JP5354634B2 - ヒトabh8タンパク質、それをコードする遺伝子、およびこれらの治療的又は診断的用途 - Google Patents

ヒトabh8タンパク質、それをコードする遺伝子、およびこれらの治療的又は診断的用途 Download PDF

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Description

本発明は、AlkBホモログ(ABH)ファミリーのメンバーであるABH8タンパク質、それをコードする遺伝子、およびこれらの治療的又は診断的用途に関する。特に、本発明は、ヒトABH8タンパク質、それをコードする遺伝子、およびこれらの治療的又は診断的用途に関する。
DNA損傷の修復は、ゲノムの完全性を維持し細胞が生存しつづけるために不可欠である[非特許文献1]。哺乳類の場合、修復系の欠陥は細胞の持つ遺伝情報の変化あるいは損失をもたらすだけでなく、その構造を劇的に変化させることでそこにコード化されている遺伝情報の読み取りに重大な影響を与えることがあり、それは癌や神経疾患、発達障害などに結びつく[非特許文献2]。アルキル化によるDNA損傷もその一つである。
細胞は、DNA中のメチル化された塩基の修復には3−メチルアデニン−DNAグリコシラーゼを用いて修復するか[非特許文献3、非特許文献4]、O6−メチルグアニン−DNAメチルトランスフェラーゼを用いてアルキル基を損傷箇所から酵素自身のシステイン残基へと転移させることで損傷を修復することが知られていた[非特許文献5、非特許文献6]。
2002年に、B.SedgwickらとE.Seebergらによって、細菌のAlkBタンパク質がこれまでに例を見ない機構によってDNAのアルキル化損傷を修復することが報告された[非特許文献7、非特許文献8]。彼らは、AlkBが、酸素、2−オキソグルタル酸、鉄の存在下において1−メチルアデニン、3−メチルシトシンを酸化的脱メチル化することを示し、2−オキソグルタレート−Fe(II)−オキシゲナーゼスーパーファミリーに属することを示唆した。その後、E.Seeberg、H.E.KrokanらによってAlkBの2種類のヒト相同体ABH2、ABH3がAlkBと同様の機構でDNA、RNAのアルキル化損傷を修復することが示された[非特許文献9]。ABH3は、ヒト前立腺癌で高発現している遺伝子として本発明者らにより既に同定されているProstate Cancer Antigen‐1(PCA−1)と同一の分子であり、AlkBとC末端部分で高い相同性を有していることから、AlkBのヒトホモログとしての機能が推測された[非特許文献10]。
また最近、J.M. Bujnickiらは、AlkB homologous regionの相同性に基づくin silicoの解析により、PCA−1は他の6種の分子とともにAlkB homolog(ABH)ファミリーを構成することを報告した[非特許文献11、非特許文献12]。彼らはこれまでに報告されている3種類のヒトABHに加えて、新たにABH4からABH7までの4つの分子の存在を明らかにし、タンパク質の二次構造のホモロジー解析によりこれらの分子もAlkBやABH2、ABH3と同様に、2−オキソグルタレート−Fe(II)−オキシゲナーゼスーパーファミリーに属することを示唆した。それらABHファミリー分子の模式図を図1に示す。さらにJ.M. Bujnickiらは、ABH8についてMacaca fascicularis(カニクイザル)などでその存在を推測したが、ヒトのcDNAデータベース(NCBI library)に基づくホモロジー解析では、エクソン6、9、および10が欠損しフレームシフトエラーが認められる不完全なスプライシングフォーム体しか検出されなかったと報告している。
PC. Hanawalt, Preferential repair of damage in activety transcribed DNA sequences in vivo, Genome. 1989; 31(2): 605−11, Review VA. Bohr, DNA repair at the level of the gene: molecular and clinical considerations, J Cancer Res Clin Oncol. 1990; 116(4): 384−91, Review J. Labahn, OD. Scharer, et al. Structural basis for the excision repair of alkylation−damaged DNA, Cell. 1996; 86(2): 321−9 BP. Engelward, A. Dreslin, et al. Repair−deficient 3−methyladenine DNA glycosylase homozygous mutant mouse cells have increased sensitivity to alkylation−induced chromosome damage and cell killing, EMBO J. 1996; 15(4): 945−52 P. Karran, T. Lindahl, et al. Adaptive response to alkylating agents involves alteration in situ of O6−methylguanine residues in DNA, Nature. 1979; 280(5717): 76−7 R. Montesano, R. Becker, et al. Repair of DNA alkylation adducts in mammalian cells, Biochimie. 1985; 67(9): 919−28, Review S.C. Trewick, T.F. Henshaw, et al. Oxidative demethylation by Escherichia coli AlkB directly reverts DNA base damage, Nature. 2002;419(6903):174−8. P.O. Falnes, R.F. Johansenand Erling Seeberg, AlkB−mediated oxidative demethylation reverses DNA damage in Escherichia coli, Nature. 2002 ;419(6903):178−82. P.A. Aas, M. Otterlei, et al. Human and bacterial oxidative demethylases repair alkylation damage in both RNA and DNA, Nature. 2003 ;421(6925):859−63. N. Konishi, M. Nakamura, et al. High expression of a new marker PCA−1 in human prostate carcinoma, Clin Cancer Res. 2005 ;11(14); 5090−7 M.A. Kurowski, A.S. Bhagwat, et al. Phylogenomic identification of five new human homolog of the DNA repair enzyme AlkB, BMC Genom. 2003 ;4(1) :48. F. Drablos, E. Feyzi, et al. Alkylation damage in DNA and RNA−repair mechanisms and medical significance, DNA Repair (Amst). 2004 ;3(11) :1389−1407. Review
このような状況下で、新たなヒトABHファミリー分子を同定し、それを癌や神経疾患、発達障害等の疾患の治療または診断等へ利用することが期待されている。
本発明者らは、新たなヒトABHファミリー分子を同定することを目的として、カニクイザル等で存在が推測されていたABH8のヒトカウンターパートのクローニングを試み、それに成功した。さらに、その分子のそのヒト正常組織および癌細胞株における発現解析、発現阻害の影響の解析等を行い、ヒトABH遺伝子の発現を阻害することによって、癌細胞のアポトーシスが誘導されることを確認した。また、いくつかのがん組織において、ABH8タンパク質が免疫組織化学染色に強く反応することを確認した。
したがって、本発明は、以下のポリヌクレオチド、タンパク質、がん治療剤、がん診断剤、ヒトABH8遺伝子の発現阻害物質またはヒトABH8タンパク質の活性阻害物質のスクリーニング方法、該阻害物質を含む癌治療剤、本発明のABH8タンパク質もしくはABH8遺伝子を生体試料中のがんマーカーとして検出する方法等を提供する。
(1)(a)配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列番号2のアミノ酸配列からなるヒトABH8タンパク質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(c)(a)もしくは(b)のポリヌクレオチドと相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ABH8タンパク質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、または
(d)配列番号2のアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなるABH8タンパク質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド。
(2)上記(1)に記載の上記(c)または(d)のポリヌクレオチドであって、上記(a)または(b)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に対して97%以上の相同性を有するヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチド。
(3)上記(1)または(2)に記載のポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
(4)配列番号2のアミノ酸配列からなるヒトABH8タンパク質、または
配列番号2のアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるABH8タンパク質。
(5)上記(4)に記載のABH8タンパク質のアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド。
(6)ヒトABH8遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤。
(7)上記ヒトABH8遺伝子の発現阻害物質が、
(a)ヒトABH8遺伝子の発現をRNAi効果により阻害する作用を有する核酸、
(b)ヒトABH8遺伝子の転写産物またはその一部に対するアンチセンス核酸、
および
(c)ヒトABH8遺伝子の転写産物を特異的に切断するリボザイム活性を有する核酸、
からなる群から選択される物質を含む、上記(6)に記載のがん治療剤。
(8)上記核酸が、配列番号16、配列番号17、配列番号18、、配列番号19、配列番号20、または配列番号21の塩基配列を有するポリヌクレオチドを含む、上記(7)に記載のがん治療剤。
(9)ヒトABH8タンパク質の活性阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤。
(10)上記ヒトABH8タンパク質の活性阻害物質が、
該ヒトABH8タンパク質に結合する抗体、
を含む、上記(9)に記載のがん治療剤。
(11)上記がんが、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんである、上記(6)〜(10)のいずれかに記載のがん治療剤。
(12)ヒトABH8遺伝子の発現阻害物質をスクリーニングする方法であって、
(a)ヒトABH8遺伝子を発現する細胞に、被検化合物を接触させる工程、
(b)該ヒトABH8遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
(c)被検化合物を接触させない場合と比較して、該発現レベルを低下させる化合物を選択する工程を包含する、スクリーニング方法。
(13)ヒトABH8タンパク質の活性阻害物質をスクリーニングする方法であって、
(a)ヒトABH8タンパク質と被検化合物とを接触させる工程、
(b)該ヒトABH8タンパク質と被検化合物との結合活性を測定する工程、および
(c)該ヒトABH8タンパク質と結合する化合物を選択する工程を包含する、スクリーニング方法。
(14)ヒトABH8タンパク質に結合する抗体。
(15)上記(14)に記載の抗体を含有するがん治療剤。
(16)放射性同位元素、治療タンパク質、低分子の薬剤、または治療遺伝子を担持したベクターをさらに含有する、上記(15)に記載のがん治療剤。
(17)上記がんが、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんである、上記(15)または(16)に記載のがん治療剤。
(18a)上記(14)に記載の抗体を含有するがん診断剤。
(18b)ヒトABH8遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列を含有するがん診断剤。
(19)上記がんが、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんである、上記(18a)または(18b)に記載のがん診断剤。
(20a)上記(14)に記載の抗体を含有するがん診断用キット。
(20b)ヒトABH8遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するがん診断用キット。
(21)上記がんが、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんである、上記(20a)または(20b)に記載のがん診断用キット。
(22)被験者由来の生体試料中のABH8タンパク質をがんマーカーとして検出および/または定量する方法。
(23)(a)被験者由来の生体試料と、ABH8タンパク質に結合する抗体とを接触させる工程、および
(b)上記試料中での上記抗体と、ABH8タンパク質との結合を検出および/または定量する工程、
を包含する、上記(22)に記載の方法。
(24)上記生体試料が、細胞または組織切片である、上記(22)または(23)に記載の方法。
(25)上記生体試料が、血液(全血、血漿、血清等を含む)または尿である、上記(22)または(23)に記載の方法。
(26)上記抗体とABH8タンパク質との結合を、免疫組織化学染色により検出および/または定量する、上記(22)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(27)がんの診断に用いるための上記(22)〜(26)のいずれかに記載の方法。
(28)上記がんが、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんである、上記(27)に記載の方法。
(29)配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、または配列番号21の塩基配列を有する、ポリヌクレオチド。
(30)ABH8遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、または配列番号21の塩基配列を有するポリヌクレオチドを含有する、がん治療剤。
(31)被験者由来の生体試料中のABH8遺伝子をがんマーカーとして検出および/または定量する方法。
(32)上記生体試料が、細胞または組織切片である、上記(31)に記載の方法。
(33)(a)被験者由来の生体試料と、ABH8遺伝子またはその断片の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドとを接触させる工程、および
(b)上記試料中での上記ポリヌクレオチドと、ABH8遺伝子またはその断片とのハイブリダイゼーションを検出および/または定量する工程、
を包含する、上記(31)または(32)に記載の方法。
(34)被験者由来の生体試料中の抗ABH8自己抗体をがんマーカーとして検出および/または定量する方法。
(35)上記生体試料が、細胞または組織切片である、上記(34)に記載の方法。
(36)上記生体試料が、全血、血清、血漿、または尿である、上記(34)に記載の方法。
(37)ABH8抗原を用いて、上記抗ABH8自己抗体を検出および/または定量する、上記(34)〜(36)のいずれかに記載の方法。
(38)上記生体試料とABH8抗原とを接触させる工程、および
上記生体試料中の抗ABH8自己抗体とABH8抗原との結合を検出および/または定量する工程
を包含する、上記(37)に記載の方法。
(39)上記検出および/または定量する工程が、抗ABH8自己抗体に対する標識された抗体を用いて、ABH8と抗ABH8自己抗体との結合を検出および/または定量することを包含する、上記(38)に記載の方法。
(40)ウエスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、サンドイッチ免疫測定法、蛍光免疫測定法(FIA)、時間分解蛍光免疫測定法(TRFIA)、酵素免疫測定法(EIA)、発光免疫測定法(LIA)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、ラテックス凝集法、免疫沈降アッセイ、沈降素反応法、ゲル拡散沈降素反応法、免疫拡散検定法、凝集素検定法、補体結合検定法、免疫放射分析検定法、蛍光免疫検定法、およびプロテインA免疫検定法からなる群から選択される免疫測定法に従う、上記(34)〜(39)のいずれかに記載の方法。
