JP2006207749A - 制振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 圧電素子を利用することで構造の簡略化と小型化が図られ得ると共に、大きな加振エネルギーを効率的に生ずることの出来る、新規な構造の制振装置を提供することにある。
【解決手段】 湾曲変形可能な弾性支持板12の一方の端部に制振対象16への取付部18を設けると共に他方の端部にマス部14を設け、更に弾性支持板12の表面に圧電素子からなる圧電板20を重ね合わせて固定した。
【選択図】 図1

Description

本発明は、制振対象の振動を抑える制振装置に関するものである。
従来から、防振対象における振動を低減するために、一般にショックアブソーバやゴム弾性体等の減衰効果を利用した振動減衰手段や、コイルスプリングやゴム弾性体等のばね効果を利用した振動絶縁手段が採用されているが、これらは何れも受動的な防振作用を発揮するものであるために、例えば防振すべき振動特性が変化する場合等にあっては、十分な防振効果を得ることが難しい問題があった。そこで、近年では、特許文献1(特開昭61−220925号公報)等に記載されているように、コイルや永久磁石による電磁力や磁力を利用した加振手段を用いて、制振対象における振動を積極的乃至は相殺的に低減せしめる能動型の制振装置も提案されている。
しかしながら、従来構造の能動型制振装置では、コイルやヨーク部材等が必要であることから装置が大型化すると共に重量も大きくなることが避けられず、その適用範囲が制限されてしまうという問題があった。また、コイルを利用することから、例えば数百Hz以上の高周波数域ではエネルギ効率や制御精度の低下が問題となるおそれもあった。
一方、特許文献2(特開2000−357824号公報)や特許文献3(特開2004−308786号公報)には、制振対象に圧電素子を取り付けて、圧電素子をアクチュエータとして利用した能動型の制振装置が提案されている。
しかしながら、周知のように圧電素子に電圧を印加することによって生ぜしめられる変形は、ある程度の力を得ることが出来るもののストロークを確保し難い。そのために、上述の如き、制振対象に対して圧電素子を直接に固定した従来構造の能動型制振装置では、発生する加振エネルギーが十分と言い難く、有効な制振効果を得ることが難しかったのである。
特開昭61−220925号公報 特開2000−357824号公報 特開2004−308786号公報
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、圧電素子を利用することで構造の簡略化と小型化が図られ得ると共に、大きな加振エネルギーを効率的に生ずることの出来る、新規な構造の制振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
(本発明の態様1)
本発明の態様1の特徴とするところは、湾曲変形可能な弾性支持板の一方の端部に制振対象への取付部を設けると共に他方の端部にマス部を設け、更に該弾性支持板の表面に圧電素子からなる圧電板を重ね合わせて固定した制振装置にある。
このような本態様に従う構造とされた制振装置においては、マス部が弾性支持板を介して制振対象に支持されていることによって、マス−バネ系からなる振動系が、主振動系たる制振対象に対する副振動系として機能している。そこにおいて、弾性支持板の表面に圧電板が重ね合わせられて固定されていることにより、圧電素子からなる圧電板の圧電効果を利用した加振力を制振対象に及ぼすことが可能となる。
すなわち、圧電素子に電圧をかけると応力により弾性的な変化を生ずる圧電気の逆効果に基づいて、圧電板に電圧を印加した場合に、圧電板の変形に基づき弾性支持板に弾性変形が生ぜしめられる。即ち、圧電板は電圧印加制御によって板厚方向に伸縮変形するが、それに伴って板面方向(長手方向)にも伸縮変形する。この伸縮変形が、圧電板が固着された弾性支持板の表面に作用せしめられることで、弾性支持板の一方の面が伸縮することとなり、弾性支持板の両面の相対的な伸縮によって曲げモーメントが作用して弾性支持板が湾曲変形せしめられることとなるのである。その結果、弾性支持板を撓ませて首振り状に湾曲変形させて、マス部を加振変位させることが出来る。従って、圧電板の駆動電圧を制御することによって、制振すべき振動に対応した加振力が有利に発揮されることとなり、かかる制振すべき振動の周波数域で十分な制振効果が得られるのである。
