JPWO2007026874A1 - Gpr120とホスホリパーゼとを用いる疾患に有用な物質のスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、Gタンパク質共役型受容体タンパク質であるGPR120と、ホスホリパーゼまたはその塩との相互作用を変化させる物質(詳しくは、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質)をスクリーニングする方法、およびそのようなスクリーニングを実施するためのスクリーニング用キットに関する。
多くのホルモンや神経伝達物質などの生理活性物質は、細胞膜に存在する特異的なレセプター蛋白質を介して、生体の機能を調節している。これらのレセプターの多くは、細胞膜を7回貫通する構造を有しており、細胞内で三量体のGタンパク質 (guanine nucleotide-binding protein) と共役していることから、Gタンパク質共役型受容体 (GPCR: G-protein coupled receptor) と呼ばれている。
本発明のスクリーニング方法には、ホスホリパーゼを使用する。ホスホリパーゼとしては、ホスホリパーゼA1、A2、B、CおよびDが挙げられるが、本発明においては、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2が好ましく、ホスホリパーゼA2がより好ましい。ホスホリパーゼA2は、性質により、分泌型(sPLA2)、細胞質型(cPLA2)、およびカルシウム非依存型(iPLA2)に分類できるが、本発明においては、分泌型が好ましい。また、ハチ毒およびヘビ毒のホスホリパーゼA2を用いることもできる。本発明によれば、ホスホリパーゼは、分泌型のホスホリパーゼA2およびハチ毒ホスホリパーゼA2がより好ましいものとして挙げられる。
(A) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)を含む、ポリペプチド;
(B) 前記(A)のアミノ酸配列において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;
(C) 前記(A)のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(D) 前記(A)のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;および、
(E) 前記(A)のアミノ酸配列をコードする塩基配列に対して80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上)の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
なお前記「ジスルフィド結合をしたもの」とは、ホスホリパーゼの分子内において、特定箇所アミノ酸と、別の特定箇所のアミノ酸とが−S−S−結合により架橋されている状態をいう。
これら本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、その改変ポリペプチド、その相同ポリペプチド)およびその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法、例えば遺伝子工学的手法、合成法などによって得ることができる。具体的には、遺伝子工学的手法の場合、ホスホリパーゼまたはその部分ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することによって調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、前記ホスホリパーゼ、前記改変ポリペプチド、前記相同ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本願明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、具体的には下記の(I)〜(VI)からなる群より選択されるものが挙げられる:
(I) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40で表される塩基配列)からなる、ポリヌクレオチド;
(II) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(III) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)を含み、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(IV) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(V) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40で表される塩基配列)からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;および
(VI) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40で表される塩基配列)に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
プラスミドに本願発明の遺伝子のDNA断片を組み込む方法としては、例えば、「Sambrook, J.ら,モレキュラークローニング,ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual, second edition)、Cold Spring Harbor Laboratory, 1.53(1989)」に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組換えプラスミドは、宿主細胞(例えば、E.coli TB1,LE392またはXL-1Bluc等)に導入する。形質転換に使用するプラスミドは、上記のようなホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知のベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。例えば、ホスホリパーゼ単独でもよいし、ホスホリパーゼとタグとなるようなタンパク質(例えば、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP))との融合タンパク質を発現ベクターに組み込んでもよい。
形質転換体は、所望の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより調製することができる。用いられる宿主細胞としては、本発明の発現ベクターに適合し、形質転換されうるものであれば特に制限はなく、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞、または人工的に樹立された組換細胞など種々の細胞を用いることが可能である。例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法に使用するGPR120は、ホスホリパーゼ(例えば、sPLA2)による活性化作用を有し、GPR120発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出、細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosおよびc−junの誘導活性、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌活性、コレシストキニン(CCK)分泌活性、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)分泌活性など)を有するものであれば、その起源は特に限定されず、例えばGPR120を発現する臓器、組織、細胞などの天然由来のもの、公知の遺伝子工学的手法、合成法などにより人為的に調製したものも包含される。また、GPR120の部分ポリペプチドとして後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されず、例えばホスホリパーゼによる細胞刺激活性化作用を有する部分ポリペプチド、細胞膜外領域に相当するアミノ酸配列を含む部分ポリペプチドなども使用することもできる。
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;
