本発明の実施の形態について、以下、具体的に説明する。
図1および図2は、転写材を塗工して微細凹凸構造を転写する鋳型を示す模式図である。図1Aに示すように、鋳型110は、微細パタン加工された転写領域、すなわちパタン部111を備えている。鋳型110におけるパタン部111以外の領域は、微細パタン加工されていない非転写領域、すなわち非パタン部112である。
この鋳型110に転写材を含む塗工液113を塗工すると、パタン部111と非パタン部112とでは、塗工液113にかかる力F(θ)の方向が逆となる(図1B参照)、または力の方向は同じでも、その絶対値が大きく異なる。このような力F(θ)が、パタン部111と非パタン部112との界面部に集中する。このとき、(1)離型性の発現する表面自由エネルギーの範囲において、鋳型110の表面自由エネルギーを増加させ、塗工性を向上させる場合、塗工液113の液滴内部には大きな応力が加わるため、パタン部111と非パタン部112との界面において液膜の分裂が起こり、これにより塗工液113の塗工不良が誘発される(以下、この現象を「塗工不良(1)」とも記す)。
一方、(2)離型性を強く発現させるために、鋳型110の表面自由エネルギーを大きく減少させた場合、非パタン部112と塗工液113の親和性が極端に低くなり、塗工された転写材は、非パタン部112上でミリメートル以上のスケールではじかれる。この場合、はじかれた非パタン部112上の塗工液113の液滴が、パタン部111内部へと部分的に侵入し、結果、パタン部111上の塗工液113の膜厚(特にパタン部111のエッジ部)に斑が生じる。このような、非パタン部112上ではじかれた塗工液113による、パタン部111上の塗工斑も、塗工不良に含まれる(以下、この現象を「塗工不良(2)」とも記す)。
また、図2Aに示すように、樹脂モールド121を、マスターモールド(原版)から得るとき、一般的に、特にロール・ツー・ロールプロセスを経る場合は、図2Aに示すように、樹脂モールド121には、パタン部122と非パタン部123が形成される。このような樹脂モールド121を鋳型として使用しそのパタンを転写形成するとき、離型性を優先させ、樹脂モールド121の離型力を高め自由エネルギーを大きく減少させた場合、塗工液124と樹脂モールド121との親和性が大きく低下する。このため、樹脂モールド121上に転写材を塗工した際に、図2Bに示すように、非パタン部123上にてはじかれた塗工液124が、矢印で示すように、パタン部122へと侵入し、パタン部122上で塗工液124の膜厚分布にばらつきが生じるという塗工不良(2)が発生する。
さらに、図1に示すパタン部111が有する微細パタンが微細凹凸構造であるほど、特に、ナノスケールになるほど、また、鋳型110の離型性が大きくなり、塗工液113と鋳型110との親和性が低下するほど、塗工液113にかかる力F(θ)は強くなり、塗工不良(1)、(2)の程度がより大きくなる。また、パタン部111と非パタン部112との間に存在する樹脂等の厚み斑の方向によっては、非パタン部112からパタン部111の方向に加わるF(θ)が見かけ上大きくなり、非パタン部112上にてはじかれた塗工液113の、パタン部111への侵入度合が増加し、塗工不良(2)の程度がより大きくなる。
そこで、本発明者は、塗工液113の液膜内部に加わる応力を緩和し、液体の分裂に代表される塗工不良(1)を抑制するために、または塗工液113の液滴内部に加わる応力を最大限に大きくし、非パタン部112上ではじかれた塗工液113の液滴が、パタン部111内部へと侵入することを阻害し、塗工不良(2)を抑制するために、図3に示すように、パタン部111と非パタン部112との間にバリア領域114を設けることを見出した。
図4Aに示すように、パタン部111と非パタン部112との間にバリア領域114を設けることにより、塗工液113の接触角が連続的に変化し、塗工液113にかかる力F(θ)も連続的に変化する。そのため、塗工液113の液滴内部への応力集中に起因する塗工不良(1)は起こらずに、良好な塗工性を保つことができる。
また、バリア領域114を設けることにより、バリア領域114上における塗工液113の液膜内部への応力を大きくすることができる。そのため、図4Bに示すように、非パタン部112上ではじかれた塗工液113の液滴は、矢印で示すように、バリア領域114を乗り越えることができず、パタン部111上の塗工性、特にパタン部111のエッジ部の塗工性が良好に保たれて塗工不良(2)が抑制される。
本発明の微細凹凸構造転写用鋳型(以下、単に転写用鋳型とも言う)は、下記の4種類を包含する。第1の転写用鋳型(I)および、第2の転写用鋳型(II)を使用することにより、塗工不良(2)を抑制し、パタン部111に対する塗工性を良質に保つことができる。一方で、第3の転写用鋳型(III)および、第4の転写用鋳型(IV)を使用することにより、塗工不良(1)を抑制し、パタン部111に対する塗工性を良質に保つことができる。
本発明の第1の転写用鋳型(I)においては、基材の一主面上に、少なくともいずれも複数の凹部を具備する転写領域およびバリア領域を具備する転写用鋳型であって、前記転写領域の平均ラフネスファクタRf1と、前記バリア領域の平均ラフネスファクタRf2との間には、Rf1>Rf2の関係が成立すると共に、前記転写領域の平均開口率Ar1と前記バリア領域の平均開口率Ar2との間には、Ar1>Ar2の関係が成立する。
本発明の第2の転写用鋳型(II)においては、基材の一主面上に、少なくともいずれも複数の凸部を具備する転写領域およびバリア領域を具備する転写用鋳型であって、前記転写領域の平均ラフネスファクタRf1と、前記バリア領域の平均ラフネスファクタRf2との間には、Rf1<Rf2の関係が成立すると共に、前記転写領域の平均開口率Ar1と前記バリア領域の平均開口率Ar2との間には、Ar1>Ar2の関係が成立する。
本発明の第3の転写用鋳型(III)においては、基材の一主面上に、少なくともいずれも複数の凹部を具備する転写領域およびバリア領域を具備する転写用鋳型であって、前記転写領域の平均ラフネスファクタRf1と、前記バリア領域の平均ラフネスファクタRf2との間には、Rf1<Rf2の関係が成立すると共に、前記転写領域の平均開口率Ar1と前記バリア領域の平均開口率Ar2との間には、Ar1<Ar2の関係が成立する。
本発明の第4の転写用鋳型(IV)においては、基材の一主面上に、少なくともいずれも複数の凸部を具備する転写領域およびバリア領域を具備する転写用鋳型であって、前記転写領域の平均ラフネスファクタRf1と、前記バリア領域の平均ラフネスファクタRf2との間には、Rf1>Rf2の関係が成立すると共に、前記転写領域の平均開口率Ar1と前記バリア領域の平均開口率Ar2との間には、Ar1<Ar2の関係が成立する。
第1の転写用鋳型(I)においては、バリア領114域およびパタン部111ともに複数の凹部から構成される微細凹凸構造を具備し、バリア領域114のラフネスファクタRf2は、パタン部111のラフネスファクタRf1よりも小さく、且つ、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さく設定される。
また、第2の転写用鋳型(II)においては、バリア領域114およびパタン部111ともに複数の凸部から構成される微細凹凸構造を具備し、バリア領域114のラフネスファクタRf2は、パタン部111のラフネスファクタRf1よりも大きく、且つ、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さく設定される。このような、バリア領域114を設けることにより、バリア領域114上における塗工液113の液滴内部に加わる応力を最大限に大きくすることで、非パタン部112上にてはじかれた塗工液113の液滴が、パタン部111内部へと侵入することを阻害でき、塗工不良(2)を抑制できる。
第3の転写用鋳型(III)においては、バリア領域114およびパタン部111ともに複数の凹部から構成される微細凹凸構造を具備し、バリア領域114のラフネスファクタRf2は、転写領域、すなわちパタン部111のラフネスファクタRf1よりも大きく、且つ、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きく設定される。
また、第4の転写用鋳型(IV)においては、バリア領域114およびパタン部111ともに複数の凸部から構成される微細凹凸構造を具備し、バリア領域114のラフネスファクタRf2は、パタン部111のラフネスファクタRf1よりも小さく、且つ、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きく設定される。このような、バリア領域114を設けることにより、バリア領域114上にて、塗工液113の液膜内部に加わる応力を緩和し、パタン部111と非パタン部112界面における液膜の分裂を抑制でき、塗工不良(1)を抑制することができる。
下記表1に、上述の第1〜第4の転写用鋳型(I)〜(IV)についてまとめた。
表1においてタイプとは、微細凹凸構造が、複数の凹部で構成されている場合を凹型、複数の凸部で構成されている場合を凸型と呼ぶ。
以下、本発明の転写用鋳型の説明において、第1〜第4の転写用鋳型(I)〜(IV)のすべてに共通する説明の際は、単に転写用鋳型と記載し、第1〜第4の転写用鋳型(I)〜(IV)のいずれかの特徴を記載する場合は、第1の転写用鋳型(I)、第2の転写用鋳型(II)、第3の転写用鋳型(III)、または第4の転写用鋳型(IV)と記載する。また、転写用鋳型(I)、(II)といったような記載は、転写用鋳型(I)および転写用鋳型(II)に共通の特徴を記載することを意味する。
このような転写用鋳型としては、例えば、円筒状または円柱状のマスターモールド(原版)と、このマスターモールドからの転写で得られるリール状樹脂モールド、また、円盤に代表される平板形状を有する平板マスターモールドと、このマスターモールドからの転写で得られるフィルム状樹脂モールドが挙げられる。
転写用鋳型(I)、(III)が具備する微細凹凸構造は、特に限定されないが、円錐形状、角錐形状、楕円錘形状、円柱形状、角柱形状、または楕円柱形状である複数の凹部(ホール形状)で構成されてもよい。また、微細凹凸構造は、特定方向にそれぞれ延在する線状の凸部および凹部(ラインアンドスペース構造)で構成されてもよい。ホール形状は、各ホールが滑らかな凸部を通じ隣接していてもよい。
一方、転写用鋳型(II)、(IV)の具備する微細凹凸構造は、特に限定されないが、円錐形状、角錐形状、楕円錘形状、円柱形状、角柱形状、または楕円柱形状である複数の凸部(ドット形状)で構成されてもよい。また、微細凹凸構造は、特定方向にそれぞれ延在する線状の凸部および凹部(ラインアンドスペース構造)で構成されてもよい。ドット形状は、各ドットが滑らかな凹部を通じ隣接していてもよい。
ここで、ドット形状とは、図5Aに示すように、基材131の表面に「柱状(錐状)体(凸部)131aが複数配置された形状」を意味する。また、ホール形状とは、図5Bに示すように、基材132の表面に「柱状(錐状)の穴(凹部)132bが複数形成された形状」を意味する。微細凹凸構造において、凸部または凹部同士の距離が50nm以上5000nm以下であり、凸部の高さまたは凹部の深さが10nm以上2000nm以下であることが好ましい。特に、凸部の高さまたは凹部の深さが50nm以上1000nm以下であると、パタン部111に対する塗工性と、バリア領域114の機能をいっそう向上することが可能となり、パタン部111への塗工性が向上すため好ましい。用途にもよるが、凸部または凹部同士の隣接距離(凸部の頂点同士の間隔または凹部の開口部中心点間の間隔)が小さく、凸部の高さまたは凹部の深さ、すなわち凹部の底から凸部の頂点までの高さが大きいことが好ましい。ここで、凸部とは、微細凹凸構造の平均高さより高い部位をいい、凹部とは、微細凹凸構造の平均高さより低い部位をいうものとする。また、微細凹凸構造のアスペクト比(凸部高さ/凸部底部径、または凹部深さ/凹部開口径)は、塗工精度、バリア領域の機能、および、転写精度の観点から0.1〜5.0であると好ましく、0.3〜3.0であるとより好ましく、0.5〜1.5であると最も好ましい。
転写用鋳型のパタン部111において、パタン部111の表面自由エネルギーを低くし、即ち、離型性を向上させ、且つ塗工性を良好に保つために、パタン部111は塗工液に対して、エネルギー的に最終的にとりうる塗工液のモードがWenzelモードになるような微細凹凸構造を具備すると好ましい。このような観点から、転写用鋳型における微細凹凸構造のパタン部111において、パタン部111における開口率が45%以上であると好ましい。特に、50%以上であると好ましく、55%以上であるとより好ましい。また、パタン部111における開口率が65%以上であると、パタン部111の微細凹凸構造の凸部上から凹部内部方向へのポテンシャルが働き、凹部内部へ塗工液が充填された後に、凸部上へと塗工液が再移動することを回避できるため、塗工性がいっそう向上し、より好ましい。さらには、パタン部111における開口率は、70%以上が好ましく、より好ましくは75%以上であり、80%以上であるとさらに好ましい。
また、転写用鋳型(I)、(III)におけるパタン部111のホール状の微細凹凸構造において、ホール開口部の面積が、ホール底部の面積よりも大きいと、上記効果をより発揮できるため好ましい。さらに、開口淵と凹部側面とは、連続的に滑らかにつながっていると、固液気界面(TPCL)におけるピン止め効果を小さくすることができ、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましい。
また、転写用鋳型(II)、(IV)におけるパタン部111のドット状の微細凹凸構造において、ドット頂点の面積が、ドット底部の面積よりも小さいと、上記効果をより発揮できるため好ましい。さらに、ドット頂部淵とドット側面とは、連続的に滑らかにつながっていると、固液気界面(TPCL)におけるピン止め効果を小さくすることができ、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましい。
なお、転写用鋳型(I)、(II)を使用することで、以下のメカニズムにより塗工不良(2)を抑制することができる。離型性を強く発現させるために、表面自由エネルギーを大きく減少させた場合、非パタン部112と塗工液113との親和性が非常に小さくなる。この場合、パタン部111と非パタン部112との間にバリア領域114を設けることで、パタン部111とバリア領域114とで、微細凹凸構造の凹部内部から凸部上部へと加わる力、転写材塗工液の微細凹凸構造認識性および塗工初期の転写材塗工液の状態(モード)が変化し、バリア領域114上にて塗工液113の液滴(液膜)内部への応力を大きくすることができる。そのため、非パタン部112上ではじかれた塗工液113の液滴は、バリア領域114を乗り越えることができず、塗工不良(2)を抑制しパタン部111上の塗工性を良好に保つことができる。
一方で、転写用鋳型(III)、(IV)を使用することで、以下のメカニズムにより塗工不良(1)を抑制することができる。非パタン部112と塗工液113との親和性が、離型性を有す範囲で高い場合、パタン部111と非パタン部112との間に、バリア領域114を設けることで、パタン部111とバリア領域114とで、微細凹凸構造の凹部内部から凸部上部へと加わる力、塗工液の微細凹凸構造認識性および塗工初期の塗工液の状態(モード)がなだらかに変化するため、バリア領域114上における塗工液113にかかる力F(θ)も連続的に変化する。そのため、塗工液113の液膜内部への応力集中を抑制することができ、パタン部111上における良好な塗工性を保つことができる。
転写用鋳型のパタン部111に対する水の接触角は、転写材の転写性(離型性)の観点から60度以上であると好ましい。特に70度以上であると好ましく、80度以上であるとより好ましい。転写用鋳型のパタン部111に対する表面自由エネルギーをより低下させ、転写精度を向上させる観点から、85度以上であると好ましく、90度以上であるとより好ましい。一方でパタン部111に対する水の接触角の上限値は180度未満であると、塗工性を向上できるため好ましい。特に、160度以下であると好ましく、140度以下であるとより好ましい。更に、塗工液の滑り性を抑制し、塗工性をより高める観点から120度以下であると好ましい。このような離型性を発現する領域においても、上記開口率を満たし、バリア領域114を設けることで、パタン部111に対する塗工を良好に行うことができる。なお、接触角は、『基板ガラス表面のぬれ性試験方法』として,JIS R3257(1999)に制定された接触角測定方法を採用し、接触角測定対象となる基材として、本発明に係る転写用鋳型のパタン部111を使用するものとする。
さらに、転写用鋳型におけるバリア領域114による効果は、バリア領域114に対する水の接触角が90度以上であると一層発揮される。これは、転写用鋳型(I)、(II)の場合は、パタン部111とバリア領域114における、微細凹凸構造の凹部内部から凸部上部へと加わる力、塗工液113の微細凹凸構造認識性および塗工初期の塗工液の状態(モード)の変化の差をいっそう大きくできることによる。一方で、転写用鋳型(III)、(IV)の場合は、パタン部111とバリア領域114における、微細凹凸構造の凹部内部から凸部上部へと加わる力、塗工液113の微細凹凸構造認識性および塗工初期の塗工液の状態(モード)の変化をいっそうなだらかにできることによる。
また、転写用鋳型における微細凹凸構造は、図6に示すように、面内において直交する第1方向D1と第2方向D2に対し、第1方向D1にピッチPで凸部(または凹部)が配列し、かつ、第2方向D2にピッチSで凸部(または凹部)が配列する場合において、第2方向D2に列をなす凸部(または凹部)の第1方向D1に対するずれαの規則性が高い配列であってもよいし(図6A参照)、ずれαの規則性が低い配列であってもよい(図6B参照)。ずれαとは、第1方向D1に平行な隣り合う列において、最も近接する凸部の中心を通る第2方向D2に平行な線分間の距離をいう。例えば、図6Aに示すように、第1方向D1に平行な第(N)列の任意の凸部の中心を通る第2方向D2に平行な線分と、この凸部から最も近い距離にある第(N+1)列の凸部の中心を通る第2方向D2に平行な線分との間の距離が、ずれαと規定される。図6Aに示す配列は、どの列を第(N)列としても、ずれαはほぼ一定であるため、周期性を備えた配列といえる。一方、図6Bに示す配列は、どの列を第(N)列とするかによって、ずれαの値が変わるため、非周期性を備えた配列といえる。
ピッチPおよびピッチSは、想定する用途に応じて適宜設計することができる。例えば、ピッチPとピッチSとは等しいピッチであってもよい。また、図6においては、凸部(または凹部)が重なりを持たず独立した状態で描かれているが、第1方向D1と第2方向D2の両方、またはいずれか一方に配列する凸部(または凹部)が重なっていてもよい。
例えば、LEDのサファイア基材表面の加工を行うための転写用鋳型の場合、微細凹凸構造は、ピッチが200nm〜800nm、高さが100nm〜1000nmである、ナノスケールで正規配列をなし、かつ、マイクロスケールの大きな周期性を有すると好ましい。特に、転写用鋳型(I)、(III)であると好ましい。中でも、微細凹凸構造のピッチが100nm〜500nm、高さが50nm〜500nmであると、LEDの内部量子効率を向上できる。さらに、配列として、ナノスケールで正規配列をなし、かつ、マイクロスケールの大きな周期性を有する、ピッチにマイクロスケールの周期を有する変調を加えると、光取り出し効率も同時に向上させることが可能となり、高効率なLEDを製造することができる。
本発明の転写用鋳型におけるパタン部111およびバリア領域114は、上記説明したように、所定の接触角範囲を満たすことで高離型性を発現し、且つ所定の開口率を満たすことで塗工性を良好に保つことが出来る。
また、転写用鋳型におけるバリア領域114は、パタン部111の少なくとも一部に隣接すると好ましい。ここで隣接するとは、図7Aに示すように、微細凹凸構造を具備するパタン部111に隣接して設けられる場合を含む。この場合の他、図7Bに示すように、微細凹凸構造を具備するパタン部111に隣接して設けられる微細凹凸構造を具備しない非パタンバリア領域115を介し、微細凹凸構造を具備するバリア領域114が設けられる場合を含む。このとき、微細凹凸構造を具備するパタン部111と微細凹凸構造を具備するバリア領域114との間に設けられる微細凹凸構造を具備しない非パタンバリア領域115の厚み(幅)は30mm以下であることが必要である。30mm以下であることにより、上記効果を発揮可能であり、パタン部111に対する塗工性を改善できる。特に、パタン部111に対する塗工性をいっそう改善する観点から、前記厚み(幅)は、10mm以下であると好ましく、5mm以下であるとより好ましく、3mm以下であるとなお好ましく、1mm以下であると最も好ましい。なお、図7Aに示す微細凹凸構造を具備するパタン部111に隣接して設けられる場合、すなわち、微細凹凸構造を具備するパタン部111と微細凹凸構造を具備するバリア領域114との間に設けられる微細凹凸構造を具備しない非パタンバリア領域115の厚み(幅)が0mmの場合が、上記効果をもっとも発揮できるため、好ましい。
また、パタン部111に隣接して設けられるバリア領域114は必ずしも連続している必要はない。図7Cおよび図7Dは、バリア領域114が途切れている場合を図示している。図7Cおよび図7Dに示すように、バリア領域114はパタン部111の少なくとも一部に隣接していれば、本発明の効果を発揮できる。すなわち、バリア領域114は、連続的に図7Aのように設けられても、非連続的に図7Cおよび図7Dのように設けられてもよい。また、非連続的に設けられる場合、バリア領域114の途切れの数は、特に限定されない。特に、本発明の効果をいっそう発揮する観点から、これらの途切れの幅Wは、30mm以下が好ましく、10mm以下であるとより好ましく、5mm以下であるとよく、3mm以下であるとなお好ましく、1mm以下であるともっとも好ましい。なお、図7Aに示すように、バリア領域114が連続的に連なっている状態の場合、パタン部111への塗工性をいっそう向上できるためもっとも好ましい。
同様に、上記図7Bを使用し説明した非パタンバリア領域115が配置される場合も、図7E、図7Fおよび図7Gに示すように、上記説明したようにバリア領域114は連続的であっても非連続的であってもよい。また、同様に非パタンバリア領域115も連続的であっても非連続的であってもよい。このような場合の、バリア領域114の途切れ幅、および非パタンバリア領域115の途切れ幅Wは、30mm以下が好ましく、10mm以下であるとより好ましく、5mm以下であるとよく、3mm以下であるとなお好ましく、1mm以下であるともっとも好ましい。なお、図7Bに示すように、バリア領域114および非パタンバリア領域115が共に連続的に連なっている状態の場合、パタン部111への塗工性をいっそう向上できるためもっとも好ましい。
また、転写用鋳型におけるパタン部111は、バリア領域114に囲まれた状態または挟まれた状態で基材の表面に配置されると、パタン部111全面に対する塗工性がより向上するため好ましい。パタン部111が、バリア領域114に囲まれた状態とは、パタン部111が閉じられた領域を有し、その周囲にバリア領域114が配置された状態を指す。また、パタン部111が、バリア領域114に挟まれた状態とは、パタン部111の両端部にバリア領域114が並設して配置された状態を指す。どちらの場合も、パタン部111は、バリア領域114の内側に配置されている。
なお、この場合のパタン部111とバリア領域114の配置も、図7Bに示す非パタンバリア領域115を具備することが可能であり、前記範囲を満たすものとする。
ここで、パタン部111が、バリア領域114に囲まれた状態または挟まれた状態のいずれの場合であっても、上記図7Cおよび図7Dを用いて説明したバリア領域114の途切れを含み、また、図7E,図7Fおよび図7Gを用いて説明したバリア領域114の途切れおよび非パタンバリア領域115の途切れを含むものとする。
