JPWO2014027684A1 - 心筋梗塞の修復再生を誘導する多能性幹細胞 - Google Patents

心筋梗塞の修復再生を誘導する多能性幹細胞 Download PDF

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Abstract

再生医療において、多能性幹細胞(Muse細胞)を用いた新たな医療用途を提供することを目的とする。本発明は、生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から分離されたSSEA−3陽性の多能性幹細胞を含む、心筋梗塞、特に重症大型心筋梗塞、及びそれに伴う心不全を治療するための細胞製剤を提供する。本発明の細胞製剤は、上記疾患の対象に対し、Muse細胞を静脈投与することにより、障害心筋組織に選択に集積させ、その組織内でMuse細胞が心筋に分化するという心筋組織再生メカニズムに基づく。

Description

本発明は、再生医療における細胞製剤に関する。より具体的には、心筋梗塞により損傷を受けた心臓組織の修復及び再生に有効な多能性幹細胞を含有する細胞製剤に関する。
冠動脈の閉塞によってもたらされる心筋壊死に起因した心筋梗塞は、急性心臓死及び慢性心臓死を引き起こすため、臨床医学における解決すべき重要課題となっている。特に、急性心筋梗塞の場合、死亡率は35〜50%と高く、その死亡例の60〜70%は発症後1〜2時間以内の死亡である。また、急性期を無事に過ぎても、初回発作の心筋壊死巣が大きい場合には、心筋梗塞の再発やそれに伴う心不全に陥る危険性が高い。したがって、心筋梗塞の治療においては、発作が起こったときに迅速に処置することが求められ、壊死した心筋の大きさ、すなわち梗塞サイズを可及的小にとどめることが重要とされている。
例えば、重症大型心筋梗塞などの心筋梗塞では、左室リモデリングが進行し、心不全に陥るため生命予後は悪いことが知られている。一般に、心筋梗塞に対しては、血栓溶解療法や血行再建術などの再開通療法が実施されている。しかし、再開通による効果が得られなかったり、逆に再灌流障害などにより心筋細胞に損傷を与えたりする場合も多く、再開通療法単独では必ずしも満足のいく治療効果が得られていない。そのため、再開通療法の補助療法として心筋保護作用を期待した薬剤の検討が行われているが、満足できる薬剤は未だ見出されていない。また、重症大型心筋梗塞の場合には、壊死心筋組織を再生し、左室リモデリングを改善できれば予後は改善する。しかしながら、上記疾患に対し、現在のところ有効な内科的治療法は存在しない。
上記のように、心筋梗塞の治療において、発作が起こったときに迅速に処置することが求められているものの、梗塞サイズを小さくとどめるための決定的な治療方法はないことから、壊死した心筋組織の再生に対する取り組みが行われている。その中でも、近年、組織再生に貢献し得る生体由来の細胞が注目されつつある。成体から得られる分化能を有する細胞として、例えば、骨、軟骨、脂肪細胞、神経細胞、骨格筋等への分化能を有する骨髄間葉系細胞画分(MSC)(非特許文献1及び2)が知られているが、これは様々な細胞を含む細胞群であり、その分化能の実体が分かっておらず、治療効果にバラつきが大きかった。また、成体由来の多能性幹細胞としてiPS細胞(特許文献1等)が報告されているが、iPS細胞の樹立には、間葉系細胞である皮膚線維芽細胞画分に特定の遺伝子や特定の化合物を体細胞に導入するという極めて複雑な操作を必要とすることに加え、iPS細胞が高い腫瘍形成能力を有することから、臨床応用への極めて高いハードルが存在している。
本発明者らの一人である出澤氏の研究により、間葉系細胞画分に存在し、誘導操作なしに得られる、SSEA−3(Stage−Specific Embryonic Antigen−3)を表面抗原として発現している多能性幹細胞(Multilineage−differentiating Stress Enduring cells;Muse細胞)が間葉系細胞画分の有する多能性を担っており、組織再生を目指した疾患治療に応用できる可能性があることが分かってきた。また、Muse細胞は、間葉系細胞画分を種々のストレスで刺激することにより濃縮できることもわかってきた。(特許文献2;非特許文献3)。しかしながら、重症大型心筋梗塞などの心筋梗塞及びそれに伴う心不全の予防及び/又は治療にMuse細胞を使用し、期待される治療効果が得られることを明らかにした例はない。
特許第4183742号公報 国際公開第WO2011/007900号パンフレット
Dezawa,M.,et al.,J.Clin.Invest.,Vol.113,p.1701−1710(2004) Dezawa,M.,et al.,Science,Vol.309,p.314−317(2005) Wakao,S,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.108,p.9875−9880(2011)
本発明は、再生医療において、多能性幹細胞(Muse細胞)を用いた新たな医療用途を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、Muse細胞を含む、心筋梗塞(特に重症大型心筋梗塞)の治療、並びにそれに伴う心不全の予防及び/又は治療のための細胞製剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、日本白色種ウサギを用いて、冠動脈虚血(30分間)によって誘導された心筋梗塞に対して、静脈注射によりMuse細胞を投与することにより、Muse細胞が障害心筋組織の局所に集積し、この障害心筋組織内で心筋細胞に分化し、梗塞サイズの縮小及び心機能の改善又は回復をもたらすことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から分離されたSSEA−3陽性の多能性幹細胞を含む、心筋梗塞を治療するための細胞製剤。
[2]外的ストレス刺激によりSSEA−3陽性の多能性幹細胞が、濃縮された細胞画分を含む、[1]に記載の細胞製剤。
[3]ヒトの重症大型心筋梗塞後の心不全を予防及び/又は治療するための、上記[1]及び[2]に記載の細胞製剤。
[4]前記多能性幹細胞が、CD105陽性である、上記[1]〜[3]に記載の細胞製剤。
[5]前記多能性幹細胞が、CD117陰性及びCD146陰性である、上記[1]〜[4]に記載の細胞製剤。
[6]前記多能性幹細胞が、CD117陰性、CD146陰性、NG2陰性、CD34陰性、vWF陰性、及びCD271陰性である、上記[1]〜[5]に記載の細胞製剤。
[7]前記多能性幹細胞が、CD34陰性、CD117陰性、CD146陰性、CD271陰性、NG2陰性、vWF陰性、Sox10陰性、Snai1陰性、Slug陰性、Tyrp1陰性、及びDct陰性である、上記[1]〜[6]に記載の細胞製剤。
