JPWO2010001862A1 - 有機酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
有機酸を生産する酵母を用いて当該有機酸を発酵により生産する際に、変異育種やDNA組換え育種等を実施せずとも、簡便な方法により有機酸の発酵効率を向上させる。有機酸を生産する酵母を、低pHに調整した有機酸含有培地中にて処理することによって、当該酵母の有機酸の生産効率が大幅に向上する。
Description
本発明は、乳酸等の有機酸を生産する酵母を用いた有機酸の製造方法に関する。
一般的に微生物を用いて有機酸を発酵生産する場合、中和剤によりpHを中性に制御して発酵を行う。しかし、同方法で生産される有機酸は塩の状態であり、精製工程で脱塩する必要があることから、製造コスト上昇に繋がる。そこで、酸性条件下で有機酸発酵を行うことが考えられるが、好酸菌の生育は酢酸、乳酸、コハク酸等の有機酸により阻害されることが知られており(非特許文献1:大島泰郎監修「極限微生物ハンドブック」第231項)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)のクエン酸発酵の場合を除いて、有機酸を高効率に生産する菌はほとんど知られていない。この問題を解決する方法として、有機酸を高効率で生産する株について変異育種により酸耐性を付与する方法(非特許文献2:R. Patnaik et al., Nat. Biotechnol. 20 (2002), pp. 707-712)や、耐酸性強いが生産能力が低い菌株を親株として収率向上を狙った代謝改変を施す方法(特許文献1:特表2003−500062号公報)が開示されているが、その効果は不十分である。
このように、変異育種法や遺伝子工学的手法によって微生物を改変といった手法により、有機酸の生産性を向上させる試みがなされているものの、これら微生物の改変手法は、煩雑であり、また確実に所望の特性を得られるとは限らない。
特表2003−500062号公報
大島泰郎監修「極限微生物ハンドブック」第231項
R. Patnaik et al., Nat. Biotechnol. 20 (2002), pp. 707-712
そこで、本発明は、有機酸を生産する酵母を用いて当該有機酸を発酵により生産する際に、変異育種やDNA組換え育種等を実施せずとも、簡便な方法により有機酸の発酵効率を向上させる方法を提供することを目的とするものである。
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、有機酸を生産する酵母を、低pHに調整した有機酸含有培地中にて処理することによって、当該酵母の有機酸の生産効率が大幅に向上することを見いだし、本発明を完成するにいたった。
すなわち、本発明に係る有機酸の製造方法は、有機酸を生産する能力を有する酵母を、低pHに調整した有機酸含有培地にて処理するステップaと、上記ステップaの後、上記酵母を用いた発酵により有機酸を産生するステップbとを有するものである。
なお、本発明に係る有機酸の製造方法において、上記ステップaは、上記酵母を用いた発酵により有機酸を産生するステップcを有し、上記ステップcにおいて産生された有機酸により有機酸含有培地を低pHに調整してもよい。すなわち、ステップcの発酵工程と、ステップbの発酵工程の間に有機酸によって低pHに調整した有機酸含有培地にて酵母を処理するといった、例えば連続培養に本発明を適用することができる。
また、本発明に係る有機酸の製造方法において上記ステップcでは、上記酵母による発酵に際して上記酵母が生産する有機酸をアルカリ添加により中和し、アルカリ添加を停止又は減少することで、上記酵母が生産する有機酸によって有機酸含有培地を低pHに調整することができる。すなわち、培地を低pHに調整するための有機酸は、培養系の外部から添加するのではなく、上記酵母の産生する有機酸を利用しても良い。
さらに、本発明に係る有機酸の製造方法において、上記有機酸含有培地は、有機酸塩を含有する培地に無機酸を添加することで遊離した有機酸を含有ものであってもよい。すなわち、上述のように、酵母が生産する有機酸をアルカリ中和して有機酸塩の状態として培地に含む場合には、無機酸(例えば強酸)を添加することで有機酸を遊離させることができる。これにより、酵母を処理するための有機酸含有培地を準備することができる。
一方、本発明に係る有機酸の製造方法において、上記有機酸含有培地は、外部から有機酸を添加して低pHに調整したものであってもよい。
なお、上記培地を低pHに調整するための有機酸としては、乳酸、コハク酸及びピルビン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸を挙げることができる。
