JP2018111722A - 脳梗塞治療のための多能性幹細胞 - Google Patents
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Description
[1]生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から分離されたSSEA−3陽性の多能性幹細胞を含む、脳梗塞を治療するための細胞製剤。
[2]脳梗塞後の後遺症を予防及び/又は治療するための、上記[1]に記載の細胞製剤。
[3]外部ストレス刺激によりSSEA−3陽性の多能性幹細胞が、濃縮された細胞画分を含む、上記[1]及び[2]に記載の細胞製剤。
[4]前記多能性幹細胞が、CD105陽性である、上記[1]〜[3]に記載の細胞製剤。
[5]前記多能性幹細胞が、CD117陰性及びCD146陰性である、上記[1]〜[4]に記載の細胞製剤。
[6]前記多能性幹細胞が、CD117陰性、CD146陰性、NG2陰性、CD34陰性、vWF陰性、及びCD271陰性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞製剤。
[7]前記多能性幹細胞が、CD34陰性、CD117陰性、CD146陰性、CD271陰性、NG2陰性、vWF陰性、Sox10陰性、Snai1陰性、Slug陰性、Tyrp1陰性、及びDct陰性である、上記[1]〜[6]に記載の細胞製剤。
[8]前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、上記[1]〜[7]に記載の細胞製剤:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ。
[9]前記多能性幹細胞が、神経細胞、グリア細胞、血管内皮細胞、及び/又はミクログリアからなる群から選択される1つ以上の細胞に分化する能力を有する、上記[1]〜[8]に記載の細胞製剤。
本発明は、SSEA−3陽性の多能性幹細胞(Muse細胞)を含む細胞製剤を用いて、脳梗塞の治療を目指す。ここで、「脳梗塞」とは、脳血管の閉塞や灌流圧低下により、脳に局所的な虚血部分が生じ、神経細胞の不可逆的細胞死を呈した状態をいう。本発明においては、発症後48時間以内の脳梗塞急性期であり、好ましくは、発症後24時間以内であり、より好ましくは6時間以内であり、最も好ましくは3時間以内の脳梗塞を対象とする。ここで、「発症」とは、患者の正常な状態を最後に見たとき、又は目撃者のいない就寝中に脳梗塞が起こった際の就寝時と定義される。脳梗塞には、血栓の由来により脳血栓と脳塞栓に分類され、本発明は、脳血栓及び脳塞栓の治療に有用である。「脳梗塞の治療」とは、脳梗塞急性期における梗塞巣の進展防止効果、脳梗塞に伴う機能不全若しくは自覚症状を改善する効果、及び/又は慢性期の精神症状やけいれん発作の発現の抑制を意味する。さらに、脳梗塞発作の再発予防も含まれる。また、投与前のCT所見により、脳梗塞の程度は、梗塞巣の大きさ、梗塞巣の広がり(穿通枝、皮質枝)、梗塞側(左、右、両側)、梗塞領域(前大脳動脈領域、中大脳動脈領域、後大脳動脈領域、分水嶺領域、脳幹、小脳、その他)及び浮腫の程度によって分類できる。「脳梗塞巣の進展を抑制する」とは、虚血イベント発症後の時間経過による梗塞巣の拡大を、未処置の場合と比較し抑制する効果をいう。「脳梗塞体積の縮小効果」とは、本発明の細胞製剤の投与前に測定した脳梗塞により生じた梗塞巣の体積が、薬剤投与後一定期間後の評価時点の測定において、該細胞製剤の投与前よりも縮小することを意味する。また、本発明によれば、脳梗塞後に残る後遺症の予防及び/又は治療において、本発明の細胞製剤を用いることもできる。ここで、「後遺症」には、言語障害、しびれ等の知覚障害、手足等の運動障害、頭痛、嘔吐、視力喪失、嚥下障害、構音障害、痴呆などが含まれる。
(1)多能性幹細胞(Muse細胞)
