JP7286292B2 - コート膜付き眼鏡レンズの作製方法 - Google Patents

コート膜付き眼鏡レンズの作製方法 Download PDF

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Description

本発明は、コート膜付き眼鏡レンズの作製方法に関する。
今日、眼鏡レンズは、プラスチックレンズが多く用いられる。プラスチックレンズには、種々の機能を持たせるために、プラスチックレンズ基材の上層に、コート膜を形成する場合が多い。例えば、紫外線等を受けることにより発色する調光膜を形成する場合がある。
眼鏡レンズに求められる性能としては、眼鏡使用者の視力を矯正できる光学的性能の他に、使用中または保管時の環境に左右されず、長期に渡って調光膜等のコート膜の密着性能を保持する耐久品質が挙げられる。
しかしながら眼鏡レンズの場合、コート膜に付いた傷からアルカリ性物質、酸性物質等が浸透し、あるいは使用中の紫外線、熱等の影響を受け、コート膜が剥がれる場合があった。
このようなコート膜の剥がれに対して、眼鏡レンズのコート膜密着性能の評価方法として、JIS K5600 に記載される「塗料一般試験方法」の4-6が挙げられる。この評価方法は、クロスハッチ法と呼ばれ、10×10の碁盤目状に傷をつけたコート膜に粘着テープを貼り付けて剥がし、剥がした後のレンズ基材に残存したコート膜の付着状態を目視によって評価する方法である。すなわち、この評価方法では、傷をつけたコート膜に、粘着テープでコート膜をレンズ基材から上方に向けて引き剥がす力を与えてレンズ基材からコート膜を引き剥がす。
しかし、この方法では、眼鏡レンズの使用の際のコート膜の剥がれを十分に再現できないという問題があった。
これに対して、ユーザーの実際の使用に伴うコート膜の剥がれ状態及び繰り返し試験の再現性が高く、且つ加速性能が早く、信頼性が高い評価試験方法が提案されている(特許文献1)。
当該評価試験方法は、眼鏡レンズを保持し、眼鏡レンズのコート膜に対して、表面に粗さを持った擦傷物を押し付けながら水平方向の運動をさせて傷を施し、耐候性等の加速試験機へ任意の期間投入した後、この眼鏡レンズのコート膜密着性能を評価するものである。
特開2004-226205号公報
上記JIS K5600による評価方法および上記評価試験方法では、傷がついた状態からコート膜の剥がれを評価することができるが、傷がない状態からコート膜の剥がれを評価することはできない。
眼鏡レンズの使用の際、眼鏡レンズの外周部の端部からコート膜の剥がれが問題となる場合がある。
また、眼鏡レンズの度数が目標とする度数になるように、研磨を行う場合や、眼鏡レンズをフレームに合わせて玉型加工をする際に、眼鏡レンズの外周部の端部からコート膜が剥がれる場合もある。すなわち、コート膜を形成した眼鏡レンズの初期状態においてコート膜のレンズ基材の密着性が低い場合もある。
そこで、本発明は、調光膜等のコート膜が剥がれにくいコート膜付き眼鏡レンズを作製することができるコート膜付き眼鏡レンズの作製方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、コート膜付き眼鏡レンズの作製方法である。当該作製方法は、
プラスチックレンズ基材の上層に、前記プラスチックレンズ基材と接する、ウレタン系、オレフィン系、アクリル系、及びエポキシ系の群の中から選択される水分散系樹脂を含む接着層と、前記接着層の上層に、前記接着層と接するコート膜と、を形成するステップと、
前記接着層及び前記コート膜を形成した前記プラスチックレンズ基材を100℃以上130℃以下の温度で熱処理するステップと、を備える。
前記熱処理の前記温度を含む熱処理条件は、前記接着層及び前記コート膜を形成して前記熱処理を施すことにより予め作製したコート膜付き眼鏡レンズの外周部から外側に10~15mm離間した位置から、前記眼鏡レンズの端部の側に向けて吐出圧力0.6Mpa~1.0MPaの高圧水を吹き付けることによってせん断力を与えたときに、前記コート膜及び前記接着層が中心に向かって剥がれる量である剥離大きさが2mm以下となるように設定される。
前記プラスチックレンズ基材の屈折率は、1.60以下である、ことが好ましい。
前記プラスチックレンズ基材の材料は、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ウレア基、及び、ウレタン結合のうち、少なくともいずれか1つを含む、ことが好ましい。
前記プラスチックレンズ基材の材料は、ウレタンとウレアの共重合体、又はポリカーボネートである、ことも好ましい。
前記コート膜及び前記接着層は、シランカップリング剤を含む、ことが好ましい。
前記眼鏡レンズの外周部の端部から中心に向かって剥がれる長さを、前記剥離大きさとして用いる、ことが好ましい。
