JP2013194043A - トランスフェリン受容体抗体 - Google Patents

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【課題】ATL細胞に発現する蛋白質であるトランスフェリン受容体を特異的に認識できる抗体を提供すること。
【解決手段】本明細書に定義する特定のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、本明細書に定義する特定のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する、TfRに対する特異に結合する抗体。
【選択図】なし

Description

本発明は、トランスフェリン受容体を特異的に認識する抗体及びその用途に関する。
乳癌に対するハーセプチン(非特許文献1)や悪性Bリンパ腫に対するリツキサン(非特許文献2)の成功は、癌に対する治療薬として抗体が有効であることを示した。ある種の抗体は、細胞膜上に存在する抗原分子と複合体を形成することでADCC作用(非特許文献3)及び/又はCDC作用(非特許文献4)を発揮し、この作用によって標的細胞(抗原を発現する細胞)を殺傷する。ADCC作用やCDC作用がアポトーシスの引き金となることもある。このような抗体の作用は抗原特異的である。つまり、それが認識する抗原を発現している限り、癌細胞であるか正常細胞であるかを区別することなく抗体は作用を及ぼす。従って、癌に対する抗体治療薬開発の成否は、癌特異的に発現し、それを抗体が認識することでADCC作用やCDC作用が引き起こされることになる抗原をいかに見つけ出すかにかかっている。このような抗原に対する抗体は、正常細胞に対する影響(副作用)を最小限に抑えつつ標的癌細胞を確実に殺すことが可能な治療薬の有望な候補となる。
ところで、抗体創薬においては、細胞膜表面に存在する「インタクトな状態の」標的癌抗原を認識する抗体を取得することが不可欠といえるが、標的癌抗原が膜タンパク質であるという理由から、既知の癌抗原に対する抗体であってもその取得には困難が伴っていた。このような問題点を解消すべく、本発明者らはこれまでに1000億個もの独立したクローンからなる巨大なヒト抗体ライブラリーを作製し、それを利用した癌細胞及び組織の細胞膜表面に存在するタンパク質(細胞表面抗原)に対する抗体の網羅的取得法を確立した。(特許文献1〜3)。
国際公開第01/062907号パンフレット 国際公開第2001/096401号パンフレット 特開2005−185281号公報
Mass R, et al.: The Concordance Between the Clinical Trials Assay(CTA) and Fluorescence in Situ Hybridization(FISH) in the Herceptin Pivotal Trials. : Proc Am Soci Clin Oncol 19, 75a, 2000 Berinstein NL, Grillo-Lopez AJ, White CA, Bence-Bruckler I, Maloney D, Czuczman M, et al. Association of serum Rituximab (IDEC-C2B8) concentration andanti-tumor response in the treatment of recurrent low-grade or follicular non-Hodgkin's lymphoma. Annals of Oncology 1998, 9:995-1001. Bruggemann M., Williams G. T., Bindon C. I., Clark M. R., Walker M. R., Jefferis R., Waldmann H., Neuberger M. S. (1987). Comparison of the effector functions of human immunoglobulins using a matched set of chimeric antibodies. J. Exp. Med., 166, 1351-1361. Loos M. (1982). The classical complement pathway: mechanism of activation of the first component by antigen-antibody complexes. Prog. Allergy, 30, 135-192. Mol Immunol. 1982 May;19(5):651-7.
成人T細胞白血病(ATL:adult T cell leukemia )は主に母乳を介して感染するウイルスHTLV1(human T cell leukemia virus Type 1)が原因の難治性血液癌である。国内感染者は100万人以上で、先進国では最も多く、潜伏期間は平均55年と長い。感染者の生涯発症率は約5%で、年間発症患者数は約1000人。従来、九州地区に多い疾患であったが、人の流動化で、東京、大阪でも感染者が増加してきている。既存の多剤併用化学療法でも一年以内に90%が死亡し、骨髄移植も発症年齢が高いことから治癒率が低く新規の治療法が早急に望まれている。また近年の報告で関東関西でのHTLV-1キャリアの増加傾向や、さらにATL発症者及び死亡者の増加傾向が顕著であり、政府においてもATL特命チームが作られ対策が練られている。その一方で現在製品化されているATLの治療薬は、一般的な多剤併用による抗がん剤(シクロフォスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン等)のみであり、5年生存率が10%以下で、骨髄抑制や感染症、出血など副作用も強く、治療に有用な商品としては否定されている。発症すると血液中でATL細胞が増殖し、免疫機能低下、リンパ節腫瘍が認められ、白血病の中でも最も治療困難な難病である。標準的な治療法はなく、発症後の平均生存期間は1年以内と短く、毎年約千人が亡くなっており、感染者は発症の不安におびえ続け、治療法・新薬の開発は喫緊の課題である。本発明は、ATL細胞に発現する蛋白質であるトランスフェリン受容体を特異的に認識できる抗体を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために、次のアプローチで抗体の解析を進めた。先ず、取得された抗体に対する細胞表面抗原を発現していると予想される細胞株を用意し、それに対して細胞膜上の抗原を対象に抗体の単離を行った。その結果、トランスフェリン受容体を特異的に認識できる新規な抗体を見出すことに成功した。
即ち、本発明によれば、重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)としてそれぞれ配列番号1〜3、7〜9、13〜15、19〜21、25〜27、31〜33、37〜39、43〜45、49〜51、55〜57、61〜63、67〜69、73〜75、79〜81、又は85〜87の何れかのアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、
軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)としてそれぞれ配列番号4〜6、10〜12、16〜18、22〜24、28〜30、34〜36、40〜42、46〜48、52〜54、58〜60、64〜66、70〜72、76〜78、82〜84、又は88〜90の何れかのアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する、
癌細胞膜上に特異的に発現するTfRに対する特異的結合性を有する単離された抗体が提供される。
好ましくは、本発明の抗体は、下記(1)から(15)から選択される、癌細胞膜上に特異的に発現するTfRに対する特異的結合性を有する単離された抗体である。
(1)配列番号1の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号2の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号3の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号4の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号5の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号6の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(2)配列番号7の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号8の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号9の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号10の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号11の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号12の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(3)配列番号13の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号14の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号15の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号16の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号17の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号18の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(4)配列番号19の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号20の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号21の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号22の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号23の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号24の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(5)配列番号25の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号26の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号27の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号28の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号29の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号30の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(6)配列番号31の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号32の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号33の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号34の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号35の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号36の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(7)配列番号37の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号38の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