JPWO2012008596A1 - 樹脂組成物の引張強度を向上させる方法 - Google Patents
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Abstract
本発明の目的は、難燃剤として樹脂に配合した場合、硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性に優れ、かつ加工性や分散性も問題のない範囲である樹脂組成物となる水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤、それを含む樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。本発明は、水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層および第2被覆層を含み、(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、(ii)第1被覆層は、ケイ素などの元素の無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、シランカップリング剤などの有機化合物を含み、有機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%である、ことを特徴とする難燃剤それを含む樹脂組成物およびその成形品である。
Description
本発明は、難燃剤、それを含む樹脂組成物およびその成形品に関する。さらに詳しくは、本発明は、難燃剤として樹脂に配合した場合、硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性に優れ、かつ加工性や分散性も良好な樹脂組成物となる水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤に関する。
水酸化マグネシウム粒子は、火災時に有害なガスや腐食性のガスや大量の黒煙を発生させないこと、埋め立て等のリサイクル時に問題となる毒性をもたないこと等の理由から、ハロゲンフリーの難燃剤の1つとして樹脂に配合され電線やケーブルをはじめとする多種多様な成形体として広く使用されている。
しかし一方で水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として利用する場合は、一般に樹脂に対して多量に配合しなければならない。また水酸化マグネシウム粒子の表面は親水性であるため親油性である樹脂へ分散させることは元来難しい。そのため分散が十分でない場合には、樹脂組成物の機械的物性や成型特性を低下させる問題が起こることが知られている。
また水酸化マグネシウム粒子は物質固有の性質により酸に対する反応性が高い。そのため水酸化マグネシウム粒子を含有する樹脂組成物が空気中または水中に長時間置かれた場合、配合された水酸化マグネシウム粒子が空気中または水中に存在する炭酸と反応し、樹脂組成物表面が白くなる、所謂表面白化現象を引き起こすことも知られている。
これらの問題を解決するために様様な方法が提案されている。例えば、水酸化マグネシウム粒子を有機化合物で表面処理することによって樹脂へ配合する際の分散性を改善する方法が提案されている(特許文献1)。
また水酸化マグネシウム粒子表面をケイ素化合物、ホウ素化合物およびアルミニウム化合物などの無機化合物で被覆することが提案されている。また無機化合物による被覆をした後に、高級脂肪酸類、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、アルコールリン酸エステル類などの有機化合物で被覆すると、高い耐酸性が得られることが提案されている(特許文献2)。
このように水酸化マグネシウム粒子表面に無機化合物からなる被覆層と有機化合物からなる被覆層を持つ水酸化マグネシウム粒子を主体とする難燃剤は提案されてきた。しかしながら、それらの難燃剤の被覆目的は、耐酸性、樹脂に対する分散性の改良を目的とするものであり、樹脂組成物の硬度、引張強度、磨耗特性の改良については何の検討もされておらず、それら特性が不十分であった。
一方、樹脂組成物の硬度、引張強度、磨耗特性の改良については、例えば、脂肪酸等で表面処理された水酸化マグネシウム粒子を使用し、水酸化マグネシウム粒子以外の樹脂や添加剤の部分によって磨耗特性を改良する方法が提案されている(特許文献3)。
また難燃剤としてシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム粒子と脂肪酸等で表面処理された水酸化マグネシウム粒子を併用したり、シラン架橋することで硬度、引張強度を改良することが提案されている(特許文献4)。
しかしながらこれらの方法は特定の樹脂組成でなければならないこと、架橋させることが必須であること、数種類の水酸化マグネシウム粒子を併用しなければならない等の限定のいずれかが存在するうえに、硬度、引張強度、磨耗特性が未だ十分でなく、さらに耐酸性が悪いという欠点もあった。
特開昭52−30262号公報
特開2000−17123号公報
特開2001−31803号公報
特開2003−160699号公報
しかし一方で水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として利用する場合は、一般に樹脂に対して多量に配合しなければならない。また水酸化マグネシウム粒子の表面は親水性であるため親油性である樹脂へ分散させることは元来難しい。そのため分散が十分でない場合には、樹脂組成物の機械的物性や成型特性を低下させる問題が起こることが知られている。
また水酸化マグネシウム粒子は物質固有の性質により酸に対する反応性が高い。そのため水酸化マグネシウム粒子を含有する樹脂組成物が空気中または水中に長時間置かれた場合、配合された水酸化マグネシウム粒子が空気中または水中に存在する炭酸と反応し、樹脂組成物表面が白くなる、所謂表面白化現象を引き起こすことも知られている。
これらの問題を解決するために様様な方法が提案されている。例えば、水酸化マグネシウム粒子を有機化合物で表面処理することによって樹脂へ配合する際の分散性を改善する方法が提案されている(特許文献1)。
また水酸化マグネシウム粒子表面をケイ素化合物、ホウ素化合物およびアルミニウム化合物などの無機化合物で被覆することが提案されている。また無機化合物による被覆をした後に、高級脂肪酸類、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、アルコールリン酸エステル類などの有機化合物で被覆すると、高い耐酸性が得られることが提案されている(特許文献2)。
このように水酸化マグネシウム粒子表面に無機化合物からなる被覆層と有機化合物からなる被覆層を持つ水酸化マグネシウム粒子を主体とする難燃剤は提案されてきた。しかしながら、それらの難燃剤の被覆目的は、耐酸性、樹脂に対する分散性の改良を目的とするものであり、樹脂組成物の硬度、引張強度、磨耗特性の改良については何の検討もされておらず、それら特性が不十分であった。
一方、樹脂組成物の硬度、引張強度、磨耗特性の改良については、例えば、脂肪酸等で表面処理された水酸化マグネシウム粒子を使用し、水酸化マグネシウム粒子以外の樹脂や添加剤の部分によって磨耗特性を改良する方法が提案されている(特許文献3)。
また難燃剤としてシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム粒子と脂肪酸等で表面処理された水酸化マグネシウム粒子を併用したり、シラン架橋することで硬度、引張強度を改良することが提案されている(特許文献4)。
しかしながらこれらの方法は特定の樹脂組成でなければならないこと、架橋させることが必須であること、数種類の水酸化マグネシウム粒子を併用しなければならない等の限定のいずれかが存在するうえに、硬度、引張強度、磨耗特性が未だ十分でなく、さらに耐酸性が悪いという欠点もあった。
本発明は下記の特性1、2を併せもつ水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤、それを含む樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
特性1:難燃剤として樹脂に配合することで、樹脂組成物に硬度、引張強度、磨耗特性を付与しうること。
特性2:難燃剤として樹脂に配合した樹脂組成物が優れた耐酸性、好適な加工性や分散性を示すこと。
即ち水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として使用する場合、必要とされてきた樹脂に対する分散性、難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性を好適な範囲にとどめた上で、1種類の水酸化マグネシウム粒子難燃剤のみで、数種類の水酸化マグネシウム粒子難燃剤を併用することなしに、樹脂組成物に、硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性も付与することを目的とする。
本発明者は水酸化マグネシウム粒子を主体とする難燃剤において、好適な範囲の無機化合物からなる第1被覆層の上に好適な範囲の有機化合物による第2被覆層を有するものが樹脂用難燃剤として優れた特性を示すことを見出し本発明に至った。優れた特性としては樹脂に対する分散性、それを配合した樹脂組成物の加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性が好適でバランスとれていることが挙げられる。即ち上記目的を達成するため本発明は以下のような構成からなる。
本発明の目的は、以下の発明により達成される。
1.水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層および第2被覆層を含み、
(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、
(ii)第1被覆層は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛およびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、
(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含み、有機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%である、
ことを特徴とする難燃剤。
2. 第1被覆層が、ケイ素の酸化物若しくは水酸化物を含む前項1記載の難燃剤。
3. 第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の難燃剤。
4. 第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびアルミネートカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の難燃剤。
5. 第2被覆層が、少なくとも1種のシランカップリング剤を含有する前項1記載の難燃剤。
6. 第2被覆層が、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩およびアニオン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の難燃剤。
7. 100重量部の樹脂および5〜300重量部の前項1記載の難燃剤を含有する樹脂組成物。
8. JIS K 6251による引張強度が10Mpa以上である前項7記載の樹脂組成物。
9. 前項7記載の樹脂組成物よりなる成形品。
10. 電線またはケーブルである前項9記載の成形品。
11. 屋外に布設された電線またはケーブルである前項9記載の成形品。
特性1:難燃剤として樹脂に配合することで、樹脂組成物に硬度、引張強度、磨耗特性を付与しうること。
特性2:難燃剤として樹脂に配合した樹脂組成物が優れた耐酸性、好適な加工性や分散性を示すこと。
即ち水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として使用する場合、必要とされてきた樹脂に対する分散性、難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性を好適な範囲にとどめた上で、1種類の水酸化マグネシウム粒子難燃剤のみで、数種類の水酸化マグネシウム粒子難燃剤を併用することなしに、樹脂組成物に、硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性も付与することを目的とする。
本発明者は水酸化マグネシウム粒子を主体とする難燃剤において、好適な範囲の無機化合物からなる第1被覆層の上に好適な範囲の有機化合物による第2被覆層を有するものが樹脂用難燃剤として優れた特性を示すことを見出し本発明に至った。優れた特性としては樹脂に対する分散性、それを配合した樹脂組成物の加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性が好適でバランスとれていることが挙げられる。即ち上記目的を達成するため本発明は以下のような構成からなる。
本発明の目的は、以下の発明により達成される。
1.水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層および第2被覆層を含み、
(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、
(ii)第1被覆層は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛およびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、
(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含み、有機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%である、
ことを特徴とする難燃剤。
2. 第1被覆層が、ケイ素の酸化物若しくは水酸化物を含む前項1記載の難燃剤。
3. 第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の難燃剤。
4. 第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびアルミネートカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の難燃剤。
5. 第2被覆層が、少なくとも1種のシランカップリング剤を含有する前項1記載の難燃剤。
6. 第2被覆層が、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩およびアニオン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の難燃剤。
7. 100重量部の樹脂および5〜300重量部の前項1記載の難燃剤を含有する樹脂組成物。
8. JIS K 6251による引張強度が10Mpa以上である前項7記載の樹脂組成物。
9. 前項7記載の樹脂組成物よりなる成形品。
10. 電線またはケーブルである前項9記載の成形品。
11. 屋外に布設された電線またはケーブルである前項9記載の成形品。
<難燃剤>
(水酸化マグネシウム粒子)
本発明に使用される水酸化マグネシウム粒子は、難燃剤用の水酸化マグネシウム粒子である。水酸化マグネシウム粒子は、BET比表面積が1〜25m2/gであることが好ましく、BET比表面積が2〜15m2/gであることがさらに好ましく、BET比表面積が4〜15m2/gであることが最も好ましい。
BET比表面積が1m2/g以下の場合は、難燃剤を樹脂に配合した樹脂組成物の難燃性、機械的物性が好ましくなく、BET比表面積が25m2/g以上の場合は、樹脂に対する分散性、樹脂組成物の加工性、機械的物性、表面外観が好ましくない。
また水酸化マグネシウム粒子は改質等の目的でリン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、カルシウム、バリウム等を少量含むものであっても良い。水酸化マグネシウムの由来についても特になんの制約もなく、例えば天然水酸化マグネシウムを含む鉱石を粉砕した粉末、マグネシウム水溶液をアルカリ中和することにより水酸化マグネシウムを合成した粉末、酸化マグネシウムを原料として水酸化マグネシウムを合成した粉末であってもよいが、特に加熱熟成工程を経た合成水酸化マグネシウムが粒子の均一性の観点から好適である。
(第1被覆層)
第1被覆層は、無機化合物を含む層である。無機化合物は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛およびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である。特にケイ素の酸化物若しくは水酸化物が好ましい。
第1被覆層のための被覆原料として、(1)メタケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、オルトケイ酸カリウム、水ガラスのようなケイ酸およびその可溶性塩類、(2)メタアルミン酸ナトリウム、オルトアルミオン酸ナトリウム、メタアルミン酸カリウム、オルトアルミン酸カリウムのようなアルミン酸およびその可溶性塩類、(3)塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウムのような可溶性鉱酸アルミニウム塩、(4)三塩化チタン、硝酸チタンのような可溶性鉱酸チタン塩、(5)塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硫酸酸化ジルコニウムのような可溶性鉱酸ジルコニウム塩または可溶性鉱酸酸化ジルコニウム塩、(6)塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛のような鉱酸の亜鉛塩、(7)ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウムのようなホウ酸およびその可溶性塩類等が挙げられる。
第1被覆層は、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーに、上記被覆原料を滴下し混合する湿式法で形成することができる。上記被覆原料は使用する際に水や有機溶媒に溶解、希釈し、無機化合物希釈物としてから用いることは、均一な第1被覆層形成のために好ましい。また第1被覆層を形成する方法において、スラリーや無機化合物希釈物は必要に応じて温度を5〜90℃の範囲で調節したり、酸やアルカリでpH調節しても良い。第1被覆層を形成する酸化物若しくは水酸化物は、AlCl(OH)2のような使用する溶液中に含まれる陰イオンを含んだ塩基性塩を少量含有するものであっても良い。
また2種以上の無機化合物で第1被覆層を形成する場合、下記2種類の方法のどちらであってもよい。
方法1:第1の無機化合物で被覆層を形成した後、それ以外の第2の無機化合物で被覆層を形成する。
方法2:第1の無機化合物と第2の無機化合物を同時に用いて被覆層を形成する。
本発明の難燃剤において、第1被覆層の被覆量は多ければ多いほど、樹脂に対する分散性が悪化し、樹脂組成物の加工性および伸び特性が低下するが、樹脂組成物の引張強度、硬度および耐酸性は向上する傾向にある。これは何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子表面より第1被覆層表面のほうが上記効果が高いためである。また第1被覆後のBET比表面積が被覆前に比べて上昇する傾向もある。
第1被覆層の含有量には好適な範囲が存在し、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましく、0.2〜2重量%であることが最も好ましい。
第1被覆層の含有量が0.05重量%未満の場合、難燃剤は十分な量の第1被覆層を有していないため該難燃剤を配合した樹脂組成物は十分な耐酸性が得られず、また使用される水酸化マグネシウム粒子のBET比表面積や第2被覆層の有機化合物量によっては引張強度、磨耗特性、硬度特性も十分でない場合がある。第1被覆層の含有量が10重量%を超える場合、第1被覆の利点である難燃剤を配合した樹脂組成物の引張強度、硬度および耐酸性の向上の効果は鈍化傾向となる。一方、欠点である樹脂に対する分散性の悪化や該難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性の低下、伸び特性の低下は利点ほど鈍化しないので好ましくない。
また難燃剤において第1被覆層の含有量が多ければ多いほど、該難燃剤において難燃性の効果の高い水酸化マグネシウムの含有率が低下するので好ましくない。
第1被覆後のBET比表面積の上昇は第1被覆層の量が多いほど上昇量も大きい傾向にあるため、場合によっては難燃剤として好適なBET比表面積から外れ、樹脂に対する分散性、樹脂組成物の加工性、機械的物性、表面外観等が好ましくなくなるため好ましくない。
(第2被覆層)
