JP6184790B2 - フォトクロミック硬化性組成物、該組成物を含むコーティング剤、及びフォトクロミック積層体 - Google Patents

フォトクロミック硬化性組成物、該組成物を含むコーティング剤、及びフォトクロミック積層体 Download PDF

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Description

本発明は、新規なフォトクロミック硬化性組成物、該組成物を含む新規なコーティング剤、及び該コーティング剤から得られるフォトクロミックコート層を有する新規なフォトクロミック積層体に関する。詳しくは、フォトクロミックコート層を形成した際にクラックなどの外観不良を低減でき、且つ、表面硬度が硬く、優れた密着性、及びフォトクロミック特性を有するフォトクロミックコート層を形成できる新規なフォトクロミック硬化性組成物に関するものである。そして、本発明は、該組成物を含む新規なコーティング剤、及びプラスチックレンズ基材の少なくとも一つの面上に、該コーティング剤を硬化させて得られるフォトクロミックコート層を有する新規なフォトクロミック積層体に関する。
フォトクロミズムとは、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻る可逆作用のことであり、様々な用途に応用されている。このような性質を持つフォトクロミック化合物として、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等が見出されている。これら化合物は、プラスチックと複合化させることにより、フォトクロミック特性を有する光学物品とすることができるため、複合化の検討が数多くなされている。
例えば、眼鏡レンズの分野においてもフォトクロミズムが応用されている。フォトクロミック化合物を使用したフォトクロミック眼鏡レンズは、太陽光のような紫外線を含む光が照射される屋外ではレンズが速やかに着色してサングラスとして機能し、そのような光の照射がない屋内においては退色して透明な通常の眼鏡として機能するものであり、近年その需要は増大している。
フォトクロミック眼鏡レンズとしては、軽量性や安全性の観点から、特にプラスチックレンズにフォトクロミック性能を付与したものが広く使用されている。プラスチックレンズにフォトクロミック性能を付与するためには、一般に、有機系のフォトクロミック化合物が使用され、様々な方法により、プラスチックレンズにフォトクロミック性が付与されている。例えば、コーティング法と呼ばれる方法でフォトクロミック眼鏡レンズが製造されている。具体的には、ラジカル重合性成分、及びフォトクロミック化合物を含むフォトクロミックコーティング剤をプラスチックレンズ基材の表面に塗布し、硬化させることによりフォトクロミックコート層を有するフォトクロミックレンズ(フォトクロミック積層体)を製造する方法である。
このコーティング方法は、プラスチックレンズの材質によらずフォトクロミック性能を付与できる点で優れた方法である。この方法においては、発色濃度や退色速度といったフォトクロミック特性を向上させるために、各種ラジカル重合性モノマーの種類や配合量を決定する必要があった。
フォトクロミックコート層を形成するフォトクロミック硬化性組成物は、これまでに様々な改良がなされている。例えば、フォトクロミックコート硬化性組成物中のアクリルモノマーとメタアクリルモノマーの比率を限定し、フォトクロミック特性とハードコート層の密着性を向上させる方法が知られている(特許文献1)。また、フォトクロミックコート硬化性組成物にシルセスキオキサンモノマーを配合することで、得られるフォトクロミック層の表面硬度を向上させる手法も検討されている(特許文献2)。これらの方法によれば、優れた性能を有するフォトクロミック積層体を製造することができる。
近年、フォトクロミック積層体に対する要求は、より一層高まっている。例えば、フォトクロミックコート層を有するフォトクロミックレンズ(フォトクロミック積層体)においては、フォトクロミックコート層のキズつき防止(以下、キズ耐性ともいう)の観点から、フォトクロミックコート層の表面硬度がより一層高いものが望まれている。フォトクロミックコート層自体の表面硬度をより高くすることができれば、その後、ハードコート層や反射防止膜を形成した光学材料のキズ耐性をも向上することができる。そのため、上記の従来方法においては、以下の点で改善が望まれていた。
例えば、本発明者等の検討によれば、特許文献1記載の方法では、フォトクロミック特性を向上させようとすると、得られるフォトクロミックコート層の表面硬度が低下する傾向にあった。また、また逆に表面硬度を向上させようとすると、フォトクロミック特性が低下する傾向がみられた。
また、特許文献2に記載の方法では、シルセスキオキサンモノマーを使用してフォトクロミックコート層の表面硬度を向上している。しかしながら、得られるフォトクロミックコート層は、柔軟性が低下することが原因だと考えられるが、該フォトクロミックコート層の形成後にクラックなどの外観不良が発生する場合があった。この傾向は、強度数プラスチックレンズ上にフォトクロミックコート層を形成したり、コバ部が傾斜しているレンズ上にフォトクロミックコート層を形成する場合に顕著であった。その中でも、上記レンズ等のプライマーコート層上にフォトクロミックコート層を形成する場合に、特に、顕著であった。
国際公開第2011/125956号パンフレット 国際公開第2013/008825号パンフレット
以上の通り、従来技術によるフォトクロミック積層体では、優れたフォトクロミック特性を維持しながら、より優れたキズ耐性を発現する表面硬度を有するフォトクロミックコート層を提供し、しかも、フォトクロミックコート層形成時にクラックなどの外観不良が生じにくいフォトクロミック硬化性組成物は存在しなかった。そのため、これらの特性を満足するフォトクロミック積層体の開発が望まれていた。特に、フォトクロミックコート層を形成するプラスチックレンズ基材の形状に影響を受けず、すなわち、どのような形状のプラスチックレンズ基材であっても、クラック等の外観不良が生じにくく、優れた表面硬度を有するフォトクロミックコート層を形成する硬化性組成物の開発が望まれていた。
したがって、本発明の目的は、フォトクロミック特性、キズ耐性が良好であり、しかもクラックなどの外観不良が生じにくいフォトクロミック積層体を製造できる、フォトクロミック硬化性組成物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。具体的には、フォトクロミック硬化性組成物に使用する(メタ)アクリルモノマーの種類や混合比率を調整することにより、フォトクロミック特性、キズ耐性が良好であり、クラックを抑制したフォトクロミック積層体が得られるのではないかと考え、それらの検討を行った。そして、従来では、自由空間を形成することができるが、その配合量が多くなるとフォトクロミック特性を低下させていた多官能の低分子量架橋性モノマーの配合割合を高め、表面硬度を高くする検討を行った。そして、矛盾するようであるが、そのような架橋性モノマーの使用量を増加させながら、フォトクロミック特性を維持し、フォトクロミックコート層形成時にクラックが生じにくいモノマーの組み合わせを検討したところ、比較的高分子量の(メタ)アクリレートモノマーと、比較的低分子量の2官能(メタ)アクリレートとの組み合わせが優れた効果を発揮することを見出した。さらに、検討を続けたところ、特定の多官能の架橋性モノマー、比較的分子量の高い特定の(メタ)アクリレートモノマー、比較的分子量の低い特定の2官能(メタ)アクリレートを少なくとも含む硬化性組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の本発明は、
(A)(メタ)アクリル基を有する重合性モノマーと(B)フォトクロミック化合物とを含んでなり、
前記(A)(メタ)アクリル基を有する重合性モノマーが、
[A1] 下記式(1)で示される多官能(メタ)アクリルモノマーを35〜70質量部、
Figure 0006184790
(式中、
は、水素原子、またはメチル基であり、
は、水素原子、または炭素数1〜2のアルキル基であり、
は、炭素数1〜10である3〜6価の炭化水素基、または炭素数1〜10の鎖中に酸素原子を含む3〜6価の基であり、
aは平均値で0〜3の数であり、bは3〜6の整数である。)、
[A2] 下記式(2)で示される2官能(メタ)アクリルモノマーを10〜40質量部、
Figure 0006184790
(式中、
、及びRは、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
、及びRは、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
Aは、下記式
Figure 0006184790
に示されるいずれかの基であり、
c、及びdは、それぞれ独立に1以上の整数であるとともに、c+dは平均値で6〜17である。)
[A3] 下記一般式(3)で示される多官能(メタ)アクリルモノマー、下記一般式(4)で示される2官能(メタ)アクリルモノマー、分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖(メタ)アクリルモノマーを10〜40質量部、
Figure 0006184790
(式中、
は、水素原子、またはメチル基であり、
は、水素原子、または炭素数1〜2のアルキル基であり、
10は、炭素数1〜10である3〜6価の炭化水素基、または炭素数1〜10の鎖中に酸素原子を含む3〜6価の基であり、
eは平均値で8〜15の数であり、fは3〜6の整数である。)
Figure 0006184790
(式中、
41、及びR51は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
61、及びR71は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
A’は、下記式
Figure 0006184790
に示されるいずれかの基であり、
g、及びhは、それぞれ独立に1以上の整数であるとともに、g+hは平均値で20以上40以下である。)
[A4] 前記[A1]、[A2]、および[A3]成分以外の(メタ)アクリルモノマーを0〜10質量部、
(ただし、[A1]、[A2]、[A3]、および[A4]成分の合計は100質量部である)
を含むことを特徴とするフォトクロミック硬化性組成物である。
第一の本発明においては、前記[A3]成分が、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびウレタンジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。
第二の本発明は、第一の本発明のフォトクロミック硬化性組成物を含むコーティング剤である。
第三の本発明は、プラスチックレンズ基材上に、第四の本発明のコーティング剤を硬化させて得られるフォトクロミックコート層を有するフォトクロミック積層体である。
さらに、本発明のコーティング剤は、プラスチックレンズ基材上にウレタン樹脂を含むプライマーコート層が積層され、このプライマーコート層上に使用される場合に、特に優れた効果を発揮する。また、フォトクロミックコート層が形成される面のプラスチックレンズ基材のコバ部が、該プラスチックレンズ基材の外周へ向かって下方へ傾斜している形状であるプラスチックレンズ基材に、該コーティング剤は好適に適用できる。さらに、強度数プラスチックレンズのコーティング剤として、本発明のコーティング剤は好適に適用できる。
本発明によれば、優れたフォトクロミック特性を維持しながら、キズ耐性良好な表面硬度を有し、またフォトクロミックコート層形成時にクラックなどの外観不良が発生しないフォトクロミック積層体を製造できる。本発明によれば、特に、プラスチックレンズ基材のコバ部の形状が外周へ向かって下方へ傾斜しているものや、強度数プラスチックレンズであったとしても、クラックの発生が少ないフォトクロミック積層体を製造できる。さらに、該プラスチックレンズ基材がウレタン樹脂からなるプライマーコート層を有するものであっても、クラックの発生が少ないフォトクロミック積層体を製造できる。
図1は、コバ部が、外周へ向かって下方へ傾斜している形状(斜角状)を有しているプラスチックレンズ基材の概略断面図である。 図2は、フォトクロミックコート層を積層した斜角状を有するプラスチックレンズ基材、及びフォトクロミックコート層を積層した斜角状の無いプラスチックレンズ基材の概略図である。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、(A)(メタ)アクリル基を有する重合性モノマーと(B)フォトクロミック化合物とを含んでなり、
前記(A)(メタ)アクリル基を有する重合性モノマーが、
[A1] 特定の多官能(メタ)アクリルモノマーを35〜70質量部、
[A2] 特定の2官能(メタ)アクリルモノマーを10〜40質量部、
