JP6448622B2 - アーク溶接制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接ワイヤの送給速度の正送と逆送とを周期的に繰り返して短絡期間とアーク期間とを発生させ、アーク期間中は第1溶接電流を通電した後に第1溶接電流よりも小の第2溶接電流を通電するアーク溶接制御方法に関するものである。
一般的な消耗電極式アーク溶接では、消耗電極である溶接ワイヤを一定速度で送給し、溶接ワイヤと母材との間にアークを発生させて溶接が行なわれる。消耗電極式アーク溶接では、溶接ワイヤと母材とが短絡状態とアーク発生状態とを交互に繰り返す溶接状態になることが多い。
ところで、溶接品質をさらに向上させるために、溶接ワイヤの正送と逆送とを周期的に繰り返して溶接する方法が提案されている。
図3は、送給速度の正送と逆送とを周期的に繰り返す溶接方法における波形図である。同図(A)は送給速度Fwの波形を示し、同図(B)は溶接電流Iwの波形を示し、同図(C)は溶接電圧Vwの波形を示す。以下、同図を参照して説明する。
同図(A)に示すように、送給速度Fwは、0よりも上側が正送期間となり、下側が逆送期間となる。正送とは溶接ワイヤを母材に近づける方向に送給することであり、逆送とは母材から離反する方向に送給することである。送給速度Fwは、正弦波状に変化しており、正送側にシフトした波形となっている。このために、送給速度Fwの平均値は正の値となり、溶接ワイヤは平均的には正送されている。
同図(A)に示すように、送給速度Fwは、時刻t1時点では0であり、時刻t1〜t2の期間は正送加速期間となり、時刻t2で正送の最大値となり、時刻t2〜t3の期間は正送減速期間となり、時刻t3で0となり、時刻t3〜t4の期間は逆送加速期間となり、時刻t4で逆送の最大値となり、時刻t4〜t5の期間は逆送減速期間となる。
溶接ワイヤと母材との短絡は、時刻t2の正送最大値の前後で発生することが多い。同図では、正送最大値の後の正送減速期間中の時刻t21で発生した場合である。時刻t21において短絡が発生すると、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは数Vの短絡電圧値に急減し、同図(B)に示すように、溶接電流Iwも小電流値の初期電流値に減少する。その後、溶接電流Iwは、所定の傾斜で増加し、予め定めたピーク値に達するとその値を維持する。
同図(A)に示すように、送給速度Fwは、時刻t3からは逆送期間になるので、溶接ワイヤは逆送される。この逆送によって短絡が解除されて、時刻t31においてアークが再発生する。アークの再発生は、時刻t4の逆送最大値の前後で発生することが多い。同図では、逆送最大値の前の逆送加速期間中の時刻t31で発生した場合である。
時刻t31においてアークが再発生すると、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは数十Vのアーク電圧値に急増する。同図(B)に示すように、溶接電流Iwは、アーク再発生の前兆現象である溶滴のくびれを検出する制御によって、時刻t31よりも数百μs程度前の時点から急減し、時刻t31のアーク再発生時点では小電流値となっている。このくびれの検出は、溶滴にくびれが形成されると通電路が狭くなり溶接ワイヤと母材との間の抵抗値又は溶接電圧値が上昇することを検出することによって行われる。
同図(A)に示すように、送給速度Fwは、時刻t31から時刻t5まで逆送される。この期間中は、アーク長が長くなる期間となる。時刻t31〜t5の期間中は、同図(B)に示すように、溶接電流Iwは、所定の傾斜で増加し、所定の第1溶接電流値に達するとその値をアーク再発生時(時刻t31)からの所定期間維持する。その後は次の短絡が発生する時刻t61まで第1溶接電流よりも小となる第2溶接電流が通電する。
同図(A)に示すように、送給速度Fwは、時刻t5から正送期間となり、時刻t6で正送ピーク値となる。そして、時刻t61において、次の短絡が発生する。この時刻t5〜t61の期間中は、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは次第に減少し、同図(B)に示すように、溶接電流Iwも次第に減少する。
上述したように、短絡とアークとの周期は、送給速度の正送と逆送との周期と略一致することになる。すなわち、この溶接方法では、送給速度の正送と逆送との周期を設定することによって短絡とアークとの周期を所望値にすることができる。このために、この溶接方法を実施すれば、短絡とアークとの周期のばらつきを抑制して略一定にすることが可能となり、スパッタ発生量の少ない、かつ、ビード外観の良好な溶接を行なうことができる。