前記せん断力は、温度50~70℃で、吐出圧力0.6MPa~1.0MPaの水を、前記眼鏡レンズの外周部の端部から外側に10~15mm離間した位置から、前記端部の側に向けて吹き付けることにより生じる力である、ことが好ましい。
前記せん断力を5~15秒の時間範囲うちの一定の時間継続して付与したときに、前記コート膜及び前記接着層が、前記中心に向かって剥がれる長さが2mm以下となるように、前記熱処理条件が設定されている、ことが好ましい。
上述のコート膜付き眼鏡レンズの作製方法によれば、調光膜等のコート膜が剥がれにくい。特に、眼鏡レンズの外周部の端部から剥がれにくいコート膜付き眼鏡レンズを効率よく作製することができる。
(a),(b)は、玉型加工をする前の眼鏡レンズとレンズ表面に与えるせん断 を説明する図である。 (a),(b)は、一実施形態で用いる剥離評価試験を行ったときの結果の一例を示す図である。 接着層を形成する水分散系樹脂の熱分析の中、電気測定法で測定して得られるDTA曲線の一例を示す図である。
以下、一実施形態のコート膜付き眼鏡レンズの作製方法を説明する。
実施形態のコート膜付き眼鏡レンズでは、
(1)プラスチックレンズ基材の上層に、プラスチックレンズ基材と接する、ウレタン系、オレフィン系、アクリル系、及びエポキシ系の群の中から選択される水分散系樹脂を含む接着層(後述する図1(b)の符号“14”の部分に対応)と、この接着層の上層に、接着層と接するコート膜と、を形成するステップ、及び
(2)接着層及びコート膜を形成したプラスチックレンズ基材を100℃以上130℃以下の温度で熱処理するステップ、を備える。
ここで、上記熱処理の上記温度を含む熱処理条件は、上記(1)、(2)のステップで予め作製したコート膜付き眼鏡レンズにせん断力を与えたときに、コート膜及び接着層が剥がれる剥離大きさに基づいて設定される。予め作製したコート膜付き眼鏡レンズとは、上記(1)と(2)のステップを通して(上記(2)の熱処理では予め設定した熱処理条件を用いて)、作製されたものである。
従来のコート膜および接着層の剥離評価試験では、眼鏡レンズの表面に傷を意図的に施して、コート膜の剥がれを観察するが、本実施形態では、眼鏡レンズ表面に傷を付けることなく、膜剥がれの評価を行う。特に、傷を付けることなく、コート膜及び接着層にせん断力を与えることができるので、眼鏡レンズの端部における剥離を評価することができる他、コート膜や接着層に傷が一端ついた時、この傷からせん断力を受けて剥離し易くなる程度を知ることができる。
JIS K5600におけるクロスハッチ法では、コート膜や接着層を、レンズ基材からレンズ面に対して垂直方向に引き剥がす力を与えて剥離の評価を行うが、眼鏡を使用する際に、眼鏡使用者は、レンズ基材からコート膜を引き剥がすように垂直方向に力を与えることはなく、レンズ表面上の異物をふき取る場合のように、布等で表面を擦る場合が多く、コート膜にせん断力を与える場合が殆どである。また、眼鏡レンズを研磨する場合も、一方のレンズ表面を押さえながら他方のレンズ表面を研磨するが、この場合もコート膜にせん断力を与える。したがって、せん断力に対する接着層やコート膜のレンズ基材に対する剥離評価が、眼鏡レンズの使用における接着層やコート膜の密着性の耐久性に対応する。
本実施形態の接着層やコート膜のレンズ基材に対する剥離評価は、せん断力を与えた場合の剥離大きさに基づいて評価する。剥離評価を行う眼鏡レンズは、例えば、実際の眼鏡の使用条件を再現する加速処理を施したものを用いることが好ましい。
しかし、このような剥離評価の評価結果は、接着層及びコート膜を形成したプラスチックレンズ基材に対して行う上記(2)のステップの熱処理の熱処理条件によって異なる。
したがって、本実施形態では、剥離がし難い眼鏡レンズを作製するために、予め(設定した熱処理条件で)作製したコート膜付き眼鏡レンズにせん断力を与えたときに、コート膜及び接着層が剥がれる剥離大きさに基づいて、熱処理に用いる、温度を含む熱処理条件を調整して眼鏡レンズが作製される。
以下、コート膜として、紫外線を吸収して発色する調光膜を一例として挙げて説明する。
(プラスチックレンズ基材)
眼鏡レンズに用いるプラスチックレンズ基材(以降、単にレンズ基材ともいう)としては、通常プラスチックレンズとして使用される種々の基材を用いることができる。レンズ基材としては、例えば、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリウレタンとポリウレアの共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン-チオール反応を利用したスルフィド樹脂、硫黄を含むビニル重合体等が挙げられる。上記中、ウレタン系又はカーボネート系が好適であるが、これらに限定されるものではない。また、プラスチックレンズ基材は、眼鏡用プラスチックレンズ基材であることが好ましい。
