JPWO2013038713A1 - 光スイッチ - Google Patents
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Abstract
本開示は、WDM波長全域にわたってのスイッチングが可能な多入力多出力の光スイッチを提供する。一実施形態に係る光スイッチは、少なくとも1つの入力ポートからの光信号を波長ごとに分波する光分波素子(3)と、入射した光信号を偏向する光分波素子からの波長分離された光信号を波長ごとに、その進行方向を波長分散軸方向と直交するスイッチ軸方向に偏向する第一の光偏向素子(5)と、第一の光偏向素子からの光信号を前記出力ポートのうち、少なくとも1つに出力されるようにその進行方向をスイッチ軸方向に偏向する第二の光偏向素子(8)と、第二の光偏向素子からの異なる波長の光信号を合波する光合波素子(10)とを備える。
Description
本発明は、波長分割多重光ネットワークに用いられる光スイッチに関する。
光通信の大容量化が進展し、伝送容量が波長分割多重(WDM(Wavelength Division Multiplexing))方式により増大する一方で、ノードにおける経路切換機能のスループットの増大が強く求められている。従来の波長多重チャネルの経路切換は、伝送されてきた各チャネルに対応する光信号を電気信号に変換した後に、電気スイッチにより行う方法が主流であったが、高速で広帯域であるという光信号の特徴を生かして、光スイッチ等を用いて各チャネルに対応する光信号のまま、アド・ドロップ等を行う、ROADM(reconfigurable optical add/drop multiplexer)システムが導入されている。具体的には、リング型の光ネットワークのネットワークノードとして、各チャネルに対応する光信号のアド・ドロップを行うとともに、ドロップの必要がないものは光信号のまま通過させるノード装置が配置されている。各チャネルに対応する光信号のまま、アド・ドロップ等を行うノード装置は、小型で低消費電力化という利点を有する。それらROADMシステムの将来的な展開に必要なデバイスとして、波長選択スイッチ(Wavelength selective switch:WSS)モジュールが求められている。
特に、複数のROADMシステムを相互に接続する光スイッチとして、多入力、多出力のWSSへの要求が高まりつつある。これは、CDC(Colorless, Directionless, Contentionless)と呼ばれるROADM構成に対応し、次世代のネットワークへの適用が期待されている。このような要求に対して、MEMS(Mechanical-Electo Machine System)を有するM×Nの波長選択スイッチが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)を有した波長選択スイッチは、波長グリッドをフレキシブルに再配置することができ、波長利用効率を高めることが可能である。
図18は、特許文献1に開示されている波長選択スイッチの概要である。図18において、入力光ファイバ101から入射した光信号は、凸レンズ103により平行光に変換され、回折格子104により波長分波されたのち、凸レンズ105によりMEMSミラーアレイ106a上に集光される。この光信号はMEMSミラーアレイ106aにより波長ごとに反射され、凸レンズ401を介して全反射ミラー402により反射される。反射された光信号は再び凸レンズ401を介してMEMSミラーアレイ106bに入射し、光路を変換されて、凸レンズ105、回折格子104、凸レンズ103を介して出力光ファイバ102へ出力される。図19は、スイッチ軸方向の光線を図示したものである。図19の構成は、MEMSミラーアレイ106aおよび106bと全反射ミラー402の間は回折格子104の波長分散軸方向および波長分散軸方向に垂直なスイッチ軸方向ともに同じ4f系(fは凸レンズ401の焦点距離)の構成である。4f系とする理由は、反射ミラー402上で波長分散軸方向、スイッチ軸方向ともに、平行ビームとしてMEMSミラーアレイ106a、106bの両方にビームウェストの位置を設定するためである。このような光学系では、2つのミラー素子107aおよびbの角度をどのように傾けても、必ずミラー素子107に戻るためスイッチングができない。この問題を解決するために、特許文献1に開示されている波長選択スイッチでは、図20に示すように、反射ミラー402を複雑で生産性の悪いブレーズド形状1200にする必要がある。また、図21に示すように反射ミラー402を曲面形状にしてスイッチングを実現する方法も考えられるが、この方式では上述の4f系を採用する利点(MEMSミラーアレイ106aおよび106b上でビームウェストを形成する点)を犠牲にしてしまう。
図18、図19および図20に示した波長選択スイッチの構成では、
(1)MEMSミラーアレイ106aおよびb上にビームウェストの位置が形成されるように構成要素を設定することができ、反射効率を高めることができる
(2)MEMSミラーアレイ106aおよびbを同一の面内に配置することができる
という利点がある。
(1)MEMSミラーアレイ106aおよびb上にビームウェストの位置が形成されるように構成要素を設定することができ、反射効率を高めることができる
(2)MEMSミラーアレイ106aおよびbを同一の面内に配置することができる
という利点がある。
図22は、同じく特許文献1に開示されている波長選択スイッチの概要構成を示す図である。図22において、入力光ファイバ101からの光信号は、個々の入力ポートごとに設置された球レンズ601とシリンドリカルレンズ602を経由して、MEMSミラーアレイ106aへと入射する。MEMSミラーアレイ106aにより光路変換された光信号は、図18を参照して説明したのと同じく、凸レンズ603を介して全反射ミラー604により反射される。全反射ミラー604により反射された光信号は再び凸レンズ603、MEMSミラーアレイ106b、シリンドリカルレンズ602、球レンズ601を経由して、出力光ファイバ102へと結合する。
しかしながら、特許文献1に記載のM×N波長選択スイッチでは以下の問題がある。
(1)図18の光学系において、反射ミラー402において、波長軸方向(x方向)の像が短波長波で逆転してしまうため、反射ミラーに垂直に入射する波長以外の波長成分は透過しない。
(2)図19の光学系において、回折格子104にスイッチ軸方向(y方向)に異なる角度で入射するため、回折格子の格子深さがポート間で異なっているように作用する。したがって、各ポートからの光信号は異なる分散特性をもつため、透過帯域の劣化につながる。
(3)図20の光学系において、製造が困難な複雑な形状のミラーを使用する必要があり、デバイスの製造性やコストの悪化につながる。
(4)図22に示す光学系では、すべての入力光信号が同じ角度で回折格子103へと入射するため、図19の光学系における上記(2)の問題は解消される。しかしながら、十分な波長分解能を得るためにシリンドリカルレンズ602の焦点距離を長くとらなければならない場合、球レンズ601によって決められる球レンズ出射直後のビーム径w1を十分に大きくする必要がある。もし、ビーム径w1が十分大きくない場合は、スイッチ軸方向のビーム広がりに起因して、MEMSミラー上のスイッチ軸方向の隣接するミラーにも光信号が入射してしまい、ポート間クロストークの性能が劣化するという問題を生じる。
(1)図18の光学系において、反射ミラー402において、波長軸方向(x方向)の像が短波長波で逆転してしまうため、反射ミラーに垂直に入射する波長以外の波長成分は透過しない。
(2)図19の光学系において、回折格子104にスイッチ軸方向(y方向)に異なる角度で入射するため、回折格子の格子深さがポート間で異なっているように作用する。したがって、各ポートからの光信号は異なる分散特性をもつため、透過帯域の劣化につながる。
(3)図20の光学系において、製造が困難な複雑な形状のミラーを使用する必要があり、デバイスの製造性やコストの悪化につながる。
(4)図22に示す光学系では、すべての入力光信号が同じ角度で回折格子103へと入射するため、図19の光学系における上記(2)の問題は解消される。しかしながら、十分な波長分解能を得るためにシリンドリカルレンズ602の焦点距離を長くとらなければならない場合、球レンズ601によって決められる球レンズ出射直後のビーム径w1を十分に大きくする必要がある。もし、ビーム径w1が十分大きくない場合は、スイッチ軸方向のビーム広がりに起因して、MEMSミラー上のスイッチ軸方向の隣接するミラーにも光信号が入射してしまい、ポート間クロストークの性能が劣化するという問題を生じる。
以下に、数値例を挙げる。一般的に入手可能な940L/mmの回折格子をリトロー配置にて使用し、波長グリッドが50GHz間隔の光信号をスイッチングすることを想定する。
