JP2005185281A - 細胞表面抗原に対する抗体取得とその抗原同定 - Google Patents

細胞表面抗原に対する抗体取得とその抗原同定 Download PDF

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Abstract

【課題】細胞表面抗原に結合する抗体のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】本発明は、以下の特徴を有する細胞表面抗原に結合する抗体のスクリーニング方法を提供した。
抗原抗体複合体の低極性溶媒中での洗浄
既に取得済みの抗体(またはそれが結合する抗原)の存在下での抗原抗体反応
更に本発明は、抗体のスクリーニングに有用な、細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法を提供する。本発明によって得られた可溶性分画は、抗体が認識する細胞表面抗原の単離にも有用である。
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法に関する。
動物個体は体液中に侵入する様々な異物に対して、その物質の表面に位置する様々な構造(エピトープ)を認識して特異的に結合する抗体を産生する能力を有する。その抗体レパートリーの大きさ(異なるアミノ酸配列を持つ抗体の種類の総数)は動物個体あたり100万種〜1億種と巨大である。この巨大なレパートリーを構成する抗体は、それぞれ個々のB細胞によって産生されている。
従来行われてきた抗血清調製技術、および細胞融合によるモノクローン抗体作製技術は、この動物の持つ抗体産生機構を利用している。すなわち、抗原物質をアジュバンドと共に動物(ウサギ、ヤギ、マウス等)に一定間隔をおいて数回注入する。動物の免疫系がその物質を異物と認識すると、その抗原物質に結合する抗体を発現したB細胞が増殖分化刺激を受け、大量の抗体の体液中への分泌を開始する。抗原物質の表面には様々な構造が存在し、精製された抗原といえどもそれに結合する抗体は、通常は多種類の抗体の混合物として分泌される。このような抗体を含む血清(抗血清)はポリクローン抗体と呼ばれる。現在もポリクローン抗体は、研究試薬として有効に利用されている。しかしポリクローン抗体は、目的とする抗原物質以外にも、部分的に(抗体にとって)類似した構造を持つ分子とも交叉反応性(cross-reactivity)を示すことが多い。交叉反応は、ポリクローン抗体を抗原検出試薬として用いるときの問題点となっていた。
細胞融合技術の確立がこの状況を一変させた。抗原物質で免疫した動物の脾臓には抗原と結合する抗体を産生するBリンパ球は多数存在する。しかしその細胞を試験管内で長期間維持培養し続けることは困難である。そこで永代培養が可能なように株化した腫瘍細胞と抗体産生細胞を融合することにより、抗体を産生し永代培養可能な細胞を作製するというアイデアが生まれ、方法として確立した。このようにして確立した融合株(ハイブリドーマ)は1個の抗体産生細胞と1個の腫瘍細胞に由来するので産生される抗体は1種類であり、モノクローン抗体と呼ばれる。これはケラーとミルスタインにより1975年に開発された技術である。モノクローン抗体は、均一な抗体分子の集合体であることから、交叉反応を生じにくい特異性に優れた抗体として利用されている。
しかしこの方法にも次のような問題点が指摘されている。
(1)抗原物質として必要充分量の精製標品を有していること
(2)その物質が免疫される動物に対して免疫原性を示す必要があること
(3)モノクローン抗体を得るまでに多大な労力と日数を要すること
ポリクローン抗体やモノクローン抗体の作製技術の有効性は、多くの有用な抗体を提供してきたことによって証明されている。しかし、これらの方法によっては解決が困難な多くの課題が今なお存在することも事実である。たとえば、多種類の抗原に結合する抗体を短期間に得ること、あるいは特殊な構造をしたエピトープに特異的に結合する抗体を選択的に得ること、といった要求には、これらの方法では応えることはできない。希望する抗体を短期間で得ることができるように、多様な抗体分子で構成された抗体ライブラリーの作製が望まれていた。
このような抗体ライブラリーに含まれる抗体の種類は、理論的には動物個体の有する抗体レパートリーの大きさに匹敵する必要がある。しかし現実には、動物細胞を用いてそのような巨大なライブラリーを作製することは不可能である。モノクローン抗体の作製は、動物の持つ抗体産生細胞のライブラリーから、期待する反応性を持つ抗体をスクリーニングする作業に他ならない。しかし、そのライブラリーを構成するレパートリーは、細胞融合などの操作を通じて大幅に失われてしまう。
そこで、大腸菌による抗体遺伝子の発現系が提案された。大腸菌中で抗原結合力のある抗体を発現させるのに初めて成功したのはBetter et al(1988)(Better M, Chang CP, Robinson RR, Horwitz AH Science 1988, 240:4855 1041-3)とSkerraとPlukthun(1988) (Skerra A, Plukthun A Science 1988, 240:4855 1038-41)である。彼らは大腸菌で分泌シグナルとして機能する配列を抗体のN末端に添加することによりFab型とFv型抗体を大腸菌中での産生と、それに続く分泌に成功した。
更に、1988年のPCRの開発は、直ちに抗体可変領域をコードする遺伝子の増幅に応用される。動物(とりわけヒト)中で発現されている全てのVHDJH、VLJL遺伝子を増幅するためのプライマー配列が提案された(Orlandi R et al. Proc Natl Acad Sci USA 1989 86:10 3833-7, Sastry L et al. Proc Natl Acad Sci USA 1989 86:15 5728-32)。そしてこれらのプライマーによって増幅した抗体遺伝子を利用して、大腸菌中で抗体を産生させるためのベクターが構築された(Huse WD et al.Science 1989 246:4935 1275-81, Ward GE et al.J Clin Microbiol 1989 27:12 2717-23)。この段階で、抗体ライブラリーのレパートリーサイズは飛躍的に向上した。しかし、大腸菌中で産生される微量の抗体について抗原との結合活性を指標とするスクリーニングを行うことは、容易なことではなかった。スクリーニングを能率的に行うには、ファージディスプレー法が抗体ライブラリー作製に応用されるのを待つ必要があった。
ファージディスプレー法はSmithにより1985年(Smith GP Science 1985 228:4075 1315-7)に考案されたもので、M13ファージのような一本鎖環状DNAを持つ線状のバクテリオファージが用いられる。ファージ粒子はDNAの周囲を取り囲んでファージ粒子の大部分を構成するcp8というタンパクと、ファージが大腸菌に感染する時に機能する5個のcp3と呼ばれるタンパクからなっている。このcp3もしくはcp8と融合した形でポリペプチドをコードするように遺伝子を構築し、ファージ粒子表面にそのタンパクを発現させるシステムがファージディスプレーシステムである。
結合性の蛋白質を表面に保持したファージ粒子は、そのリガンドとの結合活性を利用して濃縮することができる。こうして目的とするDNAを濃縮する方法は、パニング法と呼ばれている。濃縮されたファージ粒子には、必要な結合活性を持つ蛋白質をコードするDNAがパッケージングされている。このように繊維状ファージの利用によって、結合活性に基づくスクリーニングと、DNAのクローニングとをきわめて効率的に行うことができるシステムが実現した。
Better M, Chang CP, Robinson RR, Horwitz AH Science 1988, 240:4855 1041-3 Skerra A, Plukthun A Science 1988, 240:4855 1038-41 Orlandi R et al. Proc Natl Acad Sci USA 1989 86:10 3833-7 Sastry L et al. Proc Natl Acad Sci USA 1989 86:15 5728-32 Huse WD et al.Science 1989 246:4935 1275-81 Ward GE et al.J Clin Microbiol 1989 27:12 2717-23 Smith GP Science 1985 228:4075 1315-7
本発明は、抗体ライブラリーから細胞表面に結合する抗体をスクリーニングするための方法の提供を課題とする。
現在、生体分子が作る、考えられる多様な立体構造の全てに対してそれぞれ特異的に結合する抗体の大部分を含む抗体ライブラリーの作製が可能である。このような抗体ライブラリーを、本明細書ではスーパーライブラリーと記載することがある。抗原として認識される分子の認識部位はエピトープと呼ばれる。一方、エピトープを認識する抗体側の構造はパラトープと呼ばれる。つまりスーパーライブラリーは、存在し得るエピトープの全てに対するパラトープの全てを含んでいると考えることができる。具体的には、スーパーライブラリーは、1000億(1011)種程度の抗体からなっている。たとえば本発明者らが過去に作成した抗体ライブラリーAIMS4は、1011オーダーの多様性を有する抗体ライブラリーである(WO 01/62907)。
したがって一定数以上の癌細胞とスーパーライブラリーを混合すれば、癌細胞上に存在する全てのエピトープは、ある頻度で必ず抗原抗体複合体を作る。エピトープと抗体の結合頻度は、両者の平衡状態に関する物理化学法則に従う。たとえば細胞上に数千種のエピトープがあると仮定する。一方、スーパーライブラリー(1011種)が、それぞれのエピトープに対応して平均10個の抗体を含んでいると仮定すると、スーパーライブラリーの中の数万種の抗体が、細胞上のエピトープと抗原抗体反応によって結合することになる。このような条件下でも1011種の中の数万種、つまりライブラリー中のファージ抗体数百万個の中に1個の確率で細胞上に抗原抗体反応に基づく複合体が作られるだけである。ここで二つの大きな問題が生じる。
(1)抗原抗体反応は平衡反応であるために、複合体を形成するかどうかは抗原濃度、抗体濃度、そして結合定数によって決定される。その結果、反応条件によっては抗原に結合する抗体が存在しても、その多くは複合体を作らずにフリーな状態で存在する。
(2)大量の細胞とファージ粒子を混合した場合、ファージ粒子の非特異的な吸着がある頻度で必ず起こる。非特異的な吸着は、抗原抗体反応に基づかない結合である。
上記のように、抗体ライブラリー中には、数百万個の中に1個の割合で、細胞上に抗原抗体複合体を構成する抗体が存在すると考えることができる。このような条件下で、抗原抗体反応によって細胞に結合するはずのファージ粒子を分離するためには、細胞とファージ粒子を混合後、細胞を洗浄して非特異的に細胞に吸着したファージを取り除かなければならない。洗浄によって平衡状態にあるフリーの抗体は取り除かれる。抗原抗体複合体は、複合体とフリーの抗体との間の平衡状態によって維持されている。したがってフリーの抗体濃度が事実上ゼロとなる結果、抗原抗体複合体を構成している抗体が、時間経過と共にエピトープから分離する可能性がある。こうして、細胞表面からファージ粒子が除かれていく。
本発明者らは、洗浄に伴う抗体の損失を避けるためには、まず、抗原抗体反応に基づく抗体と細胞表面エピトープとの結合を安定に維持することが重要であると考えた。そしてこの課題を解決するために、抗原抗体複合体を低極性溶媒中に置くことが有効であることを見出し本発明を完成した。すなわち本発明は、以下の細胞表面に結合する抗体のスクリーニング方法に関する。
〔1〕次の工程を含む、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法。
(1)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画と抗体ライブラリーとを水性媒体中で接触させる工程
(2)(1)の水性媒体と界面を介して接触する低極性溶媒とからなる2相系を調製する工程、
(3)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を低極性溶媒に移動させる工程、および
(4)低極性溶媒に移動した細胞、またはその分画に結合している抗体を、細胞表面抗原に結合する抗体として回収する工程
〔2〕工程(3)と(4)の間に、付加的に次の工程(3-a)から(3-c)を含む、〔1〕に記載の方法。
(3-a)(3)において、低極性溶媒に移動された細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を、水性媒体に移動させる工程
(3-b)(3-a)の水性媒体と界面を介して接触する低極性溶媒とからなる2相系を調製する工程、および
(3-c)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を低極性溶媒に移動させる工程
〔3〕工程(3-a)における水性媒体が、(1)の水性媒体とは異なる水性媒体に接触させる工程である、〔2〕に記載の方法。
〔4〕工程(3-b)における低極性溶媒が、(2)の低極性溶媒と共通である〔2〕に記載の方法。
〔5〕工程(3-b)における低極性溶媒が、(2)の低極性溶媒と置き換えられた異なる低極性溶媒である〔2〕に記載の方法。
〔6〕(3-c)において低極性溶媒に移動された細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を、(3)において低極性溶媒に移動された細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画として、前記工程(3-a)から(3-c)を繰り返すことを特徴とする〔2〕に記載の方法。
〔7〕前記工程(3-a)から(3-c)を、1〜5回繰り返す、〔6〕に記載の方法。
〔8〕前記工程(3-a)から(3-c)を、2〜3回繰り返す、〔7〕に記載の方法。
〔9〕抗体ライブラリーが抗体の可変領域を提示したrgdpライブラリーである〔1〕に記載の方法。
〔10〕rgdpライブラリーがファージライブラリーである〔9〕に記載の方法。
〔11〕工程(4)において回収された抗体を新たな抗体ライブラリーとして工程(1)-(3)を繰り返す工程を含む〔1〕に記載の方法。
〔12〕細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞の分画が、細胞表面抗原の可溶性分画である〔1〕に記載の方法。
〔13〕細胞表面抗原の可溶性分画を次の工程によって得ることを特徴とする〔12〕に記載の方法。
(1) 抗体を取得すべき抗原を発現している細胞を破砕する工程、
(2) 工程(1)の破砕物から細胞膜分画を回収する工程、
(3) 細胞膜分画を界面活性剤混合液によって可溶化する工程、および
(4) 工程(3)の上清を細胞表面抗原の可溶性分画として回収する工程
〔14〕界面活性剤混合液を構成する界面活性剤が、非イオン性界面活性剤と両性界面活性剤のいずれか、または両方である〔13〕に記載の方法。
〔15〕非イオン系界面活性剤が、NP-40、Triton X100、n-Dodecyl β-D-maltoside、n-Octyl β-D-glucoside、 n-Octyl β-D-maltopyranoside、およびn-Decyl β-D-maltosideからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である〔14〕に記載の方法。
〔16〕両性界面活性剤が、Deoxycholic acidである〔14〕に記載の方法。
〔17〕細胞表面抗原の可溶性分画が固相に結合されている〔12〕に記載の方法。
〔18〕固相が磁性粒子である〔17〕に記載の方法。
〔19〕細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞が、固相に固定化された細胞である〔1〕に記載の方法。
〔20〕固相がガラスビーズである〔19〕に記載の方法。
〔21〕ガラスビーズがコラーゲン処理されたガラスビーズである〔20〕に記載の方法。
〔22〕固相に固定化された細胞が、前記細胞をコラーゲン処理されたガラスビーズとともに培養することによって得られた細胞である〔21〕に記載の方法。
〔23〕水性媒体が、不活性蛋白質を添加した細胞培養液または緩衝液である〔1〕に記載の方法。
〔24〕不活性蛋白質がウシ血清アルブミンである〔23〕に記載の方法。
〔25〕細胞培養液が、MEM(Minimum EssentialMedium)、 Basal Medium, Eagle(BME)、 Eagle's Minimum Essential Medium(EMEM)、 Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DME)、RPMI-1640 Medium(RPMI1640) 、およびES Medium(ES)からなる群から選択されるいずれかの細胞培養液である〔23〕に記載の方法。
〔26〕低極性溶媒が、シクロヘキサンおよびジフェニルエーテルを含む混合溶媒である〔1〕に記載の方法。
〔27〕シクロヘキサンとジフェニルエーテルの1:9の混合溶媒である〔26〕に記載の方法。
〔28〕低極性溶媒が、次のaおよびbに記載の溶媒を含む混合溶媒であり、かつ溶媒密度(d)1.0-1.09を有することを特徴とする〔1〕に記載の方法。
a:ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、およびジイソプロピルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒
b:フタル酸ジブチル、1,1,1-トリクロロエタン、およびジフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒
〔29〕水性媒体として、不活性蛋白質を添加した細胞培養液または緩衝液を組み合わせることを特徴とする〔26〕または〔28〕に記載の方法。
本発明の抗体の取得方法は、水性媒体と低極性溶媒の組み合わせによって、rgdpクローンの細胞表面抗原に対する結合が安定化されることに基づいている。すなわち本発明は、以下の、抗原抗体複合体の水素結合を安定化させる工程を含む方法に関する。
〔30〕以下の工程を含む、抗体の可変領域を提示したrgdpライブラリーから目的とする細胞の表面抗原に結合する活性を有するrgdpクローンをスクリーニングするための方法において、rgdpライブラリーと前記抗原とを水性媒体中で接触させた後に、低極性溶媒相に移動させることによって抗原抗体複合体の水素結合を安定化させる工程を含む方法。
(1)抗原抗体反応が可能な条件下でrgdpライブラリーおよび、目的とする抗原とを接触させる工程、および
(2)前記抗原に結合したrgdpクローンを回収する工程
〔31〕低極性溶媒で洗浄した後に前記抗原に結合したrgdpクローンを回収する工程を含む〔30〕に記載の方法
〔32〕前記細胞表面抗原が、細胞、または細胞表面抗原の可溶性分画を固定した固相である〔30〕に記載の方法。
〔33〕水性媒体が血清アルブミンを含むミニマムエッセンシャルメディウムである〔30〕に記載の方法。
〔34〕低極性溶媒が以下のa-dからなる群から選択されたいずれかの溶媒である〔30〕に記載の方法。
a.ジフェニルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合溶媒、
b.イソプロピルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合溶媒、および
c.フタル酸ジブチルとシクロヘキサンの混合溶媒
d.ジフェニルエーテルとシクロヘキサンの混合溶媒
〔35〕極性媒体として血清アルブミンを含むミニマムエッセンシャルメディウムを組み合わせることを特徴とする〔34〕に記載の方法。
細胞表面上には多種多様な分子が存在している。細胞表面の分子は、細胞間接着や接触による情報交換、液性因子の受容、栄養素の取り込みや排出など様々な生命活動に関与している。細胞は、組織、細胞の状態、あるいは分化段階によって、異なる分子をその表面に有している。ある種のウィルスに感染した細胞においては、そのウィルスによってコードされている遺伝子の産物が膜表面タンパクとして発現される。また、癌化した細胞においては癌細胞に特異的な膜表面タンパクを産生していることが知られている。細胞表面に存在する分子には、その細胞の機能に密接に関連しているものが少なくない。また特定の細胞の表面に特異的に見出される分子は、細胞のマーカー分子として有用である。
これらの細胞膜表面分子を網羅的に解析し、組織特異的な表面抗原分子を同定するシステムの開発が必要である。Wuらは細胞膜をプロテアーゼで分解し、それを質量分析によって解析する手法を報告している(Nature Biotechnology vol.21, 2003, 532-538, Wu, C.C., MacCoss, M.,J., Howell, K.,E.,& Yates, J.R.III A method for the comprehensive proteomic analysis of membrane proteins)。この方法は、蛋白質の網羅的な解析方法として有力な方法であるが、目的とする抗原分子の量的な差異、あるいは組織内での分布を観察する手段としては不十分である。
抗体は、抗原分子の量的な差異、あるいは抗原分子の局在を明らかにするための有用なツールである。しかし、細胞表面の全ての抗原分子を解析するためには、抗原分子集団を網羅的に認識できる抗体セットを取得する必要がある。一般に抗体を得るために、ヒトの癌細胞株を動物に免疫してモノクローン抗体をとる手法や、抗体ライブラリーをスクリーニングして抗体クローンを選択する方法が行われてきた。動物に免疫する手法では、免疫源となる抗原が少数のものに限定されるため、網羅的解析は困難である。従来の抗体ライブラリーを使用したスクリーニングも、それが応用できる細胞が限定されていた。また、細胞表面抗原による抗体ライブラリーのスクリーニングでは、一部の限られたエピトープあるいは抗原に結合する抗体に限定される傾向が強い。その結果、抗体ライブラリーから取得できる抗体セットが限定される。限られたエピトープ、あるいは限られた抗原を認識する抗体セットで、網羅的抗原解析(comprehensive antigen analysis)を行うことは困難である。
抗体ライブラリーから、細胞表面抗原に結合する多様な抗体を取得することが難しい理由として、次のようなメカニズムが考えられる。まず、抗体としての結合活性の高いクローンが優先的に取得される傾向がある。また細胞表面の抗原分子の数に差があると、抗体の結合活性が同等であっても、より多数の分子に対する抗体の方が優先的に取得される。抗体ライブラリーとして可変領域をディスプレイしたファージライブラリーをスクリーニングする場合、取得されたファージの増幅と、スクリーニングが繰り返される。この繰り返しの過程の中で、優先的に取得される抗体は常に回収されやすい一方で、取得が難しい抗体はしばしば失われてしまう。その結果、たとえスクリーニングを繰り返したとしても、回収されない抗体ができてしまう。これが、あらゆる抗原の網羅的な解析を可能とする抗体セットの取得が困難な理由である。
先に述べたように、抗体ライブラリーとしてスーパーライブラリーを利用すれば、あらゆる抗体をスクリーニングによって見出すことができるはずである。ところが公知のスクリーニング方法においては、結合活性の低い抗体、あるいは希少な抗原に結合する抗体をピックアップすることは、原理的に難しいといわざるをえなかった。つまり抗体ライブラリーの有する多様性を十分に生かすことができる、新たなスクリーニング方法の提供が望まれていた。
本発明者らは、あるスクリーニングにおいて回収された抗体については、別のスクリーニングにおいて、回収されないような仕組みを実現することができれば、取得が困難な抗体を高い確率でピックアップできる条件を作り出すことができると考えた。そして、既に回収されている抗体、あるいはその抗体が認識する抗原を、抗原抗体反応の場に存在させることによって、容易に未知の抗体をピックアップできることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下の細胞表面抗原に結合する抗体のスクリーニング方法に関する。
〔36〕細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーを接触させ、細胞表面抗原に結合する抗体を回収する工程を含む、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法において、以下のa)〜c)のいずれかの工程を含む方法であって、抗原マスキング剤と抗体マスキング剤がそれぞれ以下に定義される成分を含むことを特徴とする方法。
抗原マスキング剤:取得を望まない抗体を含む
抗体マスキング剤:取得を望まない抗体が認識する遊離の抗原を含む
a) 細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーとが、抗原マスキング剤または抗体マスキング剤のいずれかの共存下で接触させられる、
b)抗体ライブラリーを抗体マスキング剤との接触後に細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と接触させる、または
c)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相を抗原マスキング剤と接触後に抗体ライブラリーと接触させる
〔37〕取得を目的とする抗体が認識する抗原が癌細胞の表面抗原であり、取得を望まない抗体が認識する抗原が正常細胞の表面抗原である〔36〕に記載の方法。
〔38〕正常細胞と前記癌細胞が由来する組織が共通である〔37〕に記載の方法。
〔39〕取得を目的とする抗体が認識する抗原が、特定のステージの癌細胞の表面抗原であり、取得を望まない抗体が認識する抗原が前記ステージとは異なるステージの同種の癌細胞の表面抗原である〔36〕に記載の方法。
〔40〕前記特定のステージと、特定のステージとは異なるステージのいずれかが、進行癌であり、他方が初期癌である〔39〕に記載の方法。
〔41〕取得を望まない抗体が、前記細胞表面抗原に結合する抗体であり、目的とする抗体が、取得を望まない抗体が認識する抗原または抗原決定基とは異なる抗原または抗原決定基に結合する抗体である〔36〕に記載の方法。
〔42〕取得を望まない抗体が、前記細胞表面抗原に結合する結合活性によって予め単離された抗体である〔41〕に記載の方法。
〔43〕次の工程を含む、〔36〕に記載の方法。
(1)前記細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーを含む水性媒体と、この水性媒体と接触した低極性溶媒で構成される2相系を調製する工程、
(2)標的抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相を低極性溶媒相に移動させる工程、および
(3)低極性溶媒相に移動した細胞、またはその分画を保持した固相に結合している抗体を、細胞表面抗原に結合する抗体として回収する工程
〔44〕〔1〕、または〔36〕のいずれかの方法によって得ることができる抗体またはその可変領域を含む断片。
〔45〕〔1〕、または〔36〕のいずれかの方法によって得ることができる抗体の可変領域をコードするポリヌクレオチド。
上記の方法にしたがって得られた抗体は、更に、細胞表面抗原に対する結合活性を指標として、より目的とする細胞に特異的に結合する抗体をスクリーニングするための対象とすることができる。すなわち本発明は、以下の工程を含む、抗体のスクリーニング方法に関する。
〔46〕次の工程を含む、特定の細胞の表面抗原に結合し、同じ条件で類似の細胞に接触させたときに類似の細胞には結合しない抗体のスクリーニング方法。
(1)〔1〕または〔36〕に記載の方法によって選択された抗体を、前記特定の細胞またはその分画を保持した固相、および前記類似の細胞またはその分画を保持した固相に共通の条件下で接触させる工程、および
(2)前記特定の細胞またはその分画を保持した固相に結合し、前記類似の細胞またはその分画を保持した固相に結合しなかった抗体を選択する工程
〔47〕特定の細胞が癌細胞であり、類似する細胞が当該癌細胞と同じ組織の正常細胞である〔46〕に記載の方法。
〔48〕特定の細胞があるステージの癌細胞であり、類似する細胞が別のステージの同種の癌細胞である〔46〕に記載の方法。
〔49〕工程(1)が、前記特定の細胞および前記類似する細胞の細胞固定試料に前記抗体を接触させる工程を含む、 〔46〕に記載の方法。
〔50〕工程(1)が、前記特定の細胞の抗原分画を保持した固相、および前記類似する細胞の抗原分画を保持した固相に前記抗体を接触させる工程を含む、 〔46〕に記載の方法。
〔51〕前記細胞、または細胞の抗原分画を保持した固相に結合した抗体を、その抗体を認識する標識抗体で検出する工程を含む、〔39〕または〔40〕に記載の方法。
本発明の方法は、特に生体内における抗体の多様性を維持したrgdpライブラリーに適用することができる。すなわち本発明は、以下の工程を含む、抗体のスクリーニング方法に関する。
〔52〕前記抗体ライブラリーが少なくとも109種類の抗体を含む抗体ライブラリーである〔1〕または〔36〕に記載の方法。
〔53〕前記抗体ライブラリーが、少なくとも1010種類の抗体を含む抗体ライブラリーである〔52〕に記載の方法。
〔54〕前記抗体ライブラリーが、少なくとも1011種類の抗体を含む抗体ライブラリーである〔53〕に記載の方法。
更に本発明は、本発明によって得られる抗体が認識する抗原を同定するための方法に関する。すなわち本発明は、以下の抗原の同定方法と、この方法に基づいて同定された抗原に関する。
〔55〕次の工程を含む〔44〕に記載の抗体が結合する抗原の同定方法。
(1)〔44〕に記載の抗体と当該抗体の単離に用いた細胞表面抗原とを接触させる工程、
(2)前記抗体に結合した抗原を回収する工程、および
(3)回収された抗原を同定する工程
〔56〕付加的に、工程(3)で同定された抗原のアミノ酸配列を決定する工程を含む〔55〕に記載の方法。
〔57〕抗原を消化し、消化生成物を構成するアミノ酸を同定する工程を含む〔56〕に記載の方法。
〔58〕蛋白質分解酵素によって、抗原を消化する工程を含む〔57〕に記載の方法。
〔59〕蛋白質分解酵素がセリンプロテアーゼである〔58〕に記載の方法。
〔60〕セリンプロテアーゼがトリプシンである〔59〕に記載の方法。
〔61〕消化生成物を構成するアミノ酸を、質量分析によって同定する工程を含む〔57〕に記載の方法。
〔62〕〔55〕に記載の方法によって同定された抗原。
さて、細胞表面抗原に結合する抗体をスクリーニングするためには、細胞そのもの、あるいは細胞表面抗原の抽出物が必要である。細胞表面抗原の抽出物は、固相に固定して抗体ライブラリーのスクリーニングに利用することができる。細胞表面抗原の中には、細胞膜によってその構造が維持されているものもある。したがって、細胞膜抗原を可溶性分画として取得することはしばしば困難を伴う。本発明者らは、たとえば上記のようなスクリーニングに有用な、細胞表面抗原の可溶性分画の調製技術を完成した。すなわち本発明は、以下の細胞膜抗原の可溶性分画の製造方法、あるいはそのための混合液を提供する。
〔63〕次の工程を含む、細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法。
(1) 目的とする細胞表面抗原を発現している細胞を破砕する工程、
(2) 工程(1)の破砕物から細胞膜分画を回収する工程、
(3) 細胞膜分画を界面活性剤混合液によって可溶化する工程、および
(4) 工程(3)の上清を細胞表面抗原の可溶性分画として回収する工程
〔64〕界面活性剤混合液を構成する界面活性剤が、非イオン性界面活性剤と両性界面活性剤のいずれか、または両方である〔63〕に記載の方法。
