JPWO2006137464A1 - 弾性表面波デバイス、モジュール、及び発振器 - Google Patents
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Abstract
課題水晶基板を用いたSAWデバイスにおいて、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数と反射器の反射係数のピーク周波数のずれによるQ値の劣化を防止する。解決手段圧電基板1上に、IDT2と、該IDT2の両側にグレーティング反射器3a、3bを配置する。前記圧電基板1は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°にした水晶平板である。そして、弾性表面波の波長をλとし、IDTの電極ピッチをLt、前記反射器の電極ピッチをLrとした時、波長で基準化した電極膜厚H/λを0.05≦H/λ≦0.07とし、IDTと反射器の電極ピッチ比Lt/Lrを31.500×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲に設定する。
Description
本発明は、水晶基板を用いた弾性表面波デバイスにおいて、Q値を高めることを目的とした弾性表面波デバイス、モジュール、および発振器に関する。
近年、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:以下、SAW)デバイスは移動体通信用端末や車載用機器等の部品として幅広く利用され、小型であること、Q値が高いこと、周波数温度特性が優れていること等が強く要求されている。
これらの要求を実現するSAWデバイスとして、STカット水晶基板を用いたSAWデバイスがある。STカット水晶基板は結晶X軸を回転軸としてXZ面を結晶Z軸より反時計方向に42.75°回転した面(XZ’面)を持つ水晶板のカット名であり、結晶X軸方向に伝搬するレイリー波と呼ばれる(P+SV)波であるSAW(以下、STカット水晶SAWと称す)を利用する。STカット水晶SAWデバイスの用途は、発振素子として用いられるSAW共振子や、移動体通信端末のRF段とIC間に配置されるIF用フィルタなど幅広く存在する。
STカット水晶SAWデバイスが小型でQ値の高いデバイスを実現できる理由として、SAWの反射を効率良く利用できる点が挙げられる。図4に示すSTカット水晶SAW共振子を例に説明すると、STカット水晶SAW共振子は、STカット水晶基板101上にそれぞれ互いに間挿し合う複数本の電極指を有するくし形電極(以下、IDTと称す)102を配置し、該IDT102の両側にSAWを反射する為のグレーティング反射器103a、103bを配置した構造である。STカット水晶SAWは圧電基板の表面に沿って伝搬する波であるので、グレーティング反射器103a、103bにより効率良く反射され、SAWのエネルギーをIDT102の内部に十分閉じ込めることができるので、小型で且つQ値の高いデバイスが得られる。
更に、SAWデバイスを使用する上で重要な要素に周波数温度特性がある。上述のSTカット水晶SAWにおいては、周波数温度特性の1次温度係数が零であり、その特性は2次曲線で表され、頂点温度を使用温度範囲の中心に位置するように調整すると周波数変動量が格段に小さくなるので周波数安定性に優れていることが一般的に知られている。
しかしながら、前記STカット水晶SAWデバイスは、1次温度係数は零であるが、2次温度係数は−0.034(ppm/℃2)と比較的大きいので、使用温度範囲を拡大すると周波数変動量が極端に大きくなってしまうという問題があった。
前記問題を解決する手法として、Meirion Lewis,“Surface Skimming Bulk Wave,SSBW”,IEEE Ultrasonics Symp.Proc.,pp.744〜752(1977)、及び特公昭62−016050号公報に開示されたSAWデバイスがある。このSAWデバイスは、図5に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−50°回転した付近に設定し、且つ、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して垂直方向(Z’軸方向)にしたことが特徴である。なお、前述のカット角をオイラー角で表示する場合は(0°,θ+90°,90°)=(0°,40°,90°)となる。このSAWデバイスは、圧電基板の表面直下を伝搬するSH波をIDTによって励起し、その振動エネルギーを電極直下に閉じ込めることを特徴としていて、周波数温度特性が3次曲線となり、使用温度範囲における周波数変動量が極めて少なくなるので良好な周波数温度特性が得られる。
しかしながら、前記SH波は基本的に基板内部に潜って進んでいく波であるため、圧電基板表面に沿って伝搬するSTカット水晶SAWと比較してグレーティング反射器によるSAWの反射効率が悪い。従って、小型で高Q値なSAWデバイスを実現し難いという問題がある。また、前述の先行文献においてもSAWの反射を利用しない遅延線としての応用については開示されているものの、SAWの反射を利用したデバイスへの応用は提案されておらず、発振素子やフィルタ素子としての実用化は困難であると言われていた。
