JPWO2011125665A1 - ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物及びその製造方法、並びにその成形体及び硬化体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラス転移温度(Tg)以上の温度領域(α2領域)の熱線膨張率が低減された、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】下記式(1)で表される構造A及び下記式(2)で表される構造Bを含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、二官能以上のエポキシ樹脂と、を含む熱硬化性樹脂組成物。

Description

本発明は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物及びその製造方法、並びにその成形体及び硬化体に関する。
分子構造中にベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、耐熱性、難燃性、電気絶縁性、及び低吸水性等が良好であり、他の熱硬化性樹脂には見られない優れた特性を有するため、積層板や半導体封止材等のエレクトロニクス材料、摩擦材や砥石等の結合材として注目されている。
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、オキサジン環がベンゼン環に隣接した構造を有する熱硬化性樹脂であり、例えば、フェノール化合物、アミン化合物、アルデヒド化合物を反応させることにより製造できる。このようなベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の一例としては、フェノール化合物として、フェノールを、アミン化合物として、アニリンを、アルデヒド化合物として、ホルムアルデヒド用いて製造される、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が挙げられる(式(i)の左記)。
式(i)に示すように、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(式(i)の左記)は、加熱により開環重合を起こし、ポリベンゾオキサジン(式(i)の右記)となる。
Figure 2011125665
このようなベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂に関して、例えば、特許文献1には、二官能フェノール類、アミン類、及びアルデヒド類を反応させることにより得られる、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が開示されている。
特開2003−64180号公報
しかしながら、上記したエレクトロニクス材料等の部材には、高温環境であっても優れた寸法安定性を有することが求められているが、上記した熱硬化性樹脂は、熱線膨張率(CTE)の低減が十分ではないという問題がある。一般に、ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域をα1領域、ガラス転移温度(Tg)以上の温度領域をα2領域というが、ガラス転移温度前後で熱線膨張率が大きく変化し、α2領域での熱線膨張率が極度に大きい値となる傾向にある。このような熱的挙動を抑制するために、ガラス繊維等と複合させたりすることも試みられているが、未だ改善すべき点は多い。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、特に、ガラス転移温度(Tg)以上の温度領域(α2領域)の熱線膨張率が低減された、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、分子中に少なくとも2種類の特定構造のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂に、二官能以上のエポキシ樹脂を配合した樹脂組成物とすることにより、ガラス転移温度(Tg)以上の温度領域(α2)の熱線膨張率を大幅に低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
下記式(1)で表される構造A及び下記式(2)で表される構造Bを含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、
二官能以上のエポキシ樹脂と、を含む熱硬化性樹脂組成物。
Figure 2011125665
Figure 2011125665
式中、R〜Rは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y及びYは、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。
〔2〕
前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記構造AのR及びRは、いずれも水素である、〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔3〕
前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記構造AのR及びR並びに前記構造BのR及びRは、いずれも水素である、〔1〕又は〔2〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔4〕
前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における、前記構造Bの含有量に対する前記構造Aの含有量の比率(A/B;モル比)が、1/99〜99/1である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔5〕
前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記Y又は前記Yの少なくともいずれかが、下記式(3)で表される構造である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
Figure 2011125665
式中、*は、結合部位を表す。
〔6〕
前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記Y又は前記Yの少なくともいずれかが、下記式(4)で表される構造である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
Figure 2011125665
式中、*は、結合部位を表す。
〔7〕
前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記Xは、下記群G1aからなる群より選択される少なくとも一つである、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
Figure 2011125665
群G1a中、*は、結合部位を表す。
〔8〕
前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、下記式(5)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物と、ジアミン化合物と、アルデヒド化合物と、を反応させることにより得られる熱硬化性樹脂である、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
Figure 2011125665
式中、R及びRは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表す。
Figure 2011125665
式中、R及びRは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。
〔9〕
ラクトン中で前記反応を行う、〔8〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔10〕
前記エポキシ樹脂が、三官能以上のエポキシ樹脂である、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔11〕
前記エポキシ樹脂として、2種類以上の二官能以上のエポキシ樹脂を含む、〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔12〕
無機充填剤を更に含む、〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔13〕
フェノール硬化剤と、硬化促進剤と、を更に含む、〔1〕〜〔12〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔14〕
前記フェノール硬化剤は、電子求引基を有する、〔13〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔15〕
前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、前記エポキシ樹脂、及び前記フェノール硬化剤の合計100重量部に対して、前記無機充填剤を200〜400重量部含む、〔13〕又は〔14〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔16〕
前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、前記エポキシ樹脂、及び前記フェノール硬化剤の合計における前記エポキシ樹脂の含有量が、20〜40重量%である、〔13〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔17〕
下記式(1)で表される構造A及び下記式(2)で表される構造Bを含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、二官能以上のエポキシ樹脂と、を混合する工程を有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
Figure 2011125665
Figure 2011125665
式中、R〜Rは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y及びYは、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。
〔18〕
〔1〕〜〔16〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物、又は〔17〕に記載の製造方法により得られる熱硬化性樹脂組成物から得られる成形体。