〔65〕非イオン系界面活性剤が、NP-40、Triton X100、n-Dodecyl β-D-maltoside、n-Octyl β-D-glucoside、 n-Octyl β-D-maltopyranoside、およびn-Decyl β-D-maltosideからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である〔64〕に記載の方法。
〔66〕両性界面活性剤が、Deoxycholic acidである〔64〕に記載の方法。
〔67〕細胞が癌細胞である〔63〕に記載の方法。
〔68〕次の工程を含む、抗体が認識する細胞表面抗原を単離する方法。
(1)〔63〕に記載の方法によって得ることができる細胞表面抗原の可溶性分画を抗体と接触させる工程、および
(2)抗体に結合した抗原を単離する工程
〔69〕抗体が、〔1〕または〔36〕に記載の方法によって選択された抗体である〔68〕に記載の方法。
〔70〕抗体が固相に結合されているか、または固相に結合可能なタグを有している〔68〕に記載の方法。
〔71〕細胞表面抗原の可溶性分画を抗体に接触させる工程において、反応液中の界面活性剤の濃度を0.01%w/v−5%w/vに調整する〔68〕に記載の方法。
〔72〕〔68〕に記載の方法によって単離された抗原を同定する工程を含む、抗体が認識する細胞表面抗原の同定方法。
〔73〕抗原を消化し、消化生成物を構成するアミノ酸を同定する工程を含む〔72〕に記載の方法。
〔74〕蛋白質分解酵素によって、抗原を消化する工程を含む〔73〕に記載の方法。
〔75〕蛋白質分解酵素が、セリンプロテアーゼである〔74〕に記載の方法。
〔76〕セリンプロテアーゼがトリプシンである〔75〕に記載の方法。
〔77〕消化生成物を構成するアミノ酸を、質量分析によって同定する工程を含む〔73〕に記載の方法。
〔78〕〔68〕に記載の方法によって単離された抗原。
〔79〕以下の組成を含む、細胞表面抗原の可溶化用界面活性剤混合液。
NP-40、
Triton X100、
n-Dodecyl β-D-maltoside、
n-Octyl β-D-glucoside、
n-Octyl β-D-maltopyranoside
n-Decyl β-D-maltoside、および
Deoxycholic acid
〔80〕各界面活性剤の使用量が0.01〜5%w/vである、〔79〕に記載の細胞表面抗原の可溶化用界面活性剤混合液。
また、細胞膜上の表面抗原は、細胞をプロテアーゼ処理することによっても得ることができる。加えるプロテアーゼの種類と量を調整すれば、抗原性を保持した膜抗原の部分的分解産物を回収することが可能である。これを、調べたい抗体と反応させて回収し、細胞表面抗原分子の同定が可能になった。すなわち本発明は、以下の細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法、並びにそれを用いた細胞表面抗原の同定方法に関する。
〔81〕細胞表面抗原を不完全消化する工程と、不完全消化によって細胞から切り離された細胞表面抗原を回収する工程を含む、細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法。
〔82〕不完全消化する工程が、細胞に蛋白質分解酵素を作用させる工程を含む〔81〕に記載の方法。
〔83〕蛋白質分解酵素が、セリンプロテアーゼである〔82〕に記載の方法。
〔84〕セリンプロテアーゼがトリプシンである〔83〕に記載の方法。
〔85〕〔81〕に記載の方法によって得ることができる、細胞表面抗原の可溶性分画。
〔86〕次の工程を含む、細胞表面抗原の同定方法。
(1)細胞表面抗原を認識する抗体と〔85〕に記載の細胞表面抗原の可溶性分画とを接触させる工程、
(2)前記抗体に結合した抗原を回収する工程、および
(3)回収された抗原を同定する工程
〔87〕抗体が〔1〕または〔36〕に記載の方法によって選択された抗体である〔86〕に記載の方法。
〔88〕付加的に、工程(3)で同定された抗原のアミノ酸配列を決定する工程を含む〔87〕に記載の方法。
実際本発明者らは、上記の方法によって肝臓癌細胞に特異的に結合することができる抗体と、あるいはその可変領域の取得に成功した。すなわち本発明は、以下のポリヌクレオチド、あるいはポリペプチド、並びにイムノグロブリン、あるいはその可変領域を含む断片、そしてそれらの用途に関する。
〔89〕配列番号:82の塩基配列、または配列番号:83に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
〔90〕〔89〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
〔91〕配列番号:84の塩基配列、または配列番号:85に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
〔92〕〔91〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
〔93〕〔90〕に記載のポリペプチド、および〔92〕に記載のポリペプチドを含む、イムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片。
〔94〕CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:90、配列番号:91、および配列番号:92に記載されたアミノ酸配列であるイムノグロブリンH鎖、またはその可変領域を含む断片。
〔95〕CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:93、配列番号:94、および配列番号:95に記載されたアミノ酸配列であるイムノグロブリンL鎖、またはその可変領域を含む断片。
〔96〕〔94〕に記載のイムノグロブリンH鎖、および〔95〕に記載のイムノグロブリンL鎖を含むイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片。
〔97〕配列番号:86の塩基配列、または配列番号:87に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
〔98〕〔97〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
〔99〕配列番号:88の塩基配列、または配列番号:89に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
〔100〕〔99〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
〔101〕〔98〕に記載のポリペプチド、および〔100〕に記載のポリペプチドを含む、イムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片。
〔102〕CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:96、配列番号:97、および配列番号:98に記載されたアミノ酸配列であるイムノグロブリンH鎖、またはその可変領域を含む断片。
〔103〕CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:99、配列番号:100、および配列番号:101に記載されたアミノ酸配列であるイムノグロブリンL鎖、またはその可変領域を含む断片。
〔104〕〔102〕に記載のイムノグロブリンH鎖、および〔103〕に記載のイムノグロブリンL鎖を含むイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片。
〔105〕〔93〕、〔96〕、〔101〕、および〔104〕に記載されたイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片の少なくとも1種類と、薬学的に許容される担体を含む、肝臓癌の診断または治療のための医薬組成物。
〔106〕イムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片が、放射性同位元素、抗癌活性を有する薬物、磁性金属、蛍光色素、発光色素、および酵素からなる群から選択される分子のいずれかを結合されている〔105〕に記載の医薬組成物。
〔107〕次の要素を含む、肝臓癌の検査用キット。
i)〔93〕、〔96〕、〔101〕、および〔104〕に記載されたイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片の少なくとも1種類、
ii)正常な肝細胞組織、および
iii)肝臓癌の癌細胞組織
更に本発明者らは、scFvに融合している蛋白質に対する抗体(二次抗体)を結合させることによって、ADCC活性を確認できることを明らかにした。抗原結合部位からなる抗体断片に依存する細胞障害作用を、二次抗体の助けによって検出しうることは、本発明者らが見出した新たな知見である。すなわち本発明は、以下の工程を含む抗原結合部位を含む抗体の断片の細胞障害作用を検出する方法に関する。
〔108〕次の工程を含む、抗原結合部位を含む抗体の断片の細胞障害作用を検出する方法。
(1)前記抗体断片と、抗体断片を認識する二次抗体と、そして前記抗体断片が認識する抗原を発現した細胞とを接触させる工程、および
(2)細胞障害作用を検出する工程
〔109〕抗体の抗原結合部位を含む断片と、前記抗体断片が認識する抗原を発現した細胞とを接触させた後に、抗体断片を認識する二次抗体とを接触させる〔108〕に記載の方法。
〔110〕抗体の抗原結合部位を含む断片が、Fab断片、またはscFvのいずれかである〔108〕に記載の方法。
〔111〕抗体の抗原結合部位を含む断片が、ファージ蛋白質と融合したscFvである〔110〕に記載の方法。
〔112〕二次抗体が前記ファージ蛋白質を認識する抗体である〔111〕に記載の方法。
〔113〕抗原結合部位を含む抗体の断片が、次のiからvに記載された断片およびrgdpクローンからなる群から選択されるいずれかの断片またはrgdpクローンである〔108〕に記載の方法。
i : 〔1〕に記載の方法によって取得された抗体の抗原結合部位を含む断片、
ii: 〔10〕に記載の方法によって取得されたrgdpクローン;
iii: 〔30〕に記載の方法によって取得されたrgdpクローン;
iv: 〔36〕に記載の方法によって取得された抗体の抗原結合部位を含む断片;、および
v: 〔46〕に記載の方法によって取得された抗体の抗原結合部位を含む断片
〔114〕細胞障害作用が抗体依存性細胞性細胞傷害である〔108〕に記載の方法。
〔115〕〔108〕〜〔114〕のいずれかに記載の方法によって細胞障害活性を検出し、細胞障害活性が検出された抗体断片を選択する工程を含む、細胞障害作用を有する抗体の抗原結合部位を含む断片を選択する方法。
〔116〕抗原結合部位を含む抗体の断片に、当該抗体断片を認識する二次抗体を結合させることによって前記抗体断片に細胞障害作用を付与する方法。
〔117〕抗原結合部位を含む抗体の断片が、ファージ蛋白質と融合したscFvであり、二次抗体が前記ファージ蛋白質を認識する抗体である〔116〕に記載の方法。
本発明は、抗体ライブラリーから、細胞表面抗原に結合する抗体を網羅的にピックアップすることができる方法を提供した。まず本発明は、低極性溶媒中に細胞表面抗原に結合した抗体を置くことにより、細胞表面抗原に結合する抗体をスクリーニングする方法を提供した。低極性溶媒中では抗原抗体複合体の水素結合が安定化される。一方、非特異的に細胞表面に結合する分子は効果的に除去することができる。この条件下では、非特異的に混入し、目的とする抗体の取得を妨げる因子を効果的に除去することができる。
本発明者らは、細胞表面抗原の可溶性分画を用いて、細胞表面に結合する抗体をスクリーニングするときに有用な低極性溶媒と水性溶媒の組成を明らかにした。本発明において見出された溶媒を用いて抗体をディスプレイしたファージライブラリーをスクリーニングすることにより、ライブラリーを構成する細胞表面抗原を認識する抗体を網羅的に回収することが可能となった。本発明のスクリーニング方法をスーパーライブラリーと組み合わせることによって、あらゆる細胞表面抗原を認識する抗体の取得が可能となる。
また本発明は、既知のスクリーニング方法では回収することが難しい抗体の回収を可能とする新たなスクリーニング方法を提供した。すなわち、既に回収されている抗体、あるいはその抗体が認識する抗原のマスキングによって、未だ取得されていない抗体を優先的に回収することができる。本発明によって実現されたマスキングは、特にファージライブラリーのようなrgdpライブラリーのスクリーニングに有用である。rgdpライブラリーのスクリーニングにおいて、先に取得された抗体をマスキングとして用いれば、取得済みの抗体と同じ反応性を有するrgdpクローンの取得を効果的に妨げることができる。
更に本発明は、細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法を提供した。本発明の製造方法によって得ることができる細胞表面抗原の可溶性分画は、細胞表面抗原の免疫学的性状を高度に維持している。また抗原の多様性においても、本来の細胞が有する細胞表面抗原の組成を反映している。
本発明は、次の工程を含む、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法に関する。
(1)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画と抗体ライブラリーを含む水性媒体と、この水性媒体と接触した低極性溶媒で構成される2相系を調製する工程、
(2)標的抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を低極性溶媒相に移動させる工程、および
(3)低極性溶媒相に移動した細胞、またはその分画に結合している抗体を、細胞表面抗原に結合する抗体として回収する工程
本発明において、細胞表面抗原とは、細胞の表面に抗原決定基を有するあらゆる抗原を含む。細胞表面抗原は、細胞膜を膜貫するか、あるいは細胞膜の細胞外表面に存在する分子であることができる。あるいは細胞膜を貫通した分子、または細胞膜の細胞外表面に存在する分子との結合することによって、細胞表面に存在する分子も、細胞表面抗原に含まれる。たとえば、-SS-結合などによって細胞膜貫通ドメインに結合した受容体の細胞外ドメインなどは、本発明における細胞膜抗原に含まれる。
このような分子としては、細胞膜に存在する受容体、あるいはトランスポーターが含まれる。これらの分子の多くは蛋白質で構成される。しかしその抗原決定基は、蛋白質の構造のみならず、蛋白質の修飾構造によっても構成される。具体的には、蛋白質は、糖鎖、脂質、リン酸基、あるいはアセチル基などの修飾を受け、修飾された構造によって異なる抗原決定基が構成される。
本発明における細胞は、膜を有する細胞であれば、特に限定されない。すなわち、動物、植物、あるいは微生物に由来する細胞などを本発明に利用することができる。細胞は、天然に由来する細胞であってもよいし、人為的に改変された細胞であっても良い。人為的に改変された細胞には、特別な環境で培養された細胞や、外来遺伝子を導入された細胞などが含まれる。
本発明における好ましい細胞として、動物細胞を示すことができる。動物細胞は多様な細胞表面抗原を有している。そして、これらの細胞表面抗原の多くは、細胞が細胞外とのシグナルのやりとりのためのインターフェースとして機能していると考えられている。したがって、成体、組織、あるいは細胞の、多様な変化あるいは応答のメカニズムの解明において、細胞表面抗原の同定、そして機能解析、あるいは構造解析は、重要な研究課題である。これらの解析において重要なツールとなるのが抗体である。
本発明の方法においては、細胞に代えて、細胞の分画を用いることもできる。本発明は、細胞の表面抗原を認識する抗体の取得を目的としている。したがって、細胞の表面抗原を含む細胞の分画は、本発明に利用することができる。細胞の表面抗原を含む分画は、さまざまな方法によって得ることができる。たとえば、後に述べるような、各種の界面活性剤を利用して得ることができる細胞膜表面抗原の可溶性分画は、本発明における細胞の分画として好ましい。このような細胞の分画においては、細胞表面抗原の多くが、その構造を維持している。したがって、細胞表面抗原を認識する抗体のスクリーニングに有用である。
一方、本発明において、スクリーニングの対象となる抗体ライブラリーとは、多様な結合活性を有する抗体の集合体を言う。少なくとも2以上の異なる結合活性を有する抗体の混合物は、多様な結合活性を有する集合体に含まれる。本発明における好ましい抗体の多様性は、取得すべき抗体の種類を予め制限しない場合には、たとえば105、通常106、あるいは107、好ましくは108のレパートリーによって実現することができる。更に、より高度な多様性を実現するためには、本発明者らが作成した、109〜1010、更には1011のレパートリーサイズを有するライブラリーは、本発明におけるライブラリーとして好ましい。
一方、本発明のスクリーニング方法は、あらかじめ故意に偏りを持たせたレパートリーを有する抗体ライブラリーに適用することもできる。たとえば、後に述べるように、目的としない抗体が結合する細胞を使って予め目的としない抗体を吸収(マスキング)しておくことができる。高度に多様性を有する抗体ライブラリーも、吸収によってそのレパートリーサイズが制限されるときには、上記のようなレパートリーサイズは維持できない。しかし、レパートリーサイズが制限された抗体ライブラリーであっても、本発明のスクリーニング対象としては、なんら差し支えない。
抗体ライブラリーを構成する抗体は、イムノグロブリンそのものに加え、イムノグロブリンから誘導することができる改変体を用いることができる。改変体は、抗原との結合活性を維持している限り、イムノグロブリンと同様に、抗体ライブラリーを構成することができる。イムノグロブリンの改変体として、その可変領域を含む断片を示すことができる。本発明において可変領域とは、少なくとも抗原との結合に必要な領域を含む任意の領域とすることができる。言いかえれば、3つのCDRとそれを保持するフレーム(FR)で構成される領域を含む任意の領域を本発明の可変領域として用いることができる。
したがって、たとえば定常領域をも含む断片であっても、抗原との結合に必要な領域を含んでおれば、本発明の可変領域として利用することができる。抗体の可変領域としてしばしば用いられる、FabやFab'は、もともとイムノグロブリンの酵素的な切断によって得られる断片に対して与えられた名称である。本発明においては、Fabを可変領域を特定するための用語として理解すべきではない。
可変領域を構成するCDRは、可変領域にあって、相補性決定部(complementarity-determining region;CDR)と呼ばれる、アミノ酸配列のバリエーションに富む領域である。イムノグロブリンの重鎖と軽鎖には、それぞれ3つのCDRが存在する。抗体の多様な結合活性は、CDRを構成するアミノ酸配列の多様性によってもたらされているといってよい。3つのCDRは、フレームを介して配置されている。フレームは、結合性の異なる抗体の間でアミノ酸配列が高度に保存されている。
本発明において、イムノグロブリンの可変領域で構成される抗体ライブラリーとして、rgdpライブラリー(replicable genetic display package library;複製可能な遺伝的表示パッケージのライブラリー)を示すことができる。rgdpライブラリーとは、遺伝子を保持するとともに、その遺伝子の発現生成物を表面に提示したもので構成されるライブラリーを呼ぶ。したがって、抗体のrgdpライブラリーとは、抗体をコードする遺伝子を含むとともに、その遺伝子によってコードされる抗体蛋白質をその表面に提示したパッケージからなるライブラリーを言う。たとえばファージライブラリーが、抗体蛋白質を表面に発現している場合には、rgdpライブラリーに含まれる。rgdpライブラリーには、ファージライブラリーのほか、外来蛋白質をその表面に発現している形質転換細胞やリボゾームからなるライブラリーを示すことができる。たとえば大腸菌鞭毛蛋白質の融合蛋白質として外来遺伝子を発現するシステムを用いることによってrgdpライブラリーとすることもできる。
代表的なrgdpライブラリーとして、ファージライブラリーが挙げられる。上記の抗体遺伝子を提示したファージライブラリーは、次のようにして得ることができる。ファージ表面に外来蛋白質を発現させるには、一般にファージミドとヘルパーファージが用いられる。例えば、pTZ19R(ファルマシア製)などのファージミドベクターが市販されている。ファージミドには、cp3やcp8等のファージの構成蛋白質をコードする遺伝子に、発現させたい外来蛋白質をコードする遺伝子を連結する。
ファージミドは、大腸菌などの宿主に感染させることによって増幅できる。しかしこの状態ではファージ粒子として回収することはできない。いわば、一般の遺伝子ライブラリーと同じ状態にある。ファージミドが保持する外来蛋白質を表面に提示したファージ粒子とするには、ファージミドを感染させた宿主にヘルパーファージを重感染させる。たとえばファージミドベクターpTZ19Rは、ヘルパーファージM13K07の重感染によってファージ粒子として回収することができる。このとき利用されるファージミドのcp3蛋白質が外来蛋白質と融合されていれば、完成するファージの表面には外来蛋白質が提示されることになる。
市販のファージミドに抗体の遺伝子のクローニングに好適な制限酵素サイトを導入しておけば、本発明による軽鎖可変領域遺伝子ライブラリーを重鎖可変領域遺伝子ライブラリーとともに組み込むことができる。ファージミドベクターpTZ19Rに適当な制限酵素サイトを導入し、PCRで増幅した抗体遺伝子ライブラリーを組み込む方法が公知である(Gene 194,35-46,1997)。以下に述べる実施例においては、ファージミドベクターのシグナル配列PelBの下流にSfiIサイトとAscIサイトを導入した。一方、軽鎖可変領域遺伝子の増幅には、同じサイトを導入したプライマーを用いる。PCRの増幅生成物を当該制限酵素で消化してこのサイトに組み込むことにより、PelBの下流に抗体可変領域遺伝子が挿入され、更にその下流に位置するcp3との融合蛋白質をコードするファージミドベクター(pFCAH9-E8d/図2−D; Iba Y. et al., Gene 194 : 35-46, 1997.)とすることができる。
あるいは、重鎖可変領域遺伝子を細菌宿主発現用のベクターに挿入することもできる。この場合には、ベクターを細菌に形質転換することによって重鎖可変領域遺伝子を発現させる。得られた形質転換細胞に、更に軽鎖可変領域遺伝子を保持したファージライブラリーを感染させることにより、結果的に本発明のための遺伝子ライブラリーが完成する。大腸菌の形質転換用ベクターとしては、pFK等を示すことができる。なお細菌に形質転換するには、重鎖可変領域遺伝子を適当な分泌シグナルの下流に連結することによって、重鎖可変領域蛋白質をペリプラズムに分泌させることができる。pFKは、分泌シグナルとしてpelBを備えたベクターである。
本発明のスクリーニング方法においては、細胞またはその分画と、抗体ライブラリーとが水性媒体中で接触させられる。本発明における水性媒体とは、抗原抗体反応が可能な任意の水性媒体である。本発明の水性媒体は、以下の物理化学的性状を有する任意の媒体を含む。
i)4℃から25℃の範囲で液体であり、水と混ぜ合わせたときに完全に混じりあい2相 を形成しない
ii)25℃において比誘電率kε(=ε/ε0)が80以上である
比誘電率(relative permittivity)kε(=ε/ε0)は、溶媒に接触させた電極の間に蓄えられる電気容量を電気的に測定することによって測定することができる。一般に、比誘電率の大きい溶媒は極性溶媒と言われ、塩を良く溶解する。したがって、本発明における水性媒体は、極性溶媒を含む。
たとえば、一般に抗原抗体反応用の緩衝液として利用される、Goodバッファー、生理食塩水、あるいはリン酸緩衝液などは、本発明の水性媒体として利用することができる。あるいは、動物細胞の培養に用いられる各種の基礎培地成分も、水性媒体として利用することができる。動物細胞培養用の培地としては、MEM(Minimum EssentialMedium)、 Basal Medium, Eagle(BME)、 Eagle's Minimum Essential Medium(EMEM)、 Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DME)、RPMI-1640 Medium(RPMI1640) 、およびES Medium(ES)などを示すことができる。
本発明の水性媒体には、非特異的な結合の阻害を目的として、種々の不活性蛋白質を添加することができる。たとえば、アルブミン、スキムミルク、あるいはゼラチンなどは、非特異的な結合の抑制に有効である。本発明において、ウシ血清アルブミンを含むミニマムエッセンシャルメディウム(MEM)は、好ましい水性媒体である。ウシ血清アルブミンは、たとえば0.1−5%w/v、通常0.5−2%w/v、好ましくは0.8−1.5%w/v、好ましくは1%w/vとなるように添加することができる。
本発明は水性媒体と低極性溶媒との2相系を調整する工程を含む。2相系とは2つの液相が界面を接して分離された状態を構成することを言う。本発明において、水性媒体として極性溶媒を用い、低極性溶媒と組み合わせることにより、2相系を構成することができる。
本発明において2相系を構成するための低極性溶媒には、抗原抗体反応を行うための水性媒体と2相系を構成することができる任意の低極性溶媒を用いることができる。低極性溶媒は、2相系を構成する(すなわち界面を形成する)限り、その一部が水性溶媒と混和することは許容される。本発明における好ましい低極性溶媒は、水系媒体に比較して、物質間の水素結合を安定化することができる溶媒である。このような低極性溶媒は、以下の物理科学的性状によって定義される溶媒を含む。本発明における低極性溶媒は、好ましくは有機溶媒から選択される。
i)4℃から25℃の範囲で液体であり、水と混ぜ合わせたときに2相を形成する
ii)25℃において比誘電率kε(=ε/ε0)が20以下1以上である
ただし、εは誘電率でε0は真空中の誘電率である
特異的抗原抗体反応には水素結合が積極的に関与して行われている。水性媒体中では含まれている水分子の作用によって水素結合が不安定化され、その結果特異的結合が弱められる。一方低極性溶媒中ではこの水素結合が安定であり、特異的結合が強力に保持されるため、数回の洗浄後に特異的結合抗体の効率的な濃縮が起こる。
より具体的には、本発明における低極性溶媒として、たとえば次のaおよびbに記載の溶媒を含む混合溶媒であり、かつ溶媒密度(d)1.0-1.09を有する混合溶媒を用いることができる。
a:ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、およびジイソプロピルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒
b:フタル酸ジブチル、1,1,1-トリクロロエタン、およびジフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒
このような低極性溶媒の好ましい例として、次のような混合溶媒を示すことができる。
ジフェニルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合溶媒、
イソプロピルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合溶媒、
フタル酸ジブチルとシクロヘキサンの混合溶媒、および
ジフェニルエーテルとシクロヘキサンの混合溶媒
本発明においてジフェニルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合比は44:27:33を示すことができる。イソプロピルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合比は20:50:30を示すことができる。またフタル酸ジブチルとシクロヘキサンの混合比は9:1を示すことができる。この割合で混合された混合溶媒は、1.0-1.09の溶媒密度(d)を有する。
本発明においては、固相に固定化した細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を用いることができる。固相の比重が大きい場合には、上記の比重の範囲を外れる低極性溶媒を用いることもできる。たとえばガラスビーズを固相として用いた場合には、より小さい比重の低極性溶媒を組み合わせることもできる。たとえば、ジフェニルエーテルとシクロヘキサンからなる混合溶媒は、ガラスビーズと組み合わせる溶媒として好ましい。ジフェニルエーテルとシクロヘキサンの混合物はファージライブラリーのスクリーニングにおいて、ファージの回収率を改善する好ましい混合溶媒である。本発明において、ジフェニルエーテルとシクロヘキサンの混合比は9:1を示すことができる。
本発明のスクリーニング方法は、水性媒体中で抗体ライブラリーと接触させた細胞またはその分画を前記低極性溶媒相に移動させる工程を含む。細胞またはその分画を低極性溶媒相に移動させるための方法は任意である。たとえば、水性媒体が2相系の上相を構成する場合には、遠心分離によって、細胞またはその分画を低極性溶媒相に落とすことができる。
逆に、低極性溶媒相が上層を構成している場合には、水性媒体を除去することによって細胞またはその分画を低極性溶媒相へ移動させることができる。そのためには、たとえば限外ろ過膜を容器の底に有する反応容器を用いることができる。限外ろ過膜は、外部を陰圧にすることによって内部の液体を排出することができる。このとき、蛋白質をはじめとする大きな分子は限外ろ過膜に保持され、容器内に残る。やがて容器内の水性媒体の全てが除去されると、細胞あるいはその分画の低極性溶媒相への移動が完了する。
本発明において、細胞あるいはその分画を低極性溶媒相に移動させるための好ましい方法として、磁性粒子の利用を示すことができる。細胞あるいはその分画は、予め磁性粒子に固定しておくことができる。あるいは磁性粒子に固定可能な標識を結合させておくことができる。磁性粒子は、磁場に置くことによって、任意の位置に集めることができる。抗原抗体反応の後、細胞またはその分画が結合している磁性粒子を低極性溶媒相に集めることによって、低極性溶媒相への移動が完了する。
本発明において、水性媒体から低極性溶媒への、抗原抗体複合体の移動工程は、抗体を回収する工程の前に、複数回繰り返すことができる。すなわち、いったん低極性溶媒への移動を完了した細胞、またはその分画を、再び水性媒体に戻し、次いで低極性媒体に移動する工程を含むことができる。この繰り返しの数は、通常1〜5回、たとえば2〜4回、好ましくは3回である。低極性溶媒への移動工程の繰り返しによって、細胞またはその分画に特異的に結合する抗体の回収率を向上させることができる。このことは、後に述べる実施例においても確認された。
本発明において、複数の低極性溶媒への移動工程は、水性媒体および低極性溶媒の両方、またはいずれかを、1回目のものと置換することができる。好ましくは、全ての移動サイクルにおいて、両者を置換する。たとえば細胞を遠心分離によって回収する場合、1回目の洗浄サイクルに利用した2相系を構成する水性媒体と低極性溶媒は、低極性媒体への細胞またはその分画の移動後に、新しい2相系と置換される。具体的には、回収された細胞を新しい水性媒体に分散させ、新しい低極性溶媒との2相系を構成する。3回目の洗浄サイクルにおいても同様に、細胞の回収と2相系の置換が行われる。
あるいは、同じ2相系の間を往復させることによって、複数回の洗浄サイクルを実施することもできる。たとえば、1回目の低極性溶媒への移動の後に、細胞またはその分画を回収する。次いで少なくとも水性媒体を新しいものに置換する。このとき、低極性溶媒を合わせて置換することもできる。そして細胞またはその分画を、水性媒体と低極性溶媒の間で往復させることによって、複数回の洗浄を実施することができる。