[8]前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、上記[1]〜[7]に記載の細胞製剤:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ。
[9]前記多能性幹細胞が、心筋梗塞部位に集積する能力を有する、上記[1]〜[8]に記載の細胞製剤。
[10]前記多能性幹細胞が、血管内皮細胞に分化する能力を有する、上記[1]〜[9]に記載の細胞製剤。
[11]前記多能性幹細胞が、心筋細胞に分化する能力を有する、上記[1]〜[9]に記載の細胞製剤。
[12]虚血後1カ月以内に対象の静脈又は冠動脈に前記多能性幹細胞を治療上有効量として1×10細胞/個体〜1×10細胞/個体で1〜10回投与する、上記[1]〜[11]に記載の細胞製剤。
[13]非投与対照と比較して、心筋梗塞サイズを縮小させる、上記[1]〜[12]に記載の細胞製剤。
[14]左室における経時的な血圧変化、左室拡張末期径(LVDd)、駆出率(EF)、左室内径短縮率(FS)、及び左室収縮末期径(LVDs)からなる群から選択される少なくとも1つの心機能指標を正常値に回復させる、上記[1]〜[13]に記載の細胞製剤。
本発明は、心筋梗塞、特に重症大型心筋梗塞を患っている対象に対し、Muse細胞を静脈等から投与することにより、障害心筋組織に選択に集積させ、その組織内でMuse細胞が心筋に分化するという心筋組織再生メカニズムによって、心筋梗塞サイズを劇的に縮小させることができる。
ウサギ心筋梗塞モデルの梗塞部位を含む心臓組織の切片を示す。トリフェニルテトラゾリウム・クロリド(TTC)染色法により、梗塞部位を決定した。破線で囲まれた非染色領域が梗塞部位である。右パネルは、虚血30分後に再灌流させ、再灌流24時間後にMuse細胞を静脈投与した、再灌流14日後の組織切片である。左パネルは、Muse細胞の代りに生理食塩水を静脈投与した組織切片である。Muse細胞の移植により、梗塞部位が有意に減少した。 TTC染色法により梗塞部位を決定し、梗塞サイズを虚血領域に対する梗塞領域の割合(%)として算出した。左は生理食塩水の対照(n=3)における梗塞サイズの平均値を示し、右はMuse細胞移植群(n=4)における梗塞サイズの平均値を示す。Muse細胞の移植により、梗塞サイズが有意に縮小した。 マッソントリクローム(MT)染色法により、梗塞サイズの縮小効果を組織化学的に検討した結果を示す。このMT染色法では、生細胞からなる組織は赤く染色され、一方、膠原線維化された梗塞領域の組織は染色されないため青白く観察される。生理食塩水を投与された対照群(n=3)と比較して、Muse細胞移植群(n=4)では梗塞領域が小さく、梗塞サイズが顕著に減少した。また、骨髄間葉系細胞画分(MSC)を移植した組織では、梗塞サイズの減少は観察されたが、Muse細胞移植群と比較して、梗塞サイズの縮小効果は小さかった。 心臓組織におけるMuse細胞の心筋細胞への分化を示す。梗塞部位と非梗塞部位は、左パネルにおける破線を境界線として区別される。ローダミン・ファロイジン染色により心筋細胞は赤色に染色された(中央パネル)。また、緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子をレンチウイルスを用いて移植前に予め導入されたMuse細胞は、梗塞部位に局在していることが分かる(右パネル)。これら2つの画像を重ね合わせた画像を左パネルに示す。これにより、梗塞部位において赤色及び緑色が重なり合う細胞が多数存在し、これは、移植されたMuse細胞が心筋細胞に分化したことを示唆する。 梗塞部位に集積したMuse細胞の分化状態を検討した結果を示す。幼若型心筋細胞において発現することが知られている心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の発現の有無を蛍光染色により検討した。緑色がGFP染色(Muse細胞)、赤色がANP染色、及び青色がDAPI染色(細胞核を染色する)を示す。左パネルにおいて、これらの3つの蛍光が複数の同一細胞において観察されたことから、移植されたMuse細胞の中には、心筋細胞に分化しつつある細胞が含まれることが示唆された。 Muse細胞移植後の心機能について、経時的な血圧変化(±dp/dt;p:血圧、t:時間)を指標に検討した結果を示す。上段パネルは、心臓収縮機能(+dp/dt)の測定結果を示し、下段パネルは、心臓拡張機能(−dp/dt)の測定結果を示す。これらの結果は、Muse細胞を移植されたウサギ群は、対照群と比較して、心機能が有意に改善されたことを示唆する。 左室の胸骨傍左室長軸断面の2D心エコー画像を示す。左パネルは生理食塩水を投与されたウサギ(対照)の左室の画像を示し、右パネルはMuse細胞を移植されたウサギの左室の画像を示す。心機能の指標とするLVDd(左室拡張末期径)、EF(駆出率)、及びFS(左室内径短縮率)をこれらの画像に基づいて測定した。Muse細胞移植群では、いずれの数値も正常に回復されたことを示す。 マッソントリクローム(MT)染色法により、梗塞部位を決定し、梗塞サイズを左室に対する梗塞領域の割合(%)として算出した。横軸は、左より、各々、生理食塩水の対照(n=10)、MSC細胞(骨髄間葉系細胞画分)移植群(n=10)、Muse細胞移植群(n=10)、及び非Muse細胞(Muse細胞を含まないMSC細胞)移植群(n=4)における各梗塞サイズ(白丸)及びそれらの平均値(黒丸)を示す。図2と同様に、Muse細胞の移植により、梗塞サイズが有意に縮小した。 図3と同様に、マッソントリクローム(MT)染色法により、梗塞サイズの縮小効果を組織化学的に検討した結果を示す。図9は、図8に示される結果に対応し、各移植群の試料から任意に1つを選択した写真を示す。 梗塞部位に集積したMuse細胞の分化状態を検討した結果を示す。心筋マーカーとして知られているトロポニンIの発現の有無を図4と同様にして蛍光染色により検討した。緑色がGFP染色(Muse細胞)、赤色がトロポニンI染色、及び青色がDAPI染色(細胞核を染色する)を示す。右パネルにおいて、これらの3つの蛍光が複数の同一細胞において観察されたことから、移植されたMuse細胞の中には、心筋細胞に分化しつつある細胞が含まれることが示唆された。 図6と同様に、Muse細胞移植後の心機能について、経時的な血圧変化(±dp/dt;p:血圧、t:時間)を指標に検討した結果を示す。+dp/dtは収縮能を示し、−dp/dtは拡張能を示す。これらの結果は、Muse細胞を移植されたウサギ群は、対照群、MSC移植群及び非Muse細胞移植群と比較して、心機能が有意に改善されたことを示唆する。 2D心エコーにより、心機能の指標であるLVDd(左室拡張末期径)、LVDs(左室収縮末期径)、EF(駆出率)、及びFS(左室内径短縮率)を計測した。Muse細胞移植群では、いずれの数値も正常に回復されたことを示す。 梗塞部位に集積したMuse細胞の分化状態を検討した結果を示す。血管内皮細胞マーカーとして知られているCD31の発現の有無を検討した。Muse細胞を移植した組織においては、他の移植群と比較して、梗塞部位においてCD31陽性の微小血管密度が高かったことから、移植されたMuse細胞は、梗塞部位において血管内皮細胞に分化する可能性を示唆する。図の縦軸は、強拡大視野(HPF)における微小血管数を示す。
