JPWO2011034055A1 - プリプレグ - Google Patents

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Abstract

難燃性、及び耐熱性に優れる電子材料用プリプレグを提供する。本発明に係るプリプレグは、平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ、CaO含量が5質量%以上であるガラス組成フィラー、ガラスクロス、及びマトリックス樹脂からなるプリプレグであって、該ガラス組成フィラーと該マトリックス樹脂の合計体積に対する該ガラス組成フィラーの充填量が10vol%以上70vol%以下であることを特徴とする。

Description

本発明は、ガラス組成フィラー、ガラスクロス、及びマトリックス樹脂からなる電子材料用プリプレグに関する。より詳しくは、本発明は、平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ、CaO含量が5質量%以上であるガラス組成フィラー、ガラスクロス、及びマトリックス樹脂からなるプリプレグであって、該プリプレグ中の該ガラス組成フィラーの含量が10vol%以上70vol%以下であることを特徴とする前記プリプレグに関する。
電子機器用プリント配線板の絶縁材料として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(以下、「マトリックス樹脂」ともいう。)、無機物フィラー充填剤(以下、「無機フィラー」ともいう。)、及びガラスクロスからなるプリプレグが広く使用されている。このプリプレグを複数枚重ね、加熱加圧条件下で硬化成型することにより積層板が得られる。
現在、電子機器のモバイル化、デジタル化に伴い、プリント配線板の高密度化が進み、従来以上に優れた耐熱性、絶縁信頼性、剛性が要求されるようになっている。近年、特に、配線板の薄型化、高剛性化の要求が高まり、そのため、マトリックス樹脂中に無機フィラーを高充填化し、高剛性化した商品が開発されてきた。
また、環境負荷の小さい商品の要求が高まっており、従来のハロゲン系難燃剤を含まない材料として、無機フィラーやリン系難燃剤、及びそれらを併用した商品が主流になってきている。
無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、酸化チタンなどが挙げられるが、特に耐熱性、絶縁信頼性、難燃性の点で、プリント配線板にはシリカが広く使用されている。実際にシリカフィラー、及び水酸化アルミニウムを応用した多くのプリプレグ、積層板例が報告されている(以下の特許文献1参照)。
一方、シリカをマトリックス樹脂に高充填した場合、配線板の剛性は向上するものの、加工性が著しく低下するという問題が生じる。この問題に対し、加工性に優れた、Eガラス組成からなるガラス組成フィラーを充填したプリプレグが提案されている(以下の特許文献2参照)。また、ガラス組成フィラーの製造方法としては、ガラス繊維を脆化した後、乾式で粉砕する方法が提案されている(以下の特許文献3参照)。しかしながら、従来技術のガラス組成フィラーの粒子径、粒度分布等では、該ガラス組成フィラーがガラスクロスに含浸せず、配線板の十分な難燃性を得ることが困難である。
特開2009−155398号公報 特開2008−222986号公報 特開2003−192387号公報
本発明が解決しようとする課題は、難燃性、及び耐熱性に優れる電子材料用プリプレグを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、実験を重ねた結果、平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ、CaO含量が5質量%以上であるガラス組成フィラーを、10vol%以上70vol%以下の含量で用いたプリプレグから作製された積層板は、優れた難燃性、及び耐熱性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明は以下の通りである。
[1] 平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ、CaO含量が5質量%以上であるガラス組成フィラー、ガラスクロス、及びマトリックス樹脂からなるプリプレグであって、該ガラス組成フィラーと該マトリックス樹脂の合計体積に対する該ガラス組成フィラーの充填量が10vol%以上70vol%以下であることを特徴とする前記プリプレグ。
[2] 前記ガラス組成フィラーの比表面積が1m2/g以上20m2/g以下である、前記[1]に記載のプリプレグ。
[3] 前記ガラスクロスの平均モノフィラメント径が7μm以下である、前記[1]又は[2]に記載のプリプレグ。
[4]前記ガラスクロスの通気度が50cm3/cm2/sec以下である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のプリプレグ。
[5]前記ガラス組成フィラーのガラス組成がEガラス又はLガラスである、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のプリプレグ。
[6]前記ガラス組成フィラーの表面が、下記一般式(1):
XSi(R)3-nn (1)
