JPWO2009025272A1 - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、プラスチックレンズ基材表面上に樹脂層を形成することを含むプラスチックレンズの製造方法に関する。本発明のプラスチックレンズの製造方法は、樹脂成分および水系溶媒を含有する水系塗布液をノズル先端から吐出し、上記表面を上方に向けて回転するプラスチックレンズ基材の該表面上に、該表面周縁部から中心部へ向かって螺旋状の塗布軌跡を描くように、かつ該表面の半径方向において隣り合う塗布軌跡が接触または重なり合うように塗布すること、および、塗布後のプラスチックレンズ基材を、塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させ、該塗布液中に含まれる水系溶媒の少なくとも一部を除去することにより樹脂層を形成すること、を含む。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2007年8月23日出願の日本特願2007−217321号および2007年9月26日出願の日本特願2007−249733号の優先権を主張し、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される。
本発明は、樹脂層付きレンズの製造方法に関する。より詳しくは、水系ポリマー溶液をレンズ上に塗布および乾燥することにより、均一な膜厚を有する樹脂層を有するレンズを提供することができるレンズの製造方法に関する。
背景技術
眼鏡レンズ等のレンズに各種機能を付与するため、レンズ上に塗布膜を形成することが行われている。塗布膜の形成方法としては、ディップ法およびスピンコート法が広く用いられているが、均一な膜厚の塗布膜を形成するためには、一般にスピンコート法が有利であることが知られている(例えば特開平5−19103号公報参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)。
一般的なスピンコート法では、回転するレンズ表面中心部に塗布液を滴下し、滴下された塗布液を遠心力を利用してレンズ塗布面の全面に広げる。しかし、塗布液の粘度が高くなると、遠心力によって塗布液を十分に広げることが困難となる。そこで本願出願人は、高粘度な塗布液をスピンコート法により均一に塗布するために、塗布液を吐出するノズルの位置および移動軌跡を、レンズ等の被塗布体の形状データに基づき決定することを提案した(特開2005−218994号公報参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)。この方法は、調光性能を有する塗布液のように粘度が高い塗布液を被塗布体上に厚く塗布する方法として好適である。
上記2つの公報に記載の方法は、加熱やUV照射等により重合硬化するモノマー溶液のような非水系の塗布液を主なターゲットとしている。これに対し、本発明者らは、プラスチックレンズ上に、ポリマー化された水分散の塗布液を塗布した後、水分を飛ばすことによって塗布膜を形成する方法としてスピンコート法を採用することを考えた。上記塗布液は、加熱工程を行うことなく成膜可能である、溶剤フリー化が可能である、といった利点がある。しかし本発明者らの検討の結果、上記水系塗布液を用いてスピンコート法により塗布層を形成するためには、以下の課題があることが判明した。
(1)水系塗布液はプラスチックレンズ表面との濡れ性に乏しいため、ノズルから吐出した塗布液が回転するレンズに弾かれてしまい、全面に塗布液を塗布することは困難である。
(2)スピンコート中、レンズ表面に滴下された水系塗布液は遠心力により水系溶媒が除去される(飛ばされる)ことによって固化が進行する。レンズ表面上では、遠心力による塗布液の拡散と固化が同時に進行するため、(i)固化後の塗布膜表面に塗布液が拡散した軌跡が残り、表面平滑性が低下する、(ii)レンズ表面全体に塗布液を均一に広げることが困難であるため、膜厚が不均一になる、という問題がある。この問題は、塗布液の粘度が高い(固形分量が多い)ほど顕在化する。そこで塗布液の粘度を下げるために溶媒を増量することが考えられるが、水系溶媒を増量するとプラスチックレンズ表面と塗布液との濡れ性が更に悪化してしまう。
発明の開示
そこで本発明の目的は、プラスチックレンズ表面にスピンコート法によって水系塗布液を塗布し、均一な塗布膜を有するプラスチックレンズを製造するための手段を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
一般的なスピンコート法は、回転するレンズ表面の中心部に塗布液を滴下し、遠心力を利用し滴下した塗布液をレンズ全面に広げる。しかし、前述のように水系塗布液は濡れ性の問題から上記方法による塗布によって均一な塗布膜を形成することは困難である。そこで本発明者らは、レンズを回転させながらレンズ表面上に塗布液を螺旋状に塗布することとした。しかし、本発明者らの検討の結果、この方法では、以下の新たな課題が生じることが判明した。
(1)レンズ中心部から周縁部に向けて(内側から外側へ向けて)螺旋状の塗布軌跡を描くと、先に塗布され回転するレンズの遠心力により周縁部に向けて広がりつつある塗布液上に新たな塗布液が塗布されることとなる。中心部に塗布された塗布液は、回転中に周縁部に向けて広がる際に水系溶媒が飛び固化が進行する。そのため固形分濃度が高い状態で外側へ向けて拡散する塗布液上に新たな塗布液が塗布されることとなり、塗布層の均一性が損なわれる。
(2)螺旋状の塗布軌跡に隙間が存在すると、その後の回転によって塗布液が拡散し隙間上に供給されたとしても隙間を埋めることは難しい。これは塗布液とレンズ表面との濡れ性が低いことに起因するものと考えられる。
本発明者らは、上記新たな課題を解決するために更なる検討を重ねた結果、レンズ表面周縁部から中心部へ向かって螺旋状の塗布軌跡を描くように、かつレンズ半径方向において隣り合う塗布軌跡が接触または重なり合うように水系塗布液を塗布し、更に塗布後のレンズを、塗布液を塗布した面を上方に向けて回転させることにより、塗布液中に含まれる水系溶媒の少なくとも一部を除去して樹脂層を形成することによって、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、プラスチックレンズ基材表面上に樹脂層を形成することを含むプラスチックレンズの製造方法であって、
樹脂成分および水系溶媒を含有する水系塗布液をノズル先端から吐出し、上記表面を上方に向けて回転するプラスチックレンズ基材の該表面上に、該表面周縁部から中心部へ向かって螺旋状の塗布軌跡を描くように、かつ該表面の半径方向において隣り合う塗布軌跡が接触または重なり合うように塗布すること、および、
前記塗布後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させ、該塗布液中に含まれる水系溶媒の少なくとも一部を除去することにより樹脂層を形成すること
を含むプラスチックレンズの製造方法
に関する。
一態様によれば、前記樹脂層の形成は、前記塗布後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させる第一回転工程、および、第一回転工程後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて、かつ第一回転工程における最大回転数を越える回転数で回転させる第二回転工程、を含むことができ、かつ、第二回転工程を、前記表面に塗布した水系塗布液の、少なくとも最表面が乾燥した後に開始することができる。
一態様によれば、第二回転工程における最大回転速度は、第一回転工程における最大回転速度の2〜5倍の範囲であることができる。
一態様によれば、前記塗布液の粘度は10〜200CPSの範囲であることができる。
一態様によれば、前記塗布液のノズル先端からの吐出速度は200〜4693mm/secの範囲であることができる。
一態様によれば、前記塗布液の前記表面上における単位面積あたりの塗布量が略平均化されるように、前記塗布液のノズル先端からの吐出量、前記ノズルの移動速度および前記プラスチックレンズ基材の回転速度からなる群から選ばれる少なくとも1つを制御することができる。
一態様によれば、本発明のプラスチックレンズの製造方法は、前記塗布液を吐出するノズルを、前記表面周縁部上方から中心部上方に向かって水平方向に移動させることを含むことができる。
一態様によれば、前記ノズルの移動速度を、段階的または連続的に増加させることができる。
一態様によれば、前記塗布におけるプラスチックレンズ基材の回転速度を、段階的または連続的に増加させることができる。
一態様によれば、前記樹脂成分は、ポリウレタン樹脂であることができる。
一態様によれば、前記表面は、表面カーブが−8〜+8の曲面を含む凸面であることができる。
一態様によれば、前記プラスチックレンズは眼鏡レンズであることができる。
一態様によれば、本発明のプラスチックレンズの製造方法は、前記樹脂層上に塗布膜を形成することを更に含むことができる。
一態様によれば、前記樹脂層は、接着層であることができる。
一態様によれば、前記塗布膜はフォトクロミック膜であることができる。
本発明によればプラスチックレンズ上に水系塗布液を均一に塗布し、優れた表面平滑性を有する塗布膜を形成することができる。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、プラスチックレンズ基材表面上に樹脂層を形成することを含むプラスチックレンズの製造方法(以下、「態様I」ともいう)に関する。本発明のプラスチックレンズの製造方法は、(1)樹脂成分および水系溶媒を含有する水系塗布液をノズル先端から吐出し、上記表面を上方に向けて回転するプラスチックレンズ基材の該表面上に、該表面周縁部から中心部へ向かって螺旋状の塗布軌跡を描くように、かつ該表面の半径方向において隣り合う塗布軌跡が接触または重なり合うように塗布すること、および、(2)前記塗布後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させ、該塗布液中に含まれる水系溶媒の少なくとも一部を除去することにより樹脂層を形成すること、を含む。即ち、本発明のプラスチックレンズの製造方法は、プラスチックレンズ基材表面上に水系塗布液を塗布する塗布工程と、塗布工程後のプラスチックレンズ基材を回転させる回転工程と、を含む。前記塗布工程においてプラスチックレンズ基材表面全面に隙間なく塗布液を塗布した後、回転工程において膜厚の均一化と塗布液の固化を行うことにより、プラスチックレンズ基材上に膜厚の均一性と表面平滑性に優れた樹脂層を形成することができる。
