JPWO2012141311A1 - 反射防止性ガラス基体 - Google Patents

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Abstract

優れた反射防止性能を有するガラス基体を提供する。
ガラス基体の少なくとも1面が、複数の凹凸を有するガラス基体であって、該凸部の大きさRpが37nm以上200nm以下であり、凸部の傾斜角θの度数分布における最大度数を示す傾斜角θpが20°以上75°以下であり、傾斜角θの累積度数分布において50%を示す値をθ50とした場合の、θpとθ50の差(θp−θ50)の絶対値が30°以下であり、かつ、該凹凸は、表面粗さ(Ra)が2nm以上100nm以下、最大高低差P−Vが35nm以上400nm以下、凹凸を含む面積を観察面積で除した面積比S−ratioが1.1以上3.0以下であるガラス基体。

Description

本発明は、ガラス部分が凹凸化された、ガラスよりも屈折率の低い層(以下、「低屈折率層」とも称する)を有する反射防止性ガラス基体に関する。
従来、建材用ガラス、自動車用ガラス、ディスプレイ用ガラス、光学素子、太陽電池用ガラス基体、ショーウィンドウガラス、光学ガラス、メガネレンズなどの光線透過性が要求される用途に用いられるガラス基体において、光線透過率を高めるためにガラス基体の表面に反射防止膜を形成する場合がある。例えば、高透過性のガラス製の部材を得るために、その表面に、蒸着、スパッタなどのドライコーティングや、塗布、スピンコートなどの湿式コーティング等の方法によって、MgF2等のフッ化物の膜や中空状のSiO2膜による反射防止膜を形成することが行われていた。
しかしながら、ガラス基体と異なる性質の機能膜を成膜するため、ガラス基体と機能膜との密着性が悪く、拭き取り等の操作によって膜が容易に剥離する問題があったため、ガラス基体の表面にフッ素化剤を接触させて、ガラス表面に多孔質構造を形成(以下、「エッチング」とも称する)することで、反射防止膜を形成させる方法が知られている(特許文献1〜3)。
これは、ガラス表面において、フッ素系化合物がガラスの骨格構造であるSiOと反応してSiF(ガス)を生成し、その結果、骨格を失った残りの成分が珪フッ化物となって、表面に多孔質の領域を形成するものと推定される。
上記特許文献1では、上記フッ素化剤として、フッ素単体(F)、またはガラスの骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成しうるフッ素化合物、例えば、フッ化水素(HF)、四フッ化ケイ素、五フッ化リン、三フッ化リン、三フッ化ホウ素、三フッ化窒素、三フッ化塩素が挙げられており、中でも、そのままでも反応性が高く、反応時間を短縮できるとしてフッ素単体が最も好ましいと記載されている。ここで、フッ素化剤の濃度として、濃度が低すぎると反応速度が遅くなり処理時間が長くなり、また、濃度が高すぎると反応が速くなり反応の制御が困難となると記載され、ガス状のフッ素化剤の温度を高くする、および/または、圧力を高くすることにより、ガラス表面のフッ素原子濃度を高くすることができると記載され、具体的には、上記多孔質構造を形成するに際して、フッ素化剤としてフッ素単体を用いて、F濃度が20モル%の場合には、20〜80℃にて1〜8時間の表面処理が、F濃度が2モル%の場合には、550〜600℃にて15分間の表面処理が行われている。
また、特許文献2には、ガラス表面におけるフッ化水素濃度を1モル%以下に制御することにより、過度のエッチング作用による表面特性の悪化を生じることなく、ガラスの表面を低コストで、かつ密着性に優れたフッ素化処理ができることが記載されており、上記フッ化水素濃度を1モル%以下に制御するためには、フッ素化剤としてフッ化水素を使用しないことが記載されている。また、特許文献3では、フッ化水素および水を含むガスを用いて、10℃〜60℃のガラス基体に対して表面処理を行っている。
国際公開第08/156177号 国際公開第08/156176号 日本国特開平4−251437号公報
しかしながら、ガラス基板表面にフッ素化剤を接触させて表面に多孔質構造(凹凸構造)を設けることにより、ガラスよりも屈折率の低い、低屈折率層を設ける技術は知られているが、上記のようにして種々の調整を行ってエッチングを行っても反射防止性は低く、高い反射防止性を有するガラス基板の実現が望まれていた。
また、本反射防止性ガラス基体を薄膜シリコン太陽電池の基板に使用した場合、薄膜シリコン太陽電池において使用される発電層では、特定の波長領域の光が発電効率を上げるという波長依存性があり、特にアモルファスシリコン層は、太陽光のうち400〜700nmの光を効率よく吸収するため、この波長領域の透過率が改善された、反射防止性ガラス基板の実現が望まれていた。
本発明者らは、かかる状況の下、種々検討を重ねた結果、本発明に想到したものである。すなわち、本発明は下記の構成よりなるものである。
(1)ガラス基体の少なくとも1面が、複数の凹凸を有する、表面のガラス部分が凹凸化されたガラス基体であって、前記複数の凹凸を二次元フーリエ変換で近似処理した後に、前記複数の凹凸の凸部を正四角錐と近似した場合の底辺の一辺の長さを凸部の大きさとした場合の度数分布において、
最大度数を示す大きさをRpとしたときに、前記凸部の大きさRpが37nm以上200nm以下であり、
前記凸部の傾斜角θの度数分布における最大度数を示す傾斜角θpが20°以上75°以下であり、
前記傾斜角θの累積度数分布において50%を示す値をθ50とした場合の、θpとθ50の差(θp−θ50)の絶対値が30°以下であり、