パタン部111が、バリア領域114に囲まれた状態は、パタン部111が閉じられた領域を有し、その周囲にバリア領域114が配置された状態を指すが、パタン部111を囲むバリア領域114は、図8に示すように、連続的につながっていてもまたは途切れていてもよい。図8Aは、パタン部111がバリア領域114により全面を囲まれている場合を表現している。図8B、図8Cおよび図8Dは、パタン部111を囲むバリア領域114が途切れている状態を表現している。図8Bおよび図8Cにおいては、複数の途切れた箇所を図示しているが、途切れは図8Dに示すように一か所であってもよい。すなわち、途切れの数および場所は限定されない。このような途切れた部分がある場合においても、本発明の効果は得られるため、パタン部111が、バリア領域114に囲まれた状態において、バリア領域114が途切れた状態も含むものとする。これらの途切れの幅Wは、30mm以下が好ましく、10mm以下であるとより好ましく、5mm以下であるとよく、3mm以下であるとなお好ましく、1mm以下であるともっとも好ましい。なお、図8Aに示すように、バリア領域114が連続的に連なっている状態の場合、パタン部111への塗工性をいっそう向上できるためもっとも好ましい。なお、図7B,図7E,図7Fおよび図7Gを用いて説明した非パタンバリア領域115も同様に含むことができる。
また、パタン部111が、バリア領域114に挟まれた状態とは、パタン部111の両端部にバリア領域114が並設して配置された状態をさすが、パタン部111を挟み込むバリア領域114は、図9に示すように、連続的につながっていても、または途切れていてもよい。図9Aは、パタン部111がバリア領域114により挟まれて配置される場合を表現している。図9B、図9Cおよび図9Dは、パタン部111を囲むバリア領域114が途切れている状態を表現している。図9Bおよび図9Cにおいては、複数の途切れた箇所を図示しているが、途切れは図9Dに示すように一か所であってもよい。すなわち、途切れの数および場所は限定されない。このような途切れた部分がある場合においても、本発明の効果は得られるため、パタン部111が、バリア領域114に挟まれた状態において、バリア領域114が途切れた状態も含むものとする。これらの途切れの幅(W)は、30mm以下が好ましく、10mm以下であるとより好ましく、5mm以下であるとよく、3mm以下であるとなお好ましく、1mm以下であるともっとも好ましい。なお、図9Aに示すように、バリア領域114が連続的に連なっている状態の場合、パタン部111への塗工性をいっそう向上できるためもっとも好ましい。なお、図7B,図7E,図7Fおよび図7Gを用い説明した非パタンバリア領域115も同様に含むことができる。なお、図9においては、パタン部111は非パタン部112の中央付近に配置されているが、パタン部111の配置箇所は特に限定されない。また、パタン部111の上辺および下辺(図9Aにおけるバリア領域114と接していない辺)を上下方向に伸ばし、パタン部111がバリア領域114に挟まれ、バリア領域114にて挟まれたパタン部111が非パン部112に挟まれる構成としてもよい。
転写用鋳型において、パタン部111は、平均ラフネスファクタがRf1および平均開口率Ar1である微細凹凸構造を具備し、バリア領域114は、平均ラフネスファクタがRf2および平均開口率Ar2である微細凹凸構造を具備する。ラフネスファクタRfとは、微細化の指標となる無次元値であり、単位面積が、微細凹凸構造化により何倍に増加したかを意味している。すなわち、微細凹凸構造を付与しない表面のラフネスファクタRfは1となる。また、平均開口率とは、空隙割合の指標となる無次元値であり、微細凹凸構造表面内における空隙の存在割合を意味している。ラフネスファクタRfおよび平均開口率Arは次のように定義される。
1.微細凹凸構造がドット形状またはホール形状であり、規則性のある配列の場合
図10Aは、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状であり、かつ、規則性を持って配列されている状態を示している。これらの微細凹凸構造から、N列をなす微細凹凸構造群(N)と、N+1列をなす微細凹凸構造群(N+1)とを選択する。続いて、微細凹凸構造群(N)の中から、隣り合う2つの微細凹凸構造mおよびm+1を選択する。続いて微細凹凸構造群(N+1)の中から、微細凹凸構造mおよびm+1に最も近い距離にある、微細凹凸構造lおよびl+1を選択する。これらの微細凹凸構造m、m+1、lおよびl+1の中心を結び作られる領域を、単位セル201とする。単位セル201の面積をSoとし、単位セル201内における微細凹凸構造m、m+1、1およびl+1の側面積の和をS1とする。この場合のラフネスファクタRfは、1+(S1/So)で定義される。なお、単位セル201内に微細凹凸構造が存在しなければ、S1=0となるため、ラフネスファクタRf=1となり、単位セル201内に微細凹凸構造が存在すればラフネスファクタRf>1となる。
単位セル201内の開口部の面積をShとすると、その開口率は、(Sh/So)×100で定義される。
なお、上記の列とは、次のように定義される。転写用鋳型を構成する基材が円筒状または円柱状である場合は、その周方向を列とする。また、転写用鋳型を構成する基材がリール状樹脂である場合は、その搬送方向を列とする。さらに、転写用鋳型を構成する基材が円盤形状を有する平板である場合は、その円周方向を列とする。また、基材が円盤形状を有する平板からなる転写用鋳型をマスターとし、転写形成された転写用鋳型、すなわちフィルム状樹脂モールドである場合、前記マスターの円周方向を列とする。
2.微細凹凸構造がドット形状またはホール形状であり、規則性の弱い配列またはランダム配列の場合
図10Bは、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状であり、規則性の弱い配列またはランダム配列されている状態を示している。このときには、微細凹凸構造の平均ピッチが500nmより小さい場合、これらの微細凹凸構造を有する領域内に、1μm×1μmの正方形をとり、これを単位セル202とする。なお、微細凹凸構造の平均ピッチが500nm以上1000nm以下の場合は、単位セル202は2μm×2μmとし、微細パタンの平均ピッチが1000nm超1500nm以下の場合は、単位セル202は3μm×3μmとする。単位セル202の面積をSoとし、単位セル202内に含まれる全ての微細凹凸構造の側面積の和をS1とする。この場合のラフネスファクタRfは、1+(S1/So)で定義される。なお、ここで平均ピッチとは、隣接するドットの中心または隣接するホールの中心同士の距離の平均値を意味する。平均点数としては10点以上が好ましい。
単位セル202内の開口部の面積をShとすると、その開口率は、(Sh/So)×100で定義される。
3.微細凹凸構造がラインアンドスペース構造の場合
図10Cは、微細凹凸構造がラインアンドスペース構造を示している。各ラインは、等間隔で配列されていても、間隔が変動していてもよい。これらの微細凹凸構造から、N列目のラインと、N+1列目のラインとを選択する。続いて、これらのライン上に、それぞれ1μmの線分を引く。これらの線分の端点を結んでできた正方形または長方形を単位セル203とする。単位セル203の面積をSoとし、単位セル203内に含まれる全ての微細凹凸構造の側面積の和をS1とする。この場合のラフネスファクタRfは、1+(S1/So)で定義される。
単位セル203内の開口部の面積をShとすると、その開口率は、(Sh/So)×100で定義される。
また、平均ラフネスファクタRfは、ラフネスファクタRfの平均値を意味している。ラフネスファクタRfの平均値は、5μm×5μmの範囲内において、ランダムに10点のラフネスファクタRfを算出し、これらの加算平均値と定義される。
ラフネスファクタRfは、微細凹凸構造の高さ、ピッチ、アスペクト等で設計することができる。例えば、ラフネスファクタRf2を小さくするためには、上記単位セル201内部に含まれる微細凹凸構造の側面積を小さくすればよい。例えば、微細凹凸構造の高さを減少させるか、ピッチを大きくするか、またはアスペクトを低くすればよい。これらの変化を連続的に生じさせることで、ラフネスファクタRfは連続的に変化する。また、微細凹凸構造の高さ、ピッチ、アスペクトのいずれか1つを変化させても、複数を変化させてもよい。微細凹凸構造製造の観点から、ピッチとアスペクトの両方、またはいずれか一方を変化させることが好ましい。アスペクトは、凸部底部の幅または凹部開口幅を制御することで、容易に変化させることが可能となる。また、微細凹凸構造が凸型の場合、開口率を大きくすることでラフネスファクタRf2を小さく出来、微細凹凸構造が凹型の場合、開口率を小さくすることでラフネスファクタRf2を小さくできる。
また、例えば、ラフネスファクタRf2を大きくするためには、上記単位セル内部に含まれる微細凹凸構造の側面積を大きくすればよい。例えば、微細凹凸構造の高さを増加させるか、ピッチを小さくするか、またはアスペクトを高くすればよい。また、微細凹凸構造の高さ、ピッチ、アスペクトのいずれか1つを変化させても、複数を変化させてもよい。微細凹凸構造製造の観点から、ピッチとアスペクトの両方、またはいずれか一方を変化させることが好ましい。アスペクトは、凸部底部の幅または凹部開口幅を制御することで、容易に変化させることが可能となる。また、微細凹凸構造が凸型の場合、開口率を小さくすることでラフネスファクタRf2を大きく出来、微細凹凸構造が凹型の場合、開口率を大きくすることでラフネスファクタRf2を大きくできる。
次に、転写用鋳型(I)、(IV)におけるラフネスファクタRf1,Rf2の例について説明する。
転写用鋳型(I)、(IV)においては、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部111の平均ラフネスファクタRf1よりも小さく設定される。
図11は、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状の場合であって、第2方向D2のピッチを変化させた状態を示す模式図である。図11において、ドット形状である微細凹凸構造の頂部(凸部)またはホール形状である微細凹凸構造の開口部(凹部)を、平面視にて円形状で表わしている。図11において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、第2方向D2における凸部または凹部の間隔は、パタン部111の凸部または凹部の間隔よりも広くなり、バリア領域114の凸部または凹部の密度は、パタン部111の凸部または凹部の密度よりも疎になっている。換言すると、パタン部111における隣接する凸部間の距離または隣接する凹部間の距離は、バリア領域114における隣接する凸部間の距離または隣接する凹部間の距離よりも小さい。
微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部111の平均ラフネスファクタRf1よりも小さくなっている。
また、微細凹凸構造が凸型の場合、すなわち転写用鋳型(IV)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなり、微細凹凸構造が凹型の場合、すなわち転写用鋳型(I)の場合、バリア領域の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなる。
図11においては、バリア領域114の第2方向D2における凸部または凹部の間隔を、パタン部111の凸部または凹部の間隔よりも大きくしているが、バリア領域114の凸部または凹部の密度を、パタン部111の凸部または凹部の密度よりも疎にするためには、第1方向D1に対して同様に凸部または凹部の間隔を変化させても、または、第1方向D1と第2方向D2のいずれに対しても凸部または凹部の間隔を変化さえてもよい。なお、図11においては、凸部または凹部の間隔を変化させているが、凸部の頂部径または凹部の開口径を変化させても、バリア領域114の凸部または凹部の密度を、パタン部111の凸部または凹部の密度よりも疎にすることが出来る。具体的には、パタン部111における凸部頂部の径または凹部開口径を、バリア領域114の凸部頂部の径または凹部開口径よりも大きくすることで、バリア領域114の凸部または凹部の密度を、パタン部111の凸部または凹部の密度よりも疎にすることが出来る。また、凸部の高さまたは凹部の深さを変化させることで、ラフネスファクタRfを変化させることが出来る。具体的には、パタン部111の凸部の高さまたは凹部の深さを、バリア領域114の凸部の高さまたは凹部の深さよりも大きくすることで、Rf1>Rf2の関係を満足することが出来る。また上記説明した凸部または凹部の間隔、凸部頂部径または凹部開口部径または凸部の高さまたは凹部の深さを同時に変化させることで、ラフネスファクタの制御性が向上する。
次に、転写用鋳型(II)、(IV)におけるラフネスファクタRf1,Rf2の例について説明する。
転写用鋳型(II)、(III)においては、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部111の平均ラフネスファクタRf1よりも大きく設定される。
図12は、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状の場合であって、第2方向D2のピッチを変化させた状態を示す模式図である。図12において、ドット形状である微細凹凸構造の頂部(凸部)またはホール形状である微細凹凸構造の開口部(凹部)を、平面視にて円形状で表わしている。図12において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、第2方向D2における凸部または凹部の間隔は、パタン部111の凸部または凹部の間隔よりも狭くなり、バリア領域114の凸部または凹部の密度は、パタン部111の凸部または凹部の密度よりも密になっている。換言すると、パタン部111における隣接する凸部間の距離または隣接する凹部間の距離は、バリア領域114における隣接する凸部間の距離または隣接する凹部間の距離よりも大きい。
微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部111の平均ラフネスファクタRf1よりも大きくなっている。
また、微細凹凸構造が凸型である場合、すなわち転写用鋳型(II)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなり、微細凹凸構造が凹型である場合、すなわち転写用鋳型(III)の場合、バリア領域の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなる。
図12においては、バリア領域114の第2方向D2における凸部または凹部の間隔を、パタン部111の凸部または凹部の間隔よりも小さくしているが、バリア領域114の凸部または凹部の密度を、パタン部111の凸部または凹部の密度よりも密にするためには、第1方向D1に対して同様に凸部または凹部の間隔を変化させても、または、第1方向D1と第2方向D2のいずれに対しても凸部または凹部の間隔を変化さえてもよい。なお、図12においては、凸部または凹部の間隔を変化させているが、凸部の頂部径または凹部の開口径を変化させても、バリア領域114の凸部または凹部の密度を、パタン部111の凸部または凹部の密度よりも密にすることが出来る。具体的には、パタン部111における凸部頂部の径または凹部開口径を、バリア領域114の凸部頂部の径または凹部開口径よりも小さくすることで、バリア領域114の凸部または凹部の密度を、パタン部111の凸部または凹部の密度よりも密にすることが出来る。また、凸部の高さまたは凹部の深さを変化させることで、ラフネスファクタRfを変化させることが出来る。具体的には、パタン部111の凸部の高さまたは凹部の深さを、バリア領域114の凸部の高さまたは凹部の深さよりも小さくすることで、Rf1<Rf2の関係を満足することが出来る。また上記説明した凸部または凹部の間隔、凸部頂部径または凹部開口部径または凸部の高さまたは凹部の深さを同時に変化させることで、ラフネスファクタの制御性が向上する。
転写用鋳型のバリア領域114における微細凹凸構造はラフネスファクタの勾配を有することが好ましい。このラフネスファクタRfの勾配は、転写用鋳型(I)、(IV)の場合は、パタン部111に近づくほど大きくなる勾配であると、より好ましく、転写用鋳型(II)、(III)の場合は、パタン部111に近づくほど小さくなる勾配であると、より好ましい。なお、転写用鋳型(II)、(III)の場合、平均ラフネスファクタRf2は、パタン部111からバリア領域114方向へと、大きくなるような勾配を有すが、このときの平均ラフネスファクタRf2は、以下の定義に従うものとする。転写用鋳型(II)の場合、バリア領域114の微細凹凸構造は複数の凸部から構成される。平均ラフネスファクタRf2を、パタン部111からバリア領域114方向へと大きくするには、単位セルに対する凸部側面積の割合を大きくすればよい。ここで、例えば、単位セルの大きさを一定とし、凸部の径を大きくした場合、平均ラフネスファクタRf2は大きくなる。しかしながら、凸部同士が単位セルの内部において接触しはじめた段階から、単位セル内部に含まれる凸部側面積は減少するため、平均ラフネスファクタRf2は減少する。よって、転写用鋳型(II)の場合、バリア領域114内部において、隣接する凸部同士が接触するまでの範囲をもって、上記平均ラフネスファクタRf2の勾配を定義するものとする。一方、転写用鋳型(III)の場合、バリア領域114の微細凹凸構造は複数の凹部から構成される。平均ラフネスファクタRf2を、パタン部111からバリア領域114方向へと大きくするには、単位セルに対する凹部側面積の割合を大きくすればよい。ここで、例えば、単位セルの大きさを一定とし、凹部の径を大きくした場合、平均ラフネスファクタRf2は大きくなる。しかしながら、凹部同士が単位セルの内部において接触しはじめた段階から、単位セルの内部に含まれる凹部側面積は減少するため、平均ラフネスファクタRf2は減少する。よって、転写用鋳型(III)の場合、バリア領域114内部において、隣接する凹部同士が接触するまでの範囲をもって、上記平均ラフネスファクタRf2の勾配を定義するものとする。
このようなラフネスファクタRf2の勾配を有することで、転写用鋳型(I)、(II)においては、非パタン部112上にてはじかれた塗工液113がパタン部111に侵入する阻害性がいっそう向上するため、塗工不良(2)を効果的に抑制できる。また、転写用鋳型(III)、(IV)においては、ラフネスファクタRf2に勾配があることは、塗工液113の膜内部に加わる応力が勾配を持つことを意味し、応力集中をさけることが出来、結果、塗工不良(1)を抑制することができる。
ラフネスファクタRf2に勾配を持たせるためには、上記単位セル201〜203内部に含まれる微細凹凸構造の側面積を連続的に変化させればよい。例えば、微細凹凸構造の高さを連続的に変化させるか、ピッチを連続的に変化させるか、または、アスペクトを連続的に変化させればよい。また、微細凹凸構造の高さ、ピッチ、アスペクトのいずれか1つを連続的に変化させても、複数を連続的に変化させてもよい。微細凹凸構造製造の観点から、ピッチとアスペクトの両方、またはいずれか一方を連続的に変化させることが好ましい。
次に、転写用鋳型(I)、(IV)におけるラフネスファクタRf1,Rf2の例を示す。この例は、ラフネスファクタRf2に勾配を有す場合である。
転写用鋳型(I)、(IV)においては、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部111の平均ラフネスファクタRf1よりも小さく設定される。また、バリア領域114のラフネスファクタRf2は、パタン部111に近づくほど大きくなる勾配を有す。
図13は、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状の場合であって、第2方向D2のピッチを連続的に変化させた状態を示す模式図である。図13において、ドット形状である微細凹凸構造の頂部(凸部)またはホール形状である微細凹凸構造の開口部(凹部)を、平面視にて円形状で表わしている。図13において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側へ行くほど、第2方向D2における凸部または凹部の間隔は広くなり、凸部または凹部の密度が疎になっている。換言すると、パタン部111における隣接する凸部間の距離または隣接する凹部間の距離は、バリア領域114における隣接する凸部間の距離または隣接する凹部間の距離よりも小さい。微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は勾配を有しており、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側に行くほど、平均ラフネスファクタRf2は減少する。
また、微細凹凸構造が凸型である場合、すなわち転写用鋳型(IV)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、大きくなる勾配を有す。微細凹凸構造が凹型である場合、すなわち転写用鋳型(I)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、小さくなる勾配を有す。
図14は、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状の場合であって、第1方向D1のピッチを連続的に変化させた状態を示す模式図である。図14において、ドット形状である微細凹凸構造の頂部(凸部)またはホール形状である微細凹凸構造の開口部(凹部)を、平面視にて円形状で表わしている。図14において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側へ行くほど、第1方向D1における凸部または凹部の間隔は広くなり、凸部または凹部の密度が疎になっている。微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は勾配を有しており、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側に行くほど、平均ラフネスファクタRf2は減少する。
また、微細凹凸構造が凸型である場合、すなわち転写用鋳型(IV)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、大きくなる勾配を有す。微細凹凸構造が凹型である場合、すなわち転写用鋳型(I)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、小さくなる勾配を有す。
図15は、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状の場合であって、第1方向D1および第2方向D2のピッチを連続的に変化させた状態を示す模式図である。図15において、ドット形状である微細凹凸構造の頂部(凸部)またはホール形状である微細凹凸構造の開口部(凹部)を、平面視にて円形状で表わしている。図15において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側へ行くほど、第1方向D1および第2方向D2における凸部または凹部の間隔は広くなり、凸部または凹部の密度が疎になっている。微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は勾配を有しており、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側に行くほど、平均ラフネスファクタRf2は減少する。
また、微細凹凸構造が凸型である、すなわち転写用鋳型(IV)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、大きくなる勾配を有す。微細凹凸構造が凹型である場合、転写用鋳型(I)の場合、バリア領域の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、小さくなる勾配を有す。
図16は、微細凹凸構造がラインアンドスペース構造の場合であって、第2方向D2のピッチを連続的に変化させた状態を示す模式図である。図16において、ラインアンドスペース構造である微細凹凸構造の凸部または凹部を、平面視にて長方形状で表わしている。図16において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側へ行くほど、第2方向D2における凸部または凹部の間隔は広くなり、凸部または凹部の密度が疎になっている。