第2被覆層は、有機化合物を含む層である。第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含む。このうち特にシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物については引張強度、磨耗特性、硬度特性を悪化させ難いため特に好ましい。
高級脂肪酸およびその金属塩は、長鎖炭化水素の1価のカルボン酸およびその金属塩のうち炭素数が10以上のもので飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であっても良く既知のものを使用することができる。具体例としてはカプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸およびそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
多価アルコールの高級脂肪酸エステルは、グリセリン等の多価アルコールとステアリン酸やオレイン酸等の高級脂肪酸のエステルであり既知のものを使用できる。具体例としてはグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等が挙げられる。
リン酸エステルは、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルのどれであっても良いし、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルについてはその塩であっても良く、既知のものを使用できる。具体例としては(1)モノブチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノトリデシルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、モノオレイルリン酸エステル、モノ−2−エチルヘキシルリン酸エステル等のリン酸モノエステルおよびそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム等の金属塩やジアルコールアミン塩、(2)ジブチルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジトリデシルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、ジオレイルリン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルリン酸エステル等のリン酸ジエステルおよびそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム等の金属塩やジアルコールアミン塩、(3)リン酸トリブチル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリオレイル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル等のリン酸トリエステルが挙げられる。これらのリン酸モノエステルおよびその塩、リン酸ジエステルおよびその塩、リン酸トリエステルは、例えばリン酸モノエステルとリン酸ジエステルの混合物のような混合物であっても良い。
アニオン系界面活性剤は、硫酸エステル塩やスルホン酸塩等であり、既知のものを使用できる。具体例としては高級アルコール硫酸エステル塩、ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩、アミド結合硫酸エステル塩、エステル結合硫酸エステル塩、エステル結合スルホネート、アミド結合スルホン酸塩、エーテル結合スルホン酸塩、エーテル結合アルキルアリールスルホン酸塩、エステル結合アルキルアリールスルホン酸塩、アミド結合アルキルアリールスルホン酸塩等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1分子中に有機材料と親和性の高い官能基とアルコキシ基やハロゲンのような加水分解基という異なる2種類の官能基をもつ有機ケイ素化合物であり既知のものを使用できる。具体例としては(1)3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(2)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(3)アリルトリメトキシシラン等のアリル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(4)3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を官能基としてもつシランカップリング剤、(5)3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を官能基としてもつシランカップリング剤、(6)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(7)3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(8)p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(9)ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を官能基としてもつシランカップリング剤、(10)ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(11)3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(12)3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を官能基としてもつシランカップリング剤等が挙げられる。
チタネートカップリング剤は、1分子中に有機材料と親和性の高い官能基とアルコキシ基やハロゲンのような加水分解基という異なる2種類の官能基をもつ有機チタン化合物であり既知のものを使用できる。具体例としてはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が挙げられる。
アルミネートカップリング剤は、1分子中に有機材料と親和性の高い官能基とアルコキシ基やハロゲンのような加水分解基という異なる2種類の官能基をもつ有機アルミニウム化合物であり既知のものを使用できる。具体例としてはアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
本発明におけるオルガノシラン化合物は、アルコキシ基やハロゲンのような加水分解基を含む有機ケイ素化合物のうち比較的低分子の化合物のことであり既知のものを使用できる。なお上述のシランカップリング剤に含まれるものは除くこととする。具体例としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
オルガノシロキサン化合物は、Si−O−Si結合(シロキサン結合)をもつ有機ケイ素化合物であり、1分子中のシロキサン結合が1つのみのオルガノジシロキサンであっても良いし、少数のシロキサン結合が連なったオルガノシロキサンオリゴマーであっても良いし、多数のシロキサン結合が連なりポリマー化したオルガノポリシロキサン所謂シリコーンであっても良く既知のものを使用できるが、特にメチルハイドロジェンシリコーンオイルは撥水性が高く好ましい。具体例としては(1)ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、ナトリウムメチルシリコネート等のオルガノジシロキサン、(2)メチルメトキシシロキサンオリゴマー、ジメチルフェニルメトキシシロキサンオリゴマー等の1分子中にメチル基、フェニル基、エポキシ基、メルカプト基のうち1種または2種を有し、かつメトキシ基等のアルコキシ基をもつオルガノシロキサンオリゴマー、(3)ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルの所謂ストレートシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル等の所謂変性シリコーンオイル等のオルガノポリシロキサンが挙げられる。変性シリコーンオイルについては例えばアミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイルのように2種類以上で変性された変性シリコーンオイルであっても良い。
オルガノシラザン化合物は、Si−NH−Si結合をもつ有機ケイ素化合物であり、1分子中のSi−NH−Si結合が1つのみのオルガノジシラザンであっても良いし、少数のSi−NH−Si結合が連なったオルガノシラザンであっても良いし、多数のSi−NH−Si結合が連なりポリマー化したオルガノポリシラザンであっても良く既知のものを使用できる。
具体例としてはヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、1、3−ジビニル−1、1、3、3−テトラメチルジシラザン、ヘキサエチルシクロトリシラザン、メチルポリシラザン、フェニルポリシラザン、ポリエーテル変性ポリシラザン等が挙げられる。
本発明の第2被覆層を形成する方法にはあらかじめ第1被覆層を形成しておくこと以外に特に制限はなく既知の方法をとることができる。粉体に有機化合物を滴下または噴霧し混合する乾式の方法、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーに有機化合物を滴下し混合する湿式の方法等をとりうるが湿式の方法が特に好ましい。
さらに有機化合物は使用する際に水や有機溶媒に溶解、希釈し、有機化合物希釈物としてから用いることは均一な第2被覆層形成のために好ましく、このときエマルション化する等希釈しやすい形にしても良い。
また第2被覆層を形成する際の乾式法の水酸化マグネシウム粒子や有機化合物希釈物、湿式法のスラリー、有機化合物希釈物は必要に応じて、温度を5〜300℃の範囲で調節したり、酸やアルカリでpH調節しても良い。
また2種以上の有機化合物で第2被覆層を形成する場合、均一な第2被覆層形成できるならばその製造方法に特に制限はなく、2種類以上の処理剤で同時に処理を行っても良いし、1種類の処理を実施した後にさらに処理を行っても良い。
第1被覆層や第2被覆層を湿式法で形成する場合、第1被覆層を形成させる前のスラリー、第1被覆層を形成させたスラリー、第2被覆層を形成させたスラリーを濾過することでスラリー溶媒中の不純物を除去したり、洗浄することで難燃剤表面等に存在する不純物の低減することが望ましいが、上記全ての工程でスラリーを濾過、洗浄する必要はなく適宜選択することができる。
濾過、洗浄の方法としては不純物を低減できうるならば特に制限されることはなく既知の方法および装置を活用しうるが、洗浄方法としては清浄な水を該難燃剤に接触させる方法が特に好ましい。
水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層を形成した粒子、第1被覆層と第2被覆層を形成した粒子を得るための乾燥方法に特に制限はなく、一旦スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法やスラリーを直接熱風内に噴霧し乾燥する方法等、既知の方法や装置を活用しうる。
本発明の難燃剤において、第2被覆層の被覆量は多ければ多いほど樹脂に対する分散性が向上し、配合した樹脂組成物の加工性、伸び特性および耐酸性が向上するが、配合した樹脂組成物の引張強度および硬度は低下する。
これは<1>第2被覆される前の水酸化マグネシウム粒子表面や第1被覆層表面は親水性であるが、この親水性表面が第2被覆層で被覆された部分は新油性の高い表面となり上記の効果を示すこと、<2>第2被覆層に使用される有機化合物が樹脂組成物中に難燃剤に被覆された形態であれ添加剤として配合された形態であれ存在するとその形態にかかわらず滑剤効果として上記の効果を示すこと、によるものである。
本発明における第2被覆層の量には好適な範囲が存在し、難燃剤中の全量に対して0.1〜1.5重量%であることが好ましく、0.1〜1.0重量%であることがさらに好ましく、0.2〜1.0重量%であることが最も好ましい。
第2被覆層の含有量が0.1重量%未満の場合、難燃剤は十分な量の第2被覆層を有していないため、樹脂に対する分散性と該難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性、伸び特性、磨耗特性、耐酸性が十分得られないので好ましくない。
第2被覆層の含有量が1.5重量%を超える場合、難燃剤を配合した樹脂組成物は十分な加工性、伸び特性、耐酸性は得られるものの、十分な引張強度、硬度特性、磨耗特性が得られないので好ましくない。また単純に可燃性である有機化合物の相対含有量が増加することにより難燃性が悪くなる傾向があるため好ましくない。親水性である水酸化マグネシウム粒子表面や第1被覆層表面が第2被覆層を形成する有機化合物に単分子層として100%以上被覆された状態であると、親水性の表面の特性である引っ張り強度上昇、硬度上昇の効果を引き出しづらくなるため親水性の表面が露出している部分を有していることが本発明の難燃剤では望ましい。
本発明の難燃剤は、無機化合物による第1被覆層が形成された後に、有機化合物による第2被覆層を有するので、何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子、無機化合物による被覆層のみをもつ粒子、有機化合物による被覆層のみをもつ粒子と比較して優れた耐酸性を有する。
これは耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層により何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子表面よりも耐酸性の強い表面に改質される効果と有機化合物による第2被覆層により難燃剤表面が新油性となり撥水性を有する表面に改質される効果の両方を有していることに由来する。
なお第1被覆層の含有量や第2被覆層の含有量が多すぎる場合、本発明の難燃剤を配合した樹脂組成物で必要な優れた加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性のうち少なくとも1つは好適な範囲から外れてしまう。そのため、本発明では第1被覆層の含有量や第2被覆層の含有量を好適な範囲に制限している。
なお好適な範囲内であるならば、水酸化マグネシウム粒子表面が全て第1被覆層に覆われていることは耐酸性のために好ましいことである。
本発明の水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤は、耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層を形成することにより高引張強度、高硬度と優れた磨耗特性を得ているが、これらの特性と加工性や分散性は通常相反する特性である。
本発明は、耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層と有機化合物による第2被覆層との被覆を所定の順序にし被覆量を所定の範囲にすることにより、樹脂に配合した場合、引張強度、硬度および磨耗特性に優れ、かつ加工性や分散性を好適な範囲とすることができることを見出したことに基づく。
例えば耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層の含有量が多ければ多いほど、硬度、引張強度および磨耗特性は良い傾向となるが加工性や分散性は悪い傾向となる。一方、有機化合物による第2被覆層の含有量が多ければ多いほど、分散性や加工性は良い傾向となるが、硬度、引張強度および磨耗特性は悪い傾向となる。
よって硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性、加工性、分散性に優れた樹脂組成物を得るためには、難燃剤において本発明のような被覆量制限が必要となる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、樹脂および本発明の難燃剤を含有する。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、100重量部の樹脂に対して、好ましくは5〜300重量部、より好ましくは50〜300重量部、さらに好ましくは50〜250重量部である。難燃剤の含有量がこの範囲にあると、樹脂組成物の難燃性を維持でき、樹脂の相対的な量が減少することなく機械的物性や成型特性を維持できる。
本発明の樹脂組成物は、JIS K 6251による引張強度が、好ましくは10Mpa以上、より好ましくは12Mpa以上である。
難燃剤を配合する樹脂として、(1)ポリエチレン、ポリプロピレンおよびそのアロイ、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体等のポリオレフィンおよびその共重合体およびそのエラストマーおよびそのアロイ、(2)ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、芳香族ポリアミド等のポリアミドおよびそのアロイ、(3)ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート等のポリエステル、(4)ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート等のポリエーテル、(5)スチレンおよびそのエラストマー、(6)ポリカーボネート、(7)ポリメタクリル酸メチル、シリコーンアクリル共重合体等のアクリル樹脂およびその共重合体、(8)ポリイミド、(9)ポリ塩化ビニル、(10)シリコーン樹脂およびその共重合体、(11)ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリニトリル等のゴムおよびその共重合体、(12)フェノール樹脂、(13)エポキシ樹脂、(14)メラミン樹脂、(15)尿素樹脂、(16)ポリウレタン等が挙げられる。
このうち特にポリオレフィンおよびその共重合体およびそのエラストマーおよびそのアロイを含む樹脂を使用することが好ましい。
難燃剤を配合する樹脂は化学架橋、電子線架橋等の架橋をしても良い。ただし本発明の難燃剤は架橋により難燃剤を含む樹脂組成物を高引張強度、高硬度にするのでなく、水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤により高引張強度、高硬度という特性を樹脂組成物に付与することができるので、架橋できない樹脂や樹脂を架橋させずに使用する場合において、特に有用である。
本発明の樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で添加剤を適宜配合しても良い。使用できる添加剤に特に制限はないが、老化防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、硬化剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、充填剤、核剤、相溶化剤、発泡剤、顔料等が適宜使用できる。また他の難燃剤や難燃助剤を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物は、樹脂に本発明の難燃剤を配合することにより得ることができる。樹脂組成物の製造方法としては樹脂に難燃剤を均一に分散させられるならば特に限定されることはなく、単軸混練機、2軸混練機、ニーダー、バンバリーミキサー、オーブンロール、インターミックス等の一般的に用いられている樹脂加工機を適宜使用することができる。
<成形品>
また得られた樹脂組成物は用途や目的に応じて、インフレーション成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、カレンダー成形、真空成形、トランスファー成形、積層成形等の成形を適宜行うことによって成形品を製造することができる。
成形品として、電線またはケーブルが挙げられる。電線またはケーブルは特に屋外に敷設することができる場合に好適である。
(水酸化マグネシウム粒子)
本発明に使用される水酸化マグネシウム粒子は、難燃剤用の水酸化マグネシウム粒子である。水酸化マグネシウム粒子は、BET比表面積が1〜25m2/gであることが好ましく、BET比表面積が2〜15m2/gであることがさらに好ましく、BET比表面積が4〜15m2/gであることが最も好ましい。
BET比表面積が1m2/g以下の場合は、難燃剤を樹脂に配合した樹脂組成物の難燃性、機械的物性が好ましくなく、BET比表面積が25m2/g以上の場合は、樹脂に対する分散性、樹脂組成物の加工性、機械的物性、表面外観が好ましくない。
また水酸化マグネシウム粒子は改質等の目的でリン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、カルシウム、バリウム等を少量含むものであっても良い。水酸化マグネシウムの由来についても特になんの制約もなく、例えば天然水酸化マグネシウムを含む鉱石を粉砕した粉末、マグネシウム水溶液をアルカリ中和することにより水酸化マグネシウムを合成した粉末、酸化マグネシウムを原料として水酸化マグネシウムを合成した粉末であってもよいが、特に加熱熟成工程を経た合成水酸化マグネシウムが粒子の均一性の観点から好適である。
