本発明は、特に、ポーラ変調方式を適用した送信装置に関する。
従来の送信変調装置の設計には、一般に効率と線形性との間にトレードオフの関係がある。しかし、最近では、ポーラ変調を用いることで送信変調装置において高効率と線形性とを両立可能とした技術が提案されている。
図1は、ポーラ変調を適用した送信変調装置の構成例を示したブロック図である。
極座標変換部11は、ベースバンド変調信号を振幅成分(例えば√(I2+Q2))であるベースバンド振幅変調信号S1と位相成分(例えば、変調シンボルとI軸のなす角度)であるベースバンド位相変調信号S2とに分離する。
電源電圧変換部12は、図示せぬ電源から供給される電源電圧S3を電源電圧S4に変換し、変換後の電源電圧S4をレギュレータ14に出力する。
電力印加部13は、ベースバンド振幅変調信号S1に制御信号S5を掛け合わせることにより、振幅変調信号S6を形成する。
レギュレータ14は、振幅変調信号S6によって電源電圧S4をバイアスし変化させる。レギュレータ14は、振幅変調信号S6によって電源電圧S4を変化させて得た電源電圧S8を、電力増幅部16の電源入力端に供給する。
位相変調部15は、ベースバンド位相変調信号S2により高周波信号を位相変調して位相変調高周波信号S7に変換する。
パワーアンプ16は、電源電圧S8を電源として位相変調高周波信号S7の電力を増幅する。パワーアンプ16は、位相変調高周波信号S7を電力増幅し得たRF送信信号S9をアイソレータ17に出力する。
アイソレータ17は、ある方向に対しては電磁波を減衰させることなく通過させ、その逆の方向に対しては、電磁波の電力を吸収する。これにより、アンテナ18で受信した信号が、パワーアンプ16へ進入することを防止する。また、アイソレータ17が存在するため、アンテナ18の負荷が変動したとしても、その悪影響がパワーアンプ16に及ばず、パワーアンプ16の動作が不安定になることがない。また、パワーアンプ16の出力信号のS/Nが悪化することも防止される。このようにして、アイソレータ17は、アンテナ18によって生じる反射信号がパワーアンプ16に伝搬するのを防止するとともに、アンテナ18の負荷変動によりパワーアンプ16に与える影響を遮断する。
アンテナ18は、RF送信信号S10を送信する。
上記のように構成された送信変調装置10を携帯電話のような端末に用いた場合、アイソレータ17が設けられているため、パワーアンプ16の特性の安定化を図ることができる。しかし、アイソレータ17を挿入した分、電力損失が発生し、回路の占有面積も増大する。
アイソレータ17を削除すれば、電力損失の問題やスペースの問題は解消するものの、その一方、パワーアンプの特性の不安定化を招くことになり、上記のように構成された送信変調装置10からアイソレータ17を削除すると、パワーアンプの負荷が変動しやすくなる。
特に、携帯電話機のような移動体端末の場合は、使用環境が多様に変化し、これに伴いパワーアンプの負荷(アンテナ18の負荷)は簡単に変動してしまう。例えば、通話時に、機器本体を人体に近づけたり、あるいは金属の机の上で使用するような場合、携帯電話機のアンテナが、人体や金属板と容量結合することによって送信変調装置の負荷は大きく変動する。
このような負荷変動は、電源電圧変換部12からパワーアンプ16に流れる電流の電流値Iccを増加させ、かつ、パワーアンプ16の出力電力を低下させる。この結果、式(1)に示すようにパワーアンプ16の電力損失を増加させ、パワーアンプの電力損失が熱へ変わってパワーアンプの温度が大きく上昇してしまうという問題がある。
電力損失=供給電力(Vcc×Icc)−出力電力(Pout) …(1)
このように、負荷が変動するとパワーアンプの電力損失が増大し、パワーアンプの発熱量が大きくなってしまうという課題がある。したがって、このような送信変調装置が搭載された携帯電話機では、筐体の温度が上昇し高温となり、携帯電話機の寿命や特性劣化を招くことになる。特に、身体に接触して利用される携帯電話機の場合は、筐体の表面温度が高くなると使用そのものが難しくなるので、パワーアンプの発熱量の増加は問題となる。
このような問題を解決するために、特許文献1には、パワーアンプの電流を検出することで負荷の変動を推定し、パワーアンプ出力端に接続された可変負荷を負荷変動が緩和するように制御を行う方法が開示されている。図2に、特許文献1に開示されるポーラ変調送信装置の要部構成を示す。
パワーアンプの負荷変動による悪影響を抑えるため、特許文献1に開示されるように、パワーアンプの負荷変動を推定する回路及び負荷を制御する回路を、ポーラ変調送信装置に設けることも考えられる。
特開2000−295055号公報
しかしながら、負荷変動を推定したり、負荷を制御したりするための回路は、回路規模が大きく、携帯電話機のような端末に用いる場合、端末を小型化できないという問題がある。
本発明の目的は、ポーラ変調方式において、アイソレータを不要として回路規模を抑え、パワーアンプの熱損失を抑圧することができるポーラ変調送信装置を提供することである。
本発明のポーラ変調送信装置は、所定信号の位相成分信号の電力を増幅するパワーアンプと、電源と、前記所定信号の振幅成分信号に応じて前記電源の電源電圧を可変させ、前記パワーアンプの電源入力端に供給するレギュレータと、前記電源から前記パワーアンプに流れる電流値を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された電流値に基づいて、送信パワーを指定する送信電力制御信号の値を制限する電力制御部と、前記電力制御部から出力される前記送信電力制御信号に基づいて、前記所定信号の振幅成分信号を増幅する電力印加部とを備える構成を採る。
この構成によれば、電源電圧からパワーアンプに流れる電流値に基づいて、パワーアンプに印加される電源電圧を制限してパワーアンプの最大出力電力を制限することができるので、パワーアンプの熱損失を抑圧することができる。
本発明によれば、ポーラ変調送信機において、アイソレータを用いなくても、パワーアンプの熱損失を抑圧することができ、回路規模も抑えることができる。
従来のポーラ変調方式に用いられるポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
従来のアイソレータレスポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
パワーアンプの電力損失量とパターアンプの電源電流値との関係を示す図
本発明の実施の形態1に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
実施の形態1に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図
電源電圧の電流値とパワーアンプの熱損失との関係を説明するための図
本発明の実施の形態2に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図
本発明の実施の形態3に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
実施の形態3に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図
しきい値と制御信号との関係を示す図
電源電圧の電流値とパワーアンプの熱損失との関係を説明するための図
本発明の実施の形態4に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
実施の形態4に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図
しきい値と制御信号との関係を示す図
本発明の実施の形態5に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
実施の形態5に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の発明者らは、負荷の位相成分の変動に伴うパワーアンプの電力損失量とパワーアンプの電源電流値との間に、高い相関性があることを見いだした。この点について、図3を参照して説明する。
図3は、図1の構成からアイソレータ17を削除し、負荷の反射係数の大きさが等しく(VSWRが4にて一定)、位相成分のみを変動させた場合の負荷の位相と、パワーアンプの出力電力値を示す図である。同図において、横軸は、負荷の位相を示し、縦軸は、パワーアンプの出力電力値を示している。さらに、同図に、パワーアンプの電力損失量、及び、電源電圧変換部12からパワーアンプ16に流れる電源電流値との関係を示す。なお、参考として負荷の変動がない場合(VSWR=1)の値を同図に点線で示す。
図3から分かるように、負荷の位相成分が変動すると、パワーアンプ16の電力損失量、パワーアンプ16の出力電力値、電源電圧変換部12からパワーアンプ16に流れる電源電流値が共に変動する。
ここで、パワーアンプの電力損失量と電源電流値の変動の仕方に注目すると、図3に示されるように、負荷の位相成分の変動に対するパワーアンプの電力損失量とパワーアンプの電源電流値の間には、高い相関性があることがわかる。
本発明の発明者らは、この点に着目した。つまり、パワーアンプ16の電力損失量とパワーアンプ16の電源電流値の相関性を利用して、電源電圧変換部12からパワーアンプ16に流れる電流値に応じてパワーアンプ16の電力制御を行うようにすれば、パワーアンプ16の損失を効率的に抑圧できると考え、本発明に至った。
(実施の形態1)
図4に、本実施の形態に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示す。ポーラ変調送信装置100は、例えば携帯端末やその基地局装置等の無線通信装置に搭載されている。
図4において、ポーラ変調送信装置100は、極座標変換部110、電源電圧変換部120、電流検出部130、電力制御部140、電力印加部150、レギュレータ160、位相変調部170、パワーアンプ(Power Amp)180、及びアンテナ190を備えて構成される。
極座標変換部110は、ベースバンド変調信号を振幅成分(例えば√(I2+Q2))であるベースバンド振幅変調信号S11と位相成分(例えば、変調シンボルとI軸のなす角度)であるベースバンド位相変調信号S12とに分離する。
電源電圧変換部120は、図示せぬ電源から供給された電源電圧S20を電源電圧S21に変換し、変換後の電源電圧S21を電流検出部130及びレギュレータ160に出力する。
電流検出部130は、電源電圧変換部120からパワーアンプ180に流れる電流値Iccを検出し、電力制御部140に出力する。
電力制御部140は、入力される電力制御信号S30と、電流検出部130で検出された電流値Iccに基づいて、制御信号S31を電力印加部150に出力する。ここで、電力制御信号S30は、アンテナ190から送信されるRF出力信号S15の送信電力を制御する信号であり、例えば通信相手装置との距離が近い場合には送信電力のレベルが小さい信号で、遠い場合は送信電力のレベルが大きい信号である。電力制御部140については、後に詳述する。
電力印加部150は、ベースバンド振幅変調信号S11に制御信号S31を掛け合わせることにより、振幅変調信号S13を形成する。
レギュレータ160は、振幅変調信号S13によって電源電圧S21をバイアスし変化させる。レギュレータ160は、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させて得た電源電圧S22を、パワーアンプ180に供給する。
位相変調部170は、ベースバンド位相変調信号S12により高周波信号を位相変調して位相変調高周波信号S14に変換する。
パワーアンプ180は、電源電圧S22を電源として位相変調高周波信号S14の電力を増幅する。パワーアンプ180は、位相変調高周波信号S14を電力増幅し得たRF送信信号S15をアンテナ190に出力する。
アンテナ190は、RF送信信号S15を送信する。
図5は、電力制御部140の要部構成を示すブロック図である。
図5において、電力制御部140は、比較部141、スイッチ制御部142、スイッチ143、及び電力制御信号固定制限部144を備えて構成される。
比較部141は、電流検出部130から出力される電流値Iccと所定のしきい値との大小比較を行い、大小比較結果をスイッチ制御部142に出力する。
スイッチ制御部142は、比較部141の比較結果に応じて、スイッチ143のパスを切り換えるための制御信号S40をスイッチ143に出力する。具体的には、比較結果が、電流値Icc>しきい値の場合、パス11に切り換え、電流値Icc≦しきい値の場合、パス12に切り換えるための制御信号S40をスイッチ143に出力する。
スイッチ143は、電力制御信号S30を入力し、スイッチ制御部142から出力される制御信号S40に応じて、電力制御信号S30のパスをパス11又はパス12のいずれかに切り換える。