本発明において使用される塗布液は水系塗布液であり、溶媒が除去されることにより固化が進行する。外側に塗布された塗布液ほど、常に空気との相対速度が大きく揮発性成分が気化しやすい状態にあるため、特に周縁部に塗布された塗布液は、塗布工程が完了する前に固化が完了するか、または固化に至らないまでも流動性をほぼ失っている。このような状態では、塗布工程後に回転工程を行ったとしても膜厚を均一化することは困難である。そこで本発明では、螺旋状の塗布軌跡を、隣り合う塗布軌跡が接するか重なり合うように塗布することで、先に塗布された周縁部表層にも常に乾燥していない新液が供給される状態となるため、固化を抑制することができる。これにより塗布工程後の回転工程において膜厚の均一化および表面平滑化を達成することができる。また、隣り合う軌跡間に隙間が存在する場合、塗布液とレンズ表面との濡れ性が悪いため、塗布工程後の回転工程において中心部から周縁部に向かって塗布液が広がったとしても、広がった塗布液によって隙間を埋めることは困難である。これに対し本発明では隙間なく塗布するため塗布むらのない均一な樹脂層を形成することができる。なお、本発明において「樹脂層」とは、樹脂成分を含む層であり、例えば5質量%以上を樹脂成分が占めるとする層をいい、「樹脂成分」とは加熱や紫外線照射等により重合する重合性成分を含まないものとする。また、本発明における「水系塗布液」は、含有される水系溶媒が除去されることにより固化する性質を有するものである。
以下に、本発明のプラスチックレンズの製造方法について、更に詳細に説明する。
塗布工程
塗布工程では、回転するプラスチックレンズ基材の表面上に水系塗布液を塗布する。前記水系塗布液は、上記表面を上方に向けた状態で回転するプラスチックレンズ基材の上方に位置するノズル先端から吐出される。前記塗布液は、プラスチックレンズ基材表面に直接塗布されてもよく、プラスチックレンズ基材上に設けられた層を介して塗布されてもよい。塗布液が塗布されるプラスチックレンズ基材表面の面形状は凸面であっても凹面であってもよいが、凸面が好適である。凸面であれば周縁部に液溜まりが生じにくく均一な膜厚の樹脂層を形成できるため好ましい。前記塗布は、上記表面周縁部から中心部へ向かって螺旋状の塗布軌跡を描くように、かつ該表面の半径方向において隣り合う塗布軌跡が接触または重なり合うように行われる。上記塗布軌跡の模式図を図1に、その一部拡大模式図を図2に示す。
塗布の開始位置となるプラスチックレンズ基材表面周縁部は、例えばレンズの外周端部から10mm程度内方へ至る領域内に含まれるが、特に限定されるものではない。
また、塗布の終了位置となるプラスチックレンズ基材表面中心部とは、例えばレンズの幾何学中心または光学中心もしくは該中心近傍である。
前記開始位置から終了位置へ向かって螺旋状の塗布軌跡を描くように、ノズル先端からプラスチックレンズ基材表面に向けて水系塗布液を流下させる。上記塗布に使用可能な塗布装置の一例を図3に示す。以下に、図3に基づき塗布工程の詳細を説明するが、本発明は図3に示す態様に限定されるものではない。
図3に示す装置は、塗布液を供給するディスペンスシステムと、塗布液が塗布される表面を鉛直上方に向けて回転させるスピンコーターを含む。以下、前記表面を鉛直上方に向け塗布を行う態様について説明するが、回転軸が鉛直上方に対し傾斜した状態でプラスチックレンズ基材を回転させることも可能である。ただし遠心力を均一に加えるためには鉛直上方に向け塗布を行うことが好ましい。
ディスペンスシステムは、ディスペンスコントローラー、シリンジ、およびノズルで構成されている。ディスペンスコントローラーは、吐出量によってノズル先端からの塗布液の流下速度を制御することができる。シリンジは、水平方向(X軸方向)およびZ軸方向(鉛直方向)に移動可能である。例えばX軸方向において、レンズの一定半径毎に変速移動が可能である。スピンコーターは、図示しない制御部により制御され、シリンジ水平方向の位置と同期し回転数を変えることができる。
前記塗布液を吐出するノズルを、回転するレンズ基材表面周縁部上方から中心部上方に向かって水平方向(X軸方向)に移動させることにより、レンズ基材表面上に螺旋状の塗布軌跡を描くことができる。この螺旋状の塗布軌跡は、図2右図に示すように、レンズ半径方向において隣り合う塗布軌跡が接触または重なり合うように形成される。即ち、「塗布ピッチP≦塗布線幅W」となるように塗布が行われる。このように塗布が行われたことは、目視で容易に判定することができる。隣り合う塗布軌跡が重複する領域の広さは特に限定されるものではない。ただし、重複する領域が塗布線幅の大部分を占めるようになると塗布効率の点で好ましくないため、効率的な塗布を行うことができるように塗布条件を決定すべきである。
上記のように隣り合う塗布軌跡が接触または重なり合うように塗布軌跡を描くために、塗布線幅を制御することが好ましい。塗布線幅は主にレンズ基材の回転速度によって変化し、ノズル先端からの塗布液の流下速度が一定であるとすると、レンズ基材回転速度が速いほど塗布線幅は細く、遅くなるにしたがい太くなる。本発明者らの検討によれば、レンズ基材表面とノズル先端との距離を変えても塗布線幅はほぼ一定であった。従って、塗布時にはレンズ基材表面上でノズルを水平方向(図3に示すX軸方向)で移動させればよく、鉛直方向(図3に示すY軸方向)の位置は制御せず、例えばノズルを鉛直方向では固定し実質的に移動させることなく塗布を行ってもよい。レンズ基材の表面形状が変わればノズル先端との位置が変化するため、レンズ基材の表面形状に応じてノズル移動位置を制御する塗布方法では、レンズ基材形状毎にノズルの移動位置を決定しなければならない。これに対し、ノズルの鉛直方向の位置を制御する必要がなければ、レンズ基材の表面形状によらずノズルの移動位置を決定できるため、表面形状の異なる複数種のレンズを効率的に生産することができる。
先端から塗布液を吐出するノズルを、レンズ基材表面周縁部から中心部に向かって移動させて塗布を行う際、塗布液の吐出速度、レンズ基材の回転速度、およびノズルの移動速度がすべて一定である場合、流下位置が中心に近づくほどレンズの相対速度は遅くなるため、単位面積あたりに塗布される塗布液量は多くなる。本発明では、塗布工程後にレンズ基材を回転させることにより塗布膜厚の均一化を図るため、中心部にいくほど多量の塗布液が塗布されたとしても、その後の回転工程により膜厚を均一にすることができる。しかし、多量の塗布液を塗布することはコスト面で好ましくない。そこで本発明では、前記塗布液のレンズ基材表面上における単位面積あたりの塗布量が略平均化されるように、前記塗布液のノズル先端からの吐出量、前記ノズルの移動速度および前記プラスチックレンズ基材の回転速度からなる群から選ばれる少なくとも1つを制御することが好ましい。これにより、塗布液の使用量を適量とすることができる。更に、中心部は周縁部に比べて遠心力が小さいため、特に、粘度が高い塗布液では、周縁部に対して中心部の膜厚が大きくなりやすい。これに対し、上記のように塗布量を制御すれば、中心部が過度に厚くなることを防ぐことができる。この点は、均一な膜厚の樹脂層を形成する上できわめて有利である。
本発明では、各塗布条件において塗布線幅を測定し、レンズ基材の回転数、ノズル移動速度等の塗布条件を予めデータベース化しておくことが好ましい。このデータベースを使用することにより、レンズ基材の形状によらず塗布条件を決定することができる。
レンズ基材の回転が速くノズルとレンズ基材との相対速度(周速ともいう)が過度に大きくなると、ノズル先端から流下する塗布液がレンズ基材表面で弾かれてしまい塗布液をレンズ上に載せること(ディスペンス)自体が困難となる場合がある。よって、レンズ基材の回転速度は、ディスペンス可能な限界周速を超えないように設定することが好ましい。ディスペンス可能な限界周速は、予備実験により実験的に求めることができる。通常、良好なディスペンスを行うためには、レンズ基材とノズルとの相対速度(周速)を、400〜3000mm/secの範囲内とすることが好ましい。そしてレンズ基材の回転数は、限界周速を超えないように決定すべきであり、例えば100〜1000rpm程度とすることができる。
塗布工程においてレンズ基材回転数によって塗布量の平均化を図る場合は、レンズ基材の回転数を増加させればよい。レンズ基材の回転数の増加は連続的に行ってもよく、段階的に行ってもよい。ノズルを所定半径毎に段階的に移動させるのであれば、ノズルの移動とともにレンズ基材の回転数を変化させ、段階的にレンズ基材の回転数を上げることが効果的である。
塗布工程においてノズルの移動速度によって塗布量の平均化を図るのであれば、レンズ基材表面周縁部上方から中心部上方に向かって移動するノズルの移動速度を増加させればよい。ノズル移動速度は、連続的に増加させてもよく、段階的に増加させてもよいが、確実な制御のためには、所定半径毎に段階的にノズル移動速度を増加させることが好ましい。ただし、ノズルの移動速度が過度に速いと、前述のようにノズルとレンズ基材との相対速度が過度に大きくなりディスペンス自体が困難となる。よって、ノズルの移動速度は限界周速を超えない範囲でレンズ回転速度を考慮して決定すべきであり、例えば1〜30mm/sec程度とすることができる。
塗布工程におけるノズル先端からの塗布液の吐出速度が過度に小さいと、流下した塗布液が回転するレンズ基材表面に弾かれてしまい、安定なディスペンスが困難となる。安定なディスペンスを行うためには、ノズル先端からの塗布液の吐出速度を200mm/sec以上とすることが好ましい。一方、吐出速度が大きすぎると多量の塗布液が塗布されてしまうため適量塗布のためには吐出速度が過度に速いことは好ましくない。適量塗布のためには、吐出速度を4693mm/sec以下とすることが好ましい。吐出速度は、より好ましくは1000〜4000mm/sec、更に好ましくは2500〜3500mm/secの範囲である。ノズル先端からの塗布液の吐出速度は、吐出ノズルの内径および吐出量によって制御することができる。吐出ノズルの内径については、例えばノズル先端の内径がφ0.1〜0.8mm程度であることが好ましい。ノズル径が小さいほど塗布線幅は狭くなる傾向があるため、小径ノズルを使用する場合は隣り合う塗布軌跡が接するか重なるようにノズルの移動速度やレンズの回転数を速くすることが好ましい。吐出量を増やし吐出速度を上げることは経済性の観点からは望ましくないため、ノズル径を細くした上で、流速を確保できるように吐出量を決定することが好ましい。吐出量は、例えば0.05〜0.30g/sec程度とすることができる。吐出速度によって塗布量の平均化を図ることもできるが、精度の点では、前述のようにノズルの移動速度および/またはレンズ基材の回転速度によって塗布量の平均化を図ることが好ましい。
次に、前記塗布工程における塗布条件の設定方法を具体的に説明する。ただし、本発明は下記態様に限定されるものではない。
(a)ディスペンス限界周速を決定する。
使用するノズルおよび塗布する塗布液を決定した後、それらを使用し実際に回転するレンズ基材表面上に塗布を行い、ディスペンス限界周速を決定するための予備実験を行い、レンズ基材の周速と塗布線幅との関係を示すグラフを作成する。作成したグラフにおいて塗布線幅が確認できる最大周速をディスペンス限界周速とする。
