JPWO2008044358A1 - サッカロミセス属酵母の検出用プライマーセット - Google Patents
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Abstract
本発明は、サッカロミセス属酵母種を、正確、迅速、かつ簡便に識別できるプライマーセットの提供を目的とする。本発明によれば、配列番号1〜17または23〜30の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその相同ポリヌクレオチドからなる群から選択されるプライマーを含んでなる、サッカロミセス酵母種の検出に用いられるプライマーセットが提供される。
Description
本発明は、サッカロミセス属酵母の検出用プライマーセットに関し、より詳細には、サッカロミセス属酵母の検出用のLAMP法プライマーセットおよびPCR法プライマーセットに関する。本発明はまた、このプライマーセットを使用するサッカロミセス属酵母の検出および定量方法に関する。
サッカロミセス属酵母は、パン製造の他、ビール、ワイン、日本酒、焼酎、ウィスキー等のアルコール飲料製造に広く用いられている。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)はエールのような上面発酵タイプのビール、ワイン、日本酒、サイダーのような果実酒等の醸造酒、また焼酎、ウィスキー等の蒸留酒製造に用いられる。サッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)はワイン、シェリー酒、あるいは発泡性ワイン等の製造に用いられる。ピルスナータイプのビール製造に用いられる下面発酵酵母は、現在ではサッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)に分類されている(Kurtzman, C.P. & Fell, J.W. The Yeasts, A Taxonomic Study, 4th edition, 1998, Elsevier Science B.V., The Netherlands、Back, W.:Farbatlas und Handbuch der Geraenkebiologie, Teil I, 1994, Verlag Hans Carl, Nuernberg、Barnett, J.A. et al.:Yeasts, characteristics and identification, 3rd edition, 2000, Cambridge University Press, UK、清酒酵母・麹研究会:「清酒酵母の研究」2003, 新日本印刷, 東京)。このように製造に用いる酵母が適切な酵母かどうか把握するために、サッカロミセス属酵母の菌種を同定する技術は重要である。
しかし、これらの酵母がろ過済みの酒類製品に残存したり、あるいは外部から混入した場合には、過剰に発酵して混濁を起こし、特徴的な臭いを生産し、刺激的な苦い味に変質させて製品品質に影響を与える(Back, W.:Farbatlas und Handbuch der Geraenkebiologie, Teil I, 1994, Verlag Hans Carl, Nuernberg、European Brewery Convention:ANALYTICA - MICROBIOLOGICA - EBC, 2nd ed. 2005 Fachverlag Hans Carl, Nuernberg)。
また、サッカロミセス属酵母は清涼飲料、特に果汁飲料からも分離される事がある。これらの酵母が混入すると、グルコースやサッカロース等の糖から炭酸ガス、エタノール、不快な臭気を生成し、製品品質を大きく損ねる(Back, W.:Farbatlas und Handbuch der Geraenkebiologie, Teil II, 1999, Verlag Hans Carl, Nuernberg)。
このようにサッカロミセス属酵母が製品中で増殖すると産業に与える影響が大きいために、これら酵母を迅速に検出・同定する技術は、品質管理上重要である。また製品から分離されたサッカロミセス属酵母が製造工程で使用していた酵母である場合には、製造工程上流からのリーク、ろ過工程不良等に原因があると考えられ、外部から混入した酵母であった場合には充填機の洗浄不良や配管中の溜まり等の原因が考えられる。従って、汚染があったときに製品から分離された酵母を同定する技術は、対処する目標を明確にするために重要である。
このようにサッカロミセス属酵母が製品中で増殖すると産業に与える影響が大きいために、これら酵母を迅速に検出・同定する技術は、品質管理上重要である。また製品から分離されたサッカロミセス属酵母が製造工程で使用していた酵母である場合には、製造工程上流からのリーク、ろ過工程不良等に原因があると考えられ、外部から混入した酵母であった場合には充填機の洗浄不良や配管中の溜まり等の原因が考えられる。従って、汚染があったときに製品から分離された酵母を同定する技術は、対処する目標を明確にするために重要である。
しかし、サッカロミセス・パストリアヌス、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌスは分類学的に非常に近縁であり、サッカロミセス・パラドクサス、サッカロミセス・ミカタエ等の数種の酵母とともにSaccharomyces sensu strictoという分類学上のグループを形成している(Naumov, G.I. et al.:Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2000, vol. 50, 1931-1942)。さらにサッカロミセス・パストリアヌスは、サッカロミセス・セレビシエとサッカロミセス・バヤヌスの交雑により形成した種であると考えられており、遺伝子レベル、染色体レベルで両者のハイブリッドであることが確認されている(Kielland-Brandt, M.C. et al.:Genetics of brewing yeast. The Yeast, 2nd edn, vol. 6, pp223-254, Edited by Wheals, et al., Academic Press, New York、Ryu, S.-L. et al.:Yeast, 1996, vol.12, 757、Tamai, Y. et al.:Yeast, 1998, vol. 14, 923-933、Tamai, Y. et al.:Yeast, 2000, vol. 16, 1335-1343)。伝統的な酵母の同定法としては形態学的、生理学的、生化学的手法が用いられ、特に様々な糖の資化能、発酵能を調査する事が多いが、Saccharomyces sensu strictoに属する菌種は表現型的に互いに非常に似通っているため、このような伝統的な方法では区別する事は難しい(Naumova, E.S. et al.:Antonie van Leeuwenhoek, 2003, vol. 83, 155-166)。これらの株を見分ける分子生物学的なアプローチとしては、PCRフィンガープリンティング、DNA/DNA再結合キネティクス、核型解析、ミトコンドリアDNA制限酵素切断解析、rRNA遺伝子塩基配列解析、rDNA制限酵素切断解析、UP−PCR、アイソザイム解析、PCR−温度勾配ゲル電気泳動、リアルタイムPCR等が知られている。
これまでに、サッカロミセス属酵母のFLO1遺伝子の一部をPCR法で増幅させる、あるいはrRNA遺伝子の一部をPCR法で増幅させ、RFLPでサッカロミセス属酵母かそれ以外の属の酵母か、あるいは醸造用酵母か非醸造用酵母か識別する方法が開発された(特開平11−56366号公報)。また、下面発酵ビール酵母の26S rRNA遺伝子と5S rRNA遺伝子とのスペーサー領域の配列が2種類存在するという知見に基づいて、それぞれに対して特異的なPCRプライマーセットが開発された(特開2001−8684号公報)。更に、下面発酵酵母の検出のために、Lg−FLO1のN末端部分と酵母第IX番染色体の遺伝子が連結したLg−FLO1類似遺伝子に特異的なプライマーが開発された(特開2002−233382号公報)。
しかし、PCRやリアルタイムPCRは高度な温度制御や蛍光観察が必要なため、高価な機器を必要とする。またPCRは反応後に電気泳動、染色、写真撮影等が必要であり、遺伝子増幅工程後の結果判定までに時間がかかる。さらにRAPD PCR、増幅産物の制限酵素処理、塩基配列解析、アイソザイム解析、温度勾配ゲル電気泳動等は通常のPCR以上に時間と煩雑な操作が必要であり、日々の微生物検査業務の中で行うことには問題があった。
一方、サッカロミセス・パストリアヌスは、サッカロミセス・セレビシエ由来のサブゲノム(Sc型)と、サッカロミセス・バヤヌス由来のサブゲノム(Lg型)を併せ持っているが、最近の研究によると、下面発酵酵母では、Sc型のXVI番染色体の右腕の一部が存在しないこと、Lg型のIII番染色体の右腕の一部が存在しないこと、Lg型のVII番染色体の左腕の一部が存在しないことが報告されている(梅基直行ら「ビール酵母の物理地図作成と比較ゲノム科学」第24回 日本分子生物学会年会(2001);Nakao et al. Proceedings of the 29th EBC Congress (2003);中尾嘉宏:化学と生物, 2005, vol. 43, No. 9, 559-561;および特開2004−283169号公報)。しかし、サッカロミセス・パストリアヌスの染色体転座に関する詳細な情報は依然として得られていないのが現状であった。
また、サッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP(loop mediated isothermal amplification)法プライマーセットが開発されているが(WO2005/093059号公報)、検出精度の点で更に改善の余地を残すものであった。
本発明者らは、サッカロミセス・パストリアヌスのXVI番染色体右腕、III番染色体右腕、およびVII番染色体左腕の染色体転座の位置を特定するとともに、転座位置周辺のゲノムを分析した。本発明者らは、また、その情報に基づいてサッカロミセス属酵母を正確に検出できるプライマーセットを開発することに成功した。
以下、XVI番染色体右腕の染色体転座に関連する発明を第一の態様および第二の態様とし、III番染色体右腕の染色体転座に関連する発明を第三の態様とし、VII番染色体左腕の染色体転座に関連する発明を第四の態様とする。
第一の態様
本発明者らは、今般、サッカロミセス・パストリアヌスに属する下面発酵酵母のゲノム解析を行い、下面発酵酵母のSc型のXVI番染色体は、右腕のGPH1のORF内でLg型染色体へ転座を起こし、更に、右腕末端方向のQCR2のORF内で再度転座し、Sc型に戻っていることを見いだした。すなわち、本発明者らは、下面発酵酵母中にはXVI番染色体右腕のGPH1とQCR2に挟まれた領域はLg型の塩基配列しか存在しないことを見いだした。
本発明者らは、今般、サッカロミセス・パストリアヌスに属する下面発酵酵母のゲノム解析を行い、下面発酵酵母のSc型のXVI番染色体は、右腕のGPH1のORF内でLg型染色体へ転座を起こし、更に、右腕末端方向のQCR2のORF内で再度転座し、Sc型に戻っていることを見いだした。すなわち、本発明者らは、下面発酵酵母中にはXVI番染色体右腕のGPH1とQCR2に挟まれた領域はLg型の塩基配列しか存在しないことを見いだした。
本発明者らは、GPH1とQCR2に挟まれた領域に存在するLg型MET16遺伝子の配列(配列番号6)に基づいて、サッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP法プライマーセットを設計し、そのプライマーセットによってサッカロミセス・パストリアヌスを正確に検出できることを見いだした。Lg型MET16遺伝子の配列は、これまでに公のデータベースにおいて開示されていない新規な配列である。
すなわち、本発明の第一の態様によれば、配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド、または配列番号6の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドからなる、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)検出用プローブまたはプライマーが提供される。
本発明の第一の態様によれば、また、二種以上の上記プライマーからなる、サッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP法プライマーセットが提供される。
本発明の第一の態様によれば、また、二種以上の上記プライマーからなる、サッカロミセス・パストリアヌス検出用PCR法プライマーセットが提供される。
本発明の第一の態様によれば、好ましくは、下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP法プライマーセットが提供される:
配列番号1の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号3の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号4の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。
配列番号1の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号3の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号4の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。
本発明者らは、また、下面発酵酵母のXVI番染色体右腕の染色体転座位置に基づいて、サッカロミセス・パストリアヌス検出用PCR法プライマーセットを設計し、そのプライマーセットによってサッカロミセス・パストリアヌスを正確に検出できることを見いだした。
すなわち、本発明の第一の態様によれば、配列番号27の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドと、配列番号28の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドとを含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるPCR法プライマーセットが提供される。
本発明の第一の態様によれば、また、配列番号29の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドと、配列番号30の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドとを含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるPCR法プライマーセットが提供される。
本発明の第一の態様によれば、また、サッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるPCR法プライマーセットであって、一方のプライマーが配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド、または配列番号6の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドであり、もう一方のプライマーが下面発酵酵母のXVI番染色体右腕のGPH1とQCR2に挟まれた領域外のSc型塩基配列またはその相補配列のいずれかにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドである、PCR法プライマーセットが提供される。
