JP6540769B2 - 高強度極薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度極薄鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6540769B2
JP6540769B2 JP2017187300A JP2017187300A JP6540769B2 JP 6540769 B2 JP6540769 B2 JP 6540769B2 JP 2017187300 A JP2017187300 A JP 2017187300A JP 2017187300 A JP2017187300 A JP 2017187300A JP 6540769 B2 JP6540769 B2 JP 6540769B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
temperature
rolling
steel plate
high strength
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017187300A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018059196A (ja
Inventor
芳恵 椎森
芳恵 椎森
佑哉 河合
佑哉 河合
勇人 齋藤
勇人 齋藤
房亮 假屋
房亮 假屋
克己 小島
克己 小島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Publication of JP2018059196A publication Critical patent/JP2018059196A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6540769B2 publication Critical patent/JP6540769B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、容器用鋼板に代表される高強度極薄鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、スチール缶の需要を拡大するため、製缶コストを低減する策がとられている。
製缶コストの低減策としては、素材の低コスト化が挙げられる。そのため、使用する鋼板の薄肉化が進められている。
ただし、単に鋼板を薄肉化すると缶体強度が低下する。したがって、溶接缶の缶胴部のような高強度材が用いられている箇所には、単に薄肉化したのみの鋼板を用いることができない。そこで、高強度で極薄の鋼板が望まれている。
現在、高強度で極薄な鋼板は、焼鈍後に2次冷間圧延を施すDouble Reduce法(以下、DR法と称す)で製造されている。DR法を利用して製造した鋼板(以下、DR材とも称する。)は高強度であるが、2次冷間圧延に伴う加工硬化により全伸びが小さく(延性に乏しく)加工性が劣るという特徴がある。また、通常の焼鈍後調質圧延を行う鋼板に比べて通過工程数が多いため、コストが高くなる。
このようなDR材の欠点を回避するため、種々の強化法を用いて、2次冷間圧延工程を省略し、1次冷間圧延と焼鈍工程で特性を制御するSingle Reduce法 (SR法) により高強度鋼板を製造する方法が提案されている。
特許文献1では、焼鈍工程において再結晶が完了する高温ではなく、再結晶率:60〜90%の部分再結晶状態となるように焼鈍を行うことで、塗装焼付処理後の降伏応力:550MPa以上の高強度を得る技術が開示されている。
特許文献2では、Nb、Ti、Bによる析出強化および結晶粒微細化の複合的な組み合わせにより、450〜550MPaの高強度と20%以上の全伸びを両立する鋼板を得る技術が開示されている。
特許文献3では、Nによる固溶強化、Nb析出物による析出強化、および1〜19%の二次圧延による加工硬化を組み合わせることで、450〜630MPaの上降伏応力と13%以上の全伸びを両立する鋼板を得る技術が開示されている。
特開2001−107187号公報 特開2008−274332号公報 特許第5939368号公報
上述したように、薄ゲージ化(薄肉化)するためには缶体の強度確保のために、鋼板強度を高めることが必要である。一方、加工度が高い缶胴加工により成形される缶(例えば、拡缶加工のような缶胴加工により成形される缶体、ビード加工のような缶胴加工により成形される缶体、フランジ加工により成形される缶体)に素材として鋼板を用いる場合には、鋼板の割れが発生しないように、高延性の鋼板を適用する必要がある。
