JPWO2011118591A1 - モールドの製造方法および微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は2010年3月25日に日本に出願された、特願2010−070281号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
(I)表面に微細凹凸構造が形成されたモールド本体を作製する工程。
(II)工程(I)の後、前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面を、前記表面に存在する官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する工程。
(III)工程(II)の後、前記モールド本体を加熱加湿下に置く工程。
(IV)前記工程(II)、工程(III)を2回以上繰り返す工程。
前記工程(I)の微細凹凸構造が形成されたモールドは、アルミニウム基材を陽極酸化し、その表面に2以上の細孔を有する微細凹凸構造を形成したものが好ましい。
(1)下記の工程(I)〜(IV)を有する、モールドの製造方法。
(I)表面に微細凹凸構造が形成されたモールド本体を作製する工程。
(II)工程(I)の後、前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面を、前記表面に存在する官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する工程。
(III)工程(II)の後、前記モールド本体を加熱加湿下に置く工程。
(IV)前記工程(II)、および工程(III)を2回以上繰り返す工程。
(2)前記官能基(B)が、加水分解性シリル基である、(1)に記載のモールドの製造方法。
(3)前記離型剤の官能基(B)が、加水分解性シリル基であり、かつパーフルオロポリエーテル構造を有する離型剤である、(1)または(2)記載のモールドの製造方法。
(4)前記工程(II)において、前記離型剤の濃度が0.06質量%以上0.15質量%以下である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
(5)前記工程(I)の微細凹凸構造が形成されたモールドが、アルミニウム基材を陽極酸化し、その表面に2個以上の細孔を有する微細凹凸構造を形成したものである(1)〜(4)のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
(6)前記細孔の平均間隔が、400nm以下である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
(7)前記細孔の平均間隔が、20nm以上400nm以下である、(6)に記載のモールドの製造方法。
(8)前記工程(I)が下記の工程(a)〜(f)を有し、
前記工程(II)が下記の工程(g)〜(j)を有し、
前記工程(III)が下記の工程(k)および/または(l)を有し、
前記工程(IV)が下記の工程(m)および/または(n)を有する、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
(a)アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)前記酸化皮膜を除去し、前記アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)前記工程(b)の後、前記アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)前記工程(c)の後、細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)前記工程(d)と前記工程(e)を繰り返し行い、2個以上の細孔を有する陽極酸化アルミナが前記アルミニウム基材の表面に形成されたモールド本体を得る工程。
(g)前記工程(f)の後、前記モールド本体を水洗する工程。
(h)前記工程(g)の後、前記モールド本体にエアーを吹き付け、前記モールド本体の表面に付着した不純物を除去する工程。
(i)前記工程(f)〜(h)の後、加水分解性シリル基を有するフッ素化合物をフッ素系溶媒で希釈した希釈溶液に、表面に水酸基が導入されたモールド本体を浸漬する工程。
(j)前記工程(i)の後、前記モールド本体を乾燥させる工程。
(k)工程(i)の後、前記モールド本体を加熱加湿下に置く工程。
(l)工程(k)の直後の前記モールド本体を、フッ素系溶媒で洗浄する工程。
(m)前記工程(i)〜前記工程(l)を1サイクルとし、前記サイクルを2回以上繰り返す工程。
(n)前記工程(m)の後、前記モールド本体を乾燥させる工程。
(9)(1)〜(8)のいずれか1項に記載のモールドの製造方法で得られたモールドの表面の微細凹凸構造を、物品本体の表面に転写することを含む、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法によれば、微細凹凸構造を表面に有する物品を生産性よく製造できる。
本発明のモールドの製造方法は、下記の工程(I)〜(IV)を有する方法である。
(I)表面に微細凹凸構造が形成されたモールド本体を作製する工程。
(II)工程(I)の後、前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面を、前記表面に存在する官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する工程。
(III)工程(II)の後、前記モールド本体を加熱加湿下に置く工程。
(IV)前記工程(II)、および工程(III)を2回以上繰り返す工程。
工程(I)においては、基材の表面に微細凹凸構造を形成してモールド本体を作製する。基材の材料としては、金属(表面に酸化皮膜が形成されたものを含む。)、石英、ガラス、樹脂、およびセラミックス等が挙げられる。基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、およびシート状等が挙げられる。