本発明の第一の態様によれば、第一の態様のLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
本発明の第一の態様によれば、また、第一の態様のPCR法プライマーセットを用いてPCR法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
本発明の第一の態様によれば、更に、第一の態様のプローブを用いてハイブリダイゼーション複合体を検出する工程を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
第二の態様
本発明者らは、下面発酵酵母中にはXVI番染色体右腕のGPH1とQCR2に挟まれた領域はLg型の塩基配列しか存在しないことを見いだした。すなわち、XVI番染色体右腕のGPH1とQCR2に狭まれた領域のSc型の塩基配列は、サッカロミセス・パストリアヌスやサッカロミセス・バヤヌスには存在せず、サッカロミセス・セレビシエに特異的であることが判明した。
本発明者らは、下面発酵酵母中にはXVI番染色体右腕のGPH1とQCR2に挟まれた領域はLg型の塩基配列しか存在しないことを見いだした。すなわち、XVI番染色体右腕のGPH1とQCR2に狭まれた領域のSc型の塩基配列は、サッカロミセス・パストリアヌスやサッカロミセス・バヤヌスには存在せず、サッカロミセス・セレビシエに特異的であることが判明した。
本発明者らは、GPH1とQCR2に挟まれた領域に存在するSc型MET16遺伝子の配列に基づいて、サッカロミセス・セレビシエ検出用LAMP法プライマーセットを設計し、そのプライマーセットによってサッカロミセス・セレビシエを正確に検出できることを見いだした。
すなわち、本発明の第二の態様によれば、下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・セレビシエの検出に用いられるLAMP法プライマーセットが提供される:
配列番号7の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号8の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号9の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号10の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。
配列番号7の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号8の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号9の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号10の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。
本発明の第二の態様によれば、第二の態様のLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・セレビシエの検出方法が提供される。
第三の態様
本発明者らは、下面発酵酵母のLg型のIII番染色体は、右腕のMAT座でSc型染色体と転座を起こしていること、そして、下面発酵酵母中にはIII番染色体右腕のMAT座から右腕末端にかけてSc型の塩基配列しか存在しないことを見いだした。すなわち、III番染色体右腕のMAT座から右腕末端にかけてのLg型の塩基配列は、サッカロミセス・セレビシエやサッカロミセス・パストリアヌスには存在しないため、その領域に相当するサッカロミセス・バヤヌスの塩基配列はサッカロミセス・バヤヌスに特異的であることが判明した。
本発明者らは、下面発酵酵母のLg型のIII番染色体は、右腕のMAT座でSc型染色体と転座を起こしていること、そして、下面発酵酵母中にはIII番染色体右腕のMAT座から右腕末端にかけてSc型の塩基配列しか存在しないことを見いだした。すなわち、III番染色体右腕のMAT座から右腕末端にかけてのLg型の塩基配列は、サッカロミセス・セレビシエやサッカロミセス・パストリアヌスには存在しないため、その領域に相当するサッカロミセス・バヤヌスの塩基配列はサッカロミセス・バヤヌスに特異的であることが判明した。
本発明者らは、MAT座から末端に挟まれた領域に存在するRAD18相同遺伝子の配列に基づいて、サッカロミセス・バヤヌス検出用LAMP法プライマーセットを設計し、そのプライマーセットによってサッカロミセス・バヤヌスを正確に検出できることを見いだした。
すなわち、本発明の第三の態様によれば、下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・バヤヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットが提供される:
配列番号13の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号14の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号15の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号16の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。
配列番号13の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号14の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号15の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号16の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。
本発明者らは、また、下面発酵酵母のIII番染色体右腕の染色体転座位置に基づいて、サッカロミセス・パストリアヌス検出用PCR法プライマーセットを設計し、そのプライマーセットによってサッカロミセス・パストリアヌスを正確に検出できることを見いだした。
すなわち、本発明の第三の態様によれば、配列番号23の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドと、配列番号24の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドとを含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるPCR法プライマーセットが提供される。
本発明の第三の態様によれば、第三の態様のLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・バヤヌスの検出方法が提供される。
本発明の第三の態様によれば、また、第三の態様のPCR法プライマーセットを用いてPCR法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
第四の態様
本発明者らは、下面発酵酵母のLg型のVII番染色体は、左腕のKEM1遺伝子のORF内でSc型染色体と転座を起こしていることを見いだした。すなわち、本発明者らは、下面発酵酵母中には、VII番染色体左腕のKEM1遺伝子座から左腕末端にかけてSc型の塩基配列しか存在しないことを見いだした。
本発明者らは、下面発酵酵母のLg型のVII番染色体は、左腕のKEM1遺伝子のORF内でSc型染色体と転座を起こしていることを見いだした。すなわち、本発明者らは、下面発酵酵母中には、VII番染色体左腕のKEM1遺伝子座から左腕末端にかけてSc型の塩基配列しか存在しないことを見いだした。
本発明者らは、また、下面発酵酵母のVII番染色体左腕の染色体転座位置に基づいて、サッカロミセス・パストリアヌス検出用PCR法プライマーセットを設計し、そのプライマーセットによってサッカロミセス・パストリアヌスを正確に検出できることを見いだした。
すなわち、本発明の第四の態様によれば、配列番号25の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドと、配列番号26の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドとを含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるPCR法プライマーセットが提供される。
本発明の第四の態様によれば、第四の態様のPCR法プライマーセットを用いてPCR法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
本発明によるプライマーセットによれば、サッカロミセス属酵母を菌種レベルで正確に検出することができる。特に、本発明によるLAMP法プライマーセットは、LAMP法による核酸増幅反応に使用することができ、増幅産物の有無により対象菌種を検出することができる。従って、本発明によるLAMP法プライマーセットによれば、サッカロミセス属酵母を、菌種レベルで、正確、迅速、かつ簡便に識別することができる。
本発明によるLAMP法プライマーセットによれば、更に、試料中の菌体数を測定することができる。従って、本発明によるLAMP法プライマーセットによれば、サッカロミセス・パストリアヌス、サッカロミセス・セレビシエ、およびサッカロミセス・バヤヌスを、正確に定量することができる。
サッカロミセス属酵母は、酒類および清涼飲料などの各種飲料を混濁させる原因菌であり、これらの菌の存在・不存在は各種飲料の品質管理の指標となりうる。従って、本発明によるプライマーセットは、各種飲料(例えば、酒類および清涼飲料、特に、ビール、発泡酒、ワイン)の品質管理や環境試料の検査に有用である。
プライマーおよびプライマーセット
本発明によるLAMP法プライマーセットは、FIP、F3、BIP、およびB3の4種類のプライマーからなり、これらのプライマーは標的ヌクレオチド配列の6つの領域に対応している。具体的には、標的塩基配列について、3’末端側から5’末端側に向かって順番にF3c、F2c、F1c、B1、B2、B3という領域をそれぞれ規定し、この6領域に対し、4種類のプライマー、すなわちFIP、F3、BIPおよびB3を作製する。ここで、F3c、F2c、F1cの各領域に相補的な領域はそれぞれF3、F2、F1であり、またB1、B2、B3の各領域に相補的な領域はそれぞれB1c、B2c、B3cである。
本発明によるLAMP法プライマーセットは、FIP、F3、BIP、およびB3の4種類のプライマーからなり、これらのプライマーは標的ヌクレオチド配列の6つの領域に対応している。具体的には、標的塩基配列について、3’末端側から5’末端側に向かって順番にF3c、F2c、F1c、B1、B2、B3という領域をそれぞれ規定し、この6領域に対し、4種類のプライマー、すなわちFIP、F3、BIPおよびB3を作製する。ここで、F3c、F2c、F1cの各領域に相補的な領域はそれぞれF3、F2、F1であり、またB1、B2、B3の各領域に相補的な領域はそれぞれB1c、B2c、B3cである。
FIPは、標的配列のF2c領域と相補的なF2領域を3’末端側にもち、5’末端側に標的遺伝子のF1c領域と同じ配列を持つように作製されたプライマーである。必要ならば、FIPプライマーのF1cとF2の間に制限酵素部位を導入することもできる。
F3は、標的遺伝子のF3c領域と相補的なF3領域をもつように作製されたプライマーである。
BIPは、標的配列のB2c領域と相補的なB2領域を3’末端側にもち、5’末端側に標的遺伝子のB1c領域と同じ配列を持つように作製されたプライマーである。必要ならば、BIPプライマーのB1cとB2の間に制限酵素部位を導入することもできる。
B3は、標的遺伝子のB3c領域と相補的なB3領域をもつように作製されたプライマーである。
FIPおよびBIPプライマーに制限酵素部位が含まれる場合、LAMP法による核酸増幅反応後に増幅産物を制限酵素で処理することによって、電気泳動後に1つのバンドとして観察することができる。この場合、もし標的配列に制限酵素部位があれば、プライマーに人為的に制限酵素部位を導入しなくてもよい。
本発明によるLAMP法プライマーセットの実施に当たっては、核酸の増幅反応を加速するためにループプライマー(LFプライマーまたはLBプライマー)を1種類あるいは2種類追加してもよい。ループプライマーをF1−F2間の領域、あるいはB1−B2間の領域にアニールするように設計し、LAMP法反応系に追加して使用すると、これらのプライマーが核酸増幅工程で利用されていないループ部分に結合することにより、全てのループ部分を起点として核酸反応が進み、核酸増幅反応が加速される(例えば、特開2002−345499号公報参照)。
本発明によるLAMP法プライマーセットの実施に当たっては、核酸の増幅反応を加速するためにループプライマー(LFプライマーまたはLBプライマー)を1種類あるいは2種類追加してもよい。ループプライマーをF1−F2間の領域、あるいはB1−B2間の領域にアニールするように設計し、LAMP法反応系に追加して使用すると、これらのプライマーが核酸増幅工程で利用されていないループ部分に結合することにより、全てのループ部分を起点として核酸反応が進み、核酸増幅反応が加速される(例えば、特開2002−345499号公報参照)。
具体的には、第一の態様のLAMP法プライマーセットのうち、配列番号1〜4の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはそれらの相同ポリヌクレオチドからなるLAMP法プライマーセットは、配列番号5の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LB)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを、ループプライマーとして、更に含んでいてもよい。
第二の態様のLAMP法プライマーセットは、配列番号11の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LF)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および配列番号12の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LB)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドのいずれか一方あるいは両方を、ループプライマーとして、更に含んでいてもよい。
第三の態様のLAMP法プライマーセットは、配列番号17の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LB)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを、ループプライマーとして、更に含んでいてもよい。
本発明では、配列番号1〜5および7〜30の塩基配列で表されるポリヌクレオチドのみならず、配列番号1〜5および7〜30の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド(本明細書において「相同ポリヌクレオチド」と言うことがある)も、プライマーやプローブとして用いることができる。
