JP7102666B2 - Muse細胞動員剤及び心筋障害への利用 - Google Patents

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Description

本明細書は、Muse細胞動員剤及びその利用に関する。
間葉系細胞画分に存在し、誘導操作なしに得られる、SSEA-3(Stage-Specific Embryonic Antigen-3)を表面抗原として発現している多能性幹細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring cells;Muse細胞)が間葉系細胞画分の有する多能性を担っていることが知られている。そして、経脈管的に投与されたMuse細胞が、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体2(S1PR2)を活性化する化合物(例えば、SIP自体)の投与部位に誘導されることから、当該化合物がMuse細胞の遊走因子であり、Muse細胞は、組織再生に基づく各種疾患の治療に適用できる可能性があることがわかってきている(特許文献1)。
また、S1PR2アゴニストである化合物が、内因性Muse細胞を血流中に動員し梗塞心筋組織を再生させうることも報告されている(特許文献2)。
国際公開第WO2014/027684号パンフレット 特開2016-183119号公報
現状において、Muse細胞の疾患治療への使用形態は、特許文献1に示すように、疾患に罹患している患者個体から採取し、あるいは採取・培養して、再び個体に移植するという、細胞移植の形態が主として想定されている。細胞治療はその有用性は高いものの、適切なMuse細胞の調製は依然として困難であり、治療へのハードルは低くはない。また、SIP自体などのS1PR2活性化化合物の投与についても困難性があった。
また、既に、Muse細胞を動員して、梗塞組織等などの標的組織に遊走させうる化合物も見出されてはいるが、さらに他の化合物は未だ報告されてはいない。
本明細書は、上記問題に鑑みて、Muse細胞動員作用を有する化合物及びその心筋障害への利用を提供する。
本発明者らは、ヒトなどにおいて内在する多能性幹細胞であって、本来的に個体内に内在するか又は傷害時に骨髄から誘導されるMuse細胞を動員し、傷害部位にデリバリーさせるのに有用な化合物を見出した。本明細書は、こうした知見に基づき以下の手段を提供する。
(1)以下の式で表される化合物(1)~(3)からなる群から選択される1種又は2種以上を有効成分とする、Muse細胞動員剤。
Figure 0007102666000001
(2)経皮投与製剤である、(1)に記載のMuse細胞動員剤。
(3)皮下注射剤又は筋肉注射剤である、(1)又は(2)に記載のMuse細胞動員剤。
(4)以下の式で表される化合物(1)~(3)からなる群から選択される1種又は2種以上を有効成分とする、組織修復・再生剤。
Figure 0007102666000002
(5)障害された心筋組織の修復・再生のための、(4)に記載の組織修復・再生剤。
(6)以下の式で表される化合物(1)~(3)からなる群から選択される1種又は2種以上を有効成分とする、心筋梗塞の予防又は治療剤。
Figure 0007102666000003
ウサギの血中のMuse細胞の測定結果を示す図である。 ウサギ心筋梗塞モデルに対する化合物aの投与の梗塞領域の評価結果を示す図である。 ウサギ心筋梗塞モデルに対する化合物aの投与の心エコーによる評価結果を示す図である。 ウサギ心筋梗塞モデルに対する化合物aの投与の心エコーによる評価結果を示す図である。 ウサギドキソルビシン心筋症モデルに対する化合物aの投与の心エコーによる評価結果を示す図である。 ウサギドキソルビシン心筋症モデルに対する化合物aの投与の心エコーによる評価結果を示す図である。
本明細書は、Muse細胞の動員剤(以下、単に、本剤ともいう。)に関する。Muse細胞は、内因性多能性幹細胞であり、障害した組織の修復や再生に関与することができる。本剤は、Muse細胞を血流中に動員し、結果として、Muse細胞を生体内における必要個所、すなわち、障害部位等に送達することができる。また、障害部位等に送達されたMuse細胞は、障害された組織を修復し再生する。以上のことから、本剤は、Muse細胞の動員剤として用いるほか、Muse細胞の標的部位へのデリバリーのための送達剤、Muse細胞による障害組織の修復・再生のための治療剤等として用いることができる。
本剤の投与部位は、個体において組織や細胞の傷害が生じている傷害部位とは異なる部位であることが好ましい。本剤は、本剤の有効成分たる化合物を、いわゆる遊走因子としてではなく、Muse細胞等の多能性幹細胞を血流中に動員させるために用いているからである。本剤は、Muse細胞を集積させたい部位ではない部位に投与することによって、Muse細胞を傷害部位に集積させることができる。