しかし、送給速度の正送と逆送とを繰り返す溶接方法において、給電チップ・母材間距離、溶融池の不規則な運動、溶接姿勢の変化等の外乱によって、短絡が上述した適正なタイミングで発生しない場合が生じる。このようになると、短絡とアークとの周期と正送と逆送との周期とが同期しなくなり、短絡とアークとの周期がばらつくことになる。この同期ズレ状態を元の同期状態に戻すための方法が、特許文献1に開示されている。
特許文献1の発明では、溶接ワイヤの正送中で送給速度の減速中に、送給速度が所定の送給速度になるまでに短絡が発生しない場合には、周期的な変化を中止して送給速度を第1の送給速度に一定制御し、第1の送給速度による正送中に短絡が発生すると第1の送給速度から減速を開始して周期的な変化を再開して溶接を行うものである。これにより、同期ズレ状態を同期状態に戻そうとしている。
日本国特許第4807474号公報
特許文献1の発明では、短絡が適正なタイミングで発生しないときは、送給速度を正送の一定速度に切り換え、短絡が発生すると送給速度を元の周期的な変化に戻している。しかし、この制御では、送給速度の周期を自ら変動させることになり、溶接状態が不安定状態に陥る場合が生じる。
そこで、本発明では、送給速度の正送と逆送との周期を一定に保ったままで、短絡とアークとの周期と送給速度の正送と逆送との周期とが同期ズレ状態になることを抑制し、安定した溶接を行なうことができるアーク溶接制御方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明は、
溶接ワイヤの送給速度の正送と逆送とを周期的に繰り返して短絡期間とアーク期間とを発生させ、前記アーク期間中は第1溶接電流を通電した後に前記第1溶接電流よりも小の第2溶接電流を通電するアーク溶接制御方法において、
前記アーク期間から前記短絡期間に移行した時点の前記送給速度の位相を検出し、前記検出された位相に応じて前記第1溶接電流の値及び/又は通電期間を変化させる、
ことを特徴とするアーク溶接制御方法である。
本発明は、前記検出された位相と予め定めた短絡位相設定値との誤差に応じて前記第1溶接電流の値及び/又は通電期間を変化させる、
ことを特徴とするアーク溶接制御方法である。
本発明によれば、短絡が発生したときの送給速度の位相に応じて第1溶接電流の値及び/又は通電期間を変化させることによってアーク期間の時間長さを調整することができるので、短絡が発生する送給速度の位相の変動を抑制することができる。このために、本発明では、送給速度の正送と逆送との周期を一定に保ったままで、短絡とアークとの周期と送給速度の正送と逆送との周期とが同期ズレ状態になることを抑制し、安定した溶接を行なうことができる。
本発明の実施の形態1に係るアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。 本発明の実施の形態1に係るアーク溶接制御方法を説明するための、図1の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。 従来技術において、送給速度の正送と逆送とを周期的に繰り返す溶接方法における波形図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して、各ブロックについて説明する。
電源主回路PMは、3相200V等の商用電源(図示は省略)を入力として、後述する誤差増幅信号Eaに従ってインバータ制御等の出力制御を行い、溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。この電源主回路PMは、図示は省略するが、商用電源を整流する1次整流器、整流された直流を平滑する平滑コンデンサ、平滑された直流を高周波交流に変換するインバータ回路、高周波交流を溶接に適した電圧値に降圧する高周波変圧器、降圧された高周波交流を直流に整流する2次整流器、整流された直流を平滑するリアクトル、上記の誤差増幅信号Eaを入力としてパルス幅変調制御を行う変調回路、パルス幅変調制御信号を入力としてインバータ回路のスイッチング素子を駆動するインバータ駆動回路を備えている。