本発明では、また、配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド、および配列番号6の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを、LAMP法プライマー、PCR法プライマー、およびプローブとして使用できる。
本明細書において「ハイブリダイズする」とは、標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、標的ポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドには、実質的にはハイブリダイズしないことを意味する。ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件下で実施することができる。ここで「ストリンジェントな条件」は、プライマー配列とその相補鎖との二重鎖のTm(℃)および必要な塩濃度などに依存して決定でき、プローブとなる配列を選択した後にそれに応じたストリンジェントな条件を設定することは当業者に周知の技術である(例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)等参照)。ストリンジェントな条件としては、ハイブリダイゼーションに通常用いられる適切な緩衝液中で、ヌクレオチド配列によって決定されるTmよりわずかに低い温度(例えば、Tmよりも0〜約5℃低い温度)においてハイブリダイゼーション反応を実施することが挙げられる。ストリンジェントな条件としてはまた、ハイブリダイゼーション反応後の洗浄を高濃度低塩濃度溶液で実施することが挙げられる。ストリンジェントな条件の例としては、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム溶液中で、37℃(約14塩基のオリゴヌクレオチドについて)、48℃(約17塩基のオリゴヌクレオチドについて)、55℃(約20塩基のオリゴヌクレオチドについて)、60℃(約23塩基のオリゴヌクレオチドについて)の洗浄条件が挙げられる。
相同ポリヌクレオチドのヌクレオチド長は、少なくとも10塩基である。
LAMP法プライマーでは、FIPおよびBIPの相同ポリヌクレオチドのヌクレオチド長は、好ましくは、少なくとも30塩基(例えば、30〜60塩基)、より好ましくは少なくとも42塩基(例えば、42〜57塩基)とすることができる。
また、F3、B3、LF、およびLBの相同ポリヌクレオチドのヌクレオチド長は、好ましくは、少なくとも12塩基(例えば、12〜30塩基)、より好ましくは、少なくとも18塩基(例えば、18〜25塩基および18〜30塩基)とすることができる。
PCR法プライマーでは、配列番号23〜30の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチドのヌクレオチド長は、好ましくは、少なくとも15塩基(例えば、15〜30塩基)、より好ましくは、少なくとも18塩基(例えば、18〜24塩基および18〜30塩基)、特に好ましくは、少なくとも20塩基(例えば、20〜25塩基および20〜30塩基)とすることができる。
相同ポリヌクレオチドは、それぞれ、対応する塩基配列の連続する少なくとも10個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは少なくとも18個、特に好ましくは少なくとも20個のヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドであることができる。
配列番号1〜5および7〜30の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチドの例を示すと以下の通りである。
・配列番号1の塩基配列で表されるFIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号1の連続する少なくとも42個(42〜52個)、より好ましくは、少なくとも47個(47〜52個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で57塩基とすることができる)。
・配列番号2の塩基配列で表されるF3の相同ポリヌクレオチド:配列番号2の連続する少なくとも15個(15〜19個)、より好ましくは、少なくとも18個(18〜19個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で21塩基とすることができる)。
・配列番号3の塩基配列で表されるBIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号3の連続する少なくとも36個(36〜42個)、より好ましくは、少なくとも38個(38〜42個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で53塩基、より好ましくは最大で47塩基とすることができる)。
・配列番号4の塩基配列で表されるB3の相同ポリヌクレオチド:配列番号4の連続する少なくとも19個(19〜23個)、より好ましくは、少なくとも21個(21〜23個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基とすることができる)。
・配列番号5の塩基配列で表されるLBの相同ポリヌクレオチド:配列番号5の連続する少なくとも18個(18〜22個)、より好ましくは、少なくとも20個(20〜22個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基とすることができる)。
・配列番号7の塩基配列で表されるFIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号7の連続する少なくとも38個(38〜47個)、より好ましくは、少なくとも42個(42〜47個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で53塩基とすることができる)。
・配列番号8の塩基配列で表されるF3の相同ポリヌクレオチド:配列番号8の連続する少なくとも18個(18〜22個)、より好ましくは、少なくとも19個(19〜22個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で23塩基とすることができる)。
・配列番号9の塩基配列で表されるBIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号9の連続する少なくとも42個(42〜57個)、より好ましくは、少なくとも47個(47〜57個)、特に好ましくは、少なくとも51個(51〜57個)、最も好ましくは、少なくとも53個(53〜57個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基とすることができる)。
・配列番号10の塩基配列で表されるB3の相同ポリヌクレオチド:配列番号10の連続する少なくとも19個(19〜25個)、より好ましくは、少なくとも22個(22〜25個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基とすることができる)。
・配列番号11の塩基配列で表されるLFの相同ポリヌクレオチド:配列番号11の連続する少なくとも19個(19〜25個)、より好ましくは、少なくとも22個(22〜25個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基とすることができる)。
・配列番号12の塩基配列で表されるLBの相同ポリヌクレオチド:配列番号12の連続する少なくとも19個(19〜25個)、より好ましくは、少なくとも22個(22〜25個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基とすることができる)。
・配列番号13の塩基配列で表されるFIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号12の連続する少なくとも42個(42〜53個)、より好ましくは、少なくとも48個(48〜53個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で57塩基とすることができる)。
・配列番号14の塩基配列で表されるF3の相同ポリヌクレオチド:配列番号13の連続する少なくとも18個(18〜21個)、より好ましくは、少なくとも19個(19〜21個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で23塩基とすることができる)。
・配列番号15の塩基配列で表されるBIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号14の連続する少なくとも37個(37〜44個)、より好ましくは、少なくとも42個(42〜44個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で53塩基、より好ましくは最大で47塩基とすることができる)。
・配列番号16の塩基配列で表されるB3の相同ポリヌクレオチド:配列番号15の連続する少なくとも19個(19〜25個)、より好ましくは、少なくとも22個(22〜25個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基とすることができる)。
・配列番号17の塩基配列で表されるLBの相同ポリヌクレオチド:配列番号16の連続する少なくとも14個(14〜18個)、より好ましくは、少なくとも16個(16〜18個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で22塩基とすることができる)。
・配列番号18の塩基配列で表されるFIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号18の連続する少なくとも38個(38〜47個)、より好ましくは、少なくとも42個(42〜47個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で53塩基とすることができる)。
・配列番号19の塩基配列で表されるF3の相同ポリヌクレオチド:配列番号19の連続する少なくとも18個(18〜20個)、より好ましくは、少なくとも19個(19〜20個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で22塩基とすることができる)。
・配列番号20の塩基配列で表されるBIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号20の連続する少なくとも36個(36〜42個)、より好ましくは、少なくとも38個(38〜42個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で53塩基、より好ましくは最大で47塩基とすることができる)。
・配列番号21塩基配列で表されるB3の相同ポリヌクレオチド:配列番号21の連続する少なくとも18個(18〜20個)、より好ましくは、少なくとも19個(19〜20個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で22塩基とすることができる)。
・配列番号22の塩基配列で表されるLBの相同ポリヌクレオチド:配列番号22の連続する少なくとも18個(18〜20個)、より好ましくは、少なくとも19個(19〜20個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で22塩基とすることができる)。
・配列番号23の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチド:配列番号17の連続する少なくとも19個(19〜23個)、より好ましくは、少なくとも21個(21〜23個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基とすることができる)。
・配列番号24の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチド:配列番号18の連続する少なくとも20個(20〜24個)、より好ましくは、少なくとも22個(22〜24個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基とすることができる)。
・配列番号25の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチド:配列番号19の連続する少なくとも18個(18〜21個)、より好ましくは、少なくとも19個(19〜21個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基とすることができる)。
・配列番号26の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチド:配列番号20の連続する少なくとも14個(14〜18個)、より好ましくは、少なくとも16個(16〜18個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で23塩基とすることができる)。
・配列番号27の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチド:配列番号21の連続する少なくとも16個(16〜20個)、より好ましくは、少なくとも18個(18〜20個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で23塩基とすることができる)。
・配列番号28の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチド:配列番号22の連続する少なくとも16個(16〜20個)、より好ましくは、少なくとも18個(18〜20個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で23塩基とすることができる)。
・配列番号29の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチド:配列番号23の連続する少なくとも16個(16〜20個)、より好ましくは、少なくとも18個(18〜20個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で23塩基とすることができる)。
・配列番号30の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチド:配列番号24の連続する少なくとも16個(16〜20個)、より好ましくは、少なくとも18個(18〜20個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で23塩基とすることができる)。
本発明では、配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド、および配列番号6の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号6の塩基配列の相補配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチド、および配列番号6の塩基配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドとすることができる。