このため、本剤は、細胞移植を伴うことなく、また、傷害部位に本化合物を投与することなく、Muse細胞などの内因性多能性幹細胞を血流に動員し傷害部位に集積させて、傷害部位における組織や細胞の再生に寄与させることができる。したがって、侵襲性の低い医療を提供することができる。
本剤を適用できる組織や疾患は特に限定するものではない。例えば、心筋組織の障害治療に用いることができる。本剤を心筋障害の傷害部位でない部位に投与することで、内因性多能性幹細胞を血流中に動員し、心筋傷害部位へと送達して梗塞領域の拡大を抑制又は梗塞領域を縮小させることができる。これにより、心筋障害を治療し又は改善することができる。心筋組織の障害は、個体の生命に大きく影響するほか、心筋組織に対する直接的な治療は困難や危険を伴う場合が多い。本剤は、障害部位である心筋組織の外科的治療や直接的な薬剤導入を回避できる点において好適である。
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
(Muse細胞動員作用剤)
本剤は、Muse細胞動員作用を有する化合物を有効成分として含有することができる。最初に、Muse細胞を含む内因性多能性幹細胞について説明する。
(内因性多能性幹細胞)
本剤は、生体内に予め存在する内因性である多能性幹細胞に対して作用することができる。なお、本明細書において、「内因性多能性幹細胞」とは、移植によらないで、本来的に生体内に存在するか又は生体において生じた傷害に起因して誘導された多能性幹細胞を意味している。
内因性多能性幹細胞としては、本発明者らの一人である出澤が、ヒト生体内にその存在を見出し、「Muse(Multilineage-differentiating Stress Enduring)細胞」と命名した細胞が挙げられる。Muse細胞は、骨髄液や真皮結合組織等の皮膚組織から得ることができ、各臓器の結合組織にも散在する。また、この細胞は、多能性幹細胞と間葉系幹細胞の両方の性質を有する細胞である。
Muse細胞などの内因性多能性幹細胞は、少なくともSSEA3陽性及びCD105陽性のいずれかであることが好ましい。
例えば、Muse細胞は、それぞれの細胞表面マーカーである「SSEA-3(Stage-specific embryonic antigen-3)」と「CD105」のダブル陽性として同定される。したがって、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、これらの抗原マーカーを指標として生体組織から分離することができる。Muse細胞の分離法、同定法、及び特徴などの詳細は、国際公開第WO2011/007900号に開示されている。また、Wakaoら(2011、上述)によって報告されているように、骨髄、皮膚などから間葉系細胞を培養し、それをMuse細胞の母集団として用いる場合、SSEA-3陽性細胞の全てがCD105陽性細胞であることが分かっている。すなわち、生体の間葉系組織又は培養間葉系幹細胞からMuse細胞を分離する場合は、単にSSEA-3を抗原マーカーとしてMuse細胞を精製し、使用することができる。
なお、本明細書においては、SSEA-3を抗原マーカーとして、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織から分離された多能性幹細胞(Muse細胞)又はMuse細胞を含む細胞集団を単に「SSEA-3陽性細胞」と記載することがある。また、本明細書においては、「非Muse細胞」とは、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織に含まれる細胞であって、「SSEA-3陽性細胞」以外の細胞を指す。
より具体的には、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、細胞表面マーカーであるSSEA-3に対する抗体を単独で用いて、又はSSEA-3及びCD105に対するそれぞれの抗体を両方用いて、生体組織(例えば、間葉系組織)から分離することができる。ここで、「生体」とは、哺乳動物の生体をいう。本開示において、生体には、受精卵や胞胚期より発生段階が前の胚は含まれないが、胎児や胞胚を含む胞胚期以降の発生段階の胚は含まれる。哺乳動物には、限定されないが、ヒト、サル等の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット等のげっ歯類、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ、ヤギ、フェレット等が挙げられる。
なお、本開示においてMuse細胞は、生体の組織由来である点で、胚性幹細胞(ES細胞)や胚性生殖幹細胞(EG細胞)と明確に区別される。また、「間葉系組織」とは、骨、滑膜、脂肪、血液、骨髄、骨格筋、真皮、靭帯、腱、歯髄、臍帯などの組織及び各種臓器に存在する結合組織をいう。例えば、Muse細胞は、骨髄や皮膚から得ることができる。例えば、生体の間葉系組織を採取し、この組織からMuse細胞を分離し、利用することが好ましい。また、上記分離手段を用いて、培養間葉系細胞からMuse細胞を分離してもよい。
