JPWO2008075558A1 - 位置制御装置 - Google Patents

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Abstract

位置指令に対してオーバーシュートがない高速度高精度な追従特性および外乱に対して強力な抑圧特性を実現できる位置制御装置と制御方法を提供する。位置指令と電動機の回転位置との偏差に基づいて速度指令を算出する位置制御部(1)と、前記速度指令とフィードバック速度との速度偏差に基づいてトルク指令を算出するPI制御部(2)と、トルク指令と電動機の回転速度に基づいて前記フィードバック速度を生成するオブザーバ(6)と、を備えた位置制御装置において、速度指令からトルク指令の位相進み補償信号を生成する位相進み補償器(5)と、トルク指令とトルク指令の位相進み補償信号を加算して新たなトルク指令を生成する加算器(9)とを備えた。

Description

本発明は、フィードバック位置信号を位置指令に追従させる位置制御装置に関する。
通常、電動機を用いて機械を駆動制御する位置制御装置では、電動機の回転速度をフィードバックしてPI制御を用いて速度制御行うと共に、電動機の回転位置をフィードバックしてP制御を用いて位置制御を行うようなP−PIマイナーループ制御系が構成されている。良く知られているように、まず速度制御のPI制御のゲインを上げて速度制御ループの応答特性を向上してから、初めて位置制御のP制御のゲインを上げられ、位置指令に対する追従特性および外乱に対する抑圧特性を向上することができる。しかしながら、制御系には、計算の時間遅れおよび電流ループの位相遅れが必ず存在し、また高周波のノイズや機械振動などをカットするためにローパスフィルタやノッチフィルタなどの遅れ要素を入れる必要がある。これらの遅れ要素の位相遅れのため、速度制御のPI制御のゲインを上げられないので、位置指令に対する追従特性および外乱に対する抑圧特性が悪い。
従来技術は、遅れ要素の位相遅れを補償できるオブザーバを用いることである(例えば、特許文献1参照)。図3は従来技術を用いた位置制御装置の構成を示すブロック図である。図において、3は制御対象であり、計算の時間遅れや電流ループやローパスフィルタやノッチフィルタなどを含む遅れ要素31と、電動機の回転子を含む機械可動部32(電磁トルクから電動機の回転速度までの伝達関数で示されている)とを含んでいる。また、1は位置制御部、2はPI制御部である。また、6はオブザーバであり、機械可動部モデル61および遅れ要素モデル62で構成されたオブザーバの制御対象60とオブザーバ補償器63とを含んでいる。
また、θは位置指令、ωは速度指令、θは電動機の回転位置、ωは電動機の回転速度、ωfbはフィードバック速度、Tはトルク指令、Jは機械可動部のイナーシャ、Dは機械可動部の粘性摩擦係数、sはラプラス演算子である。
次に、動作原理について説明する。
制御対象3では、遅れ要素L(s)31の出力を機械可動部P(s)32に入力することで、オブザーバの制御対象60では、機械可動部モデルP(s)61の出力を遅れ要素モデルL(s)62に入力することになっている。そのため、制御対象のモデルが正確に同定され、すなわち、L(s)=L(s)、P(s)=P(s)が満たされる場合に、遅れ要素モデル62の出力であるωは電動機の回転速度ωの正確な推定速度になり、すなわち、
ω=ω (1)
が成り立つので、図3の制御システムを等価的に図4のように書き直すことができる。図4より、速度ループの内には遅れ要素がなくなったため、PI制御部2のゲインを大きく上げられ、速度制御ループの応答特性を向上することで、位置制御器1のゲインも上げられ、位置指令に対する追従特性および外乱に対する抑圧特性を向上することができる。
特開2003−33066号公報
しかしながら、従来技術では、位置ループの内には位相遅れを持つ遅れ要素モデルが存在しているため、位置制御器のゲインをあまり大きく上げると、電動機の回転位置が位置指令に対してオーバーシュートするという問題があった。
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、位相進み補償器を組み合わせることにより、位置ループの内の位相遅れを補償し、位置制御器のゲインを大きく上げられることで、位置指令に対してオーバーシュートがない高速度高精度な追従特性および外乱に対して強力な抑圧特性を実現できる位置制御装置を提供することを目的とする。
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、位置指令と電動機の回転位置との偏差に基づいて速度指令を算出する位置制御部と、前記速度指令とフィードバック速度との偏差に基づいてトルク指令を算出するPI制御部と、前記トルク指令および電動機の回転速度を入力し、前記電動機の回転速度から遅れ要素モデルの出力を差し引いた値をオブザーバ補償器に入力し、前記トルク指令に前記オブザーバ補償器の出力を足した値を機械可動部モデルに入力し、前記機械可動部モデルの出力を前記遅れ要素モデルに入力すると共に、前記フィードバック速度として出力するオブザーバと、を備え、電動機および負荷機械を駆動制御する位置制御装置において、前記速度指令からトルク指令の位相進み補償信号を算出する位相進み補償器を有し、前記トルク指令に前記トルク指令の位相進み補償信号を足して新たなトルク指令とすることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の位置制御装置において、前記遅れ要素モデルを一次遅れフィルタとし、前記位相進み補償器のゲインを、この一次遅れフィルタの時定数に前記PI制御部の積分ゲインを掛けた値から前記PI制御部の比例ゲインを差し引いた値とすることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、位置指令と電動機の回転位置との偏差に基づいて速度指令を算出する位置制御部と、前記速度指令とフィードバック速度との偏差に基づいて比例部速度指令を算出する積分制御部と、前記比例部速度指令とフィードバック速度との偏差に基づいてトルク指令を算出する比例制御部と、前記トルク指令および電動機の回転速度を入力し、前記電動機の回転速度から遅れ要素モデルの出力を差し引いた値をオブザーバ補償器に入力し、前記トルク指令に前記オブザーバ補償器の出力を足した値を機械可動部モデルに入力し、前記機械可動部モデルの出力を前記遅れ要素モデルに入力すると共に、前記フィードバック速度として出力するオブザーバと、を備え、電動機および負荷機械を駆動制御する位置制御装置において、前記速度指令から速度指令の位相進み補償信号を算出する位相進み補償器を有し、前記比例部速度指令に前記速度指令の位相進み補償信号を足して新たな比例部速度指令とすることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の位置制御装置において、前記遅れ要素モデルを一次遅れフィルタとし、前記位相進み補償器のゲインを、前記一次遅れフィルタの時定数に前記積分制御部のゲインを掛けた値とすることを特徴とするものである。
本発明は、位相進み補償器を組み合わせることで、位置ループの内の位相遅れを補償し、位置制御器のゲインを大きく上げられ、位置指令に対してオーバーシュートがない高速度高精度な追従特性および外乱に対して強力な抑圧特性を実現することができる。
本発明の実施例1を示す位置制御装置のブロック図 図1の等価ブロック図 従来技術を用いた位置制御装置の構成を示すブロック図 図3の等価ブロック図 本発明の実施例2を示す位置制御装置のブロック図 図5の等価ブロック図
符号の説明
1 位置制御部
2 PI制御部
3 御対象
31 遅れ要素
32 機械可動部
4 積分部
5 位相進み補償部
6 オブザーバ
60 オブザーバの制御対象
61 機械可動部モデル
62 遅れ要素モデル
63 オブザーバ補償器
64 加算器
65 減算器
7、8 減算器
9 加減算器
10 IP制御部
11 積分制御部
12 比例制御部
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1を示す位置制御装置のブロック図であり、各部には、図3の相当部分と同一記号を付してその説明を省略する。図1の本発明の実施例1は図3の従来技術と異なることが、位相進み補償器5と加算器9とを有し、速度指令ωに基づいて位相進み補償器5を用いてトルク指令の位相進み補償信号T を算出し、そして加算器9を用いてPI制御部2の出力であるトルク指令T に前記トルク指令の位相進み補償信号T を足して新たなトルク指令Tを算出することである。
以下、本発明の制御装置の動作原理について説明する。
制御対象のモデルが正確に同定され、すなわち、L(s)=L(s),P(s)=P(s)が満たされる場合に、前記従来技術と同じ理由で、図1の制御システムを等価的に図2のように書き直すことができる。図2より、速度ループの内には遅れ要素がなくなったため、PI制御部2のゲインを大きく上げられ、速度制御ループの応答特性を向上することができる。また、位置ループの内には位相遅れを持つ遅れ要素モデル62が存在しているが、その位相遅れは位相進み補償器5のゲインaを調整することにより、補償されることができる。その理由は以下に述べる。
遅れ要素の伝達関数を一次遅れフィルタと近似し、遅れ要素モデル62を式(2)とし、



