JPWO2013111332A1 - テレフタル酸カリウム塩からの有用化学品の製造法 - Google Patents

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Abstract

テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を原料とすることにより、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼを発現する微生物を用いてTPA−DHDを製造することができる。さらに、TPA−DHDデヒドロゲナーゼによりTPA−DHDをプロトカテク酸に転換し、またパラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼによりプロトカテク酸を没食子酸に転換することができる。また、廃棄ポリエステルを水酸化カリウムを含むエチレングリコール溶媒または1−ブタノール溶媒中で加熱処理することにより、効率よく該ポリエステルを解重合でき、かつ微生物による化学品製造に適したテレフタル酸カリウムを調製することができる。

Description

本発明は、テレフタル酸カリウム塩を原料とし、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼを発現する微生物を用いて、テレフタル酸−1,2−シス−ジヒドロジオール(以下、必要に応じてTPA−DHDと略す)を製造する方法、さらにTPA−DHDをプロトカテク酸や没食子酸に転換する方法、ならびに原料となるテレフタル酸カリウム塩を廃棄ポリエステルの解重合によって得る方法に関する。なお、本発明では、テレフタル酸カリウム塩とは、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩およびテレフタル酸1−カリウム4−アンモニム塩などのテレフタル酸が、テレフタル酸の少なくとも1個のカルボキシル基残基がカリウムイオンと塩を形成した化合物をいう。
テレフタル酸は、主にポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略す)およびポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略す)などのテレフタル酸系ポリエステルの原料として大量に生産されている安価な化学品である。テレフタル酸が安価であることから、微生物を用いてテレフタル酸を原料としてTPA−DHD、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸、プロトカテク酸、没食子酸などの有用化学品を製造する技術も開発されている(文献1〜5)。TPA−DHDの脱水反応により医薬品や樹脂材料の原料となる2−ヒドロキシテレフタル酸を製造できることが知られている(特許文献1と2)。
テレフタル酸を原料として微生物を用いて有用化学品を製造する場合、テレフタル酸自体でなく、水溶性が優れたテレフタル酸塩を培地中に添加することが望ましい。水酸化ナトリウムが水酸化カリウムより安価であることから、これまでにテレフタル酸のナトリウム塩がその原料として用いられてきたが、テレフタル酸のカリウム塩を原料として微生物を用いて有用化学品を製造した報告、ならびにテレフタル酸のナトリウム塩よりもテレフタル酸のカリウム塩を用いた方が目的化合物の生産性が優れていることを示した報告はない。
テレフタル酸系ポリエステルのリサイクルについては、特に廃棄PETボトルのリサイクルを中心に、多数のリサイクル技術が開発され、事業化も進められている。しかしながら、そのリサイクルコストは高く、より収益性の高いリサイクル技術が求められている。このように、テレフタル酸を原料とする化学品製造において廃棄ポリエステル由来のテレフタル酸を原料とすることは、環境問題の解決と製造コストの低減につながることから、重要な研究開発課題である。
廃棄ポリエステルのリサイクル法としては、元のポリエステルを得るマテリアル・リサイクル法に加えて、ポリエステルを化学的に解重合してテレフタル酸やビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレートなどを得るケミカル・リサイクル法(特許文献6〜11)が知られている。PETなどのポリエステルを、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を含むエチレングリコール反応溶媒またはアルコール反応溶媒の中で加熱することにより解重合できることが知られている。この場合、水酸化ナトリウムが安価であることから、一般にアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウムが利用される。ただし、得られるテレフタル酸アルカリ金属塩の利用用途がないために、テレフタル酸アルカリ金属塩をさらに酸処理することによりテレフタル酸を得るリサイクル事業の推進が期待されている。しかしながら、該リサイクル事業は、製造コストが高くなりがちであり、かつ得られるテレフタル酸が安価であるために、ほとんど実施されていない。
PETが水酸化カリウムを含むエチレングリコール溶媒中で解重合できることは知られているが(非特許文献1)、エチレングリコール溶媒中における水酸化カリウムと水酸化ナトリウムのPET解重合の違いを比較した結果は報告されていない。さらに、水酸化カリウムを含むエチレングリコール反応溶媒中でPET、PTTまたはPBTを解重合することにより、テレフタル酸カリウム塩を得た後、微生物を用いて該テレフタル酸カリウム塩を別の有用化学品に転換するという廃棄ポリエステルのリサイクル技術に関する報告はない。
水酸化ナトリウムを含む1−ブタノール反応溶媒中で廃棄PETを解重合し、硫酸添加によりテレフタル酸が得られる実験例が報告されている(特許文献12)が、水酸化カリウムを含む1−ブタノール反応溶媒中で廃棄PETを解重合する事例、ならびにアルカリを含む1−ブタノール反応溶媒中でのポリエステルの解重合反応における水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの違いを比較した事例は報告されていない。
水酸化カリウムを含むエチレングリコール中で廃棄ポリエステルを解重合した場合、純度の高いテレフタル酸カリウム塩を得ようとすると、そのリサイクルコストが増大する。したがって、エチレングリコールを含む、純度の低いテレフタル酸カリウム塩を原料として、微生物を用いて有用化学品に転換することが望まれる。しかしながら、テレフタル酸塩とエチレングリコールを共存させた状態で微生物による化学品生産を行った報告はない。なお、基礎研究分野ならびに工業生産分野でよく利用されるエシェリヒア・コリ(Escherichia coli;以下、適宜大腸菌と呼称する。)K-12株については、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼによりエチレングリコールをグリコール酸に転換できることが知られているうえ、ラクトアルデヒド・レダクターゼへの変異導入によりエチレングリコールの代謝能が向上することも報告されている(非特許文献2〜4)。
United States Patent 5,068,414 United States Patent 5,124,479 特開2007-104942 特開2009-65839 特開2009-213392 特許第3715812号 特開2000-169623 United States Patent 3,544,622 特開2002-60542 特開平11-21374 United States Patent 4,542,239 WO2005/082826
Polym.-Plastics Tech. Eng., 43, 369 (2004) J. Bacteriol., 153, 134 (1983) J. Bacteriol., 171, 6097 (1989) J. Biol. Chem., 273, 8308 (1998)
本発明の課題は、テレフタル酸アルカリ金属塩を原料としてTPA−DHDを生産するとともに、生産されたTPA−DHDをプロトカテク酸に微生物を用いて転換する際に、これら化合物の生産性を向上させる方法を提供することにあり、さらに該テレフタル酸アルカリ金属塩を廃棄ポリエステルの解重合によって得る方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、テレフタル酸系ポリエステルであるPETをアルカリ溶液中で解重合し、テレフタル酸塩を得る研究を行う過程で、組換え大腸菌によるプロトカテク酸の生産性を比較したところ、テレフタル酸二ナトリウム塩よりも、テレフタル酸カリウム塩(テレフタル酸二カリウム塩、1−カリウム4−アンモニウム塩またはテレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩)を原料としたときにプロトカテク酸の生産性が高いことを見出し、テレフタル酸カリウム塩の利用に注目した。
原料となるテレフタル酸塩の水溶性が低いと、原料タンクから投入される液量が増えることにより、培養タンクあたりの目的化合物の生産量が減少する。したがって、水溶性が高いテレフタル酸塩を原料として用いる方が好ましい。そこで、テレフタル酸二ナトリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩およびテレフタル酸二カリウム塩の水への30℃での溶解度を調べたところ、テレフタル酸二カリウム塩の溶解度が約1.0 M、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩の溶解度が約0.96 M、ならびにテレフタル酸二ナトリウム塩の溶解度が約0.63 Mであり、テレフタル酸カリウム塩の水溶性が高いことを見出した。また、テレフタル酸二カリウム塩やテレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩などのテレフタル酸カリウム塩がテレフタル酸二ナトリウム塩よりも、大腸菌などの微生物による目的化合物の生産性が優れていることを見出した。
さらに、アンモニアのモルあたりの価格は水酸化カリウムや水酸化ナトリウムのモルあたりの価格より安価であることを踏まえて、各種テレフタル酸アンモニウム塩の水への30℃での溶解度を調べたところ、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩の溶解度が約0.85 M、テレフタル酸1−ナトリウム4−アンモニウム塩の溶解度が約0.61 M、およびテレフタル酸二アンモニウム塩の溶解度が約0.51 Mであり、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩の水溶性が高いことを見出した。また、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩を用いたときに、大腸菌などの微生物による目的化合物の生産性が優れていることを見出し、本発明の課題を解決するに至った。
次に、PET、PTTおよびPBTのそれぞれをアルカリ溶液中で加熱して解重合する研究を鋭意行った結果、アルカリ金属水酸化物を含むエチレングリコール反応溶媒中で解重合したときに、アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムよりも水酸化カリウムを用いた方が、ポリエステルの解重合速度が速く、しかもテレフタル酸塩の回収効率が優れていることを見出した。この結果、テレフタル酸系ポリエステルを水酸化カリウムを含むエチレングリコール反応溶媒中で解重合する方が、廃棄ポリエステルの解重合によってテレフタル酸塩を調製する方法として優れていることを見出した。
さらに、解重合の反応溶媒をエチレングリコールから1−ブタノールに変えることにより、解重合の反応温度を下げることができ、かつ予想外にもテレフタル酸塩の回収効率が優れていることを見出した。さらに1−ブタノール中での解重合反応において、アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムよりも水酸化カリウムを用いた方が、予想外にもテレフタル酸塩の解重合効率が優れていることを見出した。
以上のように、テレフタル酸のアルカリ金属塩を原料とする微生物による目的化合物の生産においてだけでなく、原料用のテレフタル酸カリウム塩を得るためのエチレングリコール溶媒または1−ブタノール溶媒におけるポリエステルの解重合反応においても、用いるアルカリ金属としてはナトリウムでなく、カリウムを用いる方が好ましいことを見出した。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(24)に関する。
(1)以下の(a)、(b)、(c)または(d)に示すDNA、以下の(e)、(f)、(g)または(h)に示すDNA、ならびに以下の(i)、(j)、(k)または(l)に示すDNAを有し、テレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生産する能力を有する微生物、または該培養物の処理物を、テレフタル酸塩を含む水性媒体中でテレフタル酸と反応させてテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させるテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法であって、前記テレフタル酸塩が、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むことを特徴とする方法。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA。
(d)配列番号1に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
(e)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(f)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
(g)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA。
(h)配列番号3に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
(i)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(j)配列番号6に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
(k)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA。
(l)配列番号5に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
(2)前記テレフタル酸塩を含む水性媒体が、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩からなる群から選ばれる1種類以上のテレフタル酸カリウム塩を含む水溶液であることを特徴とする、(1)に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
(3)前記テレフタル酸塩を水溶液の形態または粉末の形態または懸濁液の形態として前記微生物、または該培養物の処理物に添加して前記微生物または処理物とテレフタル酸とを反応させることを特徴とする、(1)または(2)に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
(4)(1)に記載の微生物が、さらに下記(m)、(n)、(o)または(p)に示すDNAを導入することによりテレフタル酸の細胞内輸送能を増強させた微生物であることを特徴とする、(1)から(3)のいずれかに記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
(m)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(n)配列番号8に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸トランスポーター活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(o)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA。
(p)配列番号7に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸トランスポーター活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(5)前記微生物はさらに以下の(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAを有し、テレフタル酸からプロトカテク酸を生産する能力を有する微生物であり、(1)から(4)のいずれかに記載の方法により、テレフタル酸塩からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させ、さらにテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換することを特徴とするプロトカテク酸の製造法。
(q)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(r)配列番号10に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(s)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA。
(t)配列番号9に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(6)(1)から(4)のいずれかに記載の方法により、テレフタル酸塩からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させた後に、前記(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAを形質転換法により導入して得られた微生物または該培養物の処理物を用いてテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換することを特徴とするプロトカテク酸の製造法。
(7)前記微生物はさらに上記(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAおよび(u)、(v)、(w)または(x)に示すDNAを有し、テレフタル酸から没食子酸を生産する能力を有する微生物であり、(1)から(4)のいずれかに記載の方法により、テレフタル酸塩からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させ、さらにテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを没食子酸に転換することを特徴とする没食子酸の製造法。
(u)配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(v)配列番号12に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつプロトカテク酸を没食子酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(w)配列番号11に示される塩基配列からなるDNA。
(x)配列番号11に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロトカテク酸を没食子酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(8)(1)から(4)のいずれかに記載の方法により、テレフタル酸塩からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させた後に、前記(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAに加えて、前記の(u)、(v)、(w)または(x)に示すDNAを形質転換法により導入して得られた微生物または該培養物の処理物を用いて、テレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを没食子酸に転換することを特徴とする没食子酸の製造法。
(9)さらに、前記テレフタル酸塩を、下記工程(A)〜(D)により得る工程を含む、(1)から(4)のいずれかに記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
(A)ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主成分とし異物成分を含むポリエステル廃棄物を、水酸化カリウムを含むエチレングリコール反応溶媒、もしくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの両方を含むエチレングリコール反応溶媒中で、100℃から196℃の間で10分間以上加熱することにより、反応液中の水分を蒸発させるとともに、該廃棄物に含まれるポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを解重合する工程、