(a)アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)工程(b)の後、アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)工程(c)の後、細孔の径を拡大させる工程。
(e)工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)工程(d)と工程(e)を繰り返し行い、2個以上の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材の表面に形成されたモールド本体を得る工程。
図1に示すように、アルミニウム基材10を陽極酸化すると、細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。ここでアルミニウム基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、およびシート状等が挙げられる。
アルミニウム基材は、所定の形状に加工する際に用いた油が付着していることがあるため、あらかじめ脱脂処理されることが好ましい。また、アルミニウム基材は、表面状態を平滑にするために、電解研磨処理(エッチング処理)されることが好ましい。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、およびリン酸等が挙げられる。
図1に示すように、酸化皮膜14を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点16にすることで細孔の規則性を向上することができる。
図1に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材10を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
陽極酸化条件は、特に限定はないが、工程(a)と同様な条件または工程(a)より短い時間での陽極酸化を行う。
図1に示すように、細孔12の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
図1に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔12がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
図1に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と、工程(e)の陽極酸化を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成され、アルミニウム基材10の表面に陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))を有するモールド本体18が得られる。最後は工程(d)または工程(e)のいずれで終了してもよいが、工程(d)で終了することが好ましい。
細孔12間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔12間の平均間隔は、20nm以上が好ましい。
細孔12間の平均間隔の範囲は、20nm以上400nm以下が好ましく、50nm以上300nm以下がより好ましく、90nm以上250nm以下がさらに好ましい。
細孔12間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔12間の間隔(細孔12の中心から隣接する細孔12の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
細孔12の深さは、電子顕微鏡観察によって倍率30000倍で観察したときにおける、細孔12の最底部と、細孔12間に存在する凸部の最頂部との間の距離を測定した値である。
細孔12のアスペクト比(細孔の深さ/細孔間の平均間隔)は、0.8〜5が好ましく、1.2〜4がより好ましく、1.5〜3が特に好ましい。
工程(II)においては、モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面を、官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する。
官能基(A)としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基、およびエステル基等が挙げられ、後述の離型剤が反応性の官能基(B)として有することが多い加水分解性シリル基との反応性がよい点から、水酸基が特に好ましい。離型剤で処理される表面が陽極酸化アルミナの場合、官能基(A)は水酸基である。
(II−1)モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面をプラズマ処理することによって、前記表面に官能基(A)を導入する方法。
(II−2)モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面を、官能基(A)またはその前駆体を有する化合物(シランカップリング剤等)で処理することによって、前記表面に官能基(A)を導入する方法。
官能基(A)が水酸基の場合の官能基(B)としては、加水分解性シリル基、シラノール基、チタン原子もしくはアルミニウム原子を含む加水分解性基等が挙げられ、水酸基との反応性がよい点から、加水分解性シリル基またはシラノール基が好ましく、加水分解性シリル基がより好ましい。加水分解性シリル基とは、加水分解によってシラノール基(Si−OH)を生成する基であり、Si−OR(Rはアルキル基である。)、およびSi−X(Xはハロゲン原子である。)等が挙げられる。
さらに離型剤としては、官能基(B)を有するフッ素化合物であって、前記官能基(B)が加水分解性シリル基であり、かつパーフルオロポリエーテル構造を有するフッ素化合物が特に好ましい。前記官能基(B)が加水分解性シリル基であり、かつパーフルオロポリエーテル構造を有すると、官能基(A)と反応性がよく、かつ離型性が特に良好である。