(第1被覆層)
第1被覆層は、無機化合物を含む層である。無機化合物は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛およびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である。特にケイ素の酸化物若しくは水酸化物が好ましい。
第1被覆層のための被覆原料として、(1)メタケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、オルトケイ酸カリウム、水ガラスのようなケイ酸およびその可溶性塩類、(2)メタアルミン酸ナトリウム、オルトアルミオン酸ナトリウム、メタアルミン酸カリウム、オルトアルミン酸カリウムのようなアルミン酸およびその可溶性塩類、(3)塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウムのような可溶性鉱酸アルミニウム塩、(4)三塩化チタン、硝酸チタンのような可溶性鉱酸チタン塩、(5)塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硫酸酸化ジルコニウムのような可溶性鉱酸ジルコニウム塩または可溶性鉱酸酸化ジルコニウム塩、(6)塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛のような鉱酸の亜鉛塩、(7)ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウムのようなホウ酸およびその可溶性塩類等が挙げられる。
第1被覆層は、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーに、上記被覆原料を滴下し混合する湿式法で形成することができる。上記被覆原料は使用する際に水や有機溶媒に溶解、希釈し、無機化合物希釈物としてから用いることは、均一な第1被覆層形成のために好ましい。また第1被覆層を形成する方法において、スラリーや無機化合物希釈物は必要に応じて温度を5〜90℃の範囲で調節したり、酸やアルカリでpH調節しても良い。第1被覆層を形成する酸化物若しくは水酸化物は、AlCl(OH)2のような使用する溶液中に含まれる陰イオンを含んだ塩基性塩を少量含有するものであっても良い。
また2種以上の無機化合物で第1被覆層を形成する場合、下記2種類の方法のどちらであってもよい。
方法1:第1の無機化合物で被覆層を形成した後、それ以外の第2の無機化合物で被覆層を形成する。
方法2:第1の無機化合物と第2の無機化合物を同時に用いて被覆層を形成する。
本発明の難燃剤において、第1被覆層の被覆量は多ければ多いほど、樹脂に対する分散性が悪化し、樹脂組成物の加工性および伸び特性が低下するが、樹脂組成物の引張強度、硬度および耐酸性は向上する傾向にある。これは何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子表面より第1被覆層表面のほうが上記効果が高いためである。また第1被覆後のBET比表面積が被覆前に比べて上昇する傾向もある。
第1被覆層の含有量には好適な範囲が存在し、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましく、0.2〜2重量%であることが最も好ましい。
第1被覆層の含有量が0.05重量%未満の場合、難燃剤は十分な量の第1被覆層を有していないため該難燃剤を配合した樹脂組成物は十分な耐酸性が得られず、また使用される水酸化マグネシウム粒子のBET比表面積や第2被覆層の有機化合物量によっては引張強度、磨耗特性、硬度特性も十分でない場合がある。第1被覆層の含有量が10重量%を超える場合、第1被覆の利点である難燃剤を配合した樹脂組成物の引張強度、硬度および耐酸性の向上の効果は鈍化傾向となる。一方、欠点である樹脂に対する分散性の悪化や該難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性の低下、伸び特性の低下は利点ほど鈍化しないので好ましくない。
また難燃剤において第1被覆層の含有量が多ければ多いほど、該難燃剤において難燃性の効果の高い水酸化マグネシウムの含有率が低下するので好ましくない。
第1被覆後のBET比表面積の上昇は第1被覆層の量が多いほど上昇量も大きい傾向にあるため、場合によっては難燃剤として好適なBET比表面積から外れ、樹脂に対する分散性、樹脂組成物の加工性、機械的物性、表面外観等が好ましくなくなるため好ましくない。
(第2被覆層)
第2被覆層は、有機化合物を含む層である。第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含む。このうち特にシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物については引張強度、磨耗特性、硬度特性を悪化させ難いため特に好ましい。
高級脂肪酸およびその金属塩は、長鎖炭化水素の1価のカルボン酸およびその金属塩のうち炭素数が10以上のもので飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であっても良く既知のものを使用することができる。具体例としてはカプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸およびそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
多価アルコールの高級脂肪酸エステルは、グリセリン等の多価アルコールとステアリン酸やオレイン酸等の高級脂肪酸のエステルであり既知のものを使用できる。具体例としてはグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等が挙げられる。
リン酸エステルは、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルのどれであっても良いし、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルについてはその塩であっても良く、既知のものを使用できる。具体例としては(1)モノブチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノトリデシルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、モノオレイルリン酸エステル、モノ−2−エチルヘキシルリン酸エステル等のリン酸モノエステルおよびそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム等の金属塩やジアルコールアミン塩、(2)ジブチルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジトリデシルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、ジオレイルリン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルリン酸エステル等のリン酸ジエステルおよびそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム等の金属塩やジアルコールアミン塩、(3)リン酸トリブチル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリオレイル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル等のリン酸トリエステルが挙げられる。これらのリン酸モノエステルおよびその塩、リン酸ジエステルおよびその塩、リン酸トリエステルは、例えばリン酸モノエステルとリン酸ジエステルの混合物のような混合物であっても良い。
アニオン系界面活性剤は、硫酸エステル塩やスルホン酸塩等であり、既知のものを使用できる。具体例としては高級アルコール硫酸エステル塩、ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩、アミド結合硫酸エステル塩、エステル結合硫酸エステル塩、エステル結合スルホネート、アミド結合スルホン酸塩、エーテル結合スルホン酸塩、エーテル結合アルキルアリールスルホン酸塩、エステル結合アルキルアリールスルホン酸塩、アミド結合アルキルアリールスルホン酸塩等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1分子中に有機材料と親和性の高い官能基とアルコキシ基やハロゲンのような加水分解基という異なる2種類の官能基をもつ有機ケイ素化合物であり既知のものを使用できる。具体例としては(1)3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(2)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(3)アリルトリメトキシシラン等のアリル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(4)3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を官能基としてもつシランカップリング剤、(5)3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を官能基としてもつシランカップリング剤、(6)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(7)3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(8)p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(9)ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を官能基としてもつシランカップリング剤、(10)ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(11)3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(12)3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を官能基としてもつシランカップリング剤等が挙げられる。
チタネートカップリング剤は、1分子中に有機材料と親和性の高い官能基とアルコキシ基やハロゲンのような加水分解基という異なる2種類の官能基をもつ有機チタン化合物であり既知のものを使用できる。具体例としてはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が挙げられる。
アルミネートカップリング剤は、1分子中に有機材料と親和性の高い官能基とアルコキシ基やハロゲンのような加水分解基という異なる2種類の官能基をもつ有機アルミニウム化合物であり既知のものを使用できる。具体例としてはアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
本発明におけるオルガノシラン化合物は、アルコキシ基やハロゲンのような加水分解基を含む有機ケイ素化合物のうち比較的低分子の化合物のことであり既知のものを使用できる。なお上述のシランカップリング剤に含まれるものは除くこととする。具体例としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
オルガノシロキサン化合物は、Si−O−Si結合(シロキサン結合)をもつ有機ケイ素化合物であり、1分子中のシロキサン結合が1つのみのオルガノジシロキサンであっても良いし、少数のシロキサン結合が連なったオルガノシロキサンオリゴマーであっても良いし、多数のシロキサン結合が連なりポリマー化したオルガノポリシロキサン所謂シリコーンであっても良く既知のものを使用できるが、特にメチルハイドロジェンシリコーンオイルは撥水性が高く好ましい。具体例としては(1)ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、ナトリウムメチルシリコネート等のオルガノジシロキサン、(2)メチルメトキシシロキサンオリゴマー、ジメチルフェニルメトキシシロキサンオリゴマー等の1分子中にメチル基、フェニル基、エポキシ基、メルカプト基のうち1種または2種を有し、かつメトキシ基等のアルコキシ基をもつオルガノシロキサンオリゴマー、(3)ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルの所謂ストレートシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル等の所謂変性シリコーンオイル等のオルガノポリシロキサンが挙げられる。変性シリコーンオイルについては例えばアミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイルのように2種類以上で変性された変性シリコーンオイルであっても良い。
オルガノシラザン化合物は、Si−NH−Si結合をもつ有機ケイ素化合物であり、1分子中のSi−NH−Si結合が1つのみのオルガノジシラザンであっても良いし、少数のSi−NH−Si結合が連なったオルガノシラザンであっても良いし、多数のSi−NH−Si結合が連なりポリマー化したオルガノポリシラザンであっても良く既知のものを使用できる。
具体例としてはヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、1、3−ジビニル−1、1、3、3−テトラメチルジシラザン、ヘキサエチルシクロトリシラザン、メチルポリシラザン、フェニルポリシラザン、ポリエーテル変性ポリシラザン等が挙げられる。
本発明の第2被覆層を形成する方法にはあらかじめ第1被覆層を形成しておくこと以外に特に制限はなく既知の方法をとることができる。粉体に有機化合物を滴下または噴霧し混合する乾式の方法、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーに有機化合物を滴下し混合する湿式の方法等をとりうるが湿式の方法が特に好ましい。
さらに有機化合物は使用する際に水や有機溶媒に溶解、希釈し、有機化合物希釈物としてから用いることは均一な第2被覆層形成のために好ましく、このときエマルション化する等希釈しやすい形にしても良い。
また第2被覆層を形成する際の乾式法の水酸化マグネシウム粒子や有機化合物希釈物、湿式法のスラリー、有機化合物希釈物は必要に応じて、温度を5〜300℃の範囲で調節したり、酸やアルカリでpH調節しても良い。
また2種以上の有機化合物で第2被覆層を形成する場合、均一な第2被覆層形成できるならばその製造方法に特に制限はなく、2種類以上の処理剤で同時に処理を行っても良いし、1種類の処理を実施した後にさらに処理を行っても良い。
第1被覆層や第2被覆層を湿式法で形成する場合、第1被覆層を形成させる前のスラリー、第1被覆層を形成させたスラリー、第2被覆層を形成させたスラリーを濾過することでスラリー溶媒中の不純物を除去したり、洗浄することで難燃剤表面等に存在する不純物の低減することが望ましいが、上記全ての工程でスラリーを濾過、洗浄する必要はなく適宜選択することができる。
濾過、洗浄の方法としては不純物を低減できうるならば特に制限されることはなく既知の方法および装置を活用しうるが、洗浄方法としては清浄な水を該難燃剤に接触させる方法が特に好ましい。
水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層を形成した粒子、第1被覆層と第2被覆層を形成した粒子を得るための乾燥方法に特に制限はなく、一旦スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法やスラリーを直接熱風内に噴霧し乾燥する方法等、既知の方法や装置を活用しうる。
本発明の難燃剤において、第2被覆層の被覆量は多ければ多いほど樹脂に対する分散性が向上し、配合した樹脂組成物の加工性、伸び特性および耐酸性が向上するが、配合した樹脂組成物の引張強度および硬度は低下する。
これは<1>第2被覆される前の水酸化マグネシウム粒子表面や第1被覆層表面は親水性であるが、この親水性表面が第2被覆層で被覆された部分は新油性の高い表面となり上記の効果を示すこと、<2>第2被覆層に使用される有機化合物が樹脂組成物中に難燃剤に被覆された形態であれ添加剤として配合された形態であれ存在するとその形態にかかわらず滑剤効果として上記の効果を示すこと、によるものである。
本発明における第2被覆層の量には好適な範囲が存在し、難燃剤中の全量に対して0.1〜1.5重量%であることが好ましく、0.1〜1.0重量%であることがさらに好ましく、0.2〜1.0重量%であることが最も好ましい。
第2被覆層の含有量が0.1重量%未満の場合、難燃剤は十分な量の第2被覆層を有していないため、樹脂に対する分散性と該難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性、伸び特性、磨耗特性、耐酸性が十分得られないので好ましくない。
第2被覆層の含有量が1.5重量%を超える場合、難燃剤を配合した樹脂組成物は十分な加工性、伸び特性、耐酸性は得られるものの、十分な引張強度、硬度特性、磨耗特性が得られないので好ましくない。また単純に可燃性である有機化合物の相対含有量が増加することにより難燃性が悪くなる傾向があるため好ましくない。親水性である水酸化マグネシウム粒子表面や第1被覆層表面が第2被覆層を形成する有機化合物に単分子層として100%以上被覆された状態であると、親水性の表面の特性である引っ張り強度上昇、硬度上昇の効果を引き出しづらくなるため親水性の表面が露出している部分を有していることが本発明の難燃剤では望ましい。
本発明の難燃剤は、無機化合物による第1被覆層が形成された後に、有機化合物による第2被覆層を有するので、何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子、無機化合物による被覆層のみをもつ粒子、有機化合物による被覆層のみをもつ粒子と比較して優れた耐酸性を有する。
これは耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層により何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子表面よりも耐酸性の強い表面に改質される効果と有機化合物による第2被覆層により難燃剤表面が新油性となり撥水性を有する表面に改質される効果の両方を有していることに由来する。
なお第1被覆層の含有量や第2被覆層の含有量が多すぎる場合、本発明の難燃剤を配合した樹脂組成物で必要な優れた加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性のうち少なくとも1つは好適な範囲から外れてしまう。そのため、本発明では第1被覆層の含有量や第2被覆層の含有量を好適な範囲に制限している。
なお好適な範囲内であるならば、水酸化マグネシウム粒子表面が全て第1被覆層に覆われていることは耐酸性のために好ましいことである。
本発明の水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤は、耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層を形成することにより高引張強度、高硬度と優れた磨耗特性を得ているが、これらの特性と加工性や分散性は通常相反する特性である。
本発明は、耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層と有機化合物による第2被覆層との被覆を所定の順序にし被覆量を所定の範囲にすることにより、樹脂に配合した場合、引張強度、硬度および磨耗特性に優れ、かつ加工性や分散性を好適な範囲とすることができることを見出したことに基づく。
例えば耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層の含有量が多ければ多いほど、硬度、引張強度および磨耗特性は良い傾向となるが加工性や分散性は悪い傾向となる。一方、有機化合物による第2被覆層の含有量が多ければ多いほど、分散性や加工性は良い傾向となるが、硬度、引張強度および磨耗特性は悪い傾向となる。
よって硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性、加工性、分散性に優れた樹脂組成物を得るためには、難燃剤において本発明のような被覆量制限が必要となる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、樹脂および本発明の難燃剤を含有する。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、100重量部の樹脂に対して、好ましくは5〜300重量部、より好ましくは50〜300重量部、さらに好ましくは50〜250重量部である。難燃剤の含有量がこの範囲にあると、樹脂組成物の難燃性を維持でき、樹脂の相対的な量が減少することなく機械的物性や成型特性を維持できる。
