JPWO2008133175A1 - 軟質ブリキ鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本出願は、特願2007−109332号を基礎出願とし、その内容を取り込むものとする。
(1) Cを0.0020質量%以下、さらに、B及びNを質量比でB/N≧1.5、固溶Bが5ppm以上の少なくとも一方を満足するように含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成を有し;硬度がHR30Tで52〜60である、軟質ブリキ鋼板。
(2) Cを0.0020質量%以下、さらに、B及びNを質量比でB/N≧1.5、固溶Bが5ppm以上の少なくとも一方を満足するように含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成を有するスラブに、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を施した後、圧下率1.3%以上かつ3.5%以下で二次冷間圧延することにより得られる、軟質ブリキ鋼板。
(3) 硬度がHR30Tで52〜60である上記(2)に記載の軟質ブリキ鋼板。
(4) Bの添加量が0.020質量%以下である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の軟質ブリキ鋼板。
(5) 鋼組成として、Si:0.05質量%以下、Mn:0.20質量%〜0.60質量%、P:0.020質量%以下、S:0.020質量%以下、Al:0.010質量%〜0.10質量%、Cr:0.10質量%以下、Ti:0.01質量%以下、Nb:0.01質量%以下からなる群から選択された1種又は2種以上の元素をさらに含む上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の軟質ブリキ鋼板。
(7) 鋼組成として、Si:0.05質量%以下、Mn:0.20質量%〜0.60質量%、P:0.020質量%以下、S:0.020質量%以下、Al:0.010質量%〜0.10質量%、Cr:0.10質量%以下、Ti:0.01質量%以下、Nb:0.01質量%以下からなる群から選択された1種又は2種以上の元素をさらに含む上記(6)に記載の軟質ブリキ鋼板の製造方法。
(8) 前記焼鈍を、昇温速度300℃/秒未満の連続焼鈍設備を用いて650℃〜700℃の温度で行う上記(6)または(7)に記載の軟質ブリキ鋼板の製造方法。
本発明の軟質ブリキ鋼板は、所定の鋼組成を有するスラブを用いて、これに熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を施した後に、所定の圧下率で二次冷間圧延(調質圧延)することにより得られる、硬度がHR30Tで52〜60にある(すなわち、T−3程度の)ブリキ鋼板である。
以下、本発明の軟質ブリキ鋼板の母材として使用されるスラブの鋼組成について説明する。上記スラブは、鋼中の成分として、主に、炭素(C)、ホウ素(B)、窒素(N)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)等を含むことができ、残部がFe及び不可避的不純物からなるものであり、なおかつ、これら成分のうち、C、B、Nの3つの元素を必須成分としている。これら成分のスラブ中における含有量については、以下の通りである。
本発明に係る軟質ブリキ鋼板の母材となるスラブ中のCの含有量は、0.0020質量%以下である必要がある。
また、本発明に係る軟質ブリキ鋼板の母材となるスラブ中におけるB及びNは、質量比でB/Nが1.5以上となるように含有されている必要がある。
また、本発明に係る軟質ブリキ鋼板の母材となるスラブ中のSiの含有量は、0.05質量%以下であることが好ましい。これは、一般に、Siを多量に含有すると母材の耐食性が低下するためであり、本発明では、母材に含まれるSiの含有量の上限を0.05質量%にすることが好ましい。また、特に耐食性が必要とされる内容物を充填する缶等に用いられる場合には、Siの含有量を0.03質量%以下にすることがより好ましい。
また、本発明に係る軟質ブリキ鋼板の母材となるスラブ中のMnの含有量は、0.20質量%以上かつ0.60質量%以下であることが好ましい。Mnは、添加される鋼の硬質化を促進するため、少なくとも0.20質量%以上の添加が必要であり、0.40質量%以上添加することがより好ましい。一方、Mnを多量に添加すると、母材の耐食性が低下するため、ASTMでも定められているように、Mnの含有量の上限を0.6質量%にすることが好ましい。