{式中、Xは、有機官能基であり、Yは、アルコキシ基であり、nは、1〜3の整数であり、そしてRは、メチル基、エチル基又はヒドロキシル基である。}で表される化合物を含むシランカップリング剤で処理されている、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のプリプレグ。
[7]前記シランカップリング剤に含まれる化合物が、下記一般式(2):
Figure 2011034055
{式中、R1は、それぞれ独立に、水素、メチル基又はエチル基であり、R2は、アルコキシ基であり、R3は、それぞれ独立に、アルコキシ基、ヒドロキシル基、メチル基又はエチル基であり、そしてnは、1〜3の整数である。}で表される化合物である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のプリプレグ。
[8]前記ガラス組成フィラーの粒子径0.5μm以下の粒子含量が5%以上である、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のプリプレグ。
[9]前記ガラス組成フィラーが乾式粉砕により得られたものである、前記[1]〜[8]のいずれかに記載のプリプレグ。
[10]前記ガラス組成フィラーの粒子径が0.1μm以上であり、前記ガラス組成フィラーの粒子径0.5μm以下の粒子含量が10%以上であり、前記ガラス組成フィラーの比表面積が2m2/g以上20m2/g以下である、前記[1]に記載のプリプレグ。
[11]前記ガラスクロスの通気度が50cm3/cm2/sec以下であり、前記ガラス組成フィラーが乾式粉砕により得られたものである前記[1]又は[10]に記載のプリプレグ。
本発明のプリプレグを用いることにより、難燃性、及び耐熱性に優れる電子材料用途に最適な積層板を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)ガラス組成フィラー
本発明で用いるガラス組成フィラーの原料ガラスは、電子材料用途の積層板に使用可能な、CaOを5質量%以上含み、かつ、アルカリ金属含量の低い組成を有するガラスであり、Eガラス、Lガラス等が好ましい。
本発明で用いるガラス組成フィラーの原料ガラスの組成例を以下の表1に示す。
Figure 2011034055
CaOを5質量%以上含むガラスは、ドリル加工やレーザ加工などの加工性に優れ、かつ、絶縁性や耐熱性も良好で有り、バランスの良い積層板特性を有する。また、CaOは水和し易いため、良好な難燃性を得ることができる。
本発明で用いるガラス組成フィラーの平均粒子径は2.0μm以下である。平均粒子径2.0μm以下の場合、ガラスクロスをマトリックス樹脂ワニスに含浸させてプリプレグを得る工程、さらにプリプレグを加圧プレス成型する工程において、該ガラス組成フィラーがガラスクロス糸束内に十分含浸し、該ガラス組成フィラーが均一に充填された積層板ができる結果、良好な難燃性を有する積層板が得られる。該平均粒子径は、1.0μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
ガラス組成フィラーの粒度分布は、上記の平均粒子径を有した上で、粒子径0.5μm以下の累積分布を5%以上有することが好ましく、10%以上有することがさらに好ましい。粒子径0.5μm以下の累積分布を5%以上有するガラス組成フィラーの場合、該ガラス組成フィラーがガラスクロスの糸束内により含浸しやすい。また、最大粒子径は、狭ピッチの回路を形成したときに、回路形成に悪影響を与える原因となるガラス組成フィラーを配線部分から遠ざけ、絶縁信頼性を向上させるという理由から、10μm以下であることが好ましく、5μm以下がより好ましい。一方、ワニス配合の際の粘度増加を抑える理由から、平均粒子径は0.1μm以上であることが好ましい。
粒子径、及び粒度分布は、一般的なレーザ回折・光散乱法により求めることができる。平均粒子径とは、試料全体積を100%として累積カーブを求め、累積分布の50%に相当する体積平均径をいい、一般に、D50と呼ばれる。粒子径0.5μm以下の累積分布が5%以上とは、累積カーブが5%となる点の粒子径が0.5μm以下であることを意味する。一般的にD5と呼ばれる値が0.5μm以下となる。
ガラス組成フィラーの形状は、球状、破砕状、針状、短繊維状などいずれの形状でもよい。特に、マトリックス樹脂、及び樹脂ワニス中での流動性に優れる球状、破砕状のフィラーが最も好ましい。
ガラス組成フィラーの比表面積は、1m2/g以上20m2/g以下であることが好ましい。比表面積が1m2/g以上の場合、ガラス組成フィラーの表面の吸着水も増えるため、難燃性が得られやすい。一方、比表面積が20m2/g以下の場合、マトリックス樹脂中での分散性に優れ、得られた積層板は耐熱性、難燃性に優れる。
ガラス組成フィラーの表面は、シランカップリング剤で処理されていることが、マトリックス樹脂中での分散性の観点から好ましい。分散性が良い場合、積層板の難燃性、及び耐熱性は向上する。シランカップリング剤としては、下記一般式(1):
XSi(R)3-nn (1)
{式中、Xは、有機官能基であり、Yは、アルコキシ基であり、nは、1〜3の整数であり、そしてRは、メチル基、エチル基又はヒドロキシル基である。}で表される化合物を含むシランカップリング剤が挙げられる。アルコキシ基としては、ガラス組成フィラーとの反応性の点で、炭素数5以下のアルコキシ基が好ましく、炭素数1がより好ましい。
シランカップリング剤としては、積層板の耐熱性の観点から、特に、下記一般式(2):
Figure 2011034055