本発明の樹脂組成物は、JIS K 6251による引張強度が、好ましくは10Mpa以上、より好ましくは12Mpa以上である。
難燃剤を配合する樹脂として、(1)ポリエチレン、ポリプロピレンおよびそのアロイ、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体等のポリオレフィンおよびその共重合体およびそのエラストマーおよびそのアロイ、(2)ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、芳香族ポリアミド等のポリアミドおよびそのアロイ、(3)ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート等のポリエステル、(4)ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート等のポリエーテル、(5)スチレンおよびそのエラストマー、(6)ポリカーボネート、(7)ポリメタクリル酸メチル、シリコーンアクリル共重合体等のアクリル樹脂およびその共重合体、(8)ポリイミド、(9)ポリ塩化ビニル、(10)シリコーン樹脂およびその共重合体、(11)ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリニトリル等のゴムおよびその共重合体、(12)フェノール樹脂、(13)エポキシ樹脂、(14)メラミン樹脂、(15)尿素樹脂、(16)ポリウレタン等が挙げられる。
このうち特にポリオレフィンおよびその共重合体およびそのエラストマーおよびそのアロイを含む樹脂を使用することが好ましい。
難燃剤を配合する樹脂は化学架橋、電子線架橋等の架橋をしても良い。ただし本発明の難燃剤は架橋により難燃剤を含む樹脂組成物を高引張強度、高硬度にするのでなく、水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤により高引張強度、高硬度という特性を樹脂組成物に付与することができるので、架橋できない樹脂や樹脂を架橋させずに使用する場合において、特に有用である。
本発明の樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で添加剤を適宜配合しても良い。使用できる添加剤に特に制限はないが、老化防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、硬化剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、充填剤、核剤、相溶化剤、発泡剤、顔料等が適宜使用できる。また他の難燃剤や難燃助剤を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物は、樹脂に本発明の難燃剤を配合することにより得ることができる。樹脂組成物の製造方法としては樹脂に難燃剤を均一に分散させられるならば特に限定されることはなく、単軸混練機、2軸混練機、ニーダー、バンバリーミキサー、オーブンロール、インターミックス等の一般的に用いられている樹脂加工機を適宜使用することができる。
<成形品>
また得られた樹脂組成物は用途や目的に応じて、インフレーション成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、カレンダー成形、真空成形、トランスファー成形、積層成形等の成形を適宜行うことによって成形品を製造することができる。
成形品として、電線またはケーブルが挙げられる。電線またはケーブルは特に屋外に敷設することができる場合に好適である。
これより本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら掣肘されることはない。実施例または比較例にて行われた分析方法、試験方法を以下に説明する。
1.水酸化マグネシウム粒子またはそれを主体とした難燃剤の分析方法
1−1.BET比表面積
BET法(Brunauer、 Emmett、 Teller法)の比表面積測定装置にて測定を実施し、BET比表面積とした。
1−2.無機化合物の合計含有量
難燃剤中に無機元素が何重量%存在するかを測定し、その値から酸化物含有量(重量%)を算出した。第1被覆層が2種以上の元素の酸化物か水酸化物からなる場合はそれぞれの値から合計値を測定、算出した。
実施例では蛍光X線元素分析(XRF)装置にて測定を実施した。なお第1被覆層を形成する無機化合物の元素が第2被覆層を形成する有機化合物中にも含まれる場合、第2被覆層を形成する前に該難燃剤中の無機化合物元素が何重量%存在するかを測定し、その値から酸化物含有量(重量%)を算出した。
1−3.有機化合物の合計含有量
粉体に有機化合物を滴下または噴霧し混合する乾式の方法や、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーと有機化合物の混合物を直接熱風内に噴霧し乾燥する方法で作成した難燃剤については、有機化合物のほぼ全量が難燃剤中に含まれるので、有機化合物使用量から有機化合物が100%該難燃剤に含まれる場合の含有量を算出し、それを含有量(重量%)とした。上記の方法以外で作成した難燃剤については、表面処理剤をエーテル抽出することによって含有量を得た。実施例でのエーテル抽出とは該難燃剤を酸処理し、エーテル(試薬)を加えて有機化合物を抽出し、得られた抽出液を湯浴で溶媒を揮発させ油状物を得、得られた油状物を精秤することである。この得られた油状物の重量と測定に使用した該難燃剤重量より、該難燃剤の有機化合物合計含有量(重量%)を算出した。
1−4.耐酸性
自動電位差滴定装置を使用し下記条件で測定した酸消費量(mL)または経過時間(分)を耐酸性の指標とした。該難燃剤0.1gをエタノール20mL中に添加し1分間攪拌した後、20mLの純水を加えさらに1分間攪拌し該難燃剤の分散液を得た。この分散液を攪拌、pH測定しつつ自動電位差滴定装置を使用して酸を自動で滴下することによって分散液のpHを4.0一定で維持し、酸滴下開始から60分後の酸消費量(mL)を耐酸性の指標とした。
ただし酸消費量が5mLとなったものは、酸消費量5mL時点の酸滴下開始からの経過時間(分)を耐酸性の指標とした。酸としては試薬を純水で希釈し0.1mol/Lとした塩酸を使用した。測定は32℃恒温下で行った、つまり測定に使用したエタノール、純水、塩酸、分散液は32℃に温調して使用した。
該難燃剤の分散液をpHが4.0という酸性の条件にした場合、該難燃剤の耐酸性が良好なほど酸と反応することがなく酸が消費されない。よって酸消費量(mL)が大きいほど耐酸性が悪い、つまりは経過時間(分)が小さいほど耐酸性が悪く、次いで60分の時点で酸消費量5mLに達せなかったものでも、酸滴下開始から60分後の酸消費量(mL)が多いほど耐酸性が悪いことを示す。
2.樹脂組成物の試験方法
2−1.MFR
MFRをJIS K 7210に準拠し、190℃、21.6Kgの荷重の条件で測定した。
2−2.引張強度、引張伸び
引張強度、引張伸びのために引張試験をJIS K 6251に準拠し行った。
2−3.Shore D
硬度の指標として、Shore DをJIS K 6253に準拠し測定した。
2−4.LOI
難燃性の指標として、LOIをJIS K 7201に準拠し測定した。
2−5.磨耗特性
往復運動磨耗試験機の1つであるスガ磨耗試験機において、#240の紙ヤスリ、荷重500gの条件にて1000回往復運動させたときの試験片の磨耗重量(mg)を磨耗特性の指標とした。数値が小さい程、試験片が削れてしまう量が少なく磨耗特性が良いとした。
実施例または比較例において、物性測定用の樹脂組成物として以下の処方の組成物を使用した。
エチレン−エチルアクリレート共重合体 100重量部
水酸化マグネシウムまたはそれを主体とした難燃剤 150重量部
マレイン酸変性樹脂 5重量部
酸化防止剤 1重量部
上記処方の組成物を均一に混練して樹脂組成物を得、上記2−1〜5に適合する各種成形を行った。
実施例または比較例において、加熱熟成工程を経た何ら表面処理されていない合成水酸化マグネシウム粒子(BET比表面積6.1m2/g)を基材1、同様の合成水酸化マグネシウム粒子(BET比表面積11.2m2/g)を基材2として用いた。
実施例1
基材1のスラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にて第1被覆層を形成し洗浄した、それとシランカップリング剤の混合物を直接熱風内に噴霧し乾燥する方法で第2被覆層を形成し難燃剤1−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.25重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、シランカップリング剤は水酸化マグネシウム重量に対しシランカップリング剤として0.25重量%使用した。
難燃剤1−1の分析結果と難燃剤1−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例1として表1に示す。
実施例2
ケイ酸ナトリウムとシランカップリング剤の使用量が異なる以外は実施例1と同様にして、難燃剤1−2を得た。ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.50重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、シランカップリング剤は水酸化マグネシウム重量に対しシランカップリング剤として0.50重量%使用した。
難燃剤1−2の分析結果と難燃剤1−2を含む樹脂組成物の試験結果を実施例2として表1に示す。
実施例3
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にて第1被覆層を形成し、ステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後、乾燥する方法で難燃剤2−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.50重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−1の分析結果と難燃剤2−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例3として表1に示す。
比較例1
基材1を難燃剤3−1とした。難燃剤3−1の分析結果と難燃剤3−1を含む樹脂組成物の試験結果を比較例1として表1に示す。
比較例2
基材1スラリーとステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて有機化合物層のみを形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤3−2を得た。ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で3.00重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤3−2の分析結果と難燃剤3−2を含む樹脂組成物の試験結果を比較例2として表1に示す。
比較例3
ステアリン酸ナトリウムの使用量が異なる以外は比較例2と同様にして、難燃剤3−3を得た。ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.5重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤3−3の分析結果と難燃剤3−3を含む樹脂組成物の試験結果を比較例3として表1に示す。
比較例4
ステアリン酸ナトリウムの使用量が異なる以外は実施例3と同様にして、難燃剤2−2を得た。ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で5.00重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−2の分析結果と難燃剤2−2を含む樹脂組成物の試験結果を比較例4として表1に示す。
実施例4
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、硫酸アルミニウム水溶液を使用して湿式の方法にてアルミニウムの酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、ステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤2−3を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.90重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、硫酸アルミニウムは水酸化マグネシウム重量に対してAl2O3重量換算で0.10重量%分の硫酸アルミニウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.50重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−3の分析結果と難燃剤2−3を含む樹脂組成物の試験結果を実施例4として表1に示す。
実施例5
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後、乾燥したものをメチルハイドロジェンシリコーンオイルとジメチルシリコーンオイルをイソプロピルアルコール中に添加した希釈混合物を使用して乾式の方法にて第2被覆層を形成する方法で難燃剤4−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、メチルハイドロジェンシリコーンオイルとジメチルシリコーンオイルはシリコーンオイル重量換算で水酸化マグネシウム重量に対して各々0.10重量%分の量のシリコーンオイル、つまりは合計0.20重量%のシリコーンオイルを使用した。難燃剤4−1の分析結果と難燃剤4−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例5として表1に示す。
実施例6
基材2スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、ジステアリルリン酸エステルを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤5−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で5.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ジステアリルリン酸エステルは水酸化マグネシウム重量に対してジステアリルリン酸エステル重量換算で1.00重量%分の量のジステアリルリン酸エステルを使用した。
難燃剤5−1の分析結果と難燃剤5−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例6として表1に示す。
発明の効果
本発明の難燃剤は、好適な範囲の耐酸性を有する無機化合物による被覆層と有機化合物による被覆層を有するため、難燃剤として樹脂に対して十分に分散させることができる。また本発明の樹脂組成物は、優れた加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性を有する。
表1より実施例1、2、3、4、5、6の樹脂組成物は、硬度、引張強度(10Mpa以上)、磨耗特性、耐酸性に優れ、かつMFR、引張伸び、LOIに優れ、加工性や分散性も好適な範囲であった。比較例1は耐酸性が、比較例2は引張強度,硬度,摩耗特性,耐酸性が、比較例3は摩耗特性,耐酸性が、比較例4は引張強度,硬度,摩耗特性がそれぞれ不適であった。
1.水酸化マグネシウム粒子またはそれを主体とした難燃剤の分析方法
1−1.BET比表面積
BET法(Brunauer、 Emmett、 Teller法)の比表面積測定装置にて測定を実施し、BET比表面積とした。
1−2.無機化合物の合計含有量
難燃剤中に無機元素が何重量%存在するかを測定し、その値から酸化物含有量(重量%)を算出した。第1被覆層が2種以上の元素の酸化物か水酸化物からなる場合はそれぞれの値から合計値を測定、算出した。
実施例では蛍光X線元素分析(XRF)装置にて測定を実施した。なお第1被覆層を形成する無機化合物の元素が第2被覆層を形成する有機化合物中にも含まれる場合、第2被覆層を形成する前に該難燃剤中の無機化合物元素が何重量%存在するかを測定し、その値から酸化物含有量(重量%)を算出した。
1−3.有機化合物の合計含有量
粉体に有機化合物を滴下または噴霧し混合する乾式の方法や、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーと有機化合物の混合物を直接熱風内に噴霧し乾燥する方法で作成した難燃剤については、有機化合物のほぼ全量が難燃剤中に含まれるので、有機化合物使用量から有機化合物が100%該難燃剤に含まれる場合の含有量を算出し、それを含有量(重量%)とした。上記の方法以外で作成した難燃剤については、表面処理剤をエーテル抽出することによって含有量を得た。実施例でのエーテル抽出とは該難燃剤を酸処理し、エーテル(試薬)を加えて有機化合物を抽出し、得られた抽出液を湯浴で溶媒を揮発させ油状物を得、得られた油状物を精秤することである。この得られた油状物の重量と測定に使用した該難燃剤重量より、該難燃剤の有機化合物合計含有量(重量%)を算出した。
1−4.耐酸性
自動電位差滴定装置を使用し下記条件で測定した酸消費量(mL)または経過時間(分)を耐酸性の指標とした。該難燃剤0.1gをエタノール20mL中に添加し1分間攪拌した後、20mLの純水を加えさらに1分間攪拌し該難燃剤の分散液を得た。この分散液を攪拌、pH測定しつつ自動電位差滴定装置を使用して酸を自動で滴下することによって分散液のpHを4.0一定で維持し、酸滴下開始から60分後の酸消費量(mL)を耐酸性の指標とした。
ただし酸消費量が5mLとなったものは、酸消費量5mL時点の酸滴下開始からの経過時間(分)を耐酸性の指標とした。酸としては試薬を純水で希釈し0.1mol/Lとした塩酸を使用した。測定は32℃恒温下で行った、つまり測定に使用したエタノール、純水、塩酸、分散液は32℃に温調して使用した。
該難燃剤の分散液をpHが4.0という酸性の条件にした場合、該難燃剤の耐酸性が良好なほど酸と反応することがなく酸が消費されない。よって酸消費量(mL)が大きいほど耐酸性が悪い、つまりは経過時間(分)が小さいほど耐酸性が悪く、次いで60分の時点で酸消費量5mLに達せなかったものでも、酸滴下開始から60分後の酸消費量(mL)が多いほど耐酸性が悪いことを示す。
2.樹脂組成物の試験方法
2−1.MFR
MFRをJIS K 7210に準拠し、190℃、21.6Kgの荷重の条件で測定した。
2−2.引張強度、引張伸び
引張強度、引張伸びのために引張試験をJIS K 6251に準拠し行った。
2−3.Shore D
硬度の指標として、Shore DをJIS K 6253に準拠し測定した。
2−4.LOI
難燃性の指標として、LOIをJIS K 7201に準拠し測定した。
2−5.磨耗特性
往復運動磨耗試験機の1つであるスガ磨耗試験機において、#240の紙ヤスリ、荷重500gの条件にて1000回往復運動させたときの試験片の磨耗重量(mg)を磨耗特性の指標とした。数値が小さい程、試験片が削れてしまう量が少なく磨耗特性が良いとした。
実施例または比較例において、物性測定用の樹脂組成物として以下の処方の組成物を使用した。
エチレン−エチルアクリレート共重合体 100重量部
水酸化マグネシウムまたはそれを主体とした難燃剤 150重量部
マレイン酸変性樹脂 5重量部
酸化防止剤 1重量部
上記処方の組成物を均一に混練して樹脂組成物を得、上記2−1〜5に適合する各種成形を行った。
実施例または比較例において、加熱熟成工程を経た何ら表面処理されていない合成水酸化マグネシウム粒子(BET比表面積6.1m2/g)を基材1、同様の合成水酸化マグネシウム粒子(BET比表面積11.2m2/g)を基材2として用いた。
実施例1
基材1のスラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にて第1被覆層を形成し洗浄した、それとシランカップリング剤の混合物を直接熱風内に噴霧し乾燥する方法で第2被覆層を形成し難燃剤1−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.25重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、シランカップリング剤は水酸化マグネシウム重量に対しシランカップリング剤として0.25重量%使用した。
難燃剤1−1の分析結果と難燃剤1−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例1として表1に示す。
実施例2
ケイ酸ナトリウムとシランカップリング剤の使用量が異なる以外は実施例1と同様にして、難燃剤1−2を得た。ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.50重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、シランカップリング剤は水酸化マグネシウム重量に対しシランカップリング剤として0.50重量%使用した。
