JPWO2007055283A1 - 核内受容体タンパク質複合体のプロテオミクス解析方法 - Google Patents

核内受容体タンパク質複合体のプロテオミクス解析方法 Download PDF

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Abstract

少量の核内受容体タンパク質含有試料を用いた場合でも、効率的でかつ正確に核内受容体タンパク質複合体のプロテオミクス解析が可能な方法を提供する。核内受容体タンパク質含有試料を、核内受容体タンパク質の一種に対して特異的でありかつ高親和性のモノクローナル抗体を結合させた支持体を用いた免疫沈降反応に付し、免疫沈降反応により分離されたタンパク質複合体を解析することを特徴とする、核内受容体タンパク質複合体のプロテオミクス解析方法。

Description

本発明は、核内受容体タンパク質複合体のプロテオミクス解析方法に関する。
1990年に国際的なヒトゲノムプロジェクトが開始され、2001年に、国際共同研究機関及びセレラ社によりヒトゲノムの概要が発表された。その結果、遺伝子解析による医学的、あるいは生物学的な研究が促進され、遺伝子による疾患の診断法や治療法が開発されるに至った。しかし、昨今の研究において、遺伝子解析のみでは解明できない生命現象も多いことが確認されている。その理由の一つが、タンパク質複合体の存在である。タンパク質は、複数のタンパク質が結合し、機能を示す。従って、タンパク質複合体が原因となる疾患などのメカニズムは、一つの遺伝子発現を解析しただけで解明することは不可能である。
このような複合体を形成するタンパク質の例として、核内受容体がある。核内受容体は、ヒトゲノム解析の結果48種存在することがわかっている。リガンドが明らかにされた受容体の情報から、癌、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、免疫機能障害等の疾患に関連があることが示唆され、一方で、リガンドがいまだ不明な受容体も多く存在する。従って、核内受容体は生活習慣病をはじめとした多くの疾患に対する治療薬の分子標的として期待されている。
例えば、核内受容体であるHNF4には、α及びγの2種類が存在する。HNF4αはグルコースや脂質の代謝調節、内胚葉の発生などに関与する。また、MODY1の原因遺伝子であることも知られている。この核内受容体は、選択的スプライシングに加え、P1及びP2プロモーターに由来する多数のアイソフォームが存在する。P1プロモーター由来のHNF4αが肝臓、小腸、大腸、及び腎近位尿細管で発現し、P2プロモーター由来のHNF4αは、胃及び膵臓で発現していることが明らかにされている(非特許文献1)。一方、HNF4γは、HNF4−Like受容体の一つであり、その機能は未知である。しかし、その構造がHNF4αと関連があり、さらにHNF4αと共に膵臓のランゲルハンス島で発現する。HNF4γの発現は、ヒトの膵臓、腎臓、精巣、及び大腸で報告されている。HNF4γのN末端のドメインは、HNF4αのものに比べて比較的長く、DNA結合ドメインとリガンド結合ドメインの付近にある。HNF4γのC末端のFドメインは、HNF4αと37%の相同性を持つ。
また、LXRαも核内受容体の1つであり、レチノイン酸を介して組織特異的な標的遺伝子発現を調整する。転写活性のため、この受容体は「ホルモン応答部位」とよばれる、標的遺伝子を発現させる位置を含んだ構造を持つ。LXRαによる遺伝子活性は、9−シス−レチノイン酸を含んだレチノイドによってのみ誘導される。LXRαの作用は、脂質代謝と輸送である(非特許文献2)。
PPARも転写因子として作用する核内ホルモン受容体のサブファミリーの一つであり、RXRとヘテロダイマーを形成して様々な遺伝子の転写を調整する。この受容体には、PPARα、PPARβ、PPARγの3種類のサブタイプが知られている。PPARγは、脂肪細胞の分化に関与すると言われている。PPARγとRXRαのリガンド結合ドメインが、RXRαのリガンドである9−シス−レチノイン酸、PPARγのアゴニストであるGI262570、及びコアクチベーターと複合体を形成するという事実が結晶構造を用いて明らかにされている(非特許文献3)。この結晶構造により、PPARγとRXRαのヘテロダイマーの活性化には、9−シス−レチノイン酸が必要であることが理解できる。
Estrogen receptor(ER)とは、リガンドにより活性化する転写因子であり、ホルモンやDNAとの結合に重要ないくつかのドメインを有する。Walterらがクローニングし(非特許文献4)、Greeneらがヒト乳癌細胞株であるMCF−7細胞を使用して、cDNA配列を解明した(非特許文献5)。ヒトERのアイソフォームには、ERαとERβの2種類があり、それぞれ異なる組織や細胞で発現する。ERのアイソフォームは、alternative splicingにより生じ、いくつかの組織で癌化、又はエストロゲンに対する応答の調整に関与する。
TLXも同様に核内受容体の1つであり、脊椎動物の前脳で発現するオーファン受容体として発見され、脳で高い発現量が確認されている。TLXは、中枢神経系における神経の発生に関与する。また、網膜形成における基礎的なプログラムにも関与し、網膜の分化の際には、神経細胞の数と、網膜形成の終期におけるグリア細胞の分化をコントロールする(非特許文献6)。
これらの核内受容体タンパク質は、核内受容体タンパク質同士でのホモあるいは、ヘテロ複合体を形成するばかりでなく、さらに、コファクターとも複合体を形成する。核内受容体のリガンドに依存した転写制御は、p160/CBP histone acetyl transferase(HAT)とDRIP/TRAP/SMCC複合体の、2つのシグナル伝達経路が存在し、両者で制御されていることが知られている。また、48種の核内受容体のうち、ERαの機能には、巨大なコアクチベーターの複合体が必要であること、さらに、TFTC(TBP−free TAF(II)−containing)タイプのHAT複合体が、核内受容体の機能に必要なコアクチベーターの複合体であることなど(非特許文献7)が報告されているが、多くの核内受容体に関し、各種の機能を発揮する際にどのような複合体を形成しているのかについては未だ充分解析されていない。
従って、核内受容体タンパク質複合体のプロテオミクス解析は、核内受容体が関与している疾病のメカニズムの解明や治療薬の開発のために極めて重要である。
タンパク質複合体を構成する個々のタンパク質の同定の手段としては、2次元電気泳動法やプロテインチップ法によりタンパク質を分離し、次いで質量分析により解析する方法が知られている。しかし、2次元電気泳動法は試料となるタンパク質が少ない場合に解析が困難であり、また、電気泳動であるため解析に時間がかかるという欠点があった。プロテインチップ法は、多数の種類のタンパク質を同時に同定できるというメリットがあるが、コストが高く、精度や再現性が悪いという欠点があった。
核内受容体のプロテオミクスに限定した場合、解析対象の核内受容体複合体が微量であるため、解析用試料の調達が困難を極めていた。そのため、現状では核内受容体遺伝子を組み込んだ細胞を培養することにより、核内受容体複合体を調製してプロテオミクス解析を行ってきたが、本来の天然における核内受容体複合体の解析であるか否か疑問視されている。
Nucl Recept.,1(1):5,2003. Proc.Nat.Acad.Sci.99:11896−11901(2002). Molec.Cell 5:545−555(2000). Brit.J.Cancer 92:2286−2291(2005). Science 231:1150−1154(1986). J Neurosci.,24(37):8124−8134(2004). Mol Cell.9(3):553−562(2002)
本発明の目的は、天然型の少量の核内受容体タンパク質含有試料を用いた場合でも、効率的でかつ正確に核内受容体タンパク質複合体のプロテオミクス解析が可能な方法を提供することにある。
そこで本発明者は、種々検討した結果、核内受容体タンパク質の一種に対して特異的で高親和性のモノクローナル抗体を結合させた支持体、特に磁性粒子を用いて免疫沈降反応を行えば、全く意外にも、目的とする核内受容体タンパク質を有する複合体が効率良く分離できること、さらには分離されたタンパク質複合体をLC−MS/MSにより解析すれば、微量の試料でも精度が高く、効率的にプロテオミクス解析が可能になることを見出した。さらに、その結果が、従来法である遺伝子組み換え体である核内受容体発現細胞を用いたプロテオミクス解析とは異なることも見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、核内受容体タンパク質含有試料を、核内受容体タンパク質の一種に対して特異的でありかつ高親和性のモノクローナル抗体を結合させた支持体を用いた免疫沈降反応に付し、免疫沈降反応により分離されたタンパク質複合体を解析することを特徴とする、核内受容体タンパク質複合体のプロテオミクス解析方法を提供するものである。
本発明によれば、非特異的タンパク質吸着が少なく、かつモノクローナル抗体の親和性が高いことから、簡便な手段で核内受容体タンパク質含有試料から、目的とする核内受容体タンパク質を含む複合体を高純度で分離できる。
また、解析手段として、LC−MS/MSを用いることにより、免疫沈降法によって得られたタンパク質と複合体を形成する別のタンパク質を同定することが可能となる。例えば、核内受容体の場合、転写因子として機能し、複合体形成が必須であることが相次いで報告されている。このような複合体を形成するタンパク質を同定することにより、複合体の新たな機能を推定することも可能である。核内受容体を中心とした複合体タンパク質の研究において、本発明方法は、天然の少量の試料で解析可能な手法であることから有用な実験手法となりうる。