一実施形態によれば、レンズ基材は、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ウレア基、及び、ウレタン結合のうち、少なくともいずれか1つを含む、ことが好ましい。また、一実施形態によれば、レンズ基材の材料は、ウレタンとウレアの共重合体、又はポリカーボネートであることも好ましい。これらの材料は、後述する図1(b)に示す接着層14と水素結合、ファン・デル・ワールス力又は縮合反応などによる化学結合等によってプラスチックレンズ基材12と接着層14の密着性を向上させることができる。
レンズ基材は、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ等のいずれであってもよい。レンズ基材のサイズは特に限定されるものではないが、過度に大きなレンズでは接着層となる塗布液を塗布する際に処理時間が長くなるため、塗布液が塗布されるレンズ表面の直径が50~100mm程度のレンズを使用することが好ましい。
また、レンズ基材は、両面が中心対称性を有する面(例えば両面球面)であってもよいが、いずれか一方が中心対称性のない面形状を有してもよく、両面とも中心対称性のない面形状を有してもよい。そのようなレンズとしては、両面に累進屈折力分布を有する両面非球面型累進屈折力レンズ、いずれか一方の面に累進面を有し、他方の面にトーリック面を有する累進屈折力レンズ、両面にトーリック成分を配分した単焦点レンズ、単焦点レンズの光学中心(累進屈折力レンズの遠用点測定基準点を含む)が円形レンズの幾何中心より偏心された加工される眼鏡レンズ等を挙げることができる。
(接着層)
接着層は、後述する図1(b)の符号“14”の部分に対応するもので、水分散系樹脂を含む接着液を塗布液としてレンズ基材に塗布してスピンコート法により形成される。スピンコート法により所定の厚さの接着層を形成することができる。接着層の形成方法について後述する。
塗布液の樹脂成分としては、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル、エチレンビニル共重合体であるオレフィン系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系のエマルジョン等が挙げられる。また、一実施形態では、シラノール基及び加水分解によるシラノール基を発生する基のうち、少なくとも1種の基を有する化合物を含むことも好ましい。塗布液は、例えば上述の樹脂成分を水系溶媒(例えば、水、または水とアルコール、ケトン、セロソルブ等との混合溶媒)に分散させたエマルジョンであることが好ましい。特に、レンズ基材の表面との密着性の発現に有利な極性官能基を有するウレタン系エマルジョンを使用することが好ましい。上記エマルジョンは、後述するように樹脂のレンズ基材上にコート膜を形成する場合、接着剤として機能する。塗布液の粘度は、例えば10~200cps(センチポアズ)程度とすることができる。また、塗布液の固形分濃度は、液安定性および膜厚確保の点から、20~50質量%の範囲であることが好ましい。
接着層の厚さは、例えば1.0~20μmである。
(調光膜)
調光膜となる調光液は、硬化性成分、フォトクロミック色素、重合開始剤、および任意に添加される添加剤を含む。
硬化成分は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の光重合性モノマーやオリゴマー、それらのプレポリマーを用いることができる。これらのなかでも、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合性基として有する化合物が好ましい。なお、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの両方を示す。
フォトクロミック色素は、公知のものを使用することができ、例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック化合物が挙げられる。本実施形態では、これらのフォトクロミック化合物を特に制限なく使用することができる。
フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物としては、例えば、特開平2-28154号公報、特開昭62-288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される、などに記載されている化合物が好適に使用できる。