本発明の細胞製剤に使用される多能性幹細胞は、本発明者らの一人である出澤が、ヒト生体内にその存在を見出し、「Muse(Multilineage−differentiating Stress Enduring)細胞」と命名した細胞である。Muse細胞は、骨髄液、脂肪組織(Ogura,F.,et al.,Stem Cells Dev.,Nov 20,2013(Epub)(published on Jan 17,2014))や真皮結合組織等の皮膚組織から得ることができ、各臓器の結合組織にも散在する。また、この細胞は、多能性幹細胞と間葉系幹細胞の両方の性質を有する細胞であり、例えば、それぞれの細胞表面マーカーである「SSEA−3(Stage−specific embryonic antigen−3)」と「CD105」のダブル陽性として同定される。したがって、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、これらの抗原マーカーを指標として生体組織から分離することができる。Muse細胞の分離法、同定法、及び特徴などの詳細は、国際公開第WO2011/007900号に開示されている。また、Wakaoら(2011、上述)によって報告されているように、骨髄、皮膚などから間葉系細胞を培養し、それをMuse細胞の母集団として用いる場合、SSEA−3陽性細胞の全てがCD105陽性細胞であることが分かっている。したがって、本発明における細胞製剤においては、生体の間葉系組織又は培養間葉系幹細胞からMuse細胞を分離する場合は、単にSSEA−3を抗原マーカーとしてMuse細胞を精製し、使用することができる。なお、本明細書においては、脳梗塞(後遺症を含む)を治療するための細胞製剤において使用され得る、SSEA−3を抗原マーカーとして、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織から分離された多能性幹細胞(Muse細胞)又はMuse細胞を含む細胞集団を単に「SSEA−3陽性細胞」と記載することがある。また、本明細書においては、「非Muse細胞」とは、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織に含まれる細胞であって、「SSEA−3陽性細胞」以外の細胞を指す。
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ
からなる群から選択される少なくとも1つの性質を有してもよい。本発明の一局面では、本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞は、上記性質を全て有する。ここで、上記(i)について、「テロメラーゼ活性が低いか又は無い」とは、例えば、TRAPEZE XL telomerase detection kit(Millipore社)を用いてテロメラーゼ活性を検出した場合に、低いか又は検出できないことをいう。テロメラーゼ活性が「低い」とは、例えば、体細胞であるヒト線維芽細胞と同程度のテロメラーゼ活性を有しているか、又はHela細胞に比べて1/5以下、好ましくは1/10以下のテロメラーゼ活性を有していることをいう。上記(ii)について、Muse細胞は、in vitro及びin vivoにおいて、三胚葉(内胚葉系、中胚葉系、及び外胚葉系)に分化する能力を有し、例えば、in vitroで誘導培養することにより、肝細胞、神経細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、骨細胞、脂肪細胞等に分化し得る。また、in vivoで精巣に移植した場合にも三胚葉に分化する能力を示す場合がある。さらに、静注により生体に移植することで損傷を受けた臓器(心臓、皮膚、脊髄、肝、筋肉等)に遊走及び生着し、組織に応じた細胞に分化する能力を有する。上記(iii)について、Muse細胞は、浮遊培養では増殖速度約1.3日で増殖するが、浮遊培養では1細胞から増殖し、胚様体様細胞塊を作り14日間程度で増殖が止まる、という性質を有するが、これらの胚様体様細胞塊を接着培養に持っていくと、再び細胞増殖が開始され、細胞塊から増殖した細胞が広がっていく。さらに精巣に移植した場合、少なくとも半年間は癌化しないという性質を有する。また、上記(iv)について、Muse細胞は、セルフリニューアル(自己複製)能を有する。ここで、「セルフリニューアル」とは、1個のMuse細胞から浮遊培養で培養することにより得られる胚様体様細胞塊に含まれる細胞から3胚葉性の細胞への分化が確認できると同時に、胚様体様細胞塊の細胞を再び1細胞で浮遊培養に持っていくことにより、次の世代の胚様体様細胞塊を形成させ、そこから再び3胚葉性の分化と浮遊培養での胚様体様細胞塊が確認できることをいう。セルフリニューアルは1回又は複数回のサイクルを繰り返せばよい。
