JP6236222B2 - シアネートエステル系組成物及びその用途 - Google Patents

シアネートエステル系組成物及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、シアネートエステル系組成物及びその用途に関する。より詳しくは、電気、機械、自動車分野を始めとする様々な産業分野において有用なシアネートエステル系組成物、それを用いた硬化性樹脂組成物、封止材及び半導体装置に関する。
シアネートエステル化合物は、シアナト基(−OCN)を有する化合物であるが、環化三量化してトリアジン環構造を生成しながら重合することが知られており、例えば硬化性樹脂組成物に配合した場合には、トリアジン環構造に起因する耐熱性を発現することができる。そのため、これを含むシアネートエステル系組成物は、電気、機械、自動車分野を始めとする様々な産業分野への適用が検討されている。
硬化性樹脂組成物は、光や熱によって硬化する性質を有する樹脂を含む組成物であり、様々な産業分野において、各用途に求められる物性を有する硬化性樹脂組成物の開発が進んでいる。このような硬化性樹脂組成物の用途の1つに、電子部品や半導体チップ等を実装した基板に用いられる封止材がある。電子部品や半導体チップ等を基板に実装する場合の実装方式は、高密度実装が可能なことから表面実装方式が多く、その際に電気絶縁性を有する封止材で封止しており、このような封止材としては、従来、有機主成分としてエポキシ樹脂を含む硬化性樹脂組成物が汎用されている。しかし、このような樹脂組成物から得られる硬化物を、例えば200℃以上の高温下で長時間放置した場合には、機械的強度が低下し、クラックの発生や封止対象からの剥離が認められることから、耐熱性の向上が切望されていた。
シアネートエステル化合物を用いた硬化性樹脂組成物としては、例えば、三官能又は四官能のエポキシ樹脂、硬化剤、1分子内に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物及び無機充填剤を必須成分として含有するエポキシ樹脂組成物(特許文献1参照)や、シアネートエステル化合物及び/若しくはそのプレポリマーを単独で、又は、更にエポキシ樹脂を併用してなる熱硬化性樹脂組成物に、硬化触媒として有機アルミニウム化合物とシラノール基等を有する有機ケイ素化合物とを配合した熱硬化性樹脂組成物(特許文献2参照)が開示されている。なお、特許文献2の実施例には、有機ケイ素化合物や溶融シリカは含むものの、有機アルミニウム化合物を含まない場合(比較例2、4)には、硬化しないか又はゲル化時間が長時間に及ぶことが記載されている。
ところで、耐熱性に優れる硬化物を与え得る硬化性樹脂組成物として、シロキサン結合を形成するケイ素原子にイミド結合を有する有機骨格が結合してなる構成単位を有するシラン化合物と、有機樹脂とを含む樹脂組成物が開発されている(特許文献3参照)。この樹脂組成物は、耐熱性等の各種物性に優れ、高温高圧、多湿等の過酷な環境下においても各種物性の低下が低い硬化物を与えることができるため、実装用途に極めて有用な樹脂組成物である。
国際公開第2007/037500号パンフレット 特開平9−100349号公報 特表2010−518182号公報
上記のように、シアネートエステル化合物は、重合によりトリアジン環構造を生成できるため、硬化性樹脂組成物に配合させてその構造に起因する特性を発揮させる技術が検討されているが、シアネートエステル化合物は硬化温度が高く、発泡が激しいため、これを用いた硬化性樹脂組成物を成型するのは容易ではない。そこで、シアネートエステル化合物を用いた硬化性樹脂組成物の硬化には、硬化触媒として、特許文献3に記載の有機アルミニウム化合物や、特許文献2に記載の硬化促進剤(コバルトアセチルアセトナート、テトラ置換ホスホニウム塩とフェノール化合物との分子会合体)等の金属触媒を用いることが通常である。しかしながら、絶縁性が求められる用途等、用途によっては硬化物中に金属成分が含まれないことが望まれることがあるため、金属触媒を用いた場合はもちろんのこと、金属触媒を用いない場合にも成型性よく硬化性樹脂組成物を硬化できるようにするための工夫の余地があった。
また封止材としては、従来、有機主成分としてエポキシ樹脂を含む硬化性樹脂組成物が汎用されているが、耐熱性が充分ではないため、特許文献1に代表されるように、耐熱性を付与又は向上させるための技術が種々検討されつつある。しかしながら、近年要求されるより高レベルの耐熱性を発揮できるようにするための工夫の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れる硬化物を成型性よく与えることができ、様々な用途に有用なシアネートエステル系組成物及び硬化性樹脂組成物、並びに、それを用いた封止材及び半導体装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、封止材用途等に好ましく適用できる材料について種々検討したところ、シアネートエステル化合物を用いれば、重合によりトリアジン環構造が生じることに起因して耐熱性の向上が期待できる一方で、硬化温度が高く成型が非常に困難であることに着目した。そこで、シアネートエステル化合物に特定構造からなるシラン化合物を併用させると、これらを含む組成物(シアネートエステル系組成物)を硬化性樹脂組成物に配合した場合に、金属触媒を必須としなくてもその硬化温度が著しく低下し、硬化成型が格段に容易になる一方で、熱分解温度には殆ど影響を与えないことを見いだした。これは、特定構造からなるシラン化合物がシアネートエステル化合物の触媒として作用することに起因するものと推測される。なお、特許文献2の記載からは、金属アルミニウム化合物を使用しないと硬化しないこと又は硬化したとしてもゲル化時間(硬化時間)が長時間に及ぶことが示唆されているため、このような本願発明による効果は、これまでの技術からは容易に予測できない異質な効果といえる。
ここで、特定構造からなるシラン化合物の触媒作用については、次のように考えている。
シアネートエステル化合物に、イミド構造を有する化合物(例えば、N−(2−エチルヘキシル)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)を添加すると、硬化温度は上昇する。これは、極性の高いイミド部位とシアネートエステル部位との相互作用が、シアネートエステル化合物同士の相互作用より強いため、系中でシアネートエステル化合物同士が近づくことを妨げているためと考えられる。一方、本願においてシロキサン結合とイミド結合とを有するシラン化合物を用いた場合は、これとシアネートエステル化合物とを併用すると、硬化温度が低下して反応が促進されるが、これは、シロキサン結合の周りにイミド基が固定されることで、シアネートエステル部位が近づけられ、反応を促進する効果が発揮されていると考えられる。
また、このようなシアネートエステル系組成物と、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物等の硬化性樹脂とを含む硬化性樹脂組成物とすれば、耐熱性及び機械的強度に優れる硬化物を与えることができることを見いだした。なお、このようなシアネートエステル系組成物において、シラン化合物を、遷移金属化合物を触媒として用いる反応で得た場合は、遷移金属化合物はごく微量存在するだけでシアネートエステル化合物の硬化触媒として機能するため、このようにして得たシラン化合物の生成物をシアネート化合物中に配合するだけでゲル化して組成物として用いるのが困難となるときがある。しかしながら、このようにして得たシラン化合物の生成物を、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物と配合することにより、このようなゲル化を充分に防止することができる。更に、本発明者等は、このようなシアネートエステル系組成物において、シラン化合物を、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる反応で得た場合は、このようにして得たシラン化合物をエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物と配合しなくてもシアネートエステル系組成物のゲル化を充分に抑制することができることを見いだした。そして、この場合におけるエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物を含まないシアネートエステル系組成物は、該組成物を硬化して得られる硬化物がきわめて高レベルの耐熱性を発揮できるとともに、機械的強度にもより優れることを見いだした。
また本発明者等は、当該シアネートエステル系組成物や硬化性樹脂組成物が、封止材用途に特に好適なものであることを見いだした。また、これを用いた半導体装置が、高温高圧、多湿等の過酷な環境下でも物性低下がないことが強く求められる電機・電子部品や自動車部品、機械部品等の用途に極めて有用なものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、シアネートエステル化合物及びシラン化合物を含むシアネートエステル系組成物であって、該シアネートエステル化合物は、1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有し、該シラン化合物は、シロキサン結合を有し、かつ下記平均組成式(1):
SiO (1)
(式中、Xは、同一又は異なって、イミド結合を含む有機骨格を表す。Yは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子及びOR基からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。Rは、同一又は異なって、アルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表し、置換基を有していてもよい。Zは、同一又は異なって、イミド結合を含まない有機骨格を表す。aは0又は3以下の数、bは0又は3未満の数、cは0又は3未満の数、dは0でない2未満の数であり、a+b+c+2d=4である。)で表されるシアネートエステル系組成物である。
本発明はまた、上記シラン化合物は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる反応で得られたものであるシアネートエステル系組成物でもある。
本発明はまた、上記シアネートエステル系組成物と、硬化性樹脂とを含む硬化性樹脂組成物でもある。
本発明は更に、上記シアネートエステル系組成物、又は、上記硬化性樹脂組成物を用いてなる封止材でもある。
本発明はそして、上記封止材を用いてなる半導体装置でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ又は3つ以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
〔シアネートエステル系組成物〕
本発明のシアネートエステル系組成物は、シアネートエステル化合物及びシラン化合物を含むが、これら各成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。また、これらを必須とする限り、その他の成分を適宜含むこともできる。
このようなシアネートエステル系組成物は、シラン化合物がシアネートエステル化合物中に均一分散された形態であることが好ましく、また、硬化後もシラン化合物の凝集等が見られない状態であることが好ましい。
<シアネートエステル化合物>
上記シアネートエステル系組成物において、シアネートエステル化合物は、1分子中に少なくとも2個のシアナト基(−OCN)を有するものであるが、例えば、下記一般式(a)で表される化合物が好適である。
Figure 0006236222
上記一般式(a)中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、又は、ハロゲン基(X)を表す。Rは、同一又は異なって、下記化学式で表される有機基を表す。Rは、同一又は異なって、下記化学式で表される有機基を表す。mは、0又は1である。nは、0〜10の整数を表す。
Figure 0006236222