本発明に係る有機酸の製造方法においては、上記酵母がSaccharomyces 属に属する酵母、特にSaccharomyces cerevisiaeの菌株に属する酵母を使用することが好ましい。本発明に係る有機酸の製造方法において上記酵母としては、乳酸脱水素酵素遺伝子が導入された変異株を使用することが好ましい。すなわち、本発明に係る有機酸の製造方法において生産対象の有機酸として乳酸とすることが好ましい。
本発明によれば、有機酸を生産する酵母における有機酸の生産能を、非常に簡便に向上させることができ、発酵法による有機酸の生産性を大幅に改善することができる。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2008-170854号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、有機酸を生産する酵母を、目的物質である有機酸の発酵生産に先立って、低pHに調整された有機酸含有培地にて処理する。ここで、有機酸を生産する酵母としては、本来的に有機酸生産能を有する酵母であっても良いし、遺伝子工学的手法等によって有機酸生産能を付与された酵母であっても良い。酵母の一例としては、Saccharomyces属、Shizosaccharomyces属、Candida属、Pichia属、Hansenula属、Torulopsis属、Yarrowia属、Kluyveromyces属、Zygosaccharomyces属、Yarrowia属、Issatchenkia属に属する酵母を挙げることができる。中でも、Saccharomyces cerevisiaeの菌株に属する酵母を使用することが好ましい。さらに、乳酸脱水素酵素遺伝子(LDH遺伝子)を1コピー又は複数コピー導入したSaccharomyces cerevisiae変異株であって、乳酸生産能が付与された変異株を使用することが好ましい。また、酵母が生産する有機酸としては、乳酸であることが好ましいが、これに限定されず、例えばピルビン酸、コハク酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、酢酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、マロン酸、プロピオン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イタコン酸、レブリン酸、アスコルビン酸、グルコン酸等の有機酸を生産対象とすることができる。
なお、主要代謝産物がエタノールである野性型酵母については、有機酸の生産能を付与するために代謝改変を行う必要がある。例えば、酵母に乳酸生成能を付与する際には、乳酸の生合成に関与する遺伝子を形質転換する方法で対応することが可能である。
乳酸の生合成に関与する遺伝子としては、特開2003-259878号公報に記載されている乳酸脱水素酵素遺伝子や、乳酸菌由来の遺伝子(J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 31, 209-215、特表2005-518197号)、巨大菌(バチルス メガテリウム)由来の遺伝子(特表2005-518197号)、カビ(リゾプス属)由来の遺伝子(J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 30, 22-275)、ウシ由来の遺伝子(Appl. Environ. Microbiol. 67, 5621-5625)等を例示することができる。その他に、使用可能な遺伝子としては、乳酸菌等の原核生物、カビ等の真核生物、植物や動物並びに昆虫等の高等真核生物に由来する乳酸脱水素酵素を挙げることができる。
特に、乳酸生成能を有する酵母としては、特開2003-259878号公報に記載されている乳酸脱水素酵素遺伝子を導入した酵母を使用することが好ましい。当該乳酸脱水素酵素遺伝子は、酵母における発現が最適化されているため、酵母に形質転換されるとL-乳酸を高効率で生産することができる。なお、形質転換微生物の例としては、組み換え酵母(Appl. Environ. Microbiol.,1999,65(9);4211-4215)などを挙げることができる。
また、当該酵母への処理とは、低pHとされた有機酸含有培地と酵母とを接触させる処理である。ここで、低pHとは、培地が酸性条件であることを意味し、すなわちpH7.0未満を意味し、好ましくはpH4.0以下、より好ましくはpH3.5以下を意味する。なお、Saccharomyces cerevisiaeの場合、エタノール発酵においては、培養・発酵の最適pHは5.0から6.0であり、pH4.0以下で培養・発酵を行うと、著しく菌の増殖・エタノール生産が阻害される。さらに、処理対象の酵母によっては、強酸性条件で死滅する虞がある。したがって、低pHとしては、処理対象の酵母が死滅しない範囲とすることが好ましい。例えば、LDH遺伝子を導入したSaccharomyces cerevisiae変異株を処理する培地のpHの下限としては、pH2.0とすることが好ましい。