また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として、例えば、特開2001-114775号公報、特開2001-031670号公報、特開2001-011067号公報、特開2001-011066号公報、特開2000-347346号公報、特開2000-34476号公報、特開2000-3044761号公報、特開2000-327676号公報、特開2000-327675号公報、特開2000-256347号公報、特開2000-229976号公報、特開2000-229975号公報、特開2000-229974号公報、特開2000-229973号公報、特開2000-229972号公報、特開2000-219687号公報、特開2000-219686号公報、特開2000-219685号公報、特開平11-322739号公報、特開平11-286484号公報、特開平11-279171号公報、特開平10-298176号公報、特開平09-218301号公報、特開平09-124645号公報、特開平08-295690号公報、特開平08-176139号公報、特開平08-157467号公報等に開示された化合物も好適に使用することができる。上記公報の全記載は、ここに特に開示として援用される。
重合開始剤は、重合方法に応じて、公知の熱重合開始剤および光重合開始剤から適宜選択することができる。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-フォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられ、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-フォスフィンオキサイドが好ましい。
また、調光膜を熱重合により形成する場合、使用可能な熱重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’-アゾピスイソプチロニトリル、2,2’-アゾピス(4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カーボニトリル)等のアゾ化合物等挙げられる。
添加剤として、調光膜の発色する色素の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。これら添加剤としては、公知の化合物を何ら制限なく使用できる。
調光膜の厚さは、例えば10~60μmである。
このような調光液は、例えば、プラスチック製容器に、硬化成分、フォトクロミック色素、及び紫外線重合開始剤を攪拌しながら滴下した後、さらに添加剤を混合した後、自転公転方式攪拌脱泡装置で脱泡することで、得ることができる。すなわち、調光液は、調光性を有する紫外線硬化性組成物である。
このような調光膜付き眼鏡レンズは、以下のように作製することができる。
レンズ基材の表面上に、水分散系樹脂を含むエマルジョン塗布液(接着液)をノズル先端から吐出し、レンズ基材の表面を上方に向けて回転させ、このレンズ基材の表面上に螺旋状の塗布軌跡を描くように塗布する。
塗布後のレンズ基材を、塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させる。回転は、回転数が低い第1の回転と、第1の回転における最大回転数を越える回転数で回転させる第2の回転とを含む。すなわち、塗布液は、スピンコートによりレンズ基材の表面全面に広がる。このスピンコート中、レンズ表面に滴下されたエマルジョン塗布液(水分散系樹脂を含む塗布液)は遠心力により水系溶媒が除去される(飛ばされる)ことによって固化が進行する。レンズ表面上では、遠心力による塗布液の拡散と固化が同時に進行する。得られた樹脂層上に、調光液をスピンコート法でコーティングする。スピンコートは、塗布液の第1の回転及び第2の回転を用いて行う。この後、調光液が塗布されたレンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、UVランプ(Dバルブ)より紫外線を照射することにより、調光膜が得られる。こうして、固化した接着層及びコート膜を形成したプラスチックレンズ基材を得ることができる。
この後、接着層及びコート膜を形成したレンズ基材を100℃以上130℃以下の温度で熱処理する。熱処理時間(熱処理温度の維持時間)は、例えば、30~480分の範囲である。この熱処理時間が上記上限の時間を超えた場合、密着性の向上しろは小さく、これに伴って眼鏡レンズの作製時間が長くなり生産効率が低下する。
この熱処理により、優れた剥離評価結果を有する眼鏡レンズを作製することができる。
しかし、熱処理の熱処理条件を一律に固定した場合、接着層、コート膜、およびレンズ基材の種類によっては、接着層及びコート膜のレンズ基材に対する密着性を十分に確保できない場合がある。このため、密着性を十分に確保するために、熱処理条件が設定される。熱処理条件の設定は、予め作製した眼鏡レンズにせん断力を与えたときに、コート膜及び接着層が剥がれる剥離大きさに基づいて温度を含む熱処理条件が設定される。
