JP2022110997A - フォトクロミック硬化性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】傷防止用保護フィルム由来の外観不良、コーティングに伴うオレンジピール状の不良の双方を防止し、良好なフォトクロミック性を発現するフォトクロミック硬化体を得ることができる。【解決手段】(A)沸点が80℃以上200℃以下であって、SP値が8.0~10.0の有機化合物、(B)ラジカル重合性単量体成分、および (C)フォトクロミック化合物を含むフォトクロミック硬化性組成物であって、該(B)ラジカル重合性単量体成分100質量部に対して、(A)有機化合物を0.10質量部以上10質量部以下含む、フォトクロミック硬化性組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、新規なフォトクロミック硬化性組成物に関する。さらには、該フォトクロミック硬化体の硬化体を積層した新規なフォトクロミック積層体、および該フォトクロミック積層体の新規な製造方法に関する。
クロメン化合物、フルギド化合物、スピロオキサジン化合物等に代表されるフォトクロミック化合物は、太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻るという特性(フォトクロミック性)を有しており、この特性を活かして、種々の用途、特に光学材料の用途に使用されている。
例えば、フォトクロミック化合物の使用によりフォトクロミック性が付与されているフォトクロミック眼鏡レンズは、太陽光のような紫外線を含む光が照射される屋外では速やかに着色してサングラスとして機能し、そのような光の照射がない屋内においては退色して透明な通常の眼鏡として機能するものであり、近年その需要は増大している。
このフォトクロミック眼鏡レンズに用いられるフォトクロミック光学物品の製造方法としては、例えば、重合性モノマーとフォトクロミック化合物を混合し、それを重合させることにより、直接レンズ等の光学物品を成形する方法、プラスチックレンズ等の光学物品の表面にフォトクロミック化合物が分散された樹脂層をコーティングする方法、2枚の光学物品を、フォトクロミック化合物が分散された接着性樹脂により形成された接着層により接合する方法、などがある(特許文献1、2、3参照)。その中でも、プラスチックレンズ等の光学物品の表面にフォトクロミック化合物が分散された樹脂層をコーティングする方法が好適に用いられている。また、コーティング法では樹脂のコーティング性向上のためにレベリング剤を用いることが一般的である。
上記方法で製造されるフォトクロミック光学物品には、太陽光のような紫外線を含む光が照射されるとすばやく応答して高濃度で発色し、そのような光がない屋内においては速やかに退色することが求められており、さらに優れたフォトクロミック性を発現させることが求められていた。
その手法として、プラスチックレンズ等の光学物品の表面にフォトクロミック化合物が分散された樹脂層をコーティングする方法においては、フォトクロミック化合物が分散された樹脂層を強固に硬化させずに柔軟性をもたせる手法や、フォトクロミック化合物が分散された樹脂層の表面硬度を柔らかくすることで、光応答性や退色速度を向上させる手法が提案されている。
一般に、フォトクロミック光学物品、例えばフォトクロミック眼鏡レンズは、製造された後、レンズ表面に傷がつかないように、内紙と呼ばれる比較的柔らかい素材で包まれ、さらに、袋に入れられて出荷される。また、フォトクロミック眼鏡レンズは、各製造工程、保管、及び出荷時において、欠陥のないレンズ表面を得るため、レンズ表面に傷防止用保護フィルムを貼り付ける場合がある。これは工程中にレンズ表面に傷がつくことやゴミの付着を防止するためである。この時、フォトクロミック眼鏡レンズは、通常は透明であるため、傷防止用保護フィルムが貼られているか否かを瞬時に判別することが難しい。そのため、通常は、着色された傷防止用保護フィルムが使用されている。上記の保護フィルムは、例えば、アクリル系接着層(粘着剤)を有する汎用な保護フィルムを用いることが一般的である。
国際公開第2012/176439号 国際公開第2013/099640号 国際公開第2015/068798号 特開2014-056140号
前記したように、傷防止用保護フィルムを貼り付けた場合、本発明者等らの検討によれば、以下のような外観不良を生じる場合があることが分かった。すなわち、従来のフォトクロミック眼鏡レンズにおいては、使用する傷防止用保護フィルムにもよるが、傷防止用保護フィルムの着色剤や粘着剤がレンズ表面に付着し、初期着色や発色色調を損なうこと、及び粘着剤に起因するしわ状の外観不良が生じることもあり、改良の余地があることが分かった。
例えば、特許文献3においては、優れたフォトクロミック硬化性組成物、および硬化体が得られる。しかしながら、本発明者等の検討によると、以下の点で改善の余地があることが分かった。
特許文献3に記載のフォトクロミック硬化性組成物は、粘度が高くなる傾向にあり、コーティング性向上のためにレベリング剤を配合することが望ましい。しかしながら、該レベリング剤は、傷防止用保護フィルムの粘着剤の付着、浸透を促進させるため、外観不良を生じさせ易いことが分かった。一方、レベリング剤を添加しない場合、傷防止用保護フィルム由来の外観不良を低減できるが、均一なコーティングが困難であり、オレンジピール状の外観不良が新たに生じやすくなり、改善の余地があった。
特許文献4には、ハロゲン系有機溶媒を含むフォトクロミック硬化性組成物の前駆体を準備し、その後、ハロゲン系溶媒を除去することにより、フォトクロミック化合物を高濃度で重合性単量体成分と混合したフォトクロミック硬化性組成物が記載されている。しかしながら、この方法では、最終的に使用するフォトクロミック硬化性組成物は、ハロゲン系有機溶媒を含んでおらず、前記のような外観不良を改善できない場合があり、改善の余地があった。
したがって、本発明の目的は、傷防止用保護フィルム由来の外観不良、コーティングに伴うオレンジピール状の外観不良の双方を防止しつつ、良好なフォトクロミック光学物品を提供できるフォトクロミック硬化性組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、ラジカル重合性単量体と、特定の有機溶剤とを用い、その割合を精密に制御することにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の本発明は、
(1)(A)沸点が80℃以上200℃以下であって、SP値が8.0~10.0の有機化合物(以下、単に(A)成分とする場合もある)、
(B)ラジカル重合性単量体成分(以下、単に(B)成分とする場合もある)、および(C)フォトクロミック化合物(以下、単に(C)成分とする場合もある)を
含むフォトクロミック硬化性組成物であって、
該(B)ラジカル重合性単量体成分100質量部に対して、該(A)有機化合物を0.10質量部以上10質量部以下含む、フォトクロミック硬化性組成物である。
また、第一の本発明は、以下の態様とすることができる。
(2)前記(A)前記有機化合物は、エーテル化合物、エステル化合物、芳香族化合物、ケトン化合物、および環状アルキル化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
(3) 前記(B)ラジカル重合性単量体成分が、(B’)複数種類のラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体組成物(以下、単に(B’)組成物とする場合もある)であって、
前記(B’)ラジカル重合性単量体組成物が、
(B1)重量平均分子量が100,000以上1,000,000以下である、ラジカル重合性基を有するポリロタキサン成分(以下、単に(B1)成分とする場合もある)、および
(B2)重量平均分子量が1,500以上20,000以下である、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン成分(以下、単に(B2)成分とする場合もある)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体成分を含む、(1)のフォトクロミック硬化性組成物である。(B)成分((B’)組成物)が、(B1)成分、および(B2)成分の少なくとも一方を含むことにより、得られる硬化体、積層体において、優れた機械的特性、およびフォトクロミック特性を発揮する。
第二の本発明は、以下の態様をとることができる。
(4)光学基材の表面に、ポリウレタン樹脂層、及びフォトクロミック化合物を含有する樹脂層がこの順で積層された積層構造を含んでなるフォトクロミック積層体であって、
前記フォトクロミック化合物を含有する樹脂層が、(1)から(3)のいずれかのフォトクロミック硬化性組成物の硬化体からなるフォトクロミック積層体。
(5)前記ポリウレタン樹脂層が、
ポリウレタン樹脂、又は空気中の水分で硬化しうる湿気硬化型ウレタン樹脂の少なくとも一方の樹脂成分、および沸点が70℃以上で且つSP値が8.0以上である溶媒を含むコーティング液を、前記光学基材の表面に塗布した後に、前記溶媒を除去することにより、形成された層である、(4)のフォトクロミック積層体。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、ポリウレタン樹脂層上に積層するために使用する際に、特に優れた効果を発揮する。
第三の本発明は、以下の態様をとることができる。
(6)ポリウレタン樹脂、および空気中の水分で硬化しうる湿気硬化型ウレタン樹脂の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分、並びに沸点が70℃以上で且つSP値が8.0以上である溶媒を含むコーティング液を、光学基材上に塗布した後、該溶媒を除去することにより、ポリウレタン樹脂層を形成する工程、並びに
前記ポリウレタン樹脂層上に、前記(1)~(3)のいずれかのフォトクロミック硬化性組成物を塗布した後、該フォトクロミック硬化性組成物を硬化することにより、硬化体を形成する工程
を含む、前記(5)のフォトクロミック積層体の製造方法。
本発明によれば、傷防止用保護フィルム由来の外観不良、コーティングに伴うオレンジピール状の不良の双方を防止し、良好なフォトクロミック性を発現する硬化体を得ることができる。
さらには、傷防止用保護フィルム由来の外観不良を高度に防止するために、レベリング剤(界面活性剤)の配合量を低減した場合であっても、優れた外観の硬化体を得ることができる。加えて、密着性向上のためにウレタン樹脂層を表面に有する光学基材上の、該ウレタン樹脂層上に積層するためのフォトクロミック硬化性組成物とした場合に、特に外観の良好な硬化体(フォトクロミック積層体)を得ることができる。
本発明で使用できるポリロタキサン成分の分子構造を示す概略図である。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、
(1)(A)沸点が80℃以上200℃以下であって、SP値が8.0~10.0の有機化合物((A)成分)、
(B)ラジカル重合性単量体成分((B)成分)、および(C)フォトクロミック化合物((C)成分)を
含むフォトクロミック硬化性組成物であって、
該(B)ラジカル重合性単量体成分100質量部に対して、該(A)有機化合物を0.1質量部以上10質量部以下含む、フォトクロミック硬化性組成物である。
以下、各成分について説明する。
<(A)成分;沸点が80℃以上200℃以下であって、SP値が8.0~10.0の有機化合物>
本発明で用いられる有機化合物((A)成分)は、沸点が80℃以上200℃以下であって、SP値が8.0~10.0でなければならない。ここでいうSP値は、溶解度パラメーターまたはヒルデブランドパラメーターなどと呼ばれることもある値である。
(A)成分のSP値が8.0未満である場合、(B)成分との相溶性が低下し、ポリウレタン樹脂層上へのコーティング性(ぬれ性)、コーティングのし易さ(コーティングの作業性)が悪化するため、好ましくない。一方、(A)成分のSP値が10.0を超える場合、(B)成分との相溶性が低下し、傷防止用の保護フィルムとの相溶性が良好になるものと考えられるが、しわ状の外観不良が発生しやすくなるため、好ましくない。(B)成分との相溶性を考慮して、上記点を改善する効果を考慮すると、(A)成分のSP値は、8.0~9.5であることが好ましく、8.0~9.0であることがより好ましい。
(A)成分の沸点は、80℃以上200℃以下でなければならない。(A)成分の沸点が80℃未満の場合には、フォトクロミック硬化性組成物を硬化した時に不良が発生しやすく、得られる硬化体(フォトクロミック積層体)の外観不良が発生し易くなるため、好ましくない。一方、(A)成分の沸点が200℃を超える場合には、得られる硬化体(フォトクロミック積層体)の密着性や耐久性を低下させるおそれがあり、好ましくない。なお、密着性とは、硬化体からなるフォトクロミック層と光学基材との密着性を指す。光学基材上(又はポリウレタン樹脂層上)の塗れ性、コーティングのし易さ(作業性)、得られる硬化体(フォトクロミック積層体)の外観、および特性を考慮すると、(A)成分の沸点は、85℃以上200℃以下であることが好ましく、95℃以上200℃以下であることがより好ましく、110℃以上170℃以下であることがさらに好ましい。
