JPWO2012137695A1 - 圧電発電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】発電素子の変位を増幅して、発電量の大きな圧電発電装置を得ること。【解決手段】圧電発電装置Aは、ベース部材11上にばね手段12を介して第1錘部材13が支持された共振器10と、第2錘部材23と、主面に圧電素子22を貼り付けた振動板21を有し、振動板21の一方端21aが第1錘部材13に固定され、自由端である他方端に第2錘部材23が取り付けられ、上下方向に屈曲振動可能な発電素子20とを備える。第1錘部材13は発電素子20の屈曲振動面に対して垂直な軸を中心として所定の振動数で揺動する。そのため、発電素子単体に比べて発電量を増大させることができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、圧電効果を利用して機械エネルギーを電気エネルギーに変換し、発電する圧電発電装置に関するものである。
従来より、圧電効果を利用して発電する圧電発電装置が種々提案されている。特許文献1には、図12に示すようなカンチレバー(片持ち梁)構造の圧電発電装置が開示されている。この圧電発電装置は、一方端が枠状の支持部材51に固定され、他方端を自由端とした発電素子52と、発電素子52の自由端に取り付けられた励振用の錘53とを備えたものである。発電素子52は、金属板52aの一主面に圧電素子52bを貼り付けたユニモルフ構造とされ、全体として直方体形状に形成されている。この圧電発電装置に外部振動が作用すると、錘53の作用によって発電素子52に自由振動が励振され、圧電素子52bの圧電効果によって電荷を発生させることができる。発生した電荷が、圧電素子52bの表裏面に形成された電荷収集電極から取り出される。
ところで、例えば人が歩行する際の振動、自転車や自動車の振動等を利用した発電装置のように、比較的低周波の振動領域で使用される発電装置がある。このような低周波の外部振動に対して、発電素子の固有周波数を近づけることにより、発電素子を大きく振動させることができ、発電量を増大させることができる。圧電素子の発電量は、圧電素子を構成する圧電体の圧電定数の二乗と圧電体に加わる応力の二乗と圧電体の体積との積を圧電体の誘電率で割った値で決まる。圧電体の材料が同じであると仮定すると、発電量Wは、次式のように圧電体に加わる応力σの二乗と圧電体の体積Vとの積に比例する。
W∝σ2×V
したがって、発電量Wを増大させるためには、圧電体に加わる応力σと圧電体の体積Vの両方を増大させることが有効であり、特に応力σの方が体積Vより発電量Wに大きく影響する。圧電体に加わる応力σを増大させるには、発電素子の変位量を大きくすることが効果的であるが、上述のように支持部材51に発電素子52を片持ち梁状に支持しただけでは、発電素子の変位量はあまり大きくならない。
特許文献2には、共振周波数の異なる複数の発電素子を片持ち梁状に支持した圧電発電装置が開示されている。この圧電発電装置は、図13に示すように、一方端が基部60に固定され、他方端を自由端とした複数の発電素子61〜63と、発電素子61〜63の自由端に取り付けられた励振用の錘64〜66とを備えたものであり、各発電素子61〜63の長さがそれぞれ異なっている。この圧電発電装置は、外部振動の周波数が変動しても、広い周波数範囲で発電を行うためのものであるが、ある特定の周波数における発電量は大きくならない。
特許文献3には、図14に示すように、一方端が金属アングル70に固定され、他方端を自由端としたカンチレバー構造のレバー71と、レバー71の自由端に取り付けられた錘72と、レバー71の中間部(作用点)に連結された積層圧電素子73とを備えた圧電発電装置が開示されている。この圧電発電装置は、外力をてこの原理により増幅し、積層圧電素子73に加わる力を大きくしているが、積層圧電素子73には厚み方向の圧縮荷重しか作用しないため、圧電素子自体の歪み量が小さく、発電量はさほど大きくならない。
特許第3170965号公報 特開平7−245970号公報 特開平11−146663号公報