微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は勾配を有しており、バリア領域114の内側(転写領域側)から外側に行くほど、平均ラフネスファクタRf2は減少する。
また、微細凹凸構造が凸型である場合、すなわち転写用鋳型(IV)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、大きくなる勾配を有す。微細凹凸構造が凹型である場合、転写用鋳型(I)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、小さくなる勾配を有す。なお、ラインアンドスペース構造の場合、ライン幅/スペース幅で示されるDutyが、パタン部111において、0.5より大きい場合を凹型とし、この場合、凹部から構成されるスペースを微細凹凸構造の凹部とする。一方、Dutyが0.5より小さい場合を凸型とし、この場合、凸部から構成されるラインを微細凹凸構造の凸部とする。
次に、転写用鋳型(II)、(III)におけるラフネスファクタRf1,Rf2の例について説明する。この例は、ラフネスファクタRf2に勾配を有す場合である。
転写用鋳型(II)、(III)においては、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部111の平均ラフネスファクタRf1よりも大きく設定される。また、バリア領域114のラフネスファクタRf2は、転写領域に近づくほど小さくなる勾配を有す。
図17は、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状の場合であって、第2方向D2のピッチを連続的に変化させた状態を示す模式図である。図17において、ドット形状である微細凹凸構造の頂部(凸部)またはホール形状である微細凹凸構造の開口部(凹部)を、平面視にて円形状で表わしている。図17において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側へ行くほど、第2方向D2における凸部または凹部の間隔は狭くなり、凸部または凹部の密度が密になっている。換言すると、パタン部111における隣接する凸部間の距離または隣接する凹部間の距離は、バリア領域114における隣接する凸部間の距離または隣接する凹部間の距離よりも大きい。微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は勾配を有しており、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側に行くほど、平均ラフネスファクタRf2は増加する。
また、微細凹凸構造が凸型である場合、すなわち転写用鋳型(II)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、小さくなる勾配を有す。微細凹凸構造が凹型である場合、すなわち転写用鋳型(III)の場合、バリア領域114の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、大きくなる勾配を有す。
図18は、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状の場合であって、第1方向D1のピッチを連続的に変化させた状態を示す模式図である。図18において、ドット形状である微細凹凸構造の頂部(凸部)またはホール形状である微細凹凸構造の開口部(凹部)を、平面視にて円形状で表わしている。図18において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側へ行くほど、第1方向D1における凸部または凹部の間隔は狭くなり、凸部または凹部の密度が密になっている。微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は勾配を有しており、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側に行くほど、平均ラフネスファクタRf2は増加する。
また、微細凹凸構造が凸型である場合、すなわち転写用鋳型(II)の場合、バリア領域の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、小さくなる勾配を有す。微細凹凸構造が凹型である場合、すなわち転写用鋳型(III)の場合、バリア領域の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、大きくなる勾配を有す。
図19は、微細凹凸構造がドット形状またはホール形状の場合であって、第1方向D1および第2方向D2のピッチを連続的に変化させた状態を示す模式図である。図19において、ドット形状である微細凹凸構造の頂部(凸部)またはホール形状である微細凹凸構造の開口部(凹部)を、平面視にて円形状で表わしている。図19において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側へ行くほど、第1方向D1および第2方向D2における凸部または凹部の間隔は狭くなり、凸部または凹部の密度が密になっている。微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は勾配を有しており、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側に行くほど、平均ラフネスファクタRf2は増加する。
また、微細凹凸構造が凸型である場合、すなわち転写用鋳型(II)の場合、バリア領域の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、小さくなる勾配を有す。微細凹凸構造が凹型である場合、すなわち転写用鋳型(III)の場合、バリア領域の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、大きくなる勾配を有す。
図20は、微細凹凸構造がラインアンドスペース構造の場合であって、第2方向D2のピッチを連続的に変化させた状態を示す模式図である。図20において、ラインアンドスペース構造である微細凹凸構造の凸部または凹部を、平面視にて長方形状で表わしている。図20において、縦軸は第1方向D1、横軸は第2方向D2、原点はパタン部111の第2方向D2における中心Oを示している。バリア領域114において、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側へ行くほど、第2方向D2における凸部または凹部の間隔は狭くなり、凸部または凹部の密度が密になっている。微細凹凸構造一つ一つの形状がバリア領域114とパタン部111にて同様の場合、すなわち、バリア領域114とパタン部111とでピッチのみが変化している場合、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2は勾配を有しており、バリア領域114の内側、すなわちパタン部111側から外側に行くほど、平均ラフネスファクタRf2は増加する。
また、微細凹凸構造が凸型である場合、すなわち転写用鋳型(II)の場合、バリア領域の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも小さくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、小さくなる勾配を有す。微細凹凸構造が凹型である場合、すなわち転写用鋳型(III)の場合、バリア領域の平均開口率Ar2は、パタン部111の平均開口率Ar1よりも大きくなり、且つ、パタン部111からバリア領域114方向に、大きくなる勾配を有す。なお、ラインアンドスペース構造の場合、ライン幅/スペース幅で示されるDutyが、パタン部111において、0.5より大きい場合を凹型とし、この場合、凹部から構成されるスペースを微細凹凸構造の凹部とする。一方、Dutyが0.5より小さい場合を凸型とし、この場合、凸部から構成されるラインを微細凹凸構造の凸部とする。
次に、転写用鋳型(I)、(IV)における平均ラフネスファクタRf2の勾配の例について説明する。
転写用鋳型(I)、(IV)が有するパタン部111に近づくほど大きくなるバリア領域114の平均ラフネスファクタRf2の勾配としては、例えば、図21に示すような勾配が挙げられる。図21において、縦軸はラフネスファクタRfの大きさを示し、横軸はパタン部111の中心位置からの距離を示す。図21Aは、バリア領域114内で、平均ラフネスファクタRf2が階段状に減少するモデルを示している。図21Bは、バリア領域114内で、平均ラフネスファクタRf2が線形的に減少するモデルを示している。図21Cは、バリア領域114内で、平均ラフネスファクタRf2が上に凸の関数で減少するモデルを示している。図21Dは、バリア領域114内で、平均ラフネスファクタRf2が下に凸の関数で減少するモデルを示している。図21Eは、バリア領域114内で、平均ラフネスファクタRf2が緩やかな減少−急激な減少−緩やかな減少を併せ持つS字カーブ状に減少するモデルを示している。図21Fは、平均ラフネスファクタRf2が、パタン部111内の平均ラフネスファクタRf1、バリア領域114内の平均ラフネスファクタRf2に連続性がなく減少している場合を示している。
パタン部111の平均ラフネスファクタRf1より小さいバリア領域114の平均ラフネスファクタRf2としては、図21に例示するような平均ラフネスファクタRf2の変化が挙げられる。これらの勾配を有することで、塗工不良(1)を抑制するための、塗工液膜内部に加わる応力の緩和効果や、塗工不良(2)を抑制するための、非パタン部112上にてはじかれた塗工液滴のパタン部111への侵入阻害効果を発揮することができる。
図21Aに示すような階段状ステップの幅(距離)は、塗工性の観点から、微細凹凸構造の周期よりも大きければ、ステップの段数が多く細かいほど好ましい。塗工性の観点から、ステップ幅は、5mm以下であることが好ましく、1mm以下であるとより好ましい。最も好ましくは、100μm以下である。
特に、塗工液113と非パタン部112との親和性が離型性を発現する範囲で高い場合は、塗工液113の接触角が連続的に変化し、塗工液113にかかる力F(θ)も連続的に変化することで、塗工液113の液滴(液膜)内部への応力集中は起こらずに、塗工不良(1)を抑制して良好な塗工性を保つことができる。そのため、鋳型(IV)においては、図21E,図21C,図21B,図21D,図21A,図21Fに示すモデルの順に好ましい。一方、塗工液113と非パタン部112との親和性が低い場合は、パタン部111の凹凸構造の凹部内部から凸部上部へと加わる力、転写材塗工液の微細凹凸構造認識性および塗工初期の転写材塗工液の状態(モード)が変化し、バリア領域114上にて塗工液113の液滴内部への応力を大きくすることができる。そのため、非パタン部112上ではじかれた塗工液113の液滴は、バリア領域114を乗り越えることができず、塗工不良(2)を抑制しパタン部111上の塗工性を良好に保つことができる。そのため、鋳型(I)においては、図21F,図21D,図21A,図21E,図21Cに示すモデルの順に好ましい。
次に、転写用鋳型(II)、(III)における平均ラフネスファクタRf2の勾配の例について説明する。
転写用鋳型(II)、(III)が有するパタン部111に近づくほど小さくなるバリア領域114の平均ラフネスファクタRf2の勾配としては、例えば、図22に示すような勾配が挙げられる。図22において、縦軸はラフネスファクタRfの大きさを示し、横軸はパタン部111の中心位置からの距離を示す。図22Aは、バリア領域114内で、平均ラフネスファクタRf2が階段状に増加するモデルを示している。図22Bは、バリア領域114内で、平均ラフネスファクタRf2が線形的に増加するモデルを示している。図22Cは、バリア領域114内で、平均ラフネスファクタRf2が下に凸の関数で増加するモデルを示している。図22Dは、バリア領域114内で、平均ラフネスファクタRf2が上に凸の関数で増加するモデルを示している。図22Eは、バリア領域内114で、平均ラフネスファクタRf2が急激な増加−緩やかな増加―急激な増加を併せ持つS字カーブ状に増加するモデルを示している。図22Fは、平均ラフネスファクタRf2が、パタン部111内の平均ラフネスファクタRf1とバリア領域114内の平均ラフネスファクタRf2に連続性がなく増加する場合を示している。
パタン部111の平均ラフネスファクタRf1より大きい、バリア領域114の平均ラフネスファクタRf2としては、図22に例示するような平均ラフネスファクタRf2の変化が挙げられる。これらの勾配を有することで、塗工不良(1)を抑制するための、塗工液膜内部に加わる応力の緩和効果や、塗工不良(2)を抑制するための、非パタン部112上にてはじかれた塗工液滴のパタン部111への侵入阻害効果を発揮することができる。
図22Aに示すような階段状ステップの幅(距離)は、塗工性の観点から、微細凹凸構造の周期よりも大きければ、ステップの段数が多く細かいほど好ましい。塗工性の観点から、ステップ幅は、5mm以下であることが好ましく、1mm以下であるとより好ましい。最も好ましくは、100μm以下である。
特に、塗工液113と非パタン部112との親和性が離型性を発現する範囲で高い場合は、塗工液113の接触角が連続的に変化し、塗工液113にかかる力F(θ)も連続的に変化することで、塗工液113の液滴(液膜)内部への応力集中を抑制でき、塗工不良(1)を抑制して良好な塗工性を保つことができる。そのため、転写用鋳型(III)においては、図22D,図22B,図22A,図22C,図22E,図22Fに示すモデルの順に好ましい。一方、塗工液113と非パタン部112との親和性が低い場合は、パタン部111の凹凸構造の凹部内部から凸部上部へと加わる力、転写材塗工液の微細凹凸構造認識性および塗工初期の転写材塗工液の状態(モード)が変化し、バリア領域114上にて塗工液113の液滴内部への応力を大きくすることができる。そのため、非パタン部112上ではじかれた塗工液液滴は、バリア領域114を乗り越えることができず、塗工不良(2)を抑制しパタン部111上の塗工性を良好に保つことができる。そのため、転写用鋳型(II)においては、図22F,図22E,図22D、図22A、図22B、図22Cの順に好ましい。
なお、転写用鋳型(II)、(III)の場合、平均ラフネスファクタRf2は、パタン部111からバリア領域114方向へと、上記説明したような大きくなるような勾配を有すが、このときの平均ラフネスファクタRf2は、以下の定義に従うものとする。転写用鋳型(II)の場合、バリア領域114の微細凹凸構造は複数の凸部から構成される。平均ラフネスファクタRf2を、パタン部111からバリア領域114方向へと大きくするには、単位セルに対する凸部側面積の割合を大きくすればよい。ここで、例えば、単位セルの大きさを一定とし、凸部の径を大きくした場合、平均ラフネスファクタRf2は大きくなる。しかしながら、凸部同士が単位セル内部において接触しはじめた段階から、単位セル内部に含まれる凸部側面積は減少するため、平均ラフネスファクタRf2は減少する。よって、転写用鋳型(II)の場合、バリア領域114内部において、隣接する凸部同士が接触するまでの範囲をもって、上記平均ラフネスファクタRf2の勾配を定義するものとする。一方、転写用鋳型(III)の場合、バリア領域114の微細凹凸構造は複数の凹部から構成される。平均ラフネスファクタRf2を、パタン部111からバリア領域114方向へと大きくするには、単位セルに対する凹部側面積の割合を大きくすればよい。ここで、例えば、単位セルの大きさを一定とし、凹部の径を大きくした場合、平均ラフネスファクタRf2は大きくなる。しかしながら、凹部同士が単位セル内部において接触しはじめた段階から、単位セル内部に含まれる凹部側面積は減少するため、平均ラフネスファクタRf2は減少する。よって、転写用鋳型(III)の場合、バリア領域114内部において、隣接する凹部同士が接触するまでの範囲をもって、上記平均ラフネスファクタRf2の勾配を定義するものとする。
ラフネスファクタRfは塗工液の接触角に影響を与える。キャシーバクスターの式、またはウェンツェルの式より、接触角が90°より大きい撥水性材料においては、ラフネスファクタRfが大きいほど接触角は大きくなり、ラフネスファクタRfが小さいほど(接触角が90°より大きい範囲で)接触角は小さくなることが知られている。微細凹凸構造がある部分、すなわちパタン部111と、それが無い部分、すなわち非パタン部112との界面では、ラフネスファクタRfが急激な変化を起こす。これは、液滴または塗工液から見ると、パタン部111と非パタン部112との界面上において、液滴または塗工液内部に、大きな応力が加わることを意味する。すなわち、塗工液と鋳型との親和性が離型性を発現する範囲にて大きい場合は、パタン部111と非パタン部112との界面上において、塗工液膜に大きな応力が働き、その結果、塗工液膜は分裂する。転写用鋳型(III)、(IV)においては、パタン部111と非パタン部112との界面を、バリア領域114に置き換えることで、該塗工液膜内部に発生する応力を緩和し、塗工液膜の分裂を抑制し、塗工性を良好に保っている。一方、転写用鋳型(I)、(II)においては、パタン部111と非パタン部112との界面をバリア領域114に置き換えることで、もともとのパタン部111と非パタン部112との界面に比べ発生する応力が著しく大きくなる。すなわち、高離型性を発現するような表面自由エネルギーを大きく減少させた鋳型において、非パタン部112上にてはじかれ液滴化した塗工液が、パタン部111へと侵入しようとしても、バリア領域114上にて発生する大きな応力により非パタン部112側へと押し戻される。この為、パタン部111上の塗工性を良好に保つことができる。
(第1の実施形態)
図23は、第1の実施形態に係る転写用鋳型を示す模式図である。図23に示すように、この転写用鋳型(以下、単に鋳型という)300は、円筒状または円柱状で構成される。鋳型300は、外周表面に微細凹凸構造を有するパタン部301およびバリア領域302を具備する。なお、図23においては、上記説明した非パタンバリア領域や、非パタンバリア領域の途切れ、バリア領域の途切れは記載していないが、これらを含むものとする。また、以下において、パタン部301がバリア領域302に挟まれる、という表現を使用するが、これも上記説明した、挟まれの定義を適用するものとする。
図23に示すように、パタン部301は、バリア領域302に挟まれた状態で配置されている。パタン部301とバリア領域302の配置は次のように定義される。鋳型300の長手方向の中心位置を点Oとする。この点Oから長手方向へ軸をとり、この軸上で鋳型300における各位置を説明する。点Aおよび点Fは、鋳型300のエッジ部である。パタン部301は、点Cと点Dとの間に存在する。点Cと点Dの間に点Oが存在する。フィルムへの転写性の観点から、点Cと点Dとの中点が、点Oであることが好ましい(距離CO=距離DO)。バリア領域302は、点Bと点Cとの間、および、点Dと点Eとの間に存在する。点Cと点Oとの距離は、点Bと点Oとの距離よりも小さい(距離CO<距離BO)。点Dと点Oとの距離は、点Eと点Oとの距離よりも小さい(距離DO<距離EO)。点Bと点Eとの中点が、点Oであってもよい(距離BO=距離EO)。
鋳型300のエッジ部を示す点A,Fと、バリア領域302の外側の端部を示す点B,Eとは、点A=点B、点E=点Fの両方、またはいずれか一方の関係を満たしていてもよい。点A=点B、かつ、点E=点Fの場合には、鋳型300の外周全面が微細凹凸構造を具備することとなる。しかしながら、鋳型300からフィルム(図示せず)へと微細凹凸構造を転写する際に、エッジ部に近い部分の微細凹凸構造を転写することは困難である。したがって、スループット性の観点から、点A≠点B、かつ、点E≠点Fであることが好ましい。
バリア領域302の大きさ(距離BC,距離DE)は、必要な面積のパタン部301を得られるのであれば、鋳型300から転写形成されたフィルムへの直接塗工性の観点から、大きいほど好ましい。使用する溶液の粘度や、パタン部301における微細凹凸構造の形状によっても変わるが、概ね10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。バリア領域302およびパタン部301の転写性の観点から、100μm以上が好ましく、1mm以上であることが好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上であることがなお好ましい。バリア領域302上にて強い応力により分裂した転写材塗工液がパタン部301側へと移動するのを抑制するために、バリア領域302の幅は、30mm以下が好ましく、15mm以下が好ましく、8mm以下が最も好ましい。
図23に示す鋳型300が、鋳型(I)、(IV)に相当する場合、バリア領域302の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部301の平均ラフネスファクタRf1より小さい。特に、塗工性をより改善するために、バリア領域302の平均ラフネスファクタRf2は、バリア領域302の内側、すなわちパタン部301側から外側にかけて連続的に減少することが好ましい。すなわち、バリア領域302の平均ラフネスファクタRf2は、勾配を有することが好ましい。一方、転写用鋳型(II)、(III)においては、バリア領域302の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部301の平均ラフネスファクタRf1より大きくすることが好ましい。特に、塗工性をより改善するために、バリア領域302の平均ラフネスファクタRf2は、バリア領域302の内側、すなわちパタン部301側から外側にかけて連続的に増加することが好ましい。すなわち、バリア領域302の平均ラフネスファクタRf2は、勾配を有することが好ましい。
図23に示す鋳型300においては、微細凹凸構造を有するパタン部301と、微細凹凸構造を有さない非パタン部303(図23における点A−B間、点E−F間)との間に、パタン部301の平均ラフネスファクタRf1に対し、上記説明した平均ラフネスファクタRf2の関係性を満たすバリア領域302を配置している。これにより、微細凹凸構造を有さない領域、すなわち非パタン部303とパタン部301との間のラフネスファクタRfがなだらかに変化する構造となる。この構造により、鋳型300を原版(マスターモールド)として使用して転写形成された樹脂モールドを、被処理体への微細凹凸構造の転写に使用した場合に、塗工液の塗工性が良好になる。これは、塗工液と非パタン部303との親和性が離型性を発現する範囲で高い場合は、塗工液の接触角が連続的に変化し、塗工液にかかる力F(θ)も連続的に変化する。そのため、転写用鋳型(III)、(IV)を使用することで、塗工液の液滴(液膜)内部の応力集中は緩和され、塗工不良(1)を抑制して良好な塗工性を保つことができるためである。また、塗工液と非パタン部との親和性が低い場合は、バリア領域302上における塗工液に加わる応力を急激な接触角の変化により大きくできる。そのため、転写用鋳型(I)、(II)を使用した場合は、非パタン部上ではじかれた塗工液液滴は、バリア領域302を乗り越えることができず、塗工不良(2)を抑制してパタン部301上の塗工性を良好に保つことができるためである。また、鋳型300の微細凹凸構造を、光硬化性樹脂を転写材として使用し、樹脂モールドを作製する場合に、バリア領域302による転写材内部の応力緩和の効果により、得られた硬化した光硬化性樹脂膜内部の応力も緩和することもでき、残留応力を小さくできる。
(第2の実施形態)
図24は、第2の実施形態に係る転写用鋳型を示す模式図である。図24に示すように、この転写用鋳型(以下、単に鋳型という)310は、第1の実施形態に係る鋳型300から転写形成されるフィルム鋳型、すなわち、リール状樹脂モールドである。つまり、第1の実施形態に係る鋳型300を、本実施の形態に係る鋳型310へ微細凹凸構造の転写のための原版(マスターモールド)として使用している。図24に示すように、この鋳型310は、表面に微細凹凸構造を有するパタン部311およびバリア領域312を具備する。なお、図24においては、上記説明した非パタンバリア領域や、非パタンバリア領域の途切れ、バリア領域の途切れは記載していないが、これらを含むものとする。また、以下において、パタン部311がバリア領域312に挟まれる、という表現を使用するが、これも上記説明した、挟まれの定義を適用するものとする。
