JP5866604B2 - 新規微生物、ならびにそれを用いる2,3−ジヒドロキシ安息香酸およびサリチル酸の製造法 - Google Patents

新規微生物、ならびにそれを用いる2,3−ジヒドロキシ安息香酸およびサリチル酸の製造法 Download PDF

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Description

本発明は、新規微生物、ならびに当該微生物を用いて、医薬農薬の原料や中間体として有用なサリチル酸および2,3−ジヒドロキシ安息香酸を安価なフタル酸を原料として製造する方法に関する。
サリチル酸の工業的製法としては、石炭酸ナトリウムの熱溶液と炭酸ガスとを反応させることにより生じるナトリウム塩を酸性にする方法であるKolbe-Schmitt法が知られている。2,3−ジヒドロキシ安息香酸の工業的製法としては、Merasse法〔非特許文献1〕、Kolbe-Schmitt法〔非特許文献2〕および三井化学株式会社が開発した方法〔特許文献1〕などの化学合成法が知られているが、いずれも高価なカテコールを原料とし、かつ合成反応時に副生物が生成することにより製造コストが高くなるという問題点がある。
微生物を用いたサリチル酸の生成については、Pseudomonas putida ATCC17485株などの細菌が、ナフタレンを出発物質としてサリチル酸を生成する代謝経路が存在することが知られているが〔非特許文献3〕、この代謝経路に関わる酵素を利用した工業的生産に適したサリチル酸の製造法については報告されていない。また、Pseudomonas属細菌などが、グルコースなどを炭素源としてサリチル酸を生成する代謝経路が存在することが知られているが〔非特許文献4〕、この代謝経路に関わる酵素を利用した、工業的生産に適したサリチル酸の製造法については報告されていない。微生物を用いてフタル酸を出発物質としてサリチル酸を生成する現象は知られていない上、フタル酸の代謝経路を活用した工業的生産に適した方法、すなわちサリチル酸の蓄積法については報告されていない。
微生物を用いた2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生成については、大腸菌などがEnterobactinなどのSidephoreを生産する際の代謝中間体として、2,3−ジヒドロキシ安息香酸が存在することが知られているが、このSidephoreの生産に関わる酵素を反応触媒として利用する、工業的生産に適した2,3−ジヒドロキシ安息香酸の製造法については報告されていない。Pseudomonas testosteroni ATCC 17511株の変異株を用いて、メタヒドロキシ安息香酸を2,3−ジヒドロキシ安息香酸に変換する方法について報告されているが〔特許文献2〕、メタヒドロキシ安息香酸が高価なので、本方法は工業的製法に適していない。またフタル酸を出発物質として2,3−ジヒドロキシ安息香酸を経て代謝する微生物の存在は報告されているが〔非特許文献4〕、その代謝経路を活用した工業的生産に適した方法すなわち2,3−ジヒドロキシ安息香酸の蓄積法については報告されていない。このフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸に至る代謝経路に関わる酵素および遺伝子の単離に関しても報告されていない。また脱炭酸酵素の逆反応によりカテコールに二酸化炭素を付加することにより2,3−ジヒドロキシ安息香酸の製造法が報告されているが〔特許文献3〕、変換率が約3%であること、および原料となるカテコールが高価であることから、工業的生産に適していない。なお、フタル酸はオルソ系樹脂の原料として大量に生産され、またフタル酸エステルはプラスチックの可塑剤として大量に利用されている。廃棄物処理や環境保全の観点から、オルソ系樹脂やフタル酸エステルの加水分解により得られるフタル酸を再利用することが望まれている。
特開2001-039919号公報 United States Patent 4217416号 特開2005-118002号公報 J. Org. Chem. 19, 510 (1954) J. Amer. Chem. Soc., 72, 621 (1950) J. Bacteriol. 153, 822 (1983) J. Gen. Microbiol. 139, 1995 (1993)
本発明の課題は、安価なフタル酸を原料としてサリチル酸および2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生産するための方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、新潟県長岡市内の土壌からフタル酸を炭素源とする集積培養法により単離したシュードモナス・スチュツェリ(Pseudomonas stutzeri)PTH10株が、フタル酸を原料として2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生産することを見い出した。
続いて、このシュードモナス・スチュツェリPTH10株のゲノム配列を決定することにより、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸までの代謝に関わる一連の新規酵素をコードしている新規遺伝子群を同定することに成功した。各遺伝子の発現研究および代謝産物の解析により、芳香環ジオキシゲナーゼ・大サブユニットと相同性を有する蛋白質(以下、ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログと略称する)、芳香環ジオキシゲナーゼ・小サブユニットと相同性を有する蛋白質(以下、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログと略称する)、芳香環ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・コンポーネントと相同性を有する蛋白質(以下、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログと略称する)、芳香環ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・コンポーネントと相同性を有する蛋白質(以下、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログと略称する)、および芳香環ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼと相同性を有する蛋白質(以下、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログと略称する)の5種類の蛋白質を同定した。これらの蛋白質をすべて大腸菌(エシェリヒア・コリ)内で発現したときに、フタル酸が2,3−ジヒドロキシ安息香酸に転換され、2,3−ジヒドロキシ安息香酸が蓄積することを見い出した。さらに、上記5種類の蛋白質のうち、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ以外の4種類の蛋白質を大腸菌内で発現させ、培養液にフタル酸を加え、一定時間反応を行った後にサリチル酸が生成することを見い出した。さらに、このサリチル酸の生成において、フタル酸を加え、一定時間反応を行った後に、該反応液の温度を45℃以上にしたときに、著量のサリチル酸が生成することを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(11)に関する。
(1)以下の(a)または(b)または(c)または(d)に示すDNA(ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA)、以下の(e)または(f)または(g)または(h)に示すDNA(ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA)、以下の(i)または(j)または(k)または(l)に示すDNA(ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNA)、ならびに以下の(m)または(n)または(o)または(p)に示すDNA(ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA)を保有し、フタル酸からサリチル酸を生産する能力を有する微生物。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA。
(d)配列番号1に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(e)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(f)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(g)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA。
(h)配列番号3に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(i)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(j)配列番号6に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(k)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA。
(l)配列番号5に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(m)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(n)配列番号8に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(o)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA。
(p)配列番号7に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(2)さらに、以下の(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNA(ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA)を保有し、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生産する能力を有する請求項1記載の微生物。
(q)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(r)配列番号10に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(s)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA。
(t)配列番号9に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(3)前記(1)記載の微生物をフタル酸を含有する培地中でフタル酸と反応させることにより、該培地中にサリチル酸を生成、蓄積させ、該培地からサリチル酸を採取することを特徴とするサリチル酸の製造法。
(4)前記(1)記載の培養物または該培養物の処理物およびフタル酸を水性媒体中で混合させることにより、該媒体中にサリチル酸を生成、蓄積させ、該媒体からサリチル酸を採取することを特徴とするサリチル酸の製造法。