配列番号6の塩基配列に基づいて作製されたポリヌクレオチドをLAMP法プライマー(FIPおよびBIP)として用いる場合には、配列番号6の塩基配列またはその相補配列の連続する少なくとも42個(例えば、42〜57塩基)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で57塩基とすることができる)をプライマーとして使用できる。
配列番号6の塩基配列に基づいて作製されたポリヌクレオチドをLAMP法プライマー(F3、B3、LB、およびLF)として用いる場合には、配列番号6の塩基配列またはその相補配列の連続する少なくとも18個(例えば、18〜25個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基とすることができる)をプライマーとして使用できる。
配列番号6の塩基配列に基づいて作製されたポリヌクレオチドをPCR法プライマーとして用いる場合には、配列番号6の塩基配列またはその相補配列の連続する少なくとも15個(例えば、15〜30個)、より好ましくは、少なくとも18個(例えば、18〜24個および18〜30個)、特に好ましくは、少なくとも20個(例えば、20〜25個および20〜30個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基、より好ましくは最大で24塩基とすることができる)をプライマーとして使用できる。
本発明においては、配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドに基づいて、サッカロミセス・パストリアヌスを検出するためのPCR法プライマーペアを選択することができる。具体的には、PCR法においては、二つのプライマーの一方が配列番号6の塩基配列に対合し、他方のプライマーが配列番号6の塩基配列の相補配列に対合し、かつ一方のプライマーにより伸長された伸長鎖にもう一方のプライマーが対合するようにプライマーを選択できる。
本発明においては、また、配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドに基づいて、サッカロミセス・パストリアヌスを検出するためのLAMP法プライマーセットを選択することができる。具体的には、LAMP法の実施に必要な4種類のプライマー、すなわち、FIP、F3、BIP、およびB3を、前述のように設計し、必要に応じてループプライマー、すなわち、LFおよびLBを使用することもできる。
相同ポリヌクレオチドおよび配列番号6の塩基配列に基づいて作製されたポリヌクレオチドは、また、それぞれ、対応する塩基配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドであることができる。同一性の数値は、当業界において周知のアルゴリズムに従って算出することができ、例えば、BLAST(http://www.ddbj.nig.ac.jp/search/blast-j.html)を使用して同一性の数値を算出することができる。
相同ポリヌクレオチドおよび配列番号6の塩基配列に基づいて作製されたポリヌクレオチドは、更に、対応するの塩基配列に1または数個の変異が導入された改変塩基配列からなり、かつ対応するの塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドであることができる。
ここで「変異」は、同一または異なっていてもよく、置換、欠失、挿入、および付加から選択でき、好ましくは、ある1個の塩基を他の1個の塩基に置換する「一塩基置換」、ある1個の塩基を欠失させる「一塩基欠失」、ある1個の塩基を挿入する「1塩基挿入」、およびある1個の塩基を付加する「一塩基付加」から選択できる。また、変異の個数は、1〜6個、1、2、3、または4個、1または2個、あるいは1個とすることができる。
本発明において「ポリヌクレオチド」とはDNA、RNA、およびPNA(peptide nucleic acid)を含む意味で用いられる。
本発明によるプライマーセット等を構成するポリヌクレオチドは、例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller,M.et al., Nature, 310,105, 1984)等の通常の方法に準じて、核酸の化学合成を行うことにより調製してもよいし、検出対象の菌株の全DNAを取得し、本明細書に開示されるヌクレオチド配列に基づいて目的のヌクレオチド配列を含むDNA断片をPCR法等で適宜取得してもよい。
本発明による検出方法の具体的な態様としては、核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を実施した後、核酸増幅産物の有無を検出する工程を含む検出方法が挙げられる。より具体的には、以下の通りである。
本発明による第一の態様によれば、
(a)本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;および
(b)増幅産物の有無を検出する工程
を含んでなり、増幅産物の生成がサッカロミセス・パストリアヌスの存在を示す、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
(a)本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;および
(b)増幅産物の有無を検出する工程
を含んでなり、増幅産物の生成がサッカロミセス・パストリアヌスの存在を示す、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
本発明による第二の態様によれば、
(c)本発明による第二の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;および
(d)増幅産物の有無を検出する工程
を含んでなり、増幅産物の生成がサッカロミセス・セレビシエの存在を示す、サッカロミセス・セレビシエの検出方法が提供される。
(c)本発明による第二の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;および
(d)増幅産物の有無を検出する工程
を含んでなり、増幅産物の生成がサッカロミセス・セレビシエの存在を示す、サッカロミセス・セレビシエの検出方法が提供される。
本発明による第三の態様によれば、
(e)本発明による第三の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;および
(f)増幅産物の有無を検出する工程
を含んでなり、増幅産物の生成がサッカロミセス・バヤヌスの存在を示す、サッカロミセス・バヤヌスの検出方法が提供される。
(e)本発明による第三の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;および
(f)増幅産物の有無を検出する工程
を含んでなり、増幅産物の生成がサッカロミセス・バヤヌスの存在を示す、サッカロミセス・バヤヌスの検出方法が提供される。
LAMP法による核酸増幅工程に供される試料は、試料中の菌体を培養してから核酸を抽出しても、培養せずに核酸を抽出してもよい。菌体の培養や核酸の抽出など核酸試料の調製については後述する。
LAMP法による核酸増幅工程では、試料中の核酸に対して増幅反応が実施される。LAMP法による核酸増幅反応については後述する。
試料中に検出対象菌種が存在する場合には、標的とする特定の領域が増幅され、増幅産物が生成する。増幅産物が生成した場合には、核酸増幅反応が実施された試料溶液が白濁することから、試料溶液の濁度を測定することにより増幅産物の有無を決定することができる。LAMP法における濁度の測定は周知であり、市販のエンドポイント濁度測定装置(例えば、テラメックス社製LA−100)やリアルタイム濁度測定装置(例えば、テラメックス社製LA−200)を用いて濁度の測定をすることができる。
後記実施例で示すように、試料溶液がある一定の濁度に達するまでの時間を測定することにより、検定試料中の菌体数を決定することができる。すなわち、本発明による検出方法の別の面によれば、核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を実施するとともに、核酸増幅反応の開始から試料がある一定の濁度に達するまでの時間を測定し、その時間から検体中の菌体数を求める工程を含む、サッカロミセス・パストリアヌス、サッカロミセス・セレビシエ、およびサッカロミセス・バヤヌスの定量方法が提供される。具体的には、以下の通りである。
本発明による第一の態様によれば、
(a)本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;
(b’)核酸増幅反応の開始から一定の濁度に達するまでの時間を測定する工程;および
(b”)測定した時間から検体中の菌体数を求める工程
を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの定量方法が提供される。
(a)本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;
(b’)核酸増幅反応の開始から一定の濁度に達するまでの時間を測定する工程;および
(b”)測定した時間から検体中の菌体数を求める工程
を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの定量方法が提供される。
本発明による第二の態様によれば、
(c)本発明による第二の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;
(d’)核酸増幅反応の開始から一定の濁度に達するまでの時間を測定する工程;および
(d”)測定した時間から検体中の菌体数を求める工程
を含んでなる、サッカロミセス・セレビシエの定量方法が提供される。
(c)本発明による第二の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;
(d’)核酸増幅反応の開始から一定の濁度に達するまでの時間を測定する工程;および
(d”)測定した時間から検体中の菌体数を求める工程
を含んでなる、サッカロミセス・セレビシエの定量方法が提供される。
本発明による第三の態様によれば、
(e)本発明による第三の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;
(f’)核酸増幅反応の開始から一定の濁度に達するまでの時間を測定する工程;および
(f”)測定した時間から検体中の菌体数を求める工程
を含んでなる、サッカロミセス・バヤヌスの定量方法が提供される。
(e)本発明による第三の態様のLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;
(f’)核酸増幅反応の開始から一定の濁度に達するまでの時間を測定する工程;および
(f”)測定した時間から検体中の菌体数を求める工程
を含んでなる、サッカロミセス・バヤヌスの定量方法が提供される。
本発明による定量方法においては、菌体数と一定の濁度に達するまでの時間との検量線を予め作成しておき、この検量線に基づいて、測定した時間から検体中の菌体数を求めることができる。検量線は、例えば、菌体を段階的に希釈した試料を準備し、それぞれについてLAMP法による核酸増幅法を実施し、菌体のコロニー形成数の対数に対して、核酸増幅反応の開始から濁度が0.1になるまでの時間をプロットすることにより作成することができる。
本発明による検出方法および定量方法においては、FIP、F3、BIP、およびB3からなるプライマーセットに、ループプライマー(LFおよび/またはLB)を追加して、LAMP法による核酸増幅反応を実施してもよい。具体的には、本発明による第一の態様の検出方法および定量方法のうち、配列番号1〜4の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはそれらの相同ポリヌクレオチドからなるLAMP法プライマーセットにおいては、配列番号5の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその相同ポリヌクレオチドを、ループプライマーとして、追加し、使用してもよい。本発明による第二の態様の検出方法および定量方法においては、配列番号11の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその相同ポリヌクレオチドおよび配列番号12の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその相同ポリヌクレオチドのいずれか一方あるいは両方を、ループプライマーとして、追加し、使用してもよい。本発明による第三の態様の検出方法および定量方法においては、配列番号17の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその相同ポリヌクレオチドを、ループプライマーとして、追加し、使用してもよい。
本発明によるLAMP法プライマーセットは、それぞれ単独で使用しても、適宜組み合わせて使用してもよい。本発明によるプライマーセットを組み合わせて実施することにより、サッカロミセス・パストリアヌスと、サッカロミセス・セレビシエと、サッカロミセス・バヤヌスとをより正確に区別して検出することが可能となる。
本発明によるLAMP法プライマーセットは、また、単独で、あるいは組み合わせて、キットの形態で提供することができる。従って、本発明によれば、第一の態様のLAMP法プライマーセット;第二の態様のLAMP法プライマーセット;第三の態様のLAMP法プライマーセット;およびこれらの一部または全部の組み合わせからなる群から選択されるプライマーセット含んでなる、サッカロミセス属酵母の検出キットが提供される。
LAMP法プライマーセットを含む本発明によるキットは、LAMP法による核酸増幅反応の実施に必要な試薬(例えば、Bst DNAポリメラーゼ、反応用試薬混合液)や器具(例えば、反応用チューブ)を含んでいてもよい。
PCR法プライマーセットを含む本発明によるキットは、PCR法による核酸増幅反応の実施に必要な試薬(例えば、DNAポリメラーゼ、精製水)や器具(例えば、反応用チューブ)を含んでいてもよい。
本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットは、Lg型MET16遺伝子を標的にしており、ゲノム構造的に均一ではないサッカロミセス・バヤヌスと反応する可能性がある。一方、本発明による第三の態様のLAMP法プライマーセットは、サッカロミセス・セレビシエやサッカロミセス・パストリアヌスには存在しない、サッカロミセス・バヤヌスのRAD18相同遺伝子を標的にしており、サッカロミセス・バヤヌスを高い精度で検出することができる。従って、サッカロミセス・パストリアヌスをより正確に検出したい場合には、本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットと、サッカロミセス・バヤヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセット(好ましくは、第三の態様のLAMP法プライマーセット)とを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットと、サッカロミセス・バヤヌス検出用LAMP法プライマーセットとの両方で増幅反応が認められた場合、あるいは第一の態様のLAMP法プライマーセットに増幅反応が認められず、サッカロミセス・バヤヌス検出用LAMP法プライマーセットに増幅反応が認められた場合には、試料中にサッカロミセス・バヤヌスが存在すると判断することができる。本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットに増幅反応が認められ、サッカロミセス・バヤヌス検出用LAMP法プライマーセットに増幅反応が認められなかった場合には、試料中にサッカロミセス・パストリアヌスが存在すると判断することができる。
