まず、本発明の実施の形態を説明する前に、本発明が解決する課題について、図面を用いて詳細に説明する。
〔メモリセルの構造と特性〕
図1の(a)はいわゆる単層クロスポイントメモリセルアレイの立体構造を示す図である。ここには、任意の一方向かつ平行に多数配線されたワード線(例えば第2層配線)52、ワード線52と直交するように一方向かつ平行に多数配線されたビット線(例えば第1層配線)53、及びワード線52とビット線53の交差する場所に配置され、ワード線52及びビット線53と電気的に接続されたメモリセル51が図示されている。
図1の(b)はいわゆる多層クロスポイントメモリセルアレイの立体構造を示す図である。ここには、ビット線53が第1配線層に配置(第1層ビット線53a)され、その上層に、ビット線53と直交する様にワード線52が第2配線層に配置(第1層ワード線52a)され、更にその上層に、ワード線52と直交する様にビット線53が第3配線層に配置(第2層ビット線53b)され、更にその上層に、ビット線53と直交する様にワード線52が第4配線層に配置(第2層ワード線52b)され、更にその上層に、ワード線52と直交する様にビット線53が第5配線層に配置(第3層ビット線53c)される形態で幾重にも積み重ねられた構造が図示されている。ワード線52とビット線53との各交点の位置に、ビット線53とワード線52とに挟まれて、メモリセル51が構成されている。
このようにクロスポイント方式のメモリセルアレイは配線の交点にメモリセルを形成する単純な構造で、さらにそれを垂直方向に積み重ねることで、微細化に頼ることなく単位面積当たりのメモリセルの面積の縮小化が可能なため、高集積化に適した構造として知られている。
以下では本発明者らが以前に発明した多層クロスポイントメモリセルアレイを例に、クロスポイントメモリセルアレイを具体的に構成するうえで、新たに見出した課題を説明する。
〔メモリセルの構造〕
図2にクロスポイントメモリセルアレイに用いるメモリセル51の断面構成図を示す。メモリセル51は、抵抗変化素子10と、電流制御素子29とが直列接続された構成を有し、1ビットを構成している。
抵抗変化素子10を構成する抵抗変化層は、第1の抵抗変化層(ここでは、第1の遷移金属酸化物層)13と第2の抵抗変化層(ここでは、第2の遷移金属酸化物層)12とが積層されている。本実施形態においては、その一例として、第1のタンタル酸化物層(第1の抵抗変化層13の一例)と第2のタンタル酸化物層(第2の抵抗変化層12の一例)とが積層されて構成されている。
この抵抗変化素子10は、窒化タンタル(TaN)で構成される下部電極14の上層に酸素不足型の第1のタンタル酸化物(TaOx、0<x<2.5)を第1の抵抗変化層(抵抗変化層を構成する第1の領域)13として積層し、その上部界面に300℃、200W、20秒の酸素プラズマを照射して、TaOxより酸素濃度の高い第2のタンタル酸化物(TaOy、x<y)で構成される第2の抵抗変化層(抵抗変化層を構成する第2の領域)12を薄く形成し、その上層に白金(Pt)で構成される上部電極11を積層した構造としている。ここで、酸素不足型とは、通常絶縁性を示す化学量論的組成である金属酸化物の組成より酸素量が少なく、半導体的な電気特性を示す金属酸化物の組成状態をさす。第2タンタル酸化物で構成される第2の抵抗変化層(以下、第2のタンタル酸化物層)12の酸素含有率は、第1タンタル酸化物で構成される第1の抵抗変化層(以下、第1のタンタル酸化物層)13の酸素含有率よりも高くなっている。例えば、化学量論的組成であるTa2O5の酸素含有率は、総原子数に占める酸素の比率(O/(Ta+O))となり、71.4%となる。したがって、酸素不足型のタンタル酸化物とは、酸素含有率が0%より大きく、71.4%より小さいことになる。ここで、抵抗変化素子に用いる遷移金属酸化物の抵抗値は、酸素含有率が大きいほど高い。
また、上記は言い換えると、第2のタンタル酸化物層12の酸素不足度は、第1のタンタル酸化物層13の酸素不足度よりも少ないとも表現できる。
酸素不足度とは、それぞれの遷移金属において、その化学量論的組成の酸化物を構成する酸素の量に対し、不足している酸素の割合をいう。例えば、遷移金属がタンタル(Ta)の場合、化学量論的な酸化物の組成はTa2O5であって、TaO2.5と表現できる。TaO2.5の酸素不足度は0%である。例えばTaO1.5の組成の酸素不足型のタンタル酸化物の酸素不足度は、酸素不足度=(2.5−1.5)/2.5=40%となる。
また、第1および第2の抵抗変化層を構成する金属は、タンタル以外の遷移金属を用いてもよい。遷移金属としては、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)等を用いることができる。遷移金属は複数の酸化状態をとることができるため、異なる抵抗状態を酸化還元反応により実現することが可能である。例えば、タンタル酸化物を用いる場合、第1のタンタル酸化物層13の組成をTaOxとした場合にxが0.8以上1.9以下であり、且つ、第2のタンタル酸化物層12の組成をTaOyとした場合にyがxの値よりも大である場合に、抵抗変化層の抵抗値を安定して高速に変化させることが確認できている。この場合、第2のタンタル酸化物層12の膜厚は、1nm以上8nm以下が好ましい。ハフニウム酸化物を用いる場合、第1の抵抗変化層13の一例としての第1のハフニウム酸化物層13の組成をHfOxとした場合にxが0.9以上1.6以下であり、且つ、第2の抵抗変化層12の一例としての第2のハフニウム酸化物層12の組成をHfOyとした場合にyがxの値よりも大である場合に、抵抗変化層の抵抗値を安定して高速に変化させることが確認できている。この場合、第2のハフニウム酸化物層12の膜厚は、3nm以上4nm以下が好ましい。また、ジルコニウム酸化物を用いる場合、第1の抵抗変化層13の一例としての第1のジルコニウム酸化物層13の組成をZrOxとした場合にxが0.9以上1.4以下であり、且つ、第2の抵抗変化層12の一例としての第2のジルコニウム酸化物層12の組成をZrOyとした場合にyがxの値よりも大である場合に、抵抗変化層の抵抗値を安定して高速に変化させることが確認できている。この場合、第2のジルコニウム酸化物層12の膜厚は、1nm以上5nm以下が好ましい。上記のように、抵抗が高く膜厚が薄い第2の抵抗変化層と、抵抗が低い第1の抵抗変化層の積層構造で抵抗変化膜を構成することにより、抵抗変化素子に印加された電圧は、抵抗が高い第2の抵抗変化層に、より多くの電圧が分配され、第2の抵抗変化層中で発生する酸化還元反応をより起こしやすくすることができる。
さらに、第1の抵抗変化層13の一例としての第1の遷移金属酸化物層13を構成する第1の遷移金属と、第2の抵抗変化層12の一例としての第2の遷移金属酸化物層12を構成する第2の遷移金属とは、異なる材料を用いてもよい。この場合、第2の遷移金属酸化物層12は、第1の遷移金属酸化物層13よりも酸素不足度が小さい、つまり抵抗が高い方が好ましい。このような構成とすることにより、抵抗変化時に上部電極11及び下部電極14間に印加された電圧は、第2の遷移金属酸化物層12に、より多くの電圧が分配され、第2の遷移金属酸化物層12中で発生する酸化還元反応をより起こしやすくすることができる。また、第1の遷移金属と第2の遷移金属とが互いに異なる材料を用いる場合、第2の遷移金属の標準電極電位は、第1の遷移金属の標準電極電位より低い方が好ましい。抵抗変化現象は、抵抗が高い第2の遷移金属酸化物層12中に形成された微小なフィラメント中で酸化還元反応が起こってその抵抗値が変化し、発生すると考えられる。例えば、第1の遷移金属酸化物層13に、酸素不足型のタンタル酸化物を用い、第2の遷移金属酸化物層12にチタン酸化物(TiO2)を用いることにより、安定した抵抗変化動作が得られる。チタン(標準電極電位=−1.63eV)はタンタル(標準電極電位=−0.6eV)より標準電極電位が低い材料である。標準電極電位は、その値が高いほど酸化しにくい特性を表す。第2の遷移金属酸化物層12に第1の遷移金属酸化物層13より標準電極電位が低い金属の酸化物を配置することにより、第2の遷移金属酸化物層12中でより酸化還元反応が発生しやすくなる。
本実施形態においては、第2の抵抗変化層12と接する電極となる上部電極11は白金(Pt)を用いているが、白金に限ることなく、第1の抵抗変化層13を構成するタンタル(Ta)の標準電極電位および下部電極14を構成する窒化タンタル(TaN)の標準電極電位より高い材料を用いることが好ましい。このような標準電極電位の条件を満たした構造の場合、抵抗変化は白金(Pt)で構成される上部電極11と接する、より酸素濃度の高いTaOyで構成される第2の抵抗変化層12で生じる。上部電極11の電圧を下部電極14の電圧より、所定電圧以上高く印加した場合、抵抗変化素子10は高抵抗状態に変化し、逆に下部電極14の電圧を上部電極11の電圧より、所定電圧以上高く印加した場合、抵抗変化素子10は低抵抗状態に変化する。
電流制御素子29は、印加電圧の正負双方向に非線形の電流電圧特性を有するダイオード素子で、窒素不足型窒化シリコンで構成される電流制御層22を窒化タンタル(TaN)等で構成される下部電極23と上部電極21とで挟持した構造を有している。双方向に非線形の電流電圧特性とは、双方向に電流が流れ、かつ、所定の電圧範囲では、電流制御素子29は高抵抗(オフ)状態を示し、所定の電圧範囲より電圧が高い領域および電圧が低い領域では低抵抗(オン)状態を示すことをいう。つまり、印加電圧の絶対値が所定値以下のときに電流制御素子29は高抵抗(オフ)状態を示し、所定値より大きいときに電流制御素子29は低抵抗(オン)状態を示す。
メモリセル51は、抵抗変化素子10と電流制御素子29とがビア27を用いて直列接続されたメモリセルである。ビア26によって、抵抗変化素子10の上部電極11と上部配線70(ビット線53またはワード線52のいずれか一方に対応)とが接続され、ビア28によって、電流制御素子29の下部電極23と下部配線71(ビット線53またはワード線52のいずれか他方に対応)とが接続される。
なお、図2において、電流制御素子29と抵抗変化素子10の位置関係は上下逆でもかまわない。
また、メモリセル51は、図3に示す、ビア27を省略した構造のものであっても構わない。また、ビア26及びビア28のいずれか一方又は両方を省略した構造のものであっても構わない。
図3は本発明の実施の形態に係る多層構造のメモリセルアレイのクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置を構成するメモリセル51の断面構造を示す図である。
メモリセル51は、窒化タンタル(TaN)で構成される第1電極23、窒素不足型窒化シリコンで構成される電流制御層22、TaNで構成される第2電極21、酸素不足型タンタル酸化物(TaOx)で構成される第1の抵抗変化層13、第1の抵抗変化層13を酸素プラズマ雰囲気中で酸化して形成された、TaOxより酸素濃度の高いTaOy(x<y)で構成される第2の抵抗変化層12、白金(Pt)で構成される第3電極11を順に積層した構造で構成される。メモリセル51の下層には、アルミニウム(Al)で構成される下部配線71が配置され、この下部配線71とメモリセル51の第1電極23とは第1ビア28で接続されている。一方、メモリセル51の上層には、アルミニウム(Al)で構成される上部配線70が配置され、この上部配線70とメモリセル51の第3電極11とは第3ビア26で接続されている。また、下部配線71と上部配線70とは、お互いに直交するように配置されている。
この構造では、第1電極23と電流制御層22と第2電極21で電流制御素子29を構成し、第2電極21と第1の抵抗変化層13と第2の抵抗変化層12と第3電極11で抵抗変化素子10を構成している。つまり、メモリセル51は、極性の異なる電圧が印加されることで低抵抗状態および高抵抗状態の少なくとも2つの状態を可逆的に遷移する抵抗変化素子10と、その抵抗変化素子10に直列に接続された電流制御素子29とを有する。
ここで第2電極21は各々の一方の電極を兼用している。またこのメモリセル構造では図2の構成で説明したように、抵抗変化は第1の抵抗変化層13の構成材料であるタンタルおよび抵抗変化素子10の下部電極に相当する第2電極21の構成材料であるTaNのいずれの標準電極電位よりも高い標準電極電位をもつ材料(ここでは白金(Pt))で構成される第3電極と接し、第1の抵抗変化層13より酸素濃度の高いTaOyで構成される第2の抵抗変化層12で生じる。上部配線70の電圧を下部配線71の電圧より、所定電圧以上高く印加した場合、抵抗変化素子10は高抵抗化方向に変化し、逆に下部配線71の電圧を上部配線70の電圧より、所定電圧以上高く印加した場合、抵抗変化素子10は低抵抗化方向に変化する。つまり、抵抗変化素子10は、第2電極と第3電極とそれらに挟まれた第1の抵抗変化層13と第2の抵抗変化層12がZ方向(積層方向)に順に配置され、第2電極から第3電極方向にみた構造と、第3電極から第2電極方向にみた構造は非対称性を有し、第2電極を基準に第3電極に所定電圧以上の電圧が印加されたとき高抵抗状態に変化し、第3電極を基準に第2電極に所定電圧以上の電圧が印加されたとき低抵抗状態に変化する特性を有する。
図4は、抵抗変化素子10の構造と対応した接続関係を示す回路図、つまり、メモリセル51に対応する等価回路図を示している。
〔メモリセルの特性〕
次に、メモリセル51の動作について図5を用いて説明する。図5は、図2の構造を持つメモリセル51に対し、下部配線71よりも上部配線70が高い電圧となる極性を正として電圧を印加した場合の電圧と電流との関係を実測した特性図である。
当初、メモリセル51は高抵抗状態であるとする。メモリセル51に対し、印加電圧0Vから、上部配線70よりも下部配線71が高い電位となる負極性の電圧を徐々に印加していくと、C点から電流が流れ出し、抵抗変化素子は高抵抗状態から低抵抗状態へと変化を開始する。さらにA点まで負方向に電圧を印加しているが、印加電圧に応じて急激に低抵抗化が進行している。その後、低抵抗状態のまま印加電圧0Vになるまで徐々に電圧を印加する。A点は、低抵抗化時に抵抗変化素子に流す電流の値により決まる。
その後、メモリセル51に対し、下部配線71よりも上部配線70が高い電位となる正極性の電圧を印加していくと、D点から電流が流れ出し、低抵抗状態の到達電圧(A点)と概ね点対称な点であるB点で、抵抗変化素子は低抵抗状態から高抵抗状態へと変化を開始する。さらに、E点まで印加すると電流増加が見られるが、この後印加電圧を下げていくと、印加電圧を上げるときと比較して電流が小さくなっているため、高抵抗状態に変化していることがわかる。
すなわち、図5に示す実測データは、図2の構造を持つメモリセル51について、上部配線70の電圧を基準として下部配線71の電圧が所定電圧VLth(C点)以上高くなったとき低抵抗状態に変化し、下部配線71の電圧を基準として上部配線70の電圧が所定電圧VHth(B点)以上高くなったとき高抵抗状態に変化する双方向性の抵抗変化特性を示し、また、低抵抗状態の印加電圧(A点)と、高抵抗状態への変化開始電圧(B点)とが、概ね点対称な電圧および電流となる関係にあることを示している。
また、低抵抗状態の抵抗値は、本メモリセル51において、高抵抗状態から低抵抗状態に変化させる際には、抵抗変化素子10に抵抗変化しうる所定の電圧(絶対値はVLth以上の電圧)で抵抗変化素子10に流す電流値の大小に応じた低抵抗値(A点)に変化する。また、低抵抗状態の印加電圧および電流(A点)と、高抵抗状態への変化開始電圧および電流(B点)は、原点に対しほぼ点対称な特性を示し、従って高抵抗化電圧および電流は低抵抗化電圧および電流と絶対値が同じ(極性は反対)、または絶対値が低抵抗化電圧および電流以上の電圧および電流で駆動することが必要になる。
即ち、安定な抵抗変化動作を行うためには、低抵抗化においては所定の電流値で電流制限することで所定の低抵抗状態を得、一方高抵抗化においては、低抵抗化とは逆の向きの電圧を印加し、低抵抗化時より多い電流駆動をすることが安定な抵抗変化の為には必要となる。
なお、メモリセル51に電圧を印加しても、低抵抗化時(つまり、高抵抗状態で)には0VからC点までの電圧区間および、高抵抗化時(つまり、低抵抗状態で)には0VからD点までの電圧区間は顕著には電流が流れない電圧帯である。
C点やD点は、電流制御素子29の閾値電圧(以下VFとよぶ)と、抵抗変化素子10の抵抗変化電圧との合計電圧に対応している。クロスポイントメモリセルアレイにおいては、選択メモリセルにはこの合計電圧以上の電圧を印加し、非選択メモリセルにはこのC点とD点の間に動作点がくるように制御して非選択メモリセルへのリーク電流を減じて、クロスポイントメモリセルアレイの読み出しや書き込みの動作を行うことが望ましい。
〔クロスポイントメモリセルアレイとアレイ等価回路〕
次に、クロスポイントメモリセルアレイのアレイ等価回路について説明する。