また、Muse細胞などの内因性多能性幹細胞は、CD34(EP及びADSCのマーカー)、CD117(c-kit)(MBのマーカー)、CD146(PC及びADSCのマーカー)、CD271(NGFR)(NCSCのマーカー)、NG2(PCのマーカー)、vWF因子(フォンビルブランド因子)(EPのマーカー)、Sox10(NCSCのマーカー)、Snai1(SKPのマーカー)、Slug(SKPのマーカー)、Tyrp1(MBのマーカー)、及びDct(MBのマーカー)からなる群から選択される11個のマーカーのうち少なくとも1個、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個のマーカーの非発現を指標に分離することができる。例えば、限定されないが、CD117及びCD146の非発現を指標に分離することができ、さらに、CD117、CD146、NG2、CD34、vWF及びCD271の非発現を指標に分離することができ、さらに、上記の11個のマーカーの非発現を指標に分離することができる。
上記のように、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、SSEA-3陽性又はSSEA-3陽性とCD105陽性の二重陽性を指標にして生体組織から分離することができる。ヒト成人皮膚等には、種々のタイプの幹細胞及び前駆細胞を含むことが知られている。しかしながら、Muse細胞は、これらの細胞と区別されるものである。すなわち、このような幹細胞及び前駆細胞には、皮膚由来前駆細胞(SKP)、神経堤幹細胞(NCSC)、メラノブラスト(MB)、血管周囲細胞(PC)、内皮前駆細胞(EP)、脂肪由来幹細胞(ADSC)が挙げられる。したがって、これらの細胞に固有のマーカーの「非発現」を指標として、Muse細胞を分離することができる。
また、本発明において対象とされる上記特徴を有するMuse細胞は、以下:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ
からなる群から選択される少なくとも1つの性質を有してもよい。好ましくは、2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくはすべての特徴を有している。
上記(i)について、「テロメラーゼ活性が低いか又は無い」とは、例えば、TRAPEZE XL telomerase detection kit(Millipore社)を用いてテロメラーゼ活性を検出した場合に、低いか又は検出できないことをいう。テロメラーゼ活性が「低い」とは、例えば、体細胞であるヒト線維芽細胞と同程度のテロメラーゼ活性を有しているか、又はHela細胞に比べて1/5以下、好ましくは1/10以下のテロメラーゼ活性を有していることをいう。
上記(ii)について、Muse細胞は、in vitro及びin vivoにおいて、三胚葉(内胚葉系、中胚葉系、及び外胚葉系)に分化する能力を有し、例えば、in vitroで誘導培養することにより、肝細胞、神経細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、骨細胞、脂肪細胞等に分化し得る。また、in vivoで精巣に移植した場合にも三胚葉に分化する能力を示す場合がある。さらに、静注により生体に移植することで損傷を受けた臓器(心臓、皮膚、脊髄、肝、筋肉等)に遊走及び生着し、分化する能力を有する。
上記(iii)について、Muse細胞は、浮遊培養では増殖速度約1.3日で増殖するが、10日間程度で増殖が止まるという性質を有し、さらに精巣に移植した場合、少なくとも半年間は癌化しないという性質を有する。
上記(iv)について、Muse細胞は、セルフリニューアル(自己複製)能を有する。ここで、「セルフリニューアル」とは、1個のMuse細胞を浮遊培養することにより得られる胚様体様細胞塊に含まれる細胞を培養し、再度胚様体様細胞塊を形成させることをいう。セルフリニューアルは1回又は複数回のサイクルを繰り返せばよい。
本剤は、Muse細胞を動員する作用を有する化合物を有効成分としている。かかる化合物は、S1PR2活性化作用を有する化合物である場合もある。S1PR2は、スフィンゴシン-1-リン酸(SIP)に対する受容体の1つであり、内因性多能性幹細胞であるMuse細胞において特異的に発現していることが報告されている(特許文献1等)。