かつ、該凹凸部は、JIS B 0601(1994)に規定された表面粗さ(Ra)が2nm以上100nm以下、最大高低差P−Vが35nm以上400nm以下、該凹凸を含む面積を観察面積で除した面積比S−ratioが1.1以上3.0以下であることを特徴とするガラス基体。
(2)前記凹凸化されたガラス基体の表面の原子数濃度比が深さ5nmまでの範囲で、F/Siが0.05以上であることを特徴とする、上記(1)に記載のガラス基体。
(3)前記表面から深さ方向内部にいくにしたがって、F/Siが連続的に減少していくことを特徴とする、上記(2)に記載のガラス基体。
(4)前記凹凸化されたガラス基体の表面のガラスと空気の界面から凹凸化処理前のガラス表面に垂直な法線を引いた際に、前記ガラス基体上面の空気層以外に、前記凹凸化処理前のガラス基体表面よりもガラス基体側にある空気層を1つ以上通過するような法線(ただし、該法線の左右25nm範囲に法線が引ける場合は合わせて同じ法線と数える)を、ガラス基体の幅方向1000nmの範囲に1つ以上有することを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1つに記載のガラス基体。
(5)クリプトンガスを用いたBETの吸着法で測定した比表面積の相対比表面積(未処理のガラス基体の比表面積に対する前記凹凸処理化後のガラス基体の比表面積)が1.1以上5.0以下であることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1つに記載のガラス基体。
(6)前記凹凸化されたガラス表面の少なくとも50%以上の領域を、SiOを主成分とする膜で被覆されていることを特徴する、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載のガラス基体。
(7)前記凹凸化されたガラス表面で、凹部の中までSiOを主成分とする膜で被覆されてことを特徴とする、上記(1)から(6)のいずれか1つに記載のガラス基体。
本発明により、凹凸化された面に対して、400〜1100nmという広い波長範囲にわたって、少なくとも1.0%以上の反射防止性を有するガラス基体が得られる。また波長範囲400〜700nmの透過率を1.0%以上改善することができ、薄膜シリコン太陽電池におけるアモルファスシリコン層での発電効率が大きく改善されることが期待できる。
本発明者は、凹凸が形成されたガラス基体のAFM像解析において、「凹部が深いこと」、すなわち、凸部の長さRが37nm以上200nm以下であり、かつ、凸部の傾斜角θが20°以上75°以下のときに、反射防止効果が増大することを見出した。
図1は、実施例で用いた装置の概念図である。 図2は、凹凸形状規定を説明するための概略図である。 図3は、実施例1で得られたガラス基体のAFM像である。 図4は、実施例1で得られたガラス基体の断面SEM像の二次電子像である。 図5は、図4で得られた電子像の凹凸断面形状をトレースした図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<ガラス基板>
本発明で用いられるガラス基体は、必ずしも平面で板状である必要はなく、曲面でも異型状でもよく、例えば表面にガラス成形時の成形ローラ表面模様が形成されている型板と呼ばれるガラス基体でもよい。ガラス基体としては、無色透明なソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス基体、無アルカリガラス基体、その他の各種ガラスからなる透明ガラス板を用いることができる。
また、太陽電池用基体に用いる場合、ガラス基体の厚さは0.2〜6.0mmであることが好ましい。この範囲において、前記ガラス基体の強度が強く、透過率が高い。また基体は、350〜800nmの波長領域において高い透過率、例えば80%以上の透過率を有することが好ましい。また、十分絶縁性で、かつ化学的、物理的耐久性が高いことが望ましい。
本発明では、ガラス基体の表面に多孔質構造が形成され、ガラス基体表面の屈折率がバルクガラスの屈折率よりも低くなることにより、ガラスよりも屈折率の低下した「低屈折率層」を形成することができる。ガラス面に凹凸構造を形成して反射防止効果を上げるためには、ガラス材料からなる凸部と、凹部の空間を占める空気から構成される、2つの材料の屈折率(混合屈折率)が、ガラスの屈折率よりも低いことが必要である。凹凸構造の概略図を図2に例示する。本発明において、凹凸構造は、複数の凹部及び凸部からなる複数の凹凸を有する構造のことをいう。
「凹部の深さ」は、断面SEM像などから深さを測定することができるが、本発明では、凸部を正四角錐と近似した場合の底面の一辺の長さRpと、凸部を断面で見て、その凸部を二等辺三角形として近似した場合の傾斜角θpを求めることなどで表現している。一辺の長さRとは凸部の大きさ、言い換えると凹部入り口の広さを表しており、上記のとおりに近似した凸部の大きさRについて、度数分布における最大度数を示す大きさを凸部の大きさRpとした。凸部の一辺の長さRpは、37nm以上200nm以下であることが好ましい。37nmより小さい場合、凹凸構造が非常に細かくなり、凹部が浅くなるため、十分な反射防止効果を得ることが困難になり、200nmよりも大きい場合、凹凸構造が非常に大きくなり、凹部が非常に深くなるため、外力に非常に弱く、十分な耐摩耗性が得られない。より好ましくは37nm以上、180nm以下であり、さらに好ましくは40nm以上150nm以下である。さらにより好ましくは60nm以上130nm以下である。