図24に示すように、パタン部311は、バリア領域312に挟まれた状態で配置されている。パタン部311とバリア領域312の配置は、次のように定義される。フィルムの幅方向に軸を取り、フィルムの一端部と他端部との中心を点Oとする。この軸上で鋳型310における各位置を説明する。なお、パタン部311およびバリア領域312が有する微細凹凸構造は、フィルムの幅方向の軸と垂直な方向にも形成されている。
点Aおよび点Fは、鋳型310を構成するフィルムのエッジ部である。パタン部311は、点Cと点Dとの間に存在する。点Cと点Dの間に点Oが存在する。フィルムへの転写性および、鋳型310への転写材の直接塗工性の観点から、点Cと点Dとの中点が、点Oであることが好ましい(距離CO=距離DO)。バリア領域312は、点Bと点Cとの間、および、点Dと点Eとの間に存在する。点Cと点Oとの距離は、点Bと点Oとの距離よりも小さい(距離CO<距離BO)。点Dと点Oとの距離は、点Eと点Oとの距離よりも小さい(距離DO<距離EO)。点Bと点Eとの中点が、点Oであってもよい(距離BO=距離EO)。
フィルムのエッジ部を示す点A,Fと、バリア領域312の外側の端部を示す点B,Eとは、点A=点B、点E=点Fの両方、またはいずれか一方の関係を満たしていてもよい。点A=点B、かつ、点E=点Fの場合には、フィルムの表面全面が微細凹凸構造を具備することとなる。しかしながら、第1の実施形態の鋳型300から第2の実施形態の鋳型310を構成するフィルムへと微細凹凸構造を転写する際、および、第2の実施形態の鋳型310の微細凹凸構造面上に転写材を塗工し、被処理体上へと転写する際に、エッジ部に近い部分の微細凹凸構造を転写することは困難である。したがって、スループット性の観点から、点A≠点B、かつ、点E≠点Fであることが好ましい。
バリア領域312の大きさ(距離BC,距離DE)は、必要な面積のパタン部311を得られるのであれば、フィルムへの直接塗工性の観点から大きいほど好ましい。使用する溶液の粘度や、パタン部311における微細凹凸構造の形状によっても変わるが、概ね10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。特に、鋳型310を使用する際に発生するウェブの振動や撓みに対してもバリア領域312の効果を発揮する観点から、100μm以上が好ましく、1mm以上であることが好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上であることがなお好ましい。バリア領域312上にて強い応力により分裂した転写材塗工液がパタン部311側へと移動するのを抑制するために、バリア領域312の幅は、30mm以下が好ましく、15mm以下が好ましく、8mm以下が最も好ましい。
本実施の形態に係る鋳型310において、鋳型(I)、(IV)においては、バリア領域312の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部311の平均ラフネスファクタRf1より小さくすることが好ましい。特に、塗工性をより改善するために、バリア領域312の平均ラフネスファクタRf2は、バリア領域312の内側、すなわちパタン部311側から外側にかけて連続的に減少する、すなわち勾配を有することが好ましい。一方、転写用鋳型(II)、(III)においては、バリア領域12の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部311の平均ラフネスファクタRf1より大きくすることが好ましい。特に、塗工性をより改善するために、バリア領域312の平均ラフネスファクタRf2は、バリア領域312の内側、すなわちパタン部311側から外側にかけて連続的に増加することが好ましい。すなわち、バリア領域312の平均ラフネスファクタRf2は、勾配を有することが好ましい。
本実施の形態に係る鋳型310においては、微細凹凸構造を有するパタン部311と、微細凹凸構造を有さない非パタン部313(図24における点A−B間、点E−F間)との間に、パタン部311の平均ラフネスファクタRf1に対し、上記説明した平均ラフネスファクタRf2の関係性を満たすバリア領域312を配置することにより、非パタン部313とパタン部311との間のラフネスファクタRfがなだらかに変化する構造となる。塗工液と非パタン部313との親和性が離型性を発現する範囲で高い場合は、塗工液の接触角が連続的に変化し、塗工液にかかる力F(θ)も連続的に変化する。そのため、転写用鋳型(III)、(IV)を使用することで塗工液の液滴(液膜)内部の応力集中は緩和され、塗工不良(1)を抑制して良好な塗工性を保つことができる。また、塗工液と非パタン部313との親和性が低い場合は、バリア領域312における塗工液に加わる応力を急激な接触角の変化により大きくできる。そのため、鋳型(I)、(II)を使用することにより、非パタン部313上ではじかれ液滴化した塗工液は、バリア領域312を乗り越えることができず、塗工不良(2)を抑制してパタン部311上の塗工性を良好に保つことができる。したがって、転写材の塗工性が良好な鋳型310を提供することが可能となる。
(第3の実施形態)
図25は、第3の実施形態に係る転写用鋳型を示す模式図である。図25に示すように、この鋳型320は、円盤形状の平板鋳型である。
なお、この鋳型320を原版(マスターモールド)として、鋳型320から転写形成された樹脂平板鋳型(フィルム状樹脂モールド)も、鋳型320と同様の構成となる。鋳型320は、表面に微細凹凸構造を有するパタン部321およびバリア領域322を具備する。なお、図25においては、上記説明した非パタンバリア領域や、非パンバリア領域の途切れ、バリア領域の途切れは記載していないが、これらを含むものとする。また、以下において、パタン部321がバリア領域322に囲まれる、という表現を使用するが、これも上記説明した、囲まれの定義を適用するものとする。
図25に示すように、パタン部321は、バリア領域322に囲まれた状態で配置されている。パタン部321とバリア領域322の配置は次のように定義される。鋳型320を構成する平板の中心を点Oとする。この点Oを通る直線に対し、パタン部321およびバリア領域322はそれぞれ点対称に存在する。以下の説明では、点Oを始点とする1つの線分を考える。この線分上で鋳型320における各位置を説明する。
この線分において、点Cは、鋳型320を構成する平板のエッジ部である。パタン部321は、点Oを中心とし、線分OAを半径とする円の内側に存在する。バリア領域322は、線分OAを半径とする円よりも外側であって、点Oを中心とし、線分OBを半径とする円の内側に存在する。すなわち、バリア領域322は、大半径=線分OB、小半径=線分OAで表わされる円環形状を有する。線分OAは、線分OBよりも短い(距離OA<距離OB)。また、平板のエッジ部を示す点Cと、バリア領域322の外側の端部を示す点Bとは、点C=点Bの関係を満たしていてもよい。この場合には、平板の表面全面が微細凹凸構造を具備することとなる。
バリア領域322の大きさは、必要な面積のパタン部321を得られるのであれば、平板への直接塗工性の観点から大きいほど好ましい。使用する溶液の粘度や、パタン部321における微細凹凸構造の形状によっても変わるが、点Aと点Bとの距離は、概ね10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。特に、鋳型320に対し塗工液を塗工する際の鋳型の振動等に対しても良好にバリア領域322の効果を発揮する観点から、100μm以上であることが好ましく、1mm以上であることが好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上であることがなお好ましい。バリア領域322上にて強い応力により分裂した転写材塗工液がパタン部321側へと移動するのを抑制するために、バリア領域322の幅は、30mm以下が好ましく、15mm以下が好ましく、8mm以下が最も好ましい。
鋳型320において、鋳型(I)、(IV)においては、バリア領域322の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部321の平均ラフネスファクタRf1より小さくすることが好ましい。特に、塗工性をより改善するために、バリア領域322の平均ラフネスファクタRf2は、バリア領域322の内側、すなわちパタン部321側から外側にかけて連続的に減少する、すなわち勾配を有することが好ましい。鋳型(II)、(III)においては、バリア領域322の平均ラフネスファクタRf2は、パタン部321の平均ラフネスファクタRf1より大きくすることが好ましい。特に、塗工性をより改善するために、バリア領域322の平均ラフネスファクタRf2は、バリア領域322の内側、すなわちパタン部321側から外側にかけて連続的に増加することが好ましい。すなわち、バリア領域322の平均ラフネスファクタRf2は、勾配を有することが好ましい。
鋳型320においては、微細凹凸構造を有するパタン部321と、微細凹凸構造を有さない非パタン領域323(図25における大半径=線分OC、小半径=線分OBで表わされる円環形状領域)との間に、パタン部321の平均ラフネスファクタRf1に対し、上記説明した平均ラフネスファクタRf2の関係性を満たすバリア領域322を配置することにより、非パタン部323とパタン部321との間のラフネスファクタRfがなだらかに変化する構造となる。この構造により、塗工液と非パタン部323との親和性が離型性を発現する範囲で高い場合は、塗工液の接触角が連続的に変化し、塗工液にかかる力F(θ)も連続的に変化する。そのため、転写用鋳型(III)、(IV)を使用することで塗工液の液滴(液膜)内部の応力集中は緩和され、塗工不良(1)を抑制して良好な塗工性を保つことができる。また、塗工液と非パタン部323との親和性が低い場合は、バリア領域322上における塗工液に加わる応力を急激な接触角の変化により大きくできる。そのため、鋳型(I)、(II)を使用することで、非パタン部323上ではじかれた塗工液液滴は、バリア領域322を乗り越えることができず、塗工不良(2)を抑制してパタン部321上の塗工性を良好に保つことができる。したがって、転写材の塗工性が良好な鋳型320を提供することが可能となる。
また、鋳型320においては、平板状基材に対するパタン部321の製造方法上、点Oを中心とし半径OAよりも小さい円の内側に非パタン部が設けられることがある。この場合、該非パタン部の周囲を囲むようなバリア領域を別途設けることで、鋳型320に対する塗工性を改善できる。また、上記説明においては図25に示されるように平板状基材表面に外形が円形のパタン部を代表したが、平板状基材に対するパタン部の製造方法としてステッパを使用した微細加工方法を採用した場合、パタン部の外形は円形にはならない。特に、ステッパを採用した場合、パタン部の輪郭は階段状のステップを持つ形状となる。この場合、その周囲を囲むようにバリア領域を設ければよい。
次に、本発明の実施の形態に係る転写用鋳型を構成する材質について説明する。
マスターモールドを構成する円筒状または円柱状の基材または平板の基材は、表面への微細加工の観点から、合成石英や溶融石英に代表される石英、無アルカリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラスに代表されるガラス、シリコンウェハ、ニッケル版、サファイア、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等に代表される無機材料や、SiC基板やマイカ基板、ポリカーボネート(PC)基板等が挙げられる。
一方、円筒状または円柱状の原版(マスターモールド)からの転写で得られる樹脂モールドの材質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂またはゾルゲル材料等の硬化物が挙げられる。これらの材質のみで微細凹凸構造を形成するかまたは支持基材上にこれらの材質から構成される微細凹凸構造が設けられる。
支持基材として支持フィルムを用いた場合は、この支持フィルムの表面に設けられた表面に微細凹凸構造を有する熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂またはゾルゲル材料等の硬化物から樹脂モールドが構成される。離型性の観点から、この樹脂モールドの微細凹凸構造上に離型層を形成するか、または、微細凹凸構造がポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる樹脂、メチル基を含む樹脂またはフッ素含有樹脂で構成されていることが好ましい。
離型層の厚みは、転写精度の観点から30nm以下であることが好ましく、単分子層以上の厚みであることが好ましい。離型性の観点から、離型層の厚みは、2nm以上であることがより好ましく、転写精度の観点から20nm以下であることがより好ましい。離型層を構成する材料は、転写材料により適宜選定すればよく、限定されない。
公知市販のものとしては、例えば、ゾニールTCコート(デュポン社製),サイトップCTL−107M(旭硝子社製),サイトップCTL−107A(旭硝子社製),ノベックEGC−1720(3M社製),オプツールDSX(ダイキン工業社製),オプツールDACHP(ダイキン工業社製),デュラサーフHD−2101Z(ダイキン工業社製),デュラサーフHD2100(ダイキン工業社製),デュラサーフHD−1101Z(ダイキン工業社製),ネオス社製「フタージェント」(例えば,Mシリーズ:フタージェント251,フタージェント215M,フタージェント250,FTX−245M,FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S,FTX−211S,FTX−220S,FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F,FTX−213F,フタージェント222F,FTX−233F,フタージェント245F;Gシリーズ:フタージェント208G,FTX−218G,FTX−230G,FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント730FM,フタージェント730LM;フタージェントPシリーズ;フタージェント710FL;FTX−710HL等),DIC社製「メガファック」(例えば,F−114,F−410,F−493,F−494,F−443,F−444,F−445,F−470,F−471,F−474,F−475,F−477,F−479,F−480SF,F−482,F−483,F−489,F−172D,F−178K,F−178RM,MCF−350SF等),ダイキン社製「オプツールTM」(例えば,DSX,DAC,AES),「エフトーンTM」(例えば,AT−100),「ゼッフルTM」(例えば,GH−701),「ユニダインTM」,「ダイフリーTM」,「オプトエースTM」,住友スリーエム社製「ノベックEGC−1720」,フロロテクノロジー社製「フロロサーフ」等,シリコーン系樹脂(ジメチルシリコーン系オイルKF96(信越シリコーン社製),変性シリコーンの市販品としては,具体的にはTSF4421(GE東芝シリコーン社製),XF42−334(GE東芝シリコーン社製),XF42−B3629(GE東芝シリコーン社製),XF42−A3161(GE東芝シリコーン社製),FZ−3720(東レ・ダウコーニング社製),BY 16−839(東レ・ダウコーニング社製),SF8411(東レ・ダウコーニング社製),FZ−3736(東レ・ダウコーニング社製),BY 16−876(東レ・ダウコーニング社製),SF8421(東レ・ダウコーニング社製),SF8416(東レ・ダウコーニング社製),SH203(東レ・ダウコーニング社製),SH230(東レ・ダウコーニング社製),SH510(東レ・ダウコーニング社製),SH550(東レ・ダウコーニング社製),SH710(東レ・ダウコーニング社製),SF8419(東レ・ダウコーニング社製),SF8422(東レ・ダウコーニング社製),BY16シリーズ(東レ・ダウコーニング社製),FZ3785(東レ・ダウコーニング社製),KF−410(信越化学工業社製),KF−412(信越化学工業社製),KF−413(信越化学工業社製),KF−414(信越化学工業社製),KF−415(信越化学工業社製),KF−351A(信越化学工業社製),KF−4003(信越化学工業社製),KF−4701(信越化学工業社製),KF−4917(信越化学工業社製),KF−7235B(信越化学工業社製),KR213(信越化学工業社製),KR500(信越化学工業社製),KF−9701(信越化学工業社製),X21−5841(信越化学工業社製),X−22−2000(信越化学工業社製),X−22−3710(信越化学工業社製),X−22−7322(信越化学工業社製),X−22−1877(信越化学工業社製),X−22−2516(信越化学工業社製),PAM−E(信越化学工業社製)),アルカン系樹脂(アルキル系単分子膜を形成するSAMLAY等)が挙げられる。
特に、離型層を構成する材料は、メチル基含む材料、シリコーンを含む材料またはフッ素を含む材料であることが離型性の観点から好ましい。特に、シランカップリング剤またはPDMSに代表されるシリコーン系樹脂であると、離型層の膜厚を容易に薄くでき、かつ、転写精度を保持できるため好ましい。離型層に使用される材料は、1種類を単独で用いても、複数を同時に使用してもよい。また、離型層を構成する材料は、水に対する接触角が90度以上であることが好ましい。ここで接触角とは、離型層を構成する材料を用いベタ膜(微細パタンの無い膜)を作製した際の接触角を意味する。
また、樹脂モールドの微細凹凸構造上に、金属層、金属酸化物層または金属と金属酸化物から成る層(以下、単に金属層という)を設けてもよい。これらの層をあらかじめ設けることで、前述した離型層を設けた時に、より一層離型性および転写精度が向上するため好ましい。金属としては、例えば、クロム、アルミ、タングステン、モリブデン、ニッケル、金、プラチナが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、前記金属の酸化物の他、SiO2、ZnO,Al2O3,ZrO2,CaO,SnO2が挙げられる。また、シリコンカーバイド、ダイヤモンドライクカーボンやフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等も使用できる。これらの混合物を使用してもよい。なお、金属としては、転写精度の観点からCrが好ましく、金属酸化物としては、SiO2,Al2O3,ZrO2,ZnOが好ましい。
金属層は、単層であっても多層であってもよい。特に、最表面に形成する金属層とモールドの微細凹凸構造との密着性が悪い場合等は、モールドの微細凹凸構造上に第1の金属層を形成し、さらに第1の金属層上に第2の金属層を形成するとよい。同様に、密着性や帯電性の改善のために、第Nの金属層上に、第N+1の金属層を形成することができる。層数としては、転写精度の観点から、N≦4が好ましく、N≦2がより好ましく、N≦1がより好ましい。例えば、N=2の場合、微細凹凸構造表面にSiO2からなる第1の金属層を設け、第1の金属層上にCrからなる第2の金属層を設けることができる。また、金属層を構成する金属としては転写精度の観点から、Crが好ましく、金属酸化物としては、SiO2,Al2O3,ZrO2,ZnOが好ましい。
上述した離型層は、樹脂モールドの微細凹凸構造上に直接設けても、金属層上に設けてもよい。
特に、樹脂モールドの、微細凹凸構造を形成する材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる樹脂、メチル基を含む樹脂またはフッ素含有樹脂のいずれかで構成されていることが好ましく、特に、フッ素含有樹脂で構成されていることがより好ましい。フッ素含有樹脂は、フッ素元素を含有しており、かつ、水に対する接触角が90度より大きければ特に限定されない。樹脂モールドは、表面に微細凹凸構造を具備した自立性のある樹脂層のみ、または、表面に微細凹凸構造を具備した樹脂層が、支持基材の上に成形された形状が好ましい。特に、モールドを使用する際のハンドリングの観点から、支持基材上に樹脂層が成形された形状が好ましい。
また、樹脂層中の樹脂表面(微細凹凸構造付近)のフッ素濃度(Es)を、樹脂層中の平均フッ素濃度(Eb)より大きくすることで、樹脂表面の自由エネルギーが低下し、転写材との離型性に優れる転写用鋳型を得ることができる。
さらに、樹脂層を構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)と樹脂層表面(表層)部のフッ素元素濃度(Es)との比が、1<Es/Eb≦30000を満たすことで、上記効果をより発揮するためより好ましい。特に、3≦Es/Eb≦1500、10≦Es/Eb≦100の範囲となるにしたがって、より離型性が向上するため好ましい。
なお、上記する最も広い範囲(1<Es/Eb≦30000)の中にあって、20≦Es/Eb≦200の範囲であれば、樹脂モールドを構成する樹脂層表面(表層)部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂層中の平均フッ素濃度(Eb)より十分高くなり、樹脂モールド表面の自由エネルギーが効果的に減少するので、転写材との離型性が向上する。また、樹脂モールドを構成する樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Eb)を、樹脂モールドを構成する樹脂層表面(表層)部のフッ素元素濃度(Es)に対して相対的に低くすることにより、樹脂自体の強度が向上するとともに、樹脂モールド中における支持基材付近では、自由エネルギーを高く保つことができるので、支持基材の密着性が向上する。これにより、支持基材との密着性に優れ、転写材との離型性に優れ、しかも、ナノメートルサイズの凹凸形状を樹脂から樹脂へ繰り返し転写できる樹脂モールドを得ることができるので特に好ましい。また、26≦Es/Eb≦189の範囲であれば、樹脂モールドを構成する樹脂層表面の自由エネルギーをより低くすることができ、繰り返し転写性が良好になるため好ましい。さらに、30≦Es/Eb≦160の範囲であれば、樹脂モールドを構成する樹脂層表面の自由エネルギーを減少させるとともに、樹脂の強度を維持することができ、繰り返し転写性がより向上するため好ましく、31≦Es/Eb≦155であればより好ましい。46≦Es/Eb≦155であれば、上記効果をより一層発現できるため好ましい。なお、上記繰り返し転写性とは、樹脂モールドから樹脂モールドを容易に複製できることを意味する。すなわち、樹脂モールドの微細凹凸構造が凸型の樹脂モールドG1を鋳型として、微細凹凸構造が凹型の樹脂モールドG2を転写形成可能であり、樹脂モールドG2を鋳型として、微細凹凸構造が凸型の樹脂モールドG3を転写形成することが可能となる。同様に、微細凹凸構造が凸型の樹脂モールドGNを鋳型として、微細凹凸構造が凹型の樹脂モールドGN+1を転写形成することが可能となる。また、一つの樹脂モールドG1を鋳型として複数枚の樹脂モールドG2を得ることも、一つの樹脂モールドG2を鋳型として複数枚の樹脂モールドG3を得ることも可能となる。同様に、一つの樹脂モールドGMを鋳型として複数枚の樹脂モールドGM+1を得ることも可能となる。また、使用済みの転写用鋳型を再利用できることも意味する。このように、上記Es/Ebを満たす樹脂モールドを使用することにより、環境対応性が向上する。