(5)前記(1)記載の微生物をフタル酸を含有する培地中でフタル酸と反応させた後に、該培地の温度を45℃以上にすることにより、サリチル酸の生成・蓄積量を増強することを特徴とする前記(3)に記載のサリチル酸の製造法。
(6)前記(1)記載の培養物または該培養物の処理物およびフタル酸を水性媒体中で混合させた後に、該媒体の温度を45℃以上にすることにより、サリチル酸の生成・蓄積量を増強することを特徴とする前記(4)に記載のサリチル酸の製造法。
(7)前記微生物が上記(a)から(p)記載のDNAのいずれか1つ以上のDNAがコードする蛋白質の生産量が増強された微生物であることを特徴とする前記(3)から(6)のいずれか1項に記載のサリチル酸の製造法。
(8)前記(2)記載の微生物をフタル酸を含有する培地中でフタル酸と反応させることにより、該培地中に2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする2,3−ジヒドロキシ安息香酸の製造法。
(9)前記(2)記載の微生物の培養物または該培養物の処理物およびフタル酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成、蓄積させ、該媒体から2,3−ジヒドロキシ安息香酸を採取することを特徴とする2,3−ジヒドロキシ安息香酸の製造法。
(10)前記微生物が上記(a)から(t)記載のDNAのいずれか1つ以上のDNAがコードする蛋白質の生産量が増強された微生物であることを特徴とする前記(8)または(9)に記載の2,3−ジヒドロキシ安息香酸の製造法。
(11)受託番号がNITE BP-1006であるシュードモナス・スチュツェリ(Pseudomonas stutzeri)PTH10株
本発明によれば、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる5種類の蛋白質または該蛋白質をコードするDNAを利用して、フタル酸を原料として2,3−ジヒドロキシ安息香酸を安価に製造する方法、ならびに該5種類の蛋白質のうち4種類の蛋白質または該4種類の蛋白質をコードするDNAを利用して、フタル酸を原料としてサリチル酸を安価に製造する方法を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質としては、例えば、配列番号2で表される、シュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のアミノ酸配列を有する蛋白質があげられる。また、本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質としては、配列番号2のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。また、該蛋白質として、配列番号2のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。
ここで、「フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能」とはジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質とともにフタル酸と反応させたときに2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成しうる機能を意味する。
本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質としては、例えば、配列番号4で表される、シュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のアミノ酸配列を有する蛋白質があげられる。また、本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質としては、配列番号4のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。また、該蛋白質として、配列番号4のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。
ここで、「フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能」とはジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質とともにフタル酸と反応させたときに2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成しうる機能を意味する。
本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質としては、例えば、配列番号6で表される、シュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のアミノ酸配列を有する蛋白質があげられる。また、本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質としては、配列番号6のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。また、該蛋白質として、配列番号6のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。なお本研究で用いられるジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質に関しては、ジオキシゲナーゼに類縁の酵素において、相同性が低くても目的の酵素活性が発現することが知られている。
ここで、「フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能」とはジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質とともにフタル酸と反応させたときに2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成しうる機能を意味する。
本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質としては、例えば、配列番号8で表される、シュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のアミノ酸配列を有する蛋白質があげられる。また、本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質としては、配列番号8のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。また、該蛋白質として、配列番号8のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。
ここで、「フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能」とはジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質とともにフタル酸と反応させたときに2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成しうる機能を意味する。
本発明で用いられるジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質としては、例えば、配列番号10で表される、シュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のアミノ酸配列を有する蛋白質があげられる。また、本発明で用いられるジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質としては、配列番号10のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。また、該蛋白質として、配列番号10のアミノ酸配列と75%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。
ここで、「フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能」とはジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質とともにフタル酸と反応させたときに2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成しうる機能を意味する。
上記のジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質、またはジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Res., 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Res., 13, 4431 (1985)、Proc.Natl. Acad. Sci., USA, 82, 488 (1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号2、4、6、8または10で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質において特定の位置に欠失、置換もしくは付加が導入されるように、それぞれコードする配列番号1、3、5、7または9に表わされるDNAに部位特異的変異を導入することにより取得することができる。欠失、置換または付加される1または数個というアミノ酸の数は、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能が維持される限り特に限定されないが、配列番号2、4、6、8または10のアミノ酸配列との違いの個数以内であることが望ましく、1〜20個が好ましく、1〜10個がより好ましく、1〜5個が特に好ましい。
本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号1で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号3で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号5で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号7で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号9で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明のDNAには、本発明のフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を失わない範囲内で置換変異、欠失変異、挿入変異などの変異が導入されたDNA、例えば、配列番号1、3、5、7または9に表わされるDNAの全部もしくは一部をプローブとして、ハイブリダイゼーション法によってストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも包含する。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、具体的には、DNAを固定化したフィルターを用いて、0.7 〜1.0 M のNaClの存在下で65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1 倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mM NaCl 、15 mM クエン酸ナトリウムである)の中、65℃でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAを意味する。なお、ハイブリダイゼーションの実験法は、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular
Cloning, A laboratory manual)、第2版〔サンブルック(Sambrook)、フリッチ(Fritsch) 、マニアチス(Maniatis)編集、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press) 、1989年刊〕に記載されている。
2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産に用いられる本発明の微生物としては、ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNA、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA、およびジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNAを保有し、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する微生物であれば、いずれの微生物を用いることができる。すなわち前記(2)記載のDNAを保有する微生物を用いることができる。たとえば、上記性質を有する微生物は、フタル酸を炭素源とする集積培養法を用いて取得することができる。上記性質を有する微生物としては、具体的には、長岡市内の土壌からフタル酸を唯一炭素源とする集積培養法により単離したシュードモナス・スチュツェリPTH10株があげられる。シュードモナス・スチュツェリPTH10株は、2010年11月25日に特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて独立行政法人・製品評価技術基盤機構・特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託番号NITE BP-1006で国際寄託されており、分譲を受けることができる。
またサリチル酸の生産に用いられる本発明の微生物としては、上記ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNA、およびジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNAを保有する微生物であれば、いずれの微生物を用いることができる。すなわち前記(1)記載のDNAを保有する微生物を用いることができる。
上記性質を有する微生物は、前記(1)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAを組換え技術を用いて宿主細胞に導入した形質転換体であってもよい。
2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産に用いられる本発明の微生物としては、前記(2)に記載したDNAを組換え技術を用いて宿主細胞に導入した形質転換体であってもよい。
またサリチル酸の生産に用いられる本発明の微生物としては、2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産に用いられる本発明の微生物をもとに、組換え技術などを用いてジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNAに変異を導入することにより、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質の機能を失った菌株であってもよいし、または組換え技術などを用いてジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNAの転写に関わるプロモーターへの変異導入、または当該蛋白質の翻訳開始領域への変異導入、またはアンチセンスRNA法により、当該蛋白質の発現を欠損させた菌株であってもよい。
2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産に用いられる本発明の形質転換体は、上記性質を有する微生物から、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードする該DNAをモレキュラー・クローニング第2版に記載の方法に従ってクローニングし、ベクターDNAと連結することで組換えDNAを作製し、該組換えDNAを用いて宿主細胞を形質転換することにより取得することができる。
以下に、DNAのクローニングと形質転換株の作製方法について詳しく述べる。なお、その他の形質転換体も同様の方法により取得することができる。
上記のシュードモナス・スチュツェリPTH10株をシュードモナス属細菌の培養に通常用いられる公知の方法により培養する。培養後、公知の方法(例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の方法)により、該微生物の染色体DNAを単離精製する。この染色体DNAから合成DNAを用いて、ハイブリダイゼイション法またはPCR法などにより、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNAを含む断片を取得することができる。
該合成DNAは、シュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNAの配列番号1で表される塩基配列、およびシュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNAの配列番号3で表される塩基配列、およびシュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNAの配列番号5で表される塩基配列、およびシュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNAの配列番号7で表される塩基配列、およびシュードモナス・スチュツェリPTH10株由来のジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNAの配列番号9で表される塩基配列に基づいて設計することができる。
上記DNAを連結するベクターとしては、エシェリヒア・コリK12株などにおいて自立複製可能なベクターであればプラスミドベクター、ファージベクター等いずれも使用可能であるが、具体的には、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pUC18、pBR322、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、ZAP Express〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 58 (1992)〕、pBluescript II SK(+)〔ストラタジーン社製、Nucleic Acids Res., 17, 9494 (1989)〕、pUC118(タカラバイオ社製)等を用いることができる。
該ベクターに上記で取得したDNAを連結して得られる組換えDNAの宿主に用いるエシェリヒア・コリは、エシェリヒア・コリに属する微生物であればいずれでも用いることができるが、具体的には、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli) XL1-Blue MRF'〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 81 (1992)〕、エシェリヒア・コリC600〔Genetics, 39, 440 (1954)〕、エシェリヒア・コリY1088〔Science, 222,778 (1983)〕、エシェリヒア・コリY1090〔Science, 222, 778 (1983)〕、エシェリヒア・コリNM522〔J. Mol. Biol., 166, 1 (1983)〕、エシェリヒア・コリK802〔J. Mol. Biol., 16, 118 (1966)〕、エシェリヒア・コリJM105〔Gene, 38, 275 (1985)〕、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリBL21等をあげることができる。
ロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属またはラルストニア(Ralstonia)属に属する微生物の中に、上記DNAを導入するときは、これら微生物の中で自立複製可能なベクターを用いる。好ましくは、該微生物のいずれかとエシェリヒア・コリK12株の両方の微生物の中で自立複製可能なシャトル・ベクターを用いて、組換えDNAを宿主となる該微生物に導入することができる。
組換えDNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)〕、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)〕等をあげることができる。
上記のようにして得られた形質転換体から組換えDNAを抽出し、該組換えDNAに含まれる本発明のDNAの塩基配列を決定することができる。塩基配列の決定には、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5463 (1977)〕または3730xl型DNAアナライザー(アプライド・バイオシステムズ社製)等の塩基配列分析装置を用いることができる。
また、上記において決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することによっても目的とするDNAを調製することもできる。
上記のジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質および/またはジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質を発現する形質転換体は、下記の方法を用いて上記のDNAを宿主細胞中で発現させることによって得られる。
上記蛋白質をコードするDNAを用いる際には、必要に応じて、本発明の蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製することができる。また、該蛋白質をコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、該蛋白質の生産率を向上させることもできる。本発明のDNAを発現する形質転換体は、上記DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えDNAを作製し、該組換えDNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより取得することができる。
本発明の蛋白質を発現させる宿主としては、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。好ましくは、2,3−ジヒドロキシ安息香酸の代謝能を有していない微生物を用いることができる。より好ましくは、2,3−ジヒドロキシ安息香酸の代謝能を有していないエシェリヒア属(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、コマモナス(Comamonas)属、バチルス属(Bacillus)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ノボスフィンゴビウム(Novosphigobium)属またはバークホルデリア(Burkholderia)属の細菌をあげることができる。さらに好ましくは、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K-12株をあげることができる。