本発明のスクリーニング方法においては、こうして低極性溶媒相に置かれた抗原抗体複合体の結合が安定化される。また、水性媒体から低極性溶媒への移行はフリーの抗体の持込みを最少限にする。その結果、細胞またはその分画に結合した抗体として回収された抗体は、細胞表面抗原を免疫学的に認識している抗体である可能性が高い。こうして、細胞表面抗原に特異的に結合する抗体を特異的に回収することができる。
本発明のスクリーニング方法は、抗原抗体複合体の水性媒体から低極性溶媒への移動によって、その水素結合が安定化されることを利用している。すなわち本発明は、以下の工程を含む、抗体の可変領域を提示したrgdpライブラリーから目的とする細胞の表面抗原に結合する活性を有するrgdpクローンをスクリーニングするための方法において、rgdpライブラリーと前記抗原とを水性媒体で接触させた後に、低極性溶媒相に移動させることによって抗原抗体複合体の水素結合を安定化させる工程を含む方法を提供する。
(1)抗原抗体反応が可能な条件下でrgdpライブラリーおよび、目的とする抗原とを接触させる工程、および
(2)前記抗原に結合したrgdpクローンを回収する工程
実施例13−1、13−2、および13−3にも示したように、単に2相を形成する溶媒、例えばショ糖溶液の場合、水素結合の安定化による抗原抗体結合の保持効果が見込めない。この種の溶媒は、回収されるファージを減らし、スクリーニングの効率化の効果はあまりない。他方、低極性溶媒の場合には、水素結合安定化によりポジテイブ抗体の回収が増大する。逆に、ネガテイブ抗体の回収は減少する。そのため、スクリーニング効率があがり特異的なファージ回収ができる。抗体の可変領域を提示したrgdpライブラリーが、対応する抗原との反応によって構成される抗原抗体複合体が、低極性溶媒への移動によって、その水素結合が安定化されることは、新規な知見である。本発明は、この知見に基づいて完成された。
本発明における低極性溶媒による洗浄は、好ましくは1〜5回繰り返すことによって、特にスクリーニングの効率を高める効果を期待できる。本発明における低極性溶媒の洗浄のための好ましい回数は、たとえば1〜5回、あるいは2〜4回、より好ましくは3回である。実施例13(表4)に示すように、低極性溶媒による3回の洗浄によって回収される特異的に結合する抗体の数は、水性溶媒で洗浄する場合と比較して約2倍となることが確認された。つまり特異的な抗体の回収が増大していることがわかった。この結果は、特異的な水素結合の安定化に起因していると考えられる。低極性溶媒による洗浄は、3回前後の繰り返しが効果的である。
本発明のスクリーニングは、細胞表面に結合する抗体を濃縮するために繰り返すことができる。すなわち、回収された抗体の混合物を、再びスタートマテリアルとして、本発明のスクリーニングを繰り返すことができる。回収された抗体は、2ラウンド目のスクリーニングに先立って、必要に応じて増幅することができる。抗体ライブラリーがファージライブラリーであれば、ファージを回収し、大腸菌に感染後、ヘルパーファージの重感染によってファージ粒子を生成させることができる。生成されたファージ粒子は、感染させたファージの増幅産物である。
更に本発明は、細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーを接触させ、細胞表面抗原に結合する抗体を回収する工程を含む、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法において、以下のa)〜c)のいずれかの工程を含む方法であって、抗原マスキング剤と抗体マスキング剤がそれぞれ以下に定義される成分を含むことを特徴とする方法を提供する。
抗原マスキング剤:取得を望まない抗体を含む
抗体マスキング剤:取得を望まない抗体が認識する遊離の抗原を含む
a) 細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーとが、抗原マスキング剤または抗体マスキング剤のいずれかの共存下で接触させられる、
b)抗体ライブラリーを抗体マスキング剤との接触後に細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と接触させる、または
c)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相を抗原マスキング剤と接触後に抗体ライブラリーと接触させる
本発明のマスキング剤は、抗体ライブラリーから細胞表面抗原を取得するときに、目的としない抗体の結合活性をマスクするために用いられる成分である。マスキング剤は、抗原と抗体のいずれかに対して作用する。本発明においては、抗原に作用するマスキング剤を抗原マスキング剤を呼ぶ。一方、抗体に作用するマスキング剤は、抗体マスキング剤である。
抗原マスキング剤は、取得を望まない抗体を含んでいる。上記抗体の取得方法においては、抗体に結合した抗体が、目的とする抗体として回収される。ここで予め取得を望まない抗体があるときには、その抗体を抗原マスキング剤として利用することができる。抗原マスキング剤は、それが認識する抗原に結合する。その結果、ライブラリー中の取得を望まない抗体は、抗原に結合することができなくなる。こうして、抗原のマスキングによって、取得を望まない抗体が回収されなくなる。
抗体マスキング剤は、抗体に作用するマスキング剤である。予め取得を望まない抗体があるときには、その抗体が認識する抗原を抗体マスキング剤として利用することができる。前記取得方法においては、抗原は固相化されるか、または固相化が可能な標識を有している。抗体マスキング剤に含まれる遊離の抗原は、抗体ライブラリー中の取得を望まない抗体と結合する。遊離の抗原は固相には結合しないので、結果として、この抗体は回収されなくなる。こうして、抗体のマスキングが成立する。
マスキング剤は、特定の細胞の表面抗原を特異的に認識する抗体の取得において有用である。たとえば、細胞Xにあって細胞Yに無い表面抗原を認識する抗体の取得を目的とするとき、細胞Yの表面抗原は、抗体マスキング剤である。同様に、細胞Yの表面抗原を認識する抗体は、抗原マスキング剤として利用できる。これらのマスキング剤を利用することによって、抗体ライブラリーに含まれる細胞Yの表面抗原を認識する抗体は回収されなくなる。その結果、細胞Xに特異的に存在する表面抗原を認識する抗体が回収される。
マスキング剤を利用した、細胞特異的な抗体の取得方法は、特に類似した細胞の間で、特定の細胞を特異的に認識することができる抗体の取得に有用である。類似する細胞の組み合わせとしては、以下のような組み合わせを示すことができる。これらの細胞は、初代培養細胞であっても良いし、株化された細胞であっても良い。
癌細胞と正常細胞
癌細胞とその癌細胞と同じ組織の正常細胞
ステージの異なる癌に由来する細胞
進行癌の細胞と初期癌の細胞
マスキング剤の具体的な例として、不死化正常肝細胞と、各種の肝臓癌細胞の組み合わせを示すことができる。たとえばTHLE-3などの不死化正常肝細胞が公知である。したがって、THLE-3の細胞表面抗原は抗体マスキング剤として利用することができる。あるいはTHLE-3の細胞表面抗原を認識する抗体は、抗原マスキング剤とすることができる。一方、肝臓癌細胞は、臨床検体として得ることができる、患者肝臓癌病巣を組み合わせることができる。あるいは各種の肝臓癌細胞株を用いることもできる。株化された肝臓癌細胞として、HepG2、HuH-7、Nuk-1、OCTH-16、HT-17、Li-1、あるいはPLC/PRF/5などを示すことができる。
上記の組み合わせにおいて、癌のステージとは、癌の浸潤のレベル、腫瘍の大きさ、そして転移の有無などの指標に基づいて区別される。癌のステージごとに特異的に発現が変化する細胞表面抗原に結合する抗体は、癌の診断や治療に有用である。またこのような抗体を取得することができれば、その抗体が認識する抗原を単離することができる。こうして単離された、癌のステージに特異的に発現する抗原は、癌の治療標的候補として重要である。
あるいは、ある細胞の表面抗原を認識する抗体を、網羅的に取得する場合にも、マスキング剤は有効である。一般に、抗原に対する結合活性を指標として抗体を回収するとき、回収されやすい抗体が優先的に回収され、回収されにくい抗体の取得が困難となることが多い。優先的に回収される抗体としては、たとえば細胞表面に多数の抗原分子が発現している場合には、この抗原を認識する抗体は優先的に回収される可能性が高い。また、抗体ライブラリーの中に、ある抗原分子に対して特に強い結合親和性を示す抗体が含まれていると、この抗体も他の抗体よりも優先的に回収される可能性が高い。
特に抗体の可変領域を提示したファージライブラリーのようなrgdpライブラリーからの抗体の取得においては、しばしば回収されたクローンの増幅と選択が繰り返される。一連の繰り返しの過程の中で、優先的に回収される抗体を提示したクローンが、ポピュレーションの大部分を占めるようになる。このような取得工程を何度繰り返しても、けっきょく、主要な抗原に結合する抗体が優先的に取得されてしまう可能性が高い。
このような状況において、優先的に回収される抗体に対して、マスキング剤を適用することができる。すなわち、優先的に回収される抗体は、それ自身が、抗原マスキング剤として有用である。そして、この抗体が認識する抗原は、抗体マスキング剤として利用できる。その結果、優先的に取得される抗体によって、通常の取得方法においては取得が妨げられる抗体を取得できる可能性が高まる。マスキング剤が、優先的に回収される抗体の結合と回収を妨げる結果、取得を妨げられていた抗体の結合と回収が容易となるためである。
優先的に回収される抗体には、たとえば、マスキング剤の無い条件下で取得された抗体、並びにその抗体が認識する抗原を利用することができる。いったん回収された抗体を重複して回収する意義は小さいので、これをマスキング剤として利用する。次にマスキング剤の存在下で、抗体ライブラリーからの目的の細胞に結合する抗体の取得を繰り返す。更に必要に応じて、2度目の取得工程によって回収された抗体についても同様に、マスキング剤として利用することができる。こうして抗体ライブラリーからの抗体の取得工程に、別の取得工程で取得された抗体をマスキング剤として組み合わせることによって、ある細胞が有する表面抗原を認識する抗体を網羅的に回収することができる。
マスキング剤を利用した抗体の取得方法によれば、たとえば、同じ抗原を認識しながら、異なる抗原決定基を認識する抗体などが取得できる可能性が期待できる。
本発明において、抗原マスキング剤を予め細胞またはその分画と接触させた後に、抗体ライブラリーと混合することができる。あるいは、抗原マスキング剤の存在下で、細胞またはその分画と、抗体ライブラリーとを接触させることもできる。同様に、抗体マスキング剤を予め抗体ライブラリーと接触させた後に、細胞またはその分画と接触させることもできる。
本発明において、マスキング剤、抗体ライブラリー、そして細胞またはその分画は、水性媒体中で抗原抗体反応が可能な条件下で接触させることができる。そして好ましくは、水性媒体中で構成された、細胞またはその分画と抗体ライブラリーに由来する抗体からなる抗原抗体複合体を、低極性溶媒中に移動させる。このとき、水性媒体と低極性溶媒の2相系を構成しておき、相間の移動によって、低極性溶媒相に移動させる方法は、本発明に含まれる。
細胞またはその分画は、固相に保持されているか、または固相に結合可能な標識を有している。したがって、細胞またはその分画への結合によって構成される抗原抗体複合体は、最終的には固相上に形成される。固相を低極性溶媒相に移動させることによって、容易に抗原抗体複合体を、低極性溶媒相に移動させることができる。更に、低極性溶媒相中の固相から、細胞またはその分画に結合した抗体は、取得すべき抗体として回収される。
あるいは細胞の場合は固相化しなくても、遠心力を作用させることで細胞自身を沈降させ分離することができる。分離された細胞からは、固相と同様に、抗体を回収することができる。
マスキング剤は、抗体ライブラリーとしてrgdpライブラリーを用いるときに特に有利である。抗体を提示したrgdpライブラリーは、回収した後に増幅することができる。しかしマスキング剤として用いた抗体は、遺伝子を伴っていない。したがって、この段階で、増幅されない。増幅後の抗体ライブラリーには、既に、マスキング剤と同じ反応性を有する抗体は含まれていない、あるいは、含まれていたとしても、抗体ライブラリーに占めるポピュレーションが大きく低下している。そのため、以降のスクリーニングにおいて、取得される可能性が著しく低下する。その結果、目的とする抗体の取得の可能性が高まる。
加えて本発明は、上記の方法によって取得された抗体、またはその可変領域に関する。本発明によって得ることができる抗体は、これまで取得が困難であった抗体である。したがってその抗体、その可変領域、そしてそれらをコードするポリヌクレオチドは新規である。
本発明において、上記のような工程を経て取得された抗体は、必要に応じて、更にその結合活性を評価することができる。すなわち本発明は、次の工程を含む、特定の細胞の表面抗原に結合し、同じ条件で類似の細胞に接触させたときに類似の細胞には結合しない抗体のスクリーニング方法に関する。
(1)本発明に基づいて選択された抗体を、前記特定の細胞またはその分画を保持した固相、および前記類似の細胞またはその分画を保持した固相に共通の条件下で接触させる工程、および
(2)前記特定の細胞またはその分画を保持した固相に結合し、前記類似の細胞またはその分画を保持した固相に結合しなかった抗体を選択する工程
本発明において、類似する細胞とは、免疫学的に類似する特徴を有する細胞である。たとえば、共通の細胞表面抗原を有する細胞は、互いに類似する細胞である。具体的には、細胞組織的由来が同一もしくは極めて近似の細胞及びその変異細胞は、類似する細胞である。
あるいは、ある細胞を対象として本発明によって取得された抗体を用いて、別の細胞を抗原とする細胞ELISAを行って、陽性率が90%を越える場合には、両者は類似の細胞と見なすこともできる。通常、両者がまったく異なる組織に由来する場合には、細胞ELISAの陽性率は、高くても60〜80%程度である。細胞ELISAは、実施例に記載の方法によって実施することができる。
すなわち、結合活性を確認するための細胞を適当な容器内に固定する。たとえば、マイクロプレートなどが細胞ELISAのための反応容器として好適である。次いで、固定された細胞に反応性を確認すべき抗体を接触させる。このとき、細胞に結合する活性を有する抗体は、固定化された細胞に捕捉される。細胞に捕捉された抗体は、当該抗体を認識する第二抗体によって検出することができる。第二抗体を標識しておけば、細胞に結合した抗体を容易に検出することができる。検出すべき抗体がIgGであれば、第二抗体には、たとえば抗IgG抗体を利用することができる。
取得された抗体の重複の割合は、たとえば、ある細胞Xと細胞Yとの類似性を評価する場合には、次のようにして実施することができる。まず、細胞Xに結合する抗体として取得された抗体群を細胞Xに接触させ、細胞Xに対して結合する抗体の総量を決定する。次に、同じ抗体を細胞Yに結合させて同様に結合した抗体の総量を決定する。2つの測定結果を比較することによって、細胞Xに結合する抗体に占める、細胞Yに結合する抗体の割合を決定することができる。あるいは逆に、細胞Yに対する結合活性を有する抗体として取得された抗体群について、細胞Yと細胞Xに結合する抗体の総量をそれぞれ求めれば、両者に結合する抗体の割合を決定することができる。
更に、抗体ライブラリーがrgdpライブラリーであるときには、取得されたクローンが有する抗体可変領域遺伝子をシーケンスして、共通して取得されたクローンの割合を決定することもできる。
本発明における類似する細胞の組み合わせとして、たとえば、特定の細胞が癌細胞であり、類似する細胞が当該癌細胞と同じ組織の正常細胞である組み合わせを示すことができる。あるいは、特定の細胞があるステージの癌細胞であり、類似する細胞が別のステージの同種の癌細胞である組み合わせも、類似する細胞の組み合わせである。
更にある細胞とその変異細胞を、類似する細胞の組み合わせとして示すこともできる。変異細胞とはウイルス感染細胞、疾患特異的な蛋白発現変異をもった細胞、癌細胞、外的損傷細胞などがあり、それぞれの病態ステージにおいて相互に蛋白発現が変異していく場合もある。
本発明の抗体の評価方法において、細胞そのものに対する結合活性を指標として評価するときには、免疫組織学的な手法が利用される。すなわち、特定の細胞並びに類似の細胞の固定標本に対して、評価対象抗体を反応させ、固定標本に結合した抗体が検出される。固定標本に結合した抗体は、抗体に対する標識抗体によって検出することができる。
一方細胞またはその分画を保持した固相に対する抗体の結合活性に基づいて評価する場合には、たとえばELISAの原理を応用することができる。すなわち、固相に固定された細胞または細胞分画に、評価すべき抗体が結合する。次に、抗体を認識する抗体(第2抗体)によって、固相に結合した評価すべき抗体の量を検出する。第2抗体を酵素で標識したときには、酵素活性を指標として、評価すべき抗体の結合レベルを決定することができる。
本発明に基づいて、ある細胞に結合し、類似する細胞には結合しない抗体を選択することができる。この抗体は、ある細胞に特異的に発現している抗原を認識していると考えられる。したがって、この抗体が認識する抗原を単離し、同定することによって、細胞に特異的に発現している抗原を同定することができる。つまり本発明に基づいて選択された抗体は、細胞表面抗原の単離と同定に利用することができる。すなわち本発明は次の工程を含む、本発明に基づいて選択された抗体が結合する抗原の同定方法に関する。
(1)本発明の方法によって選択された抗体と当該抗体の単離に用いた細胞表面抗原とを接触させる工程、
(2)前記抗体に結合した抗原を回収する工程、および
(3)回収された抗原を同定する工程
本発明による細胞表面抗原の同定方法において、細胞表面抗原は、細胞から取得された抗原を含む分画を用いることができる。たとえば、後に述べるような、各種の界面活性剤を利用して得ることができる細胞膜表面抗原の可溶性分画は、本発明における細胞の分画として好ましい。このような細胞の分画においては、細胞表面抗原の多くが、その構造を維持している。したがって、細胞表面抗原の単離に有用である。
一方、抗体は、抗原との結合活性を維持した任意の抗体を利用することができる。すなわち、抗体は、抗原結合領域を含む断片であっても良い。抗原結合領域を含む断片は、重鎖と軽鎖が-SS-結合で連結されていても良いし、scFvのような1本鎖のポリペプチドであってもよい。更に、ラクダ抗体のように軽鎖を伴わないイムノグロブリンあるいはその断片を用いることもできる。
抗体がrgdpライブラリーから選択された場合には、rgdpライブラリーにパッケージングされた抗体の遺伝子を取得し、それを発現させることによって、必要な抗体またはその断片を再構成することができる。
本発明において、抗体と細胞表面抗原とは、抗原抗体反応が可能な条件下で接触させられる。たとえば、生理食塩水、あるいは各種の緩衝液などの中で、両者を接触させることができる。次いで抗体に結合した抗原が回収される。
抗原の回収のために、予め抗体を固相に結合させておくか、あるいは固相に結合する標識を有する抗体を利用するのが便利である。たとえば、シアノゲンブロマイド(cyanogen bromide)で活性化したセルロースビーズに抗体あるいはその断片を化学的に結合させることができる。あるいは、抗体を認識する抗体を使って免疫学的に固相に捕捉することもできる。たとえば抗原に結合する抗体がIgGであるとき、固相化した抗IgG抗体を使って、それを固相に捕捉することもできる。
また固相に結合できる標識を有する抗体としては、結合性のタグを有する抗体を示すことができる。結合性のタグとは、他の分子との結合親和性を有する物質を言う。具体的には、プロテインA、プロテインG、ヒスチジンタグ、ビオチン化配列、キチン結合ドメイン、マンノース結合ドメインなどを結合性のタグとして示すことができる。これらのタグは、抗体またはその断片との融合蛋白として発現させることができる。すなわち、まず、rgdpライブラリーから選択された抗体をコードする遺伝子が取得される。次いで、この遺伝子を、これらのタグをコードする遺伝子と連結して、発現させることによって、結合性のタグを有する融合蛋白質を得ることができる。結合性のタグを有する抗体あるいは抗体断片は、結合性のタグに対応する結合パートナーを有する固相に捕捉される。その結果、固相上に、抗体を介して、同定すべき抗原が捕捉される。必要に応じて固相を洗浄して回収すれば、目的とする抗原を固相として回収することができる。
回収された抗原は、任意の方法によって同定することができる。細胞由来の物質を同定するための種々の方法が公知である。これらの方法を駆使して、物質の同定が行われる。たとえば蛋白質抗原の場合には、アミノ酸配列を決定することによって、当該蛋白質を同定することができる。アミノ酸配列の決定方法には、任意の方法を用いることができる。本発明における好ましいアミノ酸配列の同定方法として、質量分析を応用した方法を示すことができる。以下のその原理を簡単に説明する。
「マトリックス支援レーザー脱離イオン化法」(MALDI)や「エレクトロスプレーイオン化法」(ESI)などのマイルドなイオン化が実現されてからは、蛋白質や糖、核酸などの生体物質の質量測定にも質量分析計(MS)が応用されるようになった。MALDI、ESIとも飛行時間型質量分析計(TOF-MS)四重極型、イオントラップ型、磁場型などの質量分析計が使用できる。
TOF-MSの原理は次のとおりである。物質をイオン化して加速し、真空中を飛行させるとき、その飛行時間は、物質の電荷と質量によって変化する。この現象を利用し、イオン化された物質の飛行時間を測定することによって、その質量を明らかにすることができる。これがTOF-MSの質量分析の測定原理である。
ESI方式の特徴は溶液中のペプチドを直接イオン化できることであり,HPLC分離したペプチドを直接質量分析できる。(LC-MS)この場合、HPLCは多次元展開することも可能である。
質量分析計を2台に搭載したタンデム質量分析(MS/MS)を行なうことでアミノ酸配列決定することやMALDI-TOFなどを用いてペプチドマスフィンガープリンティングをすることが可能である。タンデムMS以外でもPSD法(ポストソースディケイ法)やプロテインラダーシーケンス法などを用いればアミノ酸配列を決定することができる。またMALDI-TOFによれば、プロテアーゼ消化断片のサイズの決定のみならず、アミノ酸配列の決定にも利用することができる。
これら分析に際しては、通常、同定すべき蛋白質を、解析に先立って断片化する。蛋白質の断片化には、酵素的な方法と、化学的な方法がある。酵素的な方法としては、セリンプロテアーゼに属する酵素などが利用される。たとえば、トリプシン、キモトリプシン、あるいはV8プロテアーゼなども、蛋白質の消化に利用することができる。これらのプロテアーゼは、蛋白質を構成するアミノ酸配列の特定のアミノ酸残基を認識して切断する。また蛋白質の化学的な消化方法としては、たとえば臭化シアン(CNBr)による消化が知られている。臭化シアンは、Met残基のC末端側を切断する。蛋白質の消化によって生成する断片の大きさは、蛋白質に固有の情報である。
断片の大きさはアミノ酸配列に基づいて予測することができる。したがって、アミノ酸配列が既知の蛋白質については、各プロテアーゼによる消化によって、どのような断片が生じるのかを予めデータベース化しておくことができる。一方、同定すべき蛋白質については、プロテアーゼの消化によって生成する断片のサイズを、たとえばMALDI-TOFによって網羅的に決定することができる。得られた断片の大きさの組み合わせを、既知の蛋白の情報と照合し、もしも既知の蛋白質と同じパターンを有していれば、その蛋白質を同定することができる。一方、既知の蛋白質のアミノ酸配列から予測される断片のパターンと一致しない場合には、その蛋白質のアミノ酸配列は未知である可能性がある。
例えば、タンデム質量分析(MS/MS)によるアミノ酸配列決定法が公知である。タンデム質量分析(MS/MS)によるアミノ酸配列の決定においては、MS-1(弟1の質量分析装置)で通常の質量分析が行われる。蛋白質の解析においては、プロテアーゼの消化断片が、MS-1で解析される。MS-2(第2の質量分析装置)においては、MS-1で解析された特定の分子(断片)を、更に解析する。このとき、タンデムMSにおいては、MS−1で分離したペプチドイオンをMSデバイス内で不活性ガス粒子などに衝突させて分解し、生成する娘イオンの質量差から直接アミノ酸の配列を決める。
MS-2のマススペクトルから、生成する娘イオンの質量差を明らかにできる。その結果、MS-2で得られるマススペクトルのピークのズレは、1アミノ酸に相当する。ピークのズレはそれぞれアミノ酸の分子量を意味するので、マススペクトルから、ある断片のアミノ酸配列を一義的に決定することができる。
あるいは蛋白質のアミノ酸配列を、エドマン分解法などによって決定することもできる。エドマン分解法は、蛋白質をその末端から分解し、切り出されるアミノ酸、あるいは残った断片を解析することによって、アミノ酸配列を1つづつ決定する方法である。アミノ酸あるいは断片は、液体クロマトグラフィーあるいはMALDI-TOFによって解析することができる。
本発明によれば、蛋白質抗原以外の抗原を認識する抗体を取得することもできる。抗原として作用するの蛋白質以外の物質が数多く知られている。たとえば、糖鎖抗原、脂質抗原、あるいは薬物や非ペプチドホルモンなどの低分子化合物も抗体によって認識される。また、リン酸化やアセチル化によって修飾を受けた蛋白質には、修飾された構造を特異的に認識する抗体が結合する。これらの抗原を抗体を用いて取得し、同定することもできる。
これらの抗原分子は、たとえば蛋白質、核酸、糖、脂質、等のそれぞれの分子種に固有の検出方法によって、どのような分子であるのかを明らかにすることができる。具体的には、蛋白質であればニンヒドリン反応やビューレット反応、糖であればオルトトルイジン・ホウ酸(OTB)法などの検出方法が公知である。あるいは、分光学的手法で分子種を予測することもできる。分光学的手法としては、紫外吸収スペクトルによる固有吸収波長帯の観測による同定方法が公知である。次いで、質量分析により得られる分子量を分子の種類に対応した分子量データベースの登録データに関して検索することで、抗原分子を同定することができる
こうして、本発明に基づいて選択された抗体が認識する抗原を同定することができる。同定された抗原の構造が新規であれば、新規な細胞表面抗原の単離に成功したことになる。すなわち本発明は、本発明によって同定された抗原を提供する。
本発明の抗体のスクリーニング方法、あるいは抗原の同定方法においては、細胞表面抗原の可溶性分画が用いられる。細胞表面抗原の中には、膜貫通ドメインが細胞膜に固定されることによってその構造を維持しているものも少なくない。また、細胞膜から分離することで疎水性ドメインが露出する結果、不溶化する物質もある。このような物質を可溶性分画として、免疫学的特性を維持した状態で回収することは、困難な場合も多い。しかし本発明者は、抗体のスクリーニングや細胞表面抗原の単離のための可溶性抗原分画の調製に成功した。すなわち本発明は、次の工程を含む、細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法を提供する。
(1) 目的とする細胞表面抗原を発現している細胞を破砕する工程、
(2) 工程(1)の破砕物から細胞膜分画を回収する工程、
(3) 細胞膜分画を界面活性剤混合液によって可溶化する工程、および
(4) 工程(3)の上清を細胞表面抗原の可溶性分画として回収する工程
本発明の方法において、界面活性剤混合液を構成する界面活性剤には、非イオン性界面活性剤と両性界面活性剤のいずれか、または両方を用いることができる。たとえば、非イオン系界面活性剤は、NP-40、Triton X100、n-Dodecyl β-D-maltoside、n-Octyl β-D-glucoside、 n-Octyl β-D-maltopyranoside、およびn-Decyl β-D-maltosideからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を利用することができる。更に両性界面活性剤としては、Deoxycholic acidが有用である。これらの各界面活性剤の濃度は、たとえば0.01〜5%w/v、通常0.1〜1%w/v、好ましくは0.2〜0.5%w/vとすることができる。
本発明においては、細胞表面抗原の可溶性分画を、酵素的な消化によって得ることもできる。すなわち本発明は、細胞表面抗原を不完全消化する工程と、不完全消化によって細胞から切り離された細胞表面抗原を回収する工程を含む、細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法を提供する。細胞の不完全消化は、細胞に蛋白質分解酵素を作用させることにより実施することができる。蛋白質分解酵素としては、セリンプロテアーゼ等を用いることができる。好ましいセリンプロテアーゼは、トリプシンである。
蛋白質質分解酵素を用いる場合、化学薬品を用いる場合の如何を問わず、消化/分解では特定の条件を満たす部分(結合)が切られるが、その条件を満たす部分の切断反応が一斉(同時)に進行するわけではない。すなわち、切断反応を始めるときを開始時間(時間t=0、切断箇所n=0)とし、また、条件を満たすすべての箇所での切断が終了するときを終了時間(t=T、n=N)とすれば、t=0からTの各瞬間にはn=0からNの状態が連続的に存在する。不完全消化とは、0<n< Nの状態であり、その状態を得るためには、0<t<Tの時間に、なんらかの方法で反応を止めればよい。
Tの値は、基質、使用する酵素/化学薬品の種類、反応条件により大きく変化する。しかしながら、基質を変えることはできないので、酵素/化学薬品の種類、反応条件を検討することになる。さらに、目的(どういう箇所で切断したいか)に応じて使用する酵素/化学薬品の種類は限定されるので、温度や酵素/化学薬品濃度などの反応条件を変えることで、目的に適した状態を得るための検討が行われる。
消化が完全である場合に得られる産物は理論的に類推することができる。もし、完全分解物よりも大きな(しかしながら、未分解の基質よりは小さな)分子種が得られれば、消化が完全には進行していないことになる。このことは、分子量を調べる手法であれば、電気泳動でも質量分析法でも確認できる。
トリプシンに限らず酵素にはそれぞれ最適な反応温度やpH、塩濃度の条件がある。先に述べたように、不完全消化物をえるには、t=0からTの間に反応を止めれば良い。しかしながら、最適な反応条件下では、Tの値が小さ過ぎて、t=0からTの間に反応を止めることができない場合がある。そこで、わざと最適な反応条件をずらすことで反応速度を遅くして(Tの値を間延びさせる)、完全消化が起こる前に反応を止めることができる。
トリプシンは中性(pH8付近)、体内温度(37℃)が最適条件なので、これらの条件をずらした反応条件、例えば、pH4、反応温度4℃を設定するが、実際にはこういった条件を出発点として、経時的なサンプリングによる切断状態を確認し、それに応じてpH、反応温度、反応時間を調整する。あるいは、反応系に加える酵素量(反応時の酵素濃度)を調整することで、目的に合った反応条件を検討する場合もある。
消化産物はその大きさ(分子量)により、回収方法が異る。ほとんど分解が進んでいない分子(分子量10,000 以上)の回収のためには、通常の蛋白質と同様、カラムクロマトグラフィーや電気泳動が用いられる。それよりも低分子を回収する場合には、シリカビーズへの結合を利用した回収方法が用いられる。比較的高分子に対してはC4(シリカ高分子の架橋度を示し、この数字が大きいほど、疎水性が高いことを示す)やC8、低分子に対してはC18といったシリカビーズを使ったHPLC(逆相液体クロマトグラフィー)が使われるが、最近は、より簡便に処理が行えるものとして、シリカビーズをチップの先端につめたもの(ミリポア ZipTip)などが製品として入手可能である。
本発明の方法によれば、あらゆる細胞の可溶性分画を調製することができる。好ましい細胞は、動物由来の細胞である。中でも、癌細胞は好ましい。