難燃剤1−2の分析結果と難燃剤1−2を含む樹脂組成物の試験結果を実施例2として表1に示す。
実施例3
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にて第1被覆層を形成し、ステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後、乾燥する方法で難燃剤2−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.50重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−1の分析結果と難燃剤2−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例3として表1に示す。
比較例1
基材1を難燃剤3−1とした。難燃剤3−1の分析結果と難燃剤3−1を含む樹脂組成物の試験結果を比較例1として表1に示す。
比較例2
基材1スラリーとステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて有機化合物層のみを形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤3−2を得た。ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で3.00重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤3−2の分析結果と難燃剤3−2を含む樹脂組成物の試験結果を比較例2として表1に示す。
比較例3
ステアリン酸ナトリウムの使用量が異なる以外は比較例2と同様にして、難燃剤3−3を得た。ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.5重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤3−3の分析結果と難燃剤3−3を含む樹脂組成物の試験結果を比較例3として表1に示す。
比較例4
ステアリン酸ナトリウムの使用量が異なる以外は実施例3と同様にして、難燃剤2−2を得た。ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で5.00重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−2の分析結果と難燃剤2−2を含む樹脂組成物の試験結果を比較例4として表1に示す。
実施例4
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、硫酸アルミニウム水溶液を使用して湿式の方法にてアルミニウムの酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、ステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤2−3を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.90重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、硫酸アルミニウムは水酸化マグネシウム重量に対してAl2O3重量換算で0.10重量%分の硫酸アルミニウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.50重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−3の分析結果と難燃剤2−3を含む樹脂組成物の試験結果を実施例4として表1に示す。
実施例5
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後、乾燥したものをメチルハイドロジェンシリコーンオイルとジメチルシリコーンオイルをイソプロピルアルコール中に添加した希釈混合物を使用して乾式の方法にて第2被覆層を形成する方法で難燃剤4−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、メチルハイドロジェンシリコーンオイルとジメチルシリコーンオイルはシリコーンオイル重量換算で水酸化マグネシウム重量に対して各々0.10重量%分の量のシリコーンオイル、つまりは合計0.20重量%のシリコーンオイルを使用した。難燃剤4−1の分析結果と難燃剤4−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例5として表1に示す。
実施例6
基材2スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、ジステアリルリン酸エステルを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤5−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で5.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ジステアリルリン酸エステルは水酸化マグネシウム重量に対してジステアリルリン酸エステル重量換算で1.00重量%分の量のジステアリルリン酸エステルを使用した。
難燃剤5−1の分析結果と難燃剤5−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例6として表1に示す。
発明の効果
本発明の難燃剤は、好適な範囲の耐酸性を有する無機化合物による被覆層と有機化合物による被覆層を有するため、難燃剤として樹脂に対して十分に分散させることができる。また本発明の樹脂組成物は、優れた加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性を有する。
本発明は、難燃剤を含む樹脂組成物およびその成形品に関する。さらに詳しくは、本発明は、硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性に優れ、かつ加工性や分散性も良好な樹脂組成物に関する。
水酸化マグネシウム粒子は、火災時に有害なガスや腐食性のガスや大量の黒煙を発生させないこと、埋め立て等のリサイクル時に問題となる毒性をもたないこと等の理由から、ハロゲンフリーの難燃剤の1つとして樹脂に配合され電線やケーブルをはじめとする多種多様な成形体として広く使用されている。
しかし一方で水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として利用する場合は、一般に樹脂に対して多量に配合しなければならない。また水酸化マグネシウム粒子の表面は親水性であるため親油性である樹脂へ分散させることは元来難しい。そのため分散が十分でない場合には、樹脂組成物の機械的物性や成型特性を低下させる問題が起こることが知られている。
また水酸化マグネシウム粒子は物質固有の性質により酸に対する反応性が高い。そのため水酸化マグネシウム粒子を含有する樹脂組成物が空気中または水中に長時間置かれた場合、配合された水酸化マグネシウム粒子が空気中または水中に存在する炭酸と反応し、樹脂組成物表面が白くなる、所謂表面白化現象を引き起こすことも知られている。
これらの問題を解決するために様様な方法が提案されている。例えば、水酸化マグネシウム粒子を有機化合物で表面処理することによって樹脂へ配合する際の分散性を改善する方法が提案されている(特許文献1)。
また水酸化マグネシウム粒子表面をケイ素化合物、ホウ素化合物およびアルミニウム化合物などの無機化合物で被覆することが提案されている。また無機化合物による被覆をした後に、高級脂肪酸類、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、アルコールリン酸エステル類などの有機化合物で被覆すると、高い耐酸性が得られることが提案されている(特許文献2)。
しかし一方で水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として利用する場合は、一般に樹脂に対して多量に配合しなければならない。また水酸化マグネシウム粒子の表面は親水性であるため親油性である樹脂へ分散させることは元来難しい。そのため分散が十分でない場合には、樹脂組成物の機械的物性や成型特性を低下させる問題が起こることが知られている。
また水酸化マグネシウム粒子は物質固有の性質により酸に対する反応性が高い。そのため水酸化マグネシウム粒子を含有する樹脂組成物が空気中または水中に長時間置かれた場合、配合された水酸化マグネシウム粒子が空気中または水中に存在する炭酸と反応し、樹脂組成物表面が白くなる、所謂表面白化現象を引き起こすことも知られている。
これらの問題を解決するために様様な方法が提案されている。例えば、水酸化マグネシウム粒子を有機化合物で表面処理することによって樹脂へ配合する際の分散性を改善する方法が提案されている(特許文献1)。
また水酸化マグネシウム粒子表面をケイ素化合物、ホウ素化合物およびアルミニウム化合物などの無機化合物で被覆することが提案されている。また無機化合物による被覆をした後に、高級脂肪酸類、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、アルコールリン酸エステル類などの有機化合物で被覆すると、高い耐酸性が得られることが提案されている(特許文献2)。
このように水酸化マグネシウム粒子表面に無機化合物からなる被覆層と有機化合物からなる被覆層を持つ水酸化マグネシウム粒子を主体とする難燃剤は提案されてきた。しかしながら、それらの難燃剤の被覆目的は、耐酸性、樹脂に対する分散性の改良を目的とするものであり、樹脂組成物の硬度、引張強度、磨耗特性の改良については何の検討もされておらず、それら特性が不十分であった。
一方、樹脂組成物の硬度、引張強度、磨耗特性の改良については、例えば、脂肪酸等で表面処理された水酸化マグネシウム粒子を使用し、水酸化マグネシウム粒子以外の樹脂や添加剤の部分によって磨耗特性を改良する方法が提案されている(特許文献3)。
また難燃剤としてシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム粒子と脂肪酸等で表面処理された水酸化マグネシウム粒子を併用したり、シラン架橋することで硬度、引張強度を改良することが提案されている(特許文献4)。
しかしながらこれらの方法は特定の樹脂組成でなければならないこと、架橋させることが必須であること、数種類の水酸化マグネシウム粒子を併用しなければならない等の限定のいずれかが存在するうえに、硬度、引張強度、磨耗特性が未だ十分でなく、さらに耐酸性が悪いという欠点もあった。
一方、樹脂組成物の硬度、引張強度、磨耗特性の改良については、例えば、脂肪酸等で表面処理された水酸化マグネシウム粒子を使用し、水酸化マグネシウム粒子以外の樹脂や添加剤の部分によって磨耗特性を改良する方法が提案されている(特許文献3)。
また難燃剤としてシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム粒子と脂肪酸等で表面処理された水酸化マグネシウム粒子を併用したり、シラン架橋することで硬度、引張強度を改良することが提案されている(特許文献4)。
しかしながらこれらの方法は特定の樹脂組成でなければならないこと、架橋させることが必須であること、数種類の水酸化マグネシウム粒子を併用しなければならない等の限定のいずれかが存在するうえに、硬度、引張強度、磨耗特性が未だ十分でなく、さらに耐酸性が悪いという欠点もあった。
本発明は下記の特性1、2を併せもつ水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤を含む樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
特性1:難燃剤として樹脂に配合することで、樹脂組成物に硬度、引張強度、磨耗特性を付与しうること。
特性2:難燃剤として樹脂に配合した樹脂組成物が優れた耐酸性、好適な加工性や分散性を示すこと。
即ち水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として使用する場合、必要とされてきた樹脂に対する分散性、難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性を好適な範囲にとどめた上で、1種類の水酸化マグネシウム粒子難燃剤のみで、数種類の水酸化マグネシウム粒子難燃剤を併用することなしに、樹脂組成物に、硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性も付与することを目的とする。
特性1:難燃剤として樹脂に配合することで、樹脂組成物に硬度、引張強度、磨耗特性を付与しうること。
特性2:難燃剤として樹脂に配合した樹脂組成物が優れた耐酸性、好適な加工性や分散性を示すこと。
即ち水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として使用する場合、必要とされてきた樹脂に対する分散性、難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性を好適な範囲にとどめた上で、1種類の水酸化マグネシウム粒子難燃剤のみで、数種類の水酸化マグネシウム粒子難燃剤を併用することなしに、樹脂組成物に、硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性も付与することを目的とする。
本発明者は水酸化マグネシウム粒子を主体とする難燃剤において、好適な範囲の無機化合物からなる第1被覆層の上に好適な範囲の有機化合物による第2被覆層を有するものが樹脂用難燃剤として優れた特性を示すことを見出し本発明に至った。優れた特性としては樹脂に対する分散性、それを配合した樹脂組成物の加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性が好適でバランスとれていることが挙げられる。即ち上記目的を達成するため本発明は以下のような構成からなる。
本発明の目的は、以下の発明により達成される。
本発明の目的は、以下の発明により達成される。
1. 100重量部の樹脂および50〜300重量部の難燃剤を含有し、JIS K 6251による引張強度が10MPa以上である樹脂組成物であって、該難燃剤が、
水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層および第2被覆層を含み、
(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、
(ii)第1被覆層は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、
(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含み、有機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%である、
ことを特徴とする前記樹脂組成物。
水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層および第2被覆層を含み、
(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、
(ii)第1被覆層は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、
(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含み、有機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%である、
ことを特徴とする前記樹脂組成物。
2. 第1被覆層が、ケイ素の酸化物若しくは水酸化物を含む前項1記載の樹脂組成物。
3. 第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の樹脂組成物。
4. 第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびアルミネートカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の樹脂組成物。
5. 第2被覆層が、少なくとも1種のシランカップリング剤を含有する前項1記載の樹脂組成物。
6. 第2被覆層が、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩およびアニオン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の樹脂組成物。
7. 前項1記載の樹脂組成物よりなる成形品。
8. 電線またはケーブルである前項7記載の成形品。
9. 屋外に布設された電線またはケーブルである前項7記載の成形品。
10. 100重量部の樹脂並びに50〜300重量部の難燃剤を含有する樹脂組成物であって、該難燃剤が、水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層および第2被覆層を含み、
(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、
(ii)第1被覆層は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、
(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物である、
樹脂組成物の引張強度を向上させる方法であって、
該難燃剤として第2被覆層における有機化合物の量が難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%であるものを用いることを特徴とする方法。
(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、
(ii)第1被覆層は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、
(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物である、
樹脂組成物の引張強度を向上させる方法であって、
該難燃剤として第2被覆層における有機化合物の量が難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%であるものを用いることを特徴とする方法。
本発明の難燃剤は、好適な範囲の耐酸性を有する無機化合物による被覆層と有機化合物による被覆層を有するため、難燃剤として樹脂に対して十分に分散させることができる。また本発明の樹脂組成物は、優れた加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性を有する。
<難燃剤>
(水酸化マグネシウム粒子)
本発明に使用される水酸化マグネシウム粒子は、難燃剤用の水酸化マグネシウム粒子である。水酸化マグネシウム粒子は、BET比表面積が1〜25m2/gであることが好ましく、BET比表面積が2〜15m2/gであることがさらに好ましく、BET比表面積が4〜15m2/gであることが最も好ましい。
BET比表面積が1m2/g以下の場合は、難燃剤を樹脂に配合した樹脂組成物の難燃性、機械的物性が好ましくなく、BET比表面積が25m2/g以上の場合は、樹脂に対する分散性、樹脂組成物の加工性、機械的物性、表面外観が好ましくない。
また水酸化マグネシウム粒子は改質等の目的でリン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、カルシウム、バリウム等を少量含むものであっても良い。水酸化マグネシウムの由来についても特になんの制約もなく、例えば天然水酸化マグネシウムを含む鉱石を粉砕した粉末、マグネシウム水溶液をアルカリ中和することにより水酸化マグネシウムを合成した粉末、酸化マグネシウムを原料として水酸化マグネシウムを合成した粉末であってもよいが、特に加熱熟成工程を経た合成水酸化マグネシウムが粒子の均一性の観点から好適である。
(水酸化マグネシウム粒子)
本発明に使用される水酸化マグネシウム粒子は、難燃剤用の水酸化マグネシウム粒子である。水酸化マグネシウム粒子は、BET比表面積が1〜25m2/gであることが好ましく、BET比表面積が2〜15m2/gであることがさらに好ましく、BET比表面積が4〜15m2/gであることが最も好ましい。
BET比表面積が1m2/g以下の場合は、難燃剤を樹脂に配合した樹脂組成物の難燃性、機械的物性が好ましくなく、BET比表面積が25m2/g以上の場合は、樹脂に対する分散性、樹脂組成物の加工性、機械的物性、表面外観が好ましくない。
