JP2010005841A - モールドの製造方法 - Google Patents
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【解決手段】(I)表面に微細凹凸構造が形成されたモールド本体16を作製する工程と、(II)モールド本体16の微細凹凸構造が形成された側の表面に、官能基(A)を導入する工程と、(III)工程(II)の後、モールド本体16の微細凹凸構造が形成された側の表面を、官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する工程とを有するモールドの製造方法。
【選択図】図1
Description
(I)表面に微細凹凸構造が形成されたモールド本体を作製する工程。
(II)前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面に、官能基(A)を導入する工程。
(III)工程(II)の後、前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面を、前記官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する工程。
アルミニウム基材の表面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナを形成してモールド本体を作製する工程。
前記モールド本体の、前記微細凹凸構造が形成された側の表面をプラズマ処理することによって、該表面に官能基(A)を導入する工程。
本発明のモールドの製造方法は、下記の工程(I)〜(III)を有する方法である。
(I)表面に微細凹凸構造が形成されたモールド本体を作製する工程。
(II)前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面に、官能基(A)を導入する工程。
(III)工程(II)の後、前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面を、前記官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する工程。
工程(I)においては、基材の表面に微細凹凸構造を形成してモールド本体を作製する。
基材の材料としては、金属(表面に酸化皮膜が形成されたものを含む。)、石英、ガラス、樹脂、セラミックス等が挙げられる。
基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
(I−1)アルミニウム基材の表面に、複数の細孔(凹部)を有する陽極酸化アルミナを形成する方法。
(I−2)基材の表面にリソグラフィ法によって微細凹凸構造を形成する方法。
(a)アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記(c)工程と(d)工程を繰り返し行い、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウムの表面に形成されたモールド本体を得る工程。
図1に示すように、アルミニウム基材10を陽極酸化すると、細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
アルミニウム基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
アルミニウム基材は、所定の形状に加工する際に用いた油が付着していることがあるため、あらかじめ脱脂処理されることが好ましい。また、アルミニウム基材は、表面状態を平滑にするために、電解研磨処理(エッチング処理)されることが好ましい。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
図1に示すように、酸化皮膜14を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点16にすることで細孔の規則性を向上することができる。
図1に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材10を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
図1に示すように、細孔12の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
図3に示すように、工程(c)の陽極酸化と、工程(d)の細孔径拡大処理を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成され、アルミニウム基材10の表面に陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))を有するモールド本体18が得られる。
細孔12間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔12間の平均間隔は、20nm以上が好ましい。
細孔12間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔12間の間隔(細孔12の中心から隣接する細孔12の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
細孔12の深さは、電子顕微鏡観察によって倍率30000倍で観察したときにおける、細孔12の最底部と、細孔12間に存在する凸部の最頂部との間の距離を測定した値である。
細孔12のアスペクト比(細孔の深さ/細孔間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
工程(II)においては、モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面に、官能基(A)を導入する。
官能基(A)とは、後述の離型剤が有している反応性の官能基(B)と反応して、化学結合を形成し得る基を意味する。
官能基(A)としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基、エステル基等が挙げられ、後述の離型剤が反応性の官能基(B)として有することが多い加水分解性シリル基との反応性がよい点から、水酸基が特に好ましい。
(II−2)モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面を、官能基(A)またはその前駆体を有する化合物(シランカップリング剤等)で処理することによって、該表面に官能基(A)を導入する方法。
(f)モールド本体を水洗する工程。
(g)工程(f)の後、モールド本体にエアーを吹き付け、モールド本体の表面に付着した水滴を除去する工程。
(h)工程(g)の後、モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面をプラズマ処理することによって、該表面に官能基(A)を導入する工程。
モールド本体には、微細凹凸構造を形成する際に用いた薬剤(細孔径拡大処理に用いたリン酸水溶液、リソグラフィ法に用いた剥離液等)、不純物(埃等)等が付着しているため、水洗によってこれを除去する。
モールド本体の表面に水滴が付着していると、工程(h)のプラズマ処理の効率が低下するため、モールド本体にエアーを吹き付け、目に見える水滴はほぼ除去する。
プラズマ処理は、例えば、特開2006−303075号公報に記載の下記のプラズマ表面処理装置を用いて行うことができる。
反応ガス流路が形成されるように対向配置された、固体誘電体で覆われた対向電極と、対向電極に接続された高周波電源とを有するプラズマ表面処理装置。
該プラズマ表面処理装置の市販品としては、イー・スクエア社製の常圧プラズマ表面改質装置「ADMASTER」シリーズが挙げられる
