本発明は、高分子溶液から高分子のナノファイバーを静電爆発によって作製するための支持構造、ナノファイバー製造装置、およびその方法に関する。
従来より、所定の電位が印加されたコレクタと、コレクタから所定の距離の位置にあって該コレクタに対して所定の電位差(例えば20〜200KV)の電圧が印加されたノズルとをハウジング内の電界紡糸空間に有するナノファイバー製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。電圧が印加されたノズルは、ナノファイバーの原料液(高分子溶液)を帯電しつつコレクタに向かって吐出する。吐出された原料液は、コレクタに向かう途中に静電爆発する。この静電爆発は繰り返し起こり、それにより原料液は延伸され、最終的にナノファイバーに形成される。形成されたナノファイバーは、コレクタ上に配置されたシートに集積する。
しかし、ナノファイバー製造装置は、ハウジング内の電界紡糸空間において静電爆発によってナノファイバーを作製するように構成されている。そのため、ナノファイバー製造装置のメンテナンス、特にハウジング内の電界紡糸空間に配置されたノズルなどのメンテナンス(例えば清掃や交換)は、作業者が安全を確保しつつハウジング内に侵入して行う必要があるため、その作業性が悪い。
大量のナノファイバーを作製するためにナノファイバー製造装置が大型化すると、例えばノズル数が増加するとともにハウジングが大型化すると、その作業性はさらに悪くなる。
そこで、本発明は、ナノファイバー製造装置が大型であっても、安全であって且つ作業性が高いメンテナンスを実現することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1の態様によれば、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間内に原料液を吐出するノズルを備えた電界紡糸ヘッドを支持する支持構造であって、電界紡糸空間を内部に有するハウジングに着脱可能に、且つハウジングから取り外された状態にあるときに自立可能に構成されている、支持構造が提供される。
本発明の第2の態様によれば、支持構造が、ハウジングに取り付けられた状態のとき、電界紡糸空間と外部とを分離するように構成されている、第1の態様に記載の支持構造が提供される。
本発明の第3の態様によれば、支持構造が、ハウジングへの着脱中において支持構造の重心がハウジングの側に位置するように構成されている、第1または第2の態様に記載の支持構造が提供される。
本発明の第4の態様によれば、電解紡糸ヘッドが支持構造に対して着脱可能に構成されている、第1から第3の態様のいずれか一に記載の支持構造が提供される。
本発明の第5の態様によれば、静電爆発により原料液からナノファイバーを作製するナノファイバー製造装置であって、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間を内部に有するハウジングと、電界紡糸空間内に原料液を吐出するノズルを備えた電界紡糸ヘッドを支持する支持構造をと有し、支持構造が、ハウジングに着脱可能に、且つ、ハウジングから取り外された状態にあるときに自立可能に構成されている、ナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第6の態様によれば、ハウジングが、電源に接続された給電用ハウジング側端子と、接地されたアース用ハウジング側端子とを備え、支持構造が、電界紡糸ヘッドを駆動するヘッド駆動装置と、ヘッド駆動装置に電力を供給するために給電用ハウジング側端子と接触可能な給電用支持構造側端子と、支持構造を接地するためにアース用ハウジング側端子と接触可能なアース用支持構造側端子とを備え、支持構造がハウジングに対して取り付け状態であるときに、給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが接触状態にあるとともに、アース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが接触状態にあり、支持構造がハウジングに対して取り外し状態であるときに、給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが切り離し状態にあるとともに、アース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが切り離し状態にある、第5の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第7の態様によれば、支持構造が、電界紡糸空間を画定するハウジングの壁の一部として機能し、電界紡糸空間を画定するハウジングの壁が、導電体から作製され、且つその内側に絶縁体層が形成されており、アース用支持構造側端子が支持構造の導電体部分に接続されている、第6の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第8の態様によれば、支持構造がハウジングに取り付けられるときには給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが接触する前にアース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが接触するように、且つ、支持構造がハウジングから取り外されるときには給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子との接触が解除された後にアース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子との接触が解除されるように、アース用ハウジング側端子またはアース用支持構造側端子の少なくとも一方が、支持構造の着脱方向に関して伸縮可能に構成されている、第6または第7の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第9の態様によれば、ヘッド駆動装置が、支持構造がハウジングに対して取り付け状態にあるときにハウジング外側に位置する該支持構造の部分に取り付けられている、第6から第8の態様のいずれか一に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第10の態様によれば、支持構造の着脱方向を一定方向に規制しつつ該支持構造を着脱時にガイドするガイド機構をさらに有する、第5から第9の態様のいずれか一に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第11の態様によれば、静電爆発により原料液からナノファイバーを作製するナノファイバー製造装置であって、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間を内部に有するハウジングと、電界紡糸空間内に配置されてナノファイバーを集めるコレクタと、ナノファイバーの作製に関連する作業を電界紡糸空間内において実行する作業ヘッドを支持する支持構造とを有し、支持構造が、ハウジングに着脱可能に、且つ、ハウジングから取り外された状態にあるときに自立可能に構成されている、ナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第12の態様によれば、作業ヘッドが支持構造に対して着脱可能に構成され、作業ヘッドとして、原料液を電界紡糸空間内に吐出するノズルを備えた電界紡糸ヘッド、コレクタ上のシートに接着剤を塗布する接着剤塗布ヘッド、またはコレクタ上のシートと該シート上のナノファイバーとを熱圧着する熱圧着ヘッドのいずれか1つが支持構造に取り付けられる、第11の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第13の態様によれば、ハウジングが、電源に接続された給電用ハウジング側端子と、接地されたアース用ハウジング側端子とを備え、支持構造が、作業ヘッドを駆動するヘッド駆動装置と、ヘッド駆動装置に電力を供給するために給電用ハウジング側端子と接触可能な給電用支持構造側端子と、支持構造を接地するためにアース用ハウジング側端子と接触可能なアース用支持構造側端子とを備え、支持構造がハウジングに対して取り付け状態であるときに、給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが接触状態にあるとともに、アース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが接触状態にあり、支持構造がハウジングに対して取り外し状態であるときに、給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが切り離し状態にあるとともに、アース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが切り離し状態にある、第11または第12の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第14の態様によれば、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間内に原料液を吐出するノズルを備えた電解紡糸ヘッドを支持する支持構造を用いたナノファイバー製造方法であって、電界紡糸空間を内部に有するハウジングに支持構造を取り付けることにより電解紡糸ヘッドを電界紡糸空間内に配置し、電解紡糸ヘッドのノズルから吐出された原料液から静電爆発によりナノファイバーを作製し、ナノファイバーの作製後に、支持構造をハウジングから取り外すことにより電解紡糸ヘッドをハウジングの外部に取り出す、ナノファイバー製造方法が提供される。
本発明によれば、ノズルを備えた電解紡糸ヘッドを支持する支持構造を、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間を内部に有するハウジングから着脱可能な構成とすることにより、支持構造をハウジングから取り外すだけでノズルのメンテナンスを電界紡糸空間の外において実行できるので、電界紡糸空間内において実行する場合に比べてメンテナンスの作業性や安全性が高い。また、支持構造が自立可能であるので、支持構造をハウジングから取り外して直ぐに、ノズルをメンテナンスすることができる。
本発明のこれらの態様と特徴は、添付された図面についての好ましい実施の形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
本発明の一実施形態に係る、支持構造を取り付けた状態のナノファイバー製造装置の側面視部分断面図
本発明の一実施形態に係る、支持構造を取り外した状態のナノファイバー製造装置の正面図
ナノファイバー製造装置の電界紡糸空間を画定するハウジングの壁の二重構造を説明するための図
支持構造の斜視図
ハウジングに対して着脱中の支持構造を示す図
別の実施形態における、ハウジングに対して着脱中の支持構造を示す図
アース用コネクタを説明するための図