十分な透過帯域を得るためには、図23のように、MEMSミラーアレイ106中の1つのMEMSミラー107の波長方向(x方向)の幅wMWLに対して、当該MEMSミラー上での光信号のビーム径w2(ビームの直径)はwMWLの10分の1以下にするのが好ましい。例えば、MEMSミラーの幅wMWLとして200μmを想定すると、光信号のビーム径w2は20μm程度とするのがよい。
ところで、200μmのミラー幅wMWLがちょうど50GHzの波長範囲に対応するので、シリンドリカルレンズ602の焦点距離fは、回折格子103の角度分散を考慮するとおよそ400mmとする必要がある。したがって、w2=20μmの場合、球レンズ601で形成されるガウスビーム半径はw1=9.5mmと巨大なものになる。
スイッチ軸方向には、このビーム径がそのまま伝搬するうえ、w1=9.5mmの半径のガウスビームを十分に受けるためのMEMSミラーのサイズはその3倍程度は必要であるので、200μm×28mmとアスペクト比の非常に大きなMEMSミラーが必要となる。しかも、28mmの方向にミラーを回転させる必要がある。このような巨大なミラーは現実的ではないことは明らかである。
加えて、球レンズ601をファイバ先端に個別に実装するのは、実装の難易度が極端に上がるという問題がある。
本発明は、このような目的を達成するために、本発明の第1の側面は、少なくとも1つの入力ポートおよび少なくとも1つの出力ポートを備えた光スイッチであって、前記少なくとも1つの入力ポートからの光信号を波長ごとに分波する光分波素子と、前記光分波素子からの波長分離された光信号を波長ごとにその進行方向を偏向する少なくとも1つの第一の光偏向素子と、前記第一の光偏向素子からの光信号を前記出力ポートのうち、少なくとも1つに出力されるように偏向する第二の光偏向素子と、前記第二の光偏向素子からの異なる波長の光信号を合波する光合波素子と、を備え、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は、前記光分波素子および前記光合波素子の波長分散軸方向と直交するスイッチ軸方向に、入射した光信号を偏向することを特徴とする。
本発明の第2の側面は、第1の側面の光スイッチにおいて、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子のうち少なくとも一方は、微小な位相変調素子を複数個有する空間位相変調素子であることを特徴とする。
本発明の第3の側面は、第1又は2の側面の光スイッチにおいて、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は液晶素子であり、前記スイッチ軸方向に曲面となる位相分布を有し、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の中間に光信号のビームウェストが存在することを特徴とする。
本発明の第4の側面は、第1又は2の側面の光スイッチにおいて、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は入力光を反射する液晶素子であって、
前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の反射面は前記スイッチ軸方向に曲面となる位相分布を有し、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の中間に光信号のビームウェストが存在することを特徴とする。
前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の反射面は前記スイッチ軸方向に曲面となる位相分布を有し、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の中間に光信号のビームウェストが存在することを特徴とする。
本発明の第5の側面は、第1又は2の側面の光スイッチにおいて、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は各々のミラーにスイッチ軸方向に曲率を持たせたMEMSミラーアレイであって、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の中間に光信号のビームウェストが存在することを特徴とする。
本発明の第6の側面は、第1乃至4のいずれかの側面の光スイッチにおいて、前記少なくとも1つの入力ポートからの光信号のすべてを前記波長分散軸方向に平行光に変換する少なくともひとつの第一の光学素子と、前記少なくとも1つの入力ポートからの光信号のすべてを、前記スイッチ軸方向に平行光となるようにビーム形状を変換する少なくともひとつの第二の光学素子と、前記光分波素子からの光信号を、前記波長分散軸方向に収束光とし、前記第一の光偏向素子上に前記波長分散軸方向のビームウェストを形成する少なくともひとつの第三の光学素子と、前記第一の光偏向素子からの光信号を前記波長分散軸方向に平行光とする少なくともひとつの第四の光学素子と、前記第四の光学素子からの光信号を、前記波長分散軸方向に収束光とし、前記第二の光偏向素子上に前記波長分散軸方向のビームウェストを形成する少なくともひとつの第五の光学素子と、前記第二の光偏向素子からの光信号を前記波長分散軸方向に平行光とする少なくともひとつの第六の光学素子と、前記光合波素子からの光信号のすべてを前記波長分散軸方向に収束光に変換し、前記出力ポートの少なくともひとつに結合するようにビーム形状を変換する、少なくともひとつの第七光学素子と、前記光合波素子からの光信号のすべてを、その主光線が前記スイッチ軸方向に収束するように変換し、前記出力ポートの少なくともひとつに結合するように光路変換する、少なくともひとつの第八光学素子とを備えたことを特徴とする。
本発明の第7の側面は、第6の側面の光スイッチにおいて、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は、入力光を反射する光偏向素子であって、前記第三の光学素子は前記第四の光学素子と共用され、前記第五の光学素子は前記第六の光学素子と共用されることを特徴とする。
本発明の第8の側面は、第7の側面の光スイッチにおいて、前記第四の光学素子と共用される前記第三の光学素子と前記第六の光学素子と共用される前記第五の光学素子との間に、前記波長軸方向に光信号の像を反転させて反射する第九の光学素子を有し、
前記第四の光学素子と共用される前記第三の光学素子は、前記第五の光学素子および前記第六の光学素子とも共用されることを特徴とする。
前記第四の光学素子と共用される前記第三の光学素子は、前記第五の光学素子および前記第六の光学素子とも共用されることを特徴とする。
本発明の第9の側面は、第8の側面の光スイッチにおいて、前記第三の光学素子、前記第四の光学素子、前記第五の光学素子、および前記第六の光学素子は、入力光信号を反射する同一の光学素子であることを特徴とする。
本発明の第10の側面は、第6乃至9のいずれかの側面の光スイッチにおいて、前記第一の光学素子および前記第二の光学素子は、前記少なくとも1つの入力ポートから入射した光信号の各々を前記光分波素子に同じ角度で入射することを特徴とする。
本発明の第11の側面は、第6乃至10のいずれかの側面の光スイッチにおいて、前記第一の光学素子、前記第二の光学素子、第三の光学素子、第四の光学素子、第五の光学素子および第六の光学素子は、前記少なくとも1つの出力ポートへ出射する光信号を、その各々が同一の波長については、前記光合波素子に同じ角度で入射することを特徴とする。
本発明の第12の側面は、第1乃至11のいずれかの側面の光スイッチにおいて、前記少なくとも1つの入力ポートおよび前記少なくとも1つの出力ポートは、それぞれ基板上に形成された光導波路で構成された光ビーム成形器に接続され、前記光ビーム成形器は、前記入力ポートの数または前記出力ポートの数の接続導波路と、前記接続導波路に接続された第一のスラブ導波路と、信号波長帯域での干渉特性が無視できるほど小さな光路差を有する前記第一のスラブ導波路に接続されたアレイ導波路と、前記アレイ導波路に接続された第二のスラブ導波路と、を備え、前記基板の面が前記スイッチ軸と平行な向きに設置され、前記第二のスラブ導波路の光軸方向の長さは、前記光導波路の出力端から一定の位置に設定されることを特徴とする。
本発明の第13の側面は、第1乃至11のいずれかの側面の光スイッチにおいて、前記少なくとも1つの入力ポートおよび前記少なくとも1つの出力ポートは、それぞれ基板上に形成された光導波路で構成された光ビーム成形器に接続され、前記光ビーム成形器は、前記入力ポートの数または前記出力ポートの数の接続導波路と、前記接続導波路に接続された第一のスラブ導波路と、信号波長帯域での干渉特性が無視できるほど小さな光路差を有する前記第一のスラブ導波路に接続されたアレイ導波路と、前記アレイ導波路に接続された第二のスラブ導波路と、を備え、前記基板の面が前記スイッチ軸と平行な向きに設置され、前記アレイ導波路と前記第二のスラブ導波路の境界は曲面であることを特徴とする。