本発明は、SSEA−3陽性の多能性幹細胞(Muse細胞)を含む、心筋梗塞を治療するための細胞製剤に関する。本発明を以下に詳細に説明する。
1.適用疾患
本発明は、SSEA−3陽性の多能性幹細胞(Muse細胞)を含む細胞製剤を用いて、心筋梗塞、特に、重症大型心筋梗塞、及びそれに伴う心不全の治療を目指す。ここで、「心筋梗塞」とは、冠動脈の閉塞によってもたらされる心筋壊死をいう。また、「心不全」とは、十分量の血流を押し出す心機能の不全に原因する症候群をいい、心拍出量の低下とそれに伴う静脈圧の増大、またその結果として生じる種々の臨床症状が含まれる。心筋梗塞は、急性心臓死及び慢性心臓死を引き起こす原因となる。特に、急性心筋梗塞の場合、死亡率は35〜50%と高く、その死亡例の60〜70%は発症後1〜2時間以内の死亡である。また、急性期を無事に過ぎても、初回発作の心筋壊死巣が大きい場合には、心筋梗塞を再発する危険性が高い。したがって、心筋梗塞の治療においては、発作が起きたときに迅速に処置することが求められ、壊死した心筋の大きさ、すなわち梗塞サイズを可及的小にとどめることが重要とされている。また、心筋梗塞の重症度判定には、種々の分類がある。そのような分類としては、例えば、時間的経過による分類、形態学的分類(心筋層内範囲、部位、壊死の大きさなど)、心筋の壊死形態、梗塞後の心室再構築、血行動態的分類(治療、予後などに関連する)、臨床的重症度による分類などが挙げられる。ここで、重症度が高く、より広範囲に心筋壊死に陥った心筋梗塞を特に「重症大型心筋梗塞」という。例えば、左冠動脈の近位部の完全閉塞が挙げられる。また、重症大型心筋梗塞では、心筋の左室リモデリングが進行し、心不全に陥るため生命予後は悪いことが知られている。ここで、心筋梗塞後の「左室リモデリング」とは、心筋梗塞後に生じる梗塞部位の非薄化による心機能低下の代償として起こる非梗塞部位の心筋細胞の肥大、間質(細胞外マトリックス)の増加、心内腔の拡大などの一連の変化を指す。心筋梗塞後の長期予後は、左室機能不全の程度と相関するため、左室リモデリングを抑制することは左室の機能を維持及び保存するために不可欠である。
一般に、発症6時間以内の心筋梗塞の場合には、積極的に閉塞した冠動脈の再灌流療法を行うことで、心筋の壊死範囲を縮小することが可能である。この療法に限らず、発症から24時間以内の症例では、再灌流療法を行う意義が高いとされる。急性期の場合、カテーテルを用いた冠動脈疾患の治療が行われることが多い。これに対して、本発明の細胞製剤は、再灌流までに要した時間が非常に長かった場合、又は再灌流及びカテーテル療法で上手くいかなかった場合を治療対象とすることができる。すなわち、本発明によれば、左室リモデリングに起因した心不全に陥ることを予防することを含めて、心筋組織再生に基づく心筋梗塞の治療を目的としたMuse細胞を含む細胞製剤が提供される。
2.細胞製剤
(1)多能性幹細胞(Muse細胞)
本発明の細胞製剤に使用される多能性幹細胞は、本発明者らの一人である出澤氏が、ヒト生体内にその存在を見出し、「Muse(Multilineage−differentiating Stress Enduring)細胞」と命名した細胞である。Muse細胞は、骨髄液や真皮結合組織等の皮膚組織から得ることができ、各臓器の結合組織にも散在する。また、この細胞は、多能性幹細胞と間葉系幹細胞の両方の性質を有する細胞であり、例えば、それぞれの細胞表面マーカーである「SSEA−3(Stage−specific embryonic antigen−3)」と「CD105」のダブル陽性として同定される。したがって、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、これらの抗原マーカーを指標として生体組織から分離することができる。また、Muse細胞はストレス耐性であり、間葉系組織又は培養間葉系細胞から種々のストレス刺激により濃縮することができる。本発明の細胞製剤には、ストレス刺激によりMuse細胞が濃縮された細胞画分を用いることもできる。Muse細胞の分離法、同定法、濃縮法、及び特徴などの詳細は、国際公開第WO2011/007900号に開示されている。また、Wakaoら(2011、上述)によって報告されているように、骨髄、皮膚などの間葉系細胞を培養して得たものをMuse細胞の母集団として用いる場合、SSEA−3陽性細胞の全てがCD105陽性細胞であることが分かっている。したがって、本発明における細胞製剤においては、生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞からMuse細胞を分離する場合は、単にSSEA−3を抗原マーカーとしてMuse細胞を精製し、使用することができる。なお、本明細書においては、心筋梗塞を治療するための細胞製剤において使用され得る、SSEA−3を抗原マーカーとして、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織から分離された多能性幹細胞(Muse細胞)又はMuse細胞を含む細胞集団を単に「SSEA−3陽性細胞」と記載することがある。
簡単には、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、細胞表面マーカーであるSSEA−3に対する抗体を単独で用いて、又はSSEA−3及びCD105に対するそれぞれの抗体を用いて、生体組織(例えば、間葉系組織)から分離することができる。ここで、「生体」とは、哺乳動物の生体をいう。本発明において、生体には、受精卵や胞胚期より発生段階が前の胚は含まれないが、胎児や胞胚を含む胞胚期以降の発生段階の胚は含まれる。哺乳動物には、限定されないが、ヒト、サル等の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット等のげっ歯類、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ、ヤギ、フェレット等が挙げられる。本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞は、生体の組織由来である点で、胚性幹細胞(ES細胞)や胚性生殖幹細胞(EG細胞)と明確に区別される。また、「間葉系組織」とは、骨、軟骨、脂肪、血液、骨髄、骨格筋、真皮、靭帯、腱、心臓などの組織及びそれらの結合組織をいう。例えば、Muse細胞は、骨髄や皮膚から得ることができる。また、本発明は、心筋再生を目的とする細胞製剤を提供することを目的とし、例えば、生体の間葉系組織を採取し、この組織からMuse細胞を分離し、利用することが好ましい。また、上記分離手段を用いて、培養間葉系細胞からMuse細胞を分離してもよい。なお、本発明の細胞製剤においては、使用されるMuse細胞は、細胞移植を受けるレシピエントに対して自家であってもよく、又は他家であってもよい。