本発明の方法によって得ることができる細胞表面抗原の可溶性分画は、抗体のスクリーニング方法や、抗原の単離方法に利用することができる。すなわち本発明は、次の工程を含む、抗体が認識する細胞表面抗原を単離する方法に関する。
(1)本発明に基づく細胞表面抗原の製造方法によって得ることができる細胞表面抗原の可溶性分画を抗体と接触させる工程、および
(2)抗体に結合した抗原を単離する工程
この方法に用いる抗体として、本発明の方法に基づいて選択された抗体を用いることもできる。抗原の単離にあたり、抗体は、固相に結合しておくか、あるいは固相に結合が可能な標識を有することができる。抗体を固相に結合する方法については、既に述べたとおりである。
本発明による抗原の単離方法において、細胞表面抗原の可溶性分画と抗体とは、免疫学的な反応が可能な条件下で接触させられる。このような条件についても先に述べたとおりである。好ましくは、細胞表面抗原の可溶性分画を抗体に接触させる工程において、反応液中の界面活性剤の濃度を0.01%w/v−5%w/vに調整することができる。界面活性剤の濃度を、抗体との反応時にこの範囲に調整することによって、免疫学的な反応に対する阻害作用を解消することができる。
こうして単離された抗原は、先に述べたような方法によって、同定することができる。すなわち本発明は、前記細胞表面抗原の可溶性分画から抗体に結合する抗原を単離し、それを同定する工程を含む、細胞表面抗原の同定方法を提供する。抗原の同定は、たとえば蛋白質抗原においては、抗原の消化によってその断片の大きさ、あるいは断片を構成するアミノ酸配列を解析することができる。これらの解析手法も先に述べたとおりである。本発明はこのようにして単離された抗原、あるいは更に同定された抗原に関する。
本発明による細胞表面抗原の可溶性分画の製造に有用な各種の界面活性剤は、予め配合して、細胞表面抗原の可溶化用界面活性剤混合液とすることができる。すなわち本発明は、以下の組成を含む、細胞表面抗原の可溶化用界面活性剤混合液に関する。各界面活性剤の使用量は、たとえば0.01〜5%w/v、通常0.5〜5%w/v、好ましくは1〜2.5%w/vとなるように調節することができる。
NP-40、
Triton X100、
n-Dodecyl β-D-maltoside、
n-Octyl β-D-glucoside、
n-Octyl β-D-maltopyranoside
n-Decyl β-D-maltoside、および
Deoxycholic acid
本発明の抗体のスクリーニング方法には、細胞として、固相担体に保持された細胞を利用することもできる。固相担体に保持された細胞を利用すれば、担体の回収によって、細胞に結合した抗体、あるいはrgdpクローンを回収することができる。細胞を保持するための担体としては、たとえばガラスビーズを用いることができる。たとえば、細胞親和性物質でコートされたガラスビーズとともに細胞を培養することによって、細胞がガラスビーズ表面に付着する。細胞が付着したガラスビーズは、本発明のスクリーニングに有用である。細胞の付着を助ける細胞親和性物質には、たとえばコラーゲンを用いることができる。ガラスビーズをコラーゲン溶液に浸漬しインキュベートすれば、ガラスビーズをコラーゲンで処理することができる。
本発明によって、細胞表面抗原を認識する抗体を取得することができる。本発明によって取得された抗体は、細胞あるいは細胞表面抗原の同定、単離、検出などに利用することができる。更に本発明によって単離された細胞表面抗原のを認識する抗体は、細胞表面抗原を標的とする疾患の治療に利用することもできる。たとえば、がん細胞特異的な細胞表面抗原を認識する抗体は、がんの治療に有用である。たとえば、細胞障害性の物質で標識した抗体を投与することによって、がんの標的治療がおこわなれる。このような治療戦略は、抗体のドラッグデリバリーシステムへの応用といえる。
更に、本発明によって単離された抗体が細胞障害活性を有している場合には、抗体そのものをがんの免疫学的な治療に利用することができる。たとえば、IgG抗体には、ADCC(Antibody-Dependent Cell-mediated Cytotoxicity、抗体依存性細胞性細胞傷害)活性を有するものがある。このような抗体は、抗体自身が、抗原を発現する細胞に対して障害作用を与える。抗体がADCC活性を有することは、in vitroにおいて確認することができる。たとえば、培養細胞に抗体を接触させて細胞に対する影響を観察することにより、抗体の細胞障害作用を検出することができる。スクリーニングによって単離された抗体が、scFvのように定常領域を欠く場合には、適当な定常領域と接合してから細胞障害作用を確認することもできる。あるいは、scFvに融合している蛋白質に対する抗体(二次抗体)を結合させることによって、ADCC活性を確認することもできる。抗原結合部位からなる抗体断片に依存する細胞障害作用を、二次抗体の助けによって検出しうることは、本発明者らが見出した新たな知見である。以下本発明においては、二次抗体の助けによって抗体断片が細胞障害作用を示すとき、その抗体断片は細胞障害作用を有すると言う。
抗体の細胞障害作用は、ADCCであれ補体依存性細胞障害作用(CDC)にしろ、イムノグロブリンの定常領域が必要と考えられていた。したがって、たとえばscFvのような定常領域を伴わない抗体断片は、そのままでは細胞障害作用を確認することはできないとされていた。そのため、遺伝子組み換えなどによって、定常領域と接合した分子を再構成して、細胞障害作用を確認する必要があった。一方本発明によれば、scFvのような定常領域を伴わない抗体断片であっても、二次抗体を利用して、その細胞障害作用を確認することができる。つまり本発明よれば、scFvを定常領域と接合することなく、細胞障害作用を確認できるのである。本発明は、ファージライブラリーから選択されたscFvの細胞障害作用の確認に有用である。
すなわち本発明は、以下の工程を含む抗原結合部位を含む抗体の断片の細胞障害作用を検出する方法に関する。
(1)前記抗体断片と、抗体断片を認識する二次抗体と、そして前記抗体断片が認識する抗原を発現した細胞とを接触させる工程、および
(2)細胞障害作用を検出する工程
あるいは本発明は、抗原結合部位を含む抗体の断片に、当該抗体断片を認識する二次抗体を結合させることによって前記抗体断片に細胞障害作用を付与する方法に関する。本発明において、抗原結合部位を含む抗体の断片(抗体断片)とは、抗体の抗原との結合活性を維持した断片を言う。たとえば、抗体の細胞障害作用に必要な定常領域を欠いた断片は、本発明の抗体断片に含まれる。具体的には、scFv、Fab、あるいはFab'2などを、抗体断片として示すことができる。抗体断片は、抗原との結合活性を維持する限り他の蛋白質と融合していてもよい。たとえば、scFvは、ファージ抗体として発現させたときにはファージ蛋白質と融合しているが、抗原との結合活性は維持している。すなわち、ファージ抗体は本発明の抗体断片に含まれる。たとえば、先に述べたような本発明の方法によって取得された抗体の抗原結合部位を含む断片、あるいはrgdpクローンは、本発明における抗原結合部位を含む抗体の断片(抗体断片)として好ましい。
一方、本発明における二次抗体としては、前記抗体断片を認識し、結合することができる任意の抗体を用いることができる。好ましい二次抗体は、細胞障害作用を有する定常領域を保持した抗体である。たとえば、IgG抗体は、本発明における二次抗体として好ましい。scFv、Fab、あるいはFab'2などを認識するIgGは、これらの抗体断片を任意の免疫動物に免疫することによって得ることができる。更に、抗体断片が他の蛋白質と融合している場合には、この融合蛋白を認識する抗体を二次抗体として利用することもできる。したがって、たとえばファージ蛋白質と融合したscFvの細胞障害作用は、ファージ蛋白質を認識する抗体を二次抗体に利用することによって検出することもできる。一般的にはファージ抗体は、ファージ蛋白質であるCpIIIと融合している。したがって、CpIIIを認識するIgG抗体は、本発明における二次抗体として好ましい。二次抗体は、細胞障害作用を有する定常領域を保持した抗体であれば、任意の動物に由来するイムノグロブリンであってよい。あるいは細胞障害作用を維持している限り、遺伝子工学的に改変された抗体を二次抗体として用いることもできる。このような抗体として、たとえばマウス可変領域にヒト定常領域を接合したキメラ抗体を示すことができる。
本発明において、検出すべき細胞障害活性としては、たとえば抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を示すことができる。細胞障害作用は、細胞の障害によって溶出する細胞内成分を指標として検出することができる。たとえば細胞内に存在する酵素が反応液中に溶出するとき、反応液中の酵素活性が検出される。したがって、二次抗体を加えた後に、当該酵素活性が検出されれば、抗体断片が障害活性作用を有する抗体の断片であることが確認できる。細胞障害の指標とすることができる酵素としては、たとえば乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を示すことができる。乳酸デヒドロゲナーゼ活性の検出方法は公知である。乳酸デヒドロゲナーゼは、電子受容体(NAD)を介して、乳酸を酸化してピルビン酸を生成する。この反応に伴って蓄積するNADHを発色色素あるいは蛍光色素などで酵素的に検出することができる。具体的には、ジアホラーゼ等の作用によりテトラゾリウム塩を還元して生成される色素を指標として、NADHを検出することができる。
本発明の方法を利用して、細胞障害作用を有する抗体断片を選択することができる。すなわち本発明は、前記の抗体断片の細胞障害作用を検出する方法によって細胞障害活性を検出し、細胞障害活性が検出された抗体断片を選択する工程を含む、細胞障害作用を有する抗体の抗原結合部位を含む断片を選択する方法に関する。本発明によって選択された抗体断片は、二次抗体と組み合わせることによって、あるいは定常領域を備えた抗体に再構成することによって、細胞障害活性を有する抗体として利用することができる。特に、ヒト定常領域との接合によって再構成された抗体断片は、細胞障害作用を有する抗体医薬として有用である。
本発明に基づく抗体断片の細胞障害作用の検出方法、あるいは細胞障害作用を有する抗体断片の選択方法に用いられる要素は、あらかじめ組み合わせてキットとすることができる。すなわち本発明は、以下の要素を含む、抗体断片の細胞障害作用の検出用キット、ならびに細胞障害作用を有する抗体断片の選択用キットを提供する。
i) 抗体断片を認識する二次抗体
ii)抗体断片が結合する抗原を発現した細胞
本発明のキットには、細胞障害作用を有することが明らかな抗体断片、あるいは有しないことが明らかな抗体断片を対照試料として組み合わせることができる。更に、細胞障害を検出するための試薬をキットに組み合わせることもできる。細胞障害を検出するための試薬としては、たとえば乳酸デヒドロゲナーゼ活性測定用試薬を示すことができる。乳酸デヒドロゲナーゼの検出用試薬としては、たとえばジアホラーゼ、テトラゾリウム化合物、およびNADを示すことができる。
本発明に基づいて、肝癌細胞の表面抗原の可溶性分画を用い、scFvを提示したファージライブラリーのスクリーニングによって、実際に肝癌細胞に特異的に結合する抗体が選択された。そしてこれらの抗体は、いずれも肝癌の診断に有用であることが確認された。すなわち本発明は、抗体可変領域提示ファージライブラリー由来の、クローン049-023、あるいは050-051から取得されたポリヌクレオチド、あるいはそれによってコードされるポリペプチド、並びにその用途に関する。
これらのファージクローンが有する抗体可変領域をコードするポリヌクレオチドの塩基配列は、それぞれ以下の配列番号に示した。
049-023 VH:配列番号:82 049-023 VL:配列番号:84
050-051 VH:配列番号:86 050-051 VL:配列番号:88
本発明は、これらのポリヌクレオチドによってコードされる以下のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドは、肝癌の細胞表面抗原を認識する抗体の製造に有用である。
049-023 VH:配列番号:83 049-023 VL:配列番号:85
050-051 VH:配列番号:87 050-051 VL:配列番号:88
また本発明は、これらのアミノ酸配列をコードすることができる塩基配列を含むポリヌクレオチドに関する。本発明のポリヌクレオチドは、肝癌の細胞表面抗原を認識する抗体の製造に有用である。
当業者は、可変領域のアミノ酸配列、あるいはそれをコードする塩基配列に基づいて、特定の抗原を認識する抗体の可変領域を得ることができる。たとえば、本発明のポリヌクレオチドは、化学的に合成することができる。あるいは、既に取得されている別の抗体の可変領域をコードするポリヌクレオチドを、本発明によって開示された塩基配列に基づいて改変することによって、目的とする塩基配列からなるポリヌクレオチドとすることもできる。
たとえば、上記ポリペプチドのアミノ酸配列を解析し、可変領域に占めるCDRのアミノ酸配列を同定することができる。同定されたアミノ酸配列をコードする塩基配列は、前記ポリヌクレオチドの塩基配列から選択することができる。こうして選択された本発明のポリペプチドのCDRをコードする塩基配列を、他の抗体のCDRと置換することによって、本発明の抗体と同様の結合活性を有する抗体を高い確率で再構成することができる。すなわち本発明は、前記ポリヌクレオチドのアミノ酸配列から選択されるCDR領域のアミノ酸配列を、他のイムノグロブリンのCDRに移植する工程を含む、肝癌の細胞表面抗原に結合するイムノグロブリンの製造方法を提供する。あるいは本発明は、以下のアミノ酸配列からなるCDRを有するイムノグロブリンH鎖、L鎖、並びに両者を含むイムノグロブリン、またはそれらの可変領域を含む断片を提供する。
049-023H CDR1 SGYTLTGLSIH (配列番号:90)
CDR2 GFDPEDGETTYSQKFQG (配列番号:91)
CDR3 AGGYYYFGLDV (配列番号:92)
049-023L CDR1 RASQSVSSSYLA (配列番号:93)
CDR2 GASSRAT (配列番号:94)
CDR3 QQYGSSPWT (配列番号:95)
050-001H CDR1 SGYTFTSYGIS (配列番号:96)
CDR2 WISAYNGNTNYAQKLQG (配列番号:97)
CDR3 DFSNYAPFDY (配列番号:98)
050-001L CDR1 QGDSLRSYYAS (配列番号:99)
CDR2 GKNNRPS (配列番号:100)
CDR3 NSRDSSGNHVV (配列番号:101)
抗体の可変領域をコードするポリヌクレオチドは、適当な発現ベクターに挿入することによって、抗体発現ベクターとすることができる。抗体は、可変領域のみとすることもできるし、定常領域を融合させて、インタクトな抗体として発現させることもできる。すなわち本発明は、前記ポリヌクレオチドを発現可能に保持したベクターを提供する。単離された可変領域をコードする遺伝子を組み込んで、可変領域として、あるいは定常領域を備えたキメラ抗体として発現することができるベクターは公知である。抗体を発現するベクターには、VHとVLの両方を組み込み、ヘテロダイマー構造の可変領域として発現可能な構造を有するベクターも知られている。
本発明のベクターは、適当な宿主に形質転換することによって、抗体あるいは抗体可変領域を発現させることができる。即ち本発明は、肝癌の細胞表面抗原に結合する抗体、あるいはその可変領域を発現することができる形質転換細胞を提供する。この形質転換細胞の培養物から、肝癌の細胞表面抗原に結合する抗体またはその可変領域を取得することができる。すなわち本発明は、本発明の形質転換細胞を培養し、発現産物を回収する工程を含む、肝癌の細胞表面抗原に結合する抗体、あるいはその可変領域の製造方法を提供する。
本発明によって得られた肝癌の細胞表面抗原に結合する抗体、あるいはその可変領域は、肝臓癌の治療あるいは診断に有用である。すなわち本発明は、前記アミノ酸配列を可変領域として含むイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片の少なくとも1種と薬学的に許容される担体を含む、肝臓癌の治療あるいは診断用の医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物を構成するイムノグロブリンあるいはその可変領域を含む断片は、治療あるいは診断に有用な種々の分子によって修飾することができる。
たとえば、放射性同位元素は、癌病巣の画像化や治療に有用である。たとえばTc99mなどによってイムノグロブリンを標識する方法が公知である。あるいは、各種の磁性金属や金属を配位したキレートは、MRIによる癌病巣の画像化に有用である。更に、癌の治療用の薬剤そのもの、あるいは薬剤を封入したマイクロカプセルなどを本発明のイムノグロブリンに結合させ、癌病巣に集中的に薬剤を投与することもできる。その他、蛍光色素、発光色素、あるいは酵素等のシグナルを生成する分子を結合したイムノグロブリンは、生体外で、あるいは生体内において、癌組織を検出するためのプローブとして有用である。
あるいは本発明は、前記アミノ酸配列を可変領域として含むイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片のいずれか、または両方を試料に接触させ、試料に結合するイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片を検出する工程を含む、肝臓癌の検査方法に関する。
また本発明は、次の要素を含む、肝臓癌の検査用キットを提供する。本発明のキットによって、肝臓癌が疑われる病理組織を免疫染色し、イムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片が結合する細胞が検出されれば、被検試料には、肝臓癌が存在していることが確認できる。
i)前記アミノ酸配列を可変領域として含むイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片のいずれか、または両方、
ii)正常な肝細胞組織、および
iii)肝臓癌の癌細胞組織
前記要素のうち、ii)正常な肝細胞組織、およびiii)肝臓癌の癌細胞組織は、検査において陰性対照並びに陽性対照として用いられる。対照試料を用いることによって、操作の誤りに起因する誤判定を防止することができる。また、検査結果の判定の標準化のためにも、対照試料の検査は有用である。
本発明の試薬あるいはキットには、免疫染色の実施に必要な付加的な成分を組み合わせることができる。たとえばイムノグロブリン分子またはその可変領域を含む断片には、予め標識を結合しておくことができる。標識としては、蛍光色素あるいは酵素などを用いることができる。蛍光色素としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)などが利用される。あるいは酵素には、ペルオキシダーゼあるいはアルカリフォスファターゼなどが利用される。標識は、イムノグロブリン分子またはその可変領域を含む断片に直接結合することができる。標識の結合には、2官能性のリンカーを利用することができる。あるいは、アビジン−ビオチン結合を利用して間接的に標識を結合する技術も公知である。
以下実施例に基づいて、本発明を更に具体的に説明する。
1.scFv抗体遺伝子ライブラリーを作製するためのベクターの作製
1-1 scFv抗体遺伝子ライブラリーを作製するためのベクターの作製
図1に概念的に示すように、pTZ19Rファージミドベクター(ファルマシア)にM13ファージのpelB(シグナル配列)、His6タグ配列、M13ファージのcp3蛋白質(Δcp3(198aa-406aa)N端欠失キャプシド蛋白質3)配列、proteinA蛋白質配列を適当な制限酵素部位で組み込みベクターpFCAH9-E8dを作製した(Iba Y. et al., Gene 194 : 35-46, 1997. 参照)。このpFCAH9-E8dから、さらにscFv抗体ライブラリー用のベクターpscFvCA9-E8VHdVLdを作製した。
このベクターの所定の位置に重鎖と軽鎖の遺伝子を挿入することにより、実際の抗体蛋白質発現ベクターが完成することとなる。完成したベクターによって発現される抗体の形状はscFv型であり、軽鎖定常領域CL遺伝子は前述のcp3遺伝子と結合されており、結果として発現蛋白質はscFv-CL-cp3の形状となる。
具体的には、以下のような操作を行った。
用いたプライマー:
527 Reverse(配列番号:1):
5'-CAGGAAACAGCTATGAC-3'
599 E8VHf-PstR:(配列番号:2)
3'-CGGCTCCAAGTCGACGTCGTCA-5'
544 E8VHf-PstF:(配列番号:3)
5'-CAGCTGCAGCAGTCTGGGGCAGAGCTTGTGAAGCCAGGGGCCTCAGTCAAGTTGTCCTGCACAGCTTCTGGCTTCAACATTAA-3'
545 E8VHf-XbaR:(配列番号:4)
3'-AGACCGAAGTTGTAATTTCTGTGGATATACGTGACCCACTTCGTCTCCGGACTTTTCCCAGATCTCACCTAACCTTCCTAA-5'
546 E8VHf-XbaF:(配列番号:5)
5'-AAGGGTCTAGAGTGGATTGGAAGGATTGATCCTGCGAGTGGTAATACTAAATATGACCCGAAGGACAAGGCCACTATAACAGCA-3'
547 E8VHf-EcoR(配列番号:6)
3'-TTCCTGTTCCGGTGATATTGTCGTCTGTGTAGGAGGTTGTGTCGGATGGATGTCGACTTAAGGGAC-5'
548 E8VHf-EcoF(配列番号:7)
5'-CAGCTGAATTCCCTGACATCTGAGGACACTGCCGTCTATTACTGTGCTGGT-3'
549 E8VHf-BstR(配列番号:8):
3'-CAGATAATGACACGACCAATACTAATGCCGTTGAAACTGATGACCCCGGTTCCGTGGTGCCAGTGGCACAAGG-5'
590 His6-SmaR(配列番号:9):
3'-GGTTCTCTAACAGTAGTGGTAGTAGTGGTAATTATTCTCGATAGGGCCCTCGAA-5'
542 E8VLf-SacF(配列番号:10):
5'-GACATCGAGCTCACCCAGTCTCCAGCCTCCCTTTCTGCGTCTGTGGGAGAAACTGTCACCATCACATGT-3'
539 E8VLf-KpnR(配列番号:11):
3'-TGACAGTGGTAGTGTACAGCTCGTTCACCCTTATAAGTGTTAATAAATCGTACCATGGTCGTC-5'
542 E8VLf-KpnF(配列番号:12):
5'-GCATGGTACCAGCAGAAACCAGGGAAATCTCCTCAGCTCCTGGTCTAT-3'
543 E8VLf-BamR(配列番号:13):
3'-GGAGTCGAGGACCAGATATTACGTTTTTGGAATCGTCTACCACACGGTAGTTCCAAGTCACCGTCACCTAGGCCTTGTGTT-5'
562 E8VLf-XhoR(配列番号:14):
3'-TCATGAGGCACCTGCAAGCCACCTCCGTGGTTCGAGCTCTAGTTT-5'
563 E8VLf-XhoF(配列番号:15):
5'-AGTACTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTCGAGATCAAA-3'
613 NheR(配列番号:16):
3'-ATCGACAGCT-5'
600 E8VLKpnXhoR(配列番号:17):
3'-AAGCCACCTCCATGGTTCGAGCTCTAGTTT-5'
LCP3ASC(配列番号:18):
3'-TCGAAGTTGTCCTTACTCACAAGCCGCGCGGTCAGCTGAGGTAA-5'
hCH1Bst(配列番号:19):
5'-ACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGG-3'
hCH1midAS(配列番号:20):
3'-GGGAGTCGTCGCAGCACTGGCACGGGAGGTCGTCGAA-5'
hCH1midS(配列番号:21):
5'-GGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTCGTGACCGTGCCC-3'
hCH1H6(配列番号:22):
3'-GGGTCGTTGTGGTTCCACCTGTTCTTTCAACTCGGGTTTAGAACAGTAGTGGTAGTAGTGGTA-5'
hCH1H6Sma(配列番号:23):
3'-GGGTTTAGAACAGTAGTGGTAGTAGTGGTAATTATTCTCGATAGGGCCCTCGAACG-5'
702 BstXhoF(配列番号:24):
5'-GGCACCACGGTCACCGTCTCGAGCGCCTCCACC-3'
<pFCAH3-E8T H鎖部分の作製>
1)pAALFabを鋳型にして527-599を用いたPCR, 547-590を用いたPCRを行いDNA断片を作製した。
2)544-545,546-547,548-549にてPCRを行いDNA断片を作製した。
3)1)2)を混合し527,590によるPCRを行い、これをpAALFabのHindIII-SmaI siteにクローンニングした。
<pFCAH3-E8T L鎖部分>
4)542-562, 561-613を用いたPCRを行いDNA断片を作製した。
5)538-539,542-543にてPCRを行いDNA断片を作製した。
6)4)5)を混合し538,562によるPCRを行い、これをpAALFabのSacI-NheI siteにクローンニングした。
<pFCAH9-E8d>
7)VH stuffer部分の作製
pFCAH3-E8TをXbaI,EcoRIにて消化、klenow fragmentを作用させて平滑末端に変えた後self ligationさせてVH部分のstufferを作製した。
8)VH stuffer部分の作製
pFCAH3-E8Tを鋳型にして527-600にてPCR。7)のHindIII-XhoI siteにクローニングした。
9)これをKpnIにて消化、self ligationさせてVL部分のstufferを作製した。
10)SfiI,NcoI,SpeI siteの導入
pFCAH3-E8Tを鋳型にして527-663にてPCR。1)のHindIII-SacI siteにクローニングした。
11)AscI siteの導入
pFCAH3-E8Tを鋳型にして527-LCP3ASCにてPCRし、それをSacI完全消化、SalI部分消化した2)にクローニングした。
12)gammaCH1部分をヒト遺伝子に変換
ヒトgammaCH1部分にはBstPI siteが存在するためこれをなくす設計でクローニングを行った。ヘントウ腺cDNAを鋳型にしてhCH1Bst-hCH1midS, hCH1midAS-hCH1H6にてPCRしたのち、これを混合してhCH1Bst-hCH16SmaにてPCRし、そのDNA断片を3)のBstPI-Sma siteにクローニングした
13)Xho siteの導入
12)を鋳型に702-663にてPCRを行い、これを12)のBstPI-SacI siteにクローニングした。
<pscFvCA9-E8VHdVLdの作製>
pFCAH9-E8d 3μg(3μL)(図1Dを参照)をBstPI(3U/μL)3μL、10×H buffer 5μL、DW39μLと混合し、37℃で2時間、制限酵素処理を行った。処理後、エタノール沈殿して得られた沈殿を10μLのTEバッファーに溶解した。これに、SacI(10 U/μL )1μL、10×L buffer 5μL、DW34μLを混合して37℃で2時間、制限酵素処理した後、アガロースゲル電気泳動して、4.7kb断片を回収した。回収物をエタノール沈殿して10μLとした(pFCAH9-E8d BstPI- SacI断片)。
一方、プライマーlinF(100pmol/μL)5μLとプライマーlinR(100pmol/μL) 5μLを混合し、94℃で5分加熱した後、80℃5分、70℃5分、室温放置30分によりアニールさせた。このうち、2μLと上記で得られたpFCAH9-E8d BstPI- SacI断片1μL、10×ligation buffer 1.5μL、DW 9.5μL、T4DNAligase 1μLを混合し、16℃で16時間反応させた。反応後、エタノール沈殿して3μLに濃縮し、そのうち1.5μLを用いて、大腸菌DH12Sコンピテントセル20μLをエレクトロポレーションにより形質転換した。得られたクローンのプラスミドを抽出し、塩基配列を確認して、pscFvCA9-E8VHdVLdと名づけた。図2にpscFvCA9-E8VHdVLdの構造を模式的に示した。また、図3−1〜図3−2にpscFvCA9-E8VHdVLdのインサート部の塩基配列(配列番号:25)及びそれにコードされるアミノ酸配列(配列番号:26)を示した。
プライマーlinF(配列番号:27)
GTCACCGTCTCGAGAGGCGGTGGCGGATCAGGTGGCGGTGGAAGTGGCGGTGGTGGGTCCATGGCCGACATCGAGCT
プライマーlinR(配列番号:28)
CGATGTCGGCCATGGACCCACCACCGCCACTTCCACCGCCACCTGATCCGCCACCGCCTCTCGAGACG
1-2 重鎖可変領域(VH)を一時的にクローニングするためのベクターの作製
公知の手法(Iba Y. et al., Gene 194:35-46, 1997.参照)に従って、まずpAALFabベクター(図1A)を作製した。pAALFabベクターのXbaIからEcoRIの間を欠落させ、新たに制限酵素切断部位Kpn I, Sfi I, Nco I, Spe Iを付加して、pFCAH3-E8T(図1B)を経て、VH(重鎖可変領域)をクローニング可能としたベクターpscFvCA-E8VHd(図1C)を作製し、重鎖可変領域を一時的にクローニングするためのベクターとした。図4−1〜図4−2にpscFvCA-E8VHdのインサートの塩基配列(配列番号:29)及び制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号:30)を示した。
具体的には、primer610とprimer611をアニールさせ、それをpFCAH3-E8TのBstPI-SacI siteにクローニングしてsingle chainの作製を行なった。さらに、primer527とprimer619にてPCRを行い、これをさらにHindIII-PstI siteにクローニングし、SfiI,NcoI siteの導入を行った。以下にベクターの作製に用いたプライマー配列を示す。
610 scBstSpeSacF(配列番号:31):
5'-CACCACGGTCACCGTCTCCTCAGGCGGTGGCGGATCAGGTGGCGGTGGAAGTGGCGGTGGTGGGTCTACTAGTGACATCGAGCTCACCCAG-3'
611 scBstSpeSacR(配列番号:32):
3'-GTGGTGCCAGTGGCAGAGGAGTCCGCCACCGCCTAGTCCACCGCCACCTTCACCGCCACCACCCAGATGATCACTGTAGCTCGAGTGGGTC-5'
527 Reverse(配列番号:33):
5'-CAGGAAACAGCTATGAC-3'
619 E8VHf-SfiNcoPstR(配列番号:34):
3'-GACGCCGGGTCGGCCGGTACCGGCTCCAAGTCGACGTCGTCA-5'
2.イムノグロブリン軽鎖ライブラリーの作製
2-1 PCRを用いたイムノグロブリン軽鎖遺伝子の単離
