JP2005001902A - 無機陰イオン交換体およびそれを用いた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

無機陰イオン交換体およびそれを用いた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【目的】本発明は、耐湿信頼性、および耐熱性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂などを得るのに有効な陰イオン交換体の提供、並びに、耐湿信頼性、および耐熱性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物などを提供することを課題とするものである。
【構成】ハイドロタルサイト焼成物および/またはハイドロタルサイト化合物を、金属酸化物で処理被覆することにより、吸湿性が少なく且つ陰イオン交換性能に優れた無機陰イオン交換体が得られることを見出した。さらに該陰イオン交換体を電子部品封止用エポキシ樹脂組成物等に含有させることにより、電子部品の耐湿信頼性、耐熱性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂等が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿が少なく陰イオン交換性能に優れた無機陰イオン交換体に関するものである。また、該陰イオン交換体を用いた耐湿信頼性の優れた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LSI、IC、ハイブリッドIC、トランジスタ、ダイオード、およびサイリスタやこれらのハイブリッド部品の多くは、エポキシ樹脂を用いて封止されている。このような電子部品封止剤は、原材料中のイオン性不純物または外部より侵入する水分に起因する不良を抑止すると共に、難燃性、高密着性、耐クラック性および高体積抵抗率等の電気特性等、種々の特性が要求されている。
電子部品封止剤として多用されているエポキシ樹脂は、主成分であるエポキシ化合物の他、エポキシ化合物硬化剤、硬化促進剤、無機充填物、難燃剤、顔料、およびシランカップリング剤等により構成されている。
更に、近年半導体の高集積化に伴い、ICチップ上のアルミニウム配線幅の縮小により、アルミニウムの腐食が早期に発生するようになった。この腐食は、主に、エポキシ樹脂中に浸入した水分により助長されるものである。また、配線幅の縮小により、使用中に発生する熱が多くなったため、該エポキシ樹脂に酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂、および無機水酸化物等の難燃剤が多量に配合されるようになり、これらの難燃剤成分により、アルミニウム配線の腐食が更に助長されるようになってきている。
【0003】
上記の腐食を防止するために、エポキシ樹脂に対し、耐湿信頼性を更に向上させることが要求されてきた。既に、この耐湿信頼性を高める要求に答えるために、問題となる不純物イオン特にハロゲンイオンを捕捉する目的で、無機陰イオン交換体であるハイドロタルサイト類をエポキシ樹脂等に配合する提案がなされている(例えば特許文献1、特許文献2、および特許文献3等参照)。
ハイドロタルサイト化合物は、式
Figure 2005001902
で表わされる層状化合物で(M2+は2価金属、M3+は3価金属、およびAn−は陰イオンを表わし、a、b、c、d、およびnは正数である)、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.3Al(OH)12.6CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO等の組成式で表わされるマグネシウムアルミニウムハイドロタルサイトが一般的である。この化合物は陰イオンとして水酸イオンおよび炭酸イオン等の陰イオンをすでに有しているため、陰イオン交換性能は十分とは言えない。
【0004】
このハイドロタルサイト化合物を焼成することにより、構造内の陰イオンが脱離し、
2+ 3+
で表わされる物質となる(M2+は2価金属、M3+は3価金属を表わし、x、y、およびzは正数である)。ハイドロタルサイト焼成物は、化合物内に陰イオンを含まないためハイドロタルサイト化合物に比べ陰イオン交換性能に優れる。このものは水を吸収して再び層状構造をとる。
このハイドロタルサイト焼成物をエポキシ樹脂等に配合する提案もなされている(例えば特許文献4参照)。このものは陰イオン交換性能に優れ、電子部品の耐湿信頼性向上に有効であるものの、吸湿性が非常に高く、空気中においても吸湿しやすいため、電子部品中で吸湿、および吸湿に伴なう体積増加がある。よって、はんだバスやリフロー装置処理等で高温にさらされた時等に、基板等の熱膨張係数の違いによって発生する熱応力や、吸湿水分が気化して発生する蒸気圧によって、素子、リードフレーム等のインサート品と封止用成形材料との間で剥離が発生し、パッケージクラック、チップ損傷等の原因になる恐れがある。
【0005】
プリント配線板に用いるエポキシ樹脂に陽イオン交換体、陰イオン交換体、両イオン交換体等の無機イオン交換体を配合したものが知られている(例えば特許文献5参照)。
アラミド繊維にエポキシ樹脂あるいはポリフェニレンオキサイド樹脂とイオン捕捉剤を含有させたプリント基板が知られている。このイオン捕捉剤は、イオン交換樹脂や無機イオン交換体が例示されていて、無機イオン交換体としては、アンチモン−ビスマス系のものやジルコニウム系のものが記載されている(例えば特許文献6参照)。