〔19〕
〔18〕に記載の成形体を硬化させて得られる硬化体。
〔20〕
〔18〕に記載の成形体、又は〔19〕に記載の硬化体を含む電子機器。
本発明によれば、ガラス転移温度(Tg)以上の温度領域(α2)の熱線膨張率が低減された(低い)、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
製造例1で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)である。 製造例2で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、下記式(1)で表される構造A及び下記式(2)で表される構造Bを含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、二官能以上のエポキシ樹脂と、を含む。
Figure 2011125665
Figure 2011125665
式中、R〜Rは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y及びYは、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。
<ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂>
本実施形態において、上記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における、構造Bの含有量に対する構造Aの含有量の比率(A/B;モル比)は、特に限定されないが、1/99〜99/1であることが好ましく、樹脂組成物の耐熱性の向上と熱線膨張率の低減化のバランスの観点から、10/90〜90/10であることがより好ましく、70/30〜90/10であることが更に好ましく、50/50〜90/10であることがより更に好ましく、70/30〜90/10であることが一層更に好ましい。なお、樹脂組成物の耐熱性の向上と熱線膨張率の低減化のバランスの他に、他種類の樹脂や無機物との相溶性を一層向上させる観点では、構造Bの含有量に対する構造Aの含有量の比率(A/B;モル比)を、50/50〜70/30にすることが一層更に好ましい。構造Bの含有量に対する構造Aの含有量の比率(A/B;モル比)の下限値を、1/99以上とすることにより、得られる樹脂について、硬化フィルム等の成形体とした際の熱線膨張率が一層低減化する傾向にある。上限値を、99/1以下とすることにより、得られる樹脂について、他の材料との相溶性や配合に用いる溶媒への溶解性等が一層向上する傾向にあり、硬化フィルム等の成形体とした際の可とう性が一層向上する傾向にある。なお、ここでいう構造Aと構造Bの含有量の比率は、H−NMRによって求めることができる。
式(1)の構造AのR及びR、並びに式(2)の構造BのR及びRは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。R及びR、並びにR及びRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。特に、熱線膨張率の低減化の観点から、R及びRはいずれも水素であることが好ましく、R及びR、並びR及びRはいずれも水素であることがより好ましい。
上記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂におけるY及びYは、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表す。特に、熱線膨張率の低減化の観点から、Y及びYの少なくともいずれかが、下記式(3)で表される構造であることが好ましい。あるいは、Y及びYの少なくともいずれかが、下記式(4)で表される構造であることが好ましい。Y及びYは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
Figure 2011125665
式中、*は、結合部位を表す。
Figure 2011125665
式中、*は、結合部位を表す。
上記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂におけるm及びnは、各々独立して、1〜500の整数であればよく、2〜500の整数であることがより好ましく、2〜400の整数であることが更に好ましく、2〜300の整数であることがより更に好ましく、2〜250の整数であることが一層好ましい。
Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。Xの具体例としては、下記群G1からなる群より選択される少なくとも一つであるものが挙げられる。これらの中でも、他の材料との相溶性、配合に用いる溶媒への溶解性、及び成形体とした際の可とう性の観点から、下記群G1aからなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。
Figure 2011125665
群G1中、*は、結合部位を表す。
Figure 2011125665
群G1a中、*は、結合部位を表す。
本実施形態のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、下記式(5)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物と、ジアミン化合物と、アルデヒド化合物と、を反応させることにより得ることができる。本実施形態では、二官能フェノール化合物として、式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物を少なくとも用いる。これらの二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物と、アルデヒド化合物と、を反応させることで、式(1)で表される構造A及び式(2)で表される構造Bを含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得ることができる。
Figure 2011125665
式(5)中、R及びRは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表す。
式(5)中、R及びRが有機基である場合、その構造は特に限定されず、例えば、ヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基であってもよい。R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。官能基としては、例えば、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。R及びRは、水素であることが好ましい。
式(5)中、カルボニル基は、左右のヒドロキシル基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、カルボニル基の結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよいし、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
式(5)で表される二官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、等が挙げられる。これらの中でも、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)が好ましい。二官能フェノール化合物を用いることにより、熱線膨張率を一層低減することができる。特に、二官能フェノール化合物としてDHBPを用いることにより、熱線膨張率を一層顕著に低減することができる。式(5)で表される二官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
Figure 2011125665
式(6)中、R及びRは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。
式(6)で表される二官能フェノール化合物としては、特に限定されないが、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール、4,4’−メチレンジフェノール(ビスフェノールF)等のビスフェノール類が挙げられる。これらの中でも、他の材料との相溶性や配合に用いる溶媒への溶解性、及び硬化フィルム等の成形体とした際の可とう性の観点から、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。式(6)で表される二官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記式(5)及び式(6)のR、R、R、R、及びXの定義等については、特段の断りがない限り、上述した式(1)及び式(2)と同様である。
ジアミン化合物としては、特に限定されず、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物等を用いることができる。これらは置換されていてもよいし、無置換でもよく、ヘテロ元素又は官能基を含んでいてもよい。ここで、官能基としては、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
脂環式ジアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、式(9)で表される化合物及び式(10)で表される化合物が好ましい。
Figure 2011125665
式(9)で表される化合物及び式(10)で表される化合物において構造異性体が存在する場合は、各々、シス異性体、トランス異性体、又はシス異性体とトランス異性体との任意の混合物であってもよい。
直鎖脂肪族ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば、下記群G2からなる群より選択される直鎖脂肪族ジアミン化合物が挙げられる。
Figure 2011125665
また、芳香族ジアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(11)で表される化合物、下記式(12)で表される化合物、及び下記式(13)で表される化合物等が好ましい。
Figure 2011125665
式(11)で表される化合物としては、例えば、下記式(7)で表される化合物(p−フェニレンジアミン)がより好ましい。
Figure 2011125665
