JP7286292B2 - コート膜付き眼鏡レンズの作製方法 - Google Patents
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Description
しかしながら眼鏡レンズの場合、コート膜に付いた傷からアルカリ性物質、酸性物質等が浸透し、あるいは使用中の紫外線、熱等の影響を受け、コート膜が剥がれる場合があった。
しかし、この方法では、眼鏡レンズの使用の際のコート膜の剥がれを十分に再現できないという問題があった。
当該評価試験方法は、眼鏡レンズを保持し、眼鏡レンズのコート膜に対して、表面に粗さを持った擦傷物を押し付けながら水平方向の運動をさせて傷を施し、耐候性等の加速試験機へ任意の期間投入した後、この眼鏡レンズのコート膜密着性能を評価するものである。
眼鏡レンズの使用の際、眼鏡レンズの外周部の端部からコート膜の剥がれが問題となる場合がある。
また、眼鏡レンズの度数が目標とする度数になるように、研磨を行う場合や、眼鏡レンズをフレームに合わせて玉型加工をする際に、眼鏡レンズの外周部の端部からコート膜が剥がれる場合もある。すなわち、コート膜を形成した眼鏡レンズの初期状態においてコート膜のレンズ基材の密着性が低い場合もある。
プラスチックレンズ基材の上層に、前記プラスチックレンズ基材と接する、ウレタン系、オレフィン系、アクリル系、及びエポキシ系の群の中から選択される水分散系樹脂を含む接着層と、前記接着層の上層に、前記接着層と接するコート膜と、を形成するステップと、
前記接着層及び前記コート膜を形成した前記プラスチックレンズ基材を100℃以上130℃以下の温度で熱処理するステップと、を備える。
前記熱処理の前記温度を含む熱処理条件は、前記接着層及び前記コート膜を形成して前記熱処理を施すことにより予め作製したコート膜付き眼鏡レンズの外周部から外側に10~15mm離間した位置から、前記眼鏡レンズの端部の側に向けて吐出圧力0.6Mpa~1.0MPaの高圧水を吹き付けることによってせん断力を与えたときに、前記コート膜及び前記接着層が中心に向かって剥がれる量である剥離大きさが2mm以下となるように設定される。
実施形態のコート膜付き眼鏡レンズでは、
(1)プラスチックレンズ基材の上層に、プラスチックレンズ基材と接する、ウレタン系、オレフィン系、アクリル系、及びエポキシ系の群の中から選択される水分散系樹脂を含む接着層(後述する図1(b)の符号“14”の部分に対応)と、この接着層の上層に、接着層と接するコート膜と、を形成するステップ、及び
(2)接着層及びコート膜を形成したプラスチックレンズ基材を100℃以上130℃以下の温度で熱処理するステップ、を備える。
ここで、上記熱処理の上記温度を含む熱処理条件は、上記(1)、(2)のステップで予め作製したコート膜付き眼鏡レンズにせん断力を与えたときに、コート膜及び接着層が剥がれる剥離大きさに基づいて設定される。予め作製したコート膜付き眼鏡レンズとは、上記(1)と(2)のステップを通して(上記(2)の熱処理では予め設定した熱処理条件を用いて)、作製されたものである。
JIS K5600におけるクロスハッチ法では、コート膜や接着層を、レンズ基材からレンズ面に対して垂直方向に引き剥がす力を与えて剥離の評価を行うが、眼鏡を使用する際に、眼鏡使用者は、レンズ基材からコート膜を引き剥がすように垂直方向に力を与えることはなく、レンズ表面上の異物をふき取る場合のように、布等で表面を擦る場合が多く、コート膜にせん断力を与える場合が殆どである。また、眼鏡レンズを研磨する場合も、一方のレンズ表面を押さえながら他方のレンズ表面を研磨するが、この場合もコート膜にせん断力を与える。したがって、せん断力に対する接着層やコート膜のレンズ基材に対する剥離評価が、眼鏡レンズの使用における接着層やコート膜の密着性の耐久性に対応する。
本実施形態の接着層やコート膜のレンズ基材に対する剥離評価は、せん断力を与えた場合の剥離大きさに基づいて評価する。剥離評価を行う眼鏡レンズは、例えば、実際の眼鏡の使用条件を再現する加速処理を施したものを用いることが好ましい。
したがって、本実施形態では、剥離がし難い眼鏡レンズを作製するために、予め(設定した熱処理条件で)作製したコート膜付き眼鏡レンズにせん断力を与えたときに、コート膜及び接着層が剥がれる剥離大きさに基づいて、熱処理に用いる、温度を含む熱処理条件を調整して眼鏡レンズが作製される。