傾斜角θpとはRpと共に凸部の高さ、言い換えると凹部の深さを示しており、傾斜角θの度数分布における最大度数を示す傾斜角θのことをいう。傾斜角θpは20°以上、75°以下であることが好ましい。20°より小さい場合、凹凸構造の傾斜がなだらかになり、凹部が浅くなるため、十分な反射防止効果を得ることが困難になり、75°より大きい場合は凹凸構造の傾斜が非常に急峻になるため、外力に弱く、十分な耐摩耗性が得られない。θpのより好ましい範囲は20°以上、70°以下であり、より好ましくは25°以上、70°以下である。
また傾斜角θの累積度数分布において50%を示す値θ50とした場合の、θpとθ50の差(θp−θ50)の絶対値は、30°以下であることが好ましい。(θp−θ50)が30°を超える場合、凹凸構造の凸部の高さや、凹部の深さが一様ではなく、凹凸構造を有するガラス基体の反射防止効果の面内均一性が悪化するので好ましくない。(θp−θ50)の絶対値は、20°以下であることがより好ましい。さらに好ましくは13°以下である。
ここで、ガラス基体の表面に多孔質構造(凹凸構造)が形成されるとは、ガラス基体の表面に多数の孔(開放孔)が形成された状態になることをいい、図3(AFM像)で示されるような複数の凹凸が存在する状態のことをいう。ガラス基体の表面に低屈折率層を形成するためには、AFMで観察される表面形状におけるJIS B 0601(1994)に規定された表面粗さ(Ra)が2nm以上100nm以下であることが好ましい。2nm未満では反射防止効果が十分でなく、100nmを超えるとガラス基体表面の凹凸が激しくなり、耐摩耗性が大きく低下する。Raは2nm以上70nm以下であることがより好ましく、2〜50nmであることがさらに好ましい。また、AFMで観察される表面形状におけるP−V(最大高低差)は35nm以上400nm以下であることが好ましく、35〜350nmであることがより好ましく、35〜200nmであることがさらに好ましい。なお、P−V(最大高低差)とは、JIS B 0601(2001)定義のRzと同じである。また、AFMで観察される表面形状におけるS−ratio(凹凸を含む面積を観察面積で除した面積比)は1.1以上3.0以下であることが好ましい。1.1未満であると、元のガラス基体に対する面積増加率が10%未満であり、凹凸構造が十分に形成されているとはいえず、そのため反射防止効果が小さいため好ましくない。また3.0を超えると反射防止効果は十分であるが、凹凸構造の凸部の大きさRが非常に小さく、傾斜角θが非常に大きい状態になり、なおかつ、ガラス基体は金属などに比べて非常に脆性が高いという性質を持つので、該表面での耐摩耗性は非常に小さくなるため、好ましくない。S−ratioは、1.1以上2.7以下であることがより好ましく、1.1以上2.5以下であることがさらに好ましい。
また、BETの吸着法でクリプトンガスを用いて測定した比表面積測定法では、後述する凹部内側で広がっている凹部の形状を、AFMで求めるS−ratioより、より正確に測定ができるものあり、かかる比表面積測定法により測定した比表面積の相対比表面積(未処理のガラス基体の比表面積に対する凹凸処理化後のガラス基体の比表面積)は1.1以上5.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.1以上3.0以下である。
凹凸構造を有するガラス基体の凹凸構造の深さを断面電子顕微鏡写真から求めた値t(nm)は30nm以上400nmであることが好ましい。深さtは倍率10万倍で撮影した断面電子顕微鏡写真の任意の3点において測定した値の平均値である。30〜350nmであることがより好ましく、30〜300nmであることがさらに好ましい。
また、凹部の形状は、凹部内側で広がっていることにより、反射防止効果が増大する。「凹部内側で広がっている」とは、凹凸を有するガラス表面のガラス/空気界面からガラス表面に垂直な法線を引いた場合に、法線がガラス基体上面の空気層以外に、1つ以上の空気層を未処理のガラス基体表面よりもガラス基体側に有することをいう。
具体的には、ガラス基体を倍率10万倍で観察して得られた断面SEM像の凹凸形状をトレースして得られた断面形状において(図5参照)、元のガラス/空気界面に対して垂直に線(法線k)を描いた時に、該法線kがガラス基体上面の空気層以外に、1つ以上の空気層mを通過するような形状を、HF処理(後述)が未処理のガラス基体表面sよりもガラス基体側に有すること、すなわち、法線kによって仕切られる空気層を1つ以上、未処理のガラス基体表面よりもガラス基体側に有する形状であることを意味する。ここで、未処理のガラス基体表面sとは、凹凸処理化(エッチング)する前のガラスの表面位置を示す。この際に1本の法線を基準にした時に、法線の左右25nm範囲に法線が引ける場合は合せて同じ法線と数える。また、ガラス基体が板状の場合は、板状体の1つの表面を凹凸処理化してする凹凸構造を作るために、板状体の裏面と未処理のガラス基体表面sは平行になるために、板状体の裏面に垂直な法線を引いてもよい。
このように、ガラス基体の少なくとも1面が、ガラス基体上面の空気層以外に、1つ以上の空気層を未処理のガラス基体表面よりもガラス基体側にて通過する法線kを、幅方向1000nmの範囲において1つ以上、好ましくは3つ以上有する凹凸構造である場合に、優れた反射防止効果を得ることができる。なお、ガラス/空気界面とは、断面SEM像のトレースにより得られた断面形状において、隣り合う凸部を順に結んだ線により形成される山と谷の面積が、同じ面積になるように描かれた直線の位置を意味する。エッチング前のガラス表面は異なる面であるが、ガラス表面sとガラス/空気界面は平行になっていると考えられる。このため、エッチング前のガラスの板厚が一定であり、エッチングがガラスの表面のみを行った場合、ガラス裏面を基準にした場合と同じになる。
