JPWO2012032710A1 - Tig溶接方法 - Google Patents
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Abstract
本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間中に短絡が発生した場合に、第1のスタート期間を延長してアーク再生するまで待ち、アーク再生後にスタート波形の出力を継続することで、TIG電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
Description
本発明は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法に関し、特に、TIG溶接のアークスタート方法に関する。
TIG溶接のアークスタート方法は、一般的に、TIG電極と溶接対象物との間に高周波の高電圧を重畳印加して絶縁破壊させることでアークを発生させ、所定のスタート電流を通電した後に定常電流を出力する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、所定のスタート電流の出力中にTIG電極と溶接対象物との接触である短絡が発生した場合、従来から慣用されているTIG溶接方法では、短絡したまま所定のスタート電流の通電が完了し、短絡したままスタート電流よりも大きい定常電流を通電してしまうこととなる。
このとき、特に定常電流が大きい場合(例えば、500A)、TIG電極に大きな短絡電流が通電され、TIG電極の不要な消耗や損傷が発生するといった問題があった。
図12と図13を用いて、従来から慣用されているTIG溶接装置の動作について説明する。なお、図12は、従来のTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図13は、従来の交流TIG溶接装置における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。
図12のように構成されたTIG溶接装置について、図13を用いてその動作を説明する。
図12において、TIG溶接装置101は、溶接出力を行う溶接出力部102と、溶接電流を検出する電流検出部104と、溶接条件等を設定するための第1の設定部107aと、を備えている。そして、TIG溶接装置101は、TIG電極である電極109と溶接対象物である母材112との間に高電圧を印加するための高電圧発生部108と、溶接出力部102を制御する溶接制御部115を備えている。そして、TIG溶接装置101には電極109を備えた溶接トーチ110が接続されており、電極109と母材112との間に溶接出力を供給することでアーク111が発生し、このアーク111により溶接を行う。
溶接電流波形等を示す図13において、T1は第1のスタート期間であり、T2は第2のスタート期間である。そして、IP1は第1のスタート電流であり、IP2は第2のスタート電流であり、I1は定常電流である。また、E1は起動オンした時点であり、E2は電流を検出した時点であり、E3は短絡が発生した時点であり、E4は時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点であり、E5はアークが再生した時点である。
図12において、TIG溶接装置101の溶接出力部102は、外部から給電される商用電源(例えば、3相200V等)を入力とし、溶接制御部115から制御信号に基づいて溶接出力部102を構成する図示しない1次インバータの動作及び2次インバータの動作を行う。溶接出力部102は、1次インバータの動作及び2次インバータの動作により、この正極性と逆極性とを適正に切り替えて溶接に適した溶接電圧や溶接電流を出力する。
CPU等で構成される、第1の設定部107aは、定常電流I1(例えば、500A)、第1のスタート期間T1(例えば、40msec)、第2のスタート期間T2(例えば、20msec)、第1のスタート電流IP1(例えば、−100A)、第2のスタート電流IP2(例えば、100A)を、例えば作業者が入力したパラメータに連動して設定するものであり、設定された値を溶接制御部115へ出力する。
CT(Current Transformer)等で構成される電流検出部104は、溶接電流を検出し、電流検出信号として溶接制御部115へ出力する。
CPU等で構成される溶接制御部115は、第1の設定部107aが設定する各設定値と、電流検出部104が検出する電流検出信号を受ける。そして、溶接制御部115は、高電圧発生装置108の動作を指令するHF(High Frequency)信号を高電圧発生装置108に出力し、溶接出力を指令する出力指令信号と溶接出力の極性を指令するEN(Electrode Negative)信号とを溶接出力部102に出力する。
また、溶接制御部115は、第1のスタート期間T1の間は第1のスタート電流IP1を出力するように、第2のスタート期間T2の間は第2のスタート電流IP2を出力するように、スタート期間が完了した後は定常電流I1を出力するように、溶接出力部102に出力指令信号を出力する。そして、溶接出力部102は、溶接制御部115からの出力指令信号に基づいて溶接電流を制御する。
また、溶接制御部115は、第1のスタート期間T1の終了時に、第2のスタート期間T2へ移行させるための信号であるEN信号をオン(正極性指令)する。
溶接出力部102は、溶接制御部115からのEN信号に基づき、2次インバータの動作により正極性期間中(EN信号はオン)は正極性期間として動作し、電極109から母材112へ電子が移動する方向に出力極性を切り替える。なお、逆極性期間中(EN信号はオフ)は、逆極性期間として動作し、母材112から電極109へ電子が移動する方向に出力極性を切り替える。
高電圧発生装置108は、溶接制御部115からの指令信号であるHF信号に基づき、HF信号がオンの場合はTIG溶接装置101の出力端子間へ高電圧を印加(例えば、交流15kVを印加)し、HF信号がオフの場合はTIG溶接装置101の出力端子間への高電圧の印加を停止する。
溶接出力部102が出力する溶接電流や溶接電圧は、接続されている溶接トーチ110に給電され、電極109の先端と母材112との間でアーク111が発生し、このアーク111によりアーク溶接を行う。
次に、図13を用いて、従来の交流TIG溶接装置における溶接電流波形の時間変化について説明する。
図13に示す起動オンした時点E1において、EN信号をオフして出力極性を逆極性側に設定し、1次インバータが駆動して無負荷出力を発生させる。また、HF信号をオンとすることで高電圧発生装置108が高電圧を出力し、出力された高電圧が電極109と母材112との間に印加される。
図13に示す電流を検出した時点E2において、高電圧発生装置108が印加する高電圧により電極109と母材112との間の絶縁が破壊され、アーク111が発生して溶接電流が通電する。
そして、溶接電流の通電を検出したら電流を検出したと判定してHF信号をオフし、高電圧発生装置108の高電圧の印加を停止し、第1のスタート期間T1へ移行して第1のスタート電流IP1(例えば、−100A)を出力する。
図13に示す時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点E4において、第1のスタート期間T1が完了する。そして、時点E4において、EN信号をオンして極性を正極性出力側に反転し、第2のスタート期間T2へ移行して第2のスタート電流IP2を出力する。そして、第2のスタート期間T2の終了後、定常電流I1を出力する。
なお、図13に示す第1のスタート期間T1中の時点E3において電極109と母材112とが接触する短絡が発生したとすると、短絡が発生した時点E3以降は短絡電流が通電される。
そして、図13に示す定常溶接中の時点E5において電極109と母材112の接触が開放してアーク111が再生したとすると、アーク再生したE5以降はアーク電流が通電される。すなわち、時点E3から時点E5までは短絡電流が通電され続ける。なお、アーク再生とは、アーク状態から電極109と母材112とが接触してアーク111が消滅し、その後に電極109と母材112との接触が開放して再度アークが発生した状態を意味する。
以上のように、従来技術では、第1のスタート期間T1中に短絡が発生した場合、短絡した状態のまま第2のスタート期間T2に移行し、さらに定常電流I1に移行するが、アーク再生するまで短絡電流を通電し続けることとなる。
特に、定常電流I1が大きい場合(例えば、500A)、短絡電流の通電により電極109が不要に消耗したり破損したりする。
あるいは、電極109が溶融してアーク再生時に吹き飛ばされ、溶融した電極109が母材112へ溶け込むことで溶接欠陥の原因となる場合もある。
また、アーク爆発の際に爆発箇所の周辺の酸素や水蒸気をシールドガスに巻き込み、ブローホールの原因となる場合もある。
上述のように、従来のTIG溶接方法では、第1のスタート期間中に短絡が発生した場合、短絡したまま定常溶接に至り短絡電流を流し続けるので、TIG電極である電極109の不要な消耗や損傷が発生し、また、溶接欠陥が発生する場合があった。
本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間中に短絡が発生した場合に、第1のスタート期間を延長してアーク再生するまで電流の増加を待ち、アーク再生後に電流の増加を行うようにする。これにより、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができるTIG溶接方法を提供する。
本発明のTIG溶接方法は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、溶接開始から上記TIG電極と上記溶接対象物との接触の検出を行い、上記第1のスタート期間の終了時に上記TIG電極と上記溶接対象物との接触を検出している場合には、上記TIG電極と上記溶接対象物との接触が開放するまで上記第1のスタート期間の終了時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
また、本発明のTIG溶接方法は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行い、第1のスタート期間中にTIG電極と溶接対象物との接触を検出した場合には、第1のスタート期間を終了し、TIG電極と溶接対象物との接触が開放するまで第1のスタート期間を終了した時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
以上のように本発明によれば、第1のスタート期間中に短絡が発生した場合に、第1のスタート期間を延長してアーク再生するまで電流の増加を待ち、アーク再生後に電流の増加を行うようにする。これにより、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同じ構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1から図4を用いて本実施の形態1について説明する。なお、図1のように構成されたTIG溶接装置について、図2から図4の電流波形等の時間変化を用いてその動作を説明する。
図1から図4を用いて本実施の形態1について説明する。なお、図1のように構成されたTIG溶接装置について、図2から図4の電流波形等の時間変化を用いてその動作を説明する。
図1は本実施の形態1におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図2は本実施の形態1における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。図3は本実施の形態1における溶接電流波形等の時間変化の別の例を示す図であり、図4は本実施の形態における溶接電流波形等の時間変化のさらに別の例を示す図である。
以下では、逆極性期間と正極性期間とを繰り返して溶接を行う交流TIG溶接装置を例として説明する。