従って、本発明によれば、本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットと、サッカロミセス・バヤヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットとを組み合わせて含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出用キットが提供される。
本発明によればまた、本発明による第一の態様のサッカロミセス・パストリアヌスの検出方法において、サッカロミセス・バヤヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を更に含んでいてもよい。この工程は、核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を実施する工程と、核酸増幅産物の有無を検出する工程と有していてもよい。
上記において、サッカロミセス・バヤヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットは、好ましくは、本発明による第三の態様のLAMP法プライマーセットである。
本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットを用いてサッカロミセス・パストリアヌスを正確に検出した場合には、また、本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットを、サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスを検出できるLAMP法プライマーセットと組み合わせて使用することが好ましい。本発明による第一の態様のサッカロミセス・パストリアヌス用LAMP法プライマーは、ゲノム構造が均一でないサッカロミセス・バヤヌスと交差反応することがある。サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP法プライマーセットは、サッカロミセス・パストリアヌスに含まれるサッカロミセス・セレビシエのゲノム配列と反応するが、サッカロミセス・バヤヌスはこのサッカロミセス・セレビシエのゲノム配列を持たないため、サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP法プライマーセットはサッカロミセス・バヤヌスとは反応しない。この場合、本発明によるサッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP法プライマーセットと、サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP法プライマーセットとの両方で増幅反応が認められた場合には、試料中にサッカロミセス・パストリアヌスが存在すると判断することができる。本発明によるサッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP法プライマーで増幅反応が起こり、サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌス検出用LAMP法プライマーセットで増幅反応が認められない場合には、試料中にサッカロミセス・バヤヌスが存在すると判断することができる。
従って、本発明によれば、本発明による第一の態様のLAMP法プライマーセットと、サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットとを組み合わせて含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出用キットが提供される。
本発明によればまた、本発明による第一の態様のサッカロミセス・パストリアヌスの検出方法において、サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を更に含んでいてもよい。この工程は、核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を実施する工程と、核酸増幅産物の有無を検出する工程と有していてもよい。
上記において、サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットは、好ましくは、下記ポリヌクレオチドを含んでなるLAMP法プライマーセットである。
配列番号18の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号19の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号20の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号21の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。
配列番号18の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号19の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号20の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号21の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。
上記のサッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出用LAMP法プライマーセットは、ループプライマーとして、配列番号22の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LB)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを更に含んでいてもよい。
本発明による検出方法のうちPCR法による検出方法の具体的な態様としては、核酸試料に対してPCR法による核酸増幅反応を実施した後、核酸増幅産物の有無を検出する工程を含む検出方法が挙げられる。
より具体的には、
(g)本発明による第一の態様、第三の態様、または第四の態様のPCR法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてPCR法により核酸増幅反応を実施する工程;および
(h)増幅産物の有無を検出する工程
を含んでなり、増幅産物の生成がサッカロミセス・パストリアヌスの存在を示す、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
(g)本発明による第一の態様、第三の態様、または第四の態様のPCR法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてPCR法により核酸増幅反応を実施する工程;および
(h)増幅産物の有無を検出する工程
を含んでなり、増幅産物の生成がサッカロミセス・パストリアヌスの存在を示す、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
PCR法による核酸増幅工程に供される試料は、試料中の菌体を培養してから核酸を抽出しても、培養せずに核酸を抽出してもよい。菌体の培養や核酸の抽出など核酸試料の調製については後述する。
PCR法による核酸増幅工程では、試料中の核酸に対して増幅反応が実施される。PCR法による核酸増幅反応は周知であり、当業者であればPCR法およびその改変方法の実施条件等を適宜設定し、PCR法を実施することができる。
本発明による検出方法のうちプローブによる検出方法の具体的な態様としては、核酸試料に対する本発明によるプローブのハイブリダイゼーションを実施した後、核酸複合体の有無を検出する工程を含む検出方法が挙げられる。
より具体的には、
(i)本発明による第一の態様のプローブと、試料中の核酸とを接触させる工程;および
(j)ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出する工程
を含んでなり、ハイブリダイゼーション複合体の生成がサッカロミセス・パストリアヌスの存在を示す、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
(i)本発明による第一の態様のプローブと、試料中の核酸とを接触させる工程;および
(j)ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出する工程
を含んでなり、ハイブリダイゼーション複合体の生成がサッカロミセス・パストリアヌスの存在を示す、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法が提供される。
プローブを用いた検出法においては、プローブを標識して用いることができる。標識としては、例えば、放射性元素(例えば、32Pおよび14C)、蛍光化合物(例えば、FITC)、酵素反応に関与する分子(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ)が挙げられる。
ハイブリダイゼーション複合体の検出は、ノーザンハイブリダイゼーション、サザンハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等の周知の方法を用いて実施できる。
本発明によるプライマーセットを用いて核酸増幅反応を実施すると、酒類や清涼飲料の品質低下の原因となるサッカロミセス属酵母を菌種レベルで正確に識別することができる。従って、本発明によるプライマーセットおよびキットは、酒類(例えば、ビール、発泡酒、ワイン、果実酒、日本酒)および/または清涼飲料(例えば、果汁飲料)の品質管理や、環境試料(例えば、原料用水)の検査に用いることができる。
サッカロミセス・パストリアヌス、サッカロミセス・セレビシエ、およびサッカロミセス・バヤヌスは、ビールおよび発泡酒の製造工程あるいは最終製品に、品質劣化の原因酵母種として見いだされることがある。従って、第一の態様のLAMP法プライマーセットおよびPCR法プライマーセット;第二の態様のLAMP法プライマーセット;第三の態様のLAMP法プライマーセットおよびPCR法プライマーセット;第四の態様のPCR法プライマーセット;並びにこれらの一部または全部の組み合わせは、好ましくは、ビールおよび発泡酒の品質管理に用いることができる。
サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・バヤヌスは、ワインの製造工程あるいは最終製品に、品質劣化の原因酵母種として見いだされることがある。従って、第二の態様のLAMP法プライマーセット;第三の態様のLAMP法プライマーセット;およびこれらの組み合わせは、好ましくは、ワインの品質管理に用いることができる。
サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・バヤヌスは、清涼飲料(特に、果汁飲料)の製造工程あるいは最終製品に、品質劣化の原因酵母種として見いだされることがある。従って、第二の態様のLAMP法プライマーセット;第三の態様のLAMP法プライマーセット;およびこれらの組み合わせは、好ましくは、清涼飲料(特に、果汁飲料)の品質管理に用いることができる。
LAMP法による核酸増幅反応
本発明によるLAMP法プライマーセットは、LAMP法による核酸増幅反応のプライマーとして用いることができる。本発明によるプライマーセットはまた、LAMP法のみならず、LAMP法を改良した核酸増幅反応のプライマーとしても用いることができる。
LAMP法の原理およびそれを利用した核酸増幅方法は周知であり、LAMP法による核酸増幅反応の実施に当たっては、例えば、WO00/28082号公報やNotomi T. et al., Nucleic Acids Research, 28(12),e63(2000)の開示を参照することができる。
本発明によるLAMP法プライマーセットは、LAMP法による核酸増幅反応のプライマーとして用いることができる。本発明によるプライマーセットはまた、LAMP法のみならず、LAMP法を改良した核酸増幅反応のプライマーとしても用いることができる。
LAMP法の原理およびそれを利用した核酸増幅方法は周知であり、LAMP法による核酸増幅反応の実施に当たっては、例えば、WO00/28082号公報やNotomi T. et al., Nucleic Acids Research, 28(12),e63(2000)の開示を参照することができる。
LAMP法による核酸増幅反応は、市販のLAMP法遺伝子増幅試薬キットに従って実施することができるが、例えば、サンプルのDNA、プライマー溶液、および市販のLAMP法遺伝子増幅試薬キット(例えば、栄研化学社製Loopamp DNA増幅キット)で提供される試薬を、キットに添付されている説明書に従って混合して一定温度(60〜65℃)に保ち、一定時間(標準で1時間)反応させることにより実施できる。
LAMP法による核酸増幅反応は、以下のような工程を経て実施することができる。
(i)鎖置換型DNAポリメラーゼの働きにより、FIPのF2領域の3’末端を起点として鋳型DNAと相補的なDNA鎖が合成される。
(ii)FIPの外側に、F3プライマーがアニールし、その3’末端を起点として鎖置換型DNAポリメラーゼの働きによって、先に合成されているFIPからのDNA鎖を剥がしながらDNA合成が伸長する。
(iii)F3プライマーから合成されたDNA鎖と鋳型DNAが二本鎖となる。
(iv)FIPから先に合成されたDNA鎖は、F3プライマーからのDNA鎖によって剥がされて一本鎖DNAとなるが、このDNA鎖は、5’末端側に相補的な領域F1c、F1をもち、自己アニールを起こし、ループを形成する。
(v)上記(iv)の過程でループを形成したDNA鎖に対し、BIPがアニールし、このBIPの3’末端を起点として相補的なDNAが合成される。この過程でループが剥がされて伸びる。さらに、BIPの外側にB3プライマーがアニールし、その3’末端を起点として鎖置換型DNAポリメラーゼの働きによって、先に合成されたBIPからのDNA鎖を剥がしながらDNA合成が伸長する。
(vi)上記(v)の過程で二本鎖DNAが形成される。
(vii)上記(v)の過程で剥がされたBIPから合成されたDNA鎖は両端に相補的な配列を持つため、自己アニールし、ループを形成してダンベル様の構造となる。
(viii)上記ダンベル構造のDNA鎖を起点として、FIP次いでBIPのアニ−リングを介して所望DNAの増幅サイクルが行われる。
(i)鎖置換型DNAポリメラーゼの働きにより、FIPのF2領域の3’末端を起点として鋳型DNAと相補的なDNA鎖が合成される。
(ii)FIPの外側に、F3プライマーがアニールし、その3’末端を起点として鎖置換型DNAポリメラーゼの働きによって、先に合成されているFIPからのDNA鎖を剥がしながらDNA合成が伸長する。
(iii)F3プライマーから合成されたDNA鎖と鋳型DNAが二本鎖となる。
(iv)FIPから先に合成されたDNA鎖は、F3プライマーからのDNA鎖によって剥がされて一本鎖DNAとなるが、このDNA鎖は、5’末端側に相補的な領域F1c、F1をもち、自己アニールを起こし、ループを形成する。