本発明により、未処理のガラス基体と比べて400nmから1100nmまでの平均透過率を1.0%以上、更には1.5%以上増加させた反射防止効果の高いガラス基体を得ることができる。またガラス基体は、微小な凹凸が形成された状態になっており、凹凸処理前に親水性を示すガラス基体をより親水性に、凹凸処理前に撥水性を示すガラス基体をより撥水性にすることができる。
本発明におけるガラス基体は、アルカリ元素または、アルカリ土類元素、またはアルミニウムがその成分に含まれるガラス基体であることが好ましく、具体的には、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラスが挙げられる。またガラス基体の成分中にジルコニウムが含まれてもよい。アルカリ元素、アルカリ土類元素またはアルミニウムが含まれるガラス基体の場合には、その表面を、その構造中にフッ素原子が存在する分子を含有する気体もしくは液体であるフッ素化剤で処理することにより、ガラス最表層にFが残存しやすくなり、フッ化物の特徴である低屈折率を生かしてガラス基体の透過率を増加させることができるため好ましい。
アルカリ元素、アルカリ土類元素、AlはFと化合物をつくることが知られている。これらの元素とFの化合物は屈折率(n)がガラスより低く、ガラス基板表面に形成された場合、ガラス基板の屈折率(n)と空気の屈折率(n)の中間屈折率を有する被膜となる。すなわちn<n<nとなる。ガラス基板、フッ素化合物による被膜、空気がこの順に並んで反射率が低くなり、結果としてその構造中にフッ素原子が存在する分子を含有する気体もしくは液体で処理したガラス基板の透過率は、未処理のガラス基板と比べて透過率が上がるため、本発明のガラス基板として適している。
低屈折率層が設けられたガラス基体の表面原子数濃度比F/Siは0.05以上であることが好ましい。ここで、表面における原子数濃度とは、ガラス表面から5nmまでの範囲での濃度をいう。一般にフッ化物には低屈折率化合物が多いことが知られている。たとえば、NaF、KF、MgF,CaFなどの結晶性化合物が挙げられる。またNaF、KF、MgF,CaFなどと同じような組成のアモルファス化合物もある。またNaAlFに代表されるような、2つ以上の元素とFを含むような結晶性化合物ならびにアモルファス化合物があるが、これらに限定されるものではない。F/Siが0.05未満であると、低屈折率層が十分形成されておらず、その結果として十分な反射防止効果が得られないので、好ましくない。F/Siのより好ましい範囲は0.1以上であり、さらに好ましくは0.15以上である。
本発明の低屈折率層は、フッ素化剤によって高温のガラス表面を表面処理されることによって形成することができる。このフッ素化剤とはフッ素原子をその化学構造の一部として含有し、酸化物ガラスの骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成することのできる物質、または、例えば熱等による分解の結果、フッ素原子をその化学構造の一部として含有し、ガラス基体の骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成することのできる物質である。
このようなフッ素化剤としては、ガラス基体の骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成しうるフッ素化合物が挙げられる。具体例としては、フッ素単体(F2)、フッ化水素(HF)、フッ化水素酸、トリフルオロ酢酸、四フッ化ケイ素(SiF4)、五フッ化リン(PF5)、三フッ化リン(PF3)、三フッ化ホウ素(BF3)、三フッ化窒素(NF3)、三フッ化塩素(ClF3)が挙げられるが、これらの気体もしくは液体に限定されるものではない。液体を使用する場合は、液体のまま例えばスプレー塗布などの表面処理法でガラス基体表面に供給してもよいし、液体を気化してからガラス基体表面に供給してもよい。また必要に応じて水などの他の液体や窒素などの気体で希釈してもよい。これらのフッ素化剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上の混合物を使用してもよい。上記のフッ素化剤の中でも、フッ化水素やフッ化水素酸がガラス基体表面との反応性が高い点で好ましい。また高速で搬送しているガラスに短時間で処理できて生産性が非常に高いという点で、フッ化水素が好ましい。
本発明で用いられるフッ素化合物としては、それらの液体や気体以外の液体や気体を含んでいてもよく、常温でそのフッ素化合物と反応しない液体や気体であることが好ましい。たとえばN、空気、H、O、Ne、Xe、CO、Ar、He、Krなどが挙げられるが、これらのものに限定されるものではない。またこれらのガスのうち、2種以上を混合して使用することもできる。フッ素化合物及びそれらを希釈したもののキャリアとしては、N、アルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
また、本発明で用いられるフッ素化合物には、SOを混合してもよい。SOはフロート法などで連続的にガラス基体を生産する際に使用されており、徐冷域において搬送ローラがガラス基体と接触して、ガラスに疵を発生させることを防ぐ働きがある。また、高温で分解するガスを含んでいてもよい。