減流抵抗器Rは、上記の電源主回路PMと溶接トーチ4との間に挿入される。この減流抵抗器Rの値は、短絡負荷(0.01〜0.03Ω程度)の10倍以上大きな値(0.5〜3Ω程度)に設定される。この減流抵抗器Rが通電路に挿入されると、溶接電源内の直流リアクトル及び外部ケーブルのリアクトルに蓄積されたエネルギーが急放電される。トランジスタTRは、減流抵抗器Rと並列に接続されて、後述する駆動信号Drに従ってオン又はオフ制御される。
送給モータWMは、後述する送給制御信号Fcを入力として、正送と逆送とを周期的に繰り返して溶接ワイヤ1を送給速度Fwで送給する。この送給モータWMには、過渡応答性の速いモータが使用される。溶接ワイヤ1の送給速度Fwの変化率及び送給方向の反転を速くするために、送給モータWMは溶接トーチ4の先端の近くに設置される場合がある。また、送給モータWMを2個使用して、プッシュプル方式の送給系とする場合もある。
溶接ワイヤ1は、上記の送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を送給されて、母材2との間にアーク3が発生する。溶接トーチ4内の給電チップ(図示は省略)と母材2との間には溶接電圧Vwが印加し、溶接電流Iwが通電する。
溶接電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、溶接電流検出信号Idを出力する。溶接電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwを検出して、溶接電圧検出信号Vdを出力する。
短絡判別回路SDは、上記の溶接電圧検出信号Vdを入力として、この値が予め定めた短絡/アーク判別値(10V程度に設定)未満であるときは短絡期間にあると判別してHighレベルとなり、以上のときはアーク期間にあると判別してLowレベルになる短絡判別信号Sdを出力する。
送給速度設定回路FRは、図2(A)で詳述するように、正送と逆送とが周期的に繰り返される予め定めたパターンの送給速度設定信号Frを出力する。
送給制御回路FCは、この送給速度設定信号Frを入力として、この設定値に相当する送給速度Fwで溶接ワイヤ1を送給するための送給制御信号Fcを上記の送給モータWMに出力する。
短絡位相設定回路BRは、短絡を発生させる送給速度Fwの位相を設定するための短絡位相設定信号Brを出力する。短絡位相検出回路BDは、上記の送給速度設定信号Fr及び上記の短絡判別信号Sdを入力として、短絡判別信号SdがHighレベル(短絡)に変化したときの送給速度設定信号Frの位相を検出して、短絡位相検出信号Bdとして出力する。この動作の詳細は、図2で後述する。
位相誤差増幅回路EBは、上記の短絡位相設定信号Br(+)と上記の短絡位相検出信号Bd(−)との誤差を増幅して、位相誤差増幅信号Eb=G・(Br−Bd)を出力する。ここで、Gは、予め定めた増幅率(正の値)である。
第1溶接電流設定回路IWR1は、上記の位相誤差増幅信号Eb及び上記の短絡判別信号Sdを入力として、短絡判別信号SdがHighレベル(短絡)に変化するごとに、Iwr1=I0+ΣEbの加算を溶接中行い、第1溶接電流設定信号Iwr1を出力する。I0は、予め定めた初期値である。この回路によって、短絡位相検出信号Bdが短絡位相設定信号Brと一致するように第1溶接電流設定信号Iwr1がフィードバック制御される。
第1溶接電流通電期間設定回路TWR1は、上記の位相誤差増幅信号Eb及び上記の短絡判別信号Sdを入力として、短絡判別信号SdがHighレベル(短絡)に変化するごとに、Twr1=T0+ΣEbの加算を溶接中行い、第1溶接電流通電期間設定信号Twr1を出力する。T0は、予め定めた初期値である。この回路によって、短絡位相検出信号Bdが短絡位相設定信号Brと一致するように第1溶接電流通電期間設定信号Twr1がフィードバック制御される。
くびれ検出回路NDは、上記の短絡判別信号Sd、上記の溶接電圧検出信号Vd及び上記の溶接電流検出信号Idを入力として、短絡判別信号SdがHighレベル(短絡期間)であるときの溶接電圧検出信号Vdの電圧上昇値が予め定めたくびれ検出基準値に達した時点でくびれが形成されたと判別してHighレベルとなり、短絡判別信号SdがLowレベル(アーク期間)に変化した時点でLowレベルになるくびれ検出信号Ndを出力する。また、短絡期間中の溶接電圧検出信号Vdの微分値がそれに対応したくびれ検出基準値に達した時点でくびれ検出信号NdをHighレベルに変化させるようにしても良い。さらに、溶接電圧検出信号Vdの値を溶接電流検出信号Idの値で除算して溶滴の抵抗値を算出し、この抵抗値の微分値がそれに対応するくびれ検出基準値に達した時点でくびれ検出信号NdをHighレベルに変化させるようにしても良い。
