JP2010166873A - Pomp遺伝子およびpsma7遺伝子の治療的又は診断的用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】がんの診断および/または治療に有効な新規薬剤等の提供。
【解決手段】プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、該プロテアソーム関連遺伝子が、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子であるがん治療剤。さらに、(a)上記遺伝子の発現をRNAi効果により阻害する作用を有する核酸、(b)上記遺伝子の転写産物またはその一部に対するアンチセンス核酸、および(c)上記遺伝子の転写産物を特異的に切断するリボザイム活性を有する核酸、からなる群から選択される物質を含むがん治療剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、がんにおいて特異的に増幅しているプロテオソーム関連遺伝子、その治療的又は診断的用途などに関する。より具体的には、本発明は、大腸がんにおいて特異的に増幅している遺伝子であるPOMP遺伝子およびPSMA7遺伝子、その治療的又は診断的用途などに関する。
悪性腫瘍(がん)の特徴として、増殖・浸潤・転移を経て全身化することによる致死があげられる。外科的な切除または放射線治療のような局所療法では、転移性再発がんに対して十分な対処はできず、全身療法である薬物療法の発展が、今後のがん治療成績の向上に期待されている。
がん薬物療法の現在の中心である化学療法は、直接がん細胞のDNAおよび/またはRNAに作用し、細胞を死に至らせる殺細胞薬剤を用いる場合が多いが、がん細胞以外の、例えば、骨髄細胞、生殖細胞、毛母細胞、消化管上皮細胞など分裂がさかんな正常細胞に対しても作用し、強い副作用をもたらしていた。一方、近年の分子細胞生物学の進歩により、がん細胞の浸潤・増殖・転移などにかかわるメカニズムが解明され、そのがん細胞の特定メカニズムに特異的に作用する分子標的薬の開発が注目されている。代表例として、非小細胞肺がんの治療に効果のある、EGFR(上皮成長因子 受容体)チロシンキナーゼ阻害剤であるイレッサ(一般名:ゲフィチニブ)(特許文献1:WO96/33980)、乳がんの治療に効果のある、HER−2(ヒト上皮成長因子受容体2)のヒト化モノクローナル抗体のハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)(特許文献2:WO94/00136)などがあげられる。しかしながら、現状では未だ有効な分子標的薬は少なく、今後更なる各がん種に対する有効な分子標的薬の開発が望まれている。
日本人の大腸がんは年々増加の傾向にあり、死亡数は、肺がん、胃がんに次いで3位になっている。年齢別では60歳代が一番多く、次いで50歳代、70歳代の順である。大腸がんの増加の原因には、遺伝的要因、環境的要因などが考えられるが、食生活の西欧化、特に動物性脂肪の取りすぎが原因ではないかと指摘されている。大腸がんの有効な分子標的薬の開発が待たれている。また、診断に用いられている腫瘍マーカー(CEA,CA19−9)は、進行大腸がんであっても約半数が陽性を示すのみで、臓器特異性も無く、より高性能な診断薬の開発が望まれている。
WO96/33980 WO94/00136
このような状況下、がんの診断および/または治療に有効な薬剤の開発が望まれている。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、がん(特に、大腸がん)において、高頻度に増幅している2つのプロテアソームに関連する遺伝子、POMP、PSMA7を見出した。本発明者らはさらに、大腸がん細胞株においてPOMPおよび/またはPSMA7の発現を阻害することによって、がん細胞の増殖を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下に記載するがん治療剤、がん抑制作用を有する候補物質のスクリーニング方法、がん診断剤、がん診断用キット、がんの診断方法などを提供する。
[1]プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、該プロテアソーム関連遺伝子が、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である、がん治療剤。
[2]上記プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質が、
(a)POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子の発現をRNAi効果により阻害する作用を有する核酸、
(b)POMP遺伝子もしくはPSMA7遺伝子の転写産物またはその一部に対するアンチセンス核酸、
および
(c)POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子の転写産物を特異的に切断するリボザイム活性を有する核酸、
からなる群から選択される物質を含む、[1]に記載のがん治療剤。
[3]プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、該プロテアソーム関連タンパク質がPOMPタンパク質またはPSMA7タンパク質である、がん治療剤。
[4]上記プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質が、
該POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質に対する抗体、
を含む、[3]に記載のがん治療剤。
[5]上記がんが大腸がんである、[1]〜[4]のいずれかに記載のがん治療剤。
[6]プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質をスクリーニングする方法であって、
(a)POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子を発現する細胞に、被検化合物を接触させる工程、
(b)該POMP遺伝子または該PSMA7遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
(c)被検化合物を接触させない場合と比較して、該発現レベルを低下させる化合物を選択する工程を包含する、スクリーニング方法。
[7]プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質をスクリーニングする方法であって、
(a)POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質と被検化合物とを接触させる工程、
(b)該POMPタンパク質または該PSMA7タンパク質と被検化合物との結合活性を測定する工程、および
(c)該POMPタンパク質または該PSMA7タンパク質と結合する化合物を選択する工程を包含する、スクリーニング方法。
[8]大腸がんの治療剤の候補化合物をスクリーニングするためのものである、[6]または[7]に記載の方法。
[9]POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質に対する抗体。
[10][9]に記載の抗体を含有するがん治療剤。
[11]放射性同位元素、治療タンパク質、低分子の薬剤、または治療遺伝子を担持したベクターをさらに含有する、[10]に記載のがん治療剤。
[12]上記がんが大腸がんである、[10]または[11]に記載のがん治療剤。
[13][9]に記載の抗体を含有するがん診断剤。
[14]プロテアソーム関連遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列を含有するがん診断剤であって、該プロテアソーム関連遺伝子が、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である、がん診断剤。
[15]上記がんが大腸がんである、[13]または[14]に記載のがん診断剤。
[16][9]に記載の抗体を含有するがん診断用キット。
[17]プロテアソーム関連遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するがん診断用キットであって、該プロテアソーム関連遺伝子がPOMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である、がん診断用キット。
[18]上記がんが大腸がんである、[16]または[17]に記載のがん診断用キット。
[19]被験者由来の生体試料中のプロテアソーム関連タンパク質またはプロテアソーム関連遺伝子をがんマーカーとして検出および/または定量する方法であって、該プロテアソーム関連タンパク質がPOMPタンパク質またはPSMA7タンパク質であり、該プロテアソーム関連遺伝子がPOMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である、方法。
[20]上記生体試料が、全血、血清、または血漿である、[19]に記載の方法。
[21]質量分析装置を用いて、上記プロテアソーム関連タンパク質を検出および/または定量する、[19]または[20]に記載の方法。
[22]抗プロテアソーム関連抗体を用いて、上記プロテアソーム関連タンパク質を検出および/または定量する、[19]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23](a)被験者由来の生体試料と、上記プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体とを接触させる工程、および
(b)上記試料中での上記抗体と、上記プロテアソーム関連タンパク質との結合を検出および/または定量する工程、
を包含する、[22]に記載の方法。
[24](a)被験者由来の生体試料と、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子またはその断片の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドとを接触させる工程、および
(b)上記試料中での上記ポリヌクレオチドと、該POMP遺伝子または該PSMA7遺伝子またはその断片とのハイブリダイゼーションを検出および/または定量する工程、
を包含する、[19]または[20]に記載の方法。
[25]がんの診断に用いるための[19]〜[24]のいずれかに記載の方法。
[26]上記がんが、大腸がんである、[25]に記載の方法。
[27]配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12の塩基配列を有する、ポリヌクレオチド。
[28]POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12の塩基配列を有するポリヌクレオチドを含有する、がん治療剤。
本発明により、がん(例えば、大腸がん)の治療および/または診断に有用な新規な薬剤、キットおよび方法、ならびにがん抑制作用を有する候補化合物のスクリーニング方法が提供される。
POMP、PSMA7遺伝子の大腸がん患者由来の200検体における遺伝子増幅度に対する頻度を示すヒストグラムである。 大腸がん患者由の5つの検体組織(A,B,C,D,E)のPOMP遺伝子領域に対するプローブを用いたFISH光学顕微鏡写真である。DAPI染色された核内に、検体組織では6細胞すべてにおいてシグナルが3以上認められた。 大腸がん患者由の5つの検体組織(A,B,C,D,F)のPSMA7遺伝子領域に対するプローブを用いたFISH光学顕微鏡写真である。DAPI染色された核内に、検体組織では6細胞すべてにおいてシグナルが3以上認められた。 定量的RT−PCR解析により、大腸正常13検体とがん20検体におけるPOMP遺伝子およびPSMA7遺伝子のTBP遺伝子に対するmRNA相対発現量を求め、プロットしたグラフである。 定量的RT−PCR解析により測定した、POMP遺伝子およびPSMA7遺伝子の遺伝子ノックダウン率を示すグラフである。NCはネガティブコントロールを、NTは未処理を表す。 PSMA7遺伝子のsiRNAを導入後、48時間と72時間における内在性のPSMA7タンパク質を検出した、イムノブロット解析の結果である。PSMA7タンパク質と思われるバンドを矢印で示した(上のパネル)。アスタリスクは非特異的なバンドを示す。内在性コントロール遺伝子としてPPIBタンパク質を検出した(下のパネル)。NTは未処理を表す。トランスフェクション後48時間のPSMA7タンパク質はNTに対しておよそ30%にまで減少しており、72時間後も同程度の減少量であった。 POMP遺伝子のRNAi解析を行い、24時間ごとの経時変化を示した微分干渉像である。Viability(生存率)はRNAi解析96時間目の細胞に対して生細胞数測定解析を行い、NCに対する相対値を求めることで算出した。 PSMA7遺伝子のRNAi解析を行い、24時間ごとの経時変化を示した微分干渉像である。Viability(生存率)はRNAi解析96時間目の細胞に対して生細胞数測定解析を行い、NCに対する相対値を求めることで算出した。 RKO細胞におけるPOMP遺伝子とPSMA7遺伝子のRNAi解析後の生細胞数と死細胞数の経時変化を示したグラフである。 大腸がん細胞5種と大腸正常細胞CCD18Coに対するPOMP遺伝子のRNAi効果を示す微分干渉像である。生存率および定性評価を合わせて示す。 大腸がん細胞5種と大腸正常細胞CCD18Coに対するPSMA7遺伝子のRNAi効果を示す微分干渉像である。生存率および定性評価を合わせて示す。 肺がん細胞2種と肺正常細胞IMR−90および乳がん細胞2種と乳正常細胞Hs617.Mgに対するPOMP遺伝子のRNAi効果を示す微分干渉像である。生存率および定性評価を合わせて示す。 肺がん細胞2種と肺正常細胞IMR−90および乳がん細胞2種と乳正常細胞Hs617.Mgに対するPSMA7遺伝子のRNAi効果を示す微分干渉像である。生存率および定性評価を合わせて示す。
本発明者らは、大腸がん患者由来の検体を用いてアレイCGH法による増幅遺伝子の検証を行い、大腸がん特異的な遺伝子増幅領域を特定した。検体において高頻度に増幅が起きている領域のうち、ヒトPOMP(Proteasome maturation protein)遺伝子およびヒトPSMA7(Proteasome (prosome, macropain) subunit, alpha type, 7)遺伝子が大腸がん患者由来の検体において高頻度であることを見出した。
POMPは、分子シャペロンとしてプロテアソーム形成にかかわるタンパク質分子であり、ハーフプロテアソームを重合させ、20Sプロテアソームの形成を促進することが知られている(特開2007−119382号公報)。
PSMA7は、プロテアソームを構成するαタイプサブユニットの1つである。このタンパク質分子はC末端に核局在化シグナルを有しており、プロテアソームを核内に移行させ、機能させるのに重要な役割を担っている(Ogiso, Y., Tomida, A., Tsuruo, T. (2002) Cancer Res. 62, 5008-5012. Nuclear Localization of Proteasomes Participates in Stress-inducible Resistance of Solid Tumor Cells to Topoisomerase II-directed Drugs)。