更に、フッ素化合物には水蒸気もしくは水を混合してもよい。フッ素化合物としてHFを用いる場合、HFと水のモル比([水]/[HF])は10以下であることが好ましい。HFと水を共存させると、HF分子と水分子の間で水素結合が形成されガラス基体に作用するHFが少なくなると考えられる。[水]/[HF]が10を超えるとガラスに作用するHFが非常に少なくなり、その結果として、未処理のガラス基体と比べた400nmから1100nmまでの平均透過率の増加分が1.0%未満となる。[水]/[HF]は5以下であることが、ガラス基体に作用するHFが少なくならない点で、より好ましい。また、HFガスを含む気体の状態でガラスに吹き付ける方法が、より好ましい。特に、CVD成膜法で使用されるインジェクタと呼ばれるガス吹き付け装置からHFガスを含む気体の状態でガラスに吹き付ける方法が、処理面の面内分布を均一にしやすく好ましい。
HFガスを含む気体をガラス基体に吹き付ける際には、ガラス基体温度は400℃以上であることが好ましい。ガラス基体温度の上限はガラス基体のガラス転移温度(Tg)で変化するため、Tg+60℃が好ましい。上限のより好ましい値はTg+40℃である。
上記のフッ素化剤でガラス基体表面を処理することで、バルクガラス中にフッ素原子が配置されることになり、未処理のガラスに比べて屈折率が低下した、低屈折率層がバルクガラス表面に形成されることにより、未処理のガラス基体と比べて400nmから1100nmまでの平均透過率を1.0%以上、更には1.5%以上増加させた反射防止効果の高いガラス基体を得ることができる。またガラス基体表面にフッ素原子が導入された、指紋が付着しづらい性質をもつガラス基体を得ることができる。
本発明のガラス基体はガラス表面から深さ方向内部にいくにしたがって、F/Siが連続的に減少していくことが好ましい。ガラス基体最表面だけにフッ素原子が存在することで、低屈折率層を形成することが可能であるが、深さ方向内部にいくにしたがって連続的に減少していると、低屈折率物質がバルク厚み方向に広がって分布していることになり、低屈折率層がその屈折率を連続的に変化させた層が厚くなるので、ガラス基体表面のみにフッ素原子が存在するよりも、さらに反射防止効果が大きくなるので好ましい。F/Siが連続的に減少していくとは、XPSの深さ方向の組成分析で得られた、各深さにおけるF原子数濃度を該深さのSi原子濃度で規格化した数値をY軸、ガラス基体表面をゼロとして深さ方向をX軸としてプロットした曲線において、X軸の数値が大きくなるにつれて、Yが単調減少することを意味する。
本発明のガラス基体はそれ自身で十分な耐摩耗性及び耐候性を有するが、その表面が多孔質構造になっているため、多孔質構造の層厚を厚くしすぎると耐摩耗性が若干低下するが、凹凸化されたガラス基体表面の少なくとも50%以上を、SiOを主成分とする膜で被覆することにより、さらに耐摩耗性や耐候性を向上させることが可能である。
SiOを主成分とする膜は、酸化物だけからなる膜でも、窒化物、フッ化物、硫化物など、その他の化合物が含まれてもよい。SiOを主成分とする酸化物膜は、Na、Mg、Ca、Ti、Al、Sn、Zrを含むなど、様々な膜が知られているが、SiOが主成分であればいずれの元素と組み合わせてもよい。またSi以外の2種以上の元素と組み合わせた酸化物膜でもよい。またランタノイド系元素やアクチノイド系元素などが少量ドープされたような膜でもよい。
凹凸化されたガラス基体の耐摩耗性や耐候性を向上するためには、SiO以外の成分が、いずれの化合物からなる膜を選択しても良いが、SiOはその屈折率がガラス基体の屈折率と近いため、反射防止効果を維持できるので好ましい。
得られたSiO膜はSiOを50質量%以上含有していればよく、屈折率が高い化合物との混合物や複合酸化物では、形成される層の屈折率が高くなり、凹凸構造やフッ素原子導入によって得られた反射防止効果が損なわれるので、好ましくは70質量%以上である。このSiOを50質量%以上含有することを、SiOが主成分と称する。また、形成された膜は連続的であっても不連続であってもよい。
SiOを主成分とする膜で、凹凸化されたガラス基体表面を被覆することが、凹凸化されたガラス基体の耐摩耗性を向上させる点で好ましい。凹凸化されたガラス基体表面は凹部と凸部を有しており、凹部と凸部の比は、凹凸構造の中においてはおよそ50%ずつに配分される。少なくとも凸部を全て緻密なSiOを主成分とする緻密な膜で被覆すること、つまりはガラスの表面をおおよそ50%被覆することにより、凹凸構造が多少くずれたようなガラス基体であっても、その表面に緻密で固い層を形成することができるため、凹凸化されたガラス基体の耐摩耗性を向上させることができる。より好ましくは凹凸化されたガラス基体表面の70%以上を被覆することが好ましい。
また凹凸構造の凹部の内部までを連続的にSiOを主成分とする膜で被覆することが、凹凸化されたガラス基体の耐候性を向上させる点で好ましい。一般にガラス基体は海沿いに長期間放置されると透過率などの物性の劣化が著しくなる。フッ素化剤で凹凸構造を形成されたガラス基体は、凹凸構造の最表面においてフッ素原子が導入されているため、それに伴ってその他の原子のバランスが崩れてガラス組成が変質しており、たとえば塩水を長時間噴霧すると塩水中の塩素原子の影響で表面組成の変化が起こる、すなわち、ガラス基体が劣化するという現象が生じるが、凹部内部まで完全にSiOを主成分とする膜で覆い、凹凸構造の最表面をSiOを主成分とする緻密な膜にすることで、耐塩水噴霧性、ひいては耐候性を向上させることができる。