このような微生物に本発明の蛋白質を発現させることにより、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸を製造することができる。すなわち本発明の微生物をフタル酸を含有する培地中に加えてフタル酸と反応させることにより、2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸を得ることができる。
またこのような微生物を増殖させて、フタル酸を細胞内に取り込ませて2,3−ジヒドロキシ安息香酸およびサリチル酸を製造する場合には、フタル酸の輸送能を有する微生物を用いることが好ましい。野生型微生物のフタル酸の輸送能が小さい場合、または野生型微生物がフタル酸の輸送能を有していない場合には、フタル酸の輸送に関わるトランスポーター蛋白質を組換えDNA技術などを用いて発現させた微生物を用いることができる。具体的には、Burkholderia cepacia ATCC17616のフタル酸トランスポーター遺伝子ophD〔J. Bacterol. 181, 6197 (1999)〕を宿主細胞に発現させることにより、フタル酸の輸送能を増強することができる。フタル酸トランスポーター遺伝子としては以下のようなDNAが包含される。
(u)配列番号32に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(v)配列番号32に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸トランスポーター活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(w)配列番号31に示される塩基配列からなるDNA。
(x)配列番号31に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸トランスポーター活性を有する蛋白質をコードするDNA。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込が可能で、本発明のDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明のDNAを含有してなる組換えDNAは原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明のDNA、転写終結配列、より構成された組換えDNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
本発明の蛋白質、または、該蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質をコードするDNAを大腸菌などの微生物に導入し、発現するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。より具体的には、ベクターとしては、例えば、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pUC18、pBR322、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、pKK233-2(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-8(キアゲン社製)、pET-3(ノバジェン社製)pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(+)(ストラタジーン社製)、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)等を用いることができる。
プロモーターとしては、大腸菌(エシェリヒア・コリ)等の宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター等の、T7プロモーターなどの大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、およびtacプロモーター、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等、およびシュードモナス・プチダのTOLプラスミドのXylS蛋白質により制御されるPmプロモータを用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば5〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。本発明の組換えDNAにおいては、本発明のDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
組換えDNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69, 2110 (1972) 〕、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)〕、接合伝達法〔J. G. C. Ottow, Ann. Rev.Microbiol., Vol.29, p.80 (1975)〕、細胞融合法〔M.H. Gabor, J. Bacteriol., Vol.137, p.1346 (1979)〕等をあげることができる。
組換えDNA技術などを用いて、上記いずれか1つ以上の蛋白質の生産量が野生株と比較して増強した微生物を作製し、2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸の生産量をあげることがもできる。具体的には、上記いずれかの蛋白質をコードする遺伝子を発現させるためのプロモーターとして天然のプロモーターよりも転写活性が強いプロモーターを用いる、あるいは該蛋白質をコードする遺伝子の転写を終結するためのターミネーターとして天然のターミネーターよりも転写終結活性が強いターミネーターを用いる、あるいは発現ベクターとして高コピー数ベクターを利用すること、相同組換えで染色体上に組み込むことなどがあげられる。
以上のようにして得られる本発明の2,3−ジヒドロキシ安息香酸生産微生物を、好ましくは0.1 mM〜1 Mのフタル酸を含有する培地で培養し、培養物中に2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、2,3−ジヒドロキシ安息香酸を製造することができる。
また本発明のサリチル酸生産微生物を、好ましくは0.1 mM〜1 Mのフタル酸を含有する培地で培養し、培養物中にサリチル酸を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、サリチル酸を製造することができる。好ましくは、本発明のサリチル酸生産微生物を、0.1 mM〜1 Mのフタル酸を含有する培地で培養した後、温度を45℃以上に上げて一定時間(好ましくは1時間以上)放置することにより、培養物中にサリチル酸を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、サリチル酸を製造することができる。本発明の微生物を培地に培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
本発明の微生物の培養は、炭素源、窒素源、無機塩、各種ビタミン等を含む通常の栄養培地で行うことができ、炭素源としては、例えばブドウ糖、ショ糖、果糖等の糖類、エタノール、メタノール等のアルコール類、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸類、廃糖蜜等が用いられる。窒素源としては、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等がそれぞれ単独または混合して用いられる。また、無機塩としては、例えばリン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム等が用いられる。この他にペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンステイープリカー、カザミノ酸、ビオチン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に添加することができる。2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸を生産するための原料としては、フタル酸を添加する。
培養は、通常、通気攪拌、振とう等の好気条件下で行う。培養温度は、本発明の微生物が生育し得る温度であれば特に制限はなく、また、培養途中のpHについても本発明の微生物が生育し得るpHであれば特に制限はない。培養中のpH調整は、酸またはアルカリを添加して行うことができる。
本発明の2,3−ジヒドロキシ安息香酸生産微生物を培養した後、フタル酸を含む水性媒体中に、該微生物の培養物もしくは該培養物の処理物を加えることにより、該媒体中に2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成、蓄積させ、該媒体から2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはを採取することもできる。また本発明のサリチル酸微生物を培養した後、フタル酸を含む水性媒体中に、該微生物の培養物もしくは該培養物の処理物を加え、フタル酸の転換反応を行うことにより、該媒体中にサリチル酸を生成、蓄積させ、該媒体からサリチル酸を採取することもできる。好ましくは、本発明のサリチル酸微生物を培養した後、フタル酸を含む水性媒体中に、該微生物の培養物もしくは該培養物の処理物を加え、フタル酸の転換反応を行った後に、温度を45℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは65℃以上に上げることにより該媒体中にサリチル酸を生成、蓄積させ、該媒体からサリチル酸を採取することもできる。
該培養物の処理物として、本発明の微生物を担体に固定化したものを用いてもよい。その場合には、培養物から回収されたまま、あるいは適当な緩衝液、例えば0.02〜0.2 M程度のリン酸緩衝液(pH6〜10)等で洗浄された菌体を使用することができる。また、培養物から回収された菌体を、超音波、圧搾等の手段で破砕して得られる破砕物、該破砕物を水等で抽出して得られる本発明の蛋白質を含有する抽出物、該抽出物を更に硫安塩析、カラムクロマトグラフィー等の処理を行って得られる本発明の蛋白質の部分精製成分等を担体に固定化したものも、本発明の2,3−ジヒドロキシ安息香酸およびサリチル酸の製造に使用することができる。
これら菌体、菌体破砕物、抽出物または精製酵素の固定化は、それ自体既知の通常用いられている方法に従い、アクリルアミドモノマー、アルギン酸、またはカラギーナン等の適当な担体に菌体等を固定化させる方法により行うことができる。
反応に用いる水性媒体は、フタル酸を含有する水溶液または適当な緩衝液、例えば0.02〜0.2 M程度のリン酸緩衝液(pH6〜10)とすることができる。この水性媒体には、さらに菌体の細胞膜の物質透過性を高める必要のあるときには、トルエン、キシレン、非イオン性界面活性剤等を0.05〜2.0%(w/v)添加することもできる。