イオン捕捉剤が含有した絶縁ワニスが知られていて、この絶縁ワニスを用いて多層プリント配線板を作製している。このイオン捕捉剤としては、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、水和五酸化アンチモン、リン酸ジルコニウム、およびハイドロタルサイト等が例示されている(例えば特許文献7参照)。
多層配線板用の接着フィルムに無機イオン吸着体を配合しているものが知られている。この無機イオン吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、水和五酸化アンチモン、リン酸ジルコニウム、およびハイドロタルサイト等が例示されている(例えば特許文献8参照)。
イオントラップ剤を含有させたエポキシ樹脂接着剤が知られている。このイオントラップ剤として、陰イオン交換体または陽イオン交換体が例示されている(例えば特許文献9参照)。
イオン捕捉剤と銀粉等を含有させた導電性エポキシ樹脂ペーストが知られている。このイオン捕捉剤としては、水和硝酸ビスマス、マグネシウムアルミニウムハイドロタルサイト、酸化アンチモン等が例示されている(例えば特許文献10参照)。
これらに記載のイオン交換体・イオン捕捉剤の中で、ハイドロタルサイトが記載されているものがあるが、これらはそのままのものまたは焼成体を用いている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−252451号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭64−64243号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開昭60−40124号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭60−42418号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平05−140419号公報(特許請求の範囲、1頁)
【特許文献6】
特開平09−314758号公報(特許請求の範囲、4頁)
【特許文献7】
特開平10−287830号公報(特許請求の範囲、3頁)
【特許文献8】
特開平10−330696号公報(特許請求の範囲、6頁)
【特許文献9】
特開平10−013011号公報(特許請求の範囲、2頁)
【特許文献10】
特開平10−007763号公報(特許請求の範囲、3頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐湿信頼性、および耐熱性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂等を得るのに有効な陰イオン交換体の提供、並びに、耐湿信頼性、および耐熱性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物などを提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、式(1)で表されるハイドロタルサイト焼成物および/または式(2)で表されるハイドロタルサイト化合物を、金属酸化物で処理被覆することにより、吸湿性が少なく且つ陰イオン交換性能に優れた無機陰イオン交換体が得られることを見出した。さらに該陰イオン交換体を電子部品封止用エポキシ樹脂組成物等に含有させることにより、電子部品の耐湿信頼性、耐熱性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂等が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
Figure 2005001902
式(1)のM2+は2価金属、M3+は3価金属を表わし、xおよびyは正数である。
Figure 2005001902
式(2)のM2+は2価金属、M3+は3価金属を表わし、x、y、z、d、およびnは正数である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
○ハイドロタルサイト焼成物
本発明で用いられるハイドロタルサイト焼成物は、上記式(1)で表わされるものである。
式(1)のM2+としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、および銅等が挙げられ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ニッケル、マンガン、銅、またはコバルトが好ましく、マグネシウムまたは亜鉛が特に好ましい。
式(1)のM3+としてはアルミニウム、鉄、クロム、コバルト、マンガン、ニッケル、ランタン、バナジウム、ガドリニウム、およびインジウム等が挙げられ、アルミニウム、鉄、またはコバルトが好ましく、アルミニウムまたは鉄が特に好ましい。
式(1)のxとyとはそれぞれ正数であり、M2+およびM3+の種類によりそれぞれ好ましい値がある。
【0011】
本発明で用いられるハイドロタルサイト焼成物は、ハイドロタルサイト化合物を焼成することにより得ることができる。焼成温度は400〜900℃が好ましく、500〜700℃が特に好ましい。
ハイドロタルサイト化合物は、式(2)で表されるものであり、最も好ましい化合物としてアルミニウムマグネシウムハイドロタルサイトがある。
