本発明は、燃料電池に関し、特に、高分子電解質膜を有する固体高分子形燃料電池に関する。
燃料電池は、基本的には、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜、ならびに高分子電解質膜を挟持する一対の触媒電極(燃料極および空気極)から構成される。上記構成を有する燃料電池は、燃料極(アノード)に供給される燃料ガス(水素を含む)、および空気極(カソード)に供給される酸化ガス(酸素を含む)を用いて、電気エネルギーを継続的に取り出すことができる。
触媒電極は、高分子電解質膜側に位置し、触媒電極内における酸化還元反応を促進させる触媒層と、触媒層の外側に位置し、通気性および導電性を有するガス拡散層とから構成される。さらに、ガス拡散層は、触媒層側に位置し、触媒層との接触性を向上させるカーボンコート層と、外部から供給されるガスを拡散させて、触媒層に供給するためのガス拡散基材層とから構成される。これら高分子電解質膜および一対の触媒電極(触媒層、カーボンコート層およびガス拡散基材層)を一体化したものは、膜電極接合体(membrane electrode assembly;以下「MEA」という)と呼ばれる。
MEAは、積層されることで電気的に直列に接続されうる。このとき、燃料ガスと酸化ガスとを混ざらないようにするため、および各MEAを電気的に直列に接続するために、導電性を有するセパレータが各MEAの間に配置される。MEAを一対のセパレータで挟持したものは「燃料電池セル」または単に「セル」と呼ばれ、複数の燃料電池セルの積層体は「燃料電池スタック」または単に「スタック」と呼ばれる。
燃料電池セルにおいて、セパレータの触媒電極と接する面には、触媒電極に反応ガス(燃料ガスまたは酸化ガス)を提供するため、ならびに余剰ガスおよび余剰水分を排出するためのガス流路が形成されている。セパレータ内のガス流路は、通常、直線状の複数の並行流路であり、マニホールドと呼ばれる燃料電池スタックを貫く管に連通している。マニホールドは、燃料電池スタック内のすべての燃料電池セルについて、ガス流路への反応ガスの供給、ならびにガス流路からの余剰ガスおよび余剰水分の排出を行う。
通常、セルまたはスタックは、集電板、絶縁板、および端板によって挟持され、一般的に用いられる形の燃料電池となる。
上記構成を有する燃料電池において、燃料極に水素を含む燃料ガスを、空気極に酸素を含む酸化ガスを供給すると、以下の反応により電気エネルギーを得ることができる。
まず、燃料極に供給された水素は、燃料極のガス拡散層を拡散し触媒層に達する。触媒層において、水素は、水素イオンと電子に分けられる。水素イオンは、保水状態の高分子電解質膜を通して空気極に移動する。電子は、外部回路を通して空気極に移動する。このとき、外部回路を通る電子は、電気エネルギーとして利用されうる。空気極の触媒層では、高分子電解質膜を通して移動してきた水素イオンと、外部回路を通して移動してきた電子と、空気極に供給された酸素とが反応し、水が生成される。
燃料電池は、上記の通り、発電反応に伴い水を生成する。燃料電池は、セル内部が湿潤過多になると発電効率が落ちてしまうため、発電時に生成された水は、セパレータのガス流路を流れるガスにより外部に排出される。
水素イオンが移動する高分子電解質膜は、パーフルオロスルホン酸系の材料が用いられることが多い。この高分子電解質膜は、十分に保水しているとイオン伝導性を有するが、乾燥してしまうとイオン伝導性を失ってしまう。したがって、燃料電池セルの全面において発電反応を効率的に生じさせるためには、セル内部の乾燥を防ぎ、かつセル内部の面内方向の水分分布を均一にすることが必要である。
従来、セル内部の乾燥を防ぎ、かつセル内部の面内方向の水分分布を均一にするために、外部からセル内部を加湿する外部加湿方式がとられてきた。外部加湿方式では、外部加湿器は、露点温度が燃料電池セル内部の温度よりも高い反応ガスをセル内部に供給することで、セル内部を過湿状態にする。しかし、この方式では、ガス拡散層内部に水滴が生じてしまい、触媒層への反応ガスの供給が阻害されてしまうフラッディング現象が生じやすいという問題がある。また、外部加湿器が必要であるため、燃料電池システムの低コスト化が困難であるという問題もある。さらに、燃料電池セル内部の温度を外部加湿器で実現できる反応ガスの露点温度よりも低くしなければならないため、発電効率の高い高温での運転ができないという問題もある。
上記外部加湿方式の問題点を解決する方式として、発電反応によって生じる水をセル内部に拡散させることでセル内部を加湿する内部加湿方式がある。しかし、内部加湿方式では、外部から供給される反応ガスは乾燥しているため、反応ガスの入口側の高分子電解質膜は乾燥しやすい。一方、ガス流路を通過した反応ガスは発電反応により生成された水分を含むため、反応ガスの出口側の高分子電解質膜は湿潤過多になることが多い。このように、内部加湿方式では、セル内部の面内方向の水分分布に偏りが生じるため、発電反応は主に反応ガス出口側で生じるようになり、全体としての発電効率が低下してしまうという問題がある。
上記内部加湿方式の問題点を解決する方式として、反応ガス供給マニホールドと反応ガス排出マニホールドとを隣接させる方式がある(例えば、特許文献1参照)。
図1は、特許文献1の燃料電池セルの正面図(透視図)である。燃料極側のセパレータの構造は実線で示されており、空気極側のセパレータの構造は破線で示されている。図1において、燃料ガス供給マニホールド10および燃料ガス排出マニホールド12は、互いに隣接するように配置されており、矩形状の燃料ガス流路14によって互いに連通されている。同様に、酸化ガス供給マニホールド20および酸化ガス排出マニホールド22は、互いに隣接するように配置されており、矩形状の酸化ガス流路24によって互いに連通されている。上記構成をとることにより、反応ガスの出口側(排出マニホールド側)の水分が、電解質膜を通って反応ガスの入口側(供給マニホールド側)に移行する。これにより、ガス出口側における湿潤過多の抑制、およびガス入口側における乾燥の抑制を実現することができる。
このように、反応ガス供給マニホールドと反応ガス排出マニホールドとを隣接させることにより、水分を電解質膜を通して面内方向に移行させることができ、高分子電解質膜の面内方向の水分分布を均一にすることができる。
しかしながら、特許文献1の燃料電池では、セルの面積を大きくするには、セルおよびスタック内の構造を複雑にしなければならないという問題がある。すなわち、特許文献1の燃料電池は、矩形状のガス流路それぞれについて、反応ガス供給マニホールドと反応ガス排出マニホールドとを隣接させる構造のため、セルの1辺の長さが長くなるにつれて、マニホールドおよびそれに付随する構造物の数を増加させなければならない(図1参照)。したがって、セルの面積を大きくすると、セルおよびスタック内の構造が複雑になり、その製造コストが高くなってしまうのである。
また、特許文献1の燃料電池には、面内方向の水分移行能力が低いという問題もある。すなわち、反応ガスの出口側と入口側との間の水分移行は、それぞれが有する水分量の差が大きいほどより効率的に行われる。出口側の反応ガスの水分量を多くするには、反応ガス流路の長さを長くすればよい。しかし、特許文献1の燃料電池は、ガス流路が矩形状のため、ガス流路の長さはセルの辺の長さおよびマニホールド間の距離によって制限されてしまう(図1参照)。したがって、特許文献1の燃料電池は、面内方向の水分移行能力が低いのである。
上記問題点を解決する技術として、例えば特許文献2に示されているものがある。
図2は、特許文献2の燃料電池セルの空気極側のセパレータの正面図である。図2において酸化ガス供給マニホールド1aおよび酸化ガス排出マニホールド1bは、互いに隣接するように配置されている。さらに、流路25は蛇行状の往復流路であり往路と復路は隣接している。この構造をとることにより、マニホールドの数を減少させることができる。これにより、燃料電池セルの面積を大きくしてもセルおよびスタックの構造が複雑になることはない。流路の輪郭を決定するリブは多孔質であり、往路と復路を結ぶ毛細管を備えている。この構造をとることにより、反応ガスの出口側(排出マニホールド側)の水分が、反応ガスの入口側(供給マニホールド側)に移動する。これにより、高分子電解質膜の面内方向の水分分布を均一にすることができる。
反応ガス入口(反応ガス供給マニホールド)側の反応ガス分圧と反応ガス出口(反応ガス排出マニホールド)側のガス分圧とを均一にするために、反応ガス流路の断面積を上流側から下流側に向かって定められた割合で減少するようにする方式がある(例えば、特許文献3参照)。特許文献3では、複数並列接続された反応ガス流路において、下流部の並列数を上流部の並列数より少なくすることで、下流部の断面積を上流部の断面積に比べて小さくしている。また、特許文献3では、マニホールドの数を減少させるために、ガス流路を蛇行させている。
特開2002−151105号公報
特開2003−109620号公報
特開昭56−134473号公報
特許文献2の燃料電池は、往路と復路を結ぶ毛細管を通って、流路の上流側から流路の下流側へ水分だけでなく、反応ガスも移動する。したがって、特許文献2の燃料電池セルには、流路の上流側から流路の下流側へ反応ガスが移動し、流路の上流側と流路の下流側との間で反応ガスが循環するため、充分な量の反応ガスがセル全体に行き届かないという問題がある。
本発明の目的は、高分子電解質の面内方向の水分分布を均一にし、かつ空気極触媒層に効率的に酸化ガスを供給することができる燃料電池を提供することである。
本発明の燃料電池は、高分子電解質膜および前記高分子電解質膜を挟持する一対の触媒電極を有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体に燃料ガスまたは酸化ガスを供給するためのガス流路を有するセパレータとを備える燃料電池であって、前記ガス流路は、蛇行状または渦巻状に形成され、前記ガス流路の上流流路は、前記ガス流路の下流流路に隣接し、前記ガス流路の壁は、前記ガスの透過性を有さない。
本発明によれば、高分子電解質膜の面内方向の水分分布を均一にすることができる。特に、高温低加湿または高温無加湿で運転しても、高分子電解質膜の面内方向の水分分布を均一にすることができるため、高温低加湿または高温無加湿運転の燃料電池を提供することができる。さらに流路間の酸化ガスの移動を抑制することができるため、空気極触媒層に効率的に反応ガスを供給することができる。
従来の燃料電池のセパレータの正面図
他の従来の燃料電池のセパレータの正面図
本発明の反応ガス流路の流路構造の例を示すためのセパレータの正面図
本発明の実施の形態1〜8における燃料電池セルの断面図
本発明の実施の形態1における燃料極セパレータの正面図
本発明の実施の形態1における空気極セパレータの正面図
本発明の実施の形態2における燃料電池セルの断面図
本発明の実施の形態2における燃料電池スタックの断面図
本発明の実施の形態3における空気極セパレータの正面図
本発明の実施の形態4における空気極セパレータの正面図
本発明の実施の形態5における空気極セパレータの正面図
本発明の実施の形態7における燃料電池セルの断面図
本発明の実施の形態8における空気極セパレータの正面図
実験例1の結果を示すグラフ
実験例2の結果を示すグラフ
本発明の燃料電池は、少なくとも一つの燃料電池セルを備える。すなわち、本発明の燃料電池は、燃料電池セル単体であってもよく、複数のセルを有する燃料電池スタックであってもよい。通常、燃料電池セルまたはスタックは、集電板、絶縁板および端板によって挟持され、さらに締結ロッドにより固定される。
燃料電池セルは、高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟持する一対の触媒電極(燃料極および空気極)と、MEA(高分子電解質膜および触媒電極の集合体)を挟持するセパレータとを備える。触媒電極は、高分子電解質膜側に位置する触媒層と、セパレータ側に位置するガス拡散層とから構成される。
高分子電解質膜は、水素イオン伝導性を有する高分子膜である。高分子電解質膜の材料は、水素イオンを選択的に移動させるものであれば特に限定されない。
触媒層は、水素または酸素の酸化還元反応に対する触媒を含む層である。触媒層は、導電性を有し、かつ水素および酸素の酸化還元反応に対する触媒能を有するものであれば特に限定されない。
ガス拡散層は、導電性を有する多孔質層である。ガス拡散層の材料は、導電性を有し、かつ反応ガスが拡散できるものであれば特に限定されない。ガス拡散層は、セパレータ側から供給されるガスを触媒層に拡散させるガス拡散基材層と、ガス拡散基材層と触媒層との接触性を向上させるカーボンコート層とから構成されていてもよい。
セパレータは、燃料極と接する面に燃料ガス流路、空気極と接する面に酸化ガス流路を有する導電性の板である。セパレータの材質の例にはカーボンや金属などが含まれる。セパレータがガス流路を有する面は、凹部と凸部を有し、凹部がガス流路を形成する。
セパレータはカーボン粉末と樹脂バインダとを混合した原料粉を金型に供給し、金型に供給された原料粉に圧力と熱を加えることによって形成されたもの(以下「カーボンセパレータ」という)でもよい。カーボンセパレータは、例えば特開2000−243409号公報に記載されている。
また、セパレータは、金属プレートからなるもの(以下「金属セパレータ」という)であってもよい。金属セパレータは、例えば特開2003−203644号公報、特開2005−276637号公報に記載されている。
金属セパレータを構成する金属プレートは、表面および裏面を有する。金属プレートでは、表面の凹部が当該箇所の裏面の凸部に対応するもので、かつ表面の凸部が当該箇所の裏面の凹部に対応するものであってもよい。金属プレートに反応ガス流路を形成する方法は特に限定されない。例えば、金属プレートに反応ガス流路を形成する方法はプレス加工である。
金属プレートの材質は、導電性および耐食性に優れたものであれば特に限定されない。金属プレートの材質の例には、ステンレス鋼が含まれる。金属プレートの厚さは、セパレータを形成する強度があれば特に限定されない。例えば、金属プレートの厚さは0.01mm〜1mmである。金属セパレータの大きさはMEAを挟持できるのであれば特に限定されず、適宜設定されればよい。
金属セパレータを用いることで、セパレータの厚さが1mm以下であっても十分な強度がえられる。これによりセルおよびスタックの小型化および軽量化が可能となる。また金属セパレータはプレス加工などにより容易に製造されうることから、コスト削減および大量生産が可能となる。
セパレータ内の反応ガス流路は、ガス流路の入口近傍の流路(以下「上流流路」という)とガス流路の出口近傍の流路(以下「下流流路」という)とが同一面内で隣接するように形成されており、かつ触媒電極の全面に反応ガスを供給できるように形成されている。さらに反応ガス流路の壁は、反応ガスの透過性を有さないように形成されている。ここで「反応ガス流路の壁」とは、隣接する2本の反応ガス流路の間に位置するセパレータの凸部を意味する。触媒電極の全面に反応ガスを供給するには、例えば、反応ガス流路を蛇行状または渦巻状に形成すればよい。なお、同一のガス流路の上流流路と下流流路とが隣接する必要はなく、第一のガス流路の上流流路と第二のガス流路の下流流路とが隣接するようにしてもよい。ガス拡散相の厚さが200μm〜300μm、そして流路の幅が1.1mm、流路の深さが1.1mmの場合、上流流路と下流流路との間隔は、2.2mm〜3.3mmであるとき、燃料電池セルの発電効率は、最も高くなる。したがって、ガス拡散相の厚さが200〜300μm、そして流路の幅が1.1mm、流路の深さが1.1mmの場合、上流流路と下流流路との間隔は、2.2mm〜3.3mmであることが好ましい。反応ガス流路の流路構造の例が、図3に示される。
