本発明は、短絡状態とアーク状態とを交互に発生させて溶接を行うアーク溶接方法およびアーク溶接装置に関する。
溶接作業工程におけるロス工程の1つとして、スパッタ除去工程がある。このスパッタ除去工程を少なくするためには、スパッタを低減する必要がある。そして、スパッタを低減するために、溶接ワイヤの送給を制御して正送と逆送とを繰り返し、短絡状態とアーク状態とを交互に発生させて溶接を行う消耗電極式アーク溶接が知られている(例えば、特許文献1参照)。消耗電極である溶接ワイヤを送給しながら、短絡状態とアーク状態とを交互に発生させて溶接を行うアーク溶接制御方法の一例について、図9を用いて説明する。
図9は、従来のアーク溶接におけるワイヤ送給速度や溶接出力等の時間波形を示す図である。図9に示すように、時刻t1の短絡発生時から時刻t2のアーク発生時までの短絡期間では、ワイヤ送給速度を基本ワイヤ送給速度から後退送給速度に変更する。また、アーク発生時の時刻t2から次の短絡発生時の時刻t6までのアーク期間では、ワイヤ送給速度を加速させて基本ワイヤ送給速度に戻す。さらに、アーク期間において、アーク発生時の時刻t2から第1の所定時間である時刻t3までは、電流制御を行って所定ピーク電流IPとなるまで溶接電流を増加する。または、時刻t2から時刻t3まで、所定のピーク電流IPとなるまで溶接電流を増加して、その後、ピーク電流IPを所定期間維持する。時刻t3から時刻t4までは、溶接電圧の定電圧制御を行ってこれに基づく溶接電流を出力する。時刻t4後は、電流制御を行って、溶接電流が所定ピーク電流IPよりも低い所定のベース電流IBとなるように減少し、その後、時刻t5から時刻t6のアーク期間終了の時刻まで所定のベース電流IBを維持する。
上述のように、短絡時のワイヤの溶融金属の母材への移行を、ワイヤ送給の後退送給により機械的に確実に行う。これにより、スパッタ発生の主要な原因となる短絡周期を規則的にし、スパッタを抑制して安定した短絡移行溶接が持続できる。
上述の従来のアーク溶接は、短絡時のワイヤ溶融金属の移行を機械的に確実に行うことができる。そして、スパッタ発生の主要な原因となる短絡周期を規則的とし、スパッタ発生の低減が可能である。
しかしながら、溶接のスタート期間では、母材(溶接対象物ともいう)に溶融プールが形成されていないため、母材に溶融プールが形成されている定常溶接期間(本溶接期間ともいう)と比べて短絡開放が難しくなる。そして、短絡開放までの時間が長くなり、短絡電流が高くなる。その結果、ワイヤの溶融金属の成長が過剰になり、短絡開放時に小粒スパッタが発生し易い場合が生じる。
本発明は、スタート期間と定常溶接期間において、短絡電流の増加傾きや短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を使い分けることにより、溶接のスタート期間におけるスパッタを低減するアーク溶接方法およびアーク溶接装置を提供する。
本発明のアーク溶接方法は、消耗電極である溶接ワイヤを用いて短絡状態とアーク状態とを繰り返して溶接を行うアーク溶接方法であって、定常溶接状態である定常溶接期間と、上記定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とにおいて、短絡電流の増加傾きが異なるように短絡電流を制御する方法である。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤと被溶接物との間でアーク状態と短絡状態とを繰り返して溶接を行うアーク溶接装置であって、溶接出力を制御するスイッチング部と、溶接電圧を検出する溶接電圧検出部と、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する短絡/アーク検出部と、短絡/アーク検出部からの短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う短絡制御部と、短絡/アーク検出部からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行うアーク制御部と、作業者が設定電流を設定するための設定電流設定部と、設定電流設定部で設定された設定電流に基づいて定常溶接期間となる前の溶接スタート期間を設定するスタート期間設定部とを備え、短絡制御部は、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間における短絡電流の増加傾きを決定する短絡電流の増加傾き基本設定部と、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾き基本設定部で決定した短絡電流の増加傾きに所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きを決定する短絡電流の増加傾き制御部とを備え、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とで、短絡電流の増加傾きが異なるように短絡電流を制御して溶接を行う構成からなる。
この構成により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤと被溶接物との間でアーク状態と短絡状態とを繰り返して溶接を行うアーク溶接装置であって、溶接出力を制御するスイッチング部と、溶接電圧を検出する溶接電圧検出部と、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する短絡/アーク検出部と、短絡/アーク検出部からの短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う短絡制御部と、短絡/アーク検出部からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行うアーク制御部と、作業者が設定電流を設定するための設定電流設定部と、設定電流設定部で設定された設定電流に基づいて定常溶接期間となる前の溶接スタート期間を設定するスタート期間設定部とを備え、短絡制御部は、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと第1段目の増加傾きに続く短絡電流の第2段目の増加傾きを決定する短絡電流の増加傾き基本設定部と、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間において短絡電流の第1段目の増加傾きから短絡電流の第2段目の増加傾きに短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を決定する短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部と、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾き基本設定部で決定した定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと短絡電流の第2段目の増加傾きに所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより、溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと短絡電流の第2段目の増加傾きを決定する短絡電流の増加傾き制御部と、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部で決定した定常溶接期間における短絡電流の増加傾きの屈曲点の電流値に所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより、溶接スタート期間における屈曲点の電流値を決定する短絡電流の増加傾きの屈曲点制御部とを備え、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とで、短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2段目の増加傾きおよび屈曲点の電流値が異なるように短絡電流を制御して溶接を行う構成からなる。
この構成により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
以上のように、本発明によれば、溶接スタート期間と定常溶接期間において、短絡電流の増加傾きや短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を使い分けている。これにより、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
図1は、本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度、溶接電圧および溶接電流の時間波形を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるスタート期間、第2スタート期間および定常溶接期間の、ワイヤ送給速度、溶接電圧および溶接電流の時間波形を示す図である。
図3は、本発明の実施の形態1における設定電流と短絡電流の増加傾きの関係の一例を示す図である。
図4は、本発明の実施の形態1における設定電流と短絡電流の増加傾きの関係の一例を示す図である。
図5は、本発明の実施の形態1における設定電流と短絡電流の増加傾きの変化点である屈曲点の電流値の関係の一例を示す図である。
図6は、本発明の実施の形態1における設定電流と短絡電流の増加傾きの変化点である屈曲点の電流値の関係の一例を示す図である。
図7は、本発明の実施の形態1におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図である。
図8は、本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度、溶接電圧および溶接電流の時間波形を示す図である。
図9は、従来のアーク溶接におけるワイヤ送給速度や溶接出力等の時間波形を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同じ構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態1では、先ずアーク溶接方法について説明し、その後、このアーク溶接方法を行うアーク溶接装置について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態1の、短絡状態とアーク状態とを交互に繰り返す消耗電極式のアーク溶接におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間変化の波形を示している。図2は、スタート期間、第2スタート期間および定常溶接期間のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間変化の波形を示している。なお、図1は、定常溶接期間のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間変化の波形を示している。
図1に示すように、P1は、短絡を開始した時点であり、短絡初期期間の開始の時点でもある。P2は、短絡初期期間の終了時点を示している。なお、時点P2は、短絡電流の単位時間あたりの電流増加量である短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dt(以下、「IS1a」とする。)の出力を開始した時点でもある。また、P3は、IS1aから短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dt(以下、「IS2a」とする。)に傾きが変化する屈曲点ISCaとなる時点である。また、P4は、IS2aの出力終了の時点を示している。なお、時点P4は、溶融プールと溶接ワイヤ先端との間に出来上がった溶滴のくびれを検出し、溶接電流を瞬時に低電流に移行する、いわゆる「くびれ処理」を行う時点でもある。また、P5は、溶滴のくびれが離れ、短絡状態が終了してアークが発生した時点である。なお、時点P5は、アーク発生直後にピーク電流IPの溶接電流の出力を開始する時点でもある。また、P6は、ピーク電流IPからベース電流IBへの移行を開始させる時点である。ここで、時点P6から時点P7までは、電流制御としても良いし、電圧制御としても良い。時点P7から時点P8までは、ベース電流IBを出力する。なお、時点P8は、次の短絡が発生した時点でもある。