(B)工程(A)で得られた該廃棄物の解重合反応溶液中に含まれる固形異物のうち、該溶液に浮遊する固形異物を浮遊選別法により除去する工程、
(C)工程(B)の処理を施した該溶液から、浮遊固形異物以外の該溶液中の固形物を固液分離法によって回収する工程、
(D)工程(C)により回収した固形物に対して加熱乾燥処理または減圧乾燥処理または遠心分離処理を施すことにより、該固形物中のグリコール類の含量を減少させ、残存する固形物をテレフタル酸塩として得る工程
(10)前記工程(C)において固液分離法で固形物を回収した後のエチレングリコール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記(A)におけるエチレングリコール反応溶媒として用いることを特徴とする、(9)に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
(11)さらに、前記テレフタル酸塩を、上記工程(A)〜(D)により得る工程を含む、(5)または(6)に記載のプロトカテク酸の製造法。
(12)前記工程(C)において固液分離法で固形物を回収した後のエチレングリコール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(A)におけるエチレングリコール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、(11)に記載のプロトカテク酸の製造法。
(13)さらに、前記テレフタル酸塩を、上記工程(A)〜(D)により得る工程を含む、(7)または(8)に記載の没食子酸の製造法。
(14)前記工程(C)において固液分離法で固形物を回収した後のエチレングリコール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(A)におけるエチレングリコール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、(13)に記載の没食子酸の製造法。
(15)前記(1)または(4)に記載の微生物が、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼの発現量を増強させることにより、前記工程(A)から(D)により得られるテレフタル酸塩に混入するエチレングリコールを分解する微生物である、(9)または(10)に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
(16)前記(5)に記載の微生物が、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼの発現量を増強させることにより、前記工程(A)から(D)により得られるテレフタル酸塩に混入するエチレングリコールを分解する微生物である、(11)または(12)に記載のプロトカテク酸の製造法。
(17)前記(7)に記載の微生物が、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼの発現量を増強させることにより、前記工程(A)から(D)により得られるテレフタル酸塩に混入するエチレングリコールを分解する微生物である、(13)または(14)に記載の没食子酸の製造法。
(18)さらに、前記テレフタル酸塩を、下記工程(E)〜(H)により得る工程を含む、(1)から(4)のいずれかに記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
(E)ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主成分とし異物成分を含むポリエステル廃棄物を、水酸化カリウム含む1−ブタノール反応溶媒もしくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの両方を含む1−ブタノール反応溶媒中で、100℃から116℃の間で10分間以上加熱することにより、反応液中の水分を蒸発させるとともに、該廃棄物に含まれるポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを解重合する工程、
(F)工程(E)で得られた該廃棄物の解重合反応溶液中に含まれる固形異物のうち、該溶液に浮遊する固形異物を浮遊選別法により除去する工程、
(G)工程(F)の処理を施した該溶液から、浮遊固形異物以外の該溶液中の固形物を固液分離法によって回収する工程、
(H)工程(G)により回収した固形物に対して加熱乾燥処理または減圧乾燥処理または遠心分離処理を施すことにより、該固形物中の1−ブタノールおよびグリコール類の含量を減少させ、残存する固形物をテレフタル酸塩として得る工程
(19)前記工程(G)において固液分離法で固形物を回収した後の1−ブタノール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(E)における1−ブタノール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、(18)に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
(20)さらに、前記テレフタル酸塩を、上記工程(E)〜(H)により得る工程を含む、(5)または(6)に記載のプロトカテク酸の製造法。
(21)前記工程(G)において固液分離法で固形物を回収した後の1−ブタノール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(E)における1−ブタノール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、(20)に記載のプロトカテク酸の製造法。
(22)さらに、前記テレフタル酸塩を、上記工程(E)〜(H)により得る工程を含む、(7)または(8)に記載の没食子酸の製造法。
(23)前記工程(G)において固液分離法で固形物を回収した後の1−ブタノール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(E)における1−ブタノール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、(22)に記載の没食子酸の製造法。
(24)前記微生物がエシェリヒア・コリであることを特徴とする、(1)から(23)のいずれかに記載の製造法。
本発明によれば、モル換算でテレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対して0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を原料としたときに、微生物を用いてTPA−DHDを効率よく製造することができる。また、本発明によれば、得られたTPA−DHDをプロトカテク酸や没食子酸に効率よく変換することができる。さらに、廃棄ポリエステルの解重合により、微生物によるテレフタル酸誘導体の原料に適したテレフタル酸カリウム塩を効率よく調製することができる。
テレフタル酸から、TPA−DHDを経由して、プロトカテク酸および没食子酸を生産する経路を示す図。 水酸化カリウムおよび/または水酸化カリウムを含有するエチレングリコール溶媒中で廃棄PETを解重合したときのテレフタル酸生成速度を示すグラフ。 顆粒状水酸化カリウムまたは水酸化カリウム水溶液を含有するエチレングリコール溶媒中で解重合したときのテレフタル酸生成速度を示すグラフ。
以下に本発明を詳細に説明する。
微生物による化合物製造の原料として用いるテレフタル酸の形態としては、テレフタル酸自体よりもテレフタル酸塩の方が水溶性が高いので、一般にテレフタル酸塩が好ましい。このような目的で用いるテレフタル酸塩としては、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩、テレフタル酸二ナトリウム塩、テレフタル酸1−ナトリウム4−アンモニウム塩、およびテレフタル酸二アンモニウム塩が挙げられる。
ここで、テレフタル酸二カリウム塩とは、テレフタル酸の1位と4位のカルボキシル基残基がカリウムイオンとイオン結合した塩である。
テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩とは、テレフタル酸の1位のカルボキシル基残基がカリウムイオンとイオン結合し、かつテレフタル酸の4位のカルボキシル基残基がナトリウムイオンとイオン結合した塩である。
テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩とは、テレフタル酸の1位のカルボキシル基残基がカリウムイオンとイオン結合し、かつテレフタル酸の4位のカルボキシル基残基がアンモニウムイオンとイオン結合した塩である。
テレフタル酸二ナトリウム塩とは、テレフタル酸の1位と4位のカルボキシル基残基がナトリウムイオンとイオン結合した塩である。
テレフタル酸1−ナトリウム4−アンモニウム塩とは、テレフタル酸の1位のカルボキシル基残基がナトリウムイオンとイオン結合し、かつテレフタル酸の4位のカルボキシル基残基がアンモニウムイオンとイオン結合した塩である。
テレフタル酸二アンモニウムとは、テレフタル酸の1位と4位のカルボキシル基残基がアンモニウムイオンとイオン結合した塩である。
テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩、テレフタル酸二ナトリウム塩、テレフタル酸1−ナトリウム4−アンモニウム塩、およびテレフタル酸二アンモニウム塩は、それぞれテレフタル酸粉末に対して、モル比で2倍量の水酸化カリウム、モル比で1倍量の水酸化カリウムと1倍量の水酸化ナトリウム、モル比で1倍量の水酸化カリウムと1倍量のアンモニアを含むアンモニア水溶液、モル比で2倍量の水酸化ナトリウム、モル比で1倍量の水酸化ナトリウムと1倍量のアンモニアを含むアンモニア水溶液、およびモル比で2倍量のアンモニアを含むアンモニア水溶液を適量の水に加えた後、加熱しながら撹拌することにより、各テレフタル酸塩の水溶液を得ることができる。テレフタル酸塩の粉末は、テレフタル酸塩の水溶液に対して加熱乾燥処理、減圧乾燥処理、または結晶化処理を加えることにより得ることができる。
本発明で用いるテレフタル酸塩とは、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩である。より好ましくは、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.6倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩である。
ここで、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下の量として規定するカリウムは、テレフタル酸カリウム塩に由来するカリウム、すなわち、テレフタル酸のカルボキシル基残基とイオン結合を形成しているカリウムの量である。すなわち、粗テレフタル酸塩を使用する場合に、その中に不純物として水酸化カリウム等に由来するカリウムが含まれていたとしても、それを除いてカリウムの量を計算する。
反応の際には、水性溶媒中に、テレフタル酸カリウム塩に由来するカリウム(イオン)が全テレフタル酸に対し、モル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下の量含まれていればよい。
テレフタル酸塩としては、テレフタル酸塩の粉末、テレフタル酸塩を溶解した水溶液、または該テレフタル酸塩の水溶液にテレフタル酸塩の粉末がスラリー状態で混在するテレフタル酸塩の懸濁液のいずれの形態であっても、本発明で用いることができる。以下、テレフタル酸塩については、特記しない限り、いずれの形態のテレフタル酸塩も含むものとする。
好ましくは、本発明では、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩からなる群から選ばれる1種類以上のテレフタル酸カリウム塩を含むテレフタル酸塩であり、かつテレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を用いることができる。
本発明では、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩およびテレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩から選ばれるテレフタル酸塩を単一成分とするテレフタル酸塩を用いてもよい。
一方で、本発明で用いるテレフタル酸塩は上記カリウム含量を満たす限り、上記テレフタル酸カリウム塩に加えて、テレフタル酸二ナトリウム塩、テレフタル酸1−ナトリウム4−アンモニウム塩およびテレフタル酸二アンモニウム塩などを含んでもよい。
たとえば、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩とテレフタル酸二ナトリウム塩の2種類のテレフタル酸塩の混合物を用いる場合、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩をテレフタル酸二ナトリウム塩に対してモル比で1倍量以上含有するテレフタル酸塩を用いることができる。
また、テレフタル酸二カリウム塩とテレフタル酸二ナトリウム塩の2種類のテレフタル酸塩の混合物を用いる場合、テレフタル酸二カリウム塩をテレフタル酸二ナトリウム塩に対してモル比で1/3倍量以上含有するテレフタル酸塩を用いることができる。
本発明では、3種類以上のテレフタル酸塩の混合物を用いることもできるが、この場合も、該混合物がテレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含む必要がある。好ましくは、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩からなる群から選ばれる1種類以上のテレフタル酸カリウム塩と、テレフタル酸二ナトリウム塩、テレフタル酸1−ナトリウム4−アンモニウム塩およびテレフタル酸二アンモニウム塩からなる群から選ばれる2種類以上のテレフタル酸塩を含むテレフタル酸塩を用いることができる。その具体例としては、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸二ナトリウム塩およびテレフタル酸二アンモニウム塩をモル比で1:2:1の割合で混合して作製した水溶液が挙げられる。該水溶液は全テレフタル酸に対して0.5倍量のカリウムを含み、テレフタル酸1モルに対して0.5モルの水酸化カリウム、1.0モルの水酸化ナトリウムおよび0.5モルのアンモニアを水に添加し、溶解させることによっても得ることができる。
本発明では、水酸化カリウムもしくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの混合物を含むエチレングリコール溶媒または1−ブタノール溶媒の中で廃棄ポリエステルを解重合することにより得られるテレフタル酸二カリウム塩またはテレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩を含むテレフタル酸塩を微生物による化合物製造の原料として用いることができる。
この場合、モル当たりの価格が水酸化カリウムより水酸化ナトリウムやアンモニア水の方が安いことから、廃棄ポリエステルの解重合によって得られるテレフタル酸塩に対して、高純度テレフタル酸ならびに水酸化ナトリウムまたはアンモニア水を加えることにより生成するテレフタル酸塩を利用する方が、製造コストが安くなることがある。その具体例としては、たとえば廃棄ポリエステルの解重合によって得られるテレフタル酸二カリウム塩、高純度テレフタル酸およびアンモニア水をそれぞれモル比で6:4:8の割合で混合することによって得られるテレフタル酸塩の水溶液を用いることが挙げられる。このようにして得られるテレフタル酸塩の水溶液は、テレフタル酸二カリウム塩とテレフタル酸二アンモニウム塩をモル比で6:4の割合で混合して作製した水溶液と同等である。
本発明で開示する方法を用いて廃棄ポリエステルからテレフタル酸カリウム塩を調製した場合、カリウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン以外に、異物としてカルシウムイオンやリチウムイオンなどの他の金属イオンが混入することもある。この場合、本発明で用いるテレフタル酸塩については、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩であれば、テレフタル酸カルシウム塩やテレフタル酸リチウム塩などのテレフタル酸塩がその含有率が低ければ混入しても構わない。
本発明において、テレフタル酸からTPA−DHD、プロトカテク酸および没食子酸を製造する工程を説明する。図1に示すように、テレフタル酸は、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼにより酸化され、TPA−DHDに転換する。さらにTPA−DHDデヒドロゲナーゼによりTPA−DHDをプロトカテク酸に転換することができる。さらに、パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼもしくは改良型パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ(たとえば、パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼの199位のロイシンまたは200位のロイシンをバリンまたはグリシンに置換し、かつ385位または386位のチロシンをフェニルアラニン、バリンまたはアラニンに置換した変異体)により、プロトカテク酸を没食子酸に転換することができる。
本発明で用いられるテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼは、オキシゲナーゼ・コンポーネントとレダクターゼ・コンポーネントから成る。また、オキシゲナーゼ・コンポーネントは大小の2つのサブユニットから成る。オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質としては、例えば、配列番号2で表される、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testeroni)72W2株由来のアミノ酸配列を有するタンパク質があげられる。本菌株は独立行政法人・製品評価技術基盤機構・特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に2012年1月24日付で受領番号NITE ABP-1209で国際寄託されており、分譲を受けることができる。また、本発明で用いられるオキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質としては、配列番号2のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつテレフタル酸からTPA−DHDへの転換に関わる機能を有するタンパク質をあげることができる。また、該タンパク質として、配列番号2のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつテレフタル酸からTPA−DHDへの転換に関わる機能を有するタンパク質をあげることができる。ここで、「テレフタル酸からTPA−DHDへの転換に関わる機能」とはテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質とテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質とともにテレフタル酸と反応させたときにTPA−DHDを生成しうる機能を意味する。
テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質としては、例えば、配列番号4で表される、上述のコマモナス・テストステロニ72W2株由来のアミノ酸配列を有するタンパク質があげられる。また、本発明で用いられるテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質としては、配列番号4のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつテレフタル酸からTPA−DHDへの転換に関わる機能を有するタンパク質をあげることができる。また、該タンパク質として、配列番号4のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつテレフタル酸からTPA−DHDへの転換に関わる機能を有するタンパク質をあげることができる。ここで、「テレフタル酸からTPA−DHDへの転換に関わる機能」とはテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質とテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質とともにテレフタル酸と反応させたときにTPA−DHDを生成しうる機能を意味する。