以上の特性について、上記従来技術では、高強度、高延性 (全伸び) の両立が達成されていない。
特許文献1では、再結晶率:60〜90%の部分再結晶状態となるよう焼鈍を行うことで高強度を達成している。しかし、部分再結晶状態であるため、延性が低下する。
特許文献2では、Nb、Ti、Bによる析出強化および結晶粒微細化の複合的な組み合わせにより高強度と高延性の両立を達成している。しかし、本発明で解決しようとしている550MPa以上の高強度には達していない。
特許文献3では、Nによる固溶強化、Nb析出物による析出強化、および1〜19%の二次圧延による加工硬化を組み合わせることで高強度と高延性を両立している。しかし、実施例では、550MPa以上の高強度と15%以上の全伸びの両立を達成している例はない。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、優れた延性を有する高強度極薄鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、以下の知見を得た。
析出強化、結晶粒微細化強化、固溶強化の複合的な組み合わせに着目した。そして、Nb析出物による析出強化、固溶元素およびNb析出物のピン止め効果による結晶粒微細化強化、固溶N、Pによる固溶強化を組み合わせることで延性が劣ることなく高強度化できることを見出した。
また、鋼板の組織を一部に微細なフェライト粒を含む組織とすることで、微細なフェライト粒による強度上昇と、比較的粗なフェライト粒による延性向上の両立が図れることを見出した。具体的には、粒度番号12.5以上の微細なフェライト粒を面積%で10%以上有する組織とすることで、高強度の達成と高い延性との両立が図れることを見出した。
さらに、製造方法においては、焼鈍工程における550℃から最高到達板温までの平均昇温速度を適切に調整することで、目的とする組織を有する極薄鋼板が得られることも見出した。
以上のように、本発明は、成分組成、製造方法をトータルで管理することで、高強度と高延性を両立する極薄鋼板が製造可能であることを知見し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]成分組成は、質量%で、C:0.020%超え0.080%以下、Si:0.04%以下、Mn:0.10%以上1.20%以下、P:0.020%超え0.20%以下、S:0.020%以下、Al:0.10%以下、N:0.0120%超え0.020%以下、Nb:0.005%以上0.030%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、組織は、フェライト組織を主体とし、該フェライト組織の平均結晶粒径が8μm以下であり、粒度番号12.5以上のフェライト粒をフェライト組織全体に対し面積%で10%以上有し、塗装焼付処理後または塗装焼き付け相当の加熱処理後の上降伏応力が550MPa以上、全伸びが15%以上である、板厚0.4mm以下の高強度極薄鋼板。
[2]上記[1]に記載の高強度極薄鋼板の製造方法であって、鋼スラブを仕上げ圧延温度:820℃以上で圧延し、巻取温度:500〜720℃で巻取る熱間圧延工程と、前記熱間圧延後、圧下率:80%以上で冷間圧延する一次冷間圧延工程と、前記一次冷間圧延工程後、550℃から最高到達板温まで平均昇温速度:5℃/sec.以上で昇温し、最高到達板温:650〜800℃とし、650〜800℃の温度域での保持時間:55sec.以下で加熱を行い、前記加熱後冷却するにあたり、650℃から350℃までの温度範囲を19sec.以内とする焼鈍工程と、前記焼鈍工程後、圧下率:5%以下で調質圧延を行う調質圧延工程とを有する高強度極薄鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。
また、本発明において、高強度極薄鋼板とは、上降伏応力が550MPa以上の鋼板である。
本発明によれば、550MPa以上の上降伏応力、15%以上の全伸びを有する高強度と高延性を両立する極薄鋼板が得られる。
さらに、本発明であれば、鋼板の高強度化により、缶を薄ゲージ化しても高い缶体強度を確保することが可能となる。また、高延性により、溶接缶で用いられるビード加工、拡缶加工のような缶胴加工、フランジ加工などの加工度の高い加工を行うことが可能となる。
まず、本発明の高強度極薄鋼板の成分組成について説明する。
