JPWO2007026874A1 - Gpr120とホスホリパーゼとを用いる疾患に有用な物質のスクリーニング方法 - Google Patents

Gpr120とホスホリパーゼとを用いる疾患に有用な物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

本発明によれば、被検物質が、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質であるかをスクリーニングする方法であって、被検物質とGPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩を用いることを特徴とする方法が提供される。本発明によるスクリーニング方法によれば、CCKやGLP−1のような消化管ホルモンの分泌に関与する物質をスクリーニングすることができる。

Description

関連出願の参照
本願は、先行する日本国特許出願である、特願2005−254643号(出願日:2005年9月2日)に基づくものであって、それらの優先権の利益を主張するものであり、それらの開示内容全体は参照することによりここに組み込まれる。
発明の背景
発明の分野
本発明は、Gタンパク質共役型受容体タンパク質であるGPR120と、ホスホリパーゼまたはその塩との相互作用を変化させる物質(詳しくは、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質)をスクリーニングする方法、およびそのようなスクリーニングを実施するためのスクリーニング用キットに関する。
背景技術
多くのホルモンや神経伝達物質などの生理活性物質は、細胞膜に存在する特異的なレセプター蛋白質を介して、生体の機能を調節している。これらのレセプターの多くは、細胞膜を7回貫通する構造を有しており、細胞内で三量体のGタンパク質 (guanine nucleotide-binding protein) と共役していることから、Gタンパク質共役型受容体 (GPCR: G-protein coupled receptor) と呼ばれている。
GPCRは、各種の細胞、臓器、および器官の機能細胞表面に存在し、それらの機能を調節する分子との結合を介してシグナルを細胞内に伝達して、細胞の賦活化や抑制化をする。このため、GPCRは各種臓器および器官において重要な役割を担っている。このような生理活性物質とGPCRとの関係を明らかにすることは、生体の機能を解明し、それと密接に関連した医薬品開発をする上で重要である。医薬品を開発するためには、GPCRのアゴニストやアンタゴニストを効率良くスクリーニングして、生体内で発現しているレセプタータンパク質の遺伝子の機能を解析し、それらを適当な発現系で発現させる必要がある。
近年、ESTデータベース等のcDNA配列のランダム解析や、ゲノムDNAの網羅的解析により、多くの新規遺伝子の存在が明らかとなってきている。GPCRは、7個の膜貫通領域を有し、さらにそれ以外にも多くの共通配列を有している。このため、このような多くの新規遺伝子の中から新規GPCRが見出されている。このようにして見出された新規GPCRは通常そのリガンドは未同定である。リガンドが未同定のGPCR、すなわちオーファンGPCR、に対してリガンドを見出したり、その機能を解析したりすることは、新たな治療薬の開発につながる可能性があり、重要視されている。
そしてほとんどの場合、オーファンGPCRのリガンドの予測は困難である。GPCRのリガンドは、生体アミン、アミノ酸、核酸とその代謝物、ペプチド、タンパク質(ホルモン、ケモカイン)、脂質など多様である。リガンドを抽出物などから精製を行う場合、それぞれの物質の種類に適した抽出方法が必要となる。また、細胞に発現させたオーファンGPCRが、リガンドに応答した後にいかなる2次情報伝達系を作動させるかは一般的に不明であり、様々な系について検討する必要がある。リガンドの存在する組織の予想は容易でないため、種々の組織抽出物を用意しなければならない。このように、オーファンGPCRのリガンド探索は多くの困難さを伴う。新たなGPCRのリガンドを見出して、該リガンドを直接利用するか、または該リガンドを用いた医薬のスクリーニング系を利用することによって、今までにない新規な作用機序を有する医薬の開発が期待できる。
GPR120は、GPCRの一つとして知られている(WO00/00611、およびWO00/50596)。GPR120のリガンドは完全には解明されているとは言えないが、リガンドの一つとして脂肪酸が報告されている(WO2004/065960、および(特開2005−15358号公報)。
GPR120は、腸内分泌細胞株STC−1細胞からのコレシストキニン(CCK)の分泌促進作用との関連が知られており、GPR120のアゴニスト、アンタゴニストは、過食症、拒食症に代表される摂食異常およびそれに伴う大腸疾患等の治療への応用が期待される(特開2005−15358号公報)。また、GPR120は、腸内分泌細胞株STC−1細胞から、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)の分泌促進作用を有することが報告されており、GPR120に作用する物質は、糖尿病の治療への応用が期待される(Akira Hirasawa et al., Nature Medicine, 11, 90-94, 2004)。さらに、GPR120は下垂体に発現しており、ストレス調節に関与している可能性も示唆されている(WO2004/065960)。
上述のとおり、GPR120のリガンドの一つとして脂肪酸が報告されているが、脂肪酸は、水系の溶媒への溶解度が低いため、リガンド溶液の調製が困難となることが多い。また脂肪酸は、スクリーニングに用いるプラスチックやガラスへの吸着が大きく、さらに、不飽和脂肪酸は酸化され易い。さらに、脂肪酸は、アルブミンとの結合率が高いことが知られている。脂肪酸は、生理的には、遊離脂肪酸として存在するのはごくわずか(1%程度)であり、ほとんどは血中のアルブミンに結合した状態で存在する。このため、脂肪酸を用いたGPR120のスクリーングにおいて、実際に、牛血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)による、脂肪酸とレセプターとの反応性の阻害が観察されており、スクリーニングを血清やアルブミン非存在下で行う必要性があることが報告されている(例えば、Akira Hirasawa et al., Nature Medicine, 11, 90-94, 2004)。一方、一般的に細胞やタンパク質を用いた医薬品のスクリーニングは、より生理的条件に近いことが求められるため、血清またはアルブミン(BSA等)の存在下で行われることが多い。血清非存在下でスクリーニングを行うと、血清非存在の条件では細胞が損傷を受けるため、長時間の培養は通常困難である。このため、血清入り培地等で細胞を予め培養した後、スクリーニングをする時に血清除去培地と置換することが必要となるが、作業が繁雑になる。
このため、脂肪酸を直接使用しない、GPR120のアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング系の開発が望まれている。
ホスホリパーゼは、グリセロリン脂質のエステル結合を加水分解する酵素群の総称であり、その加水分解するエステル結合の位置により、ホスホリパーゼA1、A2、B、CおよびD等に分類される。ホスホリパーゼA2(PLA2)はさらに、分泌型(sPLA2)、細胞質型(cPLA2)、およびカルシウム非依存型(iPLA2)に分類でき、このうちsPLA2は10種類が知られている。
発明の概要
本発明者らは今般、驚くべきことに、ホスホリパーゼ、特に分泌型のホスホリパーゼA2(sPLA2)、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2が、Gタンパク質であるGPR120を介する細胞刺激活性を活性化すること見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
よって本発明は、GPR120とホスホリパーゼとの相互作用を変化させる物質、より詳しくはGPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質、をスクリーニングする方法、およびそのような方法に使用されるキット等を提供することを目的とする。
本発明によれば、被検物質が、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質であるかをスクリーニングする方法であって、被検物質と、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩を用いることを特徴とする方法が提供される。ここでいう「生体膜」には、細胞膜や細胞を構成するオルガネラ等の膜、脂質二重膜などを含む。また、リポソームなどの再構成膜も含む。本発明において、好ましくは、GPR120を含む生体膜は、GPR120を含む細胞膜と言うことができる。
本発明の一つの態様によれば、GPR120、それを含む細胞膜、またはそれらを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩と、を用いることを特徴とする、GPR120とホスホリパーゼまたはその塩との相互作用を変化させる物質のスクリーニング方法が提供される。このとき好ましくは、スクリーニングされる物質はGPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質である。
本発明の好ましい態様によれば、この方法は、被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、細胞刺激活性を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とを比較する工程を含んでなる。
さらに本発明によれば、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを少なくとも含んでなる、スクリーニング用キットが提供される。また本発明によれば、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするための、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩の使用が提供される。
本発明によるスクリーニング方法によれば、CCKやGLP−1のような消化管ホルモンの分泌に関与する物質をスクリーニングすることができる。このため、本発明によれば、糖尿病、糖尿病網膜症若しくは糖尿病腎症等の糖尿病合併症、高脂血症、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、下垂体機能障害、精神障害、免疫系疾患、炎症性疾患、マクロファージや樹状細胞が関与する疾患、癌、および、過食症、拒食症に代表される摂食障害、さらにはそれに伴う大腸疾患等の予防または治療に有用な物質をスクリーニングすることができる。
pBabeCL(GPR120)IHの構築図を示す。 CRE4VIP/pBluescriptIISK(+)の構築図を示す。 pBabeCLXの構築図を示す。 pBabeCLcre4vPdNMの構築図を示す。 GPR120のマウスにおける臓器発現分布を示す。 Vydac218TP C18 reversed phase カラムで分画したラット精巣抽出物のHPLCのUV吸収と、各分画のGPR120特異的PLAP促進活性を示す。活性は矢印に示すピークに回収された。 SunFire C18カラムを用いたラット精巣抽出物中に存在するGPR120を特異的に活性化するタンパクの最終段階の精製におけるHPLCのUV吸収と、矢印で示したピークのPLAP活性を示す。コントロールびGPR120−SE302細胞を比較した。 GX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞の培養メディウムを用いて、GPR120−SE302細胞、およびコントロール細胞におけるPLAP活性を測定した結果を示す。 GX−sPLA2−His6−HEK細胞の培養メディウムを用いて、GPR120−SE302細胞、およびコントロール細胞におけるPLAP活性を測定した結果を示す。 ニッケルカラムで精製したC末Hisタグ付きGX−sPLA2を用いた、mGPR120−SE302細胞、および、コントロール細胞におけるPLAP活性を示す。この図9AではhGX−sPLA2−Hisを用いた場合の結果を示す。 ニッケルカラムで精製したC末Hisタグ付きGX−sPLA2を用いた、mGPR120−SE302細胞、および、コントロール細胞におけるPLAP活性を示す。この図9BではmGX−sPLA2−Hisを用いた場合を示す。 市販ブタ膵臓由来sPLA2を用いたGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 市販ブタ膵臓由来sPLA2を用いたmGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 市販ハチ毒PLA2を用いたGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 市販ハチ毒PLA2を用いたmGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 市販ヘビ毒由来PLA2を用いたGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 市販ヘビ毒由来PLA2を用いたmGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 C末FLAGタグ付きレコンビナントhGX−sPLA2を用いたGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 C末FLAGタグ付きレコンビナントhGX−sPLA2を用いたmGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 C末FLAGタグ付きレコンビナントmGX−sPLA2を用いたGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 C末FLAGタグ付きレコンビナントmGX−sPLA2を用いたmGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を、コントロール細胞の場合と比較した結果を示す。 ディフクイックによる肺胞マクロファージの染色像を示す。 C57BL/6より採取した肺胞マクロファージ、および肺におけるmGPR120のRNA相対発現量を示す。 BALB/cより採取した肺胞マクロファージ、および肺におけるmGPR120のRNA相対発現量を示す。 SDラットより採取した肺胞マクロファージ、および肺におけるratGPR120のRNA相対発現量を示す。 種々マクロファージにおけるmGPR120のRNA相対発現量を示す。 播種直後の肺胞マクロファージの顕微鏡写真である。 播種後6日目の肺胞マクロファージの顕微鏡写真である。 採取直後の肺胞マクロファージ、および、初代培養6日目の肺胞マクロファージにおけるmGPR120のmRNA相対発現量を示す。 マウス脂肪組織におけるmGPR120のRNA相対発現量を示す。 マウス由来脂肪細胞におけるmGPR120のRNA相対発現量を示す。 マウス骨髄由来樹状細胞におけるmGPR120のRNA相対発現量を示す。
発明の具体的説明
ホスホリパーゼ
本発明のスクリーニング方法には、ホスホリパーゼを使用する。ホスホリパーゼとしては、ホスホリパーゼA1、A2、B、CおよびDが挙げられるが、本発明においては、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2が好ましく、ホスホリパーゼA2がより好ましい。ホスホリパーゼA2は、性質により、分泌型(sPLA2)、細胞質型(cPLA2)、およびカルシウム非依存型(iPLA2)に分類できるが、本発明においては、分泌型が好ましい。また、ハチ毒およびヘビ毒のホスホリパーゼA2を用いることもできる。本発明によれば、ホスホリパーゼは、分泌型のホスホリパーゼA2およびハチ毒ホスホリパーゼA2がより好ましいものとして挙げられる。
分泌型ホスホリパーゼA2(sPLA2)は、IB、IIA、IIC、IID、IIE、IIF、III、V、X、XIIAの10種類のグループに分類することができ、本発明においては、好ましくは、グループIB、IIA、V、Xであり、より好ましくは、グループIB、Xであり、さらに好ましくはグループXである。
ホスホリパーゼは、公知の酵素であるため、当業者であれば容易に入手することが出来る。例えば、所望するホスホリパーゼを含む生物から、常法にしたがって、抽出または精製の工程を経て調製することができる。また、ホスホリパーゼは、その市販品を購入して、使用することができる。さらにこれらのシグナル配列、プレプロ配列、およびマチュア体の配列は、これらのデータベースの配列や公知文献から容易に知ることができるのでそれに従って、所望のホスホリパーゼを発現し得るポリヌクレオチドを入手し、これを遺伝子工学的手段により発現可能なように組み込んだ細胞等を調製し、これを利用しても良い。
ホスホリパーゼは、そのアミノ酸配列およびそれをコードするDNAが報告されている。例えば、分泌型ホスホリパーゼA2の場合、Swiss Protアクセッション番号:P04054(ヒト型グループIB)、Q9Z0Y2(マウス型グループIB)、P04055(ラット型グループIB)、P00592(ブタ型グループIB)、P14555(ヒト型グループIIA)、P31482(マウス型グループIIA)、P48076(マウス型グループIIC)、Q9UNK4(ヒト型グループIID)、Q9NZK7(ヒト型グループIIE)、Q9BZM2(ヒト型グループIIF)、Q9NZ20(ヒト型グループIII)、P39877(ヒト型グループV)、P97391(マウス型グループV)、O15496(ヒト型グループX)、Q9QXX3(マウス型グループGX)、Q9QZT3(ラット型グループGX)、および、GenBankアクセッション番号:NM_030821(ヒト型グループIIA)などが報告されている。また、ハチ毒ホスホリパーゼA2の場合、Swiss Protアクセッション番号:P00630などが報告されている。さらに、ヘビ毒ホスホリパーゼA2の場合、Swiss Protアクセッション番号:SP62022、P00602などが報告されている。本発明において用いるホスホリパーゼは、このような公知の情報に基づいてそのアミノ酸配列またはそれをコードするDNAを具体的に特定することができる。
また、ホスホリパーゼの中には、前駆体ホスホリパーゼからプロセシングを受けて活性型となるものが存在する(例えば、分泌型ホスホリパーゼA2や、ハチ毒ホスホリパーゼA2など)。また、前駆体からシグナル配列がとれたプレプロ体から、さらに、プレプロ配列がとれて活性体となるものも存在する(例えばグループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2など)。本発明において用いるホスホリパーゼは、前駆体ホスホリパーゼ、プレプロホスホリパーゼ、および活性型ホスホリパーゼのいずれであってもよいが、活性型ホスホリパーゼがより好ましい。なお、実験的には、活性型ホスホリパーゼを単にホスホリパーゼということもある。これらの本発明において用いる前駆体、プレプロ体および活性型ホスホリパーゼは、公知の情報に基づいてそのアミノ酸配列またはそれをコードするDNAを具体的に特定することができる。
具体的には、本発明におけるホスホリパーゼは下記(A)〜(E)からなる群より選択されるポリペプチドからなる:
(A) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)を含む、ポリペプチド;
(B) 前記(A)のアミノ酸配列において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;
(C) 前記(A)のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(D) 前記(A)のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;および、
(E) 前記(A)のアミノ酸配列をコードする塩基配列に対して80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上)の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
本発明に使用するホスホリパーゼとしては、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド」が好ましい。なお、前記ポリペプチドには、ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。本発明において用いるこれらのホスホリパーゼは、公知の情報に基づいてそのアミノ酸配列またはそれをコードするDNAを具体的に特定することができる。