[A3] 特定の長鎖(メタ)アクリルモノマーを10〜40質量部、及び
[A4] 前記[A1]、[A2]、および[A3]成分以外の(メタ)アクリルモノマーを0〜10質量部を含むことを特徴とする。ただし、[A1]成分、[A2]成分、[A3]成分、および[A4]成分の合計は100質量部である。これら各成分について説明する。
(A)(メタ)アクリル基を有する重合性モノマー
本発明の重合性モノマーは、下記に詳述する[A1]成分、[A2]成分、[A3]成分、及び必要に応じて[A4]成分を含む。なお、この(メタ)アクリル基を有する重合性モノマーとは、メタクリル基、またはアクリル基を有する重合性モノマーを指す。以下、この成分を単に(A)成分とする場合もある。この(A)成分に含まれる各成分について説明する。
(式(1)で示される多官能(メタ)アクリルモノマー([A1]成分))
(A)成分は、下記式(1)で示される多官能(メタ)アクリルモノマーを含む。以下、下記式(1)で示される多官能(メタ)アクリルモノマーを単に[A1]成分とする場合もある。
Figure 0006184790
式中、
は、水素原子、またはメチル基であり、
は、水素原子、または炭素数1〜2のアルキル基であり、
は、炭素数1〜10である3〜6価の炭化水素基、または炭素数1〜10の鎖中に酸素原子を含む3〜6価の基であり、
aは平均値で0〜3の数であり、bは3〜6の整数である。なお、この[A1]成分の(メタ)アクリル当量(分子量を(メタ)アクリル基の個数で除した値)は、200未満である。
本発明においては、この[A1]成分を配合することにより、フォトクロミック特性とフォトクロミック積層体(フォトクロミックコート層)の表面硬度を向上することができる。本発明においては、従来技術よりも、この[A1]成分を比較的多く配合していることを特徴とする。つまり、この[A1]成分を比較的多く配合することにより、高い表面硬度を有するフォトクロミックコート層を形成することができる。そして、本来、硬化体(コート層)中に自由空間を形成できるため、フォトクロミック特性を向上させるものであるが、配合量を多くすると架橋密度が高くなりすぎるためにその効果が失われる。よって下記に詳述する[A2]成分、[A3]成分の配合が重要となる。
上記式(1)中のRは、炭素数1〜10である3〜6価の炭化水素基、または炭素数1〜10の鎖中に酸素原子を含む3〜6価の基であり、具体的には、ポリオールから誘導される基、又は3〜6価の炭化水素基を含む有機基が挙げられる。Rは、水素原子、またはメチル基であることが好ましい。また、Rに関しては、表面硬度の観点から、メチル基であることが好ましい。
上記式(1)中のaは、平均値で0〜3の数であるが、表面硬度の観点から0または1であることが好ましい。
上記式(1)中のbは、3〜6の整数であるが、フォトクロミック特性、表面硬度、及び外観の観点から、3または4であることが好ましい。
[A1]成分を具体的に例示すれば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリプロピレングリコールトリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラエチレングリコールテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラプロピレングリコールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどのメタクリル基を有する多官能メタクリルモノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリプロピレングリコールトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラエチレングリコールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラプロピレングリコールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどのアクリル基を有する多官能アクリルモノマーを挙げることができる。これら多官能(メタ)アクリルモノマーは2種以上混合して使用してもよい。
これらの多官能(メタ)アクリルモノマーの中でも、フォトクロミック特性(特に退色速度)、さらに表面硬度の観点から、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレートが好ましい。特に、優れた効果を発揮するためには、トリメチロールプロパントリメタクリレートとジトリメチロールプロパンテトラメタクリレートとを、質量比(トリメチロールプロパントリメタクリレート:ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート)が1:2〜2:1となる範囲の混合物で使用することが好ましい。
(式(2)で示される2官能(メタ)アクリルモノマー([A2]成分))
本発明においては、式(2)で示される2官能(メタ)アクリルモノマーを使用する。以下、この式(2)で示される2官能(メタ)アクリルモノマーを単に[A2]成分とする場合もある。
本発明においては、この[A2]成分を配合することにより、フォトクロミック特性とクラックの発生が少なく、外観が良好なフォトクロミックコート層を形成できる。特にフォトクロミックコート層のクラック発生を抑制する効果を発揮する。ただし、フォトクロミック特性とクラック発生の抑制効果は、この[A1]成分と[A2]成分だけで達成できるものではなく、[A1]成分、[A2]成分、および[A3]成分の配合割合が重要となる。例えば、[A1]成分と[A2]成分だけでは、表面硬度を高く維持することができるが、クラック発生を抑制する効果は低下する傾向にある。
[A2]成分は、下記式(2)で示される2官能(メタ)アクリルモノマーである。
Figure 0006184790
(式中、
、及びRは、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
、及びRは、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
Aは、下記式
Figure 0006184790
に示されるいずれかの基であり、
c、及びdは、それぞれ独立に1以上の整数であるとともに、c+dは平均値で6〜17である。)である。なお、この[A2]成分の(メタ)アクリル当量(分子量を(メタ)アクリル基の個数で除した値)は630未満である。
上記式(2)中のR、及びRは、それぞれ水素原子またはメチル基であるが、フォトクロミック特性(特に耐候性)、表面硬度、及びフォトクロミックコート層のクラック抑制の観点から、メチル基であることが好ましい。
上記式(2)中のR、及びRは、それぞれ水素原子またはメチル基であるが、フォトクロミック特性の観点から、水素原子であることが好ましい。
上記式(2)中のAは、原料の入手のしやすさ、及びフォトクロミック特性の観点から、−C(CH−基であることが最も好ましい。
上記式(2)中のc及びdは、それぞれ独立に1以上の整数であるとともに、c+dは平均値で6〜17であるが、フォトクロミック特性、表面硬度、及びフォトクロミックコート層のクラック抑制のバランスの観点から、c+dは平均値で8〜12であることがより好ましい。なお、上記式(2)で示される2官能(メタ)アクリルモノマー([A2]成分)は、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、c及びdは、平均値で示した。
[A2]成分を具体的に例示すれば、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(c+d=6)、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(c+d=10)、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(c+d=17)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(c+d=6)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(c+d=10)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(c+d=17)等を挙げることができる。
これらの[A2]成分の中でも、フォトクロミック特性、表面硬度、及びフォトクロミックコート層のクラック抑制のバランスの観点から、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(c+d=10)であることが最も好ましい。
(長鎖(メタ)アクリルモノマー([A3]成分))
本発明においては、式(3)、(4)、分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖多官能(メタ)アクリルモノマーを使用する。
本発明においては、この[A3]成分を配合することにより、フォトクロミック特性とクラックの発生が少なく、外観が良好なフォトクロミックコート層を形成できる。特にフォトクロミックコート層のクラック発生を抑制する効果を発揮する。ただし、フォトクロミック特性とクラック発生の抑制効果は、この[A1]成分と[A3]成分だけで達成できるものではなく、[A1]成分、[A2]成分、および[A3]成分の配合割合が重要となる。例えば、[A1]成分と[A3]成分だけでは、クラック発生を抑制する効果は発揮されるが、表面硬度が低下する傾向にある。特許文献1には、[A1]成分が比較的多く、また[A2]成分を含む硬化性組成物の具体的な実施例が存在するが、この例では、[A3]成分を使用していないため、本発明の効果が発揮されない。
次に、具体的な[A3]成分について説明する。先ず、下記一般式(3)で示される長鎖(メタ)アクリルモノマーについて説明する。
(式(3)で示される[A3]成分)
Figure 0006184790
(式中、
は、水素原子、またはメチル基であり、
は、水素原子、または炭素数1〜2のアルキル基であり、
10は、炭素数1〜10である3〜6価の炭化水素基、または炭素数1〜10の鎖中に酸素原子を含む3〜6価の基であり、
eは平均値で8〜15の数であり、fは3〜6の整数である。)
上記式(3)中のR10は、炭素数1〜10である3〜6価の炭化水素基、または炭素数1〜10の鎖中に酸素原子を含む3〜6価の基であり、具体的には、ポリオールから誘導される基、又は3〜6価の炭化水素基を含む有機基が挙げられる。Rは、水素原子、またはメチル基であることが好ましい。また、Rに関しては、表面硬度の観点から、メチル基であることが好ましい。
上記式(3)中のeは、平均値で8〜15の数であるが、表面硬度の観点から8〜12であることがより好ましい。
上記式(3)中のfは、3〜6の整数であるが、表面硬度、及び外観の観点から、3または4であることが好ましい。
この式(3)で示される[A3]成分は、[A1]成分においてエチレングリコール鎖、またはプロピレングリコール鎖が長くなった多官能(メタ)アクリルモノマーである。通常、式(3)で示される長鎖多官能(メタ)アクリルモノマーは、eの値が異なる混合物で得られるため、eは平均値とした。
式(3)で示される具体的なモノマーを例示すると、平均分子量1616のトリメチロールプロパンポリエチレングリコールトリアクリレート(e=10、f=3、(メタ)アクリル当量 539)、平均分子量1892のペンタエリスリトールポリエチレングリコールテトラアクリレート(e=9、f=4、(メタ)アクリル当量 473)などが挙げられる。
(式(4)で示される([A3]成分))
Figure 0006184790
(式中、
41、及びR51は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
61、及びR71は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
A’は、下記式
Figure 0006184790
に示されるいずれかの基であり、
g、及びhは、それぞれ独立に1以上の整数であるとともに、g+hは平均値で20以上40以下である。)で示される長鎖多官能(メタ)アクリルモノマーを使用することができる。この式(4)で示される[A3]成分は、[A2]成分においてエチレングリコール鎖、またはプロピレングリコール鎖が長くなった2官能(メタ)アクリルモノマーである。通常、式(4)で示される2官能(メタ)アクリルモノマーは、g、hの値が異なる混合物で得られるため、g+hは平均値とした。
上記式(4)中のR41、及びR51は、それぞれ水素原子またはメチル基であるが、フォトクロミック特性(特に耐候性)、表面硬度、及びフォトクロミックコート層のクラック抑制の観点から、メチル基であることが好ましい。
上記式(4)中のR61、及びR71は、それぞれ水素原子またはメチル基であるが、フォトクロミック特性の観点から、水素原子であることが好ましい。