また、図1に示すワイヤ送給の制御では、所定の周波数と速度振幅で基本波形である正弦波状にワイヤの正送と逆送とを周期的に繰り返すように制御している。ワイヤ送給の正送側では、ピーク時である時点P1周辺で短絡が発生する。一方、ワイヤ送給の逆送側では、ピーク時である時点P5周辺でアークが発生する。なお、ワイヤ送給の正送側では、ワイヤを正送していることにより短絡が発生し易くなる。また、ワイヤ送給の逆送側では、ワイヤを逆送していることにより短絡の開放がし易くなる。このように、短絡状態またはアーク状態の発生は、基本的に、ワイヤ送給速度の正送と逆送とを周期的に繰り返すワイヤ送給制御に依存するものである。
溶接の開始からの時間波形を示す図2において、溶接状態が定常溶接状態である定常溶接期間では、IS1aと、このIS1aに続く設定電流に応じたIS2aと、IS1aからIS2aに変わる点である、設定電流に応じた屈曲点ISCaの電流値に基づいて溶接が行われる。
また、図2に示す溶接のスタート期間において、短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dt(以下、「IS1b」とする)と、短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dt(以下、「IS2b」とする。)と、屈曲点ISCbの電流値は、定常溶接期間の各々の増加傾きや屈曲点の電流値よりも小さくなるように制御される。この詳細については後述する。なお、このスタート期間は、例えば、溶接開始からワイヤ送給速度が定常溶接状態のワイヤ送給速度に達するまでの期間であり、例えば実験等により予め求められているものでる。そして、このスタート期間終了時には、母材に溶融プールが適正に形成されている。
また、図2に示すスタート期間と定常溶接期間の間の第2スタート期間は、スタート期間の各々の増加傾きや屈曲点の電流値から、定常溶接期間の各々の増加傾きや屈曲点の電流値に変更していく期間を示している。なお、この第2スタート期間は、例えば数百msec程度である。
また、図1において、定常溶接期間における設定電流に応じた溶接電流および溶接電圧の時間波形(基本波形)を実線で示している。そして、スタート期間において増加傾きと屈曲点を変化させた場合の時間波形の例を破線で示している。なお、図1では、対比し易いように同一の短絡期間において実線と破線の両方を示している。
先ず、図1に示す時点P1から時点P8までの期間である短絡期間とアーク期間とからなる1周期分の基本制御(実線で示す時間波形)、すなわち、定常溶接期間における制御について、以下に説明する。
時点P1およびその近傍の時点において、正弦波状のワイヤ送給制御によるワイヤ送給の正送のピーク時に、溶接ワイヤが被溶接物に接触して短絡が発生する。そして、時点P1から時点P2までの短絡初期期間では、短絡発生時の電流よりも低い短絡初期電流が出力される。
ここで、時点P1から時点P2までの短絡初期期間の電流を短絡発生時の電流よりも低電流とする目的について説明する。短絡発生直後に、高電流に向けて短絡電流を増加すると、短絡が直ちに開放し、その後すぐに再度短絡が発生することがある。このような状態が生じると、短絡が発生し、一定時間経過した後、短絡が開放し、その後、再び短絡が発生するということを繰り返す、短絡の周期性が崩れてしまうことがある。そこで、短絡発生直後に短絡時の電流よりも低電流とする期間を設けることで、しっかりと短絡した状態を確保し、それから高電流に向けて短絡電流を増加する制御を行う。これにより、上述の短絡の周期性が崩れてしまうことを防ぐことができる。
なお、短絡初期期間や短絡初期電流値は、予め実験検証等により導き出して最適な期間および電流値を設定し採用している。そして、これら短絡初期期間や短絡初期電流の基本設定値は、ある溶接速度(本実施の形態1では、例えば1m/min)で溶接した時に短絡期間とアーク期間との比率が50%ずつとなる。これにより、安定した溶接が可能な適正な値を実験検証等により導き出して採用している。そして、短絡初期期間や短絡初期電流値は、アーク溶接装置の図示しない記憶部にテーブルや数式等として設定電流に対応させて記憶されている。
次に、時点P2では、溶接ワイヤが、確実に被溶接物(母材ともいう)に短絡している状態から、設定電流に基づいて決定されたIS1aに沿って実際の短絡電流が上昇する。時点P3において、短絡電流の屈曲点ISCaとして決定された電流値に到達すると、設定電流に応じて決定されたIS2aに沿って実際の短絡電流が増加する。なお、時点P2から時点P3までのIS1aと、時点P3から時点P4までのIS2aと、時点P3における短絡電流の屈曲点ISCaとなる電流値の基本設定値は、ある溶接速度(本実施の形態1では、例えば1m/min)で溶接した時に、短絡期間とアーク期間との比率が50%ずつとなり、安定した溶接が可能な適正な値を実験検証等により導き出して採用している。そして、これらIS1a、IS2aや屈曲点ISCaの電流値は、アーク溶接装置の図示しない記憶部にテーブルや数式等として設定電流に対応付けて記憶されている。
次に、時点P4から時点P5においては、従来から知られているように、溶融した溶接ワイヤの先端部分のくびれを検知して短絡電流を急峻に低減させる制御を行っている。
次に、時点P5の周辺で、正弦波状のワイヤ送給制御による逆送のピーク時付近で、溶接ワイヤが被溶接物から離れて短絡が開放する。そして、アーク期間における時点P5から時点P6までの期間においては、アーク発生初期時点である時点P5から電流制御を行って電流をピーク電流IPまで所定の傾きで上昇させる。なお、ピーク電流IPを所定時間維持して出力する必要がある場合には、必要な時間ピーク電流IPを継続するように制御することも可能である。
次に、時点P6から時点P7においては、電圧制御を行って溶接電圧に応じて溶接電流を出力するようにしても良いし、電流制御を行って所定の電流を出力するようにするようにしても良い。いずれにしても、溶滴を成長させると共に適正なアーク長を安定して維持できることが必要である。
次に、時点P7から時点P8において、電流制御を行ってベース電流IBの状態を保ち、次の短絡発生時点である時点P8を待つ状態とする。時点P8の周辺で、正弦波状のワイヤ送給制御による正送のピーク時に溶接ワイヤが被溶接物に接触して短絡が再び発生する。なお、比較的低い溶接電流値であるベース電流IBの状態を保つことで、短絡が発生しやすい状態を確保し、また、微小短絡が発生したとしても溶接電流が低いため、大粒のスパッタが発生し難いという効果がある。
なお、時点P5から時点P6までのピーク電流IPやピーク電流時間および時点P7から時点P8までのベース電流IBは、実験検証等により導き出して採用している。そして、ピーク電流IPおよびピーク電流時間やベース電流IBは、アーク溶接装置の図示しない記憶部にテーブルや数式等として設定電流に対応付けて記憶されている。
以上のように、時点P1から時点P8までの制御をアーク溶接制御の1周期とし、これを繰り返して溶接を行う。
次に、図2に示すスタート期間における制御について説明する。
図1および図2を用いて、スタート期間におけるIS1bと、IS2bと、IS1bからIS2bに増加傾きが変わる点である屈曲点(電流値)ISCbの制御について、以下に説明する。
ワイヤ送給の制御は、設定電流に応じた所定の周波数と振幅で周期的に正送と逆送を正弦波状に繰り返しながらワイヤ送給を行うものであり、この状態を基本波形としている。
スタート期間においても、定常溶接期間と同様に、周期的なワイヤ送給の制御を行っている。しかしながら、スタート期間における、時点P2から時点P3までの溶接電流であるIS1bと、このIS1bに続く時点P3から時点P4までのIS2bと、時点P3の時点の短絡電流の屈曲点ISCbが、定常溶接期間と同じような値ではスパッタを発生させてしまう。その理由は、溶接のスタート直後は母材に溶融プールが形成されていないため、定常溶接期間のように母材に溶融プールがある場合と比べ、短絡開放が難しくなるためである。
母材に溶融プールがある場合は、溶融プールの溶融金属の表面張力や熱を利用することにより、短絡開放をスムーズに行うことができる。一方、母材に溶融プールがない場合、溶融プールの表面張力や熱を利用できないため、短絡開放には長時間を要する。そして、短絡時間が長くなるということは、短絡電流が印加された状態が長く続くため、ワイヤの溶融が促進され、ワイヤ先端部分の溶融金属を過剰に成長させてしまう。過剰に成長した溶融金属は、短絡開放時に母材に移行する溶融金属とワイヤ先端との間に小粒の溶融金属を発生し、これが溶融プールに入らずにスパッタとなってしまうことがある。
よって、溶接のスタート期間は、設定電流に応じたIS1bと、IS1bに続くIS2bと、短絡電流の増加傾きが変わる屈曲点ISCbに関して、定常溶接期間のものよりも小さくなるように制御する必要がある。なお、短絡期間は、ワイヤを逆送しているため、増加傾きや屈曲点を小さくしても、適正時間内に短絡開放が行われる。
溶接のスタート期間において、IS1bと、このIS1bに続くIS2bと、IS1bからIS2bに増加傾きが変わる点である短絡電流の屈曲点ISCbを、定常溶接期間のものよりも小さく調整する方法について、図3から図6を用いて説明する。なお、図3と図4は、本実施の形態1における設定電流に対するIS1a、IS1bの関係を示しており、図5と図6は、本実施の形態1における設定電流に対する短絡電流の屈曲点ISCa、ISCbの関係を示している。また、図3と図4では、IS1a、IS1bの例を示しているが、IS2a、IS2bも同様である。
短絡電流の増加傾きdi/dt(IS1)については、図3の例では、実線で示す定常溶接期間の場合、設定電流が200Aの時、設定電流に応じたIS1aは150A/msecである。しかし、スタート期間の場合は、図3の破線で示すように実線で示す定常溶接期間の場合に対して、−50A/msecという絶対値による変化量により増加傾きを変更することとしている。そうすると、スタート期間におけるIS2aは100A/msecとなる。このように、定常溶接期間の値に対して所定値を増加または減少する、この場合は減少することにより、スタート期間の値を決定する。
あるいは、スタート期間の場合は、図4に示すように、実線で示す定常溶接期間の場合に対して−20%という変化率による変化量により増加傾きを変更することとしている。そうすると、スタート期間におけるIS1bは120A/msecとなる。このように、所定の倍率を乗算する、この場合は0.8を乗算することにより、スタート期間の値を決定することができる。
短絡電流の屈曲点ISCについては、図5の例では、実線で示す定常溶接期間の場合、設定電流が200Aの時、設定電流に応じた短絡電流の屈曲点ISCaの値は300Aである。しかし、スタート期間の場合は、図5の破線で示すように、定常溶接期間の場合に対して−100Aという絶対値による変化量により屈曲点ISCbを変更することとしていると、短絡電流の屈曲点ISCbは200Aとなる。このように、定常溶接期間の値に対して所定値を増加または減少する、この場合は減少することにより、スタート期間の値を決定する。
あるいは、スタート期間の場合は、図6に示すように、実線で示す定常溶接期間の場合に対して−40%という変化率による変化量により屈曲点ISCbを変更することとしていると、ISCbは180Aとなる。このように、所定の倍率を乗算する、この場合は0.6を乗算することにより、スタート期間の値を決定することができる。
以上のように、定常溶接期間における設定電流に応じたIS1aと、IS2aと、ISCaに比べて、スタート期間における短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点を小さくする。これにより、短絡開放時の電流を低くしても適正時間内に短絡開放が行われることから、スパッタ発生を抑制することができる。
なお、上述の例では、ワイヤの送給として正送と逆送とを周期的に行う場合について説明した。しかし、従来から行っている正送のみの一定送給の場合、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない。このため、短絡開放をスムーズに行うためには、短絡期間を短くするようにIS1bと、IS1bと、ISCbを、定常溶接期間における設定電流に応じた各々の値よりも大きくする。これにより短絡開放を速め、短絡期間を短くすることができる。