電力制限信号固定制限部144は、スイッチ143を経由して電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と電力制限信号固定制限部144が保持する固定電力制御信号S32とを比較し、より小さい値を有する信号を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
このようにして、電力制御部140は、比較部141における比較結果が、電流値Icc≦しきい値の場合、制御信号S31として電力制御信号S30を電力印加部150に出力する一方、電流値Icc>しきい値の場合、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置100の動作について、主に電力制御部140の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部140の比較部141によって、電流検出部130から出力される電流値Iccと所定のしきい値との大小比較が行われ、比較結果が、スイッチ制御部142に出力される。スイッチ制御部142からは、比較結果が、電流値Icc≦しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S40がスイッチ143に出力される。一方、比較結果が、電流値Icc>しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換えるための制御信号S40がスイッチ143に出力される。
このようにして、比較結果が、電流値Icc>しきい値の場合、電力制御信号S30は、電力制御信号固定制限部144に出力され、電流値Icc≦しきい値の場合、電力制御信号S30は、電力印加部150に直接出力される。
電力制御信号固定制限部144では、電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号が制御信号S31として、電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部144から固定電力制御信号S32が出力されるのは、固定電力制御信号S32が本来の電力制御信号S30の値より小さいときであるので、固定電力制御信号S32が制御信号S31として電力印加部150に出力される場合、電力印加部150によって形成される振幅変調信号S13のレベルが制限を受ける。レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させるため、振幅変調信号S13が小さくなることにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が減少する。パワーアンプ180に供給される電力が減少することにより、パワーアンプ180の電力損失が低減する。この結果、電力損失によりパワーアンプ180の温度が上昇するのを抑制することができる。
図6は、電力制御部140の動作の説明に供する図である。図6において、横軸は電流値Iccを示し、縦軸はパワーアンプ180の熱損失Plossを示している。また、同図中、右上あがりの直線L11は、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=26dBm相当の場合に、負荷が変動した時の電流値Iccの変化とその時の熱損失Plossとの関係を示し、直線L12は、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=23dBm相当の場合に、負荷が変動した時の電流値Iccの変化とその時の熱損失Plossとの関係を示す。また、同図中、I11は、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=26dBm相当の場合に、熱損失Plossを既定値P1以下とする電流値Iccの最大値を示し、I12は、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=23dBm相当の場合に、熱損失Plossを既定値P1以下とする電流値Iccの最大値を示す。図6から分かるように、電力制御信号S30で設定する出力電力Poutが大きいほど、熱損失Plossを既定値P1以下とする電流値Iccの最大値が小さい(I12>I11)。
例えば、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=26dBmの場合に、負荷変動により電流値IccがI11を上回る場合に、電力制御信号S30の値より小さい値を有する固定電力制御信号S32(例えば、出力電力Pout=23dBm相当の設定値)が制御信号S31として電力制御部140から電力印加部150に出力される。電力印加部150によって、ベースバンド振幅変調信号S11に制御信号S31が掛け合わされることにより、振幅変調信号S13が形成される。
レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21が変化され、振幅変調信号S13によって電源電圧S21が変化されて得た電源電圧S22が、パワーアンプ180に供給される。
このように、電力制御部140から制御信号S31として電力制御信号S30が固定印加部150に出力され、振幅変調信号S13が取得される場合に比べ、電力制御部140から制御信号S31として固定電力制御信号S32が固定印加部150に出力され、振幅変調信号S13が取得される場合の方が、ベースバンド振幅変調信号S11から振幅変調信号S13への増幅率が小さくなる。これにより、パワーアンプ180の出力電力Poutが26dBmから例えば23dBmに低減されるようになって(図6の矢印a参照)、この結果、熱損失が低減し、パワーアンプ180の温度上昇を抑圧することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、電力制御部140が、電源電圧変換部120の電流値Iccに基づき、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を制御するので、パワーアンプ180の最大出力電力を制限し、パワーアンプ180の熱損失を抑圧することができるようになる。すなわち、電流値Iccが大きい場合には、電力制御信号S30に代えて電力制御信号S30の値より小さい値の固定電力制御信号S32を制御信号S31として電力印加部150に出力することで、電力印加部150における増幅率を小さくすることができる。これにより、生成される振幅変調信号S12の振幅レベルが小さくなり、これにより、レギュレータ160を介してパワーアンプ180に供給される電源電圧S22が小さくなるので、パワーアンプ180への電源供給ラインでの電力損失を抑制し、熱損失を抑圧することができる。
なお、上述した説明では、電力制御部140は、比較部141と、スイッチ制御部142と、スイッチ143と、電力制御信号固定制限部144とから構成される場合に限定されず、比較部とメモリを備え、電流値Iccが所定のしきい値を上回る場合に、予めメモリに記憶された固定電力制御信号S32を制御信号S31として出力する構成としてもよい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2のポーラ変調送信装置のハードウェア構成図は、図4と同様であるため、説明を省略する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る電力制御部140の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態の説明にあたり、図5と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、本実施の形態の電力制御部140は、比較部141のしきい値を切り換える第2のスイッチ145を備えることにある。
スイッチ145は、制御信号S40に応じて、比較部141のしきい値を切り換える。制御信号S40は、スイッチ制御部142から出力されるスイッチ143のパスを切り換えるための信号である。具体的には、スイッチ145は、パス11に切り換えるような制御信号S40がスイッチ制御部142から出力されると、比較部141のしきい値をしきい値1からしきい値2(しきい値1>しきい値2)に切り換える。一方、スイッチ145は、パス12に切り換えるような制御信号S40がスイッチ制御部142から出力されると、比較部141のしきい値をしきい値2からしきい値1に切り換える。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置100の動作について、主に電力制御部140の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部140の比較部141によって、電流検出部130から出力される電流値Iccと所定のしきい値との大小比較が行われ、比較結果が、スイッチ制御部142に出力される。比較結果が、電流値Icc≦しきい値であることを示す場合、スイッチ制御部142からは、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S40がスイッチ143及びスイッチ145に出力される。一方、比較結果が、電流値Icc>しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換えるための制御信号S40がスイッチ143及びスイッチ145に出力される。
電流値Iccがしきい値1を超え、パワーアンプ180の出力電力Poutの制限が開始されると、スイッチ145では、比較部141のしきい値がしきい値1からしきい値2に切り換えられる(しきい値1>しきい値2)。これにより、電流値Iccがしきい値2を下回った場合に、電力制御信号S30のパスがパス11からパス12に切り換えられて、パワーアンプ180の出力電力Poutの制限が解除される。パワーアンプ180の出力電力Poutの制限が解除されると、スイッチ145では、比較部141のしきい値がしきい値2から再度しきい値1に切り換えられる。
このように、パワーアンプ180の出力電力Poutの制限を解除するしきい値を、制限開始に対するしきい値よりも小さくなるように選ぶことにより、制限開始と制限解除は、電流値Iccに関してヒステリシスを形成する。パワーアンプ180の出力電力Poutの制限開始及び制限解除の電流値Iccのしきい値を同じにした場合は、電流値Iccに関してヒステリシスを形成しないため、電流値Iccの値がしきい値を横断しながら微妙に変化するたびごとに、電力制御信号S30のパスが切り換えられ、パワーアンプ180の最大出力電力が変動することになるのに対し、パワーアンプ180の出力電力Poutの制限を解除するしきい値を、制限開始に対するしきい値よりも小さくなるように選び、電流値Iccに関してヒステリシスを形成するようにすることで、電流値Iccが微妙に変動しただけでは電力制御信号S30のパスは切り換えられなくなり、均一した送信電力が得られるようになる。
電力制御信号S30は、スイッチ制御部142からの制御信号S40に応じて、電力制御信号固定制限部144又は電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部144では、電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号が制御信号S31として電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部144から固定電力制御信号S32が出力されるのは、固定電力制御信号S32が本来の電力制御信号S30の値より小さいときであるので、固定電力制御信号S32が制御信号S31として電力印加部150に出力される場合、電力印加部150によって形成される振幅変調信号S13のレベルが制限を受ける。レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させるため、振幅変調信号S13が小さくなることにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が減少する。パワーアンプ180に供給される電力が減少することにより、パワーアンプ180の電力損失が低減する。この結果、電力損失によりパワーアンプ180の温度が上昇するのを抑制することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、パワーアンプ180の最大出力電力の制限を開始する場合のしきい値1よりも小さい値のしきい値2を、パワーアンプ180の最大出力電力の制限を解除する場合のしきい値として用いるので、パワーアンプ180の最大出力電力の制限開始と制限解除は、電流値Iccに関してヒステリシスを形成する。制限開始及び制限解除の電流値Iccのしきい値を同じに設定し、電流値Iccに関してヒステリシスを形成しない場合には、電流値Iccの値がしきい値を横断しながら微妙に変化するたびごとに、パワーアンプ180の最大出力電力が変動することになる。これに対し、パワーアンプ180の出力電力Poutの制限を解除するしきい値を、制限開始に対するしきい値よりも小さくなるように選び、電流値Iccに関してヒステリシスを形成するようにすることで、電流値Iccが微妙に変動した場合においても均一した送信電力が得られるようになる。