(b)ディスペンス可能な限界周速より、各半径(例えば5mmピッチ)での回転数を決定する。
本工程では、前述のように、レンズ基材表面周縁部から中心部へ向かって塗布が進むほど回転数が大きくなるように、限界周速を考慮し、各半径での回転数を決定する。具体的には、下記式(1)に基づき各半径での回転数を決定することができる。実用上、100rpm単位で切り下げてもよい。
レンズ基材回転数X(rpm)=滴下限界周速V(mm/sec)×60(sec)/(2π×半径R(mm))…(1)
例えば、滴下限界周速2000mm/secの場合、レンズ基材表面中心から半径40mmの位置におけるレンズ基材の回転数X40は、
レンズ基材回転数X40(rpm)=2000×60/(2π×40)=477.7(rpm)
と算出される。100rpm単位で切り下げると400rpmと決定される。
(c)各半径におけるレンズ基材回転数から周速を算出する。
上記(b)にて決定されたレンズ基材回転数から、下記式(2)により各半径におけるレンズ基材回転数を決定できる。
周速V(mm/sec)=レンズ基材回転数X(rpm)/60(sec)×(2π×半径R(mm))…(2)
例えば、レンズ基材表面中心から半径40mmの位置におけるレンズ基材回転数X40(400rpm)から、該位置における周速V40(mm/sec)は、
周速V40(mm/sec)=400/60×(2π×40)≒1674.7(mm/sec)
となり、滴下限界周速2000mm/secを超えない値に設定される。
(d)周速から螺旋ピッチを決定する。
上記(c)で得られた周速から、上記(a)で得たグラフを使用し塗布線幅を求め、隣り合う螺旋状の塗布軌跡が接するか、または重なるように螺旋ピッチを決定する。ここでは上記(a)のグラフから求めた読取値に安全率を掛けてもよい。
(e)ノズル移動速度(水平方向)を決定する。
上記で求めた回転数、螺旋ピッチより各半径でのノズル移動速度(水平方向)を決定する。
次いで、上記の手順に従い決定された塗布条件に基づき塗布を行った後、回転工程を行う。以上説明した塗布工程は、生産性および塗布液の乾燥時間を考慮すると、塗布開始から塗布終了までの一連の操作を0.3〜2.2分程度で行うことが好ましい。
次に、回転工程の詳細を説明する。
回転工程
前記塗布工程において水系塗布液を螺旋状に塗布した後、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させる。これにより、塗布液中の水系溶媒の少なくとも一部が除去されて塗布液が固化し、樹脂層を形成することができる。更にこの工程を行うことにより、未固化の塗布液(特に、中央部に塗布された塗布液)をレンズ全面に広げることができるため、膜厚の均一化を図ることができ、更に、螺旋ピッチの凹凸を埋めることによって樹脂層の平滑化を図ることもできる。前述の塗布工程においてレンズ基材表面上の外側から内側へ向かって塗布を行っているため、先に塗布され固化が進行しているレンズ基材表面周縁部の塗布液が壁の役割を果たし、回転工程において拡散する液が周縁部外へ飛び散ることを防ぐことができる。これにより、レンズ基材表面上で液を平均的に拡散し、膜厚の均一化および表面平滑化を図ることができる。
前記回転工程は、遠心力によりレンズ基材表面上で塗布液を移動させることができるように、塗布液が完全に固化する前に行うことが好ましい。従って、前記回転工程は、塗布回転後に引き続き行うことが好ましい。回転工程におけるレンズ基材の回転数は、レンズ基材表面上の塗布液を広げることができるように適宜設定すればよく、例えば800〜2000rpm程度とすることができる。具体的には、前記回転工程における回転数は、塗布工程における最大回転数またはそれ以上に設定することができる。
前記回転工程における回転数は、回転工程中、一定である必要はなく、段階的または連続的に変更してもよい。好ましくは、回転数を比較的高く設定し塗布面上の凹凸が解消された後、回転数を維持し、または回転数を下げ更に回転を継続させる。これにより、塗布液最表面の平滑性を高めることができる。第一回転工程における回転時間は、例えば5〜180秒程度とすることができる。
更に本発明では、膜厚の均一性をより高めるためには、前記回転工程(以下、「第一回転工程」という)および下記第二回転工程を経て樹脂層を形成することが好ましい。
第二回転工程
前記第一回転工程は、レンズ基材表面上に塗布された塗布液の流動性が比較的高い間に、螺旋状の塗布軌跡間の凹凸の高低差を埋めることにより表面の平滑化および膜厚の調整を行うことができる。一方、第二回転工程は、遠心力によりレンズ表面周縁部に集められた余剰液をレンズ外へ排出し、膜厚の均一性を高めるために、第一回転工程より高速で行う。第二回転工程を、第一回転工程より高速で行い、より大きな遠心力を与えることにより、第一回転工程における遠心力ではレンズ外へ排出されずレンズ表面周縁部に残留した余剰液をレンズ外へ排出し周縁部の液溜まりを除去することができる。
但し、本発明者らの検討の結果、第二回転工程を開始するタイミングによっては、平滑化のための回転により解消されたはずの螺旋状等の塗布軌跡に対応した凹凸(以下、「塗布痕」ともいう)が塗布膜表面に現れることが判明した。光学的には、この凹凸がそれぞれ凹レンズまたは凸レンズとして作用するため、透過像において、歪みや明暗の差として認識される。この歪みや明暗の差が目視でも確認できるほど鮮明になると、眼鏡レンズとして使用することは困難となる。
そこで本発明では、第二回転工程を、レンズ基材表面に塗布した水系塗布液の乾燥状態が均一になった後、即ち水系塗布液の最表面が乾燥した後に開始することが好ましい。これにより、レンズ基材表面周縁部の余剰液が除去され、しかも塗布痕の発生が防止された、均一な膜厚の樹脂層を有する光学特性に優れたプラスチックレンズを得ることができる。
第二回転工程を、塗布液最表面の乾燥状態が均一になった後に開始することにより、塗布痕発生を防止できる理由は明らかではないが、本発明者らは以下のように推定している。
(塗布痕形成仮説1)
レンズ基材表面上に塗布された水系塗布液の乾燥は、塗布直後から進行する。塗布液の乾燥は、回転により塗布液表面から水分が飛ばされることによっても引き起こされるが、一般に知られるようにレンズ素材は吸湿性が高いため、レンズ基材表面に水分が吸収されることによっても引き起こされると考えられる。特に、吸湿による黄変等の発生を防止するために保管場所を低湿度に維持したり、水分と隔離する包装により保管されていたレンズ基材は、水分を多量に吸収しやすい状態にある。吸湿性の高いレンズ基材に水系溶媒を含む塗布液が接触すると、レンズ基材は水系溶媒を急速にかつ多量に吸収する。その結果、塗布液の乾燥はレンズとの界面から発生することになる。螺旋状に塗布を行った場合、塗布直後には、塗布膜表面に塗布軌跡に対応した凹凸が存在しているが、その内部では、比較的乾燥が進行した結果、塗布膜表面と相似形をなす凹凸が形成されているものと推察される。第一回転工程では、塗布膜中の比較的流動性の高い部分を遠心力によって移動させ、内部の凹凸の隙間を埋めることによって平滑化を図ることができると考えられるが、表面の塗布液が未乾燥の状態で高速の第二回転工程を開始すると、凹凸の隙間を埋めた塗布液が遠心力によって除去されてしまう。その結果、マスキングされていた塗布膜内部の凹凸が塗布膜表面として露出し、第一回転工程による平滑化前の表面形状に近似する凹凸が現れると考えられる。
(塗布痕形成仮説2)
一方、レンズ基材表面に水分が吸収されない場合にも塗布痕が発生する場合もあり得る。その場合、螺旋状に塗布を行った場合、塗布直後には塗布膜表面に塗布軌跡に対応した凹凸が存在しているが、その塗布膜表面の一部では、比較的乾燥が進行した結果前記凹凸が保存されうることがあると推察される。第一回転工程では、塗布膜中の比較的流動性の高い部分を遠心力によって移動させ、内部の凹凸の隙間を埋めることによって平滑化を図ることができると考えられる。ところが塗布液平滑化のための塗布液の主たる移動部分は塗布液表面の凸部のレンズ周縁部側が、レンズ周縁側に隣接する凹部および凸部のレンズ中心側に移動するとことであると考えられる。従って隣接する凹部および凸部中心側の塗布膜は第一回転工程では、一部が乾燥状態にある塗布液上に未乾燥状態の塗布液が積層する層構造を形成していると考えられる。ここで前記積層構造を有する塗布液に対して最表面の塗布液が未乾燥の状態で高速の第二回転工程を開始すると、凹凸の隙間を埋めた塗布液が遠心力によって除去されてしまう。その結果、マスキングされていた塗布膜内部の凹凸が塗布膜表面として露出し、第一回転工程による平滑化前の表面形状に近似する凹凸が現れると考えられる。
これに対し、第二回転工程を塗布液表面が乾燥し流動性をほぼ失った状態で開始すれば、表面の平滑な形状を維持したままレンズ周縁部の余剰液を除去できると考えられる。塗布液表面を乾燥させた後の高速回転(第二回転工程)によって表面形状を平滑に維持しつつ周縁部の余剰液を除去できる理由は、レンズ基材上の塗布液にかかる遠心力が周縁部にいくほど大きくなることにあると考えられる。
上記の通り、第二回転工程は、レンズ表面上に塗布された水系塗布液の、少なくとも最表面が乾燥した後に開始することが好ましい。ここで、「乾燥」とは、広義には、第一回転工程に比べて水分含有量が少ないことを意味し、狭義には、レンズ基材表面上の各位置における遠心力に抗するに足る粘度を有することをいう。
第二回転工程は、第一回転工程後にレンズを風乾等により乾燥させた後に行うこともできるが、生産性の観点からは第一回転工程に引き続き行うことが好ましい。レンズ表面上の塗布液の最表面が乾燥状態にあることは、目視により判定することができるため、塗布面最表面の乾燥が目視により確認された後、第二回転工程を開始することもできる。但し、特に、第一回転工程に引き続き第二回転工程を開始する場合には、実生産開始前に予備実験を行い、第一回転工程において塗布液最表面が乾燥し得る回転条件(回転数および回転時間)を予め実験的に決定し、決定された回転時間後に第二回転工程を開始することが好ましい。また、塗布液の乾燥には、操作環境の湿度も影響する。従って、第一回転工程を適切な湿度下(例えば40〜60%RH)で行うことが好ましく、塗布工程から第二回転工程までの一連の操作を、適切な湿度下で行うことが更に好ましい。
先に説明したように、第二回転工程は、第一回転工程においてレンズ表面周縁部に集められた余剰液に対し、第一回転工程における遠心力より大きな遠心力を加え、該余剰液をレンズ基材表面周縁部上から除去する(レンズ外へ排出する)ために行う。第二回転工程における回転数は、第一回転工程における最大回転数より大きく設定される。第二工程における回転数は、例えば1000〜6000rpmとすることができ、3000〜5000rpmとすることが好ましい。更に、第二回転工程における最大回転数は、第一回転工程における最大回転数の2〜5倍の範囲とすることが好ましい。また、第二回転工程における回転数は、第一回転工程中、一定である必要はなく、段階的または連続的に変更してもよい。第二回転工程における回転時間は、例えば0.5〜2秒程度することができる。
