JPWO2011099378A1 - 球状ハイドロタルサイト化合物および電子部品封止用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】陰イオン捕捉剤として樹脂組成物等の有害な陰イオンを捕捉でき、樹脂組成物の(溶融)流動性を損ねない、新たなハイドロタルサイト化合物および電子部品封止用樹脂組成物を提供することが、本発明の課題である。【解決手段】粉末X線回折パターンにおいてハイドロタルサイト化合物のピークを有し、BET法で測定した比表面積が30m2/g以上200m2/g以下であり、なおかつ、レーザー回折式粒度分布計で測定した体積基準の2次粒径のメジアン径が0.5μm以上6μm以下である、下記式(1)で表わされる球状ハイドロタルサイト化合物。(MgxZn1-x)aAlb(OH)c(CO3)d・nH2O (1)式(1)において、a、b、c、およびdは正数であり、0.5≦x≦1 であり、2a+3b−c−2d=0を満たす。また、nは水和の数を示し、0または正数である。

Description

イオン性不純物除去性に優れ、かつ樹脂添加時の作業性に優れ、電子材料用に適した球状ハイドロタルサイト化合物に関する。より具体的には、陰イオン捕捉剤として機能し、半導体用封止材などに使用する樹脂組成物に添加しても、粘度が上昇せず、流動性を保ち、良好な充填性を有する球状ハイドロタルサイト化合物および電子部品封止用樹脂組成物に関する。
近年の半導体の配線の微細化、小チップ化により、より流動性の高い封止樹脂が求められており、それに伴ってシリカなどの添加剤も微細化、高純度化、流動性を低下させない工夫などの改善が求められている。
このような問題に対して、例えば特許文献1には半導体封止材用のエポキシ樹脂に使用する充填材であるシリカを球状にしたり、表面処理を施して流動性を上げることが提案されている。
一方、半導体封止材中の不純物イオンを除去し、半導体の信頼性を向上させる目的として、特にハロゲン化物イオンを捕捉する目的で無機陰イオン交換体であるハイドロタルサイト類あるいはその焼成物をエポキシ樹脂等に配合することが提案されている(例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、および特許文献7参照)。
別の目的で、セメントなどの水硬性材料の固化時の耐クラック性を付与する目的として、特許文献8には層状複水酸化物を球状にしたものが開示されている。
特開平8−277322号公報 特開昭63−252451号公報 特開昭64−64243号公報 特開昭60−40124号公報 特開2000−226438号公報 特開昭60−42418号公報 特開2000−159520号公報 特開2005−345448号公報
昨今のさらなる半導体チップの微細化などにより、シリカ以外の添加剤についても、微細化が求められ、また、流動性などの樹脂物性を損ねないことが要求されている。
また、ハイドロタルサイト類は陰イオンを捕捉する機能を持つが、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、および特許文献7に記載されているような既存のハイドロタルサイトでは陰イオンを捕捉する能力が十分でなく、効果が不十分な場合があった。これに対し、ハイドロタルサイト類を超微粒子にすると比表面積が増加し捕捉能力が向上するが、樹脂に微粒子を添加すると、少量の添加でも増粘してしまうため、液状封止材には使用し難いなどの問題があった。
特許文献8に記載された層状複水酸化物を球状にしたものは、電子材料用に提案されたわけではなく、半導体用封止材の信頼性を向上させるには性能不十分なものであった。
樹脂組成物等の有害な陰イオンを捕捉できる陰イオン捕捉剤として機能し、なおかつ樹脂組成物の流動性を損ねない、新たなハイドロタルサイト化合物および電子部品封止用樹脂組成物を提供することが、本発明の課題である。
上記の課題を解決するために、樹脂組成物等に使用できる新規なハイドロタルサイト化合物を見出すため鋭意検討を行なった結果、超微粒子のハイドロタルサイトを凝集させて球状粒子としたもの、すなわち、以下の<1>に記載の手段が、特に優れた性能を発揮することを確認し、本発明を完成するに至った。
<1>粉末X線回折パターンにおいてハイドロタルサイト化合物のピークを有し、BET法で測定した比表面積が30m2/g以上200m2/g以下であり、なおかつ、レーザー回折式粒度分布計で測定した体積基準の2次粒径のメジアン径が0.5μm以上6μm以下である、下記式(1)で表わされる球状ハイドロタルサイト化合物。
(MgxZn1-xaAlb(OH)c(CO3d・nH2O (1)
式(1)において、a、b、c、およびdは正数であり、0.5≦x≦1 であり、2a+3b−c−2d=0を満たす。また、nは水和の数を示し、0または正数である。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、封止材樹脂組成物に配合しても流動性を損なうことなく、樹脂中からの塩化物イオンなどの陰イオンおよびイオン性不純物の遊離を抑制することができる。このことから、本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、電子部品または電気部品の封止、被覆、および絶縁等の用途に使用することにより、電子部品または電気部品の信頼性を高めることができる。また、本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、塗料、接着剤、ワニス、防錆剤等にも使用することができ、被塗物の防錆や色移り防止、防臭などの効果を与えることができる。
実施例1で得られた球状ハイドロタルサイト化合物の粉末X線回折図形である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<ハイドロタルサイト化合物>
ハイドロタルサイトとは、狭義には特定の天然鉱物を指すが、類似の組成および構造を有する一連の化合物が化学的に類似の特性を示すため、ハイドロタルサイト様化合物、ハイドロタルサイト類化合物、ハイドロタルサイト系化合物等の名称で呼ばれており、粉末X線回折測定において、層状の結晶構造に基づく類似の回折図形を示すことが知られている。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、マグネシウムとアルミニウムを必須構成成分とする複水酸化物であり、化学式と、層状の結晶構造と、形状(粒度と真球度)によって定義することができる。
まず、本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、下記式(1)で表わされるものである。

(MgxZn1-xaAlb(OH)c(CO3d・nH2O (1)

式(1)において、a、b、c、およびdは正数であり、0.5≦x≦1であり、2a+3b−c−2d=0を満たす。また、nは水和の数を示し、0または正数である。