図3Aに示される例では、セパレータ100に形成された反応ガス流路102は、往復路折り返し部112より流路入口108側の反応ガス往路104と流路出口110側の反応ガス復路106とが流路全体に渡って対向するように形成された往復流路であり、かつ往路104と復路106とが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。ここで「対向する」とは、2本の流路が隣接しており、かつ2本の流路の反応ガスの流れる向きが逆方向であることを意味する。このように、反応ガス流路は、反応ガス流路出入口近傍の流路(上流流路および下流流路)だけでなく、流路全体に渡って対向するように形成されるのが好ましい。また、流路入口108および流路出口110は、互いに隣接しているのが好ましい。
図3Bに示される例では、反応ガス流路102は、図3Aに示される例と同様の往復流路であり、かつ反応ガス往路104と反応ガス復路106とが隣接された状態を維持しながら渦巻状にされている。
図3Cに示される例は、セパレータ100内に2本の反応ガス流路102a,102bが形成されている例である。反応ガス流路102aと反応ガス流路102bとは、流路全体に渡って対向しており、かつ反応ガス流路102aと反応ガス流路102bとが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。
本発明の燃料電池において、セパレータ内の燃料ガス流路に水素ガスを含む燃料ガスを、酸化ガス流路に酸素ガスを含む酸化ガスを供給すると、以下の反応により電気エネルギーを得ることができる。
まず、燃料極に供給された水素分子は、燃料極のガス拡散層を拡散し触媒層に達する。触媒層において、水素分子は、水素イオンと電子に分けられる。水素イオンは、加湿された高分子電解質膜を通して空気極に移動する。電子は、外部回路を通して空気極に移動する。このとき、外部回路を通る電子は、電気エネルギーとして利用されうる。空気極の触媒層では、高分子電解質膜を通して移動してきた水素イオンと、外部回路を通して移動してきた電子と、空気極に供給された酸素とが反応し、水が生成される。
本発明の燃料電池では、反応ガス流路の上流流路と下流流路とを隣接するように形成することで、燃料電池セル内部で面内方向の水分移行が行われる。以下、空気極側における面内方向の水分移行について説明する。
発電時の燃料電池セルは高温のため、発電時に空気極の触媒層で生成した水は水蒸気となる。この水蒸気は、空気極のガス拡散層内を拡散移動し、酸化ガス流路内の酸化ガスを加湿する。酸化ガス流路を流れる酸化ガスは、入口から出口に向かって進むにつれて、その水蒸気分圧が高められる。すなわち、酸化ガス流路の下流流路を流れる酸化ガスの水蒸気分圧は、隣接する上流流路を流れる酸化ガスの水蒸気分圧よりも高くなる。この水蒸気分圧の差により、下流流路を流れる水蒸気の一部は、ガス拡散層を介して、隣接する上流流路に移動する。結果として、下流流路から上流流路に面内方向に水分移行が行われる。
このように、本発明の燃料電池では、上流流路と下流流路とを隣接させることにより、上流流路を流れる反応ガス内の水分量と下流流路を流れる反応ガスの水分量との差を減少させることができる。これにより、下流流路に近接する部位における高分子電解質膜の湿潤過多を抑制すること、および上流流路に近接する部位における高分子電解質膜の乾燥を抑制することが実現できる。すなわち、本発明の燃料電池を無加湿(内部加湿方式)で用いても、セル内部の面内方向の水分分布を均一にすることができる。
また、本発明の燃料電池では、反応ガス流路は、上流流路と下流流路との隣接した状態を維持しつつ、蛇行状または渦巻状に形成される。これにより、マニホールドやそれに付随する構造物の数を減らすことができるため、燃料電池セルおよび燃料電池スタックの構造を単純にすることができる。また、ガス流路を蛇行状または渦巻状にすることでガス流路を長くすることができるため、上流流路と下流流路との水蒸気分圧の差が大きくなり、面内方向の水分移行が従来技術と比較してより効率的に行われる。
さらに、本発明の燃料電池では、反応ガス流路の壁を反応ガスの透過性を有さないようにすることで、流路間の反応ガスの循環を抑制することができる。これにより触媒層に効率的に反応ガスを供給することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図4は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池セルの断面図である。
図4において燃料電池セルは、高分子電解質膜200と、高分子電解質膜200を挟持する一対の触媒電極(燃料極300および空気極400)と、MEA500(高分子電解質膜200および触媒電極300,400の集合体)を挟持する一対のセパレータ(燃料極セパレータ600および空気極セパレータ700)とを備える。セパレータ600,700の材質は例えばカーボンである。燃料極セパレータ600は燃料ガス流路614を備える。空気極セパレータ700は酸化ガス流路714を備える。燃料極300は、高分子電解質膜側に位置する燃料極触媒層310、および燃料極セパレータ側に位置する燃料極ガス拡散層320から構成される。同様に、空気極400は、高分子電解質膜側に位置する空気極触媒層410、および空気極セパレータ側に位置する空気極ガス拡散層420から構成される。さらに、燃料極ガス拡散層320は、燃料極触媒層側に位置する燃料極カーボンコート層330、および燃料極セパレータ側に位置する燃料極ガス拡散基材層340から構成される。同様に、空気極ガス拡散層420は、空気極触媒層側に位置する空気極カーボンコート層430、および空気極セパレータ側に位置する空気極ガス拡散基材層440から構成される。
高分子電解質膜200、燃料極触媒層310、燃料極カーボンコート層330、燃料極ガス拡散基材層340、空気極触媒層410、空気極カーボンコート層430、および空気極ガス拡散基材層440は、前述のものを用いればよい。
図5は、図4に示される燃料極セパレータ600の燃料極側の面の正面図である。
図5において、燃料極セパレータ600は、燃料ガス供給マニホールド610、燃料ガス排出マニホールド612、燃料ガス流路614、酸化ガス供給マニホールド630、酸化ガス排出マニホールド632、冷却水供給マニホールド640、および冷却水排出マニホールド642を有する。燃料ガス流路614は、燃料ガス供給マニホールド610から往復路折り返し部616までの燃料ガス往路618と、往復路折り返し部616から燃料ガス排出マニホールド612までの燃料ガス復路620とからなる。
燃料ガス供給マニホールド610は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに燃料ガスを供給するための孔であり、燃料ガス流路614に燃料ガスを供給する。
燃料ガス排出マニホールド612は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから燃料ガスを排出するための孔であり、燃料ガス流路614から燃料ガスを排出する。
燃料ガス流路614は、燃料ガス供給マニホールド610から供給された燃料ガスを、燃料極300の全面に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。また、燃料ガス往路618および燃料ガス復路620は、互いに対向するように形成されている。燃料ガス流路614の壁は燃料ガスの透過性を有さないように形成されている。
酸化ガス供給マニホールド630は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに酸化ガスを供給するための孔である。また、酸化ガス排出マニホールド632は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから酸化ガスを排出するための孔である。
冷却水供給マニホールド640は、燃料電池スタック内に冷却水を供給するための孔である。また、冷却水排出マニホールド642は、燃料電池スタック内から冷却水を排出するための孔である。図示しない冷却水流路は、冷却水供給マニホールド640と冷却水排出マニホールド642とを連通する流路であり、例えば、燃料極セパレータ600または空気極セパレータ700に形成される。冷却水流路は、例えば、燃料電池スタック内において、燃料極セパレータ600と空気極セパレータ700との間に位置するように、燃料極セパレータ600または空気極セパレータ700の反応ガス流路が形成されていない面に形成されればよい。このとき、セルごとに冷却水流路を形成してもよいし、数セルごとに冷却水流路を形成してもよい。また、冷却水の流路構造は、特に限定されず、直線状の複数の並行流路であってもよいし、蛇行状または渦巻状であってもよい。
図6は、図4に示される空気極セパレータ700の空気極側の面の正面図である。
図6において、空気極セパレータ700は、酸化ガス供給マニホールド710、酸化ガス排出マニホールド712、酸化ガス流路714、燃料ガス供給マニホールド730、燃料ガス排出マニホールド732、冷却水供給マニホールド740、および冷却水排出マニホールド742を有する。酸化ガス流路714は、酸化ガス供給マニホールド710から往復路折り返し部716までの酸化ガス往路718と、往復路折り返し部716から酸化ガス排出マニホールド712までの酸化ガス復路720とからなる。
酸化ガス供給マニホールド710は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに酸化ガスを供給するための孔であり、酸化ガス流路714に酸化ガスを供給する。酸化ガス供給マニホールド710は、図5に示される酸化ガス供給マニホールド630と連通している。
酸化ガス排出マニホールド712は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから酸化ガスを排出するための孔であり、酸化ガス流路714から酸化ガスを排出する。酸化ガス排出マニホールド712は、図5に示される酸化ガス排出マニホールド632と連通している。
酸化ガス流路714は、酸化ガス供給マニホールド710から供給された酸化ガスを、空気極400の全面に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。また、酸化ガス往路718および酸化ガス復路720は、互いに対向するように形成されている。酸化ガス流路714の壁は酸化ガスの透過性を有さないように形成される。また、酸化ガス流路の幅は1.1mm、深さは1.1mmであることが好ましい。さらに、下流流路(酸化ガス排出マニホールド712近傍の酸化ガス流路714)と上流流路(酸化ガス供給マニホールド710近傍の酸化ガス流路714)との間隔は2.2mm〜3.3mmであることが好ましい。つまり上流流路と下流流路との間隔は酸化ガス流路714の幅の2倍〜3倍が好ましい。
燃料ガス供給マニホールド730は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに燃料ガスを供給するための孔である。燃料ガス供給マニホールド730は、図5に示される燃料ガス供給マニホールド610と連通している。
燃料ガス排出マニホールド732は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから燃料ガスを排出するための孔である。燃料ガス排出マニホールド732は、図5に示される燃料ガス排出マニホールド612と連通している。
冷却水供給マニホールド740は、燃料電池スタック内に冷却水を供給するための孔である。冷却水供給マニホールド740は、図5に示される冷却水供給マニホールド640と連通している。また、冷却水排出マニホールド742は、燃料電池スタック内から冷却水を排出するための孔である。冷却水排出マニホールド742は、図5に示される冷却水排出マニホールド642と連通している。
以下、上記のように構成された燃料電池セルにおける、運転時の発電のメカニズムについて説明する。
燃料電池セルの燃料ガス供給マニホールド610,730に供給された燃料ガスは、燃料極セパレータ600内部の燃料ガス流路614に供給される。燃料ガス流路614内の酸化ガスは、燃料極ガス拡散層320を通って燃料極触媒層310に拡散移動する。
一方、燃料電池セルの酸化ガス供給マニホールド630,710に供給された酸化ガスは、空気極セパレータ700内部の酸化ガス流路714に供給される。酸化ガス流路714内の酸化ガスは、空気極拡散層420を通って空気極触媒層410に拡散移動する。
燃料極触媒層310では、燃料ガス流路614から移動してきた燃料ガスに含まれる水素分子が、水素イオンと電子に分けられる。水素イオンは、保水された高分子電解質膜200を通って空気極触媒層410に拡散移動する。一方、電子は、図示しない外部回路を通って空気極触媒層410に移動する。
空気極触媒層410では、高分子電解質膜200を通って移動してきた水素イオン、外部回路を通って移動してきた電子、および酸化ガス流路714から移動してきた酸素が反応し、水が生成される。
発電時の燃料電池セルは高温のため、生成した水は、水蒸気となり、空気極ガス拡散層420を通って酸化ガス流路714に拡散移動し、酸化ガス流路714内の酸化ガスを加湿する。酸化ガスは、酸化ガス流路714内を進むにつれて加湿量が増加していく。したがって、酸化ガス復路720を流れる酸化ガス内の水蒸気の分圧は、対向する酸化ガス往路718を流れる酸化ガス内の水蒸気の分圧に比べて高くなる。この水蒸気の分圧差は、特に、下流流路と上流流路との間で顕著になる。この水蒸気の分圧差により、酸化ガス復路720内の水蒸気は、空気極ガス拡散層420を通って対向する酸化ガス往路718内に面内方向に移動する。これにより、酸化ガス流路714内の水蒸気の分圧分布が均一になる。
燃料極側でも同様の作用により、燃料ガス復路620内の水蒸気は、燃料極ガス拡散層320を通って対向する燃料ガス往路618内に面内方向に移動する。
以上のように、本実施の形態によれば、反応ガス流路の往路と復路とが流路全体に渡って対向するように形成されているため、反応ガス流路内における水蒸気の分圧分布を均一にすることができる。したがって、本実施の形態によれば、燃料電池セルの全面を効率的に利用することができ、高い発電性能と発電安定性を得ることができる。
また、反応ガス流路の壁を反応ガスの透過性を有さないようにすることで、流路間の反応ガスの循環を抑制することができる。これにより触媒層に効率的に反応ガスを供給することができる。
さらに、本実施の形態によれば、反応ガス流路は蛇行状に形成されているため、反応ガス流路および各種マニホールドの数が少数であっても、燃料電池セル全面に対して反応ガスを供給することができる。したがって、本実施の形態によれば、セルの面積を大きくしてもセルおよびスタックの構造を複雑にすることなく、高い発電性能と発電安定性を得ることができる。
なお、本実施の形態では、反応ガス流路の往路と復路とが同一面内で対向するように形成されたセパレータを、燃料極側と空気極側の両方に適用したが、水蒸気が生成される空気極側のみに適用するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、一対のマニホールド間を連通するガス流路の数を2本としたが、ガス流路の数は1本でも、3本以上でもよい。