プロテアソームは、ユビキチンで修飾されたタンパク質を分解する細胞内タンパク質分解装置である。活性型の26Sプロテアソームはタンパク質分解実行ユニットである20Sプロテアソームの両端に、それを制御する19S 複合体が会合した巨大な分子複合体である。
20Sプロテアソームは、リング状に集まった7種類のサブユニット(α1〜α7)から構成されるαリングと、同様にリング状に集まった7種類のサブユニット(β1〜β7) から構成されるβリングが、αββαの順に積み重なった筒状構造をしている。空洞になった部分はタンパク質分解の場となっており、β1、β2、β5がその触媒活性を発揮する。なお、αリングとβリングが一つずつ会合した状態(20Sプロテアソームの半分の状態)を、ハーフプロテアソームという。
ユビキチン−プロテアソームシステムは細胞内における主要なタンパク質分解系として知られている。ユビキチンは、分解するタンパク質に結合し、ポリユビキチン鎖を形成し(ポリユビキチン化修飾)、プロテアソームは、そのポリユビキチン化修飾されたタンパク質を特異的に分解する。
このシステムは、細胞内における選択的なタンパク質分解を通じて、細胞周期・アポトーシス・代謝調節・免疫応答・シグナル伝達・転写制御・ストレス応答・DNA修復など、生命科学のあらゆる領域において、中心的な役割を果たしていることが明らかになりつつある(Adams J. (2004) Nat Rev Cancer. 4, 349-360. The proteasome: a suitable antineoplastic target. ; Hershko, A. (2005) Cell Death Differ. 12, 1191-1197. The ubiquitin system for protein degradation and some of its roles in the control of the cell division cycle)。
近年、プロテアソーム阻害剤ががん治療に有用である可能性があることが示された(Kisselev, A. F., Goldgerg, A. L. (2001) Chem. & Biol. 8, 739-758. : Proteasome inhibitors: from research tools to drug candidates.; Elliott, P. J., Ross, J. S., (2001) Am. J. Clin. Pathol. 116, 637-646. The Proteasome: A New Target for Novel Drug Therapies. )。ベルケード(Bortezomib) は、多発性骨髄腫に高い有効性を持つ抗ガン剤として2003年に欧米で認可された(WO/2003/039545 )、プロテアソームを標的としたはじめての分子標的薬である。また、多発性骨髄腫以外のがんに対するプロテアソーム阻害剤の有効性についても検討されている(Adams J. (2004) Nat Rev Cancer. 4, 349-360. The proteasome: a suitable antineoplastic target)。
プロテアソーム阻害剤は、プロテアソームの触媒活性を持つβサブユニットを阻害する。特に、Bortezomibはβ5の活性中心に結合して、プロテアソームを特異的かつ可逆的に阻害する(Kisselev, A. F., Goldgerg, A. L. (2001) Chem. & Biol. 8, 739-758. : Proteasome inhibitors: from research tools to drug candidates; Lightcap, E. S., McCormack, T. A., Pien, C. S., Chau, V., Adams, J., and Elliott, P. J. (2000) Clin. Chem. 46, 673-683. Proteasome Inhibition Measurements: Clinical Application)。
しかしながら、POMPまたはPSMA7とがんとの直接的な関連については、報告されていない。
本発明者らは、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子(これらは、プロテオソームの形成、機能等に関わるタンパク質をコードする遺伝子である)の発現をRNAi(RNA干渉)によって抑制することによってがん細胞の増殖を抑制できることを確認した。したがって、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子の発現を抑制することによって、がんを治療することが可能となる。また、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子の発現量を測定することによってがんの診断を行うことも可能となる。
以下、本発明のがん治療剤、スクリーニング方法、診断剤などについて詳細に説明する。
1.がん抑制作用を有する薬剤
本発明は、プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤を提供する。
より具体的には、本発明は、(1)POMP遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤、及び(2)POMPタンパク質の活性阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤を提供する。
本発明はまた、(1)PSMA7遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤、及び(2)PSMA7タンパク質の活性阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤を提供する。
本明細書中、「プロテアソーム関連遺伝子」という場合、プロテアソームの形成、機能等に関わるタンパク質(以下、「プロテアソーム関連タンパク質」と呼ぶ。)をコードする遺伝子を意味し、より具体的には、POMP遺伝子、PSMA7遺伝子などを指す。
本明細書中、「POMP遺伝子」という場合、NCBIヌクレオチドデータベースにおいて、Accession No.:NM_015932で登録されている1347塩基対(bp)からなるヒトPOMP遺伝子(配列番号1)を意味するが、これに限定されず、例えば、当該遺伝子の塩基配列において1つ以上(例えば、1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個)の塩基の置換、欠失、付加、または挿入などを有することによって変化している変異体のような、当該遺伝子の塩基配列またはその相補配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる遺伝子も本明細書中で使用する「POMP遺伝子」に含まれるものとする。
本明細書中、「PSMA7遺伝子」という場合、NCBIヌクレオチドデータベースにおいて、Accession No.:NM_002792で登録されている984塩基対(bp)からなるヒトPSMA7遺伝子(配列番号3)を意味するが、これに限定されず、例えば、当該遺伝子の塩基配列において1つ以上(例えば、1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個)の塩基の置換、欠失、付加、または挿入などを有することによって変化している変異体のような、当該遺伝子の塩基配列またはその相補配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる遺伝子も本明細書中で使用する「PSMA7遺伝子」に含まれるものとする。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning Third Edition,J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab. Press. 2001)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。ここで、「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したときに、配列番号1の塩基配列と、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の同一性を有するポリヌクレオチドをあげることができる。
本明細書中、「遺伝子の発現阻害」とは、遺伝子からタンパク質生成までの一連の事象(例えば、転写(mRNAの生成)、翻訳(タンパク質の生成)を含む)のうちのいずれかの事象を阻害することによってその遺伝子によってコードされるタンパク質の生成を阻害することを意味するものとする。
本明細書中、「POMPタンパク質」という場合、NCBIタンパク質データベースにおいて、Accession No.:NP_057016で登録されている141アミノ酸残基(aa)からなるヒトPOMPタンパク質(配列番号2)およびこのタンパク質と実質的に同質の活性(例えば、プロテアソームの形成促進活性)から選択される一種以上の活性)を保持し、このタンパク質のアミノ酸配列に対して1〜複数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、及び/または付加が生じたアミノ酸配列からなる変異タンパク質をいう。
本明細書中、「PSMA7タンパク質」という場合、NCBIタンパク質データベースにおいて、Accession No.:NP_002783で登録されている248アミノ酸残基(aa)からなるヒトPSMA7タンパク質(配列番号4)およびこのタンパク質と実質的に同質の機能(例えば、プロテアソームの形成およびプロテアソームの活性発現に必須な構成因子としての機能)から選択される一種以上の機能)を保持し、このタンパク質のアミノ酸配列に対して1〜複数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、及び/または付加が生じたアミノ酸配列からなる変異タンパク質をいう。
上記変異タンパク質における、アミノ酸の変異部位および個数は、変異タンパク質が元のタンパク質と実質的に同質の活性を保持している限り特に制限はないが、変異個数は、例えば、1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。変異個数は一般的に少ない程好ましい。また、このような変異タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列と約70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ元のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質を含む。上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
上記POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質には、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質の「部分ペプチド」もそれぞれ含まれる。
POMPタンパク質の部分ペプチドとしては、POMPタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)の一部の連続するアミノ酸の配列からなる部分ペプチドであって、好ましくは、前述のPOMPタンパク質の活性と同様の活性を有するものであればいずれのものでも良い。例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列において、少なくとも20個、好ましくは少なくとも50個、さらに好ましくは少なくとも70個、より好ましくは少なくとも100個、最も好ましくは少なくとも130個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどが挙げられる。
PSMA7タンパク質の部分ペプチドとしては、PSMA7タンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)の一部の連続するアミノ酸の配列からなる部分ペプチドであって、好ましくは、前述のPSMA7タンパク質の活性と同様の活性を有するものであればいずれのものでも良い。例えば、配列番号4で表されるアミノ酸配列において、少なくとも20個、好ましくは少なくとも50個、さらに好ましくは少なくとも70個、より好ましくは少なくとも100個、最も好ましくは少なくとも200個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどが挙げられる。
好ましくは、これらのポリペプチドは、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質の活性に関与する部分に対応するアミノ酸配列を含有する。また、本発明で使用される部分ペプチドは、上記のポリペプチドにおいて、そのアミノ酸配列中の1または複数個(例えば、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらにより好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸残基が欠失、付加、置換、または挿入により変更されているものでもよい。
本発明で用いるPOMPタンパク質またはPSMA7タンパク質は、そのタンパク質を発現している細胞や組織から調製することができる。また、これらのタンパク質は、公知のペプチド合成機によっても合成できるし、原核生物あるいは真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた組換え方法によっても調製することができる。本発明で用いるPOMPタンパク質またはPSMA7タンパク質は、いずれの種由来のものでもよいが、好ましくはヒト由来である。
「実質的に同質の活性」とは、それらの活性が性質的に同等であることを示す。したがって、活性(POMPの場合、例えば、プロテアソームの形成促進活性など。PSMA7の場合、例えば、機能(例えば、プロテアソームの形成およびプロテアソームの活性発現に必須な構成因子としての機能など。)が同等(例えば、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。これらの活性の測定は、それぞれ、Hirano Y, Hayashi H, Iemura S, Hendil KB, Niwa S, Kishimoto T, Kasahara M, Natsume T, Tanaka K, Murata S. (2006) Mol. Cell. 24, 977-84. : Cooperation of multiple chaperones required for the assembly of mammalian 20S proteasomes. 、Liu, X., Huang, W., Li, C., Li, P., Yuan, J., Li, X., Qiu, X. B., Ma, Q., Cao, C. (2006) Mol. Cell. 22, 317-27.: Interaction between c-Abl and Arg tyrosine kinases and proteasome subunit PSMA7 regulates proteasome degradation.などの文献に記載の公知の方法に準じて行うことができるが、例えば、後に記載するスクリーニング方法に従って測定することができる。
なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(proc.Natl.Acad.Sci.USA 872264−2268,1990; proc.Natl.Acad.Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403,1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
本明細書中、「がん治療剤」という用語は、抗癌剤、癌転移阻害剤、癌細胞のアポトーシス誘導剤、癌細胞の増殖抑制剤、癌細胞の浸潤抑制剤、がん予防剤等を含む意味で使用される。なお、本願明細書中、用語「癌(または、がん)」と「腫瘍」とは同じ意味を有する用語として使用される。
1.1 プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質を含有するがん治療剤
本発明は、1つの実施形態において、プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤を提供する。典型的には、上記プロテアソーム関連遺伝子は、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である。
本明細書中、「プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質」は、プロテアソーム関連遺伝子の発現を阻害するものであれば制限はないが、典型的には、POMP遺伝子の発現阻害物質またはPSMA7遺伝子の発現阻害物質である。
本明細書中、「POMP遺伝子の発現阻害物質」には、POMP遺伝子の発現を阻害するものであれば制限はないが、例えば、(i)POMP遺伝子からPOMP mRNAへの転写を阻害する物質、および(ii)POMP mRNAからPOMPタンパク質への翻訳を阻害する物質が含まれる。
POMP遺伝子からPOMP mRNAへの転写を阻害する物質の例としては、
(a)POMP遺伝子またはその一部に対するアンチセンス核酸、
(b)POMP遺伝子またはその一部に対するデコイ核酸、
(c)POMP遺伝子またはその一部に対してドミナントネガティブに作用するPOMP遺伝子変異体、あるいは
(d)その他の転写阻害化合物
などが含まれる。
また、POMP mRNAからPOMPタンパク質への翻訳を阻害する物質の例としては、
(e)POMP mRNAまたはその一部に対してRNAi作用を有するポリヌクレオチド(例えば、siRNA)、
(f)POMP mRNAまたはその一部に対するアンチセンスポリヌクレオチド、
(g)POMP mRNAまたはその一部に対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチド、あるいは
(h)その他の翻訳阻害化合物
などが含まれる。
本明細書中、「PSMA7遺伝子の発現阻害物質」には、PSMA7遺伝子の発現を阻害するものであれば制限はないが、例えば、(i)PSMA7遺伝子からPSMA7 mRNAへの転写を阻害する物質、および(ii)PSMA7 mRNAからPSMA7タンパク質への翻訳を阻害する物質が含まれる。
PSMA7遺伝子からPSMA7 mRNAへの転写を阻害する物質の例としては、
(a)PSMA7遺伝子またはその一部に対するアンチセンス核酸、
(b)PSMA7遺伝子またはその一部に対するデコイ核酸、
(c)PSMA7遺伝子またはその一部に対してドミナントネガティブに作用するPSMA7遺伝子変異体、あるいは
(d)その他の転写阻害化合物
などが含まれる。
また、PSMA7 mRNAからPSMA7タンパク質への翻訳を阻害する物質の例としては、
(e)PSMA7 mRNAまたはその一部に対してRNAi作用を有するポリヌクレオチド(例えば、siRNA)、
(f)PSMA7 mRNAまたはその一部に対するアンチセンスポリヌクレオチド、
(g)PSMA7 mRNAまたはその一部に対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチド、あるいは
(h)その他の翻訳阻害化合物
などが含まれる。
本明細書中、「核酸」とはRNAまたはDNAを意味する。ここでいう「核酸」は、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいてもよい。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであって良い。修飾されたヌクレオシドおよび修飾されたヌクレオチドはまた、糖部分が修飾されていて良く、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されているか、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
本発明のがん治療剤においては、POMP遺伝子および/またはPSMA7遺伝子の発現をRNAi効果により阻害する作用を有する核酸を有効成分として用いることができる。RNAiとは、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二重鎖RNAを細胞内に導入すると、導入した外来遺伝子および標的内在性遺伝子の発現がいずれも阻害される現象のことをいう。ここで用いられるRNAとしては、例えば、19〜30塩基長のRNA干渉を生ずる二重鎖RNA、例えば、dsRNA(double strand RNA)、siRNA(small interfering RNA)又はshRNA(short hairpin RNA)が挙げられる。このようなRNAは、リポソームなどの送達システムにより所望の部位に局所送達させることも可能であり、また上記二重鎖RNAが生成されるようなベクターを用いてこれを局所発現させることができる。このような二重鎖RNA(dsRNA、siRNAまたはshRNA)の調製方法、使用方法などは、多くの文献から公知である(特表2002−516062号; 米国公開許第2002/086356A号; Nature Genetics, 24(2), Feb., 180−183; Genesis, 26(4), April, 240−244; Nature,Spe.21,407:6802,319−20; Genes & Dev., Vol.16,(8), Apr.16,948−958; Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 99(8),16 Apr., 5515−5520; Science, 296(5567), 19 Apr., 550−553; Proc Natl. Acad. Sci. USA, Apr.30,99:9, 6047−6052; Nature Biotechnology, Vol.20 (5), May,497−500; Nature Biotechnology, Vol. 20(5), May,500−508; Nucleic Acids Res., May 15など)。
本発明で用いられるRNAi効果を奏する二重鎖RNAの長さは、通常、19〜30塩基、好ましくは20〜27塩基、より好ましくは21〜25塩基、最も好ましくは21〜23塩基である。本発明においては、具体的には、下記siRNA(実施例4、5で使用)を用いることができる。
本明細書中、「アンチセンス核酸」、または「アンチセンスポリヌクレオチド」とは、ある対象となるDNA領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドを有し、そのポリヌクレオチドが当該領域の少なくとも一部とハイブリダイズすることができる核酸のことをいう。本発明のアンチセンス核酸またはアンチセンスポリヌクレオチドは、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。それらは二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであってもよい。修飾された核酸の具体例としては、核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、さらにはポリヌクレオチドアミドやオリゴヌクレオチドアミドの分解に抵抗性を有するものなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
使用されるアンチセンス核酸は、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3’側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。このようにして調製された核酸は、公知の方法を用いることで、所望の動物へ形質転換できる。アンチセンス核酸の配列は、形質転換される動物が持つ内在性遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に抑制できる限りにおいて、完全に相補的でなくてもよい。
例えば、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子のmRNAの5’端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的である。コード領域もしくは3’側の非翻訳領域に相補的な配列も使用することができる。遺伝子の翻訳阻害に効果的なアンチセンス核酸は、標的遺伝子の転写産物に対して約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相補性を有する。
アンチセンス核酸を用いて標的遺伝子の発現を効果的に抑制するには、アンチセンス核酸の長さは少なくとも約10塩基以上(例えば、10〜40個程度)、好ましくは約15塩基以上であり、より好ましくは約100塩基以上であり、さらに好ましくは約500塩基以上である。アンチセンス核酸は公知の文献を参照して設計することができる(例えば、平島および井上、新生化学実験講座2 核酸IV遺伝子の複製と発現、日本生化学会編、東京化学同人、1993、p.319−347)、J.Kawakami et al.,Pharm Tech Japan. Vol.8,p.247,1992;Vol.8,p.395,1992;S.T. Crooke et al.,ed.,Antisense Research and Applications,CRC Press, 1993など参照)。
また、本発明のがん治療剤においては、POMP遺伝子および/またはPSMA7遺伝子の転写産物を特異的に切断するリボザイム活性を有する核酸を有効成分として用いることができる。ここでいう「リボザイム活性」とは、ターゲットとする遺伝子の転写産物であるmRNAを部位特異的に切断する核酸のことをいう。リボザイムには、グループIイントロン型やRNasePに含まれるM1 RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(タンパク質核酸酵素、1990、35、p.2191)。ハンマーヘッド型リボザイムについては、例えば、FEBS Lett,1988,228,p.228;FEBS Lett,1988,239,p.285;タンパク質核酸酵素,1990,35,p.2191;Nucl Acids Res,1989,17,p.7059などを参照することができる。また、ヘアピン型リボザイムについては、例えば、Nature,1986,323,p.349;Nucl Acids Res,1991,19,p.6751;菊池洋,化学と生物,1992,30,p.112などを参照することができる。このようなリボザイムを用いて本発明におけるPOMPおよび/またはPSMA7遺伝子遺伝子の転写産物を特異的に切断することで、該遺伝子の発現を阻害することができる。
さらに、本発明は、POMP遺伝子および/またはPSMA7遺伝子の転写活性を阻害する核酸以外の化合物を有効成分として用いることができる。そのような化合物は、例えば、POMP遺伝子および/またはPSMA7遺伝子の発現・転写に関与する因子に結合する化合物である。このような化合物は、天然物でも合成化合物でもよい。このような化合物は、後述のスクリーニング方法によって、取得することが可能である。
1.2 プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質を含有するがん治療剤
本発明はまた、別の実施形態において、プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質を含有するがん治療剤を提供する。典型的には、上記プロテアソーム関連タンパク質は、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質である。
本明細書中、「プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質」は、プロテアソーム関連タンパク質の活性を阻害するものであれば制限はないが、例えば、POMPタンパク質の活性阻害物質、PSMA7タンパク質の活性阻害物質が含まれる。
本明細書中、「POMPタンパク質の活性阻害物質」には、例えば、
(a)POMPタンパク質に結合する抗体、
(b)POMPタンパク質に対してドミナントネガティブの性質を有するPOMPタンパク質変異体、あるいは
(c)POMPタンパク質に結合する化合物(上記抗体および変異体を除く)
などが含まれる。
本明細書中、「PSMA7タンパク質の活性阻害物質」には、例えば、
(a)PSMA7タンパク質に結合する抗体、
(b)PSMA7タンパク質に対してドミナントネガティブの性質を有するPSMA7タンパク質変異体、あるいは
(c)PSMA7タンパク質に結合する化合物(上記抗体および変異体を除く)
などが含まれる。
本明細書における「抗体」とはタンパク質の全長又は断片に反応する抗体を意味する。本発明の抗体の形態には、特に制限はなく、本発明のプロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)に結合する限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のほかに、ヒト抗体、遺伝子組み換えによるヒト型化抗体、さらにその抗体断片や抗体修飾物も含まれる。プロテアソーム関連タンパク質に結合する抗体(例:POMPタンパク質に結合する抗体(抗POMP抗体)、PSMA7タンパク質に結合する抗体(抗PSMA7抗体))は、当業者に公知の方法により調製することが可能である。なお、抗POMP抗体または抗PSMA7抗体の詳細については後述する。
本明細書における「POMPタンパク質に対してドミナントネガティブの性質を有するPOMPタンパク質変異体」または「PSMA7タンパク質に対してドミナントネガティブの性質を有するPSMA7タンパク質変異体」とは、それぞれ、それをコードする遺伝子を発現させることによって、内在性の野生型POMPタンパク質または内在性の野生型PSMA7タンパク質の活性を消失または低下させる機能を有するタンパク質を指す(土田邦博著、遺伝子の活性阻害実験法 多比良和誠編、羊土社(2001) 26−32など参照)。
さらに、本発明においては、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質の活性を阻害し得る物質として、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質にそれぞれ結合する、上記抗体または変異体以外の化合物を有効成分として用いることができる。そのような化合物は、例えば、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質に結合し、その活性を阻害する化合物である。このような化合物は、天然物でも合成化合物でもよい。このような化合物は、後述のスクリーニング方法によって、取得することが可能である。
