JPWO2009084167A1 - 編地の編成方法、および編地 - Google Patents

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Abstract

少なくとも前後一対の針床FB,BBと、各針床FB,BBに列設される針に編糸を給糸する複数の給糸口3,4とを備える横編機を用いて、前針床FB側に位置する給糸口3で後針床BBの針に、後針床BB側に位置する給糸口4で前針床FBの針に給糸して編成する。その際、各給糸口3,4でそれぞれ編目を形成し、その後、各給糸口3,4を一旦逆方向に振って、さらに元の方向に戻したときに編目を形成することで、前後の針床FB,BBの間において一方の給糸口3から給糸される編糸と他方の給糸口4から給糸される編糸とを互いに掛け合うように絡ませる。

Description

本発明は、横編機を用いて編地を編成するにあたり前後の針床でそれぞれ編成される編糸同士を互いに掛け合うように絡ませて形成した編成箇所を有する編地の編成方法、およびその方法で編成された編成箇所を有する編地に関する。
前後の針床を備える横編機で編成される編地において、前後の針床の針に編糸を交互に掛け渡すようにして編成される箇所がある。例えば、特許文献1では、指袋を有する手袋や靴下の指股部において、前後の編地部に編糸を掛け渡すことで、両編地部を綴じ合わせる股閉じを行っており、この股閉じされた箇所が上記の箇所に相当する。
一方、特許文献2では、前後の針床の針に編糸を交互に掛け渡すことで形成される編地の編み出し部が記載されており、この編み出し部が上記の箇所に相当する。
国際公開WO2002−052966号パンフレット 国際公開WO2002−101133号パンフレット
しかし、上記特許文献1の技術では、一方の編地部の編糸を他方の編地部に編み込むため、編目の滲みが生じてしまう。編目の滲みは、両編地部で異なる色の編糸を使用している場合に、編み込まれた編糸が意図しない柄として目立つ現象であり、編地の外観を損なう原因となる。
また、特許文献2の技術で編成された編地の編み出し部は、前後の一方の針床で編成される編糸を他方の針床に掛け渡すように編成された結果、編み出し部を構成する編糸の動き代が比較的小さい。この編み出し部の動き代を大きくできれば、編み出し部に作用する張力を緩和できるので、編み出し部の強度の向上が期待できるものの、そのような編成方法は現在のところ提案されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、前後の一方の針床で編成される編糸を他方の針床に掛け渡すことなく形成された編成箇所を有する編地の編成方法、およびその編成方法で編成された編成箇所を有する編地を提供することにある。
本発明は、少なくとも前後一対の針床と、各針床に列設される針に編糸を給糸する複数の給糸口とを備える横編機を用いて、前針床側に位置する給糸口で後針床の針に、後針床側に位置する給糸口で前針床の針に給糸して編成する編成箇所を有する編地の編成方法に係る。そして、本発明編地の編成方法は、以下のステップ1〜5を行うことで、前後の針床の間において一方の給糸口から給糸される編糸と他方の給糸口から給糸される編糸とを互いに掛け合うように絡ませた編成箇所を形成することを特徴とする。
一方の給糸口を先行、他方の給糸口を後行として、各給糸口から給糸される編糸で編目もしくは掛け目を形成するステップ1。
ステップ1よりも後で、ステップ1における進行方向とは逆向きに一方の給糸口を移動させるステップ2。
ステップ1よりも後で、ステップ1における進行方向とは逆向きに他方の給糸口を移動させるステップ3。
ステップ2よりも後で、ステップ1における進行方向と同方向に一方の給糸口を移動させ、ステップ1で形成した編目もしくは掛け目から一方の給糸口に延びる編糸が他方の給糸口から給糸される編糸に掛かって折り返される状態とした後、編目もしくは掛け目を形成するステップ4。
ステップ3よりも後で、ステップ1における進行方向と同方向に他方の給糸口を移動させ、ステップ1で形成した編目もしくは掛け目から他方の給糸口に延びる編糸が一方の給糸口から給糸される編糸に掛かって折り返される状態とした後、編目もしくは掛け目を形成するステップ5。
本発明編地の編成方法の一形態として、前記編成箇所を編成する際、ステップ1、2、3、5、4の順、もしくはステップ1、3、2、5、4の順に行うことができる。
また、本発明編地の編成方法の一形態として、前記編成箇所を編成する際、ステップ1、2、4、3、5の順に行うこともできる。
