JPWO2008075574A1 - 放熱材 - Google Patents

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Abstract

高熱伝導性材料及び樹脂を含む放熱材を、高熱伝導性材料を50〜95質量%含有させることで、放熱特性に優れる放熱材を提供する。特に、高熱伝導性材料が、黒鉛を含む材料で、かさ密度が1.2〜2.2g/cm3、60℃における放射面の放射率が0.40以上、厚さ方向の熱伝導率が10W/mK以上、面方向の熱伝導率が30W/mK以上、形状がフィン構造を有し、全体高さが1mm以上、比熱が0.85J/gK以下、放熱面の反対面に粘着層を有し、粘着層の熱伝導率が0.5W/mK以上である放熱材であることが好ましい。

Description

本発明は、放熱材に関する。
近年、電子機器分野において、その電子機器の温度上昇を抑制する冷却(放熱)技術が重要になってきている。特に、パーソナルコンピュータ(PC)においてはその容積が減少の傾向にあるにも関わらず、CPU(中央演算処理装置)の動作周波数の増加に伴い、発熱量は急激に上昇してきており、CPU以外の部品についても発熱量は増加傾向に有る。
また、これらに加えて静音化、消費電力低減の要求もあることから、ファンによる空冷にできるだけ頼らない放熱システムが求められている。
冷却技術においては「経済的な冷却効果の達成」が最重要項目であるため、低コストで効率の良い冷却を達成すべく、様々な検討がなされている。
放熱材として要求される特性は、熱伝導性がよいこと、安価であること、耐久性、耐熱性及び耐候性に優れていること、所望の形状に作製可能であること、軽量であること、小型であること等が挙げられる。従来の放熱材としては、熱伝導率の高いアルミニウムや銅を材料としたヒートシンクが提案されているが(例えば、特開平05−074992号公報参照)、これらアルミニウムや銅を用いた場合は軽量化の要件を満足することができなかった。また、アルミニウムや銅のような金属材料は表面に光沢があるため、放射率が低く熱輻射による放熱効果が得られにくいといった欠点もある。これを解決するために、例えば、金属材料の表面に黒色コーティングを施すか又は金属材料表面を酸化処理する等の後処理が検討されているが(例えば、特開2005−153296号公報及び特開2000−282292号公報参照)、処理工程が増えることで低コスト化の障害となっている。
本発明の目的は、軽量で高い放射率を有し、放熱特性に優れる放熱材を提供することである。
本発明は、(1)高熱伝導性材料及び樹脂を含む放熱材であって、高熱伝導性材料を放熱材中に50〜95質量%含有することを特徴とする放熱材に関する。
また、本発明は、(2)前記高熱伝導性材料が、黒鉛を含むことを特徴とする前記(1)記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(3)前記放熱材のかさ密度が、1.2〜2.2g/cmであることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(4)前記放熱材の60℃における放射面の放射率が、0.40以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(5)前記放熱材の厚さ方向の熱伝導率が、10W/mK以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(6)前記放熱材の面方向の熱伝導率が、30W/mK以上であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(7)前記放熱材が、フィン構造を有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(8)前記フィンの高さが、放熱材全体の高さの30〜95%であることを特徴とする前記(7)記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(9)前記フィンの溝部がテーパ状であり、テーパ角度が1〜30°であることを特徴とする前記(7)又は(8)記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(10)前記放熱材全体の高さが、1mm以上であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(11)前記放熱材の比熱が、0.85J/gK以下であることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