図1において、TIG溶接装置1は、溶接出力部2と、溶接制御部3と、電流検出部4と、電圧検出部5と、AS(Arc or Short)判定部6と、第1の設定部7aと、高電圧発生部8と、第3の設定部13aと、を備えている。ここで、溶接出力部2は、溶接出力を出力する。溶接制御部3は、溶接出力部2を制御する。電流検出部4は、溶接電流を検出する。電圧検出部5は、溶接電圧を検出する。AS判定部6は、電圧検出部5の検出結果に基づいて、TIG電極である電極9と溶接対象物である母材12とが接触しているか否かを検出する。第1の設定部7aは、溶接条件等を設定する。高電圧発生部8は、電極9と母材12との間に高電圧を印加する。第3の設定部13aは、溶接条件等を設定する。なお、TIG溶接装置1には電極9を備えた溶接トーチ10が接続されており、電極9と母材12との間に溶接出力を供給することにより、電極9と母材12との間にアーク11を発生させて溶接を行う。
図2から図4は、電流波形等の時間変化を示す。図2から図4において、T1は第1のスタート期間であり、T2は第2のスタート期間であり、T3は第3のスタート期間であり、T1EXTは第1のスタート延長期間である。T1TERMは、短絡発生により終了した場合の第1のスタート期間である。また、IP1は第1のスタート電流であり、IP2は第2のスタート電流であり、IP3は第3のスタート電流であり、I1は定常電流である。E1は起動オンした時点であり、E2は電流を検出した時点であり、E3は短絡が発生した時点である。E4は時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点であり、E5はアークが再生した時点であり、E6は時点E5から第3のスタート期間T3が経過した時点である。
図1において、TIG溶接装置1の溶接出力部2は、外部から給電される商用電源(例えば、3相200V等)を入力とし、溶接制御部3からの制御信号に基づいて、溶接出力部2を構成する図示しない1次インバータの動作及び2次インバータ(図示せず)の動作を行う。そして、溶接出力部2は、1次インバータの動作及び2次インバータの動作により正極性と逆極性とを適正に切り替えて、溶接に適した溶接電圧や溶接電流を出力する。
なお、溶接出力部2を構成する1次インバータは、通常、PWM(Pulse Wide Modulation)動作やフェーズシフト動作にて駆動される図示しないIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、図示しないMOSFET(Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)や、図示しない1次整流ダイオードや、平滑用電解コンデンサや、電力変換用変圧器等で構成される。
また、溶接出力部2を構成する図示しない2次インバータは、通常、IGBTを用いてハーフブリッジやフルブリッジで構成され、出力極性を切り替える。
ここで、正極性とは、アークプラズマ中の電子の移動方向が電極9から母材12へ向かう方向であり、電極9がマイナスであって母材がプラスの場合をいう。
また、逆極性とは、アークプラズマ中の電子の移動方向が母材12から電極9へ向かう方向であり、電極9がプラスであって母材12がマイナスの場合をいう。
CPU等で構成される第1の設定部7aは、定常電流I1(例えば、500A)や、第1のスタート期間T1(例えば40msec)や、第2のスタート期間T2(例えば、20msec)や、第1のスタート電流IP1(例えば、−100A)や、第2のスタート電流IP2(例えば100A)を、例えば作業者が入力したパラメータ等に基づいて設定するものであり、設定された値を溶接制御部3へ出力する。
CPU等で構成される第3の設定部13aは、第3のスタート期間T3(例えば、30msec)や第3のスタート電流IP3(例えば、−80A)を、例えば作業者が入力したパラメータ等に基づいて設定するものであり、設定された値を溶接制御部3へ出力する。
電圧測定器等で構成されTIG溶接装置1の出力端子間の電圧を測定する電圧検出部5は、溶接電圧を検出し、電圧検出信号としてAS判定部6へ出力する。
CPU等で構成されるAS判定部6は、電圧検出部5からの電圧検出信号を入力とする。電圧検出信号の絶対値がアーク判定中に予め設定される検出レベル(例えば、10V)に達した(低下した)場合、AS判定部6は、TIG電極である電極9と溶接対象物である母材12とが接触している(以下、「短絡」と呼ぶ。)と判定し、AS信号を短絡判定(ローレベル)とする。
また、短絡判定中に予め設定される検出レベル(例えば、15V)に達した(増加した)場合、TIG電極である電極9と溶接対象物である母材12との間にアークが発生している(以下、「アーク中」、または「アーク再生」と呼ぶ。)と判定し、AS信号をアーク判定(ハイレベル)とする。
なお、電流の検出が無い無負荷電圧の出力中は、AS信号はアーク判定(ハイレベル)となる。
CT等で構成される電流検出部4は、溶接電流を検出し、電流検出信号として溶接制御部3へ出力する。
CPU等で構成される溶接制御部3は、第1の設定部7aが設定する各設定値と、第3の設定部13aが設定する各設定値と、AS判定部6が出力するAS信号と、電流検出部4が検出する電流検出信号を受け、高電圧発生部8の動作を指令するHF信号を高電圧発生部8へ出力する。また、溶接制御部3は、溶接出力を指令する出力指令信号と溶接出力の極性を指令するEN信号とを溶接出力部2へ出力する。
また、溶接制御部3は、TIG溶接装置1の外部からの起動信号(起動オン)を受けてHF信号をオン(ハイレベル)し、また、電流検出部4からの信号に基づいて溶接電流を検出したと判定したら、HF信号をオフ(ローレベル)する。なお、電流検出の判定については、例えば、電流検出部4が検出した電流値が2.5A以上の場合には電流検出と判定する。
また、溶接制御部3は、外部からの起動信号(起動オン)を受け、溶接出力部2を構成する1次インバータを駆動し、電極9と母材12の間に溶接電圧を供給する。
また、溶接制御部3は、外部からの起動信号(起動オン)を受けてEN信号をオフ(ローレベル、逆極性指令)し、後述する第2のスタート期間T2を開始する時点でEN信号をオン(ハイレベル、正極性指令)する。
また、溶接制御部3は、第1のスタート期間T1の間は第1のスタート電流IP1を出力するように溶接出力部2に出力指令信号を出力し、第2のスタート期間T2の間は第2のスタート電流IP2を出力するように溶接出力部2に出力指令信号を出力する。そして、溶接制御部3は、第3のスタート期間T3の間は第3のスタート電流IP3を出力するように溶接出力部2に出力指令信号を出力し、第2のスタート期間T2が完了した後は定常電流I1を出力するように溶接出力部2に出力指令信号を出力する。
また、溶接制御部3は、第1のスタート期間T1の終了時に、AS判定部6からのAS信号が短絡判定を示すものであった場合、図2に示すように、第1のスタート延長期間T1EXTへ移行し、第1のスタート期間T1の終了時の溶接電流である第1のスタート電流IP1を継続して出力するように溶接出力部2を制御する。そして、第1のスタート延長期間T1EXT中に、AS判定部6からのAS信号がアーク判定を示すものとなった場合、第1のスタート延長期間T1EXTを終了して所定の第3のスタート期間T3へ移行する。さらに、第3のスタート期間T3が終了した後、第2のスタート期間T2へ移行してEN信号をオン(正極性指令)する。
溶接出力部2は、溶接制御部3からのEN信号に基づき、2次インバータの動作により正極性期間中(EN信号はオン)は正極性期間として動作し、電極9から母材12へ電子が移動する方向に出力極性を切り替える。そして、逆極性期間中(EN信号はオフ)は、逆極性期間として動作し、溶接出力部2は、母材12から電極9へ電子が移動する方向に出力極性を切り替える。
また、溶接出力部2は、溶接制御部3からの出力指令信号に基づき、1次インバータの動作により、第1のスタート期間T1の間は第1のスタート電流IP1を出力する。そして、溶接出力部2は、第2のスタート期間T2の間は第2のスタート電流IP2を出力し、第3のスタート期間T3の間は第3のスタート電流IP3を出力し、第2のスタート期間T2が完了した後は定常電流I1を出力する。
フライバックトランス等で構成される高電圧発生部8は、溶接制御部3からのHF信号に基づき、HF信号がオンの場合はTIG溶接装置1の出力端子間へ高電圧を印加し(例えば、15kVを印加)、HF信号がオフの場合はTIG溶接装置1の出力端子間への高電圧の印加を停止する。
溶接出力部2が出力する溶接電流や溶接電圧は、接続されている溶接トーチ10に給電され、タングステン等で構成されるTIG電極である電極9の先端とアルミニウム材等の溶接対象物である母材12との間でアーク11を発生してアーク溶接を行う。
次に、溶接電流波形等の時間変化を示す図2を用いて、本実施の形態1の溶接方法について説明する。
図2に示す起動オンした時点E1において、1次インバータがオンして無負荷出力を発生させ、HF信号をオンし、高電圧発生部8が出力する高電圧が電極9と母材12との間に印加される。
この起動オンは、例えば、TIG溶接装置1の外部にある図示しないトーチスイッチや自動機のシーケンサー等により指令される。
図2に示す時点E2において、高電圧発生部8が印加する高電圧により電極9と母材12との間の絶縁が破壊されてアークが発生し、溶接電流が通電して電流が検出される。
溶接制御部3は、電流検出部4を介して溶接電流の通電を検出し、電流検出を判定したらHF信号をオフして高電圧発生部8の高電圧の印加を停止し、第1のスタート期間T1へ移行する。
第1のスタート期間T1中は、溶接制御部3は第1のスタート電流IP1(例えば、−100A)を出力するように溶接出力部2を制御する。
図2に示す時点E3において、電極9と母材12との短絡が発生した場合、AS判定部6は短絡判定をして、AS信号はローレベルとなる。なお、電極9と母材12との短絡は、例えば、溶接作業者の熟練不足による作業ミスや、ワーク精度やジグ精度が悪い場合等に発生する。
図2に示す第1のスタート期間T1の終了時点であり、時点E2から第1のアークスタート期間T1が経過した時点E4において、電極9と母材12との短絡状態が継続している。この時に、AS判定部6が短絡であると判定していると、第1のスタート期間T1を延長する第1のスタート延長期間T1EXTへ移行する。溶接制御部3は、第1のスタート期間T1の終了時点の電流値であるIP1を維持して出力するように溶接出力部2を制御する。
その後、図2に示す時点E5において電極9と母材12との接触(短絡)が開放してアーク再生したとする。ここで、アーク再生は、例えば、作業者が意図的に電極9を母材12から離すことで発生する、あるいは、ワーク形状や自動機の動作により母材12に対して電極9が移動することで偶発的に発生する。
図2に示すアーク再生した時点E5において、第1のスタート延長期間T1EXTは終了し、第1のスタート期間T1や第1のスタート延長期間T1EXTと同じ極性である第3のスタート期間T3へ移行する。溶接制御部3は第3のスタート電流IP3を出力するように溶接出力部2を制御する。なお、第3のスタート期間T3の長さは、例えば、第1のスタート期間T1と同じとしてもよく、あるいは、実験や施工等を行って予め求めておくこともできる。
また、第3のスタート電流IP3の大きさは、例えば、第1のスタート電流IP1と同じでもよく、あるいは、実験や施工等によって求めておくこともできる。
図2に示す時点E5から第3のスタート期間T3が経過した時点E6において、第3のスタート期間T3は終了し、溶接制御部3は、EN信号をオンし、極性を正極性出力側に反転し、第2のスタート期間T2へ移行する。
このように、時点E6における極性反転の前に、第3のアークスタート期間T3おいて一定の入熱を印加することで、時点E6における極性反転の際に、アーク切れが発生しにくくなり、良好な溶接を行うことができる。そして、第2のスタート期間T2の終了の後は、溶接制御部3は定常溶接時の定常電流I1を出力するように溶接出力部2を制御する。
なお、図2では、第1のスタート延長期間T1EXT完了後に、第3のスタート期間T3に移行し、その後、第2のスタート期間T2へ移行する例を示した。しかし、図3に示すように、図2のように第3のスタート期間T3を設けずに、第1のスタート延長期間T1EXT完了後に第2のスタート期間T2へ移行するようにしてもよい。
また、図4で示すように、溶接開始から、所定の第1のスタート期間T1の途中で短絡を検出した場合、短絡を検出した時点で第1のスタート期間T1を強制的に終了させ、第1のスタート延長期間T1EXTへ移行するようにしてもよい。なお、この場合、第1のスタート期間は、図2に示す第1のスタート期間T1よりも短い図4に示す第1のスタート期間T1TERMとなる。