S1PR2活性化化合物としては、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)、スフィンゴシン-1-リン酸誘導体、並びにスフィンゴシン-1-リン酸受容体のアゴニストが挙げられる。ここで、「スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)」とは、下記式で表される。SIPは、細胞膜を構成するスフィンゴ脂質の代謝産物であり、ある種の酵素によって細胞膜から切り出されて遊離した後、細胞膜上に発現しているGタンパク質共役受容体に結合することにより、細胞遊走などを引き起こす生理活性物質として知られている。また、S1Pに対する受容体としては、Gタンパク質共役受容体であるS1P受容体が知られ、これまでにS1PR1~S1PR5の5種類が存在することが分かっている。
Figure 0007102666000004
本剤が有効成分とする化合物(以下、本化合物ともいう。)としては、以下の化合物(1)~(3)等が挙げられる。これらの化合物の構造を以下に示す。
(1)1-(2-(1-ピリジニル-2-メチル-2,5-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-2-オキソエチル)-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2(1H)-オン(IUPAC名:1-(2-{2,5-ジメチル-1-[(ピリジン-2-イル)メチル]-1H-ピロール-3-イル}-2-オキソエチル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン)
(2)1-(2-(1-ピリジニルー3-メチル-2,5-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-2-オキソエチル)-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2(1H)-オン(IUPAC名:1-(2-{2,5-ジメチル-1-[(ピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピロール-3-イル}-2-オキソエチル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン)
(3)1-(2-(1-ピリジニル-4-メチル-2,5-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-2-オキソエチル)-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2(1H)-オン(IUPAC名:1-(2-{2,5-ジメチル-1-[(ピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピロール-3-イル}-2-オキソエチル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン)
Figure 0007102666000005
本剤は、本化合物を有効成分とし、細胞や組織においてなんらかの傷害が生じているヒトを含む哺乳動物の個体の傷害部位でない部位、すなわち、非傷害部位に投与されることにより、生体内に内在するMuse細胞及び/又は傷害時に生体内に誘導されるMuse細胞を動員することができる。動員されたMuse細胞は、傷害部位に遊走し集積して、傷害組織を修復及び/又は再生し、傷害状態を改善し治療することができる。内因性のMuse細胞の再生能を利用して傷害部位を修復し、傷害の進行を抑制し又は傷害を低減させることができる。
本剤は、骨髄中のMuse細胞などの内因性多能性幹細胞を、血流中に動員することができる。一旦、血流中に動員されたMuse細胞は、その遊走能に基づいて障害部位に集積するものと考えられる。本発明者の一部は、既に、S1PR2活性化化合物を遊走因子として傷害部位に投与して、Muse細胞を傷害部位に集積させることを見出している。しかしながら、遊走因子は、その因子の血流中における濃度勾配に応じて、遊走因子高濃度側に被遊走要素(ここではMuse細胞)を誘導するものである。
これに対して、本剤は、本化合物を遊走因子として使用するものではない。本剤は、傷害部位でない非傷害部位に本化合物を投与して、内因性多能性幹細胞を血流中に動員し傷害部位に集積させるものである。本剤は、S1PR2活性化化合物を傷害部位に投与しない点、非傷害部位に投与するのに内因性多能性幹細胞を傷害部位に集積させることができる点において有利である。
本剤は、Muse細胞を動員剤であるが、傷害された組織の修復及び再生に貢献することができるため、細胞や組織の障害が発生している可能性のある状態あるいは疾患に適用することができる。本剤は、特に、疾患等の適用対象を想定するものではない。生体内において傷害部位が発生しているような疾患や、傷害が発生しているようなあるいはそのような障害が予見されるような状態に適用される。ここでいう、傷害部位は、生体内における各種の臓器、器官、及び組織において、外傷、炎症、疾患、虚血、壊死、腫瘍形成、又は加齢等を原因とした各種細胞及び組織との変性又は脱落によって失われた特定の部位を意味する。こうした状態や疾患は特に限定するものではないが、適用できる状態や疾患は、後述する。
