本発明は、レーザビームの照射または電気エネルギーの印加によって情報の記録および再生を行う情報記録媒体、ならびにその製造に使用するスパッタリングターゲットおよび成膜装置に関するものである。
従来から情報記録媒体として、記録層を相変化材料で形成する、相変化情報記録媒体がある。相変化情報記録媒体の中でも、レーザビームを用いて光学的に情報を記録、消去、書換、および再生するものは、光学的相変化情報記録媒体(以下では光記録媒体と記す)と呼ばれる。光記録媒体への情報の記録は、レーザビームの照射によって発生する熱により、相変化材料を、例えば、結晶相と非晶質相との間で状態変化させることによって行われる。また、情報の再生は、結晶相と非晶質相との間の反射率の違いを検出することにより行う。
光記録媒体のうち、情報の消去および書き換えが可能な書き換え型光記録媒体においては、一般に記録層の初期状態は結晶相である。情報を記録する場合には、高パワーのレーザビームを照射して記録層を溶融し、その後、急激に冷却することによってレーザ照射部を非晶質相にする。一方、情報を消去する場合には、記録時のパワーに比べて、より低パワーのレーザビームを照射して記録層を昇温し、その後、ゆっくりと冷却することによってレーザ照射部を結晶相にする。また、高パワーと低パワーとでパワー変調させたレーザビームを記録層に照射することで、記録されている情報を消去しながら新しい情報を記録すること、すなわち書き換えが可能である。
消去または書き換えを高速で行うためには、短時間で、非晶質相を結晶相へと変化させる必要がある。つまり、書き換え型光記録媒体において、高い消去性能を実現するためには、記録層を、結晶化速度の高い相変化記録材料によって形成することが必要となる。
このような書き換え型光記録媒体は、基板上に、記録層に加えて、誘電体層、反射層、および界面層等を適宜設けた構成を有する。誘電体層は繰り返し記録する際の記録層の蒸発および基板の熱変形を防止し、また、光学干渉効果により記録層の光吸収および光学的変化を効率よく生じさせる等の目的で設けられうる。誘電体層は、記録層の両側に配置される。反射層は照射されるレーザビームを効率良く使うこと、および、冷却速度を向上させて記録層を非晶質相にし易くする目的で設けられる。反射層は、通常、レーザビーム照射側から見て、記録層の奥に、反射層と記録層が誘電体層を挟むように、配置される。界面層は必要に応じて、記録層と誘電体層との間に配置され、記録層と誘電体層の間の原子および分子の相互拡散を防止する目的で設けられる。
公知の相変化材料の例として、GeTe−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、およびGeTe−SnTeなどが挙げられる。特に、GeTe−Bi2Te3は結晶化速度が高いので、これを用いて書き換え型光記録媒体の記録層を形成すると、優れた消去性能が得られる(特許文献1参照)。
また、書き換え型光記録媒体を大容量化するために、2つの情報層を1つの光記録媒体に設ける手法が報告されている(特許文献2参照)。情報は、2つの情報層のそれぞれに、媒体の片側から入射するレーザビームによって記録することができる。再生も同様である。よって、2つの情報層を有する光記録媒体の記録容量は、1つのみ情報層を有する光記録媒体の記録容量のほぼ2倍にすることができる。
この2つの情報層を有する書き換え型光記録媒体において、入射側から遠い情報層(以下、第1情報層とも呼ぶ)の記録および再生は、入射側の情報層(以下、第2情報層とも呼ぶ)を透過したレーザビームによって行われる。従って、第2情報層はできるだけ高い透過率を有することが好ましい。相変化材料は一般に消衰係数が大きいため、記録層の透過率を高くするには、第2情報層の記録層の厚さは薄いほうが良い。
また、大容量化のために情報層の数を増やし、例えば3つまたは4つの情報層を有する光記録媒体を実現するためには、入射側の情報層(第3情報層、または第4情報層)の透過率をさらに上げなければならず、記録層の厚さはさらに薄くする必要がある。
特開昭63−225935号公報
特開2000−36130号公報
しかしながら、従来のGeTe−Bi2Te3記録層においては、透過率を高めるために厚さを薄くすると、結晶化速度が低下し、消去性能が大きく低下するという問題があった。一方で、GeTe−Bi2Te3記録層においてBi2Te3の割合を多くすると、結晶化速度が上がり、消去性能は高められるが、非晶質相が不安定になり、信号の信頼性が低下するという問題もあった。
本発明は、上記問題点を解決するものであり、結晶化速度が速く、かつ非晶質相も安定な、優れた記録層を有する情報記録媒体、およびその製造方法、ならびにそのような記録層を形成するのに用いられるスパッタリングターゲットおよび成膜装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、相変化を生じ得る記録層を含む情報層を含む情報記録媒体であって、前記記録層がSbとSとを含み、かつ下記の式(1):
SbxS100-x (原子%) (1)
(添え字xは、原子%で示される組成比を表し、50≦x≦98を満たす)
で表される材料を含む情報記録媒体を提供する。
また、本発明は、上記本発明の情報記録媒体の製造方法として、相変化を生じ得る、SbとSとを含む記録層をスパッタリング法により形成する工程を含む情報層の形成工程を含む情報記録媒体の製造方法であって、前記記録層の形成工程において、SbとSとを含むスパッタリングターゲットを用い、前記スパッタリングターゲットを用いて形成される膜が、下記の式(1):
SbxS100-x (原子%) (1)
(添え字xは、原子%で示される組成比を表し、50≦x≦98を満たす)
で表される材料を含む、製造方法を提供する。
本発明はまた、上記本発明の情報記録媒体の記録層の成膜に用いるのに適したスパッタリングターゲットとして、SbとSとを含み、下記の式(11):
SbXS100-X (原子%) (11)
(添え字Xは、原子%で示される組成比を表し、50≦X≦98を満たす)
で表される材料を含む、スパッタリングターゲットを提供する。
本発明はさらにまた、電源、排気口およびガス供給口を有する真空容器、前記排気口を介して前記真空容器に接続された真空ポンプ、前記真空容器内に配置された陽極および陰極、および前記陽極に接続されたスパッタリングターゲットを含む成膜装置であって、前記スパッタリングターゲットが、前記本発明のスパッタリングターゲットである、成膜装置を提供する。
本発明の情報記録媒体は、高い消去率を示し、記録再生特性に優れ、かつ高い信号信頼性を示す媒体である。また、本発明の情報記録媒体の製造方法は、本発明の情報記録媒体を容易に製造することを可能にする。さらに、本発明のスパッタリングターゲットおよび成膜装置によれば、本発明の情報記録媒体を容易に製造することができる。
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の記録再生装置の一例の概略図
本発明の情報記録媒体の記録再生に用いる記録パルス波形の一例の概略図
本発明の情報記録媒体、及び電気的情報記録再生装置の構成の一部を模式的に示す図
本発明の大容量の電気的情報記録媒体の構成の一部を模式的に示す図
本発明の電気的情報記録媒体とその記録再生システムの構成の一部を模式的に示す図
本発明の電気的情報記録媒体に適用される記録・消去パルス波形の一例を示す図
本発明の情報記録媒体を製造する成膜装置の一部を模式的に示す図
符号の説明
11...情報記録媒体、12...情報記録媒体、13...情報記録媒体、14...情報記録媒体、15...情報記録媒体、16...情報記録媒体、17...情報記録媒体、18...情報記録媒体、21...基板、22...分離層、23...透明層、24...基板、25...基板、26...ダミー基板、27...接着層、28...分離層、29...分離層、31...レーザビーム、32...対物レンズ、40...情報層、41...第1情報層、42...第2情報層、43...第3情報層、44...第4情報層、48...第N−1情報層、49...第N情報層、402...反射層、403...反射層側界面層、404...第1の誘電体層、405...第1の界面層、406...記録層、407...第2の界面層、408...第2の誘電体層、412...反射層、414...第1の誘電体層、416...記録層、418...第2の誘電体層、421...透過率調整層、422...反射層、424...第1の誘電体層、426...記録層、428...第2の誘電体層、431...透過率調整層、432...反射層、434...第1の誘電体層、436...記録層、438...第2の誘電体層、441...透過率調整層、442...反射層、444...第1の誘電体層、446...記録層、448...第2の誘電体層、491...透過率調整層、492...反射層、494...第1の誘電体層、496...記録層、498...第2の誘電体層、501...レーザダイオード、502...レーザビーム、503...ハーフミラー、504...対物レンズ、505...モーター、506...情報記録媒体、507...フォトディテクター、61,81...電気的情報記録媒体、62...基板、63...下部電極、64...第1誘電体層、65...第1記録層、66...第2記録層、67...第2誘電体層、68...上部電極、69...印加部、70...抵抗測定器、71,72...スイッチ、73...パルス電源、74...電気的情報記録再生装置、75...ワード線、76...ビット線、77...メモリセル、78...アドレス指定回路、79...記憶装置、80...外部回路、901,902,903,904,905,908,909...記録波形、906,907...消去波形、667...真空容器、668...排気口、669...ガス供給口、670...陽極、671...基板、672...スパッタリングターゲット、673...陰極、674...電源。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、以下の実施の形態において、同一の要素に同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
実施の形態1として、本発明の情報記録媒体(以下、「記録媒体」または「媒体」と呼ぶことがある)の一例を説明する。実施の形態1の情報記録媒体11の部分断面図を図1に示す。情報記録媒体11は、光記録媒体であり、情報はレーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体11は、基板21上に、情報層40および透明層23がこの順に設けられた構成を有する。透明層23は、基板21よりも薄い厚さを有する。図示した形態において、レーザビームは、透明層23の側から入射する。
レーザビーム31の波長λが短いほど、対物レンズ32によって小さなスポット径に集光できる。しかし、波長λが短すぎると、透明層23などによるレーザビーム31の光吸収が大きくなる。そのため、レーザビームの波長λは350nm〜450nmの範囲内であることが好ましい。
図1に示すように、情報層40においては、基板21に近い側から、反射層402、第1の誘電体層404、記録層406及び第2の誘電体層408がこの順に設けられている。また必要に応じて、図2に示すように、反射層402と第1の誘電体層404との間に反射層側界面層403を、第1の誘電体層404と記録層406の間に第1の界面層405を、第2の誘電体層408と記録層406の間に第2の界面層407を設けてもよい。
この情報記録媒体11への情報の記録は、透明層23側からレーザビーム31を対物レンズ32で集光し、情報層40の記録層406に照射して行う。この情報記録媒体11に記録された情報も、同様にレーザビームを照射して行う
基板21は円盤形状を有し、情報層40と透明層23を保持するために用いられ、それらの層を形成するときの支持体として機能する。基板21の情報層40と接する表面には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。基板21の情報層40と接しない表面は、平滑であることが好ましい。基板21は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を材料として用いて、形成することができる。特に、ポリカーボネート樹脂は、転写性および量産性に優れ、低コストであることから、基板21の材料として好ましい。
次に、情報層40を構成する各層について説明する。
記録層406の材料は、レーザビーム31の照射によって結晶相と非晶質相との間で相変化を生じる材料である。本発明においては、記録層406の材料として、SbとSとを含む材料を用いる。記録層406がSbのみで構成されると、非晶質相が不安定になり信号の信頼性が低下してしまう。SbにSを加えることにより非晶質相を安定化できる。また、SbにSを加えることにより、記録層406の透過率を高くすることができる。
具体的には、記録層406の厚さが7nmの場合の結晶化温度をTx(室温において非晶質相の相変化材料406を50℃/minで緩やかに昇温させたときに、相変化材料が結晶相に相変化する温度)とすると、記録層406がSbのみから成るときにはTx=100℃であるのに対し、記録層406がSb80S20(添え字は、原子%で表される組成比)から成るときにはTx=200℃となり、Sbのみから成る記録層に比べ非晶質相が安定する。
また、SbとSとの組み合わせにおいて、Sbが50原子%未満になると、結晶化速度が低すぎて、書き換え型光記録媒体として実用可能な消去性能が得られない。そのため、記録層406において、SbとSは、下記の式(1):
SbxS100-x (原子%) (1)
(添え字xは、原子%で示される組成比を表し、50≦x≦98を満たす)
で表される材料として含まれることが好ましい。xが98を超えると、SbにSを添加することによる効果が得られない。xは、より好ましくは、60≦x≦80を満たす。この式は、Sb原子の数とS原子の数を合わせて100原子%としたときの組成比を示すものである。よって、記録層406は、SbおよびS以外の元素を含んでよい。
記録層は、好ましくは、Sb原子とS原子とから実質的に成る。ここで、「実質的に」という用語は、不可避的に少量の他の元素(例えば、スパッタリング中の雰囲気ガスに含まれる元素等)が含まれることを考慮して使用している。より具体的には、記録層を構成する全原子のうち、SbおよびS以外の原子の割合が10原子%未満であるときには、その記録層は、SbとSとから実質的に成るといえる。SbおよびS以外の原子の割合は、より好ましくは、1原子%未満である。
記録層406の材料として、SbとSと、Ge、Sn、Bi、InおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素(M)とを含むものを用いることができる。これは、先に示したSbとSとを含む材料に、前記のMで表される元素を加えることにより、結晶化速度の調節および非晶質相の安定性の調節が可能となることによる。例えば、SnまたはBiを、SbとSとから成る材料に添加すると、材料の結晶化速度が高くなる。また、In、GeおよびMnはそれぞれ、SbとSとから成る材料に添加すると、材料の非晶質相を安定化できる。
Mの種類に応じて、その好ましい添加量は異なる。ここでは、上記五つの元素を、Ge、InおよびSnがM1という群に属し、BiおよびMnがM2という群に属するように、分けることが好ましい。記録層406は、M1を含む場合には、記録層406は、下記の式(2):
(SbzS1-z)100-yM1y (原子%) (2)
(添え字zは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦z≦0.98を満たし、添え字yは、原子%で示される組成比を表し、0<y≦30を満たす)
で表される材料を含むことが好ましい。
上記式(2)において、M1はGe、InおよびSnから選ばれる少なくとも一つの元素である。M1として、二つの元素(例えば、GeおよびSn、またはInおよびSn)が含まれてよく、三つの元素が含まれてよい。zおよびyは、0.5≦z≦0.98かつ2≦y≦20を満たすことがより好ましく、0.6≦z≦0.8かつ5≦y≦20を満たすことがさらにより好ましい。
記録層406が上記式(2)の材料を含む場合、記録層は、より好ましくは、Sb原子とS原子とM1原子とから実質的に成る。ここで、「実質的に」という用語は、不可避的に少量の他の元素(例えば、スパッタリング中の雰囲気ガスに含まれる元素等)が含まれることを考慮して使用している。より具体的には、記録層を構成する全原子のうち、Sb、SおよびM1以外の原子の割合が10原子%未満であるときには、その記録層は、SbとSとM1とから実質的に成るといえる。Sb、SおよびM1以外の原子の割合は、より好ましくは、1原子%未満である。
記録層406がM2を含む場合、記録層406は、下記の式(3):
(SbaS1-a)100-bM2b (原子%) (3)
(添え字aは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦a≦0.98を満たし、添え字bは、原子%で示される組成比を表し、0<b≦20を満たす)
で表される材料を含むことが好ましい。上記式において、M2はBiおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素である。M2として、BiおよびMnの両方が含まれてよい。bは、より好ましくは、2≦b≦10を満たす。
記録層406が上記式(3)の材料を含む場合、記録層は、好ましくは、Sb原子とS原子とM2原子とから実質的に成る。ここで、「実質的に」という用語は、不可避的に少量の他の元素(例えば、スパッタリング中の雰囲気ガスに含まれる元素等)が含まれることを考慮して使用している。より具体的には、記録層を構成する全原子のうち、Sb、SおよびM2以外の原子の割合が10原子%未満であるときには、その記録層は、SbとSとM2とから実質的に成るといえる。Sb、SおよびM2以外の原子の割合は、より好ましくは、1原子%未満である。
あるいは、記録層406は、M1およびM2の両方を含み、下記の式(4):
(SbcS1-c)100-d-eM1dM2e (原子%) (4)
(添え字cは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦c≦0.98を満たし、添え字dおよびeは、原子%で示される組成比を表し、0<d<30、0<e≦20、0<d+e≦30を満たす)
で表される材料を含んでよい。
記録層406が上記式(4)の材料を含む場合、記録層は、好ましくは、Sb原子とS原子とM1原子とM2原子とから実質的に成る。ここで、「実質的に」という用語は、不可避的に少量の他の元素(例えば、スパッタリング中の雰囲気ガスに含まれる元素等)が含まれることを考慮して使用している。より具体的には、記録層を構成する全原子のうち、Sb、S、M1およびM2以外の原子の割合が10原子%未満であるときには、その記録層は、SbとSとM1とM2とから実質的に成るといえる。Sb、S、M1およびM2以外の原子の割合は、より好ましくは、1原子%未満である。
記録層406は、非晶質相がレーザビーム照射時に容易に結晶相に変化できることが好ましく、かつレーザビーム非照射時には結晶相に変化しないことが好ましい。記録層406の厚さが小さすぎると、十分な反射率及び反射率変化が得られなくなる。また、記録層406の厚さが大きすぎると、熱容量が大きくなるため記録感度が低下する。そのため、記録層406の厚さは5nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、8nm〜12nmの範囲内であることがより好ましい。
反射層402は、記録層406に吸収される光量を増やすという光学的な機能と、記録層406で生じた熱を拡散させるという熱的な機能とを有する。反射層402の材料として、Ag、Au、Cu、およびAlから選ばれる少なくとも1つの元素を含むものを用いることができる。例えば、Ag−Cu、Ag−Ga−Cu、Ag−Pd−Cu、Ag−Nd−Au、AlNi、AlCr、Au−CrまたはAg−In等の合金を、反射層402の材料として用いることができる。特にAg合金は熱伝導率が大きいため、反射層402の材料として好ましい。反射層402の厚さが大きいほど、熱拡散機能はより強化される。しかし、反射層402の厚さが大きすぎると、熱が過度に拡散されて、記録層406の記録感度が低下する。そのため、反射層402の厚さは、30nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、70nm〜140nmの範囲内であることがより好ましい。
第1の誘電体層404は、記録層406と反射層402との間にあり、記録層406から反射層402への熱拡散を調節する熱的な機能、ならびに反射率および吸収率などを調節する光学的な機能を有する。第1の誘電体層404の材料としては、例えば、ZrO2、HfO2、ZnO、SiO2、SnO2、Cr2O3、TiO2、In2O3、Ga2O3、Y2O3、CeO2、およびDyO2等の酸化物、ZnS、およびCdS等の硫化物、ならびにSiCなどの炭化物から選択される1種類の化合物、またはこれらの化合物から選択される2種類以上の化合物の混合物、例えばZrO2−SiO2、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZnS−SiO2、およびSnO2−SiCを用いることができる。特にZnS−SiO2は第1の誘電体層の材料として優れている。ZnS−SiO2は、成膜速度が速く、透明であり、機械特性および耐湿性が良好であることによる。
第1の誘電体層404の厚さが大きすぎると、反射層402の冷却効果が弱くなり、記録層406からの熱拡散が小さくなるため、記録層が非晶質化しにくくなる。また、第1の誘電体層404の厚さが小さすぎると、反射層402の冷却効果が強くなり、記録層406からの熱拡散が大きくなって、感度が低下する。そのため、第1の誘電体層404の厚さは、2nm〜40nmの範囲内であることが好ましく、8nm〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
反射層側界面層403は、反射層402が、第1の誘電体層404の材料によって腐食または破壊されるのを防ぐように作用する。具体的には反射層402がAgを含み、かつ、第1の誘電体層404がSを含む(例えばZnS−SiO2を含む)とき、反射層側界面層403は、AgとSの反応に起因する反射層402の腐食を防ぐ。
反射層側界面層403の材料としては、Ag以外の金属、例えばAl、またはAl合金を用いることができる。また、反射層側界面層403の材料としては、Sを含まない誘電体材料を用いることができる。そのような材料は、例えば、ZrO2、HfO2、ZnO、SiO2、SnO2、Cr2O3、TiO2、In2O3、Ga2O3、Y2O3、CeO2、およびDyO2等の酸化物、ならびにSiCなどの炭化物から選択される1種類の化合物、またはこれらの化合物から選ばれる2種類以上の化合物の混合物、例えばZrO2−SiO2、ZrO2−SiO2−Cr2O2、ZrO2−SiO2−Ga2O2、HfO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、およびSnO2−SiCである。または、Cなどを用いて反射層側界面層403を形成してよい。
反射層側界面層403の厚さは大きすぎると、第1の誘電体層404の熱的及び光学的な働きが妨げられ、また、小さすぎると、反射層402の腐食および破壊が十分に防止されないことがある。そのため、反射層側界面層403の厚さは1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、5nm〜40nmの範囲内であることがより好ましい。
第1の界面層405は、繰り返しの記録によって、第1の誘電体層404と記録層406との間で生じる物質移動を防止する機能を有する。第1の界面層405は、記録の際に溶融しない程度の高い融点を有し、記録層406との密着性が良い材料で形成することが好ましい。第1の界面層405の材料は、例えば、ZrO2、HfO2、ZnO、SiO2、SnO2、Cr2O3、TiO2、In2O3、Ga2O3、Y2O3、CeO2、およびDyO2等の酸化物、ZnSおよびCdS等の硫化物、ならびにSiCなどの炭化物から選ばれる1種類の化合物またはこれらの化合物から選ばれる2種類以上の化合物の混合物、例えば、ZrO2−SiO2、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−SiO3−Cr2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZnS−SiO2、SnO2−SiCを用いることができる。またはCなどである。特にGa2O3、ZnOおよびIn2O3などが第1の界面層405の材料として好ましい。これらは、記録層406との密着性が良いことによる。
第1の界面層405の厚さが小さすぎると、界面層としての効果が発揮されなくなり、大きすぎると、第1の誘電体層404の熱的および光学的な働きが妨げられる。そのため、第1の界面層405の厚さは、0.3nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
第2の誘電体層408は、記録層406よりもレーザビーム入射側により近い位置に存在する。第2の誘電体層408は、記録層406の腐食および変形などを防止する機能と、反射率および吸収率などを調整する光学的な機能とを有する。また、第2の誘電体層408の材料の例は、第1の誘電体層404の材料として挙げた例と同様である。特に、ZnS−SiO2は第2の誘電体層の材料として優れている。ZnS−SiO2は、成膜速度が速く、透明であり、機械特性および耐湿性が良好であることによる。
第2の誘電体層408の厚さが大きすぎると、記録層406の腐食および変形などを防止する機能が低下する。また、第2の誘電体層408の厚さは、マトリクス法に基づく計算により、記録層406が結晶相である場合と非晶質相である場合の反射光量の変化が大きくなる条件を満足するように、厳密に決定することができる。第2の誘電体層408の厚さは、20nm〜80nmの範囲内であることが好ましい。
第2の界面層407は、第1の界面層405と同様に、繰り返し記録によって第2の誘電体層408と記録層406との間で生じる物質移動を防止する機能を有する。従って、第2の界面層407は、第1の界面層405と同様の性能を有するように、第1の界面層405の材料として例示した材料で形成されることが好ましい。
第2の界面層407の厚さは、第1の界面層405と同様に、0.3nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
上記、反射層402、第1の誘電体層404、記録層406及び第2の誘電体層408を設け、さらに必要に応じて反射層側界面層403、第1の界面層405及び第2の界面層407を設けることによって情報層40は構成される。
透明層23は、情報層40のレーザビーム31入射側にあり、情報層40を保護する。透明層23は、レーザビーム31に対して小さい光吸収を有することが好ましい。透明層23は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)、遅効性熱硬化性樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を用いて、形成することができる。また、これらの材料よりなるシートを、透明層23として用いてもよい。
透明層23の厚さが小さすぎると、情報層40を保護する機能が発揮されない。また、透明層23の厚さが大きすぎると、情報記録媒体11において、レーザビーム31入射側から情報層40までの距離が対物レンズ32の焦点距離よりも長くなって、レーザビーム31の焦点を記録層406に合わせることができなくなる。NAが0.85である場合には、透明層の厚さは5μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、40μm〜110μmの範囲内であることがより好ましい。
情報記録媒体11は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板21(厚さは例えば1.1mm)上に情報層40を形成する。情報層40は多層膜から成り、各層(膜)は、順次スパッタリングすることによって形成できる。なお、基板21を構成する材料によっては、基板21は高い吸湿性を示すことがあるので、必要に応じて、スパッタリングをする前に水分を除去する基板アニール工程を実施してもよい。
各層は、各層を構成する材料のスパッタリングターゲットを、Arガス、KrガスまたはXeガスなどの希ガス雰囲気中、または希ガスと反応ガス(酸素ガス及び窒素ガスから選ばれる少なくとも一つのガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成できる。スパッタリング方法としてはDC(直流)スパッタリング法とRF(高周波)スパッタリング法とを必要に応じて使い分ける。通常、DCスパッタリングは、高い成膜レートで実施できるため、好ましく用いられる。しかし、誘電体材料など導電性の低い材料は、DCスパッタリング法によってスパッタリングできないことがあり、その場合は、RFスパッタリング法が用いられる。導電性の高い誘電体材料、およびスパッタリングターゲット作製時に工夫して導電性を高めた誘電体材料等は、DCスパッタリング法またはパルスDCスパッタリング法によってスパッタリングできる。
スパッタリングによって形成される各層の組成は、もとのスパッタリングターゲットの組成と完全には一致しないことがある。例えば、酸化物の場合、スパッタリングによって酸素欠損がおこりやすい。その場合、反応ガスとして酸素ガスを用いることで酸素欠損を補うことができる。スパッタリングターゲットの組成は、スパッタリングによって形成された膜が所望の組成となるように決定される。スパッタリングターゲットの組成と、スパッタリングによって形成された膜の組成は、一致してもよい。
ここで、本発明の情報記録媒体の製造に用いられるスパッタリング装置(成膜装置)の一例を説明する。図16は、スパッタリング装置を用いて成膜する様子を模式的に示している。図16に示すように、このスパッタリング装置では、真空容器667に、排気口668を介して真空ポンプ(図示せず)が接続され、真空容器667内で、高真空が保たれる。ガス供給口669からは、一定流量のガスが供給される。基板671(ここでの基板とは、その表面に膜を堆積させる基材である)は陽極670に載置されている。真空容器667を接地することにより、真空容器667及び基板671が陽極に保たれている。
スパッタリングターゲット672は、陰極673に接続されており、スイッチ(図示せず)を介して電源674に接続されている。図示した形態において、陰極673は水冷される。陽極670と陰極673との間に所定の電圧を加えることにより、スパッタリングターゲット672から粒子が放出され、基板671上に薄膜を形成する。この装置は、情報層を形成する各層を形成するために用いることができ、また、後述する他の形態の媒体を製造するためにも用いることができる。
図示した形態において、情報層40の形成は、具体的には、基板21上に反射層402を形成することから開始する。反射層402は、反射層402を構成する金属又は合金からなるスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、DCスパッタリングすることにより、形成できる。
続いて、必要に応じて反射層402上に、反射層側界面層403を形成する。反射層側界面層403は、反射層側界面層403を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることにより、形成する。反射層側界面層403の材料が、金属など導電性の高い材料である場合は、DCスパッタリング法を用い、酸化物など導電性の低い材料である場合は、RFスパッタリング法を用いるとよい。
続いて、反射層側界面層403上、または、反射層402上に、第1の誘電体層404を形成する。第1の誘電体層404は、第1の誘電体層404を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成する。場合により、第1の誘電体層404は、DCスパッタリング法により形成してよい。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層404上に、第1の界面層405を形成する。第1の界面層405は、第1の界面層405を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリングすることによって形成する。場合により、第1の界面層405は、DCスパッタリング法により形成してよい。
続いて、第1の界面層405上、または、第1の誘電体層404の上に記録層406を形成する。記録層406は、例えば、SbとSとを含むスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成してよい。具体的には、記録層406が上記式(1)で表される材料を含む組成となるように、組成を調整したスパッタリングターゲットをDCスパッタリングすることによって、記録層406は形成できる。そのようなスパッタリングターゲットは、例えば、SbとSとを含み、下記の式(11):
SbXS100-X (原子%) (11)
(添え字Xは、原子%で示される組成比を表し、50≦X≦98を満たす)
で表される材料を含む、スパッタリングターゲットである。
また、記録層406を形成するのに用いるスパッタリングターゲットとしては、上記のスパッタリングターゲットに、さらにSn、Bi、In、Ge及びMnから選ばれる少なくとも1つの元素を添加したスパッタリングターゲットを用いてもよい。具体的には、記録層406が上記式(2)、(3)または(4)で表される材料を含む組成となるように、組成を調整したスパッタリングターゲットを、DCスパッタリングすることによって、記録層406は形成できる。そのようなスパッタリングターゲットは、例えば、下記式(12)〜(14)で表される材料を含む。
(SbZS1-Z)100-YM1Y (原子%) (12)
(M1はGe、InおよびSnから選ばれる少なくとも一つの元素であり、添え字Zは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦Z≦0.98を満たし、添え字Yは、原子%で示される組成比を表し、0<Y≦30を満たす)
(SbAS1-A)100-BM2B (原子%) (13)
(M2はBiおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素であり、添え字Aは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦A≦0.98を満たし、添え字Bは、原子%で示される組成比を表し、0<B≦20を満たす)
(SbCS1-C)100-D-EM1DM2E (原子%) (14)
(M1はGe、InおよびSnから選ばれる少なくとも一つの元素であり、M2はBiおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素であり、添え字Cは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦C≦0.98を満たし、添え字DおよびEは、原子%で示される組成比を表し、0<D<30、0<E≦20、0<D+E≦30を満たす)
あるいは、記録層406は、Sb、S、M(但し、MはSn、Bi、In、Ge及びMnのうち少なくとも1つの元素)、Sb−S、Sb−M、S−M及びSb−S−Mで表されるスパッタリングターゲットから選ばれる少なくとも2個以上のスパッタリングターゲットを同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。その場合には、使用するスパッタリングターゲットの数、ならびに電源の出力に応じて、得られる記録層の組成が決定されることになるので、それらを適宜選択して、形成された膜が所望の組成となるようにスパッタリングする。このように2種以上のスパッタリングターゲットを使用することは、混合物のスパッタリングターゲットを形成するのが困難な場合に有用である。
続いて、必要に応じて、記録層406上に、第2の界面層407を形成する。第2の界面層407は、第2の界面層407を構成する材料から成るスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリングすることによって形成する。場合により、第2の界面層407は、DCスパッタリングにより形成してよい。
続いて、第2の界面層407上、または、記録層406上に第2の誘電体408を形成する。第2の誘電体層408は、第2の誘電体層408を構成する材料から成るスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリングすることによって形成する。場合により、第2の誘電体層407は、DCスパッタリングにより形成してよい。
このようにして、基板21上に情報層40を形成し、その後、情報層40上に透明層23を形成する。透明層23は、第2情報層41上に紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)または遅効性熱硬化性樹脂を、スピンコート法により塗布した後、この樹脂を硬化させることによって形成できる。また、透明層23は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、またはガラス等から成る、円盤状の板またはシートを用いて形成してよい。この場合、透明層23は、情報層40上に、紫外線硬化性樹脂または遅効性熱硬化性樹脂を塗布し、塗布した樹脂に板またはシートを密着させた後、硬化性樹脂を硬化させることによって形成できる。別法として、板またはシートに粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、それから板またはシートを第2の誘電体層408に密着させることもできる。
情報記録媒体11の記録層406は、通常、成膜したままの状態(アズデポ(as-depo)の状態)では非晶質状態である。よって、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層406を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
以上のようにして、情報記録媒体11は製造される。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることも可能である。
(実施の形態2)
実施の形態2として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態2の情報記録媒体12の部分断面図を図3に示す。情報記録媒体12は、多層光記録媒体であり、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体12においては、基板21上に、第1情報層41、第2情報層42・・・第N−1情報層48、第N情報層49までのN個の情報層(NはN≧2の整数)、及び透明層23がこの順に設けられている(以下、レーザ入射側とは反対側から数えてK番目(1≦K≦N)の情報層を第K情報層と呼ぶ)。情報層と情報層との間には、分離層22、・・・、28、29が設けられている。
情報記録媒体12では、第N情報層49よりも基板21側にある情報層に到達するレーザビームおよびその反射光は、その情報層よりレーザビーム31入射側に近い情報層を透過することにより、減衰する。そのため、第1情報層41、第2情報層42、・・・及び第N―1情報層48は、高い記録感度と高い反射率を有する必要があり、第2情報層42・・・第N−1情報層48及び第N情報層49は、高い透過率を有する必要がある。
基板21及び透明層23の材料、形状および機能は、実施の形態1で説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。
分離層22、・・・、28、29は、情報記録媒体12の第1情報層41、第2情報層42・・・第N情報層49のそれぞれのフォーカス位置を区別するために設ける層である。分離層22、・・・、28、29の厚さは、対物レンズ32の開口数NAとレーザビーム31の波長λにより決定される焦点深度以上であることが望ましい。一方、分離層22、・・・、28、29により分離されたすべての情報層は、対物レンズ32により集光可能な範囲に収まる必要がある。この要求を満たすには、分離層22、・・・、28、29等はある程度薄くする必要がある。仮に、λが405nm、NAが0.85である場合には、分離層22、・・・、28、29の厚さは、5μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
分離層22、・・・、28、29は、レーザビーム31に対して小さい光吸収を有することが好ましい。分離層22、・・・、28、29のレーザビーム31照射側には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。分離層22、・・・、28、29の材料は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂、遅効性熱硬化性樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等であってよい。