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るナノファイバー製造装置の側面視部分断面図(X軸方向視)である。また、図2は、図1に示すナノファイバー製造装置の正面図(Y軸方向視)である。図1や図2に示すナノファイバー製造装置10は、詳細は後述するが、ナノファイバーシート(多数のナノファイバーを基材シート上に貼り付けて一体にすることにより形成されたシート)の生産ラインの一部として機能可能に構成されている。
なお、本明細書で言う「ナノファイバー」は、高分子物質から成り、サブミクロンスケールまたはナノスケールの直径を有する糸状物質を言う。また、高分子物質としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の石油系ポリマーやバイオポリマーなどの様々な高分子、それらの共重合体や混合物などが適用可能である。ナノファイバーの原料液は、これらの高分子物質を溶解した溶液である。
図1に示すように、ナノファイバー製造装置10は、複数のノズル12を備えた電界紡糸ヘッド14と、電界紡糸ヘッド14に対して鉛直方向(Z軸方向)に所定の距離(例えば100〜600mm)離れたコレクタ16とを有する。なお、電界紡糸ヘッド14が備える複数のノズル12は、電界紡糸ヘッド14に着脱可能に設けられる場合、あるいは一体で構成される場合のいずれであってもよい。
電界紡糸ヘッド14の複数のノズル12は、コレクタ16に向かってナノファイバーの原料液を吐出する。また、複数のノズル12それぞれには、コレクタ16の電位(コレクタ16に印加された電圧)に対して所定の電位差(例えば20〜200kV)になるような電圧が印加される。このようなノズル12により、原料液は、帯電されつつコレクタ16に向かって吐出される。
コレクタ16は、図2に示すように、導電性材料からなるベルト18と、ベルト18を駆動する導電性材料からなる駆動ローラ20とを有する。このコレクタ16は、ベルト18によって基材シートSを水平方向(Z軸と直交するX軸方向)に搬送する搬送装置も兼ねている。
代わりとして、例えば基材シートSが長尺であって該基材シートSの移動方向上流側に配置されたリール(図示せず)によって巻き取られる場合、コレクタ16は、移動中の基材シートSと同期あるいは追従するようにベルト18を駆動ローラ20によって移動させてもよい。それにより、移動中の基材シートSとベルト18との間の摺動を抑制することができ、ナノファイバー作製時において、基材シートSに積層する帯電状態のナノファイバー層によって静電吸着する基材シートSとコレクタ16のベルト18との間に生じる摺動抵抗が低減される。なお、このベルト18による基材シートSの搬送の詳細については後述する。
なお、本実施の形態では、基材シートSとコレクタ16のベルト18は直接接触しているが、基材シートSをベルト18とは別体の搬送ベルト(図示せず)によって水平方向(X軸方向)に搬送し、コレクタ16のベルト18が搬送ベルトを介して基材シートSに対向してもよい。この場合、コレクタ16のベルト18が搬送ベルトと同期あるいは追従して移動することにより、ベルト18と搬送ベルトとの間の摺動抵抗が低減される。
駆動ローラ20は、ナノファイバーの作製時、所定の電圧(例えば10〜100kV)が印加される。これにより、ベルト18とノズル12との間で所定の電位差が生じて静電爆発が起こり、静電爆発によって原料液から作製されたナノファイバーがベルト18上の基材シートSに集積する。なお、ベルト18は、例えば絶縁体層を金属ベルトの表面に形成したベルトであってもよい。このような駆動ローラ20により、ベルト18は移動し、またベルト18上の基材シートSの表面に一様にナノファイバーを集めることができる。
電界紡糸ヘッド14とコレクタ16は、ナノファイバー製造装置10のハウジング22内に配置されている。ハウジング22は、直方体形状の箱体であって、その内部上側に第1の空間24を画定し、第1の空間24の下側に第2の空間26を画定する。
ハウジング22の第1の空間24には、原料液からナノファイバーが作製される電界紡糸空間であって、電界紡糸ヘッド14とコレクタ16とが配置されている。以下、第1の空間24を、電界紡糸空間24と称する。第2の空間26には、ナノファイバー製造装置10の制御機器や電源などが配置されている。例えば、コレクタ16の駆動ローラ20を回転させるモータ等(図示せず)が第2の空間26に配置されている。
ハウジング22を構成する壁の少なくとも一部が、具体的には電界紡糸空間24を画定する壁の部分が二重構造に構成されている。二重構造の壁の部分は、絶縁体から作製された内側(電界紡糸空間24側)の内側壁22aと導電体から作製された外側(ナノファイバー製造装置10の外部側)の外側壁22bとから構成されている。外側壁22bは、例えばアース線(図示せず)を介して接地されている。具体的に言えば、外側壁22b(導電体)によってハウジング22の全体が構成され、電界紡糸空間24を臨む外側壁22bの内面の一部に内側壁22a(絶縁体)が設けられている。
絶縁体の内側壁22aは、高電圧が印加された電界紡糸ヘッド14のノズル12またはコレクタ16からハウジング22への放電を抑制するためのものである。一方、導電体の外側壁22bは、ナノファイバー製造装置10の稼動中、帯電された絶縁体(誘電体)の内側壁22aに触れて感電しないようにするためのものである。
具体的に説明すると、ナノファイバー製造装置10の稼動中、電界紡糸空間24において高電圧が使用されているために、絶縁体の内側壁22aに誘電分極が起こる。例えば、図3に示すように、内側壁22aの電界紡糸空間24側に正の電荷Cpが発生し、反対側に負の電荷Cnが発生する。外側壁22bが存在しない場合、内側壁22aの外側に発生した電荷Cnにより、作業者が感電する可能性がある。この対処として、絶縁体の内側壁22aの外側に、接地された導電体の外側壁22bが設けられている。
ハウジング22の壁の一部28(特許請求の範囲の「支持構造」に対応)は、着脱可能に構成され、詳細は後述するが、電界紡糸ヘッド14を支持している。本実施の形態の場合、具体的には、支持構造28は、直方体形状のハウジング22の1つの側壁であって、上部分が電界紡糸空間24を画定し、下部分が第2の空間26を画定する。そのため、図4に示すように、支持構造28の電界紡糸空間24を画定する上部分は、内側壁22aと外側壁22bとの二重構造に構成されている。
なお、図2は、支持構造28を取り外した状態のナノファイバー製造装置10を示している。図2において、支持構造28とハウジング22の本体25との間をシールするシール部材30が見える。このシール部材30により、ナノファイバーがハウジング22の外部に漏れることが防止される。図においては、シール部材30は、ハウジング22の本体25に取り付けられているが、支持構造28に取り付けられてもよい。また、図示してはいないが、ハウジング22の本体25に支持構造28を着脱可能に固定する手段として、例えばバックルをナノファイバー製造装置10は備える。
支持構造28は、床面上を転動する複数のキャスタ32a,32bを備えた台車部34を下部に有する。そのため、支持構造28は、図4に示すように、ナノファイバー製造装置10から取り外した状態において、自立可能であって且つ走行可能である。なお、台車部34は、電界紡糸ヘッド14を支持する支持構造28に対して着脱可能に構成されてもよい。すなわち、ハウジング22に着脱可能に取り付けられている支持構造28を台車部34により受け取り、その台車部34によって支持構造28を運搬し、支持構造28の電界紡糸ヘッド14をメンテナンスできる構成であってもよい。また、支持構造28の形態としては、具体的にはドア、窓等の形態も含まれ、少なくとも電界紡糸ヘッド14等の作業ヘッド(電界紡糸ヘッド14以外の作業ヘッドについては後述する)を支持できる大きさであればよい。
支持構造28は、図1や図4に示すように、電界紡糸ヘッド14を支持する。具体的には、支持構造28に、電界紡糸ヘッド14を昇降する(Z軸方向に移動させる)ヘッド昇降機構(ヘッド移動機構)36が設けられている。このヘッド昇降機構36は、電界紡糸ヘッド14を片持ち状態で支持している。このヘッド昇降機構36により、図4に示すように電界紡糸ヘッド14が昇降され、ノズル12とコレクタ16との間の距離が調整される。なお、ヘッド昇降機構36は、電力の供給を受けて電界紡糸ヘッド14を昇降させる構成であってもよく、また人力によって電界紡糸ヘッド14を昇降させる機構であってもよい。さらに、ヘッド昇降機構36に代って、電界紡糸ヘッド14を鉛直方向(Z軸方向)および水平方向(X,Y軸方向)に移動させるヘッド移動機構であってもよい。
例えば、ノズル12に印加する電圧を制御する電圧制御装置38、ノズル12に原料液を供給するタンクおよびポンプ(図示せず)、ヘッド昇降機構36を駆動するモータ40などの電界紡糸ヘッド14(ノズル12)の駆動に関連する電装機器(ヘッド駆動装置)は、ハウジング22の本体25ではなく、支持構造28に設けられる。なお、本明細書で言う「電装機器」は、電力の供給を受けて作動する機器を言う。
また、電界紡糸ヘッド14に関連する電装機器は、全てまたはその一部が、支持構造28の外側部分(ハウジング22の本体25に支持構造28を取り付けた状態のときにハウジング22の外側に位置する部分)に取り付けられている。支持構造28の外側部分に取り付けられた電装機器は、電界紡糸空間24の外部に位置するので、ナノファイバーが付着して汚れることがない。また、それ以外にも、支持構造28の外側部分に取り付けられた電装機器を、支持構造28を取り外すことなくメンテナンスできるという利点がある。
支持構造28に設けられている電界紡糸ヘッド14に関連する電装機器は、ナノファイバー製造装置10の本体25から電力の供給を受けて作動する。そのために、支持構造28とナノファイバー製造装置10の本体25とを着脱可能に電気的に接続して電力を供給する給電用コネクタ42を、ナノファイバー製造装置10は備える。
給電用コネクタ42は、支持構造28がハウジング22の本体25から取り外されると、支持構造28とナノファイバー製造装置10の本体25との間の電気的接続を解除するように構成されている。そのために、この給電用コネクタ42は、支持構造28に設けられた端子(特許請求の範囲の「給電用支持構造側端子」に対応)42aとナノファイバー製造装置10の本体25(ハウジング22の本体25)に設けられた端子(特許請求の範囲の「給電用ハウジング側端子」に対応)42bとを有する。支持構造28側の端子42aは、電界紡糸ヘッド14に関連する電装機器に電気的に接続されている。ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子42bは、電源に電気的に接続されている。これらの端子42a,42bは、支持構造28の着脱方向(Y軸方向)に接触して電気的に接続するように構成されている。
例えば、図4に示すように、支持構造28側の端子42aは、Y軸方向に延びる円柱形状のロッドの先端に設けられている。一方、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子42bは、ロッドと係合可能なY軸方向に延びる円筒の底部に設けられている。なお、給電用コネクタ42の端子42a,42bは、Y軸方向に接触可能であれば、その形状は問わない。