式(13)中、Dは、各々独立して、直接結合手(原子又は原子団が存在しない)、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、若しくは芳香族の有機基を表す。式(13)中、Dは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。Eは、直接結合手(原子又は原子団が存在しない)、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、若しくは芳香族の有機基を表す。上記の脂肪族の有機基又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換芳香族炭化水素基等が挙げられる。ここで、官能基としては、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
式(11)、式(12)、及び式(13)の各芳香環は、置換基を有してもよい。置換基としては特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基等が挙げられる。置換基は、ヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい。ここで、官能基としては、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
式(13)中、Dは、左右のアミノ基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Dの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよいし、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。Eは、左右のDの結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していてればよく、Eの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよいし、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
ジアミン化合物が式(13)で表される化合物であり、式(13)のDが上記有機基である場合、Dは、下記群G3からなる群より選択される少なくともいずれかであってもよい。
Figure 2011125665
群G3中、*は、芳香環への結合部位を表す。
ジアミン化合物が式(13)で表される化合物であり、式(13)のEが上記有機基である場合、Eは、下記群G4からなる群より選択される少なくともいずれかであってもよい。
Figure 2011125665
群G4中、*は、芳香環への結合部位を表す。
式(13)において、n’及びm’は、各々独立して、0〜10の整数であればよいが、0〜5の整数であることが好ましく、入手容易性の観点から、0〜1であることがより好ましい。
式(13)において、n’及びm’が0である場合、ジアミン化合物は下記式(14)で表される化合物である。
Figure 2011125665
式(14)中、Eは、直接結合手(原子又は原子団が存在しない)、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、若しくは芳香族の有機基を表す。官能基としては、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
式(14)におけるEが、脂肪族の有機基又は芳香族の有機基である場合、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換芳香族炭化水素基等が挙げられる。
式(14)中、Eは、左右のアミノ基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Eの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよいし、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
式(14)で表される化合物としては、他の材料との相溶性や配合に用いる溶媒への溶解性、及び硬化フィルム等の成形体とした際の可とう性の観点から、下記式(8)で表される化合物(4,4’−ジアミノジフェニルメタン)が好ましい。
Figure 2011125665
ジアミン化合物の具体例としては、特に限定されず、3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の脂環式ジアミン化合物;1,2−ジアミノエタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、及び1,18−ジアミノオクタデカン等の直鎖脂肪族ジアミン化合物;テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン等の分岐脂肪族ジアミン化合物;p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等の芳香族ジアミン化合物;等が挙げられる。これらの中でも、熱線膨張率の低減化の観点から、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノビフェニルが好ましく、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。これらのジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ジアミン化合物の使用量は、全二官能フェノール化合物1molに対して、0.1〜2molであることが好ましく、0.3〜1.8molであることがより好ましく、0.5〜1.5molであることが更に好ましい。例えば、二官能フェノール化合物として、式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物のみを用いる場合、式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物の合計1molに対して、ジアミン化合物の使用量を上記範囲とすることを意味する。二官能フェノール化合物1molに対するジアミン化合物の使用量を、2mol以下とすることにより、反応溶液のゲル化を効果的に抑制することができる。二官能フェノール化合物1molに対するジアミン化合物の使用量を0.1mol以上とすることにより、二官能フェノール化合物を残存することなく十分に反応させて、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂をさらに高分子量化させることができる。
本実施形態では、式(5)で表される二官能フェノール化合物と、式(6)で表される二官能フェノール化合物と、を併用して、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を合成することができるが、この場合、全二官能フェノールにおける式(6)で表される二官能フェノール化合物の使用量は、1〜99mol%であることが好ましく、10〜90mol%であることがより好ましく、10〜50mol%であることが更に好ましく、10〜30mol%であることがより更に好ましい。式(6)で表される二官能フェノール化合物の使用量を上記の下限値以上とすることにより、得られる樹脂について、他の材料との相溶性や配合に用いる溶媒への溶解性等が一層向上する傾向にあり、硬化フィルム等の成形体とした際の可とう性が一層向上する傾向にある。式(6)で表される二官能フェノール化合物の使用量を上記の上限値以下とすることにより、得られる樹脂について、硬化フィルム等の成形体とした際の熱線膨張率が一層低減化する傾向にある。
アルデヒド化合物としては、特に限定されないが、ホルムアルデヒドが好ましく、ホルムアルデヒドとしては、その重合体であるパラホルムアルデヒドや、水溶液であるホルマリン等の形態で使用することができる。また、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドとアルコール類を反応させることで得られる、ヘミアセタールとして使用することも可能である。その際のアルコールとしては特に限定されないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、留去のしやすさという観点からメタノールが好ましい。アルコールは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルデヒド化合物の使用量は、ジアミン化合物1molに対して、4〜8molであることが好ましく、4〜7molであることがより好ましく、4〜6molであることが更に好ましい。アルデヒド化合物の使用量を8mol以下とすることにより、人体及び環境への影響を低減できる。アルデヒド化合物の使用量を4mol以上とすることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂をさらに高分子量化させることができる。
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法においては、二官能フェノール化合物と共に一官能フェノール化合物を更に添加して反応させてもよい。一官能フェノール化合物を併用した場合、反応性末端がベンゾオキサジン環で封止された重合体が生成されることになる。その結果、合成反応中において重合体の分子量を制御でき、溶液のゲル化を効果的に防止できる。また、重合体の反応性末端を封止することで、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の保存安定性を向上させることもできる。その結果、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の不溶化を効果的に防止することができる。
一官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ドデシルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−エトキシフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール等が挙げられる。一官能フェノール化合物としては、汎用性及びコストの観点からフェノールが好ましい。一官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
一官能フェノール化合物の使用量は、全二官能フェノール化合物1molに対して0.5mol以下が好ましい。一官能フェノール化合物の使用量が全二官能フェノール化合物1molに対して0.5mol以下とすることにより、合成反応中においてベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂をより高分子量化させることができるとともに、一官能フェノール化合物を十分に反応させることにより、一官能フェノールの残存量を減少させることができる。