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態の説明にあたり、図4と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、本実施の形態のポーラ変調送信装置200は、電力制御部140に代え、電力制御部210を備えることにある。
図9は、電力制御部210の要部構成を示すブロック図である。
図9において、電力制御部210は、比較部211、及び電力制御信号可変制限部212を備えて構成される。
比較部211は、電流検出部130から出力される電流値Iccと複数のしきい値(しきい値1〜しきい値N)との大小比較を行い、大小比較結果を電力制御信号可変制限部212に出力する。
電力制御信号可変制限部212は、比較結果に基づいて、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を変更し、電力印加部150に出力する。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置200の動作について、主に電力制御部210の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部210の比較部211によって、電流検出部130から出力される電流値Iccと複数のしきい値1〜しきい値Nとの大小比較が行われ、比較結果が、電力制御信号可変制限部212に出力される。
電力制御信号可変制限部212では、複数のしきい値1〜しきい値Nのうち、電流値Iccがどのしきい値の間にあるかによって、電力印加部150に出力される制御信号S31の値が変更される。
図10は、比較部211が3つのしきい値1〜しきい値3を有する場合に、しきい値と制御信号S31の値の関係を示した図である。図10において、しきい値1〜しきい値3は、それぞれ、750mA,700mA,650mAに設定されていて、また、同図中、出力制限値は、各出力値に対応するパワーアンプ180の出力電力Poutを示す。
図10に示す例では、電流値Iccが、Icc>しきい値1の場合、制御信号S31の値は2.9に設定され、しきい値1≧Icc>しきい値2の場合、制御信号S31の値は3.2に設定され、しきい値2≧Icc>しきい値3の場合、制御信号S31の値は3.5に設定され、しきい値3≧Iccの場合、制御信号S31の値は3.8に設定される。
電力印加部150によって、ベースバンド振幅変調信号S11に制御信号S31が掛け合わされることにより、振幅変調信号S13が形成される。
レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21が変化され、振幅変調信号S13によって電源電圧S21が変化されて得た電源電圧S22が、パワーアンプ180に供給される。
例えば、電流値Iccがしきい値1(750mA)を超え、制御信号S31の値が2.9に設定される場合、パワーアンプ180の出力電力Poutは23dBmとなる。電流値Iccがしきい値1(750mA)以下でしきい値2(700mA)を超え、制御信号S31の値が3.2に設定される場合、パワーアンプ180の出力電力Poutは24dBmとなる。電流値Iccがしきい値2(700mA)以下でしきい値3(650mA)を超え、制御信号S31の値が3.5に設定される場合、パワーアンプ180の出力電力は25dBmとなる。電流値Iccがしきい値3(650mA)以下で、制御信号S31の値が3.8に設定される場合、パワーアンプ180の出力電力は26dBmとなる。
このとき、レギュレータ160からパワーアンプ180に供給される電源電圧S22の値も、パワーアンプ180の出力電力Poutと同様に、制御信号S31の大きさに応じて、小さくなるため、式(1)の右辺第1項のパワーアンプ180の供給される供給電力(Vcc×Icc)と右辺第2項のパワーアンプ180の出力電圧Poutとの電力差が小さくなって、パワーアンプ180の電力損失Plossを抑圧することができる。
図11は、電力制御部210の動作の説明に供する図である。図11において、横軸は電流値Iccを示し、縦軸はパワーアンプ180の熱損失Plossを示している。また、同図中、右上あがりの直線L21〜L24は、それぞれ、電力制御信号S30の設定値が26dBm,25dBm,24dBm,23dBm相当の場合に、負荷が変動した時の電流値Iccの変化とその時の熱損失Plossとの関係を示す。また、同図中、I21〜I23は、電力制御信号S30の設定値が26dBm,25dBm,24dBm相当の場合に、熱損失Plossを既定値P1以下とする電流値Iccの最大値を示す。図10に示した例では、I21=650mA,I22=700mA,I23=750mAとなる。
このとき、電力制御信号S30の設定値が26dBm相当で、負荷変動により電流値IccがI21を上回る場合に、制御信号S31の値が3.8から3.5に変更される。この結果、パワーアンプ180の出力電力Poutが25dBmに制限され、熱損失も許容値内となる(図11の矢印a参照)。電流値IccがI22を上回ると、制御信号S31の値が3.5から3.2に変更されてパワーアンプ180の出力電力Poutの最大出力電力が24dBmとなり、熱損失も許容値内となる(図11の矢印b参照)。電流値IccがI23を上回ると、制御信号S31の値が3.2から2.9に変更されてパワーアンプ180の出力電力Poutの最大出力電力が23dBmとなり、熱損失も許容値内となる(図11の矢印c参照)。
このように、複数のしきい値を設け、電流値Iccの大きさに応じて、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を段階的に制御することにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が段階的に制限されるようになる。これにより、パワーアンプ180の最大出力電力の制限量を段階的に制御することができるようになり、しきい値を単一で固定にする場合に比べ、不必要に出力電力Poutを下げすぎてしまうのを回避して適切な出力電力Poutを維持しつつ、パワーアンプ180の電力損失を低減することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、比較部211は複数のしきい値を有し、電力制御部210は、しきい値ごとに、パワーアンプ180の出力電力Poutを制御する。すわなち、しきい値ごとに、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を制御することができるので、パワーアンプ180の最大出力電力の制限量を段階的に制御することができ、これにより、パワーアンプ180に印加される電源電圧S22の値を不必要に下げすぎてしまうのを回避して適切な出力電力Poutを維持しつつ、パワーアンプ180の電力損失を抑圧することができる。
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態の説明にあたり、図4と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、本実施の形態のポーラ変調送信装置300は、電力制御部140に代え、電力制御部310を備えることにある。
図13は、電力制御部310の要部構成を示すブロック図である。
図13において、電力制御部310は、供給電力推定部311、比較部312、スイッチ制御部313、スイッチ314、及び電力制御信号固定制限部315を備えて構成される。
供給電力推定部311は、電流検出部130によって検出された電源電圧変換部120の電源電圧S21の電流値Iccと、電力制御信号S30とに基づいて、式(2)を用いて、パワーアンプ180に供給する供給電力P0を推定する。
供給電力P0=電流値Icc×電力制御信号×α …(2)
式(2)において、αは、Vccを電力制限されない場合にパワーアンプ180に供給される平均電圧とした場合に、式(3)を満たすような係数である。
電力制御信号×α≒Vcc …(3)
比較部312は、推定された供給電力P0と所定のしきい値との大小関係を比較し、比較結果をスイッチ制御部313に出力する。
スイッチ制御部313は、比較結果に応じて、電力制御信号S30のパスをパス11又はパス12のいずれか一方に切り換えるための制御信号S50をスイッチ314に出力する。具体的には、供給電力P0>しきい値の場合、電力制御信号S30がパス11を経由し、供給電力P0≦しきい値の場合、電力制御信号S30がパス12を経由するような制御信号S50をスイッチ314に出力する。
スイッチ314は、制御信号S50に応じて、電力制御信号S30のパスを切り換える。すなわち、供給電力P0>しきい値の場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換え、供給電力P0≦しきい値の場合、パス12に切り換える。
電力制御信号固定制限部315は、スイッチ314を経由して電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と電力制限信号固定制限部144が保持する固定電力制御信号S32とを比較し、より小さい値を有する信号を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
このようにして、電力制御部310は、比較部312における比較結果が、供給電力P0≦しきい値の場合、電力制御信号S30を制御信号S31として電力印加部150に出力する一方、供給電力P0>しきい値の場合、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置300の動作について、主に電力制御部310の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部310の供給電力推定部311によって、電流検出部130から出力される電流値Iccと電力制御信号S30とから、式(2)が用いられて、供給電力P0が推定される。供給電力P0は、比較部312によって、所定のしきい値との大小比較が行われ、比較結果が、スイッチ制御部313に出力される。スイッチ制御部313からは、比較結果が、供給電力P0≦しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S50がスイッチ314に出力される。一方、比較結果が、供給電力P0>しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S50がスイッチ314に出力される。
このようにして、電力制御信号S30は、比較結果が、供給電力P0>しきい値の場合、電力制御信号固定制限部315に出力され、供給電力P0≦しきい値の場合、電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部315では、電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号が制御信号S31として、電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部315から固定電力制御信号S32が出力されるのは、固定電力制御信号S32が本来の電力制御信号S30の値より小さいときであるので、固定電力制御信号S32が制御信号S31として電力印加部150に出力される場合、電力印加部150によって形成される振幅変調信号S13のレベルが制限を受ける。レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させるため、振幅変調信号S13が小さくなることにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が減少する。パワーアンプ180に供給される電力が減少することにより、パワーアンプ180の損失が低減する。この結果、損失によりパワーアンプ180の温度が上昇するのを抑制することができる。
図14は、電力制限信号固定制限部315における入力値と出力値との関係を例示した図である。図14は、比較部312のしきい値が1000mWの場合の例で、供給電力推定部311において推定された供給電力P0が1000mWを超える場合には、制御信号S31として2.9が設定され、供給電力P0が1000mW以下の場合には、制御信号S31として3.8が設定されることを示している。