水性媒体中の反応原料となるフタル酸の濃度は、0.1 mM〜1 M程度が適当である。上記の水性媒体における酵素反応温度およびpHは特に限定されないが、通常10〜60℃、好ましくは15〜50℃が適当であり、反応液中のpHは5〜10、好ましくは6〜9付近とすることができる。また、pHの調整は、酸またはアルカリを添加して行うことができる。発明で使用する酵素は、菌体抽出液をそのまま、またはそれから遠心分離、濾過等で集め、これを水または緩衝液に懸濁して得ることができる。このようにして得られた酵素をフタル酸の存在下、反応させるが、反応液中のフタル酸の濃度は酵素の活性を阻害しない範囲で可能な限り高くするのが有利である。反応は静置、攪拌、振盪のいずれの方法で行ってもよい。また、酵素を適当な支持体に固定化してカラムに充填し、フタル酸を含む溶液を流す方法も利用できる。反応は、通常10〜60℃、好ましくは15〜50℃、pH5〜9、好ましくはpH6〜9で行う。
また、上記水性媒体に、反応時に抗酸化剤または還元剤を添加すると、2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸の生成収率が一層向上する場合がある。抗酸化剤/還元剤としては、アスコルビン酸、イソアルコルビン酸、システイン、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリムなどのチオ硫酸塩が挙げられる。添加濃度は、抗酸化剤/還元剤の種類によって異なるが、2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸の生成を阻害しない濃度で加えることが望ましく、通常0.001〜5%(W/V)、好ましくは0.005〜1%である。
また、上記水性媒体に、反応時に酸化剤を添加すると、2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸の生成収率が一層向上する場合がある。酸化剤としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の硝酸塩、塩化第二鉄等の金属塩、ハロゲン、ペルオクソ酸等が挙げられ、好ましくは、亜硝酸ナトリウム、塩化第二鉄が挙げられる。添加濃度は、酸化剤の種類によって異なるが、2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸の生成を阻害しない濃度で加えることが望ましく、通常0.001〜0.05%(W/V)、好ましくは0.005〜0.02%である。
培養終了後の培養液または反応液中からの2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸は、酢酸エチル等の有機溶剤によって抽出することにより単離・精製することができる。また、必要に応じて遠心分離等により該培養液から菌体等の不溶成分を除いた後、例えば、活性炭を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、結晶化法、沈殿法等の方法を単独でまたは組み合わせることによって2,3−ジヒドロキシ安息香酸またはサリチル酸を採取することができる。
以下に本発明の方法を実施例により具体的に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1.培養菌体を用いたフタル酸からの2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産
フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸までの代謝に関わるジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ、およびジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログの5種類の蛋白質をコードするDNAを以下のようにして同定するとともに、これら5種類の蛋白質を発現する菌株を用いてフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産を行った。
1.フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸までの代謝に関わる5種類の蛋白質をコードするDNAの塩基配列の決定
(1)シュードモナス・スチュツェリPTH10株によるフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産の確認
10 mMフタル酸を含有する5 mlのW液体培地〔W培地の組成は、リン酸1カリウム 1.7 g/l、リン酸2ナトリウム 9.8 g/l、硫酸アンモニウム 1.0 g/l、硫酸マグネシウム七水和物 0.1 gg/l、硫酸鉄七水和物 0.95 m g/l、酸化マグネシウム 10.75 mg/l、炭酸カルシウム 2.0 mg/l、硫酸亜鉛七水和物 1.44 mg/l、硫酸銅五水和物 mg/l、硫酸コバルト七水和物 0.28 mg/l、ホウ酸 0.06 mg/l、塩酸 51.3 ml/l〕〕にシュードモナス・スチュツェリPTH10株を接種し、25℃、150 rpmで振とう培養を行った。培養後0時間および24時間に培養液から0.2 mlとり、20μlの1N HClと1 mlの酢酸エチルを加え、激しく5分間懸濁し、遠心にかけた。二層に分かれた上層(酢酸エチル層)を0.8 mlとり、新しい1.5 mlチューブに移し、遠心乾燥機にかけた。乾固したサンプルを10μLのアセトニトリルで激しく懸濁し、190μLの水で希釈した。さらに5%のアセトニトリル溶液で40倍に希釈した後、孔径0.2μmのフィルターで濾過しした後、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による分析に供した。なお、LC−TOF型質量分析計のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)およびHPLC検出器は、それぞれACQUITY UPLC(Waters社製)およびACQUITY UPLCフォトダイオードアレイ検出器(Waters社製)を用いた。以下、LC−TOF型質量分析計を用いた化合物の分析はすべてこの構成を有する機器を用いて行った。本機器を用いて、表1に示すHPLC分離条件でシュードモナス・スチュツェリPTH10株の代謝産物の分析を行ったところ、質量数153.0184の化合物ピークが培養24時間のサンプルから新たに検出された。
Figure 0005866604
このピークが2,3−ジヒドロキシ安息香酸由来のピークとした場合、水素原子が引き抜かれた結果イオン化したピークと想定できるので、その精密質量数は153.0188となる。両者の質量数の差が0.004となり、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)の測定誤差内で、両者の質量数は一致した。また、この化合物ピークのHPLC(高速液体クロマトグラフィー)の保持時間は3.23分であった。一方、2,3−ジヒドロキシ安息香酸の標準化合物のHPLC保持時間も3.23分であり、両化合物のHPLC保持時間は一致していた。これらの結果から、シュードモナス・スチュツェリPTH10株によるフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生産することを確認した。以下、2,3−ジヒドロキシ安息香酸の物質としての同定方法については本方法を用いた。
(2)シュードモナス・スチュツェリPTH10株のゲノムDNAの調製
シュードモナス・スチュツェリPTH10株(受託番号:NITE BP-1006)を10 mM フタル酸を含有する5 mlのW液体培地に接種し、30℃で36時間振とう培養を行った後、10 mMフタル酸を含有する120 mlのW液体培地に全量接種した。30℃でさらに48時間振とう培養を行った後、菌体を集菌し、QIAGEN社製Gentra Puregene Yeast/Bact Kit用いてPTH10株のゲノムDNAを調製した。
(3)シュードモナス・スチュツェリPTH10株のゲノム配列決定
シュードモナス・スチュツェリPTH10株のゲノム配列を、以下のようにしてBeckman Coulter Genomics社(米国・マサチューセッツ州・Danvers市)に外注することにより決定した。
上記(2)で調製したシュードモナス・スチュツェリPTH10株のゲノムDNA約250μgをBeckman Coulter Genomics社に送付した。Beckman Coulter Genomics社において、454 Life Sciences Genome Sequencer FLX (GS FLX) Titaniumシーケンサーを用いて、PTH10株ゲノムDNAのフラグメント・ライブラリーより約8000万塩基の配列を決定し、またPTH10株ゲノムDNAのメイトペア・ライブラリーより約6000万塩基の配列を決定した。両方の配列を合わせてBeckman Coulter Genomics社において塩基配列のアセンブリーが行われ、合計4,214,254塩基のゲノム配列が得られた。さらに、Beckman Coulter Genomics社において、Illumina Genome Analyzer IIxシーケンサーを用いて、PTH10株ゲノムDNAのペアエンド・ライブラリーより約22億塩基の配列を決定し、配列アセンブリーを行った後、合計4,196,341塩基のゲノム配列が得られた。
(4)フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸までの代謝に関わる5種類の蛋白質および蛋白質をコードする遺伝子の推定
上記で明らかになった454 Life Sciences Genome Sequencer FLX (GS FLX) Titaniumシーケンサーを用いて得られたPTH10株の4,214,254塩基のゲノムDNA配列について、翻訳領域予測プログラムであるGeneLook〔Nishi T, Ikemura T, とKanaya S. Gene 346, 115-125 (2005)〕を用いて翻訳領域を予測した。続いて、予測された翻訳領域に対してBLAST相同性解析を用いて既存の蛋白質のアミノ酸配列との相同性解析を行った。その結果、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA(配列番号1)、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA(配列番号3)、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNA(配列番号5)、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA(配列番号7)、および配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA(配列番号9)を同定でき、これら5種類の蛋白質がフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸までの代謝に関わっていると推定された。なお、配列番号1,3,5,7および9に示した塩基配列については、いずれも454 Life Sciences Genome Sequencer FLX (GS FLX) Titaniumシーケンサーを用いて得られた配列とIllumina Genome Analyzer IIxシーケンサーを用いて得られた配列の間で完全に一致した。
2.フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸までの代謝に関わる5種類の蛋白質の大腸菌内での発現
(1)遺伝子クローニング用のPCRプライマーの設計と合成
上記で明らかになった5種類の蛋白質のDNA配列情報をもとに、PCR法を用いてこれら蛋白質をコードするDNAをクローニングするためのPCRプライマーを設計し、合成した。各PCRプライマーの塩基配列は表2に示した。なお、プライマーの合成は株式会社日本遺伝子研究所に外注した。