(実施の形態2)
実施の形態2では、セパレータの素材に金属を用いた例を示す。
実施の形態2の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池セルにおける空気極セパレータ700を空気極セパレータ900に、燃料極セパレータ600を燃料極セパレータ800に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ900および燃料極セパレータ800以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る燃料電池セルの断面図である。実施の形態1の空気極セパレータ700および燃料極セパレータ600と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図7において金属セパレータは金属プレートから構成される。燃料極セパレータは燃料ガス流路814を備える。空気極セパレータ900は酸化ガス流路914を備える。
酸化ガス流路914および燃料ガス流路814の形状は酸化ガス流路714と同じであってよい。すなわち、酸化ガス流路914は、酸化ガス供給マニホールドから供給された酸化ガスを、空気極400の全面に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。酸化ガス往路および酸化ガス復路は、互いに対向するように形成されている。また、燃料ガス流路814は、燃料ガス供給マニホールドから供給されたガスを、燃料極300の全面に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。燃料ガス往路および燃料ガス復路は、互いに対向するように形成されている。
図8は、図7の燃料電池セルが積層されることによって構成された燃料電池スタックの断面図である。
図8において燃料電池スタックは、MEA500と金属セパレータ800および金属セパレータ900から構成される複合金属セパレータ1000とが交互に積層されることで構成される。複合金属セパレータ1000の燃料ガス拡散層側は、燃料ガス流路814を形成し、複合金属セパレータ1000の酸化ガス拡散層側は酸化ガス流路914を形成する。金属セパレータ1000内の空間は冷却水流路を形成する。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、実施の形態1の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路内の水蒸気の分圧分布が均一になる。
また、金属プレートは反応ガスを透過性を有さないことから、金属セパレータを用いることで流路間の反応ガスの循環をより抑制することができる。これにより空気極触媒層に効率的に反応ガスを供給することができる。
さらに、金属セパレータは厚さが1mm以下であっても十分な強度を示す。これによりセル及びスタックの小型化および軽量化が可能となる。また金属セパレータはプレス加工などにより容易に製造されうることから、コスト削減および大量生産が可能となる。
(実施の形態3)
実施の形態1では、一つの流路の往路と復路を対向させる例を示した。実施の形態3は、二つの異なる流路を互いに対向させる例を示す。
実施の形態3の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池セルにおける空気極セパレータ700を空気極セパレータ702に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ702以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図9は、本発明の実施の形態3に係る燃料電池の空気極セパレータの空気極側の面の正面図である。実施の形態1の空気極セパレータ700と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図9において、空気極セパレータ702は、第一の酸化ガス供給マニホールド710a、第二の酸化ガス供給マニホールド710b、第一の酸化ガス排出マニホールド712a、第二の酸化ガス排出マニホールド712b、第一の酸化ガス流路714a、第二の酸化ガス流路714b、第一の燃料ガス供給マニホールド730a、第二の燃料ガス供給マニホールド730b、第一の燃料ガス排出マニホールド732a、第二の燃料ガス排出マニホールド732b、冷却水供給マニホールド740、および冷却水排出マニホールド742を有する。
第一の酸化ガス供給マニホールド710aおよび第二の酸化ガス供給マニホールド710bは、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに酸化ガスを供給するための孔である。第一の酸化ガス供給マニホールド710aは、第一の酸化ガス流路714aに酸化ガスを提供する。同様に、第二の酸化ガス供給マニホールド710bは、第二の酸化ガス流路714bに酸化ガスを供給する。
第一の酸化ガス排出マニホールド712aおよび第二の酸化ガス排出マニホールド712bは、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから酸化ガスを排出するための孔である。第一の酸化ガス排出マニホールド712aは、第一の酸化ガス流路714aから酸化ガスを排出する。同様に、第二の酸化ガス排出マニホールド712bは、第二の酸化ガス流路714bから酸化ガスを排出する。
第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、第一の酸化ガス供給マニホールド710aまたは第二の酸化ガス供給マニホールド710bから供給された酸化ガスを、空気極400全面に供給するための流路である。第一の酸化ガス流路714aは、第一の酸化ガス供給マニホールド710aおよび第一の酸化ガス排出マニホールド712aと連通している。同様に、第二の酸化ガス流路714bは、第二の酸化ガス供給マニホールド710bおよび第二の酸化ガス排出マニホールド712bと連通している。第一の酸化ガス流路714aと第二の酸化ガス流路714bとは、全体に渡って対向しており、かつ第一の酸化ガス流路714aと第二の酸化ガス流路714bとが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。酸化ガス流路(714a、714b)の壁は酸化ガスの透過性を有さないように形成される。第一の酸化ガス流路714aの上流流路と第二の酸化ガス流路714bの下流流路との間隔または第一の酸化ガス流路714aの下流流路と第二の酸化ガス流路714bの上流流路との間隔は2.2mm〜3.3mmが好ましい。
第一の燃料ガス供給マニホールド730aおよび第二の燃料ガス供給マニホールド730bは、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに燃料ガスを供給するための孔である。また、第一の燃料ガスの排出マニホールド732aおよび第二の燃料ガス供給マニホールド732bは、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから燃料ガスを排出するための孔である。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、実施の形態1の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路内の水蒸気の分圧分布が均一になる。すなわち、第一の酸化ガス流路714aの下流流路内の水蒸気は、対向する第二の酸化ガス流路714bの上流流路内に面内方向に移動する。同様に、第二の酸化ガス流路714bの下流流路内の水蒸気は、対向する第一の酸化ガス流路714aの上流流路内に面内方向に移動する。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、酸化ガス流路を燃料電池セル面内に対照的に形成することができるため、酸化ガス流路内における水蒸気の分圧分布をより均一にすることができる。したがって、燃料電池セルの全面をより効率的に利用することができ、より高い発電性能と発電安定性を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、酸化ガス流路の長さを短くすることができるため、酸化ガス供給マニホールド内における反応ガスの圧力を下げることができる。したがって、酸化ガスを供給するブロワに対する負荷を下げることができるので、発電システム全体の発電効率をより向上させることができる。
なお、本実施の形態では、空気極側の流路構造のみについて説明したが、燃料極側の流路構造も空気極側の流路構造と同様のものであってもよい。この場合、燃料極側においても、面内方向の水分分布の分圧分布をより均一にすることができる。
(実施の形態4)
実施の形態1〜3では、反応ガス流路の断面積が上流流路と下流流路とで同じ例を示した。実施の形態4は、反応ガス流路の断面積が上流流路と下流流路とで異なる例を示す。
実施の形態4の燃料電池は、図4に示される実施の形態1の燃料電池における空気極セパレータ700を空気極セパレータ704に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ704以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図10は、本発明の実施の形態4に係る燃料電池セルの空気極セパレータの空気極側の面の正面図である。実施の形態3の空気極セパレータ702と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図10において、空気極セパレータ704は、第一の酸化ガス供給マニホールド710a、第二の酸化ガス供給マニホールド710b、第一の酸化ガス排出マニホールド712a、第二の酸化ガス排出マニホールド712b、第一の酸化ガス流路714a、第二の酸化ガス流路714b、第一の燃料ガス供給マニホールド730a、第二の燃料ガス供給マニホールド730b、第一の燃料ガス排出マニホールド732a、第二の燃料ガス排出マニホールド732b、冷却水供給マニホールド740、および冷却水排出マニホールド742を有する。
第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、実施の形態3と同様に、全体に渡って対向しており、かつ第一の酸化ガス流路714aと第二の酸化ガス流路714bとが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。さらに、第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、下流流路の幅が上流流路の幅に比べて狭くなるように形成されている。前記幅は、上流流路から下流流路にいくにしたがって、段階的または徐々に小さくされてよい。さらに、酸化ガス流路(714a、714b)の壁は酸化ガスの透過性を有さないように形成される。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、実施の形態3の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路714a,714b内の水蒸気の分圧分布が均一になる。また、酸化ガス流路714a,714bの下流流路の断面積が上流流路の断面積に比べて小さいため、酸化ガスの消費に伴う酸化ガス分圧の減少が抑制される。これにより、酸化ガスが面内方向に移動することなく、酸化ガス流路714a,714b内の酸化ガスの分圧分布が均一になる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1〜3の効果に加え、酸化ガス流路上流流路の酸化ガス分圧を下流流路の酸化ガス分圧に比べて低くすることができるため、上流流路の酸化ガスが下流流路へ空気極ガス拡散層を通して移動することを防止することができる。これにより、空気極触媒層に効率的に反応ガスを供給することができるので、発電効率をより向上させることができる。
なお、本実施の形態では、反応ガス流路の幅を変えることにより反応ガス流路の断面積を調整しているが、ガス流路の断面積は、流路の深さを変えることにより調整してもよい。
また、本実施の形態では、空気極側の流路構造のみについて説明したが、燃料極側の流路構造も空気極側の流路構造と同様のものであってもよい。この場合、燃料極側においても、面内方向の水分分布および燃料ガスの分圧分布をより均一にすることができる。
(実施の形態5)
実施の形態1〜4では、一対のマニホールドを連通する反応ガス流路の本数が上流流路と下流流路とで同じ例を示した。実施の形態5は、一対のマニホールドを連通する反応ガス流路の本数が上流流路と下流流路とで異なる例を示す。
実施の形態5の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池における空気極セパレータ700を空気極セパレータ706に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ706以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図11は、本発明の実施の形態5に係る燃料電池の空気極セパレータの空気極側の面の正面図である。実施の形態3の空気極セパレータ702と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図11において、空気極セパレータ706は、第一の酸化ガス供給マニホールド710a、第二の酸化ガス供給マニホールド710b、第一の酸化ガス排出マニホールド712a、第二の酸化ガス排出マニホールド712b、第一の酸化ガス流路714a、第二の酸化ガス流路714b、第一の燃料ガス供給マニホールド730a、第二の燃料ガス供給マニホールド730b、第一の燃料ガス排出マニホールド732a、第二の燃料ガス排出マニホールド732b、冷却水供給マニホールド740、および冷却水排出マニホールド742を有する。
第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、実施の形態3と同様に、流路全体に渡って対向しており、かつ第一の酸化ガス流路714aと第二の酸化ガス流路714bとが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。さらに、第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、下流流路の流路数が上流流路の流路数に比べて少なくなるように形成されている。さらに、酸化ガス流路(714a、714b)の壁は酸化ガスの透過性を有さないように形成される。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、実施の形態4の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路714a,714b内の水蒸気および酸化ガスの分圧分布が均一になる。また、流路の幅や深さが流路全体を通して一定のため、実施の形態4の燃料電池セルに比べて、セパレータとMEAとの接触抵抗が流路全体を通して均一になる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1〜4の効果に加え、空気極セパレータとMEAとの接触性を均一にしつつ、上流流路の酸化ガス分圧を下流流路の酸化ガス分圧に比べて低くすることができる。これにより、接触抵抗による発熱分布のばらつきを抑えることができるので、発電反応分布をより均一化でき、発電効率をより向上させることができる。