(41)乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんの診断に用いるための、上記(34)〜(40)のいずれかに記載の方法。
(42)ABH8抗原を含有する、被験者由来の生体試料中の抗ABH8自己抗体をがんマーカーとして検出および/または定量するためのキット。
(43)抗ABH8自己抗体に対する標識された抗体をさらに含み、当該抗体を、上記ABH8抗原と上記抗ABH8自己抗体との結合を検出および/または定量するために利用する、上記(42)に記載のキット。
(44)ウエスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、サンドイッチ免疫測定法、蛍光免疫測定法(FIA)、時間分解蛍光免疫測定法(TRFIA)、酵素免疫測定法(EIA)、発光免疫測定法(LIA)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、ラテックス凝集法、免疫沈降アッセイ、沈降素反応法、ゲル拡散沈降素反応法、免疫拡散検定法、凝集素検定法、補体結合検定法、免疫放射分析検定法、蛍光免疫検定法、およびプロテインA免疫検定法からなる群から選択される免疫測定法に従って上記検出および/または定量を行うための、上記(42)または(43)に記載のキット。
(45)乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんの診断に用いるための、上記(42)〜(44)のいずれかに記載のキット。
(46)ABH8抗原を含有する、被験者由来の生体試料中の抗ABH8自己抗体をがんマーカーとして検出および/または定量するための、がん診断剤。
本発明により、ABH8遺伝子ならびにABH8タンパク質高発現に関連する疾患(例えば、癌(例:乳がん、前立腺がん、膀胱癌、大腸癌))の診断・治療等に有用な薬剤、キット、方法等が提供される。
1.本発明のABH8タンパク質およびそれをコードするポリヌクレオチド
本発明者らは、新たなヒトABHファミリー分子であるABH8のヒトカウンターパートのクローニングに成功し、そのcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1)を決定した。また、そこから推定されるアミノ酸配列(配列番号2)も決定した。
したがって、本発明は、1つの実施形態において、以下の(a)〜(d)のポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列番号2のアミノ酸配列からなるヒトABH8タンパク質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(c)(a)もしくは(b)のポリヌクレオチドと相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ABH8タンパク質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、および
(d)配列番号2のアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるABH8タンパク質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド。
好ましい実施形態において、上記(c)または(d)のポリヌクレオチドは、上記(a)または(b)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に対して97%以上の相同性を有するヌクレオチド配列からなる。
本発明はさらに、これらのポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを提供する。
本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列からなるヒトABH8タンパク質、および配列番号2のアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるABH8タンパク質を提供する。
本発明はさらに、これらのタンパク質のアミノ酸配列を含有するポリペプチドを提供する。
本明細書中、「本発明のABH8タンパク質」という場合、(i)配列番号2のアミノ酸配列からなるヒトABH8タンパク質のみならず、配列番号2のアミノ酸配列と高い相同性を有するアミノ酸配列からなるABH8タンパク質、例えば、(ii)配列番号2のアミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなるABH8タンパク質、および(iii)配列番号2のアミノ酸配列と高い(例:約80%以上の)同一性を有するアミノ酸配列からなるABH8タンパク質も含むものとする。
「配列番号2のアミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、および/もしくは付加されたアミノ酸配列」の例としては、配列番号2のアミノ酸配列において、例えば、1〜50個、1〜40個、1〜39個、1〜38個、1〜37個、1〜36個、1〜35個、1〜34個、1〜33個、1〜32個、1〜31個、1〜30個、1〜29個、1〜28個、1〜27個、1〜26個、1〜25個、1〜24個、1〜23個、1〜22個、1〜21個、1〜20個、1〜19個、1〜18個、1〜17個、1〜16個、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列が挙げられる。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加の数は、一般的には小さい程好ましい。
「配列番号2のアミノ酸配列と高い同一性を有するアミノ酸配列」の例としては、配列番号2のアミノ酸配列と約80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上の同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。上記同一性の数値は一般的に大きい程好ましい。なお、本明細書中、アミノ酸配列について用語「同一性(identity)」と「相同性(homology)」とは区別して用いるものとする。例えば、アミノ酸配列間の相同性をいう場合、同じ性質を持つアミノ酸(グルタミン酸とアスパラギン酸など)はひとつのグループとして扱うが、同一性を考える場合は区別される。すなわち、同一性は一致性をさす。
本明細書中、ヌクレオチド配列について「ハイブリダイズする」とは、ヌクレオチド配列同士の相補性が高い場合、二本鎖を形成することをいう。通常、二本鎖は、互いの核酸が相補的になるように設計されているが、必要に応じて(例えば、核酸を検出に使用する場合は、その目的上、問題が生じない範囲において)、その核酸中に、1または数個(例えば、2〜3個)のミスマッチを含んでいてもよい。存在してもよいミスマッチの数は、例えば、要求される検出精度、ヌクレオチド配列(または塩基配列もしくは核酸(配列)もしくはポリヌクレオチド)の長さに応じて変化し得る。なお、ヌクレオチド配列と、それがハイブリダイズする相手のヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーション条件を適宜変更することにより、ミスマッチが存在する場合を排除したり、許容できるミスマッチの数を調整したりすることができることは当業者に周知である。
ハイブリダイゼーションの方法としては、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることができる(例えば、Molecular Cloning 3rd Ed.、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987−1997を参照)。
本明細書中、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い同一性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、核酸の濃度、核酸の長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えば、Alkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドを検出することができる。
所望のヌクレオチド配列(例えば、配列番号1のヌクレオチド配列)に「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし得るヌクレオチド配列」の例としては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したときに、該所望のヌクレオチド配列と約80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の相同性を有するヌクレオチド配列をあげることができる。
なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性(または相同性)は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 2264−2268, 1990; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いことができる。
2.がん抑制作用を有する薬剤
本発明は、(1)ヒトABH8遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤、及び(2)ヒトABH8タンパク質の活性阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤を提供する。
本明細書中、「がん治療剤」という用語は、抗癌剤、癌転移阻害剤、癌細胞のアポトーシス誘導剤、癌細胞の増殖抑制剤、癌細胞の浸潤抑制剤、がん予防剤等を含む意味で使用される。なお、本願明細書中、用語「癌(または、がん)」と「腫瘍」とは同じ意味を有する用語として使用される。
(ABH8遺伝子の発現阻害物質を含有するがん治療剤)
本発明は、1つの実施形態において、本発明のABH8タンパク質をコードする遺伝子(本明細書中、単に「ABH8遺伝子」ということもある。)、特に、ヒトABH8遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤を提供する。
本明細書中、「ABH8遺伝子の発現阻害物質」には、ABH8遺伝子の発現を阻害するものであれば制限はないが、例えば、(i)ABH8遺伝子からABH8 mRNAへの転写を阻害する物質、および(ii)ABH8 mRNAからABH8タンパク質への翻訳を阻害する物質が含まれる。
ABH8遺伝子からABH8 mRNAへの転写を阻害する物質の例としては、
(a)ABH8遺伝子またはその一部に対するアンチセンス核酸、
(b)ABH8遺伝子またはその一部に対するデコイ核酸、
(c)ABH8遺伝子またはその一部に対してドミナントネガティブに作用するABH8遺伝子変異体、あるいは
(d)その他の転写阻害化合物
などが含まれる。
また、ABH8 mRNAからABH8タンパク質への翻訳を阻害する物質の例としては、
(e)ABH8 mRNAまたはその一部に対してRNAi作用を有するポリヌクレオチド(例えば、siRNA)、
(f)ABH8 mRNAまたはその一部に対するアンチセンスポリヌクレオチド、
(g)ABH8 mRNAまたはその一部に対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチド、あるいは
(h)その他の翻訳阻害化合物
などが含まれる。
本明細書中、「核酸」とはRNAまたはDNAを意味する。ここでいう「核酸」は、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいてもよい。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであって良い。修飾されたヌクレオシドおよび修飾されたヌクレオチドはまた、糖部分が修飾されていて良く、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されているか、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
本発明のがん治療剤においては、ABH8遺伝子の発現をRNAi効果により阻害する作用を有する核酸を有効成分として用いることができる。RNAiとは、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二重鎖RNAを細胞内に導入すると、導入した外来遺伝子および標的内在性遺伝子の発現がいずれも阻害される現象のことをいう。ここで用いられるRNAとしては、例えば、19〜30塩基長のRNA干渉を生ずる二重鎖RNA、例えば、dsRNA(double strand RNA)、siRNA(small interfering RNA)又はshRNA(short hairpin RNA)が挙げられる。このようなRNAは、リポソームなどの送達システムにより所望の部位に局所送達させることも可能であり、また上記二重鎖RNAが生成されるようなベクターを用いてこれを局所発現させることができる。このような二重鎖RNA(dsRNA、siRNAまたはshRNA)の調製方法、使用方法などは、多くの文献から公知である(特表2002−516062号; 米国公開許第2002/086356A号; Nature Genetics, 24(2), Feb., 180−183; Genesis, 26(4), April, 240−244; Nature,Spe.21,407:6802,319−20; Genes & Dev., Vol.16,(8), Apr.16,948−958; Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 99(8),16 Apr., 5515−5520; Science, 296(5567), 19 Apr., 550−553; Proc Natl. Acad. Sci. USA, Apr.30,99:9, 6047−6052; Nature Biotechnology, Vol.20 (5), May,497−500; Nature Biotechnology, Vol. 20(5), May,500−508; Nucleic Acids Res., May 15など)。
本発明で用いられるRNAi効果を奏する二重鎖RNAの長さは、通常、19〜30塩基、好ましくは20〜27塩基、より好ましくは21〜25塩基、最も好ましくは21〜23塩基である。
本明細書中、「アンチセンス核酸」、または「アンチセンスポリヌクレオチド」とは、ある対象となるDNA領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドを有し、そのポリヌクレオチドが当該領域の少なくとも一部とハイブリダイズすることができる核酸のことをいう。本発明のアンチセンス核酸は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。本発明のアンチセンス核酸は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。それらは二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであってもよい。修飾された核酸の具体例としては、核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、さらにはポリヌクレオチドアミドやオリゴヌクレオチドアミドの分解に抵抗性を有するものなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
使用されるアンチセンス核酸は、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3’側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。このようにして調製された核酸は、公知の方法を用いることで、所望の動物へ形質転換できる。アンチセンス核酸の配列は、形質転換される動物が持つ内在性遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に抑制できる限りにおいて、完全に相補的でなくてもよい。
例えば、ABH8遺伝子のmRNAの5’端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的である。コード領域もしくは3’側の非翻訳領域に相補的な配列も使用することができる。遺伝子の翻訳阻害に効果的なアンチセンス核酸は、標的遺伝子の転写産物に対して約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相補性を有する。
アンチセンス核酸を用いて標的遺伝子の発現を効果的に抑制するには、アンチセンス核酸の長さは少なくとも約10塩基以上(例えば、10〜40個程度)、好ましくは約15塩基以上であり、より好ましくは約100塩基以上であり、さらに好ましくは約500塩基以上である。アンチセンス核酸は公知の文献を参照して設計することができる(例えば、平島および井上、新生化学実験講座2 核酸IV遺伝子の複製と発現、日本生化学会編、東京化学同人、1993、p.319−347)、J.Kawakami et al.,Pharm Tech Japan. Vol.8,p.247,1992;Vol.8,p.395,1992;S.T. Crooke et al.,ed.,Antisense Research and Applications,CRC Press, 1993など参照)。