低レベル電流設定回路ILRは、予め定めた低レベル電流設定信号Ilrを出力する。電流比較回路CMは、この低レベル電流設定信号Ilr及び上記の溶接電流検出信号Idを入力として、Id<IlrのときはHighレベルになり、Id≧IlrのときはLowレベルになる電流比較信号Cmを出力する。
駆動回路DRは、この電流比較信号Cm及び上記のくびれ検出信号Ndを入力として、くびれ検出信号NdがHighレベルに変化するとLowレベルに変化し、その後に電流比較信号CmがHighレベルに変化するとHighレベルに変化する駆動信号Drを上記のトランジスタTRのベース端子に出力する。したがって、この駆動信号Drはくびれが検出されるとLowレベルになり、トランジスタTRがオフ状態になり通電路に減流抵抗器Rが挿入されるので、短絡負荷を通電する溶接電流Iwは急減する。そして、急減した溶接電流Iwの値が低レベル電流設定信号Ilrの値まで減少すると、駆動信号DrはHighレベルになり、トランジスタTRがオン状態になるので、減流抵抗器Rは短絡されて通常の状態に戻る。
電流制御設定回路ICRは、上記の短絡判別信号Sd、上記の低レベル電流設定信号Ilr、上記のくびれ検出信号Nd及び上記の第1溶接電流設定信号Iwr1を入力として、以下の処理を行い、電流制御設定信号Icrを出力する。
1)短絡判別信号SdがHighレベル(短絡)に変化した時点から予め定めた初期期間中は、予め定めた初期電流設定値を電流制御設定信号Icrとして出力する。
2)その後は、電流制御設定信号Icrの値を、上記の初期電流設定値から予め定めた短絡時傾斜で予め定めたピーク設定値まで上昇させ、その値を維持する。
3)くびれ検出信号NdがHighレベルに変化すると、電流制御設定信号Icrの値を低レベル電流設定信号Ilrの値に切り換えて維持する。
4)短絡判別信号SdがLowレベル(アーク)に変化すると、電流制御設定信号Icrを、予め定めたアーク時傾斜で第1溶接電流設定信号Iwr1の値まで上昇させ、その値を維持する。
オフディレイ回路TDSは、上記の短絡判別信号Sd及び上記の第1溶接電流通電期間設定信号Twr1を入力として、短絡判別信号SdがHighレベルからLowレベルに変化する時点を第1溶接電流通電期間設定信号Twr1の期間だけオフディレイさせて遅延信号Tdsを出力する。したがって、この遅延信号Tdsは、短絡期間になるとHighレベルとなり、アークが再発生してから第1溶接電流通電期間設定信号Twr1の期間だけオフディレイしてLowレベルになる信号である。
電流誤差増幅回路EIは、上記の電流制御設定信号Icr(+)と上記の溶接電流検出信号Id(−)との誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。
電圧設定回路VRは、アーク期間中の溶接電圧を設定するための予め定めた電圧設定信号Vrを出力する。電圧誤差増幅回路EVは、この電圧設定信号Vr(+)と上記の溶接電圧検出信号Vd(−)との誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。
制御切換回路SWは、上記の電流誤差増幅信号Ei、上記の電圧誤差増幅信号Ev及び上記の遅延信号Tdsを入力として、遅延信号TdsがHighレベル(短絡開始からアークが再発生して第1溶接電流通電期間設定信号Twr1の期間が経過するまでの期間)のときは電流誤差増幅信号Eiを誤差増幅信号Eaとして出力し、Lowレベル(アーク)のときは電圧誤差増幅信号Evを誤差増幅信号Eaとして出力する。この回路により、短絡期間+第1溶接電流通電期間中は定電流制御となり、それ以外のアーク期間中は定電圧制御となる。
図2は、本発明の実施の形態1に係るアーク溶接制御方法を説明するための、図1の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接ワイヤ1の送給速度Fwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(C)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(D)はくびれ検出信号Ndの時間変化を示し、同図(E)は駆動信号Drの時間変化を示し、同図(F)は遅延信号Tdsの時間変化を示し、同図(G)は電流制御設定信号Icrの時間変化を示す。以下、同図を参照して説明する。