本発明の第14の側面は、第12又は13の側面の光スイッチにおいて、前記接続導波路と前記第一のスラブ導波路との接続点列は、前記入力ポートが接続される前記光ビーム成形器である入力光ビーム成形器と前記出力ポートが接続される前記光ビーム成形器である出力光ビーム成形器との間で異なり、前記入力光ビーム成形器における接続点列を構成する点と点の中間位置に、前記出力光ビーム成形器における接続点列を構成する点が配置されることを特徴とする。
以上説明したように、本発明により、多入力多出力の波長選択光スイッチが実現され、次世代のネットワークの実現に寄与する。これまでに開示されている波長選択スイッチでは、「発明が解決しようとする課題」の(1)に示したように、特定の波長(中心波長)のみのスイッチングが可能であったが、本発明の構成による波長選択スイッチはWDM波長全域にわたってのスイッチングを可能とする。
また、「発明が解決しようとする課題」の(2)に示したように、本発明の構成による波長選択スイッチは、回折格子への入力角をすべての入力ポートからの光信号について等しくすることを可能とするので、すべて入力光信号について、全く等価な分光特性を得ることを可能とする。
加えて、「発明が解決しようとする課題」の(3)に示したように、本発明の構成による波長選択スイッチは、実現不可能な大きさの光偏向素子(MEMSミラーアレイ)を使う必要を無くす。
また、本発明の構成による波長選択スイッチは、LCOSを使う際に不可欠となる偏平ビームを実現する際に、導波路型のフロントエンド光学系を適用することにより、光学系の設計自由度が増し、またLCOSのゼロ次光に起因するクロストークの劣化を避けることも可能としている。
本発明によれば、WDM波長全域にわたってのスイッチングが可能な多入力多出力の光スイッチが提供される。以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。同一の構成要素には同一の符号をもって記述する。
(実施の形態1)
図1および2を参照して、本発明に係る光スイッチの一実施形態を説明する。図1および2は本実施の形態の光スイッチの光学系の概要を示すものである。
図1および2を参照して、本発明に係る光スイッチの一実施形態を説明する。図1および2は本実施の形態の光スイッチの光学系の概要を示すものである。
図1は、本実施の形態の光スイッチの波長軸方向の概略を示すものである。図1では、波長の異なる3つの光信号を3つの線(太実線、点線、一点鎖線)で示してある。以下の説明においては、太実線のみに着目して説明する。
フロントエンド光学素子1から出力された光信号は、コリメートレンズ2を介して平行光に変換され、回折光学素子3へと入射し、波長分離される。回折光学素子3において、回折された入力光信号は波長ごとに異なる方向へ回折される(太実線、点線、一点鎖線の3つに分波される)。回折された光信号は、集光レンズ4により収束光となり、光偏向素子5へと入射する(光信号ごとに異なる位置へ入射する)。後述するように、光偏向素子5は波長分散軸方向(単に、波長軸ともいう。)とは垂直方向に入力光を偏向することができる。なお、波長軸に垂直な方向とは光偏向素子5においてx方向をいう。光偏向素子5は、反射にて入力光を偏向する反射型もしくは透過にて入力光を偏向する透過型とすることができるが、ここでは光偏向素子5は透過光として偏向する透過型であるとして本実施の形態を説明する。反射型の光偏向素子5を用いても同様の機能を発揮することは明らかである。
光偏向素子5を通過した光信号は、コリメートレンズ6を介して平行光へ変換され、再び集光レンズ7にて収束光へ変換される。コリメートレンズ6と集光レンズ7の間においては、光信号は両者の間を伝搬するのに十分太い平行光に変換されるのが好ましい。集光レンズ7によって収束光となった光信号は光偏向素子8上に、波長ごとに集光する(太実線、点線、一点鎖線)。光偏向素子8上に集光した光信号は、波長ごとに、波長軸方向(y方向)に垂直な方向(x方向)へ偏向される。ここでは、光偏向素子5の場合と同様に、透過素子として説明するが一般性は失われない。光偏向素子8を透過した光信号は、発散光として伝搬するが、再びコリメートレンズ9により平行光に変換される。平行光に変換された光信号は、波長ごとに異なる角度で回折光学素子10へ入射し、結果として波長合波されて、同一方向へ出力される。
ここで、回折光学素子3および10は、それらの格子方向に関する回転方向が、図1に示すように、回折光学素子3により波長分波された光信号が、回折光学素子10で波長合波される方向となるように設置される。
回折光学素子10より出射した光信号は、集光レンズ11を介して収束光となり、最終的にフロントエンド光学素子2に入射する。上記の光信号の波長方向の流れを示した図中の太線の光路は、フロントエンド光学系1から出力されるガウスビームの発散、収束もしくは平行光としての伝搬を示す。また、コリメートレンズ2、6、9および集光レンズ4、7、11は波長軸方向にのみパワーをもつ(波長軸方向の成分を集光し、スイッチ軸方向の成分には影響を与えない、屈折力をもつ)シリンドリカルレンズである。
図2は、本実施の形態の光スイッチのスイッチ軸方向の光学系の概略である。なお、スイッチ軸方向とは光偏向素子5においてx方向をいう。図1に示したシリンドリカルレンズ2,4,6,7,9,11、および、回折光学素子3,10、光偏向素子5、8も模式的に示してあるが、スイッチ軸に関する動作のみを簡潔に説明するため、回折光学素子3,10の設置方向は図1の状態とは異なることに留意されたい。
図2に示される光線は、本スイッチ軸方向においては、各入出力ポートに関係する光線の主光線を示すものであり、ここでは、5入力、5出力の場合を示す。特に、図2中の太線は入力ポート1から入射した光信号であり、出力ポート2へ結合する場合を示すものである。
フロントエンド光学素子1から出力された光信号は、その入射ポートに依存して、フロントエンド光学素子1から異なる方向に出力される。フロントエンド光学系1から出力された光信号は、回折光学素子3の前段に設置されたコリメータレンズ13により、各入射ポートに対応する光線が平行となるように光路変換される。したがって、回折光学素子3へは、すべての光線は同じ角度で入射する。回折光学素子3において波長ごとに光路変換された各光線は、集光レンズ4を経由して、光偏向素子5へ入射する。光偏向素子5では、入力光線を波長ごとに異なる方向へ偏向する(x方向)。光偏向素子5により偏向された光波は、たとえば、太線で示されるように、任意の方向へ伝搬し、コリメートレンズ6および集光レンズ7を介して、光偏向素子8へ入射する。光偏向素子8に入射した信号は、所望の出力ポートに対応する方向(たとえば、太線の方向)に偏向され、コリメートレンズ9を介して、回折光学素子10へ入射する。回折光学素子10への光線は、入出力ポートによらず、すべて同じ角度で入射することは、回折光学素子5に対する状況と同じである。回折光学素子10を経由した光波は、集光レンズ14により角度変換され、集光レンズ11を介して、フロントエンド光学素子12へ入射する。
上記で太線をフロントエンド光学素子1から12へトレースすれば、入力1から出力2へとスイッチングされていることがわかる。
ここで、コリメートレンズ13および集光レンズ14はスイッチ軸方向(x方向)についてのみパワー(屈折力)をもつシリンドリカルレンズである。コリメートレンズ2の後段にコリメートレンズ13を配置する例を示したが、コリメートレンズ13の後段にコリメートレンズ2を配置してもよい。同様に、集光レンズ14の後段に集光レンズ11を配置する代わりに、集光レンズ11の後段に集光レンズ14を配置してもよい。
上記の光学系は近軸的には、以下の3つの制約条件を満たしている。すなわち、
(1)回折光学素子3および10へは、光信号は平行光として入射する。
(2)回折光学素子3および10へは、すべての入出力ポートに対応する光信号は同一の角度で入射する。
(3)回折光学素子3および10の設置方向は、前者で波長分波された光信号が後者で波長合波される方向になっている。
(1)回折光学素子3および10へは、光信号は平行光として入射する。
(2)回折光学素子3および10へは、すべての入出力ポートに対応する光信号は同一の角度で入射する。
(3)回折光学素子3および10の設置方向は、前者で波長分波された光信号が後者で波長合波される方向になっている。
上記1は、回折光学素子により波長を合分波する際の条件である。回折格子へ収束光もしくは発散光が入射すると、そのビームを構成する光線で考えたときに、回折光学素子への入射角が光線ごとに異なることになる。したがって、光線ごとに回折方向が変化するため、光偏向素子5,8上での波長選択性、すなわち透過帯域幅および損失が劣化する。