図1(a),(b)は、眼鏡レンズ10とレンズ表面に与えるせん断力SFを説明する図である。眼鏡レンズ10は、研磨及び玉型加工をする前のものである。
図1(a)に示すように、眼鏡レンズ10は、湾曲している。湾曲した凸状のレンズ表面上に、接着層14及び調光膜16が形成されている。
せん断力SFは、例えば、図1(b)に示すように、高圧水(所定の吐出圧力の水)Wを噴出させ、高圧水Wを眼鏡レンズ10の外周部の端部に近いレンズ表面に略平行な方向に吹き付けることで、調光膜16及び接着層14にせん断力SFを与えることができる。
特に、眼鏡レンズ10の端部には、高圧水Wが直接吹き付けられて大きなせん断力を受けるので剥離の起点となり易い。また、レンズ表面は、凸状な曲面を有しているので、眼鏡レンズの端部のレンズ表面に略平行な方向に高圧水Wを吹き付けたとしても、高圧水Wは完全な平行な流れではないので、内側部分のレンズ表面では高圧水Wは傾斜角度をつけてレンズ表面に衝突する。この傾斜角度によって、内側部分のレンズ表面では、この衝突によって受ける力のレンズ表面に平行な成分がせん断力として作用する。特に、剥離のうち、レンズ基材12と接着層14の界面における剥離が最も生じ易いことから、接着層14とレンズ基材12の密着性に注目している。
また、内側部分のレンズ表面の調光膜及び接着層14に傷があると、その部分からせん断力SFが作用して剥離の起点となり易い。
このように、せん断力SFを調光膜16及び接着層14が形成されているレンズ表面に与えることにより、調光膜16及び接着層14のレンズ基材12の表面への密着性を評価することができる。密着性は、調光膜16及び接着層14がレンズ基材12から剥がれる剥離大きさに基づいて評価することができる。
したがって、眼鏡レンズ10は、上記剥離評価試験において剥離大きさが小さいものを作製することが好ましい。言い換えるとは剥離大きさは小さければ小さい程密着性は高いと評価されるので、剥離大きさが小さいことが好ましく、剥離が全く存在しないことが好ましい。このような剥離大きさに基づく剥離評価では、長期使用による眼鏡レンズの劣化を模擬する加速処理をした眼鏡レンズを評価対象とすることが好ましい。したがって、眼鏡レンズ10を作製する際、評価対象の眼鏡レンズは、長期使用しても上記剥離大きさが小さくなるように作製をすることが好ましい。
本実施形態では、上述したように、接着層14及び調光膜16を形成したレンズ基材12を100℃以上130℃以下の温度で熱処理するが、このときの熱処理条件は、予め同じ方法で作製された眼鏡レンズの上記剥離大きさに基づいて調整し設定される。これにより、使用初期状態のみならず、長期使用した場合でも、剥離大きさが小さい眼鏡レンズ10を作製することができる。
図2(a),(b)は、一実施形態の高圧水Wを用いた剥離評価試験をおこなったときの結果の一例を示す図である。
図2(a)に示す例は、図中の右側の端部から、調光膜16及び接着層14が剥離している例である(図中、黒い調光膜の一部が剥離している)。図2(b)に示す例は、調光膜16及び接着層14が全く剥離していない例である。
一実施形態によれば、眼鏡レンズの外周部の端部から中心に向かって剥がれる長さを、剥離大きさとして用いる、ことが好ましい。これにより、剥離が最も生じ易い端部において密着性に優れた眼鏡レンズ10を作製することができる。剥離大きさは、剥離がレンズ表面の外周部の端部から中心方向に向かって延びる場合、その延びる長さである。剥離が内側の部分に発生する場合、剥離部分のレンズ中心方向、または円周方向の長さを計測し、長いほうを最大長さとする。
一実施形態によれば、眼鏡レンズ10に与えるせん断力SFは、温度50~70℃で、吐出圧力0.6MPa~1.0MPaの高圧水Wを、眼鏡レンズ10の外周部の端部から外側に10~15mm離間した位置から、端部の側に向けて吹き付けることにより生じる力であることが好ましい。このような、傷を付けず、高圧水Wを用いたせん断力SFにより行う剥離評価は、従来の傷をつけて行う剥離評価に比べて、眼鏡レンズの使用に伴う剥離の有無や玉型加工時の剥離の有無と、より相関する。
特に、せん断力SFを5~15秒の時間範囲うちの一定の時間継続して付与したときに、調光膜16及び接着層14が、眼鏡レンズ10の中心に向かって剥がれる距離が2mm以下となるように、上記熱処理条件が設定されている、ことが好ましい。上記一定の時間は、7~13秒の範囲がより好ましい。なお、高圧水Wの、眼鏡レンズ10に吹き付ける方向は、眼鏡レンズ10の外周部の端部に位置するレンズ表面に対して略平行であるが、±15度の範囲内で角度がずれている場合も、「略平行」の許容範囲として含まれる。