図4に示すように、所定の長さの第1のスタート期間T1の完了を待たず、電極9と母材12との短絡の発生時に第1のスタート期間T1を強制的に終了させて第1のスタート延長期間T1EXTに移行させる。これにより、より早く短絡中の処理を実施することができ、例えば、第1のスタート期間T1が長く設定されているような場合(例えば、400msec)に有効である。
以上のように、第1のスタート期間T1の終了時点で電極9と母材12との短絡を検出している場合に、第1のスタート期間T1の終了時点の電流を維持する第1のスタート延長期間T1EXTに移行する。そして、第1のスタート期間T1の延長状態としてアーク再生を待ち、アーク再生後に第2のスタート期間T2に復帰するように制御することにより、良好なアークスタート性を確保することができる。
また、電極9と母材12との短絡が継続した状態で定常溶接状態に移行することがないので、スタート期間から定常状態にわたって短絡電流が連続通電することがない。これにより、特に、定常電流I1が大電流(例えば、500A)のような場合に、電極9の不要な消耗や損傷を防ぐことができる。
また、定常電流I1が大電流の交流の場合、従来のTIG溶接装置では、第1のスタート期間T1に短絡が発生した場合、短絡が継続したまま定常溶接に移行する場合があった。この場合には、大電流であると共に短絡状態であることから、より高い電流の状態で極性反転されることとなり、この極性反転のための2次インバータのスイッチングにより高いサージ電圧が発生する。この高いサージ電圧により2次インバータを構成する半導体素子が破損する危険があった。しかし、本実施の形態1では、上述のように従来のTIG溶接装置のような状態は生じないので、従来のTIG溶接装置のような危険性がない。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間の終了時にTIG電極と溶接対象物との接触を検出している場合には、TIG電極と溶接対象物との接触が開放するまで第1のスタート期間の終了時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
また、本発明のTIG溶接方法は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間中にTIG電極と溶接対象物との接触を検出した場合には、第1のスタート期間を終了し、TIG電極と溶接対象物との接触が開放するまで第1のスタート期間を終了した時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
また、本発明のTIG溶接方法は、正極性期間と逆極性期間とを交互に繰り返して溶接を行う交流のTIG溶接方法であって、一方の極性期間である第1のスタート期間の後に前記第1のスタート期間とは極性が異なる他方の極性期間である第2のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート延長期間へ移行した場合には、第1のスタート延長期間の終了後に一方の極性期間である第1のスタート延長期間から他方の極性期間である第2のスタート期間へ転流する方法としてもよい。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
また、本発明のTIG溶接方法は、正極性期間と逆極性期間とを交互に繰り返して溶接を行う交流のTIG溶接方法であって、一方の極性期間である第1のスタート期間の後に前記第1のスタート期間とは極性が異なる他方の極性期間である第2のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート延長期間へ移行した場合は、第1のスタート延長期間の終了後に所定の溶接電流波形となるように電流を通電する所定の期間であり、第1のスタート延長期間と同じ極性である第3のスタート期間へ移行する。そして、本発明のTIG溶接方法は、第3のスタート期間の終了後に一方の極性期間である第3のスタート期間から他方の極性期間である第2のスタート期間へ転流する方法としてもよい。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
なお、本実施の形態1においては、定常電流I1として正極性の直流出力の例について説明したが、定常電流として交流出力を用いる場合にも同様の制御を行うことで同様の効果を得ることできる。
なお、第1のスタート電流IP1、第2のスタート電流IP2、第3のスタート電流IP3は、図中では任意の固定値として説明したが、各スタート期間中に変動する波形であってもよい。
また、短絡の継続時間を計時し、継続時間が長時間(例えば、1秒)となった場合には異常短絡状態と判定し、溶接出力を停止するようにしてもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態2について、図5と図6を用いて説明する。図5は、本実施の形態2におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図6は、本実施の形態2における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。
本実施の形態2について、図5と図6を用いて説明する。図5は、本実施の形態2におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図6は、本実施の形態2における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。
本実施の形態2のTIG溶接方法が実施の形態1と異なる主な点は、短絡継続中の電流値の決定方法であり、本実施の形態2では、短絡中の出力電流を設定部により設定し、具体的には電流値を低減するようにしている。
以下、逆極性期間と正極性期間とを繰り返して溶接を行う交流TIG溶接装置を用いた例について説明する。
図5において、第5の設定部14aが示されている点が実施の形態1の図1と異なり、図6において、第1の短絡電流IS1が示されている点が実施の形態1の図2から図4と異なる。
図5において、CPU等で構成される第5の設定部14aは、短絡継続中の電流である第1の短絡電流IS1(例えば、−20A)を設定するものであり、設定された値を溶接制御部3へ出力する。
CPU等で構成される溶接制御部3は、第1の設定部7aが設定する各設定値と、第3の設定部13aが設定する各設定値と、第5の設定部14aが設定する各設定値と、AS判定部6が出力するAS信号と、電流検出部4が検出する電流検出信号を受ける。そして、溶接制御部3は、高電圧発生部8の動作を指令するHF信号を高電圧発生部8へ出力し、溶接出力を指令する出力指令信号と、溶接出力の極性を指令するEN信号とを溶接出力部2へ出力する。
また、溶接制御部3は、第1のスタート期間T1および第1のスタート延長期間T1EXTにおいて、短絡してからアーク再生するまでの間、所定の第1の短絡電流IS1に溶接出力を低減する。
次に、図6を用いて、本実施の形態2における溶接電流波形等の時間変化について説明する。
図6に示す起動オンした時点E1において、TIG溶接装置1は起動し、無負荷電圧と高電圧が電極9と母材12のとの間に印加される。
図6に示す時点E2において、電極9と母材12との間の絶縁が破壊されて電流が流れ、電流検出部4により電流が検出され、高電圧発生部8による高電圧の印加が停止し、第1のスタート期間T1に移行する。
図6に示す時点E3において電極9と母材12との短絡が発生したとすると、時点E3以降は溶接電流を第1の短絡電流IS1に低減する。
そして、第1のスタート期間T1の終了時点であり、時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点である時点E4において、第1のスタート期間T1は終了する。
第1のスタート期間T1の終了時点でも電極9と母材12とが短絡しているので、AS判定部6は短絡判定である。したがって、第1のスタート延長期間T1EXTへ移行し、第1のスタート期間T1が終了した時点の電流値である第1の短絡電流IS1を維持する。
なお、第1の短絡電流IS1は、第1のスタート電流IP1より絶対値が小さい値でもよく、第1の短絡電流IS1は、定常電流I1よりも絶対値が小さい値としてもよい。
また、第1の短絡電流IS1は、例えば、実験や施工等によって適切な値を求めておくことができ、短絡通電中に電極9が不要に溶融することがない低い電流値で、かつ、アーク再生の際にアーク切れが発生しにくい所定の大きさの電流値であればよい(例えば、20A程度)。
また、第1の短絡電流IS1は、特に電極9の損傷を防ぐことを重視する場合は、TIG溶接装置1が出力可能な、最低電流値程度の低い値としてもよい(例えば、5A)。
次に、図6に示すように、第1のスタート延長期間T1EXT中の時点E5においてアーク再生し、時点E5から第3のスタート期間T3へ移行し、第3のスタート電流IP3を出力する。
時点E5から第3のスタート期間T3が経過した点E6において、第3のスタート期間T3は終了して極性反転を行い、第2のスタート期間T2へ移行し、第2のスタート期間T2終了後は定常電流I1を出力する。
このように、電極9と母材12との短絡中は、溶接電流を第1の短絡電流IS1に低減するように制御することで、電極9の不要な消耗や破損を防ぐことができる。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間および第1のスタート延長期間において、TIG電極と溶接対象物との接触を検出してからTIG電極と前記溶接対象物との接触の開放を検出するまでの間、TIG電極と溶接対象物との接触を検出した時点の電流とは異なる、予め設定された所定の第1の短絡電流波形に溶接電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
(実施の形態3)
本実施の形態において、図7から図9を用いて説明する。図7に示すTIG溶接装置1について、電流波形等の時間変化を示す図8と図9を用いてその動作を説明する。
本実施の形態において、図7から図9を用いて説明する。図7に示すTIG溶接装置1について、電流波形等の時間変化を示す図8と図9を用いてその動作を説明する。
図7は本実施の形態3におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図8は本実施の形態3における別の溶接電流波形等の時間変化を示す図であり、図9は本実施の形態3における溶接電流波形の時間変化を示す図である。
本実施の形態3のTIG溶接方法が実施の形態1と異なる主な点は、交流TIGと直流TIGの構成の差であり、実施の形態1では交流TIG溶接の動作の例を示したが、本実施の形態3では、直流TIG溶接の動作の例を示す。
以下、直流のTIG溶接装置21を用いた例について説明する。図7において、直流のTIG溶接装置21は、直流の溶接出力部2bと、直流の溶接制御部3bと、第2の設定部7bと、第4の設定部13bと、を備えている。そして、図8と図9において、T4は第4のスタート期間、IP4は第4のスタート電流、時点E7は時点E5から第4のスタート期間T4が経過した時点である。
図7において、TIG溶接装置21の直流の溶接出力部2bは、直流の溶接制御部3bからの出力に基づいて1次インバータ動作を行い、溶接に適した溶接電圧や溶接電流を正極性(電極9がマイナスであり、母材12がプラスの場合)の方向に出力する。
CPU等で構成される第2の設定部7bは、定常電流I1(例えば、500A)、第1のスタート期間T1(例えば、40msec)、第1のスタート電流IP1(例えば、100A)を、例えば作業者が入力するパラメータに連動して設定するものであり、設定された値を直流の溶接制御部3bへ出力する。
CPU等で構成される第4の設定部13bは、第4のスタート期間T4(例えば、30msec)、第4のスタート電流IP4(例えば、80A)を、例えば作業者が入力するパラメータに連動して設定するものであり、設定された値を直流の溶接制御部3bへ出力する。
CPU等で構成される直流の溶接制御部3bは、第2の設定部7bが設定する各設定値と、第4の設定部13bが設定する各設定値と、AS判定部6が出力するAS信号と、電流検出部4が検出する電流検出信号を受ける。そして、直流の溶接制御部3bは、高電圧発生部8の動作を指令するHF信号を高電圧発生部8へ出力し、溶接出力を指令する出力指令信号を直流の溶接出力部2bへ出力する。