給電用コネクタ42の端子42a,42bがY軸方向に確実に接触するように、着脱中に支持構造28をY軸方向にガイドするガイド機構をナノファイバー製造装置10は有する。具体的には、支持構造28の台車部34の側面には、ナノファイバー製造装置10のハウジング22の本体25の下部に設けられているY軸方向に延びるレール44上を従動する複数のローラ46a,46bが取り付けられている。この本体25のレール44と台車部34のローラ46a,46bとが、支持構造28の着脱方向をY方向に規制するガイド機構として機能する。台車部34のローラ46a,46bは、本体25のレール44の先端側(支持構造28の本体25に対して着脱する側)に設けられた傾斜面の案内面44aにより、レール44の上面44b上に案内される。なお、ガイド機構は、支持構造28の着脱方向をY軸方向に規制できるのであれば、レール44とローラ46a,46bとに限らない。例えば、ガイド機構は、支持構造28の台車部34の側面に形成されたY軸方向に延びる溝に、ナノファイバー製造装置10の本体25に設けられたカムフォロアが従動するような構成であってもよい。
ローラ46a,46bが接触するレール44の上面44bの床面からの高さ(接触面と床面との間のZ軸方向距離)は、支持構造28の台車部34のキャスタ32a,32bが床面から離れるような高さにされている。これは、支持構造28のZ軸方向位置を位置決めするためである。
これに関連して、支持構造28は、ハウジング22の本体25の着脱中に、ハウジング22の外部側に傾倒しないように構成されている。具体的には、ここでの「着脱中」は、取り付け時においては、取り付け方向前側のローラ46aがレール44の案内面44aに接触してから取り付け方向後側のローラ46bがレール44の上面44b上に到達するまでの間を言う。一方、取り外し時においては、取り外し方向前側のローラ46bが案内面44a上に移動してから取り外し方向後側のローラ46aが案内面44aから離れるまでの間を言う。
具体的に説明すると、図5に示すように、支持構造28は、ハウジング22の本体25への着脱中、ハウジング22の本体25に近い側のキャスタ32aが床面FLを離れ、その一方で遠い側のキャスタ32bが床面上FL上を転動する。そのため、支持構造28は、ハウジング22の外部側に傾斜した姿勢になる。この傾斜姿勢は、ハウジング22の本体25に対して近い側のローラ46aがレール44の上面44b上に位置し、その一方でハウジング22の本体25に対して遠い側のローラ46bがレール44の上面44b上に位置しないことによって起こる。
図5に示すようにハウジング22の外部側に傾斜した姿勢のときに、ハウジング22の外部側にさらに傾いて倒れないように、支持構造28は、その重心Gが支持構造28の壁(内側壁22a)に対して少なくともY軸方向(ハウジング22に対して支持構造28を着脱する方向)のハウジング22の側に位置するように構成されている。より好ましくは、重心Gは、支持構造28をハウジング22の本体25に取り付ける時に、ハウジング22の本体25の内部側であって、且つ、床面FLに近い(台車部34近傍)位置に存在するのがよい。
さらに具体的には、支持構造28は、その重心Gが、Y軸方向の支持構造28の引き出し側に位置するキャスタ32bの回転中心線を含み、鉛直方向に延びる(X−Z平面に平行な)仮想平面Pvに対してハウジング22の側に位置するように構成されるのがよい。これにより、ハウジング22の本体25への支持構造28の着脱中に限らず、床面FL上の走行中においても、支持構造28のキャスタ32b側への傾倒を抑制することができる。支持構造28の重心Gの位置は、ハウジング22の本体25への着脱中において重心Gがハウジング22の側に位置するように支持構造28を設計することにより、また、例えば台車部34におもりを載せることにより調整される。
なお、図6に示すように、ハウジング22の本体25に対して着脱中の支持構造28の傾倒をより確実に抑制するために、レール44の上方に配置されて該レール44の上面44bと平行に延びる傾倒防止部材47を設けてもよい。傾倒防止部材47は、ハウジング22の本体25に対する支持構造28の着脱中、支持構造28がハウジング22の外部側に傾くと(上記の傾斜姿勢以上に傾くと)、レール44の上面44b上を転動するローラ46aと接触する。傾倒防止部材47がローラ46aの上方への移動を防止することにより、支持構造28のハウジング22の外部側への傾倒を防止することができる。
さらに、支持構造28は、ナノファイバー製造装置10の本体(ハウジング22の本体25)を介して接地するように構成されている。そのために、支持構造28とナノファイバー製造装置10の本体25とを着脱可能に電気的に接続するアース用コネクタ48を、ナノファイバー製造装置10は備える。このアース用コネクタ48は、支持構造28を除電した状態でナノファイバー製造装置10本体から取り外すために、また電界紡糸ヘッド14に関連する電装機器に基準電位を与えるために設けられている。
アース用コネクタ48は、支持構造28がナノファイバー製造装置10の本体25から取り外されると、支持構造28とナノファイバー製造装置10の本体25との間の電気的接続を解除するように構成されている。そのために、このアース用コネクタ48は、支持構造28に設けられた端子(特許請求の範囲の「アース用支持構造側端子」に対応)48aとナノファイバー製造装置10の本体25に設けられた端子(特許請求の範囲の「アース用ハウジング側端子」に対応)48bとを有する。アース用コネクタ48の端子48aは、支持構造28の導電体の外側壁22bや電界紡糸ヘッド14の駆動に関連する電装機器に電気的に接続されている。一方の端子48bは、アース線(図示せず)を介して接地されている。これらの端子48a,48bは、給電用コネクタ42の端子42a,42bと同様に、支持構造28の着脱方向(Y軸方向)に接触して電気的に接続するように構成されている。
例えば、アース用コネクタ48の支持構造28側の端子48aは、図4に示すように、台車部34の正面に設けられたX軸方向に延びるプレート状の1つの端子である。これに対して、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bは、図2に示すように複数あって、支持構造28側の端子48aと対向するように、X軸方向に並んでいる。ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bが複数あってX軸方向に並ぶことにより、着脱方向がY軸方向から水平方向に傾いて支持構造28がナノファイバー製造装置10の本体25に取り付けられても、少なくとも1つの端子48bが支持構造28側の端子48aと接触することができる。これにより、支持構造28側の端子48aは、確実に接地される。
また、図1に示すように、アース用コネクタ48のナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bそれぞれは、Y軸方向に延びる片持ち梁形状に構成されており、自由端が支持構造28側の端子48aと接触する。具体的には、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bは、図7(A)に示すように、給電用コネクタ42の端子42aと42bとが接触する前に、支持構造28側の端子48aと接触するようなY軸方向長さに設計されている。
さらに、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bは、Y軸方向に延びる片持ち梁形状であるために、支持構造28側の端子48aにY軸方向に押圧されると撓み変形する。これにより、図7(B)に示すように、端子48bは、給電用コネクタ42の端子42aと42bとが接触した後も端子48aとの接触を維持できる。
このようなナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bによれば、当然ながら、給電用コネクタ42の端子42aと42bとの接触が解除された後に、端子48bと支持構造28側の端子48aとの接触が解除される。
したがって、ナノファイバー製造装置10の本体25から支持構造28への給電用コネクタ42を介する電力供給が開始される前に、支持構造28はアース用コネクタ48を介して接地される。また、ナノファイバー製造装置10の本体25から支持構造28への給電用コネクタ42を介する電力供給が停止した後に、支持構造28のアース用コネクタ48を介する接地が解除される。これにより、支持構造28が接地された状態のときにのみ、支持構造28に対してナノファイバー製造装置10の本体25から電力が供給される。また、支持構造28は、除電した状態でナノファイバー製造装置10の本体25から取り外される。その結果、ハウジング22の外部で、安全に電解紡糸ヘッド14のノズル12をメンテナンスすることができる。
なお、アース用コネクタ42の端子の形状は、これに限らず、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子または支持構造28側の端子の少なくとも一方が、支持構造28の着脱方向(Y軸方向)に伸縮可能であれば、どのような形状でも可能である。例えば、支持構造28側の端子が、着脱方向に圧縮可能なばね形状であってもよい。
このようなナノファイバー製造装置10によれば、ノズル12のメンテナンス、例えばノズル12の清掃や交換は、以下のように行うことができる。
ノズル12のメンテナンスを行うために、まず、ナノファイバー製造装置10の電源が切られ、ナノファイバー製造装置10の本体25から支持構造28への給電用コネクタ42を介する電力供給が停止される。このとき、アース用コネクタ48を介して支持構造28は除電される。
次に、除電済みの支持構造28が、ナノファイバー製造装置10の本体25からY軸方向に取り外される。支持構造28は、ナノファイバー製造装置10の本体25からの取り外しが完了すると、台車部34のキャスタ32を介して、所望のメンテナンス位置(例えば、メンテナンス作業を実行できる広い空間)に移動される。そして、ノズル12のメンテナンスが安全に行われる。
本実施形態によれば、ノズル12を備えた電解紡糸ヘッド14を支持する支持構造28をナノファイバー製造装置10のハウジング22の本体25から取り外すことにより、ノズル12のメンテナンスを電界紡糸空間24の外において実行できるので、電界紡糸空間24内において実行する場合に比べてメンテナンスの作業性や安全性が高い。また、支持構造28が自立可能であるので、支持構造28をハウジング22の本体25から取り外して直ぐに、ノズル12をメンテナンスすることができる。なお、ハウジング22の本体25からの支持構造28を取り外した状態には、完全に取り外された離脱状態と、メンテナンス可能なスペースを確保して支持構造28の一部が本体25につながった離間状態も含むものとする。
以上、本発明を説明したが、本発明は、上述の説明内容に限定されない。