上記した本発明のプロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)の活性を阻害し得る物質は、がん(特に、大腸がん)の治療剤として使用することができる。
2.プロテアソーム関連遺伝子の発現またはプロテアソーム関連タンパク質の活性を阻害する物質のスクリーニング方法
本発明は、がん抑制作用を有する候補化合物のスクリーニング方法をも提供する。
一つの態様としては、プロテアソーム関連タンパク質と被検化合物との結合を指標とする方法がある。典型的には、上記プロテアソーム関連タンパク質は、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質である。
通常、プロテアソーム関連タンパク質と結合する化合物は、プロテアソーム関連タンパク質の活性を阻害する効果を有することが期待される。ここで、該化合物は、プロテアソーム関連タンパク質の活性部位に結合することが好ましい。例えば、本方法においては、まず、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質と被検化合物とを接触させる。POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質は、被検化合物との結合を検出するための指標に応じて、例えば、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質の精製された形態、細胞内または細胞外に発現した形態、あるいはアフィニティーカラムに結合した形態であり得る。この方法に用いる被検化合物は必要に応じて適宜標識して用いることができる。標識としては、例えば、放射標識、蛍光標識等を挙げることができる。
次いで、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質と被検化合物との結合を検出する。
本方法に用いる被検化合物としては、特に制限はない。例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチドなどの単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物等が挙げられるが、これらに限定されない。
プロテアソーム関連タンパク質と被検化合物との結合は、例えば、プロテアソーム関連タンパク質に結合した被検化合物に付された標識によって検出することができる。また、細胞内または細胞外に発現しているプロテアソーム関連タンパク質への被検化合物の結合により生じるプロテアソーム関連タンパク質の活性の変化を指標として検出することもできる。タンパク質と被検化合物との結合活性は、公知の手法によって測定することができる(例えば、プロテアソーム形成促進活性の測定(Hirano Y, Hayashi H, Iemura S, Hendil KB, Niwa S, Kishimoto T, Kasahara M, Natsume T, Tanaka K, Murata S. (2006) Mol. Cell. 24, 977-84. : Cooperation of multiple chaperones required for the assembly of mammalian 20S proteasomes. )。
本方法においては、次いで、プロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質)と結合し、その活性を阻害する被検化合物を選択する。
本方法により単離される化合物は、がん抑制作用を有することが期待され、がん治療剤として有用である。
本発明のスクリーニング方法の他の態様は、プロテアソーム関連遺伝子の発現を指標とする方法である。典型的には、上記プロテアソーム関連遺伝子は、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である。
本方法においては、まず、プロテアソーム関連遺伝子(例えば、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)を発現する細胞に、被検化合物を接触させる。用いられる「細胞」の由来としては、ヒト、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、トリなど、ペット、家畜等に由来する細胞が挙げられるが、これら由来に制限されない。「プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)を発現する細胞」としては、内因性のプロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)を発現している細胞、または外因性のプロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)が導入され、該遺伝子が発現している細胞を利用することができる。外因性のプロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)が発現した細胞は、通常、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)が挿入された発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより作製することができる。該発現ベクターは、一般的な遺伝子工学技術によって作製することができる。
本方法に用いる被検化合物としては、特に制限はないが、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチドなどの単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物等が用いられる。
プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)を発現する細胞への被検化合物の「接触」は、通常、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)を発現する細胞の培養液に被検化合物を添加することによって行うが、この方法に限定されない。被検化合物がタンパク質等の場合には、該タンパク質を発現するDNAベクターを、該細胞へ導入することにより、「接触」を行うことができる。
本方法においては、次いで、該プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子、PSMA7遺伝子等)の発現レベルを測定する。ここで「遺伝子の発現」には、転写および翻訳の双方が含まれる。遺伝子の発現レベルの測定は、当業者に公知の方法によって行うことができる。例えば、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子、PSMA7遺伝子)を発現する細胞からmRNAを常法に従って抽出し、このmRNAを鋳型としたノーザンハイブリダイゼーション法またはRT−PCR法を実施することによって該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。あるいは、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子、PSMA7遺伝子)のプロモーター領域を常法に従って単離し、その下流に標識遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、ガラクトシダーゼ等の発光、蛍光、発色などを指標に検出可能な遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない)をつなげ、その標識遺伝子の活性を見ることによっても該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。また、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子、PSMA7遺伝子)を発現する細胞からタンパク質画分を回収し、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子、PSMA7遺伝子)の発現をSDS−PAGE等の電気泳動法で検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこともできる。さらに、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子、PSMA7遺伝子)に対する抗体を用いて、ウエスタンブロッティング法を実施することにより該タンパク質の発現を検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うことも可能である。プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子、PSMA7遺伝子)の検出に用いる抗体としては、検出可能な抗体であれば、特に制限はないが、例えばモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の両方を利用することができる。
本方法においては、次いで、被検化合物を接触させない場合(コントロール)と比較して、該発現レベルを低下させる化合物を選択する。このようにして選択された化合物は、がん治療剤のための候補化合物となる。
3.プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体及びこの抗体を含有する治療剤、複合体および組成物
本発明はまた、プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体、この抗体を含有するがん治療剤などを提供する。典型的には、上記プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体は、抗POMP抗体または抗PSMA7抗体である。本発明の1つの好ましい態様では、上記がん治療剤は、がんの標的化療法または標的化薬物送達のために使用される。
3.1 プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体
本明細書中、「プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体」または「抗プロテアソーム関連タンパク質抗体」としては、プロテアソーム関連タンパク質に特異的に結合または認識する抗体であれば制限はないが、典型的には、抗POMP抗体および抗PMSA7抗体が含まれる。
本明細書中、「抗POMP抗体」には、POMPタンパク質(その断片(部分ペプチド)もしくはその塩を含む)に特異的に結合する抗体が含まれる。また、「抗PMSA7抗体」には、PSMA7タンパク質(その断片(部分ペプチド)もしくはその塩を含む)に特異的に結合する抗体が含まれる。
本発明において使用する抗POMP抗体または抗PSMA7抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgGまたはIgMであり、精製の容易性等を考慮すると、より好ましくはIgGである。また、ここでいう「抗体」という用語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、例えば、Fab、Fab’2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などを含む。本発明の抗体は、公知の方法で製造することができる。このような抗体の製造法は当該分野で周知である(例えばHarlow E. & Lane D., Antibody, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988)を参照)。
(1)抗原の調製
本発明において、感作抗原として使用されるタンパク質は、通常、プロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)またはその塩である。上記プロテアソーム関連タンパク質には、その部分ペプチドも含まれ、これは、限定されることはないが、例えば、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列の断片であって、例えば、20個以上、40個以上、60個以上、80個以上、100個以上の、連続するアミノ酸配列部分を有する部分ペプチドである。これらの断片として、例えば、アミノ(N)末端断片やカルボキシ(C)末端断片が用いられる。本発明で用いられる部分ペプチドは、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜6個))のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたものであってもよい。ここで用いられるPOMPタンパク質もしくはPSMA7タンパク質またはその部分ペプチドの塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸)との塩などが用いられる。抗体取得の感作抗原として使用される本発明のプロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)は、その由来となる動物種に制限されないが哺乳動物、例えばマウス、ヒト由来のタンパク質が好ましく、特にヒト由来のタンパク質が好ましい。
(2)プロテアソーム関連タンパク質に対するモノクローナル抗体の作製
(i)抗体産生細胞の採取
上記のようなプロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)、その部分ペプチド又はその塩(本明細書中、抗体に関する説明では、これらをまとめて、「プロテアソーム関連タンパク質」(または、それぞれ「POMPタンパク質」、「PSMA7タンパク質」)という。)を抗原として、哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギなどに投与する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、アジュバントを用いないときは0.1〜100mgであり、アジュバントを用いるときは1〜100μgである。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下又は腹腔内等に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは2〜5週間間隔で、1〜10回、好ましくは2〜5回免疫を行う。そして、最終の免疫日から1〜60日後、好ましくは1〜14日後に抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
(ii)細胞融合
ハイブリドーマを得るため、抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。ミエローマ細胞としては、例えば X63Ag.8.653、NSI/1−Ag4−1、NS0/1などのマウスミエローマ細胞株、YB 2/0などのラットミエローマ細胞株が挙げられる。