号39の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号40の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号41の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号42の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(8)配列番号43の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号44の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号45の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号46の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号47の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号48の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(9)配列番号49の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号50の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号51の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号52の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号53の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号54の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(10)配列番号55の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号56の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号57の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号58の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号59の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号60の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(11)配列番号61の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号62の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号63の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号64の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号65の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号66の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(12)配列番号67の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号68の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号69の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号70の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号71の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号72の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(13)配列番号73の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号74の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号75の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号76の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号77の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号78の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(14)配列番号79の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号80の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号81の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号82の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号83の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号84の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
(15)配列番号85の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号86の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号87の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号88の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号89の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号90の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
好ましくは、本発明の抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
本発明によればさらに、上記した本発明の抗体抗体を含む医薬組成物が提供される。
好ましくは、上記抗体に、細胞傷害性物質が結合している。
好ましくは、細胞傷害性物質は薬剤、トキシン、又は放射性物質である。
好ましくは、本発明の医薬組成物は、抗がん剤として使用される。
好ましくは、がんが血液がんまた固形がんである。
好ましくは、血液がんが成人T細胞白血病(ATL)である。
好ましくは、固形がんが肺がん、大腸がん、胃がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、肝がん、子宮頸がん、子宮がん、卵巣がん、乳がん、頭頸部がん、皮膚がんである。
本発明のトランスフェリン受容体を特異的に認識できる抗体は、ATL細胞に発現する蛋白質をターゲットとする分子標的薬として有用であり、ATL発症患者のQOLおよび治療を著しく改善することができる、
図1は、抗TfRファージ抗体のTfR結合性を、免疫沈降とウエスタンブロットで確認した結果を示す。 図2は、癌患者より外科的に切除された臨床検体を用いた免疫染色の結果を示す。 図3は、ATLモデルにおける抗TfR抗体の腫瘍増殖抑制効果を示す。 図4は、膵臓がんモデルにおける抗TfR抗体の腫瘍増殖抑制効果を示す。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の抗体は、TfRに対する特異的に結合する抗体である。
ヒトトランスフェリン受容体(TfR)は人三番染色体にコードされ760アミノ酸から構成される一回膜貫通型タンパクである。このタンパクはTFR抗原としても知られ、細胞の鉄の取り込みに関与し、細胞の増殖に関与すると考えられている。また血液細胞における活性化B細胞並びにT細胞が活性化に伴い表面にTfRを提示していると考えられている。
TfRはネイキッドの抗体、薬剤付加抗体および、トランスフェリン−薬剤付加などを用いて1980年代より癌標的分子として研究されており、実際にはマウスIgA抗体42/6を用いた第I相臨床試験が行われている。TfRの発現は細胞増殖と相関しており、そしてこれはTfR抗体で陽性染色される腫瘍の高比率および正常組織の限定された染色を説明していると示唆されている。TfR抗体は細胞内への鉄の取り込み低減することにより、細胞増殖を抑制すると一般的には受け入れられている。これは鉄付加トランスフェリンとトランスフェリンレセプターの相互作用を阻害することにより、またはTfRサイクルおよび細胞表面の提示の動的状態を改変する事により達成することができる。腫瘍細胞内の鉄取り込みの阻害作用は主にS期における細胞周期の停止とそれに続くG1期の細胞の蓄積として最初は顕在化し、最終的に細胞死の誘導まで変動するように観察されている。
in vivoではマウスTfRを認識するラット抗体が同系マウス白血病モデルにおいて試験されており、この抗体はコントロールと比較して生存性を向上し、4週間の投与期間にわたって抗体により認識される正常組織に対する肉眼的毒性の兆候や損傷はなかった。さらに赤血球または白血球の数も変化はなかった。しかしながら骨髄先祖細胞の分析によれば、CFU-e(赤芽球コロニー形成単位)の低減を示した。TfRを阻害することの知見はマウス抗体42/6を用いて実施した第I相臨床試験の結果を評価する事で得ることができる。この試験においてはマウス抗体のより短い投与経過および微弱な薬物動態にも関わらず腫瘍応答の兆候は観察された。また副作用としては抗体投与後の骨髄CFU-eの低下が観察されたが、結果は統計的学的に有意ではなかった。
本願明細書中に後記する実施例においては、ELISA、FACS、免疫沈降試験、ウエスタンブロット、質量分析、組織染色などの実験を行った。以下、これらの実験方法について説明する。
<ELISA等のイムノアッセイとFACS>
各サンプル抗体と細胞との接触操作は適当な溶液中で行われる。その際、サンプル抗体の特性に影響を与えることなく、且つ細胞に損傷を与えない条件に設定することが好ましい。例えば、当該細胞の生存・増殖に適した培養液中、リン酸系やクエン酸系バッファー中、生理食塩水中などにおいて、20℃〜40℃(好ましくは30℃〜37℃)の温度条件下、30分〜1時間、細胞とサンプル抗体とを共存させる。この間、溶液を撹拌することにしてもよい。尚、信頼性の高いデータが得られるよう、各サンプル抗体と細胞とを接触させる際の条件は原則として統一する。
以上の接触操作の後、必要に応じて(即ち、標識済サンプル抗体を利用した場合以外)、標識化を行う。ここでの「標識化」とは、細胞表面に結合したサンプル抗体を標識することをいう。例えば、サンプル抗体に対する特異的結合能を有する抗体に標識物質を結合させたもの(検出抗体)を、接触操作後の細胞と反応(接触)させることによって標識化を行うことができる。サンプル抗体に検出抗体を直接結合させるのではなく、両者の間に他の抗体等を介在させることにしてもよい。このように様々な標識化の手法を採用することができ、当業者であれば適切な手法を選択することが可能である。フローサイトメトリー解析では通常、蛍光色素が標識物質として使用される。例えば、Alexa488、AMCA、Cascade Blue(登録商標)、FITC、PerCPTM、CyTM3、Texas Red(登録商標)、CyTM5、APC、TRITC等の蛍光色素を使用することができる。
基本的な操作法、解析条件などは装置に添付の取扱説明書に従えばよい。また、フローサイトメトリー解析に関する論文や成書も数多く存在し、例えばCao TM, et al. Cancer. 2001 Jun 15;91(12):2205-13.、Storek KJ, et al. Blood 97: 3380-3389、WEIR'S HANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY Vol.II <Blackwell Science>、 Little MT and R. Storb Nture Reviews Cancer 2002 2: 231-238、等が参考になる。