例えば、支持構造28は、単体でナノファイバーを製造可能に構成してもよい。具体的には、支持構造28を、少なくとも、原料液を電界紡糸空間24内に吐出するノズル12を備える電界紡糸ヘッド14と、ノズル12に原料液を供給する原料液供給装置(バルブおよびポンプ)と、ノズル12に電圧を印加するための電源とを有する電界紡糸ヘッドユニットとして構成してもよい。このような支持構造(電界紡糸ヘッドユニット)28により、ハウジング22の本体25側に電界紡糸ヘッド14のノズル12に電圧を印加する電源がなくても、ハウジング22内でナノファイバーを作製することができる。
例えば、ナノファイバー製造装置10の単体はまた、その複数台がX軸方向に並んで、ナノファイバーシートの製造ラインの一部として機能可能に構成されている。
具体的には、ナノファイバー製造装置10は、図2に示すように、電界紡糸空間24内を長尺の基材シートSがX軸方向に通過するように、ハウジング22への基材シートSの出入り口である開口22cをハウジング22に備える。長尺の基材シートSは、複数のナノファイバー製造装置10それぞれのコレクタ16のベルト18上を搬送されることにより、複数のナノファイバー製造装置10それぞれの電界紡糸空間24内を通過することができる。なお、開口22cを介してナノファイバー製造装置10の外部にナノファイバーが飛散しないように、開口22cの前方(電界紡糸空間24側)近くに飛散したナノファイバーを吸引する吸引ダクト50が開口22cの上部に設けられている。
このような構成により、例えば、基材シートSの移動方向(X軸方向)に関して最上流に位置する第1のナノファイバー製造装置10によって基材シートS上に第1のナノファイバー層を形成し、次に続く第2のナノファイバー製造装置10によって第1のナノファイバー層上に第2のナノファイバー層を形成することが可能になる。
なお、基材シートSの移動方向に関して最上流側のナノファイバー製造装置10より上流側には、例えば、基材シートSを下流方向に送り出す基材シート供給装置、基材シートSに接着剤を塗布する装置(ナノファイバーが接着剤によって基材シートSに接着固定される場合)などが配置される。また、基材シートSの移動方向に関して最下流側のナノファイバー製造装置10より下流側には、例えば、ナノファイバー層が形成された基材シートSを回収する基材シート回収装置、ナノファイバーを基材シートSに熱圧着する熱圧着装置(基材シートS上のナノファイバーが熱圧着されて該基材シートSに固定される場合)などが配置される。
また、例えば、複数のノズル12を有する電界紡糸ヘッド14を着脱可能に支持するように支持構造28のヘッド昇降機構36が構成されてもよい。これにより、メンテナンス済みまたは新品の電界紡糸ヘッド14と交換すれば、電界紡糸ヘッド14の複数のノズル12を1ずつメンテナンスする場合に比べて、メンテナンスによるナノファイバー製造装置10の停止時間を短縮することができる。
これに関連して、ノズルヘッド14に代って、例えば、基材シートSにナノファイバーを固定するための接着剤を塗布する接着剤塗布ヘッド、基材シートS上のナノファイバーを該基材シートSに熱圧着する熱圧着ヘッドなどの、ナノファイバーの作製に関連する作業を実行する作業ヘッドを支持できるように支持構造28(ヘッド昇降機構36)が構成されてもよい。この場合、異なる作業を少なくとも行う作業ヘッドの支持構造28を有する共用モジュール構成のナノファイバー製造装置10を複数台使用することにより、例えば、接着剤塗布ヘッドによって基材シートSに接着剤を塗布する工程と、電界紡糸ヘッド14によってナノファイバーを作製してそのナノファイバーを接着剤が塗布された基材シートS上に集積させる工程と、熱圧着ヘッドによって基材シートS上に集積したナノファイバーを該基材シートSに熱圧着する(接着剤を熱硬化させる)工程とを実行する製造ラインを実現することができる。すなわち、別構成の基材シートSに接着剤を塗布する専用の装置やナノファイバーを基材シートSに熱圧着する専用の装置が必要なくなる。なお、接着剤塗布ヘッドや熱圧着ヘッド等の作業ヘッドも、電界紡糸ヘッド14と同様に、作業ヘッドを有する支持構造28をナノファイバー製造装置10の本体25から取り外すことにより、ハウジング22の外でメンテナンスすることができる。
さらに、上述の実施形態の場合、作業ヘッドである電界紡糸ヘッド14は、ヘッド昇降機構36を介して支持構造28に支持されているが、電界紡糸ヘッド14をハウジング22内において例えば上下方向に移動させる必要がない場合は、支持構造28に直接固定されてもよい。
さらにまた、上述の実施形態の場合、図1や図4に示すように、支持構造28は下部の台車部34によってナノファイバー製造装置10の本体25から取り外された状態において自立するが、本発明はこれに限らない。例えば、台車が別にあって、ナノファイバー製造装置10の本体25に取り付けられている状態の支持構造(台車部を備えていない支持構造)28にその台車が合体し、台車と合体した支持構造28が、装置10の本体25から取り外されて台車を介して自立してもよい。本発明は、支持構造28をナノファイバー製造装置10の本体25から取り外された状態において自立させる手段が、支持構造28に一体に設けられているものに限定するわけではない。
加えて、上述の実施形態の場合、図1や図4に示すように、支持構造28は台車部34によって走行可能であるが、本発明はそれに限らない。支持構造28は、少なくともナノファイバー製造装置10の本体25から取り外された状態において自立可能であればよい。
加えてまた、上述の実施形態の場合、図4に示すように、高電圧が使用される電界紡糸空間24を画定するハウジング22の壁の一部は、絶縁体の内側壁22aと導電体の外側壁22bとからなる二重構造であるが、この内側壁22aと外側壁22bとが分離可能であってもよい。すなわち、内側壁22aを外側壁22bに対して着脱可能に構成してもよい。
具体的に言えば、絶縁体の内側壁22aと導電体の外側壁22bは、少なくとも電界紡糸空間24において高電圧が使用されているときおよび高電圧の使用に伴い帯電量が残留しているときに少なくとも電気的に接触していればよい。絶縁体の内側壁22aの誘電分極は、ナノファイバーの作製中に主に発生するためである。
内側壁22aが外側壁22bに対して着脱可能に構成することにより、例えば、ナノファイバーが付着した内側壁22aを、電界紡糸空間24の外で清掃することが可能になる。また、図4に示すように、上述の実施形態の場合、支持構造28を取り外すと、外側壁22bと内側壁22aの両方がナノファイバー製造装置10の本体25から取り外されるが、外側壁22bのみが取り外され、内側壁22aが装置10の本体25に残るようにしてもよい。
さらに加えて、支持構造28が電界紡糸ヘッド14を支持することにより、電界紡糸ヘッド14のノズル12をナノファイバー製造装置10の外部でメンテナンスができるという効果が得られるが、さらに副次的な効果も得ることができる。すなわち、支持構造28がナノファイバー製造装置10の本体25から取り外されると、電界紡糸ヘッド14が電界紡糸空間24内から外部に移動し、図2に示すように、コレクタ16上に大きなスペースが生まれる。このスペースにより、電界紡糸空間24、例えばコレクタ16のメンテナンスが容易になる。また、電解紡糸ヘッド14(ノズル12)が電界紡糸空間24内に存在していないので、ノズル12にから滴下した原料液によって作業者が汚れずに済むという効果もある。
さらに加えて、上述の実施の形態の場合、支持構造28は、図1に示すように、直方体形状のハウジング22の1つの側面(側壁)を構成するが、本発明はこれに限らない。例えば、支持構造28は、ハウジングの1つの側壁の一部分を構成してもよいし、複数の側壁を構成してもよい。また、天井壁(またはその一部)を構成してもよい。
さらに加えて、上述の実施の形態の場合、支持構造28は、電界紡糸空間24を画定するハウジング22の1つの側面であって該ハウジング22に対して着脱可能であるが、本発明はこれに限らない。例えば、別の実施の形態において、ナノファイバー製造装置は、電界紡糸空間を画定する内側ハウジングと、内側ハウジングを収容する外側ハウジングとを有する。支持構造は、外側ハウジングに取り付けられると、外側ハウジングの内部空間と外部とを分離するように構成されている。また、外側ハウジングに支持構造が取り付けられた状態のときに、支持構造が支持する電界紡糸ヘッドが電界紡糸空間内に配置されるように、内側ハウジングが電界紡糸ヘッドを通過させる開口を備える。このような別の実施の形態の場合、支持構造に電界紡糸空間内で作製されたナノファイバーが付着し難くなるという利点がある。
すなわち、本発明に係る支持構造は、電界紡糸空間を画定するハウジングに着脱可能に構成されていることに限定しておらず、広義には、電界紡糸空間を内部に有するハウジングに着脱可能であればよい。
さらに加えて、上述の実施の形態の支持構造28は、電界紡糸ヘッド14を支持する機能以外に、電界紡糸空間24と外部とを分離する機能を有する構成であるが、本発明はこれに限らない。例えば、別の実施の形態において、支持構造は、ナノファイバー製造装置のハウジング内に密閉収容されてもよい。この場合、支持構造は、電界紡糸空間と外部とを分離するように構成される必要がなくなる。
すなわち、本発明に係る支持構造は、広義には、ナノファイバー製造装置のハウジングに着脱可能であって、電界紡糸ヘッドを電界紡糸空間内に配置でき、ハウジングから取り外した状態で自立できればよい。
最後に、上述の実施の形態の場合、支持構造28は、ハウジング22(本体25)に直接的に着脱可能であるが、ハウジング22(本体25)に取り付けられた部材に対して着脱可能であってもよい、すなわち間接的にハウジング22(本体25)に対して着脱可能であってもよい。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
2010年9月9日に出願された日本国特許出願第2010−202482号、および、この優先権主張出願である、2011年1月28日に出願された日本特許出願第2011−17017号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容は、全体として参照されて本明細書の中に取り入れられるものである。
本発明は、例えば、コレクタ上にナノファイバーを直接集積させるなどの上述の実施形態と異なる装置や方法であっても、ハウジング内において高分子溶液から静電爆発によってナノファイバーを作製する装置や方法であれば、適用可能である。
10 ナノファイバー製造装置
12 ノズル
14 電解紡糸ヘッド
22 ハウジング
25 本体
28 支持構造(壁構造体)
本発明は、高分子溶液から高分子のナノファイバーを静電爆発によって作製するための支持構造、ナノファイバー製造装置、およびその方法に関する。