本剤は、傷害部位とは異なる部位、すなわち、非傷害部位に投与される。非傷害部位とは、上記した傷害部位以外の部位である。すなわち、本剤は、傷害部位とは異なる部位に投与することで、多能性幹細胞を移植することなく、傷害部位に対して内因性多能性幹細胞を集積させることができるものである。
投与部位としての非傷害部位は、改善等しようとする傷害部位以外であればよく、特に限定されない。したがって、例えば、一般的な薬剤の投与経路に適用される投与部位であって、傷害部位以外であればよい。
本剤は、経口投与のほか、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、髄腔内投与、舌下、経直腸、経膣、経鼻、吸入、経皮、口腔粘膜、インプラント等、非経口投与を意図した製剤形態を採ることができる。製剤形態としても、特に限定するものではないが、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、髄腔内投与については、注射剤などの注入剤等が挙げられる。また、経皮、口腔粘膜、インプラント等においては、パッチやフィルム等も可能である。
本剤は、静脈投与製剤以外の製剤形態が好適であり、例えば、皮下投与製剤、筋肉内投与製剤、経皮製剤が好適である。なかでも、皮下注射剤や筋肉注射剤などの経皮的投与製剤が好適である。これらの製剤は、Muse細胞を血流中に動員するのに好適な製剤形態であるからである。例えば、皮下注射剤や筋肉注射剤の場合には、特に限定するものではないが、上腕部や臀部を投与部位とすることができる。
本剤は、投与形態等に応じて、公知の製剤方法を利用して製造することができる。注射剤を調製する場合は、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法を利用して局所用注射剤を製造することができる。pH調製剤及び緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA(エデト酸ナトリウム)、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。
本剤に含める本化合物の濃度は、傷害部位における損傷の程度等によって適宜変更することができる。例えば、Muse細胞を血流に動員させ傷害部位に集積させるために有効な本化合物の濃度は、特に限定するものではないが、例えば、1nM~100μMである。
本剤は、Muse細胞を動員することができるため、Muse細胞を有効成分とする薬剤と併用することもできる。また、個体に発生している障害の種類に応じた薬剤と併用することもできる。
本剤の投与量は、Muse細胞の動員レベルや、適用する傷害の重症度、発症経過日数、個体年齢等によっても異なるが、例えば、1mg/kg体重、日以上10mg/kg体重、日以下とし、こうした投与を、例えば、1回から適数回(例えば、10回以下程度、2回以上8回以下程度など)にわたって実施することができる。投与量は、3mg/kg体重、日以上8mg/kg体重、日以下であってもよいし、好ましくは4mg/kg体重、日以上6mg/kg体重、日以下であってもよい。また、例えば、Muse細胞の早急な動員を意図する場合には、傷害又は発症後24時間以内に少なくとも1回投与することが好ましい。
(組織の修復・再生剤)
本剤は、特に、組織の修復及び/又は再生のために用いることができる。すなわち、組織の修復・再生剤として用いることもできる。本化合物によって動員されるMuse細胞は、内因性多能性幹細胞であり、傷害された組織の修復及び再生に貢献することができる。本修復剤は、細胞や組織の障害が発生している可能性のある状態あるいは疾患に適用することができる。こうした状態や疾患は特に限定するものではない。本修復剤は、既述の本剤と同様、非傷害部位に投与する剤である。
本剤は、例えば、心筋障害に用いることができる。心筋障害とは、冠動脈の狭窄や閉塞によって生じる、心筋への血流の減少又は停止に起因する傷害をいう。心筋障害としては、例えば、狭心症、不安定狭心症及び心筋梗塞が挙げられる。心筋梗塞は、特に、重症大型心筋梗塞、及びそれに伴う心不全を含む。ここで、「心筋梗塞」とは、冠動脈の閉塞によってもたらされる心筋壊死をいう。また、「心不全」とは、十分量の血流を押し出す心機能の不全に原因する症候群をいい、心拍出量の低下とそれに伴う静脈圧の増大、またその結果として生じる種々の臨床症状が含まれる。心筋梗塞は、急性心臓死及び慢性心臓死を引き起こす原因となる。
本剤の適用対象である心筋障害は、急性心筋梗塞とすることが有利である。本剤は、発症後迅速に処置するのに好適な剤であるからである。急性心筋梗塞の場合、死亡率は35~50%と高く、その死亡例の60~70%は発症後1~2時間以内の死亡である。また、初回発作の心筋壊死巣が大きい場合には、心筋梗塞を再発する危険性が高い。したがって、心筋梗塞の治療においては、発作が起きたときに迅速に処置することが求められ、壊死した心筋の大きさ、すなわち梗塞サイズを可及的小にとどめることが重要とされている。
