JPWO2013080391A1 - 分離膜エレメントおよび分離膜エレメントの製造方法 - Google Patents

分離膜エレメントおよび分離膜エレメントの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2013080391A1
JPWO2013080391A1 JP2012514244A JP2012514244A JPWO2013080391A1 JP WO2013080391 A1 JPWO2013080391 A1 JP WO2013080391A1 JP 2012514244 A JP2012514244 A JP 2012514244A JP 2012514244 A JP2012514244 A JP 2012514244A JP WO2013080391 A1 JPWO2013080391 A1 JP WO2013080391A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
separation membrane
supply
region
resin
membrane element
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012514244A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6056479B2 (ja
Inventor
雅和 小岩
雅和 小岩
高木 健太朗
健太朗 高木
洋帆 広沢
洋帆 広沢
宜記 岡本
宜記 岡本
将弘 木村
将弘 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Publication of JPWO2013080391A1 publication Critical patent/JPWO2013080391A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6056479B2 publication Critical patent/JP6056479B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D63/00Apparatus in general for separation processes using semi-permeable membranes
    • B01D63/10Spiral-wound membrane modules
    • B01D63/103Details relating to membrane envelopes
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D63/00Apparatus in general for separation processes using semi-permeable membranes
    • B01D63/10Spiral-wound membrane modules
    • B01D63/101Spiral winding
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D63/00Apparatus in general for separation processes using semi-permeable membranes
    • B01D63/10Spiral-wound membrane modules
    • B01D63/103Details relating to membrane envelopes
    • B01D63/1031Glue line or sealing patterns
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D65/00Accessories or auxiliary operations, in general, for separation processes or apparatus using semi-permeable membranes
    • B01D65/003Membrane bonding or sealing
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D67/00Processes specially adapted for manufacturing semi-permeable membranes for separation processes or apparatus
    • B01D67/0081After-treatment of organic or inorganic membranes
    • B01D67/0088Physical treatment with compounds, e.g. swelling, coating or impregnation
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/06Flat membranes
    • B01D69/061Membrane bags or membrane cushions
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/12Composite membranes; Ultra-thin membranes
    • B01D69/1213Laminated layers
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/12Composite membranes; Ultra-thin membranes
    • B01D69/1216Three or more layers
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/12Composite membranes; Ultra-thin membranes
    • B01D69/1218Layers having the same chemical composition, but different properties, e.g. pore size, molecular weight or porosity
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D2313/00Details relating to membrane modules or apparatus
    • B01D2313/04Specific sealing means
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D2313/00Details relating to membrane modules or apparatus
    • B01D2313/04Specific sealing means
    • B01D2313/042Adhesives or glues
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D2313/00Details relating to membrane modules or apparatus
    • B01D2313/14Specific spacers
    • B01D2313/143Specific spacers on the feed side
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D2323/00Details relating to membrane preparation
    • B01D2323/46Impregnation

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

集水管と、前記集水管の周囲に巻回され、供給側の面および透過側の面を有すると共に、前記集水管の長手方向における前記供給側の面の少なくとも一方の端部に帯状領域を備える分離膜と、前記帯状領域に熱融着された流路材と、を備えるスパイラル型分離膜エレメント。