図3は、接着層14を形成する水分散系樹脂の熱分析の中、電気測定法で測定して得られるDTA(Differential Thermal Analysis)曲線の一例を示す図である。図中、DTA曲線の領域Aの谷部は、温度100℃に対応し、水分散系接着液で形成した接着層14に含まれる溶剤、または界面表面の水等が気化することを表す。また、DTA曲線の領域Bの屈曲部は、接着層14の内部の溶剤、すなわち樹脂の中に閉じ込められた水、又は樹脂同士が反応(縮合)し、発生する副生成物又は水等が気化することを表す。また、DTA曲線の領域Bの屈曲部は、レンズ基材12表面と接着層14あるいは、接着層14と調光膜16の界面の脱溶剤温度、又は各層の成分同士、又は各層間界面の水素結合、ファン・デル・ワールス力、又は縮合反応などによる化学結合、等によって、レンズ基材12と接着層14の密着性を向上に必要とする温度範囲を示す。
このような領域A,Bは、温度が100℃以上の温度域で生じる。
また、熱処理温度を過度に高くすると、レンズ基材12が軟化して変形し易くなる。レンズ基材12が変形をすると、接着層14及び調光膜16に不要な応力、歪が生じて歪や応力が蓄積するため、密着性を低下させる要因となる。この点から、レンズ基材12が変形しないために、熱処理温度は130℃を上限とする。
すなわち、熱処理条件で、100℃以上130℃以下の温度範囲とする。
しかし、上記温度範囲内でも、レンズ基材12のレンズ材料、接着層14の材料、及び調光膜16の材料によって変化する。例えば、良好な剥離評価の結果を得るために、熱処理温度を110℃~115℃の範囲に制限する場合もある。
また、熱処理時間を変更する場合もある。また、熱処理のために室温から熱処理温度に至る温度の平均昇温速度及び熱処理温度から室温に低下させる平均降温速度を変更する場合もある。
熱処理時間が過度に長い場合、長時間の熱処理により、熱変形をし難い温度であっても、レンズ基材12がわずかに熱変形し、これに伴って接着層14及び調光膜16に不要な歪や応力が生じて蓄積し、密着性を低下させる要因となる。また、昇温速度及び降温速度が極端に高い場合、レンズ基材の厚さ方向で温度勾配が生じて熱変形し、これに伴って、接着層14及び調光膜16に不要な歪や応力が生じて蓄積し、密着性を低下させる要因となる。
すなわち、熱処理条件は、熱処理温度を少なくとも含み、場合に応じて、熱処理時間、昇温速度及び降温速度を含む。
以上のように、優れた密着性を得ることができるように、本実施形態では、予め作製したコート膜付き眼鏡レンズにせん断力SFを与えたときに、調光膜16及び接着層14が剥がれる剥離大きさに基づいて熱処理温度を含む熱処理条件が設定される。
一実施形態によれば、レンズ基材の屈折率は、1.60以下である、ことが好ましい。屈折率が1.60以下のレンズ材料は、レンズのガラス転移点が高く、レンズの軟化する温度が高い。このため、熱処理温度を130℃まで上昇させることが可能であり、優れた密着性を実現することができる。屈折率が1.60超のレンズ材料は、ガラス転移点が低く、熱処理温度を100℃~130℃の温度範囲まで上昇させることができない場合がある。すなわち、屈折率が1.60超のレンズ材料の場合、上記熱処理を行うと、レンズ基板が変形する場合が多くなり、密着性を低下させ易くなる。
一実施形態によれば、レンズ基材12の材料は、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ウレア基、及び、ウレタン結合のうち、少なくともいずれか1つを含む、ことが好ましい。これにより、ウレタン系、オレフィン系、アクリル系、及びエポキシ系の群の中から選択される水分散系樹脂を含む接着層14と、熱処理により接着力を高めることができ、密着性を高めることができる。また、熱処理による接着力を高めて、密着性を高める点から、レンズ基材12の材料は、ウレタンとウレアの共重合体、又はポリカーボネートとすることも好ましい。
また、一実施形態によれば、調光膜16及び接着層14は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。調光膜16及び接着層14間の接着力を高めることができる他、調光膜16及び接着層14それぞれの内部でシランカップリング剤により、強固な膜および層を形成することができる。
本実施形態では、レンズ基材12と接着層14との剥離が多いことから、特に、レンズ基材12と接着層14の密着性を向上させることができる。