また、本剤の適用対象である心筋障害は、重症大型心筋梗塞とすることが有利である。なかでも、心筋の左室リモデリングが進行する程度の心筋梗塞とすることが有利である。心筋梗塞の重症度判定には、種々の分類がある。そのような分類としては、例えば、時間的経過による分類、形態学的分類(心筋層内範囲、部位、壊死の大きさなど)、心筋の壊死形態、梗塞後の心室再構築、血行動態的分類(治療、予後などに関連する)、臨床的重症度による分類などが挙げられる。ここで、重症度が高く、より広範囲に心筋壊死に陥った心筋梗塞を特に「重症大型心筋梗塞」という。例えば、左冠動脈の近位部の完全閉塞が挙げられる。また、重症大型心筋梗塞では、心筋の左室リモデリングが進行し、心不全に陥るため生命予後は悪いことが知られている。心筋梗塞後の「左室リモデリング」とは、心筋梗塞後に生じる梗塞部位の非薄化による心機能低下の代償として起こる非梗塞部位の心筋細胞の肥大、間質(細胞外マトリックス)の増加、心内腔の拡大などの一連の変化を指す。心筋梗塞後の長期予後は、左室機能不全の程度と相関するため、左室リモデリングを抑制することは左室の機能を維持及び保存するために不可欠である。
また、本剤の適用対象である心筋障害は、例えば、薬剤の投与に伴う副作用としての心筋障害であってもよい。例えば、ドキソルビシン(商品名アドリアシン)などのアントラサイクリン系薬剤(抗ガン剤)他、シクロホスファミド、パクリタキセル、フルオロウラシル、トラスツズマブ、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ等によって生じる心筋の硬化(線維化)などによる心筋障害にも適用することができる。したがって、本剤は、心筋障害が副作用となる薬剤との併用も有効である。
本剤は、本化合物を非傷害部位に投与する剤である。ここで非傷害部位とは、例えば、心筋障害の傷害部位とは異なる部位をいう。より具体的には、例えば、心筋における傷害部位は、心筋において血管の狭窄や閉塞によって血流が減少又は停止したことによって細胞や組織が損傷された部位が挙げられる。
本剤の投与量は、適用する傷害の重症度、発症経過日数、個体年齢等によっても異なるが、例えば、心筋障害の場合、1mg/kg体重、日以上10mg/kg体重、日以下とし、こうした投与を、例えば、1回から適数回(例えば、10回以下程度、2回以上8回以下程度など)にわたって実施することができる。投与量は、3mg/kg体重、日以上8mg/kg体重、日以下であってもよいし、好ましくは4mg/kg体重、日以上6mg/kg体重、日以下であってもよい。また、例えば、急性心筋梗塞発症後においては、発症後24時間以内に少なくとも1回投与することが好ましい。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(1-(2-(1-ピリジニル-2-メチル-2,5-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-2-オキソエチル)-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2(1H)-オンの合成)
本実施例では、以下の式(1)で表される化合物(化合物a)を、以下のスキームに従い合成した。すなわち、2,5-ジメチルピロール(I)(1.0g、0.01mol)をテトラハイドロフラン(30ml)に溶解後し0℃に冷却した。水素化ナトリウム(60%油性、0.96g、0.024mol)を加え、同温度で1時間撹拌後、2-(クロロメチル)ピリジン塩酸塩(1.971mol)を加え、室温で12時間撹拌した。メタノール(3ml)加え撹拌した後、反応液を減圧濃縮した。残渣にクロロホルム(50ml)を加え、2回水洗後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮し残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル-クロロホルム)により精製し、2-[(2,5-ジメチル-1H-ピロール-1-イル)メチル]ピリジン(化合物II)(691mg、37%)を得た。
化合物II(691mg、0.0037mol)、クロロメチルクロリド(461mg、0.041mol)、塩化アルミニウム(543、mg、0.041mol)をジクロロメタン(20ml)に加え室温で15時間撹拌した。メタノール(2ml)加え撹拌した後、ジクロロメタン(10ml)を加え飽和重曹水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウム乾燥、濃縮し残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル-クロロホルム)により精製して2-クロロ-1-{2,5ジメチル-1-[(ピリジン-2-イル)メチル]-1H-ピロール-3-イル}エタン-1-オン(化合物III)(463mg、47%)を得た。