また、上記2の制約条件も光スイッチの波長選択性にかかるものである。たとえば、異なる入力ポートからの光信号が、スイッチ軸方向に異なる角度で入射した場合、回折格子の格子深さが異なる。したがって、入力ポートごとに波長分散能が異なる回折格子が設置されることになり、回折光学素子上に波長分波される際に、分波された光信号はそれぞれ異なる位置に集光する。この結果、光偏向素子5にて入力光をスイッチ軸方向に偏向した場合、偏向された光が再び光偏向素子8上に集光する場合、光偏向素子5上で集光した位置と相対的に異なる位置に集光することになる。このことは、すなわち、回折光学素子10に対する光の入射角度が異なることに直結するので、回折光学素子10での波長合成は適切に機能しないことになる。
第3の制約条件は、波長多重された入力信号を波長選択的にスイッチングする基本機能を実現するために必須である。特許文献1の図4−1、図6−1に示された構成(本願の図18、20)では、この要件は満たされていない。
光偏向素子5、8としてはLCOSによる光偏向素子、MEMSによる光偏向素子などを用いることができる。また、回折格子としては、透過型もしくは反射型の刻線回折格子や体積ホログラフィック回折格子などを用いることができる。
また、本実施の形態では、シリンドリカルレンズ2と回折光学素子3の間にシリンドリカルレンズ13が設置される例を示しているが、シリンドリカルレンズ13は回折光学素子3よりも入力側であれば良く、フロントエンド光学素子1とシリンドリカルレンズ2の間に設置されてもよい。
同様に、シリンドリカルレンズ14は、回折光学素子10とシリンドリカルレンズ11の間に設置されているが、回折光学素子10よりも出力側であれば良く、シリンドリカルレンズ11とフロントエンド光学素子12の間に設置されてもよい。
以下に、本実施の形態の光スイッチの数値例を示す。本実施の形態では、回折光学素子として透過型の刻線回折格子を用い、光偏向素子としてLCOS(Liquid Crystal on Silicon)による回折光学素子を用いる例を示す。また、信号光の波長は1530nmから1565nmのCバンドである。本数値例では、5入力、5出力の例について示す。
上述の光学部品として、
・シリンドリカルレンズ2,11の焦点距離:34mm
・シリンドリカルレンズ4,6,7,8の焦点距離:143mm
・シリンドリカルレンズ13,14の焦点距離:50mm
・回折光学素子3,10の格子定数:940Lines/mm
とした。また、LCOSはピクセルピッチが11μmの幅W×高さH=1024×768ピクセルのものを適用した。
・シリンドリカルレンズ2,11の焦点距離:34mm
・シリンドリカルレンズ4,6,7,8の焦点距離:143mm
・シリンドリカルレンズ13,14の焦点距離:50mm
・回折光学素子3,10の格子定数:940Lines/mm
とした。また、LCOSはピクセルピッチが11μmの幅W×高さH=1024×768ピクセルのものを適用した。
図3はLCOS上におけるビームの配置を示すものである。
ここでは、LCOSの短辺が波長軸(x軸)に相当する方向に設置した。上記の設定では、光周波数の100GHzがおよそ16ピクセルに相当する。
ここでは、LCOSの短辺が波長軸(x軸)に相当する方向に設置した。上記の設定では、光周波数の100GHzがおよそ16ピクセルに相当する。
図4は本パラメータにより実現される各チャネルの透過スペクトル特性を重ね書きしたものである。LCOS素子を用いることで、任意の波長間隔の設定が可能になるが、ここでは、88chの50GHz間隔のWDM光信号を想定した。特許文献1に示された例では特定の波長のみを透過することが可能であったが、本実施の形態の光スイッチでは、88chすべての信号に対して、0.5dB帯域で20GHz以上の帯域が得られることがわかる。
(実施の形態2)
本実施の形態2では、実施の形態1で示した光スイッチに関して、スイッチ軸方向の設定について数値例を挙げて説明する。光学系の構成は、実施の形態1と同様であり、本実施の形態に特徴的な部分のみを説明する。
本実施の形態2では、実施の形態1で示した光スイッチに関して、スイッチ軸方向の設定について数値例を挙げて説明する。光学系の構成は、実施の形態1と同様であり、本実施の形態に特徴的な部分のみを説明する。
図3に示すように、スイッチ軸方向については、LCOSの長辺の向きに設置する。この際、入力側LCOS(光偏向素子5)上で5入力の光信号の各々が、出力側LCOS(光偏向素子8)上では5出力の光信号の各々が、均等に振り分けられる必要がある。5つの入出力ビームにて1024ピクセルを均等に分割すると、ひとつの入出力ビームあたり205ピクセル(幅はwch=205×11μm=2253μm)を占める。なお、個々のピクセルは微細な相変調素子であり、複数のピクセルにより集約的に空間位相変調素子が構成される。
LCOSを用いた光信号の偏向は図5に示す方式でなされる。すなわち、LCOS上の各ピクセルを用いて、セロダイン波状の位相分布を持つ空間波形を設置することで、入力光の波面を傾けることができる。セロダイン波形は、位相が0から2πまでののこぎり波を階段状の波形で等価的に実現したものであり、そのセロダインの傾きに応じて、入射した光信号が反射する向きを変えることができる。図3に図示した、各々の入出力ポートに対応するLCOS上の領域において、スイッチ軸方向に図5の位相分布を設定する。光偏向素子5におけるセロダイン波形の傾きは、入射した光信号が、所望の出力に対応する光偏向素子8上の位置に向かって進むように設定すればよく、光偏向素子8上のセロダイン波形の傾きは、それに入射する光信号が所望の出力ポートへ向かう方向に変更されるように設定すればよい。
たとえば、上述の数値例において、入力ポート1から出力ポート3へ出力する場合には、スイッチ軸方向のビームの主光線の位置シフトとしては、2253×(3−1)=4506μmである。光偏向素子5と8の間の距離は143mm×4=572mmであるから、スイッチングに必要な偏向角はatan(4.506/572)=0.45度である。したがって、たとえば、1.55μmの光信号をスイッチングさせるためには、セロダイン波形の周期periodを、
0.45°=atan(1.55/period)
period=197μm
となるように、設定すればよい。すなわち、ピクセルサイズは11μmであるので、197/11=17.9ピクセルごとの周期のセロダイン波形を設定すればよい。
0.45°=atan(1.55/period)
period=197μm
となるように、設定すればよい。すなわち、ピクセルサイズは11μmであるので、197/11=17.9ピクセルごとの周期のセロダイン波形を設定すればよい。
ところで、図3に示した各々の入出力に対応するLCOS上の領域の中に、各入出力からの光信号に対応するガウスビームが十分内包される必要がある。もし、十分に内包されない場合、隣接するポートに光が漏れこむことになり、隣接クロストークの劣化につながる。ここでは、ガウスビームの裾が十分小さくなる幅として、ガウスビーム幅wSWをwSW=wch/α=wch/3.5=644μmとなるように設定した。ここで係数α(=3.5)は、要求されるポート間クロストークの値から決定される。
ところで、光偏向素子5および8の間には、スイッチ軸方向(x方向)にパワーをもつ光素子は設置されない。したがって、たとえば、光偏向素子5上にビームウェストを有する光信号がそのまま伝搬すると、光偏向素子5を通過した光信号はその径を広げながら伝搬することになる。たとえば、上述のように、光偏向素子5上で、wSW=644μmのビームがウェストを持っている場合、そのビーム広がりにより光偏向素子8上では、774μmに広がる。これは、光偏向素子8上でポート間クロストークを発生させることになるため、好ましくない。
本発明では、図6に示すBWの位置にビームウェストを設定することで、上記の問題を解消する。図6は光偏向素子5と8の間の光学系を抜粋したものである。点線は、入力3から出力3へ伝搬するビームの形状を示したものである。図6に示すように、光偏向素子5および8間の距離は、シリンドリカルレンズ4,6,7,9の焦点距離の4倍に設定される。これは、波長軸の条件から一意に決まるものである。したがって、本数値例では、BWと光偏向素子5,8までの距離は、143×2=286mmである。この場合、BWにビームウェストの位置を設定し、そのサイズをwBW=598μmとすることで、光偏向素子5,8上でwSW=644μmのビームを得ることができる。
特に、光偏向素子としてLCOSを用いる場合、スイッチ軸方向に関してwchに含まれるピクセルの位相を図7に示すような曲面にすればよい。図7において、横軸はLCOS上のスイッチ軸方向における位置を示しており、縦軸は各ピクセルに設定される位相を示している。光偏向素子5でビームウェストを結ぶ光信号が入射した場合、LCOSに曲率半径143mmの凹面に相当する位相分布を設定すれば、光偏向素子5と8の中心BWの位置に新たなビームウェストを結ぶことができる。図7に示す曲面の位相分布は、図5に示すセロダイン波形と重ね合わせて設定すれば、スイッチング機能を保ちつつビームウェストをBWの位置に設定できる。この重ね合わせは、図5に示したセロダイン波形の傾きをβ、図7に示した曲面を2次曲線で近似して、その2次の係数をαとするときに、