一実施形態によれば、せん断力SFは、温度50~70℃で、吐出圧力0.6MPa~1.0MPaの水を、眼鏡レンズ10の外周部の端部から外側に10~15mm離間した位置から、端部の側に向けて吹き付けることにより生じる力である。この場合、せん断力SFを5~15秒の時間範囲うちの一定の時間継続して付与したときに、調光膜16及び接着層14が、中心に向かって剥がれる距離が2mm以下となるように、熱処理条件が設定されることが好ましい。ここで、眼鏡レンズ10は、玉型加工前の円形状を成しているので、中心とは、円形状の中心点である。剥離距離を、調光膜16及び接着層14が、中心に向かって剥がれる長さとし、長さを2mm以下とするように、熱処理条件を設定することにより、眼鏡レンズ10の使用において、あるいは眼鏡レンズ10の研磨あるいは玉型加工等を行って使用に供される眼鏡レンズに仕上げる段階で、接着層14及び調光膜16の剥離を抑制することができる。上記長さが2mmを超える場合、眼鏡レンズ10の長期使用によっては、あるいは眼鏡レンズを仕上げる段階(レンズ表面の研磨や玉型加工)で、接着層14及び調光膜16が剥離する場合がある。
一実施形態によれば、熱処理に用いる熱処理条件と、剥離評価の試験結果(剥離大きさ)との対応関係を、レンズ基材の材料種、接着層14の材料種、及び調光膜の材料種毎に記録保持し、所望の材料を用いて眼鏡レンズを作製する場合に、上記対応関係を参照して、熱処理条件を設定することが好ましい。
[実験例]
本実施形態の方法で作製した眼鏡レンズの効果を調べるために、眼鏡レンズを種々の条件でサンプル1~8を作製した。サンプル毎に8枚の眼鏡レンズを作製した。
(レンズ基材12、接着層14、及び調光膜16)
レンズ基材12として、メニスカス形状のレンズ基材12を用い、屈折率が1.53のプラスチックレンズと、屈折率が1.59のプラスチックレンズを用いた。屈折率が1.53のプラスチックレンズの材料は、イソシアネート、アミンを成分として含むウレタンとウレアの共重合体である。屈折率が1.59のプラスチックレンズの材料は、ポリコーボネートである。
接着層14の塗布液として、ウレタン(メタ)アクリレートのエマルジョンを用いた。用いたウレタン(メタ)アクリレートは、詳しくは、アクリレートとシラノールを含む。
調光膜16の調光液は、以下のように調整して作製した。プラスチック製容器にトリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性単量体100質量部に、フォトクロミック色素としてクロメン1を3質量部、光安定化剤LS765(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート)を5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤Irganox245(チバセペシャリティケミカルズ製)を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI-1870(チバセペシャリティケミカルズ製)0.8質量部を添加して十分に攪拌混合を行った組成物に、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM503)を攪拌しながら滴下した。その後、さらにシリコーン系レベリング剤Y-7006(ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサン コポリマー 東レダウコーニング(株)製)を0.1質量量部添加混合した後、自転公転方式攪拌脱泡装置((株)シンキー AR-250)にて2分間脱泡することで、フォトクロミック性を有する調光液を得た。
(眼鏡レンズの作製)
眼鏡レンズは、以下の方法で作製した。
(1)円形状のレンズ基材12の表面上に、エマルジョンの塗布液をノズル先端から吐出し、レンズ基材12の表面を上方に向けて回転させ、このレンズ基材12の表面上に螺旋状の塗布軌跡を描くように塗布した後、塗布後のプラスチックレンズ基材12を、塗布液を塗布した表面を上方に向けて回転させた。回転では、回転数が低い第1の回転と、第1の回転における最大回転数を越える回転数で回転させ、スピンコートによりレンズ基材12の表面全面に広げた。スピンコート中、レンズ表面に滴下された塗布液のうち溶媒は遠心力により除去されて固化が進行した。
(2)こうして形成した樹脂層上に、調光液をスピンコートによりコーティングした。スピンコートは、塗布液の上記第1の回転及び上記第2の回転と同様の回転を用いて行う。この後、調光液が塗布されたレンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、UVランプ(Dバルブ)より紫外線を照射することにより、硬化した調光膜16を得た。
(3)この後、接着層14及び調光膜16を形成したレンズ基材12を130℃以下の温度で熱処理した。熱処理における熱処理条件として、熱処理時間を180分に揃え、室温から熱処理温度にいたる温度の平均昇温速度及び熱処理温度から室温にいたる温度の平均降温速度をそれぞれ2.5度/分及び2.5度/分に揃えた。熱処理温度は、83℃~120℃の範囲で種々変化させた。