次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、1×106〜1×107個/mlの抗体産生細胞と2×105〜2×106個/mlのミエローマ細胞とを混合し(抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞比2:1〜3:1が好ましい)、細胞融合促進剤存在のもとで融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1000〜6000ダルトンのポリエチレングリコール等を使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
(iii)ハイブリドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に3×105個/well程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。その結果、選択培地で培養開始後、14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、プロテアソーム関連タンパク質に反応する抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されるものではない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウエルに含まれる培養上清の一部を採集し、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法等によってスクリーニングすることができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行う。そして、最終的に、プロテアソーム関連タンパク質と反応するモノクローナル抗体を産生する細胞であるハイブリドーマを樹立する。
(iv)モノクローナル抗体の採取
上記のようにして得たハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5% CO2濃度)で7〜14日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1×107個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水を採取する。上記抗体の採取方法において抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
(3)プロテアソーム関連タンパク質に対するポリクローナル抗体の作製
まず、上記した抗原を哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギなどに投与する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、アジュバントを用いないときは0.1〜100mgであり、アジュバントを用いるときは10〜1000μgである。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下又は腹腔内等に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは2〜5週間間隔で、1〜10回、好ましくは2〜5回免疫を行う。そして、最終の免疫日から6〜60日後に、酵素免疫測定法(ELISA(enzume−linked immunosorbent assy)又は EIA(enzyme immunoassay))、放射性免疫測定法(RIA;radioimmuno assay)等で抗体価を測定し、最大の抗体価を示した日に採血し、抗血清を得る。
次いで、例えば、抗血清中のポリクローナル抗体を、プロテアソーム関連タンパク質で固定されたアフィニティーカラムにかけてプロテアソーム関連タンパク質と反応する抗体(カラム吸着画分)を採取する。プロテアソーム関連タンパク質に対する抗血清中のポリクローナル抗体の反応性は、ELISA法などで測定することができる。
(4)抗体の断片など
FabまたはFab’2断片は、従来の方法によるプロテアーゼ(例えば、ペプシンまたはパパイン)を用いた消化により作製することができる。ヒト化抗体は、例えばRiechmannら(Riechmann J Mol Biol. Oct 5;203(3):825−8,1988)、およびJonesら(Jonesら Nature 321:522−525,1986)に記載のような方法の1つにより調製することができる。
また、キメラ抗体は、例えば、「実験医学(臨時増刊号)、Vol.1.6,No.10,1988」、特公平3−73280号公報等を、ヒト化抗体は、例えば、「Nature Genetics,Vol.15,p.146−156,1997」、「Nature Genetics,Vol.7,p.13−21,1994」、特表平4−504365号公報、国際出願公開WO94・25585号公報等、「日経サイエンス、6月号、第40〜第50頁、1995年」、「Nature,Vol.368,p.856−859,1994」、特表平6−500233号公報等を参考にそれぞれ製造することができる。本発明のプロテアソーム関連タンパク質(例えば、POMPタンパク質、PSMA7タンパク質等)に結合する抗体は、例えば、癌細胞の増殖もしくは転移の抑制等を目的とした使用が考えられる。得られた抗体を人体に投与する目的(抗体治療)で使用する場合には、免疫原性を低下させるため、ヒト抗体やヒト型抗体が好ましい。
抗体は、診断剤として用いる場合は、モニタリング等のための標識物質(例えば、放射性同位元素、蛍光物質など)で標識されていてもよい。必要に応じて、放射性物質、蛍光化合物などにより標識することができる。最も慣用の蛍光標識化合物の中には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリンおよびフルオレスカミンがある。同様に、生体発光性化合物を用いて、プロテアソーム関連タンパク質(例えば、POMPタンパク質、PSMA7タンパク質等)に対する抗体を標識することもできる。生体発光性タンパク質の存在は、蛍光の存在を検出することによって測定される。この標識目的に重要な生体発光性化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびイエクオリンである。
なお、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在するプロテアソーム関連タンパク質(例えば、POMPタンパク質、PSMA7タンパク質等)を特異的に検出するために使用することができる。また、プロテアソーム関連タンパク質を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中のプロテアソーム関連タンパク質の検出、被検細胞内におけるプロテアソーム関連タンパク質の挙動の分析などのために使用することができる。
3.2 プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体を含有する複合体など
また、本発明において使用する抗プロテアソーム関連タンパク質抗体(例:抗POMP抗体、抗PSMA7抗体)は、本発明の治療剤または診断剤において、それ自体が、抗原の活性を減弱させるような中和活性を有する薬剤(agent)であり得るが、必要に応じて、治療効果を奏するための他の薬剤と組み合わせて用いることができる。したがって、本発明は、もう一つの態様において、がん(例えば、大腸がん)の標的化療法または標的化イメージング等に使用するための、抗プロテアソーム関連タンパク質抗体と他の薬剤との複合体、そのような複合体を含有する組成物などをも提供する。このような態様によれば、本発明において使用する抗プロテアソーム関連タンパク質抗体を用いて、治療効果を奏する他の薬剤または診断のための標識剤などを、プロテアソーム関連タンパク質を高発現する標的部位へ送達することができる。
本発明において用いられる「その他の薬剤」としては、例えば、放射性同位元素、治療タンパク質、または低分子の薬剤など、標的への遺伝子導入のためのウイルスベクターもしくは非ウイルスベクターなどが例示される。
本発明において、「放射性同位元素」の例としては、フッ素−18、ヨウ素−125(125I)、およびヨウ素−131などの放射性ハロゲン元素が挙げられる。これらの放射性ハロゲン元素も上述の放射性金属元素と同様に抗体やペプチドに標識して、放射性治治療剤あるいは放射性診断剤として広く利用し得る。例えば、125Iまたは131Iでのヨード化は、クロラミンT法等の公知の方法により、抗体または抗体断片に結合させることができる。さらに、診断用としてはテクネチウム−99m、インジウム−111およびガリウム−67(67Ga)など、また治療用としてはイットリウム−90(90Y)、レニウム−186(186Re)またはレニウム−188(188Re)などが使用され得る。放射性同位元素を用いて抗体に標識する場合には、通常、金属キレート剤が用いられる。金属キレート剤としては、EDTA、DTPA、ジアミノジチオ化合物、サイクラム、およびDOTAなどが知られている。これらのキレート剤は抗体に予め結合しておき、その後放射性金属で標識する場合と、放射性金属キレートを形成後、抗体に結合して標識する方法がある。
本発明において、「治療タンパク質」の例としては、免疫を担う細胞を活性化するサイトカインが好適であり、例えば、ヒトインターロイキン2、ヒト顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子、ヒトマクロファージコロニー刺激因子、ヒトインターロイキン12等が挙げられる。また、大腸がん細胞を直接殺傷するため、リシンやジフテリア毒素などの毒素を用いることができる。例えば、治療タンパク質との融合抗体については、抗体または抗体断片をコードするcDNAに治療タンパク質をコードするcDNAを連結させ、融合抗体をコードするDNAを構築し、このDNAを原核生物または真核生物用の発現ベクターに挿入し、この発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、融合抗体を製造することができる。
「低分子の薬剤」は、本明細書中で「放射性同位元素」や「治療タンパク質」等以外の診断または治療用化合物を意味するものとして用いられる。「低分子の薬剤」の例としては、ナイトロジェン・マスタード、サイクロファスファミドなどのアルキル化剤、5−フルオロウラシル、メソトレキセートなどの代謝拮抗剤、ダウノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC,ダウノルビシン、ドキソルビシンなどの抗生物質、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンのような植物アルカロイド、タモキシフェン、デキサメタソンなどのホルモン剤等の抗癌剤(臨床腫瘍学(日本臨床腫瘍研究会編 1996年 癌と化学療法社))、またはハイドロコーチゾン、プレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート、ペニシラミンなどの免疫調節剤、サイクロフォスファミド、アザチオプリンなどの免疫抑制剤、マレイン酸クロルフェニラミン、クレマシチンのような抗ヒスタミン剤等の抗炎症剤(炎症と抗炎症療法 昭和57年 医歯薬出版株式会社)などがあげられる。例えば、ダウノマイシンと抗体を結合させる方法としては、グルタールアルデヒドを介してダウノマイシンと抗体のアミノ基間を結合させる方法、水溶性カルボジイミドを介してダウノマイシンのアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法等があげられる。
「ウイルスベクター」の例としては、本発明の抗プロテアソーム関連タンパク質抗体に結合し得るように改変されたウイルスベクターが使用し得る(例えば、アデノウイルスベクター(Wang, P., et al.(1995) Somatic Cell and Molec. Genet. 21, 429−441)、レトロウイルスベクター(Naviaux R.K., et al.(1996) J. Virol 70, 5701−5705)、レンチウイルスベクター(Naldini, L. (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9, 457−463)などが挙げられる)。このようなウイルスベクターには、細胞増殖関連遺伝子、アポトーシス関連遺伝子、免疫制御遺伝子等の、標的部位(例えば、大腸がん)において、例えば、癌細胞のアポトーシスを誘導するなどの治療効果を奏する遺伝子(治療遺伝子)が組み込まれる。抗プロテアソーム関連タンパク質抗体に結合するウイルスベクターは、抗プロテアソーム関連タンパク質抗体と共に遺伝子治療を必要とする患者に投与された場合、抗プロテアソーム関連タンパク質抗体が認識する抗原(すなわち、プロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質))が存在する部位に標的化することができる。
抗プロテアソーム関連タンパク質抗体と上記他の薬剤とは、化学的または遺伝子工学的に結合され得る。ここで、「化学的な結合」には、イオン結合、水素結合、共有結合、分子間力による結合、疎水性相互作用による結合などが含まれるものとし、「遺伝子工学的な結合」には、例えば、抗体と治療タンパク質とからなる融合タンパク質を遺伝子組換えなどの技術を用いて作製した場合の、抗体と治療タンパク質との間の結合様式などが含まれるものとする。
4.製剤化および製剤の投与方法
本発明のプロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子、PSMA7遺伝子等)の発現阻害物質を含有するがん治療剤、プロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質等)の活性阻害物質を含有するがん治療剤、本発明の抗プロテアソーム関連タンパク質抗体を含有する治療剤、または本発明において使用する抗プロテアソーム関連タンパク質抗体が、放射性同位元素、治療タンパク質、低分子の薬剤、および治療遺伝子を担持したウイルスベクターもしくは非ウイルスベクターのうちのいずれか、またはこれらの任意の組み合わせと化学的または遺伝子工学的に結合されている治療剤は、公知の手法に基づいて製剤化することができる。
本発明の治療剤の製剤化にあたっては、常法に従い、必要に応じて薬学的に許容される担体を添加することができる。例えば、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体を適宜使用することができる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。
本発明の治療剤の剤型の種類としては、例えば、経口剤として錠剤、粉末剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、軟・硬カプセル剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、舌下剤、ペースト剤等、非経口剤として注射剤、坐剤、経皮剤、軟膏剤、硬膏剤、外用液剤等が挙げられ、当業者においては投与経路や投与対象等に応じた最適の剤型を選ぶことができる。有効成分としてのプロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMAタンパク質等)の活性の阻害物質またはプロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子、PSMA7遺伝子等)の発現の阻害物質は、製剤中0.1から99.9重量%含有することができる。