以上の塗布工程および回転工程を経て、更に必要に応じて風乾等の乾燥工程を行い、レンズ基材表面上に樹脂層を形成することができる。本発明によれば、比較的高粘度な塗布液を用いて厚膜の樹脂層を形成することができる。形成される樹脂層の厚さは特に限定されるものではないが、本発明によれば、膜厚の均一性および表面平滑性に優れた、例えば0.5〜50μm程度の厚さの樹脂層を有するプラスチックレンズを得ることができる。
プラスチックレンズ基材
次に、本発明において水系塗布液を塗布するプラスチックレンズ基材について説明する。
プラスチックレンズ基材としては、通常プラスチックレンズとして使用される種々の基材を用いることができる。前記レンズ基材としては、例えば、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリウレタンとポリウレアの共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン−チオール反応を利用したスルフィド樹脂、硫黄を含むビニル重合体等が挙げられる。上記中、ウレタン系が好適であるが、これらに限定されるものではない。また、前記レンズ基材は、眼鏡用プラスチックレンズ基材であることが好ましい。
前記プラスチックレンズ基材は、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズのいずれであってもよい。レンズ基材のサイズは特に限定されるものではないが、過度に大きなレンズでは塗布工程に長時間を要するため、塗布液が塗布される表面の直径が50〜100mm程度のレンズを使用することが好ましい。遠心力により液溜まりを効果的に防止するうえでは凸面を有するレンズであることが好ましい。また、レンズ基材上に塗布液を安定に保持するためには、レンズ基材表面が、表面カーブが−8〜+8の曲面を含む凸面であることが好ましい。
また本発明において樹脂層が形成されるレンズ基材は、両面が中心対称性を有する面(例えば両面球面)であってもよいが、いずれか一方が中心対称性のない面形状を有してもよく、両面とも中心対称性のない面形状を有してもよい。特に本発明によれば、前述のように、レンズ基材の表面形状によらず塗布条件を決定できるため、本発明は、中心対称性のない複雑な面形状を有するレンズの製造方法として好適である。そのようなレンズとしては、両面に累進要素を有する両面非球面型累進屈折力レンズ、いずれか一方の面に累進面を有し、他方の面にトーリック面を有する累進屈折力レンズ、両面にトーリック成分を配分した単焦点レンズ、単焦点レンズの光学中心(累進屈折力レンズの遠用測定位置を含む)が円形レンズの幾何中心より偏心された加工される眼鏡レンズ等を挙げることができる。
なお、累進屈折力レンズは、老視用累進屈折力レンズとして用いられるレンズである。累進屈折力レンズは老視用眼鏡レンズでありながら外見上は容易に老眼鏡と察知されない利点や、遠距離から近距離まで切れ目なく連続的に明視しうる利点などの理由から、一般に広く利用されている。しかしながら、限られたレンズ面積の中に境界線を介入させることなく、遠方を見るための視野と近方を見るための視野、更にはそれらの中間的な距離を見るための視野といった複数の視野を配置する。本発明により製造可能な累進屈折力レンズとしては、例えば、第1には物体側表面である第1の屈折表面と眼球側表面である第2の屈折表面の何れかに累進面を有する片面累進屈折力レンズ、第2には物体側表面である第1の屈折表面と眼球側表面である第2の屈折表面とに分割配分されている累進屈折力作用を備え、前記第1の表面と前記第2の表面とを合わせて処方値に基づいた遠用度数と加入度数を与える構成となっている両面非球面型累進屈折力レンズを挙げることができる。累進屈折力レンズは、例えば図4〜図7の度数分布、または図8aもしくは図8bの断面を有する。本発明によれば、このような複雑な面形状を有するレンズであっても均一な樹脂層を形成することができる。特に本発明は、被塗布面が累進面または累進要素を有する非球面を含むレンズであって、レンズ表面形状に応じた吐出ノズル位置制御が困難な形状のレンズへの適用に適する。
水系塗布液
本発明においてレンズ基材表面に塗布される塗布液は、樹脂成分および水系溶媒を含有する水系塗布液である。樹脂成分としては、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル、エチレンビニル共重合体であるオレフィン系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系のエマルジョン等が挙げられる。前記塗布液は、例えば上述の樹脂成分を水系溶媒(例えば、水、または水とアルコール、ケトン、セロソルブ等との混合溶媒)に分散させたエマルジョンであることが好ましい。中でも、レンズ基材表面との密着性発現に有利な極性官能基を有するウレタン系エマルジョンを使用することが好ましい。上記エマルジョンは、後述するように樹脂層上に更に層を設ける場合、接着層として機能し得る。
本発明の製造方法は、通常のスピンコート法では均一な塗布が困難な、比較的高粘度な塗布液を使用し、膜厚の均一性および表面平滑性に優れた樹脂層を形成することができる。前記塗布液の粘度は、例えば10〜200CPS程度であることができる。また、前記塗布液の固形分濃度は、液安定性および膜厚確保の点から、20〜50質量%の範囲であることが好ましい。
前記塗布液を塗布する前に、レンズ基材表面に対し、酸、アルカリ、各種有機溶媒等による化学的処理、プラズマ、紫外線、オゾン等による物理的処理、各種洗剤を用いる洗剤処理を行うことができる。このような前処理を行うことにより、レンズ基材と樹脂層との密着性を向上させることができる。
本発明の製造方法によれば、塗布液の被塗布面に対する濡れ性が乏しい場合であってもスピンコート法による均一な塗布が可能となる。本発明は、前記塗布液と被塗布面との接触角が、例えば20°以上60°以下の場合に好適であり、26〜54°において特に好適に実施される。
通常、水系ポリマーの塗布では、レベリング剤(界面活性剤)を添加することにより塗布液の濡れ性を向上し、塗布を容易にしている。これに対し、本発明では、レベリング剤を加えた水系塗布液のみならずレベリング剤を含まない水系塗布液であっても、プラスチックレンズ上に均一に塗布することができる。水系ポリマーの種類によっては、ポリマーのイオン特性に応じて適切なレベリング剤を選択しなければ液安定性が低下することがある。よって、レベリング剤なしでも塗布を容易に行い得ることは、このような系において大きな利点となる。
前記樹脂層を形成したレンズは、通常、他の機能性層(例えばフォトクロミック層、ハードコート層など)を積層した後に製品レンズとして出荷することができる。一般に水系塗布液を乾燥固化することにより形成される樹脂層は、密着性向上のためのプライマー層として好適である。よって、このプライマー層上に他の層を積層すれば、該層とレンズ基材との密着性を高めることができる。レンズ基材に直接機能性層を形成する方法に比べて、機能性層側における密着形成の分担割合が小さすることができ、密着向上成分の添加により発現すべき機能が損なわれることを防ぐことができる。この点は、特に添加剤の使用により性能が大きく影響を受けるフォトクロミック層に対して有利である。よって、本発明では、前記水系塗布液によって形成される樹脂層上にフォトクロミック層を形成することが好ましい。
フォトクロミック層は、例えば、前述の塗布工程および回転工程に準じた工程によって樹脂層上に塗布した後、紫外線照射等の硬化処理を施すことによって形成することができる。ただし、この場合は螺旋状の塗布軌跡の一部に隙間があってもかまわない。これはフォトクロミック液は一般に非水系溶液であるため、樹脂層との濡れ性に優れ、塗布工程後の回転により樹脂層上に均一に広げることができるからである。また、フォトクロミック液の塗布は、特開2005−218994号公報、その全記載は、ここに特に開示として援用される、に記載の方法により行ってもよい。
フォトクロミック液は、硬化性成分、フォトクロミック色素、重合開始剤、および任意に添加される添加剤から形成することができる。以下に、各成分について説明する。
(i)硬化性成分
フォトクロミック膜形成のために使用可能な硬化性成分は、特に限定されず、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の光重合性モノマーやオリゴマー、それらのプレポリマーを用いることができる。これらのなかでも、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合性基として有する化合物が好ましい。なお、前記(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの両方を示す。
フォトクロミック膜とレンズ基材との界面での混ざり合い防止、硬度調整の容易さ、膜形成後の耐溶剤性や硬度、耐熱性等の硬化体特性、または発色濃度や退色速度等のフォトクロミック特性を良好なものとするため、ラジカル重合性単量体としては、単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上を示すもの(以下、高硬度モノマーと称す場合がある)を使用することが好ましい。また、高硬度モノマーとともに、同じく単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40以下を示すもの(以下、低硬度モノマーと称す場合がある)を併用することもできる。低硬度モノマーの添加は、硬化体を強靭なものとし、またフォトクロミック化合物の退色速度を向上させる効果がある。
Lスケールロックウェル硬度とは、JIS−B7726に従って測定される硬度を意味する。各モノマーの単独重合体についてこの測定を行うことにより、前記硬度条件を満足するかどうかを簡単に判断することができる。具体的には、モノマーを重合させて厚さ2mmの硬化体を得、これを25℃の室内で1日保持した後にロックウェル硬度計を用いて、Lスケールロックウェル硬度を測定することにより容易に確認することができる。
また、前記Lスケールロックウェル硬度の測定に供する重合体は、仕込んだ単量体の有す重合性基の90%以上が重合する条件で注型重合して得たものである。このような条件で重合された硬化体のLスケールロックウェル硬度は、ほぼ一定の値として測定される。
前記高硬度モノマーは、硬化後の硬化体の耐溶剤性、硬度、耐熱性等を向上させる効果を有する。これらの効果をより効果的なものとするためには、単独重合体のLスケールロックウェル硬度が65〜130を示すラジカル重合性単量体が好ましい。
このような高硬度モノマーは、通常2〜15個、好ましくは2〜6個のラジカル重合性基を有する化合物であり、好ましい具体例としては、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物が挙げられる。