本発明の目的は、発電素子の変位を増幅して、発電量の大きな圧電発電装置を提案するものである。
前記目的を達成するため、本発明は、ベース部材上にばね手段を介して第1錘部材が支持された共振器と、第2錘部材と、主面に圧電素子を貼り付けた振動板を有し、当該振動板の一方端が第1錘部材に固定され、自由端である他方端に第2錘部材が取り付けられ、上下方向に屈曲振動可能な発電素子とを備え、第1錘部材は発電素子の屈曲振動面に対して垂直な軸を中心として所定の振動数で揺動することを特徴とする圧電発電装置を提供する。第1錘部材はベース部材に加わる外部振動に基づいて揺動し、発電素子は第1錘部材の揺動に同期して屈曲振動することが望ましい。
本発明の特徴は、ベース部材に加わる外部振動を発電素子に直接伝達するのではなく、外部振動のエネルギーを共振器によって増幅した上で発電素子に伝える点にある。特に、共振器は上下方向の外部振動を発電素子の屈曲振動面に対して垂直な軸を中心とした揺動運動に変換し、第1錘部材を揺動させる。第1錘部材の揺動と同期して第2錘部材が上下に振れることで、発電素子の屈曲振動が増幅され、ベース部材に発電素子を直接固定した場合に比べて大きく屈曲振動させることができる。その結果、発電素子に加わる曲げ応力が増加し、発電量が増大する。
第1錘部材の質量は第2錘部材の質量より大きいことが望ましい。第1錘部材の質量を第2錘部材の質量より大きくすると、第1錘部材が第2錘部材より大きな運動エネルギーを持つので、第1錘部材の運動エネルギーを発電素子の屈曲振動へ効果的に供給することができる。その結果、発電素子の変位量をさらに増幅させることができる。
第1錘部材の揺動軸を、第1錘部材の重心よりも発電素子の自由端側にあるように設定してもよい。第1錘部材の揺動軸は、第1錘部材の重心より発電素子の固定端側又は自由端側のいずれにあってもよいが、発電素子の自由端側にある場合には、発電素子の一方端を支持している第1錘部材の位置が上下に変化すると同時に角度変化するので、発電素子の固定端の角度変化と上下変位とが相乗的に作用し、発電素子の変位量がさらに増加する。つまり、発電量が増加する。
共振器の共振周波数が第2錘部材を含む発電素子の共振周波数よりも低いことが望ましい。本発明者らが、共振器と発電素子とを一体化した圧電発電装置について検討した結果、共振器と発電素子の2つの共振系の共振周波数を一致させるよりも、共振器の共振周波数を低くした方が、電圧増幅率及び電力増幅率が高くなることがわかった。そこで、共振器のばね手段のばね定数、第1錘部材や第2錘部材の質量などを適切に設定することで、発電素子の屈曲変位が増幅され、発電量を多くすることができる。
共振器の1次モードの共振周波数f1と第2錘部材を含む発電素子の共振周波数faとの比が、
0.4≦f1/fa≦0.95
の範囲にあることが望ましい。共振器は、ばね手段の構成によって1次モード〜高次モード等の複数の共振モードを持つが、1次モードの共振周波数とは、共振器の共振周波数のうち最も低い周波数のことである。1次モードの振動エネルギーは高次モードの振動エネルギーより大きい。上述のように共振器の1次モードの共振周波数を発電素子の共振周波数よりも低くすると、電圧増幅率及び電力増幅率が高くなるが、特に周波数比f1/faを0.4〜0.95の範囲に設定すると、最も効果的である。周波数比f1/faが0.4未満では、はね手段のばね定数が低くなり過ぎ、復元力が不足して電圧増幅率及び電力増幅率が前記範囲内より低下する傾向がある。周波数比f1/faが0.95より高くなると、はね手段のばね定数が高くなり過ぎ、第1錘部材の揺動が小さくなって電圧増幅率及び電力増幅率が前記範囲内より低下する傾向がある。
共振器のばね手段は、複数のコイルバネで構成されていてもよい。コイルバネは線形性に優れたばねであり、複数のコイルバネを用いることにより、第1錘部材を水平軸を支点として揺動するモードで振動させることができる。