対向電極間の反応ガス流路に流れる反応ガスを、高周波電源から対向電極に供給された高周波電力によってプラズマ化し、プラズマ化された反応ガスを、反応ガス流路の出口からモールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面に噴出し、該表面にプラズマ化された反応ガスを接触させる。
工程(III)においては、モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面を、官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する。
官能基(B)とは、官能基(A)と反応して化学結合を形成し得る基または該基に容易に変換し得る基を意味する。
官能基(A)が水酸基の場合の官能基(B)としては、加水分解性シリル基、シラノール基、チタン原子もしくはアルミニウム原子を含む加水分解性基等が挙げられ、水酸基との反応性がよい点から、加水分解性シリル基またはシラノール基が好ましい。加水分解性シリル基とは、加水分解によってシラノール基(Si−OH)を生成する基であり、Si−OR(Rはアルキル基である。)、Si−X(Xはハロゲン原子である。)等が挙げられる。
(III−1)離型剤の希釈溶液にモールド本体を浸漬する方法。
(III−2)離型剤またはその希釈溶液を、モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面に塗布する方法。
(i)加水分解性シリル基を有するフッ素化合物をフッ素系溶媒で希釈した希釈溶液に、表面に水酸基が導入されたモールド本体を浸漬する工程。
(j)必要に応じて、工程(i)の直後のモールド本体をフッ素系溶媒で洗浄する工程。
(k)必要に応じて、工程(i)よりも後段にてモールド本体を加熱加湿下に放置する工程。
(l)必要に応じて、工程(k)の直後のモールド本体をフッ素系溶媒で洗浄する工程。
(m)必要に応じて、工程(i)よりも後段にてモールド本体を乾燥させる工程。
希釈用のフッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロポリエーテル、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の濃度は、希釈溶液(100質量%)中、0.01〜0.2質量%が好ましい。
浸漬時間は、1〜30分が好ましい。
浸漬温度は、0〜50℃が好ましい。
洗浄用のフッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロポリエーテル、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
工程(i)よりも後段にてモールド本体を加熱加湿下に放置することによって、フッ素化合物(離型剤)の加水分解性シリル基が加水分解されてシラノール基が生成し、該シラノール基とモールド本体の表面の水酸基との反応が十分に進行し、フッ素化合物の定着性が向上する。
加熱温度は、40〜100℃が好ましい。
加湿条件は、相対湿度85%以上が好ましい。
放置時間は、10分〜1日が好ましい。
洗浄用のフッ素系溶媒としては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
フッ素系溶媒で洗浄されたモールド本体を、水、アルコール類等でさらに洗浄してもよい。
工程(i)よりも後段にてモールド本体を風乾させてもよく、乾燥機等で強制的に加熱乾燥させてもよい。
乾燥温度は、50〜150℃が好ましい。
乾燥時間は、5〜300分が好ましい。
よって、モールドの微細凹凸構造を物品の表面に繰り返し転写した場合であっても、離型性が低下しにくくなるため、微細凹凸構造を表面に有する物品を生産性よく製造できるようになる。
微細凹凸構造を表面に有する物品は、例えば、図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
表面に微細凹凸構造(図示略)を有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状のフィルム42との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離することによって、図3に示すような物品40を得る。
陽極酸化アルミナのモールドを用いた場合の物品40の表面の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の凸部46を有する。
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
凸部の高さは、電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最低部との間の距離を測定した値である。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合性化合物および重合開始剤を含む。
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含んでいてもよい。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
R11 xSi(OR12)y ・・・(1)。
ただし、R11、R12は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基を表し、x、yは、x+y=4の関係を満たす整数を表す。
R21O[Si(OR23)(OR24)O]zR22 ・・・(2)。
ただし、R21〜R24は、それぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは、3〜20の整数を表す。
硬化樹脂層44の微細凹凸構造の表面の水接触角を90°以上にするためには、疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
フッ素含有化合物としては、下記式(3)で表されるフルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。
−(CF2)n−X ・・・(3)。
ただし、Xは、フッ素原子または水素原子を表し、nは、1以上の整数を表し、1〜20が好ましく、3〜10がより好ましく、4〜8が特に好ましい。
フルオロアルキル基置換ビニルモノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリルアミド、フルオロアルキル基置換ビニルエーテル、フルオロアルキル基置換スチレン等が挙げられる。
CH2=C(R41)C(O)O−(CH2)m−(CF2)n−X ・・・(4)。
ただし、R41は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表し、mは、1〜6の整数を表し、1〜3が好ましく、1または2がより好ましく、nは、1〜20の整数を表し、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。
(Rf)aR51 bSiYc ・・・(5)。
加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、R52C(O)O(ただし、R52は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、Cl、Br、I等が挙げられる。
R52C(O)Oとしては、CH3C(O)O、C2H5C(O)O等が挙げられる。
ポリ(オキシアルキレン)基としては、下記式(6)で表される基が好ましい。
−(OR61)p− ・・・(6)。
ただし、R61は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、pは、2以上の整数を表す。R61としては、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−等が挙げられる。
シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、シリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
硬化樹脂層44の微細凹凸構造の表面の水接触角を25°以下にするためには、親水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、少なくとも親水性モノマーを含む組成物を用いることが好ましい。また、耐擦傷性や耐水性付与の観点からは、架橋可能な多官能モノマーを含むものがより好ましい。なお、親水性モノマーと架橋可能な多官能モノマーは、同一(すなわち、親水性多官能モノマー)であってもよい。さらに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その他のモノマーを含んでいてもよい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの10〜50質量%、
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの30〜80質量%、
単官能モノマーの0〜20質量%の合計100質量%からなる重合性化合物。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
ポリエチレングリコールジメタクリレートにおいて、一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計は、6〜40が好ましく、9〜30がより好ましく、12〜20が特に好ましい。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が6以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が40以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が分離しにくい。
親水性単官能モノマーとしては、M−20G、M−90G、M−230G(新中村化学社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステル基に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、単官能アクリルアミド類、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等のカチオン性モノマー類等が挙げられる。
また、単官能モノマーとして、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン等の粘度調整剤、物品本体への密着性を向上させるアクリロイルイソシアネート類等の密着性向上剤等を用いてもよい。
物品40の用途としては、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品、より具体的にはディスプレー用反射防止、自動車メーターカバー、自動車ミラー、自動車窓、有機または無機エレクトロルミネッセンスの光取り出し効率向上部材、太陽電池部材等が挙げられる。
なお、微細凹凸構造を表面に有する物品は、図示例の物品40に限定はされない。例えば、微細凹凸構造は、硬化樹脂層44を設けることなくフィルム42の表面に直接形成されていてもよい。ただし、ロール状モールド20を用いて効率よく微細凹凸構造を形成できる点から、硬化樹脂層44の表面に微細凹凸構造が形成されていることが好ましい。
陽極酸化アルミナの一部を削り、断面にプラチナを1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7400F)を用いて、加速電圧3.00kVの条件にて、断面を観察し、細孔の間隔、細孔の深さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
活性エネルギー線硬化組成物として、下記の組成のものを用意した。
トリメチロールエタンアクリル酸・無水コハク酸縮合エステル:45質量部、
ヘキサンジオールジアクリレート:45質量部、
信越化学社製商品名「x−22−1602」:10質量部、
チバ・スペシャリティケミカルズ社製商品名「イルガキュア184」:3.0質量部。
以上の操作を繰り返し、フィルムとモールドとが剥離困難になるまで繰り返し、その段階における操作の繰り返し回数を転写回数とした。
直径65mmのアルミニウム板(純度99.99%)を鏡面研磨した。
工程(a):
該アルミニウム板について、0.50.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30分間6時間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に2時間浸漬して、酸化皮膜を除去した。
該アルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、32℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
前記工程(c)および工程(d)を合計で5回繰り返し、平均周期:100nm、深さ:240nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールド本体aを得た。
シャワーを用いてモールド本体aの表面のリン酸水溶液を軽く洗い流した後、モールド本体aを流水中に10分間浸漬した。
工程(g):
モールド本体aにエアーガンから圧搾濾過エアー(濾過フィルター:5μm、圧力:0.4Mpa)を吹き付け、モールド本体aの表面に付着した目に付く水滴を除去した。
モールド本体aを搬送ラインで1m/分で移動させながら、搬送ライン上に設置された常圧プラズマ表面改質装置(イー・スクエア社製、ADMASTER II)を用い、下記条件にてモールド本体aの微細凹凸構造が形成された側の表面をプラズマ処理した。
反応ガス:窒素+空気、
印加電圧:30kv。
モールド本体aを、オプツールDSX(ダイキン化成品販売社製)の0.1質量%希釈溶液に室温で10分間浸漬し、引き上げた。
工程(m):
該モールド本体aを一晩風乾して、離型剤で処理されたモールドを得た。
該モールドの表面の転写試験を行ったところ、転写回数が2000回でもフィルムとモールドとが剥離可能であった。
工程(h)を行わなかった以外は、実施例1と同様にして離型剤で処理されたモールドを得た。
該モールドの表面の転写試験を行ったところ、転写回数が240回でモールドの微細凹凸面に樹脂残りが発生し、モールドとフィルムとが剥離困難になった。
12 細孔
14 酸化皮膜
16 細孔発生点
18 モールド本体
20 ロール状モールド
Claims (3)
- 下記の工程(I)〜(III)を有する、モールドの製造方法。
(I)表面に微細凹凸構造が形成されたモールド本体を作製する工程。
(II)前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面に、官能基(A)を導入する工程。
(III)工程(II)の後、前記モールド本体の前記微細凹凸構造が形成された側の表面を、前記官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する工程。 - 前記工程(I)が、下記の工程である、請求項1に記載のモールドの製造方法。
アルミニウム基材の表面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナを形成してモールド本体を作製する工程。 - 前記工程(II)が、下記の工程である、請求項1または2に記載のモールドの製造方法。
前記モールド本体の、前記微細凹凸構造が形成された側の表面をプラズマ処理することによって、該表面に官能基(A)を導入する工程。
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