φ=αx2+βx
とすればよい。xはLCOS上のスイッチ軸方向の位置である。
φ=αx2+βx
とすればよい。xはLCOS上のスイッチ軸方向の位置である。
本実施の形態では、光偏向素子5と8のちょうど中点BWビームウェストの位置を設定する例を示したが、光偏向素子5、8上のスイッチ軸方向のビーム径が十分にポート間クロストークを低減できるほど小さく設定できるのであれば、この位置に限らないことは明らかである。
また、MEMSミラーアレイなどの光偏向素子を用いた場合においても、光偏向素子5と8の間にビームウェストの位置を設定するように、各々のミラーにスイッチ軸方向に曲率を持たせればよいことは明らかである。
また、本実施の形態では、光偏向素子5と8上にもビームウェストが存在すると想定したが、wSWが要求されるポート間クロストークを満たす幅であれば、光偏向素子5および8上にビームウェストはなくても構わない。
また、多数の入力ポートまたは出力ポートを有する光スイッチでは、光偏向素子による偏向量が増大し、スイッチングに必要なピクセル数を有したLCOSを1つの基板上に形成すること困難となる場合がある。このような場合には、並べて配置した複数のLCOSにより光偏向素子を実現することができる。同様にレンズ1,4,6,7,9,11,13,14もまた、同種のレンズを複数個並べて1つの光学素子を実現することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3では、実施の形態1および2で示した光学系の実際の構成を図8を用いて説明する。図8において、フロントエンド光学素子1から入射した光信号は、波長軸方向(z方向)にパワー(屈折力)を持つコリメータレンズ2、スイッチ軸方向(x方向)にパワー(屈折力)をもつコリメータレンズ13を介して、透過型の回折光学素子3へと入射する。回折光学素子3で波長ごとに異なる方向に出力された光信号は、波長軸方向(y方向)にパワーをもつ集光レンズ4を介して、光偏向素子5へと入射する。光偏向素子5に入射した光信号は、実施の形態2で説明した原理に基づいて偏向され、所望の出力に対応する光偏向素子8上の領域に向かって伝搬する。光偏向素子5により反射された光信号は、波長軸方向(y方向)にパワーを持つコリメータレンズ6により波長軸方向(y方向)に平行光に変換されるが、前述の集光レンズ4の別の部分を透過させることで両者を共有することができ、部材点数の低減を図ることができる。また、集光、コリメータレンズ4,6は、回折光学素子3と光偏向素子5からの距離が、その焦点距離に等しい位置に設置される。このように配置することで、波長軸方向(y方向)には光偏向素子5上にビームウェストの位置が設定され、かつテレセントリック条件を保つことができる。光偏向素子5上にビームウェストの位置が設定されるため、高い波長選択性を有したスイッチングが可能になる。
本実施の形態3では、実施の形態1および2で示した光学系の実際の構成を図8を用いて説明する。図8において、フロントエンド光学素子1から入射した光信号は、波長軸方向(z方向)にパワー(屈折力)を持つコリメータレンズ2、スイッチ軸方向(x方向)にパワー(屈折力)をもつコリメータレンズ13を介して、透過型の回折光学素子3へと入射する。回折光学素子3で波長ごとに異なる方向に出力された光信号は、波長軸方向(y方向)にパワーをもつ集光レンズ4を介して、光偏向素子5へと入射する。光偏向素子5に入射した光信号は、実施の形態2で説明した原理に基づいて偏向され、所望の出力に対応する光偏向素子8上の領域に向かって伝搬する。光偏向素子5により反射された光信号は、波長軸方向(y方向)にパワーを持つコリメータレンズ6により波長軸方向(y方向)に平行光に変換されるが、前述の集光レンズ4の別の部分を透過させることで両者を共有することができ、部材点数の低減を図ることができる。また、集光、コリメータレンズ4,6は、回折光学素子3と光偏向素子5からの距離が、その焦点距離に等しい位置に設置される。このように配置することで、波長軸方向(y方向)には光偏向素子5上にビームウェストの位置が設定され、かつテレセントリック条件を保つことができる。光偏向素子5上にビームウェストの位置が設定されるため、高い波長選択性を有したスイッチングが可能になる。
次に、コリメータレンズ6を透過した光信号は、全反射ミラー31により反射され、波長軸方向(y方向)にパワーをもつ集光レンズ7を介して光偏向素子8へと伝搬する。光偏向素子8では、実施の形態2に示した原理に基づいて偏向され、所望の出力ポートの方向へ光信号を反射する。光偏向素子8により反射された光信号は、波長軸方向(y方向)にパワーをもつコリメータレンズ9により平行光に変換されるが、集光、コリメータレンズ4,6の場合と同様に、集光レンズ7の一部を透過させることで両者の共有を図ることができる。また、集光、コリメータレンズ7,9は光偏向素子8、後述の回折光学素子10からの距離が、その焦点距離に等しい位置に設置される。
加えて、全反射ミラー31も集光コリメータレンズ4,6および7,9からの距離が、それらの焦点距離の位置に配置される。
最後に、光信号は回折光学素子10により波長合波されて、スイッチ軸方向(x方向)にパワーをもつ集光レンズ、波長軸方向にパワーをもつ集光レンズを介して、フロントエンド光学系12へと結合する。
本実施例のように全反射ミラー31を用いることで、光学系全体を折り返して配置することができ、装置の小型化を図ることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態4では、実施の形態3に示した光学系をさらに小型化する構成を示す。図9Aおよび9Bは本実施の形態4を説明する図である。
本実施の形態4では、実施の形態3に示した光学系をさらに小型化する構成を示す。図9Aおよび9Bは本実施の形態4を説明する図である。
図9Aにおいて、フロントエンド光学素子1から出力された光信号は、波長軸方向(z方向)にパワーをもつコリメータレンズ、スイッチ軸方向(x方向)にパワーをもつコリメータレンズ13を介して平行光に変換され、回折光学素子3によって波長分波される(y方向)。実施の形態3で説明したのと同様に、波長分波された信号は光偏向素子5上に集光され、偏向されるが、光偏向素子5への入出力に関する集光コリメータレンズ4はひとつのレンズで共有される。
集光コリメータレンズ4を透過した光信号は、レトロリフレクタ41により反射される。レトロリフレクタ41は、入射光を入射角度とまったく同じ方向へ像を反転して反射する。レトロリフレクタ41により反射された光信号は、再び集光コリメータレンズ4を介して光偏向素子8へと入射する。
ここで、図9Bのスイッチ軸に関する説明図に示すように、光偏向素子5はスイッチ軸方向(x方向)に傾けて設置するのが好ましい。光偏向素子8についても同様である。このように設置することで、集光コリメータレンズ4を光偏向素子5および8に関する入出力について共有することができ、部材点数の低減、装置の小型化を図ることが可能である。
図9Bのスイッチ軸に関する説明図は、回折光学素子3からレトロリフレクタ41までの光学系のみを示した。
従来技術で示した特許文献1には類似の構成が示されているが、次の2点で本質的に異なることを明示する。
第一に、特許文献1に記載の光学系(たとえば特許文献1の図4−1)では、図10AおよびBに示すように、レトロリフレクタ41の代わりに、全反射ミラー42(特許文献1の図4−1では402)を設置する方法が開示されている。この光学系では、中心波長(点線で図示)以外の光信号は、出力側のフロントエンド光学系へ戻る際に、たとえば光路43へと伝搬する。ここでは、中心波長は全反射ミラー42に垂直に入射する波長の光信号を指す。したがって、中心波長の光信号は出力へと結合するが、それ以外の波長の光信号は損失となって現れる。
第二に、特許文献1に示されている光学系では、特許文献1の図4−2に示されているように、スイッチ軸方向にもパワーを持つレンズ401を介して全反射ミラー402に入力するように開示されている。しかしながら、この光学系では以下に説明するように、スイッチング動作を妨げる。MEMSミラーにより偏向された光信号は、偏向された角度に対応してレンズ401により全反射ミラー402上で位置に変換されるが、全反射ミラーへの入射角はMEMSミラー107の位置により一意に決まる。全反射ミラー402での反射角はミラーへの入射角により決定されるが、これも入力側のMEMSミラー107の位置により一意に決定される。全反射ミラー402により反射された光信号はレンズ401により、出力側のMEMSミラー106bに入射するが、その入射位置は全反射ミラー402での反射角により決定される。前述のように全反射ミラー402からの反射角は入射側のMEMSミラー107の位置により一意に決まるため、入射側のミラー107の位置と出力側のミラー位置は常に一対一の関係になる。