{式中、R1は、それぞれ独立に、水素、メチル基又はエチル基であり、R2は、アルコキシ基であり、R3は、それぞれ独立に、アルコキシ基、ヒドロキシル基、メチル基又はエチル基であり、そしてnは、1〜3の整数である。}で表される化合物を含むシランカップリング剤が好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
ガラス組成フィラーに対するシランカップリング剤の付着量は、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。表面処理の効果を最大にする理由から、0.01質量%以上が好ましく、またガラス組成フィラーの凝集を抑え分散性を良くする理由から、5.0質量%以下が好ましい。
なお、ガラス組成フィラーに加え、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機フィラーを併用しても構わない。特に水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの水酸化物、及び酸化アンチモンを併用した場合、良好な難燃性を得やすくなる。
ガラスフィラーの製造法としては、ヘンシェルミキサー、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の公知の粉砕方法が使用でき、湿式粉砕、乾式粉砕のいずれも可能である。ただし、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属の溶出を抑え、積層板の耐熱性を向上させるために、気流や媒体による乾式粉砕が最も好ましい。具体的には、気流式ジェットミル、乾式ボールミル、乾式ビーズミル等が最も適している。さらに、粉砕後、高温加熱により球状化してもよい。
(B)ガラスクロス
本発明のプリプレグには、ガラス糸を製織してなるガラスクロスを使用する。ガラスクロスは、たて糸とよこ糸からなり、各たて糸間、よこ糸間には隙間があるため、必ずガラスクロス面内にガラスの無い場所が存在する。通常、バスケットホールと呼ばれる。このバスケットホールの大きさは一般に通気度で評価できる。本発明のプリプレグに用いるガラスクロスの通気度は、50cm3/cm2/sec以下であることが好ましい。50cm3/cm2/sec以下の場合、バスケットホールが小さく、積層板内のガラスクロスが存在しない場所が少なくなり、難燃性に有効である。また、ガラス組成フィラーがバスケットホール部分にたまり難くなり、よりガラス糸束内に入りやすくなる。バスケットホールの大きさとしては、0.005mm2以下であることが好ましい。
ガラスクロスの織り密度は、30〜200本/インチが好ましく、さらに好ましくは50〜100本/インチである。織り密度を50本/インチ以上にすると、通気度を50cm3/cm2/sec以下にすることが容易になる。
ガラスクロスの質量は、5〜400g/m2が好ましく、さらに好ましくは10〜200g/m2である。
ガラス糸の組成はEガラス、Lガラス、Dガラス、Sガラス、Hガラスなどいずれも使用可能である。特に、ガラス組成フィラーと同組成であるガラスが、基板の均一性向上のため好ましい。
ガラス糸としては、平均モノフィラメント径が2.5〜9.0μmのガラスフィラメントを含むガラス糸がドリル加工性、及びレーザ加工性の点で好ましく、より好ましくは4.0〜7.0μmである。
織り構造については平織り構造が好ましいが、ななこ織り、朱子織り、綾織り等の織り構造を有するガラスクロスでもよい。
ガラスクロス表面は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤はマトリックス樹脂との反応性を考慮して、適宜選択してもよい。例えば、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、エポキシアクリレート、不飽和ポリエステルを硬化させる樹脂である場合には、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ベンジルアミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン及びその塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物が好ましい。
ガラスクロスへの表面処理は、製織に必要な集束剤を除去した段階で、公知の表面処理法で上記表面処理剤を処理すればよい。また、柱状流等の高圧水流又は水中での高周波振動法による超音波等によってガラスクロスへ開繊加工を施してもよい。
(C)マトリックス樹脂
本発明のプリプレグに用いるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が挙げられるが、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用してもよい。
熱硬化性樹脂の例としては、
(a)エポキシ基を有する化合物と、エポキシ基と反応するアミノ基、フェノール基、酸無水物基、ヒドラジド基、イソシアネート基、シアネート基、又は水酸基等を有する化合物とを、無触媒で、又はイミダゾール化合物、3級アミン化合物、尿素化合物、又は燐化合物等の反応触媒能を持つ触媒を添加して、反応させて硬化させるエポキシ樹脂、
(b)アリル基、メタクリル基、又はアクリル基を有する化合物を、熱分解型触媒又は光分解型触媒を反応開始剤として使用して、硬化させるラジカル重合型硬化樹脂、