Description

本発明は、分離膜を用いて逆浸透技術または濾過技術等により流体の成分を分離するスパイラル型分離膜エレメントに関する。
液体等を分離する分離膜は、その孔径サイズおよび分離機能の違いにより、種々のタイプに分類される。ただし、タイプの異なる分離膜であっても、分離膜の一方の面に原流体が供給されると、分離膜を透過することで原流体から分離された透過流体が他方の面から得られる点では共通している。分離膜は、逆浸透ろ過に用いられる分離膜エレメントに適用可能である。例えば、スパイラル型分離膜エレメントは、有孔集水管を備えると共に、その周りに巻き付けられた供給側流路材、分離膜および透過側流路材を備える。供給側流路材は原流体を分離膜の供給流体側へ供給する。分離膜は原流体に含まれる成分を分離する。透過側流路材は、分離膜を透過し原流体から分離された透過流体を有孔集水管へと導く。スパイラル型分離膜エレメントは、原流体に圧力を付与することで、透過流体を多く取り出すことができる。
スパイラル型分離膜エレメントの供給側流路を原流体が流れることによる抵抗(つまり圧力損失)は、供給側流路材に大きく支配される。そのため、圧力損失を小さくすることを目的とし、種々の構造を有するネットが報告されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
一方、特許文献4のスパイラル型膜分離装置においては、供給側流路材に相当するメッシュ状の原液流路用材(5)が、膜分離装置の両端部に配置されている。
特許文献5は、特許文献4の原液流路用材が分離膜に固定されていないことの問題点を指摘し、これを解決すべく、次のスパイラル型膜エレメントを提案している。すなわち、特許文献5のスパイラル型膜エレメントでは、原水スペーサー(11a)および(11b)が、分離膜(13)の原水流入側端部(15)、又は原水流入側端部(15)と濃縮水流出側端部(16)に、固定されている。原水スペーサーは、接着剤によって接着されることで、または2つ折りにされた原水スペーサーが分離膜の端部を両面から挟持するように配置されることで、分離膜の端部に固定される。
特開2000−000437号公報 特開2000−042378号公報 特開2005−305422号公報 実開昭59−44506号公報 特開2004−50081号公報
従来の技術でも、原流体の抵抗および圧力損失の低減が充分とはいえず、造水量の向上にむけて改良の余地がある。特に、従来技術では、供給側流路材の形状はネットに限定されており、形状変更の自由度は小さい。
本発明の目的は、供給側流路材の形状変更の自由度を高めることで、原流体の種類、または得るべき透過流体若しくは濃縮流体に応じて供給側流路材の形状を変更することを可能とする技術を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明の分離膜エレメントは、集水管と、供給側の面および透過側の面を有する分離膜と、前記供給側の面に設けられた流路材と、を備える分離膜エレメントであって、前記流路材は、前記供給側の面に融着された複数の樹脂体を有する。
本発明は、供給側流路材の形状変更の自由度を高めることで、原流体の種類、または得るべき透過流体若しくは濃縮流体に応じて供給側流路材の形状を変更することを可能とする。
本発明の第1形態にかかるスパイラル型分離膜エレメントの一部を展開した斜視図である。 第1形のスパイラル型分離膜エレメントの展開斜視図である。 供給側流路材の一例であるストライプ状流路材を示す平面図である。 供給側流路材の他の例であるドット状流路材を示す平面図である。 対向する2つの分離膜において、供給側流路材が重なり合った状態を示す平面図である。 供給側の面を内側にして折り畳まれる分離膜を示す斜視図である。 供給側流路材の一例を示す断面図である。 供給側流路材の他の例を示す断面図である。 供給側流路材のさらに他の例を示す断面図である。 供給側流路材のさらに他の例を示す断面図である。 第2形態におけるスパイラル型分離膜エレメントの展開斜視図である。
1.分離膜エレメントの概要
スパイラル型分離膜エレメント(以下、単に分離膜エレメントと称する。)の形態の一例について、図1および図2を参照して説明する。
図1および図2に示すように、分離膜エレメント1は、集水管2、分離膜3、供給側流路材4、透過側流路材5、供給側端板7および透過側端板8を備える。分離膜エレメント1は、原流体101を透過流体102と濃縮流体103とに分離することができる。
集水管2は、一方向(図中のx軸方向)に長い円筒状の部材である。集水管2の側面には複数の孔が設けられている。
分離膜3は、所望の分離性能を有する膜であればよい。分離膜3として適用可能な膜の例については後述する。分離膜3は、原流体101に接する供給側の面31と透過流体102に接する透過側の面32を有する。
供給側流路材4は、分離膜3の供給側の面31に設けられる。供給側の面31には、樹脂体の密度が比較的高い領域と、低い領域とが設けられている。
透過側流路材5としては、従来の流路材が適用可能であり、例えばトリコット等の編み物が用いられる。透過側流路材5は封筒状膜6において、向かい合う2つの透過側の面32の間に配置される。ただし、透過側流路材5は、分離膜3の間に透過側流路を形成できる他の部材に変更可能である。また、分離膜3として凹凸が形成された分離膜を用いることで、透過側流路材5を省略することもできる。透過側流路材の詳細および他の例については後述する。
封筒状膜6は、透過側の面32が内側になるように重ね合わされた2枚の分離膜により、または折り畳まれた1枚の分離膜3により形成される。封筒状膜6の平面形状は長方形であり、封筒状膜3は3辺において閉じ、1辺が開口している。封筒状膜6は、その開口部が集水管2を向くように配置され、さらに集水管2の周囲に巻き付けられる。分離膜エレメント1においては、複数の封筒状膜6が重なるように巻回されている。封筒状膜6の外側の面は供給側の面31であり、隣り合う封筒状膜6は供給側の面31が向かい合うように配置される。つまり、隣り合う封筒状膜6の間には供給側流路が形成され、封筒状膜6の内側には透過側流路が形成される。
供給側端板7および透過側端板8は、それぞれ、巻回体の上流側端部21および下流側端部22に取り付けられる。
なお、分離膜エレメントは、上述した以外の部材を備えることができる。例えば、分離膜の巻回体の周囲は、フィルム等の他部材で覆われていてもよい。
原流体101は、供給側端板7を介して分離膜3の供給側の面31に供給される。分離膜3を透過した透過流体102は、透過側流路剤5により封筒状膜6内に形成された流路を通って、集水管2へと流れ込む。集水管2を流れた透過流体は、端板8を通って分離膜エレメント1の外部に排出される。また、濃縮流体103は、供給側の面31間を通って端板8から外部に排出される。こうして、原流体101は、透過流体102と濃縮流体103とに分離される。
2.供給側流路材
供給側の面31には、流路材4の密度が比較的高い領域(第1領域)と、流路材4の密度が比較的低い領域(第2領域)とが設けられている。第1領域は、樹脂体領域と呼ばれることがある。
第1領域には、供給側流路材4(流路材4を構成する樹脂体)が所定の値以下の間隔で配置されている。第2領域は、第1領域に該当しない領域であり、具体的には、樹脂体が配置されていないか、その間隔が所定の値より大きい領域である。ここで、所定の値とは、エレメントの運転条件、流路材の材質等に応じて設定されるものであり、具体的な数値に限定されるものではない。例えば、50mmであることが好ましく、30mm、20mmまたは10mmであることがより好ましい
第1領域と第2領域との面積比、つまり(第1領域の面積/第2領域の面積)は、1/99以上であることが好ましく、10/90以上であることがより好ましく、15/85以上であることがさらに好ましい。また、この面積比は、80/20以下であることが好ましく、60/40以下であることがより好ましく、40/60以下であることがさらに好ましい。面積比が1/99以上であることで、濃度分極の発生が抑制され、80/20以下であることで、流動抵抗の増大が抑制される。
なお、第1領域と第2領域との境界は、50mm以下の間隔で設けられている樹脂体の集合体の外縁として特定できる。第1領域と第2領域とは、供給側流路材の密度以外の点で区別できる必要はない。つまり、帯状領域に含まれる分離膜は、帯状領域外の分離膜と同じ組成及び構造を有していてもよいし、異なる組成または構造を有していてもよい。
このような分離膜および流路材について、以下により具体的に説明する。以下に説明する形態には、ここまでに述べた数値範囲等の構成が適用可能である。
[第1形態]
(帯状領域)
図1~図2等に示す形態では、第1領域の一例として、集水管2の長手方向(つまりx軸方向)における分離膜3の端部に帯状領域33および34が設けられる。上流側の供給側流路材4と下流側の供給側流路材4との間には、第2領域の一例として、中央領域37が設けられる。
帯状領域33および34の縁は分離膜3の縁と一致する必要はなく、帯状領域が分離膜の縁から離れていてもよい。ただし、帯状領域33と分離膜の上流側の縁との距離、および帯状領域34と分離膜の下流側の縁との距離は、例えば、x軸方向における分離膜3の幅W0の5%以下、または1%以下である。このように、供給側流路材4がx軸方向における分離膜の縁の近傍、特に上流側の縁の近傍に設けられていることで、供給側の面31に対して原流体101が効率よく供給される。
また、帯状領域が設けられる「端部」は、具体的には、分離膜3のx軸方向における縁からx軸方向における分離膜3の幅W0の20%以内の領域を指す。つまり、供給側流路材4は、分離膜3のx軸方向における縁から、x軸方向における分離膜3の幅W0の20%の範囲内に配置されている。よって、中央領域37の幅W3、つまり第2領域の幅は、幅W0の80%以上である。
また、帯状領域33の幅W1および帯状領域34の幅W2のそれぞれが、幅W0の1%以上であることで、原流体が供給側の面31に安定的に供給される。
さらに、帯状領域の幅W1〜W2の合計は、幅W0の10%〜60%程度に設定されてもよい。幅W0に対する幅W1〜W2の比率が60%以下であることで、流動抵抗および圧力損失が低減される。また、この比率が10%以上であることで、乱流効果によって濃度分極発生を抑制することができる。さらに、幅W1およびW2は、それぞれがW0の10%以上であってもよい。
このような形態の例として、本実施形態において、帯状領域33および34の形状および大きさは同一である。つまり、図2における幅W1とW2とは同一である。また、幅W1およびW2はそれぞれ一定である。
このように、供給側の面31の端部に供給側流路材4が配置されていることで、向かい合う2つの供給側の面31の間で原流体101の流路が確保される。なお、本実施形態では、1つの供給側の面31に2つの帯状領域33および34が設けられているが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、帯状領域は、x軸方向における一方の端部、つまり上流側または下流側の一方の端部にのみ設けられていてもよい。
分離膜3が折り曲げられる場合、供給側流路材4を構成する樹脂の剛性にもよるが、分離膜3の折れ性を向上させるため、折り線上およびその付近には、供給側流路材4が配置されていないことが好ましい。
本実施形態では、熱融着によって設けられた供給側流路材4以外に、供給側の面31に流路材は設けられていない。これによって、流動抵抗および圧力損失が低減され、造水量が向上する。特に、中央領域37にネットおよびトリコット等の連続形状を有する部材が設けられていないことで、流動抵抗および圧力損失が大きく低減するという効果が得られる。さらに、中央領域37が巻回方向における分離膜3の外側端部から内側端部まで連続しているので、この効果はより向上する。ただし、供給側の面31において、帯状領域33および34以外の領域に、スパイラル型分離膜エレメントの剛性を高くするために、流動抵抗および圧力損失の観点から許容できる程度に、熱融着によってまたは他の方法によって、部材が設けられていてもよい。
封筒状膜の接着部分には、空隙が生じないことが好ましい。空隙が生じると、エレメントを加圧運転したときに透過流路と供給流路との間にリークが生じるので、透過流体に原流体または濃縮流体が混入する。このようなリークの発生の確率が高いことは、分離膜エレメントの生産収率が低いことを意味する。エレメントの生産収率とは、生産した分離膜エレメントを水中でエアリークテストし、リークが発生した分離膜エレメント数をカウントしたときの、(エアリークが発生した分離膜エレメント数/評価に供した分離膜エレメント数)の比率である。
これに対して、融着によって流路材が設けられていると、分離膜の剛性が高まるので、巻囲したときの分離膜の撓みまたはシワの発生等が生じにくくなる。よって、向かい合う透過側の面の間に空隙が生じにくくなる。その結果、分離膜エレメントの脱塩率低下や生産収率の低下を抑制できる。
第1領域および第2領域は規則的に配置されていることが好ましい。そのような構成の一例として、帯状領域33および34の幅はそれぞれ一定であり、かつ帯状領域33と帯状領域34とは互いに平行である。さらに、帯状領域33および34は巻回方向における(図2ではz軸方向における)分離膜3の外側端部から内側端部まで連続するように設けられる。すなわち、帯状領域33と帯状領域34は同一の面積を有する。なお、中央領域37の幅も均一である。このように流路材が規則的に配置されることによって、安定な剛性および強度が得られる。特に、巻回方向において連続して設けられることで、巻回方向において分離膜の全体に渡って剛性および強度が高まる。
本形態では、全ての第1領域の面積が同一であるが、一枚の分離膜に3つ以上の第1領域が設けられる場合、少なくとも2つの第1領域の面積は同一であることが好ましい。
なお、「同一」とは、例えば比較される2つの値の差が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがより好ましい。また、「一定」とは、最大値と最小値との差が15%以下であることが好ましく、10%以下であることが好ましく、または5%以下である場合を含む。
本実施形態において、供給側流路材4は、融着によって設けられた樹脂体または複数の樹脂体の集合体である。流路材が融着によって設けられていることで、供給側流路材の形状の自由度は非常に高い。よって、様々な条件に応じて、流路材の形状は変更可能である。
例えば、流路材4は、連続的な形状を有していても不連続な形状を有していてもよい。ただし、原流体の流動抵抗を低減するには、流路材4が不連続な形状を有していることが好ましい。
「連続」とは、分離膜の面に対する流路材の投影増が連続的である形状を指す。このような形状を有する部材としては、織物(例えばトリコット等)、編み物(例えばネット等)、不織布、多孔性材料(多孔性フィルム等)などが挙げられる。
「不連続」とは、帯状領域において、分離膜の面に対する投影像が不連続である形状を指す。不連続としては、複数の樹脂体が、分離膜上で互いに間隔をおいて設けられている形態が挙げられる。また、不連続とは、樹脂体の間を透過流体が流れることができる程度に、1枚の分離膜上で隣り合う樹脂体の距離が離れていることである、とも言い換えられる。
上述したように、帯状領域33および34は、第1領域に該当する。本実施形態では、これらの領域において、樹脂体は、樹脂体の頂点間の距離Dが50mmとなるように配置される。なお、頂点とは、樹脂体の最も高い部分、つまり供給側の面31から最も離れた部分である。距離Dの例については、図3,図4,図7A〜図7Dに示すとおりである。
また、個々の樹脂体の形状は、供給側流路の流動抵抗を少なくし、供給側流路を安定化させるように、選択される。
個々の樹脂体の形状としては、粒状、線状、半球状、柱状(円柱状、角柱状等を含む)、又は壁状等が適用される。1枚の分離膜上に設けられた線状又は壁状の複数の流路材は、互いに交差しないように配置されていればよく、例えば互いに平行に配置されてもよい。
また、平面方向において、個々の樹脂体は、例えば、直線(例えば図3)、曲線、楕円(真円および長円を含む)、多角形(三角形、長方形、正方形、平行四辺形、菱形、台形)、不定形等の形状を有してもよい。
分離膜の面方向に垂直な断面において、流路材4(およびそれに含まれる樹脂体)は、例えば、楕円、多角形、不定形等の形状を有してもよい。楕円は真円および長円を含み、それらの一部が欠けた形状も含む(例えば図7B)。多角形としては、台形(例えば図7A、図7C)、三角形、長方形(例えば図7D)、正方形、平行四辺形、菱形、不定形の形状を有することができる。また、分離膜の面方向に垂直な断面において、供給側流路材は、上部から下部に向かって(つまり、厚み方向における供給側流路材の頂点から、分離膜の供給側の面に向かって)、幅が広がる形状(例えば図7A、図7B)、狭まる形状(例えば図7C)、一定の幅を示す形状(例えば図7D)のいずれであってもよい。
流路材4の高さ(流路材4と供給側の面31との高低差)は、80μm以上または100μm以上であることが好ましい。また、流路材4の高さは、2000μm以下、1500μm以下、または1000μm以下であることが好ましい。高低差が2000μm以下であることで、1個のエレメント当たりの膜面積を大きくすることができ、高低差が80μm以上であることで、流動抵抗を小さくすることができる。なお、流路材4の高さとは、流路材4の厚みと言い換えられ、個々の樹脂体の高さと一致する。
個々の樹脂体の形状が線状である場合、製造の便宜上、および供給側流路の安定的な形成のために、樹脂体の配置パターンはストライプ状であることが好ましい。ストライプ状パターンでは、線状の樹脂体が、互いに交差しないように配置される。線状とは、直線および曲線のどちらでもよい。線状の樹脂体の幅は0.2mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。また、線状の樹脂体の幅は、10mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。隣り合う樹脂体同士の間隔は、樹脂体の幅の10分の1から50倍の間で選択可能である。
また、個々の樹脂体の形状がドット状である場合、ドット状の樹脂体の径は、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。また、樹脂体の径は、5.0mm以下が好ましく、より具体的には1.0mm以下であってもよい。ドット状の樹脂体の配置パターンの例として、千鳥状および格子状が挙げられる。樹脂体の間隔は、0.2mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。また、樹脂体の間隔は、20.0mm以下であることが好ましく、15.0mm以下であることがより好ましい。
また、各第1領域において、供給側の面31に対する供給側流路材4の投影面積比は、0.05以上であることが好ましい。これによって、流路をより確実に形成することができる。また、投影面積比は、0.2未満であることが好ましい。これによって、原流体の抵抗を低減し、圧力損失を低く抑えると共に、有効膜面積を確保することができる。
供給側流路材4およびそれに含まれる樹脂材の幅、径、間隔、高さ等の値は、市販の形状測定システムを用いて計測できる。例えば、幅、間隔については、走査型電子顕微鏡(S−800)(日立製作所製)を用いて30個の任意の断面を500倍で写真撮影し、結果から相加平均を算出することで求められる。また、樹脂体の高さ(厚み)は、レーザー顕微鏡(キーエンス製高精度形状測定システムKS−1100など)を用いた表面測定または断面測定によって、流路材が存在する30個の任意の箇所について測定を行い、結果から相加平均を算出することで求められる。
なお、供給側流路材の断面形状、および膜上部から観察した場合の表面形状は、スパイラル型分離膜エレメントとしての所望の効果が損なわれない範囲であれば、その形状は特に限定されない。
流路材4を構成する樹脂は、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ウレタン、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。特に加工性と費用の点から、樹脂としてはエチレン酢酸ビニル共重合樹脂などのポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂がより好ましく、100℃以下での加工が可能なエチレン酢酸ビニル共重合樹脂などのポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂が特に好ましい。
樹脂の種類、熱融着等の熱処理時の温度などを変更することによって、流路材4の断面形状、厚み(高低差)等を調整することができる。
以上に述べた流路材の配置パターンの例として、図3および図4には、ストライプ状の流路材41およびドット状の流路材42を挙げる。なお、図3および図4には、上流側の帯状領域33が示されており、本実施形態では、下流側の帯状領域34にも上流側の帯状領域33と同様の形状および配置パターンの流路材が配置される。ただし、下流側の帯状領域34に配置される流路材の形状および配置パターンは、帯状領域33に配置される流路材のそれと同じであってもよく、異なっていてもよい。
図3に示す例では、流路材41は複数の樹脂体411を備えており、樹脂体411は、直線かつ、集水管2の長手方向(x軸方向)に対して斜めに長い形状である。特に、図3では樹脂体411は互いに平行に配置されている。斜めとは、平行および直交を除くことを意味する。つまり、樹脂体411の長手方向とx軸方向との間の角度θは、0°以上90°未満である。なお、角度θは絶対値を指す。つまり、x軸に対して互いに線対称な2つの樹脂体は、同じ角度θを示す。
角度θが90°未満であることで、原流体101の流れが乱されるので、濃度分極が起こりにくく、良好な分離性能が実現される。角度θが0°より大きいことで、濃度分極の抑制効果がより高まる。また、角度θが、60°以下であることで、原流体の流動抵抗が比較的低く、かつ濃度分極に対して高い抑制効果を得ることができる。さらに、流動抵抗を低減しつつ、乱流効果を生むために、15°より大きく45°以下であることがより好ましい。