以下、コート膜として、紫外線を吸収して発色する調光膜を一例として挙げて説明する。
眼鏡レンズに用いるプラスチックレンズ基材(以降、単にレンズ基材ともいう)としては、通常プラスチックレンズとして使用される種々の基材を用いることができる。レンズ基材としては、例えば、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリウレタンとポリウレアの共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン-チオール反応を利用したスルフィド樹脂、硫黄を含むビニル重合体等が挙げられる。上記中、ウレタン系又はカーボネート系が好適であるが、これらに限定されるものではない。また、プラスチックレンズ基材は、眼鏡用プラスチックレンズ基材であることが好ましい。
一実施形態によれば、レンズ基材は、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ウレア基、及び、ウレタン結合のうち、少なくともいずれか1つを含む、ことが好ましい。また、一実施形態によれば、レンズ基材の材料は、ウレタンとウレアの共重合体、又はポリカーボネートであることも好ましい。これらの材料は、後述する図1(b)に示す接着層14と水素結合、ファン・デル・ワールス力又は縮合反応などによる化学結合等によってプラスチックレンズ基材12と接着層14の密着性を向上させることができる。
接着層は、後述する図1(b)の符号“14”の部分に対応するもので、水分散系樹脂を含む接着液を塗布液としてレンズ基材に塗布してスピンコート法により形成される。スピンコート法により所定の厚さの接着層を形成することができる。接着層の形成方法について後述する。
塗布液の樹脂成分としては、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル、エチレンビニル共重合体であるオレフィン系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系のエマルジョン等が挙げられる。また、一実施形態では、シラノール基及び加水分解によるシラノール基を発生する基のうち、少なくとも1種の基を有する化合物を含むことも好ましい。塗布液は、例えば上述の樹脂成分を水系溶媒(例えば、水、または水とアルコール、ケトン、セロソルブ等との混合溶媒)に分散させたエマルジョンであることが好ましい。特に、レンズ基材の表面との密着性の発現に有利な極性官能基を有するウレタン系エマルジョンを使用することが好ましい。上記エマルジョンは、後述するように樹脂のレンズ基材上にコート膜を形成する場合、接着剤として機能する。塗布液の粘度は、例えば10~200cps(センチポアズ)程度とすることができる。また、塗布液の固形分濃度は、液安定性および膜厚確保の点から、20~50質量%の範囲であることが好ましい。
接着層の厚さは、例えば1.0~20μmである。
調光膜となる調光液は、硬化性成分、フォトクロミック色素、重合開始剤、および任意に添加される添加剤を含む。
硬化成分は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の光重合性モノマーやオリゴマー、それらのプレポリマーを用いることができる。これらのなかでも、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合性基として有する化合物が好ましい。なお、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの両方を示す。
フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物としては、例えば、特開平2-28154号公報、特開昭62-288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される、などに記載されている化合物が好適に使用できる。
