JPWO2011129408A1 - 官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体の反応方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、ETFEは、溶媒に溶解しにくいが、スルホン酸塩等の官能基を導入することで、その溶解性が改良される(特許文献6参照。)。
さらに、グリシジル基、チオール基、アミド基、臭素、ヨウ素などの活性ハロゲン基等の官能基を導入し、架橋剤と反応させることで、架橋したETFEを得ることも報告されている(特許文献7参照。)。その他にも、柔軟性の向上、耐摩耗性の向上、親水性の付与、耐熱性の向上、電気的特性の付与、成形加工性の向上などが期待できる。
これらの性質が向上することによって、これまで使用されてきた分野での性能改善はもちろん、これまでETFEが使用されていなかった分野、例えばイオン交換膜、塗料、親水性多孔膜、エレクトレット材料、触媒担持膜などの分野などにもその用途を広げられる可能性がある。このように、ETFEを修飾することによって、その性質を変化させ、より幅広い用途に使用することができる。
しかし、これらの官能基を導入するための、効率良く均一に、また、特殊な設備を必要とせず、化合物の制限なく、ETFEを修飾する方法は知られていなかった。
[1]官能基を有するETFEを溶解する溶媒の存在下に、該官能基を有するETFEと、該官能基と反応性を有する反応性官能基を有する化合物(A)とを、溶解状態で反応させることを特徴とする官能基を有するETFEの反応方法。
[2]前記ETFEが有する官能基がカルボニル基である上記[1]に記載の官能基を有するETFEの反応方法。
[3]前記化合物(A)が有する該反応性官能基が、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも一種である上記[1]又は[2]に記載の官能基を有するETFEの反応方法。
[5]前記反応が、40℃〜230℃で行われる上記[1]〜[4]のいずれかに記載の官能基を有するETFEの反応方法。
[6]前記ETFEの含有割合が、溶媒100質量部に対して0.1〜80質量部である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の官能基を有するETFEの反応方法。
[8]前記ETFEが有するカルボニル基が、カルボキシル基、アルコシキカルボニル基、ハロゲノカルボニル基、カーボネート基、酸無水物残基、アルデヒド基、ケトン基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一種である上記[2]〜[7]のいずれかに記載の官能基を有するETFEの反応方法。
[9]前記ETFEが、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とエチレンに基づく繰り返し単位とを含有し、それらのモル比が70/30〜30/70である上記[1]〜[8]のいずれかに記載の官能基を有するETFEの反応方法。
[11]前記化合物(A)が、アルキルアミン、ハロアミン、芳香族アミン、シリルアミン、アルキルアルコール、ハロアルコール、芳香族アルコール、シリルアルコール、ジアミン、ジオール、及びアミノアルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種である上記[1]〜[9]のいずれかに記載の官能基を有するETFEの反応方法。
[13]前記ETFEが、さらに、不飽和結合と酸無水物残基を有する重合性化合物に基づく繰り返し単位を有する上記[1]〜[12]のいずれかに記載の官能基を有するETFEの反応方法。
官能基としては、カルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、スルホニル基、イソシアネート基、シアノ基、ハロゲノ基、ビニル基、エポキシ基、シリル基などが挙げられる。
なお、グラフト化する方法に関しては、ETFEにグラフト性化合物を加え、ラジカルが発生する温度下で溶融混練する製造方法が特開平7−173446に記載されている。また、カルボニル基以外の官能基を導入する場合には、上述のカルボニル基以外の他の官能基を含むモノマーが挙げられる。
なお、本発明において「溶解状態」とは、ある温度で含フッ素共重合体と該溶媒との混合物が、十分に混合した後の目視の判定で、透明で均一な状態であることを意味する。
本発明における前記カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物の、さらに好ましい具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
上記環状ケトンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、4−tert−ブチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、イソホロンが挙げられる。
上記鎖状エステルとしては、ギ酸エチル、ギ酸イソペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸ペンチル、アジピン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロペンタン酸エチルが挙げられる。
上記グリコール類のモノエステルとしては、酢酸2−メトキシエチル、酢酸2−エトキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン、1−エトキシ−2−アセトキシプロパン、酢酸3−メトキシブチル、酢酸3−メトキシ−3−メチルブチルが挙げられる。
カルボニル基を有するETFEを溶解しうるハイドロフルオロアルキルエーテルの具体例としては、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン等が挙げられる。中でも、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタンが好ましい。