(II−3)離型剤の希釈溶液にモールド本体を浸漬する方法。
(II−4)離型剤またはその希釈溶液を、モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面に塗布する方法。
(g)必要に応じて、工程(f)の後、モールド本体を水洗する工程。
(h)必要に応じて、工程(g)の後、モールド本体にエアーを吹き付け、モールド本体の表面に付着した不純物等を除去する工程。
(i)工程(f)〜(h)の後、加水分解性シリル基を有するフッ素化合物をフッ素系溶媒で希釈した希釈溶液に、表面に水酸基が導入されたモールド本体を浸漬する工程。
(j)必要に応じて、工程(i)の後、モールド本体を乾燥させる工程。
モールド本体には、微細凹凸構造を形成する際に用いた薬剤(細孔径拡大処理に用いたリン酸水溶液等)、および不純物(埃等)等が付着しているため、水洗によってこれを除去する。
モールド本体の表面に水滴が付着していると、工程(i)の離型剤による処理の効率が低下するため、モールド本体にエアーを吹き付け、目に見える水滴はほぼ除去する。
希釈用のフッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロポリエーテル、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、およびジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の濃度は、希釈溶液(100質量%)中、0.01〜0.2質量%が好ましく、0.06質量%以上0.15質量%以下がさらに好ましい。加水分解性シリル基を有するフッ素化合物のフッ素化合物の濃度が前記範囲内であると、保存または使用時に離型剤の自己縮合反応により離型剤溶液が劣化することを抑制でき、かつ十分な離型性が得られる。
浸漬時間は、1〜30分が好ましい。
浸漬温度は、0〜50℃が好ましい。
モールド本体を風乾させてもよく、乾燥機等で強制的に加熱乾燥させてもよい。
乾燥温度は、50〜150℃が好ましい。
乾燥時間は、5〜300分が好ましい。
工程(III)は、例えば、下記の工程(k)、および/または工程(l)からなる。
(k)工程(i)の後、モールド本体を加熱加湿下に置く工程。
(l)必要に応じて、工程(k)の直後のモールド本体をフッ素系溶媒で洗浄する工程。
モールド本体を加熱加湿下に放置することによって、フッ素化合物(離型剤)の加水分解性シリル基が加水分解されてシラノール基が生成し、前記シラノール基とモールド本体の表面の水酸基との反応が十分に進行し、フッ素化合物の定着性が向上する。
加熱温度は、40〜100℃が好ましい。
加湿条件は、相対湿度85%以上が好ましい。
放置時間は、10分〜1日が好ましい。
洗浄用のフッ素系溶媒としては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、およびジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
フッ素系溶媒で洗浄されたモールド本体を、水、またはアルコール類等でさらに洗浄してもよい。
工程(IV)は、例えば、下記の工程(m)、および/または工程(n)からなる。
(m)工程(i)〜工程(l)を1サイクルとし、前記サイクルを2回以上繰り返す工程。
(n)必要に応じて、工程(m)の後、モールド本体を乾燥させる工程。
工程(i)〜工程(l)のサイクルの繰り返し回数は、2回以上であり、2〜10回が好ましく、3〜5回がより好ましい。繰り返し回数が2回以上であれば、モールドの離型性を長時間にわたって維持できる。
モールド本体を風乾させてもよく、乾燥機等で強制的に加熱乾燥させてもよい。
乾燥温度は、40〜150℃が好ましい。
乾燥時間は、5〜300分が好ましい。
以上説明した本発明のモールドの製造方法にあっては、モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面を離型剤で処理する工程(II)と、前記モールド本体を加熱加湿下に置く工程(III)とを2回以上繰り返すため、表面の微細凹凸構造を繰り返し転写しても離型性を長時間にわたって維持できるモールドを製造できる。
陽極酸化アルミナの表面は、加水分解性シリル基(シラノール基)と反応しにくく、離型剤で1回処理しただけでは、離型剤の存在しない隙間が形成されやすい。そのため、前記隙間から離型剤の剥離が生じやすく、モールドの離型性が低下しやすい。一方、本発明においては、離型剤による処理を2回以上繰り返しているため、隙間を離型剤でできるだけ埋めることができ、モールドの離型性が低下しにくい。
微細凹凸構造を表面に有する物品は、例えば、図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
表面に微細凹凸構造(図示略)を有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状のフィルム42(物品本体)との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離することによって、図3に示すような物品40を得る。
陽極酸化アルミナのモールドを用いた場合の物品40の表面の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる2以上の凸部46を有する。
凸部間の平均間隔の範囲は、20〜400nmが好ましく、50〜300nmがより好ましく、90〜250nmがさらに好ましい。
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
凸部の高さは、電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
硬化樹脂層44の材料が疎水性の場合の微細凹凸構造の表面の水接触角の範囲は、90゜以上180゜以下が好ましく、110゜以上180゜以下がより好ましく、120゜以上180゜以下が特に好ましい。