したがって、MEMSミラーの角度によらず、常に入出力ポートの関係は一対一となり、スイッチング動作が実現されない。
他方、本実施の形態4の光スイッチにおける光学系は、反射光学素子としてレトロリフレクタ41を使用し、また、波長軸方向のみにパワーをもつシリンドリカルレンズを用いるため、特許文献1に開示された方法で生じる上記第一の問題を解決することができる。
また、本実施の形態4の光スイッチにおける光学系では、2つの光偏向素子間の光学系を、ビーム整形についてはLCOSの位相変調効果を利用して凹面鏡を形成してスイッチ軸方向に2f系として、ビーム偏向については光偏向素子の偏向機能のみの光学系としているため、特許文献1に開示された方法で生じる上記第二の問題を解決することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態5では、実施の形態4に示した光学系をさらに小型にする構成を示す。図11Aおよび11Bは本実施の形態5を説明する図である。
本実施の形態5では、実施の形態4に示した光学系をさらに小型にする構成を示す。図11Aおよび11Bは本実施の形態5を説明する図である。
図11Aおよび11Bに示す光スイッチは、図9Aおよび9Bの光スイッチと比較して、集光コリメータレンズ4が波長軸方向(y方向)にみにパワーをもつ凹面ミラー51に置き換えられている点で異なる。図9Aおよび9Bの光学系では、集光コリメータレンズ4の両側にその焦点距離fだけ離れた位置に回折格子3と光偏向素子5,8が配置されるため、2fの幅を必要とするが、図11Aおよび11Bの構成ではfの幅のみで十分であり、装置の小型化に寄与する。
(実施の形態6)
本実施の形態6では、フロントエンド光学素子について説明する。
本実施の形態6では、フロントエンド光学素子について説明する。
フロントエンド光学系1および12は、石英系光導波路(以下、PLC:Planar Lightwave Circuit)を使って実現できる。
実施の形態1および2で示したように、フロントエンド光学系1からの出力光は、光スイッチとしての入力ポートに対応して異なる角度で出力される。本実施の形態6では、石英系平面光波回路(PLC)を用いて、この光学系を実現する方法を示す。本実施の形態6では、石英系の導波路を用いて本発明の形態を説明するが、Si、SiON、SiN、LiNbO3、PLZTや化合物半導体などの導波路を用いても同様の効果を得ることができることは明らかである。また、導波路を用いず光ファイバアレイとレンズを使ったバルク光学系でも同様の光学系を実現することも可能である。
図12はこの石英系光導波路を用いて実現したフロントエンド光学系の概要である。フロントエンド光学系は、火炎堆積法と反応性イオンエッチングなどによる一般的な光導波路の製造方法により作製され、以下の通り動作する。ここでは、入射側のフロントエンド光学系(実施の形態1ではフロントエンド光学系1に対応する)として、説明するが、光波の進行方向を逆転すれば、出力側のフロントエンド光学系(実施の形態1ではフロントエンド光学系12に対応する)としての動作も可能である。すなわち、入力光ファイバ群1の少なくとも1が入力ポートまたは出力ポートに対応する。
入力光ファイバ群61から入力した光信号は石英系光導波路60上に形成された入力導波路62を介してスラブ導波路63へと入射する。スラブ導波路63を伝搬した光信号はアレイ導波路64を介して出力スラブ導波路65へと入射し、石英系光導波路60の端面67から自由空間に出力される。
スラブ導波路63では、基板水平方向には、光信号のビーム径Wはその伝搬距離zに応じて、
で表される。ここで、wは入力導波路62の基底モードのモード径、λは光信号の波長、nsはスラブ導波路の屈折率である。したがって、アレイ導波路64における空間的な強度分布は式(1)に従う。さらに、アレイ導波路64を構成する各々の光導波路の長さを等しく設定すれば、アレイ導波路出力界面66ではスラブ導波路63とアレイ導波路64での位相分布を保持することができる。
このように設定することで、石英系光導波路60からの出力光はその入力ポートに対応して出力角度が異なるガウスビームの光信号群とすることができる。たとえば、入力ポート62bから入力した光信号は、スラブ導波路63へは中心(入力ポート62aから入力した光信号が入射する位置)からずれた位置から入射する。したがって、アレイ導波路64では、アレイ導波路ごとに一定の位相差を有するように入射する。これはすなわち、アレイ導波路出力界面66では波面が傾くことに相当するため、波面68に示すように入力ポートに依存して出力光の波面の向き、すなわち出射方向が傾くことになる。
実施の形態1で示した光学系においては、図12の石英系光導波路60の基板方向(x方向)がスイッチ軸方向に設定され、垂直方向(z方向)が波長軸方向に設定される。
導波路を用いたフロントエンド光学系の動作は上述の通りであるが、この光学系には以下の利点がある。
(1)フォトリソグラフィによる光路の位置決めができるため、アライメント作業が不要であり、環境変動にロバストな光学系を実現できる。
(2)基板水平方向のビームウェストサイズは任意に設定できる。
(3)ビームウェスト位置を基板垂直方向、基板水平方向で任意に設定できる。(後述)
(1)フォトリソグラフィによる光路の位置決めができるため、アライメント作業が不要であり、環境変動にロバストな光学系を実現できる。
(2)基板水平方向のビームウェストサイズは任意に設定できる。
(3)ビームウェスト位置を基板垂直方向、基板水平方向で任意に設定できる。(後述)
通常の光学系でこのフロントエンドを構成する場合、ファイバアレイや複数のレンズをアクティブ調芯する必要があり、製造コストの増大につながるが、本実施の形態のようにフロントエンド光学系を導波路を用いて実現することで、量産性に優れた半導体プロセスを利用できるため、製造スループットを改善できる。
また、式(1)に示したように、本実施の形態6のフロントエンド光学系では、スラブ導波路63の長さzを適宜変更することにより、任意の大きさのビーム径を簡便に実現できる。この特徴は、光偏向素子としてLCOSを用いるときに有効に作用する。なぜならば、LCOSのような回折光学効果に基づく光偏向素子では、偏向角度を大きくとることが難しい。したがって、ポート間のクロストークを確保するためには、スイッチ軸方向のビーム径を大きく設定する必要がある。これは、LCOS上でのビームのNAを下げると言い換えても良い。一方で、波長軸方向にはビーム径は小さいほうが好ましく、LCOS上でのビームは非常に偏平なものになる。すなわち、光導波路をフロントエンド光学系に用いることにより、波長軸方向(基板垂直方向、z方向)には導波路の基底モードで決まるビーム径が形成されるのに対し、スイッチ軸方向(x方向)にはzを調整することにより、任意のビーム径を実現することができるため、このような偏平なビームを形成しやすい。例えば、比屈折率差が0.75%の石英系光導波路では、基板垂直方向のビーム径は4μm程度で一定あるが、zを20mmとすることで基板水平方向には1.6mmのビームを実現できる。このビームの出力端でのアスペクト比は1:400にも及ぶ。このような偏平なビームを通常のバルクの光学素子を使って実現するのは困難である。
加えて、出力スラブ導波路65の長さを適宜変更することにより、基板垂直方向と水平方向のビームウェストの位置を任意に設定できる。なぜならば、基板垂直方向のビームウェストは、石英系光導波路60の出力端67に存在するが、基板水平方向のビームウェストはアレイ導波路の出力端66に存在するからである。
フロントエンド光学素子出力直後のビームウェストの位置を基板垂直水平方向で任意に設定できる点は、空間光学系(実施の形態1ではレンズ2以降)の設計自由度を高めることができる。以下にこの利点について説明する。
実施の形態1および2で示した例では、
・図6のBWの位置にビームウェストを設定する、
・回折光学素子3および10においては、ビームウェストとするのが好ましい点について述べた。第2の事項については、回折光学素子へは平行光として入射することと等価である。
・図6のBWの位置にビームウェストを設定する、
・回折光学素子3および10においては、ビームウェストとするのが好ましい点について述べた。第2の事項については、回折光学素子へは平行光として入射することと等価である。
このような状態に光学系を設定するには、以下の通りにすればよい。すなわち、フロントエンド光学素子1の出力端でのビーム形状を
・スイッチ軸方向には、ビームウェストを光導波路出力端67から13.7mm位置にサイズ42μmとし
・波長軸方向には、ビームウェストを光導波路出力端67の位置に、サイズ4μmとし
