JP2012045540A - 分離膜複合体および分離膜エレメント - Google Patents

分離膜複合体および分離膜エレメント Download PDF

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Abstract

【課題】 高い分離性能と透過性能を有する分離膜エレメントを提供する。
【解決手段】 分離膜の透過側に複数の粒状物が存在する分離膜において、基材厚みの5%以上95%以下の範囲で粒状物が基材に含浸していることを特徴とする分離膜複合体とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、液体、気体等の流体に含まれる成分を分離するために使用される分離膜複合体および分離膜エレメントに関する。
液体、気体等の流体に含まれる成分を分離する方法としては、様々なものがある。例えば海水、かん水などに含まれるイオン性物質を除くための技術を例にとると、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜には、その孔径や分離機能の点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられており、目的とする分離成分及び分離性能によって使い分けられている。
分離膜エレメントは、分離膜の一方の面に原流体を供給し、他方の面から透過流体を得る点では共通している。分離膜エレメントは、各種形状からなる分離膜素子を多数束ねて膜面積を大きくし、単位エレメントあたりで多くの透過流体を得ることができるように構成されており、用途や目的にあわせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型、平膜集積型などの各種エレメントが製造されている。
例えば、逆浸透ろ過に用いられる流体分離膜エレメントを例にとると、その分離膜エレメント部材は、原流体を分離膜表面へ供給する供給側流路材、原流体に含まれる成分を分離する分離膜、及び分離膜を透過し供給側流体から分離された透過側流体を中心管へと導くための透過側流路材からなる部材を中心管の周りに巻き付けたスパイラル型分離膜エレメントが、原流体に圧力を付与し、透過流体を多く取り出す点で広く用いられている。
スパイラル型逆浸透分離膜エレメントの部材としては、供給側流路材では供給側流体の流路を形成させるために主に高分子製のネットが使用され、分離膜としては、ポリアミドなどの架橋高分子からなる分離機能層、ポリスルホンなどの高分子からなる多孔性支持層、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子からなる不織布がそれぞれ供給側から透過側にかけて積層された複合半透膜が使用され、透過側流路材では膜の落ち込みを防き、かつ透過側の流路を形成させる目的で、供給側流路材よりも間隔が細かいトリコットと呼ばれる編み物部材が使用されている。
近年、分離膜エレメントに造水コストの低減への高まりから、膜エレメントの高性能化のニーズが求められている。分離膜エレメントの分離性能、単位時間あたりの透過流体量を大きくする観点から、各流路部材、分離膜、エレメント部材の性能向上方法が提案されてきた。例えば、特許文献1では凹凸賦形されたシート状物を透過側流路材として使用する方法、特許文献2では、基材を使用せず、供給側表面に凹凸を形成させ、内部に中空通路を有する平膜を使用する方法、特許文献3および4では、凹凸を有する多孔性支持体と分離活性層とを備えるシート状複合半透膜を用い、ネットなどの供給側流路材やトリコットなどの透過側流路材を用いない方法が提案されている。しかしながら、エレメントに加工して加圧運転した場合に、付与した高低差が変化して小さくなるという問題があった。
特開2006−247453号公報 特開平11−114381号公報 特開2010−99590号公報 特開2010−125418号公報
しかし、上記した分離膜エレメントは、性能向上、特に長期間にわたり運転を行った際の安定性能の点では、十分とは言えず、例えば特許文献1で記載される、凹凸賦形されたシート状物を透過側流路材として使用する方法では透過側の流動抵抗を軽減するのみであり、かつシート表面の抵抗があるため、流動抵抗低減効果が十分とは言えない。
特許文献2で記載される、基材を使用せず、供給側表面に凹凸を形成させ、内部に中空通路を有する平膜を使用する方法では、膜表面と平行な方向に延びる中空通路を平膜内に有するため、表面の凹凸の高さを大きくすることが困難かつ凹凸形状が限定され(実施例では段差0.15mmの溝)、また透過側流路の形状も限定されるため、供給側、透過側の流動抵抗低減効果が十分とは言えない。
特許文献3および4で記載される、凹凸を有する多孔性支持体と分離活性層とを備えるシート状複合半透膜を用い、ネットなどの供給側流路材やトリコットなどの透過側流路材を用いない方法では、特許文献3の実施例に平膜評価用のセルを用いた場合の膜性能のみの記述があるものの、実際に分離膜エレメントを構成した場合の性能は開示されておらず、実際に圧力をかけて分離膜エレメントを運転した場合、供給側流路、透過側流路の断面積が変化しやすく初期だけでなく長期間にわたり運転を実施した際に性能が変化しやすい傾向にある。
そこで、本発明は、分離膜エレメントにおける分離除去性能向上、単位時間あたりの透過流体量の増加などの分離膜エレメント性能向上、安定性能に有効な分離膜エレメント及びそれに適用可能な技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。すなわち、
(1)基材及び基材上に設けられた分離機能層を備える分離膜と、前記分離膜の基材側表面上に設けられた複数の粒状物であって、前記粒状物の成分が、前記基材の厚みの5%以上95%以下の範囲で前記基材に含浸している粒状物と、を備える分離膜複合体、
(2)前記分離膜は、前記分離膜の分離機能層側表面において、前記粒状物の存在する位置で突出する部分と、前記分離膜の基材側表面において、前記粒状物の存在しない位置で、前記粒状物よりも低い部分と、を備える(1)に記載の分離複合体、
(3)分離機能層側表面および基材側表面の同一位置に、前記分離膜が加圧されることによって形成された高低差を有する(1)に記載の分離膜複合体、及び
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の分離膜複合体を備える分離膜エレメント
である。
本発明によれば、分離膜の透過側に粒状物が配置されることによって透過側の流路を確保でき、さらにはその分離膜を加圧することによって供給水側および透過側に高効率かつ安定した流路を確保できる。さらに、膜面での乱流効果も十分得られ、局所的な流動の不均一も生じにくく、その結果、分離成分の除去性能と高い透過性能を有する高性能、高効率分離膜および分離膜エレメントを得ることができる。
格子状粒状物パターンを模式的に示す平面図である。 千鳥状粒状物パターンを模式的に示す平面図である。 粒状物の含浸厚みを示す模式的に示す断面図である。 粒状物に応じた高低差を有する分離膜複合体を示す断面図である。
以下、本発明の実施の一形態について、さらに詳細に説明する。
本実施形態の分離複合体1は、図1に示すように、分離膜2と、分離膜2上に設けられた粒状物(図1中にa〜dのアルファベットで示す)とを備える。