ここで、樹脂モールドを構成する樹脂層の樹脂表面(微細凹凸構造付近)とは、例えば、樹脂モールドを構成する樹脂層の微細凹凸構造面から、支持基材側に向かって、略1〜10%厚み方向に侵入した部分、または厚み方向に2nm〜20nm侵入した部分を意味する。なお、樹脂モールドを構成する樹脂層の樹脂表面(微細凹凸構造付近)のフッ素元素濃度(Es)は、XPS法により定量できる。XPS法のX線の浸入長は数nmと浅いため、Es値を定量する上で適している。他の解析手法として、透過型電子顕微鏡を使ったエネルギー分散型X線分光法(TEM―EDX)を用い、Es/Ebを算出することもできる。また、樹脂モールドを構成する樹脂層を構成する樹脂中の平均フッ素濃度(Eb)は、仕込み量から計算することができる。またはガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)で測定することができる。例えば、樹脂モールドを構成する樹脂層を物理的に剥離してガスクロマトグラフ質量分析にかけることで、平均フッ素元素濃度を同定することができる。一方、樹脂モールドを構成する樹脂層を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることでも、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる。
樹脂モールドを構成する樹脂層を構成する樹脂のうち、光重合可能なラジカル重合系の樹脂としては、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレートおよび光重合開始剤の混合物である硬化性樹脂組成物(1)や、非フッ素含有の(メタ)アクリレートおよび光重合開始剤の混合物である硬化性樹脂組成物(2)や、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、シリコーンおよび光重合開始剤の混合物である硬化性樹脂組成物(3)である硬化性樹脂組成物等を用いることが好ましい。また、金属アルコキシドに代表されるゾルゲル材料を含む硬化性樹脂組成物(4)を用いることもできる。特に、硬化性樹脂組成物(1)を用いることで、表面自由エネルギーの低い疎水性界面等に該組成物(1)を接触させた状態で上記組成物(1)を硬化させると、樹脂モールドを構成する樹脂層表面(表層)部のフッ素元素濃度(Es)を、樹脂モールドを構成する樹脂層を構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)より大きくでき、さらには樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)をより小さくするように調整することができる。
(A)(メタ)アクリレート
硬化性樹脂組成物(1)を構成する(メタ)アクリレートとしては、後述する(B)フッ素含有(メタ)アクリレート以外の重合性モノマーであれば制限はないが、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマーが好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーがより好ましい。そして、それらは非フッ素含有のモノマーであることが好ましい。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタアクリレートを意味する。
また、重合性モノマーとしては、重合性基を複数具備した多官能性モノマーであることが好ましく、重合性基の数は、重合性に優れることから1〜6の整数が好ましい。また、2種類以上の重合性モノマーを混合して用いる場合、重合性基の平均数は1〜4.5が好ましく、転写精度に優れる為1.5〜3.5が最も好ましい。単一モノマーを使用する場合は、重合反応後の架橋点を増やし、硬化物の物理的安定性(強度、耐熱性等)を得るため、重合性基の数が3以上のモノマーであることが好ましい。また、重合性基の数が1または2であるモノマーの場合、重合性数の異なるモノマーと併用して使用することが好ましい。
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、芳香族系の(メタ)アクリレート[フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等。]、炭化水素系の(メタ)アクリレート[ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等。]、エーテル性酸素原子を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート[エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等。]、官能基を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート等。]、シリコーン系のアクリレート等。他には、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート、ε―カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。アリル基を有するモノマーとしては、p−イソプロペニルフェノール、ビニル基を有するモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール等が挙げられる。なお、EO変性とはエチレンオキシド変性をECH変性とはエピクロロヒドリン変性を、PO変性とはプロピレンオキシド変性を意味する。
(B)フッ素含有(メタ)アクリレート
硬化性樹脂組成物(1)を構成するフッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖および/またはペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され且つトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖または分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖および/または直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位および(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、または(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基または式−(CH2)aSi(M1)3−b(M2)bで表される加水分解性シリル基が好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がより好ましい。ここで、M1は加水分解反応により水酸基に変換される置換基である。このような置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基またはエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M1としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M2は、1価の炭化水素基である。M2としては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基またはアルケニル基が好ましい。M2がアルキル基である場合、炭素数1〜炭素数4のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。M2がアルケニル基である場合、炭素数2〜炭素数4のアルケニル基が好ましく、ビニル基またはアリル基がより好ましい。aは1〜3の整数であり、3が好ましい。bは0または1〜3の整数であり、0が好ましい。加水分解性シリル基としては、(CH3O)3SiCH2−、(CH3CH2O)3SiCH2−、(CH3O)3Si(CH2)3−または(CH3CH2O)3Si(CH2)3−が好ましい。
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、官能基を有すると支持基材との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基等が挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも1つの官能基を含むことが好ましい。なお、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、フルオロジエン等を用いることができる。フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
フルオロ(メタ)アクリレートとしては、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)10F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)8F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)10F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)8F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)7F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)7F、CH2=CHCOOCH2CF2CF2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)4H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)2H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)4H、CH2=CHCOOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=CHCOOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(CH2OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CH2=CHCOOCH2CyFCH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CyFCH2OCOC(CH3)=CH2等のフルオロ(メタ)アクリレートが挙げられる(但し、CyFはペルフルオロ(1,4−シクロへキシレン基)を示す。)。
フルオロジエンとしては、CF2=CFCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF2CF=CF2、CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2、CF2=CFOCF2OCF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF=CF2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH2CH=CH2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH=CH2、CF2=CFCF2C(CF3)(OCH2OCH3)CH2CH=CH2、CF2=CFCH2C(C(CF3)2OH)(CF3)CH2CH=CH2等のフルオロジエンが挙げられる。
なお、本発明で用いるフッ素含有(メタ)アクリレートは、下記化学式(1)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートであると、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を低くした状態で、効果的に樹脂モールドの微細凹凸構造表面(表層)部のフッ素元素濃度(Es)を高くでき、支持基材への接着性と離型性を一層効果的に発現できるため、より好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツールDAC」を用いることができる。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性等の表面改質剤との併用もできる。例えば、ネオス社製「フタージェント」(例えば、Mシリーズ:フタージェント251、フタージェント215M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、フタージェント245F;Gシリーズ:フタージェント208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント730FM、フタージェント730LM;フタージェントPシリーズ:フタージェント710FL、FTX−710HL、等)、DIC社製「メガファック」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SF、等)、ダイキン社製「オプツールTM」(例えば、DSX、DAC、AES)、「エフトーンTM」(例えば、AT−100)、「ゼッフルTM」(例えば、GH−701)、「ユニダインTM」、「ダイフリーTM」、「オプトエースTM」、住友スリーエム社製「ノベックEGC−1720」、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ」、等が挙げられる。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、分子量Mwが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から分子量Mwが50〜5000であることが好ましく、分子量Mwが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量体を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。
溶剤含量は、少なくとも硬化性樹脂組成物(1)中で分散する量であればよく、硬化性組成物(1)100重量部に対して0重量部超〜50重量部が好ましい。乾燥後の残存溶剤量を限りなく除去することを配慮すると、0重量部超〜10重量部がより好ましい。
特に、レベリング性を向上させる為に溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が0.1重量部以上40重量部以下であれば好ましい。溶剤含量が0.5重量部以上20重量部以下であれば、硬化性樹脂組成物(1)の硬化性を維持できるためより好ましく、1重量部以上15重量部以下であれば、さらに好ましい。硬化性樹脂組成物(1)の膜厚を薄くする為に溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が300重量部以上10000重量部以下であれば、塗工後の乾燥工程での溶液安定性を維持できるため好ましく、300重量部以上1000重量部以下であればより好ましい。
(C)光重合開始剤
硬化性樹脂組成物(1)を構成する光重合開始剤は、光によりラジカル反応またはイオン反応を引き起こすものであり、ラジカル反応を引き起こす光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、下記の光重合開始剤が挙げられる。
また、次の公知慣用の光重合開始剤を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アセトフェノン系の光重合開始剤:アセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等。ベンゾイン系の光重合開始剤:ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等。ベンゾフェノン系の光重合開始剤:ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ペルフルオロベンゾフェノン等。チオキサントン系の光重合開始剤:チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等。アントラキノン系の光重合開始剤:2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン。ケタール系の光重合開始剤:アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール。その他の光重合開始剤:α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等。フッ素原子を有する光重合開始剤:ペルフルオロtert−ブチルペルオキシド、ペルフルオロベンゾイルペルオキシド等。
硬化性樹脂組成物(1)は、光増感剤を含んでいてもよい。光増感剤の具体例としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジスイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類のような公知慣用の光増感剤の1種または2種以上と組み合わせて用いることができる。
市販されている開始剤の例としては、BASFジャパン(株)製の「Irgacure(登録商標)」(例えば、Irgacure651、184、500、2959、127、754、907、369、379、379EG、819、1800、784、OXE01、OXE02)や「Darocur(登録商標)」(例えば、Darocur1173、MBF、TPO、4265)等が挙げられる。
光重合開始剤は、1種のみを単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。2種類以上併用する場合には、フッ素含有(メタ)アクリレートの分散性、および硬化性樹脂組成物(1)の微細凹凸構造表面(表層)部および内部の硬化性の観点から選択するとよい。例えば、αヒドロキシケトン系光重合開始剤とαアミノケトン系光重合開始剤とを併用することが挙げられる。また、2種類併用する場合の組み合わせとしては、例えば、BASFジャパン(株)製の「Irgacure」同士、「Irgacure」と「Darocure」の組み合わせとして、Darocure1173とIrgacure819、Irgacure379とIrgacure127、Irgacure819とIrgacure127、Irgacure250とIrgacure127、Irgacure184とIrgacure369、Irgacure184とIrgacure379EG、Irgacure184とIrgacure907、Irgacure127とIrgacure379EG、Irgacure819とIrgacure184、DarocureTPOとIrgacure184等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物(2)は、上述した光重合性混合物から(B)フッ素含有(メタ)アクリレートを除いたものを使用することができる。樹脂モールドを構成する樹脂が硬化性樹脂組成物(2)の硬化物である場合、金属層と離型層の両方、またはいずれか一方を設けることが、転写材の転写精度の観点から好ましい。
硬化性樹脂組成物(3)は、上述した硬化性樹脂組成物(1)にシリコーンを添加するか、または、硬化性樹脂組成物(2)にシリコーンを添加したものを使用することができる。
シリコーンを含むことにより、シリコーン特有の離型性や滑り性により、転写材の転写精度が向上する。硬化性樹脂組成物(3)に使用されるシリコーンとしては、例えば、ジメチルクロロシランの重合体であるポリジメチルシロキサン(PDMS)に代表される、常温で流動性を示す線状低重合度のシリコーンオイルや、それらの変性シリコーンオイル、高重合度の線状PDMSまたはPDMSを中程度に架橋しゴム状弾性を示すようにしたシリコーンゴムや、それらの変性シリコーンゴム、また樹脂状のシリコーン、PDMSと4官能のシロキサンから構成される3次元網目構造を有す樹脂であるシリコーンレジン(またはDQレジン)等が挙げられる。架橋剤として有機分子を用いる場合や、4官能のシロキサン(Qユニット)を用いる場合もある。
変性シリコーンオイル、変性シリコーンレジンは、ポリシロキサンの側鎖および/または末端を変性したものであり、反応性シリコーンと、非反応性シリコーンと、に分けられる。反応性シリコーンとしては、−OH基(水酸基)を含むシリコーン、アルコキシ基を含むシリコーン、トリアルコキシ基を含むシリコーン、エポキシ基を含むシリコーンが好ましい。非反応性シリコーンとしては、フェニル基を含むシリコーン、メチル基とフェニル基を双方含むシリコーン等が好ましい。1つのポリシロキサン分子に上記したような変性を2つ以上施したものを使用してもよい。
変性シリコーンの市販品としては、具体的にはTSF4421(GE東芝シリコーン社製),XF42−334(GE東芝シリコーン社製),XF42−B3629(GE東芝シリコーン社製),XF42−A3161(GE東芝シリコーン社製),FZ−3720(東レ・ダウコーニング社製),BY 16−839(東レ・ダウコーニング社製),SF8411(東レ・ダウコーニング社製),FZ−3736(東レ・ダウコーニング社製),BY 16−876(東レ・ダウコーニング社製),SF8421(東レ・ダウコーニング社製),SF8416(東レ・ダウコーニング社製),SH203(東レ・ダウコーニング社製),SH230(東レ・ダウコーニング社製),SH510(東レ・ダウコーニング社製),SH550(東レ・ダウコーニング社製),SH710(東レ・ダウコーニング社製),SF8419(東レ・ダウコーニング社製),SF8422(東レ・ダウコーニング社製),BY16シリーズ(東レ・ダウコーニング社製),FZ3785(東レ・ダウコーニング社製),KF−410(信越化学工業社製),KF−412(信越化学工業社製),KF−413(信越化学工業社製),KF−414(信越化学工業社製),KF−415(信越化学工業社製),KF−351A(信越化学工業社製),KF−4003(信越化学工業社製),KF−4701(信越化学工業社製),KF−4917(信越化学工業社製),KF−7235B(信越化学工業社製),KR213(信越化学工業社製),KR500(信越化学工業社製),KF−9701(信越化学工業社製),X21−5841(信越化学工業社製),X−22−2000(信越化学工業社製),X−22−3710(信越化学工業社製),X−22−7322(信越化学工業社製),X−22−1877(信越化学工業社製),X−22−2516(信越化学工業社製),PAM−E(信越化学工業社製)等が挙げられる。
反応性シリコーンとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、ビニル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。
また、ビニル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基または脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することにより、シリコーンを化学結合を介し樹脂モールド中に組み込むことができるため、転写精度が向上する。特に、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基または脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することにより、上記効果をより一層発揮するため好ましい。樹脂モールドの樹脂層の硬化性という観点からは、ビニル基またはメタクリル基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することが好ましい。また、支持基材への接着性という観点からは、エポキシ基または脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することが好ましい。ビニル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基または脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物は、1種類のみを使用してもよく、複数を併用してもよい。
光重合性基を持つシリコーンと、光重合性基を持たないシリコーンは、併用しても、単独で用いてもよい。