以上のように、本発明によれば、外部振動を共振器によって発電素子の屈曲振動面に対して垂直な軸を中心とした揺動運動に変換し、第1錘部材の揺動と同期して第2錘部材が上下に振れることで、発電素子の屈曲振動が増幅されるので、ベース部材に発電素子を直接固定した場合に比べて大きく屈曲振動させることができる。その結果、発電量を多くすることができる。
本発明に係る圧電発電装置の第1実施例の斜視図である。 図1に示す圧電発電装置の静止状態の側面図である。 図1に示す圧電発電装置の1次モードでの変位を示す側面図である。 図1に示す圧電発電装置の2次モードでの変位を示す側面図である。 共振器のコイルバネのばね定数を変えた場合の圧電発電装置の電圧増幅率及び電力増幅率の周波数特性を示す図である。 共振器単体と発電素子単体の変位−周波数特性を示す図である。 ばね定数と共振器−規格化周波数との関係を示す図である。 共振器−規格化周波数と電圧増幅率との関係、共振器−規格化周波数と電力増幅率との関係、共振器−規格化周波数と圧電発電装置−規格化周波数との関係をそれぞれ示す図である。 本発明に係る圧電発電装置の第2実施例の斜視図である。 本発明に係る圧電発電装置の第3実施例の斜視図である。 本発明に係る圧電発電装置の第4実施例に用いられる発電素子の斜視図及び平面図である。 特許文献1に示された圧電発電装置の一例の斜視図である。 特許文献2に示された圧電発電装置の一例の断面図である。 特許文献3に示された圧電発電装置の一例の側面図である。
〔第1実施例〕
図1,図2は、本発明に係る圧電発電装置の第1実施例を示す。本実施例の圧電発電装置Aは、共振器10と、カンチレバー型の発電素子20とを備えている。
共振器10は、ベース部材11と、ばね手段12と、ベース部材11上にばね手段12を介して弾性支持された第1錘部材13とを備えている。本実施例のベース部材11は平板状の部材とされているが、ケース等の一部であってもよく、外部振動を受ける部材であれば形状は任意である。本実施例の第1錘部材13は、平板状の支持板部13aとその後端部に立設された支持台部13bとを有する側面視L字形の部材で構成されている。第1錘部材13は、金属などの剛性を持つ質量体で構成されている。第1錘部材13は、発電素子20を揺動させる機能を有する揺動用錘部材である。ばね手段12は、ベース部材11と第1錘部材13の支持板部13aとの間に配置された2個のコイルバネ12a,12bで構成されている。この実施例のコイルバネ12a,12bのばね定数は同じであるが、互いに異なっていても良い。これらコイルバネ12a,12bは、発電素子20の直下方で、かつ長さ方向(Y軸方向)に間隔を開けて配置されている。各コイルバネ12a,12bは、例えばばね定数が0.04〜0.50N/mmのコイルバネで構成されている。
発電素子20は、金属板などの振動板21と、振動板21の一主面又は両主面に貼り付けられた圧電素子22とで構成されている。振動板21は、支持板部13aに沿って延びている。振動板21の一方端21aは第1錘部材13の支持台部13bの上面に固定されており、他方端は自由端とされている。また、振動板21の他方端は、幅広な形状を有する錘取付部21bを構成している。振動板21の錘取付部21bの下面には、第2錘部材23が取り付けられている。第2錘部材23も第1錘部材13と同様に金属などの質量体で構成されている。第2錘部材23は、発電素子20の変位量を大きくする機能を有する変位量増幅用錘部材である。これにより、発電素子20は上下方向に屈曲振動可能となっている。本実施例では、発電素子20の幅方向をX軸方向、長さ方向をY軸方向、厚さ方向(上下方向)をZ軸方向とすると、発電素子20の屈曲振動面とはY軸−Z軸面のことである。