本発明で用いられるテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質としては、例えば、配列番号6で表される、上述のコマモナス・テストステロニ72W2株由来のアミノ酸配列を有するタンパク質があげられる。また、本発明で用いられるテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質としては、配列番号6のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつテレフタル酸からTPA−DHDへの転換に関わる機能を有するタンパク質をあげることができる。また、該タンパク質として、配列番号6のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつテレフタル酸からTPA−DHDへの転換に関わる機能を有するタンパク質をあげることができる。ここで、「テレフタル酸からTPA−DHDへの転換に関わる機能」とはテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質とテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質とともにテレフタル酸と反応させたときにTPA−DHDを生成しうる機能を意味する。
本発明で用いられるテレフタル酸トランスポーター・タンパク質としては、例えば、配列番号8で表される、ロドコッカス・ジョスティ(Rhodococcus jostii)RHA1株由来のアミノ酸配列を有するタンパク質があげられる。また、本発明で用いられるテレフタル酸トランスポーター・タンパク質としては、配列番号8のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつテレフタル酸の細胞内輸送能を有するタンパク質をあげることができる。また、該タンパク質として、配列番号8のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつテレフタル酸を細胞内に輸送する活性を有するタンパク質をあげることができる。
本発明で用いられるTPA−DHDデヒドロゲナーゼ・タンパク質としては、例えば、配列番号10で表される、上述のコマモナス・テストステロニ72W2株由来のアミノ酸配列を有するタンパク質があげられる。また、本発明で用いられるTPA−DHDデヒドロゲナーゼ・タンパク質としては、配列番号10のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつTPA−DHDをプロトカテク酸に転換する活性を有するタンパク質をあげることができる。また、該タンパク質として、配列番号10のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつTPA−DHDをプロトカテク酸に転換する活性を有するタンパク質をあげることができる。
本発明で用いられるパラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼとしては、例えば、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)PAO株のGenBank(以下、GenBankをGBと略す)GBアクセッション番号AAG03636のタンパク質、またはシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440株のGBアクセッション番号AAN69138のタンパク質、または配列番号12で表されるコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032株由来のアミノ酸配列を有するタンパク質があげられる。また、本発明で用いられパラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ・タンパク質としては、配列番号12のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつプロトカテク酸を没食子酸へ転換する活性を有するタンパク質をあげることができる。特に、GBアクセッション番号AAG03636の199位のロイシンをバリンまたはグリシンに置換し、かつ385位のチロシンをフェニルアラニン、バリンまたはアラニンに置換した変異体、GBアクセッション番号AAN69138の199位のロイシンをバリンまたはグリシンに置換し、かつ386位のチロシンをフェニルアラニン、バリンまたはアラニンに置換した変異体、またはGBアクセッション番号BAB98470の200位のロイシンをバリンまたはグリシンに置換し、かつ385位のチロシンをフェニルアラニン、バリンまたはアラニンに置換した変異体を用いることが好ましい。また、該タンパク質として、配列番号12のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつプロトカテク酸を没食子酸に転換する活性を有するタンパク質をあげることができる。
本発明で用いられるラクトアルデヒド・レダクターゼとしては、たとえば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K-12株のGBアクセッション番号AAB40449のタンパク質があげられる。また、本発明で用いられラクトアルデヒド・レダクターゼ・タンパク質としては、GBアクセッション番号AAB40449のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつエチレングリコールをグリコアルデヒドへ転換する活性を有するタンパク質をあげることができる。また、該タンパク質として、GBアクセッション番号AAB40449のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつエチレングリコールをグリコアルデヒドへ転換する活性を有するタンパク質をあげることができる。
本発明で用いられるラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼとしては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K-12株のGBアクセッション番号AAC74497のタンパク質があげられる。また、本発明で用いられラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ・タンパク質としては、GBアクセッション番号AAC74497のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつグリコアルデヒドをグリコール酸へ転換する活性を有するタンパク質をあげることができる。また、該タンパク質として、GBアクセッション番号AAC74497のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつグリコアルデヒドをグリコール酸に転換する活性を有するタンパク質をあげることができる。
これらの菌株は、ATCC、独立行政法人製品基盤技術基盤機構・生物遺伝資源部門(以下、NBRCと略記する)、独立行政法人理化学研究 筑波研究所・バイオリソースセンター、国立遺伝学研究所・ナショナルバイオリソースプロジェクト(以下、NBRPと略記する)、またはザ・コリ・ジェネティク・ストック・センター(The Coli Genetic Stock Center;以下、必要に応じてCGSCと略記する)などから入手することができる。
上記のテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質、TPA−DHDデヒドロゲナーゼ・タンパク質、テレフタル酸トランスポーター・タンパク質、ラクトアルデヒド・レダクターゼ・タンパク質、ラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ・タンパク質において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、各々の目的酵素活性を有するタンパク質は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Res., 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Res., 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82, 488 (1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、各タンパク質において特定の位置に欠失、置換もしくは付加が導入されるようにDNAに部位特異的変異を導入することにより取得することができる。欠失、置換または付加される1または数個というアミノ酸の数は、個々の酵素活性が維持される限り特に限定されないが、元のアミノ酸配列との違いの個数以内であることが望ましく、1〜20個が好ましく、1〜10個がより好ましく、1〜5個が特に好ましい。
本発明で用いられるテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号1で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号3で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質としては、例えば、配列番号5で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるテレフタル酸トランスポーター・タンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号7で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるTPA−DHDデヒドロゲナーゼ・タンパク質としては、例えば、配列番号9で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるパラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ・タンパク質としては、例えば、配列番号11で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるラクトアルデヒド・レダクターゼ・タンパク質としては、例えば、GBアクセション番号U2958の13420番目から4571番目までの塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ・タンパク質としては、例えば、GBアクセション番号NC_000913の1486256番目から1487695番目までの塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明に使用するDNAには、各DNAがコードするタンパク質が目的の酵素活性を失わない範囲内で置換変異、欠失変異、挿入変異などの変異が導入されたDNA、例えば、配列番号1、3、5、7、9または11に表わされるDNAの全部もしくは一部をプローブとして、ハイブリダイゼーション法によってストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも包含する。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、具体的には、DNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0 MのNaClの存在下で65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度から2倍濃度までの間の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mM NaCl、15 mM クエン酸ナトリウムである)の中、65℃でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAを意味する。なお、ハイブリダイゼーションの実験法は、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning, A laboratory manual)、第2版〔サンブルック(Sambrook)、フリッチ(Fritsch) 、マニアチス(Maniatis)編集、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年刊〕に記載されている。
テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を原料として、TPA−DHDを生産するために用いられる本発明に使用する微生物としては、上記テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニットをコードするDNA、上記テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニットをコードするDNAおよび上記テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ・レダクターゼをコードするDNAを有し、かつテレフタル酸からTPA−DHDを生産する能力を有する微生物であれば、いずれの微生物を用いることができる。すなわち前記(1)記載のDNAを有し、かつテレフタル酸からTPA−DHDを生産する能力を有する微生物を用いることができる。このような性質を有する微生物は、前記(1)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAを組換え技術を用いて宿主細胞に導入して得た形質転換体であってもよい。
また、上記微生物を用いてテレフタル酸塩を原料としてTPA−DHDを生産する際に、当該微生物にテレフタル酸トランスポーターをコードするDNAを有し、かつテレフタル酸の輸送能が増強された微生物を用いることが好ましい。このような性質を有する微生物は、前記(1)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAに加えて、前記(4)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAを組換え技術を用いて宿主細胞に導入して得た形質転換体であってもよい。
プロトカテク酸の生産に用いられる本発明に使用する微生物としては、上述のテレフタル酸からTPA−DHDを生産する能力に加えて、TPA−DHDデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを有し、かつTPA−DHDからプロトカテク酸を生産する能力を有する微生物であれば、いずれの微生物を用いることができる。すなわち前記(5)に記載したDNAを有し、かつTPA−DHDからプロトカテク酸を生産する能力を有する前記(1)または(4)に記載の微生物を用いることができる。このような性質を有する微生物は、前記(1)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAに加えて、前記(5)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAを組換え技術を用いて宿主細胞に導入して得た形質転換体であってもよい。また、上記微生物を用いてテレフタル酸塩を原料としてプロトカテク酸を生産する際に、当該微生物にテレフタル酸トランスポーターをコードするDNAを有し、かつテレフタル酸の輸送能が増強された微生物を用いることが好ましい。このような性質を有する微生物は、前記(1)および(4)に記載したDNAに加えて、前記(5)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAを組換え技術を用いて宿主細胞に導入して得た形質転換体を用いることができる。
没食子酸の生産に用いられる本発明に使用する微生物としては、上述のテレフタル酸からTPA−DHDを生産する能力に加えて、TPA−DHDデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、およびパラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼを有するタンパク質をコードするDNAを有し、かつTPA−DHDから没食子酸を生産する能力を有する微生物であれば、いずれの微生物を用いることができる。すなわち前記(5)に記載のDNAに加えて、前記(7)に記載したDNAを有し、かつテレフタル酸から没食子酸を生産する能力を有する微生物を用いることができる。このような性質を有する微生物は、前記(1)および(5)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAに加えて、前記(7)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAを組換え技術を用いて宿主細胞に導入して得た形質転換体であってもよい。また、上記微生物を用いてテレフタル酸塩を原料として没食子酸を生産する際に、当該微生物にテレフタル酸トランスポーターをコードするDNAを有し、かつテレフタル酸の輸送能が増強された微生物を用いることが好ましい。このような性質を有する微生物は、前記(1)および(4)および(5)に記載したDNAに加えて、前記(7)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAを組換え技術を用いて宿主細胞に導入して得た形質転換体であってもよい。
エチレングリコール溶媒中でポリエステルを解重合したときに、テレフタル酸塩に混入するエチレングリコールを分解する本発明に使用する微生物としては、上述のテレフタル酸からTPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸を生産する微生物に対して、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼへの変異導入、ならびに/もしくはラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼの発現量の増強により、エチレングリコール分解能を増強した微生物を用いることができる。
以下に、DNAのクローニングと形質転換株の造成方法について詳しく述べる。
上述したエシェリヒア・コリK-12株、コマモナス・テストステロニ72W2株、ロドコッカス・ジョスティRHA1株、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株などの細菌は、上記の微生物分譲機関が推奨する培養条件または通常用いられる公知の方法により培養する。培養後、公知の方法(例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の方法)により、該微生物の染色体DNAを単離し精製する。この染色体DNAから合成DNAを用いて、ハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、目的のタンパク質をコードするDNAを含む断片を取得することができる。
目的のタンパク質をコードするDNAは化学合成することによっても得ることができる。該合成DNAは、たとえば、コマモナス・テストステロニ72W2株由来のテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質をコードするDNAの配列番号1で表される塩基配列、およびコマモナス・テストステロニ72W2株由来のテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質をコードするDNAの配列番号3で表される塩基配列、およびコマモナス・テストステロニ72W2株由来のテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質をコードするDNAの配列番号5で表される塩基配列に基づいて設計することができる。
テレフタル酸トランスポーター・タンパク質をコードする合成DNAとしては、ロドコッカス・ジョスティRHA1株のテレフタル酸トランスポーター・タンパク質をコードするDNAの配列番号7で表される塩基配列に基づいて設計することができる。
TPA−DHDデヒドロゲナーゼをコードする合成DNAとしては、コマモナス・テストステロニ72W2株のTPA−DHDデヒドロゲナーゼ・タンパク質コードするDNAの配列番号9で表される塩基配列に基づいて設計することができる。
パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼをコードする合成DNAとしては、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のパラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ・タンパク質(385番目のチロシンがフェニルアラニンに置換したタンパク質)をコードするDNAの配列番号11で表される塩基配列に基づいて設計することができる。
ラクトアルデヒド・レダクターゼをコードする合成DNAとしては、エシェリヒア・コリK-12株のラクトアルデヒド・レダクターゼ・タンパク質をコードするDNAのGBアクセション番号U2958の13420番目から4571番目までの塩基配列に基づいて設計することができる。
ラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼをコードする合成DNAとしては、エシェリヒア・コリK-12株のラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ・タンパク質をコードするDNAのGBアクセション番号NC_000913の1486256番目から1487695番目までの塩基配列に基づいて設計することができる。