上記式(4)中のAは、原料の入手のしやすさ、及びフォトクロミック特性の観点から、−C(CH−基であることが最も好ましい。
式(4)で示される具体的なモノマーを例示すると、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(g+h=20、(メタ)アクリル当量622)、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(g+h=30、(メタ)アクリル当量842)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(g+h=20、(メタ)アクリル当量608)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(g+h=30、(メタ)アクリル当量828)などが挙げられる。
また、その他、本発明の[A3]成分としては、分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリレートを使用することが出来る。
(分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[A3]成分)
分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールの混合物より得られるジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを具体的に例示すれば、平均分子量736のポリエチレングリコールジメタクリレート((メタ)アクリル当量 368)、平均分子量1136のポリエチレングリコールジメタクリレート((メタ)アクリル当量 568)、平均分子量708のポリエチレングリコールジアクリレート((メタ)アクリル当量 354)、平均分子量1108のポリエチレングリコールジアクリレート((メタ)アクリル当量 554)、ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールの混合物より得られる平均分子量1114のジメタクリレート((メタ)アクリル当量 557)、平均分子量808のプロピレングリコールジアクリレート((メタ)アクリル当量 404)、平均分子量758のポリテトラメチレングリコールジアクリレート((メタ)アクリル当量 378)、平均分子量1295のグリセリンポリエチレングリコールトリアクリレート((メタ)アクリル当量 648)等を挙げることができる。上記(メタ)アクリルモノマーの分子量は、該(メタ)アクリルモノマーを製造する際の原料仕込み比から算出した理論分子量を採用しているが、該(メタ)アクリルモノマーは単一成分ではなく混合物であるため、平均分子量として表記した。
(分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリレート [A3]成分)
このウレタンジ(メタ)アクリレートとは、分子内にウレタン結合を有し、かつ(メタ)アクリル基を2個有するモノマーを指す。分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリレートの例としては、硬化体(フォトクロミック積層体)の耐光性の観点より、その分子構造中に芳香環を有しない、無黄変タイプのものが好ましい。具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンイソシアネート、2,2,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートまたはメチルシクロヘキサンジイソシアネートと、炭素数2〜4のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ヘキサメチレンオキシドの繰り返し単位を有するポリアルキレングルコール、或いはポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール等の多官能ポリオール、又はペンタエリスリトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のジオール類とを反応させ、ウレタンプレポリマーとしたものを、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレートで更に反応させた反応混合物であるか、又は前記ジイソシアネートを2−ヒドロキシ(メタ)アクリレートと直接反応させた反応混合物である多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。その中でも、本発明の[A3]成分としては、U−108A(平均分子量約1600、(メタ)アクリル基数2、(メタ)アクリル当量 800)、UA4200(平均分子量約1300、(メタ)アクリル基数2、(メタ)アクリル当量 650)、UA4400(平均分子量約1300、(メタ)アクリル基数2、(メタ)アクリル当量 650)、UA160TM(平均分子量約1600、(メタ)アクリル基数2、(メタ)アクリル当量 800)、U108(平均分子量約1600、(メタ)アクリル基数2、(メタ)アクリル当量 800)、UA−122P(平均分子量約1100、(メタ)アクリル基数2、(メタ)アクリル当量 550)、UA−5201(平均分子量約1000、(メタ)アクリル当量 500)、U−2THA(平均分子量約1300、(メタ)アクリル基数2、(メタ)アクリル当量 650)(いずれも新中村化学工業(株)製)などが挙げられる。上記多官能ウレタン(メタ)アクリレートの分子量も、前記(メタ)アクリルモノマーの分子量と同様に、平均分子量として表記した。
([A3]成分の特徴、および好適な[A3]成分)
本発明において、[A3]成分は、長鎖の多官能(メタ)アクリルモノマーでなければならない。そのため、上記の通り、式(3)で示される長鎖(メタ)アクリルモノマーは、[A1]成分よりもアルキレングリコール鎖が長くなっている。また、式(4)で示される長鎖(メタ)アクリルモノマーは、[A2]成分よりもアルキレングリコール鎖が長くなっている。
また、[A3]成分におけるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびウレタンジ(メタ)クリレートは、分子量が600〜2000である必要がある。分子量が600未満の場合にはクラック発生を抑制できず、また2000を超える場合には表面硬度が低下するため好ましくない。
また、式(3)、(4)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびウレタンジ(メタ)クリレートの項で説明した通り、[A3]成分は、(メタ)アクリル基を2個以上有する多官能モノマーでなければならない。例えば、分子量が600〜2000であって、(メタ)アクリル基を1個しか有さないモノマーを[A3]成分の代替として使用した場合には、クラック発生の抑制効果がなくなり、表面硬度も低下する。クラック発生の抑制効果、及び表面硬度の両立の観点から、分子内の(メタ)アクリル基の個数は、2〜6であることが好ましく、さらに、2〜3であることが好ましい。以上のような[A3]成分の中でも、(メタ)アクリル当量が300〜1000であるものが好ましい。その中でも、特に優れた効果を発揮するのは、分子量が600〜2000であり、該分子量を分子内の(メタ)アクリル基の個数で除した(メタ)アクリル当量が300〜1000を満足する、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、または、ウレタンジ(メタ)アクリレートである。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物において、(A)成分は、上記[A1]成分、[A2]成分、および[A3]成分のみで構成されても優れた効果を発揮する。だだし、より優れた効果、または異なる効果を発揮するには、[A1]成分、[A2]成分、[A3]成分以外の、(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリルモノマー([A4]成分)を10質量%以下の割合で含むことが好ましい。次に、[A4]成分について説明する。
[A1]成分、[A2]成分、[A3]成分以外の、(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリルモノマー([A4]成分)
本発明においては、前記[A1]成分、[A2]成分、及び[A3]成分以外に、以下にあげる(メタ)アクリルモノマーを含むことができる。以下、この成分を単に[A4]成分とする場合もある。
本発明の[A4]成分を具体的に例示すれば、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、平均分子量293のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量468のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量1068のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、平均分子量218のメトキシポリエチレングリコールアクリレート、平均分子量454のメトキシポリエチレングリコールアクリレート、平均分子量1054のメトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、平均分子量412のフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエチレングリコールジアクリレート、平均分子量508のポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート、平均分子量466の2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン、平均分子量512の2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン、平均分子量452の2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン、平均分子量478の2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン、平均分子量540の2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、平均分子量2,500〜3,500の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB80等:((メタ)アクリル基数4))、平均分子量6,000〜8,000の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB450等((メタ)アクリル基数4))、平均分子量45,000〜55,000の6官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB1830等((メタ)アクリル基数6))、平均分子量約10,000の4官能ポリエステルオリゴマー(第一工業製薬社、GX8488B等((メタ)アクリル基数6))、ビス(2−メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、ビス(メタクリロイルオキシエチル)スルフィド、ビス(アクリロイルオキシエチル)スルフィド、1,2−ビス(メタクリロイルオキシエチルチオ)エタン、1,2−ビス(アクリロイルオキシエチル)エタン、ビス(2−メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、ビス(2−アクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、1,2−ビス(メタクリロイルオキシエチルチオエチルチオ)エタン、1,2−ビス(アクリロイルオキシエチルチオエチルチオ)エタン、1,2−ビス(メタクリロイルオキシイソプロピルチオイソプロピル)スルフィド、1,2−ビス(アクリロイルオキシイソプロピルチオイソプロピル)スルフィド、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸もしくはメタクリル酸のエステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸もしくはチオメタクリル酸のエステル化合物、[A3]成分に記載した以外のウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基を有し、かつケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の構造を有するシルセスキオキサンモノマー、2−イソシアナトエチルメタクリレート、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、またはγ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートの分子量も、前記(メタ)アクリルモノマーの分子量と同様に、平均分子量として表記した。