なお、本発明を、図3に示す媒体のように、多層構造の媒体として提供する場合、N個の情報層のうち少なくとも1つの第K情報層(Kは1≦K≦Nの整数)が相変化を生じ得る記録層を含むものであればよい。例えば、第N情報層49のみが、先に実施の形態1の記録層406に関連して説明した、SbとSとを含み、上記式(1)〜(4)のいずれかで表される材料を含む記録層(以下の説明を含む本明細書において、そのような記録層を「SbとSとを含む記録層」と呼ぶことがある)を含む書き換え型の情報層であってよい。その場合、第1情報層41から第N−1情報層48までのN−1個の情報層が、再生専用の情報層、あるいは1回のみ書込み可能な追記型の情報層としてもよい。
あるいは、第N情報層から第2情報層までのN−1個の情報層のうち、少なくとも一つの情報層が、SbとSを含む記録層を含む、書き換え型の情報層であってよい。SbとSを含み、上記式(1)〜(4)で示される材料は、高い透過性を有するので、第1情報層以外の情報層(即ち、その情報層を通過した光が別の情報層の記録再生に用いられる情報層)の記録層を構成するのに適している。あるいはまた、すべての情報層が、SbとSとを含む記録層を有してよい。SbとSとを含む記録層を媒体において1つだけ設ける場合、SbとSとを含む記録層は、第N情報層に含まれることが好ましい。第N情報層は、最も高い透過率を要するからである。
以下、第N情報層49の構成を説明する。
図3に示すように、第N情報層49においては、基板21に近い側から透過率調整層491、反射層492、第1の誘電体層494、記録層496及び第2の誘電体層498がこの順に設けられている。また、必要に応じて、反射層492と第1の誘電体層494との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層494と記録層496との間に第1の界面層を、第2の誘電体層498と記録層496との間に第2の界面層を設けてもよい。図3において、反射層側界面層は、層491と492との間に、493で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層492と494との間に、495で表される層として示すことができ、第2の界面層は、層496と498との間に、497で表される層として示すことができる。
記録層496の材料として、実施の形態1の記録層406の材料と同様の材料を用いることができる。SbとSを含む材料は透明性が高いため、記録層496の材料として特に適している。また、他の情報層がSbとSとを含む記録層を有する場合には、記録層496の材料として、(Ge−Sn)Te、GeTe−Sb2Te3、(Ge−Sn)Te−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、(Ge−Sn)Te−Bi2Te3、GeTe−(Sb−Bi)2Te3、(Ge−Sn)Te−(Sb―Bi)2Te3、GeTe−(Bi―In)2Te3、(Ge―Sn)Te−(Bi―In)2Te3、Sb−Te、Sb−Ge、(Gb−Te)−Ge、Sb−In、(Sb−Te)−In、Sb−Ga及び(Sb−Te)−Gaのいずれかを含む材料を用いることもできる。記録層496の厚さは、第N情報層49の透過率を高くするために、10nm以下であることが好ましく、2nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
反射層492は、実施の形態1の反射層402と同様な機能を有する。すなわち、記録層496に吸収される光量を増やすという光学的な機能と、記録層496で生じた熱を拡散させるという熱的な機能とを有する。そのため、反射層492の材料の例は、実施の形態1で説明した反射層402の材料の例と同様である。特にAg合金は熱伝導率が大きいため、反射層492の材料として好ましい。
反射層492の厚さは、第N情報層49の透過率を高くするために、20nm以下であることが好ましく、3nm〜14nmの範囲内であることがより好ましい。反射層492の厚さがこの範囲内にあると、反射層492の光学的及び熱的な機能が十分に発揮される。
第1の誘電体層494は、実施の形態1の第1の誘電体層404と同様な機能を有する。すなわち、記録層496から反射層492への熱拡散を調節する熱的な機能と、反射率および吸収率等を調節する光学的な機能とを有する。したがって、第1の誘電体層494の材料の例は、実施の形態1の第1の誘電体層404の材料の例と同様である。
第1の誘電体層494の厚さは、光学的及び熱的な機能が十分に発揮されるように、1nm〜40nmの範囲内であることが好ましく、4nm〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
第2の誘電体層498は、実施の形態1の第2の誘電体層408と同様な機能を有する。すなわち、記録層496の腐食および変形等を防止する機能と、反射率および吸収率等を調整する光学的な機能とを有する。そのため、第2の誘電体層498の材料の例は、実施の形態1で説明した第2の誘電体層408の材料の例と同様である。第2の誘電体層498の厚さは、マトリクス法に基づく計算により、記録層496が結晶相である場合と非晶質相である場合の反射光量の変化が大きくなる条件を満足するように厳密に決定することができる。
透過率調整層491は誘電体からなり、第N情報層49の透過率を調節する機能を有する。この透過率調整層491によって、記録層496が結晶相である場合の第N情報層49の透過率Tc(%)と、記録層496が非晶質相である場合の第N情報層49の透過率Ta(%)とを共に高くすることができる。
透過率調整層491は、TiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3、SiO2、Cr2O3、CeO2、Ga2O3、およびBi2O3等の酸化物、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ge−N、Cr−N、およびAl−N等の窒化物、ならびにZnSなどの硫化物から選択される1種類の化合物、またはこれらの化合物から選択される2種類以上の化合物の混合物で形成されてよい。透過率調整層491の屈折率ntと消衰係数ktは、透過率TcおよびTaを高めるために、nt≧2.4、かつ、kt≦0.1であることが好ましい。この条件を満たす材料として、TiO2またはTiO2を含む材料を用いることが好ましい。これらの材料は屈折率が大きく(nt=2.6〜2.8)、消衰係数が小さい(kt=0.0〜0.1)ため、これらの材料を用いて形成した透過率調整層491は、第N情報層49の透過率を効果的に高めることによる。
透過率調整層491の厚さが、略λ/8nt(ただし、λはレーザビーム31の波長λ、ntは透過率調整層491の材料の屈折率)であるときに、透過率TcおよびTaがより効果的に高められる。仮に、λ=405nm、nt=2.6とした場合には、透過率調整層491の厚さは、反射率など他の特性も考慮して、5nm〜36nmの範囲内であることが好ましい。
反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層は、それぞれ実施の形態1の反射層側界面層403、第1の界面層405及び第2の界面層407と同様の機能を有する。よって、これらの層の材料の例は、それぞれ実施の形態1で説明した、反射層側界面層403、第1の界面層405及び第2の界面層407の材料の例と同様である。
情報記録媒体12は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板21上に第1情報層41から第N−1情報層48までのN−1個の情報層を、分離層22、・・・、28等を介して順次積層する。各情報層は、多層膜から成り、情報層を構成する各層(膜)は、順次スパッタリングすることによって形成できる。また、分離層22、・・・、28等は、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)または遅効性熱硬化性樹脂を情報層上に塗布し、次に全体を回転させて樹脂を均一に延ばし(スピンコート)、その後、この樹脂を硬化させることによって形成できる。分離層22、・・・、28等がレーザビーム31の案内溝を備える場合、案内溝は、溝が形成された基板(型)を硬化前の樹脂に密着させ、その状態で樹脂を硬化させた後、基板(型)を剥がすことによって案内溝を形成できる。
このようにして、基板21上にN−1個の情報層を、分離層22、・・・、28等を介して積層したのち、第N−1情報層上に、分離層29を形成する。
続いて、分離層29上に第N情報層49を形成する。
具体的には、まず分離層29上に透過率調整層491を形成する。透過率調整層491は、透過率調整層491を構成する材料から成るスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリング法またはDCスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、透過率調整層491上に、反射層492を形成する。反射層492は、実施の形態1の反射層402を形成する方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層492上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態1の反射層側界面層403を形成する方法と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層492上に、第1の誘電体層494を形成する。第1の誘電体層494は、実施の形態1の第1の誘電体層404を形成する方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層494上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態1の第1の界面層405の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層494の上に記録層496を形成する。記録層496は、SbおよびSを含む場合には、実施の形態1の記録層406の形成方法と同様の方法で形成できる。記録層406が他の材料で形成される場合には、その材料に応じてスパッタリングターゲットを選択して、スパッタリング法により形成してよい。
続いて、必要に応じて、記録層496上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態1の第2の界面層407の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層496上に第2の誘電体498を形成する。第2の誘電体層498は、実施の形態1の第2の誘電体層408の形成方法と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層29上に第N情報層49を形成し、その後、第N情報層49上に透明層23を形成する。透明層23は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
情報記録媒体12の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるため、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
以上のようにして、情報記録媒体12を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
(実施の形態3)
実施の形態3として、実施の形態2の本発明の多層記録媒体において、Nが2である、すなわち2個の情報層によって構成された記録媒体の一例を説明する。実施の形態3の情報記録媒体13の部分断面図を図4に示す。情報記録媒体13は、二層光記録媒体であって、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体13においては、基板21上に、第1情報層41、分離層22、第2情報層42及び透明層23がこの順に設けられている。
基板21、分離層22及び透明層23それぞれの材料、形状および機能は、実施の形態1及び2で説明したとおりである。
第2情報層42は、実施の形態2で説明した第N情報層49と同様の役割を果たす(実施の形態3ではN=2であるため)。そのため、第2情報層42を構成する各層は、実施の形態2で説明した第N情報層49を構成する各層の材料で形成することができる。また、第2情報層42を構成する各層の形状及び機能は、実施の形態2で説明した第N情報層49を構成する各層の形状及び機能と同様である。
以下、第1情報層41の構成について説明する。
図4に示すように、第1情報層41においては、基板21に近い側から反射層412、第1の誘電体層414、記録層416及び第2の誘電体層418がこの順に設けられている。また、必要に応じて、反射層412と第1の誘電体層414との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層414と記録層416との間に第1の界面層を、第2の誘電体層418と記録層416との間に第2の界面層を設けてもよい。図4において、反射層側界面層は、層412と414との間に、413で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層414と416との間に、415で表される層として示すことができ、第2の界面層は、層416と418との間に、417で表される層として示すことができる。
記録層416の材料として、実施の形態1の記録層406の材料と同様の材料を用いることができる。また、第2の情報層42がSbとSとを含む記録層を有する場合には、記録層416の材料は、(Ge−Sn)Te、GeTe−Sb2Te3、(Ge−Sn)Te−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、(Ge−Sn)Te−Bi2Te3、GeTe−(Sb−Bi)2Te3、(Ge−Sn)Te−(Sb―Bi)2Te3、GeTe−(Bi―In)2Te3、(Ge―Sn)Te−(Bi―In)2Te3、Sb−Te、Sb−Ge、(Gb−Te)−Ge、Sb−In、(Sb−Te)−In、Sb−Gaまたは(Sb−Te)−Gaであってよい。
反射層412、第1の誘電体層414及び第2の誘電体層418は、それぞれ実施の形態1の反射層402、第1の誘電体層404及び第2の誘電体層408と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
また、反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層は、それぞれ実施の形態1の反射層側界面層403、第1の界面層405及び第2の界面層407と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
情報記録媒体13は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板21(厚さは例えば1.1mm)上に第1情報層41を形成する。
具体的には、まず、基板21上に、反射層412を形成する。反射層412は、実施の形態1の反射層402の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層412上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態1の反射層側界面層403の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層412上に、第1の誘電体層414を形成する。第1の誘電体層414は、実施の形態1の第1の誘電体層404の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層414上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態1の第1の界面層405と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層414の上に、記録層416を形成する。記録層416は、SbおよびSを含む場合には、実施の形態1の記録層406の形成方法と同様の方法で形成できる。記録層416が他の材料で形成される場合には、その材料に応じてスパッタリングターゲットを選択して、スパッタリング法により形成してよい。
続いて、必要に応じて、記録層416上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態1の第2の界面層407の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層416上に第2の誘電体418を、形成する。第2の誘電体層418は、実施の形態1の第2の誘電体層408の形成方法と同様の方法で形成できる。
このようにして、基板21上に第1情報層41を形成し、その後、第1情報層41上に分離層22を形成する。分離層22は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
なお、第2の誘電体層418を形成した後、または分離層22を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層416を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層22上に第2情報層42を形成する。
具体的には、まず分離層22上に透過率調整層421を形成する。透過率調整層421は、実施の形態2の透過率調整層491の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、透過率調整層421上に、反射層422を形成する。反射層422は、実施の形態2の反射層492の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層422上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態2の反射層側界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層422上に、第1の誘電体層424を形成する。第1の誘電体層424は、実施の形態2の第1の誘電体層494の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層424上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態2の第1の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層424の上に記録層426を形成する。記録層426は、実施の形態2の記録層496の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、記録層426上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態2の第2の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層426上に第2の誘電体428を形成する。第2の誘電体層428は、実施の形態2の第2の誘電体層498の形成方法と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層22上に第2情報層42を形成し、その後、第2情報層42上に透明層23を形成する。透明層23は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
情報記録媒体13の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるため、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程を行ってもよい。あるいは、既に、記録層416が初期化されている場合には、第2情報層42を形成した後に、記録層426のみを初期化してよい。
以上のようにして、情報記録媒体13を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
Nが2であり、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光が記録再生に使用され、1情報層あたりの容量が約25GBであれば、約50GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにすれば、約66GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。
(実施の形態4)
実施の形態4として、実施の形態2の本発明の多層情報記録媒体において、N=4、すなわち4個の情報層によって構成された情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態4の情報記録媒体14の部分断面図を図5に示す。情報記録媒体14は、4層光記録媒体であり、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体14においては、基板21上に、第1情報層41、分離層22、第2情報層42、分離層28、第3情報層43、分離層29、第4情報層44及び透明層23がこの順に設けられている。
情報記録媒体12では、第4情報層44よりも基板21側にある情報層に到達するレーザビームおよびその反射光は、その情報層よりレーザビーム31入射側にある情報層を透過することにより減衰してしまう。そのため、第1情報層41、第2情報層42及び第3情報層43は、高い記録感度と高い反射率を有し、かつ、第2情報層42、第3情報層43及び第4情報層44は高い透過率を有する必要がある。
基板21、分離層22、28、29及び透明層23は実施の形態1及び2で説明した材料と同様の材料で形成することができる。また、それらの形状及び機能は、実施の形態1および2で説明したとおりである。
第1情報層41を構成する各層の材料、形状および機能は、実施の形態3で説明したとおりであるから、その詳細な説明は省略する。
第4情報層44は実施の形態2で説明した第N情報層49と同様の役割を果たす(実施の形態4ではN=4であるため)。そのため、第4情報層44を構成する各層は、実施の形態2で説明した第N情報層49を構成する各層の材料で形成することができる。また、第4情報層44を構成する各層の形状及び機能は、実施の形態2で説明した第N情報層49を構成する各層の形状及び機能と同様である。
以下、第2情報層42及び第3情報層43の構成について説明する。
第2情報層42においては、基板21に近い側から透過率調整層421、反射層422、第1の誘電体層424、記録層426及び第2の誘電体層428がこの順に設けられている。また、必要に応じて、反射層422と第1の誘電体層424との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層424と記録層426との間に第1の界面層を、第2の誘電体層428と記録層426との間に第2の界面層を設けてもよい。図5において、反射層側界面層は、層422と424との間に、423で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層424と426との間に、425で表される層として示すことができ、第2の界面層は、層426と428との間に、427で表される層として示すことができる。
記録層426、反射層422、第1の誘電体層424、第2の誘電体層428及び透過率調整層421は、それぞれ実施の形態2の記録層496、反射層492、第1の誘電体層494、第2の誘電体層498及び透過率調整層491と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
また、反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層は、それぞれ実施の形態2の反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
第3情報層43においては、基板21に近い側から、透過率調整層431、反射層432、第1の誘電体層434、記録層436及び第2の誘電体層438がこの順に設けられている。また、必要に応じて、反射層432と第1の誘電体層434との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層434と記録層436との間に第1の界面層を、第2の誘電体層438と記録層436との間に第2の界面層を設けてもよい。図5において、反射層側界面層は、層432と424との間に、433で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層434と436との間に、435で表される層として示すことができ、第2の界面層は、層436と438との間に、437で表される層として示すことができる。
記録層436、反射層432、第1の誘電体層434、第2の誘電体層438及び透過率調整層431は、それぞれ実施の形態2の記録層496、反射層492、第1の誘電体層494、第2の誘電体層498及び透過率調整層491と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
また、反射層側界面層433、第1の界面層及び第2の界面層は、それぞれ実施の形態2の反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
この形態の媒体においては、第2情報層42から第4情報層44までの3つの情報層のうち、いずれか1つの情報層に含まれる記録層が、SbおよびSを含み、上記式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含むことが好ましい。その理由は実施の形態2に関連して説明したとおりである。
情報記録媒体14は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板21(厚さは例えば1.1mm)上に第1情報層41を形成する。
具体的には、基板21上に、反射層412、第1の誘電体層414、記録層416及び第2の誘電体層418をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて反射層412と第1の誘電体層414との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層414と記録層416との間に第1の界面層を、第2の誘電体層418と記録層416との間に第2の界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態3で説明した方法で形成できる。
このようにして、基板21上に第1情報層41を形成し、その後、第1情報層41上に分離層22を形成する。分離層22は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
第2の誘電体層418を形成した後、または分離層22を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層416を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層22上に第2情報層42を形成する。
具体的には、まず、分離層22上に透過率調整層421を形成する。透過率調整層421は、実施の形態2の透過率調整層491の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、透過率調整層421上に、反射層422を形成する。反射層422は、実施の形態2の反射層492の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層422上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態2の反射層側界面層と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層422上に、第1の誘電体層424を形成する。第1の誘電体層424は、実施の形態2の第1の誘電体層494の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層424上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態2の第1の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層424の上に、記録層426を形成する。記録層426は、実施の形態2の記録層496の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、記録層426上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態2の第2の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層426上に、第2の誘電体428を形成する。第2の誘電体層428は、実施の形態2の第2の誘電体層498の形成方法と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層22上に第2情報層42を形成し、その後、第2情報層42上に分離層28を形成する。分離層28は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
なお、第2の誘電体層428を形成した後、または分離層28を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層426を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層28上に第3情報層43を形成する。
具体的には、まず分離層28上に透過率調整層431を形成する。透過率調整層431は、実施の形態2の透過率調整層491の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、透過率調整層431上に、反射層432を形成する。反射層432は、実施の形態2の反射層492の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層432上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態2の反射層側界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層432上に、第1の誘電体層434を形成する。第1の誘電体層434は、実施の形態2の第1の誘電体層494の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層434上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態2の第1の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層434の上に記録層436を形成する。記録層436は、実施の形態2の記録層496の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、記録層436上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態2の第2の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層436上に第2の誘電体438を形成する。第2の誘電体層438は、実施の形態2の第2の誘電体層498と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層28上に第3情報層43を形成し、その後、第3情報層43上に分離層29を形成する。分離層29は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
なお、第2の誘電体層438を形成した後、または分離層29を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層436を結晶化する初期化工程をおこなっても良い。
続いて、分離層29上に第4情報層44を形成する。
具体的には、分離層29上に、透過率調整層441、反射層442、第1の誘電体層444、記録層446及び第2の誘電体層448をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて反射層442と第1の誘電体層444との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層444と記録層446との間に第1の界面層を、第2の誘電体層448と記録層446との間に第2の界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
このようにして、分離層29上に第4情報層44を形成し、その後、第4情報層44上に透明層23を形成する。透明層23は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
なお、情報記録媒体14の各記録層は、通常、形成したままの状態では非晶質状態であるため、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程をおこなっても良い。あるいは、既に、記録層416、426、および436が初期化されている場合には、第4情報層44を形成した後に、記録層446のみを初期化してよい。
以上のようにして、情報記録媒体14を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
Nが4であり、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光が記録再生に使用され、1情報層あたりの容量が約25GBであれば、約100GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにすれば、約133GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。
実施の形態3および4として、N=2および4の媒体を説明した。Nは3であってもよい。N=3の媒体は、図4に示される層のうち、基板21、第1情報層42、分離層22、第2情報層42、分離層28、第3情報層43および透明層23から構成される。N=3の媒体においては、第2情報層および第3情報層のうち、いずれか一方または両方に含まれる記録層が、前記SbおよびSを含み、式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含むことが好ましい。また、レーザビーム入射側に最も近い第3情報層に含まれる記録層のみが、前記SbおよびSを含み、式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含む記録層である場合にも、本発明の効果を十分に得ることができる。
Nが3であり、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光が記録再生に使用され、1情報層あたりの容量が約25GBであれば、約75GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにすれば、約100GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。
(実施の形態5)
実施の形態5として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態5の情報記録媒体15の部分断面図を図6に示す。情報記録媒体15は、光記録媒体であり、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生できる。
情報記録媒体15は、基板24上に積層した情報層40とダミー基板26が、接着層27を介して密着している構成である。
基板24及びダミー基板26は透明で円盤形状を有している。基板24の情報層40と接する表面には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。基板24の情報層40と接しない表面、及びダミー基板の接着層27と接しない表面は、平滑であることが好ましい。基板24及びダミー基板26は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を材料として用いて、形成することができる。特に、ポリカーボネート樹脂は、転写性および量産性に優れ、低コストであることから、基板24及びダミー基板26の材料として好ましい。
接着層27は、レーザビーム31に対して小さい光吸収を有することが好ましい。接着層27は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)、遅効性熱硬化性樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を材料として、形成することができる。
情報層40を構成する各層の材料、形状および機能は、実施の形態1で説明したとおりであるから、その詳細な説明は省略する。その他、実施の形態1で用いた符号と同じ符号を付した要素については、その説明を省略する。
情報記録媒体15は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板24(厚さが例えば0.6mm)上に、情報層40を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層408、記録層406、第1の誘電体層404及び反射層402をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層408と記録層406との間に第2の界面層を、第1の誘電体層404と記録層406との間に第1の界面層を、第1の誘電体層404と反射層402との間に反射層側界面層を形成してもよい。図5において、第2の界面層は、層408と406との間に、407で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層406と404との間に、405で表される層として示すことができ、反射層側界面層は、層402と404との間に、403で表される層として示すことができる。これらの各層は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
次に、情報層40が積層された基板24とダミー基板26(厚さが例えば0.6mm)とを、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、貼り合わせは、紫外線硬化性樹脂または遅効性熱硬化性樹脂を、ダミー基板26上にスピンコート法により塗布し、情報層40が積層された基板24をダミー基板26上に密着させ、その後樹脂を硬化させる方法で、実施してよい。別法として、ダミー基板26上に粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、ダミー基板26を情報層40が積層された基板24に密着させることもできる。
情報記録媒体15の記録層406は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態である。よって、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層406を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
以上のようにして、情報記録媒体15を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
(実施の形態6)
実施の形態6として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態6の情報記録媒体16の部分断面図を図7に示す。情報記録媒体16は、多層光記録媒体であり、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体16は、基板24上に、順次積層された、第N情報層49、第N−1情報層48・・・第2情報層42までのN−1個の情報層(NはN≧2の整数)と、基板25上に積層された第1情報層41とが、接着層27を介して密着している構成である。情報層と情報層との間には、分離層29、28・・・等が介在している。