また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として、例えば、特開2001-114775号公報、特開2001-031670号公報、特開2001-011067号公報、特開2001-011066号公報、特開2000-347346号公報、特開2000-34476号公報、特開2000-3044761号公報、特開2000-327676号公報、特開2000-327675号公報、特開2000-256347号公報、特開2000-229976号公報、特開2000-229975号公報、特開2000-229974号公報、特開2000-229973号公報、特開2000-229972号公報、特開2000-219687号公報、特開2000-219686号公報、特開2000-219685号公報、特開平11-322739号公報、特開平11-286484号公報、特開平11-279171号公報、特開平10-298176号公報、特開平09-218301号公報、特開平09-124645号公報、特開平08-295690号公報、特開平08-176139号公報、特開平08-157467号公報等に開示された化合物も好適に使用することができる。上記公報の全記載は、ここに特に開示として援用される。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-フォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられ、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-フォスフィンオキサイドが好ましい。
調光膜の厚さは、例えば10~60μmである。
レンズ基材の表面上に、水分散系樹脂を含むエマルジョン塗布液(接着液)をノズル先端から吐出し、レンズ基材の表面を上方に向けて回転させ、このレンズ基材の表面上に螺旋状の塗布軌跡を描くように塗布する。
塗布後のレンズ基材を、塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させる。回転は、回転数が低い第1の回転と、第1の回転における最大回転数を越える回転数で回転させる第2の回転とを含む。すなわち、塗布液は、スピンコートによりレンズ基材の表面全面に広がる。このスピンコート中、レンズ表面に滴下されたエマルジョン塗布液(水分散系樹脂を含む塗布液)は遠心力により水系溶媒が除去される(飛ばされる)ことによって固化が進行する。レンズ表面上では、遠心力による塗布液の拡散と固化が同時に進行する。得られた樹脂層上に、調光液をスピンコート法でコーティングする。スピンコートは、塗布液の第1の回転及び第2の回転を用いて行う。この後、調光液が塗布されたレンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、UVランプ(Dバルブ)より紫外線を照射することにより、調光膜が得られる。こうして、固化した接着層及びコート膜を形成したプラスチックレンズ基材を得ることができる。
この熱処理により、優れた剥離評価結果を有する眼鏡レンズを作製することができる。
しかし、熱処理の熱処理条件を一律に固定した場合、接着層、コート膜、およびレンズ基材の種類によっては、接着層及びコート膜のレンズ基材に対する密着性を十分に確保できない場合がある。このため、密着性を十分に確保するために、熱処理条件が設定される。熱処理条件の設定は、予め作製した眼鏡レンズにせん断力を与えたときに、コート膜及び接着層が剥がれる剥離大きさに基づいて温度を含む熱処理条件が設定される。
図1(a)に示すように、眼鏡レンズ10は、湾曲している。湾曲した凸状のレンズ表面上に、接着層14及び調光膜16が形成されている。
せん断力SFは、例えば、図1(b)に示すように、高圧水(所定の吐出圧力の水)Wを噴出させ、高圧水Wを眼鏡レンズ10の外周部の端部に近いレンズ表面に略平行な方向に吹き付けることで、調光膜16及び接着層14にせん断力SFを与えることができる。
また、内側部分のレンズ表面の調光膜及び接着層14に傷があると、その部分からせん断力SFが作用して剥離の起点となり易い。
本実施形態では、上述したように、接着層14及び調光膜16を形成したレンズ基材12を100℃以上130℃以下の温度で熱処理するが、このときの熱処理条件は、予め同じ方法で作製された眼鏡レンズの上記剥離大きさに基づいて調整し設定される。これにより、使用初期状態のみならず、長期使用した場合でも、剥離大きさが小さい眼鏡レンズ10を作製することができる。
図2(a)に示す例は、図中の右側の端部から、調光膜16及び接着層14が剥離している例である(図中、黒い調光膜の一部が剥離している)。図2(b)に示す例は、調光膜16及び接着層14が全く剥離していない例である。