式(1)で表わされる球状ハイドロタルサイト化合物の具体例としては、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg5Al1.5(OH)13CO3・3.5H2O、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg4.2Al2(OH)12.4CO3・3.5H2O、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3・3.5H2Oなどを挙げることができる。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、層状結晶構造を有しており、粉末X線回折測定において、ハイドロタルサイト類化合物に特徴的な、等間隔に表れるシャープな回折ピークを有する回折図形を示す。粉末X線回折測定の標準的な測定条件である、40kV/150mAでCuKα線を用いた測定をしたときに、2θ=11.4°〜11.7°において、シャープな回折ピークを示すものである。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、高い比表面積を有する微小粒子(1次粒子)が凝集して真球状の2次粒子となる形状を有する。1次粒子の粒径を測定し、定義することは難しいが、1次粒子の粒度分布を反映するパラメータとしてBET法による比表面積を用いることができる。凝集して2次粒子を形成していても、1次粒径が小さいほど、BET法比表面積は大きくなるからである。イオン捕捉剤として用いるためには、比表面積の値が大きい方が好ましいが、2次粒子を形成する前の製造工程においては、1次粒径が大きいほど凝集が起き難いのでとり扱いやすいという利点がある。したがって、本発明においてはBET法比表面積は30m2/g以上200m2/g以下であり、好ましくは32〜70m2/gであり、さらに好ましくは35〜60m2/gである。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、真球状で2次粒径が大きいものの方が、樹脂に混合した時の(溶融)粘度が低く、流動性が良くなるので好ましいが、一方で2次粒径が小さい方が微細な隙間に充填することが可能である。2次粒径はレーザー回折式粒度分布計で測定することができ、本発明の球状ハイドロタルサイト化合物においては、体積基準の2次粒子径のメジアン径が0.5μm以上6μm以下であり、好ましくは0.7〜5.0μmであり、さらに好ましくは2.0〜4.0μmである。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物の真球度は、2次粒子の形状を測定することにより評価することができる。形状の測定はレーザー顕微鏡や透過型および走査型電子顕微鏡などで観察することにより可能であり、写真画面上で複数個の2次粒子を確認し、互いに直角をなして交差する任意の2方向の直径を測定して、その差と全ての直径の測定値の平均値に対する標準偏差を算出し、平均値に対する100分率(%)で表すことによって真球度の指標とする。形状の測定は少なくとも10個以上の2次粒子について行なうのが好ましく、さらに好ましくは20個以上1000個以下である。こうして算出された標準偏差の100分率としては、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。下限としては、あまり小さいものを製造することはコスト高になる一方で、樹脂組成物の(溶融)流動性や(溶融)粘度といった物性に対する真球度の向上は頭打ちになるので好ましくは0.01%以上、さらに好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上である。
<ハイドロタルサイト化合物の製造方法>
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、好ましくは以下の製造方法で製造することができるが、この製造方法に限定されるものではなく、他の原料を元に他の製造方法によって製造してもよい。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、好ましくは塩化マグネシウムと硫酸アルミニウムとを所定の比で水に溶解した後、炭酸イオン含有の水酸化アルカリ金属を加えて沈殿を生成させ、この沈殿を加熱熟成し、水洗してスラリーとする第一工程と、スラリーを噴霧乾燥する第二工程を含む製造方法によって得ることができる。
第一工程において、沈殿を生成させるときのpHとしては高い方が沈殿が生成し易いが、あまり高くすることは水酸化アルカリの使用量が多くなり、廃液処理にも費用がかかる。したがって好ましいのはpH5〜14であり、さらに好ましくはpH10〜13.5である。このとき用いる水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
また、前記炭酸イオン含有の水酸化アルカリ金属における炭酸イオン源としては、炭酸塩を添加することが好ましく、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムが好ましく、より好ましくは炭酸ナトリウムである。
第一工程において、水溶液から沈澱を生成させるときの溶液の温度としては、1〜100℃が好ましく、10〜80℃がさらに好ましく、20〜60℃がより好ましい。沈殿を加熱熟成させるときの温度は、高い方が結晶化が早く進み、結晶性が高くなるが、あまり高くし過ぎると結晶の成長が早く、大きな粒子となり比表面積が低下する傾向があるので、好ましくは70〜150℃であり、さらに好ましくは80〜120℃である。結晶性が高くなったものは、粉末X線測定において高い回折強度を示し、化学的に安定であるので好ましい。より具体的には40kV/150mAでCuKα線を用いた測定をしたときに、2θ=11.4°〜11.7°における回折強度が2500cps以上となることである。
第一工程において、水洗には、脱イオン水を用いることが好ましく、ろ過やセラミックフィルター等の洗浄装置を用いて行なうことができる。水洗された液の電導度が0μS/cm以上100μS/cm以下になるまで十分行うことが好ましい。より好ましくは0μS/cm以上50μS/cm以下である。なお、μS/cm(μジーメンス/cm)は当業者には周知の、液体の電気伝導度を表す数字であり、市販の電導度計で測定できる。電導度が小さいほど液体中にイオンが少ないことを意味する。
第一工程において水洗までを終えたスラリーは、スプレードライヤー等の造粒方法で2次粒子とすることができる。スプレードライヤーには、スプレー方式により、加圧ノズルアトマイザーとロータリーディスクアトマイザーの2種類があるが、いずれでも好ましく用いることができ、スラリーを高温雰囲気中に霧化して乾燥させ、粉として回収する。乾燥のための高温雰囲気は、高い方が乾燥が早い一方で、低い方が、霧が液滴状態をより長く保つために得られる2次粒子の真球度が高くなる。したがって好ましい温度は100℃〜350℃、さらに好ましくは130℃〜250℃、特に好ましくは150℃〜230℃である。大型のスプレードライヤーではドライヤー内部に温度勾配が生じるが、上記の高温雰囲気の温度は、ドライヤー内部での最高温度を意味し、熱風吹き込み方式では吹き込む熱風の温度とほぼ等しくなる。スプレードライヤーで形成された2次粒子は、サイクロンやバグフィルター等の粉体捕集方法で捕集することができる。