一方、本発明編地部分は、少なくとも前後一対の針床と、各針床に列設される針に編糸を給糸する複数の給糸口とを備える横編機を用いて編成される編地であって、以下に示す編成箇所を有することを特徴とする。編地に備わる編成箇所は、編地の前後一方の側において、一本の編糸で構成される複数の編目からなる一側編目列と、編地の他方の側において、一側編目列に対向する位置にあり、一側編目列の編糸とは異なる一本の編糸で構成される複数の編目からなる他側編目列とを備える。そして、この編成箇所では、一側編目列において隣接する第1編目と第2編目とを繋ぐ第1シンカーループと、他側編目列において隣接する第3編目と第4編目とを繋ぐ第2シンカーループとが、互いに掛け合うように絡んでいる。
ここで、通常、編地を編み出す場合、針床の針に掛け目を作ることで、編地の編み出し部を形成する。この掛け目は、針床から外れたときに通常の編目の形になっていない疑似編目となる。本発明編地の編成方法は、編地の編み出し部の形成にも適用できるので、疑似編目も本発明編地に備わる編成箇所における編目として扱うし、隣接する疑似編目同士を繋ぐ編糸も本発明編地に備わる編成箇所におけるシンカーループとして扱う。
本発明編地の一形態として、第1シンカーループに対して第2シンカーループが掛け合うように絡んでいることに加え、さらに、第2シンカーループとは異なる第3シンカーループが掛け合うように絡んでいることが好ましい。第3シンカーループは、他側編目列のうち、第4編目に対して第3編目とは反対側に隣接する編目を第5編目としたとき、第4編目と第5編目とを繋ぐシンカーループである。
本発明編地の編成方法によれば、一方の針床で形成される2つの編目を繋ぐシンカーループと、他方の針床で形成される2つの編目を繋ぐシンカーループとが、互いに掛け合うように絡んだ状態(以下、交絡した状態とも表現する)となる編成箇所を有する編地を編成できる。例えば、ステップ1、2、3、5、4の順、もしくはステップ1、3、2、5、4の順に行えば、一方の針床の編目列にあるシンカーループに、他方の針床の編目列にあるシンカーループが交絡する編成箇所を備える本発明編地を編成できる。また、ステップ1、2、4、3、5の順に行えば、一方の針床の編目列にあるシンカーループに、他方の針床の編目列にある2本のシンカーループが交絡する編成箇所を備える本発明編地を編成できる。
本発明編地の編成方法により、例えば、指袋を有する手袋や靴下の指股部のように前後の編地部を綴じ合わせる場合、この綴じ合わせ部分(本発明編地における編成箇所)で、一方の編地部側の編糸が、他方の編地部側に編み込まれることがないため、従来の前後の綴じ合わせ方法のように編目の滲みが生じない。さらに、この編地では、編糸が互いに掛け合わされる交絡部が編地部に固定されておらず、編糸の動き代が大きな構成であるため、編地を着用したときに交絡部が突っ張り難い。
また、本発明編地の編成方法により、編地の編み出し部(本発明編地における編成箇所)を形成する場合、この編み出し部における編糸が互いに掛け合わされる交絡部が固定されておらず、編糸の動き代が大きな構成であるので、編み出し部に作用する張力を分散させることができる。
実施形態1に係る2つの筒状編地を接合する接合部の編成工程図である。 実施形態2に係る襠の編み出し部に関する編成工程図である。
符号の説明
1,2 筒状編地
3 手前側給糸口
4 奥側給糸口
5 交絡部
次に、本発明の好適な実施の形態(実施形態1、2)を図面に基づいて以下に詳細に説明する。実施形態1、2に記載の編成はいずれも、左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する前後一対の針床を有する横編機で行われる。この横編機は、針床の長手方向に平行な方向に往復運動する複数の給糸口を備える。後述する実施形態1,2の説明に使用する図1、図2では、横編機前面側から見て手前側(前針床FB側)にある手前側給糸口3、および奥側(後針床BB側)にある奥側給糸口4のみを図示する。
<実施形態1>
実施形態1では、FBで編成される編糸とBBで編成される編糸とが互いに掛け合うように編成される編成箇所として、2つの筒状編地を接合して1つの大きな筒状編地とする際に形成される接合部を例にして説明する。接合する2つの筒状編地の具体例としては、例えば、靴下や手袋における隣り合う2つの指袋や、セーターなどの身頃と袖などを挙げることができる。なお、この実施形態1では2つの筒状編地を扱っているが、当然ながら、それ以上の数の筒状編地に対しても同様の編成を行うことができる。