本発明の[A4]成分としてのウレタン(メタ)アクリレートモノマーを具体的に例示すれば、U−4HA(平均分子量596、(メタ)アクリル基数4)、U−6HA(分子量1019、(メタ)アクリル基数6)、U−6LPA(平均分子量818、(メタ)アクリル基数4)、U−15HA(平均分子量2,300、(メタ)アクリル基数415)、(いずれも新中村化学工業(株)製)、EB4858(平均分子量454)(ダイセルユーシービー社)、その他にも、(メタ)アクリル当量が300未満、もしくは1000を超えるものとして新中村化学工業(株)製のU−200PA、UA−511、U−412A、UA−4100、UA−2235PE、UA−6100、UA−6200、UA−4000、UA−512および日本化薬(株)製UX−3204、UX−4101、UX−6101、UX−7101、UX−8101、UX−0937、UXF−4002、DPHA−40H、UX−5000、UX−5003D、UX−5005等があげられる。
シルセスキオキサンモノマーの例としては、下記式(5)で示されるモノマーが挙げられる。
Figure 0006184790
{式中、
複数個あるR11は、互いに同一もしくは異なっていてもよく、
少なくとも10個のR11は、ラジカル重合性基を含む有機基であり、
ラジカル重合性基を有する有機基以外のR11は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、またはフェニル基であり、
iは、重合度であり、15〜50の整数である。}。
該シロキサンモノマーの平均分子量は3,000〜8,000であることが好ましく、(メタ)アクリル当量は150〜800であることが好ましい。また、該シロキサンモノマーの平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した。
ここで、R11における、ラジカル重合性基を含む有機基は、重合性基のみのものを含む(珪素原子に直接、重合性基(例えば、(メタ)アクリル基等)が結合するものを含む。)。具体的には、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロキシプロピル基、(3−(メタ)アクリロキシプロピル)ジメチルシロキシ基等の(メタ)アクリル基を有する有機基;アリル基、アリルプロピル基、アリルプロピルジメチルシロキシ基等のアリル基を有する有機基;ビニル基、ビニルプロピル基、ビニルジメチルシロキシ基等のビニル基を有する有機基;(4−シクロヘキセニル)エチルジメチルシロキシ基等のシクロヘキセニル基を有する有機基;ノルボルネニルエチル基、ノルボルネニルエチルジメチルシロキシ基等のノルボルネニル基を有する有機基;N−マレイミドプロピル基等のマレイミド基を有する有機基等が挙げられる。中でも(メタ)アクリル基を有する有機基が、優れたフォトクロミック特性を発現しつつ、高い膜強度を得ることができるため特に好ましい。
また、R11における、アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましい。炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
アルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
一般にシルセスキオキサン化合物は、ケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の構造を取ることができるが、本発明においては複数の構造からなる混合物であることが好ましい。
[A4]成分としては、上記以外にも、下記式(6)
Figure 0006184790
(式中、
12、及びR13は、それぞれ、水素原子、又はメチル基であり、
14、及びR15は、それぞれ、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、または下記式(7)
Figure 0006184790
で示される基であり、
j及びkは、平均値でそれぞれ0〜20の数である。)で示されるエポキシ基を有する重合性モノマーが挙げられる。上記式(6)で示したエポキシ基を有する重合性モノマー(エポキシ基含有重合性モノマー)を含むことで、長期に渡り良好なフォトクロミック特性を得ることができる。
ここで、R12、及びR13で示されるアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。また、上記式(6)で示される化合物は、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる場合がある。そのため、j及びkは、平均値で示した。
上記式(6)で示される化合物としては、例えばグリシジルメタクリレート、グリシジルオキシメチルメタクリレート、2−グリシジルオキシエチルメタクリレート、3−グリシジルオキシプロピルメタクリレート、4−グリシジルオキシブチルメタクリレート、平均分子量406のポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート、平均分子量538のポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート、平均分子量1022のポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート、平均分子量664のポリプロピレングリコールグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルオキシメチルアクリレート、2−グリシジルオキシエチルアクリレート、3−グリシジルオキシプロピルアクリレート、4−グリシジルオキシブチルアクリレート、平均分子量406のポリエチレングリコールグリシジルアクリレート、平均分子量538のポリエチレングリコールグリシジルアクリレート、平均分子量1022のポリエチレングリコールグリシジルアクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。この内、グリシジルメタクリレート、グリシジルオキシメチルメタクリレート、2−グリシジルオキシエチルメタクリレート、3−グリシジルオキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレートが好ましく、グリシジルメタクリレートが特に好ましい。
なお、上記の[A4]成分は、単独で使用することもできるし、複数種類を混合して使用することもできる。
[A4]成分としては、上記モノマーの中でも、平均分子量536のポリプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量508のポリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量45,000〜55,000の6官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB1830等((メタ)アクリル基数6))、シルセスキオキサンモノマー、2−イソシアナトエチルメタクリレート、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、U−4HAなどのウレタン(メタ)アクリレートモノマー、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどが好ましい。
なお、本発明において、[A4]成分は、それぞれフォトクロミック特性、表面硬度、またはクラック発生の抑制効果、またはその他の効果を発揮し得る(メタ)アクリルモノマーである。ただし、この[A4]成分を[A1]成分、[A2]成分、または[A3]成分の代替として使用した場合には、フォトクロミック特性、表面硬度、及びクラック発生の抑制効果が全て同時に満足されることはない。
(A)成分における各成分の配合割合
本発明に使用する(A)成分)は、少なくとも[A1]成分、[A2]成分、及び[A3]成分を含んでなる。また、本発明の(A)成分は、[A4]成分を含んでいてもよい。
各成分の配合割合は、(A)成分を100質量部([A1]成分、[A2]成分、[A3]成分、および[A4]成分の合計量が100質量部)とした場合に、[A1]成分を35〜70質量部、[A2]成分を10〜40質量部、および[A3]成分を10〜40質量部である。本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、[A1]成分、[A2]成分、及び[A3]成分を前述の配合割合で含有することにより、優れたフォトクロミック特性、表面硬度、及び外観を同時に達成し得る。[A1]成分、[A2]成分、[A3]成分が、上記範囲を満足しない場合には、優れた効果が発揮されない。[A1]成分の含有量が、35質量部未満の場合には表面硬度が不十分となり、また70質量部を超える場合には、フォトクロミックコート層にクラックが生じ、外観不良となる。[A2]成分の含有量が、10質量部未満の場合にはフォトクロミックコート層にクラックが生じ、外観不良となりやすく、40質量部を超える場合にはフォトクロミック特性が低下する。[A3]成分の含有量が、10質量部未満の場合にはフォトクロミックコート層にクラックが生じ、外観不良となりやすく、40質量部を超える場合には表面硬度が低下する。
[A1]成分の含有量は、表面硬度、及び外観の観点から、(A)成分を100質量部とした場合に、40〜60質量部であることがより好ましく、45〜55質量部であることが最も好ましい。[A2]成分の含有量は、外観、及びフォトクロミック特性の観点から、(A)成分を100質量部とした場合に、15〜35質量部であることがより好ましく、20〜30質量部であることが最も好ましい。[A3]成分の含有量は、外観、及び表面硬度の観点から、(A)成分を100質量部とした場合に、15〜35質量部であることがより好ましく、20〜30質量部であることが最も好ましい。この場合、[A4]成分は含まれなくともよい。
また、本発明の[A4]成分の含有量は、(A)成分を100質量部とした場合に0〜10質量部である。その中でも、[A4]成分を使用し、本発明のフォトクロミック硬化性組成物が優れた効果を発揮するためには、[A1]成分が40〜60質量部、[A2]成分が15〜35質量部、[A3]成分が15〜35質量部、[A4]成分が1〜10質量部とすることが好ましく、さらに[A1]成分が45〜55質量部、[A2]成分が20〜30質量部、[A3]成分が20〜30質量部、[A4]成分が1〜8質量部とすることが好ましい。
(B)フォトクロミック化合物、およびその配合量
フォトクロミック化合物(以下、単に(B)成分とする場合もある)について説明する。フォトクロミック化合物は、所望のフォトクロミック特性が得られる配合量で用いられる。前記重合性モノマーの合計([A1]、[A2]、[A3]、及び必要により配合される[A4]成分よりなる重合性モノマー(A)成分)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部で用いられる。中でも、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、コーティング法、及び2段重合法などで製造される積層法のプラスチックレンズ(フォトクロミック積層体)に好適に使用される。積層法のプラスチックレンズ(フォトクロミック積層体)として使用される場合には、フォトクロミック化合物の配合量は、前記重合性モノマーの合計100質量部((A)成分100質量部)に対して、より好ましくは0.1〜7質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。
フォトクロミック化合物としては、フォトクロミック作用を示す化合物を採用することができる。例えば、フルギド化合物、クロメン化合物及びスピロオキサジン化合物等のフォトクロミック化合物がよく知られており、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することができる。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しれも構わない。前記のフルギド化合物、クロメン化合物、及びスピロオキサジン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレット等に記載されている化合物が挙げられる。