ここで、酵母を処理する培地は、有機酸を含有し、低pHに調整されている。培地を低pHに調整するための有機酸としては、乳酸、コハク酸及びピルビン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸が挙げられる。しかし、有機酸としては、これらの例示に限定されず、例えば、酢酸、ギ酸、安息香酸、クエン酸、D-グルクロン酸、シュウ酸、フマル酸、リンゴ酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、マロン酸、プロピオン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イタコン酸、レブリン酸、アスコルビン酸、グルコン酸等を挙げることができる。
また、有機酸含有培地は、後述する培地組成に対して外部から上述した有機酸を添加することで準備しても良いが、有機酸塩を含有する組成に対して硫酸等の強酸を添加することで有機酸を遊離させたものであってもよい。ここで、有機酸塩から有機酸を遊離させるには、対象とする有機酸より強酸であれば特に限定されない。
酵母を処理するための培地において、培地組成としては特に限定されない。例えば、発酵培地の資化炭素源としては、有機酸生成能力を有する酵母の資化炭素源として従来公知のものがいずれも使用でき、酵母が生育し有機酸を生成する限りにおいて、使用する酵母の種類に応じて適宜選択される。資化炭素源としては、例えばグルコース、マルトース、スクロース、糖みつ、コーンスティープリカー及びセルロース系物質からの糖類などが用いられる。また、発酵培地の窒素源としては、例えば酵母エキス、ヘプトン及びホエーなどが用いられるが、安価で精製工程に負担がかからない培地にするには、窒素源を添加しない、もしくは硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩などの無機態窒素や尿素を使用することが好ましい。さらに、無機物栄養源として、例えばリン酸カリウム、硫酸マグネシウムやFe(鉄)、Mn(マンガン)化合物などを使用することが可能であるが、必至な成分ではない。
上記酵母を低pHに調整された培地で処理する際には、例えば、乳酸によりpHを3.0とした培地を用いる場合、2時間以上であることが好ましい。なお、培地のpHがより低くなれば処理時間はより短縮することができる。また、処理温度は、酵母の種類によって異なるが、通常約20〜40℃程度で行われる。なお、酵母の種類によっては40℃を超える高温で処理しても良い。また、低pHに調整された培地を撹拌したり、振とうするなどして、上記酵母を処理してもよい。
以上のように、有機酸生産能を有する酵母に対して、低pHに調整された培地で処理することによって、当該酵母の有機酸生産能を向上させることができ、更には当該酵母の耐酸性を向上させることができる。有機酸生産能は、未処理の酵母を用いて有機酸を生産したときの培地に含まれる有機酸濃度と、上述した処理後の酵母を用いて有機酸を生産したときの培地に含まれる有機酸濃度とを比較することで評価することができる。
また、上述した酵母を用いた有機酸の製造は、回分式培養で行ってもよいし、連続式培養で行っても良いし、半回分式培養で行っても良い。回分式培養とは、複数回の培養について一回ごとに新たな培地を準備し、そこへ酵母を植菌し、有機酸の生産終了まで培地を添加しない方法である。連続式培養とは、灌流培養とも称され、一定の速度で培養系に培地を供給し、同時に同量の培養液を抜き取る培養法である。半回分式培養とは、培養中に培地自体や培地中の特定の成分を連続的又は断続的に添加しながら培養する方法である。また、いずれの方式を採用した場合も、上述した酵母は固体化担体に担持された状態で使用してもよい。
これらいずれの方式においても、上記酵母を用いて有機酸の発酵生産を開始するに先立って上述した低pHに調整した有機酸含有培地を用いた処理を行うことによって、発酵生産による有機酸の生産効率を大幅に向上させることができる。また、いずれの方式においても、培養中に生産された有機酸によってpHが酸性側に変化することを防止するため、アンモニア、Ca(OH)2、CaCO3及びNaOH等の中和剤の添加(アルカリ添加)を行っても良い。なお、上述した低pHに調整した培地により処理した酵母は耐酸性が向上しているため、中和剤を用いてpHを中性領域に維持しなくとも有機酸の発酵生産が可能である。
また、上述したいずれの方式においても、有機酸の発酵製造の終了時に培地を有機酸により低pHに調整することで、次回の有機酸の発酵製造において、酵母の有機酸生産能を向上させることができる。すなわち、本発明に係る有機酸の製造方法は、有機酸の発酵製造を複数回にわたって行う製造方法に適用することができ、各回の発酵製造において終了時に有機酸により低pHに調整することで、酵母の有機酸生産能を向上させることができる