なお、本実施の形態では、酸化ガス流路のターン部において酸化ガス流路の本数を減少させているが、酸化ガス流路の直線部で酸化ガス流路の本数を減少させてもよい。
また、本実施の形態では、空気極側の流路構造のみについて説明したが、燃料極側の流路構造も空気極側の流路構造と同様のものであってもよい。この場合、燃料極側においても、面内方向の水分分布および燃料ガスの分圧分布をより均一にすることができる。
(実施の形態6)
実施の形態6は、空気極ガス拡散基材層の水蒸気透過性および反応ガス透過性(以下「水蒸気等透過性」という)を、空気極カーボンコート層の水蒸気等透過性よりも低くする例を示す。
実施の形態6の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池セルにおいて、空気極ガス拡散基材層440の水蒸気等透過性を、空気極カーボンコート層430の水蒸気等透過性より低くしたものである。したがって、空気極ガス拡散基材層440および空気極カーボンコート層430以外の重複する構成要素については、説明を省略する。
上記の通り、空気極ガス拡散基材層440は、その水蒸気等透過性を空気極カーボンコート層430の水蒸気等透過性より低くなるように形成されている。このためには、空気極ガス拡散基材層440の水蒸気等透過性を低くするか、または空気極カーボンコート層430の水蒸気等透過性を高くすればよい。
空気極ガス拡散基材層440の水蒸気等透過性を低くする方法は、特に限定されないが、例えば、カーボン繊維により形成される細孔径を小さくする、空気極ガス拡散基材層440を厚くする、空気極ガス拡散基材層440に撥水化処理を施す、など行えばよい。一方、空気極カーボンコート層430の水蒸気等透過性を高くする方法は、空気極カーボンコート層430を薄くする、空気極カーボンコート層430に親水化処理を施す、などを行えばよい。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、空気極触媒層410で生成される水蒸気が、酸化ガス流路に排出されることが防止され、カーボンコート層内部で面内方向に移動するようになる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、空気極触媒層で生成された水が水蒸気となり酸化ガス流路に排出されることを防止することができるため、触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を保持させることができる。また、カーボンコート層内部に滞留する水蒸気を面内方向に移動しやすくすることができる。これにより、燃料電池セル内の水分量をより均一化することができるので、発電反応分布をより均一化し、発電効率をより向上させることができる。本実施の形態に係る燃料電池は、高温無加湿で動作させても触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を均一に保持させることができるため、高温無加湿運転の燃料電池に特に好適である。
なお、本実施の形態では、水蒸気およびガス両方の透過性について調整する例について説明したが、水蒸気透過性のみを調整するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、空気極側における調整例について説明したが、燃料極側においても同様の調整を行ってもよい。この場合、燃料極側においても、触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を保持させることができ、また、面内方向の水分分布をより均一にすることができる。
(実施の形態7)
実施の形態6では、ガス拡散基材層が単一の層から構成される例を示した。実施の形態7は、ガス拡散基材層が複数の層から構成されており、外側の層ほど水蒸気透過性および反応ガス透過性(水蒸気等透過性)を低くする例を示す。
図12は、本発明の実施の形態7に係る燃料電池セルの断面図である。実施の形態1の燃料電池セルと同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図12において、燃料電池セルは、高分子電解質膜200、一対の触媒電極(燃料極300および空気極400)、ならびに一対のセパレータ(燃料極セパレータ600および空気極セパレータ700)を備える。燃料極300は、高分子電解質膜200側に位置する燃料極触媒層310と、燃料極セパレータ600側に位置する燃料極ガス拡散層320から構成される。同様に、空気極400は、高分子電解質膜200側に位置する空気極触媒層410と、空気極セパレータ700側に位置する空気極ガス拡散層420とから構成される。さらに、燃料極ガス拡散層320は、燃料極触媒層310側から、燃料極カーボンコート層330、第一の燃料極ガス拡散基材層342、第二の燃料極ガス拡散基材層344および第三の燃料極ガス拡散基材層346の順に積層されて構成される。同様に、空気極ガス拡散層420は、空気極触媒層410側から、空気極カーボンコート層430、第一の空気極ガス拡散基材層442、第二の空気極ガス拡散基材層444および第三の空気極ガス拡散基材層446の順に積層されて構成される。
燃料極ガス拡散層320を構成する、燃料極カーボンコート層330、第一の燃料極ガス拡散基材層342、第二の燃料極ガス拡散基材層344および第三の燃料極ガス拡散基材層346は、それぞれ異なる水蒸気等透過性を有する。燃料極触媒層310に最も近い燃料極カーボンコート層330は、最も高い水蒸気等透過性を有する。以降、燃料極セパレータ600に近づくにつれて水蒸気等透過性が低くなる。すなわち、最も燃料極セパレータ600に近い第三の燃料極ガス拡散基材層346は、最も低い水蒸気透過性を有する。
同様に、空気極ガス拡散層420を構成する、空気極カーボンコート層430、第一の空気極ガス拡散基材層442、第二の空気極ガス拡散基材層444および第三の空気極ガス拡散基材層446は、それぞれ異なる水蒸気等透過性を有する。空気極触媒層410に最も近い空気極カーボンコート層430は、最も高い水蒸気等透過性を有する。以降、空気極セパレータ700に近づくにつれて水蒸気等透過性が低くなる。すなわち、最も空気極セパレータ700に近い第三の空気極ガス拡散基材層446は、最も低い水蒸気透過性を有する。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、空気極触媒層410で生成される水蒸気が、反応ガス流路に排出されることが防止され、カーボンコート層内部で面内方向に移動するようになる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、空気極触媒層で生成された水が水蒸気となり酸化ガス流路に排出されることを防止することができるため、触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を保持させることができる。また、カーボンコート層内部に滞留する水蒸気を面内方向に移動しやすくすることができる。これにより、燃料電池セル内の水分量をより均一化することができるので、発電反応分布をより均一化し、発電効率をより向上させることができる。本実施の形態に係る燃料電池は、高温無加湿で動作させても触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を均一に保持させることができるため、高温無加湿運転の燃料電池に特に好適である。
なお、本実施の形態では、水蒸気およびガス両方の透過性について調整する例について説明したが、水蒸気透過性のみを調整するようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、複数のガス拡散基材層を積層した構造について説明したが、単一のガス拡散基材層に水蒸気透過性およびガス透過性の傾斜を持たせるようにしてもよい。
(実施の形態8)
実施の形態1〜7では、反応ガス流路の往路と復路との間隔が一定である例を示した。実施の形態8では反応ガス流路の往路と復路との間隔が変化する例を示す。
実施の形態8の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池における空気極セパレータ700を空気極セパレータ902に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ902以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図13は、本発明の実施の形態8に係る燃料電池セルの空気極セパレータの空気極側の面の正面図である。実施の形態1の空気極セパレータ700と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図13において、空気極セパレータ902は酸化ガス供給マニホールド910、酸化ガス排出マニホールド912、酸化ガス流路914、燃料ガス供給マニホールド930、燃料ガス排出マニホールド932、冷却水供給マニホールド740および冷却水排出マニホールド742を有する。
酸化ガス流路914は、酸化ガス供給マニホールド910から供給された酸化ガスを、空気極400の全体に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。また、酸化ガス往路918および酸化ガス復路920は、互いに対向するように形成されている。さらに、往路918と復路920の間隔は、A部(酸化ガス供給マニホールド910および酸化ガス排出マニホールド912付近)では大きく、B部(往復路折り返し部916付近)では小さくされている。前記間隔は、A部からB部にいくにしたがって、段階的または徐々に小さくされてよい。また、A部における前記間隔は2.2mm〜3.3mmが好ましい。さらに、酸化ガス流路914の壁は酸化ガスの透過性を有さないにように形成される。
上記のように構成された燃料電池セルを作動させると、実施の形態1の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路914内の水蒸気の分圧分布が均一になる。また、上流流路と下流流路との間隔は、往復路折り返し部916の往路918と復路920との間隔と比較して大きいため上流流路の酸化ガスが空気極ガス拡散層を通して下流流路へ移動することが抑制される。
以上のように、本実施の形態によれば、空気極触媒層に効率的に反応ガスを供給することができるので、発電効率をより向上させることができる。
なお、本実施の形態では、空気極側の流路構造のみについて説明したが、燃料極側の流路構造も空気極側の流路構造と同様のものであってもよい。この場合、燃料極側においても、面内方向の水分分布の分圧分布をより均一にすることができる。
以下、上流流路と下流流路との間隔を導き出した実験例について説明する。
(実験例1)
本実験例では、流路と流路との最適な間隔を導き出したコンピューターシミュレーションを用いた実験について説明する。
用いたプログラム
本実験例で用いたプログラムは、FLUENT社のFLUENT HYPERLINK "http://www.fluent.co.jp/contents/service/service#12.html" (固体高分子形燃料電池(PEM)モジュール)の電気化学サブモデルである。このプログラムは、各パラメータを設定することで、当該燃料電池セルを動作させた場合の発生電圧を予測するためのものである。
解析条件
以下のパラメータの条件下でシミュレーションを行った。
膜厚:30μm
触媒厚:10μm
GDL(ガス拡散層)厚:300μm
カソード流路深さ:1.1mm
カソード流路幅:1.1mm
アノード流路深さ:1mm
アノード流路幅:1.1mm
セル温度:90℃
アノード露点温度:65℃
カソード露点温度:35℃
電極面積:6.1468cm2
水素利用率:10%
酸素利用率:50〜90%
GDL空隙率:0.75
電流密度:0.16/cm2
表1は、上記条件下において、流路と流路との間隔(以下「リブ幅」という)および酸素利用率と電圧(mV)との関係を示したものである。
表2は、リブ幅と接触抵抗および抵抗損(電圧低下量)との関係を示したものである。表2から、リブ幅が大きくなるに伴い、接触抵抗および抵抗損も増加していることが分かる。この理由は以下のとおりである。リブ幅が大きくなると、セパレータとGDLとの接触面積が増大する。セパレータとGDLとの接触面積が増加すると、セルに同じ締結力を加えた場合、単位面積当たりの荷重が低下する。そして、接触抵抗は、単位面積あたりの荷重が低下することで、累乗的に増加する。このため、リブ幅が増大することで、接触抵抗が増加し、抵抗損が大きくなる。
表3は、表1の結果から表2の抵抗損を差し引いた結果である。表3は、想定される抵抗損を考慮したことから、表1と比較してより実際の値に近い値を示す。
図14は、表3における酸素利用率80%でのリブ幅と電圧との関係をグラフで示したものである。
図14のグラフにおいては、縦軸が電圧、横軸がリブ幅である。リブ幅が1.1mmから3.3mmまでの領域では、リブ幅の増大に伴い、電圧も増加する。電圧はリブ幅が3.3mmのときにピークを有する。リブ幅が4.4mmのときの電圧は、リブ幅が3.3mmのときの電圧およびリブ幅が2.2mmのときの電圧と比較して、小さい。
以上の結果から、上記解析条件において、高い電圧を維持するために最適なリブ幅は2.2mm〜3.3mmであるということが明らかとなった。
(実験例2)
本実験例では実験例1と同一のプログラムを用いて、最適な流路と流路との間隔を導き出した実験について説明する。本実験例では実験例1とは異なりGDL厚のパラメータを200μmとした。GDL膜以外の解析条件は、実験例1と同じである。
表4は、上記条件下において、リブ幅および酸素利用率と電圧(mV)との関係を示したものである。
表5は、表4の結果から表2の抵抗損を差し引いた結果である。表5は、想定される抵抗損を考慮したことから、表4と比較してより実際の値に近い値を示す。
図15は、表5における酸素利用率80%でのリブ幅と電圧との関係をグラフで示したものである。
図15のグラフにおいては、縦軸が電圧、横軸がリブ幅となっている。リブ幅が1.1mmから2.2mmまでの領域では、リブ幅の増大に伴い、電圧も増加する。電圧は、リブ幅が2.2mmのときにピークを有する。リブ幅が2.2mmから4.4mmまでの領域では、リブ幅の増大に伴い、電圧は減少する。リブ幅が4.4mmのときの電圧は、リブ幅が2.2mmのときの電圧およびリブ幅が3.3mmのときの電圧と比較して顕著に小さい。
以上の結果から、上記解析条件において、高い電圧を維持するために最適なリブ幅は2.2mm〜3.3mmであるということが明らかとなった。
実験例1および実験例2の結果から、GDL厚が200μm〜300μm、そして流路幅が1.1mm、流路の深さが1.1mmの場合、リブ幅は2.2mm〜3.3mm、つまりリブ幅は流路幅の2倍から3倍であると、燃料電池セルは最も効率的に発電できることが明らかとなった。
