JP4990789B2 - Gpr40とホスホリパーゼとを用いる疾患に有用な物質のスクリーニング方法 - Google Patents

Gpr40とホスホリパーゼとを用いる疾患に有用な物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Description

関連出願の参照
本願は、先行する日本国特許出願である、特願2005−321108号(出願日:2005年11月4日)に基づくものであって、それらの優先権の利益を主張するものであり、それらの開示内容全体は参照することによりここに組み込まれる。
発明の背景
発明の分野
本発明は、Gタンパク質共役型受容体タンパク質であるGPR40と、ホスホリパーゼまたはその塩との細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングする方法、およびそのようなスクリーニングを実施するためのスクリーニング用キットに関する。
関連技術
多くのホルモンや神経伝達物質などの生理活性物質は、細胞膜に存在する特異的なレセプター蛋白質を介して、生体の機能を調節している。これらのレセプターの多くは、細胞膜を7回貫通する構造を有しており、細胞内で三量体のGタンパク質 (guanine nucleotide-binding protein) と共役していることから、Gタンパク質共役型受容体 (GPCR: G-protein coupled receptor) と呼ばれている。
GPCRは、各種の細胞、臓器、および器官の機能細胞表面に存在し、それらの機能を調節する分子との結合を介してシグナルを細胞内に伝達して、細胞の賦活化や抑制化をする。このため、GPCRは各種臓器および器官において重要な役割を担っている。このような生理活性物質とGPCRとの関係を明らかにすることは、生体の機能を解明し、それと密接に関連した医薬品開発をする上で重要である。医薬品を開発するためには、GPCRのアゴニストやアンタゴニストを効率良くスクリーニングして、生体内で発現しているレセプタータンパク質の遺伝子の機能を解析し、それらを適当な発現系で発現させる必要がある。
近年、ESTデータベース等のcDNA配列のランダム解析や、ゲノムDNAの網羅的解析により、多くの新規遺伝子の存在が明らかとなってきている。GPCRは、7個の膜貫通領域を有し、さらにそれ以外にも多くの共通配列を有している。このため、このような多くの新規遺伝子の中から新規GPCRが見出されている。このようにして見出された新規GPCRは通常そのリガンドは未同定である。リガンドが未同定のGPCR、すなわちオーファンGPCR、に対してリガンドを見出したり、その機能を解析したりすることは、新たな治療薬の開発につながる可能性があり、重要視されている。
そしてほとんどの場合、オーファンGPCRのリガンドの予測は困難である。GPCRのリガンドは、生体アミン、アミノ酸、核酸とその代謝物、ペプチド、タンパク質(ホルモン、ケモカイン)、脂質など多様である。リガンドを抽出物などから精製を行う場合、それぞれの物質の種類に適した抽出方法が必要となる。また、細胞に発現させたオーファンGPCRが、リガンドに応答した後にいかなる2次情報伝達系を作動させるかは一般的に不明であり、様々な系について検討する必要がある。リガンドの存在する組織の予想は容易でないため、種々の組織抽出物を用意しなければならない。このように、オーファンGPCRのリガンド探索は多くの困難さを伴う。新たなGPCRのリガンドを見出して、該リガンドを直接利用するか、または該リガンドを用いた医薬のスクリーニング系を利用することによって、今までにない新規な作用機序を有する医薬の開発が期待できる。
GPR40は、GPCRの一つとして知られている(Biochemical and Biophysiological Research Communications, Vol.239, pp543-547, (1997))。GPR40のリガンドは完全には解明されているとは言えないが、リガンドの一つとして脂肪酸が報告されている(WO2002/057783、およびWO2003/068959)。
GPR40は、膵臓細胞ランゲルハンス島β細胞において発現していることが知られている。マウス膵臓由来細胞株MIN6におけるグルコース依存的インスリン分泌にGPR40が関与していることが知られている(WO2003/068959)。また、膵島の初代培養細胞におけるインスリン分泌にGPR40が関与していることが報告されている(Ito Y et al., Nature, 422 (6928):173-6, 2003)。また、GPR40は、乳がんの増殖に関与していることが報告されている(Hardy S et al., Journal of Biological Chemistry, 280(14):13285-91, 2005)。さらに、GPR40の発現を低下させたマウスにおいては、肥満によって引き起される高インスリン血症や、脂肪肝、高グリセリド血症などが緩和されることが報告されている(Steneberg P et al., Cell Metabolism, 1(4):245-58, 2005)。これらのことから、GPR40のアゴニスト、アンタゴニストは、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)、糖尿病性の合併症や変性疾患(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、高血糖、多尿、ケトン血症、アシドーシス、インスリン抵抗性、耐糖能障害、神経変性疾患、インスリノーマ、癌、高インスリン血症、高グリセリド血症、脂肪肝、インスリン過剰分泌による低血糖、動脈硬化、高脂血症、脳卒中、肥満、糖尿病や肥満によって引き起こされる各種疾患等の治療への応用が期待される。
上述のとおり、GPR40のリガンドの一つとして脂肪酸が報告されているが、脂肪酸は、水系の溶媒への溶解度が低いため、リガンド溶液の調製が困難となることが多い。また脂肪酸は、スクリーニングに用いるプラスチックやガラスへの吸着が大きく、さらに、不飽和脂肪酸は酸化され易い。さらに、脂肪酸は、アルブミンとの結合率が高いことが知られている。脂肪酸は、生理的には、遊離脂肪酸として存在するのはごくわずか(1%程度)であり、ほとんどは血中のアルブミンに結合した状態で存在する。このため、脂肪酸を用いたGPR40のスクリーングにおいて、実際に、牛血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)による、脂肪酸とレセプターとの反応性の阻害が観察されており、スクリーニングを血清やアルブミン非存在下で行う必要性があることが報告されている(例えば、Ito Y et al., Nature, 422 (6928):173-6, 2003)。一方、一般的に細胞やタンパク質を用いた医薬品のスクリーニングは、より生理的条件に近いことが求められるため、血清またはアルブミン(BSA等)の存在下で行われることが多い。血清非存在下でスクリーニングを行うと、血清非存在の条件では細胞が損傷を受けるため、長時間の培養は通常困難である。このため、血清入り培地等で細胞を予め培養した後、スクリーニングをする時に血清除去培地と置換することが必要となるが、作業が繁雑になる。
このため、脂肪酸を直接使用しない、GPR40のアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング系の開発が望まれている。
ホスホリパーゼは、グリセロリン脂質のエステル結合を加水分解する酵素群の総称であり、その加水分解するエステル結合の位置により、ホスホリパーゼA1、A2、B、CおよびD等に分類される。ホスホリパーゼA2(PLA2)はさらに、分泌型(sPLA2)、細胞質型(cPLA2)、およびカルシウム非依存型(iPLA2)に分類でき、このうちsPLA2は10種類が知られている。
一方、ホスホリパーゼA2で加水分解され酸化したホスファチジルコリン(1−パルミトイル−2−リノレノイル)がGPCRの一つであるG2A発現細胞内のカルシウム誘導すること、および、ホスファチジルコリンもしくはコレステリルリノール酸の酸化および加水分解によって生産された、酸化遊離脂肪酸によってG2Aが活性化されることが報告さている(J. Biol. Chem., Vol. 280, Issue 49, 40676-40683, December 9, 2005)。
発明の概要
本発明者らは今般、驚くべきことに、ホスホリパーゼ、特に分泌型のホスホリパーゼA2(sPLA2)、ハチ毒ホスホリパーゼA2、および、ヘビ毒のホスホリパーゼA2が、Gタンパク質共役型受容体であるGPR40を介する細胞刺激活性を活性化すること見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
よって本発明は、ホスホリパーゼによるGPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングする方法、およびそのような方法に使用されるキット等を提供することを目的とする。
本発明によれば、被検物質が、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質であるかをスクリーニングする方法であって、被検物質と、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩を用いることを特徴とする方法が提供される。ここでいう「生体膜」には、細胞膜や細胞を構成するオルガネラ等の膜、脂質二重膜などを含む。また、リポソームなどの再構成膜も含む。本発明において、好ましくは、GPR40を含む生体膜は、GPR40を含む細胞膜と言うことができる。
本発明の別の一つの態様によれば、GPR40、それを含む細胞膜、またはそれらを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩と、を用いることを特徴とする、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質のスクリーニング方法が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、この方法は、被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、細胞刺激活性を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とを比較する工程を含んでなる。
さらに本発明によれば、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを少なくとも含んでなる、スクリーニング用キットが提供される。また本発明によれば、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするための、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩の使用が提供される。
本発明によるスクリーニング方法によれば、インスリン分泌に関与する物質をスクリーニングすることができる。また、GPR40は、がんの増殖に関与する物質もスクリーニングすることができる。このため、本発明によれば、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)、糖尿病性の合併症や変性疾患(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、高血糖、多尿、ケトン血症、アシドーシス、インスリン抵抗性、耐糖能障害、神経変性疾患、インスリノーマ、癌、高インスリン血症、高グリセリド血症、脂肪肝、インスリン過剰分泌による低血糖、動脈硬化、高脂血症、脳卒中、肥満、糖尿病や肥満によって引き起こされる各種疾患等の予防または治療に有用な物質をスクリーニングすることができる。
pBabeCL(GPR40)IHの構築図を示す。 CRE4VIP/pBluescriptIISK(+)の構築図を示す。 pBabeCLXの構築図を示す。 pBabeCLcre4vPdNNの構築図を示す。 市販ブタ膵臓由来sPLA2を用いたGPR40−SE302細胞おけるPLAP活性を、GPR43−SE302細胞、および、GFP−SE302細胞と比較した結果を示す。 ニッケルカラムで精製したC末Hisタグ付きGX−sPLA2を用いたGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を、GPR43−SE302細胞、および、GFP−SE302細胞と比較した結果を示す。図6AはhGX−sPLA2−Hisを用いた場合の結果を示す。 ニッケルカラムで精製したC末Hisタグ付きGX−sPLA2を用いたGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を、GPR43−SE302細胞、および、GFP−SE302細胞と比較した結果を示す。図6Bは、mGX−sPLA2−Hisを用いた場合の結果を示す。 市販ハチ毒PLA2を用いたGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を、GPR43−SE302細胞、および、GFP−SE302細胞と比較した結果を示す。 市販ヘビ毒PLA2を用いたGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を、GPR43−SE302細胞、および、GFP−SE302細胞と比較した結果を示す。 市販ハチ毒PLA2添加による、GPR40−SE302細胞における細胞内カルシウム濃度変化(A)および、GPR43−SE302細胞における細胞内カルシウム濃度変化(B)を示す。 C末FLAGタグ付きレコンビナントhGX−sPLA2を用いたGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を、GPR43−SE302細胞、および、GFP−SE302細胞と比較した結果を示す。 末FLAGタグ付きレコンビナントmGX−sPLA2を用いたGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を、GPR43−SE302細胞、および、GFP−SE302細胞と比較した結果を示す。
発明の具体的説明
ホスホリパーゼ
本発明のスクリーニング方法には、ホスホリパーゼを使用する。ホスホリパーゼとしては、ホスホリパーゼA1、A2、B、CおよびDが挙げられるが、本発明においては、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2が好ましく、ホスホリパーゼA2がより好ましい。ホスホリパーゼA2は、性質により、分泌型(sPLA2)、細胞質型(cPLA2)、およびカルシウム非依存型(iPLA2)に分類できる。ヘビ毒やハチ毒に含まれるPLA2は分泌型PLA2に分類される。本発明においては、分泌型が好ましい。また、ハチ毒およびヘビ毒など毒素のホスホリパーゼA2を用いることもできる。本発明によれば、ホスホリパーゼは、分泌型のホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、および、ヘビ毒ホスホリパーゼA2がより好ましいものとして挙げられる。
分泌型ホスホリパーゼA2(sPLA2)は、IB、IIA、IIC、IID、IIE、IIF、III、V、X、XIIAの10種類のグループに分類することができ、本発明においては、好ましくは、グループIB、IIA、V、Xであり、より好ましくは、グループIB、Xであり、さらに好ましくはグループXである。
ホスホリパーゼは、公知の酵素であるため、当業者であれば容易に入手することが出来る。例えば、所望するホスホリパーゼを含む生物から、常法にしたがって、抽出または精製の工程を経て調製することができる。また、ホスホリパーゼは、その市販品を購入して、使用することができる。さらにこれらのシグナル配列、プレプロ配列、およびマチュア体の配列は、これらのデータベースの配列や公知文献から容易に知ることができるのでそれに従って、所望のホスホリパーゼを発現し得るポリヌクレオチドを入手し、これを遺伝子工学的手段により発現可能なように組み込んだ細胞等を調製し、これを利用しても良い。
ホスホリパーゼは、そのアミノ酸配列およびそれをコードするDNAが報告されている。例えば、分泌型ホスホリパーゼA2の場合、Swiss Protアクセッション番号:P04054(ヒト型グループIB)、Q9Z0Y2(マウス型グループIB)、P04055(ラット型グループIB)、P00592(ブタ型グループIB)、P14555(ヒト型グループIIA)、P31482(マウス型グループIIA)、P48076(マウス型グループIIC)、Q9UNK4(ヒト型グループIID)、Q9NZK7(ヒト型グループIIE)、Q9BZM2(ヒト型グループIIF)、Q9NZ20(ヒト型グループIII)、P39877(ヒト型グループV)、P97391(マウス型グループV)、O15496(ヒト型グループX)、Q9QXX3(マウス型グループGX)、Q9QZT3(ラット型グループGX)、および、GenBankアクセッション番号:NM_030821(ヒト型グループIIA)などが報告されている。また、ハチ毒ホスホリパーゼA2の場合、Swiss Protアクセッション番号:P00630などが報告されている。さらに、ヘビ毒ホスホリパーゼA2の場合、Swiss Protアクセッション番号:P62022、P00602などが報告されている。本発明において用いるホスホリパーゼは、このような公知の情報に基づいてそのアミノ酸配列またはそれをコードするDNAを具体的に特定することができる。