C:0.020%超え0.080%以下
本発明の極薄鋼板においては、550MPaの上降伏応力の達成が必要である。そのためには、Nbを含有させることで生ずるNb析出物 (NbC等) による析出強化を利用することが重要となる。Nb析出物の生成には鋼板のC量が重要であり、具体的には、0.020%超えのC含有量が必要である。一方で、C量の増加は鉄炭化物の生成を促進し、伸びの低下の要因となる。そのため、C含有量は0.080%以下とする。
Si:0.04%以下
Siは固溶強化により鋼の強度を増加させる元素であるが、多量に添加するとめっき性を損ない、耐食性が著しく低下する。よって、Si含有量は0.04%以下とする。
Mn:0.10%以上1.20%以下
Mnは固溶強化により鋼の強度を増加させる元素である。目標とする上降伏応力を得るためには、Mn含有量を0.10%以上とする必要がある。よって、Mn含有量の下限は0.10%とする。一方、Mn含有量が1.20%を超えると、表面に濃化してMn酸化物が生成し、耐食性に悪影響を及ぼす。よって、Mn含有量の上限は1.20%とする。
P:0.020%超え0.20%以下
Pは固溶強化能の大きな元素である。また、Pはフェライト粒界に作用し、フェライト粒の成長を阻害する役割を担うため、後述する粒度番号12.5以上の微細粒の生成に重要な元素である。十分な固溶強化を得る観点から、目標とする上降伏応力を得るためには、P含有量を0.020%超えとする必要がある。一方、Pは過剰に含有することで、耐食性を劣化させる元素であり、0.20%を超えると耐食性が劣る。以上より、P含有量は0.020%超え0.20%以下とする。なお、好ましくは、P含有量は0.040%以上とする。好ましくは、P含有量は0.180%以下とする。より好ましくは、P含有量は0.160%以下とする。
S:0.020%以下
本発明鋼はN、C含有量が高く、また、スラブ割れの原因となる析出物を形成するNbを含むため、連続鋳造時矯正帯でスラブエッジが割れやすくなる。スラブエッジ割れを防止する点から、S含有量は0.020%以下とする。好ましくは、S含有量は0.010%以下である。
Al:0.10%以下
Al含有量が増加すると、再結晶温度の上昇がもたらされるため、焼鈍温度を高く設定する必要がある。本発明においては、強度を増加させるために含有する他の元素で再結晶温度の上昇がもたらされ、焼鈍温度が高くなるため、Alによる再結晶温度の上昇は極力回避することが必要である。よって、Alの含有量は0.10%以下とする。
N:0.0120%超え0.020%以下
Nは固溶強化能が大きく、固溶強化による強度上昇に必要な元素である。Nの固溶強化により十分な強度上昇を得るためには、N含有量は0.0120%超えとする必要がある。よって、N含有量の下限は0.0120%超えとする。一方、Nを過剰に添加すると、連続鋳造時、温度が低下する下部矯正帯でスラブエッジ割れが生じやすくなる。よって、N含有量の上限は0.020%以下とする。なお、好ましくは、N含有量は0.0130%以上とする。好ましくは、N含有量は0.0180%以下とする。より好ましくは、N含有量は0.0170%以下とする。
Nb:0.005%以上0.030%以下
Nbは析出物生成能の高い元素であり、微細な析出物を生じ、上降伏応力を上昇させる。また、微細なNb析出物はフェライト粒を細粒化し、強度の上昇をもたらす。後述する、粒度番号12.5以上の微細なフェライト粒を得るためには、上記Pに加えてNbの含有が必要となる。本発明において、目標の強度を得るためには0.005%以上のNbの含有が必要である。よって、Nb含有量の下限は0.005%以上とする。一方、Nbは再結晶温度の上昇をもたらすため、0.030%超えでNbを含有すると、本発明で記載している最高到達板温:650〜800℃、650〜800℃の温度域での保持時間:55sec.以下の加熱での焼鈍では未再結晶粒が残存する。よってNb含有量の上限は0.030%以下とする。なお、好ましくは、Nb含有量は0.007%以上とする。好ましくは、Nb含有量は0.028%以下とする。より好ましくは、Nb含有量は0.010%以上とする。より好ましくは、Nb含有量は0.025%以下とする。
上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物とする。
次に、本発明の組織、特性について説明する。