有機酸の発酵製造時に上述したアルカリ添加により中和する場合には、アルカリ添加を停止するか添加量を減少することによってpHを低下させることができ、低pHに調整した有機酸含有培地を準備することができる。また、アルカリ添加によって培地に有機酸塩を含有する場合には、硫酸等の強酸を添加することによって有機酸を培地中に遊離させることができ、低pHに調整した有機酸含有培地を準備することができる。ここで、有機酸塩から有機酸を遊離させるには、対象とする有機酸より強酸であれば特に限定されない。
有機酸の発酵製造時に上述したアルカリ添加により中和する場合には、アルカリ添加を停止するか添加量を減少することによってpHを低下させることができ、低pHに調整した有機酸含有培地を準備することができる。また、アルカリ添加によって培地に有機酸塩を含有する場合には、硫酸等の強酸を添加することによって有機酸を培地中に遊離させることができ、低pHに調整した有機酸含有培地を準備することができる。ここで、有機酸塩から有機酸を遊離させるには、対象とする有機酸より強酸であれば特に限定されない。
なお、上述した酵母を用いて有機酸を発酵製造する際、温度条件としては特に限定されないが約20〜40℃程度とする。しかし、使用する酵母によっては、更に高い温度でも可能である。有機酸生成に要する反応時間に関しても特に限定されず、本発明の効果が認められる限り任意の生成反応時間で実施される。また、有機酸生成に要する反応時間は菌体の接種量に反比例するので、接種量を検討すれば、反応時間は調整可能である。これらの条件の最適化は当業者においては容易に定めることのできるものである。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例では、乳酸生産酵母として、特開2006-006271で作製された乳酸脱水素酵素4コピー導入株を親株とし、さらに2コピー乳酸脱水素酵素遺伝子を導入した株(乳酸脱水素酵素遺伝子6コピー導入株)を作製した。
本実施例では、乳酸生産酵母として、特開2006-006271で作製された乳酸脱水素酵素4コピー導入株を親株とし、さらに2コピー乳酸脱水素酵素遺伝子を導入した株(乳酸脱水素酵素遺伝子6コピー導入株)を作製した。
(G418耐性マーカーカセットの構築)
酵母NBRC2260株のゲノムDNAを鋳型として、TDH3プロモーター領域のDNA断片をPCRで増幅した。PCRプライマーはTDH3P-U(5’-ATA TAT GGA TCC GGT AGA ATC ATT TTG AAT AA-3’(配列番号1)、TDH3プロモーター配列にBamHIサイトを付加)、TDH3P-D(5’-ATA TAT GAA TTC TGT TTA TGT GTG TTT ATT CG -3’(配列番号1)、TDH3プロモーター配列にEcoRIサイトを付加)を使用した。増幅されたTDH3プロモーター配列を制限酵素BamHIおよびEcoRIで消化したものをTDH3P断片と称した。
酵母NBRC2260株のゲノムDNAを鋳型として、TDH3プロモーター領域のDNA断片をPCRで増幅した。PCRプライマーはTDH3P-U(5’-ATA TAT GGA TCC GGT AGA ATC ATT TTG AAT AA-3’(配列番号1)、TDH3プロモーター配列にBamHIサイトを付加)、TDH3P-D(5’-ATA TAT GAA TTC TGT TTA TGT GTG TTT ATT CG -3’(配列番号1)、TDH3プロモーター配列にEcoRIサイトを付加)を使用した。増幅されたTDH3プロモーター配列を制限酵素BamHIおよびEcoRIで消化したものをTDH3P断片と称した。
大腸菌K-12株ゲノムのゲノムDNAを鋳型として、G418耐性遺伝子断片をPCRで増幅した。PCRプライマーはG418ORF-U(5’-ATA TAT GAA TTC ATG CAT ATT CAA CGG GAA AC -3’(配列番号3)、G418耐性遺伝子配列に制限酵素EcoRIサイトを付加)とG418ORF-D(5’-ATA TAT CTT AAG TTA CAA CCA ATT AAC CAA TTC-3’(配列番号4)、G418耐性遺伝子配列に制限酵素AflIIサイトを付加)を使用した。増幅されたG418耐性遺伝子配列を制限酵素EcoRIおよびAflIIで消化したものをG418断片と称した。
酵母NBRC2260株のゲノムDNAを鋳型として、CYC1ターミネーター領域のDNA断片をPCRで増幅した。PCRプライマーはCYC1T-U(5’-ATA TAT CTT AAG ACA GGC CCC TTT TCC TTT G-3’(配列番号5)、CYC1ターミネーター配列にAflIIサイトを付加)、CYC1T-D(5’ATA TAT CCG CGG GTT ACA TGC GTA CAC GCG -3’(配列番号6)、CYC1ターミネーター配列にSacIIサイトを付加)を使用した。増幅されたCYC1ターミネーター配列を制限酵素AflIIおよびSacIIで消化したものをCYC1T断片と称した。