(12)前記放熱材面方向の熱膨張率が、8×10-6/℃以下であることを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(13)前記放熱材の体積固有抵抗が200μΩm以下であることを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(14)前記放熱材がUL−94規格でV−0の難燃性を有することを特徴とする前記(1)〜(13)いずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(15)前記放熱材の放熱面の反対側の面に粘着層を有することを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか一項に記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(16)前記粘着層の厚さが、150μm以下であることを特徴とする前記(15)記載の放熱材に関する。
また、本発明は、(17)前記粘着層の熱伝導率が、0.5W/mK以上であることを特徴とする前記(15)又は(16)記載の放熱材に関する。
テーパ形状のフィン構造を有する放熱材を示す正面図である。 放熱特性評価試験方法を示す概略図である。 実施例1〜8、比較例2及び参考例1で用いた放熱材の面方向の形状を示す正面図である。 比較例3で用いた放熱材の面方向の形状を示す正面図である。
本発明の放熱材は、高熱伝導性材料及び樹脂を含み、高熱伝導性材料を放熱在中に50〜95質量%含有することを特徴としている。前記放熱材中の高熱伝導性材料の含有量は、60〜95質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。前記高熱伝導性材料の含有量が50質量%未満である場合は、放熱材の伝熱特性が低下し、充分な放熱特性が得られない。一方、前記高熱伝導性材料の含有量が95質量%を超える場合は、放熱材の成形性が低下し、所望の形状の放熱材を得ることができない。
本発明で用いられる高熱伝導性材料は特に制限されず、放熱材の熱伝導性フィラーとして公知のものであれば構わないが、熱伝導率が10〜1000W/mKであるものが好ましい。高熱伝導性材料の一例として、シリカ、黒鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、チッ化アルミニウム、炭化ケイ素、水酸化マグネシウム等の無機フィラー、アルミニウム、銅、銀、金等の金属フィラー等が挙げられる。これら高熱伝導性材料は1種類で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
前記高熱伝導性材料の例示のなかでも、軽量化と放熱特性の点で黒鉛が好ましい。黒鉛としては、例えば、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、膨張黒鉛または膨張黒鉛シートを粉砕した膨張黒鉛粉末等が用いられる。これらのなかでも天然もしくは人造黒鉛粉末が好ましい。これらの黒鉛の形状は、球形、塊状、鱗片、樹枝状等であり、特に、制限はないが、平均粒径が5〜500μmであることが好ましい。これら黒鉛の平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。なお、平均粒径は50%Dの値とする。
本発明では、前記高熱伝導性材料の粉末を樹脂と混合することにより、軽量で、放熱特性に優れる放熱材を得ることが可能である。また、黒鉛や金属フィラー等の高熱導電性材料は、樹脂と混合することにより粒子脱離による電子機器内部のショート発生を防ぐことが可能となる。
本発明において用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、結晶性ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アイオノマー、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS)、塩素化ポリエチレン・アクリロニトリル・スチレン共重合体(ACS)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリリレート、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・ポリテトラフルオロエチレン共重合体、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート(Uポリマー(登録商標))、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾイル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、その他液晶ポリエステル等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、開環重合により重合するジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂、アミノ樹脂(ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ケイ素樹脂等が挙げられる。
これら樹脂のなかでも、耐熱性、成形性、金型との離型性の点でフェノール樹脂、開環重合により重合するジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂が賞用される。また、これら樹脂は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
なお、「開環重合により重合するジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂」とは、フェノール性水酸基を有する化合物、ホルムアルデヒド類及び第1級アミンから合成される樹脂のことである。この樹脂は、加熱により開環重合反応を起こし、揮発分を発生させることなく優れた特性を持つ架橋構造を形成する。
下記一般式(I)で示される構造部位(すなわち、ジヒドロベンゾオキサジン環)を含む樹脂は、特に、耐熱性に優れ、付加反応により硬化が進行するため、揮発性副生成物が発生せず、均一で緻密な樹脂層が形成されることから、好ましい樹脂である。
Figure 2008075574
ジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂としては、下記一般式(A)及び一般式(B)、
Figure 2008075574
(式中、芳香環に結合する水素はヒドロキシル基のオルト位の一つを除き置換基で置換されていてもよい)
Figure 2008075574
(式中、Rは炭化水素基であり、芳香環に結合する水素は、置換基で置換されていてもよい)
に示す化学構造単位を含むものが揮発性ガスを抑制する効果が高く好ましく、一般式(A)/一般式(B)のモル比で4/1〜1/9で含むものが耐熱性等の点でより好ましい。これは用いる材料の比率等により調整できる。
なお、上記一般式(A)及び一般式(B)で示される化学構造単位における、置換基については特に制限はないが、メチル基、エチル基等のアルキル基等が好ましいものとして挙げられる。また、一般式(A)において、ヒドロキシル基のオルト位の一つは硬化反応のために、水素をもつことが好ましい。前記各化学構造単位の数は、1分子中に含まれる一般式(A)の数をm、一般式(B)の数をnとするとき、m≧1、n≧1かつm+n≧2であればよいが、数平均で10≧m+n≧3であることが硬化物の特性、例えば耐熱性等の点で好ましい。
上記各化学構造単位は、互いに直接に結合していてもよく、有機の基を介して結合していてもよい。前記有機の基としては、アルキレン基、キシリレン基等が好ましいものとして挙げられ、アルキレン基としては、
Figure 2008075574
で示される基(ただし、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基又は置換フェニル基を示す)、炭素原子数が5〜20の鎖状アルキレン基等が挙げられる。これは、原料として用いるフェノール性水酸基を有する化合物の種類等により選択できる。
ジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂の原料である前記フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、ポリブタジエン変性フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノール化合物、ビフェノール化合物、トリスフェノール化合物、テトラフェノール化合物等を挙げることができる。
ジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂の原料であるホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドの他、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミンのようなホルムアルデヒドを発生するもの等を用いることができる。
ジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂の原料である第1級アミンとしては、具体的にメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン、アニリン、置換アニリン等の芳香族アミンが挙げられる。硬化性の点からは脂肪族アミンが好ましく、耐熱性の点からは芳香族アミンが好ましい。
各材料は、フェノール性水酸基を有する化合物、ホルムアルデヒド類及び第1級アミンを、フェノール性水酸基を有する化合物の水酸基1モルに対し第1級アミンを0.2〜0.9モル、ホルムアルデヒドを第1級アミンの2倍モル量以上の比で反応させることが、得られる樹脂の接着性等の面で好ましい。
本発明の放熱材は、高熱伝導性材料及び樹脂の他に、樹脂硬化剤、硬化促進剤、内部離型剤、滑剤等の成分を含んでいてもよい。
本発明において、上記各材料を用いてジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂を作る方法としては、フェノール性水酸基を有する化合物と第1級アミンとの混合物を好ましくは70℃以上に加熱したホルムアルデヒド類中に添加して、好ましくは70〜110℃、より好ましくは90〜100℃で、好ましくは20〜120分反応させ、その後好ましくは120℃以下の温度で減圧乾燥することにより合成することができる。
ジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂は、日立化成工業(株)製の付加反応型熱硬化性樹脂、商品名「HR1060」として入手も可能である。
本発明に用いられるフェノール樹脂は特に限定はされないが、例えば、下記一般式(II)で示されるレゾール系フェノール樹脂を用いることが好ましい。
Figure 2008075574
(式II中、aは1以上の整数とする。)
本発明においては、高熱伝導性材料との混合性の点で前記樹脂は粉末状であることが好ましく、粒径200μm以下がより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。放熱材は、かさ密度が1.2〜2.2g/cmであることが好ましく、1.5〜2.2g/cmであることがより好ましく、1.7〜2.2g/cmであることがさらに好ましい。かさ密度が1.2g/cm未満である場合は、放熱材の内部に断熱層として作用する空気が含まれることになり、熱伝導率が低下し放熱材の放熱特性が低下する傾向がある。一方、かさ密度が2.2g/cmを超える場合は、軽量な放熱材を得ることができなくなる傾向がある。かさ密度は、放熱材の質量を体積で除すことにより測定できる。
本発明の放熱材のかさ密度を1.2〜2.2g/cmにするには充分に混練した材料を充分な圧力、温度で熱圧成形すればよい。
本発明の放熱材は、60℃における放熱面の放射率が0.40以上であることが好ましく、0.60以上であることがより好ましく、0.80以上であることがさらに好ましい。放射率が0.40未満である場合は、熱輻射による放熱効果が得られにくい傾向にある。放射率の理論的上限値は1.0であるため、本発明の上限も1.0未満となる。
放熱材の60℃における放熱面の放射率は、例えば、FT−IR法と呼ばれる方法で測定することができる。この方法は、黒体炉(異なる任意2点の温度)と測定試料(放熱材)の放射面の分光放射強度をFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)によって測定し、これらの分光放射強度と黒体炉の分光放射強度理論値から、測定試料の分光放射率を求め、これから積分放射率を算出するものであり、この積分放射率を本発明では放射率と称する。なお、放射率は測定試料の温度に依存するため(温度依存性は材料により異なる挙動を示す)、本発明においては60℃での値を使用する。
本発明の放熱材の60℃における放熱面の放射率を0.40以上にするには、粗した金型を用いて放熱材を成形する、もしくはブラスト機等を用いて放熱材表面を粗くすれば良い。