なお、スタート期間における短絡電流の増加傾きや屈曲点の調整の例としては、IS1b、IS2bおよびISCbを、設定電流に対応付けて図示しない記憶部に記憶しておく。このようにした上で、IS1b、IS2bおよびISCbを、設定電流に基づいて記憶部から読み出して決定するようにしても良い。
なお、図3から図6において、設定電流と設定電流に応じたIS1aあるいはIS2aや、設定電流と設定電流に応じたISCaの関係が、一次線である例を示している。しかしながら、これに限らず、例えば2次曲線など1次線以外の曲線としても良い。
また、図3から図6に示すように、設定電流に応じたIS1a、IS1bあるいはIS2a、IS2bや、設定電流に応じた屈曲点ISCa、ISCbの変化幅に、上限値や下限値を設けるようにしてもよい。これにより、短絡電流の増加傾きや屈曲点の電流値の過剰な調整を防止することができる。なお、上限値および下限値を設けなければ、設定電流に応じたIS1a、IS1bや、IS2a、IS2bや、短絡電流の屈曲点ISCa、ISCbが、小さくなる方向に変動し過ぎてしまう、あるいは、大きくなる方向に変動し過ぎてしまうことがある。その結果、スパッタの大幅な増加や、アークが不安定となる場合がある。
なお、設定電流に応じたIS1a、IS1bや、IS2a、IS2bや、短絡電流の屈曲点ISCa、ISCbとなる値は、送給する消耗電極であるワイヤのワイヤ径、ワイヤ種類、ワイヤ突出長、供給するシールドガスなどのうちの少なくとも1つと、溶接電流の設定電流値に基づいて設定される。
次に、図2に示すスタート期間と定常溶接期間との間に設けられた第2スタート期間における制御について説明する。
図2に示すように、第2スタート期間は、スタート期間におけるIS1bおよびIS2bや短絡電流の屈曲点ISCbを、設定電流に応じた定常溶接期間における各々の値になるように変更するための期間である。また、第2スタート期間は、IS1bおよびIS2bや短絡電流の屈曲点ISCbの電流値を、所定の短絡回数あたりの所定増加量あるいは所定の時間あたりの所定の増加量で変化させ、定常溶接期間における設定電流に応じたIS1a、IS2aや短絡電流の屈曲点ISCaとなるように、徐々に変更するための期間である。この第2スタート期間は、スタート期間終了時のIS1b、IS2bと短絡電流の屈曲点ISCbから、定常溶接期間におけるIS1a、IS1bと短絡電流の屈曲点ISCaへの変化が急にならず、徐々に変化するようにするための期間である。そして、この第2スタート期間は、例えば、予め決められた所定の短絡回数を生じる時間または予め決められた所定の時間と、設定電流とに基づいて決定される。
以上のように、本実施の形態によれば、スタート期間における短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点を、設定電流に応じたIS1bおよびIS2bや短絡電流の屈曲点ISCbの値よりも小さくなるように制御する。さらに、第2スタート期間においてスタート期間における短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点を定常溶接期間における設定電流に応じた短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点に変更する。これにより、スタート期間から定常溶接期間までの全溶接長においてスパッタ発生を低減することができる。
特に、ワイヤ送給を正弦波状に正送と逆送とを周期的に繰り返し制御し、併せて、スタート期間における短絡電流の増加傾きや屈曲点を定常溶接期間における短絡電流の増加傾きや屈曲点よりも小さくなるように制御する。これにより、スタート期間のスパッタを抑制することができる。
すなわち、本発明のアーク溶接方法は、消耗電極である溶接ワイヤを用いて短絡状態とアーク状態とを繰り返して溶接を行う方法である。そして、本発明のアーク溶接方法は、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とにおいて、短絡電流の増加傾きが異なるように短絡電流を制御する方法からなる。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、定常溶接期間における短絡電流の増加傾きと比べて、溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きの方が小さくなるように前記短絡電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、定常溶接期間および溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きとして、短絡電流の第1の増加傾きIS1aと、短絡電流の第1の増加傾きに続く短絡電流の第2の増加傾きIS2aの2つの増加傾きを有するように短絡電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、短絡電流の第1段目の増加傾きIS1aから短絡電流の第2段目の増加傾きIS2aに増加傾きが変わる点である屈曲点ISCaを示す電流値が、定常溶接期間と溶接スタート期間とで異なるように短絡電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きIS1a、短絡電流の第2の増加傾きIS2aおよび屈曲点ISCaを示す電流値は設定電流に応じて決定され、溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾きIS1b、短絡電流の第2の増加傾きIS2bおよび屈曲点ISCbを示す電流値は、定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きIS1a、短絡電流の第2の増加傾きIS2aおよび屈曲点ISCaを示す電流値に、所定値を増加する、減少する、または、乗算することにより決定される方法としてもよい。
この方法により、短絡開放時の電流を低くしても適正時間内に短絡開放が行われることから、スパッタ発生を抑制することができる。
また、定常溶接期間における短絡電流の屈曲点ISCaを示す電流値と比べて、溶接スタート期間における短絡電流の屈曲点ISCbを示す電流値の方が小さくなるように短絡電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、短絡開放時の電流を低くしても適正時間内に短絡開放が行われることから、スパッタ発生を抑制することができる。
また、定常溶接期間および溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾きIS1a、短絡電流の第2の増加傾きIS2aおよび屈曲点ISCaを示す電流値に、上限値および下限値を設けた方法としてもよい。
この方法により、短絡電流の増加傾きや屈曲点ISCの電流値の過剰な調整を防止することができる。
また、溶接スタート期間と定常溶接期間との間に第2スタート期間を設け、第2スタート期間において、溶接スタート期間の終了時の短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値が、定常溶接期間の開始時の短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値となるように、短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値を徐々に変化させる方法としてもよい。
この方法により、スタート期間から定常溶接期間までの全溶接長においてスパッタ発生を低減することができる。
また、第2スタート期間は、予め決められた所定の短絡回数となる時間、あるいは、予め決められた所定の時間である方法としてもよい。
この方法により、スタート期間から定常溶接期間までの全溶接長においてスパッタ発生を低減することができる。
また、設定電流に対応付けられた溶接ワイヤ送給速度を平均送給速度とし、所定の周波数と所定の振幅で前記溶接ワイヤの送給を正送と逆送とに周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを周期的に発生させて溶接を行う方法としてもよい。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
次に、上述のアーク溶接制御を行う本実施の形態1のアーク溶接装置について説明する。図7は、本発明の実施の形態1におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図であり、以下の構成を有している。
図7に示すように、入力電源1からの電力は1次整流部2で整流され、スイッチング部3により交流に変換され、トランス4により降圧される。そして、電力は、2次整流部5およびインダクタであるDCL6により整流され、溶接ワイヤ25と被溶接物28(母材ともいう)との間に印加され、溶接アーク27が発生する。なお、溶接ワイヤ25には、チップ26を介して印加される。
また、図7に示すようにアーク溶接装置は、スイッチング部3と、スイッチング部3を制御するための駆動部7と、溶接電圧検出部8と、溶接電流検出部9と、短絡/アーク検出部10と、短絡制御部11と、アーク制御部16と、を備えている。ここで、溶接電圧検出部8は、溶接用電源出力端子間に接続されている。溶接電流検出部9は、溶接出力電流を検出する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8からの信号に基づいて短絡またはアークを発生しているかを判定する。短絡制御部11は、短絡/アーク検出部10から短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う。アーク制御部16は、短絡/アーク検出部10からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行う。
また、図7に示すようにアーク溶接装置は、設定電流設定部19と、スタート期間設定部22と、第2スタート期間設定部23と、平均ワイヤ送給速度設定部29と、ワイヤ送給の周波数基本設定部20と、ワイヤ送給の振幅基本設定部21と、を備えている。ここで、設定電流設定部19は、作業者が設定電流を設定するためのものである。スタート期間設定部22は、設定電流に基づいてスタート期間を設定する。第2スタート期間設定部23は、設定電流に基づいて第2スタート期間を設定する。平均ワイヤ送給速度設定部29は、設定電流に基づいて溶接ワイヤの平均送給速度を決定する。ワイヤ送給の周波数基本設定部20は、平均送給速度に基づいてワイヤ送給制御の周波数を設定する。ワイヤ送給の振幅基本設定部21は、平均送給速度に基づいてワイヤ送給制御の振幅を設定する。
なお、アーク制御部16は、短絡/アーク検出部10からの信号に基づいて、アーク期間のピーク電流とベース電流を決定するピーク電流/ベース電流基本設定部17と、アーク期間にピーク電流時間を決定するピーク電流時間制御部18と、を備えている。
まず、ワイヤ送給制御について、以下に説明する。
ワイヤ送給の周波数基本設定部20とワイヤ送給の振幅基本設定部21は、設定電流設定部19の設定電流値および平均ワイヤ送給速度設定部29で決定されたワイヤ送給速度である平均送給速度に基づいて、周波数と振幅による正弦波状の正送と逆送とを繰り返すワイヤ送給速度をワイヤ送給モータ24に出力する。
なお、ワイヤ送給制御に関する平均送給速度、周波数および振幅と、設定電流との関係は、例えば、図示しない記憶部にテーブルあるいは数式として記憶されており、設定電流に基づいて決定される。
次に、溶接制御について、以下に説明する。
溶接電圧検出部8は、溶接用電源出力端子間に接続され、検出した電圧に対応した信号を短絡/アーク検出部10に出力する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8からの信号に基づいて、溶接出力電圧が一定値以上か未満かを判定する。短絡/アーク検出部10は、この判定結果により溶接ワイヤ25が被溶接物28に接触短絡しているのか、それとも非接触状態で溶接アーク27が発生しているかを判定し、判定信号を出力する。