上記操作で得られたTDH3P断片、G418断片およびCYC1T断片を、この順番で並ぶように順次pBluescriptII SK+ベクターのマルチクローニングサイトに連結してG418耐性マーカーカセットを構築した。得られたベクターを制限酵素SacIおよびEcoRVで消化、及び末端修飾酵素T4 DNA polymerase処理してG418耐性マーカーカセットを切り出し、末端を平滑化したものをG418耐性マーカーカセット断片と称した。
(染色体導入型ベクターpBG418-LDHKCBの構築)
7番染色体中のPDC6遺伝子とCTT1遺伝子の間にLDH遺伝子を導入するための染色体導入型ベクターを下記の通り作製した。
7番染色体中のPDC6遺伝子とCTT1遺伝子の間にLDH遺伝子を導入するための染色体導入型ベクターを下記の通り作製した。
酵母NBRC2260株のゲノムDNAを鋳型として、PDC6遺伝子5’上流配列のDNA断片をPCRで増幅した。PCRプライマーはPDC6-U(5’-ATA TAT GAG CTC GTT GGC AAT ATG TTT TTG C-3’(配列番号7)、PDC6の5’上流配列にSacIサイトを付加)とPDC6-D(5’-ATA TAT GCG GCC GCT TCC AAG CAT CTC ATA AAC C-3’(配列番号8)、PDC6の5’上流配列にNotIサイトを付加)を使用した。増幅されたPDC6遺伝子5’上流配列を制限酵素SacIおよびNotIで消化したものをPDC6断片と称した。
酵母NBRC2260株のゲノムDNAを鋳型として、CTT1遺伝子5’上流配列のDNA断片をPCRで増幅した。PCRプライマーはCTT1-U(5’-ATA TAT GGG CCC GAT GTC GTA CGA TCG CCT GCA C-3’(配列番号9)、CTT1の5’上流配列にApaIサイトを付加)とCTT1-D(5’-ATA TAT GGT ACC GGG CAA GTA ACG ACA AGA TTG-3’(配列番号10)、CTT1の5’上流配列にKpnIサイトを付加)を使用した。増幅されたCTT1遺伝子5’上流配列を制限酵素ApaIおよびKpnIで消化したものをCTT1断片と称した。
特開2003-259878(特願2002-65879)号公報で作製されたプラスミドpBTrp-PDC1-LDHKCBについてBamHIおよびPstIにより消化して切り出したものをLDHKCB発現カセット断片(PDC1プロモーター、LDH遺伝子、TDH3ターミネーターがこの順番に連結された断片)と称した。上記操作で得られた各断片(PDC6断片、LDHKCB発現カセット断片、G418耐性マーカーカセット断片およびCTT1断片)を、順次pBluescriptII SK+ベクターのマルチクローニングサイトに連結して、染色体導入型ベクターpBG418-LDHKCBを構築した。
(LDH6コピー導入株の作製)
酢酸リチウム法(Ito et al., J.Bacteriol., 153, 163-168(1983))にて、pG418-LDHKCBベクターを制限酵素SacIおよびKpnIで消化した断片を用い、特開2006-006271号公報で作製されたPDC1p-LDH4コピー株を形質転換した。10μg/ml G418を含むYPD培地で選抜後、導入遺伝子をPCRにて確認し、形質転換体を得た。
酢酸リチウム法(Ito et al., J.Bacteriol., 153, 163-168(1983))にて、pG418-LDHKCBベクターを制限酵素SacIおよびKpnIで消化した断片を用い、特開2006-006271号公報で作製されたPDC1p-LDH4コピー株を形質転換した。10μg/ml G418を含むYPD培地で選抜後、導入遺伝子をPCRにて確認し、形質転換体を得た。
この株を胞子形成培地(1% リン酸カリウム、0.1% イーストエキストラクト、0.05% ブドウ糖、2% 寒天)で胞子を形成させ、ホモタリック性を利用して2倍化を行った。2倍体である染色体両方に目的の遺伝子が導入されている株を取得し、これをPDC1p-LDH6コピー株とした。
(乳酸ストレス付与と発酵試験)
上記PDC1p-LDH6コピー株について、炭酸カルシウム0.1%を含むYPD培地(イーストエキストラクト 1%、ペプトン 2%、グルコース2%)に植菌し、150rpm/分(震とう幅35mm)で30℃22時間培養を行い、乳酸、コハク酸又はピルビン酸を所定濃度となるように添加してpHを測定し、さらに5時間培養した。