同図(A)に示すように、送給速度Fwは、0よりも上側の正の値のときは溶接ワイヤが正送されていることを示し、0よりも下側の負の値のときは逆送されていることを示す。同図(A)に示す送給速度Fwは送給速度設定信号Fr(図示は省略)によって設定されるので、両波形は相似波形となる。また、同図(A)に示す送給速度Fwは、図3(A)の送給速度Fwと同一波形である。
同図(A)に示すように、送給速度Fwは、時刻t1時点では0であり、時刻t1〜t2の期間は正送加速期間となり、時刻t2で正送の最大値となり、時刻t2〜t3の期間は正送減速期間となり、時刻t3で0となり、時刻t3〜t4の期間は逆送加速期間となり、時刻t4で逆送の最大値となり、時刻t4〜t5の期間は逆送減速期間となる。したがって、送給速度Fwは、時刻t1〜t5の期間を1周期として繰り返す波形となる。この1周期は、溶接中は一定値であり変化しない。送給速度Fwの位相は、時刻t1が0°となり、時刻t2が90°となり、時刻t3が180°となり、時刻t4が270°となり、時刻t5が360°(0°)となる。同図では正弦波状に変化しているが、三角波状又は台形波状に変化するようにしても良い。例えば、時刻t1〜t3の正送期間は5.4msであり、時刻t3〜t5の逆送期間は4.6msであり、1周期は10msとなる。また、正送の最大値は50m/minであり、逆送の最大値は−40m/minである。このときの送給速度Fwの平均値は約+4m/minとなり、平均溶接電流値は約150Aとなる。
同図は、短絡位相設定信号Br(図示は省略)=100°の場合とする。同図(C)に示すように、溶接ワイヤと母材との短絡が時刻t21で発生すると、溶接電圧Vwは数Vの短絡電圧値に急減する。このときに、図1の短絡位相検出回路BDによって、短絡が発生したときの送給速度Fw(送給速度設定信号Fr)の位相が検出されて短絡位相検出信号Bdが出力される。同図では、Bd=110°の場合とする。
次に、図1の位相誤差増幅回路EBによって、位相誤差増幅信号Eb=G・(Br−Bd)=G・(100−110)=G・(−10)が出力される。ここで、Gは予め定めた増幅率(正の値)である。そして、この位相誤差増幅信号Ebが図1の第1溶接電流設定回路IWR1及び第1溶接電流通電期間設定回路TWR1に入力されて、アーク発生(時刻t33)後の第1溶接電流設定信号Iwr1及び第1溶接電流通電期間設定信号Twr1が出力される。同図では、位相誤差増幅信号Ebが負の値であるので、第1溶接電流設定信号Iwr1及び第1溶接電流通電期間設定信号Twr1が減少する。このために、時刻t33〜t61のアーク期間の時間長さが短くなるように制御される。これにより、時刻t61の次の短絡発生の位相が早くなり、短絡位相検出信号Bdの値が小さくなるので、短絡位相設定信号Brの値に近づくことになる。
逆に、時刻t21に発生した短絡の位相が短絡位相設定信号Brの値よりも小さい場合には、第1溶接電流設定信号Iwr1及び第1溶接電流通電期間設定信号Twr1は増加する。この結果、次の短絡発生の位相が遅くなり、短絡位相検出信号Bdが大きくなるので、短絡位相設定信号Brの値に近づくことになる。
時刻t21において短絡が発生して溶接電圧Vwが短絡/アーク判別値Vta未満になったことを判別すると、同図(F)に示すように、遅延信号TdsはLowレベルからHighレベルに変化する。これに応動して、同図(G)に示すように、電流制御設定信号Icrは時刻t21において小さな値である予め定めた初期電流設定値に変化する。
時刻t3からは逆送加速期間となるので、送給速度Fwは逆送方向に切り換わる。同図(G)に示すように、電流制御設定信号Icrは、時刻t21〜t22の予め定めた初期期間中は上記の初期電流設定値となり、時刻t22〜t23の期間中は予め定めた短絡時傾斜で上昇し、時刻t23〜t31の期間中は予め定めたピーク設定値となる。短絡期間中は上述したように定電流制御されているので、溶接電流Iwは電流制御設定信号Icrに相当する値に制御される。このために、同図(B)に示すように、溶接電流Iwは、時刻t21においてアーク期間の溶接電流から急減し、時刻t21〜t22の初期期間中は初期電流値となり、時刻t22〜t23の期間中は短絡時傾斜で上昇し、時刻t23〜t31の期間中はピーク値となる。例えば、初期期間は1msに、初期電流は50Aに、短絡時傾斜は400A/msに、ピーク値は450Aに設定される。同図(D)に示すように、くびれ検出信号Ndは、後述する時刻t31〜t33の期間はHighレベルとなり、それ以外の期間はLowレベルとなる。同図(E)に示すように、駆動信号Drは、後述する時刻t31〜t32の期間はLowレベルとなり、それ以外の期間はHighレベルとなる。したがって、同図において時刻t31以前の期間中は、駆動信号DrはHighレベルとなり、図1のトランジスタTRがオン状態となるので、減流抵抗器Rは短絡されて通常の消耗電極アーク溶接電源と同一の状態となる。