図1と同様にメモリセル51をマトリックス状に配置したメモリセルアレイ1の回路図を図6に示す。
図6において、24はn本の配線が平行に配置されたワード線であり、25はワード線と非接触に直交するm本の配線が平行に配置されたビット線である。抵抗変化素子10と電流制御素子29が直列に接続されたメモリセル51は、ワード線24とビット線25の交点のそれぞれに位置し、抵抗変化素子10の一端が対応するビット線25に接続され、電流制御素子29の一端が対応するワード線24に接続されている。すなわち、図6のメモリセルアレイ1は、ビット線方向にn個のメモリセル51が配列され、ワード線方向にm個のメモリセル51が配列された、(n×m)個のメモリセル51で構成されている。
図7はメモリセルアレイのアレイ等価回路への展開を説明する為、選択ビット線選と択ワード線を基準にその間に構成される選択メモリセルと非選択メモリセルの接続関係を模式的に表現した、いわゆる選択視点構成図である。
図6における選択メモリセル30は選択ビット線BL1と選択ワード線WL1とに接続される。図7は、図6の等価回路で、図6の構成を選択メモリセル30と非選択メモリセル群に分けて説明する図である。選択メモリセル30はその一端を選択ビット線BL1に、他端を選択ワード線WL1に接続される。その他多数の非選択メモリセルは、(1)メモリセル51の一端を選択ビット線BL1に接続される(n−1)個の第1非選択メモリセル群190と、(2)メモリセル51の一端を選択ワード線WL1に接続される(m−1)個の第3非選択メモリセル群192と、(3)多数の非選択ワード線群を介して第1非選択メモリセル群190のメモリセル51の他端と接続され、多数の非選択ビット線群を介して第3非選択メモリセル群192のメモリセル51の他端と接続される(n−1)×(m−1)個の第2非選択メモリセル群191とで表される。なお、本明細書では、省略表記として、ビット線を「BL」、ワード線を「WL」とも記す。
第1非選択メモリセル群190の1個のメモリセル51の他端は(m−1)個の第2非選択メモリセル群191のメモリセル51の一端と接続される。この第1非選択メモリセル群190と第2非選択メモリセル群191の関係の構成が(n−1)個存在する。第3非選択メモリセル群192の1個のメモリセル51の他端は(n−1)個の第2非選択メモリセル群191のメモリセル51の他端と接続される。この第3非選択メモリセル群192と第2非選択メモリセル群191の関係の構成が(m−1)個存在する。
第1非選択メモリセル群190の1個のメモリセル51と第2非選択メモリセル群191の(m−1)個のメモリセル51とが接続される状態は第1非選択メモリセル群190と第2非選択メモリセル群191との間に同様の関係が複数個存在するので、非選択ワード線群の各ノードはほぼ同じ電圧となる。また、第3非選択メモリセル群192の1個のメモリセル51と第2非選択メモリセル群191の(n−1)個のメモリセル51とが接続される状態は第3非選択メモリセル群192と第2非選択メモリセル群191との間に同様の関係が複数個存在するので、非選択ビット線群の各ノードはほぼ同じ電圧となる。
したがって、図7に示される等価回路は、非選択ワード線群の全ノードを1本に、非選択ビット線群の全ノードを一本に、縮退されることが可能となる。このように縮退化された等価回路を図8に示す。
図8において、選択メモリセル30の一端が選択ビット線BL1に接続され、他端が選択ワード線WL1に接続される。第1非選択メモリセル193は第1非選択メモリセル群190と等価で、並列数は(n−1)個である。第2非選択メモリセル194は第2非選択メモリセル群191と等価で、並列数は(n−1)×(m−1)個である。第3非選択メモリセル195は第3非選択メモリセル群192と等価で、並列数は(m−1)個である。前記第1非選択メモリセル193と第2非選択メモリセル194と第3非選択メモリセル195とが直列接続される。第2非選択メモリセル194と接続されない第1非選択メモリセル193の他方の端子が選択ビット線BL1に接続され、第2非選択メモリセル194と接続されない第3非選択メモリセル195の他方の端子が選択ワード線WL1に接続される。第1非選択メモリセル193と第2非選択メモリセル194とを接続する中間ノードを非選択ワード線NSWLとし、第2非選択メモリセル194と第3非選択メモリセル195とを接続する中間ノードを非選択ビット線NSBLとする。
以上の様に、図6に示すクロスポイントメモリセルアレイの選択メモリセルと非選択メモリセルとの関係を示す等価回路は図8の様になる。以降では、クロスポイントメモリセルアレイの任意の選択メモリセルの読み出し特性について、選択メモリセルのI−V特性と共に、非選択メモリセルを介するいわゆる漏れ電流についてのI−V特性についても触れていく。この様なメモリセルアレイに対するI−V特性の説明については、今後簡単化の為に図8の等価回路を用いて説明する。
〔読み出し時の等価回路とI−V特性〕
次に、図8の等価回路を用いて、従来の読み出し動作及びその特性を図9と図10を用いて説明する。
図9は、図8のメモリセルアレイの等価回路に対して、非選択ワード線及び非選択ビット線がハイインピーダンス状態(以下Hi−z状態と記す)の下、1ビットの選択メモリセルをセンスアンプにて読み出す場合についての状態を示す状態構成図である。
図9において、197は読み出し時のセンス用電源であり、このセンス用電源197は、読み出しのための電圧(センス電圧)として電圧VSAを発生する。196は一端がセンス用電源197に接続され、他端が選択ビット線BL1に接続された電流検知回路であり、この電流検知回路196は、いわゆる選択メモリセルが0データ又は1データを判別するセンスアンプである。選択ワード線WL1には電気的にグランド(GND)電圧0Vが接続されている。第1非選択メモリセル193と第2非選択メモリセル194とを接続している非選択ワード線(WL)群をNW点とし、その状態はHi−zである。第2非選択メモリセル194と第3非選択メモリセル195とを接続している非選択ビット線(BL)群の状態は同じくHi−zである。選択メモリセル30の一端は選択ビット線BL1に接続され、他端は選択ワード線WL1に接続されていることは言うまでもない。
また、図9の選択ビット線BL1にはセンス用電源197の電圧VSAが印加されており(電流検知回路196のインピーダンスは極めて0Ωに等しいとする)、選択ワード線WL1にはGNDが印加されている状態において、選択メモリセル30には選択ビット線BL1から選択ワード線WL1に向かって電流Iselが流れ、第1非選択メモリセル193には選択ビット線BL1から流入する電流Ib_nwが流れ、第2非選択メモリセル194及び第3非選択メモリセル195には選択ワード線WL1に流出する電流Inw_wが流れ、電流検知回路196には前記選択メモリセル30に流れる電流Iselと前記第1非選択メモリセル193に流れる電流Ib_nwとを合計した電流Isenが流れ、GND端子には前記選択メモリセル30に流れる電流Iselと第2非選択メモリセル194及び第3非選択メモリセル195に流れる電流Inw_wとを合計した電流Iswlが流れる。つまり、電流検知回路196を流れるセンス電流Isenは以下の式1で示され、
Isen=Isel+Ib_nw ・・・式1
GND端子に流れ込む電流Iswlは以下の式2で示される。
Iswl=Isel+Inw_w ・・・式2
ここで、非選択WL群と非選択BL群は共にHi−z状態より、
Ib_nw=Inw_w ・・・式3
であるので、センス電流IsenとGND電流Iswlの大きさは同一である。
ここで、メモリセルアレイの規模が、同一ビット線上のビット数が128bit(n=128)、同一ワード線上のビット数が1024bit(m=1024)の場合について考えると、図9における各非選択メモリセルのビット数は、第1非選択メモリセル193がn−1=127個、第2非選択メモリセル194が(n−1)×(m−1)=127×1023個、第3非選択メモリセル195がm−1=1023個である。
本メモリセルアレイの電圧電流特性(I−V特性)を図10に示す。
図10において、横軸は各セルに印加される電圧、縦軸は各セルを流れる電流である。特性線は選択メモリセル30を流れる電流Isel、第1非選択メモリセル193を流れる電流Ib_nw、第2非選択メモリセル194及び第3非選択メモリセル195を流れる電流Inw_wで、それぞれ、抵抗変化素子の抵抗状態が高抵抗状態(HR)と低抵抗状態(LR)の2状態(非選択メモリセルにおいては、その全抵抗変化素子の抵抗状態が高抵抗の場合と低抵抗の場合の2種類状態を示す)が示された計6本が描かれている。一例として、ここでの抵抗変化素子の高抵抗状態の抵抗値は、低抵抗状態の抵抗値より1桁高いとしている。また、選択メモリセルが低抵抗状態(LR)の場合は白三角、選択メモリセルが高抵抗状態(HR)の場合は白丸、非選択メモリセルがすべて低抵抗状態(LR)の場合のIb_nw及びInw_wは黒三角、非選択メモリセルがすべて高抵抗状態(HR)の場合のIb_nw及びInw_wは黒丸で表す。
図10に示される各特性線は、以下の条件の下で作成されている。つまり、選択メモリセル30の特性は、センス電圧がVSAの時、抵抗変化素子の抵抗値が高抵抗状態の場合はIsel(HR)、低抵抗状態の場合はIsel(LR)となる。また、第1非選択メモリセル193の特性は、選択ビット線BL1の印加電圧をVSAとした場合、非選択WL群(NW点)の電圧を0からVSAまで振った場合の第1非選択メモリセル193に流れる電流Ib_nwについて第1非選択メモリセル193の全抵抗変化素子が高抵抗状態(HR)の場合と低抵抗状態(LR)の場合のそれぞれを表している。第2非選択メモリセル194と第3非選択メモリセル195を合わせた特性は、選択ワード線WL1の電圧0Vを基準として、非選択WL群(NW点)の電圧を0からVSAまで振った場合の第2非選択メモリセル194と第3非選択メモリセル195に流れる電流Inw_wについて全抵抗変化素子が高抵抗状態(HR)の場合と低抵抗状態(LR)の場合のそれぞれを表している。つまり、非選択メモリセルの特性は選択ビット線BL1又は選択ワード線WL1の電圧を基準として非選択ワード線群(NW点)の電圧を振った場合を表す。
本特性において、非選択メモリセルを流れる電流Ib_nwとInw_wについては、非選択WL群及び非選択BL群がHi−zより、Ib_nw=Inw_wとなるので、図10のI−V特性による動作点は、特性Ib_nwと特性Inw_wの交点位置となり、その電流量は、全ての非選択メモリセルの抵抗変化素子が高抵抗状態(HR)の場合はIb_nw1となり、一方、全ての非選択メモリセルの抵抗変化素子が低抵抗状態(LR)の場合はIb_nw2となる。ここで、Ib_nw1とIb_nw2は、図中のIhzにほぼ等しい。
すなわち、選択メモリセル30の電流Iselは、抵抗変化素子が高抵抗状態の場合はIsel(HR)、一方、抵抗変化素子が低抵抗状態の場合はIsel(LR)であるのに対し、非選択メモリセルを流れる電流は、非選択メモリセルの抵抗変化素子の抵抗状態によって変動し、ほぼIhzとなり、Isel(HR)の10倍以上でかなり多い。従って、電流検知回路196のセンス電流Isenは、上記式1より、選択メモリセル30の抵抗変化素子が高抵抗状態かつ非選択メモリセルの抵抗変化素子が全て低抵抗状態の場合はIsel(HR)+Ib_nw2となり、一方、選択メモリセル30の抵抗変化素子が低抵抗状態かつ非選択メモリセルの抵抗変化素子が全て高抵抗状態の場合はIsel(LR)+Ib_nw1となる。図10の例では、選択メモリセル30の電流Iselの高抵抗状態の電流Isel(HR)に対する低抵抗状態の電流Isel(LR)の比率が3.2倍であるのに対し、センス電流Isenの電流(Isel(HR)+Ib_nw2)に対する電流(Isel(LR)+Ib_nw1)の比率は1.1倍と、選択メモリセルだけのセンス電流比率の約3分の1まで低下していることがわかる。なお、センス電流Isenの電流比率とは、選択メモリセルの抵抗変化素子が高抵抗状態と低抵抗状態におけるセンス電流Isenの電流比率の最悪値であり、クロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置における読み出しマージンに相当する。
この様に、非選択WL群と非選択BL群が共にHi−z状態の場合、選択メモリセル30の抵抗状態を電流検知回路196で判定して読み出しすることは、非常に効率が悪いと言える。
〔非選択WLバイアスによる読み出し効率の向上と課題〕
特許文献2では、読み出し時において、読み出しの効率向上の取り組みとして、非選択WL群と非選択BL群のそれぞれに電圧印加することが開示されている。しかし読み出し動作においては選択メモリセル30の電流量はビット線側に接続される電流検知回路196によって判別されるので、電流検知回路196に流れる電流Isenの多くが選択メモリセル30の電流Iselになればよいことから、第1非選択メモリセル193を介して選択ビット線BL1から流れ出す漏れ電流Ib_nwを削減すればよい。従って、読み出しの効率化の為の非選択線への電圧は第1非選択メモリセル193の非選択WL群に対してのみ印加すればよい。
図9の読み出しの等価回路に対して、読み出しの効率化を図る為に非選択ワード線へ電圧を印加した場合の等価回路を図11に示す。
図11において、198は非選択ワード線用電源であり、この非選択ワード線用電源198は、非選択WL群(NW点)に接続され、電圧VNWを発生する。他の構成要素及びメモリセルアレイの規模は図9と同一より、説明は省略する。
非選択ワード線用電源198の電圧VNWはセンス用電源197の電圧VSA以下である。つまり、VNW≦VSAとなる。
次に、図11の等価回路における読み出し時の電圧電流特性(I−V特性)を図12に示す。
図12において、横軸は各セルに印加される電圧、縦軸は各セルを流れる電流であり、記載されている特性線は図10と同一である。ただし、非選択WL群(NW点)に非選択ワード線用電源198から電圧VNWが印加されているので、本図の特性線は、図10とは動作点が異なる。
選択メモリセル30に対しては図9と同じバイアス状態より、セル電流Iselは、抵抗変化素子の抵抗値が高抵抗状態の場合はIsel(HR)となり、低抵抗状態の場合はIsel(LR)となる。
また、図12に示す第1非選択メモリセル193の特性線と第2非選択メモリセル194と第3非選択メモリセル195を合わせた特性線は図10と同じである。つまり、NW点で分離される2つグループの非選択メモリセル特性線は選択ビット線BL1又は選択ワード線WL1の電圧を基準として非選択ワード線群(NW点)の電圧を振った場合を表す。
図12において、非選択メモリセルを流れる電流Ib_nwとInw_wについては、非選択WL群(NW点)に非選択ワード線用電源198が接続され、電圧VNWが印加されるので、電流Ib_nwと電流Inw_wの動作点は図10に示す非選択WL群がHi−zの場合の前記動作点からは高電圧側にシフトした点となる。つまり、電流Ib_nwと電流Inw_wの動作点における電流は、全ての非選択メモリセルの抵抗変化素子が高抵抗状態(HR)の場合はそれぞれIb_nw1、Inw_w1となり、一方、全ての非選択メモリセルの抵抗変化素子が低抵抗状態(LR)の場合はそれぞれIb_nw2、Inw_w2となる。ここで、Ib_nw1とIb_nw2の値はほぼ等しい。
電流検知回路196から選択BLを介して非選択メモリセルに電流は、非選択ワード線群(NW点)に電圧VNWが印加されているので、第1非選択メモリセル193を流れる電流はIb_nwとなる。
すなわち、選択メモリセル30を流れる電流Iselは、抵抗変化素子が高抵抗状態の場合はIsel(HR)、低抵抗状態の場合はIsel(LR)であるのに対し、非選択メモリセルを流れる電流は、非選択メモリセルの抵抗変化素子の抵抗状態によって変動し、Ib_nw1以上Ib_nw2以下となる。従って、電流検知回路196のセンス電流Isenは、上記式1より、選択メモリセル30の抵抗変化素子が高抵抗状態かつ非選択メモリセルの抵抗変化素子が全て低抵抗状態の場合はIsel(HR)+Ib_nw2となり、一方、選択メモリセル30の抵抗変化素子が低抵抗状態かつ非選択メモリセルの抵抗変化素子が全て高抵抗状態の場合はIsel(LR)+Ib_nw1となる。選択メモリセル30の電流Iselの高抵抗状態の電流(Isel(HR))に対する低抵抗状態の電流(Isel(LR))の比率が3.2倍であるのに対し、センス電流Isenの電流(Isel(HR)+Ib_nw2)に対する電流(Isel(LR)+Ib_nw1)の比率は1.98倍と約3分の2の低下で済んでいる。