このように、式(2)から供給電力を推定し、推定された供給電力P0を基に、電力印加部150に出力する制御信号S31のレベルを制御するようにした。上述した実施の形態1〜3のように電流値Iccを基に、制御信号S31のレベルを制御する場合には、電流値Iccが同じであれば、供給電力P0が異なる場合であってもパワーアンプ180に供給される電源電圧S22が制御されるのに対し、本実施の形態では、電流値Iccが同じであっても供給電力P0が異なる場合には、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が必ずしも制御されるとは限らない。式(1)に示されるように、パワーアンプ180の電力損失は、電流値Iccから算出される供給電力に基づいて変動するため、電流値Iccを用いて電力印加部150における増幅率を制御するのに対し、供給電力を推定し、供給電力そのものを用いて電力印加部150における増幅率を制御する場合には、より不必要にパワーアンプ180の出力電力Poutを下げすぎてしまうことを減らし、的確にパワーアンプ180の出力電力Poutを制御することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、電流値Iccと電力制御信号S30とからパワーアンプ180に供給する電力を推定する供給電力推定部311を設け、推定された供給電力P0に基づいて、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を制御するので、パワーアンプ180の最大出力電力を適切に制御して、パワーアンプ180の熱損失を確実に抑圧することができるようになる。すなわち、推定された供給電力P0が大きい場合には、電力制御信号S30に代えて電力制御信号S30の値より小さい値の電力制御信号S32を制御信号S31として電力印加部150に出力することで、電力印加部150における増幅率を小さくすることができるので生成される振幅変調信号S12の振幅レベルが小さくなり、これにより、レギュレータ160を介してパワーアンプ180に供給される電源電圧S22が小さくなってパワーアンプ180の電力損失を抑制し、熱損失を抑圧することができる。
(実施の形態5)
図15は、本発明の実施の形態5に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態の説明にあたり、図4と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、本実施の形態のポーラ変調送信装置400は、電力制御部140に代え、電力制御部430を備え、カップラ410及び電力検出部420をさらに備えることにある。
カップラ410は、パワーアンプ180から出力されるRF送信信号S15をアンテナ190と電力検出部420とに分岐して出力する。
電力検出部420は、パワーアンプ180の出力電力、つまり、RF送信信号S15の送信パワーPRFを検出し、電力制御部430に出力する。
図16は、電力制御部430の要部構成を示すブロック図である。
図16において、電力制御部430は、熱損失量推定部431、比較部432、スイッチ制御部433、スイッチ434、及び電力制御信号固定制限部435を備えて構成される。
熱損失量推定部431は、電源電圧変換部120の電源電圧S21の電流値Iccと、電力検出部420によって検出されたRF送信信号S15の送信パワーPRFと、電力制御信号S30とに基づいて、式(1)を用いて、パワーアンプ180で損失する熱量Plossを推定する。
比較部432は、推定された熱量Plossと所定のしきい値との大小関係を比較し、比較結果をスイッチ制御部433に出力する。
スイッチ制御部433は、比較結果に応じて、電力制御信号S30のパスをパス11又はパス12のいずれか一方に切り換えるための制御信号S60をスイッチ434に出力する。具体的には、熱量Ploss>しきい値の場合、電力制御信号S30がパス11を経由し、熱量Ploss≦しきい値の場合、電力制御信号S30がパス12を経由するような制御信号S60をスイッチ434に出力する。
スイッチ434は、制御信号S60に応じて、電力制御信号S30のパスを切り換える。すなわち、熱量Ploss>しきい値の場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換え、熱量Ploss≦しきい値の場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換える。
電力制御信号固定制限部435は、スイッチ434を経由して電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30の値より小さい値の固定電力制御信号S32を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
このようにして、電力制御部430は、比較部432における比較結果が、熱量Ploss≦しきい値の場合、電力制御信号S30を制御信号S31として電力印加部150に出力する一方、熱量Ploss≦しきい値の場合、電力制御信号S30の値より小さい値の固定電力制御信号S32を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置400の動作について、主に電力制御部430の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部430の熱損失量推定部431によって、電源電圧変換部120の電源電圧S21の電流値Iccと、電力検出部420によって検出されたRF送信信号S15の送信パワーPRFと、電力制御信号S30とに基づいて、式(2)が用いられて、パワーアンプ180で損失する熱量Plossが推定される。比較部432では、熱損失量推定部431から出力される熱量Plossと所定のしきい値との大小比較が行われ、比較結果が、スイッチ制御部433に出力される。スイッチ制御部433からは、比較結果が、熱量Ploss≦しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S60がスイッチ434に出力される。一方、比較結果が、熱量Ploss>しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換えるための制御信号S60がスイッチ434に出力される。
このようにして、電力制御信号S30は、比較結果が、熱量Ploss>しきい値の場合、電力制御信号固定制限部435に出力され、電流値Icc≦しきい値の場合、電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部435では、電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30の値を制限した固定電力制御信号S32が制御信号S31として、電力印加部150に出力される。
固定電力制御信号S32の値が、電力制御信号S30の値より小さい場合、固定電力制御信号S32が制御信号S31として電力印加部150に出力されるので、電力印加部150によって形成される振幅変調信号S13のレベルが制限を受ける。レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させるため、振幅変調信号S13が小さくなることにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が減少する。パワーアンプ180に供給される電力が減少することにより、パワーアンプ180の損失が低減する。この結果、損失によりパワーアンプ180の温度が上昇するのを抑制することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、電流値Iccと電力制御信号S30とRF送信信号S15の送信パワーPRFとからパワーアンプ180での熱損失そのものを推定する熱損失量推定部431を設け、推定された熱量Plossに基づいて、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を制御するので、パワーアンプ180の最大出力電力を適切に制御して、パワーアンプ180の熱損失を確実に抑圧することができるようになる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、所定信号の位相成分信号の電力を増幅するパワーアンプと、電源と、前記所定信号の振幅成分信号に応じて前記電源の電源電圧を可変させ、前記パワーアンプの電源入力端に供給するレギュレータと、前記電源から前記パワーアンプに流れる電流値を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された電流値に基づいて、送信パワーを指定する送信電力制御信号の値を制限する電力制御部と、前記電力制御部から出力される前記送信電力制御信号に基づいて、前記所定信号の振幅成分信号を増幅する電力印加部とを備える構成を採る。
この構成によれば、電源電圧からパワーアンプに流れる電流値に基づいて、パワーアンプに印加される電源電圧を制限してパワーアンプの最大出力電力を制限することができるので、パワーアンプの熱損失を抑圧することができる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記電力制御部は、前記電流検出部により検出された電流値と所定のしきい値との大小比較を行う比較部をさらに具備し、前記電流値が前記所定のしきい値よりも大きいという前記比較部の比較結果が得られたとき、前記送信電力制御信号の値を制限する構成を採る。
この構成によれば、電源電圧からパワーアンプに流れる電流値が所定のしきい値よりも大きいという比較結果が得られた場合のみ、送信電力制御信号の値を制限するという簡単な制御で、パワーアンプの最大出力電力を制限し、パワーアンプの熱損失を確実に抑圧することができる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記電流検出部により検出された電流と比較される前記所定のしきい値は、前記パワーアンプの電源入力端に供給する前記電源電圧の制限を開始するときは、第1のしきい値であり、前記パワーアンプの電源入力端に供給する前記電源電圧の制限を解除するときは、前記第1のしきい値とは異なる第2のしきい値である、構成を採る。
この構成によれば、パワーアンプの最大出力電力の制限を開始する場合のしきい値よりも小さい値のしきい値を、パワーアンプの最大出力電力の制限を解除する場合のしきい値として用いるので、パワーアンプの最大出力電力の制限開始と制限解除が、電源電圧からパワーアンプに流れる電流値に関してヒステリシスを形成するので、電流値が微妙に変動した場合においても均一した送信電力が得られるようになる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記所定のしきい値が複数あるとき、前記電力制御部は、前記電流検出部により検出された電流値と、前記複数のしきい値との前記比較部による大小比較結果に応じて、前記送信電力制御信号の値を制限する構成を採る。
この構成によれば、電流値に応じて、パワーアンプに供給される電源電圧を段階的に制御することができるようになるので、しきい値を単一で固定にする場合に比べ、不必要にパワーアンプの出力電力を下げすぎてしまうのを回避し、適切な出力電力を維持することができる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記電力制御部は、前記電流検出部により検出された電流値と前記送信電力制御信号とに基づいて、前記パワーアンプに供給される供給電力を推定する供給電力推定部と、前記供給電力と所定のしきい値との大小比較を行う比較部とを、さらに具備し、前記供給電力が前記所定のしきい値よりも大きいという前記比較部の比較結果が得られたとき、前記送信電力制御信号の値を制限する構成を採る。
この構成によれば、供給電力を推定し、供給電力そのものを用いてパワーアンプに印加される電源電圧を制限してパワーアンプの最大出力電力を制限するので、不必要にパワーアンプの出力電力を下げすぎてしまうのを回避し、的確にパワーアンプの出力電力を制御することができる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記パワーアンプの出力パワーを検出する出力パワー検出部、をさらに具備し、前記電力制御部は、前記出力パワーと、前記電流検出部により検出された電流値と、前記送信電力制御信号とに基づいて、前記パワーアンプの熱損失量を推定する熱損失量推定部と、前記熱損失量と所定のしきい値との大小比較を行う比較部を、さらに具備し、前記熱損失量が前記所定のしきい値よりも大きいという前記比較部の比較結果が得られたとき、前記送信電力制御信号の値を制限する構成を採る。
この構成によれば、パワーアンプの熱損失そのものを推定し、推定した熱損失に基づいて、パワーアンプに印加される電源電圧を制限してパワーアンプの最大出力電力を制限するので、不必要なパワーアンプの出力電力の低下をなくし、パワーアンプの熱損失を確実に抑圧することができるようになる。
2006年12月27日出願の特願2006−351716に含まれる明細書、図面及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