上記官能基含有ETFEを溶解しうる溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
例えば、官能基含有ETFEが有する官能基がカルボニル基である場合は、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基などの官能基が挙げられる。
官能基含有ETFEが有する官能基がヒドロキシ基である場合は、カルボニル基、ヒドロキシ基、スルホニル基、イソシアネート基、シアノ基、ハロゲノ基、ビニル基、エポキシ基、シリル基などの官能基が挙げられる。
官能基含有ETFEが有する官能基がアミノ基である場合は、カルボニル基、スルホニル基、イソシアネート基、ハロゲノ基、エポキシ基などの官能基が挙げられる。
官能基含有ETFEが有する官能基がメルカプト基である場合は、カルボニル基、イソシアネート基、ハロゲノ基、エポキシ基などの官能基が挙げられる。
官能基含有ETFEが有する官能基がスルホニル基である場合は、ヒドロキシ基、アミノ基などの官能基が挙げられる。
官能基含有ETFEが有する官能基がイソシアネート基である場合は、カルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基などの官能基が挙げられる。
官能基含有ETFEが有する官能基がシアノ基である場合は、ヒドロキシ基などの官能基が挙げられる。
官能基含有ETFEが有する官能基がビニル基である場合は、ヒドロキシ基、メルカプト基、ビニル基などの官能基が挙げられる。
官能基含有ETFEが有する官能基がエポキシ基である場合は、カルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基などの官能基が挙げられる。
官能基含有ETFEが有する官能基がシリル基である場合は、ヒドロキシ基などの官能基が挙げられる。
化合物(A)中の該反応性官能基は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。本発明において、化合物(A)中の該反応性官能基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基等の官能基が好ましく、ヒドロキシ基若しくはアミノ基がより好ましく、アミノ基が最も好ましい。
化合物(A)の具体例しては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,4−シクロヘキシルジアミン、1,4−フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(3-アミノプロピル)アミン、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサジオール、ジエチレングリコール、ヒドロキノン、1,4−ベンゼンジメタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5シクロヘキサントリオール、meso−エリトリトール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンチオール、1,5−ペンタジチオール、1,6−ヘキサジチオール、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、2−アミノエタノール、N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、DL-アラビトール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、α-チオグリセロール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、ヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。
該反応性官能基がヒドロキシ基である場合には、3−アミノプロピオニトリル、n−オクタノール、2−ニトロエタノール、2−フェニルエチルアルコール、2−ヒドロキシエチルホスホン酸ジメチルなどが挙げられる。
該反応性官能基がアミノ基である場合には、3−アミノプロピオニトリル、アリルアミン塩酸塩、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルアミン、2−フェニルエチルアミンなどが挙げられる。
該反応性官能基がメルカプト基である場合には、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、1−オクタンチオール、2−フェニルエタンチオールなどが挙げられる。
該反応性官能基がスルホニル基である場合には、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、2−ブロモエタンスルホニルクロリド、アリルスルホン酸ナトリウム、1−ブタンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリドなどが挙げられる。
該反応性官能基がイソシアネート基である場合は、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソシアン酸2−ブロモエチル、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、イソシアン酸プロピル、イソシアン酸ベンジルなどが挙げられる。
該反応性官能基がハロゲノ基である場合は、2−ブロモエタンスルホン酸ナトリウム、イソシアン酸2−ブロモエチル、4−ブロモブチロニトリル、ジブロモプロパン、アリルブロミド、エピブロモヒドリン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、1−ブロモオクタン、2−ブロモエチルベンゼン、2−ブロモエチルホスホン酸ジメチルなどが挙げられる。