この様に、図9や図10に示す非選択WL群と非選択BL群が共にHi−z状態の場合に比べると(この場合、センス電流Isenの電流比率は1.1倍)、非選択ワード線群(NW点)に電圧を印加する構成では(この場合には、センス電流Isenの電流比率は1.98倍であるので)、センス電流Isenの電流比率が2倍程度良化していることがわかる。つまり、非選択ワード線群に電圧を印加する特許文献2の方法によれば、確かに、理論上の読み出しマージンは改善される。
ところで、非選択ワード線群(NW点)に電圧を印加する構成は、印加電圧VNWが如何なる場合も安定化していることが前提であるが、一般的には回路素子の製造ばらつきや外部電源ノイズによるばらつきに起因して、電圧VNWは変動する。仮に電圧VNWの1割程度が変動すると仮定すると、図12に示す様に、VNWを中心に触れ幅ΔVNWだけ変動する。このとき、非選択メモリセル電流Inw_wはΔInw_w1分変動し、Ib_nwは、全ての非選択メモリセルの抵抗変化素子が高抵抗状態(HR)の場合は(Isel(HR)+Ib_nw3)以上(Isel(HR)+Ib_nw4)以下となり、全ての非選択メモリセルの抵抗変化素子が低抵抗状態(LR)の場合は(Isel(LR)+Ib_nw3)以上(Isel(LR)+Ib_nw4)以下となる。従って、電流検知回路196のセンス電流Isenは、上記式1より、選択メモリセル30の抵抗変化素子が高抵抗状態かつ非選択メモリセルの抵抗変化素子が全て低抵抗状態の場合は(Isel(HR)+Ib_nw3)以上(Isel(HR)+Ib_nw4)以下となり、一方、選択メモリセル30の抵抗変化素子が低抵抗状態かつ非選択メモリセルの抵抗変化素子が全て高抵抗状態の場合は(Isel(LR)+Ib_nw3)以上(Isel(LR)+Ib_nw4)以下となる。選択メモリセル30の高抵抗状態と低抵抗状態が判別できる最悪のセンス電流はそれぞれ、選択メモリセル30の抵抗変化素子が高抵抗状態の場合のセンス電流Isenの最大値(Isel(HR)+Ib_nw4)と、選択メモリセル30の抵抗変化素子が低抵抗状態の場合のセンス電流Isenの最小値(Isel(LR)+Ib_nw3)となる。この時、(Isel(HR)+Ib_nw4)に対する(Isel(LR)+Ib_nw3)の比率は、1.42倍となる。
つまり、動作点の電圧変動を考慮すると、センス電流Isenの電流比率は1.42倍と低下してしまう。これは、ダイオードに起因するメモリセルの電流特性が電圧に対して指数的に変化する非線形特性の為、非選択メモリセル群の電流が電圧変化対して敏感に変動してしまうことが原因と考えられる。
即ち、特許文献2では、読み出しの効率化を図る為の施策として、非選択WL群(NW点)に電圧を印加する構成が開示されているが、電圧変動に対して電流変化特性が急峻な本メモリセルを用いる記憶装置に於いては、電圧のばらつきの影響が大きく、その結果、電圧のばらつきを考慮した現実の読み出しマージンが低下するという課題が判明した。
そこで、本発明は、電圧に対して電流特性が敏感なメモリセルを用いるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置であって、印加電圧等の電気信号のばらつきを考慮した現実の読み出しマージンを拡大し、安定的な読み出しが可能な不揮発性記憶装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、非選択セルを介して選択ワード線に流入する電流の変化による電磁ノイズ(EMI)の発生という問題についても、安定的な動作が可能なクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置を提供することをも目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らは、以下の形態を考案した。
つまり、本発明に係るクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置の一形態は、極性の異なる電圧を印加することで低抵抗状態および高抵抗状態の少なくとも2つの状態を可逆的に遷移する抵抗変化素子と、前記抵抗変化素子に直列に接続された非線形の電流電圧特性を有する双方向の電流制御素子とを有するメモリセルが複数配置され、前記各メモリセルが、X方向に延びた複数のビット線と、Y方向に延びた複数のワード線との交点位置に形成されたクロスポイント型のメモリセルアレイと、前記複数のビット線から少なくとも一つのビット線を選択し、前記複数のワード線から少なくとも一つのワード線を選択することで、前記メモリセルアレイから少なくとも一つのメモリセルを選択するデコーダ回路と、選択されたメモリセルからデータを読み出す読み出し回路と、第1の定電流を供給する第1の電流源と、選択されたメモリセルからのデータの読み出しを制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記読み出し回路によるデータの読み出し時に、前記デコーダ回路で選択されたビット線である選択ビット線に前記読み出し回路から出力される読み出しのための電圧である第1の電圧を印加し、前記デコーダ回路で選択されたワード線である選択ワード線に第2の電圧を印加し、前記デコーダ回路で選択されていないワード線である非選択ワード線に前記第1の定電流を供給するように、前記デコーダ回路、前記読み出し回路および前記第1の電流源を制御する。
これにより、非選択ワードに対して、定電圧ではなく、定電流が印加され、いわゆる、非選択ワード線電流印加方式が採用される。本方式により、電圧に対して電流特性が敏感な本メモリセルを用いるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置に対して、印加する電気信号のばらつきを考慮した現実の読み出しマージンを拡大し、安定的な読み出し特性を実現することができる。
さらに、このような非選択ワード線電流印加方式では、非選択ワード線に印加される電流のばらつきが、従来の定電圧印加方式に比べ、小さくなるので、非選択セルを介して選択ワード線に流入する電流の変化による電磁ノイズ(EMI)の発生という問題についても、安定的な動作が可能になる。
ここで、前記読み出し回路と前記第1の電流源とは、少なくとも前記データの読み出し時に所定の電圧を供給する同じ電源に接続されていてもよい。これにより、読み出し回路のための単一のセンス用電源を用いて読み出し回路と第1の電流源とが構成され、本発明に係る非選択ワード線電流印加方式が簡易な回路で実現される。
また、前記クロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置はさらに、前記第1の電圧とデータの読み出しに先立つプリチャージ用の第3の電圧の何れかを前記デコーダ回路で選択されたビット線に選択的に接続する第1のスイッチ回路と、前記第2の電圧と前記第3の電圧の何れかを前記デコーダ回路で選択されたワード線に選択的に接続する第2のスイッチ回路と、前記第1の定電流と前記第3の電圧の何れかを前記デコーダ回路で選択されていないワード線に選択的に接続する第3のスイッチ回路とを備えてもよい。具体的には、前記制御回路は、第1のステップでは、前記選択ビット線に前記第1のスイッチ回路を介して前記第3の電圧が供給され、前記選択ワード線に前記第2のスイッチ回路を介して前記第3の電圧が供給され、前記非選択ワード線に前記第3のスイッチ回路を介して第3の電圧が供給されるように、前記第1乃至第3のスイッチ回路を制御し、第2のステップでは、前記選択ビット線に前記第1のスイッチ回路を介して前記第1の電圧が供給され、前記選択ワード線に前記第2のスイッチ回路を介して前記第2の電圧が供給され、前記非選択ワード線に前記第3のスイッチ回路を介して前記第1の定電流が供給されるように、前記第1〜第3のスイッチ回路を制御するのが好ましい。これにより、データの読み出しに先立つプリチャージが実現され、より確実なデータ読み出しが可能となる。
また、前記第1のステップで前記非選択ワード線に供給される前記第3の電圧は、前記第2のステップで供給される前記第1の電流源からの電流によって決まる前記非選択ワード線の電圧にほぼ等しいのが好ましい。これにより、第1のステップから第2のステップに切り替わったときにおける非選択ワード線の電圧レベルの変動が抑制され、より安定したデータ読み出しが可能になる。
また、前記クロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置は、複数の前記メモリセルアレイを備え、前記デコーダ回路は、前記複数のメモリセルアレイのうち、所定のワード線を選択するワード線デコーダ回路と、前記ワード線デコーダ回路によって選択されたワード線に電圧又は電流の供給を制御するワード線プリデコーダ回路とを有し、前記第1の電流源は、前記ワード線プリデコーダ回路へ前記第1の定電流を供給し、前記ワード線プリデコーダ回路は、前記第3のスイッチ回路を介して前記第1の定電流または前記第3の電圧に接続されていてもよい。これにより、非選択ワード線には第3のスイッチ回路およびワード線プリデコーダ回路を介して第1の電流源からの定電流が印加され、簡易に非選択ワード線電流印加方式が実現される。
また、前記読み出し回路は、第1のPMOSトランジスタと、第2のPMOSトランジスタと、第2の定電流を流す第2の電流源と、差動検知回路とを備え、前記差動検知回路は、第1の入力端子と、第2の入力端子とを有し、前記第1の入力端子における電圧と前記第2の入力端子に接続された基準電圧とを比較してその大小を論理信号として出力し、前記第1のPMOSトランジスタは、ソース端子とゲート端子とドレイン端子とを有し、前記ソース端子が前記第1の電圧に接続され、前記ゲート端子が前記ドレイン端子に接続され、前記ドレイン端子が前記第1のスイッチ回路を介して前記選択ビット線に接続され、前記第2のPMOSトランジスタは、ソース端子とゲート端子とドレイン端子とを有し、前記ソース端子が前記第1の電圧に接続され、前記ゲート端子が前記第1のPMOSトランジスタの前記ゲート端子に接続され、前記ドレイン端子が前記第2の電流源の一方の端子に接続され、前記第2の電流源の他方の端子は、GND電圧に接続され、前記差動検知回路の第1の入力端子は、前記第2のPMOSトランジスタの前記ドレイン端子に接続されていてもよい。これにより、電流印加によってメモリセル内の抵抗変化素子の抵抗状態を検出するデータ読み出し方式が実現される。
また、前記ビット線から見て上方の前記ワード線と当該ビット線との交点位置に形成される前記メモリセルを奇数層のメモリセルとし、前記ビット線から見て下方の前記ワード線と当該ビット線との交点位置に形成される前記メモリセルを偶数層のメモリセルとし、層が重なる方向であるZ方向に並んだ前記複数のビット線群毎に構成され、前記Y方向に並んで配置された複数のXZ面のそれぞれを垂直アレイ面とした場合に、前記各垂直アレイ面は、前記各垂直アレイ面を垂直に貫通する前記複数のワード線を共通に有し、前記各垂直アレイ面において、全ての偶数層の前記ビット線はZ方向に繋がれた第1のビアと共通に接続され、かつ、全ての奇数層の前記ビット線はZ方向に繋がれた第2のビアと共通に接続され、前記クロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置はさらに、前記複数の垂直アレイ面毎に設けられたグローバルビット線と、前記垂直アレイ面毎に設けられ、前記第1のビアと一端が接続された複数の第1のビット線選択スイッチ素子と、前記垂直アレイ面毎に設けられ、前記第2のビアと一端が接続された複数の第2のビット線選択スイッチ素子と、前記垂直アレイ面毎に設けられ、当該垂直アレイ面に対応する前記第1のビット線選択スイッチ素子の他端および当該垂直アレイ面に対応する前記第2のビット線選択スイッチ素子の他端と当該垂直アレイ面に対応する前記グローバルビット線との間に設けられ、前記第1のビット線選択スイッチ素子および前記第2のビット線選択スイッチ素子と前記グローバルビット線との間に流れる双方向の電流のそれぞれを制限する双方向電流制限回路と、前記双方向電流制限回路を制御する電流制限制御回路とを備え、前記デコーダ回路は、前記複数のグローバルビット線に、前記メモリセルを選択し、書き込み及び読み出しのための信号を供給するグローバルビット線デコーダ/ドライバ回路と、前記複数のワード線に、前記メモリセルを選択し、書き込み及び読み出しのための信号を供給するワード線デコーダ回路及びワード線プリデコーダ回路とを有し、前記読み出し回路は、前記グローバルビット線デコーダ/ドライバと前記ワード線デコーダ及び前記ワード線プリデコーダとで選択されたメモリセルからデータを読み出してもよい。これにより、大記憶容量に適した多層構造のクロスポイント型メモリセルアレイについても、本発明に係る非選択ワード線電流印加方式を適用することが可能となる。
なお、本発明は、クロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置として実現できるだけでなく、その読み出し方法として実現することもできる。その読み出し方法の一態様は、極性の異なる電圧を印加することで低抵抗状態および高抵抗状態の少なくとも2つの状態を可逆的に遷移する抵抗変化素子と、前記抵抗変化素子に直列に接続された非線形の電流電圧特性を有する双方向の電流制御素子とを有するメモリセルが複数配置され、前記各メモリセルが、X方向に延びた複数のビット線と、Y方向に延びた複数のワード線との交点位置に形成されたクロスポイント型のメモリセルアレイを備えるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置の読み出し方法であって、前記メモリセルアレイは、前記複数のビット線から少なくとも一つのビット線を選択し、前記複数のワード線から少なくとも一つのワード線を選択することで、前記メモリセルアレイから少なくとも一つのメモリセルを選択するデコードステップと、選択されたメモリセルからデータを読み出す読み出しステップと、選択されたメモリセルからのデータの読み出し時に、前記デコードステップで選択されたビット線である選択ビット線に前記読み出しのための第1の電圧を印加し、前記デコードステップで選択されたワード線である選択ワード線に第2の電圧を印加し、前記デコードステップで選択されていないワード線である非選択ワード線に第1の定電流を供給する電流供給ステップとを含む。
以下、上記目的を達成する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態1)
本発明に係るクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置は、非選択ワードに対して、定電圧ではなく、定電流を印加すること(非選択ワード線電流印加方式)を特徴とする。そこで、まず、非選択ワード線に定電流を印加することで現実の読み出しマージンが拡大され、安定的な読み出しが可能になることを説明する。
図9の読み出しの等価回路に対して、読み出しの効率化を図る為に非選択ワード線へ電流を印加した場合の等価回路を図13に示す。
図13において、199は非選択ワード線用電流源であり、この非選択ワード線用電流源199は、非選択WL群(NW点)に一定電流(第1の電流)Inswlを発生する、本発明に係る第1の電流源の一例である。非選択ワード線用電流源199の一端は非選択WL群(NW点)に接続され、他端は電流検知回路196の電源と同じセンス用電源197に接続されている。その結果、非選択WL群(NW点)の最大電圧はセンス用電源197の電圧VSAとなる。他の構成要素及びメモリセルアレイの規模は図9と同一より、説明は省略する。
図13における電流経路とそれぞれの関係について説明する。
図13の構成において、選択ビット線BL1にはセンス用電源197の電圧VSAが印加されており(電流検知回路196のインピーダンスが極めて0Ωに等しいとする)、選択ワード線WL1はGND端子189に接続されている。選択メモリセル30には選択ビット線BL1から選択ワード線WL1に向かって電流Iselが流れ、第1非選択メモリセル193には選択ビット線BL1から流入する電流Ib_nwが流れ、非選択ワード線用電流源199からは電流Inswlが供給され、第2非選択メモリセル194及び第3非選択メモリセル195には第1非選択メモリセル193に流れる電流Ib_nwと非選択ワード線用電流源199からの電流Inswlとを合計した電流Inw_wが流れ、その前記電流Inw_wが選択ワード線WL1に流れ込み、電流検知回路196には前記選択メモリセル30に流れる電流Iselと前記第1非選択メモリセル193に流れる電流Ib_nwとを合計した電流Isenが流れ、GND端子には前記選択メモリセル30に流れる電流Iselと第2非選択メモリセル194及び第3非選択メモリセル195に流れる電流Inw_wとを合計した電流Iswlが流れる。
つまり、電流検知回路196を流れるセンス電流Isenは前記式1に示される通りである。
また、GND端子189に流れ込む電流Iswlは前記式2で示される通りである。