本発明のポーラ変調送信装置は、アイソレータを用いなくても、パワーアンプの熱損失を抑圧することができ、回路規模も抑制できる。そのため、特に、ポーラ変調方式を適用した送信装置などに有用である。
本発明は、特に、ポーラ変調方式を適用した送信装置に関する。
従来の送信変調装置の設計には、一般に効率と線形性との間にトレードオフの関係がある。しかし、最近では、ポーラ変調を用いることで送信変調装置において高効率と線形性とを両立可能とした技術が提案されている。
図1は、ポーラ変調を適用した送信変調装置の構成例を示したブロック図である。
極座標変換部11は、ベースバンド変調信号を振幅成分(例えば√(I2+Q2))であるベースバンド振幅変調信号S1と位相成分(例えば、変調シンボルとI軸のなす角度)であるベースバンド位相変調信号S2とに分離する。
電源電圧変換部12は、図示せぬ電源から供給される電源電圧S3を電源電圧S4に変換し、変換後の電源電圧S4をレギュレータ14に出力する。
電力印加部13は、ベースバンド振幅変調信号S1に制御信号S5を掛け合わせることにより、振幅変調信号S6を形成する。
レギュレータ14は、振幅変調信号S6によって電源電圧S4をバイアスし変化させる。レギュレータ14は、振幅変調信号S6によって電源電圧S4を変化させて得た電源電圧S8を、電力増幅部16の電源入力端に供給する。
位相変調部15は、ベースバンド位相変調信号S2により高周波信号を位相変調して位相変調高周波信号S7に変換する。
パワーアンプ16は、電源電圧S8を電源として位相変調高周波信号S7の電力を増幅する。パワーアンプ16は、位相変調高周波信号S7を電力増幅し得たRF送信信号S9をアイソレータ17に出力する。
アイソレータ17は、ある方向に対しては電磁波を減衰させることなく通過させ、その逆の方向に対しては、電磁波の電力を吸収する。これにより、アンテナ18で受信した信号が、パワーアンプ16へ進入することを防止する。また、アイソレータ17が存在するため、アンテナ18の負荷が変動したとしても、その悪影響がパワーアンプ16に及ばず、パワーアンプ16の動作が不安定になることがない。また、パワーアンプ16の出力信号のS/Nが悪化することも防止される。このようにして、アイソレータ17は、アンテナ18によって生じる反射信号がパワーアンプ16に伝搬するのを防止するとともに、アンテナ18の負荷変動によりパワーアンプ16に与える影響を遮断する。
アンテナ18は、RF送信信号S10を送信する。
上記のように構成された送信変調装置10を携帯電話のような端末に用いた場合、アイソレータ17が設けられているため、パワーアンプ16の特性の安定化を図ることができる。しかし、アイソレータ17を挿入した分、電力損失が発生し、回路の占有面積も増大する。
アイソレータ17を削除すれば、電力損失の問題やスペースの問題は解消するものの、その一方、パワーアンプの特性の不安定化を招くことになり、上記のように構成された送信変調装置10からアイソレータ17を削除すると、パワーアンプの負荷が変動しやすくなる。
特に、携帯電話機のような移動体端末の場合は、使用環境が多様に変化し、これに伴いパワーアンプの負荷(アンテナ18の負荷)は簡単に変動してしまう。例えば、通話時に、機器本体を人体に近づけたり、あるいは金属の机の上で使用するような場合、携帯電話機のアンテナが、人体や金属板と容量結合することによって送信変調装置の負荷は大きく変動する。
このような負荷変動は、電源電圧変換部12からパワーアンプ16に流れる電流の電流値Iccを増加させ、かつ、パワーアンプ16の出力電力を低下させる。この結果、式(1)に示すようにパワーアンプ16の電力損失を増加させ、パワーアンプの電力損失が熱へ変わってパワーアンプの温度が大きく上昇してしまうという問題がある。
電力損失=供給電力(Vcc×Icc)−出力電力(Pout) …(1)
このように、負荷が変動するとパワーアンプの電力損失が増大し、パワーアンプの発熱量が大きくなってしまうという課題がある。したがって、このような送信変調装置が搭載された携帯電話機では、筐体の温度が上昇し高温となり、携帯電話機の寿命や特性劣化を招くことになる。特に、身体に接触して利用される携帯電話機の場合は、筐体の表面温度が高くなると使用そのものが難しくなるので、パワーアンプの発熱量の増加は問題となる。
このような問題を解決するために、特許文献1には、パワーアンプの電流を検出することで負荷の変動を推定し、パワーアンプ出力端に接続された可変負荷を負荷変動が緩和するように制御を行う方法が開示されている。図2に、特許文献1に開示されるポーラ変調送信装置の要部構成を示す。
パワーアンプの負荷変動による悪影響を抑えるため、特許文献1に開示されるように、パワーアンプの負荷変動を推定する回路及び負荷を制御する回路を、ポーラ変調送信装置に設けることも考えられる。
特開2000−295055号公報
しかしながら、負荷変動を推定したり、負荷を制御したりするための回路は、回路規模が大きく、携帯電話機のような端末に用いる場合、端末を小型化できないという問題がある。
本発明の目的は、ポーラ変調方式において、アイソレータを不要として回路規模を抑え、パワーアンプの熱損失を抑圧することができるポーラ変調送信装置を提供することである。
本発明のポーラ変調送信装置は、所定信号の位相成分信号の電力を増幅するパワーアンプと、電源と、前記所定信号の振幅成分信号に応じて前記電源の電源電圧を可変させ、前記パワーアンプの電源入力端に供給するレギュレータと、前記電源から前記パワーアンプに流れる電流値を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された電流値に基づいて、送信パワーを指定する送信電力制御信号の値を制限する電力制御部と、前記電力制
御部から出力される前記送信電力制御信号に基づいて、前記所定信号の振幅成分信号を増幅する電力印加部とを備える構成を採る。
この構成によれば、電源電圧からパワーアンプに流れる電流値に基づいて、パワーアンプに印加される電源電圧を制限してパワーアンプの最大出力電力を制限することができるので、パワーアンプの熱損失を抑圧することができる。
本発明によれば、ポーラ変調送信機において、アイソレータを用いなくても、パワーアンプの熱損失を抑圧することができ、回路規模も抑えることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の発明者らは、負荷の位相成分の変動に伴うパワーアンプの電力損失量とパワーアンプの電源電流値との間に、高い相関性があることを見いだした。この点について、図3を参照して説明する。
図3は、図1の構成からアイソレータ17を削除し、負荷の反射係数の大きさが等しく(VSWRが4にて一定)、位相成分のみを変動させた場合の負荷の位相と、パワーアンプの出力電力値を示す図である。同図において、横軸は、負荷の位相を示し、縦軸は、パワーアンプの出力電力値を示している。さらに、同図に、パワーアンプの電力損失量、及び、電源電圧変換部12からパワーアンプ16に流れる電源電流値との関係を示す。なお、参考として負荷の変動がない場合(VSWR=1)の値を同図に点線で示す。
図3から分かるように、負荷の位相成分が変動すると、パワーアンプ16の電力損失量、パワーアンプ16の出力電力値、電源電圧変換部12からパワーアンプ16に流れる電源電流値が共に変動する。
ここで、パワーアンプの電力損失量と電源電流値の変動の仕方に注目すると、図3に示されるように、負荷の位相成分の変動に対するパワーアンプの電力損失量とパワーアンプ
の電源電流値の間には、高い相関性があることがわかる。
本発明の発明者らは、この点に着目した。つまり、パワーアンプ16の電力損失量とパワーアンプ16の電源電流値の相関性を利用して、電源電圧変換部12からパワーアンプ16に流れる電流値に応じてパワーアンプ16の電力制御を行うようにすれば、パワーアンプ16の損失を効率的に抑圧できると考え、本発明に至った。
(実施の形態1)
図4に、本実施の形態に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示す。ポーラ変調送信装置100は、例えば携帯端末やその基地局装置等の無線通信装置に搭載されている。
図4において、ポーラ変調送信装置100は、極座標変換部110、電源電圧変換部120、電流検出部130、電力制御部140、電力印加部150、レギュレータ160、位相変調部170、パワーアンプ(Power Amp)180、及びアンテナ190を備えて構成される。
極座標変換部110は、ベースバンド変調信号を振幅成分(例えば√(I2+Q2))であるベースバンド振幅変調信号S11と位相成分(例えば、変調シンボルとI軸のなす角度)であるベースバンド位相変調信号S12とに分離する。
電源電圧変換部120は、図示せぬ電源から供給された電源電圧S20を電源電圧S21に変換し、変換後の電源電圧S21を電流検出部130及びレギュレータ160に出力する。
電流検出部130は、電源電圧変換部120からパワーアンプ180に流れる電流値Iccを検出し、電力制御部140に出力する。
電力制御部140は、入力される電力制御信号S30と、電流検出部130で検出された電流値Iccに基づいて、制御信号S31を電力印加部150に出力する。ここで、電力制御信号S30は、アンテナ190から送信されるRF出力信号S15の送信電力を制御する信号であり、例えば通信相手装置との距離が近い場合には送信電力のレベルが小さい信号で、遠い場合は送信電力のレベルが大きい信号である。電力制御部140については、後に詳述する。
電力印加部150は、ベースバンド振幅変調信号S11に制御信号S31を掛け合わせることにより、振幅変調信号S13を形成する。
レギュレータ160は、振幅変調信号S13によって電源電圧S21をバイアスし変化させる。レギュレータ160は、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させて得た電源電圧S22を、パワーアンプ180に供給する。
位相変調部170は、ベースバンド位相変調信号S12により高周波信号を位相変調して位相変調高周波信号S14に変換する。
パワーアンプ180は、電源電圧S22を電源として位相変調高周波信号S14の電力を増幅する。パワーアンプ180は、位相変調高周波信号S14を電力増幅し得たRF送信信号S15をアンテナ190に出力する。
アンテナ190は、RF送信信号S15を送信する。
図5は、電力制御部140の要部構成を示すブロック図である。
図5において、電力制御部140は、比較部141、スイッチ制御部142、スイッチ143、及び電力制御信号固定制限部144を備えて構成される。
比較部141は、電流検出部130から出力される電流値Iccと所定のしきい値との大小比較を行い、大小比較結果をスイッチ制御部142に出力する。
スイッチ制御部142は、比較部141の比較結果に応じて、スイッチ143のパスを切り換えるための制御信号S40をスイッチ143に出力する。具体的には、比較結果が、電流値Icc>しきい値の場合、パス11に切り換え、電流値Icc≦しきい値の場合、パス12に切り換えるための制御信号S40をスイッチ143に出力する。
スイッチ143は、電力制御信号S30を入力し、スイッチ制御部142から出力される制御信号S40に応じて、電力制御信号S30のパスをパス11又はパス12のいずれかに切り換える。
電力制限信号固定制限部144は、スイッチ143を経由して電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と電力制限信号固定制限部144が保持する固定電力制御信号S32とを比較し、より小さい値を有する信号を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
このようにして、電力制御部140は、比較部141における比較結果が、電流値Icc≦しきい値の場合、制御信号S31として電力制御信号S30を電力印加部150に出力する一方、電流値Icc>しきい値の場合、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置100の動作について、主に電力制御部140の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部140の比較部141によって、電流検出部130から出力される電流値Iccと所定のしきい値との大小比較が行われ、比較結果が、スイッチ制御部142に出力される。スイッチ制御部142からは、比較結果が、電流値Icc≦しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S40がスイッチ143に出力される。一方、比較結果が、電流値Icc>しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換えるための制御信号S40がスイッチ143に出力される。
このようにして、比較結果が、電流値Icc>しきい値の場合、電力制御信号S30は、電力制御信号固定制限部144に出力され、電流値Icc≦しきい値の場合、電力制御信号S30は、電力印加部150に直接出力される。