なお、ストライプ状の配置において、上流側の流路材と下流側の流路材とは、平行であってもよいし、非平行であってもよい。例えば、ストライプ状の配置において、上流側の流路材と下流側の流路材とは、z軸に対して線対称であってもよいし、非対称であってもよい。
図4に示す流路材42は、複数のドット形状の樹脂体421を備える。個々の樹脂体421の平面形状は円形である、樹脂体421は千鳥状に配置されている。
上述したように、分離膜3は、供給側の面31が向かい合うように重なっている。流路材4は、このように分離膜3が重なることで、対向し合う供給側の面31に設けられた樹脂体が互いに重なるように配置されていてもよい。
このような構成の例として、図5に図3の流路材41の重なる様子を示す。樹脂体411間に分離膜3が落ち込むと供給側流路が狭くなるが、図5に示すように個々の樹脂体411が交差するように重なることで、このような落ち込みを抑制できる。
なお、分離膜3をこのように重ね合わせるには、図6のように供給側の面31が内側になるように分離膜3を折り畳んでもよいし、2枚の分離膜3を供給側の面31が対向するように貼り合わせてもよい。上述したように、分離膜3が折り畳まれる場合は、流路材41は、折り線およびその近傍を外して配置される。
[第2形態]
図8を参照して、第1領域および第2領域の他の形態について説明する。すでに説明した構成が適用される要素については、同符号を付してその説明を省略する。本形態では、供給側流路材が3箇所に設けられる。このように、第1領域が3つ以上存在することで、分離膜エレメントの剛性がさらに高められる。
図8に示すように、本形態では、第1領域として、上述の帯状領域33および34に加えて、さらに3つ目の帯状領域35を備える。帯状領域35の形状および大きさは、帯状領域33および34と同一である。また、帯状領域35は、帯状領域33および34と平行に設けられる。さらに、帯状領域35は、x軸方向において分離膜の中央に設けられる。また、帯状領域35も巻回方向において分離膜3の外側から内側まで連続するように設けられる。
帯状領域33〜35の間は、第2領域に該当する領域であって、流路材が設けられていない領域38および39である。つまり、x軸方向において、第1領域と第2領域とが交互に配置される。
このように、第2領域である領域38および39を除いて分離膜全体に流路材4が設けられることで、上述したように、巻回方向における全長に渡って分離膜に剛性が付与される。
(他の形態)
(a)第1領域の数および第2領域の数は、第1および第2形態に限定されるものではない。例えば、第1領域が、1枚の分離膜において1箇所にしか設けられていなくてもよいし、4箇所以上に設けられていてもよい。
(b)第1及び第2形態では、第1領域33〜35の幅は一定であり、かつ領域33と領域34とは互いに平行であり、第1領域33〜35も互いに平行な形状である。よって、第1および第2実施形態において、分離膜において第1領域が占める面積の割合は、分離膜の幅W0における第1領域の幅の合計値の割合に一致する。また、第1領域の幅W1およびW2(さらに幅W4)の合計値と第2領域の幅の合計値との比は、第1領域の面積と第2領域の面積との比に一致する。
上述したように、少なくとも2つの第1領域の幅または面積が同一であることが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、2つ以上の第1領域が互いに異なる面積または幅を有していてもよい。また、2つ以上の第1領域が設けられる場合、それらが互いに平行である必要はない。第2領域についても同様である。
(c)第1および第2形態では、帯状領域33〜35の形状は同一である。ただし、2つ以上の第1領域が設けられる場合、全ての第1領域が互いに異なる形状であってもよいし、少なくとも2つの第1領域が同一の形状を有することが好ましい。
(d)1つの第1領域の幅は一定である必要はない。ただし、第1領域の幅が一定でない場合、または2つ以上の第1領域が互いに平行でない場合にも、上述の面積の比率、および幅の比率の数値範囲を適用することができる。第2領域についても同様である。
(e)2つ以上の第1領域が設けられる場合、集水管の長手方向において、第1領域、第2領域、第1領域が、この順に並ぶことが好ましい。上述の第1および第2形態は、このような構成の具体例である。
(f)以上に説明された構成それぞれ単独で適用されたエレメント、および組み合わされて適用されたエレメントも、本発明の技術的範囲に含まれる。
3.透過側流路材
透過側流路材5(以下、単に「流路材」と称することがある)は、透過流体が有孔集水管に到達することができるように構成されていればよく、形状、大きさ、素材等は具体的な構成に限定されるものではない。
本実施形態では、透過側流路材5は、分離膜との異素材で構成されている。「透過側流路材5が分離膜との異素材で構成されている」とは、透過側流路材5の組成が分離膜の組成と異なる場合を含む。「分離膜と異なる組成を有する」とは、分離膜が、分離機能層、支持層及び基材の三層構造を備える場合に、透過側流路材5の組成が、いずれの層の組成とも異なることを意味する。また、「異なる組成を有する」とは、化学的な組成が異なることを意味するのであって、含有する成分の少なくとも一部が異なること、及び含有する成分が同じであってもその含有率が異なることを包含する。特に、透過側流路材5の主成分である化合物と、分離膜の各層の主成分である化合物とが異なっていてもよい。また、透過側流路材5が、支持層を構成する成分の少なくとも一部と、基材を構成する成分の少なくとも一部とを含有する場合等も、「組成が異なる」形態に含まれる。
例えば、透過側流路材5は、分離膜と異なる組成を有することで、圧力に対して分離膜よりも高い耐性を示すことができる。具体的には、透過側流路材5は、特に分離膜の面方向に垂直な方向における圧力に対して、分離膜よりも高い形状保持力を有する材料で形成されることが好ましい。これによって、透過側流路材5は、繰り返しの通水又は高圧下での通水を経ても、透過側流路を確保することができる。
また、透過側流路材5は、分離膜による流体の分離が進行するように設けられていればよい。つまり、分離膜の一部が流体に接触するように露出し、流体が分離膜に接触しながら移動できるように、透過側流路材5が設けられていればよい。つまり、透過側流路材5は、分離膜の面方向において、分離膜とは異なる形状を有する。
例えば、透過側流路材5として、目の粗いネット状物、棒状、円柱状、ドット状物、発泡物、粉末状物、それらの組み合わせなどが使用することができる。組成としては特に限定されないが、耐薬品性の点で、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン、ポリポリプロピレンなどのポリオレフィンや共重合ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシなどの樹脂などが好ましく、熱可塑性樹脂だけでなく、熱や光による硬化性樹脂を使用することもできる。これらを単独もしくは2種類以上からなる混合物として用いることができる。ただし、熱可塑性樹脂であれば成形が容易であるため、流路材の形状を均一にできる。
母材としてこれらの樹脂を含有し、さらに充てん材を含有する複合材も、適用可能である。流路材の圧縮弾性率は、母材に多孔質無機物などの充てん材を添加することで高められる。具体的にはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のアルカリ土類金属のケイ酸塩、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩等を充てん材として用いることができる。なお、充てん材の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
分離膜3中に、より具体的には基材中に、透過側流路材5の成分が含浸していてもよい。分離膜の基材側、すなわち透過側に流路材5を配置し、ホットメルト法などで基材側から加熱すると、分離膜の裏側から表側に向かって透過側流路材5の含浸が進行する。含浸が進行するにつれて流路材と基材との接着が強固になり、加圧ろ過しても流路材が基材から剥離しにくくなる。
ただし、透過側流路材5の成分が分離機能層(供給側の面31)の近傍まで含浸していると、加圧ろ過した際に含浸した流路材が分離機能層を破壊してしまう。そのため、透過側流路材5の成分が基材に含浸している場合、基材の厚みに対する透過側流路材5の含浸厚みの割合(すなわち含浸率)は、5%以上95%以下の範囲であることが好ましく、10%以上80%以下の範囲であることがより好ましく、20%以上60%以下の範囲であることがさらに好ましい。なお、含浸厚みとは流路材最大含浸厚みを指し、流路材最大含浸厚みとは、1つの断面において、その流路材に対応する含浸部の厚みの最大値を意味する。
透過側流路材5の含浸厚みは、例えば、透過側流路材5を構成する材料の種類(より具体的には樹脂の種類)及び/又は材料の量を変更することで、調整可能である。また、透過側流路材5をホットメルト法によって設ける場合には、処理温度等を変更することによっても、含浸厚みを調整することができる。
なお、透過側流路材5の含浸部を含む基材を示差走査熱量測定といった熱分析に供することにより、基材とは別に透過側流路材5の成分に起因するピークが得られれば、流路材5が基材に含浸していることを確認することができる。
流路材5の基材への含浸率は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により、流路材5が存在する分離膜の断面を観察して流路材含浸厚みと基材厚みを算出することができる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば分離膜を流路材5と共に深さ方向に切断し、断面を走査型電子顕微鏡で観察して、流路材含浸厚みと基材厚みを測定する。そして、基材中の流路材5が最も含浸している流路材最大含浸厚みと基材厚みの比から算出できる。なお、含浸深さを算出する場合の「基材厚み」とは、最大含浸厚みを測定した部分と同一箇所における基材の厚みである。
透過側流路材5は、連続形状であってもよいし、不連続形状であってもよい。
透過側流路材5として、連続形状を有する部材の例として、トリコットについては既に挙げた。連続の定義についてはすでに述べた。連続形状を有する部材としては、他に、織物、編み物(ネット等)、不織布、多孔性材料(多孔性フィルム等)などが挙げられる。
また、不連続の定義についても既に述べたとおりである。不連続な流路材の形状としては、具体的には、ドット状、粒状、線状、半球状、柱状(円柱状、角柱状等を含む)、又は壁状等が挙げられる。1枚の分離膜上に設けられた、線状又は壁状の複数の流路材は、互いに交差しないように配置されていればよく、具体的には、互いに平行に配置されてもよい。
不連続形状の透過側流路材を構成する個々の樹脂体の形状は、特に限定されないが、透過流体流路の流動抵抗を少なくし、かつ分離膜エレメントに原流体を供給、透過させた際の流路を安定化させることが好ましい。不連続形状の透過側流路材の一単位を分離膜の透過側の面に垂直な方向から観察した平面視形状としては、例えば、楕円、円、長円、台形、三角形、長方形、正方形、平行四辺形、菱形、不定形が挙げられる。また、分離膜の面方向に垂直な断面において、透過側流路材は、上部から下部に向かって(つまり、厚み方向における透過側流路材の頂点から、透過側流路材が設けられた分離膜に向かって)、幅が広がる形状、狭まる形状、一定の幅を示す形状のいずれであってもよい。
分離膜エレメントにおける透過側流路材の厚みは30μm以上1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上700μm以下、さらに好ましくは50μm以上500μm以下であり、これらの範囲であれば安定した透過流体の流路を確保することができる。
透過側流路材の厚みは、例えばホットメルト加工法で不連続形状の透過側流路材を配置させる場合では処理温度や選択するホットメルト用の樹脂を変更することで、要求される分離特性や透過性能の条件を満足できるように自由に調整することができる。
透過側流路材の厚みは、市販の形状測定システムなどを用いて計測できる。例えば、レーザー顕微鏡による断面からの厚み測定、キーエンス製高精度形状測定システムKS−1100などで測定することができる。測定は任意の透過側流路材が存在する箇所について実施し、各厚みの値を総和した値を測定総箇所の数で割って求めることができる。
4.分離膜
<分離膜の構成の概要>
分離膜は、原流体中の成分を分離することができる。
分離膜は、たとえば、i)基材と、分離機能層と、基材と分離機能層との間に配置された多孔性支持層とを備えていてもよいし、あるいは、ii)分離機能層と基材とを備えていて、基材と分離機能層との間に多孔性支持層が設けられていない構成であってもよい。なお、ii)の分離膜は、i)の分離膜における多孔性支持層と同様の構成を有する層を分離機能層として備えてもよい。
分離膜は、供給側の面と透過側の面とを備える。供給側の面に原流体が供給されると、原流体は、分離膜を透過して面の側へ移動する透過流体と、供給側の面側に留まる濃縮流体とに分離される。
<分離機能層>
上記i)の形態の分離膜において、分離機能層としては、例えば、孔径制御、耐久性の点で架橋高分子が使用される。具体的には、分離性能の点で、後述するような多孔性支持層上に、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなるポリアミド分離機能層、および有機無機ハイブリッド機能層などが好適に用いることができる。
上記i)の分離膜における分離機能層は、ポリアミドを主成分として含有することができる。この分離膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や工業用超純水の製造に好適に用いられる。ポリアミドは、例えば、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合物である。
本書において、「組成物Xが物質Yを主成分として含有する」場合、物質Yの組成物Xにおける含有率は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。また、組成物Xは実質的に物質Yのみで形成されていてもよい。組成物とは、混合物、複合物、及び化合物等を含む概念である。
ポリアミドの構成、並びに多官能アミンおよび多官能酸ハロゲン化物は、製造方法の欄に例示される。さらに、上記i)の分離膜を構成する分離機能層は、耐薬品性の点でSi元素などを有する有機−無機ハイブリッド構造を有していてもよい。有機−無機ハイブリッド構造の分離機能層の組成は、特に限定されないが、例えば、(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物;および/または(B)前記ケイ素化合物以外のエチレン性不飽和基を有する化合物;の重合物を含有することができる。
すなわち、分離機能層は、
・化合物(A)のみが縮合および/若しくは重合することで形成された重合物、
・化合物(B)のみが重合して形成された重合物、並びに
・化合物(A)と化合物(B)との共重合物
のうちの少なくとも1種の重合物を含有することができる。なお、重合物には縮合物が含まれる。また、化合物(A)と化合物(B)との共重合体中で、化合物(A)は、加水分解性基を介して縮合していてもよい。化合物Bは、エチレン性不飽和基を介して重合することができる。
分離機能層において、化合物(A)の含有率は、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは20重量%以上50重量%以下である。また、分離機能層における化合物(B)の含有率は、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは50重量%以上80重量%以下である。また、化合物(A):化合物(B)の重量比率は、1:9〜1:1であってもよい。これらの範囲においては、分離機能層に含まれる縮重合体において比較的高い架橋度が得られるので、膜ろ過時に分離機能層からの成分の溶出が抑制され、その結果、安定なろ過性能が実現される。
なお、化合物(A)、化合物(B)及びその他の化合物は、重合物(縮合物を含む)等の化合物を形成していることがある。よって、例えば「分離機能層における化合物(A)の含有率」を論じる場合、化合物(A)には、縮重合物中で、化合物(A)に由来する成分の量も含まれる。化合物(B)およびその他の化合物についても同様である。
また、分離機能層は、化合物(A)の他に、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有しないが、加水分解性基を有するケイ素化合物(C)に由来する成分を含有してもよい。このような化合物(C)の例については後述する。
これら化合物(C)は、化合物(C)のみの縮合物として含まれてもよいし、化合物(A)と化合物(B)の重合物との縮合物として含まれてもよい。
次に、上記ii)の分離膜を構成する分離機能層について詳述する。上記ii)の分離膜は、下水処理などで好適に用いられる。
上記ii)の分離膜における分離機能層は、分離機能と機械強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、セルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などから形成される。なお、分離機能層は、これらの樹脂を主成分として含有することができる。
特に、分離機能層の主成分として、溶液による製膜が容易で、物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などが好ましい。
分離機能層は、後述するように、例えば、ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、後述する基材、すなわち不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、製造することができる。
上記ii)の分離膜において、多孔性樹脂層(すなわち分離機能層)の一方の表面における平均孔径は、他方の表面の平均孔径の2倍以上の大きさであってもよい。
いずれの分離機能層についても厚みは限定されない。上記i)の分離膜は、例えば、逆浸透、正浸透、ナノろ過膜で好適に採用される。その場合、分離機能層の厚みは、分離性能と透過性能の点で5nm以上3000nm以下であることが好ましく、特に5nm以上300nm以下であることが透過性能の点で好ましい。
また、上記i)の分離膜において、分離機能層の厚みは、これまでの分離膜の膜厚測定法に準ずることができ、例えば分離膜を樹脂による包埋後に、超薄切片を作製し、染色などの処理を行った後に、透過型電子顕微鏡により観察することで測定することができる。主な測定法としては、分離機能層がひだ構造を有する場合、1個のひだについて多孔性支持層より上に位置するひだ構造の断面長さ方向に50nm間隔で測定し、それを20個のひだについて行って、その平均から求めることができる。
一方、上記ii)の形態の分離膜の場合、分離機能層の厚みは、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは5μm以上である。分離機能層の厚みは、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは500μm以下である。分離機能層の厚みが1μm以上である場合、分離機能層にひび割れなどの欠陥が生じにくいので、濾過性能が維持される。分離機能層の厚みが500μm以下である場合、良好な透過性能が維持できる。
<多孔性支持層>
多孔性支持層は、分離膜に機械的強度を与える。また、多孔性支持層における孔のサイズや分布は特に限定されず、多孔性支持層は、イオン等の分子サイズの小さな成分に対して分離性能を有さなくてもよい。具体的には、多孔性支持層は、一般に「多孔性支持膜」と言われるようなものであれよく、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもつ層を言う。好ましくは、分離機能層が形成される側の表面で原子間力顕微鏡または電子顕微鏡などを用いて表面から測定された細孔の投影面積円相当径が1nm以上100nm以下であるような多孔性支持層が使用される。特に界面重合反応性および分離機能膜の保持性の点で3nm以上50nm以下の投影面積円相当径を有することが好ましい。
多孔性支持層の厚みは、特に限定されないが、分離膜の強度、分離膜の高低差を形成させる点および供給側流路の形態安定性の点で、20μm以上500μm以下の範囲にあることが好ましく、30μm以上300μm以下の範囲にあることがより好ましい。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材(不織布)から多孔性支持膜を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真から多孔性支持層の膜厚や表面の投影面積円相当径を決定する。こうして得られる支持層の厚み及び孔径は、平均値である。また、支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向に20μm間隔で測定した、20点測定の平均値である。また、孔径は、孔を200個カウントし、各投影面積円相当径の平均値である。
多孔性支持層の素材としては、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂あるいはそれらを混合、積層したものが好ましく、化学的、機械的、熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすい素材として、ポリスルホンが好ましい。
上述したように、本欄に説明した多孔性支持層と同様の構成を有する層が、分離機能層として基材上に設けられる場合がある。この場合、多孔性支持層の孔径等は、分離対象となる物質に応じて設定される。