上記DNAを連結するベクターとしては、エシェリヒア・コリK12株などにおいて自立複製可能なベクターであればプラスミドベクター、ファージベクター等いずれも使用可能であるが、具体的には、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pUC18、pBR322、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、ZAP Express〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 58 (1992)〕、pBluescript II SK(+)〔ストラタジーン社製、Nucleic Acids Res., 17, 9494 (1989)〕、pUC118(タカラバイオ社製)等を用いることができる。
該ベクターに上記で取得したDNAを連結して得られる組換えDNAの宿主に用いるエシェリヒア・コリは、エシェリヒア・コリに属する微生物であればいずれでも用いることができるが、具体的には、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli) XL1-Blue MRF'〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 81 (1992)〕、エシェリヒア・コリC600〔Genetics, 39, 440 (1954)〕、エシェリヒア・コリY1088〔Science, 222,778 (1983)〕、エシェリヒア・コリY1090〔Science, 222, 778 (1983)〕、エシェリヒア・コリNM522〔J. Mol. Biol., 166, 1 (1983)〕、エシェリヒア・コリK802〔J. Mol. Biol., 16, 118 (1966)〕、エシェリヒア・コリJM105〔Gene, 38, 275 (1985)〕、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリBL21等をあげることができる。
ロドコッカス(Rhodococcus)属、コマモナス(Comamonas)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ポラロモナス(Polaromonas)属、ラルストニア(Ralstonia)属またはバークホルデリア(Burkholderia属)に属する微生物の中に、上記DNAを導入するときは、これら微生物の中で自立複製可能なベクターを用いる。好ましくは、該微生物のいずれかとエシェリヒア・コリK12株の両方の微生物の中で自立複製可能なシャトル・ベクターを用いて、組換えDNAを宿主となる該微生物に導入することができる。
組換えDNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69, 2110 (1972) 〕、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)〕、接合伝達法〔J. G. C. Ottow, Ann. Rev.Microbiol., Vol.29, p.80 (1975)〕、細胞融合法〔M.H. Gabor, J. Bacteriol., Vol.137, p.1346 (1979)〕等をあげることができる。
上記のようにして得られた形質転換体から組換えDNAを抽出し、該組換えDNAに含まれる本発明に使用するDNAの塩基配列を決定することができる。塩基配列の決定には、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5463 (1977)〕または3730xl型DNAアナライザー(アプライド・バイオシステムズ社製)等の塩基配列分析装置を用いることができる。
また、上記において決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することによっても目的とするDNAを調製することもできる。
上記のテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質、テレフタル酸・トランスポーター・タンパク質、TPA−DHDデヒドロゲナーゼ・タンパク質、パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ・タンパク質、ラクトアルデヒド・レダクターゼ・タンパク質、および/またはラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ・タンパク質を発現する形質転換体は、下記の方法を用いて上記のDNAを宿主細胞中で発現させることによって得られる。
上記タンパク質をコードするDNAを用いる際には、必要に応じて、本発明に使用するタンパク質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製することができる。また、該タンパク質をコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、該タンパク質の生産率を向上させることもできる。本発明に使用するDNAを発現する形質転換体は、上記DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えDNAを作製し、該組換えDNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより取得することができる。
本発明に使用するタンパク質を発現させる宿主としては、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。好ましくは、TPA−DHDの代謝能を有していない微生物を用いることができる。より好ましくは、TPA−DHDの代謝能を有していないエシェリヒア属の細菌またはシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌をあげることができる。さらに好ましくは、エシェリヒア・コリK-12株またはシュードモナス・プチダKT2440株をあげることができる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能もしくは染色体中への組込みが可能で、本発明に使用するDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明に使用するDNAを含有してなる組換えDNAは原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明に使用するDNA、転写終結配列、より構成された組換えDNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
本発明に使用するタンパク質、または該タンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質をコードするDNAをエシェリヒア・コリなどの微生物に導入し、発現するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。より具体的には、ベクターとしては、例えば、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pUC18、pBR322、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、pKK233-2(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-8(キアゲン社製)、pET-3(ノバジェン社製)pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(+)(ストラタジーン社製)、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)等を用いることができる。
プロモーターとしては、エシェリヒア・コリ等の宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター等の、T7プロモーターなどのエシェリヒア・コリやファージ等に由来するプロモーター、およびtacプロモーター、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等、およびシュードモナス・プチダのTOLプラスミドのXylSタンパク質により制御されるPmプロモーターを用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば5〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。本発明に使用する組換えDNAにおいては、本発明に使用するDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
組換えDNA技術などを用いて、上記いずれか1つ以上のタンパク質の生産量が親株と比較して増強した微生物を造成し、TPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸の生産量をあげることができる。具体的には、上記いずれかのタンパク質をコードする遺伝子を発現させるためのプロモーターとして天然のプロモーターよりも転写活性が強いプロモーターを用いる、あるいは該タンパク質をコードする遺伝子の転写を終結するためのターミネーターとして天然のターミネーターよりも転写終結活性が強いターミネーターを用いる、あるいは発現ベクターとして高コピー数ベクターを利用すること、相同組換えで染色体上に組み込むことなどがあげられる。
以上のようにして得られるテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質、およびテレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質を発現している微生物を用いることにより、テレフタル酸塩からTPA−DHDを製造することができる。たとえば、該微生物を液体培地で培養した後、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を該微生物の培養液に0.1 mM〜1 Mの濃度となるように加えることにより、TPA−DHDを生成、蓄積させ、該培養液からTPA−DHDを採取することができる。本発明に使用する微生物を培地に培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
また、上記の微生物を培養した後、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を含む水性媒体中に、該微生物の培養菌体もしくは該培養菌体の処理物を加えることによりTPA−DHDを生成、蓄積させ、該媒体からTPA−DHDを採取することによってもTPA−DHDを製造することができる。
テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質、およびTPA−DHDデヒドロゲナーゼを発現している微生物を用いることにより、テレフタル酸塩からプロトカテク酸を製造することができる。たとえば、該微生物を液体培地で培養した後、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を該微生物の培養液に0.1 mM〜1 Mの濃度となるように加えることにより、プロトカテク酸を生成、蓄積させ、該培養液からプロトカテク酸を採取することができる。本発明に使用する微生物を培地に培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
また、上記の微生物を培養した後、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を含む水性媒体中に、該微生物の培養菌体もしくは該培養菌体の処理物を加えることによりプロトカテク酸を生成、蓄積させ、該媒体からプロトカテク酸を採取することによってもプロトカテク酸を製造することができる。
また、前記(1)から(4)のいずれかに記載の方法により、テレフタル酸塩からTPA−DHDを生成させた後に、前記(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAを形質転換法により導入して得られた別の微生物の培養物または該培養物の処理物を用いてTPA−DHDをプロトカテク酸に転換し、該培養液または該媒体からプロトカテク酸を採取することによってもプロトカテク酸を製造することができる。
テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質、TPA−DHDデヒドロゲナーゼ、およびパラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼを発現している微生物を用いることにより、テレフタル酸塩から没食子酸を製造することができる。たとえば、該微生物を液体培地で培養した後、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を該微生物の培養液に0.1 mM〜1 Mの濃度となるように加えることにより、没食子酸を生成、蓄積させ、該培養液から没食子酸を採取することができる。本発明に使用する微生物を培地に培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
また、上記の微生物を培養した後、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を含む水性媒体中に、該微生物の培養菌体もしくは該培養菌体の処理物を加えることにより没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することによっても没食子酸を製造することができる。
また、前記(1)から(4)のいずれかに記載の方法により、テレフタル酸塩からTPA−DHDを生成させた後に、前記(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAおよび前記(u)、(v)、(w)または(x)に示すDNAを形質転換法により導入して得られた別の微生物の培養物または該培養物の処理物を用いてTPA−DHDを没食子酸に転換し、該培養液または該媒体から没食子酸を採取することによっても没食子酸を製造することができる。
テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩は、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩およびテレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩などのテレフタル酸カリウム塩を含む純度の高いテレフタル酸塩を用いてもよいが、廃棄ポリエステルから得たものでもよい。
以下に、廃棄ポリエステルから微生物による化合物製造の原料として用いるテレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を得る方法を述べる。
廃棄ポリエステルの形状としては、容器、フィルム、シート、部品、繊維、粒状粉砕物、粉状粉砕物など、いずれの形状のものも利用することができる。これらのポリエステルを主成分(主成分とは、例えば、80%以上のPETおよび/またはPTTおよび/またはPBTを含むことをいう)とし異物成分(主成分とは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる)を含むポリエステル廃棄物を収集する。必要に応じて金属やポリエステル以外のプラスチックなどの異物を除去した後、粉砕機によりポリエステル廃棄物を粉砕する。ポリエステル廃棄物の粉砕物としてペットボトル・リサイクル業者により加工処理されたペットボトルのフレークを出発原料として用いることもできる。このようにして得られたポリエステル廃棄物の粉砕物を比重分別法、磁石による金属分離法、水による洗浄法または水での浮遊異物除去法などで処理することにより、金属、ガラス、石、食品や飲料物の残渣、ポリエステル以外のプラスチック、およびポリエチレンやポリプロピレンのシートなどの異物・夾雑物をポリエステル破砕物から分離する。
このようにして得られたポリエステル破砕物を秤量してテレフタル酸の含有量(モル数)を測定した後、金属性反応釜に入れる。さらに、水酸化カリウムまたは水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの混合物、ならびにエチレングリコールまたは1−ブタノールのどちらかの反応溶媒を反応釡に加えた後、適切な時間だけ加熱することにより、ポリエステル破砕物の解重合反応を行う。解重合反応の溶液中に適量の水を含める方が反応が早く進行するうえ、回収できるテレフタル酸塩の収率が向上する。
添加する水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムは、固形粒子または水溶液のいずれの形態でも添加することができるが、反応釡に入れたポリエステル破砕物中のテレフタル酸のモル数に対して約2倍量のモル数、好ましくは合計2〜2.2倍のモル数となるように加えることが好ましい。より好ましくは、アルカリの添加量はポリエステル破砕物中のテレフタル酸の含有量に対して合計2.10倍のモル数がよい。
添加するエチレングリコールまたは1−ブタノールの量は、該ポリエステル破砕物の容量に対して3〜10倍量となるように加えることが好ましい。より好ましくは、溶媒の添加量は合計5倍量がよい。該解重合反応の溶液に適量の水を加えることが望ましいが、該解重合反応の溶液中に含有する水の総量はポリエステル破砕物中のテレフタル酸のモル数に対して1倍量〜5倍量が望ましい。
反応釡中の圧力は、大気圧近傍の圧力、たとえば0.9〜1.1気圧(91.193〜111.458 kPa)が好ましい。反応溶媒としてエチレングリコールを用いるときの反応温度は、水が蒸発し、かつエチレングリコールが蒸発しない温度である。反応釡中の圧力が1気圧のときには、100〜196℃が好ましい。1気圧より低い気圧で反応させるときには、100〜196℃の範囲内で、水が蒸発し、かつエチレングリコールが蒸発しない温度で反応させる。また、1気圧より高い気圧で反応させるときには、100〜196℃の範囲内で、水が蒸発し、かつエチレングリコールが蒸発しない温度で反応させる。反応溶媒として1−ブタノールを用いるときの反応温度は、水が蒸発し、かつ1−ブタノールが蒸発しない温度である。反応釡中の圧力が1気圧のときには、100〜116℃が好ましい。1気圧より低い気圧で反応させるときには、100〜116℃の範囲内で、水が蒸発し、かつ1−ブタノールが蒸発しない温度で反応させる。また、1気圧より高い気圧で反応させるときには、100〜116℃の範囲内で、水が蒸発し、かつ1−ブタノールが蒸発しない温度で反応させる。
加熱時間はポリエステル破砕物が完全に分解する時間が好ましく、通常10〜240分間であるが、溶解速度はPET、PTT、PBTの順に遅くなるので、PTTとPBTを解重合するときには、加熱分解時間を長くすることが望ましい。加熱反応中に蒸発する水分などの揮発性物質は凝縮器によって回収する。
解重合反応が終わった後、エチレングリコールまたは1−ブタノールの溶液とテレフタル酸塩由来の固形物に加えて、ポリエステル以外の異物プラスチック、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニールが浮遊物として存在するときには、該浮遊物を除去する。その後、テレフタル酸塩の固形物を濾過や遠心処理などによる固液分離法を用いてエチレングリコール溶媒または1−ブタノール溶媒から分離する。
上記の固液分離法により分離したエチレングリコール溶媒には著量のテレフタル酸塩が溶解しているので、該溶媒を上記のPETまたはPTTまたはPBTの解重合反応溶媒として用いることが好ましい。また、テレフタル酸塩の1−ブタノール溶媒への溶解度は低いが、解重合反応に用いた1−ブタノール溶媒を上記のPETまたはPTTまたはPBTの解重合反応溶媒として再度用いる方が製造コストを低減できるので好ましい。このように、PETまたはPTTまたはPBTの解重合反応に用いるエチレングリコール溶媒または1−ブタノール溶媒は、生成したテレフタル酸塩を分離することにより、繰り返してポリエステルの解重合反応に用いることができる。
続いて、テレフタル酸塩の固形物に含まれる不純物が多い場合には、得られたテレフタル酸塩の固形物に対して適量のエチレングリコールまたは1−ブタノールによる洗浄処理を施してもよい。特に、PTTやPBTを含むポリエステル廃棄物を解重合した場合には、該固形物中に1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールが混入するので、エチレングリコールまたは1−ブタノールによる洗浄処理を施すことが好ましい。またPET樹脂を1−ブタノール反応溶媒中で解重合した場合には、該固形物中にエチレングリコールが混入するが、該エチレングリコールは、下記に述べる減圧乾燥によっても除くことができるが、1−ブタノールによる洗浄処理により該エチレングリコールを除いてもよい。
このようにして得られたテレフタル酸塩の固形物には、著量のエチレングリコールまたは1−ブタノールが含まれているので、必要に応じて、減圧乾燥機などを用いて該固形物中のエチレングリコールまたは1−ブタノールを減少させる処理、または遠心分離機などを用いて液体状物質の分離を行う。このようにして得られたテレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩をTPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸の製造に使用することができる。
また該テレフタル酸塩に難水溶性の固形異物が混入している場合には、該テレフタル酸塩を適量の水に溶解させた後、濾過法により異物を除去することにより得られるテレフタル酸塩の水溶液を微生物による化合物生産に用いてもよい。