式(1)で表されるハイドロタルサイト焼成物は、式(2)で表されるハイドロタルサイト化合物を約400℃以上で焼成して得られる化合物である。
ハイドロタルサイト化合物としては、
Mg4.5Al(OH)13CO・3.5H
Zn4.5Al(OH)13CO・3.5H
Ni4.5Al(OH)13CO・3.5H
Mg4.5Fe(OH)13CO・3.5H
MgAl1.5(OH)12.5CO・3.5H
MgAl(OH)16CO・4H
Mg4.3Al(OH)12.6CO・4H
等が挙げられる。
これらを焼成したハイドロタルサイト焼成物として、
Mg0.7Al0.31.15
Zn0.7Al0.31.15
Ni0.7Al0.31.15
Mg0.7Fe0.31.15
Mg0.8Al0.241.16
Mg0.9Al0.31.35
Mg0.6Al0.31.05
等が挙げられる。
【0012】
○金属塩溶液/金属アルコキシド
ハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物を被覆する金属酸化物としては特に限定はない。この金属酸化物としては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも1種以上のものである。
ハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物を金属酸化物で被覆する方法としては特に限定はない。具体的には、式(1)で表されるハイドロタルサイト焼成物および/または式(2)で表されるハイドロタルサイト化合物を、金属塩溶液および/または金属アルコキシド溶液で処理した後、加熱するものが例示できる。
【0013】
金属塩溶液の金属としては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、またはアルミニウムのものが好ましく、更に好ましくはケイ素、チタン、ジルコニウム、またはアルミニウムであり、特に好ましくはケイ素、チタン、またはジルコニウムである。この金属塩溶液としては、水溶液でもまたはゾル溶液でも良い。
この金属塩溶液としては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、またはアルミニウムのオキソ酸のアルカリ金属塩、ハロゲン化物、または酸化物などが例示できる。
【0014】
金属アルコキシドとしては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、またはアルミニウムのものが好ましく、ケイ素、チタン、ジルコニウム、またはアルミニウムのものが特に好ましい。
金属アルコキシドの具体例としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、チタンテトライソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド、およびジルコニウムテトライソプロポキシド等が挙げられ、テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランが取り扱いやすく好ましい。
【0015】
金属塩溶液および/または金属アルコキシドを用いてハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物を被覆する方法は特に限定されない。
例えば、ハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物を金属塩溶液中に分散させ、ろ過、洗浄、乾燥、焼成する方法が例示できる。
また、ハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物を金属塩溶液中に分散させ、水酸化ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ性物質を添加して金属酸化物もしくは金属水酸化物を析出させた後、ろ過、洗浄、乾燥、焼成する方法が例示できる。
また、ハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物を金属塩溶液中に分散させ、尿素、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン化合物を添加して加熱することにより、これに金属酸化物もしくは金属水酸化物を析出させた後、ろ過、洗浄、乾燥、焼成する方法が例示できる。
また、ハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物を金属アルコキシド溶液中に分散させ、酸、アルカリ、または水を添加、あるいは加熱することにより金属アルコキシドを加水分解させて金属酸化物もしくは金属水酸化物を析出させた後、ろ過、洗浄、乾燥、焼成する方法が例示できる。
また、ハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物に金属アルコキシドあるいは金属アルコキシド溶液を添加、混合した後、加熱して金属酸化物もしくは金属水酸化物を析出させる方法が例示できる。
また、ハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物を、シリカゾル、アルミナゾルなどの金属酸化物もしくは金属水酸化物のゾル溶液中に分散させ、ろ過、洗浄、乾燥、焼成する方法が例示できる。