また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として本発明者等が新たに見出した化合物、例えば特開2001−114775号、特開2001−031670号、特開2001−011067号、特開2001−011066号、特開2000−347346号、特開2000−344762号、特開2000−344761号、特開2000−327676号、特開2000−327675号、特開2000−256347号、特開2000−229976号、特開2000−229975号、特開2000−229974号、特開2000−229973号、特開2000−229972号、特開2000−219687号、特開2000−219686号、特開2000−219685号、特開平11−322739号、特開平11−286484号、特開平11−279171号、特開平10−298176号、特開平09−218301号、特開平09−124645号、特開平08−295690号、特開平08−176139号、特開平08−157467号、米国特許5645767号公報、米国特許5658501号公報、米国特許5961892号公報、米国特許6296785号公報、日本国特許第4424981号公報、日本国特許第4424962号公報、WO2009/136668号パンフレット、WO2008/023828号パンフレット、日本国特許第4369754号公報、日本国特許第4301621号公報、日本国特許第4256985号公報、WO2007/086532号パンフレット、特開平2009−120536号、特開2009−67754号、特開2009−67680号、特開2009−57300号、日本国特許4195615号公報、日本国特許4158881号公報、日本国特許4157245号公報、日本国特許4157239号公報、日本国特許4157227号公報、日本国特許4118458号公報、特開2008−74832号、日本国特許3982770号公報、日本国特許3801386号公報、WO2005/028465号パンフレット、WO2003/042203号パンフレット、特開2005−289812号、特開2005−289870号、特開2005−112772号、日本国特許3522189号公報、WO2002/090342号パンフレット、日本国特許第3471073号公報、特開2003−277381号、WO2001/060811号パンフレット、WO2000/071544号、WO2005/028465号パンフレット、WO2011/16582号パンフレット、WO2011/034202号パンフレット、WO2012/121414号パンフレット、WO2013/042800号パンフレット等に開示されている。
これらのフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ〔2, 1−f〕ナフト〔1, 2−b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。さらにこれらのクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度及び退色速度に特に優れるため好適である。その具体例として、以下のものが挙げられる。
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また、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で各種配合剤を配合することができる。次に、この配合剤について説明する。
フォトクロミック硬化性組成物およびその他の配合剤
本発明のフォトクロミック硬化性組成物には、前記(A)成分([A1]成分、[A2]成分、[A3]成分、および必要に応じて[A4]成分)、並びに(B)成分を混合することにより製造することができる。該フォトクロミック硬化性組成物には、(A)成分、及び(B)成分の他、例えば、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤、添加剤、重合調整剤を必要に応じて混合することができる。
中でも、紫外線安定剤を混合して使用するとフォトクロミック化合物の耐久性をさらに向上させることができるために好適である。紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止、イオウ系酸化防止剤を好適に使用することができる。ヒンダードアミン光安定剤としては、特に限定されないが、特にフォトクロミック化合物の劣化防止の点で、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートが好ましい。また、旭電化工業(株)により、アデカスタブLA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87、等の商品名で市販されているヒンダードアミン系光安定剤も好適に使用することができる。
ヒンダードフェノール酸化防止剤としては、特に制限されないが、フォトクロミック化合物の劣化防止の点で、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トルイル]プロピオネート]、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、その他にもチバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX1035、1075、1098、1135、1141、1222、1330、1425、1520、259、3114、3790、5057、565等を挙げることができる。
この紫外線安定剤の使用量は特に制限されるものではないが、(A)成分100質量部に対して各紫外線安定剤の配合量が0.01〜20質量部であり、さらに好ましくは0.1〜10質量部の範囲である。
また、重合調整剤としては、tードデシルメルカプタン等のチオール類を添加することもできる。
また、上記重合性モノマー以外にも、ビニルモノマーなどの重合性モノマーを添加することもできる。ビニルモノマーとしては、公知の化合物を何ら制限なく使用できるが、その中でも重合調整剤として作用する化合物を配合することが、フォトクロミック硬化性組成物の成型性を向上させるために好適である。ビニルモノマーの具体例としては、α−メチルスチレンおよびα−メチルスチレンダイマー等があげられ、特にα−メチルスチレンとα−メチルスチレンダイマーを組み合わせることが好ましい。
重合開始剤、およびフォトクロミック積層体の製法
フォトクロミック硬化性組成物から積層体を得る方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用できる。具体的には、プラスチックレンズ基材上に、フォトクロミック硬化性組成物からなる層を存在させ、該硬化性組成物を重合硬化させればよい。フォトクロミック硬化性組成物を重合する方法としては、熱や、紫外線(UV線)、α線、β線、γ線等の照射あるいは両者の併用によって行うことができる。この際、下記の熱重合開始剤や光重合開始剤などのラジカル重合開始剤を、本発明のフォトクロミック硬化性組成物に配合することが好ましい。
本発明において、重合開始剤を使用する際、その重合開始剤の使用量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部の範囲である。
代表的な重合開始剤を例示すると、熱重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を挙げることができる。
本発明のフォトクロミック硬化体組成物を熱重合させる際、重合条件のうち、特に温度は得られるフォトクロミック硬化体・積層体の性状に影響を与える。この温度条件は、熱重合開始剤の種類と量やモノマーの種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、一般的に比較的低温で重合を開始し、ゆっくりと温度を上げていき、重合終了時に高温下に硬化させる、所謂、テーパー型重合を行うのが好適である。重合時間も温度と同様に各種の要因によって異なるので、予めこれらの条件に応じた最適の時間を決定するのが好適である。2〜24時間で重合が完結するように条件を選ぶのが好ましい。
本発明の光重合開始剤としては、アセトフェノン系やアシルフォスフィン系といった化合物を採用することが出来る。具体的には、ベンゾフェノン;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2−ベンジル−2ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリコキシレート等のα−ジカルボニル系化合物;2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキシド系化合物;1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]などを挙げることができる。これらの重合開始剤は1種、又は2種以上を混合して用いてもかまわない。
本発明のフォトクロミック硬化体組成物を光重合させる際には、重合条件のうち、特にUV強度は得られるフォトクロミック硬化体・積層体の性状に影響を与える。この照度条件は、光重合開始剤の種類と量やモノマーの種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、一般的に365nmの波長で、50〜500mW/cm2のUV光を、0.5〜5分の時間で光照射するように条件を選ぶのが好ましい。
また、熱重合開始剤と光重合開始剤を併用することもできる。光重合開始剤を用いる場合には3級アミン等の公知の重合促進剤を併用することができる。2段重合法を採用する場合には、熱重合開始剤を配合することが好ましく、コーティング法を採用する場合には、光重合開始剤を配合することが好ましい。
次に、本発明のフォトクロミック積層体の製造方法に関し、具体的に説明する。先ず、使用するプラスチックレンズ基材について説明する。
(プラスチックレンズ基材)
本発明のフォトクロミック硬化性組成物からなるフォトクロミックコート層が積層されるプラスチックレンズ基材は、特に制限されるものでなく、公知の基材を使用することができる。
プラスチックレンズ基材としては、具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、及びチオエポキシ系樹脂等が挙げられ、本発明においては、何れのプラスチックレンズ基材にも適用できる。また、これらのプラスチックレンズ基材上に、ハードコート層などを積層したプラスチックレンズ基材にも適用可能である。
本発明で使用するプラスチックレンズ基材の形状は、特に制限されるものではなく、公知の形状のものに適用できる。プラスチックレンズ基材は、使用する人の視力、プラスチックレンズ基材成型時のガラスモールド形状、及び生産性などに応じて、様々は形状を有している。例えば、近視用レンズとしての中心が薄く、コバに厚みを有するマイナスレンズであり、遠視用レンズとしての中心が厚く、コバが薄いプラスレンズである。更には、プラスチックレンズ基材を成型する際のモールド等に依存し、プラスチックレンズ基材のコバ部分が外周へ向かって下方(フォトクロミックコート層が積層される側とは反対側)へ傾斜している形状を有する場合もある(以下、コバ部のこの形状を単に「斜角形状」とする場合もある。)。斜角形状を有する利点としては、例えば、コーティング法においてコバ部の液溜まりを少なくできるという点が挙げられる。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、上記いずれのプラスチックレンズ基材へも適用可能である。本発明者等の検討によれば、従来のフォトクロミック硬化性組成物では特に、マイナスレンズ、プラスレンズ、コバ部が斜角形状のレンズに対してフォトクロミックコート層を形成した場合、クラックが発生し易い傾向にあることを突き止めた。本発明者等は、この原因は以下の理由によるものと考えている。
(マイナスレンズ、およびプラスレンズへの適用について)
マイナスレンズ、およびプラスレンズの中でも、基材の種類によっても異なるが、例えば、アリルジグリコールカーボネートからなるアリル系樹脂を用いた場合には、+5.00以上のプラスレンズ、及び−3.00以下のマイナスレンズ(以下、このプラスレンズ、及びマイナスレンズをまとめて「強度数プラスチックレンズ」とする場合もある)は、以下の理由により、従来のフォトクロミック硬化性組成物ではクラックが発生し易かったものと考えている。
通常、フォトクロミックコート層を形成した後、該コート層の密着性を向上させるために、80〜120℃の温度で加熱処理したり、該コート層上にハードコート層を設けるために、やはり80〜120℃の温度で加熱処理を行う。この際、フォトクロミックコート層の表面硬度を高くしたものは、架橋度を高めるか、無機物質を含む組成のものになっているため、プラスチックレンズ基材とフォトクロミックコート層との間に熱膨張差が生じ易い。加えて、中心とコバで厚みが大きく異なる強度数プラスチックレンズでは、各積層部分において熱伝導が異なるため、積層部分おける各箇所の熱膨張差も生じ易いものと考えられる。この結果、フォトクロミックコート層に余分な応力がかかり易くなり、クラックが発生し易くなるものと考えられる。