本出願は、2006年6月21日出願の特願2006−171995に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明に係る燃料電池セルおよび燃料電池セルスタックは、高温低加湿または高温無加湿運転の固体高分子形燃料電池などにおいて有用である。
本発明は、燃料電池に関し、特に、高分子電解質膜を有する固体高分子形燃料電池に関する。
燃料電池は、基本的には、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜、ならびに高分子電解質膜を挟持する一対の触媒電極(燃料極および空気極)から構成される。上記構成を有する燃料電池は、燃料極(アノード)に供給される燃料ガス(水素を含む)、および空気極(カソード)に供給される酸化ガス(酸素を含む)を用いて、電気エネルギーを継続的に取り出すことができる。
触媒電極は、高分子電解質膜側に位置し、触媒電極内における酸化還元反応を促進させる触媒層と、触媒層の外側に位置し、通気性および導電性を有するガス拡散層とから構成される。さらに、ガス拡散層は、触媒層側に位置し、触媒層との接触性を向上させるカーボンコート層と、外部から供給されるガスを拡散させて、触媒層に供給するためのガス拡散基材層とから構成される。これら高分子電解質膜および一対の触媒電極(触媒層、カーボンコート層およびガス拡散基材層)を一体化したものは、膜電極接合体(membrane electrode assembly;以下「MEA」という)と呼ばれる。
MEAは、積層されることで電気的に直列に接続されうる。このとき、燃料ガスと酸化ガスとを混ざらないようにするため、および各MEAを電気的に直列に接続するために、導電性を有するセパレータが各MEAの間に配置される。MEAを一対のセパレータで挟持したものは「燃料電池セル」または単に「セル」と呼ばれ、複数の燃料電池セルの積層体は「燃料電池スタック」または単に「スタック」と呼ばれる。
燃料電池セルにおいて、セパレータの触媒電極と接する面には、触媒電極に反応ガス(燃料ガスまたは酸化ガス)を提供するため、ならびに余剰ガスおよび余剰水分を排出するためのガス流路が形成されている。セパレータ内のガス流路は、通常、直線状の複数の並行流路であり、マニホールドと呼ばれる燃料電池スタックを貫く管に連通している。マニホールドは、燃料電池スタック内のすべての燃料電池セルについて、ガス流路への反応ガスの供給、ならびにガス流路からの余剰ガスおよび余剰水分の排出を行う。
通常、セルまたはスタックは、集電板、絶縁板、および端板によって挟持され、一般的に用いられる形の燃料電池となる。
上記構成を有する燃料電池において、燃料極に水素を含む燃料ガスを、空気極に酸素を含む酸化ガスを供給すると、以下の反応により電気エネルギーを得ることができる。
まず、燃料極に供給された水素は、燃料極のガス拡散層を拡散し触媒層に達する。触媒層において、水素は、水素イオンと電子に分けられる。水素イオンは、保水状態の高分子電解質膜を通して空気極に移動する。電子は、外部回路を通して空気極に移動する。このとき、外部回路を通る電子は、電気エネルギーとして利用されうる。空気極の触媒層では、高分子電解質膜を通して移動してきた水素イオンと、外部回路を通して移動してきた電子と、空気極に供給された酸素とが反応し、水が生成される。
燃料電池は、上記の通り、発電反応に伴い水を生成する。燃料電池は、セル内部が湿潤過多になると発電効率が落ちてしまうため、発電時に生成された水は、セパレータのガス流路を流れるガスにより外部に排出される。
水素イオンが移動する高分子電解質膜は、パーフルオロスルホン酸系の材料が用いられることが多い。この高分子電解質膜は、十分に保水しているとイオン伝導性を有するが、乾燥してしまうとイオン伝導性を失ってしまう。したがって、燃料電池セルの全面において発電反応を効率的に生じさせるためには、セル内部の乾燥を防ぎ、かつセル内部の面内方向の水分分布を均一にすることが必要である。
従来、セル内部の乾燥を防ぎ、かつセル内部の面内方向の水分分布を均一にするために、外部からセル内部を加湿する外部加湿方式がとられてきた。外部加湿方式では、外部加湿器は、露点温度が燃料電池セル内部の温度よりも高い反応ガスをセル内部に供給することで、セル内部を過湿状態にする。しかし、この方式では、ガス拡散層内部に水滴が生じてしまい、触媒層への反応ガスの供給が阻害されてしまうフラッディング現象が生じやすいという問題がある。また、外部加湿器が必要であるため、燃料電池システムの低コスト化が困難であるという問題もある。さらに、燃料電池セル内部の温度を外部加湿器で実現できる反応ガスの露点温度よりも低くしなければならないため、発電効率の高い高温での運転ができないという問題もある。
上記外部加湿方式の問題点を解決する方式として、発電反応によって生じる水をセル内部に拡散させることでセル内部を加湿する内部加湿方式がある。しかし、内部加湿方式では、外部から供給される反応ガスは乾燥しているため、反応ガスの入口側の高分子電解質膜は乾燥しやすい。一方、ガス流路を通過した反応ガスは発電反応により生成された水分を含むため、反応ガスの出口側の高分子電解質膜は湿潤過多になることが多い。このように、内部加湿方式では、セル内部の面内方向の水分分布に偏りが生じるため、発電反応は主に反応ガス出口側で生じるようになり、全体としての発電効率が低下してしまうという問題がある。
上記内部加湿方式の問題点を解決する方式として、反応ガス供給マニホールドと反応ガス排出マニホールドとを隣接させる方式がある(例えば、特許文献1参照)。
図1は、特許文献1の燃料電池セルの正面図(透視図)である。燃料極側のセパレータの構造は実線で示されており、空気極側のセパレータの構造は破線で示されている。図1において、燃料ガス供給マニホールド10および燃料ガス排出マニホールド12は、互いに隣接するように配置されており、矩形状の燃料ガス流路14によって互いに連通されている。同様に、酸化ガス供給マニホールド20および酸化ガス排出マニホールド22は、互いに隣接するように配置されており、矩形状の酸化ガス流路24によって互いに連通されている。上記構成をとることにより、反応ガスの出口側(排出マニホールド側)の水分が、電解質膜を通って反応ガスの入口側(供給マニホールド側)に移行する。これにより、ガス出口側における湿潤過多の抑制、およびガス入口側における乾燥の抑制を実現することができる。
このように、反応ガス供給マニホールドと反応ガス排出マニホールドとを隣接させることにより、水分を電解質膜を通して面内方向に移行させることができ、高分子電解質膜の面内方向の水分分布を均一にすることができる。
しかしながら、特許文献1の燃料電池では、セルの面積を大きくするには、セルおよびスタック内の構造を複雑にしなければならないという問題がある。すなわち、特許文献1の燃料電池は、矩形状のガス流路それぞれについて、反応ガス供給マニホールドと反応ガス排出マニホールドとを隣接させる構造のため、セルの1辺の長さが長くなるにつれて、マニホールドおよびそれに付随する構造物の数を増加させなければならない(図1参照)。したがって、セルの面積を大きくすると、セルおよびスタック内の構造が複雑になり、その製造コストが高くなってしまうのである。
また、特許文献1の燃料電池には、面内方向の水分移行能力が低いという問題もある。すなわち、反応ガスの出口側と入口側との間の水分移行は、それぞれが有する水分量の差が大きいほどより効率的に行われる。出口側の反応ガスの水分量を多くするには、反応ガス流路の長さを長くすればよい。しかし、特許文献1の燃料電池は、ガス流路が矩形状のため、ガス流路の長さはセルの辺の長さおよびマニホールド間の距離によって制限されてしまう(図1参照)。したがって、特許文献1の燃料電池は、面内方向の水分移行能力が低いのである。
上記問題点を解決する技術として、例えば特許文献2に示されているものがある。
図2は、特許文献2の燃料電池セルの空気極側のセパレータの正面図である。図2において酸化ガス供給マニホールド1aおよび酸化ガス排出マニホールド1bは、互いに隣接するように配置されている。さらに、流路25は蛇行状の往復流路であり往路と復路は隣接している。この構造をとることにより、マニホールドの数を減少させることができる。これにより、燃料電池セルの面積を大きくしてもセルおよびスタックの構造が複雑になることはない。流路の輪郭を決定するリブは多孔質であり、往路と復路を結ぶ毛細管を備えている。この構造をとることにより、反応ガスの出口側(排出マニホールド側)の水分が、反応ガスの入口側(供給マニホールド側)に移動する。これにより、高分子電解質膜の面内方向の水分分布を均一にすることができる。
反応ガス入口(反応ガス供給マニホールド)側の反応ガス分圧と反応ガス出口(反応ガス排出マニホールド)側のガス分圧とを均一にするために、反応ガス流路の断面積を上流側から下流側に向かって定められた割合で減少するようにする方式がある(例えば、特許文献3参照)。特許文献3では、複数並列接続された反応ガス流路において、下流部の並列数を上流部の並列数より少なくすることで、下流部の断面積を上流部の断面積に比べて小さくしている。また、特許文献3では、マニホールドの数を減少させるために、ガス流路を蛇行させている。
特開2002−151105号公報
特開2003−109620号公報
特開昭56−134473号公報
特許文献2の燃料電池は、往路と復路を結ぶ毛細管を通って、流路の上流側から流路の下流側へ水分だけでなく、反応ガスも移動する。したがって、特許文献2の燃料電池セルには、流路の上流側から流路の下流側へ反応ガスが移動し、流路の上流側と流路の下流側との間で反応ガスが循環するため、充分な量の反応ガスがセル全体に行き届かないという問題がある。
本発明の目的は、高分子電解質の面内方向の水分分布を均一にし、かつ空気極触媒層に効率的に酸化ガスを供給することができる燃料電池を提供することである。
本発明の燃料電池は、高分子電解質膜および前記高分子電解質膜を挟持する一対の触媒電極を有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体に燃料ガスまたは酸化ガスを供給するためのガス流路を有するセパレータとを備える燃料電池であって、前記ガス流路は、蛇行状または渦巻状に形成され、前記ガス流路の上流流路は、前記ガス流路の下流流路に隣接し、前記ガス流路の壁は、前記ガスの透過性を有さない。
本発明によれば、高分子電解質膜の面内方向の水分分布を均一にすることができる。特に、高温低加湿または高温無加湿で運転しても、高分子電解質膜の面内方向の水分分布を均一にすることができるため、高温低加湿または高温無加湿運転の燃料電池を提供することができる。さらに流路間の酸化ガスの移動を抑制することができるため、空気極触媒層に効率的に反応ガスを供給することができる。
本発明の燃料電池は、少なくとも一つの燃料電池セルを備える。すなわち、本発明の燃料電池は、燃料電池セル単体であってもよく、複数のセルを有する燃料電池スタックであってもよい。通常、燃料電池セルまたはスタックは、集電板、絶縁板および端板によって挟持され、さらに締結ロッドにより固定される。
燃料電池セルは、高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟持する一対の触媒電極(燃料極および空気極)と、MEA(高分子電解質膜および触媒電極の集合体)を挟持するセパレータとを備える。触媒電極は、高分子電解質膜側に位置する触媒層と、セパレータ側に位置するガス拡散層とから構成される。
高分子電解質膜は、水素イオン伝導性を有する高分子膜である。高分子電解質膜の材料は、水素イオンを選択的に移動させるものであれば特に限定されない。
触媒層は、水素または酸素の酸化還元反応に対する触媒を含む層である。触媒層は、導電性を有し、かつ水素および酸素の酸化還元反応に対する触媒能を有するものであれば特に限定されない。
ガス拡散層は、導電性を有する多孔質層である。ガス拡散層の材料は、導電性を有し、かつ反応ガスが拡散できるものであれば特に限定されない。ガス拡散層は、セパレータ側から供給されるガスを触媒層に拡散させるガス拡散基材層と、ガス拡散基材層と触媒層との接触性を向上させるカーボンコート層とから構成されていてもよい。
セパレータは、燃料極と接する面に燃料ガス流路、空気極と接する面に酸化ガス流路を有する導電性の板である。セパレータの材質の例にはカーボンや金属などが含まれる。セパレータがガス流路を有する面は、凹部と凸部を有し、凹部がガス流路を形成する。
セパレータはカーボン粉末と樹脂バインダとを混合した原料粉を金型に供給し、金型に供給された原料粉に圧力と熱を加えることによって形成されたもの(以下「カーボンセパレータ」という)でもよい。カーボンセパレータは、例えば特開2000−243409号公報に記載されている。
また、セパレータは、金属プレートからなるもの(以下「金属セパレータ」という)であってもよい。金属セパレータは、例えば特開2003−203644号公報、特開2005−276637号公報に記載されている。
金属セパレータを構成する金属プレートは、表面および裏面を有する。金属プレートでは、表面の凹部が当該箇所の裏面の凸部に対応するもので、かつ表面の凸部が当該箇所の裏面の凹部に対応するものであってもよい。金属プレートに反応ガス流路を形成する方法は特に限定されない。例えば、金属プレートに反応ガス流路を形成する方法はプレス加工である。
金属プレートの材質は、導電性および耐食性に優れたものであれば特に限定されない。金属プレートの材質の例には、ステンレス鋼が含まれる。金属プレートの厚さは、セパレータを形成する強度があれば特に限定されない。例えば、金属プレートの厚さは0.01mm〜1mmである。金属セパレータの大きさはMEAを挟持できるのであれば特に限定されず、適宜設定されればよい。
金属セパレータを用いることで、セパレータの厚さが1mm以下であっても十分な強度がえられる。これによりセルおよびスタックの小型化および軽量化が可能となる。また金属セパレータはプレス加工などにより容易に製造されうることから、コスト削減および大量生産が可能となる。
セパレータ内の反応ガス流路は、ガス流路の入口近傍の流路(以下「上流流路」という)とガス流路の出口近傍の流路(以下「下流流路」という)とが同一面内で隣接するように形成されており、かつ触媒電極の全面に反応ガスを供給できるように形成されている。さらに反応ガス流路の壁は、反応ガスの透過性を有さないように形成されている。ここで「反応ガス流路の壁」とは、隣接する2本の反応ガス流路の間に位置するセパレータの凸部を意味する。触媒電極の全面に反応ガスを供給するには、例えば、反応ガス流路を蛇行状または渦巻状に形成すればよい。なお、同一のガス流路の上流流路と下流流路とが隣接する必要はなく、第一のガス流路の上流流路と第二のガス流路の下流流路とが隣接するようにしてもよい。ガス拡散相の厚さが200μm〜300μm、そして流路の幅が1.1mm、流路の深さが1.1mmの場合、上流流路と下流流路との間隔は、2.2mm〜3.3mmであるとき、燃料電池セルの発電効率は、最も高くなる。したがって、ガス拡散相の厚さが200〜300μm、そして流路の幅が1.1mm、流路の深さが1.1mmの場合、上流流路と下流流路との間隔は、2.2mm〜3.3mmであることが好ましい。反応ガス流路の流路構造の例が、図3に示される。