本発明の放熱材は、厚さ方向の熱伝導率が10W/mK以上であることが好ましく、20W/mK以上であることがより好ましく、30W/mK以上であることがさらに好ましい。厚さ方向の熱伝導率が10W/mK未満である場合は、熱源からの熱を放熱面(フィン構造を有する場合はフィンがある面)からの熱輻射を利用して放散することができなくなる傾向がある。また、本発明の放熱材は面方向の熱伝導率が30W/mK以上であることが好ましく、50W/mK以上であることがより好ましく、100W/mK以上であることがさらに好ましい。より高い放熱特性を得るためには、熱伝導率は高ければ高いほど好ましいが上限としては200W/mKであり、200W/mKを超える熱伝導率を得るためには、樹脂の含有量を極端に減らす必要があるため成形が困難なものとなる。
厚さ方向の熱伝導率は、例えば、レーザーフラッシュ、キセノンフラッシュ等によるハーフタイム法により熱拡散率を測定し、レーザーフラッシュ、キセノンフラッシュ等で求めた比熱とかさ密度の積から算出することができる。また温度傾斜法により直接、厚さ方向の熱伝導率を算出することも可能である。ハーフタイム法による測定には、例えば、真空理工株式会社製の熱定数測定装置TC−3000型、TC−7000型や、NETZSCH社製のNanoflashLFA447等を使用することができる。
また、面方向の熱伝導率は、ラメラー法と呼ばれる、試料を細裁し積み重ねて面を作り、この面に垂直にレーザーフラッシュや、キセノンフラッシュを当てハーフタイム法により厚さ方向の熱伝導率と同様にして算出する方法又は試料を細裁し積み重ねて面を作り、この面に垂直に温度差を付けて温度傾斜法により測定することができる。
本発明の放熱材の厚さ方向の熱伝導率を10W/mK以上にするには、高熱伝導性材料を放熱材中に質量比で50%以上含む材料を充分に混練し、充分な圧力、温度で熱圧成形すればよい。面方向の熱伝導率を30W/mK以上にするには、厚さ方向と同様に高熱伝導性材料を放熱材中に質量比で50%以上含む材料を充分に混練し、充分な圧力、温度で熱圧成形すればよい。
本発明の放熱材は、比熱が0.85J/gK以下であることが好ましく、0.80J/gK以下であることがより好ましく、0.75J/gK以下であることがさらに好ましい。比熱が0.85J/gK以下である場合は、従来より放熱材として使用されている比熱0.88J/gKのアルミニウムを用いた放熱材と比較して温度応答性に優れるからである。
本発明の放熱材の比熱を0.85J/gK以下にするには、高熱伝導性材料を放熱材中に質量比で50%以上含む材料を充分に混練し、充分な圧力、温度で熱圧成形すればよい。
本発明の放熱材は、面方向の熱膨張率が8×10-6/℃以下であることが好ましく、7×10-6/℃以下であることがより好ましく、6×10-6/℃以下であることがさらに好ましい。前記熱膨張率が8×10-6/℃以下であると、従来より放熱材として使用されている熱膨張率25×10-6/℃のアルミニウムを用いた放熱材と比較して、加熱時の寸法変化が少なく、熱衝撃による破損が発生しづらいからである。
本発明の放熱材面方向の熱膨張率を8×10-6/℃以下にするには、高熱伝導性材料を放熱材中に質量比で50%以上含む材料を充分に混練し、充分な圧力、温度で熱圧成形すればよい。
本発明の放熱材は体積固有抵抗が200μΩm以下であることが好ましく、150μΩm以下であることがより好ましく、100μΩm以下であることがさらに好ましい。前記放熱材の体積固有抵抗が200μΩm以下であると、放熱材を通して接地することが可能となるからである。
本発明の放熱材の体積固有抵抗を200μΩm以下にするには、高熱伝導性材料を放熱材中に質量比で50%以上含む材料を充分に混練し、充分な圧力、温度で熱圧成形すればよい。
本発明の放熱材は、UL−94規格でV−0の難燃性を有していることが好ましい。本発明品は電子部品として使用されるため、安全上難燃性を有していることが必要であるからである。
本発明の放熱材がV−0の難燃性を得るためには、高熱伝導性材料を放熱材中に質量比で50%以上含む材料を充分に混練し、充分な圧力、温度で熱圧成形すればよい。
本発明の放熱材は、放熱性を高めるために放熱面側にフィン構造を有することが好ましい。ここで、フィンの形状は、熱を拡散しやすいように表面積が大きくなるような形状のものであれば特に限定されず、例えば、短冊状や円筒状等の櫛歯型、円錐状等のピン型等が挙げられる。フィンの本数、方向、間隔、配置等は、用途や適用対象等に応じて適宜設定される。
前記フィンの高さは、放熱材全体の高さの30〜95%であることが好ましく、40〜95%であることがより好ましく、50〜95%であることがさらに好ましい。フィンの高さが放熱材全体の高さの30%未満である場合は、放熱特性が低下する傾向がある。一方、フィンの高さが放熱材全体の高さの95%を超える場合は、フィンの成形が困難になる傾向があり、放熱材の強度が低下する傾向がある。