Figure 0005866604
(2)PCR法による各蛋白質をコードするDNAの増幅
タカラバイオ社から購入したPrimeSTAR DNAポリメラーゼを用いて、上記1(2)で得た染色体DNAを鋳型にし、表2記載のDNAプライマーを用いて、添付の説明書に従って表2に示した各蛋白質をコードするDNAを増幅させた。
(3)フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸までの代謝に関わる5種類の遺伝子のクローニング
上記(2)で得られたジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNA、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA、およびジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNAをTaq ポリメラーゼ(タカラ・バイオ社製)による3'末端にA残基を付与する処理を行った後、ゲル電気泳動後により目的DNAを精製した。精製した目的DNAをpT7Blue(Novagen社製で、タカラバイオ社から購入)のTベクターに組み込むことにより、それぞれの遺伝子を運ぶプラスミドpT7Blue_large、pT7Blue_small、pT7Blue_ferredoxin、pT7Blue_reductase、pT7Blue_dehydrogenaseを造成した。ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNAについては、配列番号21と22で表される1組の合成DNAを用いたPCR法によりジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質の遺伝子内部の制限酵素NotI部位を破壊したプラスミドpT7Blue_LdNを造成した。
(4)ポリシストロン型発現プラスミドの構築
上記の各蛋白質をコードする遺伝子を大腸菌JM109株、大腸菌JM109(DE3)株や大腸菌BL21(DE3)株でそれぞれ転写・翻訳効率に依存しない効率よい発現を行うために、各遺伝子の転写がその遺伝子の上流に配置した疑似遺伝子に依存し、疑似遺伝子の翻訳効率を維持した状態で各遺伝子も翻訳される発現系の構築を行った。より具体的には、T7プロモーター配列と疑似遺伝子及び各蛋白質をコードする遺伝子を連結するための制限酵素PacI部位をpUC19プラスミドDNA内に挿入するために、配列番号23〜26で表される4本の合成DNAを合成した。これら合成DNAをpUC19(タカラバイオ社製)のHindIII部位とSphI部位の間に挿入したプラスミドpUTCP19を構築した。次いで、ターミネーター配列を挿入するため、配列番号27〜30で表される4本の合成DNAを合成し、pUTCP19のEcoRI部位とKpnI部位の間に挿入し、発現ベクターpUTCTP19を構築した。
(5)各蛋白質をコードする遺伝子を発現するプラスミドの構築
上記(3)で造成したプラスミドpT7Blue_LdNから制限酵素PacIと制限酵素NotIによりジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子を切り出し、上記(4)で造成した発現ベクターpUTCTP19に組込むことにより、pUTCTP_LdNを造成した。ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子はそれぞれ翻訳開始コドンの上流に制限酵素SwaI部位を、終止コドン下流に制限酵素PmeI部位と制限酵素NotI部位を有している。各遺伝子は制限酵素SwaI部位と制限酵素NotI部位により切り出すことができ、各遺伝子の終止コドン下流の制限酵素PmeI部位とNotI部位に挿入することができる。pUTCTP_LdNの制限酵素PmeI部位とNotI部位にジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子を挿入したpUTCTP_LS、pUTCTP_LSにジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子を挿入したpUTCTP_LSF、pUTCTP_LSFにジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子を挿入したpUTCTP_LSFR、pUTCTP_LSFRにジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子を挿入して、5遺伝子の発現プラスミドpUTCTP_LSFRDを造成した。さらに、同様なDNA連結法により、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸までの代謝に関わる5種類の蛋白質をコードする遺伝子のうち、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子以外の4種類の遺伝子を保持するプラスミドpUTCTP_LFRD、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子以外の4種類の遺伝子を保持するプラスミドpUTCTP_LSRD、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子以外の4種類の遺伝子を保持するプラスミドpUTCTP_LSFDを造成した。ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子以外の4種類の遺伝子を保持する発現プラスミドとしてはプラスミドpUTCTP_LSFRを造成した。ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子以外の4種類の遺伝子を発現する発現プラスミドpUTCTP_LdNSXSFRDは、ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードする遺伝子内部の制限酵素SalI部位からXhoI部位までを切り出し、自己再結合法により生成したプラスミドpUTCTP_LdNSXを造成した後、pUTCTP_LdNSXの制限酵素PmeI部位とNotI部位に当該4種類の遺伝子を挿入することにより造成した。
(6)フタル酸トランスポーターのクローニング
大腸菌K-12株などフタル酸輸送能が不明である微生物が存在する。このような微生物を用いて化合物生産を行う場合、当該微生物にフタル酸の取り込みを促進するフタル酸トランスポーターを発現させることにより、フタル酸からの2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生成量を向上できる可能性が考えられる。この可能性を調べるために、フタル酸からの菌体内へのフタル酸の取り込みを促進させる効果があるBurkholderia multivorans ATCC17616株のフタル酸トランスポーターophDをコードするDNAを得ることにした。ophD遺伝子の塩基配列については、ナショナル・センター・フォア・バイオテクノロジー・インフォメーション(以下、NCBIと略記する)のジェンバンク(GenBank;以下、GBと略記する)データベースから、アクセッション番号NC_010805Nにおける塩基番号539901〜541247の配列(配列番号31)として得た。Burkholderia multivorans ATCC17616株の染色体DNAは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(以下、ATCCと略記する)から入手した。該染色体DNA(100 ng)を鋳型として、配列番号33で表される配列を有するDNAプライマーと配列番号34で表される配列を有するDNAプライマーを用いて、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するフタル酸トランスポータータンパク質をコードしているophD遺伝子の全領域をPrimeSTAR DNAポリメラーゼを用いたPCR反応により増幅させた。Taq DNA ポリメラーゼによって増幅DNA断片の3'末端にA残基を付加した後、増幅DNA断片をゲル電気泳動法により精製し、pT7BlueのTベクターに組み込むことにより、ophD遺伝子の全領域を保持するプラスミドpTOPHD1を構築した。さらに配列番号35と36に示す1対の合成DNA、および配列番号37と38で表される1対の合成DNAを用いたPCR法によりophD遺伝子内部に2箇所ある制限酵素NotI部位を破壊したプラスミドpTOPHD_dNABを造成した。pTOPHD_dNABから制限酵素PacIと制限酵素NotIによりophD遺伝子を切り出し、大腸菌中で発現ベクターpUTCTP19と共存可能な発現ベクターpRTCKMの制限酵素PacIと制限酵素NotIに組込むことでプラスミドpRTCKM_ophDを造成した。プラスミドpRTCKM_ophDにおいては、挿入したophD遺伝子の発現は、制限酵素PacIサイトの上流にあるカナマイシン耐性遺伝子のプロモーターの制御下にある。発現ベクターpRTCKMは、プラスミドベクターpRTC_SfiIのSfiIサイトに配列番号39に示す配列を有する合成DNA由来のDNAが挿入されたプラスミドである。なお配列番号39に示したDNAの配列は、その両末端にpRTC_SfiI由来のSfiIサイトの配列も含んでいる。上述のプラスミドpRTCKM_ophDの造成に用いた制限酵素PacI部位と制限酵素NotI部位は、配列番号39に示す配列においては、それぞれ塩基番号227と塩基番号245に存在する。
また、プラスミドベクターpRTC_SfiIは、プラスミドベクターpREP4(インビトロジェン社から製品番号V004-50として入手可能)をもとに下記の手順で造成した。pREP4を制限酵素HindIIIで切断した後、平滑末端化して連結、pREP4DHを造成した。さらにpREP4DHを制限酵素XbaIで切断した後、平滑末端化して連結、pREP4DHXを造成した。pREP4DHXを鋳型に配列番号40と41で表される1組の合成DNAを用いたPCR法により、末端に制限酵素SfiI部位を導入したPCR増幅断片を得た。得られた断片を制限酵素BamHIで消化・連結することで、pRTC_SfiIを造成した。
(7)培養菌体によるフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産
上記(5)で造成した6種の発現プラスミドを上記(6)で造成したプラスミドpRTCKM _ophDを保持する大腸菌JM109に形質転換法により導入し、組換え大腸菌JM109/(pUTCTP_LSFRD, pRTCKM_ophD)、JM109/(pUTCTP_LdNSXSFRD, pRTCKM_ophD)、JM109/(pUTCTP_LFRD, pRTCKM_ophD)、JM109/(pUTCTP_LSRD, pRTCKM_ophD)、JM109/(pUTCTP_LSFD, pRTCKM_ophD)、JM109/(pUTCTP_LSFR, pRTCKM_ophD)を造成した。これら形質転換体を、2 mlのLB液体培地(10 g/l トリプトン(Difco社製)、5 g/l 乾燥酵母エキス(Difco社製)、10 g/l 塩化ナトリウム、)で一晩培養した。プラスミドを維持するためにアンピシリンを最終濃度100 mg/l、カナマイシンを最終濃度50 mg/lになるように加えた。2 mlのF液体培地(グルコース 50 g/l、リン酸2カリウム 0.72 g/l、リン酸2アンモニウム 1.94 g/l、クエン酸一水和物 2.1 g/l、硫酸アンモニウム 9.9 g/l、硫酸鉄(II)アンモニウム 0.4 g/l、硫酸鉄七水和物 1.39 g/l、硫酸マグネシウム七水和物 0.246 g/l、塩化カルシウム 0.111 g/l、チアミン 10 mg/l、pH7.0)にアンピシリンを最終濃度100 mg/l、カナマイシンを最終濃度50 mg/l加えた後、1/50容量接種し、37℃で培養し対数増殖期にIPTG (isopropyl-1-thio-β-D-galactopyranoside)を終濃度1 mMになるように添加し、30℃で18時間蛋白質生産誘導を行った。誘導後の培養液にフタル酸を終濃度で1 mMになるように添加し、30℃で24時間振とう培養して、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産を行った。なおコントロールとしてフタル酸を加えない培養も行った。0時間、24時間に培養液から50μlとり、5μlの1N HCl と0.25 mlの酢酸エチルを加え、激しく5分間懸濁し、遠心にかけた。二層に分かれた上層(酢酸エチル層)を200μlとり、新しい1.5 mlチューブに移し、遠心乾燥機にかけた。乾固したサンプルを10μlのアセトニトリルで激しく懸濁し、190μlの水で希釈した。孔径0.2μmのフィルターで濾過した後、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)による分析に供した。