電力制御信号固定制限部144では、電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号が制御信号S31として、電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部144から固定電力制御信号S32が出力されるのは、固定電力制御信号S32が本来の電力制御信号S30の値より小さいときであるので、固定電力制御信号S32が制御信号S31として電力印加部150に出力される場合、電力印加部
150によって形成される振幅変調信号S13のレベルが制限を受ける。レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させるため、振幅変調信号S13が小さくなることにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が減少する。パワーアンプ180に供給される電力が減少することにより、パワーアンプ180の電力損失が低減する。この結果、電力損失によりパワーアンプ180の温度が上昇するのを抑制することができる。
図6は、電力制御部140の動作の説明に供する図である。図6において、横軸は電流値Iccを示し、縦軸はパワーアンプ180の熱損失Plossを示している。また、同図中、右上あがりの直線L11は、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=26dBm相当の場合に、負荷が変動した時の電流値Iccの変化とその時の熱損失Plossとの関係を示し、直線L12は、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=23dBm相当の場合に、負荷が変動した時の電流値Iccの変化とその時の熱損失Plossとの関係を示す。また、同図中、I11は、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=26dBm相当の場合に、熱損失Plossを既定値P1以下とする電流値Iccの最大値を示し、I12は、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=23dBm相当の場合に、熱損失Plossを既定値P1以下とする電流値Iccの最大値を示す。図6から分かるように、電力制御信号S30で設定する出力電力Poutが大きいほど、熱損失Plossを既定値P1以下とする電流値Iccの最大値が小さい(I12>I11)。
例えば、電力制御信号S30の設定値が出力電力Pout=26dBmの場合に、負荷変動により電流値IccがI11を上回る場合に、電力制御信号S30の値より小さい値を有する固定電力制御信号S32(例えば、出力電力Pout=23dBm相当の設定値)が制御信号S31として電力制御部140から電力印加部150に出力される。電力印加部150によって、ベースバンド振幅変調信号S11に制御信号S31が掛け合わされることにより、振幅変調信号S13が形成される。
レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21が変化され、振幅変調信号S13によって電源電圧S21が変化されて得た電源電圧S22が、パワーアンプ180に供給される。
このように、電力制御部140から制御信号S31として電力制御信号S30が固定印加部150に出力され、振幅変調信号S13が取得される場合に比べ、電力制御部140から制御信号S31として固定電力制御信号S32が固定印加部150に出力され、振幅変調信号S13が取得される場合の方が、ベースバンド振幅変調信号S11から振幅変調信号S13への増幅率が小さくなる。これにより、パワーアンプ180の出力電力Poutが26dBmから例えば23dBmに低減されるようになって(図6の矢印a参照)、この結果、熱損失が低減し、パワーアンプ180の温度上昇を抑圧することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、電力制御部140が、電源電圧変換部120の電流値Iccに基づき、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を制御するので、パワーアンプ180の最大出力電力を制限し、パワーアンプ180の熱損失を抑圧することができるようになる。すなわち、電流値Iccが大きい場合には、電力制御信号S30に代えて電力制御信号S30の値より小さい値の固定電力制御信号S32を制御信号S31として電力印加部150に出力することで、電力印加部150における増幅率を小さくすることができる。これにより、生成される振幅変調信号S12の振幅レベルが小さくなり、これにより、レギュレータ160を介してパワーアンプ180に供給される電源電圧S22が小さくなるので、パワーアンプ180への電源供給ラインでの電力損失を抑制し、熱損失を抑圧することができる。
なお、上述した説明では、電力制御部140は、比較部141と、スイッチ制御部142と、スイッチ143と、電力制御信号固定制限部144とから構成される場合に限定されず、比較部とメモリを備え、電流値Iccが所定のしきい値を上回る場合に、予めメモリに記憶された固定電力制御信号S32を制御信号S31として出力する構成としてもよい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2のポーラ変調送信装置のハードウェア構成図は、図4と同様であるため、説明を省略する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る電力制御部140の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態の説明にあたり、図5と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、本実施の形態の電力制御部140は、比較部141のしきい値を切り換える第2のスイッチ145を備えることにある。
スイッチ145は、制御信号S40に応じて、比較部141のしきい値を切り換える。制御信号S40は、スイッチ制御部142から出力されるスイッチ143のパスを切り換えるための信号である。具体的には、スイッチ145は、パス11に切り換えるような制御信号S40がスイッチ制御部142から出力されると、比較部141のしきい値をしきい値1からしきい値2(しきい値1>しきい値2)に切り換える。一方、スイッチ145は、パス12に切り換えるような制御信号S40がスイッチ制御部142から出力されると、比較部141のしきい値をしきい値2からしきい値1に切り換える。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置100の動作について、主に電力制御部140の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部140の比較部141によって、電流検出部130から出力される電流値Iccと所定のしきい値との大小比較が行われ、比較結果が、スイッチ制御部142に出力される。比較結果が、電流値Icc≦しきい値であることを示す場合、スイッチ制御部142からは、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S40がスイッチ143及びスイッチ145に出力される。一方、比較結果が、電流値Icc>しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換えるための制御信号S40がスイッチ143及びスイッチ145に出力される。
電流値Iccがしきい値1を超え、パワーアンプ180の出力電力Poutの制限が開始されると、スイッチ145では、比較部141のしきい値がしきい値1からしきい値2に切り換えられる(しきい値1>しきい値2)。これにより、電流値Iccがしきい値2を下回った場合に、電力制御信号S30のパスがパス11からパス12に切り換えられて、パワーアンプ180の出力電力Poutの制限が解除される。パワーアンプ180の出力電力Poutの制限が解除されると、スイッチ145では、比較部141のしきい値がしきい値2から再度しきい値1に切り換えられる。
このように、パワーアンプ180の出力電力Poutの制限を解除するしきい値を、制限開始に対するしきい値よりも小さくなるように選ぶことにより、制限開始と制限解除は、電流値Iccに関してヒステリシスを形成する。パワーアンプ180の出力電力Poutの制限開始及び制限解除の電流値Iccのしきい値を同じにした場合は、電流値Iccに関してヒステリシスを形成しないため、電流値Iccの値がしきい値を横断しながら微妙に変化するたびごとに、電力制御信号S30のパスが切り換えられ、パワーアンプ180の最大出力電力が変動することになるのに対し、パワーアンプ180の出力電力Pou
tの制限を解除するしきい値を、制限開始に対するしきい値よりも小さくなるように選び、電流値Iccに関してヒステリシスを形成するようにすることで、電流値Iccが微妙に変動しただけでは電力制御信号S30のパスは切り換えられなくなり、均一した送信電力が得られるようになる。
電力制御信号S30は、スイッチ制御部142からの制御信号S40に応じて、電力制御信号固定制限部144又は電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部144では、電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号が制御信号S31として電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部144から固定電力制御信号S32が出力されるのは、固定電力制御信号S32が本来の電力制御信号S30の値より小さいときであるので、固定電力制御信号S32が制御信号S31として電力印加部150に出力される場合、電力印加部150によって形成される振幅変調信号S13のレベルが制限を受ける。レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させるため、振幅変調信号S13が小さくなることにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が減少する。パワーアンプ180に供給される電力が減少することにより、パワーアンプ180の電力損失が低減する。この結果、電力損失によりパワーアンプ180の温度が上昇するのを抑制することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、パワーアンプ180の最大出力電力の制限を開始する場合のしきい値1よりも小さい値のしきい値2を、パワーアンプ180の最大出力電力の制限を解除する場合のしきい値として用いるので、パワーアンプ180の最大出力電力の制限開始と制限解除は、電流値Iccに関してヒステリシスを形成する。制限開始及び制限解除の電流値Iccのしきい値を同じに設定し、電流値Iccに関してヒステリシスを形成しない場合には、電流値Iccの値がしきい値を横断しながら微妙に変化するたびごとに、パワーアンプ180の最大出力電力が変動することになる。これに対し、パワーアンプ180の出力電力Poutの制限を解除するしきい値を、制限開始に対するしきい値よりも小さくなるように選び、電流値Iccに関してヒステリシスを形成するようにすることで、電流値Iccが微妙に変動した場合においても均一した送信電力が得られるようになる。
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態の説明にあたり、図4と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、本実施の形態のポーラ変調送信装置200は、電力制御部140に代え、電力制御部210を備えることにある。
図9は、電力制御部210の要部構成を示すブロック図である。
図9において、電力制御部210は、比較部211、及び電力制御信号可変制限部212を備えて構成される。
比較部211は、電流検出部130から出力される電流値Iccと複数のしきい値(しきい値1〜しきい値N)との大小比較を行い、大小比較結果を電力制御信号可変制限部212に出力する。
電力制御信号可変制限部212は、比較結果に基づいて、電力印加部150に出力する
制御信号S31の値を変更し、電力印加部150に出力する。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置200の動作について、主に電力制御部210の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部210の比較部211によって、電流検出部130から出力される電流値Iccと複数のしきい値1〜しきい値Nとの大小比較が行われ、比較結果が、電力制御信号可変制限部212に出力される。