基板25は、透明で、円盤形状を有している。基板25の第1情報層41と接する表面には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。基板25の第1情報層41と接しない表面は、平滑であることが好ましい。基板25は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を材料として用いて、形成することができる。特に、ポリカーボネート樹脂は、転写性および量産性に優れ、低コストであることから、基板25の材料として好ましい。
その他、実施の形態2及び5で用いた符号と同じ符号を付した要素については、その説明を省略する。
情報記録媒体16は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板24(厚さが例えば0.6mm)上に、第N情報層49を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層498、記録層496、第1の誘電体層494、反射層492及び透過率調整層491をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層498と記録層496との間に第2の界面層を、第1の誘電体層494と記録層496との間に第1の界面層を、第1の誘電体層494と反射層492の間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。その後、第N−1情報層48から第2情報層42を、分離層29、28・・・等を介して順次積層する。
別に、基板25(厚さが例えば0.6mm)上に、第1情報層41を形成する。情報層は、一般に多層膜からなり、情報層41を構成する各層(膜)は、実施の形態2と同様、成膜装置内で、各層を構成するのに適したスパッタリングターゲットを、順次スパッタリングすることによって形成できる。
最後に、情報層が積層された基板24及び基板25を、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、貼り合わせは、紫外線硬化性樹脂または遅効性熱硬化性樹脂を、基板25上に積層された第1情報層41にスピンコート法により塗布して、第2情報層42が積層された基板24を第1情報層41上に密着させ、その後樹脂を硬化させる方法で実施してよい。別法として、第1情報層41上に粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、第1情報層41を第2情報層42が積層された基板24に密着させることもできる。
情報記録媒体16の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるから、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
以上のようにして、情報記録媒体16を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
(実施の形態7)
実施の形態7として、実施の形態6の本発明の多層情報記録媒体において、Nが2である、すなわち2個の情報層によって構成された情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態7の情報記録媒体17の部分断面図を図8に示す。情報記録媒体17は、2層光記録媒体であって、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体17は、基板24上に積層した第2情報層42と、基板25上に積層した第1情報層41とが、接着層27を介して密着している構成である。
第1情報層41及び第2情報層42を構成する各層の材料、形状および機能は、実施の形態3で説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。その他、実施の形態3、5及び6で用いた符号と同じ符号を付した要素については、その説明を省略する。
情報記録媒体17は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板24(厚さが例えば0.6mm)上に、第2情報層42を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層428、記録層426、第1の誘電体層424、反射層422及び透過率調整層421をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層428と記録層426との間に第2の界面層を、第1の誘電体層424と記録層426との間に第1の界面層を、第1の誘電体層424と反射層422との間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態3で説明した方法で形成できる。
透過率調整層421を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層426を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
別に、基板25(厚さが例えば0.6mm)上に、第1情報層41を形成する。具体的には、基板25上に、反射層412、第1の誘電体層414、記録層416及び第2の誘電体層418をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて反射層412と第1の誘電体層414との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層414と記録層416との間に第1の界面層を、第2の誘電体層418と記録層416との間に第2の界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態3で説明した方法で形成できる。
第2の誘電体層418を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層416を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
最後に、情報層が積層された基板24及び基板25を、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、貼り合わせは、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)または遅効性熱硬化性樹脂を、基板25上に積層された第1情報層41にスピンコート法により塗布して、第2情報層42が積層された基板24を第1情報層41上に密着させ、その後樹脂を硬化させる方法で実施してよい。別法として、第1情報層41上に粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、第1情報層41を第2情報層42が積層された基板24に密着させることもできる。
情報記録媒体17の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるので、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程を行ってもよい。予め、記録層416および426が初期化されている場合には、貼り合わせの後に初期化工程を実施する必要はない。
以上のようにして、情報記録媒体17を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
Nが2である媒体は、先に実施の形態7に関連して説明したとおり、例えば、約50GBの容量を有することができ、あるいは約66GBの容量を有することができる。
(実施の形態8)
実施の形態8として、実施の形態6の本発明の多層情報記録媒体において、Nが4である、すなわち4個の情報層によって構成された情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態8の情報記録媒体18の部分断面図を図9に示す。情報記録媒体18は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、情報の記録再生が可能な4層光記録媒体である。
情報記録媒体18は、基板24上に積層した第4情報層44、第3情報層43及び第2情報層42と、基板25上に積層した第1情報層41とが、接着層27を介して密着している構成である。第4情報層44と第3情報層43との間には、分離層29が設けられ、第3情報層43と第2情報層との間には、分離層28が設けられている。
第1情報層41、第2情報層42、第3情報層43及び第4情報層44を構成する各層の材料、形状および機能は、実施の形態4で説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。その他、実施の形態4、5、6及び7で用いた符号と同じ符号を付した要素については、その説明を省略する。
情報記録媒体18は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板24(厚さが例えば0.6mm)上に、第4情報層44を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層448、記録層446、第1の誘電体層444、反射層442及び透過率調整層441をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層448と記録層446との間に第2の界面層を、第1の誘電体層444と記録層446との間に第1の界面層を、第1の誘電体層444と反射層442の間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態4に関連してで説明した方法により形成できる。
続いて、透過率調整層441上に、実施の形態4に関連して説明した方法により分離層29を形成する。
透過率調整層441を形成した後、または分離層29を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層446を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層29上に第3情報層43を形成する。具体的には、分離層29上に、第2の誘電体層438、記録層436、第1の誘電体層434、反射層432及び透過率調整層431をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層438と記録層436との間に第2の界面層を、第1の誘電体層434と記録層436との間に第1の界面層を、第1の誘電体層434と反射層432の間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態4に関連して説明した方法により形成できる。
続いて、透過率調整層431上に、実施の形態4に関連して説明した方法により、分離層28を形成する。
透過率調整層431を形成した後、または分離層28を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層436を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層28上に第2情報層42を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層428、記録層426、第1の誘電体層424、反射層422及び透過率調整層421をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層428と記録層426との間に第2の界面層を、第1の誘電体層424と記録層426との間に第1の界面層を、第1の誘電体層424と反射層422の間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態4に関連して説明した方法により形成できる。
透過率調整層421を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層426を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
別に、基板25(厚さが例えば0.6mm)上に、第1情報層41を形成する。具体的には、基板25上に、反射層412、第1の誘電体層414、記録層416及び第2の誘電体層418をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて反射層412と第1の誘電体層414との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層414と記録層416との間に第1の界面層を、第2の誘電体層418と記録層416との間に第2の界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態4に関連して説明した方法により形成できる。
第2の誘電体層418を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層416を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
最後に、情報層が積層された基板24及び基板25を、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、貼り合わせは、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)または遅効性熱硬化性樹脂を、基板25上に積層された第1情報層41にスピンコート法により塗布して、第2情報層42が積層された基板24を第1情報層41上に密着させ、その後樹脂を硬化させる方法で実施してよい。別法として、第1情報層41上に粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、第1情報層41を第2情報層42が積層された基板24に密着させることもできる。
情報記録媒体18の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるため、必要に応じてレーザビームを照射する等して結晶化する初期化工程を行ってもよい。予め、記録層416、426、436および446が初期化されている場合には、貼り合わせの後に初期化工程を実施する必要はない。
以上のようにして、情報記録媒体18を製造できる。本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
また、本実施の形態においては第2情報層42と第1情報層41の間に接着層27を用いて、基板24及び基板25を貼り合わせた。接着層の位置、すなわち貼り合わせる位置はこれに限定されない。
例えば、基板24上に、分離層29を介して第4情報層44及び第3情報層43を積層し、基板25上に分離層(その位置は図9の接着層27の位置である)を介して第1情報層41及び第2情報層42を積層し、その後、第3情報層43と第2情報層42との間に接着層(その位置は図9の分離層28の位置である)を用いて、基板24及び基板25を貼り合わせてもよい。
Nが4である媒体は、先に実施の形態8に関連して説明したとおり、例えば、約100GBの容量を有することができ、あるいは約133GBの容量を有することができる。
2つの基板を有し、情報層を複数有する実施の形態7および8として、N=2および4の媒体を説明した。Nは3であってもよい。N=3の媒体においては、第2情報層および第3情報層のうち、いずれか一方または両方に含まれる記録層が、前記SbおよびSnを含み、式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含むことが好ましい。また、レーザビーム入射側に最も近い第3情報層に含まれる記録層のみを、前記SbおよびSnを含み、式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含む記録層としても、本発明の効果を十分に得ることができる。
Nが3である媒体は、先に説明したとおり、例えば、約75GBの容量を有することができ、あるいは約100GBの容量を有することができる。
(実施の形態9)
実施の形態9では、実施の形態1から8で説明した情報記録媒体に情報を記録し、および/または媒体に記録した情報を再生する方法の一例について説明する。
図10に、本発明の情報記録媒体の記録再生に用いられる記録再生装置の構成の一例の概略図を示す。レーザダイオード501から出射されるレーザビーム502は、ハーフミラー503及び対物レンズ504を通過して、その焦点が情報記録媒体506上に合わせられる。情報記録媒体506は、モーター505によって回転させられている。情報の再生は、情報記録媒体506からの反射光をフォトディテクター507に入射させ、信号を検出することにより行われる。
情報信号の記録を行う際には、レーザビーム502の強度を複数のパワーレベル間で変調する。レーザ強度を変調する手段としては、半導体レーザの駆動電流を変調しておこなう電流変調手段を用いることができる。記録マークを形成する部分には、ピークパワーPpの単一矩形パルスのレーザビームを照射してもよい。あるいは、特に長いマークを形成する場合は、記録層が過剰に加熱されることを防止し、マーク幅を均一にする目的で、図11に示すようにピークパワーPp及びボトムパワーPb(但し、Pp>Pb)との間で変調された、複数のパルス列からなる記録パルス列を用いてもよい。また、最後尾のパルスの後に、レーザのパワーを冷却パワーPc(Pc<Pb)にする冷却区間を設けてもよい。マークを形成しない部分に対しては、バイアスパワーPe(但し、Pp>Pe)のレーザビームを照射する。
対物レンズ504の開口数NAは、レーザビーム502のスポット径を0.4μm〜0.7μmの範囲内に調整するため、0.5〜1.1の範囲内であることが好ましく、0.6〜0.9の範囲内であることがより好ましい。レーザビーム502の波長は、350nm〜450nmの範囲内であることが好ましい。情報を記録する際の情報記録媒体506の線速度は、再結晶化が起こりにくく、且つ十分な消去性能が得られるように、4m/s〜50m/sの範囲内であることが好ましく、9m/s〜40m/sの範囲内であることがより好ましい。情報記録媒体502の種類等に応じて、ここで例示していない波長、対物レンズの開口数、および線速度を使用してよいことはいうまでもない。例えば、レーザビーム502の波長は、650〜670nmであってもよい。
このような記録再生装置を用いて、情報記録媒体506の性能を次のようにして評価できる。
記録性能は、レーザビーム502を0〜Pp(mW)の間でパワー変調し、(1−7)変調方式でマーク長0.149μm(2T)から0.596μm(8T)までのランダム信号を記録し、記録マークの前端間、及び後端間のジッター(マーク位置の誤差)をタイムインターバルアナライザーで測定することによって評価できる。なお、ジッター値が小さいほど、記録性能がよい。Pp、Pb、Pc及びPeは、前端間、及び後端間のジッターの平均値が最小となるよう決定される。決定されたPpは、記録感度である。
また、信号強度は、レーザビーム502を0〜Pp(mW)の間でパワー変調し、マーク長0.149μm(2T)と0.671μm(9T)の信号を同じトラックに連続10回交互記録し、最後に2T信号を上書きした場合の2T信号の周波数での信号振幅(carrier level)と雑音振幅(noise level)の比(CNR(Carrier to Noise Ratio))をスペクトラムアナライザーで測定することによって評価できる。CNRが大きいほど信号強度が高い。
また、消去性能は、レーザビーム502を0〜Pp(mW)の間でパワー変調し、2T信号と9T信号を同じトラックに連続10回交互記録し、11回目に2T信号を上書きした場合の2T信号の信号振幅と、さらにその後9T信号を上書きした場合の2T信号の信号振幅の差を、2T信号の消去率としてスペクトラムアナライザーで測定することにより評価できる。消去率が大きいほど、消去性能が良い。
(実施の形態10)
実施の形態10として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態10の情報記録媒体61の一構成例を図12に示す。情報記録媒体61は、電気的エネルギー(特に電流)の印加によって、情報が記録再生される電気的情報記録媒体である。
基板62として、ポリカーボネート等の樹脂基板、ガラス基板、Al2O3等のセラミック基板、Si等の半導体基板、およびCu等の金属基板を用いることができる。ここでは、基板としてSi基板を用いた形態を説明する。電気的情報記録媒体61は、基板62上に下部電極63、第1誘電体層64、第1記録層65、第2記録層66、第2誘電体層67、及び上部電極68を順に積層した構造である。下部電極63及び上部電極68は、第1記録層65及び第2記録層66に、電流を印加するために形成する。第1誘電体層64は第1記録層65に印加する電気エネルギー量を調整し、第2誘電体層67は第2記録層66に印加する電気エネルギー量を調整するために設けられる。第1誘電体層64および第2誘電体層67の材料の例は、実施の形態1の第1の誘電体層404の材料の例と同様である。
第1記録層65及び第2記録層66は、電流の印加により発生するジュール熱によって、結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす材料から成る。よって、この媒体においては、結晶相と非晶質相との間で抵抗率が変化する現象を情報の記録に利用する。第1記録層65及び第2記録層66の少なくとも一方は、SbとSとを含み、上記式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含む。そのような材料は、実施の形態1に関連して説明したとおりである。いずれか一方の記録層が、SbとSを含む記録層でない場合、実施の形態2に関連して例示した材料を用いてよい。第1記録層65及び第2記録層66はそれぞれ、実施の形態1の記録層406または実施の形態2の記録層496の形成方法と同様の方法で形成される。
下部電極63及び上部電極68は、Ti、W、Al、Au、Ag、Cu、Pt等の単体金属材料で形成してよい。あるいは下部電極63及び上部電極68は、前記元素から選ばれる1つまたは複数の元素を主成分とし、耐湿性の向上あるいは熱伝導率の調整等のために適宜1つまたは複数の他の元素を添加した合金材料を用いて形成することができる。下部電極63及び上部電極68は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガス(O2ガスまたはN2ガスから選ばれる少なくとも1種のガス)との混合ガス雰囲気中で、材料となる金属母材または合金母材をスパッタリングすることによって形成できる。各層の形成方法は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、またはMBE法等であってよい。
電気的情報記録媒体61に、印加部69を介して電気的情報記録再生装置74を電気的に接続する。この電気的情報記録再生装置74において、下部電極63と上部電極68の間には、第1記録層65及び第2記録層66に電流パルスを印加するために、パルス電源73が、スイッチ71を介して接続される。また、第1記録層65、及び第2記録層66の相変化による抵抗値の変化を検出するために、下部電極63と上部電極67の間にスイッチ72を介して抵抗測定器70が接続される。
非晶質相(高抵抗状態)にある第1記録層65または第2記録層66を、結晶相(低抵抗状態)に変化させるためには、スイッチ71を閉じて(スイッチ72は開く)電極間に電流パルスを印加する。印加は、電流パルスが印加される部分の温度が、材料の結晶化温度より高く、且つ融点より低い温度にて、結晶化時間の間、保持されるように行う。結晶相から再度非晶質相に戻す場合には、結晶化時よりも相対的に高い電流パルスをより短い時間で印加し、記録層を融点より高い温度にして溶融した後、急激に冷却する。なお、電気的情報記録再生装置74のパルス電源73は、図15の記録/消去パルス波形を出力できるような電源である。
ここで、第1記録層65が非晶質相の場合の抵抗値をra1、第1記録層65が結晶相の場合の抵抗値をrc1、第2記録層66が非晶質相の場合の抵抗値をra2、第2記録層66が結晶相の場合の抵抗値をrc2とする。rc1≦rc2<ra1<ra2、もしくはrc1≦rc2<ra2<ra1、もしくはrc2≦rc1<ra1<ra2、もしくはrc2≦rc1<ra2<ra1であることによって、第1記録層65と第2記録層66の抵抗値の和を、ra1+ra2、ra1+ra2、ra2+rc1、及びrc1+rc2の4つの異なる値に設定できる。従って、電極間の抵抗値を抵抗測定器70で測定することにより、4つの異なる状態、すなわち2値の情報を一度に検出することができる。
この電気的情報記録媒体61をマトリクス的に多数配置することによって、図14に示すような大容量の電気的情報記録媒体81を構成することができる。各メモリセル77には、微小領域に電気的情報記録媒体61と同様の構成が形成されている。各々のメモリセル77への情報の記録再生は、ワード線75、及びビット線76をそれぞれ一つ指定することによって行う。
図13は電気的情報記録媒体81を用いた、情報記録システムの一構成例を示したものである。記憶装置79は、電気的情報記録媒体81と、アドレス指定回路78によって構成される。アドレス指定回路78により、電気的情報記録媒体81のワード線75、及びビット線76がそれぞれ指定され、各々のメモリセル77への情報の記録再生を行うことができる。また、記憶装置79を、少なくともパルス電源73と抵抗測定器70から構成される外部回路80に電気的に接続することにより、電気的情報記録媒体81への情報の記録再生を行うことができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1では、図1の情報記録媒体11を作製し、記録層406の材料と、情報層40の消去性能及び信号信頼性との関係を調べた。具体的には、SbとSとを含み、SbとSとの組成比が異なる記録層406を有する8種類の情報記録媒体のサンプル(1−1から1−8)を作製し、情報層40の消去性能及び信号信頼性を測定した。
信号信頼性は再生光劣化により評価する。ここで、再生光劣化は、信号を記録したトラックに再生光(再生パワーPr)を所定の回数、照射したときの信号強度の低下量(dB)と定義する。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。そのポリカーボネート基板上に、反射層402としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層404として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、SbとSを含む記録層406(厚さ:10nm)(SbとSの組成比は表1に示すとおり)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層408として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって形成した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ反射層402を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層404を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層406を形成するためのSbとSとを含むスパッタリングターゲット、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層408を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
反射層402の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層404の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層406の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層408の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
最後に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)を第2の誘電体層408上に塗布し回転させて、均一な樹脂層を形成したのち、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ100μmの透明層23を形成した。その後、記録層406をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層406の材料が異なる複数のサンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、図10の記録再生装置を用いて、情報記録媒体11の情報層40の消去性能及び信号信頼性を測定した。測定において、レーザビーム31の波長は405nm、対物レンズ32の開口数NAは0.85、測定時のサンプルの線速度は19.7m/s(Blu−rayディスク規格の4倍速に相当する)、最短マーク長(2T)は0.149μmであった。
各サンプルについて、記録層406の組成と、情報層40の消去性能、及び信号信頼性の評価結果を(表1)に示す。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=0.35mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量で評価した。評価基準は下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
さらに、媒体の総合評価を実施した。上記の評価項目において、一つでも「×」と評価された媒体は、「×」と評価し、上記の評価項目において、一つでも「△」と評価された媒体は、「○」と評価し、上記の評価項目において、すべて「○」と評価された媒体は、「◎」と評価した。
この結果、記録層406がSbのみから成るサンプル1−1では、記録層の結晶化速度が高すぎて、信号信頼性が悪いことがわかった。また、記録層406の組成がSb45S55であるサンプル1−8では、添加したSの量が多すぎて、結晶化速度が低下し、消去性能が悪化していることがわかった。
また、記録層406がSbとSとを含み、さらに記録層406の組成が、式(1):SbxS100-x(原子%)(ただし、xは、50≦x≦98)で表されるサンプル1−2から1−7は、良好な消去性能と信号信頼性を示すことがわかった。以上の結果から、記録層406の組成が、式(1)で表されると、当該記録層を含む媒体は良好な特性を示すことがわかった。さらに、xが60以上80以下である場合に、磁気記録媒体は、さらにより良好な特性を示すことがわかった。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様に図1の情報記録媒体11を作製し、記録層406の材料と、情報層40の消去性能及び信号信頼性との関係を調べた。具体的には、記録層406がSbとSとMとを含み(MはSn、Bi、In、Ge及びMnのうち少なくとも1つの元素)、Sb/S/Mとの組成比が異なる記録層406を有する25種類の情報記録媒体11のサンプル(2−1から2−25)を作製し、情報層40の消去性能及び信号信頼性を測定した。
サンプルの製造方法は実施例1で用いた製造方法と同様である。ただし、記録層406はSbとSとMを含む(MはSn、Bi、In、Ge及びMnのうち少なくとも1つの元素)合金スパッタリングターゲットを、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにしてスパッタリングすることによって形成した。
このようにして得られたサンプルについて、実施例1と同様の方法で消去性能および信号信頼性を測定した。各サンプルについて、記録層406の組成と、情報層40の消去性能、及び信号信頼性の評価結果を(表2)に示す。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=0.35mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量で評価した。評価基準は、下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
さらに、媒体の総合評価を実施した。上記の評価項目において、一つでも「×」と評価された媒体は、「×」と評価し、上記の評価項目において、一つでも「△」と評価された媒体は、「○」と評価し、上記の評価項目において、すべて「○」と評価された媒体は、「◎」と評価した。
この結果、記録層406の組成が、(Sb0.98S0.02)65Ge35であるサンプル2−6では、添加したGeの量が多いために結晶化速度が低下し、消去性能が悪化していることがわかった。また、記録層406の組成が、(Sb0.98S0.02)65Sn35であるサンプル2−12では、添加したSnの量が多いために、結晶化速度が高すぎて信号信頼性が悪いことがわかった。さらに、記録層406の組成が、(Sb0.7S0.3)65In35であるサンプル2−17では、添加したInの量が多いために、結晶化速度が低下し、実用可能な消去性能を得られないことがわかった。
また、記録層406がSbとSとM1を含み(MはGe、Sn、およびIn)から選ばれる少なくとも一つの元素)、記録層406の組成が、式(2):
(SbzS1-z)100-yM1y(原子%) (2)
(添え字zは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦z≦0.98を満たし、添え字yは、原子%で示される組成比を表し、0<y≦30を満たす)
で表されるサンプル2−1から2−5、2−7から2−11、及び2−13から2−16は、消去性能と信号信頼性がともに良好であることがわかった。以上の結果から、SbとSとM1を含む記録層406の組成は、式(2)で表されることが好ましいことがわかった。特に、サンプル2−1から2−4、サンプル2−7から2−10、サンプル2−13から2−15より、上記式(2)において、yは2≦y≦20を満たすと、より良好な特性が得られることがわかった。
記録層406の組成が、(Sb0.7S0.3)70Mn30であるサンプル2−21では、添加したMnの量が多いために、結晶化速度が低下し、実用可能な消去性能を得られないことがわかった。また、記録層の組成が、(速すぎて信号信頼性が悪いことがわかった。さらに、記録層406の組成が、(Sb0.7S0.3)70Bi30であるサンプル2−25では、添加したBiの量が多いために、結晶化速度が高すぎて信号信頼性が悪いことがわかった。
記録層406がSbとSとM2を含み(M2はBiおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素)、記録層406の組成が、式(3):
(SbaS1-a)100-bM2b (原子%) (3)
(添え字aは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦a≦0.98を満たし、添え字bは、原子%で示される組成比を表し、0<b≦20を満たす)
で表されるサンプル2−18から2−20、及び2−22から2−24は、良好な消去性能と信号信頼性を示した。以上の結果から、SbとSとM2を含む記録層406の組成は、式(2)で表されることが好ましいことがわかった。さらに、サンプル2−18および2−19から、上記式(3)において、bが2≦b≦10を満たすと、より良好な特性が得られることがわかった。
さらに、M1として2種類の元素を含む記録媒体(サンプル2−26、2−29)、M1およびM2の両方を含む記録媒体(サンプル2−27、2−28、2−30、2−31)も、良好な消去性能および信号信頼性を示した。
(実施例3)
実施例3では、図1の情報記録媒体11を製造し、記録層406の厚さと、情報層40の消去性能及び信号信頼性との関係を調べた。具体的には、記録層406の厚さが異なる情報層40を含む、6種類の情報記録媒体11のサンプル(3−1から3−6)を作製し、情報層40の消去性能及び信号信頼性を測定した。
サンプルの製造方法は、記録層406の厚さを除いて、実施例1において用いた製造方法と同様である。記録層406はSbとSを含むスパッタリングターゲットを、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにしてスパッタリングすることによって形成した。記録層の組成は、Sb60S40であった。
このようにして得られた各サンプルについて、記録層406の厚さと、情報層40の消去性能、及び信号信頼性の評価結果を(表3)に示す。評価方法は、実施例1において用いた方法と同様の方法であった。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=0.35mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量で評価した。評価基準は下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
さらに、媒体の総合評価を実施した。上記の評価項目において、一つでも「×」と評価された媒体は、「×」と評価し、上記の評価項目において、一つでも「△」と評価された媒体は、「○」と評価し、上記の評価項目において、すべて「○」と評価された媒体は、「◎」と評価した。
この結果、記録層406の厚さが、16nmであるサンプル3−6は、記録層406が厚すぎて、低い信号信頼性を示した。、記録層406の厚さが、7〜15nmの範囲であれば、媒体は良好な消去性能と信号信頼性を示すことがわかった。以上の結果から、SbとSとを含む記録層406の厚さは15nm以下であることが好ましいことがわかった。また、記録層406の厚さが9nm〜13nmの範囲内であれば、非常に良好な特性が得られた。
(実施例4)
実施例4では、図4の情報記録媒体13を製造し、第2情報層42に含まれる記録層426の厚さと、第2情報層42の消去率、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度との関係を調べた。具体的には、記録層426の厚さが互いに異なる情報層42を含む情報記録媒体13のサンプル4−1から4−6を作製し、第2情報層42の消去率、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度を測定した。ここで、信号強度はCNRの大きさによって評価した。なお、情報記録媒体13は、情報層の数をN個(NはN≧2の整数)としたときの、N=2のものに相当し、2個の情報層を有している。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、反射層412としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層414として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、記録層416としてSb60S40(厚さ:10nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層418として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ反射層412を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層414を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層416を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb60S40の組成の膜が形成されるように組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層418を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
反射層412の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層414の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層416の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層418の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
次に、第2の誘電体層418上に紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。その上に、案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させ、樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第2情報層42側に形成された、厚さ25μmの分離層22を得た。