本実施形態において、溶媒として公知の溶媒を用いることができるが、合成溶媒としてラクトンを含む溶媒を用いることが好ましい。かかる溶媒を用いることにより、合成反応中に反応溶液のゲル化や反応生成物の不溶化が生じることなく、さらに、合成時のハンドリング性が良好であり、合成プロセスを容易にすることができる。ラクトンとしては、特に限定されず、例えば、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、3−メチルオクタノ−4−ラクトン、4−ヒドロキシ−3−ペンテン酸γ−ラクトン等のラクトンが挙げられる。これらの中でも、汎用性が高いという観点から、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、及びγ−バレロラクトン等が好ましい。ラクトンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶媒としては、ラクトンと、アルコールと、の混合溶媒でもよい。アルコールとしては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メトキシエタノール、及び2−エトキシエタノール等が挙げられる。これらの中でも、イソブタノール及び2−メトキシエタノールが好ましい。アルコールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラクトンと、アルコールと、の混合溶媒としては、特に限定されないが、反応温度等の観点から、γ−ブチロラクトンとイソブタノール、及びγ−ブチロラクトンと2−メトキシエタノールの組み合わせが好ましい。
ラクトンと、アルコールと、の混合溶媒中におけるアルコールの割合は、合成反応を効率的に進行させるという観点から、50体積%以下であることが好ましい。アルコールの割合が50体積%以下であることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応を短時間で行うことができ、合成効率を上昇させることができる。
また、溶媒としては、ラクトンと、芳香族系非極性溶媒と、の混合溶媒でもよい。芳香族系非極性溶媒としては、特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、プソイドキュメン、メシチレン等が挙げられる。これらの中でも、汎用性が高く安価である観点から、トルエン、キシレンが好ましい。芳香族系非極性溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラクトンと、芳香族系非極性溶媒と、の混合溶媒としては、特に限定されないが、反応温度等の観点から、γ−ブチロラクトンとトルエン、及びγ−ブチロラクトンとキシレンの組み合わせが好ましい。
ラクトンと、芳香族系非極性溶媒と、の混合溶媒中における芳香族系非極性溶媒の割合は、原料の溶解性を低下させない観点から、混合溶媒全体に対して、50体積%以下であることが好ましい。芳香族系非極性溶媒の割合を50体積%以下とすることにより、原料をより確実に溶解させることができ、反応効率を上昇させることができる。
さらに、溶媒としては、ラクトンと、芳香族系非極性溶媒と、アルコールと、の混合溶媒でもよい。合成反応を効率的に進行させるという観点や、溶媒に対する原料の溶解性を低下させないという観点から、芳香族系非極性溶媒とアルコールとの合計は、混合溶媒の全体の50体積%以下であることが好ましい。
本実施形態において、溶媒の量については特に限定されないが、二官能フェノール化合物の濃度が0.1〜5.0mol/Lであることが好ましく、0.1〜4.0mol/Lであることがより好ましく、0.1〜3.0mol/Lであることが更に好ましい。二官能フェノール化合物の濃度を0.1mol/L以上とすることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応速度をより促進させることができ、反応効率を上昇させることができる。二官能フェノール化合物の濃度を5.0mol/L以下とすることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応時に、反応溶液のゲル化を効果的に抑制できるとともに、得られるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の不溶化を防止できる。
上記した熱硬化性樹脂の製造方法において、原料を添加混合する順序は特に限定されず、例えば、二官能フェノール化合物、ジアミン化合物及びアルデヒド化合物を順に溶媒に添加し混合してもよいが、二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物と、溶媒と、を添加し混合して混合溶液とした後、この混合溶液にアルデヒド化合物を添加し混合することが好ましい。すなわち、上記した熱硬化性樹脂の製造方法は、二官能フェノール化合物(上記式(5)で表される化合物及び上記式(6)で表される化合物等)と、ジアミン化合物と、溶媒と、を混合させて混合溶液とする工程と、前記混合溶液にアルデヒド化合物をさらに添加し、反応させる工程と、を含んでいてもよい。
上記した熱硬化性樹脂の製造方法において、反応効率を向上させる観点から、加熱してもよいし、適宜、撹拌機、撹拌子等を使用して溶媒の撹拌下、二官能フェノール化合物等を添加混合してもよい。反応は、必要に応じて、窒素ガス等の不活性ガスをパージし、不活性ガスの存在下で行ってもよい。
加熱の方法は、特に限定されず、例えば、油浴等の温度調節器を用いて、所定の温度まで一気に上昇させた後に、その温度で一定に保つ方法が挙げられる。加温処理の際の所定の温度は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応の効率化が図られる温度であれば、特に限定されないが、反応溶液温度が10〜150℃の範囲であることが好ましく、30〜150℃であることがより好ましく、50〜150℃の範囲であることが更に好ましい。反応溶液温度を10℃以上とすることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応を効果的に促進させることができ、反応効率をさらに上昇させることができる。反応溶液温度を150℃以下とすることにより、反応溶液のゲル化を効果的に抑制でき、得られるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の不溶化を効果的に防止できる。反応溶液の加熱を行っている間は、溶媒を還流させてもよい。
上記した熱硬化性樹脂の製造方法は、反応により生成する水を除く工程を更に含んでいてもよい。反応により生成する水を除くことで、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応時間を短縮させることが可能となり、反応の効率化を図ることができる。生成する水を除く方法は、特に限定されず、反応溶液中の溶媒と共沸させる方法等が挙げられる。例えば、コック付きの等圧滴下ロート、ジムロート冷却器、ディーン・スターク装置等を用いることで生成する水を反応系から除くことができる。また、反応工程中に反応容器内を減圧にすることで、生成する水を系外へ除去してもよい。
加熱の継続時間は、特に限定されないが、例えば、加熱開始後1〜20時間程度であることが好ましく、2〜15時間程度がより好ましい。1〜20時間加熱を継続させた後、反応溶液を、油浴等の温度調節器の接触から開放して放冷してもよいし、あるいは冷媒等を用いて冷却してもよい。
上記した硬化性樹脂の製造方法は、式(5)で表される化合物と、式(6)で表される化合物と、ジアミン化合物と、アルデヒド化合物と、を含む溶液を反応させる工程の後に、反応後の溶液を塩基性水溶液により洗浄する工程を、更に含むことが好ましい。洗浄工程を更に含むことにより、反応溶液から未反応の二官能フェノール化合物や一官能フェノール化合物を効率よく取り除くことができる。
塩基性水溶液としては、塩基性化合物を水に溶解させた水溶液であればよく、特に限定されない。塩基性化合物としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、汎用性の観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
洗浄工程において塩基性水溶液で上記反応溶液を洗浄した後、さらに蒸留水等で洗浄することが好ましい。例えば、蒸留水により数回洗浄することにより、ナトリウムイオン等の塩基性水溶液由来のイオンを効果的に取り除くことができる。
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を反応溶液から回収する方法は、特に限定されず、例えば、貧溶媒による再沈法、濃縮固化法(溶媒減圧留去)、スプレードライ法等が挙げられる。本実施形態では、必要に応じて、前処理として、反応後に反応溶液のろ過を行ってもよい。
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、高分子量化されており、この熱硬化性樹脂を、二官能以上のエポキシ樹脂(後述する)の存在下、加熱すること等により、より架橋密度の高い成形体や硬化体とすることができる。かかる成形体や硬化体は上述したα2領域での熱線膨張率を大幅に低減することができるだけでなく、耐熱性や可とう性等の物性の向上も期待できる。
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られるポリエチレングリコール換算値での重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは2000〜300000であり、より好ましくは4000〜200000であり、更に好ましくは4000〜100000であり、より更に好ましくは4000〜50000であり、一層好ましくは4000〜30000である。ここで、「高分子量化されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂」とは、プレポリマータイプのベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、すなわち、繰り返し単位中にベンゾオキサジン環を有する構造の熱硬化性樹脂を指し、その重量平均分子量が2000〜300000程度に制御されていることを意味する。