図1は、筒状編地1と筒状編地2の隣り合う側端同士を接合し、その接合部を強化する編成の編成工程図を示す。図中、左欄は編成工程の番号(S+数字)を、中欄は各編成工程における編成の様子を、右欄は各編成工程における給糸口の移動方向を示す。図中、英大文字A〜Mは、後針床BBの針を示し、英小文字a〜mは、前針床FBの針を示す。また、FB側に配される手前側給糸口3から給糸される編糸は太線で、BB側に配される奥側給糸口4から給糸される編糸は細線で示す。さらに、●は各編成工程で新たに編成された編目、○は針に係止された旧編目、◎は重ね目を、▼は手前側給糸口3を、▽は奥側給糸口4を示す。ここで、説明の適宜上、図1では、針の数は実際よりも少なく表示している。
S1では、B,G,f,aに囲まれる筒状編地1と、I,M,l、hに囲まれる筒状編地2を示す。この状態から、筒状編地1と筒状編地2の対向する側端同士を重ね合わせてS2の状態にする。S2では、BBの針F,Gにおいて、S1に示すBBの針F,Gの編目とI,Jの編目とが、FBの針e,fにおいて、S1に示すFBの針e,fの編目と針h,iの編目とが目移しにより重なっている。重ね目を形成する具体的な編成工程は省略する。
以降の編成において、本発明筒状編地の編成方法を使用し、重ね目の位置で前後の編地部を綴じ合わせ、2つの筒状編地の接合部を強化する。以下の編成工程「S+数字」の後に括弧書きで示される「ステップ+数字」は、S3〜S6の各々と、請求項1の編成方法で規定するステップ1〜5との対応関係を示す。この点は、実施形態2においても同様である。
S3(ステップ1)では、手前側給糸口3を先行としてBBの針B〜Fに給糸し、奥側給糸口4を後行としてFBの針a〜eに給糸して筒状編地の編幅の途中まで編成する。両給糸口の先行と後行は入れ替えても良く、その場合、以降の編成工程の説明における両給糸口の順序を入れ替えれば良い。
S4(ステップ2+ステップ3)では、前記S3にて筒状編地の編幅の途中まで編成した各位置から、S3とは逆方向に手前側給糸口3と奥側給糸口4を移動させる。これら給糸口を移動させる順番はどちらが先でも良い。編成した最後の編目と各給糸口の位置関係により、各給糸口から延びるそれぞれの編糸は交差する。
S5(ステップ5)では、S3で後に編成を行った奥側給糸口4を、S4とは逆方向に移動させ、FBの針f,g,h,iで編目の形成を行う。このS5により、FBにおける針eの編目と針fの編目とを繋ぐシンカーループが、手前側給糸口3からBBの針Fの編目に延びる編糸に絡まった状態になる。
S6(ステップ4)では、S3で先に編成を行った手前側給糸口3を、S4とは逆方向に移動させ、BBの針G,H,I,Jで編目の形成を行う。このS6と前段のS5は順番を逆にすることはできない。
S6以降の編成を行う場合、S6の状態から奥側給糸口4を先行、手前側給糸口3を後行として復路編成を行えば、編幅の右側端で各給糸口からの編糸が交差し、同端部が綴じ合わされた状態になる。
以上説明した編成によれば、S6に示すように、針Fの位置の編目と針Gの位置の編目とを繋ぐシンカーループと、針eの位置の編目と針fの位置の編目とを繋ぐシンカーループとが、前後の編地部の間で互いに掛け合うように絡んだ交絡部5が形成される。つまり、一方の編地部側の編糸を他方の編地部側の編目に編み込むことなく、前後の編地部が綴じ合わされたことになるので、従来の前後の編地部を綴じ合わせる方法のように編糸の滲みが発生しない。また、前後の編地部を綴じ合わせる交絡部5が編地部に固定されておらず、前後左右の動きにも柔軟に追従できる構成であるため、編地を着用したときに交絡部5が突っ張り難い。その他、本実施形態では、2つの筒状編地と接合する際、重ね目を行ない横方向の伸びを抑えた状態としているので、交絡部5が表面から見え難い。
なお、本実施形態では、1つの綴じ合わせに対して編糸の交絡部5を1つとしたが、S4〜S6を複数回繰り返し、交絡部5を連続して複数形成して、綴じ合わせ部分の強度をアップさせることもできる。
<実施形態2>
実施形態2では、FBで編成される編糸とBBで編成される編糸とが互いに掛け合うように編成される編成箇所として、袖と身頃とを接合する際に形成される襠の編み出し部を例にして説明する。図2は、襠の編み出し部に関する編成工程図である。図2の見方は、図1と同様であるが、この図における●および○は掛け目である。また、図2では、針床に係止される袖と身頃の編目を省略し、襠の編み出し部を形成する際に針床に係止される掛け目のみを示す。
S1(ステップ1)では、奥側給糸口4を先行、手前側給糸口3を後行として、それぞれFBの針aとBBの針Bに掛け目を形成する。
S2(ステップ2)では、奥側給糸口4をS1とは逆方向に移動させ、針Bよりも左に位置させる。そして、S3(ステップ4)では、奥側給糸口4を再びS1と同方向に移動させて、針Bに対応するFBの針bよりも右の針cで掛け目を形成する。このS2,S3により、FBにおける針aの掛け目と針cの掛け目とを繋ぐ編糸が、手前側給糸口3からBBの針Bに延びる編糸に絡まる。