上記一般式(a)で表される化合物としては特に限定されないが、例えば、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(4−シアナトフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、ジ(4−シアナトフェニル)エーテル、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、4,4−{1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)}ビスフェニルシアナト、4,4−ジシアナトフェニル、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1’−ビス−(p−シアナトフェニル)−エタン、2,2’−ビス(p−シアナトフェニル)プロパン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアナト)、2,2’−ビス(p−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン等の二価フェノールのシアン酸エステル;トリス(4−シアネートフェニル)−1,1,1−エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)−4−シアネートフェニル−1,1,1−エタン等の三価フェノールのシアン酸エステル;フェノールノボラック型のシアン酸エステル、クレゾールノボラック型のシアン酸エステル、ジシクロペンタジエンビスフェノール型のシアン酸エステル;等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の誘電特性や硬化性等の観点から、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンや、フェノールノボラック型のシアン酸エステルが好適である。
上記シアネートエステル化合物としてはまた、上記一般式(a)で表される化合物が有するシアナト基が環化してトリアジン環構造を形成してなる多量体(例えば、三量体、五量体)を使用することもできる。中でも、操作性や、他の硬化性樹脂への溶解性の観点から、三量体が好適である。多量体を得る手法は、通常の手法で行えばよい。
上記シアネートエステル化合物は、液状であっても固体状であってもよいが、他の硬化性樹脂との溶融混練を考慮すると、高い相溶性を持つか、又は、120℃以下の融点若しくは軟化点を有するものであることが好適である。より好ましくは、100℃以下の融点又は軟化点を有するものである。
なお、融点とは、不活性雰囲気下で結晶が溶けて液状になる状態の温度(℃)を意味する。したがって、非晶質の化合物や、室温で既に液状のものは、融点を有しない。シアネートエステル化合物の融点は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)にて測定することができる。また、軟化点(℃)はJIS K7234(1986年)に準じて測定した値であり、例えば、熱軟化温度測定装置(製品名「ASP−MG4」、メイテック社製)を用いて測定することができる。
<シラン化合物>
上記シアネートエステル系組成物において、シラン化合物は、シロキサン結合(Si−O−Si結合)を有し、かつ上記平均組成式(1)で表される化合物である。このようなシラン化合物を含むことで、耐熱性、耐圧性、機械的・化学的安定性、熱伝導率性に優れる硬化物を与えることが可能となる。また、高温高圧等の過酷な環境下においても各種物性低下が抑制された硬化物を形成でき、半導体封止材等の実装用途等に好適に使用することができる。
上記シラン化合物において、シロキサン骨格(シロキサン結合を必須とする主鎖骨格)の構造は、例えば、鎖状(直鎖状又は分岐状)、ラダー状、網状、環状、かご状、キュービック状等が好ましく例示される。中でも、上記シラン化合物の添加量が少量であっても効果が発揮されやすいため、ラダー状、網状、かご状であることが好ましい。すなわち上記シラン化合物は、ポリシルセスキオキサンを含むものが特に好適である。
なお、上記シラン化合物におけるシロキサン骨格の占める割合としては、シラン化合物100質量%中、10〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは15〜70質量%であり、更に好ましくは20〜50質量%である。
上記平均組成式(1):XSiOにおいて、Xの好ましい形態は後述するとおりであるが、Yとしては、水酸基又はOR基が好適である。中でもOR基がより好ましく、更に好ましくは、Rが炭素数1〜8のアルキル基であるOR基である。また、Zとしては、アルキル基、アリール基やアラルキル基等の芳香族残基、及び、不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(これらは置換基を有していてもよい)。より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜8のアルキル基、又は、アリール基やアラルキル基等の芳香族残基である。また、Xの係数aは、0≦a≦3の数であり、Yの係数bは、0≦b<3の数であり、Zの係数cは、0≦c<3未満の数であり、Oの係数dは、0<d<2の数である。Xの係数aは、0<a≦3の数であることが好ましい。言い換えれば、Xの係数aは、0でない3以下の数であることが好ましい。
上記シラン化合物は、例えば、下記式(2):
Figure 0006236222
(式中、X、Y及びZは、各々上記と同様である。n及びnは、重合度を示す。nは、0でない正の整数であり、nは、0又は正の整数である。)で表すことができる。
なお、「Y/Z−」は、Y又はZが結合していることを表し、「X1〜2−」は、Xが1個又は2個結合していることを表し、「(Z/Y)1〜2−」は、Z又はYが1個結合するか、Z又はYが2個結合するか、又は、Z及びYが1個ずつ、合計2個結合することを表す。「Si−(X/Y/Z)」は、X、Y及びZから選ばれる任意の3種がケイ素原子に結合していることを示す。
上記式(2)において、Si−OmとSi−Omは、Si−OmとSi−Omの結合順序を規定するものではなく、例えば、Si−OmとSi−Omが交互又はランダムに共縮合している形態、Si−OmからなるポリシロキサンとSi−Omのポリシロキサンが結合している形態等が好適であり、縮合構造は任意である。
上記シラン化合物は、上記平均組成式(1)で表すことができるが、該シラン化合物が有するシロキサン骨格(シロキサン結合を必須とする主鎖骨格)は、(SiOと表すこともできる。このようなシラン化合物における(SiO以外の構造は、イミド結合を有する有機骨格(イミド結合を必須とする構造)X、水素原子や水酸基等のY、及び、イミド結合を含まない有機基Zであり、これらは主鎖骨格のケイ素原子に結合することとなる。
X、Y及びZは、「鎖」の形態となった繰り返し単位に含まれてもよく、含まれていなくてもよい。例えば、Xは、側鎖として1分子に1つ以上含まれていればよい。上記(SiOにおいて、nは、重合度を表すが、該重合度は、主鎖骨格の重合度を表し、イミド結合を有する有機骨格は、必ずしもn個存在していなくてもよい。言い換えれば、(SiOの1つの単位に必ず1つのイミド結合を有する有機骨格が存在していなくてもよい。また、イミド結合を有する有機骨格は、1分子中に1つ以上含まれていればよいが、複数含まれる場合、上述したように、1つのケイ素原子に2以上のイミド結合を有する有機骨格が結合していてもよい。これらは、以下においても同様である。
上記主鎖骨格(SiOにおいて、mは、1以上、2未満の数であることが好ましい。より好ましくはm=1.5〜1.8である。
上記nは、重合度を表し、1〜5000であることが好ましい。より好ましくは1〜2000であり、更に好ましくは1〜1000であり、特に好ましくは1〜200である。
上記nが2である場合のシラン化合物としては、ケイ素原子にイミド結合を有する有機骨格(X)が少なくとも1個結合してなる構成単位(以下、「構成単位(I)」とも称す)が2つ含まれる形態と、該構成単位(I)が1つしか含まれない形態が挙げられる。具体的には、下記式:
Figure 0006236222
(式中、AはY又はZであり、X、Y及びZは、各々上記と同様である。)等が好適であり、同一の構成単位(I)を2つ含むホモポリマーの形態と、異なる構成単位(I)を2つ含むホモポリマーの形態と、当該構成単位(I)を1つしか含まないコポリマーの形態(共縮合構造の形態)がある。
上記平均組成式(1)において、Xは、イミド結合を含む有機骨格を表すが、イミド結合を有することで、芳香族アミン化合物との相溶性が良好となる。このようなイミド結合を有する有機骨格が占める割合としては、シラン化合物に含まれるケイ素原子100モルに対して、20〜100モルであることが好ましい。より好ましくは50〜100モル、更に好ましくは70〜100モルである。
上記平均組成式(1)におけるXは、下記式(3)で表される構成単位であることが好適である。すなわち、本発明のシラン化合物は、上記平均組成式(1)中のXが、下記式(3):
Figure 0006236222
(式中、Rは、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数であり、yは、0又は1である。)で表される構成単位である、シラン化合物を含むことが好適である。このようなシラン化合物を含むことで、硬化物の耐熱性が更に向上されることになる。
上記式(3)で表される構成単位において、x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数である。また、yは、0又は1であり、0であることが好ましい。x+zとしては、0以上10以下の整数であればよいが、3〜7であることが好ましく、より好ましくは3〜5であり、特に好ましくは3である。
また上記式(3)中、Rは、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。すなわち、Rが芳香族化合物の環構造(芳香環)を有する基、複素環式化合物の環構造(複素環)を有する基及び脂環式化合物の環構造(脂環)を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることを表す。
上記Rとして具体的には、フェニレン基、ナフチリデン基、ノルボルネンの2価基、(アルキル)シクロヘキシレン基、シクロヘキセニル基等が好ましい。
なお、上記式(3)で表される構成単位は、Rがフェニレン基である場合には下記式(3−1)で表される構成単位となり、Rが(アルキル)シクロヘキシレン基である場合には下記式(3−2)で表される構成単位となり、Rがナフチリデン基である場合には下記式(3−3)で表される構成単位となり、Rがノルボルネンの2価基である場合には下記式(3−4)で表される構成単位となり、Rがシクロヘキセニル基である場合には下記式(3−5)で表される構成単位となる。
Figure 0006236222
上記式(3−1)〜(3−5)中、x、y及びzは、各々上記式(3)中のx、y及びzと同様である。
上記式(3−1)中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R〜Rとしては、全てが水素原子である形態が好ましい。
上記式(3−2)中、R〜R及びR6´〜R9´は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R〜R及びR6´〜R9´としては、R若しくはRがメチル基で残りの全てが水素原子である形態、又は、R〜R及びR6´〜R9´全てが水素原子である形態、又は、R〜R及びR6´〜R9´全てがフッ素原子である形態が好ましい。より好ましくは、R又はRがメチル基で残りの全てが水素原子である形態である。
上記式(3−3)中、R10〜R15は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R10〜R15としては、全てが水素原子である形態、又は、全てがフッ素原子である形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
上記式(3−4)中、R16〜R21は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R16〜R21としては、全てが水素原子である形態、全てがフッ素原子である形態、又は、全てが塩素原子である形態のいずれかの形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