なお、短絡制御部11は、短絡電流の増加傾きdi/dt基本設定部12と、短絡電流の増加傾きdi/dt制御部13と、短絡電流の屈曲点基本設定部14と、短絡電流の屈曲点制御部15と、から構成されている。ここで、短絡電流の増加傾きdi/dt基本設定部12は、設定した設定電流に基づいて短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dtと短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dtとを設定する。短絡電流の増加傾きdi/dt制御部13は、スタート期間設定部22と第2スタート期間設定部23に基づいて、短絡電流の増加傾きdi/dt基本設定部12で設定した短絡電流の増加傾きdi/dtを変更する。短絡電流の屈曲点基本設定部14は、設定した設定電流に基づいて短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dtから短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dtに増加傾きが変わる点である屈曲点を設定するための設定部である。短絡電流の屈曲点制御部15は、スタート期間設定部22あるいは設定電流に基づいて屈曲点である電流値を変更する。
以上のような構成のアーク溶接装置により、上述したように、スタート期間における短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点を、定常溶接期間におけるものよりも小さくなるように調整することで、スタート期間におけるスパッタの発生を低減することができる。
すなわち、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤ25と被溶接物28との間でアーク状態と短絡状態とを繰り返して溶接を行う。そして、本発明のアーク溶接装置は、スイッチング部3と、溶接電圧検出部8と、短絡/アーク検出部10と、短絡制御部11と、アーク制御部16と、設定電流設定部19と、スタート期間設定部22と、を備えている。ここで、スイッチング部3は、溶接出力を制御する。溶接電圧検出部8は、溶接電圧を検出する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する。短絡制御部11は、短絡/アーク検出部10からの短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う。アーク制御部16は、短絡/アーク検出部10からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行う。設定電流設定部19は、作業者が設定電流を設定するための設定部である。スタート期間設定部22は、設定電流設定部19で設定された設定電流に基づいて定常溶接期間となる前の溶接スタート期間を設定する。そして、本発明のアーク溶接装置の短絡制御部11は、短絡電流の増加傾き基本設定部12と、短絡電流の増加傾き制御部13とを備え、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の前記溶接スタート期間とで、短絡電流の増加傾きが異なるように短絡電流を制御して溶接を行う構成からなる。ここで、短絡電流の増加傾き基本設定部12は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間における短絡電流の増加傾きを決定する。短絡電流の増加傾き制御部13は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて、短絡電流の増加傾き基本設定部12で決定した短絡電流の増加傾きに所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きを決定する。
この構成により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、定常溶接期間における短絡電流の増加傾きと比べて、溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きの方が小さくなるように短絡電流を制御する構成としてもよい。この構成により、短絡開放時に発生するスパッタをさらに低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤ25と被溶接物28との間でアーク状態と短絡状態とを繰り返して溶接を行う。そして、本発明のアーク溶接装置は、スイッチング部3と、溶接電圧検出部8と、短絡/アーク検出部10と、短絡制御部11と、アーク制御部16と、設定電流設定部19と、スタート期間設定部22と、を備えている。ここで、スイッチング部3は、溶接出力を制御する。溶接電圧検出部8は、溶接電圧を検出する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する。短絡制御部11は、短絡/アーク検出部10からの短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う。アーク制御部16は、短絡/アーク検出部10からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行う。設定電流設定部19は、作業者が設定電流を設定するための設定部である。スタート期間設定部22は、設定電流設定部19で設定された設定電流に基づいて定常溶接期間となる前の溶接スタート期間を設定する。そして、本発明のアーク溶接装置の短絡制御部11は、短絡電流の増加傾き基本設定部12と、短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部14と、短絡電流の増加傾き制御部13と、短絡電流の増加傾きの屈曲点制御部15と、を備えている。ここで、短絡電流の増加傾き基本設定部12は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと前記第1段目の増加傾きに続く短絡電流の第2段目の増加傾きを決定する。短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部14は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間において短絡電流の第1段目の増加傾きから短絡電流の第2段目の増加傾きに短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を決定する。短絡電流の増加傾き制御部13は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾き基本設定部12で決定した定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと短絡電流の第2段目の増加傾きに所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより、溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと短絡電流の第2段目の増加傾きを決定する。短絡電流の増加傾きの屈曲点制御部15は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部14で決定した定常溶接期間における短絡電流の増加傾きの屈曲点の電流値に所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより、溶接スタート期間における屈曲点の電流値を決定する。そして、本発明のアーク溶接装置は、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とで、短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2段目の増加傾きおよび屈曲点の電流値が異なるように短絡電流を制御して溶接を行う構成からなる。
この構成により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2段目の増加傾きおよび屈曲点の電流値と比べて、溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2段目の増加傾きおよび屈曲点の電流値の方が小さくなるように短絡電流を制御する構成としてもよい。この構成により、短絡開放時に発生するスパッタをさらに低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、第2スタート期間設定部を備え、第2スタート期間において、溶接スタート期間の終了時の短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび前記屈曲点を示す電流値が、定常溶接期間の開始時の短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値となるように、短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値を徐々に変化させる構成としてもよい。ここで、第2スタート期間設定部は、溶接スタート期間と定常溶接期間との間に設けられる第2スタート期間を、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて決定する。この構成により、短絡開放時に発生するスパッタをさらに低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、平均ワイヤ送給速度設定部29と、周波数基本設定部20と、振幅基本設定部21と、を備え、所定の周波数と所定の振幅で溶接ワイヤ25の送給を正送と逆送とに周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを周期的に発生させて溶接を行う構成としてもよい。ここで、平均ワイヤ送給速度設定部29は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて溶接ワイヤの平均送給速度を決定する。周波数基本設定部20は、平均ワイヤ送給速度設定部29で設定された溶接ワイヤの平均送給速度に基づいて、ワイヤ送給を正弦波状または台形波状に正送と逆送とを周期的に繰り返して制御するための周波数を設定する。振幅基本設定部21は、平均ワイヤ送給速度設定部29で設定された溶接ワイヤの平均送給速度に基づいて、ワイヤ送給を正弦波状または台形波状に正送と逆送とを周期的に繰り返して制御するための振幅を設定する。この構成により、短絡開放時に発生するスパッタをさらに低減することができる。
なお、図7で示したアーク溶接装置を構成する各構成部は、各々単独に構成してもよいし、複数の構成部を複合して構成するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、短絡電流の増加傾きdi/dtや短絡電流の屈曲点を、設定電流に対応させて記憶部に記憶させておく例について説明した。しかし、設定電流は、ワイヤ送給速度やワイヤ送給量と比例の関係にあるので、設定電流に替えて、ワイヤ送給速度あるいはワイヤ送給量に応じて短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dtや短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dtや短絡電流の屈曲点を図示しない記憶部に記憶するようにしても良い。
また、本実施の形態では、ワイヤ送給が正弦波状である場合について説明した。しかし、図8に示すように、ワイヤ送給を台形波状に制御するようにしても良い。ワイヤ送給が所定の周波数と振幅で周期的に正送と逆送とを繰り返す制御であれば、このように台形波状でも正弦波状と同様の効果を実現することができる。
本発明によれば、スタート期間と定常溶接期間において、短絡電流の増加傾きや短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を使い分けることで、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができる。これにより、本発明のアーク溶接方法およびアーク溶接装置は、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができるので産業上有用である。
1 入力電源
2 1次整流部
3 スイッチング部
4 トランス
5 2次整流部
6 DCL
7 駆動部
8 溶接電圧検出部
9 溶接電流検出部
10 短絡/アーク検出部
11 短絡制御部
12 短絡電流の増加傾き基本設定部
13 短絡電流の増加傾き制御部
14 短絡電流の屈曲点基本設定部
15 短絡電流の屈曲点制御部
16 アーク制御部
17 ピーク電流/ベース電流基本設定部
18 ピーク電流時間制御部