Figure 0005866604
LC−TOF型質量分析計を用いて、表3に示すHPLC分離条件で各組換え大腸菌の代謝産物の分析を行った結果、フタル酸 1 mMを基質として加えた培養を行った場合に、ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質、ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質の5種類すべてのタンパク質を発現する組換え大腸菌JM109/(pUTCTP_LSFRD, pRTCKM_ophDでのみ0.89 mMの2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産が観察された。また、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質のみの発現を欠く組換え大腸菌JM109/(pUTCTP_LSFR, pRTCKM_ophD)では、添加したフタル酸の約80%が消失し、ごく微量(3.7μM)の2,3−ジヒドロキシ安息香酸と思われる化合物の生成が検出された。なお、ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質、ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質のいずれかを発現しない組換え大腸菌では2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産は検出感度以下であった。
実施例2.フタル酸トランスポーターを導入しない培養菌体を用いたフタル酸からの2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産
プラスミドpUTCTP_LSFRDを大腸菌JM109に導入した形質転換株JM109/pUTCTP_LSFRDを終濃度100 mg/mlアンピシリンを含むLB液体培地2 mlで一晩培養した。終濃度100 mg/mlアンピシリンを含むF液体培地 5 mlに1/20容量接種し、37℃で培養した後、対数増殖期にIPTGを終濃度1 mMになるように添加し、30℃で18時間蛋白質生産誘導を行った。誘導後、大腸菌を遠心によって集菌し、上清を捨てた後、終濃度100 mg/mlのアンピシリンと終濃度1 mMのIPTGを含むF培地に吸光度600 nmで5.0になるように懸濁し、大腸菌懸濁液を調製した。この懸濁液にフタル酸を終濃度で1 mMになるように添加し、30℃で24時間振とう培養して、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産を行った。0時間、24時間に培養液から50μlとり、5μlの1N HCl と0.25 mlの酢酸エチルを加え、激しく5分間懸濁し、遠心にかけた。二層に分かれた上層(酢酸エチル層)を200 μlとり、新しい1.5 mlチューブに移し、遠心乾燥機にかけた。乾固したサンプルを10 μlのアセトニトリルで激しく懸濁し、190 μlの水で希釈した。孔径0.2 μmのフィルターで濾過した後、表3に示すHPLC分離条件のもとでLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)で分析した。その結果、0.39 mMの2,3−ジヒドロキシ安息香酸が生産されたことを確認した。
実施例3.粗酵素液によるフタル酸からの2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産
形質転換株JM109/pUTCTP_LSFRDを100 mg/mlアンピシリンを含むLB液体培地2 mlで一晩培養した。100 mg/mlアンピシリンを含むF液体培地 5 mlに1/20容量接種し、37℃で培養した後、対数増殖期にIPTGを終濃度1 mMになるように添加し、30℃で18時間蛋白質生産誘導を行った。誘導後、大腸菌を遠心によって集菌し、上清を捨て、1 mlの10%グリセロールを含むHEPES緩衝液(50 mM HEPES−NaOH, pH7.5)に懸濁し、2回洗浄した。洗浄後、0.2 ml HEPES緩衝液に懸濁した大腸菌懸濁液を超音波破砕機によって、細胞破砕を行った。破砕後、遠心分離(4℃、10分、20000×g)を行い、上清と沈殿物に分離し、上清を粗酵素液とした。粗酵素液の蛋白質濃度をブラッドフォード法に基づいたバイオラッド(Bio-Rad)プロテイン・アッセイ(Bio-Rad Laboratories, CA, USA)を用いて計測した。粗酵素による2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産は、FAD 10 μM、FMN 10 μM、NADH 2.5 mM、NADPH 2.5 mM、粗酵素液100 μgを含む200 μlの反応液にフタル酸を100 mM加えた後、30℃で24時間行った。コントロールとしてフタル酸を100 mM加えない反応も行った。反応後、表3に示すHPLC分離条件のもとでLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)を用いて、生成した2,3−ジヒドロキシ安息香酸の量を測定した。その結果、フタル酸を加えたときのみ、54.66 μMの2,3−ジヒドロキシ安息香酸の生産を確認できた。
実施例4.培養菌体を用いるフタル酸からサリチル酸の生産
フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸までの代謝に関わるジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ、ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ、ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ、およびジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログの4種類の蛋白質を発現する大腸菌株を用いて、以下のようにしてフタル酸からサリチル酸の生産を行った。
形質転換株JM109/(pUTCTP_LSFR, pRTCKM_ophD)を100 mg/mlアンピシリンと50 mg/mlカナマイシンを含むLB液体培地2 mlで一晩培養した。100 mg/mlアンピシリンと50 mg/mlカナマイシンを含むF液体培地 20 mlに1/20容量接種し、37℃で培養した後、対数増殖期にIPTGを終濃度1 mMになるように添加し、30℃で18時間蛋白質生産誘導を行った。誘導後、大腸菌を遠心によって集菌し、上清を捨てた後、終濃度100 mg/mlのアンピシリンと50 mg/mlカナマイシン、さらに終濃度1 mMのIPTGを含むF培地に吸光度600 nmで5.0になるように懸濁し、大腸菌懸濁液を調製した。この懸濁液にフタル酸を終濃度で1 mMになるように添加し、30℃で24時間振とう培養して、フタル酸の変換反応を行った。24時間後の培養液から50μlとり、5μlの1N HClと0.25 mlの酢酸エチルを加え、激しく5分間懸濁し、遠心にかけた。二層に分かれた上層(酢酸エチル層)を200μlとり、新しい1.5 mlチューブに移し、遠心乾燥機にかけた。乾固したサンプルを10μlのアセトニトリルで激しく懸濁し、190μlの水で希釈した。孔径0.2μmのフィルターで濾過し、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)で分析した。
LC−TOF型質量分析計を用いて、表3に示すHPLC分離条件で形質転換株JM109/(pUTCTP_LSFR, pRTCKM_ophD)の代謝産物の分析を行った結果、フタル酸 1 mMを基質として加えた培養を行った場合にのみ、3つの新しいピークA、B、Cが出現し、ピークA、B、CのHPLC保持時間それぞれ0.53分、1.54分、1.96分であった。ピークA由来の化合物の精密質量を分析した結果、その質量数は199.0247であった。このピークAがジオキシゲナーゼ反応によりフタル酸に酸素2原子が付加された2,3−ジハイドロキシ1,2−ジカルボキシ シクロヘキサ−4,6−ジエン由来のピークとした場合、水素原子が引き抜かれた結果イオン化したピークと想定できるので、その精密質量数は199.0242となる。両者の質量数の差が0.005となり、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)の測定誤差内で、両者の質量数は一致した。ピークB由来の化合物の精密質量を分析した結果、その質量数は153.0234であった。このピークBが2,3−ジヒドロキシ安息香酸由来のピークとした場合、水素原子が引き抜かれた結果イオン化したピークと想定できるので、その理論精密質量数は153.0188となる。両者の質量数の差が0.0046となり、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)の測定誤差内で、両者の質量数は一致した。一方、使用したHPLC分析条件で2,3−ジヒドロキシ安息香酸の標準化合物のHPLC保持時間も1.54分であり、両化合物のHPLC保持時間は一致していた。ピークC由来の化合物の精密質量を分析した結果、その質量数は137.0262であった。このピークCがジオキシゲナーゼ反応によりフタル酸に酸素2原子が付加された2,3−ジハイドロキシ1,2−ジカルボキシ シクロヘキサ−4,6−ジエンの脱水産物であるヒドロキシ安息香酸のピークとした場合、水素原子が引き抜かれた結果イオン化したピークと想定できるので、その理論精密質量数は137.0239となる。両者の質量数の差が0.0023となり、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)の測定誤差内で、両者の質量数は一致した。一方、サリチル酸、メタヒドロキシ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸の標準化合物のHPLC保持時間は1.96分、1.53分、1.40分であったことから、生成した化合物はHPLC保持時間が一致するサリチル酸であった。