上記のように、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、SSEA−3陽性及びCD105陽性を指標にして生体組織から分離することができるが、ヒト成人皮膚には、種々のタイプの幹細胞及び前駆細胞を含むことが知られている。しかしながら、Muse細胞は、これらの細胞と同じではない。このような幹細胞及び前駆細胞には、皮膚由来前駆細胞(SKP)、神経堤幹細胞(NCSC)、メラノブラスト(MB)、血管周囲細胞(PC)、内皮前駆細胞(EP)、脂肪由来幹細胞(ADSC)が挙げられる。これらの細胞に固有のマーカーの「非発現」を指標として、Muse細胞を分離することができる。より具体的には、Muse細胞は、CD34(EP及びADSCのマーカー)、CD117(c−kit)(MBのマーカー)、CD146(PC及びADSCのマーカー)、CD271(NGFR)(NCSCのマーカー)、NG2(PCのマーカー)、vWF因子(フォンビルブランド因子)(EPのマーカー)、Sox10(NCSCのマーカー)、Snai1(SKPのマーカー)、Slug(SKPのマーカー)、Tyrp1(MBのマーカー)、及びDct(MBのマーカー)からなる群から選択される11個のマーカーのうち少なくとも1個、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個のマーカーの非発現を指標に分離することができる。例えば、限定されないが、CD117及びCD146の非発現を指標に分離することができ、さらに、CD117、CD146、NG2、CD34、vWF及びCD271の非発現を指標に分離することができ、さらに、上記の11個のマーカーの非発現を指標に分離することができる。
また、本発明の細胞製剤に使用される上記特徴を有するMuse細胞は、以下:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ
からなる群から選択される少なくとも1つの性質を有してもよい。本発明の一局面では、本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞は、上記性質を全て有する。ここで、上記(i)について、「テロメラーゼ活性が低いか又は無い」とは、例えば、TRAPEZE XL telomerase detection kit(Millipore社)を用いてテロメラーゼ活性を検出した場合に、低いか又は検出できないことをいう。テロメラーゼ活性が「低い」とは、例えば、ヒト線維芽細胞と同程度のテロメラーゼ活性を有しているか、又はHela細胞に比べて1/5以下、好ましくは1/10以下のテロメラーゼ活性を有していることをいう。上記(ii)について、Muse細胞は、in vitro及びin vivoにおいて、三胚葉(内胚葉系、中胚葉系、及び外胚葉系)に分化する能力を有し、例えば、in vitroで誘導培養することにより、皮膚、肝、神経、筋、骨、脂肪等に分化し得る。また、in vivoで精巣に移植した場合にも三胚葉に分化する能力を示す場合がある。さらに、静注により生体に移植することで損傷を受けた臓器(心臓、皮膚、脊髄、肝、筋肉等)に遊走及び生着し、分化する能力を有する。上記(iii)について、Muse細胞は、浮遊培養で増殖速度約1.3日で増殖するが、10日間程度で増殖が止まるという性質を有し、さらに精巣に移植した場合、少なくとも半年間は癌化しないという性質を有する。また、上記(iv)について、Muse細胞は、セルフリニューアル(自己複製)能を有する。ここで、「セルフリニューアル」とは、Muse細胞を浮遊培養することにより得られる胚様体様細胞塊に含まれる細胞を培養し、再度胚様体様細胞塊を形成させることをいう。セルフリニューアルは1回又は複数回のサイクルを繰り返せばよい。
また、本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞を含む細胞画分は、生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞に外的ストレス刺激を与え、該外的ストレスに耐性の細胞以外の細胞を死滅させ、生き残った細胞を回収することを含む方法によって得られる、以下の性質の全てを有する、SSEA−3陽性及びCD105陽性の多能性幹細胞が濃縮された細胞画分であってもよい。
(i)SSEA−3陽性;
(ii)CD105陽性;
(iii)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(iv)三胚葉に分化する能力を持つ;
(v)腫瘍性増殖を示さない;及び
(vi)セルフリニューアル能を持つ。
前記外的ストレスは、プロテアーゼ処理、低酸素濃度での培養、低リン酸条件下での培養、低血清濃度での培養、低栄養条件での培養、熱ショックへの暴露下での培養、低温での培養、凍結処理、有害物質存在下での培養、活性酸素存在下での培養、機械的刺激下での培養、振とう処理下での培養、圧力処理下での培養又は物理的衝撃のいずれか又は複数の組み合わせであってもよい。
前記プロテアーゼによる処理時間は、細胞に外的ストレスを与えるために合計0.5〜36時間行うことが好ましい。また、プロテアーゼ濃度は、培養容器に接着した細胞を剥がすとき、細胞塊を単一細胞にばらばらにするとき、又は組織から単一細胞を回収するときに用いられる濃度であればよい。
前記プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ又はN末端スレオニンプロテアーゼであることが好ましい。更に、前記プロテアーゼがトリプシン、コラゲナーゼ又はジスパーゼであることが好ましい。
また、本発明の細胞製剤に使用される上記特徴を有するMuse細胞は、後述するように、静脈投与後、障害心筋組織(心筋梗塞部位)に集積し、その組織内で心筋細胞に分化することにより、梗塞サイズを減少させ、さらには心機能を改善又は正常に回復することができる(実施例2〜4)。
(2)細胞製剤の調製及び使用