なお前記「ジスルフィド結合をしたもの」とは、ホスホリパーゼの分子内において、特定箇所アミノ酸と、別の特定箇所のアミノ酸とが−S−S−結合により架橋されている状態をいう。
ここで、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列」とは前記に列記したアクセッション番号により所定の公知のデータベースより特定されるアミノ酸配列のことであり、好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列、より好ましくは、配列番号35で表されるアミノ酸配列である。
ここで、ポリペプチドが「ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する」とは、そのポリペプチドが、GPR120に直接的または間接的に活性化作用を有し、GPR120を介したシグナル情報伝達作用、より詳しくは、GPR120発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出、細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosおよびc−junの誘導活性、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌活性、コレシストキニン(CCK)分泌活性、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)分泌活性など)を有することを意味する。また実質的に同じとは、活性が性質的に同質であることを意味する。すなわち、「ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する」ためには、前記活性が同等(例えば、約0.01〜100倍、好ましくは0.05〜20倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましい。これらの活性については、慣用の方法にしたがってと測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。
本発明の好ましい態様によれば、前記(B)のポリペプチド(以下において「改変ポリペプチド」と言うことがある)は、そのアミノ酸配列が、前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)を含むポリペプチドにおいて1または複数個(好ましくは1または数個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であって、しかもホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドであることができる。
本願明細書において「保存的置換」とは、ペプチドの活性を実質的に改変しないように、1または複数個(好ましくは数個)のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。なお、前記改変ポリペプチドには、改変ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。したがって、これらの条件を満たす限り、前記改変ポリペプチドの起源は、ヒトに限定されない。
この改変ポリペプチドには、さらにそのN末端(アミノ末端)およびC末端(カルボキシル末端)が改変または修飾されているものも包含されてよい。例えば、C末端のカルボキシルが、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)とされていてもよい。なおここで前記Rは、例えば直鎖、分岐鎖もしくは環状のC1−6アルキル基、C6−12アリール基等が挙げられる。またN末端のアミノ基が慣用の保護基により保護されたもの等も改変ポリペプチドに包含され得る。
前記(B)のポリペプチドの例としては、ヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]由来のホスホリパーゼもしくはその変異体が挙げられる。具体的には例えば、配列番号23、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列(ラット由来、マウス由来、ブタ由来、ハチ由来(セイヨウミツバチ由来))からなるポリペプチドが挙げられる。
前記(C)のポリペプチド(以下において「相同ポリペプチド」と言うことがある)は、ホスホリパーゼのアミノ酸配列に関して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、ホスホリパーゼに関して、同一性が85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であって、しかもホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドである。
本願明細書において、「同一性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えば全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出することができる。なお、前記相同ポリペプチドには、相同ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。したがって、これらの条件を満たす限り、前記相同ポリペプチドの起源は、ヒトに限定されない。例えばヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]由来のホスホリパーゼもしくはその変異体が含まれる。
具体的には、前記(C)の相同ポリペプチドとしては、例えば、配列番号23、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列(ラット由来、マウス由来、ブタ由来、ハチ由来)からなるポリペプチドが挙げられる。
なお、本明細書において、変異体とは、「variation」、すなわち、同一種内の同一ポリペプチドにみられる個体差、あるいは、数種間の相同ポリペプチドにみられる差異を意味する。
さらに、本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)の部分ポリペプチドも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する限り使用することができる。この場合、部分ポリヌクレオチドを構成するアミノ酸数は、ホスホリパーゼのアミノ酸数の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%である。
ホスホリパーゼの調製方法
これら本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、その改変ポリペプチド、その相同ポリペプチド)およびその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法、例えば遺伝子工学的手法、合成法などによって得ることができる。具体的には、遺伝子工学的手法の場合、ホスホリパーゼまたはその部分ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することによって調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
以下、本発明に使用するホスホリパーゼの調製方法のうち、遺伝子工学的手法について詳述するが、その部分ポリペプチドについても、後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されない。
ホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチド
本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、前記ホスホリパーゼ、前記改変ポリペプチド、前記相同ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本願明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、具体的には下記の(I)〜(VI)からなる群より選択されるものが挙げられる:
(I) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40で表される塩基配列)からなる、ポリヌクレオチド;
(II) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(III) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)を含み、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(IV) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(V) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40で表される塩基配列)からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;および
(VI) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40で表される塩基配列)に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
ここで、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列」とは前記に列記したアクセッション番号により所定の公知のデータベースより特定される塩基配列(または、それより特定されるアミノ酸配列をコードしてなる塩基配列)のことであり、好ましくは配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40表される塩基配列、より好ましくは、配列番号25で表される塩基酸配列である。
本発明の一つの態様によれば、本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。
アミノ酸の付加、欠失および/または置換による変異体は、例えばそれをコードするDNAに例えば、周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No.20, p.6487-6500, 1982参照)を施すことにより作成できる。本明細書において「1または複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により付加、欠失、挿入および/または置換できる程度の数のアミノ酸を意味する。
部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレートし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成せしめる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養しDNAを回収する。
尚、ホスホリパーゼの生物活性ペプチドのアミノ酸配列にその活性を喪失せしめない1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法及び遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、付加、挿入および/または置換し、次いで連結する方法もある。
本明細書において、「欠失」には、アミノ酸配列の端からアミノ酸残基を欠失したものおよびアミノ酸は配列の途中のアミノ酸残基が欠失したものも含まれる。
「付加」には、アミノ酸配列の端にアミノ酸残基を付加したものおよびアミノ酸残基の途中にアミノ酸残基を欠失したものも含まれる。
1つのアミノ酸をコードするコドンは複数存在する。従って、前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号23、配列番号35、配列番号36、配列番号39、または配列番号41で表されるアミノ酸配列)またはその酵素活性部分をコードするいずれのDNAも本発明の範囲に含まれる。
本発明の別の一つの態様によれば、本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40で表される塩基配列)からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。具体的には配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40表される塩基配列(マウス由来、ラット由来、ブタ由来およびハチ由来)からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
本願明細書において、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、具体的には、FASTA、BLAST、Smith−Waterman〔Meth. Enzym., 164, 765 (1988)〕などの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルト(初期設定)のパラメーターを用いて計算したときに、例えば配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40で表される塩基配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の同一性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。また、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」等の条件を挙げることができる。より詳細には、Rapid-hyb buffer(Amersham Life Science)を用いた方法として、68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して1時間以上68℃に保ってハイブリッド形成させ、その後、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を3回、最後に、1×SSC、0.1%SDS中、50℃で20分の洗浄を2回行うことも考えられる。その他、例えばExpresshyb Hybridization Solution (CLONTECH)中、55℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行い、標識プローブを添加し、37〜55℃で1時間以上インキュベートし、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を1回行うこともできる。ここで、例えば、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションや2度目の洗浄の際の温度を上げることにより、よりストリンジェントな条件とすることができる。例えば、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの温度を60℃、さらにストリンジェントな条件としては68℃とすることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、ホスホリパーゼのアイソフォーム、アレリック変異体、及び対応する他種生物由来の遺伝子を得るための条件を設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press (1989);特にSection9.47-9.58) 、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987-1997);特にSection6.3-6.4)、『DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University (1995);条件については特にSection2.10)等を参照することができる。ハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40の塩基を含む塩基配列に対して少なくとも50%以上、好ましくは70%、さらに好ましくは80%、より一層好ましくは90%(例えば、95%以上、さらには99%)の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。このような同一性は、上述の相同性の決定と同様にBLASTアルゴリズム(Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-7)によって決定することができる。上述の塩基配列についてのプログラムBLASTNの他に、このアルゴリズムに基づいたアミノ酸配列についての同一性を決定するプログラムとしてBLASTX(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10)等が開発されており、利用可能である。具体的な解析方法については先に挙げたように、http://www.ncbi.nlm.nih.gov.等を参照することができる。
その他、遺伝子増幅技術(PCR)(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 6.1-6.4)により、ホスホリパーゼのアイソフォームやアレリック変異体等を、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから、配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40に表される塩基配列を基に設計したプライマーを利用して得ることができる。
ポリヌクレオチドの塩基配列は、慣用の方法により配列決定して確認することができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等による確認が可能である。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、例えば天然由来のものであることもできるし、または全合成したものであることもできる。さらには、天然由来のものの一部を利用して合成を行なったものであることもできる。本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドの典型的な取得方法としては、例えば市販のライブラリーまたはcDNAライブラリーから、遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば部分ポリヌクレオチド配列(例えば配列番号21および24で表されるアミノ酸配列をコードしてなる塩基配列)の情報を基にして作成した適当なDNAプローブを用いてスクリーニングを行なう方法などを挙げることができる。
本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドとしては、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(例えば、配列番号25で表される塩基配列)からなるポリヌクレオチド」が好ましい。配列番号25で表される塩基配列は、441番目〜443番目のATGで始まり、936番目〜938番目のTAAで終了するオープンリーディングフレームを有する。また、配列番号25、配列番号28、配列番号37、配列番号38、または配列番号40で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
プラスミド
プラスミドに本願発明の遺伝子のDNA断片を組み込む方法としては、例えば、「Sambrook, J.ら,モレキュラークローニング,ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual, second edition)、Cold Spring Harbor Laboratory, 1.53(1989)」に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組換えプラスミドは、宿主細胞(例えば、E.coli TB1,LE392またはXL-1Bluc等)に導入する。形質転換に使用するプラスミドは、上記のようなホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知のベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。例えば、ホスホリパーゼ単独でもよいし、ホスホリパーゼとタグとなるようなタンパク質(例えば、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP))との融合タンパク質を発現ベクターに組み込んでもよい。