この問題を解決すべく、特公平01−034411号公報では、図6に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを−50°付近に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対し垂直方向(Z’軸方向)にした圧電基板111上に800±200対もの多対のIDT112を形成することにより、グレーティング反射器を利用せずIDT112自体の反射だけでSAWエネルギーを閉じ込め高Q値化を図った所謂多対IDT型SAW共振子が開示されている。
しかしながら、前記多対IDT型SAW共振子はグレーティング反射器を設けたSAW共振子と比較して効率的なエネルギー閉じ込め効果が得られず、高いQ値を得るのに必要なIDT対数が800±200対と非常に多くなってしまうので、STカット水晶SAW共振子よりもデバイスサイズが大きくなってしまい、近年の小型化の要求に応えることができないという問題があった。
また、前記特公平01−034411号公報に開示されているSAW共振子においては、IDTにて励振されたSAWの波長をλとした時、電極膜厚を2%λ以上、好ましくは4%λ以下にすることによりQ値を高めることができるとされており、共振周波数200MHzの場合、4%λ付近でQ値が飽和に達するが、その時のQ値は20000程度しか得られずSTカット水晶SAW共振子と比較してもほぼ同等のQ値しか得られない。この原因として、膜厚が2%λ以上4%λ以下の範囲ではSAWが圧電基板表面に十分集まっていないので反射が効率良く利用できないことが考えられる。
そこで、本発明者は特願2004−310452号にて、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板上に、Al又はAlを主成分とする合金からなるIDTを形成し、該IDTのSAWの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10としたSAWデバイスを発明した。当該発明によれば、本来、圧電基板内部に潜って進んでいく波を基板表面に集中させてグレーティング反射器等によりSAWの反射を効率良く利用することができるので、従来のSTカット水晶SAWデバイスと比較して小型でQ値が高く、且つ周波数温度特性に優れたSAWデバイスが実現できる。
ところで、SAW共振子のQ値を高くするには、圧電基板の表面上にSAWの振動エネルギーを閉じ込めて、振動損失を極力減少せしめることが重要であり、そのためにはIDTの放射コンダクタンスのピーク周波数と反射器の反射係数のピーク周波数を合わせる必要がある。図7は、IDTの電極ピッチをLt、反射器の電極ピッチをLrとした時にLt=Lrとした時のIDTの放射コンダクタンスGと反射器の反射係数|Γ|を示している。同図に示すように、IDTの放射コンダクタンスGのピーク周波数ftと反射器の反射係数|Γ|のピーク周波数frの間にはずれが生じていることが分かる。これは、IDTの中心周波数で十分な反射状態にならないことを意味しており、Q値が劣化する原因となる。
そこで、ftとfrを一致させるべく、IDTと反射器の電極ピッチ比Lt/Lrを補正する必要がある。Lt/Lrは、圧電基板のカットアングルや電極膜厚により補正値が変化するので、設計条件に応じてLt/Lrを適宜選択しないとftとfrがずれてしまいQ値が劣化する原因となる。従って、特願2004−310452号に記載のSAWデバイスにおいても、ftとfrが一致するようなLt/Lrの最適値を検討する必要があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、特願2004−310452号に開示されたSAWデバイスにおいて、IDTと反射器の電極ピッチ比Lt/Lrを最適に設定することにより、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数と反射器の反射係数のピーク周波数を一致させ、高いQ値を実現することを目的とする。
これらの要求を実現するSAWデバイスとして、STカット水晶基板を用いたSAWデバイスがある。STカット水晶基板は結晶X軸を回転軸としてXZ面を結晶Z軸より反時計方向に42.75°回転した面(XZ’面)を持つ水晶板のカット名であり、結晶X軸方向に伝搬するレイリー波と呼ばれる(P+SV)波であるSAW(以下、STカット水晶SAWと称す)を利用する。STカット水晶SAWデバイスの用途は、発振素子として用いられるSAW共振子や、移動体通信端末のRF段とIC間に配置されるIF用フィルタなど幅広く存在する。
STカット水晶SAWデバイスが小型でQ値の高いデバイスを実現できる理由として、SAWの反射を効率良く利用できる点が挙げられる。図4に示すSTカット水晶SAW共振子を例に説明すると、STカット水晶SAW共振子は、STカット水晶基板101上にそれぞれ互いに間挿し合う複数本の電極指を有するくし形電極(以下、IDTと称す)102を配置し、該IDT102の両側にSAWを反射する為のグレーティング反射器103a、103bを配置した構造である。STカット水晶SAWは圧電基板の表面に沿って伝搬する波であるので、グレーティング反射器103a、103bにより効率良く反射され、SAWのエネルギーをIDT102の内部に十分閉じ込めることができるので、小型で且つQ値の高いデバイスが得られる。