本実施例では、発電素子20の振動板21及び圧電素子22を、圧電発電装置Aを上方から視た際に振動板21の一方端21a側から他方端側に向かって漸次幅狭となる二等辺三角形状としたが、一定幅の長方形状としてもよいし、形状は任意である。また、発電素子20は、金属板21の一主面に圧電セラミックス等からなる圧電素子22を貼り付けたユニモルフ構造とされている。例えば、金属板21は厚み75μmの42Niからなり、圧電素子22は厚み75μmのチタン酸ジルコン酸鉛系の圧電セラミックスからなる。本実施例の発電素子20は、ユニモルフ構造であるが、振動板21の両主面に圧電素子22を貼り付けたバイモルフ構造としても良い。圧電素子22の貼り付け位置は、実施例のように支持台部13bに固定された振動板21の一方端21aを除く領域に限らず、一方端21a含む領域であってもよい。圧電素子22を振動板21の下側主面に貼り付けた場合には、第2錘部材23に作用する重力の影響により圧電素子22には常時圧縮応力が作用する。圧電セラミックスは一般に引張応力より圧縮応力に対して機械的強度が優れているので、圧縮応力が作用する向きに圧電素子22を貼り付けることで、圧電セラミックスからなる圧電素子22の耐久性を高めることができる。圧電素子22については、機械エネルギーを電気エネルギーに直接変換できる材料からなるものであれば良く、圧電セラミックス以外では有機圧電体や誘電ポリマー材料からなるものでも良い。
圧電素子22の両面には電荷収集電極(図示せず)が形成されており、その一方面の電荷収集電極は振動板21と電気的に接続されている。圧電素子22の電荷収集電極は、整流蓄電回路25(図2参照)と接続されている。整流蓄電回路25は、圧電素子22からの出力を整流・平滑化し、電力を蓄える機能を有するものである。整流蓄電回路自体は公知であるため、詳細な説明を省略する。
本実施例では、第2錘部材23が振動板21の下面に固定されているため、圧電発電装置Aの高さ寸法を小さくできる。なお、第2錘部材23と第1錘部材13の支持板部13aとの間には、第1錘部材13が最大限変位した場合でも、第2錘部材23と第1錘部材13の支持板部13aとが接触しないような空間が設定されている。発電素子20の共振周波数(1次の共振点)は、振動板21のヤング率、長さ、幅、厚み、第2錘部材23の質量などによって変更可能であるが、ここでは人の衣服や携帯物、自転車・自動車などの乗り物への搭載を想定して、例えば15Hzで設計されている。
第1錘部材13の質量を第2錘部材23の質量より大きくすることが望ましく、本実施例では、例えば第1錘部材13の質量は24.0g、第2錘部材23の質量は10.2gとされている。第1錘部材13の質量を第2錘部材23の質量より大きくすると、外部振動がベース部材11に加わった時、第1錘部材13が第2錘部材23より大きな運動エネルギーを持ち、第1錘部材13の運動エネルギーを発電素子20へ効果的に供給することができる。その結果、発電素子20の変位量をさらに増幅させることができる。
図3は、共振器10の1次モードにおける圧電発電装置Aの変位を示す。なお、図3では圧電素子22が省略されており、実線は変位状態、一点鎖線は静止状態を示す。図示するように、ベース部材11に対して上下方向の外部振動Fが作用すると、ばね手段12によって第1錘部材13が上下に揺動する。共振器10は発電素子20の屈曲振動面に対して垂直な揺動軸CSを中心として揺動する。揺動軸CSはX軸と平行である。1次モードでは、第1錘部材13の揺動軸CSが第1錘部材13の重心Gよりも発電素子20の自由端側、つまりコイルバネ12bの近傍にあり、コイルバネ12bは殆ど伸縮せず、コイルバネ12aが大きく伸縮する。第1錘部材13の揺動と同期して発電素子20は上下に屈曲振動する。例えば図3(a)のように第1錘部材13が右回り方向に揺動した時、第2錘部材23が上方へ振り上げられ、発電素子20は下に凸に屈曲する。一方、図3(b)のように第1錘部材13が左回り方向に揺動した時、第2錘部材23が下方へ振り下ろされ、発電素子20は上に凸に屈曲する。このように固定端である発電素子20の一方端21a(第1錘部材13の支持台部13b)が上下に移動すると同時に、角度変化が発生するので、発電素子20の変位量が増幅される。その結果、発電素子20の圧電体22に加わる応力が、発電素子20をベース部材11に直接固定した場合に比べて増加し、発電量が多くなる。なお、図3では、揺動軸CSがコイルバネ12bの斜め上方に位置する例を示したが、揺動軸CSの位置は各種設定によって変化しうるものである。但し、揺動軸CSは、少なくとも第1錘部材13の重心Gよりも発電素子20の自由端側に位置していればよい。