本発明においては、この(A)成分を含有することにより、特にフォトクロミック硬化体を製造する場合に、フォトクロミック化合物の相溶性が向上し、フォトクロミック硬化性組成物自体が均一に混合されたものとなり、ポリウレタン樹脂層上の塗れ性、コーティングのし易さが良好になる。そのため、得られるフォトクロミック層の平滑性を高め、外観を良好にすることができる。その結果、傷防止保護フィルムで保護した際に悪影響を与える可能性があるレベリング剤(界面活性剤)の配合量をフォトクロミック硬化性組成物から低減した場合でも、優れた外観のフォトクロミック積層体を得ることができると考えられる。つまり、レベリング剤(界面活性剤)の配合量が低減されたとしても、前記の通り、フォトクロミック層の平滑性を高めることができるため、外観の良好なフォトクロミック積層体を得ることができる。そのため、(A)成分を使用する場合には、レベリング剤(界面活性剤)を配合しなくとも、優れた特性を有するフォトクロミック硬化体(フォトクロミック積層体)を得ることができる。
(A)成分は、SP値と沸点とが前記範囲を満足すれば、特に制限されるものではないが、下記に記述する好適な(B)成分との相溶性を考慮すると、以下の有機化合物であることが好ましい。具体的には、
トルエン(沸点111℃、SP値8.8)、キシレン(沸点138℃、SP値8.7)、スチレン(沸点145℃、SP値8.5)等の芳香族化合物;
メチルプロピルケトン(沸点105℃、SP値8.7)、メチルイソプロピルケトン(沸点95℃、SP値8.5)、ジエチルケトン(沸点101℃、SP値8.8)、メチルイソブチルケトン(沸点116℃、SP値8.4)等のケトン化合物;
酢酸ブチル(沸点124℃、SP値8.5)、酢酸イソプロピル(沸点89℃、SP値8.4)、酢酸イソブチル(沸点116℃、SP値8.3)、酢酸エチル(沸点80℃、SP値9.1)等のエステル化合物;
ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃、SP値9.9)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃、SP値9.1)等のエーテル化合物;
シクロヘキサン(沸点81℃、SP値8.2)等の環状アルキル化合物;等が好適な有機化合物として挙げられる。これらは、市販のものを使用することができる。
これらの中でも、(B)成分との相溶性という点から、(A)成分は、エーテル化合物、エステル化合物、芳香族化合物、ケトン化合物、および環状アルキル化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、さらには、エステル化合物、および芳香族化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。その中でも、酢酸ブチル、トルエン、又はキシレンが好ましく、トルエン、又はキシレンがより好ましく、キシレンが特に好ましい。キシレンは、異性体を含む混合物であってもよい。
これらの(A)成分は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。2種以上を使用した場合の(A)成分の基準となる量は、これら(A)成分の合計量である。また、ここに挙げたスチレン、メタクリル酸メチルは、ラジカル重合性基を有するが、(A)成分として働くものであり、本発明においては、(A)成分と見なすものとする。
上記(A)成分の使用量は、(B)成分100質量部に対して、0.10質量部以上10質量部以下である。(A)成分の使用量が0.10質量部未満の場合には、(B)成分との相溶性を高めることができず、得られるフォトクロミック層の平滑性が低下し、外観不良が発生しやすくなるため、好ましくない。一方、10質量部を超える場合には、フォトクロミック硬化性組成物を硬化させる際に外観不良が発生しやすくなる。また、フォトクロミック積層体の密着性、耐久性も低下するおそれがあるため、好ましくない。(B)成分との相溶性、溶解性、また、フォトクロミック硬化性組成物のコーティング性、光学基材上に積層されたポリウレタン樹脂層への塗れ性、コーティング性の観点や、残留する有機化合物の影響等の観点から、(B)成分100質量部に対して、(A)成分は、0.5質量部以上9質量部以下であることがさらに好ましく、1.0質量部以上6質量部以下であることが特に好ましい。
前記(B)成分の量は、1種類の(B)成分を使用する場合には、その(B)成分の量を100質量部とする。ただし、以下に説明するが、(B)成分は、複数種類のラジカル重合性単量体を含む(B’)ラジカル重合性組成物((B’)組成物)として使用することが好ましい。(B)成分として(B’)組成物を使用する場合には、複数種類の(B)成分の合計量((B’)組成物の量)を100質量部とする。次に、この(B)成分について説明する。
<(B)成分;ラジカル重合性単量体((B)組成物;ラジカル重合性単量体組成物)>
本発明において、(B)成分は、特に制限されるものではなく、通常のコーティング液に使用されるラジカル重合性単量体を使用できる。具体的には、(メタ)アクリレート基を分子内に2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。中でも、
(B1)重量平均分子量が100,000以上1,000,000以下である、ラジカル重合性基を有するポリロタキサン成分、および
(B2)重量平均分子量が1,500以上20,000以下である、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン成分
の少なくとも1方の成分を使用することが好ましい。(B)成分((B’)組成物)が、(B1)成分、および(B2)成分の少なくとも一方を含むことにより、得られる硬化体、積層体において、優れた機械的特性、およびフォトクロミック特性を発揮する。
次に、これら成分について説明する。
<(B1)成分;ポリロタキサン成分>
本発明において、(B)成分として、(B1)成分を含むことが好ましい。(B1)成分は、重量平均分子量が100,000以上1,000,000以下である、ラジカル重合性基を有するポリロタキサン成分である。ラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート基(メタクリレート基、又はアクリレート基、場合によってはその両方の基)であることが好ましい。
(B1)成分は、公知の化合物であり、図1に示されるような構造を示す。図1は、(B1)成分1の概略図である。本発明で使用する(B1)成分において、軸分子2としては、種々のものが知られており、例えば、軸分子2としては、環状分子3が有する環を貫通し得る限りにおいて直鎖状或いは分岐鎖であってよく、一般にポリマーにより形成される。
本発明で使用する(B1)成分において、軸分子を形成するポリマーとして好適なものは、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールまたはポリビニルメチルエーテルであり、ポリエチレングリコールが最も好適である。
さらに、前記軸分子の両端に形成される基としては、軸分子からの環状分子の脱離を防ぐ基であれば、特に制限されないが、嵩高い基(図1における嵩高い末端基4)であることが好ましく、たとえば、アダマンチル基、トリチル基、フルオレセイニル基、ジニトロフェニル基、及びピレニル基体を挙げることができ、特に導入のし易さなどの点で、アダマンチル基が好適である。
前記軸分子の分子量は、特に制限されるものではないが、大きすぎると、他の成分、例えば、その他の重合性単量体等との相溶性が悪くなる傾向があり、小さすぎると環状分子の可動性が低下し、フォトクロミック性が低下する傾向がある。このような観点から、前記軸分子の重量平均分子量Mwは、1,000~100,000、特に5,000~80,000、特に好ましくは8,000~30,000の範囲にあることが好適である。なお、この重量平均分子量Mwは、後述する実施例で記載したGPC測定方法で測定した値である。
また、前記環状分子は、上記のような軸分子を包接し得る大きさの環を有するものであればよく、このような環状分子としては、シクロデキストリン環、クラウンエーテル環、ベンゾクラウン環、ジベンゾクラウン環及びジシクロヘキサノクラウン環を挙げることができ、特にシクロデキストリン環が好ましい。尚、シクロデキストリン環には、α体(環内径0.45~0.6nm)、β体(環内径0.6~0.8nm)、γ体(環内径0.8~0.95nm)があるが、本発明では、特にα-シクロデキストリン環及びγ-シクロデキストリン環が好ましく、α-シクロデキストリン環が最も好ましい。
上記のような環を有する環状分子は、1つの軸分子に複数個が包接しているが、一般に、軸分子1個当たりに包接し得る環状分子の最大包接数を1としたとき、環状分子の包接数は、0.001乃至0.6、より好ましくは、0.002乃至0.5、さらに好ましくは0.003乃至0.4の範囲にあることが好ましい。環状分子の包接数が多すぎると、一つの軸分子に対して環状分子が密に存在するため、その可動性が低下し、フォトクロミック性が低下する傾向がある。また包接数が少なすぎると、軸分子間の間隙が狭くなり、フォトクロミック化合物分子の可逆反応を許容し得る間隙が減少することとなり、やはりフォトクロミック性が低下する傾向がある。
本発明で使用する(B1)成分は、前記環状分子に、末端に水酸基を有する側鎖が導入されたポリロタキサン化合物を、該側鎖の水酸基を、ラジカル重合性基を有する化合物で変性したポリロタキサン化合物である。なお、この側鎖は、図1において”5”で示されている。
上記の末端に水酸を有する側鎖としては、特に制限されるものではないが、末端に水酸基を有し、かつ炭素数が3~20の範囲にある有機鎖の繰り返しにより形成されていることが好適である。このような側鎖の平均分子量は300~10,000、好ましくは350~8,000、より好ましくは350~5,000の範囲にあるのがよく、最も好ましくは、400~1,500の範囲にある。この側鎖の平均分子量は、側鎖の導入時に使用する量により調整ができ、計算により求めることができるが、H-NMRの測定からも求めることができる。
さらに、上記のような側鎖は、環状分子が有する官能基を利用し、この官能基を修飾することによって導入される。例えば、α-シクロデキストリン環は、官能基として18個の水酸基を有しており、この水酸基を介して側鎖が導入される。即ち、1つのα-シクロデキストリン環に対しては最大で18個の側鎖を導入することができることとなる。本発明においては、前述した側鎖の機能を十分に発揮させるためには、このような環が有する全官能基数の6%以上、特に30%以上が、側鎖で修飾されていることが好ましい。なお、環状分子が有する官能基は、他成分との相溶性に影響を与える場合があり、特に、該官能基が水酸基であると、他成分との相溶性に大きな影響を与える。そのため、該官能基が修飾された割合(修飾度)は、6%以上80%以下であることが好ましく、30%以上70%以下であることがより好ましい。
本発明において、上記のような側鎖は、末端に水酸基を有するものであれば、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよい。また、開環重合;ラジカル重合;カチオン重合;アニオン重合;原子移動ラジカル重合、RAFT重合、NMP重合などのリビングラジカル重合などを利用し、前記環状分子の官能基に、末端に水酸基を有するように側鎖を導入することによって、所望の側鎖とすることができる。
例えば、開環重合により、ラクトンや環状エーテル等の環状化合物に由来する側鎖を導入することができる。ラクトンや環状エーテル等の環状化合物を開環重合して導入した側鎖は、該側鎖の末端に水酸基が導入されることとなる。
前記環状化合物の中でも、入手が容易であり、反応性が高く、さらには大きさ(分子量)の調整が容易であるという観点から、環状エーテルやラクトン化合物を用いることが好ましく、好適に使用されるラクトン化合物であり、好ましいものはε-カプロラクトンである。
また、開環重合により環状化合物を反応させて側鎖を導入する場合、環に結合している官能基(例えば水酸基)は反応性に乏しく、特に立体障害などにより大きな分子を直接反応させることが困難な場合がある。このような場合には、例えば、カプロラクトンなどを反応させるために、プロピレンオキシドなどの低分子化合物を官能基と反応させてのヒドロキシプロピル化を行い、末端に反応性に富んだ官能基(例えば水酸基)を導入した後、前述した環状化合物を用いての開環重合により、側鎖を導入するという手段を採用することができる。この場合、ヒドロキシプロピル化した部分も側鎖と見なすことができる。
本発明で使用する(B1)成分においては、環状分子に、末端に水酸基を有する側鎖を導入するには、側鎖の導入のし易さ、側鎖の大きさ(分子量)の調整のし易さ、および、該水酸基を変性すること等を考慮すると、前記開環重合により末端に水酸基を有する側鎖を導入する方法を採用することが好ましい。
(末端(側鎖の末端)に重合性基を有する(B1)成分)
本発明で使用する(B1)成分においては、前記ポリロタキサンにおける側鎖の末端の水酸基と、ラジカル重合性基を有する化合物とを反応させて、該ポリロタキサン化合物の側鎖に末端に重合性基を導入したものである。本発明においては、この反応を「変性」としている。
前記ラジカル重合性基を有する化合物は、前記した末端に水酸基を有する側鎖を利用して導入されるものであり、側鎖の水酸基と反応する化合物が適宜使用できる。なお、このラジカル重合性基を有する化合物は、他成分との相溶性を考慮すると、分子内に水酸基を有さない化合物であることが好ましい。前記ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリレート基が好ましい。
