JP2009213392A - 改良型没食子酸合成酵素および没食子酸の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規な没食子酸の製造方法を提供する。
【解決手段】以下の(A)または(B)に記載の蛋白質を発現する微生物を用いてプロトカテク酸から没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする没食子酸の製造方法。
(A)配列番号2もしくは配列番号2と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において199位のロイシンが他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有し、かつプロトカテク酸の5位を酸化する酵素活性を有する蛋白質。
(B)配列番号22もしくは配列番号22と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において200位のロイシンが他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有し、かつプロトカテク酸の5位を酸化する酵素活性を有する蛋白質。
【選択図】なし

Description

抗酸化剤や写真の現像剤として有用な没食子酸を、プロトカテク酸の5位を酸化する酵素活性(以下、プロトカテク酸5位酸化活性という)を有する蛋白質を発現する微生物を用いて工業的に製造する方法に関する。
没食子酸は、そのアルカリ性水溶液は還元力が強く、還元剤、写真の現像剤に使われる。また、タンニン合成の原料になり、青インクの製造に使われ、さらに、没食子酸プロピル、没食子酸イソアミルなどのエステルとして油脂・バターの酸化防止剤にも使用される。
酵素を用いた没食子酸の製造法に関しては、野生型酵素を用いた没食子酸の生産については報告例がないが、シュードモナス・エルギノーサPAO株が保有する野生型パラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素の385位のチロシンをフェニルアラニンに変換した変異酵素(以下、PAO変異酵素と略記する)を用いることにより、試験管内でパラヒドロキシ安息香酸を出発物質としてプロトカテク酸を経由して没食子酸を生成できることが報告されている〔非特許文献1〕。ただし、PAO変異酵素のパラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素の比活性が、野生型酵素と比べて約50分の1に減少し、没食子酸を合成するプロトカテク酸5位酸化活性も低いことが報告されている。また微生物を用いた没食子酸の製造法に関しては、大腸菌によりグルコースを原料にし、上記PAO変異酵素を用いて没食子酸を生産する例が報告されている〔特許文献1、および非特許文献2〕。しかしながら、この例では、原料の一部しか没食子酸に転換しないこと、発酵時間が長いこと、前駆体3-デヒドロキシシキミ酸が大量に蓄積して没食子酸の生産量が頭打ちになっていることなどの理由から、製造コスト面で問題がある。原料として、グルコースでなく、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸およびパラヒドロキシ安息香酸などの芳香族カルボン酸を用いた場合、酵素変換によりモル数あたり100%近い没食子酸生産も期待できるが、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸およびパラヒドロキシ安息香酸を原料として微生物を培養して没食子酸を生産できることは報告されていない。
植物ヌルデの五倍子からの抽出法を用いて没食子酸を製造した場合、製造コストが高いことから、これら化合物を工業的に有利に製造する方法が求められている。フタル酸類(フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸)は安価な原料である上、テレフタル酸はペットボトルからも再生できることから、安価な原料となる。またバイオマス利用が盛んになっているが、植物を利用してパラヒドロキシ安息香酸を大量生産することも可能となっているので、パラヒドロキシ安息香酸も安価な原料となる。このような背景から、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸などの安価な原料から没食子酸を効率よく生産する方法が所望されている。PAO変異酵素はプロトカテク酸5位酸化活性が低いことから、没食子酸を効率よく生産するためにプロトカテク酸5位酸化活性の向上が所望されている。
米国特許番号6,472,190 Entsch, B, Palfey, B.A., Ballou, D. P. と Masey, V. J. Biol. Chem. 266, 17341-17349 (1991) Spiros Kambourakis, K.M. Draths, and J. W. Frost. J.Am.Chem.Soc. 122, 9042-9043 (2000年)
本発明の課題は、プロトカテク酸5位酸化活性を持つ蛋白質(以下、プロトカテク酸5位
酸化酵素という)によりプロトカテク酸を没食子酸に変換することにより没食子酸を安価に製造する方法を提供することにある。本発明の別の課題は、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸などの安価な原料からプロトカテク酸を生産し、プロトカテク酸5位酸化酵素によりプロトカテク酸を没食子酸に変換することにより没食子酸を安価に製造する方法を提供することにある。
これまでPAO変異酵素のみがプロトカテク酸5位酸化活性を持つことが知られていたが、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)PAO株が保有する野生型酵素(以下、必要に応じて水酸化酵素HFM300と略記する)の199位のロイシンをバリンやグリシンなどの他のアミノ酸に変換した変異酵素についてPAO変異酵素よりもプロトカテク酸5位酸化活性の比活性が2倍以上高いことを見出した。またPAO変異酵素の199位のロイシンをバリンやグリシンなどの他のアミノ酸に変換した2重変異酵素を作製した場合にプロトカテク酸5位酸化活性の比活性が向上すること、およびこれら2重変異酵素の385位のフェニルアラニンをバリンやアラニンなどの他のアミノ酸に変換した場合でも、強いプロトカテク酸5位酸化活性を有することを見出した。配列番号20で表されるコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032のパラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素(以下、必要に応じて水酸化酵素HFM145と略記する)の385位のチロシンをフェニルアラニンに置換した変異酵素(配列番号22)についても200位のロイシンのバリンへの置換によりプロトカテク酸5位酸化活性の比活性が大きく向上することを見出し、199位(コリネバクテリウム・グルタミカムでは200位)のアミノ酸置換によるプロトカテク酸5位酸化活性の比活性向上に関しては、シュードモナス・エルギノーサPAO株のパラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素に限定されないことを見出した。
配列番号24(HFM145の385位のチロシンをフェニルアラニンに置換し、200位のロイシンをバリンへ置換した配列)で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA断片を含む組換えベクターを構築した後、該組換えベクターで形質転換した大腸菌を調製したところ、パラヒドロキシ安息香酸を原料として没食子酸を効率よく生産させることに成功した。
次に、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、テレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼおよびテレフタル酸トランスポーターの蛋白質をコードするDNAをロドコッカス属RHA1株よりクローニングして、組換えベクターを構築した。該組換えベクター、および配列番号24で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質を発現するベクターを用いて大腸菌を形質転換することにより、テレフタル酸代謝能を獲得した形質転換体を調製した。続いて該形質転換体を利用してテレフタル酸を原料として没食子酸を効率よく生産させることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(19)に関する。
(1)以下の(A)または(B)に記載の蛋白質を発現する微生物を用いてプロトカテク酸から没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする没食子酸の製造方法。
(A)配列番号2もしくは配列番号2と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において199位のロイシンが他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有し、かつプロトカテク酸の5位を酸化する酵素活性を有する蛋白質。
(B)配列番号22もしくは配列番号22と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において200位のロイシンが他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有し、かつプロトカテク酸の5位を酸化する酵素活性を有する蛋白質。
(2)199位のロイシンまたは200位のロイシンを置換するアミノ酸がバリンまたはグリシンである、前記(1)に記載の没食子酸の製造方法。
(3)配列番号2もしくは配列番号2と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、さらに、385位のチロシンが他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の没食子酸の製造方法。
(4)385位のチロシンを置換するアミノ酸がフェニルアラニン、バリンまたはアラニンである、前記(3)に記載の没食子酸の製造方法。
(5)前記蛋白質が、配列番号6、8、10、12、14、16、18または24で表されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、前記(1)に記載の没食子酸の製造方法。
(6)前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびプロトカテク酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする前記(1)から(5)のいずれか1項に記載の没食子酸の製造法。
(7)前記微生物がさらにテレフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力を保有する微生物であり、該微生物をテレフタル酸を含有する培地中でテレフタル酸と反応させることにより、没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする前記(1)から(5)のいずれか1項に記載の没食子酸の製造方法。
(8)前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびテレフタル酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする前記(7)に記載の没食子酸の製造法。