高親和性の抗HNF4αモノクローナル抗体を用いて、HNF4αを特異的に免疫沈降することができたことを示す図である。 高親和性の抗PPARγモノクローナル抗体を用いて、PPARγを特異的に免疫沈降することができたことを示す図である。 高親和性の抗LXRαモノクローナル抗体を用いて、LXRαを特異的に免疫沈降することができたことを示す図である。 高親和性の抗TLXモノクローナル抗体を用いて、TLXを特異的に免疫沈降することができたことを示す図である。 高親和性の抗HNF4γモノクローナル抗体を用いて、HNF4γを特異的に免疫沈降することができたことを示す図である。 高親和性の抗ERαモノクローナル抗体を用いて、ERαを特異的に免疫沈降することができたことを示す図である。 高親和性抗HNF4α抗体結合支持体を用いた免疫沈降において、非特異的物質の吸着量が少ない支持体の方がプロテオミクス解析に望まれることを示す図である。 高親和性抗HNF4α抗体結合磁性粒子を用いたHepG2細胞抽出液に対する免疫沈降において、特異的なバンドが検出できたことを示す図である。 プルダウンアッセイにより、HNF4αとプロテオミクス解析で検出されたHNF4γが相互作用することを確認した図である。 免疫沈降法により、HNF4αとγが相互作用することを確認した図である。 高親和性HNF4γ抗体による免疫沈降法により、HNF4γが検出されたことを示す図である。 高親和性HNF4γ抗体免疫沈降法により、HNF4αが検出されたことを示す図である。 磁性粒子(2)より、磁性粒子(3)が同程度の非特異吸着量で回収量が向上しており、磁性粒子(3)がよりプロテオミクス解析に適当である可能性を示す図である。
本発明の解析対象である核内受容体には48種類あるが、これらは以下のGenBankアクセッション番号に記載される遺伝子配列を含み、かつその遺伝子配列に基づく核タンパク質である。
GR(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 3,group C,member 1(glucocorticoid receptor)(NR3C1),transcript variant 5,mRNA):NM_000176、MR(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 3,group C,member 2(NR3C2),mRNA):NM_000901、PR(Homo sapiens progesterone receptor(PGR),mRNA):NM_000926、AR(Homo sapiens androgen receptor(dihydrotestosterone receptor;testicular feminization;spinal and bulbar muscular atrophy;Kennedy disease)(AR),transcript variant 1,mRNA):NM_000044、ERα(Homo sapiens estrogen receptor 1(ESR1),mRNA):NM_000125、ERβ(Homo sapiens estrogen receptor 2(ER beta)(ESR2),mRNA):NM_001437、RXRα(Homo sapiens retinoid X receptor,alpha(RXRA),mRNA):NM_002957、RXRβ(Homo sapiens retinoid X receptor,beta(RXRB),mRNA):NM_021976、RXRγ(Homo sapiens retinoid X receptor,gamma(RXRG),transcript variant 1,mRNA):NM_006917、HNF4α(Homo sapiens hepatocyte nuclear factor 4,alpha(HNF4A),transcript variant 2,mRNA):NM_000457、HNF4γ(Homo sapiens hepatocyte nuclear factor 4,gamma(HNF4G),mRNA):NM_004133、COUP−TFI(Chicken ovalbumin upstream promoter transcription factor I(COUP−TFI,EAR3,COUP−TFA;NR2F1)):NM_005654,COUP−TFII(Chicken ovalbumin upstream promoter transcription factor II):NM_005654、EAR2(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 2,group F,member 6,mRNA(cDNA clone IMAGE:5228022),partial cds):BC063018、TR2(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 2,group C,member 1(NR2C1),transcript variant 1,mRNA):NM_003297、TR4(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 2,group C,member 2(NR2C2),mRNA):NM_003298、GCNF(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 6,group A, member 1(NR6A1),transcript variant 1,mRNA):NM_033334、REV−ERBα(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 1,group D,member 1(NR1D1),mRNA):NM_021724、REV−ERBβ(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 1,group D,member 2(NR1D2),mRNA):NM_005126、TRα(Homo sapiens thyroid hormone receptor,alpha(erythroblastic leukemia viral(v−erb−a)oncogene homolog,avian)(THRA),transcript variant 1,mRNA):NM_199334、TRβ(Homo sapiens thyroid hormone receptor,beta(erythroblastic leukemia viral(v−erb−a)oncogene homolog 2,avian)(THRB),mRNA):NM_000461、RARα(Homo sapiens retinoic acid receptor,alpha(RARA),transcript variant 1,mRNA):NM_000964、RARβ(Homo sapiens retinoic acid receptor,beta(RARB),transcript variant 1,mRNA):NM_000965、RARγ(Homo sapiens retinoic acid receptor,gamma(RARG),mRNA):NM_000966、PPARα(Homo sapiens peroxisome proliferative activated receptor,alpha(PPARA),transcript variant 5,mRNA):NM_005036、PPARβ(Homo sapiens peroxisome proliferative activated receptor,delta(PPARD),transcript variant 1,mRNA):NM_006238、PPARγ(Homo sapiens peroxisome proliferative activated receptor,gamma(PPARG),transcript variant 4,mRNA):NM_005037、VDR(Homo sapiens vitamin D(1,25−dihydroxyvitamin D3)receptor(VDR),transcript variant 1,mRNA):NM_000376、LXRα(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 1,group H,member 3(NR1H3),mRNA):NM_005693、LXRβ(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 1,group H,member 2(NR1H2),mRNA):NM_007121、FXR(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 1,group H,member 4(NR1H4),mRNA):NM_005123、PXR(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 1,group I,member 2(NR1I2),transcript variant 2,mRNA):NM_022002、CAR(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 1,group I,member 3(NR1I3),mRNA):NM_005122、SF−1(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 5,group A,member 1(NR5A1),mRNA):NM_004959、LRH−1(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 5,group A,member 2(NR5A2),transcript variant 2,mRNA):NM_003822、ERRα(Homo sapiens estrogen−related receptor alpha(ESRRA),mRNA):NM_004451、ERRβ(Homo sapiens estrogen−related receptor beta(ESRRB),mRNA):NM_004452、ERRγ(Homo sapiens estrogen−related receptor gamma(ESRRG),transcript variant 1,mRNA):NM_001438、NGFI−Bα:NM_002135,NGFI−Bβ:NM_006186,NGFI−Bγ:NM_006981、RORα(Homo sapiens RAR−related orphan receptor A(RORA),transcript variant 1,mRNA):NM_134261、RORβ(Homo sapiens RAR−related orphan receptor B(RORB),mRNA):NM_006914、RORγ(Homo sapiens RAR−related orphan receptor C(RORC),transcript variant 1,mRNA):NM_005060、TLX(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 2,group E,member 1(NR2E1),mRNA):NM_003269、PNR(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 2,group E,member 3(NR2E3),transcript variant 1,mRNA):NM_016346、DAX1(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 0,group B,member 1(NR0B1),mRNA):NM_000475、SHP(Homo sapiens nuclear receptor subfamily 0,group B,member 2(NR0B2),mRNA):NM_021969。