前記ラジカル重合性基を有する化合物は、一分子中に、側鎖の水酸基と反応しうる官能基と該重合性基の両方の基を有する化合物である。該水酸基と反応しうる官能基としては、例えば、イソシアネート基、カルボキシル基、および酸塩化物基(例えば、-COCl基)等が挙げられる。イソシアネート基を有する化合物を反応させることで、ウレタン結合を介してラジカル重合性基が導入される。または、カルボキシル基、および酸塩化物基等を有する化合物を反応させることで、エステル結合を介してラジカル重合性基が導入される。
前記ラジカル重合性基を有する化合物と側鎖の水酸基との反応は、公知の該水酸基と反応しうる官能基と水酸基との反応条件を採用することができる。
本発明で使用する(B1)成分は、側鎖の末端の水酸基に対する該ラジカル重合性基の変性割合、すなわち、ラジカル重合性基を有する化合物が該側鎖の全水酸基のモル数に対する反応割合は、1モル%以上100モル%未満であることが好ましく、得られる硬化体の歩留り、機械的強度、フォトクロミック特性等を考慮すると、前記ラジカル重合性基を有する化合物による変性割合は、10モル%以上95モル%以下とすることがより好ましく、30モル%以上95モル%以下とすることが更に好ましく、ポリロタキサン化合物自体の生産性も考慮すると、70モル%以上95モル%以下とすることが特に好ましい。
変性割合は、(重合性基が導入されたモル数)/(側鎖の全水酸基のモル数)×100で算出できる。なお、下記に詳述するが、(B2)成分は、ラジカル重合性基を有さない化合物で変性することもできる。そのため、側鎖の残りの水酸基は、下記に詳述する、ラジカル重合性基を有さない化合物で変性することもできる。ただし、この場合、変性割合が高いため、水酸基が残存していてもよい。
本発明で使用する(B2)成分は、前記環状分子に導入した側鎖の末端に有する水酸基を、前記ラジカル重合性基を有する化合物で変性していることが必須である。そして、前記側鎖の残りの水酸基(すなわち、前記環状分子に導入した側鎖の末端に有する水酸基のうち、ラジカル重合性基を有する化合物で変性されていない水酸基)は、水酸基のままでもよいし、ラジカル重合性基を有さない化合物で変性してもよい。
前記ラジカル重合性基を有さない化合物は、一分子中に、側鎖の水酸基と反応しうる官能基を有するものであり、該分子中にはラジカル重合性基を含まないものである。そのため、前記ラジカル重合性基を有さない化合物は、前記ラジカル重合性基の代わりに、炭素数2~20のアルキル基、炭素数2~30のアルキレンオキシ基、炭素数6~20のアリール基を有することが好ましい。ちなみに、側鎖の水酸基と反応しうる官能基は、「前記ラジカル重合性基を有する化合物」で説明したものと同じ官能基が挙げられる。
前記ラジカル重合性基を有さない化合物としては、イソシアネート基を有する化合物として、原料の入手のしやすさと水酸基との反応性が高いという観点から、炭素数2~20(イソシアネート基の炭素原子は除く)のイソシアネート化合物が好ましい。前記ラジカル重合性基を有さない化合物としては、カルボン酸塩化物として、原料の入手のしやすさと水酸基との反応性が高いという観点から、炭素数2~20(カルボニル基の炭素原子を除く)のカルボン酸塩化物が好ましい。
ラジカル重合性基を有さない化合物の変性割合は、(ラジカル重合性基有さない化合物が導入されたモル数)/(側鎖の全水酸基のモル数)×100で算出できる。この変性割合は、特に制限されるものではない。中でも、得られる硬化体の歩留り、機械的強度、フォトクロミック特性等を考慮すると、前記ラジカル重合性基を有さない化合物による変性割合は、0~99モル%とすることが好ましく、0~90モル%とすることがより好ましく、0~70モル%とすることが更に好ましく、0~30モル%とすることが特に好ましい。
(好適な(B1)成分の構造・分子量)
本発明において、好適に使用される(B1)成分は、上記の各成分の中でも、両端にアダマンチル基で結合しているポリエチレングリコールを軸分子とし、α-シクロデキストリン環を有する環状分子とし、さらに、ポリカプロラクトンにより該環状分子に末端が水酸基を有する側鎖が導入されているものが好ましい。
また、(B1)成分の重量平均分子量Mwは、100,000~1,000,000の範囲にあることが好ましい。該(B1)成分の重量平均分子量Mwがこの範囲にあることにより、他成分との相溶性が向上し、硬化体の透明性をより向上できる。他成分との相溶性、硬化体の透明性等を考慮すると、該(B1)成分の重量平均分子量Mwは、100,000~800,000の範囲にあることがより好ましく、100,000~500,000の範囲にあることがさらに好ましい。なお、この重量平均分子量Mwは、下記の実施例で記載したGPC測定方法で測定した値である。
特に好適な(B1)成分は、以下の通りである。軸分子の分子量は8,000~30,000であり、α-シクロデキストリン環の導入割合が0.003~0.4の範囲であり、α-シクロデキストリン環が修飾された割合(修飾度)は、30%以上70%以下であることが好ましい。そして、α-シクロデキストリン環には、平均値で分子量が400~1,500の範囲にある側鎖を有し、この側鎖における(メタ)アクリレート基での変性割合が70モル%以上95モル%以下とすることが好ましい。そして、これらの数値から、(B1)成分の1分子当たりの(メタ)アクリレート基の数は、10~1,000個である(B1)成分を使用することが好ましい。
<(B1)成分の配合量>
本発明において、(B1)成分は必須の成分ではないが、(B1)成分を使用することにより、機械的物性、およびフォトクロミック特性等を向上できる。そのため、よりこれら効果を高めるためには、(B)成分の合計量、つまり、(B’)組成物の量を100質量部としたとき、(B1)成分を0~30質量部とすることが好ましく、0.1~20質量部とすることがより好ましく、0.5~10質量部とすることがさらに好ましい。
次に、もう1つの好適な配合成分である(B2)成分について説明する。
<(B2)成分;シルセスキオキサン成分>
本発明において、(B)成分として、(B2)成分を含むことが好ましい。(B2)成分は、重量平均分子量が1,500以上20,000以下である、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン成分である。ラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート基(メタクリレート基、又はアクリレート基、場合によってはその両方の基)であることが好ましい。
(B2)成分は、分子内にケイ素を有する多官能重合性単量体であって、特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができる。中でも、特に好適なものは、複数の(メタ)アクリレート基を有するシルセスキオキサンである。シルセスキオキサンは、ケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の分子構造を取るものであり、本発明においては、1種類の構造のシルセスキオキサンを使用することもできるし、複数の構造のシルセスキオキサンの混合物として使用することもできる。
前記した(B2)成分としては、下記式(6)で示されるものが挙げられる。
Figure 2022110997000001
(式中、kは、重合度であり、3~100の整数であり、複数個あるR15は、互いに同一もしくは異なっていてもよく、少なくとも2個以上の(メタ)アクリレート基を含む有機基である。ただし、R15は、鎖状の有機シロキサン基を含む基は含まない。)
ここで、R15における、(メタ)アクリレート基を含む有機基は、(メタ)アクリレート基のみのものを含む(珪素原子に直接、(メタ)アクリレート基が結合するものを含む。)。本発明において(メタ)アクリレート基は、具体的には、(メタ)アクリレート基、のみならず、(メタ)アクリロキシプロピル基、(3-(メタ)アクリロキシプロピル)ジメチルシロキシ基も含み得る。中でも(メタ)アクリロキシプロピル基が、前記(B2)成分製造時の原料の入手が容易であり、優れたフォトクロミック特性を発現しつつ、高い膜強度を得ることができるため特に好ましい。
前記(B2)成分の重量平均分子量Mwは、1,500~20,000であることが好ましく、(メタ)アクリル当量は150~800であることが好ましい。なお、(B)成分の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した値である。
また、前記(B2)成分は、平均して、一分子中に(メタ)アクリレート基が10個以上含まれることが好ましく、中でも、一分子中に(メタ)アクリレート基が10~100個含まれることが好ましく、15~35個含まれることがさらに好ましい。
一般にシルセスキオキサンは、ケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の構造を取ることができるが、本発明で使用する(B2)成分は、1種類の構造の化合物を使用することもできるし、複数の構造の化合物の混合物として使用することもできる。混合物の場合、混合物の合計質量を(B2)成分の配合量と見なす。その中でも、(B2)成分は、複数の構造の化合物からなる混合物であることが好ましい。
前記(B2)成分の合成方法としては、例えば、引用文献(Appl.Organometal.Chem.2001年、p.683-692参照)や特許文献(特開2004-143449号公報、特開1999-29640号公報)に記載の方法に従って製造することもできる。
<(B2)成分の配合量>
本発明において、(B2)成分は必須の成分ではないが、(B2)成分を使用することにより、機械的物性、およびフォトクロミック特性等を向上できる。そのため、よりこれら効果を高めるためには、(B)成分の合計量、つまり、(B’)組成物の量を100質量部としたとき、(B2)成分を0~10質量部とすることが好ましく、0.1~8質量部とすることがより好ましく、0.1~6質量部とすることがさらに好ましい。
前記(B1)成分、および前記(B2)成分は、必須の成分ではないが、少なくとも一方を含むフォトクロミック硬化性組成物は、優れたフォトクロミック特性、および物性を有し、特に下記に詳述するしわ不良を抑制する効果を有する。そして、(A)成分を含むことの効果がより発揮される。(A)成分の効果がより発揮され、優れたフォトクロミック特性、および物性を有し、しわ不良を抑制したフォトクロミック光学物品を製造するためには、(B1)成分、および(B2)成分の両方を含むことが好ましい。
本発明においては、(B)成分として、前記(B1)成分、および前記(B2)成分以外の(B3)その他のラジカル重合性単量体成分を含むことが好ましい。
以下に、(B3)その他のラジカル重合性単量体成分(以下、単に(B3)成分とする場合もある。)について説明する。
<(B3)成分;その他のラジカル重合性単量体成分>
本発明においては、(B)成分は、複数種類のラジカル重合性単量体を含む(B’)組成物とすることが好ましい。そして、(B’)組成物は、前記(B1)成分、および前記(B2)成分の他に、(B3)成分を含むことが好ましい。(B3)成分が有するラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート基であることが好ましい。中でも、(B3)成分は、以下の2成分を含むことが好ましい。
(B31)(メタ)アクリレート基を分子内に2つ有する2官能(メタ)アクリレート(以下、単に(B31)成分ともいう。)、
(B32)(メタ)アクリレート基を分子内に3つ以上有する多官能(メタ)アクリレート(以下、単に(B32)成分ともいう。)
を含むことが好ましい。
また、(B33)(メタ)アクリレート基を1つ有する単官能(メタ)アクリレート(以下、単に(B33)成分ともいう。)を含むこともできる。
以下、これら成分について説明する。
<(B31)成分; 2官能(メタ)アクリレート>
本発明で使用する(B’)組成物は、(B31)成分を含むことが好ましい。以下に、その具体例を示す。具体的には、下記式(1)で示される成分(以下、単に(B31a)成分ともいう。)、下記式(2)で示される成分(以下、単に(B31b)成分ともいう。)、および下記式(3)で示される成分(以下、単に(B31c)成分ともいう。)が好適である。その他、ウレタン結合を有する2官能(メタ)アクリレート成分(以下、単に(B31d)成分ともいう。)、前記(B31a)成分、前記(B31b)成分、前記(B31c)成分、および前記(B31d)成分に該当しない2官能(メタ)アクリレート成分(以下、(B31e)成分ともいう。)も挙げられる。
これら(B31)成分について説明する。
<(B31a)成分;下記式(1)で示される成分>
Figure 2022110997000002
(式中、R1及びR2は、それぞれ、水素原子、又はメチル基であり、a及びbはそれぞれ独立に0以上の整数であり、かつ、a+bは2以上の整数である。)。
上記式(1)で示される化合物を具体的に例示すると、以下のとおりである。
ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエチレングリコールジメタクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールの混合物よりなるジメタアクリレート(ポリエチレンが2個、ポリプロピレンが2個の繰り返し単位を有する)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(特にb=4、c=0、平均分子量330)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(特にb=9、c=0、平均分子量536)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(特にb=14、c=0、平均分子量736)、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(特にb=0、c=7、平均分子量536)、ポリエチレングリコールジアクリレート(特に平均分子量258)、ポリエチレングリコールジアクリレート(特にb=4、c=0、平均分子量308)、ポリエチレングリコールジアクリレート(特にb=9、c=0、平均分子量508)、ポリエチレングリコールジアクリレート(特にb=14、c=0、平均分子量708)、ポリエチレングリコールメタクリレートアクリレート(特にb=9、c=0、平均分子量522)。
<(B31b)成分; 下記式(2)で示される成分
Figure 2022110997000003
(式中、
およびRは、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
およびRは、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子またはハロゲン原子であり、
Aは、-O-,-S-,-(SO)-,-CO-,-CH-,-CH=CH-,
-C(CH)2-,-C(CH)(C)-の何れかであり、
cおよびdはそれぞれ1以上の整数であり、c+dは平均値で2以上30以下である。)。なお、上記式(2)で示される2官能(メタ)アクリレートは、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、dおよびeは平均値で示した。
上記式(2)で示される2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、以下のビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=2、平均分子量452)、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=4、平均分子量540)、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=7、平均分子量672)、2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=2、平均分子量768)、2,2-ビス(4-(メタクリロイルオキシジプロポキシ)フェニル)プロパン(d+e=4、平均分子量596)、2,2-ビス[4-(アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=4、平均分子量512)、2,2-ビス[4-(アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=3、平均分子量466)、2,2-ビス[4-(アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=7、平均分子量642)、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=10、平均分子量804)、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=17、平均分子量1116)、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=30、平均分子量1684)、2,2-ビス[4-(アクリロイルキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=10、平均分子量776)、2,2-ビス[4-(アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=20、平均分子量1216)。
(B31c)成分; 下記式(3)で示される成分
Figure 2022110997000004
(式中、
およびRは、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、
eは平均値で1~20の数であり、
B及びB’は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2~15の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、Bが複数存在する場合には、複数のBは同一の基であっても、異なる基であってもよい。)。
上記式(3)で示される2官能(メタ)アクリレートは、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより製造することができる。
ここで、使用されるポリカーボネートジオールとしては、以下のものを例示することができる。具体的には、トリメチレングリコールのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)、テトラメチレングリコールのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)、ペンタメチレングリコールのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)、ヘキサメチレングリコールのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)、オクタメチレングリコールのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)、ノナメチレングリコールとのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)、トリエチレングリコールとテトラメチレングリコールとのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)、テトラメチレングリコールとヘキサメチレンジグリコールとのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)、ペンタメチレングリコールとヘキサメチレングリコールとのホスゲン化で得られるポリカーボネージオール(平均分子量500~2000)、テトラメチレングリコールとオクタメチレングリコールとのホスゲン化で得られるポリカーボネージオール(平均分子量500~2000)、ヘキサメチレングリコールとオクタメチレングリコールとのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)、1-メチルトリメチレングリコールとのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(平均分子量500~2000)が挙げられる。
(B31d)成分; ウレタン結合を有する2官能(メタ)アクリレート
(B31d)成分は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物が代表的である。ここで、ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンイソシアネート、2,2,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソプロピリデンビス-4-シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートまたはメチルシクロヘキサンジイソシアネートを挙げることができる。
一方、ポリオールとしては、炭素数2~4のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ヘキサメチレンオキシドの繰り返し単位を有するポリアルキレングルコール、或いはポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオールを挙げることができる。また、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール、又はペンタエリスリトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン等も例示することができる。
また、これらポリイソシアネート及びポリオールの反応によりウレタンプレポリマーとしたものを、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレートで更に反応させた反応混合物や、前記ジイソシアネートを2-ヒドロキシ(メタ)アクリレートと直接反応させた反応混合物であるウレタン(メタ)アクリレート等も使用することができる。
2官能のものとしては、市販品として、新中村化学工業(株)製のU-2PPA(分子量482)、UA-122P(分子量1,100)、U-122P(分子量1,100)、及びダイセルユーシービー社製のEB4858(分子量454)、日本曹達(株)製のTEAI-1000、TE―2000、アルケマ社製のCN9014を挙げることができる。
(B31e)成分; 上記成分に該当しない2官能(メタ)アクリレート
(B31e)成分としては、置換基を有していてもよいアルキレン基の両末端に(メタ)アクリレート基を有するような化合物が挙げられる。その中でも、炭素数6~20のアルキレン基を有するものが好ましい。具体的には、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
また、前記(B31e)成分としては、下記式(4)で示されるブタジエンジ(メタ)アクリレートも挙げることができる。
Figure 2022110997000005
(式中、
10及びR11は、それぞれ、水素原子、又はメチル基であり、
f、g及びhはそれぞれ独立に0以上の整数であり、かつ、f+g+hは1以上の整数である。)。
上記式(4)で示される2官能(メタ)アクリレートは、特に制限されず、例えば、市販品として、大阪有機化学工業(株)製のBAC-45、アルケマ社製のCN307等のブタジエンジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、前記(B31e)成分としては、硫黄原子を含むような2官能(メタ)アクリレートも挙げることができる。硫黄原子はスルフィド基として分子鎖の一部を成しているものが好ましい。具体的には、ビス(2-メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、ビス(メタクリロイルオキシエチル)スルフィド、ビス(アクリロイルオキシエチル)スルフィド、1,2-ビス(メタクリロイルオキシエチルチオ)エタン、1,2-ビス(アクリロイルオキシエチル)エタン、ビス(2-メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、ビス(2-アクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、1,2-ビス(メタクリロイルオキシエチルチオエチルチオ)エタン、1,2-ビス(アクリロイルオキシエチルチオエチルチオ)エタン、1,2-ビス(メタクリロイルオキシイソプロピルチオイソプロピル)スルフィド、1,2-ビス(アクリロイルオキシイソプロピルチオイソプロピル)スルフィドが挙げられる。
以上の(B31a)成分、(B31b)成分、(B31c)成分、(B31d)成分、および(B31e)成分においては、各成分における単独成分を使用することもできるし、前記で説明した複数種類のものを使用することもできる。複数種類のものを使用する場合には、(B31)成分の基準となる質量は、複数種類のものの合計量である。特に制限されるものではないが、(B31)成分の全量を100質量部としたとき、(B31a)成分は30~100質量部、(B31b)成分は0~70質量部、(B31c)成分は0~70質量部、(B31d)成分は0~70質量部、および(B31e)成分は0~70質量部であることが好ましく、(B31a)成分は40~95質量部、(B31b)成分は0~50質量部、(B31c)成分は5~60質量部、(B31d)成分は0~50質量部、および(B31e)成分は0~50質量部であることがより好ましい。
次に、(B32)多官能(メタ)アクリレートについて説明する。
<(B32)成分;多官能(メタ)アクリレート>
(B32)成分としては、下記式(5)で示される成分(以下、単に(B32a)成分ともいう。)、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート(以下、単に(B32b)成分ともいう。)、および、前記(B32a)成分、および前記(B32b)成分に該当しない多官能(メタ)アクリレート(以下、単に(B32c)成分ともいう。)が挙げられる。
<(B32a)成分;下記式(5)で示される化合物>
Figure 2022110997000006
(式中、
12は、水素原子またはメチル基であり、
13は、水素原子または炭素数1~2のアルキル基であり、
14は、炭素数1~10である3~6価の有機基であり、
iは、平均値で0~3の数であり、jは3~6の数である。)。