本発明の薬剤の有効成分の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、患者(60kgとして)に対して一日につき約0.1mg〜1,000mg、好ましくは約1.0〜100mg、より好ましくは約1.0〜50mgである。非経口的に投与する場合は、その一回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、患者(60kgに対して)、一日につき約0.01から30mg程度、好ましくは約0.1から20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。しかしながら、最終的には、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状等を考慮して、医師または獣医師の判断により適宜決定することができる。
このようにして得られる製剤は、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。ヒト以外の動物の場合も、上記の60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明の治療剤は、がん(例えば、大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、脾臓がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん(例:子宮頸がん、子宮体がん)、精巣がん、甲状腺がん、膵臓がん、卵巣がん、脳腫瘍、血液腫瘍など)の予防・治療、好ましくは、大腸がんの予防・治療に用いられる。
本発明の薬剤は、プロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質等)の活性阻害物質またはプロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)の発現阻害物質を有効成分として含有しているため、抗癌剤、癌転移阻害剤、癌細胞のアポトーシス誘導剤等として使用し得る。対象となる細胞、組織、臓器、または癌の種類は特定のものに限定されない。また、本発明の薬剤は、プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質およびプロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質の両方を含んでいても良い。
本発明の治療剤において、アンチセンス核酸を用いる場合、該アンチセンス核酸を単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、公知の手段に従って投与することができる。アンチセンス核酸は、単独で、あるいは生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。
また、本発明において組換えアデノウイルス粒子のようなウイルスベクターと本発明のプロテアソーム関連タンパク質に対する抗体との組み合わせを癌治療のために使用する場合は、これら単独で使用してもよいが、一般には製薬的に許容できる担体と共に使用される。そのような担体としては、既に上記したような担体、ならびに水、生理食塩水、グルコース、ヒトアルブミン等の水性等張溶液が好ましい。更に、製薬的に通常使用される添加剤、保存剤、防腐剤、衡量等を添加することもできる。そのように調製した医薬組成物は、治療すべき疾病に依存して適切な投与形態、投与経路によって投与することができる。投与形態としては、例えば、乳剤、シロップ剤、カプセル、錠剤、顆粒剤、注射剤、軟膏等が挙げられる。本発明の抗プロテアソーム関連タンパク質抗体−ウイルスベクター粒子またはこれを含む医薬組成物を治療のために投与する場合は、通常成人一人当たり1回に103〜1015個のウイルス粒子を投与するのが好ましいが、疾病の状態や標的細胞・組織の性質によって変更してよい。投与回数は、1日1回〜数回でよく、投与期間は1日〜数ヶ月以上にわたってもよく、1〜数回の投入を1セットとして、長期にわたって断続的に多数セットを投与してもよい。また、本発明において使用されるウイルスベクター粒子またはウイルスベクター核酸分子は、特定の細胞および/または組織の検出、または疾病状態の診断に使用することができる。例えば、ウイルスベクターの核酸分子に検出可能なマーカー遺伝子を組込み、これを適切な宿主細胞にトランスフェクションして得られたウイルスベクター粒子は、抗プロテアソーム関連タンパク質抗体と組み合わせて腫瘍細胞を検出診断するために使用することができる。あるいは、抗プロテアソーム関連タンパク質抗体に検出可能な標識を結合させて腫瘍細胞を検出診断するために使用することができる。
5.がんの診断剤及び診断方法
本発明はまた、がんの診断剤を提供する。1つの好ましい態様において、本発明のがんの診断剤は、(a)プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体、又は(b)プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する。
5.1 プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体を用いる診断剤及び診断方法
プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体(例:抗POMP抗体、抗PSMA7抗体等)は、プロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質等)を特異的に認識することができるので、被検液中のプロテアソーム関連タンパク質を定量することができる。具体的には、本発明のプロテアソーム関連タンパク質に対する抗体を用いる診断方法は、例えば、(a)被験者由来の生体試料と、プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体とを接触させる工程、および(b)前記試料中での前記抗体と、プロテアソーム関連タンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩との結合を検出および/または定量する工程を包含する。好ましくは、上記検出および/または定量する工程において、標識されたプロテアソーム関連タンパク質に対する抗体を用いて、プロテアソーム関連タンパク質またはその断片とプロテアソーム関連タンパク質に対する抗体との結合が検出および/または定量される。
本明細書中、「被験者由来の生体試料」は、被験者由来の組織、細胞、または体液(例えば、血液(全血、血漿、血清等を含む)、尿、リンパ液、唾液、汗、精液等)を含む。また、「被験者」は、通常、がん検診を受ける、または受けることが望まれるヒト被験体であり、がんに罹患しているか、または罹患していると疑われるヒト被験体等が含まれる。このようながんの例としては、大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、脾臓がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん(例:子宮頸がん、子宮体がん)、精巣がん、甲状腺がん、膵臓がん、卵巣がん、脳腫瘍、血液腫瘍などが含まれるが、とりわけ、大腸がんが好ましい。
被験者由来の生体試料におけるプロテアソーム関連遺伝子の発現を検出するための免疫測定は、がん(例えば、大腸がん)を有すると疑われるか、がんの危険性を有する被験体から採取した生体試料を、特異的抗原−抗体結合を生じさせる条件下でプロテアソーム関連タンパク質に対する抗体と接触させ、次いで、抗体による免疫特異的結合量を測定することを包含する。このような抗体の結合を使用して、プロテアソーム関連タンパク質の存在および/または増大した発現が検出される。この場合、増大したプロテアソーム関連タンパク質の発現の検出が疾病状態の指標となる。必要に応じて、生体試料中のプロテアソーム関連タンパク質のレベルを、がんを有しない健常者のレベルと比較してもよい。
上記免疫測定法の1つの態様では、例えば、血清試料などの生体試料を、試料中に存在する全部のタンパク質を固定する目的で、ニトロセルロースなどの固相支持体または担体と接触させる。次いで、この支持体を緩衝液で洗浄し、続いて検出可能に標識したプロテアソーム関連タンパク質に対する抗体により処理する。次いで、この固相支持体を緩衝液で2回洗浄し、未結合抗体を除去する。固相支持体上の結合した抗体の量を、周知の方法に従って測定する。各測定に適する検出条件は、慣用的な試験方法を使用して当業者により適宜決定され得る。
プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体を検出可能に標識する方法の1つにおいて、当該抗体を、酵素、例えば、酵素イムノアッセイ(EIA)に使用されるもののような酵素に結合させる[Voiler,A.による「酵素標識した免疫吸着アッセイ」(“The Enzyme Linked Immunosorbent Assay)(ELISA),1978,Diagnostic Horizons,2:1〜7,Microbiological Associates Quarterly Publication,Walkersville.MD; Voiler,A.によるJ.Clin.Pathol.,31:507〜520,1978:Butier,J.E.によるMeth.Enzymol.,73:482〜523,1981]。抗体に結合する酵素を、例えば分光光度測定により、可視手段による蛍光測定により検出することができる化学分子が生成されるような方法で、適当な基質、好ましくは色素原性基質と反応させる。抗体に検出可能な標識を付けるために使用することができる酵素は、ペルオキシダーゼおよびアルカリ性ホスファターゼを包含するが、これらに限定されない。この検出はまた、酵素に対する色素原性基質を用いる比色法により達成することができる。
その他の本発明において使用し得る方法としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ免疫測定法、イムノメトリック法、ネフロメトリー、蛍光免疫測定法(FIA)、時間分解蛍光免疫測定法(TRFIA)、酵素免疫測定法(EIA)、発光免疫測定法(LIA)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、ラテックス凝集法、免疫沈降アッセイ、沈降素反応法、ゲル拡散沈降素反応法、免疫拡散検定法、凝集素検定法、補体結合検定法、免疫放射分析検定法、蛍光免疫検定法、およびプロテインA免疫検定法からなる群から選択される免疫測定法などが挙げられる(WO00/14227号公報第39頁第25行〜第42頁第8行、EP1111047A2号公報段落[0115]第19頁第35行〜第20頁第47行など参照)。
以上のように、本発明の抗体を用いる、生体内でのプロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質等)の定量法を利用することにより、プロテアソーム関連タンパク質の機能不全に関連する各種疾患の診断をすることができる。例えば、POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質の濃度増加が検出された場合は、例えば、POMPまたはPSMA7の過剰発現に起因する疾患(例えば、がん(例:大腸がん))である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
なお、本発明のプロテアソーム関連タンパク質に対する抗体は、in vivoでの診断に用いることもできる。ここで使用し得る抗体調製物の調製および使用方法は当該分野でよく知られている。例えば、抗体−キレート剤について、Nucl. Med. Biol. 1990 17:247−254に記載されている。また、磁気共鳴イメージングで用いる標識としての常磁性イオンを有する抗体については、例えば、Magnetic Resonance in Medicine 1991 22:339−342に記載されている。
5.2 ポリヌクレオチド(例えば、DNA)プローブを用いる診断剤及び診断方法
本発明の診断方法においては、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)の塩基配列に基づいて設計されるプローブ又はプライマーを用いることができる。具体的には、そのような診断方法は、例えば、(a)被験者由来の生体試料と、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)またはその断片の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチド(プローブ)とを接触させる工程、および(b)前記試料中での前記ポリヌクレオチドと、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)またはその断片とのハイブリダイゼーションを検出および/または定量する工程を包含する。
上記本発明の方法では、被験者由来の生体試料中のプロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)のDNA(またはその遺伝子断片)を、上記プローブを使用して検出および/または定量する。プローブとして用いる塩基配列の長さは、例えば、12塩基以上、15塩基以上、18塩基以上、21塩基以上、24塩基以上、27塩基以上、30塩基以上、またはさらに長い長さのポリヌクレオチド断片であり得る。ハイブリダイゼーションには、上記した低、中又は高ストリンジェントな条件を使用し得る。なお、本明細書中、「プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)またはその断片の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列」には、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)またはその断片の塩基配列に相補的な塩基配列(アンチセンスポリヌクレオチド)も含まれるものとする。プローブおよび核酸のハイブリダイゼーションの方法は当業者に知られており、例えば国際公開公報第89/06698号、EP−A0200362、米国特許第2,915,082号、EP−A0063879、EP−A0173251、EP−A0128018に記載されている。
本発明の診断方法においては、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)に対する特異的ポリヌクレオチドプローブまたはプライマーを用いて、公知の手法を用いて標的配列を検出または定量することができる。そのような公知の手法として、例えば、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、RT−PCR法、PCR−SSCP法(Genomics,第5巻,874〜879頁(1989年))、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,第86巻,2766〜2770頁(1989年))、FISH法、DNAチップあるいはアレイCGH(Comparative Genomic Hybridization)法などを用いることができる。定量的な検出は、定量RT−PCRによって実施可能である。
アレイCGH法は、染色体CGH法(Kallioniemi, A. et al.(1992)Science 258, 818−821)を応用した方法で、スライド上に染色体領域をカバーするゲノムDNA断片(BAC,PAC,YACなど)を高密度にスポットしたDNAチップを用いて、別々の色素で標識したがん由来DNAと正常DNAを、スライド上のゲノムDNA断片に対して同時にハイブリダイゼーションを行い、その結合状態を検出することにより、がんにおけるDNAコピー数異常を高解像度に検出する方法である(Pinkel,D. et al.(1998)Nat.Genet.20, 207−211)。