また、ハイドロタルサイト化合物および/またはハイドロタルサイト焼成物にシリカゾル、アルミナゾルなどの金属酸化物もしくは金属水酸化物のゾル溶液を添加、混合した後、乾燥、焼成する方法が例示できる。
【0016】
本発明の陰イオン交換体は、主に電子部品封止用エポキシ樹脂組成物に用いられるため、イオン性の不純物はできるだけ含まないほうがよい。金属塩溶液を用いる場合、塩が副生するため、それを十分洗浄除去することが好ましい。金属アルコキシドは、塩の生成がないか、もしくは少量であるため、金属塩溶液に比べ好ましい。また、金属酸化物もしくは金属水酸化物のゾルもイオン性の不純物が少なく好ましい。
【0017】
ハイドロタルサイト化合物を金属塩溶液、金属アルコキシド、金属酸化物および/または金属水酸化物で処理したものは、400〜900℃で焼成ることが好ましく、500〜700℃が特に好ましい。
ハイドロタルサイト焼成物を金属塩溶液、金属アルコキシド、金属酸化物および/または金属水酸化物で処理したものは、50〜900℃で焼成ることが好ましく、100〜700℃が特に好ましい。
【0018】
○電子部品封止用エポキシ樹脂組成物
本発明の無機イオン交換体を含有する電子部品封止用エポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、硬化可能なものであれば特に種類は問わずいずれのものも使用できる。例えば、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、および脂環式エポキシ樹脂等、いずれも成形材料として用いられているものが例示できる。また、本発明のエポキシ樹脂の耐湿性を高めるためには、エポキシ樹脂として、塩化物イオン含有量が10ppm以下、加水分解性塩素含有量が1000ppm以下のものを用いることが望ましい。
【0019】
本発明における硬化剤はエポキシ樹脂組成物の硬化剤として知られているものをいずれも使用可能であり、好ましい具体例として、酸無水物、アミン系硬化剤、およびノボラック系硬化剤等がある。
【0020】
本発明における硬化促進剤はエポキシ樹脂組成物の硬化促進剤として知られているものをいずれも使用可能であり、好ましい具体例として、アミン系、リン系、およびイミダゾール系の促進剤等がある。
【0021】
本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物は、更に必要に応じて、無機充填物、難燃剤、無機充填物用カップリング剤、着色剤、および離型剤等の成分を添加することもできる。これらの成分はいずれも成形用エポキシ樹脂に配合する成分として知られたものである。
無機充填物の好ましい具体例として、結晶性シリカ粉、石英ガラス粉、熔融シリカ粉、アルミナ粉、およびタルク等が挙げられ、中でも結晶性シリカ粉、石英ガラス粉、および熔融シリカ粉が安価で好ましい。難燃剤の例としては、酸化アンチモン、ハロゲン化エポキシ樹脂、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、赤燐系化合物、およびリン酸エステル系化合物等があり、カップリング剤の例としては、シラン系およびチタン系等があり、離型剤の例としては、脂肪族パラフィンおよび高級脂肪族アルコール等の各種ワックスがある。
【0022】
本発明の無機陰イオン体の好ましい配合割合は、電子部品封止用エポキシ樹脂組成物100部当たり0.1〜10部であり、より好ましくは1〜5部である。0.1部未満では、耐湿信頼性を高める効果が小さく、一方10部を越えても、効果は最早向上することがなく、逆にコストアップにつながるので好ましくない。
【0023】
本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物は、上記の原料を公知の方法で混合することにより容易に得ることができる。例えば上記各原料を適宜配合し、この配合物を混練機にかけて加熱状態で混練し、半硬化状の樹脂組成物とし、これを室温に冷却した後、公知の手段により粉砕し、必要に応じて打錠することにより得られるものである。
【0024】
本発明の無機陰イオン交換体に対し無機陽イオン交換体を併用することにより、本発明の無機陰イオン交換体の陰イオン捕捉能を増加させ、且つ陽イオン性イオンの捕捉効果を期待することができる。
本発明の無機陰イオン交換体と無機陽イオン交換体との配合比は、特に限定はないが、質量比で100:0〜20:80が好ましい。本発明の無機陰イオン交換体と無機陽イオン交換体との配合は、電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を作製する際に別個に配合してもよく、これらを予め均一に混合してから行うこともできる。好ましくは混合物を用いるものである。このようにすることにより、これらの成分を併用する効果をさらに発揮させることができるからである。
【0025】
無機陽イオン交換体の具体例として、アンチモン酸(五酸化アンチモン水和物)、ニオブ酸(五酸化ニオブ水和物)、マンガン酸化物、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズ、リン酸セリウム、ゼオライト、および粘土鉱物等が挙げられ、アンチモン酸(五酸化アンチモン水和物)、リン酸ジルコニウム、およびリン酸チタンが好ましい。
【0026】
○電子部品用封止剤への配合