(式中、R13は水素原子またはメチル基であり、R14は水素原子、メチル基またはエチル基であり、R15は3〜6価の有機基であり、fは0〜3の範囲の整数、f’はO〜3の範囲の整数、gは3〜6の範囲の整数である。)
(式中、R16は水素原子またはメチル基であり、Bは3価の有機基であり、Dは2価の有機基であり、hは1〜10の範囲の整数である。)
(式中、R17は水素原子またはメチル基であり、R18は水素原子、メチル基、エチル基またはヒドロキシル基であり、Eは環状の基を含む2価の有機基であり、iおよびjは、i+jの平均値が0〜6となる正の整数である。)
(式中、R19は水素原子またはメチル基であり、Fは側鎖を有していてもよい主鎖炭素数2〜9のアルキレン基である。)
(式中、R20は水素原子、メチル基またはエチル基であり、kは1〜6の範囲の整数である。)
前記一般式(1)〜(4)における、R13〜R19は、いずれも水素原子またはメチル基であるため、一般式(1)〜(4)で示される化合物は2〜6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
前記一般式(1)におけるR14は水素原子、メチル基またはエチル基である。
一般式(1)におけるR15は3〜6価の有機基である。この有機基は特に限定されるものではなく、また、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素一炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。
単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上を示すためには、R15は、好ましくは炭素数1〜30の有機基であり、より好ましくはエーテル結合および/またはウレタン結合を含んでいてもよい炭素数1〜15の有機基である。
また、fおよびf’は、それぞれ独立に0〜3の範囲の整数である。また、Lスケールロックウェル硬度を60以上とするためには、fおよびf’の合計が0〜3であることが好ましい。
前記一般式(1)で示される高硬度モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレト、トリメチロールブロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
前記一般式(2)におけるBは3価の有機基であり、Dは2価の有機基である。このBおよびDは特に限定されるものではなく、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素−炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上であるためには、Bは炭素数3〜10の直鎖または分枝状の炭化水素から誘導される有機基であると好ましく、Dは炭素数1〜10の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素、または炭素数6〜10の芳香族炭化水素から誘導される有機基である。
また単独重合体のLスケールロックウェル硬度を60以上とするために、hは1〜10の範囲の整数であり、好ましくは1〜6の範囲の整数である。
前記一般式(2)で示される高硬度モノマーの具体的としては、分子量2,500〜3,500の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB80等)、分子量6,000〜8,000の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB450等)、分子量45,000〜55,000の6官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB1830等)、分子量10,000の4官能ポリエステルオリゴマー(第一工業製薬社、GX8488B等)等が挙げられる。
前記一般式(3)におけるR18は水素原子、メチル基、エチル基またはヒドロキシル基である。また式(3)におけるEは環状の基を含む2価の有機基である。この有機基は環状の基を含むものであれば特に限定されるものではなく、また、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素−炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。Eに含まれる環状の基としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環または以下に示す環状の基等が挙げられる。
Eに含まれる環状の基はベンゼン環であることが好ましく、さらにEは下記式:
(Gは、酸素原子、硫黄原子、−S(O2)−、−C(O)−、−CH2−、−CH=CH−、−C(CH32−および−C(CH3)(C65)−から選ばれるいずれかの基であり、R21およびR22は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子であり、lおよびl’は、それぞれ独立に0〜4の範囲の整数である。)で示される基であるとより好ましく、最も好ましいEは下記式:
で示される基である。
前記一般式(3)中、iおよびjは、i+jの平均値が0〜6となる正の整数である。なお、式(3)で示される化合物は、iおよびjの双方が0である場合を除き、通常iおよびjの異なる複数の化合物の混合物として得られる。それらの単離は困難であるため、iおよびjはi+jの平均値で示される。i+jの平均値は2〜6であることがより好ましい。
一般式(3)で示される高硬度モノマーの具体的としては、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
前記一般式(4)におけるR19は水素原子またはメチル基であり、Fは側鎖を有していてもよい主鎖炭素数2〜9のアルキレン基である。この主鎖炭素数2〜9のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、ノニリレン基等が例示される。
一般式(4)で示される高硬度モノマーの具体的としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,9−ノニレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
前記一般式(5)におけるR20は水素原子、メチル基またはエチル基であり、kは2〜6の範囲の整数であり、好ましくはkは3または4である。
一般式(5)で示される高硬度モノマーの具体的としては、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
なお、前記一般式(1)〜(5)で示される化合物でも、置換基の組み合わせによっては単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60未満のものがあるが、その場合には、これらの化合物は低硬度モノマーまたは中硬度モノマーに分類される。
また、前記一般式(1)〜(5)で示されない高硬度モノマーもあり、その代表的化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
(ii)フォトクロミック色素
フォトクロミック液に添加し得るフォトクロミック色素としては、公知のものを使用することができ、例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック化合物が挙げられ、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を特に制限なく使用することができる。
前記フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物としては、例えば、特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される、などに記載されている化合物が好適に使用できる。
また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として、例えば、特開2001−114775号公報、特開2001−031670号公報、特開2001−011067号公報、特開2001−011066号公報、特開2000−347346号公報、特開2000−34476号公報、特開2000−3044761号公報、特開2000−327676号公報、特開2000−327675号公報、特開2000−256347号公報、特開2000−229976号公報、特開2000−229975号公報、特開2000−229974号公報、特開2000−229973号公報、特開2000−229972号公報、特開2000−219687号公報、特開2000−219686号公報、特開2000−219685号公報、特開平11−322739号公報、特開平11−286484号公報、特開平11−279171号公報、特開平10−298176号公報、特開平09−218301号公報、特開平09−124645号公報、特開平08−295690号公報、特開平08−176139号公報、特開平08−157467号公報等に開示された化合物も好適に使用することができる。上記公報の全記載は、ここに特に開示として援用される。
これらフォトクロミック化合物の中でも、クロメン系フォトクロミック化合物は、フォトクロミック特性の耐久性が他のフォトクロミック化合物に比べ高く、さらにフォトクロミック特性の発色濃度および退色速度の向上が他のフォトクロミック化合物に比べて特に大きいため特に好適に使用することができる。さらに、これらクロメン系フォトクロミック化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、本発明によるフォトクロミック特性の発色濃度および退色速度の向上が他のクロメン系フォトクロミック化合物に比べて特に大きいため好適に使用することができる。
これらフォトクロミック化合物は適切な発色色調を発現させるため、複数の種類のものを適宜混合して使用することができる。
フォトクロミック液中のフォトクロミック色素の濃度は、前記重合性成分100質量部(ラジカル重合性単量体等)に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることが更に好ましい。
(iii)重合開始剤
フォトクロミック液に添加する重合開始剤は、重合方法に応じて、公知の熱重合開始剤および光重合開始剤から適宜選択することができる。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイドが好ましい。