本発明の細胞製剤は、限定されないが、上記(1)で得られたMuse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団を生理食塩水や適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁させることによって得られる。この場合、自家又は他家の組織から分離したMuse細胞数が少ない場合には、細胞移植前に細胞を培養して、所定の細胞濃度が得られるまで増殖させてもよい。なお、すでに報告されているように(国際公開第WO2011/007900号パンフレット)、Muse細胞は、腫瘍化しないため、生体組織から回収した細胞が未分化のまま含まれていても癌化の可能性が低く安全である。また、回収したMuse細胞の培養は、特に限定されないが、通常の増殖培地(例えば、10%仔牛血清を含むα−最少必須培地(α−MEM))において行うことができる。より詳しくは、上記国際公開第WO2011/007900号パンフレットを参照して、Muse細胞の培養及び増殖において、適宜、培地、添加物(例えば、抗生物質、血清)等を選択し、所定濃度のMuse細胞を含む溶液を調製することができる。ヒト対象に本発明の細胞製剤を投与する場合には、ヒトの腸骨から数ml程度の骨髄液を採取し、例えば、骨髄液からの接着細胞として骨髄間葉系幹細胞を培養して有効な治療量のMuse細胞を分離できる細胞量に達するまで増やした後、Muse細胞をSSEA−3の抗原マーカーを指標として分離し、自家又は他家のMuse細胞を細胞製剤として調製することができる。あるいは、例えば、Muse細胞をSSEA−3の抗原マーカーを指標として分離後、有効な治療量に達するまで細胞を培養して増やした後、自家又は他家のMuse細胞を細胞製剤として調製することができる。
本明細書においては、本発明の細胞製剤による脳梗塞(後遺症を含む)の治療効果を検討するためにラット脳梗塞モデルを構築し、使用することができる。該モデルとして使用されるラットには、限定されないが、一般的に、Wistar系ラット、スプラーグドーリー(SD)系ラットが挙げられる。脳梗塞モデルは、ヒトの脳梗塞に近い症状を促すために、ラットの頸動脈から塞栓子を挿入し、脳梗塞を引き起させた脳組織に繋がる動脈(例えば、中大脳動脈(MCA))を塞栓子によって所定時間塞ぎ(虚血状態)、その後、該塞栓子を引き出すことによって作製される。なお、脳梗塞の状態は、脳組織切片(TTC染色)により確認することができる。また、本発明の細胞製剤はヒト由来のMuse細胞であるため、該製剤を投与されるラットとは異種の関係にある。通常、モデル動物において異種の細胞等が投与される実験では、異種細胞の生体内で拒絶反応を抑制するために、異種細胞の投与前又は同時に免疫抑制剤(シクロスポリンなど)が投与される。
本発明の実施形態では、本発明の細胞製剤は、脳梗塞の患者、又は後遺症を患っている患者の脳機能を回復又は正常に回復することができる。本明細書において使用するとき、脳機能の「回復」とは、脳梗塞に伴う各種の機能障害(後遺症を含む)の緩和及び進行の抑制を意味し、好ましくは、日常生活に差し支えない程度にまで機能障害を緩和することを意味する。また、脳機能を「正常に回復する」とは、脳梗塞(後遺症を含む)に起因した機能障害が脳梗塞前の状態に戻ることを意味する。また、脳機能の回復の評価には、限定されないが、電気生理学検査、神経学的重症度スコア(NSS)、画像検査、病理検査による評価が一般的である。ここで、「電気生理学的検査」は、中枢神経、末梢神経、筋肉等の機能を電気刺激に対して得られる電位(電気信号の波形)を所定の装置により観察することによって脳を含む各種器官等の機能評価を行うために行うものである。例えば、中枢神経(脊髄)の検査は、特に、「体性感覚誘発電位検査(Somatosensory Evoked Potential;SEP)」と呼ばれ、四肢の感覚刺激による反応が脊髄の感覚伝導路を通って大脳皮質に伝えられたときに誘発される電位を測定する検査である。これにより、本発明の細胞製剤を患者に投与した後に、患者の中枢神経の機能回復の程度を客観的に確認することができる。また、「神経学的重症度スコア」(NSS)は、損傷した脳の機能の程度を各項目についてスコアリングすることによって評価するものである。ラットを対象としたNSSは、Chen,J.ら(Stroke,Vol.32,p.1005−1111(2001))によって示されている。