<基材>
次に、基材としては、分離膜の分離性能および透過性能を保持しつつ、適度な機械強度を与え、分離膜表面の高低差を制御する点で、繊維状基材である不織布が用いられてもよい。
不織布としては、ポリオレフィン、ポリエステル、セルロースなどからなるものが用いられるが、分離膜の高低差を形成させる点、形態保持性の点でポリオレフィン、ポリエステルからなるものが好ましい。また、複数の素材が混合させたものも使用することができる。
基材としては、長繊維不織布や短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材は、高分子重合体の溶液を基材に流延した際に、高分子重合体の溶液が基材の裏(透過側)まで浸透しにくいこと、多孔性支持層が剥離しにくいこと、さらには基材の毛羽立ち等による分離膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じにくいこと等を満たすことが好ましい。よって、基材としては、長繊維不織布が特に好ましく用いられる。基材は、例えば熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布であってもよい。また、分離膜の連続製膜においては、製膜方向に対し張力がかけられることからも、基材には寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。特に上記i)の形態の分離膜においては、強度とコストの点で長繊維不織布が好ましく、さらに基材の成形性の点でポリエステル長繊維不織布が好ましい。
長繊維不織布は、成形性、強度の点で、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維が、多孔性支持層側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造によれば、強度を保って膜破れ等をより効果的に抑制することができる。さらに、そのような構造によって、多孔性支持層と基材とを含む積層体の成形性も向上し、分離膜の凹凸部形状が安定する。より具体的に、長繊維不織布の、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度は、0°〜25°であることが好ましく、また、多孔性支持層側表層における繊維配向度との配向度差が10°〜90°であることが好ましい。
分離膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれる。加熱により、多孔性支持層または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において張力が付与されていない幅方向において、収縮が顕著である。収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度と多孔性支持層側表層における繊維配向度との差が10°〜90°であると、熱による幅方向の変化を抑制することもでき、好ましい。
ここで、繊維配向度とは、多孔性支持層を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
繊維配向度は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、これらのサンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維について、不織布の長手方向(縦方向、製膜方向)を0°とし、不織布の幅方向(横方向)を90°としたときの角度を測定し、それらの平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して繊維配向度として求める。
なお、分離膜に含まれる、基材、多孔性支持層および分離機能層等の各層は、上述した成分以外に、着色剤、耐電防止剤、可塑剤等の添加物を、5重量%以下、2重量%以下、又は1重量%以下の割合で含有することができる。
<凹凸>
分離膜エレメントの分離性能、透過性能、原流体側流路形成を向上させる点で、分離膜3の供給側または透過側の面に、高低差が形成されていてもよい。分離膜に「高低差が形成されている」とは、本書においては、分離膜自体が凹凸を持つように形成されていることを意味する。
高低差は、100μm以上2000μm以下の範囲内であってもよい。特に、供給側の面に高低差が設けられていることで、樹脂を配置していない部分にも乱流効果を生むことができる。その結果、濃度分極が抑制される。さらにエレメントの供給側流路を安定させ、分離性能および透過性能を高める上で、高低差は、200μm以上1500μm以下であることが好ましく、200μm以上1000μm以下であることがより好ましい。
分離膜3の表面、すなわち分離機能層表面の高低差は、市販の形状測定システムなどを用いて計測できる。例えば、レーザー顕微鏡による断面からの高低差測定、キーエンス製高精度形状測定システムKS−1100などで測定することができる。
高低差、つまり凹凸の形状としては特に限定されないが、流路の流動抵抗を少なくし、かつ分離膜エレメントに流体を供給、透過させた際の流路を安定化させるような形状から選択可能であるこれらの点で、分離膜の高低差、つまり凸部または凹部の形状は、膜の面方向において、例えば、楕円、円、長円、台形、三角形、長方形、正方形、平行四辺形、菱形、不定形のいずれかから選択される。また、分離膜の厚み方向においては、凸部または凹部は、分離膜のいずれかの面を上に配置したときに、上方から下方へと幅が広がる形状、狭まる形状、または一定の幅を示す形状のいずれであってもよい。高低差の1/2を基準位置としたときに、基準位置よりも上方に位置を有する凸部の面積は、膜面に垂直な方向からの観察面積(2次元面積)において、全膜面積の5%以上80%以下であることが好ましく、流動抵抗および流路安定性の点で10%以上60%以下であることが特に好ましい。
分離膜の高低差は、第2領域に設けられていることが好ましい。つまり、上述の中央領域37、第2領域38および39において、分離膜には凹凸が形成されており、第1領域である帯状領域33〜35においては分離膜が平坦であることが好ましい。このように、供給側流路材が配置された個所の分離膜には凹凸が形成されていないことで、流路材の配置が容易に行われる。
5.分離膜エレメントの製造
5−1.分離膜の製造
<上記i)における多孔性支持層および上記ii)における分離機能層の形成>
上記i)の分離膜における多孔性支持層および上記ii)の分離膜における分離機能層を、以下の説明では「多孔性樹脂層」と総称する。
多孔性樹脂層の形成方法の具体例として、良溶媒に樹脂を溶解する工程、得られた樹脂溶液を基材にキャストする工程、この樹脂溶液を非溶媒と接触させる工程を含む方法について説明する。この方法では、まず、基材(例えば不織布)の表面に、上述した樹脂と溶媒とを含む原液の被膜を形成するとともに、その原液を基材に含浸させる。その後、被膜を有する基材の被膜側表面のみを、非溶媒を含む凝固浴と接触させて樹脂を凝固させ、基材の表面に分離機能層としての多孔性樹脂層を形成する。原液の温度は、製膜性の観点から、通常、0〜120℃の範囲内で選定することが好ましい。
樹脂の種類については、既に述べたとおりである。
溶媒は、樹脂を溶解するものである。溶媒は、樹脂および開孔剤に作用してそれらが多孔性樹脂層を形成するのを促す。溶媒としては、N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、メチルエチルケトンなどを用いることができる。なかでも、樹脂の溶解性の高いNMP、DMAc、DMF、DMSOを好ましく用いることができる。
原液には、開孔剤を添加することもできる。開孔剤は、凝固浴に浸漬された際に抽出されて、樹脂層を多孔質にする作用を持つものである。開孔剤は、凝固浴への溶解性の高いものであるのが好ましい。たとえば、塩化カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機塩を用いることができる。また、開孔剤は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸などの水溶性高分子;およびグリセリンから選択されてもよい。
さらに、原液には、非溶媒を添加することもできる。非溶媒は、樹脂を溶解しない液体である。非溶媒は、樹脂の凝固の速度を制御して細孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。なかでも、廃水処理の容易さや価格の点から水やメタノールが好ましい。これらの混合物であってもよい。
原液において、樹脂の濃度は、例えば5〜40重量%または8〜25重量%である。溶媒の濃度は、例えば40〜95重量%、55〜94.9重量%、または60〜90重量%である。樹脂が極端に少ないと多孔性樹脂層の強度が低くなり、多すぎると透水性が低下することがある。また、溶媒は、少なすぎると原液がゲル化しやすくなり、多すぎると多孔性樹脂層の強度が低下することがある。
特に、開孔剤および非溶媒を添加する場合は、原液において、樹脂の含有率は5〜40重量%であることが好ましく、溶媒の含有率は40〜94.9重量%であることが好ましい。原液中の開孔剤の含有率は0.1〜15重量%であることが好ましい。開孔剤の含有率は、0.5〜10重量%であることがより好ましい。また、非溶媒の含有率は0〜20重量%であることが好ましく、0.5〜15重量%であることがより好ましい。
開孔剤は、少なすぎると透水性が低下することがあり、多すぎると多孔性樹脂層の強度が低下することがある。また、開孔剤の量が極端に多い場合、多孔性樹脂中に残存することがある。残存した開口剤は、使用中に溶出することにより、透過水の水質の悪化、または透水性の変動を引き起こすことがある。
凝固浴としては、非溶媒、または、非溶媒と溶媒とを含む混合液を用いることができる。凝固浴における溶媒の含有率は、例えば40〜95重量%、より具体的には50〜90重量%である。凝固浴は、非溶媒を少なくとも5重量%含むことが好ましい。溶媒が40重量%を下回ると、樹脂の凝固速度が速くなり、細孔径が小さくなる。また、溶媒が95重量%を越えると、樹脂が凝固しにくく、多孔性樹脂層が形成されにくくなる。
凝固浴の温度によって凝固速度を調整することができる。凝固浴の温度は、例えば0〜100℃、または10〜80℃である。
被膜を有する基材の被膜側表面のみを、凝固浴と接触させる方法は、特に限定されない。例えば、被膜を有する基材の被膜側表面が下側に来るようにして、凝固浴表面と接触させる方法や、ガラス板、金属板などの平滑な板上に被膜側とは反対側を接触させて、凝固浴が裏側に回り込まないように貼り付け、被膜を有する基材を板ごと凝固浴に浸漬させてもよい。後者の方法では、基材を板に貼り付けてから原液の被膜を形成しても構わないし、基材に原液の被膜を形成してから板に貼り付けてもよい。
基材への原液の被膜の形成は、基材への原液の塗布、または基材の原液への浸漬によって行われる。原液を塗布する場合には、基材の片面に塗布しても構わないし、両面に塗布しても構わない。このとき、原液の組成にもよるが、密度が0.7g/cm3以下である多孔性基材を使用すると、原液が多孔性基材に対して適度に含浸する。
以上のように製造される分離膜は、多孔性樹脂層(すなわち分離機能層)において、凝固浴と接触した側表面の平均孔径は、他方の表面の平均孔径の2倍以上の大きさである。これは、凝固浴に溶媒が40〜95重量%含まれるため、原液と凝固浴との置換速度が比較的遅く、多孔性樹脂層において、凝固浴と接触した側表面の穴の成長が進んで細孔径が大きくなるのに対し、反対側の表面は、凝固浴と接触しないため、原液の相分離によってのみ穴が形成され、比較的細孔径が小さくなるためである。このため、このようにして得られた分離膜は、凝固浴と接触した側を被処理液側に、他方を透過液側にして用いればよい。
具体的な形成方法について説明する。所定量のポリスルホンをDMFに溶解し、所定濃度のポリスルホン樹脂溶液(原液)を調製する。次いで、この原液を不織布からなる基材上に略一定の厚さに塗布した後、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、凝固液中でポリスルホンを凝固させる。この時、凝固液と接触する表面部分などは溶媒のDMFが迅速に揮散するとともにポリスルホンの凝固が急速に進行し、DMFの存在した部分を核とする微細な連通孔が生成される。
また、上記の表面部分から基材側へ向かう内部においては、DMFの揮散とポリスルホンの凝固が表面に比べて緩慢に進行するので、DMFが凝集して大きな核を形成しやすく、したがって、生成する連通孔が大径化する。勿論、上記の核生成の条件は、表面からの距離によって徐々に変化するので、明確な境界のない、滑らかな孔径分布を有する層が形成されることになる。この形成工程において用いる原液の温度、ポリスルホンの濃度、塗布を行う雰囲気の相対湿度、塗布してから凝固液に浸漬するまでの時間、凝固液の温度や組成等を調節することにより平均空隙率および平均孔径を制御することができる
以上に述べた工程の詳細、または特に言及しなかった条件等については、例えば、“オフィス オブ セイリーン ウォーター リサーチ アンド ディベロップメント プログレス レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って、行うことができる。ただし、目的の構造を備える層を得るために、ポリマー濃度、溶媒の温度、貧溶媒を変更することができる。
<上記i)における分離機能層の形成>
上記i)の分離膜を構成する分離機能層は以下のように製造できる。
ポリアミドを主成分とする分離機能層は、多孔性支持層上で多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。ここで、多官能アミンまたは多官能酸ハロゲン化物の少なくとも一方として、少なくとも1種の3官能以上の化合物が用いられることが好ましい。
ここで、多官能アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいう。
例えば、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。
膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、多官能アミンとしては、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンが好ましい。このような多官能芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)がより好ましい。
多官能アミンは、単独で用いられても、2種以上の多官能アミンが組み合わされて用いられてもよい。2種以上の多官能アミンが用いられる場合、上述のとおり例示されたアミン同士を組み合わせてもよく、上述のアミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。
例えば、3官能酸ハロゲン化物としては、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができる。2官能酸ハロゲン化物としては、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。
多官能アミンとの反応性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は多官能酸塩化物であることが好ましい。また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。特に、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドがより好ましい。
これらの多官能酸ハロゲン化物は、単独で用いられても、2種以上を同時に用いられてもよい。
多官能酸ハロゲン化物として、2官能酸ハロゲン化合物と3官能ハロゲン化合物とを用いることができる。分離膜の分離性能を保持する点で、2官能酸ハロゲン化合物と3官能ハロゲン化合物との比率が、モル比(2官能酸ハロゲン化合物のモル/3官能酸ハロゲン化合物のモル)で0.05〜1.5であることが好ましく、0.1〜1.0であることがさらに好ましい。
分離機能層としてポリアミド層を形成する具体的な方法について説明する。
多孔性支持膜上に、多官能アミン水溶液を塗布した後、余分なアミン水溶液をエアーナイフなどで除去する。その上に、多官能酸ハロゲン化物含有溶液を塗布し、余分な多官能酸ハロゲン化物をエアーナイフなどで除去する。
その後、洗浄によってモノマーを除去してもよい。また、塩素、酸、アルカリ、亜硝酸などの化学処理を施してもよい。化学処理後に洗浄を行ってもよいし、洗浄後に化学処理を行ってもよい。
多官能酸ハロゲン化物含有溶液の溶媒としては、有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、水と非混和性であり、かつ多官能酸ハロゲン化物を溶解し、多孔性樹脂を破壊しないものが望ましく、多官能アミン化合物および多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
また、Si元素などを有する有機−無機ハイブリッド構造を有する分離機能層の形成について説明する。上述したように、有機−無機ハイブリッド構造の分離機能層は、化合物(A)の縮合、および化合物(A)と化合物(B)との重合の少なくとも一方の反応によって得られる。
まず、化合物(A)について説明する。
エチレン性不飽和基を有する反応性基はケイ素原子に直接結合している。このような反応性基としては、ビニル基、アリル基、メタクリルオキシエチル基、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシエチル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が例示される。重合性の観点から、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が好ましい。
化合物(A)は、ケイ素原子に直接結合している加水分解性基が水酸基に変化するなどのプロセスを経て、ケイ素化合物同士がシロキサン結合で結ばれるという縮合反応により、高分子となる。
加水分解性基としてはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子およびイソシアネート基などの官能基が例示される。アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜2のものである。アルケニルオキシ基としては炭素数2〜10のものが好ましく、さらには炭素数2〜4、さらには3のものである。カルボキシ基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、さらには炭素数2のもの、すなわちアセトキシ基である。ケトオキシム基としては、メチルエチルケトオキシム基、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基が例示される。アミノヒドロキシ基は、酸素を介してアミノ基が酸素原子を介してケイ素原子に結合しているものである。このようなものとしては、ジメチルアミノヒドロキシ基、ジエチルアミノヒドロキシ基、メチルエチルアミノヒドロキシ基が例示される。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましく使用される。
分離機能層の形成にあたっては、上記加水分解性基の一部が加水分解し、シラノール構造をとっているケイ素化合物も使用できる。また2以上のケイ素化合物が、加水分解性基の一部が加水分解、縮合し架橋しない程度に高分子量化したものも使用できる。
ケイ素化合物(A)としては下記一般式(a)で表されるものであることが好ましい。
Si(R(R(R4−m−n ・・・(a)
(Rはエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。Rはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子またはイソシアネート基のいずれかを表す。RはHまたはアルキル基を表す。m、nはm+n≦4を満たす整数であり、m≧1、n≧1を満たすものとする。R、R、Rそれぞれにおいて2以上の官能基がケイ素原子に結合している場合、同一であっても異なっていてもよい。)
はエチレン性不飽和基を含む反応性基であるが、上で解説したとおりである。
は加水分解性基であるが、これらは上で解説したとおりである。Rとなるアルキル基の炭素数としては1〜10のものが好ましく、さらに1〜2のものが好ましい。
加水分解性基としては、分離機能層の形成にあたって、反応液が粘性を持つことからアルコキシ基が好ましく用いられる。
このようなケイ素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシランが例示される。
化合物(A)の他に、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有しないが、加水分解性基を有すケイ素化合物(C)を併せて使用することもできる。化合物(A)については、一般式(a)で「m≧1」と定義されているのに対して、化合物(C)としては、一般式(a)においてmがゼロである化合物が例示される。化合物(C)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが例示される。
次に化合物(A)以外のものであって、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)について説明する。
エチレン性不飽和基は付加重合性を有する。このような化合物としてはエチレン、プロピレン、メタアクリル酸、アクリル酸、スチレンおよびこれらの誘導体が例示される。