硬化樹脂層44の材料が親水性の場合の、微細凹凸構造の表面の水接触角の範囲は、3゜以上30゜以下が好ましく、3゜以上25゜以下がより好ましく、3゜以上23゜以下がさらに好ましく、3゜以上21゜以下が特に好ましい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合性化合物および重合開始剤を含む。
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、および反応性ポリマー等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、非反応性のポリマー、および活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含んでいてもよい。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、および2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、およびα−メチルスチレン等のスチレン誘導体;および(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、およびジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、およびアルキルシリケート化合物等が挙げられる。
R11 xSi(OR12)y ・・・(1)
ただし、R11、およびR12は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基を表し、x、およびyは、x+y=4の関係を満たす整数を表す。
R21O[Si(OR23)(OR24)O]zR22 ・・・(2)
ただし、R21〜R24は、それぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは、3〜20の整数を表す。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化樹脂層44の微細凹凸構造の表面の水接触角を90°以上にするためには、疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
フッ素含有化合物としては、下記式(3)で表されるフルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。
−(CF2)n−X ・・・(3)
ただし、Xは、フッ素原子または水素原子を表し、nは、1以上の整数を表し、1〜20が好ましく、3〜10がより好ましく、4〜8が特に好ましい。
フルオロアルキル基置換ビニルモノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリルアミド、フルオロアルキル基置換ビニルエーテル、およびフルオロアルキル基置換スチレン等が挙げられる。
CH2=C(R41)C(O)O−(CH2)m−(CF2)n−X ・・・(4)
ただし、R41は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表し、mは、1〜6の整数を表し、1〜3が好ましく、1または2がより好ましく、nは、1〜20の整数を表し、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。
(Rf)aR51 bSiYc ・・・(5)
加水分解性基としては、アルコキシ基、およびハロゲン原子、R52C(O)O(ただし、R52は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、およびラウリルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、Cl、Br、およびI等が挙げられる。
R52C(O)Oとしては、CH3C(O)O、C2H5C(O)O等が挙げられる。
ポリ(オキシアルキレン)基としては、下記式(6)で表される基が好ましい。
−(OR61)p− ・・・(6)
ただし、R61は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、pは、2以上の整数を表す。
R61としては、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、および−CH(CH3)CH(CH3)−等が挙げられる。
シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、およびシリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、シリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
硬化樹脂層44の微細凹凸構造の表面の水接触角を25°以下にするためには、親水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、少なくとも親水性モノマーを含む組成物を用いることが好ましい。また、耐擦傷性や耐水性付与の観点からは、架橋可能な多官能モノマーを含むものがより好ましい。なお、親水性モノマーと架橋可能な多官能モノマーは、同一(すなわち、親水性多官能モノマー)であってもよい。さらに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その他のモノマーを含んでいてもよい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの10〜50質量%、
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの30〜80質量%、および
単官能モノマーの0〜20質量%の合計100質量%からなる重合性化合物。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