ここで、分離膜とは、分離膜表面に供給される流体中の成分を分離し、分離膜を透過した透過流体を得るものであれば限定されないが、分離機能層、多孔性支持層、基材からなるものが好ましく使用される。分離機能層としては、孔径制御、耐久性の点で架橋高分子が好ましく使用され、成分の分離性能の点で、多孔性支持層上に、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなるポリアミド分離機能層、有機無機ハイブリッド機能層などが好適に用いられる。また、セルロース膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリスルホン膜のような分離機能と支持体機能を有する膜を用いることもできる。
なお、「分離機能層」とは、少なくとも分離機能を備える層を意味し、分離機能と支持体機能等の他の機能とを備えていてもよく、分離機能のみを有していてもよい。また、分離膜の2つの表面のうち、流体の供給を受ける側を供給側、透過した流体が流出する側を透過側と称する。後に詳述するが、粒状物は、透過側、つまり基材側表面に設けられる。
分離機能層がポリアミドで構成される場合について詳述する。ポリアミド膜は、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。ここで、多官能アミンまたは多官能酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3以上の結合性官能基を有する化合物を含んでいることが好ましい。
ここで、多官能アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいい、例えば、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族多官能アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましく、このような多官能芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物では、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。多官能アミンとの反応性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は多官能酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
表面の粒状物を成形より形成させ、その後の分離性能を保持する点では、2官能酸ハロゲン化合物と3官能ハロゲン化合物の比率をモル比(2官能酸ハロゲン化合物のモル/3官能酸ハロゲン化合物のモル)で0.05〜1.5であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0であることが好ましい。
さらに、分離機能層を成形性、耐薬品性の点でSi元素などを有する有機・無機ハイブリッド構造とした分離膜も使用することができる。有機無機ハイブリッド膜としては、特に限定されないが、例えば、(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物、ならびに(B)前記ケイ素化合物以外のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いた、(A)のケイ素化合物の加水分解性基の縮合ならびに(A)のケイ素化合物および(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物のエチレン性不飽和基の重合物が使用できる。
まず(A)のエチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物について説明する。
エチレン性不飽和基を有する反応性基はケイ素原子に直接結合している。かような反応性基としては、ビニル基、アリル基、メタクリルオキシエチル基、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシエチル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が例示される。重合性の観点から、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が好ましい。
またケイ素原子に直接結合している加水分解性基が水酸基に変化するなどのプロセスを経て、ケイ素化合物同士がシロキサン結合で結ばれるという縮合反応が生じ、高分子となる。加水分解性基としてはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子およびイソシアネート基などの官能基が例示される。アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜2のものである。アルケニルオキシ基としては炭素数2〜10のものが好ましく、さらには炭素数2〜4、さらには3のものである。カルボキシ基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、さらには炭素数2のもの、すなわちアセトキシ基である。ケトオキシム基としては、メチルエチルケトオキシム基、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基が例示される。アミノヒドロキシ基は、酸素を介してアミノ基が酸素原子を介してケイ素原子に結合しているものである。このようなものとしては、ジメチルアミノヒドロキシ基、ジエチルアミノヒドロキシ基、メチルエチルアミノヒドロキシ基が例示される。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましく使用される。
分離機能層の形成にあたっては、上記加水分解性基の一部が加水分解し、シラノール構造をとっているケイ素化合物も使用できる。また2以上のケイ素化合物が、加水分解性基の一部が加水分解、縮合し架橋しない程度に高分子量化したものも使用できる。
ケイ素化合物(A)としては下記一般式(a)で表されるものであることが好ましい。
Si(R)m(R)n(R4−m−n ・・・(a)
(Rはエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。Rはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子またはイソシアネート基のいずれかを表す。RはHまたはアルキル基を表す。m、nはm+n≦4を満たす整数であり、m≧1、n≧1を満たすものとする。R、R、Rそれぞれにおいて2以上の官能基がケイ素原子に結合している場合、同一であっても異なっていてもよい。)
はエチレン性不飽和基を含む反応性基であるが、上で解説したとおりである。
は加水分解性基であるが、これらは上で解説したとおりである。Rとなるアルキル基の炭素数としては1〜10のものが好ましく、さらに1〜2のものが好ましい。
加水分解性基としては、分離機能層の形成にあたって、反応液が粘性を持つことからアルコキシ基が好ましく用いられる。
