JPWO2008053720A1 - マスター及びマイクロ反応器 - Google Patents

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幹司 関原
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Abstract

マスターと成形用金型との離型性を向上させる。上記課題を解決するために、本発明に係るマスター40は、成形用金型の母体となるもので、樹脂成型品の流路に相当する溝43を有しており、溝43の底面部43aの断面が曲面状を呈している。

Description

本発明は、成形用金型の母体となるマスターとそのマスターから製造されるマイクロ反応器に関する。
近年、血液検査等の検査分野において、微細な流路中で互いに種類の異なる液体試料を混合させてその反応や変化を検査するマイクロ反応器が使用されている。当該マイクロ反応器は一般にはガラス等で構成されることが多いが、成形用金型を用いて射出成形することでも製造することができる。
上記成形用金型の製造方法の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された技術では、フォトリソグラフィーとエッチングとによりマスター(金型の母体となるもので樹脂成型品と同様の凹凸形状を有する。)を製造し、そのマスターから電鋳加工等で成形用金型を製造しており、特にマスターの表面に特殊な導電膜を形成することでマスターと成形用金型との離型性を高めている(第3頁右下欄第11行〜第4頁左上欄第11行)。
特開平4−195941号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、図7(a)に示す通り、マスター100に対し凹部101を形成しているがその凹部101が矩形状を呈しているため、マスター100から成形用金型110を離型する際に、成形用金型110の凸部111が凹部101の形状(アンダーカット形状)や当該離型時の実直度ズレ等に起因して変形したり凹部101との離型抵抗の影響で欠けたりする。更には、成形用金型110の凸部111も、図7(b)に示す通り、マスター100の凹部101に起因して矩形状を呈するから、当該成形用金型110から樹脂成型品120を離型する際にも樹脂成型品120が変形する可能性がある。
本発明の目的はマスターと成形用金型との離型性を向上させることである。
上記課題を解決するため第1の発明は、
成形用金型の母体となるマスターにおいて、
樹脂成型品の流路に相当する溝を有しており、
前記溝の断面が湾曲又は屈曲していることを特徴としている。
第1の発明に係るマスターにおいては、
前記溝の底面部の断面が曲面状を呈していてもよいし、前記溝の側面部の断面が斜面状又は曲面状を呈していてもよいし、前記溝の底面部と側面部とが半円形状を呈していてもよいし、前記溝の角部が曲面状を呈していてもよいし、前記溝の長さ方向に沿う底面部の断面が段差状、斜面状又は曲面状を呈していてもよいし、前記溝のエッジ部の断面が曲面状、斜面状又は段差状を呈していてもよい。
第2の発明は、
基体と前記基体を覆う蓋体とを有し、前記基体と前記蓋体とが貼り合わされたマイクロ反応器であって、
前記基体が請求の範囲1〜7のいずれか一項に記載のマスターから製造されていることを特徴としている。
第1の発明によれば、マスターの溝の断面が湾曲又は屈曲しているため、当該マスターから成形用金型を離型する際に、成形用金型の凸部がマスターの溝の形状や当該離型時の実直度ズレ等に起因して変形したりマスターの溝との離型抵抗の影響で欠けたりすることがなく、マスターと成形用金型との離型性を向上させることができる。
第2の発明によれば、基体にはマスターの溝の形状と同様の流路が形成され、その流路が特に請求の範囲2〜6に記載の形状を有する場合には、流路幅を変更せずにその流路を流通させる液体試料の流速等を制御することができる。他方、基体の流路が請求の範囲7に記載の形状を有する場合には、基体と蓋体との貼り合わせに際して熱溶着技術や接着剤を使用するときに、余剰の樹脂成分や接着剤が流路に浸入するのを防止することができる。
マイクロ反応器1の概略構成を示す斜視図である。 マスター40の概略構成を示す断面図である。 溝43の変形例を示す断面図である。 溝43の変形例を示す断面図である。 マイクロ反応器1の製造方法の一部の工程を示す図面である。 マイクロ反応器1の基体2の形状に起因する特有の効果を説明するための図面である。 従来の問題点を説明するための図面である。
符号の説明
1 マイクロ反応器
2 基体
21,22 流入流路
23 反応流路
24,25 流出流路
3 蓋体
31,32 流入流路
34,35 流出流路
40 マスター
41 マスターブランク
42 メッキ層
43 溝
43a 底面部
43b 側面部
43c 角部
43d エッジ部
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲は以下の実施形態及び図示例に限定されるものではない。
始めに、図1〜図3を参照しながら本発明に係る「マイクロ反応器」と「マスター」とについて説明する。
図1に示す通り、マイクロ反応器1は、略直方体状を呈した基体2と蓋体3とを有している。基体2と蓋体3は樹脂で構成されており、基体2に対して蓋体3が貼り合わされている。
図1中点線部で示す通り、基体2の表面には流入流路21,22、反応流路23及び流出流路24,25が形成されている。流入流路21,22の合流部には反応流路23の一方の端部が接続されており、反応流路23の他方の端部には流出流路24,25の合流部が接続されている。これら流入流路21,22、反応流路23及び流出流路24,25は非常に微細な溝(マイクロ流路)である。
蓋体3には流入口31,32と流出口34,35とが形成されている。流入口31,32は流入流路21,22にそれぞれ通じており、流出流路34,35は流出流路24,25にそれぞれ通じている。流入口31,32から液体を流入させると、各液体は流入流路21,22を流通して合流し、反応流路23中で混合して流出流路24と流出流路25とに分岐し、流出口34,35から流出するようになっている。このような構成から、マイクロ反応器1は、互いに種類の異なる血液や薬剤等の液体試料を混合させるのに好適に用いられる。