上記式(3−5)中、R22〜R25、R22´及びR25´は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R22〜R25、R22´及びR25´としては、全てが水素原子である形態、全てがフッ素原子である形態、又は、全てが塩素原子である形態のいずれかの形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
上記式(3)で表される構成単位の中でも、下記式(3−6):
Figure 0006236222
(式中、R26は、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。)で表される構成単位であることが好適である。すなわち、本発明のシラン化合物は、上記平均組成式(1)中のXが上記式(3−6)で表される構成単位である、シラン化合物を含むことが好適である。なお、上記式(3−6)中のR26は、上記式(3)において説明したRと同様であることが好ましい。
上記シラン化合物の特に好ましい形態としては、R26がフェニレン基であるポリ(γ−フタロイミドプロピルシルセスキオキサン);R26がメチルシクロヘキシレン基であるポリ{γ−(へキサヒドロ−4−メチルフタルイミド)プロピルシルセスキオキサン};R26がナフチリデン基であるポリ{γ−(1,8−ナフタルイミド)プロピルシルセスキオキサン};R26がノルボルネンの2価基であるポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン};R26がシクロヘキセニル基であるポリ〔(cis−4−シクロヘキセン−1,2−イミド)プロピルシルセスキオキサン〕である。これらの化合物の構造は、H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSを測定して同定することができる。
上記シラン化合物を得る方法としては特に限定されないが、例えば、下記の製法(a)及び(b)等が挙げられる。
(a)上記シラン化合物におけるイミド結合を含む有機骨格Xに対応するアミド結合を有する有機骨格X´と、シロキサン結合とを有する平均組成式X´aYbZcSiOdで表される(シラン化合物からなる)中間体を、イミド化させる工程を含む製造方法。
(b)上記シラン化合物におけるイミド結合を含む有機骨格Xに対応するイミド結合を有する有機骨格が、ケイ素原子に結合し、かつ加水分解性基を有するシラン化合物からなる中間体を、加水分解・縮合させる工程を含む製造方法。
本発明のシアネートエステル系組成物において、上記シラン化合物は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる反応で得られたものであることが好ましい。この場合、シラン化合物を配合することによる硬化開始温度を下げる効果と、硬化物の耐熱性を上げる効果との両方が得られる。
上記アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は、中間体をイミド化させる工程及び/又は加水分解・縮合させる工程において触媒として用いることがより好ましい。更に好ましくは、中間体をイミド化させる工程及び加水分解・縮合させる工程において触媒として用いることである。なお、イミド化させる工程と、加水分解・縮合させる工程とは、同時におこなっても構わない。
このようなアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物は、シアネートエステル化合物に配合した際にシアネートエステル化合物に対して硬化促進作用を及ぼすことがないものである。なお、例えばシラン化合物を得るための反応において遷移金属化合物を触媒として用いた場合は、このようにして得たシラン化合物の生成物をシアネートエステル化合物に配合したときに、遷移金属化合物がごく微量(例えば、数ppmオーダーの量)残存するだけでシアネートエステル化合物の硬化触媒としても機能してしまうため、配合物にゲル化等が生じて組成物として用いるのが困難となる場合がある。このような遷移金属化合物は、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物にはゲル化を抑えつつ配合できる。このような観点から、上記シラン化合物が、遷移金属化合物を触媒として用いる反応で得られたものである場合は、本発明の組成物はエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物を含む硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
すなわち、上記シラン化合物がアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる反応で得られたものである場合は、シラン化合物を得るための反応で用いる触媒に起因するゲル化が生じないため、ゲル化を抑えることを目的としてエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物を配合しなくてもよい。エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物を配合しない本発明の組成物は、当該化合物が配合された本発明の熱硬化性樹脂組成物と比較して、得られる硬化物の耐熱性がより優れる。したがって、上記シラン化合物が、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる反応で得られたものである場合は、本発明の組成物はエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物を含まない組成物であることが好ましい。この場合は、例えば、本発明の組成物はエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物以外のマレイミド化合物等の硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物であってもよく、かかる硬化性樹脂組成物は本発明の好ましい形態の1つである。
またシラン化合物を得るための反応において上記アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる場合は、例えばアミン化合物を触媒として用いる場合に比べ、シロキサン結合の形成度がより高く、得られるシラン化合物の生成物中に残存するシラノールの量をより充分に低減することができる。シラノールがシアネートエステル化合物の硬化に影響を与えるため、このようにシラノール量を充分に低減することにより、シアネートエステル化合物を樹脂に配合した組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性及び機械的強度をより優れたものとすることができる。
上記アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物としては、例えば、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトネート錯体等が挙げられる。中でも、炭酸塩、フッ化物、アセチルアセトネート錯体が好ましい。これらアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物は、それぞれ、1種又は2種以上を用いることができる。
上記アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有割合は、適宜設定すればよいが、例えば、硬化性樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部とすることが好適である。より好ましくは0.05〜5重量部であり、更に好ましくは0.1〜3重量部である。
なお、本発明のシアネートエステル系組成物において、上記シラン化合物は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いない反応で得られたものであってもよい。例えば、遷移金属化合物及び/又はアミン化合物を触媒として用いる反応で得られたものであっても構わない。この場合も、本発明の作用効果を発揮することができる。
上記シラン化合物の分子量は、例えば、数平均分子量が100〜10000であることが好適である。10000を超える高分子化合物であると、シアネートエステル化合物とより充分に混じり合うことができないおそれがある。また、100未満であると、耐熱分解性等が充分とはならないおそれがある。より好ましくは500〜5000、更に好ましくは1000〜5000である。また、重量平均分子量は100〜10000であることが好適である。より好ましくは500〜5000、更に好ましくは1000〜5000である。
シラン化合物の分子量(数平均分子量及び重量平均分子量)は、例えば、後述する測定条件下、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
<分子量のGPC測定条件>
計測機器:東ソー社製「HLC−8220GPC」
カラム:東ソー社製「TSK−GEL SUPER HZM−N 6.0*150」×4本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
温度:40℃
検量線:ポリスチレン標準サンプル(東ソー社製)を用いて作成。
上記シアネートエステル系組成物におけるシラン化合物の含有量としては、シアネートエステル化合物とシラン化合物との合計量100質量%に対し、0.1〜30質量%であることが好適である。シラン化合物が0.1質量%未満であると、充分にシアネートエステル化合物の硬化を促進できないおそれがある。また、30質量%を超えると、硬化時にシラン化合物が析出するおそれがある。より好ましくは0.2〜28質量%、更に好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。また、シアネートエステル系組成物と硬化性樹脂とを含む硬化性樹脂組成物としたときの、シラン化合物の含有量としては、硬化性樹脂組成物の合計量100質量%に対し、0.1〜30質量%であることが好適である。より好ましくは0.2〜28質量%、更に好ましくは0.5〜25質量%である。
<シアネートエステル系組成物の製造方法>
本発明のシアネートエステル系組成物を得るには、例えば、脱溶媒し粉体にしたシラン化合物を、80〜100℃でシアネートエステル化合物に均一分散させることが好ましい。また、シラン化合物及び溶媒を含むシラン化合物溶液にエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物等の硬化性樹脂モノマーを溶解し、脱溶媒し、得られた混合物を、シアネートエステル化合物に溶解、分散させることで得ることもできる。
なお、揮発成分を含んでもよい用途に用いる場合は、脱溶媒工程を経なくてもよい。
上記製造方法において、シラン化合物溶液を構成する溶剤(溶媒、有機溶剤)としては、シラン化合物を溶解又は分散することができるものであれば特に限定されないが、例えば、エーテル結合、エステル結合及び窒素原子からなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の構造を有する化合物を含有してなる溶媒であることが好ましい。
上記エーテル結合を有する化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ペラトロール、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、ジオキサン、トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、シオネール、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、グリセリンエーテル、クラウンエーテル、メチラール、アセタール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が好適である。
上記エステル結合を有する化合物としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノブチリン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、酪酸エステル類、イソ酪酸エステル類、イソ吉草酸エステル類、ステアリン酸エステル類、安息香酸エステル類、ケイ皮酸エチル類、アビエチン酸エステル類、アジピン酸エステル類、γ−ブチロラクトン類、シュウ酸エステル類、マロン酸エステル類、マレイン酸エステル類、酒石酸エステル類、クエン酸エステル類、セバシン酸エステル類、フタル酸エステル類、二酢酸エチレン類等が好適である。