かようなケイ素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシランが例示される。
(A)のケイ素化合物の他、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有しないが、加水分解性基を有するケイ素化合物を併せて使用することもできる。このようなケイ素化合物は、一般式(a)では「m≧1」と定義されているが、一般式(a)においてmがゼロである化合物が例示される。かようなものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが例示される。
次に(A)のケイ素化合物以外のものであって、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)について説明する。
エチレン性不飽和基は付加重合性を有する。かような化合物としてはエチレン、プロピレン、メタアクリル酸、アクリル酸、スチレンおよびこれらの誘導体が例示される。
また、この化合物は、分離膜を水溶液の分離などに用いたときに水の選択的透過性を高め、塩の阻止率を上げるために、酸基を有するアルカリ可溶性の化合物であることが好ましい。
好ましい酸の構造としては、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸およびスルホン酸であり、これらの酸の構造としては、酸の形態、エステル化合物、および金属塩のいずれの状態で存在してもよい。これらのエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物は、2つ以上の酸を含有し得るが、中でも1個〜2個の酸基を含有する化合物が、好ましい。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でカルボン酸基を有する化合物としては、以下のものが例示される。マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸が挙げられる。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でホスホン酸基を有する化合物としては、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−フェニル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でリン酸エステルの化合物としては、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素ホスフェートならびに1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−二水素ホスフェートが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でスルホン酸基を有する化合物としては、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸が挙げられる。
分離機能層を形成するために、(A)のケイ素化合物以外に、エチレン性不飽和基を1個以上有する化合物、および重合開始剤を含んだ反応液を用いることができる。具体的には、分離機能層は、この反応液を多孔質膜上に塗布し、さらに加水分解性基を縮合することに加えて、エチレン性不飽和基の重合によって、これら化合物を高分子量化することで形成可能である。(A)のケイ素化合物を単独で縮合させた場合、ケイ素原子に架橋鎖の結合が集中し、ケイ素原子周辺とケイ素原子から離れた部分との密度差が大きくなるため、分離機能層中の孔径が不均一となる場合がある。一方、(A)のケイ素化合物自身の高分子量化および架橋に加え、(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物を共重合させることで、加水分解性基の縮合による架橋点とエチレン性不飽和基の重合による架橋点が適度に分散される。このように適度に架橋点を分散させることで、均一な孔径を有する分離機能層が構成され、透水性能と除去性能のバランスが取れた分離膜を得ることができる。また、エチレン性不飽和基を1個以上有する化合物は、高分子量化していることで、分離膜使用時に溶出しにくくなるので、膜性能低下を引き起こしにくい。
分離機能層において、(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し10重量部以上であることが好ましく、さらに好ましくは20重量部〜50重量部である。ここで、反応液に含有される固形分とは、反応液に含有される全成分のうち、溶媒および縮合反応で生成する水やアルコールなどの留去成分を除いた、分離膜に最終的に分離機能層として含まれる成分のことを指す。(A)のケイ素化合物量が少ないと、架橋度が不足する傾向があるので、膜ろ過時に分離機能層が溶出し分離性能が低下するなどの不具合が発生するおそれがある。
(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し90重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは50重量部〜80重量部である。(B)の化合物の含有量がこれらの範囲にあるとき、得られる分離機能層は架橋度が高くなるため、分離機能層が溶出することなく安定に膜ろ過ができる。
次に、分離機能層を多孔質支持膜上に形成する方法について説明する。
分離機能層は、(A)のケイ素化合物および(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物を含有する反応液を塗布する工程、溶媒を除去する工程、エチレン性不飽和基を重合させる工程、加水分解性基を縮合させる工程の順に行うことで形成可能である。エチレン不飽和基を重合させる工程において、加水分解性基が同時に縮合してもよい。
まず、(A)および(B)を含有する反応液を多孔性支持層に接触させる。かかる反応液は、通常溶媒を含有する溶液であるが、かかる溶媒は多孔性支持層を破壊せず、(A)および(B)、および必要に応じて添加される重合開始剤を溶解するものであれば特に限定されない。この反応液には、(A)のケイ素化合物のモル数に対して1〜10倍モル量、好ましくは1〜5倍モル量の水を無機酸または有機酸と共に添加して、(A)のケイ素化合物の加水分解を促すことが好ましい。
反応液の溶媒としては、水、アルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒および、これらを混ぜ合わせたものが好ましい。例えば、アルコール系有機溶媒として、メタノール、エトキシメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2-メトキシエタノール)、エチレングリコールモノアセトエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシブタノール等が挙げられる。また、エーテル系有機溶媒として、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等が挙げられる。また、ケトン系有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニトリルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。また、溶媒の添加量としては、50〜99重量部%が好ましく、さらには80〜99重量部%が好ましい。溶剤の添加量が多すぎると膜中に欠点が生じやすい傾向があり、少なすぎると得られる分離膜の透水性が低くなる傾向がある。