ベクターは、簡便には当業界において入手可能な組換え用ベクター(プラスミドDNA)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターとしては、具体的には、大腸菌由来のプラスミドとして、例えば、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322などが例示されるがこれらに限定されない。
所望のタンパク質を生産する目的においては、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌用発現ベクターとして、pQE−30、pQE−60、pMAL−C2、pMAL−p2、pSE420などが好ましく、酵母用発現ベクターとしてpYES2(サッカロマイセス属)、pPIC3.5K、pPIC9K、pAO815(以上ピキア属)、pBacPAK8/9、pBK283、pVL1392、pBlueBac4.5などが好ましい。
形質転換体
形質転換体は、所望の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより調製することができる。用いられる宿主細胞としては、本発明の発現ベクターに適合し、形質転換されうるものであれば特に制限はなく、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞、または人工的に樹立された組換細胞など種々の細胞を用いることが可能である。例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などが挙げられる。
特に、大腸菌、酵母または昆虫細胞が好ましく、具体的には、大腸菌(M15、JM109等)、酵母(INVSc1(サッカロマイセス属)、GS115、KM71(以上ピキア属)など)昆虫細胞(BmN4、カイコ幼虫など)などが例示される。また、動物細胞としてはマウス由来、ラット由来、ハムスター由来、サル由来またはヒト由来の細胞若しくはそれらの細胞から樹立した培養細胞株などが例示される。さらに、植物細胞に関しては、細胞培養が可能であれば特に限定されないが、例えば、タバコ、アラビドプシス、イネ、トウモロコシ、コムギ由来の細胞などが例示される。
本発明のベクターにおいて、好適な開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。また、終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAG,TGAなど)が例示される。
発現ベクターは、少なくとも、プロモーター、開始コドン、所望の遺伝子、終止コドン、およびターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4DNAリガーゼを用いるライゲーション等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他のレストリクションサイトなど)を用いることができる。
本発明に用いた発現ベクターの宿主細胞への導入[形質転換(形質移入)]は従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、細菌(E.coli,Bacillus subtilis等)の場合は、例えばCohenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168,111(1979)]やコンピテント法[J.Mol.Biol.,56,209(1971)]によって、Saccharomyces cerevisiaeの場合は、例えばHinnenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1927(1978)]やリチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法[Virology,52,456(1973)]、昆虫細胞の場合は、例えばSummersらの方法[Mol.Cell.Biol.,3,2156-2165(1983)]によってそれぞれ形質転換することができる。植物細胞の場合は、アグロバクテリウムを用いる方法(Horsch et al., Science, 227, 129(1985)、Hiei et al., Plant J., 6, 271-282(1994))、エレクトロポレーション法(Fromm et al., Nature, 319, 791(1986))、PEG法(Paszkowski et al., EMBO J., 3, 2717(1984))、マイクロインジェクション法(Crossway et al., Mol. Gen. Genet., 202, 179(1986))、微小物衝突法(McCabe et al., Bio/Technology, 6, 923(1988))によって形質転換することができる。
本発明において、ホスホリパーゼは、例えば、上記の如く調整された発現ベクターを含む形質転換細胞を栄養培地で培養することによって発現(生産)することができる。栄養培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源、無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノールなどが、例示される。無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また、所望により他の栄養素(例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)など)を含んでいてもよい。培養は、当業界において知られている方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpH及び培養時間は、本発明のタンパクが大量に生産されるように適宜選択される。
なお、下記に宿主細胞に応じて用いられる具体的な培地及び培養条件を例示するが、何らこれらに限定されるものではない。宿主が細菌、放線菌、酵母、糸状菌である場合、例えば上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5〜8である培地としてLB培地、M9培地(ミラー(Miller)ら、Exp. Mol. Genet.、Cold Spring Harbor Laboratory、第431頁、1972年)等が例示される。かかる場合、培養は、必要により通気、攪拌しながら、通常14〜43℃、約3〜24時間行なうことができる。宿主が、Bacillus属菌の場合、必要により通気、攪拌しながら、通常30〜40℃、約16〜96時間行なうことができる。
宿主が酵母である場合、培地として、例えばBurkholder最小培地(ボスチアン(Bostian)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、第77巻、第4505頁、1980年)が挙げることができ、pHは5〜8であることが望ましい。培養は通常約20〜35℃で約14〜144時間行われ、必要により通気や攪拌を行なうこともできる。宿主が動物細胞の場合、培地として例えば約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地(サイエンス(Science)、第122巻、第501頁、1952年)、DMEM培地(バイロロジー(Virology)、第8巻、第396頁、1959年)、RPMI1640培地(J. Am. Med. Assoc.、第199巻、第519頁、1967年)、199培地(Proc. Soc. Exp. Biol. Med.、第73巻、第1頁、1950年)などを用いることができる。培地のpHは約6〜8であることが好ましく、培地は通常30〜40℃で約15〜72時間行われ、必要により通気や攪拌を行なうこともできる。
宿主が昆虫細胞の場合、例えば胎児牛血清を含むGrace’s培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、第82巻、第8404頁、1985年)などが挙げることができ、そのpHは約5〜8であることが好ましい。培養は通常約20〜40℃で15時間〜100時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行なうこともできる。
ホスホリパーゼの発現、精製方法に関しては、公知の文献が数多く存在する(例えば、Kohji Hanasaki,et al., The Journal of Biological Chemistry 274(48), 34203-34211, 1999など)。
形質転換体の培養物(発現細胞や培養上清)から所望のポリペプチドを精製する方法としては、例えば、硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
本発明において使用されるホスホリパーゼは、その塩の形態であってもよい。ここで、「塩」は、薬学的に許容される塩を示し、ホスホリパーゼと薬学的に許容される塩を形成するものであれば特に限定されない。具体的には、例えばハロゲン化水素酸塩(例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられる。
また、本発明で使用するホスホリパーゼは、GPR120の細胞刺激活性を有するものであって、実質的にホスホリパーゼと同様の活性を有するものであれば断片であってもよい。
ここで、上記断片が「ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する」とは、その断片が、GPR120を介したシグナル情報伝達作用、より詳しくは、GPR120発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出、細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosおよびc−junの誘導活性、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌活性、コレシストキニン(CCK)分泌活性、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)分泌活性など)を有することを意味する。また実質的に同じとは、活性が性質的に同質であることを意味する。すなわち、「ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する」ためには、前記活性が同等(例えば、約0.01〜100倍、好ましくは0.05〜20倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましい。これらの活性については、慣用の方法にしたがってと測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。
GPR120
本発明のスクリーニング方法に使用するGPR120は、ホスホリパーゼ(例えば、sPLA2)による活性化作用を有し、GPR120発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出、細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosおよびc−junの誘導活性、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌活性、コレシストキニン(CCK)分泌活性、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)分泌活性など)を有するものであれば、その起源は特に限定されず、例えばGPR120を発現する臓器、組織、細胞などの天然由来のもの、公知の遺伝子工学的手法、合成法などにより人為的に調製したものも包含される。また、GPR120の部分ポリペプチドとして後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されず、例えばホスホリパーゼによる細胞刺激活性化作用を有する部分ポリペプチド、細胞膜外領域に相当するアミノ酸配列を含む部分ポリペプチドなども使用することもできる。
具体的には、本発明のスクリーニング方法に使用するGPR120は、Gタンパク質共役型受容体タンパク質の一種であり、そのアミノ酸配列(ヒト、マウスおよびラット由来のもの)およびそれをコードするDNAが報告されている[例えば、GenBankアクセッション番号NP_859529(ヒト型)、NP_861413(マウス型)、XP_215281(ラット型)、GPR120は14273とも称されている]ポリペプチドである。具体的には、GPR120は下記(a)〜(e)からなる群より選択されるポリペプチドからなる:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;
(c) 配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(d) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;および、
(e) 配列番号1で表される塩基配列に対して80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上)の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
本発明に使用するGPR120としては、「配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」が好ましい。なお、前記ポリペプチドには、ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。
ここで、ポリペプチドが「GPR120と実質的に同じ活性を有する」とは、そのポリペプチドが、ホスホリパーゼ(例えば、sPLA2)による活性化作用を有し、GPR120を介したシグナル情報伝達作用、より詳しくは、GPR120発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出、細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosおよびc−junの誘導活性、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌活性、コレシストキニン(CCK)分泌活性、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)分泌活性など)を有することを意味する。また実質的に同じとは、活性が性質的に同質であることを意味する。すなわち、「GPR120と実質的に同じ活性を有する」ためには、前記活性が同等(例えば、約0.01〜100倍、好ましくは0.05〜20倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましい。これらの活性については、慣用の方法にしたがってと測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。
本発明の好ましい態様によれば、前記(b)のポリペプチド(以下において「改変ポリペプチド」と言うことがある)は、そのアミノ酸配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて1または複数個(好ましくは1または数個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であって、しかもGPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチドであることができる。
本願明細書において「保存的置換」とは、ペプチドの活性を実質的に改変しないように、1または複数個(好ましくは数個)のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。なお、前記改変ポリペプチドには、改変ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。したがって、これらの条件を満たす限り、前記改変ポリペプチドの起源は、ヒトに限定されない。
改変ポリペプチドには、さらにそのN末端(アミノ末端)およびC末端(カルボキシル末端)が改変または修飾されているものも包含されてよい。例えば、C末端のカルボキシルが、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)とされていてもよい。なおここで前記Rは、例えば直鎖、分岐鎖もしくは環状のC1−6アルキル基、C6−12アリール基等が挙げられる。またN末端のアミノ基が慣用の保護基により保護されたもの等も改変ポリペプチドに包含され得る。
前記(b)のポリペプチドの例としては、ヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]由来のGPR120もしくはその変異体が挙げられる。具体的には配列番号4および配列番号6で表されるアミノ酸配列(マウス由来およびラット由来)からなるポリペプチドが挙げられる。
前記(c)のポリペプチド(以下において「相同ポリペプチド」と言うことがある)は、GPR120のアミノ酸配列に関して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、GPR120に関して、同一性が85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であって、しかもGPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチドである。
本願明細書において、「同一性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えば全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出することができる。なお、前記相同ポリペプチドには、相同ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものとを有するものとの両方が含まれる。したがって、これらの条件を満たす限り、前記相同ポリペプチドの起源は、ヒトに限定されない。例えばヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]由来のGPR120もしくはその変異体が含まれる。具体的には配列番号4および配列番号6で表されるアミノ酸配列(マウス由来およびラット由来)からなるポリペプチドが挙げられる。
さらに、本発明に使用するGPR120(すなわち、GPR120、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)の部分ポリペプチドも、GPR120と実質的に同じ活性(例えばアラキドン酸またはγ−リノレン酸による活性化作用、あるいはアラキドン酸またはγ−リノレン酸との結合能、およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、細胞膜外領域に相当するアミノ酸配列を含む部分ポリペプチド)を有する限り使用することができる。この場合、部分ポリヌクレオチドを構成するアミノ酸数は、GPR120のアミノ酸数の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%である。
GPR120の調製方法
これら本発明に使用するGPR120(すなわち、GPR120、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)およびその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法、例えば遺伝子工学的手法、合成法などによって得ることができる。具体的には、遺伝子工学的手法の場合、GPR120またはその部分ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することによって調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
以下、本発明に使用するGPR120の調製方法のうち、遺伝子工学的手法について詳述するが、その部分ポリペプチドについても、後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されない。
GPR120をコードするポリヌクレオチド
本発明に使用するGPR120(すなわち、GPR120、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、前記GPR120、前記改変ポリペプチド、前記相同ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本願明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明に使用するGPR120をコードするポリヌクレオチドは、具体的には下記の(i)〜(vi)からなる群より選択されるものが挙げられる:
(i) 配列番号1で表される塩基配列からなる、ポリヌクレオチド;