また、本発明のがん治療剤においては、ABH8遺伝子の転写産物を特異的に切断するリボザイム活性を有する核酸を有効成分として用いることができる。ここでいう「リボザイム活性」とは、ターゲットとする遺伝子の転写産物であるmRNAを部位特異的に切断する核酸のことをいう。リボザイムには、グループIイントロン型やRNasePに含まれるM1 RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(タンパク質核酸酵素、1990、35、p.2191)。ハンマーヘッド型リボザイムについては、例えば、FEBS Lett,1988,228,p.228;FEBS Lett,1988,239,p.285;タンパク質核酸酵素,1990,35,p.2191;Nucl Acids Res,1989,17,p.7059などを参照することができる。また、ヘアピン型リボザイムについては、例えば、Nature,1986,323,p.349;Nucl Acids Res,1991,19,p.6751;菊池洋,化学と生物,1992,30,p.112などを参照することができる。このようなリボザイムを用いて本発明におけるABH8遺伝子の転写産物を特異的に切断することで、該遺伝子の発現を阻害することができる。
さらに、本発明は、ABH8遺伝子の転写活性を阻害する核酸以外の化合物を有効成分として用いることができる。そのような化合物は、例えば、ABH8遺伝子の発現・転写に関与する因子に結合する化合物である。このような化合物は、天然物でも合成化合物でもよい。このような化合物は、後述のスクリーニング方法によって、取得することが可能である。
(ABH8タンパク質の活性阻害物質を含有するがん治療剤)
本発明はまた、別の実施形態において、本発明のABH8タンパク質、特に、ヒトABH8タンパク質の活性阻害物質を含有するがん治療剤を提供する。
本明細書中、「ABH8タンパク質の活性阻害物質」には、例えば、
(a)ABH8タンパク質に結合する抗体、
(b)ABH8タンパク質に対してドミナントネガティブの性質を有するABH8タンパク質変異体、あるいは
(c)ABH8タンパク質に結合する化合物(上記抗体および変異体を除く)
などが含まれる。
本明細書における「抗体」とはタンパク質の全長又は断片に反応する抗体を意味する。本発明の抗体の形態には、特に制限はなく、本発明のABH8タンパク質に結合する限り、上記ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のほかに、ヒト抗体、遺伝子組み換えによるヒト型化抗体、さらにその抗体断片や抗体修飾物も含まれる。ABH8タンパク質に結合する抗体(抗ABH8抗体)は、当業者に公知の方法により調製することが可能である。なお、抗ABH8抗体の詳細については後述する。
本明細書における「ABH8タンパク質に対してドミナントネガティブの性質を有するABH8タンパク質変異体」とは、それをコードする遺伝子を発現させることによって、内在性の野生型ABH8タンパク質の活性を消失もしくは低下させる機能を有するタンパク質を指す(土田邦博著、遺伝子の活性阻害実験法 多比良和誠編、羊土社(2001) 26−32など参照)。
さらに、本発明においては、ABH8タンパク質の活性を阻害し得る物質として、ABH8タンパク質に結合する、上記抗体または変異体以外の化合物を有効成分として用いることができる。そのような化合物は、例えば、ABH8タンパク質に結合し、その活性を阻害する化合物である。このような化合物は、天然物でも合成化合物でもよい。このような化合物は、後述のスクリーニング方法によって、取得することが可能である。
上記した本発明のABH8タンパク質の活性を阻害し得る物質は、がん治療剤として使用することができる。
3.ABH8タンパク質の活性もしくは発現を阻害する物質のスクリーニング方法
本発明は、がん抑制作用を有する候補化合物のスクリーニング方法をも提供する。
一つの好ましい態様は、ABH8タンパク質と被検化合物との結合を指標とする方法である。通常、ABH8タンパク質と結合する化合物は、ABH8タンパク質の活性を阻害する効果を有することが期待される。ここで、該化合物は、ABH8タンパク質の活性部位に結合することが好ましい。本方法においては、まず、ABH8タンパク質と被検化合物とを接触させる。ABH8タンパク質は、被検化合物との結合を検出するための指標に応じて、例えば、ABH8タンパク質の精製された形態、細胞内または細胞外に発現した形態、あるいはアフィニティーカラムに結合した形態であり得る。この方法に用いる被検化合物は必要に応じて適宜標識して用いることができる。標識としては、例えば、放射標識、蛍光標識等を挙げることができる。
本方法においては、次いで、ABH8タンパク質と被検化合物との結合を検出する。
本方法に用いる被検化合物としては、特に制限はない。例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチドなどの単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物等が挙げられるが、これらに限定されない。
ABH8タンパク質と被検化合物との結合は、例えば、ABH8タンパク質に結合した被検化合物に付された標識によって検出することができる。また、細胞内または細胞外に発現しているABH8タンパク質への被検化合物の結合により生じるABH8タンパク質の活性の変化を指標として検出することもできる。タンパク質と被検化合物との結合活性は、公知の手法によって測定することができる(例えば、Sullivan, F. X., et al. (1998) J. Biol. Chem. 273, 8193−8202 ; Ohyama, C. et al. (1998) J. Biol. Chem. 273, 14582−14587 ; Noda, K., et al. (2003) Cancer Res. 63, 6282−6289参照)。
本方法においては、次いで、ABH8タンパク質と結合し、その活性を阻害する被検化合物を選択する。
本方法により単離される化合物は、がん抑制作用を有することが期待され、がん治療剤として有用である。
本発明のスクリーニング方法の他の態様は、ABH8遺伝子の発現を指標とする方法である。本方法においては、まず、ABH8遺伝子を発現する細胞に、被検化合物を接触させる。用いられる「細胞」の由来としては、ヒト、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、トリなど、ペット、家畜等に由来する細胞が挙げられるが、これら由来に制限されない。「ABH8遺伝子を発現する細胞」としては、内因性のABH8遺伝子を発現している細胞、または外因性のABH8遺伝子が導入され、該遺伝子が発現している細胞を利用することができる。外因性のABH8遺伝子が発現した細胞は、通常、それぞれABH8遺伝子が挿入された発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより作製することができる。該発現ベクターは、一般的な遺伝子工学技術によって作製することができる。
本方法に用いる被検化合物としては、特に制限はないが、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチドなどの単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物等が用いられる。
ABH8遺伝子を発現する細胞への被検化合物の「接触」は、通常、それぞれABH8遺伝子を発現する細胞の培養液に被検化合物を添加することによって行うが、この方法に限定されない。被検化合物がタンパク質等の場合には、該タンパク質を発現するDNAベクターを、該細胞へ導入することにより、「接触」を行うことができる。
本方法においては、次いで、該ABH8遺伝子の発現レベルを測定する。ここで「遺伝子の発現」には、転写および翻訳の双方が含まれる。遺伝子の発現レベルの測定は、当業者に公知の方法によって行うことができる。例えば、ABH8遺伝子を発現する細胞からmRNAを常法に従って抽出し、このmRNAを鋳型としたノーザンハイブリダイゼーション法またはRT−PCR法を実施することによって該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。あるいは、ABH8遺伝子のプロモーター領域を常法に従って単離し、その下流に標識遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、ガラクトシダーゼ等の発光、蛍光、発色などを指標に検出可能な遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない)をつなげ、その標識遺伝子の活性を見ることによっても該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。また、ABH8遺伝子を発現する細胞からタンパク質画分を回収し、それぞれABH8タンパク質の発現をSDS−PAGE等の電気泳動法で検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこともできる。さらに、ABH8タンパク質に結合する抗体を用いて、ウエスタンブロッティング法を実施することにより該タンパク質の発現を検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うことも可能である。ABH8タンパク質の検出に用いる抗体としては、検出可能な抗体であれば、特に制限はないが、例えばモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の両方を利用することができる。
本方法においては、次いで、被検化合物を接触させない場合(コントロール)と比較して、該発現レベルを低下させる化合物を選択する。このようにして選択された化合物は、がん治療剤のための候補化合物となる。
4.抗ABH8抗体及びこの抗体を含有する治療剤、複合体および組成物
本発明はまた、抗ABH8抗体、この抗体を含有するがん治療剤などを提供する。本発明の1つの好ましい態様では、上記がん治療剤は、がんの標的化療法または標的化薬物送達のために使用される。
(抗ABH8抗体)
本明細書中、「抗ABH8抗体」には、本発明のABH8タンパク質(その断片(部分ペプチド)もしくはその塩を含む)に特異的に結合する抗体が含まれる。本明細書中、抗体が、あるタンパク質またはその断片に「特異的に結合する」とは、その抗体が他のアミノ酸配列に対するその親和性よりも、これらのタンパク質またはその断片の特定のアミノ酸配列に対して実質的に高い親和性で結合することを意味する。ここで、「実質的に高い親和性」とは、所望の測定装置によって、その特定のアミノ酸配列を他のアミノ酸配列から区別して検出することが可能な程度に高い親和性を意味し、典型的には、結合定数(Ka)が少なくとも107-1、好ましくは、少なくとも108-1、より好ましくは、109-1、さらにより好ましくは、1010-1、1011-1、1012-1またはそれより高い、例えば、最高で1013-1またはそれより高いものであるような結合親和性を意味する。
本発明において使用する抗ABH8抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgGまたはIgMであり、精製の容易性等を考慮すると、より好ましくはIgGである。また、ここでいう「抗体」という用語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、例えば、Fab、Fab’2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などを含む。本発明の抗体は、公知の方法で製造することができる。このような抗体の製造法は当該分野で周知である(例えばHarlow E. & Lane D., Antibody, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988)を参照)。
(1)抗原の調製
本発明において、感作抗原として使用されるタンパク質は、通常、本発明のABH8タンパク質またはその塩である。上記ABH8タンパク質には、その部分ペプチドも含まれ、これは、限定されることはないが、例えば、配列番号2のアミノ酸配列の断片であって、例えば、20個以上、40個以上、60個以上、80個以上、100個以上の、連続するアミノ酸配列部分を有する部分ペプチドである。これらの断片として、例えば、アミノ(N)末端断片やカルボキシ(C)末端断片が用いられる。本発明で用いられる部分ペプチドは、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜6個))のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたものであってもよい。ここで用いられるABH8タンパク質またはその部分ペプチドの塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸)との塩などが用いられる。抗体取得の感作抗原として使用される本発明のABH8タンパク質は、その由来となる動物種に制限されないが哺乳動物、例えばマウス、霊長類、ヒト由来のタンパク質が好ましく、特にヒト由来のタンパク質が好ましい。
(2)ABH8タンパク質に対するモノクローナル抗体の作製
(i)抗体産生細胞の採取
上記のようなABH8タンパク質、その部分ペプチド又はその塩(本明細書中、抗体に関する説明では、これらをまとめて、「ABH8タンパク質」という。)を抗原として、哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギなどに投与する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、アジュバントを用いないときは0.1〜100mgであり、アジュバントを用いるときは1〜100μgである。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下又は腹腔内等に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは2〜5週間間隔で、1〜10回、好ましくは2〜5回免疫を行う。そして、最終の免疫日から1〜60日後、好ましくは1〜14日後に抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
(ii)細胞融合
ハイブリドーマを得るため、抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。ミエローマ細胞としては、例えば X63Ag.8.653、NSI/1−Ag4−1、NS0/1などのマウスミエローマ細胞株、YB 2/0などのラットミエローマ細胞株が挙げられる。
次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、1×106〜1×107個/mlの抗体産生細胞と2×105〜2×106個/mlのミエローマ細胞とを混合し(抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞比2:1〜3:1が好ましい)、細胞融合促進剤存在のもとで融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1000〜6000ダルトンのポリエチレングリコール等を使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
(iii)ハイブリドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に3×105個/well程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。その結果、選択培地で培養開始後、14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、ABH8タンパク質に反応する抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されるものではない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウエルに含まれる培養上清の一部を採集し、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法等によってスクリーニングすることができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行う。そして、最終的に、ABH8タンパク質と反応するモノクローナル抗体を産生する細胞であるハイブリドーマを樹立する。
(iv)モノクローナル抗体の採取
上記のようにして得たハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5% CO2濃度)で7〜14日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1×107個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水を採取する。上記抗体の採取方法において抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
(3)ABH8タンパク質に対するポリクローナル抗体の作製