多孔性支持層と反応液との接触は、多孔性支持層面上で均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、反応液をスピンコーター、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレーなどの塗布装置を用いて多孔性支持層にコーティングする方法があげられる。また多孔性支持層を、反応液に浸漬する方法を挙げることができる。
浸漬させる場合、多孔性支持層と反応液との接触時間は、0.5〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。反応液を多孔性支持層に接触させたあとは、膜上に液滴が残らないように十分に液切りすることが好ましい。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、反応液接触後の多孔性支持層を垂直方向に把持して過剰の反応液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、反応液の溶媒分の一部を除去することもできる。
ケイ素の加水分解性基を縮合させる工程は、多孔性支持層上に反応液を接触させた後に加熱処理することによって行われる。このときの加熱温度は、多孔性支持層が溶融し分離膜としての性能が低下する温度より低いことが要求される。縮合反応を速やかに進行させるために通常0℃以上で加熱を行うことが好ましく、20℃以上がより好ましい。また、前記反応温度は、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。反応温度が0℃以上であれば、加水分解および縮合反応が速やかに進行し、150℃以下であれば、加水分解および縮合反応の制御が容易になる。また、加水分解または縮合を促進する触媒を添加することで、より低温でも反応を進行させることが可能である。さらに、縮合反応が適切に進行することで分離機能層が細孔を有するように、加熱条件および湿度条件を選定することができる。
(A)のケイ素化合物および(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物のエチレン性不飽和基の重合方法としては、熱処理、電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射により行うことができる。ここで電磁波とは赤外線、紫外線、X線、γ線などを含む。重合方法は適宜最適な選択をすればよいが、ランニングコスト、生産性などの点から電磁波照射による重合が好ましい。電磁波の中でも赤外線照射や紫外線照射が簡便性の点からより好ましい。実際に赤外線または紫外線を用いて重合を行う際、これらの光源は選択的にこの波長域の光のみを発生する必要はなく、これらの波長域の電磁波を含むものであればよい。しかし、重合時間の短縮、重合条件の制御などのしやすさの点から、これらの電磁波の強度がその他の波長域の電磁波に比べ高いことが好ましい。
電磁波は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、水銀灯などから発生させることができる。電磁波のエネルギーは重合できれば特に制限しないが、中でも高効率で低波長の紫外線が薄膜形成性が高い。かような紫外線は低圧水銀灯、エキシマレーザーランプにより発生させることができる。分離機能層の厚み、形態はそれぞれの重合条件によっても大きく変化することがあり、電磁波による重合であれば電磁波の波長、強度、被照射物との距離、処理時間により大きく変化することがある。そのためこれらの条件は適宜最適化されてもよい。
重合速度を高める目的で分離機能層形成の際に重合開始剤、重合促進剤等を添加することが好ましい。ここで、重合開始剤、重合促進剤とは特に限定されるものではなく、用いる化合物の構造、重合手法などに合わせて適宜選択されるものである。
重合開始剤を以下例示する。電磁波による重合の開始剤としては、ベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシドもしくはビスアシルホスフィンオキシド、α−ジケトン(例えば、9,10−フェナントレンキノン)、ジアセチルキノン、フリルキノン、アニシルキノン、4,4’−ジクロロベンジルキノンおよび4,4’−ジアルコキシベンジルキノン、およびショウノウキノンが、例示される。熱による重合の開始剤としては、アゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)もしくはアゾビス−(4−シアノバレリアン酸))、または過酸化物(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過オクタン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチルもしくはジ−(tert−ブチル)ペルオキシド)、さらに芳香族ジアゾニウム塩、ビススルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アルキルリチウム、クミルカリウム、ナトリウムナフタレン、ジスチリルジアニオンが例示される。なかでもベンゾピナコールおよび2,2’−ジアルキルベンゾピナコールは、ラジカル重合のための開始剤として特に好ましい。
過酸化物およびα−ジケトンは、反応を加速するために、好ましくは、芳香族アミンと組み合わせて使用される。この組み合わせはレドックス系とも呼ばれる。このような系の例としては、過酸化ベンゾイルまたはショウノウキノンと、アミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチル−アミノ安息香酸エチルエステルまたはその誘導体)との組み合わせである。さらに、過酸化物を、還元剤としてのアスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸と組み合わせて含有する系もまた好ましい。
次いで、これを約100〜200℃で加熱処理すると重縮合反応が起こり、多孔性支持層表面にシランカップリング剤由来の分離機能層が形成された分離膜を得ることができる。加熱温度は多孔性支持層の素材にもよるが、高すぎると溶解が起こり多孔性支持層の細孔が閉塞するため、分離膜の造水量が低下する。一方低すぎた場合には、重縮合反応が不十分となり機能層の溶出により除去率が低下するようになる。
なお上記の製造方法において、シランカップリング剤とエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物とを高分子量化する工程は、シランカップリング剤の重縮合工程の前に行っても良いし、後に行っても良い。また、同時に行っても良い。
このようにして得られた分離膜はこのままでも使用できるが、使用する前に例えばアルコール含有水溶液、アルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させることが好ましい。