フローサイトメトリー解析の典型的な操作手順を以下に示す。サンプル抗体と細胞とを反応させた後、蛍光色素で標識した検出抗体を反応させ、細胞を蛍光標識化しておく。細胞表面に存在する抗原量に応じて、結合するサンプル抗体量に差が生じる結果、細胞の蛍光標識量が異なることになる。従って、蛍光強度を測定することによって当該細胞の表面に存在する抗原とサンプル抗体との親和性及び抗原量を推定することができる。通常は、蛍光強度の検出に先行し、前方散乱光(Forward Scatter: FSC)及び側方散乱光(Side Scatter: SSC)を測定してゲートをかけ、目的の細胞集団の蛍光強度のみを測定する。具体的には例えば、前方散乱光及び側方散乱光をそれぞれX軸及びY軸にとり、ドットプロット展開から得られるデータにおいて生細胞と思われる細胞集団(株化細胞や培養細胞を使用した場合は均一性の極めて高い細胞集団となる)にゲートをかけ、ゲート内の蛍光強度を測定する。測定結果はヒストグラムなどの形式に表示する。
<抗原同定>
選抜した抗体(以下、「選抜抗体」)についての抗原の同定は、免疫沈降試験、ウエスタンブロット、アフィニティークロマトグラフィー、プロテオミクスの手法(電気泳動、質量分析、ゲノムデータベース検索、バイオインフォマティックスによる分析)、及び、対応遺伝子の発現解析、等の方法を利用して行うことができる。この中でも質量分析を基盤技術とするプロテオミクスの手法による方法は未知抗原の同定に適したものであり、本発明の方法において採用する同定法として好ましい。尚、これらの方法は互いに排他的なものではなく、必要に応じて二つ以上を組み合わせて用いることができる。
<質量分析>
質量分析とは、タンパク質やペプチド等の試料から生成させたイオンを質量/電荷(m/z)に従い分離した後、その強度を測定することにより、試料の質量を決定する方法である。ESI法(Electro Spray Ionization:エレクトロスプレーイオン化法)やMALDI法(Matrix Assisted Laser Deporption Ionization:マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)などソフトイオン化法が開発されたことによって、タンパク質やペプチド等の生体試料の解析に質量分析が汎用されるようになった。
質量分析装置は一般にイオン源、質量分析計、及び検出器の組み合わせで構成され、試料の種類や分析目的に応じて種々の質量分析装置が市販されている。タンパク質やペプチドの同定には、ESI Q-TOF MS等のタンデム質量分析によるMS/MS(Mass spectrometry / mass spectrometry)、MALDI-TOF MS等が利用される。液体クロマトグラフィーと質量分析器を組み合わせた測定法(LC-MAS(液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化質量分析装置)やLC-MS/MS等)なども利用できる。
タンデム質量分析装置では二つの質量分析計が直列に連結されており、イオン源で生成したイオンを第一の質量分析計(MS1)で分離し、単一のイオンピークのみを選択的に通過させた後、それに不活性ガス粒子などを衝突させてプロダクトイオンに分解し、このプロダクトイオンを第二の質量分析計(MS2)で分析する。第一の質量分析計(MS1)と第二の質量分析計(MS2)の組み合わせにより、Q-TOF、TOF-TOF、Q-Q、Q-IT(Iontrap:イオントラップ)などのタンデム質量分析装置が存在する。Q-TOF(四重極質量分析計(Quadrupole mass spectrometer:Q-MS)とTOF質量分析計(Time-of-flight mass spectrometer:TOF-MS)が直列に連結されているタンデム質量分析装置)のように異なる2種類の質量分析計から構成されたハイブリッド型のタンデム質量分析装置はMS/MS測定能に優れており、タンパク質やペプチドのアミノ酸配列の同定に適する。
質量分析装置による結果からアミノ酸配列を同定するには実験結果を用いてゲノムデータ検索を行うPMF法(ペプチドマスフィンガープリンティング法)やMS/MSイオンサーチ法等が利用される。また、ゲノムデータ検索を伴わずにMS/MSスペクトルから数学的演算によりアミノ酸配列を決定していくde novo sequencing法を利用してもよい。
<免疫沈降、アフィニティークロマトグラフィー>
一方、免疫沈降試験やウエスタンブロット法、アフィニティークロマトグラフィーなどは、選抜抗体が既知抗原を認識していると予想される場合に有効な方法である。これらの方法では選抜抗体と既知抗原との反応性が調べられる。即ち、免疫沈降試験においては選抜抗体と特定の既知抗原が免疫沈降物を形成するか否かが調べられ、免疫沈降物を形成する場合には当該既知抗原が選抜抗体の抗原であると判断される。一方、ウエスタンブロット法ではPVDF膜等に転写した抗原タンパク質を選抜抗体が認識するか否かが調べられる。また、アフィニティークロマトグラフィーでは特定の既知抗原を担持させたカラムへの選択抗体の吸着性が調べられ、吸着性の有無又はその程度による判断が行われる。また、免疫沈降試験やウエスタンブロット法、アフィニティークロマトグラフィー等の操作法は常法に従えばよい。
疾患関連分子(疾患原因遺伝子産物、等)が精製蛋白質、あるいは、リコンビナント蛋白質、等の何らかのかたちで得られれば、抗体との分子間相互作用をin vitro(蛍光分光法、ゲル濾過、超遠心を用いる古典的な方法、表面プラズモン共鳴現象を用いる方法、水晶発振子マイクロバランスを用いる方法、等)、あるいは、in vivo(一分子追跡法、蛍光共鳴エネルギー転移(fluorescence resonance energy transfer:FRET)観測法、等)で調べることができる。
以上の確認試験によって、同定抗原と各抗体との間に特異的反応性が認められた場合、上記の推定に間違いがないと判断する。
<組織染色>
患者由来の細胞又は組織との反応性は、免疫組織化学的染色法、免疫沈降法、フローサイトメトリー解析、ウエスタンブロット、ELISA法などを利用して検出・評価することができる。これらの方法は互いに排他的なものではなく、必要に応じて二つ以上を組み合わせて用いることができる。この中でも免疫組織化学的染色法を採用することが好ましい。免疫組織化学的染色法によれば迅速で感度のよい検出が可能である。また、操作も比較的簡便である。
免疫組織化学的染色法では、患者より採取した組織と抗体とを接触させた後、特異的に結合した抗体を検出する。具体的には、以下に示す免疫組織化学的染色法に従って本発明の方法を実施することができる。
生体組織の免疫組織化学的染色は一般に以下の手順(a)〜(j)で実施される。尚、生体組織の免疫組織化学的染色法については様々な文献及び成書を参照することができる(例えば、「酵素抗体法、改訂第3版」、渡辺慶一、中根一穂編集、学際企画)。
(a)固定・パラフィン包埋
外科的に生体より採取した組織をホルマリンやパラフォルムアルデヒド、無水エチルアルコール等によって固定する。その後パラフィン包埋する。一般にアルコールで脱水した後キシレンで処理し、最後にパラフィンで包埋する。パラフィンで包埋された標本を所望の厚さ(例えば3〜5μm厚)に薄切し、スライドガラス上に伸展させる。尚、パラフィン包埋標本に代えてアルコール固定標本、乾燥封入した標本、凍結標本などを用いる場合もある。
(b)脱パラフィン
一般にキシレン、アルコール、及び精製水で順に処理する。
(c)前処理(抗原賦活)
必要に応じて抗原賦活のために酵素処理、加熱処理及び/又は加圧処理等を行う。
(d)内因性ペルオキシダーゼ除去
染色の際の標識物質としてペルオキシダーゼを使用する場合、過酸化水素水で処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を除去しておく。
(e)非特異的反応阻害
切片をウシ血清アルブミン溶液(例えば1%溶液)で数分から数十分程度処理して非特異的反応を阻害する。尚、ウシ血清アルブミンを含有させた抗体溶液を使用して次の一次抗体反応を行うこととし、この工程を省略してもよい。
(f)一次抗体反応
適当な濃度に希釈した抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(g)標識試薬の添加
標識物質としてペルオキシダーゼが頻用される。ペルオキシダーゼを結合させた2次抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(h)発色反応
トリス緩衝液にDAB(3,3'-diaminobenzidine)を溶解する。続いて過酸化水素水を添加する。このようにして調製した発色用溶液を数分間(例えば5分間)切片に浸透させ、発色させる。発色後、切片を水道水で十分に洗浄し、DABを除去する。
(i)核染色
マイヤーのヘマトキシリンを数秒〜数十秒反応させて核染色を行う。流水で洗浄し色出しする(通常、数分間)。
(j)脱水、透徹、封入
アルコールで脱水した後、キシレンで透徹処理し、最後に合成樹脂やグリセリン、ゴムシロップなどで封入する。
<エピトープ>
ここで、同じ臓器の癌であっても患者によって病態(悪性度)が大きく異なることがある。この病態の相違には、特定の抗原の発現態様が関与すると予想される。一方、この態様の方法で得られる抗体セットは、典型的には、認識する抗原のレベルでは差はないが、エピトープのレベルで互いに異なる抗体の集合からなる。即ち、認識するエピトープが異なる複数の抗体を含む抗体セットである。このような抗体セットは、抗原の発現態様を多面的に検出ないし評価することを可能にするものであり、例えば癌等における特定の病態の検出や悪性度の判定に有用である。尚、抗体グループ内の各抗体の間で特異性(交差反応性)等を比較し、最も優れた特性を有する抗体を最終的に選択することにしてもよい。
次に、本発明の抗体について更に詳細に説明する。
本明細書では必要に応じて、慣習に従い以下の略号(括弧内)を使用する。
重鎖(H鎖)、軽鎖(L鎖)、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、相補性決定領域(CDR)、第1相補性決定領域(CDR1)、第2相補性決定領域(CDR2)、第3相補性決定領域(CDR3)重鎖の第1相補性決定領域(VH CDR1)、重鎖の第2相補性決定領域(VH CDR2)、重鎖の第3相補性決定領域(VH CDR3)軽鎖の第1相補性決定領域(VL CDR1)、軽鎖の第2相補性決定領域(VL CDR2)、軽鎖の第3相補性決定領域(VL CDR3)
本発明の抗体の可変領域においてフレームワーク領域(FR領域)の配列は、対応する抗原に対する特異的結合性に実質的な影響のない限り、特に限定されない。例えば、本発明の抗体をヒト化抗体として構築する場合には、公知のヒト抗体のFR領域を用いることができる。また、検出用の試薬として使用される抗体又はヒト以外の動物種への適用に使用される抗体を構築する場合など、ヒト抗体FR領域を使用しなくとも期待される効果が奏される場合やヒト抗体FR領域を使用することがむしろ適当でない場合がある。このような場合には、ヒト以外の動物種(例えばマウスやラット)のFR領域を用いることができる。
本発明の抗体は一態様において、可変領域に加えて定常領域を含む(例えばIgG型抗体の場合など)。当該態様における定常領域の配列は特に限定されない。例えば、後述のように本発明の抗体をヒト化抗体として構築する場合には、公知のヒト抗体の定常領域を用いることができる。また、上記FR領域と同様に、ヒト以外の動物種(例えばマウスやラット)の定常領域を用いることもできる。
一方、ヒト型CDR移植抗体は例えば以下の方法により作製することができる。まず、上記キメラ抗体の製造方法の欄で述べた方法により、特定の抗原に対する抗体のH鎖可変領域及びL鎖可変領域のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列を決定する。併せて各CDR領域のアミノ酸配列及び塩基配列を決定する。
次に、CDR領域を挟んで存在するFR(フレームワーク領域)を選択する。FRの選択には、およそ三つの方法が採用できる。1つめの方法は、NEWM、REIなど既に三次元構造の明らかとなったヒト抗体フレームを用いる方法である(Riechmann L. et al., Nature 332, 323-3Z7 (1988); Tempst, PR. et al., Protein Engineering 7, 1501-1507 (1994); Ellis JH. etal., J. Immunol 155, 925-937 (1995))。2つめの方法は、目的のマウス抗体可変領域と最も高いホモロジーを持つヒト抗体可変領域をデータベースより選択し、そのFRを用いる方法である(Queen C. et al., Proc Natl Acad SciUSA 86, 10029-10033 (1989); Rozak MJ. et al., J Biol Chem 271, 22611-22618 (1996); Shearman CW. et al., J.Immunol 147, 4366-4373 (1991))。3つめの方法は、ヒト抗体のFRで最も共通に用いられるアミノ酸を選択する方法である(Sato K. et al., Mol Immunol 31, 371-381 (1994); Kobinger F. et al., Protein Engineering 6, 971-980 (1993); Kettleborough CA. et al., Protein Engineering 4, 773-783 (1991))。本発明ではこれらいずれの方法を用いることもできる。