(9)前記微生物がさらにフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力を保有する微生物であり、該微生物をフタル酸を含有する培地中でフタル酸と反応させることにより、没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする前記(1)から(5)のいずれか1項に記載の没食子酸の製造方法。
(10)前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびフタル酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする前記(9)に記載の没食子酸の製造法。
(11)前記微生物がさらにイソフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力を保有する微生物であり、該微生物をイソフタル酸を含有する培地中でイソフタル酸と反応させることにより、没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする前記(1)から(5)のいずれか1項に記載の没食子酸の製造方法。
(12)前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびイソフタル酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする前記(11)に記載の没食子酸の製造法。
(13)前記微生物がさらにパラヒドロキシ安息香酸からプロトカテク酸を生成する能力を保有する微生物であり、該微生物をパラヒドロキシ安息香酸を含有する培地中でパラヒドロキシ安息香酸と反応させることにより、没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする前記(1)から(5)のいずれか1項に記載の没食子酸の製造方法。
(14)前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびパラヒドロキシ安息香酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする前記(13)に記載の没食子酸の製造法。
(15)テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力が、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、テレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼおよびテレフタル酸トランスポーターの蛋白質をコードするDNAを形質転換法により導入して得られることを特徴とする、前記(7)または(8)記載の没食子酸の製造方法。
(16)フタル酸からプロトカテク酸を生成する能力が、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、テレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼおよびテレフタル酸トランスポーターの蛋白質をコードするDNAを形質転換法により導入して得られることを特徴とする、前記(9)または(10)記載の没食子酸の製造方法。
(17)イソフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力が、イソフタル酸ジオキシゲナーゼ、イソフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、イソフタル酸1,2-ジヒドロジオールジヒドロゲナーゼおよびイソフタル酸トランスポーターの蛋白質をコードするDNAを形質転換法により導入して得られることを特徴とする、前記(11)または(12)記載の没食子酸の製造方法。
(18)前記微生物が、前記(A)または(B)の蛋白質をコードするDNAが導入された微生物であることを特徴とする、前記(1)から(17)のいずれか1項に記載の没食子酸の製造法。
(19)微生物がエシェリヒア(Escherichia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属またはラルストニア(Ralstonia)属に属する微生物であることを特徴とする、前記(1)から(18)のいずれか1項に記載の製造法。
本発明によれば、プロトカテク酸5位酸化活性が優れた酵素蛋白質を用いて、プロトカテク酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸を原料として没食子酸を安価に製造する方法を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるプロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質は、以下の(A)または(B)の蛋白質である。
(A)配列番号2もしくは配列番号2と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において199位のロイシンが他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有し、かつプロトカテク酸の5位を酸化する酵素活性を有する蛋白質。
(B)配列番号22もしくは配列番号22と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において200位のロイシンが他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有し、かつプロトカテク酸の5位を酸化する酵素活性を有する蛋白質。
具体的には、例えば、配列番号6、8、10、12、14、16、18、22または24で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質が挙げられる。ここで、配列番号6はシュードモナス・エルギノーサPAO株が保有する野生型パラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素(配列番号2)の199位のロイシンがバリンに置換された蛋白質のアミノ酸配列である。また、配列番号2においては、199位のロイシンがバリン以外のアミノ酸に置換されてもよく、199位のロイシンがグリシンに置換されたアミノ酸配列を配列番号8に示す。さらに、配列番号2においては、199位のロイシンの変異に加えて、385位のチロシンが他のアミノ酸に置換されてもよく、配列番号6または配列番号8の385位のチロシンがフェニルアラニンに置換されたアミノ酸配列をそれぞれ配列番号10と12に示す。また、配列番号6の385位のチロシンがアラニンまたはバリンに置換されたアミノ酸配列をそれぞれ配列番号14と18に示し、配列番号8の385位のチロシンがアラニンに置換されたアミノ酸配列をそれぞれ配列番号16に示す。
本発明で用いられるプロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質は、シュードモナス・エルギノーサPAO株に限定されず、配列番号22と24は、配列番号20で表されるアミノ酸配列を有するコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032由来の野生型プロトカテク酸5位酸化酵素に上記変異点に対応するアミノ酸(コリネバクテリウム・グルタミカムでは200位と385位)を置換した蛋白質のアミノ酸配列である。
また、該蛋白質としては、配列番号2または22のいずれかのアミノ酸配列と80%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、199位または200位のロイシンが他のアミノ酸に置換され、プロトカテク酸5位酸化酵素活性を有する蛋白質(配列番号22については385位のフェニルアラニンが置換または欠失した配列を含まない)をあげることができる。
上述した部位のアミノ酸を置換し、かつプロトカテク酸5位酸化酵素活性を有する蛋白質は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Res., 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Res., 13, 4431 (1985)、Proc.Natl. Acad. Sci., USA, 82, 488 (1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号2または20で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより取得することができる。
本発明で用いられる微生物は、上記の変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を発現する微生物である。例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物などの微生物株を変異処理し、上記の変異を有するものを単離することにより得られる。微生物の親株はアメリカ・タイプ・カルチャー・コレクション(以下、必要に応じてATCCと略記する)、独立行政法人製品基盤技術基盤機構・生物遺伝資源部門(以下、必要に応じてNBRCと略記する)、または独立行政法人 理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンターなどから入手することができる。
具体的には、シュードモナス属の微生物としては、例えばシュードモナス・エルギノーサPAO株等をあげることができる。コリネバクテリウム属の微生物としては、例えばコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032等をあげることができる。ただし、これらの菌株に限定されるものではなく、その目的を達成できる菌株であればすべて使用できる。
本発明で用いられる微生物は、上記の変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードするDNAを含有する組換え体DNAで形質転換した微生物であってもよい。本発明に使
用できる変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を生産する形質転換体は、例えば該DNAをモレキュラー・クローニング第2版に記載の方法に従って、上記の微生物からプロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードするDNAをクローニングし、変異を導入し、それをベクターDNAと連結することで組換え体DNAを作製し、該組換え体DNAを用いて宿主細胞を形質転換することにより取得することができる。以下に、DNAのクローニングと形質転換株の作製方法について詳しく述べる。