そこにおいて、圧電板への電圧印加に伴う該圧電板の変形は、弾性支持板の弾性変形によって増幅されてマス部を加振変位せしめることとなる。その結果、圧電板に生ぜしめられる加振力は、マス部と弾性支持板から構成されるマス−バネ系によって増幅され大きな加振力(エネルギー)として制振対象に及ぼされる。それ故、能動的な制振効果が、圧電板の小さな変形量と消費エネルギーによって効率的に発揮され得るのである。
(本発明の態様2)
本発明の態様2の特徴とするところは、本発明の前記態様1に係る制振装置において、前記弾性支持板を前記圧電板より長尺として該弾性支持板の端部を該圧電板から延び出させたことにある。
このような本態様においては、圧電板の端部の板厚方向変位量に比して、弾性支持板の端部の板厚方向変位量が、圧電板の端部から延び出した長さに対応する分だけ大きくなる。それ故、圧電板のストロークを弾性支持板で増幅させて、マス部の振幅を大きく確保することが出来るのであり、一層大きな加振力(エネルギー)を得ることが可能となる。
(本発明の態様3)
本発明の態様3の特徴とするところは、本発明の前記態様1又は2に係る制振装置において、前記取付部が設けられた一方の端部を相互に一体的に連結することにより、共通の該取付部から複数方向に延び出すように前記弾性支持板の複数を一体的に形成し、それら各弾性支持板の他方の端部には前記マス部を設けたことにある。
このような本態様においては、装置全体の重量バランスや各マス部の加振変位が安定とされると共に、複数のマス部の加振によって大きな制振効果が得られる。また、例えば、それぞれのマス部と弾性支持板で構成される複数のマス−バネ系における固有振動数を同じ周波数域にチューニングして一層大きな加振力を得たり、相互に異なる周波数域にチューニングして複数の周波数域で有効な加振力を得たりすることが可能となり、特性チューニングの自由度の大きい制振装置が少ない部品点数で一層コンパクトに実現可能となる。
(本発明の態様4)
本発明の態様4の特徴とするところは、本発明の前記態様1乃至3の何れかに係る制振装置において、前記制振対象の振動を検出する振動検出手段を設けると共に、該振動検出手段による検出信号に基づいて前記圧電板に電圧を印加する駆動制御手段を設けたことにある。
このような本態様においては、制振対象において防振すべき振動を直接に検出することで、当該振動をキャンセルするような逆位相の加振力を高精度に発生させることが出来る。なお、振動検出手段としては、公知の加速度センサや歪センサ等を利用することが出来るが、後述する態様5に従う振動検出手段も好適に採用される。
(本発明の態様5)
本発明の態様5の特徴とするところは、本発明の前記態様4に係る制振装置において、前記圧電板における起電力を検出する起電力検出手段を設けて、該圧電板と該起電力検出手段を含んで前記振動検出手段を構成したことにある。
このような本態様においては、圧電素子における圧電気の正効果(ピエゾ効果)を利用して起電力検出手段を構成することが出来るのであり、特に制振装置自体において、制振対象の振動を検出する振動検出手段を構成することが可能となることから、制振装置システムの構造の簡略化や装着作業性の向上等が図られ得る。
(本発明の態様6)
本発明の態様6の特徴とするところは、本発明の前記態様1乃至5の何れかに係る制振装置において、前記弾性支持板の両側の表面にそれぞれ前記圧電板を重ね合わせて固定したことにある。
このような本態様においては、例えば、複数の圧電板の幾つか或いは全てを、駆動電圧による変形に基づいてマス部を加振する加振用として利用したり、外力により圧電板に生じる電荷に基づいて振動を検出する振動検出用として利用したり、或いはそれら加振用と振動検出用を共用する共用型として利用したりする等の各種の態様が図られる。その結果、例えば、複数の圧電板の変形に基づき弾性支持板を一層大きく変形させて大きな振幅を生ぜしめたり、振動検出に適した位置に設けられた圧電板で制振すべき振動を高度に検出したりすることが実現され、制振効果の更なる向上が図られ得る。
(本発明の態様7)
本発明の態様7の特徴とするところは、本発明の前記態様6に係る制振装置において、前記弾性支持板の両側の表面に重ね合わせた前記圧電板のそれぞれに対して、互いに伸縮変形が逆位相となるように電圧を印加する駆動制御手段を設けたことにある。