本発明の高強度極薄鋼板は、フェライト組織を主体とする。強度と延性の確保の観点から、本発明の高強度極薄鋼板では、フェライト組織の面積率が組織全体の70%以上であることが好ましい。より好ましくはフェライト組織の面積率が90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。フェライト組織の他には、セメンタイト、パーライト等の組織が含まれていてもよい。また、全伸びを15%以上とする観点から、本発明鋼のフェライト組織は、好ましくは再結晶組織である。
フェライト組織の平均結晶粒径が8μm以下
フェライト組織の平均結晶粒径は、鋼板の上降伏応力に影響を及ぼす。フェライト組織の平均結晶粒径が8μmを超えると目的とする上降伏応力を確保できないため、フェライト組織の平均結晶粒径は8μm以下とする。好ましくは6μm以下である。なお、フェライト組織の平均結晶粒径は、例えばJIS G 0551の切断法によるフェライト組織の平均結晶粒径に準じて測定するものとする。また、フェライト組織の平均結晶粒径は成分、冷間圧下率、焼鈍条件等により目標値に制御することが可能である。
粒度番号12.5以上のフェライト粒がフェライト組織全体に対し面積%で10%以上
粒度番号12.5以上のフェライト粒を10%以上有する組織とすることにより、粒度番号12.5以上の微細粒による強度上昇と、比較的粗なフェライト粒による延性向上の両立が達成される。粒度番号12.5以上のフェライト粒の割合が10%を下回ると、目標とする強度と延性を共に達成することが困難となる。よって、粒度番号12.5以上のフェライト粒の割合はフェライトフェライト組織全体に対し面積%で10%以上とする。好ましくは15%以上である。一方、25%を超えるとフェライト粒の微細化により高強度は得られるものの、組織全体に対する微細なフェライト粒の占める割合が極端に大きくなることで、全伸びが低下し、高強度と高延性の両立が困難となる恐れがある。よって25%以下が好ましい。なお、フェライト粒の粒度番号は、JIS G 0551の定義に従うものとする。また、粒度番号12.5以上のフェライト粒の割合は、後述する実施例記載の方法にて求めることができる。
上降伏応力550MPa以上
本発明鋼の適用対象である溶接缶のデント強度等を確保するために、塗装焼付処理後または塗装焼き付け相当の加熱処理後の上降伏応力は550MPa以上とする。上記成分組成を採用するとともに、例えば後述する製造条件を採用することで、鋼板の上降伏応力を550MPa以上に制御可能である。上降伏応力は、製缶されてから550MPaを達成していればよいが、通常、缶製造時に塗装焼き付けを行うため塗装焼付処理後または塗装焼き付け相当の加熱処理後の上降伏応力は550MPa以上とする。なお、塗装は鋼板に比較して薄いため、上降伏応力の測定値に影響はない。
なお、本発明において、塗装焼付処理または塗装焼き付け相当の加熱処理とは、通常、当業者が行う方法で行うことができる。例えば、150〜300℃、5〜30分の塗装焼付け処理または塗装焼き付け相当の熱処理である。好ましくは、210℃、10分の塗装焼付け処理または塗装焼き付け相当の熱処理とする。
全伸び15%以上
全伸びが15%を下回ると、例えば、本発明鋼の適用対象である、拡缶加工、ビード加工、フランジ加工等の高い加工性の加工を伴う缶への適用が困難となる。従って、全伸びの下限は15%以上とする。なお、全伸びは、上記成分組成を採用するとともに、例えば後述する製造条件を採用することで目標値に制御可能である。
板厚が0.4mm以下
現在、製缶コストの低減を目的として、鋼板の薄肉化が進められている。しかしながら、鋼板の薄肉化、すなわち、鋼板板厚の低減に伴って、缶体強度の低下が懸念される。これに対して、本発明の高強度極薄鋼板は、板厚が薄い場合でも、缶体強度を低下させることがない。板厚が薄い場合に、高延性かつ高強度という本発明の効果が顕著にでる。この点から、板厚は0.4mm以下とする。好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.2mm以下である。
次に、本発明の高強度極薄鋼板の製造方法の一例について説明する。
本発明の高強度極薄鋼板の製造方法は、上記成分組成からなる鋼スラブを仕上げ圧延温度:820℃以上で圧延し、巻取温度:500〜720℃で巻取る熱間圧延工程と、前記熱間圧延後、必要に応じて酸洗し、圧下率:80%以上で冷間圧延する一次冷間圧延工程と、前記一次冷間圧延工程後、550℃から最高到達板温までの平均昇温速度:5℃/sec.以上で昇温し、最高到達板温:650〜800℃とし、650〜800℃の温度域での保持時間:55sec.以下で加熱を行い、前記加熱後冷却するにあたり、650℃から350℃までの温度範囲を19sec.以内とする焼鈍工程と、前記焼鈍工程後、圧下率:5%以下で調質圧延を行う調質圧延工程とを有する。