上記窒素原子を含有してなる化合物としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、α−トルニトリル、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム等が好適である。
上記エーテル結合、エステル結合及び窒素原子からなる群より選ばれた構造を複数有する化合物としては、例えば、N−エチルモルホリン、N−フェニルモルホリン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。これらの化合物のうち、1種又は2種以上を使用することができる。
上記溶剤の使用量としては、シラン化合物及び溶剤の総量100質量%に対し、5〜70質量%であることが好適である。より好ましくは10〜60質量%であり、更に好ましくは10〜50質量%である。
上記製造方法において、シラン化合物溶液にシアネートエステル化合物を溶解する方法や溶剤を脱揮する方法については特に限定されず、通常の手法で行えばよい。また、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
本発明のシアネートエステル系組成物は、上述した構成よりなるので、硬化性に優れ、硬化時の発泡等が抑制されることから成型性に優れたものである。また、このようなシアネートエステル系組成物を用いれば、ガラス転移温度が高く、かつ高温環境下に晒された後においても各種物性の経時変化が充分に小さく、安定して物性を発現できる硬化物を、成型性よく与えることができる。そのため、本発明のシアネートエステル系組成物を用いれば、電機・電子部品や自動車部品、機械部品等の各種用途に極めて有用な高性能の封止材等を好適に得ることが可能になる。すなわち、上記シアネートエステル系組成物は、封止材用の組成物であることが好適であり、このような形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
また本発明では、シアネートエステル系組成物におけるシラン化合物を、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる反応で得ることで、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物を用いなくても、シアネートエステル系組成物のゲル化を充分に防止することができる。このようなエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物を含まない本発明のシアネートエステル系組成物は、該組成物から得られる硬化物の機械的強度により優れるとともに、その耐熱性を際立って優れたものとすることができる。このような本発明のシアネートエステル系組成物を用いれば、例えば、250℃以上の温度条件下で使用される場合がある、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等のワイドギャップ半導体材料を含む電力用半導体装置用の封止材を特に好適に得ることができる。
〔硬化性樹脂組成物〕
本発明はまた、上述した本発明のシアネートエステル系組成物及び硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物でもある。このような硬化性樹脂組成物に含有される各成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。また、これらを必須とする限り、その他の成分を適宜含むこともできる。その他の成分については、後述するとおりである。
<硬化性樹脂>
上記硬化性樹脂としては、上述したシアネートエステル化合物及びシラン化合物と相溶し得るものを、適宜、1種又は2種以上を使用することができる。例えば、エポキシ樹脂(エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物とも称す)、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の他、ビスマレイミド樹脂(ビスマレイミド化合物とも称す)、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等の高耐熱性硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、シアネートエステル系組成物との反応性の観点からは、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物や、ビスマレイミド化合物を用いることが好適である。より好ましくは、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物である。また、遷移金属化合物等に起因する硬化性樹脂組成物のゲル化を防止する必要がある場合は、これを防止する観点からも、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物がより好ましい。一方、硬化性樹脂組成物のゲル化を防止する必要が特に無い場合は、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の耐熱性を更に向上する観点からは、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物を用いず、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物以外の硬化性樹脂を用いることが好適である。
ここで、上記の高耐熱性硬化性樹脂を用いた場合には、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等のワイドギャップ半導体材料を含み、高温の動作上限温度を有する半導体装置の封止材等に特に好適な硬化物を得ることができる。例えば、ビスマレイミド樹脂を用いた場合には、特にシラン化合物が末端二重結合を有するものである場合に、ビスマレイミド樹脂とシラン化合物との間で架橋構造が形成され、通常の硬化性樹脂の効果による架橋構造との相互網目構造が形成されるため、硬化物の耐久性、耐熱性等の特性がより一層向上される。
上記エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物(エポキシ樹脂)としては、エポキシ基及びグリシジル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を、分子内に1個以上含む化合物であれば特に限定されず、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;該エポキシ樹脂を、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)と更に付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール類(フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、スフェノールS等)と、ホルムアルデヒド、アセトアルテヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジシクロペンタジエン、テルペン、クマリン、パラキシリレングリコールジメチルエーテル、ジクロロパラキシリレン、ビスヒドロキシメチルビフェニル等とを縮合反応させて得られる多価フェノール類を、更にエピハロヒドリンと縮合反応することにより得られるノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂;該芳香族結晶性エポキシ樹脂に、更に、上記ビスフェノール類や、テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等を付加反応させることにより得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂の高分子量体;トリスフェノール型エポキシ樹脂;上記ビスフェノール類、芳香族骨格を水素化した脂環式グリコール類(テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等)、又は、単/多糖類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PEG600等のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等)と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られる脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;該脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノール類と更に付加反応させることにより得られる高分子量脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル3′,4′−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等のエポキシシクロへキサン骨格を有するエポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸等と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ヒダントインや、シアヌル酸、メラミン、ベンゾグアナミン等と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られる室温で固形の3級アミン含有グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;等。
これらのエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物の中でも、芳香族部位を持つグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適である。また、より硬化性を高める観点からは、エポキシ基又はグリシジル基を、1分子内に2個以上含む化合物(多官能エポキシ化合物とも称す)を用いることが好適である。
上記硬化性樹脂がエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物を含む場合、本発明の硬化性樹脂組成物におけるエポキシ当量は、80〜400g/molであることが好適である。より好ましくは90〜300g/mol、更に好ましくは100〜200g/molである。
上記ビスマレイミド化合物(ビスマレイミド樹脂)としては、分子内に2個以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ビスマレイミドとアルデヒド化合物との共縮合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
上記ビスマレイミド化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N’−p,p’−ジフェニルジメチルシリルビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−メチレンビス(3−クロロ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’−ジメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’−m−キシレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。なかでも、上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアルデヒド等が挙げられる。
上記ビスマレイミド化合物はまた、下記一般式(5):
Figure 0006236222
(式中、R27は、下記式:
Figure 0006236222
で表される2価の基を表す。Qは、2つの芳香環に直結する基であり、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、6フッ素化されたイソプロピリデン基、カルボニル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基及びオキシド基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。)で表されるビスマレイミド化合物であってもよい。
上記一般式(5)で表されるビスマレイミド化合物として具体的には、例えば、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ポリフェニルメタンマレイミド、下記一般式:
Figure 0006236222
(式中、Qは、置換基があってもよい芳香環からなる2価の基を表す。nは、繰り返し数を表し、平均で0〜10の数である。)で表される化合物等が好適である。上記Qとして具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の2価の基(フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチリデン基等)が好ましい。
上記硬化性樹脂はまた、重量平均分子量が150〜20000であるものが好適である。すなわち硬化反応に供する前の硬化性樹脂の重量平均分子量が150〜20000であることが好適である。分子量が小さすぎると揮発するおそれがあり、分子量が大きすぎると高粘度化により金型等への注入が困難となる。より好ましくは180〜15000、更に好ましくは200〜10000である。
硬化性樹脂の重量平均分子量は、例えば、上述した測定条件の下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
上記硬化性樹脂組成物における硬化性樹脂の含有割合としては、シアネートエステル系組成物を構成するシラン化合物とシアネートエステル化合物との合計量100重量部に対し、5〜500重量部とすることが好適である。より好ましくは10〜200重量部、更に好ましくは15〜100重量部である。
<その他の成分>
上記硬化性樹脂組成物はまた、必要に応じて、上述したシアネートエステル系組成物及び硬化性樹脂以外のその他の成分を含有していてもよい。例えば、硬化剤;硬化促進剤;無機充填材;有機溶剤や希釈剤等の揮発成分;難燃剤;強化材;カップリング剤;応力緩和剤;離型剤;安定剤;着色剤;可塑剤;可とう化剤;各種ゴム状物;光感光剤;顔料;等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化剤としては特に限定されず、通常使用されているものを1種又は2種以上使用すればよい。例えば、酸無水物類、多価フェノール類、アミン類等が挙げられる。中でも、酸無水物類、多価フェノール類及び/又はアミン類を用いることが好ましい。これにより、硬化性樹脂組成物がより充分に硬化され、耐熱性等の各種物性により一層優れる硬化物を与えることが可能になる。
上記酸無水物類としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ドデシル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、無水ハイミック酸(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)、無水メチルハイミック酸、メチルナジック酸無水物(メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)、無水クロレンディック酸、ジフェン酸無水物、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロぺニル)−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2、3−ジカルボン酸無水物等の一官能性酸無水物;ピロメリット酸二無水物、マレイン化アロオシメン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラビスベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、(3、4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビシクロ〔2.2.2〕オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の二官能性酸無水物;β,γ−無水アコニット酸、無水グリコール酸、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物等の遊離酸を有する酸無水物;等が挙げられる。
上記多価フェノール類としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェニレン骨格、ビフェニレン骨格又はナフチレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂、ビスフェノール化合物等が挙げられる。また、硬化性の観点から、多価フェノール類の水酸基当量は、例えば、90〜250g/eqであることが好適である。
上記多価フェノール類として好ましくは、構造中に、フェニレン骨格、ビフェニレン骨格又はナフチレン骨格を含むアラルキル基を有する化合物である。このような化合物を用いて得た硬化物は、高温環境下で低弾性率化され、かつフェノール性水酸基が少ないために低吸水化を実現することもでき、したがって、耐半田リフロー性をより向上することが可能になる。また、ナフチレン骨格を含有する化合物は、ガラス転移温度を高く、かつ線膨張係数を低くすることができるため、例えば当該硬化物を半導体装置に適用した場合に、低反り性をより充分に発揮することが可能になる。
上記多価フェノール類としてより好ましくは、下記一般式(6):
Figure 0006236222
(式中、R28は、フェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基を表す。−R29(OH)−は、ヒドロキシフェニレン基、1−ヒドロキシナフチレン基又は2−ヒドロキシナフチレン基を表す。R30及びR31は、各々、R28及びR29に導入される基であり、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。pの平均値は、1〜10の数であり、qは、0〜5の整数であり、rは、0〜5の整数である。)で表される化合物を含むものである。このような化合物は、多価フェノール類の総量100質量%に対して10質量%以上であることが好ましく、これによって、耐半田リフロー性及び低反り性をより一層発揮することができる。より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。
なお、−R29(OH)−がヒドロキシナフチレン基である場合には、上述したように、ガラス転移温度の上昇や線膨張係数の低下により、低反り性を向上させる効果が得られ、更に芳香族炭素を多く有するため、耐燃性の向上も実現することができる。
上記アミン類としては、第1級アミン又は第2級アミンを分子中に1又は2個以上有するものが好ましく、例えば、ジエチレントリアミン、トリエラレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン等の脂肪族アミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等の脂環式アミン;N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等のピペラジン型アミン;m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、ジアミノベンゼン、メチレンジアニリン、ビス(クロロアニリノ)メタン、オキシジアニリン、ビス(ヒドロキシアニリノ)メタン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル等の芳香族アミン;等が挙げられる。これらのアミン類の中でも、硬化物の強度やガラス転移温度を高める観点から、芳香族アミンが好適である。
上記硬化剤の含有割合は、硬化剤や硬化性樹脂組成物の種類等によって適宜設定すればよいが、例えば、硬化性樹脂100重量部に対し、2〜65重量部とすることが好適である。より好ましくは5〜60重量部、更に好ましくは10〜50重量部である。
上記硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7等の第3級アミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、トリブチルヘキサデシルホスフォニウムブロマイド、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物;アルミニウムやジルコニウム等の有機金属化合物;等の他、異環型アミン化合物、ホウ素錯化合物、有機アンモニウム塩、有機スルホニウム塩、有機過酸化物、これらの反応物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
ここで、本発明では、上述したシアネートエステル系組成物の構成を採ることで、硬化促進剤(硬化触媒)を必須に用いなくても硬化反応時の発泡を充分に抑制し、容易に硬化反応を行うことが可能である。したがって、硬化物中に金属成分が含まれないことが望まれる用途に適用する場合等には、金属成分を含む硬化促進剤(金属触媒)等の硬化触媒を使用しないことが好適である。
なお、硬化促進剤を含む場合、その含有割合は、例えば、硬化性樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部とすることが好適である。より好ましくは0.05〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部である。
上記無機充填材としては特に限定されず、通常の実装基板の封止材等で使用されるものを1種又は2種以上用いればよい。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、微粉シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、マグネシア等が挙げられる。
上記無機充填材の含有割合としては、硬化性樹脂組成物の総量100質量%に対し、50〜95質量%とすることが好適である。より好ましくは60〜93質量%、更に好ましくは70〜90質量%である。このように多量の無機充填材を用いることで、例えば、実装基板の封止材等を得るために用いた場合に、硬化後の基板の反り発生を充分に防ぐことが可能になる。
上記揮発成分としては特に限定されず、通常使用されるものを1種又は2種以上使用すればよい。例えば、上述した、エーテル結合、エステル結合及び窒素原子からなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の構造を有する化合物を含有してなる溶媒等が挙げられる。
ここで、本発明の硬化性樹脂組成物は、揮発成分を極力含まないことが望まれる用途、すなわち例えば、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、機械部品用途、電機・電子部品用途、自動車部品用途等に用いることができるが、この場合、上記硬化性樹脂組成物100質量%中の揮発成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは実質的に揮発成分を含まないことである。実質的に揮発成分を含まないとは、揮発成分の含有量が、組成物を溶解させることができる量未満であることを意味し、例えば、上記硬化性樹脂組成物100質量%中に1質量%以下であることが好適である。なお、印刷インク用途等のように、揮発成分を含んでもよい用途に用いる場合にあっては、上記硬化性樹脂組成物は揮発成分を含んでいてもよく、このような形態も本発明の好適な実施形態の1つである。