(v)上記(iv)の過程でループを形成したDNA鎖に対し、BIPがアニールし、このBIPの3’末端を起点として相補的なDNAが合成される。この過程でループが剥がされて伸びる。さらに、BIPの外側にB3プライマーがアニールし、その3’末端を起点として鎖置換型DNAポリメラーゼの働きによって、先に合成されたBIPからのDNA鎖を剥がしながらDNA合成が伸長する。
(vi)上記(v)の過程で二本鎖DNAが形成される。
(vii)上記(v)の過程で剥がされたBIPから合成されたDNA鎖は両端に相補的な配列を持つため、自己アニールし、ループを形成してダンベル様の構造となる。
(viii)上記ダンベル構造のDNA鎖を起点として、FIP次いでBIPのアニ−リングを介して所望DNAの増幅サイクルが行われる。
LAMP法による核酸増幅反応は、上記の工程を適宜改変して実施できることは当業者に自明であろう。本発明によるプライマーセットはそのような改変された方法にも用いることができる。
本発明によるLAMP法プライマーセットは、約60〜約65℃(例えば65℃)においてアニーリングと同時にDNA鎖の合成も起こす。アニ−リング反応およびDNA鎖合成により約1時間反応を行うことにより109〜1010倍に核酸を増幅させることができる。
本発明によるLAMP法プライマーセットをLAMP法による核酸増幅反応の条件の下で試料核酸と反応させると、検出対象の菌株のターゲット領域が増幅される。このような増幅反応が起こると、副産物として形成されるピロリン酸マグネシウムの影響で反応液が白濁するため、この濁度に基づき増幅の有無が目視により判定できる。増幅の有無は、濁度測定装置を用いて濁度を光学的に測定してもよく、また、アガロースゲル電気泳動法などを利用してDNA断片の有無を確認し検出してもよい。
核酸増幅が観察されるならば、標的塩基配列が存在することを意味し、プライマーセットの検出対象である菌種陽性(+)を表す。逆に、核酸増幅が観察されない場合には、標的塩基配列が不存在であることを意味し、プライマーセットの検出対象である菌種陰性(−)を表す。
PCR法による核酸増幅反応
本発明によるPCR法プライマーセットは、PCR法、RT−PCR法、リアルタイムPCR法、in situ PCR等の核酸増幅法を利用して、サッカロミセス属酵母の識別に用いることができる。
本発明によるPCR法プライマーセットは、PCR法、RT−PCR法、リアルタイムPCR法、in situ PCR等の核酸増幅法を利用して、サッカロミセス属酵母の識別に用いることができる。
核酸増幅物が観察されるならば、標的塩基配列が存在することを意味し、プライマーセットの検出対象である菌種陽性(+)を表す。逆に、核酸増幅が観察されない場合には、標的塩基配列が不存在であることを意味し、プライマーセットの検出対象である菌種陰性(−)を表す。
PCR法では、アガロースゲル電気泳動など周知の方法に従って核酸増幅物を検出することができる。また、リアルタイムPCR法では、インターカレーターや蛍光標識プローブを使用し、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計とが一体化された装置において、核酸増幅物を経時的に検出することができる。
検出対象試料とその調製
本発明によるプライマーセットおよびキットの検出の対象となる試料としては、ビール、発泡酒、ワインなどの酒類;サイダー、ラムネ、炭酸水などの清涼飲料;原料用に採取された水等の環境試料;酒類や清涼飲料等の製造工程から採取された半製品などが挙げられる。
本発明によるプライマーセットおよびキットの検出の対象となる試料としては、ビール、発泡酒、ワインなどの酒類;サイダー、ラムネ、炭酸水などの清涼飲料;原料用に採取された水等の環境試料;酒類や清涼飲料等の製造工程から採取された半製品などが挙げられる。
これらをLAMP法やPCR法の試料として用いる場合には、試料中に存在する菌の濃縮、分離、および培養、菌体からの核酸分離、核酸の濃縮などの操作を前処理として実施してもよい。試料中に存在する菌の濃縮や分離の方法としては、ろ過、遠心分離などが挙げられ、適宜選択できる。また試料から濃縮、分離した菌を、さらに培養して菌数を増やしてもよい。培養には、対象とする酵母株の増殖に適切な寒天固体培地や液体培地を用いることができ、また対象とする酵母菌株を選択するために硫酸銅などの薬剤を添加してもよい。飲料試料や環境試料などに存在する菌体、あるいは培養した菌体から核酸を遊離させるためには、例えば、市販のキットを使用する方法や、アルカリ溶液などによって菌体を処理し、100℃での加熱により菌体から核酸を遊離させる方法を選択することができる。また、核酸を更に精製する必要があれば、フェノール/クロロホルム処理、エタノール沈殿や遠心等により核酸の精製を行い、最終的にTE緩衝液などに再溶解させ鋳型DNAとして試験に供してもよい(European Brewery Convention:ANALYTICA - MICROBIOLOGICA - EBC, 2nd ed. 2005 Fachverlag Hans Carl, Nuernberg、Rolfsら:PCR - Clinical diagnostics and research, Springer-Verlag, Berlin, 1992、大嶋泰治ら:蛋白 核酸 酵素, vol. 35, 2523-2541, 1990)。
本発明によるプライマーセットおよびキットを用いたサッカロミセス属酵母の検出は、例えば、以下のように実施することができる。
まず、試料中に存在すると考えられるサッカロミセス属酵母を適切な培地で増菌培養する。次いで、寒天培地上に形成されたコロニーからDNAを分離し、このDNAに対して本発明によるプライマーセットを用いたLAMP法またはPCR法を実施し、サッカロミセス属酵母の特定遺伝子領域を増幅する。遺伝子増幅産物の存在は、プライマーセットが標的とする菌種の存在を示す。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:サッカロミセス属酵母の検出
(a)ゲノムDNA抽出法
寒天平板培地上で培養した菌体をかき取り、滅菌蒸留水に懸濁した。この懸濁液を遠心分離(15000rpm、5分間)し、上澄みを捨てた。沈殿した菌体に再度滅菌蒸留水を添加、懸濁し、遠心分離した。上澄みを捨て、得られた菌体にPrepMan Ultra(アプライドバイオシステムズ社製)の溶液100μlを添加し、95℃、10分間加熱した。その後、15000rpm、1分間遠心分離し、上澄みをゲノムDNA溶液として使用した。あるいは洗浄した菌体に0.1N NaOH溶液を100μl添加し、95℃、10分間加熱した。その後、1M Tris緩衝液(pH7.0)を用いて中和し、上澄みをゲノムDNA溶液として使用した。
(a)ゲノムDNA抽出法
寒天平板培地上で培養した菌体をかき取り、滅菌蒸留水に懸濁した。この懸濁液を遠心分離(15000rpm、5分間)し、上澄みを捨てた。沈殿した菌体に再度滅菌蒸留水を添加、懸濁し、遠心分離した。上澄みを捨て、得られた菌体にPrepMan Ultra(アプライドバイオシステムズ社製)の溶液100μlを添加し、95℃、10分間加熱した。その後、15000rpm、1分間遠心分離し、上澄みをゲノムDNA溶液として使用した。あるいは洗浄した菌体に0.1N NaOH溶液を100μl添加し、95℃、10分間加熱した。その後、1M Tris緩衝液(pH7.0)を用いて中和し、上澄みをゲノムDNA溶液として使用した。
(b)LAMP用プライマー
以下のサッカロミセス属酵母各菌種用プライマーを、富士通システムソリューションズ社のeGenome Order(http://genome.e-mp.jp/index.html)、あるいはそれと同等の方法で化学合成し、TE緩衝液(pH8.0)で100μMの濃度になるように溶解した。これらの溶液を、FIP、BIPプライマー:16μM、F3、B3プライマー:2μM、LF、LBプライマー:8μMとなるように混合し、希釈した。
[下面発酵酵母検出用プライマーセット(LGM1LB1)]
FIP: CCTTCAGTGTTAAAGTCTGTGGGAAATGACTATCCGGGAAATACTATATGCC (配列番号1)
F3: TCACCATCGACATGCTGTC (配列番号2)
BIP: TCAGCCCCAGAAGCAAACTATCCAAATTCCGCCTCTGAGACG (配列番号3)
B3: CCATAGGAAATCACCGTACTTCG (配列番号4)
LB: ATGTTTATAAGCCAGATGGATG (配列番号5)
[サッカロミセス・セレビシエ検出用プライマーセット(SCM1LF2LB1)]
FIP: GGCAGAACCTTGTGATTTTCTTCTACCAAAGTGGAACCTGCACATCG (配列番号7)
F3: TGACAAGTACGATTATCTGGCC (配列番号8)
BIP: ACTGTCGATTATTGAAATAGACGAACTTAATGGAATACTGTTTAACCTGCTCGAACG (配列番号9) B3: GTTGTATGGTACATTGTTTGCATCT (配列番号10)
LF: CACTTATATGTAGCTCTTTGTAGGC (配列番号11)
LB: AAAAATAAATCCATTGATCAATTGG (配列番号12)
[サッカロミセス・バヤヌス検出用プライマーセット(SBR2LB1)]
FIP: TCCCTCATTACCATCTTCATGAATATGCAACTGAAAATAAAAACCAGTTCGCC (配列番号13)
F3: CCAGGCTCATAAAGGAAGCAA (配列番号14)
BIP: CCGCAAGGTGTTCAAGAAACCTTCACCTCTTGTTCTTCTGTGAG (配列番号15)
B3: CTGCATCTGTTAAATCTTCATTTGG (配列番号16)
LB: CAAATGGAGGAGGGGCAA (配列番号17)
[サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌス検出用プライマーセット(SCC1LB1)]
FIP: CCTCTTCCAGTTCTTGACTCTTTTCCTAAGATGAAAGTGCCGGGAGA (配列番号18)
F3: ACGAAGATGAGAAAGAGGCG (配列番号19)
BIP: TGACAGCAAGGAGAAGAGCACCCCTCGTTGTTTTCCTCCTCA (配列番号20)
B3: GTGCTGTATGCTCGTTTTCG (配列番号21)
LB: GAGCAAGGGGACGAAGGTGA (配列番号22)
以下のサッカロミセス属酵母各菌種用プライマーを、富士通システムソリューションズ社のeGenome Order(http://genome.e-mp.jp/index.html)、あるいはそれと同等の方法で化学合成し、TE緩衝液(pH8.0)で100μMの濃度になるように溶解した。これらの溶液を、FIP、BIPプライマー:16μM、F3、B3プライマー:2μM、LF、LBプライマー:8μMとなるように混合し、希釈した。
[下面発酵酵母検出用プライマーセット(LGM1LB1)]
FIP: CCTTCAGTGTTAAAGTCTGTGGGAAATGACTATCCGGGAAATACTATATGCC (配列番号1)
F3: TCACCATCGACATGCTGTC (配列番号2)
BIP: TCAGCCCCAGAAGCAAACTATCCAAATTCCGCCTCTGAGACG (配列番号3)
B3: CCATAGGAAATCACCGTACTTCG (配列番号4)
LB: ATGTTTATAAGCCAGATGGATG (配列番号5)
[サッカロミセス・セレビシエ検出用プライマーセット(SCM1LF2LB1)]
FIP: GGCAGAACCTTGTGATTTTCTTCTACCAAAGTGGAACCTGCACATCG (配列番号7)
F3: TGACAAGTACGATTATCTGGCC (配列番号8)
BIP: ACTGTCGATTATTGAAATAGACGAACTTAATGGAATACTGTTTAACCTGCTCGAACG (配列番号9) B3: GTTGTATGGTACATTGTTTGCATCT (配列番号10)
LF: CACTTATATGTAGCTCTTTGTAGGC (配列番号11)
LB: AAAAATAAATCCATTGATCAATTGG (配列番号12)
[サッカロミセス・バヤヌス検出用プライマーセット(SBR2LB1)]
FIP: TCCCTCATTACCATCTTCATGAATATGCAACTGAAAATAAAAACCAGTTCGCC (配列番号13)
F3: CCAGGCTCATAAAGGAAGCAA (配列番号14)
BIP: CCGCAAGGTGTTCAAGAAACCTTCACCTCTTGTTCTTCTGTGAG (配列番号15)
B3: CTGCATCTGTTAAATCTTCATTTGG (配列番号16)
LB: CAAATGGAGGAGGGGCAA (配列番号17)
[サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌス検出用プライマーセット(SCC1LB1)]
FIP: CCTCTTCCAGTTCTTGACTCTTTTCCTAAGATGAAAGTGCCGGGAGA (配列番号18)
F3: ACGAAGATGAGAAAGAGGCG (配列番号19)
BIP: TGACAGCAAGGAGAAGAGCACCCCTCGTTGTTTTCCTCCTCA (配列番号20)
B3: GTGCTGTATGCTCGTTTTCG (配列番号21)
LB: GAGCAAGGGGACGAAGGTGA (配列番号22)
(c)LAMP増幅反応溶液調製
LAMP法のための遺伝子増幅試薬キットとして、栄研化学社製Loopamp DNA増幅キットを使用した。反応用チューブに、ゲノムDNA溶液:2.5μl、プライマー溶液:2.5μl、2倍濃度反応用緩衝液:12.5μl、Bst DNAポリメラーゼ:1μl、滅菌水:6.5μlを添加し、全量25μlの反応液を調製した。
LAMP法のための遺伝子増幅試薬キットとして、栄研化学社製Loopamp DNA増幅キットを使用した。反応用チューブに、ゲノムDNA溶液:2.5μl、プライマー溶液:2.5μl、2倍濃度反応用緩衝液:12.5μl、Bst DNAポリメラーゼ:1μl、滅菌水:6.5μlを添加し、全量25μlの反応液を調製した。
(d)LAMP反応
LAMP反応には、テラメックス社製リアルタイム濁度計LA−200、あるいは栄研化学社製LA−320Cを使用した。反応チューブをセットし、65℃一定(ボンネットは75℃)で反応させ、その間の濁度変化を6秒毎に計測した。濁度が上昇するものを陽性、濁度の上昇が認められないものを陰性とした。
LAMP反応には、テラメックス社製リアルタイム濁度計LA−200、あるいは栄研化学社製LA−320Cを使用した。反応チューブをセットし、65℃一定(ボンネットは75℃)で反応させ、その間の濁度変化を6秒毎に計測した。濁度が上昇するものを陽性、濁度の上昇が認められないものを陰性とした。
(e)各菌種用プライマーの特異性評価
下面発酵酵母、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌスに対して作成したそれぞれの菌種特異的なプライマーについてSaccharomyces sensu strictoの各菌種を含むサッカロミセス属酵母標準株を使ってLAMP法で特異性を評価した。その結果、LGM1LB1を用いた場合はサッカロミセス・パストリアヌス(下面発酵酵母)に、SCM1LF2LB1を用いた場合はサッカロミセス・セレビシエとサッカロミセス・セレビシエ・ディアスタティカス(Saccharomyces cerevisiae var. diastaticus)に、SBR2LB1を用いた場合はサッカロミセス・バヤヌスに、SCC1LB1を用いた場合にサッカロミセス・セレビシエとサッカロミセス・パストリアヌス(下面発酵酵母)に、反応開始60分以内にDNA増幅に伴う濁度の上昇が見られた(表1)。また、プライマーが検出対象にしている菌株と反応させた場合に、反応開始から60分以内に増幅が起こり、反応チューブ内の濁度が上昇した(図1)。