圧延素材となる鋼について説明する。鋼は、上述の成分組成に調整された溶鋼を、転炉等を用いた公知の溶製方法により溶製し、次に連続鋳造法等の通常用いられる鋳造方法で圧延素材とすることで得られる。
上記により得られた鋼に対して、仕上げ圧延温度:820℃以上で圧延し、巻取温度:500〜720℃で巻取る熱間圧延を施し、熱延鋼板を製造する。熱間圧延の圧延開始時には、鋼の温度を1200℃以上1250℃以下(スラブ加熱温度)にするのが好ましい。
仕上げ圧延温度:820℃以上
仕上げ圧延温度が820℃未満では、オーステナイト相とフェライト相の2層域での圧延となるため粒成長し、熱間圧延後の鋼板の組織が粗大粒となる。そして、冷間圧延し焼鈍した後の鋼板の結晶粒が粗大化することで、上降伏応力が低下するため目標とする上降伏応力が得られない。よって、熱間圧延工程における仕上げ圧延温度は820℃以上とする。また、熱間圧延時の仕上げ圧延温度が990℃を超えた場合、スケールが発生するため、仕上げ圧延温度は990℃以下が好ましい。
巻取温度:500〜720℃
巻取温度が500℃未満では、ランナウトテーブルで急冷されることにより幅方向の温度分布が不均一となり、材質の不均一や幅方向の形状不良の要因となる。そのため、巻取温度の下限は500℃以上とする。一方、巻取温度が720℃を超えると、鋼板のスケール厚みが増大し、次工程の酸洗時の脱スケール性が悪化する可能性がある。そのため、巻取温度の上限は720℃以下とする。
次いで、必要に応じて酸洗し、圧下率:80%以上で1次圧延する1次冷間圧延を施す。
なお、必要に応じて行う酸洗はスケールを除去する目的であり、酸洗方法は特に限定しない。鋼板の表層スケールが除去できればよく、通常行われる方法により酸洗することができる。また、酸洗以外の化学的除去や、機械的除去等の方法でスケールを除去してもよい。
1次冷間圧延における圧下率:80%以上
1次冷間圧延における圧下率は、本発明において重要な要件の一つである。1次冷間圧延での圧下率が80%未満では、上降伏応力が550MPa以上の鋼板を製造することは困難である。従って、圧下率は80%以上とする。好ましくは、85%以上である。
なお、熱間圧延工程後1次冷間圧延工程前に適宜他の工程が含まれても良い。また、熱間圧延工程の直後に酸洗を行わずに1次冷間圧延工程を行っても良い。
次いで、一次冷間圧延工程後、550℃から最高到達板温まで平均昇温速度:5℃/sec.以上で昇温し、最高到達板温:650〜800℃とし、650〜800℃の温度域での保持時間:55sec.以下で加熱を行い、加熱後冷却するにあたり、650℃から350℃までの温度範囲を19sec.以内とする焼鈍を行う。
550℃から最高到達板温まで平均昇温速度5℃/sec.以上で昇温
上記のP、Nbの添加に加え、焼鈍時の550℃から最高到達板温までの平均昇温速度を5℃/sec.以上に制御することにより、粒度番号12.5以上の微細粒を面積%で10%以上有する組織を得ることが可能となる。これは、鋼板の加熱速度が大きくなることにより、鋼板中に固溶元素の濃度勾配が生じ、固溶元素の濃度が濃い部分では粒成長が極端に抑制されるためである。550℃から最高到達板温までの平均昇温速度が5℃/sec.未満の場合では、鋼板中の固溶元素が均一となり、固溶元素が濃化する領域を作ることが出来ず、微細粒を含む組織を得ることが出来ない。よって、焼鈍時の550℃から最高到達板温までの平均昇温速度は5℃/sec.以上とする。平均昇温速度を制御する温度域は550℃から最高到達板温までである。再結晶はFe原子の拡散を伴うため、再結晶組織を制御するためには、Fe原子が拡散可能な550℃以上の温度域の昇温速度を制御することが重要となる。そのため、平均昇温速度を制御する温度域を550℃から最高到達板温までとする。
焼鈍時の最高到達板温:650〜800℃
鋼板の組織をより均一とするために、焼鈍時の最高到達板温は650℃以上とする。一方、焼鈍時の最高到達板温が800℃を超える条件で連続焼鈍するためには、鋼板の破断を防止するために、鋼板の搬送速度を低下させる必要があり、生産性が低下する。そのため、焼鈍時の最高到達板温は650℃以上800℃以下とする。好ましくは、660℃以上760℃以下である。
焼鈍時の650〜800℃の温度域での保持(加熱)時間:55sec.以下