次いで、分離層22の上に、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:20nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、第1の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:15nm)、記録層426としてSb70S30層、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ透過率調整層421を形成するためのTiO2スパッタリングターゲット、反射層422を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層424を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層426を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb70S30の組成の膜が形成されるように組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層428を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
透過率調整層421の形成は、Arと酸素の混合ガス雰囲気(全体に対して3体積%の割合の酸素ガス)において、圧力を0.3Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。反射層422の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層424の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層426の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層428の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
最後に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)を第2の誘電体層428上に、スピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ75μmの透明層23を形成した。その後、記録層416及び記録層426にレーザビームを照射して、記録層416および426を結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層426の厚さが異なる複数のサンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、図10の記録再生装置を用いて、情報記録媒体13の情報層42の消去性能、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度を測定した。測定において、レーザビーム31の波長は405nm、対物レンズ32の開口数NAは0.85、測定時のサンプルの線速度は19.7m/s、最短マーク長(2T)は0.149μmであった。
各サンプルについて、記録層426の厚さと、第2情報層42の消去性能、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度の評価結果を(表4)に示す。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=0.7mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量によって評価した。評価基準は、下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
また、第1情報層41の信号強度は、CNRによって評価した。評価基準は下記の通りである。
40dB以上 「○」、
34dB以上40dB未満 「△」、
34dB以下 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
さらに、媒体の総合評価を実施した。上記の評価項目において、一つでも「×」と評価された媒体は、「×」と評価し、上記の評価項目において、一つでも「△」と評価された媒体は、「○」と評価し、上記の評価項目において、すべて「○」と評価された媒体は、「◎」と評価した。
この結果、記録層426の厚さが、4nm〜9nmの範囲であれば、第2情報層42の消去性能、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度がすべて良好な媒体が得られた。また、記録層426の厚さが5nm〜8nmの範囲内であれば、より良好な特性が得られた。
(実施例5)
実施例5では、図5の情報記録媒体14を製造し、第4情報層44に含まれる記録層446の厚さと、第4情報層44の消去率、信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、及び第1情報層41の信号強度との関係を調べた。具体的には、記録層446の厚さが互いに異なる情報層44を含む6種類の情報記録媒体14のサンプル(5−1から5−6)を作製し、第4情報層44の消去率、信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、及び第1情報層41の信号強度を測定した。ここで、信号強度はCNRによって評価した。なお、情報記録媒体14は情報層の数をN個(NはN≧2の整数)としたときの、N=4の場合であり、4個の情報層を有している。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、反射層412としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層414として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、記録層416としてSb60S40(厚さ:10nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層418として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ反射層412を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層414を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層416を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb60S40の組成の膜が形成されるように組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層418を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備える。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
反射層412の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paとし、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層414の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層416の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層418の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
次に、第2の誘電体層418上に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第2情報層42側に形成された、厚さ10μmの分離層22を得た。
その後、分離層22の上に、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:30nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:8nm)、第2の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、記録層426としてSb80S20層(厚さ:4nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ透過率調整層421を形成するためのTiO2スパッタリングターゲット、反射層422を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層424を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層426を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb80S20の組成の膜が形成されるように、組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層428を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備える。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
透過率調整層421の形成は、Arと酸素の混合ガス雰囲気(全体に対して3体積%の割合の酸素ガス)において、圧力を0.3Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。反射層422の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層424の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにし、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層426の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにし、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層428の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにし、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
次に、第2の誘電体層428上に紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に、案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第3情報層43側に形成された、厚さ15μmの分離層28を得た。
次いで、分離層28の上に、透過率調整層431としてTiO2層(厚さ:30nm)、反射層432としてAg−Pd−Cu層(厚さ:8nm)、第2の誘電体層434として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、記録層436としてSb80S20層(厚さ:4nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層438として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:38nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ透過率調整層431を形成するためのTiO2スパッタリングターゲット、反射層432を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層434を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層436を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb80S20の組成の膜が形成されるように、組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層438を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
透過率調整層431の形成は、Arと酸素の混合ガス雰囲気(全体に対して3体積%の割合の酸素ガス)において、圧力を0.3Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。反射層432の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層434の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層436の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層438の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
次に、第2の誘電体層438上に紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に、案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第4情報層44側に形成された、厚さ10μmの分離層29を得た。
その後、分離層29の上に、透過率調整層441としてTiO2層(厚さ:25nm)、反射層442としてAg−Pd−Cu層(厚さ:7nm)、第2の誘電体層444として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、記録層446として(Sb0.85S0.15)95Ge5層、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層448として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:35nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ透過率調整層441を形成するためのTiO2スパッタリングターゲット、反射層442を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層444を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層446を形成するためのSbとSとGeを含むスパッタリングターゲット((Sb0.85S0.15)95Ge5の組成の膜が形成されるように、組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層448を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
透過率調整層441の形成は、Arと酸素の混合ガス雰囲気(全体に対して3体積%の割合の酸素ガス)において、圧力を0.3Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。反射層442の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層444の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層446の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層448の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
最後に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)を第2の誘電体層448上に、スピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ65μmの透明層23を形成した。その後、記録層416、記録層426、記録層436及び記録層446をレーザビームを用いて結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層446の厚さが異なる複数のサンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、図10の記録再生装置を用いて、情報記録媒体13の情報層42の消去性能、信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、及び第1情報層41の信号強度を測定した。測定において、レーザビーム31の波長は405nm、対物レンズ32の開口数NAは0.85、測定時のサンプルの線速度は19.7m/s、最短マーク長(2T)は0.149μmであった。
各サンプルについて、記録層446の厚さと、第2情報層42の消去性能および信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、及び第1情報層41の信号強度の評価結果を(表5)に示す。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=1.4mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
また、各情報層の信号強度は、CNRによって評価した。評価基準は下記の通りである。
40dB以上 「○」、
34dB以上40dB未満 「△」、
34dB以下 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
この結果、記録層446の厚さが、1nmであるサンプル5−1は、記録層446が薄すぎて結晶化速度が低下し、消去性能において劣っていることがわかった。また、記録層446の厚さが、2〜6nmの範囲であれば、第4情報層44の消去性能および信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、ならびに第1情報層41の信号強度が良好であることがわかった。
(実施例6)
実施例6では、図6の情報記録媒体15を作製し、実施例1および2と同様に性能を評価した。サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板24として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そのポリカーボネート基板上に、第2の誘電体層408として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、SbとS、もしくはSbとSとMを含み、それらの組成比が異なる記録層406(厚さ:10nm)、第1の誘電体層404として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、反射層402としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)を順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例1で使用したものと同様である。
情報層を形成した後、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をダミー基板26上にスピンコート法により塗布し、均一な樹脂層(厚さ20μm)を形成した。次いで、基板24上の反射層402をダミー基板26に密着させ、その後紫外線をダミー基板26側から照射して樹脂を硬化させた。それにより、接着層27を介して基板24とダミー基板26を接着させた。最後に、記録層406の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
このようにして得られたサンプルについて、実施例1および2と同様の方法によって、情報記録媒体15の情報層40の消去性能、及び信号信頼性を測定した。測定において、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ41の開口数NAは0.65、測定時のサンプルの線速度は22.4m/s、最短マーク長は0.173μmであった。
この結果、実施例1と同様に、記録層406がSbとSとを含み、さらに記録層406の組成が、式(1):SbxS100-x(原子%)(ただし、xは、50≦x≦98)で表されるサンプルは、良好な消去性能と信号信頼性を示した。
また、実施例2と同様に、記録層406がSbとSとM1を含み(M1は、GeSn、およびInから選択される、少なくとも1つの元素)、さらに記録層406の組成が、式(2):(SbzS1-z)100-yM1y(原子%)(添え字zは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦z≦0.98を満たし、添え字yは、原子%で示される組成比を表し、0<y≦30を満たす)で表されるサンプルは、良好な消去性能と信号信頼性を示した。
さらに、実施例2と同様に、記録層406がSbとSとM2を含み(M1は、BiおよびMnから選択される、少なくとも1つの元素)、さらに記録層406の組成が、式(3)):(SbaS1-a)100-bM2b (原子%)(添え字aは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦a≦0.98を満たし、添え字bは、原子%で示される組成比を表し、0<b≦20を満たす)で表されるサンプルは、良好な消去性能と信号信頼性を示した。
(実施例7)
実施例7では、図6の情報記録媒体15を作製し、実施例3と同様に、性能を評価した。
サンプルの製造方法は、記録層406の厚さを除いて、実施例6で用いた製造方法と同様である。記録層406はSbとSを含むスパッタリングターゲットをArガス雰囲気において、圧力を0.2Paにし、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして、スパッタリングすることによって形成した。記録層406の組成は、Sb60S40であった。
このようにして得られたサンプルについて、実施例1と同様の方法で、消去性能および信号信頼性を評価した。この結果、実施例3と同様に、記録層406の厚さが、7〜15nmの範囲であれば、消去性能と信号信頼性がともに良好であることがわかった。
(実施例8)
実施例8では、図8の情報記録媒体17を作製し、実施例4と同様に、性能を評価した。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板24として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、記録層426としてSb70S30層、第1の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:15nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:20nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例4の第2情報層42の形成で使用したものと同様である。
また、基板25として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.58mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、反射層412としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層414として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、記録層416としてSb60S40(厚さ:10nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層418として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例4の第1情報層41の形成で使用したものと同様である。
その後、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)を基板25上の第2の誘電体層418上に、スピンコート法により塗布し、均一な樹脂層(厚さ20μm)を形成した。次いで、基板24上の透過率調整層421を基板25に密着させ、その後、紫外線を基板24側から照射して樹脂を硬化させた。その結果、接着層27を介して基板24と基板25とが、接着された。最後に、記録層416、及び記録層426の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
このようにして得られたサンプルについて、実施例4で用いた方法と同様の方法によって、情報記録媒体17の第2情報層42の消去性能、信号信頼性、及び第1情報層の信号強度を測定した。測定において、レーザビーム31の波長は405nm、対物レンズ41の開口数NAは0.65、測定時のサンプルの線速度は22.4m/s、最短マーク長は0.173μmであった。
この結果、実施例4と同様に、記録層426の厚さが、4〜9nmの範囲であれば、第2情報層42の消去性能および信号信頼性、ならびに第1情報層41の信号強度が良好であることがわかった。
(実施例9)
実施例9では、図9の情報記録媒体18を作製し、実施例5と同様に、性能を評価した。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板24として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そのポリカーボネート基板上に、第2の誘電体層448として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:35nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、記録層446として(Sb0.85S0.15)95Ge5層、第2の誘電体層444として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、反射層442としてAg−Pd−Cu層(厚さ:7nm)、透過率調整層441としてTiO2層(厚さ:25nm)を順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は、実施例5の第4情報層44の形成で使用したものと同様である。
次に、透過率調整層441上に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布し、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に、案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)を形成した基板をかぶせて密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第3情報層43側に形成された、厚さ15μmの分離層29を得た。
その後、分離層29の上に、第2の誘電体層438として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:38nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、記録層436としてSb80S20層(厚さ:4nm)、第2の誘電体層434として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、反射層432としてAg−Pd−Cu層(厚さ:8nm)、透過率調整層431としてTiO2層(厚さ:30nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例5の第3情報層43の形成で使用したものと同様である。
次に、透過率調整層431上に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に、案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第2情報層42側に形成された、厚さ10μmの分離層28を得た。
その後、分離層28の上に、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、記録層426としてSb80S20層(厚さ:4nm)、第2の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:8nm)、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:30nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例5の第2情報層42の形成で使用したものと同様である。
また、基板25として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.56mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、反射層412としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層414として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、記録層416としてSb60S40(厚さ:10nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層418として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例5の第1情報層41の形成で使用したものと同様である。
その後、紫外線硬化性樹脂を基板25の第2の誘電体層428上に、スピンコート法により塗布し、均一な樹脂層(厚さ15μm)を形成した。この樹脂層の上に、基板24の透過率調整層431を密着させ、その後紫外線を基板24側から照射して樹脂を硬化させた。それにより、接着層27を介して基板24と基板25を接着させた。最後に、記録層416、426、436、及び446の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
このようにして得られたサンプルについて、実施例5で用いた方法と同様の方法によって、情報記録媒体18の第4情報層44の消去性能および信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、ならびに第1情報層41の信号強度を測定した。測定において、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ41の開口数NAは0.65、測定時のサンプルの線速度は22.4m/s、最短マーク長は0.173μmであった。
この結果、実施例5と同様に、記録層446の厚さが、2〜6nmの範囲であれば、第4情報層44の消去性能および信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、ならびに第1情報層41の信号強度が良好であることがわかった。
実施例3、4、5、7、8及び9の結果から、情報記録媒体11から18において、記録層の厚さは2nm〜15nmの範囲内であることが好ましいことが判った。即ち、SbとSとを含む記録層が、2nm〜15nmの範囲内にある厚さを有すると、媒体において良好な性能が確保された。
(実施例10)
実施例4で作製した情報記録媒体と、同じ構成の媒体を、第2情報層42に含まれる記録層426の組成を変えて作製した。記録層426の組成は、サンプル10−1においては、Sb70Sn30とし、サンプル10−2においては、Sb70Ge30とした。サンプル10−1および10−2において、記録層は、SbSn合金ターゲット(サンプル11−1)およびSbGe合金ターゲット(サンプル11−2)をそれぞれ用いて、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。その他の層の材料および形成条件は、実施例4で作製したサンプルのそれらと同じであった。
サンプル10−1および10−2と比較するために、実施例4で作製したサンプル4−5を用意した。これらのサンプルの第2情報層の透過率を測定するために、図4に示す情報記録媒体13の第1情報層41と分離層22を有さず、基板21上に第2情報層42と透明層23のみを形成した透過率測定用サンプルを作製し、記録層426の記録層組成と、第2情報層42の透過率との関係を調べた。
透過率測定用サンプルは以下のように製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。基板21の上に、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:20nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、第1の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:15nm)、記録層426(厚さ:8nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)を順次スパッタリング法によって積層した。各層の形成条件は、実施例4で作製したサンプルのそれと同じであった。
最後に、紫外線硬化性樹脂を第2の誘電体層428上にスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ75μmの透明層23を形成した。その後、記録層426をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層426の記録層組成が異なる透過率測定用のサンプルを製造した。
これらの透過率測定用サンプルの波長405nmにおける透過率を分光器により測定して、測定値を第2の情報層の透過率とした。透過率が、49%以上であるものは「○」と評価し、49%未満である媒体は、「×」と評価した。評価結果を表6に示す。
本発明に相当するサンプル4−5は、第2情報層の透過率が高く、したがって、第1情報層の信号強度も十分な大きさとなった。記録層にSを含まないサンプル10−1および10−2は、透過率が小さく、したがって、第1情報層の信号強度は、サンプル4−5と比較して低かった。
(実施例11)
実施例5で作製した情報記録媒体と、同じ構成の媒体を、第4情報層44に含まれる記録層446の組成を変えて作製した。記録層446の組成は、サンプル11−1においては、Sb80Sn20とし、サンプル11−2においては、Sb80Ge20とした。サンプル11−1および11−2において、記録層は、SbSn合金ターゲット(サンプル11−1)およびSbGe合金ターゲット(サンプル11−2)をそれぞれ用いて、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。その他の層の材料および形成条件は、実施例5で作製したサンプルのそれらと同じであった。
これらのサンプルと比較するために、実施例5で作製したサンプル5−5を用意した。これらのサンプルの第4情報層の透過率を測定するために、図5に示す情報記録媒体14の第1、第2、第3情報層41、42、43と分離層22、28、29を有さず、基板21上に第4情報層44と透明層23のみを形成した透過率測定用サンプルを作製し、記録層446の記録層組成と、第4情報層44の透過率との関係を調べた。
透過率測定用サンプルは以下のように製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。透過率調整層441としてTiO2層(厚さ:25nm)、反射層442としてAg−Pd−Cu層(厚さ:7nm)、第2の誘電体層444として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、記録層446(厚さ:5nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層448として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:35nm)を順次スパッタリング法によって積層した。各層の形成条件は、実施例5で作製したサンプルのそれと同じであった。
最後に、紫外線硬化性樹脂を第2の誘電体層448上にスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ65μmの透明層23を形成した。その後、記録層446をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層446の記録層組成が異なる透過率測定用のサンプルを製造した。
これらの透過率測定用サンプルの波長405nmにおける透過率を分光器により測定して、測定値を第4の情報層の透過率とした。透過率が、68%以上であるものは「○」と評価し、68%未満である媒体は、「×」と評価した。評価結果を表7に示す。
本発明に相当するサンプル5−5は、第4情報層の透過率が高く、したがって、第1〜第3情報層の信号強度も十分な大きさとなった。記録層にSを含まないサンプル11−1および11−2は、透過率が小さく、したがって、第1〜第3情報層の信号強度は、サンプル5−5のそれらと比較して低かった。
(実施例12)
実施例12では、図12に示す電気的情報記録媒体61において、第2記録層66がない電気的情報記録媒体61を製造し、その電流の印加による相変化を確認した。
基板62として、表面を窒化処理したSi基板を準備し、その上に下部電極63として、Ptから成り、表面積が6μm×6μmであり、厚さが0.1μmである層を形成した。その上に、第1誘電体層64として、(SiO2)50(ZrO2)50から成り、表面積が4.5μm×5μmであり、厚さが0.01μmである層を形成した。さらに、第1記録層65として、Sb80S20から成り、表面積が5μm×5μmであり、厚さが0.05μmである層を形成した。第2誘電体層67として、(SiO2)50(ZrO2)50から成り、表面積が4.5μm×5μmであり、厚さが0.01μmである層を形成した。上部電極68として、Ptから成り、表面積が5μm×5μmであり、厚さが0.1μmである層を形成した。いずれの層もスパッタリング法により形成した。
第1誘電体層64、及び第2誘電体層67は絶縁体であった。従って、第1記録層65に電流を流すため、第1誘電体層64及び第2誘電体層67は、第1記録層65より小さい表面積を有するように形成し、下部電極63および上部電極68それぞれが、第1記録層65と部分的に接するようにした。
その後、下部電極63、及び上部電極68に、Auリード線をボンディングし、印加部69を介して電気的情報記録再生装置74を電気的情報記録媒体61に接続した。この電気的情報記録再生装置74により、下部電極63と上部電極68の間には、パルス電源73がスイッチ71を介して接続された。さらに、第1記録層65の相変化による抵抗値の変化は、下部電極63と上部電極68の間にスイッチ72を介して接続された抵抗測定器70によって検出した。
第1記録層65が非晶質相のとき、下部電極63と上部電極68の間に、図15の記録波形901を有し、Ic1=5mA、tc1=50nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層65が非晶質相から結晶相に転移した。また、第1記録層65が結晶相のとき、下部電極63と上部電極68の間に、図15の消去波形906を有し、Ia1=10mA、ta1=10nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層65が結晶相から非晶質相に転移した。
また、電気的相変化情報記録媒体61の繰り返し書き換え回数を測定したところ、第1誘電体層64及び第2誘電体層67を有する媒体の繰り返し書き換え回数は、第1誘電体層64及び第2誘電体層67が無い媒体のそれの10倍以上であった。これは、第1誘電体層64、及び第2誘電体層67が、第1記録層65への下部電極63及び上部電極68からの物質移動を抑制しているためである。
なお、第1記録層48を、Sb80S20以外のSb−S系材料、Sb−S−M系材料(MはSn、Bi、In、Ge及びMnから選ばれる少なくとも一つの元素)を用いて形成しても、同様の結果が得られた。
本発明の情報記録媒体は、記録した情報を長時間保持できる性質(不揮発性)を有し、高密度の書き換え型の光ディスク等(例えば、Blu−ray Disc Rewritable(BD−RE)、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等)または電気的メモリとして有用である。
本発明は、レーザビームの照射または電気エネルギーの印加によって情報の記録および再生を行う情報記録媒体、ならびにその製造に使用するスパッタリングターゲットおよび成膜装置に関するものである。
従来から情報記録媒体として、記録層を相変化材料で形成する、相変化情報記録媒体がある。相変化情報記録媒体の中でも、レーザビームを用いて光学的に情報を記録、消去、書換、および再生するものは、光学的相変化情報記録媒体(以下では光記録媒体と記す)と呼ばれる。光記録媒体への情報の記録は、レーザビームの照射によって発生する熱により、相変化材料を、例えば、結晶相と非晶質相との間で状態変化させることによって行われる。また、情報の再生は、結晶相と非晶質相との間の反射率の違いを検出することにより行う。