こうして得られた球状ハイドロタルサイトは、加熱によって式(1)のnが0〜0.1の間である、脱結晶水型の球状ハイドロタルサイト化合物に変換することができる。この際の加熱温度は、350℃以下であれば何℃でも良いが、加熱温度が高い方が早く変換することができる反面、あまり高くし過ぎると、ハイドロタルサイト中の炭酸イオンが放出され、結晶構造を保てなくなるので、好ましくは200〜350℃であり、さらに好ましくは200〜300℃である。加熱時間としては、好ましくは0.1時間〜24時間である。上記のスプレードライヤーの加熱条件を調節して、第2工程で脱(または低)結晶水型の球状ハイドロタルサイト化合物を得ることもできる。
式(1)のnが0〜0.1の間である、脱結晶水型の球状ハイドロタルサイト化合物は、層状結晶の層間に入っていた結晶水が減少したために、Cuイオンなどの2価・3価の金属イオンの捕捉能力が格段に上がるので、電子材料の銅配線のマイグレーションの防止にも有効である。
<組成分析>
得られたハイドロタルサイト化合物の組成は、熱重量分析(TG)等の熱分析法により、結晶水の数を決定することができ、蛍光X線分析法により、Mg、Zn,Alの元素比率を測定し、CHN元素分析法により、炭素、水素の含有量を測定することにより、式(1)のx,a,b,c,d,nの値を各々算出することができる。
<金属不純物>
本発明のハイドロタルサイト化合物の原料である、マグネシウム、アルミニウムは工業的には天然資源を多く使用するため、マグネシウム、アルミニウム以外の金属不純物を含有することがある。しかしながら、鉄、マンガン、コバルト、クロム、銅、バナジウムおよびニッケルなどの重金属を含む化合物や、ウラン、トリウムなどを含む放射性金属などを含有することは、環境の面や、電子材料の誤作動の原因になるなどの悪影響があるため好ましくない。
上記の金属不純物の含有量の合計は、好ましくは本発明のハイドロタルサイト化合物全体の1000質量ppm以下であり、より好ましくは500質量ppm以下であり、更に好ましくは200質量ppm以下である。また、ウラン、トリウムなどの含有量の合計は、好ましくは50質量ppb以下であり、さらに好ましくは25質量ppb以下であり、特に好ましくは10質量ppb以下である。また、下限は、0質量ppm以上であればよい。
<イオン性不純物>
本発明のハイドロタルサイト化合物は、水に溶出するイオン性不純物の少ないものである。このイオン性不純物において、陰イオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン等であり、陽イオンとしてはナトリウムイオン、マグネシウムイオン等であり、陰イオンはイオンクロマトグラフィー分析によって測定でき、陽イオンはICP発光分光分析法によって分析でき、陰イオンはイオンクロマト法によって分析できる。
本発明のハイドロタルサイト化合物からのイオン性不純物の溶出量としては、ハイドロタルサイト化合物に対して500質量ppm以下が好ましく、さらに好ましくは100質量ppm以下であり、特に好ましくは50質量ppm以下である。当該イオン性不純物の量が500質量ppm以下であると電子材料の信頼性を維持することができるので好ましい。また、下限は、0質量ppm以上であればよい。
<電導度>
上澄みの電導度:本発明の球状ハイドロタルサイト化合物からのイオン性物質の溶出量の指標として、例えば、脱イオン水への過熱溶出試験をして、上澄みの電導度を測定することによって評価することができる。不純物や加水分解等によるイオン性物質の溶出が多いほど電導度の値は大きくなり、ハイドロタルサイト化合物が不安定であるか、不純物が多いことを意味する。
一例として5gのハイドロタルサイト化合物を50gの脱イオン水中に入れて125℃で20時間処理した後、ろ過して、この上澄みの電導度を電導度計で測定した場合の電導度としては、200μS/cm以下が好ましく、さらに好ましくは150μS/cm以下であり、特に好ましくは100μS/cm以下である。また、下限は、0μS/cm以上であればよい。
<Clイオン交換容量>
本発明のハイドロタルサイト化合物のClイオン交換容量は、例えば塩酸を用いてイオン交換反応をさせることにより、容易に測定できる。Clイオン交換容量として好ましくは1.0meq/g以上であり、さらに好ましくは1.2meq/g以上であり、特に好ましくは1.5meq/g以上であり、上限は、好ましくは10meq/g以下である。当該Clイオン交換容量がこの範囲であると電子材料に用いたときに信頼性を維持することができるので好ましい。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、樹脂組成物として電子部品または電気部品の封止、被覆、および絶縁等の様々な用途に好適に使用することが可能である。さらに、本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、塩化ビニル等の樹脂の安定剤、防錆剤等にも使用可能である。
<樹脂組成物>
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を含む樹脂組成物に用いられる樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂であっても、ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル、およびポリプロピレン等の熱可塑性樹脂であってもよく、好ましくは熱硬化性樹脂である。樹脂組成物の中でも電子部品封止用樹脂組成物に用いる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂またはエポキシ樹脂が好ましく、特に好ましくはエポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂は、通常、電子部品封止用樹脂に用いられているものであれば限定なく用いることができる。例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、硬化可能なものであれば特に種類は問わず、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、成形材料として用いられているものをいずれも使用できる。また、本発明の組成物の耐湿性を高めるためには、エポキシ樹脂として、塩化物イオン含有量が0ppm以上10ppm以下、加水分解性塩素含有量が0ppm以上1000ppm以下のものを用いることが好ましい。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、電子部品封止用のフェノール樹脂またはエポキシ樹脂と、好ましくは、硬化剤および硬化促進剤等を含有する電子部品封止用樹脂組成物として好適に用いることができ、これを本発明の電子部品封止用樹脂組成物として定義する。なお、産業界で用いられる電子部品封止用樹脂組成物には常温(20℃)で固体状の固体封止材あるいはEMCと呼ばれるものと、常温で液状の液状封止材と呼ばれるものとがあるが、常温で固体状の封止材は、電子部品封止の工程では加熱溶融されて液状で用いられるものであり、溶融粘度や溶融流動性は加熱状態で測定評価されるものであるから効果としては同じであり、粘度および流動性の定義は、固体封止材等の常温で固体の樹脂組成物であるときは溶融粘度および溶融流動性を意味し、液状封止材等の常温で液体の樹脂組成物であるときは、通常の粘度および流動性を意味する。