前記R13で示される炭素数1~2のアルキル基としてはメチル基が好ましい。R14で示される有機基としては、ポリオールから誘導される基、3~6価の炭化水素基、3~6価のウレタン結合を含む有機基が挙げられる。
上記式(5)で示される化合物を具体的に示すと以下の通りである。
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
<(B32b)成分;ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート>
(B32b)成分は、(B31d)成分で説明したポリイソシアネート化合物とポリオール化合物を反応させて得られるものであり、分子中に3つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。市販品として、新中村化学工業(株)製のU-4HA(分子量596、官能基数4)、U-6HA(分子量1,019、官能基数6)、U-6LPA(分子量818、官能基数6)、U-15HA(分子量2,300、官能基数15)を挙げることができる。
<(B32c)成分;上記成分に該当しない多官能(メタ)アクリレート>
(B32c)成分としては、ポリエステル化合物の末端を(メタ)アクリレート基で修飾した化合物が挙げられる。原料となるポリエステル化合物の分子量や(メタ)アクリレート基の修飾量により種々のポリエステル(メタ)アクリレート化合物が市販されているものを使用することができる。具体的には、4官能ポリエステルオリゴマー(分子量2,500~3,500、ダイセルユーシービー社、EB80等)、6官能ポリエステルオリゴマー(分子量6,000~8,000、ダイセルユーシービー社、EB450等)、6官能ポリエステルオリゴマー(分子量45,000~55,000、ダイセルユーシービー社、EB1830等)、4官能ポリエステルオリゴマー(特に分子量10,000の第一工業製薬社、GX8488B等)等を挙げることができる。また、市販品として、アルケマ社製のCN2300、CN2301、CN2302、CN2303、CN2304、SB401、SB402、SB404、SB500E50、SB500K60、SB510E35、SB520E35、SB520M35、CN550、CN551、新中村化学工業(株)製のA-DPH-6E、A-DPH-12E、A-DPH-6EL、A-DPH-12EL、A-DPH-6P等も挙げることができる。
以上に例示した(B32)成分((B32a)成分、(B32b)成分、および(B32c)成分)を使用することにより、重合により架橋密度が向上し、得られる硬化体の表面硬度を高めることができる。したがって、特に、コーティング法で得られるフォトクロミック硬化体(積層体)とする場合においては、(B32)成分を含むことが好ましい。
以上の(B32a)成分、(B32b)成分、および(B32c)成分は、各成分における単独成分を使用することもできるし、前記で説明した複数種類のものを使用することもできる。複数種類のものを使用する場合には、(B32)成分の基準となる質量は、複数種類のものの合計量である。特に制限されるものではないが、(B32)成分の全量を100質量部としたとき、(B32a)成分は50~100質量部、(B32b)成分を0~50質量部、および(B32c)成分を0~50質量部とすることが好ましい。
次に(B33)成分について説明する。
<(B33)成分;単官能(メタ)アクリレート>
(B33)成分としては、下記式(7)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2022110997000007
(式中、
16は、水素原子またはメチル基であり、
17は、水素原子、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、またはグリシジル基であり、
lは、0~10の整数であり、mは、0~20の整数である。)。
上記式(7)で示される化合物を具体的に示すと以下の通りである。
メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(特に平均分子量293)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(特に平均分子量468)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(特に平均分子量218)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、(特に平均分子量454)、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタアクリレート。
<(B’)組成物の好適な配合割合、および特徴>
前記(B)成分(前記(B’)組成物)は、前記(B1)成分、前記(B2)成分、および前記(B3)成分を含むことが好ましい。ただし、前記(B1)成分、および前記(B2)成分は、必須の成分ではないため、前記(B3)成分からのみ構成されてもよい。
前記(B3)成分のみからなる場合、各成分の配合割合は、得られるフォトクロミック硬化体の硬度、機械的特性、並びに、発色濃度、および退色速度といったフォトクロミック特性を考慮すると、以下の配合割合を満足することが好ましい。つまり、前記(B3)成分の全量((B31)成分、(B32)成分、および(B33)成分の合計量、又は(B’)組成物の量)を100質量部としたとき、
前記(B31)成分30~80質量部、前記(B32)成分10~60質量部、前記(B33)成分0.1~20質量部とすることが好ましい。さらには、前記前記(B31)成分40~75質量部、前記(B32)成分15~55質量部、前記(B33)成分0.5~10質量部とすることが好ましい。当然、各成分の合計量は100質量部である。
ただし、本発明においては、前記(B1)成分、および前記(B2)成分の少なくとも一方を含むことが好ましい。
前記(B1)成分を含む場合、得られるフォトクロミック硬化体の硬度、機械的特性を高い値で維持し、発色濃度、および退色速度といったフォトクロミック特性を特に高度なものにするためには、以下の配合割合を満足することが好ましい。つまり、前記(B’)組成物の量を100質量部としたとき、前記(B1)成分0.1~20質量部、前記(B31)成分30~80質量部、前記(B32)成分10~60質量部、および前記(B33)成分0.1~10質量部とすることが好ましい。さらには、前記(B1)成分0.5~10質量部、前記(B31)成分40~75質量部、前記(B32)成分15~55質量部、および前記(B33)成分0.5~10質量部とすることが好ましい。当然、各成分の合計量は100質量部である。
前記(B2)成分を含む場合、得られるフォトクロミック硬化体の硬度、機械的特性を特に高度なものとし、発色濃度、および退色速度といったフォトクロミック特性を高度に維持するためには、以下の配合割合を満足することが好ましい。つまり、前記(B’)組成物の量を100質量部としたとき、前記(B2)成分0.1~8質量部、前記(B31)成分30~80質量部、前記(B32)成分10~60質量部、および前記(B33)成分0.1~20質量部とすることが好ましい。さらには、前記(B2)成分0.1~6質量部、前記(B31)成分40~75質量部、前記(B32)成分15~55質量部、および前記(B33)成分0.5~10質量部とすることが好ましい。当然、各成分の合計量は100質量部である。
前記(B1)成分、および前記(B2)成分の両方を含む場合、得られるフォトクロミック硬化体の硬度、機械的特性をより高度なものとし、発色濃度、および退色速度といったフォトクロミック特性もより高度なものとする場合には、以下の配合割合を満足することが好ましい。つまり、前記(B’)組成物の量を100質量部としたとき、前記(B1)成分0.1~20質量部、前記(B2)成分0.1~8質量部、前記(B31)成分30~80質量部、前記(B32)成分10~60質量部、および前記(B33)成分0.1~20質量部とすることが好ましい。さらには、前記(B1)成分0.5~10質量部、前記(B2)成分0.1~6質量部、前記(B31)成分40~75質量部、前記(B32)成分15~55質量部、および前記(B33)成分0.5~10質量部とすることが好ましい。当然、各成分の合計量は100質量部である。得られるフォトクロミック積層体が、特に優れた効果を発揮するのは、このように(B1)成分、および(B2)成分の両方を含む場合である。
また、(B’)組成物のSP値は、特に制限されるものでない。中でも、他の成分との相溶性、溶解性、及びフォトクロミック硬化性組成物のコーティング性、光学基材上に積層されたポリウレタン樹脂層への塗れ性を考慮すると、(B’)組成物のSP値は、7.0~12.0であることが好ましい。本発明において、(B’)組成物のSP値は、下記に詳述した濁度滴定法による滴定により求めることができる。なお、該SP値は、日本化学会編集の化学便覧応用編(1973年刊)、及びPolymer Handbook(第4版、Johannnes Brandrup及びE.H.Immergut編、1998年刊)における溶解度パラメーターδの記載に準じて計算することができる。
推定ではあるが、(B’)組成物のSP値と(A)成分とのSP値とが近いため、優れた効果を発揮するものと考えられる。より優れた効果を発揮するためには、(B’)組成物のSP値は、7.5~12.0であることがより好ましく、7.5~11.5であることが更に好ましく、8.0~11.0であることが特に好ましい。
<(C)成分; フォトクロミック化合物>
本発明で用いられる(C)フォトクロミック化合物((C)成分)としては、何ら制限なく、公知のものを使用することができ、これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
このようなフォトクロミック化合物として代表的なものとしては、フルギド化合物、クロメン化合物及びスピロオキサジン化合物であり、例えば、特開平2-28154号公報、特開昭62-288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレット等、多くの文献に開示されている。
本発明においては、公知のフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色性、耐久性、退色速度などのフォトクロミック性の観点から、インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を用いることがより好ましく、特に分子量が540以上のクロメン化合物が、発色濃度及び退色速度に特に優れるため好適に使用される。
以下に示すクロメン化合物は、本発明において特に好適に使用されるクロメン化合物の例であるが、これに限定されるものではない。
Figure 2022110997000008
上記に加え、分子内にオリゴマー鎖基を有するようなフォトクロミック化合物も好適に用いることができる。このようなオリゴマー鎖基を有するフォトクロミック化合物としては、WO2000/015630号パンフレット、WO2004/041961号パンフレット、WO2009/146509号パンフレット、WO2012/149599号パンフレット、WO2012/162725号パンフレット、WO2013/078086号パンフレット、WO2019/013249号パンフレット、WO2019/203205号パンフレット等、多くの文献に開示されている。これら分子内にオリゴマー鎖基を有するようなフォトクロミック化合物の中では、より優れたフォトクロミック性、耐久性を示すため、WO2019/013249号パンフレット、WO2019/203205号パンフレットに記載のオリゴマー鎖基を有するようなフォトクロミック化合物を用いることが好ましい。以下に示すオリゴマー鎖基を有するようなフォトクロミック化合物は、本発明において特に好適に使用される化合物の例であるが、これに限定されるものではない。
Figure 2022110997000009
前記(C)成分の配合量は、得られるフォトクロミック硬化体の発色濃度、及び退色速度といったフォトクロミック特性を考慮すると、以下の配合量であることが好ましい。すなわち、(B)成分の全量((B’)組成物の量)を100質量部としたとき、(C)成分の配合量は、0.001質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下とすることが更に好ましい。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分(前記(B’)組成物)、および前記(C)成分を必須成分として含むものである。ただし、その他の公知の添加剤、配合剤、重合開始剤等のその他添加成分を含むことができる。次に、これらその他添加成分について説明する。
<その他添加成分>
本発明で用いられるフォトクロミック硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の各種配合剤、例えば、重合開始剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤、添加剤、溶剤、レベリング剤等を必要に応じて配合することができる。
前記その他添加成分の使用量は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限されるものではないが、通常、(B)成分の全量((B’)組成物の量)100質量部に対して、0.001~10質量部、特に0.01~7.5質量部、更に0.05~6質量部の範囲である。ただし、前記の通り、レベリング剤(界面活性剤)は含まなくとも、優れた効果を発揮する。