また水酸化マグネシウム粒子は改質等の目的でリン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、カルシウム、バリウム等を少量含むものであっても良い。水酸化マグネシウムの由来についても特になんの制約もなく、例えば天然水酸化マグネシウムを含む鉱石を粉砕した粉末、マグネシウム水溶液をアルカリ中和することにより水酸化マグネシウムを合成した粉末、酸化マグネシウムを原料として水酸化マグネシウムを合成した粉末であってもよいが、特に加熱熟成工程を経た合成水酸化マグネシウムが粒子の均一性の観点から好適である。
(第1被覆層)
第1被覆層は、無機化合物を含む層である。無機化合物は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である。特にケイ素の酸化物若しくは水酸化物が好ましい。
第1被覆層のための被覆原料として、(1)メタケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、オルトケイ酸カリウム、水ガラスのようなケイ酸およびその可溶性塩類、(2)メタアルミン酸ナトリウム、オルトアルミオン酸ナトリウム、メタアルミン酸カリウム、オルトアルミン酸カリウムのようなアルミン酸およびその可溶性塩類、(3)塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウムのような可溶性鉱酸アルミニウム塩、(4)三塩化チタン、硝酸チタンのような可溶性鉱酸チタン塩、(5)塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硫酸酸化ジルコニウムのような可溶性鉱酸ジルコニウム塩または可溶性鉱酸酸化ジルコニウム塩、(6)ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウムのようなホウ酸およびその可溶性塩類等が挙げられる。
第1被覆層は、無機化合物を含む層である。無機化合物は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である。特にケイ素の酸化物若しくは水酸化物が好ましい。
第1被覆層のための被覆原料として、(1)メタケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、オルトケイ酸カリウム、水ガラスのようなケイ酸およびその可溶性塩類、(2)メタアルミン酸ナトリウム、オルトアルミオン酸ナトリウム、メタアルミン酸カリウム、オルトアルミン酸カリウムのようなアルミン酸およびその可溶性塩類、(3)塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウムのような可溶性鉱酸アルミニウム塩、(4)三塩化チタン、硝酸チタンのような可溶性鉱酸チタン塩、(5)塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硫酸酸化ジルコニウムのような可溶性鉱酸ジルコニウム塩または可溶性鉱酸酸化ジルコニウム塩、(6)ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウムのようなホウ酸およびその可溶性塩類等が挙げられる。
第1被覆層は、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーに、上記被覆原料を滴下し混合する湿式法で形成することができる。上記被覆原料は使用する際に水や有機溶媒に溶解、希釈し、無機化合物希釈物としてから用いることは、均一な第1被覆層形成のために好ましい。また第1被覆層を形成する方法において、スラリーや無機化合物希釈物は必要に応じて温度を5〜90℃の範囲で調節したり、酸やアルカリでpH調節しても良い。第1被覆層を形成する酸化物若しくは水酸化物は、AlCl(OH)2のような使用する溶液中に含まれる陰イオンを含んだ塩基性塩を少量含有するものであっても良い。
また2種以上の無機化合物で第1被覆層を形成する場合、下記2種類の方法のどちらであってもよい。
方法1:第1の無機化合物で被覆層を形成した後、それ以外の第2の無機化合物で被覆層を形成する。
方法2:第1の無機化合物と第2の無機化合物を同時に用いて被覆層を形成する。
また2種以上の無機化合物で第1被覆層を形成する場合、下記2種類の方法のどちらであってもよい。
方法1:第1の無機化合物で被覆層を形成した後、それ以外の第2の無機化合物で被覆層を形成する。
方法2:第1の無機化合物と第2の無機化合物を同時に用いて被覆層を形成する。
本発明の難燃剤において、第1被覆層の被覆量は多ければ多いほど、樹脂に対する分散性が悪化し、樹脂組成物の加工性および伸び特性が低下するが、樹脂組成物の引張強度、硬度および耐酸性は向上する傾向にある。これは何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子表面より第1被覆層表面のほうが上記効果が高いためである。また第1被覆後のBET比表面積が被覆前に比べて上昇する傾向もある。
第1被覆層の含有量には好適な範囲が存在し、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましく、0.2〜2重量%であることが最も好ましい。
第1被覆層の含有量が0.05重量%未満の場合、難燃剤は十分な量の第1被覆層を有していないため該難燃剤を配合した樹脂組成物は十分な耐酸性が得られず、また使用される水酸化マグネシウム粒子のBET比表面積や第2被覆層の有機化合物量によっては引張強度、磨耗特性、硬度特性も十分でない場合がある。第1被覆層の含有量が10重量%を超える場合、第1被覆の利点である難燃剤を配合した樹脂組成物の引張強度、硬度および耐酸性の向上の効果は鈍化傾向となる。一方、欠点である樹脂に対する分散性の悪化や該難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性の低下、伸び特性の低下は利点ほど鈍化しないので好ましくない。
また難燃剤において第1被覆層の含有量が多ければ多いほど、該難燃剤において難燃性の効果の高い水酸化マグネシウムの含有率が低下するので好ましくない。
第1被覆後のBET比表面積の上昇は第1被覆層の量が多いほど上昇量も大きい傾向にあるため、場合によっては難燃剤として好適なBET比表面積から外れ、樹脂に対する分散性、樹脂組成物の加工性、機械的物性、表面外観等が好ましくなくなるため好ましくない。
第1被覆層の含有量には好適な範囲が存在し、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましく、0.2〜2重量%であることが最も好ましい。
第1被覆層の含有量が0.05重量%未満の場合、難燃剤は十分な量の第1被覆層を有していないため該難燃剤を配合した樹脂組成物は十分な耐酸性が得られず、また使用される水酸化マグネシウム粒子のBET比表面積や第2被覆層の有機化合物量によっては引張強度、磨耗特性、硬度特性も十分でない場合がある。第1被覆層の含有量が10重量%を超える場合、第1被覆の利点である難燃剤を配合した樹脂組成物の引張強度、硬度および耐酸性の向上の効果は鈍化傾向となる。一方、欠点である樹脂に対する分散性の悪化や該難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性の低下、伸び特性の低下は利点ほど鈍化しないので好ましくない。
また難燃剤において第1被覆層の含有量が多ければ多いほど、該難燃剤において難燃性の効果の高い水酸化マグネシウムの含有率が低下するので好ましくない。
第1被覆後のBET比表面積の上昇は第1被覆層の量が多いほど上昇量も大きい傾向にあるため、場合によっては難燃剤として好適なBET比表面積から外れ、樹脂に対する分散性、樹脂組成物の加工性、機械的物性、表面外観等が好ましくなくなるため好ましくない。
(第2被覆層)
第2被覆層は、有機化合物を含む層である。第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含む。このうち特にシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物については引張強度、磨耗特性、硬度特性を悪化させ難いため特に好ましい。
高級脂肪酸およびその金属塩は、長鎖炭化水素の1価のカルボン酸およびその金属塩のうち炭素数が10以上のもので飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であっても良く既知のものを使用することができる。具体例としてはカプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸およびそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
多価アルコールの高級脂肪酸エステルは、グリセリン等の多価アルコールとステアリン酸やオレイン酸等の高級脂肪酸のエステルであり既知のものを使用できる。具体例としてはグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等が挙げられる。
第2被覆層は、有機化合物を含む層である。第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含む。このうち特にシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物については引張強度、磨耗特性、硬度特性を悪化させ難いため特に好ましい。
高級脂肪酸およびその金属塩は、長鎖炭化水素の1価のカルボン酸およびその金属塩のうち炭素数が10以上のもので飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であっても良く既知のものを使用することができる。具体例としてはカプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸およびそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
多価アルコールの高級脂肪酸エステルは、グリセリン等の多価アルコールとステアリン酸やオレイン酸等の高級脂肪酸のエステルであり既知のものを使用できる。具体例としてはグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等が挙げられる。
リン酸エステルは、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルのどれであっても良いし、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルについてはその塩であっても良く、既知のものを使用できる。具体例としては(1)モノブチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノトリデシルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、モノオレイルリン酸エステル、モノ−2−エチルヘキシルリン酸エステル等のリン酸モノエステルおよびそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム等の金属塩やジアルコールアミン塩、(2)ジブチルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジトリデシルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、ジオレイルリン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルリン酸エステル等のリン酸ジエステルおよびそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム等の金属塩やジアルコールアミン塩、(3)リン酸トリブチル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリオレイル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル等のリン酸トリエステルが挙げられる。これらのリン酸モノエステルおよびその塩、リン酸ジエステルおよびその塩、リン酸トリエステルは、例えばリン酸モノエステルとリン酸ジエステルの混合物のような混合物であっても良い。
アニオン系界面活性剤は、硫酸エステル塩やスルホン酸塩等であり、既知のものを使用できる。具体例としては高級アルコール硫酸エステル塩、ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩、アミド結合硫酸エステル塩、エステル結合硫酸エステル塩、エステル結合スルホネート、アミド結合スルホン酸塩、エーテル結合スルホン酸塩、エーテル結合アルキルアリールスルホン酸塩、エステル結合アルキルアリールスルホン酸塩、アミド結合アルキルアリールスルホン酸塩等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1分子中に有機材料と親和性の高い官能基とアルコキシ基やハロゲンのような加水分解基という異なる2種類の官能基をもつ有機ケイ素化合物であり既知のものを使用できる。具体例としては(1)3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(2)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(3)アリルトリメトキシシラン等のアリル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(4)3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を官能基としてもつシランカップリング剤、(5)3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を官能基としてもつシランカップリング剤、(6)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(7)3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(8)p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(9)ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を官能基としてもつシランカップリング剤、(10)ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基を官能基としてもつシランカップリング剤、(11)3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ基を官能基としてもつシランカップリング剤、(12)3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を官能基としてもつシランカップリング剤等が挙げられる。
チタネートカップリング剤は、1分子中に有機材料と親和性の高い官能基とアルコキシ基やハロゲンのような加水分解基という異なる2種類の官能基をもつ有機チタン化合物であり既知のものを使用できる。具体例としてはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が挙げられる。
アルミネートカップリング剤は、1分子中に有機材料と親和性の高い官能基とアルコキシ基やハロゲンのような加水分解基という異なる2種類の官能基をもつ有機アルミニウム化合物であり既知のものを使用できる。具体例としてはアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
本発明におけるオルガノシラン化合物は、アルコキシ基やハロゲンのような加水分解基を含む有機ケイ素化合物のうち比較的低分子の化合物のことであり既知のものを使用できる。なお上述のシランカップリング剤に含まれるものは除くこととする。具体例としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
オルガノシロキサン化合物は、Si−O−Si結合(シロキサン結合)をもつ有機ケイ素化合物であり、1分子中のシロキサン結合が1つのみのオルガノジシロキサンであっても良いし、少数のシロキサン結合が連なったオルガノシロキサンオリゴマーであっても良いし、多数のシロキサン結合が連なりポリマー化したオルガノポリシロキサン所謂シリコーンであっても良く既知のものを使用できるが、特にメチルハイドロジェンシリコーンオイルは撥水性が高く好ましい。具体例としては(1)ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、ナトリウムメチルシリコネート等のオルガノジシロキサン、(2)メチルメトキシシロキサンオリゴマー、ジメチルフェニルメトキシシロキサンオリゴマー等の1分子中にメチル基、フェニル基、エポキシ基、メルカプト基のうち1種または2種を有し、かつメトキシ基等のアルコキシ基をもつオルガノシロキサンオリゴマー、(3)ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルの所謂ストレートシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル等の所謂変性シリコーンオイル等のオルガノポリシロキサンが挙げられる。変性シリコーンオイルについては例えばアミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイルのように2種類以上で変性された変性シリコーンオイルであっても良い。
オルガノシラザン化合物は、Si−NH−Si結合をもつ有機ケイ素化合物であり、1分子中のSi−NH−Si結合が1つのみのオルガノジシラザンであっても良いし、少数のSi−NH−Si結合が連なったオルガノシラザンであっても良いし、多数のSi−NH−Si結合が連なりポリマー化したオルガノポリシラザンであっても良く既知のものを使用できる。
具体例としてはヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、1、3−ジビニル−1、1、3、3−テトラメチルジシラザン、ヘキサエチルシクロトリシラザン、メチルポリシラザン、フェニルポリシラザン、ポリエーテル変性ポリシラザン等が挙げられる。
具体例としてはヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、1、3−ジビニル−1、1、3、3−テトラメチルジシラザン、ヘキサエチルシクロトリシラザン、メチルポリシラザン、フェニルポリシラザン、ポリエーテル変性ポリシラザン等が挙げられる。
本発明の第2被覆層を形成する方法にはあらかじめ第1被覆層を形成しておくこと以外に特に制限はなく既知の方法をとることができる。粉体に有機化合物を滴下または噴霧し混合する乾式の方法、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーに有機化合物を滴下し混合する湿式の方法等をとりうるが湿式の方法が特に好ましい。
さらに有機化合物は使用する際に水や有機溶媒に溶解、希釈し、有機化合物希釈物としてから用いることは均一な第2被覆層形成のために好ましく、このときエマルション化する等希釈しやすい形にしても良い。
また第2被覆層を形成する際の乾式法の水酸化マグネシウム粒子や有機化合物希釈物、湿式法のスラリー、有機化合物希釈物は必要に応じて、温度を5〜300℃の範囲で調節したり、酸やアルカリでpH調節しても良い。
また2種以上の有機化合物で第2被覆層を形成する場合、均一な第2被覆層形成できるならばその製造方法に特に制限はなく、2種類以上の処理剤で同時に処理を行っても良いし、1種類の処理を実施した後にさらに処理を行っても良い。
さらに有機化合物は使用する際に水や有機溶媒に溶解、希釈し、有機化合物希釈物としてから用いることは均一な第2被覆層形成のために好ましく、このときエマルション化する等希釈しやすい形にしても良い。
また第2被覆層を形成する際の乾式法の水酸化マグネシウム粒子や有機化合物希釈物、湿式法のスラリー、有機化合物希釈物は必要に応じて、温度を5〜300℃の範囲で調節したり、酸やアルカリでpH調節しても良い。
また2種以上の有機化合物で第2被覆層を形成する場合、均一な第2被覆層形成できるならばその製造方法に特に制限はなく、2種類以上の処理剤で同時に処理を行っても良いし、1種類の処理を実施した後にさらに処理を行っても良い。
第1被覆層や第2被覆層を湿式法で形成する場合、第1被覆層を形成させる前のスラリー、第1被覆層を形成させたスラリー、第2被覆層を形成させたスラリーを濾過することでスラリー溶媒中の不純物を除去したり、洗浄することで難燃剤表面等に存在する不純物の低減することが望ましいが、上記全ての工程でスラリーを濾過、洗浄する必要はなく適宜選択することができる。
濾過、洗浄の方法としては不純物を低減できうるならば特に制限されることはなく既知の方法および装置を活用しうるが、洗浄方法としては清浄な水を該難燃剤に接触させる方法が特に好ましい。
水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層を形成した粒子、第1被覆層と第2被覆層を形成した粒子を得るための乾燥方法に特に制限はなく、一旦スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法やスラリーを直接熱風内に噴霧し乾燥する方法等、既知の方法や装置を活用しうる。