まず、上記した抗原を哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギなどに投与する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、アジュバントを用いないときは0.1〜100mgであり、アジュバントを用いるときは10〜1000μgである。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下又は腹腔内等に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは2〜5週間間隔で、1〜10回、好ましくは2〜5回免疫を行う。そして、最終の免疫日から6〜60日後に、酵素免疫測定法(ELISA(enzume−linked immunosorbent assy)又はEIA(enzyme immunoassay))、放射性免疫測定法(RIA;radioimmuno assay)等で抗体価を測定し、最大の抗体価を示した日に採血し、抗血清を得る。
次いで、例えば、抗血清中のポリクローナル抗体を、ABH8タンパク質で固定されたアフィニティーカラムにかけてABH8タンパク質と反応する抗体(カラム吸着画分)を採取する。ABH8タンパク質に対する抗血清中のポリクローナル抗体の反応性は、ELISA法などで測定することができる。
(4)抗体の断片など
FabまたはFab’2断片は、従来の方法によるプロテアーゼ(例えば、ペプシンまたはパパイン)を用いた消化により作製することができる。ヒト化抗体は、例えばRiechmannら(Riechmann J Mol Biol. Oct 5;203(3):825−8,1988)、およびJonesら(Jonesら Nature 321:522−525,1986)に記載のような方法の1つにより調製することができる。
また、キメラ抗体は、例えば、「実験医学(臨時増刊号)、Vol.1.6,No.10,1988」、特公平3−73280号公報等を、ヒト化抗体は、例えば、「Nature Genetics,Vol.15,p.146−156,1997」、「Nature Genetics,Vol.7,p.13−21,1994」、特表平4−504365号公報、国際出願公開WO94・25585号公報等、「日経サイエンス、6月号、第40〜第50頁、1995年」、「Nature,Vol.368,p.856−859,1994」、特表平6−500233号公報等を参考にそれぞれ製造することができる。本発明のABH8タンパク質に結合する抗体は、例えば、癌細胞の増殖もしくは転移の抑制等を目的とした使用が考えられる。得られた抗体を人体に投与する目的(抗体治療)で使用する場合には、免疫原性を低下させるため、ヒト抗体やヒト型抗体が好ましい。
抗体は、診断剤として用いる場合は、モニタリング等のための標識物質(例えば、放射性同位元素、蛍光物質など)で標識されていてもよい。必要に応じて、放射性物質、蛍光化合物などにより標識することができる。最も慣用の蛍光標識化合物の中には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリンおよびフルオレスカミンがある。同様に、生体発光性化合物を用いて、抗体ABH8抗体を標識することもできる。生体発光性タンパク質の存在は、蛍光の存在を検出することによって測定される。この標識目的に重要な生体発光性化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびイエクオリンである。
なお、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在するABH8タンパク質等を特異的に検出するために使用することができる。また、ABH8タンパク質等を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中のABH8タンパク質等の検出、被検細胞内におけるABH8タンパク質の挙動の分析などのために使用することができる。
(抗ABH8抗体を含有する複合体など)
また、本発明において使用する抗ABH8抗体は、本発明の治療剤または診断剤において、それ自体が、抗原の活性を減弱させるような中和活性を有する薬剤(agent)であり得るが、必要に応じて、治療効果を奏するための他の薬剤と組み合わせて用いることができる。したがって、本発明は、もう一つの態様において、がん(例えば、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がん)の標的化療法または標的化イメージング等に使用するための、抗ABH8抗体と他の薬剤との複合体、そのような複合体を含有する組成物などをも提供する。このような態様によれば、本発明において使用する抗ABH8抗体を用いて、治療効果を奏する他の薬剤または診断のための標識剤などを、ABH8タンパク質を高発現する標的部位へ送達することができる。
本発明において用いられる「その他の薬剤」としては、例えば、放射性同位元素、治療タンパク質、または低分子の薬剤など、標的への遺伝子導入のためのウイルスベクターもしくは非ウイルスベクターなどが例示される。
本発明において、「放射性同位元素」の例としては、フッ素−18、ヨウ素−125(125I)、およびヨウ素−131などの放射性ハロゲン元素が挙げられる。これらの放射性ハロゲン元素も上述の放射性金属元素と同様に抗体やペプチドに標識して、放射性治治療剤あるいは放射性診断剤として広く利用し得る。例えば、125Iまたは131Iでのヨード化は、クロラミンT法等の公知の方法により、抗体または抗体断片に結合させることができる。さらに、診断用としてはテクネチウム−99m、インジウム−111およびガリウム−67(67Ga)など、また治療用としてはイットリウム−90(90Y)、レニウム−186(186Re)またはレニウム−188(188Re)などが使用され得る。放射性同位元素を用いて抗体に標識する場合には、通常、金属キレート剤が用いられる。金属キレート剤としては、EDTA、DTPA、ジアミノジチオ化合物、サイクラム、およびDOTAなどが知られている。これらのキレート剤は抗体に予め結合しておき、その後放射性金属で標識する場合と、放射性金属キレートを形成後、抗体に結合して標識する方法がある。
本発明において、「治療タンパク質」の例としては、免疫を担う細胞を活性化するサイトカインが好適であり、例えば、ヒトインターロイキン2、ヒト顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子、ヒトマクロファージコロニー刺激因子、ヒトインターロイキン12等が挙げられる。また、がん細胞(例えば、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がん細胞)を直接殺傷するため、リシンやジフテリア毒素などの毒素を用いることができる。例えば、治療タンパク質との融合抗体については、抗体または抗体断片をコードするcDNAに治療タンパク質をコードするcDNAを連結させ、融合抗体をコードするDNAを構築し、このDNAを原核生物または真核生物用の発現ベクターに挿入し、この発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、融合抗体を製造することができる。
「低分子の薬剤」は、本明細書中で「放射性同位元素」や「治療タンパク質」等以外の診断または治療用化合物を意味するものとして用いられる。「低分子の薬剤」の例としては、ナイトロジェン・マスタード、サイクロファスファミドなどのアルキル化剤、5−フルオロウラシル、メソトレキセートなどの代謝拮抗剤、ダウノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC,ダウノルビシン、ドキソルビシンなどの抗生物質、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンのような植物アルカロイド、タモキシフェン、デキサメタソンなどのホルモン剤等の抗癌剤(臨床腫瘍学(日本臨床腫瘍研究会編 1996年 癌と化学療法社))、またはハイドロコーチゾン、プレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート、ペニシラミンなどの免疫調節剤、サイクロフォスファミド、アザチオプリンなどの免疫抑制剤、マレイン酸クロルフェニラミン、クレマシチンのような抗ヒスタミン剤等の抗炎症剤(炎症と抗炎症療法 昭和57年 医歯薬出版株式会社)などがあげられる。例えば、ダウノマイシンと抗体を結合させる方法としては、グルタールアルデヒドを介してダウノマイシンと抗体のアミノ基間を結合させる方法、水溶性カルボジイミドを介してダウノマイシンのアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法等があげられる。
「ウイルスベクター」の例としては、本発明の抗ABH8抗体に結合し得るように改変されたウイルスベクターが使用し得る(例えば、アデノウイルスベクター(Wang, P., et al.(1995) Somatic Cell and Molec. Genet. 21, 429−441)、レトロウイルスベクター(Naviaux R.K., et al.(1996) J. Virol 70, 5701−5705)、レンチウイルスベクター(Naldini, L. (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9, 457−463)などが挙げられる)。このようなウイルスベクターには、細胞増殖関連遺伝子、アポトーシス関連遺伝子、免疫制御遺伝子等の、標的部位(例えば、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がん)において、例えば、癌細胞のアポトーシスを誘導するなどの治療効果を奏する遺伝子(治療遺伝子)が組み込まれる。抗ABH8抗体に結合するウイルスベクターは、抗ABH8抗体と共に遺伝子治療を必要とする患者に投与された場合、抗ABH8抗体が認識する抗原(すなわち、ABH8)が存在する部位に標的化することができる。
抗ABH8抗体と上記他の薬剤とは、化学的または遺伝子工学的に結合され得る。ここで、「化学的な結合」には、イオン結合、水素結合、共有結合、分子間力による結合、疎水性相互作用による結合などが含まれるものとし、「遺伝子工学的な結合」には、例えば、抗体と治療タンパク質とからなる融合タンパク質を遺伝子組換えなどの技術を用いて作製した場合の、抗体と治療タンパク質との間の結合様式などが含まれるものとする。
5.製剤化および製剤の投与方法
本発明のABH8遺伝子の発現阻害物質を含有するがん治療剤、ABH8タンパク質の活性阻害物質を含有するがん治療剤、本発明の抗ABH8抗体を含有する治療剤、または本発明において使用する抗ABH8抗体が、放射性同位元素、治療タンパク質、低分子の薬剤、および治療遺伝子を担持したウイルスベクターもしくは非ウイルスベクターのうちのいずれか、またはこれらの任意の組み合わせと化学的または遺伝子工学的に結合されている治療剤は、公知の手法に基づいて製剤化することができる。
本発明の治療剤の製剤化にあたっては、常法に従い、必要に応じて薬学的に許容される担体を添加することができる。例えば、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体を適宜使用することができる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。
本発明の治療剤の剤型の種類としては、例えば、経口剤として錠剤、粉末剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、軟・硬カプセル剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、舌下剤、ペースト剤等、非経口剤として注射剤、坐剤、経皮剤、軟膏剤、硬膏剤、外用液剤等が挙げられ、当業者においては投与経路や投与対象等に応じた最適の剤型を選ぶことができる。有効成分としてのABH8タンパク質の活性(またはABH8遺伝子の発現)阻害物質は、製剤中0.1から99.9重量%含有することができる。
本発明の薬剤の有効成分の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、患者(60kgとして)に対して一日につき約0.1mg〜1,000mg、好ましくは約1.0〜100mg、より好ましくは約1.0〜50mgである。非経口的に投与する場合は、その一回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、患者(60kgに対して)、一日につき約0.01から30mg程度、好ましくは約0.1から20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。しかしながら、最終的には、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状等を考慮して、医師または獣医師の判断により適宜決定することができる。
このようにして得られる製剤は、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。ヒト以外の動物の場合も、上記の60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明の治療剤は、がん(例えば、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、大腸がん、胃がん、肺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、脾臓がん、腎がん、子宮がん(例:子宮頸がん、子宮体がん)、精巣がん、甲状腺がん、膵臓がん、卵巣がん、脳腫瘍、血液腫瘍など)の予防・治療、好ましくは、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんの予防・治療に用いられる。
本発明の薬剤は、ABH8タンパク質の活性阻害物質またはABH8遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有しているため、抗癌剤、癌転移阻害剤、癌細胞のアポトーシス誘導剤等として使用し得る。対象となる細胞、組織、臓器、または癌の種類は特定のものに限定されない。また、本発明の薬剤は、ABH8タンパク質の活性阻害物質およびABH8遺伝子の発現阻害物質の両方を含んでいても良い。
本発明の治療剤において、アンチセンス核酸を用いる場合、該アンチセンス核酸を単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、公知の手段に従って投与することができる。アンチセンス核酸は、単独で、あるいは生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。
また、本発明において組換えアデノウイルス粒子のようなウイルスベクターと抗ABH8抗体との組み合わせを癌治療のために使用する場合は、これら単独で使用してもよいが、一般には製薬的に許容できる担体と共に使用される。そのような担体としては、既に上記したような担体、ならびに水、生理食塩水、グルコース、ヒトアルブミン等の水性等張溶液が好ましい。更に、製薬的に通常使用される添加剤、保存剤、防腐剤、衡量等を添加することもできる。そのように調製した医薬組成物は、治療すべき疾病に依存して適切な投与形態、投与経路によって投与することができる。投与形態としては、例えば、乳剤、シロップ剤、カプセル、錠剤、顆粒剤、注射剤、軟膏等が挙げられる。本発明の抗ABH8抗体−ウイルスベクター粒子またはこれを含む医薬組成物を治療のために投与する場合は、通常成人一人当たり1回に103〜1015個のウイルス粒子を投与するのが好ましいが、疾病の状態や標的細胞・組織の性質によって変更してよい。投与回数は、1日1回〜数回でよく、投与期間は1日〜数ヶ月以上にわたってもよく、1〜数回の投入を1セットとして、長期にわたって断続的に多数セットを投与してもよい。また、本発明において使用されるウイルスベクター粒子またはウイルスベクター核酸分子は、特定の細胞および/または組織の検出、または疾病状態の診断に使用することができる。例えば、ウイルスベクターの核酸分子に検出可能なマーカー遺伝子を組込み、これを適切な宿主細胞にトランスフェクションして得られたウイルスベクター粒子は、抗ABH8抗体と組み合わせて腫瘍細胞を検出診断するために使用することができる。あるいは、抗ABH8抗体に検出可能な標識を結合させて腫瘍細胞を検出診断するために使用することができる。
6.がんの診断剤、診断用キット及び診断方法
本発明はまた、がんの診断剤を提供する。1つの好ましい態様において、本発明のがんの診断剤は、(a)ABH8タンパク質に結合する抗体、又は(b)ABH8遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する。
(抗ABH8抗体を用いる診断剤及び診断方法)
ABH8タンパク質に結合する抗体は、ABH8タンパク質等を特異的に認識することができるので、被検液中のABH8タンパク質を定量することができる。具体的には、本発明の抗ABH8抗体を用いる診断方法は、例えば、(a)被験者由来の生体試料と、ABH8タンパク質に結合する抗体とを接触させる工程、および(b)前記試料中での前記抗体と、ABH8タンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩との結合を検出および/または定量する工程を包含する。好ましくは、上記検出および/または定量する工程において、標識された抗ABH8抗体を用いて、ABH8タンパク質またはその断片と抗ABH8抗体との結合が検出および/または定量される。
本明細書中、「被験者由来の生体試料」は、被験者由来の組織、細胞、または体液(例えば、血液(全血、血漿、血清等を含む)、尿、リンパ液、唾液、汗、精液等)を含む。また、「被験者」は、通常、がん検診を受ける、または受けることが望まれるヒト被験体であり、がんに罹患しているか、または罹患していると疑われるヒト被験体等が含まれる。このようながんの例としては、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、大腸がん、胃がん、肺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、脾臓がん、腎がん、子宮がん(例:子宮頸がん、子宮体がん)、精巣がん、甲状腺がん、膵臓がん、卵巣がん、脳腫瘍、血液腫瘍などが含まれるが、とりわけ、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんが好ましい。