LSI、IC、ハイブリッドIC、トランジスタ、ダイオード、およびサイリスタやこれらのハイブリッド部品等の封止剤に本発明の無機陰イオン交換体を添加することにより、封止剤中に存在する不純イオンや加水分解性イオンを捕捉することができる。このことから本発明の無機陰イオン交換体を含有する電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を用いてLSI、IC、ハイブリッドIC、トランジスタ、ダイオード、またはサイリスタやこれらのハイブリッド部品等の電子部品を作製することができる。この電子部品封止用エポキシ樹脂組成物に無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【0027】
○配線板への適用について
エポキシ樹脂等の熱硬化性を用いてプリント配線基板とし、これに銅箔等を接着し、これをエッチング加工等して回路を作製して配線板を作製している。しかし近年、回路の高密度化、回路の積層化および絶縁層の薄膜化等により腐蝕や絶縁不良が問題となっている。
これを防止するために、配線板を作製するときに本発明の無機陰イオン交換体を添加することにより、腐食を防止することができる。また、配線板用の絶縁層にも本発明の無機陰イオン交換体を添加することにより、配線板の腐蝕等を防止することができる。このようなことから、本発明の無機陰イオン交換体を含有する配線板は、腐蝕等に起因する不良品発生を抑制することができる。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【0028】
○接着剤への配合について
配線板等の基板に接着剤を用いて電子部品等を実装している。このとき用いる接着剤に本発明の無機陰イオン交換体を添加することにより、腐蝕等に起因する不良品発生を抑制することができる。この接着剤中の樹脂固形分100部に対し0.1〜5部の本発明の無機陰イオン交換体を添加することか好ましい。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
配線板に電子部品等を接続するまたは配線するときに用いる伝導性接着剤等に本発明の無機陰イオン交換体を添加することにより、腐蝕等に起因する不良を抑制することができる。この伝導性接着剤とは、銀等の伝導性金属を含むものが例示できる。この伝導性接着剤中の樹脂固形分100部に対し0.1〜5部の本発明の無機陰イオン交換体を添加することか好ましい。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【0029】
○ワニスへの配合について
本発明の無機陰イオン交換体を含有したワニスを用いて電気製品、プリント配線板、または電子部品等を作製することができる。このワニスとしては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とするものが例示できる。この樹脂固形分100部に対し0.1〜5部の本発明の無機陰イオン交換体を添加することか好ましい。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【0030】
○ペーストへの配合について
銀粉等を含有させたペーストに本発明の無機陰イオン交換体を添加することができる。このことにより、ペーストから発生する腐食性物の発生を抑制することができる。このペースト中の樹脂固形分100部に対し0.1〜5部の本発明の無機陰イオン交換体を添加することか好ましい。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【0031】
○実施態様
ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも1種以上のものである金属塩溶液および/またはケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも1種以上のものである金属アルコキシド溶液で処理してなる無機陰イオン交換体。
ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも1種以上のものである金属塩溶液で処理してなる無機陰イオン交換体。
ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも1種以上のものである金属アルコキシド溶液で処理してなる無機陰イオン交換体。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。Mはモル濃度を示し、%は質量%を示し、部は質量部を示す。
【0033】
<合成例1>
組成式がMg4.5Al(OH)13CO・3.5HO[MAHと称する]で表わされるハイドロタルサイト化合物を550℃で2時間焼成し、Mg0.7Al0.31.15の組成で表わされるハイドロタルサイト焼成物[tMAHと称する]を得た。
【0034】
<合成例2>
組成式Ni4.5Al(OH)13CO・3.5HOで表わされるハイドロタルサイト化合物を550℃で2時間焼成し、Ni0.7Al0.31.15の組成で表わされるハイドロタルサイト焼成物[tNAHと称する]を得た。
【0035】
<合成例3>
組成式Zn4.5Al(OH)13CO・3.5HOで表わされるハイドロタルサイト化合物を550℃で2時間焼成し、Zn0.7Al0.31.15の組成で表わされるハイドロタルサイト焼成物[tZAHと称する]を得た。
【0036】
<実施例1>
100gのtMAHを、0.1M−メタケイ酸ナトリウム水溶液2000ml中に添加し、90℃で4時間攪拌後、ろ過・水洗する。これを、乾燥後、550℃で2時間焼成することにより無機陰イオン交換体を得た(化合物1)。