骨髄細胞(検体No.59)4×107 cells、および臍帯血と末梢血のリンパ球から、市販のキット(Pharmacia Biotech社製 QuickPrep Micro mRNA Purification Kit)を用いて、2.6μgのmRNAを得た。このmRNAからcDNAを作製した。cDNAは、GibcoBRL社製 SuperScript Preamplification Systemによって作製した。プライマーには、オリゴdTを用いた。得られたcDNAを鋳型にして、軽鎖遺伝子の取得用5’プライマー(κ1 〜κ6、λ1〜λ6 )と3'プライマー(hCKASCプライマーまたはhCLASCプライマー)を用いて、PCRを行った。PCR産物は、フェノール処理後、エタノール沈殿して10μLのTEバッファーに懸濁した。用いたプライマーの塩基配列とPCRの条件は以下のとおりである。軽鎖遺伝子取得用プライマーの塩基配列中、下線部はNcoIサイト、AscIサイトを示す。
5’-プライマーκ1〜κ6
hVK1a(配列番号:35):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC GACATCCAGATGACCCAGTCTCC
hVK2a(配列番号:36):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC GATGTTGTGATGACTCAGTCTCC
hVK3a(配列番号:37):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC GAAATTGTGTTGACGCAGTCTCC
hVK4a(配列番号:38):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC GACATCGTGATGACCCAGTCTCC
hVK5a(配列番号:39):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC GAAACGACACTCACGCAGTCTCC
hVK6a(配列番号:40):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC GAAATTGTGCTGACTCAGTCTCC
5’-プライマーλ1〜λ6
hVL1(配列番号:41):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCC
hVL2(配列番号:42):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGTCTGCCCTGACTCAGCCTGC
hVK3a(配列番号:43):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC TCCTATGTGCTGACTCAGCCACC
hVL3b(配列番号:44):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC TCTTCTGAGCTGACTCAGGACCC
hVL4(配列番号:45):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CACGTTATACTGACTCAACCGCC
hVL5(配列番号:46):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGGCTGTGCTCACTCAGCCGCC
hVL6(配列番号:47):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC AATTTTATGCTGACTCAGCCCCA
3’-プライマーhCKASC(配列番号:48):
TCGACTGGCGCGCCGAACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCTTTGTG
3’-プライマーHCLASC(配列番号:49):
TCGACTGGCGCGCCGAACATTCTGTAGGGGCCACTGTCTTCTC
PCRの条件
cDNA 2μL
10× buffer ♯1(KODに添付) 10μL
dNTP mix(2.0mM) 10μL
25mM MgCl2 4μL
5'側プライマー(100pmol/μL) 1μL
3'側プライマー(100pmol/μL) 1μL
滅菌済MilliQ 71μL
KOD DNA polymerase(東洋紡2.5U/μL) 1μL
94℃ 1分、55℃ 2分、74℃ 1分を35サイクル
2-2-1 軽鎖遺伝子のファージミドへの組込み
1で得たPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
PCR産物 10μL
10×NEB4(AscIに添付) 5μL
滅菌済MilliQ 33μL
AscI (NEB社 10 U/μL) 1μL
NcoI (宝酒造社 10 U/μL) 1μL
37℃で1時間、50℃で1時間反応後、そのうち10μL分をアガロース電気泳動し、600bp付近のバンドを切り出して、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。PCR産物と同様に制限酵素処理したpscFvCA9-E8VHdVLdをジーンクリーンIIキットで精製し、制限酵素処理したPCR産物と以下の条件で16℃で4時間〜一晩反応させることによりライゲーションした。
制限酵素処理したpscFvCA9-E8VHdVLd 2μL
制限酵素処理したPCR産物 1μL
10×ligation buffer 1.5μL
(T4 DNA ligaseに添付)
10mM ATP 1.5μL
滅菌済MilliQ 8μL
T4 DNA ligase (宝酒造 10 U/μL) 1μL
2-2-2 ファージミドの大腸菌への導入
得られたligated DNAを用いて以下のように大腸菌DH12Sを形質転換した。即ち、ligated DNA を一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)3μLに溶解した。そのうち、1.5μLをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)20μLに懸濁し、以下の条件でエレクトロポレーションを行った。
エレクトロポレーター
BRL社Cell-Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DC volts LowΩ
charge rate Fast
形質転換した上記の大腸菌を形質転換用培地(SOB)2mLに植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、0.1%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有2×TY培地で培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でincubateし、生えてきたコロニーを楊枝でつついて分離し、それぞれプラスミドを調製し、軽鎖遺伝子の塩基配列を調べた。
SOB培地:950mLの精製水に次の成分を加えて振とうし、完全に溶解した後250mMのKCl溶液10mLを加え、5N NaOHでpH7.0に調製した。精製水を加えて1000mLに調整した後、オートクレーブで20分間滅菌し、使用直前に滅菌した2MのMgCl2を5mL加えた。
bacto-tryptone 20g
bacto-yeast extract 5g
NaCl 0.5g
2×YT培地:900mLの精製水に次の成分を加えて振とうし、完全に溶解した後5N NaOHでpHを7.0に調製し、精製水を加えて1000mLとした。オートクレーブで20分間滅菌して使用した。
bacto-tryptone 16g
bacto-yeast extract 10g
NaCl 5g
その他の試薬は以下から購入した。
メーカー 品名
シグマ アンピシリンナトリウム
和光純薬 フェノール
シグマ BSA
DIFCO 2×YT培地
和光純薬 カナマイシン硫酸塩
ナカライテスク ポリエチレングリコール6000
ナカライテスク Tween20
片山化学 NaCl
和光純薬 IPTG
和光純薬 スキムミルク
和光純薬 アジ化ナトリウム
和光純薬 トリエチルアミン
和光純薬 過酸化水素
和光純薬 OPD錠
和光純薬 エタノール
κ1、κ2、κ3、κ4、κ5、およびκ6、並びにλ1、λ2、λ3a、λ3b、λ4、λ5、λ6、λ7、λ8、λ9、およびλ10の全てについて以上の操作を行い、目的のクローンが得られているかどうか確認した。続いてκ1、κ2などの各グループのクローンをin vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合した。これら軽鎖の各グループは、それぞれ実際の生体内でどのような割合で発現しているのかが既に知られている。PCR法で増幅してベクターに組み込んだこれらの遺伝子クローンを、in vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合しVLライブラリーとした。VLライブラリーにおける各familyの構成比率を以下に示す。
〔表1〕
-------------------------------------------------
family in vivoでの VLライブラリー KL200での
使用頻度(%)* での構成比率(%) 構成比率(%)
Vκ1 39 37 30.7
Vκ2 12 12 19.8
Vκ3 36 35 33.7
Vκ4 12 12 10.9
Vκ5 1 2 5.0
Vκ6 -** 2*** 0.0
-------------------------------------------------
* Griffith AD et al. EMBO J. (1994) 13, 3245-60.
**発表時記載なし。
*** プライマーVK6-2で作製したcDNAとプライマーVK6-3で作製したcDNAを等量混合。
〔表2〕
-------------------------------------------------
family in vivoでの VLライブラリー KL200での
使用頻度(%)* での構成比率(%) 構成比率(%)
Vλ1 43 41 34.1
Vλ2 15 15*3 15.2
Vλ3 34 32*4 25.3
Vλ4 0 1.5*5 0.0
Vλ5 0 1.0*6 11.1
Vλ6 0 1.0 14.1
Vλ7 6 6 0.0
Vλ8 1 1 0.0
Vλ9 1 1 0.0
Vλ10 -*2 1 0.0
-------------------------------------------------
* Griffith AD et al. EMBO J. (1994) 13, 3245-60.
*2 発表時記載なし。
*3 プライマーVL2で作製したcDNA5%とプライマーVL2-2で作製したcDNA10%を混合。
*4 プライマーVL3a-2で作製したcDNA17%とプライマーVL3bで作製したcDNA15%を混合。
*5 プライマーVL4aで作製したcDNA0.5%とプライマーVL4bで作製したcDNA0.5%とプライマーVL4cで作製したcDNA0.5%を混合。
*6 プライマーVL5abdeで作製したcDNA0.5%とプライマーVL5cで作製したcDNA0.5%を混合。
3.軽鎖遺伝子ライブラリーと重鎖遺伝子ライブラリーの組み合わせライブラリー(scFv抗体遺伝子ライブラリー)の作製
3-1-1 PCRを用いたイムノグロブリン重鎖遺伝子の単離
2-1と同様の手順を用いて臍帯血、骨髄液、および末梢血のリンパ球、並びに扁桃腺からhuman μ primer(以下に示すプライマーの634)あるいはrandom hexamerを用いてcDNAを調製し、このcDNAを鋳型にして、以下に示すヒト抗体重鎖遺伝子の取得用5’プライマー(VH1〜VH7)と3’プライマー(human JHプライマー4種を等量混合したもの、以下に示すプライマーの697〜700)、または、humanμプライマー(以下に示すプライマーの634)を用いて、PCRを行った。表中、下線をつけた部分はSfiIサイトを示す。hVH2aはgerm line VH2 familyに対応していないため、新たにVH2a-2を設計した。またhVH4aではVH4ファミリー全体に対応していないため、新たにhVH4a-2を設計した。VH5aもgerm line VH5 subfamilyに対応していなかったため新たにVH5a-2を設計した。またVH7に対応するprimerとしてhVH7を設計した。これらについても遺伝子増幅を行い、pscFvCA-E8VHdに組み込み、どのような遺伝子がとれたのかを塩基配列決定した。hVH5a-2についてはhVH1aと配列が酷似しているため、hVH1aで増幅させたものと同様の遺伝子産物が得られることが予想されるためこれについては使用しなかった。PCR産物は、フェノール処理後、エタノール沈殿して10μLのTEバッファーに懸濁した。
634 humμCH1R(配列番号:50):
ATGGAGTCGGGAAGGAAGTC
各VH familyの増幅に使用したprimer
Human VH primer SfiI siteを下線で示す。
628 hVH1a(配列番号:51):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGG
629 hVH2a(配列番号:52):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGGTCAACTTAAGGGAGTCTGG
630 hVH3a(配列番号:53):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC GAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGG
631 hVH4a(配列番号:54):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGGTGCAGCTGCAGGAGTCGGG
632 hVH5a(配列番号:55):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGGTGCAGCTGTTGCAGTCTGC
633 hVH6a(配列番号:56):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGGTACAGCTGCAGCAGTCAGG
629-2 hVH2a-2(配列番号:57):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGRTCACCTTGAAGGAGTCTGGTCC
631-2 hVH4a-2(配列番号:58):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGGTGCAGCTACAGCAGTGGGG
632-2 hVH5a-2(配列番号:59):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC GAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGG
712 hVH7(配列番号:60):
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCC CAGGTGCAGCTGGTGCAATCTGGGTCTGAGT
Human JH primer BstPI, XhoI siteを下線で示す。
697 hJH1-2(配列番号:61):
GGTGGAGGCACTCGAGACGGTGACCAGGGTGC
698 hJH3(配列番号:62):
GGTGGAGGCACTCGAGACGGTGACCATTGTCC
699 hJH4-5(配列番号:63):
GGTGGAGGCACTCGAGACGGTGACCAGGGTTC
700 hJH6(配列番号:64):
GGTGGAGGCACTCGAGACGGTGACCGTGGTCC
cDNA 2μL
10× buffer ♯1(KODに添付) 10μL
dNTP mix(2.0mM) 10μL
25mM MgCl2 4μL
5'側プライマー(100pmol/μL) 1μL
3'側プライマー(100pmol/μL) 1μL
滅菌済MilliQ 71μL
KOD DNA polymerase(東洋紡2.5U/μL) 1μL
PCR条件:94℃ 1分、55℃ 2分、74℃ 1分を35サイクル
3-1-2 重鎖遺伝子ライブラリーの作製
3-1-1で得たPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
PCR産物 10μL
10×K buffer(宝酒造) 5μL
滅菌済MilliQ 33μL
SfiI (NEB社10 U/μL) 1μL
XhoI (宝酒造12 U/μL) 1μL
37℃で2時間反応後、そのうち10μL分をアガロース電気泳動し、400bp付近のバンドを切り出して、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。PCR産物と同様に制限酵素処理したpscFvCA-E8VHdをジーンクリーンIIキットで精製し、制限酵素処理したPCR産物と以下の条件で16℃で4時間〜一晩反応させることによりライゲーションした。
制限酵素処理したpscFvCA-E8VHd 2μL
制限酵素処理したPCR産物 1μL
10×ligation buffer 1.5μL
(T4 DNA ligaseに添付)
10mM ATP 1.5μL
滅菌済MilliQ 8μL
T4 DNA ligase (宝酒造 10 U/μL) 1μL
3-1-3 ファージミドの大腸菌への導入
得られたDNAを大腸菌DH12Sに形質転換した。具体的には DNA を一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)3μLに溶解する。そのうち、1.5μLをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)20μLに懸濁し、エレクトロポレーション法により形質転換を行った。
エレクトロポレーター
BRL社Cell-Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DC volts LowΩ
charge rate Fast
形質転換用培地(SOB)2mLに上記操作の終了した形質転換大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、0.1%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有2×YT培地で培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でインキュベートし、生えてきたコロニーを楊枝でつついて分離し、それぞれプラスミドを調製し、重鎖遺伝子の塩基配列を調べた。VH1〜VH7の全てについてこれらのことを行い、目的のクローンが得られているかどうか確認した。これらの各グループ(ファミリー)のクローンをin vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合してVHライブラリーとした。VHライブラリーにおける各ファミリーの構成比率を以下に示す。
〔表3〕
-------------------------------------
family in vivoでの VLライブラリー
使用頻度(%)* での構成比率(%)
VH1 25 29**
VH2 6.6 7
VH3 40 40
VH4 19 19***
VH5 5 - **
VH6 3.8 4
VH7 1.2 2
-------------------------------------
*Griffith AD et al. EMBO J. (1994) 13, 3245-60.
** 実際にはVH1とVH5は同一のプライマーで増幅されるため、分離して集計できない。
***VH4プライマーで作製したcDNAとVH4-2プライマーで作製したcDNAを混合してこの割合とした。
3-2 組み合わせ遺伝子ライブラリーの作製
VHライブラリー200μgを下記条件でHindIIIとXhoIで消化し、重鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製した。
VHライブラリー200μg 100μL
10×K buffer(宝酒造) 40μL
滅菌済MilliQ 205μL
HindIII (宝酒造40 U/μL) 30μL
XhoI (宝酒造50 U/μL) 25μL
VLライブラリーの挿入されたベクターpscFvCA9-E8VHdVLdについても下記条件でHindIIIとXhoIで消化し、軽鎖遺伝子を含む断片を、ジーンクリーンIIキットで精製した。
VLライブラリーを挿入したpscFvCA9-E8VHdVLd 100μg 100μL
10×K buffer(宝酒造) 40μL
滅菌済Milli-Q 230μL
HindIII (宝酒造40 U/μL) 15μL
XhoI (宝酒造50 U/μL) 15μL
次に、VH遺伝子ライブラリー断片と軽鎖遺伝子の挿入されたpscFvCA9-E8VHdVLdベクターを、次の条件下、16℃で一晩反応させてライゲーションした。
制限酵素処理した
VHライブラリー断片 10μg 50μL
制限酵素処理した
VLライブラリーの断片
を含むpscFvCA9-E8VHdVLd 40μg 50μL
10×ligation buffer
(T4 DNA ligaseに添付) 100μL
10mM ATP 100μL
滅菌済MilliQ 670μL
T4 DNA ligase (宝酒造 10 U/μL) 30μL
反応の終了したDNAを用いて大腸菌DH12Sを形質転換した。具体的にはDNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)30μLに溶解した。これをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)500μLに懸濁し、エレクトロポレーションを行った。
エレクトロポレーター
BRL社Cell-Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DC volts LowΩ
charge rate Fast
形質転換用培地(SOB)12mLに上記操作の終了した大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、0.1%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有2×YT培地500 mLで培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でインキュベートし、生えてきたコロニーの数から得られたクローンの数を推定した。8.5×1010クローンが得られた。
4. scFv-CL抗体遺伝子ライブラリーからscFv-CL抗体ファージライブラリーの作製
1%グルコース及び100μg/mL のアンピシリンを加えた2×YT培地300mLを入れた5リットルのフラスコ16本にAIMS-5懸濁液を2.5mLを加え、37℃で振とう培養し1時間おきに波長600nmにおける吸光度を測定しながら、吸光度が1.0になるまで増殖させた。培養液にヘルパーファージ液(M13KO7)をフラスコ当たり12mL加えてヘルパーファージを感染させ、37℃で2時間培養し、ヘルパーファージ感染済みDH12Sとした。
5リットルのフラスコ24本に2×YT培地600mLと100μg/mLのアンピシリン0.6mL、50μg/mLのカナマイシン0.8mL、ヘルパーファージ感染済みDH12S 200mLを加えて37℃で20時間振とう培養した。
菌体は4℃で8000rpm、10分間遠心し、上清を集めた。上清に20%のポリエチレングリコール/2.5M NaCl 4Lを加えて約20分間静かに攪拌した後、4℃で8000rpm、20分間遠心、沈殿を1LのPBSで溶かし、20%のポリエチレングリコール/2.5M NaCl 200mLを加えて約20分間静かに攪拌した後、4℃で8000rpm、20分間遠心した。上清を捨ててさらに4℃で8000rpm、3分間遠心して沈殿を回収した。沈殿は0.05% NaN3を加えたPBSで溶解し、4℃で1000rpm、15分間遠心し、上清を回収した後、4℃で8000rpm、3分間さらに遠心して上清を回収した。
回収したファージ溶液の力価は以下のようにチェックした。すなわち、ファージ溶液をPBSで106、107、108希釈し、その10μLをDH12S 990μLに感染させ、37℃で1時間培養した。これをLBGAプレートに100μL播いて30℃で18時間培養した。コロニーの数をカウントすることにより希釈前の原液の力価を算出した。ファージ溶液原液を0.05% NaN3を含むPBSに2×1014/mLになるよう懸濁した。
5.培養細胞を使用したスクリーニング、癌組織を用いたスクリーニング
5-1 培養細胞を使用したスクリーニング
まず培養細胞を15cm デイッシュで培養し、それを2mg/ml collagenase I(Gibco BRL)/cell dissociation buffer(Gibco BRL)でデイッシュから解離させた。それを冷却したPBSで洗い、4x107を使用した。これに2x1013cfuのヒト抗体ファージライブラリーを混ぜ、反応液の終濃度を1%BSA-0.1%NaN3/MEM、容積1.6mlとし、4℃にて4時間ゆっくり回転させて反応させた。反応終了後、反応液を二つに分け、それぞれを0.6mlの有機溶液(dibutyl phtalate : cyclohexane = 9:1)の上に重層し、マイクロ遠心機にて3000rpmの遠心力を2分間作用させ、細胞をチューブの底に沈降させた。それぞれのチューブについて、溶液を捨て、細胞を0.7mlの1%BSA/MEMで懸濁、0.7mlの低極性溶媒の上に重層して遠心した。この操作をもう一度繰り返したのち、溶液を捨て、細胞を0.3mlのPBSで懸濁、液体窒素で凍結し、37℃で融解した。
これをOD0.5の大腸菌DH12S 20mlに1時間感染させ、600mlの2xYTGA培地(2xYT, 200μg/ml ampicillin sulfate, 1% glucose)にて30℃で通夜培養した。この通夜培養10mlを2xYTA培地(2xYT, 200μg/ml ampicillin sulfate)200mlと混ぜ、37℃にて1.5時間培養後ヘルパーファージKO7を1x1011入れ、37℃にて1時間培養したのち、800mlの2xYTGAK(2xYT, 200μg/ml ampicillin sulfate, 0.05% glucose, 50μg/ml kanamycin)を入れて30℃にて通夜培養した。これを8000rpmにて10分間遠心して上清1lを調製、それに200mlのPEG液(20% polyetyleneglycol 6000, 2.5M NaCl)を混ぜてよくかきまぜたのち、8000rpm 10分間の遠心を行いファージを沈殿させた。これを10mlのPBSに懸濁し、その一部を使用して大腸菌感染数を調べた。これが1stスクリーニングのファージである。
2ndスクリーニングには培養細胞2x107と1stファージ1x1010を使用し、反応液の容積を0.8mlとした。反応液は1%BSA-0.1%NaN3/MEMで、全体のスケールを1stスクリーニングの半分で行った。3rdスクリーニングは2ndファージ1x109を使用する以外は2ndスクリーニングと同じ条件とした。
5-2 手術組織を使用したスクリーニング
手術によって摘出した組織は、まず組織染色に用いる部分をとったのち、5mM HEPESを入れたMEMで灌流、デイスパーゼーコラゲナーゼ液で灌流したのち、コラゲナーゼ液で灌流した。デイスパーゼーコラゲナーゼ液とコラゲナーゼ液の組成を以下に示す。
デイスパーゼーコラゲナーゼ液:8mg/ml NaCl, 0.4mg/ml KCl, 0.56mg/ml CaCl2, 0.078mg/ml NaH2PO4-2H2O, 0.151mg/ml Na2HPO4-12H2O, 2.38mg/ml HEPES, 0.5mg/ml collagenaseI(SIGMA), 0.05mg/ml Tripsin inhibitor(WAKO), 0.35mg/ml NaHCl3, 112mg/ml Dispase(GIBCO)
コラゲナーゼ液:8mg/ml NaCl, 0.4mg/ml KCl, 0.56mg/ml CaCl2, 0.078mg/ml NaH2PO4-2H2O, 0.151mg/ml Na2HPO4-12H2O, 2.38mg/ml HEPES, 0.5mg/ml collagenaseI(SIGMA), 0.05mg/ml Tripsin inhibitor(SIGMA), 0.35mg/ml NaHCl3
コラゲナーゼ液で還流した組織を癌部と非癌部に分け、細切してコラゲナーゼ液にサスペンドし、10,000u のDNaseI(タカラ酒造)を入れて、酸素を吸入し、37℃にて約20分間、ゆっくり振とうした。これを4℃にて600rpm 2分間遠心し、実質細胞(癌細胞、肝正常細胞)を回収した。細胞をセルバンカーにて3x107ずつ懸濁、液体窒素保存した。組織より単離した細胞は膜がやや弱いので、ファージ反応液には終濃度2%になるよう、スキムミルクを入れた。以降の操作は培養細胞を用いたスクリーニングと同じである。
6.抗体クローンの塩基配列決定、抗体発現チェック、細胞ELISA、組織染色
スクリーニングによって得られた大腸菌を希釈して、100μg/mlのampicillinの入った普通寒天培地に蒔き、得られるコロニーをピックアップして2xYTGA培地にて30℃通夜培養、クラボウのPI-50にてDNAを抽出、dideoxy法で塩基配列を決定した。また、この通夜培養0.05mlを1.2mlの2xYTAI(2xYT, 200μg/ml ampicillin sulfate,0.5mM IPTG)に植えて30℃にて通夜培養、マイクロ遠心機にて15000rpm 5分間遠心して上清を回収した。
抗体はcp3融合タンパクとして発現されるので、それを用いて検出した。すなわち、まず得られた上清をMaxisorp(NUNC)に37℃にて2時間反応させたのち、液を捨て、5%BSAを37℃にて2時間反応させてブロッキングした。液を捨て、0.05%Tween/PBSで2000倍希釈したウサギ抗cp3抗体(MBL製)を室温にて1時間反応させたのちPBSで洗浄し、0.05%Tween/PBSで2000倍希釈したHRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(MBL)を室温にて1時間反応させたのちPBSで洗浄し、100μlのOPD液を室温にて15分反応させ、2M硫酸アンモニウムにて反応を停止し、SPECTRAmax 340PC(Molecular Devices)にて492nmの吸光度を測定した。
細胞ELISAの操作は次のとおりである。まず培養細胞1x105を96 well plateに蒔いて1日培養し、200μlの5%スキムミルク/PBSで置き換えて氷上に3時間置いた後、液を捨て、上清100μlと10%スキムミルク100μlを入れて氷上に一晩置いた。氷冷したPBSにて5回洗浄したのち、100μlの5μg/mlマウス抗cp3モノクローナル抗体-5%skimmilk/PBSを4℃にて2時間反応させた。氷冷したPBSにて5回洗浄したのち、25μlのperoxidase標識のENVISION+ポリマー試薬と75μlの5%skimmilk/PBSを混ぜたものを作製し、4℃にて2時間反応させた。氷冷したPBSにて5回洗浄したのち、100μlのOPD液を室温にて15分反応させ、2M硫酸アンモニウムにて反応を停止し、SPECTRAmax 340PC(Molecular Devices)にて492nmの吸光度を測定した。
組織染色は以下のようにして行った。
(A). 切片作製