ビニル基を含有するシリコーン化合物としては、例えば、KR−2020(信越シリコーン社製)、X−40−2667(信越シリコーン社製)、CY52−162(東レダウコーニング社製)、CY52−190(東レダウコーニング社製)、CY52−276(東レダウコーニング社製)、CY52−205(東レダウコーニング社製)、SE1885(東レダウコーニング社製)、SE1886(東レダウコーニング社製)、SR−7010(東レダウコーニング社製)、XE5844(GE東芝シリコーン社製)等が挙げられる。
メタクリル基を含有するシリコーン化合物としては、例えば、X−22−164(信越シリコーン社製),X−22−164AS(信越シリコーン社製)、X−22−164A(信越シリコーン社製)、X−22−164B(信越シリコーン社製)、X−22−164C(信越シリコーン社製)、X−22−164E(信越シリコーン社製)等が挙げられる。
アミノ基を含有するシリコーン化合物としては、例えば、PAM−E(信越シリコーン社製)、KF−8010(信越シリコーン社製)、X−22−161A(信越シリコーン社製)、X−22−161B(信越シリコーン社製)、KF−8012(信越シリコーン社製)、KF−8008(信越シリコーン社製)、X−22−166B−3(信越シリコーン社製)、TSF4700(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、TSF4701(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、TSF4702(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、TSF4703(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、TSF4704(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、TSF4705(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、TSF4706(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、TSF4707(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、TSF4708(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、TSF4709(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)等が挙げられる。
エポキシ基を含有するシリコーン化合物としては、例えば、X−22−163(信越シリコーン社製)、KF−105(信越シリコーン社製)、X−22−163A(信越シリコーン社製)、X−22−163B(信越シリコーン社製)、X−22−163C(信越シリコーン社製)、TSF−4730(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、YF3965(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)等が挙げられる。
脂環式エポキシ基を含有するシリコーンとしては、例えば、X−22−169AS(信越シリコーン社製)、X−22−169B(信越シリコーン社製)等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物(4)は、上記硬化性樹脂組成物(1)〜(3)に対し、以下で説明するゾルゲル材料を添加したものや、または、ゾルゲル材料のみで構成された組成物を採用することができる。硬化性樹脂組成物(1)〜硬化性樹脂組成物(3)に対し、ゾルゲル材料を加えることで、ゾルゲル材料特有の収縮採用による上記モールドの複製効率が向上する効果や、ゾルゲル材料特有の無機として性質を発揮することが可能となり、微細凹凸構造の耐久性が向上し、転写用鋳型の繰り返し使用性が向上する。
樹脂モールドを構成するゾルゲル材料としては、熱や触媒の作用により、加水分解・重縮合が進行し、硬化する化合物群である、金属アルコキシド、金属アルコラート、金属キレート化合物、ハロゲン化シラン、液状ガラス、スピンオングラスや、これらの反応物であれば、特に限定されない。これらを総称して金属アルコキシドと呼ぶ。
金属アルコキシドとは、Si,Ti,Zr,Zn,Sn,B,In,Alに代表される金属種と、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、または、イソプロピル基等の官能基が結合した化合物群である。これらの官能基が、水、有機溶剤または加水分解触媒等により、加水分解・重縮合反応を進行させ、メタロキサン結合(−Me−O−Me−結合。ただし、Meは金属種)を生成する。例えば、金属種がSiであれば、−Si−O−Si−といったメタロキサン結合(シロキサン結合)を生成する。金属種(M1)と、金属種(Si)の金属アルコキシドを用いた場合、例えば、−M1−O−Si−といった結合を生成することもできる。
例えば、金属種(Si)の金属アルコキシドとしては、例えば、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、等と、これら化合物群のエトキシ基が、メトキシ基、プロピル基、またはイソプロピル基に置き換わった化合物等が挙げられる。また、ジフェニルシランジオールやジメチルシランジオールといった、ヒドロキシ基を有す化合物も選択できる。
また、上記官能基の1つ以上が、金属種から酸素原子を介さずに、直接フェニル基等に置換された形態をとってもよい。例えば、ジフェニルシランジオールやジメチルシランジオール等が挙げられる。これらの化合物群を用いることにより、縮合後の密度が向上し、樹脂モールドに対する転写材の浸透を抑制効果が向上し、転写材の転写精度が向上する。
ハロゲン化シランとは、上記金属アルコキシドの金属種がシリコンで、加水分解重縮合する官能基がハロゲン原子に置き換わった化合物群である。
液状ガラスとしては、アポロリング社製のTGAシリーズ等が挙げられる。所望の物性に合わせ、その他ゾルゲル化合物を添加することもできる。
また、金属アルコキシドとしてシルセスキオキサン化合物を用いることもできる。シルセスキオキサンとは、ケイ素原子1個に対し、1つの有機基と3つの酸素原子が結合した化合物ある。シルセスキオキサンとしては、組成式(RSiO3/2)nで表されるポリシロキサンであれば特に限定されるものではないが、かご型、はしご型、ランダム等のいずれの構造を有するポリシロキサンであってもよい。また、組成式(RSiO3/2)nにおいて、Rは、置換または非置換のシロキシ基、その他任意の置換基でよい。nは、8〜12であることが好ましく、硬化性樹脂組成物(4)の硬化性が良好になるため、8〜10であることがより好ましく、nは8であることがさらに好ましい。n個のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
シルセスキオキサン化合物としては、例えば、ポリ水素化シルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、ポリイイソプロピルシルセスキオキサン、ポリブチルシルセスキオキサン、ポリ−sec−ブチルシルセスキオキサン、ポリ−tert−ブチルシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサン等が挙げられる。また、これらのシルセスキオキサンに対してn個のRのうち少なくとも1つを、次に例示する置換基で置換してもよい。置換基としては、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシル、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−ドデシル、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−テトラデシル、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル等、アルコキシシリル基等が挙げられる。また、市販のシルセスキオキサンを使用することができる。例えば、Hybrid Plastics社の種々のかご型シルセスキオキサン誘導体、アルドリッチ社のシルセスキオキサン誘導体等が挙げられる。
金属アルコキシドは、重合反応が部分的に反応し、未反応の官能基が残っているプレポリマ状態であってもよい。金属アルコキシドが部分的に縮合することで、金属種が酸素元素を介し連なったプレポリマを得ることができる。つまり、部分的に縮合することで、分子量の大きなプレポリマを作ることができる。金属アルコキシドを部分的に縮合することで、樹脂モールドにフレキシビリティが付与され、結果、樹脂モールドを金属アルコキシドを用いた転写により作製する場合の、微細凹凸構造の破壊やクラックを抑制できる。
部分縮合度は、反応雰囲気や、金属アルコキシドの組み合わせ等により制御可能であり、どの程度の部分縮合度のプレポリマ状態で使用するかは、用途や使用方法により適宜選択できるため、特に限定はされない。例えば、部分縮合体を含む、硬化性樹脂組成物の粘度が50cP以上であると、転写精度および水蒸気への安定性がより向上するため好ましく、100cP以上であると、これらの効果をより発揮できるため、なお好ましい。特に、150cP以上であると好ましく、250cP以上であるとより好ましい。一方で、粘度の上限値は、転写形成できれば特に限定されないが、転写精度の観点から概ね5000cP以下が好ましく、4000cP以下であるとより好ましい。また、部分縮合を促進させたプレポリマは、脱水反応に基づく重縮合および/または脱アルコール反応に基づく重縮合により得ることができる。例えば、金属アルコキシド、水、溶剤(アルコール、ケトン、エーテル等)からなる溶液を20℃〜150℃の範囲で加熱し、加水分解、重縮合を得ることで、プレポリマを得ることができる。重縮合度は、温度、反応時間、および圧力(減圧力)により制御可能であり、適宜選定できる。また、水の添加を行わず、環境雰囲気中の水分(湿度に基づく水蒸気)を利用し、徐々に加水分解・重縮合を行うことで、プレポリマの分子量分布を小さくすることも可能である。さらに、重縮合を促進させるために、エネルギー線を照射する方法も挙げられる。ここでエネルギー線の光源は、金属アルコキシドの種類により適宜選定できるため、特に限定されないが、UV−LED光源、メタルハライド光源、高圧水銀灯光源等を採用できる。特に、金属アルコキシドに光酸発生剤を添加しておき、該組成物にエネルギー線を照射することで、光酸発生剤より光酸が発生し、該光酸を触媒として、金属アルコキシドの重縮合を促進でき、プレポリマを得ることができる。また、プレポリマの縮合度および立体配置を制御する目的で、金属アルコキシドをキレート化した状態にて、上記操作を行いプレポリマを得ることもできる。なお、上記プレポリマとは、少なくとも4つ以上の金属元素が酸素原子を介し連なった状態と定義する。すなわち、−O−M1−O−M2−O−M3−O−M4−O−以上に金属元素が縮合した状態をプレポリマと定義する。ここで、M1、M2、M3、M4は金属元素であり、同一の金属元素であっても異なっていてもよい。例えば、チタンを金属種に有す金属アルコキシドを予備縮合し、−O−Ti−O−からなるメタロキサン結合を生成した場合、[−O−Ti−]nの一般式において、n≧4の範囲でプレポリマとする。同様に、例えば、チタンを金属種に有す金属アルコキシドと、シリコンを金属種とする金属アルコキシドを予備縮合し、−O−Ti−O−Si−O−からなるメタロキサン結合を生成した場合、[−O−Ti−O−Si−]nの一般式においてn≧2の範囲でプレポリマとする。但し、−O−Ti−O−Si−のように、異種金属元素が含まれる場合、−O−Ti−O−Si−のように、互いに交互に配列するとは限らない。その為、[−O−M−]n(但し、M=TiまたはSi)と、いう一般式において、n≧4の範囲でプレポリマとする。なお、元素Aおよび元素Bを使用し、―A−B−のように化学組成を表現しているが、これは、元素Aと元素Bとの結合を説明するための表現である。例えば、元素Aが結合手を3以上有す場合であっても、同表現を使用している。即ち、−A−B−と表記することで、元素Aと元素Bが化学結合することを少なくとも表現しており、元素Aが元素B以外と化学結合を形成することも含んでいる。
金属アルコキシドは、フッ素含有シランカップリング剤を含むことができる。フッ素含有シランカップリング剤を含むことで、金属アルコキシドの硬化物からなる樹脂モールドの微細凹凸構造表面のエネルギーを低下させることが可能となり、離型層の形成等を行わなくても、転写材の転写精度が向上する。これは、離型層をあらかじめモールド内部に組み込むことを意味する。
フッ素含有シランカップリング剤としては、例えば、一般式F3C−(CF2)n−(CH2)m−Si(O−R)3(ただし、nは1〜11の整数であり、mは1〜4の整数であり、そしてRは炭素数1〜3のアルキル基である。)で表される化合物であることができ、ポリフルオロアルキレン鎖および/またはペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含んでいてもよい。直鎖状ペルフルオロアルキレン基、または炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され、かつ、トリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖または分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖および/または直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位、および(CF2O)単位からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位から構成されることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、または(CF2CF2CF2O)単位から構成されることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、表面への偏析性が優れるという観点から、(CF2CF2O)単位から構成されることが特に好ましい。
また、本発明においては、金属アルコキシドは、ポリシランを含むことができる。ポリシランは、シリコン元素が主鎖を構築し、主鎖が―Si−Si―の繰り返しから構成される化合物である。ポリシランに、エネルギー線(例えばUV)を照射することで、―Si−Si―結合が切断され、シロキサン結合が生成する。このため、ポリシランを含むことで、UV照射により、効果的にシロキサン結合を生成でき、金属アルコキシドを原料に、モールドを転写形成する際の転写精度が向上する。
また、樹脂モールドは、無機のセグメントと有機のセグメントを含むハイブリッドであってもよい。ハイブリッドであることにより、樹脂モールドを転写により作製する際の転写精度が向上し、かつ、微細凹凸構造の物理的耐久性も向上する。さらに、転写材の組成にもよるが、転写材の樹脂モールドの微細凹凸構造内部への浸透を抑制する効果が大きくなり、結果、転写精度を向上させることが可能となる。ハイブリッドとしては、例えば、無機前駆体と光重合(または熱重合)可能な樹脂や、有機ポリマーと無機セグメントが共有結合にて結合した分子、等が挙げられる。無機前駆体としてゾルゲル材料を使用する場合は、シランカップリング剤を含むゾルゲル材料の他に、光重合可能な樹脂を含むことを意味する。ハイブリッドの場合、例えば、金属アルコキシド、光重合性基を具備したシランカップリング材や、例えば、金属アルコキシド、光重合性基を具備したシランカップリング材、ラジカル重合系樹脂等を混合することができる。より転写精度を高めるために、これらにシリコーンを添加してもよい。シランカップリング剤を含む金属アルコキシドと、光重合性樹脂の混合比率は、転写精度の観点から、3:7〜7:3の範囲が好ましい。
樹脂モールドを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリメチルペタクリレート,シクロオレフィンポリマー,シクロオレフィンコポリマー,透明フッ素樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,アクリロニトリル/スチレン系重合体,アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系重合体,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリ(メタ)アクリレート,ポリアリレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリアミド,ポリイミド,ポリアセタール,ポリカーボネート,ポリフェニレンエーテル,ポリエーテルエーテルケトン,ポリサルホン,ポリエーテルサルホン,ポリフェニレンスルフィド,ポリフッ化ビニリデン,テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体,テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体,フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体,テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体,ポリフルオロ(メタ)アクリレート系重合体,主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体,ポリフッ化ビニル,ポリテトラフルオロエチレン,ポリクロロトリフルオロエチレン,クロロトリフルオロエチレン/エチレン系共重合体,クロロトリフルオロエチレン/炭化水素系アルケニルエーテル系共重合体,テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体,フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等が挙げられる。
また、樹脂モールドを構成する熱硬化性樹脂としては、ポリイミド,エポキシ樹脂,ウレタン樹脂等が挙げられる。
樹脂モールドを構成する支持基材(フィルム)の材質に関しては特に制限はなく、ガラス、セラミック、金属等の無機材料、プラスチック等の有機材料を問わず使用できる。成形体の用途に応じて、板、シート、フィルム、薄膜、織物、不織布、その他任意の形状およびこれらを複合化したものを使用できるが、屈曲性を有し連続生産性に優れたシート、フィルム、薄膜、織物、不織布等を含むことが特に好ましい。屈曲性を有する材質としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の紫外線(UV)硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラス等の無機基板、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂とを組み合わせ、または単独で用いて支持基材を構成させることもできる。
以上、本実施の形態に係る転写用鋳型について説明した。続いて、本発明の転写用鋳型を使用して被処理体上に微細凹凸構造を転写する方法について説明する。転写用鋳型のパタン部の凹部内部に充填層を充填配置することで、充填層転写用鋳型を製造できる。図26に示すように、充填層転写用鋳型400は、転写用鋳型401を含む。転写用鋳型401は、支持基材402の上に設けられた樹脂層403の表面に微細凹凸構造を有する。樹脂層403に設けられた凹部403aには、充填層404が充填されている。
図26における「S」は、転写用鋳型401の微細凹凸構造の凸部頂部403bの平均位置を意味する。「B」は、転写用鋳型401の微細凹凸構造の凹部403aの底部の平均位置を意味する。「Scc」は、転写用鋳型401の微細凹凸構造の凹部403aの内部に配置された充填層404の露出する表面平均位置を意味する。位置Sと位置Bとの最短距離は転写用鋳型401の微細凹凸構造の平均深さ(高さ)hである。位置Sと位置Sccとの最短距離は、充填層404の充填度合を表現する指標でありlccと表記する。充填層転写用鋳型400は、転写用鋳型401の微細凹凸構造の凹部403aの内部に0<lcc<1.0hの範囲を満たすように充填層404が配置されている。特に、充填層転写用鋳型400を使用し、難加工基材の微細加工を行う際の加工精度の点から、lcc≦0.9hを満たすと好ましく、lcc≦0.7hがより好ましく、lcc≦0.6hであるともっとも好ましい。一方で、同様の効果から、下限値が0.02h≦lccを満たすと好ましく、0.05h≦lccを満たすとより好ましく、0.1h≦lccを満たすと最も好ましい。
充填層404の充填について説明する。転写用鋳型401に充填層材料を希釈した溶液を塗工し、余剰な溶剤を除去することで充填層転写用鋳型400を得ることができる。ここで、充填層材料を希釈する溶剤として水系溶剤(例えば、アルコール、ケトン、エーテル等)を選定すると、塗工精度が向上するため好ましい。塗工方法としては、ローラーコート法、バーコート法、ダイコート法、噴霧コート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、インクジェット法、エアーナイフコート法、フローコート法、カーテンコート法、スピンコート法等等が適用できる。充填層材料を希釈する濃度は、単位体積当たりの充填層材料の固形分量が、単位面積下に存在する凹凸構造の体積より小さくなれば特に限定されない。
パタン部、すなわち転写領域への塗工性および充填層の充填配置精度を向上させる観点から、転写用鋳型401のパタン部に対する水の接触角は90度以上であり、パタン部の開口率は45%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、最も好ましくは65%以上であると好ましい。さらに、充填層材料を希釈する溶剤は、水系溶剤であると前記効果をいっそう発揮するため好ましい。水系溶剤としては例えば、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等が挙げられる。特に、アルコール、エーテル、ケトンであると好ましい。さらに、パタン部への、非パン部上にて弾かれた塗工液による侵入を阻害する観点から、バリア領域に対する水の接触角は90度以上であると好ましい。
さらに、充填層材料が、希釈塗工後の溶剤揮発過程において様態が変化する材料を含むと、材料自体の面積を小さくするというドライビングフォースも同時に働くと推定されるため、より効果的に充填層を充填配置可能となる。様態の変化とは、例えば、発熱反応や、粘度の大きくなる変化が挙げられる。例えば、金属アルコキシドに代表されるゾルゲル材料を含むと、溶剤揮発過程で、空気中の水蒸気と反応し、ゾルゲル材料が重縮合する。これにより、ゾルゲル材料のエネルギーが不安定化するため、溶剤乾燥に伴い低下する溶剤液面(溶剤と空気界面)から遠ざかろうとするドライビングフォースが働き、結果、ゾルゲル材料が良好にパタン部の凹部内部に充填配置される。
以上のような操作により充填層転写用鋳型400を製造することで、パタン部内におけるマクロな充填層の充填率の均等化を達成できる。例えば塗工不良(2)を例にとると、図27に示すように、バリア領域を設けない一般的な転写用鋳型501に対し、上記塗工を行い、充填層転写用鋳型500を製造した場合、パタン部505に充填塗工された充填層504は、非パタン部506上にてはじかれた塗工液の侵入により、充填率の大きな分布を有することとなる。