この化合物1を150℃で4時間加熱した後、大気中に放置し、経時的に質量を測定することにより吸湿性を調べた。また、イオン交換性能も調べた。この方法は、化合物1gを0.1M−塩酸50mlに添加し、40℃で24時間攪拌後、ろ過し、ろ液中の塩化物イオン濃度を測定することより求めた。
これらの結果を表1に記載した。
【0037】
<実施例2>
100gのtMAHを、10%チタンテトライソプロポキシドイソプロパノール溶液160g中に添加した。この溶液に、水を10ml添加し、1終夜攪拌し、ろ過・水洗した。これを3日間風乾後、550℃で2時間焼成することにより無機陰イオン交換体を得た(化合物2)。
この化合物2の評価は実施例1記載の方法に従って行った。これらの結果を表1に記載した。
【0038】
<実施例3>
100gのtMAHを、テトラメトキシシラン10%メタノール溶液160gに添加し、1夜攪拌、1日間風乾後、550℃で2時間焼成することにより無機陰イオン交換体を得た(化合物3)。
この化合物3の評価は実施例1記載の方法に従って行った。これらの結果を表1に記載した。
【0039】
<実施例4>
100gのtMAHをミキサ−で攪拌しながら、テトラメトキシシラン16gに添加した。さらに攪後したのち、1日間風乾し、550℃で2時間焼成することにより無機陰イオン交換体を得た(化合物4)。
この化合物 の評価は実施例1記載の方法に従って行った。これらの結果を表1に記載した。
【0040】
<実施例5>
100gのtNAHを、0.1M−オキシ塩化ジルコニウム水溶液2000ml中に添加し、0.1M−アンモニア水溶液でpH8に調整した。この溶液を1終夜攪拌し、ろ過・水洗した。これを、乾燥後、550℃で2時間焼成することにより無機陰イオン交換体を得た(化合物5)。
この化合物5の評価は実施例1記載の方法に従って行った。これらの結果を表1に記載した。
【0041】
<実施例6>
100gのtZAHを、テトラエトキシシラン10%エタノール溶液160gに添加し、1夜攪拌、1日間風乾後、550℃で2時間焼成することにより陰イオン交換体を得た(化合物6)。
この化合物6の評価は実施例1記載の方法に従って行った。これらの結果を表1に記載した。
【0042】
<実施例7>
100gのMAHを、0.1M−メタケイ酸ナトリウム水溶液2000ml中に添加し、90℃で4時間攪拌後、ろ過・水洗する。これを、乾燥後、550℃で2時間焼成することにより無機陰イオン交換体を得た(化合物7)。
この化合物7の評価は実施例1記載の方法に従って行った。
【0043】
<実施例8>
100gのMAHを、10%チタンイソプロポキシドイソプロパノール溶液160g中に添加した。この溶液に、水を10ml添加し、1終夜攪拌し、ろ過・水洗した。これを3日間風乾後、550℃で2時間焼成することにより無機陰イオン交換体を得た(化合物8)。
この化合物8の評価は実施例1記載の方法に従って行った。
【0044】
<実施例9>
100gのZAHをミキサ−で攪拌しながら、テトラメトキシシラン16gに添加した。さらに攪後したのち、1日間風乾し、550℃で2時間焼成することにより無機陰イオン交換体を得た(化合物9)。
この化合物9の評価は実施例1記載の方法に従って行った。
【0045】
【表1】
Figure 2005001902
【0046】
表1から分かるように本発明の無機陰イオン交換体は、ハイドロタルサイト焼成物より若干陰イオン交換量は低いものの、吸湿性が低く、且つハイドロタルサイト化合物より陰イオン交換性能に優れ、電子部品封止用エポキシ樹脂組成物等に用いるのに優れた陰イオン交換体であることがわかる。
【0047】
<実施例10>
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量235)を80部、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量275)を20部、フェノールノボラック樹脂(分子量700〜1000)を50部、トリフェニルホスフィンを2部、カルバナワックスを1部、カーボンブラックを1部、および溶融シリカを370部に合成例2の化合物2を5部配合し、これらを80℃〜90℃の熱ロールで3〜5分間混練りした後、冷却し、粉砕して、粉末状エポキシ樹脂組成物を得た。これらについて100メッシュの篩で処理し、通過部の試料を用いて、成型条件170℃、3分間の設定で、アルミニウム配線が接続されている耐湿信頼性評価用素子を封止した。
この封止された素子に対して125℃でプレッシャークッカー試験を実施し、断線の起こる時間を測定した。なお、この試験は、サンプル数50で行い、その平均値を求めた。また、封止した素子を最高温度245℃のIRリフロー炉で加熱処理し外観を観察した。これらの結果を表2に示した。
【0048】
<実施例11>
実施例10の化合物2の替わりに化合物3を用いた以外は同様に操作して評価サンプルを作製した。そして、同様に評価し、この結果を表2に記載した。
【0049】
<実施例12>
実施例10の化合物2の替わりに化合物4を用いた以外は同様に操作して評価サンプルを作製した。そして、同様に評価し、この結果を表2に記載した。
【0050】
<実施例13>
実施例10の化合物2の替わりに化合物5を用いた以外は同様に操作して評価サンプルを作製した。そして、同様に評価し、この結果を表2に記載した。
【0051】
<実施例14>