これら光重合開始剤は、複数の種類のものを適宜混合して使用することができる。光重合開始剤のフォトクロミック液全量に対する配合量としては、前記重合性成分100質量部(ラジカル重合性単量体等)に対して、通常0.001〜5質量部であり、0.1〜1質量部であると好ましい。
また、フォトクロミック膜を熱重合により形成する場合、使用可能な熱重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾピスイソプチロニトリル、2,2’−アゾピス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等挙げられる。
これら熱重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性単量体の種類や組成によって異なるが、通常、前記重合性成分100質量部に対して0,01〜10質量部の範囲とすることが好適である。上記熱重合開始剤は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
(iv)添加剤
フォトクロミック液には、フォトクロミック色素の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。これら添加剤としては、公知の化合物を何ら制限なく使用できる。
前記界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、重合性単量体への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン系界面活性剤を具体的に挙げると、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル等である。界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用してもよい。界面活性剤の添加量は、前記重合性成分100質量部に対し、0.1〜20質量部の範囲が好ましい。
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用してもよい。さらにこれらの非重合性化合物の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用してもよい。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤の添加量は、前記重合性成分100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。
高分子素材については、酸素存在下において、以下のメカニズムにより紫外線、熱等のエネルギーがきっかけとなり酸化劣化するという問題があることが知られている。まず高分子化合物がUV照射などの高エネルギーに暴露されると、高分子中にラジカルが発生する。するとそれが起点となって、新たなラジカルや過酸化物が発生する。一般に過酸化物は不安定なため、熱や光で容易に分解し、さらに新たなラジカルを作り出す。このように、一度酸化が始まると、次々と連鎖的に酸化が起きるため高分子素材が劣化し機能低下をもたらされる。 このようなメカニズムによって生じる酸化を防止するためには、(1)発生したラジカルを無効化する方法、(2)発生した過酸化物を無害な物質に分解し、新たなラジカルが発生しないようにする方法、が考えられる。そこで、高分子素材用の酸化防止剤としては、上記方法(1)により酸化を防止するためにラジカル補足能を有するもの(ラジカル補足剤)を用いることが考えられ、上記方法(2)により酸化を防止するために過酸化物分解能を有するもの(過酸化物分解剤)を用いることが考えられる。本発明では酸化防止剤としてラジカル補足能を有する、過酸化物分解能を有するもののいずれを用いてもよいが、ラジカル補足能を有する化合物を酸化防止剤として用いることが好ましい。フォトクロミック化合物は太陽光からの紫外線を吸収し、分子構造が変化することで着色し、熱や可視光線を吸収することで元の状態に戻る。この変化の経路において酸素存在下では酸素へのエネルギー移動を生じ、酸化力の強い酸素ラジカルが発生する。そこで、ラジカル補足能を有する化合物によってこの酸素ラジカルを補足することで、フォトクロミック膜における酸化を有効に防止することができる。またラジカル補足剤添加によりラジカル重合の進行を抑制できるため、柔軟なフォトクロミック膜を形成するためにもラジカル補足剤添加は有効である。
以上の観点から好ましい添加剤としては、ヒンダートアミン化合物およびヒンダートフェノール化合物が挙げられる。上記化合物はラジカル補足能を発揮し得るため、柔軟なフォトクロミック膜の形成に寄与することができるとともに、得られたフォトクロミック膜の酸化を防止し耐久性を向上することができる。更に、前記化合物の添加により、硬化させる際のフォトクロミック色素の劣化を防止することもできる。ヒンダードアミン化合物およびヒンダートフェノール化合物としては、公知の化合物を何ら制限なく用いることができる。ヒンダートアミン化合物の中でも、塗布用に用いる場合、特に、フォトクロミック色素の劣化防止効果を発現する化合物としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等を挙げることができる。また、好ましいヒンダートフェノール化合物としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン酸(BHT)が挙げられる。その添加量は、前記重合性成分100質量部に対し、例えば0.001〜20質量部の範囲であり、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、より好適には、1〜5質量部の範囲である。
なお、前述のラジカル補足能を有する化合物等の各種添加剤は、フォトクロミック液に添加することができるが、フォトクロミック膜形成後に含浸処理等によって添加することも可能である。この場合、ラジカル補足能を有する化合物については、物体側表面から含浸させることが好ましい。
また、フォトクロミック液においては、成膜時の均一性を向上させるために、界面活性剤、レベリング剤等を含有させることが好ましく、特にレベリング性を有するシリコーン系・フッ素系レベリング剤を添加することが好ましい。その添加量としては、特に限定されないが、フォトクロミック液全量に対し、通常0.01〜1.0質量%であり、0.05〜0.5質量%の範囲が好ましい。
本発明においては、フォトクロミック液に、密着性を向上させるために通常添加される各種成分(カップリング剤等の密着剤、またはカップリング剤の重合触媒)を添加しないことが好ましい。例えば、シランカップリング剤等を含む塗布液は、液保存時に自己重合により液寿命(ポットライフ)が低下するため、そのような成分を含まないことは、作業性の面から好ましい。本発明によれば、水系塗布液から形成される樹脂層が接着層の役割を果たすため、フォトクロミック液への密着剤の添加を行うことなく、レンズ基材とフォトクロミック層の密着性を確保することができる。
本発明において、フォトクロミック液の調製方法は特に限定されず、所定量の各成分を秤取り混合することにより行うことができる。なお、各成分の添加順序は特に限定されず全ての成分を同時に添加してもよいし、モノマー成分のみを予め混合し、重合させる直前にフォトクロミック色素や他の添加剤を添加・混合してもよい。
前記フォトクロミック液は、25℃での粘度が20〜500cpsであることが好ましく、50〜300cpsであることがより好ましく、60〜200cpsであることが特に好ましい。この粘度範囲とすることにより、フォトクロミック液の塗布が容易となり、所望の厚さのフォトクロミック膜を容易に得ることができる。
上記フォトクロミック液を樹脂層上に塗布した後、フォトクロミック液に含まれる重合性成分の種類に応じた硬化処理を施すことにより、フォトクロミック膜を形成することができる。前記硬化処理は、公知の方法で行うことができる。フォトクロミック膜の厚さは、10μm以上であることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。
[参考態様A]
先に説明した二段階の回転工程を経る水系塗布液の塗布方法は、本発明のプラスチックレンズの製造方法に限らず適用することができる。
上記塗布方法を採用したプラスチックレンズの製造方法(参考態様A)は、
プラスチックレンズ基材表面上に樹脂層を形成することを含むプラスチックレンズの製造方法であって、
樹脂成分および水系溶媒を含有する水系塗布液をノズル先端から吐出し、上記表面を上方に向けて回転するプラスチックレンズ基材の該表面上に螺旋状の塗布軌跡を描くように塗布する塗布工程、
前記塗布工程後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させる第一回転工程、および
第一回転工程後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて、かつ第一回転工程における最大回転数を越える回転数で回転させる第二回転工程、
を含み、かつ、第二回転工程を、前記表面に塗布した水系塗布液の、少なくとも最表面が乾燥した後に開始すること
を含むプラスチックレンズの製造方法
である。
第二回転工程における最大回転速度は、第一回転工程における最大回転速度の2〜5倍の範囲であることができる。
前記螺旋状の塗布軌跡は、前記表面周縁部から中心部に向かって描くことができる。
前記螺旋状の塗布軌跡は、前記表面の半径方向において隣り合う塗布軌跡が接触または重なり合うように描くことができる。
前記樹脂成分は、ポリウレタン樹脂であることができる。
前記プラスチックレンズは眼鏡レンズであることができる。
参考態様Aは、前記樹脂層上に塗布膜を形成することを更に含むことができる。
前記樹脂層は、接着層であることができる。
前記塗布膜はフォトクロミック膜であることができる。
前述のように、水系塗布液は、加熱工程を行うことなく成膜可能である、溶剤フリー化が可能である、といった利点がある。しかし上記水系塗布液を用いてスピンコート法により塗布層を形成する際には、前述のように塗布膜の均一性向上という課題があった。この課題は、前述の本発明のプラスチックレンズの製造方法により解決することができる。更に本発明者らの検討の結果、上記水系塗布液を用いてスピンコート法により塗布層を形成するためには、以下の課題があることも判明した。
スピンコート中、レンズ表面に滴下された水系塗布液は遠心力により水系溶媒が除去される(飛ばされる)ことによって固化が進行する。レンズ表面上では、遠心力による塗布液の拡散と固化が同時に進行するため、通常のスピンコート法のようにレンズ中心部に塗布液を滴下し、回転による遠心力によって表面全体に広げる方法では、固化後の塗布膜表面に塗布液が拡散した軌跡が残り、表面平滑性が低下する。そこで、前述の特開2005−218994号公報に記載されているようにレンズ表面に螺旋状に塗布液を塗布することが考えられる。しかし、特開2005−218994号公報に記載の塗布液のように塗布後に重合硬化する塗布液であれば、螺旋状の塗布軌跡は、レベリング効果によって解消することができるのに対し、上記水系塗布液は塗布中に固化が進行するため、形成される塗布膜に塗布軌跡に対応した凹凸が残ることがあることが判明した。