一方で、図28に示すように、本実施の形態に係る転写用鋳型401を用いた充填層転写用鋳型400では、パタン部405と非パタン部406との境界にバリア領域407を設けることにより、非パタン部406上にてはじかれた塗工液の侵入を効果的に阻害できるため、充填率の分布を小さくすることができる。つまり、地点A、B、Cのいずれにおいても充填率は略同一となる。このような、地点A,B,Cのいずれの箇所においても充填率がほぼ同一になるのは、バリア領域407を設ける為であり、バリア領域407を上記説明した条件範囲内にて設けることで、転写用鋳型401に対し塗工液を塗工する際に生じる振動や撓みの影響を極めて小さくすることが可能となる。充填層404の充填率分布が極めて小さい充填層転写用鋳型400を製造することが可能となるため、充填層転写用鋳型400を使用し難加工基材を微細加工する際の面内分布を小さくすることが可能となり、難加工基材に設けられる微細凹凸構造の効果を面内にて均質に発揮することが可能となる。
次に、本発明の実施の形態に係る充填層転写用鋳型400を用いて無機基材に対して加工を施す方法について説明する。図29は、本実施の形態に係る充填層転写用鋳型を用いて無機基材の加工方法の各工程を示す工程図である。
まず、図29Aに示すように、充填層転写用鋳型400に対し、有機層410を成膜し、有機層410を無機基材411に貼合する。なお、充填層転写用鋳型400を、無機基材411上に成膜された有機層410に貼合しても良い。続いて、図29Bに示すように、例えば、エネルギー線照射または加熱処理を施すことにより、充填層404と有機層410とを接着する。続いて、図29Cのように転写用鋳型401を剥離することで、無機基材411上に充填層404と有機層410を転写形成することができる。その後、図29Dに示すように、充填層403側からドライエッチングを行うことで、有機層410を容易に微細加工することができる。さらに、図29Eに示すように、得られた充填層404と有機層410から構成されるアスペクト比の高い微細マスクパタンをマスクとして機能させることで、無機基材411を図29Fに示すように容易に加工することができる。
このように無機基材411を加工できるため、サファイアといった難加工基材も容易に加工することができる。例えば、サファイア基材表面を上記手法により容易に加工することができる。加工されたサファイア表面に半導体発光素子を成膜することで、LEDを製造することができる。特に、転写用鋳型の微細凹凸構造のピッチが100nm〜500nm、高さが50nm〜500nmであると、LEDの内部量子効率を向上できる。さらに、配列として、ナノスケールで正規配列をなし、かつ、マイクロスケールの大きな周期性を有する、ピッチにマイクロスケールの周期を有する変調を加えたホール形状とすると、光取り出し効率も同時に向上させることが可能となり、高効率なLEDを製造することができる。
次に、本実施の形態に係る転写用鋳型を用いた被処理体への微細凹凸構造形成に適用した態様について説明する。
図30および図31は、本実施の形態に係る微細凹凸構造転写用鋳型を用いた被処理体への微細凹凸構造形成方法を説明するための工程図である。
図30Aに示すように、転写用鋳型10は、その主面上に凹凸構造11が形成されている。凹凸構造11は、複数の凹部11aと凸部11bで構成されている。転写用鋳型10は、例えば、フィルム状またはシート状の樹脂モールドである。
まず、図30Bに示すように、転写用鋳型10の凹凸構造11の凹部11aの内部に、後述の第1のマスク層をパターニングするための第2のマスク層12を充填する。第2のマスク層12は、例えば、ゾルゲル材料からなる。
次に、図30Cに示すように、第2のマスク層12を含む凹凸構造11の上に、第1のマスク層13を形成する。この第1のマスク層13は、後述する被処理体のパターニングに用いられる。第1のマスク層13は、例えば、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂からなる。
さらに、図30Cに示すように、第1のマスク層13の上側には、保護層14を設けることができる。保護層14は、第1のマスク層13を保護するものであり、必須ではない。
ここで、転写用鋳型10、第2のマスク層12および第1のマスク層13からなる積層体を、微細パタン形成用積層体15、または単に積層体15と呼ぶ。
次に、図31Aに示すような被処理体20を用意する。被処理体20は、例えば、サファイア基板である。まず、図31Bに示すように、被処理体20の主面上に、保護層14を取り除いた後の積層体15を、第1のマスク層13の露出面を被処理体20の主面に対面させてラミネート(熱圧着)する。続いて、積層体15に対してエネルギー線を照射して第1のマスク層13を硬化させて、積層体15を被処理体20に接着する。
次に、図31Cに示すように、転写用鋳型10を、第1のマスク層13および第2のマスク層12から剥離する。この結果、被処理体20、第1のマスク層13および第2のマスク層12からなる中間体21が得られる。
次に、第2のマスク層12をマスクとして、第1のマスク層13を、例えばアッシングにより、図31Dに示すようにパターニングする。さらに、パターニングされた第1のマスク層13をマスクとして、被処理体20に、例えば、反応性イオンエッチングを施して、図31Eに示すように、被処理体20の主面に微細凹凸パタン22を形成する。最後に、被処理体20の主面に残った第1のマスク層13を除去して、図31Fに示すような微細凹凸パタン22を有する被処理体20を得る。
この態様では、図30A〜図30Cに示す転写用鋳型10から積層体15を得るところまでを一つのライン(以下、第1のラインという)で行う。それ以降の、図31A〜図31Fまでを別のライン(以下、第2のラインという)で行う。より好ましい態様においては、第1のラインと、第2のラインとは、別の施設で行われる。このため、積層体15は、例えば、転写用鋳型10がフィルム状であり、可とう性を有する場合に、積層体15を巻物状(ロール状)にして保管または運搬される。また、積層体15は、転写用鋳型10がシート状である場合に、複数の積層体15を積み重ねて保管または運搬される。
さらに好ましい態様においては、第1のラインは、積層体15のサプライヤーのラインであり、第2のラインは、積層体15のユーザのラインである。このように、サプライヤーにおいて積層体15を予め量産し、ユーザに提供することで、次のような利点がある。
(1)積層体15を構成する転写用鋳型10の微細凹凸構造の精度を反映させ、被処理体20に微細加工を行うことが出来る。即ち、微細凹凸構造の精度を積層体15にて担保することが可能となり、煩雑なプロセスや装置を使用することなく、被処理体20を面内において精度高く微細加工することが出来る。
(2)加工された被処理体20を使用しデバイスを製造するのに最適な場所において積層体15を使用することが出来る。即ち、安定的な機能を有すデバイスを製造出来る。
上記説明したように、第1のラインを積層体15のサプライヤーのラインに、第2のラインを積層体15のユーザのラインにすることで、被処理体20の加工に最適な、そして、加工された被処理体20を使用しデバイスを製造するのに最適な環境にて積層体15を使用することが出来る。このため、被処理体20の加工およびデバイス組み立てのスループットを向上させることが出来る。更に、積層体15は転写用鋳型10と転写用鋳型10の微細凹凸構造上に設けられた機能層から構成される積層体である。即ち、被処理体20の加工精度を支配するマスク層の配置精度を、積層体15の転写用鋳型10の微細凹凸構造の精度にて担保することが可能となる。以上より、第1のラインを積層体15のサプライヤーのラインに、第2のラインを積層体15のユーザのラインにすることで、加工された被処理体20を使用しデバイスを製造するのに最適な環境にて、積層体15を使用し精度高く被処理体20を加工し使用することが出来る。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
実施例においては、以下の材料および測定方法を用いた。
・DACHP…フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製))
・M350…トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)
・I.184…1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製 Irgacure(登録商標) 184)
・I.369…2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製 Irgacure(登録商標) 369)
・TTB…チタニウム(IV)テトラブトキシドモノマー(Wako社製)
・DEDFS…ヂエトキシヂフェニルシラン(信越シリコーン社製 LS−5990)
・X21−5841…末端OH変性シリコーン(信越シリコーン社製)
・SH710…フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製)
・3APTMS…3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(信越シリコーン社製))
・M211B…ビスフェノールA EO変性ジアクリレート(アロニックスM211B(東亞合成社製))
・M101A…フェノールEO変性アクリレート(アロニックスM101A(東亞合成社製))
・OXT221…3−エチルー3{[(3−エチルオキセタンー3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(アロンオキセタンOXT−221(東亞合成社製))
・CEL2021P…3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3、’4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート
・DTS102…ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート(光酸発生剤(みどり化学社製))
・DBA…9、10−ジブトキシアントラセン(Anthracure(登録商標) UVS−1331(Anthracure(登録商標)UVS−1331(川崎化成社製))
・PGME…プロピレングリコールモノメチルエーテル
・MEK…メチルエチルケトン
・MIBK…メチルイソブチルケトン
・Es/Eb…微細凹凸構造を表面に具備する樹脂モールドの、XPS法により測定される表面(表層)フッ素元素濃度(Es)と、平均フッ素元素濃度(Eb)の比率。
樹脂モールドの表面(表層)フッ素元素濃度はX線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)にて測定した。XPSにおける、X線のサンプル表面への侵入長は数nmと非常に浅いため、XPSの測定値を本発明における樹脂モールド表面(表層)のフッ素元素濃度(Es)として採用した。樹脂モールドを約2mm四方の小片として切り出し、1mm×2mmのスロット型のマスクを被せて下記条件でXPS測定に供した。
XPS測定条件
使用機器 ;サーモフィッシャーESCALAB250
励起源 ;mono.AlKα 15kV×10mA
分析サイズ;約1mm(形状は楕円)
取込領域
Survey scan;0〜1, 100eV
Narrow scan;F 1s,C 1s,O 1s,N 1s
Pass energy
Survey scan; 100eV
Narrow scan; 20eV
一方、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)は、物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで測定した。
<転写用鋳型(IV)>
ドット形状の構造を具備する樹脂モールドへの塗工性試験を、次のように行った。
(a)円筒形状鋳型作製
円筒形状鋳型の基材には石英ガラスを用い、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により、微細凹凸構造を石英ガラス表面に形成した。円筒形状鋳型としては、パタン部301(以下、図23参照)のみを持つ円筒形状鋳型Aと、パタン部301およびバリア領域302を持つ円筒形状鋳型Bを作製した。パタン部301が有する凹凸構造は、円筒形状鋳型A,Bともに、ピッチ460nm、高さ460nm、凸部頂部径50nmとした。円筒形状鋳型Bにおけるバリア領域302は、パタン部301の外側に5mm幅で形成した。
円筒形状鋳型A,Bに対し、デュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施した。
(b)リール状転写用鋳型(IV)作製
DACHP,M350,I.184およびI.369を混合し、硬化性樹脂組成物を調液した。DACHPは、M350、100質量部に対し、10〜20質量部添加した。円筒形状鋳型A,Bそれぞれから、以下の工程に則り、樹脂モールドCを作製した。なお、後述する樹脂モールドCから樹脂モールドDを作る工程では、樹脂モールドCを作製する際に使用した樹脂と同様の樹脂を使用して、樹脂モールドDを作製した。さらに、樹脂モールド表面(表層)フッ素元素濃度(Es)と、バルクフッ素元素濃度(Eb)との比率は、パタン部311の構造部分で、測定算出した。
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように硬化性樹脂組成物を塗布した。次いで、円筒形状鋳型A,Bそれぞれに対し、硬化性樹脂組成物が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールドC(長さ200m、幅300mm)を得た。リール状樹脂モールドCのパタン部311における表面微細凹凸構造の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、ホール形状の構造は、ピッチ460nm、深さ460nm、開口幅230nmであった。
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、樹脂モールドCを作製した際に使用した樹脂と同様の硬化性樹脂組成物を塗布膜厚6μmになるように塗布した。次いで、円筒形状鋳型AまたはBから直接転写し得られた樹脂モールドCの微細凹凸構造面に対し、硬化性樹脂組成物が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写された、円筒形状鋳型AまたはBと同様の微細凹凸構造を具備するリール状の樹脂モールドD(長さ200m、幅300mm)を複数得た。リール状樹脂モールドDの表面微細凹凸構造の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、ドット形状の構造は、ピッチ460nm、高さ460nm、凸部頂部径50nmであった。得られたドット形状を具備する樹脂モールドDの、表面(表層)フッ素元素濃度(Es)と、平均フッ素元素濃度(Eb)の比率(Es/Eb)は、DACHPの仕込み量により40〜80の値をとり、樹脂モールドDの転写領域311およびバリア領域312の水に対する接触角は、いずれも90度より大きいことが確認された。
以下の樹脂モールドDを使用した検討においては、Es/Eb=74.1,55.4,49.0である撥水性の強い樹脂モールドを選定し、それら全てに対して、塗工性の検討を行った。
(c)樹脂モールドD(リール状転写用鋳型(IV))への直接塗工
樹脂モールドDの表面に形成された微細凹凸構造面に対し、以下材料E,F,Gを、それぞれ直接塗工し、塗工性を判断した。塗工性は、鋳型A由来の樹脂モールドDを使用した場合は、パタン部311部分と、非パタン部313の界面部分で判断した。鋳型B由来の樹脂モールドDを使用した場合は、パタン部311とバリア領域312の界面およびバリア領域312と非パタン部313の界面で判断した。それぞれの界面部分で、塗膜にむらや弾きが生じた場合には塗工不良と判断し、むらや弾き無く塗工されていた場合には塗工良好と判断した。
材料E…TTB;DEDFS;TEOS;X21−5841;SH710=65.25:21.75:4.35:4.35:4.35[g]で十分に混合した。続いて、3.25%の水を含むエタノール2.3mlを、攪拌下で、徐々に滴下した。その後、80度の環境で4時間熟成し、真空引きを行い、材料Eを得た。
材料F…TTB;DEDRS;X21−5841;SH710;3APTMS;M211B;M101A;M350;I.184;I.369=33.0:11.0:4.4:4.4:17.6:8.8:8.8:8.8:2.4:0.9[g]で十分に混合し、材料Fを得た。
材料G…TTB;DEDRS;X21−5841;SH710;3APTMS=46.9:15.6:6.3:6.3:25.0[g]で十分に混合し、続いて、3.25%の水を含むエタノール2.3mlを、攪拌下で徐々に滴下した。その後、80度の環境で2.5時間熟成し、真空引きを行った。この溶液に、M211B;M101A;M350;I.184;I.369=29.6:29.6:29.6:8.1:3.0[g]を混合した溶液42.2gを加え、十分に攪拌し、材料Gを得た。
材料E,F,Gを、PGMEまたはMIBKで希釈した。希釈倍率は、1%〜5%の範囲で行い、樹脂モールドDの微細凹凸構造内部のみが埋まる状態から、微細凹凸構造を完全に埋め、かつ、微細凹凸構造上に塗膜が形成される状態まで試みた。
樹脂モールドDの微細凹凸構造面に対する材料E,F,Gの塗工は、上記(b)リール状転写用鋳型(IV)作製と同様の装置を使用した。マイクログラビアコーティングにて、樹脂モールドDの微細凹凸構造面に、希釈した材料を塗工し、80度の乾燥雰囲気を通過させた状態を確認した。
(d)バリア領域の構造
バリア領域における微細凹凸構造は、パタン部の平均ラフネスファクタRf1と、バリア領域の平均ラフネスファクタRf2とが連続化し、且つ、バリア領域の平均ラフネスファクタRf2が、非パタン部(Rf=1)へと連続的に変化することを設計指針として以下2種類を設計した。すなわち、平均ラフネスファクタRf2が、パタン部側からバリア領域側へと減少するようなバリア領域を設けた。
(d−1)バリア領域(1)
円筒形状鋳型の周方向のピッチ(周ピッチ)を変化させ、軸方向のピッチ(送りピッチ)は、周ピッチに従い、正規配列になるように設定した。パタン部とバリア領域との界面を点0としてとり、パタン部からバリア領域の方向への軸(距離)を設定した。図32は、この場合における周ピッチと距離(グラフ100)、および、ラフネスファクタRfと距離(グラフ101)との関係を示すグラフである。図32に示すグラフの横軸はパタン部とバリア領域との界面(点0)からの距離[mm]を示し、縦軸(左)は周ピッチ[nm]を示し、縦軸(右)はラフネスファクタRfの値を示す。図32において、送りピッチは、周ピッチ×(0.866)である。点0(距離0mm)におけるピッチは460nmであり、パタン部と連続である。点0からの距離が大きくなるほど、周ピッチは指数的に増加する。この周ピッチの変化に伴い、ラフネスファクタRf2は、フラットである1へと連続的に変化する。すなわち、ラフネスファクタRf2は、パタン部側からバリア領域側へと減少する。また、ピッチがパタン部側からバリア領域側へと大きくなることに伴い、開口率はパタン部側からバリア領域側へと増加している。
(d−2)バリア領域(2)
円筒形状鋳型の送りピッチのみを変化させ、周ピッチは460nmで一定とした。配列は正規配列とした。パタン部とバリア領域との界面を点0としてとり、パタン部からバリア領域の方向への軸(距離)を設定した。図33は、この場合における送りピッチと距離(グラフ102)、および、ラフネスファクタRfと距離(グラフ103)との関係を示すグラフである。図33に示すグラフの横軸はパタン部とバリア領域との界面(点0)からの距離[mm]を示し、縦軸(左)は送りピッチ[nm]を示し、縦軸(右)はラフネスファクタRfの値を示す。軸ピッチは、460nmで一定である。点0(距離0mm)における送りピッチは398nmであり、パタン部と連続である。点0からの距離が大きくなるほど、送りピッチは指数的に増加する。この送りピッチの変化に伴い、ラフネスファクタRfは、フラットである1へと連続的に変化する。すなわち、ラフネスファクタRf2は、パタン部側からバリア領域側へと減少する。また、ピッチがパタン部側からバリア領域側へと大きくなることに伴い、開口率はパタン部側からバリア領域側へと増加している。
(e)塗工結果
バリア領域を持たない鋳型A由来の樹脂モールドDを用いた場合(比較例1)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、パタン部と非パタン部界面において、むらが観察された。むらは、溶剤の揮発乾燥と共に白いもやとなって観察された。これは、図1Bに示すように、パタン部111と非パタン部112との界面上において塗工液113の膜内部に強い応力が働き、塗工液113の膜の分裂が生じ、これにより塗工斑(膜厚斑)が生じたためである(塗工不良(1))。
バリア領域を持つ鋳型B由来の樹脂モールドDを用いた場合(実施例1)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、パタン部とバリア領域との界面、および、バリア領域と非パタン部との界面において、むらは観察されず、良好な塗工が得られた。これは、図4Aに示すように、バリア領域111上において塗工液113の膜内部の応力が緩和され、塗工液113の膜の分裂が生じず、これにより塗工が良好に行われたためである。
(f)その他検討
検討(a)〜(e)において、樹脂モールドDのパタン部の構造がドット形状であり、ピッチ200nm、高さ400nm、凸部頂部径20nmの場合についても、同様の検討を行った。バリア領域は、パタン部のラフネスファクタRfが連続的に減少し、かつ、非パタン部(ラフネスファクタRf=1の部分)へと繋がるように上記周ピッチを制御し設計した。すなわち、ラフネスファクタRf2は、パタン部側からバリア領域側へと減少する。また、ピッチがパタン部側からバリア領域側へと大きくなることに伴い、開口率はパタン部側からバリア領域側へと増加している。
本検討においても、バリア領域を持たない鋳型A由来の樹脂モールドD’を用いた場合(比較例2)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、パタン部と非パタン部との界面において、むらが観察された。むらは、白いもやとなって観察された。一方、バリア領域を持つ鋳型B由来の樹脂モールドDを用いた場合(実施例2)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、パタン部とバリア領域との界面、および、バリア領域と非パタン部との界面において、むらは観察されず、良好な塗工が得られた。
また、リール状樹脂モールドではなく、平板鋳型を使用し、同様の検討を行った。平板鋳型の基材には石英ガラスを用い、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により、微細凹凸構造を、平板石英表面に形成した。平板鋳型としては、パタン部のみを持つ平板鋳型A2と、パタン部とバリア領域を持つ平板鋳型B2を作製した。パタン部における微細凹凸構造は、平板鋳型A2,B2とも、ピッチ460nm、高さ460nm、凸部底部幅230nm、凸部頂部径40nmとした。また、平板鋳型B2におけるバリア領域は、パタン部の周囲5mmの幅を使用して作製した。
本検討においても、バリア領域を持たない平板鋳型A2由来の、ドット形状を具備する樹脂モールドDを用いた場合(比較例3)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、パタン部と非パタン部との界面において、むらが観察された。むらは、白いもやとなって観察された。一方、バリア領域を持つ平板鋳型B2由来の樹脂モールドを用いた場合(実施例3)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、パタン部とバリア領域との界面、および、バリア領域と微細凹凸構造の無い部分との界面において、むらは観察されず、良好な塗工が得られた。
(g)離型性確認
実施例および比較例で得られた材料E〜Gを塗工後の樹脂モールドを使用し、離型性を確認した。離型性確認試験は次のように行った。
まず、石英基板上に、材料Hをスピンコート法により500nm〜1000nmの間で成膜した。
材料H…
A液=OXT221;CEL2021P;M211B;M101A=20g:80g:50g:50g
B液=PGME;DTS102;DBA;I.184=300g:8g:1g:5g