これらのうち、本発明方法は、HNF4α、HNF4γ、PPARγ、LXRα、ERα、及びTLXの解析に、特に有用である。
タンパク質複合体とは、複数のタンパク質が結合し、機能を示すタンパク質のことである。例えばクロマチンの場合、ヒストンタンパク質の八量体にDNAが1.75回転巻きつき、ヌクレオソームと呼ばれる構造を作る。この構造が多数形成され、リンカーヒストンによって凝縮され、クロマチンとなる。クロマチン構造の形成は、DNAの複写や転写、あるいは修復といった様々な遺伝子の制御に関与し、最近では、ヒストンタンパク質の複合体が、これらの機能に深く関与することが報告されている(Cell 116:51−61(2004))。本発明の解析対象である核内受容体タンパク質も複合体を形成していることが知られているが、前記48種のタンパク質が、どのようなタンパク質とどのような形で複合体を形成しているのかについては充分解明されていない。
本発明においては、核内受容体タンパク質の一種に対して特異的であり、かつ高親和性のモノクローナル抗体を結合させた支持体を用いる。
1.支持体
本発明に用いられる支持体としては、例えば、アガロース、セルロース、セファロースなどの不溶性の多糖類、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの合成樹脂や、ガラスなどの不溶性の支持体を挙げることができる。これらの支持体は、粒子などの形状で用いることが可能である。抗核内受容体モノクローナル抗体と支持体との結合は、化学結合や物理的な吸着などの通常用いられる方法により結合することができる。これらの支持体はすべて市販のものを用いることができるが、磁性粒子を用いることが好ましい。
磁性粒子は、非特異的タンパク質の吸着が少ないこと及び抗体を結合させるに必要な官能基を有することが望まれる。非特異的タンパク質の吸着の少ない粒子を得るには磁性粒子の表面を親水性のポリマーで被覆することにより低減可能である。
本発明の磁性粒子において、特に制限はないが、好ましくは磁性粒子の表面にFe及びFeの少なくとも一方を含む磁性体層が形成された母粒子に重合により該磁性体層上にポリマー層を形成した磁性粒子を用いることができる。磁性粒子の表面に親水性ポリマーを導入する方法として、(1)磁性粒子の存在下で、親水性モノマー又は親水性モノマーとその他の共重合性モノマーを液体中で重合させる方法、(2)磁性体表面の官能基に親水性ポリマーを結合させる方法等が挙げられる。
(1)の方法としては、磁性粒子の存在下、主原料としての親水性モノマー、必要に応じて官能基を有する共重合性モノマーや他の共重合性モノマー、副原料である重合開始剤、乳化剤、分散剤、界面活性剤、電解質、架橋剤、分子量調節剤などを添加し、液体中で重合させる。親水性モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(C2−C4)基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、ホスホリルコリン類似基含有単量体などをあげることができる。官能基を有する共重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸などのモノ又はジカルボン酸化合物をあげることができる。他の共重合性モノマーとしては、スチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル単量体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、などのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルなどを挙げることができる。
(2)の方法としては、磁性体粒子表面に導入されたカルボキシル基又はアミノ基などに対し、アミノ基又はカルボキシル基を持つ親水性ポリマーをカルボジイミドなどの公知の方法により結合させる方法が挙げられる。
本発明の磁性粒子は、非特異的なタンパク質の吸着が完全に抑制されることが理想であるが、可能な限り非特異的吸着を減少させるには、磁性体層に親水性ポリマーを結合させる方法が挙げられる。具体的には、ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、グリセリンモノメタクリレート/メタクリル酸共重合体などの合成ポリマー、デンプン、アミロース、アミロペクチン、デキストリン、グリコーゲン、シクロデキストリン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、アガロース、アルギン酸、イヌリン、グルコマンナン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸などの多糖類などを結合させる方法を挙げることができる。
2.モノクローナル抗体
本発明で用いられるモノクローナル抗体は核内受容体タンパク質の一種に特異的に結合し、かつ高い親和性を有するモノクローナル抗体であることが望ましい。さらに、好ましくは免疫沈降可能なモノクローナル抗体であることが望ましい。結合部位ならびにその由来及び形状は問わない。具体的には、マウス抗体、ラット抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト型化抗体などの公知のモノクローナル抗体を用いることができる。
本発明で使用されるモノクローナル抗体は、公知の手段を用いて得ることができる。本発明で使用される抗核内受容体タンパク質モノクローナル抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、及び遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、核内受容体又はそれらの断片ペプチドを感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法に従って免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用される核内受容体タンパク質は、その遺伝子を発現することによっても得ることができる。すなわち、核内受容体タンパク質をコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は培養上清中から目的の核内受容体タンパク質を公知の方法で精製する。
次に、この精製核内受容体タンパク質を感作抗原として用いるが、核内受容体タンパク質の部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。この際、部分ペプチドは核内受容体タンパク質のアミノ酸配列より化学合成により得ることもできるし、核内受容体タンパク質の一部を発現ベクターに組込んで得ることもできる。部分ペプチドとして用いる核内受容体タンパク質の部分及び大きさは限られない。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、あるいはウサギ、サル、鶏等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法に従って行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。特に分子量の小さい部分ペプチドを感作抗原として用いる場合には、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン等の担体タンパク質と結合させて免疫することが望ましい。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3×63Ag8.653)(J.Immnol.(1979)123,1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1−7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270)、FO(de St.Groth,S.F.etal.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21)、S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med.(1978)148,313−323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、さらに所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞の所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1,000〜6,000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング及び単一クローニングを行う。