光記録媒体のうち、情報の消去および書き換えが可能な書き換え型光記録媒体においては、一般に記録層の初期状態は結晶相である。情報を記録する場合には、高パワーのレーザビームを照射して記録層を溶融し、その後、急激に冷却することによってレーザ照射部を非晶質相にする。一方、情報を消去する場合には、記録時のパワーに比べて、より低パワーのレーザビームを照射して記録層を昇温し、その後、ゆっくりと冷却することによってレーザ照射部を結晶相にする。また、高パワーと低パワーとでパワー変調させたレーザビームを記録層に照射することで、記録されている情報を消去しながら新しい情報を記録すること、すなわち書き換えが可能である。
消去または書き換えを高速で行うためには、短時間で、非晶質相を結晶相へと変化させる必要がある。つまり、書き換え型光記録媒体において、高い消去性能を実現するためには、記録層を、結晶化速度の高い相変化記録材料によって形成することが必要となる。
このような書き換え型光記録媒体は、基板上に、記録層に加えて、誘電体層、反射層、および界面層等を適宜設けた構成を有する。誘電体層は繰り返し記録する際の記録層の蒸発および基板の熱変形を防止し、また、光学干渉効果により記録層の光吸収および光学的変化を効率よく生じさせる等の目的で設けられうる。誘電体層は、記録層の両側に配置される。反射層は照射されるレーザビームを効率良く使うこと、および、冷却速度を向上させて記録層を非晶質相にし易くする目的で設けられる。反射層は、通常、レーザビーム照射側から見て、記録層の奥に、反射層と記録層が誘電体層を挟むように、配置される。界面層は必要に応じて、記録層と誘電体層との間に配置され、記録層と誘電体層の間の原子および分子の相互拡散を防止する目的で設けられる。
公知の相変化材料の例として、GeTe−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、およびGeTe−SnTeなどが挙げられる。特に、GeTe−Bi2Te3は結晶化速度が高いので、これを用いて書き換え型光記録媒体の記録層を形成すると、優れた消去性能が得られる(特許文献1参照)。
また、書き換え型光記録媒体を大容量化するために、2つの情報層を1つの光記録媒体に設ける手法が報告されている(特許文献2参照)。情報は、2つの情報層のそれぞれに、媒体の片側から入射するレーザビームによって記録することができる。再生も同様である。よって、2つの情報層を有する光記録媒体の記録容量は、1つのみ情報層を有する光記録媒体の記録容量のほぼ2倍にすることができる。
この2つの情報層を有する書き換え型光記録媒体において、入射側から遠い情報層(以下、第1情報層とも呼ぶ)の記録および再生は、入射側の情報層(以下、第2情報層とも呼ぶ)を透過したレーザビームによって行われる。従って、第2情報層はできるだけ高い透過率を有することが好ましい。相変化材料は一般に消衰係数が大きいため、記録層の透過率を高くするには、第2情報層の記録層の厚さは薄いほうが良い。
また、大容量化のために情報層の数を増やし、例えば3つまたは4つの情報層を有する光記録媒体を実現するためには、入射側の情報層(第3情報層、または第4情報層)の透過率をさらに上げなければならず、記録層の厚さはさらに薄くする必要がある。
特開昭63−225935号公報
特開2000−36130号公報
しかしながら、従来のGeTe−Bi2Te3記録層においては、透過率を高めるために厚さを薄くすると、結晶化速度が低下し、消去性能が大きく低下するという問題があった。一方で、GeTe−Bi2Te3記録層においてBi2Te3の割合を多くすると、結晶化速度が上がり、消去性能は高められるが、非晶質相が不安定になり、信号の信頼性が低下するという問題もあった。
本発明は、上記問題点を解決するものであり、結晶化速度が速く、かつ非晶質相も安定な、優れた記録層を有する情報記録媒体、およびその製造方法、ならびにそのような記録層を形成するのに用いられるスパッタリングターゲットおよび成膜装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、相変化を生じ得る記録層を含む情報層を含む情報記録媒体であって、前記記録層がSbとSとを含み、かつ下記の式(1):
SbxS100-x (原子%) (1)
(添え字xは、原子%で示される組成比を表し、50≦x≦98を満たす)
で表される材料を含む情報記録媒体を提供する。
また、本発明は、上記本発明の情報記録媒体の製造方法として、相変化を生じ得る、SbとSとを含む記録層をスパッタリング法により形成する工程を含む情報層の形成工程を含む情報記録媒体の製造方法であって、前記記録層の形成工程において、SbとSとを含むスパッタリングターゲットを用い、前記スパッタリングターゲットを用いて形成される膜が、下記の式(1):
SbxS100-x (原子%) (1)
(添え字xは、原子%で示される組成比を表し、50≦x≦98を満たす)
で表される材料を含む、製造方法を提供する。
本発明はまた、上記本発明の情報記録媒体の記録層の成膜に用いるのに適したスパッタリングターゲットとして、SbとSとを含み、下記の式(11):
SbXS100-X (原子%) (11)
(添え字Xは、原子%で示される組成比を表し、50≦X≦98を満たす)
で表される材料を含む、スパッタリングターゲットを提供する。
本発明はさらにまた、電源、排気口およびガス供給口を有する真空容器、前記排気口を介して前記真空容器に接続された真空ポンプ、前記真空容器内に配置された陽極および陰極、および前記陽極に接続されたスパッタリングターゲットを含む成膜装置であって、前記スパッタリングターゲットが、前記本発明のスパッタリングターゲットである、成膜装置を提供する。
本発明の情報記録媒体は、高い消去率を示し、記録再生特性に優れ、かつ高い信号信頼性を示す媒体である。また、本発明の情報記録媒体の製造方法は、本発明の情報記録媒体を容易に製造することを可能にする。さらに、本発明のスパッタリングターゲットおよび成膜装置によれば、本発明の情報記録媒体を容易に製造することができる。
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の一構成例の断面図
本発明の情報記録媒体の記録再生装置の一例の概略図
本発明の情報記録媒体の記録再生に用いる記録パルス波形の一例の概略図
本発明の情報記録媒体、及び電気的情報記録再生装置の構成の一部を模式的に示す図
本発明の大容量の電気的情報記録媒体の構成の一部を模式的に示す図
本発明の電気的情報記録媒体とその記録再生システムの構成の一部を模式的に示す図
本発明の電気的情報記録媒体に適用される記録・消去パルス波形の一例を示す図
本発明の情報記録媒体を製造する成膜装置の一部を模式的に示す図
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、以下の実施の形態において、同一の要素に同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
実施の形態1として、本発明の情報記録媒体(以下、「記録媒体」または「媒体」と呼ぶことがある)の一例を説明する。実施の形態1の情報記録媒体11の部分断面図を図1に示す。情報記録媒体11は、光記録媒体であり、情報はレーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体11は、基板21上に、情報層40および透明層23がこの順に設けられた構成を有する。透明層23は、基板21よりも薄い厚さを有する。図示した形態において、レーザビームは、透明層23の側から入射する。
レーザビーム31の波長λが短いほど、対物レンズ32によって小さなスポット径に集光できる。しかし、波長λが短すぎると、透明層23などによるレーザビーム31の光吸収が大きくなる。そのため、レーザビームの波長λは350nm〜450nmの範囲内であることが好ましい。
図1に示すように、情報層40においては、基板21に近い側から、反射層402、第1の誘電体層404、記録層406及び第2の誘電体層408がこの順に設けられている。また必要に応じて、図2に示すように、反射層402と第1の誘電体層404との間に反射層側界面層403を、第1の誘電体層404と記録層406の間に第1の界面層405を、第2の誘電体層408と記録層406の間に第2の界面層407を設けてもよい。
この情報記録媒体11への情報の記録は、透明層23側からレーザビーム31を対物レンズ32で集光し、情報層40の記録層406に照射して行う。この情報記録媒体11に記録された情報も、同様にレーザビームを照射して行う
基板21は円盤形状を有し、情報層40と透明層23を保持するために用いられ、それらの層を形成するときの支持体として機能する。基板21の情報層40と接する表面には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。基板21の情報層40と接しない表面は、平滑であることが好ましい。基板21は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を材料として用いて、形成することができる。特に、ポリカーボネート樹脂は、転写性および量産性に優れ、低コストであることから、基板21の材料として好ましい。
次に、情報層40を構成する各層について説明する。
記録層406の材料は、レーザビーム31の照射によって結晶相と非晶質相との間で相変化を生じる材料である。本発明においては、記録層406の材料として、SbとSとを含む材料を用いる。記録層406がSbのみで構成されると、非晶質相が不安定になり信号の信頼性が低下してしまう。SbにSを加えることにより非晶質相を安定化できる。また、SbにSを加えることにより、記録層406の透過率を高くすることができる。
具体的には、記録層406の厚さが7nmの場合の結晶化温度をTx(室温において非晶質相の相変化材料406を50℃/minで緩やかに昇温させたときに、相変化材料が結晶相に相変化する温度)とすると、記録層406がSbのみから成るときにはTx=100℃であるのに対し、記録層406がSb80S20(添え字は、原子%で表される組成比)から成るときにはTx=200℃となり、Sbのみから成る記録層に比べ非晶質相が安定する。
また、SbとSとの組み合わせにおいて、Sbが50原子%未満になると、結晶化速度が低すぎて、書き換え型光記録媒体として実用可能な消去性能が得られない。そのため、記録層406において、SbとSは、下記の式(1):
SbxS100-x (原子%) (1)
(添え字xは、原子%で示される組成比を表し、50≦x≦98を満たす)
で表される材料として含まれることが好ましい。xが98を超えると、SbにSを添加することによる効果が得られない。xは、より好ましくは、60≦x≦80を満たす。この式は、Sb原子の数とS原子の数を合わせて100原子%としたときの組成比を示すものである。よって、記録層406は、SbおよびS以外の元素を含んでよい。
記録層は、好ましくは、Sb原子とS原子とから実質的に成る。ここで、「実質的に」という用語は、不可避的に少量の他の元素(例えば、スパッタリング中の雰囲気ガスに含まれる元素等)が含まれることを考慮して使用している。より具体的には、記録層を構成する全原子のうち、SbおよびS以外の原子の割合が10原子%未満であるときには、その記録層は、SbとSとから実質的に成るといえる。SbおよびS以外の原子の割合は、より好ましくは、1原子%未満である。
記録層406の材料として、SbとSと、Ge、Sn、Bi、InおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素(M)とを含むものを用いることができる。これは、先に示したSbとSとを含む材料に、前記のMで表される元素を加えることにより、結晶化速度の調節および非晶質相の安定性の調節が可能となることによる。例えば、SnまたはBiを、SbとSとから成る材料に添加すると、材料の結晶化速度が高くなる。また、In、GeおよびMnはそれぞれ、SbとSとから成る材料に添加すると、材料の非晶質相を安定化できる。
Mの種類に応じて、その好ましい添加量は異なる。ここでは、上記五つの元素を、Ge、InおよびSnがM1という群に属し、BiおよびMnがM2という群に属するように、分けることが好ましい。記録層406は、M1を含む場合には、記録層406は、下記の式(2):
(SbzS1-z)100-yM1y (原子%) (2)
(添え字zは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦z≦0.98を満たし、添え字yは、原子%で示される組成比を表し、0<y≦30を満たす)
で表される材料を含むことが好ましい。
上記式(2)において、M1はGe、InおよびSnから選ばれる少なくとも一つの元素である。M1として、二つの元素(例えば、GeおよびSn、またはInおよびSn)が含まれてよく、三つの元素が含まれてよい。zおよびyは、0.5≦z≦0.98かつ2≦y≦20を満たすことがより好ましく、0.6≦z≦0.8かつ5≦y≦20を満たすことがさらにより好ましい。
記録層406が上記式(2)の材料を含む場合、記録層は、より好ましくは、Sb原子とS原子とM1原子とから実質的に成る。ここで、「実質的に」という用語は、不可避的に少量の他の元素(例えば、スパッタリング中の雰囲気ガスに含まれる元素等)が含まれることを考慮して使用している。より具体的には、記録層を構成する全原子のうち、Sb、SおよびM1以外の原子の割合が10原子%未満であるときには、その記録層は、SbとSとM1とから実質的に成るといえる。Sb、SおよびM1以外の原子の割合は、より好ましくは、1原子%未満である。
記録層406がM2を含む場合、記録層406は、下記の式(3):
(SbaS1-a)100-bM2b (原子%) (3)
(添え字aは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦a≦0.98を満たし、添え字bは、原子%で示される組成比を表し、0<b≦20を満たす)
で表される材料を含むことが好ましい。上記式において、M2はBiおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素である。M2として、BiおよびMnの両方が含まれてよい。bは、より好ましくは、2≦b≦10を満たす。
記録層406が上記式(3)の材料を含む場合、記録層は、好ましくは、Sb原子とS原子とM2原子とから実質的に成る。ここで、「実質的に」という用語は、不可避的に少量の他の元素(例えば、スパッタリング中の雰囲気ガスに含まれる元素等)が含まれることを考慮して使用している。より具体的には、記録層を構成する全原子のうち、Sb、SおよびM2以外の原子の割合が10原子%未満であるときには、その記録層は、SbとSとM2とから実質的に成るといえる。Sb、SおよびM2以外の原子の割合は、より好ましくは、1原子%未満である。
あるいは、記録層406は、M1およびM2の両方を含み、下記の式(4):
(SbcS1-c)100-d-eM1dM2e (原子%) (4)
(添え字cは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦c≦0.98を満たし、添え字dおよびeは、原子%で示される組成比を表し、0<d<30、0<e≦20、0<d+e≦30を満たす)
で表される材料を含んでよい。
記録層406が上記式(4)の材料を含む場合、記録層は、好ましくは、Sb原子とS原子とM1原子とM2原子とから実質的に成る。ここで、「実質的に」という用語は、不可避的に少量の他の元素(例えば、スパッタリング中の雰囲気ガスに含まれる元素等)が含まれることを考慮して使用している。より具体的には、記録層を構成する全原子のうち、Sb、S、M1およびM2以外の原子の割合が10原子%未満であるときには、その記録層は、SbとSとM1とM2とから実質的に成るといえる。Sb、S、M1およびM2以外の原子の割合は、より好ましくは、1原子%未満である。
記録層406は、非晶質相がレーザビーム照射時に容易に結晶相に変化できることが好ましく、かつレーザビーム非照射時には結晶相に変化しないことが好ましい。記録層406の厚さが小さすぎると、十分な反射率及び反射率変化が得られなくなる。また、記録層406の厚さが大きすぎると、熱容量が大きくなるため記録感度が低下する。そのため、記録層406の厚さは5nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、8nm〜12nmの範囲内であることがより好ましい。
反射層402は、記録層406に吸収される光量を増やすという光学的な機能と、記録層406で生じた熱を拡散させるという熱的な機能とを有する。反射層402の材料として、Ag、Au、Cu、およびAlから選ばれる少なくとも1つの元素を含むものを用いることができる。例えば、Ag−Cu、Ag−Ga−Cu、Ag−Pd−Cu、Ag−Nd−Au、AlNi、AlCr、Au−CrまたはAg−In等の合金を、反射層402の材料として用いることができる。特にAg合金は熱伝導率が大きいため、反射層402の材料として好ましい。反射層402の厚さが大きいほど、熱拡散機能はより強化される。しかし、反射層402の厚さが大きすぎると、熱が過度に拡散されて、記録層406の記録感度が低下する。そのため、反射層402の厚さは、30nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、70nm〜140nmの範囲内であることがより好ましい。
第1の誘電体層404は、記録層406と反射層402との間にあり、記録層406から反射層402への熱拡散を調節する熱的な機能、ならびに反射率および吸収率などを調節する光学的な機能を有する。第1の誘電体層404の材料としては、例えば、ZrO2、HfO2、ZnO、SiO2、SnO2、Cr2O3、TiO2、In2O3、Ga2O3、Y2O3、CeO2、およびDyO2等の酸化物、ZnS、およびCdS等の硫化物、ならびにSiCなどの炭化物から選択される1種類の化合物、またはこれらの化合物から選択される2種類以上の化合物の混合物、例えばZrO2−SiO2、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZnS−SiO2、およびSnO2−SiCを用いることができる。特にZnS−SiO2は第1の誘電体層の材料として優れている。ZnS−SiO2は、成膜速度が速く、透明であり、機械特性および耐湿性が良好であることによる。
第1の誘電体層404の厚さが大きすぎると、反射層402の冷却効果が弱くなり、記録層406からの熱拡散が小さくなるため、記録層が非晶質化しにくくなる。また、第1の誘電体層404の厚さが小さすぎると、反射層402の冷却効果が強くなり、記録層406からの熱拡散が大きくなって、感度が低下する。そのため、第1の誘電体層404の厚さは、2nm〜40nmの範囲内であることが好ましく、8nm〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
反射層側界面層403は、反射層402が、第1の誘電体層404の材料によって腐食または破壊されるのを防ぐように作用する。具体的には反射層402がAgを含み、かつ、第1の誘電体層404がSを含む(例えばZnS−SiO2を含む)とき、反射層側界面層403は、AgとSの反応に起因する反射層402の腐食を防ぐ。
反射層側界面層403の材料としては、Ag以外の金属、例えばAl、またはAl合金を用いることができる。また、反射層側界面層403の材料としては、Sを含まない誘電体材料を用いることができる。そのような材料は、例えば、ZrO2、HfO2、ZnO、SiO2、SnO2、Cr2O3、TiO2、In2O3、Ga2O3、Y2O3、CeO2、およびDyO2等の酸化物、ならびにSiCなどの炭化物から選択される1種類の化合物、またはこれらの化合物から選ばれる2種類以上の化合物の混合物、例えばZrO2−SiO2、ZrO2−SiO2−Cr2O2、ZrO2−SiO2−Ga2O2、HfO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、およびSnO2−SiCである。または、Cなどを用いて反射層側界面層403を形成してよい。
反射層側界面層403の厚さは大きすぎると、第1の誘電体層404の熱的及び光学的な働きが妨げられ、また、小さすぎると、反射層402の腐食および破壊が十分に防止されないことがある。そのため、反射層側界面層403の厚さは1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、5nm〜40nmの範囲内であることがより好ましい。
第1の界面層405は、繰り返しの記録によって、第1の誘電体層404と記録層406との間で生じる物質移動を防止する機能を有する。第1の界面層405は、記録の際に溶融しない程度の高い融点を有し、記録層406との密着性が良い材料で形成することが好ましい。第1の界面層405の材料は、例えば、ZrO2、HfO2、ZnO、SiO2、SnO2、Cr2O3、TiO2、In2O3、Ga2O3、Y2O3、CeO2、およびDyO2等の酸化物、ZnSおよびCdS等の硫化物、ならびにSiCなどの炭化物から選ばれる1種類の化合物またはこれらの化合物から選ばれる2種類以上の化合物の混合物、例えば、ZrO2−SiO2、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−SiO3−Cr2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZnS−SiO2、SnO2−SiCを用いることができる。またはCなどである。特にGa2O3、ZnOおよびIn2O3などが第1の界面層405の材料として好ましい。これらは、記録層406との密着性が良いことによる。
第1の界面層405の厚さが小さすぎると、界面層としての効果が発揮されなくなり、大きすぎると、第1の誘電体層404の熱的および光学的な働きが妨げられる。そのため、第1の界面層405の厚さは、0.3nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
第2の誘電体層408は、記録層406よりもレーザビーム入射側により近い位置に存在する。第2の誘電体層408は、記録層406の腐食および変形などを防止する機能と、反射率および吸収率などを調整する光学的な機能とを有する。また、第2の誘電体層408の材料の例は、第1の誘電体層404の材料として挙げた例と同様である。特に、ZnS−SiO2は第2の誘電体層の材料として優れている。ZnS−SiO2は、成膜速度が速く、透明であり、機械特性および耐湿性が良好であることによる。
第2の誘電体層408の厚さが大きすぎると、記録層406の腐食および変形などを防止する機能が低下する。また、第2の誘電体層408の厚さは、マトリクス法に基づく計算により、記録層406が結晶相である場合と非晶質相である場合の反射光量の変化が大きくなる条件を満足するように、厳密に決定することができる。第2の誘電体層408の厚さは、20nm〜80nmの範囲内であることが好ましい。
第2の界面層407は、第1の界面層405と同様に、繰り返し記録によって第2の誘電体層408と記録層406との間で生じる物質移動を防止する機能を有する。従って、第2の界面層407は、第1の界面層405と同様の性能を有するように、第1の界面層405の材料として例示した材料で形成されることが好ましい。
第2の界面層407の厚さは、第1の界面層405と同様に、0.3nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
上記、反射層402、第1の誘電体層404、記録層406及び第2の誘電体層408を設け、さらに必要に応じて反射層側界面層403、第1の界面層405及び第2の界面層407を設けることによって情報層40は構成される。
透明層23は、情報層40のレーザビーム31入射側にあり、情報層40を保護する。透明層23は、レーザビーム31に対して小さい光吸収を有することが好ましい。透明層23は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)、遅効性熱硬化性樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を用いて、形成することができる。また、これらの材料よりなるシートを、透明層23として用いてもよい。
透明層23の厚さが小さすぎると、情報層40を保護する機能が発揮されない。また、透明層23の厚さが大きすぎると、情報記録媒体11において、レーザビーム31入射側から情報層40までの距離が対物レンズ32の焦点距離よりも長くなって、レーザビーム31の焦点を記録層406に合わせることができなくなる。NAが0.85である場合には、透明層の厚さは5μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、40μm〜110μmの範囲内であることがより好ましい。
情報記録媒体11は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板21(厚さは例えば1.1mm)上に情報層40を形成する。情報層40は多層膜から成り、各層(膜)は、順次スパッタリングすることによって形成できる。なお、基板21を構成する材料によっては、基板21は高い吸湿性を示すことがあるので、必要に応じて、スパッタリングをする前に水分を除去する基板アニール工程を実施してもよい。
各層は、各層を構成する材料のスパッタリングターゲットを、Arガス、KrガスまたはXeガスなどの希ガス雰囲気中、または希ガスと反応ガス(酸素ガス及び窒素ガスから選ばれる少なくとも一つのガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成できる。スパッタリング方法としてはDC(直流)スパッタリング法とRF(高周波)スパッタリング法とを必要に応じて使い分ける。通常、DCスパッタリングは、高い成膜レートで実施できるため、好ましく用いられる。しかし、誘電体材料など導電性の低い材料は、DCスパッタリング法によってスパッタリングできないことがあり、その場合は、RFスパッタリング法が用いられる。導電性の高い誘電体材料、およびスパッタリングターゲット作製時に工夫して導電性を高めた誘電体材料等は、DCスパッタリング法またはパルスDCスパッタリング法によってスパッタリングできる。
スパッタリングによって形成される各層の組成は、もとのスパッタリングターゲットの組成と完全には一致しないことがある。例えば、酸化物の場合、スパッタリングによって酸素欠損がおこりやすい。その場合、反応ガスとして酸素ガスを用いることで酸素欠損を補うことができる。スパッタリングターゲットの組成は、スパッタリングによって形成された膜が所望の組成となるように決定される。スパッタリングターゲットの組成と、スパッタリングによって形成された膜の組成は、一致してもよい。
ここで、本発明の情報記録媒体の製造に用いられるスパッタリング装置(成膜装置)の一例を説明する。図16は、スパッタリング装置を用いて成膜する様子を模式的に示している。図16に示すように、このスパッタリング装置では、真空容器667に、排気口668を介して真空ポンプ(図示せず)が接続され、真空容器667内で、高真空が保たれる。ガス供給口669からは、一定流量のガスが供給される。基板671(ここでの基板とは、その表面に膜を堆積させる基材である)は陽極670に載置されている。真空容器667を接地することにより、真空容器667及び基板671が陽極に保たれている。
スパッタリングターゲット672は、陰極673に接続されており、スイッチ(図示せず)を介して電源674に接続されている。図示した形態において、陰極673は水冷される。陽極670と陰極673との間に所定の電圧を加えることにより、スパッタリングターゲット672から粒子が放出され、基板671上に薄膜を形成する。この装置は、情報層を形成する各層を形成するために用いることができ、また、後述する他の形態の媒体を製造するためにも用いることができる。
図示した形態において、情報層40の形成は、具体的には、基板21上に反射層402を形成することから開始する。反射層402は、反射層402を構成する金属又は合金からなるスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、DCスパッタリングすることにより、形成できる。
続いて、必要に応じて反射層402上に、反射層側界面層403を形成する。反射層側界面層403は、反射層側界面層403を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることにより、形成する。反射層側界面層403の材料が、金属など導電性の高い材料である場合は、DCスパッタリング法を用い、酸化物など導電性の低い材料である場合は、RFスパッタリング法を用いるとよい。
続いて、反射層側界面層403上、または、反射層402上に、第1の誘電体層404を形成する。第1の誘電体層404は、第1の誘電体層404を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成する。場合により、第1の誘電体層404は、DCスパッタリング法により形成してよい。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層404上に、第1の界面層405を形成する。第1の界面層405は、第1の界面層405を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリングすることによって形成する。場合により、第1の界面層405は、DCスパッタリング法により形成してよい。
続いて、第1の界面層405上、または、第1の誘電体層404の上に記録層406を形成する。記録層406は、例えば、SbとSとを含むスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成してよい。具体的には、記録層406が上記式(1)で表される材料を含む組成となるように、組成を調整したスパッタリングターゲットをDCスパッタリングすることによって、記録層406は形成できる。そのようなスパッタリングターゲットは、例えば、SbとSとを含み、下記の式(11):
SbXS100-X (原子%) (11)
(添え字Xは、原子%で示される組成比を表し、50≦X≦98を満たす)
で表される材料を含む、スパッタリングターゲットである。
また、記録層406を形成するのに用いるスパッタリングターゲットとしては、上記のスパッタリングターゲットに、さらにSn、Bi、In、Ge及びMnから選ばれる少なくとも1つの元素を添加したスパッタリングターゲットを用いてもよい。具体的には、記録層406が上記式(2)、(3)または(4)で表される材料を含む組成となるように、組成を調整したスパッタリングターゲットを、DCスパッタリングすることによって、記録層406は形成できる。そのようなスパッタリングターゲットは、例えば、下記式(12)〜(14)で表される材料を含む。
(SbZS1-Z)100-YM1Y (原子%) (12)
(M1はGe、InおよびSnから選ばれる少なくとも一つの元素であり、添え字Zは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦Z≦0.98を満たし、添え字Yは、原子%で示される組成比を表し、0<Y≦30を満たす)
(SbAS1-A)100-BM2B (原子%) (13)
(M2はBiおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素であり、添え字Aは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦A≦0.98を満たし、添え字Bは、原子%で示される組成比を表し、0<B≦20を満たす)
(SbCS1-C)100-D-EM1DM2E (原子%) (14)
(M1はGe、InおよびSnから選ばれる少なくとも一つの元素であり、M2はBiおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素であり、添え字Cは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦C≦0.98を満たし、添え字DおよびEは、原子%で示される組成比を表し、0<D<30、0<E≦20、0<D+E≦30を満たす)
あるいは、記録層406は、Sb、S、M(但し、MはSn、Bi、In、Ge及びMnのうち少なくとも1つの元素)、Sb−S、Sb−M、S−M及びSb−S−Mで表されるスパッタリングターゲットから選ばれる少なくとも2個以上のスパッタリングターゲットを同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。その場合には、使用するスパッタリングターゲットの数、ならびに電源の出力に応じて、得られる記録層の組成が決定されることになるので、それらを適宜選択して、形成された膜が所望の組成となるようにスパッタリングする。このように2種以上のスパッタリングターゲットを使用することは、混合物のスパッタリングターゲットを形成するのが困難な場合に有用である。
続いて、必要に応じて、記録層406上に、第2の界面層407を形成する。第2の界面層407は、第2の界面層407を構成する材料から成るスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリングすることによって形成する。場合により、第2の界面層407は、DCスパッタリングにより形成してよい。
続いて、第2の界面層407上、または、記録層406上に第2の誘電体408を形成する。第2の誘電体層408は、第2の誘電体層408を構成する材料から成るスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリングすることによって形成する。場合により、第2の誘電体層407は、DCスパッタリングにより形成してよい。
このようにして、基板21上に情報層40を形成し、その後、情報層40上に透明層23を形成する。透明層23は、第2情報層41上に紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)または遅効性熱硬化性樹脂を、スピンコート法により塗布した後、この樹脂を硬化させることによって形成できる。また、透明層23は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、またはガラス等から成る、円盤状の板またはシートを用いて形成してよい。この場合、透明層23は、情報層40上に、紫外線硬化性樹脂または遅効性熱硬化性樹脂を塗布し、塗布した樹脂に板またはシートを密着させた後、硬化性樹脂を硬化させることによって形成できる。別法として、板またはシートに粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、それから板またはシートを第2の誘電体層408に密着させることもできる。
情報記録媒体11の記録層406は、通常、成膜したままの状態(アズデポ(as-depo)の状態)では非晶質状態である。よって、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層406を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
以上のようにして、情報記録媒体11は製造される。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることも可能である。
(実施の形態2)
実施の形態2として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態2の情報記録媒体12の部分断面図を図3に示す。情報記録媒体12は、多層光記録媒体であり、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体12においては、基板21上に、第1情報層41、第2情報層42・・・第N−1情報層48、第N情報層49までのN個の情報層(NはN≧2の整数)、及び透明層23がこの順に設けられている(以下、レーザ入射側とは反対側から数えてK番目(1≦K≦N)の情報層を第K情報層と呼ぶ)。情報層と情報層との間には、分離層22、・・・、28、29が設けられている。
情報記録媒体12では、第N情報層49よりも基板21側にある情報層に到達するレーザビームおよびその反射光は、その情報層よりレーザビーム31入射側に近い情報層を透過することにより、減衰する。そのため、第1情報層41、第2情報層42、・・・及び第N―1情報層48は、高い記録感度と高い反射率を有する必要があり、第2情報層42・・・第N−1情報層48及び第N情報層49は、高い透過率を有する必要がある。
基板21及び透明層23の材料、形状および機能は、実施の形態1で説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。
分離層22、・・・、28、29は、情報記録媒体12の第1情報層41、第2情報層42・・・第N情報層49のそれぞれのフォーカス位置を区別するために設ける層である。分離層22、・・・、28、29の厚さは、対物レンズ32の開口数NAとレーザビーム31の波長λにより決定される焦点深度以上であることが望ましい。一方、分離層22、・・・、28、29により分離されたすべての情報層は、対物レンズ32により集光可能な範囲に収まる必要がある。この要求を満たすには、分離層22、・・・、28、29等はある程度薄くする必要がある。仮に、λが405nm、NAが0.85である場合には、分離層22、・・・、28、29の厚さは、5μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
分離層22、・・・、28、29は、レーザビーム31に対して小さい光吸収を有することが好ましい。分離層22、・・・、28、29のレーザビーム31照射側には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。分離層22、・・・、28、29の材料は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂、遅効性熱硬化性樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等であってよい。
なお、本発明を、図3に示す媒体のように、多層構造の媒体として提供する場合、N個の情報層のうち少なくとも1つの第K情報層(Kは1≦K≦Nの整数)が相変化を生じ得る記録層を含むものであればよい。例えば、第N情報層49のみが、先に実施の形態1の記録層406に関連して説明した、SbとSとを含み、上記式(1)〜(4)のいずれかで表される材料を含む記録層(以下の説明を含む本明細書において、そのような記録層を「SbとSとを含む記録層」と呼ぶことがある)を含む書き換え型の情報層であってよい。その場合、第1情報層41から第N−1情報層48までのN−1個の情報層が、再生専用の情報層、あるいは1回のみ書込み可能な追記型の情報層としてもよい。
あるいは、第N情報層から第2情報層までのN−1個の情報層のうち、少なくとも一つの情報層が、SbとSを含む記録層を含む、書き換え型の情報層であってよい。SbとSを含み、上記式(1)〜(4)で示される材料は、高い透過性を有するので、第1情報層以外の情報層(即ち、その情報層を通過した光が別の情報層の記録再生に用いられる情報層)の記録層を構成するのに適している。あるいはまた、すべての情報層が、SbとSとを含む記録層を有してよい。SbとSとを含む記録層を媒体において1つだけ設ける場合、SbとSとを含む記録層は、第N情報層に含まれることが好ましい。第N情報層は、最も高い透過率を要するからである。
以下、第N情報層49の構成を説明する。
図3に示すように、第N情報層49においては、基板21に近い側から透過率調整層491、反射層492、第1の誘電体層494、記録層496及び第2の誘電体層498がこの順に設けられている。また、必要に応じて、反射層492と第1の誘電体層494との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層494と記録層496との間に第1の界面層を、第2の誘電体層498と記録層496との間に第2の界面層を設けてもよい。図3において、反射層側界面層は、層491と492との間に、493で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層492と494との間に、495で表される層として示すことができ、第2の界面層は、層496と498との間に、497で表される層として示すことができる。