上記のシュードモナス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物を公知の方法により培養する。培養後、公知の方法(例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の方法)により、該微生物の染色体DNAを単離精製する。この染色体DNAから合成DNAを用いて、ハイブリダイゼイション法またはPCR法などによりプロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードするDNAを含む断片を取得することができる。なお、該合成DNAは、シュードモナス属またはコリネバクテリウム属の細菌由来のプロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードする遺伝子(以下、プロトカテク酸5位酸化酵素遺伝子と呼ぶ)、好ましくはシュードモナス・エルギノーサまたはコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032由来のプロトカテク酸5位酸化酵素遺伝子の塩基配列に基づいて設計することができる。具体的には、シュードモナス・エルギノーサPAO株またはコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のプロトカテク酸5位酸化酵素遺伝子の塩基配列、すなわち配列番号1および19で表される塩基配列に基づいて設計することができる。合成DNAを用いてPCRを行い、プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードする遺伝子を増幅する。得られたDNAに部位特異的変異を導入することにより、変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードする遺伝子を取得することができる。
上記の変異型プロトカテク酸5位酸化酵素遺伝子のDNAを連結するベクターとしては、エシェリヒア・コリK12株などにおいて自立複製可能なベクターであればプラスミドベクター、ファージベクター等いずれも使用可能であるが、具体的には、pUC19〔Gene, 33,
103 (1985)〕、pUC18、pBR322、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、ZAP Express〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 58 (1992)〕、pBluescript II SK(+)〔ストラタジーン社製、Nucleic Acids Res., 17, 9494 (1989)〕、pUC118(タカラバイオ社製)等を用いることができる。
該ベクターに上記で取得したDNAを連結して得られる組換え体DNAの宿主に用いるエシェリヒア・コリは、エシェリヒア・コリに属する微生物であればいずれでも用いることができるが、具体的には、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli) XL1-Blue MRF'〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 81 (1992)〕、エシェリヒア・コリC600〔Genetics, 39, 440 (1954)〕、エシェリヒア・コリY1088〔Science, 222,778 (1983)〕、エシェリヒア・コリY1090〔Science, 222, 778 (1983)〕、エシェリヒア・コリNM522〔J. Mol. Biol., 166, 1 (1983)〕、エシェリヒア・コリK802〔J. Mol. Biol., 16, 118 (1966)〕、エシェリヒア・コリJM105〔Gene, 38, 275 (1985)〕、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリBL21等をあげることができる。
ロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属またはラルストニア(Ralstonia)属に属する微生物の中に、プロトカテク酸5位酸化酵素遺伝子を導入するときは、これら微生物の中で自立複製可能なベクターを用いる。好ましくは、該微生物のいずれかとエシェリヒア・コリK12株の両方の微生物の中で自立複製可能なシャトル・ベクターを用いて、組換え体DNAを宿主となる該微生物に導入することができる。
組換え体DNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)〕、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)〕等をあげることができる。
上記のようにして得られた形質転換体から組換え体DNAを抽出し、該組換えDNAに含まれる本発明のDNAの塩基配列を決定することができる。塩基配列の決定には、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5463 (1977)〕または3730xl型DNAアナライザー(アプライド・バイオシステムズ社製)等の塩基配列分析装置を用いることができる。
また、上記において決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することによっても目的とするDNAを調製することもできる。
上記の変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を発現する形質転換体は、下記の方法を用いて上記のDNAを宿主細胞中で発現させることによって得られる。
上記の変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードするDNAを用いる際には、必要に応じて、本発明の蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製することができる。また、該蛋白質をコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、該蛋白質の生産率を向上させることもできる。本発明のDNAを発現する形質転換体は、上記DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換え体DNAを作製し、該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより取得することができる。
変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を発現させる宿主としては、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。
好ましくは、テレフタル酸、フタル酸またはイソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸の代謝能(テレフタル酸、フタル酸またはイソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸からプロトカテク酸を生成する能力)を有する微生物を用いることができる。より好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸の代謝能を有するエシェリヒア(Escherichia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、コマモナス(Comamonas)属、バチルス属(Bacillus)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ノボスフィンゴビウム(Novosphigobium)属またはバークホルデリア(Burkholderia)属の細菌をあげることができる。さらに好ましくは、テレフタル酸の代謝能を有するロドコッカス属細菌RHA1とコマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)E6をあげることができる。
このような微生物に変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を発現させることにより、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸からプロトカテク酸を経て没食子酸を製造することができる。すなわち、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸の代謝能を有し、かつ、変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を発現する微生物を、それぞれ、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸を含有する培地中でこれらの化合物と反応させることにより、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸から生成したプロトカテク酸から没食子酸を得ることができる。
なお、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸からプロト
カテク酸を生成するプロセスは別の微生物を用いて行ってもよい。すなわち、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸の代謝能を有する微生物によってテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸から生成したプロトカテク酸を、変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を発現する微生物と反応させて没食子酸を得る方法も本発明の没食子酸の製造方法に含まれる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込が可能で、本発明のDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明のDNAを含有してなる組換え体DNAは原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明のDNA、転写終結配列、より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質、または、該蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質をコードするDNAを大腸菌などの微生物に導入し、発現するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。より具体的には、ベクターとしては、例えば、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pUC18、pBR322、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、pKK233-2(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-8(キアゲン社製)、pET-3(ノバジェン社製)pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(+)(ストラタジーン社製)、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)等を用いることができる。
プロモーターとしては、大腸菌(エシェリヒア・コリ)等の宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター等の、T7プロモーターなどの大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、及びtacプロモーター、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば5〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。本発明の組換え体DNAにおいては、本発明のDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