目的とする抗体のスクリーニング及び単一クローニングは、公知の抗原抗体反応に基づくスクリーニング方法で行えばよい。例えば、ポリスチレン等でできたビーズや市販の96ウェルのマイクロタイタープレート等の担体に抗原を結合させ、ハイブリドーマの培養上清と反応させ、担体を洗浄した後に酵素標識第2次抗体等を反応させることにより、培養上清中に感作抗原と反応する目的とする抗体が含まれるかどうか決定できる。目的とする抗体を産生するハイブリドーマを限界希釈法等によりクローニングすることができる。この際、抗原としては免疫に用いたものを用いればよい。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法に従い培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。
3.高親和性モノクローナル抗体の選択
抗体の親和性を測定する方法として、公知の方法であるスキャッチャードプロット、BIAcoreなどが知られているが、より好ましくはBIAcoreを使用した方法が望ましい。具体的には、抗マウスポリクローナル抗体を結合させたBIAcoreセンサーチップにモノクローナル抗体を結合させ、抗原を含む緩衝液を流しながら抗原抗体結合反応のシグナル、及び抗原を含まない緩衝液を流しながら抗原抗体解離反応のシグナルをそれぞれ測定することにより親和性を計算する。本発明に用いられるモノクローナル抗体の親和性は、KD値=3×10−8M以下、さらに8×10−9M以下、特に3×10−9M以下であるのが好ましい。
4.プロテオミクス解析
核内受容体タンパク質含有試料とは、核内受容体タンパク質が含まれる可能性のある生体から分離した試料であれば特に制限されないが、哺乳類などの生物の体から採取された試料が好ましく、さらに好ましくはヒトから採取された試料である。試料の具体的な例としては、例えば、血液、間質液、血漿、血管外液、脳脊髄液、滑液、胸膜液、血清、リンパ液、唾液、尿などを挙げることができるが、好ましいのは血液、血清、血漿、又は、生物の体から採取された細胞などから得られる試料である。
本発明においては、核内受容体タンパク質含有試料を前記モノクローナル抗体結合支持体と反応させ、免疫沈降反応を行う。具体的には、抗核内受容体タンパク質モノクローナル抗体を支持体に固定し、ここに試料を加え、インキュベートを行い抗核内受容体タンパク質モノクローナル抗体と核内受容体タンパク質を結合させ、免疫沈降した抗原抗体反応物を固液分離する。固液分離手段は、支持体として磁性粒子を用いた場合には磁石により行えばよい。すなわち、磁石により反応容器内に免疫反応物を保持したまま洗浄すれば、固液分離が容易に行われる。
分離された核内受容体タンパク質複合体の解析方法としてN末端アミノ酸配列分析、Edman法による内部配列決定、MALDI−TOF MSによるPMF(Peptide mass fingerprinting)分析、LC−MS/MSなどが知られているが、LC−MS/MSを使用した解析法が好ましい。LC−MS/MS法は、液体クロマトグラフィー(LC)と質量分析(MS)を組み合わせた方法であり、タンパク質試料のプロテアーゼ消化物を分離し、各ペプチドの内部断片の分子量を測定することで、タンパク質同定に必要なアミノ酸配列の情報を得ることができる。また、この方法は、タンパク質の混合物質で解析が可能であること、データの質が良くタンパク質同定の確度が高いこと、オンライン化による作業の効率化、などといった利点が得られる。具体的なLC−MS/MSの測定方法例は以下の通りである。電気泳動を行わずサンプルをそのままトリプシン等のタンパク質消化酵素で消化するか、あるいはサンプルを電気泳動後、タンパク質染色したゲルからバンドを切り出し、タンパク質を抽出してトリプシン等のタンパク質消化酵素で消化する。次いで、消化サンプルを逆相カラム等のHPLCで分画後精密MS/MSで測定し、データベースサーチによりタンパク質を同定する。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1 リコンビナント核内受容体タンパク質のクローニング
(1)HNF4α
HNF4αのmRNAはCaco−2細胞からISOGEN(Wakoケミカル)を用いて抽出した。Expand High Fidelity PCR Systemを用いてRT−PCRを行い、クローニングした。cDNAを合成するためには、mRNAにランダムヘキサマーをアニーリングさせ、SuperScript II reverse transcriptase(Invitrogen)を用いて逆転写反応を行った。次いで、Expand High Fidelity PCR Systemを行い、全長cDNAのクローニングを行った。PCRに用いたプライマーはフォワードプライマーに配列番号1とリバースプライマーに配列番号2に示されるプライマーを用いた。PCR産物はTAベクター(プロメガ)にサブクローニングして、cDNAを制限酵素Not Iで切断した断片をpcDNA3(インビトロジェン)に挿入した。作製した組換え体については、ダイターミネーター法(ABI)により遺伝子の配列を確認した。
(2)ERα
ERαのcDNAクローニングについては、HNF4αと同様の方法を用いた。MCF−7より抽出したmRNAを用いてcDNAライブラリーを調製し、フォワードプライマーに配列番号99とリバースプライマーに配列番号100を用いてPCRを行い、全長cDNAをクローニングした。全長cDNAをTAベクターにサブクローニングし、cDNAをEcoRI―BamHIにより切り出し、pcDNA3(Invitrogen)に挿入した。作製した組換え体については、ダイターミネーター法(ABI)により遺伝子の配列を確認した。
(3)TLX
TLXについて、HNF4αと同様の方法を応用しフォワードプライマーに配列番号25とリバースプライマーに配列番号26を用いHepG2細胞をライブラリーとしクローニングした。
実施例2 リコンビナント完全長核内受容体タンパク質溶液の調製
(1)HNF4α
CHO細胞におけるリコンビナント完全長HNF4αタンパク質の調製は、以下の手順で行った。10cm dishに0.8x10個のCHO細胞を撒き込み、翌日、FuGENE 6 Transfection Reagent(Roche(cat:1814443))を用いて、8μgのプラスミドDNAをトランスフェクションした。48時間後、細胞をセルスクレーパーで剥がして回収し、RIPA buffer(10mM Tris−HCl(pH7.4),150mM NaCl,5mM EDTA,1%Triton X−100,1%デオキシコール酸,0.1%SDS)で細胞を溶解した。Protein Assay/Dye Reagent Concentrate(Bio−Rad,cat:500−0006)を用いて2.5mg/mLの濃度にタンパク量を調製し、5xSDS sample bufferを加えて100℃、10分間加熱し、ライセートを得、核内受容体完全長タンパク質溶液とした。
(2)ERα
リコンビナント完全長ERαタンパク質の調製は、リコンビナント完全長HNF4αタンパク質の調製に準じて実施した。
(3)TLX
TLXについても同様の操作にてリコンビナント完全長TLXタンパク質を得た。
実施例3 核内受容体タンパク質断片ペプチド発現ウイルスの取得
HNF4αのアミノ酸配列380〜448番目までのペプチドはAutographcalifornicaの核多角体ウイルス(AcMNPV)のgp64融合タンパク質として作製した。HNF4αのアミノ酸配列380番目〜448番目の部分長cDNAについては、フォワードプライマーとして、配列番号3、リバースプライマーとして配列番号4を用い、全長HNF4αcDNAを鋳型としてPCRを行うことにより得た。gp64遺伝子の融合タンパク質となるように組換え体遺伝子の作製を行った。
作製した組換え体遺伝子をバキュロウイルスのDNAに挿入することで、組換え体遺伝子の発現を行った。すなわち、トランスファーベクターとバキュロウイルスDNA(Bac−N−Blue DNA)(インビトロジェン)をSf9細胞に挿入することにより組換体ウイルスを作製した。次いで、Sf9細胞の培養にはGrace’Insect Media、10%牛胎児血清(FBS)を用い、組換え後72から120時間27℃で培養し、培養上清中に組換えウイルスを産生し、プラークアッセイ法によりウイルスの精製を行った。プラークアッセイ法は次のように実施した。10%FBSの培地に100mmディッシュに5×10の細胞を培養し、10倍希釈のウイルス液系列を作製したものを感染させ、一時間後に培地を取り除き、寒天入り培地をのせた。27℃で6日間培養し、ニュートラルレッドで染色を3時間行った後、パスツールピペットでプラークを採り、1mLの培地に入れて攪拌しウイルスを溶出した。この操作を2度行うことにより、ウイルスの精製をおこなった。精製ウイルスを2×10個のSf9細胞に感染させ、10日間27℃で培養を行った。さらに、500mLの2×10個Sf9細胞/mLサスペンジョンカルチャーに、ウイルス液の上記5mLを懸濁した。10日間培養後、遠心操作1,000×g、20分を行い、上清のウイルス液を得た。タイターは上記プラークアッセイ法で測定し、MOIIを5になるように、ウイルス液を500mLの2×10個Sf9細胞/mLサスペンジョンカルチャーに感染させた。続いて、gp64融合タンパク質として発現させるために、培養3日後に、45,000×gで30分の遠心操作を行い、沈澱画分にあるウイルスを得た後、PBSで懸濁し、精製バキュロウイルス発現物を得た。同様の方法を応用し、残り47種類の核内受容体のうち下記43種類の核内受容体蛋白質につき、該当するcDNAあるいは該当する核内受容体発現細胞より調製したcDNAライブラリーを用いて、表1及び表2に示す番号のフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて下記の部分ペプチドのアミノ酸配列に該当するcDNAの増幅を行って、gp64融合蛋白質として発現させた精製バキュロウイルスを得た。