本発明の電子部品封止用樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、硬化剤はエポキシ樹脂組成物の硬化剤として知られているものをいずれも使用可能であり、好ましい具体例として、酸無水物、アミン系硬化剤およびノボラック系硬化剤等がある。好ましいのは粘度を下げやすい酸無水物である。
本発明に用いる硬化促進剤はエポキシ樹脂組成物の硬化促進剤として知られているものをいずれも使用可能であり、好ましい具体例として、アミン系、リン系、およびイミダゾール系の促進剤等がある。
本発明の電子部品封止用樹脂組成物は、必要に応じて成形用樹脂に配合する成分として知られたものを配合することもできる。この成分としては、無機充填物、難燃剤、無機充填物用カップリング剤、着色剤、および離型剤等が例示できる。これらの成分はいずれも成形用エポキシ樹脂に配合する成分として知られたものである。無機充填物の好ましい具体例として、結晶性シリカ粉、石英ガラス粉、熔融シリカ粉、アルミナ粉およびタルク等が挙げられ、中でも結晶性シリカ粉、石英ガラス粉および熔融シリカ粉が安価で好ましい。難燃剤の例としては、酸化アンチモン、ハロゲン化エポキシ樹脂、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、赤燐系化合物、リン酸エステル系化合物等があり、カップリング剤の例としては、シラン系およびチタン系等があり、離型剤の例としては、脂肪族パラフィン、高級脂肪族アルコール等のワックスがある。
上記の成分の他に、反応性希釈剤、溶剤やチクソトロピー性付与剤等を含有することもできる。具体的には、反応性希釈剤としてはブチルフェニルグリシジルエーテル、溶剤としてはメチルエチルケトン、チクソトロピー性付与剤としては有機変性ベントナイトが例示できる。
電子部品封止用樹脂組成物における本発明の球状ハイドロタルサイト化合物の好ましい配合割合は、多い方が陰イオン除去の効果が大きくなる傾向があるが、多すぎても効果は頭打ちになるので、電子部品封止用樹脂組成物100質量部当たり0.01〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5質量部である。
本発明の電子部品封止用樹脂組成物は、上記の原料を公知の方法で混合することにより容易に得ることができ、例えば上記各原料を適宜配合し、この配合物を混練機にかけて加熱状態で混練し、半硬化状の樹脂組成物とし、これを室温(10〜35℃)に冷却した後、固体であれば公知の手段により粉砕し、必要に応じて打錠することにより得られるものであり、液状であれば混練するだけで使えるが、本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を用いることにより、上記の混練が容易になり、電子部品を封止する際の(溶融)流動性が向上し、微細で複雑な形状の電子部品を欠陥なく封止することができる。電子部品封止用樹脂が常温で液状の場合は液状封止材として用いられるが、同様に、低い粘度と高い流動性を与えるので、微細で複雑な形状の電子部品を欠陥なく封止することができる。本発明の電子部品封止用樹脂組成物とより好ましいのは、低粘度高流動性の効果が表れやすい液状封止材であり、その好ましい粘度は、25℃において、0.1〜100Pa・sであり、さらに好ましくは1〜10Pa・sである。
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を配合した電子部品封止用樹脂組成物は、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載したものなどに使用することができる。また、プリント回路板にも本発明の電子部品封止用樹脂組成物は有効に使用できる。本発明の電子部品封止用樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法、塗布法、注入法等、いずれを用いてもよい。
本発明の電子部品封止用樹脂組成物は、封止された電子部品が100℃以上の高温にさらされる場合に特に優れた効果を発現する。即ち、電子部品封止用樹脂組成物またはその中に含まれる各種添加剤は、高温に曝されることにより塩化物イオンや硫酸イオンなどの陰イオンを放出しやすくなり、金属電極の腐食や短絡等を引き起こして電子部品の信頼性を低下させる原因となるから、本発明のハイドロタルサイト化合物が陰イオン捕捉剤として作用することの効果が、電子部品の信頼性向上の効果として大きく表れる。当該温度が100℃以上、特に150℃以上かかる電子部品封止用樹脂組成物では、さらに効果が大きくなる。
<配線板への適用について>
ガラスクロス等にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてプリント配線基板とし、これに銅箔等を接着し、これをエッチング加工等して回路を作製して配線板を作製している。しかし近年、回路の高密度化、回路の積層化および絶縁層の薄膜化等により腐食や絶縁不良が問題となっている。配線板を作製するときに本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することによりこのような腐食を防止することができる。また、配線板用の絶縁層にも本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することにより、配線板の腐食等を防止することができる。このようなことから本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を含有する配線板は、腐食等に起因する不良品発生を抑制することができる。この配線板や配線板用の絶縁層中の樹脂固形分100質量部に対し、0.05〜5質量部の本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することが好ましい。
<接着剤への配合について>
配線板等の基板に接着剤を用いて電子部品等を実装している。このとき用いる接着剤に本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することにより、腐食等に起因する不良品発生を抑制することができる。この接着剤中の樹脂固形分100質量部に対し、0.05〜5質量部の本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することが好ましい。
配線板に電子部品等を接続するまたは配線するときに用いる導電性接着剤等に本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することにより腐食等に起因する不良を抑制することができる。この導電性接着剤とは、銀等の導電性金属を含むものが例示できる。この導電性接着剤中の樹脂固形分100質量部に対し0.05〜5質量部の本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することが好ましい。