また、直流の溶接制御部3bは、第1のスタート期間T1の間は、第1のスタート電流IP1を出力し、第4のスタート期間T4の間は、第4のスタート電流IP4を出力する。第4のスタート期間T4が完了した後は、直流の溶接制御部3bは、定常電流I1を出力するよう直流の溶接出力部2bに出力指令信号を出力する。
また、直流の溶接制御部3bは、第1のスタート期間T1の終了時に、AS判定部6が出力するAS信号が短絡を示す信号であった場合、第1のスタート延長期間T1EXT期間へ移行し、第1のスタート期間T1の終了時の溶接電流である第1のスタート電流IP1を継続して出力する。
第1のスタート延長期間T1EXT中に、AS判定部6からの信号がアーク判定を示すもとのなった場合、第1のスタート延長期間T1EXTを終了して所定の第4のスタート期間T4へ移行する。そして、第4のスタート期間T4の終了後は定常電流I1を出力する。
次に、図8において、本実施の形態3における溶接電流波形等の時間変化について説明する。
図8において、図8に示す時点E3において短絡が発生した場合、短絡が発生した時点E3において、AS判定部6は電極9と母材12とが短絡していると判定し、AS信号はローレベルとなる。
図8に示す時点E4は、第1のスタート期間T1の終了時点であり、時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点である。この時点E4において、AS判定部6が短絡を判定している場合には、第1のスタート期間T1を延長する第1のスタート延長期間T1EXTへ移行し、第1のスタート期間終了時の電流値であるIP1を維持して出力する。
図8に示す時点E5でアークが再生した場合、時点E5において第1のスタート延長期間T1EXTは終了して第4のスタート期間T4へ移行し、第4のスタート電流IP4を出力する。そして、図8に示す時点E5から第4のアークスタート期間T4を経過した時点E7以降は、定常溶接に移行して定常電流I1を出力する。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、直流のTIG溶接方法であって、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート延長期間へ移行した場合は、第1のスタート延長期間の終了後に予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する所定の期間である第4のスタート期間へ移行する。そして、本発明のTIG溶接方法は、第4のスタート期間の終了後に、第4のスタート期間の終了時の溶接電流から予め設定される定常溶接時の溶接電流である定常溶接電流となるように溶接電流を制御する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
なお、第4のスタート期間T4は第1のスタート期間T1と同じ長さの期間でもよく、また、実験や施工等によって適切な期間の値を予め求めておいてもよい。
また、第4のスタート電流IP4は、第1のスタート電流IP1と同じ電流値でもよく、また、実験や施工等によって適切な電流値を予め求めておいてもよい。
なお、図8に示すような第4のスタート期間T4を設けず、溶接電流等の時間変化を示す図9に示すように、第1のスタート延長期間T1EXT完了後直ぐに定常電流I1を出力してもよい。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、直流のTIG溶接方法であって、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート延長期間へ移行した場合には、第1のスタート延長期間の終了後に、第1のスタート延長期間の終了時の溶接電流から予め設定される定常溶接時の溶接電流である定常溶接電流となるように溶接電流を制御する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
以上のように、第1のスタート期間T1の終了時に電極9と母材12との短絡を検出している場合、第1のスタート延長期間T1EXTに移行し、第1のスタート延長期間T1EXTの状態でアーク再生を待つ。これにより、アーク再生後に再度スタート期間に復帰し、良好なアークスタート性を確保することができる。
また、定常電流I1が大電流(例えば、500A)のような場合に、短絡電流が連続通電することがなく、電極9の不要な消耗や損傷を防ぐことができる。
なお、第1のスタート電流IP1、第4のスタート電流IP4は、図中では任意の固定値として説明したが、各スタート期間中に変動する波形であってもよい。
(実施の形態4)
本実施の形態4について、図10と図11を用いて説明する。図10は本実施の形態4におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図11は本実施の形態4における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。
本実施の形態4について、図10と図11を用いて説明する。図10は本実施の形態4におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図11は本実施の形態4における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。
本実施の形態4も直流溶接の例を示すものであるが、直流溶接の例を示す実施の形態3と異なる主な点は短絡中の電流値の決定方法である。本実施の形態4では、短絡中の出力電流を設定部により設定し、より具体的には、短絡前の電流よりも電流を低減するようにしている。
以下、直流のTIG溶接装置21を用いた例について説明する。
図10において、直流のTIG溶接装置21は、第6の設定部14bを備えている。図11において、IS2は第2の短絡電流である。
図10において、CPU等で構成される第6の設定部14bは、第2の短絡電流IS2(例えば、20A)を設定するものであり、設定された値を直流の溶接制御部3bへ出力する。
CPU等で構成される直流の溶接制御部3bは、第2の設定部7bが設定する各設定値と、第4の設定部13bが設定する各設定値と、第6の設定部14bが設定する各設定値と、AS判定部6が出力するAS信号と、電流検出部4が検出する電流検出信号を受ける。そして、直流の溶接制御部3bは、高電圧発生部8の動作を指令するHF信号を高電圧発生部8へ出力し、また、溶接出力を指令する出力指令信号を直流の溶接出力部2bへ出力する。
また、直流の溶接制御部3bは、第1のスタート期間T1および第1のスタート延長期間T1EXTにおいて、電極9と母材12との短絡が発生してからアーク再生するまでの間、予め設定する第2の短絡電流IS2に溶接出力を低減する。
図11を用いて、本実施の形態の溶接電流波形等の時間変化を説明する。図11において、時点E3で短絡が発生した場合、時点E3以降は溶接電流を第2の短絡電流IS2に低減する。
なお、第2の短絡電流IS2は、第1のスタート電流IP1と同じ電流値でもよく、あるいは、第1のスタート電流IP1より小さい電流値でもよく、あるいは、定常電流I1より小さい電流値としてもよい。
また、第2の短絡電流IS2は、例えば、実験や施工等によって適切な値を予め求めておくことができ、短絡通電中に電極9が不要に溶融することがない十分低い電流値であり、かつ、アーク再生の際にアーク切れが発生しにくい電流値であればよい(例えば、20A程度)。
また、第2の短絡電流IS2は、特に電極9の損傷を防ぐことを重視する場合は、直流のTIG溶接装置21が出力可能な最低電流程度の低い電流値としてもよい(例えば、5A)。
時点E4は、第1のスタート期間T1が完了する時点であり、時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点である。この時点E4において、第1のスタート期間T1が終了して第1のスタート延長期間T1EXTへ移行し、第1のスタート期間T1が終了した時点での電流値IS2を維持して出力する。
第1のスタート延長期間T1EXT中に時点E5においてアークが再生すると、第4のスタート期間T4へ移行し、第4のスタート電流IP4を出力する。
時点E5から第4のスタート期間T4が経過した時点E7において、第4のスタート期間T4が終了して定常電流I1を出力する。
このように、電極9と母材12との短絡中は、溶接電流を第2の短絡電流IS2に低減することで、電極9の不要な消耗や破損を防ぐことができる。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間および第1のスタート延長期間において、TIG電極と溶接対象物との接触を検出してから、TIG電極と前記溶接対象物との接触の開放を検出するまでの間、TIG電極と溶接対象物との接触を検出した時点の電流とは異なる、予め設定された所定の第2の短絡電流波形に溶接電流を制御する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
以上のように本願発明によれば、第1のスタート期間中に短絡が発生した場合でも、第1のスタート期間を延長してアークが再生するまで待ち、アーク再生後にスタート波形の出力を継続する。これにより、電極の不要な消耗や損傷の発生を防ぐことができ、また溶接欠陥の発生を防ぐことができる。したがって、TIG溶接施工を行う、例えば自動車業界や建設業界といった特にアルミニウム材やマグネシウム材を用いた生産を行う業界におけるTIG溶接方法として産業上有用である。
1,21 TIG溶接装置
2 溶接出力部
2b 直流の溶接出力部
3 溶接制御部
3b 直流の溶接制御部
4 電流検出部
5 電圧検出部
6 AS判定部
7a 第1の設定部
7b 第2の設定部
8 高電圧発生部
9 電極
10 溶接トーチ
11 アーク
12 母材
13a 第3の設定部
13b 第4の設定部
14a 第5の設定部
14b 第6の設定部
15 溶接制御部
2 溶接出力部
2b 直流の溶接出力部
3 溶接制御部
3b 直流の溶接制御部
4 電流検出部
5 電圧検出部
6 AS判定部
7a 第1の設定部
7b 第2の設定部
8 高電圧発生部
9 電極
10 溶接トーチ
11 アーク
12 母材
13a 第3の設定部
13b 第4の設定部
14a 第5の設定部
14b 第6の設定部
15 溶接制御部
本発明は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法に関し、特に、TIG溶接のアークスタート方法に関する。
TIG溶接のアークスタート方法は、一般的に、TIG電極と溶接対象物との間に高周波の高電圧を重畳印加して絶縁破壊させることでアークを発生させ、所定のスタート電流を通電した後に定常電流を出力する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、所定のスタート電流の出力中にTIG電極と溶接対象物との接触である短絡が発生した場合、従来から慣用されているTIG溶接方法では、短絡したまま所定のスタート電流の通電が完了し、短絡したままスタート電流よりも大きい定常電流を通電してしまうこととなる。
このとき、特に定常電流が大きい場合(例えば、500A)、TIG電極に大きな短絡電流が通電され、TIG電極の不要な消耗や損傷が発生するといった問題があった。
図12と図13を用いて、従来から慣用されているTIG溶接装置の動作について説明する。なお、図12は、従来のTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図13は、従来の交流TIG溶接装置における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。 図12のように構成されたTIG溶接装置について、図13を用いてその動作を説明する。
図12において、TIG溶接装置101は、溶接出力を行う溶接出力部102と、溶接電流を検出する電流検出部104と、溶接条件等を設定するための第1の設定部107aと、を備えている。そして、TIG溶接装置101は、TIG電極である電極109と溶接対象物である母材112との間に高電圧を印加するための高電圧発生部108と、溶接出力部102を制御する溶接制御部115を備えている。そして、TIG溶接装置101には電極109を備えた溶接トーチ110が接続されており、電極109と母材112との間に溶接出力を供給することでアーク111が発生し、このアーク111により溶接を行う。