すなわち、TRβ(アミノ酸配列2〜100番)、PPARα(アミノ酸配列4〜96番)、PPARγ(アミノ酸配列3〜108番)、RORα(アミノ酸配列136〜236番)、LXRα(アミノ酸配列2〜97番)、VDR(アミノ酸配列91〜210番)、TLX(アミノ酸配列81〜180番)、COUP−TFI(アミノ酸配列6〜81番)、COUP−TF II(アミノ酸配列43〜64番)、ERRα(アミノ酸配列98〜171番)、ERRβ(アミノ酸配列4〜100番)、ERRγ(アミノ酸配列2〜100番)、ERβ(アミノ酸配列2〜88番)、PXR(アミノ酸配列161〜280番)、LRH−1(アミノ酸配列1〜12番)、NGFI−bα(アミノ酸配列2〜248番)、NGFI−bγ(アミノ酸配列2〜99番)、RORβ(アミノ酸配列1〜26番)、RORγ(アミノ酸配列2〜30番)、TR2(アミノ酸配列4〜110番)、TR4(アミノ酸配列5〜104番)、GCNF(アミノ酸配列28〜58番)、AR(アミノ酸配列2〜53番)、MR(アミノ酸配列2〜99番)、LXRβ(アミノ酸配列2〜86番)、RXRα(アミノ酸配列2〜133番)、RXRγ(アミノ酸配列2〜137番)、RARα(アミノ酸配列1〜56)、RARβ(アミノ酸配列2〜79番)、RARγ(アミノ酸配列2〜88番)、FXR(アミノ酸配列303〜403番)、Rev−erbα(アミノ酸配列2〜130番)、Rev−erbβ(アミノ酸配列4〜101番)、GR(アミノ酸配列2〜60番)、PR(アミノ酸配列2〜99番)、EAR2(アミノ酸配列13〜44番)、ERα(アミノ酸配列2〜180番)、DAX1(アミノ酸配列1〜80番)、PPARβ(アミノ酸配列1〜60番)、RXRβ(アミノ酸配列9〜187番)、TRα(アミノ酸配列2〜51番)、PNR(アミノ酸配列2〜45番)及びNGFI−Bβ(アミノ酸配列2〜99番)の精製バキュロウイルスを得た。
実施例4 核内受容体タンパク質断片ペプチドの大腸菌による取得
HNF4γ、CAR、SF−1については、大腸菌を用いたタンパク発現により抗原を得た。HNF4γのアミノ酸配列96〜408番目のアミノ酸の部分長cDNAについては、表2に示すフォワードプライマー配列番号75及びリバースプライマー配列番号76を用い、実施例3と同様にしてPCRを行う事により得た。次いで、GST融合タンパク質として部分長発現物の作製を行った。PCRにより増幅したcDNA断片を、公知のGST融合タンパク質発現ベクターに挿入し、タンパク質発現に適した大腸菌にトランスフォームした。その大腸菌をLB培地中で、600nmの吸光度が0.5に至るまで培養し、最終濃度が1mMになるようにIPTGを加えて3時間培養し、菌体を遠心により回収した。その後、常法により精製を行い、抗原タンパク質を得た。同様に、CARR(アミノ酸配列76〜348番)、SF−1(アミノ酸配列220〜461番)についてもそれぞれ表2に示すフォワードプライマー配列番号31及び33ならびにリバースプライマー配列番号32及び34を用いて精製抗原を得た。
実施例5 核内受容体タンパク質に対する抗体の作製
HNF4αのアミノ酸配列380〜448番目までの配列を組み込んだ精製バキュロウイルス発現物(gp64−fusion発現ウイルス粒子)を免疫原とした。マウス(BALB/c雌6週齢)に、100μg/匹の投与量を2週間間隔で3回免疫した後、72時間後に脾臓細胞を採取し、骨髄腫細胞(P3/NSI−1−Ag4−1)と細胞融合(Kohler G,Milstein C:Nature 256,495(1975))を行った。HAT選択培地で培養を行うことにより、ハイブリドーマを得た。
ハイブリドーマの培養上清について、免疫抗原(gp64発現ウイルス粒子)固相ELISAと野生型ウイルス粒子固相ELISAで行い、免疫抗原に対してのみ反応するものを一次選択した。
ELISA法の概略は、免疫原及び野生型のウイルス粒子0.5μg/wellを固相化したELISA用プレートに、ハイブリドーマの培養上清を反応させ、HRP標識抗マウス抗体(ECL anti−mouse IgG Horseradish Peroxidase linked whole antibody,amersham bioscience(cat:NA931V))の反応を経て、基質添加後に得られた発色について450nmの吸光度を測定する方法(免疫抗原固相ELISA法)を使用した。
一次選択されたバイブリドーマについて、免疫抗原と野生型の各ウイルス粒子を用いたウエスタンブロットを行い二次選択した。ウエスタンブロットの概略は、免疫原及び野生型のウイルス粒子を0.6μg/laneとなるようにアプライして、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。次に、Hybond ECL膜(アマシャムバイオサイエンス社製)に転写し、転写膜をブロッキング後、ハイブリドーマの培養上清を反応させた。次にHRP標識抗マウス抗体を反応させ、ECL検出試薬(アマシャムバイオサイエンス社)を添加後に得られた化学発光について、X線フイルムを感光させて検出した。免疫抗原のHNF4α発現物に特異的なバンドのみと反応する株として二次選択されたものについて限界希釈法にてクローニングを行い、モノクローナル抗体産生株を樹立した。抗体産生ハイブリドーマをBALB/cマウスに接種し、マウス腹水を得た。そのようにして得たマウス腹水を硫安塩析法で精製し、精製モノクローナル抗体を得た。同様にして、実施例3で作製した43種類の核内受容体部分ペプチド配列を組み込んだ精製バキュロウイルス発現物(gp64−fusion発現ウイルス粒子)を免疫原とし抗体作製を行った。また、実施例4で作製した大腸菌調製タンパク質である部分長HNF4γ、CAR及びSF−1については抗原量として100μg/匹を用いて抗体作製した。尚、一次選択のELISAでは抗原固相濃度は1μg/mLを使用し、二次スクリーニングでのウエスタンブロティングは実施例7に示す方法に準じた。続いて、得られた抗体産生ハイブリドーマをマウスに接種し、腹水を得た後、硫安塩析法で精製し、精製モノクローナル抗体を得た。すなわち、TRβ、PPARα、PPARγ、RORα、LXRα、VDR、TLX、COUP−TFI、COUP−TFII、ERRα、ERRβ、ERRγ、ERβ、PXR、CAR、LPH−1、NGFI−bα、NGFI−b−bγ、RORβ、RORγ、TR2、TR4、GCNF、AR、MR、LXRβ、RXRα、RXRγ、RARα、RARβ、RARγ、FXR、Rev−erbα、Rev−erbβ、GR、PR、HNF4γ、EAR2、ERα、SF−1、DAX1、PPARβ、RXRβ、TRα、PNR及びNGFI−Bβの精製モノクローナル抗体を得た。
さらなる抗体の純度を要する場合には、下記方法にて精製した。すなわち、Hi Trap Protein G HP(Amersham CAT#17−0404−01)を用いて行った。ハイブリドーマを無血清培地(Hybridoma−SFM; GIBCO社)で培養し、培養上清中に抗体を産生させた。その培養上清を直接カラムにチャージし、結合バッファー(20mM リン酸ナトリウム(pH7.0))にて洗浄後、溶出バッファー(0.1M グリシン−HCl(pH2.7))で溶出した。溶出は中和バッファー(1M Tris−HCl(pH9.0))を加えたチューブに行い直ちに中和した。抗体画分をプールした後、0.05%Tween20/PBSで一昼夜透析を行いバッファー置換した。精製された抗体は0.02%となるようにNaNを添加した後、4℃で保管した。
実施例6 核内受容体複合体含有溶液及び核内受容体溶液の調製
(1)HNF4α
Roederらの方法(Nucleic Acids Res.1983 Mar 11;11(5):1475−89.)に従い、HNF4α複合体含有溶液及び天然型核内受容体溶液を調製した。具体的には、HepG2細胞を10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン含有DMEM培地、37℃5%CO条件で培養し、コンフルエントの状態の細胞を冷PBS/0.25mM PMSFで洗浄し、セルスクレイパーにて回収した。回収した細胞を2,000rpm,10minで沈殿させ、5cpv分のBuffer A(10mM HEPES(pH7.9 at 4℃),1.5mM MgCl,10mM KCl10mM,0.5mM DTT)に懸濁後、氷上にて10分間静置した。2,000rpm,10minで沈殿させ、2cpv分のBuffer Aに懸濁後、ダウンスホモジナイザー40ストロークで細胞を破砕した。15,000rpm,30minにて遠心で沈殿させ、1cpv分のBuffer C(20mM HEPES(pH7.9),25%v/v glycerol,0.42M NaCl,1.5mM MgCl,0.2mM EDTA,0.5mM PMSF,0.5mM DTT,2μg/mL Aprotinin,2μg/mL Leupeptin,1μg/mL Pepstatin A)に懸濁後、ダウンスホモジナイザー20ストロークで細胞を破砕した。4℃で30分間転倒混和後、15,000rpm,45minで上清を取り、Buffer D(20mM HEPES(pH7.9),10%v/v glycerol,0.1M KCl,0.2mM EDTA,0.5mM PMSF,0.5mM DTT,2μg/mL Aprotinin,2μg/mL Leupeptin,1μg/mL Pepstatin A)で5時間透析した。次いで、15,000rpm,30minで上清を取り、HNF4α複合体含有溶液及び核内受容体溶液とした。
(2)ERα
ERα複合体含有溶液の調製は、以下のとおり行った。即ち、MCF−7細胞を10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン含有RPMI1640培地、37℃5%CO条件で培養後、活性炭処理を施した10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン含有RPMI1640(フェノールレッドフリー)培地で続けて培養し、コンフルエントの状態の細胞を冷PBSで洗浄、セルスクレイパーにて回収した。以下、回収した細胞に実施例6(1)HNF4αと同様の処理を行い、ERα複合体含有溶液とした。
(3)その他核内受容体