図3Aに示される例では、セパレータ100に形成された反応ガス流路102は、往復路折り返し部112より流路入口108側の反応ガス往路104と流路出口110側の反応ガス復路106とが流路全体に渡って対向するように形成された往復流路であり、かつ往路104と復路106とが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。ここで「対向する」とは、2本の流路が隣接しており、かつ2本の流路の反応ガスの流れる向きが逆方向であることを意味する。このように、反応ガス流路は、反応ガス流路出入口近傍の流路(上流流路および下流流路)だけでなく、流路全体に渡って対向するように形成されるのが好ましい。また、流路入口108および流路出口110は、互いに隣接しているのが好ましい。
図3Bに示される例では、反応ガス流路102は、図3Aに示される例と同様の往復流路であり、かつ反応ガス往路104と反応ガス復路106とが隣接された状態を維持しながら渦巻状にされている。
図3Cに示される例は、セパレータ100内に2本の反応ガス流路102a,102bが形成されている例である。反応ガス流路102aと反応ガス流路102bとは、流路全体に渡って対向しており、かつ反応ガス流路102aと反応ガス流路102bとが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。
本発明の燃料電池において、セパレータ内の燃料ガス流路に水素ガスを含む燃料ガスを、酸化ガス流路に酸素ガスを含む酸化ガスを供給すると、以下の反応により電気エネルギーを得ることができる。
まず、燃料極に供給された水素分子は、燃料極のガス拡散層を拡散し触媒層に達する。触媒層において、水素分子は、水素イオンと電子に分けられる。水素イオンは、加湿された高分子電解質膜を通して空気極に移動する。電子は、外部回路を通して空気極に移動する。このとき、外部回路を通る電子は、電気エネルギーとして利用されうる。空気極の触媒層では、高分子電解質膜を通して移動してきた水素イオンと、外部回路を通して移動してきた電子と、空気極に供給された酸素とが反応し、水が生成される。
本発明の燃料電池では、反応ガス流路の上流流路と下流流路とを隣接するように形成することで、燃料電池セル内部で面内方向の水分移行が行われる。以下、空気極側における面内方向の水分移行について説明する。
発電時の燃料電池セルは高温のため、発電時に空気極の触媒層で生成した水は水蒸気となる。この水蒸気は、空気極のガス拡散層内を拡散移動し、酸化ガス流路内の酸化ガスを加湿する。酸化ガス流路を流れる酸化ガスは、入口から出口に向かって進むにつれて、その水蒸気分圧が高められる。すなわち、酸化ガス流路の下流流路を流れる酸化ガスの水蒸気分圧は、隣接する上流流路を流れる酸化ガスの水蒸気分圧よりも高くなる。この水蒸気分圧の差により、下流流路を流れる水蒸気の一部は、ガス拡散層を介して、隣接する上流流路に移動する。結果として、下流流路から上流流路に面内方向に水分移行が行われる。
このように、本発明の燃料電池では、上流流路と下流流路とを隣接させることにより、上流流路を流れる反応ガス内の水分量と下流流路を流れる反応ガスの水分量との差を減少させることができる。これにより、下流流路に近接する部位における高分子電解質膜の湿潤過多を抑制すること、および上流流路に近接する部位における高分子電解質膜の乾燥を抑制することが実現できる。すなわち、本発明の燃料電池を無加湿(内部加湿方式)で用いても、セル内部の面内方向の水分分布を均一にすることができる。
また、本発明の燃料電池では、反応ガス流路は、上流流路と下流流路との隣接した状態を維持しつつ、蛇行状または渦巻状に形成される。これにより、マニホールドやそれに付随する構造物の数を減らすことができるため、燃料電池セルおよび燃料電池スタックの構造を単純にすることができる。また、ガス流路を蛇行状または渦巻状にすることでガス流路を長くすることができるため、上流流路と下流流路との水蒸気分圧の差が大きくなり、面内方向の水分移行が従来技術と比較してより効率的に行われる。
さらに、本発明の燃料電池では、反応ガス流路の壁を反応ガスの透過性を有さないようにすることで、流路間の反応ガスの循環を抑制することができる。これにより触媒層に効率的に反応ガスを供給することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図4は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池セルの断面図である。
図4において燃料電池セルは、高分子電解質膜200と、高分子電解質膜200を挟持する一対の触媒電極(燃料極300および空気極400)と、MEA500(高分子電解質膜200および触媒電極300,400の集合体)を挟持する一対のセパレータ(燃料極セパレータ600および空気極セパレータ700)とを備える。セパレータ600,700の材質は例えばカーボンである。燃料極セパレータ600は燃料ガス流路614を備える。空気極セパレータ700は酸化ガス流路714を備える。燃料極300は、高分子電解質膜側に位置する燃料極触媒層310、および燃料極セパレータ側に位置する燃料極ガス拡散層320から構成される。同様に、空気極400は、高分子電解質膜側に位置する空気極触媒層410、および空気極セパレータ側に位置する空気極ガス拡散層420から構成される。さらに、燃料極ガス拡散層320は、燃料極触媒層側に位置する燃料極カーボンコート層330、および燃料極セパレータ側に位置する燃料極ガス拡散基材層340から構成される。同様に、空気極ガス拡散層420は、空気極触媒層側に位置する空気極カーボンコート層430、および空気極セパレータ側に位置する空気極ガス拡散基材層440から構成される。
高分子電解質膜200、燃料極触媒層310、燃料極カーボンコート層330、燃料極ガス拡散基材層340、空気極触媒層410、空気極カーボンコート層430、および空気極ガス拡散基材層440は、前述のものを用いればよい。
図5は、図4に示される燃料極セパレータ600の燃料極側の面の正面図である。
図5において、燃料極セパレータ600は、燃料ガス供給マニホールド610、燃料ガス排出マニホールド612、燃料ガス流路614、酸化ガス供給マニホールド630、酸化ガス排出マニホールド632、冷却水供給マニホールド640、および冷却水排出マニホールド642を有する。燃料ガス流路614は、燃料ガス供給マニホールド610から往復路折り返し部616までの燃料ガス往路618と、往復路折り返し部616から燃料ガス排出マニホールド612までの燃料ガス復路620とからなる。
燃料ガス供給マニホールド610は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに燃料ガスを供給するための孔であり、燃料ガス流路614に燃料ガスを供給する。
燃料ガス排出マニホールド612は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから燃料ガスを排出するための孔であり、燃料ガス流路614から燃料ガスを排出する。
燃料ガス流路614は、燃料ガス供給マニホールド610から供給された燃料ガスを、燃料極300の全面に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。また、燃料ガス往路618および燃料ガス復路620は、互いに対向するように形成されている。燃料ガス流路614の壁は燃料ガスの透過性を有さないように形成されている。
酸化ガス供給マニホールド630は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに酸化ガスを供給するための孔である。また、酸化ガス排出マニホールド632は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから酸化ガスを排出するための孔である。
冷却水供給マニホールド640は、燃料電池スタック内に冷却水を供給するための孔である。また、冷却水排出マニホールド642は、燃料電池スタック内から冷却水を排出するための孔である。図示しない冷却水流路は、冷却水供給マニホールド640と冷却水排出マニホールド642とを連通する流路であり、例えば、燃料極セパレータ600または空気極セパレータ700に形成される。冷却水流路は、例えば、燃料電池スタック内において、燃料極セパレータ600と空気極セパレータ700との間に位置するように、燃料極セパレータ600または空気極セパレータ700の反応ガス流路が形成されていない面に形成されればよい。このとき、セルごとに冷却水流路を形成してもよいし、数セルごとに冷却水流路を形成してもよい。また、冷却水の流路構造は、特に限定されず、直線状の複数の並行流路であってもよいし、蛇行状または渦巻状であってもよい。
図6は、図4に示される空気極セパレータ700の空気極側の面の正面図である。
図6において、空気極セパレータ700は、酸化ガス供給マニホールド710、酸化ガス排出マニホールド712、酸化ガス流路714、燃料ガス供給マニホールド730、燃料ガス排出マニホールド732、冷却水供給マニホールド740、および冷却水排出マニホールド742を有する。酸化ガス流路714は、酸化ガス供給マニホールド710から往復路折り返し部716までの酸化ガス往路718と、往復路折り返し部716から酸化ガス排出マニホールド712までの酸化ガス復路720とからなる。
酸化ガス供給マニホールド710は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに酸化ガスを供給するための孔であり、酸化ガス流路714に酸化ガスを供給する。酸化ガス供給マニホールド710は、図5に示される酸化ガス供給マニホールド630と連通している。
酸化ガス排出マニホールド712は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから酸化ガスを排出するための孔であり、酸化ガス流路714から酸化ガスを排出する。酸化ガス排出マニホールド712は、図5に示される酸化ガス排出マニホールド632と連通している。
酸化ガス流路714は、酸化ガス供給マニホールド710から供給された酸化ガスを、空気極400の全面に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。また、酸化ガス往路718および酸化ガス復路720は、互いに対向するように形成されている。酸化ガス流路714の壁は酸化ガスの透過性を有さないように形成される。また、酸化ガス流路の幅は1.1mm、深さは1.1mmであることが好ましい。さらに、下流流路(酸化ガス排出マニホールド712近傍の酸化ガス流路714)と上流流路(酸化ガス供給マニホールド710近傍の酸化ガス流路714)との間隔は2.2mm〜3.3mmであることが好ましい。つまり上流流路と下流流路との間隔は酸化ガス流路714の幅の2倍〜3倍が好ましい。
燃料ガス供給マニホールド730は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに燃料ガスを供給するための孔である。燃料ガス供給マニホールド730は、図5に示される燃料ガス供給マニホールド610と連通している。
燃料ガス排出マニホールド732は、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから燃料ガスを排出するための孔である。燃料ガス排出マニホールド732は、図5に示される燃料ガス排出マニホールド612と連通している。
冷却水供給マニホールド740は、燃料電池スタック内に冷却水を供給するための孔である。冷却水供給マニホールド740は、図5に示される冷却水供給マニホールド640と連通している。また、冷却水排出マニホールド742は、燃料電池スタック内から冷却水を排出するための孔である。冷却水排出マニホールド742は、図5に示される冷却水排出マニホールド642と連通している。
以下、上記のように構成された燃料電池セルにおける、運転時の発電のメカニズムについて説明する。
燃料電池セルの燃料ガス供給マニホールド610,730に供給された燃料ガスは、燃料極セパレータ600内部の燃料ガス流路614に供給される。燃料ガス流路614内の酸化ガスは、燃料極ガス拡散層320を通って燃料極触媒層310に拡散移動する。
一方、燃料電池セルの酸化ガス供給マニホールド630,710に供給された酸化ガスは、空気極セパレータ700内部の酸化ガス流路714に供給される。酸化ガス流路714内の酸化ガスは、空気極拡散層420を通って空気極触媒層410に拡散移動する。
燃料極触媒層310では、燃料ガス流路614から移動してきた燃料ガスに含まれる水素分子が、水素イオンと電子に分けられる。水素イオンは、保水された高分子電解質膜200を通って空気極触媒層410に拡散移動する。一方、電子は、図示しない外部回路を通って空気極触媒層410に移動する。
空気極触媒層410では、高分子電解質膜200を通って移動してきた水素イオン、外部回路を通って移動してきた電子、および酸化ガス流路714から移動してきた酸素が反応し、水が生成される。
発電時の燃料電池セルは高温のため、生成した水は、水蒸気となり、空気極ガス拡散層420を通って酸化ガス流路714に拡散移動し、酸化ガス流路714内の酸化ガスを加湿する。酸化ガスは、酸化ガス流路714内を進むにつれて加湿量が増加していく。したがって、酸化ガス復路720を流れる酸化ガス内の水蒸気の分圧は、対向する酸化ガス往路718を流れる酸化ガス内の水蒸気の分圧に比べて高くなる。この水蒸気の分圧差は、特に、下流流路と上流流路との間で顕著になる。この水蒸気の分圧差により、酸化ガス復路720内の水蒸気は、空気極ガス拡散層420を通って対向する酸化ガス往路718内に面内方向に移動する。これにより、酸化ガス流路714内の水蒸気の分圧分布が均一になる。
燃料極側でも同様の作用により、燃料ガス復路620内の水蒸気は、燃料極ガス拡散層320を通って対向する燃料ガス往路618内に面内方向に移動する。
以上のように、本実施の形態によれば、反応ガス流路の往路と復路とが流路全体に渡って対向するように形成されているため、反応ガス流路内における水蒸気の分圧分布を均一にすることができる。したがって、本実施の形態によれば、燃料電池セルの全面を効率的に利用することができ、高い発電性能と発電安定性を得ることができる。
また、反応ガス流路の壁を反応ガスの透過性を有さないようにすることで、流路間の反応ガスの循環を抑制することができる。これにより触媒層に効率的に反応ガスを供給することができる。
さらに、本実施の形態によれば、反応ガス流路は蛇行状に形成されているため、反応ガス流路および各種マニホールドの数が少数であっても、燃料電池セル全面に対して反応ガスを供給することができる。したがって、本実施の形態によれば、セルの面積を大きくしてもセルおよびスタックの構造を複雑にすることなく、高い発電性能と発電安定性を得ることができる。
なお、本実施の形態では、反応ガス流路の往路と復路とが同一面内で対向するように形成されたセパレータを、燃料極側と空気極側の両方に適用したが、水蒸気が生成される空気極側のみに適用するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、一対のマニホールド間を連通するガス流路の数を2本としたが、ガス流路の数は1本でも、3本以上でもよい。
(実施の形態2)
実施の形態2では、セパレータの素材に金属を用いた例を示す。