同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは、溶接電流Iwがピーク値となる時刻t23あたりから上昇する。これは、溶接ワイヤの逆送及び溶接電流Iwによるピンチ力の作用により、溶滴にくびれが次第に形成されるためである。
時刻t31において、くびれの形成状態が基準状態に達すると、同図(D)に示すように、くびれ検出信号NdはHighレベルに変化する。これに応動して、同図(E)に示すように、駆動信号DrはLowレベルになるので、図1のトランジスタTRはオフ状態となり減流抵抗器Rが通電路に挿入される。同時に、同図(G)に示すように、電流制御設定信号Icrは低レベル電流設定信号Ilrの値へと小さくなる。このために、同図(B)に示すように、溶接電流Iwはピーク値から低レベル電流値Ilへと急減する。そして、時刻t32において溶接電流Iwが低レベル電流値Ilまで減少すると、同図(E)に示すように、駆動信号DrはHighレベルに戻るので、図1のトランジスタTRはオン状態となり減流抵抗器Rは短絡される。同図(B)に示すように、溶接電流Iwは、電流制御設定信号Icrが低レベル電流設定信号Ilrのままであるので、時刻t33のアーク再発生までは低レベル電流値Ilを維持する。したがって、トランジスタTRは、時刻t31にくびれ検出信号NdがHighレベルに変化した時点から時刻t32に溶接電流Iwが低レベル電流値Ilに減少するまでの期間のみオフ状態となる。同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは、溶接電流Iwが小さくなるので時刻t31から一旦減少した後に急上昇する。低レベル電流値Ilは、例えば50Aに設定される。
時刻t33において、溶接ワイヤの逆送及び溶接電流Iwの通電によるピンチ力によってくびれが進行してアークが再発生すると、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwの値は短絡/アーク判別値Vta以上となる。
アークが再発生した直後の時刻t4からは逆送減速期間になるので、同図(A)に示すように、送給速度Fwは逆送状態を維持しつつ減速する。時刻t33にアークが再発生すると、同図(G)に示すように、電流制御設定信号Icrの値は、低レベル電流設定信号Ilrの値から予め定めたアーク時傾斜で上昇し、上記の第1溶接電流設定信号Iwr1の値に達するとその値を維持する。同図(F)に示すように、遅延信号Tdsは、時刻t33にアークが再発生してから上記の第1溶接電流通電期間設定信号Twr1の期間Tdが経過する時刻t41までHighレベルのままである。したがって、溶接電源は時刻t41まで定電流制御されているので、同図(B)に示すように、溶接電流Iwは、時刻t33からアーク時傾斜で上昇し、第1溶接電流設定信号Iwr1の値に達するとその値を時刻t41まで維持する。同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは、時刻t33〜t41の第1溶接電流通電期間Tw1中は大きな値の第1溶接電圧値の状態にある。同図(D)に示すように、くびれ検出信号Ndは、時刻t33にアークが再発生するので、Lowレベルに変化する。例えば、アーク時傾斜は400A/msに設定される。
時刻t41において、同図(F)に示すように、遅延信号TdsがLowレベルに変化する。この結果、溶接電源は定電流制御から定電圧制御へと切り換えられる。時刻t33にアークが再発生してから時刻t5までは、溶接ワイヤは逆送しているので、アーク長は次第に長くなる。時刻t5からは正送加速期間になるので、同図(A)に示すように、送給速度Fwは正送に切り換えられる。時刻t41に定電圧制御に切り換えられると、同図(B)に示すように、溶接電流Iwは、第1溶接電流Iw1から次第に減少する第2溶接電流Iw2が通電する。同様に、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは、第1溶接電圧値から次第に減少する。