また、PI制御部2を式(3)とし、



速度指令ωから電動機の回転速度ωまでの伝達関数を求め、整理すると、式(4)になる。



また、位相進み補償部5のゲインを式(5)とすると、



速度指令ωから電動機の回転速度ωまでの伝達関数は式(6)になる。



式(6)より、一次遅れフィルタの極はキャンセルされ、PI制御器2の比例ゲインKおよび積分ゲインKを調整することによって、Gω(s)の極を任意の位置に配置することができる。すなわち、速度指令ωに対する電動機の回転速度ωの応答特性のカット周波数を十分高く設定することができる。よって、位置指令θに対する電動機の回転位置θの応答はオーバーシュートがでないように、位置制御器1のゲインを大きく上げることができる。また、位置制御器1のゲインを上げることで、位置指令に対する追従特性および外乱に対する抑圧特性を向上することができる。
このように、位相進み補償器を組み合わせることで、位置ループの内の位相遅れを補償し、位置制御器のゲインを大きく上げられ、位置指令に対してオーバーシュートがない高速度高精度な追従特性および外乱に対して強力な抑圧特性を実現することができる。
図5は、本発明の実施例2を示す位置制御装置のブロック図であり、各部には、図1の相当部分と同一記号を付してその説明を省略する。図5の実施例2は図1の実施例1と異なることが、PI制御部2の代わりにIP制御部10を使い、また位相進み補償器5にてトルク指令の位相進み補償信号ではなく速度指令の位相進み補償信号ω を算出し、そして積分制御部11の出力である比例部速度指令ω に前記トルク指令の位相進み補償信号ω を足して新たなトルク指令ではなく新たな比例部速度指令算出することである。
以下、本発明の制御装置の動作原理について説明する。
制御対象のモデルが正確に同定され、すなわち、L(s)=L(s),P(s)=P(s)が満たされる場合に、実施例1と同じ理由で、図5の制御システムを等価的に図6のように書き直すことができる。図6より、速度ループの内には遅れ要素がなくなったため、IP制御部10のゲインを大きく上げられ、速度制御ループの応答特性を向上することができる。また、位置ループの内には位相遅れを持つ遅れ要素モデル62が存在しているが、その位相遅れは位相進み補償器5のゲインaを調整することにより、補償されることができる。その理由は以下に述べる。
遅れ要素の伝達関数を一次遅れフィルタと近似し、遅れ要素モデル62を式(7)とし、