分離機能層の厚みとしては限定されないが、分離性能と透過性能の点で5〜3000nmであることが好ましい。特に逆浸透、正浸透、ナノろ過膜では5〜300nmであることが好ましい。
分離機能層の厚みは、これまでの分離膜の膜厚測定法に準じて測定することができる。例えば分離膜を樹脂によって包埋した後に、超薄切片を作製し、染色などの処理を行った上で、透過型電子顕微鏡により観察することで測定することができる。主な測定法としては、分離機能層がひだ構造を有する場合、多孔性支持層より上に位置するひだ構造の断面長さ方向に50nm間隔で測定し、ひだの数を20個測定し、その平均から求めることができる。
多孔性支持層として、分離膜としての性能を保持しつつ支持機能を有する膜を用いることができる。
多孔性支持層に使用する材料やその形状は特に限定されないが、例えば基材に多孔性支持体を形成した膜を例示することができる。多孔性支持体の素材としては、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂あるいはそれらを混合、積層したものが使用され、化学的、機械的、熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすいポリスルホンを使用することが好ましい。
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド溶液を、後述する基材、例えば密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で凝固させることによって、製造することができる。
多孔性支持層は、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って、上述した形態を得るためにポリマー濃度、溶媒の温度、貧溶媒を調整し、製造することができる。例えば、所定量のポリスルホンをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、所定濃度のポリスルホン樹脂溶液を調製する。次いで、このポリスルホン樹脂溶液をポリエステル布あるいは不織布からなる基材上に略一定の厚さに塗布した後、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、凝固液中でポリスルホンを凝固させることによって得ることが出来る。この時、凝固液と接触する表面部分などは溶媒のN,N−ジメチルホルムアミドが迅速に揮散するとともにポリスルホンの凝固が急速に進行し、N,N−ジメチルホルムアミドの存在した部分を核とする微細な連通孔が生成される。
また、上記の表面部分から基材側へ向かう内部においては、N,N−ジメチルホルムアミドの揮散とポリスルホンの凝固は表面に比べて緩慢に進行するので、N,N−ジメチルホルムアミドが凝集して大きな核を形成しやすく、したがって、生成する連通孔が大径化する。勿論、上記の核生成の条件は、膜表面からの距離によって徐々に変化するので、明確な境界のない、滑らかな孔径分布を有する支持膜が形成される。この形成工程において用いるポリスルホン樹脂溶液の温度及びポリスルホンの濃度、塗布を行う雰囲気の相対湿度、塗布してから凝固液に浸漬するまでの時間、凝固液の温度や組成等を調節することにより、平均空隙率と平均孔径とが制御されたポリスルホン膜を得ることができる。
さらに分離膜の強度、寸法安定性、凹凸形成能の点で、基材を用いてもよい。基材としては、強度、凹凸形成能、流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。
多孔性支持層としては、分離膜に機械的強度を与え、イオン等の分子サイズの小さな成分に対して分離膜のような分離性能を有さないものであれば、孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で原子間力顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて表面から測定された細孔の投影面積円相当径が1nm以上100nm以下であるような多孔性支持層が好ましく使用される。特に界面重合反応性、分離機能膜の保持性の点で3〜50nmの投影面積円相当径を有することが好ましい。
多孔性支持層の厚みは特に限定されないが、分離膜の強度、分離膜の粒状物を形成させる点、供給側流路の形態安定性の点で、20〜500μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは30〜300μmである。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔質支持体を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真から多孔性支持層の膜厚や表面の投影面積円相当径を決定する。支持膜の厚み、孔径は、平均値であり、支持膜の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向に20μm間隔で測定し、20点測定の平均値である。また、孔径は、孔を200個カウントし、各投影面積円相当径の平均値である。
基材としては、特に限定されないが、分離膜の分離、透過性能を保持しつつ、適度な機械強度を与え、分離膜表面の高低差を制御する点で、繊維状基材が好ましく用いられる。
繊維状基材としては、ポリオレフィン、ポリエステル、セルロースなどが用いられるが、分離膜の粒状物を形成させる点、形態保持性の点でポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。特に、後述する粒状物がポリスルホンであれば、親和性が良好なポリスルホンをポリエチレンテレフタレート選択することができる。
分離膜に高低差を形成するための粒状物としては、樹脂や多孔質無機物を使用できる。粒状物が樹脂や多孔質無機物である場合、粒状物が存在しても膜面積が減少することなく透過性能を維持できる。樹脂としては例えばポリスルホン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂などが使用でき、これらを単独もしくは2種類以上からなる混合物として用いることができる。また、多孔質無機物としてはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のアルカリ土類金属のケイ酸塩、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩等が使用でき、これらを単独もしくは2種類以上からなる混合物として用いることができる。
これらの樹脂および/または多孔質無機物を分離膜に固定する方法は特に限定されないが、樹脂を良溶媒に溶解させた溶液を分離膜に含浸させると、良溶媒を除去して粒状物を分離膜に固定させることができ、粒状物の大きさや高さを制御しやすい。この場合の溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
樹脂溶液を調製するにあたっては、溶媒中の樹脂や多孔質無機物の組成は特に限定されないため、本発明の効果を損なわない範囲で樹脂及び多孔質無機物の組成を適宜設計できる。