これに対して、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、[A1]成分、特定の2官能アクリルモノマーである[A2]成分、および特定の分子鎖長を有する[A3]成分を特定の配合割合とすることにより、得られるフォトクロミックコート層が表面硬度を高く維持しつつ、熱膨張差による応力を吸収することができる。そのため、クラックの発生を抑制することができ、優れたフォトクロミック特性を発揮できるものと考えられる。
なお、この強度数プラスチックレンズの厚みは、プラスレンズの場合には中心部が5〜30mm、コバ部が1〜5mmであり、マイナスレンズの場合には中心部が1〜15mm、コバ部が5〜25mmである。
(斜角形状のプラスチックレンズへの適用について)
斜角形状を有するプラスチックレンズは、プラスチックレンズ成型時のガラスモールド形状に由来する。更には、スピンコーティング法によりフォトクロミック積層体を製造する場合には、そのコバ部分(エッジ部分)に溜る過剰な液を振り切りやすくするために、コバ部分を加工する場合もある。そのため、斜角形状は、様々であるが、通常は、図1に斜角形状プラスチックレンズ1示すが、斜角形状部2は、幅が0.1〜2.0mm、エッジ部分に対する角度3が30〜60°である。厚みは特に制限されるものではないが、1〜30mmである。
このような斜角形状を有するプラスチックレンズ基材は、その斜角部分自体にフォトクロミック硬化性組成物が溜り、その部分のフォトクロミックコート層(塗布のみ)の厚みが厚くなる場合があった。そして、図2に示すように、斜角形状を有するプラスチックレンズ基材4上フォトクロミックコート層6が重合硬化する際に、斜角部分のフォトクロミックコート層6がアンカーとなり、特に、コート層の架橋度を高めたり、無機物質を含む硬化性組成物を使用した場合には、斜角部のフォトクロミックコート層が収縮できずに応力が発生し、その影響でフォトクロミックコート層にクラックが生じる場合があった。一方で、斜角形状の無いプラスチックレンズ基材5においては、フォトクロミックコート層のアンカー部分が生じにくいために、クラックの発生確率も低かったものと推定される。
これに対して、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、[A1]成分、特定の2官能アクリルモノマーである[A2]成分、および特定の分子鎖長を有する[A3]成分を特定の配合割合とすることにより、得られるフォトクロミックコート層が表面硬度を高く維持しつつ、収縮にも追随できるようになり、クラックの発生が抑制されるものと考えられる。
以上のように、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、上記のような強度数プラスチックレンズ、斜角形状を有するプラスチックレンズを使用する場合でも、好適に適用できる。
プラスチックレンズ基材は、得られるフォトクロミック積層体の密着性向上のために、アルカリ溶液、酸溶液などによる化学的処理、コロナ放電、プラズマ放電、研磨などによる物理的処理を施用したものであってもよい。中でも、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、プラスチックレンズ基材とフォトクロミックコート層の密着性を高めるため、接着層としてプライマーコート層を有するレンズ基材を使用した場合に特に好適に適用できる。
(プライマーコート層を有するプラスチックレンズへの適用)
プライマーコート層は、通常、ポリウレタン樹脂から形成されているが、このプライマーコート層を有する場合には、プラスチックレンズ基材、プライマーコート層、およびフォトクロミックコート層の3成分の収縮、熱膨張との関係が複雑に絡み合い、従来の表面硬度を高く維持できるフォトクロミック硬化性組成物では、クラックが発生し易かったものと考えられる。特に、プライマーコート層を有する、強度数プラスチックレンズ、斜角形状を有するプラスチックレンズは、その傾向がより一層顕著となった。そのため、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、このようなプライマーコート層を有するプラスチックレンズ基材を使用する場合に、特に、好適に適用できる。
プライマーコート層としては、公知のポリウレタン樹脂を使用することが可能である。その中でも、密着性の観点から、日本国特許第4405833号公報に記載されているような湿気硬化型ポリウレタン樹脂/その前駆体、または日本国特許第5016266号公報、日本国特許5084727号公報に記載されているような水分散ウレタンエマルジョンからなるプライマーコート層であることが好ましい。
(湿気硬化型ポリウレタン樹脂からなるプライマーコート層を有するプラスチックレンズへの適用)
湿気硬化型ポリウレタン樹脂及び/ 又はその前駆体(以下、単に湿気硬化型ポリウレタン樹脂とする)とは、分子中に複数存在するイソシアネート基の一部が例えば大気中の水分と反応してカルバミン酸を生じた後に脱炭酸してアミンを生成し、該アミンと残存イソシアネート基が反応して尿素結合を生じることにより架橋硬化するイソシアネート基含有化合物またはこのような化合物の前駆体となる化合物又は化合物の組合せである。
中でも、湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、比較的低温で優れた密着性を発現できる観点から、脂肪族イソシアネート化合物及び/ 又は該脂肪族イソシアネート化合物と活性水素を有するような化合物とをイソシアネート基が残るような仕込み比で種々の方法で結合させたポリイソシアネート化合物またはポリイソシアネートオリゴマー化合物、特に塗膜性の点から環状脂肪族イソシアネート化合物及び/ 又は該環状脂肪族イソシアネート化合物と活性水素を有する化合物とをイソシアネート基が残るような仕込み比で種々の方法で結合させたポリイソシアネート化合物またはポリイソシアネートオリゴマー化合物が好ましい。
また、湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、得られるポリイソシアネート化合物またはポリイソシアネートオリゴマー化合物が空気中の水分などと反応して硬化する速度が速いという観点から、芳香族イソシアネート化合物及び/ 又は該芳香族イソシアネート化合物と活性水素を有するような化合物とをイソシアネート基が残るような仕込み比で種々の方法で結合させたポリイソシアネート化合物またはポリイソシアネートオリゴマー化合物も好適に使用できる。この場合、水分とイソシアネートとの反応の結果、ウレア結合が生成するが、本発明における接着層にはこのようなウレア結合が含まれていてもよい。
なお、上記活性水素を有する化合物としては、ポリアルキレングリコール類、3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール類、ポリアルキレンアジペート類、ポリアルキレンカーボネート類、ポリカプロラクトン類、ポリエステルポリオール類を使用することが好ましい。なお、上記した活性水素を有する化合物は単独で用いても、2 種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で使用する湿気硬化型ポリウレタン樹脂及び/ 又はその前駆体の分子量は、比較的高いほうが好ましい。分子量を高くする手法としては、前述のイソシアネート化合物と活性水素を有する化合物とをイソシアネート基が残るような仕込み比で種々の方法で結合させる際に、イソシアネート基の残る量を少なくするように調整する方法がある。あるいは、湿気硬化型ポリウレタン樹脂及び/ 又はその前駆体の分子中に複数存在するイソシアネート基を鎖延長剤などにより結合する方法もある。ここで、鎖延長剤としては、先述したような活性水素を有する化合物やエチレンジアミン等のジアミン化合物が挙げられるが、これらの中でも、鎖延長反応の制御のし易さという観点から、1 ,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、1 ,6− ヘキサンジオール等のアルキレングリコール類や、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類が好適に用いられる。
以上のような湿気硬化型ポリウレタン樹脂を、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの有機溶剤で希釈し、更に必要に応じてレベリング剤を配合してプライマーコート組成物とした後、プラスチックレンズ基材上に塗布、乾燥し、プライマーコート層を形成する。この際、プライマーコート層の厚みは、1〜10μmとすることが好ましい。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、上記プライマーコート層を有するプラスチックレンズ基材を使用する場合に、効果を発揮する。その中でも、レンズ基材が、強度数プラスチックレンズ、斜角形状を有するプラスチックレンズである場合に特に効果を発揮する。なお、当然のことであるが、フォトクロミックコート層が形成されるのは、プライマーコート層上である。
(水分散ウレタンエマルジョンからなるプライマーコート層を有するプラスチックレンズへの適用)
水分散ウレタン樹脂エマルジョンに含まれるポリウレタン樹脂は、活性水素基含有成分として、少なくとも、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基併有化合物、活性水素基含有アクリレート化合物、および/またはアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物を含み、ポリイソシアネート成分として、ポリイソシアネート化合物を含み、それら活性水素基含有成分とポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られるウレタン樹脂であることが好適である。
水分散ウレタン樹脂の原料であるポリオール化合物、及びポリイソシアネート化合物は、前述の湿気硬化型ウレタン樹脂の原料と同様なものを使用すること可能である。
水分散ウレタン樹脂の原料であるアニオン性基活性水素基併有化合物は、例えば、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基、スルホベタインなどのべタイン構造含有基などのアニオン性基を1つ以上有し、かつ、イソシアネート基と反応し得る、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素基を2つ以上有する化合物であって、例えば、1つのアニオン性基を有し、かつ、2つ以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。例えば、カルボキシル基を有するアニオン性基活性水素基併有化合物として、2 ,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸などが挙げられる。
水分散ウレタン樹脂の原料である活性水素基含有アクリレート化合物は、分子内に1個以上のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物であって、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ アクリレート、2, 2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。
水分散ウレタン樹脂の原料であるアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物としては、第1 級アミノ基および第2 級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられ、具体的には、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、N,N’−ビス〔α−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミンなどが挙げられる。
本発明の水分散ウレタン樹脂エマルジョンは、活性水素基含有成分( すなわち、少なくとも、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基併有化合物、活性水素基含有アクリレート化合物、および/またはアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物)と、ポリイソシアネート成分(すなわち、ポリイソシアネート化合物)とを、ワンショット法やプレポリマー法などに反応させることにより合成することができ、プレポリマー法がより好ましい。また鎖伸長剤を使用することもできる。