このような本態様においては、弾性支持板が両側面に作用せしめられる板面方向の伸縮力によって一層効率的に湾曲変形されることに加え、各圧電板の駆動電圧を制御することによって、弾性支持板の変形が一層高精度に制御可能となる。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた制振装置においては、圧電板の圧電効果を利用して、制振すべき振動に対応した加振力が有利に発揮されることにより、所期の制振効果が安定して得られるのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としてのダンパ10が示されている。このダンパ10は、弾性支持板としての板ばね12とマス部としてのマス金具14を含んで構成されており、マス金具14が板ばね12を介して制振対象としての振動部材16に連結支持されることによって、振動部材16に装着されるようになっている。かかる装着状態では、板ばね12とマス金具14によって構成されるマス−バネ系の振動系が、主振動系たる振動部材16に対する副振動系として機能して、制振効果を発揮し得るようになっている。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向(鉛直方向)は図1中の上下方向をいい、左右方向(水平方向)は図1中の左右方向をいう。
より詳細には、板ばね12は、略一定の厚さ寸法で広がる長手状の略矩形平板形状を有していると共に、厚さ方向(図1中、上下)に湾曲変形乃至は剪断変形可能とされている。板ばね12の形成材料には、低減衰で高動ばねを発揮し得るような硬質材が採用され、具体的に、鉄鋼やアルミニウム合金等の金属材やFRP等の繊維強化された合成樹脂材などが採用される。なお、必要に応じて、板ばね12には、ゴム材からなるダンピング材や硬質材からなる拘束材などが固着されて、その変形量が適宜に調節されるようにしても良い。また、板ばね12の長手方向一方(図1中、右)の端部には、マス金具14が溶接等で固着されている。
マス金具14は、板ばね12の幅方向(図1中、上下及び左右方向に直交する方向)に略一定の矩形断面で延びる略矩形ブロック状とされていると共に、高比重の金属材等を用いて形成されている。
また、板ばね12の長手方向他方(図1中、左)の端部が取付部18とされており、この取付部18が、振動部材16に対して溶接等で固着されるようになっている。即ち、板ばね12が、長手方向一端側に設けられた取付部18において振動部材16に固定された片端支持の梁構造とされていると共に、マス金具14が、板ばね12の長手方向他端側の自由端に取り付けられている。これにより、板ばね12とマス金具14からなるマス−バネ系が、主振動系たる振動部材16における板厚方向(図1中、上下)の振動に関して、1自由度の副振動系として機能するようになっている。特に本実施形態では、かかる副振動系の固有振動数が、板ばね12を主体として構成されたバネ系の動的ばね定数やマス金具14を主体として構成されたマス系の質量を調節して、振動部材16において制振すべき振動の周波数に対応するようにチューニングされている。
さらに、板ばね12には、圧電素子からなる薄肉の略矩形平板形状の圧電板20が固着されている。圧電板20の形成材料としては、要求される圧電効果や機械的強度、コスト等に応じて適宜に設定変更されるものであって、特に限定されるものでなく、例えば、水晶やロッシェル塩(KNaC4 4 6 ・4H2 O), ニオブ酸リチウム等の結晶やBaTiO3 , PbZrO3 およびPbTiO3 等を含む圧電セラミックス、フッ化ビニリデン(VDF)を中核とした共重合体などの高分子化合物を利用した圧電性高分子膜などが、何れも採用可能である。
更にまた、圧電板20が、板ばね12の両面の何れか一方(本実施形態では上面)に重ね合わせられて、各種の固着手段を用いて板ばね12に固定されている。かかる固着手段には、例えば、板ばね12と圧電板20の重ね合わせ面に塗布される接着剤や板ばね12と圧電板20の適当な箇所に為される溶接、固定ボルトの他、特開2000−357824号公報(特許文献2)等に示される如き圧電素子を制振対象に対して着脱可能に取り付けた接続部材などが採用可能である。特に本実施形態では、板ばね12が圧電板20よりも長手方向に大きな形状とされて、圧電板20よりも長尺とされていると共に、圧電板20が板ばね12の中央部分に重ね合わせられていることによって、板ばね12における長手方向(図1中、左右)の両端部が、圧電板20の長手方向両端部から外方に延び出している。また、特に図面に明示されていないが、圧電板20の板厚方向の両面には、薄肉の金属膜からなる電極膜が設けられている。