また、本発明に係る軟質ブリキ鋼板の母材となるスラブ中のPの含有量は、0.020質量%以下であることが好ましい。Pは、添加される鋼を顕著に硬質化させる一方で、耐食性を低下させてしまうため、本発明では、ブリキ鋼板の一般的な製法における場合と同様に、Pの含有量を0.020質量%以下にすることが好ましい。また、特に耐食性が要求される用途に使用される場合には、Pの含有量を0.015質量%以下にすることがより好ましい。
また、本発明に係る軟質ブリキ鋼板の母材となるスラブ中のSの含有量は、0.020質量%以下であることが好ましい。これは、Sは介在物として鋼を脆化させ、耐食性を低下させるためであり、本発明では、ブリキ鋼板の一般的な製法における場合と同様に、Sの含有量を0.020質量%以下にすることが好ましい。
また、本発明に係る軟質ブリキ鋼板の母材となるスラブ中のAlの含有量は、0.010質量%以上かつ0.10質量%以下であることが好ましい。Alは、製鋼段階における脱酸材として添加されるものであり、脱酸硬化を得るためにはAlの含有量を0.010質量%以上にすることが好ましい。一方、Alは、固溶Cと同様に、時効硬化の原因となる固溶Nを析出させる硬化があるが、大量に添加するとアルミナ系の冶金疵が発生する懸念があるため、Alの含有量を0.10質量%以下にすることが好ましい。
また、本発明に係る軟質ブリキ鋼板の母材となるスラブ中のCrの含有量は、0.10質量%以下であることが好ましい。Crは、素材の機械的特性に大きな影響を与えるものではないが、ブリキ鋼板の表面処理としてCrを用いる場合、鋼中Crが多いとオンラインでのCr付着量計の外乱因子となり、厳格な管理を要する表面処理の品質を低下させてしまうこと、およびASTM規格でCrの上限が0.10質量%に規定されていることから、Crの含有量は0.10質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明に係る軟質ブリキ鋼板の母材となるスラブ中のTi、Nbの含有量は、それぞれ0.01質量%以下であることが好ましい。前述のように、軟質ブリキ鋼板の母材として使用されるIF鋼は、鋼中に固溶しているC及びNを析出させるために添加されたTiやNbの微細析出により、鋼の再結晶温度が700℃以上に上昇する。本発明では、固溶Cについては真空脱ガス法などにより溶鋼段階で0.0020質量%以下とし、固溶NについてはBの添加によりBNとして析出させて無害化するため、TiやNbの積極添加は不要である。従って、焼鈍温度を低く抑え、工業生産性を向上させるために、Ti、Nbの含有量をそれぞれ0.01質量%以下にすることが好ましい。
本発明の軟質ブリキ鋼板の成分としては、前記成分以外に、Cu:0.1%以下、好ましくは0.01%以下、Ni:0.1%以下、好ましくは0.01%以下、Mo:0.05%以下、好ましくは0.005%以下、Zr:0.05%以下、好ましくは0.005%以下、V:0.1%以下、好ましくは0.01%以下、CaまたはMgを0.003%以下、好ましくは0.0005%以下の各成分元素のうち、1種または2種以上を含有してもよい。
以上、本発明の軟質ブリキ鋼板の構成について説明したが、次に、このような構成を有する本発明の軟質ブリキ鋼板の製造方法について詳細に説明する。
上記製造工程のうち、熱間圧延、酸洗、冷間圧延については、一般的な鉄鋼製造条件でよい。例えば、スラブを1000℃〜1300℃まで加熱した後、ホットストリップミル等の熱延設備を用い、仕上温度を800℃〜1000℃として1.8mm〜4.0mmの厚さまで圧延、巻取温度を400℃〜800℃として熱延鋼板を製造する。しかる後、塩酸等を用いて酸洗し、コールドストリップミル等の冷延設備を用いて常温で0.1mm〜0.6mmの厚さまで圧延する工程を行う。
焼鈍は、冷間圧延で加工硬化した鋼の組織を再結晶により軟化させ、製缶などの加工ができるように材質を調整する目的で行われる。本発明の軟質ブリキ鋼板の母材として使用されるIF鋼は、前述のように、鋼中に固溶しているC及びNを析出させるために添加されたTiやNbの微細析出により、鋼の再結晶温度が上昇し、700℃以上の焼鈍温度が必要となることが多い。しかし、本発明の軟質ブリキ鋼板の成分としてTiやNbが含まれておらず、再結晶温度が上昇することもないため、焼鈍温度は650〜700℃であれば十分である。一方、焼鈍温度が650℃未満の場合には、鋼が再結晶しないため好ましくなく、焼鈍温度が700℃を超える場合はヒートバックルが発生しやすくなる問題があるため好ましくない。また、このように熱量の供給が比較的少なくて済むため、副次的効果として熱源対策にも効果がある。なお、本発明のIF鋼の焼鈍における昇温速度は、通常の工業生産に用いられる一般的なプロセスと同等でよく、その値は、好ましくは300℃/秒未満、より好ましくは200℃/秒未満、最も好ましくは100℃/秒未満である。均熱時間も同様に、20秒〜100秒程度の通常の焼鈍条件でよい。