上記のような被験者由来の生体試料におけるABH8の発現を検出するための免疫測定は、がんを有すると疑われるか、がんの危険性を有する被験体から採取した生体試料を、特異的抗原−抗体結合を生じさせる条件下で抗ABH8抗体と接触させ、次いで、抗体による免疫特異的結合量を測定することを包含する。このような抗体の結合を使用して、ABH8タンパク質の存在および/または増大した発現が検出される。この場合、増大したABH8タンパク質発現の検出が疾病状態の指標となる。必要に応じて、生体試料中のABH8タンパク質のレベルを、がんを有しない健常者のレベルと比較してもよい。
上記免疫測定法の1つの態様では、例えば、血清試料などの生体試料を、試料中に存在する全部のタンパク質を固定する目的で、ニトロセルロースなどの固相支持体または担体と接触させる。次いで、この支持体を緩衝液で洗浄し、続いて検出可能に標識した抗ABH8抗体により処理する。次いで、この固相支持体を緩衝液で2回洗浄し、未結合抗体を除去する。固相支持体上の結合した抗体の量を、周知の方法に従って測定する。各測定に適する検出条件は、慣用的な試験方法を使用して当業者により適宜決定され得る。
抗ABH8抗体を検出可能に標識する方法の1つにおいて、当該抗体を、酵素、例えば、酵素イムノアッセイ(EIA)に使用されるもののような酵素に結合させる[Voiler,A.による「酵素標識した免疫吸着アッセイ」(“The Enzyme Linked Immunosorbent Assay)(ELISA),1978,Diagnostic Horizons,2:1〜7,Microbiological Associates Quarterly Publication,Walkersville.MD; Voiler,A.によるJ.Clin.Pathol.,31:507〜520,1978:Butier,J.E.によるMeth.Enzymol.,73:482〜523,1981]。抗体に結合する酵素を、例えば分光光度測定により、可視手段による蛍光測定により検出することができる化学分子が生成されるような方法で、適当な基質、好ましくは色素原性基質と反応させる。抗体に検出可能な標識を付けるために使用することができる酵素は、ペルオキシダーゼおよびアルカリ性ホスファターゼを包含するが、これらに限定されない。この検出はまた、酵素に対する色素原性基質を用いる比色法により達成することができる。
その他の本発明において使用し得る方法としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ免疫測定法、イムノメトリック法、ネフロメトリー、蛍光免疫測定法(FIA)、時間分解蛍光免疫測定法(TRFIA)、酵素免疫測定法(EIA)、発光免疫測定法(LIA)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、ラテックス凝集法、免疫沈降アッセイ、沈降素反応法、ゲル拡散沈降素反応法、免疫拡散検定法、凝集素検定法、補体結合検定法、免疫放射分析検定法、蛍光免疫検定法、およびプロテインA免疫検定法からなる群から選択される免疫測定法などが挙げられる(WO00/14227号公報第39頁第25行〜第42頁第8行、EP1111047A2号公報段落[0115]第19頁第35行〜第20頁第47行など参照)。
以上のように、本発明の抗体を用いる、生体内でのABH8タンパク質の定量法を利用することにより、ABH8タンパク質の機能不全に関連する各種疾患の診断をすることができる。例えば、ABH8タンパク質の濃度増加が検出された場合は、例えば、ABH8タンパク質の過剰発現に起因する疾患(例えば、がん(例:乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がん))である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
なお、本発明の抗ABH8抗体は、in vivoでの診断に用いることもできる。ここで使用し得る抗体調製物の調製および使用方法は当該分野でよく知られている。例えば、抗体−キレート剤について、Nucl. Med. Biol. 1990 17:247−254に記載されている。また、磁気共鳴イメージングで用いる標識としての常磁性イオンを有する抗体については、例えば、Magnetic Resonance in Medicine 1991 22:339−342に記載されている。
(ポリヌクレオチド(例えば、DNA)プローブを用いる診断剤及び診断方法)
本発明の診断方法においては、ABH8遺伝子の塩基配列に基づいて設計されるプローブ又はプライマーを用いることができる。具体的には、そのような診断方法は、例えば、(a)被験者由来の生体試料と、ABH8遺伝子またはその断片の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチド(プローブ)とを接触させる工程、および(b)前記試料中での前記ポリヌクレオチドと、ABH8遺伝子またはその断片とのハイブリダイゼーションを検出および/または定量する工程を包含する。
上記本発明の方法では、被験者由来の生体試料中のABH8遺伝子のDNA(またはその遺伝子断片)を、上記プローブを使用して検出および/または定量する。プローブとして用いる塩基配列の長さは、例えば、12塩基以上、15塩基以上、18塩基以上、21塩基以上、24塩基以上、27塩基以上、30塩基以上、またはさらに長い長さのポリヌクレオチド断片であり得る。ハイブリダイゼーションには、上記した低、中又は高ストリンジェントな条件を使用し得る。なお、本明細書中、「ABH8遺伝子またはその断片の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列」には、ABH8遺伝子またはその断片の塩基配列に相補的な塩基配列(アンチセンスポリヌクレオチド)も含まれるものとする。プローブおよび核酸のハイブリダイゼーションの方法は当業者に知られており、例えば国際公開公報第89/06698号、EP−A0200362、米国特許第2,915,082号、EP−A0063879、EP−A0173251、EP−A0128018に記載されている。
本発明の診断方法においては、ABH8遺伝子に対する特異的ポリヌクレオチドプローブまたはプライマーを用いて、公知の手法を用いて標的配列を検出または定量することができる。そのような公知の手法として、例えば、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、RT−PCR法、PCR−SSCP法(Genomics,第5巻,874〜879頁(1989年))、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,第86巻,2766〜2770頁(1989年))、FISH法、DNAチップあるいはアレイCGH(Comparative Genomic Hybridization)法などを用いることができる。定量的な検出は、定量RT−PCRによって実施可能である。
アレイCGH法は、染色体CGH法(Kallioniemi, A. et al.(1992)Science 258, 818−821)を応用した方法で、スライド上に染色体領域をカバーするゲノムDNA断片(BAC,PAC,YACなど)を高密度にスポットしたDNAチップを用いて、別々の色素で標識したがん由来DNAと正常DNAを、スライド上のゲノムDNA断片に対して同時にハイブリダイゼーションを行い、その結合状態を検出することにより、がんにおけるDNAコピー数異常を高解像度に検出する方法である(Pinkel,D. et al.(1998)Nat.Genet.20, 207−211)。
なお、本発明においては、ABH8遺伝子の発現が上方制御されるか否かを検出するために、細胞のABH8のmRNAレベルを標準遺伝子(ハウスキーピング遺伝子(例えば、Shaper, N.L.ら、J. Mammary Gland Biol. Neoplasia 3(1998)315−324;Wu, Y.Y.およびRees, J.L.、Acta Derm. Venereol. 80(2000)2−3)のmRNAレベルと、好ましくはRT−PCRによって比較することもできる。
上記のような手法によって標的配列(DNA、mRNAなど)を検出・定量し、ABH8遺伝子の発現過多が確認された場合は、例えば、ABH8の過剰発現に起因する疾患(例えば、がん(例:乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がん))である可能性が高い、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
(質量分析装置を用いる診断方法)
本発明の診断方法の別の実施形態では、被検試料中の標的タンパク質またはその断片の存在を、質量分析装置(MS)を用いて同定することができる。すなわち、質量分析装置を用いることによって、標的タンパク質またはその断片のアミノ酸配列の決定を行うことができ、被験者由来の生体試料中にABH8タンパク質が存在するか否かを判定することができる。質量分析法は、MSを用いてタンパク質やペプチドのような試料をイオン化し、得られた質量/電荷(m/z)に従って分離し、その強度を測定することにより、試料の質量を決定する方法である。その質量分析の結果から、タンパク質やペプチドのアミノ酸配列を構成する個々のアミノ酸を同定することができる。
イオン化には、マトリクスアシステッドレーザーデソープションイオン化法(MALDI)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、気相法(EI,CI)、電界脱離(FD)法など種々の方法が使用され得る。イオン分離には、イオン化法と相性のよいイオン分離法が用いられ、例えば、MALDIの場合には、飛行時間型(time of flight:TOF)質量分析計、ESIの場合には、四重極型(QMS)、イオントラップ型、磁場型などの質量分析計がそれぞれ用いられる。質量分析装置は、タンデムで用いられることもある。例えば、LC−ESI MS/MS、Q−TOF MS、MALDI−TOF MS等が挙げられる。なお、その他のアミノ酸配列決定法、例えば、シークエンサー(例:気相シークエンサー)によるアミノ酸配列決定法が利用されてもよい。
(診断用キット)
本発明はまた、抗ABH8抗体を含有する、被験者の生体試料中のABH8タンパク質またはその断片をがんマーカーとして検出および/または定量するためのキットを提供する。さらに、ABH8遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列を含有する、被験者由来の生体試料中のABH8遺伝子またはその断片をがんマーカーとして検出および/または定量するためのキットをも提供する。これらのキットは、上述の免疫学的手法またはハイブリダイゼーション法等により、がんマーカーを検出するために用いられる。このようながんとしては、例えば、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、大腸がん、胃がん、肺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、脾臓がん、腎がん、子宮がん(例:子宮頸がん、子宮体がん)、精巣がん、甲状腺がん、膵臓がん、卵巣がん、脳腫瘍、血液腫瘍などが含まれるが、とりわけ、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんが好ましい。
本明細書中、「がんマーカー」とは、被験者の体液(例えば、血液、尿、リンパ液、唾液、汗、精液等)または細胞もしくは組織中における、正常組織に由来していないか、あるいはがん細胞または組織において有意に発現の亢進している分子のことをいい、被験者の体液または細胞もしくは組織中における当該分子の存在ががんの存在を示すかまたは示唆するものをいう。
上記第一の態様のキットは、被験者からの生体試料中のABH8抗原(ABH8タンパク質およびその部分ペプチドを含む)を検出および/または定量する成分を含有する。例えば、ABH8タンパク質がELISAで検出および/または定量される場合、このような成分は、例えば、組織切片、または血液や尿のような体液試料中のABH8のレベルを検出および/または定量するために使用され得る。このような抗体は放射能、蛍光、比色、または酵素標識で標識されていてもよい。本発明のキットは、標識された二次抗体を含有していてもよい。
上記第二の態様のキットは、ABH8遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する。例えば、本発明のキットは、DNAチップ上に固定された上記ポリヌクレオチドを含有し得る。
本発明のキットは、抗ABH8抗体、ABH8遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列等の他に、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、薬剤ががんマーカーの検出に使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書等がさらに含まれていてもよい。
(ABH8抗原を用いて抗ABH8自己抗体を検出する方法)
本発明はまた、生体試料中の抗ABH8自己抗体をがんマーカーとして検出および/または定量する方法を提供する。この方法は、がんの診断に利用することができる。さらに抗ABH8自己抗体レベルのモニタリングにより、がんの進行を予知することができる。本発明はまた、このような方法に使用するためのABH8抗原を含む診断剤および診断用キットを提供する。
本明細書中、生体試料中の抗ABH8自己抗体をがんマーカーとして使用する態様で使用する「ABH8」、「ABH8タンパク質」、または「ABH8抗原」には、本発明のABH8タンパク質のみならず、ABH8タンパク質のエピトープを含むかまたはエピトープとして抗ABH8抗体に認識され得る断片、およびこれらの誘導体をも含むものとする。ここで、断片の長さとしては、抗ABH8抗体に特異的な抗原として認識され得る長さであれば制限はないが、好ましくは6アミノ酸以上、より好ましくは8アミノ酸以上、さらに好ましくは10アミノ酸以上である。また、これらの分解産物または断片は、ABH8タンパク質の任意の部分であり得るが、ABH8タンパク質のエピトープに対応するか、エピトープに対応する部分を含んでいることがより好ましい。また、「誘導体」とは、ABH8タンパク質またはその断片のアミノ酸配列において1または数個(例えば、6個)のアミノ酸残基の変異、置換、欠失および/または付加を含み、実質的にABH8タンパク質と同じ抗原特異性を有するペプチドまたはポリペプチドを含むものとする。
被験者からの生体試料中の抗ABH8自己抗体の検出は、任意の多くの方法で行うことができるが、代表的な方法には、免疫アッセイがあり、例えば、ウエスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ、ELISA、サンドイッチ免疫測定法、蛍光免疫測定法(FIA)、時間分解蛍光免疫測定法(TRFIA)、酵素免疫測定法(EIA)、発光免疫測定法(LIA)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、ラテックス凝集法、免疫沈降アッセイ、沈降素反応法、ゲル拡散沈降素反応法、免疫拡散検定法、凝集素検定法、補体結合検定法、免疫放射分析検定法、プロテインA免疫検定法等が挙げられる。
このようなイムノアッセイは、様々な方法で実施することができる。例えば、このようなアッセイを実施するための1つの方法は、ABH8タンパク質の固相支持体上への繋留、およびそれに対して特異的な抗ABH8抗体の検出を包含する。本発明のアッセイに用いられるABH8タンパク質は、当該分野において周知の組換えDNA技術によって調製し得る。例えば、ABH8タンパク質をコードするDNAを適当な発現ベクター中に遺伝子組換え技術により導入して、ABH8タンパク質を大規模に発現することができる。好ましくは、ABH8の標識、固定化または検出を容易にすることができる融合タンパク質が遺伝子操作される(例えば、Sambrookら、1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載された技術を参照)。別法として、ABH8タンパク質は天然の供給源から精製することができる。たとえば、当該分野において周知のタンパク質分離技術を用いてがん細胞から精製する。このような精製技術には、分子シーブクロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーが包含されるが、これらに限定されない。実際にはABH8タンパク質の固体支持体としては、マイクロタイタープレートが好都合に使用される。
(ABH8抗原を用いる診断剤または診断用キット)
本発明のABH8抗原を用いる診断剤または診断用キットは、被験者からの生体試料中の抗ABH8自己抗体を検出および/または定量するために必要な成分を含有する。例えば、自己抗体がELISAによって検出および/または定量される場合、そのような成分は、固相支持体に結合された少なくとも1種、好ましい複数種の異なるABH8抗原またはそれらのエピトープの形態における標的抗原、および標的抗原に結合する抗ABH8自己抗体を検出するための手段から構成される。このような検出手段は、例えば、抗ABH8自己抗体の定常部領域に向けられた抗体(例えば、ウサギ抗ヒトIgG抗体)であり、それ自体で検出可能なように標識されている(例えば、放射能、蛍光、比色、または酵素標識)か、または標識された二次抗体(例えば、ヤギ抗−ウサギ抗体)によって検出される。これらの診断剤または診断用キットは、上述の免疫学的手法により、抗ABH8自己抗体を検出および/または定量するために用いられる。診断用キットは、他に、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、薬剤が抗ABH8自己抗体の検出に使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書等がさらに含まれていてもよい。