溶接電流波形等を示す図13において、T1は第1のスタート期間であり、T2は第2のスタート期間である。そして、IP1は第1のスタート電流であり、IP2は第2のスタート電流であり、I1は定常電流である。また、E1は起動オンした時点であり、E2は電流を検出した時点であり、E3は短絡が発生した時点であり、E4は時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点であり、E5はアークが再生した時点である。
図12において、TIG溶接装置101の溶接出力部102は、外部から給電される商用電源(例えば、3相200V等)を入力とし、溶接制御部115から制御信号に基づいて溶接出力部102を構成する図示しない1次インバータの動作及び2次インバータの動作を行う。溶接出力部102は、1次インバータの動作及び2次インバータの動作により、この正極性と逆極性とを適正に切り替えて溶接に適した溶接電圧や溶接電流を出力する。
CPU等で構成される、第1の設定部107aは、定常電流I1(例えば、500A)、第1のスタート期間T1(例えば、40msec)、第2のスタート期間T2(例えば、20msec)、第1のスタート電流IP1(例えば、−100A)、第2のスタート電流IP2(例えば、100A)を、例えば作業者が入力したパラメータに連動して設定するものであり、設定された値を溶接制御部115へ出力する。
CT(Current Transformer)等で構成される電流検出部104は、溶接電流を検出し、電流検出信号として溶接制御部115へ出力する。
CPU等で構成される溶接制御部115は、第1の設定部107aが設定する各設定値と、電流検出部104が検出する電流検出信号を受ける。そして、溶接制御部115は、高電圧発生装置108の動作を指令するHF(High Frequency)信号を高電圧発生装置108に出力し、溶接出力を指令する出力指令信号と溶接出力の極性を指令するEN(Electrode Negative)信号とを溶接出力部102に出力する。
また、溶接制御部115は、第1のスタート期間T1の間は第1のスタート電流IP1を出力するように、第2のスタート期間T2の間は第2のスタート電流IP2を出力するように、スタート期間が完了した後は定常電流I1を出力するように、溶接出力部102に出力指令信号を出力する。そして、溶接出力部102は、溶接制御部115からの出力指令信号に基づいて溶接電流を制御する。
また、溶接制御部115は、第1のスタート期間T1の終了時に、第2のスタート期間T2へ移行させるための信号であるEN信号をオン(正極性指令)する。
溶接出力部102は、溶接制御部115からのEN信号に基づき、2次インバータの動作により正極性期間中(EN信号はオン)は正極性期間として動作し、電極109から母材112へ電子が移動する方向に出力極性を切り替える。なお、逆極性期間中(EN信号はオフ)は、逆極性期間として動作し、母材112から電極109へ電子が移動する方向に出力極性を切り替える。
高電圧発生装置108は、溶接制御部115からの指令信号であるHF信号に基づき、HF信号がオンの場合はTIG溶接装置101の出力端子間へ高電圧を印加(例えば、交流15kVを印加)し、HF信号がオフの場合はTIG溶接装置101の出力端子間への高電圧の印加を停止する。
溶接出力部102が出力する溶接電流や溶接電圧は、接続されている溶接トーチ110に給電され、電極109の先端と母材112との間でアーク111が発生し、このアーク111によりアーク溶接を行う。
次に、図13を用いて、従来の交流TIG溶接装置における溶接電流波形の時間変化について説明する。
図13に示す起動オンした時点E1において、EN信号をオフして出力極性を逆極性側に設定し、1次インバータが駆動して無負荷出力を発生させる。また、HF信号をオンとすることで高電圧発生装置108が高電圧を出力し、出力された高電圧が電極109と母材112との間に印加される。
図13に示す電流を検出した時点E2において、高電圧発生装置108が印加する高電圧により電極109と母材112との間の絶縁が破壊され、アーク111が発生して溶接電流が通電する。
そして、溶接電流の通電を検出したら電流を検出したと判定してHF信号をオフし、高電圧発生装置108の高電圧の印加を停止し、第1のスタート期間T1へ移行して第1のスタート電流IP1(例えば、−100A)を出力する。
図13に示す時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点E4において、第1のスタート期間T1が完了する。そして、時点E4において、EN信号をオンして極性を正極性出力側に反転し、第2のスタート期間T2へ移行して第2のスタート電流IP2を出力する。そして、第2のスタート期間T2の終了後、定常電流I1を出力する。
なお、図13に示す第1のスタート期間T1中の時点E3において電極109と母材112とが接触する短絡が発生したとすると、短絡が発生した時点E3以降は短絡電流が通電される。
そして、図13に示す定常溶接中の時点E5において電極109と母材112の接触が開放してアーク111が再生したとすると、アーク再生したE5以降はアーク電流が通電される。すなわち、時点E3から時点E5までは短絡電流が通電され続ける。なお、アーク再生とは、アーク状態から電極109と母材112とが接触してアーク111が消滅し、その後に電極109と母材112との接触が開放して再度アークが発生した状態を意味する。
以上のように、従来技術では、第1のスタート期間T1中に短絡が発生した場合、短絡した状態のまま第2のスタート期間T2に移行し、さらに定常電流I1に移行するが、アーク再生するまで短絡電流を通電し続けることとなる。
特に、定常電流I1が大きい場合(例えば、500A)、短絡電流の通電により電極109が不要に消耗したり破損したりする。
あるいは、電極109が溶融してアーク再生時に吹き飛ばされ、溶融した電極109が母材112へ溶け込むことで溶接欠陥の原因となる場合もある。
また、アーク爆発の際に爆発箇所の周辺の酸素や水蒸気をシールドガスに巻き込み、ブローホールの原因となる場合もある。
上述のように、従来のTIG溶接方法では、第1のスタート期間中に短絡が発生した場合、短絡したまま定常溶接に至り短絡電流を流し続けるので、TIG電極である電極109の不要な消耗や損傷が発生し、また、溶接欠陥が発生する場合があった。
本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間中に短絡が発生した場合に、第1のスタート期間を延長してアーク再生するまで電流の増加を待ち、アーク再生後に電流の増加を行うようにする。これにより、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができるTIG溶接方法を提供する。
本発明のTIG溶接方法は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、溶接開始から上記TIG電極と上記溶接対象物との接触の検出を行い、上記第1のスタート期間の終了時に上記TIG電極と上記溶接対象物との接触を検出している場合には、上記TIG電極と上記溶接対象物との接触が開放するまで上記第1のスタート期間の終了時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
また、本発明のTIG溶接方法は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行い、第1のスタート期間中にTIG電極と溶接対象物との接触を検出した場合には、第1のスタート期間を終了し、TIG電極と溶接対象物との接触が開放するまで第1のスタート期間を終了した時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
以上のように本発明によれば、第1のスタート期間中に短絡が発生した場合に、第1のスタート期間を延長してアーク再生するまで電流の増加を待ち、アーク再生後に電流の増加を行うようにする。これにより、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同じ構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1から図4を用いて本実施の形態1について説明する。なお、図1のように構成されたTIG溶接装置について、図2から図4の電流波形等の時間変化を用いてその動作を説明する。
図1から図4を用いて本実施の形態1について説明する。なお、図1のように構成されたTIG溶接装置について、図2から図4の電流波形等の時間変化を用いてその動作を説明する。
図1は本実施の形態1におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図2は本実施の形態1における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。図3は本実施の形態1における溶接電流波形等の時間変化の別の例を示す図であり、図4は本実施の形態における溶接電流波形等の時間変化のさらに別の例を示す図である。
以下では、逆極性期間と正極性期間とを繰り返して溶接を行う交流TIG溶接装置を例として説明する。
図1において、TIG溶接装置1は、溶接出力部2と、溶接制御部3と、電流検出部4と、電圧検出部5と、AS(Arc or Short)判定部6と、第1の設定部7aと、高電圧発生部8と、第3の設定部13aと、を備えている。ここで、溶接出力部2は、溶接出力を出力する。溶接制御部3は、溶接出力部2を制御する。電流検出部4は、溶接電流を検出する。電圧検出部5は、溶接電圧を検出する。AS判定部6は、電圧検出部5の検出結果に基づいて、TIG電極である電極9と溶接対象物である母材12とが接触しているか否かを検出する。第1の設定部7aは、溶接条件等を設定する。高電圧発生部8は、電極9と母材12との間に高電圧を印加する。第3の設定部13aは、溶接条件等を設定する。なお、TIG溶接装置1には電極9を備えた溶接トーチ10が接続されており、電極9と母材12との間に溶接出力を供給することにより、電極9と母材12との間にアーク11を発生させて溶接を行う。
図2から図4は、電流波形等の時間変化を示す。図2から図4において、T1は第1のスタート期間であり、T2は第2のスタート期間であり、T3は第3のスタート期間であり、T1EXTは第1のスタート延長期間である。T1TERMは、短絡発生により終了した場合の第1のスタート期間である。また、IP1は第1のスタート電流であり、IP2は第2のスタート電流であり、IP3は第3のスタート電流であり、I1は定常電流である。E1は起動オンした時点であり、E2は電流を検出した時点であり、E3は短絡が発生した時点である。E4は時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点であり、E5はアークが再生した時点であり、E6は時点E5から第3のスタート期間T3が経過した時点である。
図1において、TIG溶接装置1の溶接出力部2は、外部から給電される商用電源(例えば、3相200V等)を入力とし、溶接制御部3からの制御信号に基づいて、溶接出力部2を構成する図示しない1次インバータの動作及び2次インバータ(図示せず)の動作を行う。そして、溶接出力部2は、1次インバータの動作及び2次インバータの動作により正極性と逆極性とを適正に切り替えて、溶接に適した溶接電圧や溶接電流を出力する。
なお、溶接出力部2を構成する1次インバータは、通常、PWM(Pulse Wide Modulation)動作やフェーズシフト動作にて駆動される図示しないIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、図示しないMOSFET(Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)や、図示しない1次整流ダイオードや、平滑用電解コンデンサや、電力変換用変圧器等で構成される。
また、溶接出力部2を構成する図示しない2次インバータは、通常、IGBTを用いてハーフブリッジやフルブリッジで構成され、出力極性を切り替える。