実施の形態2の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池セルにおける空気極セパレータ700を空気極セパレータ900に、燃料極セパレータ600を燃料極セパレータ800に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ900および燃料極セパレータ800以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る燃料電池セルの断面図である。実施の形態1の空気極セパレータ700および燃料極セパレータ600と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図7において金属セパレータは金属プレートから構成される。燃料極セパレータは燃料ガス流路814を備える。空気極セパレータ900は酸化ガス流路914を備える。
酸化ガス流路914および燃料ガス流路814の形状は酸化ガス流路714と同じであってよい。すなわち、酸化ガス流路914は、酸化ガス供給マニホールドから供給された酸化ガスを、空気極400の全面に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。酸化ガス往路および酸化ガス復路は、互いに対向するように形成されている。また、燃料ガス流路814は、燃料ガス供給マニホールドから供給されたガスを、燃料極300の全面に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。燃料ガス往路および燃料ガス復路は、互いに対向するように形成されている。
図8は、図7の燃料電池セルが積層されることによって構成された燃料電池スタックの断面図である。
図8において燃料電池スタックは、MEA500と金属セパレータ800および金属セパレータ900から構成される複合金属セパレータ1000とが交互に積層されることで構成される。複合金属セパレータ1000の燃料ガス拡散層側は、燃料ガス流路814を形成し、複合金属セパレータ1000の酸化ガス拡散層側は酸化ガス流路914を形成する。金属セパレータ1000内の空間は冷却水流路を形成する。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、実施の形態1の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路内の水蒸気の分圧分布が均一になる。
また、金属プレートは反応ガスを透過性を有さないことから、金属セパレータを用いることで流路間の反応ガスの循環をより抑制することができる。これにより空気極触媒層に効率的に反応ガスを供給することができる。
さらに、金属セパレータは厚さが1mm以下であっても十分な強度を示す。これによりセル及びスタックの小型化および軽量化が可能となる。また金属セパレータはプレス加工などにより容易に製造されうることから、コスト削減および大量生産が可能となる。
(実施の形態3)
実施の形態1では、一つの流路の往路と復路を対向させる例を示した。実施の形態3は、二つの異なる流路を互いに対向させる例を示す。
実施の形態3の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池セルにおける空気極セパレータ700を空気極セパレータ702に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ702以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図9は、本発明の実施の形態3に係る燃料電池の空気極セパレータの空気極側の面の正面図である。実施の形態1の空気極セパレータ700と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図9において、空気極セパレータ702は、第一の酸化ガス供給マニホールド710a、第二の酸化ガス供給マニホールド710b、第一の酸化ガス排出マニホールド712a、第二の酸化ガス排出マニホールド712b、第一の酸化ガス流路714a、第二の酸化ガス流路714b、第一の燃料ガス供給マニホールド730a、第二の燃料ガス供給マニホールド730b、第一の燃料ガス排出マニホールド732a、第二の燃料ガス排出マニホールド732b、冷却水供給マニホールド740、および冷却水排出マニホールド742を有する。
第一の酸化ガス供給マニホールド710aおよび第二の酸化ガス供給マニホールド710bは、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに酸化ガスを供給するための孔である。第一の酸化ガス供給マニホールド710aは、第一の酸化ガス流路714aに酸化ガスを提供する。同様に、第二の酸化ガス供給マニホールド710bは、第二の酸化ガス流路714bに酸化ガスを供給する。
第一の酸化ガス排出マニホールド712aおよび第二の酸化ガス排出マニホールド712bは、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから酸化ガスを排出するための孔である。第一の酸化ガス排出マニホールド712aは、第一の酸化ガス流路714aから酸化ガスを排出する。同様に、第二の酸化ガス排出マニホールド712bは、第二の酸化ガス流路714bから酸化ガスを排出する。
第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、第一の酸化ガス供給マニホールド710aまたは第二の酸化ガス供給マニホールド710bから供給された酸化ガスを、空気極400全面に供給するための流路である。第一の酸化ガス流路714aは、第一の酸化ガス供給マニホールド710aおよび第一の酸化ガス排出マニホールド712aと連通している。同様に、第二の酸化ガス流路714bは、第二の酸化ガス供給マニホールド710bおよび第二の酸化ガス排出マニホールド712bと連通している。第一の酸化ガス流路714aと第二の酸化ガス流路714bとは、全体に渡って対向しており、かつ第一の酸化ガス流路714aと第二の酸化ガス流路714bとが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。酸化ガス流路(714a、714b)の壁は酸化ガスの透過性を有さないように形成される。第一の酸化ガス流路714aの上流流路と第二の酸化ガス流路714bの下流流路との間隔または第一の酸化ガス流路714aの下流流路と第二の酸化ガス流路714bの上流流路との間隔は2.2mm〜3.3mmが好ましい。
第一の燃料ガス供給マニホールド730aおよび第二の燃料ガス供給マニホールド730bは、燃料電池スタック内の各燃料電池セルに燃料ガスを供給するための孔である。また、第一の燃料ガスの排出マニホールド732aおよび第二の燃料ガス供給マニホールド732bは、燃料電池スタック内の各燃料電池セルから燃料ガスを排出するための孔である。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、実施の形態1の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路内の水蒸気の分圧分布が均一になる。すなわち、第一の酸化ガス流路714aの下流流路内の水蒸気は、対向する第二の酸化ガス流路714bの上流流路内に面内方向に移動する。同様に、第二の酸化ガス流路714bの下流流路内の水蒸気は、対向する第一の酸化ガス流路714aの上流流路内に面内方向に移動する。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、酸化ガス流路を燃料電池セル面内に対照的に形成することができるため、酸化ガス流路内における水蒸気の分圧分布をより均一にすることができる。したがって、燃料電池セルの全面をより効率的に利用することができ、より高い発電性能と発電安定性を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、酸化ガス流路の長さを短くすることができるため、酸化ガス供給マニホールド内における反応ガスの圧力を下げることができる。したがって、酸化ガスを供給するブロワに対する負荷を下げることができるので、発電システム全体の発電効率をより向上させることができる。
なお、本実施の形態では、空気極側の流路構造のみについて説明したが、燃料極側の流路構造も空気極側の流路構造と同様のものであってもよい。この場合、燃料極側においても、面内方向の水分分布の分圧分布をより均一にすることができる。
(実施の形態4)
実施の形態1〜3では、反応ガス流路の断面積が上流流路と下流流路とで同じ例を示した。実施の形態4は、反応ガス流路の断面積が上流流路と下流流路とで異なる例を示す。
実施の形態4の燃料電池は、図4に示される実施の形態1の燃料電池における空気極セパレータ700を空気極セパレータ704に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ704以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図10は、本発明の実施の形態4に係る燃料電池セルの空気極セパレータの空気極側の面の正面図である。実施の形態3の空気極セパレータ702と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図10において、空気極セパレータ704は、第一の酸化ガス供給マニホールド710a、第二の酸化ガス供給マニホールド710b、第一の酸化ガス排出マニホールド712a、第二の酸化ガス排出マニホールド712b、第一の酸化ガス流路714a、第二の酸化ガス流路714b、第一の燃料ガス供給マニホールド730a、第二の燃料ガス供給マニホールド730b、第一の燃料ガス排出マニホールド732a、第二の燃料ガス排出マニホールド732b、冷却水供給マニホールド740、および冷却水排出マニホールド742を有する。
第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、実施の形態3と同様に、全体に渡って対向しており、かつ第一の酸化ガス流路714aと第二の酸化ガス流路714bとが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。さらに、第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、下流流路の幅が上流流路の幅に比べて狭くなるように形成されている。前記幅は、上流流路から下流流路にいくにしたがって、段階的または徐々に小さくされてよい。さらに、酸化ガス流路(714a、714b)の壁は酸化ガスの透過性を有さないように形成される。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、実施の形態3の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路714a,714b内の水蒸気の分圧分布が均一になる。また、酸化ガス流路714a,714bの下流流路の断面積が上流流路の断面積に比べて小さいため、酸化ガスの消費に伴う酸化ガス分圧の減少が抑制される。これにより、酸化ガスが面内方向に移動することなく、酸化ガス流路714a,714b内の酸化ガスの分圧分布が均一になる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1〜3の効果に加え、酸化ガス流路上流流路の酸化ガス分圧を下流流路の酸化ガス分圧に比べて低くすることができるため、上流流路の酸化ガスが下流流路へ空気極ガス拡散層を通して移動することを防止することができる。これにより、空気極触媒層に効率的に反応ガスを供給することができるので、発電効率をより向上させることができる。
なお、本実施の形態では、反応ガス流路の幅を変えることにより反応ガス流路の断面積を調整しているが、ガス流路の断面積は、流路の深さを変えることにより調整してもよい。
また、本実施の形態では、空気極側の流路構造のみについて説明したが、燃料極側の流路構造も空気極側の流路構造と同様のものであってもよい。この場合、燃料極側においても、面内方向の水分分布および燃料ガスの分圧分布をより均一にすることができる。
(実施の形態5)
実施の形態1〜4では、一対のマニホールドを連通する反応ガス流路の本数が上流流路と下流流路とで同じ例を示した。実施の形態5は、一対のマニホールドを連通する反応ガス流路の本数が上流流路と下流流路とで異なる例を示す。
実施の形態5の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池における空気極セパレータ700を空気極セパレータ706に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ706以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図11は、本発明の実施の形態5に係る燃料電池の空気極セパレータの空気極側の面の正面図である。実施の形態3の空気極セパレータ702と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図11において、空気極セパレータ706は、第一の酸化ガス供給マニホールド710a、第二の酸化ガス供給マニホールド710b、第一の酸化ガス排出マニホールド712a、第二の酸化ガス排出マニホールド712b、第一の酸化ガス流路714a、第二の酸化ガス流路714b、第一の燃料ガス供給マニホールド730a、第二の燃料ガス供給マニホールド730b、第一の燃料ガス排出マニホールド732a、第二の燃料ガス排出マニホールド732b、冷却水供給マニホールド740、および冷却水排出マニホールド742を有する。
第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、実施の形態3と同様に、流路全体に渡って対向しており、かつ第一の酸化ガス流路714aと第二の酸化ガス流路714bとが隣接された状態を維持しながら蛇行状にされている。さらに、第一の酸化ガス流路714aおよび第二の酸化ガス流路714bは、下流流路の流路数が上流流路の流路数に比べて少なくなるように形成されている。さらに、酸化ガス流路(714a、714b)の壁は酸化ガスの透過性を有さないように形成される。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、実施の形態4の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路714a,714b内の水蒸気および酸化ガスの分圧分布が均一になる。また、流路の幅や深さが流路全体を通して一定のため、実施の形態4の燃料電池セルに比べて、セパレータとMEAとの接触抵抗が流路全体を通して均一になる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1〜4の効果に加え、空気極セパレータとMEAとの接触性を均一にしつつ、上流流路の酸化ガス分圧を下流流路の酸化ガス分圧に比べて低くすることができる。これにより、接触抵抗による発熱分布のばらつきを抑えることができるので、発電反応分布をより均一化でき、発電効率をより向上させることができる。
なお、本実施の形態では、酸化ガス流路のターン部において酸化ガス流路の本数を減少させているが、酸化ガス流路の直線部で酸化ガス流路の本数を減少させてもよい。