(重合開始剤)
重合開始剤には、熱重合開始剤と光重合開始剤とがあり、その具体例は以下のとおりである。
熱重合開始剤としては、
ジアシルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、
パーオキシエステル;t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、
パーカーボネート;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、
アゾ化合物;アゾビスイソブチロニトリル
等が挙げられる。
光重合開始剤としては、
アセトフェノン系化合物;1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、
α-ジカルボニル系化合物;1,2-ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリコキシレート、
アシルフォスフィンオキシド系化合物;2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6-ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
が挙げられる。
なお、光重合開始剤を用いる場合には、3級アミン等の公知の重合硬化促進助剤を併用することもできる。
(紫外線安定剤)
紫外線安定剤は、フォトクロミック化合物の耐久性を向上させることができるために好適に使用される。このような紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが知られている。特に好適な紫外線安定剤は、以下の通りである。
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、旭電化工業株式会社製アデカスタブLA-52、LA-57、LA-62、LA-63、LA-67、LA-77、LA-82、LA-87、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX 1010、1035、1075、1098、1135、1141、1222、1330、1425、1520、259、3114、3790、5057、565、254、245。
前記紫外線安定剤の使用量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、フォトクロミック硬化性組成物100質量部に対して、0.001~10質量部、特に0.01~3質量部の範囲である。特にヒンダードアミン光安定剤を用いる場合、フォトクロミック化合物の種類によって耐久性の向上効果に差がある結果、調整された発色色調の色ズレが生じないようにするため、フォトクロミック化合物1モル当り、0.5~30モル、より好ましくは1~20モル、さらに好ましくは2~15モルの量とするのがよい。
また、本発明のフォトクロミック硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、非反応性シリコーンオイルを配合してもよい。前記非反応性シリコーンオイルは、本発明のフォトクロミック硬化体の表面に傷防止用保護フィルムを貼り付ける場合、該傷防止用保護フィルムの粘着剤が前記フォトクロミック硬化体表面に付着することを防止する効果を付与することができる。前記非反応性シリコーンオイルは、特に制限されず、市販品の信越化学工業株式会社製のKF-351A、KF-352A、FL-5、X-22-821、X-22-822、KF-412、KF-414等を用いることができる。
<フォトクロミック硬化性組成物の製造方法/特性>
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、および必要に応じて配合されるその他添加成分を混合して製造できる。各成分を混合する手順は、特に制限されるものではない。中でも、前記(B)成分、前記(C)成分を混合しておき、十分に前記(C)成分が(B)成分中に分散している状態で、さらに前記(A)成分を混合することもできる。この時、その他添加成分は、どの時点で配合してもよい。
また、前記フォトクロミック硬化性組成物のSP値は、特には限定されない。中でも、各成分が均一に分散できること、フォトクロミック硬化性組成物のコーティング性、光学基材上に積層されたポリウレタン樹脂層への塗れ性を考慮すると、7.0~12.0であることが好ましく、7.5~12.0であることがより好ましく、7.5~11.5であることが更に好ましく、8.0~11.0であることが特に好ましい。本発明において、このSP値は、下記に詳述する濁度滴定法による滴定により求めた値である。
<フォトクロミック硬化体および積層体>
本発明において、フォトクロミック硬化体は、前記方法で製造したフォトクロミック硬化性組成物を硬化させることにより製造できる。この硬化体を光学基材上で製造すれば、フォトクロミック硬化性組成物の硬化体からなるフォトクロミック層を有する積層体を製造できる。
フォトクロミック積層体を作製するための硬化は、紫外線、α線、β線、γ線、LED等の活性エネルギー線の照射、熱、あるいは両者の併用等により、ラジカル重合反応により行われる。即ち、用いる重合性単量体や重合硬化促進剤の種類及び形成されるフォトクロミック積層体の形態に応じて、適宜の効果手段を採用すればよい。本発明において、フォトクロミック積層体を後述するコーティング法によって形成する場合には、均一な膜厚が得られる理由から、光重合を採用することが好ましい。
本発明において、フォトクロミック硬化性組成物を光重合させる際には、硬化条件のうち、特にUV強度は得られるフォトクロミック積層体の性状に影響を与える。この照度条件は、光重合開始剤の種類と量や重合性単量体の種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、一般的に365nmの波長で10~500mW/cmのUV光を0.1~5分の時間で光照射するように条件を選ぶのが好ましい。
積層法(コーティング法)によりフォトクロミック積層体を得る場合には、フォトクロミック硬化性組成物を塗布液として使用し、スピンコートやディッピング等により、レンズ基材等の光学基材の表面に該塗布液を塗布し、次いで、窒素などの不活性ガス中でのUV照射や加熱等により重合硬化を行うことにより、光学基材の表面にフォトクロミック硬化体からなるフォトクロミック層が積層される。
光学基材としては、公知の材料からなる基材が挙げられ、メガネレンズ、家屋・次号者の窓ガラス等に使用されているものが挙げられる。具体的な材質としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、チオエポキシ系樹脂等のプラスチック材料、およびガラスが挙げられる。
上記のような積層法(コーティング法)によりフォトクロミック積層体を光学基材の表面に形成する場合には、予め光学基材の表面に、アルカリ溶液、酸溶液などによる化学的処理、コロナ放電、プラズマ放電、研磨などによる物理的処理を行っておくことにより、フォトクロミック積層体と光学基材との密着性を高めることもできる。勿論、光学基材の表面に透明な接着樹脂層を設けておくことも可能である。この透明な接着樹脂層は、ポリウレタン樹脂層であることが好ましい。すなわち、光学基材の表面に、ポリウレタン樹脂層、及びフォトクロミック化合物を含有する樹脂層がこの順で積層された積層構造を含む、フォトクロミック積層体とすることが好ましい。このような積層体を製造するに際し、本発明のフォトクロミック硬化性組成物を使用することが好適である。詳細に説明する。
<ポリウレタン樹脂層上にフォトクロミック層を形成する方法>
前記ポリウレタン樹脂層は、ポリウレタン樹脂、および空気中の水分で硬化しうる湿気硬化型ウレタン樹脂の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分、並びに沸点が70℃以上で且つSP値が8.0以上である溶媒を含むコーティング液を、前記光学基材の表面に塗布した後に、前記溶媒を除去することにより、形成することが好ましい。
具体的には、以下の工程を経て、フォトクロミック積層体を製造することが好ましい。先ず、光学基材の表面に、ポリウレタン樹脂、および空気中の水分で硬化しうる湿気硬化型ウレタン樹脂の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分、並びに沸点が70℃以上で且つSP値が8.0以上である溶媒を含むコーティング液を塗布した後、該溶媒を除去することにより、ポリウレタン樹脂層を形成する工程を実施する。
該コーティング液は、市販のものを使用できる。特に好ましくは、ポリウレタン樹脂、および空気中の水分で硬化しうる湿気硬化型ウレタン樹脂の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分を含む固形分が15~40質量%、およびSP値が8.0以上である溶媒が60~85質量%であるコーティング液を使用することが好ましい(なお、前記範囲は、固形分と溶媒との合計量を100質量%としたときの場合であって、該コーティング液には、公知の任意の他成分が配合されてもよい。)。
SP値が8.0以上の溶媒としては、(A)成分において、SP値が8.0以上である有機化合物(溶媒)と同じものを例示することができる。中でも、ウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン、および/又は湿気硬化型ウレタンの前駆体を含むため、以下の溶媒であることが好ましい。具体的には、沸点が70℃以上で、かつSP値8.0以上の溶媒としては、トルエン(沸点111℃、SP値8.8)、キシレン(沸点138℃、SP値8.7)、酢酸エチル(沸点77℃、SP値9.0)、メチルプロピルケトン(沸点105℃、SP値8.7)、酢酸ブチル(沸点124℃、SP値8.5)、メチルイソプロピルケトン(沸点95℃、SP値8.5)、酢酸イソプロピル(沸点89℃、SP値8.4)、酢酸イソブチル(沸点116℃、SP値8.3)、メチルイソブチルケトン(沸点116℃、SP値8.5)、エチレングリコールジメチルエーテル(沸点85℃、SP値8.6)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点146℃、SP値8.6)、アセト酢酸メチル(沸点170℃、SP値8.4)、ジエチルケトン(沸点101℃、SP値8.8)等の溶媒が挙げられる。これら溶媒は、1種類で使用しても、2種類以上の混合溶媒を使用してもよい。混合溶媒を使用する場合には、混合溶媒の合計量が基準となる。SP値も混合したものの値を採用する。
前記コーティング液は、光学基材上に塗布されて、SP値が8.0以上の溶媒を除去することにより、ポリウレタン樹脂層を形成できる。湿気硬化型ウレタン樹脂の前駆体を含む場合には、空気中の湿気により硬化することにより、ポリウレタン樹脂層を形成できる。
光学基材上のポリウレタン樹脂層の厚みは、特に制限されるものではないが、3.5~10.0μmであることが好ましい。
次いで、本発明においては、前記ポリウレタン樹脂層上に、前記フォトクロミック硬化性組成物を塗布した後、該フォトクロミック硬化性組成物を硬化することにより、硬化体を形成する工程を実施することにより、フォトクロミック積層体を製造できる。ポリウレタン樹脂層上にフォトクロミック硬化性組成物の硬化体からなる、フォトクロミック層を形成できる。塗布したフォトクロミック硬化性組成物は、前記の方法で硬化することができる。前記フォトクロミック層厚みは、特に制限されるものではないが、30~50μmである。
本発明においては、このようなポリウレタン樹脂層上にフォトクロミック層を形成する場合に優れた効果を発揮する。理由は明らかではないが、(A)成分が前記コーティング液で使用している溶媒、及び形成されるポリウレタン樹脂層と近いSP値を有しているからではないかと推定している。つまり、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、該コーティング液から形成されるウレタン樹脂層との塗れ性が非常によいと考えられる。その結果、仮にレベリング剤(界面活性剤)が低減されたフォトクロミック硬化性組成物であったとしても、優れた効果を発揮するものと考えられる。
また、フォトクロミック硬化性組成物を塗布する際のポリウレタン樹脂層には、該溶媒(沸点が70℃以上かつSP値が8.0以上の溶媒)が若干残存する場合があるものと考えられる。この若干ではあるが溶媒が残存する場合があるため、(A)成分を含む本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、優れた特性を有するフォトクロミック積層体を製造できると共に、生産性を向上できるものと考えられる。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、発色濃度や退色速度等に優れたフォトクロミック性を発現させることができ、しかも、機械的強度等の特性を低減させることもなく、良好なフォトクロミック性が付与された硬化体を得ることができる。なお、前記にはコーティング法について説明したが、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、注型重合、ディップコーティング法、フローコーティング法、スプレー法、バインダー法等によりフォトクロミック硬化体を製造することもできる。