図2に示す通り、マスター40はマイクロ反応器1の基体2の成形用金型の母体となるもので、略直方体状を呈したマスターブランク41を有している。マスターブランク41にはその外周に沿って溝41aが形成されている。マスターブランク41の一方の側面から他方の側面にかけてマスターブランク41を抱え込むようにメッキ層42が形成されており、メッキ層42の上部には溝43が形成されている。溝43はマイクロ反応器1の流入流路21,22、反応流路23及び流出流路24,25に相当するもので、機械加工により形成された非常に微細な溝である。
図2中拡大図に示す通り、溝43は底面部43aが曲面状を呈しており、成形用金型を当該マスター40から離型し易い構造となっている。
溝43は、(1)図3(a)に示す通りに底面部43aが図2とは異なる他の曲面状を呈していてもよいし、(2)図3(b)に示す通りに側面部43bが斜面状を呈していてもよいし、(3)図3(c),(d)に示す通りに側面部43bが曲面状を呈していてもよいし、(4)図3(e)に示す通りに底面部43aと側面部43bとが半球面状を呈していてもよいし、(5)図3(f)に示す通りに角部43cが曲面状を呈していてもよいし、(6)図3(g)に示す通りにその長さ方向に沿って底面部43aが段差状を呈していたり斜面状を呈していたり曲面状を呈していたりしてもよい。溝43が図3(b)の断面形状を有する場合には側面部43bと垂線とのなす角度が0〜10°程度であるのがよく、溝43が図3(f)の断面形状を有する場合には角部43cの曲率半径が0.02〜10μm程度であるのがよい。
溝43は、図4(a)に示す通りにエッジ部43dが曲面状を呈していてもよいし、図4(b)に示す通りにエッジ部43dが斜面状を呈していてもよいし、図4(c)に示す通りにエッジ部43dが段差状を呈していてもよい。
もちろん、溝43の形状は図2〜図4に示す各形状を適宜組み合わせたものであってもよく、終局的には溝43は断面が湾曲又は屈曲していればよい。
なお、図2,図3(a)〜(f),図4(a)〜(c)に示す溝43はその長さ方向と直交する方向に切断した形状を示しており、図3(g)に示す溝43はその長さ方向に沿う方向に切断した形状を示している。
続いて、図5を参照しながら本発明に係る「マイクロ反応器の製造方法」について説明する。
当該製造方法は、大まかに言えば、マスター40から成形用金型を製造し、その成形用金型から樹脂を成形して基体2を製造し、その基体2と蓋体3とを貼り合わせる、というものである。つまり基体2はマスター40から製造されている。以下、当該製造方法の各工程を詳細に説明する。
始めに、図5(a)に示すマスターブランク41を準備する。その後、図5(b)に示す通り、マスターブランク41に対しNi−Pメッキ加工やCuメッキ加工を施してメッキ層42を形成する。メッキ層42は溝41aの影響でマスターブランク41の一方の側面から他方の側面にかけてマスターブランク41を抱え込むように形成され、マスターブランク41とメッキ層42とが互いに剥離し難くなっている。
その後、図5(c)に示す通り、メッキ層42の上面に機械加工を施して溝43を形成してマスター40が完成する。マスター40は基体2の成形用金型の母体となるもので、溝43は基体2の流入流路21,22、反応流路23及び流出流路24,25に相当するものである。
なお、マスター40にはメッキ層42がなくてもよく、例えば、マスターブランク41をアルミ合金、無酸素銅といった均質な材料で構成してこれをマスター40としてもよい。
その後、図5(d)に示す通り、マスター40のメッキ層42の上部に酸化皮膜(図示略)を形成してその酸化皮膜の上部に電鋳加工を施し、メッキ層42を被覆するように肉厚の電鋳加工体50を形成する。電鋳加工前にメッキ層42の上部に酸化皮膜を形成するのは、マスター40から電鋳加工体50を離型するのを容易にするためである。
その後、電鋳加工体50とマスター40とを離型しない状態で、図5(e)中矢印Aに示す通り、電鋳加工体50の外形を追込み加工してその側面がマスター40(メッキ層42)の側面に一致するまで当該電鋳加工体50の側部を除去する。
その後、図5(e)中矢印Bに示す通り、マスター40から追込み加工後の電鋳加工体50を離型し、その電鋳加工体50の下面(転写面)とマスター40のメッキ層42の上面とに介在させた上記酸化皮膜を除去する。その結果、マスター40の溝43に対応した凸部51を具備する成形用金型52を製造することができる。
その後、成形用金型52をベース金型に組み付ける。成形用金型52のベース金型への組付けは接着剤、ネジ止め、クランプ固定、吸引等で行うことができる。
その後、成形用金型52に対し熱可塑性樹脂等の樹脂を射出成形して基体2を製造し、最後に、その基体2と蓋体3とを熱溶着又は接着剤等で張り合わせ、マイクロ反応器1を製造することができる。
以上の本実施形態では、マスター40の溝43の底面部43aが曲面状を呈しているため、当該マスター40から電鋳加工体50を離型する際に、電鋳加工体50の凸部51がマスター40の溝43の形状や当該離型時の実直度ズレ等に起因して変形したりマスター40の溝43との離型抵抗の影響で欠けたりすることがなく、マスター40と成形用金型52との離型性を向上させることができる。
マスター40の溝43の形成にあたっては、メッキ層42に対し機械加工を施すため、フォトリソグラフィーとエッチングとにより当該溝43を形成するときよりも、微細加工の自由度が大きくなるし、フォトリソグラフィー時やエッチング時に必要とされるクリーンルームやUVカットルーム、排水処理設備等も不要となる。
また本実施形態では、基体2の流入流路21,22、反応流路23及び流出流路24,25がマスター40の溝43の形状と同様となる。このことからメッキ層42に図2〜図3の形状を有する溝43を形成すれば、その流路幅を変更せずにそれら流入流路21,22、反応流路23及び流出流路24,25を流通させる液体試料の流速等を制御することができ、液体試料の均一な流通や混合、分岐等に対して流入流路21,22、反応流路23及び流出流路24,25を効果的に機能させることができる。例えば、液体試料の流入部や混合部、流出部で流速を変化させたり、意図的に乱流や層流を発生させたり、部分的にレンズ機能やマイクロポンプ機能等の様々な機能を追加するのに適した流路形状とすることができる。
他方、メッキ層42に図4の形状を有する溝43を形成すれば、基体2と蓋体3との貼り合わせに際して熱溶着技術や接着剤を使用する場合に、図6(a)〜(c)に示す通り、基体2と蓋体3とが接触するエッジ部(図4のエッジ部43dに対応する。)に余剰の樹脂成分や接着剤が溜まり、これら余剰の樹脂成分や接着剤が流入流路21,22、反応流路23及び流出流路24,25に浸入するのを防止することができる。