一方、前記の様に第2非選択メモリセル194及び第3非選択メモリセル195を流れる電流Inw_wは第1非選択メモリセル193に流れる電流Ib_nwと非選択ワード線用電流源199からの電流Inswlとを合計した電流が流れるので以下の式で示される。
Inw_w=Ib_nw+Inswl ・・・式4
本発明における非選択ワード線用電流源199からの電流Inswlは任意の電流量に設定することが可能であり、その結果、上記式4に示す非選択ワード線用電流源199からの電流Inswl以外の電流は、非選択ワード線用電流源199からの電流Inswlの設定電流に従って、その電流量が変わる(非選択ワード線用電流源199からの電流Inswlの設定電流に従って非選択WL群(NW点)の電圧は変化するので、第1非選択メモリセル193に流れる電流Ib_nwも変化する)。
本発明における非選択ワード線用電流源199からの電流Inswlの設定電流量によって、非選択メモリセル側の電流及び電圧による動作点が変化する。次にその詳細と共に、本発明の非選択ワード線電流印加方式の利点について、その概要を図14の電圧電流特性(I−V特性)図、詳細を図15の(a)及び図15の(b)を用いて説明する。
図14は図13の非選択ワード線電流印加方式の等価回路における読み出し時の電圧電流特性(I−V特性)を示す。
図14において、横軸は各セルに印加される電圧、縦軸は各セルを流れる電流であり、記載されている特性線は図10と同一である。ただし、非選択WL群(NW点)に非選択ワード線用電流源199からの電流Inswlが印加されているので、本図の特性線は、図10とは動作点が異なる。
ここで、図14において、動作点VNWとし、非選択ワード線に非選択ワード線用電流源199から電流Inswlを印加する場合の読み出し動作について説明する。
選択メモリセル30に対しては、図9と同じバイアス状態より、セル電流Iselは、抵抗変化素子の抵抗値が高抵抗状態の場合はIsel(HR)、低抵抗状態の場合はIsel(LR)とする。
一方、非選択メモリセルを流れる電流は、NW点の電圧を共通として、上記式4の関係式から、Inswl=Inw_w−Ib_nwが成り立つ様に、Inw_wは動作点(A)で動作し、Ib_nwは動作点(B)で動作し、このときのNW点の電圧はVNWで動作する。
また、電流Inw_wや電流Ib_nwの特性は、非選択メモリセルの抵抗変化素子の状態によって若干変わるので、以下では、メモリセルの抵抗変化素子が両極端な状態、すなわち、全メモリセルの抵抗変化素子が高抵抗状態の場合と低抵抗状態の場合に分けた図15の(a)及び図15の(b)を用いて詳細な動作点の状態を説明する。
図15の(a)は図14の内の全ての抵抗変化素子が高抵抗状態の場合について、動作点を示す図である。図15の(b)は図14の内の全ての抵抗変化素子が低抵抗状態の場合について、動作点を示す図である。
図15の(a)において、非選択ワード線用電流源199からの印加電流をInswl12とした場合、電圧VNWはVNW12となり、第1非選択メモリセル193を流れる電流Ib_nwはIb_nw12となる。
一方、非選択ワード線用電流源199からの印加電流Inswlは、如何なる場合も安定化していることが好ましいが、一般的には回路素子の製造ばらつきや外部電源ノイズ等によるばらつきに起因して、印加電流Inswlは変動する。仮に電流Inswlが、その1割程度変動すると仮定すると、Inswl=Inswl12を中心に触れ幅をΔInswlとすると、電流Inswlは、最小がInswl=Inswl11=Inswl12−ΔInswlで、最大がInswl=Inswl13=Inswl12+ΔInswlの範囲で変動する。
図15の(a)において、非選択ワード線用電流源199からの印加電流Inswlが最小電流量Inswl11となった場合、電圧VNWはVNW11となり、第1非選択メモリセル193を流れる電流Ib_nwはIb_nw13となる。また、非選択ワード線用電流源199からの印加電流Inswlが最大電流量Inswl13となった場合、電圧VNWはVNW13となり、第1非選択メモリセル193を流れる電流Ib_nwはIb_nw11となる。ここで、VNW11<VNW12<VNW13、Ib_nw11<Ib_nw12<Ib_nw13である。
従って、全ての抵抗変化素子が高抵抗状態の場合、非選択ワード線用電流源199からの電流Inswlが中心値Inswl12かつ10%のばらつきΔInswlを有して印加された場合、第1非選択メモリセル193を流れる電流Ib_nwはIb_nw11以上でIb_nw13以下の範囲でばらつく。
図15の(b)において、非選択ワード線用電流源199からの印加電流Inswlを標準電流量Inswl12とした場合、電圧VNWはVNW12となり、第1非選択メモリセル193を流れる電流Ib_nwはIb_nw15となる。
一方、前記と同様、非選択ワード線用電流源199からの印加電流Inswlが、最小がInswl=Inswl11で、最大がInswl=Inswl13の範囲で変動する場合を想定する。
図15の(b)において、非選択ワード線用電流源199からの印加電流Inswlが最小電流量Inswl11となった場合、電圧VNWはVNW14となり、第1非選択メモリセル193を流れる電流Ib_nwはIb_nw16となる。また、非選択ワード線用電流源199からの印加電流Inswlが最大電流量Inswl13となった場合、電圧VNWはVNW16となり、第1非選択メモリセル193を流れる電流Ib_nwはIb_nw14となる。ここで、VNW14<VNW15<VNW16、Ib_nw14<Ib_nw15<Ib_nw16である。
従って、全ての抵抗変化素子が低抵抗状態の場合、非選択ワード線用電流源199からの電流Inswlが中心値Inswl12かつ10%のばらつきΔInswlを有して印加された場合、第1非選択メモリセル193を流れる電流Ib_nwはInswl14以上でInswl16以下の範囲でばらつく。
次に上記ばらつきを考慮した本発明の非選択ワード線電流印加方式による読み出し容易性について試算する。
電流検知回路196のセンス電流Isenは、上記式1より、選択メモリセル30の抵抗変化素子が高抵抗状態かつ非選択メモリセルの抵抗変化素子が全て低抵抗状態の場合、(Isel(HR)+Ib_nw14)以上で(Isel(HR)+Ib_nw16)以下となり、一方、選択メモリセル30の抵抗変化素子が低抵抗状態かつ非選択メモリセルの抵抗変化素子が全て高抵抗状態の場合は(Isel(LR)+Ib_nw11)以上で(Isel(LR)+Ib_nw13)以下となる。
選択メモリセル30の高抵抗状態と低抵抗状態が判別できる最悪のセンス電流はそれぞれ、選択メモリセル30の抵抗変化素子が高抵抗状態の場合のセンス電流Isenの最大値(Isel(HR)+Ib_nw16)と、選択メモリセル30の抵抗変化素子が低抵抗状態の場合のセンス電流Isenの最小値(Isel(LR)+Ib_nw11)となる。この時、(Isel(HR)+Ib_nw16)に対する(Isel(LR)+Ib_nw11)のセンス電流の比率は、1.78倍となる。
つまり、本発明の非選択ワード線電流印加方式のセンス電流Isenの電流比率は、印加電流Inswlの10%の変動を考慮しても1.78倍となる。これは図11の非選択ワード線に電圧印加する方式のセンス電流Isenの電流比率1.42倍よりも良好な値であり、非選択ワード線電圧印加方式よりも本発明の非選択ワード線電流印加方式の方が選択メモリセルの状態を容易に読み出すことができる(つまり読み出しマージンが大きい)ことを意味する。つまり、本発明に係る非選択ワード線電流印加方式により、印加する電気信号のばらつきを考慮した現実の読み出しマージンが大きくなり、安定的な読み出しが可能になることがわかる。
また、本発明は、非選択ワード線群(NW点)に印加する電流Inw_wのばらつきΔInw_w2はほぼΔInswlと等しく、非選択ワード線電圧印加方式における電流Inw_wのばらつき(図12のΔInw_w1)の5分の1程度となり、電流変化による電磁ノイズ(EMI)を抑制する効果も併せ持つ。つまり、本発明の非選択ワード線電流印加方式により、非選択セルを介して選択ワード線に流入する電流の変化による電磁ノイズ(EMI)の発生という問題についても、安定的な動作が可能になる。
ここで、本発明の非選択ワード線電流印加方式による印加電流量の決定方法について説明する。
図16Aの(a)は選択ビット線上に繋がる全非選択メモリセルを流れる漏れ電流Ib_nwに対するIsen(LR)/Isen(HR)で表わされる電流比(つまり、漏れ電流を含めたHRセル選択時のセンス電流とLRセル選択時のセンス電流の電流比率)を示すグラフである。また、図16Aの(b)は選択ビット線上に繋がる全非選択メモリセルを流れる漏れ電流Ib_nwに対するセンス電流Isenを示すグラフである。
図16Aの(a)において、漏れ電流を含めたHRセル選択時のセンス電流とLRセル選択時のセンス電流の電流比率は読み出し容易性の観点から1.5倍以上が望ましい(だたし、センスアンプの性能にも依存するので数字を規定することは困難である)。
ここでは、本発明の非選択ワード線電流印加方式による印加電流量決定方法として単体の選択メモリセルのセル電流から求める手法を記載する。
図16Aの(b)に示す様に、抵抗変化素子が高抵抗状態であるときの選択メモリセル電流(Isel(HR)、s点)に対して漏れ電流が付加される。抵抗変化素子が低抵抗状態であるときの選択メモリセル電流(Isel(LR))相当の電流(p点)では、単体のLRセルを流れる電流と、漏れ電流を含めたHRセル電流とが等しくなる。この時、電流比率は選択セル単体の電流比率(図16Aの(a)では、約3.2)のおおよそ半分程度の1.6程度(図16Aの(a)ではr点)になっているが、このことは抵抗変化素子の特性により異なる。この状態を非選択電流Ib_nwの最大電流の目安とすることができる(図16Aの(b)では、Ib_nw=Ib_nw21)。
つまり、Isel(HR)+漏れ電流=Isel(LR)となる漏れ電流が選択BLから非選択WLに流れる時の非選択WL印加電流(Inswl21)を図15の(c)の特性図から求め、Inswl21以上の電流を非選択WLに印加する。
上記の値を用いて具体的にその求め方を図16B(図15の(b)と同じグラフ)を用いて説明すると、非選択BLに流れる電流Ib_nw=Ib_nw21、この時のNW点の電圧はVNW21となる。NW点の電圧がVNW21の時に選択ワード線上に繋がる全非選択メモリセルを流れる漏れ電流Inw_wはInw_w21となるので、非選択WL印加電流(Inswl21)は上記式4より、
Inswl21=Inw_w21−Ib_nw21
となる。
この時の元となる電流Ib_nw21が最大値であるので、ここで求めた印加電流Inswl21は、最小電流となる。従って、この場合の非選択WL印加電流Inswlは、少なくともInswl21とするのが好ましく、それ以上の電流値に設定すると決めることができる。
〔非選択WL電流印加方式によるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置の回路構成〕
ここからは、本発明の非選択ワード線電流印加方式を用いたクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置の全体回路及びワード線駆動系の具体回路例について説明する。本説明に対しては、32本のWL×m本のBL(mは整数でm>32)の長方形メモリセルアレイマットを2層配置した構成を前提とする。
図17にクロスポイントメモリセルアレイに用いるメモリセル51を2層構造に積層した場合のメモリセル断面構成図を示す(各層のメモリセル51の構造は図2又は図3と同じであり、説明の簡単化のため、図2の構造を用いた構成としている)。
図17において、メモリセル51は、抵抗変化素子10と、電流制御素子29とが直列接続された構成を有して1ビットを構成し、本メモリセル51を上下層に積層した2層で構成されている。この2層構造では、1層目メモリセルの下部端子を一方のビット線71に接続し、1層目メモリセルの上部端子をワード線70に接続し、2層目メモリセルの下部端子をワード線70に接続し、2層目メモリセルの上部端子を他方のビット線71に接続している。つまり、1層目メモリセルと2層目メモリセルの中間にワード線70を配置し、前記ワード線70は、1層目メモリセルの上部端子と接続し、更に2層目メモリセル下部端子とも接続した共有化構成としている。
なお、図17において、電流制御素子29と抵抗変化素子10の位置関係は上下逆でもかまわない。
図18は、メモリセル51の図表記を示す。メモリセル51は、抵抗変化素子10と電流制御素子29とを直列に接続された構造を示す図で表わされる。ここで、メモリセル51の図表記においては、抵抗変化素子10は、上部電極11側に位置する第2の抵抗変化層12の方向を明記する為、その方向が黒塗りで表わされている。つまり、図18において、配線71に対し配線70に正の電圧を印加したとき、抵抗変化素子10は高抵抗化し、逆に配線70に対し配線71に正の電圧を印加したとき、抵抗変化素子10は低抵抗化する。
図19は、本実施の形態におけるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置の一部(一つの垂直アレイ面)であって、図17と同じ形態でメモリセルが積層された多層クロスポイントメモリセルアレイをワード線方向から見たメモリセルアレイの断面構造と、その下層部に配置される回路構成を示す構成概要図を示している。
アルミニウム等の配線材料で構成され、この紙面に水平方向(X方向)に延びるよう配置される第1層ビット線53aと、アルミニウム等の配線材料で構成され、この紙面に垂直方向(Y方向:図示せず)に延びるよう配置される第1層ワード線52aとの交点に、メモリセル51が配置されている。それらメモリセル51は、第1層ビット線53a上にX方向に沿ってnビット配列され、第1層メモリセル51aを形成している。
そして、第1層メモリセル51aの上層(Z方向)に、今度は第1層ワード線52aを下にして、アルミニウム等の配線材料で構成され、この紙面の横方向(X方向)に延びるように第2層ビット線53bが配置され、第1層ワード線52aと第2層ビット線53bとの交点に、メモリセル51が配置されている。それらメモリセル51は、第2層ビット線53b上にX方向に沿ってnビット配列され、第2層メモリセル51bを構成している。第1層メモリセル51aと第2層メモリセル51bとは、メモリセル51を2層積み重ねた3次元メモリセルアレイを構成している。
このように、各メモリセル51は、X方向に延び、複数の層に形成された複数のビット線53a〜53bと、Y方向に延び、第1層ビット線53aと第2層ビット線53bとの間の層に形成された第1層ワード線52aとの交点位置のそれぞれに、当該ビット線と当該ワード線とに挟まれて形成されている。ここで、当該ビット線から見て上方のワード線との交点位置に形成されるメモリセルを奇数層(第1層)のメモリセル(ここでは、第1層メモリセル51a)と呼び、当該ビット線から見て下方のワード線との交点位置に形成されるメモリセルを偶数層(第2層)のメモリセル(ここでは、第2層メモリセル51b)と呼ぶ。
そして、第1層ビット線53aは、第2のビアの一例である奇数層ビット線ビア(奇数層BLビア)55で共通接続され、第2層ビット線53bは、第1のビアの一例である偶数層ビット線ビア(偶数層BLビア)54で共通接続されている。このように、Z方向で隣り合う層のメモリセル群はビット線またはワード線の何れかを共有する構造の為、最少の配線層数で多層クロスポイントメモリセルアレイを構成することができ、低コスト化が可能になる。
本実施の形態では、第1層メモリセル51aから第2層メモリセル51bまで何れの層においてもメモリセル51の内、抵抗変化素子10はZ方向に対し同一の構造および製造条件で形成できること(例えば、何れの層においてもより下層側に第2電極21、その上に第1の抵抗変化層13、その上に第2の抵抗変化層12、その上に第3電極11を形成できること)が特徴で、メモリセルが奇数層にあるか、偶数層にあるかに依らず同じ構造のメモリセルを製造することができる。つまり、偶数層のメモリセルを構成する抵抗変化素子10と、奇数層のメモリセルを構成する抵抗変化素子10とは、Z方向に対し同じ向きで配置される。
偶数層ビット線ビア54は、NMOSトランジスタで構成された第1のビット線選択スイッチ素子の一例である偶数層ビット線選択スイッチ素子57のドレインまたはソースの一方に接続される。一方、奇数層ビット線ビア55は、NMOSトランジスタで構成された第2のビット線選択スイッチ素子の一例である奇数層ビット線選択スイッチ素子58のドレインまたはソースの一方に接続される。偶数層ビット線選択スイッチ素子57のドレインまたはソースの他方および、奇数層ビット線選択スイッチ素子58のドレインまたはソースの他方は共通接点(GBLI)に共通接続される。また偶数層ビット線選択スイッチ素子57のゲートは偶数層ビット線選択信号線に接続され、奇数層ビット線選択スイッチ素子58のゲートは奇数層ビット線選択信号線に接続されている。