前記フィンは、放熱効率を上げるためにフィンの厚さがフィンの先端部から根元部に向かって漸増するように、溝部がテーパ状であることが好ましい。テーパ角度は1〜30°であることが好ましく、1〜20°であることがより好ましく、1〜10°であることがさらに好ましい。前記テーパ角度が1°未満である場合は、金型からの離型が困難になる傾向がある。一方、前記テーパ角度が30°を超える場合は、フィンの根元部の幅が大きくなり、フィン間のピッチを細くすることが出来なくなるため、放熱面積減少による放熱特性低下の傾向がある。テーパ形状の放熱材例を図1に示す。
本発明の放熱材の構造を上記のごとく所望の形状にするには、放熱材を成形する時の金型を選定することにより行なわれる。本発明の放熱材全体の高さは、用途、搭載部分によって異なるが、パソコン、プラズマテレビ等の電子機器に使用する場合、熱容量および放熱材の面方向の伝熱の点から1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。前記放熱材全体の高さが1mm未満である場合は、熱容量および放熱材の面方向の伝熱が低下し、効果的な放熱を得ることができなくなる傾向にある。一方、前記放熱材全体の高さの上限は150mm程度であり、これを超えると成形が困難になる可能性がある。
本発明の放熱材の製造法については特に制限はないが、例えば、高熱伝導性材料と樹脂の混合物をニーダー、ライカイ機、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ロール機等で攪拌、混合、混練、圧延等の工程を経て、得られた混合物を、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形等の公知のプラスチック成形方法で所望の形状に成形して作製することができる。
本発明の放熱材は、熱源との接着性を高めるために放熱面の反対側の面に粘着層を有することが好ましい。粘着層の材料としては本発明の放熱材とCPU等の熱源を接着できるものであれば特に制限されず、例えば、アクリル系粘着材、ゴム系粘着材、シリコーン系粘着材等の粘着材を使用することができ、支持体の両面に粘着材を有する粘着フィルムを使用することが作業性、低コスト化の点で好ましい。かかる粘着フィルムとしては、例えば、支持体としてPET(ポリエチレンテレフタレート)等の高分子フィルムやアルミニウム、銅等の金属箔を使用し、前記支持体の両面に粘着材を有する粘着フィルムが挙げられる。粘着層の厚さは、熱抵抗を抑えるために、150μm以下とすることが好ましく、100μm以下とすることがより好ましく、50μm以であることがさらに好ましい。前記粘着層の厚さが150μmを超える場合は、熱抵抗が増加し、熱を効率よく放熱材に伝えることが困難となる傾向がある。粘着層の強度、粘着力の点から、粘着層の厚さの下限値は5μm以上であることが好ましい。また、放熱材が粘着層を有することによる熱伝導率の低下を抑えるために、放熱材の粘着層を形成する材料の熱伝導率は、0.5W/mK以上であることが好ましく、1.0W/mK以上であることがより好ましい。
本発明の放熱材は、例えば、パソコン、プラズマテレビ等の電子機器において、CPU、プラズマテレビの熱源等による温度上昇を抑制するための放熱装置として使用することができる。
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
実施例1
膨張黒鉛をシート化したものを粉砕した膨張黒鉛粉砕粉(日立化成工業株式会社製、商品名:HGF−L)及びジヒドロベンゾオキサジン環を含む粉末の付加反応型熱硬化性樹脂(日立化成工業株式会社製、商品名:HR1060)を質量比55/45で粉体混合し、熱プレスを用いて面圧30MPa、成形温度200℃、成形時間5分のプレス条件で成形して、図3に示す形状のフィン構造を有する放熱材を作製した。図3は放熱材の面方向の形状を示す正面図である。
次に、上記で得られた放熱材のフィンとは反対側の面である底面に、厚さ5μmのPETフィルムの両面に5μmのアクリルゴム粘着材を有する厚さ15μmの粘着フィルム(日立化成ポリマー株式会社製、商品名:ハイボン、熱伝導率0.2W/mK)を貼り付け、粘着層付き放熱材を作製した。
得られた放熱材のかさ密度、60℃における放射面の放射率、熱伝導率、比熱、熱膨張率、および体積固有抵抗を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
(かさ密度の測定)
放熱材の質量を体積で除すことで算出した。
(放射率の測定)