焼鈍時の650〜800℃の温度域での保持時間が55sec.を超えるような搬送速度の条件では生産性を確保できないため、焼鈍時の650〜800℃の温度域での保持時間は55sec.以下とする。また、保持時間の下限については規定をしていないが、保持時間を短縮するために搬送速度を速くすると、蛇行させずに安定的に搬送することが困難となる。そのため、10sec.を下限とすることが好ましい。
焼鈍の加熱後冷却:650℃から350℃までの温度範囲を19sec.以内に急冷
焼鈍の加熱後に急冷処理を行う。650℃から350℃までの冷却速度の制御により、Cの析出を抑制し、固溶Cによる固溶強化を積極的に利用することで、目標とする上降伏応力を得る。
650℃から350℃までの温度範囲は急速に冷却することが重要であり、19sec.以内に急冷する。好ましくは10sec.以内で急冷する。一方、1sec.未満では著しい急冷により通板中の鋼板が破断する恐れがある。よって、1sec.以上が好ましい。なお、350℃未満の領域の冷却速度は特に限定するものではないが、350℃から150℃まで200sec.以内に冷却することが好ましい。
なお、焼鈍には連続焼鈍装置を用いればよい。また、1次冷間圧延工程後焼鈍工程前に適宜他の工程が含まれても良いし、1次冷間圧延工程の直後に焼鈍工程を行っても良い。
調質圧延工程
焼鈍工程後、圧下率:5%以下の調質圧延を行う。圧下率を大きくすると、加工時に導入される歪みが大きくなり、全伸びが低下する。本発明では、極薄材において15%以上の全伸びを確保する必要があるため、調質圧延工程における圧下率は5%以下とする。また、圧下率の下限については規定をしていないが、調質圧延工程には鋼板の表面粗さを付与する役割があり、鋼板に表面粗さを均一に付与するために、圧下率は1%以上とすることが好ましい。
なお、焼鈍工程後調質圧延工程前に適宜他の工程が含まれても良いし、焼鈍工程の直後に調質圧延工程を行っても良い。
以上により、本発明の高強度極薄鋼板が得られる。なお、本発明では、調質圧延工程後に、さらに種々の工程を行うことが可能である。例えば、本発明の高強度極薄鋼板に対して、さらに鋼板表面にめっき層を有していてもよい。めっき層としては、Snめっき層、ティンフリー等のCrめっき層、Niめっき層、Sn−Niめっき層などである。また、塗装焼付け処理工程、フィルムラミネート等の工程を行ってもよい。
表1に示す成分組成を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を実機転炉で溶製し、鋼スラブを得た。得られた鋼スラブを1200℃で再加熱した後、熱間圧延を行った。次いで、通常の方法にて酸洗後、一次冷間圧延し、冷延鋼板を製造した。得られた冷延鋼板に対して、表1に示す条件で焼鈍を行った。次いで、調質圧延を施し、極薄鋼板を得た。なお、詳細な製造条件は表2に示す。
以上により得られた極薄鋼板に対して、210℃、10分の塗装焼付け処理に相当する熱処理を行った後、引張試験を行い上降伏応力及び全伸びを測定した。また、フェライト組織の平均結晶粒径、粒度番号12.5以上のフェライト粒の割合を測定した。測定方法は以下の通りである。
引張試験は、圧延方向に対して平行な方向を引張方向とする小型試験片 (平行部長さ:30mm、平行部幅:12.5mm、標点間距離:25mm)を採取し、210℃、10分の塗装焼付相当処理を施した後に、引張速度10mm/分で引張試験を行い、上降伏応力、全伸びを測定した。
ミクロ組織は、サンプルを研磨して、ナイタル液で結晶粒界を腐食させて、光学顕微鏡で観察した。
フェライト組織の平均結晶粒径は、上記のようにして観察したミクロ組織について、JIS G 0551の切断法を用いて、圧延方向断面で測定した。
粒度番号12.5以上の粒の面積率は、上記のようにして観察したミクロ組織について、観察視野内の各フェライト粒の面積から粒度番号を算出し、粒度番号12.5以上であるフェライト粒の占める面積を視野内のフェライト組織の面積で割ることにより算出した。測定は圧延方向断面で行った。なお、フェライト粒の粒度番号はJIS G 0551の定義に従うものとした。
以上により得られた結果を製造条件と併せて、表2に示す。
Figure 0006540769
Figure 0006540769
表2より、本発明例では、550MPa以上の上降伏応力と15%以上の全伸びとを両立する、高延性かつ高強度な極薄鋼板が得られていた。
本発明によれば、高延性かつ高強度な極薄鋼板が得られる。本発明は、容器用鋼板、特に高加工度の缶胴加工を伴う3ピース缶などの、高い延性と強度、また板厚が薄いことが求められる用途に最適である。