図4は、共振器10の2次モードにおける圧電発電装置Aの変位を示す。なお、図4では圧電素子22が省略されており、実線は変位状態、一点鎖線は静止状態を示す。図示するように、2次モードにおいても1次モードと同様に、ベース部材11に対して上下方向の外部振動Fが作用すると、ばね手段12によって第1錘部材13が上下に揺動する。共振器10は発電素子20の屈曲振動面に対して垂直な揺動軸CSを中心として揺動する。揺動軸CSはX軸と平行である。2次モードでは、第1錘部材13の揺動軸CSが第1錘部材13の重心Gよりも発電素子20の固定端側、つまり第1錘部材13の支持台部13bの中央部分近傍にあり、発電素子20の固定端側であるコイルバネ12aに比べて、コイルバネ12bの伸縮量が大きい。このモードでは、図4(a)のように第1錘部材13が左回り方向に揺動した時、第2錘部材23が下方へ変位し、発電素子20は上に凸に屈曲する。一方、図4(b)のように第1錘部材13が右回り方向に揺動した時、第2錘部材23が上方へ変位し、発電素子20は下に凸に屈曲する。2次モードでの発電素子20の変位量は1次モードに比べて小さいが、発電素子20をベース部材11に直接固定した場合よりは大きい。なお、図4では、揺動軸CSが支持台部13bの中央部分近傍に位置する例を示したが、揺動軸CSの位置は各種設定によって変化しうるものである。但し、揺動軸CSは、少なくとも第1錘部材13の重心Gよりも発電素子20の固定端側に位置していればよい。
図3、図4は、共振器10の1次モードの共振周波数を発電素子20の共振周波数より低く設定した場合の共振モードを示している。もし、共振器10の1次モードの共振周波数を発電素子20の共振周波数より高く設定した場合や、ばね手段12の構成を変更した場合には、異なる共振モードも発生しうる。共振器10の1次モードの共振周波数は、ばね手段12のばね定数や第1錘部材13によって設定可能である。また、発電素子20の共振周波数は、第2錘部材23の質量や振動板21のばね定数などによって設定可能である。
図5は、共振器10のばね手段12を構成しているコイルバネ12a,12bのばね定数を変えた場合の圧電発電装置Aの電圧増幅率及び電力増幅率の周波数特性を示す。比較のために、発電素子20単体の特性も記載した。ベース部材11への外部振動の入力加速度は100mG、発生電圧・電力については、マッチング抵抗をつないだ状態で出力される電圧・消費される電力として計算している。なお、図5は共振器10の1次モードを主モードとして使用した場合である。
発電素子20単体の場合には、外部振動の周波数が発電素子の共振周波数である15Hz付近において、電圧及び電力がピーク値となる。一方、共振器10と発電素子20とを一体化した圧電発電装置Aの場合、ばね定数が小さくなるにつれて、電圧増幅率及び電力増幅率のピーク値の周波数が低くなるとともに、電圧増幅率及び電力増幅率共にピーク値が大きくなっていることがわかる。したがって、圧電発電装置Aとしての共振周波数は、ばね定数に比例して高くなっているということができる。ばね定数が0.05N/mmで電圧増幅率及び電力増幅率は最大値となり、それよりばね定数が小さくなると、急激に電圧増幅率及び電力増幅率が低下している。圧電発電装置Aを共振器10と発電素子20とを一体化した構造にすることにより、発電素子20単体に比べて、電圧増幅率で1.9〜5.1倍、電力増幅率で3.6〜16.0倍の増幅効果があることがわかる。
メカニズムとしては、共振器10の第1錘部材13の質量が同一の条件であれば、ばね手段12を構成しているコイルバネ12a,12bのばね定数が小さくなるにつれて、コイルバネ12a,12bの変形量が大きくなり、より多くの運動エネルギーがコイルバネ12a,12bに蓄えられる。そのことから、共振器10から発電素子20へ流れるエネルギーが大きくなるためと考えられる。ばね定数が小さくなり過ぎて、電圧増幅率及び電力増幅率が低下しているのは、コイルバネ12a,12bが柔らかくなり過ぎ、変形に対して復元力が十分に確保できなくなるためと考えられる。