組換え体DNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69, 2110 (1972) 〕、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)〕、接合伝達法〔J. G. C. Ottow, Ann. Rev.Microbiol., Vol.29, p.80 (1975)〕、細胞融合法〔M.H. Gabor, J. Bacteriol., Vol.137, p.1346 (1979)〕等をあげることができる。
テレフタル酸、フタル酸またはイソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸から没食子酸を製造する場合、フタル酸またはイソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸からプロトカテク酸を生成する能力を有する微生物に変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコ
ードするDNAを導入する。
本発明で用いられるテレフタル酸、フタル酸またはイソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸の代謝能(テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸からプロトカテク酸を生成する能力)を有する微生物は、自然界からのサンプルをもとに、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸を炭素源とする集積培養法を用いて取得することができる。好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸の代謝能を有するシュードモナス属、ロドコッカス属、コマモナス属、バチルス属、マイコバクテリウム属、ノボスフィンゴビウム属またはバークホルデリア属の細菌をあげることができる。
なお、ロドコッカス属RHA1のように、プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を発現する微生物はパラヒドロキシ安息香酸からプロトカテク酸を生成する能力も有しているため、プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を発現させた微生物をパラヒドロキシ安息香酸を含む培地で培養することにより、パラヒドロキシ安息香酸から没食子酸を製造することができる。
テレフタル酸から没食子酸を製造する場合、変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードするDNAを導入するテレフタル酸の代謝能(テレフタルからプロトカテク酸を生成する能力)を有する微生物は、テレフタル酸からプロトカテク酸への代謝に関わるテレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、およびテレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼおよびテレフタル酸トランスポーターの蛋白質を生産する能力を有する微生物を挙げることができる。
フタル酸から没食子酸を製造する場合、変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードするDNAを導入するフタル酸の代謝能(フタル酸からプロトカテク酸を生成する能力)を有する微生物は、フタル酸ジオキシゲナーゼ、フタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、フタレート4,5-シス-ジヒドロキシジオール・ジヒドロゲナーゼ、4,5-ジヒドロキシフタレート脱炭酸酵素およびフタル酸トランスポーターの蛋白質を生産する能力を有する微生物を挙げることができる。
イソフタル酸から没食子酸を製造する場合、変異型プロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質をコードするDNAを導入するイソフタル酸の代謝能(イソフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力)を有する微生物は、イソフタル酸ジオキシゲナーゼ、イソフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、イソフタル酸1,2-ジヒドロジオールジヒドロゲナーゼおよびイソフタル酸トランスポーターの蛋白質を生産する能力を有する微生物を挙げることができる。
これらの蛋白質を生産する能力を有する微生物は、これらの蛋白質をコードするDNAを組換えDNA技術を用いて単離した後、上記のプロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を発現する形質転換体を取得する方法と同じ方法用いて取得することもできる。
以上のようにして得られる本発明の微生物を、好ましくは1mM〜1Mのプロトカテク酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸を含有する培地で培養し、培養物中に没食子酸を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、没食子酸を製造することができる。本発明の微生物を培地に培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
本発明の微生物の培養は、炭素源、窒素源、無機塩、各種ビタミン等を含む通常の栄養培地で行うことができ、炭素源としては、例えばブドウ糖、ショ糖、果糖等の糖類、エタノール、メタノール等のアルコール類、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸類、廃糖蜜等が用いられる。窒素源としては、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等がそれぞれ単独または混合して用いられる。また、無機塩としては、例えばリン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム等が用いられる。この他にペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンステイープリカー、
カザミノ酸、ビオチン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に添加することができる。没食子酸を生産するための原料としては、プロトカテク酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸を添加する。
培養は、通常、通気攪拌、振とう等の好気条件下で行う。培養温度は、本発明の微生物が生育し得る温度であれば特に制限はなく、また、培養途中のpHについても本発明の微生物が生育し得るpHであれば特に制限はない。培養中のpH調整は、酸またはアルカリを添加して行うことができる。
本発明の微生物を培養した後、プロトカテク酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸もしくはパラヒドロキシ安息香酸のいずれかを含む水性媒体中に、該微生物の培養物もしくは該培養物の処理物を加えることにより、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することもできる。
該培養物の処理物として、本発明の微生物を担体に固定化したものを用いてもよい。その場合には、培養物から回収されたまま、あるいは適当な緩衝液、例えば0.02〜0.2M程度のリン酸緩衝液(pH6〜10)等で洗浄された菌体を使用することができる。また、培養物から回収された菌体を、超音波、圧搾等の手段で破砕して得られる破砕物、該破砕物を水等で抽出して得られるプロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質を含有する抽出物、該抽出物を更に硫安塩析、カラムクロマトグラフィー等の処理を行って得られるプロトカテク酸5位酸化酵素蛋白質の部分精製成分等を担体に固定化したものも、本発明の没食子酸の製造に使用することができる。
これら菌体、菌体破砕物、抽出物または精製酵素の固定化は、それ自体既知の通常用いられている方法に従い、アクリルアミドモノマー、アルギン酸、またはカラギーナン等の適当な担体に菌体等を固定化させる方法により行うことができる。
反応に用いる水性媒体は、プロトカテク酸を含有する水溶液または適当な緩衝液、例えば0.02〜0.2M程度のリン酸緩衝液(pH6〜10)とすることができる。この水性媒体には、さらに菌体の細胞膜の物質透過性を高める必要のあるときには、トルエン、キシレン、非イオン性界面活性剤等を0.05〜2.0%(w/v)添加することもできる。
水性媒体中の反応原料となるプロトカテク酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸の濃度は、0.1mM〜1M程度が適当である。上記の水性媒体における酵素反応温度およびpHは特に限定されないが、通常10〜60℃、好ましくは15〜50℃が適当であり、反応液中のpHは5〜10、好ましくは6〜9付近とすることができる。また、pHの調整は、酸またはアルカリを添加して行うことができる。発明で使用する酵素は、菌体抽出液をそのまま又はそれから遠心分離、濾過等で集め、これを水又は緩衝液に懸濁して得ることができる。このようにして得られた酵素をプロトカテク酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸と水の存在下、反応させるが、反応液中のプロトカテク酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸の濃度は酵素の活性を阻害しない範囲で可能な限り高くするのが有利である。反応は静置、攪拌、振盪のいずれの方法で行ってもよい。また、酵素を適当な支持体に固定化してカラムに充填し、プロトカテク酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸を含む溶液を流す方法も利用できる。反応は、通常10〜60℃、好ましくは15〜50℃、pH5〜9、好ましくはp6〜8で行う。
なお、上記水性媒体には、反応時に酸化剤を添加すると、没食子酸の生成収率が一層向上
する場合がある。酸化剤としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の硝酸塩、塩化第二鉄等の金属塩、ハロゲン、ペルオクソ酸等が挙げられ、好ましくは、亜硝酸ナトリウム、塩化第二鉄が挙げられる。添加濃度は、酸化剤の種類によって異なるが、没食子酸の生成を阻害しない濃度で加えることが望ましく、通常0.001〜0.05%(W/V)、好ましくは0.005〜0.02%である。
培養終了後の培養液または反応液中からの没食子酸は、酢酸エチル等の有機溶剤によって抽出することにより単離・精製することができる。また、必要に応じて遠心分離等により該培養液から菌体等の不溶成分を除いた後、例えば、活性炭を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、結晶化法、沈殿法等の方法を単独でまたは組み合わせることによって没食子酸を採取することができる。
以下に本発明の方法を実施例により具体的に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1.没食子酸合成活性を有するコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の水酸化酵素を下記のようにして同定した。