本発明の細胞製剤は、限定されないが、上記(1)で得られたMuse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団を生理食塩水や適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁させることによって得られる。この場合、自家又は他家の組織から分離したMuse細胞数が少ない場合には、細胞移植前に細胞を培養して、所定の細胞濃度が得られるまで増殖させてもよい。なお、すでに報告されているように(国際公開第WO2011/007900号パンフレット)、Muse細胞は、腫瘍化しないため、生体組織から回収した細胞が未分化のまま含まれていても癌化の可能性が低く安全である。また、回収したMuse細胞の培養は、特に限定されないが、通常の増殖培地(例えば、10%仔牛血清を含むα−最少必須培地(α−MEM))において行うことができる。より詳しくは、上記国際公開第WO2011/007900号パンフレットを参照して、Muse細胞の培養及び増殖において、適宜、培地、添加物(例えば、抗生物質、血清)等を選択し、所定濃度のMuse細胞を含む溶液を調製することができる。ヒトの心筋梗塞対象に本発明の細胞製剤を投与する場合には、ヒトの腸骨から数ml程度の骨髄液を採取し、例えば、Muse細胞をSSEA−3の抗原マーカーを指標として分離後、有効な治療量に達するまで細胞を適切な時間(例えば、2〜3週間)培養して増やした後、自家のMuse細胞を細胞製剤として調製することができる。
また、Muse細胞の細胞製剤への使用においては、該細胞を保護するためにジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン等を、細菌の混入及び増殖を防ぐために抗生物質等を細胞製剤に含有させてもよい。さらに、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)や間葉系幹細胞に含まれるMuse細胞以外の細胞又は成分を細胞製剤に含有させてもよい。当業者は、これら因子及び薬剤を適切な濃度で細胞製剤に添加することができる。このように、Muse細胞は、各種添加物を含む医薬組成物として使用することも可能である。
上記で調製される細胞製剤中に含有するMuse細胞数は、心筋梗塞の治療において所望の効果(例えば、梗塞サイズの減少、心機能の改善)が得られるように、対象の性別、年齢、体重、患部の状態、使用する細胞の状態等を考慮して、適宜、調整することができる。後述する実施例1〜4においては、ウサギ心筋梗塞モデルを作成して、Muse細胞移植による各種の効果を検討したが、約2〜3kgの日本白色種ウサギに対しては、SSEA3陽性細胞を5×10細胞/頭で投与することにより、非常に優れた効果が得られた。この結果から哺乳動物一個体あたり1.7〜2.5×10細胞/kgを体重換算した細胞量を投与することで優れた効果が得られることが期待される。一方で、血管への細胞投与による閉塞を防ぐために、1回投与分の量として、例えば、SSEA−3陽性細胞を1×10細胞/個体以下で細胞製剤に含有させるとよい。ここで個体はウサギ、ヒトを含むがこれに限定されない。また、本発明の細胞製剤は、所望の治療効果が得られるまで、複数回(例えば、2〜10回)、適宜、間隔(例えば、1日に2回、1日に1回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回)をおいて投与されてもよい。したがって、対象の状態にもよるが、治療上有効量としては、例えば、一個体あたり1×10細胞〜1×10細胞で1〜10回の投与量が好ましい。一個体における投与総量としては、限定されないが、1×10細胞〜1×10、1×10細胞〜5×10細胞、2×10細胞〜2×10細胞、5×10細胞〜1×10細胞などが挙げられる。
本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞は、上記の通り、心筋梗塞部位に集積する性質を有する。したがって、細胞製剤の投与において、細胞製剤の投与部位、投与される血管の種類(静脈及び動脈)は限定されない。投与に適した静脈としては、耳静脈、頸静脈が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトの場合には、肘静脈が好ましい。また、投与に適した動脈としては、限定されないが、冠動脈が好ましい。しかしながら、細胞輸送効率、対象の術後の早期回復等を考慮すると、経皮的に心臓カテーテルを挿入して、梗塞部位の冠動脈に細胞製剤を直接投与することが好ましい。心臓カテーテルの穿刺部位としては、限定されないが、手首(橈骨動脈)、肘(上腕動脈)、及びももの付け根(大腿動脈)が挙げられる。
本発明の細胞製剤は、重症大型心筋梗塞などの心筋梗塞を治療対象とするが、投与時期としては、虚血後数時間から数週間の範囲を想定している。したがって、本発明の細胞製剤の投与時期としては、限定されないが、虚血後の遅くとも1カ月以内が好ましい。より好ましくは14日以内、さらに好ましくは7日以内、さらにより好ましくは72時間以内、なお好ましくは48時間以内、さらになお好ましくは24時間以内、さらになおより好ましくは12時間以内、最も好ましくは6時間以内である。本発明によれば、再灌流までに要した時間が非常に長かった場合、又は再灌流及びカテーテル療法で上手くいかなかった場合を治療対象とすることができるため、心筋梗塞の治療に非常に有用である。また、使用されるMuse細胞は、他家由来の場合でも免疫応答を惹起しないことが本発明者らの実験で確認されているので、投与回数は特に限定されず、心筋梗塞の治療において所望の効果が得られるまで適宜投与されてもよい。
本発明の実施形態では、本発明の細胞製剤の投与によって、心筋梗塞の対象において、梗塞サイズを減少させることができる。ここで、本明細書において使用するとき、「梗塞サイズ」とは、虚血領域に対する梗塞領域の割合(%)として定義される。ここで、虚血領域は、エバンスブルー染色法を用いて決定され、この色素により非虚血領域が染色される。一方、梗塞領域は、トリフェニルテトラゾリウム・クロリド(TTC)染色法を用いて決定された。さらに、本発明の細胞製剤による梗塞サイズの縮小効果を検討する場合、対照の梗塞サイズに対する縮小率(すなわち、(対照の梗塞サイズ−細胞移植後の梗塞サイズ)/対照の梗塞サイズ×100)を用いることは有用である。本発明によれば、細胞製剤の非投与群(対照)に対して、梗塞サイズが100%縮小することが好ましい。より好ましくは10〜90%縮小、さらにより好ましくは20〜70%縮小、さらになお好ましくは30〜50%縮小である。なお、後述する実施例2に示されるように、ウサギ心筋梗塞モデルを用いた場合、対照群では、梗塞サイズは平均して30.4%であったのに対して、Muse細胞移植群では、梗塞サイズは平均して18.2%であった。これらの数値から、Muse細胞移植によって、梗塞サイズを(30.4−18.2)/30.4×100=約40%縮小することができたことが分かる。