なお、本発明においては、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)の発現が上方制御されるか否かを検出するために、細胞のプロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)のmRNAレベルを標準遺伝子(ハウスキーピング遺伝子(例えば、Shaper, N.L.ら、J. Mammary Gland Biol. Neoplasia 3(1998)315−324;Wu, Y.Y.およびRees, J.L.、Acta Derm. Venereol. 80(2000)2−3)のmRNAレベルと、好ましくはRT−PCRによって比較することもできる。
上記のような手法によって標的配列(DNA、mRNAなど)を検出・定量し、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)の発現過多が確認された場合は、例えば、POMPまたはPSMA7の過剰発現に起因する疾患(例えば、がん(例:大腸がん))である可能性が高い、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
5.3 質量分析装置を用いる診断方法
本発明の診断方法の別の実施形態では、被検試料中の標的タンパク質またはその断片の存在を、質量分析装置(MS)を用いて同定することができる。すなわち、質量分析装置を用いることによって、標的タンパク質またはその断片のアミノ酸配列の決定を行うことができ、被験者由来の生体試料中にプロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)が存在するか否かを判定することができる。質量分析法は、MSを用いてタンパク質やペプチドのような試料をイオン化し、得られた質量/電荷(m/z)に従って分離し、その強度を測定することにより、試料の質量を決定する方法である。その質量分析の結果から、タンパク質やペプチドのアミノ酸配列を構成する個々のアミノ酸を同定することができる。
イオン化には、マトリクスアシステッドレーザーデソープションイオン化法(MALDI)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、気相法(EI,CI)、電界脱離(FD)法など種々の方法が使用され得る。イオン分離には、イオン化法と相性のよいイオン分離法が用いられ、例えば、MALDIの場合には、飛行時間型(time of flight:TOF)質量分析計、ESIの場合には、四重極型(QMS)、イオントラップ型、磁場型などの質量分析計がそれぞれ用いられる。質量分析装置は、タンデムで用いられることもある。例えば、LC−ESI MS/MS、Q−TOF MS、MALDI−TOF MS等が挙げられる。なお、その他のアミノ酸配列決定法、例えば、シークエンサー(例:気相シークエンサー)によるアミノ酸配列決定法が利用されてもよい。
5.4 診断用キット
本発明はまた、プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体(例:抗POMP抗体、抗PSMA7抗体)を含有する、被験者の体液試料中のプロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)またはその断片をがんマーカーとして検出および/または定量するためのキットを提供する。さらに、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列を含有する、被験者由来の生体試料中のプロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)またはその断片をがんマーカーとして検出および/または定量するためのキットをも提供する。これらのキットは、上述の免疫学的手法またはハイブリダイゼーション法等により、がんマーカーを検出するために用いられる。このようながんとしては、例えば、大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、脾臓がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん(例:子宮頸がん、子宮体がん)、精巣がん、甲状腺がん、膵臓がん、卵巣がん、脳腫瘍、血液腫瘍などが含まれるが、とりわけ、大腸がんが好ましい。
本明細書中、「がんマーカー」とは、被験者の体液(例えば、血液、尿、リンパ液、唾液、汗、精液等)または細胞もしくは組織中における、正常組織に由来していないか、あるいはがん細胞または組織において選択的に発現の亢進している分子のことをいい、被験者の体液または細胞もしくは組織中における当該分子の存在ががんの存在を示すかまたは示唆するものをいう。
上記第一の態様のキットは、被験者からの体液試料中の抗原〔プロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)およびその部分ペプチドを含む〕を検出および/または定量する成分を含有する。例えば、プロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)がELISAで検出および/または定量される場合、このような成分は、例えば、組織切片、または血液や尿のような体液試料中のプロテオソーム関連遺伝子またはタンパク質のレベルを検出および/または定量するために使用され得る。このような抗体は放射能、蛍光、比色、または酵素標識で標識されていてもよい。本発明のキットは、標識された二次抗体を含有していてもよい。
上記第二の態様のキットは、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する。例えば、本発明のキットは、DNAチップ上に固定された上記ポリヌクレオチドを含有し得る。
本発明のキットは、プロテアソーム関連タンパク質(例:POMPタンパク質、PSMA7タンパク質)に対する抗体、プロテアソーム関連遺伝子(例:POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子)またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列等の他に、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、薬剤が大腸がんマーカーの検出に使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書等がさらに含まれていてもよい。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されない。
実施例1:アレイCGH法による大腸がん特異的増幅遺伝子の同定
本実施例では、大腸がん特異的な遺伝子増幅領域を特定するために、大腸がん検体200症例のサンプル調製およびアレイCGH法に基づく検証を実施した。
その結果、大腸がん検体において高頻度に増幅が起きている領域の内、公共DBでの遺伝子情報(NCBI:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を利用し、精査した結果、使用したBAC Clone RP11−97E23に位置している、POMP(Proteasome maturation protein)(NCBI Accession No.:NM_015932)および、RP11−1083G18に位置している、PSMA7(Proteasome (prosome, macropain) subunit, alpha type, 7)(NCBI Accession No.:NM_002792)遺伝子が大腸がん患者において高頻度で高値であることを見出した(図1,表3)。図1は、POMP遺伝子およびPSMA7遺伝子の大腸がん患者200検体での増幅度に対する頻度を示すヒストグラムである。G/R値が1.2以上の検体では、POMP遺伝子はG/R値が1.3〜1.5を中心とした分布を示し、PSMA7遺伝子はG/R値が1.5〜2を中心とした分布を示した。
また、下記の表3は、POMP遺伝子およびPSMA7遺伝子の大腸がん患者200検体での増幅度(G/R値)および頻度を示す。平均値は、G/R値が1.2以上の検体での平均値を示している。表3に示されるように、POMP遺伝子は、200検体の大腸がん患者の39.0%において増幅が認められ、その増幅度の平均値は、1.3であった。最大値は5.3であり、非常に高頻度で顕著な増幅が起こっていた。またPSMA7遺伝子は、200検体の大腸がん患者の69.5%において増幅が認められ、その増幅度の平均値は、1.5であった。最大値は2.8であり、POMP遺伝子と同様に、非常に高頻度で顕著な増幅が起こっていた。
実施例2:遺伝子増幅の評価
アレイCGH法により得られた結果を検証するために、検体組織のがん細胞におけるPOMP遺伝子およびPSMA7遺伝子領域の遺伝子増幅を、当該技術分野で公知のFISH法により評価した。
アレイCGH法により、遺伝子増幅度(G/R)が1.2以上であった大腸がん患者由来の検体組織を用いて、POMP遺伝子が位置するBAC Clone RP11−97E23とPSMA7遺伝子が位置するBAC Clone RP11−1083G1のDNA Probeでハイブリダイゼーションを実施した。
結果
図2は、BAC Clone RP11−97E23(POMP遺伝子領域に相当)をDNA Probeとして行ったFISH解析の結果である。図は、使用した5つの検体組織(A〜E)とそれらのG/R値、および、各検体におけるDAPI染色された核(6細胞分)の蛍光顕微鏡写真を示す。図3は、RP11−1083G1(PSMA7遺伝子領域に相当)をDNA Probeとして行ったFISH解析の結果である。図は、5つの検体組織(A〜DおよびF。検体A〜DはPOMP遺伝子のFISH解析に使用した検体と共通の検体)に対してDAPIにより染色された核(6細胞分)の蛍光顕微鏡写真を示す。
POMP遺伝子領域のシグナルは、正常部の核では2スポットであったが、がん細胞の核では最も多いもので8スポット観察された(図2,検体E−5)。PSMA7遺伝子領域のシグナルは、正常部の核では2スポットであったが、がん細胞の核では最も多いもので9スポット観察された(図3,検体F−2)。いずれの遺伝子領域においても、がん細胞の核においては3スポット以上のシグナルが観察された。以上のことは、検体組織に対して行ったFISH解析によって、POMP遺伝子およびPSMA7遺伝子の遺伝子増幅が確認されたことを示しており、併せて、アレイCGH法により得られた結果がFISH法によって検証されたことを示している。またこのことは、これらの遺伝子領域が、がん治療薬の分子標的としてだけでなく、FISH法によるがん診断に応用できることを示している。
実施例3:大腸がん検体における遺伝子発現量亢進の検証
ゲノムDNAのある遺伝子領域の増幅は、その遺伝子の発現量亢進が引き起こされることが想像される。そこで本実施例では、遺伝子領域の増幅が見出されたPOMP遺伝子およびPSMA7遺伝子のがん特異的なmRNAの発現量亢進を検証するために、大腸正常13検体、がん20検体におけるPOMP遺伝子とPSMA7遺伝子の定量的RT−PCR解析を実施した。
大腸がん検体由来の全RNAはサイトミクス社より購入し、SuperScript III First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を使用して、添付のプロトコールに従ってcDNAを合成した。このcDNAを鋳型にして、定量的RT−PCR解析を実施した。定量的PCRは、SYBR Green RT−PCR Reagents(Applied Biosystems)を使用して、添付のプロトコールに従って7500 Real−Time PCR System(Applied Biosystems)を用いて実施した。mRNAの相対発現量を算出するための内部標準遺伝子として、TATA box binding protein(TBP)を用いた。プライマーは、以下の配列を合成し(OPERONに合成委託)使用した。
POMPプライマー配列:
5’−ATCTGAGCTAAAGGACAGTATTCCAGTTAC−3’(配列番号13)
5’−AAACCTTTCCGAAGAAGATCATGAC−3’(配列番号14)
PSMA7プライマー配列:
5’−CAAGTGGAGTACGCGCAGGA−3’(配列番号15)
5’−CTGCAGTTTGGCCACTGACTTC−3’(配列番号16)
TBPプライマー配列:
5’−CTTGACCTAAAGACCATTGCACTTC−3’(配列番号17)
5’−GTGGCTCTCTTATCCTCATGATTACC−3’(配列番号18)。
結果
市販されている大腸がん組織および正常組織由来の全RNAを用いて、定量的RT−PCRを実施した。
図4に、大腸正常13検体および大腸がん20検体におけるPOMP遺伝子のTBP遺伝子に対するmRNA相対発現量(以降単に、POMP遺伝子相対発現量と表記する)とPSMA7遺伝子のTBP遺伝子に対するmRNA相対発現量(以降単に、PSMA7遺伝子相対発現量と表記する)をプロットしたグラフを示す。図4に示されるように、POMP遺伝子相対発現量およびPSMA7遺伝子相対発現量は、大腸正常検体に比べてともに高い値を示した(p<0.01のt検定において有意)。
表4に、POMP遺伝子相対発現量およびPSMA7遺伝子相対発現量における、正常13検体の平均値およびがん20検体の平均値を示した。またさらに、それぞれの遺伝子相対発現量おいて、正常13検体の平均値に対するがん20検体での平均値の割合を発現亢進度として求め、併せて表に示した。表4に示すように、POMP遺伝子では2.6倍、PSMA7遺伝子では2.8倍の発現亢進度を示した。これらのことから、POMP遺伝子およびPSMA7遺伝子は、ともにがん特異的にmRNAの発現亢進が起こっていることが示された。
実施例4:大腸がん細胞株を用いたRNAi解析による機能解析
本実施例では、大腸がん患者200検体において高頻度に増幅が認められたPOMP遺伝子およびPSMA7遺伝子について、がん細胞における遺伝子機能を調査するために、培養細胞を用いたRNAi解析を行った。遺伝子ノックダウン率については、定量的RT−PCR解析あるいはイムノブロッティング解析により評価した。遺伝子ノックダウンによる細胞の表現型に対する影響を評価するために、大腸がん細胞株であるRKO細胞へsiRNAを導入し、時系列に従い顕微鏡下で微分干渉像を撮影し、細胞の動態を詳細に観察した。またsiRNAの導入後、96時間目に生細胞数測定解析を行い、細胞の生存率を求めた。
<RNAi解析>
細胞株はATCCより購入し、添付のプロトコールに従い培養を行った。siRNAは4種のsiRNAが混合されたON−TARGET plus SMARTpoolをDharmaconより購入した。
siRNAの培養細胞内への導入は、Lipofectamin RNAiMAX(Invitrogen)を使用し、10nMのsiRNAを添付のプロトコールに従い細胞に導入した。対照にはON−TARGET plus Non−Targeting Pool(Dharmacon)を使用した。
<定量的RT−PCR解析>