また、ホスホリパーゼの中には、前駆体ホスホリパーゼからプロセシングを受けて活性型となるものが存在する(例えば、分泌型ホスホリパーゼA2や、ハチ毒ホスホリパーゼA2など)。また、前駆体からシグナル配列がとれたプレプロ体から、さらに、プレプロ配列がとれて活性体となるものも存在する(例えばグループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2など)。本発明において用いるホスホリパーゼは、前駆体ホスホリパーゼ、プレプロホスホリパーゼ、および活性型ホスホリパーゼのいずれであってもよいが、活性型ホスホリパーゼがより好ましい。なお、実験的には、活性型ホスホリパーゼを単にホスホリパーゼということもある。これらの本発明において用いる前駆体、プレプロ体および活性型ホスホリパーゼは、公知の情報に基づいてそのアミノ酸配列またはそれをコードするDNAを具体的に特定することができる。
具体的には、本発明におけるホスホリパーゼは下記(A)〜(E)からなる群より選択されるポリペプチドからなる:
(A) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)を含む、ポリペプチド;
(B) 前記(A)のアミノ酸配列において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;
(C) 前記(A)のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(D) 前記(A)のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;および、
(E) 前記(A)のアミノ酸配列をコードする塩基配列に対して80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上)の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
本発明に使用するホスホリパーゼとしては、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド」が好ましい。なお、前記ポリペプチドには、ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。本発明において用いるこれらのホスホリパーゼは、公知の情報に基づいてそのアミノ酸配列またはそれをコードするDNAを具体的に特定することができる。
なお前記「ジスルフィド結合をしたもの」とは、ホスホリパーゼの分子内において、特定箇所アミノ酸(例えば、システイン等)と、別の特定箇所のアミノ酸(例えば、システイン等)とが−S−S−結合により架橋されている状態をいう。
ここで、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列」とは前記に列記したアクセッション番号により所定の公知のデータベースより特定されるアミノ酸配列のことであり、好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列、より好ましくは、配列番号7で表されるアミノ酸配列である。
ここで、ポリペプチドが「ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する」とは、そのポリペプチドが、GPR40に直接的または間接的に活性化作用を有し、GPR40を介したシグナル情報伝達作用、より詳しくは、GPR40発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出するレポーターアッセイ系により測定するか、細胞内のカルシウムイオンの遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、インスリン分泌活性、細胞増殖活性など)を有することを意味する。また実質的に同じとは、活性が性質的に同質であることを意味する。すなわち、「ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する」ためには、前記活性が同等(例えば、約0.01〜100倍、好ましくは0.05〜20倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましい。これらの活性については、慣用の方法にしたがってと測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。
本発明の好ましい態様によれば、前記(B)のポリペプチド(以下において「改変ポリペプチド」と言うことがある)は、そのアミノ酸配列が、前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)を含むポリペプチドにおいて1または複数個(好ましくは1または数個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であって、しかもホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドであることができる。
本明細書において「保存的置換」とは、ペプチドの活性を実質的に改変しないように、1または複数個(好ましくは数個)のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。なお、前記改変ポリペプチドには、改変ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。したがって、これらの条件を満たす限り、前記改変ポリペプチドの起源は、ヒトに限定されない。
この改変ポリペプチドには、さらにそのN末端(アミノ末端)およびC末端(カルボキシル末端)が改変または修飾されているものも包含されてよい。例えば、C末端のカルボキシルが、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)とされていてもよい。なおここで前記Rは、例えば直鎖、分岐鎖もしくは環状のC1−6アルキル基、C6−12アリール基等が挙げられる。またN末端のアミノ基が慣用の保護基により保護されたもの等も改変ポリペプチドに包含され得る。
前記(B)のポリペプチドの例としては、ヒト由来、ラット由来、マウス由来、ブタ由来、ハチ由来、ヘビ由来のものが挙げられ、またそれら生物以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]由来のホスホリパーゼもしくはその変異体も具体例として挙げられる。
前記(C)のポリペプチド(以下において「相同ポリペプチド」と言うことがある)は、ホスホリパーゼのアミノ酸配列に関して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、ホスホリパーゼに関して、85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であって、しかもホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドである。
本明細書において、「同一性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えば全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出することができる。なお、前記相同ポリペプチドには、相同ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。したがって、これらの条件を満たす限り、前記相同ポリペプチドの起源は、ヒトに限定されない。例えばヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]由来のホスホリパーゼもしくはその変異体が含まれる。
例えば、前記(A)のポリペプチドが配列番号7で表されるアミノ酸配列を含むものである場合には、前記(C)の相同ポリペプチドは、配列番号8〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであることができる。具体的には、前記(C)の相同ポリペプチドとしては、例えば、Swiss Protアクセッション番号:P04054(ヒト由来グループIB)、Q9Z0Y2(マウス由来グループIB)、P04055(ラット由来グループIB)、P00602(ヘビ由来)からなるポリペプチドが挙げられる。
なお、本明細書において、変異体とは、「variation」、すなわち、同一種内の同一ポリペプチドにみられる個体差、あるいは、数種間の相同ポリペプチドにみられる差異を意味する。
さらに、本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)の部分ポリペプチドも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する限り使用することができる。この場合、部分ポリヌクレオチドを構成するアミノ酸数は、ホスホリパーゼのアミノ酸数の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%である。
ホスホリパーゼの調製方法
これら本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、その改変ポリペプチド、その相同ポリペプチド)およびその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法、例えば遺伝子工学的手法、合成法などによって得ることができる。具体的には、遺伝子工学的手法の場合、ホスホリパーゼまたはその部分ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することによって調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
以下、本発明に使用するホスホリパーゼの調製方法のうち、遺伝子工学的手法について詳述するが、その部分ポリペプチドについても、後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されない。
ホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチド
本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、前記ホスホリパーゼ、前記改変ポリペプチド、前記相同ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、具体的には下記の(I)〜(VI)からなる群より選択されるものが挙げられる:
(I) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号13〜18で表されるいずれかの塩基配列)からなる、ポリヌクレオチド;
(II) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(III) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)を含み、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(IV) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(V) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号13〜18で表されるいずれかの塩基配列)からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;および
(VI) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号13〜18で表されるいずれかの塩基配列)に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
ここで、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列」とは前記に列記したアクセッション番号により所定の公知のデータベースより特定される塩基配列(または、それより特定されるアミノ酸配列をコードしてなる塩基配列)のことであり、好ましくは配列番号13〜18で表されるいずれかの塩基配列、より好ましくは、配列番号13で表される塩基酸配列である。
本発明の一つの態様によれば、本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。
アミノ酸の付加、欠失および/または置換による変異体は、例えばそれをコードするDNAに例えば、周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No.20, p.6487-6500, 1982参照)を施すことにより作成できる。本明細書において「1または複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により付加、欠失、挿入および/または置換できる程度の数のアミノ酸を意味する。
部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレートし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成せしめる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養しDNAを回収する。
尚、ホスホリパーゼの生物活性ペプチドのアミノ酸配列にその活性を喪失せしめない1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または挿入を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法及び遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、付加、挿入および/または置換し、次いで連結する方法もある。
本明細書において、「欠失」には、アミノ酸配列の端からアミノ酸残基を欠失したものおよびアミノ酸は配列の途中のアミノ酸残基が欠失したものも含まれる。
「付加」には、アミノ酸配列の端にアミノ酸残基を付加したものおよびアミノ酸残基の途中にアミノ酸残基を欠失したものも含まれる。
1つのアミノ酸をコードするコドンは複数存在する。従って、前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるアミノ酸配列)またはその酵素活性部分をコードするいずれのDNAも本発明の範囲に含まれる。
本発明の別の一つの態様によれば、本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号13〜18で表されるいずれかの塩基配列)からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。具体的には、前記アクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列以外の配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号13〜18で表される塩基配列(ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ブタ由来、ハチ由来、およびヘビ由来)からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
本明細書において、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、具体的には、FASTA、BLAST、Smith−Waterman〔Meth. Enzym., 164, 765 (1988)〕などの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルト(初期設定)のパラメーターを用いて計算したときに、例えば配列番号13〜18で表される塩基配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の同一性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。また、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」等の条件を挙げることができる。より詳細には、Rapid-hyb buffer(Amersham Life Science)を用いた方法として、68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して1時間以上68℃に保ってハイブリッド形成させ、その後、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を3回、最後に、1×SSC、0.1%SDS中、50℃で20分の洗浄を2回行うことも考えられる。その他、例えばExpresshyb Hybridization Solution (CLONTECH)中、55℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行い、標識プローブを添加し、37〜55℃で1時間以上インキュベートし、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を1回行うこともできる。ここで、例えば、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションや2度目の洗浄の際の温度を上げることにより、よりストリンジェントな条件とすることができる。例えば、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの温度を60℃、さらにス