該反応性官能基がビニル基である場合は、アリルアミン塩酸塩、アリルメルカプタン、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルシアニド、アリルブロミド、1,5−ヘキサジエン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、アリルトリメトキシシラン、1−オクテン、アリルベンゼン、アリルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
該反応性官能基がエポキシ基である場合は、エピブロモヒドリン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、ベンジルグリシジルエーテル、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、1,2−エポキシオクタン、スチレンオキサイドなどが挙げられる。
該反応性官能基がシリル基である場合は、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、トリクロロ−2−シアノエチルシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシランなどが挙げられる。
例えば、カルボニル基を有するETFEのカルボニル基は、上記したような化合物(A)と反応させることによって、ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホニル基、シアノ基、ハロゲノ基、ビニル基、シリル基、アルキル基、ニトロ基、芳香族基、リン酸エステル基、パーオキシ基、アゾ基等の官能基に変換することができる。
本発明において、官能基含有ETFEと化合物(A)を反応させて、ETFEが有する官能基は、他の官能基に変換できる。また、得られた他の官能基を有するETFEと、該他の官能基と反応性を有する化合物(A)を、本発明の反応方法により、さらに反応させ、別の官能基に変換することも可能である、本発明の反応方法を順次繰り返し、当初の官能基を次々に変換し、目的の官能基を有するETFEにすることも可能である。
各官能基の含有量の当量比が1倍より少ない場合、化合物(A)が全量反応してもETFE上の官能基が残存し、残存した官能基により他部材との接着性などの機能を発現させることができる。官能基に反応させる化合物(A)の量が少ないと、修飾することによりETFEに付与される機能があまり発現しない場合がある。一方、化合物(A)の量が多いと反応が早く進行し、反応時間が短くて済むが、反応後に過剰に残った化合物(A)をETFE中から取り除くことが必要になる。
一方、官能基含有ETFE溶液中の官能基含有ETFEの含有割合の上限値は、溶媒100質量部に対して80質量%が好ましい。官能基含有ETFE溶液中の官能基含有ETFEの含有割合が多すぎると粘度が非常に高くなるため、操作が困難になる可能性がある。
ここで、修飾されたETFEとは、化合物(A)との間に結合が形成されたETFEを意味する。
相分離とは、高温において高濃度の修飾されたETFEが溶解している溶液を冷却し、温度による溶解度の差によって修飾されたETFEを析出させ、目的のポリマーを得る方法である。
再沈澱とは、修飾されたETFEが溶解している溶液を、大量の修飾されたETFEを溶かさない貧溶媒中に導入し、溶解度を低下させ、修飾されたETFEを析出させて、目的のポリマーを得る方法である。
脱溶媒とは、修飾されたETFEが溶解している溶液の溶媒を、高温もしくは減圧条件で除去して、目的のポリマーを得る方法である。また、溶媒から取り出さず、修飾されたETFEが溶解した溶液のまま使用することも可能である。
上記重合は、一槽ないし多槽式の撹拌型重合装置、管型重合装置等を使用し、回分式又は連続式操作として実施することができる。
官能基含有ETFEと化合物(A)の反応は、ETFEに含まれる官能基中のカルボニル基の消失、もしくは吸収波長の変化を顕微フーリエ変換赤外分光分析装置(顕微FT−IR)(日本分光社製 Micro−20)を用いて分析することによって解析した。
融点はDSC(Differential scanning calorimetry)法、10%重量減少温度はTg−DTA(Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)法によって測定した。
(1)内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの671.1g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製AK225cb、以下「AK225cb」という。)の167.8g、及びCH2=CH(CF2)4の3.33gを仕込み、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)の352g、TFEの110.5g 、及びEの3.5gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤としてtert − ブチルペルオキシピバレートの5質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の6.7mLを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるように組成TFE/E=54/46(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して1.0モル%となるようにCH2=CH(CF2)4を、0.25モル%となるように無水イタコン酸をそれぞれ連続的に仕込んだ。重合開始3.6時間後、モノマー混合ガスの70gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに、圧力を常圧までパージ(purge)し、スラリー状のETFE−1を得た。
上記ETFE−1の融点は189.1℃、Q値は11.6mm3/s、共重合組成はTFEに基づく繰り返し単位/Eに基づく繰り返し単位/HFPに基づく繰り返し単位/CH2=CH(CF2)4に基づく繰り返し単位/無水イタコン酸に基づく繰り返し単位=47.0/43.2/8.3/1.2/0.3(モル%)であった。ETFE−1のカルボニル基の含有量は81当量/106gであった。