上記難燃剤としては特に限定されず、通常使用されるものを1種又は2種以上使用すればよいが、ノンハロゲン化合物やノンアンチモン化合物が好適である。例えば、リン酸エステル、酸化トリフェニルホスフィン、赤リン等のリン含有化合物;メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体、トリアジン環含有化合物等の窒素含有化合物;シクロホスファゼン等のリン及び窒素含有化合物;酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン亜鉛、スズ酸亜鉛等の亜鉛化合物;酸化鉄、酸化モリブデン等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ジシクロペンタジエニル鉄等の金属錯体化合物等が挙げられる。
上記難燃剤の含有割合は、例えば、硬化性樹脂100重量部に対し、2〜30重量部とすることが好適である。より好ましくは5〜20重量部である。
上記強化材としては特に限定されず、通常使用されるものを1種又は2種以上使用すればよい。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維等が挙げられ、これらの織布や不織布等を好適に用いることができる。
上記カップリング剤としては特に限定されず、通常使用されるものを1種又は2種以上使用すればよい。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
〔硬化性樹脂組成物の製造方法〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、シアネートエステル系組成物を構成するシアネートエステル化合物及びシラン化合物と、硬化性樹脂とを含む限り、その調製方法は特に限定されず、これらの成分を通常の手法で混合することにより得ることができる。例えば、上記シアネートエステル系組成物の製造方法にてシアネートエステル系組成物を得た後、これに硬化性樹脂及び必要に応じて配合されるその他の成分を同時又は順次添加し、適宜ミキサー等を用いて各成分が均一に分散するように混合した後、ニーダー、ロール、1軸押出混練機、2軸押出混練機等を用いて混練することによって得ることができる。その他、シラン化合物と硬化性樹脂の一部とを混合した後、これに硬化性樹脂の残りと、シアネートエステル化合物と、必要に応じて配合されるその他の成分とを同時又は順次添加し、適宜ミキサー等を用いて各成分が均一に分散するように混合した後、ニーダー、ロール、1軸押出混練機、2軸押出混練機等を用いて混練することによって得ることができる。
なお、混合及び混練工程では、必要に応じて加熱したり冷却したりしてもよい。
上記硬化性樹脂組成物は、成型方法によるが、トランスファーモールド成型等を行う場合には、150℃における粘度が0.01〜60Pa・sであることが好ましい。硬化性樹脂組成物がこのような適度な粘度を有するものであると、例えば、塗布する際のハンドリング性に優れたものとなる。より好ましくは0.02〜40Pa・sである。また、常温で注型する場合には、常温で液状であり、5〜1000Pa・sであることが好ましい。粘度が低すぎると無機充填剤が沈降するおそれがあり、粘度が高すぎると封止対象の凹凸に充填できないおそれがあるためである。より好ましくは10〜500Pa・sである。なお、上記硬化性樹脂組成物の175℃における粘度の好ましい範囲も、上述した150℃における粘度の好ましい範囲と同様である。
硬化性樹脂組成物の粘度は、例えば、E型粘度計(ブルックフィールド社製)やフローテスター CFT−500D(株式会社島津製作所製)を用いて、測定することができる。
〔硬化物〕
本発明のシアネートエステル系組成物又は硬化性樹脂組成物は、例えば、熱硬化することにより、硬化物とすることができる。硬化温度は、例えば、70〜250℃が好適であり、より好ましくは100〜220℃である。本発明では、シアネートエステル系組成物を上記構成とすることで、金属触媒を使用する場合はもちろんのこと、使用しない場合にも、硬化反応時の発泡が抑制され、硬化温度を低くすることが可能である。また、硬化時間は1〜15時間が好適であり、より好ましくは2〜10時間である。
なお、熱硬化反応は2段階以上で行ってもよい。
上記硬化反応には、必要に応じて硬化触媒(硬化促進剤)を用いてもよいが、本発明では硬化触媒を必須に用いなくても硬化反応時の発泡を充分に抑制し、容易に硬化反応を行うことができる。
上記硬化物の形状は、例えば、異形品等の成形体、フィルム、シート、ペレット等が挙げられる。このように本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなる硬化物(本発明の硬化性樹脂組成物から形成される硬化物)もまた、本発明の好ましい形態の1つである。
上記硬化物は、動的粘弾性測定装置(DMA)によるガラス転移温度が200℃以上であることが好適である。これにより、例えば、実装基板の封止材等のエレクトロニクス実装材料により好適に利用することができる。より好ましくは210℃以上、更に好ましくは220℃以上、特に好ましくは230℃以上である。
上記硬化物は、本発明のシアネートエステル系組成物又は硬化性樹脂組成物から得られることに起因して、ガラス転移温度が高く、かつ機械的強度に優れ、高温高圧、多湿等の過酷な環境下に晒された後においても各種物性の経時変化が充分に小さく各種物性を安定して発現できることから、例えば、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品用途、電気・電子部品用途、自動車部品用途、印刷インク用途等の種々様々な用途に有用なものである。具体的には、封止材等のエレクトロニクス実装材料、ポッティング材、アンダーフィル材、導電性ペースト、絶縁ペースト、ダイポンド材、印刷インク等に好ましく使用される。中でも、エレクトロニクス実装材料に用いることがより好ましく、特に、実装基板の封止材に極めて有用である。このように上記硬化性樹脂組成物を用いてなる封止材もまた、本発明の1つである。封止材として特に好ましくは、半導体封止材である。また、上記硬化物を用いて構成された半導体装置又はプリント配線板もまた、本発明の好ましい形態に含まれる。上記封止材を用いてなる半導体装置は、本発明の1つでもある。
上記封止材は、例えば、半導体部品(素子)を封止する際に使用される部材であるが、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じ、例えば、硬化促進剤、安定剤、離型剤、カップリング剤、着色剤、可塑剤、可とう化剤、各種ゴム状物、光感光剤、充填材、難燃剤、顔料等を含むことができる。また、上記封止材は、揮発成分を多量に含むと不具合を生じるおそれがあるため、揮発成分を含まないことが望まれており、例えば、上記封止材100質量%中の揮発成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは実質的に揮発成分を含まないことである。
上記封止材を用いてなる半導体装置として具体的には、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子;コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子;等の素子を搭載し、必要な箇所を本発明の硬化性樹脂組成物で封止した形態が挙げられる。なお、本発明の効果を顕著なものとすることができる点で、上記半導体装置は、例えば、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等のワイドギャップ半導体材料を含み、高温の動作上限温度を有する半導体装置が好適なものとして挙げられる。上記硬化性樹脂組成物により素子を封止する方法としては、例えば、低圧トランスファー成形法や、インジェクション成形法、圧縮成形法等の通常の手法を用いればよい。
また上記硬化物を用いて構成されたプリント配線板としては、例えば、コンポジットタイプ積層板(片面、両面、多層等)、ガラスエポキシタイプ積層板、アラミドエポキシタイプ積層板、金属ベース配線基板、ビルドアップタイプ配線基板等が挙げられる。これらは、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を強化材に含浸又は基材に塗布し、適宜乾燥させた後、硬化させることにより得ることができる。この場合の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤(硬化触媒)や難燃剤、充填剤等を更に含むことが好適である。
本発明のシアネートエステル系組成物は、上述のような構成であるので、充分な耐熱性を有するとともに、機械的強度にも優れ、過酷な環境下に晒された後においても各種物性の経時変化が充分に小さく各種物性を安定して発現する硬化物を、容易かつ成型性よく与えることができるものである。そのため、実装基板の封止材等の材料として有用なものである。このようなシアネートエステル系組成物を用いれば、電機・電子部品や自動車部品、機械部品等の用途で極めて有用な高性能の封止材等を好適に得ることが可能になり、特にこのような封止材を用いてなる半導体装置は、電機・電子、自動車、機械分野で極めて有用なものとなる。
試験例1について、DSCにより硬化温度を測定したグラフである。 試験例2について、DSCにより硬化温度を測定したグラフである。 試験例4について、DSCにより硬化温度を測定したグラフである。 試験例5について、DSCにより硬化温度を測定したグラフである。 試験例4及び試験例2の硬化物について、TG−DTAにより測定された熱分解温度を比較したグラフである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
なお、GPCは、上述した測定条件の下で行った。また、表2に示した硬化物の評価は、下記の測定方法に従って行った。
<DSC測定方法>
示差走査熱量測定装置(EXSTAR6000、セイコーインスツル社製)を用い、温度領域50℃〜300℃、昇温速度5℃/分、窒素雰囲気下で測定を行った。
<線膨張率(α1、α2)及びガラス転移温度(Tg)測定方法>
熱機械分析装置(TMA4000SA、ブルカー・エイエックスエス社製)を用い、温度領域50℃〜300℃、昇温速度5℃/分、窒素雰囲気下で測定を行った。
<弾性率、曲げ応力の測定方法>
万能試験機(本体型式55R1185、インストロン社製)を用いた。厚さ4mm、幅1mmの試験片を作成し、幅6.4mmの支持棒で支え、中央に2mm/分で荷重を加え、3点曲げ試験を行った。
<熱分解温度の測定方法>
熱重量測定装置(TG−DTA2000SA、ブルカー・エイエックスエス社製)を用い、温度領域50℃〜450℃、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下で測定を行った。
表3に示した組成物の評価は、下記の測定方法に従って行った。
合成例1
シラン化合物(ポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン})溶液の合成
撹拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた300mL4つ口フラスコに、予めモレキュラーシーブで乾燥したジグライム35.1gと、3−アミノプロピルトリメトキシシラン30.8gを投入し、撹拌しながら乾燥窒素流通下で100℃に昇温して系内の水分を除去した。次に100℃のまま反応液温度を維持しながら5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物28.2gを30分かけで4分割投入した。投入終了後9時間で5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が完全に消費されているのを高速液体クロマトグラフィで確認した。
反応生成物をサンプリングしてH−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSを測定し、下記化学式(i):
Figure 0006236222
で表される化合物を含有することを確認した。
H−NMR:0.40(t、2H)、1.35(m、2H)、1.46(dd、2H)、3.08−3.17(m、1H)、3.20(dd、2H)、3.28−3.37(m、1H)、3.40(s、9H)、3.42(m、1H)、3.48(m、1H)、5.91(s、2H)、6.22(bs、1H)、11.0(bs、1H)
13C−NMR:8.1、21.2、40.6、44.9、45.8、50.3、50.6、52.3、134.5、177.8、178.1