記録層496の材料として、実施の形態1の記録層406の材料と同様の材料を用いることができる。SbとSを含む材料は透明性が高いため、記録層496の材料として特に適している。また、他の情報層がSbとSとを含む記録層を有する場合には、記録層496の材料として、(Ge−Sn)Te、GeTe−Sb2Te3、(Ge−Sn)Te−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、(Ge−Sn)Te−Bi2Te3、GeTe−(Sb−Bi)2Te3、(Ge−Sn)Te−(Sb―Bi)2Te3、GeTe−(Bi―In)2Te3、(Ge―Sn)Te−(Bi―In)2Te3、Sb−Te、Sb−Ge、(Gb−Te)−Ge、Sb−In、(Sb−Te)−In、Sb−Ga及び(Sb−Te)−Gaのいずれかを含む材料を用いることもできる。記録層496の厚さは、第N情報層49の透過率を高くするために、10nm以下であることが好ましく、2nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
反射層492は、実施の形態1の反射層402と同様な機能を有する。すなわち、記録層496に吸収される光量を増やすという光学的な機能と、記録層496で生じた熱を拡散させるという熱的な機能とを有する。そのため、反射層492の材料の例は、実施の形態1で説明した反射層402の材料の例と同様である。特にAg合金は熱伝導率が大きいため、反射層492の材料として好ましい。
反射層492の厚さは、第N情報層49の透過率を高くするために、20nm以下であることが好ましく、3nm〜14nmの範囲内であることがより好ましい。反射層492の厚さがこの範囲内にあると、反射層492の光学的及び熱的な機能が十分に発揮される。
第1の誘電体層494は、実施の形態1の第1の誘電体層404と同様な機能を有する。すなわち、記録層496から反射層492への熱拡散を調節する熱的な機能と、反射率および吸収率等を調節する光学的な機能とを有する。したがって、第1の誘電体層494の材料の例は、実施の形態1の第1の誘電体層404の材料の例と同様である。
第1の誘電体層494の厚さは、光学的及び熱的な機能が十分に発揮されるように、1nm〜40nmの範囲内であることが好ましく、4nm〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
第2の誘電体層498は、実施の形態1の第2の誘電体層408と同様な機能を有する。すなわち、記録層496の腐食および変形等を防止する機能と、反射率および吸収率等を調整する光学的な機能とを有する。そのため、第2の誘電体層498の材料の例は、実施の形態1で説明した第2の誘電体層408の材料の例と同様である。第2の誘電体層498の厚さは、マトリクス法に基づく計算により、記録層496が結晶相である場合と非晶質相である場合の反射光量の変化が大きくなる条件を満足するように厳密に決定することができる。
透過率調整層491は誘電体からなり、第N情報層49の透過率を調節する機能を有する。この透過率調整層491によって、記録層496が結晶相である場合の第N情報層49の透過率Tc(%)と、記録層496が非晶質相である場合の第N情報層49の透過率Ta(%)とを共に高くすることができる。
透過率調整層491は、TiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3、SiO2、Cr2O3、CeO2、Ga2O3、およびBi2O3等の酸化物、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ge−N、Cr−N、およびAl−N等の窒化物、ならびにZnSなどの硫化物から選択される1種類の化合物、またはこれらの化合物から選択される2種類以上の化合物の混合物で形成されてよい。透過率調整層491の屈折率ntと消衰係数ktは、透過率TcおよびTaを高めるために、nt≧2.4、かつ、kt≦0.1であることが好ましい。この条件を満たす材料として、TiO2またはTiO2を含む材料を用いることが好ましい。これらの材料は屈折率が大きく(nt=2.6〜2.8)、消衰係数が小さい(kt=0.0〜0.1)ため、これらの材料を用いて形成した透過率調整層491は、第N情報層49の透過率を効果的に高めることによる。
透過率調整層491の厚さが、略λ/8nt(ただし、λはレーザビーム31の波長λ、ntは透過率調整層491の材料の屈折率)であるときに、透過率TcおよびTaがより効果的に高められる。仮に、λ=405nm、nt=2.6とした場合には、透過率調整層491の厚さは、反射率など他の特性も考慮して、5nm〜36nmの範囲内であることが好ましい。
反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層は、それぞれ実施の形態1の反射層側界面層403、第1の界面層405及び第2の界面層407と同様の機能を有する。よって、これらの層の材料の例は、それぞれ実施の形態1で説明した、反射層側界面層403、第1の界面層405及び第2の界面層407の材料の例と同様である。
情報記録媒体12は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板21上に第1情報層41から第N−1情報層48までのN−1個の情報層を、分離層22、・・・、28等を介して順次積層する。各情報層は、多層膜から成り、情報層を構成する各層(膜)は、順次スパッタリングすることによって形成できる。また、分離層22、・・・、28等は、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)または遅効性熱硬化性樹脂を情報層上に塗布し、次に全体を回転させて樹脂を均一に延ばし(スピンコート)、その後、この樹脂を硬化させることによって形成できる。分離層22、・・・、28等がレーザビーム31の案内溝を備える場合、案内溝は、溝が形成された基板(型)を硬化前の樹脂に密着させ、その状態で樹脂を硬化させた後、基板(型)を剥がすことによって案内溝を形成できる。
このようにして、基板21上にN−1個の情報層を、分離層22、・・・、28等を介して積層したのち、第N−1情報層上に、分離層29を形成する。
続いて、分離層29上に第N情報層49を形成する。
具体的には、まず分離層29上に透過率調整層491を形成する。透過率調整層491は、透過率調整層491を構成する材料から成るスパッタリングターゲットを、希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、RFスパッタリング法またはDCスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、透過率調整層491上に、反射層492を形成する。反射層492は、実施の形態1の反射層402を形成する方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層492上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態1の反射層側界面層403を形成する方法と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層492上に、第1の誘電体層494を形成する。第1の誘電体層494は、実施の形態1の第1の誘電体層404を形成する方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層494上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態1の第1の界面層405の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層494の上に記録層496を形成する。記録層496は、SbおよびSを含む場合には、実施の形態1の記録層406の形成方法と同様の方法で形成できる。記録層406が他の材料で形成される場合には、その材料に応じてスパッタリングターゲットを選択して、スパッタリング法により形成してよい。
続いて、必要に応じて、記録層496上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態1の第2の界面層407の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層496上に第2の誘電体498を形成する。第2の誘電体層498は、実施の形態1の第2の誘電体層408の形成方法と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層29上に第N情報層49を形成し、その後、第N情報層49上に透明層23を形成する。透明層23は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
情報記録媒体12の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるため、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
以上のようにして、情報記録媒体12を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
(実施の形態3)
実施の形態3として、実施の形態2の本発明の多層記録媒体において、Nが2である、すなわち2個の情報層によって構成された記録媒体の一例を説明する。実施の形態3の情報記録媒体13の部分断面図を図4に示す。情報記録媒体13は、二層光記録媒体であって、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体13においては、基板21上に、第1情報層41、分離層22、第2情報層42及び透明層23がこの順に設けられている。
基板21、分離層22及び透明層23それぞれの材料、形状および機能は、実施の形態1及び2で説明したとおりである。
第2情報層42は、実施の形態2で説明した第N情報層49と同様の役割を果たす(実施の形態3ではN=2であるため)。そのため、第2情報層42を構成する各層は、実施の形態2で説明した第N情報層49を構成する各層の材料で形成することができる。また、第2情報層42を構成する各層の形状及び機能は、実施の形態2で説明した第N情報層49を構成する各層の形状及び機能と同様である。
以下、第1情報層41の構成について説明する。
図4に示すように、第1情報層41においては、基板21に近い側から反射層412、第1の誘電体層414、記録層416及び第2の誘電体層418がこの順に設けられている。また、必要に応じて、反射層412と第1の誘電体層414との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層414と記録層416との間に第1の界面層を、第2の誘電体層418と記録層416との間に第2の界面層を設けてもよい。図4において、反射層側界面層は、層412と414との間に、413で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層414と416との間に、415で表される層として示すことができ、第2の界面層は、層416と418との間に、417で表される層として示すことができる。
記録層416の材料として、実施の形態1の記録層406の材料と同様の材料を用いることができる。また、第2の情報層42がSbとSとを含む記録層を有する場合には、記録層416の材料は、(Ge−Sn)Te、GeTe−Sb2Te3、(Ge−Sn)Te−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、(Ge−Sn)Te−Bi2Te3、GeTe−(Sb−Bi)2Te3、(Ge−Sn)Te−(Sb―Bi)2Te3、GeTe−(Bi―In)2Te3、(Ge―Sn)Te−(Bi―In)2Te3、Sb−Te、Sb−Ge、(Gb−Te)−Ge、Sb−In、(Sb−Te)−In、Sb−Gaまたは(Sb−Te)−Gaであってよい。
反射層412、第1の誘電体層414及び第2の誘電体層418は、それぞれ実施の形態1の反射層402、第1の誘電体層404及び第2の誘電体層408と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
また、反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層は、それぞれ実施の形態1の反射層側界面層403、第1の界面層405及び第2の界面層407と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
情報記録媒体13は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板21(厚さは例えば1.1mm)上に第1情報層41を形成する。
具体的には、まず、基板21上に、反射層412を形成する。反射層412は、実施の形態1の反射層402の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層412上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態1の反射層側界面層403の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層412上に、第1の誘電体層414を形成する。第1の誘電体層414は、実施の形態1の第1の誘電体層404の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層414上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態1の第1の界面層405と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層414の上に、記録層416を形成する。記録層416は、SbおよびSを含む場合には、実施の形態1の記録層406の形成方法と同様の方法で形成できる。記録層416が他の材料で形成される場合には、その材料に応じてスパッタリングターゲットを選択して、スパッタリング法により形成してよい。
続いて、必要に応じて、記録層416上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態1の第2の界面層407の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層416上に第2の誘電体418を、形成する。第2の誘電体層418は、実施の形態1の第2の誘電体層408の形成方法と同様の方法で形成できる。
このようにして、基板21上に第1情報層41を形成し、その後、第1情報層41上に分離層22を形成する。分離層22は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
なお、第2の誘電体層418を形成した後、または分離層22を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層416を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層22上に第2情報層42を形成する。
具体的には、まず分離層22上に透過率調整層421を形成する。透過率調整層421は、実施の形態2の透過率調整層491の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、透過率調整層421上に、反射層422を形成する。反射層422は、実施の形態2の反射層492の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層422上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態2の反射層側界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層422上に、第1の誘電体層424を形成する。第1の誘電体層424は、実施の形態2の第1の誘電体層494の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層424上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態2の第1の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層424の上に記録層426を形成する。記録層426は、実施の形態2の記録層496の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、記録層426上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態2の第2の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層426上に第2の誘電体428を形成する。第2の誘電体層428は、実施の形態2の第2の誘電体層498の形成方法と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層22上に第2情報層42を形成し、その後、第2情報層42上に透明層23を形成する。透明層23は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
情報記録媒体13の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるため、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程を行ってもよい。あるいは、既に、記録層416が初期化されている場合には、第2情報層42を形成した後に、記録層426のみを初期化してよい。
以上のようにして、情報記録媒体13を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
Nが2であり、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光が記録再生に使用され、1情報層あたりの容量が約25GBであれば、約50GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにすれば、約66GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。
(実施の形態4)
実施の形態4として、実施の形態2の本発明の多層情報記録媒体において、N=4、すなわち4個の情報層によって構成された情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態4の情報記録媒体14の部分断面図を図5に示す。情報記録媒体14は、4層光記録媒体であり、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体14においては、基板21上に、第1情報層41、分離層22、第2情報層42、分離層28、第3情報層43、分離層29、第4情報層44及び透明層23がこの順に設けられている。
情報記録媒体12では、第4情報層44よりも基板21側にある情報層に到達するレーザビームおよびその反射光は、その情報層よりレーザビーム31入射側にある情報層を透過することにより減衰してしまう。そのため、第1情報層41、第2情報層42及び第3情報層43は、高い記録感度と高い反射率を有し、かつ、第2情報層42、第3情報層43及び第4情報層44は高い透過率を有する必要がある。
基板21、分離層22、28、29及び透明層23は実施の形態1及び2で説明した材料と同様の材料で形成することができる。また、それらの形状及び機能は、実施の形態1および2で説明したとおりである。
第1情報層41を構成する各層の材料、形状および機能は、実施の形態3で説明したとおりであるから、その詳細な説明は省略する。
第4情報層44は実施の形態2で説明した第N情報層49と同様の役割を果たす(実施の形態4ではN=4であるため)。そのため、第4情報層44を構成する各層は、実施の形態2で説明した第N情報層49を構成する各層の材料で形成することができる。また、第4情報層44を構成する各層の形状及び機能は、実施の形態2で説明した第N情報層49を構成する各層の形状及び機能と同様である。
以下、第2情報層42及び第3情報層43の構成について説明する。
第2情報層42においては、基板21に近い側から透過率調整層421、反射層422、第1の誘電体層424、記録層426及び第2の誘電体層428がこの順に設けられている。また、必要に応じて、反射層422と第1の誘電体層424との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層424と記録層426との間に第1の界面層を、第2の誘電体層428と記録層426との間に第2の界面層を設けてもよい。図5において、反射層側界面層は、層422と424との間に、423で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層424と426との間に、425で表される層として示すことができ、第2の界面層は、層426と428との間に、427で表される層として示すことができる。
記録層426、反射層422、第1の誘電体層424、第2の誘電体層428及び透過率調整層421は、それぞれ実施の形態2の記録層496、反射層492、第1の誘電体層494、第2の誘電体層498及び透過率調整層491と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
また、反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層は、それぞれ実施の形態2の反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
第3情報層43においては、基板21に近い側から、透過率調整層431、反射層432、第1の誘電体層434、記録層436及び第2の誘電体層438がこの順に設けられている。また、必要に応じて、反射層432と第1の誘電体層434との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層434と記録層436との間に第1の界面層を、第2の誘電体層438と記録層436との間に第2の界面層を設けてもよい。図5において、反射層側界面層は、層432と424との間に、433で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層434と436との間に、435で表される層として示すことができ、第2の界面層は、層436と438との間に、437で表される層として示すことができる。
記録層436、反射層432、第1の誘電体層434、第2の誘電体層438及び透過率調整層431は、それぞれ実施の形態2の記録層496、反射層492、第1の誘電体層494、第2の誘電体層498及び透過率調整層491と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
また、反射層側界面層433、第1の界面層及び第2の界面層は、それぞれ実施の形態2の反射層側界面層、第1の界面層及び第2の界面層と同様の機能を有し、同様の材料で形成することができる。
この形態の媒体においては、第2情報層42から第4情報層44までの3つの情報層のうち、いずれか1つの情報層に含まれる記録層が、SbおよびSを含み、上記式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含むことが好ましい。その理由は実施の形態2に関連して説明したとおりである。
情報記録媒体14は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板21(厚さは例えば1.1mm)上に第1情報層41を形成する。
具体的には、基板21上に、反射層412、第1の誘電体層414、記録層416及び第2の誘電体層418をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて反射層412と第1の誘電体層414との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層414と記録層416との間に第1の界面層を、第2の誘電体層418と記録層416との間に第2の界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態3で説明した方法で形成できる。
このようにして、基板21上に第1情報層41を形成し、その後、第1情報層41上に分離層22を形成する。分離層22は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
第2の誘電体層418を形成した後、または分離層22を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層416を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層22上に第2情報層42を形成する。
具体的には、まず、分離層22上に透過率調整層421を形成する。透過率調整層421は、実施の形態2の透過率調整層491の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、透過率調整層421上に、反射層422を形成する。反射層422は、実施の形態2の反射層492の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層422上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態2の反射層側界面層と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層422上に、第1の誘電体層424を形成する。第1の誘電体層424は、実施の形態2の第1の誘電体層494の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層424上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態2の第1の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層424の上に、記録層426を形成する。記録層426は、実施の形態2の記録層496の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、記録層426上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態2の第2の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層426上に、第2の誘電体428を形成する。第2の誘電体層428は、実施の形態2の第2の誘電体層498の形成方法と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層22上に第2情報層42を形成し、その後、第2情報層42上に分離層28を形成する。分離層28は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
なお、第2の誘電体層428を形成した後、または分離層28を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層426を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層28上に第3情報層43を形成する。
具体的には、まず分離層28上に透過率調整層431を形成する。透過率調整層431は、実施の形態2の透過率調整層491の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、透過率調整層431上に、反射層432を形成する。反射層432は、実施の形態2の反射層492の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて反射層432上に、反射層側界面層を形成する。反射層側界面層は、実施の形態2の反射層側界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、反射層側界面層上、または、反射層432上に、第1の誘電体層434を形成する。第1の誘電体層434は、実施の形態2の第1の誘電体層494の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体層434上に、第1の界面層を形成する。第1の界面層は、実施の形態2の第1の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面層上、または、第1の誘電体層434の上に記録層436を形成する。記録層436は、実施の形態2の記録層496の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、記録層436上に、第2の界面層を形成する。第2の界面層は、実施の形態2の第2の界面層の形成方法と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面層上、または、記録層436上に第2の誘電体438を形成する。第2の誘電体層438は、実施の形態2の第2の誘電体層498と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層28上に第3情報層43を形成し、その後、第3情報層43上に分離層29を形成する。分離層29は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
なお、第2の誘電体層438を形成した後、または分離層29を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層436を結晶化する初期化工程をおこなっても良い。
続いて、分離層29上に第4情報層44を形成する。
具体的には、分離層29上に、透過率調整層441、反射層442、第1の誘電体層444、記録層446及び第2の誘電体層448をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて反射層442と第1の誘電体層444との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層444と記録層446との間に第1の界面層を、第2の誘電体層448と記録層446との間に第2の界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
このようにして、分離層29上に第4情報層44を形成し、その後、第4情報層44上に透明層23を形成する。透明層23は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
なお、情報記録媒体14の各記録層は、通常、形成したままの状態では非晶質状態であるため、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程をおこなっても良い。あるいは、既に、記録層416、426、および436が初期化されている場合には、第4情報層44を形成した後に、記録層446のみを初期化してよい。
以上のようにして、情報記録媒体14を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
Nが4であり、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光が記録再生に使用され、1情報層あたりの容量が約25GBであれば、約100GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにすれば、約133GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。
実施の形態3および4として、N=2および4の媒体を説明した。Nは3であってもよい。N=3の媒体は、図4に示される層のうち、基板21、第1情報層42、分離層22、第2情報層42、分離層28、第3情報層43および透明層23から構成される。N=3の媒体においては、第2情報層および第3情報層のうち、いずれか一方または両方に含まれる記録層が、前記SbおよびSを含み、式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含むことが好ましい。また、レーザビーム入射側に最も近い第3情報層に含まれる記録層のみが、前記SbおよびSを含み、式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含む記録層である場合にも、本発明の効果を十分に得ることができる。
Nが3であり、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光が記録再生に使用され、1情報層あたりの容量が約25GBであれば、約75GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにすれば、約100GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。
(実施の形態5)
実施の形態5として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態5の情報記録媒体15の部分断面図を図6に示す。情報記録媒体15は、光記録媒体であり、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生できる。
情報記録媒体15は、基板24上に積層した情報層40とダミー基板26が、接着層27を介して密着している構成である。
基板24及びダミー基板26は透明で円盤形状を有している。基板24の情報層40と接する表面には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。基板24の情報層40と接しない表面、及びダミー基板の接着層27と接しない表面は、平滑であることが好ましい。基板24及びダミー基板26は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を材料として用いて、形成することができる。特に、ポリカーボネート樹脂は、転写性および量産性に優れ、低コストであることから、基板24及びダミー基板26の材料として好ましい。
接着層27は、レーザビーム31に対して小さい光吸収を有することが好ましい。接着層27は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)、遅効性熱硬化性樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を材料として、形成することができる。
情報層40を構成する各層の材料、形状および機能は、実施の形態1で説明したとおりであるから、その詳細な説明は省略する。その他、実施の形態1で用いた符号と同じ符号を付した要素については、その説明を省略する。
情報記録媒体15は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板24(厚さが例えば0.6mm)上に、情報層40を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層408、記録層406、第1の誘電体層404及び反射層402をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層408と記録層406との間に第2の界面層を、第1の誘電体層404と記録層406との間に第1の界面層を、第1の誘電体層404と反射層402との間に反射層側界面層を形成してもよい。図5において、第2の界面層は、層408と406との間に、407で表される層として示すことができ、第1の界面層は、層406と404との間に、405で表される層として示すことができ、反射層側界面層は、層402と404との間に、403で表される層として示すことができる。これらの各層は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
次に、情報層40が積層された基板24とダミー基板26(厚さが例えば0.6mm)とを、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、貼り合わせは、紫外線硬化性樹脂または遅効性熱硬化性樹脂を、ダミー基板26上にスピンコート法により塗布し、情報層40が積層された基板24をダミー基板26上に密着させ、その後樹脂を硬化させる方法で、実施してよい。別法として、ダミー基板26上に粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、ダミー基板26を情報層40が積層された基板24に密着させることもできる。
情報記録媒体15の記録層406は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態である。よって、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層406を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
以上のようにして、情報記録媒体15を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
(実施の形態6)
実施の形態6として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態6の情報記録媒体16の部分断面図を図7に示す。情報記録媒体16は、多層光記録媒体であり、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体16は、基板24上に、順次積層された、第N情報層49、第N−1情報層48・・・第2情報層42までのN−1個の情報層(NはN≧2の整数)と、基板25上に積層された第1情報層41とが、接着層27を介して密着している構成である。情報層と情報層との間には、分離層29、28・・・等が介在している。
基板25は、透明で、円盤形状を有している。基板25の第1情報層41と接する表面には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。基板25の第1情報層41と接しない表面は、平滑であることが好ましい。基板25は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を材料として用いて、形成することができる。特に、ポリカーボネート樹脂は、転写性および量産性に優れ、低コストであることから、基板25の材料として好ましい。
その他、実施の形態2及び5で用いた符号と同じ符号を付した要素については、その説明を省略する。
情報記録媒体16は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板24(厚さが例えば0.6mm)上に、第N情報層49を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層498、記録層496、第1の誘電体層494、反射層492及び透過率調整層491をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層498と記録層496との間に第2の界面層を、第1の誘電体層494と記録層496との間に第1の界面層を、第1の誘電体層494と反射層492の間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。その後、第N−1情報層48から第2情報層42を、分離層29、28・・・等を介して順次積層する。
別に、基板25(厚さが例えば0.6mm)上に、第1情報層41を形成する。情報層は、一般に多層膜からなり、情報層41を構成する各層(膜)は、実施の形態2と同様、成膜装置内で、各層を構成するのに適したスパッタリングターゲットを、順次スパッタリングすることによって形成できる。
最後に、情報層が積層された基板24及び基板25を、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、貼り合わせは、紫外線硬化性樹脂または遅効性熱硬化性樹脂を、基板25上に積層された第1情報層41にスピンコート法により塗布して、第2情報層42が積層された基板24を第1情報層41上に密着させ、その後樹脂を硬化させる方法で実施してよい。別法として、第1情報層41上に粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、第1情報層41を第2情報層42が積層された基板24に密着させることもできる。
情報記録媒体16の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるから、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
以上のようにして、情報記録媒体16を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
(実施の形態7)