(1)シュードモナス・エルギノーサPAO株のパラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素のアミノ酸配列と相同性を有するコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の蛋白質の同定
シュードモナス・エルギノーサPAO株のパラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素(HFM300)は、パラヒドロキシ安息香酸を酸化してプロトカテク酸を生成する活性を保有するが、プロトカテク酸5位酸化活性を生成する活性は全く保有していないと報告されている。また、プロトカテク酸から没食子酸を生成する活性を持つ酵素に関してはシュードモナス・エルギノーサPAO株が保有する野生型パラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素(HFM300)の385位のチロシンをフェニルアラニンに変換した変異酵素HFM300Y385Fでのみ、活性を持つと報告されている〔Entsch, B, Palfey, B.A., Ballou, D. P. と Masey, V. J. Biol. Chem. 266, 17341-17349 (1991)〕。一方、ナショナル・センター・フォア・バイオテクノロジー・インフォメーション(以下、NCBIと略記する)のジェンバンク(GenBank;以下、GBと略記する)データベースから、配列番号2に示すシュードモナス・エルギノーサPAO株のパラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素のアミノ酸配列を問い合わせ配列とするBLAST相同性解析法を用いて検索を行った。その結果、アミノ酸発酵の工業生産に利用されているコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のゲノム配列中にHFM300と40.1%の相同性を有する蛋白質HFM145(蛋白質の配列番号は20であり、GBアクセッション番号はNP_600305.1)を同定した。
(2)染色体DNAの単離精製
蛋白質HFM145をコードするDNAをPCR法を用いてクローニングするために、菌株コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032(NBRC番号:12168)をNBRCから入手し、NBRCからの情報に従って培養し、これら培養菌体から染色体DNAをディーエヌイージー・ティシュ・キット(キアゲン社製(DNeasy tissue kit;Qiagen)を用いて単離精製した。
(3)PCRプライマーの設計と調製
NCBIのGenBankデータベースより蛋白質HFM145をコードする塩基配列(GBアクセッション番号はNC_003450.3;配列番号19)をインターネット経由で取得した。この塩基配列をもとに各遺伝子のDNAをPCR法を用いてクローニングするためのPCRプライマーを設計し、合成した。PCRプライマーの塩基配列は配列番号25と配列番号26に示した。
(4)PCR法による蛋白質HFM145をコードするDNAの増幅
ロシュ・ダイアグノスティクス社から購入したエキスパンド・ハイ・フィデリティ・PCRシステム(Expand High Fidelity PCR System)およびロシュ・ダイアグノスティクス社から購入したジー・シー・リッチ・PCRシステム(GC Rich PCR System)を用いて、上記で得た染色体DNAを鋳型にし、上記PCRプライマーを用いて、添付の説明書に従って蛋白質HFM145をコードするDNAを増幅させた。なお、ジー・シー・リッチ・PCRシステムを用いたPCR反応はデメチルスルホオキシドと7-deasa-dGTPの存在下で実施した。
(5)遺伝子のクローニング
上記で得られた蛋白質HFM145をコードするDNA、すなわちHFM145遺伝子のDNAをクローンテック社から購入したBD・イン−フュージョン・PCR・クローニング・キット(BD In-Fusion PCR Cloning Kit)を用いて、大腸菌T7プロモーターを利用した大腸菌用発現ベクターであるプラスミドpROX1(ロシュ・アプライド・サイエンス社から入手した;塩基配列は配列番号27に示した)の制限酵素部位Nco Iと制限酵素部位Sma I の間にクローニングし、HFM145遺伝子を発現するプラスミドpROX_HFM145を得た。なお、これら発現プラスミドは、各野生型酵素のC末端にGly-Gly-Gly-Ser-His-His-His-His-His-His(配列番号28)の10アミノ酸のペプチドが付加された酵素蛋白質が発現する構造を有する。
これらプラスミドに組み込まれたDNAの塩基配列は、財団法人かずさDNA研究所の柴田大輔博士に依頼して、ジデオキシヌクレオチド酵素法(dideoxychain termination法)〔Sanger, F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol. 74, p.5463, (1977)〕により決定され、それぞれのプラスミドが目的の遺伝子を含むことを確認した。
(6)形質転換株の造成と培養
上記で述べたプラスミドpROX_HFM145を大腸菌K-12 BL21(DE3)株にカルシウムイオンを用いる形質転換法を用いて導入することにより、形質転換株BL21/pROX__HFM145を造成した。なお、BL21(DE3)株は、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 ナショナル・バイオ・リソース・プロジェクトより菌株番号ME9026として入手した。
(7)上記形質転換株を用いた没食子酸の生産
形質転換株BL21/pROX_HFM145を5mlのLB培地で一晩培養した。プラスミドを維持するためにアンピシリンを最終濃度100ppmになるように加えた。新しいLB培地に1/100容量接種し、25℃で培養し対数増殖期にIPTG(isopropyl-1-thio-β-D-galactopyranoside)を終濃度1mMになるように添加し、3時間タンパク誘導を行った。タンパク誘導後、大腸菌を遠心によって集菌した。上清を捨て、500μlのHEPES緩衝液(50mM HEPES−NaOH(pH7.5)、10%グリセロール)に懸濁した。大腸菌懸濁液を超音波破砕機によって、細胞破砕を行った。大腸菌懸濁液は遠心分離(4℃、10分、20000×g)を行い、上清と沈殿物に分離し、上清を粗酵素液とした。粗酵素液のタンパク濃度をブラッドフォード法に基づいたバイオラッド(Bio-Rad)プロテイン・アッセイ(Bio-Rad Laboratories, CA, USA)を用いて計測し、1mg/mlになるようにHEPES緩衝液で希釈した。
没食子酸合成反応は0.5mMの基質(プロトカテク酸またはパラヒドロキシ安息香酸)、0.01mM FAD、0.01mM FMN(フラビンモノヌクレオチド)、2.5mM NADH、25mM NADPHを含むHEPES緩衝液中で100μlの反応系で行った。プロトカテク酸を基質にした場合、粗酵素68μgを反応液に加えて反応を開始した。酵素反応液は30℃で反応を行い0時間および1時間後に1mlの酢酸エチルにて反応を停止した。また、パラヒドロキシ安息香酸を基質にした場合、粗酵素10μgを
反応液に加えて反応を開始した。酵素反応液は30℃で反応を行い、0分および30分後に1mlの酢酸エチルにて反応を停止した。さらに150μlのHEPES緩衝液と2N HCl 1.5μlを加えて、5分間激しく混和し、遠心分離(室温、5分、20000×g)を行った。二層に分離した反応液・酢酸エチル混和物の上層(酢酸エチル層)を800μl回収し、新しい1.5mlチューブに移した。
真空遠心乾燥機で乾燥後、10μl アセトニトリルを加え、5分間激しく混和し、さらに190μlの水で希釈し、孔径0.2μmのフィルター(Millex-LG)で濾過し、バイアル瓶に注入した。バイアル瓶はLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)にセットし、LC−TOF型質量分析計による解析を行った。没食子酸はLC−TOF型質量分析計を用いて検出した。標品の没食子酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの質量値を合わせて生産された没食子酸を同定した。
水酸化酵素HFM145はプロトカテク酸を基質にした場合、没食子酸を合成した。粗酵素タンパク1mg当たりの1時間当たりの没食子酸合成は249μM/時間/mg 粗酵素タンパクであった。
実施例2.水酸化酵素HFM145の活性とPAO変異酵素の活性を以下のようにして比較した。
(1)ポリシストロン型発現プラスミドの構築
上記HFM145遺伝子を大腸菌 JM109株、大腸菌 JM109(DE3)株や大腸菌 BL21(DE3)株で遺伝子の転写・翻訳効率に依存しない効率よい発現を行うために、目的遺伝子の転写は疑似遺伝子に依存し、疑似遺伝子の翻訳効率を維持した状態で目的遺伝子も翻訳される発現系の構築を行った。より具体的にはT7プロモーター配列と疑似遺伝子及び目的遺伝子をHindIII部位とSphI部位を介してpUC19プラスミドDNA内に挿入するために、配列番号29〜32で表される4本の合成DNAを合成した。これら合成DNAをpUC19(タカラバイオ(株)社製)のHindIII部位とSphI部位の間に挿入し、発現ベクターpUTCH19を構築した。
(2)PAO変異酵素の造成とベクターへの組み込み
シュードモナス・エルギノーサPAO株のパラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素遺伝子塩基配列データ(NC_002516)をNCBIのGenBankデータベースよりインターネット経由で取得した。この塩基配列をもとに各遺伝子のDNAをPCR法を用いてクローニングするための配列番号33で表されるフォワードPCRプライマーと配列番号34で表されるリバースPCRプライマーを設計し、合成した。シュードモナス・エルギノーサPAO株の染色体DNA(ATCC番号:47085D-5)をATCCから入手し、これを鋳型として、2種のPCRプライマーとPrimeSTAR酵素(タカラ・バイオ社製)を用いたPCRによりパラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素遺伝子のDNAを増幅させた後、Taq ポリメラーゼ(タカラ・バイオ社製)による3'末端にA残基を付与する処理を行った。ゲル電気泳動後により目的DNAを精製した後、pT7Blue-T ベクターに組み込むことにより、パラヒドロキシ安息香酸水酸化酵素蛋白質HFM300をコードするDNAを運ぶプラスミドpT7Blue_HFM300を造成した。pT7Blue_HFM300から制限酵素HindIIIと制限酵素 XbaIにより各酵素蛋白質をコードするDNAを切り出し、発現ベクターpUTCH19に組み込むことにより、プラスミドpUTCH_HFM300を造成した。
同様に、配列番号35で表されるフォワードPCRプライマーと配列番号36で表されるリバースPCRプライマーを用いるPCR法により、酵素蛋白質HFM300の385番目のチロシンをフェニルアラニンに置換した変異酵素蛋白質HFM300Y385F(PAO変異酵素)をコードするDNAを増幅し、pT7Blue-T ベクターに組み込むことにより、蛋白質HFM300Y385FをコードするDNAを運ぶプラスミドpT7Blue_HFM300Y385Fを造成した。pT7Blue_HFM300Y385Fから制限酵素HindIIIと制限酵素XbaIにより各酵素蛋白質をコードするDNAを切り出し