まず、摘出された組織を5mm×5mm×10mmほどの大きさにした。それをあらかじめ4℃に冷やしておいた4%PFA/0.1%グルタールアルデヒド/0.1Mカコジル酸バッファー2mlに入れ(PFAは和光純薬、グルタールアルデヒドは関東化学、カコジル酸はSIGMA)、電子レンジ(SHARP)を用いて,マイクロウェーブ照射を14秒間行い固定した。そして、30mlのPLP(2%PFA/0.075M Lysine/0.01M NaIO4/0.0375PB)に移し、4℃にて1時間再固定したのち、10%sucrose/PBSに入れて4℃にて4時間浸漬後、15%sucrose/PBSに置換して4℃にて4時間浸漬したのち、20%/sucrose/PBSに置換して4℃にて一晩浸漬し、OTCコンパウンドにて包埋して急速凍結した。これを、クリオスタット(Reichert-Jung 2800 FRIGCUT E)にて5μmに薄切し,シランコートスライドガラス(MATSUNAMI)に貼り付け、冷風ドライヤーにて30分風乾した。このスライドガラスを1枚ずつキムワイプに包み,さらにその上からアルミ箔で包み、シリカゲルをいれた容器に入れ、-80℃にて保存した。
(B). 組織染色
スライドガラスに霜がつかないようにゆっくりと室温に戻し、PBSを5分間ずつ3回浸漬して親水化した。次に50μlの0.3%H2O2/0.1%NaN3を滴下し、室温にて10分間反応させ、内因性ペルオキシダーゼをブロッキングした。その後、PBSにて5分間ずつ3回洗浄し、2%BSA/PBS中で室温で10分間反応させ、非特異反応をブロッキングした。そして、硫酸アンモニウムを使用して5倍濃縮したサンプル抗体50μlを滴下し,室温にて1時間反応させたのち、2%BSA/PBSで5分間ずつ3回の洗浄を行った。次に、50μlの抗CP3ウサギ抗体5μg/mlを加え、室温にて45分間二次抗体反応を行った。そして、2%BSA/PBSで5分間ずつ3回の洗浄後、これに50μlのパーオキシダーゼ標識デキストラン結合抗ウサギイムノグロブリン・ヤギポリクローナル抗体(DAKO)を滴下して、室温にて30分間三次抗体反応を行った。これを2%BSA/PBSにて5分間ずつ3回の洗浄したのち、50μlのDAB・H2O2発色液を加え、室温にて5分反応させて発色した。その後10分間水洗したのち、ヘマトキシリンによる核染後,脱水・透徹し、マリノールにて封入し、鏡検した。
7.CEA, TRAIL-R2についてのスクリーニング
PBSにて0.1mg/mlの濃度に調製したCEA(Lee Biosolutions)、TRAIL-R2/Fc chimera(Zenezyme) 0.1mlをF8 maxisorp looseに感作し、室温にて通夜静置し、液を捨て、2% skimmilk/PBSを入れ、室温にて2時間振とう、液を捨て、スクリーニングで得たファージ1x106を室温にて2時間反応、0.1% Tween/PBSにて20回洗浄したのち、PBSにて5回洗浄、0.1mlの50mM Glycine pH2.5にてファージを溶出し、これを1M Tris-HCl pH9.0にて中和、1mlの大腸菌DH12Sに感染させ、37℃にて1時間培養、LBGA寒天培地に蒔き、30℃にて通夜培養、大腸菌コロニーを得た。これから培養上清を得、DNAを調製して塩基配列を読み取った。
抗原に対するELISA
PBSにて0.1mg/mlの濃度に調製したCEA(Lee Biosolutions)、TRAIL-R2/Fc chimera(Zenezyme) 0.1mlをF8 maxisorp looseに感作し、室温にて通夜静置し、液を捨て、5% BSA/PBS 0.2mlを入れ37℃ 2時間静置、液を捨て、大腸菌培養上清0.1mlを加え37℃ 2時間静置、PBSにて洗浄し、6μg/ml PBS-0.05% Tween20濃度のrabbit anti cp3 IgGを0.1ml加え37℃ 1時間静置、PBSにて洗浄し、PBS-0.05% Tween20にて2000倍希釈したgoat anti rabbit IgG(MBL) 0.1mlを加え37℃ 1時間静置、PBSにて洗浄し、OPD発色を行い、SPECTRAmax 340PC(Molecular Devices)にて492nmの吸光度を測定した。
8.タンパクの可溶化、マグネットビーズへの結合、回収実験、スクリーニング
8-1 培養細胞からの膜タンパクの可溶化は以下のようにして行った。
細胞2x108をcollagenaseI/cell dissociation bufferにて培養デイッシュからはがして浮遊させ、それを氷冷のPBSで洗浄、3mlの0.25M sucroseに懸濁したのち、ダウンスホモジナイザーによってホモジナイズした。これを等量の2.5M sucroseと混ぜ、3mlずつ2本の日立13PAチューブに入れた。これにそれぞれ4mlの1.25M sucroseと3mlの0.25M sucroseを重層し、スイングローターRPS40T(日立)にて4℃24000rpm 16時間遠心し、0.25M sucroseと1.25M sucroseの間にある膜タンパクの層をぬきとった。これを10倍量のPBSで希釈し、4℃にて12000rpm 20分遠心して沈さをとり、これを界面活性剤混合液(NP-40(OIERCE), Triton X-100(PIERCE), n-Dodecyl β-D-maltoside(DOJINDO), n-Octyl β-D-glucoside(SIGMA), n-Octyl β-D-maltopyranoside(CALBIOCHEM), n-Decyl β-D-maltoside(,CALBIOCHEM), Deoxycholic acid(SIGMA)それぞれ0.25%)にて4℃ 6時間ゆっくりと混ぜながら懸濁したのち、マイクロ遠心機にて4℃ 15000rpm 20分遠心して上清を回収した。これが膜タンパクの可溶性分画である。
8-2 手術組織からの膜タンパク抽出は以下のようにして行った。
肝癌および肝正常組織の重量を測定し、約4gを使用した。これに20mlの0.25M sucroseを混ぜ、ポッター型ホモジナイザーで懸濁したのち、ダウンスホモジナイザーにてホモジナイズ、等量の2.5M sucroseを混ぜて3mlずつ13PAチューブに分注した。以降の操作は培養細胞の方法と同じである。
8-3 抽出した膜タンパクの定量
抽出した膜タンパク10μlをPIERCEのMICRO BCA 90μlと混ぜ、室温にて10分間反応させた。対照としては、BSAの希釈系列を作り、MICRO BCAと反応させたものを作製し、これをもとにした検量線を作製した。サンプルの吸光度に対応する検量線の数値が膜タンパクのタンパク濃度である。
8-4 膜タンパクのマグネットビーズへの結合
抽出した膜タンパク0.5mg相当とPBSで洗浄したダイナビーズを混ぜ、それに終濃度0.3Mになるよう硫酸アンモニウムを加え、PBSにて全体量を1mlにした。これを24℃にて24時間ゆっくり回転させて反応させたのち、マグネットでビーズを捕らえ、反応液と分離した。マグネットビーズは5%BSA, 0.1%アザイドを加えて洗浄し、同液にて懸濁して4℃保存した。
24時間反応した後の反応液の一部をとってMICRO BCAと反応させ、これをBSAを用いた検量線に対応させ、反応しなかった膜タンパク量を計算した。使用したタンパク量からこの量を引き算したものがビーズに結合した膜タンパク量である。
8-5 膜タンパクを用いたファージ回収実験、膜タンパク共存実験、抗体共存実験
膜タンパク量10μgに相当するマグネットビーズとファージ1x108を界面活性剤混合液と混ぜて全量を200μlとし、4℃にて4時間反応させたのち、LysisT buffer(50mM Tris-HCl pH7.5, 5mM EDTA, 1% NP40, 0.5% Triton X-100, complete)にて4回洗浄、それを1mlのDH12Sと混ぜて37℃ 1時間培養、アンピシリン寒天プレートにまいてコロニーを形成させ、その数を数えた。
膜タンパク共存実験においては、膜タンパク400μgを入れて膜タンパク結合ビーズとファージとの反応を行った。
8-6 正常膜タンパクを共存させて行った肝癌膜タンパクに対するスクリーニング
肝癌膜タンパク20μg相当のマグネットビーズと、正常膜タンパク200μg相当、ヒト抗体ファージライブラリー1x1013を使用し、界面活性剤混合液にて全量を1mlにし、4℃にて4時間反応を行い、マグネットでビーズをトラップして液をLysisT bufferに交換、懸濁後マグネットでビーズをトラップして同液を交換、この操作をあと2回行ったのち、PBSで洗浄、5mlのDH12Sに感染させた。以降は細胞スクリーニングの操作と同じ。4回のスクリーニングを行ったのち、抗体クローンを単離、解析を行った。
9.抗体共存による同一クローンの排除
SKOv-3をスクリーニングして得られた抗体クローン3またはpAALSCのファージ1x107と卵巣がん細胞SKOv-3 2x106、クローン3抗体0, 0.2μg, 20μgをまぜ、1%BSA/MEMで懸濁し、全量を0.3mlにし、4℃にて4時間ゆっくり回転させて反応させた。これを0.5mlの低極性溶媒溶液上に重層してマイクロ遠心機にて4℃にて3000rpm 2分遠心し、細胞を沈降させた。液を捨て、細胞を0.3mlの1%BSA/MEMで懸濁、0.5mlの低極性溶媒に重層して同様に遠心した。再度同じ操作を行ったのち、液を捨て、細胞を0.2mlのPBSにて懸濁、液体窒素にて凍結させたのち、37℃にて融解させ、これを1mlのDH12Sに感染させて37℃1時間培養、アンピシリン寒天培地にまいて大腸菌コロニーを形成させ、回収されたファージ数を計算した。
クローン3 pp型抗体は以下のようにして精製した。SKOv-3細胞のスクリーニングによって得られたクローン3抗体クローンはcp3融合型である。このDNAを制限酵素SalIで消化し、自己再結合させることによって抗体のFvCLとProteinA- ProteinAとが融合した(プロテインA融合型)FvCLPP型に変換することができる。それを用いて大腸菌DH12Sを形質転換し、1lの2XYTAI培地にて30℃18時間培養、4℃8000rpm 10分間の遠心を行って培養上清を回収、硫酸アンモニウム291gをゆっくりと混ぜたのち、4℃8000rpm 10分間の遠心を行って沈さを回収、これを20mlのPBSにて懸濁した。懸濁液は4℃12000rpm 20分間遠心して上清を回収、PBSにて平衡化した1mlのIgGセファロース(ファルマシア)と4℃にて2時間反応させた。セファロースをカラムに充填し、20mlのPBST(0.1% Tween20/PBS)、50mlのPBSにて洗浄した。これを10mlの50mMグリシンpH2.3にて溶出、3M TrisにてpHを7.0に合わせたのち、PBSにて透析、吸光度計にて280nmの吸光度を測定し、プロテインA融合型抗体タンパク濃度を計算した。タンパクの濃縮が必要な場合はアミコンウルトラ(ミリポア)にて4℃ 6000rpmで回転させ、濃縮した。
pAALSC3-D1.3HL(以後pAALSCとする)抗体遺伝子は伊庭善孝博士より提供されたものである(GENE 194(1997)35-46)(図5−1〜図5−2/塩基配列を配列番号:65、アミノ酸配列を配列番号:66に示す)。PP融合型抗体は、上記と同じ操作により作製した。
クローン3及びpAALSCのファージの調整は以下のようにして行った。cp3融合型の抗体遺伝子を持ったプラスミドで形質転換された大腸菌を2mlの2xYTGAにて30℃で通夜前培養し、そのうち1mlを20mlの2xYTAに混ぜて37℃1.5時間培養、KO7 1x1010を感染させ、37℃にて1時間さらに培養、これに80mlの2xYTGAKを入れて、30℃にて16時間培養、4℃にて10000rpm 10分間遠心を行って上清をとり、これに20mlのPEG溶液を入れて室温で30分かき混ぜた。室温にて10000rpm 10分間遠心を行って沈さをとり、これを2mlの0.1%NaN3/PBSにて懸濁した。ファージの力価の測定は上記で述べたとおりである。
10.抗体集団についての抗体タンパク調整
肝細胞腫HepG2のスクリーニングを行い、240個のクローンをピックアップした。それらについてcp3型抗体の発現を調べたところ、162個が発現陽性であることがわかったので、これらのDNAを混合し、制限酵素SalIにて消化、自己再結合させてpp formに変換し、それを用いてDH12Sを形質転換し、500mlの2xYTGAにて30℃通夜培養した。この培養250mlを5lの2xYTAに混ぜて1.5時間培養したのち、2.5mlの1M IPTGを加えて30℃16時間培養、4℃800rpm 10分間遠心して上清をとり、これに1528gの硫酸アンモニウムをゆっくり加えて室温にて1時間かき混ぜたのち、4℃800rpm 10分間遠心して沈さをとり、これを100mlのPBSにて懸濁した。それについて、4℃12000rpm 20分間遠心して上清をとり、それを3mlのIgGセファロース(ファルマシア)と4℃にて2時間反応させた。セファロースをカラムに充填し、50mlのPBST(0.1% Tween20/PBS)、100mlのPBSにて洗浄した。これを10mlの50mMグリシンpH2.3にて溶出、3M TrisにてpHを7.0に合わせたのち、PBSにて透析、アミコンウルトラ(ミリポア)にて4℃6000rpm回転させ、濃縮した。吸光度計にて280nmの吸光度を測定し、タンパク濃度を計算した。
11.抗体集団共存による集団的排除
まずHepG2細胞4x107と上記の抗体集団2mgを混ぜたのち、ヒト抗体ライブラリー2x1013を入れ、1%BSA/MEMで全体の容量を1.6mlにし、4℃にて4時間ゆっくりと回転させて反応させた。以後の操作は上記5.と同じ。2ndと3rdのスクリーニング時にも抗体集団1mgを共存反応させた。
12.免疫沈降、マススペクトル解析
12-1 クローンのAvi, PPAvi formへの変換
ヒト抗体ファージライブラリー由来の抗体クローンはSfi-AscでDNA断片を切り出し、それをBirA-Aviベクター、BirA-PPAviベクターに組替えることができる。その結果、抗体PPAvi融合型もしくは抗体Avi融合型の分子が形成され、これはベクター上のBirA遺伝子によって発現される分泌型ビオチンリガーゼ分子によってビオチン化される。従ってビオチン化した抗体分子が形成される。
12-2 pAviBirAベクター、pPPAviBirAベクターの構築
まず、ラクダ抗体クローンpscFvCA-cam167(図6−1〜図6−2/塩基配列を配列番号:67、アミノ酸配列を配列番号:68に示す)を鋳型にしてReverseプライマーと658プライマーにてPCRを行い、HindIIIとEcoRIにて消化してDNA断片を作製した。これをHindIIIとEcoRIにて消化したpBluscriptKS+に組み込んだプラスミドpBlue-cam167を作製した。次にINVITROGENより購入したAVB99を鋳型にしてプライマー677とプライマー678にてPCRを行ったのちさらにプライマー676とプライマー678にてPCRを行い、これを上記のpBlue-cam167のKpnIとHindIIIサイトに組み込み、プラスミドpBlueBirA-cam167を得た。
一方pTZ19RをHindIIIとBamHIで消化したのち、Klenow enzymeを作用させて平滑末端を作製し、これを自己結合反応させてプラスミドpTZdelを作製した。このプラスミドpTZdelをKpnIとEcoRIで消化してベクターとし、これにpBlueBirA-cam167をKpnIとEcoRIで消化して得たDNA断片を組み込んでAvi-tag融合抗体を発現するpBirAAvi-cam167を作製した。抗体15-3についてSfiIとAscIにて消化してDNA断片を切り出し、これをSfiIとAscIにて消化したpAviBirA-cam167(図7−1〜図7−2/塩基配列を配列番号:69、アミノ酸配列を配列番号:70に示す)に組替えたものがpBirAAvi-15003である。
15-3 pp型プラスミドを鋳型にReverseプライマーとプライマー697でPCRを行い、それをHindIIIとEcoRIで消化してpBirAAvi-15-3のHindIIIとEcoRIサイトに組み込んだものがプラスミドpPPAviBirA-15003である。pPPAviBirA-15003をSfiI とAscIとで切断してベクターとし、これにpAviBirA-cam167をSfiIとAscIとで切断して作製したインサートを組み込んでpPPAviBirA-cam167を得た(図8−1〜図8−2/塩基配列を配列番号:71、アミノ酸配列を配列番号:72に示す)。
12-3 Avi-tag formの抗体を用いた免疫沈降反応
ビオチン化した抗体分子はストレプトアビジンの結合したセファロースに強固にトラップされる。約50μg相当のサンプル抗体分子を結合させたストレプトアビジン結合セファロースと培養細胞の膜タンパク100μg相当を混合したのち、界面活性剤混合液を足して300μlにした反応液にて4℃ 4時間反応し、lysisTにて4回洗浄したのち、acetate-lysisT(50mM acetate pH2.3とlysisTとを3:1の割合で混合したもの)40μlにて溶出したのち3M Trisにて中和して、それを7.5% SDS-PAGEにて泳動し、銀染色を行った。これを細胞膜タンパクなしで行ったものと比較して、抗原の位置を決定し、それを切り出した。
免疫沈降の反応は過剰量の界面活性剤の存在によって阻害されることもありうる。そこで発明者らは界面活性剤を希釈した条件での免疫沈降反応も検討した。膜タンパク溶液をPBSで希釈したのち、限外ろ過によって濃縮し、膜タンパクのロスが起きるかどうかをみた。実験した結果、40倍希釈でもロスは起きなかった。そこで、これを使用して界面活性剤濃度を1/40に下げた条件での免疫沈降を行いSDS-PAGE泳動、銀染MSキット(WAKO)によって調べた。
12-4 シアノジェンブロマイド活性化セファロース結合抗体を用いた免疫沈降反応
9.に示した方法により精製したPP融合型抗体をシアノジェンブロマイド活性化セファロースに結合させ、それを用いて12-3の方法による免疫沈降反応を行った。シアノジェンブロマイド活性化セファロースの作製およびそれへのPP融合型抗体の結合は以下のようにして行った。まずPP融合型抗体をカップリングバッファー(0.1M NaHCO3-NaOH pH9)にて4℃通夜透析した。シアノジェンブロマイド活性化セファロース粉末(Amersham Biosciences)0.2gを1mM HClに懸濁したのち、アスピレーターで吸引しながら、液をカップリングバッファーに置換し、セファロース上のシアノジェンブロマイド基を活性化した。これに透析を終えたPP融合型抗体と混ぜ、室温にて4時間ゆっくり回転しながら攪拌した。その後、これをカラムに充填し、カップリングバッファーにて洗浄、結合しなかったPP融合型抗体を除去した。液を0.2M Glycine-NaOH(pH8)で置換し、室温にて2時間放置、反応しなかったシアノジェンブロマイド基を不活化した。液を0.2M Glycine-NaOH(pH3)で置換、5分間室温放置したのち、液をPBSに置換した。
12-5 プロテアーゼ処理による細胞表面タンパクの切り出し、それを用いた免疫沈降
過剰な界面活性剤存在下では抗原抗体反応が阻害される可能性がある。そこで、膜タンパクをプロテアーゼで切り出し、得られるタンパク成分を用いての免疫沈降が可能かどうかを調べる実験を行った。
まず細胞1x107を300μlのSTN(150mM Tris-HCl pH7.4, 1.25% NP-40, 150mM NaCl)で懸濁し、それに終濃度が67ng/ml, 1000ng/ml, 33μg/mlになるようトリプシン(シグマ)を加え、反応温度25℃にて反応時間を30分、4時間とした。その条件にて反応したのち、氷上に置いて反応を止め、complete(最終量1 tablet/50ml)とPMSF(最終量20mM)を加えた。チューブより5μlをとり、β-mercapt Ethanolの入ったサンプルバッファー3μlを加えて5分煮沸したのち、10% SDS-PAGE、銀染MSキット(WAKO)にて得られるタンパクがどうなっているのかを検討した。その結果、トリプシン濃度67ng/ml、反応時間30分にて反応したものにおいて、十分な膜タンパクの切り出しが起こっていることが観察された。
そこで、これを用いて免疫沈降反応を行った。使用した抗体とストレプトアビジンビーズは上記3.と同じ。それにトリプシン処理膜成分10μlを混ぜ、PBSを加えて終量を300μlとし、室温にて4時間反応させ、それをPBSにて4回洗浄し、500μlの50mM Glycine pH2.5て溶出、1 Tris-HCl pH9.0にて中和したのち、アミコンウルトラ(ミリポア)による濃縮を行い、β-mercapt Ethanolの入ったサンプルバッファーを加えて5分煮沸したのち、10% SDS-PAGE、銀染MSキット(WAKO)にて得られるタンパクを検討した。
12-6 切り出されたバンドについてのマススペクトル解析
12-6-1 ゲル内トリプシン消化
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を常法に従い行い、クマシーブリリアントブルーで染色することで得られたバンドを切り出した。これを200mM重炭酸アンモニウム-50%アセトニトリル溶液に浸し、37℃で45分間振盪後、溶液を廃棄して、同じ操作を2回繰り返すことでクマシーブリリアントブルーを除いた。このゲルを減圧乾燥し、それに40mM重炭酸アンモニウム(pH8.1)-10%アセトニトリルに溶かしたトリプシン(20μg/ml)をゲルスライスの単位面積(mm2)あたり4μl加えて、室温で1時間置いて充分に浸潤させた。これに先に加えた量の2.5倍量のトリプシン溶液を加えて、37℃で18時間静置した。これをポアサイズが0.22μmのフィルター付きチューブで濾過して、トリプシンにより抗原が切断されて生じたペプチドを回収した。
12-6-2 質量分析による抗原の同定
ゲル内トリプシン消化により得られた試料を、エレクトロスプレーイオン化方式イオントラップ四重極型質量分析装置につないだHPLCにかけた。HPLCの逆相クロマトグラフィーカラムから、0.1%TFAを含む0%から80%のアセトニトリルの直線濃度勾配変化により、疎水性の違いで順次溶出される各ペプチドをエレクトロスプレー法でイオン化し、各ペプチドの質量を分析した。
同時に、それらのイオンの飛行経路の途中に置いたヘリウム原子との衝突により生じる各ペプチドの限定分解産物の質量を分析した。限定分解によりひとつのアミノ酸がはずれると、はずれたアミノ酸の質量分だけ小さいイオンが観測されるので、その質量差によりはずれたアミノ酸の種類を同定できる。さらにもうひとつアミノ酸がはずれると、はずれたアミノ酸の質量分だけ小さいイオンが観測されるので、その質量差によりはずれたアミノ酸の種類を同様に同定できる。同様の実験データ解析を進めることで、内部アミノ酸配列を決定することができる。得られたアミノ酸内部配列のセットを、公開されているアミノ酸配列データベースを用いて検索することにより、抗原の同定を行った。同定結果は、同定された蛋白質のアミノ酸配列から類推される総質量が、トリプシン分解を行う前の抗原のSDSポリアクリルアミド電気泳動の結果により得られる分子量の実験データと矛盾しないことで、確認された。
13−1.低極性溶媒を用いた細胞表面抗原抗体スクリーニング法の効果
本発明で使用している低極性溶媒洗浄方法の効果を確認した。陽性抗体ファージとしてのクローン3、クローン126はSKOv-3細胞に対する抗体ファージであり、陰性抗体ファージとしてのpAALSCは抗HEL(hen egg lysozyme)抗体ファージである。SKOv-3細胞と各クローンのファージを1%BSA-0.1%NaN3/MEM中で混合後、4℃にて4時間反応、有機溶液(dibutyl phtalate: cyclohexane = 9:1)の上に重層し、マイクロ遠心機にて3000rpmの遠心力を2分間作用させ、細胞をチューブの底に沈降させた。以下同様に上記5-1の記載に準じ混合するファージ数は1x107 phageに固定し、1st、2nd、3rd、4th、5thと低極性溶媒洗浄を繰り返し回収されてくるファージのtiterを表4Aに記載した。
従来の方法(1%BSA-0.1%NaN3/MEM中でそのまま遠心して細胞を沈降、ファージを回収、ファージのtiterを計測(表4B))に比較して回収されるファージが多いことがわかる。3回の洗浄において本法は従来法に比べて約2倍の回収があり、非特異的な回収は同程度に抑制されている。これは低極性溶媒を使用することによって解離反応を起こしている時間を短縮し、また低極性溶媒の存在によって抗原抗体反応における特異的な水素結合を増強させることによって行われたものと考えられる。この作用により、本発明の方法は取得される抗体の網羅性を上昇させたことが示唆された。
13−2.低極性溶媒を使用したときの抗体ファージクローンの回収率の検討
pAALSCはニワトリリゾチームに対する抗体で、SKOv-3細胞に対して反応しない。一方 clone3はSKOv-3細胞に対するスクリーニングによって単離された抗体クローンでSKOv-3細胞に反応する。
pAALSC とclone3の2種類のphage 1x107 とSKOv-3細胞1x107 を1%BSA 0.05%NaN3 MEMでサスペンドして全体を0.4mlとしたものを4時間4℃にてゆっくり回転させて反応させた。この懸濁液を、0.6mlの以下の溶液(1)、(2)、または(3)の上に重層し、3000回転にて2分間遠心した。
(1)1%BSA-MEM
(2)Diphenyl Ether: 1.1.1-Trichloroethane: Hexane=44:27:33
(3)Isopropyl Ether: 1.1.1-Trichloroethane: Hexane=20:50:30 、液を吸い取った後、回収された細胞を再び0.3mlの1%BSA-MEMに懸濁して(1)、(2)、または(3)液0.6mlの上に重層して3000回転にて2分間遠心した。液を吸い取ったのち、もう一度0.3mlの1%BSA-MEMに懸濁して(1)、(2)、または(3)液0.6mlの上に重層して3000回転にて2分間遠心し、液を吸い取った。
チューブ内部の液ををキムワイプでぬぐい、蓋を開けて 37℃にて30分放置、0.2mlのPBSで懸濁し、液体窒素にて凍結、37℃にて融解した。これを37℃にて培養したDH12S 2mlに感染させ、37℃にて1時間培養、一部をアンピシリンプレートに蒔いて37℃一晩培養、コロニー数を数えた。(1)、(2)、または(3)液で洗浄を繰り返したときに回収されたファージの数は、それぞれ以下のとおりであった。
(1)液 (2)液 (3)液
pAALSCの回収 308 176 198
clone3の回収 8.36x105 1.13x106 1.16x106
(x2714) (x6420) (x5858)
低極性溶媒(2)あるいは(3)においては、ネガテイブコントロール(pAALSC)の回収が減少し、ポジテイブコントロールの回収が増加した。結果として水性媒体(1)で洗浄した場合に比較して2倍以上の洗浄効果を得た。
13−3.2相を形成する水性溶媒を使用したときの抗体ファージクローンの回収率の検討
pAALSC とclone3の2種類のphage 1x107 とSKOv-3細胞1x107 を1%BSA 0.05%NaN3 MEMでサスペンドして全体を0.4mlとしたものを4時間4℃にてゆっくり回転させて反応させた。0.6mlの以下の溶液(1)または(2)の上に反応後のファージ懸濁液を重層し、3000回転にて2分間遠心した。
(1)1%BSA-MEM
(2)PBSで4倍希釈した Ficoll-Paque(Phalmacia Biotech)
遠心後、液を吸い取ったのち、回収された細胞を再び0.3mlの1%BSA-MEMに懸濁して(1)または(2)液0.6mlの上に重層して3000回転にて 2分間遠心した。液を吸い取ったのち、もう一度0.3mlの1%BSA-MEMに懸濁して(1)または(2)液0.6mlの上に 重層して3000回転にて2分間遠心し、液を吸い取った。
チューブ内部の液をキムワイプでぬぐい、0.2mlのPBSで懸濁し、液体窒素にて凍結、37℃にて融解した。これを 37℃にて培養したDH12S 1mlに感染させ、37℃にて1時間培養、一部をアンピシリン プレートに蒔いて37℃一晩培養、コロニー数を数えた。 (1)液あるいは(2)液で洗浄を繰り返したときに回収されたファージの数は、以下のとおりであった。
(1)液 (2)液
pAALSCの回収 1044 1044
clone3の回収 2.17x106 1.51x106
(x2078) (x1443)
pAALSCはニワトリリゾチームに結合する抗体で、SKOv-3細胞には反応しない。したがって洗浄によって除去されるべき抗体である。しかし上記のようにかなりの数のファージが回収されている。この結果は、2相を形成する水性溶媒では、洗浄効果が認められなかったことを示している。表4で確認された洗浄効果は、低極性溶媒の効果であることが裏付けられた。
14.卵巣癌細胞株SKOv-3細胞表面抗原結合抗体のスクリーニング
−組織特異性抗体と抗HER2抗体の同定−
本低極性溶媒洗浄方法を用いてヒト抗体ファージライブラリーを用い実施した卵巣癌細胞株SKOv-3のスクリーニングの経過を表5に示す。5-1に記載のとおり、1st、2nd、3rdとスクリーニングを繰り返し3回のスクリーニングの結果回収率が上がってきたので、SKOv-3細胞に対する抗体の濃縮が行われたと判断した。そこで、3rdスクリーニングより得た大腸菌培養をLBGA寒天培地にまき、30℃にて通夜培養して大腸菌のコロニーを得た。これより528個のクローンを拾い、培養上清とDNAを調製し、まずcp3発現ELISAとSKOv-3細胞に対する細胞ELISAを行い、これらの結果が陽性と判断されたものについて、塩基配列の解析を行った。その結果は表6に示すとおり。528個のクローンを調べた結果240種類の細胞ELISA陽性の抗体クローンが得られ、98種であったことから網羅的抗体取得ができていることがわかった。
〔表6〕
----------------------------
重複クローン数 種類数
----------------------------
41 1(clone 1)
36 1(clone 3)
27 1(clone 11)
8 1
7 1
6 2
4 1
3 2(clone 126)
2 11
1 77
----------------------------
解析:528
陽性:240
種類数:98
SKOv-3から得た122種類のクローンについて、組織特異性を調べる目的でSKOv-3とHeLaに対する細胞ELISAを行い、両者で差のあるものをピックアップした(図9)。3つのクローンに差が見られたので、それらの上清をとり、それをウサギ抗cp3抗体結合セファロースと反応させて洗浄したのち、SKOv-3の膜タンパクを加えて免疫沈降し、SDS-PAGE後、ウサギ抗HER2抗体を反応させるwestern blottingを行った。その結果126がHER2を免疫沈降させることが判明した(図10)。他の2クローンについてはHER2のバンドが検出されなかった。
15.胃癌細胞株MKN-45の細胞表面抗原抗体スクリーニング及び抗CEA抗体の同定
本低極性溶媒洗浄方法を用いてヒト抗体ファージライブラリーを用い胃癌細胞株MKN-45について行ったスクリーニングの経過を(表4B)に示す。5-1に記載のとおり、1st、2nd、3rdとスクリーニングを繰り返したスクリーニングより何種類の抗CEA抗体が得られるか調べる目的で、抗原を使用したファージ回収実験記載の方法に従い、maxisorp loose(NUNC)に固相化したCEAに対して3rdファージを用いたファージ回収実験を行った。ELISA陽性のもの48個を解析した結果、抗CEA抗体は6種類が存在していることがわかった(図11)。
16.肝細胞癌株HepG2の細胞表面抗原抗体スクリーニング及び抗TRAIL-R2抗体の同定
本低極性溶媒洗浄方法を用いてヒト抗体ファージライブラリーを用い肝細胞癌HepG2に対して行ったスクリーニングの経過を表5Cに示す。5-1に記載のとおり1st、2nd、3rdとスクリーニングを繰り返したのち3rdスクリーニングより240個のクローンをピックアップし、SKOv-3と同様の解析を行った。細胞ELISA、cp3発現ELISAともに陽性のクローンは162個で、それらは83種類に分類された(表7)。これらの抗体クローンについて6(B)の記載どおり組織染色を行った結果、035-112が癌細胞の細胞質特異的認識をしていることが示された(図12)。