<ワニスへの配合について>
本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を含有したワニスを用いて電気製品、プリント配線板、または電子部品等を作製することができる。このワニスとしては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とするものが例示できる。この樹脂固形分100質量部に対し0.05〜5質量部の本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することが好ましい。
<ペーストへの配合について>
銀粉等を含有させたペーストに本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することができる。ペーストとは、ハンダ付け等の補助剤として接続金属同士の接着を良くするために用いられるものである。このことにより、ペーストから発生する腐食性物の発生を抑制することができる。このペースト中の樹脂固形分100質量部に対し0.05〜5質量部の本発明の球状ハイドロタルサイト化合物を添加することが好ましい。
以下に実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
%やppmは、特に断りのない限り、それぞれ質量%、質量ppmである。
ハイドロタルサイト化合物が合成されたかどうかの確認は、リガク電機RINT2400V型粉末X線回折装置により、X線40kV/150mAの条件でCuKα線による粉末X線回折測定を行い、得られた粉末X線回折図形から確認した。また、CHN元素分析はヤナコMT−5型CHNコーダーで測定し、蛍光X線分析は(株)リガク製system3270E蛍光X線分析装置で測定し、ファンダメンタルパラメータ法で解析した。結晶水の量を、セイコー電子工業(株)製TG/DTA220型熱重量分析装置を用いて測定し、測定結果に基づいて式(1)のx,a,b,c,d,nを算出した。
[実施例1]
246.5gの硫酸マグネシウム7水和物と、126.1gの硫酸アルミニウム16水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら炭酸ナトリウム53.0gと水酸化ナトリウム60gとを1Lの脱イオン水に溶解した液を加えてpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後沈殿物をメンブランフィルターでろ過しつつ、脱イオン水を加えて、ろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、5質量%の濃度のスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、スプレードライヤー(DL−41、ヤマト科学(株)製)にて乾燥温度180℃、噴霧圧0.16MPa、噴霧速度約150mL/minで噴霧乾燥により球状粒子Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O(ハイドロタルサイト化合物A)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、ハイドロタルサイト化合物A(無機イオン捕捉剤A)の組成はMg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2Oと決定された。また、この化合物の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を図1に示す。この結果、ハイドロタルサイトのピークを有し、2θ=11.52°のピーク強度が6000cpsのものであった。
[実施例2]
256.4gの硝酸マグネシウム6水和物と、150.1gの硝酸アルミニウム9水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら炭酸ナトリウム53.0gと水酸化ナトリウム60gとを1Lの脱イオン水に溶解した液を加えてpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後沈殿物を脱イオン水でろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、5質量%の濃度のスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、スプレードライヤー(DL−41、ヤマト科学(株)製)にて乾燥温度180℃、噴霧圧0.16MPa、噴霧速度約150mL/minで噴霧乾燥により球状粒子(ハイドロタルサイト化合物B)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、ハイドロタルサイト化合物Bの組成はMg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2Oと決定された。
[実施例3]
203.3gの塩化マグネシウム6水和物と、96.6gの塩化アルミニウム9水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら炭酸ナトリウム53.0gと水酸化ナトリウム60gとを1Lの脱イオン水に溶解した液でpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後沈殿物を脱イオン水でろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、5質量%の濃度のスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、スプレードライヤー(DL−41、ヤマト科学(株)製)にて乾燥温度180℃、噴霧圧0.16MPa、噴霧速度約150mL/minで噴霧乾燥により球状粒子(ハイドロタルサイト化合物C)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、ハイドロタルサイト化合物Cの組成はMg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2Oと決定された。
[実施例4]
246.5gの硫酸マグネシウム7水和物と、105.1gの硫酸アルミニウム16水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら炭酸ナトリウム53.0gと水酸化ナトリウム60gとを1Lの脱イオン水に溶解した液でpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後沈殿物を脱イオン水でろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、5質量%の濃度のスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、スプレードライヤー(DL−41、ヤマト科学(株)製)にて乾燥温度180℃、噴霧圧0.16MPa、噴霧速度約150mL/minで噴霧乾燥により球状粒子(ハイドロタルサイト化合物D)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、ハイドロタルサイト化合物Dの組成はMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oと決定された。