MALDI−TOF−MS:350(M+Li)
続いて脱イオン水9.3gを一括投入し冷却管で副生メタノールの還流が掛かるように昇温し、95℃で10時間保持したのち、冷却管をパーシャルコンデンサーに付け替えて再び昇温を開始し、副生メタノール及び縮合水を回収しながら3時間かけて反応液温度を120℃に到達させた。120℃到達時にピリジン1.4gを投入してそのまま昇温を開始し、縮合水を回収しながら3時開かけて160℃に到達、同温度で2時間保持して室温まで冷却した。
反応生成物は不揮発分58.2%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定したところ数平均分子量2340、重量平均分子量2570であった。H−NMR、13C−NMRを測定し、下記化学式(ii):
Figure 0006236222
で表される化合物を含有することを確認した。
H−NMR:0.25−0.45(bs、2H)、1.2−1.45(bs、2H)、1.47(dd、2H)、3.0−3.2(bs、4H)、3.4−3.6(bs、2H)、5.8−6.0(bs、2H)
13C−NMR:9.7、21.5、40.4、44.9、45.7、50.1、134.2、178.0
なお、上記化学式(ii)中のnは、括弧内のシロキサン結合が繰り返されていることを示す。また、上記合成例で得た化合物の化学式は、合成した化合物の主たる組成を示すものである。後述する合成例において示す化学式中のn、該合成例で得た化合物の化学式においても同様である。
合成例2
コンパウンド(シルセスキオキサン分散エポキシ樹脂)の合成
ビスフェノールA型エポキシ樹脂YL980(ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量180〜190)100g、及び、合成例1で得た反応生成物であるシラン化合物溶液(不揮発分58.2%)687gを、セパラブルフラスコ中、減圧条件下で、150℃、3時間撹拌し、ジグライムを回収し、コンパウンドを得た。冷却後、乳鉢にて粉砕し、以下の試験例に使用した。
以下の試験例では、このコンパウンドとYL980とを混合することで、シラン化合物(シルセスキオキサン)の含有量の調整を行っている。
試験例1〜5
<樹脂組成物の硬化試験>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂YL980(ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量180〜190)、合成例2で得たコンパウンド、N−オクチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂BADCy(登録商標)(ロンザ社製、シアネートエステル当量139)を、表1の配合量(質量%)となるように適宜配合し、90℃にて30分撹拌し、溶解したことを目視で確認した後、すぐに直径5cmのアルミカップへ6g注入した。その後、イナートオーブンを使用し、150℃で1時間、180℃で1時間、200℃で5時間、窒素雰囲気下で硬化を行った。
シラン化合物(シルセスキオキサン)を2%(試験例1)又は10%(試験例2)配合した際には、透明な外観の硬化物を得ることができたが、シラン化合物(シルセスキオキサン)を添加しなかった場合(試験例4〜5)には、硬化が完了しなかった。また、シルセスキオキサンを30%配合した場合(試験例3)には、硬化中にシルセスキオキサンが析出し、懸濁した硬化物となった。
Figure 0006236222
また試験例1、2、4及び5については、DSCにより硬化温度を測定した。結果を図1〜4に各々示す。
試験例6〜7
<フィラー添加時の物性>
表2に示す組成をプラスチック容器中で振り混ぜ、得られた混合物を3本ロールにて80℃で混錬し、冷却後、粉砕機にて粉砕した。得られた粉体を175℃、5MPa、減圧条件下にて10分間圧縮成型した。試験例6では一次硬化物を得ることができたが、シラン化合物(シルセスキオキサン)を配合しなかった試験例7においては、硬化が完了しなかった。試験例6については引き続き、イナートオーブンを使用し、150℃で1時間、180℃で1時間、200℃で5時間、窒素雰囲気下で硬化を行い、二次硬化物を得た。評価結果を表2に示す。
Figure 0006236222
上述した試験例1〜5の結果より、シアネートエステル化合物とシラン化合物とを併用すると、通常使用される金属触媒を用いていないにも関わらず、硬化温度が低下し、硬化成型を行うことができたのに対し、シラン化合物を使用しなかった場合(試験例4)や、シラン化合物に代えて、シロキサン結合を有さず、かつイミド結合を有する化合物を用いた場合(試験例5)には、硬化反応自体が完了しなかったことが分かる。また、シラン化合物の熱分解温度への影響を確認するため、試験例4で得られた未硬化物を更に250℃、5時間、窒素雰囲気下で硬化を行い硬化物を得た後、試験例2で得られた硬化物と共にTG−DTA(熱重量−示差熱)を測定し、比較した。その結果、シラン化合物の配合による熱分解開始温度への影響はほとんどなく、シラン化合物配合時には熱分解時の重量減少が抑制されることが分かった。TG−DTAの結果を図5に示す。
更に試験例6〜7の結果より、シアネートエステル化合物とシラン化合物とを併用した場合には、機械的強度やガラス転移温度、線膨張率(α1、α2)が、特に封止剤用途に好適な範囲内となる硬化物を得ることができることが分かった。
合成例3
ポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン}の合成
撹拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた500mL4つ口フラスコに、予めモレキュラーシーブで乾燥したジグライム87.9gと、3−アミノプロピルトリメトキシシラン142.5gを投入し、撹拌しながら乾燥窒素流通下で100℃に昇温して系内の水分を除去した。次に100℃のまま反応液温度を維持しながら5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物131.8gを30分かけて4分割投入した。投入終了後9時間で5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が完全に消費されているのを高速液体クロマトグラフィで確認した。
続いて脱イオン水42.9gを一括投入し冷却管で副生メタノールの還流が掛かるように昇温し、95℃で10時間保持したのち、冷却管をパーシャルコンデンサーに付け替えて再び昇温を開始し、副生メタノールおよび縮合水を回収しながら3時間かけて反応液温度を120℃に到達させた。120℃到達時に炭酸セシウム0.65gを投入してそのまま昇温を開始し、縮合水を回収しながら3時間かけて160℃に到達、同温度で2時間保持して室温まで冷却することで反応生成物Aを得た。
反応生成物Aは不揮発分70.0%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定したところ数平均分子量2340、重量平均分子量2570であった。H−NMR、13C−NMRを測定し、上記化学式(ii)の化合物を含有することを確認した。
H−NMR:0.25−0.45(bs、2H)、1.2−1.45(bs、2H)、1.47(dd、2H)、3.0−3.2(bs、4H)、3.4―3.6(bs、2H)、5.8−6.0(bs、2H)
13C−NMR:9.7、21.5、40.4、44.9、45.7、50.1、134.2、178.0
合成例4
ポリ〔(cis−4−シクロヘキセン−1,2−イミド)プロピルシルセスキオキサン〕の合成
合成例3の5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物131.8gの代わりにcis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物122.2gを用いる以外はすべて合成例3と同じ操作により反応生成物Bを得た。反応生成物Bは不揮発分70.0%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定したところ数平均分子量2041、重量平均分子量2838であった。H−NMR、13C−NMRを測定し、下記化学式(iii):
Figure 0006236222
で表される化合物を含有することを確認した。
H−NMR:0.25−0.55(bs、2H)、1.3−1.5(bs、2H)、2.0−2.5(dd、4H)、2.9−3.1(bs、2H)、3.2−3.35(bs、2H)、5.65−5.8(bs、2H)
13C−NMR:10.0、21.0、23.8、39.0、41.1、127.8、180.5
合成例5
ポリ(γ−フタロイミドプロピルシルセスキオキサン)の合成
合成例3の5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物131.8gの代わりに無水フタル酸118.9gを用いる以外はすべて合成例3と同じ操作により反応生成物Cを得た。反応生成物Cは不揮発分70.0%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定したところ数平均分子量2310、重量平均分子量2830であった。H−NMR、13C−NMRを測定し、下記化学式(iv):
Figure 0006236222
で表される化合物を含有することを確認した。
H−NMR:0.3−0.9(bs、2H)、1.5−1.8(bs、2H)、3.4−3.6(bs、2H)、7.1−7.7(bs、4H)
13C−NMR:10.0、22.1、40.4、123.1、132.3、133.7、168.1
合成例6
ポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン}の合成
合成例3の炭酸セシウム0.65gの代わりにフッ化カリウム0.23gを用いる以外はすべて合成例3と同じ操作により反応生成物Dを得た。反応生成物Dは不揮発分70.0%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定、H−NMR測定、13C−NMR測定し、反応生成物Aと同等品が得られたことを確認した。
合成例7
ポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン}の合成
合成例3の炭酸セシウム0.65gの代わりにマグネシウム(II)アセチルアセトネート0.88gを用いる以外はすべて合成例3と同じ操作により反応生成物Eを得た。反応生成物Eは不揮発分70.0%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定、H−NMR測定、13C−NMR測定し、反応生成物Aと同等品が得られたことを確認した。
合成例8
ポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン}の合成
合成例3の炭酸セシウム0.65gの代わりにチタン(IV)テトラ−n−ブトキシド1.35gを用いる以外はすべて合成例3と同じ操作により反応生成物Fを得た。反応生成物Fは不揮発分70.0%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定、H−NMR測定、13C−NMR測定し、反応生成物Aと同等品が得られたことを確認した。
合成例9
ポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン}の合成
合成例3の炭酸セシウム0.65gの代わりにピリジン0.63gを用いる以外はすべて合成例3と同じ操作により反応生成物Gを得た。反応生成物Gは不揮発分70.0%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定、H−NMR測定、13C−NMR測定し、反応生成物Aと同等品が得られたことを確認した。
試験例8〜14
<組成物の調製>