尚、選択されたヒトFRのアミノ酸配列を改変したアミノ酸配列であっても、最終的に得られるヒト型CDR移植抗体がTfRに対する特異的結合性を有する限り、FRのアミノ酸配列として利用することができる。特に、選択されたヒトFRのアミノ酸の一部をCDRの由来となった抗体のFRのアミノ酸に変更した場合、抗体の特性が維持される可能性が高い。改変されるアミノ酸の数は好ましくはFR全体の30%以下であり、更に好ましくはFR全体の20%以下であり、更に更に好ましくはFR全体の10%以下である。
次に、これらいずれかの方法により選択したFRと上記CDRとを組み合わせることによりH鎖可変領域及びL鎖可変領域をコードするDNAを設計する。この設計を基にH鎖可変領域をコードするDNAとL鎖可変領域をコードするDNAを化学合成、生化学的切断/再結合等によりそれぞれ作製する。そしてH鎖可変領域をコードするDNAを、ヒト免疫グロブリンH鎖定常領域をコードするDNAとともに発現ベクターに組み込みH鎖発現ベクターを構築する。同様に、L鎖可変領域をコードするDNAを、ヒト免疫グロブリンL鎖定常領域をコードするDNAとともに発現ベクターに組み込みL鎖発現ベクターを構築する。発現ベクターとしては例えばSV40 virus basedベクター、EB virus basedベクター、BPV(パピローマウイルス)basedベクターなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
以上の方法で作製されたH鎖発現ベクター及びL鎖発現ベクターにより宿主細胞を共形質転換する。宿主細胞としてはCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)(A.Wright& S.L.Morrison, J.Immunol.160, 3393-3402 (1998))、SP2/0細胞(マウスミエローマ)(K.Motmans et al., Eur.J.Cancer Prev.5,512-519 (1996),R.P.Junghans et al.,Cancer Res.50,1495-1502 (1990))などが好適に用いられる。また、形質転換にはリポフェクチン法(R.W.Malone et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,6077 (1989), P.L.Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,7413 (1987)、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法(F.L.Graham & A.J.van der Eb,Virology 52,456-467(1973))、DEAE-Dextran法等が好適に用いられる。
形質転換体を培養した後、形質転換体の細胞内又は培養液よりヒト型CDR移植抗体を分離する。抗体の分離、精製には、遠心分離、硫安分画、塩析、限外濾過、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて利用することができる。
本発明の抗体を基にして又は本発明の抗体をコードする遺伝子の配列情報を基にして抗体断片を作製することができる。抗体断片としてはFab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv抗体が挙げられる。
Fabは、IgGをシステイン存在下パパイン消化することにより得られる、L鎖とH鎖可変領域、並びにCH1ドメイン及びヒンジ部の一部からなるH鎖フラグメントとから構成される分子量約5万の断片である。本発明では、上記抗体をパパイン消化することにより得ることができる。また、上記抗体のH鎖の一部及びL鎖をコードするDNAを適当なベクターに組み込み、当該ベクターを用いて形質転換した形質転換体よりFabを調製することもできる。
Fab'は、後述のF(ab')2のH鎖間のジスルフィド結合を切断することにより得られる分子量が約5万の断片である。本発明では、上記抗体をペプシン消化し、還元剤を用いてジスルフィド結合を切断することにより得られる。また、Fab同様に、Fab'をコードするDNAを用いて遺伝子工学的に調製することもできる。
F(ab')2は、IgGをペプシン消化することにより得られる、L鎖とH鎖可変領域、並びにCH1ドメイン及びヒンジ部の一部からなるH鎖フラグメントとから構成される断片(Fab')がジスルフィド結合で結合した分子量約10万の断片である。本発明では、上記抗体をペプシン消化することにより得られる。また、Fab同様に、F(ab')2をコードするDNAを用いて遺伝子工学的に調製することもできる。
scFvは、H鎖可変領域とL鎖可変領域とからなるFvを、片方の鎖のC末端と他方のN末端とを適当なペプチドリンカーで連結し一本鎖化した抗体断片である。ペプチドリンカーとしては例えば柔軟性の高い(GGGGS)3などを用いることができる。例えば、上記抗体のH鎖可変領域及びL鎖可変領域をコードするDNAとペプチドリンカーをコードするDNAを用いてscFv抗体をコードするDNAを構築し、これを適当なベクターに組み込み、当該ベクターを用いて形質転換した形質転換体よりscFvを調製することができる。
dsFvは、H鎖可変領域及びL鎖可変領域の適切な位置にCys残基を導入し、H鎖可変領域とL鎖可変領域とをジスルフィド結合により安定化させたFv断片である。各鎖におけるCys残基の導入位置は分子モデリングにより予測される立体構造に基づき決定することができる。本発明では例えば上記抗体のH鎖可変領域及びL鎖可変領域のアミノ酸配列から立体構造を予測し、かかる予測に基づき変異を導入したH鎖可変領域及びL鎖可変領域をそれぞれコードするDNAを構築し、これを適当なベクターに組み込み、そして当該ベクターを用いて形質転換した形質転換体よりdsFvを調製することができる。
尚、適当なリンカーを用いてscFv抗体、dcFv抗体などを連結させたり、ストレプトアビジンを融合させたりして抗体断片を多量体化することもできる。
本発明の抗体(抗体断片を含む)に低分子化合物、タンパク質、標識物質などを融合又は結合させることにより、融合抗体又は標識化抗体を構成することができる。標識物質としては125I等の放射性物質、ペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンイソチオシアネート(RITC)、アルカリホスファターゼ、ビオチンなどを用いることができる。
さらには、本発明の抗体を、薬物等を特定の癌細胞特異的に送達させるための媒体(運搬体)として利用することもできる。即ち、本発明の抗体の用途として、特定の癌細胞を標的としたDDS(Drug delivery system)が想定される。
尚、本発明の抗体の各用途については以下に詳述される。
本発明によれば、本発明の抗体を用いて癌の検査を行うことができる。
ステップ(1):生体から分離された被検細胞を用意するステップ。
ステップ(2):被検細胞を対象としてTFR抗原を検出するステップ。
本発明の検査法によって得られる情報は、胆肝癌の診断又は膵臓癌の診断に有益である。例えば、胆肝癌患者を対象として上記方法を実施して得られた情報は、当該患者の病態の評価ないし把握、治療効果の評価などに利用できる。例えば、胆肝癌の治療と並行して本発明の方法を実施すれば、結果として得られる情報を基に治療効果を評価することができる。具体的には、薬剤投与後に本発明の方法を実施することで肺癌におけるTFR抗原の発現量の変化を調べ、発現量の増減から治療効果を判定することができる。このように本発明の方法を治療効果のモニターに利用してもよい。
一方、患者以外の者、即ち胆肝癌が認定されていない者を対象とした場合に得られた情報は、胆肝癌に関して罹患の有無の判定、罹患リスクの評価等に利用できる。本発明の方法によれば遺伝子の発現量という客観性に優れた指標を基に肝癌の診断を行えることから、その価値は非常に高いといえる。
以下、構成する各ステップを詳細に説明する。
1. ステップ(1)では対象(被検者、生体)から分離された細胞を用意する。患者に限らず、健常者をここでの対象とすることもできる。例えば、バイオプシー(生検)で採取した、対象の組織の一部を被検細胞として本発明の方法に供することができる。
本発明において「被検細胞」とは、本発明の方法における検出をする際の試料(対象)となる細胞である。被検細胞は生体より分離される。即ち、生体より分離された状態の被検細胞に対して本発明が適用される。「生体より分離された」とは、被検細胞が存在する生体組織の一部を摘出することによって、被検細胞がその由来の生体と完全に隔離されている状態をいう。ステップ(2)において免疫学的検出法を採用する場合には通常、被検細胞は生体で存在していた状態、即ち周囲の細胞と結合した状態で(組織片として)調製され、本発明の方法に使用される。尚、被検細胞を周囲の細胞から分離(単離)した後に本発明の方法に使用してもよい。
2. ステップ(2)では、用意した被検細胞を対象としてTFR抗原を検出する。「TFR抗原を検出する」とは、TFR抗原が発現しているか否か(発現の有無)を調べること、又はTFR抗原の発現量を絶対量として又は相対量として把握することをいう。ここでの相対量の基準を例えば、悪性度に応じて用意した標準試料のTFR抗原量にすることができる。通常は、TFR抗原の発現の有無、及び発現している場合にはその量が調べられることになる。TFR抗原を検出する際に厳密にTFR抗原量を定量することは必須でない。
本発明の一態様ではTFR抗原の転写産物であるmRNAをターゲットとした検出法を実施する。mRNAの検出(測定)にはRT-PCR法、特異的なプローブを用いた各種ハイブリダイゼーション法(例えばノザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション)などの常法を採用できる。本発明の他の態様では、TFR抗原の発現産物(タンパク質)をターゲットとした検出法を実施する。
免疫学的手法(例えば免疫組織化学的染色法)でTFR抗原を検出することが好ましい。免疫学的手法では抗TFR抗原抗体が使用され、当該抗体の結合性(結合量)を指標としてCD46抗原タンパク質が検出される。免疫学的検出法によれば迅速で感度のよい検出が可能となる。また、操作も簡便である。尚、検出方法としては例えば、ELISA法、ラジオイムノアッセイ、FCM、免疫沈降法、イムノブロッティング等の方法が挙げられる。
免疫組織化学的染色法によれば、迅速に且つ感度よくTFR抗原を検出できる。また、操作も簡便である。従って、TFR抗原の検出に伴う被検者(患者)への負担も小さくなる。
本発明の抗TFR抗体として標識化抗体を使用すれば、標識量を指標に結合抗体量を直接検出することが可能である。従って、より簡易な方法となる。その反面、標識物質を結合させた抗TFR抗体を用意する必要があることに加えて、検出感度が一般に低くなるという問題点がある。そこで、標識物質を結合させた二次抗体を利用する方法、二次抗体と標識物質を結合させたポリマーを利用する方法など、間接的検出方法を利用することが好ましい。ここでの二次抗体とは、抗TFR抗体に特異的結合性を有する抗体であって例えばウサギ抗体として抗TFR抗体を調製した場合には抗ウサギIgG抗体を使用できる。ウサギやヤギ、マウスなど様々な種の抗体に対して使用可能な標識二次抗体が市販されており(例えばフナコシ株式会社やコスモ・バイオ株式会社など)、本発明で使用する抗TFR抗体に応じて適切なものを適宜選択して使用することができる。
標識物質には、ペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンイソチオシアネート(RITC)、アルカリホスファターゼ、ビオチン、及び放射性物質の中から任意に選択されるものが好適に用いられる。特に、ビオチンを標識物質として用いてアビジンペルオキシダーゼを反応させる方法によれば高感度の検出が可能である。
(治療用途)