19 設定電流設定部
20 ワイヤ送給の周波数基本設定部
21 ワイヤ送給の振幅基本設定部
22 スタート期間設定部
23 第2スタート期間設定部
24 ワイヤ送給モータ
25 溶接ワイヤ
26 チップ
27 溶接アーク
28 被溶接物
29 平均ワイヤ送給速度設定部
本発明は、短絡状態とアーク状態とを交互に発生させて溶接を行うアーク溶接方法およびアーク溶接装置に関する。
溶接作業工程におけるロス工程の1つとして、スパッタ除去工程がある。このスパッタ除去工程を少なくするためには、スパッタを低減する必要がある。そして、スパッタを低減するために、溶接ワイヤの送給を制御して正送と逆送とを繰り返し、短絡状態とアーク状態とを交互に発生させて溶接を行う消耗電極式アーク溶接が知られている(例えば、特許文献1参照)。消耗電極である溶接ワイヤを送給しながら、短絡状態とアーク状態とを交互に発生させて溶接を行うアーク溶接制御方法の一例について、図9を用いて説明する。
図9は、従来のアーク溶接におけるワイヤ送給速度や溶接出力等の時間波形を示す図である。図9に示すように、時刻t1の短絡発生時から時刻t2のアーク発生時までの短絡期間では、ワイヤ送給速度を基本ワイヤ送給速度から後退送給速度に変更する。また、アーク発生時の時刻t2から次の短絡発生時の時刻t6までのアーク期間では、ワイヤ送給速度を加速させて基本ワイヤ送給速度に戻す。さらに、アーク期間において、アーク発生時の時刻t2から第1の所定時間である時刻t3までは、電流制御を行って所定ピーク電流IPとなるまで溶接電流を増加する。または、時刻t2から時刻t3まで、所定のピーク電流IPとなるまで溶接電流を増加して、その後、ピーク電流IPを所定期間維持する。時刻t3から時刻t4までは、溶接電圧の定電圧制御を行ってこれに基づく溶接電流を出力する。時刻t4後は、電流制御を行って、溶接電流が所定ピーク電流IPよりも低い所定のベース電流IBとなるように減少し、その後、時刻t5から時刻t6のアーク期間終了の時刻まで所定のベース電流IBを維持する。
上述のように、短絡時のワイヤの溶融金属の母材への移行を、ワイヤ送給の後退送給により機械的に確実に行う。これにより、スパッタ発生の主要な原因となる短絡周期を規則的にし、スパッタを抑制して安定した短絡移行溶接が持続できる。
上述の従来のアーク溶接は、短絡時のワイヤ溶融金属の移行を機械的に確実に行うことができる。そして、スパッタ発生の主要な原因となる短絡周期を規則的とし、スパッタ発生の低減が可能である。
しかしながら、溶接のスタート期間では、母材(溶接対象物ともいう)に溶融プールが形成されていないため、母材に溶融プールが形成されている定常溶接期間(本溶接期間ともいう)と比べて短絡開放が難しくなる。そして、短絡開放までの時間が長くなり、短絡電流が高くなる。その結果、ワイヤの溶融金属の成長が過剰になり、短絡開放時に小粒スパッタが発生し易い場合が生じる。
本発明は、スタート期間と定常溶接期間において、短絡電流の増加傾きや短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を使い分けることにより、溶接のスタート期間におけるスパッタを低減するアーク溶接方法およびアーク溶接装置を提供する。
本発明のアーク溶接方法は、消耗電極である溶接ワイヤを用いて短絡状態とアーク状態とを繰り返して溶接を行うアーク溶接方法であって、定常溶接状態である定常溶接期間と、上記定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とにおいて、短絡電流の増加傾きが異なるように短絡電流を制御する方法である。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤと被溶接物との間でアーク状態と短絡状態とを繰り返して溶接を行うアーク溶接装置であって、溶接出力を制御するスイッチング部と、溶接電圧を検出する溶接電圧検出部と、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する短絡/アーク検出部と、短絡/アーク検出部からの短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う短絡制御部と、短絡/アーク検出部からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行うアーク制御部と、作業者が設定電流を設定するための設定電流設定部と、設定電流設定部で設定された設定電流に基づいて定常溶接期間となる前の溶接スタート期間を設定するスタート期間設定部とを備え、短絡制御部は、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間における短絡電流の増加傾きを決定する短絡電流の増加傾き基本設定部と、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾き基本設定部で決定した短絡電流の増加傾きに所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きを決定する短絡電流の増加傾き制御部とを備え、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とで、短絡電流の増加傾きが異なるように短絡電流を制御して溶接を行う構成からなる。
この構成により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤと被溶接物との間でアーク状態と短絡状態とを繰り返して溶接を行うアーク溶接装置であって、溶接出力を制御するスイッチング部と、溶接電圧を検出する溶接電圧検出部と、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する短絡/アーク検出部と、短絡/アーク検出部からの短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う短絡制御部と、短絡/アーク検出部からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行うアーク制御部と、作業者が設定電流を設定するための設定電流設定部と、設定電流設定部で設定された設定電流に基づいて定常溶接期間となる前の溶接スタート期間を設定するスタート期間設定部とを備え、短絡制御部は、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと第1段目の増加傾きに続く短絡電流の第2段目の増加傾きを決定する短絡電流の増加傾き基本設定部と、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間において短絡電流の第1段目の増加傾きから短絡電流の第2段目の増加傾きに短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を決定する短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部と、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾き基本設定部で決定した定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと短絡電流の第2段目の増加傾きに所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより、溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと短絡電流の第2段目の増加傾きを決定する短絡電流の増加傾き制御部と、設定電流設定部により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部で決定した定常溶接期間における短絡電流の増加傾きの屈曲点の電流値に所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより、溶接スタート期間における屈曲点の電流値を決定する短絡電流の増加傾きの屈曲点制御部とを備え、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とで、短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2段目の増加傾きおよび屈曲点の電流値が異なるように短絡電流を制御して溶接を行う構成からなる。
この構成により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
以上のように、本発明によれば、溶接スタート期間と定常溶接期間において、短絡電流の増加傾きや短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を使い分けている。これにより、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度、溶接電圧および溶接電流の時間波形を示す図
本発明の実施の形態1におけるスタート期間、第2スタート期間および定常溶接期間の、ワイヤ送給速度、溶接電圧および溶接電流の時間波形を示す図
本発明の実施の形態1における設定電流と短絡電流の増加傾きの関係の一例を示す図
本発明の実施の形態1における設定電流と短絡電流の増加傾きの関係の一例を示す図
本発明の実施の形態1における設定電流と短絡電流の増加傾きの変化点である屈曲点の電流値の関係の一例を示す図
本発明の実施の形態1における設定電流と短絡電流の増加傾きの変化点である屈曲点の電流値の関係の一例を示す図
本発明の実施の形態1におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図
本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度、溶接電圧および溶接電流の時間波形を示す図
従来のアーク溶接におけるワイヤ送給速度や溶接出力等の時間波形を示す図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同じ構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態1では、先ずアーク溶接方法について説明し、その後、このアーク溶接方法を行うアーク溶接装置について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態1の、短絡状態とアーク状態とを交互に繰り返す消耗電極式のアーク溶接におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間変化の波形を示している。図2は、スタート期間、第2スタート期間および定常溶接期間のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間変化の波形を示している。なお、図1は、定常溶接期間のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間変化の波形を示している。
図1に示すように、P1は、短絡を開始した時点であり、短絡初期期間の開始の時点でもある。P2は、短絡初期期間の終了時点を示している。なお、時点P2は、短絡電流の単位時間あたりの電流増加量である短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dt(以下、「IS1a」とする。)の出力を開始した時点でもある。また、P3は、IS1aから短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dt(以下、「IS2a」とする。)に傾きが変化する屈曲点ISCaとなる時点である。また、P4は、IS2aの出力終了の時点を示している。なお、時点P4は、溶融プールと溶接ワイヤ先端との間に出来上がった溶滴のくびれを検出し、溶接電流を瞬時に低電流に移行する、いわゆる「くびれ処理」を行う時点でもある。また、P5は、溶滴のくびれが離れ、短絡状態が終了してアークが発生した時点である。なお、時点P5は、アーク発生直後にピーク電流IPの溶接電流の出力を開始する時点でもある。また、P6は、ピーク電流IPからベース電流IBへの移行を開始させる時点である。ここで、時点P6から時点P7までは、電流制御としても良いし、電圧制御としても良い。時点P7から時点P8までは、ベース電流IBを出力する。なお、時点P8は、次の短絡が発生した時点でもある。