次に、電力増幅に必要な共振器10と発電素子20の共振周波数の関係について説明する。図6は、共振器10単体と発電素子20単体の変位−周波数特性を示す。共振器10については、コイルバネ12a,12bのばね定数を0.12N/mmとした際の結果である。発電素子20単体については、15Hz付近に共振点があり、共振器10については、2本のコイルバネ12a,12bを使用しているため、11Hzと20Hz付近にそれぞれ1次モードと2次モードの共振点が見られる。圧電発電装置Aとしてみた場合の共振は、共振器10の1次モードと発電素子20の共振が結合したモードが主モードであるため、共振器10の1次モードの共振周波数と発電素子20の共振周波数の関係を見ていく。
図7に、ばね定数と共振器−規格化周波数(共振器10の1次モードの共振周波数を発電素子20の共振周波数で規格化した値及び共振器10の2次モードの共振周波数を発電素子20の共振周波数で規格化した値)の関係を示す。共振器−規格化周波数が1.0であるラインが発電素子20の共振点 (15Hz)を表している。コイルバネ12a,12bのばね定数が0.23N/mm以下では1次モードの共振器−規格化周波数が1.0以下になっており、共振器10の1次モードの共振周波数が発電素子20の共振周波数よりも小さくなっている。また、コイルバネ12a,12bのばね定数が0.07N/mm以下では2次モードの共振器−規格化周波数も1.0以下になり、共振器10の2次モードの共振周波数が発電素子20の共振周波数よりも小さくなる。
図6、図7から明らかなように、電圧増幅率及び電力増幅率については、共振器10と発電素子20の2つの共振系の共振周波数を一致させるよりも、共振器10の1次モードの共振周波数を発電素子20の共振周波数よりも低くした方が増幅率が高くなることがわかる。また、共振周波数を低く設計する定義としては、発電素子20と共振器10の共振帯域の−3dB幅(半値幅)が重ならない範囲とするのがよい。
図8(a)に共振器−規格化周波数と電圧増幅率との関係を示し、図8(b)に共振器−規格化周波数と電力増幅率との関係を示し、図8(c)に共振器−規格化周波数と圧電発電装置−規格化周波数との関係を示す。図8において、共振器−規格化周波数は共振器10の1次モードの共振周波数を発電素子20の共振周波数で規格化した値(f1/fa)であり、圧電発電装置−規格化周波数は圧電発電装置Aの共振周波数を発電素子20単体の共振周波数で規格化した値である。
電圧増幅率及び電力増幅率の関係から見ると、図8(a),(b)に示すように共振器−規格化周波数が1以上の範囲では、緩やかに電圧増幅率及び電力増幅率が低下している。共振器−規格化周波数が1以下の範囲は、共振器−規格化周波数が小さくなるにつれて、電圧増幅率及び電力増幅率は高くなり、共振器−規格化周波数が0.5付近に極大値を持つ。共振器10と発電素子20の共振周波数を同じにするよりも、共振器の1次次モードの共振周波数を発電素子20の共振周波数よりも低くすることが電圧及び電力の増幅には効果的と言える。共振器10の設計範囲としては、共振器−規格化周波数で0.40〜0.95が最も増幅効果が大きい。共振器−規格化周波数が0.40未満になると、電圧増幅率及び電力電力増幅率が低下する傾向が見られる。その原因は、ばね手段12を構成しているコイルバネ12a,12bが柔らかくなり過ぎ、変形に対して復元力が十分に確保できなくなるためと考えられる。
図8(c)の共振器−規格化周波数と圧電発電装置−規格化周波数との関係については、共振器−規格化周波数が0.6 より小さな範囲ではほぼ比例関係にある。共振器−規格化周波数を大きくしていくと、傾きが緩やかになり、圧電発電装置−規格化周波数は1に漸近していく。このことは、共振器10のばね手段12を構成しているコイルバネ12a,12bのばね定数を大きくすると共振器10の振動が小さくなり、圧電発電装置の共振周波数は発電素子20の共振周波数に近づいていくと考えられる。本発明のように圧電発電装置を共振器と発電素子とを一体化した構造にすることで、発電素子の共振周波数を変えることなく、共振器ののばね手段のばね定数を調整することにより、圧電発電装置の共振周波数を調整することができる。