電力制御信号可変制限部212では、複数のしきい値1〜しきい値Nのうち、電流値Iccがどのしきい値の間にあるかによって、電力印加部150に出力される制御信号S31の値が変更される。
図10は、比較部211が3つのしきい値1〜しきい値3を有する場合に、しきい値と制御信号S31の値の関係を示した図である。図10において、しきい値1〜しきい値3は、それぞれ、750mA,700mA,650mAに設定されていて、また、同図中、出力制限値は、各出力値に対応するパワーアンプ180の出力電力Poutを示す。
図10に示す例では、電流値Iccが、Icc>しきい値1の場合、制御信号S31の値は2.9に設定され、しきい値1≧Icc>しきい値2の場合、制御信号S31の値は3.2に設定され、しきい値2≧Icc>しきい値3の場合、制御信号S31の値は3.5に設定され、しきい値3≧Iccの場合、制御信号S31の値は3.8に設定される。
電力印加部150によって、ベースバンド振幅変調信号S11に制御信号S31が掛け合わされることにより、振幅変調信号S13が形成される。
レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21が変化され、振幅変調信号S13によって電源電圧S21が変化されて得た電源電圧S22が、パワーアンプ180に供給される。
例えば、電流値Iccがしきい値1(750mA)を超え、制御信号S31の値が2.9に設定される場合、パワーアンプ180の出力電力Poutは23dBmとなる。電流値Iccがしきい値1(750mA)以下でしきい値2(700mA)を超え、制御信号S31の値が3.2に設定される場合、パワーアンプ180の出力電力Poutは24dBmとなる。電流値Iccがしきい値2(700mA)以下でしきい値3(650mA)を超え、制御信号S31の値が3.5に設定される場合、パワーアンプ180の出力電力は25dBmとなる。電流値Iccがしきい値3(650mA)以下で、制御信号S31の値が3.8に設定される場合、パワーアンプ180の出力電力は26dBmとなる。
このとき、レギュレータ160からパワーアンプ180に供給される電源電圧S22の値も、パワーアンプ180の出力電力Poutと同様に、制御信号S31の大きさに応じて、小さくなるため、式(1)の右辺第1項のパワーアンプ180の供給される供給電力(Vcc×Icc)と右辺第2項のパワーアンプ180の出力電圧Poutとの電力差が小さくなって、パワーアンプ180の電力損失Plossを抑圧することができる。
図11は、電力制御部210の動作の説明に供する図である。図11において、横軸は電流値Iccを示し、縦軸はパワーアンプ180の熱損失Plossを示している。また、同図中、右上あがりの直線L21〜L24は、それぞれ、電力制御信号S30の設定値が26dBm,25dBm,24dBm,23dBm相当の場合に、負荷が変動した時の電流値Iccの変化とその時の熱損失Plossとの関係を示す。また、同図中、I21
〜I23は、電力制御信号S30の設定値が26dBm,25dBm,24dBm相当の場合に、熱損失Plossを既定値P1以下とする電流値Iccの最大値を示す。図10に示した例では、I21=650mA,I22=700mA,I23=750mAとなる。
このとき、電力制御信号S30の設定値が26dBm相当で、負荷変動により電流値IccがI21を上回る場合に、制御信号S31の値が3.8から3.5に変更される。この結果、パワーアンプ180の出力電力Poutが25dBmに制限され、熱損失も許容値内となる(図11の矢印a参照)。電流値IccがI22を上回ると、制御信号S31の値が3.5から3.2に変更されてパワーアンプ180の出力電力Poutの最大出力電力が24dBmとなり、熱損失も許容値内となる(図11の矢印b参照)。電流値IccがI23を上回ると、制御信号S31の値が3.2から2.9に変更されてパワーアンプ180の出力電力Poutの最大出力電力が23dBmとなり、熱損失も許容値内となる(図11の矢印c参照)。
このように、複数のしきい値を設け、電流値Iccの大きさに応じて、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を段階的に制御することにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が段階的に制限されるようになる。これにより、パワーアンプ180の最大出力電力の制限量を段階的に制御することができるようになり、しきい値を単一で固定にする場合に比べ、不必要に出力電力Poutを下げすぎてしまうのを回避して適切な出力電力Poutを維持しつつ、パワーアンプ180の電力損失を低減することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、比較部211は複数のしきい値を有し、電力制御部210は、しきい値ごとに、パワーアンプ180の出力電力Poutを制御する。すわなち、しきい値ごとに、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を制御することができるので、パワーアンプ180の最大出力電力の制限量を段階的に制御することができ、これにより、パワーアンプ180に印加される電源電圧S22の値を不必要に下げすぎてしまうのを回避して適切な出力電力Poutを維持しつつ、パワーアンプ180の電力損失を抑圧することができる。
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態の説明にあたり、図4と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、本実施の形態のポーラ変調送信装置300は、電力制御部140に代え、電力制御部310を備えることにある。
図13は、電力制御部310の要部構成を示すブロック図である。
図13において、電力制御部310は、供給電力推定部311、比較部312、スイッチ制御部313、スイッチ314、及び電力制御信号固定制限部315を備えて構成される。
供給電力推定部311は、電流検出部130によって検出された電源電圧変換部120の電源電圧S21の電流値Iccと、電力制御信号S30とに基づいて、式(2)を用いて、パワーアンプ180に供給する供給電力P0を推定する。
供給電力P0=電流値Icc×電力制御信号×α …(2)
式(2)において、αは、Vccを電力制限されない場合にパワーアンプ180に供給される平均電圧とした場合に、式(3)を満たすような係数である。
電力制御信号×α≒Vcc …(3)
比較部312は、推定された供給電力P0と所定のしきい値との大小関係を比較し、比較結果をスイッチ制御部313に出力する。
スイッチ制御部313は、比較結果に応じて、電力制御信号S30のパスをパス11又はパス12のいずれか一方に切り換えるための制御信号S50をスイッチ314に出力する。具体的には、供給電力P0>しきい値の場合、電力制御信号S30がパス11を経由し、供給電力P0≦しきい値の場合、電力制御信号S30がパス12を経由するような制御信号S50をスイッチ314に出力する。
スイッチ314は、制御信号S50に応じて、電力制御信号S30のパスを切り換える。すなわち、供給電力P0>しきい値の場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換え、供給電力P0≦しきい値の場合、パス12に切り換える。
電力制御信号固定制限部315は、スイッチ314を経由して電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と電力制限信号固定制限部144が保持する固定電力制御信号S32とを比較し、より小さい値を有する信号を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
このようにして、電力制御部310は、比較部312における比較結果が、供給電力P0≦しきい値の場合、電力制御信号S30を制御信号S31として電力印加部150に出力する一方、供給電力P0>しきい値の場合、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置300の動作について、主に電力制御部310の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部310の供給電力推定部311によって、電流検出部130から出力される電流値Iccと電力制御信号S30とから、式(2)が用いられて、供給電力P0が推定される。供給電力P0は、比較部312によって、所定のしきい値との大小比較が行われ、比較結果が、スイッチ制御部313に出力される。スイッチ制御部313からは、比較結果が、供給電力P0≦しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S50がスイッチ314に出力される。一方、比較結果が、供給電力P0>しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S50がスイッチ314に出力される。
このようにして、電力制御信号S30は、比較結果が、供給電力P0>しきい値の場合、電力制御信号固定制限部315に出力され、供給電力P0≦しきい値の場合、電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部315では、電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30と固定電力制御信号S32のうち、より小さい値を有する信号が制御信号S31として、電力印加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部315から固定電力制御信号S32が出力されるのは、固定電力制御信号S32が本来の電力制御信号S30の値より小さいときであるので、固定電力制御信号S32が制御信号S31として電力印加部150に出力される場合、電力印加部150によって形成される振幅変調信号S13のレベルが制限を受ける。レギュレータ1
60では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させるため、振幅変調信号S13が小さくなることにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が減少する。パワーアンプ180に供給される電力が減少することにより、パワーアンプ180の損失が低減する。この結果、損失によりパワーアンプ180の温度が上昇するのを抑制することができる。
図14は、電力制限信号固定制限部315における入力値と出力値との関係を例示した図である。図14は、比較部312のしきい値が1000mWの場合の例で、供給電力推定部311において推定された供給電力P0が1000mWを超える場合には、制御信号S31として2.9が設定され、供給電力P0が1000mW以下の場合には、制御信号S31として3.8が設定されることを示している。
このように、式(2)から供給電力を推定し、推定された供給電力P0を基に、電力印加部150に出力する制御信号S31のレベルを制御するようにした。上述した実施の形態1〜3のように電流値Iccを基に、制御信号S31のレベルを制御する場合には、電流値Iccが同じであれば、供給電力P0が異なる場合であってもパワーアンプ180に供給される電源電圧S22が制御されるのに対し、本実施の形態では、電流値Iccが同じであっても供給電力P0が異なる場合には、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が必ずしも制御されるとは限らない。式(1)に示されるように、パワーアンプ180の電力損失は、電流値Iccから算出される供給電力に基づいて変動するため、電流値Iccを用いて電力印加部150における増幅率を制御するのに対し、供給電力を推定し、供給電力そのものを用いて電力印加部150における増幅率を制御する場合には、より不必要にパワーアンプ180の出力電力Poutを下げすぎてしまうことを減らし、的確にパワーアンプ180の出力電力Poutを制御することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、電流値Iccと電力制御信号S30とからパワーアンプ180に供給する電力を推定する供給電力推定部311を設け、推定された供給電力P0に基づいて、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を制御するので、パワーアンプ180の最大出力電力を適切に制御して、パワーアンプ180の熱損失を確実に抑圧することができるようになる。すなわち、推定された供給電力P0が大きい場合には、電力制御信号S30に代えて電力制御信号S30の値より小さい値の電力制御信号S32を制御信号S31として電力印加部150に出力することで、電力印加部150における増幅率を小さくすることができるので生成される振幅変調信号S12の振幅レベルが小さくなり、これにより、レギュレータ160を介してパワーアンプ180に供給される電源電圧S22が小さくなってパワーアンプ180の電力損失を抑制し、熱損失を抑圧することができる。