〔表7〕
----------------------------
重複クローン数 種類数
----------------------------
20 1
17 1
9 1
5 1
4 1
3 5
2 16
1 56
----------------------------
解析:240
陽性:162
種類数:83 HepG2スクリーニングで何種類の抗TRAIL-R2抗体が得られるか調べる目的で、抗原を使用したファージ回収実験記載の方法に従い、maxisorp loose(NUNC)に固相化したTRAIL-R2に対して3rdファージを用いたファージ回収実験を行った。ELISA陽性のもの20個を解析した結果、抗TRAIL-R2抗体は3種類が存在していることがわかった(図13 Hep2,5,6クローン)。
17.肝癌細胞株Nuk-1の細胞表面抗原抗体スクリーニング
本低極性溶媒洗浄方法を用いてヒト抗体ファージライブラリーを用いNuk-1(C型肝炎に感染した成人由来の肝癌細胞株)に対して5-1に記載のとおり細胞表面抗原抗体スクリーニングを行った結果得た抗体の種類数を表8に示す。由来の異なる肝癌細胞を用いると、得られる抗体の種類が大きく異なることがわかった。HepG2は胎児性肝細胞癌由来の細胞株であり、由来の異なる肝癌細胞を用いるとその表面抗原の組成が大きく異なることが原因と考えられる。
〔表8〕
----------------------------
重複クローン数 種類数
----------------------------
39 1
15 1
9 1
7 1
3 1
2 8
1 45(1)
----------------------------
解析:144
陽性:135
種類数:58(1)
( )はHepG2共存抗体同一
18.肝癌組織より単離した細胞を用いた細胞表面抗原抗体抗体スクリーニングと抗TRAIL-R2抗体の同定
本低極性溶媒洗浄方法を用いてヒト抗体ファージライブラリーを用い肝癌組織より単離した細胞に対して5-2に記載のとおり、行ったスクリーニングの経過を表9に示す。この細胞はファージとの反応の時点で破裂しやすいので、反応液には終濃度5%になるようスキムミルクを加えた。これについては5回のスクリーニングで回収率が上がったので5thスクリーニングより480個のクローンをピックアップし、SKOv-3と同様の解析を行った。細胞ELISA、cp3発現ELISAともに陽性のクローンは87個で、それらは68種類に分類された(表10)。これらの抗体クローンについて6(B)に示した方法に従い、癌部と非癌部についての組織染色を行った結果、3172-120は癌組織特異的な染色を行う抗体クローンであることが示された(図14)。
〔表10〕
----------------------------
重複クローン数 種類数
----------------------------
59 1(1)
6 1
5 1
3 5
2 5
1 55(1)
----------------------------
解析:480
陽性:150
種類数:68(2)
( )はHepG2共存抗体同一
肝癌組織のスクリーニングによって得た5thファージを用いてTRAIL-R2に対するファージ回収実験を行い、16個のクローンをピックアップしたところ、2種類の抗TRAIL-R2抗体クローンが得られた(図13 tumor43,53クローン)が、そのうちtumor53クローンはHepG2に対する抗原を使用したファージ回収実験によって得られたHep5クローンと一致していた(表10)。このことはHepG2等の癌細胞株をスクリーニングして得られる抗体クローンのレパートリーが実際の癌をスクリーニングして得られる抗体クローンのレパートリーと重なることを意味しており、癌を認識する抗体クローンを細胞株スクリーニングから得られることを示唆している。
19.取得した抗体クローンによるマスキング効果
クローン3抗体は14.によって単離された細胞表面抗原に対する抗体である。9.に記載のとおりクローン3抗体(クローンプロテインA融合型)を共存させた状態でクローンファージとSKOv-3細胞とを反応させ、ファージを回収すると、クローン抗体を共存させなかった場合に比べ、ファージ回収が大きく減少した(表11)。それに対してpAALSC抗体(抗ニワトリリゾチーム抗体、SKOv-3細胞に結合しないことを確認済み)を共存させたときにはクローンファージの回収は変化しなかった。SKOv-3細胞に対してpAALSCファージを用いて行ったファージ回収は低く、クローン抗体を共存させてもほぼ同様であった。従って抗体共存によって同一クローン抗体ファージ回収が特異的に阻害されることが示された。すなわち、取得を望まない抗体は、当該抗体とは異なる結合特異性を有する抗体の取得のための、抗原マスキング剤として有用であることが確認された。
20.取得した抗体クローンによる抗原マスキング効果2
SKOv-3に対するスクリーニングでは3種類のもの(clone1,clone3、clone11)については多数の同一抗体がとれてきており(表6)、取得クローンに偏りがあることがわかる。そこで、9.記載に準じてこの3種類の抗体クローンそれぞれについて、SalIにて消化し自己再結合を行わせてプロテインA融合型の抗体分子を分泌させ、これを精製し、それぞれ100μgずつを加えてSKOv-3に対するスクリーニングを行った。3rdスクリーニングより48個のクローンを単離して、上記の手順に従い、解析した結果、45個が陽性で、それらは37種類に分類されたが、このなかには上記3種類のクローンは含まれていなかった。この37種類のうち5種類は最初のスクリーニングで得たクローンと同一であった。従って共存させた抗体クローンは選択的に除去されることが示された。すなわち、先に取得された抗体は、より多様な抗体の取得のための、抗原マスキング剤として有用であることが確認された。
21.多種類の抗体集団クローンによる抗原マスキング効果
抗体クローンによるマスキングを多種類の抗体集団によって行うことができる。
16で取得したHepG2のスクリーニングより得られた162個の陽性クローンのDNAを混ぜたのち、これを9.記載に準じてプロテインA融合型に変換してプロテインA融合型抗体として発現させ、IgGセファロースカラムで精製し、約5mgのプロテインA融合型抗体を得た。このうち1mgを共存させて再度16と同様にHepG2に対するスクリーニングを行い、3rdスクリーニングより得たクローンを解析したところ、16で取得したクローンとは96種類中1種類(ELISA陽性の128クローン中1個)が一致したのみで、他は違うクローンだった。
抗体を共存させなかったスクリーニングでは44種類中8種類(ELISA陽性62クローン中21個)一致するクローンが得られているので、抗体共存はたいへん効果的だったことがわかる(表12)。従って一度とれたクローンを共存させることによって、その後とれてくるクローンの網羅性を高めることが可能であることが示された。すなわち、先に取得された抗体は、より多様な抗体の取得のための、抗原マスキング剤として有用であることが確認された。またその作用が、複数種類の抗体を混合した場合にも維持できることが裏付けられた。
〔表12〕
抗体共存スクリーニング
----------------------------
重複クローン数 種類数
----------------------------
7 1
5 1
4 3
3 2
2 9
1 80(1)
----------------------------
解析:288
陽性:128
種類数:96(1)
(HepG2同一):(1)
( )はHepG2共存抗体同一

抗体非共存スクリーニング
----------------------------
重複クローン数 種類数
----------------------------
8 1(1)
4 1(1)
3 1(1)
2 6(1)
1 35(4)
----------------------------
解析:192
陽性:62
種類数:44(8)
(HepG2同一):(21)
( )はHepG2共存抗体同一
22.膜タンパクの可溶化、ビーズへの結合
8-1〜8-4に記載のとおりSKOv-3、肝癌組織について、膜タンパクを可溶化、それをダイナビーズに結合させたところ、SKOv-3では1mgを反応させて300μgが、肝癌組織については1mgを反応させて350μgがダイナビーズに結合した。
23.膜タンパク固定化ビーズを用いたスクリーニング系評価と抗原共存によるマスキング効果
卵巣がんSKOv-3について、そのスクリーニングで単離されたクローン126を用いて回収実験を行った。膜タンパク10μg相当のダイナビーズを126ファージ1x108cfu(cfu; colony forming unit)とを反応させたところ、8.7x104cfuが回収された。一方SKOv-3と反応しない同数のpAALSCファージを用いて行った実験では、回収がわずか11cfuであった。したがって、膜タンパクを使用してのスクリーニングは十分可能であると判断した。前者の実験においてSKOv-3由来の膜タンパク400μg相当を共存させると回収は2.2x103cfu(約1/40)になったが、HeLa由来の膜タンパク400μg相当を共存させた場合の回収は5.0x104 cfuで、ほとんど変わらなかった。これらのことはSKOv-3由来の126ファージによって認識される抗原が水溶液中に大量に存在することによって126ファージのビーズによる回収を妨げたためと思われる。すなわち、取得を望まない抗体が認識する抗原は、目的とする抗体を取得するための抗体マスキング剤として有用であることが確認された。
24.膜タンパク固定化ビーズを用いた抗体スクリーニングと単離抗体による組織染色
[実施例11]を参考に、8.の記載のとおりに肝癌組織膜タンパクを結合させたダイナビーズを用い、肝正常膜タンパクを共存させたスクリーニングを実施した。その経過は表13に示すとおりである。4thで回収率が上がったので、これよりクローン336個をピックアップして解析し、74種類のクローンを得た。これらについて5-2、6(B)の記載どおり組織染色を行った結果、049-023が癌細胞の細胞質特異的認識をしていること、050-001が癌組織を部分的に認識していることが示された(図15)。
これらの結果に基づいて、クローン049-023および050-001を、肝癌組織に特異的に発現している抗原を認識する抗体として選択し、その塩基配列を決定した。決定された塩基配列と、それによってコードされるアミノ酸配列を以下の配列番号に示した。
塩基配列:
049-023 VH:配列番号:82 049-023 VL:配列番号:84
050-051 VH:配列番号:86 050-051 VL:配列番号:88
アミノ酸配列:
049-023 VH:配列番号:83 049-023 VL:配列番号:85
050-051 VH:配列番号:87 050-051 VL:配列番号:89
25.単離抗体の認識抗原の同定
14によって単離されたクローン抗体を12.に記載のとおりPPAvi型抗体に変換し作製、ストレプトアビジンセファロースに結合させた。これを8.に記載に準じて得たSKOv-3膜タンパク画分と反応させ、12-3〜12-6に記載のとおり免疫沈降させた結果、図16に示すように約130kDaバンドが得られた。このバンドについて12-3〜12-6に記載のとおりバンドを切り出してマススペクトル分析を行い、得られたペプチド配列が図16に示すものである。これらをヒトのゲノムデータベースに対応させた結果、Integrin alpha-3が最も確率の高い抗原遺伝子候補であることが判明した。
26.界面活性剤希釈免疫沈降反応による抗原同定
HepG2細胞株にスクリーニングによって得た035-003抗体を免疫沈降、マススペクトル解析 クローンのAvi, PPAvi formへの変換記載のとおりPPAvi型抗体に変換し作製、HepG2膜タンパクに対してPPAviを反応させた免疫沈降では、28kDa近辺にごく薄いバンドが観察されるのみであったが、膜タンパクと035-003抗体PPAvi form反応時の界面活性剤濃度を1/40に低下させたものでは28kDaに濃いバンドが観察できた(図17レーン8)。
27.膜蛋白トリプシン消化法による抗原の同定
SKOv-3細胞、HepG2細胞をトリプシンで処理して可溶性膜タンパク成分を調製し、それを上記の抗体を結合させたストレプトアビジンセファロースと反応させて免疫沈降させると、それぞれの抗体に特異的なバンドが得られる。SKOv-3細胞トリプシン処理成分とクローン抗体を反応させて免疫沈降したものものについては約130kDaに(図18レーン5)、HepG2細胞トリプシン処理成分と3172-120抗体を反応させて免疫沈降したものについては75kDaに(図18レーン1)、それぞれ特異的なバンドが得られた。3172-120は肝癌に対するスクリーニングによって得られた抗体であるが、その抗原がHepG2にも存在していることが細胞ELISAによる結果からも示された。
28.使用する界面活性剤の決定
膜タンパクについての免疫沈降実験をするためには、膜タンパクを可溶化すること、その溶液中で抗原抗体反応が起こり、抗原を精製できる、ということが条件となる。
まず、1x108の細胞を、培養細胞を使用したスクリーニングに記載の方法に従って回収し、膜画分を調製した。これを20個に分注し、300μlの0.5%界面活性剤, 20mM Tris HCl pH8.0, 140mM NaCl, completeの組成の液で4℃6時間懸濁し、4℃15000rpmにて10分間遠心、上清を次のチューブに移し、そこにclone 3 PPAviを結合セファロースを30μl wet volume入れ、4℃にて6時間ゆっくり振とう後、免疫沈降に記載の方法に従って洗浄し、SDS-PAGEを行って銀染色し、どの界面活性剤で抗原のバンドを検出できるかを調べた。用いた界面活性剤を以下に示す。
Tween20(PIERCE)
Tween80(PIERCE)
TritonX-100(PIERCE)
TritonX-114(PIERCE)
NP-40(PIERCE)
Brij-35(PIERCE)
Brij-58(PIERCE)
n-Octyl β-D-glucoside(SIGMA)
n-Octyl β-D-Thioglucopyranoside (PIERCE)
CHAPS(SIGMA)
CHAPSO(DOJINDO)
n-Dodecyl β-D-maltoside (DOJINDO)
n-Dodecyl β-D-glucopyranoside (CALBIOCHEM)
SDS(WAKO)
Cholic acid(DOJINDO)
Deoxycholic acid(SIGMA)
sucrose monolaurate(DOJINDO)
n-Octyl β-D-maltopyranoside(CALBIOCHEM)
n-Decyl β-D-maltoside(,CALBIOCHEM)
MEGA-10(DOJINDO)
その結果、NP-40(PIERCE), Triton X-100(PIERCE), n-Dodecyl β-D-maltoside(DOJINDO), n-Octyl β-D-glucoside(SIGMA), n-Octyl β-D-maltopyranoside(CALBIOCHEM), n-Decyl β-D-maltoside(CALBIOCHEM), Deoxycholic acid(SIGMA)の6種類について、はっきりとした抗原のバンドが検出された。これらの6種類について、それぞれを0.25%になるよう混ぜ合わせた溶液についても同様にクローン3に対応するバンドが得られた。
29.ADCC(Antibody-Dependent Cell-mediated Cytotoxicity、抗体依存性細胞性細胞傷害)試験
本発明によって単離されたファージ抗体クローンが、抗腫瘍活性を持つかどうかを確認するため、ADCC(Antibody-Dependent Cell-mediated Cytotoxicity、抗体依存性細胞性細胞傷害)試験を行った。試験には以下の材料を用いた。
BT-474:ヒト乳がん由来培養細胞HER2 過剰発現株
ヒトリンパ球:(新鮮末梢血単核球画分)
Herceptin:市販乳がん治療薬(ヒトIgG 抗体)
015-126:抗HER2 抗体(ヒトIgG 抗体、実施例14で得られたクローン126由来のFabをヒトIgGの定常領域と接合し、完全ヒト型にした抗体)
HR1-007:抗ハブ毒素HR1 抗体(ヒトIgG 抗体)
015-126 pIII:抗HER2 抗体(ファージpIII融合scFv型抗体、実施例14で得られたクローン126)
YA14 pIII:抗インフルエンザウィルス抗体(ファージpIII融合scFv型抗体)
抗pIII ウサギ抗体:ファージ抗体のpIII ドメインと特異的に結合するウサギポリクローナル抗体
CTM 培地(Cytotoxic Medium: RPMI-1640培地, 1%ウシ胎児血清, 1% ペニシリン、ストレプトマイシン混合液, 10 mM HEPES)
実験に用いた015-126のVHとVLのアミノ酸配列とそれをコードするDNAの塩基配列を、それぞれ次の配列番号に記載した。
重鎖可変領域(VH) 軽鎖可変領域(VL)
塩基配列 配列番号:102 配列番号:104
アミノ酸配列 配列番号:103 配列番号:105
<ADCC試験>
1)乳がん由来BT-474 細胞をコラゲナーゼ処理により回収した。
2)遠心分離(250 x g、3分間)により細胞をペレットにした。
3)上清を除き、CTM へ懸濁させた。
4)1x105 細胞/ml になるようにCTM へ希釈し、100 μl ずつV 底96 ウェルプレートに分注した(1 ウェルあたり1x104 細胞)。
5)ヒトIgG 抗体またはファージ抗体を1 μg/ml になるように加え、液量を200 μl とし、氷上で30 分間反応させた。
6)遠心分離(350 x g、2分間)により細胞をペレットにした。
7)上清を除き、CTM へ懸濁させ、ただちに新しいU 底96 ウェルプレートに分注した。ファージ抗体を用いた系のみ抗pIII ウサギ抗体を5 μg/ml になるように加えた。
8)1ウェルあたり100 μl のヒトリンパ球懸濁液を加えた(4x106 細胞/ml、1 ウェルあたり4x105 細胞、Effector/Target 比= 40)。
9)遠心分離(60 x g、5 分間)により細胞を底に沈殿させた。
10)37℃、5% CO2、の条件で4 時間反応させた。
11)遠心分離(200 x g、2 分間)により細胞をペレットにした。
12)上清を100 μl 回収し、平底96 ウェルプレートへ移した。
13)乳酸デヒドロゲナーゼ活性測定液100 μl を添加し、室温で30分間反応させた。
14)吸光光度計でOD492nmの吸光度を測定した。OD492の吸光度は、傷害を受けた細胞から遊離してきた乳酸デヒドロゲナーゼの活性に比例し、どれだけの割合の細胞が傷害されたかの指標となる。
HER2過剰発現株BT-474に対して、Herceptinおよび抗HER2抗体015-126はADCC活性が見られた。抗ハブ毒素HR1抗体および抗体を加えない場合は細胞傷害性は見られない(図18)。ファージ抗体と抗pIIIウサギ抗体を組み合わせた実験では、015-126と抗pIIIウサギ抗体の組み合わせではADCC活性が見られ、YA14(抗インフルエンザウィルス抗体)と抗pIIIウサギ抗体、または抗pIIIウサギ抗体のみでは細胞傷害性が見られなかった(図19)。本発明によって、細胞表面抗原を認識する抗体を効率的に取得できることが確認された。また、本発明によって選択された015-126由来のscFvは、HER2を標的とする乳がんの治療に有用な抗体であることが確認された。
30.細胞のガラスビーズ接着培養法
<ガラスビーズ上での細胞の培養(接着状況の確認)>
用いた細胞:ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)
1)ガラスビーズ(Sigma, G-8772, 425-600 microns)をPBSで洗浄し、オートクレーブで滅菌した。滅菌後のガラスビーズを、無菌のコラーゲン溶液(機能性ペプチド研究所製、IFP01111)で37℃で一晩処理し、再度PBSで洗浄した。
2)セルストレーナー(BD Falcon, 352340)の取っ手を切り落とし、35mmのシャーレ(IWAKI, 1000-035)の中に置いた(図20A)。
3)セルストレーナーの下部フィルターを覆うように、乾燥したビーズ、あるいはPBSに浸したビーズを入れた。後者は、約680μl(ビーズ約500個) 相当で、PBSは完全に除去した。
4)5 x 105細胞/ 500μlの細胞懸濁液を静かにかけた。この時セルストレーナーの下に漏れ出さないように注意する。
5)CO2インキュベーターで1時間培養後、HEC-C1培地で満たした。
6)24時間培養後、セルストレーナーの上からPBSを流して洗浄した(図20B)。
7)トリプシンEDTA溶液4.5mlで細胞を剥離し、液を回収、細胞数を計測した。
乾燥ビーズ 8.0 x 104 回収率16%
ウェットビーズ 2.2 x 105 44%
ウェットビーズで培養を行った場合は、380細胞/ビーズ1個の細胞が培養された。細胞液がガラスビーズ上でうまく保持されると吸着率が上がると考えられる、細胞の種類によっては、一部が付着できればその後の培養時間を長くすることで、細胞数を増加させることは可能だと考えられる。また上記実験では、細胞添加後1時間で培養液を加えているが、ビーズ表面が乾燥状態にならなければ、数時間〜一夜おいて加えた方が細胞を保持でき効率が上がると考えられる。
31.有機溶媒遠心法によるファージの回収率
有機溶媒の組成によりファージの回収率が予想以上に振れることがあり、しかもサンプル数が多い場合、即ち長い時間を要している時に回収率の低下が起こったため、有機溶媒がファージに及ぼす影響を調べた。
1)ファージ溶液 5μl をエッペンドルフチューブに取った(約 2 X 106)。
2)有機溶媒 200μl を加えた。
3)転倒混和
4)室温、10分
5)1ml のPBSを加えた。
6)転倒混和
7)遠心 (10,000rpm、30秒間)
8)水層(上層)150μl を新しいチューブに移した。
9)-80℃で凍結(10分以上)
10)37℃で10分保温し融解
11)20μl の溶液を試験管に移し、1ml の大腸菌を加えた。
12)37℃で 1時間培養
13)0.1mlをLBGAプレートにまき、30℃で培養
結果を表14に示す。
〔表14〕
------------------------------------------------------------------
サンプル
1. コントロール:希釈は0.1% BSA/PBSで行い、そのまま大腸菌と感染
2. 0.1% BSA/PBSで凍結
3. PBSで凍結
4. 組成A(フタル酸ジブチル+シクロヘキサン)、凍結
5. 組成B(ジフェニルエーテル+トリクロロエタン+ヘキサン)、凍結
6. 組成C(ジフェニルエーテル)、凍結
7. 組成D(ジフェニルエーテル:ジイソプロピルエーテル=9:1)、凍結
8. 組成E(ジフェニルエーテル:シクロヘキサン=9:1)、凍結
------------------------------------------------------------------
コロニー数 %
1. コントロール 1489 100
2. 0.1% BSA/PBS 793 53.3
3. PBS 513 34.5
4. 組成A 74 5.0
5. ジフェニルエーテル 226 15.2
6. ジフェニルエーテル:ジイソプロピルエーテル 21 1.4
7. ジフェニルエーテル:シクロヘキサン 207 13.9
------------------------------------------------------------------
10分間有機溶媒と混和させると、かなりのファージが失活する。組成Aは5%に対し、組成Cあるいは組成Eは13.9-15.2%であった。
また、細胞からファージを回収する際、PBSを加えて-80度で凍結する処理を行うが、回収率に影響を及ぼしていると考えられた。そこで、塩酸回収と凍結回収によるファージの回収率を比較した。結果を以下に示す。
No.1 HUVEC 1st & Freeze recovery 回収
100倍希釈 570 ==> 570 x 10 x 100 x 10ml = 5700000 = 5.7 x 106
1000倍希釈 62 ==> 62 x 10 x 1000 x 10ml = 6200000 = 6.2 x 106
No.2 HUVEC 1st & HCl recovery 回収
100倍希釈 -
1000倍希釈 453 ==> 453 x 10 x 1000 x 10ml = 45300000 = 4.5 x 107
この結果、Freeze : HCl = 1:7.9 と極端に凍結回収の方が回収率が悪かった。
現在行われているスクリーニングでも、希望する抗体が取得出来ており機能していることは疑う余地はないが、操作の過程で手間取ったり、サンプル数が多いなどで時間がかかってしまうような場合は、ファージを失活させてしまう可能性がある。ジフェニルエーテルの回収率が比較的いいが、単体だと室温の低下で結晶化するなど扱いにくい溶媒のため、シクロヘキサンとの9:1溶液を使用することとした。
32.ガラスビーズ培養と有機溶媒遠心法によるスクリーニング
<スクリーニング1>
以下のファージを使用した。
No.1 HUVEC Library :1X1012ファージ
No.2 HUVEC Library :1X1012ファージ
1%BSA, 0.1% NaN3, 100μg/ml Collagen in MEM alpha medium (reaction medium)
1)セルストレーナーが入っているシャーレから培地を除き、ファージ液を4ml加えた。
2)シーソー式のシェーカーに置き、6時間程度4℃で振とうした。
3)ピペットマンを使用し、シャーレからファージ液を除いた。
4)キムワイプなどを使い、できるだけファージ液を除去した。
5)あらかじめ2059チューブに有機溶媒ミックスを8ml入れておき、そのチューブをさらにブルーキャップチューブに入れた(図21)。
*有機溶媒ミックス ジフェニルエーテル : シクロヘキサン = 9:1
6)2059チューブに合わせて漏斗をセットし、その上でセルストレーナーのメッシュをカッターで切った。
7)ビーズの上からPBSをかけ、ビーズを流し入れた。(ビーズの固まりは、一気にチューブ底に落ちる。)
8)水層ができるだけ少なくなるように、有機溶媒ミックスを上から加えた。
9) 2000rpm, 1分間遠心
10) 水層をピペットマンでできるだけ除いた。水層は上部に数100μl程度の水滴状に存在している。
11) 水層が残らないように、キムワイプでチューブ内を拭いた。(一緒に有機溶媒層を吸ってしまう感じで行い、絶対に水層は残さないようにする。)
12) 静かにチューブを傾け、有機溶媒を捨てた。(ビーズはしっかりパックしていることもあるが、流れそうになることもある。)
13) キムワイプでチューブ内を拭いた。
14) ガラスビーズの近くは綿棒を使ってできるだけふき取った。
15) ガラスビーズに500μlの0.1M HCl (GlycineでpH2.2に調製)を加え室温で10分間放置
16) 2M Tris 30μlで中和
17) ファージ感染用大腸菌DH12S 10mlを加えた。
18) 37℃、1時間振とう培養
19) 15ml 遠心管に移し、5000rpm 5分間遠心分離し、上層を捨てた。
20) 2xTYGA (1%Glucose, 100ug/ml Amp) 10mlでサスペンド
21) タイターチェック
結果を下記に示す。
No.1 HUVEC 1st 1.7 x 108
No.2 HUVEC 2nd 1.3 x 108
存在している1 x 106の細胞に対し、1 x 108 のファージが結合しているとすると、1細胞から、100個のファージ、有機溶媒処理と回収操作でファージ活性が1/5くらいに低下しているとなると、1細胞に、500個程度のファージが結合していたと考えられる。従来法でのスクリーニングにおいて、1細胞あたり1個以下しか結合していないというようなファージ回収現象の説明がしかできなかったが、それに比べると妥当な数値だと思われる。
但し、これらスクリーニングで得られたクローンを解析したところ、半分ほどがコラーゲンに結合することがわかった。ガラスビーズ表面のコラーゲンに対してファージが結合したと考えられるため、ブロッキングが不十分であったと思われる。
<スクリーニング 2>
スクリーニング1で、ブロッキングが不十分であったことが示唆されたため、スクリーニング溶液の組成を検討した。スクリーニング溶液の組成を以下に示す。
溶液1 Gelatin + BSA
イーグルMEM培地 (ニッスイ、粉末、code06900) 0.94 g
炭酸水素ナトリウム 2 g
BSA fraction V 1 g
10% gelatin /PBS 5 ml
5% NaN3 2 ml
溶液2 Gelatin + Skim milk
イーグルMEM培地 (ニッスイ、粉末、code06900) 0.94 g
炭酸水素ナトリウム 2 g
スキムミルク 2 g
10% gelatin /PBS 5 ml
5% NaN3 2 ml
上記溶液1または2を用いてファージ溶液を調整し、スクリーニング1と同様の方法でスクリーニングを行った。
ファージ溶液:
上記溶液1 or 2 4ml
3mg/ml Collagen 133μl
1stファージ Library 1 X 1012ファージ
結果を以下に示す。
No.1 HUVEC Gelatin + BSA 2.7 x 107
No.2 HUVEC Gelatin + Skim milk 1.6 x 107
Blank:細胞なし(コラーゲンコートしたガラスビーズのみ)
Gelatin + Skim milk 2.3 x 106
Gelatin添加により、リカバリーが1/2〜1/7 少なくなった。以後、溶液2を使用することにした。
<抗体を発現しているクローンの抗コラーゲン抗体価>
2種のスクリーニング溶液由来のクローンを、それぞれ24クローン選び、コラーゲンへの反応性を確認した。
その結果、1時間の発色でもほとんどが0.1以下の値を示したことから、抗コラーゲン抗体クローンはほとんど含まれていないことが確認できた。
<細胞ELISA>
図22に細胞ELISAの結果を示す。HUVECとHeLaを交互に並べた。No.14,28は、PBSのみのレーンを示す。No.1-24が、溶液1由来、No.25-48が溶液2由来である。反応時間は30分とした。
各クローンについて、細胞ごとにduplicateで測定した(HUVEC, HeLa, HUVEC, HeLaの順)。
陰性対象クローン
NC1: 035-029
NC2: 035-283
NC3: YA14
陽性対象クローン
PC1: 048-006
PC2: 051-144
PC4: 052-054
PC5: 35-11
Blank
PC3:PBS
○で囲ったクローンに関しては、顕微鏡観察を行った(図23)。
抗体発現の確認できた57クローン内で、HUVEC,HeLa 細胞を用いた細胞ELISAで陽性を示したクローンは16クローン(28%)であった
従来のスクリーニング法では、少なくとも3回のスクリーニングを行い濃縮されてくるクローンを取得し、その解析を行っている。そのため、濃縮されるファージ抗体は、その標的分子が多量に発現されているものである可能性が高くなる。それに対し、ここで行ったスクリーニング法は、1回のみのスクリーニング操作で取得しており、結合ファージの濃縮を繰り返す過程を含まないことから、低発現量の抗原に対するファージも含まれていることが期待できる(表15)。
本発明によって細胞表面抗原に結合する抗体をスクリーニングすることができる。既にあらゆる抗体を含む抗体ライブラリーは実現している。次の課題は、この抗体ライブラリーから目的とする抗体を確実に、迅速に見出すことである。既知のスクリーニング方法では、特定の反応性を有する抗体が優先的に取得されるのに対して、本発明の方法を利用すれば、あらゆる反応性を有する抗体を取得することができる。