また、この化合物は、分離膜を水溶液の分離などに用いたときに水の選択的透過性を高め、塩の阻止率を上げるために、酸基を有するアルカリ可溶性の化合物であることが好ましい。
好ましい酸の構造としては、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸およびスルホン酸であり、これらの酸の構造としては、酸の形態、エステル化合物、および金属塩のいずれの状態で存在してもよい。これらのエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物は、2つ以上の酸を含有し得るが、特に1個〜2個の酸基を含有する化合物が、好ましい。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でカルボン酸基を有する化合物としては、以下のものが例示される。マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸が挙げられる。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でホスホン酸基を有する化合物としては、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−フェニル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でリン酸エステルの化合物としては、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素ホスフェートならびに1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−二水素ホスフェートが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でスルホン酸基を有する化合物としては、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸が挙げられる。
有機−無機ハイブリッド構造の分離機能層の形成においては、化合物(A)、化合物(B)および重合開始剤を含んだ反応液が使用される。この反応液を多孔性支持層上に塗布し、加水分解性基を縮合させ、かつエチレン性不飽和基を重合させることによって、これら化合物を高分子量化することができる。
化合物(A)が単独で縮合した場合、ケイ素原子に架橋鎖の結合が集中するので、ケイ素原子周辺とケイ素原子から離れた部分との密度差が大きくなる。その結果、分離機能層中の孔径が不均一となる傾向がある。一方、化合物(A)自身の高分子量化および架橋に加え、化合物(B)が化合物(A)と共重合することで、加水分解性基の縮合による架橋点とエチレン性不飽和基の重合による架橋点が適度に分散される。このように架橋点が分散することで、分離膜における孔径が均一化する。その結果、分離膜における透水性能と除去性能との良好なバランスが実現される。また、エチレン性不飽和基を1個以上有する低分子量化合物は、分離膜使用時に溶出することで膜性能低下を引き起こすことがあるが、分離機能層において化合物が高分子化されていることによって、このような膜性能低下を抑制することができる。
このような製造方法において、化合物(A)の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し10重量部以上であることが好ましく、さらに好ましくは20重量部〜50重量部である。ここで、反応液に含有される固形分とは、反応液に含有される全成分のうち、溶媒および縮合反応で生成する水やアルコールなどの留去成分を除いた、得られる複合半透膜に最終的に分離機能層として含まれる成分のことを指す。化合物(A)の量が充分であることで、充分な架橋度が得られ、膜ろ過時に分離機能層の成分が溶出し分離性能が低下するなどの不具合が発生するおそれが低減される。
化合物(B)の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し90重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは50重量部〜80重量部である。化合物(B)の含有量がこれらの範囲にあるとき、得られる分離機能層は架橋度が高くなるため、分離機能層が溶出することなく安定に膜ろ過ができる。
次に、上記のような有機−無機ハイブリッド構造を有する分離機能層を多孔性支持層上に形成する方法について説明する。
分離機能層形成方法として、化合物(A)および化合物(B)を含有する反応液を塗布する工程、溶媒を除去する工程、エチレン性不飽和基を重合させる工程、加水分解性基を縮合させる工程を、この順に行う方法が例示される。エチレン不飽和基を重合させる工程において、加水分解性基が同時に縮合することが含まれていてもよい。
まず、化合物(A)および化合物(B)を含有する反応液を、後述する多孔性支持層に接触させる。かかる反応液は、通常溶媒を含有する溶液であるが、かかる溶媒は多孔性支持層を破壊せず、化合物(A)、化合物(B)、および必要に応じて添加される重合開始剤を溶解するものであれば特に限定されない。この反応液に、化合物(A)のモル数に対して1〜10倍モル量の水、好ましくは1〜5倍モル量の水を、無機酸または有機酸と共に添加することでて、化合物(A)の加水分解を促すことができる。
反応液の溶媒としては、水、アルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒および、これらを混ぜ合わせたものが好ましい。例えば、アルコール系有機溶媒として、メタノール、エトキシメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2-メトキシエタノール)、エチレングリコールモノアセトエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシブタノール等が挙げられる。また、エーテル系有機溶媒として、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等が挙げられる。また、ケトン系有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニトリルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
また、溶媒の添加量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し50重量部以上であることが好ましく、80重量部以上であることがより好ましい。溶媒の添加量が固形分量100重量部に対して50重量部以上であることで、良好な透水性を有する膜が得られる。また、溶媒の添加量が固形分量100重量部に対し以下であることで、膜に欠点が生じにくいという利点がある。
多孔性支持層と上記反応液との接触は、多孔性支持層上で均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、反応液をスピンコーター、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレーなどの塗布装置を用いて多孔性支持層上にコーティングする方法があげられる。また多孔性支持層を、反応液に浸漬する方法を挙げることができる。
浸漬させる場合、多孔性支持層と反応液との接触時間は、0.5〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。反応液を多孔性支持層に接触させたあとは、多孔性支持層上に液滴が残らないように十分に液切りすることが好ましい。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、反応液接触後の多孔性支持層を垂直方向に把持して過剰の反応液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法(つまりエアーナイフ)などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、反応液の溶媒分の一部を除去することもできる。
ケイ素の加水分解性基を縮合させる工程は、多孔性支持層に反応液を接触させた後に加熱処理することによって行われる。このときの加熱温度は、多孔性支持層が溶融し分離膜としての性能が低下する温度より低いことが要求される。縮合反応を速やかに進行させるために通常0℃以上で加熱を行うことが好ましく、20℃以上がより好ましい。また、前記反応温度は、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。反応温度が0℃以上であれば、加水分解および縮合反応が速やかに進行し、150℃以下であれば、加水分解および縮合反応の制御が容易になる。また、加水分解または縮合を促進する触媒を添加することで、より低温でも反応を進行させることが可能である。さらに分離機能層が細孔を有するよう加熱条件および湿度条件を選定することで、縮合反応を適切に行うことができる。
化合物(A)および化合物(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物のエチレン性不飽和基の重合方法としては、熱処理、電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射により行うことができる。ここで電磁波とは赤外線、紫外線、X線、γ線などを含む。重合方法は適宜最適な選択をすればよいが、ランニングコスト、生産性などの点から電磁波照射による重合が好ましい。電磁波の中でも赤外線照射や紫外線照射が簡便性の点からより好ましい。実際に赤外線または紫外線を用いて重合を行う際、これらの光源は選択的にこの波長域の光のみを発生する必要はなく、これらの波長域の電磁波を含むものであればよい。しかし、重合時間の短縮、重合条件の制御などのしやすさの点から、これらの電磁波の強度がその他の波長域の電磁波に比べ高いことが好ましい。
電磁波は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、水銀灯などから発生させることができる。電磁波のエネルギーは重合できれば特に制限しないが、特に高効率で低波長の紫外線は薄膜形成性が高い。このような紫外線は低圧水銀灯、エキシマレーザーランプにより発生させることができる。分離機能層の厚み、形態はそれぞれの重合条件によっても大きく変化することがあり、電磁波による重合であれば電磁波の波長、強度、被照射物との距離、処理時間により大きく変化することがある。そのためこれらの条件は適宜最適化を行う必要がある。
重合速度を速める目的で分離機能層形成の際に重合開始剤、重合促進剤等を添加することが好ましい。ここで、重合開始剤、重合促進剤とは特に限定されるものではなく、用いる化合物の構造、重合手法などに合わせて適宜選択されるものである。
重合開始剤を以下例示する。電磁波による重合の開始剤としては、ベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシドもしくはビスアシルホスフィンオキシド、α−ジケトン(例えば、9,10−フェナントレンキノン)、ジアセチルキノン、フリルキノン、アニシルキノン、4,4’−ジクロロベンジルキノンおよび4,4’−ジアルコキシベンジルキノン、およびショウノウキノンが、例示される。熱による重合の開始剤としては、アゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)もしくはアゾビス−(4−シアノバレリアン酸))、または過酸化物(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過オクタン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチルもしくはジ−(tert−ブチル)ペルオキシド)、さらに芳香族ジアゾニウム塩、ビススルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アルキルリチウム、クミルカリウム、ナトリウムナフタレン、ジスチリルジアニオンが例示される。なかでもベンゾピナコールおよび2,2’−ジアルキルベンゾピナコールは、ラジカル重合のための開始剤として特に好ましい。
過酸化物およびα−ジケトンは、開始を加速するために、好ましくは、芳香族アミンと組み合わせて使用される。この組み合わせはレドックス系とも呼ばれる。このような系の例としては、過酸化ベンゾイルまたはショウノウキノンと、アミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチル−アミノ安息香酸エチルエステルまたはその誘導体)との組み合わせである。さらに、過酸化物を、還元剤としてのアスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸と組み合わせて含有する系もまた好ましい。
次いで、これを約100〜200℃で加熱処理すると重縮合反応が起こり、多孔性支持層表面にシランカップリング剤由来の分離機能層が形成される。加熱温度は、多孔性支持層の素材にもよるが、高すぎると溶解が起こり多孔性支持層の細孔が閉塞するため、最終的に得られる分離膜の造水量が低下する。一方低すぎた場合には、重縮合反応が不十分となり分離機能層の溶出により除去率が低下するようになる。
なお上記の製造方法において、シランカップリング剤とエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物とを高分子量化する工程は、シランカップリング剤の重縮合工程の前に行っても良いし、後に行っても良い。また、同時に行っても良い。
このようにして得られた有機−無機ハイブリッド構造を有する分離膜は、このままでも使用できるが、使用する前に例えばアルコール含有水溶液、アルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させることが好ましい。
<後処理>
上述したi)及びii)のいずれの分離膜においても、分離機能層は、透過性能、除去性能などの基本性能を向上させる上で、塩素含有化合物、酸、アルカリ、亜硝酸、カップリング剤などによる化学処理を施されてもよい。さらに洗浄によって、未重合のモノマーが除かれてもよい。
<凹凸の形成>
高低差を付与する方法としては特に限定されないが、分離膜にエンボス成形、水圧成形、カレンダ加工などの方法を用いることができ、分離膜に高低差を形成した後に、40〜150℃の熱処理を施すことで、凹凸形状の保持性を向上させることができる。成形後の該熱処理温度は、分離膜から基材のみをはがし取り、基材のDSCを測定することでポリエステル繊維の熱処理温度を公知の方法を用いて同定することができる。
高低差の成形工程としては特に限定されないが、分離膜を作製するまでの段階で多孔性支持層を加工する工程、基材を加工する工程、多孔性支持層および基材を積層した積層体を加工する工程や、分離機能層が形成された分離膜を加工する工程が好ましく用いることができる。
5−2.供給側流路材の配置
供給側流路材は、融着によって分離膜上に設けられる。融着として、具体的には熱融着が挙げられる。熱融着法としては、熱風溶着、熱板溶着、レーザー溶着、高周波溶着、誘導加熱溶着、スピン溶着、振動溶着、超音波溶着、DSI成形などを用いることができる。
融解した樹脂を塗布することで供給側流路材を配置する場合、供給側の面31の帯状領域に目的のパターンで流路材4が配置できれば、その方法は特に限定されないが、例えばノズル型のホットメルトアプリケーター、スプレー型のホットメルトアプリケーター、フラットノズル型のホットメルトアプリケーター、ロール型コーター、グラビア法、押出型コーター、印刷、噴霧等が挙げられる。
供給側流路材を配置する工程は、分離膜製造におけるどのタイミングで行われてもよい。例えば、分離膜を作製する前の段階で支持膜を加工する工程、又は、支持膜および基材の積層体を加工する工程、分離膜を加工する工程等において、樹脂を塗布することができる。
5−3.透過側流路材の配置
透過側流路材の形成方法としては特に限定されないが、連続形状の場合、あらかじめ加工しておいた流路材を分離膜の透過流体側に積層する方法が好ましい。不連続形状の場合、透過側流路材を構成する材料を分離膜の透過流体側に直接、印刷、噴霧、アプリケーター塗布、ホットメルト加工などにより配置する方法が用いられる。
5−4.エレメントの組み立て
従来のエレメント製作装置を用いて、例えば、リーフ数26枚、有効面積37mの8インチエレメントを作製することができる。エレメント作製方法としては、参考文献(特公昭44−14216、特公平4−11928、特開平11−226366)に記載される方法を用いることができる。
分離膜は重ねられ、集水管の周囲に巻き付けられながら、貼り合わされる。分離膜同士の接着に用いられる接着剤は、粘度が40PS(Poise)以上150PS以下の範囲内であることが好ましく、さらに50PS以上120PS以下がより好ましい。接着剤粘度が高すぎる場合には、積層したリーフを集水管に巻囲する際に、シワが発生し易くなって分離膜エレメントの性能が損なわれ易くなる。逆に、接着剤粘度が低すぎる場合は、リーフの端部(接着面部分)から接着剤が流出して装置を汚す他、不要な部分に付着して分離膜エレメントの性能を損なうと共に、流出した接着剤の処理作業により作業効率が著しく低下する。
接着剤の塗布量は、リーフを集水管に巻囲した後に、分離膜上で接着剤が付着する領域の幅が、10mm以上100mm以下になるように調整されてもよい。塗布幅が10mm以上であることで、接着不良の発生が抑制される。よって、供給流体の一部が透過側に流入することが抑制される。一方で、接着剤は、分離膜が巻回される時に広がることで分離に関わる分離膜の面積(すなわち有効膜面積)を低減させることがある。これに対して、接着剤が付着する領域の幅が100mm以下であることで、有効膜面積を確保することができる。
接着剤としてはウレタン系接着剤が好ましく、粘度を40PS以上150PS以下の範囲とするには、主剤のイソシアネートと硬化剤のポリオールとを、イソシアネート:ポリオール=1:1〜1:5の割合で混合したものが好ましい。接着剤の粘度は、予め主剤、硬化剤単体、及び配合割合を規定した混合物の粘度をB型粘度計(JIS K 6833)で測定したものである。
6.エレメントの使用
分離膜エレメントは、直列または並列に接続されて圧力容器に収納されることで、分離膜モジュールとして使用される。
また、上記の分離膜エレメントおよびモジュールは、それらに流体を供給するポンプや、その流体を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、例えば原流体を飲料水などの透過流体と膜を透過しなかった濃縮流体とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、膜エレメントの供給流路、透過流路の保持性を考慮すると、膜モジュールに被処理水を透過する際の操作圧力は、0.2MPa以上、8.0MPa以下が好ましい。原流体温度は、高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、3℃以上、60℃以下が好ましい。
本発明に係るスパイラル型分離膜エレメントによって処理される流体は特に限定されないが、水処理に使用する場合、原流体としては、海水、かん水、排水等の500mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
(分離膜の作製)
表1および表2に示す各種基材上に、ポリスルホンの16.0重量%、ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、室温(25℃)で、180μmの厚みでキャストした。キャスト後、ただちに純水中に浸漬して5分間放置した。こうして繊維補強ポリスルホン支持膜からなる多孔性支持層(厚さ135μm)ロールを作製した。
多孔性支持層ロールを巻きだし(ほどき)、ポリスルホン支持膜の表面に、m−PDA1.5重量%、ε−カプロラクタム5.0重量%の水溶液を塗布した。エアーノズルから窒素を吹き付けることで支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.06重量%を含む25℃のn−ヘキサン溶液を、支持膜表面が完全に濡れるように塗布した。その後、膜から余分な溶液をエアーブローで除去し、50℃の熱水で洗浄して、2%のグリセリン水溶液に1分浸漬した後、100℃の熱風オーブンで3分間処理し、半乾燥状態の分離膜ロールを得た。
こうして、基材、ポリスルホン製支持膜、ポリアミド製分離機能層が順に積奏された分離膜が得られた。
(供給側流路材の高さ)
供給側流路材が設けられた部分を含むように、分離膜から1cm×5cmの大きさのサンプルを切り出した。キーエンス製高精度形状測定システムKS−1100を用いて、分離膜の供給側の面の高低差を測定し、その結果から平均の高低差を解析した。具体的には、1つのサンプルについて、10μm以上の高低差のある30箇所について測定を行い、得られた高低差の総和を測定箇所の数で割って流路材の高さを求めた。これを3つのサンプルについて行い、流路材の高さとして、各サンプルで得られた値の平均値を得た。
(分離膜の高低差)
供給側流路材が設けられていない分離膜から5cm×5cmの大きさのサンプルを切り出し、キーエンス製高精度形状測定システムKS−1100を用い、供給側の面の高低差を測定し、結果から平均の高低差を解析した。具体的には、10μm以上の高低差のある30箇所について測定を行い、得られた高低差の総和を測定箇所の数で割って分離膜の高低差を求めた。これを3つのサンプルについて行い、分離膜の高低差として各サンプルで得られた値の平均を得た。
(脱塩率(TDS除去率))
原流体の食塩濃度:500mg/L、運転圧力:0.75MPa、運転温度:25℃、pH7でエレメント運転(回収率15%)した。このときの透過流体中の塩濃度を測定することにより、次の式から求めた。
TDS除去率(%)=100×{1−(透過流体中のTDS濃度/原流体中のTDS濃度)}。
(造水量)