、発現ベクターpUTCH19に組み込むことにより、プラスミドpUTCH_HFM300Y385Fを造成した。
(3)酵素蛋白質HFM145を発現するプラスミドの構築
実施例1の結果から、酵素蛋白質HFM145を発現する形質転換株の培養抽出液を用いたときに、良好な没食子酸の生成が観察された。そこで、酵素蛋白質HFM145を効率よく発現するプラスミドの構築を行った。上記プラスミドpROX_HFM145から生産される酵素蛋白質HFM145は、いずれもC末端に10アミノ酸のペプチド(Gly-Gly-Gly-Ser-His-His-His-His-His-His(配列番号28))が付加されている。これらペプチドを除去した酵素蛋白質を発現するプラスミドを構築するために、配列番号37と38に示す2種類のPCRプライマーを設計し、合成した。
pROX_HFM145プラスミドDNAを鋳型として、上表のPCRプライマーとPrimeSTAR酵素(タカラ・バイオ社製)を用いたPCRにより目的DNAを増幅させた後、Taq ポリメラーゼ(タカラ・バイオ社製)による3'末端にA残基を付与する処理を行った。ゲル電気泳動後により目的DNAを精製した後、pT7Blue-T ベクターに組み込むことにより、プラスミドpT7Blue_HFM145を造成した。これらプラスミドから制限酵素HindIIIと制限酵素XbaIまたはKpnIにより各酵素蛋白質をコードするDNAを切り出し、発現ベクターpUTCH19に組み込むことにより、プラスミドpUTCH_HFM145を造成した。
(4)変異酵素蛋白質HFM145Y385Fを発現するプラスミドの構築
これまでにプロトカテク酸から没食子酸を生成する活性を持つことが証明された酵素は、酵素蛋白質HFM300の385番目のチロシンをフェニルアラニンに置換した変異酵素蛋白質HFM300Y385Fのみであった。そこで、酵素蛋白質HFM145の385番目のチロシンをフェニルアランニンに置換した変異酵素蛋白質HFM145Y385Fを発現するプラスミドを上記で述べた方法と同様の方法により構築した。
配列番号39と40に示す2種類のPCRプライマーを設計し、合成した。pROX_HFM145のプラスミドDNAを鋳型として、表4のPCRプライマーとPrimeSTAR酵素(タカラ・バイオ社製)を用いたPCR法により目的DNAを増幅させた後、Taq ポリメラーゼ(タカラ・バイオ社製)による3'末端にA残基を付与する処理を行った。ゲル電気泳動後により目的DNAを精製した後、pT7Blue-T ベクターに組み込むことにより、プラスミドpT7Blue_HFM145Y385Fを造成した。これらプラスミドから制限酵素HindIIIと制限酵素XabIまたはKpnIにより各酵素蛋白質をコードするDNAを切り出し、発現ベクターpUTCH19に組み込むことにより、プラスミドpUTCH_HFM145Y385Fを造成した。
(5)蛋白質HFM300、HFM145およびHFM145Y385Fの大腸菌による生産
プラスミドpUTCH_HFM300、pUTCH_HFM145およびpUTCH_HFM145Y385Fをそれぞれ大腸菌JM109に形質転換法により導入し、組換え大腸菌JM109/pUTCH_HFM300、JM109/pUTCH_HFM145およびJM109/pUTCH_HFM145Y385Fを造成した。これら形質転換体を、lacプロモーター誘導発現用培地であるオーバーナイト・エクスプレス・インスタントTB(Overnight Express Instant TB;Novagen社製;以下、OEI−TB培地と略す)を用いて、37℃で14時間培養した。集菌後、HEPES−グリシン緩衝液 0.5mlに懸濁した。この懸濁液に対して超音波破砕処理を加え、遠心した後、上清を回収して粗酵素液とした。続いて、粗酵素液の蛋白質濃度をブラッドフォード法により計測し、1mg/mlに調製した。
(6)没食子酸合成酵素活性の測定
上記5で調製した粗酵素液の没食子酸合成酵素活性を次のようにして測定した。酵素反応は、プロトカテク酸(基質)500μM、FAD 10μM、FMN 10μM、NADH
2.5mM、NADP 2.5mM、粗酵素液68μgを含む100μlの反応液で30
℃で1時間行った。反応後、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)を用いて、生成した没食子酸の量を測定した。その結果、組換え大腸菌JM109/pUTCH_HFM300、JM109/pUTCH_HFM145およびJM109/pUTCH_HFM145Y385Fにおいて、それぞれ1mg蛋白質あたり、133μM、172μM、865μMの没食子酸が検出された。この活性測定結果より、各没食子酸合成酵素の活性比は下表のとおりであった。
Figure 2009213392
発現ベクターpUTCH19においては、該ベクターに組み込まれた遺伝子は同じ発現効率で蛋白質が生産されるように設計されているが、そのことを確認するために、上記粗酵素液内の没食子酸合成酵素蛋白質の量を下記のようにして測定した。上記で1mg/mlに調製した粗酵素タンパク液10μL(10μg)にβ−メルカプトエタノール(99.5%を0.25μl、10%ドデシル硫酸ナトリウム溶液を1.25μl、染色液1.25μl加えて、5分間煮沸処理を行った。冷却した泳動用サンプルをポリアクリルアミドゲル(ATTO
e-PAGEL E-T1020L)のウェルにアプライし、20mAで80分間泳動した。ゲルをクマシブリリアントブルー溶液(ATTO EzStainAqua)を用いてタンパク染色を行った。蒸留水で十分に脱色し、スキャナーを用いて画像を電子的に取り込んだ。ベクターコントロールと比較して、新しく発現したタンパクの中にHFM酵素タンパクのアミノ酸配列から予想される分子量(約44kD)のシグナルが見られた。電子的に取り込んだ画像を画像処理ソフトウェアNIH ImageJ(http://www.bioarts.co.jp/~ijjp/ij/)で解析したところ、各HFM酵素タンパクの発現量はサンプル間で違いは観察されなかった。
実施例3.水酸化酵素HFM300の199位のアミノ酸置換変異体を以下のようにして造成し、酵素活性を測定した。
(1)水酸化酵素HFM300の199位にアミノ酸置換を有する変異体におけるアミノ酸置換の種類
上述のように、シュードモナス・エルギノーサPAO株の水酸化酵素HFM300の385位のチロシン、またはコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の水酸化酵素HFM145の385位のチロシンに変異を導入することにより、没食子酸合成活性が向上することが示された。これら酵素の他のアミノ酸残基に変異を導入することにより、没食子酸合成活性を向上させることを下記のようにして試みた。具体的には、HFM300の199位のロイシン残基およびHFM145の200位のロイシン残基を他のアミノ酸残基に置換した8種類の変異体(表2に示す)を造成した。
Figure 2009213392
(2)変異酵素蛋白質HFM300_L199Vを発現するプラスミドの造成
酵素蛋白質HFM300の199位のロイシンをバリンに置換した変異酵素蛋白質HFM300_L199Vを発現するプラスミドを次のようにして構築した。酵素蛋白質HFM300をコードする塩基配列データ(配列番号1)をもとに変異酵素蛋白質HFM300_L199Vをコードする遺伝子を作製するために、配列番号41で表されるフォワードPCRプライマーと配列番号42で表されるリバースPCRプライマーを設計し、合成した。水酸化酵素蛋白質HFM300をコードするDNAを運ぶプラスミドpUTCH_HFM300を鋳型として、2種のPCRプライマーとPfu酵素(ストラタジーン社製)を用いたPCRにより酵素蛋白質HFM300の199番目のロイシンをバリンに置換した変異酵素蛋白質HFM300_L199VのDNAを増幅し、タンパク発現ベクターにクローニングを行い、pUTCH_HFM300_L199Vを造成した。
(3)変異酵素蛋白質HFM300_L199Gを発現するプラスミドの造成
(2)と同様に、配列番号43で表されるフォワードPCRプライマーと配列番号44で表されるリバースPCRプライマーを用いる部位特異的変異導入PCR法により、酵素蛋白質HFM300の199番目のロイシンをグリシンに置換した変異酵素蛋白質HFM300_L199GをコードするDNAを増幅し、タンパク発現ベクターにクローニングを行い、pUTCH_HFM300__L199Gを造成した。
(4)蛋白質HFM300、HFM300_L199G、およびHFM300_L199Vの大腸菌による生産
プラスミドpUTCH_HFM300_L199GおよびpUTCH_HFM300_L199Vをカルシウムイオンを用いる形質転換法を用いて大腸菌JM109導入することにより、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199GおよびJM109/ pUTCH_HFM300_L199Vを造成した。また、比較のためのコントロールとして、JM109/ pUTCH_HFM300も同時に実験に供した。これらの形質転換体を、lacプロモーター誘導発現用培地であるオーバーナイト・エクスプレス・インスタントTB(Overnight Express Instant TB;Novagen社製;以下、OEI−TB培地と略す)を用いて、37℃で14時間培養した。プラスミドを維持するためにアンピシリンを最終濃度100ppmになるように加えた。集菌後、HEPES−グリシン緩衝液 0.5mlに懸濁した。この懸濁液に対して超音波破砕処理を加え、遠心した後、上清を回収して粗酵素液とした。続いて、粗酵素液の蛋白質濃度をブラッドフォード法に基づいたバイオラッド(Bio-Rad)プロテイン・アッセイ(Bio-Rad Laboratories, CA, USA)を用いて計測し、1mg/mlになるようにHEPES緩衝液で希釈した。
(5)没食子酸合成酵素活性の測定
上記で調製した粗酵素液の没食子酸合成酵素活性を次のようにして測定した。酵素反応は、プロトカテク酸(基質)500μM、FAD 10μM、FMN 10μM、NADH 2.5mM、NADP 2.5mM、粗酵素液68μgを含む100μlの反応液で30℃で1時間行った。反応後、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)を用いて、生成した没食子酸の量を測定した。
没食子酸合成反応は0.5mMの基質(プロトカテク酸またはパラヒドロキシ安息香酸)、0.01mM FAD、0.01mM FMN、2.5mM NADH、25mM NADPHを含むHEPES緩衝液中で100μlの反応系で行った。プロトカテク酸を基質にした場合、粗酵素68μgを反応液に加えて反応を開始した。酵素反応液は30℃で反応を行い0時間および1時間後に1mlの酢酸エチルにて反応を停止した。さらに150μlのHEPES緩衝液と2N HCl 1.5μlを加えて、5分間激しく混和し、遠心分離(室温、5分、20000×g)を行った。二層に分離した反応液・酢酸エチル混和物の上層(酢酸エチル層)を800μl回収し、新しい1.5mlチューブに移した。真空遠心乾燥機で乾燥後、10μl アセトニトリルを加え、5分間激しく混和し、さらに190μlの水で希釈し、孔径0.2μmのフィルター(Millex-LG)で濾過し、バイアル瓶に注入した。バイアル瓶はLC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)にセットし、LC−TOF型質量分析計による解析を行った。没食子酸はLC−TOF型質量分析計を用いて検出した。標品の没食子酸と比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの質量値を合わせて生産された没食子酸を同定した。