熱硬化性樹脂の重量平均分子量を2000以上とすることで、その後の開環反応により得られる成形体や硬化体の耐熱性及び可とう性を一層上昇させることができる。さらに、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造における回収作業性を上昇させることができ、収率を向上させることができる。重量平均分子量を300000以下とすることで、合成後に得られるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の各種有機溶媒に対する溶解性を確保することができるため、熱硬化性樹脂組成物の調製を容易にすることができる。
熱硬化性樹脂の重量平均分子量を制御する方法としては、例えば、合成反応中に、反応溶液の一部を採取し、その溶液の分子量をGPCにより測定することで、熱硬化性樹脂の重量平均分子量を制御する方法が挙げられる。
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、ハロゲン原子を構造中に有さないものとすることができ、不純物としてハロゲン化合物を含まない溶媒を用いて製造することもできるため、ハロゲン化合物を実質的に含有しない、熱硬化性樹脂とすることもできる。
<二官能以上のエポキシ樹脂>
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、二官能以上のエポキシ樹脂を含む。これにより、より架橋密度を高くすることができるため、特に、上述したα2領域での熱線膨張率を大幅に低減することができる。
二官能以上のエポキシ樹脂(以下、単に「多官能エポキシ樹脂」という場合がある。)は、分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するものであり、オリゴマーやポリマーであってもよい。エポキシ樹脂中のエポキシ基の数としては、1分子当たり2個以上であればよく、1分子当たり3個以上であることがより好ましい。
一官能のエポキシ樹脂のみを用いた場合では、該熱硬化性樹脂組成物の硬化物において、α2領域での熱線膨張率を低減できる架橋密度を確保することが困難である。一方、二官能以上のエポキシ樹脂を用いることにより、α2領域での熱線膨張率を低減できる架橋密度を確保することが可能になる。特に、三官能以上のエポキシ樹脂である場合、より一層好適な架橋密度を実現することができる(ただし、本実施形態の作用はこれに限定されない。)。
二官能以上のエポキシ樹脂としては、2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂ならば、特に限定せずに、使用することができる。例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等を用いることができる。
より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノール・ビフェニレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノトリアジン型エポキシ樹脂及びそれらの混合物等が挙げられる。
二官能以上のエポキシ樹脂は市販品を用いることもできる。その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の商品名「RE−410S」(日本化薬社製)や商品名「ZX−1627」(東都化成社製)や商品名「EPICLON840」(DIC社製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の商品名「EPICLON830S」(DIC社製)、ナフタレン型エポキシ樹脂の商品名「EPICLON−HP−4032」(DIC社製)、ビフェニル型エポキシ樹脂の商品名「jER−YX4000」(ジャパンエポキシレジン社製)、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂の商品名「ZX−1027」(東都化成社製)等が挙げられる。
二官能以上のエポキシ樹脂の中でも、架橋密度を上げる観点から、三官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。三官能以上のエポキシ樹脂の構造は特に限定されず、3個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂であればよい。それらの中でも、三官能以上のエポキシ樹脂の中でも、架橋密度を更に上げる観点からエポキシ等量がより小さい三官能以上のエポキシ樹脂であることがより好ましい。また、同じエポキシ等量の場合はより多官能のエポキシ樹脂であることが更に好ましい。
三官能以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂は市販品を用いることもできる。その具体例としては、三官能アミノフェノール型エポキシ樹脂の商品名「jER−630」(ジャパンエポキシレジン社製)、三官能トリアジン骨格含有エポキシ樹脂の商品名「TEPIC−SP」(日産化学工業社製)、三官能芳香族エポキシ樹脂の商品名「テクモアVG3101」(プリンテック社製)、四官能芳香族エポキシ樹脂の商品名「GTR−1800」(日本化薬社製)、変性ノボラック型エポキシ樹脂の商品名「EPICLON−N540」(DIC社製)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の商品名「EPICLON−HP7200H−75M」(DIC社製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の商品名「EPICLON−N660」(DIC社製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の商品名「jER−152」(ジャパンエポキシレジン社製)、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の商品名「NC3000」(日本化薬社製)、「NC3000H」(日本化薬社製)、「NC3000L」(日本化薬社製)、ナフタレン型エポキシ樹脂の商品名「ESN−175S」(東都化成社製)等が挙げられる。
上記した二官能以上のエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよいが、二官能以上のエポキシ樹脂を2種以上併用することが好ましい。2種類以上の多官能エポキシ樹脂を用いることで、架橋密度をより高くすることができ、熱線膨張率の更なる低減化、及び耐熱性や機械特性の一層の向上を実現可能とする。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物が二官能以上のエポキシ樹脂を2種類以上含む場合、エポキシ樹脂の組み合わせは特に限定されないが、少なくとも1種は液状のエポキシ樹脂であることが好ましい。ここでいう、「液状のエポキシ樹脂」とは、好ましくは、室温にて粘性を有するエポキシ樹脂であり、より好ましくは25℃での粘度が20000mPa・s以下であるエポキシ樹脂である。二官能以上のエポキシ樹脂を2種類以上併用する場合、二官能エポキシ樹脂(液状)としてはビスフェノールA型エポキシやビスフェノールF型が好ましく、その他の多官能エポキシ樹脂としてはノボラックタイプエポキシ樹脂が好ましい。かかる組み合わせとすることにより、成形体の成形性及び機械特性(引張破断伸び)を一層向上させることができる。
<無機充填剤>
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、無機充填剤を更に含むことが好ましい。これにより、寸法安定性を向上させることができる。無機充填剤としては、特に限定されず、種々の無機充填剤を用いることができる。例えば、シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、低熱線膨張率、コスト、及び入手容易性の観点から、シリカが好ましく、シリカスラリーがより好ましい。
シリカスラリーとしては、メチルエチルケトン(MEK)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、シクロヘキサノン等の溶媒に分散させたもの等が挙げられる。シリカスラリーの製造方法は限定されず、公知の方法により準備することができるが、シリカの表面処理を行い、上記した有機溶媒等に分散させる方法が好ましい。なお、スラリーとしては、熱硬化性樹脂組成物中における無機充填剤の分散性の観点から、N,N−ジメチルホルムアミドやシクロヘキサノン溶媒に分散させたものが好ましい。
特に、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記したベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、2種類以上の多官能エポキシ樹脂と、無機充填剤と、フェノール硬化剤と、硬化促進剤とを含むことが好ましい。かかる成分を含有することにより、α2領域だけでなくα1領域も含む広い領域での熱線膨張率の低減化が可能となり、耐熱性や機械特性についても向上させることができる。
<フェノール硬化剤>
フェノール硬化剤は、本実施形態で用いるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂やエポキシ樹脂との相溶性に優れるため、均一な熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。フェノール硬化剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることもできる。フェノール硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。また、吸水率の低減や耐熱性の観点から、ビフェニル骨格を有するノボラック型フェノール樹脂の使用が好ましい。フェノール樹脂とは、フェノール性水酸基を有する樹脂であればよい。
フェノール硬化剤は、電子求引基を有するものが好ましい。電気求引基を有するフェノール硬化剤を使用することで、熱硬化性樹脂組成物の硬化温度の低減を図ることができる。電子求引基としては、ケトン基やスルホニル基等の置換基が好ましい。かかるフェノール硬化剤としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)等を用いることができる。フェノール硬化剤としては、1種単独で使用してもよいし、2種類上併用してもよい。
<硬化促進剤>