なお、エチレングリコール溶媒中での廃棄ポリエステルの解重合により得られたテレフタル酸塩に混入するエチレングリコールを分解するためには、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼの発現量を増強した本発明に使用する微生物を液体培地で培養した後、エチレングリコールを含有し、かつテレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を培養液中に0.1 mM〜1 Mの濃度となるように加えることにより、エチレングリコールを分解させながらTPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸を生成させることもできる。
本発明に使用する微生物を培養した後、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を含む水性媒体中に、該微生物の培養菌体もしくは該培養菌体の処理物を加えることによりTPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体からTPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸を採取することもできる。
本発明に使用する微生物の培養は、炭素源、窒素源、無機塩、各種ビタミン等を含む通常の栄養培地で行うことができ、炭素源としては、例えばブドウ糖、ショ糖、果糖等の糖類、エタノール、メタノール等のアルコール類、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸類、廃糖蜜等が用いられる。窒素源としては、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等がそれぞれ単独または混合して用いられる。また、無機塩としては、例えばリン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム等が用いられる。この他にペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンステイープリカー、カザミノ酸、ビオチン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に添加することができる。TPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸を生産するための原料としては、上述のようにして調製した、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むテレフタル酸塩を添加する。
培養は、通常、通気攪拌、振とう等の好気条件下で行う。培養温度は、本発明に使用する微生物が生育し得る温度であれば特に制限はなく、また、培養途中のpHについても本発明に使用する微生物が生育し得るpHであれば特に制限はない。培養中のpH調整は、酸またはアルカリを添加して行うことができる。
該培養菌体の処理物として、本発明に使用する微生物を担体に固定化したものを用いてもよい。その場合には、培養物から回収されたまま、あるいは適当な緩衝液、例えば0.02〜0.2 M程度のリン酸緩衝液(pH6〜10)等で洗浄された菌体を使用することができる。また、培養物から回収された菌体を、超音波、圧搾等の手段で破砕して得られる破砕物、該破砕物を水等で抽出して得られる本発明に使用するタンパク質を含有する抽出物、該抽出物をさらに硫安塩析、カラムクロマトグラフィー等の処理を行って得られる本発明に使用するタンパク質の部分精製成分等を担体に固定化したものも、本発明のTPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸の製造に使用することができる。
これら菌体、菌体破砕物、抽出物または精製酵素の固定化は、それ自体既知の通常用いられている方法に従い、アクリルアミドモノマー、アルギン酸、またはカラギーナン等の適当な担体に菌体等を固定化させる方法により行うことができる。
反応に用いる水性媒体は、テレフタル酸塩を含有する水溶液または適当な緩衝液、例えば0.02〜0.2 M程度のリン酸緩衝液(pH6〜10)とすることができる。この水性媒体には、さらに菌体の細胞膜の物質透過性を高める必要のあるときには、トルエン、キシレン、非イオン性界面活性剤等を0.05〜2.0%(w/v)添加することもできる。
水性媒体中の反応原料となるテレフタル酸塩の濃度は、0.1 mM〜1 M程度が適当である。上記の水性媒体における酵素反応温度およびpHは特に限定されないが、通常10〜60℃、好ましくは15〜50℃が適当であり、反応液中のpHは5〜10、好ましくは6〜9付近とすることができる。また、pHの調整は、酸またはアルカリを添加して行うことができる。
発明で使用する酵素は、菌体抽出液をそのまま、またはそれから遠心分離、濾過等で集め、これを水または緩衝液に懸濁して得ることができる。このようにして得られた酵素をテレフタル酸塩の存在下、反応させるが、反応液中のテレフタル酸塩の濃度は酵素の活性を阻害しない範囲で可能な限り高くするのが有利である。反応は静置、攪拌、振盪のいずれの方法で行ってもよい。また、酵素を適当な支持体に固定化してカラムに充填し、テレフタル酸塩を含む溶液を流す方法も利用できる。反応は、通常10〜60℃、好ましくは15〜50℃、pH5〜9、好ましくはpH6〜9で行う。
また、上記水性媒体に、反応時に抗酸化剤または還元剤を添加すると、TPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸の生成収率が一層向上する場合がある。抗酸化剤/還元剤としては、アスコルビン酸、イソアルコルビン酸、システイン、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリムなどのチオ硫酸塩が挙げられる。添加濃度は、抗酸化剤/還元剤の種類によって異なるが、TPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸の生成を阻害しない濃度で加えることが望ましく、通常0.001〜5%(w/v)、好ましくは0.005〜1%である。
また、上記水性媒体に、反応時に酸化剤を添加すると、TPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸の生成収率が一層向上する場合がある。酸化剤としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の硝酸塩、塩化第二鉄や硫酸第二鉄等の金属塩、ハロゲン、ペルオクソ酸等が挙げられ、好ましくは、亜硝酸ナトリウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄が挙げられる。添加濃度は、酸化剤の種類によって異なるが、TPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸の生成を阻害しない濃度で加えることが望ましく、通常0.001〜0.05%(w/v)、好ましくは0.005〜0.02%である。
培養終了後の培養液または反応液中のTPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸は、必要に応じて遠心分離等により該培養液から菌体等の不溶成分を除いた後、例えば、酢酸エチル等の有機溶媒による抽出法、活性炭を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、晶析法、塩析などの沈殿法、蒸留法等の方法を単独でまたは組み合わせることによってTPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸を採取することができる。TPA−DHD、プロトカテク酸または没食子酸について、塩の形態でなく、酸の状態で化合物を得る必要があるときには、上記精製工程において、硫酸や塩酸などの添加によりpHを下げて塩を形成しているカルボン酸を遊離酸の状態にすることができる。
以下に本発明の方法を実施例により具体的に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1.各種テレフタル酸塩の溶解度の測定
テレフタル酸(粉末状、シグマアルドリッチジャパン製;以下、特記しない限り、試薬はシグマアルドリッチジャパン製を用いた。)2.99 g(0.018 mol)と水酸化カリウム(顆粒状)0.036 molを50 mLガラスビーカーに投入し、蒸留水で約15 mLにした。アルミホイルで蓋をしてホットスターラー(アズワン社製)で撹拌しながら50℃で60分間加熱後、放冷して30℃まで冷却した。30℃で120分間以上撹拌し、溶液に沈殿が残存していることを確認した後、溶液1 mLを採取し、微量高速遠心機(トミー精工製)を用いた遠心〔30℃、14000 rpm(17800g)、30秒間〕により上清を回収した。
この上清のテレフタル酸の濃度を測定し、テレフタル酸二カリウム塩の溶解度とした。テレフタル酸の濃度の測定については、サンプルを2.5%アセトニトリル水溶液で16000倍に希釈し、高速液体クロマトグラフィー(Water社、LCT Premier XE)を用いて表1の分離条件で分析した後に、濃度既知のテレフタル酸水溶液を対照としたテレフタル酸ピークの面積の比をもとに算出した。
上記のテレフタル酸二カリウム塩の水溶液の作製方法と同様に、テレフタル酸(粉末状)2.99 g(0.018 mol)に対して、水酸化ナトリウム(顆粒状)0.036 mol、もしくは28%アンモニア水0.036 mol、もしくは水酸化カリウム0.018 molおよび水酸化ナトリウム0.018 mol、もしくは水酸化カリウム0.018 molおよび28%アンモニア水0.018 mol、もしくは水酸化ナトリウム0.018 molおよび28%アンモニア水0.018 molを加えることにより、テレフタル酸二ナトリウム塩、テレフタル酸二アンモニウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩、もしくはテレフタル酸1−ナトリウム4−アンモニウム塩の水溶液を作製した後、それぞれのテレフタル酸塩の溶解度を測定した。
得られた各テレフタル酸塩の溶解度を表2に示す。表2の結果より、テレフタル酸二カリウム、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム、テレフタル酸二ナトリウム、テレフタル酸1−ナトリウム4−アンモニウム、テレフタル酸二アンモニウムの順で水への溶解度が高く、テレフタル酸の少なくとも1個のカルボキシル基残基がカリウムと塩を形成している塩の溶解度が優れていることが判明した。
実施例2.テレフタル酸塩の違いによるTPA−DHDの生産性の違い
実施例1の結果に基づいて、テレフタル酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、28%アンモニア水および蒸留水をもとに、0.6 M テレフタル酸二カリウム水溶液、0.6 M テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム水溶液、0.6 M テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム水溶液、および0.6 M テレフタル酸二ナトリウム水溶液を500 mLずつ調製した。これらのテレフタル酸塩溶液30 mlとグルコース7 gを混合し、グルコース・基質混合液とした。
参考例3で構築したTPA−DHD生産プラスミドpUXPEaLT_tphA2A3A1_tpaKを大腸菌M7032株(Yale大学のCGSCより入手)に形質転換法により導入し、組換え大腸菌株M7032(pUXPEaLT_tphA2A3A1_tpaK)を得た。
この形質転換体をアンピシリン終濃度100 mg/lを含む1 mlのLB液体培地〔10 g/l トリプトン(Difco社製)、5 g/l 乾燥酵母エキス(Difco社製)、10 g/l 塩化ナトリウム〕で一晩培養した。次に、アンピシリン終濃度100 mg/lを含む10 mlのF6.6W/P100/G2培地にこの一晩培養液を1%だけ接種し、30℃で24時間培養した。なお、F6.6W/P100/G2培地とは、リン酸二水素カリウム 13.6 g/L、クエン酸一水和物 2.1 g/L、硫酸アンモニウム 9.9 g/L、 硫酸鉄(II)七水和物 1.703 g/L、グルコース 20 g/L、硫酸マグネシウム七水和物 246 mg/ml、塩化カルシウム二水和物 12.9 mg/L、チアミン塩酸塩 10 mg/L、酸化マグネシウム 10.75 mg/L、炭酸カルシウム 2 mg/L、硫酸亜鉛七水和物 4.5 mg/ml、硫酸マンガン(II)四水和物 1.12 mg/L、硫酸銅(II)五水和物 0.25 mg/L、硫酸コバルト(II)七水和物 0.28 g/L、およびホウ酸 0.06 mg/L〕を含む水溶液である。
次に、この前培養液をもとに本培養を行うために、本培養培地であるF6.6W/P10/G1培地65 mlを8連ミニジャーファーメンター(エイブル社製)に投入し、30.2℃±0.2、pH6.9±0.1に調整した。なお、F6.6W/P10/G1培地とは、リン酸二水素カリウム1.36 g/L、クエン酸一水和物 2.1 g/L、硫安 9.9 g/L、硫酸鉄(II)七水和物1.703 g/L、グルコース 20 g/L、硫酸マグネシウム七水和物 246 mg/ml、塩化カルシウム二水和物 12.9 mg/L、チアミン 10 mg/L、酸化マグネシウム 10.75 mg/L、炭酸カルシウム 2 mg/L、硫酸亜鉛七水和物 4.5 mg/ml、硫酸マンガン四水和物 1.12 mg/L、硫酸銅五水和物 0.2 5mg/L、硫酸コバルト七水和物 0.28 g/L、ホウ酸 0.06 mg/Lを含む水溶液である。
ジャーファーメンター培養の通気条件は1 vvmに調整し、培養のpH調整はアンモニア水と硫酸を用いて行った。また、培養液中の溶存酸素は飽和酸素濃度を100%として調節して、菌体増殖に伴って減少する溶存酸素を15%で維持するように撹拌羽根の回転数で制御を行った。
本培養培地に0.1%の前培養液を接種し、上記条件で培養を行った。菌体濁度が吸光度600 nmで約7になったときに、誘導剤m-トルイル酸を終濃度1 mMになるように添加し、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼレダクターゼ・タンパク質、およびテレフタル酸トランスポーター・タンパク質を発現させた。グルコース濃度を経時的に計測し、グルコース濃度が0になったときにグルコース・基質混合液の投与を行った。
本培養開始後48時間後にサンプリングを行った。各サンプルはLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による表1に示す条件での分析に供した。テレフタル酸の同定は、標品のテレフタル酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの精密質量値を合わせて行った。TPA−DHDは、テレフタル酸の減少に伴って出現する物質の中から、TPA−DHDの予想精密質量値をもとに同定した。また、TPA−DHDの定量は、テレフタル酸の減少量とTPA−DHDのピークエリアの増加から作成した検量線をもとに行った。
その結果、テレフタル酸の減少に伴ってTPA−DHDの増加が観察された。培養48時間後の各テレフタル酸塩からのTPA−DHD生産量を100%とした比率を表3に示す。表3に示す結果から、3種類のテレフタル酸カリウム塩のいずれもテレフタル酸二ナトリウム塩よりもTPA−DHDの生産性が優れていることが明らかになった。
実施例3.テレフタル酸塩中のカリウムイオンの濃度によるTPA−DHDの生産性の違い
実施例2の結果より、テレフタル酸カリウム塩を原料とすると、TPA−DHDの生産性が優れていることが示された。そこで、テレフタル酸塩中のカリウムイオンの濃度がTPA−DHDに及ぼす影響を以下のようにして調べた。
まず、実施例2で調製した0.6 M テレフタル酸二カリウム水溶液と0.6 M テレフタル酸二ナトリウム水溶液をそれぞれ0:100、20:80、25:75、30:70、35:65、50:50の割合で混合したテレフタル酸塩の水溶液を作製した。これらのテレフタル酸塩溶液30 mlとグルコース7 gを混合し、グルコース・基質混合液とした。
これらグルコース・基質混合液を用いて、実施例2の方法と同様の方法により、組換え大腸菌株M7032(pUXPEaLT_tphA2A3A1_tpaK)によるTPA−DHDの生産性を調べた。その結果を表4に示す。
その結果、表4に示すように、テレフタル酸塩中のカリウムイオン含量が増加するにつれてTPA−DHDの生産性が増加する現象が観察され、テレフタル酸二ナトリウム塩を原料としたときの生産性と比べて、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上のカリウムを含むテレフタル酸塩を用いたときにTPA−DHDの生産性が高くなることが示された。

実施例4.テレフタル酸塩の違いによるプロトカテク酸の生産性の違い
参考例2で構築したプロトカテク酸生産プラスミドpUXPEaLT_tphA2A3BA1_tpaKを大腸菌M7032株へ形質転換法により導入し、プロトカテク酸生産大腸菌株M7032(pUXPEaLT_tphA2A3BA1_tpaK)を得た。
続いて、実施例2と同様にして、本プロトカテク酸生産菌の前培養液を調製した後、該前培養液を2%だけ本培養培地に接種し、本培養を行った。菌体濁度が吸光度600 nmで約7になったときに誘導剤m-トルイル酸を終濃度1 mMになるように添加し、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼレダクターゼ・タンパク質, テレフタル酸ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ・タンパク質、およびテレフタル酸トランスポーター・タンパク質を発現させた。グルコース濃度を経時的に計測し、グルコース濃度が0になったときにグルコース・基質混合液の投与を行った。
本培養開始後48時間後にサンプリングを行った。各サンプルはLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による分析に供した。テレフタル酸およびプロトカテク酸の同定は、標品のテレフタル酸およびプロトカテク酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの精密質量値を合わせて行った。
その結果、テレフタル酸の減少に伴ってプロトカテク酸の増加が観察された。培養48時間後の各テレフタル酸塩からのプロトカテク酸生産量を100%とした比率を表5に示した。表5に示す結果から、3種類のテレフタル酸カリウム塩のいずれもテレフタル酸二ナトリウム塩よりもプロトカテク酸の生産性が優れていることが明らかになった。
実施例5.テレフタル酸塩の違いによる没食子酸の生産性の違い
参考例4で構築した没食子酸プラスミドpUXPEaLT_HFM145_tphA2A3BA1_tpaKを大腸菌M7032株へ形質転換法により導入し、没食子酸生産大腸菌株M7032(pUXPEaLT_HFM145_tphA2A3BA1_tpaK)を得た。続いて、実施例2と同様にして、この没食子酸生産菌の前培養液を調製した後、この前培養液を2%だけ本培養培地に接種し、上記条件で本培養を行った。菌体濁度が吸光度600 nmで約7になった時に誘導剤m-トルイル酸を終濃度1 mMになるように添加し、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼレダクターゼ・タンパク質, テレフタル酸ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ・タンパク質、テレフタル酸トランスポーター・タンパク質および改良型パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼを発現させた。グルコース濃度を経時的に計測し、グルコース濃度が0になった時にグルコース・基質混合液の投与を行った。
本培養開始後48時間後にサンプリングを行った。各サンプルはLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による分析に供した。テレフタル酸およびプロトカテク酸の同定は、標品のテレフタル酸および没食子酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの精密質量値を合わせて行った。
その結果、テレフタル酸の減少に伴って没食子酸の増加が観察された。培養48時間後の各テレフタル酸塩からの没食子酸生産量を100%とした比率を表5に示した。表6に示す結果から、3種類のテレフタル酸カリウム塩のいずれもテレフタル酸二ナトリウム塩よりも没食子酸の生産性が優れていることが明らかになった。
実施例6.エチレングリコール溶媒中での廃棄PETの解重合
(1)アルカリ金属水酸化物の種類による廃棄PETの解重合速度と解重合効率の違い
廃棄ペットボトル22 kgを収集し、ラベルとキャップを分離した後、洗浄・風乾した。この洗浄済みの廃棄ペットボトルを、日本コークス工業株式会社に依頼して、5 mm角スクリーンを通過する大きさの粒に粉砕した。この粉砕物を廃棄ペットボトル破砕物として以下の工程で使用した。