特に、せん断力SFを5~15秒の時間範囲うちの一定の時間継続して付与したときに、調光膜16及び接着層14が、眼鏡レンズ10の中心に向かって剥がれる距離が2mm以下となるように、上記熱処理条件が設定されている、ことが好ましい。上記一定の時間は、7~13秒の範囲がより好ましい。なお、高圧水Wの、眼鏡レンズ10に吹き付ける方向は、眼鏡レンズ10の外周部の端部に位置するレンズ表面に対して略平行であるが、±15度の範囲内で角度がずれている場合も、「略平行」の許容範囲として含まれる。
このような領域A,Bは、温度が100℃以上の温度域で生じる。
また、熱処理温度を過度に高くすると、レンズ基材12が軟化して変形し易くなる。レンズ基材12が変形をすると、接着層14及び調光膜16に不要な応力、歪が生じて歪や応力が蓄積するため、密着性を低下させる要因となる。この点から、レンズ基材12が変形しないために、熱処理温度は130℃を上限とする。
すなわち、熱処理条件で、100℃以上130℃以下の温度範囲とする。
また、熱処理時間を変更する場合もある。また、熱処理のために室温から熱処理温度に至る温度の平均昇温速度及び熱処理温度から室温に低下させる平均降温速度を変更する場合もある。
熱処理時間が過度に長い場合、長時間の熱処理により、熱変形をし難い温度であっても、レンズ基材12がわずかに熱変形し、これに伴って接着層14及び調光膜16に不要な歪や応力が生じて蓄積し、密着性を低下させる要因となる。また、昇温速度及び降温速度が極端に高い場合、レンズ基材の厚さ方向で温度勾配が生じて熱変形し、これに伴って、接着層14及び調光膜16に不要な歪や応力が生じて蓄積し、密着性を低下させる要因となる。
すなわち、熱処理条件は、熱処理温度を少なくとも含み、場合に応じて、熱処理時間、昇温速度及び降温速度を含む。
本実施形態では、レンズ基材12と接着層14との剥離が多いことから、特に、レンズ基材12と接着層14の密着性を向上させることができる。
本実施形態の方法で作製した眼鏡レンズの効果を調べるために、眼鏡レンズを種々の条件でサンプル1~8を作製した。サンプル毎に8枚の眼鏡レンズを作製した。
レンズ基材12として、メニスカス形状のレンズ基材12を用い、屈折率が1.53のプラスチックレンズと、屈折率が1.59のプラスチックレンズを用いた。屈折率が1.53のプラスチックレンズの材料は、イソシアネート、アミンを成分として含むウレタンとウレアの共重合体である。屈折率が1.59のプラスチックレンズの材料は、ポリコーボネートである。
接着層14の塗布液として、ウレタン(メタ)アクリレートのエマルジョンを用いた。用いたウレタン(メタ)アクリレートは、詳しくは、アクリレートとシラノールを含む。
調光膜16の調光液は、以下のように調整して作製した。プラスチック製容器にトリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性単量体100質量部に、フォトクロミック色素としてクロメン1を3質量部、光安定化剤LS765(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート)を5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤Irganox245(チバセペシャリティケミカルズ製)を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI-1870(チバセペシャリティケミカルズ製)0.8質量部を添加して十分に攪拌混合を行った組成物に、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM503)を攪拌しながら滴下した。その後、さらにシリコーン系レベリング剤Y-7006(ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサン コポリマー 東レダウコーニング(株)製)を0.1質量量部添加混合した後、自転公転方式攪拌脱泡装置((株)シンキー AR-250)にて2分間脱泡することで、フォトクロミック性を有する調光液を得た。
眼鏡レンズは、以下の方法で作製した。