遺伝子ノックダウン率について評価するために、siRNAの効果をmRNAレベルで検証した。siRNA導入後24時間の細胞から、SV96 Total RNA Isolation System(Promega)を使用して、添付のプロトコールに従い、全RNAを抽出した。その後、SuperScript III First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を使用して、添付のプロトコールに従い、cDNAを合成した。
このcDNAを鋳型にして、定量的RT−PCRを実施した。定量的PCRは、Power SYBR Green Master Mix(Applied Biosystems)を使用して、添付のプロトコールに従い、7500 Real−Time PCR System(Applied Biosystems)を用いて実施した。
<イムノブロッティング解析>
遺伝子ノックダウン率について評価するために、siRNAの効果をタンパク質レベルで検証した。siRNA導入後48時間および72時間の細胞を回収し、1%SDSを含むPBS中で超音波破砕を行い、細胞溶解液を調製した。その細胞溶解液についてSDS−PAGE(ドデシル硫酸−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を行った後、抗PSMA7抗体を用いてイムノブロッティングを行った。内在性コントロールとして、peptidylprolyl isomerase B(PPIB)を用いた。
<生細胞数測定解析>
siRNA導入後の生細胞数をAlamar Blue(Biosource)を用いて、添付のプロトコールに従い、Wallac 1420 Multilabel/Luminescence Counter ARVO(PerkinElmer)により測定した。
結果
図5に、POMP遺伝子およびPSMA7遺伝子のsiRNAを導入後、24時間に回収したOUMS−23細胞を用いて行った定量的RT−PCR解析の結果を示す。内在性コントロールとしてTBPの相対比を用いて、NCに対する相対量を示した。NCはON−TARGET plus Non−Targeting Pool(Dharmacon)を使用した。NTはNon−Treated(未処理)を表す。図5に示されるように、mRNAレベルでのRNAi効果を定量的RT−PCRで確認した結果、いずれの遺伝子においても遺伝子発現量は、NCに対して10% 以下にまで減少していることが認められた。
図6に、PSMA7遺伝子のsiRNAを導入後、48時間および72時間に回収したHeLa細胞を用いて行ったイムノブロッティング解析の結果を示す。図6に示されるように、タンパク質レベルでのRNAi効果をイムノブロッティングで確認した結果、PPIBタンパク質はサンプル間で一定であったが、PSMA7タンパク質は、siRNAを導入したサンプル特異的に、およそ30%程度にまで減少していた。このPSMA7タンパク質の減少はトランスフェクション後72時間においても同様に認められた。
図7に、RKO細胞に対してPOMP遺伝子のRNAi解析を行い、経時的に微分干渉観察を行った結果を示した。また、トランスフェクション後96時間に生細胞数測定解析を行い、NCに対する相対値をViability(生存率)として算出した。図7に示されるように、POMP遺伝子のsiRNAを細胞内に導入することで、48時間目以降における細胞増殖の抑制および細胞死の誘導が確認された。また、トランスフェクション96時間後の生存率は8.9%と著しく減少していた。
図8に、RKO細胞に対してPSMA7遺伝子のRNAi解析を行い、経時的に微分干渉観察を行った結果を示した。また、トランスフェクション後96時間に生細胞数測定解析を行い、NCに対する相対値をViability(生存率)として算出した。図7に示されるように、PSMA7遺伝子のsiRNAを細胞内に導入することで、48時間目以降における細胞増殖の抑制および細胞死の誘導が確認された。また、トランスフェクション96時間後の生存率は11.1%と著しく減少していた。
図9は、観察した微分干渉像の視野内における、生細胞数と死細胞数の経時的な推移を示したグラフである。POMP遺伝子、PSMA7遺伝子のsiRNAを細胞内に導入すした結果、ともにトランスフェクション48時間以降で生細胞数の減少および死細胞数の増加が確認された。
POMP遺伝子およびPSMA7遺伝子のsiRNAの細胞内へ導入は、それぞれの遺伝子のmRNAとタンパク質の減少を引き起こすことが確認された(図5,図6)。また、POMP遺伝子およびPSMA7遺伝子のsiRNAの細胞内へ導入は、細胞の増殖を抑制し、細胞死を誘導した(図7,8,9)。これらのことから、大腸がん細胞株であるRKO細胞において、POMP遺伝子とPSMA7遺伝子の発現抑制は、細胞増殖の抑制をもたらすことが見出された。
実施例5:大腸由来の種々の細胞株でのRNAi効果の評価
本実施例では、大腸由来の種々の細胞株でのRNAi効果の評価するために、大腸がん細胞株であるRKO細胞、LS123細胞、RKO−E6細胞、OUMS−23細胞、Caco−2細胞、さらに大腸正常細胞株であるCCD18Co細胞を用いてPOMP遺伝子およびPSMA7遺伝子のRNAi解析を行い、時系列に従い顕微鏡下で微分干渉像を撮影し、細胞の動態を詳細に観察した。またsiRNAの導入後、96時間目に生細胞数測定解析を行い、細胞の生存率を求めた。
<RNAi解析>
実施例4の記載方法と同様に実施する。
<生細胞数の測定>
実施例4の記載方法と同様に実施する。
結果
図10に、POMP遺伝子のsiRNAのトランスフェクション96時間後の微分干渉像および生存率を示す。使用されたすべての大腸がん培養細胞株に対して、POMP遺伝子のsiRNA導入は、細胞死を誘導することが認められた。また、LS123細胞においては、細胞死の誘導は弱いものの、細胞周期長の延長が認められた。
図11にPSMA7遺伝子のsiRNAのトランスフェクション96時間後の微分干渉像および生存率を示す。使用された細胞のうち半数以上の大腸がん培養細胞株に対して、PSMA7遺伝子のsiRNA導入は、細胞死を誘導することが認められた。また、PSMA7遺伝子のRNAi効果はPOMP遺伝子のRNAi効果に比べて僅かに弱いことが確認された。
これらのことから、POMP遺伝子とPSMA7遺伝子の遺伝子発現の抑制は、種々の大腸がん培養細胞に対して、細胞増殖抑制効果をもたらすことが認められた。
実施例6:肺および乳由来細胞株でのRNAi効果の評価
大腸がん細胞株では、POMP遺伝子、PSMA7遺伝子ともにRNAiにより、増殖抑制効果が認められた。そこでさらに、他の臓器(肺および乳)由来の細胞株においてどのような効果が認められるのか、前述のRNAi解析法により評価した。肺由来の培養細胞は、がん細胞株であるNCI−H838細胞とABC−1細胞および正常細胞株であるIMR−90細胞を用いた。また、乳由来の培養細胞は、がん細胞であるMCF7細胞とHCC1806細胞および正常細胞株であるHs617.Mg細胞を用いた。
<RNAi解析>
実施例4の記載方法と同様に実施する。
<生細胞数の測定>
実施例4の記載方法と同様に実施する。
結果
図12は、肺および乳由来の細胞株にPOMP遺伝子のsiRNAを導入した96時間目の微分干渉像および生存率を示す。POMP遺伝子のsiRNAの導入は、ABC−1細胞(生存率43%)、IMR−90細胞(生存率9%)、HCC1860細胞(生存率3%)では細胞死を誘導するが、比較的生存率の高いMCF7細胞(生存率65%)、Hs617.Mg細胞(生存率61%)に対する細胞増殖抑制効果はわずかであった。NCI−H838細胞(生存率108%)においては、POMP遺伝子のRNAi効果は見られなかった。
図13は、肺および乳由来の細胞株にPSMA7遺伝子のsiRNAを導入した96時間目の微分干渉像および生存率を示す。PSMA7遺伝子のsiRNAの導入は、ABC−1細胞(生存率38%)、IMR−90細胞(生存率43%)、HCC1860細胞(生存率24%)では細胞死を誘導するが、比較的生存率の高いMCF7細胞(生存率83%)に対する細胞増殖抑制効果はわずかであった。また、IMR−90細胞においては、細胞死の誘導と合わせて形態変化(細胞伸張)が認められた。NCI−H838細胞(生存率104%)とHs617.Mg細胞(生存率99%)においては、PSMA7遺伝子のRNAi効果は認められなかった。また大腸がん細胞株と同様に、PSMA7遺伝子のRNAi効果はPOMP遺伝子のRNAi効果に比べて僅かに弱いことが確認された。
これらの結果から、POMP遺伝子およびPSMA7遺伝子の機能阻害は、大腸がんだけでなく、肺がんまたは乳がんにおいても抗腫瘍性効果を示すことが示唆された。
本発明により、がん(例えば、大腸がん)の治療および/または診断に有用な新規な薬剤、キットおよび方法、ならびにがん抑制作用を有する候補化合物のスクリーニング方法が提供される。

Claims (28)

  1. プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、該プロテアソーム関連遺伝子が、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である、がん治療剤。
  2. 前記プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質が、
    (a)POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子の発現をRNAi効果により阻害する作用を有する核酸、
    (b)POMP遺伝子もしくはPSMA7遺伝子の転写産物またはその一部に対するアンチセンス核酸、
    および
    (c)POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子の転写産物を特異的に切断するリボザイム活性を有する核酸、
    からなる群から選択される物質を含む、請求項1に記載のがん治療剤。
  3. プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、該プロテアソーム関連タンパク質がPOMPタンパク質またはPSMA7タンパク質である、がん治療剤。
  4. 前記プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質が、
    該POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質に対する抗体、
    を含む、請求項3に記載のがん治療剤。
  5. 前記がんが大腸がんである、請求項1〜4のいずれかに記載のがん治療剤。
  6. プロテアソーム関連遺伝子の発現阻害物質をスクリーニングする方法であって、
    (a)POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子を発現する細胞に、被検化合物を接触させる工程、
    (b)該POMP遺伝子または該PSMA7遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
    (c)被検化合物を接触させない場合と比較して、該発現レベルを低下させる化合物を選択する工程を包含する、スクリーニング方法。
  7. プロテアソーム関連タンパク質の活性阻害物質をスクリーニングする方法であって、
    (a)POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質と被検化合物とを接触させる工程、
    (b)該POMPタンパク質または該PSMA7タンパク質と被検化合物との結合活性を測定する工程、および
    (c)該POMPタンパク質または該PSMA7タンパク質と結合する化合物を選択する工程を包含する、スクリーニング方法。
  8. 大腸がんの治療剤の候補化合物をスクリーニングするためのものである、請求項6または7に記載の方法。
  9. POMPタンパク質またはPSMA7タンパク質に対する抗体。
  10. 請求項9に記載の抗体を含有するがん治療剤。
  11. 放射性同位元素、治療タンパク質、低分子の薬剤、または治療遺伝子を担持したベクターをさらに含有する、請求項10に記載のがん治療剤。
  12. 前記がんが大腸がんである、請求項10または11に記載のがん治療剤。
  13. 請求項9に記載の抗体を含有するがん診断剤。
  14. プロテアソーム関連遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列を含有するがん診断剤であって、該プロテアソーム関連遺伝子が、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である、がん診断剤。
  15. 前記がんが大腸がんである、請求項13または14に記載のがん診断剤。
  16. 請求項9に記載の抗体を含有するがん診断用キット。
  17. プロテアソーム関連遺伝子またはその一部の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するがん診断用キットであって、該プロテアソーム関連遺伝子がPOMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である、がん診断用キット。
  18. 前記がんが大腸がんである、請求項16または17に記載のがん診断用キット。
  19. 被験者由来の生体試料中のプロテアソーム関連タンパク質またはプロテアソーム関連遺伝子をがんマーカーとして検出および/または定量する方法であって、該プロテアソーム関連タンパク質がPOMPタンパク質またはPSMA7タンパク質であり、該プロテアソーム関連遺伝子がPOMP遺伝子またはPSMA7遺伝子である、方法。
  20. 前記生体試料が、全血、血清、または血漿である、請求項19に記載の方法。
  21. 質量分析装置を用いて、前記プロテアソーム関連タンパク質を検出および/または定量する、請求項19または20に記載の方法。
  22. 抗プロテアソーム関連抗体を用いて、前記プロテアソーム関連タンパク質を検出および/または定量する、請求項19〜21のいずれかに記載の方法。
  23. (a)被験者由来の生体試料と、前記プロテアソーム関連タンパク質に対する抗体とを接触させる工程、および
    (b)前記試料中での前記抗体と、前記プロテアソーム関連タンパク質との結合を検出および/または定量する工程、
    を包含する、請求項22に記載の方法。
  24. (a)被験者由来の生体試料と、POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子またはその断片の塩基配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドとを接触させる工程、および
    (b)前記試料中での前記ポリヌクレオチドと、該POMP遺伝子または該PSMA7遺伝子またはその断片とのハイブリダイゼーションを検出および/または定量する工程、
    を包含する、請求項19または20に記載の方法。
  25. がんの診断に用いるための請求項19〜24のいずれかに記載の方法。
  26. 前記がんが、大腸がんである、請求項25に記載の方法。
  27. 配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12の塩基配列を有する、ポリヌクレオチド。
  28. POMP遺伝子またはPSMA7遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療剤であって、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12の塩基配列を有するポリヌクレオチドを含有する、がん治療剤。
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