また、本実施の形態では、空気極側の流路構造のみについて説明したが、燃料極側の流路構造も空気極側の流路構造と同様のものであってもよい。この場合、燃料極側においても、面内方向の水分分布および燃料ガスの分圧分布をより均一にすることができる。
(実施の形態6)
実施の形態6は、空気極ガス拡散基材層の水蒸気透過性および反応ガス透過性(以下「水蒸気等透過性」という)を、空気極カーボンコート層の水蒸気等透過性よりも低くする例を示す。
実施の形態6の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池セルにおいて、空気極ガス拡散基材層440の水蒸気等透過性を、空気極カーボンコート層430の水蒸気等透過性より低くしたものである。したがって、空気極ガス拡散基材層440および空気極カーボンコート層430以外の重複する構成要素については、説明を省略する。
上記の通り、空気極ガス拡散基材層440は、その水蒸気等透過性を空気極カーボンコート層430の水蒸気等透過性より低くなるように形成されている。このためには、空気極ガス拡散基材層440の水蒸気等透過性を低くするか、または空気極カーボンコート層430の水蒸気等透過性を高くすればよい。
空気極ガス拡散基材層440の水蒸気等透過性を低くする方法は、特に限定されないが、例えば、カーボン繊維により形成される細孔径を小さくする、空気極ガス拡散基材層440を厚くする、空気極ガス拡散基材層440に撥水化処理を施す、など行えばよい。一方、空気極カーボンコート層430の水蒸気等透過性を高くする方法は、空気極カーボンコート層430を薄くする、空気極カーボンコート層430に親水化処理を施す、などを行えばよい。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、空気極触媒層410で生成される水蒸気が、酸化ガス流路に排出されることが防止され、カーボンコート層内部で面内方向に移動するようになる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、空気極触媒層で生成された水が水蒸気となり酸化ガス流路に排出されることを防止することができるため、触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を保持させることができる。また、カーボンコート層内部に滞留する水蒸気を面内方向に移動しやすくすることができる。これにより、燃料電池セル内の水分量をより均一化することができるので、発電反応分布をより均一化し、発電効率をより向上させることができる。本実施の形態に係る燃料電池は、高温無加湿で動作させても触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を均一に保持させることができるため、高温無加湿運転の燃料電池に特に好適である。
なお、本実施の形態では、水蒸気およびガス両方の透過性について調整する例について説明したが、水蒸気透過性のみを調整するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、空気極側における調整例について説明したが、燃料極側においても同様の調整を行ってもよい。この場合、燃料極側においても、触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を保持させることができ、また、面内方向の水分分布をより均一にすることができる。
(実施の形態7)
実施の形態6では、ガス拡散基材層が単一の層から構成される例を示した。実施の形態7は、ガス拡散基材層が複数の層から構成されており、外側の層ほど水蒸気透過性および反応ガス透過性(水蒸気等透過性)を低くする例を示す。
図12は、本発明の実施の形態7に係る燃料電池セルの断面図である。実施の形態1の燃料電池セルと同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図12において、燃料電池セルは、高分子電解質膜200、一対の触媒電極(燃料極300および空気極400)、ならびに一対のセパレータ(燃料極セパレータ600および空気極セパレータ700)を備える。燃料極300は、高分子電解質膜200側に位置する燃料極触媒層310と、燃料極セパレータ600側に位置する燃料極ガス拡散層320から構成される。同様に、空気極400は、高分子電解質膜200側に位置する空気極触媒層410と、空気極セパレータ700側に位置する空気極ガス拡散層420とから構成される。さらに、燃料極ガス拡散層320は、燃料極触媒層310側から、燃料極カーボンコート層330、第一の燃料極ガス拡散基材層342、第二の燃料極ガス拡散基材層344および第三の燃料極ガス拡散基材層346の順に積層されて構成される。同様に、空気極ガス拡散層420は、空気極触媒層410側から、空気極カーボンコート層430、第一の空気極ガス拡散基材層442、第二の空気極ガス拡散基材層444および第三の空気極ガス拡散基材層446の順に積層されて構成される。
燃料極ガス拡散層320を構成する、燃料極カーボンコート層330、第一の燃料極ガス拡散基材層342、第二の燃料極ガス拡散基材層344および第三の燃料極ガス拡散基材層346は、それぞれ異なる水蒸気等透過性を有する。燃料極触媒層310に最も近い燃料極カーボンコート層330は、最も高い水蒸気等透過性を有する。以降、燃料極セパレータ600に近づくにつれて水蒸気等透過性が低くなる。すなわち、最も燃料極セパレータ600に近い第三の燃料極ガス拡散基材層346は、最も低い水蒸気透過性を有する。
同様に、空気極ガス拡散層420を構成する、空気極カーボンコート層430、第一の空気極ガス拡散基材層442、第二の空気極ガス拡散基材層444および第三の空気極ガス拡散基材層446は、それぞれ異なる水蒸気等透過性を有する。空気極触媒層410に最も近い空気極カーボンコート層430は、最も高い水蒸気等透過性を有する。以降、空気極セパレータ700に近づくにつれて水蒸気等透過性が低くなる。すなわち、最も空気極セパレータ700に近い第三の空気極ガス拡散基材層446は、最も低い水蒸気透過性を有する。
上記のように構成された燃料電池セルを動作させると、空気極触媒層410で生成される水蒸気が、反応ガス流路に排出されることが防止され、カーボンコート層内部で面内方向に移動するようになる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、空気極触媒層で生成された水が水蒸気となり酸化ガス流路に排出されることを防止することができるため、触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を保持させることができる。また、カーボンコート層内部に滞留する水蒸気を面内方向に移動しやすくすることができる。これにより、燃料電池セル内の水分量をより均一化することができるので、発電反応分布をより均一化し、発電効率をより向上させることができる。本実施の形態に係る燃料電池は、高温無加湿で動作させても触媒層および高分子電解質膜に適切な水分を均一に保持させることができるため、高温無加湿運転の燃料電池に特に好適である。
なお、本実施の形態では、水蒸気およびガス両方の透過性について調整する例について説明したが、水蒸気透過性のみを調整するようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、複数のガス拡散基材層を積層した構造について説明したが、単一のガス拡散基材層に水蒸気透過性およびガス透過性の傾斜を持たせるようにしてもよい。
(実施の形態8)
実施の形態1〜7では、反応ガス流路の往路と復路との間隔が一定である例を示した。実施の形態8では反応ガス流路の往路と復路との間隔が変化する例を示す。
実施の形態8の燃料電池セルは、図4に示される実施の形態1の燃料電池における空気極セパレータ700を空気極セパレータ902に置き換えたものである。したがって、空気極セパレータ902以外の重複する構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図13は、本発明の実施の形態8に係る燃料電池セルの空気極セパレータの空気極側の面の正面図である。実施の形態1の空気極セパレータ700と同じ構成要素については、同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図13において、空気極セパレータ902は酸化ガス供給マニホールド910、酸化ガス排出マニホールド912、酸化ガス流路914、燃料ガス供給マニホールド930、燃料ガス排出マニホールド932、冷却水供給マニホールド740および冷却水排出マニホールド742を有する。
酸化ガス流路914は、酸化ガス供給マニホールド910から供給された酸化ガスを、空気極400の全体に供給する流路であり、蛇行状に形成されている。また、酸化ガス往路918および酸化ガス復路920は、互いに対向するように形成されている。さらに、往路918と復路920の間隔は、A部(酸化ガス供給マニホールド910および酸化ガス排出マニホールド912付近)では大きく、B部(往復路折り返し部916付近)では小さくされている。前記間隔は、A部からB部にいくにしたがって、段階的または徐々に小さくされてよい。また、A部における前記間隔は2.2mm〜3.3mmが好ましい。さらに、酸化ガス流路914の壁は酸化ガスの透過性を有さないにように形成される。
上記のように構成された燃料電池セルを作動させると、実施の形態1の燃料電池セルと同様に、酸化ガス流路914内の水蒸気の分圧分布が均一になる。また、上流流路と下流流路との間隔は、往復路折り返し部916の往路918と復路920との間隔と比較して大きいため上流流路の酸化ガスが空気極ガス拡散層を通して下流流路へ移動することが抑制される。
以上のように、本実施の形態によれば、空気極触媒層に効率的に反応ガスを供給することができるので、発電効率をより向上させることができる。
なお、本実施の形態では、空気極側の流路構造のみについて説明したが、燃料極側の流路構造も空気極側の流路構造と同様のものであってもよい。この場合、燃料極側においても、面内方向の水分分布の分圧分布をより均一にすることができる。
以下、上流流路と下流流路との間隔を導き出した実験例について説明する。
(実験例1)
本実験例では、流路と流路との最適な間隔を導き出したコンピューターシミュレーションを用いた実験について説明する。
用いたプログラム
本実験例で用いたプログラムは、FLUENT社のFLUENT(固体高分子形燃料電池(PEM)モジュール)の電気化学サブモデルである。このプログラムは、各パラメータを設定することで、当該燃料電池セルを動作させた場合の発生電圧を予測するためのものである。
解析条件
以下のパラメータの条件下でシミュレーションを行った。
膜厚:30μm
触媒厚:10μm
GDL(ガス拡散層)厚:300μm
カソード流路深さ:1.1mm
カソード流路幅:1.1mm
アノード流路深さ:1mm
アノード流路幅:1.1mm
セル温度:90℃
アノード露点温度:65℃
カソード露点温度:35℃
電極面積:6.1468cm2
水素利用率:10%
酸素利用率:50〜90%
GDL空隙率:0.75
電流密度:0.16/cm2
表1は、上記条件下において、流路と流路との間隔(以下「リブ幅」という)および酸素利用率と電圧(mV)との関係を示したものである。
表2は、リブ幅と接触抵抗および抵抗損(電圧低下量)との関係を示したものである。表2から、リブ幅が大きくなるに伴い、接触抵抗および抵抗損も増加していることが分かる。この理由は以下のとおりである。リブ幅が大きくなると、セパレータとGDLとの接触面積が増大する。セパレータとGDLとの接触面積が増加すると、セルに同じ締結力を加えた場合、単位面積当たりの荷重が低下する。そして、接触抵抗は、単位面積あたりの荷重が低下することで、累乗的に増加する。このため、リブ幅が増大することで、接触抵抗が増加し、抵抗損が大きくなる。
表3は、表1の結果から表2の抵抗損を差し引いた結果である。表3は、想定される抵抗損を考慮したことから、表1と比較してより実際の値に近い値を示す。
図14は、表3における酸素利用率80%でのリブ幅と電圧との関係をグラフで示したものである。
図14のグラフにおいては、縦軸が電圧、横軸がリブ幅である。リブ幅が1.1mmから3.3mmまでの領域では、リブ幅の増大に伴い、電圧も増加する。電圧はリブ幅が3.3mmのときにピークを有する。リブ幅が4.4mmのときの電圧は、リブ幅が3.3mmのときの電圧およびリブ幅が2.2mmのときの電圧と比較して、小さい。
以上の結果から、上記解析条件において、高い電圧を維持するために最適なリブ幅は2.2mm〜3.3mmであるということが明らかとなった。
(実験例2)
本実験例では実験例1と同一のプログラムを用いて、最適な流路と流路との間隔を導き出した実験について説明する。本実験例では実験例1とは異なりGDL厚のパラメータを200μmとした。GDL膜以外の解析条件は、実験例1と同じである。
表4は、上記条件下において、リブ幅および酸素利用率と電圧(mV)との関係を示したものである。
表5は、表4の結果から表2の抵抗損を差し引いた結果である。表5は、想定される抵抗損を考慮したことから、表4と比較してより実際の値に近い値を示す。
図15は、表5における酸素利用率80%でのリブ幅と電圧との関係をグラフで示したものである。
図15のグラフにおいては、縦軸が電圧、横軸がリブ幅となっている。リブ幅が1.1mmから2.2mmまでの領域では、リブ幅の増大に伴い、電圧も増加する。電圧は、リブ幅が2.2mmのときにピークを有する。リブ幅が2.2mmから4.4mmまでの領域では、リブ幅の増大に伴い、電圧は減少する。リブ幅が4.4mmのときの電圧は、リブ幅が2.2mmのときの電圧およびリブ幅が3.3mmのときの電圧と比較して顕著に小さい。
以上の結果から、上記解析条件において、高い電圧を維持するために最適なリブ幅は2.2mm〜3.3mmであるということが明らかとなった。
実験例1および実験例2の結果から、GDL厚が200μm〜300μm、そして流路幅が1.1mm、流路の深さが1.1mmの場合、リブ幅は2.2mm〜3.3mm、つまりリブ幅は流路幅の2倍から3倍であると、燃料電池セルは最も効率的に発電できることが明らかとなった。
本出願は、2006年6月21日出願の特願2006−171995に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明に係る燃料電池セルおよび燃料電池セルスタックは、高温低加湿または高温無加湿運転の固体高分子形燃料電池などにおいて有用である。
従来の燃料電池のセパレータの正面図
他の従来の燃料電池のセパレータの正面図
本発明の反応ガス流路の流路構造の例を示すためのセパレータの正面図
本発明の実施の形態1〜8における燃料電池セルの断面図
本発明の実施の形態1における燃料極セパレータの正面図
本発明の実施の形態1における空気極セパレータの正面図
本発明の実施の形態2における燃料電池セルの断面図
本発明の実施の形態2における燃料電池スタックの断面図
本発明の実施の形態3における空気極セパレータの正面図
本発明の実施の形態4における空気極セパレータの正面図
本発明の実施の形態5における空気極セパレータの正面図
本発明の実施の形態7における燃料電池セルの断面図
本発明の実施の形態8における空気極セパレータの正面図
実験例1の結果を示すグラフ
実験例2の結果を示すグラフ