その結果、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199G、JM109/ pUTCH_HFM300_L199V、JM109/ pUTCH_HFM300において、それぞれ1mg蛋白質あたり・1時間当たりの活性は表3と表4のとおりであった。
Figure 2009213392
Figure 2009213392
また酵素蛋白質HFM300との各没食子酸合成酵素の活性比は表5のとおりであった。
Figure 2009213392
実施例4.酵素蛋白質HFM300の199位と385位のアミノ酸残基に変異を導入した二重変異酵素蛋白質を下記のようにして造成した。
(1)HFM300_L199G_Y385Fの造成
配列番号41で表されるフォワードPCRプライマーと配列番号42で表されるリバースPCRプライマーを用いる部位特異的変異導入PCR法により、プラスミドpUTCH_HFM300_Y385Fを鋳型として、酵素蛋白質HFM300_Y385Fの199番目のロイシンをバリンに置換した変異酵素蛋白質HFM300_L199V_Y385FをコードするDNAを増幅し、タンパク発現ベクターにクローニングを行い、pUTCH_HFM300_L199V_Y385Fを造成した。
(2)HFM300_L199V_Y385Fの造成
プラスミドpUTCH_HFM300_Y385Fを鋳型として、配列番号43で表されるフォワードPCRプライマーと配列番号44で表されるリバースPCRプライマーを用いる部位特異的変異導入PCR法により、酵素蛋白質HFM300_Y385Fの199番目のロイシンをグリシンに置換した変異酵素蛋白質HFM300_L199G_Y385FをコードするDNAを増幅し、タンパク発現ベクターにクローニングを行い、pUTCH_HFM300_L199G_Y385Fを造成した。
(3)HFM300_L199V_Y385Aの造成
同様に、配列番号45で表されるフォワードPCRプライマーと配列番号46で表されるリバースPCRプライマーを用いる部位特異的変異導入PCR法により、プラスミドpUTCH_HFM300_L199Vを鋳型として、酵素蛋白質HFM300_Y385Fの385番目のチロシンをアラニンに置換した変異酵素蛋白質HFM300_L199V_Y385AをコードするDNAを増幅し、タンパク発現ベクターにクローニングを行い、pUTCH_HFM300_L199V_Y385Aを造成した。
(4)HFM300_L199G_Y385Aの造成
同様に、配列番号45で表されるフォワードPCRプライマーと配列番号46で表されるリバースPCRプライマーを用いる部位特異的変異導入PCR法により、プラスミドpUTCH_HFM300_L199Gを鋳型として、酵素蛋白質HFM300_L199Gの385番目のチロシンをアラニンに置換した変異酵素蛋白質HFM300_L199G_Y385AをコードするDNAを増幅し、タンパク発現ベクターにクローニングを行い、pUTCH_HFM300_L199G_Y385Aを造成した。
(5)HFM300_L199V_Y385Vの造成
同様に、配列番号47で表されるフォワードPCRプライマーと配列番号48で表されるリバースPCRプライマーを用いる部位特異的変異導入PCR法により、プラスミドpUTCH_HFM300_L199Vを鋳型として、酵素蛋白質HFM300_L199Vの385番目のチロシンをバリンに置換した変異酵素蛋白質HFM300_L199V_Y385VをコードするDNAを増幅し、タンパク発現ベクターにクローニングを行い、pUTCH_HFM300_L199V_Y385Vを造成した。
(6)二重変異酵素蛋白質HFM300_L199V_Y385F、変異酵素蛋白質HFM300_L199G_Y385F、変異酵素蛋白質HFM300_L199V_Y385A、変異酵素蛋白質HFM300_L199G_Y385Aおよび変異酵素蛋白質HFM300_L199V_Y385Vの大腸菌による生産
プラスミドpUTCH_HFM300_L199V_Y385F、pUTCH_HFM300_L199G_Y385F、pUTCH_HFM300_L199V_Y385A、pUTCH_HFM300_L199G_Y385AおよびpUTCH_HFM300_L199V_Y385をそれぞれ大腸菌JM109に形質転換法により導入し、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199V_Y385F、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199G_Y385F、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199V_Y385A、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199G_Y385Aおよび組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199V_Y385を造成した。また、比較のためのコントロールとして、JM109/ pUTCH_HFM300も同時に実験に供した。これらの形質転換体をlacプロモーター誘導発現用培地であるオーバーナイト・エクスプレス・インスタントTB(Overnight Express Instant TB;Novagen社製;以下、OEI−TB培地と略す)を用いて、37℃で14時間培養した。集菌後、HEPES−グリシン緩衝液 0.5mlに懸濁した。この懸濁液に対して超音波破砕処理を加え、遠心した後、上清を回収して粗酵素液とした。続いて、粗酵素液の蛋白質濃度をブラッドフォード法により計測し、1mg/mlに調製した。
(7)没食子酸合成酵素活性の測定
上記(6)で調製した粗酵素液の没食子酸合成酵素活性を次のようにして測定した。酵素反応は、プロトカテク酸(基質)500μM、FAD 10μM、FMN 10μM、NADH 2.5mM、NADP 2.5mM、粗酵素液68μgを含む100μlの反応液で30℃で1時間行った。反応後、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)を用いて、生成した没食子酸の量を測定した。その結果、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199V_Y385F、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199G_Y385F、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199V_Y385A、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199G_Y385A、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM300_L199V_Y385、JM109/ pUTCH_HFM300において、それぞれ1mg蛋白質あたりの活性は表6と表7のとおりであった。
Figure 2009213392
Figure 2009213392
また酵素蛋白質HFM300との各没食子酸合成酵素の活性比は表8のとおりであった。
Figure 2009213392
実施例5.水酸化酵素HFM145の200位のアミノ酸置換変異体を以下のようにして造成し、酵素活性を測定した。
(1)二重変異酵素蛋白質HFM145_L200V_Y385Fを発現するプラスミドの造成
酵素蛋白質HFM300の二重変異導入によって、プロトカテク酸から没食子酸を生成する活性が大幅に増加することが明らかになったので、同様にHFM300の385位のチロシンに相当するHFM145の385位のチロシンをフェニルアラニンに変換し、かつHFM300の199位のロイシンに相当するHFM145の200位のロイシンをバリンに変換した二重変異導入酵素
の作製を以下のようにして行った。
まず、配列番号49と配列番号50に示す2種類のPCRプライマーを設計し、合成した。これらPCRプライマーとPrimeSTAR酵素(タカラ・バイオ社製)を用いた部位特異的変異導入PCR法によりpUTCH_HFM145_Y385FのプラスミドDNAを鋳型として、変異酵素蛋白質HFM145_Y385Fの200番目のロイシンをバリンに置換した二重変異導入酵素蛋白質HFM145_L200V_Y385FをコードするDNAを増幅し、タンパク発現ベクターにクローニングを行い、pUTCH_HFM145_L200V_Y385Fを造成した。
(2)二重変異酵素蛋白質HFM145_L200V_Y385Fの大腸菌による生産
プラスミドpUTCH_HFM145_L200V_Y385Fを大腸菌JM109に形質転換法により導入し、組換え大腸菌JM109/ pUTCH_HFM145_L200V_Y385Fを造成した。また、比較のためにJM109/ pUTCH_HFM300及びJM109/pUTCH_HFM145_Y385Fも同時に実験に供した。これらの形質転換体を、OEI−TB培地を用いて、37℃で14時間培養した。集菌後、HEPES−グリシン緩衝液 0.5mlに懸濁した。この懸濁液に対して超音波破砕処理を加え、遠心した後、上清を回収して粗酵素液とした。続いて、粗酵素液の蛋白質濃度をブラッドフォード法により計測し、1mg/mlに調製した。
(3)没食子酸合成酵素活性の測定
上記で調製した粗酵素液の没食子酸合成酵素活性を次のようにして測定した。酵素反応は、プロトカテク酸(基質)500μM、FAD 10μM、FMN 10μM、NADH 2.5mM、NADP 2.5mM、粗酵素液68μgを含む100μlの反応液で30℃で1時間行った。反応後、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)を用いて、生成した没食子酸の量を測定した。その結果、組換え大腸菌JM109/ HFM145_Y385F及び組換え大腸菌JM109/ HFM145_L200V_Y385F、JM109/ pUTCH_HFM300において、それぞれ1mg蛋白質あたりの活性は表9のとおりであった。
Figure 2009213392
また酵素蛋白質HFM300との各没食子酸合成酵素の活性比は表10のとおりであった。
Figure 2009213392
実施例6.大腸菌によるテレフタル酸からの没食子酸の生産を下記のようにして行った。1.テレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、テレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼおよびテレフタル酸トランスポーターの蛋白質をコードするDNAクローニング
ロドコッカス属(Rhodococcus sp.)RHA1株のテレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、テレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼ酵素遺伝子の塩基配列データ(NC_008268、NC_008269、NC_008270、NC_008271)を