本発明における二次冷間圧延(調質圧延)工程では、圧延液を用いる(「DCR」や「HRT」と呼ばれる、いわゆるWET調圧)と、上述したように安定した鋼板の生産ができない。そのため、本発明では、圧延液を用いない、いわゆるDRY調圧を施す。なお、本発明者らは、連続焼鈍後のIF鋼に対して圧延液を用いた二次冷間圧延を行った場合の技術的検討を行い、実機検証に及んだが、上述したような鋼板の延び過ぎが発生し、板厚制御や鋼板形状の不良が発生したのみならず、自動制御の圧延荷重が極端に低下して圧延不能になるなどの危険性があり、工業的な適用は困難であることが認められた。
まず、本発明の製造方法を利用して製造された軟質ブリキ鋼板の製造例について説明する。
下記に示す表1および表2に示す組成を有する鋼A〜Dシリーズのスラブを鋳造し、これらスラブを1235℃で加熱した後に、ホットストリップミルを用いて、仕上温度900℃かつ巻取温度650℃の条件で、圧延後の仕上板厚が3.0mmとなるまで熱間圧延を行った。次いで、この熱間圧延後の鋼帯を酸洗し、圧延後の仕上板厚が0.25mmとなるまで冷間圧延した後、連続焼鈍炉にて680℃及び640℃の2種の温度条件で焼鈍を行った。さらに、焼鈍後の鋼板に対して、調質圧延率が3%及び5%の2種の条件で二次冷間圧延を行った。なお、調質圧延率が3%の条件では、圧延液を使用しないDRY調圧を行い、調質圧延率が5%の条件では、圧延液を使用したWET調圧を行った。WET調圧の場合の圧延液としては、日本クエーカーケミカル社製のチノールを純水で0.2%に希釈したものを使用した。
以上のようにして製造されたブリキ鋼板について、硬度(HR30T)をJIS Z 2245に規定の方法により、また降伏伸び(YP−EL)をJIS Z 2241に規定の方法により測定した。なお、硬度と降伏伸びのいずれについても、通常の塗装焼付により付与される210℃で30分の熱処理後に測定した。
Claims (8)
- Cを0.0020質量%以下、
さらに、B及びNを質量比でB/N≧1.5、固溶Bが5ppm以上の少なくとも一方を満足するように含み、
残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成を有し;
硬度がHR30Tで52〜60である;
ことを特徴とする軟質ブリキ鋼板。 - Cを0.0020質量%以下、
さらに、B及びNを質量比でB/N≧1.5、固溶Bが5ppm以上の少なくとも一方を満足するように含み、
残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成を有するスラブに、
熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を施した後、圧下率1.3%以上かつ3.5%以下で二次冷間圧延することにより得られる
ことを特徴とする軟質ブリキ鋼板。 - 硬度がHR30Tで52〜60であることを特徴とする請求項2に記載の軟質ブリキ鋼板。
- Bの添加量が0.020質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の軟質ブリキ鋼板。
- 鋼組成として、Si:0.05質量%以下、Mn:0.20質量%〜0.60質量%、P:0.020質量%以下、S:0.020質量%以下、Al:0.010質量%〜0.10質量%、Cr:0.10質量%以下、Ti:0.01質量%以下、Nb:0.01質量%以下からなる群から選択された1種又は2種以上の元素をさらに含む
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の軟質ブリキ鋼板。 - Cを0.0020質量%以下、
さらに、B及びNを質量比でB/N≧1.5、固溶Bが5ppm以上の少なくとも一方を満足するように含み、
残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成を有するスラブに、
熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を施した後、
圧下率1.3%以上かつ3.5%以下で二次冷間圧延する
ことを特徴とする軟質ブリキ鋼板の製造方法。 - 鋼組成として、Si:0.05質量%以下、Mn:0.20質量%〜0.60質量%、P:0.020質量%以下、S:0.020質量%以下、Al:0.010質量%〜0.10質量%、Cr:0.10質量%以下、Ti:0.01質量%以下、Nb:0.01質量%以下からなる群から選択された1種又は2種以上の元素をさらに含む
ことを特徴とする請求項6に記載の軟質ブリキ鋼板の製造方法。 - 前記焼鈍を、昇温速度300℃/秒未満の連続焼鈍設備を用いて650℃〜700℃の温度で行う
ことを特徴とする請求項6または7に記載の軟質ブリキ鋼板の製造方法。
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