樹脂や多孔質無機物の混合物を良溶媒に溶解させて分離膜の裏側、すなわち基材側(透過側)に含浸させる場合、溶液を基材側に含浸させた後に、乾燥や非溶媒中に浸漬させる非溶媒誘起相分離などを利用すると、樹脂や多孔質無機物を分離膜に固定することができる。
非溶媒誘起相分離とは、高分子溶液中に高分子の非溶媒が流入することにより、高分子溶液が高分子濃厚相と高分子希薄相とに相分離する現象である。最終的に、高分子濃厚相を分離膜の壁とし、高分子希薄相を分離膜の孔として利用することになる。一般に、常温で高分子を溶解できる良溶媒が高分子溶液の調製に使用され、高分子を溶解しない非溶媒を凝固に使用する。このような相分離法で粒状物を多孔質にしておくと、粒状物が分離膜に包括されている部分が分離膜としての機能を失活せず、膜造水量の低下を防ぐことができる。
樹脂の非溶媒としては、水やメタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。特に水やエタノールが好ましく、これらの混合溶液であってもよい。
ホットメルト法で粒状物を配置させる場合では処理温度や選択するホットメルト用の樹脂を変更することで、要求される分離特性や透過性能の条件を満足できるように自由に調整することができる
組成としては特に限定されないが、耐薬品性の点で、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどのポリオレフィンや共重合ポリオレフィンなどが好ましく、ウレタン、エポキシなどのポリマーを使用できる。
図3に示すように、粒状物の成分は、基材に含浸していてもよい。図3の分離膜複合体21は、分離膜2と、粒状物25とを備える。粒状物25の断面は矩形であるが、後述するように、本発明はこれに限定されるものではない。
図3に示すように、分離膜2は、基材3と分離機能層4とを備える。粒状物25は、分離膜2の基材側表面に配置される。基材3において粒状物25の成分が含浸している部分を、含浸部5として図示する。
分離膜の裏側、すなわち基材側(透過側)に粒状物を含浸させると、分離膜の裏側から表側に向かって含浸が進行する。含浸が進行するにつれて粒状物と基材との接着が強固になり、加圧ろ過しても粒状物が基材から剥離しにくくなる。ただし、粒状物が分離機能層の近傍まで含浸していると、加圧ろ過した際に粒状物が分離機能層を破壊してしまう。そのため、粒状物は基材厚みに対して5%以上95%以下の範囲で含浸していてもよく、15%以上95%以下の範囲であることが好ましく、25%以上60%以下の範囲であることがさらに好ましい。
粒状物の含浸厚みは、例えば、粒状物を構成する材料の種類(より具体的には樹脂の種類)及び/又は材料の量を変更することで、調整可能である。また、粒状物をホットメルト法によって設ける場合には、処理温度等を変更することによっても、含浸厚みを調整することができる。
なお、粒状物の含浸部を含む基材を示差走査熱量測定といった熱分析に供することにより、基材とは別に粒状物の成分に起因するピークが得られれば、粒状物が基材に含浸していることを確認することができる。
粒状物の基材への含浸深さは、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により粒状物含浸厚みと基材厚み観察して算出することができる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば分離膜を粒状物と共に深さ方向に切断し、断面を走査型電子顕微鏡で観察して、粒状物含浸厚みと基材厚みを測定する。そして、基材中の粒状物が最も含浸している粒状物最大含浸厚みと基材厚みとの比から算出できる。なお、含浸深さを算出する場合の「基材厚み」とは、粒状物最大含浸厚みを測定した部分と同一箇所における基材の厚みである。図3では、説明の便宜上、基材厚みを示す矢印が、粒状物最大厚みを示す矢印からずれた位置に描かれている。
上述した方法で樹脂や多孔質無機物を膜の裏側、すなわち基材側(透過側)に含浸させ、加圧して分離膜の表面および裏面に高低差を形成でき、樹脂や多孔質無機物が強固に分離膜に固定されているために加圧ろ過を実施しても供給側および透過側の高低差がほとんど変化しない。
分離膜を、粒状物の存在しない側、つまり表側から加圧することによって、分離膜の表側の面(供給側)および裏側の面(透過側)の同一位置に高低差を付与することができる。そうすると、エレメントにした場合に供給側および透過側のいずれにも流路材を必要とすることなく、高効率かつ安定な流路を確保することができる。
図4に、加圧後の分離複合体31の形態の一例を示す。図4に示すように、分離膜2が加圧されることで、分離膜2が、粒状物35の外形に沿って変形する。それによって、粒状物35の存在する箇所は基材側面でも分離機能層側面でも突出するので、分離膜複合体31の両面で同一位置に高低差が付与される。つまり、分離膜2は、分離機能層側表面には、粒状物35の存在する位置で突出する部分が含まれる。また、基材側表面には、粒状物の存在しない位置で、粒状物よりも低い部分が含まれる。言い換えると、基材側表面では、粒状物の方が、その周囲の分離膜よりも突出している部分が存在する。
高低差の付与された分離膜複合体は、加圧によって形成されたものに限定されない。例えば、型を用いて分離膜に凹部をあらかじめ形成しておき、その凹部内に粒状物を配置することによっても、粒状物に対応する箇所に高低差を有する分離膜複合体を製造することができる。
図4では、粒状物35の断面は矩形であるが、上述したように、本発明はこれに限定されるものではない。また、図4では、分離膜の層構造及び含浸部の図示を省略している。
なお、加えられる圧力及びどの程度分離膜を変形させるかは、粒状物の形状、隣り合う粒状物の間隔、分離膜の材質及び特性、並びに分離複合体に求められる特性等に応じて、変更可能である。
また、加圧された後の分離複合体も、上述の含浸深さの範囲を満たすことができる。
分離膜の供給側および透過側の高低差は、分離特性や水透過性能が要求される条件を満足するように、加圧時の圧力によって自由に調整できる。しかしながら、高低差が低すぎると流路の流動抵抗が大きくなり、分離特性や水透過性能が低下してしまう。また、高低差が高すぎると流動抵抗が小さくなるが、エレメント化した場合にベッセルに充填できる膜リーフ数が少なくなる。そのため、エレメントの造水能力が低下し、造水量を増加させるための運転コストが高くなる。
従って、上述した各性能のバランスや運転コストを考慮すると、供給側の高低差は、好ましくは100μm以上2000μm以下であり、より好ましくは300μm以上1000μm以下である。
分離膜の透過側については供給水側と異なり水量が少ないために、高低差を高くして流動抵抗を小さくしても造水量への影響は小さい。よって、エレメント化した場合にベッセルに充填できる膜リーフ数を確保するために、高低差は、好ましくは30μm以上800μm以下であり、より好ましくは50μm以上500μm以下であり、さらに好ましくは100μm以上400μm以下である。
分離膜の供給側および透過側の高低差は、市販の形状測定システムなどを用いて計測できる。例えば、レーザー顕微鏡による断面からの高低差を、キーエンス製高精度形状測定システムKS−1000などで測定することができる。測定は任意の高低差のある箇所について実施し、各高さの値を総和した値を測定総箇所の数で割って求めることができる。