上記本発明のABH8検出のためのアッセイまたは抗ABH8自己抗体検出のためのアッセイは、単独で、がんの診断および/または予後評価等に使用し得る新たな方法であり得るが、本発明はそのような形態に限定されず、例えば、他の診断方法と組み合わせて用いることで、診断の精度をさらに向上させることもできる。
7.本発明の組換えベクター、形質転換体、およびそれらを用いるABH8タンパク質の製造方法
本発明はまた、別の実施形態において、本発明のABH8タンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入物として含有する組換えベクターに関する。具体的には、本発明は、(i)配列番号2のアミノ酸配列、(ii)配列番号2のアミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、および/もしくは付加を有するアミノ酸配列、または(iii)配列番号2のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列、のいずれかからなるABH8タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する、組換えベクターを提供する。
さらに本発明は、(iv)配列番号1のヌクレオチド配列、または(v)配列番号1のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし得る、ABH8タンパク質をコードするヌクレオチド配列、のいずれかからなるポリヌクレオチドを含有する、組換えベクターを提供する。
ここで、上記(ii)、(iii)、および(v)に対応するヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド配列と約97%以上の相同性を有し、ABH8タンパク質をコードすることが好ましい。
本発明の好ましい態様において、組換えベクターは、その挿入物を発現させ得る組換え発現ベクターである。そのような組換えベクターは、当該技術分野における公知の任意の方法で作製することができる。
本発明において、本発明のABH8タンパク質を発現させるために用いるベクターには、無細胞発現系(インビトロ トランスクリプション−トランスレーション)に、および宿主細胞、例えば大腸菌、酵母または動物培養細胞を用いるタンパク質発現系に適するベクターとすることができ、そのようなベクターは市販されているかまたは公知のベクターから容易に作製することができる。例えば、インビトロトランスレーションおよび動物培養細胞における発現に用いるベクターは、ヒトサイトメガロウイルスのimmeadiate-early エンハンサー/プロモーター領域を組込み、その下流域にT7のプロモーター配列/マルチクローニング部位を有するpTargetTベクターやSV40エンハンサーとSV40のearlyプロモーターを有するpSIベクター(プロメガ社)、pBK−CMV、CMV−Script、pCMV−TagおよびpBK−RSV(ストラタジーン社)などである。また、大腸菌、酵母などの微生物宿主における発現に適するベクターは、例えば大腸菌系のT7のプロモーターを有するpETシリーズベクター発現システム(例えばpET3a,pET27b(+)やpET28a(+);ノバジェン社)、および酵母系においてはアルコールオキシダーゼのプロモーターを有するピチア発現系ベクターpICシリーズベクター(例えばpPIC9KやPIC3.5K;インビトロジェン社)などである。
また、精製のためのペプチド配列としては、当該技術分野にて用いられているペプチド配列とすることができるが、例えば、ヒスチジン残基が4個以上、好ましくは6個以上連続したヒスチジンタグ配列、モノクローナル抗体への結合能を持つエピトープタグ配列、グルタチオンS−トランストランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインまたはプロテインAをコードする配列などが包含される。これらペプチド配列をコードするDNAを挿入物として含有するベクターは市販されている。例えば、大腸菌、酵母などの微生物宿主に用いるベクターは、大腸菌系のT7のプロモーターを有し、ヒスチジン残基を10個をアミノ末端に融合発現ベクター(例えばpET16b;ノバジェン社)、ヒスチジン残基を6個をアミノ末端に有する発現ベクター(例えばpHB6;ロッシュダイアグノスチィック社、pTrc−Hisシリーズベクター;インビトロジェン社、pHATベクターシリーズ;クローンテック社)などである。動物培養細胞における発現に用いるベクターは、ヒスチジン残基6個をアミノ末端に融合発現するベクター(例えば、pHM6やpVM6;ロッシュダイアグノスチィック社)の使用が可能である。昆虫培養細胞系ではバキュロウイルス系のヒスチジン残基6個をアミノ末端に融合発現するベクター(例えば、pBacPAK−Hisベクター;クローンテック社)。また、グルタチオンS−トランスフェラーゼと融合発現するpGEXシリーズベクター(ファルマシア)、プロテインAを発現するpRIT2またはpEZZ18ベクター(ファルマシア)が使用可能である。
本発明のABH8タンパク質を製造するためのインビトロトランスレーションは、公知の方法、例えばSpirin, A.S., et.al., Science 242: 1162-1164(1988年)および Patnaik, R. & Swartz, J.M. Biotechniques 24: 862-868(1998年)に記載の方法で実施することができ、市販のインビトロトランスレーションキット(例えば、TNT−インビトロトランスクリプション−トランスレーションキット、プロメガ社製)を用いてもよい。
本発明または、上述の組換えベクターで形質転換した形質転換体(例えば、宿主細胞(例:微生物(大腸菌、酵母など))および動物培養細胞(昆虫培養細胞、哺乳類培養細胞(例:CHO細胞、COS7細胞)))に関する。
本発明はまた、上記本発明の組換えベクターまたは上記本発明の形質転換体を用いるABH8タンパク質の製造方法に関する。本発明のABH8タンパク質の製造方法は、例えば、本発明の組換え発現ベクターを用いてインビトロトランスクリプション−トランスレーションを実施することからなる。あるいは、上記組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞を培養し、所望のタンパク質を単離することからなる。
本発明のABH8タンパク質の製造方法において、発現させたタンパク質は、宿主細胞の培養後、その培地からまたは菌体の可溶性画分から単離することができる。
本発明のABH8タンパク質の製造方法において、発現させたタンパク質は公知の方法により単離・精製されるが、その精製法としては公知の任意の方法から適宜選択することができる。例えば、本発明のABH8タンパク質が上述した精製のためのペプチド配列を包含する場合、これを用いて精製するのが好ましい。具体的には、ヒスチジンタグ配列にはニッケルキレートアフィニティークロマト法、S−トランストランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインにはグルタチオン結合ゲルによるアフィニティークロマト法、プロテインAまたは他のタンパク質の配列の場合には抗体アフィニティークロマト法を用いることができる。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されない。
実施例1:ABH8のクローニング
《実験材料》
実験材料としては、以下のものを使用した。
(1)ヒト正常膵臓 cDNA:
Human Multiple Tissue cDNA (MTC) Panel 1. Human Pancreas First-strand cDNA(BD バイオサイエンス), Lot# 1100541
(2)プライマー:
hABH8-F2-TOPO 5'-CACCATGGACAGCAACCATCAAAG-3'(配列番号3)
hABH8-R2 5'-ATCAGGCCTTTTGAAGAATCA-3'(配列番号4)
hABH8-F3 5'-AAAAAGTGCAGTGGAAGGA-3'(配列番号5)
hABH8-F4 5'-TGATGACAGGAGAATCTAGA-3'(配列番号6)
hABH8-F5 5'-ATTGGATGTGGTAATGGAAAG-3'(配列番号7)
M13 Forward 5'-GTAAAACGACGGCCAG-3'(配列番号8)
M13 Reverse 5'-CAGGAAACAGCTATGAC-3'(配列番号9)
(3)DNA ポリメラーゼ:
(i)PrimeSTARHS DNA Polymerase Sample (タカラ) , Cat. No. R010Q
(ii)BigDye(登録商標) Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit (アプライドバイオシステム
ス), Cat. No. 4337036
(4)ベクター構築Kitおよび使用プラスミド:
pENTRTM Directional TOPO(登録商標) Clonig Kits (インビトロジェン)
pENTRTM/D-TOPO(登録商標) vector (インビトロジェン)
(5)アガロースゲルからのDNA精製キット:
Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System (プロメガ),Cat. No. A9282
《実験方法》
実験は、以下の手順で行った。
(1)PCR
ヒト正常膵臓cDNAをテンプレートとして以下に示す組成にしたがってサンプルを調製し、マスターサイクラー ep グラジエント S Manual Lid (エッペンドルフ)を用いてPCRを行った。この際、条件として98℃で10秒、52℃で5秒、72℃で2分の増幅を40サイクル行った。
(PCRサンプルの組成)
Human Pancreas cDNA 1.0
5x Prime STARTM Buffer 5.0
dNTP Mixture (2.5 mM each) 2.0
10μM hABH -F2-TOPO 0.5
10μM hABH -R2 0.5
Prime STARTM HS DNA Polymerase (2.5 U/μl) 0.25
dH 2 O 15.75
25.0 μl
(2)クローニング
PCR後のサンプル全量を1%アガロースゲルで電気泳動し、2 kbpの位置に見られた単一バンドを切り出して、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System で精製した。このPCR産物をpENTRTM Directional TOPO(登録商標) Clonig Kits を用いてpENTRTM/D-TOPO(登録商標)とligationし、Top10 (インビトロジェン)をトランスフォーメイションしてプラスミドを複製した。プラスミドはWizard(登録商標)Miniprep Kit (プロメガ)により精製した。こうして得られたプラスミドは以下pENTR-ABH8と表記する。
(3)シークエンス解析
pENTR-ABH8をテンプレートとして、以下に示す組成にしたがって、それぞれ5つの異なるプライマー(hABH8-F3、hABH8-F4、hABH8-F5、M13 Forward、M13 Reverse)の一つを含む5種類のサンプルを調製し、マスターサイクラー ep グラジエント S Manual Lid を用いてPCRを行った。この際、条件として96℃で1分間前変性させ、96℃で10秒、50℃で5秒、60℃で4分の増幅を25サイクル行った(以下の操作はサンプルごとに別々に行った)。PCR後のサンプルを1.5 mlチューブに移し、5μlの125 mM EDTAと60μlの100% エタノールを加えてボルテックス後、15分間遮光下で放置した。その後15000 rpm , 4℃で20分間遠心し上清を捨てた後、60μlの70%エタノールを加え再度15000 rpm , 4℃で15分間遠心し、上清を捨てて2分間乾燥させた。そこに25μlのHi Di Formamideを加えボルテックスした後フラッシュし、95℃で2分間インキュベートした。インキュベート後に氷上で冷却しフラッシュ後、シークエンス用チューブに移してABI PRISM(登録商標)310 Genetic Analyzer (ABI)を用いてシークエンス解析を行った。解析結果を図3 示した。
(PCRサンプルの組成)
Ready Reaction Premix 4.0
BigDye Sequencing Buffer 2.0
10μM Primer 0.32
Template (150〜300ng)
dH 2 O to 20.0μl
20.0μl
《実験結果》
(1)PCR後の電気泳動写真
図2にヒト正常膵臓におけるABH8の発現を示すPCR後の電気で移動写真を示す。
(2)シークエンス解析結果
図3は、クローニングしたヒトABH8 cDNAの塩基配列とアミノ酸配列を示す。
解析後のヒトABH8 cDNAの配列をプラスミドの配列、およびヒトゲノムの配列とホモロジー解析した。得られたABH8 cDNAは2073 bp(配列番号1)であり、ORFは664個のアミノ酸(配列番号2)から構成されていた。またABH8は11番染色体に存在し、少なくとも12個のエクソンから構成されていることも明らかとなった(図4)。
(3)ABH8 の構造的特徴
図4は、ABH8のエクソン構成およびモチーフ・ドメインの模式図である。ABH8の推定される全664個のアミノ酸配列のモチーフ・ドメイン検索により、AlkB homologous regionとともに, RNA-recognition motif, methyltransferase domainが認められた。
以上のとおり、ヒトゲノム配列とMacaca fascicularisのABH8配列からプライマーを設計し、ヒト膵臓cDNAを用いてRT-PCRを行ったところ、約2 kbpの単一バンドが増幅できた。増幅された約2 kbpのバンドを切り出しpENTR/D-TOPOにライゲーションし、得られたプラスミド中のヒトABH8 cDNAの塩基配列を決定した。塩基配列解析ならびにホモロジー解析の結果、得られたヒトABH8 cDNAはカニクイザル ABH8 cDNAと96%以上という高い相同性を有することが明らかとなり、この結果から、得られたcDNAをヒトABH8であると断定した。さらに推定される全664個のアミノ酸配列のモチーフ・ドメイン検索から、AlkB homologous regionとともに, RNA recognition motif, methyltransferase domainが認められたことから、ヒトABH8が同一分子でメチル化、脱メチル化を担う可能性、またRNAがそのターゲットとなる可能性が示唆された。そこで次に、ヒト正常組織および各種ヒト癌細胞株におけるABH8 mRNAの発現を検討した。
実施例2:ヒト正常組織real-time PCRによるABH8の定量的発現解析
《実験材料》
以下の実験材料を使用した。
(1)ヒト正常臓器 cDNA:
Human Multiple Tissue cDNA (MTC) Panel 1 and Panel 2 (BD バイオサイエンス)
(2)プライマー:
β-actin-F 5'-CTACGAGCTGCCTGACGGC-3'(配列番号10)
β-actin-R 5'-GCCACAGGACTCCATGCCC-3'(配列番号11)
HA058356-F 5'-TGCTGAGACATGAAGGCATTGAG-3'(配列番号12)
HA058356-R 5'-ACGGCTTGTTAGGTGGCATTAAGA-3'(配列番号13)
(3)DNA ポリメラーゼ:
LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I(ロシュ) , Cat. No. 2239264
《実験方法》
実験は、以下の手順に従って行った。
(1)real-time PCR
16種のヒト正常臓器cDNAをテンプレートとして、β-actinとABH8 mRNAの発現をそれぞれに特異的なプライマー(β-actin:β-actin-F , β-actin-R , ABH8:HA058356-F , HA058356-R)を用いて調べた。サンプルは以下に示す組成にしたがって調製し、LightCycler (ロシュ)を用いてreal-time PCRを行った。この際、条件としてβ-actinでは、95℃で10分間前変性させ、95℃で15秒、62℃で30秒、72℃で10秒の増幅を40サイクル行った。またABH8では、95℃で10分間前変性させ、95℃で10秒、60℃で10秒、72℃で10秒の増幅を40サイクル行った。
(real-time PCRサンプルの組成)
Human Tissue cDNA 1.0
25mM MgCl2 stock solution 0.8
10μM Primer-F 0.5
10μM Primer-R 0.5
LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I 1.0
dH 2 O 6.2
10.0 μl
《実験結果》
ABH8 mRNAの発現を比較のために解析したABH2、3とともに、β-actinの発現に対する割合として計算し、小腸での発現を1として図5に示した。赤いバーで示したヒト正常臓器におけるABH8の発現はそれぞれ異なるが、検討した全てのヒト正常臓器において確認できた。また、その発現はABH2およびABH3の発現と類似していることが分かった。また精巣において特に発現量が高いことが分かった。