このような圧電板20は、電極を介して電圧を印加して二つの電極間に電位差を生ぜしめると、ピエゾ(圧電気)の逆効果に基づいて、板厚方向(図1中、上下)に圧縮変形乃至は伸長変形される。即ち、交番電流や脈流等を電極間に印加すると圧電板20が、外観上、板面方向(図1中、左右)に伸縮するように変形される。また、板厚方向の伸縮変形は、圧電板20の板面方向(図1中の左右方向となる長手方向)での縮伸変形を伴うこととなる。この板面方向の伸縮変形が板ばね12の一方の面において板面方向の引張/圧縮力として作用せしめられることによって、板ばね12が湾曲変形せしめられる。そして、板ばね12は、固定端である取付部18を中心に板厚方向(図1中の上下方向)で首振り状に湾曲変形乃至は剪断変形せしめられることとなり、自由端に設けられたマス金具14が上下に加振変位せしめられる。そして、このマス金具14の加振変位によって、圧電板20の変形が増幅されて、増幅された加振力が、取付部18から振動部材16に及ぼされる。
本実施形態では、振動部材16が、例えば、自動車のボデーやステアリングコラム、シート等とされるが、その他自動車以外の振動が発生する各種の装置とされても良い。
振動部材16に及ぼされる加振力の大きさやタイミング(位相)の制御は、圧電板20に印加する電圧を制御することによって実現される。ここにおいて、圧電板20に電圧を印加する駆動制御手段としてのコントローラ22が設けられている。コントローラ22は、図示しない車載バッテリー等の電源装置から、必要に応じて適当な増幅器を介して、圧電板20に駆動電圧を印加するものであって、以下に示す各態様ごとに適宜に採用される適当な参照信号や振動検出手段としての加速度センサ24で検出されるエラー信号等によって、制御信号を生成する。
一つの例示的な制御態様としては、コントローラ22に対して振動部材16に発生している振動の検出信号が与えられて、かかる振動を打ち消すように圧電板20への駆動電圧を制御する態様が挙げられる。
具体的には、例えば、加速度センサ24が振動部材16の適当な箇所に取り付けられている。コントローラ22は、振動部材16に発生している振動を加速度センサ24により検出する。コントローラ22では、加速度センサ24の検出信号を参照信号26として予め記憶されたプログラムに従って演算処理を行い、目的とする電圧の周期や位相などを調節するフィードバック制御や適応制御、或いは予め記憶されたマップデータからデータを選択処理するマップ制御などによって、該振動と同じ周期で逆位相の電圧を得る。そして、かかる電圧を圧電板20の各電極に対して、リード線28を介して印加して、圧電板20を駆動させる。その結果、圧電板20の伸縮変形に基づく加振力が、マス−バネ系で増幅されて振動部材16に及ぼされるこにより、制振効果が発揮される。
また、別の制御態様としては、例えば、コントローラ22では、車両のエンジン点火パルス信号を参照信号として、圧電板20への印加電圧の周波数を、エンジン回転数に基づいて制御する。かかる印加電圧の位相を、振動部材16に装着した加速度センサ24の検出信号を用いたフィードバック制御によって行うことでも実現可能である。勿論、かかる位相を、適応制御やマップ制御などで行うことも可能である。
従って、本実施形態に従う構造とされたダンパ10においては、制振すべき振動に応じて圧電板20への駆動電圧を制御することで、圧電板20の伸縮変形に基づくマス−バネ系の振動が高度に制御される。しかも、圧電板20が板ばね12の板面方向に長手状に延びるプレート状とされていることによって、圧電板20の板厚方向の変形量は小さいが、板面方向の伸縮量は大きくされている。それ故、振動部材16に極めて有効な加振力が及ぼされることとなり、優れた制振効果が発揮され得るのである。加えて、圧電板20の長手方向両端よりも板ばね12が長手方向に延び出していることから、この延び出した部分によっても、圧電板20の上下方向の変位量が増幅され得る。
特に本実施形態では、マス−バネ系の固有振動数が制振すべき振動の周波数域にチューニングされていることにより、かかる固有振動数の周波数域において、振動系の共振作用に基づき、圧電板20による加振力が増幅されて振動部材16に及ぼされることとなる。それ故、圧電板20への供給エネルギ(駆動電圧)に対して、大きな加振力を振動部材16に及ぼすことが出来、小型で消費エネルギの小さい圧電板20によって一層効率的な制振効果が得られる。