また、図1に示すワイヤ送給の制御では、所定の周波数と速度振幅で基本波形である正弦波状にワイヤの正送と逆送とを周期的に繰り返すように制御している。ワイヤ送給の正送側では、ピーク時である時点P1周辺で短絡が発生する。一方、ワイヤ送給の逆送側では、ピーク時である時点P5周辺でアークが発生する。なお、ワイヤ送給の正送側では、ワイヤを正送していることにより短絡が発生し易くなる。また、ワイヤ送給の逆送側では、ワイヤを逆送していることにより短絡の開放がし易くなる。このように、短絡状態またはアーク状態の発生は、基本的に、ワイヤ送給速度の正送と逆送とを周期的に繰り返すワイヤ送給制御に依存するものである。
溶接の開始からの時間波形を示す図2において、溶接状態が定常溶接状態である定常溶接期間では、IS1aと、このIS1aに続く設定電流に応じたIS2aと、IS1aからIS2aに変わる点である、設定電流に応じた屈曲点ISCaの電流値に基づいて溶接が行われる。
また、図2に示す溶接のスタート期間において、短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dt(以下、「IS1b」とする)と、短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dt(以下、「IS2b」とする。)と、屈曲点ISCbの電流値は、定常溶接期間の各々の増加傾きや屈曲点の電流値よりも小さくなるように制御される。この詳細については後述する。なお、このスタート期間は、例えば、溶接開始からワイヤ送給速度が定常溶接状態のワイヤ送給速度に達するまでの期間であり、例えば実験等により予め求められているものでる。そして、このスタート期間終了時には、母材に溶融プールが適正に形成されている。
また、図2に示すスタート期間と定常溶接期間の間の第2スタート期間は、スタート期間の各々の増加傾きや屈曲点の電流値から、定常溶接期間の各々の増加傾きや屈曲点の電流値に変更していく期間を示している。なお、この第2スタート期間は、例えば数百msec程度である。
また、図1において、定常溶接期間における設定電流に応じた溶接電流および溶接電圧の時間波形(基本波形)を実線で示している。そして、スタート期間において増加傾きと屈曲点を変化させた場合の時間波形の例を破線で示している。なお、図1では、対比し易いように同一の短絡期間において実線と破線の両方を示している。
先ず、図1に示す時点P1から時点P8までの期間である短絡期間とアーク期間とからなる1周期分の基本制御(実線で示す時間波形)、すなわち、定常溶接期間における制御について、以下に説明する。
時点P1およびその近傍の時点において、正弦波状のワイヤ送給制御によるワイヤ送給の正送のピーク時に、溶接ワイヤが被溶接物に接触して短絡が発生する。そして、時点P1から時点P2までの短絡初期期間では、短絡発生時の電流よりも低い短絡初期電流が出力される。
ここで、時点P1から時点P2までの短絡初期期間の電流を短絡発生時の電流よりも低電流とする目的について説明する。短絡発生直後に、高電流に向けて短絡電流を増加すると、短絡が直ちに開放し、その後すぐに再度短絡が発生することがある。このような状態が生じると、短絡が発生し、一定時間経過した後、短絡が開放し、その後、再び短絡が発生するということを繰り返す、短絡の周期性が崩れてしまうことがある。そこで、短絡発生直後に短絡時の電流よりも低電流とする期間を設けることで、しっかりと短絡した状態を確保し、それから高電流に向けて短絡電流を増加する制御を行う。これにより、上述の短絡の周期性が崩れてしまうことを防ぐことができる。
なお、短絡初期期間や短絡初期電流値は、予め実験検証等により導き出して最適な期間および電流値を設定し採用している。そして、これら短絡初期期間や短絡初期電流の基本設定値は、ある溶接速度(本実施の形態1では、例えば1m/min)で溶接した時に短絡期間とアーク期間との比率が50%ずつとなる。これにより、安定した溶接が可能な適正な値を実験検証等により導き出して採用している。そして、短絡初期期間や短絡初期電流値は、アーク溶接装置の図示しない記憶部にテーブルや数式等として設定電流に対応させて記憶されている。
次に、時点P2では、溶接ワイヤが、確実に被溶接物(母材ともいう)に短絡している状態から、設定電流に基づいて決定されたIS1aに沿って実際の短絡電流が上昇する。時点P3において、短絡電流の屈曲点ISCaとして決定された電流値に到達すると、設定電流に応じて決定されたIS2aに沿って実際の短絡電流が増加する。なお、時点P2から時点P3までのIS1aと、時点P3から時点P4までのIS2aと、時点P3における短絡電流の屈曲点ISCaとなる電流値の基本設定値は、ある溶接速度(本実施の形態1では、例えば1m/min)で溶接した時に、短絡期間とアーク期間との比率が50%ずつとなり、安定した溶接が可能な適正な値を実験検証等により導き出して採用している。そして、これらIS1a、IS2aや屈曲点ISCaの電流値は、アーク溶接装置の図示しない記憶部にテーブルや数式等として設定電流に対応付けて記憶されている。
次に、時点P4から時点P5においては、従来から知られているように、溶融した溶接ワイヤの先端部分のくびれを検知して短絡電流を急峻に低減させる制御を行っている。
次に、時点P5の周辺で、正弦波状のワイヤ送給制御による逆送のピーク時付近で、溶接ワイヤが被溶接物から離れて短絡が開放する。そして、アーク期間における時点P5から時点P6までの期間においては、アーク発生初期時点である時点P5から電流制御を行って電流をピーク電流IPまで所定の傾きで上昇させる。なお、ピーク電流IPを所定時間維持して出力する必要がある場合には、必要な時間ピーク電流IPを継続するように制御することも可能である。
次に、時点P6から時点P7においては、電圧制御を行って溶接電圧に応じて溶接電流を出力するようにしても良いし、電流制御を行って所定の電流を出力するようにするようにしても良い。いずれにしても、溶滴を成長させると共に適正なアーク長を安定して維持できることが必要である。
次に、時点P7から時点P8において、電流制御を行ってベース電流IBの状態を保ち、次の短絡発生時点である時点P8を待つ状態とする。時点P8の周辺で、正弦波状のワイヤ送給制御による正送のピーク時に溶接ワイヤが被溶接物に接触して短絡が再び発生する。なお、比較的低い溶接電流値であるベース電流IBの状態を保つことで、短絡が発生しやすい状態を確保し、また、微小短絡が発生したとしても溶接電流が低いため、大粒のスパッタが発生し難いという効果がある。
なお、時点P5から時点P6までのピーク電流IPやピーク電流時間および時点P7から時点P8までのベース電流IBは、実験検証等により導き出して採用している。そして、ピーク電流IPおよびピーク電流時間やベース電流IBは、アーク溶接装置の図示しない記憶部にテーブルや数式等として設定電流に対応付けて記憶されている。
以上のように、時点P1から時点P8までの制御をアーク溶接制御の1周期とし、これを繰り返して溶接を行う。
次に、図2に示すスタート期間における制御について説明する。
図1および図2を用いて、スタート期間におけるIS1bと、IS2bと、IS1bからIS2bに増加傾きが変わる点である屈曲点(電流値)ISCbの制御について、以下に説明する。
ワイヤ送給の制御は、設定電流に応じた所定の周波数と振幅で周期的に正送と逆送を正弦波状に繰り返しながらワイヤ送給を行うものであり、この状態を基本波形としている。
スタート期間においても、定常溶接期間と同様に、周期的なワイヤ送給の制御を行っている。しかしながら、スタート期間における、時点P2から時点P3までの溶接電流であるIS1bと、このIS1bに続く時点P3から時点P4までのIS2bと、時点P3の時点の短絡電流の屈曲点ISCbが、定常溶接期間と同じような値ではスパッタを発生させてしまう。その理由は、溶接のスタート直後は母材に溶融プールが形成されていないため、定常溶接期間のように母材に溶融プールがある場合と比べ、短絡開放が難しくなるためである。
母材に溶融プールがある場合は、溶融プールの溶融金属の表面張力や熱を利用することにより、短絡開放をスムーズに行うことができる。一方、母材に溶融プールがない場合、溶融プールの表面張力や熱を利用できないため、短絡開放には長時間を要する。そして、短絡時間が長くなるということは、短絡電流が印加された状態が長く続くため、ワイヤの溶融が促進され、ワイヤ先端部分の溶融金属を過剰に成長させてしまう。過剰に成長した溶融金属は、短絡開放時に母材に移行する溶融金属とワイヤ先端との間に小粒の溶融金属を発生し、これが溶融プールに入らずにスパッタとなってしまうことがある。
よって、溶接のスタート期間は、設定電流に応じたIS1bと、IS1bに続くIS2bと、短絡電流の増加傾きが変わる屈曲点ISCbに関して、定常溶接期間のものよりも小さくなるように制御する必要がある。なお、短絡期間は、ワイヤを逆送しているため、増加傾きや屈曲点を小さくしても、適正時間内に短絡開放が行われる。
溶接のスタート期間において、IS1bと、このIS1bに続くIS2bと、IS1bからIS2bに増加傾きが変わる点である短絡電流の屈曲点ISCbを、定常溶接期間のものよりも小さく調整する方法について、図3から図6を用いて説明する。なお、図3と図4は、本実施の形態1における設定電流に対するIS1a、IS1bの関係を示しており、図5と図6は、本実施の形態1における設定電流に対する短絡電流の屈曲点ISCa、ISCbの関係を示している。また、図3と図4では、IS1a、IS1bの例を示しているが、IS2a、IS2bも同様である。
短絡電流の増加傾きdi/dt(IS1)については、図3の例では、実線で示す定常溶接期間の場合、設定電流が200Aの時、設定電流に応じたIS1aは150A/msecである。しかし、スタート期間の場合は、図3の破線で示すように実線で示す定常溶接期間の場合に対して、−50A/msecという絶対値による変化量により増加傾きを変更することとしている。そうすると、スタート期間におけるIS2aは100A/msecとなる。このように、定常溶接期間の値に対して所定値を増加または減少する、この場合は減少することにより、スタート期間の値を決定する。
あるいは、スタート期間の場合は、図4に示すように、実線で示す定常溶接期間の場合に対して−20%という変化率による変化量により増加傾きを変更することとしている。そうすると、スタート期間におけるIS1bは120A/msecとなる。このように、所定の倍率を乗算する、この場合は0.8を乗算することにより、スタート期間の値を決定することができる。
短絡電流の屈曲点ISCについては、図5の例では、実線で示す定常溶接期間の場合、設定電流が200Aの時、設定電流に応じた短絡電流の屈曲点ISCaの値は300Aである。しかし、スタート期間の場合は、図5の破線で示すように、定常溶接期間の場合に対して−100Aという絶対値による変化量により屈曲点ISCbを変更することとしていると、短絡電流の屈曲点ISCbは200Aとなる。このように、定常溶接期間の値に対して所定値を増加または減少する、この場合は減少することにより、スタート期間の値を決定する。
あるいは、スタート期間の場合は、図6に示すように、実線で示す定常溶接期間の場合に対して−40%という変化率による変化量により屈曲点ISCbを変更することとしていると、ISCbは180Aとなる。このように、所定の倍率を乗算する、この場合は0.6を乗算することにより、スタート期間の値を決定することができる。
以上のように、定常溶接期間における設定電流に応じたIS1aと、IS2aと、ISCaに比べて、スタート期間における短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点を小さくする。これにより、短絡開放時の電流を低くしても適正時間内に短絡開放が行われることから、スパッタ発生を抑制することができる。
なお、上述の例では、ワイヤの送給として正送と逆送とを周期的に行う場合について説明した。しかし、従来から行っている正送のみの一定送給の場合、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない。このため、短絡開放をスムーズに行うためには、短絡期間を短くするようにIS1bと、IS1bと、ISCbを、定常溶接期間における設定電流に応じた各々の値よりも大きくする。これにより短絡開放を速め、短絡期間を短くすることができる。