200 mLのステンレス製ビーカー(株式会社三商より購入)に廃棄ペットボトル破砕物12 gとエチレングリコール60 gを投入した後、水酸化カリウム(顆粒状)0.13 mol、もしくは水酸化ナトリウム(顆粒状)0.13 mol、もしくは水酸化カリウム0.066 molおよび水酸化ナトリウム0.066 molを投入し、ホットスターラーを用いて強く撹拌しながら160℃で120分間の加熱処理を行った。
この際、溶液の内温が160℃に達したときより0分、5分、10分、20分、30分、60分、120分経過した時点で反応液約200μLを回収し、各時点におけるテレフタル酸塩の濃度を測定した。反応時間経過によるテレフタル酸塩の生成濃度は図2に示す。
図2の結果から、水酸化カリウムを添加した方が廃棄ペットボトル破砕物からのテレフタル酸塩の生成速度も大きく、さらに生成効率も優れていることがわかった。また、水酸化カリウムのみを添加した場合と水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの両方を等モル添加した場合の間では効果は同等であった。
(2)廃棄PET解重合反応後の固形物残渣の分析
500 mLのステンレス製ビーカー(三商より購入)に廃棄ペットボトル破砕物30 gとエチレングリコール150 gを投入した後、水酸化カリウム(顆粒状)0.33 mol、もしくは水酸化ナトリウム(顆粒状)0.33 mol、もしくは水酸化カリウム0.17 molおよび水酸化ナトリウム0.17 molをに投入し、ホットスターラーで強く撹拌しながら160℃で60分間の加熱処理を行った後に、自然冷却させ、内温40℃以下になってから内容物を払いだした。
この内容物をろ紙(ワットマン製グレード540)でろ別して、ろ液と残渣に分けた後に、それぞれの残渣の重さと残渣中のテレフタル酸の総量を測定した。その結果を表7に示す。
また、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸二ナトリウム塩、およびテレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩のエチレングリコールへの溶解度を実施例1と同様の方法により調べたところ、それぞれ231 mM、109 mM、205 mMであった。
したがって、テレフタル酸塩のエチレングリコールへの溶解度が高いので、水酸化ナトリウムの添加と比較して、水酸化カリウムの添加の方がテレフタル酸塩の生成効率が優れているが、水酸化カリウムを添加した場合と水酸化ナトリウムを添加した場合の回収したテレフタル酸量(モル換算)はほぼ同じであったことがわかった(表7参照)。
(3)テレフタル酸塩で飽和したエチレングリコール溶媒を用いた廃棄PETの解重合反応
廃棄PETを解重合する工程において、解重合を終えた後にテレフタル酸塩を主成分とする固形物残渣と分離することによって得られるエチレングリコール溶媒は再利用することが望ましい。廃棄PETの解重合反応に供したエチレングリコール溶媒にはそれぞれのテレフタル酸塩が飽和状態で溶けていることを考慮して、テレフタル酸塩で飽和したエチレングリコール溶媒を用いた廃棄PETの解重合反応を以下のようにして行った。
200 mLガラスビーカーにテレフタル酸4.15 g(0.025 mol)を投入した後、水酸化カリウム(顆粒状)0.050 mol、もしくは水酸化ナトリウム(顆粒状)0.050 mol、もしくは水酸化カリウム0.025 molおよび水酸化ナトリウム0.025 molを投入し、エチレングリコールで約100 mLにした。アルミホイルで蓋をしてホットスターラーで撹拌しながら100℃で60分間加熱後、放冷して30℃以下になるまで冷却した。これらの溶液をろ紙(ワットマン製グレード50)でろ過して、テレフタル酸塩で飽和したエチレングリコール溶媒とした。
それぞれの該溶媒に含まれるテレフタル酸塩の濃度はテレフタル酸二カリウム飽和溶液では0.23 M、テレフタル酸二ナトリウム飽和溶液では0.11 M、およびテレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム飽和溶液では0.20 Mであった。
200 mLのステンレス製ビーカーに廃棄ペットボトル破砕物12 gを投入した後、テレフタル酸二カリウムで飽和したエチレングリコール溶媒65 gおよび水酸化カリウム0.13 mol、もしくはテレフタル酸二ナトリウムで飽和したエチレングリコール溶媒65 gおよび水酸化ナトリウム0.13 mol、もしくはテレフタル酸1−カリウム4−ナトリウムで飽和したエチレングリコール溶媒65 gおよび水酸化カリウム0.066 molおよび水酸化ナトリウム0.066 molを投入し、ホットスターラーで強く撹拌しながら160℃、60分間の加熱処理を行った。放冷して内温40℃以下になってから内容物を払い出した。
この内容物をろ紙でろ別して、ろ液と残渣に分けた後に、それぞれの残渣の重さと残渣中のテレフタル酸の総量を測定した。表8に示す結果から、ろ過後の残渣中のテレフタル酸の総量は、水酸化カリウム、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの混合物、水酸化ナトリウムの順に大きいことがわかった。
(4)水を含む溶媒中での廃棄ペットボトル破砕物の解重合反応
200 mLのステンレス製ビーカーに廃棄ペットボトル破砕物10 gおよびエチレングリコール50 gを投入し、さらに水酸化カリウム(顆粒状)を0.083 molまたは0.090 molまたは0.11 molを投入する、もしくは34%水酸化カリウム水溶液を0.083 molまたは0.090 molまたは0.11 molを投入した。
続いて、ホットスターラーで強く撹拌しながら160℃、60分間の加熱処理を行った。34%水酸化カリウム水溶液を加えた解重合反応溶液の水分はほぼ蒸発した結果、水酸化カリウム(顆粒状)を加えた解重合反応溶液の液量とほぼ同じになった。自然冷却させ、内温40℃以下になってから内容物を払い出した。この内容物をろ紙でろ別して、ろ液と残渣に分けた。これらの残渣のテレフタル酸塩含量を図3に示す。
図3に示す結果から、水酸化カリウムを0.090 molまたは0.11 molを投入した場合、水を含む溶媒中での解重合反応の方が、テレフタル酸塩の生成効率が優れていることがわかった。
実施例7.エチレングリコール溶媒中でのPTTの解重合
PTT製わた(西川産業社製、ファインスムーズ ソロテックス わた補充用パックRC7954)13 g、ならびに実施例6(3)で調製したテレフタル酸二カリウムで飽和したエチレングリコール溶媒130 gおよび水酸化カリウム0.13 mol、またはテレフタル酸二ナトリウムで飽和した溶液130 gおよび水酸化ナトリウム0.13 mol、またはテレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム飽和溶液130 gおよび水酸化カリウム0.066 molおよび水酸化ナトリウム0.066 molを200 mLのステンレス製ビーカーに投入し、ホットスターラーで強く撹拌しながら160℃、60分間加熱して加水分解させた。放冷して内温40℃以下になってから内容物を払い出した。この内容物をろ紙(ワットマン製、グレード540)でろ別して、ろ液と残渣に分けた後、それぞれの残渣の重さと残渣中のテレフタル酸の総量を測定した。表9に示す結果から、ろ過後の残渣中のテレフタル酸の総量は、水酸化カリウム、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの混合物、水酸化ナトリウムの順に大きいことがわかった。
実施例8.エチレングリコール溶媒中でのPBTの解重合
200 mLのステンレス製ビーカーにPBT製レンゲ〔アマゾン・ドット・コム社より、PBTレンゲ103TW白(RLVH001)を購入〕の破砕物15 gを加えた後、さらに実施例6(3)で調製したテレフタル酸二カリウム塩で飽和したエチレングリコール溶媒75 gおよび水酸化カリウム0.15 mol、もしくはテレフタル酸二ナトリウム塩で飽和したエチレングリコール溶媒75 gおよび水酸化ナトリウム0.15 mol、またはテレフタル酸1−カリウム2−ナトリウム塩で飽和したエチレングリコール溶媒75 gおよび水酸化カリウム0.075 molおよび水酸化ナトリウム0.075 molを投入した。
続いて、ホットスターラーで強く撹拌しながら160℃、120分間加熱して加水分解させた。放冷して内温40℃以下になってから内容物を払い出した。
この内容物をろ紙でろ別して、ろ液と残渣に分けた後に、それぞれの残渣の重さと残渣中のテレフタル酸の総量を測定した。表10に示す結果から、ろ過後の残渣中のテレフタル酸の総量は、水酸化カリウム、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの混合物、水酸化ナトリウムの順に大きいことがわかった。
実施例9.1−ブタノール中での廃棄PETの解重合における水酸化カリウムと水酸化ナトリウムとの違い
テレフタル酸二カリウム塩とテレフタル酸二ナトリウム塩の1−ブタノールに対する溶解度を実施例1と同じようにして調べたところ、それぞれ0.2 mMと1.9 mMであった。このように、エチレングリコールへの溶解と異なり、1−ブタノールに対しては極めて溶解しにくいことがわかった。
したがって、新品の1−ブタノールを用いた解重合反応用溶媒と一度廃棄PETの解重合反応に供した1−ブタノール溶媒の間では、解重合反応で生成したテレフタル酸塩の回収効率に大きな差が生じないので、1−ブタノールを用いる以下の実施例では、新品の1−ブタノールを用いた例のみを示す。
200 mLのステンレス製ビーカーに廃棄ペットボトル破砕物13 gと1‐ブタノール80 gを投入した後、水酸化カリウム(顆粒状)0.14 molまたは水酸化ナトリウム(顆粒状)0.14 molを投入し、ホットスターラーで強く撹拌しながらそれぞれ100℃、60分間または90分間の加熱処理を行った。これらの溶液を自然冷却させ、内温40℃以下になってから、ろ紙(ワットマン社製グレード540)でろ別し、ろ液と残渣に分けた。残渣を漏斗上でメタノール50 mLによって洗浄後、真空乾燥機(アズワン社製)を使用し60℃で重量減少が0.1 g/時間未満になるまで乾燥した。残渣重量と残渣中のテレフタル酸含量は表11に示す。表11に示すように、水酸化ナトリウムよりも水酸化カリウムを用いた方が、テレフタル酸塩の生成効率も優れていることがわかった。
実施例10.1−ブタノール中でのPTTの解重合における水酸化カリウムと水酸化ナトリウムとの違い
200 mLのステンレス製ビーカーにPTT製わた(西川産業社製、ファインスムーズ ソロテックス わた補充用パックRC7954)13 gおよび1―ブタノール130 gを投下した後に、水酸化カリウム(顆粒状)0.13 mol、もしくは水酸化ナトリウム(顆粒状)0.13 molを投入した。ホットスターラーで強く撹拌しながら、水酸化カリウムの場合には100℃で90分間の加熱処理、ならびに水酸化ナトリウムの場合には100℃で120分間の加熱処理を行った。
加熱処理後、自然冷却させ、内温40℃以下になってから内容物を払い出した。この内容物をろ紙(ワットマン製、グレード540)でろ別して、ろ液と残渣に分けた後、それぞれの残渣の重さと残渣中のテレフタル酸の総量を測定した。
表12に示す結果から、残渣中のテレフタル酸の総量は、水酸化ナトリウムよりも水酸化カリウムを用いた方が、加熱時間が短いにもかかわらず大きいことがわかった。
実施例11.1−ブタノール中でのPBTの解重合における水酸化カリウムと水酸化ナトリウムとの違い
200 mLのステンレス製ビーカーに実施例7で調製した廃棄PBT製レンゲの破砕物15 gおよび1‐ブタノール75 gを加えた後、水酸化カリウム(顆粒状)0.15 mol、もしくは水酸化ナトリウム(顆粒状)0.15 molを投入し、ホットスターラーで強く撹拌しながら100℃で240分間の加熱処理を行った後、自然冷却させ、内温40℃以下になってから内容物を払い出した。
この内容物をろ紙でろ別して、ろ液と残渣に分けた後、それぞれの残渣の重さと残渣中のテレフタル酸の総量を測定した。
表13に示すように、残渣中のテレフタル酸の総量は、水酸化ナトリウムよりも水酸化カリウムを用いた方が、大きいことがわかった。

実施例12.エチレングリコールを含むテレフタル酸塩からTPA−DHDを生産したときのエチレングリコールの分解
エチレングリコール分解能を持つテTPA−DHD生産菌は、参考例3で構築したpUXPEaLT_tpaA_tpaK_Pm_fucO_I7L_aldAを大腸菌K-12 M7032株へ形質転換法により導入することにより、大腸菌M7032 (pUXPEaLT_tpaA_tpaK_Pm_fucO_I7L_aldA)株を造成した。
続いて、実施例1と同様にして、大腸菌M7032 (pUXPEaLT_tpaA_tpaK_Pm_fucO_I7L_aldA)株と対照となる大腸菌K-12 M7032株をミニジャーファーメンターで培養した。原料となるテレフタル酸二カリウム塩の投与と同時に、エチレングリコール0.278 ml(終濃度72mM)を投入した。
本培養開始後48時間後にサンプリングを行った。各サンプルはLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による表1に示す条件での分析に供した。テレフタル酸の同定は、標品のテレフタル酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの精密質量値を合わせて行った。TPA−DHDは、テレフタル酸の減少に伴って出現する物質の中から、TPA−DHDの予想精密質量値をもとに同定した。また、TPA−DHDの定量は、テレフタル酸の減少量とTPA−DHDのピークエリアの増加から作成した検量線をもとに行った。
その結果、テレフタル酸の減少に伴ってTPA−DHDの増加が観察された。培養48時間後のTPA−DHD生産量は、大腸菌M7032 (pUXPEaLT_tpaA_tpaK_Pm_fucO_I7L_aldA)株と大腸菌K-12 M7032株の培養48時間後のTPA−DHD生産量は、それぞれ10.5 g/L、11.1 g/Lであった。また、伴ってTPA−DHDの増加が観察された。
続いて、培養48時間後の培養液中のエチレングリコール量をガスクロマトグラフィー(GC)型質量分析計(GC:アジレント社7890A、質量分析計:アジレント社5975C)を用いて表14に示す条件で分析した。エチレングリコールは、標品のエチレングリコールと比較して、ガスクロマトグラフィーの保持時間の測定と質量分析計からのm/z62をターゲットイオンとした測定を合わせて行うことにより同定した。その結果、大腸菌M7032 (pUXPEaLT_tpaA_tpaK_Pm_fucO_I7L_aldA)株と大腸菌M7032株の培養48時間後のエチレングリコールの濃度は、それぞれ37.1 mM、0.0 mMであることがわかり、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼの発現量の増強により、テレフタル酸塩に含まれているエチレングリコールを分解できることがわかった。
実施例13.PETの解重合により得られたテレフタル酸塩からのプロトカテク酸の生産
参考例2で造成したプロトカテク酸生産大腸菌株M7032(pUXPEaLT_tphA2A3BA1_tpaK)を用いて、実施例2と同様にして、本プロトカテク酸生産菌の前培養液を調製した後、該前培養液を2%だけ本培養培地に接種し、本培養を行った。菌体濁度が吸光度600 nmで約7になったときに誘導剤m-トルイル酸を終濃度1 mMになるように添加し、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼレダクターゼ・タンパク質, テレフタル酸ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ・タンパク質、およびテレフタル酸トランスポーター・タンパク質を発現させた。グルコース濃度を経時的に計測し、グルコース濃度が0になったときに実施例6で作成したPET由来のテレフタル酸塩を0.6Mに溶解し、グルコースと混合して培養装置へ投与を行った。
本培養開始後52時間後にサンプリングを行った。各サンプルはLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による分析に供した。テレフタル酸およびプロトカテク酸の同定は、標品のテレフタル酸およびプロトカテク酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの精密質量値を合わせて行った。
その結果、テレフタル酸の減少に伴ってプロトカテク酸の増加が観察された。培養52時間後の各テレフタル酸塩からのプロトカテク酸生産量を100%とした比率を表15に示した。表15に示す結果から、2種類のテレフタル酸カリウム塩のいずれもテレフタル酸二ナトリウム塩よりもプロトカテク酸の生産性が優れていることが明らかになった。
実施例14.PTTの解重合により得られたテレフタル酸塩からのTPA−DHDの生産
参考例2で構築したTPA−DHD生産組換え大腸菌株M7032(pUXPEaLT_tphA2A3A1_tpaK)を用いて、実施例2と同様にして、本TPA−DHD生産菌の前培養液を調製した後、該前培養液を2%だけ本培養培地に接種し、本培養を行った。菌体濁度が吸光度600 nmで約7になったときに誘導剤m-トルイル酸を終濃度1 mMになるように添加し、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼレダクターゼ・タンパク質、およびテレフタル酸トランスポーター・タンパク質を発現させた。グルコース濃度を経時的に計測し、グルコース濃度が0になったときに実施例7で作成したPTT由来のテレフタル酸塩を0.6 Mに溶解し、グルコースと混合して培養装置へ投与を行った。
本培養開始後48時間後にサンプリングを行った。各サンプルはLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による表1に示す条件での分析に供した。テレフタル酸の同定は、標品のテレフタル酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの精密質量値を合わせて行った。TPA−DHDは、テレフタル酸の減少に伴って出現する物質の中から、TPA−DHDの予想精密質量値をもとに同定した。また、TPA−DHDの定量は、テレフタル酸の減少量とTPA−DHDのピークエリアの増加から作成した検量線をもとに行った。
その結果、テレフタル酸の減少に伴ってTPA−DHDの増加が観察された。培養48時間後の各テレフタル酸塩からのTPA−DHD生産量を100%とした比率を表16に示す。表16に示す結果から、2種類のテレフタル酸カリウム塩のいずれもテレフタル酸二ナトリウム塩よりもTPA−DHDの生産性が優れていることが明らかになった。
実施例15.PTTの解重合により得られたテレフタル酸塩からのプロトカテク酸の生産
参考例2で造成したプロトカテク酸生産大腸菌株M7032(pUXPEaLT_tphA2A3BA1_tpaK)を用いて、実施例2と同様にして、本プロトカテク酸生産菌の前培養液を調製した後、該前培養液を2%だけ本培養培地に接種し、本培養を行った。菌体濁度が吸光度600 nmで約7になったときに誘導剤m-トルイル酸を終濃度1 mMになるように添加し、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼレダクターゼ・タンパク質, テレフタル酸ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ・タンパク質、およびテレフタル酸トランスポーター・タンパク質を発現させた。グルコース濃度を経時的に計測し、グルコース濃度が0になったときに実施例8で作成したPBT由来のテレフタル酸塩を0.6Mに溶解し、グルコースと混合して培養装置へ投与を行った。
本培養開始後48時間後にサンプリングを行った。各サンプルはLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による分析に供した。テレフタル酸およびプロトカテク酸の同定は、標品のテレフタル酸およびプロトカテク酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの精密質量値を合わせて行った。
その結果、テレフタル酸の減少に伴ってプロトカテク酸の増加が観察された。培養48時間後の各テレフタル酸塩からのプロトカテク酸生産量を100%とした比率を表17に示した。表17に示す結果から、2種類のテレフタル酸カリウム塩のいずれもテレフタル酸二ナトリウム塩よりもプロトカテク酸の生産性が優れていることが明らかになった。
実施例16.1-ブタノール溶媒中でPETの解重合により得られたテレフタル酸塩からのTPA−DHDの生産
参考例2で造成したTPA−DHD生産組換え大腸菌株M7032(pUXPEaLT_tphA2A3A1_tpaK)を用いて、実施例2と同様にして、本TPA−DHD生産菌の前培養液を調製した後、該前培養液を2%だけ本培養培地に接種し、本培養を行った。菌体濁度が吸光度600 nmで約7になったときに誘導剤m-トルイル酸を終濃度1 mMになるように添加し、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・タンパク質、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼレダクターゼ・タンパク質、およびテレフタル酸トランスポーター・タンパク質を発現させた。グルコース濃度を経時的に計測し、グルコース濃度が0になったときに実施例9で作成した1-ブタノール中で解重合して得たPET由来のテレフタル酸塩を0.6Mに溶解し、グルコースと混合して培養装置へ投与を行った。