化合物III(463mg、0.00176mol)、5-トリフルオロメチル-2-ピリドン(316mg、0.00176mol)、炭酸セシウム(689mg、0.0021mol)、をジメチルホルムアミド(20ml)に加え室温で8時間撹拌した。メタノール(2ml)を加え撹拌した後、クロロホルム(50ml)を加え、2回水洗後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮し残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル-クロロホルム)により精製し、化合物(a)(650mg、95%)を得た。
得られた化合物は融点167-168℃の無色結晶で、質量分析の結果C2018332を示した。また、元素分析を行った結果(実測値:C,61.72%;H,4.61%;N,10.78%)と、計算値(計算値:C,61.69%;H,4.66%;N,10.79%、)と実測値の差がいずれも±0.3%以内であったので、式(1)で表される構造を有していると考えられた。また、H1-NMR測定(CDCl3)でもその構造を確認した。
Figure 0007102666000006
また、式(2)で表される化合物(化合物b)及び式(3)で表される化合物(化合物c)を、上記スキームにおける2-(クロロメチル)ピリジンに替えて、3-(クロロメチル)ピリジン及び4-(クロロメチル)ピリジンを用いる以外は、同様に操作して、合成した。得られた化合物は、化合物aと同様に、それぞれ同定することができた。
Figure 0007102666000007
さらに、以下に示す化合物d及び化合物eも準備した。
Figure 0007102666000008
(血中Muse細胞の評価)
本実施例では、ウサギ(日本白色種ウサギ(約2~2.5kg/匹)に、実施例1で準備した各化合物a~e及び以下に示す化合物f(特許文献1に開示される化合物(1)である。)を皮下注により投与し、血中Muse細胞を評価した。本実施例におけるウサギを用いた実験プロトコールは、岐阜大学の動物実験に関する倫理委員会によって承認されたものであり、米国国立衛生研究所(NIH)によって刊行された「実験動物の管理と使用に関する指針」(1996年改定版)に沿って実施された。
Figure 0007102666000009
準備したウサギにおいて、コントロール群では生理食塩水を、化合物投与群は、化合物a~fを10mg/kgとなるようにウサギの背中の筋肉内に対して注射を実施した。化合物投与前、投与1時間後、2時間及び3時間後に、各群から血液を採取して、FACSによりSSEA3及びCD44陽性細胞をカウントした。結果を図1に示す。
(心筋梗塞サイズの評価)
以下に示す方法でウサギ心筋梗塞モデルを作製した。日本白色種ウサギ(約2~2.5kg/匹)は、30mg/kgペントバルビタールナトリウムを用いて麻酔された。ウサギにおいて、連続的に動脈ガス分析を行い、動脈ガスを生理学的範囲に維持するように換気条件を適宜調整した。左頸動脈及び頸静脈にカニュレートし、動脈圧を監視した。3番目の肋間腔において左開胸後、心臓を露出させ、左室の外側前面の中央を下行する大冠動脈枝下で4-0絹糸結紮を行った。縫合糸の両末端に細いビニルチューブを通し、その縫合糸を引くことによって冠動脈枝を閉塞した。次に、モスキート止血鉗子を用いてこのチューブをクランプすることによって固定した。心筋虚血は、局所的チアノーゼ及び心電図の変化によって確認した。閉塞(虚血)時間は適宜調整される。縫合糸を開放後、危険領域全体での心筋の赤色への変化によって確認した(Yasudaら,Am.J.Physiol.Heart.Circ.Physiol.,296:H1558-1565,2009を参照されたい)。
準備したウサギ心筋梗塞モデルにおいて、結紮による梗塞(虚血)時間を30分間(ヒトにおいては虚血3時間に対応する)とし、その後、縫合糸を開放し、再灌流を開始した。再灌流から30分後に、コントロール群では生理食塩水を、化合物aの投与群では化合物aを10mg/kgとなるようにウサギの背中の筋肉内に対して注射を実施した。再灌流から2週間後に心臓を摘出した。より具体的には、再灌流14日後のウサギをヘパリン(500U/kg)処理し、過剰量のペントバルビタールを静脈注射することによって安楽死させた。心臓を摘出し、エバンスブルー染色で危険領域と非危険領域を、TTC染色で梗塞領域を決定し、梗塞領域/危険領域×100の計算式で、梗塞サイズを測定した。結果を図2に示す。
(心エコーによる評価)
準備したウサギにおいて、結紮による梗塞(虚血)時間を30分間(ヒトにおいては虚血3時間に対応する)とし、その後、縫合糸を開放し、再灌流を開始した。再灌流から30分後に、コントロール群では生理食塩水を、化合物aの投与群では化合物aを10mg/kgとなるようにウサギの背中の筋肉内に対して注射を実施した。再灌流から2週間後に心エコーにより、左室駆出率(LV Ejection Fraction)と左室短縮率(LV Fractional Shortening)を測定した。結果を図3に示す。また、左室リモデリングの指標である左室拡張末期径と左室収縮末期径を心エコーで評価した。結果を図4に示す。