(c)シアネート基を有する化合物と、マレイミド基を有する化合物とを反応させて硬化させるマレイミドトリアジン樹脂、
(d)マレイミド化合物とアミン化合物とを反応させて硬化させる熱硬化性ポリイミド樹脂、
(e)ベンゾオキサジン環を有する化合物を加熱重合により架橋硬化させるベンゾオキサジン樹脂、
等が挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、不溶性ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等が挙げられる。
[プリプレグの製造]
本発明のプリプレグは、前記したガラス組成フィラー、ガラスクロス、及びマトリックス樹脂から構成される。
ガラスクロスに対するマトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計付着量は、容易に板成型にできる理由から、30質量%以上であることが好ましく、またプリプレグの作製を容易にし、ガラスクロスの補強効果を最大にする理由から、90質量%以下であることが好ましい。
マトリックス樹脂中のガラス組成フィラーの充填量は、該マトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計体積に対し10vol%以上70vol%以下であることが好ましい。ガラス組成フィラーの充填量が10vol%未満であれば、難燃性への効果が見られず、一方、70vol%以上であると積層板の成形性確保が困難になる。
本発明のプリプレグは、常法に従って製造することができる。例えば、表面処理されたガラス組成フィラーとマトリックス樹脂とを有機溶剤で希釈したワニスにガラスクロスを含浸させた後、通常100〜200℃の乾燥機中で、1〜30分加熱させる方法などにより、マトリックス樹脂を半硬化(Bステージ化)させるとともに有機溶剤を揮発させて、プリプレグを得ることができる。含浸させた後に、スリットなどで余分なワニスを除去し、厚みを適宜調節してもよい。
プリプレグの十分な難燃性を得るために、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤等を適宜使用することが好ましい。特に、環境への負荷を抑えるため、リン系難燃剤の使用が最も好ましい。
上記ワニスにおける有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチルピロリドン(NMP)が好ましく、適宜、任意に混合して使用してもよい。そのワニス中に、表面処理されたガラス組成フィラーとマトリックス樹脂の合計量は、30質量%以上90質量%以下が好ましい。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
本発明の平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ、CaO含量が5質量%以上であるガラス組成フィラーを含むプリプレグを用いた積層板の難燃性、耐熱性を、以下の方法で評価した。
<粒度分布測定方法>
ガラス組成フィラーを水溶媒に分散させたスラリーの状態でレーザ回折器(日機装(株)製マイクロトラックMT3300EXII)にかけ、フィラーの粒度分布を測定し、平均体積粒子径を求めた。
<比表面積測定方法>
ガラス組成フィラーを比表面積測定装置(日本ベルベルソープ(株)製BELSOAP28SA)にかけ、フィラーの比表面積を求めた。
<ガラスクロス>
N−(ビニルベンジル)−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩(東レダウコーニング製SZ6032)で処理した、スタイル1078ガラスクロス(旭化成イーマテリアルズ株式会社製、ガラス種:Eガラス、単糸径:5μm、糸を構成する単糸本数:200本、織り方:平織り、織り密度:タテ54本/インチ、ヨコ54本/インチ、通気度:9cm3/cm2/sec、質量47.0g/m2)(以下「ガラスクロスA」という。)、スタイル1080ガラスクロス(旭化成イーマテリアルズ株式会社製、ガラス種:Eガラス、単糸径:5μm、糸を構成する単糸本数:200本、織り方:平織り、織り密度:タテ60本/インチ、ヨコ47本/インチ、通気度:65cm3/cm2/sec、質量48.0g/m2)(以下「ガラスクロスB」という。)。
<マトリックス樹脂ワニス組成>
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製エピコート157S70B75)48.5質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製エピコート1001B80)10質量部、ビスフェノールAノボラック(ジャパンエポキシレジン製エピキュアYLH129B65)30質量部、シクロフォスファゼン(大塚化学製SPB100)11.5質量部、2エチル4メチルイミダゾール0.1質量部を混合してマトリックス樹脂ワニス(以下「マトリックス樹脂ワニスA」)という。)を得た。
<積層板の作製方法>
プリプレグ4枚を重ね、さらに上下に厚さ12μmの銅箔を重ね、195℃、40kg/cm2で60分間加熱加圧して積層板を得た。
<積層板の難燃性評価方法>
積層板を13mm×130mmにカットして試験片を5枚作製し、各試験片にガスバーナーで10秒接炎した後、積層板の燃焼が止まるまでの時間を計測した。燃焼が止まらず、試験片が燃えきった場合、全焼とした。UL規格に準じて難燃性判定を行った。