本実施形態で用いることができる硬化促進剤としては、特に限定されず、種々の硬化促進剤を用いることができる。例えば、イミダゾール、ピペリジン、N、N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン及びそれらの誘導体等の二級及び三級アミン、トリフェニルホスフィン等を用いることができる。これらの中でも、イミダゾール及びその誘導体である硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、1種単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本実施形態において、上述したベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、2種類以上の多官能エポキシ樹脂と、無機充填剤と、フェノール硬化剤と、硬化促進剤とを含有する場合、各成分の添加量は特に限定されないが、無機充填剤の添加量は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール硬化剤の合計100重量部に対して、200〜400重量部であることが好ましく、200〜350重量部であることがより好ましく、200〜300重量部であることが更に好ましい。無機充填剤の添加量を上記下限値以上とすることで、得られる成形体の熱線膨張率を一層低減化することができ、上記上限値以下とすることで、成形体の成形性及び機械特性の低下を抑制することができる。
エポキシ樹脂の合計含有量は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール硬化剤の合計に対して、20〜40重量%であることが好ましく、25〜40重量%であることがより好ましく、30〜40重量%であることが更に好ましい。
フェノール硬化剤の含有量は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール硬化剤の合計に対して、10〜25重量%であることが好ましく、15〜25重量%であることがより好ましく、20〜25重量%であることがより好ましい。フェノール硬化剤の添加量を上記下限値以上とすることで、硬化温度を低くすることができるため更なる硬化促進が可能となり、上記上限値以下とすることで、機械特性の低下を一層抑制することができる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、上記したエポキシ樹脂や無機充填剤以外の、他の添加剤を配合することもできる。例えば、硬化剤、難燃剤、離型剤、接着性付与剤、界面活性剤、着色剤、カップリング剤、レベリング剤等が挙げられる。さらに、その他の熱硬化性樹脂等を添加してもよい。
例えば、カップリング剤としては、上記した無機充填剤の表面処理剤としてアルコキシシランカップリング剤を用いることができる。使用するカップリング剤は特に制限するものではないが、無機充填剤100重量部に対し、0.1〜3重量部を使用することができる。また、作業工程を減らすために、予めカップリング剤で表面処理した無機充填剤を使用することもできる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族非極性溶媒、ラクトン等の有機溶媒を更に含んでいてもよい。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
芳香族系非極性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、プソイドキュメン、メシチレン等が挙げられる。
ラクトンとしては、例えば、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、3−メチルオクタノ−4−ラクトン、4−ヒドロキシ−3−ペンテン酸γ−ラクトン等が挙げられる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記したベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、二官能以上のエポキシ樹脂と、を混合する工程(混合工程)を有する製造方法により得ることができる。混合の方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
また、上述した無機充填剤、フェノール硬化剤、硬化促進剤、その他の充填剤や熱硬化性樹脂、さらには溶媒等を混合する場合、その混合順序等は限定されず、適宜に好適な順序・条件にて混合することができる。混合方法等についても、特に限定されず、適宜に好適な方法を採用できる。例えば、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と溶媒とを自転・公転ミキサー(例えば、あわとり練太郎、シンキー社製)や各種撹拌装置を用いて混合した後、フェノール硬化剤等を投入して更に混合し、必要に応じて上記の無機充填剤、他の充填剤や熱硬化性樹脂等を投入して混合することができる。
<成形体等>
本実施形態の成形体は、上述した熱硬化性樹脂組成物を、必要により部分硬化させて、若しくは硬化させずに得られる成形体である。すなわち、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、成形体とすることもできるし、硬化体とすることもできる。本実施形態の硬化体としては、前述したベンゾオキサジン構造を有する熱硬化性樹脂が硬化前にも成形性を有しているため、一旦硬化前に成形した後に熱をかけて硬化させたもの(硬化成形体)でもよいし、成形と同時に硬化させたもの(硬化体)でもよい(以下、これらを「硬化体」と総称する場合がある)。また、その寸法や形状は特に制限されず、例えば、フィルム状、シート状(板状)、ブロック状等が挙げられ、さらに他の部位(例えば、粘着層)を備えていてもよい。
本実施形態における硬化方法としては、特に限定されず、従来公知の任意の硬化方法を用いることができ、一般には120〜260℃程度で数時間加熱すればよいが、加熱温度がより低かったり、加熱時間が不足したりすると、場合によっては、硬化が不十分となって機械的強度が不足することがある。また、加熱温度がより高すぎたり、加熱時間が長すぎたりすると、場合によっては、分解等の副反応が生じて機械的強度が不都合に低下することがある。したがって、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の特性に応じた適正な条件を選択することが好ましい。
加圧加熱蒸気を使って硬化させることを想定した場合、及び電熱線等その他の方法による加熱硬化を想定した場合には、省エネルギーの観点から、硬化温度は、硬化可能で、かつ低い温度であることが好ましい。具体的には、190℃以下で硬化させることが好ましく、185℃以下で硬化させることがより好ましい。硬化促進の観点から、硬化時間の下限は10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましい。生産性の面から考えると硬化時間の上限は10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、3時間以下が更に好ましい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を、従来公知の方法により成形又は硬化して得られる成形体又は硬化体は、電子部品・電子機器及びその材料として、低熱線膨張率が要求される多層基板、積層板、封止剤、接着剤等として好適に用いることができる。特に、ビルドアップ基板用の材料として好適である。上記電子機器としては、例えば、携帯電話、表示機器、車載機器、コンピュータ、通信機器等が挙げられる。その他、航空機部材、自動車部材、建築部材等にも幅広く使用できる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いた原材料、評価方法及び測定方法は以下の通りである。
I.ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の検討
(原材料)
二官能エポキシ樹脂
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「EPICLON830S」、DIC社製、エポキシ等量165〜177g/eq、粘度3000〜4500mPa・s(25℃))
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「RE−410S」、日本化薬社製、エポキシ等量170〜190g/eq、粘度7000〜12000mPa・s(25℃))。
多官能エポキシ樹脂(三官能以上のエポキシ樹脂)
・変性ノボラック型エポキシ樹脂(商品名「EPICLON−N540」、DIC社製、エポキシ等量169g/eq)
・三官能トリアジン骨格含有エポキシ樹脂(商品名「TEPIC−SP(高純度、微粉末グレード)」、日産化学工業社製、エポキシ当量<105g/eq)
・ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂(商品名「NC3000L(低分子量グレード)」、日本化薬社製、エポキシ当量272g/eq)
(熱線膨張率の測定)
熱線膨張率は、SIIナノテクノロジー社製「TMA/SS6100」を用い、引っ張りモードで、窒素雰囲気下で、荷重5mN、昇温速度5℃/分で測定した。測定サンプルは、得られた硬化体を幅4mm、長さ20mmにカットし、チャック間の距離が10mmとなるようにセットした。そして、ガラス転移温度(Tg)以上の温度領域であるα2領域(TMA測定データの変曲点温度以上の領域)の熱線膨張率を評価した。
(重量平均分子量(Mw)の測定)
高速液体クロマトグラフシステム(島津製作所社製)
システムコントローラー:SCL−10A VP
送液ユニット:LC−10AD
VPデガッサー:DGU−12A
示差屈折計(RI)検出器:RID−10A
オートインジェクター:SIL−10AD VP
カラムオーブン:CTO−10AS VP
カラム:SHODEX KD803(排除限界分子量70000)×2(直列)
カラム温度:50℃
流量:0.8mL/分
溶離液:ジメチルホルムアミド(DMF;和光純薬工業社製、安定剤不含、HPLC用、LiBr(臭化リチウム) 10mmol/L含有))
サンプル:0.1重量%
検出器:RI
上記測定条件により、Mwが、20000、14000、10000、8000、6000、4000、3000、2000、1500、1000、900、600、400、300、200の標準ポリエチレングリコール(純正化学社)により検量線を作成した。
標準ポリエチレングリコール換算により、GPC測定により得られたポリエチレングリコール換算値での重量平均分子量(Mw)を測定した。
H−NMRの測定〕
下記測定装置、溶媒を用いて、サンプル濃度1.3重量%で測定を行った。
測定装置:JEOL製、ECX400(400MHz)
溶媒:TMS(テトラメチルシラン)を0.05体積%含有する重DMSO(ジメチルスルホキシド;シグマアルドリッチ社製)、またはTMSを0.05体積%含有する重クロロホルム(CambRidge Isotope LaboRatoRies社製)
(ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造)