て設定するのが良い。スイッチ軸方向のビームウェストは、レンズの焦点距離などの光学系のパラメータが変更になるたびに、最適化が必要になる。この状態に設定するときに、回折光学素子の位置にスイッチ軸方向にビームウェストを設定できる。図13にスイッチ軸方向のビームウェストの位置関係を示す。図13において、フロントエンド光学素子1および12からの距離sがs=13.7mmの位置BWin1、BWout1にビームサイズ42μmのビームウェストが存在し、回折光学素子3および10の位置BWin2、BWout2と、光偏向素子5と8の中点BWの位置に、ビームサイズ598μmのビームウェストが存在する。
・スイッチ軸方向には、ビームウェストを光導波路出力端67から13.7mm位置にサイズ42μmとし
・波長軸方向には、ビームウェストを光導波路出力端67の位置に、サイズ4μmとし
て設定するのが良い。スイッチ軸方向のビームウェストは、レンズの焦点距離などの光学系のパラメータが変更になるたびに、最適化が必要になる。この状態に設定するときに、回折光学素子の位置にスイッチ軸方向にビームウェストを設定できる。図13にスイッチ軸方向のビームウェストの位置関係を示す。図13において、フロントエンド光学素子1および12からの距離sがs=13.7mmの位置BWin1、BWout1にビームサイズ42μmのビームウェストが存在し、回折光学素子3および10の位置BWin2、BWout2と、光偏向素子5と8の中点BWの位置に、ビームサイズ598μmのビームウェストが存在する。
このように、波長軸とスイッチ軸でビームに対する要求が異なるのは、LCOS上のビームが、波長軸方向についてはサイズが小さいのでフラウンホーファ領域の回折現象として近似できるが、スイッチ軸方向については比較的大きくフレネル領域として考慮する必要があることに起因する。LCOS上でスイッチ軸方向のビーム径を大きくする必要があるのは、LCOSによるビーム偏向角が大きく取れないため、ポート間クロストークを確保するためにはLCOS上でのビームのNAを小さくする必要があるからである。
これまでの例では、ポート数を5入力、5出力として、ピクセルサイズが11μm、ピクセル数が1024×768のLCOSを例に挙げて説明した。この例ではLCOS上のビームサイズは644μmであったが、異なるパラメータでは、BWin1、BWin2の位置に関する要請は異なり、光導波路の内部にBWin1、BWin2が存在するのが良い場合がある。図12に示したフロントエンド光学素子では、BWin1、BWin2はアレイ出力端66に存在するため、このような要件を満たすのに適している。
図14はフロントエンド光学素子1および2からビームウェストBWin1、BWout1までの距離sと、回折光学素子3および10とBWin2、BWout2の間の距離の関係をプロットしたものである。前述したように、BWin2とBWout2は回折格子上に設定すべきものであり、プロットの縦軸がゼロとなるように設定されるのが好ましい。しかしながら、図に示すように、sがわずかに変わるだけでも回折光学素子3および10とBWin2、BWout2の間の距離は大きく変動する。光導波路によるフロントエンド光学素子は、フォトリソグラフィにより精度良くウェスト位置BWin1、BWout1を設定できるため、このようにトレランスの厳しい光学系に適している。
(実施の形態7)
本実施の形態7では、実施の形態6で示したBWin1、BWin2の位置にビームウェストを形成するのに適した光導波路によるフロントエンド光学素子の実現例を説明する。
本実施の形態7では、実施の形態6で示したBWin1、BWin2の位置にビームウェストを形成するのに適した光導波路によるフロントエンド光学素子の実現例を説明する。
図15は本実施の形態7のフロントエンド光学素子の概略である。実施の形態6で説明した部分については、本実施の形態7では省略する。図15において、アレイ導波路64と出力スラブ導波路65の境界は円弧71の形状となっている。円弧71は入力導波路62側に対して凸面となる形状である。このときアレイ導波路66の各々は凸面円弧71と垂直に交差する。また、アレイ導波路64はすべて等長であるのは実施の形態6と同様である。
この場合、フロントエンド光学系60からの出力光は、スイッチ軸方向にも収束光と設定でき、そのビームウェスト位置は、フロントエンド光学素子60の端面67からsだけ離れた位置78に設定できる。
上述の数値例では、ビームウェスト位置78におけるスイッチ軸方向のビーム径は、wSW=42μmとするのが好ましい。s=13.7mmであった。このようなビームは、アレイ導波路出力端66におけるビーム径を166μmとし、円弧71の曲率を13.7mmとすることで実現される。このときアレイ導波路64のピッチは入力側スラブ63との境界と出力側スラブ65との境界で等しく設定すれば、入力スラブ導波路の長さは1970μmとすればよい。なお、図15において、フロントエンド光学系60の導波路の厚みで決まる端面67における垂直方向(波長軸方向)のビームウェストサイズwWLも示している。
(実施の形態8)
実施の形態7では、ビームウェストがフロントエンド光学系の後方(光信号の伝搬方向)にある場合について説明した。本実施の形態8では、仮想的なビームウェストをフロントエンド光学系の前方に設定する例について説明する。図16は本実施の形態8のフロントエンド光学素子の概略である。実施の形態6では、PLCの内部にビームウェストが存在する場合の例を挙げたが、ビームウェストまでの距離が長く、通常のウエハプロセスで作製できない程度に長くなる可能性がある。このような場合、図16に示すように、アレイ導波路64と出力スラブ導波路65の境界を入力導波路62側に対して凹面の円弧72となるように設定すればよい。このとき、アレイ導波路66の各々は凹面円弧72と垂直に交差する。図16では、光導波路基板の手前側(入力側)の外部(位置88)にビームウェストを実現する例を示した。なお、図16において、フロントエンド光学系60の導波路の厚みで決まる端面67における垂直方向(波長軸方向)のビームウェストサイズwWLも示している。
実施の形態7では、ビームウェストがフロントエンド光学系の後方(光信号の伝搬方向)にある場合について説明した。本実施の形態8では、仮想的なビームウェストをフロントエンド光学系の前方に設定する例について説明する。図16は本実施の形態8のフロントエンド光学素子の概略である。実施の形態6では、PLCの内部にビームウェストが存在する場合の例を挙げたが、ビームウェストまでの距離が長く、通常のウエハプロセスで作製できない程度に長くなる可能性がある。このような場合、図16に示すように、アレイ導波路64と出力スラブ導波路65の境界を入力導波路62側に対して凹面の円弧72となるように設定すればよい。このとき、アレイ導波路66の各々は凹面円弧72と垂直に交差する。図16では、光導波路基板の手前側(入力側)の外部(位置88)にビームウェストを実現する例を示した。なお、図16において、フロントエンド光学系60の導波路の厚みで決まる端面67における垂直方向(波長軸方向)のビームウェストサイズwWLも示している。
以上、実施の形態7、8に示したように、導波路を使ったフロントエンド光学系では、ビームサイズと出力端の曲率を独立に設計できるため、任意の位置にビームウェストをもつ、任意の大きさのビームを容易に実現することができる。
(実施の形態9)
本実施の形態9は、フロントエンド光学素子1と12の最適な関係について説明するものである。
本実施の形態9は、フロントエンド光学素子1と12の最適な関係について説明するものである。
LCOSなどの回折効果をつかった光偏向素子は、回折に起因する高次光やゼロ次光が発生する。特にゼロ次光は、一般に強度も大きく、ポート間のクロストークとして光スイッチの特性を劣化させる。
図17は本実施の形態9にかかる、入力側のフロントエンド光学素子と出力側フロントエンド光学素子の関係を示したものである。図17において、入力側フロントエンド光学素子と、出力側フロンエンド光学素子は、入出力の接続導波路62と92と、スラブ導波路63と93との接続部の位置関係を除いて、線分Lに対して線対称な形状である。出力側フロントエンドでは、接続導波路92(実線で表示)は、入力側フロントエンドにおける接続導波路62d(点線で表示)とは異なる位置でスラブ導波路93と接続される。すなわち、本実施の形態では、出力側フロントエンドでは、入力側フロントエンドにおける接続導波路62d(点線)がスラブ導波路に接続される位置の中間位置で、出力側フロントエンドにおける接続導波路(実線)がスラブ導波路に接続される。
前述の回折効果をつかった光偏向素子によるゼロ次光は、入力側フロントエンド光学素子の接続導波路位置62dに伝搬するため、このように出力側の接続導波路93の位置をずらして配置することで、クロストークの発生を抑圧できる。
本実施の形態9の出力側フロントエンド光学素子を用いる際は、同一番号の入出力間にパスを形成する際にも、LCOS素子にセロダイン波形の位相分布を設定する。
1 フロントエンド光学素子
2,4,6,7,9,11,13,14 集光レンズ
3,10 回折光学素子
5,8 光偏向素子、LCOS、MEMSミラーアレイ
41 レトロリフレクタ