〔第2実施例〕
図9は、本発明に係る圧電発電装置の第2実施例を示す。本実施例の圧電発電装置Bは、ばね手段12として、4個のコイルバネ12c〜12fを使用したものである。これらコイルバネ12c〜12fは、発電素子20を中間にしてX軸方向に間隔をあけて配置され、かつY軸方向にも間隔をあけて配置されている。なお、本実施例の圧電発電装置Bは、ばね手段12以外の構成は第1実施例の圧電発電装置Aと同じとされている。
本実施例では、ばね手段12として4個のコイルバネ12c〜12fを使用することで、第1錘部材13の揺動軸CSの位置が安定し、左右方向の振れ(Y軸を中心とする揺動)が少なくなる。そのため、外部振動を効率よく第1錘部材13の揺動に変換でき、その結果として発電素子20の変位量をさらに増幅させることができ、圧電発電装置Bの発電量が多くなる。なお、コイルバネの個数及び配置は任意に設定できる。
〔第3実施例〕
図10は、本発明に係る圧電発電装置の第3実施例を示す。本実施例の圧電発電装置Cは、ばね手段12として、4個のU字形の板ばね12g〜12jを使用したものである。板ばね12g〜12jの配置は、図9に示すコイルバネ12c〜12fの配置と同じである。なお、本実施例の圧電発電装置Cは、ばね手段12以外の構成は第1実施例の圧電発電装置Aと同じとされている。本実施例の効果は、第2実施例と同様である。コイルバネに代えて板ばねをばね手段12として使用することで、ベース部材11及び第1錘部材13へのばね手段12の取り付けが簡単になる。なお、板ばねの形状はU字形に限らず、個数も4個に限らない。
〔第4実施例〕
図11は、本発明に係る圧電発電装置の第4実施例に用いられる発電素子を示す。本実施例の圧電発電装置Dは、発電素子として、発電素子30を使用したものである。本実施例の発電素子30は、金属板などの振動板31と、振動板31の両主面に貼り付けられた圧電素子32a〜32cと、励振用の第2錘部材33とで構成されている。なお、図11の(a)では圧電素子32a〜32cが省略されている。なお、本実施例の圧電発電装置Dは、発電素子30以外の構成は第1実施例の圧電発電装置Aと同じとされている。
振動板31の一方端である固定部31dは第1錘部材13の支持台部13bの上面に固定されている。振動板31の他方端は自由端とされており、振動板31の他方端には、第2錘部材33が取り付けられている。振動板31の一方端と他方端との間の部分には、コの字状の貫通部が形成されている。貫通部は、振動板31の一方端側に位置し、X軸方向に延びる部分と、振動板31の一方端と他方端との間であって、長手方向の端部近傍に位置し、Y軸方向に延びる2つの部分とにより構成されている。振動板31の他方端には、第2錘部材33が取り付けられている部分の両側に、切り欠き部が形成されている。具体的には、振動板31は第1〜第3アーム部31a〜31cと第1,第2の折り返し部31e,31fを有し、第1アーム部31aと第2アーム部31bとはそれぞれ左右一対設けられ、中央部に第3アーム部31cが設けられている。そのため、第3アーム部31cの中心を通る軸線CLを中心として振動板31は左右対称形状とされている。第1アーム部31aは、振動板31の長手方向の端部に位置し、Y軸方向に延びている。第1アーム部31aは、固定部31d側から第2錘部材33側に向かって漸次幅狭に形成されている。第1アーム部31aの一端は固定部31dに連結されており、第1アーム部31aの他端は第1の折り返し部31eを介して第2アーム部31bの一端と連結されている。第2アーム部31bは、第1アーム部31aと貫通部を介して対向するように位置し、Y軸方向に延びている。第2アーム部31bは、固定部31d側から第2錘部材33側に向かって漸次幅狭に形成されている。第2アーム部31bの一端は第1の折り返し部31eを介して第1アーム部31aの他端と連結されており、第2アーム部31bの他端は第2の折り返し部31fを介して第3アーム部31cの一端と連結されている。第3アーム部31cは、第2アーム部31bと切り欠き部を介して対向するように位置し、Y軸方向に延びている。第3アーム部31cは、固定部31d側から第2錘部材33側に向かって漸次幅狭に形成されている。第3アーム部31cの一端は第2の折り返し部31fを介して第2アーム部31bの他端と連結されており、第3アーム部31cの他端は自由端であり、第2錘部材33が取り付けられている。