この対策として、プラスチックレンズ表面上に水系塗布液を螺旋状に塗布した後、塗布液が未乾燥の状態でレンズを回転させることが考えられる。これにより、未乾燥状態の塗布液を遠心力により移動させ凹凸間の高低差を埋める(平滑化する)ことができる。ただし、回転により加わる遠心力によりレンズ表面では周縁部に余剰液が集まる傾向にある。そこで本発明者らは、平滑化のための回転工程後、回転数を上げてより大きな遠心力を加えることにより、余剰液をレンズ外へ排出することを考えた。しかし、本発明者らが上記方法による塗布膜形成を試みたところ、高速回転を開始するタイミングによっては、平滑化のための回転により解消されたはずの螺旋状等の塗布軌跡に対応した凹凸(塗布痕)が塗布膜表面に現れる場合があることが判明した。この凹凸は、膜厚の不均一や光学特性低下の原因となる。これに対し、本発明者らの検討の結果、高速回転後の塗布痕は、塗布膜表面の乾燥状態が不均一な状態で高速回転を開始したときに発生することが明らかになった。そこで本発明者らは、余剰液除去のために行う高速回転を、少なくとも塗布膜表面が均一な乾燥状態になった後、即ち塗布膜の最表面が乾燥した後に行うことにより、塗布痕発生を防止できることを見出し、参考態様Aを完成するに至った。参考態様Aによれば、プラスチックレンズ基材上に水系塗布液を均一に塗布し、優れた光学特性を有する塗布膜を形成することができる。
参考態様Aは、プラスチックレンズ基材表面上に樹脂層を形成することを含むプラスチックレンズの製造方法に関する。参考態様Aは、以下の工程を含む。
(1)樹脂成分および水系溶媒を含有する水系塗布液をノズル先端から吐出し、上記表面を上方に向けて回転するプラスチックレンズ基材の該表面上に螺旋状の塗布軌跡を描くように塗布する塗布工程;
(2)前記塗布工程後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させる第一回転工程;
(3)第一回転工程後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて、かつ第一回転工程における最大回転数を越える回転数で回転させる第二回転工程。
前記第一回転工程は、レンズ基材表面上に塗布された塗布液の流動性が比較的高い間に、螺旋状の塗布軌跡間の凹凸の高低差を埋めることにより表面の平滑化および膜厚の調整を行うために行われる。一方、前記第二回転工程は、遠心力によりレンズ基材表面周縁部に集められた余剰液をレンズ外へ排出し、膜厚の均一性を高めるために行われる。ここで、第二回転工程を、第一回転工程より高速で行う理由は、より大きな遠心力を与えることにより、第一回転工程における遠心力ではレンズ外へ排出されずレンズ基材表面周縁部に残留した余剰液をレンズ外へ排出するためである。
但し、前述のように、本発明者らの検討の結果、第一回転工程後に塗布液最表面の乾燥状態が不均一のうちに第二回転工程を開始すると、第一回転工程において解消されたはずの螺旋状の塗布痕と同様の凹凸が塗布膜表面に現れる場合があることが判明した。光学的には、この凹凸がそれぞれ凹レンズまたは凸レンズとして作用するため、透過像において、歪みや明暗の差として認識される。この歪みや明暗の差が目視でも確認できるほど鮮明になると、眼鏡レンズとして使用することは困難となる。
そこで参考態様Aでは、第二回転工程を、レンズ基材表面に塗布した水系塗布液の乾燥状態が均一になった後、即ち水系塗布液の表面が乾燥した後に開始する。これにより、レンズ基材表面周縁部の余剰液が除去され、しかも塗布痕の発生が防止された、均一な膜厚を有する光学特性に優れたプラスチックレンズを得ることができる。第二回転工程を、塗布液最表面が未乾燥の状態で開始することにより、塗布痕が発生する理由について、本発明者らは前述の塗布痕形成仮説1および2のように推定している。これに対し、第二回転工程を塗布液表面が乾燥し流動性をほぼ失った状態で開始すれば、表面の平滑な形状を維持したままレンズ周縁部の余剰液を除去できるものと考えられる。塗布液表面を乾燥させた後の高速回転によって表面形状を平滑に維持しつつ周縁部の余剰液を除去できる理由は、レンズ上の塗布液にかかる遠心力が周縁部にいくほど大きくなることにあると考えられる。
以下に、参考態様Aについて、更に詳細に説明する。
塗布工程
本工程では、レンズ基材表面上に螺旋状の塗布軌跡を描くように水系塗布液を塗布する。螺旋状の塗布軌跡を描くためには、回転するレンズ基材上でノズルを水平方向に移動させればよい。螺旋状の塗布軌跡は、レンズ基材表面中心部から周縁部に向かって描いてもよいが、本発明のプラスチックレンズの製造方法のように、周縁部から中心部(外側から内側)に向かって描くことが好ましい。レンズ基材表面上で外側から内側へ向かって塗布することにより、先に塗布され固化が進行しているレンズ基材表面周縁部の塗布液が壁の役割を果たし、その後の第一回転工程において遠心力により拡散する液が、周縁部外へ飛び散ることを防ぐことができる。これにより、第一回転工程においてレンズ基材表面上で液を平均的に拡散し、膜厚の均一化および表面平滑化を図ることができる。参考態様Aにおける塗布工程は、本発明のプラスチックレンズの製造方法における塗布工程と同様に行うことが好ましい。その詳細は前述の通りである。
第一回転工程
参考態様Aにおける第一回転工程は、本発明のプラスチックレンズの製造方法について前述した通りに行うことができる。なお、前述のように、塗布工程においてレンズ基材表面上の外側から内側へ向かって塗布を行った場合、先に塗布され固化が進行しているレンズ基材表面周縁部の塗布液が壁の役割を果たし、回転工程において拡散する液が周縁部外へ飛び散ることを防ぐことができる。これにより、レンズ基材表面上で液を平均的に拡散することができるため、塗布工程において外側から内側へ向かって塗布を行うことは、膜厚の均一化および表面平滑化を達成する上で好ましい。
第二回転工程
本工程は、先に説明したように塗布痕防止のために、レンズ基材表面上に塗布された水系塗布液の、少なくとも最表面が乾燥した後に開始される。参考態様Aにおける第二回転工程の詳細は、本発明のプラスチックレンズの製造方法について前述した通りである。
以上説明した工程を経て、更に必要に応じて風乾等の乾燥工程を行い、レンズ基材表面上に樹脂層を形成することができる。形成される樹脂層の厚さは特に限定されるものではないが、参考態様Aによれば、膜厚の均一性および表面平滑性に優れた、例えば0.5〜50μm程度の厚さの樹脂層を有するプラスチックレンズを得ることができる。参考態様Aにおいて使用されるプラスチックレンズ基材、水系塗布液、その他の詳細は、先に本発明のプラスチックレンズの製造方法の説明において記載した通りである。
以下に、実施例により本発明を更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
[実施例1(態様I)]
1.樹脂層の形成
(1)塗布条件の設定
プラスチックレンズ基材として、メニスカス形状のポリチオウレタン(HOYA(株)製 商品名EYAS、中心肉厚2.0mm厚、半径75mm、凸面の表面カーブ(平均値)約+0.8)、プライマー液として水系ポリウレタン樹脂液(ポリカーボネートポリオール系ポリウレタンエマルジョン、粘度100CPS、固形分濃度38質量%)を使用しプライマー層を形成するための塗布条件を以下の方法により決定した。塗布ノズルとしてはφ0.2mmのものを使用し、吐出量は0.1g/sec、吐出速度は3360mm/secとすることとした。また、上記レンズ基材は、10質量%水酸化ナトリウム水溶液に5〜6分間浸漬することでアルカリ処理を施した後、80℃の温風で乾燥させた。乾燥後のレンズ凸面に対する上記水系ポリウレタン樹脂液の接触角を測定したところ、54°であった。
(a)ディスペンス限界周速の決定
上記アルカリ処理後のレンズ基材を凸面を鉛直上方に向けてスピンコーター上に載置し、200〜1200rpmの範囲で回転数を変化させてレンズを回転させた。上記回転中のレンズ凸面上に、前記水系ポリウレタン樹脂液を塗布ノズルから吐出し、レンズ凸面周縁部から中心部に向かって螺旋状の塗布軌跡が描かれるように樹脂液を流下させた。風乾後に塗布線幅を顕微鏡により測定した。レンズ周速と塗布線幅との関係を図9に示す。ここでは、レンズ凸面とノズル先端との距離の影響を確認するため、該距離を6mm、12mm、18mmに変化させてデータを収集した。
図9に示すように、レンズ周速2000mm/sec程度までであれば塗布線幅を測定することができたが、より高速側ではレンズ表面で液が弾かれてしまったレンズ凸面上に樹脂液をディスペンスできなかった。この結果から、ディスペンス限界周速を2000mm/secと決定した。また、図9の結果から、レンズ凸面とノズル先端との距離は塗布線幅に大きな影響を及ぼさないことが確認できる。
(b)各半径での回転数の決定
上記(a)で決定したディスペンス限界周速から、前述の式(1)により各半径での回転数を決定した。
(c)各半径における周速の算出
上記(b)で決定した回転数から、前述の式(2)により各半径でのレンズ周速を算出した。
(d)螺旋ピッチの決定
図9に示すグラフから上記(c)で算出したレンズ周速での塗布線幅を読み取った。読み取り値に安全率(80%)をかけて算出された値を螺旋ピッチとした。
(e)水平方向でのノズル移動速度の決定
上記(b)で求めた回転数と上記(d)で求めた螺旋ピッチから、各半径でのノズル移動速度(水平方向)を決定した。図9に示すように、ノズル先端とレンズ凸面との距離は塗布線幅に大きな影響を及ぼさなかったため、鉛直方向でのノズル位置は一定とし、水平方向にのみ移動させることとした。
上記(a)〜(e)によって決定された塗布条件を下記表1に示す。
(2)樹脂液の塗布
上記表1に示す塗布条件にて、前記ポリウレタン樹脂液を、前記レンズ基材凸面に、凸面周縁部から中心部に向かって螺旋状の塗布軌跡を描きながら塗布した。塗布後のレンズ凸面を目視で観察したところ、隣り合う塗布軌跡が重なり合い、螺旋ピッチ間に隙間なく塗布されたことが確認できた。
(3)回転工程
前記塗布後のレンズを、引き続きスピンコーター上で、回転数800rpmで30秒間回転させた。その後、15分間風乾し、樹脂層を有するレンズを得た。形成された樹脂層の膜厚は、6.5〜8.5μmであった。
[参考例1]
塗布工程を、下記表2に示す塗布条件にて行った点を除き、実施例1と同様の方法で樹脂層を有するレンズを得た。塗布工程後のレンズ凸面を目視で観察したところ、螺旋ピッチ間に隙間が確認された。これら隙間は回転工程後にも残存していた。
実施例1で作製したレンズおよび参考例1で作製したレンズ凸面をデジタルカメラで撮影した写真を図10(a)、(b)に示す。測定位置は、レンズ幾何中心より20mm程度の位置、スケールは5mm角、蛍光灯下における室内で、蛍光灯からの反射光により塗布面をデジタルカメラで撮影した。