ポリエチレングリコールジメタクリレートにおいて、一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計は、6〜40が好ましく、9〜30がより好ましく、12〜20が特に好ましい。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が6以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が40以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が分離しにくい。
親水性単官能モノマーとしては、M−20G、M−90G、M−230G(新中村化学社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステル基に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート;単官能アクリルアミド類;およびメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、およびメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等のカチオン性モノマー類等が挙げられる。
また、単官能モノマーとして、アクリロイルモルホリン、およびビニルピロリドン等の粘度調整剤;および物品本体への密着性を向上させるアクリロイルイソシアネート類等の密着性向上剤等を用いてもよい。
物品40の用途としては、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、および撥水性物品、より具体的にはディスプレー用反射防止、自動車メーターカバー、自動車ミラー、自動車窓、有機または無機エレクトロルミネッセンスの光取り出し効率向上部材、および太陽電池部材等が挙げられる。
以上説明した本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法にあっては、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドを用いているため、モールドの微細凹凸構造を物品の表面に繰り返し転写した場合であっても、離型性が低下しにくくなり、その結果、微細凹凸構造を表面に有する物品を生産性よく製造できるようになる。
陽極酸化アルミナの一部を削り、断面にプラチナを1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7400F)を用いて、加速電圧3.00kVの条件にて、断面を観察し、細孔の間隔、および細孔の深さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
モールドの微細凹凸構造が形成された側の表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを1μL流し込み、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを被せた後、UV照射機(高圧水銀ランプ:積算光量1100mJ/cm2)によって硬化を行った。ついで、PETフィルムごと硬化樹脂をモールドから剥離(離型)した。
モールドを変更することなく、この操作をくりかえし、400回目の離型時に90度剥離試験を行い、剥離強度を求めた。
TAS:コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合反応混合物;45質量部、
C6DA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学社製);45質量部、
X−22−1602:ラジカル重合性シリコーンオイル(信越化学工業社製);10質量部、
Irg184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184);3質量部。
50mm×50mm×厚さ0.3mmのアルミニウム板(純度99.99%)を、過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨したものを使用した。
工程(a):
前記アルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で6時間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に3時間浸漬して、酸化皮膜を除去した。
工程(c):
前記アルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、32℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
前記アルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
前記工程(d)および工程(e)を合計で4回繰り返し、最後に工程(d)を行い、平均間隔:100nm、深さ:240nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールド本体aを得た。
シャワーを用いてモールド本体aの表面のリン酸水溶液を軽く洗い流した後、モールド本体aを流水中に10分間浸漬した。
工程(h):
モールド本体aにエアーガンからエアーを吹き付け、モールド本体aの表面に付着した水滴を除去した。
モールド本体aを、オプツールDSX(ダイキン化成品販売社製)を希釈剤HD−ZV(ハーベス社製)で0.1質量%に希釈した溶液に室温で10分間浸漬した。モールド本体aを希釈溶液から3mm/secでゆっくりと引き上げた。
工程(j):
モールド本体aを15分間風乾した。
工程(k):
離型剤処理したモールド本体aについて、恒温恒湿器(楠本化成社製)を用いて、温度60℃、相対湿度85%に1時間放置し、加熱加湿処理した。
工程(m):
工程(i)〜(k)をさらに4回繰り返した。
工程(n):
モールド本体aを一晩風乾し、モールドを得た。
前記モールドを用いて転写試験を行った。90度剥離試験から求めた1回目から400回目の剥離強度を指数近似により外挿して800回目の剥離強度とし、剥離強度が35N/mに達する転写回数を概算し、転写可能回数とした。結果を表1に示す。