ここで、正極性とは、アークプラズマ中の電子の移動方向が電極9から母材12へ向かう方向であり、電極9がマイナスであって母材がプラスの場合をいう。
また、逆極性とは、アークプラズマ中の電子の移動方向が母材12から電極9へ向かう方向であり、電極9がプラスであって母材12がマイナスの場合をいう。
CPU等で構成される第1の設定部7aは、定常電流I1(例えば、500A)や、第1のスタート期間T1(例えば40msec)や、第2のスタート期間T2(例えば、20msec)や、第1のスタート電流IP1(例えば、−100A)や、第2のスタート電流IP2(例えば100A)を、例えば作業者が入力したパラメータ等に基づいて設定するものであり、設定された値を溶接制御部3へ出力する。
CPU等で構成される第3の設定部13aは、第3のスタート期間T3(例えば、30msec)や第3のスタート電流IP3(例えば、−80A)を、例えば作業者が入力したパラメータ等に基づいて設定するものであり、設定された値を溶接制御部3へ出力する。
電圧測定器等で構成されTIG溶接装置1の出力端子間の電圧を測定する電圧検出部5は、溶接電圧を検出し、電圧検出信号としてAS判定部6へ出力する。
CPU等で構成されるAS判定部6は、電圧検出部5からの電圧検出信号を入力とする。電圧検出信号の絶対値がアーク判定中に予め設定される検出レベル(例えば、10V)に達した(低下した)場合、AS判定部6は、TIG電極である電極9と溶接対象物である母材12とが接触している(以下、「短絡」と呼ぶ。)と判定し、AS信号を短絡判定(ローレベル)とする。
また、短絡判定中に予め設定される検出レベル(例えば、15V)に達した(増加した)場合、TIG電極である電極9と溶接対象物である母材12との間にアークが発生している(以下、「アーク中」、または「アーク再生」と呼ぶ。)と判定し、AS信号をアーク判定(ハイレベル)とする。
なお、電流の検出が無い無負荷電圧の出力中は、AS信号はアーク判定(ハイレベル)となる。
CT等で構成される電流検出部4は、溶接電流を検出し、電流検出信号として溶接制御部3へ出力する。
CPU等で構成される溶接制御部3は、第1の設定部7aが設定する各設定値と、第3の設定部13aが設定する各設定値と、AS判定部6が出力するAS信号と、電流検出部4が検出する電流検出信号を受け、高電圧発生部8の動作を指令するHF信号を高電圧発生部8へ出力する。また、溶接制御部3は、溶接出力を指令する出力指令信号と溶接出力の極性を指令するEN信号とを溶接出力部2へ出力する。
また、溶接制御部3は、TIG溶接装置1の外部からの起動信号(起動オン)を受けてHF信号をオン(ハイレベル)し、また、電流検出部4からの信号に基づいて溶接電流を検出したと判定したら、HF信号をオフ(ローレベル)する。なお、電流検出の判定については、例えば、電流検出部4が検出した電流値が2.5A以上の場合には電流検出と判定する。
また、溶接制御部3は、外部からの起動信号(起動オン)を受け、溶接出力部2を構成する1次インバータを駆動し、電極9と母材12の間に溶接電圧を供給する。
また、溶接制御部3は、外部からの起動信号(起動オン)を受けてEN信号をオフ(ローレベル、逆極性指令)し、後述する第2のスタート期間T2を開始する時点でEN信号をオン(ハイレベル、正極性指令)する。
また、溶接制御部3は、第1のスタート期間T1の間は第1のスタート電流IP1を出力するように溶接出力部2に出力指令信号を出力し、第2のスタート期間T2の間は第2のスタート電流IP2を出力するように溶接出力部2に出力指令信号を出力する。そして、溶接制御部3は、第3のスタート期間T3の間は第3のスタート電流IP3を出力するように溶接出力部2に出力指令信号を出力し、第2のスタート期間T2が完了した後は定常電流I1を出力するように溶接出力部2に出力指令信号を出力する。
また、溶接制御部3は、第1のスタート期間T1の終了時に、AS判定部6からのAS信号が短絡判定を示すものであった場合、図2に示すように、第1のスタート延長期間T1EXTへ移行し、第1のスタート期間T1の終了時の溶接電流である第1のスタート電流IP1を継続して出力するように溶接出力部2を制御する。そして、第1のスタート延長期間T1EXT中に、AS判定部6からのAS信号がアーク判定を示すものとなった場合、第1のスタート延長期間T1EXTを終了して所定の第3のスタート期間T3へ移行する。さらに、第3のスタート期間T3が終了した後、第2のスタート期間T2へ移行してEN信号をオン(正極性指令)する。
溶接出力部2は、溶接制御部3からのEN信号に基づき、2次インバータの動作により正極性期間中(EN信号はオン)は正極性期間として動作し、電極9から母材12へ電子が移動する方向に出力極性を切り替える。そして、逆極性期間中(EN信号はオフ)は、逆極性期間として動作し、溶接出力部2は、母材12から電極9へ電子が移動する方向に出力極性を切り替える。
また、溶接出力部2は、溶接制御部3からの出力指令信号に基づき、1次インバータの動作により、第1のスタート期間T1の間は第1のスタート電流IP1を出力する。そして、溶接出力部2は、第2のスタート期間T2の間は第2のスタート電流IP2を出力し、第3のスタート期間T3の間は第3のスタート電流IP3を出力し、第2のスタート期間T2が完了した後は定常電流I1を出力する。
フライバックトランス等で構成される高電圧発生部8は、溶接制御部3からのHF信号に基づき、HF信号がオンの場合はTIG溶接装置1の出力端子間へ高電圧を印加し(例えば、15kVを印加)、HF信号がオフの場合はTIG溶接装置1の出力端子間への高電圧の印加を停止する。
溶接出力部2が出力する溶接電流や溶接電圧は、接続されている溶接トーチ10に給電され、タングステン等で構成されるTIG電極である電極9の先端とアルミニウム材等の溶接対象物である母材12との間でアーク11を発生してアーク溶接を行う。
次に、溶接電流波形等の時間変化を示す図2を用いて、本実施の形態1の溶接方法について説明する。
図2に示す起動オンした時点E1において、1次インバータがオンして無負荷出力を発生させ、HF信号をオンし、高電圧発生部8が出力する高電圧が電極9と母材12との間に印加される。
この起動オンは、例えば、TIG溶接装置1の外部にある図示しないトーチスイッチや自動機のシーケンサー等により指令される。
図2に示す時点E2において、高電圧発生部8が印加する高電圧により電極9と母材12との間の絶縁が破壊されてアークが発生し、溶接電流が通電して電流が検出される。
溶接制御部3は、電流検出部4を介して溶接電流の通電を検出し、電流検出を判定したらHF信号をオフして高電圧発生部8の高電圧の印加を停止し、第1のスタート期間T1へ移行する。
第1のスタート期間T1中は、溶接制御部3は第1のスタート電流IP1(例えば、−100A)を出力するように溶接出力部2を制御する。
図2に示す時点E3において、電極9と母材12との短絡が発生した場合、AS判定部6は短絡判定をして、AS信号はローレベルとなる。なお、電極9と母材12との短絡は、例えば、溶接作業者の熟練不足による作業ミスや、ワーク精度やジグ精度が悪い場合等に発生する。
図2に示す第1のスタート期間T1の終了時点であり、時点E2から第1のアークスタート期間T1が経過した時点E4において、電極9と母材12との短絡状態が継続している。この時に、AS判定部6が短絡であると判定していると、第1のスタート期間T1を延長する第1のスタート延長期間T1EXTへ移行する。溶接制御部3は、第1のスタート期間T1の終了時点の電流値であるIP1を維持して出力するように溶接出力部2を制御する。
その後、図2に示す時点E5において電極9と母材12との接触(短絡)が開放してアーク再生したとする。ここで、アーク再生は、例えば、作業者が意図的に電極9を母材12から離すことで発生する、あるいは、ワーク形状や自動機の動作により母材12に対して電極9が移動することで偶発的に発生する。
図2に示すアーク再生した時点E5において、第1のスタート延長期間T1EXTは終了し、第1のスタート期間T1や第1のスタート延長期間T1EXTと同じ極性である第3のスタート期間T3へ移行する。溶接制御部3は第3のスタート電流IP3を出力するように溶接出力部2を制御する。なお、第3のスタート期間T3の長さは、例えば、第1のスタート期間T1と同じとしてもよく、あるいは、実験や施工等を行って予め求めておくこともできる。
また、第3のスタート電流IP3の大きさは、例えば、第1のスタート電流IP1と同じでもよく、あるいは、実験や施工等によって求めておくこともできる。
図2に示す時点E5から第3のスタート期間T3が経過した時点E6において、第3のスタート期間T3は終了し、溶接制御部3は、EN信号をオンし、極性を正極性出力側に反転し、第2のスタート期間T2へ移行する。
このように、時点E6における極性反転の前に、第3のアークスタート期間T3おいて一定の入熱を印加することで、時点E6における極性反転の際に、アーク切れが発生しにくくなり、良好な溶接を行うことができる。そして、第2のスタート期間T2の終了の後は、溶接制御部3は定常溶接時の定常電流I1を出力するように溶接出力部2を制御する。
なお、図2では、第1のスタート延長期間T1EXT完了後に、第3のスタート期間T3に移行し、その後、第2のスタート期間T2へ移行する例を示した。しかし、図3に示すように、図2のように第3のスタート期間T3を設けずに、第1のスタート延長期間T1EXT完了後に第2のスタート期間T2へ移行するようにしてもよい。
また、図4で示すように、溶接開始から、所定の第1のスタート期間T1の途中で短絡を検出した場合、短絡を検出した時点で第1のスタート期間T1を強制的に終了させ、第1のスタート延長期間T1EXTへ移行するようにしてもよい。なお、この場合、第1のスタート期間は、図2に示す第1のスタート期間T1よりも短い図4に示す第1のスタート期間T1TERMとなる。
図4に示すように、所定の長さの第1のスタート期間T1の完了を待たず、電極9と母材12との短絡の発生時に第1のスタート期間T1を強制的に終了させて第1のスタート延長期間T1EXTに移行させる。これにより、より早く短絡中の処理を実施することができ、例えば、第1のスタート期間T1が長く設定されているような場合(例えば、400msec)に有効である。
以上のように、第1のスタート期間T1の終了時点で電極9と母材12との短絡を検出している場合に、第1のスタート期間T1の終了時点の電流を維持する第1のスタート延長期間T1EXTに移行する。そして、第1のスタート期間T1の延長状態としてアーク再生を待ち、アーク再生後に第2のスタート期間T2に復帰するように制御することにより、良好なアークスタート性を確保することができる。
また、電極9と母材12との短絡が継続した状態で定常溶接状態に移行することがないので、スタート期間から定常状態にわたって短絡電流が連続通電することがない。これにより、特に、定常電流I1が大電流(例えば、500A)のような場合に、電極9の不要な消耗や損傷を防ぐことができる。
また、定常電流I1が大電流の交流の場合、従来のTIG溶接装置では、第1のスタート期間T1に短絡が発生した場合、短絡が継続したまま定常溶接に移行する場合があった。この場合には、大電流であると共に短絡状態であることから、より高い電流の状態で極性反転されることとなり、この極性反転のための2次インバータのスイッチングにより高いサージ電圧が発生する。この高いサージ電圧により2次インバータを構成する半導体素子が破損する危険があった。しかし、本実施の形態1では、上述のように従来のTIG溶接装置のような状態は生じないので、従来のTIG溶接装置のような危険性がない。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間の終了時にTIG電極と溶接対象物との接触を検出している場合には、TIG電極と溶接対象物との接触が開放するまで第1のスタート期間の終了時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
また、本発明のTIG溶接方法は、TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間中にTIG電極と溶接対象物との接触を検出した場合には、第1のスタート期間を終了し、TIG電極と溶接対象物との接触が開放するまで第1のスタート期間を終了した時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