更に、SAWデバイスを使用する上で重要な要素に周波数温度特性がある。上述のSTカット水晶SAWにおいては、周波数温度特性の1次温度係数が零であり、その特性は2次曲線で表され、頂点温度を使用温度範囲の中心に位置するように調整すると周波数変動量が格段に小さくなるので周波数安定性に優れていることが一般的に知られている。
しかしながら、前記STカット水晶SAWデバイスは、1次温度係数は零であるが、2次温度係数は−0.034(ppm/℃2)と比較的大きいので、使用温度範囲を拡大すると周波数変動量が極端に大きくなってしまうという問題があった。
前記問題を解決する手法として、Meirion Lewis,“Surface Skimming Bulk Wave,SSBW”,IEEE Ultrasonics Symp.Proc.,pp.744〜752(1977)、及び特公昭62−016050号公報に開示されたSAWデバイスがある。このSAWデバイスは、図5に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−50°回転した付近に設定し、且つ、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して垂直方向(Z’軸方向)にしたことが特徴である。なお、前述のカット角をオイラー角で表示する場合は(0°,θ+90°,90°)=(0°,40°,90°)となる。このSAWデバイスは、圧電基板の表面直下を伝搬するSH波をIDTによって励起し、その振動エネルギーを電極直下に閉じ込めることを特徴としていて、周波数温度特性が3次曲線となり、使用温度範囲における周波数変動量が極めて少なくなるので良好な周波数温度特性が得られる。
しかしながら、前記SH波は基本的に基板内部に潜って進んでいく波であるため、圧電基板表面に沿って伝搬するSTカット水晶SAWと比較してグレーティング反射器によるSAWの反射効率が悪い。従って、小型で高Q値なSAWデバイスを実現し難いという問題がある。また、前述の先行文献においてもSAWの反射を利用しない遅延線としての応用については開示されているものの、SAWの反射を利用したデバイスへの応用は提案されておらず、発振素子やフィルタ素子としての実用化は困難であると言われていた。
この問題を解決すべく、特公平01−034411号公報では、図6に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを−50°付近に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対し垂直方向(Z’軸方向)にした圧電基板111上に800±200対もの多対のIDT112を形成することにより、グレーティング反射器を利用せずIDT112自体の反射だけでSAWエネルギーを閉じ込め高Q値化を図った所謂多対IDT型SAW共振子が開示されている。
しかしながら、前記多対IDT型SAW共振子はグレーティング反射器を設けたSAW共振子と比較して効率的なエネルギー閉じ込め効果が得られず、高いQ値を得るのに必要なIDT対数が800±200対と非常に多くなってしまうので、STカット水晶SAW共振子よりもデバイスサイズが大きくなってしまい、近年の小型化の要求に応えることができないという問題があった。
また、前記特公平01−034411号公報に開示されているSAW共振子においては、IDTにて励振されたSAWの波長をλとした時、電極膜厚を2%λ以上、好ましくは4%λ以下にすることによりQ値を高めることができるとされており、共振周波数200MHzの場合、4%λ付近でQ値が飽和に達するが、その時のQ値は20000程度しか得られずSTカット水晶SAW共振子と比較してもほぼ同等のQ値しか得られない。この原因として、膜厚が2%λ以上4%λ以下の範囲ではSAWが圧電基板表面に十分集まっていないので反射が効率良く利用できないことが考えられる。
そこで、本発明者は特願2004−310452号にて、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板上に、Al又はAlを主成分とする合金からなるIDTを形成し、該IDTのSAWの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10としたSAWデバイスを発明した。当該発明によれば、本来、圧電基板内部に潜って進んでいく波を基板表面に集中させてグレーティング反射器等によりSAWの反射を効率良く利用することができるので、従来のSTカット水晶SAWデバイスと比較して小型でQ値が高く、且つ周波数温度特性に優れたSAWデバイスが実現できる。
ところで、SAW共振子のQ値を高くするには、圧電基板の表面上にSAWの振動エネルギーを閉じ込めて、振動損失を極力減少せしめることが重要であり、そのためにはIDTの放射コンダクタンスのピーク周波数と反射器の反射係数のピーク周波数を合わせる必要がある。図7は、IDTの電極ピッチをLt、反射器の電極ピッチをLrとした時にLt=Lrとした時のIDTの放射コンダクタンスGと反射器の反射係数|Γ|を示している。同図に示すように、IDTの放射コンダクタンスGのピーク周波数ftと反射器の反射係数|Γ|のピーク周波数frの間にはずれが生じていることが分かる。これは、IDTの中心周波数で十分な反射状態にならないことを意味しており、Q値が劣化する原因となる。