従来より、所定の電位が印加されたコレクタと、コレクタから所定の距離の位置にあって該コレクタに対して所定の電位差(例えば20〜200KV)の電圧が印加されたノズルとをハウジング内の電界紡糸空間に有するナノファイバー製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。電圧が印加されたノズルは、ナノファイバーの原料液(高分子溶液)を帯電しつつコレクタに向かって吐出する。吐出された原料液は、コレクタに向かう途中に静電爆発する。この静電爆発は繰り返し起こり、それにより原料液は延伸され、最終的にナノファイバーに形成される。形成されたナノファイバーは、コレクタ上に配置されたシートに集積する。
しかし、ナノファイバー製造装置は、ハウジング内の電界紡糸空間において静電爆発によってナノファイバーを作製するように構成されている。そのため、ナノファイバー製造装置のメンテナンス、特にハウジング内の電界紡糸空間に配置されたノズルなどのメンテナンス(例えば清掃や交換)は、作業者が安全を確保しつつハウジング内に侵入して行う必要があるため、その作業性が悪い。
大量のナノファイバーを作製するためにナノファイバー製造装置が大型化すると、例えばノズル数が増加するとともにハウジングが大型化すると、その作業性はさらに悪くなる。
そこで、本発明は、ナノファイバー製造装置が大型であっても、安全であって且つ作業性が高いメンテナンスを実現することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1の態様によれば、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間内に原料液を吐出する複数のノズルを列状に備えた電界紡糸ヘッドを、ノズル列の長手方向の一端で片持ち支持する支持構造であって、電界紡糸空間を内部に有するハウジングに着脱可能に、且つハウジングからノズル列の長手方向に取り外されて電界紡糸ヘッドの少なくとも一部が電界紡糸空間から取り出された状態のときに自立可能に構成されている、支持構造が提供される。
本発明の第2の態様によれば、電界紡糸空間内に配置されたナノファイバーを集めるためのコレクタと電界紡糸ヘッドとの間の距離を調整するヘッド移動機構を有する、第1の態様に記載の支持構造が提供される。
本発明の第3の態様によれば、支持構造が、ハウジングに取り付けられた状態のとき、電界紡糸空間と外部とを分離するように構成されている、第1または第2の態様に記載の支持構造が提供される。
本発明の第4の態様によれば、支持構造が、ハウジングへの着脱中において支持構造の重心がハウジングの側に位置するように構成されている、第1から第3の態様のいずれか一に記載の支持構造が提供される。
本発明の第5の態様によれば、電解紡糸ヘッドが支持構造に対して着脱可能に構成されている、第1から第4の態様のいずれか一に記載の支持構造が提供される。
本発明の第6の態様によれば、静電爆発により原料液からナノファイバーを作製するナノファイバー製造装置であって、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間を内部に有するハウジングと、電界紡糸空間内に原料液を吐出する複数のノズルを列状に備えた電界紡糸ヘッドを、ノズル列の長手方向の一端で片持ち支持する支持構造とを有し、支持構造が、ハウジングに着脱可能に、且つ、ハウジングからノズル列の長手方向に取り外されて電界紡糸ヘッドの少なくとも一部が電界紡糸空間から取り出された状態のときに自立可能に構成されている、ナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第7の態様によれば、支持構造が、電界紡糸空間内に配置されたナノファイバーを集めるためのコレクタと電界紡糸ヘッドとの間の距離を調整するヘッド移動機構を有する、第6の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第8の態様によれば、ハウジングが、電源に接続された給電用ハウジング側端子と、接地されたアース用ハウジング側端子とを備え、支持構造が、電界紡糸ヘッドを駆動するヘッド駆動装置と、ヘッド駆動装置に電力を供給するために給電用ハウジング側端子と接触可能な給電用支持構造側端子と、支持構造を接地するためにアース用ハウジング側端子と接触可能なアース用支持構造側端子とを備え、支持構造がハウジングに対して取り付け状態であるときに、給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが接触状態にあるとともに、アース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが接触状態にあり、支持構造がハウジングに対して取り外し状態であるときに、給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが切り離し状態にあるとともに、アース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが切り離し状態にある、第6または第7の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第9の態様によれば、支持構造が、電界紡糸空間を画定するハウジングの壁の一部として機能し、電界紡糸空間を画定するハウジングの壁が、導電体から作製され、且つその内側に絶縁体層が形成されており、アース用支持構造側端子が支持構造の導電体部分に接続されている、第8の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第10の態様によれば、支持構造がハウジングに取り付けられるときには給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが接触する前にアース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが接触するように、且つ、支持構造がハウジングから取り外されるときには給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子との接触が解除された後にアース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子との接触が解除されるように、アース用ハウジング側端子またはアース用支持構造側端子の少なくとも一方が、支持構造の着脱方向に関して伸縮可能に構成されている、第8または第9の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第11の態様によれば、ヘッド駆動装置が、支持構造がハウジングに対して取り付け状態にあるときにハウジング外側に位置する該支持構造の部分に取り付けられている、第8から第10の態様のいずれか一に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第12の態様によれば、支持構造の着脱方向を一定方向に規制しつつ該支持構造を着脱時にガイドするガイド機構をさらに有する、第6から第11の態様のいずれか一に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第13の態様によれば、静電爆発により原料液からナノファイバーを作製するナノファイバー製造装置であって、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間を内部に有するハウジングと、電界紡糸空間内に配置されてナノファイバーを集めるコレクタと、ナノファイバーの作製に関連する作業を電界紡糸空間内において実行する作業ヘッドを片持ち支持する支持構造とを有し、支持構造が、ハウジングに着脱可能に、且つ、ハウジングから取り外されて作業ヘッドの少なくとも一部が電界紡糸空間から取り出された状態のときに自立可能に構成されている、ナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第14の態様によれば、支持構造が、コレクタと作業ヘッドとの間の距離を調整するヘッド移動機構を有する、第13の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第15の態様によれば、作業ヘッドが支持構造に対して着脱可能に構成され、作業ヘッドとして、原料液を電界紡糸空間内に吐出するノズルを備えた電界紡糸ヘッド、コレクタ上のシートに接着剤を塗布する接着剤塗布ヘッド、またはコレクタ上のシートと該シート上のナノファイバーとを熱圧着する熱圧着ヘッドのいずれか1つが支持構造に取り付けられる、第13または14の態様に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第16の態様によれば、ハウジングが、電源に接続された給電用ハウジング側端子と、接地されたアース用ハウジング側端子とを備え、支持構造が、作業ヘッドを駆動するヘッド駆動装置と、ヘッド駆動装置に電力を供給するために給電用ハウジング側端子と接触可能な給電用支持構造側端子と、支持構造を接地するためにアース用ハウジング側端子と接触可能なアース用支持構造側端子とを備え、支持構造がハウジングに対して取り付け状態であるときに、給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが接触状態にあるとともに、アース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが接触状態にあり、支持構造がハウジングに対して取り外し状態であるときに、給電用ハウジング側端子と給電用支持構造側端子とが切り離し状態にあるとともに、アース用ハウジング側端子とアース用支持構造側端子とが切り離し状態にある、第13から第15の態様のいずれか一に記載のナノファイバー製造装置が提供される。
本発明の第17の態様によれば、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間内に原料液を吐出する複数のノズルを列状に備えた電界紡糸ヘッドを、ノズル列の長手方向の一端で片持ち支持する支持構造を用いたナノファイバー製造方法であって、電界紡糸空間を内部に有するハウジングに支持構造を取り付けることにより電界紡糸ヘッドを電界紡糸空間内に配置し、電界紡糸ヘッドのノズルから吐出された原料液から静電爆発によりナノファイバーを作製し、ナノファイバーの作製後に、支持構造をハウジングからノズル列の長手方向に取り外すことにより電界紡糸ヘッドの少なくとも一部を電界紡糸空間から取り出す、ナノファイバー製造方法が提供される。
本発明によれば、ノズルを備えた電解紡糸ヘッドを支持する支持構造を、ナノファイバーが作製される電界紡糸空間を内部に有するハウジングから着脱可能な構成とすることにより、支持構造をハウジングから取り外すだけでノズルのメンテナンスを電界紡糸空間の外において実行できるので、電界紡糸空間内において実行する場合に比べてメンテナンスの作業性や安全性が高い。また、支持構造が自立可能であるので、支持構造をハウジングから取り外して直ぐに、ノズルをメンテナンスすることができる。
本発明のこれらの態様と特徴は、添付された図面についての好ましい実施の形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