HNF4γ及びLXRαについてもHepG2細胞を用い、実施例6(1)HNF4αと同様に調製した。PPARγについては、0.25μMのデキサメタゾン刺激で分化した3T3細胞を用いて実施例6(1)HNF4αと同様に調製した。
実施例7 核内受容体に対する高親和性モノクローナル抗体によるウエスタンブロティング
多数得られた核内受容体に対する抗体について、該当する核内受容体タンパク質を用いたウエスタンブロットを行って、完全長タンパク質を認識できるか否かを確認した。
ウエスタンブロットの概略は、核内受容体のリコンビナント完全長発現物を強制発現させたCHO細胞あるいは該当するタンパク質発現細胞株のライセートと、陰性コントロールとしての宿主CHO細胞のライセートを、6μg/laneとなるようにアプライして、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。次に、Hybond ECL膜(アマシャムバイオサイエンス社製)にゲルを転写し、転写膜をブロッキング後、該当するハイブリドーマの培養上清あるいは精製抗体を反応させた。次にHRP標識抗マウス抗体を反応させ、ECL検出試薬(アマシャムバイオサイエンス社)を添加後に得られた化学発光について、X線フイルムを感光させて検出し、完全長核内受容体タンパク質を認識する抗体を選択した。
実施例8 抗核内受容体モノクローナル抗体の親和性測定
BIAcore3000を使用し、HNF4α完全長タンパク質を認識するモノクローナル抗体の親和性を測定した。センサーチップは抗マウスイムノグロブリン抗体を結合させたCM5チップを作製し使用した。ランニングバッファーはHBS−EP(10mMHEPES pH7.4,0.15M NaCl,3mM EDTA,0.005%Tween 2)を使用した。測定温度は25℃で行った。フローセル1はコントロールとし、フローセル2からフローセル4に各抗体を結合させた。結合/解離反応の測定は、HBS−EPで希釈したGST融合HNF4αEFドメインタンパク質を全てのフローセルに一定時間流して結合反応を、その後HBS−EPバッファーを一定時間流すことで解離反応を見ることにより行った。速度論の計算はHNF4αGST融合タンパク質の各濃度での結合/解離センサーグラムをBIAeval softwareで行った。同じ抗原で得られたいくつかの抗HNF4αモノクローナル抗体のうち、H1415抗体がKD=約1×10−9Mという最も高い親和性を示した(FERM P−20192としてハイブリドーマ寄託)。このことは、H1415抗体を用いると高効率にHNF4αの解析ができる可能性を示唆している。同様にして、他の抗核内受容体モノクローナル抗体についても親和性を測定し、高親和性抗核内受容体モノクローナル抗体を選択した。
実施例9 核内受容体に対する高親和性モノクローナル抗体を用いた免疫沈降
実施例7で高親和性と確認された抗HNF4αモノクローナル抗体を使用して、免疫沈降を行った。免疫沈降において、抗原のネガティブコントロールとしてluciferaseを使用し、抗体のネガティブコントロールとしてマウスIgGを使用した。35Sメチオニンをラベルした核内受容体タンパク質抗原を、TNT Coupled Reticulocyte System(Promega社製)を用いて、in vitroで蛋白発現させた。この発現タンパク質溶液(35S メチオニンラベルのHNF4α)50μLと、抗核内受容体マウスモノクローナル抗体及び陰性コントロール用のマウスIgG各々10μg,及びProtein G Sepharose粒子(Amersham社製)20μLを混合し、4℃で2時間反応させた後、粒子画分と上清画分に分離した。粒子画分(免疫沈降画分)を10mM Hepes−KOH(pH7.4),142.5mM KCl,0.2% NP40で洗浄後、SDS−PAGE sample buffer(48mM Tris−HCl(pH6.8),3%SDS,2−mercaptoetanol,10%glycerol)で溶出せしめ、溶出物と上清画分をそれぞれSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、泳動パターンをオートラジオグラフィーで検出した。HNF4γ、LXRα、PPARγ、抗ERα抗体、及びTLXについても、同様な操作で免疫沈降の可否を検討した。図1〜図6に示すように、今回使用した高親和性抗HNF4α抗体を始めとし、抗LXRα抗体、抗PPARγ抗体、抗ERα抗体、抗TLX抗体及び抗HNF4γ抗体を用いた免疫沈降において、該当する核内受容体タンパク質を特異的に回収できることが示された。
実施例10 磁性粒子(1)の作製
1.核粒子の作製
特公昭57−24369号公報記載の膨潤重合法、ジャーナル オブポリマーサイエンス ポリマーレター エディション(J.Polym.Sci.,Polymer Letter Ed.)記載の重合方法、あるいは本発明者らが先に提案した重合方法(特開昭61−215602、同61−215603、同61−215604)を参考に下記核粒子を作製した。下記核粒子は、重合後遠心分離により粒子のみ取り出したものをさらに水洗し、乾燥、粉砕した。
核粒子1;スチレン/ジビニルベンゼン=80/20共重合体
(平均粒径3.5μm、CV値2.5%)
2.磁性体層の形成
油性磁性流体「FV55」[松本油脂(株)製]にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、疎水化処理された表面を有するフェライト系の超常磁性体(平均粒子径:0.01μm)を得た。なおこの磁性体は界面活性剤により疎水化処理された表面を有するものである。得られた磁性体をトルエン/水(重量比1:1)に添加し、十分に攪拌した後静置したところ、磁性体はトルエンのみに分散されており、表面が疎水化されたことを確認した。ついで、核粒子10gに、疎水化された磁性体を10g混合し、この混合物をハイブリダイゼーションシステムNHS−O型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽根(撹拌翼)の周速度100m/秒(16,200rpm)で3分間処理し、磁性体層の形成を得た。
3.ポリマー層の形成
得られた磁性体被覆粒子30gと、分散剤としてノニオン性乳化剤「エマルゲン150」(花王製)の0.5%水溶液375gと、アニオン性乳化剤ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)の0.5%水溶液375gとを1Lセパラブルフラスコに投入し充分に分散させた。ついで、イカリ型撹拌羽200rpm撹拌、Nガス気流下60℃とした。これに、モノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート15g及び重合開始剤としてターシャリーブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート(日本油脂社製;パーブチルO)1.5g、分散剤としてノニオン性乳化剤「エマルゲン150」(花王製)の0.5%水溶液25g及びアニオン性乳化剤ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)の0.5%水溶液25gの混合物を10℃以下において超音波微分散により乳化させて、1時間にわたり連続添加して反応させた。続いて、グリシジルメタクリレート15g及びパーブチルO 1.5g、エマルゲン150の0.5%水溶液25g及びSDSの0.5%水溶液25gの混合物を10℃以下において超音波微分散により乳化させて、1時間にわたり連続添加して反応させた。その後、メタクリル酸4.5gの50%水溶液を添加し、1時間反応の後、さらに温度を80℃とし3時間継続し反応を完結させた。その後、室温に冷却し500メッシュステンレス製網で粗大物を除去し、さらに磁気精製において非磁性成分を除去した。磁気精製にて、粒子分散液を蒸留水に置換した。得られた磁性核粒子(1)の粒径は4.2μm、粒子比重は1.4g/cmであった。
実施例11 磁性粒子(2)の作製
1.磁性体層のアミノ化
上記実施例10の2で得られた磁性体被覆磁性粒子30gと、分散剤としてノニオン性乳化剤「エマルゲン150」(花王製)の0.5%水溶液375gと、アニオン性乳化剤ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)の0.5%水溶液375gとを1Lセパラブルフラスコに投入し充分に分散させた。ついで、イカリ型撹拌羽200rpm撹拌、Nガス気流下60℃とした。これに、モノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート15g及び重合開始剤としてターシャリーブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート(日本油脂社製;パーブチルO)1.5g、分散剤としてノニオン性乳化剤「エマルゲン150」(花王製)の0.5%水溶液25g及びアニオン性乳化剤ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)の0.5%水溶液25gの混合物を10℃以下において超音波微分散により乳化させて、1時間にわたり連続添加して反応させた。続いて、グリシジルメタクリレート15g及びパーブチルO 1.5g、エマルゲン150の0.5%水溶液25g及びSDSの0.5%水溶液25gの混合物を10℃以下において超音波微分散により乳化させて、1時間にわたり連続添加して反応させ、さらに温度を3時間継続し反応を完結させた。その後、室温に冷却し500メッシュステンレス製網で粗大物を除去し、さらに磁気精製において非磁性成分を除去した。得られた磁性粒子1g分を純水100mLに分散し、エチレンジアミン25gを加えた後、間接超音波を10分間照射して分散させてから、50℃にて6時間加熱攪拌し、その後、磁気分離により前記粒子を単離した。次いで、この粒子をメタノールで2回、水/メタノール混合物(3/1、容積比)で3回洗浄した後、乾燥させることによりアミノ化磁性粒子を得た。
2.親水性ポリマーの結合