トリンジェントな条件としては68℃とすることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、ホスホリパーゼのアイソフォーム、アレリック変異体、及び対応する他種生物由来の遺伝子を得るための条件を設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press (1989);特にSection9.47-9.58) 、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987-1997);特にSection6.3-6.4)、『DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University (1995);条件については特にSection2.10)等を参照することができる。ハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号13〜18の塩基を含む塩基配列に対して少なくとも50%以上、好ましくは70%、さらに好ましくは80%、より一層好ましくは90%(例えば、95%以上、さらには99%)の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。このような同一性は、上述の相同性の決定と同様にBLASTアルゴリズム(Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-7)によって決定することができる。上述の塩基配列についてのプログラムBLASTNの他に、このアルゴリズムに基づいたアミノ酸配列についての同一性を決定するプログラムとしてBLASTX(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10)等が開発されており、利用可能である。具体的な解析方法については先に挙げたように、http://www.ncbi.nlm.nih.gov.等を参照することができる。
その他、遺伝子増幅技術(PCR)(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 6.1-6.4)により、ホスホリパーゼのアイソフォームやアレリック変異体等を、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ヘビ、ハチ等のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから、配列番号13〜18に表される塩基配列を基に設計したプライマーを利用して得ることができる。
ポリヌクレオチドの塩基配列は、慣用の方法により配列決定して確認することができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等による確認が可能である。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、例えば天然由来のものであることもできるし、または全合成したものであることもできる。さらには、天然由来のものの一部を利用して合成を行なったものであることもできる。本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドの典型的な取得方法としては、例えば市販のライブラリーまたはcDNAライブラリーから、遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば部分ポリヌクレオチド配列の情報を基にして作成した適当なDNAプローブを用いてスクリーニングを行なう方法などを挙げることができる。
本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドとしては、「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(例えば、配列番号13で表される塩基配列)からなるポリヌクレオチド」が好ましい。配列番号13で表される塩基配列は、441番目〜443番目のATGで始まり、936番目〜938番目のTAAで終了するオープンリーディングフレームを有する。また、配列番号14〜18で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
プラスミド
プラスミドに本発明の遺伝子のDNA断片を組み込む方法としては、例えば、「Sambrook, J.ら,モレキュラークローニング,ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual, second edition)、Cold Spring Harbor Laboratory, 1.53(1989)」に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組換えプラスミドは、宿主細胞(例えば、E.coli TB1,LE392またはXL-1Bluc等)に導入する。形質転換に使用するプラスミドは、上記のようなホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知のベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。例えば、ホスホリパーゼ単独でもよいし、ホスホリパーゼとタグとなるようなタンパク質(例えば、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP))との融合タンパク質を発現ベクターに組み込んでもよい。
ベクターは、簡便には当業界において入手可能な組換え用ベクター(プラスミドDNA)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターとしては、具体的には、大腸菌由来のプラスミドとして、例えば、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322などが例示されるがこれらに限定されない。
所望のタンパク質を生産する目的においては、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌用発現ベクターとして、pQE−30、pQE−60、pMAL−C2、pMAL−p2、pSE420などが好ましく、酵母用発現ベクターとしてpYES2(サッカロマイセス属)、pPIC3.5K、pPIC9K、pAO815(以上ピキア属)、pBacPAK8/9、pBK283、pVL1392、pBlueBac4.5などが好ましい。
形質転換体
形質転換体は、所望の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより調製することができる。用いられる宿主細胞としては、本発明の発現ベクターに適合し、形質転換されうるものであれば特に制限はなく、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞、または人工的に樹立された組換細胞など種々の細胞を用いることが可能である。例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などが挙げられる。
特に、大腸菌、酵母または昆虫細胞が好ましく、具体的には、大腸菌(M15、JM109等)、酵母(INVSc1(サッカロマイセス属)、GS115、KM71(以上ピキア属)など)昆虫細胞(BmN4、カイコ幼虫など)などが例示される。また、動物細胞としてはマウス由来、ラット由来、ハムスター由来、サル由来またはヒト由来の細胞若しくはそれらの細胞から樹立した培養細胞株などが例示される。さらに、植物細胞に関しては、細胞培養が可能であれば特に限定されないが、例えば、タバコ、アラビドプシス、イネ、トウモロコシ、コムギ由来の細胞などが例示される。
本発明のベクターにおいて、好適な開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。また、終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAA、TAG,TGAなど)が例示される。
発現ベクターは、少なくとも、プロモーター、開始コドン、所望の遺伝子、終止コドン、およびターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4DNAリガーゼを用いるライゲーション等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他のレストリクションサイトなど)を用いることができる。
本発明に用いた発現ベクターの宿主細胞への導入[形質転換(形質移入)]は従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、細菌(E.coli,Bacillus subtilis等)の場合は、例えばCohenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168,111(1979)]やコンピテント法[J.Mol.Biol.,56,209(1971)]によって、Saccharomyces cerevisiaeの場合は、例えばHinnenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1927(1978)]やリチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法[Virology,52,456(1973)]、昆虫細胞の場合は、例えばSummersらの方法[Mol.Cell.Biol.,3,2156-2165(1983)]によってそれぞれ形質転換することができる。植物細胞の場合は、アグロバクテリウムを用いる方法(Horsch et al., Science, 227, 129(1985)、Hiei et al., Plant J., 6, 271-282(1994))、エレクトロポレーション法(Fromm et al., Nature, 319, 791(1986))、PEG法(Paszkowski et al., EMBO J., 3, 2717(1984))、マイクロインジェクション法(Crossway et al., Mol. Gen. Genet., 202, 179(1986))、微小物衝突法(McCabe et al., Bio/Technology, 6, 923(1988))によって形質転換することができる。
本発明において、ホスホリパーゼは、例えば、上記の如く調整された発現ベクターを含む形質転換細胞を栄養培地で培養することによって発現(生産)することができる。栄養培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源、無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノールなどが、例示される。無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また、所望により他の栄養素(例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)など)を含んでいてもよい。培養は、当業界において知られている方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpH及び培養時間は、本発明のタンパクが大量に生産されるように適宜選択される。
なお、下記に宿主細胞に応じて用いられる具体的な培地及び培養条件を例示するが、何らこれらに限定されるものではない。宿主が細菌、放線菌、酵母、糸状菌である場合、例えば上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5〜8である培地としてLB培地、M9培地(ミラー(Miller)ら、Exp. Mol. Genet.、Cold Spring Harbor Laboratory、第431頁、1972年)等が例示される。かかる場合、培養は、必要により通気、攪拌しながら、通常14〜43℃、約3〜24時間行なうことができる。宿主が、Bacillus属菌の場合、必要により通気、攪拌しながら、通常30〜40℃、約16〜96時間行なうことができる。
宿主が酵母である場合、培地として、例えばBurkholder最小培地(ボスチアン(Bostian)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、第77巻、第4505頁、1980年)が挙げることができ、pHは5〜8であることが望ましい。培養は通常約20〜35℃で約14〜144時間行われ、必要により通気や攪拌を行なうこともできる。宿主が動物細胞の場合、培地として例えば約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地(サイエンス(Science)、第122巻、第501頁、1952年)、DMEM培地(バイロロジー(Virology)、第8巻、第396頁、1959年)、RPMI1640培地(J. Am. Med. Assoc.、第199巻、第519頁、1967年)、199培地(Proc. Soc. Exp. Biol. Med.、第73巻、第1頁、1950年)などを用いることができる。培地のpHは約6〜8であることが好ましく、培地は通常30〜40℃で約15〜72時間行われ、必要により通気や攪拌を行なうこともできる。
宿主が昆虫細胞の場合、例えば胎児牛血清を含むGrace’s培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、第82巻、第8404頁、1985年)などが挙げることができ、そのpHは約5〜8であることが好ましい。培養は通常約20〜40℃で15時間〜100時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行なうこともできる。
ホスホリパーゼの発現、精製方法に関しては、公知の文献が数多く存在する(例えば、Kohji Hanasaki,et al., The Journal of Biological Chemistry 274(48), 34203-34211, 1999など)。
形質転換体の培養物(発現細胞や培養上清)から所望のポリペプチドを精製する方法としては、例えば、硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
本発明において使用されるホスホリパーゼは、その塩の形態であってもよい。ここで、「塩」は、薬学的に許容される塩を示し、ホスホリパーゼと薬学的に許容される塩を形成するものであれば特に限定されない。具体的には、例えばハロゲン化水素酸塩(例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられる。
また、本発明で使用するホスホリパーゼは、GPR40の細胞刺激活性を有するものであって、実質的にホスホリパーゼと同様の活性を有するものであれば断片であってもよい。
ここで、上記断片が「ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する」とは、その断片が、GPR40を介したシグナル情報伝達作用、より詳しくは、GPR40発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出するレポーターアッセイ系により測定するか、細胞内のカルシウムイオンの遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、インスリン分泌活性、細胞増殖活性など)を有することを意味する。また実質的に同じとは、活性が性質的に同質であることを意味する。すなわち、「ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する」ためには、前記活性が同等(例えば、約0.01〜100倍、好ましくは0.05〜20倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましい。これらの活性については、慣用の方法にしたがってと測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。
GPR40
本発明のスクリーニング方法に使用するGPR40は、ホスホリパーゼ(例えば、sPLA2)による活性化作用を有し、GPR40発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出するレポーターアッセイ系により測定するか、細胞内のカルシウムイオンの遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、インスリン分泌活性、細胞増殖活性など)を有するものであれば、その起源は特に限定されず、例えばGPR40を発現する臓器、組織、細胞などの天然由来のもの、公知の遺伝子工学的手法、合成法などにより人為的に調製したものも包含される。また、GPR40の部分ポリペプチドとして後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されず、例えばホスホリパーゼによる細胞刺激活性化作用を有する部分ポリペプチド、細胞膜外領域に相当するアミノ酸配列を含む部分ポリペプチドなども使用することもできる。