実施例10の化合物2の替わりに化合物6を用いた以外は同様に操作して評価サンプルを作製した。そして、同様に評価し、この結果を表2に記載した。
【0052】
<実施例15>
実施例10の化合物2の替わりに化合物4と無機陽イオン交換体であるアンチモン酸とを用いた(質量比は5:5)以外は同様に操作して評価サンプルを作製した。そして、同様に評価し、この結果を表2に記載した。
【0053】
<実施例16>
実施例10の化合物2の替わりに化合物5と無機陽イオン交換体であるリン酸ジルコニウムとを用いた(質量比は7:3)以外は同様に操作して評価サンプルを作製した。そして、同様に評価し、この結果を表2に記載した。
【0054】
<比較例3>
実施例10の化合物2の替わりにMAHを用いた以外は同様に操作して評価サンプルを作製した。そして、同様に評価し、この結果を表2に記載した。
【0055】
<比較例4>
実施例10の化合物2の替わりにtMAHを用いた以外は同様に操作して評価サンプルを作製した。そして、同様に評価し、この結果を表2に記載した。
【0056】
<比較例5>
実施例10において化合物2を用いない以外は同様に操作して評価サンプルを作製した。そして、同様に評価し、この結果を表2に記載した。
【0057】
【表2】
Figure 2005001902
【0058】
<実施例17>
エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂60部、反応性希釈剤としてブチルフェニルグリシジルエーテル30部、硬化剤としてのエポキシ・アミン付加反応物20部、チクソトロピー性付与剤として有機変性ベントナイト1部、無機充填材としてタルク32部、合成ゼオライト8部、赤色顔料0.5部、および化合物9を3部を混合し、三本ロールを用いて樹脂中に固体粒子を均一に分散させ、表面実装用接着剤組成物を得た。このようにして調製した組成物について、絶縁信頼性、曳糸性、塗布形状、接着性、およびゲルタイムの各項目を評価し、結果を表3に記載した。
【0059】
<比較例6>
実施例17記載の表面実装用接着剤組成物において化合物9を添加しないものを同様に作製した。そして、実施例17と同様に評価を行い、表3に結果を記載した。
【0060】
○絶縁信頼性
実施例17および比較例6で調製した表面実装用接着剤組成物の硬化物について表面絶縁抵抗値をJIS−Z−3197に準じて測定した。
即ち、II型の櫛形基板に前期組成物をスクリーン印刷法により、膜厚が100〜150μmになるように塗布し、150℃において10分間加熱して硬化させた。微小電流測定器を用い、得られた未処理基板の絶縁抵抗値を測定した(A値)。続いて、この基板を2時間水中煮沸した後、25℃、60%RHの環境下で約1時間放置し再度絶縁抵抗値を測定した(B値)。評価は、A/B≦10を「○」、10<A/B≦10を「△」、10<A/Bを「×」とした。この結果を表3に記載した。
【0061】
○曳糸性
ソルダーレジストを全面に印刷、硬化させたガラスエポキシ基板(FR−4)にディスペンサーを用いて、実施例17および比較例6で作製した接着剤組成物を1点あたり0.15mg、塗布速度1点あたり50msecで連続1000点の塗布試験を行ない、曳糸性による基板の汚れが1ヶ所でも存在するものを「×」、1ヶ所もないものを「○」とした。
【0062】
○塗布形状
上記曳糸性の評価において塗布した接着剤組成物の形状は円錐形となるが、この円錐の底面の直径Dと、円錐の高さHをマイクロスコープで観察し測定した。高さと直径の比H/Dが0.5以下のものを「×」、0.5〜1.5の範囲のものを「○」、1.5以上のものを「△」とした。
【0063】
○接着性
曳糸性の評価と同様、ソルダーレジストを表面に印刷、硬化させたガラスエポキシ基板に2125抵抗体チップを接着し、1個のチップを引きはがすために要する力をプッシュプルゲージにより測定した。即ち、実施例17および比較例6で作製した接着剤組成物をチップ1個あたり0.3mg塗布し、150℃のオーブン中で3分加熱して硬化させたものを用いた。
【0064】
○ゲルタイム
150℃の熱板上で0.3±0.05gの実施例17および比較例6で作製した接着剤組成物を加熱し、流動状態が消失してゲル化に至るまでの時間(秒)を測定した。
【0065】
【表3】
Figure 2005001902
【0066】
<実施例18>
液晶シール材を次の組成と工程で調製した。エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製、商品名:アラルダイトAER−2502)100部、硬化剤としてエポキシ・アミンアダクト体(旭化成工業(株)製、商品名:ノバキュアHX−3721)40部、充填材として酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:タイペークR−630)60部、コロイダルシリカ(日本アエロジル工業(株)製、商品名:アエロジルR−974)5部、無機イオン交換体であるアンチモン酸を1部、化合物6を2部をダルトンミキサーにより40℃に加熱し、30分間撹拌して混合した。その後、三本ロールによるミーリングを5回行い、グラインドゲージにより内容物の粒径が5μm以下であることを確認し、粒径が5μmのシリカスペーサーを1.5部加えて均一に分散させ、液晶シール材としての組成物を得た。