本発明の実施形態では、本発明の細胞製剤は、心筋梗塞後の心機能を改善又は正常(又は正常値)に回復することができる。本明細書において使用するとき、心機能の「改善」とは、心筋梗塞に伴う各種の症状の緩和及び進行の抑制を意味し、好ましくは、日常生活に差し支えない程度にまで症状を緩和することを意味する。また、心機能を「正常に回復する」とは、心筋梗塞に起因した全ての症状が心筋梗塞前の状態に戻ることを意味する。なお、本発明の一態様では、本発明の細胞製剤は、心筋梗塞後の(慢性)心不全の予防及び/又は治療に使用することができる。
ここで、心筋機能を評価する指標としては、限定されないが、一般的なものとして、左室の経時的な血圧変化(±dp/dt;p:血圧、t:時間)、左室拡張末期径(Left Ventricular end−Diastolic dimension;LVDd)、駆出率(Ejection Fraction;EF)、左室内径短縮率(Fractional Shortening;FS)、及び左室収縮末期径(Left Ventricular end−Sytolic dimension;LVDs)が挙げられる。本発明の細胞製剤による心機能の改善又は回復には、上記5つの指標のうちの少なくとも1つを用いて判断することができる。例えば、実施例4に記載されるように、左室経時的な血圧変化(±dp/dt)に関しては、+dp/dtは心臓収縮機能を表し、−dp/dtは左室の心臓拡張機能を表すが、両者の測定値から、細胞移植群では、対照群と比較して、心機能が有意に改善されていることが分かる(図6及び11)。さらに、2D心エコー検査の結果から、LVDdについては、対照群においてはLVDdの増大が見られたが、Muse細胞移植群ではLVDdの増大は観察されず、正常範囲内にあった(図7及び12)。次に、心臓収縮機能の指標の1つである駆出率(EF)は、ヒトにおいて55%以上を正常とするものであるが、ウサギ心筋梗塞モデルにおいて、Muse細胞移植群では60.9%(図7)及び平均59.3%(n=10)(図12)であったことから正常に回復したことを示唆する。また、EFと同様に、心臓収縮機能の指標の1つである左室内径短縮率(FS)についても、Muse細胞を移植されたウサギでは30.4%(図7)及び平均30.0%(n=10)(図12)であった。このFSは、ヒトにおいて正常値は30〜50%とされることから、このウサギ心筋梗塞モデルについても正常に回復したことを示唆する。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1:ウサギ心筋梗塞モデルの作製
本実施例におけるウサギを用いた実験プロトコールは、岐阜大学の動物実験に関する倫理委員会によって承認されたものであり、米国国立衛生研究所(NIH)によって刊行された「実験動物の管理と使用に関する指針」(1996年改定版)に沿って実施された。具体的には、以下の通りである。まず、日本白色種ウサギ(約2〜3kg/匹)は、30mg/kgペントバルビタールナトリウムを用いて麻酔された。ウサギにおいて、連続的に動脈ガス分析を行い、動脈ガスを生理学的範囲に維持するように換気条件を適宜調整した。左頸動脈及び頸静脈にカニュレートし、動脈圧を監視した。3番目の肋間腔において左開胸後、心臓を露出させ、左室の外側前面の中央を下行する大冠動脈枝下で4−0絹糸結紮を行った。縫合糸の両末端に細いビニルチューブを通し、その縫合糸を引くことによって冠動脈枝を閉塞した。次に、モスキート止血鉗子を用いてこのチューブをクランプすることによって固定した。心筋虚血は、局所的チアノーゼ及び心電図の変化によって確認した。閉塞(虚血)時間は適宜調整される。縫合糸を開放後、危険領域全体での心筋の赤色への変化によって確認した(Yasudaら,Am.J.Physiol.Heart.Circ.Physiol.,296:H1558−1565,2009wo参照されたい)。
実施例2:Muse細胞移植による心筋梗塞サイズの縮小効果
(1)Muse細胞の調製
ウサギ(約2〜3kg/匹)から骨髄細胞を回収し、SSEA−3陽性細胞(Muse細胞)をFACSを用いて分離した。より具体的には、ヒトMuse細胞の分離及び同定に関する国際公開第WO2011/007900号パンフレットに記載された方法に準じて行った。なお、移植に使用されるMuse細胞は、心筋梗塞を発症させたウサギの個体の骨髄細胞に由来するものであり、骨髄から接着性を有する間葉系細胞を培養し、増殖を経て、レンチウイルス−GFPを細胞に導入した。GFPで標識されたMuse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団をGFPとSSEA−3の二重の陽性細胞としてFACSにて分離した。その後、所定濃度に調整し、静脈注射により心筋梗塞の同一個体のウサギに戻された。なお、上記のように、骨髄細胞などの間葉系細胞を培養して得たものをMuse細胞の母集団として用いる場合、Wakaoら(2011、上述)によって報告されているように、SSEA−3陽性細胞は全て、CD105陽性細胞であることが分かっている。
(2)Muse細胞移植による梗塞サイズの縮小効果
ウサギにおいて、結紮による梗塞(虚血)時間を30分間(ヒトにおいては虚血3時間に対応する)とし、その後、縫合糸を開放し、再還流を開始した。再還流24時間後に、上記(1)で得た後の生理食塩水で濃度調整されたSSEA−3陽性細胞(5×10細胞)をウサギの耳静脈に投与した。また、比較対照として、骨髄間葉系細胞画分(MSC)(5×10細胞)、及び生理食塩水をそれぞれ別のウサギに投与し、再灌流させた。再還流14日後にMuse細胞による梗塞サイズの縮小効果を比較検討した。
より具体的には、再灌流14日後のウサギをヘパリン(500U/kg)処理し、過剰量のペントバルビタールを静脈注射することによって安楽死させた。心臓を摘出し、心筋組織における梗塞領域については、トリフェニルテトラゾリウム・クロリド(TTC)染色法により決定した。非染色領域が梗塞部位となる。一方、虚血領域については、エバンスブルー色素(4%;Sigma Chemical,ミズーリ州セントルイス)を大動脈から80mmHgで注射し、虚血領域を決定した。この色素により、虚血に陥っていない組織が青色に染色され、虚血領域はこの色素が毛細血管によって運ばれないため、白色となる。
房室輪が得られるように左室を切断し、計7つの組織切片を得た。各組織を計量後、1%TTC溶液中、37℃にてインキュベート後、梗塞領域を視覚化し、撮像した(Fishbeinら、Am.Heart J.,101,593−600,1981を参照されたい)。結果を図1に示す。図中、左パネルは、対照として生理食塩水を投与された房室輪を示し、右パネルは、Muse細胞移植を行った房室輪を示す。これらの組織切片において白色破線で囲まれた領域(心筋の一部と乳頭筋)は、TTCによって染色されなかった梗塞部位を表す。Muse細胞移植が行われた組織切片では、対照と同様に梗塞部位は観察されたが、対照と比較してその領域は非常に狭いことが分かる。