本発明の一実施形態に係る、支持構造を取り付けた状態のナノファイバー製造装置の側面視部分断面図
本発明の一実施形態に係る、支持構造を取り外した状態のナノファイバー製造装置の正面図
ナノファイバー製造装置の電界紡糸空間を画定するハウジングの壁の二重構造を説明するための図
支持構造の斜視図
ハウジングに対して着脱中の支持構造を示す図
別の実施形態における、ハウジングに対して着脱中の支持構造を示す図
アース用コネクタを説明するための図
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るナノファイバー製造装置の側面視部分断面図(X軸方向視)である。また、図2は、図1に示すナノファイバー製造装置の正面図(Y軸方向視)である。図1や図2に示すナノファイバー製造装置10は、詳細は後述するが、ナノファイバーシート(多数のナノファイバーを基材シート上に貼り付けて一体にすることにより形成されたシート)の生産ラインの一部として機能可能に構成されている。
なお、本明細書で言う「ナノファイバー」は、高分子物質から成り、サブミクロンスケールまたはナノスケールの直径を有する糸状物質を言う。また、高分子物質としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の石油系ポリマーやバイオポリマーなどの様々な高分子、それらの共重合体や混合物などが適用可能である。ナノファイバーの原料液は、これらの高分子物質を溶解した溶液である。
図1に示すように、ナノファイバー製造装置10は、複数のノズル12を備えた電界紡糸ヘッド14と、電界紡糸ヘッド14に対して鉛直方向(Z軸方向)に所定の距離(例えば100〜600mm)離れたコレクタ16とを有する。なお、電界紡糸ヘッド14が備える複数のノズル12は、電界紡糸ヘッド14に着脱可能に設けられる場合、あるいは一体で構成される場合のいずれであってもよい。
電界紡糸ヘッド14の複数のノズル12は、コレクタ16に向かってナノファイバーの原料液を吐出する。また、複数のノズル12それぞれには、コレクタ16の電位(コレクタ16に印加された電圧)に対して所定の電位差(例えば20〜200kV)になるような電圧が印加される。このようなノズル12により、原料液は、帯電されつつコレクタ16に向かって吐出される。
コレクタ16は、図2に示すように、導電性材料からなるベルト18と、ベルト18を駆動する導電性材料からなる駆動ローラ20とを有する。このコレクタ16は、ベルト18によって基材シートSを水平方向(Z軸と直交するX軸方向)に搬送する搬送装置も兼ねている。
代わりとして、例えば基材シートSが長尺であって該基材シートSの移動方向上流側に配置されたリール(図示せず)によって巻き取られる場合、コレクタ16は、移動中の基材シートSと同期あるいは追従するようにベルト18を駆動ローラ20によって移動させてもよい。それにより、移動中の基材シートSとベルト18との間の摺動を抑制することができ、ナノファイバー作製時において、基材シートSに積層する帯電状態のナノファイバー層によって静電吸着する基材シートSとコレクタ16のベルト18との間に生じる摺動抵抗が低減される。なお、このベルト18による基材シートSの搬送の詳細については後述する。
なお、本実施の形態では、基材シートSとコレクタ16のベルト18は直接接触しているが、基材シートSをベルト18とは別体の搬送ベルト(図示せず)によって水平方向(X軸方向)に搬送し、コレクタ16のベルト18が搬送ベルトを介して基材シートSに対向してもよい。この場合、コレクタ16のベルト18が搬送ベルトと同期あるいは追従して移動することにより、ベルト18と搬送ベルトとの間の摺動抵抗が低減される。
駆動ローラ20は、ナノファイバーの作製時、所定の電圧(例えば10〜100kV)が印加される。これにより、ベルト18とノズル12との間で所定の電位差が生じて静電爆発が起こり、静電爆発によって原料液から作製されたナノファイバーがベルト18上の基材シートSに集積する。なお、ベルト18は、例えば絶縁体層を金属ベルトの表面に形成したベルトであってもよい。このような駆動ローラ20により、ベルト18は移動し、またベルト18上の基材シートSの表面に一様にナノファイバーを集めることができる。
電界紡糸ヘッド14とコレクタ16は、ナノファイバー製造装置10のハウジング22内に配置されている。ハウジング22は、直方体形状の箱体であって、その内部上側に第1の空間24を画定し、第1の空間24の下側に第2の空間26を画定する。
ハウジング22の第1の空間24には、原料液からナノファイバーが作製される電界紡糸空間であって、電界紡糸ヘッド14とコレクタ16とが配置されている。以下、第1の空間24を、電界紡糸空間24と称する。第2の空間26には、ナノファイバー製造装置10の制御機器や電源などが配置されている。例えば、コレクタ16の駆動ローラ20を回転させるモータ等(図示せず)が第2の空間26に配置されている。
ハウジング22を構成する壁の少なくとも一部が、具体的には電界紡糸空間24を画定する壁の部分が二重構造に構成されている。二重構造の壁の部分は、絶縁体から作製された内側(電界紡糸空間24側)の内側壁22aと導電体から作製された外側(ナノファイバー製造装置10の外部側)の外側壁22bとから構成されている。外側壁22bは、例えばアース線(図示せず)を介して接地されている。具体的に言えば、外側壁22b(導電体)によってハウジング22の全体が構成され、電界紡糸空間24を臨む外側壁22bの内面の一部に内側壁22a(絶縁体)が設けられている。
絶縁体の内側壁22aは、高電圧が印加された電界紡糸ヘッド14のノズル12またはコレクタ16からハウジング22への放電を抑制するためのものである。一方、導電体の外側壁22bは、ナノファイバー製造装置10の稼動中、帯電された絶縁体(誘電体)の内側壁22aに触れて感電しないようにするためのものである。
具体的に説明すると、ナノファイバー製造装置10の稼動中、電界紡糸空間24において高電圧が使用されているために、絶縁体の内側壁22aに誘電分極が起こる。例えば、図3に示すように、内側壁22aの電界紡糸空間24側に正の電荷Cpが発生し、反対側に負の電荷Cnが発生する。外側壁22bが存在しない場合、内側壁22aの外側に発生した電荷Cnにより、作業者が感電する可能性がある。この対処として、絶縁体の内側壁22aの外側に、接地された導電体の外側壁22bが設けられている。
ハウジング22の壁の一部28(特許請求の範囲の「支持構造」に対応)は、着脱可能に構成され、詳細は後述するが、電界紡糸ヘッド14を支持している。本実施の形態の場合、具体的には、支持構造28は、直方体形状のハウジング22の1つの側壁であって、上部分が電界紡糸空間24を画定し、下部分が第2の空間26を画定する。そのため、図4に示すように、支持構造28の電界紡糸空間24を画定する上部分は、内側壁22aと外側壁22bとの二重構造に構成されている。
なお、図2は、支持構造28を取り外した状態のナノファイバー製造装置10を示している。図2において、支持構造28とハウジング22の本体25との間をシールするシール部材30が見える。このシール部材30により、ナノファイバーがハウジング22の外部に漏れることが防止される。図においては、シール部材30は、ハウジング22の本体25に取り付けられているが、支持構造28に取り付けられてもよい。また、図示してはいないが、ハウジング22の本体25に支持構造28を着脱可能に固定する手段として、例えばバックルをナノファイバー製造装置10は備える。
支持構造28は、床面上を転動する複数のキャスタ32a,32bを備えた台車部34を下部に有する。そのため、支持構造28は、図4に示すように、ナノファイバー製造装置10から取り外した状態において、自立可能であって且つ走行可能である。なお、台車部34は、電界紡糸ヘッド14を支持する支持構造28に対して着脱可能に構成されてもよい。すなわち、ハウジング22に着脱可能に取り付けられている支持構造28を台車部34により受け取り、その台車部34によって支持構造28を運搬し、支持構造28の電界紡糸ヘッド14をメンテナンスできる構成であってもよい。また、支持構造28の形態としては、具体的にはドア、窓等の形態も含まれ、少なくとも電界紡糸ヘッド14等の作業ヘッド(電界紡糸ヘッド14以外の作業ヘッドについては後述する)を支持できる大きさであればよい。
支持構造28は、図1や図4に示すように、電界紡糸ヘッド14を支持する。具体的には、支持構造28に、電界紡糸ヘッド14を昇降する(Z軸方向に移動させる)ヘッド昇降機構(ヘッド移動機構)36が設けられている。このヘッド昇降機構36は、電界紡糸ヘッド14を片持ち状態で支持している。このヘッド昇降機構36により、図4に示すように電界紡糸ヘッド14が昇降され、ノズル12とコレクタ16との間の距離が調整される。なお、ヘッド昇降機構36は、電力の供給を受けて電界紡糸ヘッド14を昇降させる構成であってもよく、また人力によって電界紡糸ヘッド14を昇降させる機構であってもよい。さらに、ヘッド昇降機構36に代って、電界紡糸ヘッド14を鉛直方向(Z軸方向)および水平方向(X,Y軸方向)に移動させるヘッド移動機構であってもよい。
例えば、ノズル12に印加する電圧を制御する電圧制御装置38、ノズル12に原料液を供給するタンクおよびポンプ(図示せず)、ヘッド昇降機構36を駆動するモータ40などの電界紡糸ヘッド14(ノズル12)の駆動に関連する電装機器(ヘッド駆動装置)は、ハウジング22の本体25ではなく、支持構造28に設けられる。なお、本明細書で言う「電装機器」は、電力の供給を受けて作動する機器を言う。
また、電界紡糸ヘッド14に関連する電装機器は、全てまたはその一部が、支持構造28の外側部分(ハウジング22の本体25に支持構造28を取り付けた状態のときにハウジング22の外側に位置する部分)に取り付けられている。支持構造28の外側部分に取り付けられた電装機器は、電界紡糸空間24の外部に位置するので、ナノファイバーが付着して汚れることがない。また、それ以外にも、支持構造28の外側部分に取り付けられた電装機器を、支持構造28を取り外すことなくメンテナンスできるという利点がある。
支持構造28に設けられている電界紡糸ヘッド14に関連する電装機器は、ナノファイバー製造装置10の本体25から電力の供給を受けて作動する。そのために、支持構造28とナノファイバー製造装置10の本体25とを着脱可能に電気的に接続して電力を供給する給電用コネクタ42を、ナノファイバー製造装置10は備える。
給電用コネクタ42は、支持構造28がハウジング22の本体25から取り外されると、支持構造28とナノファイバー製造装置10の本体25との間の電気的接続を解除するように構成されている。そのために、この給電用コネクタ42は、支持構造28に設けられた端子(特許請求の範囲の「給電用支持構造側端子」に対応)42aとナノファイバー製造装置10の本体25(ハウジング22の本体25)に設けられた端子(特許請求の範囲の「給電用ハウジング側端子」に対応)42bとを有する。支持構造28側の端子42aは、電界紡糸ヘッド14に関連する電装機器に電気的に接続されている。ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子42bは、電源に電気的に接続されている。これらの端子42a,42bは、支持構造28の着脱方向(Y軸方向)に接触して電気的に接続するように構成されている。