上記PDC1p-LDH6コピー株について、炭酸カルシウム0.1%を含むYPD培地(イーストエキストラクト 1%、ペプトン 2%、グルコース2%)に植菌し、150rpm/分(震とう幅35mm)で30℃22時間培養を行い、乳酸、コハク酸又はピルビン酸を所定濃度となるように添加してpHを測定し、さらに5時間培養した。
発酵培地(濃度糖12%、りん酸二水素カリウム0.04%、硫酸マグネシウム0.04%、炭酸カルシウム0.4%)20mlを100ml容のフラスコに入れ、上記菌体を濃度が4%になるように接種し、120rpm/分(震とう幅35mm)・34℃で発酵を行い、乳酸の生産量を検討した。なお、発酵16時間の時点で全ての処理区は糖を全て消費したか、残糖がある処理区も乳酸濃度が減少し始めていたことから、発酵試験は終了した。
表1から判るように、発酵試験の結果、乳酸400mM以上、コハク酸400mM以上の処理区で乳酸濃度が向上した。また、低濃度でより培地を酸性化する能力の高いピルビン酸は100mMでも乳酸濃度が向上した。
(乳酸ストレス付与と発酵試験のpH)
上記PDC1p-LDH6コピー株について、炭酸カルシウム0.1%を含むYPD培地(イーストエキストラクト 1%、ペプトン 2%,グルコース2%)に植菌し、150rpm/分(震とう幅35mm)で30℃22時間培養を行い、乳酸600mM処理を行い、さらに5時間培養した。なお、乳酸処理をしないで27時間培養した菌を対照とした。
上記PDC1p-LDH6コピー株について、炭酸カルシウム0.1%を含むYPD培地(イーストエキストラクト 1%、ペプトン 2%,グルコース2%)に植菌し、150rpm/分(震とう幅35mm)で30℃22時間培養を行い、乳酸600mM処理を行い、さらに5時間培養した。なお、乳酸処理をしないで27時間培養した菌を対照とした。
炭酸カルシウムの濃度を変えることでpHを変えた発酵培地(濃度糖12%、りん酸二水素カリウム0.04%、硫酸マグネシウム0.04%、炭酸カルシウム 0.1%、0.5%、1.0%、2.0%、4.0%又は5.0%)20mlを100ml容のフラスコに入れ、上記2種類の培養菌を濃度が4%になるように接種し、120rpm/分(震とう幅35mm)・34℃で発酵を行い、乳酸の生産量を検討した。なお、発酵16時間で発酵試験を終了した。発酵16時間の時点で炭酸カルシウム0.1%の処理区を除き、糖を全て消費した。
乳酸の測定はバイオセンサBF-4及びBF-5(王子計測機器)を用いた。結果を図1に示す。なお、図の乳酸濃度は発酵16時間までの最高濃度を示した。pHは乳酸が最高濃度時のデータを示した。
発酵試験の結果、乳酸600mMを処理した菌のほうが、無処理の菌と比較して、全ての処理区で乳酸濃度が上回った。なお、発酵液のpHは2.4から5.1の範囲となった。本結果より、有機酸ストレスによる発酵能力向上効果は、発酵時の制御pHと関係ないことが判明した。
(菌自体が生産する有機酸によるpHストレス付与と発酵試験)
培養培地から酵母エキスやペプトンなど緩衝能力が高い培地添加物を削減し、菌が生産する有機酸のみで培養培地のpHを下げることで、外部より有機酸添加してpHを下げると同様な効果が期待できるか検討した。改変YPD培地(イーストエキストラクト 0.5%、ペプトン 1%、グルコース3%)に、上記PDC1p-LDH6コピー株を植菌し、150rpm/分(震とう幅35mm)で30℃33時間培養を行った。対照として、培養開始8・24・29時間後に炭酸カルシウムを添加し、培養培地のpH低下を抑えた処理区と、YPD培地で培養した処理区(炭酸カルシウム添加なし)を用意した。
培養培地から酵母エキスやペプトンなど緩衝能力が高い培地添加物を削減し、菌が生産する有機酸のみで培養培地のpHを下げることで、外部より有機酸添加してpHを下げると同様な効果が期待できるか検討した。改変YPD培地(イーストエキストラクト 0.5%、ペプトン 1%、グルコース3%)に、上記PDC1p-LDH6コピー株を植菌し、150rpm/分(震とう幅35mm)で30℃33時間培養を行った。対照として、培養開始8・24・29時間後に炭酸カルシウムを添加し、培養培地のpH低下を抑えた処理区と、YPD培地で培養した処理区(炭酸カルシウム添加なし)を用意した。
改変YPD培地で培養した菌はpHが3.0まで低下したが、改変YPD培地に炭酸カルシウムを添加した処理区(1)(8・24・29時間後に、各0.1%・0.2%・0.1%の濃度分の炭酸カルシウムを添加)では、24時間後にpH3.3まで低下したものの、培養終了時にはpH4.3となった。改変YPD培地に炭酸カルシウムを添加した処理区(2)(8・24・29時間後に、各0.1%・0.3%・0.2%の濃度分の炭酸カルシウムを添加)では培養終了時にはpH6.4となった。YPD培地で培養した場合、pHは3.8まで低下したが、培養終了時にはpH4.2となった(図2)。なお、培養終了時の培地の乳酸濃度を測った結果、乳酸が検出されたことから、pH低下の主因は乳酸によるものと考えられた(表2参照)。