上記、無水イタコン酸に基づく繰り返し単位を有するETFE−1の15.0gとn−ドデシルアミンの1gを1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(融点−35℃、沸点131℃、フッ素含有量53質量%、以下、「溶媒1」という。)の230g中で混合し、加熱して、還流管を接続したナスフラスコ中120℃で攪拌した。途中、ETFE−1及びn−ドデシルアミンは溶媒1中に溶解し、粘性の高い透明溶液となった。3時間後、0℃で、800mLのヘキサン中で再沈澱を行い、白色透明固体を得た。次いで、オーブンで150℃にて、15時間乾燥し、薄茶色固体の13.6gを得た。得られた薄茶色固体を顕微FT−IRにてカルボニル吸収を分析すると、無水イタコン酸のカルボニル吸収(1780cm−1)はほぼ消失し、イミド結合のカルボニル吸収(1710cm−1)が出現した。また、アルキル基の吸収(2850cm−1、及び2900cm−1:−CH3基、及び−CH2−基に由来する。)が出現した。このように、n−ドデシルアミンのアミノ基がETFE−1の無水イタコン酸のカルボニル基と反応し、イミド結合が生成し、ETFE−1がn−ドデシルアミンによって修飾されたことが確認された(ETFE−2)。また、n−ドデシルアミンにより修飾されているETFE−2の融点は、191.5℃、Tg−DTAによる10%重量減少温度は435.5℃(ETFE−1:379.3℃)であった。
実施例1において、n−ドデシルアミンをシクロヘキシルアミンの1.01gに代える以外は実施例1と同様の実験を行い、茶色固体の10.7g得た。途中、ETFE−1及びシクロヘキシルアミンは溶媒1中に溶解し、粘性の高い透明溶液となった。得られた茶色固体を、実施例1と同様に顕微FT−IRにてカルボニル吸収を分析すると、無水イタコン酸のカルボニル吸収(1780cm−1)はほぼ消失し、イミド結合のカルボニル吸収(1710cm−1)が出現した。このように、シクロヘキシルアミンのアミノ基がETFE−1の無水イタコン酸のカルボニル基と反応し、イミド結合が生成し、ETFE−1がシクロヘキシルアミンによって修飾されたことが確認された(ETFE−3)。
シクロヘキシルアミンにより修飾されているETFE−3の融点は191.7℃、Tg−DTAによる10%重量減少温度は404.2℃であった。
実施例1において、n−ドデシルアミンを2−アミノエタノールの1.08gに代える以外は実施例1と同様の実験を行い、茶色固体の12.1g得た。途中、ETFE−1及び2−アミノエタノールは溶媒1中に溶解し、粘性の高い透明溶液となった。得られた茶色固体を、同様に顕微FT−IRにてカルボニル吸収を分析すると、無水イタコン酸のカルボニル吸収(1780cm−1)はほぼ消失し、イミド結合のカルボニル吸収(1710cm−1)が出現した。また、−OHの吸収(3500cm−1付近のブロードなピーク。)が出現した。このように、2−アミノエタノールのアミノ基がETFE−1の無水イタコン酸のカルボニル基と反応し、イミド結合が生成し、ETFE−1が2−アミノエタノールによって修飾されたことが確認された(ETFE−4)。2−アミノエタノールにより修飾されているETFE−4の融点は186.4℃、Tg−DTAによる10%重量減少温度は395.1℃であった。
ETFE−1の12.4gとエチレンジアミンの1.1gを1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの230.7g中で混合し、加熱して、環流管を接続したナスフラスコ中、120℃で攪拌した。途中、ETFE−1は溶媒中に溶解し、粘性の高い透明溶液となった。2時間後、ナスフラスコの中を見ると、淡黄色の直径5mm程度の粒子が析出しているのが確認された。さらに1時間後、0℃で、800mLのヘキサン中で再沈澱を行い、淡黄色固体を得た。次いで、オーブンで120℃にて、15時間乾燥し、黄色固体の11.2gを得た。この黄色固体のQ値を測定しようと試みたが、フローテスターよりまったく流出せず、Q値は測定不能であった。反応途中で淡黄色粒子が析出してきたこと、そのQ値が測定不能であったことより、ETFE−1にエチレンジアミンを反応させることで架橋反応が進行し、ETFE−1が架橋したものと考察した(ETFE−5)。
ETFE−1の0.97gを、環流管を接続したナスフラスコ中1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(融点−35℃、沸点131℃、フッ素含有量53質量%、「溶媒1」)の50.71gと混合し、攪拌しながら加熱して溶解させ、それを室温まで冷却した後、ろ過し、1.08質量%のETFE−1が溶解したETFE−1溶液の42.35gを得た。この1.08質量%ETFE−1溶液中にエチレンジアミンの1.01gを導入し、溶解させ、80℃で2時間攪拌した。反応後、0℃のヘキサンの600g中に、上記溶液を導入して、再沈澱した。得られた透明固体を120℃のオーブンで15時間乾燥させ、白色固体の0.23gを得た。この白色固体すべてをETFE−1の1.00gと混合し、Q値を測定したところ、原料ETFEのQ値11.6に対し、混合物のQ値は0.8であり、大幅に低下した。このことより、無水イタコン酸を有するETFE−1溶液中にエチレンジアミンを導入し、80℃、2時間という比較的温和な条件でETFE−1が効率的に架橋され、分子量が上昇したものと考察した(ETFE−6)。
実施例1において溶媒1の代わりに、シクロヘキサノン(融点−16.4℃、沸点155.7℃、以下、「溶媒2」という。)を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、淡黄色固体の13.1gを得た。途中、ETFE−1は溶媒中に溶解し、粘性の高い透明溶液となった。得られた淡黄色固体を、実施例1と同様に顕微FT−IRにてカルボニル吸収を分析すると、無水イタコン酸のカルボニル吸収(1780cm−1)はほぼ消失し、イミド結合のカルボニル吸収(1710cm−1)が出現した。このように、n−ドデシルアミンのアミノ基がETFE−1の無水イタコン酸と反応し、イミド結合が生成し、ETFE−1がn−ドデシルアミンによって修飾されたことが確認された(ETFE−7)。また、n−ドデシルアミンにより修飾されているETFE−7の融点は190.1℃、Tg−DTAによる10%重量減少温度は426.7℃であった。