放熱材の放射面の放射率は、日本電子株式会社製のJIR−5500型フーリエ変換赤外分光光度計及び放射測定ユニットJRR−200を使用してFT−IR法で測定し、積分放射率を算出して放射率とした。
(熱伝導率の測定)
熱伝導率は真空理工株式会社製TC−7000型を用いて熱拡散率を測定し、比熱とかさ密度の積から算出した。
(比熱の測定)
比熱はPerkin-Elmer社製のDSC−7型を用いたDSC(示差走差熱量計)法により測定した。
(熱膨張率の測定)
熱膨張率はセイコー株式会社製のSS5200型熱機械分析装置(TMA)を用いて測定した。
(体積固有抵抗の測定)
体積固有抵抗はKIKUE ELECTRONICS社のMODEL PAB型電流電圧発生器を用いて4端子法により測定した。
得られた放熱材の放熱特性を以下の方法により評価した。
図2に示すように10mm角のセラミックヒーター2(坂口電熱株式会社製)上に銅板3を載置し、放熱材1の粘着層が接するように銅板3上に放熱材1を貼り付けた。セラミックヒーター2に一定出力:2.5W/cm(150℃時)の電流を流し、銅板3の中心部の温度をサーモロガー(安立計器株式会社製、製品名:AM−8060K)により測定した。セラミックヒーター2の温度低下を直接測定することは困難であるため、セラミックヒーター2と放熱材1との間の銅板3の温度を測定した。銅板の温度の測定は、試験開始20分後に行い、周囲の環境温度の影響を避けるため、銅板の温度T1と環境温度T2との差(T1−T2)を評価温度と定義した。結果を表1に示す。
実施例2
膨張黒鉛粉砕粉と付加反応型熱硬化性樹脂の質量比を70/30とすること以外は、実施例1と同様に操作して粘着層付き放熱材を作製し、同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
実施例3
膨張黒鉛粉砕粉と付加反応型熱硬化性樹脂の質量比を90/10とすること以外は、実施例1と同様に操作して粘着層付き放熱材を作製し、同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
実施例4
膨張黒鉛粉砕粉に代えて天然黒鉛粉(日本黒鉛株式会社製、商品名:F48)を用い、天然黒鉛粉と付加反応型熱硬化性樹脂の質量比を90/10とすること以外は、実施例1と同様に操作して放熱材を作製した。次いで、放熱材のフィンとは反対側の面である底面に熱伝導性グリース(サンハヤト株式会社製、商品名:SCH−20、熱伝導率0.84W/mK)を塗布し、銅板と密着させた。実施例1と同様の評価を行ない、結果を表1に示した。
実施例5
膨張黒鉛粉砕粉に代えて人造黒鉛粉(ティムカル社製、商品名:ks5−75)を用い、人造黒鉛粉と付加反応型熱硬化性樹脂の質量比を90/10とすること以外は、実施例1と同様に操作して放熱材を作製した。次いで、放熱材のフィンとは反対側の面である底面に熱伝導性グリース(サンハヤト株式会社製、商品名:SCH−20、熱伝導率0.84W/mK)を塗布し、銅板と密着させた。実施例1と同様の評価を行ない、結果を表1に示した。
実施例6
付加反応型熱硬化性樹脂に代えてフェノール樹脂(日立化成工業株式会社製、商品名:HP−190R)を用い、膨張黒鉛粉砕粉とフェノール樹脂の質量比を90/10とすること以外は、実施例1と同様に操作して放熱材を作製した。次いで、放熱材のフィンとは反対側の面である底面に熱伝導性グリース(サンハヤト株式会社製、商品名:SCH−20、熱伝導率0.84W/mK)を塗布し、銅板と密着させた。実施例1と同様の評価を行ない、結果を表1に示した。
実施例7
膨張黒鉛粉砕粉に代えて人造黒鉛粉(ティムカル社製、商品名:ks5−75)を用い、付加反応型熱硬化性樹脂に代えてフェノール樹脂(日立化成工業株式会社製、商品名:HP−190R)を用い、人造黒鉛粉とフェノール樹脂の質量比を90/10とすること以外は、実施例1と同様に操作して放熱材を作製した。次いで、放熱材のフィンとは反対側の面である底面に熱伝導性グリース(サンハヤト株式会社製、商品名:SCH−20、熱伝導率0.84W/mK)を塗布し、銅板と密着させた。実施例1と同様の評価を行ない、結果を表1に示した。
実施例8
膨張黒鉛粉砕粉に代えて天然黒鉛粉(日本黒鉛株式会社製、商品名:F48)を用い、付加反応型熱硬化性樹脂に代えてフェノール樹脂(日立化成工業株式会社製、商品名:HP−190R)を用い、天然黒鉛粉とフェノール樹脂の質量比を90/10とすること以外は、実施例1と同様に操作して放熱材を作製した。次いで、放熱材のフィンとは反対側の面である底面に熱伝導性グリース(サンハヤト株式会社製、商品名:SCH−20、熱伝導率0.84W/mK)を塗布し、銅板と密着させた。実施例1と同様の評価を行ない、結果を表1に示した。