発酵培地(濃度糖13.8%、炭酸カルシウム0.5%、りん酸二水素カリウム0.04%、硫酸マグネシウム0.04%)20mlを100ml容のバッフル付きフラスコに入れ、上記培養菌体の濃度が4%になるように接種し、120rpm/分(震とう幅35mm)・34℃で発酵を行い、18時間後の発酵液組成を調べた(図3)。発酵試験の結果、改変YPD培地で培養した菌が最も高い乳酸濃度となった。乳酸・グルコース・エタノールの測定はバイオセンサBF-4及びBF-5(王子計測機器)を用いた。さらに、発酵18時間後の生細胞数を計測した結果、細胞数は培養開始時の30-50%程度とばらついたが、乳酸発酵能力と生細胞数との相関性はなかった。生細胞数の計測は生死細胞オートアナライザーVi-CELL(ベックマンコールター)を使用した。
本結果から、発酵能力向上に必要な有機酸ストレスとして、一定濃度の有機酸が培地中にあれば、有機酸を外部から添加して培地を低pHに調整する必要性はなく、その効果はpHに依存すること判明した。
〔実施例2〕
本実施例では、実施例1で使用したPDC1p-LDH6コピー株に対する有機酸処理の時間を検討した。具体的に、PDC1p-LDH6コピー株を、炭酸カルシウム0.1%を含むYPD培地(イーストエキストラクト 1%、ペプトン 2%,グルコース2%)に植菌し、150rpm/分(震とう幅35mm)で30℃、21時間培養を行った。その後、有機酸処理として乳酸600mMを添加し、さらに30分から5時間培養した。なお、対照としては、乳酸処理をしないで21時間培養した菌とした。
本実施例では、実施例1で使用したPDC1p-LDH6コピー株に対する有機酸処理の時間を検討した。具体的に、PDC1p-LDH6コピー株を、炭酸カルシウム0.1%を含むYPD培地(イーストエキストラクト 1%、ペプトン 2%,グルコース2%)に植菌し、150rpm/分(震とう幅35mm)で30℃、21時間培養を行った。その後、有機酸処理として乳酸600mMを添加し、さらに30分から5時間培養した。なお、対照としては、乳酸処理をしないで21時間培養した菌とした。
次に、発酵培地(濃度糖13%、りん酸二水素カリウム0.04%、硫酸マグネシウム0.04%、炭酸カルシウム0.4%)20mlを100ml容のフラスコに入れ、上記菌体を濃度が4%になるように接種し、120rpm/分(震とう幅35mm)・34℃で発酵を行い、乳酸の生産量を検討した。発酵17時間後に測定した乳酸濃度及びグルコース濃度の結果を表3に示す。なお、17時間以上発酵を継続しても乳酸濃度が上昇することはなかった。乳酸及びグルコースの測定はバイオセンサBF-4及びBF-5(王子計測機器)を用いた。
表3から判るように、発酵試験の結果、乳酸処理2時間以上の処理区で、無処理区に対し著しく乳酸濃度が向上したことから、有機酸ストレスに必要な時間は2時間以上とすることが好ましいことが判明した。なお、本実施例では、有機酸として乳酸を用い、培養終了時の培地pHが3.0である実験系で評価したものであり、有機酸の種類や培養終了時のpHによって、有機酸ストレスに必要な時間は異なってくるものと理解できる。
〔実施例3〕
本実施例では、実施例1で使用したPDC1p-LDH6コピー株に対する有機酸処理の望ましいpHを検討した。具体的に、上記PDC1p-LDH6コピー株について、バイオット社製の1Lジャーを用い、pHを5.2、4.5、4.0若しくは3.5に制御して増殖させた。このように、各種pHで処理された菌体を用いて発酵試験を行い、乳酸の生産量を測定することで、乳酸ストレス付与時のpHの発酵試験に対する影響を検討した。なお、1Lジャーにおける菌体増殖(乳酸ストレス付与)は、YPD培地を用い、撹拌数450rpm、通気量1vvm(volume per volume per minute(単位体積あたりのガス通気量))、30℃で17時間培養した。pH制御は乳酸と水酸化ナトリウムで行った。
本実施例では、実施例1で使用したPDC1p-LDH6コピー株に対する有機酸処理の望ましいpHを検討した。具体的に、上記PDC1p-LDH6コピー株について、バイオット社製の1Lジャーを用い、pHを5.2、4.5、4.0若しくは3.5に制御して増殖させた。このように、各種pHで処理された菌体を用いて発酵試験を行い、乳酸の生産量を測定することで、乳酸ストレス付与時のpHの発酵試験に対する影響を検討した。なお、1Lジャーにおける菌体増殖(乳酸ストレス付与)は、YPD培地を用い、撹拌数450rpm、通気量1vvm(volume per volume per minute(単位体積あたりのガス通気量))、30℃で17時間培養した。pH制御は乳酸と水酸化ナトリウムで行った。
発酵培地(グルコース13%、リン酸二水素カリウム0.01%、硫酸マグネシウム0.01%、炭酸カルシウム0.4%)20mLを100mL容のフラスコに入れ、上記菌体を濃度がそれぞれ1%となるように接種し、120rpm(振とう幅35mm)、34℃で発酵を行い、乳酸の生産量を検討した。