一般に結合活性の低い抗体、細胞表面にわずかしか存在しない抗原を認識する抗体を抗体ライブラリーからピックアップするのは、容易ではない。本発明によれば、このような希少な抗体を、より高い確率でピックアップすることができる。本発明のスクリーニング方法は、特に、より高度な多様性を維持している抗体ライブラリーのスクリーニングに有用である。
希少な抗体には、たとえば類似した細胞の間で、ある細胞に特異的に見出される細胞表面抗原を認識する抗体が含まれる。たとえば、同じ臓器に由来するがん細胞の間で、悪性度の高い癌と、低い癌の間で比較して、いずれかの細胞に特異的に見出される抗原を認識する抗体を取得することができれば、癌の悪性度の指標として有用である。更にこのような抗体によって認識される細胞表面抗原は、悪性度の高い癌を治療するための治療標的となる可能性がある。
同様に、特定の疾患を有する細胞と正常の細胞、ウイルスなどの感染性病原体に感染している細胞と正常細胞、などの異なる細胞の間で発現状態の異なる細胞表面抗原は、いずれも診断マーカーとして有用である。したがってそれを認識して結合する抗体は、診断用ツールとして利用することができる。更に、疾患に関連して見出される細胞表面抗原は、上記の癌の例と同様に、治療標的分子としての可能性を有している。
このように、本発明によれば、目的とする細胞に固有の細胞表面抗原を、網羅的に取得することができる。現在、ある細胞において特異的に発現レベルが変化している遺伝子を同定するためのツールとして、DNAチップが広く利用されている。DNAチップを用いれば、たとえばヒトの遺伝子の大部分について、その発現レベルの変化を網羅的に追跡することができる。しかしDNAチップによって解析可能な遺伝子転写物は、その原理上、DNAチップを構成するプローブで検出できる範囲に限られる。その結果、スプライシングバリアントや、エキソンの一部を欠いた構造を有する翻訳産物(truncated protein)を識別できない可能性がある。
一方、本発明に基づく、細胞に特異的に見出される細胞表面抗原の同定方法によれば、抗体をプローブとして利用できることから、スプライシングバリアント、あるいはtruncated proteinを、異なる蛋白質として明確に区別することができる。これらの蛋白質を識別することによって、遺伝子の転写異常に起因する疾患や病態の解明において、重要な情報を提供することができる。
加えて本発明は、細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法を提供した。本発明によって提供される細胞表面抗原の可溶性分画を用いて、上記のような抗体のスクリーニング方法を実施することができる。または細胞表面抗原の可溶性分画は、特に、抗体が認識する抗原分子の単離に有用である。本発明によって得ることができる細胞表面抗原の可溶性分画は、細胞表面抗原の多様性と免疫学的特性を高度に維持している。したがって、ある抗体が認識する抗原分子見出すための、抗原ライブラリーとして有用である。
可溶性分画から抗体によって選択された抗原分子は、可溶性であることから、高度に純粋な状態で単離される。そのため、単離された抗原分子の解析が容易である。たとえば質量分析を利用した解析によって、容易に抗原のアミノ酸配列を特定することができる。このように、本発明の細胞表面抗原の可溶性分画は、細胞表面抗原の解析において、研究を助ける重要なツールとなる。
scFv抗体遺伝子ライブラリーの作製に用いたベクターの模式図である。 pscFvCA9-E8VHdVLdの構造を模式的に示した図である。 pscFvCA9-E8VHdVLdのインサート部の塩基配列(配列番号:25)及びそれにコードされるアミノ酸配列(配列番号:26)を示した図である。 図3−1の続き。 pscFvCA-E8VHdのインサートの塩基配列(配列番号:29)及び制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号:30)を示した図である。 図4−1の続き。 pAALSCの塩基配列(配列番号:65)及びそれにコードされるアミノ酸配列(配列番号:66)を示した図である。 図5−1の続き。 pscFvCA-cam167の塩基配列(配列番号:67)及びそれにコードされるアミノ酸配列(配列番号:68)を示した図である。 図6−1の続き。 pAviBirA-cam167の塩基配列(配列番号:69)及びそれにコードされるアミノ酸配列(配列番号:70)を示した図である。 図7−1の続き。 pPPAviBirA-cam167の塩基配列(配列番号:71)及びそれにコードされるアミノ酸配列(配列番号:72)を示した図である。 図8−1の続き。 得られた抗SKOv-3細胞抗体クローンの細胞ELISAの結果を示すグラフである。 免疫沈降による抗原分子の同定結果を示す写真である。抗HER2抗体によるwestern blotによって行なった。 固相化CEAに対するELISAの結果を示すグラフである。図中、縦軸は492nmにおける吸光度を示す。横軸に記載した抗体は、それぞれ以下の抗体を示す。 Clone 2, 3, 6, 13, 24, 32;胃癌細胞株MKN-45に対する抗体クローン CEA抗体;マウスモノクロナル抗体 単離抗体による組織染色の結果を示す顕微鏡写真(1000倍)である。クローン035-112は癌細胞膜を染色した。 固相化TRAIL-R2に対するELISAの結果を示すグラフである。 クローン3172-120による組織染色の結果を示す顕微鏡写真(1000倍)である。 単離抗体049-023、および050-001による組織染色の結果を示す顕微鏡写真(1000倍)である。 未知の抗原分子の同定過程を示す写真及び図である。 界面活性剤希釈免疫沈降反応によって同定された抗原の電気泳動結果を示す写真である。 膜蛋白トリプシン消化法によって同定された抗原の電気泳動結果を示す写真である。 HER2過剰発現株BT-474に対して、ヒトIgG抗体を用いた場合のADCC活性を示す図である。 HER2過剰発現株BT-474に対して、ファージ抗体と抗pIIIウサギ抗体を組み合わせた場合のADCC活性を示す図である。 細胞のガラスビーズ接着培養法におけるセルストレーナー(A)と、ガラスビーズに接着した細胞(B)を示す写真である。 有機溶媒遠心法によるスクリーニングにおける、ガラスビーズの設置方法を示す写真である。 細胞ELISAの結果を示す図である。 細胞ELISAにおいて取得したクローンを用いて免疫染色し顕微鏡観察した写真(400倍)である。

Claims (117)

  1. 次の工程を含む、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法。
    (1)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画と抗体ライブラリーとを水性媒体中で接触させる工程
    (2)(1)の水性媒体と界面を介して接触する低極性溶媒とからなる2相系を調製する工程、
    (3)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を低極性溶媒に移動させる工程、および
    (4)低極性溶媒に移動した細胞、またはその分画に結合している抗体を、細胞表面抗原に結合する抗体として回収する工程
  2. 工程(3)と(4)の間に、付加的に次の工程(3-a)から(3-c)を含む、請求項1に記載の方法。
    (3-a)(3)において、低極性溶媒に移動された細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を、水性媒体に移動させる工程
    (3-b)(3-a)の水性媒体と界面を介して接触する低極性溶媒とからなる2相系を調製する工程、および
    (3-c)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を低極性溶媒に移動させる工程
  3. 工程(3-a)における水性媒体が、(1)の水性媒体とは異なる水性媒体に接触させる工程である、請求項2に記載の方法。
  4. 工程(3-b)における低極性溶媒が、(2)の低極性溶媒と共通である請求項2に記載の方法。
  5. 工程(3-b)における低極性溶媒が、(2)の低極性溶媒と置き換えられた異なる低極性溶媒である請求項2に記載の方法。
  6. (3-c)において低極性溶媒に移動された細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を、(3)において低極性溶媒に移動された細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画として、前記工程(3-a)から(3-c)を繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の方法。
  7. 前記工程(3-a)から(3-c)を、1〜5回繰り返す、請求項6に記載の方法。
  8. 前記工程(3-a)から(3-c)を、2〜3回繰り返す、請求項7に記載の方法。
  9. 抗体ライブラリーが抗体の可変領域を提示したrgdpライブラリーである請求項1に記載の方法。
  10. rgdpライブラリーがファージライブラリーである請求項9に記載の方法。
  11. 工程(4)において回収された抗体を新たな抗体ライブラリーとして工程(1)-(3)を繰り返す工程を含む請求項1に記載の方法。
  12. 細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞の分画が、細胞表面抗原の可溶性分画である請求項1に記載の方法。
  13. 細胞表面抗原の可溶性分画を次の工程によって得ることを特徴とする請求項12に記載の方法。
    (1) 抗体を取得すべき抗原を発現している細胞を破砕する工程、
    (2) 工程(1)の破砕物から細胞膜分画を回収する工程、
    (3) 細胞膜分画を界面活性剤混合液によって可溶化する工程、および
    (4) 工程(3)の上清を細胞表面抗原の可溶性分画として回収する工程
  14. 界面活性剤混合液を構成する界面活性剤が、非イオン性界面活性剤と両性界面活性剤のいずれか、または両方である請求項13に記載の方法。
  15. 非イオン系界面活性剤が、NP-40、Triton X100、n-Dodecyl β-D-maltoside、n-Octyl β-D-glucoside、 n-Octyl β-D-maltopyranoside、およびn-Decyl β-D-maltosideからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の方法。
  16. 両性界面活性剤が、Deoxycholic acidである請求項14に記載の方法。
  17. 細胞表面抗原の可溶性分画が固相に結合されている請求項12に記載の方法。
  18. 固相が磁性粒子である請求項17に記載の方法。
  19. 細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞が、固相に固定化された細胞である請求項1に記載の方法。
  20. 固相がガラスビーズである請求項19に記載の方法。
  21. ガラスビーズがコラーゲン処理されたガラスビーズである請求項20に記載の方法。
  22. 固相に固定化された細胞が、前記細胞をコラーゲン処理されたガラスビーズとともに培養することによって得られた細胞である請求項21に記載の方法。
  23. 水性媒体が、不活性蛋白質を添加した細胞培養液または緩衝液である請求項1に記載の方法。
  24. 不活性蛋白質がウシ血清アルブミンである請求項23に記載の方法。
  25. 細胞培養液が、MEM(Minimum EssentialMedium)、 Basal Medium, Eagle(BME)、 Eagle's Minimum Essential Medium(EMEM)、 Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DME)、RPMI-1640 Medium(RPMI1640) 、およびES Medium(ES)からなる群から選択されるいずれかの細胞培養液である請求項23に記載の方法。
  26. 低極性溶媒が、シクロヘキサンおよびジフェニルエーテルを含む混合溶媒である請求項1に記載の方法。
  27. シクロヘキサンとジフェニルエーテルの1:9の混合溶媒である請求項26に記載の方法。
  28. 低極性溶媒が、次のaおよびbに記載の溶媒を含む混合溶媒であり、かつ溶媒密度(d)1.0-1.09を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
    a:ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、およびジイソプロピルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒
    b:フタル酸ジブチル、1,1,1-トリクロロエタン、およびジフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒
  29. 水性媒体として、不活性蛋白質を添加した細胞培養液または緩衝液を組み合わせることを特徴とする請求項26または請求項28に記載の方法。
  30. 以下の工程を含む、抗体の可変領域を提示したrgdpライブラリーから目的とする細胞の表面抗原に結合する活性を有するrgdpクローンをスクリーニングするための方法において、rgdpライブラリーと前記抗原とを水性媒体中で接触させた後に、低極性溶媒相に移動させることによって抗原抗体複合体の水素結合を安定化させる工程を含む方法。
    (1)抗原抗体反応が可能な条件下でrgdpライブラリーおよび、目的とする抗原とを接触させる工程、および
    (2)前記抗原に結合したrgdpクローンを回収する工程
  31. 低極性溶媒で洗浄した後に前記抗原に結合したrgdpクローンを回収する工程を含む請求項30に記載の方法
  32. 前記細胞表面抗原が、細胞、または細胞表面抗原の可溶性分画を固定した固相である請求項30に記載の方法。
  33. 水性媒体が血清アルブミンを含むミニマムエッセンシャルメディウムである請求項30に記載の方法。
  34. 低極性溶媒が以下のa-dからなる群から選択されたいずれかの溶媒である請求項30に記載の方法。
    a.ジフェニルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合溶媒、
    b.イソプロピルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合溶媒、および
    c.フタル酸ジブチルとシクロヘキサンの混合溶媒
    d.ジフェニルエーテルとシクロヘキサンの混合溶媒
  35. 極性媒体として血清アルブミンを含むミニマムエッセンシャルメディウムを組み合わせることを特徴とする請求項34に記載の方法。
  36. 細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーを接触させ、細胞表面抗原に結合する抗体を回収する工程を含む、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法において、以下のa)〜c)のいずれかの工程を含む方法であって、抗原マスキング剤と抗体マスキング剤がそれぞれ以下に定義される成分を含むことを特徴とする方法。
    抗原マスキング剤:取得を望まない抗体を含む
    抗体マスキング剤:取得を望まない抗体が認識する遊離の抗原を含む
    a) 細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーとが、抗原マスキング剤または抗体マスキング剤のいずれかの共存下で接触させられる、
    b)抗体ライブラリーを抗体マスキング剤との接触後に細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と接触させる、または
    c)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相を抗原マスキング剤と接触後に抗体ライブラリーと接触させる
  37. 取得を目的とする抗体が認識する抗原が癌細胞の表面抗原であり、取得を望まない抗体が認識する抗原が正常細胞の表面抗原である請求項36に記載の方法。
  38. 正常細胞と前記癌細胞が由来する組織が共通である請求項37に記載の方法。
  39. 取得を目的とする抗体が認識する抗原が、特定のステージの癌細胞の表面抗原であり、取得を望まない抗体が認識する抗原が前記ステージとは異なるステージの同種の癌細胞の表面抗原である請求項36に記載の方法。
  40. 前記特定のステージと、特定のステージとは異なるステージのいずれかが、進行癌であり、他方が初期癌である請求項39に記載の方法。
  41. 取得を望まない抗体が、前記細胞表面抗原に結合する抗体であり、目的とする抗体が、取得を望まない抗体が認識する抗原または抗原決定基とは異なる抗原または抗原決定基に結合する抗体である請求項36に記載の方法。
  42. 取得を望まない抗体が、前記細胞表面抗原に結合する結合活性によって予め単離された抗体である請求項41に記載の方法。
  43. 次の工程を含む、請求項36に記載の方法。
    (1)前記細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーを含む水性媒体と、この水性媒体と接触した低極性溶媒で構成される2相系を調製する工程、
    (2)標的抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相を低極性溶媒相に移動させる工程、および
    (3)低極性溶媒相に移動した細胞、またはその分画を保持した固相に結合している抗体を、細胞表面抗原に結合する抗体として回収する工程
  44. 請求項1、または請求項36のいずれかの方法によって得ることができる抗体またはその可変領域を含む断片。
  45. 請求項1、または請求項36のいずれかの方法によって得ることができる抗体の可変領域をコードするポリヌクレオチド。
  46. 次の工程を含む、特定の細胞の表面抗原に結合し、同じ条件で類似の細胞に接触させたときに類似の細胞には結合しない抗体のスクリーニング方法。
    (1)請求項1または請求項36に記載の方法によって選択された抗体を、前記特定の細胞またはその分画を保持した固相、および前記類似の細胞またはその分画を保持した固相に共通の条件下で接触させる工程、および
    (2)前記特定の細胞またはその分画を保持した固相に結合し、前記類似の細胞またはその分画を保持した固相に結合しなかった抗体を選択する工程
  47. 特定の細胞が癌細胞であり、類似する細胞が当該癌細胞と同じ組織の正常細胞である請求項46に記載の方法。
  48. 特定の細胞があるステージの癌細胞であり、類似する細胞が別のステージの同種の癌細胞である請求項46に記載の方法。
  49. 工程(1)が、前記特定の細胞および前記類似する細胞の細胞固定試料に前記抗体を接触させる工程を含む、 請求項46に記載の方法。
  50. 工程(1)が、前記特定の細胞の抗原分画を保持した固相、および前記類似する細胞の抗原分画を保持した固相に前記抗体を接触させる工程を含む、 請求項46に記載の方法。
  51. 前記細胞、または細胞の抗原分画を保持した固相に結合した抗体を、その抗体を認識する標識抗体で検出する工程を含む、請求項39または請求項40に記載の方法。
  52. 前記抗体ライブラリーが少なくとも109種類の抗体を含む抗体ライブラリーである請求項1または請求項36に記載の方法。
  53. 前記抗体ライブラリーが、少なくとも1010種類の抗体を含む抗体ライブラリーである請求項52に記載の方法。
  54. 前記抗体ライブラリーが、少なくとも1011種類の抗体を含む抗体ライブラリーである請求項53に記載の方法。
  55. 次の工程を含む請求項44に記載の抗体が結合する抗原の同定方法。
    (1)請求項44に記載の抗体と当該抗体の単離に用いた細胞表面抗原とを接触させる工程、
    (2)前記抗体に結合した抗原を回収する工程、および
    (3)回収された抗原を同定する工程
  56. 付加的に、工程(3)で同定された抗原のアミノ酸配列を決定する工程を含む請求項55に記載の方法。
  57. 抗原を消化し、消化生成物を構成するアミノ酸を同定する工程を含む請求項56に記載の方法。
  58. 蛋白質分解酵素によって、抗原を消化する工程を含む請求項57に記載の方法。
  59. 蛋白質分解酵素がセリンプロテアーゼである請求項58に記載の方法。
  60. セリンプロテアーゼがトリプシンである請求項59に記載の方法。
  61. 消化生成物を構成するアミノ酸を、質量分析によって同定する工程を含む請求項57に記載の方法。
  62. 請求項55に記載の方法によって同定された抗原。
  63. 次の工程を含む、細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法。
    (1) 目的とする細胞表面抗原を発現している細胞を破砕する工程、
    (2) 工程(1)の破砕物から細胞膜分画を回収する工程、
    (3) 細胞膜分画を界面活性剤混合液によって可溶化する工程、および
    (4) 工程(3)の上清を細胞表面抗原の可溶性分画として回収する工程
  64. 界面活性剤混合液を構成する界面活性剤が、非イオン性界面活性剤と両性界面活性剤のいずれか、または両方である請求項63に記載の方法。
  65. 非イオン系界面活性剤が、NP-40、Triton X100、n-Dodecyl β-D-maltoside、n-Octyl β-D-glucoside、 n-Octyl β-D-maltopyranoside、およびn-Decyl β-D-maltosideからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項64に記載の方法。
  66. 両性界面活性剤が、Deoxycholic acidである請求項64に記載の方法。
  67. 細胞が癌細胞である請求項63に記載の方法。
  68. 次の工程を含む、抗体が認識する細胞表面抗原を単離する方法。
    (1)請求項63に記載の方法によって得ることができる細胞表面抗原の可溶性分画を抗体と接触させる工程、および
    (2)抗体に結合した抗原を単離する工程
  69. 抗体が、請求項1または請求項36に記載の方法によって選択された抗体である請求項68に記載の方法。
  70. 抗体が固相に結合されているか、または固相に結合可能なタグを有している請求項68に記載の方法。
  71. 細胞表面抗原の可溶性分画を抗体に接触させる工程において、反応液中の界面活性剤の濃度を0.01%w/v−5%w/vに調整する請求項68に記載の方法。
  72. 請求項68に記載の方法によって単離された抗原を同定する工程を含む、抗体が認識する細胞表面抗原の同定方法。
  73. 抗原を消化し、消化生成物を構成するアミノ酸を同定する工程を含む請求項72に記載の方法。
  74. 蛋白質分解酵素によって、抗原を消化する工程を含む請求項73に記載の方法。
  75. 蛋白質分解酵素が、セリンプロテアーゼである請求項74に記載の方法。
  76. セリンプロテアーゼがトリプシンである請求項75に記載の方法。
  77. 消化生成物を構成するアミノ酸を、質量分析によって同定する工程を含む請求項73に記載の方法。
  78. 請求項68に記載の方法によって単離された抗原。
  79. 以下の組成を含む、細胞表面抗原の可溶化用界面活性剤混合液。
    NP-40、
    Triton X100、
    n-Dodecyl β-D-maltoside、
    n-Octyl β-D-glucoside、
    n-Octyl β-D-maltopyranoside
    n-Decyl β-D-maltoside、および
    Deoxycholic acid
  80. 各界面活性剤の使用量が0.01〜5%w/vである、請求項79に記載の細胞表面抗原の可溶化用界面活性剤混合液。
  81. 細胞表面抗原を不完全消化する工程と、不完全消化によって細胞から切り離された細胞表面抗原を回収する工程を含む、細胞表面抗原の可溶性分画の製造方法。
  82. 不完全消化する工程が、細胞に蛋白質分解酵素を作用させる工程を含む請求項81に記載の方法。
  83. 蛋白質分解酵素が、セリンプロテアーゼである請求項82に記載の方法。
  84. セリンプロテアーゼがトリプシンである請求項83に記載の方法。
  85. 請求項81に記載の方法によって得ることができる、細胞表面抗原の可溶性分画。
  86. 次の工程を含む、細胞表面抗原の同定方法。
    (1)細胞表面抗原を認識する抗体と請求項85に記載の細胞表面抗原の可溶性分画とを接触させる工程、
    (2)前記抗体に結合した抗原を回収する工程、および
    (3)回収された抗原を同定する工程
  87. 抗体が請求項1または請求項36に記載の方法によって選択された抗体である請求項86に記載の方法。
  88. 付加的に、工程(3)で同定された抗原のアミノ酸配列を決定する工程を含む請求項87に記載の方法。
  89. 配列番号:82の塩基配列、または配列番号:83に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
  90. 請求項89に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
  91. 配列番号:84の塩基配列、または配列番号:85に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
  92. 請求項91に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
  93. 請求項90に記載のポリペプチド、および請求項92に記載のポリペプチドを含む、イムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片。
  94. CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:90、配列番号:91、および配列番号:92に記載されたアミノ酸配列であるイムノグロブリンH鎖、またはその可変領域を含む断片。
  95. CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:93、配列番号:94、および配列番号:95に記載されたアミノ酸配列であるイムノグロブリンL鎖、またはその可変領域を含む断片。
  96. 請求項94に記載のイムノグロブリンH鎖、および請求項95に記載のイムノグロブリンL鎖を含むイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片。
  97. 配列番号:86の塩基配列、または配列番号:87に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
  98. 請求項97に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
  99. 配列番号:88の塩基配列、または配列番号:89に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
  100. 請求項99に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
  101. 請求項98に記載のポリペプチド、および請求項100に記載のポリペプチドを含む、イムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片。
  102. CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:96、配列番号:97、および配列番号:98に記載されたアミノ酸配列であるイムノグロブリンH鎖、またはその可変領域を含む断片。
  103. CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:99、配列番号:100、および配列番号:101に記載されたアミノ酸配列であるイムノグロブリンL鎖、またはその可変領域を含む断片。
  104. 請求項102に記載のイムノグロブリンH鎖、および請求項103に記載のイムノグロブリンL鎖を含むイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片。
  105. 請求項93、請求項96、請求項101、および請求項104に記載されたイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片の少なくとも1種類と、薬学的に許容される担体を含む、肝臓癌の診断または治療のための医薬組成物。
  106. イムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片が、放射性同位元素、抗癌活性を有する薬物、磁性金属、蛍光色素、発光色素、および酵素からなる群から選択される分子のいずれかを結合されている請求項105に記載の医薬組成物。
  107. 次の要素を含む、肝臓癌の検査用キット。
    i)請求項93、請求項96、請求項101、および請求項104に記載されたイムノグロブリン分子、またはその可変領域を含む断片の少なくとも1種類、
    ii)正常な肝細胞組織、および
    iii)肝臓癌の癌細胞組織
  108. 次の工程を含む、抗原結合部位を含む抗体の断片の細胞障害作用を検出する方法。
    (1)前記抗体断片と、抗体断片を認識する二次抗体と、そして前記抗体断片が認識する抗原を発現した細胞とを接触させる工程、および
    (2)細胞障害作用を検出する工程
  109. 抗体の抗原結合部位を含む断片と、前記抗体断片が認識する抗原を発現した細胞とを接触させた後に、抗体断片を認識する二次抗体とを接触させる請求項108に記載の方法。
  110. 抗体の抗原結合部位を含む断片が、Fab断片、またはscFvのいずれかである請求項108に記載の方法。
  111. 抗体の抗原結合部位を含む断片が、ファージ蛋白質と融合したscFvである請求項110に記載の方法。
  112. 二次抗体が前記ファージ蛋白質を認識する抗体である請求項111に記載の方法。
  113. 抗原結合部位を含む抗体の断片が、次のiからvに記載された断片およびrgdpクローンからなる群から選択されるいずれかの断片またはrgdpクローンである請求項108に記載の方法。
    i : 請求項1に記載の方法によって取得された抗体の抗原結合部位を含む断片、
    ii: 請求項10に記載の方法によって取得されたrgdpクローン;
    iii: 請求項30に記載の方法によって取得されたrgdpクローン;
    iv: 請求項36に記載の方法によって取得された抗体の抗原結合部位を含む断片;、および
    v: 請求項46に記載の方法によって取得された抗体の抗原結合部位を含む断片
  114. 細胞障害作用が抗体依存性細胞性細胞傷害である請求項108に記載の方法。
  115. 請求項108〜請求項114のいずれかに記載の方法によって細胞障害活性を検出し、細胞障害活性が検出された抗体断片を選択する工程を含む、細胞障害作用を有する抗体の抗原結合部位を含む断片を選択する方法。
  116. 抗原結合部位を含む抗体の断片に、当該抗体断片を認識する二次抗体を結合させることによって前記抗体断片に細胞障害作用を付与する方法。
  117. 抗原結合部位を含む抗体の断片が、ファージ蛋白質と融合したscFvであり、二次抗体が前記ファージ蛋白質を認識する抗体である請求項116に記載の方法。
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