また、共通接点GBLIは、NMOSトランジスタで構成されたN型電流制限素子90のドレインまたはソースの一方に接続され、さらに、PMOSトランジスタで構成されたP型電流制限素子91のドレインまたはソースの一方に接続されている。N型電流制限素子90のドレインまたはソースの他方は、グローバルビット線56(GBL)に接続され、P型電流制限素子91のドレインまたはソースの他方も同様にグローバルビット線56(GBL)に接続されている。つまり、N型電流制限素子90とP型電流制限素子91とは、並列に接続され、偶数層ビット線選択スイッチ素子57および奇数層ビット線選択スイッチ素子58とグローバルビット線56(GBL)との間に流れる双方向の電流のそれぞれを制限する双方向電流制限回路920を構成している。
N型電流制限素子90のゲートにはノードCMNに接続される信号線が接続され、P型電流制限素子91のゲートにはノードCMPに接続される信号線が接続されている。本発明は読み出しに関する技術であり、読み出しモードにおいて、N型電流制限素子90とP型電流制限素子91は常時オン状態とする為、ノードCMPおよびノードCMNから各ゲートに印加される信号の電圧は、それぞれ、CMPが0V、CMNがVSAとなる。ちなみに、N型電流制限素子90とP型電流制限素子91とが電流制限素子として機能するのは書き込み動作時である。
なお、図19に示すビット線53a及び53bが並ぶ方向にスライスした構成のグループを垂直アレイ面と呼ぶ。つまり、層が重なる方向であるZ方向に並んだ複数のビット線群毎に構成され、垂直に貫通するワード線を共通に有し、Y方向に並んで配置された複数のXZ面のそれぞれを垂直アレイ面と呼ぶ。前記垂直アレイ面を面が合わさる様に4枚並べた場合の構成図を図20に示す。
図20において、ビット線が延びる方向をX方向、ワード線が延びる方向をY方向、ビット線やワード線の層が重なる方向をZ方向としている。
図20において、ビット線(BL)はX方向に延び、複数の層(図20では2層)に形成されている。ワード線(WL)はY方向に延び、ビット線の間の層(図20では1層)に形成されている。そして、メモリセルアレイ100において、ビット線とワード線との交点位置に、各メモリセル(MC)51が当該ビット線と当該ワード線とに挟まれて形成されている。なお、図の簡略化のために、メモリセル51の一部およびワード線の一部については図示を省略している。
そして、Z方向に揃った各層のビット線BL群毎に、ワード線WLとの間に形成されたメモリセル51によって、4つの垂直アレイ面0〜3がそれぞれ構成されている。各垂直アレイ面0〜3において、ワード線(WL)は共通である。図20の例では、各垂直アレイ面0〜3において、メモリセル51がX方向に32個(図19においてn=32)、Z方向に2個、配置されている。またメモリセルアレイ100は、Y方向に並ぶ4個の垂直アレイ面0〜3によって構成されている。
ただし、垂直アレイ面におけるメモリセルの個数や、Y方向に並ぶ垂直アレイ面の個数は、これに限定されるものではない。
そして、各垂直アレイ面0〜3において、偶数層のビット線BLが図19における偶数層ビット線ビア54により共通に接続されており(BL_e0〜BL_e3)、また、奇数層のビット線BLが図19における奇数層ビット線ビア55により共通に接続されている(BL_o0〜BL_o3)。なお、図19において偶数層ビット線ビア54は、全ての偶数層のビット線をZ方向に繋ぐ第1のビアの一例である。また、奇数層ビット線ビア55は、全ての奇数層のビット線をZ方向に繋ぐ第2のビアの一例である。
さらに、各垂直アレイ面0〜3に対応して設けられたグローバルビット線GBL000〜GBL003がY方向に延びて形成されている。また、各垂直アレイ面0〜3毎に、奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64および偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68がそれぞれ設けられている。なお、偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68は、垂直アレイ面毎に設けられ、第1のビア(偶数層ビット線ビア54)と一端が接続された複数の第1のビット線選択スイッチ素子の一例である。また、奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64は、垂直アレイ面毎に設けられ、第2のビア(奇数層ビット線ビア55)と一端が接続された複数の第2のビット線選択スイッチ素子の一例である。
図20では、奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64および偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68は、NMOSトランジスタによって構成されているものとしている。加えて、NMOSトランジスタによって構成されるN型電流制限素子90、92、94、96とPMOSトランジスタによって構成されるP型電流制限素子91、93、95、97が関係する奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64および偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68の各々と、関係する各グローバルビット線GBL000〜GBL003とは、奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64および偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68のドレイン又はソースの拡散層端子で接続されている。N型電流制限素子90、92、94、96のゲート端子は制御電圧用ノードCMNに共通接続され、P型電流制限素子91、93、95、97のゲート端子は制御電圧用ノードCMPが共通接続される。また、ノードCMNとノードCMPの電圧は、読み出し時においては、それぞれに接続された電流制限素子がオンする状態に設定することができる。
奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64は、それぞれ関係するN型電流制限素子90、92、94、96及びP型電流制限素子91、93、95、97を介して、当該垂直アレイ面に係るグローバルビット線GBL000〜GBL003と、当該垂直アレイ面においてそれぞれ共通に接続された奇数層のビット線BL_o0〜BL_o3との電気的な接続または非接続を、奇数層ビット線選択信号BLs_o0に従って切換制御する。一方、偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68は、それぞれ関係するN型電流制限素子90、92、94、96及びP型電流制限素子91、93、95、97を介して、当該垂直アレイ面に係るグローバルビット線GBL000〜GBL003と、当該垂直アレイ面においてそれぞれ共通に接続された偶数層のビット線BL_e0〜BL_e3との電気的な接続または非接続を、偶数層ビット線選択信号BLs_e0に従って切換制御する。
この構成では、何れのメモリセル層においても抵抗変化素子10のZ方向の構造については、同じ構造で形成したメモリセル51で各垂直アレイ面0〜3を形成できる。そして、図19において、偶数層のビット線53b、および奇数層のビット線53aをそれぞれ独立したビア(偶数層ビット線ビア54及び奇数層ビット線ビア55)で共通に接続し、さらにはそれらのビアとグローバルビット線GBLとを、偶数層ビット線選択スイッチ素子57または奇数層ビット線選択スイッチ素子58と双方向電流制限回路920とを介して接続することにより、階層ビット線方式による多層クロスポイント構造を実現している。
図21は図20のメモリセルアレイ100とその周辺回路を示す回路図である。なお、本図では、本図の右下に示されるように、抵抗変化素子10と電流制御素子29との直列接続から構成される個々のメモリセルは、便宜上、白色領域と黒色領域をもつ四角形で図示されている。
図21において、グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路98は、メモリセル51を選択するための信号を各グローバルビット線GBL000〜GBL003に供給する回路であり、グローバルビット線GBL000〜GBL003を選択的に駆動制御する。
電流制限制御回路99は、双方向電流制限回路920を制御する回路であり、選択されたメモリセルの抵抗状態を検知する読み出し動作を行う場合は、N型電流制限素子90、92、94、96とP型電流制限素子91、93、95、97の全てをオン状態に活性化する回路である。
つまり、この電流制限制御回路99は、双方向電流制限回路920を制御する回路であり、読み出し動作時には、一対となっているN型電流制限素子90、92、94、96およびP型電流制限素子91、93、95、97の両方をON状態にする制御回路であり、ノードCMN及びノードCMPに対する出力電圧VCMN及びVCMPとして、読み出しモードの場合も読み出しパルスに対して電流量を制限しないような十分高い電圧のVCMNと十分低い電圧のVCMPとを発生する。
サブビット線選択回路73は、奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64および偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68を制御する回路であり、アドレス信号A0〜Axに応じて、偶数層ビット線選択信号BLs_e0および奇数層ビット線選択信号BLs_o0を出力する。
ワード線デコーダ回路74は、アドレス信号Ayに応じて、メモリセル51を選択するための信号を各ワード線WL00000〜WL00031に選択的に切り換え供給するデコーダスイッチ回路である。ワード線プリデコーダ回路111は、アドレス信号Ayに応じて、プリデコード信号GWL0〜GWL31を選択的に供給制御するプリデコーダ回路である。ワード線プリデコーダ回路111のプリデコード信号GWL0〜GWL31とワード線デコーダ回路74のスイッチ選択状態とによって、任意のワード線を所定の状態に選択制御する。
なお、グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路98、サブビット線選択回路73、ワード線デコーダ回路74およびワード線プリデコーダ回路111によって、本発明に係るデコーダ回路、つまり、複数のビット線から少なくとも一つのビット線を選択し、複数のワード線から少なくとも一つのワード線を選択することでメモリセルアレイ100から少なくとも一つのメモリセルを選択するデコーダ回路が構成されている。
図22は、本実施の形態におけるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置の主要部300を示す回路図である。
図22に示すように、実際のクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置の主要部300では、図20に示すメモリセルアレイ100(各垂直アレイ面に相当)が複数個配置されることによって、メモリセルアレイ200が構成される。図20の構成では、メモリセルアレイ100は、X(ビット線)方向にnビット、Y(ワード線)方向に4ビットのメモリセルアレイである。図22の例では、メモリセルアレイ100をY方向にp個(ここでp=(m/4)の整数)配置し、X方向にnビット、Y方向にmビットのメモリセルをマトリックス状に配置したメモリセルアレイブロック250を単位ブロックとし、メモリセルアレイブロック250を16ブロック配置した構成をメモリセルアレイ200としている。
ワード線プリデコーダ回路111は、プリデコード信号GWLi(ここで、iは0〜n−1の整数でn=32)をワード線デコーダ回路74に選択的に供給制御する。ワード線デコーダ回路103(図21ではワード線デコーダ回路74)は、ブロック選択信号BLKj(ここではjは0〜15の整数)に従って任意のメモリセルアレイブロック1個を選択し、選択したメモリセルアレイブロックに対してn本のワード線にプリデコード信号GWLiを出力する。つまり、ブロック選択信号BLKjによって選択されたブロックのn本のワード線がプリデコード信号GWL0〜GWL31の信号によって直接的に制御される。本構成の詳細は、別途詳細図面を用いて後に説明する。
グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102は、複数のグローバルビット線に、メモリセルを選択し、書き込み及び読み出しのための信号を供給する回路であり、具体的には、ブロック選択信号BLKjによって、選択ブロックに関連するグローバルビット線群(ここではグローバルビット線GBLj0〜GBLj3でjは00〜15)を選択し、選択した各グローバルビット線GBLj0〜GBLj3を書込みや読み出しモードによって駆動制御する。
電流制限制御回路104は、ブロック選択信号BLKjによって選択されたメモリセルアレイブロック250に対して、動作モードに応じて双方向電流制限回路920を制御する電圧VCMNjとVCMPj(jは0〜15の整数)を個別に発生する。なお、非選択状態のメモリセルアレイブロック250に対しては、VCMNj=0V、VCMPj=VPoff(Vpoffは非選択メモリセルアレイブロック250に関連するP型電流制限素子91がオフする電圧)を発生供給する。
サブビット線選択回路101(図21ではサブビット線選択回路73)は、アドレス信号A0〜Axに応じて、メモリセルアレイ200の内、任意の選択垂直アレイ面に属する奇数層ビット線選択スイッチ素子(図20では奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64)または偶数層ビット線選択スイッチ素子(図20では偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68)の何れかを導通させる為、各メモリセルアレイ100に対する偶数層ビット線選択信号BLs_ek(ここでkは0〜(p−1)の整数)および奇数層ビット線選択信BLs_ok(ここでkは0〜(p−1)の整数)を制御する。
図23は、本実施の形態におけるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置400の全体構成を示す回路図である。図23において、主要部300が図22に示す構成に相当している。
図23において、アドレス入力回路110は、高抵抗化書き込みサイクル、低抵抗化書き込みサイクルまたは読み出しサイクルの間、外部からのアドレス信号を一時的にラッチし、ラッチしたアドレス信号をサブビット線選択回路101、グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102、ワード線プリデコーダ回路111、ワード線デコーダ回路103、および電流制限制御回路104へ出力する。
非選択ワード線用電流源199は、読み出し動作時に所定の定電流(第1の定電流)を発生し、ワード線プリデコーダ回路111及びワード線デコーダ回路103を介して非選択ワード線へ印加供給する、本発明に係る第1の電流源の一例である。
制御回路109は、複数の入力信号を受けて、高抵抗化書き込みサイクル、低抵抗化書き込みサイクル、読み出しサイクル、およびスタンバイ時の状態を表す信号を、本発明に係るデコーダ回路(サブビット線選択回路101、グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102、ワード線プリデコーダ回路111、ワード線デコーダ回路103)、電流制限制御回路104、書き込み回路105、読み出し回路106、およびデータ入出力回路107へそれぞれに相応した信号として出力する。また制御回路109は、高抵抗化書き込みサイクル、低抵抗化書き込みサイクル、および読み出しサイクル時の高抵抗化書き込み、低抵抗化書き込み、または読み出しパルス発生トリガー信号をパルス発生回路108へ出力する。
特に、制御回路109は、本発明に係る非選択ワード線電流印加方式を実現するために、読み出し回路106によるデータの読み出し時に、本発明に係るデコーダ回路で選択されたビット線である選択ビット線に読み出しのための第1の電圧(VSA)が印加され、前記デコーダ回路で選択されたワード線である選択ワード線に第2の電圧(GND電位)が印加され、前記デコーダ回路で選択されていないワード線である非選択ワード線に、第1の電流源(非選択ワード線用電流源199)からの第1の定電流(Inswl)が供給されるように、前記デコーダ回路、読み出し回路106および非選択ワード線用電流源199を制御する。