濾過、洗浄の方法としては不純物を低減できうるならば特に制限されることはなく既知の方法および装置を活用しうるが、洗浄方法としては清浄な水を該難燃剤に接触させる方法が特に好ましい。
水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層を形成した粒子、第1被覆層と第2被覆層を形成した粒子を得るための乾燥方法に特に制限はなく、一旦スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法やスラリーを直接熱風内に噴霧し乾燥する方法等、既知の方法や装置を活用しうる。
本発明の難燃剤において、第2被覆層の被覆量は多ければ多いほど樹脂に対する分散性が向上し、配合した樹脂組成物の加工性、伸び特性および耐酸性が向上するが、配合した樹脂組成物の引張強度および硬度は低下する。
これは<1>第2被覆される前の水酸化マグネシウム粒子表面や第1被覆層表面は親水性であるが、この親水性表面が第2被覆層で被覆された部分は新油性の高い表面となり上記の効果を示すこと、<2>第2被覆層に使用される有機化合物が樹脂組成物中に難燃剤に被覆された形態であれ添加剤として配合された形態であれ存在するとその形態にかかわらず滑剤効果として上記の効果を示すこと、によるものである。
これは<1>第2被覆される前の水酸化マグネシウム粒子表面や第1被覆層表面は親水性であるが、この親水性表面が第2被覆層で被覆された部分は新油性の高い表面となり上記の効果を示すこと、<2>第2被覆層に使用される有機化合物が樹脂組成物中に難燃剤に被覆された形態であれ添加剤として配合された形態であれ存在するとその形態にかかわらず滑剤効果として上記の効果を示すこと、によるものである。
本発明における第2被覆層の量には好適な範囲が存在し、難燃剤中の全量に対して0.1〜1.5重量%であることが好ましく、0.1〜1.0重量%であることがさらに好ましく、0.2〜1.0重量%であることが最も好ましい。
第2被覆層の含有量が0.1重量%未満の場合、難燃剤は十分な量の第2被覆層を有していないため、樹脂に対する分散性と該難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性、伸び特性、磨耗特性、耐酸性が十分得られないので好ましくない。
第2被覆層の含有量が1.5重量%を超える場合、難燃剤を配合した樹脂組成物は十分な加工性、伸び特性、耐酸性は得られるものの、十分な引張強度、硬度特性、磨耗特性が得られないので好ましくない。また単純に可燃性である有機化合物の相対含有量が増加することにより難燃性が悪くなる傾向があるため好ましくない。親水性である水酸化マグネシウム粒子表面や第1被覆層表面が第2被覆層を形成する有機化合物に単分子層として100%以上被覆された状態であると、親水性の表面の特性である引っ張り強度上昇、硬度上昇の効果を引き出しづらくなるため親水性の表面が露出している部分を有していることが本発明の難燃剤では望ましい。
第2被覆層の含有量が0.1重量%未満の場合、難燃剤は十分な量の第2被覆層を有していないため、樹脂に対する分散性と該難燃剤を配合した樹脂組成物の加工性、伸び特性、磨耗特性、耐酸性が十分得られないので好ましくない。
第2被覆層の含有量が1.5重量%を超える場合、難燃剤を配合した樹脂組成物は十分な加工性、伸び特性、耐酸性は得られるものの、十分な引張強度、硬度特性、磨耗特性が得られないので好ましくない。また単純に可燃性である有機化合物の相対含有量が増加することにより難燃性が悪くなる傾向があるため好ましくない。親水性である水酸化マグネシウム粒子表面や第1被覆層表面が第2被覆層を形成する有機化合物に単分子層として100%以上被覆された状態であると、親水性の表面の特性である引っ張り強度上昇、硬度上昇の効果を引き出しづらくなるため親水性の表面が露出している部分を有していることが本発明の難燃剤では望ましい。
本発明の難燃剤は、無機化合物による第1被覆層が形成された後に、有機化合物による第2被覆層を有するので、何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子、無機化合物による被覆層のみをもつ粒子、有機化合物による被覆層のみをもつ粒子と比較して優れた耐酸性を有する。
これは耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層により何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子表面よりも耐酸性の強い表面に改質される効果と有機化合物による第2被覆層により難燃剤表面が新油性となり撥水性を有する表面に改質される効果の両方を有していることに由来する。
なお第1被覆層の含有量や第2被覆層の含有量が多すぎる場合、本発明の難燃剤を配合した樹脂組成物で必要な優れた加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性のうち少なくとも1つは好適な範囲から外れてしまう。そのため、本発明では第1被覆層の含有量や第2被覆層の含有量を好適な範囲に制限している。
なお好適な範囲内であるならば、水酸化マグネシウム粒子表面が全て第1被覆層に覆われていることは耐酸性のために好ましいことである。
これは耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層により何の被覆もされていない水酸化マグネシウム粒子表面よりも耐酸性の強い表面に改質される効果と有機化合物による第2被覆層により難燃剤表面が新油性となり撥水性を有する表面に改質される効果の両方を有していることに由来する。
なお第1被覆層の含有量や第2被覆層の含有量が多すぎる場合、本発明の難燃剤を配合した樹脂組成物で必要な優れた加工性、引張強度、伸び特性、磨耗特性、硬度特性、耐酸性のうち少なくとも1つは好適な範囲から外れてしまう。そのため、本発明では第1被覆層の含有量や第2被覆層の含有量を好適な範囲に制限している。
なお好適な範囲内であるならば、水酸化マグネシウム粒子表面が全て第1被覆層に覆われていることは耐酸性のために好ましいことである。
本発明の水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤は、耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層を形成することにより高引張強度、高硬度と優れた磨耗特性を得ているが、これらの特性と加工性や分散性は通常相反する特性である。
本発明は、耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層と有機化合物による第2被覆層との被覆を所定の順序にし被覆量を所定の範囲にすることにより、樹脂に配合した場合、引張強度、硬度および磨耗特性に優れ、かつ加工性や分散性を好適な範囲とすることができることを見出したことに基づく。
例えば耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層の含有量が多ければ多いほど、硬度、引張強度および磨耗特性は良い傾向となるが加工性や分散性は悪い傾向となる。一方、有機化合物による第2被覆層の含有量が多ければ多いほど、分散性や加工性は良い傾向となるが、硬度、引張強度および磨耗特性は悪い傾向となる。
よって硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性、加工性、分散性に優れた樹脂組成物を得るためには、難燃剤において本発明のような被覆量制限が必要となる。
本発明は、耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層と有機化合物による第2被覆層との被覆を所定の順序にし被覆量を所定の範囲にすることにより、樹脂に配合した場合、引張強度、硬度および磨耗特性に優れ、かつ加工性や分散性を好適な範囲とすることができることを見出したことに基づく。
例えば耐酸性を有する無機化合物による第1被覆層の含有量が多ければ多いほど、硬度、引張強度および磨耗特性は良い傾向となるが加工性や分散性は悪い傾向となる。一方、有機化合物による第2被覆層の含有量が多ければ多いほど、分散性や加工性は良い傾向となるが、硬度、引張強度および磨耗特性は悪い傾向となる。
よって硬度、引張強度、磨耗特性、耐酸性、加工性、分散性に優れた樹脂組成物を得るためには、難燃剤において本発明のような被覆量制限が必要となる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、樹脂および本発明の難燃剤を含有する。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、100重量部の樹脂に対して、50〜300重量部、好ましくは50〜250重量部である。難燃剤の含有量がこの範囲にあると、樹脂組成物の難燃性を維持でき、樹脂の相対的な量が減少することなく機械的物性や成型特性を維持できる。
本発明の樹脂組成物は、JIS K 6251による引張強度が、好ましくは10MPa以上、より好ましくは12MPa以上である。
本発明の樹脂組成物は、樹脂および本発明の難燃剤を含有する。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、100重量部の樹脂に対して、50〜300重量部、好ましくは50〜250重量部である。難燃剤の含有量がこの範囲にあると、樹脂組成物の難燃性を維持でき、樹脂の相対的な量が減少することなく機械的物性や成型特性を維持できる。
本発明の樹脂組成物は、JIS K 6251による引張強度が、好ましくは10MPa以上、より好ましくは12MPa以上である。
難燃剤を配合する樹脂として、(1)ポリエチレン、ポリプロピレンおよびそのアロイ、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体等のポリオレフィンおよびその共重合体およびそのエラストマーおよびそのアロイ、(2)ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、芳香族ポリアミド等のポリアミドおよびそのアロイ、(3)ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート等のポリエステル、(4)ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート等のポリエーテル、(5)スチレンおよびそのエラストマー、(6)ポリカーボネート、(7)ポリメタクリル酸メチル、シリコーンアクリル共重合体等のアクリル樹脂およびその共重合体、(8)ポリイミド、(9)ポリ塩化ビニル、(10)シリコーン樹脂およびその共重合体、(11)ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリニトリル等のゴムおよびその共重合体、(12)フェノール樹脂、(13)エポキシ樹脂、(14)メラミン樹脂、(15)尿素樹脂、(16)ポリウレタン等が挙げられる。
このうち特にポリオレフィンおよびその共重合体およびそのエラストマーおよびそのアロイを含む樹脂を使用することが好ましい。
難燃剤を配合する樹脂は化学架橋、電子線架橋等の架橋をしても良い。ただし本発明の難燃剤は架橋により難燃剤を含む樹脂組成物を高引張強度、高硬度にするのでなく、水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤により高引張強度、高硬度という特性を樹脂組成物に付与することができるので、架橋できない樹脂や樹脂を架橋させずに使用する場合において、特に有用である。
このうち特にポリオレフィンおよびその共重合体およびそのエラストマーおよびそのアロイを含む樹脂を使用することが好ましい。
難燃剤を配合する樹脂は化学架橋、電子線架橋等の架橋をしても良い。ただし本発明の難燃剤は架橋により難燃剤を含む樹脂組成物を高引張強度、高硬度にするのでなく、水酸化マグネシウム粒子を主体とした難燃剤により高引張強度、高硬度という特性を樹脂組成物に付与することができるので、架橋できない樹脂や樹脂を架橋させずに使用する場合において、特に有用である。
本発明の樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で添加剤を適宜配合しても良い。使用できる添加剤に特に制限はないが、老化防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、硬化剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、充填剤、核剤、相溶化剤、発泡剤、顔料等が適宜使用できる。また他の難燃剤や難燃助剤を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物は、樹脂に本発明の難燃剤を配合することにより得ることができる。樹脂組成物の製造方法としては樹脂に難燃剤を均一に分散させられるならば特に限定されることはなく、単軸混練機、2軸混練機、ニーダー、バンバリーミキサー、オーブンロール、インターミックス等の一般的に用いられている樹脂加工機を適宜使用することができる。
本発明の樹脂組成物は、樹脂に本発明の難燃剤を配合することにより得ることができる。樹脂組成物の製造方法としては樹脂に難燃剤を均一に分散させられるならば特に限定されることはなく、単軸混練機、2軸混練機、ニーダー、バンバリーミキサー、オーブンロール、インターミックス等の一般的に用いられている樹脂加工機を適宜使用することができる。
<成形品>
また得られた樹脂組成物は用途や目的に応じて、インフレーション成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、カレンダー成形、真空成形、トランスファー成形、積層成形等の成形を適宜行うことによって成形品を製造することができる。
成形品として、電線またはケーブルが挙げられる。電線またはケーブルは特に屋外に敷設することができる場合に好適である。
また得られた樹脂組成物は用途や目的に応じて、インフレーション成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、カレンダー成形、真空成形、トランスファー成形、積層成形等の成形を適宜行うことによって成形品を製造することができる。
成形品として、電線またはケーブルが挙げられる。電線またはケーブルは特に屋外に敷設することができる場合に好適である。
これより本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら掣肘されることはない。実施例または比較例にて行われた分析方法、試験方法を以下に説明する。
1.水酸化マグネシウム粒子またはそれを主体とした難燃剤の分析方法
1−1.BET比表面積
BET法(Brunauer、 Emmett、 Teller法)の比表面積測定装置にて測定を実施し、BET比表面積とした。
1−1.BET比表面積
BET法(Brunauer、 Emmett、 Teller法)の比表面積測定装置にて測定を実施し、BET比表面積とした。
1−2.無機化合物の合計含有量
難燃剤中に無機元素が何重量%存在するかを測定し、その値から酸化物含有量(重量%)を算出した。第1被覆層が2種以上の元素の酸化物か水酸化物からなる場合はそれぞれの値から合計値を測定、算出した。
実施例では蛍光X線元素分析(XRF)装置にて測定を実施した。なお第1被覆層を形成する無機化合物の元素が第2被覆層を形成する有機化合物中にも含まれる場合、第2被覆層を形成する前に該難燃剤中の無機化合物元素が何重量%存在するかを測定し、その値から酸化物含有量(重量%)を算出した。
難燃剤中に無機元素が何重量%存在するかを測定し、その値から酸化物含有量(重量%)を算出した。第1被覆層が2種以上の元素の酸化物か水酸化物からなる場合はそれぞれの値から合計値を測定、算出した。
実施例では蛍光X線元素分析(XRF)装置にて測定を実施した。なお第1被覆層を形成する無機化合物の元素が第2被覆層を形成する有機化合物中にも含まれる場合、第2被覆層を形成する前に該難燃剤中の無機化合物元素が何重量%存在するかを測定し、その値から酸化物含有量(重量%)を算出した。
1−3.有機化合物の合計含有量
粉体に有機化合物を滴下または噴霧し混合する乾式の方法や、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーと有機化合物の混合物を直接熱風内に噴霧し乾燥する方法で作成した難燃剤については、有機化合物のほぼ全量が難燃剤中に含まれるので、有機化合物使用量から有機化合物が100%該難燃剤に含まれる場合の含有量を算出し、それを含有量(重量%)とした。
上記の方法以外で作成した難燃剤については、表面処理剤をエーテル抽出することによって含有量を得た。実施例でのエーテル抽出とは該難燃剤を酸処理し、エーテル(試薬)を加えて有機化合物を抽出し、得られた抽出液を湯浴で溶媒を揮発させ油状物を得、得られた油状物を精秤することである。この得られた油状物の重量と測定に使用した該難燃剤重量より、該難燃剤の有機化合物合計含有量(重量%)を算出した。
粉体に有機化合物を滴下または噴霧し混合する乾式の方法や、水を主体とする溶液に水酸化マグネシウム粒子を分散させた所謂スラリーと有機化合物の混合物を直接熱風内に噴霧し乾燥する方法で作成した難燃剤については、有機化合物のほぼ全量が難燃剤中に含まれるので、有機化合物使用量から有機化合物が100%該難燃剤に含まれる場合の含有量を算出し、それを含有量(重量%)とした。
上記の方法以外で作成した難燃剤については、表面処理剤をエーテル抽出することによって含有量を得た。実施例でのエーテル抽出とは該難燃剤を酸処理し、エーテル(試薬)を加えて有機化合物を抽出し、得られた抽出液を湯浴で溶媒を揮発させ油状物を得、得られた油状物を精秤することである。この得られた油状物の重量と測定に使用した該難燃剤重量より、該難燃剤の有機化合物合計含有量(重量%)を算出した。
1−4.耐酸性
自動電位差滴定装置を使用し下記条件で測定した酸消費量(mL)または経過時間(分)を耐酸性の指標とした。該難燃剤0.1gをエタノール20mL中に添加し1分間攪拌した後、20mLの純水を加えさらに1分間攪拌し該難燃剤の分散液を得た。この分散液を攪拌、pH測定しつつ自動電位差滴定装置を使用して酸を自動で滴下することによって分散液のpHを4.0一定で維持し、酸滴下開始から60分後の酸消費量(mL)を耐酸性の指標とした。
ただし酸消費量が5mLとなったものは、酸消費量5mL時点の酸滴下開始からの経過時間(分)を耐酸性の指標とした。酸としては試薬を純水で希釈し0.1mol/Lとした塩酸を使用した。測定は32℃恒温下で行った、つまり測定に使用したエタノール、純水、塩酸、分散液は32℃に温調して使用した。
該難燃剤の分散液をpHが4.0という酸性の条件にした場合、該難燃剤の耐酸性が良好なほど酸と反応することがなく酸が消費されない。よって酸消費量(mL)が大きいほど耐酸性が悪い、つまりは経過時間(分)が小さいほど耐酸性が悪く、次いで60分の時点で酸消費量5mLに達せなかったものでも、酸滴下開始から60分後の酸消費量(mL)が多いほど耐酸性が悪いことを示す。
自動電位差滴定装置を使用し下記条件で測定した酸消費量(mL)または経過時間(分)を耐酸性の指標とした。該難燃剤0.1gをエタノール20mL中に添加し1分間攪拌した後、20mLの純水を加えさらに1分間攪拌し該難燃剤の分散液を得た。この分散液を攪拌、pH測定しつつ自動電位差滴定装置を使用して酸を自動で滴下することによって分散液のpHを4.0一定で維持し、酸滴下開始から60分後の酸消費量(mL)を耐酸性の指標とした。
ただし酸消費量が5mLとなったものは、酸消費量5mL時点の酸滴下開始からの経過時間(分)を耐酸性の指標とした。酸としては試薬を純水で希釈し0.1mol/Lとした塩酸を使用した。測定は32℃恒温下で行った、つまり測定に使用したエタノール、純水、塩酸、分散液は32℃に温調して使用した。
該難燃剤の分散液をpHが4.0という酸性の条件にした場合、該難燃剤の耐酸性が良好なほど酸と反応することがなく酸が消費されない。よって酸消費量(mL)が大きいほど耐酸性が悪い、つまりは経過時間(分)が小さいほど耐酸性が悪く、次いで60分の時点で酸消費量5mLに達せなかったものでも、酸滴下開始から60分後の酸消費量(mL)が多いほど耐酸性が悪いことを示す。
2.樹脂組成物の試験方法
2−1.MFR
MFRをJIS K 7210に準拠し、190℃、21.6Kgの荷重の条件で測定した。
2−2.引張強度、引張伸び
引張強度、引張伸びのために引張試験をJIS K 6251に準拠し行った。
2−3.Shore D
硬度の指標として、Shore DをJIS K 6253に準拠し測定した。
2−4.LOI
難燃性の指標として、LOIをJIS K 7201に準拠し測定した。
2−1.MFR
MFRをJIS K 7210に準拠し、190℃、21.6Kgの荷重の条件で測定した。
2−2.引張強度、引張伸び
引張強度、引張伸びのために引張試験をJIS K 6251に準拠し行った。
2−3.Shore D
硬度の指標として、Shore DをJIS K 6253に準拠し測定した。
2−4.LOI
難燃性の指標として、LOIをJIS K 7201に準拠し測定した。