本実施例におけるラットを用いた実験プロトコールは、「国立大学法人東北大学動物実験等に関する規定」を遵守し、実験動物は、東北大学動物実験センターの監督下において該規定に沿って作製された。より具体的には、ラット脳梗塞モデルは、Wistar系ラット(雄性10週齢)の頸動脈から塞栓子を挿入し、脳血管の一部(例えば、中大脳動脈(MCA))を閉塞した。その後、塞栓子を引き出し、再灌流させ、該ラットを脳梗塞モデルとして以下の実験に使用した。なお、脳梗塞の状態は、脳組織切片(TTC染色)により確認した。また、ラットに対して異種となるヒトMuse細胞を移植するため、移植前に免疫抑制剤(FK506)を脳梗塞ラットに投与した。
ヒト線維芽細胞由来のMuse細胞の調製は、国際公開第WO2011/007900号に記載された方法に従って行った。より具体的には、ヒト骨髄液から接着性を有する間葉系細胞を培養し、増殖を経て、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団をSSEA−3陽性細胞としてFACSにて分離した。また、非Muse細胞は、上記間葉系細胞のうち、SSEA−3陰性の細胞群であり、対照として用いた。その後、リン酸緩衝生理食塩水又は培養液を用いて、所定濃度に調整し、以下のラット脳梗塞モデルにおけるMuse細胞による脳機能評価等に使用した。なお、骨髄間葉系細胞などの間葉系細胞を培養して得たものをMuse細胞の母集団として用いる場合、Wakaoら(2011、上述)によって報告されているように、SSEA−3陽性細胞は全て、CD105陽性細胞であることが分かっている。
実施例1で作製した脳梗塞ラットを3群に分け、再灌流後の2日目に、ヒト線維芽細胞由来のMuse細胞(1×104細胞/2μl PBS×3箇所)、非Muse細胞(1×104細胞/2μl PBS×3箇所)、又は生理食塩水(6μl)を各群のラットの脳実質内に直接注入した。その後、経時的にラットの運動機能の改善を評価し、さらに、所定時間後の細胞動態解析を行った。
上記で移植されたラットに対して、移植後の3カ月間、各種の脳機能障害(麻痺、感覚障害、視覚障害など)を神経学的重症度スコア(NSS)(Chen,J.,Stroke,Vol.32,p.1005−1111(2001))を用いて評価した。このNSSによる評価では、ポイントが運動機能及び行動の変化について割り当てられ、その結果、18の最大スコアが重症の神経学的機能不全を表し、一方、0のスコアが正常の神経学的状態を示す。具体的には、下記の項目について評価された:尾によって体を起こすこと(各項目1ポイント(最大3ポイント));床面に置いたときの状態(0〜3ポイント);感覚試験(1又は2ポイント);ビームバランス試験(0〜6ポイント);並びに反射欠如及び運動異常(各項目1ポイント(最大4ポイント))。各ラット群(n=10)のNSS評価の結果を図1に示す。非Muse細胞の投与群及び生理食塩水の投与群では、最初の10日程度までスコアを下げ、それ以降、スコアが6〜8ポイントで維持される傾向にあった。これに対して、Muse細胞の投与群では、20日目でスコアを他の群と比較して有意に下げ、およそ実験を終了させた時期(80日以降)においてもさらにスコアを下げる傾向にあり、他の群と比較して有意差が見られた。
実験動物のもつ運動機能の協調性と平衡感覚を測定する装置として一般的に知られた装置を用いて、Muse細胞等の移植による脳機能障害の回復を調べた。該試験の評価は、回転する台の上でラットが落下するまでの時間を週1回(0〜84日目)の頻度で各日2回の計測し、それらの平均値を求め、脳梗塞発症前の2回の平均値を基準としたスコア(%)を算出することにより行った。結果を図2に示す。非Muse細胞の投与群及び生理食塩水の投与群では、21〜28日目にかけて最大70%程度まで運動機能の回復が見られたが、それ以降では100%まで運動機能を回復させることはなかった。これに対して、Muse細胞の投与群では、一度、28日目で90%まで回復後、一次的にスコアが70%まで下がるが、56日からはほぼ100%まで運動機能の回復が見られた。上記のNSSによる総合評価及びロータロッド試験の結果から、Muse細胞は、脳梗塞ラットの脳機能を顕著に改善させることが示唆された。