同様の理由から粒状物直径は好ましくは1000μm以上10000μm以下であり、より好ましくは3000μm以上6000μm以下である。ピッチは粒状物直径の10分の1から20倍の間で適宜設計すると良い。ピッチとは、粒状物のある表面における高い箇所の最も高いところから近接する高い箇所の最も高い箇所までの水平距離のことである。粒状物のパターンは流路を妨げないものであれば特に限定されず、目的に応じていわゆる格子状や千鳥状などにパターン化でき、あるいはその組み合わせでも良いが、千鳥状であると、分離膜に原水を均一に供給できるため好ましい。分離膜に原水を均一に供給できると、膜面での乱流効果(攪拌効果)が大きくなり、濃度分極等による分離性能の低下が生じ易くなる。
格子状とは図1の分離膜複合体1のように、直近の4個の粒状物a、b、c、dが略正方形を形成するように少なくとも略直交する二方向に一定のピッチで形成される態様を意味し、千鳥状とは図2の分離膜複合体11ように直近の3個の粒状物e、f、gが略正三角形の頂点を形成するように少なくとも三方向に一定のピッチで形成される態様を意味する。
粒状物の形状としては特に限定されないが、流路の流動抵抗を少なくし、かつ分離膜エレメントに流体を供給、透過させた際の流路を安定化させることが重要である。これらの点で、表面上部から観察した形では、楕円、円、長円、台形、三角形、長方形、正方形、平行四辺形、菱形、不定形があり、立体的には表面上部からの形をそのまま表面方向に賦形したもの、広がる形で賦形したもの、狭める形で賦形したものが用いられる。
粒状物の中心線よりも表面上部方向に高い位置を有する凸面積は、膜表面上部からの観察面積(2次元面積)に対して、5%〜80%であることが好ましく、流動抵抗と流路安定性の点で10〜60%であることが特に好ましい。
基材表面の粒状物は、市販の形状測定システムなどを用いて計測できる。例えば、レーザー顕微鏡による断面からの粒状物測定、キーエンス製高精度形状測定システムKS−1000などで測定することができる。
成形工程としては特に限定されないが、例えば粒状物を加圧処理して分離膜に固定することができ、エレメント化前に加圧ローラにより粒状物を加圧して分離膜に高低差を形成する方法や、エレメント運転時の圧力を利用する方法が好ましく、エレメント化して加圧ろ過させることで分離膜の高低差を形成することがさらに好ましい。
集水管は、その中を透過水が流れるように構成されていればよく、材質、形状、大きさ等は特に限定されない。
次に、分離膜エレメントの製造方法について説明する。
スパイラル型分離膜エレメントは、有孔の中空状集水管と、集水管の周りに巻き付けられた分離膜、又は、分離膜と供給側流路材および/または透過側流路材との積層体と、を備える。分離膜エレメントの製造方法は、特定の方法に限定されない。以下では、ポリアミド分離機能層を多孔性支持層、基材に積層し、分離膜を得た後に成形、透過側流路材を配置してエレメントを製造する代表的な方法について述べる。なお、成形工程などは、前述したように分離膜製膜工程の前、途中、後のいずれにおいても取り入れることが可能である。
多孔性支持層と基材を複合した後、多孔性支持層に多官能アミン水溶液を塗布し、余分なアミン水溶液をエアーナイフなどで除去した後、多官能酸ハロゲン化物含有溶液を塗布し、ポリアミド分離機能層を形成させる。有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能酸ハロゲン化物を溶解し、多孔性支持層を破壊しないものが望ましく、多官能アミン化合物および多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。さらに、必要に応じて分離性能、透過性能を高めるべく、塩素、酸、アルカリ、亜硝酸などの化学処理を施し、さらにモノマー等を洗浄し分離膜を得る。その後、ロータリースクリーン法によって樹脂および/または多孔質無機物の混合物を分離膜の裏側に含浸させ、水中で凝固させて高低差を有する分離膜の連続シートを作製する。該シートを用い、従来のエレメント製作装置を用いて、リーフ数26枚、リーフ有効面積37mの8インチエレメントを作製する。エレメント作製方法をしては、参考文献(特公昭44−14216、特公平4−11928、特開平11−226366)に記載される方法を用いることができる。
このように製造される分離膜エレメントは、さらに、直列または並列に接続して圧力容器に収納した分離膜モジュールとすることもできる。
また、上記の分離膜エレメント、モジュールは、それらに流体を供給するポンプや、その流体を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、例えば原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、膜エレメントの供給流路、透過流路の保持性を考慮すると、膜モジュールに被処理水を透過する際の操作圧力は、0.2MPa以上5MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上45℃以下が好ましい。また、供給水のpHが中性領域にある場合、供給水が海水などの高塩濃度の液体であって、マグネシウムなどのスケールの発生が抑制され、また、高pH運転による膜の劣化が抑制される。
分離膜エレメントによって処理される流体は特に限定されないが、水処理に使用する場合、原水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
なお、異なる図面または形態として示された構成は、互いに組み合わせることができる。例えば、上述の粒状物の形状、大きさ、配置、材料、含浸厚み等は互いに組み合わせられる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(造水量)
供給水(かん水)の膜エレメント透過水量について、膜エレメントあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)を造水量(m/日)として表した。なお、1時間後の測定値と8時間後の測定値が1m/日以上あった場合に付記した。
(脱塩率(TDS除去率))
TDS除去率(%)=100×{1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}として算出した。
なお、1時間後の測定値と8時間後の測定値で0.1%以上の変化をした場合に、その結果を付記した。
(分離膜複合体の高低差)
キーエンス製高精度形状測定システムKS−1000を用い、5cm×5cmの分離膜の供給側における測定結果から平均の高低差を解析した。高低差のある箇所を100箇所任意に選択して測定し、各高さの値を総和した値を測定総箇所の数で割って求めた。
(分離膜複合体の高低差変化率)
このようにして加圧運転前後の分離膜の高低差(すなわち100箇所の平均値)を測定し、高低差変化率(%)=100×{1−(加圧運転後の分離膜の高低差/加圧運転前の分離膜の高低差)}とした。
(粒状物の含浸深さ)