また、本発明のフォトクロミック硬化性組成物により形成されるフォトクロミック硬化体、積層体は、その用途に応じて、分散染料などの染料を用いて染色することもできる。また、シランカップリング剤や、ケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、タングステン等の酸化物ゾルを主成分とするハードコート剤を用いてのハードコート膜をその上に積層することもできる。さらには、直接、又はハードコート膜上に、SiO、TiO、ZrO等の金属酸化物の蒸着による薄膜を形成することもできる。その他、有機高分子を塗布しての薄膜による反射防止処理、帯電防止処理等の後加工を施すことも可能である。
上記フォトクロミック積層体の外観向上の観点から、フォトクロミック硬化体(ハードコート膜等を形成していない状態)のビッカーズ硬度は3.0以上8.0以下であることが好ましく、3.5以上7.5以下であることがより好ましく、4.0以上7.5以下であることが特に好ましい。
本発明のフォトクロミック積層体は、表面を保護する目的で傷防止用保護フィルムを張り付けてもよい。
前記したようにフォトクロミック硬化体の表面(少なくともフォトクロミック層上)に傷防止用保護フィルムを貼り付ける場合、傷防止用保護フィルムの粘着剤が前記硬化体表面に付着し、前記硬化体が粘着剤に起因するしわ状の外観不良が生じることを改善する観点から、フォトクロミック硬化性組成物と粘着剤とのSP値が、一定の差であることが好ましい。
前記フォトクロミック硬化性組成物と傷防止用保護フィルムの粘着剤のSP値の差の上限は特に限定されないが、接着性の観点から5以下であることが好ましい。フォトクロミック硬化性組成物と傷防止用保護フィルムの粘着剤のSP値の差は0.05~5.0であることが好ましく、0.075~4.0であることがより好ましく、0.1~3.0であることが特に好ましい。なお、フォトクロミック硬化性組成物のSP値、および粘着剤のSP値は、下記に詳述する通り、実施例記載の濁度滴定法による滴定により求めることができる。
また、フォトクロミック積層体に傷防止用保護フィルムを貼り付ける場合、傷防止用保護フィルムの粘着剤が硬化体表面に付着する外観不良を改善する観点から、フォトクロミック硬化体は、エチレングリコールに対する接触角が高い方が好ましい。具体的には、該接触角が50度以上であることが好ましい。50度以上であることにより、上記外観不良を低減することができる。なお、フォトクロミック硬化体とエチレングリコールとの接触角の上限値は、特に限定されないが、90度未満であることが好ましい。上記接触角は50度以上90度未満であることがより好ましく、50度以上85度以下であることが更に好ましい。
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。各成分の表記、および評価方法等は、以下の通りである。
(A)成分
OC-1:キシレン(沸点138℃、SP値8.7)。
OC-2:スチレン(沸点145℃、SP値8.5)。
OC-3:トルエン(沸点111℃、SP値8.8)。
OC-4:酢酸ブチル(沸点124℃、SP値8.5)。
OC-9:酢酸エチル(沸点80℃、SP値9.1)。
OC-10:プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点120℃、SP値9.1)。
OC-11:メチルプロピルケトン(沸点105℃、SP値8.7)。
OC-12:メチルイソプロピルケトン(沸点95℃、SP値8.5)。
OC-13:ジエチルケトン(沸点101℃、SP値8.8)。
OC-14:メチルイソブチルケトン(沸点116℃、SP値8.4)。
OC-15:酢酸イソプロピル(沸点89℃、SP値8.4)。
OC-16:酢酸イソブチル(沸点116℃、SP値8.3)。
OC-17:シクロヘキサン(沸点81℃、SP値8.2)。
OC-18:ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃、SP値9.9)。
(A)成分の比較対象
OC-5:イソプロピルアルコール(沸点83℃、SP値11.5)。
OC-6:n-オクタン(沸点125℃、SP値7.6)。
OC-7:ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点210℃、SP値9.9)。
OC-8:メチレンクロライド(沸点40℃、SP値9.7)。
上記OC-5、OC-6、OC-7、およびOC-8は、本発明で使用する(A)成分には該当しないが、表1には、(A)成分の欄にその種類と配合割合とを記載した。
(B)成分
(B1)成分:
RX-1:アクリレート基を有するポリロタキサン
(国際公開第WO2018/030275号に記載の方法に従って、以下の特性を満足するアクリレート基を有するポリロタキサンを合成した。
アクリレート基を有するポリロタキサン(RX-1)の重量平均分子量Mw(GPC);180,000。
側鎖におけるアクリレート基変性割合:80モル%。
側鎖に残存するOH基の割合;20モル%。
軸分子;分子量11,000の直鎖状ポリエチレングリコール(PEG)。
包接環;α-シクロデキストリン(α-CD) 導入割合0.25。
軸分子の末端;アダマンタンで封止。
包接環に導入した側鎖;側鎖の(平均)分子量が約500。
1分子当たりのアクリレート基の個数:約90個。
なお、前記RX-1は、以下の条件で重量平均分子量MwをGPCによって求めた。
<(B1)成分;RX-1の重量平均分子量Mwの測定>
前記(B1)成分;ポリロタキサン(RX-1)の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した。装置としては、液体クロマトグラフ装置(日本ウォーターズ社製)を用いた。カラムとしては、TSKgel SuperHM-M(排除限界分子量:4,000,000、東ソー株式会社製)2本を直列で使用した。
また、展開液としてテトラヒドロフランを用い、流速0.6ml/min、温度40℃の条件にて測定した。標準試料にポリスチレンを用い、比較換算により重量平均分子量を求めたところ、RX-1の重量平均分子量は180,000であった。
(B2)成分
SO-1:下記方法によって合成したメタクリレート基を有するシルセスキオキサン。
1分子当たりのメタクリレート基の個数:20個。
メタクリレート基を有するシルセスキオキサンの重量平均分子量;4,800。
<(B2)成分;SO-1の製造方法>
3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート248g(1.0mol)にエタノール248mlおよび水54g(3.0mol)を加え、触媒として水酸化ナトリウム0.20g(0.005mol)を添加し、30℃で3時間反応させた。原料の消失を確認後、希塩酸で中和し、トルエン174ml、ヘプタン174ml、および水174gを添加し、水層を除去した。その後、水層が中性になるまで有機層を水洗し、溶媒を濃縮することによって本発明で用いられるシルセスキオキサン(PMS-1)を得た。なお、H-NMRより、原料は完全に消費されていることを確認した。また、29Si-NMRより、ケージ状構造、ラダー状構造およびランダム構造の混合物であることを確認した。
<(B2)成分;SO-1の酸価の確認>
SO-1に含まれる酸性成分は次に記す滴定を行うことで酸価を定量して評価した。2mlミクロビューレットに0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液(エタノール性)溶液(以下、測定液)をセットし、スターラーを準備した。メスシリンダーを用い、エタノールとトルエンを50mlずつ精秤し、200mlビーカーに入れ、スターラーにて撹拌混合した。フェノールフタレイン溶液3滴を加え、滴定液にて空滴定を行った。空滴定後の溶液に試料20gを入れ、スターラーにて撹拌混合した。さらに、フェノールフタレイン溶液3滴を加え、滴定液にて試料滴定を行って滴定量を得た。酸価の計算方法は以下の式に基づいて計算した。
酸価(mgKOH/g)=滴定量(ml)×滴定液f×5.6÷試料量(g)
ここで、fは標準塩酸溶液を用いて求めた滴定液のファクターを示す。上記方法で使用したN/10水酸化カリウムアルコール溶液のfは0.094であった。また、試料量は試料中に含まれるシルセスキオキサンの重量である。この方法に従って測定したSO-1の酸価は1.1mgKOH/gであった。
<(B2)成分;SO-1の重量平均分子量Mwの測定>
(B2)成分:SO-1の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した。装置としては、液体クロマトグラフ装置(日本ウォーターズ社製)を用いた。カラムとしては、Shodex GPC KF-802(排除限界分子量:5000、昭和電工株式会社製)、Shodex GPC GPC KF802.5(排除限界分子量:20000、昭和電工株式会社製)及びShodex GPC KF-803(排除限界分子量:70000、昭和電工株式会社製)の3本を直列で使用した。
また、展開液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、温度40℃の条件にて測定した。標準試料にポリスチレンを用い、比較換算により重量平均分子量を求めたところ、SO-1の重量平均分子量は4,800であった。
(B2)成分
SO-2:「商品名:AC-SQ SI-20、東亜合成株式会社製」シルセスキオキサン。
1分子当たりのアクリレート基の個数:約4個。
アクリレート基を有するシルセスキオキサンの重量平均分子量;2,000。
(B3)成分
(B31)成分;2官能(メタ)アクリレート
(B31a)成分:
9G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均差超9、平均分子量536)。
14G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長14、平均分子量736)。
A-400:ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長9、平均分子量508)。
(B31b)成分:
BPE800:2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(d+e=10、平均分子量804)。
(B32)成分;多官能(メタ)アクリレート
(B32a)成分:
TMPT;トリメチロールプロパントリメタクリレート。
D-TMP;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート。
(B33)成分:単官能(メタ)アクリレート
TSL-1:γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン。
GMA:グリシジルメタクリレート。
(C)成分
PC1:下記式で表される化合物
Figure 2022110997000010
PC2:WO2019/013249号記載の方法を参考にして合成された下記式で表わされる化合物
Figure 2022110997000011
PC3:WO2012/149599号記載の方法で合成された分子量2000のポリプロピレングリコール鎖の両末端にフォトクロミック化合物が結合した下記式で表される化合物
Figure 2022110997000012
(その他添加成分)
重合開始剤
CGI1:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(商品名:Omnirad819、IGM社製)(重合開始剤)。
CGI2:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad184、IGM社製)(重合開始剤)。
(その他添加成分)
紫外線吸収剤、安定剤、レベリング剤(界面活性剤)
HALS:ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(分子量508)(紫外線安定剤)。
HP:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irganox245)(安定剤)。
L7001:(商品名:L7001、東レ・ダウコーニング株式会社製)(レベリング剤)。
<実施例1>
フォトクロミック硬化性組成物の調整、およびフォトクロミック硬化体(フォトクロミック硬化体)の作製・評価に関して、下記処方により、各成分を十分に混合し、フォトクロミック硬化性組成物を調製した。
処方;
(フォトクロミック硬化性組成物)
(A)成分:OC-1 3質量部。
(B1)成分:RX-1 3質量部。
(B2)成分:SO-1 0.1質量部。
(B31a)成分:9G 40質量部。
(B31c)成分:A-400 25質量部。
(B32a)成分:TMPT 25質量部。
(B33)成分:TSL-1 5.9質量部、GMA 1質量部。
(C)成分:PC1 2質量部。
その他添加成分:
(重合開始剤);CGI-1 0.3質量部、CGI-2 0.3質量部。
(安定剤);HALS 3質量部、HP 1質量部。
なお、(B’)組成物、(C)成分、およびその他の添加成分を先に混合し、得られた混合物に、さらに(A)成分を混合し、均一なフォトクロミック硬化性組成物とした。
(フォトクロミック硬化組成物のSP値 測定)