Muse細胞等を注入してから85日後のラット脳梗塞モデルの体性感覚誘発電位検査(SEP)を測定した(図3)。大腿直筋を10mA、1Hz×100回(1秒間隔)で刺激し、電位の測定点は前項(bregma)より2.5mm側方、2.5mm後方、深さ1mmとした。右脳−左足(rt−lt)は障害側に伝わる刺激の潜時を示し、左脳−左足(lt−lt)は同側の脳に伝わる刺激、すなわち健常側での潜時を示す。潜時が短い方が、回復が早いことを示す。右脳−左足(rt−lt)、左脳−左足(lt−lt)共に、Muse細胞が投与された群では、PBS又は非Muse細胞に比べて潜時が短く、統計的有意差は認められなかったものの、実測値において神経回路網の回復が示唆された。
脳実質内に注入されたMuse細胞及び非Muse細胞の挙動を調べるために、これらの細胞が脳組織に生着及び分化するかどうかを検討した。これらの細胞を投与85日後に、脳組織切片を調製し、蛍光顕微鏡下で観察した(図4)。いずれの切片においても、細胞核をDAPIで染色し、さらにヒトミトコンドリアマーカーと神経細胞マーカーであるβ−チューブリンIIIの二重染色を行った。その結果、Muse細胞を注入されたラットの脳切片では、ヒトミトコンドリアマーカーの蛍光(緑色)と神経細胞を示すβ−チューブリンIIIのマーカーの蛍光(赤色)が同一細胞群において観察されたことから、Muse細胞は、脳組織に生着し、神経細胞に分化していることが示唆された。一方、非Muse細胞を注入した場合の脳組織切片では、非Muse細胞の生着は観察されなかった。また、梗塞境界領域のおけるMuse細胞及び非Muse細胞の生着について、ヒトミトコンドリアマーカー陽性の細胞を蛍光顕微鏡下で観察し、10視野に含まれる各細胞数をそれぞれカウントした(図5)。梗塞境界領域においては、非Muse細胞はほとんど生着していなかったが、Muse細胞は多数存在していた。これらの結果から、Muse細胞は、非Muse細胞と比較して、梗塞境界領域に生着し、神経細胞に分化することが示唆された。
Claims (9)
- 生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から分離されたSSEA−3陽性の多能性幹細胞を含む、脳梗塞を治療するための細胞製剤。
- 脳梗塞後の後遺症を予防及び/又は治療するための、請求項1に記載の細胞製剤。
- 外部ストレス刺激によりSSEA−3陽性の多能性幹細胞が、濃縮された細胞画分を含む、請求項1又は2に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、CD105陽性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、CD117陰性及びCD146陰性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、CD117陰性、CD146陰性、NG2陰性、CD34陰性、vWF陰性、及びCD271陰性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、CD34陰性、CD117陰性、CD146陰性、CD271陰性、NG2陰性、vWF陰性、Sox10陰性、Snai1陰性、Slug陰性、Tyrp1陰性、及びDct陰性である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の細胞製剤:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ。 - 前記多能性幹細胞が、神経細胞、グリア細胞、血管内皮細胞、及び/又はミクログリアからなる群から選択される1つ以上の細胞に分化する能力を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞製剤。
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