脱塩率の測定と同条件でエレメントを運転した。このときの透過水量を、1つの分離膜エレメントにおける1日あたりの透水量(立方メートル)を造水量(m/日)として表した。
(実施例1)
基材としてポリエチレンテレフタレート繊維から抄紙法で得られた不織布(糸径:1デシテックス、厚み:90μm、通気度:0.9cc/cm/sec)を用い、上述した通りに分離膜を得た。
次に、分離膜ロールの分離膜表面(原流体側)端部両側に対して、ノズル式ホットメルト加工機でエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(701A)を、間隔5.0mm、線幅1.0mm、高さ400μm、斜行角度θ 45°、塗布幅50mmでストライプ状に熱融着し、供給側流路材を配置した。なお、塗布幅とはx軸方向における第1領域の幅に相当する。
その後に、透過側流路材としてトリコット(厚み:300μm、溝幅:200μm、畦幅:300μm、溝深さ:105μm)を連続的に分離膜の透過側面に積層した。
透過側流路材と積層された分離膜を断裁し、折り畳み加工した後、1辺が開口するように分離膜上にウレタン系接着剤(イソシアネート:ポリオール=1:3)を塗布し、重ね合わせることで、分離膜エレメントの有効面積が37.0mになるように、幅930mmの26枚の封筒状分離膜を作製した。
その後、封筒状分離膜の積層体を有孔集水管にスパイラル状に巻回することで、26枚の封筒状分離膜からなる巻回体を得た。続いて、外周にフィルムを巻き付け、テープで固定後、エッジカット、端板取りつけ、フィラメントワインディングを行った。こうして、8インチスパイラル型分離膜エレメントを作製した。なお、供給側流路材として分離膜に設けられた樹脂体は、対向する分離膜に設けられた樹脂体と交差するように配置されていた。
このエレメントを圧力容器に入れ、上述の条件で運転したところ、脱塩率99.35%、造水量45.4m/日であった。各条件およびエレメントの評価結果を、他の実施例等とともに表3に示す。
(実施例2〜4)
実施例2では、供給側流路材を原流体の供給側端部(上流側端部)のみに設けた以外は、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し評価を行った。その結果、脱塩率99.25%、造水量44.1m/日であった。
実施例3では、供給側流路材のストライプの斜行角度θを20°に変更した以外は、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し評価を行った。その結果、脱塩率99.32%、造水量45.7m/日であった。
実施例4では、供給側流路材のストライプ形状を間隔20.0mm、線幅1.5mm、高さ200μm、斜行角度θ 30°、塗布幅80mmに変更した以外、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し評価を行った。その結果、脱塩率99.28%、造水量44.3m/日であった。
(実施例5)
実施例5では、供給側流路材の配置パターンを格子状のドット(間隔7.0mm、直径1.0mmφ、高さ400μm、塗布幅50mm)に変更した以外、実施例1と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.30%、造水量42.5m/日であった。
(実施例6)
実施例6では、基材をポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層の繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向°:20°)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.45%、造水量45.5m/日であり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例7)
実施例7では、基材をポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層での繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向度:20°)に変更した以外は、実施例2と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.33%、造水量44.1m/日であり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例8)
実施例8では、基材をポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層での繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向度:20°)に変更した以外は、実施例3と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.37%、造水量45.9m/日であり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例9)
実施例9では基材をポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層での繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向度:20°)に変更した以外は、実施例4と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.35%、造水量44.4m/日であり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例10)
実施例10では、供給側流路材のストライプ形状の間隔を30.0mmに変更した以外は、実施例6と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.41%、造水量44.3m/日であった。
(実施例11)
実施例11では、基材を、多孔性支持層側表層で20°、多孔性支持層とは反対側の表層で40°の繊維配向度を有する基材に変更した以外は、実施例6と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率98.30%、造水量43.5m/日であり、製膜時の膜欠点増加により脱塩率、造水量が減少した。
(実施例12)
ストライプ加工の斜行角度θを70°に変更した以外、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し評価を行った。その結果、脱塩率99.30%、造水量42.2m/日であり、原流体がエレメント供給側面に流入する際の抵抗が増加し、造水量が若干低下した。
(実施例13)
ストライプ加工の斜行角度θを85°に変更した以外、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し評価を行った。その結果、脱塩率99.05%、造水量35.2m/日であり、原流体がエレメント供給側面に流入する際の抵抗が増加し、造水量が低下した。
(実施例14)
実施例14では分離膜端部への樹脂の熱融着を実施する前に、分離膜に対してネット状のエンボス加工を行い、分離膜表面(供給流体側)に200μmの高低差を付与した以外、実施例1と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.51%、造水量45.7m/日であり、乱流効果による濃度分極が抑制され、脱塩率がさらに向上した。
(実施例15)
透過側流路材をトリコットから、ホットメルトによって形成され、巻回方向に平行なストライプ状の部材に変更した以外は、実施例1と同様にエレメントを作製した。すなわち、溝幅および線幅がそれぞれ450μmの櫛形シムを装着したホットメルトアプリケーターを用いて、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(商品名:703A)を、樹脂温度125℃、走行速度3m/minで、分離膜の巻回方向の内側端部から外側端部まで集水管の長手方向に対して垂直になるように、直線状に塗布した。こうして得られた透過側流路材は、高さ140μm、断面形状が台形状でその上底および下底が0.4mmおよび0.6mm、溝幅0.4mm、間隔1.0mmで、ストライプ状に配置された壁状部材であった。
本実施例のエレメントを運転した結果、脱塩率99.35%、造水量52.5m/日であった。
(実施例16)
実施例16ではポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層での繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向度:20°の基材に変更した以外は、実施例15と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.48%、造水量52.6m/日となり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例17)
実施例17では、供給側流路材の塗布幅を30mmとした。また、分離膜エレメントでの有効面積が0.5mになるように、幅280mmの2枚の封筒状膜を作製した。他の部材および手順等は実施例1と同様であった。この封筒状分離膜を用いて、実施例1と同様の方法で2インチのエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.30%、造水量0.61m/日であった。
(実施例18)
実施例18では、基材をポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層での繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向度:20°)に変更した以外は、実施例17と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.45%、造水量0.61m/日となり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例19)
実施例19では透過側流路材をトリコットからエチレン酢酸ビニル共重合樹脂製(商品名:701A)の壁状物(高さ140μm、断面形状が台形状でその上底および下底が0.4mmおよび0.6mm、溝幅0.4mm、間隔1.0mm)に変更した以外は実施例17と同様にエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.35%、造水量0.73m/日であった。該壁状物は、実施例15と同様の手法で塗布した。
(実施例20)
実施例20では、基材をポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層での繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向度:20°)に変更した以外は、実施例19と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.44%、造水量0.73m/日となり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例21)
実施例21では、分離膜エレメントでの有効面積が1.5mになるように、幅280mmの6枚の封筒状膜を作製した。この封筒状膜を用いて、実施例1と同様の方法で3インチエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.30%、造水量1.84m/日であった。
(比較例1)
供給側流路材として、端部に樹脂を熱融着する代わりに、分離膜表面全体にネット(厚み:900μm、ピッチ:3mm×3mm)を配置した以外、実施例1と同様の方法で8インチエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.30%、造水量41.2m/日であった。
(比較例2)
供給側流路材として、端部両側に樹脂を熱融着する代わりに、ネット(厚み:900μm、ピッチ:3mm×3mm、幅:50mm)を配置した以外、実施例1と同様の方法で8インチエレメントを作製した。その結果、脱塩率98.90%、造水量41.4m/日であり、造水量の向上はわずかであり、脱塩率の低下も見られた。
(比較例3)
供給側流路材として、端部に樹脂を熱融着する代わりに、分離膜表面全体にネット(厚み:900μm、ピッチ:3mm×3mm)を配置した以外、実施例16と同様の方法で2インチエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.30%、造水量0.55m/日であった。
(比較例4)
供給側流路材として、端部両側に樹脂を熱融着する代わりに、ネット(厚み:900μm、ピッチ:3mm×3mm、幅:50mm)を配置した以外、実施例16と同様の方法で2インチエレメントを作製した。その結果、脱塩率98.88%、造水量0.56m/日であり、造水量の向上はわずかであり、脱塩率の低下も見られた。
(比較例5)
供給側流路材として、端部に樹脂を熱融着する代わりに、分離膜表面全体にネット(厚み:900μm、ピッチ:3mm×3mm)を配置した以外、実施例20と同様の方法で3インチエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.31%、造水量1.66m/日であった。
(比較例6)
供給側流路材として、端部両側に樹脂を熱融着する代わりに、ネット(厚み:900μm、ピッチ:3mm×3mm、幅:50mm)を配置した以外、実施例20と同様の方法で3インチエレメントを作製した。その結果、脱塩率98.89%、造水量1.70m/日であり、造水量の向上はわずかであり、脱塩率の低下も見られた。
(実施例22)
供給側流路材を、分離膜の両端部および中央部(分離膜の上流側の端部から435mmから495mmの範囲)に設け、かつホットメルトによる塗布幅を60mmとした以外は、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し、評価を行った。その結果、脱塩率99.39%、造水量43.8m/日であった。
(実施例23〜27)
実施例23では樹脂の塗布位置を原流体の供給側端部(上流側端部)および中央部のみに実施する以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製した。エレメントを運転した結果、脱塩率99.35%、造水量44.2m/日であった。
実施例24ではストライプ加工の斜行角度を20°に変更する以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製した。エレメントを運転した結果、脱塩率99.37%、造水量44.0m/日であった。
実施例25ではストライプ形状を間隔20.0mm、線幅1.5mm、高さ200μm、斜行角度30°、塗布幅80mmに変更する以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製した。このエレメントを運転した結果、脱塩率99.31%、造水量43.2m/日であった。
実施例26では分離膜表面(原流体側)の両側端部から60mmの範囲、上流側の端から290mmから350mmの範囲、および端部から580mmから640mmの範囲にエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(701A)を熱融着した以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製した。つまり、熱融着によって樹脂が塗布された分離膜において、4つの領域(第1領域)は、幅が60mmで同一であり、樹脂が塗布されていない3つの領域(第2領域)の幅は230mmで同一であった。つまり、分離膜に対する樹脂体領域の配置は均等であった。こうして得られたエレメントを運転した結果、脱塩率99.47%、造水量43.4m/日であった。
実施例27では塗布幅を90mmに変更した以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製した。このエレメントを運転した結果、脱塩率99.48%、造水量43.5m/日であった。
(実施例28)
樹脂の塗布パターンを格子状のドット(間隔7.0mm、直径1.0mmφ、高さ400μm、塗布幅60mm)に変更する以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.40%、造水量41.9m/日であった。
(実施例29)
基材をポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層での繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向度:20°)に変更した以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製した。このエレメントを運転した結果、脱塩率99.46%、造水量43.8m/日であり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例30)
分離膜を凹凸加工した以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製した。すなわち、分離膜端部への樹脂の熱融着を実施する前に、供給側流路材を配置しない領域に、形状が網型、ピッチ5mm、投影面積比0.30のエンボスロールによる分離膜ロールのエンボス加工を100℃および40kg/cmで実施することで、分離膜表面(供給流体側)に400μm(すなわち、封筒時状分離膜とした場合に800μm)の高低差を形成した。その結果、脱塩率99.57%、造水量44.7m/日であり、乱流効果による濃度分極が抑制され、脱塩率がさらに向上した。
(実施例31)
透過側流路材を上述の壁状部材に変更した以外は、実施例22と同様にエレメントを作製した。
エレメントを運転した結果、脱塩率99.41%、造水量50.8m/日であった。
(実施例32)
実施例32では、塗布幅を30mmで配置し、分離膜エレメントでの有効面積が0.5mになるように、幅280mmの2枚の封筒状膜を作製した。この封筒状膜を用いて、実施例22と同様の方法で2インチのエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.33%、造水量0.59m/日であった。
(実施例33)
実施例33では、基材をポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層での繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向度:20°)に変更した以外は、実施例32と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.45%、造水量0.59m/日となり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例34)
実施例34では透過側流路材をトリコットからエチレン酢酸ビニル共重合樹脂製(商品名:701A)の壁状物(高さ140μm、断面形状が台形状でその上底および下底が0.4mmおよび0.6mm、溝幅0.4mm、間隔1.0mm)に変更した以外は実施例32と同様にエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.35%、造水量0.71m/日であった。該壁状物は、実施例15と同様の手法で塗布した。
(実施例35)
実施例35では、基材をポリエステル長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec、多孔性支持層側表層での繊維配向度:40°、多孔性支持層とは反対側の表層での繊維配向度:20°)に変更した以外は、実施例34と同様の方法でエレメントを作製した。その結果、脱塩率99.44%、造水量0.71m/日となり、製膜時の膜欠点減少による脱塩率の向上が見られた。
(実施例36)
実施例36では、分離膜エレメントでの有効面積が1.5mになるように、幅280mmの6枚の封筒状膜を作製した以外は、実施例32と同様の方法で3インチスパイラル型分離膜エレメントを作製した。その結果、脱塩率99.30%、造水量1.78m/日であった。
(実施例37)
供給側流路材の斜行角度を70°に変更した以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製した。このエレメントを運転した結果、脱塩率99.33%、造水量40.0m/日であり、圧力損失の増加が影響して性能の向上は見られなかった。
(実施例38)
ストライプ形状を間隔50.0mm、線幅1.5mm、高さ400μm、斜行角度15°、塗布幅50mmに変更した以外は、実施例22と同様の方法でエレメントを作製し評価を行った。本例においては、供給側流路材は交差構造を形成していなかった。その結果、脱塩率98.79%、造水量33.5m/日であった。
本発明の分離膜および分離膜エレメントは、特に、かん水や海水の脱塩に好適に用いることができる。
1 スパイラル型分離膜エレメント
2 集水管
21 分離膜エレメントの上流側の端部
22 分離膜エレメントの下流側の端部
3 分離膜
31 分離膜の供給側の面
32 分離膜の透過側の面
33,34,35 帯状領域(第1領域の例)
37,38,39 中央領域(第2領域の例)
4、41、42 供給側流路材
411,421,43〜46 樹脂体
5 透過側流路材
6 封筒状膜
7 上流側の端板
8 下流側の端板
101 原液流体
102 透過流体
103 濃縮流体
W0 集水管長手方向における分離膜の幅
W1、W2、W4 同方向における第1領域の幅
W3 同方向における、分離膜端部に設けられた第1領域間の距離
D 樹脂体の頂点間の距離