<積層板のハンダ耐熱性評価方法>
500mm×500mmの積層板を、温度20℃湿度60%RHの雰囲気下に、まず24時間置き、さらに温度121℃湿度100%RHの雰囲気下に1〜24時間曝した後、表面の水分を除去し、288℃のハンダ浴に浸漬して引き上げ、膨れ度合いを目視により評価した。サンプル数は試験時間ごとに5個とした。以下の表3中、評価結果として、5mm未満の膨れを「○」で、5mm以上の膨れを「×」で示す。
(実施例1)
メチルトリメトキシシラン処理された平均粒子径0.5μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が32%であるEガラス組成フィラー(比表面積;12m2/g、湿式粉砕品)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計固形分が70質量%、固形分中のガラス組成フィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスAを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
(実施例2)
アミノプロピルトリエトキシシラン処理された平均粒子径0.7μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が15%であるEガラス組成フィラー(比表面積;10m2/g、湿式粉砕品)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計固形分が70質量%、固形分中のガラス組成フィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスAを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
(実施例3)
アミノプロピルトリエトキシシラン処理された平均粒子径0.7μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が15%であるEガラス組成フィラー(比表面積;10m2/g、湿式粉砕品)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計固形分が70質量%、固形分中のガラス組成フィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスBを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
(実施例4)
アミノプロピルトリエトキシシラン処理された平均粒子径1.8μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が5%であるEガラス組成フィラー(比表面積;3m2/g、湿式粉砕品)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計固形分が70質量%、固形分中のガラス組成フィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスAを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
(実施例5)
アミノプロピルトリエトキシシラン処理された平均粒子径0.2μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が80%であるEガラス組成フィラー(比表面積;21m2/g、湿式粉砕品)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計固形分が70質量%、固形分中のガラス組成フィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスAを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
(実施例6)
アミノプロピルトリエトキシシラン処理された平均粒子径1.8μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が5%であるEガラス組成フィラー(比表面積;2m2/g、乾式粉砕品)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計固形分が70質量%、固形分中のガラス組成フィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスAを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
(実施例7)
アミノプロピルトリエトキシシラン処理された平均粒子径1.8μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が3%であるEガラス組成フィラー(比表面積;2m2/g、湿式粉砕品)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計固形分が70質量%、固形分中のガラス組成フィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスAを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
(比較例1)