撹拌装置、温度センサー、パーシャルコンデンサー、及び、捕集器を備え付けた500mL4つ口フラスコに反応生成物A〜Gのうちのいずれか1種類293gとシアネートエステル化合物2種のうちのいずれか(製品名「Primaset(登録商標) PT−15」又は「Primaset BADCy」、いずれもロンザ社製)207gを仕込み、撹拌しながらフラスコ内温を120℃に保持し、Nガスを吹き込みながらフラスコ内圧を1.5kPa以下にしてパーシャルコンデンサーを通じて反応生成物A〜Gに含有されるジグライムを3時間かけて捕集器に回収することで、組成物の調製を試みた。ここで、得られた組成物の性状は、表3に示した通りであった。表3中、「150℃溶融粘度(Pa・s)」は、E型粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて、150℃で測定を行った。
Figure 0006236222
試験例15〜21
<耐熱性試験>
上記樹脂組成物1〜5、7及びシアネートエステル化合物(Primaset PT−15)のうちのいずれか1種類100質量%に対してビスマレイミド化合物(製品名「BMI−2300」、大和化成工業社製)30質量%、2−エチル−4−メチルイミダゾール1質量%を溶融混合し、ガラス製型枠に注ぎ込んで150℃×3時間及び250℃×3時間の条件で硬化させることにより厚さ4mmの樹脂板を作製した。得られた樹脂板を10mm×50mm×4mmの大きさに切削し、熱循環乾燥オーブンを用いて空気中、250℃の雰囲気に500時間放置し、放置前後での重量変化を確認した。熱分解開始温度はTG−DTAを用いて空気流通下、昇温速度10℃/minで重量減少を追跡し5%重量減少温度を熱分解開始温度とした。試験結果を表4に示す。
Figure 0006236222
<半導体封止材性能評価>
樹脂組成物1、2を用いて下記表5の組成で半導体封止材を調製し性能評価を行った。比較としてシアネートエステル化合物(製品名「PT−15」「PT−30」、いずれもロンザ社製)を用いることを試みたが、室温での性状は、PT−15がシャーベット状化合物でPT−30が高粘度液体であることから、封止材に用いる粉体原料への均一な配合ができず封止材を調製できなかった。
封止材の成型品は圧縮成型機を用いて作製した。成型機に設置した金型を175℃に調温し、型内に封止材組成物を仕込んだのち1kPaに減圧しながら、0.5MPaで圧縮成型した。成型時間は300秒で、型から取り外した後、イナートオーブンに移送して窒素流通下、280℃、3時間の条件でポストキュアした。
ゲル化時間及び溶融粘度は175℃の条件でフローテスター CFT−500D(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、熱的性質は熱機械分析装置(TMA)、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した。機械特性はインストロン社製の試験機を用いて測定した。
表5の「組成」の項目中、「ビスマレイミド化合物」は、製品名「BMI−2300」(大和化成工業社製)を意味する。「ホスファゼン化合物」は、製品名「SPE−100」(大塚化学社製)を意味する。「カーボンブラック」は、製品名「MA600」(三菱化学社製)を意味する。「含窒素化合物1」は、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール(試薬)を意味する。「含窒素化合物2」は、製品名「アデカスタブCDA−1M」(ADEKA社製)を意味する。「硬化促進剤」は、製品名「1B2PZ」(四国化成社製)を意味する。「カップリング剤」は、製品名「KBM−403」(信越化学工業社製)を意味する。「カルナバワックス」は、製品名「TOWAX−132」(東亜化成社製)を意味する。「溶融シリカ」は、製品名「S−270」(マイクロン社製)を意味する。「無機難燃剤」は、製品名「Z−10」(タテホ化学工業社製)を意味する。「シリコーン微粒子」は、製品名「X−52−7030」(信越化学工業社製)を意味する。また、「組成」の項目における数値は、重量部を意味する。
Figure 0006236222
上述した試験例8〜14の結果より、以下のことが分かった。すなわち、試験例8〜12においては、シラン化合物を、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いて得られたものとすると、エポキシ樹脂を配合していないにも関わらず、組成物のゲル化を抑制することができ、シラン化合物の分散体が得られた。また、シラン化合物を、アミン化合物であるピリジンを触媒として用いて得られたものとした試験例14においても、同様に組成物のゲル化を抑制することができ、シラン化合物の分散体が得られた。一方、シラン化合物を、遷移金属化合物であるチタン(IV)テトラ−n−ブトキシドを触媒として用いて得られたものとした試験例13では、組成物のゲル化が生じ、150℃溶融粘度を測定することができなかった。なお、試験例13の組成物にエポキシ樹脂を更に配合することにより、このようなゲル化を抑制することができる。
更に、上述した試験例15〜21の結果より、以下のことが分かった。すなわち、試験例15〜19のように、シラン化合物を、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いて得られたものとし、組成物中にエポキシ樹脂を配合しなかったところ、重量減少が5%となる温度である熱分解開始温度が421〜438℃と高いものとなった。このような試験例15〜19の熱分解開始温度は、例えば図5に示した試験例2のグラフと比較して、重量減少が5%となる温度が高温側に大きくシフトしている。また、上記重量減少率も0.70〜0.87%と低いものとなり、きわめて高レベルの耐熱性を発揮できるものであった。また、シラン化合物を、アミン化合物であるピリジンを触媒として用いて得られたものとした試験例20では、熱分解開始温度は398℃、重量減少率は1.8%であり、良好な耐熱性を発揮できるものであった。また、試験例21は、シアネートエステル化合物(Primaset PT−15)を単独で用いたものであるが、重量減少率が5.3%と高く、耐熱性が不充分であった。
また上述した試験例22〜24の結果より、以下のことが分かった。試験例22〜24の封止材は、優れた耐熱性及び機械的強度を発揮できるものであった。中でも、シラン化合物を触媒としてアルカリ金属化合物を用いて得た組成物から封止材を調製した試験例22、23は、シラン化合物を、アミン化合物を触媒として用いて得た組成物から封止材を調製した試験例24と比較して、曲げ強度(MPa)及び撓み率(%)の機械的強度がより優れるものとなった。
試験例8〜20、22〜24に示した組成物でも、上述した試験例1、2、6等に示した組成物と同様に、上記シアネートエステル化合物とシラン化合物とを併用していることから、硬化温度を低温側にシフトでき、硬化物を容易かつ成型性よく与えることが可能である。
以上の試験例の結果を纏めると、本発明のシアネートエステル系組成物は、特定のシアネートエステル化合物及びシラン化合物を含むことにより、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂と配合されて、耐熱性に優れる硬化物を成型性よく与えることができるという本発明の効果を発揮できる。また、本発明のシアネートエステル系組成物又は硬化性樹脂組成物は、シラン化合物がアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる反応で得られたものとした場合は、エポキシ樹脂と配合されなくても、ゲル化を充分に抑制でき、エポキシ樹脂と配合されないことにより、該組成物を硬化して得られる硬化物がきわめて高レベルの耐熱性を発揮できる。また、該硬化物の機械的強度がより優れる。
すなわち、本発明のシアネートエステル系組成物又は硬化性樹脂組成物であって、シラン化合物がアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる反応で得られたものであり、かつエポキシ樹脂を含有しない組成物を用いるか、又は、本発明のシアネートエステル系組成物と、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂とを含む硬化性樹脂組成物を用いることにより、耐熱性等の本発明の効果を充分に発揮できる封止材、該封止材を用いてなる半導体装置を好適に得ることが可能である。

Claims (6)

  1. シアネートエステル化合物及びシラン化合物を含むシアネートエステル系組成物であって、
    該シアネートエステル化合物は、1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有し、
    該シラン化合物は、シロキサン結合を有し、かつ下記平均組成式(1):
    SiO (1)
    (式中、Xは、同一又は異なって、イミド結合を含む有機骨格を表し、下記式(3)で表される構成単位である。Yは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子及びOR基からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。Rは、同一又は異なって、アルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表し、置換基を有していてもよい。Zは、同一又は異なって、イミド結合を含まない有機骨格を表す。aは0又は3以下の数、bは0又は3未満の数、cは0又は3未満の数、dは0でない2未満の数であり、a+b+c+2d=4である。)で表され、
    該シラン化合物の含有量は、シアネートエステル化合物とシラン化合物との合計量100質量%に対し、0.1〜30質量%である
    ことを特徴とするシアネートエステル系組成物。
    Figure 0006236222
    式中、Rは、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数であり、yは、0又は1である。
  2. シアネートエステル化合物及びシラン化合物を含むシアネートエステル系組成物の製造方法であって、
    該製造方法は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を触媒として用いる反応でシラン化合物を得る工程を含み、
    該シラン化合物は、シロキサン結合を有し、かつ下記平均組成式(1):
    SiO (1)
    (式中、Xは、同一又は異なって、イミド結合を含む有機骨格を表し、下記式(3)で表される構成単位である。Yは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子及びOR基からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。Rは、同一又は異なって、アルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表し、置換基を有していてもよい。Zは、同一又は異なって、イミド結合を含まない有機骨格を表す。aは0又は3以下の数、bは0又は3未満の数、cは0又は3未満の数、dは0でない2未満の数であり、a+b+c+2d=4である。)で表され、
    該シアネートエステル化合物は、1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有し、
    該シラン化合物の含有量は、シアネートエステル化合物とシラン化合物との合計量100質量%に対し、0.1〜30質量%である
    ことを特徴とするシアネートエステル系組成物の製造方法。
    Figure 0006236222
    式中、Rは、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数であり、yは、0又は1である。
  3. 封止材用であることを特徴とする請求項1に記載のシアネートエステル系組成物。
  4. 請求項1又は3に記載のシアネートエステル系組成物と、硬化性樹脂とを含む硬化性樹脂組成物であって、
    該硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、及び、ベンゾオキサジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項3に記載のシアネートエステル系組成物、又は、請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする封止材。
  6. 請求項5に記載の封止材を用いてなることを特徴とする半導体装置。
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