(ii) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(iii) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、前記のGPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(iv) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、GPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(v) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、GPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;および
(vi) 配列番号1で表される塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、しかも、前記のGPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
本発明の一つの態様によれば、本発明に使用するGPR120をコードするポリヌクレオチドは、「配列番号2で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記のGPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。
アミノ酸の付加、欠失および/または置換による変異体は、例えばそれをコードするDNAに例えば、周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No.20, p.6487-6500, 1982参照)を施すことにより作成できる。本明細書において「1または複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により付加、欠失、挿入および/または置換できる程度の数のアミノ酸を意味する。
部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレートし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成せしめる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養しDNAを回収する。
尚、GPR120の生物活性ペプチドのアミノ酸配列にその活性を喪失せしめない1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法及び遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、付加、挿入および/または置換し、次いで連結する方法もある。
「欠失」には、アミノ酸配列の端からアミノ酸残基を欠失したものおよびアミノ酸は配列の途中のアミノ酸残基が欠失したものも含まれる。
「付加」には、アミノ酸配列の端にアミノ酸残基を付加したものおよびアミノ酸残基の途中にアミノ酸残基を欠失したものも含まれる。
1つのアミノ酸をコードするコドンは複数存在する。従って、配列番号2、配列番号4、または配列番号6で示されるアミノ酸配列またはその酵素活性部分をコードするいずれのDNAも本発明の範囲に含まれる。
本発明の別の一つの態様によれば、本発明に使用するGPR120をコードするポリヌクレオチドは、「配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記のGPR120と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。具体的には配列番号4および配列番号6で表される塩基配列(マウス由来およびラット由来)からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
本願明細書において、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、具体的には、FASTA、BLAST、Smith−Waterman〔Meth. Enzym., 164, 765 (1988)〕などの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルト(初期設定)のパラメーターを用いて計算したときに、配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の同一性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。また、「ストリンジェント」なハイブリダイゼーション条件としては、前記したホスホリパーゼの場合と同様であることができる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については上記ホスホリパーゼの項を参照することができる。
その他、遺伝子増幅技術(PCR)(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 6.1-6.4)により、ホスホリパーゼのアイソフォームやアレリック変異体等を、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから、配列番号1、3、または5に記載の塩基配列を基に設計したプライマーを利用して得ることができる。
ポリヌクレオチドの塩基配列は、慣用の方法により配列決定して確認することができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等による確認が可能である。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
本発明に使用するGPR120をコードするポリヌクレオチドは、例えば天然由来のものであることもできるし、または全合成したものであることもできる。さらには、天然由来のものの一部を利用して合成を行なったものであることもできる。本発明に使用するGPR120をコードするポリヌクレオチドの典型的な取得方法としては、例えば市販のライブラリーまたはcDNAライブラリーから、遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば部分ポリヌクレオチド配列(例えば配列番号1で表される塩基配列)の情報を基にして作成した適当なDNAプローブを用いてスクリーニングを行なう方法などを挙げることができる。
本発明に使用するGPR120をコードするポリヌクレオチドとしては、「配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド」が好ましい。配列番号1で表される塩基配列は、1番目〜3番目のATGで始まり、1084番目〜1086番目のTAAで終了するオープンリーディングフレームを有する。また、配列番号3および配列番号5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
プラスミド
前記形質転換に使用されるプラスミドは、上記のようなGPR120をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。
形質転換体
また、前記形質転換体も、上記のようなGPR120をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば当該ポリヌクレオチドが宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドの形で含有する形質転換体であることもできるし、あるいは、GPR120を発現していない形質転換体であることもできる。当該形質転換体は、例えば前記プラスミドにより、あるいは、前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。
前記宿主細胞としては、例えば通常使用される公知の微生物、例えば大腸菌(例えばEscherichia coli JM109株)または酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae W303株)、あるいは、公知の培養細胞、例えば動物細胞(例えばCHO細胞、HEK−293細胞、またはCOS細胞)または昆虫細胞(例えばBmN4細胞、Sf−9細胞)を挙げることができる。
また、公知の前記発現ベクターとしては、例えば大腸菌に対しては、pUC、pTV、pGEX、pKK、またはpTrcHisを;酵母に対しては、pEMBLYまたはpYES2を;CHO細胞、HEK−293細胞およびCOS細胞に対しては、pcDNA3、pMAMneoまたはpBabe Puroを;BmN4細胞に対しては、カイコ核多角体ウイルス(BmNPV)のポリヘドリンプロモーターを有するベクター(例えばpBK283)を挙げることができる。
GPR120を含有する細胞は、GPR120を細胞膜表面に発現している限り、特に限定されるものではなく、例えば前記形質転換体(すなわち、GPR120をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドで形質転換された細胞)を、GPR120の発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできるし、あるいは、適当な細胞に、GPR120をコードするRNAを注入し、GPR120の発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできる。
細胞膜断片
また、GPR120を含有する本発明に使用する細胞膜断片は、例えば前記のGPR120を発現する細胞を破砕した後、細胞膜が多く含まれる画分を分離することにより得ることができる。細胞の破砕方法としては、例えばホモジナイザー(例えばPotter−Elvehiem型ホモジナイザー)で細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーまたはポリトロン(Kinematica社)による破砕、超音波による破砕、あるいは、フレンチプレスなどで加圧しながら細いノズルから細胞を噴出させることによる破砕などを挙げることができる。また、細胞膜の分画方法としては、例えば遠心力による分画法、例えば分画遠心分離法または密度勾配遠心分離法を挙げることができる。
スクリーニング方法
前記したように、本発明によれば、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを用いることを特徴とする、GPR120とホスホリパーゼまたはその塩との相互作用を変化させる物質のスクリーニング方法が提供される。好ましくは、この方法は、被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、細胞刺激活性を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とにおける測定結果を比較することを含んでなる。
本発明のより好ましい態様によれば、前記方法は、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合との間で、結果に相違が出た場合に、その物質をGPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質であると決定する工程をさらに含んでなる。
このスクリーニング方法によれば、GPR120の機能を促進もしくは阻害する能力を区別して被検物質(または被検化合物)をスクリーニングすることができる。すなわち、このスクリーニング方法では、ホスホリパーゼとGPR120との相互作用を変化させる物質をスクリーニングすることができ、具体的には、GPR120の活性化に影響を与える化合物を、より具体的には、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質、さらに具体的には、GPR120の機能を促進する物質(アゴニスト)あるいはGPR120の機能を阻害する物質(アンタゴニスト)を、スクリーニングすることができる。
したがって、被検物質非存在下における細胞刺激活性に対して、被検物質存在下における細胞刺激活性が上昇する場合には、その被検物質は、GPR120の機能を促進する物質(GPR120アゴニスト)と決定することができる。被検物質非存在下における細胞刺激活性に対して、被検物質存在下における細胞刺激活性が低下する場合には、その被検物質は、GPR120の機能を阻害する物質(GPR120アンタゴニスト)と決定することができる。
本発明の好ましい態様によれば、細胞刺激活性の測定は、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化を検出するレポーターアッセイ系により測定するか、または、細胞内カルシウムイオン遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌活性、コレシストキニン(CCK)分泌活性、および、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)分泌活性からなる群より選択されるパラメータを測定することによって行うことができる。より好ましくは、ポーターアッセイ系や細胞内Ca2+濃度の上昇を測定することができる。
本発明においては、例えばGPR120を介する細胞内カルシウム濃度の上昇やレポーター遺伝子の転写量の増加を公知の手法で測定すればよく、GPR120の機能を促進もしくは阻害する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この態様は、GPR120にホスホリパーゼが作用することにより生じる細胞内シグナル伝達、例えば、細胞内カルシウム濃度の上昇作用を利用するものである。
例えばGPR120を細胞膜上に発現(好ましくは、GPR120を含む発現ベクターを導入し過剰に発現)した哺乳動物由来細胞(例えばHEK−293細胞もしくはCHO細胞)にホスホリパーゼを作用すると細胞内Ca2+濃度が上昇する。
GPR120の機能を促進する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系でGPR120を介して細胞刺激活性を惹起しうる物質(例えばホスホリパーゼ)に代わり、被検物質を単独で接触させて細胞内の細胞内Ca2+濃度が上昇する化合物を選択すると良い。
GPR120の機能を阻害する化合物をスクリーニングする場合には、ホスホリパーゼまたはその塩、および被検物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。ホスホリパーゼの作用で細胞内カルシウムの濃度が上昇するが、被検物質がホスホリパーゼの作用に拮抗する場合には、細胞内カルシウムの濃度の上昇が抑制され。このときには、前記被検物質はGPR120の機能を阻害する化合物として選択できる。
細胞内カルシウム濃度は、例えば、カルシウム蛍光プローブ(例えば、Fura−2、Fluo−3など)を用いて測定することができる。また、市販のカルシウム測定キットを使用することもできる。
本発明においては、また、GPR120を細胞膜上に発現(好ましくは、GPR120を含む発現ベクターを導入し過剰に発現)し、しかも、cAMP応答配列(CRE)が5’上流に位置するレポーター遺伝子(例えばアルカリフォスファターゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、ベータラクタマーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、ベータガラクトシダーゼ遺伝子など、またはGFP(Green Fluorescent Protein)などの蛍光タンパク質遺伝子など)を含有する細胞(以下、「スクリーニング用細胞」と称することもある)を用いることにより、GPR120の機能を促進もしくは阻害する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この場合は、細胞内に種々のシグナルが伝わると前記スクリーニング用細胞に導入されているCREをプロモーター領域に有するレポーター遺伝子の転写が促進されることを利用している。
以下、GPR120の機能を促進もしくは阻害する能力を区別して化合物をスクリーニングする手順について、より具体的に説明する。
前記CREをプロモーター領域に有するレポーター遺伝子を導入されている細胞においては、例えば、細胞内のcAMPの濃度上昇や細胞内Ca2+濃度の上昇により、レポーター遺伝子の発現量が増加する。また、アデニル酸シクラーゼの活性化剤(例えばフォルスコリンなど)で細胞の基礎的なcAMP量を増大させておいて活性を測定することもできる。レポーター遺伝子産物の発現量は、細胞培養上清や細胞抽出物に含まれるレポーター遺伝子産物と反応した基質から生成した発光物質の量に由来する発光を測定する方法、もしくはレポーター遺伝子として産生された蛍光タンパク質由来の蛍光を測定する方法などにより容易に測定することが可能である。
また、ホスホリパーゼまたはその塩を加えると、細胞内のシグナル伝達の活性化が生じ(例えば細胞内Ca2+濃度が上昇)結果として、レポーター遺伝子産物の発現量が増加する。したがって、GPR120の機能を促進する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系で、GPR120を介して細胞刺激活性を惹起しうる物質に代わり被検物質を単独で接触させてレポーター遺伝子産物の発現量を上昇させる化合物を選択すると良い。
GPR120の機能を阻害する化合物をスクリーニングする場合には、ホスホリパーゼまたはその塩、および被検物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。また、アデニル酸シクラーゼの活性化剤(例えばフォルスコリンなど)で細胞の基礎的なcAMP量を増大させておいてから活性を測定することもできる。ホスホリパーゼの作用で培養上清中や細胞内のレポーター遺伝子産物の発現量は上昇するが、被検物質がホスホリパーゼの作用に拮抗する場合には、レポーター遺伝子産物の発現を抑制する。このときには、前記被検物質はGPR120の機能を阻害する化合物として選択できる。
被検物質による作用が、GPR120を介した作用であるか否かは、簡単に確認することができる。例えばスクリーニング用細胞(すなわち、GPR120を細胞膜上に発現し、しかも、CREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有する細胞)を用いた前記試験と並行して、コントロール用細胞(例えばCREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有するものの、GPR120を細胞膜上に発現していない細胞)を用いて同様の試験を実施する。その結果、前記被検物質による作用が、GPR120に対する結合による作用でない場合には、スクリーニング用細胞およびコントロール用細胞でレポーター遺伝子産物の発現量に関して同じ現象が観察されるのに対して、前記被検物質による作用が、GPR120に対する結合による作用である場合には、スクリーニング用細胞とコントロール用細胞とでレポーター遺伝子産物の発現量に関して異なる現象が観察される。
本発明の別の態様によれば、ホスホリパーゼとGPR120との相互作用を変化させる物質として、ホスホリパーゼのGPR120への結合性を変化させる物質をスクリーニングすることができる。この場合、本発明によるスクリーニング方法は、被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞へのホスホリパーゼまたはその塩の結合量を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とを比較することを含んでなる。このスクリーニング方法によれば、GPR120の機能を促進もしくは阻害する能力を区別せずに被検化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、この態様の方法が適用可能な場合、この方法により、ホスホリパーゼとGPR120との相互作用を変化させる物質をスクリーニングすることができ、具体的には、ホスホリパーゼのGPR120への結合性を変化させる化合物を、より具体的には、GPR120の機能を促進もしくは阻害する能力を有する化合物を、スクリーニングすることができる。
具体的には、被検物質非存在下および被検物質存在下の各条件下において、GPR120と、標識したホスホリパーゼとを接触させ、前記条件下におけるGPR120へのホスホリパーゼの特異的結合量を比較することにより、GPR120の機能を促進もしくは阻害する能力を区別せずに化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、被検物質非存在下におけるGPR120へのホスホリパーゼの特異的結合量に対して、被検物質存在下における前記特異的結合量が低下する場合には、その被検物質は、ホスホリパーゼとGPR120との相互作用を変化させる物質であると、具体的には、ホスホリパーゼのGPR120への結合性を変化させる化合物であると、より具体的には、GPR120アゴニストあるいはGPR120アンタゴニストであると、決定することができる。