(c) 配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(d) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;および、
(e) 配列番号1で表される塩基配列に対して80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上)の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
これら本発明に使用するGPR120(すなわち、GPR120、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)およびその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法、例えば遺伝子工学的手法、合成法などによって得ることができる。具体的には、遺伝子工学的手法の場合、GPR120またはその部分ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することによって調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
本発明に使用するGPR120(すなわち、GPR120、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、前記GPR120、前記改変ポリペプチド、前記相同ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本願明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明に使用するGPR120をコードするポリヌクレオチドは、具体的には下記の(i)〜(vi)からなる群より選択されるものが挙げられる:
(i) 配列番号1で表される塩基配列からなる、ポリヌクレオチド;
(ii) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(iii) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、前記のGPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(iv) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、GPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(v) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、GPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;および
(vi) 配列番号1で表される塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、しかも、前記のGPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
「欠失」には、アミノ酸配列の端からアミノ酸残基を欠失したものおよびアミノ酸は配列の途中のアミノ酸残基が欠失したものも含まれる。
1つのアミノ酸をコードするコドンは複数存在する。従って、配列番号2、配列番号4、または配列番号6で示されるアミノ酸配列またはその酵素活性部分をコードするいずれのDNAも本発明の範囲に含まれる。
前記形質転換に使用されるプラスミドは、上記のようなGPR120をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。
また、前記形質転換体も、上記のようなGPR120をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば当該ポリヌクレオチドが宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドの形で含有する形質転換体であることもできるし、あるいは、GPR120を発現していない形質転換体であることもできる。当該形質転換体は、例えば前記プラスミドにより、あるいは、前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。
また、GPR120を含有する本発明に使用する細胞膜断片は、例えば前記のGPR120を発現する細胞を破砕した後、細胞膜が多く含まれる画分を分離することにより得ることができる。細胞の破砕方法としては、例えばホモジナイザー(例えばPotter−Elvehiem型ホモジナイザー)で細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーまたはポリトロン(Kinematica社)による破砕、超音波による破砕、あるいは、フレンチプレスなどで加圧しながら細いノズルから細胞を噴出させることによる破砕などを挙げることができる。また、細胞膜の分画方法としては、例えば遠心力による分画法、例えば分画遠心分離法または密度勾配遠心分離法を挙げることができる。
前記したように、本発明によれば、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを用いることを特徴とする、GPR120とホスホリパーゼまたはその塩との相互作用を変化させる物質のスクリーニング方法が提供される。好ましくは、この方法は、被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、細胞刺激活性を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とにおける測定結果を比較することを含んでなる。
前記CREをプロモーター領域に有するレポーター遺伝子を導入されている細胞においては、例えば、細胞内のcAMPの濃度上昇や細胞内Ca2+濃度の上昇により、レポーター遺伝子の発現量が増加する。また、アデニル酸シクラーゼの活性化剤(例えばフォルスコリンなど)で細胞の基礎的なcAMP量を増大させておいて活性を測定することもできる。レポーター遺伝子産物の発現量は、細胞培養上清や細胞抽出物に含まれるレポーター遺伝子産物と反応した基質から生成した発光物質の量に由来する発光を測定する方法、もしくはレポーター遺伝子として産生された蛍光タンパク質由来の蛍光を測定する方法などにより容易に測定することが可能である。
本発明によるスクリーニング用キットは、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを少なくとも含んでなる。好ましくは、このキットは、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするためのものである。前記スクリーニング用キットは、所望により、本発明によるスクリーニング方法を実施するための種々の試薬、例えば結合反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。
GPR120は、後述する実施例8、および28〜33に示されるように、下垂体、肺、腸管(特に、回腸、盲腸、大腸)、精巣、前立腺、甲状腺、副腎、各種脂肪組織(皮下脂肪、腸間膜脂肪、副睾丸脂肪、および、褐色脂肪)、肺胞マクロファージ、樹状細胞、リンパ節で高い発現が検出された。中でも腸管や下垂体、肺、肺胞マクロファージ、脂肪組織、樹状細胞等で高い発現が検出された。このため、本発明によれば、糖尿病、糖尿病網膜症若しくは糖尿病腎症等の糖尿病合併症、高脂血症、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、下垂体機能障害、精神障害、免疫系疾患、炎症性疾患、マクロファージや樹状細胞が関与する疾患、癌、および、過食症、拒食症に代表される摂食障害、さらにはそれに伴う大腸疾患等の予防または治療に有用な物質をスクリーニングすることができる。また、GPR120は、腸内分泌細胞株STC−1細胞からのコレシストキニン(CCK)の放出促進作用との関連が報告されている(特開2005−15358号公報)。CCKは末梢領域において、迷走神経を介した摂食抑制作用を有する。また、CCKは胃や十二指腸などの消化管臓器から放出され、胃酸分泌、胆嚢の収縮、膵臓の酵素分泌促進、および腸の運動など、消化管ホルモンとしての様々な機能も有する。これらのことから、GPR120が、過食症、拒食症に代表される摂食異常、肥満症およびそれに伴う糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、および消化機能の調節と関連していることが予想される。