続いて、加熱処理がサリチル酸の生成量を向上させるか調べるために、上述したフタル酸変換反応後の培養液に対して、25℃、35℃、45℃、55℃、65℃、75℃、85℃、95℃の8条件で60分間静置する処理を加えた。これらの処理を施した後、50μlとり、5μlの1N HClと0.25 mlの酢酸エチルを加え、激しく5分間懸濁し、遠心にかけた。二層に分かれた上層(酢酸エチル層)を200μlとり、新しい1.5 mlチューブに移し、遠心乾燥機にかけた。乾固したサンプルを10μlのアセトニトリルで激しく懸濁し、190μlの水で希釈した。孔径0.2μmのフィルターで濾過し、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)で分析した。分析の結果、各条件で生成したサリチル酸の量は表4に示すとおりで、45℃以上に加熱したときに、サリチル酸の生産量が向上することがわかった。
Figure 0005866604
配列表フリ−テキスト
配列番号1:ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA
配列番号2:ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質
配列番号3:ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA
配列番号4:ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質
配列番号5:ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNA
配列番号6:ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白
配列番号7:ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA
配列番号8:ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質
配列番号9:ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA
配列番号10:ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質
配列番号11:ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用フォワード・プライマー
配列番号12:ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用リバース・プライマー
配列番号13:ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用フォワード・プライマー
配列番号14:ジオキシゲナーゼ・小サブユニット・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用リバース・プライマー
配列番号15:ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用フォワード・プライマー
配列番号16:ジオキシゲナーゼ・フェレドキシン・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用リバース・プライマー
配列番号17:ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用フォワード・プライマー
配列番号18:ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用リバース・プライマー
配列番号19:ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用フォワード・プライマー
配列番号20:ジヒドロジオール・ジヒドロゲナーゼ・ホモログ蛋白質をコードするDNA増幅用リバース・プライマー
配列番号21:ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質の遺伝子内部の制限酵素NotI部位の破壊用PCRフォワード・プライマー
配列番号22:ジオキシゲナーゼ・大サブユニット・ホモログ蛋白質の遺伝子内部の制限酵素NotI部位の破壊用PCRリバース・プライマー
配列番号23:T7プロモーター構築用合成DNA
配列番号24:T7プロモーター構築用合成DNA
配列番号25:T7プロモーター構築用合成DNA
配列番号26:T7プロモーター構築用合成DNA
配列番号27:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号28:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号29:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号30:ターミネーター構築用合成DNA
配列番号31:Burkholderia multivorans ATCC17616株のophD遺伝子の塩基配列
配列番号32:Burkholderia multivorans ATCC17616株のフタル酸トランスポーターophD遺伝子がコードするフタル酸トランスポータータンパク質のアミノ酸配列
配列番号33:ophD遺伝子増幅用フォワード・プライマー
配列番号34:ophD遺伝子増幅用リバース・プライマー
配列番号35:ophD遺伝子内のNotI部位欠損用PCRプライマー
配列番号36:ophD遺伝子内のNotI部位欠損用PCRプライマー
配列番号37:ophD遺伝子内のNotI部位欠損用PCRプライマー
配列番号38:ophD遺伝子内のNotI部位欠損用PCRプライマー
配列番号39:発現ベクターpRTCKM内の2つのSfiI部位に挟まれた合成DNA由来の塩基配列
配列番号40:発現ベクターpRTC_SfiIの造成用のPCRプライマー
配列番号41:発現ベクターpRTC_SfiIの造成用のPCRプライマー

Claims (11)

  1. 以下の(a)、(b)、(c)または(d)に示すDNA、以下の(e)、(f)、(g)または(h)に示すDNA、以下の(i)、(j)、(k)または(l)に示すDNA、及び以下の(m)、(n)、(o)または(p)に示すDNAを保有し、フタル酸からサリチル酸を生産する能力を有する微生物。
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA。
    (d)配列番号1に示される塩基配列の全部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (e)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
    (f)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (g)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA。
    (h)配列番号3に示される塩基配列の全部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (i)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
    (j)配列番号6に示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (k)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA。
    (l)配列番号5に示される塩基配列の全部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (m)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
    (n)配列番号8に示されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換お
    よび/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (o)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA。
    (p)配列番号7に示される塩基配列の全部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
  2. さらに、以下の(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAを保有し、フタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生産する能力を有する請求項1記載の微生物。
    (q)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
    (r)配列番号10に示されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (s)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA。
    (t)配列番号9に示される塩基配列の全部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフタル酸から2,3−ジヒドロキシ安息香酸への転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
  3. 請求項1記載の微生物をフタル酸を含有する培地中でフタル酸と反応させることにより、該培地中にサリチル酸を生成、蓄積させ、該培地からサリチル酸を採取することを特徴とするサリチル酸の製造法。
  4. 請求項1記載の微生物の培養物または該培養物の処理物およびフタル酸を水性媒体中で混合させることにより、該媒体中にサリチル酸を生成、蓄積させ、該媒体からサリチル酸を採取することを特徴とするサリチル酸の製造法。
  5. 請求項1記載の微生物をフタル酸を含有する培地中でフタル酸と反応させた後に、該培地の温度を45℃以上にすることにより、サリチル酸の生成・蓄積量を増強することを特徴とする請求項3に記載のサリチル酸の製造法。
  6. 請求項1記載の微生物の培養物または該培養物の処理物およびフタル酸を水性媒体中で混合させた後に、該媒体の温度を45℃以上にすることにより、サリチル酸の生成・蓄積量を増強することを特徴とする請求項4に記載のサリチル酸の製造法。
  7. 前記微生物が上記(a)から(p)記載のDNAのいずれか1つ以上のDNAがコードする蛋白質の生産量が増強された微生物であることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載のサリチル酸の製造法。
  8. 請求項2記載の微生物をフタル酸を含有する培地中でフタル酸と反応させることにより、該培地中に2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする2,3−ジヒドロキシ安息香酸の製造法。
  9. 請求項2記載の微生物の培養物または該培養物の処理物およびフタル酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に2,3−ジヒドロキシ安息香酸を生成、蓄積させ、該媒体から2,3−ジヒドロキシ安息香酸を採取することを特徴とする2,3−ジヒドロキシ安息香酸の製造法。
  10. 前記微生物が上記(a)から(t)記載のDNAのいずれか1つ以上のDNAがコードする蛋白質の生産量が増強された微生物であることを特徴とする請求項8または9に記載の2,3−ジヒドロキシ安息香酸の製造法。
  11. 受託番号がNITE BP-1006であるシュードモナス・スチュツェリ(Pseudomonas stutzeri)PTH10株。
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