結合量を測定する場合、ホスホリパーゼまたはその塩は、標識することができる。前記標識としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、[H]、[14C]、[125I]、[35S]などを用いることができる。前記酵素としては、例えばβ−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼなどを用いることができる。蛍光物質としては、例えばフルオレセイソチオシアネート、BODIPYなどを用いることができる。発光物質としてはルシフェリン、ルシゲニンなどを用いることができる。また、遺伝子工学的手法により、ホスホリパーゼと標識蛋白(例えばGFPなど)のキメラ蛋白を作製し用いることもできる。
また、GPR120は、コレシストキニン(CCK)やグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)の分泌との関連が示唆されていることから、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物をヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に投与し、細胞における消化管ホルモン量(例えば、CCK量やGLP−1量など)を指標として解析したり、または、投与後の自発運動などを指標に解析したりすることによって、過食症、拒食症に代表される摂食障害、肥満症やそれに伴う糖尿病、糖尿病網膜症若しくは糖尿病腎症等の糖尿病合併症、高脂血症、動脈硬化、および高血圧症、消化機能調節、下垂体ホルモン分泌、ストレス調節などに影響を与える化合物であるか否かを確認および決定することができる。上記哺乳動物としては、正常の動物に限らず、遺伝性の病態モデル動物や遺伝子改変動物でもよい。被検物質の投与形態としては経口的または非経口的に投与する。非経口的な投与経路の様態としては、例えば静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、気道内、直腸内、脳内、好ましくは視床下部近傍の脳室内投与が挙げられる。スクリーニングなどの指標としては、例えば、消化管収縮運動、胆嚢収縮運動、消化管ホルモン分泌、下垂体ホルモン分泌、体重の変化、インスリン分泌、血中脂質量などを測定する試験などを行うことも有効である。被検物質の投与回数は1日あたり一回でも数回に分けても良く、被検物質を投与する期間や観察する期間は1日から数週間にわたってもよい。
本発明に使用する被検物質は、どのような化合物であってもよいが、例えば遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物ライブラリー、核酸(オリゴDNA、オリゴRNA)、合成ペプチドライブラリー、抗体、細菌放出物質、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)抽出液、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)培養上清、精製または部分精製ポリペプチド、海洋生物、植物または動物由来の抽出物、土壌、ランダムファージペプチドディスプレイライブラリーを挙げることができる。
スクリーニング用キット
本発明によるスクリーニング用キットは、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを少なくとも含んでなる。好ましくは、このキットは、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするためのものである。前記スクリーニング用キットは、所望により、本発明によるスクリーニング方法を実施するための種々の試薬、例えば結合反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。
本発明の別の態様のスクリーニング用キットは、ホスホリパーゼまたはその塩、およびGPR120を細胞膜上に発現(好ましくは、GPR120を含む発現ベクターを導入して過剰に発現)し、しかも、cAMP応答配列(CRE)が5’上流に位置するレポーター遺伝子(例えば、アルカリフォスファターゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子など)を含有する細胞とを少なくとも含有する。前記スクリーニング用キットは、所望により、種々の試薬、例えばレポーター遺伝子産物(例えば、アルカリフォスファターゼもしくはルシフェラーゼなど)の基質、アデニル酸シクラーゼ活性化剤(例えばフォルスコリン)、結合反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。また、前記スクリーニング用キットは、コントロールとして、CREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有するものの、GPR120を細胞膜上に発現していない細胞を含んでいてもよい。
本発明の別の態様のスクリーニング用キットは、ホスホリパーゼまたはその塩、およびGPR120を細胞膜上に発現(好ましくは、GPR120を含む発現ベクターを導入して過剰に発現)した細胞を少なくとも含有する。前記スクリーニング用キットは、所望により、種々の試薬、例えばカルシウム蛍光プローブ(例えばFura−2など)、反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。また、前記スクリーニング用キットは、コントロールとしてGPR120を細胞膜上に発現していない細胞を含んでいてもよい。
本発明のスクリーニング方法により得られる化合物を含有する医薬
GPR120は、後述する実施例8、および28〜33に示されるように、下垂体、肺、腸管(特に、回腸、盲腸、大腸)、精巣、前立腺、甲状腺、副腎、各種脂肪組織(皮下脂肪、腸間膜脂肪、副睾丸脂肪、および、褐色脂肪)、肺胞マクロファージ、樹状細胞、リンパ節で高い発現が検出された。中でも腸管や下垂体、肺、肺胞マクロファージ、脂肪組織、樹状細胞等で高い発現が検出された。このため、本発明によれば、糖尿病、糖尿病網膜症若しくは糖尿病腎症等の糖尿病合併症、高脂血症、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、下垂体機能障害、精神障害、免疫系疾患、炎症性疾患、マクロファージや樹状細胞が関与する疾患、癌、および、過食症、拒食症に代表される摂食障害、さらにはそれに伴う大腸疾患等の予防または治療に有用な物質をスクリーニングすることができる。また、GPR120は、腸内分泌細胞株STC−1細胞からのコレシストキニン(CCK)の放出促進作用との関連が報告されている(特開2005−15358号公報)。CCKは末梢領域において、迷走神経を介した摂食抑制作用を有する。また、CCKは胃や十二指腸などの消化管臓器から放出され、胃酸分泌、胆嚢の収縮、膵臓の酵素分泌促進、および腸の運動など、消化管ホルモンとしての様々な機能も有する。これらのことから、GPR120が、過食症、拒食症に代表される摂食異常、肥満症およびそれに伴う糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、および消化機能の調節と関連していることが予想される。
さらにGPR120は、腸内分泌細胞株STC−1細胞からのグルカゴン様ペプチド‐1(GLP−1)の放出促進作用が報告されている(Akira Hirasawa et al., Nature Medicine, 11, 90-94, 2004)。GLP−1はインスリン分泌促進や代謝のホメオスタシスに関わる重要なホルモンであることから、GPR120が、糖尿病などの代謝異常疾患と関連していることが予想される。
また、水浸拘束ストレスを負荷したラットの下垂体でGPR120のmRNA発現量の上昇が検出されており、GPR120がストレス調節に関与していることが示唆されている(国際公開WO2004/065960号パンフレット)。また、GPR120の発現が下垂体に多いことから、下垂体ホルモン(例えばACTHなど)の分泌への関与も示唆される。
したがって、本発明によるスクリーニング方法により得られる化合物は、過食症、拒食症に代表される摂食障害の治療用の医薬、肥満症やそれに伴う糖尿病、高脂血症、動脈硬化、高血圧症、免疫疾患、炎症性疾患、癌などの治療剤、消化機能調節剤、下垂体ホルモン分泌異常改善薬、ストレス調節剤として用いることができる。
よって、本発明によるスクリーニング方法により得られる化合物は、過食症、拒食症に代表される摂食障害、肥満症やそれに伴う糖尿病、高脂血症、動脈硬化、高血圧症、免疫疾患、炎症性疾患、癌など、また、消化機能不良、さらには、下垂体ホルモン分泌異常、ストレス症などの治療に有効な化合物である。
当該化合物は塩を形成してもよく、さらに当該化合物およびその塩は溶媒和物(例えば、水和物、アルコール和物、エーテル和物)を形成していてもよい。ここで「塩」とは、薬学的に許容される塩を示し、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物と薬学的に許容される塩を形成するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば好ましくはハロゲン化水素酸塩(例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法により得られる化合物を単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬品組成物として用いることもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。また、かかる薬剤は、ヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に、種々の形態、経口または非経口(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。したがって、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物を含有する医薬組成物は、投与経路に応じて適当な剤形とされ、具体的には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、あるいはシロップ剤などによる経口剤、または注射剤、点滴剤、リポソーム剤、坐薬剤などによる非経口剤を挙げることができる。これらの製剤は通常用いられている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することが可能である。使用可能な無毒性のこれらの成分としては、例えば大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;例えば流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;例えばミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;例えばセトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;例えばヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;例えばエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);例えばグルコース、ショ糖等の糖;例えば無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの無機塩;精製水等を用いて常法により製造することができる。使用可能な無毒性の上記賦形剤としては、例えば乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素等が挙げられる。結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が挙げられる。着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが挙げられる。矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が挙げられる。上記の成分は、その塩またはその水和物であってもよい。
それらの投与形態としては、また、必要な投与量範囲は、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物の選択、投与対象、投与経路、製剤の性質、患者の状態、そして医師の判断に左右される。しかし、適当な投与量は患者の体重1kgあたり例えば約1.0〜1,500μg、好ましくは約10〜500μg程度を投与するのが好ましい範囲である。投与経路の効率が異なることを考慮すれば、必要とされる投与量は広範に変動することが予測される。例えば経口投与は静脈注射による投与よりも高い投与量を必要とすると予想される。こうした投与量レベルの変動は、当業界でよく理解されているような、標準的経験的な最適化手順を用いて調整することができる。
本明細書において「治療」とは、一般的に、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾病および/または症状を完全にまたは部分的に防止する点では予防的であり、疾病および/または疾病に起因する悪影響の部分的または完全な治癒という点では治療的である。本明細書において「治療」とは、哺乳動物、特にヒトの疾病の任意の治療を含み、例えば
(1A)疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;
(1B)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または遅延すること;
(1C)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こすこと等を含む。
以下、実施例により本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。
実施例1: GPR120をコードするポリヌクレオチドの調製
(1)ヒトGPR120をコードするポリヌクレオチドの調製
ヒトGPR120(以下、ヒトGPR120を、単にGPR120またはhGPR120と称することもある)をコードするポリヌクレオチドの単離のため、配列番号1で表される1086bpの核酸配列を基にして、常法にしたがって、5’側プライマー(5’−GATATCGCCGCCACCATGTCCCCTGAATGCGCGCGGGCA−3’)(配列番号7)と3’側プライマー(5’−GATATCTTAGCCAGAAATAATCGACAAGTC−3’)(配列番号8)とで表されるPCRプライマーを設計した。
鋳型となるcDNAは、ヒト大腸癌細胞由来Caco−2細胞から調製したRNAを逆転写することにより得た。具体的には、75cmフラスコに培養したCaco−2細胞(ATCC)からRNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いてマニュアルに従いtotal RNAを抽出した。その後、TaqMan Reverse Transcription Reagents(アプライドバイオシステムズ社)を用い、25℃10分、48℃60分、95℃10分で逆転写を行った。得られたcDNAを鋳型として、上記の配列番号7と配列番号8との組合せからなるPCRプライマーと、Expand High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)とを用い、95℃5分の後、95℃1分、57℃1分、72℃3分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。増幅した約1.1kbpのPCR産物をpCR2.1(インビトロジェン(Invitrogen)社)に挿入し、ABI prism DNA sequencing kit(Perkin-Elmer Applied Biosystems社)により配列を確認した。その結果、pCR2.1に挿入された1086塩基対の配列は、配列番号1における1番目から1086番目と同一配列であり、GPR120−pCR2.1を得ることができた。
(2)マウスGPR120をコードするポリヌクレオチドの調製
マウスGPR120(以下、mGPR120と称する)をコードするポリヌクレオチドの単離のため、配列番号3で表される1086bpの塩基配列を基にして、常法に従って、5’側プライマー(5’−GATATCGCCGCCACCATGTCCCCTGAGTGTGCACAGACGACG−3’)(配列番号9)および3’側プライマー(5’−GATATCTTAGCTGGAAATAACAGACAAGTCA−3’)(配列番号10)とで表されるPCRプライマーを設計した。6週令のC57BL/6CrSlcマウス(日本エスエルシー株式会社)の大腸からRNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて調製したRNAを鋳型として、上述の配列番号9および配列番号10のプライマー、Taq Man逆転写試薬、および、AmpliTaqGold(アプライドバイオシステムズ社)を用いることによりRT−PCRを行った。増幅したPCR産物をpCR2.1に挿入し、常法に従って配列を確認した。その結果、挿入された1086bpのcDNA配列は、配列番号3における1番目から1086番目と同一配列であり、mGPR120−pCR2.1を得ることができた。
実施例2: レトロウイルスベクタープラスミドの調製
pBabe Puro(Morgenstern J.P. and Land H. Nucleic Acids Res. 18(12):3587-96, 1990)(配列番号11)をSalIおよびClaIで切断することによりSV40 promoter−puro(r)領域を除いた後、末端をクレノー断片(Klenow fragment)(宝酒造株式会社)により平滑化した。ここへ、pIREShyg(Clontech社)をNsiIおよびXbaIで切断することにより切り出し、T4ポリメラーゼ(宝酒造株式会社)により末端を平滑化したIRES−hyg(r)領域を挿入し、pBabeXIHを得た。
このpBabeXIHをSspIおよびBamHIで切断することにより、5’−LTR−packaging signalを除いた。ここへ、pCLXSN(IMGENEX社)をSspIおよびBamHIで切断することにより切り出した5’LTR−CMV promoter-packaging signalを挿入して、pBabeCLXIHを得た。
実施例3: GPR120、および、mGPR120遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミドの調製
実施例2で得たレトロウイルス発現用プラスミドpBabeCLXIHを、制限酵素HpaIで切断した。ここへ実施例1(1)で得たGPR120−pCR2.1を、EcoRVで切断することにより切り出したGPR120をコードするcDNAを挿入しすることにより、pBabeCL(GPR120)IHを得た(図1)。同様にして実施例1(2)で得たmGPR120−pCR2.1を用いて、pBabeCL(mGPR120)IHを得た。
実施例4: GPR120、および、mGPR120遺伝子導入用レトロウイルスベクターの調製
2×10個の293−EBNA細胞(インビトロジェン社)を、DMEM培地(シグマ社)(10% fetal bovine serum(FBS)、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)(以下、「EBNA培養液」と称する)10mlを用いて、10cm径コラーゲンコートディッシュ(旭テクノグラス社)で培養した。翌日、pV−gp(pVpack−GP(Stratagene社)をNsiIおよびXbaIで切断することによりIRES−hisDを除きT4ポリメラーゼによる平滑化後、自己環化したもの)、pVPack−VSV−G(Stratagene社)、および実施例3で得た遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミド(pBabeCL(GPR120)IH、または、pBabeCL(mGPR120)IH)それぞれ3.3μgを、リポフェクション試薬であるFuGENE 6 Transfection Reagent(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用い、293−EBNA細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に培養液を回収し、1,200×gで10分間遠心した。その上清を0.45μmのフィルター(Millipore社)でろ過し、GPR120遺伝子導入用レトロウイルスベクターを得た。