具体的には、本発明のスクリーニング方法に使用するGPR40は、Gタンパク質共役型受容体タンパク質の一種であり、そのアミノ酸配列(ヒト、マウスおよびラット由来のもの)およびそれをコードするDNAが報告されている[例えば、GenBankアクセッション番号NP_005294(ヒト型)、NP_918946(マウス型)、NP_695216(ラット型)]ポリペプチドである。具体的には、GPR40は下記(a)〜(e)からなる群より選択されるポリペプチドからなる:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;
(c) 配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(d) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;および、
(e) 配列番号1で表される塩基配列に対して80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上)の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
本発明に使用するGPR40としては、「配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」が好ましい。なお、前記ポリペプチドには、ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。
ここで、ポリペプチドが「GPR40と実質的に同じ活性を有する」とは、そのポリペプチドが、ホスホリパーゼ(例えば、sPLA2)による活性化作用を有し、GPR40を介したシグナル伝達情報作用、より詳しくは、GPR40発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出するレポーターアッセイ系により測定するか、細胞内のカルシウムイオンの遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、インスリン分泌活性、細胞増殖活性など)を有することを意味する。また実質的に同じとは、活性が性質的に同質であることを意味する。すなわち、「GPR40と実質的に同じ活性を有する」ためには、前記活性が同等(例えば、約0.01〜100倍、好ましくは0.05〜20倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましい。これらの活性については、慣用の方法にしたがってと測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。
本発明の好ましい態様によれば、前記(b)のポリペプチド(以下において「改変ポリペプチド」と言うことがある)は、そのアミノ酸配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて1または複数個(好ましくは1または数個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であって、しかもGPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチドであることができる。
本明細書において「保存的置換」とは、ペプチドの活性を実質的に改変しないように、1または複数個(このましくは数個)のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。なお、前記改変ポリペプチドには、改変ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。したがって、これらの条件を満たす限り、前記改変ポリペプチドの起源は、ヒトに限定されない。
改変ポリペプチドには、さらにそのN末端(アミノ末端)およびC末端(カルボキシル末端)が改変または修飾されているものも包含されてよい。例えば、C末端のカルボキシルが、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)とされていてもよい。なおここで前記Rは、例えば直鎖、分岐鎖もしくは環状のC1−6アルキル基、C6−12アリール基等が挙げられる。またN末端のアミノ基が慣用の保護基により保護されたもの等も改変ポリペプチドに包含され得る。
前記(b)のポリペプチドの例としては、ヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]由来のGPR40もしくはその変異体が挙げられる。具体的には配列番号4および配列番号6で表されるアミノ酸配列(マウス由来およびラット由来)からなるポリペプチドが挙げられる。
前記(c)のポリペプチド(以下において「相同ポリペプチド」と言うことがある)は、GPR40のアミノ酸配列に関して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、GPR40に関して、同一性が85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であって、しかもGPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチドである。
本明細書において、「同一性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えば全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出することができる。なお、前記相同ポリペプチドには、相同ポリペプチドの塩が含まれ、ジスルフィド結合をしたものとジスルフィド結合をしていないもの、リン酸化されたものとリン酸化されていないもの、さらには糖鎖を有しないものとを有するものとの両方が含まれる。したがって、これらの条件を満たす限り、前記相同ポリペプチドの起源は、ヒトに限定されない。例えばヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]由来のGPR40もしくはその変異体が含まれる。具体的には配列番号4および配列番号6で表されるアミノ酸配列(マウス由来およびラット由来)からなるポリペプチドが挙げられる。
さらに、本発明に使用するGPR40(すなわち、GPR40、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)の部分ポリペプチドも、ホスホリパーゼ(例えば、sPLA2)による活性化作用を有し、GPR40を介したシグナル伝達情報作用、より詳しくは、GPR40発現細胞の細胞刺激活性実質的に同じ活性を有するものをいう。ここで、活性細胞刺激活性とは、例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出するレポーターアッセイ系により測定するか、細胞内のカルシウムイオンの遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、インスリン分泌活性、細胞増殖活性などをいい、これらの活性を有するものであれば本発明に包含される。また実質的に同じとは、活性が性質的に同質であることを意味する。すなわち、「GPR40と実質的に同じ活性を有する」ためには、前記活性が同等(例えば、約0.01〜100倍、好ましくは0.05〜20倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましい。これらの活性については、慣用の方法にしたがってと測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。
GPR40の調製方法
これら本発明に使用するGPR40(すなわち、GPR40、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)およびその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法、例えば遺伝子工学的手法、合成法などによって得ることができる。具体的には、遺伝子工学的手法の場合、GPR40またはその部分ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することによって調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
以下、本発明に使用するGPR40の調製方法のうち、遺伝子工学的手法について詳述するが、その部分ポリペプチドについても、後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されない。
GPR40をコードするポリヌクレオチド
本発明に使用するGPR40(すなわち、GPR40、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、前記GPR40、前記改変ポリペプチド、前記相同ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明に使用するGPR40をコードするポリヌクレオチドは、具体的には下記の(i)〜(vi)からなる群より選択されるものが挙げられる:
(i) 配列番号1で表される塩基配列からなる、ポリヌクレオチド;
(ii) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(iii) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、前記のGPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(iv) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、GPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(v) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、GPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;および
(vi) 配列番号1で表される塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、しかも、前記のGPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
本発明の一つの態様によれば、本発明に使用するGPR40をコードするポリヌクレオチドは、「配列番号2で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記のGPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。
アミノ酸の付加、欠失および/または置換による変異体は、例えばそれをコードするDNAに例えば、周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No.20, p.6487-6500, 1982参照)を施すことにより作成できる。本明細書において「1または複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により付加、欠失、挿入および/または置換できる程度の数のアミノ酸を意味する。
部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレートし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成せしめる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養しDNAを回収する。
尚、GPR40のアミノ酸配列にその活性を喪失せしめない1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または挿入を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法及び遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、付加、挿入および/または置換し、次いで連結する方法もある。
「欠失」には、アミノ酸配列の端からアミノ酸残基を欠失したものおよびアミノ酸は配列の途中のアミノ酸残基が欠失したものも含まれる。
「付加」には、アミノ酸配列の端にアミノ酸残基を付加したものおよびアミノ酸残基の途中にアミノ酸残基を欠失したものも含まれる。
1つのアミノ酸をコードするコドンは複数存在する。従って、配列番号2、配列番号4、または配列番号6で示されるアミノ酸配列またはその活性部分をコードするいずれのDNAも本発明の範囲に含まれる。
本発明の別の一つの態様によれば、本発明に使用するGPR40をコードするポリヌクレオチドは、「配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記のGPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。具体的には配列番号3および配列番号5で表される塩基配列(マウス由来およびラット由来)からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
本明細書において、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、具体的には、FASTA、BLAST、Smith−Waterman〔Meth. Enzym., 164, 765 (1988)〕などの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルト(初期設定)のパラメーターを用いて計算したときに、配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の同一性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。また、「ストリンジェント」なハイブリダイゼーション条件としては、前記したホスホリパーゼの場合と同様であることができる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については上記ホスホリパーゼの項を参照することができる。
その他、遺伝子増幅技術(PCR)(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 6.1-6.4)により、ホスホリパーゼのアイソフォームやアレリック変異体等を、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから、配列番号1、3、または5に記載の塩基配列を基に設計したプライマーを利用して得ることができる。
ポリヌクレオチドの塩基配列は、慣用の方法により配列決定して確認することができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等による確認が可能である。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
本発明に使用するGPR40をコードするポリヌクレオチドは、例えば天然由来のものであることもできるし、または全合成したものであることもできる。さらには、天然由来のものの一部を利用して合成を行なったものであることもできる。本発明に使用するGPR40をコードするポリヌクレオチドの典型的な取得方法としては、例えば市販のライブラリーまたはcDNAライブラリーから、遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば部分ポリヌクレオチド配列(例えば配列番号1で表される塩基配列)の情報を基にして作成した適当なDNAプローブを用いてスクリーニングを行なう方法などを挙げることができる。
本発明に使用するGPR40をコードするポリヌクレオチドとしては、「配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド」が好ましい。配列番号1で表される塩基配列は、1番目〜3番目のATGで始まり、901番目〜903番目のTAAで終了するオープンリーディングフレームを有する。また、配列番号3および配列番号5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
プラスミド
前記形質転換に使用されるプラスミドは、上記のようなGPR40をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。
形質転換体
また、前記形質転換体も、上記のようなGPR40をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば当該ポリヌクレオチドが宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドの形で含有する形質転換体であることもできるし、あるいは、GPR40を発現していない形質転換体であることもできる。当該形質転換体は、例えば前記プラスミドにより、あるいは、前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。