[実施例5]
256.4gの硝酸マグネシウム6水和物と、125.0gの硝酸アルミニウム9水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら炭酸ナトリウム53.0gと水酸化ナトリウム60gとを1Lの脱イオン水に溶解した液でpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後沈殿物を脱イオン水でろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、5質量%の濃度のスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、スプレードライヤー(DL−41、ヤマト科学(株)製)にて乾燥温度180℃、噴霧圧0.16MPa、噴霧速度約150mL/minで噴霧乾燥により球状粒子(ハイドロタルサイト化合物E)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、ハイドロタルサイト化合物Eの組成はMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oと決定された。
[実施例6]
203.3gの塩化マグネシウム6水和物と、80.5gの塩化アルミニウム9水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら炭酸ナトリウム53.0gと水酸化ナトリウム60gとを1Lの脱イオン水に溶解した液でpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後沈殿物を脱イオン水でろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、5質量%の濃度のスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、スプレードライヤー(DL−41、ヤマト科学(株)製)にて乾燥温度180℃、噴霧圧0.16MPa、噴霧速度約150mL/minで噴霧乾燥により球状粒子(ハイドロタルサイト化合物F)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、ハイドロタルサイト化合物Fの組成はMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oと決定された。
[実施例7]
ハイドロタルサイト化合物Aを250℃で24時間加熱乾燥して、脱結晶水型の球状ハイドロタルサイト化合物(ハイドロタルサイト化合物G)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、ハイドロタルサイト化合物Gの組成はMg4.5Al2(OH)13CO3と決定された。
[実施例8]
ハイドロタルサイト化合物Dを250℃で24時間加熱乾燥して、脱結晶水型の球状ハイドロタルサイト化合物(ハイドロタルサイト化合物H)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、ハイドロタルサイト化合物Hの組成は、Mg6Al2(OH)16CO3と決定された。
[比較例1]
203.3gの塩化マグネシウム6水和物と、96.6gの塩化アルミニウム6水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら水酸化ナトリウム60gを1Lの脱イオン水に溶解した液でpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後沈殿物を脱イオン水でろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、5質量%の濃度のスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、スプレードライヤー(DL−41、ヤマト科学(株)製)にて乾燥温度180℃、噴霧圧0.16MPa、噴霧速度約150mL/minで噴霧乾燥により球状粒子(比較化合物1)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、比較化合物1の組成はMg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2Oと決定された。
[比較例2]
203.3gの塩化マグネシウム6水和物と、80.5gの塩化アルミニウム6水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら水酸化ナトリウム60gを1Lの脱イオン水に溶解した液でpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後沈殿物を脱イオン水でろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、5質量%の濃度のスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、スプレードライヤー(DL−41、ヤマト科学(株)製)にて乾燥温度180℃、噴霧圧0.16MPa、噴霧速度約150mL/minで噴霧乾燥により球状粒子(比較化合物2)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、比較化合物2の組成はMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oと決定された。
[比較例3]
246.5gの硫酸マグネシウム7水和物と、126.1gの硫酸アルミニウム16水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら炭酸ナトリウム53.0gと水酸化ナトリウム60gとを1Lの脱イオン水に溶解した液でpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後沈殿物を脱イオン水でろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、150℃で静置乾燥を行い、粉砕してハイドロタルサイト化合物(比較化合物3)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、比較化合物3の組成はMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oと決定された。
[比較例4]
比較化合物3を250℃で24時間乾燥して、脱結晶水型の球状ハイドロタルサイト化合物(比較化合物4)を得た。熱重量分析と蛍光X線分析とCHN元素分析の結果から、比較化合物4の組成はMg4.5Al2(OH)13CO3と決定された。