例えば、図4に示すように、支持構造28側の端子42aは、Y軸方向に延びる円柱形状のロッドの先端に設けられている。一方、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子42bは、ロッドと係合可能なY軸方向に延びる円筒の底部に設けられている。なお、給電用コネクタ42の端子42a,42bは、Y軸方向に接触可能であれば、その形状は問わない。
給電用コネクタ42の端子42a,42bがY軸方向に確実に接触するように、着脱中に支持構造28をY軸方向にガイドするガイド機構をナノファイバー製造装置10は有する。具体的には、支持構造28の台車部34の側面には、ナノファイバー製造装置10のハウジング22の本体25の下部に設けられているY軸方向に延びるレール44上を従動する複数のローラ46a,46bが取り付けられている。この本体25のレール44と台車部34のローラ46a,46bとが、支持構造28の着脱方向をY方向に規制するガイド機構として機能する。台車部34のローラ46a,46bは、本体25のレール44の先端側(支持構造28の本体25に対して着脱する側)に設けられた傾斜面の案内面44aにより、レール44の上面44b上に案内される。なお、ガイド機構は、支持構造28の着脱方向をY軸方向に規制できるのであれば、レール44とローラ46a,46bとに限らない。例えば、ガイド機構は、支持構造28の台車部34の側面に形成されたY軸方向に延びる溝に、ナノファイバー製造装置10の本体25に設けられたカムフォロアが従動するような構成であってもよい。
ローラ46a,46bが接触するレール44の上面44bの床面からの高さ(接触面と床面との間のZ軸方向距離)は、支持構造28の台車部34のキャスタ32a,32bが床面から離れるような高さにされている。これは、支持構造28のZ軸方向位置を位置決めするためである。
これに関連して、支持構造28は、ハウジング22の本体25の着脱中に、ハウジング22の外部側に傾倒しないように構成されている。具体的には、ここでの「着脱中」は、取り付け時においては、取り付け方向前側のローラ46aがレール44の案内面44aに接触してから取り付け方向後側のローラ46bがレール44の上面44b上に到達するまでの間を言う。一方、取り外し時においては、取り外し方向前側のローラ46bが案内面44a上に移動してから取り外し方向後側のローラ46aが案内面44aから離れるまでの間を言う。
具体的に説明すると、図5に示すように、支持構造28は、ハウジング22の本体25への着脱中、ハウジング22の本体25に近い側のキャスタ32aが床面FLを離れ、その一方で遠い側のキャスタ32bが床面上FL上を転動する。そのため、支持構造28は、ハウジング22の外部側に傾斜した姿勢になる。この傾斜姿勢は、ハウジング22の本体25に対して近い側のローラ46aがレール44の上面44b上に位置し、その一方でハウジング22の本体25に対して遠い側のローラ46bがレール44の上面44b上に位置しないことによって起こる。
図5に示すようにハウジング22の外部側に傾斜した姿勢のときに、ハウジング22の外部側にさらに傾いて倒れないように、支持構造28は、その重心Gが支持構造28の壁(内側壁22a)に対して少なくともY軸方向(ハウジング22に対して支持構造28を着脱する方向)のハウジング22の側に位置するように構成されている。より好ましくは、重心Gは、支持構造28をハウジング22の本体25に取り付ける時に、ハウジング22の本体25の内部側であって、且つ、床面FLに近い(台車部34近傍)位置に存在するのがよい。
さらに具体的には、支持構造28は、その重心Gが、Y軸方向の支持構造28の引き出し側に位置するキャスタ32bの回転中心線を含み、鉛直方向に延びる(X−Z平面に平行な)仮想平面Pvに対してハウジング22の側に位置するように構成されるのがよい。これにより、ハウジング22の本体25への支持構造28の着脱中に限らず、床面FL上の走行中においても、支持構造28のキャスタ32b側への傾倒を抑制することができる。支持構造28の重心Gの位置は、ハウジング22の本体25への着脱中において重心Gがハウジング22の側に位置するように支持構造28を設計することにより、また、例えば台車部34におもりを載せることにより調整される。
なお、図6に示すように、ハウジング22の本体25に対して着脱中の支持構造28の傾倒をより確実に抑制するために、レール44の上方に配置されて該レール44の上面44bと平行に延びる傾倒防止部材47を設けてもよい。傾倒防止部材47は、ハウジング22の本体25に対する支持構造28の着脱中、支持構造28がハウジング22の外部側に傾くと(上記の傾斜姿勢以上に傾くと)、レール44の上面44b上を転動するローラ46aと接触する。傾倒防止部材47がローラ46aの上方への移動を防止することにより、支持構造28のハウジング22の外部側への傾倒を防止することができる。
さらに、支持構造28は、ナノファイバー製造装置10の本体(ハウジング22の本体25)を介して接地するように構成されている。そのために、支持構造28とナノファイバー製造装置10の本体25とを着脱可能に電気的に接続するアース用コネクタ48を、ナノファイバー製造装置10は備える。このアース用コネクタ48は、支持構造28を除電した状態でナノファイバー製造装置10本体から取り外すために、また電界紡糸ヘッド14に関連する電装機器に基準電位を与えるために設けられている。
アース用コネクタ48は、支持構造28がナノファイバー製造装置10の本体25から取り外されると、支持構造28とナノファイバー製造装置10の本体25との間の電気的接続を解除するように構成されている。そのために、このアース用コネクタ48は、支持構造28に設けられた端子(特許請求の範囲の「アース用支持構造側端子」に対応)48aとナノファイバー製造装置10の本体25に設けられた端子(特許請求の範囲の「アース用ハウジング側端子」に対応)48bとを有する。アース用コネクタ48の端子48aは、支持構造28の導電体の外側壁22bや電界紡糸ヘッド14の駆動に関連する電装機器に電気的に接続されている。一方の端子48bは、アース線(図示せず)を介して接地されている。これらの端子48a,48bは、給電用コネクタ42の端子42a,42bと同様に、支持構造28の着脱方向(Y軸方向)に接触して電気的に接続するように構成されている。
例えば、アース用コネクタ48の支持構造28側の端子48aは、図4に示すように、台車部34の正面に設けられたX軸方向に延びるプレート状の1つの端子である。これに対して、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bは、図2に示すように複数あって、支持構造28側の端子48aと対向するように、X軸方向に並んでいる。ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bが複数あってX軸方向に並ぶことにより、着脱方向がY軸方向から水平方向に傾いて支持構造28がナノファイバー製造装置10の本体25に取り付けられても、少なくとも1つの端子48bが支持構造28側の端子48aと接触することができる。これにより、支持構造28側の端子48aは、確実に接地される。
また、図1に示すように、アース用コネクタ48のナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bそれぞれは、Y軸方向に延びる片持ち梁形状に構成されており、自由端が支持構造28側の端子48aと接触する。具体的には、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bは、図7(A)に示すように、給電用コネクタ42の端子42aと42bとが接触する前に、支持構造28側の端子48aと接触するようなY軸方向長さに設計されている。
さらに、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bは、Y軸方向に延びる片持ち梁形状であるために、支持構造28側の端子48aにY軸方向に押圧されると撓み変形する。これにより、図7(B)に示すように、端子48bは、給電用コネクタ42の端子42aと42bとが接触した後も端子48aとの接触を維持できる。
このようなナノファイバー製造装置10の本体25側の端子48bによれば、当然ながら、給電用コネクタ42の端子42aと42bとの接触が解除された後に、端子48bと支持構造28側の端子48aとの接触が解除される。
したがって、ナノファイバー製造装置10の本体25から支持構造28への給電用コネクタ42を介する電力供給が開始される前に、支持構造28はアース用コネクタ48を介して接地される。また、ナノファイバー製造装置10の本体25から支持構造28への給電用コネクタ42を介する電力供給が停止した後に、支持構造28のアース用コネクタ48を介する接地が解除される。これにより、支持構造28が接地された状態のときにのみ、支持構造28に対してナノファイバー製造装置10の本体25から電力が供給される。また、支持構造28は、除電した状態でナノファイバー製造装置10の本体25から取り外される。その結果、ハウジング22の外部で、安全に電解紡糸ヘッド14のノズル12をメンテナンスすることができる。
なお、アース用コネクタ42の端子の形状は、これに限らず、ナノファイバー製造装置10の本体25側の端子または支持構造28側の端子の少なくとも一方が、支持構造28の着脱方向(Y軸方向)に伸縮可能であれば、どのような形状でも可能である。例えば、支持構造28側の端子が、着脱方向に圧縮可能なばね形状であってもよい。
このようなナノファイバー製造装置10によれば、ノズル12のメンテナンス、例えばノズル12の清掃や交換は、以下のように行うことができる。
ノズル12のメンテナンスを行うために、まず、ナノファイバー製造装置10の電源が切られ、ナノファイバー製造装置10の本体25から支持構造28への給電用コネクタ42を介する電力供給が停止される。このとき、アース用コネクタ48を介して支持構造28は除電される。
次に、除電済みの支持構造28が、ナノファイバー製造装置10の本体25からY軸方向に取り外される。支持構造28は、ナノファイバー製造装置10の本体25からの取り外しが完了すると、台車部34のキャスタ32を介して、所望のメンテナンス位置(例えば、メンテナンス作業を実行できる広い空間)に移動される。そして、ノズル12のメンテナンスが安全に行われる。