42 全反射ミラー
51 凹面ミラー
60 石英系光導波路
61 光ファイバ
62,62a,62b 入出力接続導波路
63,93 スラブ導波路
64 アレイ導波路
65 出力スラブ導波路
101 入力光ファイバ
102 出力光ファイバ
103,105,401,603 凸レンズ
104 回折格子
106a,106b MEMSミラーアレイ
402,604 全反射ミラー
601 球レンズ
602 シリンドリカルレンズ
2,4,6,7,9,11,13,14 集光レンズ
3,10 回折光学素子
5,8 光偏向素子、LCOS、MEMSミラーアレイ
41 レトロリフレクタ
42 全反射ミラー
51 凹面ミラー
60 石英系光導波路
61 光ファイバ
62,62a,62b 入出力接続導波路
63,93 スラブ導波路
64 アレイ導波路
65 出力スラブ導波路
101 入力光ファイバ
102 出力光ファイバ
103,105,401,603 凸レンズ
104 回折格子
106a,106b MEMSミラーアレイ
402,604 全反射ミラー
601 球レンズ
602 シリンドリカルレンズ
Claims (14)
- 少なくとも1つの入力ポートおよび少なくとも1つの出力ポートを備えた光スイッチであって、
前記少なくとも1つの入力ポートからの光信号を波長ごとに分波する光分波素子と、
前記光分波素子からの波長分離された光信号を波長ごとにその進行方向を偏向する少なくとも1つの第一の光偏向素子と、
前記第一の光偏向素子からの光信号を前記出力ポートのうち、少なくとも1つに出力されるように偏向する第二の光偏向素子と、
前記第二の光偏向素子からの異なる波長の光信号を合波する光合波素子と、
を備え、
前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は、前記光分波素子および前記光合波素子の波長分散軸方向と直交するスイッチ軸方向に、入射した光信号を偏向する
ことを特徴とする光スイッチ。 - 前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子のうち少なくとも一方は、微小な位相変調素子を複数個有する空間位相変調素子であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
- 前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は液晶素子であり、前記スイッチ軸方向に曲面となる位相分布を有し、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の中間に光信号のビームウェストが存在することを特徴とする請求項1または2に記載の光スイッチ。
- 前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は入力光を反射する液晶素子であって、
前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の反射面は前記スイッチ軸方向に曲面となる位相分布を有し、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の中間に光信号のビームウェストが存在することを特徴とする請求項1または2に記載の光スイッチ。 - 前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は各々のミラーにスイッチ軸方向に曲率を持たせたMEMSミラーアレイであって、前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子の中間に光信号のビームウェストが存在することを特徴とする請求項1または2に記載の光スイッチ。
- 前記少なくとも1つの入力ポートからの光信号のすべてを前記波長分散軸方向に平行光に変換する少なくともひとつの第一の光学素子と、
前記少なくとも1つの入力ポートからの光信号のすべてを、前記スイッチ軸方向に平行光となるようにビーム形状を変換する少なくともひとつの第二の光学素子と、
前記光分波素子からの光信号を、前記波長分散軸方向に収束光とし、前記第一の光偏向素子上にビームウェストを形成する少なくともひとつの第三の光学素子と、
前記第一の光偏向素子からの光信号を前記波長分散軸方向に平行光とする少なくともひとつの第四の光学素子と、
前記第四の光学素子からの光信号を、前記波長分散軸方向に収束光とし、前記第二の光偏向素子上にビームウェストを形成する少なくともひとつの第五の光学素子と、
前記第二の光偏向素子からの光信号を前記波長分散軸方向に平行光とする少なくともひとつの第六の光学素子と、
前記光合波素子からの光信号のすべてを前記波長分散軸方向に収束光に変換し、前記出力ポートの少なくともひとつに結合するようにビーム形状を変換する、少なくともひとつの第七光学素子と、
前記光合波素子からの光信号のすべてを、その主光線が前記スイッチ軸方向に収束するように変換し、前記出力ポートの少なくともひとつに結合するように光路変換する、少なくともひとつの第八光学素子と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光スイッチ。 - 前記第一の光偏向素子および前記第二の光偏向素子は、入力光を反射する光偏向素子であって、
前記第三の光学素子は前記第四の光学素子と共用され、
前記第五の光学素子は前記第六の光学素子と共用されることを特徴とする請求項6に記載の光スイッチ。 - 前記第四の光学素子と共用される前記第三の光学素子と前記第六の光学素子と共用される前記第五の光学素子との間に、前記波長軸方向に光信号の像を反転させて反射する第九の光学素子を有し、
前記第四の光学素子と共用される前記第三の光学素子は、前記第五の光学素子および前記第六の光学素子とも共用されることを特徴とする請求項7に記載の光スイッチ。 - 前記第三の光学素子、前記第四の光学素子、前記第五の光学素子、および前記第六の光学素子は、入力光信号を反射する同一の光学素子であることを特徴とする請求項8に記載の光スイッチ。
- 前記第一の光学素子および前記第二の光学素子は、前記少なくとも1つの入力ポートから入射した光信号の各々を前記光分波素子に同じ角度で入射することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の光スイッチ。
- 前記第一の光学素子、前記第二の光学素子、第三の光学素子、第四の光学素子、第五の光学素子および第六の光学素子は、前記少なくとも1つの出力ポートへ出射する光信号を、その各々が同一の波長については、前記光合波素子に同じ角度で入射することを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の光スイッチ。
- 前記少なくとも1つの入力ポートおよび前記少なくとも1つの出力ポートは、それぞれ基板上に形成された光導波路で構成された光ビーム成形器に接続され、
前記光ビーム成形器は、
前記入力ポートの数または前記出力ポートの数の接続導波路と、
前記接続導波路に接続された第一のスラブ導波路と、
信号波長帯域での干渉特性が無視できるほど小さな光路差を有する前記第一のスラブ導波路に接続されたアレイ導波路と、
前記アレイ導波路に接続された第二のスラブ導波路と、
を備え、
前記基板の面が前記スイッチ軸と平行な向きに設置され、
前記第二のスラブ導波路の光軸方向の長さは、前記光導波路の出力端から一定の位置に設定されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の光スイッチ。 - 前記少なくとも1つの入力ポートおよび前記少なくとも1つの出力ポートは、それぞれ基板上に形成された光導波路で構成された光ビーム成形器に接続され、
前記光ビーム成形器は、
前記入力ポートの数または前記出力ポートの数の接続導波路と、
前記接続導波路に接続された第一のスラブ導波路と、
信号波長帯域での干渉特性が無視できるほど小さな光路差を有する前記第一のスラブ導波路に接続されたアレイ導波路と、
前記アレイ導波路に接続された第二のスラブ導波路と、
を備え、
前記基板の面が前記スイッチ軸と平行な向きに設置され、
前記アレイ導波路と前記第二のスラブ導波路の境界は曲面であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の光スイッチ。 - 前記接続導波路と前記第一のスラブ導波路との接続点列は、前記入力ポートが接続される前記光ビーム成形器である入力光ビーム成形器と前記出力ポートが接続される前記光ビーム成形器である出力光ビーム成形器との間で異なり、
前記入力光ビーム成形器における接続点列を構成する点と点の中間位置に、前記出力光ビーム成形器における接続点列を構成する点が配置されることを特徴とする請求項12または13に記載の光スイッチ。
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