こうして得た液晶シール材を、ITO(透明電極)が形成されたガラス基板に液晶封入口を残してスクリーン印刷によりシール部に印刷した。次に80℃に加熱して3分間保持して、予備乾燥と基板への融着を行なった後、室温に戻した。次に対極側のガラス基板を合わせ、130℃に加熱した熱プレスで10分圧着し、シール材を硬化させた。こうして得た空パネルを真空吸引した後、液晶(メルク社製、ZL11636)を注入し、封入口をシール材で封口し、硬化させて液晶パネルを得た。
この液晶パネルの液晶配向性、およびメモリ性(透過光強度をパルス電圧の印加直後の強度に対して、経時的に保持できる割合、不純物が存在すると下がる。)を評価した。液晶配向性は、電圧を印加せずに該液晶パネルを80℃に加熱し、偏光板を介して見た場合のシール材近傍に発生する黒い帯の巾を目視することによって評価した。巾が0.5mm以下の場合を「○」、0.5〜1mmを「△」、1mmを超える巾を「×」とした。結果を表4に示した。
【0067】
<比較例7>
実施例18の組成物にアンチモン酸及び化合物6を添加せずに同様にして液晶シール材組成物を作製した。そして実施例18と同様にして評価し、この結果を表7に記載した。
【0068】
【表4】
Figure 2005001902
【0069】
<実施例19>
化合物9を、エポキシ当量450〜500のビスフエノールA型エポキシ樹脂100部に対して、5部添加し、更にエポキシ硬化剤としてジシアンジアミド4部、反応促進剤としてベンジルジメチルアミン0.4部、溶剤(メチルエチルケトン)60部を加え、撹件混合して含浸用樹脂ワニスを作製した。次に厚さ0.2mmの低アルカリ電気用ガラス布に先に作製した樹脂ワニスを含浸させた。この後、160℃で5分間乾操しプリプレグを作製した。このプリプレグを50mm×50mmの寸法にカツトし、6枚重ね合わせて、初期条件が30kg/cm、160℃、15分間、その後70kg/cm、165℃、1時間加熱プレスすることにより、樹脂とガラス布基材の体積分率50:50、厚み約1.6mmの積層板を得た。
銀ペースト(藤倉化成株式会社製ド−タイトXA208)をスクリーン印刷法にて、積層板に塗布し、130℃で1時間加熱硬化させることにより、2つの向かい合う櫛形をしたプリント配線された導体(電極)を形成した。この電極間の最短距離はいずれも1mmであり、厚みは約20μmである。エレクトロマイグレーション現象の発生を防止する効果を評価するため、この2つの櫛形電極間にl00Vの直流電圧を印加すると共に、40℃、95%RHに保ち、電極間の絶縁抵抗値がl0Ω以下となつた時間を短絡に到った時間として測定した。
この結果、短絡に到った時間は3000時間以上であった。
【0070】
<比較例8>
実施例19の樹脂ワニスに化合物9を添加せずに同様に操作して樹脂ワニスを作製し、そして積層板を作製した。この積層板に対して、実施例19と同様に評価を行った結果、短絡に到った時間は160時間であった。
【0071】
【発明の効果】
本発明の無機陰イオン交換体は吸湿性が少なく且つ陰イオン交換性能に優れ、該イオン交換体を添加した電子部品封止用エポキシ樹脂等は、封止した配線等の防食効果および耐熱性に優れている。このことから、本発明の無機陰イオン交換体を含有するものを用いたものは、電子部品等の不良品発生を抑制することができる。

Claims (9)

  1. 式(1)で表されるハイドロタルサイト焼成物および/または式(2)で表されるハイドロタルサイト化合物を、金属酸化物で被覆してなる無機陰イオン交換体。
    Figure 2005001902
    (式(1)のM2+は2価金属、M3+は3価金属を表わし、xおよびyは正数である。)
    Figure 2005001902
    (式(2)のM2+は2価金属、M3+は3価金属を表わし、x、y、z、d、およびnは正数である。)
  2. 式(1)および式(2)のM2+がマグネシウム、カルシウム、亜鉛、ニッケル、マンガン、銅、およびコバルトの群から選ばれる少なくとも1種以上であり、並びに式(1)および式(2)のM3+がアルミニウムおよび鉄の群から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1記載の無機陰イオン交換体。
  3. 金属酸化物がケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも1種以上のものである請求項1または請求項2に記載の無機陰イオン交換体。
  4. 式(1)で表されるハイドロタルサイト焼成物および/または式(2)で表されるハイドロタルサイト化合物を、金属塩溶液および/または金属アルコキシド溶液で処理した後、加熱してなる請求項1〜3にそれぞれ記載の無機陰イオン交換体の製造方法。
  5. 無機陽イオン交換体を含有することもある、請求項1〜3にそれぞれ記載の無機陰イオン交換体を含有する電子部品封止用エポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項5記載の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる電子部品封止用エポキシ樹脂。
  7. 請求項5記載の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物により素子を封止してなる電子部品。
  8. 無機陽イオン交換体を含有することもある、請求項1〜3にそれぞれ記載の無機陰イオン交換体を含有するワニス、接着剤、またはペースト。
  9. 請求項8記載のワニス、接着剤、またはペーストを含有する製品。
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