SiOを主成分とする膜のSiO部分は、例えば、CVD法により形成してもよいし、あるいは、SiOを形成し得る液体を、凹凸構造を有するガラス基体上にオーバーコートすることにより形成してもよいが、これらの方法に限定されるものではない。CVD法で形成する場合は、Si源としてはSiH、SiHCl、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiBr、SiI、SiF、Si(OCなどを用いることができる。酸化剤としては O、O、NO、NO、NO、CO、COなどを用いることができるが、Si源、酸化剤ともに、これらの限定されるものではない。液体塗布法で形成する場合は、Si源としてはSi(OC、Si(OCHなどに代表されるアルコキシシランや、SiMeCl、SiPhCl、SiMeEtClなどに代表されるクロロシランや、シロキサン結合を有するポリシロキサンや各種シリコーン樹脂、シラザン、ポリシラザン、水ガラスなどが挙げられるが、いずれかに限定されるものではなく、空気中の酸素や、UVなどに代表される特定波長の光、熱などにより、最終的にSiOが形成されるような、Si源と酸化剤の組み合わせであれば、本明細書の記載に限定されるものではない。塗布液体は、その中にSiO粒子が含まれてもよく、SiO粒子は粒子の中が空洞になっている中空粒子や、粒子成分が全てSiOである中実粒子や、それらを任意の比率で混合してもよい。例えば塗布後にTiOを形成するような液体中にSiO粒子を含み、塗布後の熱処理及び光処理により、TiO中にSiO粒子が分散したような膜でもよい。また凹凸構造中の凹部のみにSiOを主成分とする膜を形成し、全体として表面凹凸が非常に小さく、元のガラス基体と同じような平滑平面を有するガラス基体としても良い。
SiOを主成分とする膜の膜厚は特に限定的ではないが、100nm以下であることが好ましい。100nm以下において、反射防止効果に悪影響を及ぼすことなく優れた機械的強度や耐候性が達成できる。
以下に実施例を用いて、本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
〔実施例1〕
大気圧CVD法で用いる両流しインジェクタ10を用いて、図1に示す模式図のようにして、ガラス基体の表面に、フッ化水素を含むガスを接触させた(以下、単に「HF処理」とも呼ぶ)。
すなわち、図1に示す中央スリット1から、HF0.56SLM(標準状態での気体で毎分リットル)と窒素9SLMを混合したガスを150℃に加熱して流速64cm/sで、外スリット2からNを45.5SLMを同じく150℃に加熱してガラス基板に向けて吹きつけて、凹凸構造を有するガラス基体を得た。ガスは基板20上を、流路4を通じて流れ、排気スリット5では吹きつけガス流量の2倍量を排気している。ガスの温度と流速の計測には、熱線風速計(カノマックス社製、クリモマスター6543)を用いた。ガラス基体は旭硝子製ソーダライムガラス(厚さ1.8mm、Tg:560℃)を使用した。ガラス基体は600℃に加熱して、速度2m/min.で搬送した。ガラス基体の温度は、ガスを吹き付ける直前に放射温度計を設置して測定した。エッチング時間は約5秒と短時間であった。
上記のようにして得られたガラス基体について、純水で5分間超音波洗浄した後、透過率、AFM物性値、耐候性及び耐摩耗性を下記のとおりにして測定した。これらの結果を表2及び表3に示す。
<透過率>
装置: 分光光度計(島津製作所社製、型番UV−3100PC)
処理面から光を入射させて積分球透過率として測定した。未処理のガラスに対する透過率の増加分を得られたガラス基体の反射防止効果とし、400〜1100nm、400〜700nmの各波長範囲での平均値で求めた。
<AFMの測定による、Ra,P−V,S−ratio>
走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、型番SPI3800N)を用いて、得られたガラス基体中の観察層を2μm角、取得データ数を1024×1024として、DFMモードで観察を行った時の表面粗さ(Ra)、最大高低差(P−V)、S−ratio(凹凸を含む面積を観察面積で除した値)を測定した。また、実施例1で得られたガラス基体を測定した表面は図3のとおりである。なお、本発明では最大高低差(P−V)とは、Rz (JIS B0601:2001)と同じである。
<Rp:凸部の大きさ>
ガラス表面の凹凸の模式図を図2aに示す。この凹凸に対してAFM像を二次元フーリエ変換画像処理して、凹凸構造を正四角錐と近似した場合(図2b、図2c)の底辺の一辺の長さを凹凸の大きさRとした場合の度数分布において、最大度数を示す大きさをRpとした。通常、画像処理後の度数分布はバラツキが大きく、データ解析には不向きであるため、ある大きさRにおける度数は、その前後4点と合わせた計9点における度数を平均して算出した。これにより大きさRの度数分布グラフが平滑化され、データ解析を用意に行うことが可能になる。最大度数を示すRpは、平滑化されたグラフ及びそのデータから求めた。
Figure 2012141311
二次元フーリエ変換は、一般に数式1のような式で表わされる。フーリエ変換とは一般に時間空間から周波数空間に置き換える処理であり、二次元画像においては画像上の縦方向と横方向に2回フーリエ変換をかけることにより、AFM画像信号に含まれる周波数の成分比が得られる。
<θp:凸部の傾斜角>