本発明によれば、TfRを標的として利用することで、癌細胞特異的に作用し傷害することが可能な薬剤(癌治療剤)及びそれを用いた治療方法が提供される。本発明の薬剤の一態様では、抗TfR抗体が有効成分として含有される。本発明の薬剤の好ましい一態様では、ADCC活性を有する抗TFR抗体が有効成分として含有される。この態様の薬剤では、ADCC活性を利用した細胞障害によって治療効果を得ることができる。ADCC活性を有する抗TFR抗体として、後述の実施例に示す抗体(TFRに対する特異的結合性及びADCC活性を維持する限りにおいて一部改変したものであってもよい)、又はこれを基に構築されたタイプの異なる抗体(例えばIgG型)を用いることができる。この抗体はTFRに対する特異的結合性とADCC活性を併せ持つ。従って、TFRを発現する癌細胞に特異的に結合し、その後ADCC活性を発揮し、癌細胞に傷害を与えることが可能である。この態様の薬剤の標的癌細胞は特に限定されないが、例えば肺がん、大腸がん、胃がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、肝がん、子宮頸がん、子宮がん、卵巣がん、乳がん、頭頸部がん、皮膚がん、血液がんであるATL細胞を標的とすることができる。
本発明の抗体はDDS用の運搬体として利用することができる。つまりこの態様は抗HER1抗体等に薬物(細胞毒など)又は放射性同位元素など(これらをまとめて「活性成分」ともいう)を結合して得られる免疫複合体を提供する。殺細胞活性又は細胞傷害活性を持つ薬物(細胞毒)を含有する免疫複合体は一般にイムノトキシンと呼ばれる。
本発明で用いられる薬剤の例としては例えばデュオカルマイシン、デュオカルマイシンのアナログ及び誘導剤、CC−1065、CBIを主成分とするデュオカルマイシンアナログ、MCBIを主成分とするデュオカルマイシンアナログ、CCBIを主成分とするデュオカルマイシンアナログ、ドキソルビシン、ドキソルビシンコンジュゲート、モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン、ドラスタチン、ドレスタチン−10、コンブレタスタチン、カリケアミシン、マイタンシン、マイタンシンアナログ、DM1,DM2,DM3,DM4、DMI、アウリスタチンE、アウリスタチンEB(AEB)、アウリスタチンEFP(AEFP)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、5−ベンゾイルバレリン酸AEエステル(AEVB)、チューブリシン、ジソラゾール、エポシロン、パクリタキセル、ドセタキセル、SN−38、トポテカン、リゾキシン、エキノマイシン、コルヒチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エストラムスチン、セマドチン、エリューテロビン、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、リューロシン、リューロシダイン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ダウノルビシンコンジュゲート、マイトマイシンC、マイトマイシンA、カルミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシン誘導体、エトポシド、エトポシドリン酸塩、ビンクリスチン、タキソール、タキソテールレチノイン酸、酪酸、N8−アセチルスペルミジン並びにカンプトセシン等をあげることができるが、これだけに限定されるわけではない。
本発明において、前記の薬剤と抗体との結合は公知の方法をにより作製できる。抗体と薬剤は、それら自身が有する連結基などを介して直接結合されてもよいし、また、リンカーやなどの他の物質を介して間接的に結合されてもよい。
薬剤が直接結合される場合の連結基は、例えばSH基を用いたジスルフィド結合やマレイミドを介する結合が挙げられる。例えば、抗体のFc領域の分子内ジスルフィド結合と、薬剤のジスルフィド結合を還元して、両者をジスルフィド結合にて結合する。また、マレイミドを介する方法もある。また別の方法として、抗体内にシステインを遺伝子工学的に導入する方法もある。
抗体と薬剤を、他の物質(リンカー)を介して間接的に結合することも可能である。リンカーには、抗体または薬剤または両方と反応する官能基を1または2種類以上有することが望ましい。官能基の例としてはアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、マレイミド基、ピリジニル基等をあげることができる。また、このリンカーはペプチドリンカーであってもよい。 活性部分を抗体に結合させる技術は公知であり、例えばMonoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985)、Controlled Drug Delivery (2nd edition.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987)、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、Thorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)を参照することができる。
本発明の別の実施形態としては、抗体に毒素(トキシン)を化学的または遺伝子工学的に結合した、いわゆるイムノトキシンをあげることができる。
本発明で用いられるトキシンとしては、例えば、次のものを挙げることができる。ジフテリアトキシンA鎖、シュードモナスエンドトキシン、リシン鎖;無糖鎖リシンA鎖ゲロニン(Gelonin)サポリン(Saporin)等をあげることができる。
本発明の抗体の別の実施態様としては、本発明の抗体と放射性物質とを結合したいわゆるRI標識抗体をあげることができる。
放射性物質としては、癌治療薬として用いる場合には細胞傷害性放射性金属が好ましく、癌診断薬として用いる場合には細胞非傷害性放射性金属であるのが好ましい。また、ヨウド123(123I)、ヨウド131(I131)を使用する方法もある。
このような細胞傷害性放射性金属としては、例えばイットリウム90(90Y)、レニウム186(186Re)、レニウム188(188Re)、銅67(67Cu)、鉄59(59Fe)、ストロンチウム89(89Sr)、金198(198Au)、水銀203(203Hg)、鉛212(212Pb)、ジスプロシウム165(165Dy)、ルテニウム103(103Ru)、ビスマス212(212Bi)、ビスマス213(213Bi)、ホルミウム166(166Ho)、サマリウム153(153Sm)、ルテチウム177(177Lu)などを挙げることができる。
これらの放射性金属の中でも、90Y、153Sm、177Luが、半減期、放射線エネルギー、容易な標識反応、標識率、錯体の安定性等の点から好ましい。
一方、診断薬に用いる細胞非傷害性放射性金属としては、テクネシウム99m(99mTc)、インジウム111(111In)、インジウム113m(113mIn)、ガリウム67(67Ga)、ガリウム68(68Ga)、タリウム201(201Tl)、クロム51(51Cr)、コバルト57(57Co)、コバルト58(58Co)、コバルト60(60Co)、ストロンチウム85(85Sr)、水銀197(197Hg)、銅64(64Cu)が好適に用いられるが、これに限定されるものではない。
これらの放射性金属元素を本発明の抗体に結合させるには、該抗体に金属キレート試薬を反応させ、これに放射性金属元素を反応させて錯体とするのが好ましい。このようにして得られた修飾抗体は、放射性金属元素が金属キレート試薬を介して本発明の抗体に結合している。
このような錯体形成に用いられる金属キレート試薬の例としては、例えば(1)8−ヒドロキシキノリン、8−アセトキシキノリン、8−ヒドロキシキナルジン、硫酸オキシキノリン、O−アセチルオキシン、O−ベンゾイルオキシン、O−p−ニトロベンゾイルオキシン、キノリン骨格を有するキノロン系化合物であるノルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、フレロキサシン、スパルフロキサシン等のキノリン誘導体;(2)クロラニル酸、アルミノン、チオ尿素、ピロガロール、クペロン、ビスムチオール(II)、ガロイル没食子酸、チオリド、2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラフェニルアルソニウムクロライド等の化合物;(3)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびこれらに類似した骨格を有するジヒドロキシエチルグリシン、ジアミノプロパノール四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸塩酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、ニトリロトリス(メチレンスルホン酸)三ナトリウム塩、トリエチレンテトラミン六酢酸、メチルDTPA、シクロヘキシルDTPA、アミノベンジルEDTA、イソチオシアノベンジルEDTA、イソチオシアノベンジルDTPA、メチルイソチオシアノベンジルDTPA、シクロヘキシルイソチオシアノベンジルDTPA、マレイミドプロピルアミドベンジルEDTA、マレイミドペンチルアミドベンジルEDTA、マレイミドデシルアミドベンジルEDTA、マレイミドペンチルアミドベンジルDTPA、マレイミドデシルアミドベンジルEDTA、マレイミドデシルアミドベンジルDTPA;(4)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(Cyclen)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(Cyclam)、イソチオシアノベンジルDOTA、イソチオシアノベンジルNOTA等が挙げられる。
これらの金属キレート試薬のうち、イソチオシアノベンジルDOTA、メチルイソチオシアノベンジルDTPA、シクロヘキシルイソチオシアノベンジルDTPAが金属キレートの容易な抗体への導入反応、標識率、錯体の安定性等の点で好ましい。
本発明の抗体への放射性金属元素の結合は、当業者であれば常法に従って行うことができる。例えば本発明の抗体に金属キレート試薬を反応させ、予め標識前駆体を調製しておき、次いで放射性金属元素を反応させることにより行うことができる。
本発明の医薬組成物に含有させる活性成分として、所望の生物活性を有するタンパク質又はペプチドを使用してもよい。このような目的において使用可能なタンパク質等の候補として、アブリン、リシンA、シュードモナス・エキソトキシン、ジフテリア毒素、腫瘍壊死因子、インターフェロン-γ、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)リンホカインを例示できる。
本発明の医薬組成物の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
製剤化する場合の剤型も特に限定されず、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤などとして調製できる。
本発明の薬剤を用いた治療においては、癌細胞又は成人T細胞白血病細胞を保有する対象(患者)に本発明の薬剤が投与される。本発明の薬剤はその形態に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、腹腔内注射、標的細胞への直接導入など)によって対象(患者)に適用され得る。
薬剤の投与量は症状、患者の年齢、性別、及び体重などによって異なるが、当業者であれば適宜適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約0.001mg〜約100mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの設定においては、患者の病状や薬剤の効果持続時間などを考慮することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
実施例1:癌細胞株を使用したファージ抗体スクリーニング
(1)癌細胞に結合するファージ抗体のスクリーニング(肝癌細胞株HepG2)
まずHepG2細胞を15cm デイッシュで培養し、それを2mg/ml collagenase I(Gibco BRL)/cell dissociation buffer(Gibco BRL)でデイッシュから解離させた。それを冷却したPBSで洗い、4x107を使用した。これに1x1013cfuのヒト抗体ファージライブラリー(特開2005−185281号公報、WO2008/007648号公報、WO2006/090750号公報を参照)を混ぜ、反応液の終濃度を1%BSA-0.1%NaN3/MEM、容積1.6mlとし、4℃にて4時間ゆっくり回転させて反応させた。反応終了後、反応液を二つに分け、それぞれを0.6mlの有機溶液(dibutyl phtalate cycloheximide 9:1)の上に重層し、マイクロ遠心機にて3000rpmの遠心力を2分間作用させ、細胞をチューブの底に沈降させた。それぞれのチューブについて、溶液を捨て、細胞を0.7mlの1%BSA/MEMで懸濁、0.7mlの有機溶媒の上に重層して遠心した。この操作をもう一度繰り返したのち、溶液を捨て、細胞を0.3mlのPBSで懸濁、液体窒素で凍結し、37℃で融解した。