そこで、ftとfrを一致させるべく、IDTと反射器の電極ピッチ比Lt/Lrを補正する必要がある。Lt/Lrは、圧電基板のカットアングルや電極膜厚により補正値が変化するので、設計条件に応じてLt/Lrを適宜選択しないとftとfrがずれてしまいQ値が劣化する原因となる。従って、特願2004−310452号に記載のSAWデバイスにおいても、ftとfrが一致するようなLt/Lrの最適値を検討する必要があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、特願2004−310452号に開示されたSAWデバイスにおいて、IDTと反射器の電極ピッチ比Lt/Lrを最適に設定することにより、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数と反射器の反射係数のピーク周波数を一致させ、高いQ値を実現することを目的とする。
本発明の弾性表面波デバイスは、圧電基板と、該圧電基板の主面上に形成した少なくとも1つのIDTとその両側に反射器とを備え、励振波をSH波とした弾性表面波デバイスであって、前記圧電基板は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板であり、励振する弾性表面波の波長をλとしたとき、前記IDTの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.05≦H/λ≦0.07とし、前記IDTの電極ピッチをLt、前記反射器の電極ピッチをLrとしたとき、IDTと反射器の電極ピッチ比Lt/Lrを31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲に設定することを特徴とする。
また、前記IDT及び前記反射器は、Al又はAlを主成分とする合金から形成されていることを特徴とする。
また、本発明のモジュールは、前述の弾性表面波デバイスを備えていることを特徴とする。
また、本発明の発振器は、前述の弾性表面波デバイスを備えていることを特徴とする。
また、前記IDT及び前記反射器は、Al又はAlを主成分とする合金から形成されていることを特徴とする。
また、本発明のモジュールは、前述の弾性表面波デバイスを備えていることを特徴とする。
また、本発明の発振器は、前述の弾性表面波デバイスを備えていることを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、本発明に係るSAWデバイスの一例としてのSAW共振子の平面図を示しており、圧電基板1上に正電極指と負電極指とがそれぞれ互いに間挿し合うIDT2と、該IDT2の両側にSAWを反射する為のグレーティング反射器3a、3bとを配置する。そして、前記IDT2の入出力パッド4a、4bとパッケージ6の入出力用端子とを金属ワイヤ5a、5bにより電気的に導通し、パッケージ6の開口部を蓋(リッド)で気密封止する。圧電基板1は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対しほぼ垂直方向(90°±5°)にした水晶平板であって、励振するSAWはSH波である。なお、IDT2及びグレーティング反射器3a、3bの電極材料はAl又はAlを主成分とする合金である。また、図1(b)は、IDT2及びグレーティング反射器3a、3bの拡大図を示しており、IDT2上を励振するSAWの波長をλ、IDT2の電極ピッチをLt、グレーティング反射器3a、3bの電極ピッチをLrとし、電極指幅をL、電極指間スペースをSとしている。なお、以下に示す実施例では、電極膜厚Hを波長で基準化した値H/λで表し、ライン占有率mrを電極指幅L/(電極指幅L+電極指間スペースS)で表し、IDTと反射器の電極ピッチ比をLt/Lrで表すこととする。
本発明では、特願2004−310452号に記載の回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対しほぼ垂直方向(90°±5°)にした水晶平板を用いたSAWデバイスにおいて、Lt/Lrを最適に設定し、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数と反射器の反射係数のピーク周波数を一致させることにより、振動エネルギーを効率よく閉じ込めて高Q化を図った。
図2は、電極膜厚H/λを0.05、0.06、0.07とした時のLt/LrとQ値の関係を示している。ここでは水晶基板のカット角θを−52°±0.5°、ライン占有率mrを0.60、IDT2の対数を100対、グレーティング反射器3a、3bの本数を各々100本とし、共振周波数を315MHzとしたSAW共振子を試作し、その実験結果をプロットした。いずれの電極膜厚の条件においても、Lt/Lr=0.995付近でQ値は約25000の最大値をとり、Lt/Lr=0.995よりずれるとQ値が減少することが分かる。また、H/λ=0.05の場合で0.990≦Lt/Lr≦0.997の範囲、H/λ=0.06の場合で0.980≦Lt/Lr≦0.998の範囲、H/λ=0.07の場合で0.997≦Lt/Lr≦1.00の範囲において20000以上もの高いQ値が得られた。これは、Lt/Lrを補正することにより、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数が、反射係数の大きい周波数である範囲に入っているためだと考えられる。