さらに、梗塞サイズは、虚血領域に対する梗塞領域の割合(%)として算出された(図2)。対照群(n=3)においては、梗塞サイズは30.4%であるが、Muse細胞移植(n=4)後の梗塞サイズは18.2%であり、Muse細胞により梗塞サイズを顕著に縮小させたことが分かる。この効果は、縮小率として計算すると、Muse細胞は、梗塞サイズを約40%縮小させることができた。さらに、被検体数を増やして、同様の試験を行った(図8)。梗塞サイズの平均値は、生理食塩水の対照(n=10)では27.0%であり、MSC細胞(骨髄間葉系細胞画分)移植群(n=10)では21.0%であり、Muse細胞移植群(n=10)では13.9%であり、及び非Muse細胞(Muse細胞を含まないMSC細胞)移植群(n=4)では22.8%であった。この結果からも、梗塞サイズの縮小において、Muse細胞の効果を大きいことがわかる。
また、マッソントリクローム染色により、梗塞サイズの縮小効果を組織化学的に検討した。上記で摘出した心臓を10%ホルマリン液中で固定し、パラフィン包埋後、房室輪が得られるように各標本から横断面方向に切片を作製した。その後、常法に従ってマッソントリクローム(MT)染色し、心筋梗塞領域を視覚化した(図3及び図9)。このMT染色では、生細胞からなる組織では赤く染色され、一方、膠原線維化された組織は青白く、色が抜けたように観察される。生理食塩水を投与された対照群では、MTに染色されない膠原線維化された組織(梗塞部位)が広がっている。一方、Muse細胞を移植されたウサギ群の左室組織は、対照と比較して青白い部分が小さく、梗塞サイズが減少したことが分かる。また、特徴的に、乳頭筋についても梗塞から回復していることが観察された。一方、比較対照として、MSC細胞を移植したウサギにおける左室組織は、生理食塩水を投与された対照と比較すると、梗塞サイズの減少は観察されたが、Muse細胞移植群と比較して、梗塞サイズの縮小効果は小さかった。また、Muse細胞移植において観察された乳頭筋の回復は、MSC細胞を移植した組織では見られなかった。
実施例3:心臓組織におけるMuse細胞の分化
実施例2において観察されたMuse細胞による梗塞サイズの減少が、Muse細胞による心筋細胞への分化によるものかどうかを検討した。まず、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するように遺伝子導入されたMuse細胞(5×10個)をウサギ心筋梗塞モデルの耳静脈から注射した。実施例2と同様にして、組織切片を作製し、各種組織染色用の蛍光色素を用いて組織を観察した(図4)。図4の左パネルに見られるように、白色の破線は梗塞部と非梗塞部との境界を示し、それより右上部分は梗塞部位、左下部分は非梗塞部位を示す。中央パネルは、常法に従って、ローダミン・ファロイジン染色により生きた心筋細胞を赤色に染色したものである。この染色により、梗塞部位と非梗塞部位を明確に区別することができる。また、右パネルは、GFP染色画像を示し、GFP遺伝子が導入されたMuse細胞(緑色)が梗塞部位に選択的に集積している様子を示す。これら2つの画像を重ね合わせた画像を左パネル示す。これにより、梗塞部位において赤色及び緑色が重なり合う細胞が多数存在し、これは、移植されたMuse細胞が心筋細胞に分化したことを示唆する。
さらに、梗塞部位に集積したGFP陽性のMuse細胞の分化状態を調べるために、常法に従って、これらの細胞を心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の発現の有無について検討した。このANPは、幼若型心筋細胞が発現することが知られている。図5中、緑色(Muse細胞)がGFP染色、赤色がANP染色、及び青色がDAPI染色(細胞核を染色する)を示す。図5の左パネルからも分かるように、これらの3つの蛍光が複数の同一細胞において観察されたことから、移植されたMuse細胞の中には、心筋細胞に分化しつつある細胞が含まれることが示唆された。
次に、梗塞部位に集積したGFP陽性のMuse細胞において、心筋マーカーとして知られているトロポニンIの発現の有無を検討した。トロポニンI染色では、ウサギのトロポニンIと交差反応するマウス抗ヒトトロポニンI抗体(Chemical International,Inc)を一次抗体として使用した。図10中、緑色(Muse細胞)がGFP染色、赤色がトロポニンI染色、及び青色がDAPI染色(細胞核を染色する)を示す。図10の右パネルからも分かるように、これらの3つの蛍光が複数の同一細胞において観察されたことから、移植されたMuse細胞の中には、上記の結果(図5)と同様に、心筋細胞に分化しつつある細胞が含まれることが示唆された。
さらに、梗塞部位に集積したMuse細胞の分化状態を調べるために、血管内皮細胞マーカーとして知られているCD31の発現の有無を検討した。具体的には、ウサギの血管内皮細胞と交差反応するマウス抗ヒトCD31モノクローナル抗体(Dakoより入手)を一次抗体として使用し、組織化学的にCD31を発現した細胞を染色した。図13の写真からも明らかなように、Muse細胞を移植した組織においては、他の移植群と比較して、梗塞部位においてCD31陽性の微小血管密度が高かった。このことから、移植されたMuse細胞は、梗塞部位において血管内皮細胞に分化する可能性が示唆された。
実施例4:Muse細胞移植による心機能改善の評価
Muse細胞移植後の心機能を経時的な血圧変化(±dp/dt;pは血圧、tは時間を示す)を指標として検討し、さらに、2D心エコー検査によって左室断面の画像から判断した。これらの実験では、再灌流24時間後に、生理食塩水を投与されたウサギ(対照群)(n=3)、及びMuse細胞を投与されたウサギ群(n=4)を用いた。まず、経時的な血圧変化の測定は、再灌流14日後の各ウサギを10mg/kgペントバルビタールで浅麻酔し、ウサギの頸動脈からマイクロマノメーター付きカテーテル(SPR 407;Millar Instruments)を左室に挿入して行われた。このカテーテルにより得られる左室の心臓収縮機能を表す+dp/dt、及び左室の心臓拡張機能を表す−dp/dtを記録した。この結果を図6に示す。心臓収縮機能(+dp/dt)(図6上)、心臓拡張機能(−dp/dt)(図6下)ともに、Muse細胞を移植されたウサギ群は、対照群と比較して、心機能が有意に改善された。
さらに被検体数を増やし、上記と同様に、心機能を経時的な血圧変化を指標として検討した結果を図11に示す。心臓収縮機能(+dp/dt)(図11上)、心臓拡張機能(−dt/dt)(図11下)ともに、Muse細胞(n=10)を移植されたウサギ群は、対照群(n=10)、MSC細胞移植群(n=10)、及び非Muse細胞移植群(n=9)と比較して、心機能が有意に改善された。