発酵試験の結果、菌体増殖時に培地におけるpHを低い値にするほど、最高乳酸濃度がより向上する傾向があった。その効果は、pH4.5でも確認でき、pH3.0が最も効果が高かった。
〔比較例1〕
本比較例では、有機酸に代えて無機酸を用いて低pHに調整した培地又は有機酸で効果があった濃度と同モル濃度の有機酸塩を添加した培地(低pHに調整していない培地)を用いた以外は実施例1と同様にして、発酵試験を行った。すなわち、本比較例では、無機酸として硫酸を20mM又は40mMとなるように添加してpHを測定し、さらに5時間培養した。このように硫酸により低pHとした培地によってPDC1p-LDH6コピー株を処理した。次に、発酵培地(濃度糖12%、りん酸二水素カリウム0.04%、硫酸マグネシウム0.04%、炭酸カルシウム0.4%)20mlを100ml容のフラスコに入れ、上記菌体を濃度が4%になるように接種し、120rpm/分(震とう幅35mm)・34℃で発酵を行い、乳酸の生産量を検討した。なお、発酵16時間の時点で全ての処理区は糖を全て消費したか、残糖がある処理区も乳酸濃度が減少し始めていたことから、発酵試験は終了した。乳酸の測定はバイオセンサBF-4及びBF-5(王子計測機器)を用いた。結果を表5に示す。
本比較例では、有機酸に代えて無機酸を用いて低pHに調整した培地又は有機酸で効果があった濃度と同モル濃度の有機酸塩を添加した培地(低pHに調整していない培地)を用いた以外は実施例1と同様にして、発酵試験を行った。すなわち、本比較例では、無機酸として硫酸を20mM又は40mMとなるように添加してpHを測定し、さらに5時間培養した。このように硫酸により低pHとした培地によってPDC1p-LDH6コピー株を処理した。次に、発酵培地(濃度糖12%、りん酸二水素カリウム0.04%、硫酸マグネシウム0.04%、炭酸カルシウム0.4%)20mlを100ml容のフラスコに入れ、上記菌体を濃度が4%になるように接種し、120rpm/分(震とう幅35mm)・34℃で発酵を行い、乳酸の生産量を検討した。なお、発酵16時間の時点で全ての処理区は糖を全て消費したか、残糖がある処理区も乳酸濃度が減少し始めていたことから、発酵試験は終了した。乳酸の測定はバイオセンサBF-4及びBF-5(王子計測機器)を用いた。結果を表5に示す。
表1と表5とを比較すると、有機酸で低pHとした培地によって処理した場合には乳酸の生産性が向上したのに対して、無機酸で低pHとした培地や、有機酸塩を含有するpHを低下させない培地によって処理した場合には乳酸の生産性は低下していた。本比較例から、有機酸を生産する酵母に対して、低pHに調整した有機酸含有培地で処理することで、当該酵母の有機酸生産能が向上することが明らかとなった。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
Claims (10)
- 有機酸を生産する能力を有する酵母を、低pHに調整した有機酸含有培地にて処理するステップaと、
上記ステップaの後、上記酵母を用いた発酵により有機酸を産生するステップbとを有することを特徴とする有機酸の製造方法。 - 上記ステップaは、上記酵母を用いた発酵により有機酸を産生するステップcを有し、上記ステップcにおいて産生された有機酸により上記有機酸含有培地を低pHに調整することを特徴とする請求項1記載の有機酸の製造方法。
- 上記ステップcでは、上記酵母による発酵に際して上記酵母が生産する有機酸をアルカリ添加により中和し、アルカリ添加を停止又は減少することで、上記酵母が生産する有機酸によって上記有機酸含有培地を低pHに調整することを特徴とする請求項2記載の有機酸の製造方法。
- 上記有機酸含有培地に含まれる有機酸は、外部添加されたものであることを特徴とする請求項1記載の有機酸の製造方法。
- 上記有機酸含有培地に含まれる有機酸は、乳酸、コハク酸及びピルビン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸であることを特徴とする請求項1記載の有機酸の製造方法。
- 上記有機酸含有培地は、有機酸塩を含有する培地に無機酸を添加することで遊離した有機酸を含有することを特徴とする請求項1記載の有機酸の製造方法。
- 上記酵母がSaccharomyces 属に属する酵母であることを特徴とする請求項1記載の有機酸の製造方法。
- 上記酵母がSaccharomyces cerevisiaeの菌株に属する酵母であることを特徴とする請求項1記載の有機酸の製造方法。
- 上記酵母は、乳酸脱水素酵素遺伝子が導入された変異株であることを特徴とする請求項1記載の有機酸の製造方法。
- 酵母が生産する有機酸が乳酸であることを特徴とする請求項1記載の有機酸の製造方法。
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