(1A)疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;
(1B)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または遅延すること;
(1C)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こすこと等を含む。
(1)ヒトGPR120をコードするポリヌクレオチドの調製
ヒトGPR120(以下、ヒトGPR120を、単にGPR120またはhGPR120と称することもある)をコードするポリヌクレオチドの単離のため、配列番号1で表される1086bpの核酸配列を基にして、常法にしたがって、5’側プライマー(5’−GATATCGCCGCCACCATGTCCCCTGAATGCGCGCGGGCA−3’)(配列番号7)と3’側プライマー(5’−GATATCTTAGCCAGAAATAATCGACAAGTC−3’)(配列番号8)とで表されるPCRプライマーを設計した。
マウスGPR120(以下、mGPR120と称する)をコードするポリヌクレオチドの単離のため、配列番号3で表される1086bpの塩基配列を基にして、常法に従って、5’側プライマー(5’−GATATCGCCGCCACCATGTCCCCTGAGTGTGCACAGACGACG−3’)(配列番号9)および3’側プライマー(5’−GATATCTTAGCTGGAAATAACAGACAAGTCA−3’)(配列番号10)とで表されるPCRプライマーを設計した。6週令のC57BL/6CrSlcマウス(日本エスエルシー株式会社)の大腸からRNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて調製したRNAを鋳型として、上述の配列番号9および配列番号10のプライマー、Taq Man逆転写試薬、および、AmpliTaqGold(アプライドバイオシステムズ社)を用いることによりRT−PCRを行った。増幅したPCR産物をpCR2.1に挿入し、常法に従って配列を確認した。その結果、挿入された1086bpのcDNA配列は、配列番号3における1番目から1086番目と同一配列であり、mGPR120−pCR2.1を得ることができた。
pBabe Puro(Morgenstern J.P. and Land H. Nucleic Acids Res. 18(12):3587-96, 1990)(配列番号11)をSalIおよびClaIで切断することによりSV40 promoter−puro(r)領域を除いた後、末端をクレノー断片(Klenow fragment)(宝酒造株式会社)により平滑化した。ここへ、pIREShyg(Clontech社)をNsiIおよびXbaIで切断することにより切り出し、T4ポリメラーゼ(宝酒造株式会社)により末端を平滑化したIRES−hyg(r)領域を挿入し、pBabeXIHを得た。
実施例2で得たレトロウイルス発現用プラスミドpBabeCLXIHを、制限酵素HpaIで切断した。ここへ実施例1(1)で得たGPR120−pCR2.1を、EcoRVで切断することにより切り出したGPR120をコードするcDNAを挿入しすることにより、pBabeCL(GPR120)IHを得た(図1)。同様にして実施例1(2)で得たmGPR120−pCR2.1を用いて、pBabeCL(mGPR120)IHを得た。
2×106個の293−EBNA細胞(インビトロジェン社)を、DMEM培地(シグマ社)(10% fetal bovine serum(FBS)、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)(以下、「EBNA培養液」と称する)10mlを用いて、10cm径コラーゲンコートディッシュ(旭テクノグラス社)で培養した。翌日、pV−gp(pVpack−GP(Stratagene社)をNsiIおよびXbaIで切断することによりIRES−hisDを除きT4ポリメラーゼによる平滑化後、自己環化したもの)、pVPack−VSV−G(Stratagene社)、および実施例3で得た遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミド(pBabeCL(GPR120)IH、または、pBabeCL(mGPR120)IH)それぞれ3.3μgを、リポフェクション試薬であるFuGENE 6 Transfection Reagent(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用い、293−EBNA細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に培養液を回収し、1,200×gで10分間遠心した。その上清を0.45μmのフィルター(Millipore社)でろ過し、GPR120遺伝子導入用レトロウイルスベクターを得た。
(1) サイクリックAMP応答配列を含むレポーターDNAの作成
Durocher Y et al. Anal Biochem 284(2):316-26, 2000 を参考にサイクリックAMP(cAMP)に応じた転写が見られるユニットを以下のように構築した。
cAMP responsive element(CRE)を含むユニットの作成のために、CREx2hb用として、配列番号12(5’-cccaagcttgatatcgaattcgacgtcacagtatgacggccatgggaattcgacgtcacagtatgacggccatggggatcccg-3’)および配列番号13(5’-cgggatccccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcgatatcaagcttggg-3’)で表されるオリゴDNAを、CREx2bp用として配列番号14(5’-tgcactgcaggaattcccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcccatggccgtcatactgtgacgtcggatcccg-3’)および配列番号15(5’-cgggatccgacgtcacagtatgacggccatgggaattcgacgtcacagtatgacggccatgggaattcctgcagtgca-3’)で表されるオリゴDNAを常法に従い作成した。それぞれの組合せから成るオリゴDNAを95℃に熱処理後、徐々に温度を室温まで下げることにより二本鎖DNA(CRE2xhb,およびCREx2bp)を形成させた。CRE2xhbをHindIIIおよびBamHI、CREx2bpをBamHIおよびPstIで消化するとともに、pBluescriptIISK(+)(Stratagene社)をHindIIIおよびPstIで消化した。消化したDNAを電気泳動して両端に制限酵素部位をもつDNAを精製した後、これら3つのDNA(CREx2hb、CREx2bp、pBluescriptSK(+))を一度に連結し(ligation)、得られたプラスミドの配列を解析して、CRE4/pBluescriptIISK(+)を作成した。
ヒトゲノムDNA(Roche Diagnostics社)を鋳型とし、上述の配列番号16および配列番号17の組合せからなるPCRプライマーと、組換えTaqポリメラーゼ(Takara社)を用いて、94℃30秒、55℃30秒、72℃1分のサイクルを35回繰り返すことによりPCRしたところ、264bpのDNA(配列番号18)が得られた。この264bpのDNAをPstIで消化するとともにCRE4/pBluescriptIISK(+)のPstIサイトに挿入し、得られたプラスミドの配列を確認してCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)を作成した(図2)。このCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)を、HindIIIとSmaIで消化した後、得られたCRE4VIPプロモーター断片の末端平滑化を行った。
サイクリックAMP応答配列によりレポーター遺伝子PLAPが誘導されるレトロウイルスベクタープラスミドpBabeCLcre4vPdNNを用い、実施例4に記載の方法に準じてレトロウイルスベクターを調製した。調製したレトロウイルスベクターをHEK293細胞に導入し、限界希釈法により細胞をクローン化して、PLAP誘導の反応性が最も良かったクローン(以下、「SE302」と称する)を以下の実験に供した。