本培養開始後35時間後にサンプリングを行った。各サンプルはLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による表1に示す条件での分析に供した。テレフタル酸の同定は、標品のテレフタル酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの精密質量値を合わせて行った。TPA−DHDは、テレフタル酸の減少に伴って出現する物質の中から、TPA−DHDの予想精密質量値をもとに同定した。また、TPA−DHDの定量は、テレフタル酸の減少量とTPA−DHDのピークエリアの増加から作成した検量線をもとに行った。
その結果、テレフタル酸の減少に伴ってTPA−DHDの増加が観察された。培養35時間後の各テレフタル酸塩からのTPA−DHD生産量を100%とした比率を表18に示す。表18に示す結果から、2種類のテレフタル酸カリウム塩のいずれもテレフタル酸二ナトリウム塩よりもTPA−DHDの生産性が優れていることが明らかになった。
参考例1.発現ベクターpUXPEaLT19の構築
大腸菌を用いて遺伝子の転写・翻訳効率に依存しない効率よい発現を行うために、目的遺伝子の転写は疑似遺伝子に依存し、疑似遺伝子の翻訳効率を維持した状態で目的遺伝子も翻訳される発現系の構築を行った。より具体的にはpUC19(タカラバイオ社製)にターミネーター配列を挿入するため、配列番号13〜18で表される6本の合成DNAを合成した。
これら合成DNAをpUC19のKpnI部位とEcoRI部位の間に挿入し、プラスミドpUC1LT1を構築した。次いで、pUC1LT1のPvuII部位とHindIII部位の間を削除したpULTDL1を構築した。pULTDL1にT7プロモーター配列と疑似遺伝子および目的遺伝子を連結するためのPacI部位を挿入するために、配列番号19〜24で表される6本の合成DNAを合成した。これら合成DNAをpULTDL1のSphI部位とSalI部位の間に挿入し、発現プラスミドpUTPELT19を構築した。次いで、PrimeSTAR DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製;以下、特記しない限り、PCR反応に用いるDNA増幅酵素は本酵素を用いた。)を用いたPCR法により、pUTPELT19のBglII部位とPacI部位の間を配列番号25で表される配列に置換した発現プラスミドpUTPEaLT19を構築した。
さらに、XylS-Pmプロモーターを利用した誘導発現系を構築するため、XylS-Pmプロモーター領域のDNAを取得することにした。XylS-Pmプロモーター領域は、国立遺伝学研究所から入手したプラスミドpJB866を鋳型として、2種類のDNAプライマー(配列番号26と27)を用いたPCR反応により増幅し、取得した。Taq DNAポリメラーゼによって増幅DNA断片の3’末端にA残基を付加した後、該増幅DNA断片をゲル電気泳動法により精製し、pT7Blue-Tベクター(ノバジェン社製)に組み込むことにより、XylS-Pmプロモーターの全領域を保持するプラスミドpT7-xylS_Pmを構築した。
プラスミドpT7-xylS_Pmから制限酵素SbfIと制限酵素BamHIによりXylS-Pmプロモーターの領域を切り出し、pUTPEaLT19のSbfI部位とBglII部位の間に組み込むことにより、発現ベクターpUXPEaLT19を造成した。
参考例2.プロトカテク酸生産プラスミドの構築
(1)コマモナス・テストステロニ72W2株の自然界からの分離
コマモナス・テストステロニ72W2株は東京都板橋区から採取した土壌よりテレフタル酸を唯一の炭素源として生育する菌株として得た。
具体的には、採取した土壌試料を15 mlファルコンチューブに入れた10 mMテレフタル酸を含有するW液体培地5 mlに加えた後、30℃で振とう培養を行った。なお、W液体培地の組成は、リン酸二水素カリウム0.85 g/L、リン酸水素二ナトリウム4.9 g/L、硫酸アンモニウム0.5 g/L、硫酸マグネシウム七水和物9.5 mg/L、硫酸鉄(II)七水和物9.5 mg/L、酸化マグネシウム10.75 mg/L, 炭酸カルシウム2 mg/L、硫酸亜鉛 七水和物4.5 mg/ml、硫酸マンガン(II) 四水和物1.12mg/L、硫酸銅(II)五水和物0.25 mg/L、硫酸コバルト(II)七水和物0.28 g/L、ホウ酸0.06 mg/Lである。
培養液を10 mMテレフタル酸を含有するW液体培地の寒天プレートに塗布して30℃で培養することにより、テレフタル酸を唯一の炭素源として生育する菌株を選択した。寒天プレートにのコロニーを10 mMテレフタル酸を含むW液体培地5 mlで3日間培養した。本菌株の16S rDNA配列を決定することにより、本菌株をコマモナス・テストステロニと同定し、72W2株と命名した。
(2)コマモナス・テストステロニ72W2株からの遺伝子の単離
コマモナス・テストステロニ72W2株を培養し、集菌した後、illustra bacteria genomicPrep Mini Spin Kit(GEヘルスケア・ジャパン株式会社より購入)を用いてゲノムDNAを抽出した。
次に、コマモナス・テストステロニYZW-D株のテレフタル酸代謝遺伝子群をコードするオペロンの塩基配列を、ナショナル・センター・フォア・バイオテクノロジー・インフォメーション(以下、NCBIと略記する)のGBデータベースからGBアクセッション番号AY923836として得た。また、コマモナス属E6株が保有するテレフタル酸代謝遺伝子群をコードする2つのオペロンの塩基配列をNCBIのGBデータベースから得た。具体的には、コマモナス・テストステロニYZW-D株はGBアクセッション番号AY923836における塩基番号8242〜11908をテレフタル酸代謝遺伝子群のオペロンの塩基配列として使用した。コマモナス属細菌E6株は2つのテレフタル酸代謝遺伝子群のオペロンを保持するため、それぞれGBアクセッション番号AB238678.1における塩基番号3260〜6926とGBアクセッション番号AB238679.1における塩基番号4911〜8577をテレフタル酸代謝遺伝子群のオペロンの塩基配列として使用した。
これらの配列をもとに、コマモナス・テストステロニ72W2株のテレフタル酸代謝遺伝子群をコードするDNAをクローニングするために、縮重プライマーを設計した。該縮重プライマーのうち、5’プライマー(配列番号28)にはPacI認識部位を付加し、3’プライマー(配列番号29)にはSgfI認識部位とNotI認識部位を付加した。
これら2種類の縮重プライマーを用いて、コマモナス・テストステロニ72W2株のゲノムDNAを鋳型として、テレフタル酸代謝遺伝子群(tphA2遺伝子-tphA3遺伝子-tphB遺伝子-tphA1遺伝子;以下、tphA2A3BA1遺伝子と略す)のオペロン領域をPCR反応により増幅させた。増幅DNA断片をQIAquick PCR精製キット(キアゲン社製;以下、特記しない限り、PCR精製キットは本キットを用いた。)を用いて回収した。該増幅DNA断片の塩基配列を決定したところ、該DNAが、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ・大サブユニット・タンパク質をコードするtphA2遺伝子(配列番号1)、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ・小サブユニット・タンパク質をコードするtphA3遺伝子(配列番号3)、TPA−DHDデヒドロゲナーゼ・タンパク質をコードするtphB遺伝子(配列番号9)、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質をコードするtphA1遺伝子(配列番号5)をコードしていることを確認した。
tphA2A3BA1遺伝子のオペロン(配列番号30)を制限酵素PacIと制限酵素NotIによりPCR産物から切り出し、参考例1に記載した発現ベクターpUXPEaLT19のPacI部位とNotI部位の間に組み込むことにより、テレフタル酸からプロトカテク酸への転換に関わる酵素群を発現するプラスミドpUXPEaLT_tphA2A3BA1を造成した。
(4)テレフタル酸トランスポーターのクローニングとプロトカテク酸生産プラスミドの構築
大腸菌K-12株のテレフタル酸取り込み能が弱いことがわかったので、テレフタル酸の取り込みを促進するテレフタル酸トランスポーターを発現させることにより、テレフタル酸取り込み能を強化することを試みた。
具体的には、テレフタル酸からの菌体内へのテレフタル酸の取り込みを促進させる効果があるロドコッカス・ジョスティRHA1株のテレフタル酸トランスポーターtpaKをコードするDNAを得ることにした。tpaK遺伝子の塩基配列については、NCBIのGBデータベースから、アクセッション番号CP000432における塩基番号175046〜176425の配列(配列番号7)として得た。長岡技術科学大学・福田雅夫教授から入手したロドコッカス・ジョスティRHA1株の染色体DNA(100 ng)を鋳型として、2種類のDNAプライマー(配列番号31と配列番号32)を用いて、テレフタル酸トランスポータータンパク質(配列番号8)をコードしているtpaK遺伝子の全領域をPCR反応により増幅させた。
増幅DNA断片をPCR精製キットを用いて回収した。tpaK遺伝子を制限酵素PacIと制限酵素NotIによりPCR産物から切り出し、上述のプラスミドpUXPEaLT_tphA2A3BA1のSgfI
部位とNotI部位の間に組み込むことにより、プロトカテク酸生産プラスミドpUXPEaLT_tphA2A3BA1_tpaKを造成した。
参考例3.TPA−DHD生産プラスミドの構築参考例2(4)で構築したpUXPEaLT_tphA2A3BA1_tpaK(100 ng)を鋳型として、2種類のDNAプライマー(配列番号28と配列番号33)を用いてtphA2遺伝子-tphA3遺伝子領域をPCR反応により増幅させた。また、2種類のDNAプライマー(配列番号29と配列番号34)を用いてtphA1遺伝子領域をPCR反応により増幅させた。これら増幅DNA断片をPCR精製キットを用いて回収した。続いて、回収したtphA2遺伝子-tphA3遺伝子領域の増幅断片とtphA1遺伝子増幅断片を鋳型として、2種類のDNAプライマー(配列番号28と配列番号29)を用いて、tphA2-tphA3-tphA1遺伝子領域をPCR反応により増幅させた。増幅DNA断片をPCR精製キットを用いて回収した。増幅断片を制限酵素PacIと制限酵素HindIIIによって消化した後、参考例2(3)で造成した発現ベクターpUXPEaLT_tphA2A3BA1のPacI部位とHindIII部位の間に組み込むことにより、pUXPEaLT_tphA2A3A1_tpaKを構築した。
参考例4,没食子酸生産プラスミドの構築
プロトカテク酸を没食子酸に効率よく変換するためにパラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ遺伝子をプロトカテク酸生産遺伝子群とともに発現させるプラスミドを下記のようにして構築した。具体的には、公開特許公報(公開番号:特開2009-213392)に開示されているパラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ(配列番号12)をコードするDNA(配列番号11)を鋳型として、2種類のDNAプライマー(配列番号35と配列番号36)を用いて、パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼタンパク質をコードしているDNAをPCR反応により増幅させた。増幅DNA断片をPCR精製キットを用いて回収した。該DNAを制限酵素PacIと制限酵素SgfIによって消化した後、上記で造成したpUXPEaLT_tphA2A3BA1_tpaKのPacI部位に組み込むことにより、没食子酸生産プラスミドpUXPEaLT_HFM145_tphA2A3BA1_tpaKを造成した。
参考例5.エチレングリコール分解菌の造成
(1)大腸菌K-12株のfucO遺伝子のクローニング
大腸菌K-12 MG1655株由来のラクトアルデヒド・レダクターゼ・タンパク質をコードするfucO遺伝子の塩基配列を、NCBIからインターネット経由で取得した塩基配列(GBアクセッション番号U29581)の13420〜14571番目の配列として得た。この配列に基づいて合成した2種類のDNAプライマー(配列番号37配列番号38)を用いて、NBRPより入手した大腸菌K-12 MG1655株の染色体DNA(100 ng)を鋳型として、fucO遺伝子の全領域をPCR反応により増幅させた。この増幅DNA断片を制限酵素PacI部位と制限酵素NotIによりPCR産物から切り出し、参考例1で造成した発現ベクターpUXPEaLT19に組み込むことにより、プラスミドpUXPEaLT_fucO_I7Lを造成した。
(2)大腸菌K-12株のaldA遺伝子のクローニング
大腸菌K-12 MG1655株由来のラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ・タンパク質をコードするaldA遺伝子の塩基配列を、NCBIからインターネット経由で取得した塩基配列(GBアクセッション番号U00096.2)の1486256〜1487695番目の配列として得た。この配列に基づいて合成した2種類のDNAプライマー(配列番号39と配列番号40)を用いて、大腸菌K-12 MG1655株の染色体DNA(100 ng)を鋳型として、aldA遺伝子の全領域をPCR反応により増幅させた。この増幅DNA断片を制限酵素SwaIと制限酵素NotIによりPCR産物から切り出し、プラスミドpUXPEaLT_fucO_I7Lに組み込むことにより、プラスミドpUXPEaLT_fucO_I7L_aldAを造成した。
制限酵素NotIと制限酵素AscIにより配列番号41に示す配列を有する合成DNAから切り出し、プラスミドpUEPEaLT_fucO_I7L_aldAのNotI部位とAscI部位の間に組み込むことにより、プラスミドpUXPEaLTEk_fucO_I7L_aldAを造成した。
続いて、プラスミドpUXPEaLTEX_fucO_I7L_aldAから2種類のDNAプライマー(配列番号42と配列番号43)を用いてPCR反応によりfucO遺伝子とaldA遺伝子を含む発現ユニット(以下、fucO-aldA発現ユニットと略す)を増幅させた。制限酵素AscI部位によりPCR産物から切り出し、上記(参考例3)で造成した発現ベクターpUXPEaLT_tphA2A3A1_tpaKに組み込むことにより、プラスミドpUXPEaLT_tpaA_tpaK_PmfucO_I7L_aldAを構築した。
本発明によれば、テレフタル酸カリウム塩を原料とし、テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼを発現する微生物を用いて、テレフタル酸−1,2−シス−ジヒドロジオールを製造する方法、さらにTPA−DHDをプロトカテク酸や没食子酸などのフェノール酸に転換する方法、ならびに原料となるテレフタル酸カリウム塩を廃棄ポリエステルの解重合によって得る方法に提供することができる。
配列表の説明
配列番号1:テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質をコードするDNA
配列番号2:テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ大サブユニット・タンパク質
配列番号3:テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質をコードするDNA
配列番号4:テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・オキシゲナーゼ小サブユニット・タンパク質
配列番号5:テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質をコードするDNA
配列番号6:テレフタル酸1,2−ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・タンパク質
配列番号7:テレフタル酸トランスポーター・タンパク質をコードするDNA
配列番号8:テレフタル酸トランスポーター・タンパク質
配列番号9:TPA−DHD・デヒドロゲナーゼ・タンパク質をコードするDNA
配列番号10:TPA−DHD・デヒドロゲナーゼ・タンパク質
配列番号11:パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ・タンパク質をコードするDNA
配列番号12:パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ・タンパク質
配列番号13:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号14:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号15:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号16:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号17:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号18:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号19:T7プロモーターと疑似遺伝子の構築用合成DNA
配列番号20:T7プロモーターと疑似遺伝子の構築用合成DNA
配列番号21:T7プロモーターと疑似遺伝子の構築用合成DNA
配列番号22:T7プロモーターと疑似遺伝子の構築用合成DNA
配列番号23:T7プロモーターと疑似遺伝子の構築用合成DNA
配列番号24:T7プロモーターと疑似遺伝子の構築用合成DNA
配列番号25:プラスミドpUTPELT19の制限酵素BglII部位と限酵素PacI部位の間の配列
配列番号26:XylS-Pmプロモーター領域のDNAの取得用PCRプライマー
配列番号27:XylS-Pmプロモーター領域のDNAの取得用PCRプライマー
配列番号28:コマモナス・テストステロニのテレフタル酸代謝遺伝子群のクローニング用縮重PCRプライマー
配列番号29:コマモナス・テストステロニのテレフタル酸代謝遺伝子群のクローニング用縮重PCRプライマー
配列番号30:コマモナス・テストステロニ72W2株のテレフタル酸代謝遺伝子群をコードするDNA
配列番号31:テレフタル酸トランスポーター・クローニング用PCRプライマー
配列番号32:テレフタル酸トランスポーター・クローニング用PCRプライマー
配列番号33:tphA2遺伝子-tphA3遺伝子領域クローニング用PCRプライマー
配列番号34:tphA1遺伝子領域クローニング用PCRプライマー
配列番号35:改良型パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ・クローニング用PCRプライマー
配列番号36:改良型パラヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ・クローニング用PCRプライマー
配列番号37:大腸菌ラクトアルデヒド・レダクターゼ・クローニング用PCRプライマー
配列番号38:大腸菌ラクトアルデヒド・レダクターゼ・クローニング用PCRプライマー
配列番号39:大腸菌ラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ・クローニング用PCRプライマー
配列番号40:大腸菌ラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ・クローニング用PCRプライマー
配列番号41:プラスミドpUXPEaLTEk_fucO_I7L_aldAのNotI部位とAscI部位の間の配列
配列番号42:fucO遺伝子とaldA遺伝子を含む発現ユニット・クローニング用PCRプライマー
配列番号43:fucO遺伝子とaldA遺伝子を含む発現ユニット・クローニング用PCRプライマー
本発明に使用するDNAには、各DNAがコードするタンパク質が目的の酵素活性を失わない範囲内で置換変異、欠失変異、挿入変異などの変異が導入されたDNA、例えば、配列番号1
、3、5、7、9または11に表わされるDNAの全部もしくは一部をプローブとして、ハ
イブリダイゼーション法によってストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも
包含する。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、具体的には、DNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0 MのNaClの存在下で65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mM NaCl、15 mM クエン酸ナトリウムである)の中、65℃でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAを意味する。なお、ハイブリダイゼーションの実験法は、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning, A laboratory manual)、第2版〔サンブルック(Sambrook)、フリッチ(Fritsch) 、マニアチス(Maniatis)編集、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年刊〕に記載されている。

Claims (24)