2−5.磨耗特性
往復運動磨耗試験機の1つであるスガ磨耗試験機において、#240の紙ヤスリ、荷重500gの条件にて1000回往復運動させたときの試験片の磨耗重量(mg)を磨耗特性の指標とした。数値が小さい程、試験片が削れてしまう量が少なく磨耗特性が良いとした。
実施例または比較例において、物性測定用の樹脂組成物として以下の処方の組成物を使用した。
エチレン−エチルアクリレート共重合体 100重量部
水酸化マグネシウムまたはそれを主体とした難燃剤 150重量部
マレイン酸変性樹脂 5重量部
酸化防止剤 1重量部
上記処方の組成物を均一に混練して樹脂組成物を得、上記2−1〜5に適合する各種成形を行った。
実施例または比較例において、加熱熟成工程を経た何ら表面処理されていない合成水酸化マグネシウム粒子(BET比表面積6.1m2/g)を基材1、同様の合成水酸化マグネシウム粒子(BET比表面積11.2m2/g)を基材2として用いた。
往復運動磨耗試験機の1つであるスガ磨耗試験機において、#240の紙ヤスリ、荷重500gの条件にて1000回往復運動させたときの試験片の磨耗重量(mg)を磨耗特性の指標とした。数値が小さい程、試験片が削れてしまう量が少なく磨耗特性が良いとした。
実施例または比較例において、物性測定用の樹脂組成物として以下の処方の組成物を使用した。
エチレン−エチルアクリレート共重合体 100重量部
水酸化マグネシウムまたはそれを主体とした難燃剤 150重量部
マレイン酸変性樹脂 5重量部
酸化防止剤 1重量部
上記処方の組成物を均一に混練して樹脂組成物を得、上記2−1〜5に適合する各種成形を行った。
実施例または比較例において、加熱熟成工程を経た何ら表面処理されていない合成水酸化マグネシウム粒子(BET比表面積6.1m2/g)を基材1、同様の合成水酸化マグネシウム粒子(BET比表面積11.2m2/g)を基材2として用いた。
実施例1
基材1のスラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にて第1被覆層を形成し洗浄した、それとシランカップリング剤の混合物を直接熱風内に噴霧し乾燥する方法で第2被覆層を形成し難燃剤1−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.25重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、シランカップリング剤は水酸化マグネシウム重量に対しシランカップリング剤として0.25重量%使用した。
難燃剤1−1の分析結果と難燃剤1−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例1として表1に示す。
基材1のスラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にて第1被覆層を形成し洗浄した、それとシランカップリング剤の混合物を直接熱風内に噴霧し乾燥する方法で第2被覆層を形成し難燃剤1−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.25重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、シランカップリング剤は水酸化マグネシウム重量に対しシランカップリング剤として0.25重量%使用した。
難燃剤1−1の分析結果と難燃剤1−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例1として表1に示す。
実施例2
ケイ酸ナトリウムとシランカップリング剤の使用量が異なる以外は実施例1と同様にして、難燃剤1−2を得た。ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.50重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、シランカップリング剤は水酸化マグネシウム重量に対しシランカップリング剤として0.50重量%使用した。
難燃剤1−2の分析結果と難燃剤1−2を含む樹脂組成物の試験結果を実施例2として表1に示す。
ケイ酸ナトリウムとシランカップリング剤の使用量が異なる以外は実施例1と同様にして、難燃剤1−2を得た。ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.50重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、シランカップリング剤は水酸化マグネシウム重量に対しシランカップリング剤として0.50重量%使用した。
難燃剤1−2の分析結果と難燃剤1−2を含む樹脂組成物の試験結果を実施例2として表1に示す。
実施例3
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にて第1被覆層を形成し、ステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後、乾燥する方法で難燃剤2−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.50重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−1の分析結果と難燃剤2−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例3として表1に示す。
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にて第1被覆層を形成し、ステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後、乾燥する方法で難燃剤2−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.50重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−1の分析結果と難燃剤2−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例3として表1に示す。
比較例1
基材1を難燃剤3−1とした。難燃剤3−1の分析結果と難燃剤3−1を含む樹脂組成物の試験結果を比較例1として表1に示す。
基材1を難燃剤3−1とした。難燃剤3−1の分析結果と難燃剤3−1を含む樹脂組成物の試験結果を比較例1として表1に示す。
比較例2
基材1スラリーとステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて有機化合物層のみを形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤3−2を得た。ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で3.00重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤3−2の分析結果と難燃剤3−2を含む樹脂組成物の試験結果を比較例2として表1に示す。
基材1スラリーとステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて有機化合物層のみを形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤3−2を得た。ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で3.00重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤3−2の分析結果と難燃剤3−2を含む樹脂組成物の試験結果を比較例2として表1に示す。
比較例3
ステアリン酸ナトリウムの使用量が異なる以外は比較例2と同様にして、難燃剤3−3を得た。ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.5重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤3−3の分析結果と難燃剤3−3を含む樹脂組成物の試験結果を比較例3として表1に示す。
ステアリン酸ナトリウムの使用量が異なる以外は比較例2と同様にして、難燃剤3−3を得た。ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.5重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤3−3の分析結果と難燃剤3−3を含む樹脂組成物の試験結果を比較例3として表1に示す。
比較例4
ステアリン酸ナトリウムの使用量が異なる以外は実施例3と同様にして、難燃剤2−2を得た。ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で5.00重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−2の分析結果と難燃剤2−2を含む樹脂組成物の試験結果を比較例4として表1に示す。
ステアリン酸ナトリウムの使用量が異なる以外は実施例3と同様にして、難燃剤2−2を得た。ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で5.00重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−2の分析結果と難燃剤2−2を含む樹脂組成物の試験結果を比較例4として表1に示す。
実施例4
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、硫酸アルミニウム水溶液を使用して湿式の方法にてアルミニウムの酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、ステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤2−3を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.90重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、硫酸アルミニウムは水酸化マグネシウム重量に対してAl2O3重量換算で0.10重量%分の硫酸アルミニウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.50重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−3の分析結果と難燃剤2−3を含む樹脂組成物の試験結果を実施例4として表1に示す。
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、硫酸アルミニウム水溶液を使用して湿式の方法にてアルミニウムの酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、ステアリン酸ナトリウムを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤2−3を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で0.90重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、硫酸アルミニウムは水酸化マグネシウム重量に対してAl2O3重量換算で0.10重量%分の硫酸アルミニウムを使用し、ステアリン酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してステアリン酸重量換算で0.50重量%分の量のステアリン酸ナトリウムを使用した。
難燃剤2−3の分析結果と難燃剤2−3を含む樹脂組成物の試験結果を実施例4として表1に示す。
実施例5
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後、乾燥したものをメチルハイドロジェンシリコーンオイルとジメチルシリコーンオイルをイソプロピルアルコール中に添加した希釈混合物を使用して乾式の方法にて第2被覆層を形成する方法で難燃剤4−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、メチルハイドロジェンシリコーンオイルとジメチルシリコーンオイルはシリコーンオイル重量換算で水酸化マグネシウム重量に対して各々0.10重量%分の量のシリコーンオイル、つまりは合計0.20重量%のシリコーンオイルを使用した。難燃剤4−1の分析結果と難燃剤4−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例5として表1に示す。
基材1スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後、乾燥したものをメチルハイドロジェンシリコーンオイルとジメチルシリコーンオイルをイソプロピルアルコール中に添加した希釈混合物を使用して乾式の方法にて第2被覆層を形成する方法で難燃剤4−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で1.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、メチルハイドロジェンシリコーンオイルとジメチルシリコーンオイルはシリコーンオイル重量換算で水酸化マグネシウム重量に対して各々0.10重量%分の量のシリコーンオイル、つまりは合計0.20重量%のシリコーンオイルを使用した。難燃剤4−1の分析結果と難燃剤4−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例5として表1に示す。
実施例6
基材2スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、ジステアリルリン酸エステルを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤5−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で5.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ジステアリルリン酸エステルは水酸化マグネシウム重量に対してジステアリルリン酸エステル重量換算で1.00重量%分の量のジステアリルリン酸エステルを使用した。
難燃剤5−1の分析結果と難燃剤5−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例6として表1に示す。
基材2スラリーとケイ酸ナトリウム水溶液を使用して湿式の方法にてケイ素の酸化物か水酸化物からなる被覆層を形成し、ジステアリルリン酸エステルを使用して湿式の方法にて第2被覆層を形成し洗浄し、スラリーから溶媒の大部分を取り除いたケーキ状にした後乾燥する方法で難燃剤5−1を得た。
ケイ酸ナトリウムは水酸化マグネシウム重量に対してSiO2重量換算で5.00重量%分の量のケイ酸ナトリウムを使用し、ジステアリルリン酸エステルは水酸化マグネシウム重量に対してジステアリルリン酸エステル重量換算で1.00重量%分の量のジステアリルリン酸エステルを使用した。
難燃剤5−1の分析結果と難燃剤5−1を含む樹脂組成物の試験結果を実施例6として表1に示す。
表1より実施例1、2、3、4、5、6の樹脂組成物は、硬度、引張強度(10Mpa以上)、磨耗特性、耐酸性に優れ、かつMFR、引張伸び、LOIに優れ、加工性や分散性も好適な範囲であった。比較例1は耐酸性が、比較例2は引張強度,硬度,摩耗特性,耐酸性が、比較例3は摩耗特性,耐酸性が、比較例4は引張強度,硬度,摩耗特性がそれぞれ不適であった。
1. 100重量部の樹脂並びに50〜300重量部の難燃剤を含有する樹脂組成物であって、該難燃剤が、水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層および第2被覆層を含み、
(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、
(ii)第1被覆層は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、
(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物である、
樹脂組成物の引張強度を向上させる方法であって、
該難燃剤として第2被覆層における有機化合物の量が難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%であるものを用いることを特徴とする方法。
(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、
(ii)第1被覆層は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、
(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物である、
樹脂組成物の引張強度を向上させる方法であって、
該難燃剤として第2被覆層における有機化合物の量が難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%であるものを用いることを特徴とする方法。
2. 難燃剤の第1被覆層が、ケイ素の酸化物若しくは水酸化物を含む前項1記載の方法。
3. 難燃剤の第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の方法。
4. 難燃剤の第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびアルミネートカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の方法。
5. 難燃剤の第2被覆層が、少なくとも1種のシランカップリング剤を含有する前項1記載の方法。
6. 難燃剤の第2被覆層が、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩およびアニオン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する前項1記載の方法。
7. 樹脂組成物は電線またはケーブル用の樹脂組成物である前項1記載の方法。
8. 樹脂組成物は屋外に布設された電線またはケーブル用の樹脂組成物である前項1記載の方法。
Claims (11)
- 水酸化マグネシウム粒子、第1被覆層および第2被覆層を含み、
(i)水酸化マグネシウム粒子の表面に第1被覆層が形成され、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成され、
(ii)第1被覆層は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛およびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物若しくは水酸化物である無機化合物を含み、無機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して酸化物換算で0.05〜10重量%であり、
(iii)第2被覆層は、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含み、有機化合物の量は、難燃剤の全重量に対して0.1〜1.5重量%である、
ことを特徴とする難燃剤。 - 第1被覆層が、ケイ素の酸化物若しくは水酸化物を含む請求項1記載の難燃剤。
- 第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサン化合物およびオルガノシラザン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する請求項1記載の難燃剤。
- 第2被覆層が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびアルミネートカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する請求項1記載の難燃剤。
- 第2被覆層が、少なくとも1種のシランカップリング剤を含有する請求項1記載の難燃剤。
- 第2被覆層が、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルの塩およびアニオン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含有する請求項1記載の難燃剤。
- 100重量部の樹脂および5〜300重量部の請求項1記載の難燃剤を含有する樹脂組成物。
- JIS K 6251による引張強度が10Mpa以上である請求項7記載の樹脂組成物。
- 請求項7記載の樹脂組成物よりなる成形品。
- 電線またはケーブルである請求項9記載の成形品。
- 屋外に布設された電線またはケーブルである請求項9記載の成形品。
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