圧電素子32aは第1アーム部31aの下面に貼り付けられ、圧電素子32bは第2アーム部31bの上面に貼り付けられ、圧電素子32cは第3アーム部31cの下面に貼り付けられている。圧電素子32a〜32cは各アーム部の形状に相似した形状とされている。
本実施例の圧電発電装置Dでは、各アーム部に発生する曲げ応力がほぼ均等化され、各アーム部の長さ方向においても曲げ応力がほぼ均等化される。そのため、発電量が、単一のアーム部よりなる振動板21を有する第1〜第3実施例の圧電発電装置A〜Cに比べて多くできる。
本発明に係る圧電発電装置は上述の実施例に限られるものではなく、種々変更可能であることは勿論である。ばね手段としては、コイルバネ、板ばねに限らず、その個数も2個、4個に限らない。実施例では第1錘部材を側面視L字形の部材で構成したが、形状は任意であり、発電素子の固定位置も実施例のような一端部に限らない。外部振動が加わったとき、共振器の第1錘部材が横振れ(Y軸回りの揺動)を生じないように、第1錘部材を上下方向にのみ揺動するようにガイドするガイド手段を追加的に設けてもよい。このガイド手段としては、例えばベース部材11に固定又は一体形成され、第1錘部材13の両側面をスライド自在にガイドする壁やポストであってもよい。
A〜D 圧電発電装置
10 共振器
11 ベース部材
12 ばね手段
12a,12b コイルバネ
13 第1錘部材
20 発電素子
21 振動板
22 圧電素子
23 第2錘部材
25 整流蓄電回路
30 発電素子
31 振動板
31a〜31c 第1〜第3アーム部
31e,31f 第1,第2の折り返し部
32a〜32c 圧電素子
33 第2錘部材

Claims (7)

  1. ベース部材上にばね手段を介して第1錘部材が支持された共振器と、
    第2錘部材と、
    主面に圧電素子を貼り付けた振動板を有し、当該振動板の一方端が前記第1錘部材に固定され、自由端である他方端に前記第2錘部材が取り付けられ、上下方向に屈曲振動可能な発電素子とを備え、
    前記第1錘部材は前記発電素子の屈曲振動面に対して垂直な軸を中心として所定の振動数で揺動することを特徴とする圧電発電装置。
  2. 前記第1錘部材は前記ベース部材に加わる外部振動に基づいて揺動し、前記発電素子は前記第1錘部材の揺動に同期して屈曲振動することを特徴とする請求項1に記載の圧電発電装置。
  3. 前記第1錘部材の質量は前記第2錘部材の質量より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電発電装置。
  4. 前記第1錘部材の揺動軸は、前記第1錘部材の重心よりも前記発電素子の自由端側にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電発電装置。
  5. 前記共振器の共振周波数が前記第2錘部材を含む前記発電素子の共振周波数よりも低いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電発電装置。
  6. 前記共振器の1次モードの共振周波数f1と前記第2錘部材を含む前記発電素子の共振周波数faとの比が、
    0.4≦f1/fa≦0.95
    の範囲にあることを特徴とする請求項5に記載の圧電発電装置。
  7. 前記共振器のばね手段は、複数のコイルバネで構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電発電装置。
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