このアミノ化磁性粒子0.5gに、純水20mLに溶解した日本製紙ケミカル株式会社製カルボキシメチルセルロースナトリウム塩APP−84(平均分子量17,000でグルコース単位1個当たり平均0.7個のカルボキシル基を含有)0.5gを加え、間接超音波を30分間照射して分散させた。次に、この分散液を氷冷し、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの5wt%水溶液5mLを加え、氷冷下で12時間攪拌した。純水10mLで10回洗浄し磁性粒子(2)を得た。得られた磁性粒子(2)の粒径は4.3μm、粒子比重は1.4g/cmであった。
実施例12 磁性粒子(3)の作製
実施例10の1、2において以下の核粒子2を用いた以外は、実施例10と同様な処理を行い、磁性体被覆粒子30gを得た。
核粒子2;スチレン/ジビニルベンゼン=80/20共重合体
(平均粒径1.5μm、CV値2.2%)
次に、SDSを0.25重量%及びエマルゲン150を0.25重量%含む水溶液(以下、「分散剤水溶液」という)375gを1Lセパラブルフラスコに投入し、次いで、磁性体被覆磁性粒子15gを投入し分散した後、Nガス気流下60℃とした。分散剤水溶液150gに、メチルメタクリレート27g、トリメチロールプロパントリメタクリレート3g、及びジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(日本油脂社製;パーロイル355)0.6gを入れて分散させたプレエマルジョンを、前記1Lセパラブルフラスコに1時間30分かけて滴下した。滴下終了後、60℃に保持し1時間攪拌した後、分散剤水溶液75gに、グリシジルメタクリレート 13.5g、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.5g、及びパーロイル355 0.3gを入れて分散させたプレエマルジョンを、60℃にコントロールした上記1Lセパラブルフラスコに1時間30分かけて滴下した。その後75℃に昇温した後さらに2時間重合を続けて、反応を完了させた。続けて、この1Lセパラブルフラスコに1mol/L 硫酸60mLを入れ、60℃で6時間撹拌した。次いで、磁気を用いて前記セパラブルフラスコ中の粒子を分離した後、蒸留水を用いて繰り返し洗浄した。以上により、2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する磁性粒子を得た。
次に、上記2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する磁性粒子を真空乾燥して得られた乾燥粒子1.0gを10mLのピリジンで洗浄してから5mLのピリジンに分散させた後、25mLのピリジンに3gの無水コハク酸を溶解した溶液を加え、60℃で2時間撹拌した。反応後、磁気を用いて粒子を分離し、蒸留水で洗浄して、磁性粒子(3)を得た。この磁性粒子(3)の平均数粒子径は2.9μmであった。
実施例13 磁性粒子の非特異的吸着量の確認
磁性粒子(1)、(2)、(3)ならびにプロテインGセファロース粒子各1mgを2mLマイクロチューブにとり、1%牛血清アルブミン(以下BSAとする)PBSを100μL加え10分間撹拌した。磁性粒子については磁気分離により、プロテインGセファロース粒子に関しては遠心により、上清を捨てた後、500μLの0.005% Tween20/PBSを用い、磁気分離あるいは遠心により洗浄操作を5回行った。洗浄後の磁性粒子及びプロテインGセファロース粒子に、タンパク質溶出液として0.5%SDSを40μL加え、5分間撹拌後、磁気分離あるいは遠心により上清を回収した。この上清をSDS電気泳動にかけ、銀染色を行って粒子に吸着した非特異吸着蛋白量を定量した。その結果、磁性粒子(2)及び磁性粒子(3)において非特異的物質の吸着量が極めて少なく、次いで磁性粒子(1)が少なく、プロテインGセファロース粒子では非特異的物質の吸着量が多いことが確認できた。
実施例14 高親和性抗体結合磁性粒子(1)の作製
実施例10で得られた粒子100mgを15mL試験管に採取し、50mM HEPES−NaOH pH6(以下Buffer−A)10mLにて3回洗浄を行った。洗浄後の粒子をBuffer−A 5mLに分散し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(同仁化学研究所製)10mgを加え室温にて15分間撹拌した。磁気分離により上清を除去した後、Buffer−A 5mLに分散し、抗体1mgを加え室温にて撹拌し、2時間反応を行った。反応終了後、100mM Tris−HCl pH7/0.01% Tween20 10mLにて3回洗浄を行った後、リン酸緩衝塩溶液10mLに分散し、高親和性抗体結合磁性粒子(1)を得た。
実施例15 高親和性抗体結合磁性粒子(2)の作製
実施例11で得られた磁性粒子(2)を用いる以外は実施例10と同様の方法で、高親和性抗体結合磁性粒子(2)を得た。
実施例16 高親和性抗体結合磁性粒子(3)の作製
実施例12で得られた磁性粒子(3)を用いる以外は実施例10と同様の方法で、高親和性抗体結合磁性粒子(3)を得た。
実施例17 免疫沈降における粒子への非特異的タンパク質吸着の検討
抗体の親和性と非特異的タンパク質吸着の関連を検討するため、実施例8で確認された高親和性抗HNF4α抗体であるH1415と抗マウスIgG(NM IgG)抗体を、実施例11で作製した磁性粒子(2)と市販品であるプロテインGセファロース粒子のそれぞれに結合させ、実施例6で調製したHNF4αを含む試料とHNF4αを含まないHeLa細胞から作製した試料を用い免疫沈降を行い、タンパク質染色及びウエスタンブロッティングを実施した。ウエスタンブロッティングの結果は、HNF4αを含有している試料において、抗HNF4α抗体を結合させた粒子では、磁性粒子とプロテインGセファロース粒子のいずれもが特異的に回収されたが、HNF4αを含有していない場合、HNF4αのバンドがいずれの粒子においても確認できなかった。しかし、タンパク質染色の結果では、ウエスタンブロッティングの結果とは異なっていた。すなわち、磁性粒子で明確なバンドが検出されたが、プロテインGセファロース粒子ではバックグラウンドが高く、バンドが不明瞭であった。この結果は、磁性粒子(2)の方がプロテインGセファロース粒子よりも、非特異的なタンパク質の吸着が少ないことを示唆している。(図7)。
この結果より、免疫沈降によるタンパク質の分離・抽出を行う場合、非特異的なタンパク質の吸着の少ない粒子を使用する必要性が示され、また磁性粒子(2)はプロテインGセファロース粒子よりもタンパク質の非特異的な吸着が少ない為、目的のタンパク質を高純度で分離・抽出できることが示唆された。
実施例18 高親和性抗体結合磁性粒子(2)を用いた核内受容体結合複合体の解析
1.免疫沈降
(1)HNF4α
高親和性抗体結合磁性粒子(2)を用いた免疫沈降により回収した核内受容体複合体を、LC−MS/MSで同定できるか否かを検討するため、抗HNF4α抗体であるH1415結合磁性粒子及び正常マウスIgG結合磁性粒子を用い、実施例6の(1)で調製したHepG2核抽出液に対し免疫沈降を行い、タンパク質染色を実施した(図8)。正常マウスIgG結合磁性粒子には認められないH1415結合磁性粒子に特異的なバンド(図8の矢印のバンド)が観察されることから、その特異的バンドを切り出した。
(2)ERα
高親和性ERα抗体結合磁性粒子及び、対照として正常マウスIgG結合磁性粒子を用い、実施例6の(2)で調製したMCF−7核抽出液に対し免疫沈降を行なった。その後、各磁性粒子を洗浄、回収後、SDS sample bufferを加えて100℃、10分間加熱し、免疫沈降物を得た。この免疫沈降物をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、試料添加位置より数mm泳動した後、泳動された沈降物が存在する領域のゲルを切り出した。
2.ゲル内消化
切り出したゲル片に10%メタノール及び7%酢酸水溶液を加え、20時間後に酢酸除去を目的に超純水を1mL加え30分間静置することにより脱色を行った。超純水を取り除いた後、還元液(10mM DTT,0.2M Tris,0.1M EDTA)を加え、37℃で1時間インキュベートすることにより還元操作を行った後、アルキル化液(4−vinylpyridine)を加え、遮光、室温で1時間静置することによりアルキル化操作を行った。続いて、20% 2−mercaptoethanol含有超純水を1mL加え30分間静置した後、液を取り除いた。さらに、超純水1mLを加え30分静置する作業を3回繰り返すことにより、反応停止操作を行った。次いで、脱水液(50%アセトニトリル,0.1M重炭酸アンモニウム)を加え、室温で30分間静置し、液を取り除いた後、凍結乾燥させることにより、脱水操作を行った。脱水試料にトリプシン0.1μg/μLを1mL加え、4℃で10分間静置後、Digest Buffer(0.2M重炭酸アンモニウム、超純水、アセトニトリル、0.1M CaCl)を加え37℃で一晩反応させることにより酵素消化を行った。液を一度回収した後、抽出液(60%アセトニトリル,0.1%トリフルオロ酢酸)を加え、室温で30分間振とうした後、回収した液と合わせ、凍結乾燥することによりペプチド抽出操作を行った。これをSample Buffer(2%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸)に溶解したものを試料溶液として、LC−MS/MSによる解析に用いた。
3.LC−MS/MSによる解析
(1)HNF4α
得られた分析結果からデータベースサーチによりタンパク質の同定を行ったところ、いくつかのバンドが確認できた。その中の1つとして、HNF4α及びHNF4αのファミリータンパク質であるγが同定された。このことは高親和性抗体を用いることで核内受容体タンパク質自体を回収することが示され、さらに、その複合体も解析が可能であることを示す。また前述のとおり公知の粒子では非特異吸着が多いため特異的バンドの比較が困難であったが、親水性ポリマーを結合させることにより非特異吸着を減少させた粒子を用いることによりこの方法が可能になったことを示している。
(2)ERα