なお、後述の比較例1では転写可能回数240回で剥離強度が35N/mに達し、モールド側に硬化樹脂が付着したために離型出来ない領域が発生した。
工程(m)における繰り返し回数を2回とした以外は、実施例1と同様にしてモールドを得た。
前記モールドを用いて実施例1と同様に転写試験を行った。結果を表1に示す。
工程(m)における繰り返し回数を1回とした以外は、実施例1と同様にしてモールドを得た。
前記モールドを用いて実施例1と同様に転写試験を行った。結果を表1に示す。
工程(k)および工程(m)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてモールドを得た。
前記モールドを用いて実施例1と同様に転写試験を行った。結果を表1に示す。
工程(m)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてモールドを得た。
前記モールドを用いて実施例1と同様に転写試験を行った。結果を表1に示す。
工程(k)を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にしてモールドを得た。
前記モールドを用いて実施例1と同様に転写試験を行った。結果を表1に示す。
オプツールDSXの希釈溶液の濃度を0.3質量%に変更した以外は、比較例1と同様にしてモールドを得た。
前記モールドを用いて実施例1と同様に転写試験を行った。結果を表1に示す。
オプツールDSXの希釈溶液の濃度を0.3質量%に変更した以外は、比較例2と同様にしてモールドを得た。
前記モールドを用いて実施例1と同様に転写試験を行った。結果を表1に示す。
特に、離型剤の濃度0.1質量%付近で加熱加湿処理を2回以上繰り返すことで、非常に長時間にわたって離型性を維持できることがわかる。
12 細孔
14 酸化皮膜(陽極酸化アルミナ)
18 モールド本体
20 ロール状モールド
40 物品
42 フィルム(物品本体)
Claims (9)
- 下記の工程(I)〜(IV)を有する、モールドの製造方法。
(I)表面に微細凹凸構造が形成されたモールド本体を作製する工程。
(II)工程(I)の後、前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面を、前記表面に存在する官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する工程。
(III)工程(II)の後、前記モールド本体を加熱加湿下に置く工程。
(IV)前記工程(II)、および工程(III)を2回以上繰り返す工程。 - 前記官能基(B)が、加水分解性シリル基である、請求項1に記載のモールドの製造方法。
- 前記離型剤の官能基(B)が、加水分解性シリル基であり、かつパーフルオロポリエーテル構造を有する離型剤である、請求項1または2記載のモールドの製造方法。
- 前記工程(II)において、前記離型剤の濃度が0.06質量%以上0.15質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
- 前記工程(I)の微細凹凸構造が形成されたモールドが、アルミニウム基材を陽極酸化し、その表面に2個以上の細孔を有する微細凹凸構造を形成したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
- 前記細孔の平均間隔が、400nm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
- 前記細孔の平均間隔が、20nm以上400nm以下である、請求項6に記載のモールドの製造方法。
- 前記工程(I)が下記の工程(a)〜(f)を有し、
前記工程(II)が下記の工程(g)〜(j)を有し、
前記工程(III)が下記の工程(k)および/または(l)を有し、
前記工程(IV)が下記の工程(m)および/または(n)を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
(a)アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)前記酸化皮膜を除去し、前記アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)前記工程(b)の後、前記アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)前記工程(c)の後、細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)前記工程(d)と前記工程(e)を繰り返し行い、2個以上の細孔を有する陽極酸化アルミナが前記アルミニウム基材の表面に形成されたモールド本体を得る工程。
(g)前記工程(f)の後、前記モールド本体を水洗する工程。
(h)前記工程(g)の後、前記モールド本体にエアーを吹き付け、前記モールド本体の表面に付着した不純物を除去する工程。
(i)前記工程(f)〜(h)の後、加水分解性シリル基を有するフッ素化合物をフッ素系溶媒で希釈した希釈溶液に、表面に水酸基が導入されたモールド本体を浸漬する工程。
(j)前記工程(i)の後、前記モールド本体を乾燥させる工程。
(k)工程(i)の後、前記モールド本体を加熱加湿下に置く工程。
(l)工程(k)の直後の前記モールド本体を、フッ素系溶媒で洗浄する工程。
(m)前記工程(i)〜前記工程(l)を1サイクルとし、前記サイクルを2回以上繰り返す工程。
(n)前記工程(m)の後、前記モールド本体を乾燥させる工程。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載のモールドの製造方法で得られたモールドの表面の微細凹凸構造を、物品本体の表面に転写することを含む、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
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