実施例5: サイクリックAMP応答配列を含むレポーター系導入細胞SE302の構築
(1) サイクリックAMP応答配列を含むレポーターDNAの作成
Durocher Y et al. Anal Biochem 284(2):316-26, 2000 を参考にサイクリックAMP(cAMP)に応じた転写が見られるユニットを以下のように構築した。
cAMP responsive element(CRE)を含むユニットの作成のために、CREx2hb用として、配列番号12(5’-cccaagcttgatatcgaattcgacgtcacagtatgacggccatgggaattcgacgtcacagtatgacggccatggggatcccg-3’)および配列番号13(5’-cgggatccccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcgatatcaagcttggg-3’)で表されるオリゴDNAを、CREx2bp用として配列番号14(5’-tgcactgcaggaattcccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcccatggccgtcatactgtgacgtcggatcccg-3’)および配列番号15(5’-cgggatccgacgtcacagtatgacggccatgggaattcgacgtcacagtatgacggccatgggaattcctgcagtgca-3’)で表されるオリゴDNAを常法に従い作成した。それぞれの組合せから成るオリゴDNAを95℃に熱処理後、徐々に温度を室温まで下げることにより二本鎖DNA(CRE2xhb,およびCREx2bp)を形成させた。CRE2xhbをHindIIIおよびBamHI、CREx2bpをBamHIおよびPstIで消化するとともに、pBluescriptIISK(+)(Stratagene社)をHindIIIおよびPstIで消化した。消化したDNAを電気泳動して両端に制限酵素部位をもつDNAを精製した後、これら3つのDNA(CREx2hb、CREx2bp、pBluescriptSK(+))を一度に連結し(ligation)、得られたプラスミドの配列を解析して、CRE4/pBluescriptIISK(+)を作成した。
次にVIP(vasoactive intestinal peptide)プロモーターを含むDNAを得るために、5’側プライマー(5’−tcgactgcagcccatggccgtcatactgtg−3’)(配列番号16)および3’側プライマー(5’−tgcactgcaggtcggagctgactgttctgg−3’)(配列番号17)で表されるPCRプライマーを常法に従い作成した。
ヒトゲノムDNA(Roche Diagnostics社)を鋳型とし、上述の配列番号16および配列番号17の組合せからなるPCRプライマーと、組換えTaqポリメラーゼ(Takara社)を用いて、94℃30秒、55℃30秒、72℃1分のサイクルを35回繰り返すことによりPCRしたところ、264bpのDNA(配列番号18)が得られた。この264bpのDNAをPstIで消化するとともにCRE4/pBluescriptIISK(+)のPstIサイトに挿入し、得られたプラスミドの配列を確認してCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)を作成した(図2)。このCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)を、HindIIIとSmaIで消化した後、得られたCRE4VIPプロモーター断片の末端平滑化を行った。
実施例2で得たpBabeCLXIHよりIRES〜hyg(r)領域を除去したpBabeCLXを作成した(図3)。PBabeCLXよりレトロウイルス本来のエンハンサー活性(LTR)中のNheI〜NarI領域を除去することによって得られた外来性プロモーター導入用レトロウイルスベクタープラスミドに、末端平滑化した上述のCRE4VIPプロモーター断片と、レポーター遺伝子である胎盤由来アルカリフォスファターゼ(Placental Alkaline Phosphatase:PLAP)(Goto M et al., Mol. Pharmacol. 49(5):860-73, 1996)を導入し、pBabeCLcre4vPdNNを得た(図4)。
(2) サイクリックAMP応答配列を含むレポーター系導入細胞SE302の樹立
サイクリックAMP応答配列によりレポーター遺伝子PLAPが誘導されるレトロウイルスベクタープラスミドpBabeCLcre4vPdNNを用い、実施例4に記載の方法に準じてレトロウイルスベクターを調製した。調製したレトロウイルスベクターをHEK293細胞に導入し、限界希釈法により細胞をクローン化して、PLAP誘導の反応性が最も良かったクローン(以下、「SE302」と称する)を以下の実験に供した。
実施例6: ウイルスベクターによるGPR120−SE302細胞の作成
実施例5で構築したSE302細胞を、コラーゲンコート6穴プレート(旭テクノグラス社)に1穴当たり1.2×10個になるように播種した。培地はDMEM(シグマ社))(10% FBS、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)を用い、2ml/穴の容量で培養した。翌日、実施例4で得たGPR120、または、mGPR120含有ウイルスベクター液、および、最終濃度8μg/mlのpolybrene(別名 hexadimethrine bromide, シグマ社)をSE302細胞に加えた。500μg/mlのハイグロマイシン(インビトロジェン社)含有の培養液で培養し、この条件で増殖してきた細胞をGPR120遺伝子導入SE302細胞、および、mGPR120遺伝子導入SE302細胞(以下、それぞれ「GPR120−SE302細胞」、「mGPR120−SE302細胞」と称する)として実験に供した。
実施例7: 遺伝子導入SE302細胞における転写活性の測定
前記実施例6で構築したGPR120−SE302細胞、もしくはmGPR120-SE302細胞を、転写活性測定用培地(DMEMに65℃にて30分熱処理したFBSを最終濃度10%になるように加えたもの)にて懸濁した後、96穴プレート(ベクトンディッキンソン社)に、1×10細胞/wellで播種した。また、コントロール細胞としては、緑色蛍光タンパク質(GFP、Invitrogen社)を発現させたSE302細胞(以下、「GFP−SE302細胞」を用いた。)具体的には、実施例3、4に示す方法にGFP発現用ウイルス得た後、実施例6に示す方法でSE302に感染させてGFP−SE302細胞を作製した。細胞播種24時間培養後、最終濃度1.0μMとなるように調製したフォルスコリンおよび試料を添加した。更に24時間培養後、細胞上清を5μl回収してポリプロピレン製384穴ホワイトプレート(ナルジェヌンクインターナショナル株式会社)に移し、20μlのアッセイ用緩衝液(280mmol/L NaCO−NaHCO、8mmol/L MgSO、pH10)および25μlのLumiphos530(Lumigen社)を添加した。室温で2時間反応させた後、各穴の化学発光をFusionプレートリーダー(Perkin Elmer社)にて測定し、転写活性量とした。この測定値をもとにして、転写活性量促進/抑制を以下に示した式(I)で計算し、[% of control]で表した。試料添加群の活性は、それぞれのプレート毎に設置した対照の値を用いて算出した。
[% of control] = (X−C)/(F−C)x100 (I)
ここで、上記式中、
X: 試料添加群のPLAP転写活性
F: ポジティブコントロール(試料無添加、フォルスコリン刺激あり)の2穴のPLAP転写活性の平均値
C: ネガティブコントロール(試料無添加、フォルスコリン刺激なし)の2穴のPLAP転写活性の平均値
である。
実施例8: SYBR Green PCR法を用いたGPR120のマウスにおける臓器発現分布
mRNAの発現量の定量には、ABI PRISM 7700 Sequence Detector(アプライドバイオシステムズ社)を用いた。発現量の定量に用いるプライマー5’側プライマー(5’−TCCGAGTGTCCCAACAAGACT−3’)(配列番号19)、および3’側プライマー(5’−GGATCAAGATGAGGAGGATGG−3’)(配列番号20)は、マウスGPR120の塩基配列(配列番号3)を基に、ABI PRISM Sequence Detector専用のソフトウエアPrimer Express を利用して設計した。
7週令のC57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社より入手)から各種臓器を摘出し、RNeasy Mini kit (QIAGEN社)を用い、マニュアルにしたがってDNase処理を行うプロトコールで、total RNAを抽出した。DNase処理は、DNaseI (RNase Free)(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用い、25℃で15分間行った。得られたtotal RNA 50ng相当を、TaqMan逆転写試薬(TaqMan Reverse Transcription Reagents)(アプライドバイオシステムズ社)を用い、25℃10分、48℃60分、95℃10分で逆転写を行うことによりcDNAを合成した。PCR反応液はSYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、10xSYBR Green 2.5μl、25mM MgCl 3.0μl、dNTP mix 2.0μl、AmpliTaq Gold 0.125μl、cDNA溶液となるように混ぜ合わせ、蒸留水で25μlとして調製した。ABI PRISM 7700 Sequence Detectorでの反応は、50℃で2分、95℃で10分の後、94℃20秒、58℃20秒、72℃30秒のサイクルを40回繰り返した。
各種臓器でのmRNAの発現分布は図5に示されたとおりであった。図5のように、下垂体、肺、腸管(特に、回腸、盲腸、大腸)、精巣、前立腺、甲状腺、副腎で高い発現が検出された。
実施例9: マウス腸管および精巣抽出物におけるGPR120−SE302細胞特異的にPLAPを上昇させる活性物質の検出
実施例8に示すマウスの発現分布に基づき、GPR120の発現量が多かった腸管および精巣の抽出物を用いて、以下に示す方法でGPR120に特異的なリガンド活性を示す物質の探索を行った。
6週令のC57BL/6CrSlcマウス(日本エスエルシー株式会社)から腸管18gおよび精巣20gを摘出後、直ちにドライアイスで凍結し、−80℃で使用時まで保管した。凍結した臓器の重量の10倍量のホモジネートバッファー(70% アセトン、1M 酢酸、20mM 塩酸、予め4℃で冷却)に、臓器を凍結したまま入れて、家庭用ファイバーミキサーMX−X103(松下電器産業株式会社)で粉砕した。2時間氷冷下で抽出後、500ml容遠心瓶(ナルジェヌンクインターナショナル株式会社)に移し、10,000xgで30分4℃にて遠心した。遠心後、上清をキャップ付ガラス瓶に移し、等容量のジエチルエーテルを加えて3分間よく振った後、30分間4℃で静置し、上層の脂質を含むエーテル層と下層の水層に分離させた。エーテル層をアスピレーターで除去後、残った水層に対して、再び等容量のジエチルエーテルを加え、3分間よく振った。30分間4℃で静置した後、再び上層のエーテル層をアスピレーターにより除去した。
得られた水層を50ml容オークリッジ遠沈管(ナルジェヌンクインターナショナル株式会社)に移し、20,000xgで30分、4℃にて遠心した。遠心後、中間の水層を採取し、抽出液とした。抽出液を100μmナイロン製セルストレイナー(ベクトンディッキンソン株式会社)でろ過後、水で2.5倍に希釈し、HF MEGA BOND ELUTE C18 カラム(10g樹脂、60ml容量、バリアン社)に付した。カラムを0.1%トリフルオロ酢酸(以下、TFAと略す)80mlで洗浄後、0.1% TFAを含む50% アセトニトリル40mlで溶出した。このとき、カラム1本あたりに適用する抽出物は、出発材料の臓器重量が40g以下となるようにし、それ以上の場合には複数本のカラムを用い溶出後に1つにまとめた。
溶出液を凍結乾燥することにより得られた粉末を1M酢酸で溶解し、Millex−GV 0.22μm PVDF フィルター(ミリポア社)でろ過後、ODSカラム(YMC−Pack ODS−A、4.6Φ x 300mm、ワイエムシイ株式会社)に付した。溶出は24−48%アセトニトリルの濃度勾配により行い、1分毎に分画した各分画を減圧下、濃縮・乾固した。これらを0.1% TFAに溶かし、実施例7に示した方法にしたがってPLAP活性を測定した。その結果、アセトニトリル34%付近の分画に、GPR120−SE302において顕著なPLAP活性の上昇が確認された。このPLAP上昇活性は他のレセプター発現細胞では認められなかったことから、マウス腸管および精巣抽出物両方において、GPR120特異的なリガンド活性物質が存在することが示された。
実施例10: ラット腸管および精巣抽出物におけるGPR120−SE302細胞特異的にPLAPを上昇させる活性物質の検出
ラットの精巣および腸管にも、マウスと同様に、GPR120に特異的なリガンド活性を示す物質が存在するか検討を行った。
9週令のWistarラット(日本エスエルシー株式会社より入手)100匹から、精巣約300gと腸管約450gを摘出し、直ちにドライアイスで凍結した。実施例9に示した方法で、腸管および精巣の抽出物を作成した。凍結乾燥した粉末を1M酢酸で溶解し、Millex−GV 0.22μm PVDFフィルター(ミリポア社)でろ過後、ODSカラム(YMC−Pack ODS−A、4.6Φ x 300mm、ワイエムシイ株式会社)に付した。24−48%アセトニトリルの濃度勾配溶出法により溶出させた液を1分毎に分取した。ここで、ODSカラムでの分取は、1回あたりのサンプルの付加量が出発の臓器重量として20g以下となるように、複数回に分けて行い、後にサンプルを1つにまとめて以後の実験に供した。各分画を減圧下、濃縮・乾固させ、実施例7に示す方法でPLAP活性を測定した。
その結果、マウス抽出物を用いた場合と同様に、GPR120−SE302細胞特異的なPLAP活性の上昇が検出された。よって、ラットの腸管および精巣の抽出物中にも、GPR120特異的なリガンド活性物質が存在することが示された。以後の実験には、臓器重量が多いラットを用いることにした。
実施例11: GPR120−SE302細胞に対して特異的にPLAP活性を上昇させる活性物質のラット腸管からの精製およびアミノ酸配列の決定
実施例10で得られたラット腸管抽出物の活性フラクションの乾燥粉末を、10%アセトニトリルを含む10mM ギ酸アンモニウム(リン酸でpHを3に調整したもの)に溶解した後、陽イオン交換カラム(TSKgel SP-5PW、7.5Φ x 75mm、東ソー株式会社)に付した。10%アセトニトリル存在下で、10mMから1.0Mのギ酸アンモニウムの濃度勾配により溶出した。活性は、ギ酸アンモニウム 280mM付近に回収された。活性分画を、Diphenylカラム(Vydac219TP Diphenyl Reversed Phase、4.6Φ x 250mm、GRACE VYDAC)に付した後、0.1% TFAを含む21%から48%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出した結果、アセトニトリル30%付近に活性が検出された。
活性分画を0.1% TFAで3倍希釈した後、ODSカラム(Vydac218TP C18 Reversed Phase、4.6Φ x 250mm、GRACE VYDAC)に付し、0.1% TFAを含む27%から42%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出した。活性はアセトニトリル34%付近に認められた。
活性分画を0.1% TFAで3倍希釈し、μRPC C2/C18カラム(4.6Φ x 100mm、アマシャムバイオサイエンス株式会社)に付した後、0.1% TFAを含む24%から48%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出し、溶出液はピーク毎に手動で分取した。活性はアセトニトリ35%付近に認められた。
活性分画を、0.1% ヘプタフルオロ酪酸(以下、HFBAと記す)で3倍希釈した後、ODSカラム(YMC-Pack ProC18、2.0Φ x 150mm、株式会社ワイエムシイ)に付した。0.1% HFBAを含む24%から48%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出し、溶出液はピーク毎に手動で分取した。活性はアセトニトリル35%付近に得られた。
活性分画を、株式会社アプロサイエンスの受託分析サービスにアミノ酸分析を依頼し、Procise 494 cLC(Applied Biosystems, USA)を用いたN末アミノ酸分析法によりアミノ酸配列を決定したところ、N末から17残基までに、XLLELAGTLDXVGPRSP(配列番号21)の配列が得られた。この配列は、シークエンスが読めなかったXの残基を除いて、前駆体ラットGroup X secretory Phospholipase A2(GX−sPLA2)(配列番号22、Swiss‐Prot アクセッション番号:Q9QZT3)の29番目から45番目まで、すなわち、ラットGX−sPLA2(配列番号23)のN末から17残基までと100%一致した。配列番号21の1番目のXは機器のトラブルで1サイクル目のクロマトグラムの一部が得られなかった。また配列番号21の11番目のXは収量的に相当するアミノ酸が検出されなかったが、この残基はデータベース配列Q9QZT3(配列番号22)からシステインと推測された。
実施例12: GPR120−SE302細胞に対して特異的にPLAP活性を上昇させる活性物質のラット精巣からの精製およびアミノ酸配列の決定
実施例10で得られたラット精巣抽出物の活性フラクションの乾燥粉末を、10%アセトニトリルを含む10mM ギ酸アンモニウム(リン酸でpHを3に調整したもの)に溶解した後、陽イオン交換カラム(TSKgel SP-5PW,7.5Φ x 75mm、東ソー株式会社)に付した。10%アセトニトリル存在下で、10mMから1.0Mのギ酸アンモニウムの濃度勾配により溶出した。活性は、ギ酸アンモニウム280mM付近に回収された。活性分画を、Diphenylカラム(Vydac219TP Diphenyl Reversed Phase、4.6Φ x 250mm、GRACE VYDAC)に付した後、0.1% TFAを含む21%から48%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出した結果、アセトニトリル30%付近に活性が検出された。
活性分画を0.1% HFBAで3倍希釈した後、ODSカラム(Vydac218TP C18 Reversed Phase、4.6Φ x 250mm、GRACE VYDAC)に付した後、0.1% HFBAを含む27%から51%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出した結果、活性はアセトニトリル44%付近に認められた(図6-A)。
活性分画を0.1% HFBAで3倍希釈し、ODSカラム(SunFire(商標) C18 3.5μm、2.1Φ x 150mm、Waters)に付した後、28.8%から46.8%の濃度勾配により溶出し、溶出液はピーク毎に手動で分取した。活性はアセトニトリル36%付近に単一ピークとして得られた(図6-B)。
活性分画を、株式会社アプロサイエンスの受託分析サービスにアミノ酸分析を依頼し、Procise 494 cLC(Applied Biosystems, USA)を用いたN末アミノ酸分析法によりアミノ酸配列を決定したところ、N末から15残基までに、GLLELAGTLDXVGPR(配列番号24)の配列が得られた。この配列は、シークエンスが読めなかったXの残基を除いて、前駆体ラットGX−sPLA2(配列番号22)の29番目から43番目まで、すなわち、ラットGX−sPLA2(配列番号23)のN末から15残基までと100%一致した。配列番号24のXは収量的に相当するアミノ酸が検出されなかったが、この残基はデータベース配列(配列番号22)からシステイン残基と推測された。
実施例13: ヒトおよびマウスのGX−sPLA2の前駆体をコードするcDNAのクローニング
ラット腸管および精巣の抽出物から得られたGPR120−SE302細胞に対して特異的にPLAP活性を上昇させる物質として同定されたGX−sPLA2のヒト、およびマウスのホモログの前駆体をコードするcDNAを、以下に示す方法にしたがって行った。
(1) ヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2)の前駆体をコードするcDNAのクローニング