実施の形態7として、実施の形態6の本発明の多層情報記録媒体において、Nが2である、すなわち2個の情報層によって構成された情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態7の情報記録媒体17の部分断面図を図8に示す。情報記録媒体17は、2層光記録媒体であって、情報は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、記録再生される。
情報記録媒体17は、基板24上に積層した第2情報層42と、基板25上に積層した第1情報層41とが、接着層27を介して密着している構成である。
第1情報層41及び第2情報層42を構成する各層の材料、形状および機能は、実施の形態3で説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。その他、実施の形態3、5及び6で用いた符号と同じ符号を付した要素については、その説明を省略する。
情報記録媒体17は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板24(厚さが例えば0.6mm)上に、第2情報層42を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層428、記録層426、第1の誘電体層424、反射層422及び透過率調整層421をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層428と記録層426との間に第2の界面層を、第1の誘電体層424と記録層426との間に第1の界面層を、第1の誘電体層424と反射層422との間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態3で説明した方法で形成できる。
透過率調整層421を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層426を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
別に、基板25(厚さが例えば0.6mm)上に、第1情報層41を形成する。具体的には、基板25上に、反射層412、第1の誘電体層414、記録層416及び第2の誘電体層418をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて反射層412と第1の誘電体層414との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層414と記録層416との間に第1の界面層を、第2の誘電体層418と記録層416との間に第2の界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態3で説明した方法で形成できる。
第2の誘電体層418を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層416を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
最後に、情報層が積層された基板24及び基板25を、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、貼り合わせは、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)または遅効性熱硬化性樹脂を、基板25上に積層された第1情報層41にスピンコート法により塗布して、第2情報層42が積層された基板24を第1情報層41上に密着させ、その後樹脂を硬化させる方法で実施してよい。別法として、第1情報層41上に粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、第1情報層41を第2情報層42が積層された基板24に密着させることもできる。
情報記録媒体17の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるので、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層を結晶化する初期化工程を行ってもよい。予め、記録層416および426が初期化されている場合には、貼り合わせの後に初期化工程を実施する必要はない。
以上のようにして、情報記録媒体17を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
Nが2である媒体は、先に実施の形態7に関連して説明したとおり、例えば、約50GBの容量を有することができ、あるいは約66GBの容量を有することができる。
(実施の形態8)
実施の形態8として、実施の形態6の本発明の多層情報記録媒体において、Nが4である、すなわち4個の情報層によって構成された情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態8の情報記録媒体18の部分断面図を図9に示す。情報記録媒体18は、レーザビーム31を対物レンズ32で集光し照射することによって、情報の記録再生が可能な4層光記録媒体である。
情報記録媒体18は、基板24上に積層した第4情報層44、第3情報層43及び第2情報層42と、基板25上に積層した第1情報層41とが、接着層27を介して密着している構成である。第4情報層44と第3情報層43との間には、分離層29が設けられ、第3情報層43と第2情報層との間には、分離層28が設けられている。
第1情報層41、第2情報層42、第3情報層43及び第4情報層44を構成する各層の材料、形状および機能は、実施の形態4で説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。その他、実施の形態4、5、6及び7で用いた符号と同じ符号を付した要素については、その説明を省略する。
情報記録媒体18は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板24(厚さが例えば0.6mm)上に、第4情報層44を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層448、記録層446、第1の誘電体層444、反射層442及び透過率調整層441をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層448と記録層446との間に第2の界面層を、第1の誘電体層444と記録層446との間に第1の界面層を、第1の誘電体層444と反射層442の間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態4に関連してで説明した方法により形成できる。
続いて、透過率調整層441上に、実施の形態4に関連して説明した方法により分離層29を形成する。
透過率調整層441を形成した後、または分離層29を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層446を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層29上に第3情報層43を形成する。具体的には、分離層29上に、第2の誘電体層438、記録層436、第1の誘電体層434、反射層432及び透過率調整層431をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層438と記録層436との間に第2の界面層を、第1の誘電体層434と記録層436との間に第1の界面層を、第1の誘電体層434と反射層432の間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態4に関連して説明した方法により形成できる。
続いて、透過率調整層431上に、実施の形態4に関連して説明した方法により、分離層28を形成する。
透過率調整層431を形成した後、または分離層28を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層436を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
続いて、分離層28上に第2情報層42を形成する。具体的には、基板24上に、第2の誘電体層428、記録層426、第1の誘電体層424、反射層422及び透過率調整層421をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて、第2の誘電体層428と記録層426との間に第2の界面層を、第1の誘電体層424と記録層426との間に第1の界面層を、第1の誘電体層424と反射層422の間に反射層側界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態4に関連して説明した方法により形成できる。
透過率調整層421を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層426を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
別に、基板25(厚さが例えば0.6mm)上に、第1情報層41を形成する。具体的には、基板25上に、反射層412、第1の誘電体層414、記録層416及び第2の誘電体層418をこの順序で形成する。このとき、必要に応じて反射層412と第1の誘電体層414との間に反射層側界面層を、第1の誘電体層414と記録層416との間に第1の界面層を、第2の誘電体層418と記録層416との間に第2の界面層を形成してもよい。これらの各層は、実施の形態4に関連して説明した方法により形成できる。
第2の誘電体層418を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射する等して、記録層416を結晶化する初期化工程を行ってもよい。
最後に、情報層が積層された基板24及び基板25を、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、貼り合わせは、紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂)または遅効性熱硬化性樹脂を、基板25上に積層された第1情報層41にスピンコート法により塗布して、第2情報層42が積層された基板24を第1情報層41上に密着させ、その後樹脂を硬化させる方法で実施してよい。別法として、第1情報層41上に粘着性の樹脂を予め均一に塗布し、第1情報層41を第2情報層42が積層された基板24に密着させることもできる。
情報記録媒体18の各記録層は、通常、成膜したままの状態では非晶質状態であるため、必要に応じてレーザビームを照射する等して結晶化する初期化工程を行ってもよい。予め、記録層416、426、436および446が初期化されている場合には、貼り合わせの後に初期化工程を実施する必要はない。
以上のようにして、情報記録媒体18を製造できる。本実施の形態においては、情報層を構成する各層の形成方法としてスパッタリング法を用いた。形成方法は、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE法などを用いることも可能である。
また、本実施の形態においては第2情報層42と第1情報層41の間に接着層27を用いて、基板24及び基板25を貼り合わせた。接着層の位置、すなわち貼り合わせる位置はこれに限定されない。
例えば、基板24上に、分離層29を介して第4情報層44及び第3情報層43を積層し、基板25上に分離層(その位置は図9の接着層27の位置である)を介して第1情報層41及び第2情報層42を積層し、その後、第3情報層43と第2情報層42との間に接着層(その位置は図9の分離層28の位置である)を用いて、基板24及び基板25を貼り合わせてもよい。
Nが4である媒体は、先に実施の形態8に関連して説明したとおり、例えば、約100GBの容量を有することができ、あるいは約133GBの容量を有することができる。
2つの基板を有し、情報層を複数有する実施の形態7および8として、N=2および4の媒体を説明した。Nは3であってもよい。N=3の媒体においては、第2情報層および第3情報層のうち、いずれか一方または両方に含まれる記録層が、前記SbおよびSnを含み、式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含むことが好ましい。また、レーザビーム入射側に最も近い第3情報層に含まれる記録層のみを、前記SbおよびSnを含み、式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含む記録層としても、本発明の効果を十分に得ることができる。
Nが3である媒体は、先に説明したとおり、例えば、約75GBの容量を有することができ、あるいは約100GBの容量を有することができる。
(実施の形態9)
実施の形態9では、実施の形態1から8で説明した情報記録媒体に情報を記録し、および/または媒体に記録した情報を再生する方法の一例について説明する。
図10に、本発明の情報記録媒体の記録再生に用いられる記録再生装置の構成の一例の概略図を示す。レーザダイオード501から出射されるレーザビーム502は、ハーフミラー503及び対物レンズ504を通過して、その焦点が情報記録媒体506上に合わせられる。情報記録媒体506は、モーター505によって回転させられている。情報の再生は、情報記録媒体506からの反射光をフォトディテクター507に入射させ、信号を検出することにより行われる。
情報信号の記録を行う際には、レーザビーム502の強度を複数のパワーレベル間で変調する。レーザ強度を変調する手段としては、半導体レーザの駆動電流を変調しておこなう電流変調手段を用いることができる。記録マークを形成する部分には、ピークパワーPpの単一矩形パルスのレーザビームを照射してもよい。あるいは、特に長いマークを形成する場合は、記録層が過剰に加熱されることを防止し、マーク幅を均一にする目的で、図11に示すようにピークパワーPp及びボトムパワーPb(但し、Pp>Pb)との間で変調された、複数のパルス列からなる記録パルス列を用いてもよい。また、最後尾のパルスの後に、レーザのパワーを冷却パワーPc(Pc<Pb)にする冷却区間を設けてもよい。マークを形成しない部分に対しては、バイアスパワーPe(但し、Pp>Pe)のレーザビームを照射する。
対物レンズ504の開口数NAは、レーザビーム502のスポット径を0.4μm〜0.7μmの範囲内に調整するため、0.5〜1.1の範囲内であることが好ましく、0.6〜0.9の範囲内であることがより好ましい。レーザビーム502の波長は、350nm〜450nmの範囲内であることが好ましい。情報を記録する際の情報記録媒体506の線速度は、再結晶化が起こりにくく、且つ十分な消去性能が得られるように、4m/s〜50m/sの範囲内であることが好ましく、9m/s〜40m/sの範囲内であることがより好ましい。情報記録媒体502の種類等に応じて、ここで例示していない波長、対物レンズの開口数、および線速度を使用してよいことはいうまでもない。例えば、レーザビーム502の波長は、650〜670nmであってもよい。
このような記録再生装置を用いて、情報記録媒体506の性能を次のようにして評価できる。
記録性能は、レーザビーム502を0〜Pp(mW)の間でパワー変調し、(1−7)変調方式でマーク長0.149μm(2T)から0.596μm(8T)までのランダム信号を記録し、記録マークの前端間、及び後端間のジッター(マーク位置の誤差)をタイムインターバルアナライザーで測定することによって評価できる。なお、ジッター値が小さいほど、記録性能がよい。Pp、Pb、Pc及びPeは、前端間、及び後端間のジッターの平均値が最小となるよう決定される。決定されたPpは、記録感度である。
また、信号強度は、レーザビーム502を0〜Pp(mW)の間でパワー変調し、マーク長0.149μm(2T)と0.671μm(9T)の信号を同じトラックに連続10回交互記録し、最後に2T信号を上書きした場合の2T信号の周波数での信号振幅(carrier level)と雑音振幅(noise level)の比(CNR(Carrier to Noise Ratio))をスペクトラムアナライザーで測定することによって評価できる。CNRが大きいほど信号強度が高い。
また、消去性能は、レーザビーム502を0〜Pp(mW)の間でパワー変調し、2T信号と9T信号を同じトラックに連続10回交互記録し、11回目に2T信号を上書きした場合の2T信号の信号振幅と、さらにその後9T信号を上書きした場合の2T信号の信号振幅の差を、2T信号の消去率としてスペクトラムアナライザーで測定することにより評価できる。消去率が大きいほど、消去性能が良い。
(実施の形態10)
実施の形態10として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態10の情報記録媒体61の一構成例を図12に示す。情報記録媒体61は、電気的エネルギー(特に電流)の印加によって、情報が記録再生される電気的情報記録媒体である。
基板62として、ポリカーボネート等の樹脂基板、ガラス基板、Al2O3等のセラミック基板、Si等の半導体基板、およびCu等の金属基板を用いることができる。ここでは、基板としてSi基板を用いた形態を説明する。電気的情報記録媒体61は、基板62上に下部電極63、第1誘電体層64、第1記録層65、第2記録層66、第2誘電体層67、及び上部電極68を順に積層した構造である。下部電極63及び上部電極68は、第1記録層65及び第2記録層66に、電流を印加するために形成する。第1誘電体層64は第1記録層65に印加する電気エネルギー量を調整し、第2誘電体層67は第2記録層66に印加する電気エネルギー量を調整するために設けられる。第1誘電体層64および第2誘電体層67の材料の例は、実施の形態1の第1の誘電体層404の材料の例と同様である。
第1記録層65及び第2記録層66は、電流の印加により発生するジュール熱によって、結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす材料から成る。よって、この媒体においては、結晶相と非晶質相との間で抵抗率が変化する現象を情報の記録に利用する。第1記録層65及び第2記録層66の少なくとも一方は、SbとSとを含み、上記式(1)〜(4)のいずれかで示される材料を含む。そのような材料は、実施の形態1に関連して説明したとおりである。いずれか一方の記録層が、SbとSを含む記録層でない場合、実施の形態2に関連して例示した材料を用いてよい。第1記録層65及び第2記録層66はそれぞれ、実施の形態1の記録層406または実施の形態2の記録層496の形成方法と同様の方法で形成される。
下部電極63及び上部電極68は、Ti、W、Al、Au、Ag、Cu、Pt等の単体金属材料で形成してよい。あるいは下部電極63及び上部電極68は、前記元素から選ばれる1つまたは複数の元素を主成分とし、耐湿性の向上あるいは熱伝導率の調整等のために適宜1つまたは複数の他の元素を添加した合金材料を用いて形成することができる。下部電極63及び上部電極68は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガス(O2ガスまたはN2ガスから選ばれる少なくとも1種のガス)との混合ガス雰囲気中で、材料となる金属母材または合金母材をスパッタリングすることによって形成できる。各層の形成方法は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、またはMBE法等であってよい。
電気的情報記録媒体61に、印加部69を介して電気的情報記録再生装置74を電気的に接続する。この電気的情報記録再生装置74において、下部電極63と上部電極68の間には、第1記録層65及び第2記録層66に電流パルスを印加するために、パルス電源73が、スイッチ71を介して接続される。また、第1記録層65、及び第2記録層66の相変化による抵抗値の変化を検出するために、下部電極63と上部電極67の間にスイッチ72を介して抵抗測定器70が接続される。
非晶質相(高抵抗状態)にある第1記録層65または第2記録層66を、結晶相(低抵抗状態)に変化させるためには、スイッチ71を閉じて(スイッチ72は開く)電極間に電流パルスを印加する。印加は、電流パルスが印加される部分の温度が、材料の結晶化温度より高く、且つ融点より低い温度にて、結晶化時間の間、保持されるように行う。結晶相から再度非晶質相に戻す場合には、結晶化時よりも相対的に高い電流パルスをより短い時間で印加し、記録層を融点より高い温度にして溶融した後、急激に冷却する。なお、電気的情報記録再生装置74のパルス電源73は、図15の記録/消去パルス波形を出力できるような電源である。
ここで、第1記録層65が非晶質相の場合の抵抗値をra1、第1記録層65が結晶相の場合の抵抗値をrc1、第2記録層66が非晶質相の場合の抵抗値をra2、第2記録層66が結晶相の場合の抵抗値をrc2とする。rc1≦rc2<ra1<ra2、もしくはrc1≦rc2<ra2<ra1、もしくはrc2≦rc1<ra1<ra2、もしくはrc2≦rc1<ra2<ra1であることによって、第1記録層65と第2記録層66の抵抗値の和を、ra1+ra2、ra1+r c2、ra2+rc1、及びrc1+rc2の4つの異なる値に設定できる。従って、電極間の抵抗値を抵抗測定器70で測定することにより、4つの異なる状態、すなわち2値の情報を一度に検出することができる。
この電気的情報記録媒体61をマトリクス的に多数配置することによって、図14に示すような大容量の電気的情報記録媒体81を構成することができる。各メモリセル77には、微小領域に電気的情報記録媒体61と同様の構成が形成されている。各々のメモリセル77への情報の記録再生は、ワード線75、及びビット線76をそれぞれ一つ指定することによって行う。
図13は電気的情報記録媒体81を用いた、情報記録システムの一構成例を示したものである。記憶装置79は、電気的情報記録媒体81と、アドレス指定回路78によって構成される。アドレス指定回路78により、電気的情報記録媒体81のワード線75、及びビット線76がそれぞれ指定され、各々のメモリセル77への情報の記録再生を行うことができる。また、記憶装置79を、少なくともパルス電源73と抵抗測定器70から構成される外部回路80に電気的に接続することにより、電気的情報記録媒体81への情報の記録再生を行うことができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1では、図1の情報記録媒体11を作製し、記録層406の材料と、情報層40の消去性能及び信号信頼性との関係を調べた。具体的には、SbとSとを含み、SbとSとの組成比が異なる記録層406を有する8種類の情報記録媒体のサンプル(1−1から1−8)を作製し、情報層40の消去性能及び信号信頼性を測定した。
信号信頼性は再生光劣化により評価する。ここで、再生光劣化は、信号を記録したトラックに再生光(再生パワーPr)を所定の回数、照射したときの信号強度の低下量(dB)と定義する。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。そのポリカーボネート基板上に、反射層402としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層404として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、SbとSを含む記録層406(厚さ:10nm)(SbとSの組成比は表1に示すとおり)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層408として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって形成した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ反射層402を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層404を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層406を形成するためのSbとSとを含むスパッタリングターゲット、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層408を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
反射層402の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層404の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層406の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層408の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
最後に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)を第2の誘電体層408上に塗布し回転させて、均一な樹脂層を形成したのち、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ100μmの透明層23を形成した。その後、記録層406をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層406の材料が異なる複数のサンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、図10の記録再生装置を用いて、情報記録媒体11の情報層40の消去性能及び信号信頼性を測定した。測定において、レーザビーム31の波長は405nm、対物レンズ32の開口数NAは0.85、測定時のサンプルの線速度は19.7m/s(Blu−rayディスク規格の4倍速に相当する)、最短マーク長(2T)は0.149μmであった。
各サンプルについて、記録層406の組成と、情報層40の消去性能、及び信号信頼性の評価結果を(表1)に示す。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=0.35mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量で評価した。評価基準は下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
さらに、媒体の総合評価を実施した。上記の評価項目において、一つでも「×」と評価された媒体は、「×」と評価し、上記の評価項目において、一つでも「△」と評価された媒体は、「○」と評価し、上記の評価項目において、すべて「○」と評価された媒体は、「◎」と評価した。
この結果、記録層406がSbのみから成るサンプル1−1では、記録層の結晶化速度が高すぎて、信号信頼性が悪いことがわかった。また、記録層406の組成がSb45S55であるサンプル1−8では、添加したSの量が多すぎて、結晶化速度が低下し、消去性能が悪化していることがわかった。
また、記録層406がSbとSとを含み、さらに記録層406の組成が、式(1):SbxS100-x(原子%)(ただし、xは、50≦x≦98)で表されるサンプル1−2から1−7は、良好な消去性能と信号信頼性を示すことがわかった。以上の結果から、記録層406の組成が、式(1)で表されると、当該記録層を含む媒体は良好な特性を示すことがわかった。さらに、xが60以上80以下である場合に、記録媒体は、さらにより良好な特性を示すことがわかった。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様に図1の情報記録媒体11を作製し、記録層406の材料と、情報層40の消去性能及び信号信頼性との関係を調べた。具体的には、記録層406がSbとSとMとを含み(MはSn、Bi、In、Ge及びMnのうち少なくとも1つの元素)、Sb/S/Mとの組成比が異なる記録層406を有する25種類の情報記録媒体11のサンプル(2−1から2−25)を作製し、情報層40の消去性能及び信号信頼性を測定した。
サンプルの製造方法は実施例1で用いた製造方法と同様である。ただし、記録層406はSbとSとMを含む(MはSn、Bi、In、Ge及びMnのうち少なくとも1つの元素)合金スパッタリングターゲットを、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにしてスパッタリングすることによって形成した。
このようにして得られたサンプルについて、実施例1と同様の方法で消去性能および信号信頼性を測定した。各サンプルについて、記録層406の組成と、情報層40の消去性能、及び信号信頼性の評価結果を(表2)に示す。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=0.35mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量で評価した。評価基準は、下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
さらに、媒体の総合評価を実施した。上記の評価項目において、一つでも「×」と評価された媒体は、「×」と評価し、上記の評価項目において、一つでも「△」と評価された媒体は、「○」と評価し、上記の評価項目において、すべて「○」と評価された媒体は、「◎」と評価した。
この結果、記録層406の組成が、(Sb0.98S0.02)65Ge35であるサンプル2−6では、添加したGeの量が多いために結晶化速度が低下し、消去性能が悪化していることがわかった。また、記録層406の組成が、(Sb0.98S0.02)65Sn35であるサンプル2−12では、添加したSnの量が多いために、結晶化速度が高すぎて信号信頼性が悪いことがわかった。さらに、記録層406の組成が、(Sb0.7S0.3)65In35であるサンプル2−17では、添加したInの量が多いために、結晶化速度が低下し、実用可能な消去性能を得られないことがわかった。
また、記録層406がSbとSとM1を含み(MはGe、Sn、およびIn)から選ばれる少なくとも一つの元素)、記録層406の組成が、式(2):
(SbzS1-z)100-yM1y(原子%) (2)
(添え字zは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦z≦0.98を満たし、添え字yは、原子%で示される組成比を表し、0<y≦30を満たす)
で表されるサンプル2−1から2−5、2−7から2−11、及び2−13から2−16は、消去性能と信号信頼性がともに良好であることがわかった。以上の結果から、SbとSとM1を含む記録層406の組成は、式(2)で表されることが好ましいことがわかった。特に、サンプル2−1から2−4、サンプル2−7から2−10、サンプル2−13から2−15より、上記式(2)において、yは2≦y≦20を満たすと、より良好な特性が得られることがわかった。
記録層406の組成が、(Sb0.7S0.3)70Mn30であるサンプル2−21では、添加したMnの量が多いために、結晶化速度が低下し、実用可能な消去性能を得られないことがわかった。また、記録層の組成が、(速すぎて信号信頼性が悪いことがわかった。さらに、記録層406の組成が、(Sb0.7S0.3)70Bi30であるサンプル2−25では、添加したBiの量が多いために、結晶化速度が高すぎて信号信頼性が悪いことがわかった。
記録層406がSbとSとM2を含み(M2はBiおよびMnから選ばれる少なくとも一つの元素)、記録層406の組成が、式(3):
(SbaS1-a)100-bM2b (原子%) (3)
(添え字aは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦a≦0.98を満たし、添え字bは、原子%で示される組成比を表し、0<b≦20を満たす)
で表されるサンプル2−18から2−20、及び2−22から2−24は、良好な消去性能と信号信頼性を示した。以上の結果から、SbとSとM2を含む記録層406の組成は、式(2)で表されることが好ましいことがわかった。さらに、サンプル2−18および2−19から、上記式(3)において、bが2≦b≦10を満たすと、より良好な特性が得られることがわかった。
さらに、M1として2種類の元素を含む記録媒体(サンプル2−26、2−29)、M1およびM2の両方を含む記録媒体(サンプル2−27、2−28、2−30、2−31)も、良好な消去性能および信号信頼性を示した。
(実施例3)
実施例3では、図1の情報記録媒体11を製造し、記録層406の厚さと、情報層40の消去性能及び信号信頼性との関係を調べた。具体的には、記録層406の厚さが異なる情報層40を含む、6種類の情報記録媒体11のサンプル(3−1から3−6)を作製し、情報層40の消去性能及び信号信頼性を測定した。
サンプルの製造方法は、記録層406の厚さを除いて、実施例1において用いた製造方法と同様である。記録層406はSbとSを含むスパッタリングターゲットを、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにしてスパッタリングすることによって形成した。記録層の組成は、Sb60S40であった。
このようにして得られた各サンプルについて、記録層406の厚さと、情報層40の消去性能、及び信号信頼性の評価結果を(表3)に示す。評価方法は、実施例1において用いた方法と同様の方法であった。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=0.35mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量で評価した。評価基準は下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
さらに、媒体の総合評価を実施した。上記の評価項目において、一つでも「×」と評価された媒体は、「×」と評価し、上記の評価項目において、一つでも「△」と評価された媒体は、「○」と評価し、上記の評価項目において、すべて「○」と評価された媒体は、「◎」と評価した。
この結果、記録層406の厚さが、16nmであるサンプル3−6は、記録層406が厚すぎて、低い信号信頼性を示した。、記録層406の厚さが、7〜15nmの範囲であれば、媒体は良好な消去性能と信号信頼性を示すことがわかった。以上の結果から、SbとSとを含む記録層406の厚さは15nm以下であることが好ましいことがわかった。また、記録層406の厚さが9nm〜13nmの範囲内であれば、非常に良好な特性が得られた。
(実施例4)
実施例4では、図4の情報記録媒体13を製造し、第2情報層42に含まれる記録層426の厚さと、第2情報層42の消去率、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度との関係を調べた。具体的には、記録層426の厚さが互いに異なる情報層42を含む情報記録媒体13のサンプル4−1から4−6を作製し、第2情報層42の消去率、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度を測定した。ここで、信号強度はCNRの大きさによって評価した。なお、情報記録媒体13は、情報層の数をN個(NはN≧2の整数)としたときの、N=2のものに相当し、2個の情報層を有している。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、反射層412としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層414として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、記録層416としてSb60S40(厚さ:10nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層418として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ反射層412を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層414を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層416を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb60S40の組成の膜が形成されるように組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層418を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
反射層412の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層414の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層416の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層418の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
次に、第2の誘電体層418上に紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。その上に、案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させ、樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第2情報層42側に形成された、厚さ25μmの分離層22を得た。
次いで、分離層22の上に、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:20nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、第1の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:15nm)、記録層426としてSb70S30層、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ透過率調整層421を形成するためのTiO2スパッタリングターゲット、反射層422を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層424を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層426を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb70S30の組成の膜が形成されるように組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層428を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
透過率調整層421の形成は、Arと酸素の混合ガス雰囲気(全体に対して3体積%の割合の酸素ガス)において、圧力を0.3Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。反射層422の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層424の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層426の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層428の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
最後に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)を第2の誘電体層428上に、スピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ75μmの透明層23を形成した。その後、記録層416及び記録層426にレーザビームを照射して、記録層416および426を結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層426の厚さが異なる複数のサンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、図10の記録再生装置を用いて、情報記録媒体13の情報層42の消去性能、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度を測定した。測定において、レーザビーム31の波長は405nm、対物レンズ32の開口数NAは0.85、測定時のサンプルの線速度は19.7m/s、最短マーク長(2T)は0.149μmであった。
各サンプルについて、記録層426の厚さと、第2情報層42の消去性能、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度の評価結果を(表4)に示す。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=0.7mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量によって評価した。評価基準は、下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