前記宿主細胞としては、例えば通常使用される公知の微生物、例えば大腸菌(例えばEscherichia coli JM109株)または酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae W303株)、あるいは、公知の培養細胞、例えば動物細胞(例えばCHO細胞、HEK−293細胞、またはCOS細胞)または昆虫細胞(例えばBmN4細胞、Sf−9細胞)を挙げることができる。
また、公知の前記発現ベクターとしては、例えば大腸菌に対しては、pUC、pTV、pGEX、pKK、またはpTrcHisを;酵母に対しては、pEMBLYまたはpYES2を;CHO細胞、HEK−293細胞およびCOS細胞に対しては、pcDNA3、pMAMneoまたはpBabe Puroを;BmN4細胞に対しては、カイコ核多角体ウイルス(BmNPV)のポリヘドリンプロモーターを有するベクター(例えばpBK283)を挙げることができる。
GPR40を含有する細胞は、GPR40を細胞膜表面に発現している限り、特に限定されるものではなく、例えば前記形質転換体(すなわち、GPR40をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドで形質転換された細胞)を、GPR40の発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできるし、あるいは、適当な細胞に、GPR40をコードするRNAを注入し、GPR40の発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできる。
細胞膜断片
また、GPR40を含有する本発明に使用する細胞膜断片は、例えば前記のGPR40を発現する細胞を破砕した後、細胞膜が多く含まれる画分を分離することにより得ることができる。細胞の破砕方法としては、例えばホモジナイザー(例えばPotter−Elvehiem型ホモジナイザー)で細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーまたはポリトロン(Kinematica社)による破砕、超音波による破砕、あるいは、フレンチプレスなどで加圧しながら細いノズルから細胞を噴出させることによる破砕などを挙げることができる。また、細胞膜の分画方法としては、例えば遠心力による分画法、例えば分画遠心分離法または密度勾配遠心分離法を挙げることができる。
スクリーニング方法
前記したように、本発明によれば、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを用いることを特徴とする、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質のスクリーニング方法が提供される。この方法は、被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、細胞刺激活性を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とにおける測定結果を比較することを含んでなる。
本発明のより好ましい態様によれば、前記方法は、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合との間で、結果に相違が出た場合に、その物質をGPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質の候補であると決定する工程をさらに含んでなる。
このスクリーニング方法によれば、GPR40の機能を促進もしくは阻害する能力を区別して被検物質(または被検化合物)をスクリーニングすることができる。すなわち、このスクリーニング方法では、ホスホリパーゼのGPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングすることができ、具体的には、GPR40の活性化に影響を与える化合物、より具体的にはGPR40の機能を促進する物質(アゴニスト)あるいはGPR40の機能を阻害する物質(アンタゴニスト)を、スクリーニングすることができる。
したがって、被検物質非存在下における細胞刺激活性に対して、被検物質存在下における細胞刺激活性が上昇する場合には、その被検物質は、GPR40の機能を促進する物質(GPR40アゴニスト)と決定することができる。被検物質非存在下における細胞刺激活性に対して、被検物質存在下における細胞刺激活性が低下する場合には、その被検物質は、GPR40の機能を阻害する物質(GPR40アンタゴニスト)と決定することができる。
本発明の好ましい態様によれば、細胞刺激活性の測定は、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出するレポーターアッセイ系により測定するか、細胞内のカルシウムイオンの遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、インスリン分泌活性、および細胞増殖活性からなる群より選択されるパラメータを測定することによって行うことができる。より好ましくは、レポーターアッセイ系や細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を測定することができる。
本発明においては、例えばGPR40を介する細胞内カルシウムイオン濃度の上昇やレポーター遺伝子の転写量の増加を公知の手法で測定すればよく、GPR40の機能を促進もしくは阻害する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この態様は、GPR40にホスホリパーゼが作用することにより生じる細胞内シグナル伝達、例えば、細胞内カルシウム濃度の上昇作用を利用するものである。
例えばGPR40を細胞膜上に発現(好ましくは、GPR40を含む発現ベクターを導入し過剰に発現)した哺乳動物由来細胞(例えばHEK−293細胞もしくはCHO細胞)にホスホリパーゼを作用すると細胞内Ca2+濃度が上昇する。
GPR40の機能を促進する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系でGPR40を介して細胞刺激活性を惹起しうる物質(例えばホスホリパーゼ)に代わり、被検物質を単独で接触させて細胞内の細胞内Ca2+濃度が上昇する化合物を選択すると良い。
GPR40の機能を阻害する化合物をスクリーニングする場合には、ホスホリパーゼまたはその塩、および被検物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。ホスホリパーゼの作用で細胞内カルシウムの濃度が上昇するが、被検物質がホスホリパーゼの作用に拮抗する場合には、細胞内カルシウムの濃度の上昇が抑制され。このときには、前記被検物質はGPR40の機能を阻害する化合物として選択できる。また、いくつかの報告例にあるように(Kalindjian S.B. et al., Journal of Medicinal Chemistry, vol44 (8), 1125-1133, 2001、 Sharma S. K. et al., Journal of Medicinal Chemistry, vol44, 2073-2079, 2001など)、アンタゴニストとして見出された化合物を基に構造式の変換、合成展開などを行うことにより、アゴニストに変換することも可能である。
細胞内カルシウム濃度は、例えば、カルシウム蛍光プローブ(例えば、Fura−2、Fluo−3など)を用いて測定することができる。また、市販のカルシウム測定キットを使用することもできる。
本発明においては、また、GPR40を細胞膜上に発現(好ましくは、GPR40を含む発現ベクターを導入し過剰に発現)し、しかも、cAMP応答配列(CRE)が5’上流に位置するレポーター遺伝子(例えばアルカリフォスファターゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、ベータラクタマーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、ベータガラクトシダーゼ遺伝子など、またはGFP(Green Fluorescent Protein)などの蛍光タンパク質遺伝子など)を含有する細胞(以下、「スクリーニング用細胞」と称することもある)を用いることにより、GPR40の機能を促進もしくは阻害する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この場合は、細胞内に種々のシグナルが伝わると前記スクリーニング用細胞に導入されているCREをプロモーター領域に有するレポーター遺伝子の転写が促進されることを利用している。
以下、GPR40の機能を促進もしくは阻害する能力を区別して化合物をスクリーニングする手順について、より具体的に説明する。
前記CREをプロモーター領域に有するレポーター遺伝子を導入されている細胞においては、例えば、細胞内のcAMPの濃度上昇や細胞内Ca2+濃度の上昇により、レポーター遺伝子の発現量が増加する。また、アデニル酸シクラーゼの活性化剤(例えばフォルスコリンなど)で細胞の基礎的なcAMP量を増大させておいて活性を測定することもできる。レポーター遺伝子産物の発現量は、細胞培養上清や細胞抽出物に含まれるレポーター遺伝子産物と反応した基質から生成した発光物質の量に由来する発光を測定する方法、もしくはレポーター遺伝子として産生された蛍光タンパク質由来の蛍光を測定する方法などにより容易に測定することが可能である。
また、ホスホリパーゼまたはその塩を加えると、細胞内のシグナル伝達の活性化が生じ(例えば細胞内Ca2+濃度が上昇)、結果として、レポーター遺伝子産物の発現量が増加する。したがって、GPR40の機能を促進する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系で、GPR40を介して細胞刺激活性を惹起しうる物質に代わり被検物質を単独で接触させてレポーター遺伝子産物の発現量を上昇させる化合物を選択すると良い。
GPR40の機能を阻害する化合物をスクリーニングする場合には、ホスホリパーゼまたはその塩、および被検物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。また、アデニル酸シクラーゼの活性化剤(例えばフォルスコリンなど)で細胞の基礎的なcAMP量を増大させておいてから活性を測定することもできる。ホスホリパーゼの作用で培養上清中や細胞内のレポーター遺伝子産物の発現量は上昇するが、被検物質がホスホリパーゼの作用に拮抗する場合には、レポーター遺伝子産物の発現を抑制する。このときには、前記被検物質はGPR40の機能を阻害する化合物として選択できる。また、いくつかの報告例にあるように(Kalindjian S.B. et al., Journal of Medicinal Chemistry, vol44 (8), 1125-1133, 2001、 Sharma S. K. et al., Journal of Medicinal Chemistry, vol44, 2073-2079, 2001など)、アンタゴニストとして見出された化合物を基に構造式の変換、合成展開などを行うことにより、アゴニストに変換することも可能である。
被検物質による作用が、GPR40を介した作用であるか否かは、簡単に確認することができる。例えばスクリーニング用細胞(すなわち、GPR40を細胞膜上に発現し、しかも、CREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有する細胞)を用いた前記試験と並行して、コントロール用細胞(例えばCREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有するものの、GPR40を細胞膜上に発現していない細胞)を用いて同様の試験を実施する。その結果、前記被検物質による作用が、GPR40に対する結合による作用でない場合には、スクリーニング用細胞およびコントロール用細胞でレポーター遺伝子産物の発現量に関して同じ現象が観察されるのに対して、前記被検物質による作用が、GPR40に対する結合による作用である場合には、スクリーニング用細胞とコントロール用細胞とでレポーター遺伝子産物の発現量に関して異なる現象が観察される。
本発明の別の態様によれば、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質として、ホスホリパーゼのGPR40への結合性を変化させる物質をスクリーニングすることができる。この場合、本発明によるスクリーニング方法は、被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞へのホスホリパーゼまたはその塩の結合量を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とを比較することを含んでなる。このスクリーニング方法によれば、GPR40の機能を促進もしくは阻害する能力を区別せずに被検化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、この態様の方法が適用可能な場合、この方法により、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングすることができ、具体的には、ホスホリパーゼのGPR40への結合性を変化させる化合物を、より具体的には、GPR40の機能を促進もしくは阻害する能力を有する化合物を、スクリーニングすることができる。
具体的には、被検物質非存在下および被検物質存在下の各条件下において、GPR40と、標識したホスホリパーゼとを接触させ、前記条件下におけるGPR40へのホスホリパーゼの特異的結合量を比較することにより、GPR40の機能を促進もしくは阻害する能力を区別せずに化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、被検物質非存在下におけるGPR40へのホスホリパーゼの特異的結合量に対して、被検物質存在下における前記特異的結合量が低下する場合には、その被検物質は、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質であると、具体的には、ホスホリパーゼのGPR40への結合性を変化させる化合物であると、より具体的には、GPR40アゴニストあるいはGPR40アンタゴニストであると、決定することができる。
結合量を測定する場合、ホスホリパーゼまたはその塩は、標識することができる。前記標識としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、[H]、[14C]、[125I]、[35S]などを用いることができる。前記酵素としては、例えばβ−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼなどを用いることができる。蛍光物質としては、例えばフルオレセイソチオシアネート、BODIPYなどを用いることができる。発光物質としてはルシフェリン、ルシゲニンなどを用いることができる。また、遺伝子工学的手法により、ホスホリパーゼと標識蛋白(例えばGFPなど)のキメラ蛋白を作製し用いることもできる。
また、GPR40は、インスリン分泌との関連が示唆されていることから、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物をヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に投与し、膵臓ランゲルハンス島からのインスリン分泌を指標として解析したり、または、投与後の血中インスリン量、血糖値などを測定することにより、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)、糖尿病性の合併症や変性疾患(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、高血糖、多尿、ケトン血症、アシドーシス、インスリン抵抗性、耐糖能障害、神経変性疾患、インスリノーマ、癌、高インスリン血症、高グリセリド血症、脂肪肝、インスリン過剰分泌による低血糖、動脈硬化、高脂血症、脳卒中、肥満、糖尿病や肥満によって引き起こされる各種疾患などに影響を与える化合物であるか否かを確認および決定することができる。スクリーニングなどの指標としては、例えば、インスリン分泌、血糖値、血中脂質量などを測定する試験などを行うことも有効である。被検物質の投与回数は1日あたり一回でも数回に分けても良く、被検物質を投与する期間や観察する期間は1日から数週間にわたってもよい。
本発明に使用する被検物質は、どのような化合物であってもよいが、例えば遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物ライブラリー、核酸(オリゴDNA、オリゴRNA)、合成ペプチドライブラリー、抗体、細菌放出物質、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)抽出液、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)培養上清、精製または部分精製ポリペプチド、海洋生物、植物または動物由来の抽出物、土壌、ランダムファージペプチドディスプレイライブラリーを挙げることができる。
スクリーニング用キット