鎖伸長剤として、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物以外の、他のアミン類、ヒドラジン類( 他のアミン類、ヒドラジン類は、活性水素基含有成分に含まれる。) を併用することもできる。例えば、そのような他のアミン類としては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−イソシアナトメチル−3,5 ,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジアミン) 、4,4 ’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2 ,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2 .2 .1 ]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどのジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのポリアミン類などが挙げられる。
以上のような水分散ポリウレタン樹脂エマルジョンは、最終的に水にポリウレタン樹脂が分散しているが、必要に応じて、水やレベリング剤、更には有機溶剤などを配合してプライマーコート組成物とした後、プラスチックレンズ基材上に塗布、乾燥し、プライマーコート層を形成する。この際、プライマーコート層の厚みは、1〜10μmとすることが好ましい。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、上記プライマーコート層を有するプラスチックレンズ基材を使用する場合に、効果を発揮する。その中でも、レンズ基材が、強度数プラスチックレンズ、斜角形状を有するプラスチックレンズである場合に特に効果を発揮する。なお、当然のことであるが、フォトクロミックコート層が形成されるのは、プライマーコート層上である。
以上のようなプラスチックレンズ基材、通常形状のプラスチックレンズ、強度数プラスチックレンズ、斜角形状を有するプラスチックレンズ、およびこれらレンズ表面にポリウレタン樹脂からなるプライマーコート層上に、フォトクロミック硬化性組成物からなるフォトクロミックコート層を積層する(フォトクロミック積層体を製造する。)。次に、これらレンズ基材上にフォトクロミックコート層を形成する方法について具体的に説明する。
(コーティング法、2段重合法:フォトクロミック積層体の製造方法)
具体的な積層体の製造方法としては、コーティング法、および2段重合法が挙げられる。
コーティング法
コーティング法によりフォトクロミック積層体を製造する場合には、プラスチックレンズ基材上に、光重合開始剤を混合した本発明のフォトクロミック硬化体組成物をスピンコーティング法などにより塗布し、窒素などの不活性ガス中に設置した後に、UV照射を行うことで、コーティング法によるフォトクロミック積層体を得ることが出来る。そして、フォトクロミックコート層とプラスチックレンズ基材との密着性を高めるため、80〜120℃の温度範囲で0.5〜5時間程度加熱処理することが好ましい。こうすることにより、プラスチックレンズ基材/必要に応じて形成される、プライマーコート層/フォトクロミックコート層がこの順で積層されたフォトクロミック積層体を得ることができる。コーティング法で形成されるフォトクロミックコート層の厚みは、特に制限されるものではないが、10〜70μmとすることが好ましい。
2段重合法
2段重合法によりフォトクロミック積層体を製造する場合には、エラストマーガスケット、スペーサー、または粘着テープで保持されているガラスモールドとプラスチックレンズ基材とからなる隙間に、熱重合開始剤を配合した本発明のフォトクロミック硬化体組成物を注入し、空気炉中で重合硬化させた後、ガラスモールドから積層体を取り外す注型重合が挙げられる。光重合開始剤を使用する場合には、ガラスモールドごとUV照射を行い、その後、ガラスモールドから硬化体を取り外せばよい。重合硬化する際の温度は、特に制限されるものではないが、熱重合する場合には、20〜120℃の範囲で温度を変化させることが好ましい。また、光重合の場合には、光重合後、80〜120℃の温度範囲で0.5〜5時間程度加熱処理することが好ましい。こうすることにより、プラスチックレンズ基材/必要に応じて形成される、プライマーコート層/フォトクロミックコート層がこの順で積層されたフォトクロミック積層体を得ることができる。2段重合法で形成されるフォトクロミックコート層の厚みは、特に制限されるものではないが、100〜1000μmとすることが好ましい。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、上記のような方法によりプラスチックレンズ基材上に配置され、硬化することにより、フォトクロミック積層体を形成できる。この際、クラックを抑制するために、フォトクロミックコート層自体の強度を向上させたものである。
フォトクロミック積層体の特性、及び後加工
本発明のフォトクロミック硬化体組成物を前記方法により重合して得られるフォトクロミック積層体は、表面硬度に優れ、フォトクロミックコート層に生じるクラック等の外観不良を抑制することができ、かつフォトクロミック特性にも優れたフォトクロミックプラスチックレンズとすることができる。
さらに、前記の方法で得られるフォトクロミック積層体は、その用途に応じて以下のような処理を施すこともできる。即ち、分散染料などの染料を用いる染色、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、タングステン等のゾルを主成分とするハードコート剤や、SiO、TiO、ZrO等の金属酸化物の薄膜の蒸着や有機高分子の薄膜の塗布による反射防止処理、帯電防止処理等の加工および2次処理を施すことも可能である。
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で使用した使用した化合物は下記の通りである。
(A)成分
[A1]成分
・TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート。
・D−TMP:ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート。
・A−TMMT:テトラメチロールメタンテトラアクリレート。
[A2]成分
・BPE500:2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレグリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が、804)。
[A3]成分
・14G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が14であり、平均分子量が736、(メタ)アクリル当量 368)。
・U1:新中村化学工業(株)製 ウレタンジアクリレート(製品名;UA−122P、平均分子量約1100、(メタ)アクリル当量 550)。
・U2:新中村化学工業(株)製 ウレタンジアクリレート(製品名;U−2THA、平均分子量約1300、(メタ)アクリル当量 650)。
・A−TMMT2:平均分子量1892のペンタエリスリトールポリエチレングリコールテトラアクリレート(e=9、f=4、(メタ)アクリル当量 473)。
・BPE2:2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(g+h=20、(メタ)アクリル当量622)。
[A4]成分
・U4HA:新中村化学工業(株)製‘U−4HA’ 4官能性ウレタンアクリレート(平均分子量596、(メタ)アクリル当量 149)。
・U6HA:新中村化学工業(株)製‘U−6HA’ 6官能性ウレタンアクリレート(平均分子量1019、官能基数6、(メタ)アクリル当量 170)
・A400:ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が9であり、平均分子量が508、(メタ)アクリル当量 254)。
・M90G:新中村化学工業(株)製‘M90G’ 単官能性メタクリレート(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)。
・9G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が9であり、平均分子量が536、(メタ)アクリル当量 268)。
・GMA :グリシジルメタアクリレート。
・MA1:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
・MA2:2−イソシアナトエチルメタクリレート。
・PMS1:シルセスキオキサンモノマー。
・MA3:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(平均分子量468、(メタ)アクリル当量 468)。
<PMS1の合成>
3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート248g(1.0mol)にエタノール248mlおよび水54g(3.0mol)を加え、触媒として水酸化ナトリウム0.20g(0.005mol)を添加し、30℃で3時間反応させた。原料の消失を確認後、希塩酸で中和し、トルエン174ml、ヘプタン174ml、および水174gを添加し、水層を除去した。その後、水層が中性になるまで有機層を水洗し、溶媒を濃縮することによってシルセスキオキサンモノマー(PMS1)を得た。なお、1H−NMRより、原料は完全に消費されていることを確認した。また、29Si−NMRより、ケージ状構造、ラダー状構造およびランダム構造の混合物であることを確認した。シルセスキオキサンモノマー(PMS1)の分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により測定したところ、重量平均分子量が4800であった。(メタ)アクリル当量は、約178であった。
(B)フォトクロミック化合物
Figure 0006184790
Figure 0006184790
Figure 0006184790
その他の配合剤(添加剤)
安定剤
HALS: ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量508) 。
HP:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irganox245)。
熱重合開始剤
ND :t−ブチルパーオキシネオデカネート(商品名:パーブチルND、日本油脂(株)製)。
O :1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシ−2−エチルヘキサネート(商品名:パーオクタO、日本油脂(株)製)。
光重合開始剤
PI:フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(商品名:Irgacure819、BASF社製)。
プラスチックレンズ基材
PL1:中心厚2mm、斜角45°、屈折率1.50、斜角形状を有するアリル系プラスチックレンズ。
PL2:中心厚10mm、斜角45°、屈折率1.67、斜角形状を有するチオウレタン系プラスチックレンズ。
PL3:屈折率1.50、度数+6.00、中心厚12mm、エッジ厚1mm、アリル系プラスチックレンズ。
PL4:屈折率1.50、度数−4.00、中心厚3mm、エッジ厚10mm、アリル系プラスチックレンズ。
PL5:中心厚2mm、屈折率1.50、斜角形状の無いアリル系プラスチックレンズ。
プライマー組成物
PR1;湿気硬化型プライマー(製品名;TR−SC−P、(株)トクヤマ製)。
PR2;水分散ウレタンエマルジョン(製品名;NJ−321A、(株)トクヤマ製)。
製造例
フォトクロミック硬化性組成物(Z1)の調整
[A1]成分:トリメチロールプロパントリメタクリレート 20質量部、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート 30質量部、[A2]成分:2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレグリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が804) 30質量部、[A3]成分:ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が14であり、平均分子量が736) 20質量部、(B)成分:PC1 1.2質量部、PC2 0.4質量部、PC3 1.2質量部、その他の配合剤(添加剤)安定剤:HALS 3質量部、HP 3質量部、重合開始剤としてPI 0.3質量部、レベリング剤として東レ・ダウコーニング株式会社製L7001 0.1質量部を加え、70℃で15分間撹拌混合し、コーティング法に用いるフォトクロミック硬化性組成物(Z1)を得た。各配合量を表1に示した。