Claims (2)

  1. 成分組成は、質量%で、C:0.020%超え0.080%以下、Si:0.04%以下、Mn:0.10%以上1.20%以下、P:0.020%超え0.20%以下、S:0.020%以下、Al:0.10%以下、N:0.0120%超え0.020%以下、Nb:0.005%以上0.030%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
    組織は、フェライト組織が面積率で組織全体の70%以上とし、該フェライト組織の平均結晶粒径が8μm以下であり、粒度番号12.5以上のフェライト粒をフェライト組織全体に対し面積%で10%以上25%以下を有し、
    塗装焼付処理後または塗装焼き付け相当の加熱処理後の上降伏応力が550MPa以上、全伸びが15%以上である、
    板厚0.4mm以下の高強度極薄鋼板。
  2. 請求項1に記載の高強度極薄鋼板の製造方法であって、鋼スラブを仕上げ圧延温度:820℃以上で圧延し、巻取温度:500〜720℃で巻取る熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延後、圧下率:80%以上で冷間圧延する一次冷間圧延工程と、
    前記一次冷間圧延工程後、550℃から最高到達板温まで平均昇温速度:5℃/sec.以上で昇温し、最高到達板温:650〜800℃とし、650〜800℃の温度域での保持時間:55sec.以下で加熱を行い、前記加熱後冷却するにあたり、650℃から350℃までの温度範囲を19sec.以内とする焼鈍工程と、
    前記焼鈍工程後、圧下率:5%以下で調質圧延を行う調質圧延工程と
    を有する高強度極薄鋼板の製造方法。
JP2017187300A 2016-10-04 2017-09-28 高強度極薄鋼板およびその製造方法 Active JP6540769B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016196272 2016-10-04
JP2016196272 2016-10-04