  1. 以下の(a)、(b)、(c)または(d)に示すDNA、以下の(e)、(f)、(g)または(h)に示すDNA、ならびに以下の(i)、(j)、(k)または(l)に示すDNAを有し、テレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生産する能力を有する微生物、または該培養物の処理物を、テレフタル酸塩を含む水性媒体中でテレフタル酸と反応させてテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させるテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法であって、前記テレフタル酸塩が、テレフタル酸塩に含まれる全テレフタル酸に対してモル換算で0.5倍量以上かつ2倍量以下のカリウムを含むことを特徴とする方法。
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
    (c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA。
    (d)配列番号1に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
    (e)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
    (f)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
    (g)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA。
    (h)配列番号3に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
    (i)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
    (j)配列番号6に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
    (k)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA。
    (l)配列番号5に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールへの転換に関わる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
  2. 前記テレフタル酸塩を含む水性媒体が、テレフタル酸二カリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−ナトリウム塩、テレフタル酸1−カリウム4−アンモニウム塩からなる群から選ばれる1種類以上のテレフタル酸カリウム塩を含む水溶液であることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
  3. 前記テレフタル酸塩を水溶液の形態または粉末の形態または懸濁液の形態として前記微生物、または該培養物の処理物に添加して前記微生物または処理物とテレフタル酸とを反応させることを特徴とする、請求項1または2に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
  4. 請求項1に記載の微生物が、さらに下記(m)、(n)、(o)または(p)に示すDNAを導入することによりテレフタル酸の細胞内輸送能を増強させた微生物であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
    (m)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
    (n)配列番号8に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸トランスポーター活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (o)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA。
    (p)配列番号7に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸トランスポーター活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  5. 前記微生物はさらに以下の(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAを有し、テレフタル酸からプロトカテク酸を生産する能力を有する微生物であり、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法により、テレフタル酸塩からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させ、さらにテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換することを特徴とするプロトカテク酸の製造法。
    (q)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
    (r)配列番号10に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (s)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA。
    (t)配列番号9に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  6. 請求項1から4のいずれか一項に記載の方法により、テレフタル酸塩からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させた後に、前記(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAを形質転換法により導入して得られた微生物または該培養物の処理物を用いてテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換することを特徴とするプロトカテク酸の製造法。
  7. 前記微生物はさらに(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAおよび(u)、(v)、(w)または(x)に示すDNAを有し、テレフタル酸から没食子酸を生産する能力を有する微生物であり、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法により、テレフタル酸塩からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させ、さらにテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを没食子酸に転換することを特徴とする没食子酸の製造法。
    (q)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
    (r)配列番号10に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (s)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA。
    (t)配列番号9に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールをプロトカテク酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (u)配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
    (v)配列番号12に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつプロトカテク酸を没食子酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (w)配列番号11に示される塩基配列からなるDNA。
    (x)配列番号11に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロトカテク酸を没食子酸に転換する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  8. 請求項1から4のいずれか一項に記載の方法により、テレフタル酸塩からテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを生成させた後に、前記(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAに加えて、前記の(u)、(v)、(w)または(x)に示すDNAを形質転換法により導入して得られた微生物または該培養物の処理物を用いて、テレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールを没食子酸に転換することを特徴とする没食子酸の製造法。
  9. さらに、前記テレフタル酸塩を、下記工程(A)〜(D)により得る工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
    (A)ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主成分とし異物成分を含むポリエステル廃棄物を、水酸化カリウムを含むエチレングリコール反応溶媒、もしくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの両方を含むエチレングリコール反応溶媒中で、100℃から196℃の間で10分間以上加熱することにより、反応液中の水分を蒸発させるとともに、該廃棄物に含まれるポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを解重合する工程、
    (B)工程(A)で得られた該廃棄物の解重合反応溶液中に含まれる固形異物のうち、該溶液に浮遊する固形異物を浮遊選別法により除去する工程、
    (C)工程(B)の処理を施した該溶液から、浮遊固形異物以外の該溶液中の固形物を固液分離法によって回収する工程、
    (D)工程(C)により回収した固形物に対して加熱乾燥処理または減圧乾燥処理または遠心分離処理を施すことにより、該固形物中のグリコール類の含量を減少させ、残存する固形物をテレフタル酸塩として得る工程
  10. 前記工程(C)において固液分離法で固形物を回収した後のエチレングリコール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記(A)におけるエチレングリコール反応溶媒として用いることを特徴とする、請求項9に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
  11. さらに、前記テレフタル酸塩を、下記工程(A)〜(D)により得る工程を含む、請求項5または6に記載のプロトカテク酸の製造法。
    (A)ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主成分とし異物成分を含むポリエステル廃棄物を、水酸化カリウム含むエチレングリコール反応溶媒、もしくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの両方を含むエチレングリコール反応溶媒中で、100℃から196℃の間で10分間以上加熱することにより、反応液中の水分を蒸発させるとともに、該廃棄物に含まれるポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを解重合する工程、
    (B)工程(A)で得られた該廃棄物の解重合反応溶液中に含まれる固形異物のうち、該溶液に浮遊する固形異物を浮遊選別法により除去する工程、
    (C)工程(B)の処理を施した該溶液から、浮遊固形異物以外の該溶液中の固形物を固液分離法によって回収する工程、
    (D)工程(C)により回収した固形物に対して加熱乾燥処理または減圧乾燥処理または遠心分離処理を施すことにより、該固形物中のグリコール類の含量を減少させ、残存する固形物をテレフタル酸塩として得る工程
  12. 前記工程(C)において固液分離法で固形物を回収した後のエチレングリコール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(A)におけるエチレングリコール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、請求項11に記載のプロトカテク酸の製造法。
  13. さらに、前記テレフタル酸塩を、下記工程(A)〜(D)により得る工程を含む、請求項7または8に記載の没食子酸の製造法。
    (A)ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主成分とし異物成分を含むポリエステル廃棄物を、水酸化カリウム含むエチレングリコール反応溶媒、もしくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの両方を含むエチレングリコール反応溶媒中で、100℃から196℃の間で10分間以上加熱することにより、反応液中の水分を蒸発させるとともに、該廃棄物に含まれるポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを解重合する工程、
    (B)工程(A)で得られた該廃棄物の解重合反応溶液中に含まれる固形異物のうち、該溶液に浮遊する固形異物を浮遊選別法により除去する工程、
    (C)工程(B)の処理を施した該溶液から、浮遊固形異物以外の該溶液中の固形物を固液分離法によって回収する工程、
    (D)工程(C)により回収した固形物に対して加熱乾燥処理または減圧乾燥処理または遠心分離処理を施すことにより、該固形物中のグリコール類の含量を減少させ、残存する固形物をテレフタル酸塩として得る工程
  14. 前記工程(C)において固液分離法で固形物を回収した後のエチレングリコール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(A)におけるエチレングリコール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、請求項13に記載の没食子酸の製造法。
  15. 前記請求項1または4に記載の微生物が、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼの発現量を増強させることにより、前記工程(A)から(D)により得られるテレフタル酸塩に混入するエチレングリコールを分解する微生物である、請求項9または10に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
  16. 前記請求項5に記載の微生物が、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼの発現量を増強させることにより、前記工程(A)から(D)により得られるテレフタル酸塩に混入するエチレングリコールを分解する微生物である、請求項11または12に記載のプロトカテク酸の製造法。
  17. 前記請求項7に記載の微生物が、ラクトアルデヒド・レダクターゼおよびラクトアルデヒド・デヒドロゲナーゼの発現量を増強させることにより、前記工程(A)から(D)により得られるテレフタル酸塩に混入するエチレングリコールを分解する微生物である、請求項13または14に記載の没食子酸の製造法。
  18. さらに、前記テレフタル酸塩を、下記工程(E)〜(H)により得る工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
    (E)ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主成分とし異物成分を含むポリエステル廃棄物を、水酸化カリウム含む1−ブタノール反応溶媒もしくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの両方を含む1−ブタノール反応溶媒中で、100℃から116℃の間で10分間以上加熱することにより、反応液中の水分を蒸発させるとともに、該廃棄物に含まれるポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを解重合する工程、
    (F)工程(E)で得られた該廃棄物の解重合反応溶液中に含まれる固形異物のうち、該溶液に浮遊する固形異物を浮遊選別法により除去する工程、
    (G)工程(F)の処理を施した該溶液から、浮遊固形異物以外の該溶液中の固形物を固液分離法によって回収する工程、
    (H)工程(G)により回収した固形物に対して加熱乾燥処理または減圧乾燥処理または遠心分離処理を施すことにより、該固形物中の1−ブタノールおよびグリコール類の含量を減少させ、残存する固形物をテレフタル酸塩として得る工程
  19. 前記工程(G)において固液分離法で固形物を回収した後の1−ブタノール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(E)における1−ブタノール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、請求項18に記載のテレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールの製造法。
  20. さらに、前記テレフタル酸塩を、下記工程(E)〜(H)により得る工程を含む、請求項5または6に記載のプロトカテク酸の製造法。
    (E)ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主成分とし異物成分を含むポリエステル廃棄物を、水酸化カリウム含む1−ブタノール反応溶媒もしくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの両方を含む1−ブタノール反応溶媒中で、100℃から116℃の間で10分間以上加熱することにより、反応液中の水分を蒸発させるとともに、該廃棄物に含まれるポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを解重合する工程、
    (F)工程(E)で得られた該廃棄物の解重合反応溶液中に含まれる固形異物のうち、該溶液に浮遊する固形異物を浮遊選別法により除去する工程、
    (G)工程(F)の処理を施した該溶液から、浮遊固形異物以外の該溶液中の固形物を固液分離法によって回収する工程、
    (H)工程(G)により回収した固形物に対して加熱乾燥処理または減圧乾燥処理または遠心分離処理を施すことにより、該固形物中の1−ブタノールおよびグリコール類の含量を減少させ、残存する固形物をテレフタル酸塩として得る工程
  21. 前記工程(G)において固液分離法で固形物を回収した後の1−ブタノール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(E)における1−ブタノール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、請求項20に記載のプロトカテク酸の製造法。
  22. さらに、前記テレフタル酸塩を、下記工程(E)〜(H)により得る工程を含む、請求項7または8に記載の没食子酸の製造法。
    (E)ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主成分とし異物成分を含むポリエステル廃棄物を、水酸化カリウム含む1−ブタノール反応溶媒もしくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの両方を含む1−ブタノール反応溶媒中で、100℃から116℃の間で10分間以上加熱することにより、反応液中の水分を蒸発させるとともに、該廃棄物に含まれるポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを解重合する工程、
    (F)工程(E)で得られた該廃棄物の解重合反応溶液中に含まれる固形異物のうち、該溶液に浮遊する固形異物を浮遊選別法により除去する工程、
    (G)工程(F)の処理を施した該溶液から、浮遊固形異物以外の該溶液中の固形物を固液分離法によって回収する工程、
    (H)工程(G)により回収した固形物に対して加熱乾燥処理または減圧乾燥処理または遠心分離処理を施すことにより、該固形物中の1−ブタノールおよびグリコール類の含量を減少させ、残存する固形物をテレフタル酸塩として得る工程
  23. 前記工程(G)において固液分離法で固形物を回収した後の1−ブタノール反応溶媒を回収し、該溶媒を前記工程(E)における1−ブタノール反応溶媒として用いることにより、エチレングリコール反応溶媒を廃棄せずに繰り返し利用することにより得られるテレフタル酸塩を用いることを特徴とする、請求項22に記載の没食子酸の製造法。
  24. 前記微生物がエシェリヒア・コリであることを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載の製造法。
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