hGX−sPLA2の前駆体をコードするポリヌクレオチドの単離は、配列番号25(GenBank アクセッション番号NM_003561)であらわされる核酸配列を基にして、hGX−sPLA2のコード領域441番目から938番目に対してプライマーを設計し5’側プライマー(5’−ATGGGGCCGCTACCTGTGTGCCTGCC−3’)(配列番号26)および3’側プライマー(5’−TCAGTCACACTTGGGCGAGTCCGGC−3’)(配列番号27)、Human Lung QUICK-Clone cDNA(クロンテック社)を鋳型として、PCRを行った。FastStart High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)を用い、94℃5分の後、94℃1分、61℃1分、72℃3分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。増幅された約500bpのPCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入し、hGX−sPLA2−pCR2.1を得た。
ABI prism DNA sequencing kit(Perkin-Elmer Applied Biosystems社)により配列を確認した結果、pCR2.1に挿入された498塩基対の配列は、配列番号25における441番目から938番目と同一配列であった。
(2) マウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2)をコードするcDNAのクローニング
mGX−sPLA2をコードするポリヌクレオチドの単離は、配列番号28(GenBank アクセッション番号NM_011987)であらわされる核酸配列を基にして、mGX−sPLA2のコード領域175番目から630番目に対してプライマー5’側プライマー(5’−ATGCTGCTGCTACTGCTGCTGTTGC−3’)(配列番号29)および3’側プライマー(5’−TCAATTGCACTTGGGAGAGTCCTTC−3’)(配列番号30)を設計した。鋳型なるcDNAは、実施例8に記したC57BL/6NCrjマウスの大腸のRNAを実施例8と同様の方法で逆転写したものを用いた。FastStart High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)を用い、94℃5分の後、94℃1分、58℃1分、72℃3分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。増幅された約450bpのPCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入し、mGX−sPLA2−pCR2.1を得た。
ABI prism DNA sequencing kit(Perkin-Elmer Applied Biosystems社)により配列を確認した結果、pCR2.1に挿入された456塩基対の配列は、配列番号28における 175番目から630番目と同一配列であった。
実施例14: C末Hisタグ付きGX−sPLA2(GX−sPLA2−His6)の遺伝子導入用レトロウイルスベクターの作成
(1) C末Hisタグ付きGX−sPLA2(GX−sPLA2−His6)のクローニング
C末Hisタグ付きヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2−His6)は、実施例13で得たhGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として5’側プライマー(5’−GATATCGCCGCCACCATGGGGCCGCTACCTGTG−3’)(配列番号31)および3’側プライマー(5’−GATATCTCAATGGTGATGGTGATGATGGTCACACTTGGGCGAGTC−3’)(配列番号32)のプライマーを用いてPCRを行った。同様に、C末Hisタグ付きマウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2−His6)は、実施例13で得たmGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として5’側プライマー(5’−GATATCGCCGCCACCATGCTGCTGCTACTGCTG−3’)(配列番号33)および3’側プライマー(5’−GATATCTCAATGGTGATGGTGATGA TGATTGCACTTGGGAGAGTC−3’)(配列番号34)のプライマーを用いてPCRを行った。PCRは、FastStart High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)を用い、94℃5分の後、94℃1分、61℃1分(hGX−sPLA2の場合)もしくは58℃1分(mGX−sPLA2の場合)、72℃3分のサイクルを15回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。得られたPCR産物を再びpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入し、hGX−sPLA2−His6−pCR2.1およびmGX−sPLA2−His6−pCR2.1を得た。
(2) hGX−sPLA2−His6およびmGX−sPLA2−His6のレトロウイルスベクターの調製
hGX−sPLA2−His6−pCR2.1およびmGX−sPLA2−His6−pCR2.1をEcoRVで切断し、それぞれhGX−sPLA2−His6およびmGX−sPLA2−His6を切り出した。これを、制限酵素HpaIで切断したpBabeCLXIH(実施例2に記載)にサブクローニングし、GX−sPLA2−His6遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミドpBabe(hGX−sPLA2−His6)IHおよびpBabe(mGX−sPLA2−His6)IHを得た。これらを、実施例4と同様の方法を用いて、レトロウイルスベクター溶液を作成した。
実施例15: GX−sPLA2−His6発現CHO−K1細胞作成
1.2×10個のCHO−K1細胞を、DMEM(10% FBS、ペニシリン 100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)2mlを用いて6well plate(日本ベクトンディッキンソン株式会社)に培養した。翌日、培地を取り除き、実施例14で調製したレトロウイルスベクター4mlおよび1.6mg/ml polybrene 20μl(最終濃度8μg/ml)を加えた。その後、350μg/mlハイグロマイシン含有の培養液で培養することにより生き残ってきた細胞を、ヒトおよびマウスHisタグ付きGX−sPLA2発現CHO−K1細胞(それぞれ、hGX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞および、mGX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞)として以下の実験に供した。
実施例16: Hisタグ付きGX−sPLA2発現HEK細胞作成
1.2×10個のHEK細胞を、DMEM(10%FBS、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)2mlを用いてコラーゲンコート6well plate(旭テクノグラス社)に培養した。翌日、培地を取り除き、実施例14で調製したレトロウイルスベクター4mlおよび1.6mg/ml polybrene 20μl(最終濃度8μg/ml)を加えた。その後、350μg/mlのハイグロマイシン含有の培養液で培養することにより、生き残ってきた細胞をヒトおよびマウスHisタグ付きGX−sPLA2発現HEK細胞(それぞれ、hGX−sPLA2−His6−HEK細胞および、mGX−sPLA2−His6−HEK細胞)として以下の実験に供したとして以下の実験に供した。
実施例17: ヒトおよびマウスGX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞の培養メディウムを用いたGPR120−SE302細胞のPLAP活性
hGX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞およびmGX−sPLA2−His6−CHO−K1細胞を、DMEM(10% FBS、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)10mlを用いて、10cm径シャーレ(ベクトンディッキンソン社)に培養した。コンフルエントに達してから2日培養後、培地を回収し、実施例7に示す方法にしたがってGPR120−SE302細胞のPLAP活性を測定した。図7に示すように、両細胞のメディウム中に、GPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を上昇させる活性が存在することが明らかになった。
実施例18: ヒトおよびマウスGX−sPLA2−His6−HEK細胞の培養メディウムを用いたGPR120−SE302細胞のPLAP活性の測定
hGX−sPLA2−His6−HEK細胞およびmGX−sPLA2−His6−HEK細胞を、DMEM(10% FBS、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)10mlを用いて、コラーゲンコート10cm径シャーレ(旭テクノグラス社)に培養した。コンフルエントに達してから2日培養後、培地を回収し、実施例7に示す方法にしたがってGPR120−SE302細胞のPLAP活性を測定した。図8に示すように、両細胞のメディウム中に、GPR120−SE302におけるPLAP活性を上昇させる活性が存在することが明らかになった。
実施例19: C末Hisタグ付きGX−sPLA2の遺伝子導入用バキュロウイルスの作製
C末Hisタグ付きGX−sPLA2の遺伝子導入用バキュロウイルスは、BAC−TO−BAC Baculovirus Expression Systems (インビトロジェン株式会社)を用いて、キットに含まれるマニュアルに従って作製した。具体的には、実施例14で得たhGX−sPLA2−His6―pCR2.1、および、mGX−sPLA2−His6−pCR2.1を、制限酵素XbaIおよびHindIIIで切断し、同じくXbaIおよびHindIIで切断しておいたpFASTBAC1プラスミドに挿入することにより、それぞれhGX−sPLA2−His6−pFASTBACおよび、mGX−sPLA2−His6−pFASTBACを得た。これらプラスミドを、キット付属のDH10BAC コンピテントセルにトランスポジションすることにより、バクミドDNAを回収した。SF900 II SFM(インビトロジェン社)で培養したSf9細胞に、バクミドDNAをセルフェクチン(インビトロジェン社)によりトランスフェクションし、3日後に培養上清を回収することにより、ヒトおよびマウスC末Hisタグ付きGX−sPLA2遺伝子導入用バキュロウイルスを得た。
実施例20: C末Hisタグ付きGX−sPLA2の精製
実施例19で得たヒトおよびマウスC末Hisタグ付きGX−sPLA2遺伝子導入用バキュロウイルスを、それぞれSf9細胞に感染させ、三角フラスコ中で振とう培養を行った。60時間後に培養液を遠心することにより培養上清を得た。培養上清にFinal 10 mM イミダゾール(シグマ社)を加え、 Ni Sepharose 6 Fast Flow カラム(アマシャムバイオサイエンス社)に付した。カラムの5倍量のBinding Buffer(10mMイミダゾール、500mM NaCl、20mM NaHPO、pH7.4)で洗浄した後、Elution Buffer(500mM イミダゾール、500mM NaCl、20mM NaHPO、50mM Tris−HCl、pH7.4)で溶出した。溶出液を0.1% TFAで5倍希釈した後、HF MEGA BOND ELUTE C18カラム(バリアン社)に付した。カラムを、0.1% TFAを含む50% アセトニトリルで溶出し、凍結乾燥により、ヒトおよびマウスの精製C末Hisタグ付きGX−sPLA2(それぞれ、hGX−sPLA2−His、および、mGX−sPLA2−His)を得た。
実施例21: C末Hisタグ付きマウスGX−sPLA2を用いたGPR120−SE302におけるPLAP活性の測定
実施例20で得たhGX−sPLA2−HisおよびmGX−sPLA2−Hisの凍結乾燥粉末を、適量の0.1% TFA溶液に溶かした。これらを用いて、実施例7記載の方法によりmGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図9に示すように、hGX−sPLA2−His(図9−A)および、mGX−sPLA2−His(図9−B)の濃度に応じて、mGPR−SE302細胞おけるPLAP活性の上昇が観察され、GPR120がレコンビナントのGX−sPLA2によっても活性化されることが明らかになった。
実施例22: 市販ブタ膵臓由来sPLA2を用いたGPR120−SE302細胞のPLAP活性の測定
ブタ膵臓由来sPLA2(Phospholipase A2from porcine pancreas (ammonium sulfate suspension (using soybean L-α-phosphatidylcholine)600ユニット/mg protein,pH8.0,37℃))を遠心後、ペレットを水に溶かし、実施例7に記載する方法にしたがってPLAP活性を測定した。図10に示すように、GPR120−SE302細胞(図10−A)、および、mGPR120−SE302細胞(図10−B)において濃度依存的なPLAP活性の上昇が検出された。このブタ膵臓由来sPLA2は、主にGroupIB sPLA2(GIB−sPLA2)(Swiss Protアクセッション番号P00592)であることが確認されていることから(Ta-min Chang et al., J. Biol. Chem. 274(16):10758-10764, 1999)、GPR120は、GX−sPLA2のみでなくGIB−sPLA2によっても活性化されることが示された。
実施例23: 市販ハチ毒PLA2を用いたGPR120−SE302細胞のPLAP活性の測定
ハチ毒PLA2(bvPLA2)(Phospholipase A2 from honey bee venom (salt-free, lyophilized powder, 600‐1800ユニット/mg protein))を水に溶かし、実施例7に記載する方法にしたがってGPR120−SE302細胞、および、mGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図11に示すように、GPR120−SE302細胞(図11−A)、および、mGPR120−SE302(図11−B)において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出された。このことから、GX−sPLA2やGIB−sPLA2などの分泌型PLA2のみではなく、ハチ毒由来のPLA2によってもGPR120が活性化されることが示された。
実施例24: 市販ヘビ毒PLA2を用いたGPR120−SE302細胞のPLAP活性の測定
ヘビ毒PLA2(snake venom PLA2)(Phospholipase A2 from Naja mossambica mossambica、シグマ社)を水に溶かし、実施例7に記載する方法に従ってGPR120−SE302細胞、および、mGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図12に示すように、GPR120−SE302細胞(図12A)、および、mGPR120−SE302(図12B)において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出された。このことから、ヘビ毒由来のPLA2によってもGPR120が活性化されることが示された。
実施例25: C末FLAG タグ付きGX−sPLA2のcDNAクローニング
実施例13で得たhGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として、配列番号31に示す5’側プライマー、および、3’側プライマー(5’−GATATCTCACTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCGTCACACTTGGGCGA−3’)(配列番号42)を用いてPCRを行うことにより、C末FLAGタグ付きヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2−FLAG)(配列番号43)を得た。同様に、実施例13で得たmGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として、配列番号33に示す5’側プライマー、および、3’側プライマー(5’−GATATCTCACTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCATTGCACTTGGGAGA−3’)(配列番号44)のプライマーを用いてPCRを行うことにより、C末FLAGタグ付きマウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2−FLAG)を得た(配列番号45)。得られたPCR産物を再びpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入し、それぞれhGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1およびmGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を得た。
実施例26: C末FLAGタグ付きレコンビナントhGX−sPLA2を用いたGPR120−SE302細胞のPLAP活性の測定
実施例25で得たhGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を制限酵素EcoRVで消化し、切り出したフラグメントをpYNGベクター(片倉工業株式会社製)のEcoRVサイトにサブクローニングした。タンパク質産生サービス(Superworm system)(片倉工業株式会社製)に受託し、カイコサナギ抽出液を得た。カイコサナギ抽出液をANTI-FLAG M2 Agarose(シグマ社)に付し、付属のマニュアルに従い精製を行った。sPLA2酵素活性は、sPLA2 Assay Kit (Cayman Chemical 社)を用いて付属のマニュアルに従い行った。活性分画をVYDAC(商標) Protein & Peptide C18カラム (#218TP54、VYDAC社)に付した後、0.1% TFAを含む24〜42%アセトニトリルの濃度勾配により溶出した。得られたピークのうち、もっともsPLA2の比活性の高かったシングルピークをレコンビナントhGX−sPLA2として、PLAPアッセイに用いた。なお、レコンビナントの蛋白濃度は、Dcプロテインアッセイ(BioRad社)を用い測定した。得られたレコンビナントhGX−sPLA2を0.1%TFAに溶かし、実施例7に記載する方法にしたがってGPR120−SE302細胞、および、mGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図13に示すように、GPR120−SE302細胞(図13A)、および、mGPR120−SE302(図13B)において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出された。このことから、C末FLAGタグ付きレコンビナントhGX−sPLA2によってもGPR120が活性化されることが示された。
実施例27: C末FLAGタグ付きレコンビナントmGX−sPLA2を用いたGPR120−SE302細胞のPLAP活性の測定
実施例25で得たmGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を制限酵素BamHI、XbaIで消化し、切り出したフラグメントをpFastBac(インビトロジェン社)のBamHI、XbaIサイトにサブクローニングし、mGX−sPLA2−FLAG−pFAST Bacを得た。Bac-to-Bac(商標) Baculovirus Expression System(インビトロジェン社)を用いてバキュロウイルスを得た後、昆虫細胞Sf−9感染させた。Sf−9細胞は、SF−900II培地(インビトロジェン社)(ペニシリン/ストレプトマイシン、2.5% FCS)で培養した。バキュロウイルス感染Sf−9細胞培養上清をANTI-FLAG M2 Agarose(シグマ社)に付し、付属のマニュアルに従い精製を行った。sPLA2酵素活性は、sPLA2 Assay Kit (Cayman Chemical 社)を用いて付属のマニュアルに従い行った。活性分画をVYDAC(商標) Protein & Peptide C18カラム (#218TP54、VYDAC社)に付した後、0.1% TFAを含む24〜54%アセトニトリルの濃度勾配により溶出した。得られたピークのうち、もっとも比活性の高かったシングルピークをレコンビナントmGX−sPLA2として、PLAPアッセイに用いた。なお、レコンビナントの蛋白濃度は、Dcプロテインアッセイ(BioRad社)を用い測定した。得られたレコンビナントmGX−sPLA2を0.05%TFA、1% BSA (Fatty Acid Free、シグマ社)に溶かし、実施例7に記載する方法にしたがってGPR120−SE302細胞、および、mGPR120−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図14に示すように、GPR120−SE302細胞(図14A)、および、mGPR120−SE302(図14B)において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出された。このことから、C末FLAGタグ付きmGX−sPLA2によってもGPR120が活性化されることが示された。