前記実施例6で構築したGPR120−SE302細胞、もしくはmGPR120-SE302細胞を、転写活性測定用培地(DMEMに65℃にて30分熱処理したFBSを最終濃度10%になるように加えたもの)にて懸濁した後、96穴プレート(ベクトンディッキンソン社)に、1×104細胞/wellで播種した。また、コントロール細胞としては、緑色蛍光タンパク質(GFP、Invitrogen社)を発現させたSE302細胞(以下、「GFP−SE302細胞」を用いた。)具体的には、実施例3、4に示す方法にGFP発現用ウイルス得た後、実施例6に示す方法でSE302に感染させてGFP−SE302細胞を作製した。細胞播種24時間培養後、最終濃度1.0μMとなるように調製したフォルスコリンおよび試料を添加した。更に24時間培養後、細胞上清を5μl回収してポリプロピレン製384穴ホワイトプレート(ナルジェヌンクインターナショナル株式会社)に移し、20μlのアッセイ用緩衝液(280mmol/L Na2CO3−NaHCO3、8mmol/L MgSO4、pH10)および25μlのLumiphos530(Lumigen社)を添加した。室温で2時間反応させた後、各穴の化学発光をFusionプレートリーダー(Perkin Elmer社)にて測定し、転写活性量とした。この測定値をもとにして、転写活性量促進/抑制を以下に示した式(I)で計算し、[% of control]で表した。試料添加群の活性は、それぞれのプレート毎に設置した対照の値を用いて算出した。
ここで、上記式中、
X: 試料添加群のPLAP転写活性
F: ポジティブコントロール(試料無添加、フォルスコリン刺激あり)の2穴のPLAP転写活性の平均値
C: ネガティブコントロール(試料無添加、フォルスコリン刺激なし)の2穴のPLAP転写活性の平均値
である。
mRNAの発現量の定量には、ABI PRISM 7700 Sequence Detector(アプライドバイオシステムズ社)を用いた。発現量の定量に用いるプライマー5’側プライマー(5’−TCCGAGTGTCCCAACAAGACT−3’)(配列番号19)、および3’側プライマー(5’−GGATCAAGATGAGGAGGATGG−3’)(配列番号20)は、マウスGPR120の塩基配列(配列番号3)を基に、ABI PRISM Sequence Detector専用のソフトウエアPrimer Express を利用して設計した。
実施例8に示すマウスの発現分布に基づき、GPR120の発現量が多かった腸管および精巣の抽出物を用いて、以下に示す方法でGPR120に特異的なリガンド活性を示す物質の探索を行った。
ラットの精巣および腸管にも、マウスと同様に、GPR120に特異的なリガンド活性を示す物質が存在するか検討を行った。
9週令のWistarラット(日本エスエルシー株式会社より入手)100匹から、精巣約300gと腸管約450gを摘出し、直ちにドライアイスで凍結した。実施例9に示した方法で、腸管および精巣の抽出物を作成した。凍結乾燥した粉末を1M酢酸で溶解し、Millex−GV 0.22μm PVDFフィルター(ミリポア社)でろ過後、ODSカラム(YMC−Pack ODS−A、4.6Φ x 300mm、ワイエムシイ株式会社)に付した。24−48%アセトニトリルの濃度勾配溶出法により溶出させた液を1分毎に分取した。ここで、ODSカラムでの分取は、1回あたりのサンプルの付加量が出発の臓器重量として20g以下となるように、複数回に分けて行い、後にサンプルを1つにまとめて以後の実験に供した。各分画を減圧下、濃縮・乾固させ、実施例7に示す方法でPLAP活性を測定した。
実施例10で得られたラット腸管抽出物の活性フラクションの乾燥粉末を、10%アセトニトリルを含む10mM ギ酸アンモニウム(リン酸でpHを3に調整したもの)に溶解した後、陽イオン交換カラム(TSKgel SP-5PW、7.5Φ x 75mm、東ソー株式会社)に付した。10%アセトニトリル存在下で、10mMから1.0Mのギ酸アンモニウムの濃度勾配により溶出した。活性は、ギ酸アンモニウム 280mM付近に回収された。活性分画を、Diphenylカラム(Vydac219TP Diphenyl Reversed Phase、4.6Φ x 250mm、GRACE VYDAC)に付した後、0.1% TFAを含む21%から48%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出した結果、アセトニトリル30%付近に活性が検出された。
活性分画を0.1% TFAで3倍希釈した後、ODSカラム(Vydac218TP C18 Reversed Phase、4.6Φ x 250mm、GRACE VYDAC)に付し、0.1% TFAを含む27%から42%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出した。活性はアセトニトリル34%付近に認められた。
実施例10で得られたラット精巣抽出物の活性フラクションの乾燥粉末を、10%アセトニトリルを含む10mM ギ酸アンモニウム(リン酸でpHを3に調整したもの)に溶解した後、陽イオン交換カラム(TSKgel SP-5PW,7.5Φ x 75mm、東ソー株式会社)に付した。10%アセトニトリル存在下で、10mMから1.0Mのギ酸アンモニウムの濃度勾配により溶出した。活性は、ギ酸アンモニウム280mM付近に回収された。活性分画を、Diphenylカラム(Vydac219TP Diphenyl Reversed Phase、4.6Φ x 250mm、GRACE VYDAC)に付した後、0.1% TFAを含む21%から48%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出した結果、アセトニトリル30%付近に活性が検出された。
ラット腸管および精巣の抽出物から得られたGPR120−SE302細胞に対して特異的にPLAP活性を上昇させる物質として同定されたGX−sPLA2のヒト、およびマウスのホモログの前駆体をコードするcDNAを、以下に示す方法にしたがって行った。
hGX−sPLA2の前駆体をコードするポリヌクレオチドの単離は、配列番号25(GenBank アクセッション番号NM_003561)であらわされる核酸配列を基にして、hGX−sPLA2のコード領域441番目から938番目に対してプライマーを設計し5’側プライマー(5’−ATGGGGCCGCTACCTGTGTGCCTGCC−3’)(配列番号26)および3’側プライマー(5’−TCAGTCACACTTGGGCGAGTCCGGC−3’)(配列番号27)、Human Lung QUICK-Clone cDNA(クロンテック社)を鋳型として、PCRを行った。FastStart High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)を用い、94℃5分の後、94℃1分、61℃1分、72℃3分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。増幅された約500bpのPCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入し、hGX−sPLA2−pCR2.1を得た。
ABI prism DNA sequencing kit(Perkin-Elmer Applied Biosystems社)により配列を確認した結果、pCR2.1に挿入された498塩基対の配列は、配列番号25における441番目から938番目と同一配列であった。
mGX−sPLA2をコードするポリヌクレオチドの単離は、配列番号28(GenBank アクセッション番号NM_011987)であらわされる核酸配列を基にして、mGX−sPLA2のコード領域175番目から630番目に対してプライマー5’側プライマー(5’−ATGCTGCTGCTACTGCTGCTGTTGC−3’)(配列番号29)および3’側プライマー(5’−TCAATTGCACTTGGGAGAGTCCTTC−3’)(配列番号30)を設計した。鋳型なるcDNAは、実施例8に記したC57BL/6NCrjマウスの大腸のRNAを実施例8と同様の方法で逆転写したものを用いた。FastStart High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)を用い、94℃5分の後、94℃1分、58℃1分、72℃3分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。増幅された約450bpのPCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入し、mGX−sPLA2−pCR2.1を得た。