濁度滴定法により、得られたフォトクロミック硬化性組成物のSP値を評価した。フォトクロミック硬化性組成物2.0gをアセトン10mlに溶解させた。得られたフォトクロミック硬化性組成物溶液を脱イオン水、n-ヘキサンで滴定し、上記溶液が濁る滴定量を算出した。得られた値から、下記式を用いて、SP値を算出した。
SP値=((VH)1/2×δH+(VL)1/2×δL)/((VH)1/2+(VL)1/2)。
VH=H/(S+H)。
VL=L/(S+L)。
δH=A×S/(S+H)+B×H(S+H)。
δL=A×S/(S+L)+C×H(S+L)。
H:n-ヘキサン滴定量(ml)。
L:脱イオン水滴定量(ml)。
VH:ヘキサンの体積分率。
VD:脱イオン水の体積分率。
S:アセトンの使用量(ml)。
A:アセトンのSP値。
H:n-ヘキサンのSP値。
L:脱イオン水のSP値。
(フォトクロミック積層体(フォトクロミック硬化体)の作製と評価)
前記フォトクロミック硬化性組成物を用い、積層法によりフォトクロミック積層体を得た。硬化方法を以下に示す。
まず、光学基材として中心厚が2mmで屈折率が1.60のチオウレタン系プラスチックレンズを用意した。なお、このチオウレタン系プラスチックレンズは、事前に5%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、50℃で5分間のアルカリエッチングを行い、その後十分に蒸留水で洗浄を実施した。
スピンコーター(1H-DX2、MIKASA製)を用いて、上記のプラスチックレンズの表面に、湿気硬化型プライマー(コーティング液)を回転数70rpmで15秒、続いて1000rpmで10秒コートし、6μmのポリウレタン樹脂層を得た。なお、前記湿気硬化型プライマー(コーティング液)は、湿気硬化型ウレタン樹脂の前駆体、および溶媒を含むものを使用した。そして、該溶媒は、トルエン(沸点111℃、SP値8.8)と酢酸エチル(沸点77℃、SP値9.0)を含み、トルエン100質量部に対して、酢酸エチル185質量部を含むものである。
その後、上記で得られたフォトクロミック硬化性組成物 約2gを、回転数100rpmで30秒、続いて900rpmで5~15秒かけて、フォトクロミック層の膜厚が40μmになるように、該ポリウレタン樹脂層上にスピンコートした。
このように、フォトクロミック硬化性組成物が表面に塗布されているレンズを、窒素ガス雰囲気中で出力200mW/cmのメタルハライドランプを用いて、90秒間光を照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに90℃で1時間加熱して、フォトクロミック層を有するフォトクロミック積層体(フォトクロミック光学物品)を作製した。同じ方法を繰返し、フォトクロミック積層体(フォトクロミック光学物品)を20枚作製した。
(評価方法)
(1)フォトクロミック特性
得られたフォトクロミック光学物品を試料とし、これに株式会社浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20±1℃、フォトクロミック光学物品表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmで300秒間照射して発色させ、フォトクロミック性を測定した。
・最大吸収波長(λmax):
株式会社大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD3000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は発色時の色調に関係する。
・発色濃度{ε(300)-ε(0)}:
前記最大吸収波長における、300秒間光照射した後の吸光度{ε(300)}と光照射前の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
・退色速度〔t1/2(sec.)〕:
300秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大吸収波長における吸光度が{ε(300)-ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
以上の評価は、作製した20枚を測定し、表にはその平均値を示した。
(2)外観評価(外観性、クラック、白濁、しわ不良)
得られた、全てのフォトクロミック光学物品を光学顕微鏡、照明装置(QC X75、バルブトロニクス社製)にて、外観性(オレンジピール、スパイラル状の不良)、クラック、白濁の発生有無、しわ不良(フォトクロミック光学物品の表面に生じるしわ状の外観不良を指す。)を観察評価した。これら評価は、得られたフォトクロミック光学物品のフォトクロミック層上に傷防止用保護フィルム(アクリル系粘着剤、厚み0.1mm)を貼り付け、70℃1時間加熱した後の状況を確認した。加熱することにより、促進状態の評価結果を得ることができる。
外観性、クラック、白濁、しわ不良の評価は、該傷防止用保護フィルムを剥がした後のフォトクロミック光学物品を光学顕微鏡、照明装置(QC X75、バルブトロニクス社製)にて観察評価した。評価基準を以下に示す。
<外観性>
A:全てのフォトクロミック光学物品において、均一であり外観不良は全く見られない。
B:ごくわずかに微細な外観不良が見られる(1枚以上存在する)。
C:わずかに外観不良が見られる(1枚以上存在する)。
D:部分的に外観不良が見られる(1枚以上存在する)。
E:全体的に外観不良が見られる(1枚以上存在する)。
この評価は、作製した20枚の内、1枚でも上記外観不良が存在するフォトクロミック光学物品がある場合には、それに該当する評価(評価の低い方)を表に示した。
<クラック>
A:全てのフォトクロミック光学物品において、均一でありクラックは全く見られない。
B:ごくわずかに微細なクラックが見られる(1枚以上存在する)。
C:わずかにクラックが見られる(1枚以上存在する)。
D:部分的にクラックが見られる(1枚以上存在する)。
E:全体的にクラックが見られる(1枚以上存在する)。
この評価は、作製した20枚の内、1枚でも上記クラックが存在するフォトクロミック光学物品がある場合には、それに該当する評価(評価の低い方)を表に示した。
<白濁>
A:全てのフォトクロミック光学物品において、均一であり白濁は全く見られない。
B:ごくわずかに微細な白濁が見られる(1枚以上存在する)。
C:わずかに白濁が見られる(1枚以上存在する)。
D:部分的に白濁が見られる(1枚以上存在する)。
E:全体的に白濁が見られる(1枚以上存在する)。
この評価は、作製した20枚の内、1枚でも上記白濁が存在するフォトクロミック光学物品がある場合には、それに該当する評価(評価の低い方)を表に示した。
<しわ不良>
A:全てのフォトクロミック光学物品において、均一でありしわ不良は全く見られない。
B:ごくわずかに微細なしわ不良が見られる(1枚以上存在する)。
C:わずかにしわ不良が見られる(1枚以上存在する)。
D:部分的にしわ不良が見られる(1枚以上存在する)。
E:全体的にしわ不良が見られる(1枚以上存在する)。
この評価は、作製した20枚の内、1枚でも上記しわ不良が存在するフォトクロミック光学物品がある場合には、それに該当する評価(評価の低い方)を表に示した。この「しわ不良」は、傷防止用保護フィルムから転写される粘着剤が影響しているものと考えられる。
(3)収率
製造した20枚のフォトクロミック光学物品において、均一であり、外観不良・クラック・白濁・しわ不良が全く見られないものの枚数を観察評価し、その枚数を収率として求めた。
(4)密着性
JISD-0202に準じてクロスカットテープ試験によって行った。即ち、カッターナイフを使い、得られたフォトクロミック光学物品の表面に1mm間隔に切れ目を入れ、マス目を100個形成させる。その上にセロファン粘着テープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標))を強く貼り付け、次いで、表面から90°方向へ一気に引っ張り剥離した後、フォトクロミック光学物品が残っているマス目を評価した。20枚の平均値を表に示した。
(5)ビッカーズ硬度
ビッカーズ硬度は、マイクロビッカーズ硬度計PMT-X7A(株式会社マツザワ製)を用いて測定した。圧子には、四角錐型ダイヤモンド圧子を用い、荷重10gf、圧子の保持時間30秒の条件で測定した。測定結果は、計4回の測定を行い、測定誤差の大きい1回目の値を除いた計3回の平均値で示した。20枚の平均値を表に示した。
(6)エチレングリコールに対する接触角
フォトクロミック積層体に対して、自動接触角計DM500(協和界面化学株式会社製)を用い、エチレングリコール(2.0μl)をフォトクロミック層に滴下した際にできる液滴に対し、滴下5秒後におけるフォトクロミック積層体の映連グリコールに対する接触角について5回測定を行いその平均値を結果とした。20枚の平均値を表に示した。
(7)SP値差
前記フォトクロミック硬化性組成物と傷防止用保護フィルムの粘着剤の差を算出した。20枚の平均値を表に示した。
<実施例2~10>
表1に記載した各成分を用いた以外は、実施例1と同様にしてフォトクロミック硬化性組成物を調製し、また実施例1と同様にしてフォトクロミック積層体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
Figure 2022110997000013
<比較例1~7>
表2に記載した各成分を用いた以外は、実施例1と同様にしてフォトクロミック硬化性組成物を調製し、また実施例1と同様にしてフォトクロミック積層体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
Figure 2022110997000014
Figure 2022110997000015
<実施例11~22>
表4に記載した各成分を用いた以外は、実施例1と同様にしてフォトクロミック硬化性組成物を調製し、また実施例1と同様にしてフォトクロミック積層体を作製し、評価を行った。評価結果を表5に示す。
Figure 2022110997000016
Figure 2022110997000017
1:ポリロタキサン
2:軸分子
3:環状分子
4:嵩高い末端基
5:側鎖

Claims (6)

  1. (A)沸点が80℃以上200℃以下であって、SP値が8.0~10.0の有機化合物、
    (B)ラジカル重合性単量体成分、および
    (C)フォトクロミック化合物を
    含むフォトクロミック硬化性組成物であって、
    該(B)ラジカル重合性単量体成分100質量部に対して、該(A)有機化合物を0.10質量部以上10質量部以下含む、フォトクロミック硬化性組成物。
  2. 前記(A)前記有機化合物は、エーテル化合物、エステル化合物、芳香族化合物、ケトン化合物、および環状アルキル化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のフォトクロミック硬化性組成物。
  3. 前記(B)ラジカル重合性単量体成分が、(B’)複数種類のラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体組成物であって、
    前記(B’)ラジカル重合性単量体組成物が、
    (B1)重量平均分子量が100,000以上1,000,000以下である、ラジカル重合性基を有するポリロタキサン成分、および
    (B2)重量平均分子量が1,500以上20,000以下である、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン成分
    からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体成分を含む、請求項1又は2に記載のフォトクロミック硬化性組成物。
  4. 光学基材の表面に、ポリウレタン樹脂層、及びフォトクロミック化合物を含有する樹脂層がこの順で積層された積層構造を含んでなるフォトクロミック積層体であって、
    前記フォトクロミック化合物を含有する樹脂層が、請求項1から3のいずれかに記載のフォトクロミック硬化性組成物の硬化体からなるフォトクロミック積層体。
  5. 前記ポリウレタン樹脂層が、
    ポリウレタン樹脂、および空気中の水分で硬化しうる湿気硬化型ウレタン樹脂の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分、並びに沸点が70℃以上で且つSP値が8.0以上である溶媒を含むコーティング液を、前記光学基材の表面に塗布した後に、前記溶媒を除去することにより、形成された層である、請求項4に記載のフォトクロミック積層体。
  6. ポリウレタン樹脂、および空気中の水分で硬化しうる湿気硬化型ウレタン樹脂の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分、並びに沸点が70℃以上で且つSP値が8.0以上である溶媒を含むコーティング液を、光学基材上に塗布した後、該溶媒を除去することにより、ポリウレタン樹脂層を形成する工程、並びに
    前記ポリウレタン樹脂層上に、請求項1から3のいずれかに記載のフォトクロミック硬化性組成物を塗布した後、該フォトクロミック硬化性組成物を硬化することにより、硬化体を形成する工程
    を含む、請求項5に記載のフォトクロミック積層体の製造方法。
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