パルス発生回路108は、高抵抗化書き込みサイクル、低抵抗化書き込みサイクル、および読み出しサイクル内の各高抵抗化書き込み、低抵抗化書き込み、または読み出し時間において、パルスを所定の期間(tp_E、tp_P、tp_R)発生し、グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102、ワード線プリデコーダ回路111およびワード線デコーダ回路103へ出力する。
データ入出力回路107は外部とのデータをやり取りする回路ブロックで、書き込み時にはデータDQをラッチして、次のデータが来るまでの間、書き込み回路105に書き込みデータを出力し、読み出し時には、読み出し回路106からの読み出しデータをラッチして、次の出力データが来るまでの間、読み出しデータを外部端子DQへ出力する。
書き込み回路105は、グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102とワード線デコーダ回路103とで選択されたメモリセルにデータを書き込む回路であり、データ入出力回路107からのデータ信号を受けて、グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102、ワード線プリデコーダ回路111、電流制限制御回路104へ書き込み信号を出力する。
読み出し回路106は、本発明に係るデコーダ回路、つまり、サブビット線選択回路101とグローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102とワード線プリデコーダ回路111及びワード線デコーダ回路103とで選択されたメモリセルからデータを読み出す回路であり、選択されたメモリセルの記憶データ状態(そのメモリセルに含まれる抵抗変化素子の抵抗状態)を検知し、その結果をデータ信号としてデータ入出力回路107へ出力する。図9の電流検知回路196が読み出し回路106に相当する。
次に、読み出し時のワード線の選択及びワード線への電圧電流印加に関連する、非選択ワード線用電流源199〜ワード線プリデコーダ回路111〜ワード線デコーダ回路103〜ワード線までの回路構成とその動作について、図24を用いて詳細に説明する。
図24において、PMOSトランジスタ135はソース端子に読み出し電源VSAが接続され、ゲート端子に制御回路109による制御の下で所定の固定電圧Vicが接続され、ドレイン端子が出力端子に接続され、PMOSトランジスタ135を主構成要素とし、VSA電圧と所定の固定電圧Vicとで決まる第1の定電流Inswlを発生する非選択ワード線用電流源199の構成例である。非選択ワード線用電流源199の出力端子はノードNWSに接続される。PMOSトランジスタ136はソース端子に読み出し時のプリチャージ電源VPRが接続され、ゲート端子にプリチャージ信号NPREが接続され、ドレイン端子にノードNWSが接続され、読み出し動作のプリチャージ時にノードNWSをVPRに設定する機能を有する。これらPMOSトランジスタ135および136は、本発明に係る第3のスイッチ回路、つまり、制御回路109による制御の下で、非選択ワード線用電流源199と第3の電圧(VPR)の何れかをノードNWS(つまり、非選択ワード線)に選択的に接続する第3のスイッチ回路をも構成している。
バッファ回路134は入力信号に従って高電圧側電圧又は低電圧側電圧を選択出力する。このバッファ回路134は、高電圧側電圧を供給するための端子がノードNWSに接続され、低電圧側電圧を供給するための端子がGND(0V)接続され、各入力端子がグローバルワード線選択信号GWLSi(iは0〜n−1 の整数)のそれぞれへ接続され、各出力端子がグローバルワード線GWLi(iは0〜n−1 の整数)のそれぞれへ接続されている。n個(ここでは,n=32)のバッファ回路134で構成されるワード線プリデコーダ回路111は、所定の1本のグローバルワード線GWLiをグローバルワード線選択信号GWLSiによって選択制御し、選択されたグローバルワード線GWLiをGND電圧(第2の電圧)とし、非選択のグローバルワード線をノードNWS状態(プリチャージ時には第3の電圧VPR、センス時には第1の定電流Inswlが印加される状態)とする。このバッファ回路134は、プリチャージ時においては、本発明に係る第2のスイッチ回路、つまり、制御回路109による制御の下で、第2の電圧(GND電圧)と第3の電圧(VPR)の何れかを選択ワード線に選択的に接続する第2のスイッチ回路として機能する。
PMOSトランジスタ130は、ソース又はドレインの一方の端子がグローバルワード線の1本GWLi(iは0〜n−1の整数)と接続され、ソース又はドレインの他方の端子が対応するワード線WL000iに接続され、ゲート端子がインバータ(反転論理回路)133の出力端子に接続される。NMOSトランジスタ131は、ソース又はドレインの一方の端子がグローバルワード線の1本GWLiと接続され、ソース又はドレインの他方の端子が対応するワード線WL000iに接続され、ゲート端子が対応するブロック選択信号BLKj(ここではjは0〜15の整数)に接続される。CMOSスイッチ回路132はPMOSトランジスタ130とNMOSトランジスタ131とがお互いのドレイン端子とソース端子とを並列接続されており、ワード線選択スイッチ回路を構成している。ワード線選択スイッチ回路132は、メモリセルアレイブロック250内の各ワード線に配置される(図24では1つのメモリセルアレイブロック内のワード線の本数はn=32本あり、ワード線選択スイッチ回路132も32個配置される)。1つのメモリセルアレイブロック250に対応したn個のワード線選択スイッチ回路132は、メモリセルアレイブロック250に対応したブロック選択信号BLKjによって、選択時にはn個のワード線選択スイッチ回路132が全てオン状態となり、非選択時には全てオフ状態となる。16個の各メモリセルアレイブロックに対応して前記n個のワード線選択スイッチ回路132が配置され、n個のワード線選択スイッチ回路132は、ワード線デコーダ回路103を構成している。
本構成によって任意のワード線を選択する場合、まず選択ワード線が属するメモリセルアレイブロック250を意味するブロック選択信号BLKjが選択(High)状態となり、ワード線デコーダ回路103により、ブロック選択信号BLKjを受けて選択ブロックに対応する32個のワード線選択スイッチ全てがオン状態となる(選択ブロック以外の非選択ブロックに対応するワード線選択スイッチ全てはオフ状態となる)。更にワード線プリデコーダ回路111内の選択ワード線に対応する1本の選択グローバルワード線GWLn0(n0は選択グローバルワード線に対応する整数)がグローバルワード線選択信号GWLSn0の選択信号(Low状態)を受けてGND状態に設定され、他の31本の非選択グローバルワード線GWLnはノードNWSの電圧状態に設定される。ノードNWSは、読み出しのプリチャージ時(第1のステップ)にはNPRE信号のLow状態を受けてVPR電圧に設定され、読み出しのセンス時(第2のステップ)にはNPRE信号のHigh状態を受けてPMOSトランジスタ136はオフ状態に設定されるので、非選択ワード線用電流源199の出力電流Inswlを流す様に設定される。
なお、全てのワード線が非選択のメモリセルアレイブロック250は、関係するワード線選択スイッチ全てがオフ状態となるので、前記非選択ワード線はハイインピーダンス(Hi−z)状態となる。
次に、選択されたメモリセルアレイブロック250と、読み出し時に前記選択メモリセルアレイブロック250に関連する読み出し回路106と、グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102及び奇偶数層選択スイッチ素子158のビット線系選択回路と、選択ワード線系回路及び非選択ワード線系の非選択ワード線用電流源199と、プリチャージ時にプリチャージ電圧を供給する各種スイッチ回路とで構成される読み出し構成回路図を図25に示す。
図25において、選択メモリセル30は選択ビット線BLe1及び選択ワード線WL1によって選択され、第1非選択メモリセル193は選択ビット線BLe1に接続される31個の非選択メモリセルを等価回路で表したものであり、第3非選択メモリセル195は選択ワード線WL1に接続される1023個の非選択メモリセルを回路で表したものであり、第2非選択メモリセル194は非選択ワード線及び非選択ビット線に接続される31×1023個の非選択メモリセルを等価回路で表したものである。本図では、選択メモリセル30を含む選択メモリセルアレイブロック250の選択メモリセルと非選択メモリセルの3直列構成で表現された等価回路をメモリセルアレイブロック250内の構成として示す。
選択ワード線は、ワード線デコーダ回路103とワード線プリデコーダ回路111とによる前記図24の動作によって、プリチャージ時(第1のステップで)にはプリチャージ電圧(第3の電圧)VPRが印加され、センス時(第2のステップで)にはGND電圧(第2の電圧)が印加されている。非選択ワード線群(NW点)は、ワード線デコーダ回路103とワード線プリデコーダ回路111とによる前記図24の動作によって、プリチャージ時(第1のステップで)にはプリチャージ電圧(第3の電圧)VPRが、センス時(第2のステップで)には非選択ワード線用電流源199からの非選択ワード線電流(第1の定電流)Inswlが印加されている。
選択ビット線BL_e1は、奇偶数層選択信号BLs_o0によって選択的にオン状態に設定された奇偶数層選択スイッチ素子158及びグローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102によって、選択的にノードYDに接続される。
140は、読み出し回路106を構成する第1のPMOSトランジスタの一例であり、ソース端子がVSA電源に接続され、ゲート端子とドレイン端子とが接続されたダイオード接続のPMOSトランジスタである。
146はPMOSトランジスタ140のドレイン端子とYDノードとを接続/非接続制御するスイッチ素子であり、このスイッチ素子146は、制御信号NACTがLowの時に接続状態にする。145はプリチャージ電圧(第3の電圧)VPRとYDノードとを接続/非接続制御するスイッチ素子であり、このスイッチ素子145は、制御信号NPREがLowの時に接続状態にする。これらのスイッチ素子145および146は、本発明に係る第1のスイッチ回路、つまり、制御回路109による制御の下で、読み出し回路106とデータの読み出しに先立つプリチャージ用の第3の電圧の何れかを選択ビット線に選択的に接続する第1のスイッチ回路を構成している。
PMOSトランジスタ141は、読み出し回路106を構成する第2のPMOSトランジスタの一例であり、ソース端子がVSA電源に接続され、ゲート端子がPMOSトランジスタ140のゲート端子に接続され、ドレイン端子がSENノードに接続されたPMOSトランジスタである。PMOSトランジスタ140とPMOSトランジスタ141とはカレントミラー接続構成となっているので、PMOSトランジスタ140を流れる電流Iload0と同じ電流量の電流がPMOSトランジスタ141にも流れる。
PMOSトランジスタ144は、ソース端子がVSA電源に接続され、ゲート端子がVPRM電圧に接続され、ドレイン端子がノードs0に接続されており、所定のVPRM電圧がゲート端子に印加されることで一定電流Iso0を流す定電流源として動作する。
NMOSトランジスタ143はソース端子がGND電源に接続され、ゲート端子とドレイン端子とが接続されたダイオード接続のNMOSトランジスタであり、ドレイン端子にはノードs0が接続されている。NMOSトランジスタ142は、読み出し回路106を構成する第2の電流源の一例であり、ソース端子がGND端子に接続され、ゲート端子がNMOSトランジスタ143のゲート端子に接続され、ドレイン端子がSENノードに接続されたNMOSトランジスタである。NMOSトランジスタ143とNMOSトランジスタ142とはカレントミラー接続構成となっているので、NMOSトランジスタ143を流れる電流Iso0と同じ電流量の電流がNMOSトランジスタ142にも流れる。
従って、SENノードの電圧状態はPMOSトランジスタ141のミラー電流Iload0とNMOSトランジスタ142のミラー電流Iso0の大小関係(実際はPMOSトランジスタ140の電流で決まるPMOSトランジスタ141の電流能力とNMOSトランジスタ143の電流で決まるNMOSトランジスタ142の電流能力の大小関係)で決まる。つまり、電流Iload0が所定電流Iso0より大きい場合(Iload0>Iso0)は、SENノード電圧VSENはVSAに近い電圧となり、電流Iload0が所定電流Iso0より小さい場合(Iload0<Iso0)は、SENノード電圧VSENはGND電圧に近い電圧となる。
148はVREF端子(第2の入力端子)の電圧とSENノードの電圧(第1の入力端子における電圧)と大小を比較し、比較結果を論理信号DOUTとして出力する差動検知回路であり、この差動検知回路148は、VSEN>VREFの時にはDOUT=Lowを出力し、VSEN<VREFの時にはDOUT=Highを出力する。
読み出し回路106は、上記デコーダ回路で選択されたメモリセルからデータを読み出す回路であり、PMOSトランジスタ140、141、144とNMOSトランジスタ142、143とスイッチ素子145、146と差動検知回路148とで構成される。
なお、選択ビット線の電圧とPMOSトランジスタ140のソース電圧VSAとを同じレベルとする為に、PMOSトランジスタ140とカレントミラー接続されるPMOSトランジスタ141は、デプレッション形としても良い。
次に図25の読み出し系回路の、制御回路109下での読み出し動作について、図26の読み出しシーケンス図を用いて説明する。図26の読み出しシーケンスはプリチャージ(第1のステップ)およびセンス(第2のステップ)を1サイクルとして2サイクル分を表している。
図26の読み出しシーケンスにおいて、時間t0からt1はプリチャージ時間(第1のステップ)で、t1からt2はセンス時間(第2のステップ)であり、t0からt2を読み出しの1サイクルとしている。非選択ワード線用電流源199は電流Inswlを常時発生している。
本読み出しにおいてはメモリセルアレイブロック0が選択されているので、ブロック選択信号BLK0がHigh状態で、BLK1〜15はLow状態である。
プリチャージ時間(第1のステップ)においては、制御回路109による制御の下で、NPRE=Low、NACT=Highより、スイッチ素子145と136はオン状態、スイッチ素子146はオフ状態として、選択されたメモリセルアレイブロック250に属する選択ビット線と選択ワード線と非選択ワード線の全てがプリチャージ電圧(第3の電圧)VPRに設定される。なお、非選択のメモリセルアレイブロック250に属する全ビット線及び全ワード線はハイインピーダンス(Hi−z)状態となっている。
時間t1でセンス状態(第2のステップ)になると、制御回路109による制御の下で、NPRE=High、NACT=Lowとなり、非選択ワード線群はプリチャージ電圧VPRの供給がオフし、一定電流(第1の定電流)Inswlの供給のみとなる。従って非選択ワード線はVPRレベルから電流Inswlで決まる電圧レベルに微動する。ここで、VPR電圧レベルは、センス時に非選択ワード線群に対して非選択ワード線用電流源199からの一定電流Inswlの供給によって決まる選択ワード線群の安定時電圧にできるだけ近く設定する方が好ましい。このように、第1のステップ(プリチャージ時)で非選択ワード線に供給される第3の電圧VPRは、第2のステップ(センス時)で供給される非選択ワード線用電流源199からの一定電流Inswlの供給によって決まる非選択ワード線の電圧にほぼ等しくなるように、設定する。第3の電圧VPRと、非選択ワード線用電流源199からの一定電流Inswlの供給によって決まる非選択ワード線の電圧の差は、第3の電圧VPRの10%以内にすることが好ましい。これによって、第1のステップ(プリチャージ)から第2のステップ(センス)に切り替わったときにおける非選択ワード線の電圧レベルの変動が抑制され、より安定したデータ読み出しが可能になる。
一方、選択グローバルビット線(図26ではGBL001)はプリチャージ電圧VPRからセンス電圧(第1の電圧)VSAに変化し、選択ビット線(図26ではBL_e1)はグローバルビット線の状態変化を受けてプリチャージ電圧(第3の電圧)VPRからセンス電圧(第1の電圧)VSAに変化し、選択ワード線(図26ではWL00001)はプリチャージ電圧VPR(第3の電圧)からGND電圧(第2の電圧)0Vに変化する。