Claims (8)

  1. 成形用金型の母体となるマスターにおいて、
    樹脂成型品の流路に相当する溝を有しており、
    前記溝の断面が湾曲又は屈曲していることを特徴とするマスター。
  2. 請求の範囲第1項に記載のマスターにおいて、
    前記溝の底面部の断面が曲面状を呈していることを特徴とするマスター。
  3. 請求の範囲第1項に記載のマスターにおいて、
    前記溝の側面部の断面が斜面状又は曲面状を呈していることを特徴とするマスター。
  4. 請求の範囲第1項に記載のマスターにおいて
    前記溝の底面部と側面部とが半円形状を呈していることを特徴とするマスター。
  5. 請求の範囲第1項に記載のマスターにおいて、
    前記溝の角部が曲面状を呈していることを特徴とするマスター。
  6. 請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか一項に記載のマスターにおいて、
    前記溝の長さ方向に沿う底面部の断面が段差状、斜面状又は曲面状を呈していることを特徴とするマスター。
  7. 請求の範囲第1項乃至第6項のいずれか一項に記載のマスターにおいて、
    前記溝のエッジ部の断面が曲面状、斜面状又は段差状を呈していることを特徴とするマスター。
  8. 基体と前記基体を覆う蓋体とを有し、前記基体と前記蓋体とが貼り合わされたマイクロ反応器であって、
    前記基体が請求の範囲第1項乃至第7項のいずれか一項に記載のマスターから製造されていることを特徴とするマイクロ反応器。
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