分離膜を粒状物と共に深さ方向に切断し、断面を走査型電子顕微鏡(S−800)(日立製作所製)を用いて30個の任意の含浸部を500倍で写真撮影した。撮影された写真において最大含浸厚み及び基材厚みを測定し、含浸率を、含浸率(%)=(基材中の粒状物の最大含浸厚み/基材厚み)×100の式に基づいて算出した上で、1個の含浸部当たりの平均値を求めた。以下、得られた平均値を「含浸率」と表記する。なお、粒状物の含浸深さを示す模式図を図3に示す。上述したように、最大含浸厚み及び基材厚みは、同一箇所で測定した。
(実施例1、比較例1)
ポリエステル繊維からなる不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1cc/cm/sec)上にポリスルホンの15.0重量%、ジメチルホルムアミド(N,N−ジメチルホルムアミド)溶液を180μmの厚みで室温(25℃)にてキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって繊維補強ポリスルホン支持膜からなる多孔性支持層(厚さ130μm)ロールを作製した。
その後に、多孔性支持層ロールを巻きだし、ポリスルホン表面に、m−PDAの1.8重量%、ε−カプロラクタム4.5重量%水溶液中を塗布し、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.06重量%を含む25℃のn−デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布した。その後、膜から余分な溶液をエアーブローで除去し、80℃の熱水で洗浄して分離膜ロールを得た。次に、得られた分離膜ロールの分離膜裏側に菱形のスクリーン型を用いたロータリースクリーン法により、表1に記載した条件で樹脂および多孔質無機物の混合溶液を含浸させ、30℃に調整した水中で凝固して樹脂および多孔質無機物の混合物を分離膜裏側に配置した。さらに、この分離膜を加圧ローラで、圧力を適宜設定して加圧処理し分離膜に表1で示す高低差を付与した。そして、折り畳み断裁加工により分離膜のリーフ状物を分離膜エレメントでの有効面積が37mになるように、幅930mmで26枚のリーフ状物を作製した。
ここで、粒状物のある表面における高い箇所の最も高いところから近接する高い箇所の最も高い箇所までの水平距離を200個についてカウントし、その平均値をピッチとした。
その後、透過側流路材の端部を集水管に巻き付けながら26枚のリーフ状物をスパイラル状に巻き付けた分離膜エレメントを作製し、外周にフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカット、端板取りつけ、フィラメントワインディングを行い、8インチエレメントを作製した。該エレメントを圧力容器に入れて、原水500mg/L食塩水、運転圧力0.7MPa、運転温度25℃、pH7で運転(回収率15%)した際の性能を表1にまとめた。分離膜ロールの成形をせずに、ネット(厚み:900μm、ピッチ:3mm×3mm)を供給側流路材、トリコット(厚み:300μm、溝幅:200μm、畦幅:300μm、溝深さ:105μm)を透過側流路材として用いた比較例1に比べて、大幅に造水量が増え、かつ同等の除去率を保持できることがわかった。
Figure 2012045540
(実施例2〜10)
実施例2では、表1に示す条件とし、粒状物をポリスルホン単独に変更したところ、やや高低差変化率が高くなった。
実施例3では、高低差を1200μmになるようにした以外は実施例2と同条件にしたところ、造水量がやや低下する結果となった。
実施例4では、樹脂をポリエーテルスルホンとした以外は実施例2と同条件にしたところ、実施例2とほぼ同等の結果になった。
実施例5では、樹脂をポリフッ化ビニリデンとした以外は実施例2と同条件にしたところ、造水量がやや低下し、高低差変化率はやや高くなった。
実施例6では、粒状物パターンを格子状とした以外は実施例2と同条件にしたところ、造水量がやや低下した。
実施例7では、ロータリースクリーン法を用いるスクリーン型を楕円型にして、粒状物形状を楕円形とした以外は実施例2と同条件にしたところ、造水量がやや低下した。
実施例8では、粒状物をエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(加越社製、商品名:703A)とし、粒状物の配置方法をグラビア法とした以外は実施例2と同条件にしたところ、造水量はやや低下し高低差変化率がやや高くなった。
実施例9では、粒状物をポリエチレン樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名:ヒロダイン2705)とした以外は実施例8と同条件にしたところ、造水量はやや低下し高低差変化率がやや高くなった。
実施例10では、粒状物をポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱化学社製、商品名:ノバペックスGS400)とし、分離膜裏側にSUS製の型を当てて溶融した樹脂を流延して粒状物を配置した以外は実施例2と同条件にしたところ、造水量はやや低下し高低差変化率がやや高くなった。
(比較例2)
含浸深さを本願発明の範囲外にした結果、粒状物が分離膜から剥離して流路形成能に劣り、大きく性能が低下した。
(比較例3)
ロータリースクリーン法によって樹脂を含浸させ、水中へ浸漬させるまでの時間を変更し、含浸深さを本願発明の範囲外にした結果、分離膜にクラックが生じて大きく性能が低下した。
(比較例4)
分離膜表面には実施例1と同様に粒状物を形成し、分離膜裏面には、分離膜表面に形成された直近の3個の粒状物の中央に対応する位置に分離膜裏面の粒状物の中心が存在するように、ピッチが5,000μmになるように粒状物を形成した。その結果、分離膜が変形して流路断面を一部狭くしたために造水量が悪化した。
なお、供給側の高低差の変化率のみを算出したが、実施例では粒状物によって供給側及び透過側の両方に高低差が付与されるので、供給側で高低差の変化率が小さければ、透過側の高低差の変化率も小さいと言える。
以上のように、本願発明により得られる分離膜エレメントは、高造水性能、安定運転、優れた除去性能を有している。
本願発明の分離膜エレメントは、特に、かん水や海水の脱塩に好適に用いることができる。
1,11,21,31 分離複合体
2 分離膜
3 基材
4 分離機能層
5 含浸部
a〜g,25,35 粒状物

Claims (4)

  1. 基材及び基材上に設けられた分離機能層を備える分離膜と、
    前記分離膜の基材側表面上に設けられた複数の粒状物であって、前記粒状物の成分が、前記基材の厚みの5%以上95%以下の範囲で前記基材に含浸している粒状物と、
    を備える分離膜複合体。
  2. 前記分離膜は、
    前記分離膜の分離機能層側表面において、前記粒状物の存在する位置で突出する部分と、
    前記分離膜の基材側表面において、前記粒状物の存在しない位置で、前記粒状物よりも低い部分と、を備える
    請求項1に記載の分離複合体。
  3. 分離機能層側表面および基材側表面の同一位置に、前記分離膜が加圧されることによって形成された高低差を有する請求項1に記載の分離膜複合体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜複合体を備える分離膜エレメント。
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