〔製造例1〕
(DHBP70−BisA30−PDAの製造)
300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン200mL(和光純薬工業社製)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(以下、DHBPという。)18.12g(0.084mol、和光純薬工業社製)、ビスフェノールA(以下、BisAという。)8.22g(0.036mol、日本ジーイープラスチックス社製)、p−フェニレンジアミン(以下、PDAという。)12.99g(0.12mol、大新化成工業社製)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。反応溶液を100℃で1時間攪拌し、DHBP、BisA、PDAの溶解を確認した後、パラホルムアルデヒド(以下、PFAという。)18.87g(0.58mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、4時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。
析出した沈殿固体を減圧乾燥することにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が得られた。得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は7000であった。得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(以下、樹脂aという。)の構造A:構造B(式(1)及び式(2)参照)の比率(モル比)は約70:30であることを、H−NMRによって確認した。樹脂aのH−NMRスペクトルを図1に示す。
(DHBP70−BisA30−PDAのH−NMR)
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.44ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.61ppm
BisA_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.26ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.46ppm
BisA由来のメチル基のプロトンピーク:1.48ppm
〔製造例2〕
(DHBP50−BisA50−PDAの製造)
300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン200mL(和光純薬工業社製)、DHBP 12.94g(0.06mol、和光純薬工業社製)、BisA 13.70g(0.06mol、日本ジーイープラスチックス社製)、PDA 12.99g(0.12mol、大新化成工業社製)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。反応溶液を100℃で1時間攪拌し、DHBP、BisA、PDAの溶解を確認した後、PFA18.87g(0.58mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、5時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。
析出した沈殿固体を減圧乾燥することにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が得られた。得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は8000であった。得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(以下、樹脂bという。)の構造A:構造B(式(1)及び式(2)参照)の比率(モル比)は約50:50であることを、H−NMRによって確認した。樹脂bのH−NMRスペクトルを図2に示す。
(DHBP50−BisA50−PDAのH−NMR)
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.43ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.61ppm
BisA_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.25ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.45ppm
BisA由来のメチル基プロトンピーク:1.48ppm
〔実施例1〜10〕
(熱硬化性樹脂組成物の製造)
表1、2に示す組成、配合量に基づき、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とエポキシ樹脂とジメチルホルムアミド(DMF)を混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。固形分濃度は、55〜60重量%となるように調製した。撹拌、脱泡には自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いた。得られた熱硬化性樹脂組成物を、PETフィルム上にアプリケーターを用いて塗工し、80℃で10分、150℃で10分、180℃で30分、190℃で60分加熱することによって硬化体を得た。得られた硬化体の物性を測定した。その結果を表1、2に示す。なお、表中、「BO」とはベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を示す(以下同様)。
〔比較例1〕
比較例1では、エポキシ樹脂を用いず、上述した熱硬化性樹脂(DHBP70−BisA30−PDA)のみを用いた以外は実施例1と同様にして硬化体を測定した。その結果を表1に示す。
〔比較例2〕
比較例2では、エポキシ樹脂を用いず、上述した熱硬化性樹脂(DHBP50−BisA50−PDA)のみを用いた以外は実施例4と同様にして硬化体を製造した。その結果を表2に示す。
Figure 2011125665
表1から示されるように、エポキシ樹脂を配合しなかった比較例1のα2領域の熱線膨張率は541ppm/℃であったのに対して、二官能以上の多官能のエポキシ樹脂を配合した実施例1〜3、7、8のα2領域の熱線膨張率は大幅に低減されたことが確認された。中でも、三官能以上の多官能エポキシ樹脂を配合した実施例3、7、8のα2領域の熱線膨張率は一層大幅に低減されたことが確認された。
Figure 2011125665
表2から示されるように、エポキシ樹脂を配合しなかった比較例2のα2領域の熱線膨張率は1260ppm/℃であったのに対して、二官能以上の多官能のエポキシ樹脂を配合した実施例4〜6、9、10のα2領域の熱線膨張率は大幅に低減されたことが確認された。中でも、三官能以上の多官能エポキシ樹脂を配合した実施例6、9、10のα2領域の熱線膨張率は一層大幅に低減されたことが確認された。
II.ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤、硬化促進剤等を含む熱硬化性樹脂組成物の検討
(原材料)
(1)二官能エポキシ樹脂
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「EPICLON830S」、DIC社製、エポキシ等量165〜177g/eq、粘度3000〜4500mPa・s(25℃))
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「RE−410S」、日本化薬社製、エポキシ等量170〜190g/eq、粘度7000〜12000mPa・s(25℃))。
(2)多官能エポキシ樹脂(三官能以上のエポキシ樹脂)
・ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「NC3000H(高分子量グレード)」、エポキシ当量280〜300g/eq、軟化点65〜75℃、室温で固体)。
(3)フェノール硬化剤
・ビフェニル骨格含有フェノール硬化剤(明和化成社製、商品名「MEH−7851−SS(低分子グレード)」、OH当量201〜205g/eq、軟化点64〜69℃)
・4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、和光純薬工業製
(4)硬化促進剤
・イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業社製、商品名「2P4MZ」、2−フェニル−4−メチルイミダゾール)
(5)無機充填剤
・シリカ(アドマテックス社製、商品名「SOC2」:平均粒子径0.5μm)をビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−1003」)により表面処理し、シクロヘキサノン(CHN)に分散させたシリカスラリー(固形分70重量%)を用いた。
(6)ベンゾオキサジン樹脂
・モノマータイプのベンゾオキサジン樹脂として、ビスフェノールA−アニリン型ベンゾオキサジン(四国化成工業社製、B−a型)
(熱線膨張率の測定)
熱線膨張率は、SIIナノテクノロジー社製「TMA/SS6100」を用い、引っ張りモードで、窒素雰囲気下で、荷重5mN、昇温速度5℃/分で測定した。測定サンプルは、得られた硬化体を幅4mm、長さ20mmにカットし、チャック間の距離が10mmとなるようにセットした。そして、α1領域(TMA測定データの変曲点温度以下の領域)の熱線膨張率及びα2領域(TMA測定データの変曲点温度以上の領域)の熱線膨張率をそれぞれ評価した。
(ガラス転移点(Tg)の測定)
硬化体のガラス転移点(Tg)は、SIIナノテクノロジー社製「DMS6100」を用い、窒素雰囲気下で、周波数10Hz、昇温速度2℃/分で測定した。測定サンプルは、得られた硬化体を幅4mm、長さ50mmにカットし、チャック間の距離が20mmとなうようにセットした。
(引張破断強度、伸び、及び弾性率の測定)
引張破断強度、伸び、及び弾性率は、島津製作所製「オートグラフAG−5000B」を用い、引っ張りモードで、引っ張り速度5mm/分で測定した。測定サンプルは、得られた硬化体を幅10mm、長さ100mmでカットし、チャック間距離が60mmとなるようにセットした。
(比較製造例1:BisA−BAPPの製造)