ABI prism DNA sequencing kit(Perkin-Elmer Applied Biosystems社)により配列を確認した結果、pCR2.1に挿入された456塩基対の配列は、配列番号28における 175番目から630番目と同一配列であった。
(1) C末Hisタグ付きGX−sPLA2(GX−sPLA2−His6)のクローニング
C末Hisタグ付きヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2−His6)は、実施例13で得たhGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として5’側プライマー(5’−GATATCGCCGCCACCATGGGGCCGCTACCTGTG−3’)(配列番号31)および3’側プライマー(5’−GATATCTCAATGGTGATGGTGATGATGGTCACACTTGGGCGAGTC−3’)(配列番号32)のプライマーを用いてPCRを行った。同様に、C末Hisタグ付きマウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2−His6)は、実施例13で得たmGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として5’側プライマー(5’−GATATCGCCGCCACCATGCTGCTGCTACTGCTG−3’)(配列番号33)および3’側プライマー(5’−GATATCTCAATGGTGATGGTGATGA TGATTGCACTTGGGAGAGTC−3’)(配列番号34)のプライマーを用いてPCRを行った。PCRは、FastStart High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)を用い、94℃5分の後、94℃1分、61℃1分(hGX−sPLA2の場合)もしくは58℃1分(mGX−sPLA2の場合)、72℃3分のサイクルを15回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。得られたPCR産物を再びpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入し、hGX−sPLA2−His6−pCR2.1およびmGX−sPLA2−His6−pCR2.1を得た。
hGX−sPLA2−His6−pCR2.1およびmGX−sPLA2−His6−pCR2.1をEcoRVで切断し、それぞれhGX−sPLA2−His6およびmGX−sPLA2−His6を切り出した。これを、制限酵素HpaIで切断したpBabeCLXIH(実施例2に記載)にサブクローニングし、GX−sPLA2−His6遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミドpBabe(hGX−sPLA2−His6)IHおよびpBabe(mGX−sPLA2−His6)IHを得た。これらを、実施例4と同様の方法を用いて、レトロウイルスベクター溶液を作成した。
1.2×105個のCHO−K1細胞を、DMEM(10% FBS、ペニシリン 100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)2mlを用いて6well plate(日本ベクトンディッキンソン株式会社)に培養した。翌日、培地を取り除き、実施例14で調製したレトロウイルスベクター4mlおよび1.6mg/ml polybrene 20μl(最終濃度8μg/ml)を加えた。その後、350μg/mlハイグロマイシン含有の培養液で培養することにより生き残ってきた細胞を、ヒトおよびマウスHisタグ付きGX−sPLA2発現CHO−K1細胞(それぞれ、hGX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞および、mGX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞)として以下の実験に供した。
1.2×105個のHEK細胞を、DMEM(10%FBS、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)2mlを用いてコラーゲンコート6well plate(旭テクノグラス社)に培養した。翌日、培地を取り除き、実施例14で調製したレトロウイルスベクター4mlおよび1.6mg/ml polybrene 20μl(最終濃度8μg/ml)を加えた。その後、350μg/mlのハイグロマイシン含有の培養液で培養することにより、生き残ってきた細胞をヒトおよびマウスHisタグ付きGX−sPLA2発現HEK細胞(それぞれ、hGX−sPLA2−His6−HEK細胞および、mGX−sPLA2−His6−HEK細胞)として以下の実験に供したとして以下の実験に供した。
hGX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞およびmGX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞を、DMEM(10% FBS、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)10mlを用いて、10cm径シャーレ(ベクトンディッキンソン社)に培養した。コンフルエントに達してから2日培養後、培地を回収し、実施例7に示す方法にしたがってGPR120−SE302細胞のPLAP活性を測定した。図7に示すように、両細胞のメディウム中に、GPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を上昇させる活性が存在することが明らかになった。
hGX−sPLA2−His6−HEK細胞およびmGX−sPLA2−His6−HEK細胞を、DMEM(10% FBS、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)10mlを用いて、コラーゲンコート10cm径シャーレ(旭テクノグラス社)に培養した。コンフルエントに達してから2日培養後、培地を回収し、実施例7に示す方法にしたがってGPR120−SE302細胞のPLAP活性を測定した。図8に示すように、両細胞のメディウム中に、GPR120−SE302におけるPLAP活性を上昇させる活性が存在することが明らかになった。
C末Hisタグ付きGX−sPLA2の遺伝子導入用バキュロウイルスは、BAC−TO−BAC Baculovirus Expression Systems (インビトロジェン株式会社)を用いて、キットに含まれるマニュアルに従って作製した。具体的には、実施例14で得たhGX−sPLA2−His6―pCR2.1、および、mGX−sPLA2−His6−pCR2.1を、制限酵素XbaIおよびHindIIIで切断し、同じくXbaIおよびHindIIで切断しておいたpFASTBAC1プラスミドに挿入することにより、それぞれhGX−sPLA2−His6−pFASTBACおよび、mGX−sPLA2−His6−pFASTBACを得た。これらプラスミドを、キット付属のDH10BAC コンピテントセルにトランスポジションすることにより、バクミドDNAを回収した。SF900 II SFM(インビトロジェン社)で培養したSf9細胞に、バクミドDNAをセルフェクチン(インビトロジェン社)によりトランスフェクションし、3日後に培養上清を回収することにより、ヒトおよびマウスC末Hisタグ付きGX−sPLA2遺伝子導入用バキュロウイルスを得た。
実施例19で得たヒトおよびマウスC末Hisタグ付きGX−sPLA2遺伝子導入用バキュロウイルスを、それぞれSf9細胞に感染させ、三角フラスコ中で振とう培養を行った。60時間後に培養液を遠心することにより培養上清を得た。培養上清にFinal 10 mM イミダゾール(シグマ社)を加え、 Ni Sepharose 6 Fast Flow カラム(アマシャムバイオサイエンス社)に付した。カラムの5倍量のBinding Buffer(10mMイミダゾール、500mM NaCl、20mM NaH2PO4、pH7.4)で洗浄した後、Elution Buffer(500mM イミダゾール、500mM NaCl、20mM NaH2PO4、50mM Tris−HCl、pH7.4)で溶出した。溶出液を0.1% TFAで5倍希釈した後、HF MEGA BOND ELUTE C18カラム(バリアン社)に付した。カラムを、0.1% TFAを含む50% アセトニトリルで溶出し、凍結乾燥により、ヒトおよびマウスの精製C末Hisタグ付きGX−sPLA2(それぞれ、hGX−sPLA2−His、および、mGX−sPLA2−His)を得た。