なお、本実施形態は能動型制振器であることから、チューニング周波数域を外れた周波数域でも、圧電板20への印加電圧の周波数を適宜に変更調節することにより、マス−バネ系の固有振動数を外れた周波数域でもマス金具14を変位させて能動的な制振効果を得ることが出来る。
また、本実施形態では、マス−バネ系の固有振動数が制振すべき振動の周波数域にチューニングされていることによって、特に圧電板20に駆動電圧を及ぼさない形態下でも、固有振動数の周波数域におけるマス−バネ系の共振作用に基づいて受動的な制振効果、いわゆるダイナミックダンパ機能が発揮される。それ故、制振効果が効率的に得られる。
次に、図2には、本発明の第二の実施形態としてのダンパ30が示されている。なお、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の構造とされた部材及び部位については、図中に第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
本実施形態のダンパ30における板ばね12の両面には、第一の実施形態の圧電板20と同一の構造とされた圧電板20a,20bが、それぞれ、板厚方向(図2中、上下)に重ね合わせられて固着されている。これら圧電板20a,20bは、板ばね12の中央部分において板ばね12を挟んで対向位置せしめられており、各圧電板20の両面に設けられた電極が、第一の実施形態と同様に、リード線28を通じてコントローラ22の増幅器などに接続されている。
このような構造とされたダンパ30においては、両圧電板20a,20bに対してコントローラ22により互いに逆位相の電圧をかけて、一方の圧電板20aを圧縮変形させると共に、他方の圧電板20bを引張変形させる。即ち、駆動制御手段としてのコントローラ22で駆動電圧を制御して、一対の圧電板20a,20bに互いに逆位相の伸縮変形を及ぼすことが可能となる。
これにより、板ばね12を板厚方向(図2中、上下)に対して効率的に湾曲変形力を及ぼすことが出来る。しかも、一対の圧電板20a,20bに印加する駆動電圧を各別に制御することによって、板ばね12の変形が高度に制御されることから、板ばね12の変形が安定化せしめられて、目的とする制振効果を一層安定して得ることが可能となる。
また、本実施形態では、一つ当たりの圧電板20にかかる電圧を小さくして、各圧電板20の変形を抑えた場合においても、全体として、板ばね12が効率的に湾曲変形されることによって所期の加振力が得られることから、圧電板20の耐久性や作動効率(省エネルギー性)が向上されるといった利点を生ずる。
次に、図3には、本発明の第三の実施形態としてのダンパ40が示されている。本実施形態では、板ばね12の両面に圧電板20が固着される構造などは前記第二の実施形態と同様であるが、圧電効果を利用した圧電板20への駆動電圧の制御などにおいて前記実施形態と異なる態様が示されている。
詳細には、板ばね12の一方(例えば図3中、上)の面に固着された圧電板20’が、起電力検出手段としてのピックアップ42を介してコントローラ22に接続されている。ピックアップ42は、公知の回路素子からなり、圧電板20’の表面に設けられた電極に接続されて、圧電板20’から取り出された電気信号をコントローラ22に出力するようになっている。
このような構造とされたダンパ40では、振動部材16の振動が板ばね12を介して圧電板20’に入力されると、圧電板20’の表面に電荷が生ずる、所謂ピエゾの正効果が発揮される。かかる圧電効果を利用して、板ばね12における圧電板20’と反対側の面に固着された圧電板20への駆動電圧を制御することが可能となる。
具体的には、一つの例示的な制御態様において、コントローラ22が、車両のエンジン点火パルス信号を契機として、振動部材16から圧電板20’に入力される振動の周波数および位相を、該振動入力に伴い圧電板20’に生じる電気信号としてピックアップ42により検出する。コントローラ22では、ピックアップ42で検出された振動の周波数および位相を参照信号26として、フィードバック制御や適応制御、マップ制御などによって、該振動を打ち消すような電圧を得る。そして、かかる電圧を圧電板20に印加して圧電板20の伸縮変形に基づき、振動部材16の振動を打ち消すような加振力を振動部材16に及ぼす。これにより、優れた制振効果が得られる。なお、前述の説明からも明らかなように、本実施形態では、振動検出手段が、板ばね12の一方の面に固着された圧電板20’とピックアップ42を含んで構成されている。