(ドキソルビシン心筋症の作製と心機能及び左リモデリングに対する評価)
以下に示す方法で、ウサギドキソルビシン心筋症モデルを作製した。すなわち、日本白色種ウサギ(約2~2.5kg/匹)に対して、ドキソルビシン1mg/kgを週2回、6週間にわたって静注し、ドキソルビシン心筋症モデルを作製した。
作製したウサギドキソルビシン心筋症モデルに、DMSO0.1mlを皮下注(コントロール群)あるいは化合物a10mg/kgをDMSO0.1mlに溶解して皮下注を行った。その2週間後に心エコーによって心機能と左室リモデリングを測定した。結果を図5及び図6に示す。
(評価結果)
図1に示すように、化合物aの投与群は、投与後1~2時間で投与前の200~230%にまで血中Muse細胞が増大し、3時間経過には、投与前にほぼ戻った。これに対して、化合物b及び化合物cの投与群も、投与後1~2時間で投与前の200%及び160%にまで到達した。これに対して化合物d及び化合物eは、いずれも、実質的な血中Muse細胞濃度の増大を観察できなかった。また、化合物fは、投与後1~2時間で血中Muse細胞濃度は、150%程度にまで増大した。
以上の結果から、化合物a~cは、いずれも、化合物fと同等かそれを超えるMuse細胞動員活性を有することがわかった。また、化合物a~cは、化合物d~eに比較して優れたMuse細胞動員活性を有することがわかった。また、化合物aは、最も優れたMuse細胞動員活性を有していることがわかった。
また、図2に示すように、危険領域/左室領域の割合はコントロール群(28.8±1.9%)と化合物a投与群(26.2±2.0%)とで2群間でなかったが、梗塞領域/危険領域の割合は、コントロール群(29.2±2.2%)に対して化合物a投与群(22.6±1.9%)であり、縮小した。
さらに、図3に示すように、心エコーで測定した心機能の指標である左室駆出率(LV Ejection Fraction)がコントロール群(21.9±0.7%)に比較し投与群(27.1±0.8%)で改善されていた。また、左室内径短縮率(LV Fractional Shortening)がコントロール群(21.9±0.7 %)に比較して化合物a群(27.1±0.8 %)で改善された(**:p<0.01)。
さらにまた、図4に示すように、心エコーで測定した左室リモデリングの指標である左室拡張末期径(LVEDd)がコントロール群(15.5±1.3mm)に比較して化合物a投与群(13.3±0.7mm)で改善された(*:p<0.05)。また、左室収縮末期径(LVESd)がコントロール群(12.1±1.1mm)に比較して化合物a群(9.7±0.5mm)で有意に改善された(*:p<0.05)。すなわち、左室リモデリングが化合物aにより抑制された。
また、図5に示すように、左室駆出率(LV Ejection Fraction)と左室短縮率(LV Fractional Shortening)は、コントロール群(n=3)に比較して化合物a投与群(n=3)は、有意に増加した(*:p<0.05)。また、図6に示すように、左室リモデリングの指標である左室拡張末期径(LVEDd)と左室収縮末期径(LVEDs)は、コントロール群(n=3)に比較して化合物a投与群(n=3)では有意な低値を示した(*:p<0.05)。
以上のことから、化合物aないしcは、離れた部位にまた筋肉内投与であっても、他の化合物に比較して優れたMuse細胞動員作用を発揮できることがわかった。また、梗塞領域及び心機能の評価結果からも、Muse細胞の動員による改善効果を確認することができた。さらに、薬剤による心筋障害にも有効であることがわかった。

Claims (6)

  1. 以下の式(1)及び式(3)で表される化合物からなる群から選択される1種又は2種を有効成分とする、Muse細胞動員剤。
    Figure 0007102666000010
  2. 経皮投与製剤である、請求項1に記載のMuse細胞動員剤。
  3. 下注射剤又は筋肉注射剤である、請求項1又は2に記載のMuse細胞動員剤。
  4. 以下の式(1)及び式(3)で表される化合物からなる群から選択される1種又は2種を有効成分とする、組織修復・再生剤。
    Figure 0007102666000011
  5. 障害された心筋組織の修復・再生のための、請求項4に記載の組織修復・再生剤。
  6. 以下の式(1)及び式(3)で表される化合物からなる群から選択される1種又は2種を有効成分とする、心筋梗塞の予防又は治療剤。
    Figure 0007102666000012
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