ここで、特公平01−034411号公報の多対IDT型SAW共振子と本発明のSAW共振子のQ値を比較すると、特公平01−034411号公報で得られているQ値は共振周波数が207.561(MHz)における値であり、これを本実施例で適用している共振周波数315(MHz)に変換するとQ値は15000程度であり、本発明のSAWデバイスのQ値は、15000を超える。本発明のSAWデバイスのQ値は、特公平01−034411号公報で得られているQ値よりも大きいことが分かる。また、共振子のサイズを比較すると、特公平01−034411号公報の多対IDT型SAW共振子は800±200対もの対数が必要なのに対し、本発明はIDTの両方で200対分の大きさで十分であるので格段に小型化できる。
次に、図3は、図2に示す電極膜厚H/λの各条件において、20000以上のQ値が得られるLt/Lrの上限値及び下限値をプロットした図を示している。ここで、Lt/Lrの上限値を表す近似式を曲線Aとし、Lt/Lrの下限値を表す近似式を曲線Bとした時、曲線A及びBは以下のように表すことができる。曲線A:Lt/Lr≒−3.000×(H/λ)2+0.500×(H/λ)+0.9796曲線B:Lt/Lr≒31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133この曲線A及びBに囲まれる領域内にLt/Lrを設定すれば、20000以上のQ値を得ることができる。即ち、0.05≦H/λ≦0.07とした時に、Lt/LrとH/λを31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲内に設定すれば良い。
以上説明した通り、本発明に係るSAWデバイスは、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対しほぼ垂直方向(90°±5°)にした水晶平板を用いたSAWデバイスにおいて、電極膜厚H/λを0.05≦H/λ≦0.07とした時に、Lt/Lrを31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲内に設定することにより、従来品と比較して小型で高いQ値を実現することができる。
また、特願2004−310452号に記載されているように、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−61.4°<θ<−51.4°に設定すれば、周波数温度特性の頂点温度を実用的な0〜70℃の間に設定することができる。
以上では電極膜厚H/λを0.05≦H/λ≦0.07とした場合についてのみ説明してきたが、これ以外の電極膜厚であっても31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲内にLt/Lrを設定すればQ値の高いSAWデバイスを実現できる。また、ライン占有率mrは0.60に固定したが、これ以外のライン占有率としても良い。電極材料についても上述ではAl又はAlを主成分とする合金としたが、それ以外のTa、W、Au、Ag等の金属又はそれらを主成分とする合金としても良い。
デバイス構造に関しては、図1に示すような1ポートのSAW共振子以外に、2ポートSAW共振子、SAW共振子の音響結合を利用した2重モードSAW(DMS)フィルタ、SAW共振子を直列腕と並列腕に梯子状に配置したラダー型SAWフィルタ、入力用IDTと出力用IDTを所定の間隙をあけて配置したトランスバーサル型SAWフィルタ等のSAWデバイスに適用しても良い。
また、上述のSAWデバイスにおいて、IDTやグレーティング反射器上にSiO2等の保護膜やAlを陽極酸化した保護膜等を形成したり、Al電極の上部あるいは下部に密着層あるいは耐電力向上等の目的で別の金属薄膜を形成した場合においても、本発明と同様の効果を得られることは明らかである。また、センサ装置やモジュール装置、発振回路等にも本発明のSAWデバイスを適用可能である。
また、本発明のSAWデバイスは、図1に示すようなSAWチップとパッケージをワイヤボンディングした構造以外でも良く、SAWチップの電極パッドとパッケージの端子とを金属バンプで接続したフリップチップボンディング(FCB)構造や、配線基板上にSAWチップをフリップチップボンディングしSAWチップの周囲を樹脂封止したCSP(Chip Size Package)構造、或いは、SAWチップ上に金属膜や樹脂層を形成することによりパッケージや配線基板を不要としたWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)構造等にしても良い。更には、水晶デバイスを水晶又はガラス基板で挟んで積層封止したAQP(All Quartz Package)構造としても良い。前記AQP構造は、水晶又はガラス基板で挟んだだけの構造であるのでパッケージが不要で薄型化が可能であり、低融点ガラス封止や直接接合とすれば接着剤によるアウトガスが少なくなりエージング特性に優れた効果を奏する。