なお、サンプルの一部(サンプル1~3,5~8)では、接着層14及び調光膜16を形成する前のレンズ基材12に前処理を施した。前処理として、10質量%のNaOH水溶液に6分浸漬してレンズ表面を粗らす処理(「NaOH浸漬」)と、所定の強度の紫外線と所定の濃度のオゾンの雰囲気に1分放置してレンズ表面を粗らす処理(「紫外線、オゾンに放置」)と、を用いた。
(高圧水剥離評価)
作製した眼鏡レンズに上述した高圧水Wを眼鏡レンズの外周部の端部に吹き付けたときの接着層14及び調光膜16の剥離の評価を行った(高圧水剥離評価)。この評価では、剥離大きさとして剥離長さ[mm]を測定した。剥離長さをレベルに分けて、レベルA~Cで評価した。レベルA(剥離長さが0以上1.0mm以下)及びレベルB(剥離長さが1,0mm超2.0mm以下)は合格を意味し、レベルC(剥離長さが2.0mm超)は、不合格を意味する。評価に用いたサンプルの数は、それぞれ2枚であり、2枚のサンプルの剥離した長さのうち最大長さを剥離長さとした。
また、JIS K5600 に記載される従来の剥離評価(クロスハッチ法)も行った(従来の剥離評価)。
また、従来の剥離評価の対象とする眼鏡レンズとして、作製初期状態のもの、及び、眼鏡レンズの使用を模擬して意図的に劣化させるために後処理したものを用いた。後処理は、溶剤に一定時間した浸漬すること(「溶剤に浸漬」)、一定時間、紫外線とオゾンの雰囲気に放置すること(「紫外線、オゾンの雰囲気に放置」)を含む。
上記「溶剤に浸漬」では、エタノールに眼鏡レンズを1時間浸漬した。
上記「紫外線、オゾン雰囲気に放置」では、所定の強度の紫外線及び所定の濃度のオゾン雰囲気中に168時間放置した。評価に用いたサンプルの数は、それぞれ2枚である。
剥離評価では、2枚のサンプルの目視により、P、Fの2段階で評価した。Pは、合格を意味し、Fは不合格を意味する。Pは、剥離が殆どないか、剥離があるとしても許容できる剥離大きさであることを意味する。
作製した眼鏡レンズの作製条件と剥離評価の結果を、表1、表2に示す。
Figure 0007286292000001
Figure 0007286292000002
サンプル1~5、あるいはサンプル6~8によれば、従来の剥離評価で差がなかったサンプル間で、高圧水剥離評価において評価に差が生じる。サンプル1,2及びサンプル6,7は、眼鏡レンズの研磨及び玉型加工において剥離が全くなく玉型加工をすることができた。一方、サンプル3~5,8は、眼鏡レンズの研磨及び玉型加工において剥離が生じた。これより、高圧水剥離評価は、接着層14及び調光膜16の、レンズ基材12への密着性の評価を精度よく表すことができることがわかる。したがって、眼鏡レンズの作製において、予め作製した眼鏡レンズにおいて調光膜16及び接着層14が剥がれる剥離大きさに基づいて熱処理温度を含む熱処理条件を設定することで、密着性の高い調光膜付き眼鏡レンズを作製することができる。
以上、本発明のコート膜付き眼鏡レンズの作製方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更してもよいのはもちろんである。
10 眼鏡レンズ
12 プラスチックレンズ基材
14 接着層
16 調光膜

Claims (2)

  1. 眼鏡レンズのコート膜密着性能の評価方法であって、
    プラスチックレンズ基材の上層に、
    ウレタン系、オレフィン系、アクリル系、及びエポキシ系の群の中から選択される水分散系樹脂を含む接着層と、
    前記接着層と接するコート膜と、
    を形成するステップと、
    前記接着層及び前記コート膜を形成した前記プラスチックレンズ基材を100℃以上130℃以下の温度で熱処理するステップと、
    前記接着層及び前記コート膜を形成した前記プラスチックレンズ基材の外周部に向けて、前記プラスチックレンズ基材の端部から外側に10~15mm離間した位置からレンズ表面に略平行な方向に、吐出圧力0.6Mpa~1.0MPaの高圧水を所定時間吹き付けることによって、前記接着層及び前記コート膜にせん断力を与えるステップと、
    前記接着層および前記コート膜が、前記プラスチックレンズ基材から中心に向かって剥がれる量である剥離大きさが2mm以下であるか否かによって、密着性を評価するステップと、
    を有する、
    眼鏡レンズのコート膜密着性能の評価方法。
  2. 前記コート膜は、フォトクロミック色素を含む調光膜である、請求項に記載の眼鏡レンズのコート膜密着性能の評価方法。
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