凹凸構造を有するガラス基体の模式図を図2において、AFM像を画像処理して、凹凸構造を二等辺三角形として近似した場合(図2b、図2c)の傾斜角θの度数分布を角度2度ずつに分けて作成し、前記度数分布において最大度数を示す傾斜角を2度刻みの角度の中間値を採用して、θpとした。
<θ50
傾斜角θの度数分布線が累積度数50%を通過する時の前後の傾斜角の平均値とした。例えば累積度数分布曲線が累積度数50%を通過するのが、角度分布28〜30°と角度分布30〜32°の間である(仮に角度分布28〜30°が47%、角度分布30〜32°が51%とする)場合、θ50は30°となる。
<t:凹凸構造の厚み>
断面SEM像の距離測定機能を使用して3点平均として算出した凹凸構造部分の膜厚を示す。
<F/Si>
X線光電子分光分析装置(XPS,アルバック・ファイ社製 QuanteraSXM)にて測定した。XPS分析の測定条件としては、X線源に単色化AlKα線を25Wで用い、光電子検出面積を100μmφ、光電子検出角を45度、パスエネルギーを224eVとし、スパッタイオンにはArイオンを用いた。XPS分析より検出される元素のそれぞれのピーク強度から、各原子濃度プロファイルを求め、Si濃度で規格化した。また、表面からの深さは、以下の方法で測定した値から算出した。膜厚測定用のSi基板上へスパッタ成膜法で作製した、酸化物ガラス(ガラス基体)と同一組成の膜厚既知の薄膜を、上記の測定方法と同条件下でXPS分析し、得られた深さ方向の組成プロファイルより見積もった薄膜のスパッタレートから求めた。
<耐候性>
5質量%の食塩水を処理面表面に2時間噴霧し、その後60℃95%RHの炉に7日間放置した。これを1サイクルとして4サイクル繰り返した後に純水洗浄し、透過率を測定した。試験前の透過率と比較して、400〜700nmの波長範囲における平均透過率の低下分を耐候性とした。耐候性は劣化度合いを示すので基本的に負の数値をとり、数値が大きいほど耐候性が強く、数値が小さいほど耐候性が小さいことを意味する。
<耐摩耗性>
フェルト(10.3mm×15mm×49mm)を10.3mm×49mmの面がガラス基体に当たるように配置し、1kgの荷重をかけて速度10cm/sで基体上を往復させた。100回往復後の透過率を測定し、摩耗前の透過率と比較して、400〜700nmの波長範囲における平均透過率の低下分を耐摩耗性とした。耐摩耗性は劣化度合いを示すので基本的に負の数値をとり、数値が大きいほど耐摩耗性が強く、数値が小さいほど耐摩耗性が小さいことを意味する。
<凹部の内部形状評価>
実施例1で作成した反射防止性ガラス基体をガラス/空気界面に対して垂直に割断し、断面SEM像を日立超高分解能分析走査電子顕微鏡 SU−70)を用いて観察した。 該断面に対してオスミウムコーター(NL−OPC60N:Nippon Laser and Electronic Lab社製)を使用して、金属オスミウムを5nm製膜したガラス基体を準備した。観察においてはWDを3mm、加速電圧を3.0kVに設定し、二次電子像を得た。得られた画像を図4に示す。
次に得られた二次電子像における断面部分の凹凸形状を別紙に写し取り、その凹凸形状の外側の輪郭(凹凸表面がガラス空気に接する曲面)を断面形状として得た。得られ形状を図5に示す。
断面形状に対して、ガラス表面も並行な方向に1000nmの視野幅で切り出し、エッチング前の元のガラス/空気界面に対して垂直な線(法線k)を描いた時に、その線がガラス基体上面の空気層以外に、1つ以上の空気層mを通過する線が引ける場所を測定した。ただし、線を引いた左右25nm以内に別の線が引ける場合は、1本の線とみなす。上記のようにして測定できた法線の数は、7本であった。
〔実施例2〕
実施例1でガラス基体の温度を560℃とした以外は、全て実施例1と同様に凹凸構造を有するガラス基体を得た。
〔実施例3〕
実施例1でガラス基体の温度を400℃とした以外は、全て実施例1と同様に凹凸構造を有するガラス基体を得た。
〔実施例4〕
実施例1でガラス基体の温度を620℃とした以外は、全て実施例1と同様に凹凸構造を有するガラス基体を得た。
〔実施例5〕
実施例1でHF流量を1.12SLMとした以外は、全て実施例1と同様に凹凸構造を有するガラス基体を得た。
〔比較例1〕
実施例1でガラス基体の温度を350℃とした以外は、全て実施例1と同様に凹凸構造を有するガラス基体を得た。
〔実施例6〕
実施例5で得られたガラス基体上に、図1で示したと同様の大気圧CVD法で用いるインジェクタ10を用いて、それぞれのガラス基体の表面に、以下に示すとおりにガスを接触させた。すなわち、中央スリット1から、30%SiHを0.12SLMと窒素(N)9.4SLMを混合したガスを150℃に加熱して流速64cm/sで、外スリット2から酸素(O)3.6SLM及び窒素(N)30.5SLMを吹きつけて、凹凸構造を有するガラス基体の凹凸部にSiOを主成分とする膜を形成したガラス基体を得た。ガスは基板20上を流路4を通じて流れ、排気スリット5では吹きつけガス総流量の2倍量を排気している。ガラス基板は525℃に加熱して、速度2m/min.で搬送した。なお、SiOを主成分とする膜は凹凸構造を有するガラス基体の凹凸部表面の約50%以上の面積を被覆していると考えられる。
〔実施例7〕
実施例1で得られたガラス基体上に、実施例6と同様にしてSiOを形成したガラス基体を得た。
実施例、比較例の処理条件を表1に、及び得られたガラス基板の物性値を表2、表3へ示す。
Figure 2012141311
Figure 2012141311
Figure 2012141311