以上説明したように、本発明によれば、カット角θが−64.0°<θ<−49.3°の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、SAWの伝搬方向が結晶X軸に対して90°±5°として励振されるSH波を用い、IDT及びグレーティング反射器の電極材料をAlまたはAlを主とした合金にて構成し、波長で基準化した電極膜厚H/λを0.05≦H/λ≦0.07とし、前記IDTの電極ピッチをLt、前記反射器の電極ピッチをLrとしたとき、IDTと反射器の電極ピッチ比Lt/Lrを31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲に設定することにより、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数を反射器の反射係数の周波数範囲内に位置させることができるので、高いQ値を実現することが可能な弾性表面波(SAW)デバイスを提供することができる。また、前述のSAWデバイスをモジュール装置、又は発振回路等に用いれば、小型化、高性能化を実現できる。
本発明では、特願2004−310452号に記載の回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対しほぼ垂直方向(90°±5°)にした水晶平板を用いたSAWデバイスにおいて、Lt/Lrを最適に設定し、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数と反射器の反射係数のピーク周波数を一致させることにより、振動エネルギーを効率よく閉じ込めて高Q化を図った。
図2は、電極膜厚H/λを0.05、0.06、0.07とした時のLt/LrとQ値の関係を示している。ここでは水晶基板のカット角θを−52°±0.5°、ライン占有率mrを0.60、IDT2の対数を100対、グレーティング反射器3a、3bの本数を各々100本とし、共振周波数を315MHzとしたSAW共振子を試作し、その実験結果をプロットした。いずれの電極膜厚の条件においても、Lt/Lr=0.995付近でQ値は約25000の最大値をとり、Lt/Lr=0.995よりずれるとQ値が減少することが分かる。また、H/λ=0.05の場合で0.990≦Lt/Lr≦0.997の範囲、H/λ=0.06の場合で0.980≦Lt/Lr≦0.998の範囲、H/λ=0.07の場合で0.997≦Lt/Lr≦1.00の範囲において20000以上もの高いQ値が得られた。これは、Lt/Lrを補正することにより、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数が、反射係数の大きい周波数である範囲に入っているためだと考えられる。
ここで、特公平01−034411号公報の多対IDT型SAW共振子と本発明のSAW共振子のQ値を比較すると、特公平01−034411号公報で得られているQ値は共振周波数が207.561(MHz)における値であり、これを本実施例で適用している共振周波数315(MHz)に変換するとQ値は15000程度であり、本発明のSAWデバイスのQ値は、15000を超える。本発明のSAWデバイスのQ値は、特公平01−034411号公報で得られているQ値よりも大きいことが分かる。また、共振子のサイズを比較すると、特公平01−034411号公報の多対IDT型SAW共振子は800±200対もの対数が必要なのに対し、本発明はIDTの両方で200対分の大きさで十分であるので格段に小型化できる。
次に、図3は、図2に示す電極膜厚H/λの各条件において、20000以上のQ値が得られるLt/Lrの上限値及び下限値をプロットした図を示している。ここで、Lt/Lrの上限値を表す近似式を曲線Aとし、Lt/Lrの下限値を表す近似式を曲線Bとした時、曲線A及びBは以下のように表すことができる。曲線A:Lt/Lr≒−3.000×(H/λ)2+0.500×(H/λ)+0.9796曲線B:Lt/Lr≒31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133この曲線A及びBに囲まれる領域内にLt/Lrを設定すれば、20000以上のQ値を得ることができる。即ち、0.05≦H/λ≦0.07とした時に、Lt/LrとH/λを31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲内に設定すれば良い。
以上説明した通り、本発明に係るSAWデバイスは、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対しほぼ垂直方向(90°±5°)にした水晶平板を用いたSAWデバイスにおいて、電極膜厚H/λを0.05≦H/λ≦0.07とした時に、Lt/Lrを31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲内に設定することにより、従来品と比較して小型で高いQ値を実現することができる。