また、第1情報層41の信号強度は、CNRによって評価した。評価基準は下記の通りである。
40dB以上 「○」、
34dB以上40dB未満 「△」、
34dB以下 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
さらに、媒体の総合評価を実施した。上記の評価項目において、一つでも「×」と評価された媒体は、「×」と評価し、上記の評価項目において、一つでも「△」と評価された媒体は、「○」と評価し、上記の評価項目において、すべて「○」と評価された媒体は、「◎」と評価した。
この結果、記録層426の厚さが、4nm〜9nmの範囲であれば、第2情報層42の消去性能、信号信頼性、及び第1情報層41の信号強度がすべて良好な媒体が得られた。また、記録層426の厚さが5nm〜8nmの範囲内であれば、より良好な特性が得られた。
(実施例5)
実施例5では、図5の情報記録媒体14を製造し、第4情報層44に含まれる記録層446の厚さと、第4情報層44の消去率、信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、及び第1情報層41の信号強度との関係を調べた。具体的には、記録層446の厚さが互いに異なる情報層44を含む6種類の情報記録媒体14のサンプル(5−1から5−6)を作製し、第4情報層44の消去率、信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、及び第1情報層41の信号強度を測定した。ここで、信号強度はCNRによって評価した。なお、情報記録媒体14は情報層の数をN個(NはN≧2の整数)としたときの、N=4の場合であり、4個の情報層を有している。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、反射層412としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層414として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、記録層416としてSb60S40(厚さ:10nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層418として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ反射層412を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層414を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層416を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb60S40の組成の膜が形成されるように組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層418を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備える。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
反射層412の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paとし、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層414の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層416の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層418の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
次に、第2の誘電体層418上に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第2情報層42側に形成された、厚さ10μmの分離層22を得た。
その後、分離層22の上に、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:30nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:8nm)、第2の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、記録層426としてSb80S20層(厚さ:4nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ透過率調整層421を形成するためのTiO2スパッタリングターゲット、反射層422を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層424を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層426を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb80S20の組成の膜が形成されるように、組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層428を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備える。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
透過率調整層421の形成は、Arと酸素の混合ガス雰囲気(全体に対して3体積%の割合の酸素ガス)において、圧力を0.3Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。反射層422の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層424の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにし、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層426の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにし、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層428の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにし、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
次に、第2の誘電体層428上に紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に、案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第3情報層43側に形成された、厚さ15μmの分離層28を得た。
次いで、分離層28の上に、透過率調整層431としてTiO2層(厚さ:30nm)、反射層432としてAg−Pd−Cu層(厚さ:8nm)、第2の誘電体層434として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、記録層436としてSb80S20層(厚さ:4nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層438として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:38nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ透過率調整層431を形成するためのTiO2スパッタリングターゲット、反射層432を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層434を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層436を形成するためのSbとSを含むスパッタリングターゲット(Sb80S20の組成の膜が形成されるように、組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層438を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
透過率調整層431の形成は、Arと酸素の混合ガス雰囲気(全体に対して3体積%の割合の酸素ガス)において、圧力を0.3Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。反射層432の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層434の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層436の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層438の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
次に、第2の誘電体層438上に紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に、案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第4情報層44側に形成された、厚さ10μmの分離層29を得た。
その後、分離層29の上に、透過率調整層441としてTiO2層(厚さ:25nm)、反射層442としてAg−Pd−Cu層(厚さ:7nm)、第2の誘電体層444として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、記録層446として(Sb0.85S0.15)95Ge5層、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層448として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:35nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
上記の各層をスパッタリングする成膜装置は、それぞれ透過率調整層441を形成するためのTiO2スパッタリングターゲット、反射層442を形成するためのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット、第1の誘電体層444を形成するための(ZrO2)50(In2O3)50スパッタリングターゲット、記録層446を形成するためのSbとSとGeを含むスパッタリングターゲット((Sb0.85S0.15)95Ge5の組成の膜が形成されるように、組成を調整したもの)、第2の界面層を形成するための(ZrO2)50(Cr2O3)50スパッタリングターゲット、第2の誘電体層448を形成するための(ZnS)80(SiO2)20スパッタリングターゲットを備えていた。スパッタリングターゲットの形状は、いずれも直径100mm、厚さ6mmであった。
透過率調整層441の形成は、Arと酸素の混合ガス雰囲気(全体に対して3体積%の割合の酸素ガス)において、圧力を0.3Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。反射層442の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.3Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを100Wにして行った。第1の誘電体層444の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。記録層446の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。第2の界面層の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを200Wにして行った。第2の誘電体層448の形成は、Arガス雰囲気において、圧力を0.1Paにして、RF電源を用いて、投入パワーを400Wにして行った。
最後に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)を第2の誘電体層448上に、スピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ65μmの透明層23を形成した。その後、記録層416、記録層426、記録層436及び記録層446をレーザビームを用いて結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層446の厚さが異なる複数のサンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、図10の記録再生装置を用いて、情報記録媒体13の情報層42の消去性能、信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、及び第1情報層41の信号強度を測定した。測定において、レーザビーム31の波長は405nm、対物レンズ32の開口数NAは0.85、測定時のサンプルの線速度は19.7m/s、最短マーク長(2T)は0.149μmであった。
各サンプルについて、記録層446の厚さと、第2情報層42の消去性能および信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、及び第1情報層41の信号強度の評価結果を(表5)に示す。消去性能は、消去率の値によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
25dB以上 「○」、
20dB以上25dB未満 「△」、
20dB未満 「×」。
信号信頼性は、Pr=1.4mWの再生光を100万回照射した後の再生光劣化量によって評価した。評価基準は下記のとおりである。
0.3dB未満 「○」、
0.3dB以上2dB未満 「△」、
2dB以上 「×」。
また、各情報層の信号強度は、CNRによって評価した。評価基準は下記の通りである。
40dB以上 「○」、
34dB以上40dB未満 「△」、
34dB以下 「×」。
上記評価において、「○」及び「△」と評価された媒体は、その評価項目に関して実用に耐えうることを意味し、「×」と評価された媒体は、その項目に関して実用に耐えないことを意味する。
この結果、記録層446の厚さが、1nmであるサンプル5−1は、記録層446が薄すぎて結晶化速度が低下し、消去性能において劣っていることがわかった。また、記録層446の厚さが、2〜6nmの範囲であれば、第4情報層44の消去性能および信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、ならびに第1情報層41の信号強度が良好であることがわかった。
(実施例6)
実施例6では、図6の情報記録媒体15を作製し、実施例1および2と同様に性能を評価した。サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板24として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そのポリカーボネート基板上に、第2の誘電体層408として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、SbとS、もしくはSbとSとMを含み、それらの組成比が異なる記録層406(厚さ:10nm)、第1の誘電体層404として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、反射層402としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)を順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例1で使用したものと同様である。
情報層を形成した後、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をダミー基板26上にスピンコート法により塗布し、均一な樹脂層(厚さ20μm)を形成した。次いで、基板24上の反射層402をダミー基板26に密着させ、その後紫外線をダミー基板26側から照射して樹脂を硬化させた。それにより、接着層27を介して基板24とダミー基板26を接着させた。最後に、記録層406の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
このようにして得られたサンプルについて、実施例1および2と同様の方法によって、情報記録媒体15の情報層40の消去性能、及び信号信頼性を測定した。測定において、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ41の開口数NAは0.65、測定時のサンプルの線速度は22.4m/s、最短マーク長は0.173μmであった。
この結果、実施例1と同様に、記録層406がSbとSとを含み、さらに記録層406の組成が、式(1):SbxS100-x(原子%)(ただし、xは、50≦x≦98)で表されるサンプルは、良好な消去性能と信号信頼性を示した。
また、実施例2と同様に、記録層406がSbとSとM1を含み(M1は、GeSn、およびInから選択される、少なくとも1つの元素)、さらに記録層406の組成が、式(2):(SbzS1-z)100-yM1y(原子%)(添え字zは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦z≦0.98を満たし、添え字yは、原子%で示される組成比を表し、0<y≦30を満たす)で表されるサンプルは、良好な消去性能と信号信頼性を示した。
さらに、実施例2と同様に、記録層406がSbとSとM2を含み(M1は、BiおよびMnから選択される、少なくとも1つの元素)、さらに記録層406の組成が、式(3)):(SbaS1-a)100-bM2b (原子%)(添え字aは、Sb原子の数とS原子の数を合わせて1としたときの各原子の割合を表し、0.5≦a≦0.98を満たし、添え字bは、原子%で示される組成比を表し、0<b≦20を満たす)で表されるサンプルは、良好な消去性能と信号信頼性を示した。
(実施例7)
実施例7では、図6の情報記録媒体15を作製し、実施例3と同様に、性能を評価した。
サンプルの製造方法は、記録層406の厚さを除いて、実施例6で用いた製造方法と同様である。記録層406はSbとSを含むスパッタリングターゲットをArガス雰囲気において、圧力を0.2Paにし、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして、スパッタリングすることによって形成した。記録層406の組成は、Sb60S40であった。
このようにして得られたサンプルについて、実施例1と同様の方法で、消去性能および信号信頼性を評価した。この結果、実施例3と同様に、記録層406の厚さが、7〜15nmの範囲であれば、消去性能と信号信頼性がともに良好であることがわかった。
(実施例8)
実施例8では、図8の情報記録媒体17を作製し、実施例4と同様に、性能を評価した。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板24として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、記録層426としてSb70S30層、第1の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:15nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:20nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例4の第2情報層42の形成で使用したものと同様である。
また、基板25として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.58mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、反射層412としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層414として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、記録層416としてSb60S40(厚さ:10nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層418として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例4の第1情報層41の形成で使用したものと同様である。
その後、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)を基板25上の第2の誘電体層418上に、スピンコート法により塗布し、均一な樹脂層(厚さ20μm)を形成した。次いで、基板24上の透過率調整層421を基板25に密着させ、その後、紫外線を基板24側から照射して樹脂を硬化させた。その結果、接着層27を介して基板24と基板25とが、接着された。最後に、記録層416、及び記録層426の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
このようにして得られたサンプルについて、実施例4で用いた方法と同様の方法によって、情報記録媒体17の第2情報層42の消去性能、信号信頼性、及び第1情報層の信号強度を測定した。測定において、レーザビーム31の波長は405nm、対物レンズ41の開口数NAは0.65、測定時のサンプルの線速度は22.4m/s、最短マーク長は0.173μmであった。
この結果、実施例4と同様に、記録層426の厚さが、4〜9nmの範囲であれば、第2情報層42の消去性能および信号信頼性、ならびに第1情報層41の信号強度が良好であることがわかった。
(実施例9)
実施例9では、図9の情報記録媒体18を作製し、実施例5と同様に、性能を評価した。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板24として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そのポリカーボネート基板上に、第2の誘電体層448として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:35nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、記録層446として(Sb0.85S0.15)95Ge5層、第2の誘電体層444として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、反射層442としてAg−Pd−Cu層(厚さ:7nm)、透過率調整層441としてTiO2層(厚さ:25nm)を順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は、実施例5の第4情報層44の形成で使用したものと同様である。
次に、透過率調整層441上に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布し、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に、案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)を形成した基板をかぶせて密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第3情報層43側に形成された、厚さ15μmの分離層29を得た。
その後、分離層29の上に、第2の誘電体層438として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:38nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、記録層436としてSb80S20層(厚さ:4nm)、第2の誘電体層434として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、反射層432としてAg−Pd−Cu層(厚さ:8nm)、透過率調整層431としてTiO2層(厚さ:30nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例5の第3情報層43の形成で使用したものと同様である。
次に、透過率調整層431上に、紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)をスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した。この樹脂層の上に、案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)を形成した基板をかぶせて、密着させ、その後樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、基板を剥がした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第2情報層42側に形成された、厚さ10μmの分離層28を得た。
その後、分離層28の上に、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、記録層426としてSb80S20層(厚さ:4nm)、第2の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:8nm)、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:30nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例5の第2情報層42の形成で使用したものと同様である。
また、基板25として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.68μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.56mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、反射層412としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第1の誘電体層414として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:25nm)、記録層416としてSb60S40(厚さ:10nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層418として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。使用した成膜装置、スパッタリングターゲット、および成膜条件(ガス種、圧力、投入パワー)等は実施例5の第1情報層41の形成で使用したものと同様である。
その後、紫外線硬化性樹脂を基板25の第2の誘電体層428上に、スピンコート法により塗布し、均一な樹脂層(厚さ15μm)を形成した。この樹脂層の上に、基板24の透過率調整層431を密着させ、その後紫外線を基板24側から照射して樹脂を硬化させた。それにより、接着層27を介して基板24と基板25を接着させた。最後に、記録層416、426、436、及び446の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
このようにして得られたサンプルについて、実施例5で用いた方法と同様の方法によって、情報記録媒体18の第4情報層44の消去性能および信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、ならびに第1情報層41の信号強度を測定した。測定において、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ41の開口数NAは0.65、測定時のサンプルの線速度は22.4m/s、最短マーク長は0.173μmであった。
この結果、実施例5と同様に、記録層446の厚さが、2〜6nmの範囲であれば、第4情報層44の消去性能および信号信頼性、第3情報層43の信号強度、第2情報層42の信号強度、ならびに第1情報層41の信号強度が良好であることがわかった。
実施例3、4、5、7、8及び9の結果から、情報記録媒体11から18において、記録層の厚さは2nm〜15nmの範囲内であることが好ましいことが判った。即ち、SbとSとを含む記録層が、2nm〜15nmの範囲内にある厚さを有すると、媒体において良好な性能が確保された。
(実施例10)
実施例4で作製した情報記録媒体と、同じ構成の媒体を、第2情報層42に含まれる記録層426の組成を変えて作製した。記録層426の組成は、サンプル10−1においては、Sb70Sn30とし、サンプル10−2においては、Sb70Ge30とした。サンプル10−1および10−2において、記録層は、SbSn合金ターゲット(サンプル10−1)およびSbGe合金ターゲット(サンプル10−2)をそれぞれ用いて、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。その他の層の材料および形成条件は、実施例4で作製したサンプルのそれらと同じであった。
サンプル10−1および10−2と比較するために、実施例4で作製したサンプル4−5を用意した。これらのサンプルの第2情報層の透過率を測定するために、図4に示す情報記録媒体13の第1情報層41と分離層22を有さず、基板21上に第2情報層42と透明層23のみを形成した透過率測定用サンプルを作製し、記録層426の記録層組成と、第2情報層42の透過率との関係を調べた。
透過率測定用サンプルは以下のように製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。基板21の上に、透過率調整層421としてTiO2層(厚さ:20nm)、反射層422としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、第1の誘電体層424として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:15nm)、記録層426(厚さ:8nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層428として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)を順次スパッタリング法によって積層した。各層の形成条件は、実施例4で作製したサンプルのそれと同じであった。
最後に、紫外線硬化性樹脂を第2の誘電体層428上にスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ75μmの透明層23を形成した。その後、記録層426をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層426の記録層組成が異なる透過率測定用のサンプルを製造した。
これらの透過率測定用サンプルの波長405nmにおける透過率を分光器により測定して、測定値を第2の情報層の透過率とした。透過率が、49%以上であるものは「○」と評価し、49%未満である媒体は、「×」と評価した。評価結果を表6に示す。
本発明に相当するサンプル4−5は、第2情報層の透過率が高く、したがって、第1情報層の信号強度も十分な大きさとなった。記録層にSを含まないサンプル10−1および10−2は、透過率が小さく、したがって、第1情報層の信号強度は、サンプル4−5と比較して低かった。
(実施例11)
実施例5で作製した情報記録媒体と、同じ構成の媒体を、第4情報層44に含まれる記録層446の組成を変えて作製した。記録層446の組成は、サンプル11−1においては、Sb80Sn20とし、サンプル11−2においては、Sb80Ge20とした。サンプル11−1および11−2において、記録層は、SbSn合金ターゲット(サンプル11−1)およびSbGe合金ターゲット(サンプル11−2)をそれぞれ用いて、Arガス雰囲気において、圧力を0.2Paにして、DC電源を用いて、投入パワーを50Wにして行った。その他の層の材料および形成条件は、実施例5で作製したサンプルのそれらと同じであった。
これらのサンプルと比較するために、実施例5で作製したサンプル5−5を用意した。これらのサンプルの第4情報層の透過率を測定するために、図5に示す情報記録媒体14の第1、第2、第3情報層41、42、43と分離層22、28、29を有さず、基板21上に第4情報層44と透明層23のみを形成した透過率測定用サンプルを作製し、記録層446の記録層組成と、第4情報層44の透過率との関係を調べた。
透過率測定用サンプルは以下のように製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。透過率調整層441としてTiO2層(厚さ:25nm)、反射層442としてAg−Pd−Cu層(厚さ:7nm)、第2の誘電体層444として(ZrO2)50(In2O3)50層(厚さ:10nm)、記録層446(厚さ:5nm)、第2の界面層(図示せず)として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第2の誘電体層448として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:35nm)を順次スパッタリング法によって積層した。各層の形成条件は、実施例5で作製したサンプルのそれと同じであった。
最後に、紫外線硬化性樹脂を第2の誘電体層448上にスピンコート法により塗布して、均一な樹脂層を形成した後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ65μmの透明層23を形成した。その後、記録層446をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、記録層446の記録層組成が異なる透過率測定用のサンプルを製造した。
これらの透過率測定用サンプルの波長405nmにおける透過率を分光器により測定して、測定値を第4の情報層の透過率とした。透過率が、68%以上であるものは「○」と評価し、68%未満である媒体は、「×」と評価した。評価結果を表7に示す。
本発明に相当するサンプル5−5は、第4情報層の透過率が高く、したがって、第1〜第3情報層の信号強度も十分な大きさとなった。記録層にSを含まないサンプル11−1および11−2は、透過率が小さく、したがって、第1〜第3情報層の信号強度は、サンプル5−5のそれらと比較して低かった。
(実施例12)
実施例12では、図12に示す電気的情報記録媒体61において、第2記録層66がない電気的情報記録媒体61を製造し、その電流の印加による相変化を確認した。
基板62として、表面を窒化処理したSi基板を準備し、その上に下部電極63として、Ptから成り、表面積が6μm×6μmであり、厚さが0.1μmである層を形成した。その上に、第1誘電体層64として、(SiO2)50(ZrO2)50から成り、表面積が4.5μm×5μmであり、厚さが0.01μmである層を形成した。さらに、第1記録層65として、Sb80S20から成り、表面積が5μm×5μmであり、厚さが0.05μmである層を形成した。第2誘電体層67として、(SiO2)50(ZrO2)50から成り、表面積が4.5μm×5μmであり、厚さが0.01μmである層を形成した。上部電極68として、Ptから成り、表面積が5μm×5μmであり、厚さが0.1μmである層を形成した。いずれの層もスパッタリング法により形成した。
第1誘電体層64、及び第2誘電体層67は絶縁体であった。従って、第1記録層65に電流を流すため、第1誘電体層64及び第2誘電体層67は、第1記録層65より小さい表面積を有するように形成し、下部電極63および上部電極68それぞれが、第1記録層65と部分的に接するようにした。
その後、下部電極63、及び上部電極68に、Auリード線をボンディングし、印加部69を介して電気的情報記録再生装置74を電気的情報記録媒体61に接続した。この電気的情報記録再生装置74により、下部電極63と上部電極68の間には、パルス電源73がスイッチ71を介して接続された。さらに、第1記録層65の相変化による抵抗値の変化は、下部電極63と上部電極68の間にスイッチ72を介して接続された抵抗測定器70によって検出した。
第1記録層65が非晶質相のとき、下部電極63と上部電極68の間に、図15の記録波形901を有し、Ic1=5mA、tc1=50nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層65が非晶質相から結晶相に転移した。また、第1記録層65が結晶相のとき、下部電極63と上部電極68の間に、図15の消去波形906を有し、Ia1=10mA、ta1=10nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層65が結晶相から非晶質相に転移した。
また、電気的相変化情報記録媒体61の繰り返し書き換え回数を測定したところ、第1誘電体層64及び第2誘電体層67を有する媒体の繰り返し書き換え回数は、第1誘電体層64及び第2誘電体層67が無い媒体のそれの10倍以上であった。これは、第1誘電体層64、及び第2誘電体層67が、第1記録層65への下部電極63及び上部電極68からの物質移動を抑制しているためである。
なお、第1記録層48を、Sb80S20以外のSb−S系材料、Sb−S−M系材料(MはSn、Bi、In、Ge及びMnから選ばれる少なくとも一つの元素)を用いて形成しても、同様の結果が得られた。
本発明の情報記録媒体は、記録した情報を長時間保持できる性質(不揮発性)を有し、高密度の書き換え型の光ディスク等(例えば、Blu−ray Disc Rewritable(BD−RE)、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等)または電気的メモリとして有用である。
11...情報記録媒体、12...情報記録媒体、13...情報記録媒体、14...情報記録媒体、15...情報記録媒体、16...情報記録媒体、17...情報記録媒体、18...情報記録媒体、21...基板、22...分離層、23...透明層、24...基板、25...基板、26...ダミー基板、27...接着層、28...分離層、29...分離層、31...レーザビーム、32...対物レンズ、40...情報層、41...第1情報層、42...第2情報層、43...第3情報層、44...第4情報層、48...第N−1情報層、49...第N情報層、402...反射層、403...反射層側界面層、404...第1の誘電体層、405...第1の界面層、406...記録層、407...第2の界面層、408...第2の誘電体層、412...反射層、414...第1の誘電体層、416...記録層、418...第2の誘電体層、421...透過率調整層、422...反射層、424...第1の誘電体層、426...記録層、428...第2の誘電体層、431...透過率調整層、432...反射層、434...第1の誘電体層、436...記録層、438...第2の誘電体層、441...透過率調整層、442...反射層、444...第1の誘電体層、446...記録層、448...第2の誘電体層、491...透過率調整層、492...反射層、494...第1の誘電体層、496...記録層、498...第2の誘電体層、501...レーザダイオード、502...レーザビーム、503...ハーフミラー、504...対物レンズ、505...モーター、506...情報記録媒体、507...フォトディテクター、61,81...電気的情報記録媒体、62...基板、63...下部電極、64...第1誘電体層、65...第1記録層、66...第2記録層、67...第2誘電体層、68...上部電極、69...印加部、70...抵抗測定器、71,72...スイッチ、73...パルス電源、74...電気的情報記録再生装置、75...ワード線、76...ビット線、77...メモリセル、78...アドレス指定回路、79...記憶装置、80...外部回路、901,902,903,904,905,908,909...記録波形、906,907...消去波形、667...真空容器、668...排気口、669...ガス供給口、670...陽極、671...基板、672...スパッタリングターゲット、673...陰極、674...電源。