時刻t6の正送最大値の後の時刻t61において、次の短絡が発生する。この短絡発生の位相は、時刻t21の短絡発生の位相よりも短絡位相設定信号Brの値に近づいている。このために、短絡が発生する送給速度Fwの位相は外乱が発生しても略一定に維持されるので、短絡とアークとの周期と送給速度の正送と逆送との周期とが同期ズレ状態になることを抑制することができる。このときに、時刻t1〜t5の送給速度Fwの1周期は一定であり、変化しない。
上述した実施の形態1では、位相誤差増幅信号Ebに応じて第1溶接電流設定信号Iwr1及び第1溶接電流通電期間設定信号Twr1がフィードバック制御される場合を説明したが、どちらか一方だけを制御するようにしても良い。
上述した実施の形態1によれば、アーク期間から短絡期間に移行した時点の送給速度の位相を検出し、検出された位相に応じて第1溶接電流の値及び/又は通電期間を変化させる。これにより、短絡が発生したときの送給速度の位相に応じて第1溶接電流の値及び/又は通電期間を変化させることによってアーク期間の時間長さを調整することができるので、短絡が発生する送給速度の位相の変動を抑制することができる。このために、本実施の形態では、送給速度の正送と逆送との周期を一定に保ったままで、短絡とアークとの周期と送給速度の正送と逆送との周期とが同期ズレ状態になることを抑制し、安定した溶接を行なうことができる。
本発明によれば、送給速度の正送と逆送との周期を一定に保ったままで、短絡とアークとの周期と送給速度の正送と逆送との周期とが同期ズレ状態になることを抑制し、安定した溶接を行なうことができるアーク溶接制御方法を提供することができる。
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、開示された発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
本出願は、2014年4月22日出願の日本特許出願(特願2014−088319)に基づくものであり、その内容はここに取り込まれる。
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
BD 短絡位相検出回路
Bd 短絡位相検出信号
BR 短絡位相設定回路
Br 短絡位相設定信号
CM 電流比較回路
Cm 電流比較信号
DR 駆動回路
Dr 駆動信号
Ea 誤差増幅信号
EB 位相誤差増幅回路
Eb 位相誤差増幅信号
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
FR 送給速度設定回路
Fr 送給速度設定信号
Fw 送給速度
ICR 電流制御設定回路
Icr 電流制御設定信号
ID 溶接電流検出回路
Id 溶接電流検出信号
Il 低レベル電流値
ILR 低レベル電流設定回路
Ilr 低レベル電流設定信号
Iw 溶接電流
Iw1 第1溶接電流
Iw2 第2溶接電流
IWR1 第1溶接電流設定回路
Iwr1 第1溶接電流設定信号
ND くびれ検出回路
Nd くびれ検出信号
PM 電源主回路
R 減流抵抗器
SD 短絡判別回路
Sd 短絡判別信号
SW 制御切換回路
TDS オフディレイ回路
Tds 遅延信号
TR トランジスタ
Tw1 第1溶接電流通電期間
TWR1 第1溶接電流通電期間設定回路
Twr1 第1溶接電流通電期間設定信号
VD 溶接電圧検出回路
Vd 溶接電圧検出信号
VR 電圧設定回路
Vr 電圧設定信号
Vta 短絡/アーク判別値
Vw 溶接電圧
WM 送給モータ

Claims (2)

  1. 溶接ワイヤの送給速度の正送と逆送とを周期的に繰り返して短絡期間とアーク期間とを発生させ、前記アーク期間中は第1溶接電流を通電した後に前記第1溶接電流よりも小の第2溶接電流を通電するアーク溶接制御方法において、
    前記アーク期間から前記短絡期間に移行した時点の前記送給速度の位相を検出し、前記検出された位相に応じて前記第1溶接電流の値及び/又は通電期間を変化させる、
    ことを特徴とするアーク溶接制御方法。
  2. 前記検出された位相と予め定めた短絡位相設定値との誤差に応じて前記第1溶接電流の値及び/又は通電期間を変化させる、
    ことを特徴とする請求項1記載のアーク溶接制御方法。
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