Claims (16)

  1. 集水管と、
    前記集水管の周囲に巻回され、供給側の面および透過側の面を有すると共に、前記集水管の長手方向における前記供給側の面の少なくとも一方の端部に帯状領域を備える分離膜と、
    前記帯状領域に融着された流路材と、
    を備えるスパイラル型分離膜エレメント。
  2. 前記流路材は、前記帯状領域内で互いに間隔をおいて、融着により配置された複数の樹脂体を有する請求項1に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  3. 前記複数の樹脂体は、ドット状又はストライプ状の少なくとも一方の形態で配置されている請求項2に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  4. 前記樹脂体は、前記集水管の長手方向に対して斜め方向に長い形状である請求項2または3に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  5. 前記集水管の長手方向と前記樹脂体の長手方向との間の角度が60°以下である請求項4に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  6. 前記分離膜は、前記供給側の面が互いに対向するように配置されており、
    前記流路材は、対向する前記供給側の面に設けられた樹脂体が互いに重なるように配置される
    請求項2〜5のいずれかに記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  7. 前記樹脂体は、一方向に長い形状を有し、重なった前記樹脂体の長手方向が交差するように配置される
    請求項6に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  8. 前記流路材は、前記集水管の長手方向における前記分離膜の縁から、前記分離膜の幅の20%の範囲内に配置されている、
    請求項1〜7のいずれかに記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  9. 前記樹脂体の高さが80μm以上2000μm以下である請求項1〜8のいずれかに記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  10. 前記供給側の面および透過側の少なくとも一方は、100μm以上2000μm以下の高低差を有する領域を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  11. 前記分離膜が、基材、前記基材上に形成された多孔性支持層、および前記多孔性支持層上に形成された分離機能層を備える、請求項1〜10のいずれかに記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  12. 前記基材が長繊維不織布である、請求項11に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  13. 前記長繊維不織布の前記多孔性支持層とは反対側の表層における繊維が、前記多孔性支持層側の表層の繊維よりも縦配向である、
    請求項12に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  14. 前記供給側の面において、頂点間の距離が50mm以下となるように樹脂体が配置されている樹脂体領域と、前記樹脂体領域に該当しない領域とを備え、
    前記樹脂体領域と、該当しない前記領域との面積比が、1:99〜80:20の範囲内にある
    請求項1〜13のいずれかに記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  15. 1枚の分離膜に対して3つ以上の前記樹脂体領域が設けられることを特徴とする請求項14に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
  16. 集水管および前記集水管の周囲に巻回された分離膜を備えるスパイラル型分離膜エレメントの製造方法であって、下記工程(a)〜(c)を備える製造方法:
    (a)供給側の面および透過側の面を有する分離膜本体を準備すること、
    (b)前記集水管の長手方向における前記供給側面の少なくとも一方の端部に設けられた帯状領域内に流路材を熱融着させること、および
    (c)前記工程(b)を経た分離膜本体を、集水管の周囲に巻回すること。
JP2012514244A 2011-12-02 2011-12-27 分離膜エレメントおよび分離膜エレメントの製造方法 Active JP6056479B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011264501 2011-12-02
JP2011264501 2011-12-02
JP2011280897 2011-12-22
JP2011280897 2011-12-22
PCT/JP2011/080245 WO2013080391A1 (ja) 2011-12-02 2011-12-27 分離膜エレメントおよび分離膜エレメントの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2013080391A1 true JPWO2013080391A1 (ja) 2015-04-27
JP6056479B2 JP6056479B2 (ja) 2017-01-11