フォトクロミック硬化性組成物(Z2)〜(Z28)の調整
表1、2、および3に示した材料を用いた以外は、前記フォトクロミック硬化性組成物(Z1)と同様の方法にて、フォトクロミック硬化性組成物(Z2)〜(Z28)を調整した。組成を、表1、表2、及び表3に示す。なお、フォトクロミック硬化性組成物(Z1)〜(Z14)、および(Z21)〜(Z24)は、実施例の組成物に該当する。また、フォトクロミック硬化性組成物(Z15)〜(Z20)、および(Z25)〜(Z28)は、比較例の組成物に該当する。
Figure 0006184790
Figure 0006184790
Figure 0006184790
実施例1(コーティング法)
プラスチックレンズ基材として、中心厚2mm、斜角45°、屈折率1.50、斜角形状を有するアリル系プラスチックレンズを用意した。なお、このアリル系プラスチックレンズは、事前に10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、50℃で5分間のアルカリエッチングを行い、その後十分に蒸留水で洗浄を実施した。
スピンコーター(1H−DX2、MIKASA製)を用いて、上記のプラスチックレンズの表面に、湿気硬化型プライマー(製品名;TR−SC−P、(株)トクヤマ製)を回転数70rpmで15秒、続いて1000rpmで10秒コートした。その後、上記で得られたフォトクロミック硬化性組成物(Z1) 約2gを、回転数60rpmで40秒、続いて600rpmで10〜20秒かけて、フォトクロミックコーティング層の膜厚が40μmになるようにスピンコートした。このようにコーティング剤が表面に塗布されているレンズを、窒素ガス雰囲気中で出力200mW/cmのメタルハライドランプを用いて、90秒間光を照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに100℃で1時間加熱して、フォトクロミックコート層を有するフォトクロミック積層体を作製した。
得られたフォトクロミック積層体は、最大吸収波長588nm、発色濃度1.0、退色速度50秒のフォトクロミック特性を有し、外観評価が0、密着性がA、表面硬度が7.5であった。なお、これらの評価は以下のようにして行った。
フォトクロミック特性
得られたフォトクロミック積層体(フォトクロミック層の厚み500マイクロメートル)を試料とし、これに、浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm,245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、前記積層体のフォトクロミック特性を測定した。各フォトクロミック特性は以下の方法で評価した。
1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD3000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
2)発色濃度{ε(120)−ε(0)}:前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と上記ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック特性が優れているといえる。
3)退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほど速やかに消色することを意味し、フォトクロミック特性が優れているといえる。
外観評価
フォトクロミック積層体を10枚作製し、フォトクロミックコート層にクラックが発生したフォトクロミック積層体の枚数にて評価を行った。
密着性
得られたフォトクロミック積層体の密着性を評価した。密着性の評価は、フォトクロミックコート層、接着層、及びプラスチックレンズの密着性をJISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって行った。すなわち、カッターナイフを使いレンズ表面に約1mm間隔に切れ目を入れ、マス目を100個形成させる。その上にセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製セロテープ(登録商標))を強く貼り付け、次いで、表面から90°方向へ一気に引っ張り剥離した後、フォトクロミックコート層の残っているマス目を数えた。つまり、評価結果は、(残っているマス目数)/100で表している。ここでの密着性は、レンズ基材上に積層している全ての層の密着性を評価している。評価基準を以下に示す。
A;100/100。
B:99/100〜95/100。
C:95/100未満 。
表面硬度
本発明における表面硬度は、ビッカース硬度にて評価した。測定は、マイクロビッカース硬度計PMT-X7A(株式会社マツザワ製)を用いて実施した。圧子には、四角錐型ダイヤモンド圧子を用い、荷重10gf、圧子の保持時間30秒の条件にて評価を実施した。測定結果は、計4回の測定を実施した後、測定誤差の大きい1回目の値を除いた計3回の平均値で示した。
実施例2−23、比較例1−6
表4に示したフォトクロミック硬化性組成物、プラスチックレンズ及びプライマーを用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体を作製し、評価を行なった。評価結果を表4に示した。
Figure 0006184790
以上の実施例1−23から明らかな通り、本発明のフォトクロミック硬化性組成物を重合して得られるフォトクロミック積層体は、フォトクロミック特性に優れるばかりでなく、外観、密着性、及び表面硬度にも優れている。しかしながら、比較例1〜6では、フォトクロミック特性、外観、密着性、または表面硬度のうち、少なくとも1つの物性が不十分であり、全ての物性を同時に満足するものはない。
実施例24(2段重合法)
フォトクロミック硬化性組成物(Z19)を、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットを用い、ガラス板と中心厚2mm、斜角45°、屈折率1.50、斜角形状を有するアリル系プラスチックレンズで挟まれた鋳型の中に注入し、注型重合を行った。なお、このプラスチックレンズは、事前に10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、50℃で5分間のアルカリエッチングを行い、その後十分に蒸留水で洗浄を実施した。
重合は空気炉を用い、30℃〜90℃まで18時間かけ徐々に温度を上げていき、90℃で2時間保持して行い、重合終了後にガラス板を外すことで、0.3mm厚のフォトクロミック硬化性組成物のフォトクロミック層と2mm厚のプラスチックレンズ基材が密着したフォトクロミック積層体を得た。得られたフォトクロミック積層体は、実施例1と同様にして、フォトクロミック特性、外観、密着性、及び表面硬度の評価を実施した。その結果を、表4に示した。
実施例25−29、比較例7−10
表5に示したフォトクロミック硬化性組成物、プラスチックレンズを用いた以外は、実施例24と同様な方法でフォトクロミック積層体を作製し、評価を行なった。評価結果を表5に示した。
Figure 0006184790
以上の実施例24−29から明らかな通り、本発明のフォトクロミック硬化性組成物を用いて、2段重合法によって得られるフォトクロミック積層体は、フォトクロミック特性に優れるばかりでなく、外観、密着性、及び表面硬度にも優れている。しかしながら、比較例7〜10では、フォトクロミック特性、外観、密着性、または表面硬度のうち、少なくとも1つの物性が不十分であり、全ての物性を同時に満足するものはない。
1 斜角形状を有するプラスチックレンズ基材
2 斜角形状部分
3 斜角形状の角度
4 フォトクロミックコート層を積層した斜角形状を有するプラスチックレンズ基材
5 フォトクロミックコート層を積層した斜角形状の無いプラスチックレンズ基材
6 フォトクロミックコート層

Claims (8)

  1. (A)(メタ)アクリル基を有する重合性モノマーと(B)フォトクロミック化合物とを含んでなり、
    前記(A)(メタ)アクリル基を有する重合性モノマーが、
    [A1] 下記式(1)で示される多官能(メタ)アクリルモノマーを35〜70質量部、
    Figure 0006184790
    (式中、
    は、水素原子、またはメチル基であり、
    は、水素原子、または炭素数1〜2のアルキル基であり、
    は、炭素数1〜10である3〜6価の炭化水素基、または炭素数1〜10の鎖中に酸素原子を含む3〜6価の基であり、
    aは平均値で0〜3の数であり、bは3〜6の整数である。)、
    [A2] 下記式(2)で示される2官能(メタ)アクリルモノマーを10〜40質量部、
    Figure 0006184790
    (式中、
    、及びRは、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
    、及びRは、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
    Aは、下記式
    Figure 0006184790
    に示されるいずれかの基であり、
    c、及びdは、それぞれ独立に1以上の整数であるとともに、c+dは平均値で6〜17である。)、
    [A3] 下記一般式(3)で示される多官能(メタ)アクリルモノマー、下記一般式(4)で示される2官能(メタ)アクリルモノマー、分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖(メタ)アクリルモノマーを10〜40質量部、
    Figure 0006184790
    (式中、
    は、水素原子、またはメチル基であり、
    は、水素原子、または炭素数1〜2のアルキル基であり、
    10は、炭素数1〜10である3〜6価の炭化水素基、または炭素数1〜10の鎖中に酸素原子を含む3〜6価の基であり、
    eは平均値で8〜15の数であり、fは3〜6の整数である。)、
    Figure 0006184790
    (式中、
    41、及びR51は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
    61、及びR71は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
    A’は、下記式
    Figure 0006184790
    に示されるいずれかの基であり、
    g、及びhは、それぞれ独立に1以上の整数であるとともに、g+hは平均値で20以上40以下である。)、
    [A4] 前記[A1]、[A2]、および[A3]成分以外の(メタ)アクリルモノマーを0〜10質量部、
    (ただし、[A1]、[A2]、[A3]、および[A4]成分の合計は100質量部である)
    を含むことを特徴とするフォトクロミック硬化性組成物。
  2. 前記[A3]成分が、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびポリウレタンジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖(メタ)アクリルモノマーであることを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミック硬化性組成物。
  3. 前記(A)(メタ)アクリル基を有する重合性モノマー100質量部当たり、前記(B)フォトクロミック化合物を0.1〜10質量部含む請求項1に記載のフォトクロミック硬化性組成物。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載のフォトクロミック硬化性組成物を含むコーティング剤。
  5. プラスチックレンズ基材上に、請求項4に記載のコーティング剤を硬化させて得られるフォトクロミックコート層を有するフォトクロミック積層体。
  6. プラスチックレンズ基材とフォトクロミックコート層との間に、ウレタン樹脂を含むプライマーコート層を有する請求項5に記載のフォトクロミック積層体。
  7. 前記プラスチックレンズ基材として、フォトクロミックコート層が形成される面のコバ部が外周へ向かって下方へ傾斜している形状であるプラスチックレンズ基材を使用する請求項5に記載のフォトクロミック積層体。
  8. 前記プラスチックレンズ基材として、度数−3.00以下、または+5.00以上である強度数のプラスチック基材を使用する請求項5に記載のフォトクロミック積層体。
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