処理前のガラス基体並びに実施例1及び5で得られたガラス基体について、下記のとおりにして比表面積を測定した。得られた結果を表4に示す。HF処理により、BETの吸着法でクリプトンガスを用いて測定した比表面積が格段と増大したことが分かる。
(比表面積測定方法)
装置:日本ベル株式会社製BELSORP-max
測定方法:
HFで処理したガラス基体を25mm×3mmの短冊状に切断し、およそ11gとなるように秤量した。秤量した短冊ガラスをサンプル管に入れ、200℃3時間の条件で真空排気を行った後、77KでKr(クリプトン)ガスを吸着させた。
吸着等温線から得られたBETプロットより、Kr吸着量を求めた。HF処理した基板については得られたKr吸着量から未処理基板の片面分を減じた値をHF処理面の吸着量とした。尚、切断されたガラスサンプルは、質量から見てほぼ同じであるために、3つのサンプルの未処理時の面積はほぼ同じと仮定した。なお相対比表面積とは、サンプルの同面積に対して、HF処理後の面積変化をHF処理前の面積を1.00として算出した。
Figure 2012141311
本出願は、2011年4月15日出願の日本特許出願(特願2011−091436)及び2011年4月27日出願の日本特許出願(特願2011−099983)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明によれば、優れた反射防止効果を有するガラス基体が得られる。したがって、本発明に従い得られた表面処理されたガラス基体は、建材用ガラス、自動車用ガラス、ディスプレイ用ガラス、光学素子、太陽電池用ガラス基体、ショーウィンドウガラス、光学ガラス、メガネレンズなどの光線透過性が要求される用途に幅広く用いられ、特に薄膜シリコン太陽電池用TCO基板、結晶シリコン太陽電池用カバーガラス、ディスプレイ等の分野に用いることができる。薄膜シリコン太陽電池用TCO基板は、太陽光を効率的に利用するために電池のタンデム化が進んでいる。波長範囲400〜700nmの光は、特にアモルファスシリコン層での量子効率が高く、また波長範囲600〜900nmの光は、特に微結晶シリコン層での量子効率が高いため、本発明のガラス基体を使うことにより、効率的な太陽光発電を行うことが可能になる。
また、ガラス表面が凹凸(粗面化)されたガラス基体の耐摩耗性は実用上問題ない範囲であるが、特にSiO被覆をしたものは、摩耗性の改善が行われている。更に耐候性視点では、SiO被覆をしたものは変化が少なく、反射防止性ガラス基体を野外で使う場合に特に優れている。
1:中央スリット
2:外スリット
4:流路
5:排気スリット
10:インジェクタ
20:ガラス基体
30:凸部
31:凹部
k:法線
m:空気層
s:未処理のガラス基体表面

Claims (7)

  1. ガラス基体の少なくとも1面が、複数の凹凸を有する、表面のガラス部分が凹凸化されたガラス基体であって、前記複数の凹凸を二次元フーリエ変換で近似処理した後に、前記複数の凹凸の凸部を正四角錐と近似した場合の底辺の一辺の長さを凸部の大きさとした場合の度数分布において、
    最大度数を示す大きさをRpとしたときに、前記凸部の大きさRpが37nm以上200nm以下であり、
    前記凸部の傾斜角θの度数分布における最大度数を示す傾斜角θpが20°以上75°以下であり、
    前記傾斜角θの累積度数分布において50%を示す値をθ50とした場合の、θpとθ50の差(θp−θ50)の絶対値が30°以下であり、
    かつ、該凹凸部は、JIS B 0601(1994)に規定された表面粗さ(Ra)が2nm以上100nm以下、最大高低差P−Vが35nm以上400nm以下、該凹凸を含む面積を観察面積で除した面積比S−ratioが1.1以上3.0以下であることを特徴とするガラス基体。
  2. 前記凹凸化されたガラス基体の表面の原子数濃度比が深さ5nmまでの範囲で、F/Siが0.05以上であることを特徴とする、請求項1に記載のガラス基体。
  3. 前記表面から深さ方向内部にいくにしたがって、F/Siが連続的に減少していくことを特徴とする、請求項2に記載のガラス基体。
  4. 前記凹凸化されたガラス基体の表面のガラスと空気の界面から凹凸化処理前のガラス表面に垂直な法線を引いた際に、前記ガラス基体上面の空気層以外に、前記凹凸化処理前のガラス基体表面よりもガラス基体側にある空気層を1つ以上通過するような法線(ただし、該法線の左右25nm範囲に法線が引ける場合は合わせて同じ法線と数える)を、ガラス基体の幅方向1000nmの範囲に1つ以上有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のガラス基体。
  5. クリプトンガスを用いたBETの吸着法で測定した比表面積の相対比表面積(未処理のガラス基体の比表面積に対する前記凹凸処理化後のガラス基体の比表面積)が1.1以上5.0以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のガラス基体。
  6. 前記凹凸化されたガラス表面の少なくとも50%以上の領域を、SiOを主成分とする膜で被覆されていることを特徴する、請求項1から5のいずれか1つに記載のガラス基体。
  7. 前記凹凸化されたガラス表面で、凹部の中までSiOを主成分とする膜で被覆されてことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1つに記載のガラス基体。
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