本発明によるスクリーニング用キットは、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを少なくとも含んでなる。好ましくは、このキットは、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするためのものである。前記スクリーニング用キットは、所望により、本発明によるスクリーニング方法を実施するための種々の試薬、例えば結合反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。
本発明の別の態様のスクリーニング用キットは、ホスホリパーゼまたはその塩、およびGPR40を細胞膜上に発現(好ましくは、GPR40を含む発現ベクターを導入して過剰に発現)し、しかも、cAMP応答配列(CRE)が5’上流に位置するレポーター遺伝子(例えば、アルカリフォスファターゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子など)を含有する細胞とを少なくとも含有する。前記スクリーニング用キットは、所望により、種々の試薬、例えばレポーター遺伝子産物(例えば、アルカリフォスファターゼもしくはルシフェラーゼなど)の基質、アデニル酸シクラーゼ活性化剤(例えばフォルスコリン)、結合反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。また、前記スクリーニング用キットは、コントロールとして、CREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有するものの、GPR40を細胞膜上に発現していない細胞を含んでいてもよい。
本発明の別の態様のスクリーニング用キットは、ホスホリパーゼまたはその塩、およびGPR40を細胞膜上に発現(好ましくは、GPR40を含む発現ベクターを導入して過剰に発現)した細胞を少なくとも含有する。前記スクリーニング用キットは、所望により、種々の試薬、例えばカルシウム蛍光プローブ(例えばFura−2など)、反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。また、前記スクリーニング用キットは、コントロールとしてGPR40を細胞膜上に発現していない細胞を含んでいてもよい。
本発明のスクリーニング方法により得られる化合物を含有する医薬
GPR40は、膵臓のβ細胞での高い発現が報告されており、マウス膵臓β細胞由来細胞株MIN6や、すい臓の初代培養細胞のからのインスリン分泌促進作用との関連が報告されている(国際公開WO2003/068959号パンフレット, Ito Y et al., Nature, 422 (6928):173-6, 2003)。インスリンは、血糖値の調節や、トリグリセリドの貯蔵、血中脂肪酸の調節などの作用を有する。また、GPR40は、乳がんの増殖に関与していることが報告されている(Hardy S et al., The Journal of Biological Chemistry, 280(14):13285-91, 2005)。さらに、GPR40の発現を低下させたマウスにおいては、肥満によって引き起される高インスリン血症や、脂肪肝、高グリセリド血症などが緩和することが報告されている(Steneberg P et al., Cell Metabolism, 1(4):245-58, 2005)。これらのことから、GPR40が、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)、糖尿病性の合併症や変性疾患(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、高血糖、多尿、ケトン血症、アシドーシス、インスリン抵抗性、耐糖能障害、神経変性疾患、インスリノーマ、癌、高インスリン血症、高グリセリド血症、脂肪肝、インスリン過剰分泌による低血糖、動脈硬化、高脂血症、脳卒中、肥満、糖尿病や肥満によって引き起こされる各種疾患などと関連していることが予想される。
したがって、本発明によるスクリーニング方法により得られる化合物は、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)、糖尿病性の合併症や変性疾患(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、高血糖、多尿、ケトン血症、アシドーシス、インスリン抵抗性、耐糖能障害、神経変性疾患、インスリノーマ、癌、高インスリン血症、高グリセリド血症、脂肪肝、インスリン過剰分泌による低血糖、動脈硬化、高脂血症、脳卒中、肥満、糖尿病や肥満によって引き起こされる各種疾患などの治療用の医薬として用いることができる。
当該化合物は塩を形成してもよく、さらに当該化合物およびその塩は溶媒和物(例えば、水和物、アルコール和物、エーテル和物)を形成していてもよい。ここで「塩」とは、薬学的に許容される塩を示し、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物と薬学的に許容される塩を形成するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば好ましくはハロゲン化水素酸塩(例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法により得られる化合物を単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬品組成物として用いることもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。また、かかる薬剤は、ヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に、種々の形態、経口または非経口(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。したがって、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物を含有する医薬組成物は、投与経路に応じて適当な剤形とされ、具体的には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、あるいはシロップ剤などによる経口剤、または注射剤、点滴剤、リポソーム剤、坐薬剤などによる非経口剤を挙げることができる。これらの製剤は通常用いられている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することが可能である。使用可能な無毒性のこれらの成分としては、例えば大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;例えば流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;例えばミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;例えばセトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;例えばヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;例えばエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);例えばグルコース、ショ糖等の糖;例えば無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの無機塩;精製水等を用いて常法により製造することができる。使用可能な無毒性の上記賦形剤としては、例えば乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素等が挙げられる。結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が挙げられる。着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが挙げられる。矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が挙げられる。上記の成分は、その塩またはその水和物であってもよい。
それらの投与形態としては、また、必要な投与量範囲は、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物の選択、投与対象、投与経路、製剤の性質、患者の状態、そして医師の判断に左右される。しかし、適当な投与量は患者の体重1kgあたり例えば約1.0〜1,500μg、好ましくは約10〜500μg程度を投与するのが好ましい範囲である。投与経路の効率が異なることを考慮すれば、必要とされる投与量は広範に変動することが予測される。例えば経口投与は静脈注射による投与よりも高い投与量を必要とすると予想される。こうした投与量レベルの変動は、当業界でよく理解されているような、標準的経験的な最適化手順を用いて調整することができる。
本明細書において「治療」とは、一般的に、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾病および/または症状を完全にまたは部分的に防止する点では予防的であり、疾病および/または疾病に起因する悪影響の部分的または完全な治癒という点では治療的である。本明細書において「治療」とは、哺乳動物、特にヒトの疾病の任意の治療を含み、例えば
(1A)疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;
(1B)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または遅延すること;
(1C)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こすこと等を含む。
以下、実施例により本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。
実施例1: GPR40をコードするポリヌクレオチドの調製
ヒトGPR40(以下、ヒトGPR40を、単にGPR40またはhGPR40と称することもある。)をコードするポリヌクレオチドの単離のため、配列番号1で表される903bpの核酸配列を基にして、常法にしたがって、5’側プライマー(5'-ttgatatcgccgccaccatggacctgcccccgcagct-3')(配列番号19)と3’側プライマー(5' -ttacttctgggacttgccccctt-3')(配列番号20)とで表されるPCRプライマーを設計した。Human Pancreas QUICK-CloneTM cDNA (クロンテック社)を鋳型にして、配列番号19と配列番号20との組合せからなるPCRプライマーと、Expand High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)とを用い、94℃5分の後、94℃1分、58℃2分、72℃1分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。増幅したPCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し、ABI prism DNA sequencing kit(パーキンエルマーアプライドサイエンス社(Perkin-Elmer Applied Biosystems社))により配列を確認した。その結果、pCR2.1に挿入された903塩基対の配列は、配列番号1における1番目から903番目と同一配列であり、GPR40−pCR2.1を得ることができた。
実施例2: レトロウイルスベクタープラスミドの調製
pBabe Puro(Morgenstern J.P. and Land H. Nucleic Acids Res. 18(12):3587-96, 1990)(配列番号21)をSalIおよびClaIで切断することによりSV40 promoter−puro(r)領域を除いた後、末端をクレノー断片(Klenow fragment)(宝酒造株式会社)により平滑化した。ここへ、pIREShyg(クロンテック社(Clontech社))をNsiIおよびXbaIで切断することにより切り出し、T4ポリメラーゼ(宝酒造株式会社)により末端を平滑化したIRES−hyg(r)領域を挿入し、pBabeXIHを得た。
このpBabeXIHをSspIおよびBamHIで切断することにより、5’−LTR−packaging signalを除いた。ここへ、pCLXSN(IMGENEX社)をSspIおよびBamHIで切断することにより切り出した5’LTR−CMV promoter-packaging signalを挿入して、pBabeCLXIHを得た。
実施例3: GPR40遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミドの調製
実施例2で得たレトロウイルス発現用プラスミドpBabeCLXIHを、制限酵素HpaIで切断した。ここへ実施例1で得たGPR40−pCR2.1を、EcoRVで切断することにより切り出したGPR40をコードするcDNAを挿入することにより、pBabeCL(GPR40)IHを得た(図1)
実施例4: GPR40遺伝子導入用レトロウイルスベクターの調製
2×10個の293−EBNA細胞(インビトロジェン社(Invitrogen社))を、DMEM培地(シグマ社(Sigma社))(10% fetal bovine serum(FBS)、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)(以下、「EBNA培養液」と称する)10mlを用いて、10cm径コラーゲンコートディッシュ(旭テクノグラス社)で培養した。翌日、pV−gp(pVpack−GP(ストラタジーン社(Stratagene社))をNsiIおよびXbaIで切断することによりIRES−hisDを除きT4ポリメラーゼによる平滑化後、自己環化したもの)、pVPack−VSV−G(ストラタジーン社(Stratagene社))、および実施例3で得た遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミド(pBabeCL(GPR40)IH)それぞれ3.3μgを、リポフェクション試薬であるFuGENE 6 Transfection Reagent(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用い、293−EBNA細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に培養液を回収し、1,200×gで10分間遠心した。その上清を0.45μmのフィルター(ミリポア(Millipore)社)でろ過し、GPR40遺伝子導入用レトロウイルスベクターを得た。
実施例5: サイクリックAMP応答配列を含むレポーター系導入細胞SE302の構築
(1) サイクリックAMP応答配列を含むレポーターDNAの作成
Durocher Y et al. Anal Biochem 284(2):316-26, 2000 を参考にサイクリックAMP(cAMP)に応じた転写が見られるユニットを以下のように構築した。
cAMP responsive element(CRE)を含むユニットの作成のために、CREx2hb用として、配列番号22(5'-cccaagcttgatatcgaattcgacgtcacagtatgacggcca tgggaattcgacgtcacagtatgacggccatggggatcccg-3')および,配列番号23(5'-cgggatccccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcgatatcaagcttggg-3')で表されるオリゴDNAを、CREx2bp用として配列番号24(5'-tgcactgcaggaattcccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcccatggccgtcata ctgtgacgtcggatcccg-3')および、配列番号25(5'-cgggatccgacgtcacagtatgacggccatgggaattcgacgtcacagtatgacggccatgggaattcctgcagtgca-3')で表されるオリゴDNAを常法に従い作成した。それぞれの組合せから成るオリゴDNAを95℃に熱処理後、徐々に温度を室温まで下げることにより二本鎖DNA(CREx2hb,およびCREx2bp)を形成させた。CREx2hbをHindIIIおよびBamHI、CREx2bpをBamHIおよびPstIで消化するとともに、pBluescriptIISK(+)(ストラタジーン社(Stratagene社))をHindIIIおよびPstIで消化した。消化したDNAを電気泳動して両端に制限酵素部位をもつDNAを精製した後、これら3つのDNA(CREx2hb、CREx2bp、pBluescriptSK(+))を一度に連結し(ligation)、得られたプラスミドの配列を解析して、CRE4/pBluescriptIISK(+)を作成した。
次にVIP(vasoactive intestinal peptide)プロモーターを含むDNAを得るために、5’側プライマー(5'-tcgactgcagcccatggccgtcatactgtg-3')(配列番号26)および、3’側プライマー(5'-tgcactgcaggtcggagctgactgttctgg-3')(配列番号27)で表されるPCRプライマーを常法に従い作成した。