図10(a)に示すように、実施例1で作製したレンズでは塗布ムラは認められず均一な樹脂層を形成することができた。これに対し、図10(b)に示すように、参考例1で作製したレンズ表面では、塗布ムラに起因し一部樹脂層が形成されず、均一な膜厚の樹脂層を形成することができなかった。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で樹脂層を形成した。その後、形成した樹脂層上に、以下の方法でフォトクロミック膜を形成した。
(i)フォトクロミックコーティング液の調製
プラスチック製容器にトリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性単量体100質量部に、フォトクロミック色素として下記クロメン1を3質量部、光安定化剤LS765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)を5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤Irganox245(チバセペシャリティケミカルズ製)を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI−1870(チバセペシャリティケミカルズ製)0.8質量部を添加して十分に攪拌混合を行った組成物に、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM503)を攪拌しながら滴下した。その後、さらにシリコーン系レベリング剤Y−7006(ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサン コポリマー 東レダウコーニング(株)製)を0.1質量量部添加混合した後、自転公転方式攪拌脱泡装置((株)シンキー AR−250)にて2分間脱泡することで、フォトクロミック性を有する硬化性組成物を得た。
(ii)フォトクロミック膜の形成
前記樹脂層上に、(i)で調製された硬化性組成物をスピンコート法でコーティングした。スピンコートは、特開2005−218994号公報記載の方法で行った。その後、
このレンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、フュージョン製UVランプ(Dバルブ)波長405nmの紫外線積算光量で1800mJ/cm2(100mW/cm2、3分)照射し、さらに、100℃、60分間硬化を行い、フォトクロミック被膜層を有するプラスチックレンズレンズを得た。
クロスハッチ試験によりレンズ基材とフォトクロミック膜との密着性を評価したところ、100/100で良好な結果が得られた。
[比較例1]
実施例1と同様のレンズ基材と樹脂液を使用し、スピンコーター上で回転するレンズ凸面中心に塗布液を滴下してスピンコートする方法により樹脂液の塗布を試みた。スピンコート後のレンズ表面を、上記と同様の方法でデジタルカメラによって撮影した写真を図11に示す。図11に示すように、レンズ表面上に塗布液を塗布することができなかった。これは、レンズ表面に塗布液が弾かれてしまったからであった。
[実施例A1〜A24(態様I、参考態様A)、実施例B1〜B48(態様I)]
1.樹脂層の形成
(1)樹脂液の塗布
塗布条件として実施例1で設定した塗布条件を採用し、実施例1で使用したポリウレタン樹脂液と同様の樹脂液を、実施例1と同様の処理を施したレンズ基材凸面に、凸面周縁部から中心部に向かって螺旋状の塗布軌跡を描きながら塗布した。塗布後のレンズ凸面を目視で観察したところ、隣り合う塗布軌跡が重なり合い、螺旋ピッチ間に隙間なく塗布されたことが確認できた。
(2)第一回転工程
(i)予備実験
予備実験として、上記と同様の方法で塗布液を塗布した後、表3に示す湿度において、回転数800rpm、1000rpm、1200rpm、1400rpmにて、それぞれ最大80秒間回転を続け、レンズ凸面上に塗布した塗布液の表面が乾燥するまでに要する時間を測定した。塗布液表面が乾燥したことは目視により確認した。結果を下記表3に示す。
(ii)第一回転工程の実施
前記塗布後のレンズを、引き続きスピンコーター上で、表4に示す回転数および回転時間で回転させた。
(3)第二回転工程
前記塗布工程後のレンズを、表4に示す湿度下にて、表4に示す回転数および回転時間で回転させた後、それぞれ回転数を表4に示す値まで上げ、該回転数にて表4に示す時間回転を続けた。これにより樹脂層付プラスチックレンズを得た。第一回転工程および第二回転工程は、表4に示す湿度下で実施した。
得られたプラスチックレンズを以下の方法により評価した。
(a)塗布痕の有無
形成した樹脂層中に螺旋状の塗布痕が確認されるか否かを目視により観察した。結果を表4に示す。
(b)膜厚差測定
形成した樹脂層の厚さを、オムロン社製光学式膜厚測定装置Z5FM-C300SEにより、中心部(レンズの幾何学中心近傍)と周縁部(レンズの外周端部から10mm程度内方)において測定した。結果を表4に示す。同一回転数内で膜厚差が小さいほど膜厚の均一性は良好である。回転数が大きくなるほど膜厚が薄くなり膜厚差は小さくなるため、異なる回転数間の試料について膜厚差の値のみで膜厚の均一性を判断することはできないが、例えば膜厚差0.5μm以下が好ましく、0.2μm以下が更に好ましい。
実施例A1〜A24、B1〜B48で作製したレンズを蛍光灯下における室内で観察したところ、いずれも塗布ムラは観察されなかった。更に、表4に示すように、塗布液表面の乾燥状態が均一になった(最表面が乾燥した)後に第二回転工程を開始した実施例A1〜A24では、螺旋状の塗布痕のない、より均一な膜厚を有する樹脂層を形成することができた。
[実施例A25]
実施例A1〜A24のプラスチックレンズの樹脂層上に、実施例2と同様の方法でフォトクロミック膜を形成し、フォトクロミック被膜層を有するプラスチックレンズを得た。
クロスハッチ試験によりレンズ基材とフォトクロミック膜との密着性を評価したところ、100/100で良好な結果が得られた。
本発明のプラスチックレンズの製造方法および参考態様Aは、フォトクロミック膜等の機能性膜を有する眼鏡レンズの製造方法として好適である。
螺旋状の塗布軌跡の模式図を示す。 図2に示す塗布軌跡の一部拡大模式図を示す。 水系塗布液の塗布に使用可能な塗布装置の一例を示す。 累進多焦点レンズのS度数(平均度数)分布図である。 累進多焦点レンズのC度数(円柱度数)分布図である。 図4のS度数分布に対応する鳥瞰図である。 図5のC度数分布に対応する鳥瞰図である。 累進屈折力プラスチックレンズの断面を表す図である。 累進屈折力プラスチックレンズの断面を表す図である。 レンズ周速と塗布線幅との関係を示すグラフである。 図10(a)は実施例1で作製したレンズ、図10(b)は参考例1で作製したレンズのデジタルカメラ写真である。 比較例1における塗布後のレンズ表面のデジタルカメラ写真である。

Claims (15)

  1. プラスチックレンズ基材表面上に樹脂層を形成することを含むプラスチックレンズの製造方法であって、
    樹脂成分および水系溶媒を含有する水系塗布液をノズル先端から吐出し、上記表面を上方に向けて回転するプラスチックレンズ基材の該表面上に、該表面周縁部から中心部へ向かって螺旋状の塗布軌跡を描くように、かつ該表面の半径方向において隣り合う塗布軌跡が接触または重なり合うように塗布すること、および、
    前記塗布後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させ、該塗布液中に含まれる水系溶媒の少なくとも一部を除去することにより樹脂層を形成すること
    を含むプラスチックレンズの製造方法。
  2. 前記樹脂層の形成は、前記塗布後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させる第一回転工程、および、第一回転工程後のプラスチックレンズ基材を、前記塗布液を塗布した表面を上方に向けて、かつ第一回転工程における最大回転数を越える回転数で回転させる第二回転工程、を含み、かつ、
    第二回転工程を、前記表面に塗布した水系塗布液の、少なくとも最表面が乾燥した後に開始する請求項1に記載の製造方法。
  3. 第二回転工程における最大回転速度は、第一回転工程における最大回転速度の2〜5倍の範囲である請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記塗布液の粘度は10〜200CPSの範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記塗布液のノズル先端からの吐出速度は200〜4693mm/secの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記塗布液の前記表面上における単位面積あたりの塗布量が略平均化されるように、前記塗布液のノズル先端からの吐出量、前記ノズルの移動速度および前記プラスチックレンズ基材の回転速度からなる群から選ばれる少なくとも1つを制御する請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記塗布液を吐出するノズルを、前記表面周縁部上方から中心部上方に向かって水平方向に移動させることを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記ノズルの移動速度を、段階的または連続的に増加させる請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記塗布におけるプラスチックレンズ基材の回転速度を、段階的または連続的に増加させる請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記樹脂成分は、ポリウレタン樹脂である請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記表面は、表面カーブが−8〜+8の曲面を含む凸面である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 前記プラスチックレンズは眼鏡レンズである請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 前記樹脂層上に塗布膜を形成することを更に含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
  14. 前記樹脂層は、接着層である請求項13に記載の製造方法。
  15. 前記塗布膜はフォトクロミック膜である請求項13または14に記載の製造方法。
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