(実施の形態5)
図15は、本発明の実施の形態5に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態の説明にあたり、図4と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、本実施の形態のポーラ変調送信装置400は、電力制御部140に代え、電力制御部430を備え、カップラ410及び電力検出部420をさらに備えることにある。
カップラ410は、パワーアンプ180から出力されるRF送信信号S15をアンテナ190と電力検出部420とに分岐して出力する。
電力検出部420は、パワーアンプ180の出力電力、つまり、RF送信信号S15の送信パワーPRFを検出し、電力制御部430に出力する。
図16は、電力制御部430の要部構成を示すブロック図である。
図16において、電力制御部430は、熱損失量推定部431、比較部432、スイッチ制御部433、スイッチ434、及び電力制御信号固定制限部435を備えて構成される。
熱損失量推定部431は、電源電圧変換部120の電源電圧S21の電流値Iccと、電力検出部420によって検出されたRF送信信号S15の送信パワーPRFと、電力制御信号S30とに基づいて、式(1)を用いて、パワーアンプ180で損失する熱量Plossを推定する。
比較部432は、推定された熱量Plossと所定のしきい値との大小関係を比較し、比較結果をスイッチ制御部433に出力する。
スイッチ制御部433は、比較結果に応じて、電力制御信号S30のパスをパス11又はパス12のいずれか一方に切り換えるための制御信号S60をスイッチ434に出力する。具体的には、熱量Ploss>しきい値の場合、電力制御信号S30がパス11を経由し、熱量Ploss≦しきい値の場合、電力制御信号S30がパス12を経由するような制御信号S60をスイッチ434に出力する。
スイッチ434は、制御信号S60に応じて、電力制御信号S30のパスを切り換える。すなわち、熱量Ploss>しきい値の場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換え、熱量Ploss≦しきい値の場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換える。
電力制御信号固定制限部435は、スイッチ434を経由して電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30の値より小さい値の固定電力制御信号S32を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
このようにして、電力制御部430は、比較部432における比較結果が、熱量Ploss≦しきい値の場合、電力制御信号S30を制御信号S31として電力印加部150に出力する一方、熱量Ploss≦しきい値の場合、電力制御信号S30の値より小さい値の固定電力制御信号S32を制御信号S31として電力印加部150に出力する。
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置400の動作について、主に電力制御部430の動作を中心に説明する。
まず、電力制御部430の熱損失量推定部431によって、電源電圧変換部120の電源電圧S21の電流値Iccと、電力検出部420によって検出されたRF送信信号S15の送信パワーPRFと、電力制御信号S30とに基づいて、式(2)が用いられて、パワーアンプ180で損失する熱量Plossが推定される。比較部432では、熱損失量推定部431から出力される熱量Plossと所定のしきい値との大小比較が行われ、比較結果が、スイッチ制御部433に出力される。スイッチ制御部433からは、比較結果が、熱量Ploss≦しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス12に切り換えるための制御信号S60がスイッチ434に出力される。一方、比較結果が、熱量Ploss>しきい値であることを示す場合、電力制御信号S30のパスをパス11に切り換えるための制御信号S60がスイッチ434に出力される。
このようにして、電力制御信号S30は、比較結果が、熱量Ploss>しきい値の場合、電力制御信号固定制限部435に出力され、電流値Icc≦しきい値の場合、電力印
加部150に出力される。
電力制御信号固定制限部435では、電力制御信号S30が入力されると、電力制御信号S30の値を制限した固定電力制御信号S32が制御信号S31として、電力印加部150に出力される。
固定電力制御信号S32の値が、電力制御信号S30の値より小さい場合、固定電力制御信号S32が制御信号S31として電力印加部150に出力されるので、電力印加部150によって形成される振幅変調信号S13のレベルが制限を受ける。レギュレータ160では、振幅変調信号S13によって電源電圧S21を変化させるため、振幅変調信号S13が小さくなることにより、パワーアンプ180に供給される電源電圧S22が減少する。パワーアンプ180に供給される電力が減少することにより、パワーアンプ180の損失が低減する。この結果、損失によりパワーアンプ180の温度が上昇するのを抑制することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、電流値Iccと電力制御信号S30とRF送信信号S15の送信パワーPRFとからパワーアンプ180での熱損失そのものを推定する熱損失量推定部431を設け、推定された熱量Plossに基づいて、電力印加部150に出力する制御信号S31の値を制御するので、パワーアンプ180の最大出力電力を適切に制御して、パワーアンプ180の熱損失を確実に抑圧することができるようになる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、所定信号の位相成分信号の電力を増幅するパワーアンプと、電源と、前記所定信号の振幅成分信号に応じて前記電源の電源電圧を可変させ、前記パワーアンプの電源入力端に供給するレギュレータと、前記電源から前記パワーアンプに流れる電流値を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された電流値に基づいて、送信パワーを指定する送信電力制御信号の値を制限する電力制御部と、前記電力制御部から出力される前記送信電力制御信号に基づいて、前記所定信号の振幅成分信号を増幅する電力印加部とを備える構成を採る。
この構成によれば、電源電圧からパワーアンプに流れる電流値に基づいて、パワーアンプに印加される電源電圧を制限してパワーアンプの最大出力電力を制限することができるので、パワーアンプの熱損失を抑圧することができる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記電力制御部は、前記電流検出部により検出された電流値と所定のしきい値との大小比較を行う比較部をさらに具備し、前記電流値が前記所定のしきい値よりも大きいという前記比較部の比較結果が得られたとき、前記送信電力制御信号の値を制限する構成を採る。
この構成によれば、電源電圧からパワーアンプに流れる電流値が所定のしきい値よりも大きいという比較結果が得られた場合のみ、送信電力制御信号の値を制限するという簡単な制御で、パワーアンプの最大出力電力を制限し、パワーアンプの熱損失を確実に抑圧することができる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記電流検出部により検出された電流と比較される前記所定のしきい値は、前記パワーアンプの電源入力端に供給する前記電源電圧の制限を開始するときは、第1のしきい値であり、前記パワーアンプの電源入力端に供給する前記電源電圧の制限を解除するときは、前記第1のしきい値とは異なる第2のしきい値である、構成を採る。
この構成によれば、パワーアンプの最大出力電力の制限を開始する場合のしきい値より
も小さい値のしきい値を、パワーアンプの最大出力電力の制限を解除する場合のしきい値として用いるので、パワーアンプの最大出力電力の制限開始と制限解除が、電源電圧からパワーアンプに流れる電流値に関してヒステリシスを形成するので、電流値が微妙に変動した場合においても均一した送信電力が得られるようになる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記所定のしきい値が複数あるとき、前記電力制御部は、前記電流検出部により検出された電流値と、前記複数のしきい値との前記比較部による大小比較結果に応じて、前記送信電力制御信号の値を制限する構成を採る。
この構成によれば、電流値に応じて、パワーアンプに供給される電源電圧を段階的に制御することができるようになるので、しきい値を単一で固定にする場合に比べ、不必要にパワーアンプの出力電力を下げすぎてしまうのを回避し、適切な出力電力を維持することができる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記電力制御部は、前記電流検出部により検出された電流値と前記送信電力制御信号とに基づいて、前記パワーアンプに供給される供給電力を推定する供給電力推定部と、前記供給電力と所定のしきい値との大小比較を行う比較部とを、さらに具備し、前記供給電力が前記所定のしきい値よりも大きいという前記比較部の比較結果が得られたとき、前記送信電力制御信号の値を制限する構成を採る。
この構成によれば、供給電力を推定し、供給電力そのものを用いてパワーアンプに印加される電源電圧を制限してパワーアンプの最大出力電力を制限するので、不必要にパワーアンプの出力電力を下げすぎてしまうのを回避し、的確にパワーアンプの出力電力を制御することができる。
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記パワーアンプの出力パワーを検出する出力パワー検出部、をさらに具備し、前記電力制御部は、前記出力パワーと、前記電流検出部により検出された電流値と、前記送信電力制御信号とに基づいて、前記パワーアンプの熱損失量を推定する熱損失量推定部と、前記熱損失量と所定のしきい値との大小比較を行う比較部を、さらに具備し、前記熱損失量が前記所定のしきい値よりも大きいという前記比較部の比較結果が得られたとき、前記送信電力制御信号の値を制限する構成を採る。
この構成によれば、パワーアンプの熱損失そのものを推定し、推定した熱損失に基づいて、パワーアンプに印加される電源電圧を制限してパワーアンプの最大出力電力を制限するので、不必要なパワーアンプの出力電力の低下をなくし、パワーアンプの熱損失を確実に抑圧することができるようになる。
2006年12月27日出願の特願2006−351716に含まれる明細書、図面及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
本発明のポーラ変調送信装置は、アイソレータを用いなくても、パワーアンプの熱損失を抑圧することができ、回路規模も抑制できる。そのため、特に、ポーラ変調方式を適用した送信装置などに有用である。
従来のポーラ変調方式に用いられるポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
従来のアイソレータレスポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
パワーアンプの電力損失量とパターアンプの電源電流値との関係を示す図
本発明の実施の形態1に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
実施の形態1に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図
電源電圧の電流値とパワーアンプの熱損失との関係を説明するための図
本発明の実施の形態2に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図
本発明の実施の形態3に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
実施の形態3に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図
しきい値と制御信号との関係を示す図
電源電圧の電流値とパワーアンプの熱損失との関係を説明するための図
本発明の実施の形態4に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
実施の形態4に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図
しきい値と制御信号との関係を示す図
本発明の実施の形態5に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
実施の形態5に係る電力制御部の要部構成を示すブロック図