このように、ヒト正常臓器におけるABH8 mRNAの発現解析で、全ての組織でその発現を確認できたことから、ABH8が正常なすべての組織において恒常的に発現しており、組織の保護や生体のホメオスタシスにおいて重要な役割を担う可能性が考えられる。精巣において特に発現が高いことからヒトの正常な生殖、発生においてなんらかの役割を担うことも考えられる。
実施例3:ヒト癌細胞株RT-PCRによるABH8の発現解析
《実験材料》
実験材料は、以下のものを使用した。
(1)ヒト癌細胞株:
DU145 , PC3 , LNCap , A549 , AGS , HUH7 , SW480 , HeLa , U2OS , HL60 , HO , KLM , PANAC , Paca2 , PKI , PK45P (American Type Culture Collection)
(2)プライマー:
hABH8-F2-TOPO 5'-CACCATGGACAGCAACCATCAAAG-3'(配列番号3)
hABH8-R2 5'-ATCAGGCCTTTTGAAGAATCA-3'(配列番号4)
β-actin-F 5'-CTACGAGCTGCCTGACGGC-3'(配列番号10)
β-actin-R 5'-GCCACAGGACTCCATGCCC-3'(配列番号11)
(3)DNA ポリメラーゼ:
(i)TaKaRa LA Taq(登録商標) (タカラ) , Cat. No. RR002A
(ii)LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I(ロシュ) , Cat. No. 22392
64
(4)逆転写酵素:
M-MLV Reverse Transcriptase (インビトロジェン) , Cat. No. 28025-013
(5)試薬類:
Trizol (インビトロジェン)
Chloroform (和光純薬)
pd (T)12-18 (アマシャム バイオサイエンス), Cat. No. 27-7858-01
40 units/μl RNase inhibitor (和光純薬)
2 mM dNTP (アプライド バイオシステムス)
《実験方法》
実験は、以下の手順に従って行った。
(1)APGC法による各種癌細胞株のRNA調製
[1]各種癌細胞をはがし取りそれぞれエッペンチューブにとり遠心して細胞を集めた(以下の操作はすべて各細胞株ごとに行った)。[2]上清を捨て1 mlのトリゾールを加え、ピペッティングとボルテックスで細胞を塊が見えなくなるまでよく懸濁させた。[3]室温で5分間放置し、0.2 mlのクロロホルムを加えてボルテックスした後、室温で3分間放置した。[4]遠心して上清を新しいチューブに移し、イソプロパノールを0.5 ml加えて室温で10分間置いた。[5]遠心し上清を捨て、80%エタノールを 1 ml加えてボルテックスした後、再度遠心を行い上清を捨てた。[6]乾燥させた後、適当量のdH2Oに溶かして電気泳動でDNAのコンタミネーションがないことを確認した。
(2)逆転写によるcDNA合成
[1]5μgのRNAをRNse-freeチューブにいれ、1μlの0.5μg/μl pd(T)12-18 を添加した。[2]冷RNase-free dH2Oを加えて軽くボルテックスし、70℃で10分間インキュベートした後氷冷した。[3]以下に示す試薬を加えて軽くボルテックスし、37℃で60分間インキュベートした。[4]70℃で15分間インキュベートして酵素を不活化し、氷上で反応を止めた。
([3]で加えた試薬 :μl)
0.1 M DTT(インビトロジェン) 2.5
40 units/μl Rnase inhibitor (和光純薬) 0.5
5x First-Strand Buffer (インビトロジェン) 5.0
2mM dNTPs (ABI) 6.0
200 units/μl MMLV 1.0
(3)β-actinによるcDNAの標準化
合成した16種の癌細胞株cDNAをテンプレートとして、以下に示す組成にしたがってサンプルを調製し、LightCycler (ロシュ)を用いてreal-time PCRを行った。この際、条件として95℃で10分間前変性させ、95℃で15秒、62℃で30秒、72℃で10秒の増幅を40サイクル行った。解析したそれぞれの細胞株におけるβ-actinの発現量からその濃度比を算出し、HL60由来のcDNAの濃度に合わせて希釈した。
(real-time PCRサンプルの組成)
Human Cancer Cell Line cDNA 1.0
25 mM MgCl2 stock solution 0.8
β-actin-F 0.5
β-actin-R 0.5
LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I 1.0
dH 2 O 6.2
10.0 μl
(4)PCR
β-actinで標準化した16種のヒト癌細胞株cDNAをテンプレートとして、以下に示す組成にしたがってサンプルを調製し、RT-PCRを行った。この際、条件として94℃で2分間前変性させ、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で2分の増幅を40サイクル行った。PCR後の各サンプルの電気泳動写真を《実験結果》の図6に示した。
(RT-PCRサンプルの組成)
Human Cancer Cell Line cDNA 1.0
10x LA PCR(登録商標) Buffer II 2.5
25mM MgCl2 2.5
dNTP Mixture (2.5 mM each) 4.0
hABH8-F2-TOPO 0.5
hABH8-R2 0.5
TaKaRa LA Taq(登録商標) (5 units/μl) 0.25
dH 2 O 13.75
25.0 μl
《実験結果》
このように、前立腺癌細胞株(DU145, PC3, LNCap)をはじめとして、調べたすべての癌細胞株においてABH8の発現が確認できた。
実施例4:ABH8およびABHファミリー分子の細胞内局在
《実験材料》
以下の実験材料を使用した。
(1)細胞培養:
ヒト子宮頸癌細胞株であるHeLa(ATCC)を10%の非動化FCS(ニチレイ)を添加したDMEM (シグマ)で培養した。
(2)トランスフェクション試薬:
TransIT(登録商標)-HeLa MONSTER(登録商標) Transfection Kit (マイラス) , Cat. No. MIR2904
(3)ベクター構築キットおよび使用プラスミド:
Gateway(登録商標) LR ClonaseTM Enzyme Mix (インビトロジェン) , Cat. No. 11791-043
pENTRTM/D-TOPO(登録商標) vector (インビトロジェン) Cat. No. K2400-20
pcDNATM 6.2/N-EmGFP-DEST (インビトロジェン) Cat. No. V356-20
(4)試薬類:
PBS
(組成) NaCl 8.0 g , Na2HPO4・12H2O 2.9 g , KH2PO4 0.2 g , KCl 0.2 gをdH2Oに溶解して1 Lとし、オートクレーブ後使用
Trypsin/EDTA溶液
(組成) EDTA 0.04 g , trypsin 0.1 gをPBS 200 mlで溶解
Tris-EDTA Buffer (pH 8.0)
(組成) tris塩基 0.6055 g , EDTA 0.1861 g を400 mlのdH2Oに溶解し、6 Nの塩酸を加えながらpHを8.0にあわせて500 mlにメスアップし、オートクレーブ後使用した。
《実験方法》
実験は、以下の手順に従って行った。
(1)ABH8の細胞発現ベクターの作製
[1]pENTR-ABH8をエントリークローンとして、またpcDNATM 6.2/N-EmGFP-DESTをデスティネーションベクターとして用い、以下に示す組成にしたがって1.5 mlチューブにサンプルを調製した。[2]タッピング後、LA Clonase Enzyme Mixを4μl加えてボルテックスした後フラッシュし、25℃で60分間インキュベートした。[3]Proteinase K solutionを2μl加えてボルテックスした後フラッシュし、37℃で10分間インキュベートした。[4]Nova Blue(ノバジェン)をトランスフォーメイションしてプラスミドを複製し、プラスミドはWizard(登録商標)Miniprep kit(プロメガ)により精製した。こうして得られたプラスミドは以下pEGFP-ABH8と表記する。
(サンプルの組成)
Entry clone (100〜300ng)
Destination vector (150 ng/μl) 2.0
5x LR Clonase TM Reaction Buffer 4.0
Tris-EDTA buffer (pH 8.0) to 16.0 μl
(2)トランスフェクション
[1]トランスフェクションの前日にHeLa細胞を5x104 cells/ml/12-well dishにまき、細胞が50-70%になるまでCO2 incubaterで培養した(約24 hr)。[2]1.5 mlのシリコンチューブ2本にOpti-MEM(インビトロジェン)を100μl入れ、TransIT(登録商標) HeLa Reagentを2μl加えた後ボルテックスして室温で5分間インキュベートした。[3]1μgのpEGFP-ABH8およびコントロールとしてpcDNATM 6.2/N-EmGFP-DEST (以下pEGFPとする)をそれぞれ別のチューブに加えピペッティングし、室温で5分間インキュベートした(以下の操作はすべてチューブごとに行った)。[4]MONSTER Reagentを1μl加えピペッティングし、室温で5分間インキュベートした。[5]あらかじめ温めておいたDMEM (シグマ)を1 ml加えて転倒攪拌した後、培養液を除いた細胞上に滴下し、プレートを前後左右にふって攪拌した。[6]24時間後に培養液をDMEM (シグマ)に交換した。
(3)EGFPによる蛍光観察
pEGFP-ABH8 , pEGFPをトランスフェクションした24時間後のHeLa細胞のEGFPによる蛍光を、BZ-8000 (キーエンス)を用いて観察した。
《実験結果》
pEGFP−ABH8およびpEGFPをトランスフェクションしたHeLa細胞の染色像に加えて、比較のために同様の方法で他のABHファミリー分子をトランスフェクションしたHeLa細胞の染色像も並べて図7に示した。観察の結果、pEGFP-ABH8をトランスフェクションしたHeLaではコントロールに比べて蛍光が細胞質に偏り、核が染まっていなかった。このような極端な細胞質への局在は、ABH2、3など他のABHファミリー分子では見られていないことからABH8の細胞質タンパク質としての機能が推測される。さらに、組織がなんらかの障害を受けたときに特異的に発現誘導がかかり核内への移行を伴って機能発現するという可能性についても推測される。
実施例5:抗ABH8ペプチド抗体の作製
《実験材料》
以下の実験材料を使用した。
(1)ELISAプレート:
MULTI WELL PLATE [for ELISA] H Type Plate (スミロン) , Cat. No. MS-8596F
(2)二次抗体:
goat anti-rabbit IgG-HRP (サンタクルス バイオテクノロジー)
(3)ELISA発色液
A液:ABTS Peroxidase Substrate (KPL), Product Code 50-64-00
B液:Peroxidase Solution B [H2O2] (KPL), Product Code 50-65-00
(4)試薬類:
PBS
SKIM MILK (森永)
《実験方法》
実験は、以下の手順に従って行った。
(1)抗原ペプチドの設計および合成
ABH8の全アミノ酸配列のペプチド抗原性サーチを北山ラベス株式会社に委託した。解
析の結果得られたいくつかの候補配列の中から511-524の配列(NKQKSKYLRGNRNS)を抗原部位に決定し、この配列の頭部にCysをつけたペプチドの合成、および合成したペプチドとキャリアータンパク(KLH)との接合をSIGMA Aldrich Japan(株)に委託した。
(2)抗血清の作製
合成した抗原ペプチドを用いたウサギによる抗血清の作製を再度北山ラベス株式会社
に委託した。ウサギ(No.1 , No.2)への免疫は2005/9/1から2005/10/13まで二週間おきに計4回行い、免疫開始から0週目、4週目、6週目、7週目の時点で採血した血清サンプルの抗体価を、ELISA法を用いて測定した。測定の結果、6週目と7週目のサンプルで十分な抗体価が確認できたので、免疫開始から11週目でNo.1 , No.2のウサギをともに全採血した。
(3)ELISA
[1]抗原ペプチドをPBSで1 mMに調整後、10μMに希釈し、100μl/wellとなるようにELISAプレートに入れ、4℃、湿箱中で一晩インキュベートした。[2]各wellを3回洗ったあとSKIM MILK/PBSを200μl/well加え、室温、湿箱中で1時間インキュベートした。[3]各wellを3回洗ったあと、1%BSA/PBSでそれぞれの血清サンプルの16000倍からの2倍希釈系列をつくり、100μl/well加えて室温、湿箱中で1時間インキュベートした。[4]各wellを3回洗ったあと、1%BSA/PBSで1000倍に希釈した二次抗体を50μl/well加え、室温、湿箱中で1時間インキュベートした。[5]各wellを3回洗ったあと、ELISA発色液のA液とB液を1:1で混合攪拌し100μl/well加えて、遮光下で20分間インキュベートした。[6]415nmで吸光度を測定した。
《実験結果》
測定の結果、免疫7週目において十分な抗体価を確認することができたので、11週目でNo.1のウサギ、No.2のウサギともに全採血し、抗血清を得た。またグラフのように、No.2に比べてNo.1から得られた抗血清で比較的高い抗体価が得られたので、次にABH8タンパクの発現をこのNo.1の抗血清を用いたウエスタンブロットで解析した。
実施例6:ABH8タンパクの発現解析
《実験材料》
以下の実験材料を使用した。
(1)細胞培養:
ヒト前立腺癌細胞株であるDU145(ATCC)を10%の非動化FCS(ニチレイ)を添加したRPMI 1640 (シグマ)で培養した
(2)トランスフェクション試薬:
TransIT(登録商標)-Prostate Transfection Kit (マイルス) , Cat. No. MIR2130
(3)ベクター構築Kitおよび使用プラスミド:
Gateway(登録商標) LR ClonaseTM Enzyme Mix (インビトロジェン) , Cat. No. 11791-043
pENTRTM/D-TOPO(登録商標) vector (インビトロジェン) Catalog No. K2400-20
pDESTTM 26 (インビトロジェン)Catalog No. 11809-019
(4)1次抗体:
ウサギ抗ABH8ペプチド抗体(抗血清) No.1
(5)2次抗体:
goat anti-rabbit IgG-HRP (サンタクルーズ)
(6)化学発光試薬
LumigenTM PS-3 detection reagent (アマシャム バイオサイエンス), Cat. No. RPN2132V
(7)試薬類:
3% BSA/TBS-T
(組成)TBS-T:1 M tris buffer (pH 7.5) 10 ml, 5 M NaCl 30 ml, Tween 20 1 mlをdH2Oに溶解して1 Lにメスアップした
《実験方法》
実験は、以下の手順に従って行った。
(1)ABH8の細胞用発現ベクターの作製
[1]pENTR-ABH8をエントリークローンとして、またpDESTTM26をデスティネーションベクターとして用い、以下に示す組成にしたがって1.5 mlチューブにサンプルを調製した。[2]タッピング後、LA Clonase Enzyme Mixを4μl加えてボルテックスした後フラッシュし、25℃で60分間インキュベートした。[3]Proteinase K solutionを2μl加えてボルテックスした後フラッシュし、37℃で10分間インキュベートした。[4]Nova Blue(ノバジェン)をトランスフォーメイションしてプラスミドを増幅し、プラスミドはWizard(登録商標)Miniprep Kit(プロメガ)により精製した。こうして得られたプラスミドは以下pDEST26-ABH8と表記する。
(サンプルの組成)
Entry clone (100〜300ng)
Destination vector (150 ng/μl) 2.0
5x LR Clonase TM Reaction Buffer 4.0
Tris-EDTA buffer (pH 8.0) to 16.0 μl
(2)トランスフォーメイション
[1]トランスフォーメイションの前日にDU145細胞を2x105 cells/35 Φ dishにまき、細胞が50-70%になるまでCO2 incubaterで培養した(約24 hr)。[2]1.5 mlのシリコンチューブにOpti-MEM(インビトロジェン)を200μl入れ、TransIT(登録商標)-Prostate Transfection Reagentを6μl加えた後ボルテックスして室温で5分間インキュベートした。[3]2μgのpDEST26-ABH8をチューブに加えピペッティングし、室温で5分間インキュベートした。[4]Prostate Boost Reagentを2μl加えピペッティングし、室温で5分間インキュベートした。[5]あらかじめ温めておいたRPMI 1640 (シグマ)を2ml加えて転倒攪拌した後、培養液を除いた細胞上に滴下し、プレートを前後左右にふって攪拌した。[6]24時間後に細胞をはがして全量を90 Φ dishにまきなおし、さらに48時間インキュベートした。
(3)ライセートの回収