選択メモリセル30は、センス状態(第2のステップ)になると、制御回路109による制御の下で、前記の様に選択ビット線電圧がVSAレベル(第1の電圧)に、選択ワード線電圧がGND電圧(第2の電圧)になるので、セル電流が流れ出す。この時の選択メモリセル30の電流量は抵抗変化素子10の抵抗状態でその大小が決まり、抵抗変化素子10の抵抗状態が高抵抗の場合は低抵抗の場合よりもメモリセル電流は小さくなる。つまり、選択メモリセル30の抵抗変化素子10の抵抗値が高い(低い)場合、選択メモリセル30の電流量は少ない(多い)となる。
センス状態(第2のステップ)になると、前記の様に選択メモリセル30に電流が流れ、その電流は選択グローバルビット線やYDノードを介してPMOSトランジスタ140に伝搬する。選択メモリセル30の抵抗変化素子10の抵抗状態による電流量の差異はほぼそのままPMOSトランジスタ140の電流量の差異として現われる。つまり、選択メモリセル30の抵抗変化素子10が高抵抗状態の場合、セル電流は少なくなるのでPMOSトランジスタ140の電流量も少なく、逆に選択メモリセル30の抵抗変化素子10が低抵抗状態の場合、セル電流は多くなるのでPMOSトランジスタ140の電流量も多くなる。従って、PMOSトランジスタ140の電流量を検知判断することで、選択メモリセルの抵抗変化素子10に抵抗状態の大小として記憶させた論理データ値を把握することができる。
PMOSトランジスタ140とカレントミラー接続されているPMOSトランジスタ141には、PMOSトランジスタ140と同様の電流が流れる。そして、PMOSトランジスタ141を流れる電流量(PMOSトランジスタ140を流れる電流量)と、一定電流能力に制御しているNMOSトランジスタ142との電流量の駆け引きによってSENノード電圧は決まる。PMOSトランジスタ140の電流量が少ない場合はSENノードの電圧はGND電圧近傍まで低下し、PMOSトランジスタ140の電流量が多い場合はSENノードの電圧はVSA近傍まで上昇する。従って、選択メモリセル30の抵抗変化素子10が高抵抗状態(HR)の場合、SENノードの電圧はGND電圧近傍まで低下し、選択メモリセル30の抵抗変化素子10が低抵抗状態(HR)の場合、SENノードの電圧はVSA近傍まで上昇する。
差動検知回路148の一方の入力端子VREFの電圧をVSA電圧の半分といった様な所定の電圧に設定印加することで、差動検知回路148はSENノード電圧の大小状態をDOUT端子にHigh/Lowの論理レベルとして出力することができる。従って、選択メモリセル30の抵抗変化素子10の抵抗状態はDOUT端子のHigh/Low論理レベルに変換されるので、抵抗変化素子10の記憶データを判断することができる。
この様にt1からt2のセンス時の間に、選択メモリセル30の記憶データを検知判断してDOUT端子から出力される。
時間t2になると再びプリチャージ状態(第1のステップ)となるので、制御回路109による制御の下で、NPRE=Low、NACT=Highに変化し、スイッチ素子145と136はオン状態、スイッチ素子146はオフ状態として、選択ビット線と選択ワード線と非選択ワード線の全てがプリチャージ電圧VPRに再度設定される。
t0→t1のプリチャージとt1→t2のセンスを1サイクルとして、各サイクル単位で選択メモリセルを順次変更しながら繰り返すことで、メモリセルアレイ内の各メモリセルの記憶データを読み出すことが可能となる。
このように、制御回路109は、第1のステップ(プリチャージ時)では、選択ビット線に第1のスイッチ回路(スイッチ素子145および146)を介して第3の電圧VPRが供給され、選択ワード線に第2のスイッチ回路(バッファ回路134)を介して第3の電圧VPRが供給され、非選択ワード線に第3のスイッチ回路(PMOSトランジスタ135および136)を介して第3の電圧VPRが供給されるように、第1〜第3のスイッチ回路を制御する。一方、制御回路109は、第2のステップ(センス時)では、選択ビット線に第1のスイッチ回路(スイッチ素子145および146)を介して読み出し回路106が接続され、選択ワード線に第2のスイッチ回路(バッファ回路134)を介して第2の電圧(GND電圧)が接続され、非選択ワード線に第3のスイッチ回路(PMOSトランジスタ135および136)を介して非選択ワード線用電流源199が接続されるように、第1〜第3のスイッチ回路を制御する。
以上の様に、本実施の形態によると、選択メモリセルが属するメモリセルアレイブロックの非選択ワード線群に対して所定電流を印加することが可能な構成のクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置400は、読み出し時に書込みデータの読み出しマージンを拡大し、安定的な読み出しが可能な不揮発性記憶装置を実現することができる。
(実施の形態2)
図27にクロスポイントメモリセルアレイに用いるメモリセル51を4層構造に積層した場合の本発明の実施の形態2に係るメモリセル断面構成図を示す(各層のメモリセル51の構造は図2又は図3と同じであり、説明の簡単化のため、図2の構造を用いた構成としている)。
図27において、メモリセル51は、抵抗変化素子10と、電流制御素子29とが直列接続された構成を有して1ビットを構成し、本メモリセル51を上下層に積層した4層で構成されている。この4層構造では、1層目メモリセルの下部端子をビット線71aに接続し、1層目メモリセルの上部端子をワード線70aに接続し、2層目メモリセルの下部端子をワード線70aに接続し、2層目メモリセルの上部端子をビット線71bに接続し、3層目メモリセルの下部端子をビット線71bに接続し、3層目メモリセルの上部端子をワード線70bに接続し、4層目メモリセルの下部端子をワード線70bに接続し、4層目メモリセルの上部端子をビット線71cに接続している。
つまり、1層目メモリセルと2層目メモリセルの中間にワード線70aが配置され、前記ワード線70aは、1層目メモリセルの上部端子と2層目メモリセル下部端子に共に接続された共有化構成となっている。同様に、2層目メモリセルと3層目メモリセルの間にビット線71bが配置され、前記ビット線71bは、2層目メモリセルの上部端子と3層目メモリセル下部端子に共に接続された共有化構成となっている。さらに同様に、3層目メモリセルと4層目メモリセルの間にワード線70bが配置され、前記ワード線70bは、3層目メモリセルの上部端子と4層目メモリセル下部端子に共に接続された共有化構成となっている。
なお、図27において、電流制御素子29と抵抗変化素子10の位置関係は上下逆でもかまわない。
図28は、本実施の形態2におけるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置の一部(一つの垂直アレイ面)であって、図27と同じ形態でメモリセルが8層積層された多層クロスポイントメモリセルアレイをワード線方向から見たメモリセルアレイの断面構造と、その下層部に配置される回路構成を示す構成概要図を示している。
アルミニウム等の配線材料で構成され、この紙面に水平方向(X方向)に延びるよう配置される第1層ビット線53aと、アルミニウム等の配線材料で構成され、この紙面に垂直方向(Y方向:図示せず)に延びるよう配置される第1層ワード線52aの交点に、メモリセル51が配置されている。それらメモリセル51は、第1層ビット線53a上にX方向に沿ってnビット配列され、第1層メモリセル51aを形成している。
そして、第1層メモリセル51aの上層(Z方向)に、今度は第1層ワード線52aを下にして、アルミニウム等の配線材料で構成され、この紙面のX方向に延びるよう配置される第2層ビット線53bとの交点に、メモリセル51が配置されている。それらメモリセル51は、やはり第2層ビット線53b上にX方向に沿ってnビット配列され、第2層メモリセル51bを形成している。なお、Z方向とは、層が重なる方向である。
以下同様に、ワード線またはビット線を共用する形で、第2層ビット線53bと第2層ワード線52bとの交点に第3層メモリセル51cが形成され、第2層ワード線52bと第3層ビット線53cとの交点に第4層メモリセル51dが形成され、第3層ビット線53cと第3層ワード線52cとの交点に第5層メモリセル51eが形成され、第3層ワード線52cと第4層ビット線53dとの交点に第6層メモリセル51fが形成され、第4層ビット線53dと第4層ワード線52dとの交点に第7層メモリセル51gが形成され、第4層ワード線52dと第5層ビット線53eとの交点に第8層メモリセル51hが形成されている。このようにして、本実施の形態では、メモリセル51を8層積み重ねた3次元メモリセルアレイが形成されている。
このように、各メモリセル51は、(1)X方向に延び、複数の層に形成された複数のビット線53a〜53eと、(2)Y方向に延び、第1層ビット線53aと第2層ビット線53bとの間の層に形成された第1層ワード線52a、第2層ビット線53bと第3層ビット線53cとの間の層に形成された第2層ワード線52b、第3層ビット線53cと第4層ビット線53dとの間の層に形成された第3層ワード線52c、および、第4層ビット線53dと第5層ビット線53eとの間の層に形成された第4層ワード線52dとの交点位置のそれぞれに、当該ビット線と当該ワード線とに挟まれて形成されている。ここで、当該ビット線から見て上方のワード線と当該ビット線との交点位置に形成されるメモリセルを奇数層(第1、3、5、7層)のメモリセルと呼び、当該ビット線から見て下方のワード線と当該ビット線との交点位置に形成されるメモリセルを偶数層(第2、4、6、8層)のメモリセルと呼ぶ。
そして、第1、3、5層ビット線53a、53c、53eは、第2のビアの一例である奇数層ビット線ビア55で共通接続され、第2、4層ビット線53b、53dは、第1のビアの一例である偶数層ビット線ビア54で共通接続されている。このように、Z方向で隣り合う層のメモリセル群はビット線またはワード線の何れかを共有する構造の為、最少の配線層数で多層クロスポイントメモリセルアレイを構成することができ、低コスト化が可能になる。
本実施の形態では、第1層メモリセル51aから第2層メモリセル51bまでの何れの層においても、メモリセル51の内、抵抗変化素子10はZ方向に対し同一の構造および製造条件で形成できること(例えば、何れの層においても、より下層側に第2電極21、その上に第1の抵抗変化層13、その上に第2の抵抗変化層12、その上に第3電極11を形成できること)が特徴で、メモリセルが奇数層にあるか、偶数層にあるかに依らず同じ構造のメモリセルを製造することができる。つまり、偶数層のメモリセルを構成する抵抗変化素子10と、奇数層のメモリセルを構成する抵抗変化素子10とは、Z方向に対し同じ向きで配置される。
偶数層ビット線ビア(偶数層BLビア)54は、NMOSトランジスタで構成された第1のビット線選択スイッチ素子の一例である偶数層ビット線選択スイッチ素子57のドレインまたはソースの一方に接続され、一方、奇数層ビット線ビア(奇数層BLビア)55は、NMOSトランジスタで構成された第2のビット線選択スイッチ素子の一例である奇数層ビット線選択スイッチ素子58のドレインまたはソースの一方に接続される。偶数層ビット線選択スイッチ素子57のドレインまたはソースの他方および、奇数層ビット線選択スイッチ素子58のドレインまたはソースの他方は共通接点(GBLI)に共通接続される。また偶数層ビット線選択スイッチ素子57のゲートは偶数層ビット線選択信号線に接続され、奇数層ビット線選択スイッチ素子58のゲートは奇数層ビット線選択信号線に接続されている。
また、共通接点GBLIは、NMOSトランジスタで構成されたN型電流制限素子90のドレインまたはソースの一方に接続され、さらに、PMOSトランジスタで構成されたP型電流制限素子91のドレインまたはソースの一方に接続されている。N型電流制限素子90のドレインまたはソースの他方は、グローバルビット線(GBL)に接続され、P型電流制限素子91のドレインまたはソースの他方も同様にグローバルビット線(GBL)に接続されている。つまり、N型電流制限素子90とP型電流制限素子91とは、並列に接続され、偶数層ビット線選択スイッチ素子57および奇数層ビット線選択スイッチ素子58とグローバルビット線(GBL)との間に流れる双方向の電流のそれぞれを制限する双方向電流制限回路920を構成している。
N型電流制限素子90のゲートにはノードCMNに接続される信号線が接続され、P型電流制限素子91のゲートにはノードCMPに接続される信号線が接続されている。本発明は読み出しに関する技術であり、読み出しモードにおいて、N型電流制限素子90とP型電流制限素子91は常時オン状態とする為、ノードCMPおよびノードCMNから各ゲートに印加される信号の電圧は、それぞれ、CMPが0V、CMNがVSAとなる。ちなみに、N型電流制限素子90とP型電流制限素子91とが電流制限素子として機能するのは書き込み動作時である。
なお、図28に示すビット線53が並ぶ方向にスライスした構成のグループを垂直アレイ面と呼ぶ。つまり、層が重なる方向であるZ方向に並んだ複数のビット線群毎に構成され、垂直に貫通するワード線を共通に有し、Y方向に並んで配置された複数のXZ面のそれぞれを垂直アレイ面と呼ぶ。
前記垂直アレイ面を面が合わさる様に4枚並べた場合の構成図を図29に示す。
図29において、ビット線が延びる方向をX方向、ワード線が延びる方向をY方向、ビット線やワード線の層が重なる方向をZ方向としている。
図29において、ビット線(BL)53はX方向に延び、複数の層(図29では5層)に形成されている。ワード線(WL)52はY方向に延び、ビット線の間の各層(図29では4層)に形成されている。そして、メモリセルアレイ100において、ビット線53とワード線52との交点位置に、各メモリセル(MC)51が当該ビット線53と当該ワード線52とに挟まれて形成されている。なお、図の簡略化のために、メモリセル51の一部およびワード線の一部については図示を省略している。
そして、Z方向に揃った各層のビット線BL群毎に、ワード線WLとの間に形成されたメモリセル51によって、垂直アレイ面0〜3がそれぞれ構成されている。各垂直アレイ面0〜3において、ワード線WLは共通である。図29の例では、各垂直アレイ面0〜3において、メモリセル51がX方向に32個(図11においてn=32)、Z方向に8個、配置されている。またメモリセルアレイ100は、Y方向に並ぶ4個の垂直アレイ面0〜3によって構成されている。
ただし、垂直アレイ面におけるメモリセルの個数や、Y方向に並ぶ垂直アレイ面の個数は、これに限定されるものではない。
そして、各垂直アレイ面0〜3において、偶数層のビット線BLが図28における偶数層ビット線ビア54により共通に接続されており(BL_e0〜BL_e3)、また、奇数層のビット線BLが図28における奇数層ビット線ビア55により共通に接続されている(BL_o0〜BL_o3)。
さらに、各垂直アレイ面0〜3に対応して設けられたグローバルビット線GBL000〜GBL003がY方向に延びて形成されている。また、各垂直アレイ面0〜3毎に、奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64および偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68がそれぞれ設けられている。図29では、奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64および偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68は、NMOSトランジスタによって構成されているものとしている。加えて、NMOSトランジスタによって構成されるN型電流制限素子90、92、94、96とPMOSトランジスタによって構成されるP型電流制限素子91、93、95、97が関係する奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64および偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68の各々と、関係する各グローバルビット線GBL000〜GBL003とは、奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64および偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68の他方のドレイン又はソースの拡散層端子で接続されている。N型電流制限素子90、92、94、96のゲート端子は制御電圧用ノードCMNに共通接続され、P型電流制限素子91、93、95、97のゲート端子は制御電圧用ノードCMPが共通接続される。また、ノードCMNとノードCMPの電圧は制限したい電流量に応じて任意に設定することができる。