ヒトゲノムDNA(Roche Diagnostics社)を鋳型として、上述の配列番号26および配列番号27の組合せからなるPCRプライマーと、組換えTaqポリメラーゼ(Takara社)を用いて、94℃30秒、55℃30秒、72℃1分のサイクルを35回繰り返すことによりPCRしたところ、264bpのDNA(配列番号28)が得られた。この264bpのDNAをPstIで消化するとともにCRE4/pBluescriptIISK(+)のPstIサイトに挿入し、得られたプラスミドの配列を確認してCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)を作成した(図2)。このCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)を、HindIIIとSmaIで消化した後、得られたCRE4VIPプロモーター断片の末端平滑化を行った。
実施例2で得たpBabeCLXIHよりIRES〜hyg(r)領域を除去したpBabeCLXを作成した(図3)。PBabeCLXよりレトロウイルス本来のエンハンサー活性(LTR)中のNheI〜NarI領域を除去することによって得られた外来性プロモーター導入用レトロウイルスベクタープラスミドに、末端平滑化した上述のCRE4VIPプロモーター断片と、レポーター遺伝子である胎盤由来アルカリフォスファターゼ(Placental Alkaline Phosphatase:PLAP)(Goto M et al., Mol. Pharmacol. 49(5):860-73, 1996)を導入し、pBabeCLcre4vPdNNを得た(図4)。
(2) サイクリックAMP応答配列を含むレポーター系導入細胞SE302の樹立
サイクリックAMP応答配列によりレポーター遺伝子PLAPが誘導されるレトロウイルスベクタープラスミドpBabeCLcre4vPdNNを用い、実施例4に記載の方法に準じてレトロウイルスベクターを調製した。調製したレトロウイルスベクターをHEK293細胞に導入し、限界希釈法により細胞をクローン化して、PLAP誘導の反応性が最も良かったクローン(以下、「SE302」と称する)を以下の実験に供した。
実施例6: GPR40遺伝子導入SE302細胞の作製
実施例5で構築したSE302細胞を、コラーゲンコート6穴プレート(旭テクノグラス社)に1穴当たり1.2×10個になるように播種した。培地はDMEM(Sigma社))(10% FBS、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)を用いた。翌日、実施例4で得たGPR40含有ウイルスベクター液、および、最終濃度8μg/mlのpolybrene(別名 hexadimethrine bromide, Sigma社)をSE302細胞に加えた。350μg/mlのハイグロマイシン(インビトロジェン社(Invitrogen社))含有の培養液で培養し、この条件で増殖してきた細胞をGPR40遺伝子導入SE302細胞(以下、「GPR40−SE302細胞」と称する)として実験に供した。
実施例7: GPR43遺伝子導入SE302細胞の作製
(1)GPR43をコードするポリヌクレオチドの調製
ヒトGPR43(以下、ヒトGPR43を、単にGPR43と称することもある。)をコードするポリヌクレオチドの単離のため、GenBankアクセッション番号NM005306を参考にして、配列番号29で表される993bpの核酸配列を基にして、常法にしたがって、5’側プライマー(5'-ttaagcttgccgccaccatgctgccggactggaagagct-3')(配列番号30)と3’側プライマー(5'-ctactctgtagtgaagtccgaa-3')(配列番号31)とで表されるPCRプライマーを設計した。Human Lung QUICK-CloneTM cDNA (クロンテック社)を鋳型にして、配列番号30と配列番号31との組合せからなるPCRプライマーと、Expand High Fidelity PCR System(ロシュ ジアグノスティックス社(Roche Diagnostics社))とを用い、94℃5分の後、94℃1分、58℃2分、72℃1分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。増幅したPCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し、ABI prism DNA sequencing kit(パーキンエルマーアプライドサイエンス社(Perkin-Elmer Applied Biosystems社))により配列を確認した。その結果、pCR2.1に挿入された993塩基対の配列は、配列番号29における1番目から993番目と同一配列であり、GPR43−pCR2.1を得ることができた。
(2)GPR43遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミドの調製
実施例2で得たレトロウイルス発現用プラスミドpBabeCLXIHを、制限酵素HpaIで切断した。ここへ上記(1)で得たGPR43−pCR2.1を、制限酵素HindIIIおよびBamHIで切断し、末端を平滑化することにより得たGPR43をコードするcDNAを挿入することにより、pBabeCL(GPR43)IHを得た。
(3)GPR43遺伝子導入SE302細胞の作製
上記(2)で得られたpBabeCL(GPR43)IHプラスミドを、実施例4記載の方法に従い、pV−gp、および、pVPack−VSV−G(Stratagene社)と共に293−EBNA細胞(インビトロジェン社(Invitrogen社))にトランスフェクションした。24時間後に培養上清を回収し、得たGPR43遺伝子導入用レトロウイルスベクター液を、実施例6記載と同様の方法でSE302細胞に感染させた。350μg/mlのハイグロマイシン(インビトロジェン社(Invitrogen社))含有の培養液で培養し、この条件で増殖してきた細胞をGPR43遺伝子導入SE302細胞(以下、「GPR43−SE302細胞」と称する)として実験に供した。
実施例8: 遺伝子導入SE302細胞における転写活性の測定
前記実施例6、7で構築したGPR40−SE302細胞、GPR43−SE302細胞を、転写活性測定用培地(DMEMに、65℃にて30分熱処理したFBSを最終濃度10%になるように加えたもの)にて懸濁した後、96穴プレート(ベクトンディッキンソン社)に、1×10細胞/wellで播種した。また、コントロール細胞としては、緑色蛍光タンパク質(GFP、インビトロジェン社(Invitrogen社))を発現させたSE302細胞(以下、「GFP−SE302細胞」)を用いた。具体的には、実施例3、4に示す方法にGFP発現用ウイルス得た後、実施例6に示す方法でSE302に感染させてGFP−SE302細胞を作製した。細胞播種24時間後、最終濃度0.3μMとなるように調製したフォルスコリンおよび試料を添加した。更に24時間培養後、細胞上清を5μl回収してポリプロピレン製384穴ホワイトプレート(ナルジェヌンクインターナショナル株式会社)に移し、20μlのアッセイ用緩衝液(280mmol/L NaCO−NaHCO、8mmol/L MgSO、pH10)および25μlのLumiphos530(ルミジェン社(Lumigen社))を添加した。室温で2時間反応させた後、各穴の化学発光をFusionプレートリーダー(パーキンエルマー社(Perkin Elmer社))にて測定し、転写活性量とした。この測定値をもとにして、転写活性量促進/抑制を以下に示した式(I)で計算し、[% of control]で表した。試料添加群の活性は、それぞれのプレート毎に設置した対照の値を用いて算出した。
[% of control] = (X−C)/(F−C)x100 (I)
ここで、上記式中、
X: 試料添加群のPLAP転写活性
F: ポジティブコントロール(試料無添加、フォルスコリン刺激あり)の2穴のPLAP転写活性の平均値
C: ネガティブコントロール(試料無添加、フォルスコリン刺激なし)の2穴のPLAP転写活性の平均値
である。
実施例9: 市販ブタ膵臓由来sPLA2を用いたGPR40−SE302細胞のPLAP活性の測定
ブタ膵臓由来sPLA2(Phospholipase A2 from porcine pancreas (ammonium sulfate suspension using soybean L-α-phosphatidylcholine) 600ユニット/mg protein,シグマ社(Sigma社))を遠心後、ペレットを水に溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってPLAP活性を測定した。図5に示すように、GPR40−SE302細胞において濃度依存的なPLAP活性の上昇が検出されたが、GPR43−SE302細胞、および、GFP−SE302細胞ではPLAP活性の上昇が検出されなかった。このブタ膵臓由来sPLA2は、主に Group IB secretory phospholipase A2(GIB−sPLA2)(Swiss Protアクセッション番号P00592)であることが確認されていることから(Ta-min Chang et al., J. Biol. Chem. 274(16):10758-10764, 1999)、GPR40がGIB−sPLA2によって活性化されることが示された。
実施例10: ヒトおよびマウスのGX−sPLA2の前駆体をコードするcDNAのクローニング
ヒト、およびマウスGroup X secretory Phospholipase A2(GX−sPLA2)の前駆体をコードするcDNAを以下に示す方法にしたがって行った。
(1) ヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2)の前駆体をコードするcDNAのクローニング
hGX−sPLA2の前駆体をコードするポリヌクレオチドの単離は、配列番号13(GenBank アクセッション番号NM_003561)であらわされる核酸配列を基にして、hGX−sPLA2のコード領域441番目から938番目に対してgkプライマーを設計し5’側プライマー(5'-atggggccgctacctgtgtgcctgcc-3')(配列番号32)、および、3’側プライマー(5'-tcagtcacacttgggcgagtccggc-3')(配列番号33)、Human Lung QUICK-Clone cDNA(クロンテック社)を鋳型として、PCRを行った。FastStart High Fidelity PCR System(ロシュ・ジアグノスティックス社(Roche Diagnostics社))を用い、94℃5分の後、94℃1分、61℃1分、72℃3分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。PCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し配列を確認したところ、挿入された498塩基対の配列は、配列番号13における441番目から938番目と同一配列であり、hGX−sPLA2−pCR2.1を得ることができた。
(2) マウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2)をコードするcDNAのクローニング
mGX−sPLA2をコードするポリヌクレオチドの単離は、配列番号14(GenBank アクセッション番号NM_011987)であらわされる核酸配列を基にして、mGX−sPLA2のコード領域175番目から630番目に対してプライマー5’側プライマー(5'-atgctgctgctactgctgctgttgc-3')(配列番号34)、および、3’側プライマー(5'-tcaattgcacttgggagagtccttc-3')(配列番号35)を設計した。鋳型なるcDNAは、C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)から摘出した大腸より、RNeasy Mini kit (キアゲン社(QIAGEN社))を用いて抽出したRNAを、TaqMan Reverse Transcription Reagents(アプライドバイオシステムズ社)を用い25℃10分、48℃60分、95℃10分逆転写することにより得た。FastStart High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)を用い、94℃5分の後、94℃1分、58℃1分、72℃3分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。PCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し配列を確認したところ、挿入された456塩基対の配列は、配列番号14における175番目から630番目と同一配列であり、mGX−sPLA2−pCR2.1を得ることができた。
実施例11: C末Hisタグ付きGX−sPLA2(GX−sPLA2−His6)のクローニング
C末Hisタグ付きヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2−His6)は、実施例10で得たhGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として5’側プライマー(5'-gatatcgccgccaccatggggccgctacctgtg-3')(配列番号36)および3’側プライマー(5'-gatatctcaatggtgatggtgatgatggtcacacttgggcgagtc-3')(配列番号37)を用いてPCRを行った。同様に、C末Hisタグ付きマウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2−His6)は、実施例10で得たmGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として、5’側プライマー(5'-gatatcgccgccaccatgctgctgctactgctg-3')(配列番号38)および3’側プライマー(5'-gatatctcaatggtgatggtgatga tgattgcacttgggagagtc-3')(配列番号39)を用いてPCRを行った。PCRは、FastStart High Fidelity PCR System(ロシュ ジアグノスティックス社(Roche Diagnostics社))を用い、94℃5分の後、94℃1分、61℃1分(hGX−sPLA2の場合)もしくは58℃1分(mGX−sPLA2の場合)、72℃3分のサイクルを15回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。得られたPCR産物をそれぞれpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し、hGX−sPLA2−His6−pCR2.1およびmGX−sPLA2−His6−pCR2.1を得た。
実施例12: C末Hisタグ付きGX−sPLA2の遺伝子導入用バキュロウイルスの作製
C末Hisタグ付きGX−sPLA2の遺伝子導入用バキュロウイルスは、BAC−TO−BAC Baculovirus Expression Systems(インビトロジェン株式会社)を用いて、キットに含まれるマニュアルに従って作製した。具体的には、実施例11で得たhGX−sPLA2−His6―pCR2.1、および、mGX−sPLA2−His6−pCR2.1を、制限酵素XbaIおよびHindIIIで切断し、同じくXbaIおよびHindIIで切断しておいたpFASTBAC1プラスミドに挿入することにより、それぞれhGX−sPLA2−His6−pFASTBACおよび、mGX−sPLA2−His6−pFASTBACを得た。これらプラスミドを、キット付属のDH10BACコンピテントセルにトランスポジションすることにより、バクミドDNAを回収した。バクミドDNAを、SF900 II SFM(インビトロジェン社)で培養したSf9細胞に、セルフェクチン試薬(インビトロジェン社)を用いてトランスフェクションし、3日後に培養上清を回収することにより、ヒトおよびマウスC末Hisタグ付きGX−sPLA2遺伝子導入用バキュロウイルスを得た。
実施例13: C末Hisタグ付きGX−sPLA2の精製
実施例12で得たヒトおよびマウスC末Hisタグ付きGX−sPLA2遺伝子導入用バキュロウイルスを、それぞれSf9細胞に感染させ、三角フラスコ中で振とう培養を行った。60時間後に培養液を遠心することにより培養上清を得た。培養上清に最終濃度 10 mM イミダゾール(シグマ社(Sigma社))を加え、 Ni Sepharose 6 Fast Flow カラム(アマシャムバイオサイエンス社)に付した。カラムの5倍量のBinding Buffer(10mMイミダゾール、500mM NaCl、20mM NaHPO、pH7.4)で洗浄した後、溶出バッファー(Elution Buffer)(500mM イミダゾール、500mM NaCl、20mM NaHPO、50mM Tris−HCl、pH7.4)で溶出した。溶出液を0.1% TFAで5倍希釈した後、HF MEGA BOND ELUTE C18カラム(バリアン社)に付した。カラムを、0.1% TFAを含む50% アセトニトリルで溶出し、凍結乾燥により、ヒトおよびマウスの精製C末Hisタグ付きGX−sPLA2(それぞれ、hGX−sPLA2−His、および、mGX−sPLA2−His)を得た。