これをOD0.5の大腸菌DH12S 20mlに1時間感染させ、その一部をアンピシリンプレートに蒔いて回収されたファージのtiterを算出した。ファージ感染大腸菌は600mlの2xYTGA培地(2xYT, 200μg/ml ampicillin sulfate, 1% glucose)にて30℃で通夜培養した。この通夜培養10mlを2xYTA培地(2xYT, 200μg/ml ampicillin sulfate)200mlと混ぜ、37℃にて1.5時間培養後ヘルパーファージKO7を1x1011入れ、37℃にて1時間培養したのち、800mlの2xYTGAK(2xYT, 200μg/ml ampicillin sulfate, 0.05% glucose, 50μg/ml kanamycin)を入れて30℃にて通夜培養した。これを8000rpmにて10分間遠心して上清1lを調製、それに200mlのPEG液(20% polyetyleneglycol 6000, 2.5M NaCl)を混ぜてよくかきまぜたのち、8000rpm 10分間の遠心を行いファージを沈殿させた。これを10mlのPBSに懸濁し、その一部を使用して大腸菌感染数を調べた。これが1stスクリーニングのファージである。
2edスクリーニングには培養細胞2x107と1stファージ1x1010を使用し、反応液の容積を0.8mlとした。反応液は1%BSA-0.1%NaN3/MEMで、全体のスケールを1stスクリーニングの半分で行った。
3rdスクリーニングは2ndファージ1x109を使用する以外は2ndスクリーニングと同じ条件で行った。
(2)ファージ抗体の抗体発現能力の解析
スクリーニングによって得られた大腸菌を希釈して、100μg/mlのampicillinの入った普通寒天培地に蒔き、得られるコロニーをピックアップして2xYTGA培地にて30℃通夜培養、クラボウのPI-50にてDNAを抽出、dideoxy法で塩基配列を決定した。また、この通夜培養0.05mlを1.2mlの2xYTAI(2xYT, 200μg/ml ampicillin sulfate,0.5mM IPTG)に植えて30℃にて通夜培養、マイクロ遠心機にて15000rpm 5分間遠心して上清をとった。
抗体はcp3融合タンパクとして発現されるので、それを用いた発現検討を行った。即ち、まず得られた上清をMaxisorp(NUNC)に37℃にて2時間反応させたのち、液を捨て、5%BSAを37℃にて2時間反応させてブロッキングを行った。液を捨て、0.05%Tween/PBSで2000倍希釈したウサギ抗cp3抗体(株式会社医学生物学研究所)を室温にて1時間反応させたのちPBSで洗浄し、0.05%Tween/PBSで2000倍希釈したHRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(株式会社医学生物学研究所)を室温にて1時間反応させたのちPBSで洗浄し、100μlのOPD液を室温にて15分反応させ、2M硫酸アンモニウムにて反応を停止し、SPECTRAmax 340PC(Molecular Devices)にて492nmの吸光度を測定した。吸光度 0.5以上を陽性とした結果、1012種のクローンが陽性となった。
(3)DNA配列の解析
上記(2)により抗体の発現の確認されたファージ1012種類に関して、既存法によりDNA配列を解析し、欠損領域を保持する不完全な抗体や配列が重複する抗体を排除し、独立した抗体配列を持つファージ抗体を410個を選別した。
同様の手法により、下記の表1に示す21種類の癌細胞に関して、上記(1)〜(3)のスクリーニングにより、独立配列を有するファージ抗体として以下の合計1863個を確立した。
実施例2:TfRの分泌型抗原を用いたELISA法による抗体の結合性評価試験
(1)TfR分泌細胞の調整
癌細胞#MIAPaCa2, SKOv3(TfR高発現株)より、常法によりTfR 細胞外ドメインのcDNAを調整したのち、 pCMV-Script(クロンテク社製)に挿入、TfR発現ベクターを作成した。この発現ベクターを細胞株#293T へ導入しTfRを分泌する発現細胞を作成した。
(2)ELISA系の作成
TfR分泌細胞より得られたTfR抗原を用いて下記の要領でELISAによる結合活性評価を行った。Maxisorp immuno moduleに抗原を感作させた。具体的には10μg/mlの濃度で 50μl/well 37℃で2時間反応させた。その後、上清を捨て、ブロッキング操作に入った。具体的にはBlocking液(5% スキムミルク / 0.05% NaN3 / PBS) 200μl/well 37℃で2時間反応させた。その後ブロッキング溶液を除き、リン酸バッファーで1回洗った。その後、一次抗体として上記にあるサンプル抗体の発現培養上清100μl/well 37℃で1時間反応させた。その後上清を除き、リン酸バッファーで5回洗った。次に二次抗体としてRabbit anti-cp3ポリクローナルをPBS/0.05%Tween20で5000倍希釈したものを100μl/well 37℃で1時間反応さえて上清を除き、リン酸バッファーで5回洗った。次に二次抗体として anti-rabbit IgG(H+L)-HRPをPBS/0.05%Tween20で2000倍希釈したものを100μl/well 37℃で1時間反応させた。その後上清を除き、リン酸バッファーで5回洗った。その後、発色試薬として OPD in 0.1Mクエン酸リン酸Buffer pH5.1 0.01%H2O2 100μl/wellで加え室温で5分反応させた。その後 2N H2SO4 100μl/well で加えて発色反応を停止した。その後、SPECTRAmax 340PC(Molecular Devices)にて492nmの吸光度を測定した。
(3)TfR固相ELISAによる、抗TfR抗体の選択
実施例2で得られたファージ抗体1863種類を、ELISA系で評価した結果、下記15種類の独立した配列を保持する抗体がヒトTfRに特異的反応性を示すことが確認された。各抗体クローンのアミノ酸配列は次の通りである。
(1)Tfr001抗体
VH CDR1:配列番号1、VH CDR2:配列番号2、VH CDR3:配列番号3
VL CDR1:配列番号4、VL CDR2:配列番号5、VL CDR3:配列番号6
(2)Tfr002抗体
VH CDR1:配列番号7、VH CDR2:配列番号8、VH CDR3:配列番号9
VL CDR1:配列番号10、VL CDR2:配列番号11、VL CDR3:配列番号12
(3)Tfr003抗体
VH CDR1:配列番号13、VH CDR2:配列番号14、VH CDR3:配列番号15
VL CDR1:配列番号16、VL CDR2:配列番号17、VL CDR3:配列番号18
(4)Tfr004抗体
VH CDR1:配列番号19、VH CDR2:配列番号20、VH CDR3:配列番号21
VL CDR1:配列番号22、VL CDR2:配列番号23、VL CDR3:配列番号24
(5)Tfr005抗体
VH CDR1:配列番号25、VH CDR2:配列番号26、VH CDR3:配列番号27
VL CDR1:配列番号28、VL CDR2:配列番号29、VL CDR3:配列番号30
(6)Tfr006抗体
VH CDR1:配列番号31、VH CDR2:配列番号32、VH CDR3:配列番号33
VL CDR1:配列番号34、VL CDR2:配列番号35、VL CDR3:配列番号36
(7)Tfr007抗体
VH CDR1:配列番号37、VH CDR2:配列番号38、VH CDR3:配列番号39
VL CDR1:配列番号40、VL CDR2:配列番号41、VL CDR3:配列番号42
(8)Tfr008抗体
VH CDR1:配列番号43、VH CDR2:配列番号44、VH CDR3:配列番号45
VL CDR1:配列番号46、VL CDR2:配列番号47、VL CDR3:配列番号48
(9)Tfr009抗体
VH CDR1:配列番号49、VH CDR2:配列番号50、VH CDR3:配列番号51
VL CDR1:配列番号52、VL CDR2:配列番号53、VL CDR3:配列番号54
(10)Tfr010抗体
VH CDR1:配列番号55、VH CDR2:配列番号56、VH CDR3:配列番号57
VL CDR1:配列番号58、VL CDR2:配列番号59、VL CDR3:配列番号60
(11)Tfr011抗体
VH CDR1:配列番号61、VH CDR2:配列番号62、VH CDR3:配列番号63
VL CDR1:配列番号64、VL CDR2:配列番号65、VL CDR3:配列番号66
(12)Tfr012抗体
VH CDR1:配列番号67、VH CDR2:配列番号68、VH CDR3:配列番号69
VL CDR1:配列番号70、VL CDR2:配列番号71、VL CDR3:配列番号72
(13)Tfr013抗体
VH CDR1:配列番号73、VH CDR2:配列番号74、VH CDR3:配列番号75
VL CDR1:配列番号76、VL CDR2:配列番号77、VL CDR3:配列番号78
(9)Tfr014抗体
VH CDR1:配列番号79、VH CDR2:配列番号80、VH CDR3:配列番号81
VL CDR1:配列番号82、VL CDR2:配列番号83、VL CDR3:配列番号84
(15)Tfr015抗体
VH CDR1:配列番号85、VH CDR2:配列番号86、VH CDR3:配列番号87
VL CDR1:配列番号88、VL CDR2:配列番号89、VL CDR3:配列番号90
実施例3:抗TfRファージ抗体の、TfR結合性の確認
(1)免疫沈降とウエスタンブロット
実施例2で得られた15種類のファージを大腸菌に感染させ、抗体scFVを発現させたのち、カラム精製により、15種類の抗体を取得した。Glass filterにCNBr-activated Sepharose 4Bを抗体量5mgに対し、膨張後のゲル1mlの割合により抗体を固相した。固相化された抗体(以降、抗体ビーズと表記)約60μl分(溶液として約150μl)を2mlチューブに入れ、そこに4mM biotinを1/10 volume(15μl程)添加した。これに、培養皿0.5枚分のlysate (600μl)と60μlのbiotin液を混合したものを加え、4℃にて撹拌させながら数時間反応させた後、チューブを遠心(5500g,1分, 4℃)し、上清を除いた。これに洗浄用biotin/lysis-T buffer(0.5mM biotin, 0.1%Tween20/PBS)を800μl加え、転倒混和を2、3回行ったのち、チューブを遠心(5500g, 1分, 4℃)し、上清を除いた。この洗浄操作を再度行った後、抗体ビーズに溶出用クエン酸液(50mMクエン酸pH2.5)を30μl加え、撹拌したのち、チューブを遠心(5500g, 1min, 4℃)し、上清を回収した。残った抗体ビーズに再度溶出用クエン酸溶液を30μl加え、撹拌し、チューブを遠心(5500g, 1min, 4℃)し、上清を回収した。この溶出操作をさらに3回繰り返してサンプル溶液を回収し、それに3M Trisを加えて中和した。このサンプルをSDS-PAGEにて泳動し、銀染色にてバンドの確認を行った。このサンプルについては、同時にストレプトアビジン−HRP(Anti-Streptavidin, IgG Fraction, Conjugated to Peroxidase CORTEX biochem 社)を使用したウエスタンブロットを行いビオチン化された膜蛋白のバンドを検出した。
免疫沈降およびウエスタンブロットの結果を図1に示す。図1は免疫沈降後のサンプルをSDSPAGEによって分離し得られたバンドパターンである。四角枠によって囲まれているバンドをゲル内消化し、質量分析計にて測定した。
(2)免疫沈降法により得られた抗原タンパクの質量分析による同定
(ゲル内トリプシン消化)
検出された膜蛋白に対応する部分をゲル内でトリプシン消化し、ペプチドを回収した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を常法に従い行い、クマシーブリリアントブルーで染色することで得られたバンドを切り出した。これを200mM重炭酸アンモニウム-50%アセトニトリル溶液に浸し、37℃で45分間振盪後、溶液を廃棄して、同じ操作を2回繰り返すことでクマシーブリリアントブルーを除いた。このゲルを減圧乾燥し、それに40mM重炭酸アンモニウム(pH8.1)-10%アセトニトリルに溶かしたトリプシン(20μg/ml)をゲルスライスの単位面積(mm2)あたり4μl加えて、室温で1時間置いて充分に浸潤させた。これに先に加えた量の2.5倍量のトリプシン溶液を加えて、37℃で18時間静置した。これをポアサイズが0.22μmのフィルター付きチューブで濾過して、トリプシンにより抗原が切断されて生じたペプチドを回収した。