Family

ID=48534902

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012514244A Active JP6056479B2 (ja) 2011-12-02 2011-12-27 分離膜エレメントおよび分離膜エレメントの製造方法

Country Status (7)

Country Link
US (1) US9597640B2 (ja)
EP (1) EP2786798B1 (ja)
JP (1) JP6056479B2 (ja)
KR (1) KR101870307B1 (ja)
CN (1) CN103987446A (ja)
TW (1) TW201323071A (ja)
WO (1) WO2013080391A1 (ja)

Families Citing this family (31)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5490281B2 (ja) * 2012-06-20 2014-05-14 富士フイルム株式会社 酸性ガス分離モジュール、及び酸性ガス分離システム
KR20150035802A (ko) * 2012-07-31 2015-04-07 도레이 카부시키가이샤 분리막 및 분리막 엘리먼트
WO2015064720A1 (ja) 2013-10-30 2015-05-07 東レ株式会社 分離膜、シート流路材および分離膜エレメント
JP2015136634A (ja) * 2014-01-20 2015-07-30 富士フイルム株式会社 酸性ガス分離用スパイラル型モジュールおよび製造方法
JP6645729B2 (ja) 2014-09-25 2020-02-14 日東電工株式会社 スパイラル型膜エレメント
KR20170101212A (ko) * 2014-12-26 2017-09-05 도레이 카부시키가이샤 분리막 엘리먼트
CN104785075B (zh) * 2015-04-27 2018-12-28 南京九思高科技有限公司 一种可消除静电的气体膜分离装置及方法
JP6741658B2 (ja) * 2015-05-29 2020-08-19 住友化学株式会社 スパイラル型酸性ガス分離膜エレメント、酸性ガス分離膜モジュール、および酸性ガス分離装置
CN105113117B (zh) * 2015-09-18 2018-04-06 南京九思高科技有限公司 一种防静电导流网及其制备方法和应用
KR102420963B1 (ko) 2015-09-28 2022-07-13 도레이 카부시키가이샤 복합 반투막
KR102046685B1 (ko) 2015-09-30 2019-12-04 주식회사 엘지화학 역삼투압 필터 모듈
WO2017057833A1 (ko) * 2015-09-30 2017-04-06 주식회사 엘지화학 역삼투압 필터 모듈
JP2019502535A (ja) * 2015-11-19 2019-01-31 インテグリス・インコーポレーテッド 多孔質膜上のフィーチャ
JP7037306B2 (ja) * 2016-09-16 2022-03-16 日東電工株式会社 スパイラル型膜エレメント
JP2019529099A (ja) 2016-09-20 2019-10-17 アクア メンブレインズ エルエルシー 透過流パターン
EP3541623A4 (en) * 2016-11-19 2020-06-24 Aqua Membranes LLC INTERFERENCE GROUNDS FOR SPIRAL WOUND ELEMENTS
SG10201701498UA (en) * 2017-02-24 2018-09-27 Aquaporin Asia Pte Ltd Spiral wound membrane rolls and modules
EP3609607B1 (en) 2017-04-12 2024-05-22 Aqua Membranes, Inc. Graded spacers for filtration wound elements
WO2018195367A1 (en) * 2017-04-20 2018-10-25 Aqua Membranes Llc Mixing-promoting spacer patterns for spiral-wound elements
WO2018194911A1 (en) 2017-04-20 2018-10-25 Aqua Membranes Llc Non-nesting, non-deforming patterns for spiral-wound elements
CN110691640B (zh) 2017-05-30 2022-04-26 东丽株式会社 分离膜元件
KR102513191B1 (ko) 2017-10-13 2023-03-22 아쿠아 멤브레인스 인코포레이티드 나선형 권취 요소를 위한 가교 지지체 및 축소된 공급물 스페이서
WO2019146342A1 (ja) 2018-01-25 2019-08-01 東レ株式会社 膜分離システム及び膜分離システムの運転方法
CN112533686A (zh) * 2018-08-23 2021-03-19 株式会社村田制作所 过滤装置以及过滤方法
KR102342446B1 (ko) * 2018-10-18 2021-12-22 주식회사 엘지화학 분리막 엘리먼트의 결함 검출 방법 및 분리막 엘리먼트 결함 검출 장치
KR20210030637A (ko) 2019-09-10 2021-03-18 주식회사 엘지화학 분리막 나권형 엘리먼트 분석방법
KR102436315B1 (ko) 2019-10-02 2022-08-25 주식회사 엘지화학 공급측 유로재 및 분리막 엘리먼트
WO2021150648A1 (en) * 2020-01-21 2021-07-29 Membrane Technology And Research, Inc. Counterflow membrane module
WO2021207256A1 (en) 2020-04-07 2021-10-14 Aqua Membranes Inc. Independent spacers and methods
CN112774442B (zh) * 2020-12-28 2024-04-19 益可美(广州)生态科技有限责任公司 一种自清洁反渗透膜及其制备方法
CN114849480A (zh) * 2022-06-21 2022-08-05 杭州苏博瑞驰科技有限公司 高效率膜元件及生产工艺

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004050081A (ja) * 2002-07-22 2004-02-19 Japan Organo Co Ltd スパイラル型膜エレメント、逆浸透膜モジュール及び逆浸透膜装置
JP2004508170A (ja) * 2000-09-05 2004-03-18 ミオックス コーポレーション 濾過浸透膜およびその製造方法

Family Cites Families (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3367504A (en) 1964-12-21 1968-02-06 Gulf General Atomic Inc Spirally wrapped reverse osmosis membrane cell
US3813334A (en) * 1973-04-09 1974-05-28 Desalination Systems Porous backing material for semipermeable membrane cartridges
JPS5944506A (ja) 1982-09-03 1984-03-13 石川島播磨重工業株式会社 再熱ボイラ
JPS5944506U (ja) 1982-09-14 1984-03-24 日東電工株式会社 スパイラル型膜分離装置
JPS62141660A (ja) 1985-12-16 1987-06-25 Nec Corp 光記録媒体
US4944877A (en) * 1989-10-10 1990-07-31 Maples Paul D Spacerless feed channel membrane filter element
JPH0628703B2 (ja) 1990-04-27 1994-04-20 東レ株式会社 スパイラル型液体分離素子
JP3430783B2 (ja) * 1996-04-11 2003-07-28 東レ株式会社 液体分離素子、装置および処理方法
JPH11226366A (ja) 1998-02-19 1999-08-24 Toray Ind Inc 流体分離膜エレメントの製造方法および装置ならびに流体分離膜エレメント
JP3230490B2 (ja) 1998-06-18 2001-11-19 東レ株式会社 スパイラル型逆浸透膜エレメントおよびそれを用いた分離装置
AU2627300A (en) * 1999-01-27 2000-08-18 Koch Membrane Systems, Inc. Method for sealing axial seam of spiral wound filtration modules
JP2000042378A (ja) 1999-08-20 2000-02-15 Toray Ind Inc 流体分離素子
JP2004202371A (ja) * 2002-12-25 2004-07-22 Nitto Denko Corp スパイラル型膜エレメントの製造方法
US7051883B2 (en) 2003-07-07 2006-05-30 Reemay, Inc. Wetlaid-spunbond laminate membrane support
JP4688140B2 (ja) 2004-03-26 2011-05-25 日東電工株式会社 スパイラル型分離膜エレメント
US7780833B2 (en) * 2005-07-26 2010-08-24 John Hawkins Electrochemical ion exchange with textured membranes and cartridge
ES2868124T3 (es) * 2007-07-31 2021-10-21 Toray Industries Soporte para la membrana de separación y método para la producción del mismo
JP2010099590A (ja) * 2008-10-23 2010-05-06 Nitto Denko Corp シート状複合半透膜及びその製造方法
JP2012518538A (ja) * 2009-02-25 2012-08-16 プラット アンド ホイットニー ロケットダイン,インコーポレイテッド ファウリングが低減された流体分離システム
JP2011092905A (ja) * 2009-10-30 2011-05-12 Japan Gore Tex Inc 脱気膜の製造方法、封筒状物、および該封筒状物を用いた脱気装置

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004508170A (ja) * 2000-09-05 2004-03-18 ミオックス コーポレーション 濾過浸透膜およびその製造方法
JP2004050081A (ja) * 2002-07-22 2004-02-19 Japan Organo Co Ltd スパイラル型膜エレメント、逆浸透膜モジュール及び逆浸透膜装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP6056479B2 (ja) 2017-01-11
US20150068971A1 (en) 2015-03-12
KR20140107214A (ko) 2014-09-04
TW201323071A (zh) 2013-06-16
US9597640B2 (en) 2017-03-21
EP2786798B1 (en) 2018-10-03
CN103987446A (zh) 2014-08-13
KR101870307B1 (ko) 2018-06-22
WO2013080391A1 (ja) 2013-06-06
EP2786798A1 (en) 2014-10-08
EP2786798A4 (en) 2015-08-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6056479B2 (ja) 分離膜エレメントおよび分離膜エレメントの製造方法
JP6056478B2 (ja) 分離膜エレメント
JP6065588B2 (ja) スパイラル型分離膜エレメントおよびその製造方法
JP5954476B2 (ja) 分離膜エレメント
JP6111668B2 (ja) 分離膜エレメント、および分離膜エレメントの製造方法
WO2012033086A1 (ja) 分離膜、分離膜エレメントおよび分離膜の製造方法
JP5817330B2 (ja) 分離膜および分離膜エレメント
JP2013071098A (ja) 分離膜エレメント
JP2012045540A (ja) 分離膜複合体および分離膜エレメント
JP2012187574A (ja) 分離膜および分離膜エレメント
JP2012161748A (ja) 分離膜エレメント
JP2015091574A (ja) 分離膜エレメント
JP2015085322A (ja) 分離膜エレメント
JP2015142894A (ja) 分離膜エレメント
JP2012139615A (ja) スパイラル型分離膜エレメントおよびその製造方法
JP2012055817A (ja) 分離膜エレメント

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160112

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160311

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160823

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161018

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161121

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6056479

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151