比較例1
膨張黒鉛粉砕粉と付加反応型熱硬化性樹脂の質量比を96/4とすること以外は、実施例1と同様に操作したところ、混合物の粘度が上昇し成形できず、放熱材を作製することができなかった。
比較例2
膨張黒鉛粉砕粉と付加反応型熱硬化性樹脂の質量比を45/55とすること以外は、実施例1と同様に操作して粘着層付き放熱材を作製し、同様の評価を行なった。結果を表2に示す。
比較例3
膨張黒鉛粉砕粉と付加反応型熱硬化性樹脂の質量比を45/55とし、図4に示す形状とすること以外は、実施例1と同様に操作して放熱材を作製した。次いで、放熱材のフィンとは反対側の面である底面に熱伝導性グリース(サンハヤト株式会社製、商品名:SCH−20、熱伝導率0.84W/mK)を塗布し、銅板と密着させた。実施例1と同様の評価を行ない、結果を表2に示した。
参考例1
図3に示す形状の放熱材をアルミニウムで作製した。次いで、放熱材のフィンとは反対側の面である底面に熱伝導性グリース(サンハヤト株式会社製、商品名:SCH−20、熱伝導率0.84W/mK)を塗布し、銅板と密着させた。実施例1と同様の評価を行ない、結果を表2に示した。
参考例2
放熱材を用いずに、銅板の温度を測定した。すなわち、10mm角のセラミックヒーター2(坂口電熱株式会社製)上に銅板3を載置し、セラミックヒーター2に一定出力:2.5W/cm(150℃時)の電流を流し、銅板3の中心部の温度をサーモロガーにより測定した。銅板の温度T1と環境温度T2との差(T1−T2)を評価温度と定義した。結果を表2に示す。
Figure 2008075574
Figure 2008075574
本発明の放熱材は、軽量で高い放射率を有し、放熱特性に優れるものである。

Claims (17)

  1. 高熱伝導性材料及び樹脂を含む放熱材であって、高熱伝導性材料を放熱材中に50〜95質量%含有することを特徴とする放熱材。
  2. 前記高熱伝導性材料が、黒鉛を含むことを特徴とする請求項1記載の放熱材。
  3. 前記放熱材のかさ密度が、1.2〜2.2g/cmであることを特徴とする請求項1又は2記載の放熱材。
  4. 前記放熱材の60℃における放射面の放射率が、0.40以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の放熱材。
  5. 前記放熱材の厚さ方向の熱伝導率が、10W/mK以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の放熱材。
  6. 前記放熱材の面方向の熱伝導率が、30W/mK以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の放熱材。
  7. 前記放熱材が、フィン構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の放熱材。
  8. 前記フィンの高さが、放熱材全体の高さの30〜95%であることを特徴とする請求項7記載の放熱材。
  9. 前記フィンの溝部がテーパ状であり、テーパ角度が1〜30°であることを特徴とする請求項7又は8記載の放熱材。
  10. 前記放熱材全体の高さが、1mm以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の放熱材。
  11. 前記放熱材の比熱が、0.85J/gK以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の放熱材。
  12. 前記放熱材面方向の熱膨張率が、8×10-6/℃以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の放熱材。
  13. 前記放熱材の体積固有抵抗が200μΩm以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の放熱材。
  14. 前記放熱材がUL−94規格でV−0の難燃性を有することを特徴とする請求項1〜13いずれか一項に記載の放熱材。
  15. 前記放熱材の放熱面の反対側の面に粘着層を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の放熱材。
  16. 前記粘着層の厚さが、150μm以下であることを特徴とする請求項15記載の放熱材。
  17. 前記粘着層の熱伝導率が、0.5W/mK以上であることを特徴とする請求項15又は16記載の放熱材。
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