[比較例5]
市販のハイドロタルサイト化合物である協和化学工業(株)製DHT−4Aを比較化合物5とした。
○イオン捕捉剤の基本物性
<BET比表面積の測定>
得られたハイドロタルサイト化合物Aの比表面積をJIS Z8830「気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」により測定した。この結果を表1に示す。
同様にハイドロタルサイト化合物B,C,D,E,F、比較化合物1〜4についても比表面積を測定した。結果を表1に併せて示す。
<平均2次粒子径および粒度分布の測定>
球状ハイドロタルサイト化合物の2次粒径(メジアン径)および粒度分布の測定は球状ハイドロタルサイト化合物を脱イオン水に分散し、70Wの超音波で2分以上処理を行った後、レーザー回折式粒度分布計で測定し、結果を体積基準で解析した。具体的にはマルバーン社製レーザー回折式粒度分布測定装置「MS2000」により測定した。
<イオン交換容量の測定>
1.0gの球状ハイドロタルサイト化合物Aを100mlのポリエチレン製の瓶に入れ、更に50mlの0.1モル/リットル濃度の塩酸水溶液を投入し、密栓して40℃で24時間振とうした。その後、ポアサイズ0.1μmのメンブレンフィルターでこの溶液を濾過し、ろ液中の塩化物イオン濃度をイオンクロマトブラフィーで測定した。この塩化物イオンの値に対し、ハイドロタルサイト化合物を入れないで同様の操作を行って塩化物イオン濃度を測定した値を除したものから塩化物イオン交換容量(meq/g)を求めた。この結果を表2に示す。ハイドロタルサイト化合物B〜F、比較化合物1〜4についても同様に処理して塩化物イオン交換容量(meq/g)を求めた。これらの結果を表2に示す。
<イオンクロマトグラフィー分析条件>
測定機器:DIONEX社製 DX−300型
分離カラム :IonPac AS4A−SC(DIONEX社製)
ガードカラム:IonPac AG4A−SC(DIONEX社製)
溶離液:1.8mM Na2CO3/1.7mM NaHCO3水溶液
流量 :1.5mL/min
サプレッサー:ASRS−I(リサイクルモード)
上記記載の分析条件で、塩化物イオンを測定した。
<不純物イオン溶出量の測定>
5.0gの球状ハイドロタルサイト化合物Aを100mlのポリテトラフルオロエチレン製の密閉耐圧容器に入れ、更に50mlの脱イオン水を投入して、密閉して125℃で20時間処理を行った。冷却後、ポアサイズ0.1μmのメンブレンフィルターでこの溶液を濾過し、ろ液中の硫酸イオン、硝酸イオン、および塩化物イオン濃度をイオンクロマトグラフィー(上記記載の分析条件で、硫酸イオン以外に硝酸イオンおよび塩化物イオンを測定した。以下、同様の方法で測定した。)で測定した。また、ろ液中のナトリウムイオンとマグネシウムイオンの濃度はJIS K 0116−2003に準拠したICP発光分光分析方法により測定した。それぞれの測定値の合計を10倍した数値をイオン性不純物量(ppm)とした。この結果を表2に示す。
ハイドロタルサイト化合物B〜F、比較化合物1〜4についても同様に不純物イオン溶出量を測定した。これらの結果を表2に示す。
<上澄みの電導度の測定>
5.0gのハイドロタルサイト化合物A1を100mlのポリテトラフルオロエチレン製の密閉耐圧容器に入れ、更に50mlの脱イオン水を投入して、密閉して125℃で20時間処理を行った。冷却後、ポアサイズ0.1μmのメンブレンフィルターでこの溶液を濾過し、ろ液の電導度(μS/cm)を、電導度計で測定した。この結果を表2に示す。
ハイドロタルサイト化合物B〜F、比較化合物1〜4についても同様に上澄みの電導度を測定した。これらの結果を表2に示す。
[実施例9]
○粘度の測定およびアルミニウム配線の腐食試験
<サンプルの作製>
72部のビスフェノールエポキシ樹脂(エポキシ当量190)、28部のアミン系硬化剤(分子量252)、100部の溶融シリカ、エポキシ系シランカップリング剤1部、および0.5部のハイドロタルサイト化合物Aを配合し、これをスパーテル等でよく混合し、更に3本ロールで混合した。更にこの混合物を35℃で真空ポンプを用いて1時間脱気した。
混合した樹脂を、ガラス板に印刷された2本のアルミ配線(線幅20μm、膜厚0.15μm、長さ1000mm、線間隔20μm、抵抗値・約9kΩ)上に厚さ1mmで塗布し、120℃で硬化させた(アルミ配線サンプルA)。
<粘度測定>
混合した硬化前の樹脂について、B形粘度計を使用して、JISK7117−1により粘度を測定した(25℃)。結果を表2に示す。
<腐食試験>
作製したエポキシ被覆したアルミ配線サンプルAについてプレッシャークッカーテスト(PCT)を行った。(使用機器:楠本化成株式会社製PLAMOUNT−PM220、130℃±2℃、85%RH(±5%)、印加電圧40V、時間40時間)PCT前と後で、陽極のアルミ配線の抵抗値を測定し、抵抗値の変化率で評価した。また、アルミ配線の腐食度合いを裏面から顕微鏡で観察した。結果を表2に示す。
[実施例10]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりにハイドロタルサイト化合物Bを用いた以外は実施例9と同様に操作してアルミ配線サンプルBを作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[実施例11]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりにハイドロタルサイト化合物Cを用いた以外は実施例9と同様に操作してアルミ配線サンプルCを作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[実施例12]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりにハイドロタルサイト化合物Dを用いた以外は実施例9と同様に操作してアルミ配線サンプルDを作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[実施例13]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりにハイドロタルサイト化合物Eを用いた以外は実施例9と同様に操作してアルミ配線サンプルEを作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[実施例14]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりにハイドロタルサイト化合物Fを用いた以外は実施例9と同様に操作してアルミ配線サンプルFを作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[実施例15]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりに、ハイドロタルサイト化合物Gを用いた以外は実施例9と同様に操作してアルミ配線サンプルGを作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[実施例16]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりに、ハイドロタルサイト化合物Hを用いた以外は実施例9と同様に操作してアルミ配線サンプルHを作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[比較参考例]