クロロホルム中に、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(東京化成社製)13.7g(0.06mol)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(東京化成社製)25.13g(0.06mol)、パラホルムアルデヒド(和光純薬製)8.05g(0.25mol)を投入し、発生する水分を除去しながら還流下で6時間反応させた。反応後の溶液を多量のメタノールに投じて生成物を析出させた。その後、ろ別により生成物を分離し、メタノールで洗浄した。洗浄した生成物を減圧乾燥することにより、ベンゾキサジン樹脂を得た。得られた樹脂のGPCによる分子量測定では、重量平均分子量は8900であった。
〔実施例11、12〕
(熱硬化性樹脂組成物の製造)
表3に示す組成及び配合量に基づき、製造例1及び2のベンゾオキサジン樹脂とエポキシ樹脂、フェノール硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤(シリカスラリー)、及びN,N−ジメチルホルムアミドを混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。固形分濃度は、70〜75重量%となるように調製した。撹拌、脱泡には自転・公転ミキサー(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いた。得られた熱硬化性樹脂組成物を、離型処理されたPETフィルム上(厚み50μm、リンテック社製)にアプリケーターを用いて塗工し、80℃で10分間、150℃で10分間、180℃で30分間、及び190℃で90分間の条件で順次加熱することによって、厚さ30〜40μmの硬化体を得た。得られた硬化体の物性を測定した。その結果を表3に示す。なお、表3に示す樹脂成分の合計量は100重量部である。
〔比較例3〕
比較例3では、モノマータイプのベンゾオキサジン樹脂を用いた点以外は実施例11と同様にして硬化体を製造した。その結果を表4に示す。なお、表4に示す樹脂成分の合計量は100重量部である。
〔比較例4〕
比較例4では、BisA−BAPP構造のベンゾオキサジン樹脂(比較製造例1)を用いた点以外は実施例11と同様にして硬化体を製造した。その結果を表4に示す。
Figure 2011125665
Figure 2011125665
表3、4から示されるように、比較例3、4のα2領域の熱線膨張率は201ppm/℃、198ppm/℃であったのに対して、実施例11、12のα2領域の熱線膨張率は97ppm/℃、99ppm/℃であった。これらのことから、実施例11、12のα2領域の熱線膨張率は大幅に低減されていることが確認された。そして、α1領域の熱線膨張率についても、実施例11、12は低減されていることが確認された。
さらに、実施例11、12のTgは198℃以上であったのに対し、比較例3、4のTgは179℃以下であった。また、実施例11、12の引張破断強度は121〜127MPaであり、破断伸びは2.5%以上であったのに対し、比較例3、4の引張破断強度は114MPa以下であり、破断伸びは2.3%以下であった。
以上より、上記したベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂に、エポキシ樹脂、フェノール硬化剤、及び硬化促進剤を配合した熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化体では、α2領域だけでなくα1領域においても熱線膨張率の低減が実現されるとともに、耐熱性及び機械特性にも優れていることが確認された。
本出願は、2010年3月31日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2010−080458)、2010年9月29日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2010−219634)、及び2011年2月28日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2011−042809)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物、その成形体、及び硬化体は、積層板や半導体封止材等のエレクトロニクス材料、摩擦材や砥石等の結合材の分野において産業上の利用可能性を有し、各種電子機器としても好適に用いることができる。

Claims (20)

  1. 下記式(1)で表される構造A及び下記式(2)で表される構造Bを含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、
    二官能以上のエポキシ樹脂と、を含む熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2011125665
    Figure 2011125665
    式中、R〜Rは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y及びYは、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。
  2. 前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記構造AのR及びRは、いずれも水素である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記構造AのR及びR並びに前記構造BのR及びRは、いずれも水素である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における、前記構造Bの含有量に対する前記構造Aの含有量の比率(A/B;モル比)が、1/99〜99/1である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記Y又は前記Yの少なくともいずれかが、下記式(3)で表される構造である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2011125665
    式中、*は、結合部位を表す。
  6. 前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記Y又は前記Yの少なくともいずれかが、下記式(4)で表される構造である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2011125665
    式中、*は、結合部位を表す。
  7. 前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂における前記Xは、下記群G1aからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2011125665
    群G1a中、*は、結合部位を表す。
  8. 前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、下記式(5)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物と、ジアミン化合物と、アルデヒド化合物と、を反応させることにより得られる熱硬化性樹脂である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2011125665
    式中、R及びRは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表す。
    Figure 2011125665
    式中、R及びRは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。
  9. ラクトン中で前記反応を行う、請求項8に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  10. 前記エポキシ樹脂が、三官能以上のエポキシ樹脂である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  11. 前記エポキシ樹脂として、2種類以上の二官能以上のエポキシ樹脂を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  12. 無機充填剤を更に含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  13. フェノール硬化剤と、硬化促進剤と、を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  14. 前記フェノール硬化剤は、電子求引基を有する、請求項13に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  15. 前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、前記エポキシ樹脂、及び前記フェノール硬化剤の合計100重量部に対して、前記無機充填剤を200〜400重量部含む、請求項13又は14のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  16. 前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、前記エポキシ樹脂、及び前記フェノール硬化剤の合計における前記エポキシ樹脂の含有量が、20〜40重量%である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  17. 下記式(1)で表される構造A及び下記式(2)で表される構造Bを含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、二官能以上のエポキシ樹脂と、を混合する工程を有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
    Figure 2011125665
    Figure 2011125665
    式中、R〜Rは、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y及びYは、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。
  18. 請求項1〜16のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物、又は請求項17に記載の製造方法により得られる熱硬化性樹脂組成物から得られる成形体。
  19. 請求項18に記載の成形体を硬化させて得られる硬化体。
  20. 請求項18に記載の成形体、又は請求項19に記載の硬化体を含む電子機器。
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