NCBIのGenBankデータベースよりインターネット経由で取得した。この塩基配列をもとに各遺伝子のDNAをPCR法を用いてクローニングするための配列番号51で表されるフォワードPCRプライマーおよび配列番号52で表されるリバースPCRプライマーを設計し、合成した。Rhodococcus sp. RHA1株の染色体DNAを鋳型として、2種のPCRプライマーとPrimeSTAR酵素(タカラ・バイオ社製)を用いたPCRによりテレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、テレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼ酵素遺伝子のDNAを増幅させた後、Taq ポリメラーゼ(タカラ・バイオ社製)による3'末端にA残基を付与する処理を行った。ゲル電気泳動後により目的DNAを精製した後、pT7Blue-T ベクターに組み込むことにより、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、テレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼをコードするDNAを運ぶプラスミドpT7Blue_TPACB1を造成した。pT7Blue_TPACB1から制限酵素HindIIIと制限酵素XbaIにより各酵素蛋白質をコードするDNAを切り出し、発現ベクターpUTCH19に組み込むことにより、プラスミドpUTCH_TPACB1を造成した。
なお、Rhodococcus sp. RHA1株は長岡科学技術大学の福田雅夫博士より分与を受け、同博士から教授された方法に従って培養した。培養菌体から染色体DNAをディーエヌイージー・ティシュ・キット(キアゲン社製(DNeasy tissue kit;Qiagen)を用いて単離精製した。
2.テレフタル酸からの没食子酸の合成
pUTCH_TPACB1とpRTCH_HFM145_Y385F、pUTCH_TPACB1とpRTCH_HFM145_L200V_Y385F、pUTCH_TPACB1とpRTCH_HFM300、またはpUTCH_TPACB1とpRTCH_HFM300_Y385Fを用いて大腸菌JM109(DE3)を形質転換し、組換え大腸菌JM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM145_Y385F)、JM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM145_L200V_Y385F)、JM109 (DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM300)、およびJM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM300_Y385F)を得た。
得られた組換え大腸菌JM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM145_Y385F)、JM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM145_L200V_Y385F)、JM109 (DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM300)、およびJM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM300_Y385F)を5mlのOEI−TB培地を用いて37℃で16時間培養した。集菌後、LB培地(カナマイシン50ppm、アンピシリン100ppm、 IPTG 1mM、pH5.95)3mlに懸濁し、25℃で4時間培養した。菌懸濁液500μlを取り、1.5mlチューブに移した。テレフタル酸を終濃度1mMになるように添加した。0、2、20時間に菌懸濁液から100μlとり、1mlの酢酸エチル、150μLのHEPES緩衝液 5μlの2N HClを加え、激しく5分間懸濁し、遠心にかけた。二層に分かれた上層(酢酸エチル層)を800μlとり、新しい1.5mMチューブに移し、遠心乾燥機にかけた。乾固したサンプルを10μLのアセトニトリルで激しく懸濁し、190μLの水で希釈した。孔径0.2μmのフィルターで濾過し、LC−TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)で解析した。
その結果、反応2時間を行った組換え大腸菌JM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM145_Y385F)、JM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM145_L200V_Y385F)、JM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM300_Y385F) およびJM109(DE3)/(pUTCH_TPACB1, pRTCH_HFM300)はそれぞれ1.2μM、3.7μM、1.0μMおよび0.3μMの没食子酸の生産が観察された。

Claims (19)

  1. 以下の(A)または(B)に記載の蛋白質を発現する微生物を用いてプロトカテク酸から没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする没食子酸の製造方法。
    (A)配列番号2もしくは配列番号2と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において199位のロイシンが他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有し、かつプロトカテク酸の5位を酸化する酵素活性を有する蛋白質。
    (B)配列番号22もしくは配列番号22と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において200位のロイシンが他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有し、かつプロトカテク酸の5位を酸化する酵素活性を有する蛋白質。
  2. 199位のロイシンまたは200位のロイシンを置換するアミノ酸がバリンまたはグリシンである、請求項1に記載の没食子酸の製造方法。
  3. 配列番号2もしくは配列番号2と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、さらに、385位のチロシンが他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする、請求項1または2に記載の没食子酸の製造方法。
  4. 385位のチロシンを置換するアミノ酸がフェニルアラニン、バリンまたはアラニンである、請求項3に記載の没食子酸の製造方法。
  5. 前記蛋白質が、配列番号6、8、10、12、14、16、18または24で表されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の没食子酸の製造方法。
  6. 前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびプロトカテク酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の没食子酸の製造法。
  7. 前記微生物がさらにテレフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力を保有する微生物であり、該微生物をテレフタル酸を含有する培地中でテレフタル酸と反応させることにより、没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の没食子酸の製造方法。
  8. 前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびテレフタル酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする請求項7に記載の没食子酸の製造法。
  9. 前記微生物がさらにフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力を保有する微生物であり、該微生物をフタル酸を含有する培地中でフタル酸と反応させることにより、没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の没食子酸の製造方法。
  10. 前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびフタル酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする請求項9に記載の没食子酸の製造法。
  11. 前記微生物がさらにイソフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力を保有する微生物であり、該微生物をイソフタル酸を含有する培地中でイソフタル酸と反応させることにより、没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の没食子酸の製造方法。
  12. 前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびイソフタル酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする請求項11に記載の没食子酸の製造法。
  13. 前記微生物がさらにパラヒドロキシ安息香酸からプロトカテク酸を生成する能力を保有する微生物であり、該微生物をパラヒドロキシ安息香酸を含有する培地中でパラヒドロキシ安息香酸と反応させることにより、没食子酸を生成、蓄積させ、これを採取することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の没食子酸の製造方法。
  14. 前記微生物の培養物または該培養物の処理物およびパラヒドロキシ安息香酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に没食子酸を生成、蓄積させ、該媒体から没食子酸を採取することを特徴とする請求項13に記載の没食子酸の製造法。
  15. テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力が、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、テレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼおよびテレフタル酸トランスポーターの蛋白質をコードするDNAを形質転換法により導入して得られることを特徴とする、請求項7または8記載の没食子酸の製造方法。
  16. フタル酸からプロトカテク酸を生成する能力が、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、テレフタル酸1,2-ジヒドロジオール ジヒドロゲナーゼおよびテレフタル酸トランスポーターの蛋白質をコードするDNAを形質転換法により導入して得られることを特徴とする、請求項9または10記載の没食子酸の製造方法。
  17. イソフタル酸からプロトカテク酸を生成する能力が、イソフタル酸ジオキシゲナーゼ、イソフタル酸ジオキシゲナーゼ・レダクターゼ、イソフタル酸1,2-ジヒドロジオールジヒドロゲナーゼおよびイソフタル酸トランスポーターの蛋白質をコードするDNAを形質転換法により導入して得られることを特徴とする、請求項11または12記載の没食子酸の製造方法。
  18. 前記微生物が、前記(A)または(B)の蛋白質をコードするDNAが導入された微生物であることを特徴とする、請求項1から17のいずれか1項に記載の没食子酸の製造法。
  19. 微生物がエシェリヒア(Escherichia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属またはラルストニア(Ralstonia)属に属する微生物であることを特徴とする、請求項1から18のいずれか1項に記載の製造法。
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