なお、スタート期間における短絡電流の増加傾きや屈曲点の調整の例としては、IS1b、IS2bおよびISCbを、設定電流に対応付けて図示しない記憶部に記憶しておく。このようにした上で、IS1b、IS2bおよびISCbを、設定電流に基づいて記憶部から読み出して決定するようにしても良い。
なお、図3から図6において、設定電流と設定電流に応じたIS1aあるいはIS2aや、設定電流と設定電流に応じたISCaの関係が、一次線である例を示している。しかしながら、これに限らず、例えば2次曲線など1次線以外の曲線としても良い。
また、図3から図6に示すように、設定電流に応じたIS1a、IS1bあるいはIS2a、IS2bや、設定電流に応じた屈曲点ISCa、ISCbの変化幅に、上限値や下限値を設けるようにしてもよい。これにより、短絡電流の増加傾きや屈曲点の電流値の過剰な調整を防止することができる。なお、上限値および下限値を設けなければ、設定電流に応じたIS1a、IS1bや、IS2a、IS2bや、短絡電流の屈曲点ISCa、ISCbが、小さくなる方向に変動し過ぎてしまう、あるいは、大きくなる方向に変動し過ぎてしまうことがある。その結果、スパッタの大幅な増加や、アークが不安定となる場合がある。
なお、設定電流に応じたIS1a、IS1bや、IS2a、IS2bや、短絡電流の屈曲点ISCa、ISCbとなる値は、送給する消耗電極であるワイヤのワイヤ径、ワイヤ種類、ワイヤ突出長、供給するシールドガスなどのうちの少なくとも1つと、溶接電流の設定電流値に基づいて設定される。
次に、図2に示すスタート期間と定常溶接期間との間に設けられた第2スタート期間における制御について説明する。
図2に示すように、第2スタート期間は、スタート期間におけるIS1bおよびIS2bや短絡電流の屈曲点ISCbを、設定電流に応じた定常溶接期間における各々の値になるように変更するための期間である。また、第2スタート期間は、IS1bおよびIS2bや短絡電流の屈曲点ISCbの電流値を、所定の短絡回数あたりの所定増加量あるいは所定の時間あたりの所定の増加量で変化させ、定常溶接期間における設定電流に応じたIS1a、IS2aや短絡電流の屈曲点ISCaとなるように、徐々に変更するための期間である。この第2スタート期間は、スタート期間終了時のIS1b、IS2bと短絡電流の屈曲点ISCbから、定常溶接期間におけるIS1a、IS1bと短絡電流の屈曲点ISCaへの変化が急にならず、徐々に変化するようにするための期間である。そして、この第2スタート期間は、例えば、予め決められた所定の短絡回数を生じる時間または予め決められた所定の時間と、設定電流とに基づいて決定される。
以上のように、本実施の形態によれば、スタート期間における短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点を、設定電流に応じたIS1bおよびIS2bや短絡電流の屈曲点ISCbの値よりも小さくなるように制御する。さらに、第2スタート期間においてスタート期間における短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点を定常溶接期間における設定電流に応じた短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点に変更する。これにより、スタート期間から定常溶接期間までの全溶接長においてスパッタ発生を低減することができる。
特に、ワイヤ送給を正弦波状に正送と逆送とを周期的に繰り返し制御し、併せて、スタート期間における短絡電流の増加傾きや屈曲点を定常溶接期間における短絡電流の増加傾きや屈曲点よりも小さくなるように制御する。これにより、スタート期間のスパッタを抑制することができる。
すなわち、本発明のアーク溶接方法は、消耗電極である溶接ワイヤを用いて短絡状態とアーク状態とを繰り返して溶接を行う方法である。そして、本発明のアーク溶接方法は、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とにおいて、短絡電流の増加傾きが異なるように短絡電流を制御する方法からなる。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、定常溶接期間における短絡電流の増加傾きと比べて、溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きの方が小さくなるように前記短絡電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、定常溶接期間および溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きとして、短絡電流の第1の増加傾きIS1aと、短絡電流の第1の増加傾きに続く短絡電流の第2の増加傾きIS2aの2つの増加傾きを有するように短絡電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、短絡電流の第1段目の増加傾きIS1aから短絡電流の第2段目の増加傾きIS2aに増加傾きが変わる点である屈曲点ISCaを示す電流値が、定常溶接期間と溶接スタート期間とで異なるように短絡電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きIS1a、短絡電流の第2の増加傾きIS2aおよび屈曲点ISCaを示す電流値は設定電流に応じて決定され、溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾きIS1b、短絡電流の第2の増加傾きIS2bおよび屈曲点ISCbを示す電流値は、定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きIS1a、短絡電流の第2の増加傾きIS2aおよび屈曲点ISCaを示す電流値に、所定値を増加する、減少する、または、乗算することにより決定される方法としてもよい。
この方法により、短絡開放時の電流を低くしても適正時間内に短絡開放が行われることから、スパッタ発生を抑制することができる。
また、定常溶接期間における短絡電流の屈曲点ISCaを示す電流値と比べて、溶接スタート期間における短絡電流の屈曲点ISCbを示す電流値の方が小さくなるように短絡電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、短絡開放時の電流を低くしても適正時間内に短絡開放が行われることから、スパッタ発生を抑制することができる。
また、定常溶接期間および溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾きIS1a、短絡電流の第2の増加傾きIS2aおよび屈曲点ISCaを示す電流値に、上限値および下限値を設けた方法としてもよい。
この方法により、短絡電流の増加傾きや屈曲点ISCの電流値の過剰な調整を防止することができる。
また、溶接スタート期間と定常溶接期間との間に第2スタート期間を設け、第2スタート期間において、溶接スタート期間の終了時の短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値が、定常溶接期間の開始時の短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値となるように、短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値を徐々に変化させる方法としてもよい。
この方法により、スタート期間から定常溶接期間までの全溶接長においてスパッタ発生を低減することができる。
また、第2スタート期間は、予め決められた所定の短絡回数となる時間、あるいは、予め決められた所定の時間である方法としてもよい。
この方法により、スタート期間から定常溶接期間までの全溶接長においてスパッタ発生を低減することができる。
また、設定電流に対応付けられた溶接ワイヤ送給速度を平均送給速度とし、所定の周波数と所定の振幅で前記溶接ワイヤの送給を正送と逆送とに周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを周期的に発生させて溶接を行う方法としてもよい。
この方法により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
次に、上述のアーク溶接制御を行う本実施の形態1のアーク溶接装置について説明する。図7は、本発明の実施の形態1におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図であり、以下の構成を有している。
図7に示すように、入力電源1からの電力は1次整流部2で整流され、スイッチング部3により交流に変換され、トランス4により降圧される。そして、電力は、2次整流部5およびインダクタであるDCL6により整流され、溶接ワイヤ25と被溶接物28(母材ともいう)との間に印加され、溶接アーク27が発生する。なお、溶接ワイヤ25には、チップ26を介して印加される。
また、図7に示すようにアーク溶接装置は、スイッチング部3と、スイッチング部3を制御するための駆動部7と、溶接電圧検出部8と、溶接電流検出部9と、短絡/アーク検出部10と、短絡制御部11と、アーク制御部16と、を備えている。ここで、溶接電圧検出部8は、溶接用電源出力端子間に接続されている。溶接電流検出部9は、溶接出力電流を検出する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8からの信号に基づいて短絡またはアークを発生しているかを判定する。短絡制御部11は、短絡/アーク検出部10から短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う。アーク制御部16は、短絡/アーク検出部10からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行う。
また、図7に示すようにアーク溶接装置は、設定電流設定部19と、スタート期間設定部22と、第2スタート期間設定部23と、平均ワイヤ送給速度設定部29と、ワイヤ送給の周波数基本設定部20と、ワイヤ送給の振幅基本設定部21と、を備えている。ここで、設定電流設定部19は、作業者が設定電流を設定するためのものである。スタート期間設定部22は、設定電流に基づいてスタート期間を設定する。第2スタート期間設定部23は、設定電流に基づいて第2スタート期間を設定する。平均ワイヤ送給速度設定部29は、設定電流に基づいて溶接ワイヤの平均送給速度を決定する。ワイヤ送給の周波数基本設定部20は、平均送給速度に基づいてワイヤ送給制御の周波数を設定する。ワイヤ送給の振幅基本設定部21は、平均送給速度に基づいてワイヤ送給制御の振幅を設定する。
なお、アーク制御部16は、短絡/アーク検出部10からの信号に基づいて、アーク期間のピーク電流とベース電流を決定するピーク電流/ベース電流基本設定部17と、アーク期間にピーク電流時間を決定するピーク電流時間制御部18と、を備えている。
まず、ワイヤ送給制御について、以下に説明する。
ワイヤ送給の周波数基本設定部20とワイヤ送給の振幅基本設定部21は、設定電流設定部19の設定電流値および平均ワイヤ送給速度設定部29で決定されたワイヤ送給速度である平均送給速度に基づいて、周波数と振幅による正弦波状の正送と逆送とを繰り返すワイヤ送給速度をワイヤ送給モータ24に出力する。
なお、ワイヤ送給制御に関する平均送給速度、周波数および振幅と、設定電流との関係は、例えば、図示しない記憶部にテーブルあるいは数式として記憶されており、設定電流に基づいて決定される。
次に、溶接制御について、以下に説明する。
溶接電圧検出部8は、溶接用電源出力端子間に接続され、検出した電圧に対応した信号を短絡/アーク検出部10に出力する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8からの信号に基づいて、溶接出力電圧が一定値以上か未満かを判定する。短絡/アーク検出部10は、この判定結果により溶接ワイヤ25が被溶接物28に接触短絡しているのか、それとも非接触状態で溶接アーク27が発生しているかを判定し、判定信号を出力する。