実施例28: SYBR Green PCR法を用いた肺、および、肺胞マクロファージのGPR120の遺伝子発現量の定量
8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)、または、8週令の雄性BALB/cAnNcrlcrljマウス(日本チャールズリバー株式会社)をネンブタール麻酔下、気道よりカテーテルを挿入し、0.8mLのPBS(−)(Phosphate Buffered Saline、シグマ社、4℃)で4回、肺胞洗浄(Broncho-Alveolar Lavage:BAL)を行った。得られた肺胞洗浄液(Broncho-Alveolar Lavage Fluid:BALF)のうち、500μlをサイトスピン(サーモエレクトロン社)で350rpm、5分間遠心することにより細胞集積し、ディフ・クイック(国際試薬株式会社)により、染色を行った。図15Aに示すように、肺胞洗浄液中に含まれる細胞のほとんどは肺胞マクロファージであることが確認できた。残りのBALFを450xgで10分間遠心することにより細胞集積を行い、RNeasy Mini kit(QIAGEN社)を用い、実施例8に記載の方法に従ってtotal RNAを得た。また、肺からも同様にtotal RNAを得た。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。図15に示すように、C57BL/6(図15B)、および、マウスBALB/c(図15C)において、肺胞マクロファージにおいても肺と同程度のマウスGPR120 mRNAの発現が確認された。
また、 8週令のSprague−Dawley ラット(日本エスエルシー株式会社)をネンブタール麻酔下、気道にカテーテルを挿入し、5mlのPBS(−)で5回肺胞洗浄を行った。450xgで10分間延伸することにより細胞集積を行い、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用い、total RNAを回収した。また、肺からも同様にtotal RNAを得た。実施例8に記載の方法に従い、逆転写を行いcDNAを合成した後、5’側プライマー(5’−TGATCCAGAACTTCCGGCA−3’)(配列番号46)、および、3’側プライマー(5’−CGGAGTTGGCAAACGTGAA−3’)(配列番号47)および、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、10xSYBR Green 2.5μl、25mM MgCl2 3.0μl、dNTP mix 2.0μl、AmpliTaq Gold 0.125μl、10μM 5’側プライマー0.5μl、10μM3’側プライマー0.5μl、cDNA溶液を混ぜ、蒸留水で25μlとなるよう調製した。なお、配列番号46および47のプライマーは、ラットGPR120の塩基配列(配列番号5)を基に、ABI PRISM Sequence Detector専用のソフトウエア Primer Expressを利用して設計した。ABI PRISM 7700 Sequence Detectorでの反応は、50℃2分、95℃10分の後、94℃20秒、58℃20秒、72℃30秒のサイクルを40回繰り返した。図15Dに示すように、ラットにおいても肺、および、肺胞マクロファージで同程度のGPR120 mRNAの発現が確認された。
実施例29: SYBR Green PCR法を用いた種々マクロファージにおけるGPR120の遺伝子発現量の定量
8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)を用いた。肺胞マクロファージは、実施例28記載の方法に従い採取した。腹腔マクロファージは、腹内を2.5mlのPBS(−)で2回洗うことにより回収した。また、3%チオグリコレート (シグマ社製) 2mlをマウス腹腔内に投与し、4日後に腹内を2.5mlのPBS(−)で2回洗うことにより、チオグリコレート投与群腹腔マクロファージを回収した。骨髄は大腿骨から採取した。骨髄由来マクロファージは、骨髄をBD Pharm Lyse(商標) Lysing Buffer(ベクトンディッキンソン社)を用いて5分間赤血球処理した後、RPMI1640(10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、50μM メルカプトエタノール)、および、最終濃度50ng/mlのレコンビナントマウスM−CSF(R&D Systems社)にサスペンドし、75cm2フラスコに播種し5日間培養することにより得た。各サンプルからのTotal RNAは、TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を用いてマニュアルに従って調製した。得られたtotal RNAをDNA−free(商標)(Ambion社)を用いて、マニュアルに従ってDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。
図16に示すように、腹腔マクロファージ、チオグリコレート投与マウスの腹腔マクロファージ、および、骨髄由来マクロファージにおいては、肺胞マクロファージと比較して、10分の1、もしくはそれ以下のGPR120 mRNAしか検出されなかった。また、骨髄ではほとんどGPR120の発現が観察されなかったが、腸間膜リンパ節においてはGPR120の発現が観察された。
実施例30: SYBR Green PCR法を用いた初代培養肺胞マクロファージにおけるGPR120の遺伝子発現量の定量
肺胞マクロファージの初代培養は、Akagawa K. らの方法に従い行った (Akagawa K. et al., The Journal of Immunology, vol.141, 3383-3390, 1988)。詳しくは、8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)をネンブタール麻酔後、右心室よりPBS(−)、10U/mlヘパリンを灌流し脱血を行った。肺を摘出後、PBS(−)/1mM EDTA中で1−2mm角にハサミで刻み、70μmセルストレイナーでろ過しフロースルーを肺胞マクロファージとして回収した。1,500rpm、5分間遠心により回収された細胞を、BD Pharm Lyse(商標)Lysing Buffer(ベクトンディッキンソン社)を用いて5分間、赤血球処理を行った。再び1,500rpmで5分間遠心後、細胞をRPMI1640培地(ペニシリン/ストレプトマイシン、10%FBS、50μM β−メルカプトエタノール)にサスペンドし、24穴シャーレに播種した。最終濃度20ng/mlのレコンビナントマウスGM−CSF(R&D Systems社)を加え、2−3日おきに培地交換を行い、6日目間培養した。図17A、図17Bには、それぞれ播種直後、および、6日目の肺胞マクロファージの顕微鏡写真を示した。6日後に細胞を回収し、TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を用いてtotal RNAを調製した後、DNA−free(商標)(Ambion社)を用いてDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。図17Cに示すように、GPR120の発現量は、初代培養肺胞マクロファージにおいても、採取直後の肺胞マクロファージと同程度、維持されていることが示された。
実施例31: SYBR Green PCR法を用いた脂肪組織におけるGPR120の遺伝子発現量の定量
8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)より4種類の脂肪組織(皮下脂肪、副睾丸脂肪、腸間膜脂肪、および、褐色脂肪)を摘出し、QIAzol(商標) Lysis Reagent(QIAGEN社)中でホモジナイズし、クロロホルム抽出を行った後、RNeasy(QIAGEN社)を用いてマニュアルに従ってtotal RNA抽出を行った。得られたtotal RNAをDNA−free(商標)(Ambion社)を用いて、マニュアルに従ってDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。図18に示すように、いずれの脂肪組織においてもGPR120の発現が観察されたが、褐色脂肪組織においては特に高い発現が観察された。
実施例32: SYBR Green PCR法を用いたマウス由来培養脂肪細胞におけるGPR120の発現
3−4週齢の雄性Balb/cマウス(チャールズリバー社より入手)の鼠蹊部から皮下脂肪を摘出し、天井培養法(Sugihara H, et al. Differentiation 1986, 31:42-49.)により脂肪細胞(21Sc細胞と命名)を単離した。細胞は継代培養をおこなった後に凍結ストックを作製した。凍結ストックより21Sc細胞を起こし、1:4の希釈率で細胞培養用6穴プレートに播種後、通常培地(DMEM−4.5g/L glucose、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン)で4日間培養しコンフルエントにした。培地を誘導培地(通常培地に、0.5mM IBMX, 0.25uMデキサメタゾン、10μg/ml インスリン、0.2mMインドメタシンを添加したもの)に交換し2日間培養した。ついで、成熟培地(通常培地に5μg/ml インスリンを添加したもの)に交換し1−2日おきに成熟培地で培地交換を行った。分化誘導前、および誘導培地添加から6、13、20日後に、TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を用いてマニュアルに従ってtotal RNAを調製した。得られたtotal RNAをDNA−free(商標)(Ambion社)を用いて、マニュアルに従ってDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。各培養日数におけるGPR120のmRNA発現量を図19に示した。分化誘導前と比べて、分化誘導後の細胞では著しいGPR120 RNA量(約200倍程度)の増加が観察された。
実施例33: SYBR Green PCR法を用いたマウス骨髄由来樹状細胞におけるGPR120の遺伝子発現量の定量
8週令の雄性C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)の大腿骨より骨髄を採取し、Lutz M.B. らの方法に従って骨髄由来樹状細胞を得た(Lutz M.B. ら、Journal of Immunological Methods 233, 77-92, 1999)。具体的には、骨髄をBD Pharm Lyse(商標) Lysing Buffer(ベクトンディッキンソン)を用いて5分間赤血球処理した後、RPMI1640(10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、50μM メルカプトエタノール)、および、最終濃度20ng/mlのレコンビナントマウスGM−CSF(R&D Systems社)にサスペンドし、75cmフラスコに播種した。2〜3日おきに培地交換を行い(RPMI1640、ペニシリン/ストレプトマイシン、50μMメルカプトエタノール、20ng/ml レコンビナントマウスGM−CSF)、11日間培養することにより骨髄由来樹状細胞を得た。一部の樹状細胞に、11日目に1μg/ml LPS(シグマ社)を加え、24時間培養し、活性化した骨髄由来樹状細胞を得た。各サンプルからのTotal RNAは、TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を用いてマニュアルに従って調製した。得られたtotal RNAをDNA−free(商標)(Ambion社)を用いて、マニュアルに従ってDNase処理を行った。実施例8に記載の方法に従い逆転写でcDNA合成した後、配列番号19の5’側プライマー、および、配列番号20の3’側プライマーを用い、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて、実施例8に記載の方法に従いマウスGPR120のmRNA量を測定した。図20に示すように、骨髄由来樹状細胞にGPR120が発現していることが見出された。また、1μg/ml LPSで24時間刺激後は、刺激前と比較してGPR120の発現量が5分の1程度であった。

Claims (17)

  1. 被検物質が、GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質であるかをスクリーニングする方法であって、
    被検物質と、
    GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、
    ホスホリパーゼまたはその塩
    を用いることを特徴とする、前記方法。
  2. ホスホリパーゼが、ホスホリパーゼA1、またはホスホリパーゼA2である、請求項1に記載の方法。
  3. ホスホリパーゼが、ホスホリパーゼA2である、請求項1に記載の方法。
  4. ホスホリパーゼが、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIA分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIC分泌型ホスホリパーゼA2、グループIID分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIE分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIF分泌型ホスホリパーゼA2、グループIII分泌型ホスホリパーゼA2、グループV分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、グループXIIA分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ホスホリパーゼが、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4に記載の方法。
  6. 被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、細胞刺激活性を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とを比較する工程を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合との間で、結果に相違が出た場合に、その物質をGPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質であると決定する工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
  8. 被検物質が細胞刺激活性を上昇させる場合に、その物質をGPR120アゴニストと決定する工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
  9. 被検物質が細胞刺激活性を低下させる場合に、その物質をGPR120アンタゴニストと決定する工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
  10. 細胞刺激活性の測定を、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化を検出するレポーターアッセイ系により測定するか、または、細胞内カルシウムイオン遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌活性、コレシストキニン(CCK)分泌活性、および、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)分泌活性からなる群より選択されるパラメータを測定することによって行う、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. GPR120が、下記(a)〜(d)からなる群より選択されるポリペプチドからなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法:
    (a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
    (b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、
    (c) 配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
    (d) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、および、
    (e) 配列番号1で表される塩基配列に対して70%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
  12. GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、
    ホスホリパーゼまたはその塩と
    を少なくとも含んでなる、スクリーニング用キット。
  13. GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするためのものである、請求項12に記載のキット。
  14. GPR120が、下記(a)〜(d)からなる群より選択されるポリペプチドからなる、請求項13に記載のキット:
    (a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
    (b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、
    (c) 配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド、
    (d) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、および、
    (e) 配列番号1で表される塩基配列に対して70%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR120と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
  15. ホスホリパーゼが、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIA分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIC分泌型ホスホリパーゼA2、グループIID分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIE分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIF分泌型ホスホリパーゼA2、グループIII分泌型ホスホリパーゼA2、グループV分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、グループXIIA分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項13または14に記載のキット。
  16. ホスホリパーゼが、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項13または14に記載のキット。
  17. GPR120を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするための、
    GPR120を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、
    ホスホリパーゼまたはその塩
    の使用。
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