また、本発明のTIG溶接方法は、正極性期間と逆極性期間とを交互に繰り返して溶接を行う交流のTIG溶接方法であって、一方の極性期間である第1のスタート期間の後に前記第1のスタート期間とは極性が異なる他方の極性期間である第2のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート延長期間へ移行した場合には、第1のスタート延長期間の終了後に一方の極性期間である第1のスタート延長期間から他方の極性期間である第2のスタート期間へ転流する方法としてもよい。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
また、本発明のTIG溶接方法は、正極性期間と逆極性期間とを交互に繰り返して溶接を行う交流のTIG溶接方法であって、一方の極性期間である第1のスタート期間の後に前記第1のスタート期間とは極性が異なる他方の極性期間である第2のスタート期間を有し、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート延長期間へ移行した場合は、第1のスタート延長期間の終了後に所定の溶接電流波形となるように電流を通電する所定の期間であり、第1のスタート延長期間と同じ極性である第3のスタート期間へ移行する。そして、本発明のTIG溶接方法は、第3のスタート期間の終了後に一方の極性期間である第3のスタート期間から他方の極性期間である第2のスタート期間へ転流する方法としてもよい。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
なお、本実施の形態1においては、定常電流I1として正極性の直流出力の例について説明したが、定常電流として交流出力を用いる場合にも同様の制御を行うことで同様の効果を得ることできる。
なお、第1のスタート電流IP1、第2のスタート電流IP2、第3のスタート電流IP3は、図中では任意の固定値として説明したが、各スタート期間中に変動する波形であってもよい。
また、短絡の継続時間を計時し、継続時間が長時間(例えば、1秒)となった場合には異常短絡状態と判定し、溶接出力を停止するようにしてもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態2について、図5と図6を用いて説明する。図5は、本実施の形態2におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図6は、本実施の形態2における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。
本実施の形態2について、図5と図6を用いて説明する。図5は、本実施の形態2におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図6は、本実施の形態2における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。
本実施の形態2のTIG溶接方法が実施の形態1と異なる主な点は、短絡継続中の電流値の決定方法であり、本実施の形態2では、短絡中の出力電流を設定部により設定し、具体的には電流値を低減するようにしている。
以下、逆極性期間と正極性期間とを繰り返して溶接を行う交流TIG溶接装置を用いた例について説明する。
図5において、第5の設定部14aが示されている点が実施の形態1の図1と異なり、図6において、第1の短絡電流IS1が示されている点が実施の形態1の図2から図4と異なる。
図5において、CPU等で構成される第5の設定部14aは、短絡継続中の電流である第1の短絡電流IS1(例えば、−20A)を設定するものであり、設定された値を溶接制御部3へ出力する。
CPU等で構成される溶接制御部3は、第1の設定部7aが設定する各設定値と、第3の設定部13aが設定する各設定値と、第5の設定部14aが設定する各設定値と、AS判定部6が出力するAS信号と、電流検出部4が検出する電流検出信号を受ける。そして、溶接制御部3は、高電圧発生部8の動作を指令するHF信号を高電圧発生部8へ出力し、溶接出力を指令する出力指令信号と、溶接出力の極性を指令するEN信号とを溶接出力部2へ出力する。
また、溶接制御部3は、第1のスタート期間T1および第1のスタート延長期間T1EXTにおいて、短絡してからアーク再生するまでの間、所定の第1の短絡電流IS1に溶接出力を低減する。
次に、図6を用いて、本実施の形態2における溶接電流波形等の時間変化について説明する。
図6に示す起動オンした時点E1において、TIG溶接装置1は起動し、無負荷電圧と高電圧が電極9と母材12のとの間に印加される。
図6に示す時点E2において、電極9と母材12との間の絶縁が破壊されて電流が流れ、電流検出部4により電流が検出され、高電圧発生部8による高電圧の印加が停止し、第1のスタート期間T1に移行する。
図6に示す時点E3において電極9と母材12との短絡が発生したとすると、時点E3以降は溶接電流を第1の短絡電流IS1に低減する。
そして、第1のスタート期間T1の終了時点であり、時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点である時点E4において、第1のスタート期間T1は終了する。
第1のスタート期間T1の終了時点でも電極9と母材12とが短絡しているので、AS判定部6は短絡判定である。したがって、第1のスタート延長期間T1EXTへ移行し、第1のスタート期間T1が終了した時点の電流値である第1の短絡電流IS1を維持する。
なお、第1の短絡電流IS1は、第1のスタート電流IP1より絶対値が小さい値でもよく、第1の短絡電流IS1は、定常電流I1よりも絶対値が小さい値としてもよい。
また、第1の短絡電流IS1は、例えば、実験や施工等によって適切な値を求めておくことができ、短絡通電中に電極9が不要に溶融することがない低い電流値で、かつ、アーク再生の際にアーク切れが発生しにくい所定の大きさの電流値であればよい(例えば、20A程度)。
また、第1の短絡電流IS1は、特に電極9の損傷を防ぐことを重視する場合は、TIG溶接装置1が出力可能な、最低電流値程度の低い値としてもよい(例えば、5A)。
次に、図6に示すように、第1のスタート延長期間T1EXT中の時点E5においてアーク再生し、時点E5から第3のスタート期間T3へ移行し、第3のスタート電流IP3を出力する。
時点E5から第3のスタート期間T3が経過した点E6において、第3のスタート期間T3は終了して極性反転を行い、第2のスタート期間T2へ移行し、第2のスタート期間T2終了後は定常電流I1を出力する。
このように、電極9と母材12との短絡中は、溶接電流を第1の短絡電流IS1に低減するように制御することで、電極9の不要な消耗や破損を防ぐことができる。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間および第1のスタート延長期間において、TIG電極と溶接対象物との接触を検出してからTIG電極と前記溶接対象物との接触の開放を検出するまでの間、TIG電極と溶接対象物との接触を検出した時点の電流とは異なる、予め設定された所定の第1の短絡電流波形に溶接電流を制御する方法としてもよい。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
(実施の形態3)
本実施の形態において、図7から図9を用いて説明する。図7に示すTIG溶接装置1について、電流波形等の時間変化を示す図8と図9を用いてその動作を説明する。
本実施の形態において、図7から図9を用いて説明する。図7に示すTIG溶接装置1について、電流波形等の時間変化を示す図8と図9を用いてその動作を説明する。
図7は本実施の形態3におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図8は本実施の形態3における別の溶接電流波形等の時間変化を示す図であり、図9は本実施の形態3における溶接電流波形の時間変化を示す図である。
本実施の形態3のTIG溶接方法が実施の形態1と異なる主な点は、交流TIGと直流TIGの構成の差であり、実施の形態1では交流TIG溶接の動作の例を示したが、本実施の形態3では、直流TIG溶接の動作の例を示す。
以下、直流のTIG溶接装置21を用いた例について説明する。図7において、直流のTIG溶接装置21は、直流の溶接出力部2bと、直流の溶接制御部3bと、第2の設定部7bと、第4の設定部13bと、を備えている。そして、図8と図9において、T4は第4のスタート期間、IP4は第4のスタート電流、時点E7は時点E5から第4のスタート期間T4が経過した時点である。
図7において、TIG溶接装置21の直流の溶接出力部2bは、直流の溶接制御部3bからの出力に基づいて1次インバータ動作を行い、溶接に適した溶接電圧や溶接電流を正極性(電極9がマイナスであり、母材12がプラスの場合)の方向に出力する。
CPU等で構成される第2の設定部7bは、定常電流I1(例えば、500A)、第1のスタート期間T1(例えば、40msec)、第1のスタート電流IP1(例えば、100A)を、例えば作業者が入力するパラメータに連動して設定するものであり、設定された値を直流の溶接制御部3bへ出力する。
CPU等で構成される第4の設定部13bは、第4のスタート期間T4(例えば、30msec)、第4のスタート電流IP4(例えば、80A)を、例えば作業者が入力するパラメータに連動して設定するものであり、設定された値を直流の溶接制御部3bへ出力する。
CPU等で構成される直流の溶接制御部3bは、第2の設定部7bが設定する各設定値と、第4の設定部13bが設定する各設定値と、AS判定部6が出力するAS信号と、電流検出部4が検出する電流検出信号を受ける。そして、直流の溶接制御部3bは、高電圧発生部8の動作を指令するHF信号を高電圧発生部8へ出力し、溶接出力を指令する出力指令信号を直流の溶接出力部2bへ出力する。
また、直流の溶接制御部3bは、第1のスタート期間T1の間は、第1のスタート電流IP1を出力し、第4のスタート期間T4の間は、第4のスタート電流IP4を出力する。第4のスタート期間T4が完了した後は、直流の溶接制御部3bは、定常電流I1を出力するよう直流の溶接出力部2bに出力指令信号を出力する。
また、直流の溶接制御部3bは、第1のスタート期間T1の終了時に、AS判定部6が出力するAS信号が短絡を示す信号であった場合、第1のスタート延長期間T1EXT期間へ移行し、第1のスタート期間T1の終了時の溶接電流である第1のスタート電流IP1を継続して出力する。
第1のスタート延長期間T1EXT中に、AS判定部6からの信号がアーク判定を示すものとなった場合、第1のスタート延長期間T1EXTを終了して所定の第4のスタート期間T4へ移行する。そして、第4のスタート期間T4の終了後は定常電流I1を出力する。
次に、図8において、本実施の形態3における溶接電流波形等の時間変化について説明する。
図8において、図8に示す時点E3において短絡が発生した場合、短絡が発生した時点E3において、AS判定部6は電極9と母材12とが短絡していると判定し、AS信号はローレベルとなる。
図8に示す時点E4は、第1のスタート期間T1の終了時点であり、時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点である。この時点E4において、AS判定部6が短絡を判定している場合には、第1のスタート期間T1を延長する第1のスタート延長期間T1EXTへ移行し、第1のスタート期間終了時の電流値であるIP1を維持して出力する。
図8に示す時点E5でアークが再生した場合、時点E5において第1のスタート延長期間T1EXTは終了して第4のスタート期間T4へ移行し、第4のスタート電流IP4を出力する。そして、図8に示す時点E5から第4のアークスタート期間T4を経過した時点E7以降は、定常溶接に移行して定常電流I1を出力する。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、直流のTIG溶接方法であって、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート延長期間へ移行した場合は、第1のスタート延長期間の終了後に予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する所定の期間である第4のスタート期間へ移行する。そして、本発明のTIG溶接方法は、第4のスタート期間の終了後に、第4のスタート期間の終了時の溶接電流から予め設定される定常溶接時の溶接電流である定常溶接電流となるように溶接電流を制御する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