実施例20で得たhGX−sPLA2−HisおよびmGX−sPLA2−Hisの凍結乾燥粉末を、適量の0.1% TFA溶液に溶かした。これらを用いて、実施例7記載の方法によりmGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図9に示すように、hGX−sPLA2−His(図9−A)および、mGX−sPLA2−His(図9−B)の濃度に応じて、mGPR−SE302細胞おけるPLAP活性の上昇が観察され、GPR120がレコンビナントのGX−sPLA2によっても活性化されることが明らかになった。
ブタ膵臓由来sPLA2(Phospholipase A2from porcine pancreas (ammonium sulfate suspension (using soybean L-α-phosphatidylcholine)600ユニット/mg protein,pH8.0,37℃))を遠心後、ペレットを水に溶かし、実施例7に記載する方法にしたがってPLAP活性を測定した。図10に示すように、GPR120−SE302細胞(図10−A)、および、mGPR120−SE302細胞(図10−B)において濃度依存的なPLAP活性の上昇が検出された。このブタ膵臓由来sPLA2は、主にGroupIB sPLA2(GIB−sPLA2)(Swiss Protアクセッション番号P00592)であることが確認されていることから(Ta-min Chang et al., J. Biol. Chem. 274(16):10758-10764, 1999)、GPR120は、GX−sPLA2のみでなくGIB−sPLA2によっても活性化されることが示された。
ハチ毒PLA2(bvPLA2)(Phospholipase A2 from honey bee venom (salt-free, lyophilized powder, 600‐1800ユニット/mg protein))を水に溶かし、実施例7に記載する方法にしたがってGPR120−SE302細胞、および、mGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図11に示すように、GPR120−SE302細胞(図11−A)、および、mGPR120−SE302(図11−B)において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出された。このことから、GX−sPLA2やGIB−sPLA2などの分泌型PLA2のみではなく、ハチ毒由来のPLA2によってもGPR120が活性化されることが示された。
ヘビ毒PLA2(snake venom PLA2)(Phospholipase A2 from Naja mossambica mossambica、シグマ社)を水に溶かし、実施例7に記載する方法に従ってGPR120−SE302細胞、および、mGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図12に示すように、GPR120−SE302細胞(図12A)、および、mGPR120−SE302(図12B)において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出された。このことから、ヘビ毒由来のPLA2によってもGPR120が活性化されることが示された。
実施例13で得たhGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として、配列番号31に示す5’側プライマー、および、3’側プライマー(5’−GATATCTCACTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCGTCACACTTGGGCGA−3’)(配列番号42)を用いてPCRを行うことにより、C末FLAGタグ付きヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2−FLAG)(配列番号43)を得た。同様に、実施例13で得たmGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として、配列番号33に示す5’側プライマー、および、3’側プライマー(5’−GATATCTCACTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCATTGCACTTGGGAGA−3’)(配列番号44)のプライマーを用いてPCRを行うことにより、C末FLAGタグ付きマウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2−FLAG)を得た(配列番号45)。得られたPCR産物を再びpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入し、それぞれhGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1およびmGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を得た。
実施例25で得たhGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を制限酵素EcoRVで消化し、切り出したフラグメントをpYNGベクター(片倉工業株式会社製)のEcoRVサイトにサブクローニングした。タンパク質産生サービス(SuperwormR system)(片倉工業株式会社製)に受託し、カイコサナギ抽出液を得た。カイコサナギ抽出液をANTI-FLAGR M2 Agarose(シグマ社)に付し、付属のマニュアルに従い精製を行った。sPLA2酵素活性は、sPLA2 Assay Kit (Cayman Chemical 社)を用いて付属のマニュアルに従い行った。活性分画をVYDAC(商標) Protein & Peptide C18カラム (#218TP54、VYDAC社)に付した後、0.1% TFAを含む24〜42%アセトニトリルの濃度勾配により溶出した。得られたピークのうち、もっともsPLA2の比活性の高かったシングルピークをレコンビナントhGX−sPLA2として、PLAPアッセイに用いた。なお、レコンビナントの蛋白濃度は、Dcプロテインアッセイ(BioRad社)を用い測定した。得られたレコンビナントhGX−sPLA2を0.1%TFAに溶かし、実施例7に記載する方法にしたがってGPR120−SE302細胞、および、mGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図13に示すように、GPR120−SE302細胞(図13A)、および、mGPR120−SE302(図13B)において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出された。このことから、C末FLAGタグ付きレコンビナントhGX−sPLA2によってもGPR120が活性化されることが示された。
実施例25で得たmGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を制限酵素BamHI、XbaIで消化し、切り出したフラグメントをpFastBac(インビトロジェン社)のBamHI、XbaIサイトにサブクローニングし、mGX−sPLA2−FLAG−pFAST Bacを得た。Bac-to-Bac(商標) Baculovirus Expression System(インビトロジェン社)を用いてバキュロウイルスを得た後、昆虫細胞Sf−9感染させた。Sf−9細胞は、SF−900II培地(インビトロジェン社)(ペニシリン/ストレプトマイシン、2.5% FCS)で培養した。バキュロウイルス感染Sf−9細胞培養上清をANTI-FLAGR M2 Agarose(シグマ社)に付し、付属のマニュアルに従い精製を行った。sPLA2酵素活性は、sPLA2 Assay Kit (Cayman Chemical 社)を用いて付属のマニュアルに従い行った。活性分画をVYDAC(商標) Protein & Peptide C18カラム (#218TP54、VYDAC社)に付した後、0.1% TFAを含む24〜54%アセトニトリルの濃度勾配により溶出した。得られたピークのうち、もっとも比活性の高かったシングルピークをレコンビナントmGX−sPLA2として、PLAPアッセイに用いた。なお、レコンビナントの蛋白濃度は、Dcプロテインアッセイ(BioRad社)を用い測定した。得られたレコンビナントmGX−sPLA2を0.05%TFA、1% BSA (Fatty Acid Free、シグマ社)に溶かし、実施例7に記載する方法にしたがってGPR120−SE302細胞、および、mGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図14に示すように、GPR120−SE302細胞(図14A)、および、mGPR120−SE302(図14B)において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出された。このことから、C末FLAGタグ付きmGX−sPLA2によってもGPR120が活性化されることが示された。