アミノプロピルトリエトキシシラン処理された平均粒子径2.6μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が0.5%であるEガラス組成フィラー(比表面積;3m2/g)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂とガラス組成フィラーの合計固形分が70質量%、固形分中のガラス組成フィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスAを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
(比較例2)
未処理の平均粒子径0.5μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が30%であるシリカフィラー(比表面積;9m2/g)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂とシリカフィラーの合計固形分が70質量%、固形分中のシリカフィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスAを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
(比較例3)
未処理の平均粒子径2.1μmであり、粒子径0.5μm以下の累積分布が1%である水酸化アルミニウムフィラー(比表面積;4m2/g)を、マトリックス樹脂ワニスAとエチレングリコールモノメチルエーテルに分散させて、マトリックス樹脂と水酸化アルミニウムフィラーの合計固形分が70質量%、固形分中の水酸化アルミニウムフィラーの濃度が30vol%となるよう調整したマトリックス樹脂ワニスに、ガラスクロスAを含浸させ、160℃で1分間乾燥後プリプレグを得た。
上記実施例及び比較例で得られたプリプレグから作製した積層板の難燃性の評価結果を、以下の表2に、そして耐熱性の評価結果を、以下の表3に示す。
Figure 2011034055
Figure 2011034055
実施例1〜7はいずれも、比較例1〜3に比較して、難燃性又は耐熱性に優れることが分かる。
本発明のプリプレグは、電子材料用途に好適に利用できる。

Claims (11)

  1. 平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ、CaO含量が5質量%以上であるガラス組成フィラー、ガラスクロス、及びマトリックス樹脂からなるプリプレグであって、該ガラス組成フィラーと該マトリックス樹脂の合計体積に対する該ガラス組成フィラーの充填量が10vol%以上70vol%以下であることを特徴とする前記プリプレグ。
  2. 前記ガラス組成フィラーの比表面積が1m2/g以上20m2/g以下である、請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 前記ガラスクロスの平均モノフィラメント径が7μm以下である、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  4. 前記ガラスクロスの通気度が50cm3/cm2/sec以下である、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  5. 前記ガラス組成フィラーのガラス組成がEガラス又はLガラスである、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  6. 前記ガラス組成フィラーの表面が、下記一般式(1):
    XSi(R)3-nn (1)
    {式中、Xは、有機官能基であり、Yは、アルコキシ基であり、nは、1〜3の整数であり、そしてRは、メチル基、エチル基又はヒドロキシル基である。}で表される化合物を含むシランカップリング剤で処理されている、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  7. 前記シランカップリング剤に含まれる化合物が、下記一般式(2):
    Figure 2011034055
    {式中、R1は、それぞれ独立に、水素、メチル基又はエチル基であり、R2は、アルコキシ基であり、R3は、それぞれ独立に、アルコキシ基、ヒドロキシル基、メチル基又はエチル基であり、そしてnは、1〜3の整数である。}で表される化合物である、請求項6に記載のプリプレグ。
  8. 前記ガラス組成フィラーの粒子径0.5μm以下の粒子含量が5%以上である、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  9. 前記ガラス組成フィラーが乾式粉砕により得られたものである、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  10. 前記ガラス組成フィラーの粒子径が0.1μm以上であり、前記ガラス組成フィラーの粒子径0.5μm以下の粒子含量が10%以上であり、前記ガラス組成フィラーの比表面積が2m2/g以上20m2/g以下である、請求項1に記載のプリプレグ。
  11. 前記ガラスクロスの通気度が50cm3/cm2/sec以下であり、前記ガラス組成フィラーが乾式粉砕により得られたものである請求項1又は10に記載のプリプレグ。
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