なお、第4のスタート期間T4は第1のスタート期間T1と同じ長さの期間でもよく、また、実験や施工等によって適切な期間の値を予め求めておいてもよい。
また、第4のスタート電流IP4は、第1のスタート電流IP1と同じ電流値でもよく、また、実験や施工等によって適切な電流値を予め求めておいてもよい。
なお、図8に示すような第4のスタート期間T4を設けず、溶接電流等の時間変化を示す図9に示すように、第1のスタート延長期間T1EXT完了後直ぐに定常電流I1を出力してもよい。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、直流のTIG溶接方法であって、溶接開始からTIG電極と溶接対象物との接触の検出を行う。そして、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート延長期間へ移行した場合には、第1のスタート延長期間の終了後に、第1のスタート延長期間の終了時の溶接電流から予め設定される定常溶接時の溶接電流である定常溶接電流となるように溶接電流を制御する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
以上のように、第1のスタート期間T1の終了時に電極9と母材12との短絡を検出している場合、第1のスタート延長期間T1EXTに移行し、第1のスタート延長期間T1EXTの状態でアーク再生を待つ。これにより、アーク再生後に再度スタート期間に復帰し、良好なアークスタート性を確保することができる。
また、定常電流I1が大電流(例えば、500A)のような場合に、短絡電流が連続通電することがなく、電極9の不要な消耗や損傷を防ぐことができる。
なお、第1のスタート電流IP1、第4のスタート電流IP4は、図中では任意の固定値として説明したが、各スタート期間中に変動する波形であってもよい。
(実施の形態4)
本実施の形態4について、図10と図11を用いて説明する。図10は本実施の形態4におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図11は本実施の形態4における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。
本実施の形態4について、図10と図11を用いて説明する。図10は本実施の形態4におけるTIG溶接装置の概略構成を示す図であり、図11は本実施の形態4における溶接電流波形等の時間変化を示す図である。
本実施の形態4も直流溶接の例を示すものであるが、直流溶接の例を示す実施の形態3と異なる主な点は短絡中の電流値の決定方法である。本実施の形態4では、短絡中の出力電流を設定部により設定し、より具体的には、短絡前の電流よりも電流を低減するようにしている。
以下、直流のTIG溶接装置21を用いた例について説明する。 図10において、直流のTIG溶接装置21は、第6の設定部14bを備えている。図11において、IS2は第2の短絡電流である。
図10において、CPU等で構成される第6の設定部14bは、第2の短絡電流IS2(例えば、20A)を設定するものであり、設定された値を直流の溶接制御部3bへ出力する。
CPU等で構成される直流の溶接制御部3bは、第2の設定部7bが設定する各設定値と、第4の設定部13bが設定する各設定値と、第6の設定部14bが設定する各設定値と、AS判定部6が出力するAS信号と、電流検出部4が検出する電流検出信号を受ける。そして、直流の溶接制御部3bは、高電圧発生部8の動作を指令するHF信号を高電圧発生部8へ出力し、また、溶接出力を指令する出力指令信号を直流の溶接出力部2bへ出力する。
また、直流の溶接制御部3bは、第1のスタート期間T1および第1のスタート延長期間T1EXTにおいて、電極9と母材12との短絡が発生してからアーク再生するまでの間、予め設定する第2の短絡電流IS2に溶接出力を低減する。
図11を用いて、本実施の形態の溶接電流波形等の時間変化を説明する。図11において、時点E3で短絡が発生した場合、時点E3以降は溶接電流を第2の短絡電流IS2に低減する。
なお、第2の短絡電流IS2は、第1のスタート電流IP1と同じ電流値でもよく、あるいは、第1のスタート電流IP1より小さい電流値でもよく、あるいは、定常電流I1より小さい電流値としてもよい。
また、第2の短絡電流IS2は、例えば、実験や施工等によって適切な値を予め求めておくことができ、短絡通電中に電極9が不要に溶融することがない十分低い電流値であり、かつ、アーク再生の際にアーク切れが発生しにくい電流値であればよい(例えば、20A程度)。
また、第2の短絡電流IS2は、特に電極9の損傷を防ぐことを重視する場合は、直流のTIG溶接装置21が出力可能な最低電流程度の低い電流値としてもよい(例えば、5A)。
時点E4は、第1のスタート期間T1が完了する時点であり、時点E2から第1のスタート期間T1が経過した時点である。この時点E4において、第1のスタート期間T1が終了して第1のスタート延長期間T1EXTへ移行し、第1のスタート期間T1が終了した時点での電流値IS2を維持して出力する。
第1のスタート延長期間T1EXT中に時点E5においてアークが再生すると、第4のスタート期間T4へ移行し、第4のスタート電流IP4を出力する。
時点E5から第4のスタート期間T4が経過した時点E7において、第4のスタート期間T4が終了して定常電流I1を出力する。
このように、電極9と母材12との短絡中は、溶接電流を第2の短絡電流IS2に低減することで、電極9の不要な消耗や破損を防ぐことができる。
すなわち、本発明のTIG溶接方法は、第1のスタート期間および第1のスタート延長期間において、TIG電極と溶接対象物との接触を検出してから、TIG電極と前記溶接対象物との接触の開放を検出するまでの間、TIG電極と溶接対象物との接触を検出した時点の電流とは異なる、予め設定された所定の第2の短絡電流波形に溶接電流を制御する方法である。
この方法により、電極の不要な消耗や損傷を発生させることなく、また、溶接欠陥の発生を防ぐことができる。
以上のように本願発明によれば、第1のスタート期間中に短絡が発生した場合でも、第1のスタート期間を延長してアークが再生するまで待ち、アーク再生後にスタート波形の出力を継続する。これにより、電極の不要な消耗や損傷の発生を防ぐことができ、また溶接欠陥の発生を防ぐことができる。したがって、TIG溶接施工を行う、例えば自動車業界や建設業界といった特にアルミニウム材やマグネシウム材を用いた生産を行う業界におけるTIG溶接方法として産業上有用である。
1,21 TIG溶接装置
2 溶接出力部
2b 直流の溶接出力部
3 溶接制御部
3b 直流の溶接制御部
4 電流検出部
5 電圧検出部
6 AS判定部
7a 第1の設定部
7b 第2の設定部
8 高電圧発生部
9 電極
10 溶接トーチ
11 アーク
12 母材
13a 第3の設定部
13b 第4の設定部
14a 第5の設定部
14b 第6の設定部
15 溶接制御部
2 溶接出力部
2b 直流の溶接出力部
3 溶接制御部
3b 直流の溶接制御部
4 電流検出部
5 電圧検出部
6 AS判定部
7a 第1の設定部
7b 第2の設定部
8 高電圧発生部
9 電極
10 溶接トーチ
11 アーク
12 母材
13a 第3の設定部
13b 第4の設定部
14a 第5の設定部
14b 第6の設定部
15 溶接制御部
Claims (8)
- TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、
溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、
溶接開始から前記TIG電極と前記溶接対象物との接触の検出を行い、
前記第1のスタート期間の終了時に前記TIG電極と前記溶接対象物との接触を検出している場合には、前記TIG電極と前記溶接対象物との接触が開放するまで前記第1のスタート期間の終了時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行するTIG溶接方法。 - TIG電極と溶接対象物との間にアークを発生させて溶接を行うTIG溶接方法であって、
溶接開始から予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する期間である第1のスタート期間を有し、
溶接開始から前記TIG電極と前記溶接対象物との接触の検出を行い、
前記第1のスタート期間中に前記TIG電極と前記溶接対象物との接触を検出した場合には、前記第1のスタート期間を終了し、前記TIG電極と前記溶接対象物との接触が開放するまで前記第1のスタート期間を終了した時の電流を維持する第1のスタート延長期間へ移行するTIG溶接方法。 - 正極性期間と逆極性期間とを交互に繰り返して溶接を行う交流のTIG溶接方法であって、一方の極性期間である第1のスタート期間の後に前記第1のスタート期間とは極性が異なる他方の極性期間である第2のスタート期間を有し、
溶接開始から前記TIG電極と前記溶接対象物との接触の検出を行い、
前記第1のスタート延長期間へ移行した場合には、前記第1のスタート延長期間の終了後に一方の極性期間である前記第1のスタート延長期間から前記他方の極性期間である前記第2のスタート期間へ切り替える請求項1または2のいずれか1項に記載のTIG溶接方法。 - 正極性期間と逆極性期間とを交互に繰り返して溶接を行う交流のTIG溶接方法であって、一方の極性期間である第1のスタート期間の後に前記第1のスタート期間とは極性が異なる他方の極性期間である第2のスタート期間を有し、
溶接開始から前記TIG電極と前記溶接対象物との接触の検出を行い、
前記第1のスタート延長期間へ移行した場合は、前記第1のスタート延長期間の終了後に所定の溶接電流波形となるように電流を通電する所定の期間であり、前記第1のスタート延長期間と同じ極性である第3のスタート期間へ移行し、
前記第3のスタート期間の終了後に一方の極性期間である前記第3のスタート期間から前記他方の極性期間である前記第2のスタート期間へ切り替える請求項1または2のいずれか1項に記載のTIG溶接方法。 - 前記第1のスタート期間および前記第1のスタート延長期間において、前記TIG電極と前記溶接対象物との接触を検出してから前記TIG電極と前記溶接対象物との接触の開放を検出するまでの間、前記TIG電極と前記溶接対象物との接触を検出した時点の電流とは異なる予め設定された所定の第1の短絡電流波形に溶接電流を制御する請求項4に記載のTIG溶接方法。
- 直流のTIG溶接方法であって、溶接開始から前記TIG電極と前記溶接対象物との接触の検出を行い、第1のスタート延長期間へ移行した場合には、前記第1のスタート延長期間の終了後に、前記第1のスタート延長期間の終了時の溶接電流から予め設定される定常溶接時の溶接電流である定常溶接電流となるように溶接電流を制御する請求項1または2のいずれか1項に記載のTIG溶接方法。
- 直流のTIG溶接方法であって、溶接開始から前記TIG電極と前記溶接対象物との接触の検出を行い、
第1のスタート延長期間へ移行した場合は、前記第1のスタート延長期間の終了後に予め設定された所定の溶接電流波形となるように電流を通電する所定の期間である第4のスタート期間へ移行し、
前記第4のスタート期間の終了後に、前記第4のスタート期間の終了時の溶接電流から予め設定される定常溶接時の溶接電流である定常溶接電流となるように溶接電流を制御する請求項1または2のいずれか1項に記載のTIG溶接方法。 - 前記第1のスタート期間および前記第1のスタート延長期間において、前記TIG電極と前記溶接対象物との接触を検出してから、前記TIG電極と前記溶接対象物との接触の開放を検出するまでの間、
前記TIG電極と前記溶接対象物との接触を検出した時点の電流とは異なる予め設定された所定の第2の短絡電流波形に溶接電流を制御する請求項6に記載のTIG溶接方法。
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