[1]pDEST26-ABH8をトランスフェクションしたDU145細胞、およびコントロールとしてワイルドタイプのDU145細胞をそれぞれはがして1 mlのPBSに懸濁し、別々の1.5 mlチューブに全量回収した。[2]1500 rpmで2分間遠心して上清を取り除いた後、lysis buffer 200μlと100倍希釈したprotein inhibitor 2μlを加えて氷上で30分間インキュベートした。[3]1500 rpmで10分間遠心してそれぞれの上清を回収した。
(4)ウエスタンブロット
[1]回収したそれぞれのライセートを12%SDS-PAGEを用いて電気泳動した。[2]これをニトロセルロース膜(スクレイチャー アンド スクウェル)に転写した後、3% BSA/TBS-Tを用いてブロッキングした。[3]TBS-Tで3回洗浄した後、1次抗体として10000倍に希釈したNo.1由来の抗ABH8ペプチド抗体を含む抗血清10 mlを加え1時間振とうし、再度TBS-Tで3回洗浄した。[4]2次抗体として10000倍に希釈したHRP標識抗rabbit IgG抗体(サンタクルス バイオテクノロジー)10 mlを加え1時間振とうし、TBS-Tで3回洗浄した。[5]化学発光試薬(アマシャム)を用いて抗原抗体複合体を検出した。
《実験結果》
図9では左のレーンにpDEST26-ABH8をトランスフェクションしたDU145細胞、右のレーンにワイルドタイプのDU145細胞のウエスタンの結果を示している。図のように、ABH8高発現株とワイルドタイプのDU145細胞でともにABH8の推定質量 75 kDaに近い82 kDaのバンドを確認することができた。
以上示した実施例1〜6では、ヒト正常臓器および各種ヒト癌細胞株におけるABH8 mRNAの発現解析の結果発現量はそれぞれ異なるものの、検討した全ての臓器および癌細胞株でその発現を確認することができた。ヒト正常臓器における発現については、すべての臓器において発現が確認できることから、正常な組織の維持に重要な役割を担うことが推測された。また精巣における高発現といったように各臓器において発現の度合いが異なることから、それぞれの臓器において組織特異的な役割を担っていることも考えられる。またABH8の細胞内における局在性の解析からABH8が特に細胞質に存在することが示され、細胞質タンパク質としての機能が推測された。
ABH8をトランスフェクションしたDU145細胞およびワイルドタイプのDU145細胞を用いたウエスタンブロット解析では、その両方においてABH8の推定質量 75 kDaに近い82 kDaのバンドを確認することができた。この結果は、ヒト癌細胞株におけるABH8 mRNAの発現解析の結果とも一致するものでありABH8の機能性タンパク質の細胞内における存在を裏付けるものである。
実施例7:ヒトABH8の免疫組織化学染色
tissue arrayを用いてヒトABH8の免疫組織化学染色を行った。
<手順>
全ての組織は10%中性緩衝ホルマリンにより固定し、パラフィン中に包埋し、組織病理学的解析のために4μmに切片化した。脱パラフィン化の後、切片を1mM EDTA(pH8.0)に浸し、オートクレーブ中120℃で5分間熱した。切片を37℃にて1時間、抗血清の1:3000希釈(濃度1μm/ml)とインキュベートした。反応は引き続きHistofine SAB−PO(R)キット(ニチレイ社製)および色素としてジアミノベンジジン(diaminobenzidine)を用いて可視化し、ヘマトキシリンにより対比染色した。
<結果>
以下は、癌種(陽性検体/試験検体)で表されている。
乳癌(26/28)、肺癌(腺癌3/13、扁平上皮癌3/16;但しいずれも極めて弱い)、腎癌(9/16;但し正常尿細管の方が強い)、膀胱癌(13/20)、前立腺癌(26/50)、胃癌(14/52);正常腺管、特に胃固有腺に強い反応)、大腸癌(33/57;但し正常腺管も弱いながら反応)、胆嚢癌(3/16;但し極めて弱い)、肝癌(4/8;但し正常幹細胞の方が強い)。
以上の結果から、乳癌(MMK)、膀胱癌(BT)、前立腺癌(PK)、大腸癌(colon)が背景の反応も少なく、腫瘍に比較的反応しているようであった。代表的な染色写真を、図10A〜Dに示す。
実施例8:ABH8遺伝子のRNAi解析
本実施例では、乳がん細胞株T47D、前立腺がん細胞株DU145、PC3、大腸がん細胞株HCT116を用いて、ABH8遺伝子についてRNAi解析を行い、その表現型を解析した。
<RNAi解析>
細胞株はATCCより購入し、添付のプロトコールに従い培養を行った。ABH8siRNAはABH8遺伝子内の特異的な21merを選択しその配列を標的とするsiRNAを合成した(株式会社日本バイオサービスに合成委託)。
ABH8siRNAの細胞内への導入は、Lipofectamine RNAiMAX(Invitrogen)を使用し、10nMのABH8siRNAを添付のプロトコールに従い細胞に導入した。対照にはNegative Control siRNA(QIAGEN)を使用した。
<定量的RT−PCR解析>
定量的RT−PCR法を用いて、ABH8siRNAの効果をmRNAレベルで検証した。ABH8siRNA導入後24時間の細胞から、Micro−to−Midi Total RNA Purification System(Invitrogen) を使用して、添付のプロトコールに従い、全RNAを抽出した。その後、SuperScript III First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を使用して、添付のプロトコールに従い、cDNAを合成した。
このcDNAを鋳型にして、定量的RT−PCRを実施した。定量的PCRは、Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用して、添付のプロトコールに従い、7500 Real−Time PCR System(Applied Biosystems)を用いて実施した。プライマーは、以下の配列を合成し(OPERONに合成委託)使用した。
プライマー配列:
5’−GTTGAGCCATTTGGTCCCATAG−3’(配列番号14)
5’−CTCACGGAACACATGGTAGTAACG−3’(配列番号15)
相対比を算出するための標準遺伝子にはGlyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase(GAPDH) Control Reagents(Applied Biosystems)を用いてGAPDHの発現量を求め、相対比を算出した。
<生細胞数の測定>
ABH8siRNA導入後、4日目の生細胞数をAlamar Blue(Biosource)を用いて、添付のプロトコールに従い、Wallac 1420 Multilabel/Luminescence Counter ARVO(PerkinElmer)により測定した。
<siRNAのトランスフェクション>
まず、ABH8遺伝子内の配列に特異的な表1に示すようなsiRNAを合成した。(以下「ABH8siRNAa」とする)。
Figure 0005354634
このABH8siRNAaを乳癌細胞株であるT47D細胞及び前立腺癌細胞株であるDU145細胞にトランスフェクション後、4日目の生細胞数を用いて測定試薬により生細胞数を測定した。
結果を図11A、Bに示した。グラフはNegative Control(NC)に対する相対量を示した。示されるように、生細胞数の測定を行った結果、NCと比較して顕著に細胞数が減少していた(図11A,B)。なおグラフはN=2の結果を示しておりほぼ再現性は確保されている。
次に、表2に示すように、ABH8遺伝子内の別の配列に特異的なABH8siRNAaとは別のsiRNAを合成した(以下「ABH8siRNAb」とする)。
Figure 0005354634
このABH8siRNAbを前立腺癌細胞株であるPC3細胞及び大腸癌細胞株であるHCT116細胞にトランスフェクション後、4日目の生細胞数を用いて測定試薬により生細胞数を測定した結果を図11C,Dに示した。グラフはNegative Control(NC)に対する相対量を示した。この結果、図に示されるように生細胞数の測定を行った結果、ABH8遺伝子に特異的な、ABH8siRNAaとは別の配列のABH8siRNAbによってもNCと比較して顕著に細胞数が減少していた(図11C,D)。なおグラフはN=2の結果を示しておりほぼ再現性は確保されている。
我々は同時に、ABH8siRNAa及びABH8siRNAbによってABH8遺伝子の発現が阻害されていたかどうかを検証するため、それぞれのsiRNAをトランスフェクション後、1日目の細胞におけるABH8遺伝子の発現量を定量的RT−PCRにより測定した。図12に、ABH8siRNAaをT47D及びDU145にトランスフェクション後、またABH8siRNAbをPC3及びHCT116細胞にトランスフェクション後の結果を示した。標準遺伝子にはGAPDHを用いた。グラフはNCに対する相対量を示した。示されるように、どの細胞株においてもNCと比較して顕著に発現量が減少していた(図12A,B、C、D)。
よって、RNAi効果によりABH8遺伝子の発現が抑制された結果、T47D、DU145、PC3,HCT116細胞において、顕著にがん細胞の増殖が抑制されることが見出された。
以上のことから、乳がん、前立腺がん、および大腸がんにおいて、ABH8遺伝子機能の抑制が、それらのがん治療において有効である可能性が示唆された。
実施例8:ABH8siRNAによるDU145細胞での増殖抑制及びアポトーシス誘導
我々は更に別のABH8siRNA配列を用いて、ABH8siRNAによるDU145細胞での増殖抑制効果の検証を行い、増殖抑制の要因としてアポトーシス誘導について検証した。
《ABH8siRNAの配列》
用いたABH8siRNAの配列を表3に示す(以下「ABH8siRNAc」とする)。
Figure 0005354634
《コントロールsiRNA》
コントロールsiRNAとして、B-Bridge ネガティブコントロール S5C-0600を使用した。
《RNAiのトランスフェクションプロトコール》
RNAiのトランスフェクションプロトコールは、以下のとおりであった。
1.35φdishに2 x 105 cellsのDU145細胞(血清(−)、抗生物質(−)のRPMI1640)で播種し、37℃、5% CO2で24時間インキュベートする。
2.2μM siRNA 100μlと血清(−)、抗生物質(−)のRPMI1640 100μlを混合する([1])。
3.DharmaFECTTM 1(DHARMACON)4μlと血清(−)、抗生物質(−)のRPMI1640 196μl を混合し室温で5分間放置する([2])。
4.[1][2]を混合し、室温で20分間放置する([3])。
5.培養中のDU145細胞の培地を血清(+)、抗生物質(−)のRPMI1640に変え、[2]を滴下して撹拌37℃、5% CO2でインキュベートする。
《増殖アッセイ》
増殖アッセイは、以下のプロトコールに従って行った。
1.siRNAトランスフェクションから48時間後に96ウェルプレートに1 x 103cells/wellで播種する(Day0)。
2.Day1からDay6までの増殖をWST−1(DOJINDO)を用いてそのプロトコールに従い測定する。
3.Day1のOD値を1として比率で増殖率を表す。
《アポトーシス解析》
アポトーシス解析を以下のプロトコールの通り行った。
1.siRNAトランスフェクションから48時間後に播種しなおす(Day0)。
2.Day0とDay3の細胞を回収し、Annexin V−FITC Apoptosis Detection Kit(BioVision)を用いてプロトコールに従い染色し、フローサイトメーターで解析する。
《カスパーゼアッセイ解析》
1.Promega社より市販されている「Caspase-Glo 3/7 Assay」を用いて、プロトコールに従い測定した。
2.siRNAトランスフェクショから48時間後に96ウェルプレートに1 x 104 cells/wellで播種する。
3.24時間後、Caspase-Glo 3/7 Assayの試薬を100μl添加し、1時間室温でインキュベーション後発光度をルミノメーターで測定する。グラフは、Control siRNAをトランスフェクションした細胞の発光度を1として示している。
<結果>
図13は、増殖アッセイの結果を示す。
図に示されるように、コントロールsiRNAに比較して、ABH8siRNAcをトランスフェクションしたDU145細胞では、増殖が抑制されていることが確認された。
図14は、アポトーシス解析の結果を示す。
アポトーシス細胞は、Annexin V陽性propidium iodide陰性の位置に検出された。Day 0では、control siRNA 3%, ABH8 siRNAc 4%であった。Day3ではcontrol siRNA 11%であるのに対して、ABH8 siRNAcでは40%と増加していた。このように、ABH8 siRNAcはDU145細胞においてアポトーシス誘導作用を示すことが確認された。
図15は、上記カスパーゼアッセイ解析の結果を示す。図に示されるように、コントロールsiRNAを用いた場合と比較して、ABH8siRNAcでトランスフェクションしたDU145細胞では、カスパーゼ3/7活性が上昇していることが確認された。これは、ABH8siRNAcでトランスフェクションしたDU145細胞でアポトーシスが誘導されることを示す。
本発明は、ヒトABH8遺伝子に関連する疾患(例えば、癌(例:乳がん、前立腺がん、膀胱癌、大腸癌))の診断・治療等に有用である。
ABHファミリー分子の模式図を示す。 ヒト正常膵臓におけるABH8の発現を示す電気泳動写真である。 クローニングしたヒトABH8 cDNAの塩基配列とアミノ酸配列を示す。 ABH8のエクソン構成、およびモチーフ・ドメインの模式図である。 ヒト正常臓器におけるABH2、ABH3、およびABH8の発現を示すグラフである。 ヒト各種癌細胞株におけるABH8の発現を示す電気泳動写真である。 HeLa細胞におけるABH8およびその他のABHファミリー分子の細胞内局在を示す写真である。 免疫後各週における抗血清の抗体価の比較(x2048000でのODを1とする)を示すグラフである。 左のレーンにpDEST26-ABH8をトランスフェクションしたDU145細胞、右のレーンにワイルドタイプのDU145細胞のウエスタンの結果を示す電気泳動写真である。 ヒトABH8の免疫組織化学染色の結果を示す染色写真である。それぞれ、(A)乳癌、(B)膀胱癌、(C)前立腺癌、および(D)大腸癌の組織の染色結果を示す。 ヒトABH8の免疫組織化学染色の結果を示す染色写真である。それぞれ、(A)乳癌、(B)膀胱癌、(C)前立腺癌、および(D)大腸癌の組織の染色結果を示す。 ABH8siRNAaを乳癌細胞株であるT47D細胞(A)、前立腺癌細胞株であるDU145細胞(B)、またABH8siRNAbを前立腺癌細胞株であるPC3細胞(C)、及び大腸癌細胞株であるHCT116細胞(D)にトランスフェクション後、4日目の生細胞数を用いて測定試薬により生細胞数を測定した結果を示す。 ABH8siRNAaを乳癌細胞株であるT47D細胞(A)、前立腺癌細胞株であるDU145細胞(B)、またABH8siRNAbを前立腺癌細胞株であるPC3細胞(C)、及び大腸癌細胞株であるHCT116細胞(D)にトランスフェクション後、4日目の生細胞数を用いて測定試薬により生細胞数を測定した結果を示す。 ABH8siRNAaをT47D(A)及びDU145(B)にトランスフェクション後、またABH8siRNAbをPC3(C)及びHCT116細胞(D)にトランスフェクション後1日目の細胞におけるABH8遺伝子の発現量を定量的RT−PCRにより測定したの結果を示す。 ABH8siRNAaをT47D(A)及びDU145(B)にトランスフェクション後、またABH8siRNAbをPC3(C)及びHCT116細胞(D)にトランスフェクション後1日目の細胞におけるABH8遺伝子の発現量を定量的RT−PCRにより測定したの結果を示す。 AHB8siRNAc導入DU145細胞の増殖抑制を示すグラフである。 ABH8siRNAcによるDU145細胞のアポトーシス誘導効果を示すフローサイトメーター解析からのグラフである。 ABH8siRNAc導入DU145細胞におけるカスパーゼ3/7活性の上昇を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 配列番号1のヒトABH8遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、
    前記ヒトABH8遺伝子の発現阻害物質が、
    (a)前記ヒトABH8遺伝子の発現をRNAi効果により阻害する作用を有する核酸、または
    (b)ヒトABH8遺伝子の転写産物またはその一部に対するアンチセンス核酸、
    である、がん治療剤。
  2. 前記核酸が、配列番号16の塩基配列を含有するポリヌクレオチドおよび配列番号17の塩基配列を含有するポリヌクレオチドのセット、配列番号18の塩基配列を含有するポリヌクレオチドおよび配列番号19の塩基配列を含有するポリヌクレオチドのセット、または配列番号20の塩基配列を含有するポリヌクレオチドおよび配列番号21の塩基配列を含有するポリヌクレオチドのセットである、請求項に記載のがん治療剤。
  3. 前記がんが、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、または大腸がんである、請求項またはに記載のがん治療剤。
  4. 配列番号1のABH8遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、配列番号16の塩基配列を含有するポリヌクレオチドおよび配列番号17の塩基配列を含有するポリヌクレオチドのセット、配列番号18の塩基配列を含有するポリヌクレオチドおよび配列番号19の塩基配列を含有するポリヌクレオチドのセット、または配列番号20の塩基配列を含有するポリヌクレオチドおよび配列番号21の塩基配列を含有するポリヌクレオチドの
    セットを含有する、がん治療剤。
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