なお、短絡制御部11は、短絡電流の増加傾きdi/dt基本設定部12と、短絡電流の増加傾きdi/dt制御部13と、短絡電流の屈曲点基本設定部14と、短絡電流の屈曲点制御部15と、から構成されている。ここで、短絡電流の増加傾きdi/dt基本設定部12は、設定した設定電流に基づいて短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dtと短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dtとを設定する。短絡電流の増加傾きdi/dt制御部13は、スタート期間設定部22と第2スタート期間設定部23に基づいて、短絡電流の増加傾きdi/dt基本設定部12で設定した短絡電流の増加傾きdi/dtを変更する。短絡電流の屈曲点基本設定部14は、設定した設定電流に基づいて短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dtから短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dtに増加傾きが変わる点である屈曲点を設定するための設定部である。短絡電流の屈曲点制御部15は、スタート期間設定部22あるいは設定電流に基づいて屈曲点である電流値を変更する。
以上のような構成のアーク溶接装置により、上述したように、スタート期間における短絡電流の増加傾きや短絡電流の屈曲点を、定常溶接期間におけるものよりも小さくなるように調整することで、スタート期間におけるスパッタの発生を低減することができる。
すなわち、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤ25と被溶接物28との間でアーク状態と短絡状態とを繰り返して溶接を行う。そして、本発明のアーク溶接装置は、スイッチング部3と、溶接電圧検出部8と、短絡/アーク検出部10と、短絡制御部11と、アーク制御部16と、設定電流設定部19と、スタート期間設定部22と、を備えている。ここで、スイッチング部3は、溶接出力を制御する。溶接電圧検出部8は、溶接電圧を検出する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する。短絡制御部11は、短絡/アーク検出部10からの短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う。アーク制御部16は、短絡/アーク検出部10からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行う。設定電流設定部19は、作業者が設定電流を設定するための設定部である。スタート期間設定部22は、設定電流設定部19で設定された設定電流に基づいて定常溶接期間となる前の溶接スタート期間を設定する。そして、本発明のアーク溶接装置の短絡制御部11は、短絡電流の増加傾き基本設定部12と、短絡電流の増加傾き制御部13とを備え、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の前記溶接スタート期間とで、短絡電流の増加傾きが異なるように短絡電流を制御して溶接を行う構成からなる。ここで、短絡電流の増加傾き基本設定部12は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間における短絡電流の増加傾きを決定する。短絡電流の増加傾き制御部13は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて、短絡電流の増加傾き基本設定部12で決定した短絡電流の増加傾きに所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きを決定する。
この構成により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、定常溶接期間における短絡電流の増加傾きと比べて、溶接スタート期間における短絡電流の増加傾きの方が小さくなるように短絡電流を制御する構成としてもよい。この構成により、短絡開放時に発生するスパッタをさらに低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤ25と被溶接物28との間でアーク状態と短絡状態とを繰り返して溶接を行う。そして、本発明のアーク溶接装置は、スイッチング部3と、溶接電圧検出部8と、短絡/アーク検出部10と、短絡制御部11と、アーク制御部16と、設定電流設定部19と、スタート期間設定部22と、を備えている。ここで、スイッチング部3は、溶接出力を制御する。溶接電圧検出部8は、溶接電圧を検出する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する。短絡制御部11は、短絡/アーク検出部10からの短絡の信号を受けて短絡期間に短絡電流の制御を行う。アーク制御部16は、短絡/アーク検出部10からのアークの信号を受けてアーク期間にアーク電圧の制御を行う。設定電流設定部19は、作業者が設定電流を設定するための設定部である。スタート期間設定部22は、設定電流設定部19で設定された設定電流に基づいて定常溶接期間となる前の溶接スタート期間を設定する。そして、本発明のアーク溶接装置の短絡制御部11は、短絡電流の増加傾き基本設定部12と、短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部14と、短絡電流の増加傾き制御部13と、短絡電流の増加傾きの屈曲点制御部15と、を備えている。ここで、短絡電流の増加傾き基本設定部12は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと前記第1段目の増加傾きに続く短絡電流の第2段目の増加傾きを決定する。短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部14は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて定常溶接期間において短絡電流の第1段目の増加傾きから短絡電流の第2段目の増加傾きに短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を決定する。短絡電流の増加傾き制御部13は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾き基本設定部12で決定した定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと短絡電流の第2段目の増加傾きに所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより、溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾きと短絡電流の第2段目の増加傾きを決定する。短絡電流の増加傾きの屈曲点制御部15は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて短絡電流の増加傾きの屈曲点基本設定部14で決定した定常溶接期間における短絡電流の増加傾きの屈曲点の電流値に所定値を増加する、減少する、または、所定倍率を乗算することにより、溶接スタート期間における屈曲点の電流値を決定する。そして、本発明のアーク溶接装置は、定常溶接状態である定常溶接期間と、定常溶接期間となる前の溶接スタート期間とで、短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2段目の増加傾きおよび屈曲点の電流値が異なるように短絡電流を制御して溶接を行う構成からなる。
この構成により、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができ、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、定常溶接期間における短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2段目の増加傾きおよび屈曲点の電流値と比べて、溶接スタート期間における短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2段目の増加傾きおよび屈曲点の電流値の方が小さくなるように短絡電流を制御する構成としてもよい。この構成により、短絡開放時に発生するスパッタをさらに低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、第2スタート期間設定部を備え、第2スタート期間において、溶接スタート期間の終了時の短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび前記屈曲点を示す電流値が、定常溶接期間の開始時の短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値となるように、短絡電流の第1段目の増加傾き、短絡電流の第2の増加傾きおよび屈曲点を示す電流値を徐々に変化させる構成としてもよい。ここで、第2スタート期間設定部は、溶接スタート期間と定常溶接期間との間に設けられる第2スタート期間を、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて決定する。この構成により、短絡開放時に発生するスパッタをさらに低減することができる。
また、本発明のアーク溶接装置は、平均ワイヤ送給速度設定部29と、周波数基本設定部20と、振幅基本設定部21と、を備え、所定の周波数と所定の振幅で溶接ワイヤ25の送給を正送と逆送とに周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを周期的に発生させて溶接を行う構成としてもよい。ここで、平均ワイヤ送給速度設定部29は、設定電流設定部19により設定された設定電流に基づいて溶接ワイヤの平均送給速度を決定する。周波数基本設定部20は、平均ワイヤ送給速度設定部29で設定された溶接ワイヤの平均送給速度に基づいて、ワイヤ送給を正弦波状または台形波状に正送と逆送とを周期的に繰り返して制御するための周波数を設定する。振幅基本設定部21は、平均ワイヤ送給速度設定部29で設定された溶接ワイヤの平均送給速度に基づいて、ワイヤ送給を正弦波状または台形波状に正送と逆送とを周期的に繰り返して制御するための振幅を設定する。この構成により、短絡開放時に発生するスパッタをさらに低減することができる。
なお、図7で示したアーク溶接装置を構成する各構成部は、各々単独に構成してもよいし、複数の構成部を複合して構成するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、短絡電流の増加傾きdi/dtや短絡電流の屈曲点を、設定電流に対応させて記憶部に記憶させておく例について説明した。しかし、設定電流は、ワイヤ送給速度やワイヤ送給量と比例の関係にあるので、設定電流に替えて、ワイヤ送給速度あるいはワイヤ送給量に応じて短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dtや短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dtや短絡電流の屈曲点を図示しない記憶部に記憶するようにしても良い。
また、本実施の形態では、ワイヤ送給が正弦波状である場合について説明した。しかし、図8に示すように、ワイヤ送給を台形波状に制御するようにしても良い。ワイヤ送給が所定の周波数と振幅で周期的に正送と逆送とを繰り返す制御であれば、このように台形波状でも正弦波状と同様の効果を実現することができる。
本発明によれば、スタート期間と定常溶接期間において、短絡電流の増加傾きや短絡電流の増加傾きが変化する点である屈曲点の電流値を使い分けることで、スタート直後の母材に溶融プールが形成されていない状態でも、短絡電流の上昇を抑えることができる。これにより、本発明のアーク溶接方法およびアーク溶接装置は、ワイヤの溶融金属の成長を適正に保ち、短絡開放時に発生するスパッタを低減することができるので産業上有用である。
1 入力電源
2 1次整流部
3 スイッチング部
4 トランス
5 2次整流部
6 DCL
7 駆動部
8 溶接電圧検出部
9 溶接電流検出部
10 短絡/アーク検出部
11 短絡制御部
12 短絡電流の増加傾き基本設定部
13 短絡電流の増加傾き制御部
14 短絡電流の屈曲点基本設定部
15 短絡電流の屈曲点制御部
16 アーク制御部
17 ピーク電流/ベース電流基本設定部
18 ピーク電流時間制御部
19 設定電流設定部
20 ワイヤ送給の周波数基本設定部
21 ワイヤ送給の振幅基本設定部
22 スタート期間設定部
23 第2スタート期間設定部
24 ワイヤ送給モータ
25 溶接ワイヤ
26 チップ
27 溶接アーク
28 被溶接物
29 平均ワイヤ送給速度設定部