実施例1の比較例として、実施例1の修飾方法に代えて、合成例1においてコモノマーとしてn−ドデセンを使用し、重合を行って、ETFEに長鎖アルキル基を導入しようとすると、n−ドデセンが強力な連鎖移動剤として働き、生成したETFEは分子量が低く、実用に適するETFEを合成することが困難であった。
[比較例2]
実施例3の比較例として、実施例3の方法に代えて、合成例1においてコモノマーとして3−ブテン−1−オールを使用し、重合を行って、ETFEにヒドロキシル基を導入しようとすると、3−ブテン−1−オールが強力な連鎖移動剤として働き、生成したポリマーは分子量が低く、実用に適するETFEを合成することが困難であった。また、3−ブテン−1−オールのエチレンやテトラフルオロエチレンなどの他のモノマーラジカルとの反応性により、目的通りETFEをヒドロキシル基で修飾することが困難であった。
なお、2010年4月16日に出願された日本特許出願2010−094733号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (13)
- 官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体を溶解する溶媒の存在下に、該エチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体と、該官能基と反応性を有する反応性官能基を有する化合物(A)とを、溶解状態で反応させることを特徴とする官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記エチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体が有する官能基がカルボニル基である請求項1に記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記化合物(A)が有する反応性官能基が、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記溶媒が、含フッ素芳香族化合物、カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物、及び、ハイドロフルオロアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記反応が、40℃〜230℃で行われる請求項1〜4のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記エチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の含有割合が、溶媒100質量部に対して0.1〜80質量部である請求項1〜5のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記エチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体が有する官能基の含有量が、10〜3000当量/106gである請求項1〜6のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記エチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体が有するカルボニル基が、カルボキシ基、アルコシキカルボニル基、ハロゲノカルボニル基、カーボネート基、酸無水物残基、アルデヒド基、ケトン基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項2〜7のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記エチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体が、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とエチレンに基づく繰り返し単位とを含有し、それらのモル比が70/30〜30/70である請求項1〜8のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記化合物(A)が、反応性官能基を2個以上有する請求項1〜9のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記化合物(A)が、アルキルアミン、ハロアミン、芳香族アミン、シリルアミン、アルキルアルコール、ハロアルコール、芳香族アルコール、シリルアルコール、ジアミン、ジオール、及びアミノアルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜9のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記エチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体が、さらに、その他のモノマーに基づく繰り返し単位を有し、その他のモノマーが、CH2=CX(CF2)nYで表される化合物(ただし、X、及びYはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、nは2〜8の整数である。)であり、その他のモノマーに基づく繰り返し単位の含有割合が全繰り返し単位のうち0.1〜10モル%である請求項1〜11のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
- 前記エチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体が、さらに、不飽和結合と酸無水物残基を有する重合性化合物に基づく繰り返し単位を有する請求項1〜12のいずれかに記載の官能基を有するエチレン/テトラフルオロエチエレン共重合体の反応方法。
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