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018059196A JP2018059196A (ja) 2018-04-12
JP6540769B2 true JP6540769B2 (ja) 2019-07-10

Family

ID=61907670

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017187300A Active JP6540769B2 (ja) 2016-10-04 2017-09-28 高強度極薄鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6540769B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
MY196226A (en) * 2018-08-30 2023-03-23 Jfe Steel Corp Steel Sheet for Cans and Method of Producing Same
MY196469A (en) * 2018-12-20 2023-04-12 Jfe Steel Corp Steel Sheet for Cans and Method of Producing Same
WO2021009966A1 (ja) * 2019-07-18 2021-01-21 Jfeスチール株式会社 箱型焼鈍dr鋼板およびその製造方法
DE102021125692A1 (de) * 2021-10-04 2023-04-06 Thyssenkrupp Rasselstein Gmbh Kaltgewalztes Stahlflachprodukt für Verpackungen und Verfahren zur Herstellung eines Stahlflachprodukts

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08325670A (ja) * 1995-03-29 1996-12-10 Kawasaki Steel Corp 製缶時の深絞り性及びフランジ加工性と、製缶後の表面性状とに優れ、十分な缶強度を有する製缶用鋼板及びその製造方法
JP4525450B2 (ja) * 2004-04-27 2010-08-18 Jfeスチール株式会社 高強度高延性な缶用鋼板およびその製造方法
JP5162924B2 (ja) * 2007-02-28 2013-03-13 Jfeスチール株式会社 缶用鋼板およびその製造方法
JP5939368B1 (ja) * 2014-08-29 2016-06-22 Jfeスチール株式会社 缶用鋼板及びその製造方法
JP6028884B1 (ja) * 2015-03-31 2016-11-24 Jfeスチール株式会社 缶用鋼板及び缶用鋼板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018059196A (ja) 2018-04-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5135868B2 (ja) 缶用鋼板およびその製造方法
JP5884714B2 (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP5162924B2 (ja) 缶用鋼板およびその製造方法
JP5434212B2 (ja) 高強度容器用鋼板およびその製造方法
JP6540769B2 (ja) 高強度極薄鋼板およびその製造方法
JP6028884B1 (ja) 缶用鋼板及び缶用鋼板の製造方法
JP2009263789A (ja) 高強度容器用鋼板およびその製造方法
JP5939368B1 (ja) 缶用鋼板及びその製造方法
JPS60262918A (ja) ストレツチヤ−ストレインの発生しない表面処理原板の製造方法
JP6123958B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP6421773B2 (ja) 缶用鋼板およびその製造方法
JP6191807B1 (ja) 缶用鋼板およびその製造方法
JP5803660B2 (ja) 高強度高加工性缶用鋼板およびその製造方法
JP6361553B2 (ja) 高加工性高強度缶用鋼板及びその製造方法
JP5655839B2 (ja) 缶用鋼板の母材に用いる熱延鋼板およびその製造方法
TWI675112B (zh) 鋼板及其製造方法以及王冠和drd罐
KR102587650B1 (ko) 캔용 강판 및 그의 제조 방법

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20180502

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20180509

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180524

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190313

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190326

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190327

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190422

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190514

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190527

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6540769

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250