実施例14: C末Hisタグ付きマウスGX−sPLA2を用いたGPR40−SE302におけるPLAP活性の測定
実施例13で得たhGX−sPLA2−HisおよびmGX−sPLA2−Hisの凍結乾燥粉末を、適量の0.1% TFA溶液に溶かした。これらを用いて、実施例8記載の方法によりGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図6に示すように、hGX−sPLA2−His(図6−A)および、mGX−sPLA2−His(図6−B)の濃度に応じて、GPR40−SE302細胞おけるPLAP活性の上昇が観察されたが、GFP−SE302細胞においては特異的なPLAP活性の上昇は観察されなかった。このことから、GPR40がヒトおよびマウスのGX−sPLA2によって活性化されることが明らかになった。
実施例15: 市販ハチ毒PLA2を用いたGPR40−SE302細胞のPLAP活性の測定
ハチ毒PLA2(bvPLA2)(Phospholipase A2 from honey bee venom (salt-free, lyophilized powder, 600〜1800ユニット/mg protein)、シグマ社(Sigma社))を水に溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図7に示すように、GPR40−SE302細胞において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出されたが、GFP−SE302およびGPR43−SE302においてはPLAP活性の上昇は観察されなかった。このことから、GIB−sPLA2、GX−sPLA2などの分泌型PLA2のみではなく、ハチ毒由来のPLA2によってもGPR40が活性化されることが示された。
実施例16: 市販ヘビ毒PLA2を用いたGPR40−SE302細胞のPLAP活性の測定
ヘビ毒PLA2(snake venom PLA2)(Phospholipase A2 from Naja mossambica mossambica, lyophilized powder, 〜1,500 units/mg protein, pH 8.9, 25℃ (using soybean L-α-phosphatidylcholine)、シグマ社(Sigma社))を水に溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図8に示すように、GFP−SE302およびGPR43−SE302と比較して、GPR40−SE302細胞において、濃度依存的なPLAP活性の顕著な上昇が検出された。このことから、ヘビ毒由来PLA2によっても、GPR40が活性化されることが示された。
実施例17: 市販ハチ毒PLA2を用いたGPR40−SE302細胞における細胞内カルシウム濃度変化の測定
1mM Fura2-AM(Dojin)20μlを、5 mLのアッセイバッファー (Hanks液に、10 mM HEPES (pH 7.4), 0.05%グルコース、2.5 mM プロベネシドを加えたもの)で希釈した。約5×10個のGPR40−SE302細胞をトリプシンで処理し、遠心した後、上記のFura−2含有アッセイバッファーに懸濁し、室温で2時間、振とう培養をおこなった。その後、遠心にて細胞を回収し、8×10個/100μlの細胞が含まれるようにアッセイバッファーに懸濁し、Blak walled 96-well plate with half area (コーニング社)に、1穴あたり50μlずつ分注した。別の96wellプラスチックプレート(ファルコン社)に、実施例15で用いたハチ毒PLA2(bvPLA2)(Phospholipase A from honey bee venom、シグマ社(Sigma社))溶液を分注し、FDSS-6000(浜松フォトニクス社)にセットした。FDSS-6000で蛍光読み取り開始後10秒後にリガンドが添加されるようにプログラムし、蛍光の経時変化を調べた。図9(A)に示すように、GPR40発現細胞において、ハチ毒PLA2添加後により蛍光の変化が観察されたことから、細胞内カルシウム濃度が変化していることが示唆された。また、0.1,0.3,1.0,3.0μg/mlのハチ毒PLA2によりGPR40の蛍光は濃度依存的に変化した(図9(A))。一方、GPR43発現細胞においては、0.1,0.3,1.0,3.0μg/mlのハチ毒PLA2いずれの濃度を存在させた場合にも、蛍光の変化は観察されなかったことから(図9(B))、ハチ毒PLA2がGPR40特異的に細胞内カルシウム濃度を変化させることが示唆された。
実施例18: C末FLAG タグ付きGX−sPLA2のcDNAクローニング
C末FLAGタグ付きヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2−FLAG)は、実施例10で得たhGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として配列番号36に示す5’側プライマー、および、3’側プライマー(5'-gatatctcacttgtcatcgtcgtccttgtagtcgtcacacttgggcga-3')(配列番号40)を用いてPCRを行うことにより得た(配列番号41)。同様に、C末FLAGタグ付きマウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2−FLAG)は、実施例10で得たmGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として配列番号38に示す5’側プライマー、および、3’側プライマー(5'-gatatctcacttgtcatcgtcgtccttgtagtcattgcacttgggaga-3')(配列番号42)のプライマーを用いてPCRを行うことにより得た(配列番号43)。得られたPCR産物を再びpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入して、それぞれ、hGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1およびmGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を得た。
実施例19: C末FLAGタグ付きレコンビナントhGX−sPLA2を用いたGPR40−SE302細胞のPLAP活性の測定
実施例18で得たhGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を、制限酵素EcoRVで消化し、切り出したフラグメントをpYNGベクター(片倉工業株式会社)のEcoRVサイトにサブクローニングした。タンパク質産生サービス(Superworm(商標) system)(片倉工業株式会社)に受託し、カイコサナギ抽出液を得た。カイコサナギ抽出液をANTI−FLAG(商標) M2 Agarose(シグマ社)に付し、付属のマニュアルに従い精製を行った。sPLA2酵素活性は、sPLA2アッセイ・キット(Cayman Chemical 社)を用いて付属のマニュアルに従い行った。活性分画をVYDAC(商標) Protein & Peptide C18カラム(#218TP54、VYDAC社)に付した後、0.1% TFAを含む24〜42%アセトニトリルの濃度勾配により溶出した。得られたピークのうち、もっとも比活性の高かったシングルピークをレコンビナントhGX−sPLA2として、PLAPアッセイに用いた。なお、レコンビナントの蛋白濃度は、Dcプロテインアッセイ(BioRad社)を用い測定した。得られたレコンビナントhGX−sPLA2を0.1%TFAに溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。
図10に示すように、GPR40−SE302細胞において濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出されたが、GPR43−SE302、および、GFP−SE302ではPLAP活性の上昇が検出されなかった。このことから、C末FLAGタグ付きhGX−sPLA2によってもGPR40が活性化されることが示された。
実施例20: C末FLAGタグ付きレコンビナントmGX−sPLA2を用いたGPR40−SE302細胞のPLAP活性の測定
実施例18で得たmGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を、制限酵素BamHI、XbaIで消化し、切り出したフラグメントをpFastBac(インビトロジェン社)のBamHI、XbaIサイトにサブクローニングし、mGX−sPLA2−FLAG−pFAST Bacを得た。Bac−to−Bac(商標)バキュロウイルス発現系(Bac-to-Bac Baculovirus Expression System)(インビトロジェン社)を用いてバキュロウイルスを得た後、昆虫細胞Sf−9感染させた。Sf−9細胞は、SF−900II培地(インビトロジェン社)(ペニシリン/ストレプトマイシン、2.5% FCS)を用いて培養した。バキュロウイルス感染Sf−9細胞培養上清をANTI−FLAGR M2 Agarose(シグマ社)に付し、付属のマニュアルに従い精製を行った。sPLA2酵素活性は、sPLA2アッセイ・キット(Cayman Chemical 社)を用いて付属のマニュアルに従い行った。活性分画をVYDAC(商標) Protein & Peptide C18カラム(#218TP54、VYDAC社)に付した後、0.1% TFAを含む24〜54%アセトニトリルの濃度勾配により溶出した。得られたピークのうち、もっとも比活性の高かったシングルピークをレコンビナントhGX−sPLA2として、PLAPアッセイに用いた。なお、レコンビナントの蛋白濃度は、Dcプロテインアッセイ(BioRad社)を用い測定した。得られたレコンビナントmGX−sPLA2を0.05% TFA、1% BSA(Fatty Acid Free、シグマ社))に溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。
図11に示すように、GPR40−SE302細胞において濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出されたが、GPR43−SE302、および、GFP−SE302ではPLAP活性の上昇が検出されなかった。このことから、C末FLAGタグ付きmGX−sPLA2によってもGPR40が活性化されることが示された。

Claims (13)

  1. 被検物質が、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質であるかをスクリーニングする方法であって、
    被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて
    GPR40を含む細胞と、
    分泌型ホスホリパーゼA2またはその塩とを接触させ、次いで、
    細胞刺激活性を測定して、
    被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とを比較する工程
    含むことを特徴とする、方法。
  2. 分泌型ホスホリパーゼA2が、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIA分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIC分泌型ホスホリパーゼA2、グループIID分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIE分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIF分泌型ホスホリパーゼA2、グループIII分泌型ホスホリパーゼA2、グループV分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、グループXIIA分泌型ホスホリパーゼA22、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 分泌型ホスホリパーゼA2が、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合との間で、結果に相違が出た場合に、その物質をGPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質の候補であると決定する工程をさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 被検物質存在下の場合が、被検物質の非存在下の場合と比べて細胞刺激活性が上昇している場合、その被検物質をGPR40アゴニストと決定する工程をさらに含んでなる、請求項に記載の方法。
  6. 被検物質存在下の場合が、被検物質の非存在下の場合と比べて細胞刺激活性が抑制される場合、その被検物質をGPR40アンタゴニストと決定する工程をさらに含んでなる、請求項4に記載の方法。
  7. 細胞刺激活性の測定を、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化を検出するレポーターアッセイ系により測定するか、または、細胞内カルシウムイオン遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c-fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性およびインスリン分泌活性からなる群より選択されるパラメータを測定することによって行う、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. GPR40が、下記(a)〜(e)からなる群より選択されるポリペプチドからなる、請求項1〜7のいずれか−項に記載の方法:
    (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
    (b)配列番号2のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、
    (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
    (d)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、および、
    (e)配列番号1で表される塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
  9. GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするためのキットであって、GPR40を含む細胞と、分泌型ホスホリパーゼA2またはその塩とを少なくとも含んでなる、スクリーニング用キット。
  10. GPR40が、下記(a)〜(e)からなる群より選択されるポリペプチドからなる、請求項に記載のキット:
    (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
    (b)配列番号2のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、
    (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド、
    (d)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、および、
    (e)配列番号1で表される塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
  11. 分泌型ホスホリパーゼA2が、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIA分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIC分泌型ホスホリパーゼA2、グループIID分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIE分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIF分泌型ホスホリパーゼA2、グループIII分泌型ホスホリパーゼA2、グループV分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、グループXIIA分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項9又は10に記載のキット。
  12. 分泌型ホスホリパーゼA2が、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項9〜11のいずれか一項に記載のキット。
  13. GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするための、GPR40を含む細胞と、分泌型ホスホリパーゼA2またはその塩の使用。
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