8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)、または、8週令の雄性BALB/cAnNcrlcrljマウス(日本チャールズリバー株式会社)をネンブタール麻酔下、気道よりカテーテルを挿入し、0.8mLのPBS(−)(Phosphate Buffered Saline、シグマ社、4℃)で4回、肺胞洗浄(Broncho-Alveolar Lavage:BAL)を行った。得られた肺胞洗浄液(Broncho-Alveolar Lavage Fluid:BALF)のうち、500μlをサイトスピン(サーモエレクトロン社)で350rpm、5分間遠心することにより細胞集積し、ディフ・クイック(国際試薬株式会社)により、染色を行った。図15Aに示すように、肺胞洗浄液中に含まれる細胞のほとんどは肺胞マクロファージであることが確認できた。残りのBALFを450xgで10分間遠心することにより細胞集積を行い、RNeasy Mini kit(QIAGEN社)を用い、実施例8に記載の方法に従ってtotal RNAを得た。また、肺からも同様にtotal RNAを得た。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。図15に示すように、C57BL/6(図15B)、および、マウスBALB/c(図15C)において、肺胞マクロファージにおいても肺と同程度のマウスGPR120 mRNAの発現が確認された。
8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)を用いた。肺胞マクロファージは、実施例28記載の方法に従い採取した。腹腔マクロファージは、腹内を2.5mlのPBS(−)で2回洗うことにより回収した。また、3%チオグリコレート (シグマ社製) 2mlをマウス腹腔内に投与し、4日後に腹内を2.5mlのPBS(−)で2回洗うことにより、チオグリコレート投与群腹腔マクロファージを回収した。骨髄は大腿骨から採取した。骨髄由来マクロファージは、骨髄をBD Pharm Lyse(商標) Lysing Buffer(ベクトンディッキンソン社)を用いて5分間赤血球処理した後、RPMI1640(10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、50μM メルカプトエタノール)、および、最終濃度50ng/mlのレコンビナントマウスM−CSF(R&D Systems社)にサスペンドし、75cm2フラスコに播種し5日間培養することにより得た。各サンプルからのTotal RNAは、TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を用いてマニュアルに従って調製した。得られたtotal RNAをDNA−free(商標)(Ambion社)を用いて、マニュアルに従ってDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。
肺胞マクロファージの初代培養は、Akagawa K. らの方法に従い行った (Akagawa K. et al., The Journal of Immunology, vol.141, 3383-3390, 1988)。詳しくは、8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)をネンブタール麻酔後、右心室よりPBS(−)、10U/mlヘパリンを灌流し脱血を行った。肺を摘出後、PBS(−)/1mM EDTA中で1−2mm角にハサミで刻み、70μmセルストレイナーでろ過しフロースルーを肺胞マクロファージとして回収した。1,500rpm、5分間遠心により回収された細胞を、BD Pharm Lyse(商標)Lysing Buffer(ベクトンディッキンソン社)を用いて5分間、赤血球処理を行った。再び1,500rpmで5分間遠心後、細胞をRPMI1640培地(ペニシリン/ストレプトマイシン、10%FBS、50μM β−メルカプトエタノール)にサスペンドし、24穴シャーレに播種した。最終濃度20ng/mlのレコンビナントマウスGM−CSF(R&D Systems社)を加え、2−3日おきに培地交換を行い、6日目間培養した。図17A、図17Bには、それぞれ播種直後、および、6日目の肺胞マクロファージの顕微鏡写真を示した。6日後に細胞を回収し、TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を用いてtotal RNAを調製した後、DNA−free(商標)(Ambion社)を用いてDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。図17Cに示すように、GPR120の発現量は、初代培養肺胞マクロファージにおいても、採取直後の肺胞マクロファージと同程度、維持されていることが示された。
8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)より4種類の脂肪組織(皮下脂肪、副睾丸脂肪、腸間膜脂肪、および、褐色脂肪)を摘出し、QIAzol(商標) Lysis Reagent(QIAGEN社)中でホモジナイズし、クロロホルム抽出を行った後、RNeasy(QIAGEN社)を用いてマニュアルに従ってtotal RNA抽出を行った。得られたtotal RNAをDNA−free(商標)(Ambion社)を用いて、マニュアルに従ってDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。図18に示すように、いずれの脂肪組織においてもGPR120の発現が観察されたが、褐色脂肪組織においては特に高い発現が観察された。
3−4週齢の雄性Balb/cマウス(チャールズリバー社より入手)の鼠蹊部から皮下脂肪を摘出し、天井培養法(Sugihara H, et al. Differentiation 1986, 31:42-49.)により脂肪細胞(21Sc細胞と命名)を単離した。細胞は継代培養をおこなった後に凍結ストックを作製した。凍結ストックより21Sc細胞を起こし、1:4の希釈率で細胞培養用6穴プレートに播種後、通常培地(DMEM−4.5g/L glucose、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン)で4日間培養しコンフルエントにした。培地を誘導培地(通常培地に、0.5mM IBMX, 0.25uMデキサメタゾン、10μg/ml インスリン、0.2mMインドメタシンを添加したもの)に交換し2日間培養した。ついで、成熟培地(通常培地に5μg/ml インスリンを添加したもの)に交換し1−2日おきに成熟培地で培地交換を行った。分化誘導前、および誘導培地添加から6、13、20日後に、TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を用いてマニュアルに従ってtotal RNAを調製した。得られたtotal RNAをDNA−free(商標)(Ambion社)を用いて、マニュアルに従ってDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。各培養日数におけるGPR120のmRNA発現量を図19に示した。分化誘導前と比べて、分化誘導後の細胞では著しいGPR120 RNA量(約200倍程度)の増加が観察された。