また、積分制御部11のゲインをKとし、比例制御部12のゲインをKとし、速度指令ωから電動機の回転速度ωまでの伝達関数を求め、整理すると、式(8)になる。



また、位相進み補償部5のゲインを式(9)とすると、



速度指令ωから電動機の回転速度ωまでの伝達関数は、式(10)になる。



式(10)より、一次遅れフィルタの極はキャンセルされ、IP制御器2の比例ゲインKおよび積分ゲインKを調整することによって、Gω(s)の極を任意の位置に配置することができる。すなわち、速度指令ωに対する電動機の回転速度ωの応答特性のカット周波数を十分高く設定することができる。よって、位置指令θに対する電動機の回転位置θの応答はオーバーシュートがでないように、位置制御器1のゲインを大きく上げることができる。また、位置制御器1のゲインを上げることで、位置指令に対する追従特性および外乱に対する抑圧特性を向上することができる。
このように、位相進み補償器を組み合わせることで、位置ループの内の位相遅れを補償し、位置制御器のゲインを大きく上げられ、位置指令に対してオーバーシュートがない高速度高精度な追従特性および外乱に対して強力な抑圧特性を実現することができる。
通常のマイナーループ制御系にオブザーバと位相進み補償器を組み合わせることで制御系の遅れ要素の位相遅れを補償することによって、高性能な目標追従制御を実現することができるので、電動機駆動装置のみならず、いわゆる目標指令にフィードバック信号を追従させる制御システムにも適用できる。

Claims (4)

  1. 位置指令と電動機の回転位置との偏差に基づいて速度指令を算出する位置制御部と、前記速度指令とフィードバック速度との偏差に基づいてトルク指令を算出するPI制御部と、
    前記トルク指令および電動機の回転速度を入力し、前記電動機の回転速度から遅れ要素モデルの出力を差し引いた値をオブザーバ補償器に入力し、前記トルク指令に前記オブザーバ補償器の出力を足した値を機械可動部モデルに入力し、前記機械可動部モデルの出力を前記遅れ要素モデルに入力すると共に、前記フィードバック速度として出力するオブザーバと、
    を備え、電動機および負荷機械を駆動制御する位置制御装置において、
    前記速度指令からトルク指令の位相進み補償信号を算出する位相進み補償器を有し、
    前記トルク指令に前記トルク指令の位相進み補償信号を足して新たなトルク指令とする
    ことを特徴とする位置制御装置。
  2. 前記遅れ要素モデルを一次遅れフィルタとし、前記位相進み補償器のゲインを、前記一次遅れフィルタの時定数に前記PI制御部の積分ゲインを掛けた値から前記PI制御部の比例ゲインを差し引いた値とすることを特徴とする請求項1記載の位置制御装置。
  3. 位置指令と電動機の回転位置との偏差に基づいて速度指令を算出する位置制御部と、前記速度指令とフィードバック速度との偏差に基づいて比例部速度指令を算出する積分制御部と、前記比例部速度指令とフィードバック速度との偏差に基づいてトルク指令を算出する比例制御部と、
    前記トルク指令および電動機の回転速度を入力し、前記電動機の回転速度から遅れ要素モデルの出力を差し引いた値をオブザーバ補償器に入力し、前記トルク指令に前記オブザーバ補償器の出力を足した値を機械可動部モデルに入力し、前記機械可動部モデルの出力を前記遅れ要素モデルに入力すると共に、前記フィードバック速度として出力するオブザーバと、
    を備え、電動機および負荷機械を駆動制御する位置制御装置において、
    前記速度指令から速度指令の位相進み補償信号を算出する位相進み補償器を有し、
    前記比例部速度指令に前記速度指令の位相進み補償信号を足して新たな比例部速度指令
    とすることを特徴とする位置制御装置。
  4. 前記遅れ要素モデルを一次遅れフィルタとし、前記位相進み補償器のゲインを、前記一次遅れフィルタの時定数に前記積分制御部のゲインを掛けた値とすることを特徴とする請求項3記載の位置制御装置。
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