次に、上記のウサギ(対照群及びMuse細胞移植群)の心機能をさらに確認するために2D心エコー検査を行った。この2D心エコー検査においては、動物用の超音波診断装置(SSD2000;Aloka)を用いて、ウサギの心臓を撮像した。測定により得られた左室の胸骨傍左室長軸断面の画像を図7に示す。左パネルは、対照ウサギの左室であり、右パネルは、Muse細胞を移植されたウサギの左室である。対照では、左室拡張末期径(Left Ventricular end−Diastolic dimension;LVDd)が22.2mmであった。これに対し、Muse細胞を移植されたウサギでは19.5mmと小さいことから、Muse細胞によって、梗塞サイズを縮小したことが分かる。さらに、心臓収縮機能の指標の1つである駆出率(Ejection Fraction;EF)を測定すると、対照では34.1%であり、Muse細胞を移植されたウサギでは60.9%であった。この駆出率は、左室1回排出量の左室拡張末期容積に対する割合で表される。通常、ヒトにおいて、駆出率が55%以上を正常とする。したがって、上記の測定結果は、対照と比較して、ウサギにおいてMuse細胞移植によって心機能が正常に回復したことを示唆する。また、EFと同様に、心臓収縮機能の指標の1つとなる左室内径短縮率(Fractional Shortening;FS)を測定すると、対照では15.1%であり、Muse細胞を移植されたウサギでは30.4%であった。この左室内径短縮率は、撮像して得られたMモードエコー図を用い、左室拡張末期径と左室収縮末期径を計測し、これらの差を左室拡張末期径で除し、100分率で表したものである。通常、ヒトにおいて正常値は30〜50%とされる。したがって、上記の測定結果は、対照と比較して、ウサギにおいてMuse細胞移植によって心機能が正常に回復したことを示唆する。
再度、Muse細胞移植後のウサギの心機能が正常に回復したことを確認するために、対照ウサギ、MSC細胞を移植されたウサギ、及び非Muse細胞を移植されたウサギについて、LVDd、EF、及びFS(上述)、並びに左室収縮末期径(Left Ventricular end−Sytolic dimension;LVDs)を測定した。上記の結果と同様に、LVDd、EF及びFSともに、Muse細胞移植によってウサギの心機能が正常に回復した。また、LVDsについても、対照ウサギでは、平均して18.3mmであったのに対して、Muse細胞を移植されたウサギでは、平均して13.8mmと小さいことから、Muse細胞移植によって心機能が正常に回復したことを示唆する。
本発明の細胞製剤は、心筋梗塞モデルに経静脈的に投与することにより、梗塞部位において心筋を再生することができ、梗塞サイズを縮小させ、心機能を改善することができ、心筋梗塞、特に、ヒトの重症大型心筋梗塞及びそれに伴う心不全の治療に応用できる。
本明細書に引用する全ての刊行物及び特許文献は、参照により全体として本明細書中に援用される。なお、例示を目的として、本発明の特定の実施形態を本明細書において説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の改変が行われる場合があることは、当業者に容易に理解されるであろう。

Claims (14)

  1. 生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から分離されたSSEA−3陽性の多能性幹細胞を含む、心筋梗塞を治療するための細胞製剤。
  2. 外部ストレス刺激によりSSEA−3陽性の多能性幹細胞が、濃縮された細胞画分を含む、請求項1に記載の細胞製剤。
  3. ヒトの重症大型心筋梗塞後の心不全を予防及び/又は治療するための、請求項1又は2に記載の細胞製剤。
  4. 前記多能性幹細胞が、CD105陽性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  5. 前記多能性幹細胞が、CD117陰性及びCD146陰性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  6. 前記多能性幹細胞が、CD117陰性、CD146陰性、NG2陰性、CD34陰性、vWF陰性、及びCD271陰性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  7. 前記多能性幹細胞が、CD34陰性、CD117陰性、CD146陰性、CD271陰性、NG2陰性、vWF陰性、Sox10陰性、Snai1陰性、Slug陰性、Tyrp1陰性、及びDct陰性である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  8. 前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の細胞製剤:
    (i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
    (ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
    (iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
    (iv)セルフリニューアル能を持つ。
  9. 前記多能性幹細胞が、心筋梗塞部位に集積する能力を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  10. 前記多能性幹細胞が、心筋細胞に分化する能力を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  11. 前記多能性幹細胞が、血管内皮細胞に分化する能力を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  12. 虚血後1カ月以内に対象の静脈又は冠動脈に前記多能性幹細胞を治療上有効量として1×10細胞/個体〜1×10細胞/個体で1〜10回投与する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  13. 非投与対照と比較して、心筋梗塞サイズを縮小させる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  14. 左室における経時的な血圧変化、左室拡張末期径(LVDd)、駆出率(EF)、左室内径短縮率(FS)、及び左室収縮末期径(LVDs)からなる群から選択される少なくとも1つの心機能指標を正常値に回復させる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の細胞製剤。
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