奇数層ビット線選択スイッチ素子61〜64は、それぞれ関係するN型電流制限素子90、92、94、96及びP型電流制限素子91、93、95、97を介して、当該垂直アレイ面に係るグローバルビット線GBL000〜GBL003と、当該垂直アレイ面においてそれぞれ共通に接続された奇数層のビット線BL_o0〜BL_o3との電気的な接続または非接続を、奇数層ビット線選択信号BLs_o0に従って切換制御する。一方、偶数層ビット線選択スイッチ素子65〜68は、それぞれ関係するN型電流制限素子90、92、94、96及びP型電流制限素子91、93、95、97を介して、当該垂直アレイ面に係るグローバルビット線GBL000〜GBL003と、当該垂直アレイ面においてそれぞれ共通に接続された偶数層のビット線BL_e0〜BL_e3との電気的な接続または非接続を、偶数層ビット線選択信号BLs_e0に従って切換制御する。
この構成では、何れのメモリセル層においても抵抗変化素子10のZ方向の構造は、同じ構造で形成したメモリセル51で各垂直アレイ面0〜3は形成できる。そして、図28において、偶数層のビット線53b及び53d、および奇数層のビット線53a、53c、及び53eをそれぞれ独立したビア(偶数層ビット線ビア54及び奇数層ビット線ビア55)で共通に接続し、さらにはそれらのビアとグローバルビット線GBLを、偶数層ビット線選択スイッチ素子57または奇数層ビット線選択スイッチ素子58と双方向電流制限回路920を介して接続することにより、階層ビット線方式による多層クロスポイント構造を実現している。
次に、メモリセルが8層積層された多層クロスポイントメモリセルアレイの読み出し時のワード線選択及びワード線への電圧電流印加に関連する、非選択ワード線用電流源199〜ワード線プリデコーダ回路111〜ワード線デコーダ回路103〜ワード線までの回路構成とその動作について、図30を用いて詳細に説明する。
図30において、PMOSトランジスタ135はソース端子に読み出し電源VSAが接続され、ゲート端子に制御回路109による制御の下で所定の固定電圧Vicが接続され、ドレイン端子が出力端子に接続され、PMOSトランジスタ135を主構成要素とする、VSA電圧と所定の固定電圧Vicとで決まる一定電流Inswlを発生する非選択ワード線用電流源199の構成例である。非選択ワード線用電流源199の出力端子はノードNWSに接続される。PMOSトランジスタ136はソース端子に読み出し時のプリチャージ電源VPRが接続され、ゲート端子にプリチャージ信号NPREが接続され、ドレイン端子にノードNWSが接続され、読み出し動作のプリチャージ時にノードNWSをVPRに設定する機能を有する。
バッファ回路134は入力信号に従って高電圧側電圧又は低電圧側電圧を選択出力する回路である。このバッファ回路134は、高電圧側電圧を供給するための端子がノードNWSに接続され、低電圧側電圧を供給するための端子がGND端子(0V)へ接続され、各入力端子がグローバルワード線選択信号GWLSgi(gは0〜l−1、iは00〜n−1の整数で、ワード線がl層(ここではl=4)に積層されたメモリセルアレイより、gはZ方向の層番号を、iはX方向の配置番号を示す2桁の番号で表現)のそれぞれに接続され、各出力端子がグローバルワード線GWLgi(gは0〜l−1、iは00〜n−1の整数)のそれぞれへ接続されている。l×n個のバッファ回路134で構成されるワード線プリデコーダ回路111は、グローバルワード線選択信号GWLSgiによって、所定の1本のグローバルワード線GWLlnを選択グローバルワード線として選択制御する。つまり、グローバルワード線選択信号GWLSgiの内の任意の1つの選択を意味するLowレベルに、他をHighレベルに設定する。選択された1本のグローバルワード線GWLgiをGND電圧に設定し、他の全ての非選択グローバルワード線を非選択ワード線用電流源199に接続する。
ワード線選択スイッチ回路132は、PMOSトランジスタ130とNMOSトランジスタ131とがお互いのドレイン端子とソース端子とが並列接続され、それぞれのゲート端子によってドレイン−ソース間の導通/非導通を制御するCMOSタイプのワード線選択スイッチ回路である。インバータ133はブロック選択信号BLKj(jは0〜15の整数)を入力としてその反転信号を出力する。前記PMOSトランジスタ130のゲート端子がインバータ133の出力端子に接続され、前記NMOSトランジスタ131のゲート端子が、対応するブロック選択信号BLKjに接続されている。各ワード線にはワード線選択スイッチ回路132がそれぞれ設けられ、メモリセルアレイブロック単位でワード線とグローバルワード線との電気的な接続制御を行うワード線デコーダ回路103が構成されている。
ワード線選択スイッチ回路132はメモリセルアレイブロック250内の各ワード線に存在(図30では1つのメモリセルアレイブロック内のワード線数はn本×l層=32本×4層=128本より、ワード線選択スイッチ回路132も128個存在する)する。1つのメモリセルアレイブロック250に対応した4×32個のワード線選択スイッチ回路132は、メモリセルアレイブロック250に対応したブロック選択信号BLKjによって、選択時には4×32個のワード線選択スイッチ回路132が全てオン状態となり、非選択時には全てオフ状態となる。16個の各メモリセルアレイブロックに対応して前記4×32個のワード線選択スイッチ回路132が存在し、128個のワード線選択スイッチ回路132は、ワード線デコーダ回路103を構成している。
本構成によって任意のワード線を選択する場合、まず選択ワード線が属する一つのメモリセルアレイブロック250を指定するブロック選択信号BLKjが出力(High状態)され、ワード線デコーダ回路103により、ブロック選択信号BLKjを受けて1つの選択ブロックに対応する4×32個のワード線選択スイッチ全てがオン状態となる。一方、選択ブロック以外の他の非選択ブロックに対応する4×32個のワード線選択スイッチ全てはオフ状態となる。更にワード線プリデコーダ回路111内の選択ワード線に対応する1本の選択グローバルワード線GWLn0(n0は選択グローバルワード線に対応する整数)がグローバルワード線選択信号GWLSln0の出力信号(Low状態)を受けてGND状態に設定され、他の4×31本の非選択グローバルワード線GWLlnはノードNWSに接続される。ノードNWSは、読み出しのプリチャージ時(第1のステップ)にはNPRE信号のLow状態を受けてVPR電圧に設定され、読み出しのセンス時(第2のステップ)にはNPRE信号のHigh状態を受けてPMOSトランジスタ136はオフ状態に設定されるので、非選択ワード線用電流源199の出力電流Inswlのみが印加される様に設定される。
なお、全てのワード線が非選択のメモリセルアレイブロック250は、ワード線デコーダ回路103内の関係するワード線選択スイッチ回路132が全てオフ状態となるので、前記非選択ワード線はハイインピーダンス(Hi−z)状態となる。
本メモリセルアレイの様に複数層のワード線で構成される多層構造のクロスポイント型メモリセルアレイにおいても、複数のワード線構造に対応したワード線プリデコーダ回路やワード線デコーダ回路を構成することによって、単層のワード線構成と同様の方法で動作させることが可能となる。つまり、実施の形態1の単層のワード線構成で説明した読み出しシーケンスを適用することで、複数層のワード線で構成される多層構造のクロスポイント型メモリセルアレイの読み出しを行うことができる。
以上の様に、本実施の形態によると、2層を越える多層構造のクロスポイント型メモリセルアレイにおいても、選択メモリセルが属するメモリセルアレイブロックの非選択ワード線群に対して所定電流を印加することが可能なクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置を構成することができ、読み出し時に書込みデータの読み出しマージンを拡大し、安定的な読み出しが可能な不揮発性記憶装置を実現することができる。
以上、本発明に係るクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置について、実施の形態1および2に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、各実施の形態における構成要素を任意に組み合わせて実現される形態も、本発明に含まれる。
たとえば、本発明は、クロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置として実現できるだけでなく、クロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置の読み出し方法として実現することもできる。
より具体的には、本発明の一態様は、制御回路109による制御の下でクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置400からデータを読み出す方法であって、極性の異なる電圧を印加することで低抵抗状態および高抵抗状態の少なくとも2つの状態を可逆的に遷移する抵抗変化素子10と、前記抵抗変化素子10に直列に接続された非線形の電流電圧特性を有する双方向の電流制御素子29とを有するメモリセルが複数配置され、前記各メモリセルが、X方向に延びた複数のビット線と、Y方向に延びた複数のワード線との交点位置に形成されたクロスポイント型のメモリセルアレイ200を備えるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置400の読み出し方法である。
その読み出し方法は、ワード線デコーダ回路103等が、前記複数のビット線から少なくとも一つのビット線を選択し、前記複数のワード線から少なくとも一つのワード線を選択することで、前記メモリセルアレイ200から少なくとも一つのメモリセルを選択するデコードステップと、読み出し回路106が、選択されたメモリセルからデータを読み出す読み出しステップと、制御回路109が、選択されたメモリセルからのデータの読み出し時に、前記デコードステップで選択されたビット線である選択ビット線に前記読み出しのための第1の電圧を印加し、前記デコードステップで選択されたワード線である選択ワード線に第2の電圧を印加し、前記デコードステップで選択されていないワード線である非選択ワード線に第1の定電流を供給する制御を行う電流供給ステップと、を含む。
これにより、非選択ワードに対して、定電圧ではなく、定電流が印加され、いわゆる、非選択ワード線電流印加方式が採用される。本方式により、電圧に対して電流特性が敏感な本メモリセルを用いるクロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置400に対して、印加する電気信号のばらつきを考慮した現実の読み出しマージンを拡大し、安定的な読み出し特性を実現することができる。
さらに、このような非選択ワード線電流印加方式では、非選択ワード線に印加される電流のばらつきが、従来の定電圧印加方式に比べ、小さくなるので、非選択セルを介して選択ワード線に流入する電流の変化による電磁ノイズ(EMI)の発生という問題についても、安定的な動作が可能になる。
ここで、前記電流供給ステップでは、前記第1の電圧と前記第1の定電流とを、少なくとも前記データの読み出し時に所定の電圧を供給する同じ電源から生成してもよい。これにより、本発明に係る非選択ワード線電流印加方式が簡易に実現される。
また、この読み出し方法は、さらに、上述の第1のスイッチ回路により、前記第1の電圧とデータの読み出しに先立つプリチャージ用の第3の電圧の何れかを前記デコードステップで選択されたビット線に選択的に接続する第1のスイッチステップと、上述の第2のスイッチ回路により、前記第2の電圧と前記第3の電圧の何れかを前記デコードステップで選択されたワード線に選択的に接続する第2のスイッチステップと、上述の第3のスイッチ回路により、前記第1の定電流と前記第3の電圧の何れかを前記デコードステップで選択されていないワード線に選択的に接続する第3のスイッチステップとを含んでもよい。
より具体的には、前記電流供給ステップでは、第1のステップにおいて、前記選択ビット線に前記第1のスイッチステップで前記第3の電圧が供給され、前記選択ワード線に前記第2のスイッチステップで前記第3の電圧が供給され、前記非選択ワード線に前記第3のスイッチステップで第3の電圧が供給されるように、前記第1乃至第3のスイッチステップでの動作を制御し、第2のステップにおいて、前記選択ビット線に前記第1のスイッチステップで前記第1の電圧が供給され、前記選択ワード線に前記第2のスイッチステップで前記第2の電圧が供給され、前記非選択ワード線に前記第3のスイッチステップで前記第1の定電流が供給されるように、前記第1〜第3のスイッチステップでの動作を制御するのが好ましい。これにより、データの読み出しに先立つプリチャージが実現され、より確実なデータ読み出しが可能となる。
なお、前記第1のステップで前記非選択ワード線に供給される前記第3の電圧は、前記第2のステップで供給される前記第1の電流源からの電流によって決まる前記非選択ワード線の電圧にほぼ等しいのが好ましい。これにより、第1のステップから第2のステップに切り替わったときにおける非選択ワード線の電圧レベルの変動が抑制され、より安定したデータ読み出しが可能になる。
また、前記デコードステップは、ワード線デコーダ回路103により、前記複数のメモリセルアレイ200のうち、所定のワード線を選択するワード線デコードステップと、ワード線プリデコーダ回路111により、前記ワード線デコードステップによって選択されたワード線に電圧又は電流の供給を制御するワード線プリデコードステップとを含んでもよい。これにより、非選択ワード線には第3のスイッチ回路およびワード線プリデコーダ回路を介して第1の電流源からの定電流が印加され、簡易に非選択ワード線電流印加方式が実現される。
ここで、前記読み出しステップでは、上述の第1のPMOSトランジスタと、上述の第2のPMOSトランジスタと、第2の定電流を流す上述の第2の電流源と、差動検知回路148とを用いて前記データを読み出すのが好ましい。これにより、電流印加によってメモリセル内の抵抗変化素子の抵抗状態を検出するデータ読み出し方式が実現される。
また、前記ビット線から見て上方の前記ワード線と当該ビット線との交点位置に形成される前記メモリセルを奇数層のメモリセルとし、前記ビット線から見て下方の前記ワード線と当該ビット線との交点位置に形成される前記メモリセルを偶数層のメモリセルとし、層が重なる方向であるZ方向に並んだ前記複数のビット線群毎に構成され、前記Y方向に並んで配置された複数のXZ面のそれぞれを垂直アレイ面0〜3とした場合に、前記各垂直アレイ面0〜3は、前記各垂直アレイ面0〜3を垂直に貫通する前記複数のワード線を共通に有し、前記各垂直アレイ面0〜3において、全ての偶数層の前記ビット線はZ方向に繋がれた第1のビアと共通に接続され、かつ、全ての奇数層の前記ビット線はZ方向に繋がれた第2のビアと共通に接続され、前記クロスポイント型抵抗変化不揮発性記憶装置400はさらに、前記複数の垂直アレイ面0〜3毎に設けられたグローバルビット線GBLと、前記垂直アレイ面0〜3毎に設けられ、前記第1のビアと一端が接続された複数の第1のビット線選択スイッチ素子と、前記垂直アレイ面0〜3毎に設けられ、前記第2のビアと一端が接続された複数の第2のビット線選択スイッチ素子と、前記垂直アレイ面0〜3毎に設けられ、当該垂直アレイ面に対応する前記第1のビット線選択スイッチ素子の他端および当該垂直アレイ面に対応する前記第2のビット線選択スイッチ素子の他端と当該垂直アレイ面に対応する前記グローバルビット線GBLとの間に設けられ、前記第1のビット線選択スイッチ素子および前記第2のビット線選択スイッチ素子と前記グローバルビット線GBLとの間に流れる双方向の電流のそれぞれを制限する双方向電流制限回路920と、前記双方向電流制限回路を制御する電流制限制御回路104と、を備え、前記デコードステップは、グローバルビット線デコーダ/ドライバ回路102により、前記複数のグローバルビット線GBLに、前記メモリセルを選択し、書き込み及び読み出しのための信号を供給するグローバルビット線デコード/ドライブステップと、ワード線デコーダ回路103により、前記複数のワード線に、前記メモリセルを選択し、書き込み及び読み出しのための信号を供給するワード線デコードステップとを含み、前記読み出しステップでは、前記グローバルビット線デコード/ドライブステップと前記ワード線デコードステップとで選択されたメモリセルからデータを読み出してもよい。
これにより、大記憶容量に適した多層構造のクロスポイント型メモリセルアレイについても、本発明に係る非選択ワード線電流印加方式を適用することが可能となる。