下面発酵酵母、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌスに対して作成したそれぞれの菌種特異的なプライマーについてSaccharomyces sensu strictoの各菌種を含むサッカロミセス属酵母標準株を使ってLAMP法で特異性を評価した。その結果、LGM1LB1を用いた場合はサッカロミセス・パストリアヌス(下面発酵酵母)に、SCM1LF2LB1を用いた場合はサッカロミセス・セレビシエとサッカロミセス・セレビシエ・ディアスタティカス(Saccharomyces cerevisiae var. diastaticus)に、SBR2LB1を用いた場合はサッカロミセス・バヤヌスに、SCC1LB1を用いた場合にサッカロミセス・セレビシエとサッカロミセス・パストリアヌス(下面発酵酵母)に、反応開始60分以内にDNA増幅に伴う濁度の上昇が見られた(表1)。また、プライマーが検出対象にしている菌株と反応させた場合に、反応開始から60分以内に増幅が起こり、反応チューブ内の濁度が上昇した(図1)。
さらに、LGM1LB1、SCM1LF2LB1、SBR2LB1について各種酵母標準株、ビール醸造用酵母、ビール工場分離野生酵母、ワイン分離野生酵母株を使用して各プライマーの特異性を評価したところ、各プライマーが検査対象にしている株以外からはほとんど増幅が見られなかった(表2、表3、および表4)。
以上により、サッカロミセス属酵母各菌種に対して作成した本発明によるプライマーセットは、検査対象とするサッカロミセス属酵母を菌種レベルで正確に検出できることが示された。従来の報告では共通プライマーを用いて酵母から遺伝子断片を増幅し、その後塩基配列の違いを制限酵素切断パターンやDGGE等で解析することが多かったが、本発明によるプライマーを用いれば、遺伝子増幅の有無を確認するだけでこれら3種のサッカロミセス属酵母が同定・検出できる。
実施例2:LAMP法の検出限界
LAMP法の増幅効率を検討するために、寒天平板培地で培養した下面発酵酵母(BFY70、サッカロミセス・パストリアヌス)、サッカロミセス・セレビシエNBRC10217、サッカロミセス・バヤヌスNBRC1948の菌体を滅菌水で段階的に希釈して上記した方法でDNA抽出し、これをLAMP法に供した。その結果、LAMP法では102〜103cfuレベルの少ない菌体量からも増幅が観察された。
また、菌体の各段階の希釈液から抽出したゲノムDNAを使ったときにLAMP反応で濁度が0.1を越えた時間を検出時間として、各プライマーの検出時間とコロニー形成数の対数をグラフにしたところ、累乗近似により高い相関係数の近似曲線を描くことが出来た(R2=0.98−0.99)。LGM1LB1について得られた近似曲線は図2に示される通りである。また、各プライマーの検出限界と検量線の相関係数との関係は下記に示される通りである。これを検量線とすることにより、102〜107cfuあるいは103〜107cfuの範囲で、サンプル中のサッカロミセス属酵母の存在を定量的にある程度推測することが可能であることが示された。
[各プライマーの検出限界と検量線の相関係数]
検出限界 検量線近似式 検量線相関係数(R 2 )
LGM1LB1 5.2 x 102 cfu y = 28179x-2.4039 0.992
SCM1LF2LB1 4.4 x 103 cfu y = 6875x-1.8959 0.981
SBR2LB1 1.9 x 102 cfu y = 1431.3x-1.8361 0.982
LAMP法の増幅効率を検討するために、寒天平板培地で培養した下面発酵酵母(BFY70、サッカロミセス・パストリアヌス)、サッカロミセス・セレビシエNBRC10217、サッカロミセス・バヤヌスNBRC1948の菌体を滅菌水で段階的に希釈して上記した方法でDNA抽出し、これをLAMP法に供した。その結果、LAMP法では102〜103cfuレベルの少ない菌体量からも増幅が観察された。
また、菌体の各段階の希釈液から抽出したゲノムDNAを使ったときにLAMP反応で濁度が0.1を越えた時間を検出時間として、各プライマーの検出時間とコロニー形成数の対数をグラフにしたところ、累乗近似により高い相関係数の近似曲線を描くことが出来た(R2=0.98−0.99)。LGM1LB1について得られた近似曲線は図2に示される通りである。また、各プライマーの検出限界と検量線の相関係数との関係は下記に示される通りである。これを検量線とすることにより、102〜107cfuあるいは103〜107cfuの範囲で、サンプル中のサッカロミセス属酵母の存在を定量的にある程度推測することが可能であることが示された。
[各プライマーの検出限界と検量線の相関係数]
検出限界 検量線近似式 検量線相関係数(R 2 )
LGM1LB1 5.2 x 102 cfu y = 28179x-2.4039 0.992
SCM1LF2LB1 4.4 x 103 cfu y = 6875x-1.8959 0.981
SBR2LB1 1.9 x 102 cfu y = 1431.3x-1.8361 0.982
実施例3:ワインおよびビールからの検出
ワイン製造では、通常、果汁にワイン酵母であるサッカロミセス属酵母を多量に添加して発酵させるが、外部から汚染する酵母の菌数はサッカロミセス属酵母に比べると圧倒的に少ない。そこでワインに多量のサッカロミセス・セレビシエを懸濁し、そこへワインで希釈して作成したサッカロミセス・バヤヌスNBRC1948の菌体希釈液を混合して集菌洗浄後、まとめてDNA抽出し、プライマーセットとしてSBR2LB1を使用してLAMP法を実施し、サッカロミセス・バヤヌスが検出可能かどうか検討した。その結果、ワインによる反応阻害およびサッカロミセス・セレビシエの存在に関係なく、滅菌水に懸濁した場合とほとんど同じ検出限界でサッカロミセス・バヤヌスが検出出来ることがわかった。また、ビールに下面発酵酵母を懸濁して、サッカロミセス・バヤヌスの菌体希釈液を混合した場合でも同じ結果が得られた。
サッカロミセス・バヤヌスの検出限界
ワイン+サッカロミセス・セレビシエ(5 x 107 cells) 3.9 x 102 cfu
ビール+下面発酵酵母(1 x 107 cells) 3.2 x 102 cfu
ワイン製造では、通常、果汁にワイン酵母であるサッカロミセス属酵母を多量に添加して発酵させるが、外部から汚染する酵母の菌数はサッカロミセス属酵母に比べると圧倒的に少ない。そこでワインに多量のサッカロミセス・セレビシエを懸濁し、そこへワインで希釈して作成したサッカロミセス・バヤヌスNBRC1948の菌体希釈液を混合して集菌洗浄後、まとめてDNA抽出し、プライマーセットとしてSBR2LB1を使用してLAMP法を実施し、サッカロミセス・バヤヌスが検出可能かどうか検討した。その結果、ワインによる反応阻害およびサッカロミセス・セレビシエの存在に関係なく、滅菌水に懸濁した場合とほとんど同じ検出限界でサッカロミセス・バヤヌスが検出出来ることがわかった。また、ビールに下面発酵酵母を懸濁して、サッカロミセス・バヤヌスの菌体希釈液を混合した場合でも同じ結果が得られた。
サッカロミセス・バヤヌスの検出限界
ワイン+サッカロミセス・セレビシエ(5 x 107 cells) 3.9 x 102 cfu
ビール+下面発酵酵母(1 x 107 cells) 3.2 x 102 cfu
実施例4:特許文献にあるプライマーの評価
(a)特許文献のプライマー
土屋らの特許文献(WO2005/093059号公報)に記載されていた以下のサッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)および下面発酵酵母検出用プライマーセット(SBFY1LF1LB1)を、実施例1(b)と同様にLAMP法用プライマー溶液を調製した。サッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)はrRNA遺伝子のD2領域を、下面発酵酵母検出用プライマーセット(SBFY1LF1LB1)はメリビアーゼ遺伝子を標的としている。
[サッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)]
FIP: TGCGAGATTCCCCTACCCCAGACATGGTGTTTTGTGCC(配列番号31)
F3: AGACCGATAGCGAACAAGTA (配列番号32)
BIP: CTGTGGGAATACTGCCAGCTGGCCGTGTTTCAAGACGGGCGG(配列番号33)
B3: CTTGGTCCGTGTTTCAAGAC(配列番号34)
LB: CAAGGATGCTGGCATAATGGTT (配列番号35)
[下面発酵酵母検出用プライマーセット(SBFY1LF1LB1)]
FIP: GCAATTGCTCACTGACGTCGCACACCCCTCAAATGGGTTGG (配列番号36)
F3: CCGAGTTACAATGGCCTTGG(配列番号37)
BIP: ACCGCTGACCGGATTTCTGAAAACTAGACCAGCAGTCATCCA(配列番号38)
B3: CCTTGTCTGCAACGAGTGT (配列番号39)
LF: GGCAAATGTGTTCCAATTGTC (配列番号40)
LB: GGACTAAAGGATTTGGGTTACAC(配列番号41)
(a)特許文献のプライマー
土屋らの特許文献(WO2005/093059号公報)に記載されていた以下のサッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)および下面発酵酵母検出用プライマーセット(SBFY1LF1LB1)を、実施例1(b)と同様にLAMP法用プライマー溶液を調製した。サッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)はrRNA遺伝子のD2領域を、下面発酵酵母検出用プライマーセット(SBFY1LF1LB1)はメリビアーゼ遺伝子を標的としている。
[サッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)]
FIP: TGCGAGATTCCCCTACCCCAGACATGGTGTTTTGTGCC(配列番号31)
F3: AGACCGATAGCGAACAAGTA (配列番号32)
BIP: CTGTGGGAATACTGCCAGCTGGCCGTGTTTCAAGACGGGCGG(配列番号33)
B3: CTTGGTCCGTGTTTCAAGAC(配列番号34)
LB: CAAGGATGCTGGCATAATGGTT (配列番号35)
[下面発酵酵母検出用プライマーセット(SBFY1LF1LB1)]
FIP: GCAATTGCTCACTGACGTCGCACACCCCTCAAATGGGTTGG (配列番号36)
F3: CCGAGTTACAATGGCCTTGG(配列番号37)
BIP: ACCGCTGACCGGATTTCTGAAAACTAGACCAGCAGTCATCCA(配列番号38)
B3: CCTTGTCTGCAACGAGTGT (配列番号39)
LF: GGCAAATGTGTTCCAATTGTC (配列番号40)
LB: GGACTAAAGGATTTGGGTTACAC(配列番号41)
実施例1(c)および(d)の記載に従って、上記プライマーセットを用いて、LAMP法により各種菌株の検出を行った。結果は図3および図4に示される通りであった。
(b)プライマーの評価
その結果、SSC1LB1は試験したサッカロミセス属酵母のほとんどの菌種と反応し、サッカロミセス属酵母の中での識別は出来ないことが分かった。また、SBFY1LF1LB1は下面発酵酵母以外にサッカロミセス・バヤヌスと反応した。SBFY1LF1LB1は下面発酵酵母のメリビアーゼ遺伝子から設計されているが、設計に使用された領域はサッカロミセス・バヤヌスのゲノム中にも96%相同性がある塩基配列が存在していたため、交差反応したと考えられた。
その結果、SSC1LB1は試験したサッカロミセス属酵母のほとんどの菌種と反応し、サッカロミセス属酵母の中での識別は出来ないことが分かった。また、SBFY1LF1LB1は下面発酵酵母以外にサッカロミセス・バヤヌスと反応した。SBFY1LF1LB1は下面発酵酵母のメリビアーゼ遺伝子から設計されているが、設計に使用された領域はサッカロミセス・バヤヌスのゲノム中にも96%相同性がある塩基配列が存在していたため、交差反応したと考えられた。
実施例3:Sc型-Lg型染色体転座領域を利用したPCR法プライマーの評価
上述したように、下面発酵酵母のSc型のXVI番染色体は、右腕のGPH1のORF内からQCR2のORF内の範囲でLg型染色体と転座を起こしていた。下面発酵酵母のLg型のIII番染色体は、右腕のMAT座から右腕末端までSc型染色体と転座を起こしていた。また、下面発酵酵母のLg型のVII番染色体は、左腕のKEM1遺伝子ORF内から左腕末端までSc型染色体と転座を起こしていた。これらの下面発酵酵母のIII番染色体、VII番染色体、XVI番染色体の染色体転座位置を挟み込む形で、Sc型染色体側の塩基配列、およびLg型染色体側の塩基配列からPCR法用プライマーを設計し、各種サッカロミセス属酵母で評価した。
上述したように、下面発酵酵母のSc型のXVI番染色体は、右腕のGPH1のORF内からQCR2のORF内の範囲でLg型染色体と転座を起こしていた。下面発酵酵母のLg型のIII番染色体は、右腕のMAT座から右腕末端までSc型染色体と転座を起こしていた。また、下面発酵酵母のLg型のVII番染色体は、左腕のKEM1遺伝子ORF内から左腕末端までSc型染色体と転座を起こしていた。これらの下面発酵酵母のIII番染色体、VII番染色体、XVI番染色体の染色体転座位置を挟み込む形で、Sc型染色体側の塩基配列、およびLg型染色体側の塩基配列からPCR法用プライマーを設計し、各種サッカロミセス属酵母で評価した。
PCR法にはタカラバイオ社製Ex Taqを用いた。PCRに用いた各プライマーの塩基配列は次の通りである。
[III番染色体転座領域用プライマーセット(増幅産物:約3.2kb)]
IIIjunc1(Lg型側): TGTTGGGGTGTACTATGGTCTTT (配列番号23)
IIIjunc2(Sc型側): ACAAAGAATGATGCTAAGAATTGA (配列番号24)
[VII番染色体転座領域用プライマーセット(増幅産物:約350bp)]
VIISL1(Lg型側): CGACTCAAACTGTATTACTCC (配列番号25)
VIISL2(Sc型側): AATTTTGATGTTCAAGCG (配列番号26)
[XVI番染色体転座領域用プライマーセット(増幅産物:XVISL1−2約720bp、XVISL3−4約630bp)]
XVISL1(Lg型側): CGACAGAGTTGACCAGTTTG(配列番号27)
XVISL2(Sc型側): GTTCTTCTTGCAAGATGTGG(配列番号28)
XVISL3(Lg型側): CCTTGGCAGATGTGTTGTAT(配列番号29)
XVISL4(Sc型側): CTTGCCCTTCTTCAAATCCG(配列番号30)
[III番染色体転座領域用プライマーセット(増幅産物:約3.2kb)]
IIIjunc1(Lg型側): TGTTGGGGTGTACTATGGTCTTT (配列番号23)
IIIjunc2(Sc型側): ACAAAGAATGATGCTAAGAATTGA (配列番号24)