本実施形態によれば、ノズル12を備えた電解紡糸ヘッド14を支持する支持構造28をナノファイバー製造装置10のハウジング22の本体25から取り外すことにより、ノズル12のメンテナンスを電界紡糸空間24の外において実行できるので、電界紡糸空間24内において実行する場合に比べてメンテナンスの作業性や安全性が高い。また、支持構造28が自立可能であるので、支持構造28をハウジング22の本体25から取り外して直ぐに、ノズル12をメンテナンスすることができる。なお、ハウジング22の本体25からの支持構造28を取り外した状態には、完全に取り外された離脱状態と、メンテナンス可能なスペースを確保して支持構造28の一部が本体25につながった離間状態も含むものとする。
以上、本発明を説明したが、本発明は、上述の説明内容に限定されない。
例えば、支持構造28は、単体でナノファイバーを製造可能に構成してもよい。具体的には、支持構造28を、少なくとも、原料液を電界紡糸空間24内に吐出するノズル12を備える電界紡糸ヘッド14と、ノズル12に原料液を供給する原料液供給装置(バルブおよびポンプ)と、ノズル12に電圧を印加するための電源とを有する電界紡糸ヘッドユニットとして構成してもよい。このような支持構造(電界紡糸ヘッドユニット)28により、ハウジング22の本体25側に電界紡糸ヘッド14のノズル12に電圧を印加する電源がなくても、ハウジング22内でナノファイバーを作製することができる。
例えば、ナノファイバー製造装置10の単体はまた、その複数台がX軸方向に並んで、ナノファイバーシートの製造ラインの一部として機能可能に構成されている。
具体的には、ナノファイバー製造装置10は、図2に示すように、電界紡糸空間24内を長尺の基材シートSがX軸方向に通過するように、ハウジング22への基材シートSの出入り口である開口22cをハウジング22に備える。長尺の基材シートSは、複数のナノファイバー製造装置10それぞれのコレクタ16のベルト18上を搬送されることにより、複数のナノファイバー製造装置10それぞれの電界紡糸空間24内を通過することができる。なお、開口22cを介してナノファイバー製造装置10の外部にナノファイバーが飛散しないように、開口22cの前方(電界紡糸空間24側)近くに飛散したナノファイバーを吸引する吸引ダクト50が開口22cの上部に設けられている。
このような構成により、例えば、基材シートSの移動方向(X軸方向)に関して最上流に位置する第1のナノファイバー製造装置10によって基材シートS上に第1のナノファイバー層を形成し、次に続く第2のナノファイバー製造装置10によって第1のナノファイバー層上に第2のナノファイバー層を形成することが可能になる。
なお、基材シートSの移動方向に関して最上流側のナノファイバー製造装置10より上流側には、例えば、基材シートSを下流方向に送り出す基材シート供給装置、基材シートSに接着剤を塗布する装置(ナノファイバーが接着剤によって基材シートSに接着固定される場合)などが配置される。また、基材シートSの移動方向に関して最下流側のナノファイバー製造装置10より下流側には、例えば、ナノファイバー層が形成された基材シートSを回収する基材シート回収装置、ナノファイバーを基材シートSに熱圧着する熱圧着装置(基材シートS上のナノファイバーが熱圧着されて該基材シートSに固定される場合)などが配置される。
また、例えば、複数のノズル12を有する電界紡糸ヘッド14を着脱可能に支持するように支持構造28のヘッド昇降機構36が構成されてもよい。これにより、メンテナンス済みまたは新品の電界紡糸ヘッド14と交換すれば、電界紡糸ヘッド14の複数のノズル12を1ずつメンテナンスする場合に比べて、メンテナンスによるナノファイバー製造装置10の停止時間を短縮することができる。
これに関連して、ノズルヘッド14に代って、例えば、基材シートSにナノファイバーを固定するための接着剤を塗布する接着剤塗布ヘッド、基材シートS上のナノファイバーを該基材シートSに熱圧着する熱圧着ヘッドなどの、ナノファイバーの作製に関連する作業を実行する作業ヘッドを支持できるように支持構造28(ヘッド昇降機構36)が構成されてもよい。この場合、異なる作業を少なくとも行う作業ヘッドの支持構造28を有する共用モジュール構成のナノファイバー製造装置10を複数台使用することにより、例えば、接着剤塗布ヘッドによって基材シートSに接着剤を塗布する工程と、電界紡糸ヘッド14によってナノファイバーを作製してそのナノファイバーを接着剤が塗布された基材シートS上に集積させる工程と、熱圧着ヘッドによって基材シートS上に集積したナノファイバーを該基材シートSに熱圧着する(接着剤を熱硬化させる)工程とを実行する製造ラインを実現することができる。すなわち、別構成の基材シートSに接着剤を塗布する専用の装置やナノファイバーを基材シートSに熱圧着する専用の装置が必要なくなる。なお、接着剤塗布ヘッドや熱圧着ヘッド等の作業ヘッドも、電界紡糸ヘッド14と同様に、作業ヘッドを有する支持構造28をナノファイバー製造装置10の本体25から取り外すことにより、ハウジング22の外でメンテナンスすることができる。
さらに、上述の実施形態の場合、作業ヘッドである電界紡糸ヘッド14は、ヘッド昇降機構36を介して支持構造28に支持されているが、電界紡糸ヘッド14をハウジング22内において例えば上下方向に移動させる必要がない場合は、支持構造28に直接固定されてもよい。
さらにまた、上述の実施形態の場合、図1や図4に示すように、支持構造28は下部の台車部34によってナノファイバー製造装置10の本体25から取り外された状態において自立するが、本発明はこれに限らない。例えば、台車が別にあって、ナノファイバー製造装置10の本体25に取り付けられている状態の支持構造(台車部を備えていない支持構造)28にその台車が合体し、台車と合体した支持構造28が、装置10の本体25から取り外されて台車を介して自立してもよい。本発明は、支持構造28をナノファイバー製造装置10の本体25から取り外された状態において自立させる手段が、支持構造28に一体に設けられているものに限定するわけではない。
加えて、上述の実施形態の場合、図1や図4に示すように、支持構造28は台車部34によって走行可能であるが、本発明はそれに限らない。支持構造28は、少なくともナノファイバー製造装置10の本体25から取り外された状態において自立可能であればよい。
加えてまた、上述の実施形態の場合、図4に示すように、高電圧が使用される電界紡糸空間24を画定するハウジング22の壁の一部は、絶縁体の内側壁22aと導電体の外側壁22bとからなる二重構造であるが、この内側壁22aと外側壁22bとが分離可能であってもよい。すなわち、内側壁22aを外側壁22bに対して着脱可能に構成してもよい。
具体的に言えば、絶縁体の内側壁22aと導電体の外側壁22bは、少なくとも電界紡糸空間24において高電圧が使用されているときおよび高電圧の使用に伴い帯電量が残留しているときに少なくとも電気的に接触していればよい。絶縁体の内側壁22aの誘電分極は、ナノファイバーの作製中に主に発生するためである。
内側壁22aが外側壁22bに対して着脱可能に構成することにより、例えば、ナノファイバーが付着した内側壁22aを、電界紡糸空間24の外で清掃することが可能になる。また、図4に示すように、上述の実施形態の場合、支持構造28を取り外すと、外側壁22bと内側壁22aの両方がナノファイバー製造装置10の本体25から取り外されるが、外側壁22bのみが取り外され、内側壁22aが装置10の本体25に残るようにしてもよい。
さらに加えて、支持構造28が電界紡糸ヘッド14を支持することにより、電界紡糸ヘッド14のノズル12をナノファイバー製造装置10の外部でメンテナンスができるという効果が得られるが、さらに副次的な効果も得ることができる。すなわち、支持構造28がナノファイバー製造装置10の本体25から取り外されると、電界紡糸ヘッド14が電界紡糸空間24内から外部に移動し、図2に示すように、コレクタ16上に大きなスペースが生まれる。このスペースにより、電界紡糸空間24、例えばコレクタ16のメンテナンスが容易になる。また、電解紡糸ヘッド14(ノズル12)が電界紡糸空間24内に存在していないので、ノズル12にから滴下した原料液によって作業者が汚れずに済むという効果もある。
さらに加えて、上述の実施の形態の場合、支持構造28は、図1に示すように、直方体形状のハウジング22の1つの側面(側壁)を構成するが、本発明はこれに限らない。例えば、支持構造28は、ハウジングの1つの側壁の一部分を構成してもよいし、複数の側壁を構成してもよい。また、天井壁(またはその一部)を構成してもよい。
さらに加えて、上述の実施の形態の場合、支持構造28は、電界紡糸空間24を画定するハウジング22の1つの側面であって該ハウジング22に対して着脱可能であるが、本発明はこれに限らない。例えば、別の実施の形態において、ナノファイバー製造装置は、電界紡糸空間を画定する内側ハウジングと、内側ハウジングを収容する外側ハウジングとを有する。支持構造は、外側ハウジングに取り付けられると、外側ハウジングの内部空間と外部とを分離するように構成されている。また、外側ハウジングに支持構造が取り付けられた状態のときに、支持構造が支持する電界紡糸ヘッドが電界紡糸空間内に配置されるように、内側ハウジングが電界紡糸ヘッドを通過させる開口を備える。このような別の実施の形態の場合、支持構造に電界紡糸空間内で作製されたナノファイバーが付着し難くなるという利点がある。
すなわち、本発明に係る支持構造は、電界紡糸空間を画定するハウジングに着脱可能に構成されていることに限定しておらず、広義には、電界紡糸空間を内部に有するハウジングに着脱可能であればよい。
さらに加えて、上述の実施の形態の支持構造28は、電界紡糸ヘッド14を支持する機能以外に、電界紡糸空間24と外部とを分離する機能を有する構成であるが、本発明はこれに限らない。例えば、別の実施の形態において、支持構造は、ナノファイバー製造装置のハウジング内に密閉収容されてもよい。この場合、支持構造は、電界紡糸空間と外部とを分離するように構成される必要がなくなる。
すなわち、本発明に係る支持構造は、広義には、ナノファイバー製造装置のハウジングに着脱可能であって、電界紡糸ヘッドを電界紡糸空間内に配置でき、ハウジングから取り外した状態で自立できればよい。
最後に、上述の実施の形態の場合、支持構造28は、ハウジング22(本体25)に直接的に着脱可能であるが、ハウジング22(本体25)に取り付けられた部材に対して着脱可能であってもよい、すなわち間接的にハウジング22(本体25)に対して着脱可能であってもよい。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
2010年9月9日に出願された日本国特許出願第2010−202482号、および、この優先権主張出願である、2011年1月28日に出願された日本特許出願第2011−17017号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容は、全体として参照されて本明細書の中に取り入れられるものである。
本発明は、例えば、コレクタ上にナノファイバーを直接集積させるなどの上述の実施形態と異なる装置や方法であっても、ハウジング内において高分子溶液から静電爆発によってナノファイバーを作製する装置や方法であれば、適用可能である。
10 ナノファイバー製造装置
12 ノズル
14 電解紡糸ヘッド
22 ハウジング
25 本体
28 支持構造(壁構造体)