また、本実施形態では、例えば、マス−バネ系の加振周波数の振動を一方の圧電板20’で検出して、他方の圧電板20の駆動電圧をマス−バネ系の振動を増幅せしめるように制御することも可能である。それによって、制振効果の更なる向上が図られ得る。
次に、図4には、本発明の第四の実施形態としてのダンパ50が示されている。このダンパ50は、振動部材16への組み付け構造や圧電板20の数等において他の実施形態のダンパと異なる形態とされている。
詳細には、前記第一の実施形態と同様な構造とされた一対の板ばね12a,12bにおいて、各取付部(18)を備えた一方の端部が、相互に一体的に連結されている。これにより、一対の取付部(18,18)が協働して一つの取付部18’を構成し、該取付部18’から一対の軸直角方向(図4中、左右)に延び出すように一対の板ばね12a,12bが一体形成されて、長尺の略矩形平板形状を呈する板ばね12’が構成されている。
また、各板ばね12a,12bにおける取付部18’と反対側の端部に第一の実施形態と同様な構造とされたマス金具14が、それぞれ固着されており、それによって、板ばね12’の長手方向両端部にマス金具14が固着されている。
これにより、板ばね12’と一対のマス金具14a,14bからなるマス−バネ系が、主振動系たる振動部材16における板厚方向(図4中、上下)の振動に関して、少なくとも2自由度の多自由度の副振動系として機能するようになっている。
また、板ばね12’を構成する一対の板ばね12a,12bの両面には、それぞれ、第一の実施形態と同様な構造とされた圧電板20が重ね合わせられて固着されている。板ばね12’の一方(図4中、上)の面には、一対の圧電板20a,20cが長手方向(図4中、左右)に離隔して固着されていると共に、板ばね12’の他方(図4中、下)の面には、一対の圧電板20b、20dが長手方向に離隔して固着されている。また、各圧電板20の両面に設けられた電極が、第一の実施形態と同様に、リード線28を通じてコントローラ22に接続されている。
また、取付部18’の両面には、矩形平板形状の金具が、それぞれ一体的に固設されていて、各金具が一対の圧電板20a,20cの間と一対の圧電板20b,20dの間に位置せしめられている。特に、各金具が各圧電板20の表面と略面一とされていると共に、各圧電板20の端部が該金具の端部と接している。取付部18’は、これら金具を含んで構成されている。
さらに、取付部18’の一方の面には、略平板形状の取付金具52が固着されており、圧電板20よりも軸方向外方に突出している。この取付金具52が振動部材16に重ね合わせられて固着されることによって、板ばね12’や一対のマス金具14a,14b、複数の圧電板20が振動部材16と所定距離を隔てて位置せしめられると共に、ダンパ50が振動部材16に装着されるようになっている。特に本実施形態では、ダンパ50が、加速度センサ24と振動部材16を挟んで対向位置せしめられる。
このような構造とされたダンパ50においては、コントローラ22による各圧電板20への電圧の制御に基づいて、例えば、厚さ方向(図4中、上下)で対向位置せしめられた圧電板20aおよび圧電板20bと圧電板20cおよび圧電板20dに、それぞれ互いに逆位相の伸縮変形が生ぜしめられるようにすると共に、板ばね12’の一方(図4中、上)の面に固着された圧電板20aおよび圧電板20cと他方(図4中、下)の面に固着された圧電板20bおよび圧電板20dに、それぞれ互いに同位相の伸縮変形が生ぜしめられるようにする。
その結果、板ばね12’の中央の取付部18’を挟んで両側に配された板ばね12aと板ばね12bが互いに同位相に首振り状に湾曲変形されることとなり、大きな加振力をもって、有効な制振効果を得ることが出来る。
特に、マス−バネ系の副振動系が薄肉のプレート形状の圧電板20で加振せしめられるようになっていることから、図4に示されるように、振動部材16との離隔距離が比較的に小さい場合においても、本実施形態に従う構造とされたダンパ50を有利に取り付けることが出来る。また、コンパクトな構造とされていることによって、振動部材16の複数の箇所に容易に取り付けることが可能となる。