[VII番染色体転座領域用プライマーセット(増幅産物:約350bp)]
VIISL1(Lg型側): CGACTCAAACTGTATTACTCC (配列番号25)
VIISL2(Sc型側): AATTTTGATGTTCAAGCG (配列番号26)
[XVI番染色体転座領域用プライマーセット(増幅産物:XVISL1−2約720bp、XVISL3−4約630bp)]
XVISL1(Lg型側): CGACAGAGTTGACCAGTTTG(配列番号27)
XVISL2(Sc型側): GTTCTTCTTGCAAGATGTGG(配列番号28)
XVISL3(Lg型側): CCTTGGCAGATGTGTTGTAT(配列番号29)
XVISL4(Sc型側): CTTGCCCTTCTTCAAATCCG(配列番号30)
これらの試薬をタカラバイオ社製Ex Taqの説明書に従って混合し(全量15μl)、サーマルサイクラーにセットして94℃・30秒、55℃・30秒、72℃・1分(III番染色体転座領域用プライマーセットの場合は、72℃を2分とした)の温度プログラムを30回繰り返してPCR反応を実施した。その結果、各PCRプライマーセットを下面発酵酵母に使用した際に予想された分子量のバンドが出現した。増幅産物の有無は表5に示される通りである。
Claims (34)
- 配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド、または配列番号6の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドからなる、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)検出用プローブまたはプライマー。
- 請求項1に記載の二種以上のプライマーからなる、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)検出用LAMP法プライマーセット。
- 下記ポリヌクレオチドを含んでなる、請求項2に記載のLAMP法プライマーセット:
配列番号1の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号3の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号4の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - 配列番号5の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LB)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを更に含んでなる、請求項3に記載のLAMP法プライマーセット。
- 請求項1に記載の二種以上のプライマーからなる、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)検出用PCR法プライマーセット。
- 下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の検出に用いられるLAMP法プライマーセット:
配列番号7の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号8の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号9の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号10の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - 下記ポリヌクレオチドのいずれか一方あるいは両方を更に含んでなる、請求項6に記載のLAMP法プライマーセット:
配列番号11の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LF)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号12の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LB)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - 下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)の検出に用いられるLAMP法プライマーセット:
配列番号13の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号14の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号15の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号16の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - 配列番号17の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LB)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを更に含んでなる、請求項8に記載のプライマーセット。
- 下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)の検出に用いられるPCR法プライマーセット:
配列番号23の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号24の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - 下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)の検出に用いられるPCR法プライマーセット:
配列番号25の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号26の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - 下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)の検出に用いられるPCR法プライマーセット:
配列番号27の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号28の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - 下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)の検出に用いられるPCR法プライマーセット:
配列番号29の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号30の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - 配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド、および配列番号6の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドが、それぞれ、配列番号6の塩基配列の相補配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチド、および配列番号6の塩基配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドである、請求項1に記載のプローブまたはプライマー。
- 配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド、および配列番号6の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドが、それぞれ、配列番号6の塩基配列の相補配列と少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチド、および配列番号6の塩基配列と少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載のプローブまたはプライマー。
- 配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド、および配列番号6の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドが、それぞれ、配列番号6の塩基配列の相補配列において1または数個のヌクレオチドが改変された改変塩基配列からなり、かつ配列番号6の塩基配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド、および配列番号6の塩基配列において1または数個のヌクレオチドが改変された改変塩基配列からなり、かつ配列番号6の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドである、請求項1に記載のプローブまたはプライマー。
- 配列番号1〜5、7〜17または23〜30の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドが、それぞれ、対応する塩基配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドである、請求項3、4、および6〜13のいずれか一項に記載のプライマーセット。
- 配列番号1〜5、7〜17、または23〜30の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドが、それぞれ、対応する塩基配列と少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチドである、請求項3、4、および6〜13のいずれか一項に記載のプライマーセット。
- 配列番号1〜5、7〜17、または23〜30の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドが、それぞれ、対応する塩基配列において、1または数個のヌクレオチドが改変された改変塩基配列からなり、かつ対応する塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドである、請求項3、4、および6〜13のいずれか一項に記載のプライマーセット。
- 請求項2〜4のいずれか一項に記載のプライマーセットと、サッカロミセス・バヤヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットとを組み合わせて含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出用キット。
- サッカロミセス・バヤヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットが、請求項8または9のLAMP法プライマーセットである、請求項20に記載のキット。
- 請求項2〜4のいずれか一項に記載のLAMP法プライマーセットと、サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットとを組み合わせて含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出用キット。
- サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットが下記ポリヌクレオチドを含んでなるLAMP法プライマーセットである、請求項22に記載の検出キット:
配列番号18の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号19の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号20の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号21の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーとして、配列番号22の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LB)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを更に含んでなる、請求項23に記載の検出キット。
- 請求項2〜4のいずれか一項に記載のプライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法。
- サッカロミセス・バヤヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を更に含んでなる、請求項25に記載の検出方法。
- サッカロミセス・バヤヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットが、請求項8または9のLAMP法プライマーセットである、請求項26に記載の検出方法。
- サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を更に含んでなる、請求項25に記載の検出方法。
- サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットが、下記ポリヌクレオチドを含んでなるプライマーセットである、請求項28に記載の検出方法:
配列番号18の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号19の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;
配列番号20の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド;および
配列番号21の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチド。 - サッカロミセス・セレビシエおよびサッカロミセス・パストリアヌスの検出に用いられるLAMP法プライマーとして、配列番号22の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LB)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを更に含んでなる、請求項29に記載の検出方法。
- 請求項5に記載のPCR法プライマーセットまたは請求項10〜13のいずれか一項に記載のPCR法プライマーセットを用いてPCR法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法。
- 請求項1に記載のプローブを用いてハイブリダイゼーション複合体を検出する工程を含んでなる、サッカロミセス・パストリアヌスの検出方法。
- 請求項6または7に記載のLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・セレビシエの検出方法。
- 請求項8または9に記載のLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・バヤヌスの検出方法。
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