得られた測定結果からデータベースサーチによりタンパク質同定を行ない、抗ERα抗体結合磁性粒子を使用して得られた免疫沈降物に対してのみ同定されるタンパク質として表3の結果を得た。その中の1つとしてERαが同定された。また、ERαとの相互作用が示唆されるSWI/SNF複合体の構成タンパク質(EMBO J.Aug 1;21(15):4094−103(2002).)なども同定されており、このことは高親和性抗体を用いることでその結合相手であるERαタンパク質自体を回収できることが示されると共に、HNF4α同様、その複合体も解析が可能であることを示している。
実施例19 HNF4αと複合タンパク質の相互作用の確認
1.トランスフェクションしたCHO細胞さらに高親和性抗体結合磁性粒子(2)によるLC−MS/MSで同定された複合体タンパク質が実際に相互作用するか否かを詳細に検討するため、強制発現によるプルダウンアッセイと、公知の方法によるHepG2の免疫沈降サンプルをウエスタンブロッティングにより解析した。プルダウンアッセイは、HNF4αとFLAGタグがついたHNF4γをトランスフェクション試薬としてTransIT−LT1を用いトランスフェクションしたCHO細胞から細胞抽出液を作製した。すなわち、RPMI培地400μLにTransIT−LT1を16μL添加し、室温で15分間静置後プラスミドを添加し、室温で15分間静置後CHO細胞培養ディッシュに添加し48時間培養させた。次いで、細胞を冷PBS/0.25mM PMSFで洗浄し、セルスクレイパーにて回収した。回収した細胞を2,000rpm,10minで沈殿させ、Lysis Buffer(20mMTris−HCl(pH7.47),1% NP−40,25mM β−glycerophosphate,2mM EGTA,2mM MgCl,150mM NaCl,10mM NaF,10% glycerol, 0.5mM PMSF,0.5mM DTT,2μg/mL Aprotinin,2μg/mL Leupeptin,1μg/mL PepstatinA)に懸濁後、Benozonace(QUIAGEN社)をLysis Bufferの1/500倍量加えて氷上にて30分間静置した。15,000rpm,15minで上清を取り細胞破砕液とした。その細胞破砕液をサンプルとして用いて抗HNF4α抗体と抗Flag抗体(SIGMA社)で免疫沈降を行い、通常の方法でHRP標識した抗HNF4α抗体、もしくは抗Flag抗体を用いてイムノブロッティングで検出した。HepG2の免疫沈降は実施例6で調製したHepG2核抽出液を抗HNF4α抗体で免疫沈降を行い、HRP標識抗HNF4α抗体もしくは抗HNF4γヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz)を用いてイムノブロッティングで検出した(図9〜図10)。結果として、プルダウンアッセイでも公知の免疫沈降法でもHNF4αとHNF4γの相互作用を確認することができた。今まで両者の相互作用を示唆するデータは報告されていたが、実際の相互作用が確認された例はなく、今回初めて確認することができた。この結果から、高親和性抗体結合磁性粒子を用いた免疫沈降サンプルに対するLC−MS/MSによる解析方法は、核内受容体複合体を解析するために有効であることが示された。
実施例20 高親和性抗HNF4γ抗体結合粒子を用いたHNF4γと複合体を形成するタンパク質の解析
高親和性抗HNF4γ抗体結合プロテインGセファロース粒子を用いて、実施例6で調製したHepG2核抽出液を免疫沈降し、ビオチン標識高親和性抗HNF4γ抗体でイムノブロッティングを行った。その結果、HNF4γに相当する分子量の位置にバンドが検出された(図10)。実施例17にて、HNF4αとHNF4γが複合体を形成することが証明されていることから、上記免疫沈降試料と同一試料について、HRP標識抗HNF4αヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz)によるイムノブロッティングを行った。その結果、HNF4αの分子量に相当する位置にバンドが検出された(図11)。今回のこの試験ではLC−MS/MSを用いてはいないが、免疫沈降により複合体を形成しているHNF4αが検出されたことから、高親和性抗HNF4γ抗体結合磁性粒子を用いることによりプロテオミクス解析が可能であることを示唆している。
実施例21 天然型核内受容体溶液使用によるプロテオミクス解析に対する強制発現核内受容体溶液を使用した場合の差異
天然型の核内受容体と強制的に発現させた核内受容体では形成される複合体構成タンパク質が異なるか否かを解析するため、高親和性抗HNF4α抗体結合磁性粒子によるHepG2細胞内の天然型HNF4α複合体のプロテオミクス解析とHepG2に強制的に発現させたFlagタグ融合型HNF4α複合体の抗Flag抗体結合アガロース粒子によるプロテオミクス解析結果を比較した。
1.免疫沈降
天然型HNF4αに関しては、実施例16のHNF4αの解析方法と同様の操作を行い、タンパク質染色を行わずに免疫沈降されたタンパク質をそのままトリプシン消化に用いた。Flagタグ融合型HNF4αに関してはHepG2細胞にトランスフェクション試薬としてLipofectamine2000(invitrogen社)を用いてFlagタグ融合型HNF4αを発現させ核抽出液を調整し、抗Flag抗体結合アガロースビーズ(SIGMA社)で免疫沈降を行い、Flagペプチド(SIGMA社)により溶出し、溶出タンパクをそのままトリプシン消化に用いた。
2.トリプシン消化
免疫沈降されたタンパクをトリクロロ酢酸により沈殿させ、10%アセトニトリル,0.1M重炭酸アンモニウムで再溶解し、還元液(10mM DTT,0.2M Tris,0.1M EDTA)を加え、37℃で1時間インキュベートすることにより還元操作を行った後、アルキル化液(4−vinylpyridine)を加え、遮光、室温で1時間静置することによりアルキル化操作を行った。その後トリプシン0.1μg/μLの濃度で加え37℃で一晩反応させることにより酵素消化を行った。消化後凍結乾燥することによりペプチド抽出操作を行った。これをSample Buffer(2%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸)に溶解したものを試料溶液として、LC−MS/MSによる解析に用いた。
3.LC−MS/MSによる解析
得られた測定結果からデータベースサーチによりタンパク質同定を行なった。天然型HNF4αに関しては、抗HNF4α抗体結合磁性粒子を使用して得られた免疫沈降物に対してのみ同定されるタンパク質として表4の結果を得た。Flagタグ融合型HNF4αに関しては、抗Flag抗体結合アガロースビーズを使用して得られた免疫沈降物に対してのみ同定されるタンパク質として表5の結果を得た。天然型HNF4αで同定されたタンパク質にはHNF4γの他、すでにHNF4αとの相互作用が報告されているRNA−binding protein EWS(Biochem Biophys Res Commun.2005 Apr 8;329(2):653−60.)、また他の核内受容体との相互作用が報告されているSFPQ protein(Mol Cell Biol.2001 Apr;21(7):2298−311.)などがあった。一方、Flagタグ融合型HNF4αで同定されたタンパク質にはHNF4γはあるものの、その他HNF4αと複合体を形成している可能性があるようなタンパク質が同定されなかった。これらの結果から、天然型と強制発現の核内受容体複合体は異なる可能性が示唆された。すなわち、強制発現物を用いた核内受容体プロテオミクス解析は正確な解析結果を得ることが困難であると思われる。従って、正確な解析結果を得るためには、少量の試料でプロテオミクス解析が可能な非特異的結合が少ない高親和性抗体結合磁性粒子を用いた天然型核内受容体複合体のプロテオミクス解析が必要であると考えられる。
実施例22 磁性粒子の種類による免疫沈降性能の差異
異なる方法で調整された非特異吸着の少ない磁性粒子(2)と(3)の性能を比較するため、抗体結合磁性粒子(2)と(3)を実施例17と同様の方法で比較した。タンパク質染色の結果、抗体結合磁性粒子(2)と(3)はほぼ同程度の低非特異吸着量であった。ウエスタンブロッティングの結果、どちらもHNF4αが特異的に回収され、バンドの濃さを定量したところ磁性粒子(3)が磁性粒子(2)の約1.5倍の回収量であった。この結果は磁性粒子(3)がよりプロテオミクス解析に適当であることを示している(図13)。

Claims (9)

  1. 核内受容体タンパク質含有試料を、核内受容体タンパク質の一種に対して特異的でありかつ高親和性のモノクローナル抗体を結合させた支持体を用いた免疫沈降反応に付し、免疫沈降反応により分離されたタンパク質複合体を解析することを特徴とする、核内受容体タンパク質複合体のプロテオミクス解析方法。
  2. 支持体が、磁性粒子である請求項1記載のプロテオミクス解析方法。
  3. 磁性粒子が、非特異的タンパク質吸着の少ない磁性粒子である請求項2記載のプロテオミクス解析方法。
  4. 磁性粒子の表面に親水性ポリマーを有する請求項2又は3記載のプロテオミクス解析方法。
  5. 親水性ポリマーが多糖類である請求項4記載のプロテオミクス解析方法。
  6. モノクローナル抗体が、KD値=3×10−8M以下である請求項1〜5のいずれか1項記載のプロテオミクス解析方法。
  7. 分離された核内受容体タンパク質複合体の解析手段が、LC−MS/MSによるものである請求項1〜6のいずれか1項記載のプロテオミクス解析方法。
  8. 核内受容体タンパク質が、GR、MR、PR、AR、ERα、ERβ、RXRα、RXRβ、RXRγ、HNF4α、HNF4γ、COUP−TFI、COUP−TFII、EAR2、TR2、TR4、GCNF、Rev−erbα、Rev−erbβ、TRα、TRβ、RARα、RARβ、RARγ、PPARα、PPARβ、PPARγ、VDR、LXRα、LXRβ、FXR、PXR、CAR、SF−1、LRH−1、ERRα、ERRβ、ERRγ、NGFI−Bα、NGFI−Bβ、NGFI−Bγ、RORα、RORβ、RORγ、TLX、PNR、DAX1及びSHPである請求項1〜7のいずれか1項記載のプロテオミクス解析方法。
  9. 核内受容体蛋白質が、HNF4α、HNF4γ、PPARγ、LXRα、ERα及びTLXである請求項1〜7のいずれか1項記載のプロテオミクス解析方法。
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