また、本実施形態の多自由度振動系において、複数の固有振動数のチューニングに際しては、例えば各固有振動数を、それぞれ制振すべき異なる振動の各周波数域にチューニングすることが有効であり、それによって、特に制振すべき各振動の周波数が略一定で且つ比較的に狭い場合には、効率的な制振効果が実現され得る。また、例えば複数の固有振動数の二つを、制振すべき振動に対して低周波側と高周波側にずらせてチューニングすることも可能であり、それによって、特に制振すべき一つの振動の周波数範囲が広い場合や、制振すべき振動の周波数が変動する場合に、効率的な制振効果を安定して得ることが可能となる。
なお、制振すべき振動に対して低周波側と高周波側にずらせる固有振動数の範囲は、制振すべき振動特性等に応じて適宜に設定されるものであって特に限定されるものでないが、広い範囲で特に有効な制振効果を得るためには、二つの固有振動数を、低周波目的の振動周波数中央値に対して、±20%以内で両側にそれぞれ振って設定することが望ましい。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、前記実施形態では、各圧電板20が、電圧を印加してマス金具14を加振する構造や表面に生じる電荷に基づいて振動を検出する構造とされていたが、電圧を印加して加振する圧電板20を利用して振動検出手段を構成することも可能である。
また、圧電板20における形状や大きさ、構造、板ばね12に設けられる位置などの形態は、例示の如きものに限定されない。即ち、圧電板20の形態は、振動部材16の形態や要求される制振特性などに応じて、適宜に設定変更される。
また、板ばね12の面に対して、2つ以上の圧電板20を設けても良い。例えば、板ばね12の長手方向に延びる複数の圧電板20を幅方向に並設して、一つをピエゾ効果を利用した起電力検出手段として構成し、他の圧電板20によって駆動力を得るようにしても良い。
また、板ばね12が振動部材16に取り付けられている側の端部にまで延びるようにして圧電板20を装着しても良い。或いは、板ばね12の長手方向で独立した複数の圧電板20を装着しても良い。板ばね12に対する圧電板20の装着態様は限定されるものでない。
加えて、本発明に従う構造とされた制振装置は、自動車用パネル部材やサブフレーム等の自動車用部材の他、振動が問題となる各種の装置の部材乃至は部位に対して取り付けられ、有効な制振効果が発揮され得ることは勿論である。
本発明の第一の実施形態としてのダンパをモデル的に示す縦断面説明図である。 本発明の第二の実施形態としてのダンパをモデル的に示す縦断面説明図であって、図1に対応する図である。 本発明の第三の実施形態としてのダンパをモデル的に示す縦断面説明図であって、図1に対応する図である。 本発明の第四の実施形態としてのダンパをモデル的に示す縦断面説明図であって、図1に対応する図である。
符号の説明
10 ダンパ
12 板ばね
14 マス部
16 振動部材
18 取付部
20 圧電板

Claims (7)

  1. 湾曲変形可能な弾性支持板の一方の端部に制振対象への取付部を設けると共に他方の端部にマス部を設け、更に該弾性支持板の表面に圧電素子からなる圧電板を重ね合わせて固定したことを特徴とする制振装置。
  2. 前記弾性支持板を前記圧電板より長尺として該弾性支持板の端部を該圧電板から延び出させた請求項1に記載の制振装置。
  3. 前記取付部が設けられた一方の端部を相互に一体的に連結することにより、共通の該取付部から複数方向に延び出すように前記弾性支持板の複数を一体的に形成し、それら各弾性支持板の他方の端部には前記マス部を設けた請求項1又は2に記載の制振装置。
  4. 前記制振対象の振動を検出する振動検出手段を設けると共に、該振動検出手段による検出信号に基づいて前記圧電板に電圧を印加する駆動制御手段を設けた請求項1乃至3の何れかに記載の制振装置。
  5. 前記圧電板における起電力を検出する起電力検出手段を設けて、該圧電板と該起電力検出手段を含んで前記振動検出手段を構成した請求項4に記載の制振装置。
  6. 前記弾性支持板の両側の表面にそれぞれ前記圧電板を重ね合わせて固定した請求項1乃至5の何れかに記載の制振装置。
  7. 前記弾性支持板の両側の表面に重ね合わせた前記圧電板のそれぞれに対して、互いに伸縮変形が逆位相となるように電圧を印加する駆動制御手段を設けた請求項6に記載の制振装置。
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