8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)の大腿骨より骨髄を採取し、Lutz M.B. らの方法に従って骨髄由来樹状細胞を得た(Lutz M.B. ら、Journal of Immunological Methods 233, 77-92, 1999)。具体的には、骨髄をBD Pharm Lyse(商標) Lysing Buffer(ベクトンディッキンソン)を用いて5分間赤血球処理した後、RPMI1640(10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、50μM メルカプトエタノール)、および、最終濃度20ng/mlのレコンビナントマウスGM−CSF(R&D Systems社)にサスペンドし、75cm2フラスコに播種した。2〜3日おきに培地交換を行い(RPMI1640、ペニシリン/ストレプトマイシン、50μMメルカプトエタノール、20ng/ml レコンビナントマウスGM−CSF)、11日間培養することにより骨髄由来樹状細胞を得た。一部の樹状細胞に、11日目に1μg/ml LPS(シグマ社)を加え、24時間培養し、活性化した骨髄由来樹状細胞を得た。各サンプルからのTotal RNAは、TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を用いてマニュアルに従って調製した。得られたtotal RNAをDNA−free(商標)(Ambion社)を用いて、マニュアルに従ってDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。図20に示すように、骨髄由来樹状細胞にGPR120が発現していることが見出された。また、1μg/ml LPSで24時間刺激後は、刺激前と比較してGPR120の発現量が5分の1程度であった。
Claims (17)
- 被検物質が、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質であるかをスクリーニングする方法であって、
被検物質と、
GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、
ホスホリパーゼまたはその塩
を用いることを特徴とする、前記方法。 - ホスホリパーゼが、ホスホリパーゼA1、またはホスホリパーゼA2である、請求項1に記載の方法。
- ホスホリパーゼが、ホスホリパーゼA2である、請求項1に記載の方法。
- ホスホリパーゼが、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIA分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIC分泌型ホスホリパーゼA2、グループIID分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIE分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIF分泌型ホスホリパーゼA2、グループIII分泌型ホスホリパーゼA2、グループV分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、グループXIIA分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- ホスホリパーゼが、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4に記載の方法。
- 被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、細胞刺激活性を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とを比較する工程を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合との間で、結果に相違が出た場合に、その物質をGPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質であると決定する工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
- 被検物質が細胞刺激活性を上昇させる場合に、その物質をGPR120アゴニストと決定する工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
- 被検物質が細胞刺激活性を低下させる場合に、その物質をGPR120アンタゴニストと決定する工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
- 細胞刺激活性の測定を、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化を検出するレポーターアッセイ系により測定するか、または、細胞内カルシウムイオン遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌活性、コレシストキニン(CCK)分泌活性、および、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)分泌活性からなる群より選択されるパラメータを測定することによって行う、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
- GPR120が、下記(a)〜(d)からなる群より選択されるポリペプチドからなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、
(c) 配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(d) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、および、
(e) 配列番号1で表される塩基配列に対して70%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。 - GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、
ホスホリパーゼまたはその塩と
を少なくとも含んでなる、スクリーニング用キット。 - GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするためのものである、請求項12に記載のキット。
- GPR120が、下記(a)〜(d)からなる群より選択されるポリペプチドからなる、請求項13に記載のキット:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、
(c) 配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド、
(d) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、および、
(e) 配列番号1で表される塩基配列に対して70%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。 - ホスホリパーゼが、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIA分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIC分泌型ホスホリパーゼA2、グループIID分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIE分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIF分泌型ホスホリパーゼA2、グループIII分泌型ホスホリパーゼA2、グループV分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、グループXIIA分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項13または14に記載のキット。
- ホスホリパーゼが、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項13または14に記載のキット。
- GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするための、
GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、
ホスホリパーゼまたはその塩
の使用。
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