(質量分析による抗原の同定)
ゲル内トリプシン消化により得られた試料を、エレクトロスプレーイオン化方式イオントラップ四重極型質量分析装置につないだHPLCにかけた。HPLCの逆相クロマトグラフィーカラムから、0.1%TFAを含む0%から80%のアセトニトリルの直線濃度勾配変化により、疎水性の違いで順次溶出される各ペプチドをエレクトロスプレー法でイオン化し、各ペプチドの質量及び内部アミノ酸配列を決定した。得られたアミノ酸内部配列のセットを、公開されているTfRアミノ酸配列データベースを用いて検索した。その結果実施例により得られた13個のファージがTfRに結合することが確認された。
実施例4:TfR高発現細胞株結合性の評価(FACS)
単離した各種抗体クローンの各種細胞株に対する反応性を以下の通りFCMで確認した。実験操作は次の通りとした。まず、付着性細胞株については6穴プレート(Falcon 3516)において、ATL由来細胞株などの浮遊細胞株は浮遊培養フラスコ(70ml(スラントネック))において、培地(RPMI-1640:Sigma-Aldrich 社製、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリンーストレプトマイシン溶液)を用い、CO2インキュベーター内、37℃で培養したものを使用した。
付着性細胞株は2mg/ml collagenase I(Gibco BRL)/cell dissociation buffer(Gibco BRL)で培養皿から解離させたのち、10%FBS/D MEMにて回収した。一方、浮遊系細胞の場合は一度培地を除くためにそのままの状態で遠心分離(400xg, 4℃, 2分)した。このような操作の後、各細胞を2.5%BSA, 0.05%NaN3/PBS(BSA液)にて洗浄し、2.5% normal goat serum/BSA液100μlに懸濁して氷上に30分静置した後、106個/wellになるように分注し、遠心分離(400xg, 4℃, 2分)し上清を除いた。
抗体を、5μg/mlになるように加えて、氷上に1時間静置した。これをBSA液にて一度洗浄したのち、抗cp3マウスモノクローナル抗体(株式会社医学生物学研究所)5μg/ml BSA液100μlにて懸濁し、氷上に1時間静置した。これをBSA液にて一度洗浄したのち、Alexa488結合抗マウスIgGヤギ抗体(Molecularprobe社製)5μg/ml BSA液100μlにて懸濁し、氷上に1時間静置した。これをBSA液にて二度洗浄したのち、BSA液500μlにて懸濁し、固定液(ホルムアル デヒド)50μlを添加し、10分静置した。その後PBS 150μl添加し、セルストレイナー(Becton Dickinson社製)にて処理したのち、Becton Dickinson社製FACScaliver(FCM)にて 細胞集団の蛍光強度を解析した。その結果、15種類の抗体は結合性評価を行ったTfR高発現をしている癌細胞株(A431、PANC1、KATOIII、MIAPaCa2)全てにおいて有意なピークシフトを示した。
実施例5:癌患者より外科的に切除された臨床検体を用いた免疫染色
(1)切片作製
摘出された組織は5mm×5mm×10mmほどの大きさにし、4℃の4%PFA/0.01%グルタールアルデヒド/0.1Mカコジル酸バッファーに入れ(PFAは和光純薬、グルタールアルデヒドは関東化学、カコジル酸ナトリウムはSIGMA)、電子レンジ(SHARP)を用いてマイクロウェーブ固定した後に、同固定液にて4℃で1時間再固定した。それから10%sucrose/PBSに移し4℃にて4時間浸漬後、15%sucrose/PBSに置換して4℃にて4時間浸漬したのち、20%/sucrose/PBSに置換して4℃にて一晩浸漬させ、OTC compoundにて包埋、ドライアイス・ヘキサン中で急速に凍結した。これを、クリオスタット(Reichert-Jung 2800 FRIGCUT E)にて4μmの厚さに薄切し,シランコートスライドガラス(MATSUNAMI)に貼り付け、冷風ドライヤーにて30分風乾した。
(2)染色
切片を貼付したスライドガラスは、PBS中で5分間ずつ3回浸漬して親水化した。次に50μl の0.3%H2O2/0.1%NaN3を滴下し、室温にて10分間反応させて内因性ペルオキシダーゼのブロッキングをおこなった後、PBSで5分間ずつ3回洗浄した。そして2%BSA/PBS中で室温で10分間反応させ、非特異反応のブロッキングをした。その後、余分な液を落としたところへファージ抗体サンプル50μlを滴下し,室温にて1時間反応させたのち、PBSで5分間ずつ3回洗浄した。次に、50μlの抗CP3ウサギ抗体5μg/mlを滴下し、室温にて45分間二次抗体反応させたのち、PBSで5分間ずつ3回洗浄した。そして50μlのパーオキシダーゼ標識デキストラン結合抗ウサギイムノグロブリン・ヤギポリクローナル抗体(DAKO)を滴下して、室温にて30分間三次抗体反応を行った。これをPBSで5分間ずつ3回洗浄したのち、50μl のDAB・H2O2発色液を滴下し、褐色に発色後、蒸留水を満たしたバットに移して反応を停止させた。その後10分間水洗したのち、ヘマトキシリンによる核染後,脱水・透徹し、マリノールにて封入し、鏡検した。免疫染色の結果の例を図2に示す。
実施例6:IgG型抗体への変換
(IgG型抗体遺伝子の構築)
抗体医薬としての有効性を探るため、一部の抗体をIgG型へ変換した。
まず、scFVcp3型抗体のVH、VL遺伝子を用い、それをIgG1のFc領域と遺伝子の塩基配列内にクローニングする際必要な制限酵素サイトが無いことを確認した。抗体遺伝子を鋳型とし、H鎖とL鎖増幅用プライマーを用い、PCRを行った。増幅産物をIgG1 construction vectorのCMVプロモーター下流へライゲーションし、IgG型抗体遺伝子を含むプラスミドDNAを得た。
(IgG型抗体の発現)
プラスミドDNAのCHO-K1細胞へのトランスフェクションにはGenePORTER Reagent( Gene Therapy Systems社:T201007)を使用した。まず、60mm培養皿にCHO-K1細胞が2×104cells/mlになるように、トランスフェクションの前日から準備しておいた(培地はα-MEM(Invitrogen:12561-056)に10%FCS(エキテック社:268-1)添加したものを使用)。
プラスミドDNA 8μgを250μLの血清非含有培地(Serum Free Medium、以下SFMと略す-(Invtrogen:12052-098 CHO-S-SFMII))に溶かし、0.22μmのフィルターにかけた。GenePORTER Reagent 40μLを250μLのSFMに加えた。
SFMに溶かしたプラスミドDNAとGenePORTER Reagentをすばやく混ぜ、室温30min静置した。
細胞をSFM 2mlで2回洗い、プラスミドDNA-GenePORTER mixture (Transfection Medium)を細胞の入ったプレートにゆっくり加え、インキュベーター内、37℃、5時間培養した。
トランスフェクション用培地を吸引し、αMEM 10%FCSで2回洗った後、αMEM 10%FCSを5ml加え、インキュベーター内、37℃、48時間培養した。
αMEM 10%FCS+700μg/ml G418(Sigma:G7034)の培地10mLに置き換え、セレクションを開始した(以後のmediumはαMEM 10%FCS+700μg/mL G418を使用)。37℃、48時間培養後、細胞をPBS 10mLにて洗浄し、0.25%Trypsin-EDTA(Sigma T4049)750μLにて処理後、αMEM 5mL加えプレートより剥離、回収し細胞数を測定した。その結果を元に限界希釈を10cells/200μL/well 96well 2platesの条件で行った。14日間培養後、各wellの培養上清を用いてELISAを行い、IgG型抗体の発現を確認した。
(培養上清からの発現タンパク(IgG)の精製)
Protein G Sepharose 4 Fast Flow(amersham pharmacia biotech:17-0618-01) 1mLをカラムにつめ、5mLのPBSで平衡化した。培養上清をアプライ、流速1滴/2秒で送液し、発現タンパク(IgG)をカラムに結合させた。10mLのPBSを流速1滴/2秒で送液し、非吸着成分を洗浄後、6mLの溶出バッファー(0.2M グリシン-HCl,pH3)を流速1滴/秒で送液、溶出液を1mLずつ1.5mlチューブに回収した。回収チューブにはあらかじめ中和バッファー(3M Tris-HCl)400μLを添加、回収と同時に中和した。溶出液をまとめ750μLまで濃縮、溶液置換(PBS、complete、0.01%NaN3)を行い、SDS−PAGEによって抗体タンパクの濃度を算出した。
実施例7:in vivoの薬効評価
(1)ATLモデルにおける抗TfR抗体の抗腫瘍効果
ATL細胞株MT−2細胞を10%FBS添加したRPMI1640培養液で培養した。移植時遠心により細胞を回収し、細胞を5×107/mlになるようにRPMI1640に懸濁した。NOG/Jicマウス(メス、7週齢、動物実験中央研究所)の右腹側部皮下に上記の細胞懸濁液100μlを移植した。移植後、週二回ノギスにより腫瘍径を測定し、腫瘍平均体積が120mm3前後に到達した時点で、腫瘍体積に対する無作為化割付により、マウスを2群(n=5)に分けた。抗体投与群にPBSで希釈したTfR006抗体をマウス一匹あたり15mg/kgになるように尾静脈より投与した。陰性コントロール群に0.2mLPBSを尾静脈より投与した。投与は、週2回(3日または4日毎)、合計6回行った。投与後も同様に週2回ノギスによる腫瘍径の測定を行い、各群の腫瘍体積を求めた。抗腫瘍効果の判定は最終測定日の腫瘍体積について、PBS群をコントロールとしたパラメトリックDunnet多重比較検定により判定した。
腫瘍体積は下式にて算出した。
腫瘍体積=(短径)2 × 長径 × 0.5
腫瘍体積の平均値の経時的変化を図3に示す。図に示したように、TfR006抗体はATLモデルにおいて強い腫瘍縮小効果を示した。
(2)膵臓癌モデルにおける抗TfR抗体の抗腫瘍効果
膵臓癌由来細胞株PK−45をPRPMI1640+10%FBSで培養した。移植時0.25%トリプシンにより細胞をプレートから剥がし、PBSで一回洗浄した後、RPMI1640に懸濁した。SCIDマウス(メス、7週齢、日本クレア)の右腹側部皮下に5×106個/マウスとなるように細胞懸濁液200μl/匹で移植した。移植後、ノギスによる毎日腫瘍径を測定し、下記の式により体積を求めた。腫瘍平均体積が150mm3以上に至る時点で、群分けソフト(EXSASversion7.6 シーエーシ)によりマウスを二群(n=5)に分けた。抗体投与群にPBSで希釈したTfR006抗体をマウス一匹あたり15mg/kgになるように尾静脈より投与した。陰性コントロール群に0.2mLPBSを尾静脈より投与した。投与は、週2回(3日または4日毎)、合計6回行った。投与後週2回ノギスによる腫瘍径の測定を行い、各群の腫瘍体積を求めた。抗腫瘍効果の判定は最終測定日の腫瘍体積について、PBS群をコントロールとしたパラメトリックDunnet多重比較検定により判定した。腫瘍体積は下式にて算出した。
腫瘍体積=(短径)2 × 長径 × 0.5
腫瘍体積の平均値の経時的変化を図4に示す。図に示したように、膵臓がんゼノグラフトモデルにおいて、抗体の投与群は腫瘍増殖の抑制が認められた。この結果から、TfR006抗体はTfR陽性発現癌細胞の増殖に対する強い抑制効果を示唆した。

Claims (10)

  1. 重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)としてそれぞれ配列番号1〜3、7〜9、13〜15、19〜21、25〜27、31〜33、37〜39、43〜45、49〜51、55〜57、61〜63、67〜69、73〜75、79〜81、又は85〜87の何れかのアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、
    軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)としてそれぞれ配列番号4〜6、10〜12、16〜18、22〜24、28〜30、34〜36、40〜42、46〜48、52〜54、58〜60、64〜66、70〜72、76〜78、82〜84、又は88〜90の何れかのアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する、TfRに対する特異に結合する抗体。