また、特願2004−310452号に記載されているように、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−61.4°<θ<−51.4°に設定すれば、周波数温度特性の頂点温度を実用的な0〜70℃の間に設定することができる。
以上では電極膜厚H/λを0.05≦H/λ≦0.07とした場合についてのみ説明してきたが、これ以外の電極膜厚であっても31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲内にLt/Lrを設定すればQ値の高いSAWデバイスを実現できる。また、ライン占有率mrは0.60に固定したが、これ以外のライン占有率としても良い。電極材料についても上述ではAl又はAlを主成分とする合金としたが、それ以外のTa、W、Au、Ag等の金属又はそれらを主成分とする合金としても良い。
デバイス構造に関しては、図1に示すような1ポートのSAW共振子以外に、2ポートSAW共振子、SAW共振子の音響結合を利用した2重モードSAW(DMS)フィルタ、SAW共振子を直列腕と並列腕に梯子状に配置したラダー型SAWフィルタ、入力用IDTと出力用IDTを所定の間隙をあけて配置したトランスバーサル型SAWフィルタ等のSAWデバイスに適用しても良い。
また、上述のSAWデバイスにおいて、IDTやグレーティング反射器上にSiO2等の保護膜やAlを陽極酸化した保護膜等を形成したり、Al電極の上部あるいは下部に密着層あるいは耐電力向上等の目的で別の金属薄膜を形成した場合においても、本発明と同様の効果を得られることは明らかである。また、センサ装置やモジュール装置、発振回路等にも本発明のSAWデバイスを適用可能である。
また、本発明のSAWデバイスは、図1に示すようなSAWチップとパッケージをワイヤボンディングした構造以外でも良く、SAWチップの電極パッドとパッケージの端子とを金属バンプで接続したフリップチップボンディング(FCB)構造や、配線基板上にSAWチップをフリップチップボンディングしSAWチップの周囲を樹脂封止したCSP(Chip Size Package)構造、或いは、SAWチップ上に金属膜や樹脂層を形成することによりパッケージや配線基板を不要としたWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)構造等にしても良い。更には、水晶デバイスを水晶又はガラス基板で挟んで積層封止したAQP(All Quartz Package)構造としても良い。前記AQP構造は、水晶又はガラス基板で挟んだだけの構造であるのでパッケージが不要で薄型化が可能であり、低融点ガラス封止や直接接合とすれば接着剤によるアウトガスが少なくなりエージング特性に優れた効果を奏する。
以上説明したように、本発明によれば、カット角θが−64.0°<θ<−49.3°の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、SAWの伝搬方向が結晶X軸に対して90°±5°として励振されるSH波を用い、IDT及びグレーティング反射器の電極材料をAlまたはAlを主とした合金にて構成し、波長で基準化した電極膜厚H/λを0.05≦H/λ≦0.07とし、前記IDTの電極ピッチをLt、前記反射器の電極ピッチをLrとしたとき、IDTと反射器の電極ピッチ比Lt/Lrを31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲に設定することにより、IDTの放射コンダクタンスのピーク周波数を反射器の反射係数の周波数範囲内に位置させることができるので、高いQ値を実現することが可能な弾性表面波(SAW)デバイスを提供することができる。また、前述のSAWデバイスをモジュール装置、又は発振回路等に用いれば、小型化、高性能化を実現できる。
Claims (4)
- 圧電基板と、該圧電基板の主面上に形成した少なくとも1つのIDTとその両側に反射器とを備え、励振波をSH波とした弾性表面波デバイスであって、前記圧電基板は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板であり、励振する弾性表面波の波長をλとしたとき、前記IDTの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.05≦H/λ≦0.07とし、前記IDTの電極ピッチをLt、前記反射器の電極ピッチをLrとしたとき、IDTと反射器の電極ピッチ比Lt/Lrを31.50×(H/λ)2−4.435×(H/λ)+1.133≦Lt/Lr≦−3.000×(H/λ)2+0.5000×(H/λ)+0.9796の範囲に設定することを特徴とした弾性表面波デバイス。
- 前記IDT及び前記反射器は、Al又はAlを主成分とする合金から形成されていることを特徴とした請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
- 請求項1又は2に記載の弾性表面波デバイスを用いたモジュール。
- 請求項1又は2に記載の弾性表面波デバイスを用いた発振器。
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