A液:B液=100g:157g
次に、樹脂モールドの塗工面を、材料H膜に貼合し、0.05MPaで押圧した後に、UV照射を行った。最後に、樹脂モールドを剥離した。
離型性は、走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡にて確認した。結果は下記表2中に示す。離型性良好(表2中○印)とは、「微細凹凸構造を具備した材料E〜Fのいずれか/材料H/石英」から成る構造が得られた場合とした。微細凹凸構造が破壊されていた場合、材料E〜Fが転写されていない場合等は、全て離型性不良(表2中×印)とした。
(比較例)
また、比較例として、バリア領域を持たない鋳型Aの構造において、パタン部と非パタン部(ラフネスファクタRf=1の領域)との界面に、表面に微細凹凸構造を持たない傾斜構造を備える鋳型Hも作成した。鋳型I由来の樹脂モールドを用いた場合(比較例4)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、微細凹凸構造を持たない傾斜構造部分において、むらが観察された。むらは、白いもやとなって観察された。
バリア領域を持つ鋳型B由来の樹脂モールドDに対し、以下の3つの表面処理を施した。
(比較例5)微細凹凸構造面に対し、オゾン処理を30分行った。
(比較例6)微細凹凸構造面に対し、酸素アッシングを1分行った。
(比較例7)微細凹凸構造面に対し、スパッタにより、SiO2を10nm成膜した。
処理を行った鋳型B由来の樹脂モールドDに対し、同様の塗工性試験および離型性確認試験を行った。結果は、下記表2中に示す。
実施例および比較例の結果を表2に示す。
以上から、バリア領域に微細凹凸構造を有さない場合(比較例1〜4)は、いずれの場合も塗工性に不良があることがわかる。また、バリア領域に微細凹凸構造を有する場合(実施例1〜3)は、パタン部における微細凹凸構造の形状や、鋳型の形状にかかわらず、塗工性および離型性が良好であることがわかる。一方、比較例5〜7のように、表面処理により塗工性は改善できるが、離型性が悪化することがわかる。
<転写用鋳型(I)>
次に、ホール形状の構造を具備する樹脂モールドへの塗工性試験を次のように行った。
(h)円筒形状鋳型作製
円筒形状鋳型の基材には石英ガラスを用い、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により、微細凹凸構造を石英ガラス表面に形成した。円筒形状鋳型としては、パタン部301(以下、図23参照)のみを持つ円筒形状鋳型Iと、パタン部301およびバリア領域302を持つ円筒形状鋳型Jを作製した。パタン部301が有する微細凹凸構造は、円筒形状鋳型I,Jともに、ピッチ460nm、高さ460nm、開口幅430nmとした。円筒形状鋳型Jにおけるバリア領域302は、パタン部301の外側に5mm幅で形成した。
円筒形状鋳型I,Jに対し、デュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施した。
(i)リール状転写用鋳型(I)作製
DACHP,M350,I.184およびI.369を混合し、硬化性樹脂組成物を調液した。DACHPは、M350、100質量部に対し、10〜20質量部添加した。円筒形状鋳型I,Jそれぞれから、以下の工程に則り、樹脂モールドKを作製した。なお、後述する樹脂モールドKから樹脂モールドLを作る工程では、樹脂モールドKを作製する際に使用した樹脂と同様の樹脂を使用して、樹脂モールドLを作製した。さらに、樹脂モールド表面(表層)フッ素元素濃度(Es)と、バルクフッ素元素濃度(Eb)との比率は、パタン部311の構造部分で、測定算出した。
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように硬化性樹脂組成物を塗布した。次いで、円筒形状鋳型I,Jそれぞれに対し、硬化性樹脂組成物が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールドK(長さ200m、幅300mm)を得た。リール状樹脂モールドKのパタン部311における表面微細凹凸構造の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、ドット形状は、ピッチ460nm、高さ460nmであった。
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、樹脂モールドKを作製した際に使用した樹脂と同様の硬化性樹脂組成物を塗布膜厚6μmになるように塗布した。次いで、円筒形状鋳型IまたはJから直接転写し得られた樹脂モールドKの微細凹凸構造面に対し、硬化性樹脂組成物が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写された、円筒形状鋳型IまたはJと同様の微細凹凸構造を具備するリール状の樹脂モールドL(長さ200m、幅300mm)を複数得た。リール状樹脂モールドLの表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、ホール形状は、ピッチ460nm、高さ460nm、開口幅430nmであった。得られたホール形状を具備する樹脂モールドDの、表面(表層)フッ素元素濃度(Es)と、平均フッ素元素濃度(Eb)の比率(Es/Eb)は、DACHPの仕込み量により40〜80の間であり、樹脂モールドLのパタン部311およびバリア領域312の水に対する接触角はいずれも90度より大きいことが確認された。
(j)樹脂モールドL(リール状転写用鋳型(I))への直接塗工(ホール形状)
樹脂モールドLの表面に形成された微細凹凸構造面に対し、材料E,F,Gを、それぞれ直接塗工し、塗工性を判断した。塗工性は、鋳型I由来の樹脂モールドLを使用した場合は、パタン部311(以下、図24参照)の非パタン部313に近い領域(パタン部311のエッジ部)で判断し、鋳型J由来の樹脂モールドLを使用した場合は、パタン部311のバリア領域312に近い領域(パタン部311のエッジ部)、および、非パタン部313のバリア領域312に近い部分(非パタン部313のエッジ部)で判断した。パタン部311のエッジ部に塗工斑が生じた場合には塗工不良と判断し、むら無く塗工されていた場合には塗工良好と判断した。
材料E,F,Gを、PGMEまたはMIBKで希釈した。希釈倍率は、1%〜5%の範囲で行い、樹脂モールドLの微細凹凸構造内部のみが埋まる状態から、微細凹凸構造を完全に埋め、かつ、微細凹凸構造上に塗膜が形成される状態まで試みた。
樹脂モールドLの微細凹凸構造面に対する材料E,F,Gの塗工は、上記(i)リール状転写用鋳型(I)作製と同様の装置を使用した。マイクログラビアコーティングにて、樹脂モールドLの微細凹凸構造面に、希釈した材料E,F,Gを塗工し、80度の乾燥雰囲気を通過させた状態を確認した。
(k)バリア領域の構造
バリア領域として2種類設計し、それぞれ別個に円筒形状鋳型に具備させた。1つは、バリア領域における微細凹凸構造は、パタン部の平均ラフネスファクタRf1と、バリア領域の平均ラフネスファクタRf2とが連続化し、かつ、バリア領域の平均ラフネスファクタRf2が、非パタン部(Rf=1)へと連続的に変化することを設計指針とした(バリア領域A)。
もう1つは、バリア領域における微細凹凸構造は、パタン部の平均ラフネスファクタRf1と、バリア領域の平均ラフネスファクタRf2とが非連続化し、かつ、バリア領域の平均ラフネスファクタRf2が、非パタン部(Rf=1)へと非連続的に変化することを設計指針とした(バリア領域B)。
円筒形状鋳型の送りピッチのみを変化させ、周ピッチは460nmで一定とした。配列は正規配列とした。パタン部とバリア領域との界面を点0としてとり、パタン部からバリア領域の方向への軸(距離)を設定した。図34は、バリア領域Aに関する図であり、この場合における送りピッチと距離(グラフ104)、および、ラフネスファクタRfと距離(グラフ105)との関係を示すグラフである。図34に示すグラフの横軸はパタン部とバリア領域との界面(点0)からの距離[mm]を示し、縦軸(左)は送りピッチ[nm]を示し、縦軸(右)はラフネスファクタRfの値を示す。点0(距離0mm)における送りピッチは398nmであり、パタン部と連続である。点0からの距離が大きくなるほど、送りピッチは指数的に増加する。この送りピッチの変化に伴い、ラフネスファクタRfは、フラットである1へと連続的に変化する。すなわち、ラフネスファクタRf2は、パタン部側からバリア領域側へと減少する。また、ピッチがパタン部側からバリア領域側へと大きくなることに伴い、開口率はパタン部側からバリア領域側へと減少している。
図35は、バリア領域Bに関する図であり、この場合における送りピッチと距離(グラフ106)、および、ラフネスファクタRfと距離(グラフ107)との関係を示すグラフである。図35に示すグラフの横軸はパタン部とバリア領域との界面(点0)からの距離[mm]を示し、縦軸(左)は送りピッチ[nm]を示し、縦軸(右)はラフネスファクタRfの値を示す。図35において、点0(距離0mm)の位置に、パタン部とバリア領域のRfおよび送りピッチの非連続性を示すために、参照点としてパタン部のRf(A)および送りピッチ(B)も記載した。バリア領域の、点0(距離0mm)における送りピッチは867nmであり、パタン部と非連続であり、バリア領域内部では送りピッチは変化していない。そのため、ラフネスファクタRfは、パタン部と非連続であり、バリア領域内で一定である。また、非パタン部(フラットであるため、Rf=1)へと非連続的に変化する。すなわち、ラフネスファクタRf2は、パタン部側からバリア領域側へと減少する。また、ピッチがパタン部側からバリア領域側へと大きくなることに伴い、開口率はパタン部側からバリア領域側へと減少している。
(l)塗工結果
バリア領域を持たない鋳型I由来の樹脂モールドLを用いた場合(比較例8)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、非パタン部ではじかれた塗工液が、はじかれた塗工液の安定するまでの自己流動および樹脂モールドの振動に起因する流動により、パタン部へと侵入し、パタン部エッジ部に塗工斑が観察された。微細凹凸構造の体積よりも塗工固形分の体積が大きい場合は、パタン部と非パタン部との界面からパタン部方向に膜厚は減少すると共に、膜厚分布は良好になっていった。一方、微細凹凸構造の体積よりも塗工固形分の体積が小さい場合は、パタン部と非パタン部との界面から転写領域方向にむかって、図26に例示して説明した充填層404の充填率が、図27に例示するような分布を持つことが、透過型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分光法観察により確認された。
バリア領域を持つ鋳型J由来の樹脂モールドLを用いた場合(実施例4)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、非パタン部ではじかれた塗工液は、はじかれた塗工液が安定するまでの自己流動および樹脂モールドの振動に起因する流動により樹脂モールドの非パタン部上を移動したが、バリア領域を乗り越えることができず、バリア領域の非パタン部側にバリア領域に平行に配列した。この為、パタン部エッジ部に塗工斑は観察されなかった。
(m)その他検討
検討(h)〜(l)において、樹脂モールドLのパタン部の構造がホール形状であり、ピッチ200nm、深さ200nm、開口幅180nmの場合についても、同様の検討を行った。バリア領域は、パタン部のラフネスファクタRfが連続的に減少し、かつ、非パタン部(ラフネスファクタRf=1の部分)へと繋がるように設計した。すなわち、ラフネスファクタRf2は、パタン部側からバリア領域側へと減少する。また、ピッチがパタン部側からバリア領域側へと大きくなることに伴い、開口率はパタン部側からバリア領域側へと減少している。
本検討においても、バリア領域を持たない鋳型I由来の樹脂モールドL´を用いた場合(比較例9)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、非パタン部で弾かれた塗工液がパタン部へと侵入し、結果、パタン部のエッジ部に塗工斑が観察された。一方、バリア領域を持つ鋳型J由来の樹脂モールドL’を用いた場合(実施例5)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、非パタン部ではじかれた塗工液は、バリア領域を乗り越えることができず、結果、パタン部のエッジ部は、良好に塗工されていた。非パタン部上にてはじかれ、パタン部側へと向かい、バリア領域によりパタン部への侵入を阻止された塗工液は、バリア領域の非パタン部側に沿い配置されていた。バリア領域Aを有する場合も、バリア領域Bを有する場合も良好な塗工結果が得られたが、非パタン部上ではじかれた塗工液のバリア性(バリア領域でのはじかれ具合)は、バリア領域Bを有す場合がより強かった。
また、円筒形状鋳型ではなく、平板鋳型を使用し、同様の検討を行った。平板鋳型の基材には石英ガラスを用い、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により、微細凹凸構造を、平板石英表面に形成した。平板鋳型としては、パタン部のみを持つ平板鋳型I2と、パタン部とバリア領域を持つ平板鋳型J2を作製した。パタン部における微細凹凸構造は、平板鋳型I2,J2とも、ピッチ460nm、深さ460nm、開口幅430nmとした。また、平板鋳型J2におけるバリア領域は、パタン部の周囲5mmの幅を使用して作製した。
本検討においても、バリア領域を持たない平板鋳型I2由来の、ホール形状を具備する樹脂モールドLを用いた場合(比較例10)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、非パタン部ではじかれた塗工液が、パタン部へと侵入し、結果、パタン部のエッジ部に塗工斑が観察された。一方、バリア領域を持つ平板鋳型J2由来の樹脂モールドを用いた場合(実施例6)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、非パタン部ではじかれた塗工液は、バリア領域を乗り越えることができず、結果、パタン部のエッジ部は良好に塗工されていた。非パタン部上にてはじかれ、パタン部側へと向かい、バリア領域によりパタン部への侵入を阻止された塗工液は、バリア領域の非パタン部側に沿い配置されていた。
(n)離型性確認
実施例および比較例で得られた材料E〜Gを塗工後の樹脂モールドを使用し、離型性を確認した。離型性確認試験は次のように行った。
まず、サファイア基板上に、光硬化性樹脂(MUR/丸善石油化学社製)をスピンコート法により750nmで成膜した。
次に、樹脂モールドの塗工面を、材料H膜に貼合し、ラミネータを使用し0.01Mpaにて貼合した。その後、0.05MPaで押圧した後に、UV照射を行った。UV照射は積算光量が1200mJ/cm2となるまで行った。最後に、樹脂モールドを剥離した。
離型性は、走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡にて確認した。結果は下記表3中に示す。離型性良好(表3中○印)とは、「微細凹凸構造を具備した材料E〜Fのいずれか/材料H/サファイア」から成る構造が得られた場合とした。微細凹凸構造が破壊されていた場合、材料E〜Fが転写されていない場合等は、全て離型性不良(表3中×印)とした。
(比較例)
また、比較例として、バリア領域を持たない鋳型Iの構造において、パタン部と非パタン部(ラフネスファクタRf=1の領域)との界面に、表面に微細凹凸構造を持たない傾斜構造を備える鋳型Mも作成した。鋳型M由来の樹脂モールドを用いた場合(比較例11)、材料E〜Gおよびその濃度に関わらず、微細凹凸構造を持たない傾斜構造部分において、むらが観察された。むらは、白いもやとなって観察された。
バリア領域を持つ鋳型J由来の樹脂モールドLに対し、以下の3つの表面処理を施した。
(比較例12)微細凹凸構造面に対し、オゾン処理を30分行った。
(比較例13)微細凹凸構造面に対し、酸素アッシングを1分行った。
(比較例14)微細凹凸構造面に対し、スパッタにより、SiO2を10nm成膜した。
処理を行った鋳型J由来の樹脂モールドLに対し、同様の塗工性試験および離型性確認試験を行った。結果は、下記表3中に示す。
実施例および比較例の結果を表3に示す。
以上から、バリア領域に微細凹凸構造を有さない場合(比較例8〜10)は、いずれの場合も塗工性に不良があることがわかる。また、バリア領域に微細凹凸構造を有する場合(実施例4〜6)は、パタン部における微細凹凸構造の形状や、鋳型の形状にかかわらず、塗工性および離型性が良好であることがわかる。一方、比較例10〜14のように、表面処理により、塗工性は改善できるが、離型性が悪化することがわかる。
<転写用鋳型(I)の作成>
上記実施例に倣い、微細凹凸構造のピッチ、開口径およびEs/Eb値を変化させることで、転写領域(パタン部)への水の接触角、転写領域(パタン部)とバリア領域の開口率、転写領域(パタン部)とバリア領域のラフネスファクタを制御した、転写用鋳型(I)(リール状樹脂モールド)を作製した。なお、リール状樹脂モールドは、<転写用鋳型(I)>(i)リール状転写用鋳型(I)作製において、硬化性樹脂組成物を、DACHP:M350:I.184:I.369=17.5g:100g:5.5g:2.0gにしたこと、円筒形状鋳型から樹脂モールドを転写する際および樹脂モールドから樹脂モールドを転写する際の積算光量を1200mJ/cm2にしたこと以外は、同様におこない作製した。
作製した転写用鋳型(I)を表4に記載した。なお、バリア領域は、転写領域(パタン部)に対し、開口径を制御することで設計した。開口径は、円筒形状鋳型を作製する際の、露光エネルギー、回転速度およびドライエッチング時の圧力および時間を調整し、制御した。
表4に記載の転写用鋳型(I)No.1〜7を作製し、上記材料Fを、PGMEにて3重量%に希釈し、転写用鋳型(I)上に、バーコータを使用し塗工を行った。塗工速度は、25mm/secとした。塗工後、80℃の乾燥炉に転写用鋳型(I)を5分間入れ、溶剤を除去し、乾燥した。
評価は、塗工性、離型性、および、充填層転写用鋳型作製(表4中「充填層」と記す)、とし、目視および走査型電子顕微鏡にて判断した。
表4より、No.1,2,4,5に示されるように、Rf1>Rf2、Ar1>Ar2、パタン部への接触角が85°以上、好ましくは92°以上、且つ開口率が55%以上を満たすことにより、塗工性および離型性を両立できることがわかる。塗工不良(2)の抑制は、バリア領域の非パタン部側において、バリア領域に沿って、塗工液の固形分が配置されていることから、容易に目視判断できた。なお、No.3における塗工性評価は、塗工不良(2)、即ち、非パン部上にてはじかれた液滴がパタン部へと侵入することに起因する塗工膜厚斑にて判断した結果である。No.3に記載の転写用鋳型の表面フッ素元素濃度を低下させ、塗工性を向上させた結果、No.3に記載のバリア領域を設けることで、塗工不良(1)、即ち、パタン部と非パタン部界面上における塗工液の分裂に起因した塗工不良を抑制できることが確認された。
本発明のバリア領域の効果をより明確に視認するために、表4のNo.1に示される充填層転写用鋳型に対し、さらに下記条件で塗工を施し、表面の状態を写真撮影して観察した。新たな塗工液としては、ベンジル系アクリルポリマーに、アクリレートモノマーと光重合開始剤が添加されたものを使用した。濃度をプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびメチルエチルケトンにて12.6%にし、25mm/sec.のバーコティング法にて成膜した。成膜後、80度の乾燥炉内に5分間静置し、溶剤を乾燥させた。観察の結果、非パタン部上では、非パタン部上にてはじかれ、乾燥した塗工液に由来するドット(乾燥した半球状液滴)が認められた。一方で、バリア領域の非パタン部側には、複数のドットが認められたが、これらは、非パタン部上にてはじかれた塗工液滴が、パタン部へと侵入しようとしたが、バリア構造により阻止され、バリア領域の非パタン部側に並び乾燥した塗工液に由来する。以上の結果は、写真にて撮影できない表4の結果とも一致している。このように、バリア領域を設けることにより、非パタン部上にてはじかれた塗工液は、バリア領域による阻止によりパタン部へと侵入することができず、パタン部に対する塗工性が改善される。
例えば、No.3のようにRf1<Rf2の場合、非パタン部上にてはじかれた塗工液は、バリア構造上を移動し、パタン部へと侵入した。この為、充填層転写用鋳型は作製できていたが、図27に例示したように、充填層転写用鋳型の充填層の充填率が、バリア領域とパタン部界面から、パタン部方向に徐々に減少していることが走査型電子顕微鏡観察より確認された。一方でNo.7のようにパタン部の開口率(Ar1)が23%と小さいことで、塗工液はパタン部上にてはじかれ液滴化し、塗工が出来なかった。そのため、充填層転写用鋳型は作製出来なかった。この為、離型性の評価はできなかった。また、No.6に示すように、パタン部の接触角が45°の場合、非パタン部上での塗工液のはじきがみられず塗工性は良好であった。しかしながら、充填層転写用鋳型において、微細凹凸構造の凸部および凹部全てを覆うように、転写材の被膜が形成されており、充填層転写用鋳型は作製出来なかった。さらに、転写試験において、離型不良を生じた。
<転写用鋳型(II)の作成>
上記実施例に倣い、微細凹凸構造のピッチ、開口径、およびEs/Eb値を変化させることで、パタン部への水の接触角、パタン部とバリア領域の開口率、パタン部とバリア領域のラフネスファクタを制御した、転写用鋳型(II)(リール状樹脂モールド)を作製した。
作製した転写用鋳型(II)を表5に記載した。なお、バリア領域は、パタン部に対し、凸部径を制御することで設計した。凸部径は、円筒形状鋳型を作製する際の、露光エネルギーおよび回転速度、そしてドライエッチングの圧力および時間を調整し、制御した。
表5に記載の転写用鋳型(II)を作製し、上記材料Fを、PGMEにて3%に希釈し、転写用鋳型(II)上に、バーコータを使用し塗工を行った。
塗工速度は、25mm/sec.とした。塗工後、80℃の乾燥炉に転写用鋳型(II)を5分間入れ、溶剤を除去し、乾燥した。
評価は、塗工性、離型性、および、充填層転写用鋳型作製(表5中「充填層」と記す)、とし、目視および走査型電子顕微鏡にて判断した。
表5より、No.8,9,11,12に示されるように、Rf1<Rf2、Ar1>Ar2、パタン部への接触角が86°以上、好ましくは92°以上、且つ開口率が90%以上を満たすことにより、塗工性および離型性を両立できることがわかる。塗工不良(2)の抑制は、バリア領域の非パタン部側において、バリア領域に沿って、塗工液の固形分が配置されていることから、容易に目視判断できた。なお、No.10における塗工性評価は、塗工不良(2)、即ち、非パタン部上にてはじかれた液滴がパタン部へと侵入することに起因する塗工膜厚斑にて判断した結果である。No.10に記載の転写用鋳型の表面フッ素元素濃度を低下させ、塗工性を向上させた結果、No.10に記載のバリア領域を設けることで、塗工不良(1)、即ち、パタン部と非パタン部界面上における塗工液の分裂に起因した塗工不良を抑制できることが確認された。
例えば、No.10のようにRf1>Rf2の場合、非パタン部上にてはじかれた塗工液は、バリア構造上を移動し、パタン部へと侵入した。この為、充填層転写用鋳型は作製できていたが、図27に例示したように、充填層転写用鋳型の充填層の充填率が、バリア領域とパタン部界面から、パタン部方向に徐々に減少していた。一方でNo.14のようにパタン部の開口率(Ar1)が31%と小さいことで、塗工液はパタン部上にてはじかれ液滴化し、塗工が出来なかった。その為、充填層転写用鋳型は作製出来なかった。この為、離型性の評価はできなかった。また、No.13に示すように、パタン部の接触角が40°の場合、非パタン部上での塗工液のはじきがみられず塗工性は良好であった。しかしながら、充填層転写用鋳型において、微細凹凸構造の凸部および凹部全てを覆うように、転写材の被膜が形成されており、充填層転写用鋳型は作製出来なかった。さらに、転写試験において、離型不良を生じた。
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。