  2. 下記(1)から(15)から選択される、TfRに対する特異的に結合する抗体。
    (1)配列番号1の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号2の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号3の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号4の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号5の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号6の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (2)配列番号7の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号8の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号9の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号10の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号11の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号12の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (3)配列番号13の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号14の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号15の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号16の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号17の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号18の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (4)配列番号19の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号20の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号21の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号22の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号23の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号24の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (5)配列番号25の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号26の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号27の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号28の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号29の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号30の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (6)配列番号31の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号32の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号33の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号34の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号35の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号36の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (7)配列番号37の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号38の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号39の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号40の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号41の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号42の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (8)配列番号43の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号44の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号45の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号46の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号47の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号48の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (9)配列番号49の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号50の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号51の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号52の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号53の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号54の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (10)配列番号55の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号56の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号57の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号58の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号59の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号60の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (11)配列番号61の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号62の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号63の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号64の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号65の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号66の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (12)配列番号67の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号68の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号69の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号70の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号71の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号72の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (13)配列番号73の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号74の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号75の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号76の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号77の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号78の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (14)配列番号79の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号80の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号81の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号82の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号83の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号84の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
    (15)配列番号85の重鎖第1相補性決定領域(VH CDR1)、配列番号86の重鎖第2相補性決定領域(VH CDR2)、配列番号87の重鎖第3相補性決定領域(VH CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号88の軽鎖第1相補性決定領域(VL CDR1)、配列番号89の軽鎖第2相補性決定領域(VL CDR2)、配列番号90の軽鎖第3相補性決定領域(VL CDR3)からなるCDR、又はそれと実質的に同一のCDRを有する軽鎖可変領域とを有する抗体;
  3. ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項1又は2に記載の抗体。
  4. 請求項1から3の何れか1項に記載の抗体を含む、医薬組成物。
  5. 上記抗体に、細胞傷害性物質が結合している、請求項4に記載の医薬組成物。
  6. 細胞傷害性物質が薬剤、トキシン、又は放射性物質である、請求項5に記載の医薬組成物。
  7. 抗がん剤として使用される、請求項4から6の何れか1項に記載の医薬組成物。
  8. がんが、血液がんまた固形がんである、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 血液がんが成人T細胞白血病(ATL)である請求項7に記載の医薬組成物。
  10. 固形がんが肺がん、大腸がん、胃がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、肝がん、子宮頸がん、子宮がん、卵巣がん、乳がん、頭頸部がん、皮膚がんである、請求項7に記載の医薬組成物。
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