次いで、S4(ステップ3)では、手前側給糸口3をS1とは逆方向に移動させ、針cよりも左に位置させる。そして、S5(ステップ5)では、手前側給糸口3を再びS1と同方向に移動させて、針cに対応するBBの針Cよりも右の針Dで掛け目を形成する。このS4,S5により、BBにおける針Bの掛け目と針Dの掛け目とを繋ぐ編糸が、奥側給糸口4からFBの針cに延びる編糸に絡まる。
以降、S1〜S5と同様の編成を繰り返すことで、S6に示す状態とすることができる。
以上説明した編成によれば、一方の針床に配される編目列の1本のシンカーループに、他方の針床に配される編目列の2本のシンカーループが絡んだ状態となっている編み出し部を有する襠が形成される。この編み出し部は、絡み合うシンカーループの数が多く、強固でありながら、シンカーループ同士の交絡部が固定されていない状態にある。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるわけではない。本発明編地の編成方法は、実施形態1に示したような複数の筒状編地の接合に対する綴じ合わせだけでなく、単体の筒状編地の前後を編幅の途中で綴じ合わせることにも適用できる。例えば、ネクタイやマフラーなどの筒状の製品に対して前後のズレを防ぐ編成方法として利用できる。その他、2つの筒状編地を接合する際、実施形態2に示すように1本のシンカーループに2本のシンカーループを交絡させる構成としても良いし、編み出し部を形成する際、実施形態1に示すように、1本のシンカーループに1本のシンカーループを交絡させる構成としても良い。

Claims (5)

  1. 少なくとも前後一対の針床と、各針床に列設される針に編糸を給糸する複数の給糸口とを備える横編機を用いて、前針床側に位置する給糸口で後針床の針に、後針床側に位置する給糸口で前針床の針に給糸して編成する編成箇所を有する編地の編成方法であって、
    以下のステップ1〜5を行うことで、前後の針床の間において一方の給糸口から給糸される編糸と他方の給糸口から給糸される編糸とを互いに掛け合うように絡ませた編成箇所を形成することを特徴とする編地の編成方法。
    一方の給糸口を先行、他方の給糸口を後行として、各給糸口から給糸される編糸で編目もしくは掛け目を形成するステップ1。
    ステップ1よりも後で、ステップ1における進行方向とは逆向きに一方の給糸口を移動させるステップ2。
    ステップ1よりも後で、ステップ1における進行方向とは逆向きに他方の給糸口を移動させるステップ3。
    ステップ2よりも後で、ステップ1における進行方向と同方向に一方の給糸口を移動させ、ステップ1で形成した編目もしくは掛け目から一方の給糸口に延びる編糸が他方の給糸口から給糸される編糸に掛かって折り返される状態とした後、編目もしくは掛け目を形成するステップ4。
    ステップ3よりも後で、ステップ1における進行方向と同方向に他方の給糸口を移動させ、ステップ1で形成した編目もしくは掛け目から他方の給糸口に延びる編糸が一方の給糸口から給糸される編糸に掛かって折り返される状態とした後、編目もしくは掛け目を形成するステップ5。
  2. ステップ1、2、3、5、4の順、もしくはステップ1、3、2、5、4の順に行うことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の編地の編成方法。
  3. ステップ1、2、4、3、5の順に行うことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の編地の編成方法。
  4. 少なくとも前後一対の針床と、各針床に列設される針に編糸を給糸する複数の給糸口とを備える横編機を用いて編成される編地であって、
    以下の編成箇所を有することを特徴とする編地。
    編地の前後一方の側において、一本の編糸で構成される複数の編目からなる一側編目列と、
    編地の他方の側において、一側編目列に対向する位置にあり、一側編目列の編糸とは異なる一本の編糸で構成される複数の編目からなる他側編目列と、
    を備え、
    一側編目列において隣接する第1編目と第2編目とを繋ぐ第1シンカーループと、他側編目列において隣接する第3編目と第4編目とを繋ぐ第2シンカーループとが、互いに掛け合うように絡んでいる編成箇所。
  5. さらに、他側編目列のうち、第4編目に対して第3編目とは反対側に隣接する編目を第5編目としたとき、
    第4編目と第5編目とを繋ぐ第3シンカーループと、第1シンカーループとが、互いに掛け合うように絡んでいることを特徴とする請求の範囲第4項に記載の編地。
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