ハイドロタルサイト化合物Aを使用しない以外は実施例9と同様に操作して比較参考アルミ配線サンプルを作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[比較例6]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりに比較化合物1を用いた以外は実施例9と同様に操作して比較アルミ配線サンプル1を作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[比較例7]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりに比較化合物2を用いた以外は実施例9と同様に操作して比較アルミ配線サンプル2を作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[比較例8]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりに比較化合物3を用いた以外は実施例9と同様に操作して比較アルミ配線サンプル3を作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[比較例9]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりに比較化合物4を用いた以外は実施例9と同様に操作して比較アルミ配線サンプル4を作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
[比較例10]
ハイドロタルサイト化合物Aの代わりに比較化合物5を用いた以外は実施例9と同様に操作して比較アルミ配線サンプル5を作製し、粘度測定および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2011099378
Figure 2011099378
表2から明らかなように、本発明の球状ハイドロタルサイト化合物は、液状樹脂に添加しても粘度が上昇せず、作業性を損なわない。また、本発明の電子部品封止用樹脂組成物は、アルミ配線の腐食を抑える効果が高く、信頼性の高い電子部品をもたらすものである。
また、実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた球状ハイドロタルサイト化合物の真球度を、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM−6330F型)により撮影した写真画面上で100個の2次粒子を確認し、互いに直角をなして交差する任意の2方向の直径を測定して、その差と全ての直径の測定値の平均値に対する標準偏差を算出し、平均値に対する100分率(%)を求めて真球度とした。真球度の数字が0に近いほど、真球に近いことを意味する。
各球状ハイドロタルサイト化合物(無機イオン捕捉剤A〜H、及び、比較化合物1〜5)の2次粒子における真球度(%)を、以下の表3にまとめて示す。
Figure 2011099378
本発明の球状ハイドロタルサイトは、イオン性不純物の溶出が少なく、樹脂に混合したときの粘度上昇が少ない。そして、本発明の球状ハイドロタルサイトを含む電子部品封止用樹脂組成物は、優れたアルミ配線腐食抑制効果を有するから、信頼性の高い電子部品を与えるものである。また、本発明の球状ハイドロタルサイトは陰イオン捕捉剤であるので、電気部品の封止、被覆、絶縁等の他に、塩化ビニル等の樹脂の安定剤、防錆剤等の様々な用途にも使用することができる。
図1の横軸はX線回折角度2θ(単位:°)、縦軸は回折強度(単位:cps)を示す。

Claims (13)

  1. 粉末X線回折パターンにおいてハイドロタルサイト化合物のピークを有し、BET法で測定した比表面積が30m2/g以上200m2/g以下であり、なおかつ、レーザー回折式粒度分布計で測定した体積基準の2次粒径のメジアン径が0.5μm以上6μm以下である、下記式(1)で表わされる球状ハイドロタルサイト化合物。
    (MgxZn1-xaAlb(OH)c(CO3d・nH2O (1)
    式(1)において、a、b、c、およびdは正数であり、0.5≦x≦1 であり、2a+3b−c−2d=0を満たす。また、nは水和の数を示し、0または正数である。
  2. CuKα線を用いた粉末X線回折測定において、回折角度2θ=11.4°〜11.7°の間にシャープな回折ピークを有し、40kV/150mAの測定条件では、上記の回折ピークの回折強度が2500cps以上となる、請求項1に記載の球状ハイドロタルサイト化合物。
  3. 前記式(1)において、n=0〜0.1である、請求項1または2に記載の球状ハイドロタルサイト化合物。
  4. 2次粒子における真球度が、0.01〜20%である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の球状ハイドロタルサイト化合物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の球状ハイドロタルサイト化合物と硬化性樹脂とを含む樹脂組成物。
  6. 球状ハイドロタルサイト化合物の含有量が樹脂組成物全体の0.01〜10質量%である、請求項5の樹脂組成物。
  7. 硬化性樹脂が、熱硬化性のエポキシ樹脂および/またはフェノール樹脂の中から選択され、25℃における組成物の粘度が0.1〜100Pa・sの間である、請求項5または6に記載の樹脂組成物。
  8. 電子部品封止用である、請求項5〜7のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
  9. 請求項5〜8のいずれか1つに記載の樹脂組成物により、アルミ配線を有する電子素子を封止してなる、電子部品。
  10. アルミ配線を有する電子素子が半導体チップである、請求項9に記載の電子部品。
  11. マグネシウム塩とアルミニウム塩とを所定の比で水に溶解し溶液を得る工程、
    前記溶液に炭酸イオン含有の水酸化アルカリ金属を加えて沈殿を生成させる工程、
    前記沈殿を加熱熟成し、水洗してスラリーとする工程、及び、
    前記スラリーを噴霧乾燥する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1つに球状ハイドロタルサイト化合物の製造方法。
  12. 前記マグネシウム塩が、硫酸マグネシウムであり、前記アルミニウム塩が、硫酸アルミニウムである、請求項11に記載の球状ハイドロタルサイト化合物の製造方法。
  13. 前記噴霧乾燥を100℃〜350℃の雰囲気中で行う、請求項11又は12に記載の球状ハイドロタルサイト化合物の製造方法。
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