(1)円形状のレンズ基材12の表面上に、エマルジョンの塗布液をノズル先端から吐出し、レンズ基材12の表面を上方に向けて回転させ、このレンズ基材12の表面上に螺旋状の塗布軌跡を描くように塗布した後、塗布後のプラスチックレンズ基材12を、塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させた。回転では、回転数が低い第1の回転と、第1の回転における最大回転数を越える回転数で回転させ、スピンコートによりレンズ基材12の表面全面に広げた。スピンコート中、レンズ表面に滴下された塗布液のうち溶媒は遠心力により除去されて固化が進行した。
(2)こうして形成した樹脂層上に、調光液をスピンコートによりコーティングした。スピンコートは、塗布液の上記第1の回転及び上記第2の回転と同様の回転を用いて行う。この後、調光液が塗布されたレンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、UVランプ(Dバルブ)より紫外線を照射することにより、硬化した調光膜16を得た。
(3)この後、接着層14及び調光膜16を形成したレンズ基材12を130℃以下の温度で熱処理した。熱処理における熱処理条件として、熱処理時間を180分に揃え、室温から熱処理温度にいたる温度の平均昇温速度及び熱処理温度から室温にいたる温度の平均降温速度をそれぞれ2.5度/分及び2.5度/分に揃えた。熱処理温度は、83℃~120℃の範囲で種々変化させた。
なお、サンプルの一部(サンプル1~3,5~8)では、接着層14及び調光膜16を形成する前のレンズ基材12に前処理を施した。前処理として、10質量%のNaOH水溶液に6分浸漬してレンズ表面を粗らす処理(「NaOH浸漬」)と、所定の強度の紫外線と所定の濃度のオゾンの雰囲気に1分放置してレンズ表面を粗らす処理(「紫外線、オゾンに放置」)と、を用いた。
作製した眼鏡レンズに上述した高圧水Wを眼鏡レンズの外周部の端部に吹き付けたときの接着層14及び調光膜16の剥離の評価を行った(高圧水剥離評価)。この評価では、剥離大きさとして剥離長さ[mm]を測定した。剥離長さをレベルに分けて、レベルA~Cで評価した。レベルA(剥離長さが0以上1.0mm以下)及びレベルB(剥離長さが1,0mm超2.0mm以下)は合格を意味し、レベルC(剥離長さが2.0mm超)は、不合格を意味する。評価に用いたサンプルの数は、それぞれ2枚であり、2枚のサンプルの剥離した長さのうち最大長さを剥離長さとした。
また、従来の剥離評価の対象とする眼鏡レンズとして、作製初期状態のもの、及び、眼鏡レンズの使用を模擬して意図的に劣化させるために後処理したものを用いた。後処理は、溶剤に一定時間した浸漬すること(「溶剤に浸漬」)、一定時間、紫外線とオゾンの雰囲気に放置すること(「紫外線、オゾンの雰囲気に放置」)を含む。
上記「溶剤に浸漬」では、エタノールに眼鏡レンズを1時間浸漬した。
上記「紫外線、オゾン雰囲気に放置」では、所定の強度の紫外線及び所定の濃度のオゾン雰囲気中に168時間放置した。評価に用いたサンプルの数は、それぞれ2枚である。
剥離評価では、2枚のサンプルの目視により、P、Fの2段階で評価した。Pは、合格を意味し、Fは不合格を意味する。Pは、剥離が殆どないか、剥離があるとしても許容できる剥離大きさであることを意味する。
12 プラスチックレンズ基材
14 接着層
16 調光膜
Claims (2)
- 眼鏡レンズのコート膜密着性能の評価方法であって、
プラスチックレンズ基材の上層に、
ウレタン系、オレフィン系、アクリル系、及びエポキシ系の群の中から選択される水分散系樹脂を含む接着層と、
前記接着層と接するコート膜と、
を形成するステップと、
前記接着層及び前記コート膜を形成した前記プラスチックレンズ基材を100℃以上130℃以下の温度で熱処理するステップと、
前記接着層及び前記コート膜を形成した前記プラスチックレンズ基材の外周部に向けて、前記プラスチックレンズ基材の端部から外側に10~15mm離間した位置からレンズ表面に略平行な方向に、吐出圧力0.6Mpa~1.0MPaの高圧水を所定時間吹き付けることによって、前記接着層及び前記コート膜にせん断力を与えるステップと、
前記接着層および前記コート膜が、前記プラスチックレンズ基材から中心に向かって剥がれる量である剥離大きさが2mm以下であるか否かによって、密着性を評価するステップと、
を有する、
眼鏡レンズのコート膜密着性能の評価方法。 - 前記コート膜は、フォトクロミック色素を含む調光膜である、請求項1に記載の眼鏡レンズのコート膜密着性能の評価方法。
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